ドラゴンボールF (月日火)
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帝王の座より

ドラゴンボール超 ブロリーでなによりも驚いたのは

ブロリーの圧倒的成長力でもなく、ゴジータのかっこよさでも無く

ブロリーの攻撃を一時間も耐え切って更にドラゴンボールの願いがレッド総帥と同じにまでなったフリーザでした。


X X X年、ある惑星にて。

 

「おお!見よクウラよ!此奴が貴様の弟であるぞ!!」

 

「……フン。」

 

現宇宙の王、コルド大王の第二子誕生。

というのも大王の時代は単独統治だった為宇宙全体にその影響が深く反映されていなかったというのが今回の一件に繋がる。

また、コルド大王は確かに宇宙の王ではあるがそれも薄氷の上に立っているものだと自らは確信していた。

 

太古に封印された伝説の魔神であるブウと呼ばれた存在。

少し前に4人の界王の手によって封印されたヘラーの一族。

極めつけは怠惰ではあるが宇宙最強の存在である破壊神ビルス。

 

そのどれかが目覚めでもしたら自身の後継はどうなるのか。

そう思ったコルド大王は当時幼かった第一子であるクウラを見た。

実力はこのままいけば宇宙最強に上り詰めるであろうと確信してはいたものの

その実、クウラはかなりガサツな性格だ。

一度星の侵略を任せてみた時にそれはよく分かった。

惑星を荒廃させるその姿は帝王としての力の矜持ならば申し分は無いが、上に立つものとしては及第点も与えられない。

もっと言えば、クウラの性格から出るその傲慢さはビルスに牙をむけるかもしれない。

 

ーーでは、どうするか。

 

結果、大王は第二子を作る事に決めた。

母体はクウラの時と変わらずそのままにした。

優秀な(クウラ)を産んだあやつなら此度の子もきっと優秀になると違いないと踏んだからだ。

クウラは難色を示したが、今の大王には勝てないとわかってはいたので渋々了承した。

 

かくして、第二子は誕生しコルド大王の野望である兄弟での協力統治は達成され、彼の系譜は更なる発展を見せる事となる。

 

 

と、ここまでならば順風満帆とも言えるこの一族だが事はそう上手くはいかないのが世の常である。

 

 

産まれた息子には古い記憶が存在していた。

とは言っても取り戻した切っ掛けはクウラとコルドではあるが。

その記憶はドラゴンボールと言われる神秘の存在を求める少年少女を描いた冒険譚。

その中の少年、孫悟空はその後出逢いと別れを経験しながら成長し、自らのルーツを知り、そして地球を狙う悪と闘い、時には仲間にしていく。

 

かつて親友を殺した者の息子、マジュニアことピッコロ。

 

自らのルーツとなるサイヤ人の王子ベジータ。

 

そしてそんな彼の物語は未だ続いていたと息子は思い返す。

何故、自分がそんなモノを持っていたのかは定かではないがそのお陰で自らを知れた。

孫悟空最初の強敵にして、宇宙の帝王とまで呼ばれた存在。

一度は敗れたがその後復活、復讐を挑んで一応は勝利、だが負ける。

その後は力の大会で駆り出され、ボコボコにされ。

更にはブロリーを連れ出して親父を殺して、ボコボコにされ。

 

そんな存在であった。

 

息子は苦悩した。

どうしてそんな記憶を持っているのかというよりも未来を悲観した。

自身の小ささを幼くして実感してしまったからだ。

だが、息子は更なる不幸に見舞われた。

自身には兄がいてしまった。

 

そう、クウラだ。

 

本来ならばいるはずのない兄。

そこから導き出せるのは劇場版という存在。

ガーリックJrを始めとした劇場版の強敵達。

更にはそれに派生したツフルの傑作。

 

息子は大いに苦悩した。

産まれた時の戦闘力はおおよそ53万。

某有名な台詞が言えるのでは?

という淡い期待は太陽の炎に消えてった。

なんせ、このまま何もしなければ自身は唯の雑魚に等しい。

 

ある番外作品で孫悟空が言っていた台詞がこれだ。

 

 

「フリーザかぁ……いまとなっちゃてぇした相手でもねぇなぁ。」

 

これである。

 

…それは当然だ。

フリーザの当時で1億2000万…いや、サイボーグ化した時に多少は上がっているか。

魔人ブウの戦闘力は不明だが、それすら倒した悟空にとってフリーザなんぞ

そこらの雑魚敵とそう変わらない。

 

仲間になる?不可能だ。

これはサイヤがどうとかではなく唯自身の問題だ。

自らの意思がそうする事を許してはくれない。

 

 

では、どうするか?

修行は必須だ。

なんせ、3ヶ月真面目にトレーニングすれば初期とはいえブルーと三分間互角に戦う事も出来るし、精神トレーニングだけで自らの進化を成長させるアホみたいな才能が自分にはあるのだ。

まぁ、原作と違う自分が本当にそうなのかはわからないが。

 

そしてもう一つ、兄との関係だ。

ゲームでは宇宙最強を共に自負する2人の相性は最悪だ。

クウラ対フリーザなんて両者殺す気満々でどちらが勝ってもあの台詞から殺しているのは明白だ。

現に自身を見た兄も意思を持ったとわかった途端。

 

「いいか弟よ、この俺が宇宙最強の帝王だ。決してその事を忘れるな。」

 

と、殺気全開で言われた。

その時は気の抜けた返事で返してしまったが関係はほぼ変わらないと言って良いだろう。

 

最強は持って当たり前の称号だ。

それはこの世に生を受けて最初に根付いた意思だ。

断じて産まれが早いだけの兄が持っていい称号では無い。

この私こそが宇宙最強にならなければならないのだ。

 

……いいだろう。

 

帝王の座など、兄にくれてやろう。

好きに宇宙を統治してしまえばいい。

思うように動き思うように誇れば良い。

精々、思う存分に踊れば良い。その裏を糸人形の様に操ってやるから。

 

 

だが、宇宙最強はこの私の物だ。

私はなろう、孫悟空の最強で最悪の敵に。

孫悟空に尊敬したが故に私は奴を超える。

劇場版のボスも他宇宙の奴も破壊神でさえもぶっちぎりで超越した最強こそ私がなるものだ。

 

 

「このフリーザが、宇宙最強だ。」

 

 

それこそが私の生きる意味、私の全てだ。

 

あぁ、礼を言っておきましょうか見知らぬ私。

アナタは立派な働きをしてくれました。

明確な目的は自身をより強く成長させるものです。

アナタ以上に私が感謝する存在はこの世にいないでしょう。

 

 

 

では、サヨウナラ。

 

 

 

 

 

…私の中で潜んでいたナニカは消えた。

では、先ずは行動だ。

修行を重ね、知識を積み、部下を集め、智略を巡らす。

 

手始めに父を超え

来たるサイヤ人の統治までにせめてゴールデンフリーザにはなっておこう。

ドラゴンボールは当然使う。

私はいくつまで生きられるかは分からないが少なくとも不老は欲しい所だ。

衰えない最強は私でなくても喉から手が出るほど欲しい。

 

ガーリックJrやスラッグがいい例だろう。

 

…そうだ、手始めに部下はその方達からにしよう。

ギニュー特戦隊はまだしもドドリアとザーボンは正直弱すぎる。

その点ならば劇場版ボスは実力的にも申し分無い。

また、ターレスの持つ神聖樹の実は最終手段でとっておきたい。

 

そこまでいくと最大の問題はタイムパトローラーとトワ達、そしてベビーと合体ザマス辺りか。

 

タイムパトローラーは実力が未知数、トワは問答無用で洗脳してくる。

ベビーは傷つけられたらアウト、ザマスは合体させたらアウト。

 

 

問題は山積みだがそれでこそ私の覇道に相応しい。

 

 

 

さぁ、全てを私の手へと収めようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー。

・今作のフリーザ様のコンセプト
『メタ知識を得た慢心無しの帝王。』
正直フリーザ様大好きなのでこういう話を書いてみたかった。


・劇場版について
バンバン出していきたいです。
ブロリーは旧版も好きですが今回は超版にします。
その方が色々と面白そうなんで。
後、時代設定が明確なんで。

・憑依って?
フリーザ様と完全に混ざった……というよりも吸収されました。
ファイターズみたいにはなりません。

・ゲーム関連
正直作者はメテオ、レイジングブラスト、ゼノバース、ファイターズぐらいしかやった事ありません。
その為、超巨大神龍は出ません。

・世界軸
ブロリーに合わせて超時空です。
ですが、GTも好きなんでベビーやリルド将軍辺りは出したいですね。


後もしかしたら

「ん?これっておかしくね?」

って部分があればどんどん下さい。
質問もなるべく全部答えます。


後関係無いけど、孫悟飯、フリーザ、超ブロリーが才能方面の化け物だなと
色々見返して思った。









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惑星侵略のススメ

先ず手始めに行った事は何と言ってもトレーニングだ。

折角の才能を腐らせるのは愚の骨頂、やるならば徹底的にやるべきだ。

フリーザ一族は鍛えずとも戦闘力が軒並み高い種族ではあるがサイヤ人の様に急激なパワーアップは出来ない。

だが、コルドの系譜に限ってのみ異常な才能を秘めている事がトレーニングを始めて僅か1週間で嫌でも把握できた。

 

この肉体、何と言っても飲み込みが早い。

念力や気のコントロールは勿論、体術に関しても僅かな時間で体得してしまうのだ。

そのせいでどうにも達成感がないのが欠点ではあるのだが。

そのお陰もあってか戦闘力はみるみる成長し今では既にクウラを超えた。

とはいえ、その裏では父にかなりの説得をしたものではあるがまぁ必要経費だ。

組手の要望から始まり、この世界で最もメジャーな『重力』の修行や気をどう捉えるかなどを全てクウラに内密にしてほしいと頼んだのはどうしても必要ではあったものの難しいとは考えていた。

何せ、己の家系が頂点だと疑わない父だ。そしてクウラに甘い。

更に生憎と私には師匠などは居ないので全て独学。

どう考えても息子の狂言としか思えないだろう。

しかし父はかなり困惑したもののすぐに承諾してくれた。

魔人ブウや暗黒魔界辺りはこの時代にはもういるはずなのでその付近を考慮したのだろうか?

それにしても重力室に関しては正直期待してはいなかったが、地球の重力の約50倍まで作成してみせたのは正直驚いた。

と同時にブルマの恐ろしさが身をもって知れた。

 

「…ブルマさんをフリーザ軍に迎えてもいいかもしれませんね。」

 

…割と本気でそう思う。

 

 

 

♠︎

 

 

トレーニングを終えれば次は勉学。

国語、数学といった基本的な知識は勿論、異惑星語など高度な事を教わる。

教わるのは世話役でもあるベリブルだ。

 

「いいですかなフリーザ様?惑星というのはいかに空気が澄み土地が豊かであるかでその価値は決まります。

荒みきった土地などは論外ではありますがその価値もしっかりと判断するのですぞ?

そして当然ながらその価値を買う相手も把握した上で、なるべく安くなるように値段交渉してくる事でしょう。」

 

「ええ、それは当然でしょう。交渉相手も馬鹿ではありませんからね。」

 

「そうですとも。ですので値段は自身が確実に有利になるようにつけるのです。相手の癖を読み何を欲しているのか見極める。そうした上で相手がギリギリ払える値段を見つけるのがフリーザ様には求められておるのです。」

 

「ええ、心得ていますよベリブルさん。」

 

「よろしい!では次は……」

 

 

勉学の中で最も重要視されているのはビジネスだ。

星を侵略し、その惑星を協力者たる種族に売り払う事で生計を立てているこの軍にとって観察眼は何よりも大事。

軍の中には表向きコルドの力に屈し従っていても裏では反旗の機会や意趣返しの機会を狙っている者などざらにいる。

 

帝王にならなくとも、私はその様な機会は許してはおけない。

最強とは単純な強さだけでは駄目なのだ。

クウラが存分に踊る場を用意しなければならないのもまた私の役目になる。

つまりこれも自分の為。

手は抜かず免許皆伝を受け取ろうでは無いか。

 

 

 

♠︎

トレーニングと勉学を両立してからだいぶ経つ。

トレーニングから二ヶ月には50倍に慣れた上にゴールデンフリーザになる事が出来た。つまり父超えだ。

更に一年かけてゴールデンフリーザのコントロールはほぼ磐石となった。

残りの数年は勉学や他の技の研究に使用した。出来た技もあったが出来なかったものもある。

 

やはり『時とばし』や『破壊』は実際に目にして見なければやり方がわからないし『元気玉』や『界王拳』はどうやっても不可能だった。

やはり自身は悪だという事を再確認できたいい機会ではあったが。

 

そうして、着々と戦闘力を伸ばしていた矢先父からある命令を受けた。

 

「フリーザよお前もそろそろ惑星侵略をしてもらう。だがお前1人でだ。これは儂がお前が我が一族に相応しいかどうか確かめる試練でもある。心して掛かるといい。」

 

「ええ、わかりましたよ父上。で?私は何処へ向かえば?」

 

 

 

「惑星ルード。それが今回お前が向かう惑星の名だ。」

 

 

惑星ルード。

確かそこはGTで出ていた名前だったか。

究極ドラゴンボールを求めていた悟空達の前に立ち塞がったマシンミュータントのルード。

後はパラパラブラザーズ辺りぐらいしか印象に残っていないが。

 

「その惑星は最近宇宙中から謎の信仰者を集め勢力を伸ばしているらしい。

大した事では無いとはいえ勢力を伸ばされては面倒でな。頼んだぞフリーザよ。」

 

 

 

♠︎

個人用のポッドに乗って行く事約数ヶ月。

ようやく惑星ルードに到着した。

それにしても遅い。これは宇宙船の性能の向上にも着手すべきだろう。

 

「さて…ここが惑星ルード。ですが私には大した感傷もありませんしさっさと終わらせてしまいましょう。」

 

気を全身に張り巡らし、空へと浮く。

そして紫の気を掌に圧縮させて放つ。

要は魔人ブウが神の神殿にいた際行った地球全土の住民にした事と全く同じ。

住民にある僅かな気を探知して追撃し殺すホーミング弾は簡単に見えて実はかなり複雑なコントロールが必要だが私には大した問題でも無い。

ルードがいた場合は面倒だが、操縦者である奴を先に殺してしまえば戦力として奪えるだろう。

 

「…ハァ!!」

 

掛け声と共に気弾を放つ。

先ずは最も大きい気から…おやいない。

やはりルード教ではなく別の宗教。こんな昔にミューは来ていない事は分かっていましたしね。

ということはこの星は宗教の苗床として最適であり

ルードというのは元々の名前なのでしょう。

 

まぁ、私には関係ありませんがね。

 

小さな気を全て見失う事なく貫き消失させる。

人口はそこまで多く無いのが幸いし、約5分後には全ての気の消失を確認した。

 

「……拍子抜けですねぇ。まぁ楽で良いでしょう。」

 

後で生き残りがいると面倒ですし、最後に確認と掃除だけはしておきましょうか。

 

 

 

恐らく住宅街だったであろう所へ降り立つ。

辺りは頭が吹き飛び血を夥しく流す死体や心臓を貫かれしかし辛うじて生きているもので埋まっており、そしてそれらが放つ鉄の匂いが充満していた。

 

「ぁ…た、たすけ」

 

「…。」

 

助けを求めた者は例外なく留めを刺して行く。

そして、全ての生命が死んでいる事を確かめ再び気を放出する。

今から行うのは掃除だ。汚れた床を綺麗にするための。

惑星の表面ギリギリを削り血の痕跡を消す。勿論自然は残したままだ。

その後はさっさとポッドに乗り込み帰還する。

 

 

 

フリーザが去った後の惑星ルードはまるで初めから誰も居なかったかの様に綺麗であったそうだ。

 

 

 

♠︎

「よく帰ったぞフリーザよ!お前の活躍は近くに配置した偵察員からよぉく聞いておる!素晴らしい!あの状態ならばかなりの高値で売れるだろう!お前は我が一族の誇りだ!ハッハッハ!!」

 

「ええ、ただ今戻りました父上。そして…。」

 

「フン、帰ったか弟よ。あの程度の星ごときでくたばるかと思っていたが。」

 

「あの程度の星でやられる私ではありませんよ兄上。」

 

「…チッ。」

 

「さて、お前も晴れて立派な帝王の素質を持つ者になった訳だが…お前には褒美を与えようと思っておる。」

 

「へぇ…それはどのような?」

 

「なんでも構わんさ。お前にはそれ程期待しておるからな。」

 

「ふむ…では私に宰相の地位を与えて欲しいのです。」

 

「宰相とな?どういう事だ。」

 

「いえ、簡単な話です。私は帝王の座を兄上が受け取るべきだと考えました。」

 

ズシリ。と空気が重くなる。

それは兄であるクウラから発せられたものだ。

 

「…なんだと?貴様、俺を侮辱しているつもりでは無いだろうな?」

 

「おやおや滅相も無い、ただ面倒な惑星の管理などを私が引き受けようと考えたからです。他意はありませんよ。」

 

「…フリーザよ、詳しく聞かせてくれ。」

 

ええ、勿論。

その為にこんな場で私は宣言したのですから。

そう言おうとする口を押さえて概要を説明する。

 

「先ず、はっきりと言わせてもらいますが兄上は支配が雑です。」

 

「なんだと!?」

 

激昂するクウラをコルドは睨みつけ抑える。

 

「抑えよクウラよ。儂からも言うがお前は雑にすぎる。」

 

「……チッ!!」

 

そんなクウラに内心で溜息をつきながら更に続ける。

 

「ですが、帝王として兄上の様は恐怖の象徴として正に相応しいと私は思いました。」

 

「ほう。それで?」

 

父が興味を示した、後は王手を掛けるだけだ。

 

「ですので私は考えたのですよ。軍に二つの顔をつけようとね。」

 

「…成る程、考えたな愚弟よ。」

 

「お分かりになりましたか。そうです、兄上が恐怖の顔を持ち私が経済の顔を持つ。勿論頂点は兄上です。どうです?悪い話では無いでしょう?」

 

「…確かに悪い話では無い。俺が頂点であるならば貴様の意見に異を唱えるつもりも無い。だが一つ聞かせろ。貴様、何を企んでいる?」

 

ふむ、何をですか。

特に困る事も無いので言ってしまいましょうか。

これを言った方が操りやすくなりますからね。

 

「別に何もありません。強いて言うならば私と兄上に相応しい立ち位置があったから進言しただけですからね?」

 

そう言うとクウラは顔を破顔させ、大声で笑った。

ええ、そのまま笑い続けていなさい。

 

 

その用意された破滅の城で……ね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー。

・クウラについて
兄弟仲はまぁまぁ。少なくともゲームよりは良い。
自身の下と認めた弟に一種の疑惑はあるものの、帝王の座に到達した嬉しさが上回った。

もしかして、ナメック星編。


・惑星ルードについて
完全にオリジナル。というかGTをみてあんなに集まるんだったら
宗教が集まりやすいのかなと思った結果。
因みに裏設定で宗教と偽装したレジスタンスという設定だったが
フリーザがそんな事を知るはずが無く、全滅したとさ。
なお、ルード。


・大王大勝利のお知らせ。
意図せずして願いが叶ったコルド、ここから引退の為の準備を始める。
なお、裏では。




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配下収集。

私が新体制を提案してから数年、父は名目上の頂点にはいるものの基本的にはクウラと私の二大制度で軍を運営していた。

 

主な役割は反乱の兆しがある者や裏で暗躍するものを私が発見しクウラがそれを滅ぼす。

惑星関連といえば主に私が担当している。

だが、軍は元々父の物であり私の物ではない。

親の七光りと裏口を叩く者も少なくなく、更に仕事をかなり適当にやっている者が多い事が書面から見てとれた。

父からの斡旋でザーボン、ドドリア、そしてギニューは紹介して貰っていたが

あの方達も随分と苛立っている様子だ。

彼等には私の実力をほんの少し見せているので、実力に反して現状を打破できていない私への苛立ちも多少はあるのだろう。

 

 

そんな事もありそろそろ実力行使で黙らせてやろうかと私自身も苛立ちを隠しきれなくなりそうになったある日。

 

「おい、フリーザよ。付いて来い。」

 

「おや、どうしましたか兄上?」

 

「今、父の傘下の惑星である催事が行われている。

といっても格下どもの武術大会だがな。

そして本題はここからだが優勝者は我が軍への入隊が決まっている。

俺の部下として果たして見合うかどうか見極めるのも一興だ。付き合え。」

 

「はいはい、分かりましたよ。」

 

 

♠︎

 

 

クウラからそんな命令を受け、私はある惑星へと同行した。

その惑星は高温の惑星ではあるものの気のバリアをはればそんなに大した訳でも無い。

そんな中クウラが言っていた大会は今まさに決勝を迎えようとしているようだ。

惑星のスタジアム前の電光掲示版が煌々とその事を教えており、私達の目の前には小太りな男が立っていた。

 

 

「へ、へへ。よ、ようこそお越しくださいました。クウラ様、フリーザ様。」

 

「…貴様は?」

 

「今大会の主催者であるカーマネと申します、へへ。」

 

「では、カーマネさん。決勝戦はどなたとどなたが闘うのでしょうか?」

 

「え、ええ。決勝戦はサウザーとジースの対決になっています。へへ。」

 

サウザーそしてジース。

どちらもフリーザとクウラの部下となる者達。

丁度良いですね。

どちらが勝とうが構いませんがジースさんは貰っておきましょうか。

 

「フリーザよ、どちらに賭ける?」

 

「では、ジースさんの方にしましょう。」

 

「では俺はサウザーの方だ。そら、チップだ受け取れ。」

 

「へへぇ!ま、毎度あり!」

 

 

会場内では、100を超えた戦士達から選ばれた者ともあって会場内は大きな歓声が上がっていた。

既に決勝は始まっており、気の刃を振り下ろす男と多くの赤の気弾を宙に滞空させ一斉に放つ男の姿があった。

その様子を私達は特等席の中その会場を見下ろしていた。

 

「ふん、やはり格下か。…が、サウザーとやらには見所があるな。」

 

「そうですねぇ、両者の実力は拮抗していると思っていたのですが…どうやら私の思い違いだったようです。」

 

「そのようだなぁ愚弟よ、見ろ。サウザーの方が圧倒している。」

 

やはり、戦闘力の差は大きいのか最初は互角の様に見えていた2人の戦いの流れは一気にサウザーの方に傾いていた。

気の刃を振り下ろしジースはそれを必死に避けている。

体力切れも時間の問題だろう。

そして、数分も経たないうちに刃が首元に突きつけられジースの降参で大会は幕を閉じたのであった。

 

 

表彰式、私達は表彰台のすぐ後ろで待機していた。

どうやら折角なのでここで軍への加入を行いたいという。

ならばと私は一つ提案した。

 

ーー優勝者はクウラに、準優勝者は私の部下にしては?と。

 

クウラ自身は特にそれに異議を問う事はせず、カーマネは難色を示したが遂には権力の元に屈した。

そして軍への加入の時。

 

「サウザーよ、今日から貴様はこのクウラの部下となる。決して失態は許さん。そして貴様が一体誰に仕えているかその目を持って確かめるが良い!この宇宙最強の帝王クウラ様をな!!」

 

「はっ!このサウザーこの身の全てを捧げお仕えする所存です!」

 

「ふん、精々俺の期待を裏切るなよ?」

 

 

「さて、ジースさん。貴方は今日から私の部下になって頂きます。」

 

「…一つ聞いてもいいですか?」

 

「ええ、どうぞ?」

 

「どうして負けた俺を仕官してくれるんだ?」

 

「簡単な話です、私は貴方に可能性を見た。それだけの話ですよ。」

 

「……はい!このジース、精一杯尽くしますぜ!」

 

「ええ、貴方の活躍に期待していますよ。一先ず貴方はギニューという方の部下です、しっかりと学びなさい。」

 

「はい!」

 

さて、これでギニュー特戦隊も2人目ですか。

さてさて、これからどうなる事やらと多少の期待を膨らませフリーザ達は2人の部下と共にその星をたったのだった。

 

 

♠︎

 

ジースの一件が切っ掛けとなったのか。

その後はどんどんと特戦隊のメンバーを始めとしたフリーザ軍の一員が揃い始め

遂にはフリーザ軍はコルド軍にも引けをとらない巨大な軍隊となった。

 

逆にクウラは機甲戦隊のメンバーであるドーレとネイズ、

その他はクウラ自らが選別した選りすぐりの少数の人数の兵隊を編成。

 

そこまで来てしまえばコルド軍もクウラ兄弟に大きな口をきけなくなり

更には嫌でもわかってしまう兄弟の圧倒的な力に完全に怖気ついてしまっていた。

 

更に数年が経過。

コルドは自らの潮時を判断し10年以内の引退を宣言。

フリーザはその事から大きな時代の流れを感じとる。

それはいよいよ流れが始まるという合図。

 

サイヤ人によるツフル全面侵略がすぐそこまで迫っていたのだ。

 

それから1年後フリーザは遠くのある気がある目的地へ近づいている事に気づく。

それはガーリックの遺志を継ぐガーリックJrと魔凶星であった。

魔族は魔凶星が近づけば近づくほど戦闘力が大幅に上昇するのは知っていたが戦闘力が段違いだ。

少なくとも以前の第二形態程の力はあるだろう。

 

ーーこれは…期待できそうですねぇ。

 

フリーザは薄く笑みを浮かべてその場へと瞬間移動するのだった。

 

 

♠︎

 

ガーリックJrは困惑した。

地球に向かう際、魔凶星をなるべく近くにする様にしていたのもつかの間。

いきなり現れた(・・・・・・・)白の存在に。

だが、この程度で動揺していては魔族としての誇りが失われる。

そう考えたガーリックJrは悠然な態度で目の前の存在へと話しかける。

 

「貴様…一体何者だ?」

 

その存在…フリーザは薄く笑みを浮かべてながらこう答える。

 

「あぁ、失礼しました。私の名はフリーザ。貴方を部下に迎えようと思いここにやってきました。」

 

ガーリックJrは更に困惑した。

こいつが、この俺を部下に?魔族の頂点に立つこの俺に対してだと?

 

ガーリックJrの小さな身体がみるみるうちに肥大化し体皮は濃くなっていく。

更に側に潜んでいたガーリック三人衆と魔族四天王もまた身体を肥大化させ

戦闘力をどんどん増大させていきながらフリーザの小さな体に詰り寄っていく。

 

「クックック……ふざけるなぁ!!」

 

全ての魔族がフリーザに向かって襲いかかる。

だが、フリーザはその場から一歩も動こうとしない。

そのまま笑みを浮かべてその時を待っている。

 

「死ねぇ!!!」

 

そうして拳は振り下ろされる。

その全てがフリーザに命中するもフリーザはひるむ様子も無く笑みを深める。

 

むしろ、

 

「グッガァァア!!!?ば、バカなぁ!!?」

 

殴ったガーリックJrの方が拳を痛がる始末。

更にガーリックよりも戦闘力が低い面々は腕の骨が粉々になりその場で蹲りその痛みに絶叫している。

 

「おや、どうしました?貴方方の力はその程度の物ですか?」

 

フリーザは笑みを崩さず、まるで幼子をあやす母親のように語りかける。

その姿に三人衆や四天王は震え上がり気絶する。

しかし、ガーリックJrはその事に更に怒りがまし身体の筋肉量が増大する。

その肥大化のまま今度はフリーザに乱撃をかます。

顔を、腰を、足、腕、そして首を。

力加減など一切関係ない。全てを全力のまま連打、連打!

一方のフリーザは笑みを崩さない。

それどころか首への攻撃でデスクワークの疲労がとれたらしく知らず知らずの内にホクホクとした笑顔になっている。

 

「さて、マッサージもして頂いた事ですし改めて聞きましょうか。私の部下になる気はありませんか?」

 

ガーリックJrは更に激昂。

当然だ、己の全力をマッサージとまで侮辱するコイツをなんとしてでも殺さなくてはならないという怨念だけが増していく。

遂には己の味方の安否すら忘れ最終手段に出る。

 

「オ、オノレェエエエエ!!!何処までもこのガーリック様を侮辱しやがってぇええええ!!もう許さんゾォ!!!このデッドゾーンで貴様を無限の地獄へ送ってやルゥウウウウ!!!」

 

ガーリックJrの最終手段、『デッドゾーン』。

背後にブラックホールそのもののようなモノが展開されてはいるがそれはあくまでも見た目だけ。

本来は別空間に存在する無限の地獄へと相手を叩き落す格上にも届きうる技である。

 

だが、ことフリーザとガーリックJrの差は正に天と地。

更にはフリーザにとってこの技は大した事も無く、指先に気を集中させた唯の気弾でそれを消しとばす。

更にはその技の被害を食らわないように他の魔族を念力によって固定するまでの余裕を見せる。

 

「…では、答えをお願いいたしますね。」

 

その行動、その笑顔、その変わらない質問に。

大海を知った蛙もといガーリックJrの精神はバラバラに崩れ去った。

 

♠︎

その後ガーリックJrは牙が取れた老犬のように唯、大人しく首を縦に振った。

それを見た彼の腹心達は己の運命を悟りフリーザへと永遠の服従を誓うことになる。

ガーリックJrの服従をしった他の魔族もまた次は我かと恐怖に怯え次々とフリーザ軍への服従を誓い始める。

そうして、魔族すら取り込んだフリーザ軍は更に強大化。

コルド大王をして最大の軍団とまで知らしめる軍団へと増大する。

 

そして、これならばとコルド大王はある事をフリーザに伝える。

 

「フリーザよ、ここまで軍を増大させたその手腕を買いお前にある事を頼みたい。」

 

「ええ、引き受けましょう。してどのような事でしょう?」

 

「うむ、近々始まる戦争。その監視にお前の軍を派遣してほしい。」

 

 

その言葉にフリーザはいよいよ自らの道が始まるという確信を持ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・サウザーとジース。
同じ惑星という情報はあったため、じゃあどうやって軍に入ったのかと考えたらこんな事に。
ライバルという設定もあったので存分に利用しました。

・ガーリックJr
ここでも原作崩壊。
ガーリックJrくん、まさかの知将。
魔凶星と一緒に地球に来襲予定、しかも魔族オールスターズ。フライングで役満。
このまま地球まで行っていたら間違いなくドラゴンボール終了のお知らせだった。

・ツフルとサイヤの戦争。
年号は明記されていないので悟空が生まれる9年前に設定。(737年生誕)
つまり728年。
因みにドラゴンボール超ブロリーではフリーザがサイヤ人の統治を始めたのが41年前。








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ツフルと魔族とサイヤ。

6.6 軽い修正を入れました。


エイジ728年、遂にその時がやってくる。

長らく星内で支配者層と労働者層の関係を巡り

小競り合いを繰り返していたツフル人とサイヤ人だったが

決着を付けるべく当代のベジータ王が軍隊を率いて惑星プラント中枢へと侵攻

ツフル人は強大な科学力によってこれを迎撃する。

 

「行け!我がサイヤ人の力を今日こそ思い知らせてやる!!」

 

「サイヤが来たぞ!各自迎撃せよ!」

 

暴力のサイヤと科学のツフル。

初めはその科学力によるツフルが優勢だったものの夜になり満月になった瞬間

形勢は逆転する。

 

そう、ベジータ王は満月の日を狙ってここの反逆を決行していた。

科学力は全宇宙で屈指だとしても、素の戦闘力が低いツフルは一堪りも無い。

暴力の化身である大猿に次々と身体を潰されていく。

 

その侵略の中、監視を命じられたフリーザは配下のギニューに一時的な軍の指揮権を与え惑星プラントへと足を伸ばす。

そうして、ある人物と接触を図っていた。

 

「だ、誰だ!貴様は!」

 

「私の名はフリーザといいます。…一つ貴方に提案があるのです。」

 

 

ーーDr.ミューさん?

 

 

さて、今回のフリーザの目的はツフルの科学力…ではない。

Dr.ミューとDr.ライチー。彼等のスカウトがフリーザの目的だ。

彼等はツフルの中でも有数の科学者である。

ミューはベビーやルードといったマシンミュータント。更に超17号などのオーバーテクノロジー。

ライチーは自らすらも媒介とした怨念増幅装置ハッチヒャックそしてデストロイドガス。

 

両者ともサイヤを憎んだ敵として悟空達を苦しめた至高の科学者である。

そんな彼等を逃す手は無いと睨んだフリーザは父の命令を利用しフリーザ軍の更なる増大を目論んでいた。

特にベビーは戦力としても余りに貴重な存在。

いずれ彼を利用したある作戦の為にせめてミューだけでも必ず迎え入れたい。

そんな思いを抱えフリーザは今彼の前に立っていた。

 

因みにフリーザは今自身を2つに分けている。

1人はこちらにおりもう1人をライチーへと差し向けている。

既にライチーはこちらへの参入を決めており後はこちらのみなのだが

こちらのフリーザは知る由も無い。

ミューと言えば、唐突に現れたフリーザを信用する訳もなく

疑惑の目を向けフリーザへと問いを投げかける。

 

 

「…貴様もあのサイヤ人の仲間か?」

 

「いいえとんでもない。私は貴方を助けに来たのですよ?」

 

「戯言を…!!仮にそれが真実だとして私が頷くと思ったか?」

 

「ええ、勿論。貴方の様な優秀な科学者ならばこの星の運命も予想できるはず…違いますか?」

 

ミューはその言葉に黙り込む。

フリーザの言った言葉はミューが既に予測していた事に知っていたかの様な口調だったからだ。

確かにミューは既にこの星がどの様な結末に至るかを予測している。

彼の優秀な頭脳はあらゆる可能性を弾き出しそのどれもがツフルの滅亡であると確信したが故に自らのラボに篭り、サイヤという嵐を耐えようとしているのだ。

 

「…確かに私はこの星がどうなるか想像した。だがそれが貴様に何の関係が…」

 

次の言葉を言おうとした瞬間。

 

()()()

 

フリーザの言ったその言葉に絶句した。

何故だ、何故お前が私のソレを知っている!!?

未だ開発段階にあるミューの最高傑作となるベビー。

情報隠蔽は完璧で、王以外の他のツフル人はその存在すら

知らなかったその情報を何故知っていたのか。

ミューの頭は酷い混乱状態に陥る。

 

 

その隙をフリーザは見逃さない。

 

「彼を完成させたくはありませんか?」

 

「私の軍に入れば最高の環境を約束しましょう。金を惜しむ必要もありません。」

 

「あぁ、貴方専用のラボも作ってあげましょう。少なくともここよりはきっと快適になるはずです。」

 

フリーザの投げかける、甘く溶け落ちる様な誘惑にミューは次第に引き込まれていく。

一度、ハマってしまえばもう抜け出す事は出来ない。

ミューはもうフリーザの掌の上だ。

それを確認したフリーザはトドメを放つ。

 

「そして、見たくはありませんか?己の最高傑作がサイヤ人を無残に殺す所を。」

 

そして、ミューは。

 

「…あぁ。勿論だとも。」

 

 

完全に欲望の底へハマっていったのだった。

 

 

♠︎

 

フリーザがミューとライチーを自らの宇宙船へと引き入れた数分後。

大猿の雄叫びがそこら中に響き渡り侵略の終わりを高々に告げた。

滅んでいく星を見ていたミューとライチーの手の平は硬く握った所為で血が滲んでおり、その憎しみを抑えきれてはいなかった。

 

フリーザはその姿を見て己の更なる増大を確信する。

その予想は的中。

ツフルの高度な科学力によりスカウターを始めとした様々な道具が生産され

それは全軍に支給される。

これをミューとライチーは己の作品の片手間に作ってくれるのだからこの世界の科学者は誰も彼もがおかしい。

 

その三年後のエイジ731。

サイヤ人の王ベジータ王がコルド大王の元へと推参し服従を誓う。

どうやら、ツフルへの侵略時にコルドへの服従を約束とした密約がかわされていたそうだが、反対派の粛清に思ったよりも時間が掛かったらしい。

 

この事をミューとライチーにも伝えはしたが特に反応は無かった。

ミューが言うには

 

「奴らの狂暴性からみてすぐに奴らはお前達を裏切るだろうさ。その機を狙って皆殺しにすればよい。それに…」

 

ミューの背後に浮かぶ培養液にはベビーらしきものがその命の息吹を吹かせていた。

 

「こやつももうそろそろだ。」

 

邪悪な笑顔でミューはそう告げる。

ライチーは既にハッチヒャックを完成させており今後はフリーザ軍への発明品をメインにおいてくれるそうだ。

 

その間、フリーザはコルド大王から更なる指示を受ける。

 

「フリーザよ。どうやら、我が領土である惑星を違法に改造している魔族がいるらしい。その魔族を服従あるいは抹殺するのだ。」

 

「わかりましたよ、父上。」

 

フリーザはその魔族の気を即座に探知。

瞬間移動によってその者の目の前に立つ。

 

「ん……何者だ…?貴様は?」

 

目の前にいた物はかなり年老いていた。

フードで隠している顔は皺くちゃで目は今に落ちそうである。

見るからに寿命間近の老年であった。

 

フリーザはその顔を見てこの男はスラッグであると確信する。

となれば、彼の懐柔はそう難しくは無いだろう。

そう考えたフリーザはこうスラッグに告げる。

 

「初めまして、私はフリーザと言います。」

 

「フリーザ……あ、ぁあコルドの息子…か。」

 

「おや、よくご存知で。では話が早い。スラッグさん、若がえりたくは無いですか?」

 

スラッグはピクリと眉を動かす、余りにも真っ直ぐ言われた言葉に困惑の色を浮かべフリーザの真意を問いただす。

 

「どういう…事だ?」

 

「スラッグさん、貴方は日光に苦しんでいる。そうですね?」

 

「ぁあ…昔はそうではなかったが年を取り老いていくにつれ太陽が苦手になってな…今では1時間と持たない。」

 

「…貴方が永遠の若さを得られるとしたらどうします?」

 

「………本当に、そんなものがあるのか?」

 

スラッグの目に一つの光が宿る。

皮肉にも年を取った際に得た落ち着きがフリーザの言葉を信じるものだと直感してしまったのだ。

スラッグは老いによる死を何よりも恐れていた。

自らの野望も果たせぬまま日に日に衰えていく自分の体に吐き気すら覚えた。

だが、もしも己の最も力の溢れていた頃に戻れるならば?しかもそれが永遠なら?

スラッグはそんな吊るされた最後の希望にしがみつく程に耄碌してしまったのだ。

 

そんな老年にフリーザは更に蜘蛛の糸を垂らす。

 

「今、貴方がこの星の改造を辞め、私に服従するのならば貴方をその老いの苦しみから解き放って差し上げましょう。どうです?」

 

「……待て、まだその方法を聞いていないぞ。」

 

「貴方の選択が先です。」

 

スラッグはしばし硬直し

このまま従い若さを取り戻した時に奴を殺せばいいと結論付け答えを出す。

 

「わかった、お前に下ってやろう。」

 

「では、これからよろしくお願いしますね、スラッグさん。貴方の働きに期待していますよ?」

 

「…フン。で、方法とはなんだ。」

 

「…ドラゴンボール、7つのある特殊な球を集めると龍が現れ何でも願いを叶えてくれるそうです。」

 

「……裏切るなよ、コルドの倅よ。」

 

「ええ、勿論。」

 

 

♠︎

 

スラッグがフリーザ軍へと下って更に8年が経過。

コルド大王が引退する旨が決まる。

 

そして。

 

「フリーザよ、貴様にサイヤ人の指揮を任せることにしたい。」

 

「おや、私でいいので?兄上はどうしたのです?」

 

「……この俺に猿の世話をしろと?」

 

「いえ、別に。…確かに承りましたよ父上。」

 

 

エイジ739年。

フリーザはサイヤ人の指揮を任せられる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー。

・ツフル系科学者。
原作のGTやサイヤ人絶滅計画よりも設備が大幅に向上した為
ベビー、ルード、リルド将軍、ハッチヒャックの戦闘力上昇。
フリーザ軍設備も大幅に改善。宇宙船も某長寿宇宙映画並に早くなった。
因みにこれでもブルマ一家がいれば簡単に果たせるという謎。

・スラッグについて。
太陽の下では一時間はどう考えても変と考えてはいたのだが
そういえば同じく老年の最長老も室内に篭りっぱなしだったので
ナメック星人は老いれば老いる程太陽に弱くなる設定に。
これは独自設定なので悪しからず。




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蟻の叛逆と破壊神

惑星ベジータ。

かつて惑星プラントと呼ばれたその星はそのあり方を変えベジータ王を中心とした地上げ屋の拠点である。

 

その惑星ベジータに巨大な宇宙船の一団が来襲する。

王座からその宇宙船を見たベジータ王は即座に歓迎の準備、そして暗殺の準備を指示し宇宙船の着陸位置へと向かっていった。

 

ベジータ王がついた時には既に宇宙船のハッチは開かれようしており

その中から何度も苦渋を飲まされた元凶であるコルドとクウラ

そして、その隣には見た事も無い奴が降りてこようとしていた。

ベジータ王はコルドに近づき握手をしようとする。

 

「これはコルド大王にクウラ様!よくぞ参られた!」

 

「……フッ。」

 

だが、コルドはこれを無視し自らの重大な発表をする。

 

「皆の者!儂は引退する事にした!そして紹介しよう。こやつが貴様らの新しい主人だ。」

 

フリーザは父からの紹介を受け、前に出る。

ベジータ王は名も知らない新しい主人と言われた者から出る謎の圧に圧倒されていた。

 

「初めまして。これから貴方方の指揮を取らせていただくフリーザと申します。よろしくお願いしますね?」

 

「……っ!!」

 

ベジータ王は得体の知れない何かに呑まれると同時にサイヤの本能すら捨て去り臣下の礼を取っていた。

背後に着く部下達も我れ先と取り始める。

その顔からは大量の汗が吹き出し恐怖が滲み出ていた。

 

「おや?返事が無いようですが?」

 

「あ、あぁ。こちらこそですフリーザ様…!」

 

フリーザはそれを見て蔑む様な笑みを浮かべ、コルドは満足そうな顔をし

クウラは心底呆れた顔をする。

ベジータ王は自らが何をしでかしたのかをようやく自覚でき

下げた顔には憤怒が籠っていた。

 

コルドは更に宣言する。

 

 

「これからはこの儂の息子であるフリーザが貴様らの指揮をとる!…なぁに貴様らのやる事は変わらん!今まで通りに従ってさえいれば良いのだ!」

 

そう言い、高らかに笑うコルド。

その間ベジータ王は腕につけてあったブレスレットが反応するのを確認した。

これはフリーザ達を暗殺する準備が整ったという合図。

ベジータ王は意を決し射撃の合図を送りに入る。

 

「そ、それでフリーザ様。他にはどんな御用件で……?」

 

「あぁ、そうでした。実は貴方方にこれを差し上げようと思いましてね。」

 

フリーザは指を鳴らし、部下を呼ぶ。

その部下が持ってきたトランクを開けると中には目につけるであろう機械が仕舞われていた。

 

「これは、私達の軍が新しく作り出した新しい戦闘力測定装置です。

名前はスカウター。これは以前の粗悪機から大幅に性能が上がったものです。

一先ずは…50個支給しておきましょう。

また必要になった場合は随時報告を。

…勿論、有料ですがね?」

 

「では、今回の私の要件は終わりましたので失礼します。これから貴方方とはいい関係を築ける事を祈っていますよ?」

 

ベジータ王は部下にそれを受け取らせ、フリーザが背を向けた瞬間に腕を上げようとして。

 

「あぁ、それから私の暗殺など貴方方の戦闘力では不可能だと伝えておきましょうか。…聞いていますか?これは慈悲で言っているのですよ?

私も駒を無意味に減らしたくはないのでね?」

 

…結局、フリーザが宇宙船へと乗り

そこを立ち去るまでその腕が上がる事は無かった。

 

「……くそったれが。」

 

知らずして出た若い頃の口癖と共にベジータ王とその部下達もその場から去るのだった。

 

 

♠︎

 

フリーザがサイヤ人を指揮し始めて少し。

彼はDr.ミューからベビーが完成したとの報告を受け、彼のラボへと向かっていた。

だが、ミューのラボへと入り辺りを見回してもベビーらしき人物が見当たらない。

 

「……ふむ。」

 

フリーザはその事に疑問を抱きつつも今はミューの知らせに集中せんと

彼を待っていた。

 

「おお、来たかフリーザよ。」

 

そうして直ぐにフリーザの来訪を察知したミューがやってくる。

しかし彼の背後にもベビーらしい存在はない。

 

「ミューさん。私は貴方がベビーを完成させたという報告を受けてここへ来たのです。さっさとそのベビーを見せていただけると嬉しいのですが。」

 

「まぁ、そう焦るなフリーザよ。私とてようやく完成した我が最高傑作に歓喜しておった。このぐらいは勘弁してくれると嬉しいのだが?」

 

「…まぁ、いいでしょう。それで肝心のは?」

 

その言葉を聞いたミューの周りの空気が一変する。

そうして彼は邪悪な笑みを浮かべて。

 

「あぁ……見せてやるとも……」

 

 

 

 

「お前が見る事は無いがな!!!」

 

 

ミューの顔が決壊し、何者かの腕がフリーザに向かって迫る。

 

「何!?くっ…!」

 

フリーザは驚きはしたものの前方に張った気のバリアによってこれを弾く。

だが、その腕はその弾かれた衝撃を利用してフリーザの背後を取る。

 

「しまっ……!!」

 

「終わりダァ!!貴様の肉体はこのオレが頂く!」

 

そしてその腕は容易くフリーザの腹を貫いた。

 

「……ごぷっ!!」

 

フリーザの吐血と共に腕は引き抜かれ、背後を振り向く

そうする事でその何者かの姿がその全容を明かす。

 

「あ、貴方がま、まさか……!!?」

 

「クックック……そうさこのオレこそが貴様の言うベビーだ。…最もその名前を聞くたびどんなに腑が煮えくり返った事か……!!」

 

その姿はフリーザが知る幼少体では無く、既に青年体。

ここで、フリーザは自らの失態を悟った。

そしてベビーは下衆な笑みを浮かべ、フリーザの前へと立つ。

ベビーはフリーザの傷をみて彼が動く事は不可能と判断。

その笑みを勝ち誇った者へと変えてフリーザへと告げる。

 

「な、何故……何故貴方がもう既に……!!」

 

「ククク……冥土の土産に教えてやろう。

オレはエイジ731にはもう完成していたのだ。他ならぬ貴様のお陰でなぁ。

そして貴様を騙すため、オレはこのガラクタになりすましオレの強化パーツをオレ自身と偽りながら貴様を乗っ取る機会をずぅっと待っていたのさ!!」

 

「そ、そんな…まさか…こ、このフリーザが…こんなと、ところでぇ…!!」

 

「フハハハハァ!!!安心しろ!貴様の肉体はこのオレが乗っ取り全宇宙ツフル化計画の最高の肉体として使ってやるさ!!」

 

ベビーの笑い声がラボ内に木霊する。

フリーザはその顔に苦渋の顔を浮かべ断末魔の叫びを上げる。

 

「ち、ち、ちくしょおおおおお!!!!」

 

ベビーはその顔を見て更に笑い声を増し、フリーザへと寄生しようとして

 

 

 

「なんてね。」

 

 

 

そのフリーザの正体に気付いた。

 

「な、こ、これはま、まさか……!!」

 

そして、ポチという音が聞こえると同時にそのフリーザは爆発し

ベビーはその血をモロに喰らうことになった。

 

 

「ぐがっ…!め、目が見えん…!」

ベビーは顔にベッタリとついた血液を拭おうとしながら辺りを一心不乱に見渡す。

その背後から先程まで聞いていた声が鼓膜へと響く。

 

「まぁ、そんな事だろうとは思っていましたよ。」

 

フリーザはやれやれと首を横に振りながらベビーの背後へと立っていた。

ベビーは血をぬぐいフリーザの姿を目撃し驚愕の声を上げる。

 

「き、貴様何故……!!?」

 

「アレはライチーさんに一体だけ作らせた私のクローンです。…まぁ他の方の血をも混ぜた所為か随分と弱体化していましたがね。」

 

「い、一体いつからだ!!」

 

「ラボに入った瞬間ですね。」

 

「何故わかった!!?」

 

フリーザは溜息をつきながら。

 

「……そんな事を貴方にいう必要がありますか?」

 

「お、おのれこのオレを騙しやがってえええ!!」

 

フリーザの言葉にベビーは激昂。

振り向きざまに拳を放つが、あっさりとフリーザに捕まえられ

首を尻尾で絞められていく。

 

「ぐが……い、いぎが…。」

 

それを解かんと抵抗するものの今のベビーの実力では解く事すら出来ずに

尻尾は更に力を増していく。

 

フリーザはその姿に欠伸を漏らしながら気になっていた事を聞く。

 

「さてと、私からも一つ質問があります。それさえ答えてくれればこの尻尾をどうにかして差し上げましょう。」

 

顔がどんどん真っ赤になっていき思考力が低下しているベビーにそれを断る選択肢は無い。

 

「わ、わがっだ!!は、話す!」

 

「では、遠慮なく。貴方はいつから意識があったのです?」

 

それこそがフリーザの気になっていた事。

フリーザは、ベビーという生物がミューによって生み出されていたのは知っていたが反対にミューの完成時期を把握してはいなかった。

その穴が今回の事態を引き起こした事を悟り、反省していたのだ。

 

「き、貴様が初めてガラクタのラボへき、きたいぢねんまえのどぎがらだ!!」

 

これにはフリーザも驚いた。

そしてやはりベビーは本当に必要な人材である事を再確認したフリーザはベビーに首輪をつける為ある行動に出る。

 

「成る程……そして貴方は一年間を使ってミューさんを建造したと。一つ謎が解けた気分です…では死になさい。」

 

「!!!?な、なぜ!!?」

 

「おや?私がいつ放す(・・)と言いましたか?」

 

「!!し、しまっだ!や、やめでぐれ…こ、このオレがこ、こんな所でぇ…!!」

 

「では私に永遠の忠誠を誓うと、今この場で約束なさい。…それともこのまま…!!」

 

フリーザは尻尾の力を更に加え首をへし折らんとかかる。

ベビーはジタバタと抵抗を繰り返すが効果はない。

遂にベビーはフリーザに従う屈辱よりも己の命を選択する。

 

「わ、わがっだ!!じだがう!!」

 

「その言葉…確かに聞きましたよ?」

 

フリーザは悪辣な笑みを浮かべてベビーを尻尾から解放する。

ベビーは首を絞められた所為か大量に咳き込み、そしてフリーザを睨みつける。

 

「お、おのれぇ……!!」

 

フリーザはそれを意にも介さずにこう告げる。

 

「まぁ、安心なさい。貴方にはとっておきの肉体を用意して差し上げますからね。」

 

それにベビーはピクリと反応する。

 

「……本当だろうな?」

 

「ええ、勿論ですとも。」

 

フリーザの即答に疑惑の目を持ったものの今の自分では確実にコイツには勝てないと判断したベビーは本当に業腹だがフリーザへ従う事に決め首を縦に振った。

 

それを確認したフリーザは笑みを浮かべ、大量の書類をドン!とベビーの目の前に置く。

 

「あぁ、ではこの仕事をお願いしますね?ベビーさん?ホッホッホ!!」

 

そして上機嫌のまま立ち去っていくのだった。

その姿にベビーはワナワナと震え。

 

 

「アイツ……いつか殺してやるっ……!!」

 

そう誓ったのだった。

 

 

♠︎

そんな騒動から1年が経過。

順風満帆だったフリーザの元に遂に彼自身が最も警戒していた人物が現れる。

 

「へぇ〜これが次のサイヤ人のねぇ。」

 

その猫のような姿からは想像もつかない程の気の奔流をその一言だけで感じ取る。

そしてフリーザは直感する。

 

ーーまだ、勝てない。

 

そう思わせてしまう程の人物。

 

「はい、そのようですよ。」

 

 

「ビルス様」

 

 

破壊神ビルスがここに降臨した。

 

フリーザは息を飲む。

それこそ父がヘーコラしている情けない姿を忘れてしまう程に。

だが、ここで後退りなど己のプライドが許さない。

故に。

 

「あぁ、貴方があの破壊神ビルス様ですか。初めまして。フリーザと申します。」

 

いつも通りの笑みを浮かべ、されど決して従順する事はない。

あるがままで彼に臨んだのだ。

その仕草にビルスは目を細める。

 

「へぇ…僕の事を軽視しているわけでもなくかと言って己を過信していない…君の様な奴に会うのは随分と久し振りな気がするよ。」

 

ーー見破られている。

やはり、まだ格の差があるとフリーザは確信し

内心で笑みを浮かべる。

いずれ超える相手だ。今の内に観察しておくべきだとフリーザは判断した。

 

 

「おや、お気に召したのですか?」

 

隣に立っていたビルスの付き人であり師匠でもあるウィスが主人の珍しい反応に興味を示す。

 

「んーまぁね。彼、僕とまでは行かないけど結構な力を持ってる。今の彼で…僕の5…いや4割に匹敵してる。こりゃあ思わぬ掘り出し物だよ。」

 

目の前にいる彼が思わぬ力を秘めている事にビルスは興味を示す。

同時にこれならばとビルスは自らの仕事の押し付け先を彼にする事に決めた。

 

一方、それを聞いたウィスはおや、と驚きはしたものの

フリーザのまだ秘められている力を見抜き品定めを始めていた。

それと同時にビルスが次に言おうしている言葉に溜息をついた。

 

「…そうだ、フリーザ…でいいんだよね君。」

 

「え、ええ。」

 

「本当はコルドにやらせる予定だったんだけど……君でいいや。」

 

「僕さぁ今とっても眠いんだよ。予言魚さんからある予言が来たもんだから早く寝なくちゃならないんだよ。わかるかい?」

 

予言。その言葉をフリーザは知っている。

恐らくだが超サイヤ人ゴッドの事だ。

では、この後39年という中途半端な眠りにつく事だろう。

それまでに力をつけなければとフリーザは思考する。

 

最もその思考はビルスの落とす爆弾に中断させられる事となる。

 

 

 

 

「だから、惑星ベジータの破壊は君に任せるよ。」

 

 

 

…荒れ狂う時代が遂にフリーザの元へと到来した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー。

・ミューとベビー。(長いので注意。)

今作の彼らの流れは。
フリーザが来る一年前にベビーの意識が覚醒。
その場にいたツフル人の科学者を改造してミューを一年かけ製造。
フリーザが来た際にはベビーはフリーザの肉体に目標を定めミューに指示を入力。
ミューが簡単に堕ちたのもこの為。
そんでもって731に完成したベビーはミューに寄生。
新たに自らの強化生体パーツを製造開始。この時にリルド将軍のM2軍団、ルードがちゃっかり誕生。
8年という長い年月をかけ、遂に完成しフリーザへと強襲。
という流れです。

ぶっちゃけ、粗がありすぎますが作者の戦闘力じゃこんなもんですのでお許しを。

・破壊神ビルス

第7宇宙最強の神にして、破壊神内でも上位な神様。
今のゴールデンフリーザでもボコボコである。
これで、ウィスやジレンとかいう更に強いのがいるからドラゴンボール世界は本当に魔境だ。
ブロリーは正直分からない。




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たったひとりの防衛戦

 

それじゃあ、僕はベジータ王に会ってから寝るから。早めに頼むよと言い放ちビルスはウィスと共にあっさりとその場から姿を消す。

 

後に残ったのは

未だ情けない姿をしているコルドと

内心頭を抱えるフリーザ。

 

直ぐに探知しようとしたフリーザではあったがビルスの持つ神の気は高次元のクリアな気である為、探知をする事は出来ない。

 

そもそもフリーザも惑星ベジータの破壊に反対な訳では無い。

最近では隠れてコソコソとベジータ王が反逆の準備を整えているのは既に把握済みであり、正直サイヤ人から得られる物はもう殆ど奪った。

金も土地も誇りもだ。

 

故にフリーザとしても今回の提案はそう悪いものではなかった。

しかしだ、記憶と違い別段サイヤ人を滅ぼす理由がフリーザには無い。

超サイヤ人など伝説とはいえあそこのサイヤ人の誰がなったとしても部下のガーリックJrすら倒せない。

だからこそフリーザは理由探しのために頭を抱えていた。

だが、滅ぼす以外の選択肢は無い。

断れば破壊で一巻の終わりだ。

 

「………はぁ。もう超サイヤ人の伝説を探った末の結論。という事にしましょうか。」

 

5分弱悩み、結果として記憶通りの理由にする事とし。

フリーザはベビーの元へと瞬間移動する。

ベビーはまた何か無茶振りでも受けるのかと警戒しながら現れたフリーザに声をかける。

 

「……今回は何の用だフリーザ。」

 

「おや、今回は依頼ではありませんよ。」

 

目を細め、疑いの眼差しで見るベビー。

はっきりいってあの一件以来、無茶振りの依頼でしか来なかったフリーザを誰が信用できるというのか?

ベビーの目はそう訴えていた。

 

「…おやおや随分と警戒されているようで。では簡潔に伝えましょう。」

 

フリーザは淡々といつも変わらぬ胡散臭い笑顔で何てことも無いように

あっさりと。

 

 

「綺麗な花火を見たくはありませんか?」

 

ベジータ星の崩壊のパーティチケットをベビーに手渡す。

ベビーはそのチケットを手にし。

 

「…いいだろう。」

 

こちらもまた悪どい笑みを浮かべ承諾したのだった。

 

 

♠︎

 

2ヶ月後。

 

惑星ベジータに向かって小さな宇宙船が飛んでいた。

 

「チッ……なんだってんだ。」

 

男はある惑星の侵略中、星から指令が下っていた。

 

ーー総員、直ちに惑星ベジータへと帰還せよ。

 

男はその指令を受けた直後に急いで惑星を征服し

今正に故郷であるベジータ星へと戻ってこようとしていたのだ。

 

だが、そんな彼の直感はこの指令に得体の知れない何かが裏にあるとボンヤリとではあるが感じ取っていた。

しかしフリーザの命令は絶対である。逆らえばウチのに変な輩が付きまとってしまう。

変な輩自体は別にぶっ潰せば問題ではない。

 

しかし。

今帰らなければ後悔する。それだけは確実だと彼は確信していた。

 

 

男の宇宙船は真っ直ぐに専用の着陸地点へと着地する。

ハッチが開き男が出てくる。その姿を確認した別の男がその者へと笑みを浮かべ近づく。

 

「よく帰ったな…バーダック!!」

 

バーダック。

身分は下級戦士であるもののその実力はエリート戦士を上回り

持ち前の戦闘センスと直感で下級戦士の筆頭とまで噂される歴戦の戦士である。

 

そして、バーダックに近づいてたサイヤ人の名はリーク。

バーダックの相棒であるがバーダックの実力を尊敬しているが故に相棒というよりも舎弟と化している。

 

バーダックはリークに今回の招集について尋ねる。

 

「なぁ、今回の招集は何だと思う。」

 

「んー、かなり大きい惑星を見つけたとかか?俺たち全員でかかんなきゃ厳しいような。……いやねぇかな?」

 

「……。」

 

バーダックは思考する。

だが、余りにも情報が少なすぎる。

考えをうち切ろうとしたバーダックを同じサイヤ人であるタロが話しかける。

 

「おー!バーダック!帰ってきていたのか!嫁さんとこには行かなくて良いのか?」

 

「うるっせぇなぁ…後で行く。…そうだ。お前、今回の招集の理由知ってるか?」

 

「んぁ?あー。そういやフリーザの奴が…。」

 

「おい、スカウターを外せ。聞かれるぞ。」

 

「お、おうすまねぇ。んで続きだが…超サイヤ人について聞き回っているとか言ってたなぁ。」

 

「超サイヤ人だぁ?そりゃ唯の伝説じゃあねぇか。」

 

「まぁそうなんだがよ。」

 

「ったく……俺はもう行くぜ。」

 

「おう!ギネさんによろしくなぁ!」

 

タロの一言にバーダックは去り際に軽く手を振ることで合図した。

だが、超サイヤ人。そしてフリーザ。

 

バーダックの中で何かがハマった気がした。

 

 

♠︎

 

その惑星ベジータの上空には巨大なフリーザの宇宙船が滞在しており

その内部では夜に決行する破壊への最終調整をしていた。

 

「ザーボンさん。不在のサイヤ人は?」

 

「はっ!我々の調査によるとベジータ王の息子であるベジータ。その付き人であるラディッツとナッパ。そして惑星支配から帰ってきていないターレスというサイヤ人が不在です。」

 

フリーザはその報告を聞き、ふむ。と軽く頷く。

そして、ザーボンに更なる指示を出す。

 

「わかりました。貴方は引き続きサイヤ人達の監視を命じます。1匹たりとも逃してはいけませんよ?」

 

軽く気を放出し、悪戯程度に脅しをかける。

その程度ですらザーボンは冷や汗を流し命令を受諾する。

 

「は、はっ!了解致しました!」

 

そしてザーボンは速やかにその場から離れ監視の任務へと戻っていった。

 

 

「さて。折角ですからねぇ。綺麗な花火を上げてみせますか…ホッホッホ……!」

 

 

 

♠︎

 

自宅へと戻ったバーダックを妻であるギネが迎える。

 

「あっ!お帰りバーダック!」

 

バーダックは帰るなり、自らの子供達の居場所を尋ねる。

このまま自らの予感が当たってしまった時がバーダックにとって危惧している事だからだ。

 

「おう、今帰ったぞ。ラディッツは?」

 

「ラディッツはまだ王子様のお守り中だよ。」

 

「…カカロットは?」

 

「…カカロットはまだ保育ポッドの中だよ?いきなりどうしたのさ?」

 

ギネはバーダックの僅かな感情の変化に気付く。

バーダックは自らの予感を告げる。

 

「今回のフリーザの招集には何か裏がある…こっからは唯の俺の予測だが…

フリーザは今日この日に俺たちを滅ぼす気だ。」

 

ギネはバーダックの告げた予測に驚愕する。

だが、バーダックの予測は外れた事が無いというのは長い付き合いの中で

ギネ自身が良く知っている。

 

だからこそ、バーダックの言葉を否定する事はしない。

 

「…で、本題はここからだが。…カカロットを辺境の星に飛ばそうと思ってる。」

 

「……うん。」

 

今度は逆にバーダックが驚く番だった。

と、同時にギネという女がこれ程自分を信じてくれている事が分かり

何ともむず痒い感情になる。

 

「……いいのか。」

 

「…うん。ほ、ほらさ!バーダックが間違ってるかもしれないだろ?」

 

「…おう。そんときゃ迎えに行けばいい。」

 

 

「…あぁ!」

 

 

 

その夜、カカロットを小型ポットに乗せ

サイヤ人の集落から外れた草原へとバーダックとギネは訪れていた。

 

そして、彼らは息子に最期の言葉を伝える。

 

「……またあとで迎えに行くからね!」

 

母の泣きそうな顔をカカロットは見た。

 

「…絶対生き残るんだぞ。」

 

父の優しげな笑顔。

そしてポットに置かれた大きな掌に自身の掌を重ねる。

 

カカロットが何かを言おうとした時ポットが宙に浮き、バーダックが事前にセットした地球という惑星へとポットは飛んで行ったのだった。

 

それを確認したギネは涙を流し崩れ落ちる。

 

「うっ…わぁああ…。」

 

「…。」

 

バーダックはそっと不器用ながらに手を置く。

 

「……先に逝ってる。…あばよギネ。」

 

そして、自らの最期の抵抗せんと宇宙へと滑空する。

 

 

「……さよなら、バーダック。」

 

 

 

♠︎

 

惑星ベジータの外。

そのフリーザの宇宙船には無数の死体が転がっていた。

その中である一つの死体には首から上がなく

体から判断して漸くその死体はベジータ王だったと分かるだろう。

 

何故ベジータ王が無残にも倒れているのか理由はいたって単純。

反逆し、デコピン一発で頭を吹き飛ばされたからだ。

 

そんな死体をフリーザはチラリと見て直ぐに興味を無くす。

 

「ザーボンさん、上部ハッチを開けなさい。」

 

フリーザがそう告げると宇宙船の上部ハッチが開かれ、フリーザはベビーと共に宇宙へとその身体を晒す。

 

その眼前には多数の部下に捕らえられたバーダックの姿があった。

バーダックは現れたフリーザにその激情をぶつける。

 

「フリィィィィザァア!!」

 

その声にフリーザは反応する事は無い。

指先に太陽が如き大きさであり高密度の気弾を生成。

惑星ベジータに向けて何でも無いように放り投げる。

 

それを迎撃せんとバーダックは右手に今持てる最大の気を集中させる。

そして、己の全てをかけて投擲する。

 

「オラァァァァァ!!」

 

だが、その健闘も虚しく気弾はフリーザの巨大な気弾に吸い込まれ

バーダックに直撃する。

その刹那、バーダックは見た。

 

自らの息子であるカカロットとフリーザが互いに向き合い拳を交える姿を。

そして、バーダックは笑う。

いつかカカロットが自らの後を継ぐと確信して。

 

「カカロットよぉぉぉお!!!」

 

 

その日、惑星の崩壊を免れたサイヤ人は何かを感じ取った。

それが何かはまだ誰にも分からない。

しかしだ、それはいつか巨悪に突き立てる牙であると誰かは言った。

 

 

そして、今日この日。

英雄となる星の子が遥か彼方へと旅立ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー


・バーダック
基本的には超ベースだが、多少旧バーダックもブレンドしてみた。
たったひとりの最終決戦はドラゴンボールでも屈指の作品だと思う。


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宇宙の壊し屋

惑星ベジータが原因不明の巨大隕石に巻き込まれ消滅してから早くも数年が経過した。

 

その間、フリーザ軍は軍備を更に拡大し戦闘力が低い兵士には特製のアーマーが支給されるようになったり。

ガーリックJrを始めとした戦闘力が高い者達にはフリーザによる直々の特訓が特製の訓練室で行われフリーザ軍全体の質が上がっていた。

 

特製の訓練室はツフル人の科学力により重力200倍にまで増幅する事が出来

広さもこの先セルが作るであろう会場の2.5倍程度にはなっている。

 

そんな理想の訓練空間では

今現在ギニュー率いる特戦隊がフリーザとの特訓に勤しんでいた。

 

「フリーザ様!それでは胸をお借りします!」

 

「ええ、どうぞ?全員でかかってきなさい?」

 

 

フリーザのその言葉を切欠として先ずはリクーム、ジース、バータが迫る。

最初はリクーム。

特戦隊で最も物理的なパワーがある彼の鋭い拳がフリーザに迫る。

対するフリーザは余裕そうに首だけで拳を避け、くるりと反転。

リクームの手首を掴んで後ろへと投げ飛ばす。

 

「うおお!!!?」

 

リクームは受け身を取る事が出来ずにそのまま壁へと激突するが

すかさず起き上がり次の出番を待つ。

 

次はジースとバータのコンビ。

技のジースと速さのバータは相性が良く、惑星侵略も大抵このペアで行なっている。

そんな彼らのコンビ技であるパープルコメットアタックを駆使しフリーザへと

挟み撃ちの形でラッシュする!

