アズリールになったので自分に正直に生きます (ミレニア)
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初投稿です。
駄文などあるかもしれませんが暖かい目で見てくれるとありがたいです。


アズリール

 

ここの主人公。

元の世界では男で、高校生、彼女いない歴=年齢の童貞。

のんびり屋で、何かを失う事が怖い。

基本優しい。

大事な物、人を傷つけられるとブチギレる。

過去にその事があり、それをした人物を半殺しにしたとこで止められた。

 

因みに語尾に「にゃ」を付けてるのは本人の意思だとか。

理由は原作がそうだったから。

 

特に不自由無く暮らしてはいたが、あの出来事から、両親とあまり喋らなくなっていた。

毎日が退屈で新しい事を探そうかと思ってた時に転生した。

 

めんどくさがり屋だが、アズリールになった時はめんどくさいより好奇心などを優先していた為、いつの間にか治っていた。

 

魔法は使えるが転移とかが使うのに少し時間がかかる。

 

因みに天翼種自体好きだがその中でもジブリールが大好き。

ジブリールの為なら何でもするし、何でもしたい位。

なお、ジブリールと会えるのは2万年後と思い出した時は絶望に落とされたとか。

 

容姿

 

目は緑。

髪は肩位まであって、原作とは違い、緑色から徐々に紫色、となっている。

 

裏話

 

アズリールになった事で、退屈という悩みは終わったが、新しい悩みが出来た。

それは…少し顔を下に下げれば見えるおっぱい。

いくら自分のでも、元男として意識するとつい触りたくなってしまい、悩んだ結果触ってみたら、ぶっ倒れたとか。

 

「童貞には…刺激が…強かったにゃ……」

 

因みにすごく柔らかかったにゃ!

流石うち!

 

ジブリール

 

最終番個体の番外個体。

ここのヒロイン。

アズリールの事は時々うざくて不思議な人と思ってるが信頼してるし、姉として尊敬もしている。

 

容姿

 

原作と一緒。

 

裏話

 

アズリールと会って、数日後の時。

歩いていたら、突然何も無いのにコケてちょうど前にいたアズリールを巻き込んだ。

その時、不可抗力でアズリールのおっぱいを揉んだ時「…にゃ…♡」と、その喘ぎ声に少し興奮を覚えたとか。

因みに、その時はこれが何の気持ちか分からなかったそう。

 

ラフィール

 

クールで口調が男っぽい。

そのうち出ます、あまり喋らないかもですが。

 

容姿

 

原作と一緒だが、原作は翼が小さくなっているが、ここではそのケガは無かったことになっている。

 

裏話

 

珍しくアズリールがイライラしてるから何故か聞いてみた。

そしたら、大事な本を妹に傷つけられたけど、わざとじゃないから怒らない、でも、大事な本だったからどうしようってことらしい。

悪い癖というのは知っているが、私はつい、気になってしまった。

この状態のアズリールに更に妹の誰かを故意に傷つけたとなったらどうなるのだろう。

なので、聞いてみたら。

「…死にたいの?…冗談でもやめるにゃ」

凄まじい殺気に一瞬死が見えた。

流石に今のは私も酷いことを聞いた、反省だな、すまない。




ごめんなさい、アズリールとジブリールの裏話は微エロ話を作りたかっただけです。


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日常編
二人の天翼種の日常


本編とは全く関係ないやりたかった事をやっただけのものです。
この話を見なくても支障は無いです。


 

このエルキア大図書館にいる二人の少女。

一人は翡翠色であり、しかしながら徐々に紫色へと変わっていく肩に乗る程の髪を持ち、首に蒼く、それでいて透明な宝石をシンプルなデザインで作られたネックレスを着けた少女。

 

一人は美しき桃色の髪を持ち、風が流れない場所でも靡き、その光の反射で綺麗なプリズム色を見せてくれる。

その手には翡翠色の少女から貰った本を愛おしそうに持つ少女。

 

彼女達の名はアズリール、そしてジブリールと呼ばれる。

そんな彼女達だが、最近は新たなエルキアの王の傍にいる為に知られていなかったが、最近ようやく何も予定もない日があった。

なので今回はそんな彼女達にとっては6000年前からの日常を見ていこうと思う。

 

 

 

 

 

エルキア大図書館の中央に置かれているテーブルとイスに隣同士で座る少女達。

彼女達はただ静かに。

ジブリールは手で、アズリールは片腕しか使えない為テーブルに置いて本を読む。

もし、二人はこういう時は楽しく又はイチャイチャしながらお喋りをしていると思っていたなら、意外にもそこに会話は無い。ただ黙々と読み続ける。

 

二人はこの場所にある本の内容を知っている。

既にエルキア大図書館にある本は全て一度は読んでいる。

それでももう一度読むのは忘れているからでは無い。

本に書かれた文字を読むのが楽しいからだ。

天翼種の記憶力を持ってすれば本の内容を全て覚えていることは簡単だが、それでも本を用いて読むのだ。

 

今ジブリールが読んでいるのは、恋愛小説というやつである。

その恋愛小説に書かれている事をアズリール(彼氏)ジブリール(彼女)に置き換えて妄想し心の内ではうへへと楽しんでいたりする。

基本的に人類種、たまに他の種で書かれており「天翼種ではこんなこと絶対に起きない」と理解しているがそんなものを気にしていたら楽しめないのでそっと隅に追いやっている。

時々ちらちらと隣にいるアズリールの横顔を伺うのだが、本を読んでいる時のアズリールは凛々しく、たまにふふっと薄く笑っていてそれを見てはゆっくり顔を本に戻し、何も無かった風に写るが内心では「可愛い可愛い!」「かっこいいかっこいい!」と頬を両手で挟み身体ごと左右に振りながら叫んでいるのが見えなくもないが。

 

それに対しアズリールが読んでいる本とは。

と、言っても好き好んでこのジャンルを読むというのが無い。

何も考えず適当にふらついて適当に止まってはその手に掴んだ本を読むだけなのだ。

 

それが昔話の様な本ならば「そういえばこんな事あったにゃあ」と、実際に見ていた場合に限るが当時の記憶を思い出しながら本と記憶を照らし合わせる。

 

それが恋愛小説という本ならば「こんな事うちもしてーにゃ〜」と、ジブリールと同じく欲望に忠実である。

無論こちらも天翼種だからどうこうと言った話は気にしてない。

というよりは何も考えてないだけなのだが。

 

それが専門書の様な本ならば「暇だから読んでるけど何で読んでんだろにゃ?」と、天翼種の記憶力故に理解出来てはいるが「そもそも使い時あるか?」と。

 

それが料理のレシピなどが書かれた本ならば「あ〜、美味しそうにゃ。うちもジブちゃんに美味しく作ってあげたいにゃー。…はぁ」と、自身の腕を使えない事と下手くそという二つの意味で理解し悲しみに浸かる。

 

因みにあれから料理の腕が上がったかと言えば、ジブリールは「美味しい」と言ってくれるが他は「まぁ…美味い(不味い)よ」と言うくらいである。

とまぁ、こういった感じでありアズリールは本を読む事は好きだしもちろん楽しいのだが、どちらかというと『ジブリールと隣同士で静かに本を読む』という事が好きなのだ。一人より二人、ジブリールのいるいないはアズリールにとってはとてもでかい訳で。

丸一日喋ること無く本を読んでいたなんて事もある。

まぁ、それはたまにある事であり今回は起きなかった訳で。

 

お昼頃になるとジブリールが昼食を作ってくれる。

本来天翼種に食事も睡眠も必要ないと分かっているがアズリールは「したいから」と続けている。

それに影響を受けてジブリールも真似る。

無論、ジブリールの作ったものはアズリールからすれば「美味しすぎる!!」と言った具合である。

一応料理の上手さを数値化し1~100とした場合。

 

 

 

 

アズリール──『15』──

 

 

 

ジブリール──『100』──

 

 

 

ステファニー──『130』──

 

 

 

といったところだろう。

あれ?おかしいなって思っただろうけど一般的に見たらこれで合ってるんです。

無論アズリール視点なら。

 

 

 

アズリール──『-100』──

 

 

 

ステファニー──『130』──

 

 

 

ジブリール──『1000』──(許容上限値)

 

 

 

 

といった感じで補正が掛かりに掛かりまくってカンストする、といった具合になる。

ジブリールの方はアズリールの『15』という数値が自分と同じ位になるだけなのでさっきと比べたらマシに見える。

しかし、アズリールが自力でジブリールと同じ所に行ければ、ジブリールも同じく許容上限値をカンストするのも事実。

 

 

 

 

さて、お昼が終われば二人はまた本の世界に戻る。

たまに外に行く事もあるが今回はそれらを抜きにした日常なのである。

といってもここからは先はとんとんと進む。

別段やる事が変わって無ければ語れることも無いわけでそのまま夜まで時間は飛んだ。

 

夜ご飯も食べ片付けも終わりベッドへと場所は移る。

ジブリールが右側、アズリールが左側。

キングサイズのベッドの上に二人は寝転がりこの時に本を読んでいた時の静寂分を話したりもするのだ。

そうすると、うとうと、と瞼が閉じてきて意識が落ちる。

今回はアズリールが寝落ちし、そんな彼女を愛おしいく、慈愛に溢れるような手つきで撫でていく。

ジブリールが寝落ちすれば、アズリールも似たようにする。

ただ二人の違う点を挙げるとアズリールは頭を撫で終わり自分も寝るのだが、ジブリールはアズリールの右手を手に取り自分の胸の中央まで持っていき、その手を両手で掴み抱いて最後にその顔を見て意識を落とす。

 

そして日が昇り、朝になれば基本的にアズリールが先に目を覚まし隣で自分の右手を持ち「すぅ…すぅ…」と寝息を立てて眠るジブリールを見つめる。

毎度毎度その顔を見つめれば出てくる感想は

 

「…うちの彼女、可愛すぎ…!?」である。

 

数分か数十分、時間が経てばもう一人の少女が目を覚ます。

目を擦り、ゆっくり身体を起こして、彼女の頬におはようのキスをする。

それを当たり前の如く受け入れ、ジブリールの小さな声がアズリールの耳に届く。

 

「……おはようぅ、ございます」

 

「おはよ、よく眠れた?」

 

「…はい、お陰様で」

 

「そっか!よし、今日もよろしくにゃー!」

 

「えぇ…♪」

 

短い会話と挨拶をして、新しい一日が少女達を迎い入れる。

何も変わらない、時に違った、そんな日常。

 



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アズリールの日常

 

エルキア大図書館内の中央テーブルにて二人の天翼種がいる。

一人は翡翠髪の少女、アズリール。

その向かいに座るは水のように透き通った青色の髪を持ち、本来ならばその翼は根元から無く、光輪も欠けていたはずの少女。

だが、この世界においては全てが健在である片目を隠した天翼種、その名はラフィール。

実はラフィール、二週間に一、二回ほど遊びに来る事があった。

最近は色々と自身のやりたい事もあったが主に二人が忙しそうだなという事で来なかったのだ。

現在は「暇そうだし、大丈夫だろう」といった具合で来ている。

ただ、丁度その日ジブリールは自身の用事の為にいなかった。

余談だが、アズリールの料理の腕が最底辺の時に一度興味本位で食した事があったが本人曰く「料理で天翼種が気分を悪くするなど理解できない。これは一種の兵器だ。それこそ…破壊力、は…天撃並…だな……」なんて言い残して二十分位気絶したほど。

若干のトラウマである為にアズリールの料理を前にびくびくと震えるラフィールという滅多に見れないものが見れる。

「断ってもいいんですよ?」とジブリールが言っても「あいつの願いとなると妙に断りずらくてな…結果このざまだが」との事。

最近は「アレに比べれば、まぁ…」と、結構ガバガバになってたりする。

 

「あぁ〜、ラフィちゃん〜聞いて欲しいのにゃぁ〜」

 

目の前に座わり顎をテーブルに乗せ、やる気無く右手をぶらぶらとさせる。

ラフィールはその手に持つ本を閉じ、置いてそんな相手を見る。

 

「何だ、一体」

 

「最近ジブちゃんの様子が変なのにゃ〜。うち何かしちゃったのかにゃぁ、嫌われてたりしてないよにゃぁ…」

 

ウガー、と頭を押さえて唸るアズリールから目を離し考える。

ラフィールは思う、あのジブリールがちょっとやそっとの事でアズリールの元から居なくなる事などありえないと断言出来る。

しかし、ラフィールを含めた天翼種相手には特に変わらぬというのに、ジブリールの事となると途端に崩れる。

 

「はぁ…アズリール、お前は少し心配が過ぎる。確かにお前が何かをしてしまっていたとしても、あいつはそう簡単にお前から離れんだろう」

 

「じゃあ何であんなにうちから遠のくような事をするのにゃ〜、やっぱり嫌われてるんじゃないのかにゃぁぁぁ…」

 

「…お前はジブリールの事を信じてるのか信じてないのかどっちなんだ」

 

「っ、そ、そんなの信じて…」

 

「だったら何も心配するな。確かに行動はよそよそしいかもしれんが信じて待ってろ」

 

「…そうだ、そうだよ、うちが信じないでだ〜れが信じるにゃ!うちは堂々と待ってればいいだけだもんにゃ!」

 

「あぁ、それでいい。余計な心配など無用だ、全く苦労をかける」

 

「にゃはは〜、ごめんね。でも、やっぱりラフィちゃんは頼りになるにゃ〜♪」

 

その言葉に小さく笑い受け止める。

これではどちらが姉なのかがよく分からなくなってしまいそうだ。

それでもラフィールは「世話の掛かる我らが姉」なんて認識ではあるが。

さて、アズリールの不安は解消出来た所で次は何故そうなっているのか。

 

「それで、ジブリールは何故そうまでしてお前に何かを隠すかだが」

 

「うーん、怒らせるような事をした覚えは無いし…」

 

「一応言っておくが、未だ一緒に風呂を入る時に目を合わせてくれない事には怒っていたぞ」

 

「ぅぐっ、だ、だって仕方ないじゃん!恥ずかしいんだもん!というか!いつの間に会ってたの!」

 

「裸体位でこうも騒ぐのもどうなんだ。それに他の者達だったら大丈夫だったろ、何が違う」

 

「ジブちゃんが特別なのー!ラフィちゃんも愛してる人が出来たらうちの気持ちが分かるに決まってる!」

 

「私に出来るとは到底思えないがな。それより、話が逸れているぞ」

 

「はっ、そうだった。あ、でもだからといってさっきの話が無くなる訳じゃ無いからにゃ!きっちり付き合って貰うからにゃ!」

 

「…ちっ、面倒くさい事になった」

 

「聞こえてるんですけどー?」

 

アズリールが唯一気にしている点を突いたら面倒事になったと自業自得ではあるが。

 

「思ったのだが、何故そこまでジブリールの事を気にする」

 

「え、だって気になるじゃん」

 

「……………」

 

「あっ、今!絶対「くだらない」って思ったでしょ!」

 

「あぁ、くだらん」

 

「挙句に言った!言いやがった!」

 

「そもそもだ、もしお前に隠している事がジブリールにとって見つかったら嫌なものだったらどうする」

 

「ジブちゃんだったら堂々とうちに見せる」

 

「…お前はその自信を最初から持ってろ」

 

「うーん、そうなると一体なんだろにゃ〜」

 

「行動が怪しく他人の様、アズリールには気付かれたくない。それを踏まえたうえでジブリールのしそうな事…あぁ、なるほどな」

 

「ん〜?何か気がついたのにゃ?」

 

「まぁな、もし当たってたならばお前には教えられん。知りたいなら自力で見つけろ」

 

「え、ちょ、何で!?教えて教えてにゃ〜!」

 

「知らん。全く、お前はジブリールの事を理解しているのか理解してないのかよく分からん奴だ」

 

そう言い放ち置いてある本の続きを見る事にした。




最近出したもの全部夜中にやって出してる気がします。
なのでほとんどが眠気に晒されながらしてます。


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ジブリールの日常

 

とある森の中にて、ティーテーブルを間に挟み座る二人。

一人は桃色髪の少女、ジブリール。

その向かいに座るは──森精種。

柔らかくカールした金髪を持ち、本来ならお互いに嫌いあってるはずの、その名はフィール。

だが、この世界においては大戦時ジブリールが知らずのうちにアズリールに付きっきりとなっていた為に森精種の首都壊滅事件は無かったことになっている。

アズリールはその事実に気がついていないが。

意外な組み合わせの二人はよく気まぐれで会って話し合う。

天翼種と森精種、二人だけでこうして相見える事すら有り得なかっただろう光景。

そんな二人がこうして話す内容とは。

 

 

 

愛する人(アズリール)

好きな子(クラミー) の話である。

 

 

 

 

カップを手に取り優雅に飲む二人。

第三者が見れば美しいと言わせる事など至極簡単であり、リアルなら出来る女達と見られてもおかしくない見た目を持つ二人が話す内容がいつも二人の隣に居るはずのアズリールとクラミーの事だと思えるだろうか。

 

「聞いてくださいよ、フィール。あなたに教えて貰った料理、アズに凄く気に入ってもらえたんです。無我夢中に食べてる姿がそれはもう愛おしいくて♡」

 

「それはよかったのですよ〜。わたしもぉ、ジブリールにおすすめしてもらった本をクラミーに読んでもらったらぁ凄〜く楽しそうにしてたのですよ〜♪」

 

喜んで欲しいから。その理由だけでお互いに結託している。

二人で足りないものはおぎあいながら、相談事をしたりたまにではあるが世間話をしたりと結構いい仲である。

 

「そういえばアレの進捗の程は?」

 

「もちろん進んでいるのですよぉ」

 

ジブリールの言うアレとは、即ち『ブレスレット』である。

アズリールにサプライズで何か渡したいと相談したらこうなった。

ジブリールが何処からか銀を手に持ってきて、それをフィールが魔法で加工するといった具合に。

 

「本当に助かりますね。どうしても我々だと細かい事は苦手で」

 

「適材適所、って言葉もありますしぃ気にしないでほしいのですよ〜。わたしたちはぁ、友人じゃないですかぁ。困ってたら手を貸すのも友人なのですよぉ。それにぃ、好きな子の為に頑張りたいのはぁ、お互いに分かってますからね〜」

 

「ふふっ、えぇそうですね」

 

ジブリールが知る物達はほとんどが姉妹であり、二人だけだがマスターであり、一人は愛する人物であり、友人というものを作ったことなど無いに等しいが、そう考えると短くともここまで仲良くなったフィールは数少ない友人、いや親友なのかもしれない。

まぁ、気恥しいので口には出さないが。

そんな親友たるフィールの発言に顔が微笑むが、そうそうと話を切り出してきたので聞く姿勢に整える。

 

「少し前にぃ、アズリールさんが訪ねて来たのですよぉ」

 

「アズがフィールに?珍しいですね」

 

何気にアズリールはジブリールとフィールが仲良くしているのを知っている。

本人は何故か憎みあってる訳では無く、寧ろ楽しげな二人に何があった?と疑問に感じているが。

なお、無意識的にだがジブリールがフィールとの出来事を短くだが楽しく話しているのを見て「いい方向に進んでそうだし、友達の事を話すジブちゃんが楽しそうな笑顔をしてるからよかったにゃ。……かわい、やべ鼻血が」。

まぁ、二人が何の話をしているかはアズリールの知るところではないが。

 

「それがですよぉ?「ジブちゃんがうちに他人行儀な感じなのにゃ〜。フィーちゃんは何か知ってるかにゃ〜?」です」

 

「あの、フィール。こういうのもなんですが、あなたの声でアズのセリフを言うと、違和感が…」

 

「そ〜ですかぁ?わたし、結構アズリールさんと似てると思うんですけどぉ〜」

 

「因みに、どこがです?」

 

「……のほほ〜んとしたところ?」

 

「……………」

 

「……………」

 

「まぁ…否定はしません。というか声とかじゃ無いんですね…。って、凄い話がずれてしまいました」

 

「えっとぉ、どこまで話を…あっ思い出しましたぁ、何か知ってる?って聞かれたんですよぉ。それで思ったのですけどぉ。ジブリール、どうやってアズリールさんからこの話を隠してたんです〜?」

 

「どうって、ボロを出さない為にバレないように隠してきましたけど…?」

 

「もしかしてぇ、離れてたりしましたぁ?」

 

「確かにアズから離れてたり近くに来させないようにしましたが、それが?」

 

「……気がつかないんですかぁ?」

 

「……えっと、ごめんなさい。分からないです」

 

「アズリールさん、寂しかったと思いますよぉ?」

 

「…あっ」

 

「それにぃ多分ですけどぉあの人、嫌われたって思ってるかもしれませんよぉ?」

 

「………ど」

 

「ど?」

 

「どういたしましょうか!?確かに言われてみればアズのことを遠ざけてましたしもしかしたらまだ気がついてない事がアズの事を……!あぁ、私のバカ…」

 

「確かにぃアズリールさんを喜ばすサプライズでぇ、アズリールさんを寂しがらせてたら本末転倒ですね〜♪」

 

「あぅぅ、や、やめてくださいフィール……。本気で後悔してるんですからぁ…」

 

頭を抱えて唸る。

うふふ、と笑い楽しげにジブリールを弄る様はクラミーを相手にしている様でもあり、フィール本人も口には出さないが親友と認めているのかも知れないがそれを知るは本人のみである。




気がついたら日常ばかり出してしまいそう。


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二人の天翼種の日常 サプライズ編

 

「あ、あの〜。アズ〜?」

 

「うにゃ?ジブちゃんどうかしたのにゃ?」

 

「えっ、とその……ごめんなさい、何でもないです…」

 

「そう?ならいいけどにゃ」

 

何でもないとは言ってたものの少し離れた所で左右にうろうろと行ったり来たりして全然何でもなくないと身体が教えている。

どうしてこんなにも不審者真っ只中な行動をしているのかというと。

単純な話「アズリールを悲しませた」。

本来ジブリールからすれば、悲しませた“かも“だし、実際悲しんでたものの立ち直ってる為に特に気にしてないのだが。

それでもジブリールの中では絶対悲しませたとなっているので、言い出しずらくてこんな事にはなっている。

といってもそんな事はアズリールの知る由もない訳で。

 

「にゃ〜ジブちゃん。うろうろとしてどうしたのにゃ?」

 

「い、いえ気にしないでください…」

 

「いや無理にゃ、すっごい気になるにゃ。正直に言っちゃえば不審者感凄いにゃ。ほら、こっちおいで」

 

手を上下に振って呼びかける。

そうなればジブリールも行かざる負えなくて、ゆっくりではあるがこちらへ来る。

アズリールも立ち上がり近いて正面に立って。

 

「それで、どうしたの?」

 

首を傾げて心配そうに見上げる。

 

「その、ですね」

 

「うん」

 

「す、少し待っててください!」

 

そういって走っていき、数十秒後に帰ってくる。

その手には平べったい箱があり。

 

「えーっと、それは?」

 

「これ、開けてみてください」

 

ジブリールの手の上にある箱をぱかりと開けてみる。

そこにあったのは銀が輝くチェーン状のブレスレットであった。

腕に付けるには少し大きいが丁度手に引っかかる程である。

ジブリールに付けてもらい、その右腕にあるブレスレットを見つめる。

 

「………」

 

「ど、どうでしょうか?」

 

「…あ、ありがとう!めちゃくちゃ嬉しい!………わぁ〜」

 

喜んでもらえると分かっていても緊張するものであり、その反応に心からホッとする。

 

「もしかしてサプライズプレゼント?」

 

「そうなんです。フィールに手伝ってもらって、というよりはフィールに作ってもらったんですけどね…。私が出来たら良かったんですが…」

 

「そうなんだぁ。ならフィールにもお礼を言わないとだにゃ!あと、ジブちゃんがこうしてうちにやってくれた事が一番だにゃ。だから気にしにゃい!」

 

「…はい!それとですね、この事を隠すためにアズを遠ざけてしまってごめんなさい」

 

「あ〜、もしかしてあんなに挙動不審だったのってその事にゃ?まぁ確かに気にしてはいたけどもう平気にゃ?それにうちもジブちゃんの愛を疑っちゃったし…」

 

「本当にごめんなさい…。ですが、それでしたらこれでおあいこでどうでしょう?」

 

「そうだね。ならうちも…ごめんなさい」

 

「はい、大丈夫です。しかし、喜んで貰ってよかったですよ」

 

「超大事に使わさせて貰います」

 

「ふふ、はい。大事に使ってくださいね♪」

 

この後アズリールはこのブレスレットを自慢しに回った。

 

 

 

 

 

 

 

「にゃはは!どーにゃこれ!ジブちゃんからのプレゼントなのにゃ!」

 

「またお前なぁ…。前のネックレスの時にもそう言ってたがもしかしてジブリールから貰う度来るわけじゃねぇよな」

 

「え?来たらダメなの?自慢しに」

 

「いちいち来るなって事だよっ!嬉しいのは分かるが一人で喜んでろ!」

 

「…でも、けっ、こう…似合って、るよ?」

 

「にゃ〜♪やっぱ白ちゃんは分かってるにゃ〜♪それに比べて空、だから女の子にモテないのにゃ?」

 

「うるせぇ!まだ分かんねぇだろ!!まだ未来があるじゃねぇか!?」

 

「そんな大声出して一体どうしたんですの?」

 

「あ、ステフ」

 

「あら、アズリールさんじゃありませんの。ってその腕の綺麗ですわね?似合ってますわ」

 

「にゃは〜♪ステフも分かる〜?ジブちゃんに貰ったばっかなのにゃ〜♪やっぱり女の子ってちゃんと分かるんだにゃ〜」

 

「クソ、すげぇムカつく。だが、まぁなんだ、似合ってるぜ、アズリール」

 

「にゃはは、ありがと〜。それじゃあうちはお礼を言いに行かなきゃいけない子の所に行ってくるにゃ」

 

そう言い残して空間転移していく。

転移先は森であり空間転移の影響で草木が大きく揺れ、その近くにいた森精種の髪も靡く。

 

「あ、フィーちゃん!」

 

「あらぁアズリールさんじゃないですかぁ。どうしたのですか〜?」

 

「フィーちゃんが手伝ってくれたって聞いたからお礼を言いに来たのにゃ。本当にありがとう!すっごい気に入ったのにゃ!」

 

「良かったのですよぉ。でもぉデザインとかぁそういうのは〜ジブリールがぜーんぶやってくれてぇわたしはその通りに作っただけなのですよ〜」

 

「それでもにゃ!ありがとう!」

 

「でしたらぁその分のお礼はジブリールにしてあげてほしいのです〜」

 

「フィーちゃん…そっか、分かったにゃ」

 

「──ィー──フィー、今戻ったわ。あれ、アズリールじゃない。何の用?」

 

「いや、うちの用はもう終わったにゃ〜」

 

「あらそうなのね。それより、そんなブレスレット今まで着けてた?」

 

「そうなのにゃ、これさっきジブちゃんに貰ったばかりなのにゃ!」

 

「へー、いいじゃない。似合ってるわよ?」

 

「ありがとにゃ〜、にゃはは」

 

皆から似合ってると言われ気分上々であり、ルンルンとしているアズリールがここ数日間見られた。

もちろんフィールの言った通りにジブリールを褒めまくった。

褒め過ぎて「あ、あう、そのぉ、や、やめてください、ほんとうにぃ…」と少し俯いてたじたじしながら顔が紅潮してしまったが、その仕草が胸にグッときており、もし尊いや可愛いといったものにダメージがあったなら今頃ここら一体は血の海で瀕死のアズリールが見つかっていたかもしれない。




ここの現在のアズリールの状態をまとめると
・翡翠から紫色に変わる髪色
・首に蒼く透明な宝石をしたネックレス
・右腕に銀が輝くチェーンブレスレット
・左腕機能停止
・右翼損失

何か気がついたらこんな事になってたんですね…。
やりたいことやってんなぁって思います。
そして相も変わらず眠い脳が作りました。

あと何故かランキング16位に乗ってました、夜くらいに。
めちゃめちゃびっくりした。
未だに気のせいかバグかと疑ってます。
なんでこんなのが入ってんだろう、好きなことしかしてない駄文職人なのに。
まぁバグでもノゲノラタグ付いたものがランキング入ってくれたのは嬉しいですね。
ともかくなんやかんやと読んでくださる皆さんのおかげでございます。
そして皆も好きな事、やろう!