 

「だりゃりゃりゃ!!!」

 

「おおお!!」

 

左右から繰り出される鋭い攻撃の数々をフリーザは時には避け、時には両手で軽く捌きながらリクームへの指導を行なっている。

 

「リクームさん、貴方は攻撃が単調です。せっかくの体幹があるのですから

柔軟な行動を取りなさい。」

 

「ハ〜〜イ❤︎」

 

「……真面目に返事なさい。」

 

リクームの小ふざけた返事に呆れながら

バータとジースの手を掴み、引く。

 

「うぉ!?」

 

「げぇ!!?」

 

その勢いのままジースとバータの顔面が激突し両者は悶える。

 

「「っ〜〜!!」」

 

更にその悶えている隙を突き、念力で2人を浮かせて壁へと放つ。

 

「うわああああ!!!?」

 

 

当然、念力を解く事は出来ずに壁へと激突。

2人は目を回してしまう。

 

「止まれ!」

 

だが、念力を使っていたフリーザの背後でグルドが時間の停止を行う。

その停止時間の中で2人を叩き、解除。

2人はその痛みで起き上がる。

 

「た、助かったぜグルド。」

 

「ふん、とーぜんだろ?」

 

 

その裏ではギニューがフリーザへと迫る。

 

「おおお!!」

 

雄叫びを上げながら、ラッシュ!ラッシュ!

フリーザはそのラッシュを丁寧に捌き、右手首に尻尾を巻き付け投げ飛ばす。

 

「くっ!」

 

ギニューは地面に激突寸前に地面に左手の気弾を発射。

その衝撃で体制を整える。

その上で右手で気弾を生成、凝縮させフリーザに向かって撃つ。

 

「ミルキーキャノン!」

 

空気が切れる音ともに気弾はフリーザに迫る。

しかし、フリーザは腕を解く事は無く。

 

「ハァ!!」

 

叫びにさせた気の波によって消しとばす。

 

「それで本気ですか?」

 

「流石ですフリーザ様!!」

 

ギニューがフリーザを称えた直後。

訓練室に備えられたタイマーが鳴る。

 

それを聞いたフリーザは勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

「さて、今回も私の勝ちですね。皆さん?」

 

というのも、この特訓では特戦隊の誰かがフリーザにまともに一撃を与えられれば

フリーザが好きなものを各々に一つずつ買うというルールがあったからである。

 

そして、今回もまた敗北を喫した特戦隊の面々は実に悔しそうな表情をする。

 

「だぁーー!くっそー!今回もかぁーー!!」

 

「次だ、次!次こそチョコレートパフェを奢ってもらうんだ!」

 

「オメーはまたそれかよ!!?」

 

だが、特戦隊の顔には笑顔があり心が折れた様子はない。

寧ろ次はどういう戦法でフリーザへと立ち向かうかを直ぐに作戦会議をしている。

 

 

そんな彼らを見ていたフリーザだったが

特戦隊に特訓以外の別件を伝えるべくギニューを呼び寄せる。

 

「ギニュー隊長。」

 

「はっ!ここに!」

 

「今から特戦隊の皆さんには私と共にある所に行ってもらいます。」

 

「はっ。…して何処へとお出向きで?」

 

「ベジータさんとその部下以外のサイヤ人…ターレスさんの元ですよ。」

 

「了解しました!ですがその前に今回も感謝のダンスを踊ってもよろしいでしょうか?」

 

 

「…………………好きになさい。」

 

 

♠︎

 

名もなき惑星…というのは語弊がある。

実際には名が無くなった惑星。

土地は荒れ果て死滅し、自然はすでにその養分を失っている。

立っているのはたった一本の巨大な大樹。

 

その根の部分に座り、赤い果実を齧る男が1人。

果実を齧り、男は失望する。

 

「チッ……今回は外れか。まぁいいさ。」

 

男の名はターレス。

クラッシャー軍団という組織を従えるサイヤ人である。

 

そしてターレスが持つ赤い果実の名は神聖樹の実。

本来は神にしか持つ事を許されていない果実であり

食べたのものには莫大な力を与える禁忌の果実。

本来ならばサイヤ人が一生手にする物ではない。

 

しかし、ターレスは違う。

偶然か、それとも運命なのか。

彼はこの実を手に入れ、星をぶっ壊し。

今となってはサイヤ人随一との噂の高いベジータを

圧倒する程の力を得ていた。

 

そんな順風満帆な彼のスカウターが巨大な反応をキャッチする。

それと同時に副官であるダイーズが焦った表情で飛んでくる。

 

「ターレス!!」

 

「…来たか。」

 

ターレスは上を見上げ、笑みを深める。

 

「そろそろ…目障りなバケモノを消すとするか…。」

 

 

その直後。

フリーザの宇宙船がその星に着陸する。

だが、その周りをターレス率いるクラッシャー軍団が取り囲んでいた。

そして出てきたフリーザの前にターレスは立ち不敵に笑う。

 

「おやおや、フリーザサマがこんな星に何の用で?」

 

フリーザはいつもの笑みでこう告げる。

 

「こんな商品価値の無い星に興味はありませんよ。

私が用があるのは貴方です。」

 

その言葉にターレスは少し目を開いたが直ぐに元の表情に戻り

こう宣言する。

 

「なぁるほどねぇ…この俺に帰投命令ってか…んじゃ力尽くでやってみなぁ!!」

 

 

そうしてターレスはフリーザの元へ突進していったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・ターレス。
今作は映画よりは強い設定。
具体的な強さはまた次回。

・ブロリー
映画のまま惑星バンパへと追放されました。

・訓練室
ツフルの科学の結晶。


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聳える強さの壁

 

「オラァ!!」

先んじて繰り出すターレスの拳をフリーザは右手で首を掴んで受け止める。

ただ、フリーザも若干後ろへとずらされているのを見るにその威力は相当ではあるがフリーザの顔色は一つも変わらない。

 

「どうしました?さっきの威勢は何処にいったのですか?」

 

「…チッ。流石に強いな、だが…そらぁ!」

 

ターレスは首を掴まれながらも手に溜めた気弾で煙幕を張り

フリーザの視界を砂埃で出来る限り狭める。

そこから後方へとバックステップし両手を合わせて輪っか状の気弾を作り上げて投擲。

 

「喰らいやがれ!キルドライバー!!」

 

この気弾の利点は切断性能があるという事。

ここにおいての切断はこと格上相手にだろうが通じる事がある。

例に例えるならクリリンの気円斬あたりが妥当だろうか。

切断という性能を極めれば格上殺しになり得ることは間違いはない。

 

しかしフリーザは見えづらい視界の中で気の流れを読み

正確に気弾を把握し受け止めそれを上方向へとなんでも無いように投げ捨てる。

 

それにはターレスも驚きを隠せなかったが直ぐに気持ちをリセットし

 

「こい!フリーザサマよ!!」

 

いつもの不敵な笑みでフリーザを挑発し

自らのテリトリーへと誘い込もうとするべく最高速で飛行する。

その誘いに気付いたフリーザではあったがこの程度では

興醒めも良いところであったのでそのまま彼の誘いに乗っていった。

 

ターレスの後を追いたどり着いた先にはこの惑星で唯一の自然である

神聖樹。

既にターレスの手にはその実の一つが握られており

その顔は自らの勝利を確信した顔になっていた。

 

「……俺の勝ちだな。」

 

そして神聖樹の実を一口食べたターレスの身体は

豪快な音と共に更に強靭になり、発せられる気もまた大幅に増幅する。

しかし、神聖樹の実はあくまでも神の所有物として星のエネルギーを得る為に

作られた兵器。

本来ならば連続で使用する事は無く、一つの実を一口食べ

慣らしていく事でその実に順応するものである。

 

よって、ターレスにとってもこれは賭けであった。

彼自身も連続で食べた事は無く自身にどの様な影響が出るかわからない。

だが、最初の一撃で己の実力とフリーザの実力にあまりの差がある事を

自覚したターレスにとってこれしか方法は無かったのだ。

 

「ほう、いいですよ!これならば私の部下に相応しい戦闘力です!」

 

だが、フリーザにとっては前と今とでも同じ事。

余裕そうに並みの戦士なら即死するであろうターレスの連続攻撃を

捌いていく。

ターレスとって攻撃の全てが全力。

時には超至近距離からの気弾を多様な方法で使い分けながら

フリーザへと迫っている。

 

ーーだが届かない。

 

攻撃は全て受け流されるか最小限の動きで躱される。

全力の中で織り交ぜられるフェイントにすらフリーザは対応し

まるで子供と遊ぶ親の様に反撃などは一切してこない。

ターレスが猿とするならばフリーザは肉食恐竜 。

天と地の差が多少縮んだ程度では到底届く筈も無い。

 

「おおおおお!!!!」

 

ターレスが更に吠え、その攻撃はその速度を増す。

これならば昔のフリーザならばダメージを与える事ができるだろう。

空は空気が振動され衝撃波が起こり、岩はその余波で崩れ去る。

神聖樹もその衝撃の元その大きな幹がゆらゆらと激しく揺れる。

常人では最早何が起こっているのすら分からない

その攻撃の嵐はフリーザの一言で終わる。

 

「……飽きましたね。」

 

嵐の中で確かに響いたその一言はターレスの予期していた事を現実にする。

昔、惑星ベジータでフリーザを見た時に感じ取ったナニカ

ターレスはそのナニカを今再び感じ取ったのだ。

 

その瞬間。

フリーザはターレスの攻撃を尻尾で掴みそのまま地面へと叩き落とす!

その一撃だけで地面に大きな亀裂が走り

その一撃だけでターレスの意識は朦朧とし最早自分が何処にいるのかすら

覚束なくなる。

 

「ぐが………!」

 

地面に大の字で倒れるターレスをフリーザは再び尻尾を持ち上げ

こう告げる。

 

「いい事を教えようか。

中途半端な力を身につけ慢心した者は返って早死にする。

……よぉく覚えておきなさい。」

 

ターレスはその朦朧とした意識の中で自らの敗北を悟り

されど、決して絶望はしない。

最後までフリーザを小馬鹿にする様子でこう返す。

 

「………へっ、よぉく覚えておくぜ。フリーザ、サマよぉ。」

 

そしてそのままターレスの意識は糸が切れるように落ちていった。

 

 

フリーザがターレスを担いで

自らの宇宙船に戻れば、そこには他のクラッシャー軍団が

ギニュー特戦隊に捕らえられ、その手には戦闘力を極限まで抑え込む

手錠がかけられていた。

 

「ターレス!!」

 

軍団の長たるターレスが血塗れの状態で運ばれるのを部下達は心配そうに

見つめる。

その目には侮蔑は無い。

そこには唯の信頼があった。

 

「さて、戻りますよ?皆さん。」

 

フリーザがそう指示し特戦隊は一糸乱れぬ敬礼を以って返事する。

そのままフリーザの宇宙船は名もなき星を飛び立っていく。

 

そして本拠地である惑星フリーザへと到着すると

ターレスはそのまま治療室のメディカルポッドへと移送され、部下達は個室の牢獄へと

投獄されることとなった。

 

 

♠︎

 

ターレスが目を覚ませば、メディカルポッドは自動で開き地面へと降り立つ。

冷たい地面の感覚を気にすることなくターレスは辺りを見回す。

 

そして、目にしたのは空中に浮かぶ何かを操作し

指示を出すフリーザ。

 

自身が敗北したという事は理解しているターレスは

用意されてあった戦闘服に着替えフリーザの元へと向かう。

 

「よう、これはどういう了見だフリーザサマよ?」

 

そう話しかければフリーザはその何かをスライドさせ

ターレスへと自らの指先を向ける。

 

「言ったでしょう?私の目的は貴方だと。」

 

その指先からは小さいながらもターレスという命を奪うには充分な威力の

気弾が充填されている。

 

「さて、サルの貴方にまどろっこしい説明は必要ありません。

…選びなさい。ここで私に忠誠を誓うか、ここで命令違反者として私に処刑されるかの二択です。」

 

ターレスの顔に小さな汗が垂れる。

自分がいくら死の淵からのパワーアップした所とはいえ

フリーザに勝てるなどと微塵も思っていない。

更に部下達も恐らく囚われている事だろう。

 

実質一択。

要は自分の口から忠誠という言葉がフリーザは欲しいだけなのだ。

しかしそこは流石のターレスである。

忠誠を誓い、力を蓄え次こそフリーザという化け物を殺すという発想に切り替えて忠誠の言葉を吐く。

 

「…いいぜ、一応はアンタに従ってやるよ。」

 

フリーザの指先から気弾が消え、最初に見た胡散臭い笑顔へと変わる。

 

「おや、そうですか。では貴方をフリーザ軍の遊撃部隊に任命します。

私の為にキッチリ働くようにお願いしますよ?」

 

そして、フリーザはターレスに向かって最初の指示を出す。

 

「では、最初の命令です。ターレスさん超サイヤ人になりなさい。」

 

「……………………は?」

 

 

ターレスは初めて理解が及ばない驚きというものを味わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・ターレス
戦闘力で言えばベビーを除けばポテンシャルは高く
同時にサイヤの中でも狡猾な方に入る。
因みにこのターレスが劇場本編と同じ行動をとっても悟空を完封するぐらいの力を誇っている。

・戦闘力について
特に設定する気はありません。
というか設定したらしたで作者が混乱します。

・ツフルの科学力
宇宙二位。





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上に立つ者

惑星ベジータが滅んでから数年間、フリーザ軍は更なる拡張を遂げた。

その数は既に万を超えて億単位にまで跳ね上がっている。

そうなってくると、フリーザが1番重視するのは時間だ。

 

同盟者との会合、惑星侵略の後処理、或いは商談。

クウラの後始末の他にも部下への報酬などフリーザの一日は実に多忙を極める。

その為、重力室200倍でのトレーニングとベビーへの無茶振りだけが今のフリーザの少ない楽しみである。

初期には僅か数名しかいなかったフリーザ軍もこんなにも大所帯となり

設立部署も大分多くなった。

こうなると宇宙パトロールすらも黙認する所か一部の者は情報を無償提供する始末。

今ではクウラさえ居なければ第七宇宙のほぼ全域はフリーザの手中となっていると言っても過言では無いのだ。

 

そんな多忙を極めるフリーザは現在ターレスと共に訓練室へと

向かい10倍の重力のまま超サイヤ人へのヒントを与えていた。

 

「さて、超サイヤ人には三つのトリガーがあります。

一つはそれにふさわしいまでの戦闘力。

もう一つは貴方の中にあるサイヤ細胞と言われるものの鎮静にあたります。

そして最後はそれを踏まえた上での激しい怒り。

貴方はまだ戦闘力はまだしも鎮静化なんて難しいでしょう?」

 

「…沈静化だぁ?そんなもん俺たちサイヤ人が出来るわけねぇよ。

暇さえあれば殺し合いだ。」

 

「…まぁそうでしょうから貴方はこれから自分のペースでやって行きなさい。」

 

「へーへー。」

 

「という訳で私が貴方に教えるのは精神統一です。

今からここの重力を100倍にしておきますので私が帰って来るまでには

そこで気の流れ、というものを捉えなさい。

それさえ捉えられればスカウターなんぞ必要なくなりますからね。」

 

「……俺のキルドライバーを受け止めたのもそれか。」

 

「おや、察しが良くて何より。それでは励みなさい。」

 

そうしてフリーザはこの部屋の重力を100倍へと変換し

さっさと退出する。

ターレスはというと100倍という初めての重力に押しつぶされかけていた。

 

「………こりゃあ先ずはここで自由に動けるようにしねぇとなぁ。

…重てぇ。」

 

 

♠︎

 

フリーザ軍は完全実力主義の世界である。

要は強い者が弱者を従え、その強者同士もまた強さによって

軍での位に差が発生する。

 

だが、ここで言っておきたいのは別に戦闘力が高いだけの木偶の坊は

フリーザの目に敵わないという事である。

確かに戦闘力が高いのは一種のステータスであり

重宝されるべき対象ではある。

 

しかし、闘うだけが強さでは無い。

知識、人望、戦略眼そして一経営者という自覚。

それらを含めた強さこそがフリーザの求める部下の在り方だ。

 

サイヤの王子たるベジータはこの数年

癪ではあるがフリーザに従ってみてそれがよく分かっていた。

成る程、父が無残に殺される訳だとも。

 

ならば己はどうか。

サイヤとして、強さこそが絶対の自分は果たしてどうなのか。

この大宇宙を制覇するに足りる戦士なのか。

当然、イエスだ。

このベジータ様こそが王となりうる存在なのだ。

 

ベジータは日に日に続く惑星侵略により高まる戦闘力を感じて確信を持っていた。

 

…弁明しておくがベジータはこと戦闘に対しては無類のセンスを誇る。

だが、己の強さに対する傲慢が油断を隙を生み格上に対する対策を怠ってしまう。

 

よって。

 

「おうおう、サイヤ人の奴らがやっと帰ってきたぜぇ。」

 

「ふん、あんな星に三日もかかるとはな。」

 

今ベジータの前に立つ、ドドリアとザーボンが己の何十倍という戦闘力を有したがそれを何故隠しているのかすらも理解しようとしていないのだ。

 

今のベジータの戦闘力は18000。

サイヤ人とすれば正に超エリートである事は間違いない。

 

左隣に立つナッパの戦闘力が4000。

右隣に立つラディッツの戦闘力が1200と表記すればその強さが明確に

分かるだろう。

 

しかし、ドドリアの戦闘力は昔のモノとは遥かに違う。

強さこそ至上というドドリアの思考はフリーザのそれと同種。

ならば、ドドリアの忠誠は絶対的なものでありフリーザの元で

その力を更に伸ばした。

 

ザーボンは更にその上だ。

変身を嫌うザーボンにとってフリーザの特訓は非常に有益な物だった。

ドドリアとは違い美しさとこそというザーボンにとって

同じ変身タイプでありながら敵の血を浴びる事無く蹂躙するフリーザは

正に羨望の対象であった。

故にザーボンは自らの変身を捨てこのままの姿で強く、美しく闘う術を

フリーザに教授されたのだ。

 

 

そんな彼らを知らないナッパは激昂する。

 

「んだとぉ……!!じゃあテメェらならどのぐらいかかるってんだ!!?」

 

「ナッパ!!」

 

ベジータはそれを諌める。

それは部下を気遣うものではない。

フリーザとの決戦での駒が無くなることへの苛立ちのものだ。

 

だが、そんなナッパの激昂も今のザーボン達にとって

仔犬の鳴き声のようなもの。

 

「あー?あんな星、半日もあれば充分だぜぇ。なぁ?」

 

「私は3時間で充分だがな。」

 

「んだとぉ?」

 

「なんだ?」

 

「「………ぶはっ!!」」

 

2人は睨み合いの末に爆笑する。

その事が更にナッパの頭に青筋を増やしていく。

 

だが、その苛立ちも

 

「おや、ザーボンさんにドドリアさん……そしてサイヤ人の皆さん。」

 

フリーザが来た事によって鎮火していく。

 

フリーザを見たサイヤ人は臣下の礼をとるが

ザーボンとドドリアはそのまま笑いながらフリーザに近づいていく。

 

「フリーザ様聞いてくださいよぉ。サイヤ人の奴ら、あの星に三日もかかったそうなんですよぉ。くくっ!」

 

「ふむ…ベジータさん。」

 

「…はっ!」

 

「侵略した惑星の映像はキチンと撮影しましたか?」

 

「…ナッパ。」

 

「す、すまねぇベジータ。」

 

「……その様子を見るに忘れてたか壊してしまったか…まぁいいでしょう。

ザーボンさん後で確認してきなさい。」

 

「了解しました。」

 

「しかし、罰は罰です。サイヤ人の皆さんは今月の給料を減らしますので。」

 

 

そう言い残しフリーザはハンドサインでザーボンとドドリアを背後に立たせ

その場を去っていく。

 

その後ろ姿を見たベジータはいずれ倒すべき敵に不敵な笑みを浮かべ

闘志を燃やしていた。

 

(そうやって仰け反っていろ。いずれ貴様はこのベジータ様が倒すのだからな……!)

 

 

 

 

「ではフリーザ様。この減らした分は……。」

 

「……また新しい化粧品でも見つけたのですか?」

 

「ま、まぁそんな所です。」

 

「…まぁいいでしょう。その分しっかりと働きなさい。」

 

「はっ!!」

 

 

 

♠︎

 

「休暇願……ですか。」

 

「はっ!どうやらサイヤ人のラディッツからですね。」

 

フリーザがいつものように商談を終え、部下の訓練をこなし

ターレスの面倒を見て、クウラの機嫌取りをして

デスクワークへと向かっていたある日。

 

部下のアプールから手渡された書状にはラディッツの休暇願が

書かれてあった。

中身を見れば、そこには

 

『ベジータとナッパのいびりに精神がおかしくなりそうなので休ませて下さい。』

 

と書かれており、フリーザはヒエラルキー最下層の不憫さに

ほんの少しだけ同情した。

 

とはいえ、大して強くもないラディッツが多少抜けた所で

大した損害になるはずもなく。

 

「まぁ、いいでしょう。」

 

そう言い、フリーザはウィンドウを開きラディッツの回線に

認可のメッセージを送信した。

だが、何かが引っかかったフリーザはある指示を出す。

 

「アプールさん、ラディッツさんのスカウターの盗聴をお願いします。

彼のことですから何も無いとは思いますが万が一、というのもありますからね。」

 

「了解!では失礼します!」

 

ラディッツのスカウターの盗聴を命じられたアプールはそのまま敬礼を取り

フリーザの執務室から退室する。

だが、その際誰かにぶつかってしまい謝罪すべく振り向く。

 

「おっと、すまねぇな。」

 

「あら、気にしないで頂戴。」

 

「……フン。」

 

相手からの返答を聞き

録音室まで歩いた先でアプールは思う。

 

「……あんな奴らフリーザ軍にいたか?」

 

 

そして、執務室。

フリーザの目の前には1組の男女が立っていた。

赤い衣装を見に纏い、彼らの纏う気はフリーザが感じたのとはまた異質なもの。

顔を見ただけで彼らの正体は明確だったが

あえてフリーザは名を訪ねた。

 

「ふむ…何者ですか?貴女方は。」

 

「私はトワ、こっちは私が創り出したミラ。」

 

「では、トワさん。貴女に問いましょうか。要件は?」

 

トワは妖艶に笑う。

その言葉を待っていたように。

 

「フリーザ、貴方と取引をしに来たのよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー。

・フリーザ軍
超実力主義の社会。
フリーザ軍に貢献すればする程給料やボーナスが豪華になる仕様。
勿論弱者にも福祉は充実させる、総勢5億程度の大軍隊。
侵略した惑星の写真は取引の際に必要としている。
部署や部隊が幾多にも分かれ、その統括をフリーザが担っている。
幹部に上がるにつれてフリーザへの口調も変化している。

・ドドリアとザーボン。
本作においての彼らは悪友。
フリーザとの特訓により
ドドリアはザーボンの強さをザーボンもまた強さという名の美を
学んだ為、お互いの悪口を言いながらも切磋琢磨しあっている。
そんな彼らの戦闘力は現在気のコントロールプラス原作の約1500倍程度には上がっている。

・ベジータ
彼はまだ蛙。
龍となるのはもう少し。

・ラディッツ
弟に会う為、割と本心を書いて地球へ。

・時系列
ラディッツの休暇届の時点では
マジュニアを倒してパオズ山まで帰った所。

・時空の犯罪者
「フリーザ、取引をしに来たわ!」
Dr.ストレンジ風

・時空の守護者
アップを始めました。


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取引と監視

トワが持ちかけた取引は大きく分けて二つだった。

フリーザはトワを普段会談で使うソファーへと案内し

その内容を聞くことにする。

 

トワはフリーザの思った以上の紳士的な対応に驚くも

これならばと一安心する。

キリの大きさからみてフリーザはミラを大きく上回っているからだ。

 

「先ずは私達の目的から説明する必要があるわ。」

 

「…ふむ、長い話になりそうですね。」

 

「まぁ…そうなるわね。」

 

ならばとフリーザはウィンドウを開き、近くにいる部下に指示を出す。

というのもスカウターのネットワークは全てフリーザが管理しており

ハッキング対策はベビーやライチーを中心とした研究メンバーによる

完全防備が敷かれている。

 

因みにこれは全てブルマ用の対策だ。

 

 

「スーイさん、お客様の飲み物を持って来なさい。」

 

『了解しました。少々お待ち下さい。』

 

 

「あら、別に構わないのに。」

 

「いえいえ、これから商談する相手に失礼があってはいけませんからね。」

 

「そう、ありがとう。」

 

スーイが飲み物のレモネードを持って現れ

互いにそれが行き渡った後にトワはこう語り出す。

 

「さて、改めて私達の目的は暗黒魔界の復興よ。」

 

「暗黒魔界……聞いたことがありませんね。」

 

当然、嘘である。

フリーザにとって暗黒魔界の存在は決して無視は出来ない存在。

よって没落したという情報が流れていようとも

逐一フリーザはその動向を確認していた。

 

「仕方ないわ、この数百年間で暗黒魔界は没落してしまったもの。…兄であるダーブラがバビディとかいう魔術師に洗脳されてしまったから。」

 

「それは…心中お察しします。」

 

「気持ちだけ受け取るわ。それでここからが最初の取引よ。」

 

「ええ、聞きましょうか。」

 

「暗黒魔界の復興。それの投資者になって欲しいの。」

 

フリーザにとって、その話は気が乗らない事ではあった。

何故ならば、復興を終えた後の自軍のメリットが無いにも等しいからだ。

寧ろ、侵略をこちらへと仕掛け戦争にすらなり兼ねない。

部下を失うのはこちらにとって害にしかならない。

 

だが、フリーザはこの要求が通ればこの取引を成立しても良いと考えた。

 

「…ふむ、それを引き受けたとしてこちらへのメリットは?」

 

「それと釣り合うのならば何を請求しても構わないわ。」

 

「随分と大きく出ましたね。」

 

「それだけ私達もその目的に賭けていると察して頂戴。」

 

「では、貴女方…いえ、トワさん貴女の技術知識とその運用方法の提供を要求しましょう。」

 

「いいわ。寧ろそんなに軽くていいのかしら?」

 

「貴女が虚偽の報告さえしなければ対等ですよ。」

 

あっさりと要求が通ったフリーザは更に警戒心を強める。

そして、牽制に軽い皮肉を加えトワの内心を探る。

 

とはいえトワもまたフリーザが思った以上に素直に応じる事に驚いていた。

自らの技術というのは暗黒魔界随一。

決して軽いものでは無いがそれで復興が叶うのなら願ったりである。

 

「では、先ずは一つ目は成立という事で。」

 

「ええ、それじゃあ次は……。」

 

トワが次の要求を持ちかけようとした時

フリーザの隣が青く光る。

 

「っ……もう嗅ぎつけたのかしら。」

 

「そこまでだ。トワ!」

 

青い光が晴れた先には水色の髪をした青年が立っていた。

青年は背中の剣を引き抜きトワへと向ける。

 

だが、そんな不届き者をフリーザが許すはずもない。

即座に尻尾だけで剣を弾き、首を絞め上げる。

その目には若干の苛立ちと呆れが浮かんでいた。

 

「…今、私は彼女と取引の最中です。

それに貴方は私の目からすれば不法侵入者。

容赦する理由はありません。」

 

そのクグッと首を絞められ青年はその苦しみから逃れようともがき出す。

 

その光景に唖然としていたトワであったが

直ぐに持ち直し、ミラへと指示を出す。

 

「ミラ、いつものように。」

 

「あぁ、わかった。おい、そいつをこっちに渡せ。」

 

ミラはそのまま立ち上がり、青年を引き渡すように要求する。

フリーザもこのままでは唯の邪魔なのでミラへと青年を投げつけこういう。

 

「闘いたいのでしたら、そちらのワープゲートから直通で訓練室の方に行けますのでそちらを使って下さい。こちらには大切な書類が沢山あるのでね。」

 

その言葉にミラはそのまま黙してワープゲートへと向かい青年と共に転移する。

 

トワはそのままソファーに座りなおすような動作を取り

二つ目の要求にはいる。

 

「…さて、邪魔が入ったけれども二つ目ね。」

 

「ええ。」

 

「二つ目は私達との同盟よ。それも半永久的なね。」

 

「ふむ…。」

 

フリーザはトワの契約書を軽く見

思った以上にまともな内容である事に軽く安心を覚える。

内容は要は復興まで傍観という事。互いに不干渉でいる事。

そして、トワ達の手だしの禁止。

 

これならばフリーザも口を出す事はしない。

別段フリーザ軍に対し何か害を仕掛けるなら話は別だが

不干渉というのなら特にいう事は無い。

一応魔術の解析もしたがそのような事があろうはずもなかった。

 

「ま、これも大丈夫でしょう。」

 

「そう、ならこれからよろしくねフリーザ。」

 

「ええ、いい関係にしましょうね。」

 

そう言って2人は握手を交わす。

その時に魔術が発動するのがわかったがフリーザに特に効果は無く

トワもやはりな、という顔で

その場から姿を消したのだった。

 

トワが消えたその後。

フリーザは虚空に向かって声をかける。

 

「さてと、どうせこの会話も聞いているのでしょう?

何処かの誰かさん。今回は大目に見ますが次はありません。

よく覚えておきなさい。」

 

そう言った後、フリーザは再びデスクワークへと戻っていった。

 

 

そして何処かの神殿で唾を飲み込む音がした。

 

 

 

♠︎

 

それから数ヶ月後。

 

スカウターの逆探知によりラディッツの居場所が地球という惑星にある事が

わかり

フリーザは暇潰しにラディッツの会話をスカウターを通じて監視していた。

 

『お前はサイヤ人の恥だ!死んでしまえ!!』

 

どうやら既に孫悟空との邂逅を終えていたようだ。

と言うことは今はピッコロと孫悟空が組みラディッツと戦闘をしている事になる。

 

フリーザは宇宙パトロールから受け取った機密情報。

宇宙の各地で指名手配されている犯罪者のリストを確認しながら

久々の休憩を存分に満喫していた。

 

更に秘密裏に開発していたフリーザ軍の慰安旅行の為の惑星全体を利用したレジャースポットの建設もそろそろ佳境という事もあり

後のフリーザの仕事は警備システムの確認と旅行案内のパンフレット作成のみ。

 

「ふむ、この人は…教育すれば中々使えそうですね。」

 

ペラペラとリストを巡りながらフリーザはいっそ可愛く見れるであろう

三人の戦闘をのんびりと見ていた。

 

ラディッツが高速移動で2人の背後に迫り肘打ち。

更に迫りくる2人の高速の攻防を見切り攻撃する姿。

孫悟空のかめはめ波による一時的な戦闘力の上昇にビビるラディッツ。

 

その後、ポッドを破壊し戦闘力を上回った孫悟空の息子にビビるラディッツ。

 

その無様な姿を見ていたフリーザだったが

ある人物の登場により眉を細める。

 

トワ達が行った洗脳により戦闘力が上昇したラディッツ。

それを加勢しに来た謎の男。

体格から察するにサイヤ人。

という事はアレがタイムパトローラーであるとフリーザは確信した。

 

「全く…これではショーが台無しですね。」

 

ならば、このショーに興味は無いと早々にフリーザは

ラディッツの生存を諦めた。

 

結局ショーは謎の男の活躍もあり、孫悟空がラディッツを抑え込み

ピッコロの魔貫光殺砲によって諸共貫かれラディッツと孫悟空は死亡した。

 

ならばとフリーザは監視から盗聴に切り替え

侵略中であるベジータ達の様子を伺う。

 

やはり、ベジータは地球のドラゴンボールを狙い地球へと向かうようだ。

ベジータ達に支給したのは旧型のポッドだったので

あれから地球に降り立つまで後一年。

 

フリーザは己の更なる研鑽をすべく

最近またベビーに無茶ぶりさせ改良した500倍の訓練室で

残りの休憩時間を費やす。

 

「ふっ……ふっ…!!」

 

フリーザが行なっている事は割と単純な基礎的なトレーニングだ。

全ての筋肉を平等に黄金比になるように自らの知恵を生かして

鍛える。

加えて気弾を超高密度かつ最小になるようにし

それを反射させその気を察知し回避するなどの高度なトレーニングもこなしている

 

フリーザ一族は筋肉が見えにくい体なので成果は分かりにくいが

フリーザの積み重ねは着実にその羽を広げている。

 

その成果は

 

「ハァ!!!」

 

自らのゴールデン化が更なる輝きを持つ事により確かに証明されている。

フルパワー時の力は全てゴールデン化が吸収した。

 

だが、慢心する事はない。

 

 

フリーザの敵は更にその先にいるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・トワとミラ。
フリーザが余りにも強いので現実的な形に落ち着く事にした。
よってトワはフリーザを余り怒らせないように立ち回る。
ミラは早く闘いたくてウズウズしている。

・謎の青い青年。
通称何ンクス。
彼が出る事で歴史が修正されるという何とも不憫な立場。

・時の界王神
正直バレるとは思わなくて一瞬滝汗が出た。

・ラディッツ
ドラゴンボールのゲームなら最初のチュートリアル的存在。
大体のゲームで報われないが
ネオだけは報われたと思いたい。

・タイムパトローラー
今作品の強さはそこそこ。
純粋悪〜ヒット程度の強さまで成長する予定。
よってもう既にフリーザへの敗北が確定。

・レジャースポット
今作オリジナル。
丁度良いところに緑と海が豊かで美しい星があったので
フリーザ直々に指示をし作り上げた後の宇宙最高の楽園。
警備はガーリックJr。
評価はスラッグが担当。
彼の為にこの惑星は改造され彼を太陽から守る特殊なバリアが張られている。




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揺れ動く情勢

ベジータとナッパが地球へと侵略を開始。

その知らせは当然フリーザの元へと伝わる。

どうやらベジータは自らを不老不死とすべく

地球に存在するドラゴンボールを利用する腹らしい。

 

失敗する事など既に予想済みのフリーザは

完成済みである惑星リゾートにてある考え事をしていた。

未だ惑星バンパにいるであろうブロリーについてだ。

 

ハッキリ言えばブロリーは是非フリーザ軍に組み入れたい。

伝説の超サイヤ人の名は伊達ではなくその実力さえあれば軍の地位は不動のものとなる。

ならば何故今までずっと放置をしていたのか。

 

答えは簡単。

制御できる自信がなかったからだ。

もっと言えばアレはチライやレモが比較的善人であったからである。

絶対的な悪人であるフリーザが果たしてブロリーを制御できるか。

しかし、今のフリーザの実力を正確に把握できるのもまたブロリー以外に

存在しない。

そのまま、バンパに放置し続けて早二十数年。

 

そろそろ決める時が来たのではないかと揺れる波を見ながらフリーザは

そう考えていた。

ターレスの修行も既に最終段階であり

星の商談も少なくなった今だからこそ、フリーザに決断する余裕を生ませた。

 

その矢先に起こったベジータの地球襲来。

フリーザはこれを運命だと確信した。

 

故にフリーザはブロリーの気を探りだし惑星バンパに向かって瞬間移動。

惑星リゾートにはあいも変わらず美しい海が揺ら揺らと揺らめいていた。

 

♠︎

 

惑星バンパに瞬時に到着したフリーザは

その荒廃ぶりに先ずは驚いた。

その後砂嵐が巻きあれ視界は全く無いものとなり詳しくは観察出来なかったが

フリーザはこの星の価値を既に確定していた。

 

「これは…随分と酷い星です。商品価値などありはしない。」

 

そしていきなり目の前に現れたフリーザに対し近くにいたこの男

パラガスもまた驚いていた。

 

「フ、フリーザ様!!?」

 

「おや、私をご存知でしたか。貴方、お名前は?」

 

「サイヤ人のパ、パラガスと申します!」

 

「そうですか。戦闘力は?」

 

「…なにぶん戦場を離れて久しく、今では6500程度かと。」

 

「まぁいいでしょう。私がここへ来た理由は貴方の息子さんです。」

 

「…ブロリーに何の用で?」

 

パラガスはフリーザに対し少しだけ警戒心を上げる。

未だ息子は道具ではない

最近ではバアとかいう友達まで作り修行をサボっている。

今、ブロリーをフリーザに勧誘される訳にはいかない。

 

己の復讐の為、ブロリーは最強の兵士になって貰わなければならないのだ。

 

「まぁ、今回は軽い顔見せです。

ベジータ王が何故彼を恐れ追放したか。それを確かめに来ました。」

 

その言葉を聞き、パラガスは少しだけ気分が高揚する。

やはり、ベジータ王は我が息子を恐れていたのが己の勘違いでは

無かったからである。

 

「そ、そうですか!なら存分に見てやって下さい!」

 

「ええ、ですが生憎の砂嵐。顔を見ようにも見れませんので。」

 

パラガスはその言葉にニヤリと笑い

 

「あぁ、御安心を。これはそのブロリーの仕業ですので。おい!ブロリー!」

 

その瞬間、一瞬にして砂嵐が消え去り中から多少は強い気が現れる。

その筋肉は明らかに実践でのみつけられたもの。

そして何か底知れない力が彼の気からは感じられる。

瞬間移動した時に近くにいないと思ったらこんな所にいるとは。

フリーザは改めてブロリーの気を察知し

その有用性をやはりフリーザ軍へと転用させたいと考えた。

 

「……お父さん。どうした、の?」

 

「お前にお客さんだ!挨拶しろ!」

 

ブロリーは首を傾げながら地へと降り立ち、フリーザの目の前へ来る。

やはり身長は大きく、フリーザが見上げる程度には差があった。

だが、そんな事をフリーザが気にすることは無い。

いつもの笑顔を浮かべブロリーへと自己紹介する。

 

「はじめまして、ブロリーさん。私の名前はフリーザといいます。よろしくお願いしますね?」

 

そういい、手をブロリーの元へと出すが

握手という事すらブロリーは知らされておらずその意味を理解できないのか

特に何かを反応する事はしない。

 

だが、その事実を確認したフリーザは既にチェックメイトに入っていた。

変わらず、笑顔のままブロリーへ握手という事を教える。

 

「ブロリーさん、私の手を握りなさい。…あぁ、両手ではありませんよ。」

 

「…そうです。これが握手です。覚えましたね?」

 

「……握手。」

 

「そうです、ではブロリーさん。私は貴方にお願いがあってきました。」

 

「……?」

 

「私の部下になる気はありませんか?」

 

パラガスはそれに反応し、声を出そうとしたが片手間の念力により

口を塞がれてしまう。

 

「…部下。」

 

「そうです。部下…私の元で働く気はありませんか?勿論お父様もご一緒にね?」

 

「……。」

 

ブロリーは一度に流れてくる情報を何とか理解しながら

フリーザの話を聞く。

とはいえ、知識など殆ど存在しない彼はフリーザにとってただの鴨でしかない。

 

「美味しいご飯もあります。ゆっくり眠れる施設も私が手配しましょう。

ですのでこの星を離れて……。」

 

この星を離れる、その言葉にブロリーは反応する。

 

「ダメだ!!」

 

「……何故です?」

 

勝った、そうフリーザは確信した。

 

「…ここには、友達のバアが、いる。置いては、いけない。」

 

「……友達想いですね。わかりました。

今回は諦める事にしましょう。次は貴方のお友達にも会わせてください。」

 

残念そうな演技をし、フリーザは惑星を手配する。

ここに生息している獣の生息できる環境を持っていた検査機で調べ

開発班へと指示を送る。

 

「……!わかった!」

 

「ええ、約束です。」

 

そう言ってフリーザは再び瞬間移動で

惑星バンパから離れていった。

 

 

♠︎

 

『この星ごと!!宇宙のチリになれぇぇぇ!!!』

 

『4倍だぁぁぁぁ!!!』

 

「まぁやはりこんなものでしょう。…大した事もありませんね。」

 

ブロリーとの邂逅後、自らの執務室へと戻ったフリーザはベジータの戦闘服に

仕込んでおいたドローンカメラで彼らの対決を見物していた。

カメラを別に向ければ両者ボロボロになった2人のサイヤ人。

 

そしてその後、大猿となって大暴れし

両者とも尻尾を切断されて元に戻され。

 

ナッパは件のサイヤ人によって死亡。

ベジータは命からがら宇宙ポッドに乗り込み、地球から脱出した。

 

その光景を見たフリーザは治療ポッドの準備を手配し

ある所へと連絡をとる。

 

 

「……あぁ、私です。

もしも何でも願いが叶うと言われている

あのドラゴンボールが実在していたらどうします?」

 

「ええ、私の方で調査した所

どうやらナメック星の方でその存在が確認されているようで。」

 

「やはり向かいますか。…はいはい、私の方で惑星の範囲一星間の閉鎖指示を出しておきます。思う存分蹂躙して結構です。」

 

「ええ、それでは失礼しますよ。」

 

 

ーー兄上。

 

 

 

♠︎

 

ベジータ帰還。

惑星フリーザNo.79へと着陸したベジータはその重症の為

直ぐさま治療ポッドへと運び込まれた。

 

そして、2時間後。

傷が全快し、支給された新型の戦闘服を身に纏ったベジータは

ライバル視されているキュイを無視し、更にはキュイから伝えられた

フリーザへの謁見すら無視してそのままナメック星へと飛んだ。

 

その二度目の命令無視は当然フリーザへと伝わり、フリーザはターレスにベジータ討伐令をある任務と共に与えナメック星へと向かわせた。

 

更にそれから39日後、身元不明の宇宙船が警備が敢えて(・・・)手薄にした所を通過したという

報告を受ける。

フリーザはそれを地球から来たものと断定。

執務室の中で笑みを浮かべナメック星の惑星図をウィンドウに表示する。

 

「さぁ、素敵なショーの始まりですよ。ホッホッホ。」

 

ここに、クウラ軍、ベジータ、フリーザ軍、そして地球人

四つ巴の戦いが幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・惑星リゾート
前話で話した、レジャースポットの名称。
命名、コルド。

・ブロリー
首輪付け開始。

・ベジータ
負けを経験し、サイヤの力でパワーアップ。
だが、フリーザ軍未だ最弱。

・クウラ
不老不死獲得の為ナメック星へ侵攻開始

・地球人達
ある惑星の悪意の協力により(アニメ版参照)
デッドレースへと参戦。

・ナメック星

「帰って。」


・フリーザ様のスケジュール。(通常編)

5時 起床。朝食等を済ます。

6時 朝の訓練(自主制)

7時〜9時 各部署巡回、各仕事伝達。

9時〜12時 各惑星の状態、情勢の確認。並びに討伐指示。

12時〜13時半 惑星商談。最近はトワとの会合も追加。

14時〜17時 部下の訓練(幹部、下級も含め)

17時〜18時 給料明細作成などの雑務。クウラの機嫌取り

18時半 部下に仕事の終了命令。

19時〜20時 新たな部下の発掘。裏切り者の排除。

20〜24時 トレーニング

25時半 就寝


これがいつもの生活。
激務だとこれがかなりギッチギチになる。







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動乱のナメック星

ナメック星、そこは豊かな自然と水に恵まれたのどかな惑星。

そこに住むナメック星人は宇宙の中でも屈指の穏やかな性格である。

 

しかしそれも彼らが来たことでその性格が仇となる。

 

「貴様らの残りのドラゴンボールのありか。この俺に寄越せ。」

 

ナメック星のある村。

そこは既にクウラ軍により地獄絵図となっていた。

既に多くの村人がクウラの部下であるクウラ機甲戦隊により犠牲となり

残ったナメック星人は村にいた村長と僅かに残された子ども達のみ。

途中、戦闘タイプのナメック星人が駆けつけたものの焼け石に水。

圧倒的な力の差の前に血の海に沈んだ。

 

村長の背後にはナメック星人の子供であるデンデとカルゴが恐怖

に身を震わせていた。

だが、気を感じる事が出来る村長はクウラの放つ悪の気から

渡せばこの星どころかこの宇宙すら災悪に飲み込まれる事を正しく認識していた。

 

「断る!!」

 

故に自らの命を投げ捨てても、子どもの命とドラゴンボールだけは

守り通す決断をし、クウラに啖呵をきる。

 

「…ふん。」

 

その直後、村長の頬を光線がかすり

背後にいたカルゴの心臓を貫く。

カルゴは灼き焦げる痛みに絶叫を上げそのまま目の光が失われた。

 

「そら。これで1人目。次は隣の餓鬼だ。さっさと渡せばそのゴミの

ようにせずに苦しまず殺してやろう。」

 

クウラは笑う事もせず、唯簡潔にその事を告げる。

 

 

その後ろの高い崖で身を伏せその光景を見ている者がいた。

地球からベジータ達に殺された人達を蘇らせる為にやってきた

クリリンと悟飯である。

 

クリリンはナメック星人の命をどんどん奪っていくのに怒りを覚えていたが

実力の差をみて何も出来ない自分を呪っていた。

悟飯はその光景をみて身を焦がすような怒りを覚えて今にも飛び出しそうに

なっていた。

 

「あ、アイツら……命をなんだと思ってるんだ…!!」

 

「ぐぎぎ……!!!」

 

「よせ、悟飯…!俺たちじゃアイツらには敵わない!」

 

身を震わすな悟飯を何とか諌めようとするクリリンだったが

 

 

「死ね。」

 

デンデに向け撃とうとしているクウラを見た悟飯の怒りが爆発し

そのまま飛び出してしまう。

 

「やめろーーー!!!」

 

 

クウラはその声を聞き振り向き、突然現れた邪魔者を始末せんと

指示を出す。

 

「何だ、あの餓鬼は。ネイズ、ドーレ!」

 

「「はっ!」」

 

ネイズとドーレはその指示を受け、悟飯とクリリンを始末せんと突撃する。

 

「だぁ!くそっ!!こうなった一か八かだ!!太陽拳!!」

 

だが、クリリンの放った太陽拳はクウラすら巻き込み

その視界を潰す。

 

「ぐぁ…この虫ケラがぁ!!」

 

その隙を突き、悟飯はデンデを掴み

クリリンは村長を掴もうとするが。

 

「行ってくだされ!…見知らぬ人。デンデを頼みます…!」

 

村長はそれを拒否、決死の抵抗をせんと

視界を取り戻そうするクウラ達のスカウターを破壊する。

 

クリリンは村長の覚悟を受け取り、悟飯を連れ全速力で避難する。

 

「この……!!」

 

それから少しして視界を取り戻したクウラは

そのまま怒りのまま村長の心臓を光線で破壊。

 

「追え!追わなければ貴様らも死刑だ!!」

 

その激昂のまま、失態を犯したネイズとドーレに吐き捨てる。

 

「「は、はっ!!」」

 

その威圧に萎縮した2人は全速力で追いかけていく。

 

「サウザー!貴様は俺と共に一度宇宙船に戻るぞ!急げ!」

 

「了解しました!」

 

クウラは村を木っ端微塵に破壊し

既に持っていた4つのドラゴンボールと共にその場を去る。

 

 

一方、デンデを引き連れ全速力で逃走していたクリリンと悟飯だったが

実力の差は大きく、ネイズに背後を捉えられる。

 

「ゲェヘヘェ!!雑魚共が俺たちを巻けると思ったかぁ!!」

 

「クソォ!!太陽…。」

 

「おっとぉ…もうその技は使わせねぇぞ。クソ餓鬼め!」

 

再び太陽拳で視界を潰そうしたクリリンだったが

ネイズの背後にいたドーレに腕を掴まれ封じられる。

 

「くそぉ!!」

 

「このまま、腕をへし折ってやる…!!」

 

ドーレの掴む力がどんどん強くなり、クリリンの腕の骨が痛ましい音を立てていく。

 

「ぎゃああああ!!!」

 

「クリリンさぁーーーん!!」

 

 

しかし、クリリンの腕が折れる事はなかった。

 

ドーレの横面に蹴りをいれ、1人の男がクリリンの目の前に立つ。

 

「……。」

 

「てめぇ!何者だ!この俺様の顔を蹴りやがって!」

 

男…タイムパトローラーはクリリンへと視線を向け

直ぐに逃げるように伝える。

 

クリリンは突然現れた男を警戒したが、気の穏やかさを感じ

タイムパトローラーを味方と判断。

 

「すまない!ありがとう!行くぞ悟飯!」

 

「は、はい!誰かわからないけど有難うございます!!」

 

悟飯と共にその場を離脱する。

 

「逃すか!!」

 

ドーレが追わんとするもタイムパトローラーに阻まれ行く事が出来ない。

 

ならばとネイズが追わんとするが。

 

「おっと!てめぇの相手はこの俺だ…機甲戦隊のネイズさんよ!」

 

「なっ…ゲェヘ!!?」

 

その肩に手を置かれ、振り向いた瞬間に頬に拳がめり込む。

 

そのダメージにふらついたネイズはその男の正体を見る。

 

「て、てめぇは…フリーザ様のとこの!?」

 

 

♠︎

 

同時刻。

 

一つの小型ポットがナメック星へと着陸する。

中から出てくるのはベジータ。

不老不死の願いを叶えるべく

遂にナメック星での騒乱の渦に飛び込んだのだ。

 

「ここがナメック星…なんだ!?この気配の数は!?」

 

ベジータは地球で習得した、気を探る術を使い

ナメック星での気の多さに驚愕する。

 

「ば、馬鹿な…これはクウラだと!?それに奴の配下も!

フリーザの野郎…ドラゴンボールの情報をリークしやがったな!」

 

「それと…あの地球人共もいるのか。

…可能性として奴らと組む事も考えなくては…ちっ!」

 

「それと知らないのが7つ(・・)内の5つは…ふん。」

 

ベジータは察知した5つの気が自身の周りを囲んでいる事に気づく。

その気は敵対の意思が含まれているのを察知したベジータは

声を荒げその存在達を挑発する。

 

「そこにいるのはわかっているぞ!さっさと姿を見せやがれ!」

 

 

「なるほど…お前も気を探る事が出来るのかベジータ。」

 

そして、ベジータの周囲をその5人が囲む。

 

「ベジータ、俺たちと共に来てもらいたい。」

 

「何者だ、貴様ら。」

 

「俺の名はアモンドでっせい。」

 

「ダイーズ。隣はカカオ。」

 

「ンダ!」

 

「「んで俺たちがラカセイとレズンって訳だ。」」

 

 

ベジータはその名に覚えがあった。

それは確か、自分と同じサイヤ人に従っていた人物。

 

「ほう、貴様らがクラッシャー軍団とやらか。

で?貴様らのような雑魚にこのベジータ様がついていくと思ったか?」

 

 

「…従うつもりは?」

 

「ない!」

 

ベジータはそう宣言する。

その言葉に5人の殺気が増加する。

 

 

「ならば、力尽くだ。」

 

 

 

 

♠︎

 

そして、ナメックの長である最長老は

今正にこの星で起こっている全ての騒動を全て感じ取っていた。

 

「おお…恐ろしい。この様な事が私の家族に降りかかるとは…。」

 

「ご安心を。このネイルがいる限り最長老様には指一本触れさせません。」

 

護衛であり、ナメック星人の中ではトップの実力を持つネイルが

最長老を安心させようと声をかける。

 

だが、そのネイルも自らの実力では果たしてどこまで守れるか。

自身がどれほど無力なのか。

 

ネイルはその事を思い死ぬほど呪う。

 

最長老は待つ。

今正に自分に迫っているのが、この星を照らす光であらん事と。

 

ネイルは覚悟を決める。

自身が例えどんな醜態を晒そうとも

この星を護り、最長老を守る。

 

そして、ここにあるドラゴンボールが正しき人が使う事を

唯、祈るのだった。

 

 

 

ーーナメック星の太陽は静かに星を照らしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・ナメック星

「あぁ今回もダメだったよ。」

・クウラ軍

スカウターをぶっ壊されたものの未だ無傷。

・地球組
初っ端からベリーハード。
彼らの行方は果たして。

・ベジータ
地獄の釜へご招待。

・タイムパトローラー
何故か組んだ。

・クラッシャー軍団
何故か狙った。



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英雄、来たる

ベジータとクラッシャー軍団の闘いは既に決着がつきつつあった。

 

「くそっ!どうなってやがる!」

 

5人の乱れぬ連携に防戦しかできぬベジータ。

更にベジータが感じ取ったのは5人の気の上昇。

既に己に肉薄しつつある彼らをベジータは認めざるを得なかった。

 

(こいつら闘いの中でどんどんパワーが上がってやがる…!いや、違う!)

 

ダイーズのラッシュを必死に躱す。

だが、ダイーズは急に脱力しその場で停止。

 

「っ!だだだだだだだ!!!」

 

その隙を突いてベジータの強烈な気弾の嵐がダイーズへと襲いかかる。

しかし、ダイーズはそれを待っていた。

 

「ふっ。掛かったな!」

 

「こっちでっせい!!」

 

背後からアモンドのラリアットが直撃。

その空中へと吹き飛ばされる。

 

「ほぅ!!?」

 

「ンダ!」

 

吹き飛ばされるベジータをカカオが追撃。

ダブルスレッジハンマーでベジータの腹部をめり込ませる!

 

「がぁ!!?」

 

その威力は凄まじく、猛スピードでベジータは地面に激突。

地面には巨大な割れ目が発生し、そこに待ち構えていた双子によって

ベジータの全身が痛めつけられる。

 

「「そらそら!!」」

 

そのラッシュの速さに砂嵐が発生し、ベジータの姿は見えなくなる。

だがその中では痛ましい音が連続して響いておりその音はまるで機関銃のようである。

 

砂嵐が晴れた先には、戦闘服は見るも無残にバラバラになり

打撲痕が大量に付けられたベジータ。

大の字で倒れてはいるものの

サイヤ人の強靭な肉体がギリギリで意識を保っていた。

 

そこにダイーズが近づき

ベジータのボロボロになり朦朧とする意識にダイーズの声が届く。

 

「これが、戦闘力のコントロールだ。」

 

そのまま、顔面に振り下ろさせた拳を最後にベジータの意識は途絶えた。

 

 

ダイーズはベジータの意識が無くなるのを確認した後

アモンドにベジータを担がせ、その場を離れる。

そして通信機を起動し、自らのリーダーにその事を伝える。

 

「作戦第一段階、完了だ。」

 

 

 

♠︎

 

時は僅かに遡り

場所はドーレとネイズが足止めを食らった所へと移る。

 

 

「て、てめぇはフリーザ様の所の!!ターレス!!」

 

「ほぅ…俺の事を知っているとはな。まぁいい。貴様には退場して貰うぜ。」

 

「う、裏切ったのか!!?フリーザ様を!」

 

「さぁな…それは地獄で知りな!!」

 

ターレスはそのまま、ネイズへと突進。

瞬時に懐に入り込みボディブロー。

 

「ゲェア!!?」

 

「そらぁ!!」

 

そこからのオーバーヘッドキックでネイズを叩き落とす。

 

「はぁ!!」

 

更に追撃の片手による連続エネルギー波を放ち

その全てをネイズへと直撃させる。

そして気を纏った突進でネイズへと肉薄する。

 

ネイズも直撃した気弾を喰らいつつも耐えぬき、自らの触角から

電撃波を放ち直撃させるも。

 

「お遊戯なら死んでからやりなぁ!」

 

その一切がターレスに通じず、頭を掴まれ逆に自らが電撃を喰らう。

 

「ぎゃああおああ!!?」

 

その掴まれた状態のまま地面へと激突されるネイズ。

彼はもう既に虫の息にも等しい。

だが、ターレスはフリーザに従ったとはいえ残虐なサイヤ人。

 

頭を踏みつけ、止めの気弾を掌へと集結させる。

 

「た、たすけ……。」

 

ネイズは恥も外聞も全て捨て、命乞いするもターレスに届く事は無い。

 

「死ね!!」

 

無慈悲に冷酷にその気弾はネイズの体を焼き焦がし、

ついにはネイズがそこにいたという痕跡は残っていなかった。

 

ターレスは気を探り、ネイズという存在が完全に消え去った事を

確認し、上空を見る。

 

 

「さぁて。あちらさんはどうなってやがる?」

 

 

 

 

上空ではタイムパトローラーとドーレが手四つで組み合っていた。

 

「へっ!俺様と力でやり合おうってか!」

 

「……!」

 

最初は拮抗していたそれもタイムパトローラーが紅炎のオーラを

放った事で一気に形勢が傾く。

 

「お、おお……!!?」

 

「…!!」

 

タイムパトローラーが一気にドーレを追い詰め、腕の間から顎に蹴り!

 

「おご……!?」

 

顎に蹴りが入った事により脳を揺らされたドーレを殴り飛ばし

赤い軌跡を残して超加速、背後に回り込んで更にもうニ撃蹴りを食らわせ

背中を地面に激突させるようにする。

 

そして、最後にドーレよりも地面に先回りして右手を上にして

ドーレを受け止める。

 

ベキリと背骨の折れる音と共にドーレは地面に倒れ、

タイムパトローラーは界王拳を解除。その後遺症に僅かに苦しんだ。

 

「……っ!」

 

そこにターレスが近づき、ドーレの生存が分かると気弾で吹き飛ばした。

 

「……。」

 

タイムパトローラーは何も殺さなくてもと目で訴えるが、

ターレスは逆にそれを咎める。

 

「お前もサイヤ人なら容赦するんじゃあねぇ。お前がどっかの飼い犬であろうともサイヤ人ならサイヤ人に相応しい生き方を…。」

 

続きを述べようとした時

タイムパトローラーの通信機に声が響く。

 

『はいはい、うちの大切な部下をそれ以上虐めないでくれるかしら?』

 

「へーへー。だがまぁ、これで共闘は終わりだ。

後は好きにやらせて貰うぜ?こっちも色々とあるんでね?」

 

『…ええ。ありがとう。彼だけじゃドーレとネイズの2人は倒せなかったでしょうから…そういえば貴方はフリーザに何を指示されたの?』

 

 

 

「自由に暴れてこい。それだけだぜ。」

 

 

♠︎

 

一方、宇宙船に戻ったクウラとサウザーは予備のスカウターを装着し

クリリンや悟飯の行方を追っていた。

そして。

 

「クウラ様!」

 

「捉えたか、ネイズとドーレはやはり逃したか…使えん奴らめ。

行くぞサウザー。場所はわかるな?」

 

「はっ!場所は……。」

 

 

 

 

そして、そのクリリンと悟飯そしてデンデはというと。

 

「良く来て下さいました。…貴方がたが来てくれた事に感謝を。」

 

「は、はいっ!」

 

デンデの案内により最長老の家へと訪れていた。

 

「まずは…貴方がたの目的を探らせて下さい。」

 

最長老はそう言って手を出し、ここへ来るように伝える。

 

「探るって……?」

 

「最長老様は頭に触れる事で記憶を読み取ることが出来るのだ。」

 

「あ、あぁなるほど!わかりました!お願いします。」

 

クリリンは頭を最長老の手に差し出し、

最長老はある事と共にクリリンの記憶を見る。

 

そこに映し出されたのは多くの死。

サイヤ人と呼ばれる存在が次々と仲間を殺し

ついにはカタッツの息子までもがその犠牲となっていた。

 

だが、ナメック星にもドラゴンボールがある事を突き止め最後の希望として

このナメック星に来たという事を。

 

その光景を見た、最長老は深い哀しみに襲われながらも

クリリンの秘められた潜在能力を解放させる。

 

「おお!!?凄い力が湧いてくる!!」

 

「貴方の潜在能力の扉を勝手ながら開かせて貰いました。そして…ええ。貴方がたならばきっとこれも任せられる。」

 

そう言い、最長老はドラゴンボールの一個をクリリンへと手渡し

クリリンはその期待に応えようと真剣な眼差しで受け取る。

 

次に隣にいた悟飯の潜在能力を解放させようとするがその余りの大きさに

驚愕する。

 

(この少年…とても大きな潜在能力を秘めている。しかし、それを全て取り放っては力に殺されてしまう…ならば。)

 

そう思い最長老は今の悟飯が引き出しても耐えられるギリギリの潜在能力を引き出す。

 

「わぁ!!凄い!凄いですよ!!クリリンさん!」

 

「あぁ!」

 

力の大幅な上昇を喜びあう2人だったが

強大な気が近づいてくる事を感じ、自らの失態を悟った。

 

「しまった…!!奴らに捉えられた!!」

 

「ど、どうしましょうクリリンさん!?」

 

慌てる2人を最長老は穏やかな声で伝える。

 

「急ぎなさい…この邪悪な気がやってきた時私の命が尽きるかもしれません。その前に、ドラゴンボールを使って願いを叶えるのです。

…時間はありません。デンデ、付いて行ってあげなさい。」

 

「で、でもそれだと!!」

 

「良いのです…私は充分に生きました…老い先短い私の命が未来の為に

使えるなら本望。さぁ、早く。」

 

 

クリリン達は悔しさに歯を食いしばり

最長老の家から全速力で避難する。

 

それから直ぐにクウラとサウザーが最長老の家に姿を現わす。

 

 

「餓鬼どもは…ふん逃げたか。まぁ良い。それに関しては二の次だったからな。サウザー、俺はこの老いぼれに用がある。お前はあの餓鬼どもを追え。」

 

「はっ!」

 

クウラの指示にサウザーは飛ぶ。

 

そして、クウラは悪意ある笑みを浮かべ

 

「老いぼれ、貴様がこの星の長と聞いた。答えろ!ドラゴンボールの使い方をな!」

 

指先に気弾を溜めながらそう吐き捨てるのだった。

 

 

♠︎

 

一方、ベジータを連れたクラッシャー軍団と

その報告を聞いたターレスはベジータをメディカルポッドへとぶち込み。

改めて作戦の確認をとり、今は再び別行動をとっていた。

 

クラッシャー軍団はクウラの宇宙船へ向かい

容易くドラゴンボールを奪取。

その場を急いで離れる。

実は既にクラッシャー軍団はドラゴンボールを2個手にしており

これで後残り1つとなる。

 

 

そして、ターレスはある地点へとその足を運んでいた。

 

「さてと…そろそろか?」

 

その言葉と共に宇宙船がターレスの目の前に着陸する。

そして、中から男が現れ。

 

 

「来たか、カカロット。」

 

「あれ?おめぇ、オラにそっくりだなぁ!!」

 

「…はぁ。」

 

と、この混沌とした場に全く似合わない声をあげた。

 

 

ーーナメック星崩壊まで、後…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー。

・悟空
界王様にかなり止められたものの
いつものワクワクで地獄に参戦。因みに原作よりも歴史改変の影響もあって
強化されている。

・ベジータ
この地獄の中では慢心した奴から死んでいく
ただし、ここから巻き返せるかが分水嶺。

・ターレス
ネイズをあっさり撃破。
因みにタイムパトローラーと組んだのは偶々。
フリーザの許可も得て大暴れ中。

・クラッシャー軍団。
彼等の特訓は一般兵と変わらないので
精々が原作の15倍程度、カカオに関しては10倍。

・クウラ
唯我独尊を貫く帝王。
王手をかけていると思わせ実は…?

・サウザー
苦労人

・歴史管理者
渋々組んだけど後が怖い。
この時点では精々がサウザーを倒せる程度である

・改変者
アップを始めました。

・フリーザ
暗躍中。愉悦。


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チーム・オブ・サイヤン

ナメック星上空では今正に命を賭けた逃走劇が行われていた。

 

「くそぉ!もう追いつかれちまったのかよぉ!!」

 

クリリンと悟飯の背後には既にサウザーがおり

その差はどんどんと無くなり続けている。

 

「逃がさんぞ!!そのドラゴンボールはクウラ様のものだぁ!!」

 

再び太陽拳を思いつくクリリンだったが、既にドラゴンボールによって

両手が塞がっている為出来ず。

更に追い付いてくるスピードからして恐らく間に合わない。

 

だが、クリリンには希望があった。

逃げている最中に感じとった親友の気。

 

「目一杯飛ばすぞ!悟飯!」

 

「はい!お父さんの所まで!」

 

孫悟空というヒーローならば必ずこの敵だって倒してくれる。

親友だからこそそれを確信したクリリンとは全速力で加速し

それを悟飯が追従する。

 

だが、そう簡単に出来る程運命は甘くはない。

サウザーが遂にクリリンを追い越して前へと立ち塞がる。

 

「ようやく追い付いたぞ…!!さぁ、ドラゴンボールを渡せ!そして死ね!」

 

手に気を巡らせブレード状にしゆっくりと迫ってくるサウザー。

しかし、サウザーのスカウターは新たに迫る存在をキャッチした。

 

「なんだ…新しい奴がこっちに向かってくる。」

 

クリリン、悟飯もまたその気を捉える。

 

「これは…これは!!」

 

「はい!」

 

次の瞬間。

その存在は、クリリンと悟飯の前に立つ。

 

「よぉ!待たせちまったな、クリリン!よく頑張ったぞ、悟飯!」

 

英雄、孫悟空がその姿を見せた。

サウザーは悟空を視界に捉えられなかった事に焦りを覚え

クリリンと悟飯はその様子をみて安心する。

 

ーーやはり、悟空(お父さん)なら勝てる!

 

「ば、馬鹿な…この私が奴の姿を…!!?」

 

「おめぇじゃオラには勝てねぇ!」

 

「戯言を!!かあああ!!」

 

悟空の言葉に激昂したサウザーはそのまま突進し悟空に斬りかかる。

だが、怒りのせいもあり攻撃は単調に過ぎず悟空に容易く躱される。

 

「くそ!なぜ当たらない!!くそぉ!!」

 

「言ったろ!おめぇじゃ…!」

 

横薙ぎの大振りをしゃがむ事で回避

瞬時に界王拳10倍となりそのままボディブロー!

 

「だりゃあ!!」

 

ついで、顔面に蹴りの三連撃!

その威力の高さにサウザーは吹っ飛んでいく。

そして吹っ飛んでいくサウザーに悟空は更に追撃する。

 

「オラには勝てねぇ!か…め…は…め…波ぁぁぁ!!」

 

「ぐはぁぁぁあ!!!ク、クウラ様ぁぁぁあ!!」

 

界王拳10倍のかめはめ波はサウザーに直撃し、爆発を起こす。

そして、その煙の中からボロボロのサウザーが落下していく。

 

「ご、悟空?」

 

「心配すんな、まだ生きてる。オラ、無駄な殺しはしたくねぇからな。」

 

「は、はは…お前らしいよ。それにしたっていつのまにこんなに強くなって…。」

 

「詳しい話は後ですっからさクリリン、悟飯。オラについてきてくれねぇか?」

 

「お、おう?」

 

「は、はい。お父さん。」

 

悟空の珍しい真剣な表情に困惑する2人だったが

そのまま悟空の後を追っていく。

 

 

暫くして、2人は謎の宇宙船のもとに辿り着き、そのハッチを開ける。

 

そこには…

 

「おう、帰ったか…そいつらがお前のお仲間か?」

 

「あぁ!クリリンと悟飯!オラの大切な仲間さ!」

 

「……俺を踏むな!クソッタレエエエ!!」

 

悟空にそっくりな人物が

少し前に自分達を恐怖の底に陥れたベジータを足蹴にしている所だった。

 

「なぁ悟飯…これ夢かなぁ。」

 

「……いいえ、夢じゃないですよクリリンさん。」

 

♠︎

 

一方、最長老の家から少し離れた草原では。

 

「ハァ…ハァ…!!!」

 

「………っ!!」

 

「ふん、所詮はたかだか戦闘力42000と150000…いくら雑魚が集まった所

でこの俺に勝てるわけが無いだろう?」

 

片手でスカウターを持ちながら、呆れた様子で見下ろすクウラ。

そして、傷だらけの状態に今にも倒れそうなネイルとタイムパトローラーの姿があった。

 

何故こうなったかというならば、話は至って簡単だ。

最長老に負担をさせんとしたネイルがクウラに対し、自らを倒せば

ドラゴンボールの使い方を教えると宣言。

そして更に最長老を殺せばドラゴンボールも二度と使えなくなるという事も

教えクウラをこの草原にまで誘導した。

 

だが、ネイルとクウラの戦力差は正に天と地以上の差でありながら

歴史改変の魔術によりクウラが更にパワーアップ。

改変ならばとタイムパトローラーが送り込まれるも精々が川に小石を投げ入れた程度。

 

戦闘力ならば億を超えるクウラの前には文字通り手も足も出なかったのである。

更にいうならば、クウラはこの戦いにおいて片手を使っていない。

 

これが帝王、いくら盤上の駒とはいえクウラの実力は宇宙でも屈指なのである。

 

 

「さて…何故ここにサルの生き残りがいるのか…そんな事はどうでも良い。」

 

クウラはネイルへと近づきその首を掴んで持ち上げ

タイムパトローラーに指先を向ける。

 

「さて、宣言通りドラゴンボールの使い方を教えて貰おう。

さもなければ、このサルが死ぬ事になるぞ?」

 

「す、すまない…青年。助けて貰ったのにも関わらず…。」

 

「……。」

 

横に首を振り、責任は貴方には無いと伝えるパトローラー。

彼は喋れはするものの、この揺れ動く歴史の中では部外者のたった一言で

改変が起き得る事を時の界王神に指摘された彼は、

返答すらする事は許されないのだ。

 

「……くくっ!サルだからか?ろくに言葉も喋れんとはな!こいつは傑作だ!!」

 

(いや…この青年もまた何らかの使命を背負ってきたもの…私にはわかる…あの哀しみの目を見れば…!!)

 

タイムパトローラーの目を見て、ネイルは苦渋の表情を浮かべ空を見上げる。

そして、笑みを浮かべる。

 

「…わかった教える…と言いたい所だがな…空を見ろ。」

 

「な、なんだ?急に空が…!?」

 

空は急に暗雲に満ち、その様子にクウラは驚く。

ネイルはそんなクウラを見て皮肉たっぷりに告げる。

 

「生憎と…方法はデンデが知っていてな…今頃は願いを叶える所だろうさ。

…諦めろ侵略者。お前の願いは叶わん!

そして、お前が言っていたサルだが…私にはそんな奴は見えんな?」

 

クウラは立て続けに起こる屈辱に怒りを震わせ、激昂し、ネイルを投げ飛ばし

直ぐさま空に浮かび猛スピードで加速する。

そしてスカウターで確認し、その反応の多さに

クウラは自らの失態を悟る。

 

(あの餓鬼ども……協力者がいたのか!!………どこまでこのクウラ様をコケにして生きて帰れると思うな!!下等生物ども!!)

 

「願いを叶えるのはこの俺だぁぁぁぁ!!!!」

 

だが、そのクウラに立ち塞がる者達が現れる。

 

「悪いがここは行き止まりでっせい、クウラ様よぉ?」

 

「ンダ!」

 

「……雑魚どもが邪魔をするなぁぁぁ!!」

 

 

♠︎

 

時は少し遡り、クラッシャー軍団の宇宙船にて

 

先ずはターレスが口を開く。

 

「さて、俺がお前達を集めたのは他でもねぇ。この星で踏ん反りかえってる

バケモノを倒すのに協力しろ。」

 

「それってクウラちゅう、とんでもねぇ奴の事か?」

 

「ふん!サイヤ人が協力とはな。」

 

「俺の部下すら倒せなかった奴は黙ってな…お坊ちゃんよ?」

 

「………。」

 

悟空が確認をし

ベジータはいつもの傲慢さを出そうとしてターレスに咎められる。

今回ばかりはベジータも反論出来ずに黙り込む。

それもそのはずベジータが感じている悟空とターレスの気は己を超えていたからである。

 

(超エリートのこの俺が下級戦士に負けているだと?馬鹿な!この俺は超エリートだ!たかが下級戦士にごときに負けていい筈が無い!!)

 

「ってもよぉ。オラ1人でそのクウラっちゅうのと闘いてぇぞ。」

 

悟空は協力に異を唱えるが、ターレスはそれを嘲笑う。

 

「無駄死にしてぇなら構わねぇ。だが奴の戦闘力は俺やお前が倒した

機甲戦隊程度では比べ物にならねぇ強さだ。オススメはしねぇぜ。」

 

「どれくらいだ。」

 

ベジータがどれ程なの力なのか尋ねる。

 

「少なくも4億は確実に超えてるな。…もしかすれば5億すら超えてるかもしれねぇ」

 

「な、なんだと!?」

 

ターレスのその回答にベジータは声を荒げる。

そして、確信する。

今のままでは勝てない。

今の自身の戦闘力は一度死の淵からのパワーアップを果たしたとはいえ

精々が40000程度、例え大猿化した所でクウラとは最低でも約1000倍の差が

あるということになる。

 

「…その様子なら理解してくれたみてぇだな。なら、もう一度聞くぜ。

協力する気になったかいベジータ王子さんよ?」

 

「…ふん、認めてやる。今の俺では確かに奴には勝てん。だから今回だけは貴様と組んでやる。だが、俺の足を引っ張るなら容赦せずに殺してやる。」

 

「おうおう、それでこそだぜ。…それでカカロット、貴様はどうする。」

 

ベジータの協力を得たターレスはうんうんと悩んでいた悟空に声をかける。

 

「…オラ、戦闘力ちゅうのは良く分かんねぇけんどクウラちゅうのが

とんでもねぇ事だけはわかった!…それにおめぇも悪い気してっけど、

クウラを倒すって事には嘘はねぇんだろ?なら、協力すっさ!」

 

「そいつはどうも。…さてここから本題だ。」

 

ターレスは宇宙船の近くに置いてありクリリンが警護している

7つ揃ったドラゴンボールを見る。

 

「このドラゴンボールを誰が使うか、俺としてはクウラの為になるべく駒が欲しい、あいつらは別件でどうしても抜きでやらなきゃならねぇからな。

…で、どうなんだカカロットの息子さんよ。」

 

「え、えっと…僕はピッコロさんを生き返らせたらなって…。」

 

「…あの雑魚のナメック星人を復活させてた所で何の役にもたたんだろうが…!」

 

「ひっ!…で、でも!ピッコロさんが生きかえれば地球のドラゴンボール

も復活するし……。」

 

「…地球にもドラゴンボールがあるのか?」

 

「は、はい。…あ、でも叶えれる願いは3つですし!あ、それと…」

 

悟飯は既にデンデから聞かされた情報を全て伝える。

今ここで、秘密にしていても勝つ見込みが無いということは

幼いながらも悟飯は直感していたのだ。

 

「いや、そのピッコロとやらがあの世にいて死んだのは地球。って事はこっちに引っ張ってくるにも願いを使うんだろ?」

 

「あ!そ、そっかぁ。」

 

ターレスはその情報から願いをたった1人に2つも使う事に気付き

内心、頭を抱える。

 

(ちっ!万能の玉ってもそう上手く出来てねぇか。まぁ仕方ねぇ。背に腹は変えられねぇからな。)

 

「…仕方ねぇ、そろそろ使うぞ。…どうやらあちらさんも限界みてぇだ。」

 

ターレスがそう言い、他の人達も一斉に気を探る。

感じるのは邪悪な気。ターレスが言った通り1人では絶対に勝てないと

思わせる程の絶対的な気である。

 

「す、すげぇ気だ…!!こりゃあオラだけじゃきちぃかもな…。」

 

「それじゃあ直ぐに取りかかれ!」

 

 

宇宙船から飛び出し、デンデにクリリンは指示を出す。

そして

 

「タッカラプト ポッポルンガ プピリットパロ!」

 

デンデが呪文を唱えると空は暗雲に包まれ、ドラゴンボールが輝き

光の中から巨大な龍が現れ

 

「ドラゴンボールを7つ揃えし者よ…さあ願いを言え!どんな願いも三つ叶えてやろう。」

 

そう告げるのだった。

 

 

ーー滅びの時は近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・サイヤ地球連合

クウラへの共同戦線発足。
なお、最大戦闘力はターレスの模様。

・クウラ
プライドを破茶滅茶に刺激され大激怒。
恐怖の帝王降臨。

・クラッシャー軍団
決死の時間稼ぎ開始。

・タイムパトローラー
ボコボコにされ帰還、次に現れるのは直ぐ近く。

・歴史改変者
キリが溜まっていってにっこにっこ。

・フリーザ
兄の無様さに笑いすぎて腹をやられた。


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実力の差

「雑魚どもが…手間をかけさせてくれる!!」

 

無傷のクウラがボロボロのクラッシャー軍団を見下ろす。

 

ドラゴンボールを使う為の時間稼ぎの為

クラッシャー軍団は必死にクウラへと食い下がりはしたものの

力の差は歴然。

連携は意味をなさず、ものの数分で壊滅状態にまで追い込まれてしまう。

 

「さ、流石はフリーザ様の兄貴…でっせい。つ、強い…。」

 

一番戦闘力が高いアモンドですら立っているのがやっとの状態であり

他の者は血の流しすぎで意識が混濁していた。

 

それに止めを刺さんとクウラが指先を向けようとした次の瞬間。

 

「ンダ!!」

 

背後に潜んでいたカカオがクウラへと抱きつく。

カカオもまた至る所の配線がショートし、活動停止も近い中

最期の力を振り絞りクウラへとしがみつく。

 

「放せ!ガラクタが!!」

 

クウラが抵抗するたびに、そこかしこのパーツが破損し配線は焼き切られる。

それでもカカオはクウラを放さない。

 

「カ、カカオ!」

 

「ンダ!!」

 

声は届かずとも、アモンドはカカオのやる事を察する。

 

ーー自爆だ。

 

カカオはサイボーグである自らの心臓にあたる部分をオーバーヒートさせる

事によりクウラごと自爆する気なのだ。

長年チームを組み続けた者だからこそ、分かるカカオの最期の意思は

確かにアモンドに伝わる。

 

「………すまねぇ!」

 

アモンドは気絶するダイーズと双子を担ぎ脱出する。

そして、それを確認したカカオは中心から発光し…

 

「ンダ!!!」

 

「何!?」

 

内側から大爆発を引き起こし、辺りは爆風に包まれる。

その爆風は次第に晴れ。

 

「……ふん、所詮は唯のガラクタ…この俺に傷1つ付ける事は出来ん!

…そして逃がさんぞ!虫ケラどもがぁぁぁぁ!!」

 

無傷のクウラが現れ、直ぐさま追跡する。

 

ーー既に空が晴れた事に気付かずに。

 

 

♠︎

 

ピッコロの復活、そしてナメック星への転移。

この2つの願いが叶え終わった瞬間。

ポルンガが消滅し、ドラゴンボールは唯の石ころに戻る。

 

それはつまり、最長老の死を意味していた。

 

「そ、そんなぁ…最長老様がぁ……うぅ!!」

 

「デンデ!」

 

泣き崩れるデンデを悟飯が支える。

だが。

 

「泣くな小僧!泣くのはここに来るバケモノをぶっ殺してからだ!テメェの存在1つで俺たちの生死が決まると思え!」

 

ターレスはそれを叱責する。

何故ならばターレスが考えついた作戦にデンデは最も必要であるからだ。

その作戦は言わばサイヤ人によるゾンビ戦法。

 

悟空、ターレス、ベジータ。

この3人を主体としてクウラに挑むわけだがターレスは未だしも悟空やベジータは明らかな戦力不足だ。

そこでサイヤ人の特性として死の淵からのパワーアップをターレスは利用し

その成長限界までやられ続け、その度にデンデに治療してもらう、或いは悟空が持ってきた仙豆で回復という

正に賭けでしかない戦法を敢行する事を決断。

 

ベジータに関しては実力差から納得し

悟空はなんだかよくわからないまま、同意した。

 

故にデンデの死がゲームオーバーなのだ、ターレスの気が立つのも

当然なのだろう。

 

デンデもそれを分かっているのか涙を拭き決戦に備える。

その目は覚悟が決まった目だ。

 

その直後、血塗れとなったアモンド達が降り立つ。

 

「……小僧!!」

 

「は、はい!」

 

直ぐ様デンデがアモンド達を治療。

ターレスはカカオだけがその場にいない事に気付き。

 

「……カカオは。」

 

「……俺たちを逃がすために。」

 

「そうか…。」

 

アモンドが伝えた情報を聞きながら

拳を血が滲む程に握る。

だが、そんな怒りは高速で近づいてくる気の暴力でかき消される。

 

「てめぇら…早速だが…来るぜ。」

 

そして、クウラが今ここに降臨した。

 

「……下等なサルどもが…よくもよくもこの俺をここまでコケに出来たものだなぁ……!!絶対に…絶対に!!」

 

クウラの全身から彼自身の怒りを体現する程のおぞましい気の奔流が溢れでる。

 

一歩、また一歩と憎き怨敵へと歩いてくるその姿に

その場にいたものは体の震えが止まらない。

果たしてそれは恐怖からか武者震いか。

咄嗟に誰もが戦闘態勢をとりその脅威に備える。

だが、クウラの気は近づけば近づく程増大し、更にその圧力を増す。

 

 

「許してなるものかぁ!!もうここまでだ!!貴様らを皆殺しにし!!この星を徹底的に壊滅してやる!!!」

 

己を出し抜いた下等生物への怒りとそれを見逃した己への怒りが

濃密に混ざり合いクウラはその場で停止し更に気を高める。

 

「カァァァァ!!!」

 

ターレスはここで自らの最大の誤算に気づく。

 

ーー奴を怒らせすぎたと。

 

「もう貴様らにかける加減は無い!!光栄に思え!!この究極の変身を見るのはお前達が最初で……最後だぁ!!!」

 

星が悲鳴を上げる様に大地は震えながら裂け、空は赤く染まる。

 

「ぬおおおおお!!!」

 

クウラの体が一回り大きくなり、全身が発光し始める。

 

「ちっ!!はぁ!!」

「くそっ!!だだだだだだだ!!!」

 

その危険性を察知したのはターレスとベジータ。

クウラの変身を阻止せんとありったけの気弾を乱射する。

 

だが、その全てをクウラが張る気のバリアが完全に防ぎきり

光は次第に小さくなる。

 

「クックック……さぁ、始めようか!!」

 

クウラの開戦と共に口元にマスクから装着され

それと同時にクウラの巨大な体躯が消え去る。

 

その瞬間、誰もが背筋から殺気を覚え合図する事もなく全速力で散開。

 

しかし、その瞬間アモンドの姿が搔き消え

地面からグシャリという音がする。

 

「なっ!!」

 

下を見れば、頭を完全に潰され、脳髄が飛び出した所為で体が痙攣した

アモンドらしいものがクウラの足によってグチャグチャにされていた。

 

 

「先ずは貴様から…次は!」

 

そして再び、クウラの姿が消え今度は悟空の背後で横張りを放つが

咄嗟に殺気を感じた悟空は自らの限界である20倍界王拳をもってこれを

回避。

 

だが、それすらも超えた速度でクウラは背後に立ち悟空の回避行動を受け止め

地面へと叩きつける。

 

「が、がぁぁぁぁ!!」

 

20倍界王拳の影響もあり頭は潰されはしなかったものの

叩きつけられた衝撃で悟空は頭から血を流して気絶する。

 

「くそっ!!」

 

「だぁぁぁ!!」

 

それを救わんとターレスとベジータがクウラに向かっていくが

クウラはそれを一笑。

 

「下らん!」

 

即座にベジータの腹部に強烈な蹴りを炸裂させ

ターレスへと振り向きラリアット。

 

「ごっ!!」

 

「ぎっ!!」

 

ベジータの肋骨は容易く砕かれ、近くの岩場まで吹き飛ばされる。

ターレスはラリアットに耐え、気弾で目くらまし。

 

クウラの視界を奪って悟空とベジータを悟飯に押し付けたデンデの方に運ぶ。

 

「急げ!早く!」

 

そう言い、デンデの返事を待つ事無くターレスは迫るクウラへと残りのクラッシャー軍団と共に迎え撃つ。

 

「雑魚がいくら集まろうとも俺に勝つ事は出来ん!」

 

ダイーズの右手を掴んで引きちぎり、レズンとラカセイの片足を片手で掴んで

地面へとぶん投げ、激突。

その際、ブチリと足がちぎり飛び、クウラはそれを投げ捨て気弾でもって焼き尽くす。

 

「てめぇら!!…クウラァァァァ!!」

 

激昂するターレスがクウラへと迫る。

多彩な技術を持ってクウラを攻撃するがクウラはその全てをノーガードで

受け止める。

 

「その程度かぁ!!」

 

膝でターレスを岩場へと叩きつけ

ダブルスレッジハンマーで近くの池へと叩き落とし

更に追撃に池へと突進、右腕をターレスの腹部へとめり込ませる!

 

「が、がぁぁぁ!!?」

 

衝撃で一瞬、その部分のみ池の水は消し飛びクウラがターレスから離れれば

再び水は元に戻っていく。

 

「ククク!!この程度かサイヤ人!…甘い!」

 

笑うクウラの背後から気弾が迫るもののクウラは容易くそれを弾く。

弾かれた気弾は空にまって爆発。

その背後には復活しネイルと同化した事で更にパワーアップしたピッコロの

姿があった。

 

「ふん、誰かと思えばただのナメック星人の雑魚…」

 

「……バケモノめ。」

 

冷や汗を流すピッコロの横にはデンデによって更にパワーアップした悟空。

 

「…そして、さっきの雑魚か。」

 

悟空とピッコロは目を合わせ、1人ではクウラを倒すのは不可能な事を

把握しあい。

 

「オラとオメェでやるぞ!ピッコロ!」

 

「…どうやらそれしかないらしいな!」

 

ラディッツ以来のタッグを結成し、クウラへと迫る。

 

「調子に乗るな!下等生物が!!」

 

悟空が界王拳20倍を維持しながら、ピッコロと交互にクウラへと攻め続け

クウラの重い攻撃をいなし続ける。

 

「だりゃあ!!」

 

「うわたぁ!!」

 

ピッコロ自体の攻撃はクウラにとって大した事では無い事はピッコロ自身がよく分かっている。

ならばとピッコロは気弾でもってクウラを翻弄しながら悟空を的確にサポートしていく。

 

悟空はひたすら視界の塞がったクウラに打撃を与え続け、その速度はどんどん増していく。

 

クウラは悟空の攻撃が先程よりも自らに響いているのに疑問を持つ。

 

(この短時間で奴の戦闘力が上がっているのか…?しかし!)

 

「小賢しい!!」

 

だが、自らの方が未だ上と確信したクウラはその思考を打ち切り

悟空の腕を掴んでピッコロへとぶつけそのままドロップキックのような形で

2人まとめて吹き飛ばす!

 

「とどめだぁ!!」

 

 

♠︎

 

一方、池の中から脱出したターレスは

部下を担ぎ、デンデの所へ向かう。

 

しかし、ターレスが見た光景は正に狂気。

 

「おい!もう一度だ!!」

 

「くそぉ!!」

 

「ごぷっ!!さ、さぁ!は、早く直しやがれ…!!」

 

「は、はいいい!!」

 

ベジータがクリリンに何度も自らに穴を開けさせ死の淵に至り回復し

を繰り返している姿。

ベジータは思ったのだ、今己に足りないのは純粋な戦闘力。

ならば、ターレスの作戦に則り何度でも繰り返せば、必ず奴やフリーザが

恐れた超サイヤ人になれると。

 

そして、ターレスがつく頃にはベジータの気は先程までとはまるで格の違った強さ。

未だターレスの上、とまではいかないが既に己の部下すら超えた戦闘力なのは間違いないだろう。

 

「恐れ入ったぜ…流石はサイヤの王子様だ。小僧、次は俺を頼む。割と骨が逝っちまって結構きちぃんでな。」

 

「は、はい!」

 

「ふん、貴様もよぉく見ておけこれが奴らの恐れていた超サイヤ人だ!」

 

「へいへい…おうおう本当に治ってやがる。礼を言うぜ。後コイツらも頼んだ。気絶してるがこのまま休ませてやってくれ。」

 

「行くぞ!ターレス!」

 

「はいよ…まぁ本当は違うが今言う事ではねぇわな。」

 

 

♠︎

 

止めを刺さんとするクウラを気弾で封じ込めたのはターレスとベジータ。

 

「覚悟しやがれ…クウラさんよ。」

 

ターレスが笑い、ベジータもいつものように不敵な笑みを浮かべる。

 

そのままターレスが腕をクロスさせると全ての気弾がクウラへと迫る。

 

「ふん!下らん遊戯だ!」

 

だが、その全てをクウラは無視してターレスへと迫る。

 

「どこを見てやがる!」

 

だがベジータがその間に入り込み両足でクウラの顎を蹴り上げ

ターレスがその首元を思っ切り殴りつける!

 

「…っ!ごほっ!」

 

いかにダメージが通り辛くとも喉は生き物にとって重要な器官。

そこを殴られたクウラはその衝撃によって咳き込む。

 

「はぁ!!」

 

「そらぁ!!」

 

そして、ベジータが咳き込んだクウラの腹を意趣返しに蹴りつけ

ターレスがラリアット。

 

クウラはその確かに威力の上がった攻撃を喰らい

吹き飛ばされた時、ふと悟空の方を向く。

そこではデンデが不思議な光を放ち、悟空を治療する姿が映る。

 

(そうか!あの餓鬼が奴らを治していたのか!!小賢しい真似をサルごときが!!)

 

確信したクウラはそちらへと向かおうとするが

 

「ギャリック砲!!」

 

「キルドライバー!!」

 

迫るベジータとターレスの一撃が間近へと迫りそのまま直撃。

しかし、いくら上がったとはいえまだまだサイヤ人とクウラの間には

大きな差がある。

 

「邪魔だ!!」

 

故にクウラが一度腕振ればその一撃は消し飛び、クウラはデンデへと急接近。

 

「ば、馬鹿な!」

 

ベジータが驚き、ターレスはクウラの標的を察知する。

 

「小僧!そこを…!!」

 

「遅い!」

 

そして、デンデの脳天を高速の光線で撃ち抜く。

 

「あっ………。」

 

脳を一瞬で焼かれ、デンデは何が起こったのかわからないままゆっくりと崩れていき息絶えた。

 

「デンデーー!!!」

 

すぐ隣にいた悟飯が絶叫し、治療を終えたピッコロと悟空が怒りを滲ませ

クウラへと迫る。

 

「オメェ!!」

 

「キサマァ!」

 

更にベジータとターレスがクウラへと迫り、四方を囲んで一斉攻撃。

 

「だだだだだ!!」

 

「うわりゃあ!!」

 

「はぁぁ!!」

 

「おらおらぁ!!」

 

クウラも四方の攻撃は流石に捌けはしないがしかし。

 

「邪魔だぁ!!」

 

前方のベジータを威圧で吹きとばし、後方の悟空を蹴り上げ、側方の

ピッコロとターレスを掴んで投げ飛ばし気弾で追撃。

あっという間に4人は数の有利を失う。

 

「クックック…どうした?貴様らはこの程度か?」

 

そしてクウラは嘲笑う。

最早あの鬱陶しい復活も無く、打つ手も無いまま足掻く下等生物が

可笑しくて仕方ないが故に。

 

だからこそ、クウラは気付かない。

いつの間にか消え去った1人。

孫悟空にはたったひとつ、起死回生の一手が有ると言う事を。

 

「孫…頼んだぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー。

・悟空
秘策の準備。

・ピッコロ
同化したものの、4人の中では最弱。
技量でギリギリクウラにへばりついている。

・ターレス
まだ最大戦力。

・ベジータ
狂気の行動で一気に戦力に。
だが、慢心は治らず。

・クウラ
未だ、最強は揺るがない。
だが?

・クラッシャー軍団
再起可能。

・地球勢
足手まといを自覚し隠れている。

・デンデ
今回のMVPは間違いなく彼。

・トワ
準備開始。

・フリーザ
飽きてきた。そして作戦最終段階。


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たったひとつの秘策

ピッコロ達がクウラと闘っている場所から少し離れて所で悟空は両手を

上げて、ある技の準備をする。

 

「空よ…海よ…大地よ…近くの星達よ…!頼む…!オラに元気を分けてくれ!」

 

これが悟空の最後の切り札。名を元気玉。

ナメック星にある全て、そしてナメック星の近くにある星の全て。

そこから少しづつ気を分けて貰い完成する

界王が伝授した最強の技である。

 

その気を溜めている時は悟空は完全に無防備になってしまうものの

悪に対して無類の威力を誇るこの技は正に悟空達において起死回生の一手。

 

故に悟空は一時離脱し

ピッコロを始めとした3人が時間稼ぎを引き受けたのだ。

 

だが、ここで思わぬ幸運が悟空に降りかかる。

元気玉の溜まりが予想以上に早く、既にベジータに使った時よりも大きくなり始めているのだ。

しかし、これでもまだクウラを倒すには足りないと感じた悟空は完成するまで

仲間達が無事である事を祈るのだった。

 

「頼むぞ…ピッコロ、ベジータ、ターレス…!オラの元気玉が出来るまで

持ち堪えてくれ…!!」

 

 

♠︎

 

そして、クウラと再び相対する3人は時間稼ぎの為とはいえ悟空という抜けた穴の為もあってか先程までの勢いは無いにも等しかった。

 

「はっ、どうした!さっきまでの威勢は何処にいった?」

 

「サイヤ人を舐めるなよバケモノめ!」

 

ベジータが威勢良く突撃し、ターレスとピッコロがそれに続く。

 

「はぁぁぁあ!!」

 

ベジータがクウラにラッシュし

ピッコロが気弾で視界を塞ぐ。

ターレスは両手を合わせ今度は全力のキルドライバーを撃つ準備をする。

 

ピッコロのサポートもあってかベジータの攻撃は的確にクウラへと直撃するも

それに怯む様子は無い。

 

「その程度か!」

 

それどころかラッシュと気弾を受けながらもベジータとピッコロの頭を

掴みとり、投げ飛ばし

 

「キエァ!!」

 

両手でエネルギー波を撃ち追撃する。

 

「くっ!」

 

「ちっ!!」

 

2人は何とか避けきり、ターレスの目の前には両手を広げたクウラ。

 

「くたばれ!!キルドライバー!!」

 

その好機を見逃さず今ある全力のキルドライバーを最高のタイミングでクウラに放つ!

 

「馬鹿め!!そんなものが俺に効くかぁ!!」

 

だが、その一撃もクウラの皮膚を軽く切断するに留まり片手で弾き飛ばされる。

 

「くそっ!」

 

悔しがるターレスをクウラは嘲笑う。

 

「どうした…さっきの威勢は何処へいった?」

 

そして、ベジータもまたこれだけの攻撃を喰らわせたのにも関わらず

未だ大したダメージを受けていないクウラを見て

自らの強さは本当は超サイヤ人では無いのかという疑惑を持ち始める。

 

(ま、まさかこの俺は未だ超サイヤ人では無いというのか…!!それともクウラの野郎は超サイヤ人ですら倒せないというのか!!…違う!!)

 

だが、その思考を超エリートとしての誇りで薙ぎ払い

ベジータは己の全てを込めて最大のギャリック砲を放つ!

 

「この俺は…超サイヤ人なんだぁぁぁ!!くたばれクウラァァァァ!!」

 

ベジータのこのギャリック砲は間違いなく人生で最も威力のある物だったろう

 

しかし。

 

「ふん!」

 

クウラは避けるどころか

そのギャリック砲の中を何ともなしに突っ込んで行く。

 

「ば、馬鹿な!」

 

「ふん!」

 

そしてベジータの下までたどり着きそのままアッパー

ふらついたベジータを膝蹴りからの肘打ちで再び岩場へと叩きつける!

 

「がぁ!!」

 

更に岩場に激突したベジータをその巨大な足で岩場へと押し潰す。

 

「く、くそぉ…がぁ!!」

 

ベジータはその圧倒的な実力差に悔し涙を流すもクウラは更にベジータを

踏み抜き。

その威力にベジータは気絶する。

 

「ふん!つまらん!やはり超サイヤ人はただの伝説だった!」

 

そして、残りの2人を始末せんと次はピッコロへと迫る。

 

「くそ!!うわたたたたぁ!!」

 

迫るクウラに連続で気弾を放ちながら距離を離すピッコロ。

 

「パワーは上でもスピードはこの俺だ!」

 

だが、クウラはそのスピードのギアを上げピッコロの目の前に立つ。

 

「くく…スピードがどうしたって?」

 

「くそっ!魔貫光殺…」

 

「遅い!」

 

咄嗟に貫通性のある魔貫光殺砲を撃たんとしたピッコロの背後に立ち

ダブルスレッジハンマーで地面へと叩き飛ばし更に追撃。

 

「く…は…」

 

ふらつくピッコロの腹に拳を突き刺しながらまたも岩場に叩きつけながら

上と持ち上げ、今度は地面に叩きつける!

 

「ごぁぁぁ!」

 

地面は容易く割れ

先にあった川すらもまた割れていく。

そして、その衝撃にピッコロは気絶し

 

クウラは最後の1人であるターレスへ迫る。

 

「くそっ!来やがれクウラ!はぁぁぁ!!」

 

ターレスは己の残った全ての気を解放し、クウラへと向かっていく。

戦闘力が劣るターレスがクウラにできるのは最早、間髪入れない怒涛の攻め

の一手のみ。

 

「そらぁ!!」

 

その攻めをクウラはまるで遊戯のようにただ避けるのみ。

そして、ターレスに僅かな隙ができればそこにエネルギー波を撃ち込み

辺りを爆風で包む。

 

その爆風の中、ターレスとクウラの気弾の応酬。

だが、ターレスはクウラの気を察知して放つのに対しクウラは唯がむしゃらに

撃ちまくるのみ。

 

「やはりか…奴はフリーザと違って気が読めねぇ。ならば!」

 

ターレスは小型のキルドライバーを爆風の中に仕込み

クウラが出てくるのを待つ。

 

程なくして爆風が止み、クウラがターレス目掛けて突進する。

それをギリギリで回避し、ターレスはクウラの背後にキルドライバーを仕込ませ、そのまま尻尾を切断する。

 

「んぐっ!!貴様ぁ!よくも俺の尻尾を!!」

 

激昂したクウラは更にそのスピードを上げ、ターレスの顔面を膝蹴り。

のげぞったターレスの首をその巨腕で握り込みその背中を殴り続ける。

 

「ぎゃぁぁあ!!!」

 

「サルごときが良くも!良くも!」

 

プロテクターは容易く砕け、バキリと骨が折れる音がしようとも

クウラはその怒りのままにターレスを殴り続ける。

 

だが、そんなクウラに5つの気弾が炸裂。

僅かに緩んだ腕からターレスは逃れる。

 

気弾の正体はクラッシャー軍団とクリリンと悟飯。

腕を無くし、足を無くそうとも彼らは一矢報いた。

そして、その一矢はクウラを更に激昂させ

 

「貴様ら…何処までもこのオレを侮辱しやがって!いいだろう!この星ごと消えてしまうがいい!下等種族が!」

 

クウラは全力を込めようと空に浮かび自らの最大の技。

スーパーノヴァを放たんと気を指先へと集めようとするが

 

「やれぇ!孫!!」

 

「だりゃぁぁぁぁ!!!」

 

気絶から復帰したピッコロの言葉。

そう、彼らの必死の抵抗が身を結び

ついに悟空の元気玉はナメック星の上空から小惑星の様な大きさとなって

クウラへと振り下ろされる!

 

流石のクウラも超巨大な気弾には驚き、咄嗟に受け止めようと両手で更には全力で抵抗を試みるが

 

「こんなもの…こ、こんなもの……!!」

 

元気玉は悪人には決して弾き返す事は出来ない。

ピッコロや悟空達が地面へと伏せる中、クウラはその元気玉に呑まれていく。

 

「こんな……ぐわぁぁぁぁ!!!」

 

抑える事が出来ないまま、クウラはそのまま元気玉と共に水場へと沈んでいく。

 

その瞬間元気玉は水場で大爆発を起こし

その場には元気玉のサイズの穴が空く。

 

「へ、へへ…や、やったぞ。」

 

悟空はその光景に気を探らせクウラの気を感じないと確認すると

そのまま地面へとへたり込む。

そんな彼の元にピッコロやクリリンや悟飯。

彼らに支えてもらっているクラッシャー軍団。

そしてベジータに腕を貸しながら歩いてくるターレスが集まる。

 

「やりやがった…あのクウラをよ。」

 

「……ふん。」

 

周りが勝利に沸く中

クリリンは悟空を立ち上がらせようと抱きつく形で持ち上げる。

 

 

ーーその横を二本の光線が走った。

 

「…………へ?」

 

クリリンが後ろを振り返れば、そこにはターレスを突き飛ばしたダイーズ。

そしてベジータを突き飛ばしたラカセイとレズンが

目の光を失い、そのまま地面へと崩れ落ちる姿。

 

「……………は?」

 

ターレスは突然の出来事にただ放心する。

だが、他の人はそれをやった正体は嫌でも把握できた。

 

「ヒュー!ヒュー!い、今のは危なかった……こ、このオレがほんの僅かな

間死を感じた……!!このクウラが死にかけたのだぞ!!」

 

そう、あれだけの威力を喰らってもまだクウラは生きていた。

角は折れ、マスクは半分千切れ飛び、全身から血が滲みだしていても

未だクウラはその生命力の強さをもって元気玉を耐えたのだ。

 

「……ふん!」

 

そして、クウラは唖然とする皆を差し置き、次の標的を。

 

「うわぁ!うわぁぁぁぁ!!」

 

そもそもの原因となったクリリンへと定めた。

右手に集めた透明な気をクリリンへと送り込み、体の支配を奪い取り。

空へと浮かせ。

 

「っ!やめろクウラァァァァ!!」

 

右手を握る。

 

「悟空ぅぅぅぅぅ!!!」

 

それだけで内部の気は爆発し、クリリンの体は文字通りの木っ端微塵。

彼の姿はこの世から完全に消失した。

 

その姿を悟空は見て。彼の中でナニカがプツリと切れた。

 

「ゆ……ゆ……許さんぞ。よ、よくも……よくも……!!!!」

 

悟空の気が次第に金色へと変わっていく。

彼の中で眠っていたサイヤの細胞が今、覚醒の時を迎える。

戦闘力、穏やかさ、そして激しい怒り。

ここに彼の枷は全て外れ、彼はサイヤの歴史を超えた更なるステージへ

 

「ーーーーー!!!」

 

大凡、人が発する事無い正に獣の雄叫び共に彼の髪は金に染まる。

 

更にこの人物もまた、全ての鍵を揃える。

彼はあと1つだけここに至る為の鍵が無かった。

条件となる戦闘力は充分にあった。

奴の部下となってからの部下達との交流で穏やかさも手にした。

だが、激しい怒りは備えていなかった。

 

ターレスは自らを呪う。

カカオが死ぬ前に、アモンドが死ぬ前に、ダイーズがレズンがラカセイが。

その前に辿り着けなかった自らの愚かさを。

呪って、呪って、呪って。

その自らへの紅蓮の怒りが彼の姿を金へと変える。

悟空とは対照的に彼は叫ぶ事は無い。

唇から血を流しながら。それはまるで涙のように

彼は焼け焦げそうな怒りの中で静かに次のステージへと到達した。

 

 

ベジータは、その姿を見て確信する。

 

「奴らが奴らこそが……真の超サイヤ人……!!くそっ!!」

 

悟飯はその金の姿に最大の希望を見る。

 

「なれたんだね…!お父さん達は超サイヤ人に!!」

 

 

「な、なんだ!何が起こったというのだ…!!あ、あの変わりようは…!」

 

クウラは2人の姿を見て、確信する。

 

ーーこいつらこそが、あの伝説の超サイヤ人なのだと!!

 

 

 

「貴様はもう謝ってもゆるさねぇぞ!このクズ野郎ーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・下級戦士
遂に次のステージへ。

・超エリート
屈辱。ただその一言。

・地球組
2人の変身に勝機を見た。

・帝王
最強崩れる時。

・真の帝王
もう見るものは見た。

・歴史改変者
準備完了。


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悪を貫く黄金の光

悟空、そしてターレスはついに自らの殻を破りさり超サイヤ人へと

変身を遂げた。

 

その姿を見たクウラは僅かな動揺を覚えたが

次の瞬間、彼に謎の光が直撃し彼の気の纏う気が禍々しく変化し

目は赤く光る。

 

クウラはその自身の変化に気づく事無く獰猛な笑みを浮かべ

 

「良いだろう!!ここで貴様らを倒し!この俺が真の宇宙最強だという事を死をもって味わわせてやろう!!キェェエ!!」

 

自分の真下へと気弾を放ち、ナメック星の核が熱を帯び始める。

その狙いは自分と相手の退路を断ち切り、この残り少ない時間の中での

決着をクウラが望んだわけではない。

 

これはトワの狙いだ。

本来ならばここで無様に敗北するクウラを敢えてお膳立てし

決戦に相応しい舞台を作り上げ、最期までキリの収穫に役立って貰えれば

それでいい。

ならば、盛大に狂わせるのもまた、愉悦なのだ。

 

「オメェ!!」

 

「ハハハハハ!!これでこの星は滅びる!元々この星は滅ぼす運命だったのだ!寧ろ後五分も残してやったのは慈悲だろう!!」

 

怒る悟空を何処までも嘲笑うクウラだが、彼もそして悟空やターレスですら

トワにとって、最早踊るだけの人形に過ぎない。

 

その為か。

その光は直ぐに消え去り、クウラの禍々しさが元に戻る。

 

しかし、

クウラの言うことに嘘は無い、戦闘の中でそれを嫌と言う程感じた悟空は

直ぐさま悟飯とピッコロ、ベジータに逃げる様に告げる。

 

「オメェら…この星が爆発する前にオレが乗ってきた宇宙船でサッサと脱出しろ!」

 

悟飯とピッコロは自らの力が既にクウラに通じない事を解っており

ベジータもまた、先程の戦闘。

そして目の前の光景にプライドはズタズタ。

故に彼らは拒否する事も反論する事も無く

そのままその場から全速力で退避する。

 

「ハァア!!」

 

そんな彼らをクウラが待つはずもなく

彼の拳は悟空の頬へと突き刺さる。

 

しかし、悟空はその状態から顔色1つ変えずクウラの拳を掴み取り

そのまま握る力を強めていく。

 

「貴様…一体幾つの命を犠牲にすれば気がすむんだ……!罪も無いものを次から次へと殺しやがって…!」

 

「ぬぅ!くっ……くっ!ば、馬鹿な!?ちぃ!!」

 

クウラはそれを解かんと必死に抵抗するも外れない。

ならばと膝で悟空の腹を蹴り上げるも。

 

「そして……クリリンまで……!!」

 

悟空にダメージは無い。いや正確に言えば悟空とクウラの差は

先程よりは無いとは言え魔術の効果もあり未だクウラの方が上だ。

しかし、その差すら上回る悟空の純粋な怒りがダメージすらも

無視していた。

サイヤの力の源である細胞が奴を倒せ、殺せと更に活性化し

悟空の力を底上げしているからだ。

 

それでも必死に抵抗するクウラをさっきまで動かなかったターレスが全力で殴り抜く!

先程とは全く違う、完全にダメージが入った拳はクウラの頬を抉り飛ばし

ターレスの拳にクウラの千切れた頰肉が飛び散る。

 

「……。」

 

その静かなままターレスは飛び散った頰肉を消しとばし

自らの怨敵へとその視線を向ける。

 

殴り飛ばされたクウラは暫く地面を転がった後に立ち上がり

自らの頬を触り笑う。

 

「ク、クククククククッ!なるほど流石は伝説というだけある…だが!」

 

クウラはそのまま地を蹴り悟空へと疾走。

そのまま、あえて悟空が放った拳を受け止め、顔を掴んで叩きつける。

更にそこからエネルギー波を至近距離で発射しようとするも

悟空の両足の蹴りで腕を弾かれ、更にターレスが背中を蹴り飛ばす。

 

更に悟空が起き上がって追撃、クウラを横殴りし

その上をターレスが横回転により威力を増した裏拳。

顔面に二発、水月に一発殴り込み、反撃の拳をしゃがんで躱せば

今度は上から悟空が顔面に蹴り抜き、蹴り上げ、蹴り飛ばして後方へ

回転。

拳に気を溜めたターレスが防御がガラ空きになった腹を殴り抜けば

クウラはそのまま吹っ飛んでいく。

 

2人はその姿に追いつき吹き飛んでいくクウラに横蹴りを喰らわせ。

 

「「くたばれクウラーーー!!!」」

 

2人の青と紫の気が混じりあって1つになった強力なエネルギー波が

クウラに迫る。

 

「舐めるなぁ!!」

 

だが、そこは帝王たる所以か。

しっかりとバリアを張り、攻撃を完全に防ぎきる。

 

「付け上がるなよ下等生物がぁ!!」

 

それだけでは無く、そのバリアのままクウラは突進。

2人のエネルギー波を弾き飛ばしながら、間近まで到達。

真空波で2人を分けさせ、悟空の方には踏みつけで真空波を起こし

僅かに吹き飛んだ悟空にボディブロー、そのままダブルスレッジハンマーで

叩きつけ

 

「キェエエエ!!」

 

片手で気弾を連射。

ある程度まで撃ちきれば、次はターレスの背後からの攻撃を避けながら

反転し、痺れ効果のある気弾でターレスの動きを封じて

全力で殴り飛ばし、高速で回り込んで殴り飛ばそうとするも

ターレスが背後に高速移動して逆にクウラを蹴り飛ばす。

クウラも飛ばされる瞬間に一撃ターレスの腹へと裏拳を突き刺していく。

 

「ぷっ!!」

 

突き刺した裏拳はターレスの骨を砕き、血反吐を吐かせるに至るほど

凄まじい一撃。

しかし、ターレスはそれを意にも介さず、復帰した悟空と共に

体勢を立て直したクウラへ迫る。

 

「キエエ!!」

 

そんな2人を撃ち落とさんと極細の気弾を連続で撃つも当たる前に

高速移動で避けられ、顔に膝蹴りを腹にブローをモロに喰らってしまう。

更にターレスは蹲るクウラの足を掴んで高速のジャイアントスイング。

クウラの姿が何重にも見えるような超高速スピードで振り回してぶん投げ

悟空が背後へと回り込んで鯖折り。

苦痛に悶えながらも両腕を悟空の首に回して締め上げそのまま急降下!

悟空の力の入らない抵抗は気にもせず

自らの全力で落下していき地面ギリギリで悟空を放つ。

悟空はそのまま地面へと亀裂を走らせながら激突。

 

急接近したターレスのラッシュを途中で片手を掴み

反対の手でラッシュ!

ターレスがふらついた所を今度は両手と膝でラッシュし

脇を両手で掴んで放り投げ

 

落下していくターレスは元気玉の穴で停止するもクウラが追撃してくるのを

確認して回避し、大振りの横薙ぎを掴んで反対の手を掴んで手四つに。

 

「ぐっ……!!」

 

「おおおお……!!クッ、掛かったな!」

 

だが、クウラがターレスの両手と共にその場で腕を開き

そのまま腹へと膝うち。

 

「ぐぉぅ!!?……ぺっ!こんな程度か……?」

 

ターレスは呻き声を出すが直ぐに表情は無に戻り

クウラを挑発する。

 

クウラは激昂し、言葉を返そうとするが。

 

「調子に……な、なんだ!?空が急に……!!あ、あれはまさか!!」

 

突如暗くなった空、最初は惑星崩壊の時間切れかと思ったソレは

直ぐに近くに現れた龍の存在により打ち消され、クウラの頭脳があれこそが

願いを叶える龍だと確信する。

 

何故、今になってなどは最早どうでもいい!

不老不死さえ手に入れれば宇宙最強は俺の中に!

 

そう考えたクウラはターレスを無視しポルンガの元へと向かおうするが

悟空がそれを阻み、それに追いついたターレスのラッシュを

捌き、避け、反撃し。

僅かな連携の隙を見逃さずに2人の腹を蹴って加速する。

 

(遂に……遂に!!この俺に!!)

 

だが、クウラは見た。

己が確かに殺した筈のナメック星人の餓鬼が何故か生き返り

今正にポルンガへと願いを言おうしている姿を。

 

「邪魔をするなぁぁぁぁぁ!!!」

 

そうはさせじとクウラは気弾を放つもターレスが先回りして弾き

彼の前には悟空が立ち塞がる。

 

そして。

 

「ポルンガ クウラ ポット ソンゴクウ ポット ターレス!!

トピリット ドンロンパ タペスポ パロ!!」

 

デンデがナメック語で願いを言えば

 

「いいだろう。」

 

それに応じるようにポルンガの目が赤く光りその場からデンデが

宇宙船にいた悟飯、ピッコロ、ベジータ。ついでに何処かにいたブルマも

更に復活したナメック星人とカカオを除いたクラッシャー軍団は

ナメック星から姿を消し

無事に地球へと転移する事に成功する。

 

その効果が終わればドラゴンボールは宙に浮き、7つの星となって

その姿を消す。

 

「な、な、なん……だとぉ…!!」

 

「へっ…ざまぁみやがれってんだ。」

 

自らの野望が星と消える姿を認められず唖然とするクウラ。

そして、転移する前に仲間の気を感じ取ったターレスは

いつもの調子を取り戻し

今までの憎しみを込めて嫌味ったらしくクウラを罵倒する。

 

その直後。

クウラの気が再び禍々しさを増し全身から気を放出。

 

ターレスと悟空は目を細めたのを確認し

クウラは上空へ跳躍。

虚空に手を向け、ナメック星を軽々と破壊できる

否、ナメック星を含めた近隣の星ですら巻き込む程の威力の気弾を生成し

自らの最強の技であるスーパーノヴァで全てを破壊せんとかかる。

 

「もうここまでだ!!!この星ごと……消えて無くなれぇぇぇぇ!!!」

 

そして、無慈悲にも放たれたそれを。

悟空達も迎撃せんと力を込める。

 

「か………め………は……め………!!」

 

悟空は自らの使い慣れた最も自分が熟知した

少年の頃からの技。

 

「消えるのは……!!」

 

ターレスは片手に己の全て、超サイヤ人となって爆発的に成長した

全部の気をこの一撃に込める。

 

「波ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「てめぇだぁぁぁぁ!!!」

 

 

放たれた3人の奥義はぶつかり合い、均衡していたが

魔術によりクウラの目の光は更に増す。

 

「ハハハハハ!!ソォラァ!!!」

 

その増大した気を更に込め

悟空とターレスはギリギリまで追い込まれてしまう。

 

「ぐぎぎぎぎ……!!」

 

「ぐぉぉぉぉ……!!」

 

そしてクウラは勝利を確信し叫ぶ。

 

「俺のか……!!」

 

しかし、その言葉は横から届いた決して無視できない一撃がクウラへと

直撃する。

横を見れば、そこにはあの時にいたサルがまだ傷が残った状態で

浅い息を吐きながらクウラを睨む。

 

「貴様……あの時の!!」

 

そこで気を取られたのがクウラの敗因。

僅かな気の緩みを見逃さず。

 

悟空とターレスは最後のパワーでスーパーノヴァを押し返す。

 

「し、しまっ……!!」

 

クウラもまた自らの技を抑えながら再び押し返そうとするが

勢いは止まらない。放たれた黄金の光とともに

クウラは空を成層圏を超え、刹那、背後に熱さを感じる。

 

「こ、こんな事でやられ………なっ!?」

 

クウラの背後にあったのはナメック星にある太陽の一つ。

それに向かってクウラは自らの技ごと突っ込んだ形となってしまった。

 

「あ、甘かったのは……!!」

 

摂取6000度の業火の中で焼かれ続けるクウラの脳裏には

ある日の過去が思い起こされる。

 

惑星ベジータが滅ぶ時、クウラは確かに知っていたのだ。

奴を、孫悟空という存在を……そして、サルが未だ残っていたという事も!!

 

『放っておけ。自分で蒔いた種だ。自分で刈らせろ。

フリーザも……まだまだ甘い』

 

そうだ、甘かったのはフリーザだけでは無かった。

甘かったのは……。

 

後悔と憎悪の思考の中、悪の帝王は最後まで己が舞台の演者とは

気づかぬまま彼の肉体は消滅した。

 

その遠く、遥か遠い惑星でとある一室。

ある人物が薄っすら笑い、自らの兄が無様に死ぬ場面を見て。

 

「中々面白かったですよ?クウラ(負け犬)?」

 

そう切り捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・下級戦士
遂に打ち倒した。

・地球帰還組
これから各々の行動へ戻る。

・帝王
…………!

・タイムパトローラー
美味しいとこだけ取ってった。

・歴史改変者
キリ吸収終了。

・フリーザ
お迎え。


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帰還

クウラを打ち倒した悟空とターレスではあったが

既にマグマが各地で吹き出し、星の爆発までもう猶予も無い。

一先ずはターレスと共に使える宇宙船を探そうとして

悟空はターレスの方を向く。

 

「……ターレス?」

 

既にターレスの姿は無く、悟空は急にいなくなった彼の姿を探すが

もう一刻の猶予も無くなったナメック星が爆発寸前なのを察知し

 

悟空は運良く崖下に引っ掛けられていた

ターレスが乗ってきた宇宙船に乗り、行く先が不明のまま

しかし、クウラから受けたダメージによってナメック星から離れた瞬間に

気絶した。

 

一方、ターレスは訳の分からないまま惑星リゾートへと運ばれていた。

 

「……あ?」

 

「クウラと闘った感想は如何でしたか?…おや。」

 

ターレスの消えた理由は至って簡単。

フリーザが速攻でターレスを掴んで瞬間移動し

惑星リゾートに常時設置してある

気を発生させるポータルへと運んできたからである。

 

流れる穏やかな海の光景がターレスの心を落ち着かせ

同時に今まで蓄積していたダメージが今になってターレスの身体に

苦痛を与え、ターレスは眠るように砂浜に倒れこんだ。

 

「……はぁ、任務失敗の件は後で聞くとしましょう。ガーリックさん

ターレスさんをメディカルポットへ運んで差し上げなさい。」

 

「了解。」

 

フリーザは報告もせずに気絶したターレスを見て呆れたのち

指をパチンと鳴らしてガーリックJrにターレスを運ばせた。

 

運ばれていくターレスを目にしながら

フリーザは彼の部下の迎えに行くために

不本意だが地球にいるベジータの気を頼りに瞬間移動した。

 

 

♠︎

 

その頃地球のある地点。

その小さな岩場にてベジータの笑い声が響く。

 

それは超サイヤ人が伝説では無かった事への喜び。

そして、クウラとカカロットそしてターレスという邪魔者も

ナメック星と共に消滅する運命だという嘲笑からだった。

 

ベジータは余程嬉しいのか、近くの草を千切って上に放り投げる。

 

だが、その後ろから聞き慣れた声が響く。

 

「おや、何がそんなに嬉しいのですか?……ベジータさん。」

 

「なっ!!フ、フリーザ……!!?」

 

ベジータの背から突然姿を現した新たな脅威に

ベジータを見張っていたピッコロと悟飯も驚く。

 

「ふむ……ここが地球ですか。中々いい土地です。」

 

「な、何故ここに!?」

 

「何故?…あぁ、ご安心なさい。部下を迎えに来た事とビジネスです。

裏切り者の貴方を殺そうなんて気は毛頭ありません。…ですので

そこにいらっしゃるナメック星人とおチビさんも気を静めて貰って結構。」

 

フリーザは警戒する3人にやれやれと呆れ、敵対の意思がない事を

告げるがピッコロは逆に更に警戒心を高める。

 

「……いきなり現れた貴様を信用できると思っているのか。」

 

「いえ、全く。まぁお退きなさい。死にたく無いならね。」

 

そういってフリーザはほんの少しだけ気を解放する。

それだけでそこだけがまるで重力が何千倍にもなったような圧力が

戦士達に襲いかかる。

 

「ぐ、ぐぁ……ぁ…。」

 

3人はその重さに耐えきれず、フリーザに首を垂れる形で跪いてしまう。

 

「そうです、そのまま跪いていれば何もしませんので。」

 

そしてそのままフリーザは3人を軽く素通りし

 

最早瀕死の最長老のもとへと姿を現わす。

 

「……何者ですか?」

 

「はじめまして、私の名はフリーザ。

この度は愚兄がご迷惑をおかけしたようで……。」

 

クウラの名を出したフリーザに残っていた戦士タイプの者達が

一斉にフリーザを囲い込む。

 

「おや、随分なようで。つきましては私の方で新しい星を手配して差し上げます。……あぁ、お代は結構。愚兄の行いの慰謝料とでも。」

 

「何が……目的です?」

 

「目的?そんなものありませんよ!第一に貴方達から何を搾取すればいいと?