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二人の天翼種の日常 バレンタイン編

 

今日は二月十四日。バレンタイン。

友人などには義理チョコというものを渡し、そんな義理すら貰えない悲しき人達はこの世界にもいる。

その中には稀に、本命チョコなどという一部人からは都市伝説なのでは無いかと言われるほど。

そして、ここに一人。日頃の感謝に愛しているの気持ちを込めて本命チョコを作り、渡そうとする少女。

 

「………………………」

 

少女、アズリールはただ願っていた。

どんなに感謝や愛を込めたところで残念ながらそのお菓子が美味しくなることは無い。

天翼種だったら想いの力で料理を美味しくする魔法でも作れたりしそうだが。

この場にはアズリールの他にステファニー・ドーラことステフは今回もその腕を買われてお願いされた立場である。

ステフも忙しい状況であったが、アズリールとしてはなんとしても間に合わせたく土下座も覚悟で頼み込んだ。

 

「………………………」

 

「…………どう、ですかにゃ」

 

ゴクリ、と飲む音が聞こえてくる。

 

「………アズリールさん」

 

「………はい…」

 

「───ですわ」

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「合格ですわ!!!」

 

「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

一ヶ月。暇があればバレないようにチョコを作り続け、美味しく出来る努力をし、ついに報われる。

 

「普通に美味しいですわ。おめでとうございますね」

 

「マジにゃ?マジだにゃ?!本当に美味しいんだにゃ!!?」

 

再度美味しいですわの声を聞いて、感傷に浸る。

料理の腕は最低値。お菓子の腕など以ての外。

更には片腕縛りの困難続き。だが、それでもと諦めずにこの日の為にと頑張ってきた。

おかげで翌日にokを出されるというギリギリになってしまったが。

 

「あぁぁぁぁー、よ゛が゛っ゛だ゛にゃ゛ーーー」

 

「今までお疲れ様ですわ。ジブリールも喜びますわよ」

 

「本゛当゛に゛ス゛テ゛フ゛も゛あ゛り゛

が゛と゛う゛!」

 

「ええまぁ大変でしたけど、そこまで喜んでもらえたのでしたらよかったですわ」

 

泣きながら感謝を告げる。

あとはもう一度、ジブリールの為に用意する本命チョコを作るだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──エルキア大図書館─キッチン──

 

二人の天翼種が住むエルキア大図書館。

その片翼が自前で作ったキッチンに二人の存在。

それはジブリールとフィールであった。

二人はいつもの如くしていたが、フィールからもうすぐバレンタインの時期ですね〜と教えてもらい、ならばと翌日にチョコ作りに二人で励む。

そして奇しくも同時刻に、ステフとアズリールも同じチョコ作りに励んでいた。

 

「フィール、やはりチョコを渡すべき形はハート以外に無いですよね」

 

「当たり前じゃないですかぁ。好きな子にぃ、思いを伝えるにはストレート!なのですよぉ〜」

 

この二人はよく料理をする方であり、お菓子作りはあまりジブリールはしない方だったが、それでも安定度は凄まじい。

二回ほど試しにチョコを作って問題なく出来たので、本命作りにはいる。

小さなハート型の容器にチョコを入れて、それを何個か用意し冷やす。

シンプルだが一番伝わりやすい。

だが、この冷やしている待ち時間に一つ思いつく。

 

「あの、フィール。チョコレートケーキを作ってみません?」

 

「それはいいアイデアなのですよ〜」

 

やるならとことんやってしまおう。

そうして二人はチョコケーキ作りに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アズリールとジブリール。

お互いが立ち、向き合って、手を後ろに置く。

改めてこうしてやるのは中々恥ずかしい。

おずおずとした動きから、いつ言おうか悩んでいるらしく、攻めあぐねてる。

 

「あ、あの!」「ね、ねぇ」

 

被った。

 

「あ、いや、ジブちゃんが先に…」

 

「あ、いえ、アズからどうぞ…?」

 

またしても沈黙が訪れる。

ただチョコを渡すだけだというのに、その行為が恥ずかしくなってくる。

これでも六千年の付き合いだというのだから、慣れないのかと聞かれれば、なんとも言えないところではある。

 

「そ、そう?じゃあ、これ…」

 

そう手渡しするアズリールは恥ずかしがるように目線が少し横を向いていて、顔が全体的に赤くなり動きが落ち着かないといった様子。

それを受け取り、自分もと。

 

「で、ではアズ、これを…!」

 

そう手渡しするこちらも恥ずかしがりながらも目線はアズリールに釘付けであり、頬がほんのり紅がかる。

アズリールはそれを受け取る。

ジブリールは貰ったチョコを優しく抱きしめるように持ち、顔はにこやかで翼が上下に動いて嬉しいと表現するかのよう。

アズリールはその右手に持つチョコをじっと見て、口から笑みが零れる。

内心は嬉しすぎて転げ回っているのだが。

 

「あ、それとチョコレートケーキもあるんですよ、食べますか?」

 

「え、本当?食べる食べる!」

 

運ばれてきたチョコケーキは丸く、砂糖が振りかけられており、その周りを生クリームで囲われているシンプルなもの。

 

「美味しそうなのにゃ〜!」

 

チョコの件で盛り上がっていたところにもう一つ、ケーキという形で現れて、アズリールのテンションは上がりまくりである。

 

「本当にありがとうなのにゃ!!」

 

「どういたしまして。私もありがとうございます、アズ♡」

 

「どういたしまして!にゃはは、よーし、ついでにキスしちゃえ〜!」

 

「ぅえ?アズ───!?」

 

強引に口を合わせ、舌を入れる。

舌を絡ませ数秒数十秒と過ぎて離れる二人の口からは薄い糸があり10cm程離れるとぷつりと切れる。

アズリールはにこにこと、若干顔も紅いが本人は気がついてないだろう。

 

「にゃははぁ、久しぶりにした気がするにゃ〜?ジブちゃんをご馳走様!にゃひひ!」

 

「──も、もう!アズのばか!もう少しゆっくり…じゃなくて一言下さいよ!嬉しかったからいいですけどぉ

 

顔を真っ赤にし、油断していたのもあるが久しぶりというのも原因の一つであり、それでもぱたぱたと動く翼は正直者だった。




作成時間2.3時間程。回らなかった頭で急ぎました。
今日バレンタインじゃんと思いやりたくなった。


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大戦編
新しい世界


今日は雨だった。

 

雨のせいで視界がとても悪い中、1人の男が傘を持って、走っていた。

 

(ぅー、やっと終わったよ。

さっさと帰ってのんびりしたいのよねー。

あ、でも、なんの本を読もう、なんのゲームをしようかなぁ)

 

そんな事を悩みながら、男は走る。

 

(でもなぁ、毎日同じ事の繰り返し、起きて着替えて高校に行く、そして帰ってのんびり生活、流石に飽きる、あ、でも、のんびり生活は最高だけどね。

それでも、何か新しい事を探したいけど、めんどくさいから何もしたくない。

はぁ、飽きずに生きるって大変だなぁ。)

 

と、自分でも笑える、なかなか馬鹿らしい事を考える。

そのせいだろうか、それとも視界が悪いせいで見えなかったからだろうか。

居眠り運転のトラックが突っ込んでくる事に気づかなかったのは──

 

 

 

 

-----------------------

 

 

 

 

(う〜、ここはどこなんだ?

確か家に帰ってたはず…)

 

ゆっくり目を開け、周りを見渡してみる。

知らない場所、大きな部屋、そして──

 

(…何、この、巨大な、“ヒト“?)

 

そこには神々しく、恐ろしい、強者たる事を知らしめるオーラ。

十八枚の大きな翼。

完璧とも言える逞しい筋肉の身体。

全て、全てに不思議な魅力があった。

困惑と唖然を繰り返す彼に、“ヒト“は話し出す。

 

「我が名はアルトシュ。

最強として生まれ、汝を作り生み出した主。

我が目的の為、我に尽くせ。

そして、我の名のもとに名前を授ける。

“アズリール“と」

 

こうして、

アズリールは

考える事を

辞めた。

 

 

-----------------------

 

 

全く意味のわからない出来事を、まぁいいか、で、済まし適当に歩いていたら、大きな図書館についた。

 

「いやー、いきなりよく分からない事だらけで遂に頭が逝っちゃったかと思ったにゃ。

というか、アズリールって名前に、翼が生えてて、この大きいおっぱいは…」

 

と言ってると、ちょうどいい所に鏡があったので覗き込んで見ると。

 

「にゃはー、やっぱにゃー、本当に天翼種になっちゃったにゃー。

しかも天翼種って事はおんにゃの子になってるにゃー、元男の子のうちとしては息子がいないことに違和感にゃ。

しかし人間には羽が無かったから全然飛べないにゃ。

戦い方も知らないにゃ。

これじゃーそっこー終わりにゃ。

死んで転生してまた死ぬとかごめんだにゃ」

 

自分の姿を確認し、間違えでは無いことを確信した。

ノーゲーム・ノーライフの世界、しかも大戦真っ只中の。

しかし、そんな事を思わせない位ののんびりっぷりである。

 

「まぁ、この世界に来れたのは、とーっても嬉しいのだけれどにゃ、何で大戦の時に生まれたにゃ、のんびり出来る暇まさか無いなんて言わないよにゃ。

もしそうだったとしても、知らないにゃ知らないにゃうちのしたい事するにゃ。

まずは飛んでみたいにゃ、それから……」

 

その後も独り言は続いたが気がつけば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すぅ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝ていた。

 

────────2万年後────────

 

この2万年間、アズリールは本を読んだり、各地を飛び回ったり、のんびりスポットを見つけたりetc。

そして、アルトシュに呼ばれたアズリールは翼を畳み、光輪を落とし、跪く。

 

「アズリールよ」

 

「はっ!なんでございましょう」

 

「汝を呼んだのは、今日我の最大の力の以て、新しい天翼種を作り出す。

そして、その天翼種を最終番個体とする」

 

「最終番個体…ですか」

 

その言葉を聞いて確信した。

 

あぁ、遂に。

 

「そうだ、だが、あえて不完全に作る」

 

「…なるほど」

 

「その個体の管理をアズリール、汝に任せる、よいな?」

 

「了解いたしました!このアズリールめにお任せ下さい!」

 

遂に会えるのか。

 

「では、作り出そう、最終番個体“ジブリール“」



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これからよろしく、ジブちゃん

(天翼種が作られる時はうちはいつも、その場にいるにゃ。

使われる精霊の量でどれくらい強いのか分かるけど、流石ジブリールにゃ。

にゃ…そろそろ身体を作り始め…る…)

 

ジブリールの身体が作られる。

 

小説、アニメ、確かに可愛かった。

 

だが、二次元で見るのと三次元で見るのは大違い。

 

可愛らしい顔、美しい髪、整った身体。

 

(にゃはは…可愛いで済まして…いいのかにゃ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めましてにゃ、うちはアズリール。

まぁ、一番最初に生まれた天翼種にゃ!

君の事を任されたからよろしくにゃ。(ジブちゃんにゃ!ジブちゃんにゃ!可愛いにゃ!hshsしたいにゃ!すりすりしたいにゃ!なでなでしたいにゃ!抱きつきたいにゃ!食べちゃいたいにゃ!何なら付き合いたいにゃ!

はっ、そういえば、原作だとやりすぎて嫌われて、冷たくされた気がするにゃ。

あ、でもジブちゃんになら…♡ってうちはMじゃないにゃ違うにゃ、落ち着くにゃ平常心平常心……)」

 

「……あの」

 

「んにゃ?ど、どうしたにゃ?」

 

「…いえ、他の天翼種とは何か、違う感じがしたので、つい気になって」

 

「なるほどにゃ、まぁそんなのうちくらいにゃ、気にする事ないにゃ〜(す、鋭いにゃ、流石ジブちゃん)。

それじゃあ、まずはアヴァント・ヘイムを案内するにゃ」

 

「よろしくお願いします」

 

「それとうちらは皆姉妹にゃ!だから遠慮なくおねt「お断りします」…食い気味にゃ」

 

ここが図書館、こっちが君の部屋、と大雑把に案内をするアズリール。

 

「そしてここがお昼寝に最適の場所にゃぁぁ!」

 

眩しいくらいのいい笑顔で。

 

「………」

 

呆れた顔で問う。

 

「…我々には睡眠は不必要なはずでは?」

 

「ちっちっち、ジブちゃんは分かってないにゃ、必要不必要なんて下らない、気持ちいいから寝るんだにゃ?」

 

少々言い方にイラッとするジブリール。

それに気づかず話を続けるアズリール。

 

「大体案内は終わったけどにゃ、何か質問あるかにゃ?

例えば、お姉ちゃんに甘えたいけど出来ないとかにゃ!

うちは気にしないにゃいつでもうぇるかむにゃ!」

 

「いえ、ありません」

 

最初の問いにだけ答えあとは完全スルー。

 

「……そうかにゃ、じゃあ、うちはここでお昼寝でもするにゃ。

ジブちゃんも一緒にどうかにゃ?」

 

「…お断りs「ダメにゃ!強制にゃ!」…」

 

何故聞いたんですか、という質問をさせず、無理矢理ジブリールを横に寝かせ、アズリールも横になる。

 

「ほ〜ら、目を閉じてみるにゃ」

 

仕方ないと心の中で付け足し、ゆっくり目をつぶってみる。

 

(にゃー、遂に遂にジブちゃんと会えたにゃ。

2万年…流石に長かったにゃ、でも、会えた時は凄い嬉しかったにゃ。

しかもリアルは…女神級の可愛さだった…にゃ。

流石…うちの……推し…キャラ……にゃ………)

 

(…ふむ、これが昼寝というものですか。

ただ寝るのと何が違うか分かりませんが、なるほど、確かに心地よい感じがしますね。

不必要でもしたくなる、というのが分かった気がします。

しかし、先輩はなんと言うか、うざいし、めんどくさい、アホっぽいですが、面白い…方ですね。

…おや…何やら……不思議と…眠くなって………)

 

 

 

 

 

 

「「すぅ…すぅ…」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん」

 

「おはようにゃ、ジブちゃん(むぅ、もっと可愛い寝顔見たかったにゃ!

可愛すぎて気絶しかけたけどにゃ!)」

 

「…おはようございます…?

あ、私は…寝てたのですね」

 

「そーにゃ、で、どーだったにゃ?

お昼寝、よかったにゃ?」

 

「えぇ、確かによかったです。

先輩がどうしてもと言うならば、またここに来てもいいですよ?」

 

「にゃはは!

なら、これからもどんどん誘うにゃ!」

 

 

 

 

-----------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、ジブちゃん!お出かけに行くにゃ!」

 

「突然何ですか。はぁ…それでどこに行くんです?」

 

何やかんや原作よりは仲のいいふたり。

それもそのはず、ジブリールも知らぬうちにアズリールに付き合っていたら。

400年は経っていたのだから。

 

「とーっても綺麗な場所を見つけたんだにゃ、きっと感動で涙が溢れるはずにゃ!!」

 

「景色を見たくらいで涙も感動もするとは思えませんが」

 

口ではこう言ってるものの内心、先輩だからもしかしたら、と思ってたりもする。

 

「いいから行くにゃ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何故空間転移しないのですか?」

 

80kmは軽くあるであろう距離を転移せず飛んでいるのだ。

 

「こういうのは楽しちゃダメにゃ、自力で行くことでできる感動があるにゃ!」

 

「そういうものなのでしょうか」

 

「そーゆーものにゃー(知らないけど…てへ)」

 

その景色を目指して飛ぶふたり。

 

(この100年、もう一度色んな場所を探し回ったにゃ。

ジブちゃんに喜んでもらいたくて探したにゃ、そしてやっと見つけたにゃ!

あそこは凄いにゃ、ジブちゃんもぜーったい感動するにゃぁ)

 

(なんて考えてるのでしょうね。思いっきり顔に出てますよ。

ですが、私の為に何か…してくれているというのは…嬉しい…のでしょうか?)

 

色々と考えてる間に。

 

「よーやく着いたにゃ…。遠いにゃ、空間転移使えばよかったにゃ」

 

「先輩、流石に自分の言葉には責任を持ってください」

 

「分かってるにゃ。

っと、あと少し登ったら見えるにゃ」

 

「…飛んで行けばいいのでは?」

 

「地に足を付けて見るのと飛んで見るのじゃ全然違うにゃ!多分!」

 

「先程の発言といい、最後の一言といい不安ですが、まぁいいです」

 

ジブリールも地面に降りて、足で登る。

そして、その光景が視界に入った途端、止まった。

そこには戦いだらけの命を散らす大戦の中にあるとは思えないほどの満開で、一つ一つの花が心を魅力するかのように。

赤、オレンジ、黄色…と色鮮やかに咲き誇っている。

 

「……綺麗……ですね」

 

「当たり前にゃ。

でも、何回来ても…ここは感動するにゃ…」

 

ジブリールは無我夢中に見ている。

 

 

 

 

「よく…見つけましたね、まぁ流石先輩です」

 

ジブリールは嬉しそうに。

 

「にゃー、喜んでくれてうれしーにゃー」

 

アズリールは満足気に。

 

2人は時間を忘れ、どれだけ見ても飽きない、飽きる事がない景色を見続ける。



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歯車は狂い出す

 

 

 

「そろそろ帰るかにゃ?」

 

「そうですね…帰りましょうか」

 

「それじゃあ、転移s「先輩」何にゃ?」

 

「その…話ながら…帰りませんか?」

 

ジブリールは少し顔を赤らめて。

 

「(ぐはぁ…な、なんて子にゃ…。

危うく理性が飛ぶとこだったにゃ…)

ジブちゃんの頼みは絶対にゃ!

早速飛んでいくにゃ!」

 

 

 

 

 

 

長い道のりの帰り道。

ふたりの少女の楽しげの会話。

ジブリールは初めて感じた“感動“を。

アズリールは、嬉しそうでよかったにゃ、と思いながら返事をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、会話に気を取られ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全に油断しきっていたふたり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その空気を最悪に変えたのは遅くなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如現れた、巨人種。

 

いつの間に近づかれたのか、拳の攻撃にジブリールは反応は出来たが回避が間に合わずに、食らい、飛ばされる。

 

「ジ、ジブちゃん!」

 

すぐさまアズリールがジブリールを転移させる為、近づく。

 

が………。

 

 

 

「あがっ!?」

 

いきなり目の前に現れたもう一匹の巨人種に攻撃され、天高く飛ばされる。

 

 

モロに食らったとはいえ、何とか動けるジブリール、転移で退避しようとするが巨人種が足で踏みつけ、阻止する。

 

「があぁっ…!ぐ……ぅうう…!」

 

どうにか耐えてはいるものの、流石に巨人種の数十トンもある体重をずっと受けていられるなんてジブリールでも無理だ。

 

「っ!貴様ァァァ!!」

 

激怒したアズリールが攻撃を開始する。

巨人種の上半身を囲む程の魔法量で攻撃し、体制を崩し少し苦戦する。

だが、アズリールの方が圧倒的不利に違いない。

相手は天翼種より上位種、しかも2体。

苦戦を強いられるのは必然。

一体を遠ざける事に成功し、ジブリールに近寄る。

 

「大丈夫!?ジブちゃん!(まず、転移で戻ってジブちゃんを回復させる…そしたら後で絶対に殺す!)」

 

何とか意識を保つジブリールを抱えて空間転移しようとするが、もう一体に邪魔をされる。

 

「邪魔、する、なぁぁ!」

 

上空に飛んで安全に転移したくとも、向かってる途中にやられるリスクが高い。

どうにか避けながら転移出来る隙を探る。

その事に集中していた為、2体目がいつの間にかいないことに気づけなかった。

そして巨人種が背後に現れ。

 

「!?しまっ……」

 

巨人種の攻撃が繰り出され、アズリールはモロにくらい、ふたり共吹っ飛ばされ、何度も地面に叩きつけられる。

 

「うっ…ぐぅっ…ジブ…ちゃん」

 

「先輩…だけでも…逃げて…ください…」

 

「何を…言ってるにゃ…そんな事…絶対にしない…!」

(吹っ飛ばされたおかげであいつらも直ぐには来ないはず…ぐっ…今…近寄れれば…転移出来るはず…!)

 

アズリールは二体目の巨人種の攻撃を顎から喰らい、視界が揺れ、ふらつく。

ジブリールは巨人種の体重で押し潰されたせいで身体が思うように動かない。

 

「はぁ…今…転移…する…!」

 

あと少しで転移出来る。

だが、あとちょっとで逃げれる系のフラグとはどの世界でも同じである。

 

 

 

 

 

 

 

「………にゃ………!?」

 

決まって敵がやってくるのだから…。

 

背景から突如現れた三体目の巨人種に戸惑いを隠せない。

ふたりは、蹴られ。

 

「ぐがっ…!」

 

飛ばされ、岩に激突する。

 

「がっはぁぁ……げほっごほっ…はぁ…はぁ…」

 

(何で…さっきまでいなかった………………まさか……吸血種を……使っている……?)

 

吸血種。

隠密と幻惑に長けており、大戦時は天翼種を欺ける程の魔法を使い、最悪の暗殺者として知られていた。

 

ならあの巨人種が見えないのも納得出来る、だが、見えない相手にどうやって…、そんな考えを巡らせるがすぐさま中断させることになる。

 

意識が朦朧とする中。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジブリールが動かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジブ……ちゃん?ジブちゃん…!」

 

まさか…。

 

(違う、違う!そんなはずない!気を失ってるだけだから…!)

 

見えない敵に…?だったら、消える前に消すだけ、あの巨体を全て隠すには時間がかかるはず、なら。

 

「………“天撃“………」

 

殺すだけ。

 

神の兵器として作られ、ひとつひとつの戦闘行為に名前を付けない天翼種が唯一名前を付けた技。

 

 

その威力は絶大。

 

 

 

だが代償も大きい。

 

 

 

 

巨人種を一匹消し去る事が出来た。

 

精霊の過剰使用により、幼い姿になったアズリール、普通ならこれ以上は何も出来ない。

 

「はぁ……はぁ………“天撃“………!」

 

二匹目。

普通なら2発目など撃たない。

基本1発で終わる為、撃つ必要が無いから。

もうひとつは、そんな事をすれば死ぬ確率はぐんと上がる。

 

「がぁぁっ…!はぁぁぁ…はぁぁぁ!………“天…撃“………!!」

 

そして、殲滅。

3発も撃てば普通死んでいてもおかしくない。

 

(ジブちゃん…ジブちゃん………ジブリール…!)

 

意識を保つ事さえ不可能に近いにも関わらず歩く。

 

「きっと大丈夫…!ジブちゃん……ジブちゃん……ごめんね………守れなくて……お願い…起きて」

 

ジブリールを揺らしながら。

 

「目…覚ますにゃ…お願いだから…起きるにゃ……」

 

「……先輩」

 

「よかったにゃ…!起きて…くれたにゃ」

 

「何故…逃げなかったの…ですか…」

 

「うちが妹置いて逃げるわけ……ないにゃ」

 

「…どうやって…天撃を……3発も………普通…死んでいても…おかしく……ないです」

 

「……見てたのにゃ……ジブちゃん……うちは死なない……だけど、代償を…うちの宝物に……変えたにゃ…だから、少しお別れにゃ。

(にゃはは…当分うちののんびりは…お預け…だね──)」



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初めまして、ジブリール

その後、青髪の少女がこちらを見つけ、急いでアヴァント・ヘイムへ連れ帰った。

瀕死で帰ってきたふたりの事はすぐさま全天翼種に伝わった。

アズリールは2万年間天翼種の損害を一度も出した事が無かったのだ。

アズリールは指示やサポート、時々前線で身を呈して助け、アズリールの指示でジブリールは主に前線で天翼種達を助けた。

全天翼種がアズリールかジブリールに一度は助けられているだろう。

だからこそ、天翼種達は何も出来ないor何も出来なかった自分を恨み、悔やんだ。

 

───────1年後────────

 

「…先輩っ!!」

 

はぁ…はぁ…と、息遣いを荒くして、修復術式の中で叫んだ少女。

その声に気がついた、青い髪の少女。

 

“ラフィール“

 

「起きたか、ジブリール」

 

「ラフィール先輩…あのっ!アズリール先輩は…」

 

「安心しろ、あいつも回復中だ。

で、起きて早々で悪いがあの時、一体何があったんだ?

偶然通った時、大量の精霊反応を感じて来たらお前達が倒れてたのだ」

 

「実は…」

 

ジブリールは説明する。

先輩が自分の為にある場所に連れて行ってくれた事。

私が飛んで帰ろうと誘って巨人種に不意打ちを食らったこと。

そして、自分は何も出来ずに、先輩に助けて貰った事…。

 

「…という事です…」

 

自分のせいであんな事になったのに、何も出来なかったことに歯を食いしばり、怒りで震える。

 

「落ち着け、今回に関してはお前は何も悪くない」

 

「ですが…!」

 

「アズリールはお前を生きて返すことできたんだ、あいつは後悔しないさ。

しかし、妙だな、何故あいつは3度も天撃を撃つことが出来た…?

(普通そんな事をすれば誰であろうと死ぬだろう。

…ならば、代償を変えたというのか?

だが、何に?)」

 

「…アズリール先輩は気になる事を言ってました、確か…代償を宝物に変えた、だからお別れ…と言っておりました」

 

「やはり代償か。そして、宝物…お別れ…?

………あいつっ、まさか!?」

 

「何か分かったのですか!?」

 

「お前を守る為、アズリールの事だ、ほぼ間違いないだろう。

だが…あいつは簡単に自分を捨てすぎだ!

…すまない…ジブリール、よく聞くんだ、あいつは───」

 

───────2年後─────────

 

もう1つの修復術式部屋にて。

 

「…ん、ここは…どこ…?」

 

そう呟く、緑と紫髪の少女。

周りは誰も居らず、不思議に思いながら術式から出る。

その直後。

 

「…!せっ!先輩!先輩!!」

 

入口からやって来た彼女が喜びの声を上げ、少女が目覚めた事を歓喜する。

その声にラフィールも来て。

 

「どうした、ジブリール!

…!目覚めたのか!」

 

目の前で自分が目覚めた事を喜んでるふたり。

 

「よかったです…先輩…。

…先輩?(…あっ…)」

 

その時、ジブリールは思い出す。

ジブリールが目覚めた時に言っていた、ラフィールの言葉を。

 

(「ジブリール、よく聞くんだ、あいつは─」)

 

「君たちは…誰?」

 

(「全ての記憶を代償にした」)

 

(覚悟はしておりましたが…こうも簡単に言われると…心が痛いですね)

 

「…私はジブリールと申します」

 

「…私はラフィール。あなたはアズリール。

我ら天翼種の“長“であり、そして“姉“である、姉さん」

 

「うちは…アズリール…。天翼種の長で…皆の…お姉ちゃん…?」

 

「…そうで、ございます…姉さん」

 

-----------------------

 

アヴァント・ヘイムをアズリールに案内する。

 

こちらが図書館、あちらが先輩の部屋ですよ、と丁寧な説明の仕方。

そしてジブリールは。

 

 

「先輩、ここはお昼寝に最適の場所なんですよ」

 

それはジブリールと初めてあった時、アズリールが最初に誘った場所。

 

「…でも天翼種って睡眠はいらないはず…?」

 

「先輩は分かってないですね、いるいらない関係なく気持ちいいからするのですよ」

 

「でも、うちはえんr「ダメです、強制的に寝かせます♪」…」

 

何で聞いたの、と言わせず無理矢理アズリールを寝かせ、ジブリールも横になる。

 

「目を…つぶるんですよ」

 

ゆっくり目を閉じる。

 

(本当に…忘れてしまったのですね…。

私がもっと強ければこんな事にはならなかったかも知れない…。

そもそも誘わなければ…はぁ………)

 

(ジブリールの言う通り…。確かに気持ちがいい。

…でも、不思議と前にもこんな事が……ぐっ…!?)

 

アズリールに何かが流れる。

 

「………い…せ…ぱぃ…先輩!」

 

ジブリールが揺らして叫ぶ。

気がついたアズリールに。

 

「よかった…一体どうしたのですか?

回復仕切れてないなら術式に…」

 

「……ここに誘ったのは……うち…?」

 

「!!記憶が戻ったので!?」

 

「記憶…?これが…うちの記憶…?

ただ、誘っただけの記憶だよ…?」

 

「そ、そう…ですか。

(もしかしたら思い出深い場所に行けば記憶が…!)

すみません!先輩!ちょっと失礼します!」

 

ジブリールはアズリールがよく行っていた場所を知る為に全天翼種に聞き込みを開始するのであった。

 



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妹を守る、それが姉の役目だから

「皆さんから聞いた話をまとめると、先輩が頻繁に行ってた場所は8ヶ所…」

 

アズリールの記憶を戻す為、その8ヶ所に向けて出発するのだった。

 

元森精種領土近くの森の中、煌めく石で出来た洞窟、など確かにアズリールが好きそうな場所ではあった。

だが、1年という時間を掛けて回ったが結果は何一つ取り戻せなかった。

 

(まさか全滅とは思いませんでしたよ…。

先輩の記憶はもう取り戻せないのですか…?

あの後も先輩が1回でも行った場所に向かったというのに………いや、1ヶ所だけまだ行ってませんでしたね…ですが、あそこは…)

 

そう、あと1ヶ所。

それは2人が巨人種(ギガント)に襲われた場所。

あれからあそこの近くを通ると嫌な感じがしていたのだ。

 

(それでも、行ってみなければ…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふたりは空間転移でそこに移動する。

 

「どこに行くの?」

 

「とっても綺麗な場所ですよ」

 

そう言って2人は登る。

…そこは前に来た時と変わらぬ風景。

まるでここだけ時が止まってたみたいに。

 

「確かに…綺麗だね」

 

「…えぇ、本当に(…ここでもダメなんですか…?)」

 

何か音がする。

 

(…?何ですか、この音…それにこの気配は…上から?)

 

上を見ようとした瞬間。

 

ドゴオオォォォォン。

 

何かが降ってきたような音が後ろからする。

振り向いて見ると…そこには。

 

「…龍精種…!?」

 

龍精種(ドラゴニア)

それは天翼種が束になって勝てるかという相手。

その戦闘能力はアルトシュを除けば最強。

 

「何故龍精種がこんな所に…!

…?様子がおかしいですね…」

 

龍精種はこちらに向かいながら無差別に地形を破壊している。

理性が無くなったように。

そして、龍精種はこちらに向けて吠える。

 

「グギャアアアアァァァァ!!!!!」

 

「どうやら逃がしてはくれないようですね…」

 

空間転移には多少時間がかかる…なら。

 

「先輩!私が時間を稼ぎます!だから逃げてください!」

 

「でも、ジブリールは!?」

 

だが、ジブリールはその問いが聞こえる前に攻撃を開始すると同時に大きく砂煙が。

中は何も見えない、だけどジブリールの魔法らしき光は見える。

すぐさまアズリールは空間転移を準備し、逃げようとした時。

 

(本当…?)

 

「えっ…誰…?」

 

(思い出すにゃ、そして、守るにゃ)

 

一時的に時が止まったように感じ、戻ってくる。

 

 

 

と、その時。

ドォォォン、と大きな音が。

音の出た方へ見るとジブリールが倒れている。

砂煙の中から高く振り上げられた手が、そして振り下ろされジブリールに。

 

 

 

 

 

 

当たる前にアズリールが助け出す。

 

「あっぶなかったにゃ!」

 

「せ、先輩!」

 

「ただいまにゃ。

ジブちゃんが色々としてくれたおかげで戻れたにゃ」

 

アズリールの記憶が戻った。

状況が良ければ大喜び出来てたのに。

龍精種に向いて。

 

「私達なら、勝てますよね」

 

「にゃはは、蜥蜴風情がジブちゃんに怪我作ったにゃ。

だから、さっさと殺してやるにゃ」

 

 

 

龍精種が砂煙を払い。

 

「ガアアアァァァ!!!!」

 

ふたりが戦闘に入る。

 

アズリールの魔法の数々、ジブリールの魔法と鎌による攻撃。

だが、ふたりの攻撃をものともしない頑丈な鱗。

ただの攻撃がガードをしなければ大ダメージになるほどの威力。

更に時空間というとんでもないものを持っていて、そこに複数の時間をもっており、“現在“に存在する個体にダメージを与えても容易に回復出来る。

戦闘開始から20分経過。

何故か相手の威力が強くなってくる。

腕や魔法で守って、それでも防ぎきれないダメージ。

腕や身体の傷からは、どんどん血が出てくる。

二人の精霊力が削られこのままでは負ける。

 

「はぁ…はぁ…どうしますか、このままでは勝てませんよ」

 

「はぁ……ひとつ考えがあるのにゃ。

うちがジブちゃんを守りながら攻撃するにゃ、だからジブちゃんは守る事を忘れていっぱい攻撃するにゃ。

首の1ヶ所だけに集中攻撃するにゃ。

そしたら──」

 

と、作戦を伝え、実行する。

ふたりの攻撃が更に強くなり、首だけを狙う。

龍精種はそれを嫌がり、反撃。

それをアズリールは避け、ジブリールへの攻撃は庇う。

作戦開始から10分。

 

(ハァ…ハァ…!まだなの…!そろそろうちが限界…!)