私のただの善意ですので疑わずとも結構。」

 

そういってフリーザはあるカードと通信機を最長老を看護していたムーリという

ナメック星人に渡す。

 

「では、星の案内をお求めでしたらそちらのカードに記載してある番号

をそちらの通信機にかければ私の部下が迎えに来ますので。」

 

そうして、フリーザはクラッシャー軍団の前に立ち。

 

「さて、ターレスさんも待っていますのでさっさと帰りますよ?」

 

彼らを一息で担ぎ、瞬間移動でさっさと帰還した。

 

フリーザが消えた事で彼の重圧から逃れたベジータ達は

解放された瞬間に息を荒くし

クウラですらまだ前座であった事を知り恐怖するのであった。

 

♠︎

 

フリーザがクラッシャー軍団を連れ、惑星リゾートへ帰還してから

2時間後。

 

ターレスが完全回復して目を覚まし

フリーザが建設したホテルの会議室で彼らは揃って集結していた。

 

「さて、貴方がたの任務をおさらいしておきましょうか。」

 

フリーザが何もない空間を叩くとディスプレイが発生し

フリーザはベジータの写真でスライドを解除する。

 

「貴方達の任務はベジータさんの始末。……これは本来簡単な任務だったのですがねぇ…。」

 

「クウラの野郎を代わりに殺ったからいいじゃねぇか。」

 

「………まぁ、それを引いてもゼロです。結局の所、貴方がたの手でベジータさんを始末しなければ……。」

 

フリーザがスライドをカカオの写真へと変え

 

「カカオの奴をドラゴンボールで生き返らせない。……そうだろ?」

 

ターレスがそう確認する。

 

「そうです…ですので先ずは失敗した分こき使う予定ですのでよろしく。」

 

ターレスは自らの手を見る。

昔の自分ならカカオ1人失ったとてフリーザとの手を切り

いつもの様に宇宙を荒らしに行ったのだろう。

 

だが、今となっては出来るはずもない。

今まで孤高の獣だった自分にできてしまった群れ。

同じ志の元で美味い飯を食い美味い酒に酔った仲間を

もうターレスは見捨てられなくなってしまった。

 

「へいへい、分かりましたよフリーザサマ。」

 

「宜しい。では貴方がたはこのリストの星の殲滅をお願いします。」

 

吹っ切れた表情で返答するターレスにフリーザは

最早不要である星の殲滅リストをターレスに渡す。

大抵は土地に含まれている栄養分などの問題なのだが

ごく稀に未だフリーザ軍に楯突く愚か者が潜んでいる場合がある。

 

この宇宙を統べていたクウラが死んだ以上その部分もフリーザ軍が

引き受ける事になる。

故に先ずは簡単なものからターレスに殲滅を命じ

 

彼らは早速支給された新しい宇宙船に乗り込んで惑星リゾートを

飛び立った。

 

その数日後、フリーザは惑星リゾートからある場所へと再び瞬間移動。

 

降り立った先には大きくもなく小さくもない

しかし、綺麗な家が草原と砂漠が入り混じった星に建てられていた。

 

近くには巨大な砂場があり、敵が現れる訳でもない。

 

フリーザはその様子を確認ながら

家の前に立ちドアを3回ノックする。

 

そして。

 

「おや、どうです?ここでの生活は?」

 

「うん、とても、楽しい。」

 

中から惑星バンパに居たはずのブロリーがフリーザを

笑顔で迎えいれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・ターレス
もうあの頃には戻れない

・地球組
軽く絶望した

・フリーザ
軽く撫でる気で放ったのにそんなになるとは思わなかった
そして、作戦終了。

・ブロリー
また、次回。



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信頼と裏切り

さて、ブロリーが何故バンパからこの星へと移住しているのか。

時は孫悟空が元気玉を準備している時まで遡る。

 

フリーザはナメック星の様子を観察していた際

星の手配が完了した連絡を受け

さっさとブロリーを移住し己の手元に置こうと

惑星バンパへと向かっていた。

 

だが、そこでフリーザが周りを見渡せばどこもかしこも

まるで何か大きな災害にでもあったような破壊が起きているバンパの光景。

 

そして、目の前には小さく縮こまったブロリー。

眼前に倒れ、息絶えている生物。

最後に、何者かの肉片。

 

ひとまずは話を聞いてみようとフリーザはブロリーへと近寄り話しかける。

 

「何があったのです、ブロリーさん?」

 

フリーザの声に振り向いたブロリーには

涙を乱暴に手で擦って拭いた跡が真新しく残っており

今までずっと、ブロリーが泣いていた事がわかる。

 

「フ、フリー、ザ?」

 

「ええ、私です。ここで何があったのですか?」

 

質問に少し黙るブロリーだったが

やがてポツポツと朧げに覚えている事を話し始めた。

 

 

♠︎

 

事の始まりはフリーザが最初にブロリーと会った後。

念力で封じ込められたパラガスは星から脱出できなかった事よりも

ブロリーが断った事に大層喜んだ。

ただ、修行をかまけてバアと遊んでいる事はパラガスにとって

不愉快な事であり同時に兵士としては邪魔な事だと認識していた。

 

それから、数日。

自分以外の誰かに友達を紹介するなど当然ながら初めてのブロリーは

更に修行を行わなくなった所かフリーザに教えて貰った握手が

切っ掛けになったかのように知識を欲するようになった。

 

それに感化されたのかバアも更にブロリーとの友好を深め

ついには修行など出来ない親友の様な存在となってしまい

ブロリーにとってバアとパラガスの立ち位置の認識がほぼ同列となるほどになっていた。

 

だが、人の心を知らぬ様にパラガスも自身がそんな立場に置かれていること

など知りはしなかった。

そして遂にパラガスは決心し、実行した。

 

 

ブロリーとバアがいつもの様にじゃれあいながら遊びに興じていた時

エネルギー波がバアの胸を貫く。

自分の兵士であるブロリーという道具に不要な存在をパラガスは排除したのだ。

バアは弱々しくブロリーの頰を舐め、何かに齧り付き、涙を流し、ブロリーとの別れを

惜しむ様に息を引き取った。

 

ーーその時、ブロリーの気が爆発的に上昇する。

 

頭を掻き毟り、そこにはもういないバアの存在を無意識に感じ取る。

怒りと哀しみが偶然にも最高の形で融合しブロリーの秘められた大猿の

力を解放する。

ブロリーはその怒りのまま理性を失い

だがそれでもバアの仇が誰であるのかは明確に分かっていた。

本来ならばバアを殺されたとしてもブロリーは自分が悪いと納得していたのだろう。

 

しかし、フリーザという一種の起爆剤がここに来て引火した。

渋々ながら父に知識を教えて貰ったブロリーにはその感情は無い。

そう、既にブロリーは親の枷から解き放たれていたのだ。

 

それを行なったのは間違いなくパラガス。

彼の失態はブロリーの力を恐れる余り

知識をブロリーに与えてしまった事。

始めは軽くあしらっていた。

だが、教えなければブロリーは修行にすら行かなくなった。

だから、教えた。

 

その結果がこれだ。

パラガスはそう後悔しながらもブロリーの首に付けてある制御装置を作動しようとする。

が、作動しない。

ふと、ブロリーの首を見ればそんなものは何処にも無い。

 

では、なぜ無いのか。

答えは簡単、バアが壊したから。

獣の本能がブロリーの自由の為に最期の力を振り絞って破壊したのだ。

 

ならば、もうパラガスに打つ手立ては何も無い。

襲いかかってくるブロリーから無様に逃げ惑い、しかし戦闘から離れて

久しいパラガスがバアとの遊びで無意識に身体の使い方を

覚えたブロリーに勝てるわけも無い。

 

怒りのままパラガスは何度も地面へと叩き潰され、しかしサイヤ人が

誇る異常なまでの生命力がパラガスに気絶させる事を許さない。

 

肉から骨が飛び出し、目玉は潰され、どこもかしこもペチャンコに

なりながらも死ななかったパラガスは自らの頭をブロリーに

踏みつけられ首から上が何もかも無くなった事で漸く苦痛から解放された。

 

この話をターレスが聞けばこう言うのだろう。

 

ーー子が親を殺す。それがサイヤ人だ。

 

 

♠︎

 

ブロリーから話を聞き終えたフリーザは内心ほくそ笑む。

 

なんて好都合なのだと。

 

ブロリーの説得にはパラガスが唯一の邪魔だったフリーザにとって

今回の事は本当に幸運でしか無い。

更に友達であるバアとやらも死んだのはフリーザにとって更なる策を

考えさせるのに充分な材料だった。

 

だが決してそれをフリーザは顔に出さずに同情の眼差しでブロリーを

見つめる。

 

「そうですか……大変でしたね。ブロリーさん。」

 

「ゔ、ゔん。バア、にも、フリーザを、紹介、したがっだ。」

 

話し終えた事で記憶が思い出されたのか再び大粒の涙を流し

ブロリーはバアの亡骸に向き合って、ぎゅっと抱きしめる。

 

ならばと、フリーザは提案していたある事をブロリーに告げる。

 

「ブロリーさん、よぉく聞いてください。……もしバアさんを生き返らせる事が出来るとしたらどうしますか?」

 

ブロリーはこの言葉に反応して勢いよく振り向く。

その目にはもう一度バアと遊べるのかという希望がこれ以上に

無いほど詰められていた。

 

「ほ、ほんと!ほんとにバアを!?」

 

その希望に縋る形でブロリーはフリーザに尋ねる。

フリーザもまた穏やかな笑顔を作り上げながら答えていく。

 

「ええ、ドラゴンボール、というものがこの宇宙にはあります。」

 

「ドラゴンボール…?」

 

「そうです。驚くべきなのはその玉を7つ集めれば何でも願いが叶う、という事です。」

 

「ほ、ほんとに!!?」

 

「ええ、嘘はついていません。どうですかブロリーさん。私と共にドラゴンボールを見つけに行きませんか?」

 

「うん!!」

 

フリーザの提案にブロリーは即答する。

そして、フリーザはその傍らでナメック星に類似する惑星をピックアップし

その星に保護を掛ける。

 

ブロリーは、バアが生き返るという喜びとそれを与えてくれたフリーザに

感謝する一心で満遍の笑みを浮かべていた。

 

「では、先ずはバアさんを安全な所に連れて行って差し上げましょう。

このままでは他の生物に食べられてしまうかもしれませんので。」

 

故にフリーザの提案にもあっさりと承諾し、ブロリーはそのまま

バアの亡骸と共にフリーザの瞬間移動でバンパから脱出したのだった。

 

そして、現在ブロリーは近くの土地で農園を築き

サイヤ人とは思えない程穏やかな生活を送っていた。

勿論、農業のノウハウやそれに類する機械を与えたのはフリーザであるし種を与えたのもフリーザだ。

しかし、ブロリーは持ち前の記憶力で直ぐに工程をマスターし

今では立派に果実や野菜を育てている。

今はこの星に来てから日は浅い為、芽は出ていないが

月が経てば立派に身が育つのは間違いないだろう。

 

そして、最愛の親友であるバアの亡骸はブロリーの家の隣にある大きな砂場の中に内蔵されている冷却装置によって腐る事なく眠っている。

 

そんな充実した暮らしを興奮しながら語るブロリーをフリーザは

軽い相槌をしながらしっかり聞いていた。

 

30分後、次の仕事の時間が迫ったフリーザはブロリーに別れを告げる。

ブロリーはそれを惜しむもののまた来て欲しいと告げ

再び農地へと飛んでいき

それを見届けたフリーザは

瞬間移動で次のビジネスの場へと向かうのだった。

 

♠︎

 

クウラの死から暫く。

フリーザの元に引退したコルドが姿を現した。

 

「フリーザよ、我が息子でありお前の兄であるクウラがサイヤ人に殺された。

お前にはそのサイヤ人の行方を捜し、儂と共にそいつを消しに行くぞ。」

 

コルドは子を殺された事により珍しく怒っており

フリーザにも問答無用で来てもらう腹づもりだった。

 

だが。

 

「そのサイヤ人なら地球という星にいますので後は勝手にどうぞ。私は兄上の仇打ちなどに興味はありませんので。」

 

フリーザは何てこと無いようにあっさりと拒否する。

 

「……なんだと?貴様、サイヤ人に恐れをなしているのか?」

 

「おや、何故そう思うのです?」

 

「聞けば、貴様は滅ぼしたサイヤ人を部下にしていると聞く、裏切られたともな。それにクウラは貴様よりも強かった。だから貴様は死ぬのを恐れ地球に向かおうとしないのだろう!」

 

そのコルドの言葉にフリーザは反応する。

 

「……何か、勘違いをしているようなので言っておきましょう。」

 

そして、フリーザは自らの気の僅か1割を解放する。

そのビリビリとした感覚はコルドをして死を予期させるほどの禍々しいモノ。

 

「私は兄上……いえ、あの負け犬に関して特に思う事はありません。

寧ろ目障りとしか思っていませんでしたよ。」

 

「な……!だ、だがお前はクウラをサポートする為に宰相になると……!!」

 

「あんなのはただの建前です。アイツをスケープゴートにし裏では私が政権を握る。その為の……ね?」

 

フリーザの態度にコルドは激昂し、指を鳴らす。

 

「我が部下達よ!奴を捕らえろ!!」

 

だかその指示をしても部下の誰一人として応じるものはいなく

一人、また一人とフリーザの元へと集まり跪く。

 

「な……!!何をしておるのだ!!愚か者ども!!」

 

「そして、これを最後に貴方も私にとって必要ではなくなりましたので。

……さっさと失せなさい。仕事の邪魔です。」

 

フリーザの放つ気が更に鋭さを増し、コルドは逃げる様にして自らの宇宙船に乗り込み地球へと向かう。

 

だが、付いてくる部下は一人としていなかった。

 

その跪いた部下達はフリーザに媚つく。

 

「へへ……フリーザさま…!貴方に忠誠を!!?」

 

しかし、跪いた全ての部下をフリーザは横薙ぎの風圧だけで上半身を

消しとばす。

 

「金を積まれただけで寝返る者など私の軍には不要です。」

 

そういって残りの痕跡をも消しとばして、フリーザは再び仕事へと

戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー。

・ブロリー
フリーザを完全に恩人認定。

・パラガス
「おおぉ……自分の子供に殺されるとは…これもサイヤ人の定めか……!!」

・クウラ
破壊された惑星はフリーザが修復し売りつけ、忠誠を奪われていた。
因みに元気玉には近くのフリーザ軍も参加していた。
哀れ。

・コルド
息子を失い、裏切られた挙句、たったひとりで地球へ
因みに引退生活でフリーザから金を得て、近くの星で隠居生活していたが
コルドが地球に行った瞬間、フリーザ軍がその星を劇的ビフォーアフターしたのでもう帰る場所もない
残当。

・フリーザ
身内の汚点が粗方消えたので、満足。
それどころかそのお陰でビジネスが円満化したので大勝利。


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未来の齟齬

コルドが地球へと侵攻する前

ナメック星人達はフリーザから渡された書類を見つめ議論をしていた。

 

議論はその破格の条件に賛同する者、罠だと断じて反対する者とに真っ二つに

裂け、混沌を極めていた。

 

賛成派は星の環境や空気に至るまで全く類似しているこの惑星の景観、更に立て直しのサポートまで着く、資金も援助する。といった正にこちらにとって降って湧いた幸運であり手離すわけにはいかないという意見。

 

反対派はそもそも与えたフリーザという者が我々家族を殺戮して回ったクウラの弟であるという事。

そのフリーザが我々の持つドラゴンボールの存在を知っていてもおかしくは無く、それをいいように利用されるかもしれないという意見。

 

議論の決着は中々付かず、ついには今は亡き最長老から新たにこのナメック星人の長を任じられたムーリが決着をつける。

 

ムーリの出した答えはイエス。

ナメック星人特有の底知れぬ優しさが原因かどうかは不明だが

わざわざ星だけを与えるのならクウラの弟とも名乗らずとも、あの瞬間に

来なくても良かった。

そして、フリーザがクウラと全く同じとは限らないという可能性を信じたのだ。

 

結果、ムーリは通信機でフリーザの部下から案内を受け新たなナメック星で

スタートを切った。

育ている農作物は前の惑星よりもスクスクと育ち、資金も困らない。

フリーザがドラゴンボールを求めてやって来る様子も無く、ナメック星人達は穏やかに過ごしていた。

 

…その遠くで、ナニカが迫ってくる事になど気付きもしないで。

 

 

♠︎

 

時間は戻り、フリーザが自らの執務室へと戻った後に舞台を移そう。

 

フリーザはクウラが死んでから更に増加した部下達の配備とクウラが破壊したであろう星の修復作業、そして今から死ぬコルドの遺産である金と星の整理作業に入っていた。

 

宇宙は粗方フリーザが治めていたとはいえクウラ、コルドが治めていた地域も未だ残っておりその彼らが死んだと知った途端反乱軍を形成されては面倒でしかない。

故にフリーザは早急に鎮圧と再統治へと乗り出す事にした。

 

幸いにして、あの汚点共が支配していた所の人々は従順では無いにしても

戦闘力は雑魚にも等しく、オツムが少し足りていなかった。

故に鎮圧してから飴と鞭を使い分ければ直ぐさま忠誠を誓う星が続々と現れる。

言い方を変えれば、フリーザという名の安心を得る為に人々が甘い毒の沼に自ら飛び込んでいくという事。

 

こうして、フリーザ軍は僅か1ヶ月にして汚点共の征服地区を塗り替えた。

それから少しして、コルドが地球に到着したとの情報が斥候部隊により

伝達された。

 

無論、コルドが着ている戦闘服にも超極小サイズのカメラ付きドローンが内蔵されており、戦闘開始と共に発射。

フリーザは、コルドが未来から来たベジータの息子であるトランクスにあっさりと敗北し、命乞いをした挙句、真っ二つからの乱れ切りにエネルギー波での消しとばしというなんとも無様な最期を遂げた事を仕事の合間に見ていた。

 

「……あれが、私の父とは…無様過ぎて涙すら出そうです…くくっ!」

 

フリーザはコルドの死に様に侮蔑と侮辱。それでもって清々しい別れを告げ

トランクスの未来の情報を聞き取る事にした。

 

♠︎

 

トランクスは困惑していた。

何故ならば、本来この地球に現れたと言われていた人物がコルドだけでは無かったからだ。

 

そんな彼の姿もまた、コルドの気を察知し駆けつけた戦士達にとっては

驚愕するものではあった。

何故ならば悟空とターレスしかなれないと思われていた超サイヤ人に突然現れた謎の青年があっさりと変身してしまったからだ。

 

特にベジータは己がいつまでたってもなれない超サイヤ人に何処の骨ともわからぬガキがなっているのはベジータにとってプライドを大いに刺激するものであり、その身を怒りで震わせていた。

 

「ど、どうなってやがる…!あんなガキが何故超サイヤ人になれている…!

サイヤ人の生き残りは俺たちだけでは無かったという事なのか……!!くそったれ!」

 

しかし、そんなベジータの怒りさえトランクスは動揺で感じとる事が出来ない。

 

そんな中、大きな宇宙船が地球へと上陸し中から悟空がひょっこりと姿を出す。

 

「あれ?おめぇ、誰だ?」

 

悟空は帰ってきた仲間の喜びよりも先に

近くにいた見知らぬ青年に声をかける。

その青年は悟空の声に反応し、悟空に近づき小さな声で話す。

 

「……孫さん、少しお話しがあります。そこの丘まで来てくれませんか?」

 

「ん?…あぁ、いいぞ。」

 

悟空は焦りを覚える青年が何か事情を抱えていると直感で感じ

青年が先導する先へと向かう。

 

着いた先はさっきの場所から少し離れた小さな丘が近くにある岩場。

トランクスはまず、これだけは確認しようと悟空に話しかける。

 

「……先ずはお伺いしたいのですが、孫さんは自分の意思で超サイヤ人になる事が出来ますか?」

 

これが第一前提。

トランクスは、僅かに息を飲んで尋ねる。

 

「あぁ、最初はダメだったが…苦労して何とか出来るようになった。」

 

悟空の返答に僅かに安堵したトランクスは

 

「今、ここでなっていただけませんか?」

 

「え?」

 

「…お願いします。」

 

悟空に超サイヤ人への変身を要求する。

その言葉に何かを感じた悟空は僅かに力を溜め。

 

「……ふっ!!」

 

その解放によって、瞬時に超サイヤ人へと変身する。

その気の大きさはトランクスの想定以上の気。

同時に天津飯を始めとする戦士達は超サイヤ人の気の圧に押されるが

一度フリーザの気を味わったベジータ、ピッコロ、悟飯は耐性が出来た為

普段通りの態度で悟空の変身を見守る。

 

「では、僕も超サイヤ人に。」

 

トランクスもまた、気を解放し超サイヤ人へと変身する。

 

「!おめぇもなれんのか。」

 

「…失礼します!」

 

悟空が僅かに驚いた瞬間、トランクスは剣を引き抜き悟空へと斬りかかる。

悟空はそれを気を集中させた指一本で防ぐ。

 

「たぁぁ!!」

 

繰り返されるコルドの身体をも切り裂いた剣の乱舞を悟空は容易く受け止め続け、最後は首の攻撃を僅かに首をずらして指一本で受け止める。

 

トランクスは悟空が予想以上の戦闘力を有している事に驚きながらも

柔らかな笑みを浮かべ、超サイヤ人を解除し剣を上に放り投げ鞘に収める。

 

「やはり…貴方の力は僕の想像以上でした…!!」

 

「おめぇが本気を出してなかったからさ。」

 

悟空もまた、超サイヤ人を解除する。

 

「貴方なら信じられる!……全てをお話しします。…どうやら僕の知る世界とは少し違うようですので。」

 

トランクスは悟空の信頼の眼差しをするとともに自らの素性を明かしていく。

 

自らが、約20年後の未来からタイムマシンによってやってきた事。

自らの名はトランクスであり、ベジータとブルマの息子だという事。

そして。

 

「今から3年後の5月12日。恐ろしい2人組が現れます。…そして更にその2ヶ月後の7月12日。今度はその2人以上……いえ、もしかしたらそれ以上の力を持つ3人組の化け物がこの地球を荒らしてしまうのです。」

 

「……何もんだ、宇宙人なのか?」

 

「いえ、彼らはこの地球で産み出された人造人間…いわゆるサイボーグという奴です。…作り上げたのは元RR軍の狂人的科学者…Dr.ゲロ!」

 

「RR軍…!」

 

悟空は少年時代にそこへ乗り込み滅ぼした軍の名前を思い出す。

 

「何が目的だ?例によって世界征服なのか?」

 

「……恐らくは、そうだったのだと思います。しかし、彼らは違った…!!

破壊と殺戮だけを目的としたマシーンたる彼らは創造主たるゲロさえ殺して、

今も…!!」

 

「更に、それだけでは終わりません。今度は宇宙からやってきたヒルデガーンという怪物と、ターレスとブロリーというサイヤ人を始めとしたクラッシャー軍団が地球へと侵攻し、既に地球は地獄と化しました…。」

 

「勿論、僕1人ではどうする事も出来ず……今は彼らの間で争っている中何とか地球人はひとかたまりで息を潜めて生き残っている状態です……!」

 

「ま、待ってくれ!おめぇ1人なのか!?他の皆は?」

 

「……いません。20年後の未来にはもう、彼らに抵抗出来る戦士は僕しかいないんです…!!」

 

「僕の父のベジータ、ピッコロさん、天津飯さん、ヤムチャさん、クリリンさん……!皆、地球を取り戻そうと必死に戦いましたが……彼らの前では及ばず…唯一生き残った悟飯さん。悟飯さんは僕に闘い方を教えてくれた師匠でもあったのですが……やはり、4年前に。」

 

トランクスは、拳を震わせて孫悟飯が豪雨の中、残酷な死を迎えたあの時を思い出す。

 

「オ、オラは?オラはどうなったんだ?オラもやられちまったんか?」

 

悟空は自らの名が無い事に気付き、自身がどうなったのかを尋ねる。

 

「いえ…貴方は今から間も無くして病気で亡くなってしまう。」

 

「いい!!?」

 

「ん?」

 

「ウイルス性の心臓病だそうです。…流石の超サイヤ人も病気には勝てなかったんです…。」

悟空が病気で死ぬ。

その言葉に悟空、そして遠くから聞いていたピッコロが反応する。

だが、その直後悟空は身を震わせ。

 

「くっそ〜!オラ死んじまうんか…!!悔しいなぁ〜!オラもそいつらと戦いてぇのに〜!」

 

「……恐ろしくはないのですか?」

 

「そりゃ、怖えけどよ?でもつえぇんだろ?そいつら!やってみてぇよ〜!!」

 

トランクスはその悟空の様子を見て、母と師が間違ってなかった事を確信し

あるカプセルを渡す。

 

「やはり、母さんや悟飯さんが言っていた通りの戦士だ…!頼もしい人です。だからこそ、僕はこれを届けにきたんです。今は不治の病でも約20年後には特効薬があるんです。症状が出始めたらこれを。」

 

「これが?」

 

「はい。」

 

「なぁ〜んだ!あるなら早く出してくれりゃあいいのによぉ!オラびっくりしちまったぞ!」

 

喜ぶ悟空にトランクスはもう一つ重要な事を尋ねる。

 

「そして、もう一つだけ。これが僕がまず貴方にだけ伝えたかった事なんです。……クウラ、という人物を知っていますか?」

 

「……あぁ。」

 

「…僕のいた歴史ではクウラはコルドと共にこの地球に現れ孫さんが倒したらしいのですが…僕が見たのはコルドだけでした。…何かが違うのかもしれません。」

 

「…わかった。おめぇはこれからどうするんだ?」

 

「先ずは未来へ帰ります。母さんを安心させてあげなきゃならないので。」

 

「また、会えるか?」

 

「わかりません、今回の往復もかなり危ない物でしたし、エネルギーが集まるのも時間をかけてしまうのです。…生きていたら必ず駆けつけます。…3年後に…!」

 

「生きろよ…いい目標が出来た。オラ達も3年間みっちり修行して待ってるからな。」

 

悟空とトランクスは握手を交わし、トランクスはそのままタイムマシンへと

乗り込み、悟空は皆の元へと戻っていく。

 

そこでピッコロが悟空にナメック星人の聴力で全てを聞いていた事を悟空にバラし。

説明下手の悟空の為にトランクスの部分だけを伏せ、ここから先にあらわれる

恐怖の存在を伝えた。

 

皆が修行へと決心を固める中、生き残る事を渇望したベジータはふとある事に気づく。

 

(ブロリーとやらは知らんが、ターレスは俺の知る限りフリーザの部下だった。…あの狡猾なフリーザが便利な駒である奴の手綱を離すわけが無い。なら……。)

 

ーーフリーザは一体どこに消えやがった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・未来
まだ全容は明らかになってはいない。
まぁ、どっちもベリーハードなのは確か。

・地球組
未来通りなら原作+劇場版コンボ。

・超極小サイズカメラ付きドローン
ぶっちゃければDr.ゲロの監視ドローンの上位互換。
微生物にも満たない大きさのドローンは情報をフリーザへと直通で伝達する。
勿論、1080。

・クウラ
???

・コルド
無事、無様に死亡。

・トランクス
生き残ったほんの僅かの人々を守る守護者。
但し、実力はあの未来最弱。

・フリーザ
答えに気付いた。



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絶望の未来

時の歯車というのは何とも不思議なものだ。

ほんの少し、何かを違えるだけで決定的に変わってしまうのだから。

 

きっかけは些細な事。

コルド大王がクウラの事を危惧せず、ビルスや魔人ブウに目を向けなかった。

よって、フリーザという帝王は産まれる事は無く。

特異点たるフリーザがいなければ彼に集った悪は未来の飼い主を失い

無駄に宇宙を荒らして暴れ回る。

 

そして、クウラがナメック星にて倒された時。

本来ならばコルドはフリーザに頼り復讐へと走った。

しかし、フリーザという存在がいない以上

コルドは頭部だけでギリギリ生き残ったクウラを発見、治療する。

 

そうして、メタルではなくメカとなったクウラは地球へと侵攻。

地球が破壊される前にヤードラットから帰ってきた悟空によってコルド共々完全消滅した。

 

……ここから、世界は大きく歪み始める。

 

フリーザ一族が滅んだ事を知ったターレスは、丁度辺境の星で発見した

パラガスと伝説の超サイヤ人であるブロリーと同盟を結成。

 

ターレスが星の土壌を神聖樹で根こそぎ奪い取り、ブロリーが枯れた星を破壊しつくす。

そうして、ターレス達率いるクラッシャー軍団は宇宙随一の戦闘集団と化していく。

 

同時に魔族たるガーリックjrが魔凶星と共に地球へと侵攻。

それに伴ってDr.ライチーがデストロンガスとハッチヒャックを引き連れ同じく地球へ侵攻。

 

そんな事を露にも知らぬ悟空達であったが

パオズ山で悟空の容体が謎の病気により急激に変化し床に伏せてから状況は一変する。

 

先ず、ガーリックjrが神殿を占領。

アクアミストという一滴浴びるだけで魔族となる液体が地球中に散布。

 

更に、ピッコロ、悟飯、クリリンがガーリックjr達魔族を相手取っている隙にDr.ライチーによってデストロンガスが地球に蔓延する。

 

アクアミストそしてデストロンガスによって汚染された地球だったが

アクアミストを弾き飛ばし、超サイヤ人へと覚醒したベジータが参戦。

 

ガーリックjrを一瞬で消しとばし、ハッチヒャックの怨念が溜まる前にDr.ライチーを粉砕。

 

地球に僅かな平和が戻った…はずだった。

 

 

孫悟空が死んだ。

 

正義の英雄と悪の英雄が消えたこの時をもって、この世界のレールは完全に崩壊する。

 

悟空の死から3年後。

Dr.ゲロによって発明された人造人間17号、そして18号が各方面への都市へと破壊行動を開始。

その範囲は東、南、北に及び、彼らが破壊した都市は完全更地と化した。

 

ベジータを始めとする戦士達がこの騒ぎに直ぐ気付いたものの

気を捉えられない人造人間は破壊しては消えを繰り返し、見つけられたのは2ヶ月後。

 

西の都のすぐ近くの都が荒らされているのを知り、そこへ向かうも

Dr.ゲロがセルのプロトタイプとして制作された人造人間13号、14号、15号がベジータ達の前に立ち塞がる。

 

殺害対象である孫悟空は既に死したものの、人造人間13号達はゲロの遺言に従い、孫悟空の仲間を殺すミッションを遂行しようとする。

 

ベジータ、ピッコロが14号、15号を倒すも13号が彼らのパーツを取り込みパワーアップ。

 

その騒ぎを聞きつけた17号達も集まり、戦場は混沌と化す。

この時人造人間17号達によって天津飯、ヤムチャ、クリリンの地球人達が

命を散らす。

 

ベジータは合体13号に手も足も出ず、最後の希望として悟飯とピッコロを逃し約1時間の間、執念の時間稼ぎをしたが最期は13号の圧倒的な力の元にその命を散らす。

 

それから15年、ピッコロの指導と精神と時の部屋で急成長を遂げた悟飯。

最早ドラゴンボールを使おうとも無駄だと判断し決意を固めた神と融合し別人のようなパワーアップを果たしたピッコロ。

そして、赤ん坊から成長し戦士としてその身を開花しつつある新星、トランクス。

 

大幅な戦力の上昇を果たした地球の戦士達だが、ここに来て更なる絶望が

投下される。

 

ターレス達、クラッシャー軍団の襲来。

既に地球以外の星を粗方食い尽くした彼らが遂に地球へと足を伸ばしてしまった。

 

直ぐさま、ターレス達の元へ向かい戦闘を起こす地球の戦士達。

ダイーズなどの雑魚達は一掃できたものの、パラガスが死んだ瞬間ブロリーの封印が解放。

 

制御装置によって押さえつけられた力を解放した伝説の超サイヤ人は、悟飯、ピッコロ、トランクス。

そして、その場を破壊しようと目論んでいた17号、18号を圧倒。

 

人造人間達と協力するという異例の事態。

だが、伝説の超サイヤ人は戦えば戦う度に段違いに強さを増していく。

地球の戦士達も段違いの強さを遂げてはいたが、ブロリーの急成長には耐えきれずトランクスを庇って悟飯は左腕を喪い時間稼ぎを買ってでたピッコロの死によって何とか撤退を果たす。

 

その後、大暴れをするブロリーは17号、18号を粉砕。

やがて、地球全土を破壊尽くしついでとばかりに合体13号を完全に消滅させ

ターレスは地球のど真ん中に立てた神聖樹の実で着々とパワーアップしながら

ブロリーの破壊を己の身をもって誘導し自由気ままに破壊を楽しんでいた。

 

更に1年が経過。

今度はナメック星がターレスによって滅ぼされる前にホイがナメック星人を騙しドラゴンボールを使って復活したタピオンがナメック星から逃れ、地球へと身を隠していた事を知ったホイが地球へと侵攻。

 

地球の戦士達はタピオンが隠れている事など地球の守護でそれどころではなく

結果、タピオンの封印は解けてしまい

幻魔人ヒルデガーンが完全復活してしまう。

 

ブロリー、ターレス 、ヒルデガーン。

 

三つ巴の争いの前に地球は最早、その輝きを永遠に失った。

人類は16年前の約1割にまで減少。

神聖樹はターレスが離れている隙を突き既に悟飯が破壊したものの

それで何かが進展する訳も無く、残された僅かな土地と食料と水で何とか飢えを凌ぎながら唯、救いを待つまでの日々。

 

悟飯は、その光景を見て思う。

 

もしも、父が生きていたのならば。

確証は無いし、それ自体が無駄な考えであっても。

孫悟空ならば、未だに背中を追い続けているヒーローならば、敬愛する父ならばこんな世界を救えた筈だ。

それが消えたのは己の責任、自分が父の異変に気付かなかったから。

悟飯の苦悩を理解していた師はもういない。

残ったのは未来を託せる希望だけ。

 

荒廃した大地の上、人類最後の防衛ラインの守護の為自らの命を捨てる事を決意した悟飯は、引き止めようとしたトランクスを気絶させ生き残ったブルマへと託す。

 

「トランクス……生きてくれ!俺の遺志を継いで立ち上がり、そして……!」

 

 

…その先は、言えなかった。

 

悟飯は口を塞ぎ、死地へと降り立つ。

ブロリー、ヒルデガーン。

そして、高みの見物へと洒落込んでいるターレスを睨みつけ悟飯は突進する。

 

「フハハハハ!!カカロットの息子!!今度こそ楽にしてやる!!」

 

「ゴァァァァァ!!!」

 

「……ふっ。」

 

悟飯は自らのフルパワーである超サイヤ人2へと変身。

ブロリーの攻撃をいなし、ヒルデガーンを気弾の攻撃によってわざと霧状化させ、そのままターレスへ一直線。

 

「……こいよ。ゴハン!」

 

「はぁぁぁあ!!!!」

 

拳と拳がぶつかり合い、その場に閃光が走った。

 

 

♠︎

 

トランクスが目を覚ました時、全ては終わっていた。

 

豪雨が降り注ぐ最早土地として再生不可能の破壊が起きた場所には、ターレスの死体と敬愛する師であった孫悟飯の死体。

トランクスは泣いた。泣いて泣いて泣いて。

気付けば、あれだけなりたかった超サイヤ人へと覚醒していた。

水溜まりに浮かぶ自らの姿を見てトランクスは怒る。

 

「何故……何故今なんだ!!どうして!!……どうして……!!」

 

最初のブロリー戦の時、悟飯の左腕とピッコロの死に直面したトランクスは

自身の戦力の無さを呪った。

だが、怒りよりも後悔が先んじた為か結局、今になるまで超サイヤ人になれず

悟飯の為にも、早く超サイヤ人になりたいと熱望していたトランクス。

 

だが、今となっては後の祭り。

もう、1番に見せたかった師は居ない。

己の成長を心の底から楽しみにしていたあの瞳はもう開く事は無い。

トランクスは悟飯の亡骸を抱え、その場を去る。

 

悟飯の死は、人類に更なる絶望を与えた。

特に夫と息子を喪ったチチは心を壊してしまい今では生きる人形だ。

しかし、悟飯は手厚く弔われ、地球を護らんとした英雄としてその墓はひっそりと最後の拠点の真ん中に建てられている。

 

あれから3年。

 

過去から帰還したトランクスは悟飯の墓の前に立ち、語る。

悟飯が尊敬していた孫悟空は聞いた通りの人だった事。

ブルマが愛したベジータは棘があって生え際が少しアレだった事。

初めての師であったピッコロの久々の姿。

 

天津飯、ヤムチャ、クリリン。

 

そして、平和と活気に溢れた地球を。

 

時に笑い、時に涙ぐみながらもトランクスは悟飯の墓に語り続ける。

 

 

ブロリーとヒルデガーンは未だ健在で決着の付かない戦いを続けている。

地球は、僅かに自然が戻ってきているがまだまだ今の人達の生活に追いつかない。

 

だが、それでも師から託された願いだけはこの身が滅びようとも叶えてみせる。

 

「必ず、この未来を変えてみせます……!!だから、だからもう少しだけそっちで待っていてください。悟飯さん。」

 

トランクスは悟飯の墓に背を向け歩き始める。

 

その姿は、死ぬ場所を決めた兵士のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・未来。
要はフリーザと悟空がいなくなった今作。
神聖樹で地球はボロボロ、ブロリーとヒルデガーンという決着がつきそうにない戦闘と、完全に詰み。
ナメック星を頼ろうにも既にターレスによって滅んでいる為もうドラゴンボールも使えない。

・トランクス
今作は原作よりも師匠に恵まれた為、強さで言えばこちらの方が強い。
覚悟も完全に決まっており、ブロリーとヒルデガーンを倒すならばどんな手でも使う孤高の戦士。
いつか、悟飯と再び会える日を心待ちにしている。

・ブロリー
あったが超版なら、こっちは旧版。
文字通りの伝説。
カカロットとターレスを勘違いしたが、制御装置でギリギリ押さえ込まれていた。が、パラガスが死んだ途端に覚醒。
現在、ヒルデガーンと果てのない闘争中。

・ヒルデガーン
あっちで出て来た場合説明。



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無慈悲な決別

トランクスが未来へと帰還してから早くも1年が経過。

地球では、来たる人造人間に備え死に物狂いの特訓をしている戦士達の姿があった。

 

悟空、悟飯そしてピッコロはパオズ山で、ベジータは1人海で超サイヤ人への

扉を開こうとし、地球人の戦士達は神殿に篭り時に協力し時に研鑽しながら

各々、力を磨いていた。

 

トランクスから言われていた心臓病の症状も未だ起きる兆しは無く、地球はのどかに時を刻んでいた。

 

一方、ナメック星では再び脅威が訪れる。

無人の惑星のエネルギーや宇宙に存在する部品を吸収した1つの惑星

ビックゲテスター、そしてそこに運良く辿り着きコアと化したクウラが今再び

ナメック星へと襲来したのだ。

彼の目的は既にドラゴンボールに無く、己の再生の為のナメック星のエネルギーとそこに住むナメック星人の生命エネルギーの吸収が主な目的である。

 

数日前に襲来したビックゲテスターは瞬く間にナメック星を覆い尽くし

その中からはビッグゲテスターの高度な科学力によって生み出されたロボット兵が無数に出現。

ナメック星人は今は亡きネイルを除けば2万を超えれば相当であるが故に

当然、ロボット兵の敵では無く次々とビックゲテスターの元へ連れて行かれていく。

 

それを危惧したのはムーリを始めとした村長達。

自分達では守れない事は重々承知であり、無論このまま黙って吸収される訳にもいかない。

そんな彼らがロボット兵から隠れながら議論していたのは誰に助けを求めるか。

 

地球の人々は善良であり、戦力的にも申し分無いのだが連絡手段が存在しなく

頼るには少々困難であった。

だが、フリーザなら連絡手段である通信機は未だムーリの手元にあり、今回の不始末も兄のものであると説明すれば駆けつけてくれるだろう。

 

しかし、フリーザが助けた後に何を求めるのか。

……恐らくドラゴンボールであり、それ以外は無い。

フリーザが何を願うのか、そこだけが唯一の不安材料だった。

 

だが、最早一刻の猶予も無く、このままではナメック星人は全滅してしまう。

ならば、ドラゴンボールでも何でも差し出してでも皆の安全を守るべきだ。

 

星の長としてそう決断したムーリはすぐさま通信機に連絡を入れるのだった。

 

 

♠︎

 

そんなフリーザは今現在、ブロリーの元へと足を運び軽い訓練を行なっていた。

既にブロリーの元には新たな家族として古参のレモという人物を紹介し

ブロリーはそれを快諾した。

 

フリーザも何億の中から彼を探すのと、ブロリーが大人というものを克服する時間、そして自立させる為の時間を作る為1年は彼1人で生活させるつもりだったが、半年が経った時ブロリー自身が寂しさをフリーザへと申請した為急遽フリーザはレモを探し出しブロリーの手伝いを命じたのだった。

 

レモ自身、ブロリーの事は息子のように感じており

ブロリーもまたパラガスの様に強制せず適度な距離感でサポートしてくれるレモの事を直ぐに信頼していた。

 

フリーザはそんなブロリーを見て予定を繰り上げる事に決め、今こうして農園をレモに任せ、ブロリーのその強大な力をコントロールする為の訓練を行っていた。

 

「グググ……!!」

 

先ず、ブロリーが行なっているのはその身に眠る大猿の力を最大限に引き出した上で理性を保つコントロール。

この惑星はフリーザの保護があるとはいえ、無法者の宇宙海賊とやらがこの農園に侵略してこないとは限らない。

そうなれば、戦うのはブロリーであり、レモやこれから生き返らせる予定のバアを守る為には必要だとフリーザは彼を説得した。

 

要はチライが言った、戦いたくて戦っている訳では無い状態から一転させブロリーが自らの意思で戦うという状態にする為フリーザはブロリーに指導していた。

 

とはいえ、そんな簡単に大猿の状態がコントロール出来るはずも無い。

あるかもしれない先の未来で月を見て金の大猿と化した悟空もまた暫くは理性を失い暴れた程に大猿の本能は強い。

 

故に

 

「オ、オオオオオ!!!」

 

ブロリーは大猿の力に飲み込まれ、眼前のフリーザへと襲いかかる。

 

「はぁ……やれやれ。」

 

迫りくるブロリーの拳を片手で押さえ込みながらフリーザはブロリーへと気を流す。

いくら、肉体が強靭なサイヤ人でも内部はどうして脆くなる。

故に、フリーザが編み出した特殊な気でブロリーの脳を刺激し、強制的に

ブロリーを眠らせていく。

 

「ガ……ガ……ぐー。」

 

唐突な眠気に襲われたブロリーはその本能のまま眠りにつく。

それを確認したフリーザは念力で彼を浮かせ、近くに創ったハンモックに彼を寝かせる。

 

「これは…先が長そうですねぇ。ま、構いませんが。」

 

そのまま、フリーザはブロリーの農園へ向かいそこで作業をしていたレモに

ブロリーが眠りについたのを伝える。

 

「レモさん、今回もどうやら失敗のようですのでハンモックにブロリーさんを寝かせておきましたよ。」

 

「あ、は、はい。ありがとうございますフリーザ様。」

 

フリーザはブロリーが1年かけ作り上げた農園を見渡す。

大きさはあれから更に増大し、今や宇宙一の大きさに。

そして、品物の数も豊富となり宇宙の市場ではブランドになる程高値で売れる程に成長した。

戦闘力の成長も早ければ、品物の成長も早いのか。

 

……まぁ、そこは関係ないだろう。

 

因みにレモにはブロリーの過去を事前に話してあるし、そのせいで発現した大猿の力をコントロールする為に足を伸ばしている事も報告済みだ。

そうしなかった所為で変な亀裂を生むのはフリーザとしても望むべきでは無い。

 

完全に余談だが、上司がちょくちょく足を運んでくるのは心臓に悪いとレモは感じているのはここだけの秘密。

 

「ここも随分、大きくなりましたねぇ。」

 

「まぁ、アイツが一生懸命に頑張った結果ですよ。オレのお陰じゃありません。」

 

「謙遜なさらずとも結構ですよ。あなた、案外こっちの方が性に合ってるでしょうに。」

 

「まぁ、後続部隊でいつ戦場に向かわされるかビクビクしてた時よりは遥かに。特にオレは非戦闘員でしたからね。」

 

「何か不便は?」

 

「何も、強いて言うならここに来てフリーザ様の印象がガラッと変わったって事ぐらいです。」

 

「ほう?」

 

「貴方が思った以上に部下には優しいって事ですよ。」

 

「…それはそれは、随分な信頼を頂いたようで。」

 

レモからの信頼にフリーザは少し面食らった表情をしたが、直ぐに元に戻り

笑みを浮かべる。

 

そんな中、フリーザのディスプレイが突然開く。

映されたのは通信兵のラーズベリ。

 

『フリーザ様、ナメック星の奴から救助要請が入っておりますがいかがなさいましょうか?』

 

「ふむ、契約外ですがまぁいいでしょう。あちらも私の要求するものを分かってて連絡したでしょうからね。」

 

『は!では、そのように伝えておきます!』

 

フリーザの言葉を伝えに再び、ムーリとの通信へ戻っていたラーズベリ。

そして、フリーザはブロリーを起こすべくハンモックの元に戻っていく。

 

「レモさん、どうやらバアさんの復活のめどが立ったようですのでブロリーさんを連れて行きますね。」

 

「そ、そうですか。ブロリーの奴も喜びます。お気をつけて。」

 

フリーザはブロリーを起こし、ドラゴンボールを見つけた事を伝える。

ブロリーは大層喜びフリーザの随伴命令にも直ぐに快諾する。

 

そうして、フリーザはブロリーとある人物を連れナメック星へと瞬間移動した

 

 

♠︎

 

ナメック星にたどり着いたフリーザとブロリー、そして。

 

「……漸く…か。随分と待たされたものだな。フリーザよ。」

 

「まぁ、そう仰らずに…スラッグさん。」

 

生命維持装置で命を永らえていたスラッグ。

その水晶のような装置の中にいるスラッグはナメック星の光景を目にし、懐かしい気持ちになる。

 

 

「……ふん、しかしまぁ…この星は初めてきた気がせん。……儂の中の遠い記憶がそう叫んでいるような気がする…。」

 

「そうでしょうね、星は違えどナメック星というのはあなたの故郷ですから。」

 

「……そういう事か。それならばこの懐かしさにも納得が持てるものよ。」

 

そう言ったスラッグはその安堵とともに眠りにつく。

寿命を無理矢理伸ばした所為なのかどうにも眠る頻度が高いのだ。

 

そして、フリーザはムーリへと振り向く。

 

「さて、あなたの要請通り今回は私があなた方を助けますが……勿論、これは契約書の外。当然、報酬はお支払いいただきますよ?」

 

「え、ええ…ここにその報酬があります。」

 

そう言うと、ムーリは村から集めた7つのドラゴンボールをフリーザへと見せる。

 

「これが、今回の報酬です……!!お願いします!どうか、どうか同胞を助けて下さい……!!」

 

フリーザはドラゴンボールを検分し、それが本物である事を把握する。

 

「ええ、分かりました。直ぐに終わらせて差し上げましょう。」

 

 

「ほう、誰が誰を終わらせると?」

 

快諾したフリーザ、その背後から慣れ親しんだあの邪魔者の声がした。

 

「勿論、あなたをですが?クウラさん。」

 

フリーザが振り向くと、そこには約10はいるであろうメタルクウラが立っていた。

 

「クックック……オレが居ない間に随分と大きな口を叩くようになったな…フリーザよ。」

 

「サイヤの猿ごときに負ける兄など、必要ありませんので。」

 

フリーザの挑発にメタルクウラの殺気が増す。

だが、フリーザは2つ指を立て余裕の表情を浮かべる。

 

「……吐いた言葉は飲み込めんぞ?」

 

「そうですね、まぁあなたとももうお別れ……」

 

メタルクウラがフリーザへ飛びかかろうとした次の瞬間。

フリーザは遠くに見えるビッグゲテスターを見据え、そのまま指を滑らかに振り下ろす。

 

その瞬間、ビッグゲテスターが真っ二つに切断され、コアであったクウラもまた何が起こったのかも認識できずに、両断された。

 

 

「ですがね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・フリーザ
兄を一手両断。
ブロリーの教育は順調。

・ブロリー
現在自分の力をコントロール中。
最近家族が増えた。

・スラッグ
願い叶う時。

・ナメック星人達
ドラゴンボールと引き換えに命を救われる。

・クウラ
多分死ぬでしょう。

・どっかの星でドライブが趣味な王様
フリーザを認識しました。

・ビッグゲデスター
高度な科学力も理不尽な暴力には勝てなかった


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取り戻したモノ

今回、ある言語が登場しますので『』表現で表記いたします。


クウラは自らの顔の半分が離れている事を直ぐに気付くことは出来なかった。

 

(な、なんだ……?何故、オレの視界がこんなにもズレている!?ま、まさか……!!)

 

だが、ビッグゲテスターの機械的な音と共に墜落するのを確認した事で自らと

ビッグゲテスターが切断された事に気付く。

 

クウラはもう訳も分からなかった。

誰がやったのか、それはもう問題ではない。どうやったのか。それがクウラが1番に考えた事。

 

しかし、その考えもビッグゲテスターの停止と共に機能を失っていく己では最早出来るはずもなくクウラは最期の最期までフリーザが唯の一撃で己を倒した事を認識出来ず、そのままビッグゲテスターの爆発とともに消滅した。

 

程なくしてフリーザの前にいた10体のメタルクウラ達も

ビッグゲテスターの機能停止と同時に爆発四散。

更にビッグゲテスターにいたナメック星人はフリーザの念力によってさっさと救出され、ここにクウラの脅威はほぼ一瞬の内に完全消滅、終結した。

 

♠︎

 

「という訳で、報酬は頂いていきますので。」

 

突然の脅威の消滅に唖然とするムーリを無視し、念力でドラゴンボールを浮かせ村から離れる。

これはドラゴンボールの願いを邪魔されない為の措置。

 

ナメック語は一応出来るとはいえ、村人の近くで言うのはリスクが高い

喋るスピードは明らかにあちらが上であり豚の二の舞になる可能性だってある。

そして、そのせいでこの3人の誰かの願いを叶えられないとなっては勢い余ってこの星ごとナメック星人を全滅させてしまうかもしれない。

それは避けるべきであり、ナメック星のドラゴンボールはまだまだ利用価値がある。せめて利用価値が無くなるまでは手元に置くのが吉だ。

 

そう考えたフリーザはドラゴンボールを片手で浮かせ、スラッグの水晶をもう片方の手で浮かせてブロリーと共にさっさと村から遠く離れた場所に移動した。

 

そして、その場所にドラゴンボールを7つ置き。

 

「タッカラプト ポッポルンガ プピリットパロ」

 

フリーザは、ナメック星の神龍を呼ぶ為の呪文を唱える。

そして、その言葉を聞き届けたドラゴンボールは光を放ち中からポルンガが現れ、その場の3人に伝える。

 

「さぁ、願いを言え。どんな願いでも 3つだけ叶えてやろう。」

 

「では、先ずは……スラッグさんからいきましょう。ブロリーさんは次ですからね?」

 

「うん。」

 

ブロリーの承諾を得たフリーザはポルンガに最初の願いを伝える。

 

『では……そこにいるスラッグさんに永遠の若さを。彼の全盛期だった頃の若さで肉体が保つようにして下さい。』

 

全盛期での状態に戻す事と不老の2つを願ったフリーザだったが

そこは問題なくポルンガは機能した。

 

「容易い願いだ。」

 

ポルンガの目が光る。

すると、水晶に眠っていたスラッグの肉体に段々と色が戻り始め

しわしわだった肉体は強靭とかし、水晶をぶち破って出てくる。

 

「………フ、ハ。」

 

「フハハハハハハハ!!!ハハハハ!!戻ったぞ!このオレに飛び切りの若さが戻ったぞ!!最もパワーに溢れていたこのオレに!!!ハハハハハ!!!」

 

スラッグはペタペタと肉体へと触れ、己がようやく求めていた全盛期の頃に戻れた事に歓喜し、笑う。

その実力は老人だった頃とは比べ物にならない程にパワーアップし、正に超ナメック星人と言っても過言では無い程だ。

 

その様子を見たフリーザは次の願いを言う。

 

『そこにいるブロリーさんの友達であるバアさんを生き返らせて下さい。』

 

「いいだろう。」

 

フリーザの願いを聞き届けたポルンガの目が再び光り

冷凍保存されていたバアの目が開く。

冷凍保存装置は、彼が目覚めた事を確認してその扉を開放する。

 

バアは初めは全く違った星である事に困惑したが果実から感じるブロリーの気配に安心したのか改めて眠りについた。

 

ブロリーもまた類稀なる直感でバアの気配を感じ取り、笑顔を浮かべていた。

 

「……!!バアが!バアが!」

 

「ええ、あともう少しで終わりますので、お待ちを。」

 

フリーザは最後の願いを伝える。

 

『私に全盛期のまま老いない身体を。衰えず、低下せずならなお良しです。』

 

「……了解した。」

 

ポルンガはフリーザの願いを聞き届け、最後の効力を使う。

フリーザの肉体は見た目こそ変化しないものの、多少は体を動かしやすくなった事や肉体のハリが戻った事を確認したフリーザは願いが叶ったのだと解釈した。

 

どうやら地球のとは違って問題なく機能したようであり

ポルンガは再び7つのドラゴンボールに分かれ石となって各地へ散っていく。

 

フリーザはそれを見て、ブロリーとスラッグを連れ帰還しようとして

 

「ふん!!」

 

スラッグの強襲を指一本で受け止める。

 

「ぬ……ぐぐぐ……!!」

 

スラッグは指一本で受け止められた拳に全力を込めるがフリーザの指はピクリとも動かず事は出来ない。

 

「満足ですか?」

 

フリーザは流し目でスラッグに尋ねる。

スラッグはその目を見てやはりと確信し構えを解く。

 

「あぁ…満足だとも。やはり貴様はオレの遥か先にいる存在だったようだ。」

 

「おや、私にそんな評価をしているとは意外です。」

 

「ふん、確かにオレは若さを求めた。……しかしだ、今こうしてみると老いたのは好都合だったかもしれん。仮にオレが貴様を知らず若さを取り戻せばオレは死んでいただろう……認めるのは癪だがな。」

 

「ま、そうでしょうね。」

 

「そうだろう、貴様は部下には寛大だ…がこと敵となった者や裏切り者には一切の容赦が無い。オレも裏切れば殺すだろう?」

 

「ええ、それは勿論。」

 

あっさりと自身の殺害を宣言したフリーザにスラッグは満足そうに笑う

 

「フハハハハハハ!それで良い!それでこそオレが従う価値があるというものだ!良いだろう!貴様が生き絶えるまではオレは貴様に従っておいてやろう!」

 

そして、改めてこの帝王に忠誠を誓うのだった。

 

「それはなにより…という訳でブロリーさん。その気を抑えなさい。」

 

それを聞いたフリーザはスラッグを殺意の目で見るブロリーを諌める。

ブロリーはフリーザの制止を聞き、徐々に気を沈めていく。

 

こうして、フリーザ達はナメック星から瞬間移動で帰還した。

 

ブロリーは自分の星に戻りバアと感動的な再会を果たす。

その隣ではレモが父親のような穏やかな笑みで立っていた。

 

スラッグは先ずは己のカンを取り戻す為訓練に参加、元々の素質が良いのか

メキメキと実力を伸ばしていき、更に。

 

「ヒ、ヒイイイ!!……わ、分かった!!分かったから命だけは!」

 

「では、貰っていくぞ貴様の力を!!…ちっ、今回はハズレかまぁ良い!次だ!」

 

己の様に各星々に散らばったナメック星人を次々と同化の対象にし己の器を大きくしていく。

 

そして、フリーザは。

 

ビッグゲテスターのコアチップをこっそり回収。自らの惑星に組み込む事に成功、だが、そこには。

 

「おやおや、随分と無様な姿になりましたねぇ?クウラさん?」

 

電子人格、つまりはAIとなったクウラの姿がフリーザのディスプレイに映し出されていた。

 

『ふん、実際にはクウラではないがな。これは私のコアだった者の人格を借りているのにすぎん。』

 

「それでどうしますか?私に復讐でも?」

 

『そんな事はせん、惑星に組み込まれたとはいえ私の管理は貴様が握っているのだろう?そんな事をすれば破壊されるのが目に見える。非効率的だ。』

 

「くくっ……あのクウラとは違ってこちらのクウラさんは随分と従順な様で。」

 

『あの宿主は私に意思を持たせてくれた。そこには感謝しよう。だが、それだけだ。それ以上の感情を私は持たない。ならば貴様に従うのが一番現実的だ。

……初めてだぞ、私が計測不能を叩き出したのはな。』

 

クウラとは違い機械的な声で話すビッグゲテスター。

そして、彼の口から今の目的が語られる。

 

『故に、今の私の目的は貴様を観察し、貴様を暴く。その為にも多少のサンプルは頂くぞ。』

 

「いいでしょう、その代わり私の命令には絶対服従という事で。」

 

『命令を承認した。……あぁ、こういう時はこれからよろしく……だったか?』

 

「ええ、これからよろしくお願いしますよ…ホッホッホ!」

 

(さて、こうなれば……奴はもう不要ですね。さっさと埋め込んでしまいますか。)

 

フリーザは新たな部下に喜ぶと同時に今まで野放しにしてきた腐った枝を

排除する方針を念密に練っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・フリーザ
今回の収穫で不老とビッグゲテスターを入手。
そして、盆栽の準備。

・スラッグ
永遠の若さを入手、老人の時に得た視界の広さで死亡フラグを回避。
第3のドラゴンボール排除の為、散らばったナメック星人を片っ端から強制同化。

・ブロリー
バアを生き返らせる事に成功。
これからはレモとバアを守る為、更なる成長を果たす。

・ビッグゲテスター
星はバラバラにされたものの破壊される前にフリーザによってメインのチップだけ救出された。実は切断された時にフリーザの戦闘力を計算したところ
オーバーヒート寸前までいった経緯がある。
前の宿主の人格を借りフリーザ軍へ加入。

・ナメック星の方々
助けに来たと思ったら一瞬で終わった上に、全員無事ですんだので喜んでいいのかどうか困惑している。
因みにこの一件である事が起こった模様。

・ドライブ趣味で洒落に目が無い神さま

「あわわわ……な、なんて強さじゃ…あのクウラを一撃とは…しかもあの力……もしや。と、とにかく悟空には伝えん事にしよ…フリーザ…恐ろしい奴じゃ……。」

・???

「おや、今僅かですが笑いましたね。何かいい夢でも見ているのでしょうか?」



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人造人間、来たる

あれから2年、ビッグゲテスターのお陰もあってかフリーザの肉体は更なる進化を遂げる事に成功した。

 

と言っても新たな変身が出来るようになったという訳ではない。

 

全身を隈なく鍛える為のトレーニングメニューを自ら考えるのでは無く

ビッグゲテスターに自身をスキャンさせる事によって足りないモノを補うトレーニングメニューを組ませる他、ビッグゲテスターの実験として現段階までで計算可能の範囲で創れるメタルフリーザとの模擬戦に今までやってきた700倍の重力トレーニングを複合させより厳しくより効果的なものに仕上がった。

 

特にメタル戦士は訓練において特に重宝されるようになる。

フリーザの戦闘力はビッグゲテスターの超常的な計算力を以ってしても未だ解析は不能であり、1日1体が限度だ。

しかし、その部下の計算は容易にこなせる。

つまりはいくらでも生産可能なのだ。

その機能は特にギニュー特戦隊やターレス、スラッグが好んで活用するようになっていた。

 

更には惑星侵略にもメタル戦士は採用されるようになる。

既存の兵士と通信機器で連携を取る姿は対象の惑星からすればもはや恐怖を通り越して諦めの域である。

 

だが、ビッグゲテスターの制御や情報、そして自己崩壊の権限はフリーザが握っている為、裏切る事はまず無くビッグゲテスター自体も2年の時を経てフリーザの下で得体の知れない安心を得ていた。

とはいえ、ビッグゲテスターがハッキングされた日には碌な目に合わない事も確か。

移動惑星となった惑星フリーザにメタル戦士の制御を取られるのは面倒であり

ビッグゲテスターという駒をわざわざ失いたくは無い。

 

そんな訳で、フリーザが得た知識とトワから定期的に得ている技術、そして多数の惑星の技術を複合させたビッグゲテスターの高度な科学力を結集し全宇宙一といっても過言では無いファイヤーウォールを創り上げた。

当然、魔術も効くはずもない。正に最強の壁である。

 

そんなフリーザ軍が怒涛の快進撃で宇宙を手中に収めている中で

地球はいよいよ運命の時を迎えていた。

 

トランクスの情報から最初の人造人間の襲来地は南の都から南西9キロの島である事を掴んでいたベジータを除く戦士達は続々とそこに集結していた。

 

島には大きな街もあり、なるべく多くの犠牲者は出すまいとする一同。

だが、そこにはブルマと小さな赤ん坊がそこにはいた。

 

悟飯はヤムチャの子かと質問するもヤムチャはとっくに別れていた事を話す。

が、悟空は事前にその赤ん坊がトランクスであり、父はベジータである事を知っていた為大した驚きもなかった。寧ろ、隠していたブルマが驚くぐらいだった。

 

そんな会話をしていたのが9時30分、人造人間が現れるまで後30分……の筈だった。

 

ヤジロベーから仙豆を受け取った後

談笑していた悟空達の背後に3人の男が姿を現わす。

だが、悟空達の誰一人としてその接近に気づく事が出来ず

 

「…ゲロ様、ターゲット孫悟空。確認しました。」

 

男が発した声によってようやく気づく事となる。

 

「なっ……!!オメェらいつからそこに!?」

 

悟空がそう尋ねるも彼らは答える事は無い。

だが、悟飯はその頭脳から答えを導き出す。

 

「そうか!人造人間だからだよ!気なんかないんだ!!」

 

「正解だ、孫悟飯。」

 

その答えに是を唱えるのはRR軍の帽子を被る白髪の男。

 

「ど、どうして僕の名前を!?」

 

「生憎と答える必要が無い。我々の目的は……貴様だ、孫悟空。」

 

「オラ……?」

 

「そうだ。貴様を殺す事こそが我らの任務だ。そして……。」

 

そう言った瞬間、街から爆発音が起き煙が立ち込め皆が振り返る。

その瞬間、悟空の顔を男は掴み北の氷河地帯まで有無を言わさずに持って行ってしまう。

 

それに追従するように他の2人もその後を追う。

 

悟飯達は突然の展開について行く事が出来なかったが、上空から降りてくるタイムマシンによって落ち着きを取り戻す。

 

中から現れたのは勿論トランクス。

トランクスは辺りを見渡し、悟空がいない事が分かるとピッコロに所在を聞く。

 

「ピッコロさん、悟空さんの居場所は?」

 

「知らん!悟空のやつは白髪の男に連れていかれた!それよりもどうなってやがる!情報と全く違っているじゃないか!!」

 

「……恐らく、俺がその情報を伝えた所為です。そして連れ去った正体も分かります。連れ去った男の名は人造人間13号。そしてその2人は14号と15号でしょう。俺が直接戦ったわけでは無いので正確には分かりませんが…。」

 

「ならば、街の奴は?」

 

「……恐らくそちらも人造人間。どうやら人造人間達は未来とは違いいっぺんに来たようです。……そういえば悟飯さん、悟空さんは薬を飲んでいましたか?」

 

「え?う、ううん。そんな症状出てないからってお家に置いてきちゃった。」

 

「……まさか。」

 

トランクスは何かに気付いたような顔をして直ぐ様悟空の気を探り出す。

そして

 

「皆さんは街の人造人間を!僕は悟空さんの元に向かいます!!」

 

そう伝え全速力で悟空の後を追う。

 

「チッ!行くぞぉ!」

 

トランクスが去って直ぐにピッコロが声を荒げ他の人達は一同に街へと降りていく。

 

その後、人造人間を見つけたヤムチャが見つける代償に重傷を負い

クリリンに運ばれていき、ピッコロ、天津飯が人造人間達に挑もうとする。

 

「おい!戦う前に聞かせろ!あの3人組はお前らの仲間か!」

 

そうピッコロが尋ねる。

だが、その言葉に人造人間達は首を傾げる。

 

「……なんの話だ、それより孫悟空は何処にいる?まさか逃げ帰っている事はあるまい?」

 

「とぼけるな!人造人間13号だ!知らんはずが無いだろう!同じ人造人間だ、コンピューターとやらで分かるのだろう!?」

 

「……馬鹿な、何故貴様がその名を知っておる!」

 

 

「……なんだと?」

 

 

「ふふ……。楽しんで頂戴?今日は楽しいお祭りなのだから…ね?」

 

「ふん……さっさとキリを集めるぞ。…後は好きにするといい。」

 

「クククッ!……ではぁ、そうさせてもらおうか。礼を言わせて貰うぞぉ…貴様らのお陰で私はこの時代に来れたのだからなぁ。」

 

「御託はいい、さっさと行け。」

 

 

 

「クククッ!待っていろぉ…17号に18号…。」

 

 

ーー絶望の序章が今切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・地球人組
地獄へご招待。

・ベジータ
まだ力を溜めている。

・トランクス
原作と違って割と冷静に行動してくれる歴戦の戦士。

・人造人間20号
予定と狂った挙句、開発完了寸前だった人造人間達を盗られた。

・トワ
ちょっとだけ開発に手を加えて完成させた。
歴史改変発動。因みにトワがいなければちゃんと2ヶ月後に彼らは現れた。

・??
トワの助けを借りて時代に到着。

・フリーザ
着々と戦力を増やし、ある人物の切り離しを行なっている。




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極寒の決戦

北の氷河地帯、13号によって連れて来られた悟空は今、小手調べにと14号そして15号のタッグと戦っていた。

 

悟空は始めこそ攻撃を与えられていたがDr.ゲロのコンピュータが次第に悟空の動きを予測し始め、今では防戦一方どころかまともに攻撃を捌くことすら出来ていない。

 

「くっ…!!」

 

更に悟空は戦闘が続くにつれ胸の辺りに違和感を覚えるようになっていくが

悟空はそれを気にしている場合では無く注意深く観察し反撃の糸口を探していた。

 

だが、悟空が反撃に転じる前に14号と15号は何処からかきた気弾に吹っ飛ばされ氷壁に激突する。

 

「な、なんだぁ!?」

 

驚く悟空が放たれた方向を見ると、そこにはベジータとトランクスの姿が

ありベジータは心底イライラした表情で、トランクスは一瞬ベジータの方を向いたが直ぐに悟空へ向き直り笑みを浮かべる。

 

 

「なんてざまだ!カカロット!貴様を殺すのはこのサイヤ人の王子であるこのベジータ様だという事を忘れたか!」

 

「すみません!お待たせしました悟空さん!俺も戦います!」

 

2人を見た13号は、2人のデータをコンピュータへと転送し演算を開始。

演算データを立ち上がった14号と15号へと送信する。

そして、13号は余裕の笑みを浮かべ悟空へと近づく。

 

「ふん…孫悟空への死の土産が増えたか…丁度いい。14号、15号。こいつらの相手をしてやれ。」

 

「調子に乗るなよ…ガラクタ共!」

 

「こい!」

 

13号は悟空に14号はトランクス、15号はベジータへと接近した瞬間。

 

…戦いが始まった。

 

♠︎

 

15号は小柄である事を利用し、目にも留まらぬ速さでラッシュを繰り出す。

だが、ベジータはそれを余裕そうに避けていく。

 

「……!!」

 

15号の目は随時演算によって戦術を変え、攻撃方法を変えながら戦うがベジータとて戦闘の天才。

その全てをセンスによって看破しカウンターで15号に一撃を加える。

 

「はぁ!」

 

ラッシュの僅かな間を見逃さずにボディブロー、そこから気の刃で15号を貫こうとするが腕を弾かれる。

 

「ちっ!」

 

ベジータはすかさずに反対の手で貫こうとするが15号は身を屈んでそれを回避しベジータの体へ無造作に拳を叩き込みながら地面へと降下していく。

そして雪を引きずりながら近くの小さな氷壁にベジータは叩きつける。

その間にも15号はラッシュを繰り返す。

 

 

「ぐっがっ……ふん、その程度か?」

 

ベジータにとって最早そんな攻撃は通じない。

彼はこんな雑魚に苦戦している程、立ち止まっている暇など無いのだ。

ベジータは即座に15号の腕を掴んで放り投げる!

 

「そぉら!!砕け散れ!」

 

そして2本の指を飛ばされていく15号に突き出す。

すると、15号の身体は内側からベジータの不可視の気弾によって爆発し

パーツがそこら中に散らばっていく。

その様子を見てベジータは鼻で笑う。

 

「ふん!きたねぇ花火だ。」

 

 

14号はその巨漢でのパワーを生かし攻撃するがトランクスは悠然とそれを避ける。

14号の攻撃はどれも大振りで攻撃は容易であり、トランクスの攻撃は面白い様に当たる。

しかし、ダメージが通っている様子は全く無い14号はトランクスが突き出した拳を掴み取り、ボディブローからの肘打ちでトランクスを叩きつける。

 

「ぐぅぅぅ!!」

 

叩きつけられたトランクスはそのまま数メートル吹っ飛び、煙が立ち込めるが平然とした様子で立ち上がる。

 

しかし、その煙の中から14号が現れトランクスに頭突き。

倒れ込んだトランクスを馬乗りになって両腕で頭を掴んで数発頭突きをかまし

そのまま顔面を何発も殴り込んでいく。

 

何発も貰い続けていたトランクスだったが、殴り終わり僅かに硬直した14号の腕を掴み取り

 

「……はぁ!!」

 

そのまま力の限り引き千切り、気弾で14号を吹き飛ばす。

トランクスはただやられていたのではない。

敵の力を間近で観察し、反撃のタイミングつまりは相手が油断するのをずっと待っていた。

そもそも14号よりも遥かに強いブロリーを撃退する為に何度も彼の攻撃を見て、そして経験していたトランクスにとっては最早14号など相手にもならない。

 

再び走り出し突っ込んでくる14号を迎え撃ち、剣で横に真っ二つに切断。

頭から多少血が流れるが、その背後で14号はパーツを撒き散らして爆発を起こした。

 

一方、13号と悟空の勝負は13号が常に優位に立っていた。

それもそのはず。14号、15号はいわば13号の合体用のパーツのようなものであり戦闘力で言えば13号が圧倒的に高く、その演算力の早さも折り紙付き。

 

「だりゃりゃりゃ!!!」

 

「ふん!どうした孫悟空!動きが止まって見えるぞ!」

 

悟空のラッシュをまるで予期していたように鮮やかに躱しながら反撃していく13号は悟空の僅かなラッシュの間をぬって人差し指を悟空に突き出し巨大な気弾を放つ。

 

「うぁぁあ!!」

 

悟空はそのまま吹っ飛ばされ地面に激突するが

すぐに巨大な氷の塊とともに浮上しそれを投げつける。

 

「だりゃあ!!」

 

13号は容易く受け止めて破壊し上へと上昇する悟空の足を掴む。

 

「っく!」

 

「流石だな…俺の一撃をまともに喰らってまだ生きているとは…。」

 

13号はニヤリと笑うと悟空を掴んだまま共に氷の砕けた湖の中に入っていき

そのまま放して攻撃に転じる。

一撃目の右ストレートを悟空は腕でガードするが2撃目を腹に3撃目を背中

4撃目を頬を喰らって最後にボディブローからの気弾で再び空中へと打ち上げられる。

 

悟空は僅かに距離を保とうとするが

 

「無駄だ!S.S.デットリーボンバー!!」

 

13号のどこまでも追跡してくる気弾が放たれ、それを避け続ける悟空であったがついに壁に追い込まれ、悟空は両手を前に突き出し受け止める体勢をとる。

 

「受け止める気か?その技には星なんぞ簡単に破壊できるだけのエネルギーがあるのだぞ?」

 

13号のその言葉に嘘はなく、ジリジリと悟空は追い詰められていく。

更に悟空は自らの力がうまく入らなくなっていくのを感じ取る。

同時に心臓の違和感が痛みへと変わり、その気弾に押し潰されそうになる。

それもそうだろう。ただでさえ寒い気温であるのにも関わらず駄目押しに冷たい湖の中に入り大幅に体温が変化したのだ、体温を取り戻そうと心臓は更に活発化しその結果、ウイルスが増幅し心臓病が発症したのだ。

 

(こ、こんな時に……オラの心臓…もうちっとだけ我慢しててくれ……!!)

 

しかし、悟空は次第に追い詰められ、いよいよ限界になった瞬間。

 

「はっ!!」

 

ベジータがその気弾を弾き飛ばし、上空で爆発させる。

 

「どうしたカカロット!!貴様はその程度の技で……ちっ。」

 

ベジータは悟空を叱責しようとするが悟空の顔があまりにも青ざめている事から何かただならぬ事があった事に気づく。

 

「へ、へへ…すまねぇ、ベジータ。」

 

程なくしてトランクスも悟空に合流し、その顔を見て最悪の予想が当たった事を感じとる。

トランクスは苦い顔をしながらも悟空を安全な場所に連れて行こうとする。

ベジータはそんな悟空を見ることをせずに13号と対立する。

 

「貴様はもう下がっていろ、俺の戦いの邪魔だ。」

 

「14号と15号はやられたか……。」

 

「ふん!あんな雑魚、このベジータ様の敵じゃない!…そして貴様もこのベジータ様の手によって始末されるのだ。」

 

「くっ……クッハハハハハ!!」

 

ベジータが啖呵を切ると13号は突然笑い出す。

その笑いにつられるように14号と15号のあるパーツが空中に浮かび13号へと

取り込まれようとする。

 

「!させるか!!」

 

それに気付いたトランクスが反射的にそのパーツを攻撃するが、謎の赤い光に包まれたそのパーツはトランクスの攻撃を完全に無効化し13号の脳、そして胸付近に飲み込まれていく。

 

「ハハハッ……グッ!?ナ、ナンダ……オオオオオ!!!」

 

笑いながらそのパーツを取り込んだ13号だったが突然その場所を掻き毟り始める。

その間にも13号の身体は青に染まり、目は赤くなり、体格は更に強靭となっていき上着はバラバラになる。

 

やがて掻きむしるのをやめた13号から白と黒が混ざったおぞましい気の奔流が流れ出す。

 

「……ソンゴクウ……ソン!ゴクウゥゥゥゥ!!」

 

そして、13号は暴走したかのように気を解放させる。

 

「ちっ!!はぁぁぁぁぁ!!!」

 

ベジータはその気の大きさから出し惜しみをしている場合ではない事を本能で悟り、超サイヤ人へと変身。そのまま13号へ殴りかかる。

だが、その拳の連打を合体した13号は物ともせずにベジータの両肩を掴んでそのまま降下する。

 

「なっ…!!くっ……!!」

 

ベジータはなんとかそれを振り解こうとするも抜け出す事が出来ない。

 

「ベジータさん!!」

 

悟空を運んだトランクスがベジータを救出せんと超サイヤ人となり剣で斬りかかろうとするも、合体13号は見向きもせずにエネルギー波でトランクスを吹き飛ばし、トランクスはそのまま氷壁へ。ベジータはそのまま地面へと激突。

追撃と言わんばかりのエネルギー波で別の氷壁に吹き飛ばされる。

 

が、そこはサイヤ人。

フラフラになりながらも両者起き上がる。

 

「くそったれ……!!なんだ、奴の急激なパワーアップは……くっ!」

 

「くぅ……つ、強い。あの時以上に……!!」

 

だが合体13号は2人のトドメを刺そうとはせずに真っ直ぐ悟空の元へ向かっていく。

悟空はそれを痛む心臓に耐えながら、ぼやける視界の中で認識するが体が言う事を効かない。

 

「悟空さーーーん!!」

 

トランクスが咄嗟に悟空を守ろうと飛ぶがもう間に合わない。

悟空がこの豪腕を喰らいそうになった次の瞬間。

 

「………!!」

 

「グゥ!!?」

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

「ッ……!!?」

 

何者かが横から合体13号の顔面を蹴りぬき、トランクスより先に追いついたベジータが全力で怯んだ合体13号の顎を殴り抜けそのまま転がっていく。

合体13号はそのまま体勢を崩して倒れこむが直ぐに起き上がり再び悟空へ迫るがその間を男が立ち塞がる。

 

「オ、オメェは……?」

 

その男の正体はタイムパトローラー。

彼は街を歴史よりも早くに襲おうとしたある人物を撃退した後。

トワの魔術によって強化された19号をピッコロと共に倒し、そのままこの戦場へ参戦したのだ。

 

「っ!!」

 

タイムパトローラーはそのまま超サイヤ人……否、正確には超サイヤ人と超サイヤ人2の間…簡単に言えば超サイヤ人1.5へと覚醒し合体13号に向かって構える。

 

「オ、オオオオオ!!!!」

 

合体13号は暴走する中、最も孫悟空殺害の障害となりうるのが眼前に立つ男だと判断しそのまま襲いかかる。

 

「くそったれ…カカロットは……俺のものだ!勝手に手を出すなぁぁぁ!!」

 

「……貴方が誰とは聞きません!今は共に戦いましょう!」

 

「……。」

 

トランクスの言葉にタイムパトローラーが頷き

その突進をタイムパトローラー、ベジータ、トランクスが迎え撃つ。

 

その様子を見た悟空は彼らの為に自分が何を出来るかを本能で感じ取り

 

「……奴を倒せるのはアレしかねぇ……!!頼む、オラの身体……もうちょっとだけ動いてくれ……!!」

 

心臓の痛みに苦しみながら這う這うになりながらも体を動かして少し離れた場所で無理矢理立ち上がり両手を上に上げた。

 

♠︎

 

合体13号とタイムパトローラーの拳がぶつかり合う。

 

「ウ、オオオオオ!!」

 

「……!!!」

 

少しのせめぎ合いが起きるが更に気を増した合体13号が勝り、タイムパトローラーはそのまま後方へと殴り飛ばされる。

 

「だだだだだだだだだ!!!」

 

「ヌゥ……!」

 

それを追撃しようとする合体13号だったが、ベジータの気弾の連射によって視界と同時に地面の氷を破られ現れた水面に落下する。

しかし、水中からベジータへと接近し背後に立つ。

 

「なっ!し、しまっ……うぉぁぁぁ!!?」

 

そして、ベジータの両肩を掴んで力のままに締め上げ、更に背骨をへし折らんと自らの膝にベジータの背中を叩きつける。

 

「ァァァァ!!?この……ガラクタがぁ!!」

 

背骨と両肩をやられたベジータだが、超サイヤ人になっていたお陰で意識ははっきりしており爆発波で合体13号を弾いた後、超サイヤ人が解除されそのまま気絶する。

 

「だぁぁぁ!!!」

 

弾き出された合体13号をトランクスが突進し剣を振り下ろすが2撃防がれ

3撃目で剣先が折れてしまい、そのボディブローをまともに喰らってしまうが

 

「魔閃光ーーー!!」

 

合体13号が追撃に腕を伸ばしてエネルギー波を放とうと超近距離になった瞬間魔閃光を放つ。

が、晴れた先には無傷の合体13号。

唖然としたトランクスに追撃のエネルギー波が直撃する。

 

「ハァァァァァ!!」

 

そのまま叫び声を上げながら飛ばされていくトランクスを確認しベジータを始末せんと下を向いた合体13号はふと巨大な影がある事に気付く。

 

だが、それを確認する前にタイムパトローラーが背後から合体13号の腰を掴んでジャーマンスープレックス。

 

「ヌゥ!??」

 

「……!」

 

頭から激突した合体13号ではあったが無理矢理起き上がって、肘打ち。

そのまま両腕で叩きつけようとするが、それはタイムパトローラーの両腕の防御で塞がれる。

だが、ここで合体13号はフェイントをかけていた。

あえて、この攻撃をガードさせる事で腹への膝うちを防御できなくしていた。

その攻撃を喰らったタイムパトローラーはもう一度繰り出される両腕の攻撃が首に直撃し倒れ込んだ所、顔面を踏みつけられる。

 

合体13号はそのまま踏み潰そうとするが、先程の影が比べ物にならない程

大きくなっているのに気付き咄嗟に上を向く。

 

そこには、クウラの時よりと同等とはいかないもののそれでも充分な元気玉を創り終えた悟空の姿。

 

だが、何を思ったか悟空はそのままの状態で超サイヤ人化する。

その瞬間、悟空の心臓の痛みは更に増し、まるで心臓に剣でも突き立てられているような痛みにまで増幅する。

 

だが、悟空はそれでも襲いくる激痛に耐え抜き、元気玉の気を自らの体に取り込み始める。

元気玉は青から金へと変わりそのまま、悟空の体内へと流れこんでいき

やがてその気は大きくなり周りを呑み込んでいく。

 

その光景を見た合体13号はタイムパトローラーを蹴り飛ばし、そのまま悟空へ向かっていき右腕で殴ろうとするが。

 

「オ、オオオオオ!!?」

 

逆に右腕が崩壊し、今度は左腕で殴ろうとするも再び崩壊していく。

 

「ククククゥ……!!!」

 

合体13号が見上げればそこには鬼神のような表情で怒る悟空。

完全に圧倒された合体13号は後退るが

 

「ソン、ゴクウ……!!」

 

「うぁりゃあぁぁぁぁ!!!」

 

全てを込めた悟空の一撃が合体13号の心臓を貫通させ

 

「ソンゴクウゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

そこから流し込まれた悟空の気により合体13号は発光。

その後、完全消滅した。

 

それを確認した悟空は気絶しそのまま落下するが

 

「……。」

 

タイムパトローラーによって回収され、暖かい毛布が掛けられる。

そのまま、ベジータ、トランクスも同じ場所に置きその時空から消え去る。

 

そして、悟空達は駆けつけたピッコロとクリリンによって直ぐさま安全な場所へと運ばれ、悟空は特効薬を飲んで穏やかな眠りにつき

トランクスは念の為この時代に残る事にし、ベジータは目を覚ますとピッコロに状況の説明を求めた。

 

そこで聞かされたのは人造人間17号と18号の起動。

完成されていなかったはずの13号達。

そして、僅かしか感じ取れなかったが複数の気が複合した謎の気。

 

ーー何が裏にいる。

 

そんな予感をベジータはどうしても拭えなかった。

 

そして、数日後。

 

ジンジャータウンの人間が丸ごと居なくなったのを機にナニカが動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・悟空
原作よりも酷い条件の中辛勝を抑えたのち
心臓病の治療の為先ずは体の治療中

・ベジータ
合体13号の件以来、何かの存在を感じ取っている。

・トランクス
狂い始めている今を見捨てる事が出来なかった。
現在へ残り、尽力する。

・ピッコロ
決意を固めた。

・人造人間17号、18号
今作では18号は未戦闘、代わりに17号がまとめて蹴散らしたものの服がだいぶボロボロになったので行き先は変わらない。

・??
行動開始。

・タイムパトローラー
これから更なる激務が待っている。頑張れ。

・トワ
キリが大分集まった、今回も勝利。

・フリーザ
部下の大特訓実施中。


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複合した悪夢

住民集団失踪と題されたニュースが報道されてから少し。

ピッコロは件の街へとその足を伸ばしていた。

報道通り人1人として存在しない街は木枯らしが吹き、辺りには服が散乱している。

 

「……。」

 

ピッコロはある場所から僅かな気を感じとり、それが前にも感じた不思議な気である事を察する。その方向へ振り向けば小太りの男の襟を掴んだ緑のバケモノの姿。

 

「何者だ。貴様は?」

 

「……。」

 

ピッコロがそのバケモノに尋ねるもそのバケモノは答える様子も無く

ただ、ピッコロを見つけた小太りの男が手をジタバタさせながら金を取り出し必死に助けを求める声だけが無人の街に響き渡る。

 

「…放してやれ、そんな奴でも命は命だ。」

 

ピッコロがそう告げると、バケモノはその男から手を離す。

だが、男が数センチ離れた瞬間。

 

「はう!!」

 

男の背中を尻尾で貫く、尻尾は何故か脈拍をうち

 

「あ……あ……。」

 

それに伴い、男の血液が、骨が、肉体が溶け落ち、やがてこの世から完全に消え去る。

 

「な……!?」

 

驚愕するピッコロにバケモノがようやく口を開く。

 

「…次はお前がこうなるんだ…ピッコロ大魔王。」

 

「…な、何!?」

 

「ヌオオオオオオオ!!!」

 

バケモノはそのまま、気を高め始めその街の大気が激しく振動する。

しかし、ピッコロが驚いたのはピッコロ大魔王をこのバケモノが知っている事では無い。

 

そのバケモノから感じる気に驚いたのだ。

バケモノが放っているのは、よりによって己の気。

それだけでは無い。悟空、悟飯、ベジータ、トランクス、コルド、クウラ、ターレスと言ったピッコロがよく知っている気に加えて

 

(だ、誰だ……!!誰なんだこの気は……!!)

 

この世界のピッコロが知るはずも無い気であるガーリックJr、ハッチヒャックといったそうそうたる気が複合し混ざり合った気がそこにはあった。

 

「な、何者だ貴様…。」

 

「はぁぁぁ……俺はお前の兄弟だ…ピッコロ大魔王よ…。」

 

「何!?」

 

そう告げたバケモノは更に気を高め始める。

その気は当然、カメハウスにいる悟飯やクリリン、そしてカメハウスで静かに眠る悟空。

その気を察して今まさに向かおうとしているトランクスとベジータもそれを感じ取る。

 

「……どういう事なんだ…何故、皆の気があんなにも……急がなくては!!」

 

「……どうなってやがる!この俺様の気だと…!?チッ!」

 

そうして彼らは更にスピードを上げ、ジンジャータウンへと急ぐ。

 

ピッコロはそんなバケモノへと尋ねる。

 

「おい!貴様の正体は何だ!話すんだ!詳しくな!」

 

「…その必要はない。お前は直ぐに私の食事になるからだ。」

 

「…成る程、話すつもりは無いか。…ふっ。」

 

バケモノはその質問を殺害宣言によって答えるが、ピッコロはそれを聞いて口角を上げる。

 

「……何がおかしい。」

 

「いや、貴様が答えないならこちらも何も聞かずに貴様の息の根を止めてやろうと思ってな。」

 

「フハハ…ピッコロ大魔王が私を殺すつもりか?」

 

「貴様は何故だかピッコロを知っているようだが……はぁぁぁ……!!」

 

ピッコロが気を高め始める。だがそれは今までのピッコロとは遥かに格が違うもの。

そして気の質ですらも彼自身とはまるで別人のような洗練さ。

大気が揺れ動き、地面は歪み、空気が紫電を起こす。

 

最早、今の彼はピッコロであってピッコロでは無い。

 

「残念だったな……人違いだ。」

 

この場に立っているのは神と融合し、1人に戻ったただのナメック星人である。

 

そう、ピッコロはここに来る前に神の元へと出向き彼と同化を果たしていた。

つまりは今の彼こそが本当の意味での彼なのだ。

 

「何……貴様はピッコロ大魔王では無いという……そういう事か。」

 

だが何故かバケモノは彼の変化に納得し、笑みを深める。

それは己の得られるエネルギーがより素晴らしいものになったという歓喜。

 

だが、ピッコロはその全てを無視し右手の気を集約させ

 

「ハァァ!!」

 

そのまま放出。バケモノは咄嗟に両腕をクロスさせ防御の体制となるがその気の奔流を受け止めきれずに吹き飛ばされる。

 

そのまま、その気の奔流は街を軽々と消し去り、ピッコロの身体からは紫電が迸る。

 

その気の圧は瞬く間に地球の戦士たちへと伝わり、その振動は遥か遠くをドライブしていた人造人間17号達にも伝わる。

 

そんな気の受けたバケモノだったが直ぐに立ち上がり、真っ正面を見つめる。

だが、バケモノが瞬きをした次の瞬間にはピッコロは己の眼前へと迫っており

咄嗟に拳を突き出すが、背後を取られそのまま背中に蹴りを喰らう。

 

「ヌオォ!!?」

 

飛ばされたバケモノは立ち上がりバックステップで後方へと退避するが

ピッコロはそのスピードの上をいき、三連蹴りからの蹴り上げでバケモノを打ち上げる。

 

回りながら落ちていくバケモノを追跡するピッコロだが

 

「ぶるぁぁぁぁ!!!」

 

バケモノの咆哮によりほんの一瞬だが停止して攻撃に移れず

そのままバケモノは空へと浮かび2本の指を額に当てて、気を集中させる。

 

その構えにピッコロは見覚えがあった。

 

「ま、まさか……!!」

 

「ぬぉぁ!!」

 

バケモノが放ったのはピッコロの技である魔貫光殺砲。

一瞬、それに硬直するピッコロだが

 

「ぬぇい!!」

 

右腕でそれを弾き飛ばし、飛ばされた魔貫光殺砲は近くのビルを貫通しそのまま爆発を起こす。

 

「あ、あれは俺の……むっ!」

 

一瞬思案するピッコロだったが、その暇も無くバケモノは接近し

空に浮かびながら両者は攻防を繰り返すも

その僅かな攻防はピッコロが制しバケモノの拳を躱してそのまま顎を蹴り上げ無防備になった胴体にエネルギー波を直撃させ地面へと激突させる。

 

ピッコロはそのまま地面へと着地しバケモノの前へ立つ。

 

「そんな程度か?貴様をとてつもないバケモノだと判断したのは勘違いでは無いはずだ。」

 

バケモノはそれにニヤリと笑い首を左右に倒す。

 

「やるではないか。いくら私が完全体では無いと言ってもな。」

 

「完全体…貴様その為に人間を襲って!!」

 

「生体エネルギーとして頂くのだ。」

 

バケモノの言葉に怒りを震わせるピッコロは声を荒げる。

 

「答えろ!貴様をこの時代に送り込んだ協力者は誰だ!!」

 

「ぬぅ…?」

 

セルはその言葉に僅かに首を傾げるが直ぐに笑みへと変わる。

 

「貴様の仲間か!!」

 

「私を送り込むのに協力して貰ったのはある女だ……といっても私も奴の正体は知らないがな…それにしても何故私が別の時代から来たとわかったのだ。」

 

「貴様のような特殊な気の持ち主なら、俺でなくても誰かが確実に気づく!だが、今まで貴様の存在など神殿からですら見る事は無かった!ならば貴様はどこか別の時代から来たと考えるのが妥当だろう!!」

 

「くく……成る程。流石の洞察力だ、感心するぜ……だがぁ、こういう事まで見切れなかっただろう?」

 

バケモノはピッコロにとって、否この地球にいる戦士ならば誰でもわかる構えを取る。

 

「ま、まさか……!?」

 

「まさかこれは……カカロットの…!?」

 

そのバケモノの気の上昇を感じ取ったトランクスとベジータ

そして間近でその構えを見たピッコロもそれに驚愕する。

 

「か……め……は……め!!」

 

「なっ……!!?」

 

「波ぁぁぁぁ!!!」

 

バケモノが放ったのは、悟空の得意技であるかめはめ波。

迫り来るエネルギーと停止していたピッコロは咄嗟に上空へ回避するが

爆風に紛れたバケモノの四肢に体を拘束されてしまう。

 

「なっ……!!く、このっ!!」

 

ピッコロは必死に抵抗するが解けることも無く。

 

「命は貰ったぞ!!」

 

バケモノの尻尾がピッコロの心臓へと迫る。

だが、ピッコロは体を動かしその尻尾はピッコロの左腕へと突き刺さる。

 

「ぐぉぁぁぁ!!!」

 

「ちっ!…まぁ結果は同じだ。貴様の潤沢な生体エネルギーは貰っていくぞ!!」

 

バケモノの尻尾が脈動し、ピッコロの腕が次第に干からびていく。

その腕が完全に干からびる前にピッコロはバケモノへの顔面へと頭をぶつけよろめさせ、何とか脱出するもその腕は既に使い物にすらならない程に変色していた。

 

「ふっふっふ…!何とか脱出できたようだが…片腕を失ってはどうやら優劣が逆転してしまった様だな…そして!!」

 

バケモノの気がピッコロのエネルギーのお陰で更に増大する。

いや、寧ろ取り戻していっていると言った方が妥当だろう。

何がハマっていっているようなそんな感覚をピッコロは感じ取った。

 

「確かに!これではバランスが崩れてしまい優劣が逆転してしまった!残念だ……!!」

 

「クククッ!流石の貴様でも諦めざるを得ないようだなぁ。だが喜べ!貴様の僅かなエキスでこれだ!貴様を完全に取り込めば私は完全にかなり近くだろうなぁ!!」

 

「………完全体だと!?」

 

「この私の役に立つのだ、嬉しいだろぉ?」

 

「…そうか、貴様に完全に吸収される前に教えてくれ!貴様は一体何者なんだ!!」

 

ピッコロは苦悶の表情をしながらもバケモノの正体を尋ねる。

バケモノは多少、思案するもすぐに回答する。

 

「いいだろう。どうせ死ぬのだ教えてやろう!私の名はセル。人造人間だ。」

 

「人造人間だと!!……またDr.ゲロって訳か。」

 

「ご察しの通り、私の製作者はDr.ゲロだ。…その昔、ゲロは多くの戦士達の細胞をかき集め合成させた究極の戦士を創ろうとしたが…そのあまりの難解さに断念し、途中で私の研究を打ち切った。」

 

「だが!コンピュータはなおも稼働を続け細胞を取り込み続けた。ベジータとの戦い、クウラとの戦い、そして……まぁこの先は説明は不要だろう。貴様らはどうやら私以外の未来の戦士を知っているようだしな。…大方、トランクスだろうが。」

 

「馬鹿な……!!あの戦いには怪しい奴などどこにも居なかったはずだ!!

それにトランクス…?何故貴様の口からトランクスの名が出る!」

 

「貴様らの行動は全て!スパイロボットが監視していたのだよ。そしてトランクスは私と同じ時空の戦士だ…貴様の時代という言葉が無ければ私も気付かなかったがな…。」

 

セルは背後を指差し、ピッコロはそれを見る。

すると、蜂のような小さなロボットが小さな電子音ともに見えてくる。

 

「そら、よぉく見てみるがいい。今もロボットはいて貴様と私の戦いのデータをコンピュータへ送っているぞ?いや、もしかすると貴様の細胞を欲しがっているのかもなぁ?」

 

「く、くそったれ!!」

 

ピッコロはその怒りのまま右手でエネルギー波を放ちスパイロボットを完全に消滅させる。

 

「グッフッフ…!今頃破壊しても遅いぞ…?既に必要な細胞を集めゲロのコンピュータにより私の研究は進められている筈だ。最も私が完成するまでに後20年かそこらはかかるがね。」

 

「貴様をこの時代に連れてきた女というのは一体何者だ!!」

 

「さてな、私も詳しい事は聞いていない…ただ、私がここにいた方が好都合だとは言っていたな…さて、質問は以上だ。そろそろお前を頂くとしよう。」

 

「最後の質問だ!!女が貴様を連れてきたのは分かった!!だが、何故この時代に来る必要があったのだ!!」

 

「私の完成体には大量の人間生体エネルギーでは足りんのだ!2つの特殊生命体を吸収しなければなぁ。…そいつらのはゲロが創り出した人造人間17号と18号。…だが、私の時代では奴らはある奴に破壊され私の夢は潰えかけていた。しかし、その時女が現れ私をこの時代へと連れてきてくれたのだ…。」

 

「…そして、私を創り出したコンピュータはこう言った!私が完全体になれば想像を絶する究極のパワーが手に入るとなぁ!!」

 

「何故だ!!何故そこまで究極のパワーを手に入れようとする!」

 

「何故だと?つまらん事を聞くな…コンピュータは私を究極にしようとインプットしていたのだ!……奴以上の力になるように。それとも…私の中に流れる

サイヤ人やクウラ、ピッコロの血が私に強くなれと叫んでいるやも知れんなぁ……もういいだろう、そろそろ貴様を吸収し私は更なるパワーを手に入れるとしよう。」

 

「……ふっ。そうか、助かったぜ。お陰で謎は粗方解けた…ふん!」

 

セルの回答を全て聞いたピッコロは自らの腕を引き千切るとそのまま新しい腕を生やす。

 

「……し、しまった!!」

 

ピッコロは新しい腕の調子を確かめ悪どい笑みを浮かべる。

 

「随分と参考になった、貴様を完全体にさせる訳にいかん。しかし貴様、俺の血を引いている割には腕の再生に今まで気付かないとはドジだったな。…そして…ゲームオーバーだ、セル!」

 

ピッコロが指を上に向け、セルも上を見ると。

 

「なんだそのバケモノは…説明してもらうぞピッコロ!」

 

「な、なんなんだこいつは……。」

 

ベジータとトランクスが上空におり、それに続くようにしてクリリンや天津飯もこの戦場へと駆けつける。

セルは己の不利を悟るも余裕の笑みは崩れない。

 

「ふ、フハハ…!!どうやら今回はここまでらしいな。だが…貴様も私が誰の血を引いているのかもう忘れてしまったようだな?」

 

セルは地面へ気弾を叩きつけ、爆風をだして上空へ浮上。

セルの意図に気付いたのは天津飯。

 

「……!!み、皆目を……!!」

 

「遅い!太陽拳!!」

 

太陽の光がその場にいる全員の視界を奪う。

そして、視界が戻った先にはもうセルはおらず

セルは既に遠くへ離れ、そのセルの近くにいたラグビーチームの生体エネルギーを吸収していた。

 

(これは…少し急がねばならんかもな。)

 

一方でセルを逃してしまった事への怒りでピッコロの気が荒れ狂う。

 

ベジータはここへ来る際に感じた気がピッコロである事に気付き、驚愕する。

 

(ば、馬鹿な……奴のこの急激な戦闘力は一体なんだ!!この気は13号とかいう野郎の合体した時の圧と同じ……いや、それ以上か!?ど、どうなってやがる!!)

 

「おい、ピッコロ!!貴様のそれと今の奴!!どういう事がきちんと説明しやがれ!」

 

「良いだろう、全てを話そう。」

 

そうして語られる人造人間セルの正体と目的。

そして、背後につく謎の女。

 

ベジータはどんどんと抜かされていく超サイヤ人の姿を見て、怒りを滲ませる。

ピッコロとベジータの実力の差は前まではかけ離れたものだったが今ではピッコロの方がパワーは上。

更にそのセルという奴がサイヤ人の血を引く以上これからどんどん実力を伸ばしていくのだろう。

 

(頭にくるぜ……なぁ、カカロットよ…!!)

 

混沌とした地球はセルという存在により更なる展開を迎える。

 

ーー勝利は果たして誰に微笑むのか。それは誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・悟空
夢の中

・ベジータ
人造人間13号戦のお陰もあり、実力はピッコロに僅かに劣る程度ではある。
が、セルとやらの存在が気にくわない。

・トランクス
未来にそんな奴がいたなんて思いもしなかった。
てっきり、ブロリーが破壊しているものかと。

・ピッコロ
新生神コロ様。
実力は更なる成長を遂げたが、果たして。

・セル
未来の細胞を粗方集めた究極の生命体。
因みにヒルデガーンの細胞はない。
というか、細胞があるのだろうか?
完全体となりある事を成し遂げるために現代へ。

・トワ
更なる暗躍へ

・フリーザ
自らのロボットは破壊されなかった。



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視察

地球ではセルが猛威を振るっている間、フリーザの手元には1年に1度銀河パトロールの一部でフリーザへと忠誠を誓った者から受け取っている銀河犯罪者

の名簿があり、その中でも極悪犯罪者が収監されている銀河刑務所の欄を

スパイロボットで地球を監視しながらのんびりと読み込んでいた。

 

「……おや、これは?」

 

そんなフリーザだったが、とある人物の名前に目が止まる。

 

「……1000万年前に320個の星を滅ぼした魔術師モロ、大界王神の技であるカイカイマトルにより力を失わされ終身刑により収監中ですか。」

 

フリーザが気になったのは大界王神のカイカイマトルという謎の技。

文面からは想像できないが恐らく何かの封印術だろう、魔術師というには魔力を封印されているのだろうがもしも気も封印できるようならばフリーザですら

捕まる可能性があったという事。

 

フリーザは今だけは500万年前に大界王神が魔人ブウに吸収されていた事に感謝した。

 

逆に文面からも想像できるモロとやらの能力、これは極めて単純であり星や生物からエネルギーを吸収できるという要はビッグゲテスターと同種なのだろうが、奴と違うのはそのエネルギーを自由に扱えるという事。

そんな彼の異名は『星喰のモロ』

 

フリーザはそんなモロが万が一でも脱獄した場合、面倒に極まり無く

更に獄中記録からも独尊心が強い事が明らかなので自身に従わない事は明確。

今後の為にも始末する事を判断したフリーザは

自らの足で銀河刑務所へ向かう事を決めた。

 

そんな訳で、フリーザは刑務所にいるフリーザの協力者へと連絡を取り刑務所への視察へと向かったのだった。

 

♠︎

 

銀河刑務所、そこは宇宙の中でも極悪の犯罪者を捕まえる為の施設。

そこは今現在、フリーザが来るという事で厳戒態勢が敷かれていた。

とはいえ今回のフリーザの要件は約1000万年もの間死刑に出来ずに生き続けたバケモノの始末。

 

なんの気まぐれか分からないがそれに関しては宇宙パトロールも望む事であった為今回ばかりはフリーザを黙認する形をとった。

 

「おやおや、皆さんが従順で嬉しい限りです。」

 

フリーザが悠々と銀河刑務所を歩く姿を刑務所の長官が媚びを売るように隣に立つ。

 

通路の脇には多少なりとも正義感に溢れた者達がフリーザへの悪感情を隠す事もせずに睨みつけているがフリーザにとっては可愛いもの

 

寧ろ、逆に流し目で軽く気を当ててやれば直ぐに腰が抜けて崩れ落ちる。

 

その様子に心底愉悦を感じながらフリーザはモロが収監されている場所へと

たどり着く。

 

 

「貴方がモロさんで?」

 

フリーザが見たのは二本の角がある青い山羊のような容姿の老いた人物。

昔は大層な実力があったそうだが、今はそんな姿は見る影も無く

体はやつれ感じられる魔力はもはや風前の灯火。

モロはフリーザは見て、過去の自分を幻視する。

かつて、最強の魔力を誇り何百もの星を喰らい尽くした自らの姿を。

そして察する、今眼前にいるこの男こそが自らの僅かな力が感じ取ったであろう新たな支配者であるフリーザであり彼こそが次世代の自分なのだと。

 

 

「お前が…フリーザか。感じていたぞ…俺はお前の存在をな……大方俺を殺しに来たのだろう?」

 

ならば、今にしがみつく己はフリーザにとって邪魔なのだとモロは判断する。

当然だ、立ち位置が逆ならば自分も全く同じ事をする。

それぐらいの確信がモロにはあった。

フリーザも同じ支配者だったからこそ感じ取れる波長を感じ

正直に話す。

 

 

「話が早くて助かります、最期に言い残したい事は?」

 

モロは鎖に繋がれながらも、フリーザを真っ直ぐに見つめ覚悟を決めたような表情で見つめる、だがその目には僅かな野望があった様にも見えたが直ぐにそれは失われていき、やがては諦めの色へと変わる。

 

「ふん、俺は所詮大界王神に負けた身…魔力は殆ど封じられた挙句貴様を吸おうとしてもどうにもうまくいかん…やれ、俺はもう充分生きた。」

 

その言葉には何か裏がある様にも感じられたがフリーザにとってはその言葉

こそが彼を実験台へと決めつける最大の言葉だった。

フリーザはニヤリと笑い他愛の無い質問をする。

 

「では……あぁ、そうそう。あなた、お菓子は好きで?」

 

「…何を。」

 

 

 

 

 

「さて…と、用も済んだ事ですしさっさと帰りましょう…これで用意は整いました。」

 

モロを始末したフリーザはすぐに惑星フリーザへと帰還し、自らのみが使用する権限のあるビックゲテスターのシステムを作動させる。

 

『なんだ、フリーザよ。』

 

フリーザはその場で自らの現在までのスキャンデータを開き、詳細な項目を確認していく。

 

「今あなたが利用出来るメタルフリーザの最大値は私の何パーセント程で?」

 

『……おおよそ10%。それ以上はメタルフリーザの強度が持たん。』

 

ビッグゲテスターは悔しそうにそう告げるが、フリーザにとってはそれで十分。寧ろ、それぐらいで助かった程だ。

 

「今から一体創ってください。材質は何を使っても構いません。」

 

『構わんが…何をするつもりだ?』

 

「視察ですよ。私達が最後に治めるに相応しい星の…ね?」

 

そして、フリーザはある男の元へ赴く。

 

「さてさて、ベビーさん。その身体の調子はいかがでしょう?」

 

ベビーは既にあるものに寄生している。

その名はハッチヒャック。今は亡きDr.ライチーが創り出した怨念増幅装置。つまり機械であり同じ機械であるベビーとはとことんまでに相性が良かったのだ。

ベビーとハッチヒャック。

ツフルの王の細胞とサイヤが滅ぼしたツフルの怨念の塊が融合し共鳴しあいハッチヒャックベビーというべきその存在は今までとは比べ物にならない力を手にしていた。

 

「あぁ、中々好調だ…まさかこんなにもオレと適合する肉体があったとはな…貴様が体を用意したという事は…。」

 

ベビーは肉体の調整をしながらフリーザへと振り向く。

その顔には獰猛な笑みが張り付き、待ちに待ったある事が待っている事が

そこから判断が出来る。

 

「えぇ、地球への侵攻。その第一陣として貴方とメタルフリーザが向かう事になりました。」

 

「そうか……そうか!!ついに!憎きサイヤ人を殺せるというわけだ…メタルフリーザとやらには邪魔をするなと伝えておけ…邪魔をすれば殺すともなぁ…!!」

 

ベビーの憎悪は唸りを上げラボの機械が軋みを上げる。

ベビーは既にいつでも行ける準備は出来ており今か今かとフリーザを睨みつける。

 

「それで?オレはその地球やらの何処に行けば良い?…どこでも構わんが探すのが面倒だ。」

 

「おや、それでしたら問題ありません。…こちらをご覧ください。」

 

フリーザがディスプレイを広げ地球の様子を見せる。

そこには、既に完全体となったセルがテレビ塔をジャックしセルゲームの開催を宣言し内容を説明している場面。

そのゲームの参加条件は自由。

つまりは、他の星から来ても問題は無いという事。

ベビーはその映像を見て察し、直ぐ様準備を始める。

 

「あぁ…そういう事か…良いだろう…癪だが奴も纏めて殺してきてやろう…奴もサイヤ人の気を持っている…生かしてはおけん。」

 

「私としても世界中の人類が滅ぼされては堪ったものではありません。あの土地には知るべきものが山ほどあるのでね。…という訳でよろしくお願いしますね?」

 

ベビーはフリーザの言葉に舌打ちしながらも従い、宇宙船にメタルフリーザ1体を詰め込み地球へと飛び立つ。

フリーザは端末でベビーの到着をセルゲーム開始の時刻に設定しメタルフリーザにはある命令を送り込む。

 

そうして、今度はトワに連絡し

 

「あぁ、私です。本日をもってベビーさんは私の軍から退職いたしましたので……どうぞ、あなたの操り人形にでも使ってあげてください。」

 

事実上のベビーの切り捨てを宣言するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・フリーザ
今日も今日とて暗躍、ベビーを切り捨て新たな知識を。

・ベビー
やっとサイヤ人をぶっ殺し自分の真の目的へと着手し始める…予定。
ハッチヒャックベビーは個人的だがベビー系統ではかなり好きだったり。

・セル
完全体になりセルゲームを開始宣言


・モロ
はっきりと言いましょう、こいつわけわからん。
という訳で漫画で何されるかわかる前にさっさと始末。
その知識と魔力は後々……?

・メタルフリーザ
現在はフリーザの10%、それでも十分宇宙を粉微塵にできたり
戦闘力ではジャネンバを軽々と超えるが、強度に難あり。


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究極の生命体

あれから10日後、いよいよセルゲームが開幕する。

セルを打倒せんと集まろうとするのは地球の戦士達、Mr.サタンと名乗る格闘家とその弟子達。

 

そして

 

「ここが地球…中々良い星だ、我が新しいツフル星への土壌に相応しい…。」

 

ベビーとメタルフリーザもこの地球へと上陸する。

ベビーは地球を大層気にいるが、メタルフリーザはその場からさっさと離れ

ある場所へと向かっていく。

 

「……奴が消えた。まぁ良い、オレの目的はここのサイヤ人を滅ぼし新たなツフル星を創り上げる!それだけの話だ…。」

 

ベビーはメタルフリーザの行き先に目もくれず、セルの気がある場所へと飛ぼうとする。

しかし。

 

「あら、それは駄目よ。あなたは私の人形なのだから。」

 

「なっ……!なんだ、キサ……!!」

 

ベビーの居場所を予めフリーザからリークされていたトワがかけた魔術により

ベビーの肉体は彼女の支配下に置かれる。

 

その洗脳はベビーの意識を奪い、造り替え、トワの新たな人形として造り替える。

 

そうして、洗脳の過程が終了した時、そこにいるのは最早ベビーであってベビーではなく彼自身の意識は瓦解。

彼の精神は異常を正常と判断し理性は狂気へと変え

ベビーはあふれる知性を失い、唯怨敵へ向かって豪速で向かっていった。

 

……ベビーの野望はほんの僅かな時間で瓦解した。

だが、ベビーにとってはこれが幸せだったのかもしれない。

何故なら、仮にもベビーが地球を支配した場合にはフリーザは地球ごとベビーを葬るし、なんならその行動をする前にメタルフリーザによって始末されてしまう。

そんな可能性が潰えただけベビーは運が良い。

そう考え、しかしそれをすぐに打ち消しさっさと洗脳魔術を終えたトワは最後にベビーにいつもの魔術をかけ強化を施しそのまま姿を消すのだった。

 

所変わってセルゲームの会場。

バカの世界チャンピオンのパフォーマンスが終了し

セルと悟空が目にも留まらぬ速さで戦闘を繰り広げていた。

 

悟空とセル、実力は表面を見れば実力は拮抗しているようにも見えるが

実際には実力はセルの方が上ではあり

悟空は今まで戦ってきた経験と師から学んだ技術で何とか拮抗している状態に過ぎない。

 

「フハハ!どうした孫悟空!まさか貴様の実力がその程度ではあるまい!」

 

「くっ…!!」

 

悟空にとって今までセルが繰り出してきたピッコロや天津飯の技ならば見切る事が容易だ。

しかし、セルの中には悟空すらも知らない細胞が組み込まれている。

その技を使われてはただでさえ実力が上なセルの攻撃を見切り、反撃する事が出来ない。

 

「だりゃりゃりゃ!!!」

 

悟空のラッシュをセルが防げば、セルの腕が僅かに発光し始め、パワーが溜まっていく。

 

「ふん!はぁぁ!!!」

 

そして、そのパワーの溜まった腕は悟空のラッシュを容易く弾き逆に悟空の胴体へと無数の拳を繰り出して蹴り上げ、そのままセルは両手を合わせ

 

「喰らえ、キルドライバー!」

 

ターレスの技を悟空に向かって放つ。

悟空は飛ばされながらも体を逸らす事で回避。

 

だが、そこまで計算してたセルは追撃に特大なかめはめ波を放つ。

かめはめ波が悟空に迫り、飲みこまれるもそこには既に悟空はいなく

 

「何?」

 

僅かに動揺するセルに背後に瞬間移動した悟空の蹴りが直撃する。

セルは僅かに吹き飛ばされるも、直ぐに立ち直る。

 

「何故だ…あのかめはめ波のタイミングならば貴様に避け切れるはずがない。」

 

「あぁ、逃げられなかった。」

 

「そうか…貴様は前にも突然現れ、消えた事があった。」

 

「瞬間移動だ…オラにはそいつが出来る。」

 

「なるほど…そいつは厄介な技だ!」

 

そうして、セルは再び悟空へと接近しようとし

 

「フハハハハ!!!」

 

2人の間に何者かが猛スピードで降り立つ。

降り立った衝撃でセルゲームの会場は爆風と共に粉々に砕け散り、セルと悟空は目を塞ぐ。

 

爆風が晴れた先にいたのは、赤い全身に黄色のアーマーをきた存在。

 

「サイヤ人!今日がお前たちの死ぬ日だ!!フハハハ!!」

 

悟空達にとっては突然現れた未知の存在。

セルにとっては既存の知識とは僅かに違う存在。

 

「サイヤ人!!サイヤ人ンン!!」

 

その存在は完全に狂った目で憎きサイヤ人を捉え、怨嗟を吐き散らす。

そうして困惑する悟空とセルの2人の頭を掴み取り、そのまま何度も地面へと叩きつける。

 

「ハハは!!ハヒャヒャヒャ!!!」

 

2人は抵抗していたがその存在は飽きたように手を離し、次の標的へと狙いを定める。

その視線には唖然とする他の戦士達の中にいる…サイヤ人。

 

「サイヤ人!!……ベジータァァァァ!!!」

 

「何!?ぐぉおお!!?」

 

そう、その存在が次に狙ったのはベジータ。

ソレはベジータの頭を掴み取り何処かへと連れて行ってしまう。

 

「父さん!!」

 

数秒たちようやく事態を把握し始めた戦士達よりも先にトランクスは父の後を追う。

 

存在はベジータをセルゲームからだいぶ離れた所で地面に頭を引きづらせていくが

 

「ぐぅぅぅ!!放し…やがれ!!」

 

ベジータは抵抗するもその手は離れる事がなかったが

 

「はぁあ!!」

 

追いついたトランクスの気弾が存在の背中に直撃し、その存在はベジータから手を離す。

 

ベジータはすぐさまその存在から距離を置き、超サイヤ人へと変身する。

 

「ちっ…!!なんなんだコイツは!!?」

 

「…僕にも分かりません、ですがこの気は……セルと同等…いや、もしかしたらそれ以上かも知れません!!」

 

「キキキキキ!!ツフル人の恨み…オモイシレレレ!!」

 

「ツフルだと…?今頃になって俺たちサイヤ人へ復讐とはな!!」

 

「来ます父さん!!」

 

「ふん!精々俺の足を引っ張るなよ!トランクス!!」

 

 

もはやツフルの怨念の結晶と言うべき存在と化していくベビーはその狂気の本能のまま、ベジータ親子へと突進。

 

ベジータへ大振りで殴りかかるがベジータは軽々と回避。

だが、ベジータが元々いた地面は真っ二つに避け底が見えない裂け目が出来る。

ベジータはそれをちらりと見たが直ぐにニヤリと笑い

 

「……ちっ、当たると不味いな。だが…遅いぞ!」

 

そのままベビーへボディブローしそのままエネルギー波を放つ。

その威力にベビーの体にヒビが入るが瞬きの間にその傷は再生し、すぐさまベジータの腕を掴む。

 

「……ふっ。」

 

ベジータは余裕の笑みを浮かべ、そのまま頭を下げる。

 

「はぁぁ!!」

 

その上をトランクスの蹴りが通過、ベビーの顔面へと突き刺さる。

 

「ギ!?……サイヤ人ンンンンン!!!!」

 

だが、ベビーはその蹴りをあろう事か口で受け止める。

 

「なっ!!?」

 

そして、ベビーは口でトランクスの足を掴んで振り回して吐き出すと同時にベジータの腕を掴んだまま上にあげ振り回してぶん投げる。

 

投げられた2人は地面を転がるが、即座に立ち上がって高速移動でベビーの懐へ入りラッシュを叩き込む。

2人の一撃一撃がベビーのボディへとヒビを入れてはベビーの怨念により再生を繰り返す。

更にベビーは2人の攻撃を意に介さず、逆にベジータ達に攻撃を加え始める。

今度は先程と違いスピードが段違いの速さであり、ベジータ達は攻撃を中断し

防ぐことに集中するが、その攻撃のあまりの速さに防御が追いつかなくなり

徐々に殴られる頻度が上がっていき、ブルマ特製のアーマーが紙細工のように砕けていく。

 

「ぐっがっ!!?」

 

「ぐぅぅぅ!!?」

 

ベジータ達が苦悶の表情を浮かべ反撃するも

ベビーのボディはヒビしか入らず、フィニッシュと言わんばかりに繰り出されるベビーの怨念の気が篭った一撃を避けることが出来ずにベジータ達の体を貫き、肋骨がへし折れる音を聞きながらベジータ達は近くの岩盤へと叩きつけれる。

 

叩きつけられたベジータ達は血反吐を吐き出しながらベビーを睨みつける。

 

「……ごぽっ!!?……ふ、ふざけやがってぇ……!!」

 

「な…なんて強さだ……!!?」

 

「ギヒヒヒヒ!!!!ヒャハハ!!シネェ!!」

 

ベビーはとどめを刺そうと、腕をクロスさせる。

両手にはだんだんと光が集まりだし

その数秒後、極光がベジータ達を呑み込んだ。

 

 

♠︎

 

一方、メタルフリーザはその2つの戦場に目を向ける事もせずにある場所へと

向かい、そして今その場にたどり着いていた。

 

「……ここですか。」

 

その場所とはDr.ゲロの研究所の1つ。

トランクス達が壊した所とはまた違った場所な最奥には1つのコフィンがあった。

コフィンはコンピュータに繋がっており、コンピュータはそれに次から次へとデータが組み込まれている。

 

メタルフリーザは、そのコンピュータを操作しビッグゲテスターへと接続。

ビッグゲテスターは、そのコンピュータの支配権をすぐさま支配し

内蔵データをハッキングし思考回路を組み替え、新たな遺伝子データをどんどん登録していく。

 

その様子を確認したメタルフリーザは研究所から外へ移動し、2つの戦場を

目視で確認していく。

 

「……これで私の仕事は終わりですが…あれは少々手に余るようですし…様子だけでも見に行きますか。」

 

そしてメタルフリーザは気をたぎらせ、戦場へと飛翔する。

 

果たして希望なのか、それとも絶望か。

 

それを知るのは…1人しかいないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・悟空、セル。
決戦中に水を差される。

・ベジータ、トランクス。
恨みの前に大苦戦。

・ベビー
ベビーというよりはハッチヒャックのツフル人の恨みだけが表面化した存在と化した、正真正銘のバケモノ。
狂気に支配された支配者は怨念を果たすためだけに動き出す。

・メタルフリーザ
フリーザの端末であり、ビッグゲテスターの端末。
メタリックボディーはあらゆる攻撃を軽減する。
今回の乱入枠は実はこいつ。

・作者
ブロリーのブルーレイを買った。


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親子

極光が晴れた先にベジータ達の姿は無かった。

 

「フハハハハハ!!!シンダ!シンダ!!」

 

サイヤ人が死んだ事を歓喜し嘲笑を上げるベビー。

 

 

「……なんだ、あの…威力は……!!?」

 

「……危なかった…!!」

 

だが、実際にはベジータ達はギリギリの所で何とか上空へと回避し、気を消していた。

2人がいた位置へと通過したベビーの極光は地を焼き、その熱量により地面が紅く溶けている様子を目視しベジータ達は戦慄する。

 

もし、あの一撃が直撃していたら。

その結末は言うに及ばないだろう。

 

ベジータはふと隣のトランクスを見る。

別の未来から来た自分の息子だと精神と時の部屋で明かされてからあの部屋で

1年修行してからどうにも、己の調子を狂わせるガキ。

 

しかも、そいつの目的は未来を救う事だと言う。

…馬鹿馬鹿しい。守る、救うはサイヤ人のすることでは無い。

サイヤ人とはただ戦い、滅ぼし、そして死ぬ事こそが生きる意味に等しい

人種だ。

 

だが、ベジータはどうにもトランクスを嫌悪する気にはなれなかった。

どうみても自分とは反対の思考を持つ、このガキが。

…あのやかましい女と重なり、自身の嫌悪感を払っていく。

 

ムカつくガキだ。だが、それ以上にムカつくのは。

 

…トランクスを息子と認めている自分がいる事だ。

 

「おい、トランクス。」

 

「な、なんでしょう。」

 

「貴様はさっさとあっちに戻れ。戦いの邪魔だ。」

 

「……その体じゃ、いくらなんでも無茶だ。」

 

トランクスは自らを追い払おうとする父の体を見る。

体は真っ赤な血に染まり、いくつかの骨が砕けているのかその体勢には危うさがある。

対する自身も骨は砕けさえすれ、明らかに父よりは軽症だ。

なのに何故、父は自らを追い出そうとするのか。

悩みこむトランクスをベジータは訝しむが直ぐに元の態度に戻る。

 

「……おい、何を思っているのか知らんがさっさと消えろ。」

 

「……できません!」

 

ベジータの通告にトランクスははっきりと否を唱える。

それにベジータは静かに激昂する。

 

「…トランクス。貴様は何のためにここにいる?」

 

「それは、この現代の手助けになればいいと……。」

 

「貴様の戦場はここだったか。…貴様が戦うべき相手はあのバケモノか?」

 

「そ、それは……。」

 

トランクスは僅かに動揺する。

何故、父が怒っているのかが分からない。

どうして今になってそんな事を言い出すのか、しかしトランクスはベジータの言葉にあの未来を思い浮かべた。

 

その動揺は確実にベジータに伝わる。

 

「違うだろう…ならさっさとここから失せろ。あのバケモノはこの俺1人で倒す。」

 

「……出来ません!!」

 

「聞き分けのできんガキめ……!!このベジータ様の実力が信じられんのか!?それに貴様には元々ヤツは無関係な存在でこれはサイヤとツフルの問題だ!!本来ならば貴様が戦う相手では無いのだ!」

 

「出来ません!!」

 

「何故だ…!!」

 

ベジータはトランクスを追い出そうと必死になるが、トランクスはその全てに否を唱える。

その目にはいつのまにか涙がたまっていた。

それに気付きながらもベジータはその理由を問う。

 

「……もう、俺は置いて逝かれるのはごめんです!」

 

トランクスは2人の師を思い出す。

ブロリーから逃がすために身を犠牲にした最初の師匠であるピッコロ。

自分に希望を託し、その身を散らした兄弟子であり、第2の師匠である孫悟飯。

 

2人とも自分を生き残らせる為に犠牲になった。

そうして、今も確証は無いがベジータもまた己を逃がそうと下手な芝居まで使って追い出そうとしている。

 

…それがトランクスのトラウマを確実にえぐった。

 

トランクスは思う、もう何かを託されたくは無い。ましてや命まで使ってくれる相手からもう無様に目を背けたくない。

トランクスとて、大きくはなっても父を知らなかった子ども。

 

それが更にトランクスが必死になって止まろうとする楔になっているのだ。

ベジータはその目を見て、やはりこいつはサイヤ人ではないと確信する。

同時にこいつはてこでもここから動かそうにもない事も。

 

ベジータは溜息を吐き、自分の甘さに反吐を吐きながら

トランクスに諦めとともに吐き出す。

 

「……勝手にしろ。だが、俺はお前が死んでも何も思わんぞ。」

 

「……はい!」

 

そして、ベジータ達は未だ笑い続けるベビーに向かって気弾を放ち、それはベビーに直撃する。

 

「グゥゥ!!?マダ、イキテイタカ!!?」

 

ベビーは当てられた方向を目視しベジータ達を発見する。

そして超スピードでベジータ達へと接近し、殴りかかるが

ベジータ達はそれを悠々と回避し、今度はラッシュでは無く堅実にしかし

確実にベビーの肉体にヒビを入れ続ける。

 

当然、気に入らないのはベビーだ。

ベビーのラッシュは先程ベジータ達を苦しめた速度へと変化していくが

それはベジータ達の気弾が視界を潰すことによって阻止される。

 

「ガァァ!?」

 

そして、ベジータ達は二手に分かれ

纏めてでは無く今度は個人で多方向から攻め始める。

トランクスが殴り、ベビーに掴まれればベジータが気弾の乱射によって阻止。

ベビーが今度はベジータの気弾の嵐を潜り抜け接近すれば、トランクスが背後から蹴り飛ばし、ベジータが追撃する。

 

「どうした!?動きがのろいぞ!バケモノめ!!」

 

ベジータが挑発するとベビーの怨嗟が体から漏れ出し、それと同時にベビーは

腕をクロスさせる。

先程と同じように光が集約しはじまる。

 

ベジータはあえてそこから動かず、ベビーのタメ時間を数え始めた。

 

(1.2.3.4.……13!!)

 

「オオオオ!!」

 

ベジータの計算通りの時間でベビーは自らの大技を繰り出す。

当然、ベジータは回避し隙が生じたベビーの背後に回って蹴り飛ばす。

そこにはヒビが入るが、ベジータが見る限りではそのヒビは完全に直るのは通常に比べて遥かに遅かった。

 

その情報をベジータは見逃さない。

 

「なるほど…貴様はあの技を撃った後一瞬だが、再生力が衰える訳か!」

 

「サイヤジンンンン!!!」

 

その事を知られたからなのか否か、ベビーはトランクスを無視しベジータのみを執拗に狙い始める。

しかも、先程とは違い動きに一切無駄が無い。

ベジータの傷ついた場所や骨折部位だけを的確に狙い撃ち、ベジータの傷は着実に増えていきそれに比例するように出血量も増える。

 

「父さん!!」

 

トランクスがそれを阻止しようとベビーの背後を何度も殴りつけるもベビーが怯む事は無いままベジータへ攻撃を続け、出血と骨折の痛みでベジータの意識はどんどん暗闇へと堕ちかける。

 

「サイヤ人を……舐めるなぁ!!」

 

だが、サイヤ人のプライドがベジータの力と意識を押し上げベビーの猛攻を少しずつだが押しのけられるようになっていく。

つまり、戦いの中での極限状態においてベジータは更なるステージへと足を踏み入れつつあるという事。

 

ベビーは段々と確実に自身の攻撃を防ぎ始めるベジータに怒りを覚え、怨念の力により更にその気は禍々しくなるが、ベジータの成長は確実にベビーへと近づき始めていた。

 

やがて、完全にベジータはベビーの攻撃を捌き、その成長に驚くトランクスも

ベビーへの攻撃へ改めて転じる。

ベビーの攻撃が全く当たらなくなると同時にベジータ達の攻撃は着実に通じるようになりベビーのヒビの直るスピードが少しずつ長くなっていく。

 

ベビーはその事に理性なくとも大層怒りを覚える。

何故、自身よりも下等生物で実力も劣るサルがここまで食い下がっているのか。

ここでベビーに理性があったならば、話は違ったが最早彼は狂気だけで

復讐するモンスター。

そんな理由よりもサイヤへの怒りが勝り、遂にベジータとトランクスの腕へ全力の拳がヒットする。

ベジータは骨が飛び出して剥き出しになるのを見ながらも余裕の笑みを見せ

苦悶の声も漏らさず、ただ傲慢に不敵に笑いながらベビーを睨みつけ挑発する。

 

「貴様のパンチなどこの俺には効かん……さっさと自分の星にでも帰ったらどうだ?」

 

「……コロスコロスコロス!!!」

 

ベビーはその言葉に完全に激昂。

空高く舞い上がり、腕をクロスさせる。

 

「……来たか。おい、トランクス!俺の息子ならわかっているな!」

 

「はい!」

 

ベビーの腕に気が集約されていく。

その気は今まで撃って来たのとは格が違い、ベビーの体が気に負けてひび割れるほどに増大していく。

それは、文字通りの全身全霊。

ベジータ達も来るべき、その時の為に気を高め続けある体勢を取る。

それはかつてベジータがこの地球を滅ぼす為に使った技。

 

「チキュウゴトキエロ!!リベンジャーカノン!!」

 

「「ギャリック砲ーーー!!!!」」

 

リベンジャーカノンと2人のギャリック砲がぶつかり合り、閃光があちこちで爆発を起こす。

 

「ぐぅぅぅ!!」

 

だが、ベジータ達の力ではベビーの怨念には敵わないのかジリジリとリベンジャーカノンはギャリック砲を押し返し始める。

 

「このままでは……!!」

 

「もっと……気を上げやがれ!!」

 

ベジータ達は残された力の全てを出しきりながらもしかし、ベビーのエネルギーの前では未だ足らず、ついにリベンジャーカノンはベジータ達の目先にまで追い詰められしまう。

 

しかし。

 

「……やはり、ですか。仕方ありませんねぇ。」

 

そんな声がベジータの耳に入った瞬間、ベジータ達の気が更に増幅する。

 

「こ、これは!?」

 

「……ちっ!!」

 

思わぬ相手からの助太刀に苛立ちを隠せないベジータだったが、与えられた気は想像以上であり、ベジータ達を更なるステージへと押し上げる足場となる。

その溢れんばかりの気を全身に巡らせ、リベンジャーカノンを押し返す。

 

「ガギギギ!!?」

 

「くたばり……やがれぇぇぇ!!!」

 

「はぁぁぁ!!!」

 

一瞬、ベジータ達の周りに紫電が走ったかと思えばベビーのリベンジャーカノンは完全に破られ、そのまま宇宙へと放り出される。

 

「マ、マダ……オレハ!!オレハァァァ!!!」

 

ベビーはギャリック砲に巻き込まれながら、怨嗟の声を吐き続ける。

しかし、その声も長くは続かない。

なぜならば、ギャリック砲はそのまま太陽へと直撃。

ベビーは太陽とギャリック砲との板挟みとなったからだ。

 

「オオオオ!!?サ、サイヤジンンンン!!!」

 

元々が機械の体であり、全身全霊の攻撃によって外面がボロボロだったベビーはその太陽の熱とギャリック砲に耐えきれず、バラバラになった挙句一欠片も残さずこの世から完全に、クウラのように復活する事も無い形で消滅した。

 

それを気で感じ取ったベジータ達は超サイヤ人が解け、そのまま倒れこむ。

 

「……礼は言わんぞ、くそったれ…。」

 

そう吐き捨てベジータは気絶。程なくしてトランクスも気絶する。

 

…そして、悟空とセルの気が地球から無くなったのはそれと同時だった。

 

この顛末を監視し、データを送り続けたメタルフリーザはベジータ達に簡易的な治療を施した後。

地球からそのまま惑星フリーザへと帰還せんと宇宙空間へと飛び出す。

 

その後、程なくしてセルが復活。自らの最強を証明せんと己に害する者全てを

地球ごと消し去る事を宣言。

悟飯を庇ってトランクスが犠牲となり、怒りに震えるベジータが再び超サイヤ人の壁を超えた事でセルにダメージが入ったものの傷だらけのベジータではセルを殺す事は叶わず、吹き飛ばされ。

 

「消えてろ!ベジータ!!」

 

セルからの追撃の気弾を間に入った悟飯が喰らい、左腕が使えなくなってしまう。

 

そして

 

「地球ごと消えて無くなれ!!」

 

「だぁぁぁぁ!!!」

 

超特大のかめはめ波同士がぶつかり合い、一時はセルが圧倒的に優位に立つものの、仲間達、そしてタイムパトローラーの援護もあり悟飯はなんとか耐えしのぐ。

 

だが、セルの力はより究極になった上でトワの魔術が込められたもの。

容易く、それらを跳ね除けるが。

 

「ビックバンアタァァァクッ!!!」

 

ベジータの一撃がセルに直撃。

セルが一瞬だけ怯んだその瞬間、父の声で悟飯の気が爆発。

 

「そ、そんな……馬鹿なぁ……。」

 

セルのかめはめ波を容易く粉砕、セルは今度こそ核すら残らずに消滅。

 

ここにセルというの名の未曾有の恐怖、そしてサイヤとツフルの因縁もまたここに終結した。

 

皆が喜びに満ちてる中、ベジータとピッコロは疲弊するタイムパトローラーの前へと立つ。

 

「いい加減聞かせてもらうぞ…キサマは何者だ。」

 

「…いつも、ある時になっては突然現れ消えていく。…答えろ、一体何を追っていやがるのかをな。」

 

「………。」

 

黙り込む、タイムパトローラーだが、その時ベジータとピッコロの脳内に声が響く。

 

『それは、私から説明するわ。』

 

「…何者だ。」

 

その女の声は厳格に自らの正体を明かす。

 

『私の名前は時の界王神。全ての歴史を知る者よ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・セル
結局、届く事は無かった。

・悟空
次世代に後を託した

・悟飯
託された父の想いを決して忘れない

・ベジータ
地球に毒されている自分に嫌気が差す反面、息子と嫁に対して複雑な感情を抱き始める。そして、真相究明。

・トランクス
死亡、後に復活し未来へと帰還する。

・ピッコロ
同じく、真相究明。
セルが言った最後の謎をここで明かさせる。

・時の界王神
もう、限界。

・フリーザ
上記の元凶。


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管理者の失敗

「あら…?気のせいかしら?」

 

コントン都。

そこは歴史を管理し、歴史改変といった意図的な物から正常な歴史を守護する為の戦士達が集う都市。

 

その中でも最奥にあるのが時の巣。

ここには時の巻物と呼ばれる歴史の全てが書かれた書物が刻蔵庫に納められており、それを管理する時の界王神たるクロノアがその全てを管理している。

 

そんなクロノアの目には一瞬だけではあったが、時の巻物の色が一瞬だけ変わったように見えたが瞬きの内にそれは元の色に戻っていた。その為

クロノアはその事を不思議に思い、念の為その巻物を調べてはみたものの何の代わりも無いクロノアが覚えている通りの歴史であった。

 

その為、クロノアはそれを自らの勘違いと断定。

 

「…疲れているのかしらね。」

 

そうしてクロノアは休息の為、刻蔵庫から退出する。

 

それが、全ての始まりであり、終わり。

 

 

数刻後、クロノアが戻るといくつもの巻物にある変化が生じていた。

 

「な、何よ…これ……!!どうして…!?」

 

歴史改変…では無い。しかし、確かに歴史が変化している。

その特異点となっている存在は…フリーザ。

 

クロノアは戦慄する。

フリーザの存在はまるでタチの悪い伝染病のように歴史をどんどん変えていき

元の歴史とは段違いの速さで宇宙の星々を侵略、平定し。

遂にフリーザはこの歴史に無くてはならない存在となっていく姿。

 

そして。

 

「…嘘、トワに……トランクスも!!?」

 

ある歴史の中に歴史改変者である筈のトワだけでは無くタイムパトローラーである筈のトランクスさえ組み込まれていく。

最終的に全ての歴史がただ1人の存在の所為で完全に書き換えられ、修正は絶望的。

 

更に事態は加速し、時の巻物の1つに歴史改変が発生する。

よりによってそれは、フリーザとトワの会合にトランクスが現れなかった為に起きていた。

 

歴史を守る者が歴史の改変の原因になるなど笑い話にもなりはしないとすぐ様トランクスをその歴史に派遣。

 

直ぐに歴史改変は収まったものの

 

「さてと、どうせこの会話も聞いているのでしょう?