 

ガードの上からでも、どんどん蓄積されていくダメージに。

早く、早くしなければ、と焦り更に攻撃を増し、そして、鱗が剥がれ落ちる。

が、龍精種が回復を。

 

(ですが、その前に!)

 

ジブリールが鎌を突き刺し。

 

(こうすれば、刺した部分は回復されない、でしたか、そして私だけの──)

 

「130%の“天撃“!」

 

鎌の先に力を集め、そして放つ。

 

「グギャアアアアァァァァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!」

 

天撃による大爆発を起こし、ジブリールは爆発で飛ばされるが体制を立て直す。

 

龍精種の姿は見えないが、首は吹っ飛んだろう、ふたりはそう思い、やっと倒した…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かに思えた。

 

だが、龍精種は耐えていた、そしてエネルギーが集まる。

 

「(!?何でまだ生きてっ!もしかして最初から死ぬ気で解放してたのか?!いや、それより何?何する気だ………まさか…まさかまさかまさかまさか!)ジブちゃん!!」

 

龍精種は本来撃てるはずのない限界を超えた天撃を撃った反動で動けなくなっているジブリールに向いて。

 

崩哮(ファークライ)

 

ジブリールに向けて放たれる、龍精種最強の技。

時空間から無限に取れるエネルギーを使い、自身ですら制御不能の命を使った攻撃。

アズリールはジブリールに当たる前に突き飛ばし、崩哮が命中する。

 

「せ、先輩っ!!!!!」

 

龍精種は倒れ、アズリールが消えた。

幼い姿になる寸前のジブリールはどこかにいるはず、と探し始め、そして見つける事が出来た。

だが、その姿は悲惨なものだった。

右翼は無くなり、左全身が黒く焦げ、顔も少し焦げ、左手はもう使えないだろう。

いや、それだけで済んでいるのは奇跡に等しい。

 

「…何故…何故…守ったのですか…先輩の…つ、翼が…腕が!身体が!!!」

 

「………にゃはは…ジブちゃんを…守る為なら…うちの身体なんか…」

 

「は、早く戻って修復を…「ジブ、ちゃん…」…何ですか…」

 

唯一動く右腕をジブリールの頭に乗せて撫でながら。

 

「ごめんね…ジブちゃん……辛いかも…だけど、後は…任せるにゃ………ジブちゃん……大好…き…」

 

笑顔は絶やさずゆっくり目を閉じ、右腕が落ちる。

 

「先輩…?先輩…先輩…嘘で……ございましょう…?

…皆さんの所に帰りましょう?

…先輩?…何故起きない…のですか…。

まさか…本当に…?

い、嫌です、嫌ですよ!

先輩が…死ぬわけ…ないですよねっ!

死なないって…言ったではありませんかっ!!

だから…お願いします!

起きて…ください………!」

 

涙を流し、必死に懇願する。

天翼種の存在は魔法、精霊が無ければ魔法は使えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アズリールからの精霊反応無し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

ジブリールの心が壊れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────アヴァント・ヘイム─広場────

 

アヴァント・ヘイムへ転移したジブリール。

 

「ジブリール!帰ってきたのか!一体何がおき………アズリール…?」

 

ジブリールはアズリールを抱き上げて、光無き目からぽたぽたと涙を流し、俯きながら。

 

「……ラフィール先輩…修復術式の使用許可を…」

 

「…何故…だ」

 

「何故って…何を言ってるのですか…!アズリール先輩を…治さないと…せ、先輩は気絶してるだけ…だけですよ…。」

 

ラフィールも、アズリールから精霊を感じられない。

 

「…ジブ…リール…アズリールは………もう…起きないぞ…」

 

「っ!分かっています!分かってますよ!

ですが、そうしていないと、思っていないと…また心が壊れてしまいそうなんですよっ…だから、術式の使用許可を…」

 

「…ジブリール………分かった…」

 




因みにあの龍精種、アズリール達と会う前に既に時空間を解放していて、大量のエネルギーに理性失ってました。
だから、威力がどんどん上がってたり首に天撃を撃っても死ななかったのはそのせいです。
実際そんな事出来るのか分かりませんけど、そんな設定です。
まぁ、時空間どうのこうのは調べて下さい。
自分もよく分かってないです。
それとジブリールの130%天撃はアズリールが一応教えておいた技らしいです。

この先、本編とは別として楽しめる方以外は飛ばしてください。












トーク編

「だって、ジブちゃん強い敵に喧嘩売ってたし、だったらいつもより強い天撃使えたら便利かな〜って思って作られる前より練習しておいたにゃ。
うちの練習とは裏腹にうちより強いのあっさり使えてて少し萎えたにゃ。
うちのは110%位にゃ」

「それより、先輩。
私が作られるより前から何故私の事を知っているのかはこの際無視しますが、何で生きてるんですか」

「何その死んでて欲しかったみたいなの。
お姉ちゃん泣くよ?
それに本編とここは別物だからいいんですー」

「何でしょう、本編とはキャラクター違いませんか?
それとせっかくのシリアスぶち壊しですよ。
どうするんですか」

「知らないにゃ。
説明の癖にうちを登場させた作者が悪いにゃ。
全部作者のせいにゃ、うち悪くないにゃ」


…まぁ、最後に。



シリアスぶち壊してすんませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!






それと次回からトーク編としてこれ続けるつもりなのでお願いします。


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うちのお願い

アズリールが死んだ。

それは全天翼種からすれば絶望である。

今まで明るく、アホっぽくて、そして元気をくれた存在がいなくなった。

自分達は助けてもらったのに、アズリールには何も出来なかった。

ラフィールでさえ、頭を抱える。

だが、それでも1番辛いのはジブリールなのだ。

目の前で死んで、自分が作られてからずっと居てくれた人、こんな自分を常に笑顔で接してくれた人、そんな人を突然失ったのだ。

ジブリールの目に光はなく、俯いて表情も無くなり、誰から話しかけられようとも言葉さえ失っていた。

実は本当に気絶ではないか、行ったらまたその笑顔で私と居てくれないか、そんな思いを抱きながらアズリールの修復術式部屋に向かった。

次の日もその次の日も。

そして3ヶ月が過ぎた頃。

ジブリールは意味もなく向かう。

でも、今回はアズリールの部屋にいた。

自分でも何でここに来たのか分からなかった。

ふと、本棚を見ると、1枚の封筒が。

 

 

 

遺書

 

「やっほー、アズリールにゃ。

これを見てるって事はうちは死んだかにゃ?

うちが死んで皆落ち込んでないかにゃ?

さっさと立ち直るにゃ、うちはそんな子達に育てた覚えはないにゃ!ぷんぷん。

それより、これを見てる子にはうちの変わりにやって欲しいことがあるにゃ。

…もうすぐ、この大戦が終わるにゃ。

その大戦を終わらそうとしてる子を手伝って欲しいにゃ。

場所は一緒に入ってる地図に書いてるにゃ。

その場所に行ったら人間と機凱種が居るはずにゃ、そしたらその作戦に入れてもらうにゃ。

その人間の指示を聞いて欲しいにゃ。

いくら下等種族でも見下すのは禁止にゃ。

…つまり、アルトシュ様を裏切って欲しいにゃ。

これを引き受けて欲しいにゃ。

というか見たんだから強制にゃ強制にゃ。

それじゃあ、よろしく頼むにゃ!」

 

それを見て、生きる希望を見つけたように、目に光を戻し、3ヶ月ぶりに言葉を発する。

 

「ふふっ、先輩…らしいですね、先輩の願い、どんな事でも叶えるつもりでしたが…これはなかなか大変そうでございますね。

この遺書を知らせれば…殺されるかもしれませんが、やってみましょう」

 

ジブリールは全天翼種を集める。

 

「皆さんに聞いて欲しい事があります!

アズリール先輩の遺書を見つけました!

その中に先輩からのお願いが書いてあります!」

 

手紙の内容を読む。

それを聞いたザワつく天翼種達。

 

「というわけです、このお願いを確実に叶えるには皆さんの力が必要何です!」

 

それでも一向に決まらない。

その時、1人の少女が。

 

「私は賛成だぞ?」

 

「ラフィール先輩!」

 

「アズリールから初めてのお願いだ、聞いてやらなければな、それが主を裏切る事でも。

あいつには借りがあるからな」

 

それを聞いた天翼種が、どんどん賛同していく。

そうだ、アルトシュ様は確かに我らを作ってくださった、ですが、それ以上に我らが長は救って下さった。

それに、我らは長に何も出来ていない、その長からの願いというのであれば、我ら天翼種、アルトシュ様を裏切ろう。

 

「それと、先輩から最後に一言「妹達、生きてにゃ」」






トーク編




「何か見てて思ったけど妹達、アルトシュ様の忠誠心結構低めに見えたにゃ」

「あの先輩、平然と出ないでもらえますか?
あなた一応死んでるんですよ」

「何か作者から紙もらったけど、説明として書いてたら地味に楽しかったのでトーク編にしてやろって思いました。てへ。
、だそうにゃ」

「あの作者は本当に自由ですね…。
天撃でも撃ち込んだら少しは観念するでしょうか♪」

死ぬから、死んじゃうからやめて。

「何にゃ、いたのかにゃ。
いるんだったらうち読んだ意味無かったにゃ」

何となくアズ先輩に読んで欲しかっただけですはい。
いいじゃないですか、これ自分の妄想から出来た話ですし。
自分の好き勝手やって何が悪いのだ。

「あ、開き直りましたね」

まぁ、こんな感じに緩くやるのでお願いします。

「おなしゃすにゃ」「お願い致します」


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幽霊と機凱種と天翼種

ある日、“幽霊“達が集まった洞窟にて、この世界にゲームを挑んだ者がいた。

 

【一つ】誰も殺してはならない

──心は誰も殺したくないから。

 

【二つ】誰も死なせてはならない

──心は誰も死なせたくないから。

 

【三つ】誰にも悟られてはならない

──悟られれば死ぬから。

 

【四つ】如何なる手も不正ではない

──悟られなければ如何なる不正も不正に当たらないから。

 

【五つ】奴らのルールなど知ったことではない

──心は殺し合いなどクソ喰らえだから。

 

【六つ】上記に違反する一切は、敗北とする

──心はこれらに違反した勝利に、価値を感じないから。

 

以上──やりたいようにやる。

 

さぁ、ゲームを始めよう

 

-----------------------

 

その洞窟に、幽霊の長、一人の機凱種…そして、一人の天翼種。

 

「………何で天翼種がこんな所にいるっ…!」

 

「リク、シュヴィが、足、止めする、から逃げて」

 

「そんな事したらお前が!」

 

「……あの」

 

「何だ!」「何…!」

 

「さっき説明致しましたよね、私は戦いに来たわけじゃないと」

 

「知ってるよ、この状況でいちゃつくのもアリかと思っただけだ」

 

「ん…」

 

本当にこの方達何ですか、先輩…?

 

「まぁ、警戒はしてるけどな」

 

「私の前でそんな事しておいて、よく言えますね」

 

「お前なら大丈夫だと思っただけだ、それで?何の用だ」

 

「あなた方はこの大戦を終わらせようとしてますよね」

 

「…何で知ってやがる」

 

「我らの長がその情報を持っていましたから」

 

「くそ、どっかから漏れたって事か、ならほかの種族にも…」

 

「いえ、それは無いと思います、元々知っていた…が正しいです」

 

「知ってた?俺らがこんな事する事をか!?

ナニモンだ?お前らの長ってのは、一度会ってみたいもんだ」

 

「長は不思議な方でしたから、それに…会う事はもう叶いません」

 

「ん?何故だ?」

 

「死んだのであります」

 

一瞬、少しだけ手が震えたのを、リクは見逃さなかった。

 

「そうか…そりゃあ悪かったな。

で、話を戻すが、何の用だ?」

 

「要件は…我ら天翼種をその作戦に入れてもらいたいのです」

 

長い沈黙が続き、そして。

 

「…えっ、あっ、は?」

 

予想外の要件に間抜けな声を出す。

 

「マジで…?何でだ…?」

 

「それが長の願いだからです」

 

「つまり、アルトシュを裏切るってか!?

天翼種が!?」

 

「更に言えば全天翼種です。

それで、入れてもらえるのでしょうか?」

 

「あ、あぁ、本当にやってくれんなら大歓迎だが、アルトシュを裏切らせるお前らの長って本当に何なんだ?」

 

「アルトシュ様以上の姉でございます」

 

 

-----------------------

 

その後、リクはジブリールに作戦内容を話す。

 

「ふむ、なるほど、ですが、貴方達は重大な事をお忘れのようで」

 

「あ?何だそりゃ」

 

「貴方達が虚空第零加護(アーカ・シ・アンセ)髄爆(ずいばく)崩哮(ファークライ)神撃(しんげき)の力を集め、星を穿ち『星杯(スーニアスター)』を顕現させようともそれが現れるのはほぼアルトシュ様の手の中でしょう」

 

「なっ嘘だろ!」

 

「精霊回廊の潮流を穿ったとしても、アルトシュ様の『神髄』によりそれすら上回る力を持つのでアルトシュ様を討つ他我らの勝ちはありませんよ」

 

「だが、それだとルールに背く。

ちっ、どうすりゃいい!」

 

「ならば、アルトシュの『神髄(しんずい)』だけを奪えばよかろう」

 

突如見知らぬ声が発せられる。

 

「あら、そちらから出ていただけるのですか」

 

「さっさと、出て、くるの」

 

物陰から現れたのは…シュヴィと同じく機凱種。

 

「…すまない、盗み聞くつもりは無かった。

だが、天翼種を味方に付けた、という事に少々警戒していたものでな」

 

「まぁ、聞きたいことは山ほどあるが、取り敢えずお前誰だ」

 

「我らには名前はないが、そうだな、

全連結指揮体(アインツィヒ)“、とでも名乗っておこう」

 

「あー、わかった。

なら、次だ。

神髄だけを奪うなんて出来んのか?」

 

「…可能だ。

神撃を放った後ならばアルトシュは弱体化。

その隙に神髄を剥奪。

それにて我らの勝利が確定する」

 

「…なるほど、確かにそれなら、ルールには背かねぇな。

だが、それを誰がやる?」

 

「我らがやろう」「我々でしょうね」

 

「天翼種は分かるが、機凱種はやるメリットがねぇだろ?」

 

「そこの解析体(プリューファ)が心という物を知れた。

その物のおかげで天翼種を味方に付けたというなら、我らとしてはぜひとも手に入れたい物だ。

それに、人間が天翼種を味方に付ける事すら不可能極まりない。

更に大戦を終わらせるという野望を成し遂げようとする、確率的に不可能というものを可能にしようとしている。

それが心という物なら手に入れる代償としてはこの位がちょうどいいのではないか」

 

「解析体じゃなくてシュヴィな。

それに心っつっても、そんな大層なもんじゃねぇよ。

それにどうやって手に入れんだ?」

 

「そこの解析体、訂正、シュヴィと同期し、心のデータをコピー、共有してもらいたい」

 

「…シュヴィはそれで大丈夫か?」

 

「…ん、リクが、望む、なら、シュヴィは、そうする、よ?」

 

「ありがとな。

じゃあ、頼むわ」

 

シュヴィとアインツィヒが同期、データ共有し終わる。

 

「それと作戦の不備が一つ。

予定通り“通行規制(アイン・ヴィーク)“を設置、起動し全陣営の攻撃を下方誘導すれば、力は衝突し指向性を与え収束させるのは不可能」

 

「マジかよ…、ならどうするか…」

 

「なので、報告する。

通行規制、二十四個で逸らす。

それにより、力は収束したまま誘導可。

機凱種は受けた攻撃を再現、作成する事が可能。

複数の連結体を代償に70%以上を再現し、任意のタイミングで起動可。

アルトシュの神髄を剥奪後起動すれば我らの勝ちとなる」

 

「おい、待て、それじゃあお前らが…」

 

「ルールには背かない。

我らは機凱種、ただの道具である故、敗北はしない」

 

「何でそこまでするんだ!」

 

「シュヴィがくれた心が、意思がそう言うのだからだ」

 

「シュヴィ……」

 

「シュヴィは、リクの、為、にしたい、から」

 

「…お前らの覚悟は分かった。

改めて作戦を言うぞ」

 

「どんな命令でもこなして見せよう」

 

「我らは長のために、従いましょう」




トーク編





「何か機凱種仲間にするの雑に見えないかにゃ」

すいません、シュビィと戦う天翼種居ないもので、それに頭パンクする寸前だったんで後半雑だったり…。

「まぁ一応お疲れ様って言っといてやるにゃ」

あざっす。

「もう私はツッコミません」

あ、ジブリールさんが遂に放棄した。

「ジブちゃんかっこよかったにゃ!流石うちの自慢の妹にゃ!もっと褒めてあげるからぎゅーってしに来てにゃ!」

「面倒くさいので無理です」

「何かジブちゃん本編とここ比べるとうちに対して酷くないかにゃ!?」

一応本編と同じですけどね。
したいけど恥ずかしいんじゃないですか?

「おや、こんな所に人間の首以下の物が落ちてますね♪
天撃で処分致しましょうか♡」

いや、マジですいません、ごめんなさい。
絶賛土下座中です。本当にすいませんでした。
まだ死にたくないです。
というか、否定しないってことはしたいんですか、そうですか。

「さようなら♡」

作者権限発動!
瞬間移動で逃げてやる!
おさらば!

「ちっ、逃がしましたか」

「それよりジブちゃん!
実はしたかったりするの!?
にゃはー!ジブちゃんはやっぱりツンデレにゃー!そこも可愛いにゃ!」すりすりすり

「次あったら絶対許しません♡」


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ゲームスタート

洞窟での出来事から数日後。

現在状況は森精種(エルフ)妖精種(フェアリー)、地精種艦隊に対抗出来る龍精種(ドラゴニア)に契約を申し込み、それによる森精種同盟、地精種(ドワーフ)巨人種(ギガント)、多数の幻想種(ファンタズマ)による地精種同盟。

そして、最強の敵、神霊種(オールドデウス)アルトシュと天翼種(フリューゲル)によるアルトシュ陣営。

 

「全戦闘体(ケンプファ)、“偽典・天撃(ヒーメアポクリフェン)“─典開(レーゼン)─」

 

アヴァント・ヘイムのすぐ後方にて。

 

「照準固定──殺すなよ?」

 

了解(ヤヴォール)

 

アヴァント・ヘイム後方から1000を超える“天撃“が同盟軍に撃ち込まれた。

その大きな揺れに、アルトシュは笑う。

 

「ククク──クハハハハハハ、そうかそうか!貴様が余を弑するか!

なるほど、最強たる余に相対するは最弱たるは道理、なぁ、猿?」

 

アルトシュは右腕を上げ。

 

「総員構え」

 

これが意味する答えは戦の神、最強の神の全ての力、全天翼種の“天撃“を束ね放つ最強の一撃。

 

神撃(しんげき)

 

それを放つというのだ。

機凱種(エクスマキナ)如きに撃つのですか、それが目的ですよ、そんな事を天翼種達は聞かない。

何一つ、疑問も浮かばぬままアルトシュの言葉にただ従い、羽を滾らせる。

それは何故か?

当たり前、作戦の一つに過ぎないからだ。

そして、放たれる無双の一撃。

 

 

数分前、森精種同盟のリーダー、シンク・ニルヴァレンは敵からの先制攻撃を天翼種の天撃では無い事を看破し、森精種同盟の切り札、虚空第零加護(アーカ・シ・アンセ)の全弾術式解放を命じ、十八発の半分をアルトシュ陣営、もう半分を地精種同盟に撃ち込むために。

そして、術式解放完了の知らせを受けた、その時。

 

アヴァント・ヘイムから常軌を逸した理外の力。

八重術者(オクタキャスター)のシンクですら理解不能の攻撃。

敵である地精種にさえ情報共有を求むも報告は同じく、測定不能。

森精種同盟は全火力をアルトシュ陣営に、それは地精種同盟も同じく。

虚空第零加護(アーカ・シ・アンセ)を十八発。

髄爆(ずいばく)を十二発。

崩哮(ファークライ)を八発。

全火力を重ねそれでも止められぬ神撃。

全ての攻撃が交わって出来たそれは世界の終わりを告げるに等しい光。

それが突如、逸れた。

光が逸れた先には八重術式(オクタキャスト)でようやく見えた遥か彼方にいたのは──。

 

「……機凱種…?」

 

数千機の機凱種を消しながら、シンクは見た。

そこには『幽霊』がいた。

つまり、ここまで作戦通り。

 

-----------------------

 

「十一【連結体(クラスタ)】、四千八百七機投入により再現、設計完了、同期します。

典開(レーゼン)

Org.0000『真典・星殺し(ステイル・マーター)』託します」

 

一機の機凱種が手をかざし現れたそれは、小さな塔が地に突き刺さった銃。

 

「それではわた…当機も戦線に向かいますのでこれにて」

 

そう言って飛んでゆく機凱種。

 

「…あとはあいつらがやってくれるのを待つだけだ」

 

「…そう、だね…きっと…やって、くれ、るよ…信じ、てる」

 

「あぁ、そうだな」

 

-----------------------

 

すまない、【意志者(シュピラー)】リク、幾ら我ら機凱種が居て天翼種が力を貸してくれようともアルトシュの神髄だけを奪うなど不可能。

だから、こう思って欲しい。

天翼種が弱らせた所を機凱種が暴走した、と。

 

そして、先に解析してあった空間転移(シフト)により目的地へと集まる。

 

「許す。余の敵を名乗れ」

 

「………………」

 

「なるほど、それで良い」

 

アルトシュはより笑みを浮かべる。

 

「しかし、ははは、まさか我が兵(天翼種)すら味方に付けてたとはなぁ?

久しいな、最終番個体(ジブリール)

 

ジブリールを初めに神撃時にいなかった十七人の天翼種。

 

「お久しぶりです、アルトシュ様」

 

「待ちわびたぞ、余の敵になりうる兵よ」

 

アルトシュが玉座から立ち上がる。

ただそれだけ、それだけなのに。

天翼種達は震え何人かは怯え、機凱種はありえないと言う。

アルトシュのエネルギー、否、エネルギーでは無い何かを増大させる。

それは世界を包む概念が現れようとしている。

アルトシュは言う。

 

「最強とは最強故に最強。

力の増減など意味がない。

概念が我を手にしたのなら、それは意思を持った法則ではないか?

強者とは我であり弱者は我以外の全て」

 

そう語るアルトシュ。

アインツィヒは苦笑いを浮かべ一つの仮説を立てる。

 

「全機に問う。

神髄は“物理的に存在しそれを確認“することは可能か?」

 

【【【肯定(ベヤーエ)】】】

 

ならばどうするか?

我らが手に入れた心に従うまで。

敵が未知ならば、全てを想定すればいい。

 

「目標─アルトシュ神髄

理解をするな計算をするな、全ては感覚に頼れ!

相手が毎秒事に何かするならば、その度に半秒で対応せよ、全機に問う、我らには不可能か?」

 

【【【否定(ナイン)ッ!】】】

 

「存在する限り対応する!

それが機凱種だ。

各機健闘を祈る」

 

【【【了解(ヤヴォール)!】】】

 

【【【【【──典開(レーゼン)!!!】】】】】

 

一方天翼種は。

何人かアルトシュの力の前に怯え恐怖する。

我らは何故アルトシュ様に挑んでしまったのだっ!

だが、直後。

 

「怯えるな!

理解しろ!我らは誰に挑んだか!」

 

叫ぶラフィールに注目する。

 

「我らはこのゲーム、誰の為に勝たなければならない!

ただ一人!アズリールの為だ!

その為に我らはここに居る!

アルトシュの神髄を剥離し勝利する!

そして絶対に死ぬな!」

 

その言葉に我に返る。

そうだ、なんの為にここに来たか?なんの為に挑んだか?全てはアズリールの為!

アルトシュ様以上に我らを救い、思ってくれたか!

 

天翼種と機凱種が一斉に襲いかかる。

 

「我が神髄に──相対するか世に示すがよい、我が『最弱(天敵)』よ!」

 

-----------------------

 

リクは思う。

このゲーム、勝てないってことは分かってた。

 

遥か遠くに少しだけ見えるアヴァント・ヘイムにて機凱種がアルトシュを殺さずに神髄を剥離すべく行動している。

ただ合図が来たら、これを引くだけ。

その時、星を揺らすような声が聞こえる。

 

「これが敗北か──なるほど。

楽しい戦であった。

名も無き最弱よ、貴様は本当に(・・・)最強()の敵に足り得た」

 

…ん?ちょっと待て…本当に?

もしかして、マジで成功したのか?

全員が無理だと思った事をか?!

 

(そうさ、君達はやり遂げた!)

 

誰だ、お前。

 

(僕かい?

僕は君の事を知ってるし、君も僕の事を知ってるよ?)

 

そうか、お前か。

だが、会う前に言わせてくれ。

 

「悪いね、神様共!」

 

引き金を引いた瞬間、光に包まれた。

地を焼き、星を焦がす力の七割が大地を射抜く。

星の核を貫き、精霊回廊を破壊する。

そして、現れる“星杯(スーニアスター)“。

 

「…やるか」

 

「う、ん」

 

遊戯(ゲーム)の神様。

生まれて初めて祈る。

俺達は勝者ではない、星杯(スーニアスター)を手に入れるにはこの手は汚れ過ぎている!」

 

「でも、神様、なら、やれ、る!」

 

「俺達はこの戦争の敗者だ…」

 

「…星杯(スーニアスター)は、シュビィ、達に、は…使えない…」

 

「だから俺達はお前(他人)に頼むしかない!」

 

「おね、がい!」

 

そして、二人の間を通って星杯(スーニアスター)に向かう一人の少年(神様)

 

「…ははっははは!

やっぱり居たんだなお前!」

 

「あれ、が…遊戯(ゲーム)の神様…?」

 

振り返り、笑みを浮かべる神様に。

 

「なぁ、またゲームしようぜ。

今度は絶対に勝つからよ」

 

「二人で、たお、すの」

 

そして、少年が手を星杯(スーニアスター)に添えて────

 

───世界は生まれ変わる───

 




トーク編





「結構ゴリ押し気味に見えるにゃ」

正直自分ただの妄想野郎なので今回何書いてるかよく分からなかったですけど、まぁ二次創作だしいいかってことで割り切りましたはい、実際深夜にかんがえたので深く考えてないです。

「取り敢えず面倒くさそうってのは伝わったにゃ。
それじゃあさよならにゃ、作者」

え?

「どうも、お元気でしたか♪」

…ジ、ジブリールサン、ハイ、ゲンキデシタ、サッキマデ。

「前回の事を、忘れてはいませんよね?♪」

ア、ハイ、オボエテマス、ナニヲスレバユルシテイタダケマスカ。

「無理でございます♡
それでは、ごきげんよう♡」

あ、では、さようなら。










って死ねるか!

「な、何故生きているのですか!
ちゃんと、殺しましたよ!?」

生き返ったわ!
自分死んだら話進まないよ!?

「別にいいにゃ、このままジブちゃんといちゃいちゃできれば」

あんた本当にそればかりね…。

「あったりまえにゃ、可愛いは正義ならジブちゃんは女神に匹敵するに決まってるにゃ。
そんなジブちゃんと常に一緒にいれるここは最高にゃ、むしろ死んで欲しかったにゃ」

泣くぞコラ。

「でも、先輩とずっと一緒というのも嫌ですけどね」

「泣くにゃうち」

「まぁ、お二人が泣いておりますが今回はこれで終わります。
ありがとうございました」


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二人の天翼種

神様は星杯を手に入れてどこかに消えて、リクはシュヴィと飛んで帰っていった。

 

そしてアヴァント・ヘイム側は。

 

「本当に出来るとは思いませんでした」

 

「それは我らも同じこと、まさかアルトシュ自身が手放すとは思いもよらぬ出来事だった」

 

「それほど、認めてくださったのでしょうか?」

 

「そう信じたいものだ。

では、我らはこれにて帰還する。

さらばだ」

 

「えぇ、またいつか会える日まで」

 

アインツィヒを初めとする生き残った機凱種達が帰っていく。

一方天翼種は

 

 

 

 

誰一人死者は無し。

全員生還出来た。

時に機凱種が守ってくれたのだ。

それはルールに背くからなのか、それともこちらの心中を察してか。

ジブリールは見上げる。

 

「…空というのは、蒼かったのですね…。

先輩、終わりました、本当に大戦が終わりましたよ。

ですが、これだけ凄いことをしたというのに、何故こうも悲しいのでしょうか…!」

 

ジブリールは涙を流し俯く。

後ろから足音が聞こえ、徐々に近ずいてきて、そして。

 

「にゃはは、ジブちゃんを泣かせちゃうなんてなんと罪なうち!

だけど、泣き顔も可愛いにゃ〜」

 

その聞いた事のある声に、聞きたかった声に振り向く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまにゃ!ジブちゃん!」

 

とびきりの笑顔で。

 

「せん…ぱい…せんぱい…!」

 

ジブリールは走り、そして抱きつき。

 

「せんぱあああああああああああい!

わあああああああああああああん!」

 

大量の涙を流し、叫び、アズリールの肩を大いに濡らしていく。

ジブリールを撫でながら。

 

「いっぱい…泣くにゃ。

よく頑張ってくれたにゃ。

本当に……本当に…!