何処かの誰かさん。今回は大目に見ますが次はありません。

よく覚えておきなさい。」

 

その一言でクロノアはフリーザの異常性に潔くというよりは漸く気付いた。

 

ーーフリーザに知られている。

 

何故?いつ、どこで知られたのか?直ぐ様巻物全てを漁るもののそんな情報

は何処にも無く、何を知られているのか全く分からずそれでも己を的確に認識したその底知れぬ恐ろしさと蛙を睨む蛇のような眼差しに心から恐怖を覚えたクロノアは滝汗と共にその場にへたり込む。

 

「……どうなっているの…。」

 

クロノアの声が刻蔵庫に響いた。

 

♠︎

 

それから数日。

クロノアは事態の究明を図ったものの解決策が見つかる事は無いまま

次の歴史改変が起きる。

それはラディッツの戦いでの事だ。

本来、孫悟飯の攻撃により弱体化する筈のラディッツがその攻撃を避けてしまいその影響で悟空達を倒してしまうというもの。

その背後には当然トワ達の姿があり、クロノアは直ぐに新たに歴史改変の修正に任命したタイムパトローラーを派遣。

 

事態は穏やかに収束したものの、ここからがクロノアにとっての地獄の始まりである。

ベジータ戦では、ベジータだけでは無くナッパまでも大猿化したり。

本来はフリーザ戦の筈がクウラ戦へと変わった挙句、その中でも歴史改変が起こった時には刻蔵庫が大地震を起こしたものだった。

 

更には歴史の僅かな部分の小競り合いですら歴史改変が発生する始末であり

クロノアとタイムパトローラーの疲労は溜まっていくばかり。

 

そして、最もクロノアが驚いたのは老界王神に尋ねた際の事。

何の問題も無く、歴史改変に赴く彼らの姿を見て疑問に感じたクロノアは

老界王神にこの歴史の変化を尋ねた。

 

「ねぇ…この歴史おかしいと思わない?」

 

「何を言っとるんじゃ…

 

 

全く変わっておらんだろうに。(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

「…………え?」

 

 

ーー自分以外がこの歴史を当たり前に見ていた事だ。

 

何度も尋ね直しても、誰に尋ねても同じ答えが返ってくる所か疲れているのかと思われ休息を提案される始末。

しかも、歴史改変が起きるごとに刻蔵庫が大きな地震が起きているのを誰も不思議に思っていないというのだ。

 

ーーどう考えてもおかしい。

 

そう、おかしいのだ。

クロノアが知る歴史と今クロノアが閲覧している歴史は大いに異なっている。

にも関わらず周りの人達は誰もそれを不思議に思わない。

 

しかも、歴史が進むごとに自分でさえもこの歴史に違和感を感じなくなっている。

ずれていた認識が少しずつ戻っていくような感覚が起こり

明らかに間違っている筈なのに、それがあたかも正解であると思ってしまう

感覚は麻薬のように徐々にクロノアを蝕み始める。

 

そんな中、セルがトワ達によって現代の地球に訪れた際にクロノアは気付く。

 

この世界は人選が変わろうとも、人数が増えようが減ろうが確実に元の世界の流れを進んでいる。

ベジータ戦もクロノアが元々知っていた歴史と結末は大差なく。

クウラ戦も、フリーザがクウラになっただけで悟空が超サイヤ人に覚醒して

撃破したという事実は変わらない。

その影響でメタルクウラが発生したもののメタルクウラが滅ぶ流れは撃破された時間は違えどクウラが完全に死ぬというのは同じである事を。

 

更に、トワ達の行動を注意深く観察した結果。

 

「これ……ほんの少しなら歴史改変にならないレベルでこの世界に干渉できる…!」

 

元の歴史が完全に崩壊せず、今の歴史に影響しない内は此方側も歴史改変にならないという事をベビーの一件そして、

 

「この私がパーフェクトになった記念だ…孫悟飯、貴様も…そして私を足蹴にした奴もだ。確実に私の前から消してやろう。…もう容赦はせんぞ…覚悟すると良い。」

 

セルの言葉でクロノアは確信する。

 

「なら……伝えなくっちゃ…もう、なりふり構ってはいられないわ…!!幸いこの歴史は彼らだけではなく私たちも介入しやすい世界に創り変えられてる…ルール違反なんて気にしている場合じゃない!……フリーザ…彼を確実に止めなくっちゃ…!!」

 

そうして、クロノアが見た先の巻物はモザイクがかかって背景は見えないが

 

ーー悟空とフリーザが戦っている様子が映し出されていた。

 

 

かくして、クロノアはセルが死亡した後タイムパトローラーに尋問しているベジータとピッコロの脳内に語る。

歴史の事は未来の事や歴史崩壊に関わる事だけは避けつつも言及、もっとも重要である特異点であるフリーザがその結果、宇宙にどのような影響を及ぼしたのかやセルが言った女の正体。

そして……自分達の正体を彼らだけに伝える事を条件に明かしたのだった。

 

 

♠︎

 

事態を大抵把握したピッコロとベジータは話のスケールの大きさに

面食らうが、フリーザが与えた今の宇宙の現状を聞かされ戦慄する。

 

「ちっ……カカロットが死んだ以上俺はもう戦わんとさえ思っていたのだがな…そうも言ってられんらしい。…フリーザめ、厄介だとは思っていたがここまでとはな…。」

 

「…お前達の話を頭ごなしに納得するのは難しい…だが、嘘はついていない事はわかった。」

 

『ええ、でも私はあなたたちに今何かをして欲しいわけじゃない。ただ覚えておいて欲しいだけ。…それとあなたももう喋っても良いわ、この事が分かった以上最低限は可能よ。…ごめんなさい。あなたには無理をさせてしまったわね。』

 

クロノアは事態を説明した後、タイムパトローラーに謝罪する。

 

「いいや、気にする事はねぇさ。界王神様。俺は強え奴と戦えて満足だったからよ!」

 

その言葉に陽気な声で返答するタイムパトローラー。

その声にクロノアは時の巣で破顔し、改めて感謝を告げる。

 

『ふふっ…あなたは変わらないわね…ほんとサイヤ人ってこんなのしかいないのかしら!ふふふ!!ありがとう!』

 

「おう!」

 

「それで?キサマはトワとやらが歴史改変をした時にまた現れるのか。」

 

ベジータがそう質問すればタイムパトローラーは是と答える。

 

「トワ…そしてミラか。俺たちも注意するに越した事は無いな。」

 

ピッコロは、戦いの後だというのに警戒心を高め更なる修行を決心する。

 

『じゃあ、私はもう戻るわ。…バイバイ!』

 

そういってクロノアは、念話を終了して

 

「さーて!今日も頑張りましょう!」

 

いつものようなにこやかな笑顔で刻蔵庫へと戻って行った。

 

 

一方、その頃フリーザは。

 

「それで、私に何のようで?」

 

「ふふーん!フリーザ、君を僕の手下にしてやるよぉ〜!」

 

「喜べ、貴様も暗黒魔界の王であるダーブラ様とともに偉大なる魔術師であるバビディ様の手下となるのだ。光栄に思うが良い。」

 

「生憎と私には先用がありまして…退きなさい。1度しか言いませんよ?」

 

ある惑星への出発準備中思わぬ来客と対立していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・この本作での歴史設定。
原作を下地に本作というテクスチャが貼られている感じ。
特異点であるフリーザ様がやった事が正規の歴史となる以外は人選、人数、死亡数問わずほぼ原作と同じように進行していく。
例としてはナメック星でのクウラ戦。
超サイヤ人に悟空が覚醒し、ナメック星のドラゴンボールで皆が地球に送られて、フリーザの立ち位置となったクウラが一時的とはいえ死に、ナメック星が崩壊する事が歴史成立の条件。
その事さえ崩さなければ介入が割と自由にできる。

正直言って作者の脳ではこれが限界ですので、お許し下さい!

・クロノア
胸のつっかえが取れて、心機一転。

・タイムパトローラー
ようやく喋れるように。
因みに、ちゃんと元ネタがある。

・ベジータ
「俺は…まだ、戦う。」

・ピッコロ
地球の守護により一層力を入れる事を決意。

・フリーザ
急に出てきた雑魚に手下になれと言われた。

・謎のチビB
ある者復活の為の犠牲に選んだ。

・ダーブラ
暗黒魔界の王、実は洗脳前の方が強いとの噂。





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魔の復活

今話、グロ描写に注意を


…ある魔術師とダーブラが現れてからわずか数分。

 

「カ…カ……。」

 

「ば、馬鹿な……暗黒魔界の王であるこの私が……!?」

 

「くわぁあ……まさかここまで弱いくせに私に挑むとは…新手のお馬鹿さんでしたか。」

 

そこには胴体が真っ二つの魔術師バビディと両足の骨が砕かれ右手が石になって地面に這い蹲るダーブラの姿を見下し、欠伸をするフリーザの姿。

 

何故こうなったかなどは最早問うまでもないだろう。

ただの実力の差である。

バビディの魔術は通じず、ダーブラの石化の唾は風圧で返された挙句、並の戦士ならば細切れになるであろう剣舞すらノーガードの薄い気のバリアで止められる始末。

逆にフリーザからしてみれば微生物が少しやる気を出してちょっかいをかけにきた程度にすぎ無い。

…仮にもこれが1つの世界の王なのかと思うと涙が出てくるが魔界の弱体化も著しい為これも仕方ないのだろうか。

 

これならば、ターレスどころかギニュー以下。

こんな無様な姿を見せられても不快でしかないフリーザはダーブラのMと書かれた額に人差し指を突き立て気を集め始める。

 

「さて、私に楯突くという事はそれ相応の覚悟があったという事。…では。」

 

そして、フリーザはその気を放とうとして。

 

「…やめなさい。」

 

「……ト、トワ…か?」

 

その手に震えるトワの両手が重なる。フリーザが彼女を見ればその目には僅かな恐怖があった。

…それは恐らく、今正に家族を喪うかもしれなかったという恐怖からなのだろう。

背後にはミラが臨戦態勢で待機しており、トワかダーブラがやられればすぐ様フリーザに襲いかかる事は明確であるが

フリーザはそれを鼻で笑う。

 

トワは多少非難の視線を含みながらフリーザを咎める。

 

「あなたは知っていた筈よね…暗黒魔界の王であるダーブラ…いえ、お兄様の事を。」

 

「ええ、勿論。ですが、それは私との契約の外の話です。ダーブラさんがあなたの兄君だろうと私に楯突く者を生かしておく訳にはいきません。」

 

「……じゃあ、これなら?」

 

トワはフリーザから手を離し、杖を振る。

すると、ダーブラの傷は瞬く間に修復され額にあったMの文字が消失する。

 

「ア、アア……!!お、おまえ…!よ、よくも!よくも僕のダーブラ…」

 

「お黙りなさい。」

 

「ケペ!!!」

 

魔術を解除されたバビディはしぶといながらもトワに抗議するものの

その声を耳障りと断じたフリーザが拳を握ればバビディはその場で爆散する。

 

程なくしてダーブラは先程とは多少なりともましな戦闘力をたぎらせ立ち上がる。

 

「……よくも…よくも!!この暗黒魔界の王であるこの私を……!!あの蛆虫風情があぁ!!」

 

その暗黒の気が辺りを覆うが、その程度の実力ならば今更この惑星フリーザの地面に傷1つも付かない、これでは実力としては雑魚当然。

そんな怒りに震えるダーブラを反対に冷めた目で見るフリーザ。

だが、これでフリーザはダーブラに、ダーブラはフリーザに手出しが出来なくなった。

 

「……なるほど、洗脳を解く事であなたたちの王…つまりはあなたたちの仲間として扱われる為私は手出しが出来なくなる…良いでしょう。どうせ、雑魚に変わりありませんので。ですが、次は…殺しますよ?」

 

フリーザはやれやれといった様子で首を振るが、最後に気を僅かながら解放し

その場の気の重さでトワ、ミラそしてダーブラが跪く。

それにフリーザは意外そうな表情で大げさに驚き、改めてダーブラに尋ねる。

 

「おや、申し訳ありません。まさかこの程度とは…それで、バビディとやらが言っていた地球にいる魔人ブウの封印はどうするのです?」

 

ダーブラは冷や汗を流しながらも立ち上がり告げる。

 

「…復活はさせる。奴の思惑に乗るのは癪だが、奴の父親が創り出した魔人ブウの存在は我が暗黒魔界の復興に必要な戦力。手放すわけにはいかん。」

 

「ええ、それが良いと思うわお兄様。先ずはキリを集め、力を取り戻しそれから地球へ向かうとしましょう。」

 

「うむ…そうしよう。…借りは必ず返すぞ、フリーザよ。」

 

ダーブラはフリーザを睨みつけ、そのままトワとミラとともに姿を消す。

 

残ったのはバビディの残骸だが、フリーザはそれを塵も残さず消し去り

今回の目的であるボージャックの気を探知し瞬間移動。

今回はボージャックの目の前に立ち、にこやかに殺害宣言を下す。

 

 

「何者だ…!貴様は。」

 

「そうですねぇ…あなたが邪魔なので始末しに来た人物。とだけ覚えておけば結構です。」

 

フリーザにとってボージャックはターレスと同系統の存在である事は事前に知ってはいたものの、ターレスは自らを知っていたが故に統治していた星以外を

苗床にしていた分大人しく、強い奴を求めるサイヤ人ともあってか制御するのは容易かった。

 

しかし、ボージャックは数百年も前に界王達によって封印された存在。

当然、自らの存在を知っている筈も無く、せっかく王手をかけかけている

宇宙統治を邪魔する事は明確。

ボージャック自身も傲慢さの塊であり、例え部下にしたとしてもいずれ何処かで暗躍し、裏切る事は間違いないと判断したフリーザはヘラー一族の排除を

決断し、今に至る。

 

「ふん!いきなり出てきて大口を叩く奴だ!ブージン!ビドー!ザンギャ!ゴクア!」

 

そんな事は知る筈もないヘラー一族の頭領であるボージャック

いきなり現れ自身の殺害などという不遜にも等しい言葉を吐いたこの愚か者を鼻で笑い。

僅かに後方へ下がったのち自らの部下を差し向け、殺害を命じる。

 

それに従いブージンとビドーはそのままフリーザの横へと降り立ち何重にも張り巡らせるようにして作られるサイコスレッドという操り糸を展開し、フリーザを締め上げる。

 

が、フリーザはなんて事はない様子で悠然とボージャックの元へと歩いていき

その途中でハエでも払うような仕草で軽く撫であげれば糸は容易く霧散する。

 

「なっ!!?……ちぃ!!」

 

「はぁぁ!!」

 

その事実に驚愕するザンギャとゴクアであったが直ぐさま持ち直しフリーザへと襲いかかる。

しかし。

 

「…あぁ、言い忘れてましたが。」

 

フリーザにその攻撃が当たろうとした瞬間。

ザンギャは足が、ゴクアは剣を持っていた両腕が千切れ空を舞う。

 

「いやぁぁぁ!!?」

 

「ぎゃぁぉぁぁぉ!!?」

 

「私に触れる時はご注意を。」

 

地面を転がり絶叫している2人の血により周りが赤に染まった事で

フリーザが自身の周りに極細の気の糸を張り巡らせていた事に3人は気付く。

 

だが、時すでに遅し。

ブージンとビドーの胴体にはフリーザが仕掛けた糸が張り巡らせており

フリーザが指を軽く曲げれば、2人の胴体は下半身と永遠の別れを告げる。

 

その突然の激痛に耐えきれずに2人は気絶。

いかに使えん部下とはいえ余りにも早い殲滅にボージャックの警戒度は最大に高まる。

 

「ッ…!!ウオオオオ!!」

 

ボージャックの雄叫びと共に上半身の服は千切れ飛び、皮膚は青から黄緑へと変色し、戦闘力が格段に上昇するもフリーザにとっては蟻二匹分のようなもの

ボージャックの繰り出す豪腕を指一本で簡単に受け止め

そのまま、顎を軽く蹴り上げる。

 

「オゴッ!!!?……ゴ……ガ……!!」

 

それだけでボージャックの顎は粉々に粉砕され口は開いたまま閉じなくなり

話す事すらままならなくなり、更に脳が揺れた事によりそのまま地面に両膝をついてしまう。

フリーザはそのままボージャックの前に立ち、気の糸をボージャックの指の一つ一つに引っ掛けていく。

これから行われるのは、フリーザにとって八つ当たりに過ぎないが

ボージャックにはとって死んだ方がマシとさえ思える地獄の幕開けだった。

 

「今、私はすこーし気が立っていまして…あなたには憂さ晴らしになって頂きますが…構いませんね?」

 

「アァ??」

 

フリーザが問いかけるも顎が砕かれた事により喋る事すら出来ないボージャックには返事が出来るはずもなく。

 

「では…先ずは小指から。」

 

フリーザを無表情のままボージャックの手と足の指を全て切断し

次に腕と足をまるで肉をカットしているかのように均等に少しずつ指で

切り分けていく。

 

「アアアァァ!!?オオオォォ!!?」

 

切られてはその断面と肉塊を見せられながら徐々に己の腕と足が失われていく恐怖と激痛を味わっていくボージャック。

その行為は数分かけ行われ所謂、達磨状態になったボージャックを更なる恐怖が襲う。

 

先ず、目玉を直に片方ずつえぐり取られていく。

絹を裂くような絶叫を挙げる頭領に不幸な事に意識が残っていたザンギャとゴクアは顔面蒼白となり吐きそうになりながらもその場から一歩も動けずにいた。

そうこうしている間にボージャックの目があった場所には空洞が出来、視覚が完全に失われていった。

次にフリーザが狙ったのは鼻。

鼻の根元から糸で切り裂き、ボージャックの下には鼻らしきものが落ちていく。

 

そして、最後に聴覚だけが残ったボージャックは

 

「あぁ、そうそう…あなた、お菓子は好きですか?」

 

最大限に過敏になった聴覚で心が完全に折れる音とフリーザの底冷えするような声を聞きながらそのまま意識は深い闇に沈んでいった。

そして、半分になり血の海に沈んだ2人と恐怖に耐えきれずに気絶した2人はフリーザが一見して指を指して何かをして。

その星から立ち去った時には彼等の痕跡は星から姿を消していた。

 

♠︎

 

フリーザはそれからの7年を主に部下の教育に使用する。

ブロリーの大猿の気のコントロールとその応用やターレスの更なる進化といったサイヤ人の能力の更なる発展。

ギニューやスラッグを始めとする幹部勢には大きくなったフリーザ軍を更に強大にする為の手本となってもらう為フリーザ直々の戦闘力の向上を図り。

 

ツフルと暗黒魔界の技術を組み合わせた新たな科学の可能性をビッグゲテスターと模索し。

肥大化し大きな態度を取り始める取引相手を間引き、改めて警告を発し。

 

「……ハァ!!」

 

その合間にビッグゲテスターの立ち入りを禁止した上でゴールデン化の新たなる可能性を模索していた。

 

というのも、ボージャックを排除してから5年。

フリーザは自らの戦闘力の伸び悩みを感じていた。

 

「ふむ…そろそろメタルフリーザとの訓練にも限界が来てしまいましたか…。」

 

フリーザの肉体は新たな変化を欲している。

それは、フリーザにも充分わかっていた。

 

そろそろ、ゴールデン化にプラスになる新たな力を模索するべきなのか。

それともこのままゴールデン化を極めるべきか。

 

フリーザに新たな転機が訪れようとしていた。

 

そして、セルの戦いから7年後の地球にて。

 

地球にダーブラ達魔族が上陸した事により

この宇宙に新たな騒動が巻き起こされようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・フリーザ
成長が停滞気味になっている事に焦りを覚える。

・ヘラー一族
フリーザの抹殺対象に見事にノミネート。
無残な死を……遂げたはず。

・暗黒魔界軍
力を溜めて地球へ。
暗黒魔界の為、魔人ブウの確保を図る。

・フリーザ軍のサイヤ人
新たなる領域へ。

・地球軍
ボージャック達が来なかった為、妨害無く天下一大武道会が開幕。
トランクスは未来に帰った為無出場だったが、代わりにベジータが出場。
決勝はベジータ対悟飯の勝負となり白熱した戦いだったそう。



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暗黒魔界軍襲来

セルとの戦いから7年。

世間一般ではセルを倒したのはMr.サタン…という事になっている

地球では第25回目となる天下一武道会の開催に伴い

あの世から1日だけ帰ってくる悟空が参戦。

 

ベジータがパンチングマシーンを木っ端微塵にしてしまうアクシデントがあったもののかつてセルと戦った地球の戦士達は続々と予選を通過。

 

だが、突如現れたシンと呼ばれる界王神とそれに従うキビトという付き人が現れ魔人ブウの復活の阻止と暗黒魔界の王ダーブラの侵略を防ぐ事を地球の戦士達の中でも特に強い悟空やベジータ、悟飯とピッコロに懇願。

 

悟空と特にベジータはその協力を渋ったものの。

悟空は復活した魔人ブウが地球にどんな被害をもたらすのかを聞かされるとそれならばと参戦。

ベジータはこの騒動が終わった直後に悟空との対戦を約束し面倒ながらも

参戦した。

 

その瞬間、少し武道会場から離れた所で宇宙船が着陸。

悟空達はその禍々しい気こそがダーブラ達暗黒魔界の気であると確信し

すぐさま宇宙船の元へと急行する。

 

着いた先には既にタイムパトローラーが既に待機しており

4人を見て、軽快な挨拶を告げる。

 

「おう!遅かったなぁ!」

 

界王神はダーブラの仲間と身構え、悟空はどこかで見た事があるような顔に首を傾げ、ピッコロやベジータは約7年ぶりの再会を果たした彼がいるその意味を知る。

 

「あれ?おめぇ…どっかで会ったか?」

 

「…いいや?初対面だぜ。俺はタイムパトローラー…って長ぇな。

まぁ、パトローラーとでも呼んでくれ。」

 

「パトローラー…?ま、良いや!宜しくな!」

 

悟空は呑気に返事を返すがベジータは真剣な表情で尋ねる。

 

「…おい、貴様がいるという事は。」

 

「あぁ…トワとミラがこの時代に来ているって訳だ…そこにな。」

 

タイムパトローラーが指差すのはダーブラが乗っているであろう宇宙船。

 

「どうやら、トワってダーブラの妹みてぇでよ。バビディだかビビディだか

わかんねー奴ぶっ殺して、魔人ブウの復活を目論んでるらしい。んで、そこで俺が出張ってきたってわけだ。トワとミラの相手は俺がするんであんた達は…。」

 

タイムパトローラーが次の答えを述べようとした瞬間、宇宙船の上部ハッチが

吹っ飛ばされる。

そこから立ち込めるのはピンク色の蒸気、それはやがて空で結合し混ざり合い。

 

「ブゥー!!」

 

「あー……ダーブラとブウの相手を頼む。」

 

…陽気な声と共に魔人ブウが復活する。

 

というのもこの世界は地盤が緩いため、キリが集まりやすいという特徴があり

また、その影響で歴史改変も割り込みがしやすい事もあり

魔人ブウの復活にエネルギーは戦闘によるキリ回収を為さずとも

トワの魔術と元々乗船していたプイプイやヤコンやらを死体にする事で起こる僅かな歴史改変で十分な量が集まってしまったのだ。

 

そして、ブウの壊したハッチからダーブラ、トワ、ミラが浮上してくる。

 

「ここが地球…中々良い星ではないか。」

 

「ええ、そしてあそこにいる戦士なら暗黒魔界復活の為のキリが沢山手に入るわ。…あぁ、でも忌々しいタイムパトローラーまで。ミラ、頼むわよ。」

 

「あぁ。」

 

トワの指示を受け、ミラが拳を突き出すもタイムパトローラーはその手首を掴んでそのまま急上昇。

 

「そういう事で頼むぜーー!!」

 

「は、離せ……!!」

 

「…ミラ!」

 

トワとミラがその場から離脱し、戦士達の前に立つのはダーブラとそこらかしこをふらつく魔人ブウ。

 

「あ、あぁ……!!な、なんて事だ。ま、魔人ブウが復活してしまうなんて…!!」

 

せっかく封印していた最悪の存在が解き放たれしまった事に絶望する

界王神とキビト。

だが、悟空やベジータがそんな界王神を無視し、魔人ブウが放つその気の大きさに笑みを浮かべて彼の元へと歩いていく様子を見て唖然とする。

 

「おい、ベジータ。先ずはオラからやらせてくれよ!」

 

「ふざけるな!俺はせっかくのチャンスを潰されて気が立ってるんだ!先に貴様から始末してやっても構わないんだぞ!」

 

「オラだ!」

 

「俺だ!」

 

口論はデットヒートし、彼らは魔人ブウの目の前に立ってもなおいがみ合い続ける。

その様子をブウは不思議そうに見つめ、ダーブラは呆れ、悟飯とピッコロは

なんだか恥ずかしい気持ちにさせられた。

 

「な、なんなのだコイツらは…?」

 

「なんだ?お前たちブウと遊びたいのか?」

 

「…父さん…。」

 

「…あの馬鹿どもめ…!!」

 

 

そんなお馬鹿なサイヤ人達を見ていた界王神は。

 

「なんなんですか…彼らは。」

 

なんだか、考えるのが馬鹿らしくなっていた。

 

そんな中ブウは不思議そうな様子から一転、この2人が自身と遊んでくれると

童心ながらに気付き、嬉しそうにその場をぐるぐると回る。

悟空とベジータは先程の自分達の行動を棚に放り投げ

突飛な行動を取り始めた魔人ブウに驚く。

 

「な、なんだ…?どうしちまったんだ?」

 

「知らん…変な野郎だぜ。」

 

ブウはそのまま踊り続けた後停止。

 

「それじゃあ遊ぶぞ!よーいどん!!」

 

掛け声と共に悟空とベジータを殴り飛ばし、そのまま無邪気に笑いながら追いかけていく。

予想外な攻撃を受け数十メートル先の岩場まで飛ばされた悟空とベジータは地面に激突する前に空中で受け身を取りそのまま今の全力である超サイヤ人2に変身し、ブウへと突撃。

 

突進と共にベジータの蹴りと悟空のパンチが炸裂するもまるでゴムのように弾かれ、ブウを吹っ飛ばすどころか逆に悟空達が弾かれていく。

 

「なっ……!」

 

「ふふーん!効かないもんねー!」

 

そういって、地面に降り立つ魔人ブウは無邪気な子どものようにただ楽しそうにスキップしながら悟空達へと迫る。

 

「…カカロット。」

 

「……あぁ、わかってっさ。」

 

ブウの腹の中に底知れぬ何かを感じ取った悟空達は真剣な表情に変わり

互いに目線を交わし構えの体勢に入る。

 

「ほほーい!!」

 

「でりゃあぁぁぁ!!」

 

「はぁぁぁ!!」

 

そして今再びブウと悟空達の拳がぶつかり合い、地面がひび割れ

無邪気な魔人と2人のサイヤ人の戦いの幕が上がった。

 

♠︎

悟空とベジータが魔人ブウと戦闘を開始する前の宇宙船跡にて。

ピッコロと悟飯はダーブラとの戦闘を開始していた。

 

「ぬぅ…!!」

 

「うわったぁ!!」

 

「だりゃぁ!!」

 

ピッコロのサマーソルトキックを両手で受け止めれば悟飯のブローが差し込まれ無防備となったダーブラの腹にもろに直撃し、ダメージを与える。

 

 

「おごっ……!!おのれぇ!!」

 

2人の息のあった連携は戦場を支配しつつあったが

悟飯がダーブラがよろめいた隙に接近してきたその瞬間ダーブラはニヤリと笑う。

 

「……フッ…ペッ!」

 

ダーブラの吐いた唾が、悟飯の手袋に直撃

みるみる内に手袋が石化する様子を見た悟飯は急いで手袋を外し

今の情報をピッコロへと伝える。

 

「ピッコロさん!」

 

「あぁ、どうやら奴の唾は石化させる能力があるようだが…タネが分かれば恐れる事は無い!行くぞ!悟飯!」

 

「はい!はぁぁぁ!!」

 

悟飯はこの7年間勉学に集中していた事もあり戦力はセルの時よりも大幅に

衰えているが、そこはピッコロがきちんと補える程に成長しており

そんな2人が気を解放すれば、ダーブラとの戦力差にて上を行く事ができる。

 

だが、ダーブラとて暗黒魔界の王としての実力は確か。

ピッコロが放つ気弾を弾き、悟飯のラッシュを軽々と躱しつつ攻撃を加えていくさまは正に王に相応しいともいえる。

 

悟飯とピッコロが挟み撃ちにして行う攻撃を弾き、躱し、時には反撃する。

そこからおこる気の奔流は地面を砕き、雲を消し去る。

 

「悟飯!」

 

ピッコロはそんな中いきなり攻撃をやめ、そのまま離脱。

悟飯はその意図を察し、再びダーブラへと攻撃を再開する。

 

しかし、長らく戦いの場から離れていた悟飯には戦いのセンスというものが

鈍っているのは自らも自覚済み。

ダーブラが繰り出す剣戟を何とか避けつつ、時間稼ぎに徹底する。

 

ダーブラも自らの剣が当たらない事に苛立ちを覚え、その速度を増していく。

そうなると悟飯の肌に僅かながら裂傷が見え始め、動きが鈍くなり避けていくのが困難になっていく。

 

「フハハ!!どうした!?貴様の力はそんなものか!」

 

「くっ…!!」

 

そして、遂にダーブラの剣が悟飯の隙をついて背中へと回り脚の腱を切断。

痛みに悟飯が怯んだ瞬間にダーブラは悟飯の顔を掴んで空中へと急降下

そのまま地面へと叩きつける。

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

地面に叩きつけられ脳を揺らされ、脚の腱が切断された

悟飯は立ち上がろうとするも体が言う事を聞かず

勝利を確信したダーブラは悟飯を見下しながら手にエネルギーを集め

 

「死ねぇ!」

 

悟飯をエネルギー波が襲おうとしたその時。

 

ーーダーブラの心臓を光弾が貫通する。

 

貫かれたダーブラは一瞬何をされたのかわからずにエネルギーが霧散した手で潰された心臓があった場所を触る。

そして、自らが心臓を貫かれたのを察し。

 

「…………ごぽっ!」

 

そのまま口から大量に吐血し、倒れこむ。

 

「…魔貫光殺砲。」

 

ダーブラが倒れ、悟飯が見えたのは最大限に気を溜め終わり殺傷力を極限に高めた一撃を放ったピッコロの姿。

 

ピッコロはそのまま、悟飯へと近寄りそのまま体を起こしてやる。

 

「大丈夫か。」

 

「す、すみません、ありがとうございます。」

 

そして、ダーブラが完全に死亡している事を確認し、未だ戦っている悟空達の

所に向かおうとした時。

 

「おやおや…これで契約もおしまいですか…ま、いい契約でしたよ。」

 

背後から声がし、ピッコロと悟飯はゆっくりと振り向く。

 

そこには、血塗れのキビトと傷だらけの界王神が倒れ臥す姿。

 

「なっ……!!」

 

「界王神様っ!」

 

「まぁ、これでも雑魚は雑魚なりに頑張った方です。界王神とやらもダーブラさんもね。」

 

今度は前方から声が聞こえ、2人は前を向き直す。

 

そこにはーー絶望が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





紹介コーナー

・悟空、ベジータ
喧嘩しながら魔人ブウ戦。

・悟飯、ピッコロ
負けイベ突入。

・ダーブラ
死亡確認。

・タイムパトローラー
また次回。トワ、ミラも。

・界王神
気絶

・キビト
瀕死

・フリーザ
預け物と拾い物をしに来た。


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戯れ

フリーザが悟飯とピッコロの前に現れる数分前。

 

上空で拳がぶつかり合う。

 

「はぁぁ!!」

 

「おぉぉ!!」

 

お互いの頬に直撃しようが、蹴りが腹に突き刺さろうが、気弾が直撃しようが

互いの方から手を離す事をしない。

超サイヤ人2になったタイムパトローラーと最強の兵士たりえるミラの

戦い…否、意地の張り合いは衝撃で空は裂け、近くにいるトワが目を開けられないほど凄まじいものであった。

 

拳を出せば拳が返され、膝を出せば同じく膝が返される。

血を吐き捨て、骨が砕け散らし。されども本能絶ゆる事なし。

タイムパトローラーは獰猛な笑みを絶やさず嗤う。

それはまるで、極限まで飢えた獣。

 

「へへ……!そうこなくちゃあなぁ!!」

 

「俺が……俺が最強だ……邪魔をするなぁ!!」

 

対するミラが抱くのは怒り。

ミラはここまでの歴史改変の中で大量にキリを吸収し力を高めてきた。

創造主の命に従い、ずっと。

自分はそうあれと産み落とされたモノ。

故に自分の最強は揺るがぬモノ…だと思っていた。

 

だが、現実はどうだ?

自身の前に現れたのは遥かなる壁。

帝王という名の絶対。

そして、今この瞬間ですら幾度となく打ち倒してきた雑魚ですら

僅かな時で自分に拮抗する力を手にしている。

 

ーー赦さない。赦してはいけない!

 

俺は最強なのだ!誰よりも!何よりも!

 

怒りの業火はそのまま気の増大に直結し今も燃え盛る。

ならば、ミラの戦闘力の方がタイムパトローラーの上を行く…そのはずなのだ。

互いに全力で殴り合い、ようやくお互いの肩から抑えてつけられていた双方の

手が離れる。

 

「何故だ……!!何故貴様はそこまでの力を手に出来た…!!」

 

「当然だ!俺はお前より強え!」

 

「ふざけるなぁぁ!!」

 

あのサイヤ人から感じるのは絶対的な自信。

己の力をほんの少しも疑っていない。

その顔が、その笑みが憎い。感情の噴出が収まらない。

やめろ、その笑みは。

 

そばで見ていたトワはミラの感情値の異常な上昇を確認し

何度もミラに語りかける。

だが、もうトワに彼は止められない。

何故ならトワは何度もミラから奪ってきた故に。

 

「俺は……俺は!!」

 

ミラは頭を掻き毟り、その気は青黒く染まっていく。

極悪化。かつてトワが合体13号に与えたそれをミラは自力でやってのける。

だが、その負担は尋常ではない。

ミラのいまだ未完成の肉体では急激な上昇を受け止められる器は無い。

 

「やめなさい!やめて!ミラ!!」

 

いたる数値がオーバーフローを起こし、このままではミラが自滅すると判断したトワはもうなりふり構わない。

ミラの真正面に立ち、ミラを抑えんとするが。

 

「邪魔を…するなぁぁぁぁ!!」

 

暴走するミラには最早創造主たるトワの言葉は聞こえない。

真正面の邪魔者にもう加減すら出来なくなったエネルギー波を放つ。

 

「いやぁぁぁ!!!???」

 

予期せぬ攻撃に魔術で避難も防御も出来ぬまま、トワの肉体は高熱のエネルギー波により黒焦げになり、その生命活動を停止。

そのまま、真下の海へと物言わぬ骸となって落下していく。

 

「オ、オオオオオ!!!」

 

トワの野望も暗黒魔界も自分の産まれた意味すら最早忘却の彼方に消え

吠えるだけの理性のない猛獣は己の誇りと憎悪を以って

タイムパトローラーに迫る。

 

「…いいぜ、ならこっちもフルパワーだ!!」

 

サイヤの直感でもうミラの身体が限界を超えているのを察した

タイムパトローラーは自らの全力を解放していく。

 

「ハァァァァァ!!!!」

 

眉が消え、髪は長くなり、黄金の気は更にその純度を増す。

これこそが超サイヤ人の最大。

理屈を抜きにした正真正銘の全力にして究極。

 

「これが…超サイヤ人3だぁ!!!」

 

黄金と青黒の気がその荒々しさを滾らせぶつかり合って弾ける。

ミラの脇腹には拳で貫かれた痕ができ、タイムパトローラーは肋骨が数本粉砕する音がする。

 

「ぐぅぅぅ!!」

 

痛みすら怒りでかき消したミラはそのまま全力のエネルギー波を放ち

その腕は焼き切れる。

 

だが、それをタイムパトローラーは避け。

 

「これで終わりだぁぁぁぁ!!!」

 

黄金の気をその掌に滾らせ、ミラに向けて放つ!

これが彼の全力全開な技。

ただ、気を溜めて放つ。

それだけの単純で簡単な技は、彼から離れるごとにその威力を、大きさを

増しミラへと直撃。

 

「ぐ ぐぉぁぁぁぁぁ!!!」

 

ミラという存在を構成していたものが気で焼き切れる感覚を味わいながらも

ミラは最後の最後まで彼を睨み、そして…

 

(俺は……貴様と戦いたかった………!!!)

 

結局、その命が尽きるまで戦いの望みが許さなかった『最強』を幻視した。

 

消え去るミラを最期まで見つめるタイムパトローラー。

だが、爆炎の先に彼が見たのは塵芥のミラではなく。

 

「はぁ……やれやれ死にましたか。」

 

「なっ…!!てめぇは…!!」

 

 

その先に映る何かを一瞬捉え、超サイヤ人3に再度変身。

迎撃を取ろうとし。

 

「ふむ。」

 

まるで空気の割れたような音と共にタイムパトローラーの身体はその自由を失い海へと落下していく。

 

(え…?おれ、いったい……?)

 

背中の感覚が消失した事に痛みよりも先に困惑を覚えたタイムパトローラーは

そのまま意識を暗転させた。

 

それを見下ろし、彼…否、フリーザはダーブラの気が急激に低下した事を察知し、契約終了を確認する為瞬間移動した。

 

♠︎

 

そして現在。

 

「バ、バケモノめ……!!」

 

「失礼な、あなたが弱すぎるだけですよ。」

 

悟飯を出来るだけ離れさせ、たったひとりでフリーザに立ち向かうピッコロ

だったが、フリーザを一歩も動かす事すら叶わないどころかフリーザは一度たりとも攻撃を回避しないにも関わらず無傷。

 

足元が崩れ去るような感覚を味わいながらもピッコロは構えを解かず、フリーザを睨み続ける。

その殺意による爆風をフリーザは手を払うだけで消しとばし。

 

「そら。」

 

ピッコロが全く反応できない速さで背後に廻り、そのまま軽く裏拳でピッコロの後頭部を撃つ。

 

「がっ……!!」

 

頭蓋骨がミシリとヒビが入る音と共にピッコロは地面に崩れ落ちる。

 

「ピッコロさん!!……お前ぇぇぇぇ!!フリーザァァァァ!!」

 

「やれやれ、うるさいお猿さんです。」

 

倒れゆくピッコロを見た悟飯の怒りが爆発し、フリーザの背後へ高速移動。

ピッコロに当たらないように上空に向け全力のかめはめ波を放つ。

 

だが、そのかめはめ波の中をフリーザは物ともせずにその中を歩いていき

そのまま悟飯の首を掴んで胴体にエネルギー波。

 

「うわぁぁぁぁ!!!!!」

 

気の奔流に飲み込まれながら悟飯は吹き飛ばされていき

数100M離れた所で小規模の爆発。

悟飯は全身を気の灼熱で焼かれそのまま気絶する。

 

フリーザはその様子を欠伸をしながら見つめ次はある場所へ移動。

 

『な、なんだ……!!なんなのだ貴様……ha…』

 

雪の溪谷、太陽すら溶かせない永久氷壁を容易く砕き

眠っていたDr.ウィローの生命維持をしている機械をハッキング。

ビッグゲテスターがすぐ様ウィローの脳を解析し、改造。データを転写。

そのままその施設をまるごとビッグゲテスターの仮のラボへと作り変えていく。

 

そして、トワの魔術の技術を利用し旧ゲロの研究室とここの空間を接続。

コフィンや重要なコンピュータなどの機器をそのラボへと移していき

今までよりも作業効率が格段に上昇した事がデータとして表示されたのを確認しゲロの研究室を内部から爆破解体し、空間を閉じる。

フリーザはそれを確認した後地上へ浮上し、念力でその氷壁を戻していく。

 

「…これで、私たちの研究は誰にも確認は出来ないでしょう。」

 

フリーザは地球での用事は全て終了したのを確認し、後の研究をビッグゲテスターへと任せ惑星フリーザへと帰還。

 

コルド襲来時から変わらず稼働しているスパイロボへ接続し魔人ブウと悟空、ベジータの戦いをブロリーの星で取れた葡萄を使ったワインを嗜みながら見つめるのだった。

 

♠︎

 

悟空とベジータは魔人ブウとの戦いの中でその気の流れを感じてはいたものの

 

「ほほーい!!」

 

一向にダメージが与えられない上に向こうからは猛威を振るわれていき

その身が満身創痍の状態ではろくに気を探る暇すらない。

 

「はぁ…はぁ……。」

 

「く、くそ…不死身か奴は……?」

 

いくら強い奴が好きなサイヤ人でも致命傷を何度も与えても復活してくる

敵には流石にお手上げという他なく、疲れによりどんどん気が減っていく。

 

「ふ〜ん、ふんふ〜ん。」

 

しかし、ブウにとってこれはただの遊戯に過ぎず、それも楽しくなってきたようでテンションが上がるごとに動きは更に加速し、攻撃も過激化していく。

そんな中、何かを決断したベジータは悟空へと尋ねる。

 

「……おい、カカロット。何故貴様は力を温存してやがる。」

 

「…バレてたんか?」

 

「…やはりか。くそったれ…!!貴様はやはり気に食わん…気に食わんが理由は聞いてやる。」

 

「……オラの超サイヤ人3は変身した後のその膨大なパワーのせいでこの世に留まれる時間が大幅に減っちまうんだ。…多分、今やったらオラがいれるのは

ほんのちょっとしか残んねぇ…。」

 

超サイヤ人の新たな領域がある事を知ったベジータはその領域にいる悟空に未だに追いつけない事にイラつくも直ぐに次の質問にうつる。

 

「……ちっ。ならどうする。このままだと俺たちは全滅だぞ。」

 

悟空は思案する顔になるも何かを思いつく。

 

「フュージョンなら…けど、オラ達に今出来る時間はねぇし…。」

 

「…そのフュージョンとやらは知らんが、聞いてやる…それは打開策になるか?」

 

「…あぁ、フュージョンならあいつにだってぜってぇ負けねぇ。」

 

悟空の確信をもった表情にベジータは覚悟を決める。

……己の命を捨てる覚悟を。

 

「カカロット…仙豆はあるか。」

 

「仙豆…あったぞ!一個だけんど残ってたぞ!!これで…。」

 

悟空が仙豆を探し出し、見つけた瞬間。

 

「ふん!」

 

ベジータが背後から強襲。悟空はそのまま気絶してしまう。

 

「馬鹿が…貴様は一度死んだ身だ。その状態でもう一度死ねばどうなるかわからん程馬鹿では無いはずだ。」

 

ベジータは仙豆を拾って食べ、気を全快させそのまま悟空を遠くへと全力で放り投げる。

 

ブウはその後を追いかけようとするが

ベジータがそれに立ち塞がり、罵倒する。

 

「貴様の相手はこのベジータ様だ!この醜いフーセン野郎!!」

 

ブウはその言葉の意味は分からずとも目の前の存在が自分を侮辱していた事は

なんとなく理解できた。

怒りによりブウから蒸気のようなものが吹き出し、ベジータへと突撃する。

 

「怒ったもんねーー!殺しちゃおーー!!」

 

だが、突撃するブウを何者かが横から強襲する。

蹴り飛ばされたブウはそのまま地面を跳ねまわりながら岩場へと激突。

 

「パパ!!」

 

「おじさん!!」

 

現れたのはトランクスと悟天。

天下一武道会会場から大きな気のぶつかり合いを感じた彼らは魔人ブウみたさにこの場所に向かおうとしたものの、悟飯の気の消失や父であるベジータと悟空の気の減り方からただ事では無い事を感じとり、先ずピッコロを起こした後直ぐ様ベジータの元へとたどり着いたのだ。

 

だが、ベジータは既に覚悟を決めた身。

近づいてきたトランクスと悟天に厳しく伝える。

 

「お前達はさっさとここから立ち去れ…魔人ブウとは俺1人で戦う。」

 

その言葉にトランクスと悟天は反発するも、ベジータは聞き入れる事は無く

岩場から出てくるブウを見つめ、そして目を閉じて何かを思い出し

トランクスの方へとベジータを知る者からならば考えられない優しい笑みを

浮かべる。

 

「……お前は赤ん坊の頃から一度も抱いてやった事が無かったな……抱かせてくれ。」

 

そして、ベジータはそのままトランクスを抱擁し、そのまま気絶させ

悟天には少々手荒に気絶させ、子ども達を追ってきたピッコロに預け

離脱を促す。

 

「……ピッコロ。……トランクスを頼んだ。」

 

「……わかった。」

 

ピッコロはベジータの目からこれから何をするのかを察し

その場を全速力で離脱。

 

迫り来る魔人ブウを前にして自らの気を体の内側からゆっくりと増幅させていく。

どうせ、自分は1度目。

そう思っても込み上げてくるものがベジータにはあった。

 

「貴様の殺し方がわかったぜ…ようやくな。」

 

「んん?」

 

「貴様を殺すには二度と修復できないように粉々に消しとばすことだ!!」

 

それはかつてベジータ自身が無駄だと断じたもの。

今は自分の中で一番のもの。

甘くなっていく自分を受け入れ、手にしたもの。

それこそ……

 

(さらばだ…ブルマ、トランクス、そして……カカロット。)

 

 

家族

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー


・ベジータ
守るべきものの為に。

・ミラ、トワ
ご退場。

・フリーザ
酒が不味い。

・フリーザ軍戦力ランキングベスト5

第1位、フリーザ
言わずもがなの帝王。

第2位、ブロリー
フリーザとの軽い手合わせだけでもあり得ないほどの戦闘力を獲得する
姿はまさに伝説。

第3位、ターレス
流石のサイヤ人、現在はとある事に挑戦中。

第4位、スラッグ
同化の影響と訓練により実力は折り紙つき。
なお。

第5位、ギニュー
忠誠心による努力の結果。
隊長としての威厳を保つ為日々努力の日々。





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魔神

地球では魔人ブウの脅威が続く中

宇宙ではフリーザ軍の管制班がある一般兵士の救難信号を受信。

フリーザはそれに対しギニュー特戦隊を派遣する。

 

だが、4日経ってもその星から帰還の連絡が一向に無い。

曲がりなりにも軍内でも五本指に入る実力者である彼らがたかが救助で

遅れをとる事はまずなく、忠誠心も高いので裏切りや脱走はあり得ない。

というよりもフリーザ自身彼らの気を今もなお感じられるので死亡という事も無い。

 

ならば、何故こんなにも時間をかけているのか。

多少なりの疑惑を感じ取ったフリーザは自ら向かう事を決断する。

だが。

 

「……おや?」

 

ギニューの気を辿り瞬間移動しようとしたものの、何かに阻まれたかのような

感触とともにフリーザはその星から弾き出され、宇宙空間へ放り出される。

ダメージは無いところから己を害するものではない事、瞬間移動を弾くという事は相手はこちらの手札を粗方知っている事がわかる。

 

そして、改めてその星に目を凝らしてみれば星の周りに薄い膜のようなものができており、軽く豆粒程度の気弾を当ててみればその防壁は魔法陣を展開し攻撃を防ぐ。

それはつまり魔術的要素が絡んでいるという事。

だが、暗黒魔界の者達は全滅したはず。

なのに何故……いや、見当はもうついている。

 

「出てきなさい。」

 

人差し指を立て後方を撃ち抜く。

すると背後の空間に亀裂が走り、ならない筈の音を立てて崩れ落ちていく。

 

「流石…というべきだな。フリーザ。やはり貴様を注意しておいて正解だった。」

 

中から出てきたのは杖を持った赤髪の男。

空間ごと撃ち抜いたのか心臓付近には穴が空いており、男の体にノイズが走っている事から、魔術で生み出した幻影だとわかる。

 

「何者ですか、貴方は。」

 

「私の名は魔神ドミグラ…いずれ神となりこの時空、否全てを収める男だ。」

 

「全てとは…随分と大きく出たものです。それで何故私の名を?」

 

「知れたこと。私は全てを見ていた。それだけの話だ。」

 

「そうですか…ではさようなら。」

 

フリーザがその幻影を完全に消失させようと手を翳し、ドミグラの幻影を

完全に粉砕する。

霧になりながら霧散していくドミグラは笑いながら

残った指でギニュー達がいる星を指差す。

 

『フハハ……!私の幻影を破壊した所で魔術が解けるだけだ…!そしてよぉく見てみるがいい!』

 

そして、ドミグラが消失すると星を囲んでいた膜も消え去り

その全容が明らかになる。

幾分かマシであり自然もそこそこあった星の姿が霧散し、炎に包まれた

無残な姿へと変わっていく。

 

「これは……。」

 

星に降り立ち周囲を確認すれば、負傷しているギニュー特戦隊と気絶したタピオンの姿、魔術師ホイの死体。そして既に完全体となっているヒルデガーンの姿が見える。

 

どうやらドミグラが先に宇宙を彷徨っていたホイに接触し

魔術によりオルゴールの保護を解除。

復活したタピオンに干渉してヒルデガーンを解放し、更にもう一つ魔術を

ヒルデガーンにかけ一気に完全体にさせたのだろう。

 

理由はきっと単純。

ギニュー特戦隊が思った以上に強かったせいだろう。

メタル戦士の訓練は彼らに大きな刺激を与えたようで彼らは著しく成長した。

特にギニューの成長は素晴らしく、執念というべきその血を吐くような努力により今では組織ナンバー5の戦闘力を有している。

 

しかし、彼らの真骨頂は個別の戦闘力でなく特戦隊としての連携力にある。

簡単に言えば、彼らは格上殺しであり、格下殺しなのだ。

フリーザとの訓練により何が自分達よりも上の存在へ通じるのかを見極め

そして惑星侵略により格下への油断を消した。

 

特戦隊としてならば、彼らはスラッグにも対抗しうる存在。

その実力に戯れと言わんばかりに相手したであろうドミグラは焦った。

このままでは、ヒルデガーンはあっさり殺されてしまうと。

余談だが、本来ドミグラが介入しなければ時期は違えどヒルデガーンはその羽化を果たすこと無く特戦隊により消滅していたという背景もあった。

 

そうして復活した幻魔人ヒルデガーンは、実力も格上ながら一番の難関である

幻影化を巧みに駆使してギニュー特戦隊と事態を把握出来ないながらも彼らに

加勢したタピオンを圧倒。

 

特に封印されていた恨みがあったのかタピオンを集中的に狙い、最終的に気絶させた。

ギニュー特戦隊は何とか攻撃を当てようと連携したものの攻撃が命中するのは

精々がグルドが時間停止し、攻撃している時のみ。

グルド自身は実力の限界を感じ、特戦隊の中でもサポートに回った為

そこまで強い訳では無く、主な時間停止の使い道はヒルデガーンの攻撃を避けさせたり、念力で攻撃の妨害をしたりする事しか出来ない。

勿論、何度も連続して使える訳でも無いので徐々にギニュー特戦隊は追い詰められていった。

 

…とまぁこんな所だろうと飛行中のフリーザは思考を打ち切り、ギニュー特戦隊の元へと辿り着く。

 

「フリーザ様!?」

 

「ギニュー隊長。戦況の報告を。」

 

ギニューは突然現れたフリーザに驚くもまずは言われた通りに報告する。

これまでの経緯とあのバケモノの特徴を。

 

「はっ!あのバケモノはどうやら霧になっている間は一切の攻撃が通じないようで…ですが姿を現した一瞬だけは攻撃が命中するようです。私達では実力不足で始末するには至りませんでしたが…フリーザ様は何故ここに?」

 

「あなたたちが出動してからもう4日です。流石に遅いと様子を見に来ただけだったのですが…これは仕方ないですかね。さっさと始末して帰還しましょう…ところでギニュー隊長、戦闘において一番重要なのはなんだと思いますか?」

 

フリーザは特戦隊による足止めをくらっているヒルデガーンを軽く見て

ふと思い出したかのようにギニューに尋ねる。

 

「……やはり、力でしょうか。」

 

一瞬考え込み、ギニューはそう返答する。

力を持つ。

それは戦いという場に立つ上で最も重要な物の一つだ。

上に立つ、敵を圧倒するなど、これが無ければ話にもならない。

 

しかし、それにフリーザは付け加える。

 

「確かに力を持つ事は大事です、雑魚は戦闘に立つ事すら許されず搾取される。ですが、私はもう一つ付け加えましょう。…情報です。」

 

「情報…ですか。」

 

「あのバケモノを例にたとえてみましょう。ヤツの事前情報があるか、それとも無いか。どちらの方が楽だと?」

 

「当然、前者の方かと。」

 

そう2人が会話していると他の特戦隊のメンバーが足止めしていたヒルデガーンの姿が突然搔き消える。

 

「そうでしょうとも。ですがそれはヤツも同じ事です。本能で動いているとはいえヤツも生物ですので、知らない事を知る為に戦いの中で相手、つまりはあなた達の動きを分析し最善の行動を図ります。それはつまり…。」

 

そして、ヒルデガーンはフリーザとギニューの背後に立ち、フリーザに向かって拳を振り下ろす。

 

「フリーザ様!!」

 

いち早く気づいたギニューが叫ぶ。

だが。

 

「こういう事です。」

 

フリーザは一瞬で振り向き、接近。

約50%の力をもってヒルデガーンを殴り抜く。

その衝撃は凄まじく、燃えていた炎が消し飛び、同時にヒルデガーンの首から上が文字通り消え去り、首があった所から噴水のように血が流れ出し

脳を失った肉体はそのまま糸が切れた人形のように倒れこむ。

それらを気のバリアで防ぎつつフリーザは講義を続ける。

 

「突然現れた私の情報を得る為に私を襲うという事です。…ほら、当たっていたでしょう?」

 

自分達が苦戦していたバケモノを片手間に始末し

得意げに話すフリーザをギニューはやはりこの人こそが

全宇宙の王に相応しい存在なのだと尊敬の念を強める。

そして、この騒動のきっかけとなったドミグラの事を思い出し

奴がフリーザに伝えろと言っていたメッセージを伝えた。

 

「そういえば…フリーザ様はドミグラとかいう魔術師には…?」

 

「ええ、会いました。…どうかしましたか?」

 

「いえ、奴から伝言を。…また会おう…と。」

 

「…いいでしょう、今度はきっちり殺して差し上げましょう…!」

 

フリーザはそう遠く無いドミグラとの再会を予感しながら

ある種コケにされた事に怒りを覚え殺意を高めていく。

そして、ホイの死体と気絶したタピオンをその星に置き去りにし

フリーザ達は一休みの為惑星リゾートへと帰還。

特別ボーナスを与えられた特戦隊のメンバーは最近リニューアルしたリゾートを隅々まで遊び尽くすのだった。

 

 

 

 

一方で新たなドミグラの分身は地球へと侵攻。

Mr.サタンの功績、そして心無い屑どものベエへの銃撃により

善と悪に分かれた魔人ブウの悪の部分が神殿に襲来した瞬間に洗脳。

 

悟空の最後の教えであるフュージョンに成功したトランクスと悟天の合体であるゴテンクスの超サイヤ人3を本来ならば圧倒される筈が逆に圧倒。

 

「ぐへへ…オマエ、弱いな。」

 

「く、くそぉーー!!」

 

駆けつけたタイムパトローラーと、老界王神により潜在能力を解放された悟飯が参戦した事で形勢が逆転。

しかし、ブウはゴテンクスとピッコロを吸収しその直後洗脳が解除される。

ドミグラの洗脳が解けた事を不思議に思いながら帰還したタイムパトローラーだったが僅かな歴史の歪みを探知したトランクスが地獄に向かい重症を負ったという情報がクロノアより入りすぐさま地獄へと直行。

 

そこではドミグラが地獄へと進行しこの時代では発生する事の無かったスピリッツロンダリング装置の暴走を引き起こそうと魔術をかけている最中であり

側にはトランクスが倒れていた。

 

「ちっ…もう嗅ぎつけたのか…クロノアの飼い犬め…!」

 

「テメェの思い通りにはさせねぇぞ!ドミグラ!」

 

そして、ドミグラとタイムパトローラーの戦闘が開始。

巧みに魔術を扱いながら戦うドミグラに戦いづらさを感じるタイムパトローラーだが。

 

「おい、貴様のせいでこっちは地獄から出れなくてイライラしているんだ…!さっさと消えやがれ!」

 

1日だけの現世へ帰還する為、占いババの元へと向かおうとしていたベジータがタイムパトローラーに協力。

降り注ぐ魔術の隙をベジータが作り出し、タイムパトローラーがドミグラの幻を撃破。

 

『ちっ…だが、これも歴史に無かった戦いだ…。』

 

その後はベジータが地球へと帰還し悟空とポタラで合体。

ベジットへとその姿を変える。

 

「よっしゃぁーー!!」

 

悟飯を吸収し、更にドミグラの洗脳によりパワーアップしたブウをその圧倒的な力で圧倒。

鼻っ面を砕き、スピリッツソードで体を貫き、触覚を引きちぎってブウを激昂させていく。

 

「グッガッギィ!!くそぉーー!!」

 

ブウはその触覚でベジットを吸収するも、直ぐに苦しみだし

ブウの穴から合体が解けた悟空とベジータが悟飯やピッコロ達を連れて

脱出。

 

ブウはそのまま苦しみだし、退化する。

そうして純粋悪と化したブウの一撃により地球は消滅。

 

界王神界へと瞬間移動した悟空、ベジータそしてMr.サタンは

これまたドミグラの魔術によりなんと2つに別れたブウと戦う事になる。

 

「「ウギャギャギャオォーーー!!!」」

 

「うるさいヤツらだ…!!」

 

「やるぞベジータ!」

 

悟空は超サイヤ人3となって1人で魔人ブウと戦い、ベジータは駆けつけたタイムパトローラーと共にもう1人の魔人ブウと戦う。

先程とは違い極悪化を施されたブウに3人は苦戦。

サタンの挑発でブウから吐き出された善のブウも途中で参戦するものの。

 

「困った…ちょっと勝てない。」

 

再生力も戦闘力も桁違いな純粋悪には及ばない。

なんとか、2人のブウをぶつけ1人に戻す事には成功しても既に3人ともボロボロ。

そんな中ベジータは元気玉の準備を悟空にさせ

時間稼ぎの為、再びタイムパトローラーと共に魔人ブウへと突撃。

 

ナメック星のドラゴンボールにより復活した地球の人々に悟空は説得を試みるも失敗。

だが、Mr.サタンの呼びかけにより大量の元気が集まる。

そうして完成した特大の元気玉を魔人ブウにぶつける。

 

「くたばっちまえーー!!」

 

だが、悟空自身の気が足りないのか魔人ブウは受け止め

逆に元気玉を押し始める。

 

「ウガガ……!!!ガァ!!」

 

そして、ブウはあろうことか元気玉を押し返してしまう。

だが、ドラゴンボールの3つ目の願いで悟空の気が回復。

超サイヤ人に変身した悟空は元気玉に己の今の全開の気を込め

 

「またな…!」

 

「ガァ……カ……カ…!!」

 

ここに魔人ブウの脅威は消滅。

最後にドラゴンボールにより、魔人ブウの記憶が人々から抹消され

事件はこれで解決…とはいかない。

 

人から忘れ去られたとはいえ機械はそしてコンピュータには魔人ブウの詳細なデータが残っている。

データが残っている。

それは、フリーザとビックゲテスターの研究の最後の1ピース。

 

今ここに研究は完成する。

ソレが眼を覚ますまで後……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・ギニュー特戦隊
チームでならターレスにすら一矢報いる事が出来る程には
成長。

・ヒルデガーン
初見殺しに敗北。

・ドミグラ
彼の野望達成まで後。

・??
目覚めかけ。

・???
もうそろそろ起きる。

・フリーザ
完全に王手をかけた。


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神と帝王

話の展開上、神と神をダイジェストでお送りします。


魔人ブウとの戦いから暫く。

とある場所の寝室にてある存在が目を覚ます。

 

「くわぁ……邪魔。」

 

目を覚ましたその存在は爆発寸前のあるものに手を翳し力を込める。

すると、ソレは一瞬ブレたかと思えば、初めから存在しなかったように

塵となって消滅する。

 

「起きてくだ……おや。目覚まし爆弾よりも先に起きるなんて珍しい。」

 

それと同時にその存在を起こそうと使用人らしい者が寝室へと入る。

彼はその存在が珍しく早起きしていた事に驚きおおよその検討を立てる。

 

「そんなに楽しみになさったのですか?」

 

「んまぁさ。良い夢を見てたんだよ。直ぐに起きて確かめたいぐらいの良い夢を…ね。」

 

「それはそれは…折角、目覚ましの歌の為にマイクまで用意いたしましたのに…。」

 

「君のそのド下手な歌で目覚めるのは二度とゴメンだ!」

 

マイクを取り出す使用人をその存在は全力で止めようとマイクを取り上げ先程と同じように塵に帰す。

 

少しむすっととした後、改めて自らの神に挨拶をする。

 

「では、改めて。おはようございますビルス様。」

 

「おはよう、ウイス。」

 

その存在…破壊神ビルスは目を冴えさせながら

使用人…否、自身の師匠であり天使であるウイスに挨拶を返すのだった。

 

 

♠︎

 

「んぐんぐ……。で、僕が眠っている間に彼…えっと…スリー…じゃなくて。」

 

「フリーザですか?」

 

「そう!フリーザ!彼は惑星ベジータを破壊しておいてくれたのかい?」

 

「ええ、跡形も無く。」

 

朝食を嗜むビルスとウイス。

ビルスはまず、惑星ベジータが破壊された事を確認しようとウイスに尋ねる。

対する答えはイエス。

 

「でも彼、あの弱そうな兄に従ってたみたいだけど…確かクウラとか言ったっけ。…アイツ弱いのに随分と偉そうだったし…今度会ったら破壊しちゃおうかなぁ。」

 

「生憎とクウラは既に死亡しています。」

 

「あれ?そうなんだ、アイツは僕にとったら雑魚だったけど他の奴らにとって

はそうそう勝てないだろうに。誰がやったんだい?」

 

「一度目は、こちらに。」

 

ウイスが杖を地面にコツリと当たれば、そこには過去の映像が映し出される。

そこには悟空、そしてターレスが超サイヤ人に覚醒し

最終形態となったクウラが驚いているところだった。

 

「あれ、これどっかで見たような…。」

 

「こちらは孫悟空、またはカカロット。そしてこちらはターレス。どちらもサイヤ人です。」

 

「…ふぅん。でも、サイヤ人って例のアレで滅んだんじゃ無かったっけ?