ジブ…ちゃん!」

 

アズリールも抱きつき。

 

「ジブちゃあああああああああああああああああああああああん!!!」

 

泣いた。

 

 

 

 

 

 

あれから数十分後。

二人は泣き終わり、冷静になったあとジブリールは恥ずかしかったようで。

 

「にゃははは!ジブちゃん!顔真っ赤!

真っ赤にゃ!にゃははは!」

 

「せ、先輩は、は、恥ずかしくないのですか!?」///

 

「恥ずかしい?何でそんな事思わないといけないにゃ?

むしろうちはすっごく嬉しいにゃあ!」

 

「先輩がうらやましいですよ!」///

 

「にゃはは!真っ赤で怒ってる!可愛い!にゃはは!」

 

「本当に先輩大っ嫌いです!!!」///

 

「可愛い!可愛いにゃ!にゃははは!」

 

「何でこんな人の為にあそこまでしてしまったのでしょうかね!!!???」///

 

そんな言い合いを続けて数時間後。

そして今まで疑問に思ってた事をついに問う。

 

「先輩は、何故生きてるのでしょうか?」

 

「分からないにゃ、あの後目を開いたら暗闇にいたにゃ。

どこかも分からずどこに行っても同じで、正直凄く怖かったにゃ。

でも、光が近ずいてきて手を伸ばしたら起きたにゃ」

 

「それは、もしかしたら唯一神が助けてくれたのでは?」

 

「そーかにゃ?

まぁ、今生きてる事だし色んなジブちゃんを今日見れたしもう死んでもいいにゃ!」

 

「そ、それは忘れてください!」//

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遥か遠くの一つの駒の上に。

唯一神として生まれた一人の少年。

遊戯(ゲーム)の神“テト“。

テトは言う。

 

「ありがとう、アズリール。

君のおかげで二人は助けられた。

それに君が生き返ったのはお礼さ。

流石の僕でも死んでたら無理だったけど君がジブリールを思い、そして生にしがみついてたおかげで助けれた。

さてさーて、それじゃあ!」

 

 

──知性ありしと自称する十六種族(イクシード)よ!──

 

──遺志達の公儀(アシエイト)を継いで──

 

──十六種族の同意(アッシエント)をなし──

 

──唯一神の座に基ずき(アシエンテ)定める──

 

──『十の盟約』を──

 

いざ仰げ。今日、この日、世界は変わった!

 

────【盟約に誓って(アッシェンテ)】─────

 

────さぁ、ゲームを続けよう!────

 

 

 

 

 

-----------------------

 

大戦が終わり、変えれた部分は、リクとシュビィが生きていて、妹達が誰も死んでない事。

そして一番の変化は。

 

(ジブちゃんがうちと一緒にいる事だよねー)

 

ジブリールはほぼアズリールの隣にいる。

 

「にゃはは………うぐっ!」

 

忘れてはならないのが、アズリールは生き返ったとはいえ傷が治ったわけではない。

右翼はないし、左手は使えない、良くなった点を上げるなら黒焦げた部分がなくなったくらい。

そしてアズリールは定期的に失った部分に激痛が走るようになった。

 

「先輩!大丈夫ですか!」

 

それを知らない、否、知らせていないジブリールは心配する。

 

「(や、やばいにゃ)大丈夫にゃ、気にしなくていいにゃ」

 

いつもより引きつった笑顔で。

これ以上、ジブリールが自分自身を責めるのをやめて欲しい故に、言わない。

 

「…大丈夫じゃないです…。

先輩はいつも…一人で片付けようとします。

私のせいで出来た怪我が痛むのでしょう!?

先輩の事です、私が自分を責めて欲しくないとかで背負い込んでいるのでしょう?」

 

(にゃ、何でバレた)

 

「何でバレたって思ってますよね。

先輩はいつも顔に出てます。

…私にも責任を負わせてください!」

 

「………分かったにゃ。

それじゃあまず、話を聞いて欲しいにゃ」

 

「はい」

 

「実はうち…転生者にゃ」

 

「…転…生者…?」

 

「一度死んでこの世界に生まれたにゃ。

アズリールとして。

どうにゃ?ここまでは信じてもらえるにゃ?」

 

「正直…信じられません。

ですが、先輩ですし、本当何でしょうね」

 

「…前は人間だった。

今考えれば凄く短い十六年だったけど、その頃は凄く長い十六年だった。

毎日が退屈で、何もすることがなく、新しい事を見つけられない、そんなつまらない人生。

だけど、それは唐突に終わって、そしたらアズリールになってたのさ。

でも、どこかで見たって思ったよ。

実はさ、この世界と同じ物語がうちの元いた世界では本になってたんだ」

 

「この世界と同じ…ですから先輩は私の事を知ってたり大戦が終わる事を?」

 

「そう、結末は違うけどね。

きっとうちが違う行動ばかりしてたからジブちゃん達を苦しめちゃった。

これじゃあ、お姉ちゃん失格だよ」

 

「…その本ではどんな終わりが?」

 

「ジブちゃんとシュヴィが戦ってジブちゃんが勝ち、リクと機凱種だけで世界を変えようとする、機凱種は止めに来る天翼種を倒しながらアルトシュと対峙し、その後は分からない。

そして、リクは世界を壊し、唯一神が取ってリクは死んじゃうって終わり」

 

「確かに、先輩が行動を起こしたから私達は苦しめられたかも知れません。

ですが、今を見てください。

私達は全員無事、二人は生きている。

完璧とは程遠いかもしれませんが、最高ではありませんか?

私は…先輩が作ったこの世界がいいです。

自慢の…姉です」

 

「この世界がよかったとしても、うち自身がジブちゃんの姉失格だよ。

うちが死んだ時、暗闇に居たって話したでしょ?

凄く怖かった、何でうちはここに居るのか、何で何でってね。

そして思っちゃったの、ジブリール何か助けなければよかったって。

すぐ何言ってるんだって言ったさ。

でも、本当の事だろうってね。

頭がおかしくなりそうだったよ。

だからさ、うちは失格なの、好きになる資格もないよ…」

 

「…先輩は馬鹿なのですか!

たった数回思ったから?でしたら、それ以上に先輩は私にしてくれました!

それでチャラですよ!

どれだけ私が先輩に助けられ、そして感謝したか分かりますか!?

先輩がどう思おうと、私からすれば最高の姉です!

ですから、先輩も私の最高の姉と思ってください!」

 

「ジブちゃんはうちを許してくれるの?」

 

「えぇ!許しますよ!」

 

「ジブちゃんのお姉ちゃんのままでいいの?」

 

「私の自慢の姉さんですよ!」

 

「ジブちゃんを好きになってていいの?」

 

「当たり前です!私は姉さんの事、大好きですよ!」

 

「……………」

 

「…はぁ………はぁ…」

 

「……にゃはは、にゃはははははは!

深く考えてたうちが馬鹿みたいだにゃ!」

 

「先輩は大馬鹿者ですよ。

いちいち、そんなことを考えるなんて」

 

「ありがとう、ジブちゃん。

おかげですっきりしたにゃ」

 

「よかったです、正直、凄く恥ずかしいです」//

 

「にゃはは、それじゃあうちも恥を覚悟して言うにゃ」

 

ジブリールは首を傾げる。

アズリールは深呼吸して、片膝を地に付け、ジブリールに手を伸ばし。

 

「うち…いや、俺と付き合ってください」

 

まさかの告白。

 

「大丈夫、姿だけ見れば女の子同士だけど心は男だしそれにこっちの世界には百合という文化がある!安心!安全!

え?姉妹だろって?(あ、忘れてた)

し、知らない、愛にそんなの関係ないしぃ⤴︎ ⤴︎⤴︎」

 

予想外の言葉に理解が及ばないジブリール。

 

「えぅっと、え、その、あの、つつつ、つまり付き合うというのは付き合うという事(?)ですか?」

 

「にゃはは、面白い位にバグってる。

…今よりもっと仲良く暮らそうって事だね」

 

「…私とですか?」

 

「そういう事。

それじゃあ、俺の翼、左腕となって一緒にいてください、ジブリール」

 

「…はい、私を貴方の翼、左腕としていさせてください」

 

アズリールの手に乗せ。

告白成功で、いいのかな?

 

「やったにゃぁぁぁぁぁ!!!

めちゃくちゃはっっっずかしいけど嬉しいにゃぁぁぁ!」/////

 

「先輩、顔赤いですよ、ふふっ」

 

「そんな事知らないにゃ!

よーし、それじゃあこれからイチャイチャするにゃあああ!!!」

 

「それはお断りします」

 

「何でっ!?」

 

 

 

 

二人の天翼種による原作とは違う神話の物語。




トーク編






「甘い、めちゃくちゃ甘いにゃ。
それと、ジブちゃんが泣いてるとこってすっごく尊いと思うにゃ」

はい、まさかの告白ENDってね!
ぶっちゃけます、ただこれがしたかったからやった。
後悔はしてない、反省はしない。
ジブ×アズ増えろ。
テト×いづもリク×シュビィもジブ×ステもその他もいいけどジブ×アズの絵とかもっと増えて。
俺は!妄想を続けるぞ!

「見てるこちらが恥ずかしいですよ」

「にゃ、ジブちゃん。
うちらも付き合う?」

「言うと思いました、答えはnoです」

「絶対ジブちゃん本編とは違うにゃ」

本編とここは違いますし、それに二回目はいらないでしょう。
もしくはジブリールさん、アズ先輩の事嫌い何じゃないですか?

「おや、こんな所に豚の首が落ちてますね♪
よく切り刻んでおきましょうか♡」

え、普通に嫌ですよ。
あれ、というか怒ってるってことは好きなんですか?
やっぱり本編と変わらないですね。ひゅーひゅー。

「ぐっ、うるさいですよ!」

ずーぼーしー、はいずーぼーしー、はい。

「ストップストップー、ジブちゃんが十回殺すまで追いかける位に怒ってるから」

「絶対、殺してやります、ふふふ…」

こっわ、それじゃあ皆さん、さよなら。

「ばいにゃ」「はぁ、さようなら」



一応完結ですけどこれの続きかおまけ編みたいなの思いついたらやると思います。
出たらラッキー位にでも。
ここまでありがとうございました。


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ディスボード編
プロローグ


──都市伝説。

それは一種の願望。

 

数多の都市伝説がある中、その一つにこんな話があるのを聞いたことはあるだろうか。

ただ一度も敗北はなく、空前絶後の記録を刻み。

あらゆるゲームで頂点に君臨する、正体不明のプレイヤー。

アカウント名がいつも空欄ゆえに、通称『 』(くうはく)

勝つことは不可能とまで言われたプレイヤー。

だが、ある日どのゲームからも『 』が消えた。

 

 

 

こんな噂を聞いたことがあるだろうか。

あまりにゲームが上手すぎる者には、ある日メールが届くという。

本文のURLを踏むとゲームが始まり、そのゲームをクリアすると異世界へ誘われるという。

そんな『都市伝説』。

 

だが、実際にそれはあり、『 』はクリアした。

そして、全てがゲームで決まる世界『ディスボード』にやって来た。

『 』…いや、空と白はとある宿屋で一人の人類種(イマニティ)、ステファニー・ドーラと出会い、王宮で情報を集め、国王選定戦で無敗の記録を持った一人の人類種と森精種を下し、三日が過ぎて新しい二人の王が出来た。

 

その二人の王がベランダから出て、何十万の人類種に対し声を上げる。

 

それを誰もいない道から見ている、フードを被った少女。

そこからちらりと見える、緑から紫へと変わっている髪色。

 

「にゃは、もう来てたのかにゃ。

…ようこそ、最強のゲーマーさん」

 

少女…アズリールはそう呟いた。

 

「まぁ、それより早く帰るにゃ」

 

 

 

───国立エルキア大図書館───

 

ここは数十年前に愚王と罵られる一人の人類種と二人の天翼種がゲームをし、天翼種が勝ち手に入れた場所。

そこの扉に手をかけ開き。

 

「たっだいまにゃ〜」

 

帰ってきたアズリール。

 

「あ、おかえりなさい、アズ」

 

彼女の帰りを待っていた少女。

長く、美しく、桃色の髪をし、風のない屋内でもなびき、光の反射でプリズムのように見える。

少女の名はジブリール。

ジブリールは料理を手に持ち、テーブルに置いて。

 

「アズは最近料理に興味が出たと言ってましたので、作ってみました」

 

それを聞いたアズリールは某奇妙な冒険のような顔になり。

 

「な、何ィィィ!

ジブちゃんの手料理だとぉぉぉ!?

ベネ(よし)!」

 

「そんな大袈裟に反応しなくてもよいではありませんか」

 

「だって、ジブちゃんの手料理にゃ?

作ってもらうだけでも信じられない位にゃ」

 

「それを言ったら私と付き合ってる事の方が信じられないのでは?」

 

「た、確かに!

なら手料理はまだ信じられるかにゃ。

よし、早速食べるにゃ」

 

椅子に座り、テーブルに置いてある料理を食べ始める。

 

「いつ、もぐもぐ、食べても、もぐもぐ、美味しい、もぐもぐ、にゃ、もぐもぐ」

 

「よかったです。

今度はアズの料理を食べてみたいでございますね♪」

 

アズリールの手が止まる。

 

「にゃ、えーと…あの…ま、任せる…にゃ(料理の本ってあったかにゃ…)」

 

「はい、楽しみにしております♪」

 

料理を食べ終わり、片付けてから話す。

 

「そういえば、新しい人間が王になったにゃ」

 

「確かに広場はそれで盛り上がってましたが…人間ですか?」

 

「そう、人間、ジブちゃんなら意味は分かるよね」

 

「彼らも転生者、異世界人という事ですか」

 

「そーにゃ、まぁ、これも本にあったからにゃ〜」

 

「本当にアズはチートですね…」

 

「ジブちゃんがその言葉を使うとは…。

それより…料理の本ってどこにあったかにゃ…?」

 

「それでしたらこちらにありますよ♪(最近は私を頼ってくださり嬉しいですね♪)」

 

 

 

これは大戦を終わらせた二人の天翼種による神話の物語の続きである。

 




トーク編




どうも、作者です。
本当はあのまま終わっておこうかと思ってましたが何となく再開する事にしました。
続き出るの遅くなるかもですし、なんならいなくなってる可能性ありますがまたよろしくお願いします。
因みにジブリールの先輩→アズ呼びはアズリールが恋人らしくそう呼んで欲しいと言ったからです。

「みんなの主人公アズリールさんにゃ。
また、ジブちゃんといちゃいちゃしてくからよろしくにゃ!」

「どうも、皆さん、ジブリールです。
先輩のわがままなどにまた付き合わされるので本当に勘弁したいのですが、どうしてもというので来てしまいました。
またよろしくお願いします」

「ねぇ!作者!やっぱりここのジブちゃん違うよね!?泣いていいよね!?」

どうせ内心は好きに決まってるでしょ。

「…♪」

やっべ逃げよ。
それでは、またよろしくです。

「おなしゃすにゃ…しくしく」

「お願いします」


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二人の王

───エルキア城王───

 

ここに新しく人類種の王となった二人の人間。

空と白。

その二人にパシリにされている少女、ステファニー・ドーラ。

通称ステフ。

ステフは今朝、空にゲームを挑み、負け、そして超適当に一日犬という要求に従っていた。

その姿が【十六種族(イクシード)】位階序列・十四位“獣人種(ワービースト)“と同じ姿という事を知り、空は獣人種の国『東部連合』をどう攻めるか考えていた。

 

「しっかし、情報がねぇんじゃ話になんねぇなぁ」

 

「情報?

だって、空達引きこもってましたわよね?」

 

「え、何?

俺達何もせずにずっと遊んでただけだと思われてたの?」

 

「一片の疑いもなくそう思ってましたわよ」

 

「…まぁ、んなこたどうでもいい。

例えば東部連合を攻めるとしよう。

俺達が知ってる情報は“第六感(心を読める)“、それだけだ。

他種族の情報が足らなすぎる。

穴も見つからん。

だから、どう攻めるべきか、分かんねぇ」

 

「それでも、何かしなければ──」

 

「あのな、一手でも間違えたら終わりなの、そんくらい追い詰められてんだ、忘れんな」

 

最強のゲーマーが今何も出来ないことに苛立ちを覚え。

 

「あーあ、アヴァント・ヘイムにいるっつー天翼種とコンタクト取れればなぁ。

どうやってあそこまで行けと…」

 

その言葉にとてつもなく言いづらそうにステフは。

 

「…あのぉ、その事でしたら居ますわよ…天翼種」

 

「…は?」

 

「そのぉ、エルキア図書館を掛けてゲームをして負けてしまい、そこに今いるんですのよぉ」

 

「へぇ、図書館あったのか。

じゃねぇよ!何人類の武器掛けてんだ!

アホか!そりゃここまで負けるわ!」

 

一旦落ち着いてから。

 

「で?その図書館はどこにあんだ?」

 

「ま、まさか、天翼種に挑みに行くなんて言わないですわよね…?」

 

「よく分かってるじゃないか」

 

「いやー!誰か止めてー!この男をー!」

 

「さ、案内するかもっと酷い格好されるか、どっちがいい?」

 

にこやかにそう告げ、ステフは諦めた顔になり、案内を始めた。

 

 

 

-----------------------

 

 

 

──国立エルキア大図書館前──

 

「「でっかぁ…」」

 

「あの、最後に言いますけれど、本当に行くんですのね?」

 

「あぁ、諦めろ」

 

と言い扉に手をかけ開く。

そこに広がるのは大量の本。

周りに本棚が沢山ありそれでも収まりきれない本は本棚ごと空中に浮いている。

 

「すっげ、少し見直したわ」

 

「いえ、前はこんなになかったですわ」

 

「…それ、に、浮いてるの、天翼種、の、技術…」

 

「…見直して損したわ」

 

入口付近で喋る三人に後ろから。

 

「あのにゃ、そこどいて欲しいにゃ?」

 

突如後ろから声がして振り向く三人。

 

「にゃ?もしかしてお客さんにゃ?

それなら歓迎するにゃ、早く入るにゃ〜」

 

「お、おぉ」

 

取り敢えず入れたしいいか、と空は思う事にした。

 

「ただいまにゃー」

 

「おかえりなさい、おや?その方達は新しい王の空様と白様ではありませんか」

 

「なんだ、俺達の事知ってんのか、なら話が早い」

 

三人は案内された椅子に座り二人の天翼種に対し。

 

「この図書館をくれ」

 

と、空は言う。

 

「我らは知識を尊ぶ種族、その知識が詰まっている本、それが収められてる書庫は、命と等価と言っても差し支えない程でございます。

…私に命を掛けよと申される以上、そちらは何をお掛けになるので?」

 

「異世界の書、計四万冊以上…!」

 

「!?ごほっがはっごほっ…し、失礼しました。

しかし、一体どこにそれだけの本が?」

 

「これだ」

 

空はタブpcを取り出して。

 

「つまり、異世界人…という事ですか」

 

「そうだ」

 

「…なるほど、分かりました、しかし、四万冊…うぇへへ(アズにどれだけ頼んでも少ししか教えて貰えなかった知識が目の前に…)」

 

「ところでさ、ずっと気になってたんだがよ、お前誰」

 

「あ、今にゃ?

うちは天翼種のアズリールにゃ、よろしくにゃ」

 

「アズリールか、分かった、しかし二人いるとはな、こりゃ驚きだ」

 

「あ、すみません、魅力的な提案に釣られて名乗るのを忘れておりました。

私の名前はジブリールと申します。

以後お見知り置きを。」

 

「それで、ゲームは受けてくれるのかな?」

 

「あ、それはもちろんお受け致します。

では、掛けるのは『一部以外の私の全て』でいかがでしょう」

 

内心、空はマジ?と思ったが一部というのが気になった。

 

「なぁ、その一部ってなんだ?あと、アズリールは参加しないのか」

 

「うちは別にジブちゃんと一緒にいれればどうでもいいにゃ」

 

「一部というのはアズとの関係です。

アズを一番に行動させて貰いますのでそこだけはご了承ください」

 

「つまり命令は聞いてくれるんだな?。

因みに何でそんなにアズリールを気にかけるんだ?」

 

「うちら付き合ってるからにゃ」「私達付き合っておりますので」

 

長い沈黙が続き。

 

「えっ、は!?つ、付き合ってるって、マジか!?」

 

驚きを隠せず。

 

「う、そ…百合…だ、と…」

 

信じられずに。

 

「お、おおお女の子同士ですのにににに」

 

顔を赤くし。

 

「という事ですのでそれで宜しければゲームはお受け致します」

 

「あ、あぁ、それで大丈夫だ…。

で、何をするんだ?」

 

「それは…『具象化しりとり』でこざいます」




トーク編


「よく本編のうちはジブちゃんに異世界の事話さなかったと思うにゃ。
うちだったら空達関係なしに全部話してたにゃ」

アズ先輩、大変です。

「どったの」

トーク編のネタが無いです。

「あ、そう」

めちゃくちゃ興味無さそうっすね。

「当たり前にゃ」

ジブリールさん。

「何ですか」

お、きたきた。
あのですね、トーク編のネタが無くなりました。

「だから何ですか。
まさかそんな事言う為に呼んだなんて言いませんよね?
ではネタ提供してあげましょう。
私があなたを殺します」

それただ殺したいだけだよね。
ただ自分が損するだけだよね。

「よくお分かりで。
ではさようなら」

嫌ですよ避けますよ。

「生き返るのですからいいではありませんか」

よく考えたらジブリールさんめっちゃ自分の事嫌いですよね。

「あなたがそうやってるからではありませんか?」

まぁそうなんですけどぉ。
取り敢えずオチなしという事で〜。
さよなら!


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転生者(『 』)vs転生者(アズリール)

「具現化しりとり?」

 

「はい、ルールは簡単です」

 

1.既出の言葉を口にする

 

2.三十秒答えない

 

3.継続不能

 

「あと、存在しないもの、架空のもの、イメージが出来ないものは具現化できません」

 

「なるほどな、それと──」

 

「継続不能ってのはにゃ、具現化しりとりだから、『その場にあれば消えて』、『無ければ現れる』、あとは分かるにゃ?」

 

「さんきゅー、丁度聞きたかった事だ。

因みに俺が『女』と言ったら?」

 

「プレイヤー以外のここにいる女の子が消えるにゃ。

プレイヤーに直接干渉して継続不能は出来ないから気をつけてにゃ〜」

 

「そうか、大体わかった、それじゃあそろそろ始めようか」

 

「えぇ、では始めましょう」

 

「「「盟約に誓って(アッシェンテ)」」」

 

「先行はお譲りしますよ」

 

「そうか?なら、手始めに…『水爆』」

 

その言葉を発言した途端。

真上に巨大な鉄塊が現れる。

空達の世界もアズリールの世界でも、人類が生み出した大量殺人兵器。

ステフとジブリールは何か分からずただ見ているだけ。

核熱がリチウムを配合させ、光を放つ。

ジブリールは何がおきているか知らないが、本能が告げた。

 

「──!久遠第四加護(クー・リ・アンセ)!」

 

叫び終わるとほぼ同時に爆発。

辺りを焼け野原と変えた。

その中を無傷でいるジブリール。

 

「お分かり頂けましたか?

私を殺す事は出来ませんよ。

しかし、初手で自爆ですか、これも作戦の内でしょうか?」

 

「ほぉ、自爆したのを馬鹿にされるかと思ってたんだがなぁ。

てか、かってぇなー天翼種って」

 

「昔のままの私ならしてたでしょうね。

それでは、続きをしましょうか」

 

「あぁ、『精霊回廊』」

 

しりとりは続く。

途中、空が作り出した『超健全空間』により、女性全員が裸体となり、ステフは隠し、白は親指を立て、ジブリールは特に気にせず、アズリールは頭を撃たれたように気絶した。

アズリールは鼻から血を出しながらもその顔はとても晴れやかであった。

そんなこんなでゲームも終盤、アズリールも復活を果たし『 』を見る。

二人が立ち、階段を登りだす。

 

(「ジブちゃん」)

 

(「アズ…?何でしょうか」)

 

一枚の紙を渡して。

 

(「これは…」)

 

(「うちの足掻きにゃ」)

 

 

 

 

「「『リソスフェア』」」

 

惑星の表面を消した。

ジブリールは理解する。

惑星の中心核に落とし、まだ、ジブリールを殺そうとしている事に。

 

「なるほど、では、『朝』」

 

「「すぅーー──『酸素』」」

 

全員を強烈な頭痛が襲い、呼吸が出来なくなる。

アズリールは呼吸を出来ていた事にめっちゃ感謝していた。

 

「私には無意味ですよ、『ソナタ』」

 

「…ぐっ…『種うえ』…」

 

「そうですね、では『空気』」

 

その時、意識を失いそうなほどの強烈な減圧が襲う。

空気を戻したつもりが逆に出来なくなった。

 

「──なっ何故っ───んんっ!?」

 

天翼種の本能が、強力な毒を吸ったことを告げる。

空は笑う。

 

(やはりジブリールっ!

お前は原子論を知らない!

呼吸が出来なくなれば、空気を戻せばいいと解釈するよなぁ?

だが、俺が消したのは酸素のみ!

存在するものは消え、しないものは出現するこのルール。

他の気体は消え酸素は戻る。

つまり、今この空間は単体で取り込めば猛毒でしかない酸素のみ!)

 

(うぐっ…ですが、この状況はあなた方も同じはず…何をっ!?)

 

(循環呼吸…だが、これはお前らも出来ることだなっ…!)

 

(っ!アズっ!?い、いえ、これは勝つ為です、ですが、は、恥ずかしい…!)

 

(無心無心無心無心無心無心無心…無理!

でも嬉しい!けどちゃんとしたかった!)

 

空はニッと笑い。

 

「いくぞ…白っ!」

 

「…んっ!」

 

全力で空気を吐いて。

 

「「『アトモスフェア』ッ!」」

 

ジブリールとアズリールの中で何かが弾けた。

体内に残った気体がゼロ気圧により、肺を引き裂かれるような衝撃を生む。

 

(いっだぁぁぁぁ!

吐ききれなかったにゃああああ)

 

(それでも…私は殺せませんよ!)

 

ジブリールは口を動かす。

そして異変に気づく。

“音“が出ない。

現在、この場は『真空』状態。

空気が無ければ言葉を相手に伝えられずに。

 

(三十秒経過で私の負け…でございますか…。

ですが、それで勝てると思っているなら、私達を少々侮ってはいませんか?

なので、私からはこれをお渡しします)

 

ジブリールは精霊を分解させ、空中に言葉を書く。

『暗弱』。

その返しに、空は──“笑った“。

空は紙にある言葉を書いてあった。

『クーロン力』。

本来、超大型惑星の最期、重力崩壊によってのみ引き起こされる、天文学的現象。

数光年の星系をも蒸発させる

極超新星爆発(ハイパーノヴァ)』となる。

 

(摂氏五百億度、天地開闢に等しい力にも耐えられるなら耐えて見せろよ天翼種!)

 

発生している現象も何もかもジブリールは知らない、が。

 

(でしたら、次はアズの分でございます。

ふふっ、本当にアズはチートですよ…!)

 

ジブリールもどこからか紙を取り出して。

 

(嘘だろ!?まだ、何かあんのか!?)

 

その動作に空は冷や汗をかき。

『空中爆発』。

そして、空と白の後ろに現れる。

 

(あなた方を殺せる程の爆発を真後ろで起こせば私が死ぬより先にあなた方は終わり、私達の勝ちでございます)

 

そして、世界は真っ白に包まれ、元の場所へと戻り、勝者のコールがなる。

勝者──「 」

 

「なっ…負け…ですか…」

 

「あっぶねぇぇぇ!

てか、ジブリール!

いつの間に紙なんて持ってたんだよ!」

 

「それ、うちがさっき渡してたやつにゃ」

 

「マジかよ…、てことは俺達が登ってる時にか。

はは、してやられたぜ」

 

「はぁ、正直、これは勝てたと思ったけどにゃー」

 

「あの、何故負けたのでしょうか?」

 

「簡単にゃ、もし、空が白を守っても一緒に死んで終わり、だったら、飛ばせばいい(・・・・・・)

 

「…なるほど…。

はぁ、アズと一緒でも勝てないとは…。

本当に凄まじい種族です」

 

「この位まだ簡単なほうさ」

 

「私達を相手に簡単ですか…。

正気ではありませんね」

 

「神様に挑むんだ、正気でやれるか?」

 

「神に…本気でございますか」

 

「俺達を連れてきたのはテトだ。

あいつにゲームで勝ったら大人気なくこの世界に連れてきて、こっちのルールで勝たせろってね。

だったら、あいつに勝つ以外の選択肢ないっしょ〜」

 

唯一神の座を奪う。

ただ、それだけの事。

 

「と、言うわけで盟約に従い、ジブリールの一部を除いた全権利は俺のものだ。

あ、それとな、タブpcに入ってる書庫、あれエサだったから全部自由に見ていいぞー。

それとこの図書館も今まで通り使っていいぞ」

 

その一連の言葉に。

ジブリールは跪き、手を合わせ祈るように。

羽をたたみ、光輪は後ろに。

天翼種が主にのみ、見せる絶対忠誠。

 

「マイマスター、マイロード。

十六種族(イクシード)】位階序列第六位天翼種、十八翼議会が一体、ジブリール。

我が一部を除く他全ては貴方様のもの。

どうか、最大限活用、利用し、その意思の礎として下されば至上の悦びでございます」

 

「おう、任せとけ、なぁ白」

 

「…おーう、任せろー…」




正直、空中爆破で先にやれば勝てるじゃないかって思ったけど対策考えてたらすごく呆気なかったです。
循環呼吸する必要無かったけど、出来る場面があるならするしかないでしょ!
というか、絶対忠誠なのにアズ先輩一番ってなかなか矛盾してるけど、まぁ気にしなーい気にしなーい。

「ジブちゃんカッコイイにゃ!」

はい絶対言うと思ったー。

「ついにキスしてしまいましたか」

「うちらもちゅーするにゃあー」

「お断りします、近寄らないでください」

「作者ぁぁぁ!」

ウケる。

「笑うにゃぁぁぁ!」


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愚王

空は図書館を取り返したあと、王の寝室から図書館に引きこもっていた。

ステフはお茶いれをさせられ、空と白は獣人種の情報をジブリールから教えて貰いながら。

 

「…なぁ、ジブリール。

何でアズリールはあんなに怪我してんだ?」

 

「…ん、それ、気に、なった」

 

が、本を読みながらつい気になってた事を喋ってしまう、空と白。

その言葉にアズリールは、顔をくもらせ、左腕を抑える。

長い年月が経ち、痛みが出てくる回数は減りはしたが、それでも、激痛が来なくなった訳では無いし、その出来事関連を思い出すだけでも来る。

 

「…いくらマスター達といえど、その質問にはお答えいたしかねます。

それと、これを最後にその質問をしないでください」

 

少しだけ目を細め。

 

「…わりぃ」「ごめ、ん」

 

二人は謝る。

だが、アズリールは。

 

「いや、いいにゃ、二人には話しておくにゃ」

 

「アズ…ですが」

 

「大丈夫にゃ。

…この怪我は大戦時、自身を犠牲にジブちゃんを守った時に出来たにゃ。

まぁ、右翼は無くなって飛べなくなったり、左腕は使えないから何かするのも一苦労。

しかも時々激痛もはしる。

正直ジブちゃん無しじゃほぼ何も出来ない位にゃ。

でも、その程度で済んで守れたなら後悔なんて無いにゃ。

あ、その事とジブちゃんと付き合ってる事は全くの別だからにゃ!」

 

「それは分かってるから。

しかし、まぁなんだ、それは本当に悪い事を聞いたな、すまん」

 

「うん、ごめん、ね」

 

「気にしなくていいにゃ」

 

そして、ステフが帰ってくる。

 

「皆さん、用意が出来ましたわよ……何ですの、この空気」

 

お茶を入れお菓子を作ってきたステフが困惑しているなか。

アズリールは、はっ、と何かを思い出した。

 

「あ、忘れてた!

ドラちゃん!ちょっと来て欲しいにゃ!」

 

「ド、ドラちゃん!?

私にはステファニーという名前が…あと、どこへ連れていかれるんですのー!」

 

二人は空間転移で何処かへ行ってしまい。

取り残された三人は。

 

「…あいつの切り替えの良さは凄いな…」

 

それに頷く二人。

 

-----------------------

 

再びキッチンへ戻らされたステフ。

 

「な、何故またここに…」

 

「ドラちゃんにお願いにゃ!

うちに料理を教えて欲しいにゃ!

このとーり!」

 

手を合わせたいが出来ない為、それっぽいように手を出し頭を下げるアズリール。

それに慌てるステフ。

 

「ちょ、頭を上げてください!

料理位教えてあげますわよ!

でも、何故急に?

天翼種って食事は必要ないじゃないですの」

 

「必要ないけど、うちは最近食べる事にハマってるにゃ。

ジブちゃんに作ってもらったりしてるけど、うちの料理を食べてみたいって言ってたからにゃ!

本を読んだり色々してるにゃ、だけど教えて貰いたいからにゃ。

そこで、ドラちゃんの出番にゃ!」

 

「まぁ、いいですわよ。

それで、何を作りたいんですの?」

 

「簡単なものから作っていきたいにゃ」

 

「分かりましたわ、ではまずこれから──」

 

アズリールの料理特訓は続く。

正直に言おう、下手である。

元の世界でも料理なんてほぼした事ない人間が上手い人に教えて貰ってもすぐに上手くなる訳では無いが、なかなか酷い。

いくら片腕が使えないにしてもである。

 

「にゃはは……もう……無理…」

 

アズリールは自分の下手さに絶望して、真っ白に力尽きて。

 

「あの…まだこれからですわよ…ほら…頑張ってみましょう?」

 

ステフも予想以上の下手さに慰める事しか出来ない。

その後も少し続いたがアズリールが自虐しだしたので一旦料理は終わりにし、戻る。

そして、ドアを開ける前に声が聞こえる。

 

「くそ、どうしろってんだ。

先王、アホだとは思ってたがここまでくるとアル中だったんじゃねぇか?

無謀な突撃に領土を八回も掛けるとか…。

数でおせば運で勝てると思ったのかねぇ?」

 

その声にステフはドアを思い切り開けて声を上げる。

 

「やめなさい…確かに、お祖父様はゲームは弱かったですわ…。

でも、人類種数百万の命を背負って、何も思わないほど頭のネジは飛んでませんでしたわよっ!

空達と違って、常識的人格者だったんですのよ!」

 

「領土半分を無駄に費やすのが常識的人格者なら、俺は異常者で結構」

 

その言葉に、震えて涙目になり、走る。

 

「いい、すぎ」

 

「…あんなん見せられてどうしろってんだ…」

 

-----------------------

 

──エルキア王城─旧王の寝室──

 

元は空達の寝室だったが、別の場所に寝床を作ったのでステフの寝室となった。

ステフ一人にはでかいベッドに埋まって。

 

「お祖父様が正しいって証明してくれるんじゃなかったんですの…嘘つき…」

 

ステフが肌身離さず持っている鍵を握り。

 

『おじいさま、これ、なんの鍵ですの?』

 

『それはワシの大事なものがはいってる鍵じゃ』

 

『聞いた事ありますわー、おじいさまは人に見せられない本を集めてるって』

 

『いやいや、それは別の事じゃ!

…これはな、希望の鍵なんじゃ』

 

『きぼうの…鍵…?』

 

『そうじゃ、いつかステファニーにあげよう』

 

『ほ、ほんとうですのっ!』

 

『ああ、ただしよく聞いとくれ。

いつか、心からエルキアを任せられると信じた者に渡しておくれ』

 

思い出す、数十年前の事。

だけど、お祖父様を侮辱した空には…。

 

「ドラちゃん、ちょっといいかにゃ?」

 

「ひぎゃああああああああああああ」

 

ひょこっと現れたアズリール。

その事に驚き跳ね上がる。

 

「うるさいにゃ。

…ちょっと話をしようにゃ」

 

「…何ですの…」

 

アズリールはステフが横になっているベッドに座る。

 

「確かに空は君の先王を侮辱したにゃ。

ネガティブ思考になってたとはいえ言っちゃいけない事を言ったのは事実にゃ」

 

「そうですわよ…だから、あの男には…」

 

「でも、今、空はそれを訂正しようと頑張ってるにゃ」

 

「えっ…」

 

「よく考えるにゃ、空は不器用で人類種なんてどうでもいい風に見えるけど、実際やってきた事はどうにゃ?」

 

森精種を破り王になり、効率の良い内政を作り出した。

ジブリールを負かし、図書館を取り戻した。

 

「…あっ」

 

「分かったかにゃ?

空には愚王を賢王にする残り1ピースが無いにゃ。

でも、ドラちゃんにはあるにゃ」

 

ステフは手のひらに置かれた鍵を見て。

 

「…あの男を信じろ…って言うんですの?」

 

「知らんにゃ。

そんなのは自分で行ってから考えるにゃ。

それじゃあ、うちは戻ってるにゃー」

 

そう言い残し、アズリールは消える。

 

「………あぁ、もう!行ってやりますわよ!」

 




トーク編

「珍しくうちかっこいいと思わない?」

珍しくいい文書けたと思わない?
最後だけだけど。

「はいはい、二人ともよく出来ました」

「褒めるんだったら撫でてにゃぁぁぁ」

撫でてー。

「先輩はいいですけど、作者は嫌です」

ハハッナミダ。

「( ・´ー・`)ドヤァ」

おお、うざいうざい。

「やっぱり私もやめましょうかな」

「ごめんなさいやめないでくださいうちがわるかったですというかぜんぶさくしゃがわるいんですだからやめないでくださいもっとしてください」

「はぁ、仕方ないですね、ほら、早く来てください」

「ジブ様ぁぁぁ!」

何これ、新手の洗脳?

「あなたにはこれを差し上げます」

WOW、BIGTENGEKI。
って、アホか!久遠第四加護!
あぶねぇな!

「ちっ」

わぁ、素直、そういうとこ嫌いじゃない。


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賢王

何度も行った図書館だというのに、今回は足がとても重い。

静かに扉を開け、足音を殺す。

 

「マスター、そろそろお休みになられた方がよろしいかと。

いくら調べても、先王の起こした愚行は──」

 

「ジブちゃん、それは違うにゃ」

 

「…?」

 

「空、地図と睨めっこして何か分かったかにゃ?」

 

「あぁ、まず先王が掛けた土地は元王城含め全て無価値な場所だ。

だが、何故八回も東部連合に挑んだ?

常識人がムキになって挑む回数じゃねぇ。

何か意図があるとしか思えねぇんだよ。

何故、東部連合はデメリットの記憶消去を行う?

何故、エルブン・ガルドは四回挑んだ?

何故──」

 

「─八回でやめたんだろうにゃ?」

 

「…それは…八回で目的を成し遂げたから…!?

確証はねぇ、だが──」

 

「マスター、アズにも申し訳ないのですが、人類種が皆、お二人のように思慮深く行動してるわけではございません」

 

「だが、してる奴もいる。

そして概ね、そういうやつは大抵、理解されない」

 

「だから、それを理解するのもうちらの仕事ってわけにゃ(けど、原作情報無しに理解出来てたか、うちには分からないにゃ)」

 

「何故、俺が人類種なんて種族信じられるのだろうって思うか?」

 

「…いいえ」

 

ジブリールは信じている。

あの二人がやり遂げたように。

 

「へぇ、そうか。

だが、俺は『人類』なんて信じてないからさ」

 

「「えっ」」

 

一人はその場にいるジブリールが。

もう一人は隠れているステフが。

アズリールに来てみろと言われ来てみたがやはりこれでは。

 

「人類なんて、どこに行ってもクソだ。

だが、その『可能性』を信じる。

根拠は…こいつさ。

もし、人類が俺みたいな『無能』だらけなら、俺はここにはいねぇさ。

世の中、いるんだよ。

本物の『天才』が。

だから、信じてみないと始まんないのさ、先王も、な」

 

「にゃはは!空くんかっこいー!」

 

「うっせ」

 

空は再び地図に目を落とし、アズリールはただ待つだけ。

ジブリールは目をつぶり、手から幻想的な光を作り、照らす。

ステフはただ、先王と空を考える。

優しく、温かい、人を信じた男。

冷酷で、いつだって人を疑って生きる男。

あまりに、かけ離れた、だが、だからこそ。

『可能性』を信じる空に、渡していいのだろうか。

覚悟を決め、ドアを開く。

その音にアズリールは、笑う。

 

「…空、渡したいものが…ありますわ」

 

-----------------------

 

──エルキア王城──旧王の寝室──

 

そこには、空、白、ステフ、ジブリール、アズリールが揃う。

空は鍵を持ち。

 

「………間違いない、エロ本だ」

 

ステフは早速、後悔した。

 

「そんなわけないじゃないですの!

この展開からどうしたらそうなるんですのよ!」

 

「だってよー、男が鍵を作るほどの隠し事なんてなぁ?」

 

「ですが、どこの鍵か分からなければ…」

 

「つーか、もう見つけてるしな」

 

「──へっ?」

 

二人はちょちょいと仕掛けを解いていき。

本棚の後ろから現れる扉。

 

「扉さん、ご登場ー」

 

「…とう、じょー」

 

「もう嫌ですわ、この兄妹」

 

「さてさて、こんな派手な仕掛けを作るほどとはどんな代物が出るのかな?」

 

「だから、エロ本じゃありませんわよ!?」

 

ステフから貰った鍵を差し込み、回す。

金具が軋む音と共に開く扉。

一同は息を呑む。

 

一見、ただの書斎。

本で埋められた本棚、しみじみと漂わせる小物、机に椅子。

だが、皆は感じた、気軽に立ち寄ってはいけない、鬼気迫る何か。

そして、机の上に開かれたまま、置かれてる本。

 

『人類種の最期の王ならぬ──再起の王の為、これを遺す』

 

空はページをめくり、読み続ける。

 

ただ、立ち尽くす空、覗き込む白とジブリールも理解する。

愚王と罵られた男の。

生涯に渡り、他国と行った勝負。

そこには、東部連合との勝負も記載され。

 

「やはり、先王は記憶を失ってなかった」

 

「勝てる勝負に見せかけ、何度も挑ませる、それを承知で挑み続けた…いや、探り続けた、いつか、取り戻すために…かにゃ」

 

記憶を消さずとも、他に話すことを東部連合が認めるわけが無い、故に。

 

「“生涯誰にも伝えない“って盟約にゃ…」

 

「それでは、なんの意味が──」

 

「─ただし、“死後“は含まれない…。

だから、先王は掛けたんだ。

“人類最強のギャンブラー“に」

 

「………うん」

 

「…なぁ、ステフ」

 

「な、何ですの?」

 

「…先王は……やっぱお前の祖父さんだな」

 

自国民から、他国から、愚者と罵られ、愚王を演じ続け、手の内を暴く事に徹する。

その、いかほどの覚悟と。

“再起の王“を信じた、人類種への信頼。

序列最下位が、他種族を圧倒する者が現れるという。

限りなくゼロに等しい、しかしゼロではない可能性を信じ。

それを任された、“再起の王“である二人。

 

「…そのまま信じ続けてろ、望み通り、やってやるさ」

 

「…まか、せ、ろ」




トーク編

ここまでやってましたけど、正直こっからなんも思いついてません。
なので次出るの時間掛かるかもしれません。

「ちょっといちゃつきが足りないんじゃないかにゃ?」

それは思いましたけど、まぁなんとかします。

「もっとうちらをいちゃつかせろにゃ」

うっす。


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行動開始

書斎で見つけた先王の本を読み、その意思を継いだ空達が東部連合を飲み込む為に作戦会議をする。

 

「あ、うちやる事があるから作戦会議は君たちで頑張ってにゃ」

 

「そうか、分かった」

 

「どこに行かれるのですか?」

 

「んー、ちょっとしたお仕事かにゃ」

 

 

 

 

 

 

 

───エルキア大使館前───

 

「…あんまり興味無かったけど、無駄にでかいにゃ。

あ、首痛」

 

何回かは見たが目の前には来たことが無かった為、つい呟いてしまった。

 

すると、中から一人の獣人種の爺さんが。

 

「よくぞいらっしゃいました。

ところで、何故本に埋もれてるだけの欠陥品殿がこのような場所に?」

 

「別にうちは君らみたいに沸点低くないから煽るのは気にしにゃいけど。

うちはただ要件を伝えに来ただけにゃ」

 

少し顔がピキついて。

 

「…なるほど、要件とは?」

 

「明日、人類種の王がここにくることを伝えに来ただけにゃ。

アポったのは書簡を受け取ってないだろうからにゃ」

 

アズリールが出した訳では無い。

ただ、知ってるだけ。

 

「確かに出しておられる。

恐らく下のものが勝手に処理していたのでしょう。

論外の対応です。

以降は初瀬いの宛にお送りください」

 

心は読めてないようで。

 

「まぁ、気にしてないにゃ。

取り敢えずうちは伝えたからにゃー、よろしくにゃー」

 

「わかりました。

お待ちしております」

 

と言ってお辞儀をする爺さん。

 

「あ、それとにゃ。

このままだと少し不公平かなと思って一つ教えてあげるにゃ」

 

「…なんですかな?」

 

ニヤニヤとした顔で。

 

 

 

 

 

 

「心、読めてないでしょ」

 

「………」

 

「それじゃ、またにゃ〜♪」

 

そう言い残して消える。

 

 

 

 

───エルキア王城──旧王の寝室───

 

大使館から帰ってきて、まだ残っていると思い部屋に行く。

 

「ただいまにゃー」

 

「おかえりなさい、アズ。

あの、何をしに行ったのですか?」

 

「大使館に行って明日行くよって伝えてきただけにゃ」

 

「お、さんきゅー、手間が省けた」

 

「どーいたまして。

うち珍しく眠いからさっさと寝るにゃ。

あ、ジブちゃん一緒に寝よー♡」

 

「えぇ、いいですよ♪

という訳ですので、失礼致しますマスター」

 

仲良く腕を組んで出ていく二人。

 

「…羨ましい」

 

(いい、なぁ)

 

 

 

───エルキア大図書館──寝室───

 

「にゃはー、ベッドにゃー」

 

ダイブして大の字になる。

 

「アズ、これでは寝れません」

 

「あ、ごめん。

空いたよ、ほら、よこよこ」

 

普通の二人用ベッドで横になり。

 

「…こうして寝るのも久しぶりでしょうか。

最近は色々ありましたね」

 

「と言っても、まだまだこれからいっぱいおきるよ。

そういえば、うちらが初めてあった時もベッドでは無かったけど二人で寝たよね」

 

「懐かしいですね。

その頃のアズはすごくめんどくさかったですよ♪」

 

「ごはぁ」

 

にこやかに。

 

「それに、とてもうざかったでございます♪」

 

「ぐふぅ」

 

反応が思ったより面白かったそうで。

 

「それとアホっぽかったです♪

あ、今もですけど♪」

 

「やめて、うちのライフは0を通り越してる、心折れそう」

 

しくしくと口で言ってる辺りまだ余裕そうなアズリール。

 

「それでもアズはこんな私に色んなものをいっぱいくれましたね。

本や感情、大事な人。

本当に感謝しています」

 

「…それはこっちのセリフだよ」

 

「いえ、絶対にこちらのセリフです!

なので…少しお返しです♪」

 

「え──」

 

ジブリールがアズリールの顔を横に向け、口を合わせる。

 

「──んん!?──ジ、ジブちゃん!?」

 

驚きを隠せず顔を赤くする。

 

「ん──はぁ…前にちゃんと出来なかったので今してみました♡」

 

小悪魔的笑みを浮かべて。




どうもです。
やる気が全く起きなかったです。
取り敢えず出せる時に出しますので時間はかかるかもですがお待ちして頂けたら。


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話し合い

翌日エルキア王城にて空、白、ステフ、ジブリール、アズリールの五人がエルキア大使館に行くために集まる。

 

「それじゃ、行くか」

 

「れっつ、ごー」

 

「もうどうにでもなれですわー」

 

「アズ、ちゃんと摑まっていてくださいね」

 

「既に摑まってるにゃ」

 

皆が腰の布に摑まってる中一人だけ後ろから抱きついて。

 

「アズ…まぁ、いいですか。

それでは参ります、しっかりとお摑まりくださいませ。

目的地──エルキア大使館へ」

 

そう言い残して五人は消える。

 

 

 

 

───エルキア大使館前───

 

空虚から現れる五人。

それを待っていたであろう獣人種が扉から出てきてお辞儀をし。

 

「お初にお目にかかります。

エルキア国王空殿、女王白殿。

東部連合・在エルキア次席大使の初瀬いのです。

在エルキア東部連合大使、初瀬いづなに用があるのですね」

 

思考を読めると言わんばかりに。

だが、そんなのは空には通じず、全く気にすることなどなく。

 

「お、話が早くて助かるな。

さっさと案内してくれ」

 

「どうぞこちらへ」

 

左手で示した先の扉が開き、いのを先頭に五人は入ってゆく。

大使館の中は思ってたより和風でいてその雰囲気にアズリールは癒されていた。

ジブリールとステフは見たことない技術にキョロキョロとして。

空と白にとっては別に変わったものでもない為二人より落ち着いて歩く。

いのの先導の下、表面上はお辞儀をしてくる獣人種を横目に流しエレベーターへと乗る。

床が動いたと驚くステフとジブリールの肩に頭を置いて半分寝かけているアズリールを無視してただ待つだけ。

 

「…なぁ、なんでアズリールは昨日来たんだ?」

 

「…先の件以来エルキアに良い感情を持つものが少ないので…恐らくその者達が原因で、そちらが出していた書簡を勝手に処理されてましてな、そこの…アズリール殿でしたか、その事と御二方が来ることを伝えに来ましてな」

 

「…先の件ってなんだ?」

 

特に情報が出ないと判断した空は気になった事を口に出す。

アズリールの頭を撫でながらジブリールが答える。

 

「人類種が城を奪われたあと大使館が王城より立派なのが国の威厳に関わると新たな城に増築を重ね、それに対し東部連合も増築、そこからは…ただの意地の張り合いで御座いますね。

結局力も技術でも勝る東部連合により、現在に至るという事でございます」

 

「…めんどくさ」

 

その言葉をわざわざ拾い。

 

「ただでさえ獣人種は人類種を過剰に見下しますので。

あぁ、そういえばアズから教えて貰った言葉にありましたね。

目くそ鼻くそを笑う、と」

 

「はっはっは、全く同感ですな。

それも六位殿に言われるといやはや耳が痛い。

ならば人類種如きにふよふよとついて行くだけの欠陥兵器はさしずめ耳くそですかな?」

 

お互いに笑みを崩さず。

 

「うふふふ」「はっはっは」

 

…そこからの展開は語るまでもないであろう。

いのとジブリールの二人がお互いの種族を罵りあいそれはエレベーターが着くまで続いた。

いやなんでアズリールは起きねぇんだよ。

 

そしていのがピンポイントにアズリールを貶し、その事に完全にキレたジブリールは今すぐにいのにゲームを挑み殺そうとする。

それを止めた頃には獣人種とのゲームを終えたあとより疲れていたであろう。

 

とてつもなく長く感じて、やっと着いたエレベーターから降りる。

 

「それでは、初瀬いづなを連れてきますので少々お待ちを」

 

一礼してまた乗り込むいの。

 

「しかし、技術の差を感じされられますわ…」

 

大理石などの資源を使った部屋。

ふかふかそうなソファやら金持ちが使ってそうな椅子やら。

そして、巨大な画面。

 

「やっぱりか」

 

「でかいにゃー」

 

「…アズ、リール、知って、るの?」

 

初めて見るはずなのに特に気になってなさそうだし、知ってそうなもの言いから。

つい口から出てしまった事に焦り。

 

「いやいや、ただ大きいなって思っただけにゃ!」

 

二人の事だから気づかれたかもと思い。

 

「…そ、う」

 

特に気になった訳でも無さそうに。

 

(よかったぁ、マジ焦った…。

あれ、というかなんで隠す必要があるんだ?

……まぁいいか!)

 

この切り替えの良さは凄いと思う。

そこにジブリールから魔法によるテレパスで話しかけられ。

 

「(アズ、あれはなんなのでしょうか?)」

 

「(あれはテレビって言って元の世界にもあった技術だよ。

あれでゲームをするんだけどテレビゲームで絶対勝ちたい奴ってこっちが勝てないほどのチートを使ってくるからなー。

しかもこっちはそれを暴く術がない。

だから東部連合は挑まれれば絶対に負けない)」

 

「(なるほど、ですがマスター達は──)」

 

「(──そんな事知った上でやるからねー)」

 

テレパスで話しているとエレベーターが開きそこから出てきた二人の獣人種。

 

「お待たせしました。

東部連合・在エルキア大使館、初瀬いづなでございます」

 

そう紹介され出てきたのは。

 

黒目黒髪のボブヘアーにフェネックのように大きく長い獣耳と尻尾。

大きなリボンを腰につけた和服の、どう見ても年齢一桁の幼女。

 

「か……」

 

立場を忘れ可愛いとステフがこぼすより早く。

 

「「「キング・クリムゾンッ!!!」」」

 

「うふふ獣耳の麗しき幼女よおにいさんと遊びましょうかなぁに怪しい人じゃないですことよ」

 

「……ぷにぷに……ふわふわ…ふふふふふ」

 

「尻尾ぉぉぉぉもふもふぅぅぅ」

 

ジブリールの目を持ってしても認識出来なかった空、白、アズリール。

アズリールもやはり中身は獣耳好きの男子だったようで。

三人が的確に頭と尻尾と耳を撫で回していると、獣人種の少女が、いづなが。

かわいい声で。

 

「なに気安く触ってやがる、です」

 

「………えっ?」

 

「…かわ、いさ…ま、いなす…五十、ポイン」

 

「もふもふ〜♪」

 

いづなの言葉づかいに距離を取る兄妹。

それでも撫で続けるアズリール。

その光景を羨ましく見てる天使がいるとか。

 

「勝手にやめんな、です」

 

「えと……はい?」

 

「はやく続けろや、です」

 

尻尾をアズリールにもふられてる為動けないいづなが首を出して。

 

「あー、えーと、よろしいのデ?」

 

「いきなり触りやがったの、驚いただけだろ、です。

イヤって言ってねぇ、です」

 

言葉と表情の不一致に気づいた空。

 

「…あー、語尾に『です』を付ければ丁寧語になるわけじゃねぇぞ、です?」

 

「…っ!そーなのか、です!?」

 

そういえばこの世界は嫌がることは出来ないこと。

つまり出来た時点で許可がおりていたことに気がついた空。

 

「…お気になさらず、孫はエルキアに来て一年、まだ人類種語が苦手でして、それと」

 

表情が変わり。

 

「おいゴラ、ハゲザル、欠陥品。

こっちが礼儀正しくしてりゃ調子乗りやがって、なに薄汚ぇ手でカワイイ孫を触ってやがんだ死なすゾゴラ──と」

 

再び礼儀正しい笑顔に戻り。

 

「言われるような行動は控えてもらえますでしょうか」

 

「なるほど、じじい、てめぇの問題か」

 

「…この、じじい嫌い、マイナス、千、ポイン」

 

…撫でて欲しそうないづなを撫でて。

 

「でも、いづな、たん、ギャップ萌え…プラス、千、五十、ポイン」

 

怒りを隠す表情のいのが。

 

「嫌なら断ってよいのですよ?」

 

「かまわねぇ、です。

ハゲザルとけっかんひんの癖にじーじよりうめぇ、です」

 

その事に凹んだ様子のいの。

 

「じゃあ、そのハゲザルとかやめようか。

俺は空、こっちは白、ずっと尻尾に居るのはアズリールだ」

 

「…よろ、しく…いづなたん」

 

「にゃふぅ、アズリール、にゃ、よろしく、にゃ、いづにゃん」

 

「がってん、です。

よろしくな、です。

空、白、アズリール」

 

「…あのー、そろそろ始めませんこと?」

 

と、唯一置いてかれていたステフ。

アズリールがやっと尻尾から離れ椅子に座った時。

何やらジブリールの様子が。

 

「もふもふだったにゃ〜、にゃ?

ジブちゃんどうしたにゃ?」

 

ジト目でそっぽ向いて。

 

「…なんでもないです」

 

嫉妬である。

何となく頭を撫でてみる。

少し口元が揺らぐ。

 

「…そんな事をしても許しませんよ」

 

「ごめんにゃ、今度何かプレゼントするからにゃー」

 

「…仕方ありませんね」

 

と言ってアズリールとは反対に顔を向ける。

よく見えないが嬉しそうに。

 

 

 

 

横長いテーブルを挟み、空をはじめに、白、アズリール、ジブリール、ステフが座り、向かい合う。

 

「では、そろそろクソザル共のご用件を伺いましょうかな」

 

「孫の扱いで負けたからってキレんなよ爺さん。大人気ねぇ」

 

いのにヒビがどんどんと入っていくなか、一人の天翼種が。

 

「マスター、獣人種のコンプレックスの塊の如き精神はガラス細工並に脆く傷つきやすいので、あまり刺激しないであげて頂けませんか。哀れさに笑みがこぼれてしまいます」

 

笑顔を保つのが限界ないの。

何もかも忘れて今すぐこいつらを叩きだそう、そう決め考え空の目を覗いた瞬間。

不覚にも背筋に悪寒が走るのを、いのは感じた。

そこには、一瞬前までのふざけた、おちゃらけた男などいなく、そこにいたのは自信に満ち溢れ途方もない打算を行っている。

紛れもない──『種族の王』であった。

 

「俺の要求は単純さ、初瀬いの。

お孫さんのパンツをくれ、ステフのやるから」

 

「はぇっ!?なんで私─」

 

「てめぇ、クソザルいい加減にしやがれ!」

 

「えぇ?じゃあ、ジブリールのが─」

 

「そぉらぁくぅん?」

 

「…じょ、冗談だよ」

 

ニコニコとしてはいたが目は笑ってなかった。

 

「あ、白のはダメだぞ、十一歳児のパンツ欲しがるとか爺さん病気だぞ。

それとも、まさか、俺か!俺のがいいってか!?」

 

「てめぇ…本当の要件を話す気ねぇんならマジで帰──」

 

「なぁ、爺さん。

思考を読める振りしてるとこわりぃけど、バレてるよ。

てか、最初から知ってたんだけどな。

仕方ないから本題に入ってやろう」

 

足を組み姿勢をただし。

 

「位階序列十六位人類種が一国、『エルキア王国』全権代理者、空と白の名の下に。

貴国、位階序列十四位獣人種が一国、東部連合が。

我ら世界征服の覇道における名誉ある最初の犠牲者に選ばれた事を祝福する。

当方は貴国に対し『対国家ゲーム』におき、『大陸にあるお前らの全て』を要求する」





トーク編

獣耳っ子の尻尾をモフるのは男子諸君の夢でしょう。
因みにアズリールは獣耳っ子と天使っ子が好きですよ。
作者もだけど(ボソッ

「ジブちゃんなかなかチョロくない?」

原作が空達限定でMになるならここだったらアズリール限定でめちゃめちゃ甘くなるみたいな?

「こっちのジブちゃんは全然なのに」

なんでですかねー。


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準備期間

その後『人類種の駒』を賭け東部連合は逃げ道を無くされ空のゲームを受けざる負えなくなり空、白、ステフ、ジブリール、アズリールの五人対いづなの一人の勝負となった。

そして城に戻り開幕ステフが。

 

「な、な、な、な、な、なんて事してくれたんですのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

城に鳴り響く声に耳を塞ぐ。

 

「言えば反対するだろ?」

 

「当たり前じゃないですの!

何をしたか分かってるんですの!?」

 

「ん?人類種三百万の命で退路を塞いだだけだが」

 

何か問題でも?と言わんばかりの空。

 

「あなた、負けたらどう責任を…」

 

「責任?何言ってんだ。

負けたら終わり、責任もありゃしねぇよ」

 

面白い、と笑顔を浮かべ。

 

「負ければ道ずれゲームオーバー。

勝てば国土が二倍に獣耳大量ゲットさ。

こんな楽しいゲーム滅多にないぜ?

なー、白ー」

 

にこにこしながら頷く。

それをステフはただ、ゾッと。

 

「何をそんなに焦る必要があるにゃ?