それとやつらは黒髪だった筈だろ?」

 

「どうやら生き残りがいたようで。それとサイヤ人はここ近年超サイヤ人とやらに変異する方法を手にしたようで。」

 

「なるほどねぇ…ん?1回目?あいつ生き返ったりした訳?」

 

「いいえ。」

 

ウイスの杖が映し出す映像が別の映像に変えられる。

そこにはビッグゲテスターと融合したクウラの姿。

 

「彼の執念とも言いますか、死ぬ寸前に宇宙空間を漂っていた機械惑星と融合したようで…。」

 

「…それで?2回目は?」

 

「フリーザが。」

 

そして、それを一手両断するフリーザの姿が映し出される。

 

ビルスはそれを聞いて、深い笑みを浮かべる。

まるで、そうなる事をわかっていたように。

或いは、そうであって嬉しいかのように。

 

「…へぇ。」

 

「おや、なんだか嬉しそうですね。」

 

「僕が起きる前に彼にあっただろ?その時のフリーザの力を考えたらねぇ。

…そうか、あの夢はもしかして…いやその前に超サイヤ人…そう!ゴッドだ!思い出した!」

 

「ゴッド?」

 

「超サイヤ人ゴッドとやらと僕が戦う夢を見たんだよ!」

 

「はぁ…ビルス様の予知夢ってあんまり当たらないじゃないですか。」

 

「…馬鹿にしてるのか?でも今回は違うぞ。実は僕はもう一つ見たのさ。黄金の何かとそれこそこの僕が全力で戦う夢をね!」

 

「ビルス様が全力で…あぁ、だから。」

 

ウイスはとある時の事を思い出す。

ビルスの様子を見に行った時、それはそれは珍しい満遍の笑みで

心地よく眠っていたビルスの姿があった時の事を。

 

「ん?」

 

「多分その時でしょうね、ビルス様があーんなにいい笑顔で眠っていたのは。」

 

「…そんな顔してたのか?」

 

「ええ、勿論。」

 

ビルスはなんだか苦い顔になり、会話をそらすためにウイスに同行を

命令する。

外に出たらビルスは予言魚を呼び出し、39年後に自身に強敵が現れる事を予言したかを尋ねる。

答えはイエス。

 

「ビルス様に強敵…あまり考えにくいですが。」

 

「もしも、もしもだよウイス。39年前に会った時に僕の4割だったフリーザが

あのまま成長していたとしたら…楽しみだよ。

超サイヤ人ゴッドとやらもあの黄金…フリーザもね!」

 

「それで、どちらへ?」

 

「先ずはゴッドからだ、あの孫悟空とかいうサイヤ人に会いに行くぞ。」

 

 

♠︎

 

一方の悟空は地球で行われているブルマの誕生パーティーをすっぽかし

界王星へと修行に来ていた。

そこで、界王から破壊神ビルスの事を聞きワクワクしていた矢先に

ウイスと共にビルスが界王星へと来訪。

事前に界王の指示により隠れていたもののビルスは容易く看破。

 

挨拶もそこそこに、ビルスは超サイヤ人ゴッドの事を尋ねるも悟空も界王も

そんな存在は聞いた事もなく。

ならばと地球にいるベジータ王子にでも聞こうと地球へ向かおうとしたが

悟空はビルスと試合する事を嘆願する。

 

そして。

 

「さぁ…かかってきなさい。」

 

「よぉし!そんじゃあ……ハァァァァ!!!」

 

ビルスは構えもせずにただそこに立ち

悟空は自らの全力を出しきらんと超サイヤ人3に変身する。

 

「これが!最強の超サイヤ人3だぁぁ!ぜりゃあ!!」

 

間髪入れず、ビルスに突撃し間近に迫った瞬間に高速移動で背後に回って

渾身の一撃を放つも、あっさりと受け止められ投げ飛ばされる。

 

「…へへ!!」

 

驚きはしたものの寧ろ、界王が言っていた最強の存在であるという事実に

悟空は歓喜し起き上がろうとした瞬間。

ビルスは悟空の気配探知に一切引っかからずに接近しデコピン。

 

それだけで悟空は脳が揺れるような感覚と共に吹き飛ばされる。

その勢いを殺し上空に避難した悟空はビルスの挑発に引っかかり

そのまま怒涛の攻撃を仕掛けるも一撃の爆風をビルスが突っ切り

悟空の首に軽く手刀を浴びせノックアウト。

 

僅かに失望した様子を見せビルスはウイスと共に地球へと移動した。

界王はすぐ様ベジータに連絡をいれ、地球の命運はベジータに託された。

 

 

♠︎

 

その後、地球へと来訪したビルスをあの手この手、時には慣れないダンスまで踊って機嫌取りをしたベジータだったが。

 

「完全にキレたぞぉーーー!!!」

 

地球の食に目が眩んだビルスの目に映ったプリンを魔人ブウが総取りしてしま

い、ビルスは激怒。

止めようとピッコロ、天津飯、悟飯、ゴテンクスと錚々たるメンバーが

ビルスを止めようとするも、ビルスは箸で全員を撃破してしまう。

 

「くそっ!もうどうにでもなれー!!」

 

やけくそ気味にベジータもビルスに突貫するもあえなく撃墜。

しかし、誕生パーティーを邪魔されたブルマがビルスにビンタ。

その反撃によりブルマが気絶するのを見たベジータの怒りが爆発。

 

ビルスの一撃を食らうも物ともせずに乱打を浴びせ、トドメにギャリック砲を

放つ。

 

それでも、ビルスに与えられたのはたったの血の一滴。

ベジータの攻撃に飽きたビルスは地球を破壊しようとするもそこに悟空が

到着。

 

神龍によってゴッドのなり方を教わり、超サイヤ人ゴッドへと変身し

ビルスとの第二ラウンドに突入。

 

拳と拳でぶつかり合うだけで岩場は容易く瓦解し、雲は霧散する。

街へ、海へ、岩場へ、洞窟へ、そして宇宙へと戦いの場が移るごとに悟空は

驚くべき成長スピードでビルスへと追い縋っていく。

 

遂にはゴッドの世界を完全に体に吸収した超サイヤ人となりビルスに特大の

かめはめ波を喰らわせる事に成功する。

 

だが。

 

「お返しだよ!」

 

それでもビルスは無傷のまま、太陽が如き光弾を地球に向かって放つ。

悟空はそれを止めるために必死になるが力の差は歴然。

 

どんどん光弾は地球へと迫るも、その時悟空に皆の声が響き渡る。

 

『悟空さ!』

 

『悟空ーー!!』

 

その声に応えるように悟空は再びゴッドへと変身し、その光弾を破壊。

その姿に満足したビルスはウイスを呼ぶ。

 

「あーあ、思った以上の収穫だったよ全く…それじゃあ次だ。」

 

「では、向かいましょう。」

 

そして、ビルスは悠々と次の強敵となりえる者の元へと向かうのだった。

 

♠︎

 

数刻前。

 

惑星リゾートにて。

 

「さて、皆さん。あなた達の働きのお陰でフリーザ軍の支配は残すところ僅か

となりました…これを記念しまして私直々に大々的なパーティーの開催を宣言いたします…今夜は無礼講!さぁ、思いっきり楽しみなさい!」

 

「「うぉぉーー!!!」」

 

フリーザ軍もまた、宇宙の支配に王手をかけ残す所は地球周辺のみとなった

事への記念として惑星リゾートを権限で貸切ってパーティーを開催していた。

 

フリーザは主催席に座り、馬鹿騒ぎする部下達を穏やかに見下ろす。

 

飲み比べを始めるターレスとスラッグ。

 

「サイヤ人がオレにかなうとでも!!?」

 

「馬鹿め!貴様と俺とでは酒の強さでも天と地ほどの差があるのだ!」

 

突然始まる大食い大会。

 

「さぁー!始まりました!第一回フリーザ軍大食い対決!実況は私ガーリックJrとー!」

 

「この俺!ギニュー隊長が解説だぁ!!」

 

「選手はご覧の通りだぁ!!」

 

ガーリックJrが各地に設置したモニターを起動し、そこには4人の選手が

映される。

そこにはリクーム、バータ、ジースといった特戦隊の面々。

そして。

 

「頑張れよー!ブロリー!」

 

「負けんなよー!」

 

「うん!」

 

レモ、そして最近フリーザ軍へ加入したチライがブロリーを応援する。

 

チライは少し前に惑星リゾートにて開催された宇宙でも有数の宝石が集まる宝石展示会に侵入し、窃盗を試みたがあえなく確保。

とはいえ、未遂という事と近くで商品の荷運びをしていたレモとブロリーの

説得によりチライはフリーザ軍に加入。

そのままチライはレモとブロリーと共に農園兼牧場で楽しく生活している。

 

そして、いよいよ大食い対決の幕が上がろうとしていた。

 

「ブロリー!おめーがサイヤ人でも俺は負けねぇからなぁ!」

 

と、バータ。

 

「俺が一位を取っちゃうもんねー!」

 

と、リクーム。

 

「……なんで、俺ここにいるんだろう。」

 

と、酔っ払った勢いで参加してしまったジース。

 

「……勝つ!」

 

そして、ブロリーの穏やかな闘志と共に今、大会が……。

 

 

始まろうとしたその時、中央に光の柱が発生し

あたりは騒然とする。

 

「……まさか。」

 

フリーザはすぐ様席から立ち、その柱の元へと向かう。

 

そこには。

 

「……なんだか、美味しそうな匂いがするじゃないか!」

 

「ええ、私も食べたばかりなのにお腹が空いてきちゃいましたよ。」

 

なんだか威厳を失った破壊神とその付人の天使がそこに立っていた。

とはいえ、あちらはさじ加減一つでこちらを簡単に消してしまえる身。

 

フリーザは僅かな汗を流しながら迎撃態勢を取る部下を制止し

丁重に彼らをもてなす。

 

「お久しぶりです…ビルス様。」

 

「久しぶりだねぇフリーザ。それで、これは?」

 

「私の主催する祭り事の最中でして。」

 

「お祭りとな?随分と美味しそうな匂いがそこら中にしてるのは。」

 

「宇宙のあらゆる所から集めた絶品の料理では無いかと。」

 

「ほーう?」

 

会話の最中に涎が溢れ出すビルス。

ウイスは既に姿を消し、屋台に次々と顔を出して食べ物を頂いている。

 

「んじゃあ…案内してくれるかい?」

 

「ええ、お任せを。…皆さん、この方と…そちらの方は私の客人です。

くれぐれも手は出さないように!」

 

「「はっ!!」」

 

フリーザは部下に命令を下し、ビルスを案内する。

そう、大食い大会の所に。

 

「ギニュー隊長。」

 

「は、はっ!」

 

「この方もエントリーさせます。…いいですね。」

 

「はっ!グルド!」

 

「へい!」

 

ギニューは、グルドに指示を出し、グルドは時間を停止。

即座に新しいテーブルと椅子を用意する。

 

「何だいこれ?」

 

「この場は好きな料理を好きなだけ食べていい場です。」

 

「へぇー。いいじゃないか。…勿論、邪魔はないよね?」

 

「ええ、勿論。」

 

「それじゃあ、僕も参加しようかな。そうだ、ここにプリンという食べ物は

あるかい?」

 

「ありますが…どうしましたか。」

 

「そうかそうか!んじゃ僕にプリンを!」

 

プリンがある事に喜ぶビルスはそのままブロリーの隣に配置してある椅子に座ってプリンの到着を待つ。

 

「それでは、ギニュー隊長。」

 

「はっ!!では改めて!よーい!スタートォ!」

 

改めてスタートした大食い大会。

始まった瞬間、選手の上に配置してある転送装置から山のような料理が

転送されてくる。

 

バータには特大のチョコレートパフェ。

リクームには大量のフルーツ。

ジースには山のようなイチゴケーキ。

ブロリーには、サイヤ人という事もありジャンルを問わず沢山の量の豊富な料理が。

 

そして、ビルスには。

 

「……すごいな!!」

 

小さいカップながらも約50はある色々な種類のプリン。

 

「んー!うまーーーい!!」

 

味もバリエーションも何もかもが違う美味しさを持つプリンをビルスは絶賛し

興奮のあまり食べ過ぎる始末。

結局、勝負はやはりサイヤ人であるブロリーの勝利となり優勝商品として

惑星リゾートの一週間の宿泊券を三枚渡され、お祭りの夜は大盛況のまま

終わりを告げた。

 

そして、次の日。

 

リゾートの料理班によるバイキング式の朝食後、ビルスとフリーザは

リゾートから少し離れた宇宙空間にいた。

 

「さてと…先ずは礼を言うよ、あんなに楽しい思いをしたのは久しぶりだった。」

 

「それはそれは…楽しんでいただけたようでなによりです。」

 

「それでだ、惑星リゾートだっけ、あそこは破壊しないでおくよ。でも、それは君次第だ。」

 

ビルスが放つ圧が段々と強くなっていく。

フリーザはその気からこれから何が起こるのかを理解し、構えを取る。

 

「君が果たして、僕の夢通りに強敵なのか…確かめさせて貰うよ!」

 

ビルスの姿が消え、フリーザの背後に立つ。

 

「そらぁ!!」

 

そこから回し蹴りをするもフリーザの姿が消えビルスの背後に立つ。

 

「はぁ!!」

 

しかし、ビルスはその攻撃を尻尾で掴んで振り上げ、フリーザを宙に浮かせて

その一瞬で接近しそのまま蹴り落とす。

だが、フリーザも蹴られる寸前に念力でビルスの攻撃の衝撃を歪ませ

ダメージを最小限に。

更に吹き飛ばれながら右手で近くの惑星から手頃な岩場を刈り取り石槍へと変形させ光速で飛ばす。

 

「うぉ!?」

 

その速度はビルスの想像を超えたものの、直ぐさま破壊によってその石槍は塵へと帰る。

だが、その大きさ故に塵の量も凄まじくビルスの視界を塞ぐ。

その隙をついて接近しアッパーでビルスを殴りあげ、その場で回転。

尻尾でビルスを叩き落とす。

 

ビルスはそのままフリーザが先程石槍に使った惑星へと激突し

特大のクレーターが発生する。

フリーザはその後を追って着地し。

ビルスは額から僅かに流れる血をぬぐい笑う。

 

「へぇ…それじゃあもう少し本気をだそうかな!!」

 

ビルスの気が更にその荒々しさを増し、その移動速度はフリーザの反応速度を僅かに上回る。

一瞬でフリーザの真下に潜り込んで顎を蹴り上げ、高速移動し

その吹き飛ぶ位置へ先回りして掌底を腹に直撃させながらそのまま急降下。

 

「ぐがぁ!!?」

 

そのまま、地面を抉りさるがフリーザはその破片を念力で強化して

ビルスにぶつけ僅かに怯ませた内に脱出し、上空に避難しつつ切断性の高い気弾を発射。

 

だが、その誘導する思考よりも早くビルスはフリーザの背後に立つも

 

「見えていますよ!」

 

更にその背後をついて念力でビルスを包んで飛ばす。

それはやがて地面に激突して爆裂。

爆風がビルスの移動速度で晴れるもその拳をフリーザは受け止め

逆にビルスの頬を殴り抜く。

乱打、乱打、乱打!

一撃当たれば一撃当て返す。

しかし、フリーザよりもビルスの方が拳の重さは強く。

フリーザの白い肌に決して無視できない傷ができ始める。

 

「くっ…キェェ!!」

 

その攻防に勝利したのはビルス。

フリーザは一歩引き、ビルスがいる前方を横薙ぎに爆砕し

そこからビルスがいるであろう座標を計算し、その空間を爆破する。

 

「やるじゃないか!」

 

その爆破に巻き込まれたのか、ビルスの右腕には僅かな火傷が出来ていたが

構わずビルスの一撃がフリーザの鳩尾に直撃。

 

「おぐぅ!!?」

 

そのまま、頬から蹴り落とされ地面が大きく破砕する。

 

「おいおい、僕をがっかりさせるなよ…。まさか、君の実力はそれじゃないだろ?」

 

ビルスは倒れるフリーザを見下ろし、告げる。

 

「まさか…これからが私の…このフリーザの真の力です!」

 

傷だらけのフリーザはそのまま気を爆発させ立ち上がり、両手をダラン、と下げてそこから少しだけ広げ、左足を前に出す。

 

「ハァァァァァ!!」

 

彼の紫の気が変色し、まるで黄金の炎となりて彼の体を包む。

その気の高まりに空は恐れるかのように雷鳴が走り、地面はその場だけを抉り取るかのように崩壊していく。

 

ビリビリと伝わる気はビルスを驚嘆させるに十分なもの。

 

「……これは…!!」

 

「カァァァァァ!!!!」

 

そして、フリーザの黄金の炎が爆発し発光。

その眩さにビルスもまた、目を塞ぐ。

 

中から現れしその身は一点の曇りもない黄金に染まり

先程とは比較にならない気の圧がそこら中を破砕させる。

 

そして。

 

「はっ!!」

 

今度はビルスがフリーザの動きを見切れない。

膝蹴りをもろに喰らい、ここで初めてビルスにまともなダメージが入る。

 

「なるほど……面白い!!」

 

脳の揺さぶり、そして先程とは違って夥しく流れる血はビルスを歓喜させる。

それは、ビルスがフリーザを本当の意味で強敵と認めた証でもあった。

 

「全力だ!!正真正銘の破壊神の本気…その身で味わってみろ!!」

 

「では…遠慮なく!!」

 

そして、2人の姿が搔き消え、爆音が拳がぶつかり合った後に響き出す。

それはつまり、音さえも最早、2人の戦いに追いつく事が出来ないという事。

その音、その衝撃は星を超え、星系を超えて、遥か遠い宇宙の果てまでも伝わる。

 

拳がぶつかり、膝がぶつかり合い、距離が離れれば気弾が秒よりも早いスピードで何千発と打ち消しあう衝撃は音というよりは波。

荒れ狂う波は星を簡単に砕けちらせ、小さくしている。

 

これが僅か1秒の出来事。

 

ビルスとフリーザが同時にダメージにより怯み、流血の線と共に距離が出来る。

 

「はぁ…はぁ…やるじゃないか。じゃあこれならどうだ!!」

 

ビルスの周りに高密度の、それこそ惑星を何百も破壊できる程のエネルギーを持つ気弾が浮遊する。

 

「そら!そらぁ!!」

 

それをフリーザに向かって蹴り飛ばし、その気弾はソニックブームを巻き起こしながら正確にフリーザへと迫る。

だが、フリーザにぶつかる寸前にその気弾は静止し、フリーザが指を動かせば僅かに見える糸がその気弾を捉えてビルスに投げ返している。

 

「はははぁ!!破壊!!」

 

その全てを破壊の力によって破壊し、フリーザに迫るも。

 

「捕らえましたよぉ!!」

 

フリーザの念力がビルスを完全に拘束する。

何とか逃れようともがくも抜け出す事は叶わない。

 

「はぁ…はあ……!!これで……どうです!!」

 

そのまま、地面へとビルスを叩き潰して追撃に黄金に禍々しく光る光弾を

投げる。

 

「調子に…のるなぁ!!」

 

その全てを破壊で消し去るも既に目の前には黄金を纏ったフリーザの姿。

 

「今すぐ黙らせてやりますよ!!そらぁ!!」

 

そのままビルスに突撃しながら地面を掘り進め、遂には星の核を貫通して

裏側にまで直通してしまう。

 

空中に放り出され骨がいくつか折れたビルスはフリーザの追撃の拳を掴む。

 

「オォ!!!」

 

それはフリーザの顔面の真ん中に突き刺さり、フリーザの鼻は複雑になる。

だが、フリーザはそのままニヤリと笑って殴り返す。

 

「フン!!」

 

それはビルスの腹にヒットし、衝撃で肋骨が数本折れる音が聞こえる。

負けじとビルスも全力の蹴りをフリーザの脇腹に直撃させる。

 

「オブッ!!?」

 

肋骨が数本折れ、その内の一つが肺に刺さりフリーザは大量の血反吐を吐く。

しかし。

 

「ォォ!!!」

 

再度、フリーザが放った拳はビルスの脳天を殴り抜く。

 

 

「ッッ……!!?」

 

頭蓋骨が僅かにひび割れ、その手を離してしまうが

離されたフリーザの手は骨が完全に飛び出ており、もう使い物にはならないだろう。

 

互いに重傷、後一発で致命傷となりうる状況の中。

2人の獣は笑い合う。

 

「ハハ!!…ゲボォ!た、楽しかったよ…本当に!けど…!」

 

「どうやら…ゴフッ!これが最後になりそうで…!!!!」

 

ビルスは両手を広げ、惑星よりも巨大な光弾を創り出す。

対するフリーザは残された腕に全ての力を込め、その時を待つ。

 

だが。

 

 

『フハハハハハ!!この時を待っていたのだ!!』

 

そこに最悪の横槍が入る。

ドミグラの思念体だ。

 

ドミグラの魔術によってビルスの周りに暗黒の気が走る。

それはビルスが洗脳されたという事に直結する。

 

『キサマと破壊神が互いに死の直前の今!私だけが知る今!!やはり私は絶対なのだ!!ハハハハハハ!!!』

 

それを冷えた目で見つめるフリーザ。

 

「……はぁ。」

 

洗脳されたビルスとフリーザの目が交差しあい

そして、その一撃をドミグラに発射する。

 

『な………!!?』

 

容赦ない一撃はドミグラに直撃し時空の歪みができる程の大爆発が起きる。

 

「……あーあ。折角の楽しみが台無しだ…あれ、誰かわかるかい?」

 

ビルスは静かに怒りを滾らせ、フリーザに尋ねる。

 

「あれは魔神ドミグラ…どうやら時系列に干渉して悪事を働いているようです。」

 

「時空ねぇ…そりゃあ確かクロノアの領分だったっけ……おい、ウイス!」

 

ビルスが血を吐きながら、ウイスを呼ぶ。

どうやら少し遠くで2人の戦いを観察していたようだ。

 

「フリーザをリゾートに送ってから……アイツを破壊しに行くぞ。」

 

「はい、ビルス様。」

 

それを聞いたのを最後にフリーザはそのまま意識を失う。

 

 

そしてーー1週間が経過した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・フリーザ
重度の疲労と骨折。
後は気の激しい消耗。
後、満足。

・ビルス
上記と同じだが
折角の楽しみを奪われた事への怒りが勝った。

・悟空
ゴッドを体に吸収したが、それ以上にすげぇ2人がいる事に気づく。

・祭
参考はマギという漫画の謝肉祭をイメージ。
宇宙全てのグルメがここで味わえる。

・魔神ドミグラ

ーーTHE.END



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束の間の天下

一週間前のコントン都、時の巣。

歴史の全てを司るこの場は今まさに空前絶後の危機を迎えていた。

 

「……ねぇ、僕は今キレてるんだよ。わかるかい?」

 

「わわわわかってます!わかってますけど……!!」

 

刻蔵庫を背に必死でビルスを止めようとしているのは、ここの界王神である

クロノア。

だが、ビルスは怒っている。

本能に従った理不尽な怒りではない。

今の彼は理性を保ったまま冷静にブチ切れている。

 

「……ここから見てた傍観者の君にはわからないだろうさ。知ってるかい?

フリーザとの戦いはね、今まで生きた中で一番楽しかった…そう、楽しかったんだよ……!!あれ程までに心踊った事は無かった!僕が本気で負けると考えたこともな!!」

 

本来の歴史においてフリーザとビルスの戦いは引き分け。

ドミグラの邪魔が無ければ、最後の攻撃は両者を焼き尽くしどちらも瀕死の重傷を負うという結末だ。

 

だが、その結末はゼロになった。

ビルスはそれが許せないのだ、勝負とは何かしらの終わりがあるものであり決着がつかない戦いなど道端のゴミ同然。

 

今この場のビルスは破壊神であり、決着を奪われた戦士。

故にこの怒りは当然ではあるが、クロノアは生憎と戦士ではなく管理者。

この場でビルスに破壊なんてされた日には、今までの歴史が無にされる。

 

だからこそこうやって実力の差を放り出して必死に止めようとしている。

タイムパトローラーもトランクスもこの場にはいない。

 

今は歴史の改変に赴いているドミグラを止めるために必死に修行を積んでいる最中、呼ぶわけにはいかない。

破壊神の荒々しい怒りはクロノアを萎縮させるには十分すぎる威力がある。

だが、ここで引くわけには行かない、これはこちらの問題。

例え破壊神であろうとそれを譲る気はないのだ。

 

「……わかりませんよ、私はここを管理する者。個人の感情は許されません。

誰かの感情に移入する事もあってはなりませんから。」

 

「それで…何が言いたい。」

 

ビルスは前方の涙目のクロノアに手をかざす。

それは下らない答えであれば即座に破壊するという意であり、同時に最後通達でもある。

 

「ビルス様の怒りは理解はすれど共感はしません。ですが、時の支配はあくまで私が任され、私がそして彼らが護るもの。それを破るのは…例え破壊神であろうとも許しはしません!!」

 

ビルスに対し啖呵を切るクロノア。

そうして暫く睨み合いが続き、ビルスの方が折れた。

 

「……そこまで言うんだったら僕がそいつらを試そう。そいつらが僕の目に叶うようだったら僕は大人しく奴が死ぬのを待っててやるよ。けど、もし僕の目が

そいつらを任せられないと判断したら…君も、ドミグラも、全てを纏めて破壊する。いいね?」

 

クロノアはそれに応じる。

それによりタイムパトローラーとトランクスは破壊神の試練を受ける事となり

ボロボロになりながらも立ち上がる彼らの姿を見て、及第点とし

ビルスはドミグラの消滅をこの目で見届けさせる事を条件にコントン都へと

居座るのだった。

 

 

数日後、コントン都に裂け目が発生し中からドミグラが現れる。

ドミグラはトキトキを捕獲吸収し、時の支配を我が物にせんと蹂躙を開始する。

 

その直後地球では、突如として今まで倒したセル、ベビー、合体13号、そして魔人ブウが復活。

タイムパトローラーはそちらに向かう事となり、トランクスは1人ドミグラに立ち向かう。

 

「ドミグラ!お前の野望も今日で最後だ!!」

 

「ほざけ、キサマなど敵ではないわ!!」

 

トランクスは超サイヤ人に変身し、ドミグラに巧みな剣術を使いながら立ち向かうも魔術の圧倒的な弾幕の前に身動きが取れず。

 

「かかったな!!」

 

弾幕の中に仕込んでいた洗脳魔術にトランクスは捕らえられ、ドミグラの操り人形にされてしまう。

 

一方、タイムパトローラーは超サイヤ人3の力と駆けつけた悟空、そしてベジータの尽力もあり撃破に成功するも今度は悟飯、ピッコロ、ゴテンクスが洗脳された状態で襲いかかってくる。

 

「ここはオラ達に任せろ!」

 

「貴様は貴様の戦いにさっさと向かいやがれ!!」

 

しかし、悟空とベジータが殿を引き受けた事によりタイムパトローラーはコントン都に帰還する。

 

だが、そこにはかつてのコントン都は無く赤黒く染まった空が青い空を覆い尽くし美しかった街は破壊し尽くされてしまっていた。

 

「随分と遅かったじゃないか。もうそろそろ僕が決着をつけるところだったよ。」

 

リゾートから盗んできたジュースを飲みながら、ビルスとウイスは襲いかかってきたので気絶させたトランクスを担ぎながら状況を説明する。

 

急いで時の巣に向かうタイムパトローラー。

そこには、刻蔵庫を背後に嗤うドミグラの姿。

 

「遅かったじゃないか…タイムパトローラー…いいやシャロット、と呼んでおこうか。もうじきタイムパトローラーという者は消滅するのだからなぁ。」

 

「テメェの好きにさせると思うのかよ!テメェはここで!俺が倒す!」

 

「その傷だらけの体でか…無駄だ、私のこの新たな神話の創造は最早誰にも止められはしないのだからな。」

 

「神ねぇ…言うじゃないか。僕の戦いの邪魔をした事…忘れたとは言わせないぞ。」

 

怒りに震えるビルスとシャロット。

だが、その怒りはドミグラには届かない。

 

即座に魔術により杖が量産され辺り一帯に発射される。

ビルスは軽く弾いていくが、シャロットは苦戦し最後は腹を貫かれ魔術で

封じ込められてしまう。

 

そしてトドメと言わんばかりに特大の気弾を放ちドミグラは時空の穴から

脱出。

 

かくして、ドミグラの新たな時代は……始まらなかった。

 

気絶していたはずのシャロットが何故かこの空間へと姿を現し

隣にはビルスまでいる始末。

 

「何故だ……!!あの場所で破壊なぞ使えない筈…!!」

 

「あぁ、あれなら悟空に放り投げてきたよ。面倒だったからね。」

 

そう、あの気弾はウイスが連れてきた悟空に全部放り出してビルスはこの戦いの最後、そしてドミグラの最期を見届けにきたのだった。

 

これにドミグラは焦る。

しかし、自身の神としてのプライドと今まで溜め込んだ全ての力さえあれば例え破壊神であろうとも倒せるという自信がドミグラの退路を断つ。

 

「良いだろう…今まで溜め込んだパワーの全てを使い貴様らを時の闇へと沈めてやる!!」

 

ドミグラはパワーを解放し、青き魔獣となりて2人に襲いかかる。

 

それにシャロットは超サイヤ人3に変身し迎え撃つ。

始めのうちは硬い外皮と魔術防壁が邪魔しロクなダメージが与えられなかったものの、ビルスが防壁を破壊した事で戦況は一変。

怒りによって成長するサイヤ人の本領がここぞと言わんばかりに発揮され

ドミグラは完全に追い詰められる。

 

「く、くそぉぉぉぉぉ!!!」

 

怒りのまま全ての力を使い突撃するドミグラだったが、シャロットのかめはめ波によって相殺され。

 

「龍拳ダァァァ!!!」

 

シャロットがコントン都の師匠から教わった龍拳でドミグラの腹を貫きトキトキを奪還する。

 

「どうだぁ!!」

 

「オ、オノレェェェ!!」

 

それでもなお、襲いかかろうとするドミグラだったが。

 

「往生際が悪い奴だね…君は負けたんだ……つまりもう僕も遠慮なんてする必要は無いという訳だ。…破壊。」

 

「ァァァ!!キ、キエル……このワタシガァ……。」

 

ビルスの破壊により歴史に認識もされずに永遠に消滅した。

 

かくして、コントン都にひと時の平和が戻っていったのだった。

 

♠︎

 

そして現在。

 

目を覚ましたフリーザはビルスによって事の顛末を聞かされたのち

トレーニングルームに来ていた。

 

「………。」

 

1人立つフリーザは自らの拳を握っては開きを繰り返す。

ビルスとの死闘の中でフリーザは何か見えない壁を壊した感触があった事を思い出す。

 

「……フッ!!」

 

そしていつものようにトレーニングを行う。

そうするとフリーザは今までよりも格段に体が使いやすくなっている事に気づく。

更に今までよりも気の質が明らかに変わっており、気が研ぎ澄まされたというべきか洗練されたというべきか…。

 

…今なら、出来る気がする。

そう考えたフリーザはあの戦いの事を思い出す。

イメージするのは万物を破壊せし力。

あれだけ見本は見たのだ。ならばこのフリーザが出来ないはずは無い!

 

「ハァァァ……!!」

 

両手を合わせ、イメージを具現化させようとする。

だが、やはり破壊神の技というべきか中々上手くはいかない。

とはいえそんな程度で諦めるフリーザでは無い。

 

ビルスの目覚めは更なる力の加速を生み出す事をフリーザは知っている。

もう強さに胡座をかく時間は終わったのだ。

だったらこの技は完成させなければならない。

そして、数時間が経過しついに、僅かではあるが高密度の破壊のエネルギーが

手の中に出来てくるのを感じる。

 

「……はぁ…はぁ。」

 

だが、その分疲労も恐ろしく気の半分以上を使用した結果のこの小ささ。

フリーザはまだまだ修行が甘いという認識とまだまだ強くなれるという確信を抱いて再びトレーニングを続けるのだった。

 

僅かに時は流れ、再びビルスがフリーザの元に来訪する。

 

「おい、フリーザ!お前も出ろ!」

 

「……ウイスさん。」

 

いつになく焦るビルスを尻目にフリーザはウイスへと説明を求める。

 

「はい、先ずはこの宇宙について説明する必要がありますね。」

 

ウイスは宇宙の原理、対となる宇宙と破壊神についてを語る。

そして、この第七宇宙と対になる第六宇宙の破壊神たるシャンパが地球の交換を要求する為に格闘試合を申し込んだという事を。

 

「はぁ…それは随分と…しかし私には関係ないでしょう。」

 

「嘘つけ、僕は知ってるんだぞ!君の宇宙侵略とやらが後地球ぐらいしか残ってない事なんてな。」

 

「…まぁ、そうですが。」

 

知らん顔を決め込もうとするフリーザだったが前回祭に乱入したビルスが指摘し気まずさで目線を逸らすが、流石に断るのは無理と判断したのか不承不承ながら了承した。

 

「くくく!!これでシャンパの野郎に赤っ恥をかかさられるぞ!!」

 

「やれやれ…。」

 

悪どい笑みを浮かべて喜ぶビルスを呆れた目で見つめるフリーザ。

だがまぁ、力の大会に向けてヒットの技を見ておくのも悪くはないだろうと思考を切り替えたフリーザは、ギニューやザーボン達に臨時の指揮を任せビルスとウイスと共に地球へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




3秒でわかるドミグラ戦。

「破壊。」

「うわぁぁぁぁ!!!?」

紹介コーナー

・フリーザ
ビルスとの戦いで見えなかった壁をぶち壊し、更なるステージへと登っていく。

・ビルス
珍しく破壊神としてというより神として仕事をした。

・シャロット
元ネタはドラゴンボールレジェンズの主人公。
口調が果たして合っているのか不安だがまぁいいだろう。

・ドミグラ
詰みからの完全敗北、死亡。

・??
そろそろ、起きる時間。




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破壊神選抜格闘試合

ウイスに連れられこれで3度目となる地球への来訪を果たしたフリーザ。

だが、フリーザはビルスに許可を得て

悟空達に顔見せをする前に用事を済まそうととある場所へと向かっていた。

 

そこはかつてDr.ウィローが巣食っていた永久氷壁のラボ。

フリーザは再び念力で氷壁をこじ開けラボへと入っていく。

そして作業をしているビッグゲテスターのAIにコフィンの状態を尋ねる。

 

「完成度はどうです?」

 

『問題ない、いつでも起動できる。…が、性格に僅かに歪みがある。…大方、魔人ブウの細胞を組み込んだからだな。それでもいいか?』

 

「問題ありません。彼…いいえ、彼女の試運転に第六宇宙とやらを利用させていただきましょう。」

 

『了解だ…その第六宇宙の方の細胞も一応、スパイカメラで得ておくか?』

 

「お願いしますね?」

 

『では、コフィンを開くぞ。』

 

ビッグゲテスターの指示によりコフィンが冷気とともに解放され

中の女性が目を覚ます。

 

「ふぁ〜ぁ、やっと起きられた!退屈だったのねぇ…この中。」

 

「おはようございます。気分はどうですか?」

 

栗色の長髪をし側にあった眼鏡をかけた女性はフリーザを見て小悪魔じみた笑みを浮かべ、こう告げる。

 

「まぁまぁね、それよりも…私とってもお腹が空いてるの?お菓子をくれないかしら?…パァパ?」

 

「……はいはい、これを食べなさい。」

 

フリーザはそれに呆れながらも、予め用意してあった五つのお菓子を21号に手渡す。

21号は、少しむすっとしながらもお菓子を手に取り食べる。

 

「…まぁまぁね…点数にするなら…60点ぐらいかしら?」

 

「…でしょうね、では次はこちらです。」

 

まだ物足りなさそうな21号に今度は山羊の形をしたクッキーを手渡す。

 

「ん〜〜!!おいし!点数にするなら90点って所ね!」

 

「それは何より。さて、私の事を父と呼んだのなら父のお願いを聞いていただけますよね?ねぇ、娘?」

 

今のクッキーは大分高評価だったようで絶大なパワーアップを果たした21号に今度はフリーザが悪どい笑顔で告げる。

 

「ええ、いいわよ。それで?私は何をすれば良いのかしら?」

 

21号は僅かに笑みを浮かべたが直ぐに消え、フリーザに似た悪どい笑顔に変えて快諾する。

 

「先ずはあなたがどれ程の強さなのか試運転です。付いてきなさい。」

 

「はぁーーい。」

 

フリーザの後ろに付いた21号はそのままラボから退室。

ビルスに告げられた集合場所へと向かうのだった。

 

♠︎

 

一触触発、今の状態を表すのならこの言葉が適正だろう。

集合場所へとたどり着いたフリーザを悟空以外のメンバーが最大限の警戒心を

露わにする。

 

「ビルスがいう最強の戦士が誰かと思えば…貴様だったかフリーザ…!!」

 

「おぉ、怖い怖い。そう殺気を出すものじゃないですよベジータさん。…怖がっているのがバレバレになってしまっていますからねぇ?」

 

「なんだと……!!」

 

ベジータが殺気を出してフリーザに近づくも軽くあしらわれ殺気を増すも

ビルスに睨まれ、舌打ちをして下がる。

今度は悟空がフリーザに近づいて挨拶をする。

 

「おめぇがフリーザちゅうんか!オラ悟空!よろしくな!」

 

「…ええ、よろしくお願いします。悟空さん。」

 

フリーザは、記憶にある通りに能天気さに少し引くも挨拶を返す。

 

「それで、こっちは?」

 

「彼女は…私の娘です。」

 

「な、なんだと!?」

 

「フリーザに娘だと……!!?」

 

悟空がフリーザの背後の女性の正体を質問すればフリーザはなんて事の無いように21号を紹介する。

ベジータ、そしてピッコロはそれに驚きを禁じ得ない。

 

対する21号はこれまたなんて事ないように普通に手を振る。

 

「で…これが5人目か?フリーザ。」

 

「ええ、彼女なら十分第六宇宙の戦士にも引けは取らないでしょう。」

 

「お前が言うなら、そう言うことにしておくが…無様を晒したら破壊するからな。」

 

「あら、怖いわパパ。」

 

「全く…。」

 

ビルスは21号を脅すも21号は小馬鹿にしたような笑みでフリーザに隠れる。

とはいえ、21号の方が背が高い為殆ど隠れられていないので焼け石に水のようなものなのだが。

 

ともあれ、これで全ての戦士が集い

5人はキューブと言われる移動装置で第七宇宙と第六宇宙の中間にある『名前のない星』と呼ばれる星へと向かっていった。

 

♠︎

 

会場へとつけばどうやら第六宇宙の選手達は先についていたようであった。

 

フリーザが軽く選手をみれば、ふくよかな黄色のクマ。全身が機械の蒸気の戦士。そして、自らをサイヤ人と名乗った貧相な体をした少年に、自らと同じ種族の戦士。

 

最後に腕を組んで沈黙する戦士。

フリーザの記憶はその戦士こそ、『時とばし』など時間、時空系の技に長けるヒットである事を断定する。

 

というのも今回のフリーザの目的はヒットの『時とばし』にある。

グルドに教わった時間停止の上位互換というべきその技を是非とも盗む。

それが今回のフリーザの最大の目的だった。

 

程なくして試合が始まる…と思いきやどうやらペーパーテストがあるらしく

戦士達は揃って机に向かう事となった。

 

とはいえ、曲がりなりにも王子のベジータ、そして神の知識を得たピッコロ。

現在まで帝王の地位を不動のものとしたフリーザやDr.ゲロ以上の頭脳を持つ

21号にとって唯の一般教養如きは楽勝であり、余裕の100点を記録する。

 

…が、悟空だけは50点という合格ギリギリの点数を叩き出し

ビルスに冷や汗をかかせた。

 

とにかく、第六宇宙含め全員が合格した事により試合は問題なく開始する事となった。

 

第七宇宙の布陣は大将をフリーザとし

先鋒、孫悟空。 次鋒、ピッコロ。 中堅、ベジータ。 副将、21号という布陣となった。

 

第1試合は黄色いクマのボタモ。

ボタモのダメージを通さないボディに苦戦する悟空ではあったものの

気絶ではなく、場外へと戦法を切り替えた事でボタモは悟空の攻撃でボールのように跳ね回りそのまま場外へと叩き出され敗北する。

 

第2試合はフリーザと同種族のフロスト。

初めから最終形態へと変身するフロストに対し超サイヤ人に変身した悟空。

戦いは終始悟空が有利だったものの悟空の攻撃がフロストの右腕に当たった途端、悟空の体が一瞬硬直しそのまま悟空は気絶してしまう。

よって、勝負はフロストの勝ち。

程なくして起き上がった悟空は笑顔でフロストの勝ちを讃え、フロストもまた苦しくも楽しい勝負だったと悟空との勝負を讃えた。

 

第3試合はピッコロ対フロスト。

マントを脱ぎ捨て本気となったピッコロは勝負を素早く片付ける事を優先し

多重残像拳で、武舞台を埋め尽くす程の分身を繰り出しながら最大限まで魔貫光殺砲を溜め始める。

それに対しフロストは気弾を周囲にばら撒く事で着実に分身を消していき

遂にピッコロ本体を捉える。

魔貫光殺砲が消失したピッコロだが、すぐ様右腕を伸ばしてフロストを完全に捕えてもう片方で準備した魔貫光殺砲を放とうとする。

しかし、解こうとしてフロストの右腕がピッコロの右腕に当たった瞬間にピッコロの体が一瞬硬直し気が霧散。

 

その隙を狙ってフロストの蹴りがピッコロに炸裂。

ピッコロは場外となり、フロストの勝利が確定した。

 

が。

 

「あら、あなた右腕に毒針を仕込んでるのね。」

 

21号がフロストの右腕を看破。

審判が調べた結果、フロストの右腕には精神系の毒が仕込まれていた事が発覚。

結果ルール違反によりピッコロの勝利となるのだがピッコロは棄権し

ベジータがフロストと戦う事となるが、ベジータは一撃でフロストを粉砕。

 

続くマゲッタとの試合は、バリアに触れたら場外というルールが邪魔をし

更にはマゲッタの鋼鉄のボディがベジータの攻撃を通さなかったが流石に超サイヤ人2の攻撃には耐えられなかったようで鋼鉄のボディに亀裂を走らせながら場外へと落下していった。

 

次に降り立つのはサイヤ人であるキャベ。

とはいえ、超サイヤ人になれないサイヤ人など今更ベジータの敵ではない。

キャベの乱打を軽く躱し、一撃浴びせてやればすぐ様キャベは膝をつく。

ベジータはそれに失望するもキャベの教えをこう姿勢に激怒。

サイヤ人の誇りとはなんなのかを説きつつ、惑星サダラを滅ぼすなどの虚言により間接的にキャベに超サイヤ人へと変身させる。

だが、超サイヤ人なりたてのキャベと超サイヤ人2のベジータでは天と地の差。

ギャリック砲とエネルギー波のぶつかり合いにおいてベジータが圧倒。

キャベは堪らず場外へと吹っ飛びベジータの勝利。

 

 

そして、いよいよ最後の戦士ヒットが武舞台へと降り立つ。

ベジータは初めからブルーに変身し、構えを取る。

対するヒットは不動の姿勢でベジータの攻撃を待つ。

 

まず最初に仕掛けるはベジータ。

だが、ヒットの動きが一瞬ブレたかと思えばヒットの拳が人体の弱点の一つである人中へと突き刺さる。

 

その吹き飛んだ時間をはっきりとフリーザは視認できていた。

 

「ふむ、やはり一度時間というものに触れていれば彼の動きは認識可能…と。」

 

そして、21号は約0.1秒の時間の切り取りに違和感を覚える。

これは少し前に口にしたモロの魔術的知識と数多の思考の科学者の頭脳を受け継ぐ21号だからこそ気づける事。

そんな彼女が僅かに頭を働かせれば答えはおのずと見える。

 

「へぇ…時間への干渉かしら。…美味しそうね、彼。」

 

 

ベジータは多少ふらつくも、直ぐに反撃を繰り出す。

ヒットは確実に躱しながら、こめかみや乳様突起といった急所を打ち抜きベジータの方向感覚を狂わせる。

しかしベジータはそれに耐え再び攻撃を食らわせにかかる。

が、ヒットには一向に当たらず逆に水月、喉仏、顎と連続で打ち抜かれる。

そんなに中でベジータはヒットの弱点に気付く。

それはヒットの攻撃の一撃の軽さ。

それに気づいたベジータは笑い、ヒットに再度攻撃。

 

「だりゃぁぁ!!」

 

「はっ!!」

 

ベジータの顔面への攻撃を躱し、間髪入れずに肝臓へと拳を叩き込むがベジータはその攻撃を掴んでヒットにようやく一撃を喰らわせる。

次いで2撃目を放とうとするが、ヒットの重く鋭くなった拳が脳天に直撃。

激しく脳が揺さぶられたのか流石のベジータでも耐えきれずに気絶。

 

そしてそれを見た21号が武舞台に降り立つ。

21号は眼前に立つヒットを見て嗤いながら忠告する。

 

「一つ忠告しておくわ、あなた、本気出さないと死ぬわよ?」

 

瞬間、21号の気が自身の周りを囲むように荒れ狂い、21号の体が変化する。

体肌はピンクになり、目は赤く染まる。

 

ヒットはその気の圧から僅かに警戒度を上げ、無言のまま構えを取る。

 

「ふぅん…そんなのでいいのかしら?ま、良いわ。」

 

そう言い、21号は攻撃を仕掛けに掛かる。

それに合わせヒットがカウンターを繰り出そうと時とばしを発動して。

 

「はい、捕まえた♩」

 

21号の腕がその飛んだ時の中のヒットを捕らえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・フリーザ
一児の父になりました。

・人造人間21号
基準は悪ベース。善なんて無い。
モロやヘラー一族を食べた為強さは折り紙つき。
悟空、ベジータといったサイヤの細胞やピッコロ、ベビー、セルに、魔人ブウ。そしてフリーザの細胞を取り込み、様々な技術の権威を取り込んだ完全なるハイブリット。
創造主たるフリーザは父と認定した、推定10歳程度。

・第六宇宙の皆様。
ダイジェスト。トワやらドミグラが死んだので変化なし。

・ヒット
今作はアニメ版の強さで進行。
時とばしを少しの時間で看破された。


活動報告に次回作の案を記入してますのでもし良ければ。


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宇宙最恐の娘

 

時とばしの正体は言ってしまえば映像のフィルムの抜き取りだ。

時という映像はヒットの力により0.1秒という僅かな時間を切り取られ、他の誰もがそれに気づく事は無い。

唯の一般人であればそれはきっと大した事はなく気づきもしない一瞬に過ぎない。

だが、一流の領域に立った戦士達にとって0.1秒という時間はそれだけで決着が着くといっても過言では無い。

ならば0.1秒というアドバンテージを得られ続けるという戦士は正に無敵の一言。

生きた伝説とまで称されるヒットという暗殺者が今まで一度も訓練しないのも当然だ。

 

だが、そんなヒットの無敗神話も今日で崩れ去る。

 

「なっ……!!?」

 

とんだ時の中、それは自身だけが自由に動ける時間…そんなものもう過去の話だ。

今ヒットの前に立つのは数多の宇宙の科学の叡智をその身に受け継ぎ、そしてモロという何百世紀も生き続けた至高の魔術師の魔術知識を喰らったハイブリッドの頂点。

そんな彼女がたかが時間の技程度に翻弄される筈が無い。

 

ヒットの僅かな動きとほんの少しの違和感から謎を解析し、対抗できる魔術を即興で創り出すのなどは訳無い事である。

21号はその掴んだ腕を引っ張り、ヒットが僅かに前のめりになった所を理想の形で正拳突きを正確にこめかみに打ち抜く。

 

「がっ……!!」

 

悟空達から見れば、2人が消えた途端ヒットが吹っ飛ばされるという謎の展開だ。

だが、彼らはそれを気にする余裕は無い。

何故なら彼女の姿が悟空達にとって忘れもしない悪の魔人ブウとあまりにも類似していたからだ。

 

「いい!??ど、どういうことだぁ!?」

 

「おい!説明しやがれフリーザ!!」

 

魔人ブウと戦った悟空とベジータがフリーザに問い詰める。

フリーザはそういえば忘れていたと言わんばかりに2人に説明をする。

 

「あぁ、そういえば説明するのを忘れていましたね。彼女の名前は人造人間21号。今まで地球にいた全ての戦士、そして私の軍の全てを詰め込んだ傑作でもあります。つまりは悟空さんやベジータさん。そして私の細胞を取り入れた最強の娘、という訳ですね。いやはや親として鼻が高い。」

 

「な、なんだと…!!?」

 

そんなフリーザの説明に驚愕する2人を無視してフリーザは再び武舞台へと視線を落とす。

 

「ほらほら!!どうしたのかしら!!?」

 

「ぐっ……!!」

 

武舞台では21号がヒットを完全に圧倒する形で試合が進んでいた。

ヒットが先手を打とうと時とばしをしようとも。

 

「それはもう見飽きたのよ!!」

 

急所へと拳が直撃する瞬間に21号の魔術が発動し後方に回転し回避。

その状態から足を伸ばしてヒットの顎を蹴り上げる。

そして時とばしが解除されヒットが宙に浮くのを今度は腕を伸ばして足首を掴んで叩きつける。

 

「ぐぉぉ!!?」

 

叩きつけられたヒットが立ち上がろうとした瞬間。

世界が灰色へと染まる。

あらゆるものが停止し、その中でたった1人21号だけが立ち上がらんとするヒットへと近づき、彼を立たせて棒立ちにさせる。

そして、人体の急所たる全ての部分を抉るように乱打し

 

「ぷはぁ!!」

 

「……やるな。」

 

21号は息を止めるのをやめ、時の停止を解除。

急所を打たれ目眩や立ちくらみがする中ヒットは素直に彼女を賞賛する。

ヒットからしてみれば、産まれて初めての強敵たる彼女。

故にヒットは。

 

「…お前なら使っても良さそうだ。」

 

使わなければ自身よりも強いこの戦士を倒すことは出来ないと決断し

僅かに離れた距離から拳を構え、放つ!

 

「……しっ!!」

 

「あら?」

 

ヒットが放った不可視の気は21号の腹を容易く貫き、彼女の腹に穴を開ける。それに僅かにヒットの目が見開く。

だが、直ぐにその穴は塞がり彼女はニヤリと笑う。

 

「へぇ…なかなかやるじゃない。それじゃあ……。」

 

そして、彼女は先ほどのヒットと全く同じ構えを取る。

その行動にヒットは最悪の事を予想する。

 

(まさか…。)

 

「お返し!!」

 

その予想は的中。

21号はヒットと全く同じ技を魔術によって再現し、不可視の気を飛ばしてくる。

とはいえ、自身の技である以上その技の特徴や弱点を知り尽くしているヒットは僅かにブレる空気の波を読み、時とばしによって回避する。

その時とばしの中を21号が突撃し、殴り掛かろうとするが

21号の攻撃は何故か外れヒットの気を纏った攻撃が表面に浸透するように直撃。

 

「ふん!」

 

「ギッ……!!」

 

21号にダメージが入ったのを見逃さずヒットの攻撃がに21号へと連続で命中。

時とばしが解除され、21号が僅かに地面を引きずる。

 

「なるほど…確かにお前は強い。だが、戦闘経験は全くのゼロという訳か。

恐ろしい奴だ。お前がこれから成長していくのがな…だが、ここは俺が勝たせて貰う。」

 

「……言ってくれるじゃない!!はぁぁぁ!!」

 

ヒットが冷静に21号を分析し、勝利宣言を下す。

それに激昂する21号が攻撃をヒットに繰り出すもヒットは煙のようにそこから拳が突き抜ける。

 

「え……?」

 

驚き、高速で思考を開始する21号だがそれは何処から訪れた強い衝撃により中断され、吹き飛ばされる。

 

「づぅ……!!」

 

即座にヒットを見る21号だがヒットは先程の位置から全く動いていない。

となれば。

 

「………ふぅぅ。」

 

21号は大きく息を吐いて深呼吸をし荒立つ気を鎮め、己の戦闘スタイルを思い出す。

自らの戦闘スタイルはあらゆる事を即座に解析し弱点を的確に狙う理論的な物だ。

怒りに任せてしまえば、得られるものなど何も無い。

故に21号はほんの一瞬の時間の中であらゆる可能性を思考錯誤する。

自分がもし彼ならどういう技、手段で追い詰めにかかるかを何百、何千通りも高速シミュレートしそれに適した自らの攻撃手段を構築する。

 

21号の構えが高速で動き、ヒットと全く同じ構えを取る。

そして再びヒットへ拳を繰り出すもさっきと同じようにすり抜ける。

だが。

 

「捕まえたわ!!」

 

21号は回転し何も無いところへと手刀を突き出す。

すると、空間に亀裂が走り砕け、中からヒットが首を掴まれ苦悶の表情で弾き出される。

 

「何っ!?」

 

そのまま21号は細腕から考えられない程の剛力でヒットの首を掴みながら武舞台の地面へと叩きつける。

 

「やっぱり…貴方の技の秘密は、切り取った時を蓄積させて別空間を創り出す事!!」

 

「…大した奴だ。ここまでの短時間でそこまで俺の技を見破るとは。」

 

「それで?貴方はここで降参かしら?」

 

「いいや…お前の力に敬意を表して俺も全力を出そう!!」

 

そう言うとヒットの気が爆発的に上昇する。

時とばしでは無く、自らのスピードとパワーにより21号の拘束から解放したヒットはそのまま21号へと迫り時とばしを行使。

そのまま21号もその世界へと介入し、ヒットと全く同じ攻撃を同時に繰り出す。

当然拳同士がぶつかり合い、それをきっかけに殴り合いへと移行していく。

お互いがお互いの急所を的確に打ち合い、その激痛はヒットの体に徐々に蓄積していく。

対する21号は魔人ブウと同種の肉体により、ダメージを大幅にカットしてはいるもののヒットの気の篭った一撃は神経に直接響いていくため徐々に息が荒くなっていく。

 

更にお互いがお互いを刺激しあい、武闘家として急成長している事もあり

その鋭さや威力は有り得ない速度で上がっていく。

そんな中、21号の中にある無数の細胞が闘争の中、21号の肉体で活性化し彼女の全身を刺激する。

 

「……ふふっ!!」

 

その高揚感に21号は嗤い、戦法を変えていく。

ただの拳のぶつけ合いではなく、気弾や尻尾、足技を使うのは勿論

フェイントを織り交ぜていく事によりヒットは徐々に追い詰められついに21号の猛攻をもろに受けてしまう。

 

「アハハハハハ!!!」

 

そこまできてしまえば、最早試合は一方的。

21号の殴打の嵐はヒットとの戦いの中習った人体の急所を的確に拳、脚、尻尾を使い何度も何度もヒットを打ちのめす。

 

ヒットも負けじと拳を何とか捌いて反撃を試みるも21号はほんの僅か時を止めて回避する事で間髪入れずに攻撃をヒットに直撃させる。

それは、最早無呼吸での乱打。

 

それに耐えられなくなったヒットの肉体が悲鳴を上げ、ヒットの視界がぼやけふらついた瞬間に、踵落としでヒットの頭を地面へと蹴り落としたと同時に尻尾で脚を絡ませて仰向けに叩きつける。

 

「これで最後よ!」

 

仰向けに倒れたヒットに21号は馬乗りになり

両手を重ねて、エネルギー波を発射。

その威力に武舞台は完全に崩壊した挙句にバリアを木っ端微塵に消しとばし

爆風が発生する。

 

爆風が晴れ、立ちあがるのは21号。

ヒットは白目を剥き、完全に気絶している。

 

「ちょっと!審判!!?」

 

爆風により場外まで吹き飛ばされた審判に21号は勝利の宣言を要求する。

 

「は、はいっ!!勝者21号選手ーーー!!!」

 

審判の勝利宣言にビルスは立ち上がり、悟空は21号と戦いたくてウズウズし始める。

そして、フリーザはさも当然のように娘の勝利を拍手で祝うのだった。

 

その後、大会の勝利報酬として超ドラゴンボールがビルスへと進呈されるも

ビルスの願いは第六宇宙の地球の復活。

シャンパは感激の眼差しを向けビルスは気恥ずかしそうに顔を背ける。

なんだかかんだと言ってビルスも兄弟に対して素直では無いらしい。

 

その視線に耐えきれなくなったのか地球に戻って直ぐにビルスはウイスと共にフリーザと21号を引き連れ、悟空に絶対についてくる事を禁じた上で惑星リゾートへと向かい、やけ食いを開始したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・21号
当然の事ながらブロリーの細胞も組み込まれているので
技の物真似はお得意のもの。
あらゆる動きをトレースし弱点を的確に叩き出すのが主な戦法。

・ヒット
こちらは暗殺者としてではなく武道家として莫大な成長を遂げたものの
成長の速さで敗北。
人体の急所を的確に打ち抜く短時間戦が主な戦法。

・フリーザ
結局今回は出番は無かった。
念力や豊富な技で相手を圧殺するのが主な戦法。


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全宇宙の舞台装置

現在、ビルスは正座中であった。

理由は目の前の存在が全ての答えではあるが。

 

「もー、ビルスってば。ダメなのね、勝手に帰っちゃ。」

 

「も、申し訳ありません。」

 

ビルスの目の前にいるのは12の宇宙の王。

明らかな子どもでありながら、その身体には全宇宙を容易く消滅できる権能に等しいエネルギーを持つ存在。

その名は全王。

破壊神たるビルスですら恐れるある種の舞台装置である。

 

実は全王は第七宇宙と第六宇宙の試合を観賞しておりその事を注意しようと

したのだが、一足先にビルスが第七宇宙の地球に帰ってしまった為シャンパに少しばかり八つ当たりをしてそのまま配下と共にやけ食いを終え破壊神の星へと帰ったビルスの元へ向かったのだった。

これに関しては完全にビルスの自業自得である。

 

「それでね、きょうはね、注意しようと思ってきたのね。」

 

「は、ははぁ!!も、申し訳ありません!!全王様!!」

 

「でもね、観てたらね。面白かったの~!