そもそも空達が負けるなんて思ってるのかにゃ?

なんだか、うちも楽しくなってきたにゃ♪

こんな面白い事を間近で見れるなんてにゃ♪」

 

「異常ですわ、狂ってますわ…!」

 

「異常?狂ってる?何言ってんだか、これはゲームだぞ?」

 

「そうにゃ、ただのゲームにゃ。

誰も死なない平和なゲームにゃ〜♪」

 

「えっ?」

 

何か噛み合ってない、と空は違和感に気づく。

 

「あー、なるほど、やっとわかった。

なんかこの世界、ゲームで全てが決まるのにギスギスしてんなと思ったら、ステフだけ分かってなかったのか」

 

はぁ、とため息を一つ。

 

「そりゃ神様も暇するわ。

安心しろ、俺達は世界征服するし、万に一つも負けはない」

 

アズリールは知っている為、ジブリールもアズリールと過ごし、何となく分かった為、ただ一人答えを見つけることが出来ていなかった。

 

 

───一週間後───

 

空が人類種の駒を賭けた、という噂はどこからか立ち所に広まった。

森精種を破り天翼種を破ったことで、「空こそが他国の間者ではないか」という気運が高まり。

ただでさえ空に対して反感を持っていた貴族達がデモを発生させ、エルキア王城は多くの人に包囲され、連日罵倒の言葉を浴びせられる。

 

「空〜、もう抑えられないですわよ〜」

 

疲れた足取りで玉座の間にあらわれ床にへたりと座り込む。

 

「おつかれステフ。

ってアズリール!お前その害悪行為やめてくんね!?」

 

「ごめんにゃごめんにゃ、わざとだけど許してにゃ」

 

p○pのモン○ンを借りて操作などを知ってはいたが教えて貰い狩りにて裸縛り、初期武器縛りなど色んな縛りを重ねる空に爆弾を置いたりあえて攻撃して邪魔するなりの害悪行為を楽しんでいた。

 

「お前本当にこのゲームやった事ねぇのか!?

ぜってぇやった事あるだろ!

あぶねぇ!」

 

「何を言ってるにゃ?

うちはこの世界の住人にゃ、君らのゲームなんて初めてにゃ」

 

なんて言いながら慣れた手つきで操作する。

そんな言い合いをしてる二人にステフが。

 

「…で、空はこの一週間何をしてるか聞いてもいいですの?」

 

「待ってる」

 

「…東部連合からの返事…ですの?」

 

「いんや、それはまだ困るな」

 

謎めいた返事に空は続ける。

 

「その前に来て欲しい『ピース』があんだよ、つかおせぇな」

 

ふと、側に控えていたジブリールが。

 

「マスター、これは…」

 

だが、空は手で遮り言う。

 

「やっと来てくれたか。

待たせすぎじゃね?」

 

その視線の先に。

何もいない先に。

ジブリールとアズリールは気配だけは感じ。

ステフと白にすら見えないものと、空は会話する。

 

「あぁ、用件は分かってる。

いつでもいいぜ」

 

膝の上に座る白を下ろし。

空は言う。

 

白、俺はお前を信じてる。

 

白、俺らは、いつも二人で一人だ。

 

白、俺らは、約束で結ばれてる。

 

白、俺らは、少年漫画の主人公じゃない。

 

白、俺らは、常にゲームを始める前に勝っている。

 

淡々と、意味の汲み取れない言葉を重ねる空に。

何かとてつもなく、嫌な予感が込み上げ。

そんな白を空は撫でて。

 

「東部連合を飲み込む為の最後のピースを手に入れようぜ」

 

見えないナニカに向かって、笑って言った。

 

「さぁ、ゲームを始めようか?」




いやー、書くやる気が出ないですけど考えるのは楽しいな、と作者です。
正直東部連合とのゲームどうしよっかなーって絶賛お悩み中です。
それと最近別の小説買ってそれが読みたかったりするので遅れるかもです。
なので、ごめんにゃ☆


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記憶

 

窓から差し込まれる光が眩しくて。

 

「…ん……うぅ……」

 

それでも起きたくない、まだ寝てたい、その欲に忠実に、寝返りをうって二度寝をしようと。

いつもの様に兄の腕を掴んで、もう一度寝ようと。

だが、何度も掴もうとする手は空振りをするだけ。

またベットから落ちたのか?

寝ぼけた頭で考え、兄の姿を確認すべく、嫌々目を開けて。

そこに、いるべき者はいなかった。

 

-----------------------

 

一人の少女がおぼつかない足取りで歩く。

ステファニー・ドーラ。

赤い髪に青い瞳をした高貴な少女。

のはずだが、眼下のクマと足取りから見てとれる疲労が本来の気品を奪って。

片手にトランプを持って不審な笑みを浮かべふらふらと王の寝室へ向かう。

 

「白、起きてますわよね!朝ですわよ!」

 

ドンドンと扉を蹴って。

だが、扉は簡単に開いて。

 

「あれ…起きてたんですの!?」

 

起きていた事に驚き部屋を覗き込むが、そこにいたのは。

 

「にぃ…にぃ……どこ…しろ、が……わるかった…か、ら……でて、きてぇ…」

 

膝を抱えて震え、涙を流す白。

 

「え、ちょ、どうしたんですの!?」

 

その変わり果てたありさまに先程までの事は忘れ、トランプを捨てて駆け寄る。

ステフが何かを叫ぶ。

その声が白には届かなかった。

ただひたすら。

 

「にぃ……にぃ……出てきて……ひとりに、しないでぇ……」

 

その呟きにステフは。

 

「あ、あの、にぃって誰ですの?

その人を連れてくればいいんですの?」

 

ようやく白の耳に届いた言葉に。

ステフは何を言っているのだろう。

自分の兄など、一人しかいないだろう。

そんなことを考え、ケータイのアドレス帳を開く、が。

 

「…う、そ…」

 

白のケータイに登録されている番号なんて兄一人だ。

 

なのに、どうして。

 

どうして、ケータイには『登録者0』と表示されてるのだろうか。

 

「…なん、で……どうして……うそ…うそ…」

 

元々白い肌から更に血の気が引いて。

ステフが必死に叫ぶがそんな声などもはや無いに等しかった。

白は猛然とケータイのメール履歴、ゲームアカウント、画像フォルダ、開けるものを全て開いて──一切兄の痕跡は無かった。

 

「うそ……ぜったい…うそ…!」

 

慌ててケータイで、日付を確認する白。

 

21日。

 

兄が自分と王座でゲームしていたのは、19日。

白が、瞬時に映像記憶で遡って、携帯ゲーム機、タブPC、ケータイで見た複数の端末の表示が全て、19を指していたことを確認する。間違いなく、19日だった。

だが、ならば20日。

つまり昨日、自分は何をしていた?

ない。

記憶が一切、ないのだ。

五年前読んだ本を、記憶だけで逆から読める白の記憶が。

まるで、丸一日を寝て過ごしたように、一切記憶がないのだ。

兄が、隣にいない。

ケータイのアドレス帳にも入っていない。

メールも履歴も形跡の一切が残っていない。

兄を証明する根拠が、なにもない。

状況を整理した白。

ここから導き出される可能性は、三つだけだった。

 

可能性1

なんらかの力が兄の"存在"をこの世から消したか。

 

可能性2

自分が、ついに"狂った"か。

 

可能性3

あるいははじめから狂っていて"今正気に戻った"か。

 

だが、その可能性のどれが正解であろうと、白にとって、目の前が暗くなっていくのを堪えるに値する答えではない。

予想される、だが、決して聞きたくない故に。

ここまで、口にせずにいた名前を。

最後の希望を込めて、ステフに、問う。

 

「ステ、フ…にぃ……『空』、は…どこ…?」

 

だが、かくして返された答えは、予想通り。

決して聞きたくなかった、答えだった。

 

「空?名前、ですわよね。誰ですの?」

 

ああ、願わくば、これが、たちの悪い夢でありますように。

眼を覚ましたら、いつも通り隣で兄が寝ていて、ただ一言、『おはよう』と言ってくれるように。

ただ、それだけを願いながら。

目の前が暗くなる感覚に身をゆだね、白は意識を手放した。

 

-----------------------

 

「どう、ですの?」

 

王の寝室の扉の前でステフがジブリールに尋ねる。

ジブリールもまた、ため息をついて。

 

「なにも。私の入室を拒まれ何も出来ない状態でございますね」

 

「…相変わらず、『空』と言い続けるだけ、ですの?」

 

「えぇ、そちらは?」

 

「城内スタッフに手当たり次第聞いて見ましたが皆答えは同じ…」

 

「空なる人物は知らない、エルキアの王はマスター一人、でございますか」

 

「えぇ、その通りですわ」

 

「…順当に考えれば、マスターの記憶が書き換えられた事になるのでございますが…」

 

「それじゃあ、白が負けたって事ですの?」

 

「…はい」

 

酷い違和感があった。

突然、『空』なる正体不明の人物を呼び続け、茫然自失になった白。

状況そのものがまるで意味不明ではあったが、それ以上の違和感に、二人は閉口する。

その会話が聞こえていたのか。

扉の下からすーっと、薄い板が差し出される。

 

「…これって、確か…」

 

「マスターの、タブPCというものでございますね」

 

それを拾い上げ二人で画面を覗き。

 

「これは…アz…ではなく、マスターの元の世界の言語ですね。

『質問』と書かれています」

 

ぽこっ、と新しいメッセージが。

 

「なるほど。筆談ならぬ"チャット会話"がお望み、でございましょうか」

 

主が持ち込んだ異世界の膨大な知識。

その全てを把握するにはまだ至っていないが、その意図は汲み取れた。

 

「今度はなんて書いてありますの?」

 

「『1、ステフに惚れろと要求した人物は?』」

 

「白、じゃないですの?」

 

「私は分かりませんが…。

えっと、これはどう返信すれば…」

 

操作方法が分からないジブリールに、すぐさま、ぽこっという音が。

 

「なるほど、口頭でよいと。

『2、十一歳の同性が、惚れろと要求した?』と書かれていますが」

 

「え、えぇ・・・だ、だから変態だ鬼畜だって散々言ってるじゃないですの・・・」

 

口を引きつらせながら答えるのと、更なるメッセージが届くのは同時。

 

「『3、どうやって負けたか、詳細に』だそうでございます」

 

白の状態を考え、安易な答えは出来ないステフ。

出来るだけ詳細に思い出そうと、額に指を当てて必死に思い出す。

 

「えーっと、ジャンケンでしたわ。

私を挑発して、心理戦で、あいこ狙いの。

でも重要だったのは"要求内容"のほうで、具体性のない条件をあいこで求められましたわ。それでペテン師呼ばわりした私に。

でも問答無用で『惚れろ』と言われましたわ」

 

ステフが言い終わると同時、次のメッセージが届く。

 

「『4、自分のものになれ、ではなく何故"惚れろ"と要求されたか』と」

 

「貢がせるためですわ。

あとでミスだったと気づいて悶えてましたわ。白が」

 

そして、またすぐにメッセージが届く。

 

「『5、ジブリールと対戦した人物の名は?』と」

 

「えーっと、白ですわね」

 

「それは、私も同じように記憶してございます」

 

そこで、メッセージが止まる。

静寂が流れるなか、そういえば、と口を開いたステフが。

 

「アズリールさんはどうしてるんですの?」

 

「分かりません。

気がつけばいなくなっておりました」

 

「もう、こんな大変な時に何をしてるんでしょう!」

 

「いえ、アズが私に何も言わずにどこか行くなんてありませんでしたが…」

 

だけど、今回は何も言われてなかった。

何故居ないのだろう。

ジブリールはそう考える。

その時、ジブリールの腰辺りからひらひらと小さい一枚の紙が。

 

「何故紙が…?」

 

そんな疑問を口に出して拾い読み上げる。

 

「『うちはやる事があるから図書館に居るにゃ。

もし、君達でダメだったらうちを呼ぶにゃ』…と」

 

「…それって!」

 

そこに書かれた意味をステフも気づいて。

 

「マスター、アズを連れて来ます!

少し時間を下さい!」

 

それだけ言い残しジブリールは消えた。

そしてステフが持っているタブPCから。

ぽこっ。

 

 

 

『任せた』




ふと思ったんですけどジブリールとアズリールってどっちが身長高いんでしょうかね。
ジブリールが167cmってのは知ってるんですがアズリールは分からない。
自分の中ではアズリール164cmって感じ。
妹より背の低い姉って何か…いいじゃん。


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簡単な事

時は遡り一日前、つまり20日。

図書館にて一人の少女が。

 

「やった、遂に出来た、ふふふ、にゃはははは!」

 

高笑いして何かを作り出した事に喜ぶアズリール。

 

「イメージを紙に写せる魔法…つまり超能力の念写の魔法バージョン…でけたーー!!」

 

ようはイメージや考えてる事、なんなら記憶を紙に写せる魔法を作ったらしい。

 

「制作期間…覚えてない…けど、だるかった…!

でも、これで…ジブちゃんとの思い出を写真に残せるぞおおおおお!!!」

 

高く両腕を上げたいが出来ないので小さくガッツポーズして。

基本だるい事やめんどくさい事などしたくないアズリールだが、ジブリール関連ならばガチで取り組む。

ジブリールが空と白を倒そう、なんて言った日には速攻 「 」に挑みそうだ。

 

「っと、その前にジブちゃんにプレゼントをあげるって約束したんだった。

だが、もう決まっている、この魔法が完成したからな!」

 

誰に喋っているのだこの天使は、と第三者が見ていたらそう突っ込むだろう。

 

「うちの次に好きな本をプレゼントする!

そう、うちの!次に!好きな本!」

 

ジブリールは大の本好きだが、その本より上に立っているぞ、と自慢でもしたいのか。

 

「この世界の本はまだ読んでないのもあるけど大体読んだしこの図書館にあるから、この世界のはダメ、なら元の世界の本を作ればいい!

うち天才!褒めて!ジブちゃん!

あ、居ないんだった…」

 

独り言が激しい天使ってそれだけ聞いたらなかなか悲しいものである。

ようはアズリールの記憶にある元の世界の知識を本にコピーをする。

ただそれを繰り返す。

 

「今だけは退屈だった日々に感謝するぜ。

おかげで本の知識には自信あるからな…!」

 

一人になるとよくキャラ崩壊が起こる。

安心してください、ずっとアズリールです。

そこからはただただ同じ事を繰り返す。

本を取り紙一枚に知識をコピーする。

特に喋ること無く本を作る。

気がつけば一日経っている。

 

「ふぅ、流石に精霊を使いすぎたかな、今回はここまでにしよっと。

…あらま、日が変わってるじゃないか。

しかも昼位。

んー、これはそろそろかな」

 

そう言って椅子に座り待つ。

十分もしないうちにジブリールが転移して。

 

「アズ!よかった居ましたか!

今すぐマスターの元へ来てください!」

 

「わかった〜」

 

そして二人は消える。

 

 

───エルキア王城──王の寝室前──

 

アズリールを連れてきたジブリール。

 

「んにゃー、分からなかったかにゃー」

 

自分が呼ばれたという事はそういう事、と理解する。

 

「ごめんなさい、私達ではどうする事も…」

 

「お願いします、アズ…」

 

二人は申し訳ないように頭を垂れる。

 

「それはいいんだけどにゃ、白ちゃんも分からなかったかにゃー」

 

その言葉に扉の向こうにいる白は疑問を持った。

何か、見落としてる…?

 

「よーし、なら言おうかにゃ。

うちは『空』を知っている」

 

「「「えっ」」」

 

白も含めた三人がその言葉に驚く。

ぽこっと音がする。

 

『なんで知ってるの?』

 

その問いにアズリールは笑う。

 

「にゃはは、白ちゃんでもこんな簡単な答えを見つけられないなんて事あるんだにゃ」

 

白は考える。

 

簡単?

…あれ、そういえば、アズリールって。

 

白が答えを見つけると同時にアズリールは答える。

 

「そもそもうちは“記憶“、失ってないにゃ」

 

ジブリールとステフは驚く事しか出来なかった。

 

「な、何故記憶がアズにはあるのですか!?」

 

その疑問を真っ先に問うジブリール。

 

「ジブちゃんは空をマスターとして認め従者になったから盟約の範囲内、でも、うちは?」

 

その答えに二人はハッとする。

 

そもそもアズリールはずっとついてきてるだけ。

ただ、一緒に居るだけ。

 

「そう、盟約の範囲外、つまり獣人種達も空を知っているにゃ」

 

白は自分を自虐する。

白の馬鹿、その事に早く気がつければ、と。

 

「それじゃあ次、これは白ちゃんがちゃんと解くにゃ」

 

「…うん」

 

扉の向こうから声が聞こえ。

 

「一つ、何でそこにいる?」

 

白は考える。

 

何でそこにいる?

起きた時にここに居たから。

…ここに…居た…?

何故?ここは今、ステフの部屋なのに。

何故そこに自分が寝ているのか。

 

「二つ、空の言葉。

うちからはここまでにゃ、後は頑張るにゃ」

 

そう言われ、考える。

 

確か…

 

白、俺はお前を信じてる。

 

白、俺らは、いつも二人で一人だ。

 

白、俺らは、約束で結ばれてる。

 

白、俺らは、少年漫画の主人公じゃない。

 

白、俺らは、常にゲームを始める前に勝っている。

 

その時は意味が分からなかった。

 

だけど、今ならわかる。

 

白と空は、いつも二人で一人。

 

兄は自分を一人にしない。

 

つまり、この部屋に兄はいる。

 

二人で一人、なら自分もこのゲームに参加している。

 

兄は言った。

 

常にゲームは始まる前に勝っている。

 

ならばこの気が狂いそうになった状況も全て想定内、わざと行った行為。

 

兄は言った

 

俺らは、少年漫画の主人公じゃない、と。

 

少年漫画の主人公、それは成長するもの。

 

この場合、白が成長するフラグ。

 

空抜きでもやれるようになるが、兄はそれをハッキリと否定した。

 

兄は言った。

 

俺らは、約束で、結ばれている、と、

 

自分達は、二人で一人。二人で、完成品だと。

 

兄は言った

 

最後のピースを手に入れて来ようぜ、と。

 

つまり、東部連合との勝負を有利にするもの。

 

なら、敵は東部連合ではない。

 

なら誰だ。

 

しばらくして。

 

「国王選定戦で…たたか、った…人…」

 

その答えに、アズリールはにっと笑い。

 

「……あり、が……と……」

 

それだけ言い残し、白は意識を無くした。

 

-----------------------

 

白が意識を取り戻した。

そこからは早かった。

次々と仕掛けを解いて。

白がオセロの手を一手進める。

その瞬間アズリール以外の全員が襲ってきた頭痛に頭を抑える。

 

「いっ、た…な、なんですの…」

 

「っっ……思い…出しました。

ゲームのルールとはいえ、マスターを忘れていた…とは」

 

仕方の無い事とはいえ、申し訳なさに頭を垂れる。

ゆっくりとオセロは進む。

見えない相手が置けばひっくり返り、白が置けばその倍はひっくり返る。

そして聞こえてくる声は。

 

空の勝利。

そう響く声に。

直後に空が現れて。

 

「よし白、殴っていいぞ。覚悟は出来て──」

 

だが、迷うこと無く空の胸に白が飛び込む方が早かった。

 

「…ごめん、なさ、い……ごめん、なさい…もっと、はやく…!」

 

大粒の涙をこぼす白を撫でながら。

 

「お前ならやってくれると信じてたぜ?」

 

「やっぱり分かってたかにゃ〜、このこの〜」

 

空の頭をぐりぐりとする。

そんな楽しげな雰囲気も一人の少女の声によって壊される。

 

「クラミーッ!ねぇクラミーッ!

聞こえないのですッ!?」

 

皆が声が上がる方へ向く。

必死の形相でクラミーという少女を呼びかける森精種の少女、そして。

無気力に、いや、抜け殻、死体のように力なく崩れているクラミー。

空がどう勝ったのか、ステフには分からない。

だが、一歩間違えれば空がそうなっていた結末に、震えた。

 

「さて、俺"ら"の勝ちだな。第一要求といこうか」

 

空の言葉に、森精種の少女が悲鳴のように懇願する。

 

「待っ、どんなことでもするのですっ!

クラミーを、こんなにするのだけはっ!!」

 

だが、空は一切の温度を無くした瞳でそれを見返す。

 

「俺が負けて、白が同じことを願ったら、お前らはそれを飲んだのか?」

 

空の言うとおり、彼女が同じ立場なら歯牙にもかけなかったはずだ。

 

「む、虫が良すぎるのはわかっているのですっ!

で、でも要求内容は変更可能に設定したのはそっちだったのですよっ!

わ、わたしをどうにでも好きにしていいのです!

クラミーを、こんな……こんなにするのだけはっ!」

 

その言葉に、空は悪魔のような嗜虐的な笑みで、死刑執行人の鉈を振り下ろすように。

 

「だ〜め♪予定通りの要求をさせて貰う。というわけで」

 

「や、やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!]

 

「要求一、互いの奪い合った全ての記憶の定着と、奪い合った全ての返還。」

 

「「「「…え……?」」」」

 

その一言に、一同が揃って同じ音をこぼし。

 

「かはっ!はっ…はぁ…」

 

同時、クラミーが呼吸を思い出したように意識を取り戻す。

だが、目が覚めても虚空を見つめ続けるクラミーに、少女が駆け寄る。

 

「クラミー!クラミー!大丈夫なのです!?自分がわかるのです!?」

 

必死な少女の声に、だが、クラミーは呆然と虚ろな目を続ける。

それから、何度も身体を揺さぶられ、ようやく気がついたように。

 

「ええ…うん、私は、大丈夫…むしろ……」

 

とクラミーは震える自分の肩を抱きしめ、悪夢のように空を見た。

 

「あの男が、空が大丈夫な理由が、理解できないで、上の空だっただけ」

 

瞬間、盟約の実行に、ジブリールと森精種が作ったゲーム盤が爆音をあげる。

その様子に、もっとも冷や汗を流したのは、意外にも、空だった。

 

「あ、危ねぇ…ジブリールの"核"があってさえ、この要求はギリッギリだったか…」

 

原理的不可能性を有する契約は順守出来ない。

空の要求は、あのゲーム盤の全魔力量でも足りるか怪しかったわけだ。

 

「空、確かにこれからは危ない橋を渡れるだけマシなゲームをして行くんだろうけどにゃ、もう少し、さ」

 

「…そうだな、手段はもうちょっと選ぶようにするよ。

正直、想像を超えてたわ」

 

「それ、絶対にこっちのセリフよ…」

 

空の記憶を見て、過去を知って、そして疑わずに居られないクラミー。

恐怖に顔をひきつらせ。

 

「なんで、こんな経験をしてまともでいられるのあなたっ!?」

 

クラミーが何をもって、そう叫ぶのか。

ゲーム中の空の心境すら最後には奪われていたなら、見たはずだろう。

そのことかもしれないし、もしかしたら、

白さえ知らないことかもしれない。

だが、唯一その全てに心当たりがある空も、意外そうに一同に問う。

 

「え、俺ってマトモに見えるか?」

 

いいえ。

全員が首を横に振って。

 

「それに引きこもり、ニート、コミュ症、さらに童貞…君に残ってるのはなんだろにゃ?」

 

「薄汚いゴミのような命です…」

 

ボロクソに言われ一瞬そうだ、死のう、と思い床に跪いて涙を流しす空がいた。




あずじぶ絵もっと増えないかなー。


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一時の間

あれから何やかんやあり、森精種の少女とクラミーがスパイをする事になった。

その翌日、エルキア城の小さい会議室にて。

空と白、ステフ、ジブリールとアズリール、クラミーと森精種の七人が集まる。

 

「集まってもらったのは他でもない、俺達はこれから『共闘』する仲だ。

だったら、自己紹介をしようではないか」

 

そう言って空はクラミーを見る。

 

「そうね、なら私からさせてもらうわ。

クラミー・ツェルよ。よろしく」

 

 

 

………。

 

 

 

「え、それだけですの?」

 

「自己紹介なんてこんなものでいいでしょ?」

 

コホン。

 

「…えー、歳は俺と同じ18歳。

身長は158cmでスリーサイズは上からぁ…」

 

「ちょ!?あんたそれ卑怯よ!?」

 

「ついでにクールを装ってるけどピンチになったら子供のように泣くにゃ」

 

「なんで知ってんのよ!」

 

「え、聞いたからにゃ?(嘘だけど)」

 

若干目に涙を溜めてるクラミー。

 

「と、取り敢えず…フィーを紹介しないと説明が出来ないわね…」

 

「はぁい、フィール・ニルヴァレンなのですよー」

 

柔らかそうなふわふわのカールが掛かった金髪から森精種特有の長い耳を覗かせ、見た目十代中盤程の少女。

 

「フィーは…幼馴染。

正確には…私の主人、だけどね」

 

一瞬、意味が分からない様子の白にジブリールが解説する。

 

「エルヴン・ガルドは民主国家ですが、位階序列で自分達以下の種族を盟約で縛る事を推奨しています。

つまり、『奴隷制度』を採用しております」

 

「え…じゃあクラミーは……」

 

こくりと頷き。

 

「えぇ、曽祖父の代からニルヴァレン家の奴隷。

生まれも育ちもエルヴン・ガルドよ。

まぁ、その男に比べれば大したこと無いわよ。

誰だって苦労の一つや二つするものね」

 

言葉を失うステフ。

でも、それより、そんな出来事を体験したクラミー当人をして大したことないと言わしめる、空の過去にステフやフィール、ジブリールとアズリールまでも、疑問を覚えた。

 

「まぁ、よくある話よ。

奴隷の私をフィーだけが友人として扱ってくれた。

けど奴隷を友人扱いしてるなんて家名に傷がつく所の騒ぎじゃないから、表向きはそんな素振り見せれないけどね」

 

「私はぁ、それがす〜〜〜ごく気に入らないのですよぉ?」

 

「ニルヴァレン家はエルヴン・ガルドでも名のある家よ。

代々上院議員の末席に名を連ねてきたし、先代当主が昨年、鬼籍に入ってからフィーが事実上の家長──」

 

と、そこで話を呼んで、反応したのは。

 

「─じゃあフィールさんはエルヴン・ガルドの次期選挙まで上院議員代行……って上院議員が奴隷解放運動を企ててるって国家反逆じゃないですの!」

 

…確かにそれは、世界最大国家の、とてつもないスキャンダルだが。

だがそんな事より、全員の視線がステフに注がれる。

 

「ス、ステフ、が…話、に…つい、てこれ、た…?」

 

「大丈夫か、ステフ!熱があるなら言えよ!

まさか、病気か!?」

 

「ドラちゃん。いくら心配されるのが嫌だったとしても自分の体調の悪さは伝えた方がよろしいかと」

 

「大丈夫にゃ?一人で医師の所まで行けるかにゃ?肩、貸そうかにゃ?」

 

「あなた達揃って何なんですのよ!

いい加減バカのレッテル剥がして頂けません!?

政治については国政全てを丸投げしてるどっかの王様二人より詳しくなきゃ務まらないんですのよ!」

 

「…大変ね、あなた…」

 

割と本気で(アズリールはわざとだが)心配してた三人。

四人に怒るステフを少し同情したクラミー。

 

「えーっと、フィーって呼んでいいか?」

 

「いいのですよ〜」

 

「フィーはいいのか?それで」

 

「はぁい?何がですかぁ」

 

「俺達に協力するのは、エルヴン・ガルドの破滅に繋がるかもしれんぞ?」

 

そう、クラミーが口にしたように、空が企てるのは東部連合、その先。

 

「はぁ、でも、まぁわたしはぁ、クラミーが傷つかなければなんでもいいのですよぉ。

家とかどうでもいいですしぃ、議会がうるさいのでぇ、いっそ国ごと無くなれば話が早いのにと思った事もあるのですよぉ」

 

…さらりとえげつない事を言う。

 

「にゃ〜、空ぁ〜」

 

「ん?何だ?」

 

「ちょっとうちとジブちゃん抜けていいかにゃー」

 

「あぁ、別にいいぞ」

 

「ありがと、それじゃ、ばいにゃ〜。

さっ、行こうにゃ〜」

 

「はい♪」

 

腕を組んで消える。

 

「…あの二人、何をしに行ったのかしら」

 

「さぁ、まぁ、アズリールの事だ。

何か考えがあるのかただジブリールといちゃつきたいだけだろ。チッウラヤマシイ」

 

「はぁ、ほんと天翼種同士が付き合ってるって貴方の記憶を見ても信じられないわ…」

 




じかぁい、じぶあずかぁい


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二人の時間

ファイアーエムブレムが超楽しいです。
ベルナデッタ可愛い。


めんどくさいからさっさと抜けてきたアズリールとそれについて行くジブリール。

図書館に転移して。

 

「あー、シリアス的な話は無理にゃ」

 

「シリアス、という割には途中ふざけていた気がしますが…」

 

何のことでしょうと言わんばかりに目をそらす。

 

「ところで、何故抜けてきたのでしょう?」

 

「ふっふっふー、取り敢えずこちらへどうぞー」

 

椅子にジブリールを座らせアズリールはキッチンへと向かう。

 

 

「お待たせ致しました、こちら日本の朝飯でございます」

 

テーブルに鮭とご飯、味噌汁とその他を置いて。

 

「…今昼ですけど」

 

「ごめん、許してください、壊滅級に下手くそなうちが結構頑張って作れたのがこれなの。

言い訳してよろしいのなら片手だけは辛いの」

 

見た目は普通な料理。

正直あのアズリールから見た目だけでも普通の料理がでてきた事に驚きである。

 

「いただきます」

 

手を合わせ食べ始める。

 

静かに食べていき、何も言わぬジブリールにアズリールはただただ不安になるしか無かった。

 

(だ、大丈夫かな…不味かったかな…がっかりしたかな…やっぱり無理だって言えばよかったかも知れないにゃ…あわわ)

 

そんなアズリールをよそに着々と食べ始めて十五分後。

 

「ごちそうさまでした」

 

それだけ言って席を立ち皿を片す。

この時点で絶対不味かったと落ち込んでるアズリール。

キッチンから戻りにこりと笑ってジブリールが一言。

 

「…美味しかったですよ」

 

「…えっ」

 

割と本気で聞き間違えじゃないか確かめる。

 

「確かに他と比べたら美味しくないのかも知れません」

 

「ぅぎっ」

 

「それでも、アズが私の為に頑張って作ってくれたと思えばとても美味しかったです」

 

「ジ、ジブちゃん…!」

 

天使…いや、女神がここに現れた。

そうだ、今すぐジブリール教を作らなければ。

そして信者を増やそう。

そんな女神を拝んでいると何かを思い出したように。

 

「あっ、ジブちゃんジブちゃん。

そういえば前に言ったプレゼントを用意したんだにゃ」

 

「ほ、本当ですか!」

 

その食いつきっぷりに少し驚く。

まぁ、無理もない。

あまりアズリールからプレゼントを貰ったことが無いのだ。

別にその事に不満がある訳でも無い。

そして、申し訳なさそうにアズリールは。

 

「その、確かに前の事はうちが悪かったと思ってるよ。

でも、なんというか、うちもプレゼント欲しい」

 

「…つまり、プレゼント交換したい、と」

 

「お願いしますっ!」

 

あまりアズリールからお願いをされる事なんて少ない為、アズリールのお願いにジブリールはめっぽう弱い。

 

「し、仕方ないですね…。

でしたら、今から探して来ますので待っていてください。

…時間は掛かりますよ?」

 

「ありがとにゃあああ!」

 

本当、ジブちゃんの優しさには頭が上がりません。

 

 

 

-----------------------

 

 

 

 

場所は変わってエルキアの大広場。

がやがやと人が賑わう中、一人の少女に多くの視線が集まる。

だが、その少女は特に気にしてなさそうに。

 

「そろそろ私もアズに日頃のお礼を含め、何かプレゼントしたかったので丁度いいですね♪

ですが、問題は何にいたしましょうか…」

 

(正直、何を渡しても喜んでくれます。

でも、そんな適当な事は絶対にしませんし、したくありません。

はて、どうしたものでしょう…。

無難に花…でしょうか。

それとも、アズの欲しいもの…といっても基本アズは無欲ですから無さそうです。

…おや、これは?)

 

考え事をしながら歩いているとそこにあったのは小さな宝石店。

そこに何となく立ち寄って見る。

 

「お、いらっしゃい…って天翼種!?」

 

「はい?何ですか?」

 

「い、いや、気を悪くしないでくれ。

ただ、天翼種の人もこんな石に興味あるとは思わなくてな」

 

「えぇ、まぁ、ちょっと…」

 

大切な人へのプレゼント、なんて言おうにも少し恥ずかしい。

 

数は多いというわけではないがずらっと並べられた宝石の数々。

ゆっくり一個一個見てると、ふと、一個の宝石に目が止まる。

それはほぼ透明で、中心が少し青い。

 

(…綺麗)

 

「何だ?それが気になるかい?」

 

「はい、これはなんと言う石なのですか?」

 

「…実は俺もあんまよく分かんねぇんだ。

ただ、この目を信じて美しいと思った石を取ってきただけさ」

 

「…それでお金を取るのはなかなかのぼったくりな気もしますが…」

 

「いいんだよ、客は満足してくれてるし。

それに天翼種の人もそれ、綺麗って思ったんだろ?

ならいいじゃねぇか」

 

「そうですが…まぁ、いいです」

 

そう言って、その石に視線を戻す。

何故かは分からないが、これを渡したい。

 

「…これ頂けますか?」

 

「あぁ、いいぜ。

何なら首にかけれるようにも出来るが」

 

「お願いします」

 

店主がその宝石を奥へ持っていき、数分が過ぎて戻ってくる。

ネックレスのようになっていて、その真ん中に宝石がはめ込まれている。

 

「あの、いくらですか」

 

「ん?あぁ、金ならいらねぇ。

俺は目がいいんだ、大切な人とかのプレゼントだろ?

遠慮なく持っていきな」

 

「っ!…ありがとうございます」

 

バレてた事に少々驚き店をでる。

多少恥ずかしい思いをしながら、ネックレスを見ながら歩き、図書館へと戻って行く。

 

 

 

 

-----------------------

 

 

 

 

「ただいま戻りました」

 

「おっかえりにゃー♪」

 

アズリールがこちらを向き座りながらにこりと笑い、テーブルの上には箱。

 

「よーし、それじゃ、プレゼント交換にゃー!

まずはうちからこれ!」

 

渡された箱を、開けていいか聞いてから開く。

そこに入っていたのは本数冊。

だが、そこに書かれる文字は日本語。

 

「こ、これはまさか、アズの元いた世界の本ですか!?」

 

「そーにゃ、驚いたぁ?」

 

「えぇ、すごく。

でも、ありがとうございます!

とても大切に使います。

あぁ、早く読みたい…うぇへへ…えへへ」

 

涎を垂らし読みたい欲を出して。

だが、はっと思い出し、涎を拭いて。

 

「次は私の番ですね。その…これです」

 

ジブリールが小さな箱を渡し、それを開ける。

 

「これは…ネックレス?」

 

内心、不安になるジブリール。

 

「…ありがとう!

すっごく嬉しい!」

 

だが、それもその言葉によりホッとする。

 

(喜んでくれてよかったです…!

そして、嬉しい。

アズから本を貰って、しかもプレゼントを喜ばれた事が凄く嬉しい)

 

それはアズリールも同様である。

だが、アズリールはある事に気づく。

 

(あれ?この宝石…どこかで見たことが…あっ)

 

ジブリールが選んだ宝石は元の世界でもある。

 

『ブルームーンストーン』

 

その石の効果の一つにこんなものが。

 

『大切な人との変わらぬ愛を願う』

 

(確か…そんなのだったかな…。

…ジブちゃんは気づいて無さそう)

 

それでも、ジブリールが選んだことには変わりなく、本人はそんな効果を知らず選んだとしても、きっと運命が選んでくれた。

 

そんな事を思いながら。

 

「ふふっ」

 

「?どうしましたか?」

 

「いや、何でもないにゃ。

こんな、とても素敵なプレゼントをくれたお礼をしなきゃね」

 

「えっ、でもお礼でしたらこの本だけでもじゅうぶ──」

 

最後まで言わせずに、アズリールはジブリールの唇を長く、長く奪って。

 

「……ありがと♪ジブちゃん♪」

 

左側だけ口を吊り上げて。

だが、それでも顔がほんの少し赤く。

 

「──んぅ、ど、どういたしましてぇ…」

 

顔が真っ赤になり、へたりと椅子に座り込んで。

 

二人がキスに慣れるまであとどのくらいなのでしょうかね。




宝石はネットで適当に調べただけなので間違っていても許してください。
てか間違ってたら台無しもいいとこ過ぎてやばい。


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開幕

あのままいちゃついてジブリールとおやすみしてもよかったのだがお風呂に入りたかったので城に戻ってみる。

 

お風呂に向かってる最中の空達と廊下で出くわして。

 

「ん、よお、お二人さん。

今から風呂に行くんだがお前らも入るか?」

 

「(あ、そういえばそんなイベントもありましたね)それじゃ、入らさせてもらうにゃー。

あ、もし、ジブリールを盗撮するならその機械ぶっ壊すか空の目が無くなるかの二択だからにゃ」

 

「お前本当にジブリールの事になると怖ぇな!」

 

にゃははと笑い飛ばして風呂へ向かう。

後ろに抵抗する気力もないステフとクラミーがいるけどまぁ、気にしない方向で。

 

 

 

──風呂場──

 

せっせと服を脱ぐ。

 

改めて思うけど…やっぱりうちの体って凄いよな。

ジブちゃんに負けず劣らずな気もする。

まぁ、どうでもいいんだけど。

 

なんて思いながら浴場へ入る。

…ふむ、カメラはなさそうだ。

 

「あれ?クラミーそんなにスタイル良かったんですの?」

 

「ふっふーん、着痩せするタイプなのよ」

 

散々弄られてた割にはモデル並にスタイルがいいクラミーが。

 

「アズちゃん必殺!お胸破壊魔法!」

 

右手の人差し指と中指をクラミーに向けるとぱぁん、という音と共に偽装が解けて元のサイズへ戻ってゆく。

取り敢えず合唱しておこう。

片腕しかないけど。

 

「な、何してくれてんのよ!

というか、手を出してるんじゃないわよっ!」

 

「ウソ、ヨクナイ、ニャ」

 

「何故カタコトなのでしょうか」

 

「やっぱり、バレてたし、裸の付き合いに偽装は失礼だと思うのですよぉ」

 

ぐぬぬぬと涙目になるクラミー。

そこに空が。

 

「ところでー、フィールさん?」

 

「はぁい、なんですかぁ?」

 

「俺を“女性化“出来ないですかねっ!?」

 

「そらぁ」

 

「何だ?」

 

「死ねばいいと思うにゃ」

 

「なんでっ!?」

 

だってうちがそれでなったし、なんて意図は伝わらず。

唐突な暴言に若干動揺するもすぐに元どうり。

 

「一応、できますよぉ」

 

「マジですかっ!?」

 

「ただし、元にもは戻れませんがいいですかー?」

 

「え?」

 

…なんか魔力どうのこうの言ってるけど無視して。

 

「やっぱり、落ち着くにゃー」

 

「…あの、アズ、一ついいですか。

何故頑なにこちらを見ないのです?」

 

見れないからである。

別に自分の身体もクラミーやフィー、ステフ、白の身体を見ようが特に何も感じないが。

ジブリールだけは見れないのだ。

 

「そんなに変でしょうか、私」

 

「え、にゃ、ち、違うにゃ!

ただ、うちが慣れてないだけにゃ!」

 

「で〜は、お風呂でもアズと顔を合わせて話したいので慣れて下さい」

 

無理矢理こちらに向かして。

じーっとアズリールを見て。

 

「わ、わわわかったにゃ!

少しずつ慣れてくから今は許して!」

 

徐々に顔が熱くなり耐えきれなくなって反対方向に顔を向ける。

それにジブリールはむぅっと頬を少し膨らまし、アズリールの腕を胸に寄せて。

にゃっ!?と反応して必死に顔を向かないようにしているが更に顔を熱くしている事にジブリールは笑って満足そうにして続ける。

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

数日後。

予め東部連合の手紙はアズリールを見て挙動不審になっていた人から貰っておいたので空達に言っておく。

 

「へい、そらぁ。

とーぶれんごーの手紙、届いてたにゃー」

 

「おう、やっときたか。

えーっと、白、今何日だっけ」

 

「二十、五日」

 

「ふむ、明後日か、それまで暇だな」

 

「それまでに準備をしたらどうですの?」

 

「それじゃ二日間いちゃいちゃしてるからにゃー」

 

「それでは失礼します」

 

「えっ」

 

転移で消えて。

 

「よし、なら寝るか。行くぞー、白」

 

「ん…」

 

「あの…」

 

部屋に戻り。

 

取り残されたステフは。

 

「…じ、自由気まますぎますわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後。

 

「それじゃ、行きますか」

 

「わかりました。

ではマスター方、アズ、ドラちゃん、私に摑まって下さいませ。

大使館まで跳躍──」

 

「あ、ジブリールそれ却下。

ステフ、城の正面に馬車を用意させろ。

正門から堂々と出てやる」

 

「えっ…ぼ、暴動の最中ですわよっ!?」

 

「だからこそ、さ。

なんの為に暴動を起こさせたと思ってんだ」

 

 

 

──エルキア城前──

 

罵詈雑言が飛び交う、デモ隊で埋め尽くされたエルキア城前大広場。

その正面の巨大かエルキア城正門が、轟音を立ててゆっくりと開いていく。

誰が姿を現そうが罵倒の限りをぶつけるつもりでいたデモ隊が。

歩み出てきた五つの人影に、水を打ったように静まり返る。

五人の歩みに、静寂に包まれた広場の人だかりが割れて、道を作っていく。

中央を歩くのは、夜のように深く冷たい黒髪黒瞳の『王』、空。

その右に、かつてないほどに妖しく赤い紅玉の瞳の『女王』、白。

その後ろを一歩引いて歩くのは、静かに輝く琥珀の瞳の『従者』、ジブリールと口を吊り上げながら嗤う『王』と『女王』の良き友人、アズリール。

その四人の光る目が湛える、ただならぬ覚悟。

そして、絶対的なまでの"自信"が。

大衆に、言葉を紡ぐのを許さなかった。

 

 

 

 

 

 

………なんて事はなく。

主にジブリールの眼差しと穏やかな微笑が、民衆に語っていた。

 

『我が耳に届くところで、主に罵倒を浴びせるなら、命と引き換えに』

 

更に目を鋭くさせ。

 

『そして、アズに浴びせるなら、死すら喜びに感じる程の苦痛と引き換えにどうぞ』と。

 

その呼吸すら止めさせる威圧的な空気が、全ての言葉を大衆から奪い、そんな中アズリールはその姿のジブリールも愛おしく思う。

そしてずっと後ろをアクアマリンの瞳のステフがおどおどと小走りで追いかける。

結局、空達の歩みは、ただ一つの罵倒すら許さなかった。

 

ステフが理由を求めていたがそれは割愛。

 

 

 

──在エルキア・東部連合大使館──

 

馬車から降りたところを、袴のような服を着た初老の、白い毛並みの獣人種が出迎えた。

東部連合、在エルキア次席大使、初瀬いの。

 

「お待ちしておりました」

 

「待たされたのはこっちだっての。

さぁ、はじめようぜ?」

 

軽口を叩く空を、警戒した様子でいのが言葉少なに対応する。

 

「…では、こちらへ」

 

先導されて大使館を歩く空達。

こんな時でもアズリールとジブリールはテレパスで楽しく話し合って気がつけば応接室へ。

 

「では、ゲーム開始時刻まで今しばらく、ここでお待ちを」

 

「あいよ。観客もちゃんと通しといてくれよ?」

 

いのが無言のまま一礼して立ち去る。

空は迷わずソファーに横になり白と共に寝る。

最初の数時間はジブリールと話の続きなり色々としていたが、残り一時間前に空を起こしてどうするかもう一度話し合う。

 

いのに案内され、一同が通されたのは大使館の中のワンフロア。

巨大なビルの一階を丸ごと使ったのでは、と思わせるほど広大な四角い広間。

壁を埋めるような巨大なスクリーン一枚、それが四面に張られたフロアだ。

そこには、人類の命運を決めるゲームを観戦にきた観客、千人はいるだろうそれは、疑惑の眼差しで舞台に向けている。

正面スクリーン前の舞台には、黒い箱、そして六つの椅子が据えられていた。

 

「………」

 

無言で、その椅子の一つに正座して待つのは、対戦相手の少女、初瀬いづな。

目を閉じて精神統一してる様子の少女に、先日のような人懐っこさなどなく。

 

「皆様、こちらにお座りください」

 

いのに促され、いづなの隣に座る空。

その隣に右へ白、ジブリール、アズリール、ステフと続く。

始まるまでの少ない残り時間にアズリールは集中する。

いのがなにかを言ってるが関係ない。

ルールは知ってるし空がなんとかしてくれる。

 

数分の時が流れて。

 

「…では、同意したとみなし、盟約の宣言を願います」

 

「「「「「盟約に誓って」」」」」

 

「盟約に誓って、です」

 

一息ついてジブリールの方を見る。

その視線に気がつき、こちらを向いて。

 

「どうかしましたか?」

 

手を差し出して。

 

「…手、繋ご?」

 

珍しくやる気のアズリールに答えるように強く頷き。

 

「喜んで」

 

そして、意識が無くなった。




多分次辺りから出すの遅いかもです。
一応どうしよっかなってのは思いついてはいますがそれを撤回してもう一度考えるかもしれませんし、やる気が低下しまくってます。
考えるのは楽しいんですけどねー。


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ゲームの最中

ロードが終わり意識がゲームの中、仮想空間へ飛ばされた。

目の前で組み立てられてる世界を見て。

確かに日本だなーっと思って、そして横に人類種全てを背負った二人が。

 

 

 

 

 

既に瀕死で見つかった。

 

「すまん、ステフ、ジブリール、アズリール」

 

「あ、はい?」

 

「……はっ。あ、あの、今お呼びになりましたか?」

 

「(知ってるけど)何にゃー」

 

「俺達もうダメだ。

すまん、人類種は終わりだ…」

 

「ガクガクブルブル」

 

「は…どう言うことですのッ!?あんな啖呵切っておいて…」

 

「ごめんなさいごめんなさいまさか東京が舞台なんて予想してないです僕達にここは無理ですホームはアウェーですもう僕達は役にたたないので申し訳ないですが自力でなんとか」

 

「ガクガクブルブル」

 

ちょんちょん、と空の肩を叩いて。

 

「あのにゃ?ここはゲームの中で空達の世界じゃないにゃ」

 

「…え?」

 

ばっと顔を上げ凄い勢いで周りを見渡す。

 

その瞬間。

 

脅かすんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!

 

「うるさいにゃ」

 

まだ何か言いたそうだが、まずは白をどうにかせねば。

 

「おい、落ち着け白!ここは東京じゃない!

似てるだけで連中が作った場所だ」

 

「………ひぐっ…ぇ…?」

 

空の声で戻ってくる白。

 

「一体何があればこうなるにゃ…」

 

原作でも語られぬ過去。

それにより興味が湧いたがいのが始めたそうなのでその思考は置いておこう。

 

『えー、では改めて。

ゲームを始めてもよろしいですかな』

 

「おし、もう大丈夫だ。始めてくれ」

 

『…おほん、では、オープニングムービーを』

 

撤回だ、さっきの思考返せ、うちはこんなの見たくない、と目をそっと閉じる。

 

…オープニングが終わったらしいので取り敢えず戻ってくる。

 

「あー、じいさん…少しいいか」

 

『何も言わないで頂けますかな。

孫は血生臭いのは嫌で作らせたゲームでして』

 

どっかの変態じじいからどうすればこんなにも健全でいい子が生まれるのかを本気で考え始めるところだったアズリール。

 

『それより皆様、足元をご覧ください』

 

言われた通り下を見ると小さな箱が置いてあり開けるとそこには。

 

「なんだこれ、銃か?」

 

「…変、な…形」

 

「マスターの文献にもアズのh…んん、登場する『銃』とは異なってございますね」

 

「ダサくないかにゃ」

 

「なんですのこれ。どう持つんですの?」

 

『ではルールを説明させていただきます』

 

…まぁ、何かルール説明があったけど要は。

 

『ラブパワー』はなんでも出来るよ。

使えば減るよ。

撃たれた人は撃った人の愛の奴隷になるよ。

ステータスは魔法が使えないだけで現実と一緒だよ。

 

という事らしい。

あ、空が撃たれた。

 

「唖々、妹よ。

こんな近くにこんな愛らしく愛おしい女性がいたと今の今まで気づかなかった己の両目を嗚呼っ!えぐりとってしまいたいっ!」

 

「…やぁ……にぃ、ダメ……白達………兄妹…」

 

もじもじと、頬を赤く染めて白が芝居がかった様子で応える。

 

目の前で見てみると面白かったので取り敢えず笑っとくアズリール。

 

「おぉっ!それがどうしたというのかっ!

そうだとも世間は許しはしないだろう、だが俺達の世間は何処へ行った!

ここはディスボード、ここはゲームの中っ!

全てがゲームで決まる世界、誰が文句など挟もうかいざ往かん!

倫理規定の彼方へとっ!」

 

「ちょっ、私が挟みますわよっ!!国民が観戦してるの忘れてませんのっ!?」

 

「それなら私も一つ」

 

にゃはは、面白かったな。

あれ、なんでジブちゃんはうちにそれを向けてるのかな。

確か…原作では白に撃ってたのに…あっ…反応出来ない。

 

パーンっと。

ジブリールはアズリールに向けて撃つ。

 

「ジブリール!うちは完全無欠の素晴らしい女性の君と付き合えてる事に前世では一体どれだけの善行を積んだのか本気で考えるほど幸せだ!」

 

「ア、アズ…!」

 

手を掴んでぐいっとジブリールを引き寄せる。

 

「本当はこんなものでは無いが伝わり易い例えをするならば、君さえ良ければ、今すぐに結婚したいぐらい君が好きだ!

さぁ、うちの本当の気持ちを受け取って欲しい!」

 

顔を近ずけてキスする。

 

「……んぅ…はっ!」

 

じーっと黙って三人が見る。

いや、ここにいないだけで数千人の観客にも見られているはず。

徐々に熱くなっていく。

絶対に顔は真っ赤であろう。

 

「あぅ、その、にゃは、は。

………恥ずかし」

 

目を合わせられず下を向く。

 

「…私はアズさえ、良ければ…」

 

ジブリールもジブリールで赤くして皆に聞こえない程の小さな声で呟く。

徐々に不安が増してジブリールを見れずに。

 

「あの、えと、体が言うこと聞かなくて……ごめんね。

嫌だったのなら…本当に…」

 

結構無理矢理だったので本気で不安になり、謝る。

 

「…嬉しかったですよ?

その…アズさえいいのでしたら、私は…」

 

それを聞いて不安は無くなって嬉しさが勝ったが、それと同時にまた恥ずかしさも出てきた。

 

「…うん、でも、うちが納得出来てないというか、なんと言うか…取り敢えず…その、今は終わりにしよう」

 

「…です、ね」

 

なかなか恥ずかしいらしい二人。

 

「全く!百合百合カップルめ!」

 

「う、うるさいなぁ!」

 

「それより、だ。ステフ。

さっきの説明理解出来たか?」

 

「ふっ甘く見ないでほしいですわね、一切出来ませんでしてよっ!」

 

清々しいまでに、誇らしげに胸を張るステフ。

 

「ふむ、じゃあまずその銃な、こういうふうに握るんだわ」

 

「ん、こうですの?」

 

「そうそう。で、その穴に人差し指を入れる」

 

「はいはい?」

 

「で、それを真下に向けて、人差し指を握り込もうとしてみ」

 

「こうですの?」

 

その瞬間、バーンと音がなり、床に当たり、そして跳弾した。

 

「…あ、あぁ……なんて素敵なわ・た・

く・し、うふふもう放さないですわぁ!」

 

「ふむ、やはり跳弾性能ありか。

これが鍵だろうな、白」

 

「…ん、分かってる……任せ、て」

 

「よし、ここをαポイントとする。

ゲームバランスを把握するまで隊列行動とする。

ルール通りならジブリールとアズリール以外論外な性能だろう。

NPCが獣人種のステータスなら、撒くのも怪しくなってくる。

ジブリールとアズリールは後ろ。

追っ手を蹴散らしてくれ」

 

「…いえっさー」

 

「…分かった、にゃ」

 

「了解で、ございます…」

 

「よし、行くぞ三人ともっ!

人類の命運はこの一戦にありっ!」

 

「おー」

 

「「…ぉー…」」

 

元気よく白が腕を上げた。

まだ恥ずかしく、小さく腕を上げて、小声の二人。

そして、誰にも突っ込まれず心配もされないステフはガラスに張り付きうねうねとして、ただ一人取り残された。




前から適当でしたけど更に適当になってきたタイトル。
自分にセンスはありませんです。


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対獣人種作戦

ゲーム開始から数十分。

やっと本調子に戻ったアズリールとジブリールは今、その場にいるNPCを残らず蹴散らす。

その横で空は一人のNPCのパンツに狙いを定め、撃つがその願いが叶うことは無くパンツと共に消えていくNPCを見届けて空は叫ぶ。

まぁ、そんな事はどうでもよく。

 

「白、銃の性能報告」

 

深く息を吸って。

 

「弾速毎秒300、射程約400、風重力影響無し、直進性、跳弾性能あり、限界跳弾回数は射程に比例して無限、跳弾角度は入射角度に比例で、単純」

 

はぁ、と息を吐いて。

 

「…つか…れ、た……」

 

「よく続いたにゃ」

 

「よーしよし、上出来だ流石白!」

 

わしゃわしゃと頭を撫で、白は嬉しそうにしている。

 

「次、そこのジブアズカップル、設定されてる身体能力はどんなもんだ?」

 

「凄くツッコミたいけどまぁいいにゃ。

魔法が使えないって事はうちら自身の否定になるからにゃ。

だから、物理的限界数値に設定されてるにゃ」

 

「物理的肉体というのにまだ慣れませんね。

なんとも不便でございます」

 

「獣人種の身体性能は物理限界に迫ると言ったな。

今のお前らと互角か?」

 

「まぁ、そう考えて問題ないと思うにゃ」

 

「ですが、獣人種には『血壊』を使うものがございます。

それがゲームに反映されるのならば、私達を凌駕すると考えてよろしいかと」

 

『血壊』 物理限界に届く性能を有する獣人種、その中でも更に一部の者だけが使える、物理限界をすら瞬間的には突破しうるという力。

 

「まぁ、獣人種のゲームに反映されない訳がないにゃー」

 

「はぁ、お前らといい獣人種といい…この世界の連中デタラメすぎんだろ。

だが、まぁいい。

つまり敵は、仮想空間内で魔法を禁じ、自分達の得意分野である『身体性能にものを言わせた戦闘』を行い、圧倒的に有利に立っている、と思い込んでいるわけだな?

いいか、どんな複雑に見えるゲームでも、究極的に取れる行動は二つしかない」

 

「と、仰いますと?」

 

その問いに、意地悪い笑みを浮かべて空が応える。

 

「戦術的行動と、対処的行動。

つまりは、動かすか動かされるかでしかない」

 

即ち、主導権を握った方の勝ち。

 

「あいつらは気づいていない。

これこそが人類が古代から最も得意なゲームだ」

 

口を釣りあげて笑う。

 

「白、用意はいいな。

くれぐれも走るのは最低限にな」

 

「……了解…」

 

「それじゃーお前ら、そろそろ始めるか?」

 

そう言って、空はボムを手に持ち、投げられたボムは轟音を放ちゲームが動く。

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

「っ!?」

 

空の投げたボムが、いづなのいるビルを揺らす。

 

(居場所が特定された、です!?

そんなわけねぇ、です!)

 

だが、いづなの聴覚が、ビルを上がってくる足音を捉える。

 

(この足音は、ジブリール……いや、アズリール、です)

 

一定のペースで、軽い音を鳴らしながら。

いづなが“危険“と判断したプレイヤー。

いくら魔法が使えないとはいえ、その身体性能はいづなと同じなのだ。

それが二人もいる時点で、開始と同時に仕掛けられるはずも無い。

が、一人ずつ来てくれるのであれば跳弾を使って倒すことは出来る。

だが、違和感を覚える、

このビル内にはNPCがひしめいてるのは、音で把握している。

その中を、全く乱れないペースで、トントンと走る足音…?

いづながバッと、和服を翻して、埃舞い立つ狭い部屋の扉に銃口を向ける。

いづなが身を潜める倉庫、その唯一の出入り口。

八階フロアまで近づく足音は、ふっ、と止まった。

 

(・・・?)

 

いづなが怪訝そうに耳を立て、様子を探る、直後。

足音が一気に速度を上げた。

しかも、外のフロアを徘徊するNPC達が。

銃撃音一発ごとに一体ずつ、それが二つ聞こえる事に、寒気が走る。

さらに一切の迷いなく、NPC達を蹴散らしながら真っ直ぐ。

 

(ここに来やがる、ですっ!?)

 

もはや疑う余地もない。

どうやって突き止めたかなど、どうでもいい。

獣人種の五感をフル稼働させ、倉庫の外、視界外のアズリールに向けて、引き金を引く。

銃口から発射された弾丸は、正確無比に、僅かに開け放たれた扉の隙間を縫って飛翔、壁にあたって跳弾。

そして、アズリールに当たる。

 

 

 

 

 

 

 

かと思われた。

既に白が放った弾丸が複数回跳弾し、その弾丸に当たり、更に白の弾丸は跳弾し扉の隙間を通りいづなに向かう。

 

(ありえねぇ、ですっ!?)

 

それを何とか避けてもう一度銃を向けようとしたが。

既に足音は扉の前までやって来る。

 

(逃げるしかねぇ、ですっ!)

 

逃げるスキを作るため、いづなが扉の隙間から『ボム』を投げる。

だが、それが外に飛び出すよりも速く、外から侵入してきた弾丸によって、炸裂する。

資材の後ろに隠れやり過ごすが、二人は扉を蹴って入ってくる。

呼吸音を探るが、聞こえず。

 

(弾幕を張るしかねぇ、です!)

 

資材の後ろに身を潜めたまま、大まかに狙いをつけて乱射する。

無数に放たれる弾丸。

それが跳弾し、部屋の中を結界のような弾幕を作り出す。

だが、一瞬。

 

 

 

 

 

 

 

 

アズリールのにゃは、と嗤う声と白のゆっくりと息を吐き出す音が聞こえて、背筋に悪寒が走る。

 

即座に飛んだ。

床が砕けるような力で蹴り、小さな窓を突き破って、ビルの外の宙空へ飛び出す。

振り返りざま、爆煙で視界を遮られている部屋の中、いづなが感じ取ったのは、全ての弾幕が撃墜された音。

そして更に、跳ね返った弾丸が、いづなが隠れていた場所へ収束する音。

 

(一体、何が起きた、ですっ!?)

 

だが、そんな思考も即座に放棄する。

アズリールが白を置いて、いづなの開けた穴から外へ飛び出しいづなに放つ。

放たれた弾丸をいづなは落としアズリールへ撃ち返す。

空中での銃撃戦が続く。

 

だが、いづなは突如異様な銃撃音が一つなった事に気がつく。

 

いづなが見据えるアズリールから放たれたものでは無い銃声。

 

では、いづなよりアズリールより上にいる白が放ったもの?

 

いや、違う。

聴覚で白も捉えていたが白からでは無い。

 

そして、アズリールの後ろからもう一人。

完全にアズリールと重なっていたジブリールが撃っていた事に気がついた時には、思考に意識が分散し避けることが出来ぬ程いづなに当たる寸前まで弾丸が迫っていた。

 

が、咄嗟に銃でガードし、何とか免れたが銃は既にいづなの手から離れていた。

今ので倒すつもりだった為少し焦ったが、素早くアズリールは撃つ。

更に白が撃ち、ジブリール、そしてアズリールの横を通り過ぎいづなが横に逃げれないように撃つ。

正面、横からの弾丸で逃げ場などなく、決まったかに思えた。

 

 

 

気炎を吐く。

いづなは剥き出しにして嗤った。

『血壊』だ。

いづなは空間を摑んで、身体を受け止め、蹴りによって跳ね上がる。

 

「にゃっ!?」

 

一瞬で二人の上を取り、そして見た時にはいづなは銃を取り戻し、二人に向けて撃っていた。

そして、ジブリールはアズリールを横に突き飛ばして、当たる。

白は既にそのビルから姿を消しアズリールは落下、体勢を立て直して、空に合流する為に戻る。

 

 

 




こういう細かい戦闘は苦手です…。
ほのぼのを書かせてクレメンス。
因みに活動報告でも言ったのですがまさかのインフルになって結構地獄を見ました。
何とか回復して平熱にはなりましたけど。
いやぁ、薬って偉大だなぁ。


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決着

お久しぶりでございますはい。
約一年ぶりです。一応続き出したいなーと思ってたんですけど超やる気低下と続きどうしよっかな〜って考えてました。
なんなら次出すの来年かもしれないですしね。
あと見てない間に3万UA行ってるのびっくり。一年出てないのに。
まぁそれはともかくお待たせしました。
因みに相変わらず文章力はミジンコです。


ジブリールが身代わりになり自分が生き残る。

この事実にただ、腹が立つ。

 

自分の不甲斐なさに、腹が立つ。

正直、ジブリールを一度足りとも向こうに渡したくは無かった。

戦力的な意味でも自身の気持ち的な意味でもだ。

あの状況では仕方がないのかも知れないが、だからといって納得出来るものか。

 

だが、自分に対して怒るのはいいがそれは今することでは無い。

それくらい分かっている。

いち早くも空の元に行き伝えなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルに囲まれ上空、正面以外に遮蔽物がない見晴らしの悪い公園。

そこに集まる空、白、ステフ、アズリール。

 

「空、ほんとごめんにゃ。

いづにゃんには血壊を使われたし、ジブちゃんも…」

 

「あぁ、気にするな。それで、どうだ?白。

初手で決められなかった以上、ここからはアドリブだ」

 

「…ん」

 

そうは言うが空も余裕が無さそうに白は爪を噛んで地面を描きなぐる。

そんな二人にアズリールから。

 

「…少し、いいかにゃ」

 

「何だ?」

 

「一つ、お願いがあるんだにゃ」

 

 

 

 

 

 

 

「──どう、かにゃ」

 

「つまりお前はジブリールとやるから俺達にはいづなと戦ってくれ、そう言ってんのか?」

 

「…うん」

 

分かってる、言っていることは自分勝手。

このままあのステフの作戦をやればいいのも理解している。

それでも、うちはなんとしてもジブちゃんを取り戻したい。

だけどそれ以上に大変な事を目の前の三人に言っている。

 

「……いいぜ」

 

「えっ?」

 

「その提案、乗ってやる」

 

「え、でも」

 

「お前が今まで無駄な事をした事あったか?

まぁ、今回は自分の都合が入ってんだろうがな。

だが、お前が今までやった行動は意味のある事だけだ。

つまり、何か策があるんだろ?」

 

…何故ここまで信用されているのか分からない。

けど、こんなに信用されてるならそれに答えないとダメだよね。

 

「…もちろん、あるにゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは周波数を聞き取れる獣人種にしか聞こえない声。

東部連合の第二のチート。

ビルからビルへ飛び移っていくいづなへ。

 

『いづな、相手は西側公園にいる。

それに、何か企んでいるようだ。

気をつけろ』

 

「…はぁ、はぁ」

 

いづなの耳にいのの報告が届く。

 

(言われるまでも、ねぇ、です!)

 

分かりきった事を。

あれだけの事を出来る奴らがこれだけ終わるか。

それより、さっきから心臓がうるさい!

何を跳ねてる。何でそんなに喜んでる!

まさか、楽しいと思っている?

そんなわけない、楽しいわけない、楽しいと認めるわけにはいかない!

…早くあいつらを仕留めないと…さっさと終わらせないと。

 

そうしていづなは空たちを見つけて。

 

(早く、負けろ、です!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空達と別れ単体で行動するアズリールは。

 

「ジブちゃん、容赦、無さすぎにゃぁぁ」

 

ジブリールとの戦闘中、なお一方的だが。

アズリールが走り回って探していた所をジブリールもまた、探していたようで。

狭い裏路地でジブリールが放つ弾をアズリールは曲がって避けるなり白ほどでは無いにしろ跳弾を使って撃ち落としたりしている。

だが、それも長くは続かない。

細長く周りは建物で塞がって上に登ろうにもいやらしく塞がっていて唯一の逃げ道はジブリールによって塞がれている。

つまり、絶体絶命。

 

「にゃはは、めっちゃピンチ」

 

強がって笑ってみるが実際ジブリールを倒す他逃げる術は無い。

 

「ジブちゃんを撃たないとなのかにゃ…」

 

死なないのは分かっているが銃に対して苦い思い出を持っているからこそ撃ちにくい。

ましてや相手は自分が愛してる人。

 

「……覚悟、決めるかにゃ…」

 

じわじわと歩いて近寄ってくるジブリールに向ける。

 

「大丈夫、死なない、死なないから…」

 

自分に語りかける。

相手もこちらに銃を向けて。

アズリールが引き金を引く。

だが、その弾はジブリールの横を通り過ぎる。

 

「……はぁ、後でいっぱい謝らないとなぁ」

 

そしてジブリールも引き金を引いて、アズリールに当たり、そのまま後ろに倒れやられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その光景を神の視点から見ていたいの。

ちょうどモニターが変わり現在戦闘中のいづなが映し出される。

 

『いづな、アズリールはやられたぞ。

残りはそいつらだけだ』

 

いづなが戦っている相手は空と白。

ステフは意気込んではいたけど一瞬でやられました。

三人は高いビルの中で戦ってはいる。

だが、二人の銃撃が跳弾を利用しても当たろうとはしない。

物理限界を突破した速さについていけずそれでもなお食らいつく。

 

一方いづなは内心は焦っていた。

早く終わらせないとという思い。

だが負けてはいけない、それにいづなが思ってる以上に屋内での白の強さが刻まれていてあまり動けないでいる。

それと二人は余裕で避けられてると思っていたりするがいづなは結構ギリギリで避けているのが多い。

 

三人の撃ち合いは続き階層がどんどん上がって屋上へ集まる。

空と白は扉を見つめそこからいづなが歩いて出てくる。

 

「フゥゥゥゥ…フゥゥゥゥ」

 

「はぁ、はぁ…ったく、本当に大変な事を言ってくれたぜ」

 

「…はぁ…げん、かい…」

 

「こりゃ、後で文句の一つ言ってやんなきゃなぁ」

 

「ん…さんせい」

 

そう言って二人は空中に身を投げ出す。

いづなも二人を追いかける。

そうして三人と空中戦が始まったが、空と白はただ落ちるだけに対しいづなは空間を蹴り避ける事が出来る。

そうして上から注がれる弾をどうにか撃ち落とす事には出来はするがやられるのは時間の問題。

咄嗟に白は全く違う所に一発だけ撃つ。

いづなは狙って撃っても当たらないから適当に撃ったのか?と思いその弾を警戒対象から外した瞬間。

空は一発撃つといづなは首を横に倒し躱すと先程の弾が跳弾をしていづなより上からやってくる。

そして空の放った弾と当たり跳ね返りあたるかと思われたがくるりと避けられ二人に撃つ。

二人は打ち返そうとするがラブパワーが切れる。

 

「…うそ…!」

 

「クソが…!!」

 

そのまま二人に命中し地面に落ちる。

いづなはアスファルトに亀裂を入れ着地すると心臓を掴む。

 

「──ハァッ!──ハァッ!……フゥゥゥゥゥ」

 

いのが何か言っているがいづなの耳には届いていない。

報告などいらない、仕留めたという確信があった。

 

「…やった」

 

立つことすら重労働の体。

そうするだけの価値のある二人をようやく。

 

「……やった、です…!」

 

気がつけば後ろにジブリールが待機していた。

空と白はやった。

ステフは特に気にもせずやった。

アズリールはジブリールが仕留めた。

 

「…勝った、です!!」

 

───ぱすっ。

 

そんな軽い音が聞こえた。

どこからその音が鳴り響いたかといえば後ろからだ。

だが、そこにいるのはやられているはずの。

 

 

「えぇ、勝ちですよ。私達の、ですが」



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ジブリールの不安

(馬鹿なっ!!確実にジブリールは仕留めていた。

ジブリールを助け出せた時間なんてどこにも…!)

 

ふと、いのは思い出した。

最後にジブリールをスクリーンで見た光景。

ジブリールがアズリールを仕留めるその前に当たらなかった弾。

 

(まさかっ!)

 

「にゃふふ、そっのとーり」

 

てくてくと歩いてくるアズリール。

 

「うちはわざと当てなかったのにゃ。

うちがやられた後に弾が跳弾してジブちゃんに当たるようににゃー。

うちがやられたっていう情報は手に入ってもジブちゃんが元に戻ったっていう情報は見れなかったよにゃぁ?」

 

「ぐっ」

 

だが、何故見られていると分かったのだ。

どのタイミングまで見られどこから見られていないかなど分かる術が。

 

「因みに何故見られてないか分かったのはビルでいづにゃんにジブちゃんを取られちゃった時にゃ。

ジブちゃんがやられた時すぐ見られてるって感覚が無くなったのにゃ。

天翼種ってそういうのにも敏感に感じ取れちゃうからにゃ〜♪

だから、君は確実に倒してるっていう情報だけ手に入れて空達の居場所を突き止めに行ってたのは分かったにゃ。そんなわけでその癖を利用させてもらったのにゃ」

 

「ならば、何故心音に変化が無かったのだ!」

 

「簡単な話にゃ、ゲームが始まる前にジブちゃんに『ゲームが終わるまで心音を大きくたてるな』っていうね」

 

「……なるほど、そちらの作戦通りというわけですな…」

 

「要はずっと動かされていたって訳だ。

さてさて、勝者のコールはまだかな、爺さん?」

 

「──勝者、エルキア…」

 

エルキア王国に対し東部連合は…なんて話してるけど全くもって興味はないアズリールは落ち込むいづなに話しかける。

 

「にゃあ、いづにゃん」

 

「……なんだ、です…」

 

「ゲーム、楽しかったね」

 

「っ!…そんな訳、ねぇ、です!

負けたせぇで、みんな苦しみやがる、です。

でも、なんで、なんでこの顔は笑いやがった、ですっ!!」

 

「…いづにゃん、一つ訂正しなきゃいけないにゃ。誰も死なないし、誰も苦しまない」

 

「…え?」

 

「納得行かにゃいなら空にでも詳しく聞くといいにゃー」

 

それだけ言い残してスタスタと歩いてく。

 

(ぶっちゃけ説明するのがめんどくさいだけ何だけどね!)

 

どうしてもがっかり具合が残ってしまう。

ジブリールの元へと近づき話しかける。

 

「ジブちゃんー」

 

「アズ、お疲れ様です」

 

「ごめんにゃー、ジブちゃんを向こうに渡しちゃったの本当にごめんにゃ。

それと、ありがとう、ジブリールのおかげで勝てた」

 

「別に怒ってませんし謝らなくてもいいですよ?それにその作戦を立てたのはアズではありませんか」

 

「いや、うちのわがままでこんな作戦になったのにゃ。空と白には感謝しきれないにゃ」

 

「えぇ、後でマスター達にお礼でも言いに行きましょうか。

あ〜、それとですよ。いくら天翼種でも神視点の視線を感じ取るなんて無理です。アズ位ですよ?そんな事出来るの」

 

「えっ、嘘!?」

 

その後は空といづなで原作でのコイントスの下りをしているなか、こちらではほのぼのと話し合いをしている。

そしてそこから何やかんやとあり風呂場にて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カメラよーし。容量確認よーし。湯気よーし。

 

「よし、確認。健全と判断するに十分な量の湯気と認識する」

 

皆が着替えてる中、先に入り一人こそこそとやっている空。

すると後ろから肩をちょんちょんと触られ、それに反応するように後ろを向くと。

 

タオルで身体を隠しているアズリールがニコニコと笑顔で立っていた。

いや、確かに顔は笑顔だろう。だが、雰囲気は完全にそんな感じではない。

現にその姿を見た空はサァーっと青ざめている。

 

「…エット、マダヨンデマセンガドンナゴヨウデ?」

 

「前は一回目だから許したけどにゃ?二回目はどうなるか分からないにゃ?

…言いたいこと、分かるよね〜」

 

その言葉にゾワッと震える。

空の本能が告げる。マジでやばい。

次の瞬間にはパパパッと回収し終わって。

 

「うんうん、いい子だにゃ〜」

 

「本当に!すいませんでした!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にゃはは♪ついついジブちゃんの事になると少しだけ怒っちゃうなー♪

ジブちゃんはうちのだけです。誰にも渡さない。

それはさておき、うちとジブちゃんはみんにゃより少し遠めのとこでのんびりとお風呂IN。

一方うちら以外の子達はというと。

男性陣はギャーギャーと騒いで、女性陣はステフが白を洗って白がいづなを洗う。

主に尻尾だけど。………もふもふ、かぁ、いいなぁ。

 

「…また、あの尻尾に夢中ですか」

 

「んうぇっ!?ち、違うにゃ!い、いや、違わないけど…」

 

何というかいづなの尻尾って凄くもふもふしたくなるというか、顔をうずめたくなるというか、そういう欲求が湧いてきてしまうのであって…。

 

そんな事を考えているとジブリールはぷいっと顔を背ける。

 

「アズは酷いです。私という者がありながらあのような尻尾に夢中になるのですから」

 

「…ジブちゃんってそんなに独占欲つよかったっけ…?」

 

「そんな事ありません。ですが、強いて言うならアズのせいかも知れませんね。

…アズにはずっと私だけ見ていて欲しいですから」

 

「それは…凄く嬉しいにゃあ。あ、でも、少しだけなら…いい?」

 

「まぁ…少しでしたらいいですけど…」

 

会話が途切れ沈黙が訪れる。

少し遠くの方を見れば白といづなが騒いでいるのが見える。

それから5分か10分が経過するとジブリールが沈黙を破る。

 

「あ、あの、アズ?」

 

「うん?どうかしたのにゃ?」

 

「その、私って面倒くさくないですか?」

 

「え、な、何で?」

 

「だって、私だけ見ていて欲しいとかその…自分勝手、と言いますか…」

 

あー、つまりさっきの言葉に少し不安を覚えちゃったって事ね。

 

「安心していいにゃ。その位でめんどう何て思ってすらないにゃ。

それに好きな人が他の女の子に理由はどうあれ気になってたら不安になるのも仕方ないとうちは思うけどにゃ」

 

特にそういう事に気にしない子もいれば、分かっていても心配しちゃう子だっている。

 

「…ありがとうございます。ちょっとアズに言うのは恥ずかしい話ですけど、私はアズが死んでしまった時、凄く、怖かったのです。

いつも隣にいた人がいなくなる恐怖。

今はこうしてまた隣に居てくれてますがもし、アズが私に対して何か嫌な思いを感じ離れてしまったら…」

 

「ジブリール…」

 

「頭では分かっているんです。アズは優しいですから私から離れて行かないって。

でも心の何処かにあるそういう不安がどうしても拭い切れないのです。

私はアズ無しではもう無理なのかも知れませんね。

正直…こう言えば優しいアズは私から居なくならないと思ってしまったりします」

 

ジブリールはうちがいなくなるのをとことん恐れている。

うちとしてはそんな気はさらさら無いけどそう言葉にしてもきっと少しは不安が残ってしまうだろう。

でもそれは仕方のない事なのだ。完璧に不安要素を取り除けるなんて無理だと思う。

それでも、言葉にしなきゃいけない。

うちはそっとジブリールを引き寄せ抱きつく。

 

「大丈夫、うちはいなくならないから。

君がうちを求めるならうちもそれに答えるし、うちも君の事を求める。

だから、安心して欲しい、愛してる」

 

「ア、ズ。アズぅ…」

 

俺の胸元にぽたぽたと雫が落ちてくる。

小さく、俺にだけ聞こえる泣き声が止むまで時間が過ぎるのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたかにゃ?」

 

「はい、お恥ずかしい所を見せましたね」

 

「うちとしてはようやく少女らしい姿を見れたにゃーって思ってる所にゃ。これで三回目かにゃ?」

 

「うっ、で、でも二回目はアズだって…!」

 

そんなやり取りをしているとステフの声が聞こえてくる。

 

「ジブリールさーん、アズリールさーん。

そろそろ上がりませんことー?」

 

「……のぼ、せた」

 

「…ふろ、きれー、です」

 

「あれだけはしゃげば疲れますわよ…」

 

立ち上がる気力位しか残されてない二人を若干呆れているステフ。

 

「分かったにゃー。今行くにゃー」

 

そう言ってスっと上がって出ていき、そのまま後ろを振り向き。

 

「行こ?ジブちゃん」

 

手を差し出して、それを握り。

 

「えぇ」

 

そう返事をして、戻っていく。

その時のジブリールの顔はとてもにこやかに笑っていたそうな。




一回目はアズリールが死んでしまった時で二回目は大戦終了後。



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ちょっとした準備

なんにも思いつかなかったのでタイトルはお気になさらず。
あと本当にちょっとしたものです。


「んにゃ〜」

 

「どうしたんです、アズ」

 

エルキア大図書館内にあるテーブルにぐで〜っと怠けている一人の少女。

 

「いやぁ、ちょっとばかしやっておこうかなって事を考えてたら色々面倒くさくなっちゃってにゃー」

 

「やっておく事ですか?何です?それ」

 

「『エルキア連邦』に天翼種を加盟される為にあの子達を説得しないとにゃーって」

 

「それも、『本』にあった事ですか?」

 

「そうだにゃ〜」

 

「…まぁそうですね、正直私を含め他の先輩方もアズの事を信用してますし大丈夫では?

それに『十八翼議会』にはいないと思いますが、アズがそうだと言ったなら絶対そう!って何も考えずに絶対的に信じてる先輩も居ますから」

 

「そこまで盲目的に信用されるのも、結構困りものな気がするんだけどにゃ…?」

 

「もう手遅れだと思います」

 

「……そう、ですか…」

 

「その、仕方ないと思いますよ…アズのせいでは、無いですよきっと…」

 

意外な天翼種の事実に、それはそれで困る気がする。

頭が痛いと言いたげな空気感に、実際ジブリールは頭を抑える。

 

「まぁ、色々言っても意味無いしにゃー。

あ、それとなんだけど、もうそろそろ空に呼ばれると思うにゃ?」

 

「えっ?あっ、本当ですね。

では、私は呼ばれましたので行きますね。

アズ。行ってきます」

 

「行ってらっしゃいませにゃ〜」

 

手を振りジブリールが空間転移で居なくなりその場にはアズリールだけが残される。

ただ、その後も何もせずに時間だけが過ぎる。

 

「はぁ、まっ考えても仕方ないにゃ。

取り敢えずは今後の為にやる事しようかにゃー」

 

 

 

 

 

 

 

──エルキア王城──隠し書斎内──

 

前王の部屋に隠されていた書斎内に空間転移し、この後の為に色々準備して置いてあげよう、というアズリールの粋な計らいを実行すべくおバカな人魚さん攻略に助けになる本を探し出す。

 

「どこかにゃ〜?」

 

ガサゴソガサゴソ。

 

「あ、これかにゃ?…違ったにゃ」

 

ガサゴソガサゴソ。

 

「ん?なんにゃこれ?

…もしかしてこれって前王の見せられない本とやらでは…本棚の裏に一つだけ隠されてたにゃ。

でもこんなのに興味は無いにゃ」

 

ガサゴソガサゴソ。

 

「お、これじゃないかにゃ?えーっと、タイトルは…」

 

『ごうまんお姫さまのたからもの』

 

「よし、これにゃこれ!

取り敢えず分かりやすくテーブルの上にでも置いとくとするにゃ。

…さて、お次はどうしよっかにゃ〜」

 

正直に申すなら、今アズリールが行っていることは暇つぶしに近いと言っていい。

今後の為に楽できてたらいいなというのも少しは混じってもいるが。

とはいえ他にやる事などあったかと考えると特に思いつきもしなかったので大人しく図書館へと帰ることにした。

アズリールは今頃巫女とのゲームを終わらせエルキア連邦を設立。

いづなの家でプラムでも見つけてる頃かと考えた。

 

「まぁ、取り敢えず暇だしステフのとこでも行ってみるかにゃ。

ジブちゃんに連れ去られて王城に居るはずだし」

 

そんな訳でまたまたエルキア王城内に空間転移する。

するとちょうど真下にステフといのがうつ伏せになっている。

 

「あ〜…お疲れ様にゃ?」

 

「ア、アズリールさん…」

 

知ってはいたけどそれでもお疲れ様と言いたかった。

何せその場の雰囲気がとても悲しいものだったのだ。

 

「…改めて、君って大変だにゃ」

 

「お分かり頂けますか…」

 

「まぁ…その、少しは手伝ってあげるから元気だそうにゃ」

 

「えっ、あなた手伝えるんですの?」

 

素で答えてしまうステフはそう言っても仕方ないと思っている。

ステフのアズリールに対するイメージなど好き勝手にやって過ごす、とエルキアの王二人と大体似て少しマシ程度のイメージを浮かばせているのだから。

 

「こんなでも天翼種の長って事になってるし手伝い位は出来るんだけど?」

 

「意外ですわ…」

 

その後アズリールは色々手伝ってあげてステフとしては結構助かっていた。

それに対してアズリールは手伝いをこなして思うことはこれらをずっと対応していたあの一人の人類種を二割の敬意と八割の哀れみを感じていた。

因みにいのに関しては特に何も無かった。

お互い不干渉というより別段話さなくともよいという状態に近い。

そしてまぁ、案の定と言うべきかステフはぶっ倒れ、そこにいのにキレ散らかした空達が帰ってきた。

無論空達をここに送ったジブリールは即座にアズリールの隣に移動してたが。

そのまま話は続き、空がステフに対して「さんきゅ」と感謝の言葉を言い、涙を含んだ目をしたステフをよしよしとするアズリール。

だがまぁ結局水着の裁縫という仕事が増えた為に気絶したステフが居るわけだが。




久々トーク編

はいどうもトーク編というなの文字数稼ぎです。
久しぶりに出したのに本編が短かったと思うので尺稼ぎ的な。

「マジで久しぶりだにゃ?作者」

正直こんなのあったなってなりましたはい。
というか思ったんですよ。

「何をにゃ?」

日常回ってやってないなって。

「確かに本編のうちらの日常知らないにゃ」

「そうですね、そこらへんはどうなってるんです?」

うお、びっくりした、久しぶりです。

「ええ、本当に。いい度胸してますね。
本編の私達とは違いここに居る私達はここだけなんですよ?
そこ分かっているのですか?天撃食らわせますよ?」

「そーにゃそーにゃ!もっと言ってやれにゃー!」

誠に申し訳ないです、反省してるのでそれ収めて貰ってもいいですか。

「はぁ、まあいいでしょう。今後もなるべく出してくださいよ?」

ネタ無いですけど頑張ります。

「やっぱちょろくない?」

ちょろいよね。

「聞こえてるんですが??」

やっべ逃げろ!

「あっ!ちょっと待ってください!今回は逃がしませんからね!?」

「…なーんかいつもこんなオチな気がするにゃ〜…?」



日常回はまぁ用意出来次第一応出しときます。


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水着回!

 

 

──海──

レジャースポットといえば山派、海派に分かれるであろうレジャースポット。

夏になると多くの人が餌に群がる虫のように集まる場。

まぁ、実際は足に付いた砂が離れる事をうざったらしく拒み、焼かれた肌は長期に渡り人体を苦しめ、その他要素含めて何が楽しいのか全くもって理解不能なリア充専用フィールド。

だが、そんな忌々しいスポットも状況が変われば話も変わる。

 

「ふぅ……しゃーわせ♡」

 

パラソルの下、草で編まれたベッドにグラス片手の空。

両脇には、巫女の従者らしき獣人種が大きな葉で空を扇ぐ。

 

「この日差しの中空殿、いいご身分ですな」

 

「うむ、ジブリールお手製の光精配合つー日焼け止めのお陰でな♪」

 

「ジブちゃんに感謝しろよにゃ」

 

冷めた声をかけるいのに平然な空、感謝を要求するアズリール。

空達と一緒にいるアズリールはちゃんと空指定の水着を着てる。

とはいっても、ビキニではあるがボトムがショートパンツであり腰には変わらず布が巻かれている。

 

「あー、なんつーかアズリール、俺が言うのもなんだがあんまし変わんねーな。

いや、綺麗ではあるぜ?」

 

「うちなんかどうでもいいにゃ!

それより空!ジブちゃんのはちゃんとしてる水着だよにゃ!?」

 

「お、おう、流石にもう懲りてるから安心しろ…」

 

「ならよし!あ〜、めっちゃ楽しみにゃ〜♪早く見たいにゃ〜♪」

 

「……こいつ、本当は男だったって言われても受け入れられるぞ…」

 

「それには同意しますな」

 

見た目は少女でも中身はいくら経っても変わらぬ男のままなので、合ってるといえば合ってる。

まだかまだかとわくわく気分な天翼種はさておき、先程から空といのの叫び、舌打ち、皮肉──ほぼ空だが──が聞こえてたが今はいづなが着替え終わっていた。

 

「……着てやったぞ、です」

 

「流石いづな、何を着てもかわいいのぉ。

空殿が指定した水着と聞いて心配しましたが」

 

「浅はかだなじじい、まずッ!幼女には『スク水』と決まっている!!」

 

「おぉー、かわいいにゃー、よしよし」

 

「おい、てめぇ欠陥兵器!何いづなのことを触ってやがんだ、あぁッ!?」

 

「撫でる位別によくないかにゃ?」

 

「チッ……しかし、本当に露出は抑えたのですな」

 

「何度でも言おう浅はかなじじいよ。文化を加味せずどうして浪漫を語れよう!」

 

スク水に前が開けた半纏のような振袖を羽織ったいづな。

これこそが空の出した答えだった。

 

「こんなんでいいか、です」

 

「あぁ、パーフェクトだ。こりゃ文化遺産レベルだな」

 

「…意味は分かりませんが、孫に下品さを求めなかったのは評価しましょう」

 

「あ、あのぉ……着替え終わりましたわ…」

 

「おぉ、ステフか。いやー本当にいい仕事した──」

 

恥ずかしそうなステフの声に反応し、振り向き礼を言おうとし、固まった。

普段着のイメージをそのままに半透明な素材のフリルやパレオをセパレートの水着に付け、もじもじと顔を紅潮し視線を泳がせていた。

だが、空が固まった理由はそこではなく、豊満な『それ』に。

 

「──バカな…。八十九、五十八、八十九……戦闘力五十万だと!?」

 

「な、何で知って…って違いますわよ!何の話ですのよぉ!!」

 

「ステフのくせに、何としたレベル高さか…!」

 

「えっ、あ、そ、そうですの?そんなでも…ない、ですわよ……」

 

満更でもないステフに、もう一言二言掛けようとし口を開くが。

 

「申し訳ありません、遅れました。ご希望通りの姿を編むのに手間取りました」

 

「かっかっか、えーてえーて。待人焦らすんのも、ええ女の礼儀やで?」

 

その声に、一同が振り向き。

アズリール、空、そしていの。

何かを思うより早く、本能のままに。

そして──そこにいたのは『二柱の女神』。

 

二柱の女神──その一柱、巫女

金色の髪と耳と尾、そして白い肌が陽の光に照らされる様はさしずめ──後光。

幾分慎ましやかなラインはまさしく──至高。

普段は和服に包まれているその柔肌を、例にも漏れず半纏のような水着が包む。

夜の蝶を思わせる着崩しに、なよやかに覗かせた肩は、艶やかで。

その顔に浮かぶ妖艶な笑みは、永遠を生き、神へ至る妖狐──頂点たる天狐の実在を確信させる。

 

二柱の女神──その一柱、ジブリール

光を乱反射し色を変えるその長い髪は、海の日差しと風に揺れ、とても鮮やかに。

どんな彫刻師の心も一目で折るだろう、巫女を至高と言うならば、ジブリールは──究極。

その芸術品たる身体を覆う水着は。

普段から露出が高いがあえてと選ぶ腹部が紐で編まれたワンピース。

大きめのストールをパレオのように巻き、腰から伸びるは、淡く輝く翼。

頭上を廻りし光輪は、ここへ来て神々しさを加速させ。

疑う余地など正しくなき、天から舞い降りたとされる、問答無用なまでの圧倒的美しさ。

 

その光景に、地に伏せる者達の頬には、涙が伝った。

 

「…この初瀬いの、正しく生まれてきた意味を、ついに知るに至りましたぞぉお──!!!」

 

「あぁ神よッ!どこのどなたかは存じねぇが、この天地にジブリールと巫女さんを創りたもうたとんでもねぇセンスしやがった神よ──弟子にしてください」

 

「…あぁ、そっか。うちって、この為にこうして居るんだ。…あぁ、どうしよう、もう…死んでもいいや…にゃはは」バタン

 

一名血を出しながら倒れてしまったが、貴重シーンを目撃したステフといづなは。

 

「確かに比べたら仕方ないですけど……違いすぎじゃないですの…?」

 

「…?みんな砂、目ぇ入ったのか、です?」

 

ステフは地に伏せる三人を見て、いづなは首を傾げる。

 

「ちょっ、アズ!?大丈夫ですか、凄い血の量ですけど!?起きてください!!?」

 

「んむ、苦しゅうないえ、あての水着を見られる幸福を噛み締めるとええ」

 

普通に焦って空の事を完全に忘れ、人間なら出血多量で死んでもおかしくないアズリールを膝枕し、心配そうな顔で見守る。

安心させるようにジブリールの頭を撫で、鼻から血が流れる顔をにへらと笑ってみせる。

いのと忘れ去られた空はおそるおそる、立ち上がり、揃って天を見あげた。

 

「……なんか、もう十分すぎるくらいに堪能したな」

 

「……さようですな。やり遂げた感で胸が満ちておりますな」

 

「……もう、帰ろっか」

 

「……珍しく意見が一致しましたな、空殿」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……天翼種じゃなかったらふっつーに死んでたにゃ。

…………ジブちゃん…最高、万歳、感謝、我が生涯に一片の悔い無し………」



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