だからね、今度全部の宇宙の戦士を集めてね。

 やってみようかなぁ…なんて思っちゃったのね。」

 

「は、はぁ…。」

 

「む、何その返事、消しちゃうよ?」

 

「いい!!?は、はいっ!とっても良い事だと思います!はい!!」

 

「でしょ〜?それでね、きみの宇宙の人にも聞いてみたいのね。

どこにいけば会えるかなぁ?」

 

全王は子どもながらの無邪気さでビルスに尋ねる。

これにはビルスは内心大慌てである。

常識で考えればフリーザの方だろう。

だが、あのフリーザがこんな大会に賛同するとは到底思えない。

奴は軍を統べる頭領だ。今回は景品が奴の支配予定地であったから渋々ながらも賛同したものの、長くは軍を離れないフリーザが今度は賛同するとは限らない。

逆に悟空の方はどうか。

あの戦闘馬鹿ならば、全王の提案にもにべもなく賛同するだろう。

が、界王星で会ったことで確信した事だが、あいつは絶望的にマナーというものを知らない。

敬語はめちゃくちゃだった事からそれは良く分かっている。

不敬と言われ、自分ごと破壊される可能性があるかもしれない。

 

硬い馬鹿と阿保。

二択をビルスは自ら背負いこみ…。

 

「ち、地球という星ならば会えるかと。」

 

阿保を取った。

 

「ふーん、じゃあ案内して欲しいのね!」

 

「は、はい!!おい!ウイス!!」

 

「はいはい…では、全王様失礼します。」

 

そうして、ビルスを引き連れ地球へと赴き悟空から全力の了承を得た全王は初めての友だちを得たのだった。

 

 

♠︎

 

一方のフリーザといえば。

 

「アハハハ!!」

 

「流石にやりますね。ですが。」

 

フリーザは一瞬だけ瞬く。

すると、世界が灰色に染まり21号の動きが完全に停止する。

フリーザはそのまま21号の背後に立ち三発拳を放つ。

 

そして、再び瞬くと世界は色を取り戻し三発の隕石にも匹敵する衝撃が21号を吹き飛ばす。

 

「痛ったぁ!!」

 

とはいえ、魔人ブウと同じボディは衝撃を殆ど吸収する為ダメージは軽減される他フリーザも手加減しているためダメージは痛みはあるものの殆ど無い。

寧ろ、暗殺の技を極め人体の急所に通じたヒットだからこそ21号にまともにダメージが入っていたとも言えるのだが。

 

「はい、私の勝ちです。」

 

「あーあ、負けちゃった。ま、いいわ。」

 

「…やれやれ、私を食べようとはね…まったくなんて娘ですか。」

 

惑星フリーザへと戻ったフリーザはまず21号の紹介を部下に通達した。

…とはいえいくら流石の歴戦の部下でもいつの間にか娘をこさえた上司には驚きの声が絶えなかったのだが。

その後、職場案内を済ませた矢先21号が唐突に言った。

 

「ねぇ、パパ。一度手合わせしてくれないかしら?」

 

やけに妖艶な笑みを浮かべて言ったことに多少違和感を感じたフリーザだったが、ヒットの時に活性化したであろうサイヤ人の細胞の熱がまだ冷めていないのだろうと思い快く承諾した。

ルールは背後に一発でも攻撃が当たればアウトという単純なもの。

 

そして、訓練室へ向かい構えを取った21号の開口一番がこれである。

 

「あ、パパ。もし私に負けたら食べちゃうから。」

 

そう言って、合図も無しに突撃してくる娘の攻撃はヒットの戦いで経験値を得た為鋭さは増したもののそれでも戦闘経験はその一回のみ。

そんな彼女が戦闘のエキスパートたるフリーザに勝てる筈も無くあっさりと通常状態へと戻り今に至る。

 

「それで?どうしてこんな事を?」

 

「だってパパがとっても美味しそうだったから…食欲が抑えられなかったの!」

 

「……やれやれ。」

 

「あ、これからも定期的になるかもしれないからよろしくね?パァパ?」

 

「…はぁ、これは思わぬ拾い物だったかもしれませんねぇ。」

 

おおよそ親子とは思えない会話ではあるが、21号はそのやりとりの中で何とも言えない安らぎを感じている事などフリーザには知る由も無いのであった。

 

♠︎

 

「コメソン…ですか。」

 

あの試合から数日が経ち、宇宙にも多少の平穏が訪れたある日。

フリーザは惑星ポトフへの視察に赴いたドドリアが封印されていたコメソンという兵器を誤って解き放ってしまったという報告を受けていた。

 

更に部下によれば、形状は紫色のスライムのようであり

ドドリアを飲み込んですぐにドドリアそっくりに変身したという。

今は共に視察していたザーボンがそのコメソンを食い止めてはいるものの

本体を叩かないとドドリアの存在が消失するという情報を聞かされフリーザへと応援を求めた次第だった。

 

その部下はドドリアの部下であり、もう何年も世話になっているという。

厳しいながらも熱血に熱心に指導し、訓練が終わればいつも自分の金で部下全員の飯を奢ってくれる。

そんなドドリアを失いたくないという懇願をフリーザは聞き入れ

部下が乗ってきた小型ジェットに兵器ならばと21号とビッグゲテスターを引き連れ惑星ポトフへとワープした。

 

「フ、フリーザ様!!?…も、申し訳ねぇ…!!」

 

ジェット機から降り立ってきたフリーザに対しドドリアは驚きと共に自らの不甲斐なさを謝罪する。

その体は大分すけ始めており一刻の猶予もない事が見て取れる。

 

「ドドリアさん、次はありませんからね?もっとあなたは周囲を見なさい。」

 

「へ、へい…。」

 

「21号。」

 

「はぁい。…あ、いたわ。そこよ。」

 

フリーザは21号に指示を出し、21号は魔術の探知によって直ぐ様コメソンの本体を特定する。

フリーザはその座標に狙いを定め、念力でコメソンのコアを握り潰し

それと同時にビッグゲテスターが解析を終了させ21号は溶け始めた複製されたドドリアとコメソン本体をお菓子に変えそのまま一口で食べ尽くす。

コメソンの本体はそのまま21号を複製しに掛からんとするが逆に魔術によって持たされてしまった悪の意志を含めた存在の全てをバラバラに分解され無事に21号の養分となった。

 

「んー、まぁ65点ってとこかしら。少し脂っこいのが難点だけどこれはこれでいけたわね。」

 

「てめぇ…じゃなかった、21号!それは俺が脂っこいとでも言いてえのか!?」

 

「あら、ごめんなさい?てっきり自覚しているかとばかり思ってたわ?」

 

「くくくっ!!自業自得だぞ、ドドリア!」

 

「うるせぇ!」

 

『解析終了だ…が、これは軍で扱えそうには無いな。食べて正解だった。』

 

コメソンの脅威があっさりと終了し、談笑を始める部下達。

そして、ポトフの100年以上続いたコメソンの脅威がようやく終わりを告げたとわかったポタージュは安心で腰を抜かしてしまっていた。

 

ともあれ、これで惑星ポトフはようやく一つの星として成立するようになったのだった。

その後、ポタージュはフリーザに惑星の権利を完全に譲渡。

コメソンという最大の爆弾を隠していた事を謝罪し責任を持って星から退去する事を決断した。

とはいえ、星の元の景観を取り戻さなければこの星の商品価値は無いも当然。

そんな訳でフリーザはそのままポタージュを現場監督へと任命。

ドドリアの処罰とザーボンへの特別ボーナスの為にポトフから飛び立つのだった。

 

因みにドドリアには給料の5%の減俸を二ヶ月。

ザーボンには惑星リゾートの中にあるエステでも最高額の場所の無料券が支給された。

ドドリアは自らを反省し、更なる力の研鑽を。

ザーボンは早速エステへと向かい更なる美の研鑽を行った。

 

そして、ベビーのラボが取り壊された跡地にリニューアルし創り上げられた21号のラボではコメソンの解析結果から新しい装置を作らんとフリーザ、21号、ビッグゲテスターが構想会議へと入っていた。

 

「しかしコメソンとやらの複製にはいささか惹かれるものがありましたねぇ。」

 

「といっても複製し過ぎたらアレの二の舞。…つくづく欠陥品ねぇ。」

 

『ふむ、では存在感が消えたという方に視点を変えて…こういうのはどうだ。』

 

ビッグゲテスターが表示したソレに2人は悪どい笑みを浮かべる。

 

「ふむ、悪くありません。」

 

「いいんじゃ無いかしら?…それじゃあ早速取り掛かりましょうか。」

 

こうして、3人の天才の暗躍は密かに進行していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・フリーザ
娘が自身を物理的に食べようとしてくる。

・21号
実は愛情の裏返し。
食欲と愛情がごちゃ混ぜになった結果である。
ずっと強い父でいて欲しいけど、それはそれとして食べたい。

・ビッグゲテスター
21号の加入によって更なるアップデートを地味にしている有能。
コメソンのデータから新たな発想を得る。

・黒の男。
本編では出番なしです。
要望があれば番外編で。

「何故だ……。」

・自称神
上記に同じく。

「何故だ…!」


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力の大会前夜

ーー力の大会。

それは全王が少し前に見た破壊神同士の大会に感銘を受け、今度は宇宙全体でやってみようと計画した座興。

あるいは、宇宙消滅前の戯れ。

 

全12宇宙の中から人間レベルと呼ばれる裁定基準が低い宇宙下位8位までが対象。

対象外は今回であれば第1、第5、第8、第12宇宙である。

その宇宙の破壊神及び天使は代表者全10名の選手を選抜し、覇を競う。

敗北条件は武舞台からの落下のみであり、舞空術は禁止。

全選手が脱落した時点でその宇宙は強制消滅。無に帰される。

 

場所は無の界。

宇宙のどこでも無い、唯の無の世界である。

 

発案者は、言わずもがなの孫悟空。

 

コメソンの事件から数ヶ月たった現在。

この説明を惑星フリーザへ赴いたビルスから聞かされたフリーザは頭を抱えた。

 

「………はぁ。何を考えているのでしょうねぇ。」

 

とはいえフリーザはこの事態を既に識っていた。

だが、実際に聞いてみてその馬鹿さ加減に感謝すると同時に呆れた。

確かに孫悟空がそれを提案しなければ、第7宇宙は知らずのうちに無に帰した。

そこには感謝しよう。

だが、もう少しなにか無かったのかと恨まずにはいられない。

 

しかし、これでフリーザも参加しないという選択肢はゼロである。

参加しなかった場合、地球のメンバーだけでは上位には立てるだろうが確実に敗北する。

理由は単純。

第11宇宙最強の男。力に溺れ、しかし力を制した男。

フリーザが識る正真正銘の化け物。

名はジレン。彼だけには悟空もベジータも勝てはしない。

トッポやディスポ辺りならば悟飯やベジータでどうにかなる。

だが、ジレンだけは駄目だ。本来ならば彼1人だけでも十分、だからこそあの宇宙の破壊神は絶大な信頼を置いていた。

 

フリーザは目頭を押さえながら溜息をつく。

ビルスは出されたスイーツを食いながらもその目は真剣であった。

 

「…言う事でも無いがお前は確実に出ろ。僕に匹敵する力だ、大抵の奴に負けはしない。後は…お前の娘も出せ。あの暗殺者に勝てる実力を出さない選択肢は無い。」

 

「はいはい…いいでしょう。私もただ黙って消されるのは御免です。ですがこちらにも条件が。」

 

「なんだ?」

 

フリーザの提案に、ビルスは神妙な表情で尋ねる。

フリーザは4本指を立て、宣言する。

 

「4名、こちらから出させていただきます。後はどうせ地球の方々が出るのでしょうし勝手に決めてください。」

 

「……いいだろう。ただし、相応の実力の奴なんだろうな?」

 

「ええ、それは保証いたします。とはいってもどちらもサイヤ人ですがね。」

 

「ほう…名前は。」

 

「ターレスさん、そしてブロリーさん。どちらも素晴らしい戦闘力の持ち主です。」

ビルスはそれを聞いた後に放っていた威圧感がゆっくりと消えていき

いつものお気楽な彼に戻っていく。

 

「まぁ、君がそう言うなら任せるよ。それじゃあ僕は地球の連中に伝えに行ってくるから。」

 

「あぁ、最後に。私達の宇宙の人間レベルって…。」

 

「…9番目だそうだ。これでもかなり上がってはいるらしい…はぁ。」

 

肩を落としながらビルスはそのまま側に立たせたウイスと共に地球へと向かって行った。

 

フリーザは、それを見送った後に通信機でまず2人の集合を要請する。

 

「21号さん、ターレスさん。直ぐに来なさい。」

 

 

21号は魔術により、空間転移ですぐに到着。

ターレスは近くの星で、視察を行っていた為少し遅れて到着した。

 

「で、何の用かしらパパ?」

 

「俺を呼ぶって事は…何か重大な問題でもあったってのか?」

 

「ええ、それについてはこれを。」

 

フリーザは、予め作成した紙を2人に渡す。

それをみた21号は顔を顰め、反対にターレスは僅かに口角を上げた。

 

「何よこれ…気に入らないわね。」

 

「いいじゃねぇか、俺は賛成だぜ。最近体が鈍りかけてきたところだったからな。それにただ黙って消されるってのは癪に触る。」

 

「…それに関しては賛成ね。で、これに私達も?」

 

21号の質問にフリーザは是と答える。

 

「ま、良いわよ。美味しそうな人がいると良いのだけど。」

 

「あ、食べるのは禁止ですよ。」

 

「えー。」

 

「俺もいいぜ。せっかくチームが元に戻ったのに消されたんじゃ溜まったもんじゃねぇからな。」

 

「ええ、では2人は準備の程を。私は最後の1人を迎えに行ってきますので。」

 

そして、フリーザはブロリーの元へ瞬間移動。

残された2人もまた語る時に備え、訓練室に向かい軽く手合わせを開始したのだった。

 

 

♠︎

 

 

「私は反対だよ!」

 

「お、おいチライ…。」

 

ブロリーの元へ瞬間移動したフリーザ。

近くにいたチライ、そしてレモにも事情を説明し、参加を要請をしたものの

それにチライは猛反発。

レモが必死に宥めるもチライは止まる事を知らない。

 

「ブロリーはアンタも知ってるだろうけど優しくていい奴なんだ!戦う事なんて出来る訳無いじゃないか!?」

 

「…私達が負ければ宇宙が消滅するとしてもですか?」

 

「…それは。」

 

フリーザが感情のままに叫ぶチライに改めて敗北した後の運命を告げる。

チライはそれを受けて沈黙する。

だが、どうしてもブロリーに危険な目にあって欲しくないと言うのはその様子から伝わってくる。

 

しかし、それを聞き沈黙していたブロリーが口を開く。

 

「…わかった。俺も出る。」

 

「!?で、でもアンタ……!!」

 

まさかの宣言にチライは驚く。

ブロリーはそれを穏やかな笑みと覚悟を決めた目で見つめる。

 

「確かに、戦うのは、苦手だ。けど、チライとレモ。それにバア。…そしてフリーザが消えちゃうのは…もっと嫌だ。」

 

「……そっか。アンタがそう言うならアタシは止めないよ…けど、出るからには思いっきりやってきな!!」

 

「うん…!!任せて…!!」

 

「俺から言える事は少ないが…まぁ、そうだな…出るからには勝ってこい!」

 

「うん!!」

 

「話は纏まった様ですね。」

 

「あ、えっと……ご、ごめんなさい。フ、フリーザ、様。」

 

「いいえ、まぁ次はありませんよ?」

 

「は、はぁ〜い。」

 

チライはブロリーに覚悟をしっかりと受け止めて、応援。

レモはもう何年もブロリーと共に過ごした事もあり親の様な気持ちでブロリーを送り出す。

そして、フリーザが声を掛ければチライはすごすごと謝る。

ともあれ、これでフリーザ軍の4強が揃い準備は完全に……。

 

「そこまでだ。」

 

その時、フリーザ達の周りを黒ずくめの男達が包囲した。

 

「……何者です?」

 

フリーザはその正体を知ってはいたがあえて尋ねる。

その正体は第9宇宙からの刺客。

大方、ビルスの動きを観察し最も厄介になる者でも排除しに来たのだろう。

フリーザが周りを見渡せば辺りは温い殺気だらけ。

これならば大した時間も掛けずに終わるだろう。

 

「貴様に名乗る名は無い。貴様達をここで始末する。」

 

「ほう、随分と大きな口を叩きますねぇ雑魚の癖に。」

 

「……ほざけ!!」

 

リーダー格と思わしき男が叫ぶと男達は一斉にフリーザ、そしてブロリーへと

押し寄せる。

フリーザは片手の念力でチライとレモを防御する膜を創り出し、そこから出ないように告げる。

 

「さてと、軽いウォーミングアップといきましょうか。」

 

「うん…オオオオオオオオオオ!!!」

 

フリーザが首を鳴らしながらブロリーへと視線を飛ばせばブロリーは大猿の力を解放しそのまま前方の敵を薙ぎ払っていく。

 

「ひいぃ!!?」

 

「な、なんなんだぁアイツはぁぁ!!」

 

「ひ、ひとじ…ギャァァァァァ!」

 

ブロリーの剛腕の前には刺客達など紙屑にも等しく、刺客達は次々と吹き飛ばされ地面へと埋め込まれていく。

その際でフリーザは一歩も動く事も無く既に観戦状態に入ってしまっていた。

 

「おやおや、これでは私の出番はありませんねぇ…ホッホッホ。」

 

「油断したなぁ!喰らえぇぇ!!」

 

そんな隙だらけのフリーザを目掛けてリーダー格が第9宇宙の破壊神たるシドラから授かった破壊のエネルギーを投げつける。

だが。

 

「ふむ。」

 

フリーザはそれを見ること無く容易く受け止めた。

 

「……………へっ?」

 

絶対であった筈の破壊のエネルギーが容易く受け止められた事の衝撃で脳がオーバーヒートを起こしたリーダー格の男はそのまま唖然とその光景を見つめていた。

 

「そら、返しますよ。」

 

「あ…。」

 

そして、ボールのように投げ返された破壊のエネルギーはその男に直撃し

彼が持っていた水晶ごと完全に消滅した。

 

それと同時にブロリーの方も完全に終了したようでフリーザの隣にブロリーが大人しく待機していた。

フリーザは膜を解除し、ブロリーを見上げる。

 

「…終わったよ。」

 

「ご苦労様です。では、行きましょうか。」

 

「うん、チライ!レモ!行ってきます!!」

 

 

「「いってらっしゃい!!」」

 

2人の激励を耳にしながらブロリーとフリーザは惑星フリーザへと帰還。

スパーリングを終え軽く汗を流した21号ととある作業を終えたターレスを引き連れ地球へと瞬間移動した。

 

 

地球へと到着した4人の前には地球から選ばれた悟空、ベジータ、悟飯、ピッコロ、人造人間18号と人造人間17号といったメンバーが立っていた。

 

「あれ、ビルス様が言ってた残りの4人ってやっぱオメェ達かぁ、ひゃぁ〜久しぶりだなぁフリーザに21号に…ターレスまで!!」

 

「ふん、やはりそうか…おい、お前もサイヤ人だな。」

 

「…ブロリー。」

 

「成る程…フリーザの奴もまだこんな奴を隠していたとはな。」

 

悟空、ベジータの2人は比較的予想していたメンバーが来た事に納得し。

悟飯、ピッコロは相変わらずの警戒心。

18号は変わらずだったが17号は新たな人造人間に驚いていた。

 

「へぇ、Dr.ゲロの奴まだこんな人造人間を作っていたとはな。」

 

「勘違いしないで、私を造ったのはそこにいるパパよ。あんなジジイの手じゃないわ。」

 

「パパねぇ…ま、いいさ。今回は味方だ。よろしく頼むぞ。」

 

「ふん。」

 

あらかた顔合わせが終わり、力の大会の開始時間が近くなったのを確認してウイスが告げる。

 

「はぁい、それでは出発しますよ。」

 

そうして、ここに10人は集結し無の界へと転移した。

 

様々な強豪が揃いたつ力の大会まであと少し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・第七宇宙
これが最強メンバー、とはいかない。
変な軋轢を考えなければ18号を抜いてスラッグが入れば完璧である。
人間レベルは暗黒魔界やヘラー一族などが軒並み消滅、フリーザだけが残っているので多少は上がっている。ただし統べているのが悪なのでそこはマイナス。

・ジレン
公式最強枠、破壊神より上の実力は伊達では無く
身勝手の極意がなんだと言わんばかりに悟空を圧倒した猛者。
今作においてもその強さは揺らぐ事は無いが…果たして。

・全王
2人に増えて、大神官を困らせる。


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開戦

各陣営の準備が終わり、各々の準備が整う。

舞台は闘志で高まり、緊張感が走る。

そんな我らが第七宇宙のリーダーは孫悟飯であるがそれはあくまで建前上のもの、唯我独尊を貫くサイヤ人が半分を占めるこのチームにチームワークは不要でありそれ自体は悟飯もよく把握している。

 

よって、戦法はたった一つ。

自由に戦い、そして勝つ。これに限る。

そんな訳で悟空、ベジータ、ターレスは独自で動き、悟飯とピッコロ、17号と18号はタッグで。

フリーザ、ブロリー、21号が3人組で動く。

 

そんな中フリーザは発端である孫悟空に敵意が向いている以上第七宇宙は積極的に他宇宙に狙われる事を予見し短期決着を目標に定める。

そして21号に耳打ちをして作戦を伝え、21号は了承。

 

それと同時にして大神官が声を発する。

 

「力の大会…始め!!」

 

その宣言と同時に、誰かが地面を蹴り爆音と共に選手達の攻防が始まる。

その瞬間フリーザは世界最高硬度であるカチカッチン鋼を容易く切断し、念力で浮かせその上に乗り上空から無数の気弾を敵にのみ正確に撃ち込み続け次々と敵を落としていく。

威力は雑魚がいる事も見越して精々が魔人ブウの純粋悪に重傷を与える程度。

戦闘力がインフレ特急のこの世界においてこれぐらいならばきっと耐えられると見越した一撃である。

当然の事だがどんなに雑魚であろうとも重傷にこそなれども死亡する事は決してないように調整はしてある、よって失格する事は無い。

そんな横暴を阻止せんと地上から跳躍しようとする戦士達もいたがそんな事は出来るはずが無い。

 

なぜならば。

 

「アハ!!」

 

「アハハ!!!」

 

「アハハハ!!」

 

「オオオ!!!」

 

3体に別れた21号と大猿の力を解放したブロリーがそれを阻止せんと大暴れしており並みの戦士では近づく事が出来ないからである。

勿論、彼らとて選ばれた戦士。

第2宇宙の瞬間移動の使い手であるジーミズはフリーザに接近できたし

近づくのは愚かと言わんばかりに遠くからフリーザを狙う者もいる。

それは当然だ、何しろわかりやすいマトを見て撃たないような馬鹿はここにはいないのだから。

 

しかし、それだけだ。

 

仮にフリーザに接近してしまえば張り巡らされた無数の糸に全身を縛られてそのまま場外へと投げ飛ばされる。気弾もまたその糸に阻まれ霧散する。

フリーザが一瞬止まり、再び爆撃を開始しようとしたその時。

 

「フン……!!」

 

鬱陶しいと言わんばかりに放たれたジレンの拳圧がフリーザの糸を簡単に引き裂き、切り抜かれた地面を破壊する。

だが、糸のお陰もあってかダメージは存在せずフリーザは落下しながらその破片の全てを念力でジレンに向かって掃射する。

が、ジレンは目力だけでその全てを破壊。

僅かに目を細めた後、興味を無くしたようにその場で再び瞑想を開始した。

 

そんなジレンの危険性を改めて把握したフリーザが地上へと降り立った時、残っていた選手といえば。

 

第2宇宙はプランが反撃を諦めその身を呈して乙女達を守った事で乙女達とプランが残留。プランは乙女達3人分の気弾をモロに喰らった為にダメージは大きくもう戦う事は不可能だろう。

そして、その他は気弾が直撃し脱落。

残り人数4名。

 

第3宇宙はマジ・カーヨの守りによりペパロニ、コイツカイ、パンチア、ボラレータといったメンバーが残り他は脱落。

残り人数5名。

 

第4宇宙は散々でありもう後がなくなってしまった。

極小の体躯であるダモンや透明人間のガミザラスといった幸いにも避けられた者のみが生き残り他はみな対抗策を取る前に気弾が直撃し脱落。

これには破壊神であり外道であるキテラもドン引きである。

残り人数2名。

 

第6宇宙はその逆である。

結局あの大会では未知のままであったフリーザの実力をシャンパが懸念し

入念な下調べをヴァトスに命じた所、手段を問わない悪党だという事を掴み

何があっても不思議ではない事を事前に伝えていた事が功をなしDr.ロタ、ボタモ以外の全ての選手がフリーザの爆撃から身を守る事に成功する。

その功績には歴戦の暗殺者たるヒットの時とばしや天武の才があるカリフラの機転、防御ならば随一たるマゲッタの防御があった事は間違いない。

残り人数8名。

 

第9宇宙はもう崩壊寸前だ。

『トリオ・デ・デンジャーズ』は必死こいて何とか傷を作りながらも回避出来たものの後は纏めて場外へ一直線。

しかし、そのデンジャーズの1名バジルは機動力の足を重点的に焼かれて絶対絶命。

他の2人も悲惨な姿を見て完全に戦意喪失しかけている。

破壊神や界王神はその光景にもう終わったと一種の諦めを感じていた。

それもそのはず、水晶から見ていたあの襲撃においてシドラの破壊すら退けたフリーザの一撃をギリギリまで揃わなかった荒くれ者が防げるはずも無い。寧ろ良く残ってくれたと感動すらしていた。

残り人数3名。

 

第10宇宙は九死に一生という有様。

第10宇宙でも随一の戦士であるオブニはその気弾を弾く事が出来たものの

ムリチム以外の戦士達はその一撃で容易く吹き飛ばされそのムリチムもダメージは大きい。

よって、もう無事なのはオブニしかいない。

残り人数2名。

 

第11宇宙は流石に強者揃い。

ジレン、そしてディスポは完全に無傷。

トッポは僅かに手傷を追うも戦闘に支障はない。

「将軍」たるカーセラルや異空間を操るココットは判断が間に合わず

戦闘に多少は影響が及ぶ程の手傷を負った。

意外なのはクンシー、彼は偶然にもディスポが近くにいた為に無傷のまま無事に凌ぐことができた。

だが、他のメンバーは総じて脱落。

残り人数6名。

 

 

総数40名。

それが示すのはこの僅かな時間に半数の40名が脱落したという事であり。

 

ーーここからが、真の強者のみが生き残りをかけて闘うという事。

 

 

それを残る全選手が無意識的に肌で感じとり1人、また1人と闘志を増し戦闘は激化する。

他宇宙の神達はフリーザのこの行動を予想していたのか否なのかは知らないが差異はあれども非難の目をするがその全てをフリーザは鼻で笑う。

 

これはいくら場外負けだというルールであっても生存を賭けた戦争だ。

弱い者は、自らが手を下さずとも勝手に落ちるのだから自分が下しても問題は無いだろうに。

 

そう、心の中で吐き捨てた。

 

そんな中、純粋サイヤ人たる孫悟空やベジータ、ターレスはその肌で真の強者の気配をビリビリ感じ取ったのかその笑みは獰猛さを増しそのまままだ見ぬ敵へと突撃していく。

 

悟飯、ピッコロ、17号、18号は僅かな嫌悪をしながらもまずは敵を優先せんと先ほどのメンバーのままで行動し悟飯とピッコロは同じナメック星人であるサオネルとピリナ。

17号と18号は、カーセラルとココットに接近し戦闘を開始する。

 

魔人ブウとコメソンの応用である分身を解除し再び1人に戻った21号

そして、大猿の力を解放したブロリーはというと。

 

「あら?また、私にやられにきたのかしら?」

 

「今度は、そう上手くいくと思うな。」

 

「おっと、この俺も忘れちゃ困るぜ。第6、そして第7宇宙の戦士よ!この超速のディスポ様に追いつけるかな?」

 

「ふぅん。ま、いいわ。さぁ…楽しい楽しい狩りの時間を始めましょう!」

 

21号は少し前に闘った強敵であるヒット、そして超速の戦士であり第11宇宙のNo.3であるディスポとの三つ巴の戦いを開始。

 

 

「アンタ、強えな!いっちょアタシと戦いな!!」

 

「あ、姐さん……危ないよ…。」

 

「そうですよ!カリフラさん!僕も戦います!」

 

「…こい。」

 

ブロリーは、第6宇宙のサイヤ人全員を相手取る。

 

そして、フリーザの目の前には。

 

「良くもやってくれたわね!醜い貴方に!」

 

「私達が!」

 

「愛を教えてやるわ!!」

 

「はぁ…やれやれ、私の周りにはどうしてこう…ま、いいでしょう。

かかってきなさい。」

 

第2宇宙の最後の砦である乙女達が立ち塞がり、真の戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





紹介コーナー。

・フリーザ
初手MAP攻撃は基本。
とはいえ、小手調べなので威力は控えめに。
因みに本気でやれば、残るのはジレンとディスポだけになる。
これは酷い。

・21号
3体に分裂したのは、純粋悪の魔人ブウがアニメでやった分裂を
コメソンの力で応用を加え、本体が死なない限り一つの生命として永遠に復活するという複合技。因みに今の段階でもジレンにボコられる。

・ブロリー
大猿パワーで、周りを圧倒できる成長力の鬼。
戦闘すればする程、強くなるのは健在。

・ビルス
勝ったな、プリン食ってくる。

・ジレン
まだ動く時ではない。


力の大会残りメンバー。

第2宇宙
リブリアン
ロージィ
カクンサ
プラン

第3宇宙
マジ・カーヨ
ペパロニ
コイツカイ
パンチア
ボラレータ

第4宇宙
ダモン
ガミザラス

第6宇宙
ヒット
カリフラ
ケール
キャベ
マゲッタ
フロスト
サオネル
ピリナ

第7宇宙
変動なし。

第9宇宙
ベルガモ
ラベンダ
バジル

第10宇宙
オブニ
ムリチム

第11宇宙
ジレン
トッポ
ディスポ
カーセラル
ココット
クンシー

総数、残り40名。


このメンバーは作者が印象に残ったキャラかつ、何かしらの戦績を挙げた者だけを残しています。
流石に80名を書き切るのは厳しいです。
ご了承を



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大混戦

武舞台に3つの閃光がぶつかり合う。

ヒットが時とばしでディスポを殴れば、21号がヒットを尻尾で弾きとばす。

 

「アハ!」

 

「くっ…!」

 

「ば、馬鹿な!!?この俺の最高速に追いつけるだと!?」

 

速度で言えば、既に『超最高速モード』へと気の質を上げたディスポが一番であり、その速さは流石全宇宙一の速さであると賞賛せざるを得ない。

だが、そのディスポの前に立つのは叡智の結晶たる21号と速度という概念を無視できる時の支配者たるヒット。

 

成長力がバケモノたる両者は最高速であり本来ならば人である以上目で捉えられる筈も無い速度のディスポすら各々の対策方法で攻略しつつあり。

時間が経つにつれ、速度で勝るディスポの弱さが露呈していく。

 

「へぇ…あなた速いくせに、威力は大した事ないのねぇ?」

 

「…成る程、お前の強さは大体わかった。」

 

「な、なんだとぉ……!?」

 

その言葉にディスポの額から冷たい汗が流れ出す。

なぜならばそれが真実ならばディスポの事実上の詰みが確定してしまうから。

 

元々21号は魔術でヒットは時を操るというテクニックがあるのに対し

ディスポには純粋な速さだけであり、その為パワーでいえばこの場の3人で最弱である。

故に、元々攻撃が中々当たらないヒットは勿論。

魔人ブウの細胞により衝撃を吸収しダメージが殆ど通らなくなっている21号の肉体にはほんの少ししかダメージが与えられないのだ。

 

例えるならば、100のダメージの攻撃を繰り出しても相手には10しか喰らわないのと同じ。

そんな中速さまでもが見切られてしまえばディスポの勝機は完全に失われる。

 

だが、そんな事で諦めるディスポでは無い。

プライド・トルーパーズのメンバーとして、No.3としての誇りに掛けて。

そして。

 

ーーあの孤独な男に仲間と認められる為に。

 

自身が弱いなど承知の上だ、だがそれがどうした。

弱者に弱者の強さがあるという事を眼前の奴らに思い知らせてやる!

 

「…だから…だからどうしたっ!!」

 

ディスポの姿が掻き消え、21号とヒットの周りを無数のディスポの残像が囲み一斉に襲いかかる。

だが、ヒットは別空間に潜んでいる為攻撃が当たらず

21号は既にその速さを見切り涼しい顔で全て避けていく。

 

「はい、捕まえた。そぉれ!!」

 

「うぉぉぉ!!?」

 

そして、その腕を尻尾で掴み取りヒットの元に投げつける。

同時にヒットの一撃が吹き飛ぶ勢いにプラスする形で水月へと刺さる。

 

「ご……ぉ…!!?まだ……まだぁ……!!!」

 

襲い来る吐き気、朦朧としつつある意識を気合いで押さえ込み

せめて道連れにと残る力の全てを使って21号へと突進するがその抵抗も虚しく悪質な笑顔を浮かべた21号の魔術で身体の全てが硬直させられた後尻尾で身体を巻き取られそのまま投げ捨てられる。

 

(すまねぇ…すまねぇ…ジレン…!!俺はっ…!!)

 

口も動かせないまま吹き飛ばされるディスポの目に映るのは瞑想を続けるジレンの姿。

ジレンは目を一瞬開き飛ばされていくディスポと目が合うも興味がないように…いっそ無関心にも等しい様子で直ぐに目を閉じる。

 

その様子にディスポは涙を流しながら場外へと落下。

 

「第11宇宙、ディスポさん脱落です。」

 

そんな無情な大神官の報告が武舞台に響き渡り

それと同時に21号とヒットが不敵に笑い合い、直後ぶつかり合った。

 

♠︎

 

一方、カリフラ達と対決しているブロリーは。

 

「テメェ……ナメてんのかぁ!!!」

 

武舞台にカリフラの怒号が響く。

それもそのはず。ブロリーはいくら攻撃を喰らおうとも一度も反撃をしていないのだから。

既に超サイヤ人となったカリフラとキャベがいくら全力で打撃を、気弾を喰らわせようともブロリーは身動き1つもせずに不動のまま、身動きもせずにそこに立っているだけ。

 

それに完全に怖気ついたケールは近くの破壊された岩場に膝を丸めて震えてしまっている。

 

「…これで、わかっただろう。武舞台から、降りてくれ。」

 

「ナメやがって……!!」

 

「落ち着いて下さい…!!」

 

「どけっ!!」

 

第6宇宙の中でも気性の荒い性格であるカリフラにとってブロリーの態度はとことんまでにイラつくものであり、キャベの制止も最早聞く耳を持たないまま再びその気の荒ぶるままに猛進しブロリーにラッシュを叩き込む。

 

だが、それでもブロリーの強靱を超えた肉体には傷どころか打撲痕すら残らない。

それどころか、カリフラの拳が徐々に傷つき皮が剥がれ血が滲み出してくる。

それと同時にしてカリフラから悔しさで涙が溢れ出す。

 

「くそっ!くそぉぉ!!」

 

「……わかった、もう終わりにしよう。」

 

「なっ……」

 

ブロリーは自身の肉体にカリフラの血がつき始めるのを見てこれ以上この戦士が傷付かないように決着をつける覚悟を決める。

未だ殴り続けるカリフラの腕を掴み、その豪腕をもって振り回しそのまま岩場に向かって投げつける。

 

「ごっ……!!?」

 

その余りの速さにカリフラは抵抗する事も出来ずに岩場に激突し気絶。

そして、その岩場に亀裂が走って崩壊しそのままカリフラは糸が切れた人形のように地面へと落下していく。

 

「カリフラさん!!くそぉぉ!!」

 

それをただ唖然と見ていたキャベは岩場が崩れる音と共に正気に戻り

激昂のままブロリーにラッシュし、効かないと分かると気弾を連射する。

 

「だだだだだだだ!!!」

 

だが、煙が晴れた先には無傷のブロリー。

それに完全に不利と判断したキャベはカリフラを救おうとその場から離れようとするが直後ブロリーの丸太のような豪腕から繰り出されるラリアットがキャベの顔面に直撃。

そのままの状態のままブロリーは走り、岩盤へと叩きつける。

 

「……終わりだ。」

 

「ぐっ…がっ…ぐっ……。」

 

2度、3度と顔面を押し付けられキャベは超サイヤ人が解け気絶。

そのまま、ブロリーの手によって場外へと静かに落下していった。

 

「第6宇宙キャベさん、脱落です。」

 

そしてブロリーは気絶しているカリフラの元へと向かおうとして

 

「やめて……これ以上姐さんを傷つけないでっ……!!」

 

両手を広げて震える足になりながらも必死に気絶するカリフラを守ろうとするケールに阻まれる。

 

「……。」

 

ブロリーは、しばしその場を動かずにいたがやがて次の敵の元に向かおうと

ケールに背中を向けて走り出した。

 

そして、ブロリーが去ったのちケールは腰が抜けたのかぺたりとその場にへたり込みカリフラが目覚めるのを待つのだった。

 

 

♠︎

 

フリーザと乙女達の勝負は一方的なものとなっていた。

人の目の前で変身する阿呆かと思いきや

急に愛がどうとかを述べられた挙句、やってる事は卑怯殺法の連続というなんとも矛盾のきいた芸にも関わらず、第2宇宙の席では美しいと喚く芸人集団にフリーザは飽き飽きしていた。

 

「はぁ…はぁ…どうして!?どうしてあなたには私達の愛が通じないの!!?」

 

「……はぁ。もうお遊戯会はおしまいです。さっさと本気になってはいかがでしょう?」

 

「なっ…!!私達の渾身の愛が…お遊戯!?お遊戯ですって!!?」

 

「あったまきた!!リブリアン!私達のパワーを!!」

 

「受け取って!!あの醜い悪を倒すのよ!!」

 

乙女2人と第2宇宙の愛とやらのパワーがリブリアンに集中しリブリアンは巨大化。

 

「……はぁ。どうやら口で言ってもわからないお馬鹿さんだけしかいない宇宙のようですね。…そこのあなた達もそうは思いませんか。」

 

もう、乙女3人に興味すら無くしたのかフリーザは漁夫の利を狙おうとしていたガミサラスとダモンを気の膜で包み込み念力でこちらに運ぶ。

 

「……!!」

 

「……!!」

 

「あぁ、申し訳ありません。どうやら私の耳では聞こえないようです。では、第4宇宙さん。左様なら。」

 

そのまま、ゴミを捨てるようにフリーザはその2匹を場外に投げ捨て2匹は脱落。

大神官の宣言と共に2人の全王が拳を握り第4宇宙はここに消滅と相成った。

 

それと同時に巨大化が完了したリブリアンがフリーザを見下ろす。

 

「さぁ!これが愛の力の全て!!私こそが愛の女神よ!!」

 

その宣言のままリブリアンは拳を振り下ろす。

だが。

 

「……はぁ。」

 

ため息混じりに放ったフリーザの拳はリブリアンの拳ごとリブリアンを吹き飛ばしそのままフリーザは岩場を蹴って、ふらつくリブリアンの下顎を完全に蹴り飛ばす。

強烈に脳が揺さぶられたリブリアンは白目をむき気絶。

縮小化と共に変身が解除されその状態のままフリーザに脇腹を蹴飛ばされて場外に。

力を使い果たし変身が解除されたカクンサとロージィもまたフリーザの片手間に放たれた気弾に巻き込まれて場外へ一直線。

 

フリーザはそのままダメージが大きいプランの元へ向かい首を掴み。

 

「そぉら!!」

 

そのまま場外へ投げ捨てる。

これにより第2宇宙の戦士達は全て脱落し、全王の手によって消滅した。

 

その様子を呆れたように見つめフリーザは吐き捨てる。

 

「愛、愛と忌々しい…あの方達はどうやら戦争をお遊戯会と勘違いしていたようです…ま、どうせ生き返るのですから精々反省するといいでしょう。」

 

そう吐き捨てたフリーザの背後から拍手の音が響く。

 

「流石、あの破壊神が警戒する事だけはありますね。私も同族としてかくあるべきかと感動してしまいましたよ。」

 

「おや、あなたは…。」

 

フリーザがその音に振り向けば、そこにはフロストとマゲッタの姿。

フロストの顔には胡散臭い笑みが貼り付いておりマゲッタのその隣で静かに佇んでいる。

 

「あの時はご挨拶が出来なかったので改めて…私の名前はフロストと申します。」

 

「…で?そのフロストさんがこの私に何の用で?」

 

「単刀直入に言いましょう…私達と手を組んで頂きたいのです。フリーザさん?」

 

 

♠︎

 

「ジレン!!オラと戦え!!」

 

暗躍が発生しつつある一方で悟空はマジ=カーヨを拳圧だけで吹き飛ばしたジレンの元へと辿り着き勝負を挑む。

ジレンは悟空へとその身体を向け、悟空へと近づいていく。

悟空は近づいてくる程に感じるジレンの圧に冷や汗を流し最初からブルーへと変身する。

 

「……む。」

 

その変化にジレンの目が僅かに驚きの色を見せるがそれだけでジレンはそのまま悟空の眼前に立った。

 

「……へへっ、行くぜぇ!!」

 

 

そして、ベジータは既にブルーに変身してトッポと戦闘を開始していた。

 

「ジャスティス!フラァァシュ!!」

 

「だだだだ!!」

 

赤と蒼の気弾同士がぶつかり合い宇宙最高硬度な筈のカチカッチン鋼はあっさりと

砕け散る。

 

「我らが正義!お前を倒して果たさせて貰う!!」

 

「正義、正義と煩い奴だ!!」

 

 

ターレスは第10宇宙最後の戦士達であるオブニとムリチムを同時に相手取る。

ターレスは既にブルーツ波を全開に浴びてきた為超サイヤ人4に変身。

オブニの能力である体の動きと気の流れを変えられる事など知った事では無いと第10宇宙でも屈指である程の屈強な男達の攻撃をその大猿の力を存分に発揮する肉体で封殺し純粋なパワーによって圧倒していた。

 

「へっ…跪けば痛い目を合わずに落としてやる…どうだ?」

 

「はぁ…はぁ……断る!!」

 

「そうかよ!!」

 

 

17号、18号は逆に苦戦する形だ。

いくらフリーザによって手傷があっても彼らはプライド・トルーパーズの中でも強く、更にクンシーの参戦もあって一向に手が出せないまま戦いはカーセラル達の優位に傾きつつあった。

 

純粋な強さではカーセラルがこの5人の中でも頭一つ抜けており次点で17号である。

そして、極めつけに3対2という状況の中2人は追い詰められていた。

 

「くっ…どうするんだい17号。このままじゃ…。」

 

「あぁ…だがやるしか……いや、もうその必要も無いみたいだ。」

 

17号が遠くに見つけたのはこちらへと地鳴りを鳴らしながら近づいてくるブロリー。

 

「オオオオ!!!」

 

「なっ、クンシー!!」

 

カーセラルの指示によりクンシーの糸がそこら中に撒き散らされ、ブロリーがそれを踏んで爆発を起こす。

だが、

 

「オオオ!!フン!!」

 

「なっ……ごぉ!!!?」

 

ブロリーはそれを突っ切ってクンシーに強烈なパワーを持って殴りクンシーはその痛みに耐えきれないのか蹲ってしまう。

 

「クンシー!!おのれ!第7宇宙め!!」

 

クンシーが殴られ怒るカーセラルはそのまま気の刃を放出させブロリーの方へ向かってしまい。

17号と18号は余裕をもってココットの方に集中できる事となった。

 

「形勢…」

 

「逆転ってやつだね。」

 

「くっ……!!」

 

 

果たして勝利の栄光は誰の手に渡るのか。

それは、この場にいる破壊神や天使ですら予想は出来ないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





紹介コーナー

・フリーザ
新たに6人を撃破し、第4、第2宇宙はここで消滅。
ただいま交渉中。

・21号
図らずもヒットと共にディスポを撃破。
ヒットとの最終決戦へ。

・ブロリー
心優しい彼は時に残酷な兵士に見えてしまうという皮肉。
とはいえ、キャベとクンシーを撃破しカーセラルとの戦闘に臨む。

・悟空、ベジータ、ターレス
それぞれ強者との戦闘を開始。

・ビルス
今夜は枕を高くして眠れるし、暖かい風呂にも入れると天狗になっている。

・ジレン
始動。



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戦士降臨

突然の共闘をフロストから持ちかけられたフリーザは腕を組み僅かな時間思考する。

先ずはフロストと組むことによるメリット。

 

……ない。ベジータ如きにやられる雑魚が役に立つとは到底思えない。

 

では、デメリットは。

…ある、大いにある。それは部下や駒を失う可能性があるという事。

フロストがいつ裏切るかわからない以上、組むとするならば首輪をつける事は確定なのだがそれを踏まえても奴はどこかで必ずフリーザや21号、ブロリーといったフリーザ軍、悟空、ベジータといった地球軍を一片の躊躇もなく狙ってくるだろう。

 

まぁ、あの程度の実力ならば誰に向かっても致命傷になりえるのだが、中途半端な力を持っている奴ほど力の差というやつをこれっぽっちも理解していないのが普通だ。

 

では、どうするか。

 

フリーザは、そんな思考を僅か1秒にも満たない思考で弾き出し答えを出す。

 

「……いいでしょう。ですが、そこのマゲッタさんを落としなさい。それが条件です。」

 

フリーザは悪意たっぷりのいい笑顔でそう告げる。

 

「なっ……。」

 

これにはフロストも予想外だったようで、苦渋の表情を浮かべる。

因みにマゲッタは特製の耳栓をつけていてこれらの会話は一切通じていない。

哀れ、マゲッタは知らずの内に自身の命をベットされているのだ。

 

「何を迷う必要があるのですか?あなたが私と組むという事はあなたが住む第6宇宙を裏切り、第7宇宙のスパイとなるという事だとまさか予測していなかった事はないでしょう?なんといってもあなたは私と同類。裏切りはお手の物でしょう?さぁ!」

 

フリーザにとってこれが前提条件。

フロストの逃げ道を完全に自らの手で断たせる事によってフリーザに逆らって場外に叩き落とされようともそれはフロストの自業自得だという証明になる。

これは別に断っても承諾しても別に構わない。

断ればこの場で叩き落とすしその為の準備は済ませてある。

承諾すればそれはもうフロストはフリーザの奴隷だ。

それが示す答えはフロストの人生の詰み。

断っても承諾してもフロストだけは全王か裏切りに怒るシャンパかの破壊による消滅を避けられない。

 

フロストの最大の敗因はフリーザを完全に同格と侮った事。

フロストは所詮弱い星で威張りちらすだけのチンピラで、フリーザは第7宇宙のほぼ全てを治めた帝王。

器も力も完全にフリーザはフロストの上位互換、フロストはそこに気付かなかった時点でこの結末は確定していたのだ。

 

そしてそんな事はつゆ知らずにフロストは暫く悩んだ後に

 

「マゲッタさん…私の為に落ちろ!!」

 

「ポッ!!?」

 

まさか裏切る筈はないと確信し油断しきっていたマゲッタに対し尻尾を叩きつけ場外へと落とす。

運がいいのかそれとも悪いのかその行為はシャンパの目に入る事は無かったが

天使であるヴァトスはそれをしっかりと見ていたのでシャンパがマゲッタの落ちた原因を聞いたその瞬間がフロストの命日だろう。

 

「はぁ…はぁ…こ、これでよろしいですか!!?」

 

「ええ、よろしくお願いしますよ?フロストさん?」

 

逃げ道を失ったフロストはこれによりフリーザとの同盟を結ぶことに成功する。だが、フロストの首には確かにフリーザによる首輪が付けられたのだった。

 

「では、手始めに残りの雑魚どもを落としに行きます。後に続きなさい。」

 

「は、はい…。」

 

そうして、決して逃げる事の出来ない状況に追い込まれたフロストはフリーザの指示に犬のように追従する事となったのだ。

 

 

 

「ひぃぃ!!ま、待ってくれ!俺たちはアンタらに何も……!!」

 

「恨むなら、こちらに何の断りも無しに攻め入ったお馬鹿な破壊神と界王神を恨むことですね。」

 

「ひぎゃぁぁぁぁ!!!?」

 

「ぎゃあぁぁ!!?」

 

先ずは、ひそひそと膝を抱えて隠れていたトリオ・デ・デンジャーズを一掃。

これにより第9宇宙が消滅し残り宇宙は後5つとなった。

次に、残った第3宇宙のメンバーを叩きに向かったが。

 

「我が宇宙の存続の為!負けるわけにはいかん!!コイツカイ!パンチア!ボラレータ!行くぞ!我らが力をここに示す時だ!」

 

既にフリーザ達を待ち構えていた科学者のような白衣を纏ったパパロニが叫ぶと、他3名は自らのパーツを変形させ合体。

更にその胸部の部分にパパロニが吸い込まれていく。

 

「フハハハハ!!我らが最高傑作アニラーザの力を思い知れぇ!!」

 

笑い声と共にパパロニは吸収され、高密度のエネルギーがそこに集まる。

それが晴れた先にいたのは白の巨大な化け物。

 

「グォォォ!!!」

 

「…ほう?」

 

空気を揺らす咆哮を上げ、その合体戦士であるアニラーザはフリーザとフロストに襲いかかり、その地面から爆風が巻き起こった。

 

♠︎

 

一方でブロリーはというと。

 

「オオ!!」

 

「なにぃ!!?ぐぉぉ!!?」

 

カーセラルが繰り出す気の刃を物ともせず、その鋼の肉体を存分に使用したタックル、そこから胸に気を溜め込んで気弾を爆発させる。

そこから、仰向けに倒れたカーセラルの足を掴んで左右に叩きつけトドメに上空へと放り投げ、自身も跳躍。頭を掴んで叩き落とす!

 

「あ……あ…。」

 

玩具のように振り回され叩きつけられたカーセラルはそのまま昏倒、そのままクンシーと共に場外へと投げ捨てられる。

 

「……ふぅ。」

 

必要以上に気を高ぶらせたブロリーは一旦落ち着くべく、一度大猿のパワーを解除し息を整える。

そのついでに周りを見渡せば、丁度17号と18号がきょうだいならではのコンビネーションでココットを翻弄し場外へと落とす姿。

 

同時にターレスの気が一瞬爆発的に上がったかと思えばボロボロになったオブニとムチリムが空へと吹き飛ばされる姿と白い巨人が出現する瞬間を目撃する。

 

これに伴い、第10宇宙が消滅。

残る宇宙は第3、第6、第7、第11の4つのみとなった。

 

白い巨人に驚くブロリーの元に17号と18号、先程決着をつけたターレスと

ピッコロ、悟飯が集結する。

 

「あれは……。」

 

「これはまた、随分とデカい奴だな。」

 

「言ってる場合かい!」

 

「だが、あの大きさならば武舞台ごと俺たちを落とす事もありえるかもしれん。

残り人数も少ない中俺たちだけが全員脱落していない状態だからな。」

 

「…そうですね。急いであの怪物の元に向かいましょう!!」

 

「悪りぃが俺は別行動させてもらうぜ、あっちの援護もしてやんねぇとなぁ?」

 

「わかりました!父さんとベジータさんをお願いします!」

 

そう言うと4人はそのままアニラーザの元へと走り出し。

ターレスは悟空の元へと向かう。

ブロリーは4人の方の援護をせんとその後を追おうとし、走り出そうとしたその瞬間。

 

「……待ちな!!アタシとの…いや!」

 

「私達との勝負は終わっていません!!」

 

ブロリーの背後から超サイヤ2のカリフラとブロリーの体型によく似た超サイヤ人のケールの声が響く。

ブロリーが振り向けばカリフラとケールの手元には緑色の宝石らしきものがついたイヤリングがあり、カリフラは不敵な笑みを、ケールは先程とは違う晴れやかな笑みを浮かべていた。

 

「行くぜ!ケール!」

 

「はい!姐さん!!」

 

そして、2人はそれを耳につける。

その瞬間、2人の体は磁石の様に貼り付きそこから夥しい程の気の高ぶりが発生し可視化される程の気の膜が出来上がる。

 

「「よっしゃぁーー!!」」

 

それが晴れた先に立っていたのは、カリフラでもケールでも無い。

ただのブロリーに挑戦する1人の戦士がそこには立っていた。

 

 

♠︎

 

「はぁ…はぁ…。や、やるじゃない。」

 

「…そちらもな。」

 

21号とヒットとの勝負は互いが互いを刺激し強くなるというインフレの化身のような試合が繰り広げられていた。

試合は正に音速を否、速度を超越した試合。

21号が時を止め、何10発と拳を叩きこめばヒットはカウンターの重い一撃でその攻撃のダメージと同等の威力を叩き込み21号は決して軽くないダメージを負う。

 

手数で攻める21号に対し、一撃をもって勝負を決めんとするヒット。

知らずの内に戦法が逆転しているのに2人は気づく余地も無く、2人が戦っているその場だけは血の色で武舞台が変色していた。

お互いの額から血が流れ出し、一滴地面へ滴り落ちる。

 

その瞬間、21号が仕掛ける。

と、同時に時とばしが発動。飛ばされる時の中での攻防が繰り広げられる。

21号の上段蹴りを防げば、ヒットは懐に潜り込んで流れる様に拳を突き出す。

だが、それは21号の罠。

その部分だけ敢えて穴を作り出しヒットの拳は空を切る。

そのまま顎をアッパーで殴り抜こうとするもバックステップで回避され再び一定の距離を保つ。

 

次に仕掛けるのはヒット、21号は気弾と魔術弾を組み合わせた弾幕を張りヒットの攻撃位置を限定させようとする。

だが、ヒットはほんの一瞬だけ時を飛ばすことであたかも気弾がすり抜けるような形で回避。

そのまま、21号の人中を殴り抜くと同時に21号もヒットの人中を殴る。

 

その威力で2人は仰け反りはしたものの、再び攻めようとして。

確実に当たったはずの21号の拳がヒットが更に加速した事で空を切り、ヒットの拳は正確に21号の急所を打ち抜く。

 

「が…ぁ……!!いったいじゃない!!」

 

怒りのまま首を掴もうとするもヒットの姿は残像となり再び空を掴み、再びヒットの拳が21号を打ち抜く。

 

21号とヒットとの実力差は実はそこまでなく技と技術の勝負となっていたのだが、ここに来てヒットがこの戦いのこのタイミングで新技を開発したのだ。

名を「時ずらし」。

相手の時間だけを切り離し進むスピード、そして認識すらも遅くするという技である。

 

つまりはヒットの速度が爆発的に上昇したのでは無く、21号の速度が爆発的に低下しているのが21号の攻撃が当たらなくなっている事の真相である。

 

その技1つで戦況は大きく変わった。

21号の攻撃が一切当たらなくなるのと比例する様にしてヒットの攻撃は面白い様に直撃するようになり、これには魔人ブウ由来のダメージを殆ど半減する肉体でもダメージを段々と許容できない範囲になっていく領域に達してきたのか少しずつ立つのが辛くなってきたように膝が笑い始める。

 

だが、そんな状況においても21号は冷静に今の状況を分析していた。

ヒットの異常なまでの速度の秘密が何処にあるのか、自身の攻撃が当たらなくなっている原因は何処にあるのか。

攻撃の手を緩めず、しかし冷静に分析するという並列思考をこの一瞬とでもいえる攻防のなかで行なっているのだ。

 

そして弾き出された結論の立証の為に敢えてノーガードで一撃、二撃とヒットの拳の威力を自身の肌で感じるという凶行に出る。

ヒットはそれを不審に思いながらもそこに余裕を感じる事はせずにこの好機を逃さんと勝負に出る。

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

しかし、その攻撃を21号は掴み取る。

ヒットはそれに驚愕し振り解こうとするも21号は拳を変形させヒットの拳を包み込む。

 

「捕まえた♩」

 

そして、そのまま拳を5発ヒットに叩きこんだ後回し蹴りでヒットを蹴り飛ばす。

 

「謎は全て解けたわ。そして…こうね!」

 

21号の腕から魔法陣が現れ、ヒットの動きがまるで何分割したような遅さへと変わっていく。

何の事はない。21号が検証していたのはヒットの攻撃の威力の変動だ。

ヒットのようにパワーもある戦士ならば、速度が爆発的に上昇したと21号が認識している状態では攻撃の威力は劇的に変化するはずであり、実際ヒットの成長を感じながら戦ってきた21号にとってはそれは把握済み。

しかし、あの時においてヒットの攻撃の威力は先程と全く変わっていなかった。

つまりはヒットが早くなっているのでは無く、こちらが遅くなっているのだという結論が立証でき、それまで糸口すら掴めなかった技の解析を終了させたのだ。

 

「ぐっ……今回も俺の負け…か。」

 

体の動く速度が約100分の1にまで低下されたヒットに最早勝機は無い。

だが、ヒットは自身の消滅を目前としているのにも関わらず涼しい笑みで21号を見つめる。

 

「…だが、楽しかった。己の力を全て出し切った勝負がこれほどとは、長く生きた中でも最高の時間だった。…感謝する。」

 

「…ええ、こっちも楽しかったわ。…また、会いましょう?次は美味しく食べてあげるから。」

 

「…ふっ、それは勘弁して欲しい所だ。」

 

僅かな会話を済まし、21号はもう片方の腕を使って魔術でヒットを場外へと転送。

 

「第6宇宙ヒットさん、脱落です。」

 

そして、大神官が勝負の決着を告げた。

 

「さてと、次はパパの所にでも…って、何よ、あれ。」

 

息を整え、ダメージは多少残っているものの戦闘には支障ない程に回復した21号は白い巨人を目にし、そこに父の気を感じ取った為そのまま瞬間移動でそこへ移動したのだった。

 

♠︎

 

場面は戻ってアニラーザと戦闘中のフリーザ一族。

 

アニラーザの攻撃を念力でずらしつつも余裕があるフリーザと。

1発が致命傷となりうる為必死になって攻撃を避けるフロストというように2人のアニラーザに対する行動は全くの対極であり、これには客席にいる破壊神であるジャンパも呆れ顔である。

 

「それで!どうするんです!?」

 

「まぁ、落ち着きなさい。あちらもどうやら戦闘が終わったようですので…ほら。」

 

焦るフロストに涼しげな表情で適当に答えるフリーザの前に瞬間移動で辿り着いた21号が現れる。

 

「はぁい、パパ。」

 

「おや、随分と痛めつけられたようですね。戦闘には?」

 

「問題無いわ。寧ろ良い気分よ?」

 

「それは上々。では、私は野暮用があるので失礼。フロストのお世話をお願いしますね?」

 

「えー。ま、しょうがないわね。あのデカブツは…ま、私とこっちに来てる人達だけで充分でしょ。さて…さぁ、ダイエットの時間よ?パパのパチモンさん?」

 

「誰が、パチモンですか!!」

 

フリーザはそのまま、21号にフロストを任せ瞬間移動で何処かへと移動する。

 

その後やってきた17号、18号、悟飯、ピッコロと共にアニラーザとの戦闘を開始するのだった。

 

まぁ、何故かいるフロストに対しては物凄く懐疑的な目をされたのはお約束というやつだ。

 

 

その一方で、悟空とジレンとの戦いはジレンの圧倒的な有利で進んでいた。

既に悟空はフルパワーである20倍界王拳を使用しジレンへと立ち向かってはいるもののジレンにパワー、スピード共に劣っており攻撃が入ったとしてもダメージは殆ど通らないという始末。

 

「それがお前の限界か、孫悟空。ならば……。」

 

「くっ……!!」

 

遂には界王拳の時間切れが発生し、悟空は激しい筋肉の悲鳴に膝をつく。

滝のように汗を掻き、息切れを起こしている悟空に対しジレンはまだまだ余裕がある。

だが、そんな悟空の前に立ち塞がる男がいた。

 

「おっと、そいつはさせねぇさ。次は俺に付き合って貰うぜ?最強さんよ?」

 

「オメェ……ターレス…なのか?」

 

「ん?あぁ、カカロット。お前には尻尾が無いから知らねぇのか。こいつは大猿の力をその身に纏った超サイヤ人…超サイヤ人4だ。」

 

「へ、へへ…すげぇ気だ。」

 

「次はお前か。…雑魚が何人来ようとも同じだ。来い。」

 

「雑魚ねぇ…それが本当かテメェ自身が確かめてみやがれ!!」

 

超サイヤ人4であるターレスに悟空は驚き、ジレンは先程の孫悟空と同等かそれ以上の気であることを判断。

己の敵では無いと判断し、構えを取らずにターレスを待ち構える。

それに僅かな怒りを灯しターレスはジレンへと特攻するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・フリーザ
まだまだ、ゴールデン化もしていないので余裕たっぷり。
3つの宇宙を消滅させたのでベルモッドからの警戒度がマックスになった。
なお、ジレンが負けるとは微塵にも思っていない模様。

・21号
決着。

・ブロリー
2人を撃破し、ケフラとの戦いへと望む。

・ターレス
第10宇宙を消滅させ、最強へと挑む。

・ビルス
悟空のボコられっぷりを見て、あれ?これやばいのでは?と冷や汗を流し始めた。

・ジレン
まだまだ余力たっぷり。
余裕も沢山。

・ベルモッド
勝ったわ。


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掌握

「オラァ!!」

 

「ムン!」

 

勇猛果敢にジレンへと迫るターレスをジレンは腰を低く構え鋭いラッシュを繰り出す。

だがその乱打をターレスは敢えてノーガードで迫り数発、ターレスの身体に色濃い痣が出来上がるも意に介す事も無く、ジレンの頬に拳を叩き込む。

 

「な……!」

 

「へっ!くすぐってぇんだよ!!」

 

そのまま僅かに仰け反るジレンの隙を見逃すはずもなくターレスはその本能のまま無造作にジレンへと攻撃を叩き込む。

 

「どうしたぁ!!テメェの実力はそんなもんじゃねぇだろうがぁ!!」

 

「……。」

 

続くターレスの大振りな蹴りをジレンは掌で受け止め、合気の要領で受け流す。

その蹴りの威力が凄まじかったのか何度も横に回転するターレスの体に対しジレン鋭い回し蹴りをもって蹴り飛ばす。

強靭な筋肉の鎧すら貫通するその一撃によりターレスはそのまま恐ろしい程の速さで吹き飛ばされる。

 

「…ぷっ!」

 

吹っ飛ばされ、血を吐き出すと同時にターレスはそのまま空中で回転し、地面を削り取りながらも武舞台に留まる。

ターレスはジレンの回し蹴りを受けた時に鈍い音が聞こえた箇所を軽く触ると肋骨が数本折れているのか、鈍痛が走る。

 

「……おもしれぇじゃねぇか。」

 

だが、そんな状況においてもターレスは堪える事の出来ない喜びに満ちる。

脳からは夥しい程のアドレナリンが溢れるような感触と共にこの身に受けた鈍痛が引いていく。

 

ブルーの特徴は神の気という精密かつ高濃度の気を操る事による唯のサイヤ人では操る事も知る事も出来ない新たな領域へと己の肉体を押し上げる事であるが超サイヤ人4は違う。

ブルーが穏やかな川だとするならば、超サイヤ人4は溢れ出した激流に等しい。

唯、単純な肉体の強化。神の気には無い荒々しさを持つ大猿の気でひたすらに暴力をもって相手を殴殺する。

 

それが超サイヤ人4の真髄、そんな肉体を容易く破壊したジレンの一撃にターレスは僅かな冷や汗を流すともに改めて宇宙の広さと今会えた強敵との邂逅に歓喜する。

 

そして、ターレスは再び獰猛な笑みを浮かべジレンへと接敵。

先程とは違い、一瞬でジレンの懐に入り込み鳩尾を殴り込むもジレンは片手でそれを掴み上へ持ち上げる。

それにより体が真っ直ぐに、つまりはダメージを逃す事も出来ない状態となってしまいジレンの右アッパーがターレスの顎を砕くように突き刺さる。

「ゴッッ!?」

 

超サイヤ人4の強靭な肉体とあらかじめ仕込んでおいた薄い気の膜により顎の骨は砕かれずに済んだものの流石に脳の揺れを抑え込む事は出来なかったのかターレスの目が僅かにブレ、体が浮き上がると同時に痙攣、ジレンはそのまま浮き上がっているターレスに対しラッシュし最後に先程よりも多少力を込め顔面を殴り抜く。

 

が。

 

「つ・・かまえ・た・・ぞ・・テメェ!!」

 

あろう事かターレスは顔を逸らしながらジレンの拳に喰らいついていた。

そのまま、ジレンの拳を吐き捨てオーバーヘッドキック。

ジレンもこれには予想外だったようで頭頂部をガードする事なくもろに蹴りを喰らい頭が強制的に下げられ、ターレスは蹴った足とは反対の足でジレンの後頭部を蹴り出し、そのまま後方へ退がる。

 

「……醜いな、お前の戦い方はおおよそ人のものではない。まるで獣のそれだ。唯の獣では俺は倒せんぞ。」

 

2発、ターレスの重き攻撃を受けてもなおジレンには大したダメージは無いのか、既に実力は見切ったと言わんばかりにターレスの評価を吐き捨てる。

 

「……へっ、こちとらサルだのなんだのっていつも言われてんだ…サルの執念、見せてやるよ!!」

 

だが、ターレスはその評価にも口元から血を流しながらも

不敵な笑みを崩さず、三度ジレンへと突貫していった。

 

♠︎

 

所変わってアニラーザと対峙する6人。

 

第七宇宙の4人はそれぞれが高速移動を駆使しアニラーザの周りを囲むように回りつつアニラーザが21号を攻撃してきた瞬間を狙っての迎撃戦法を取っていた。

因みにフロストは咄嗟に逃げようとして21号の魔術の球体に捕まっておりある意味最も安全な場所に放置されている。

 

何故、この様な戦法を取っているのかといえばそれは少し前に遡る。

 

アニラーザへといの一番に仕掛けたのはこの中で最も戦闘力が高い21号。

アニラーザの巨大な躯体はそれだけでも大きなアドバンテージになるが同時に攻撃を当てやすい的でもあると判断し両足で地面を蹴って音速を超える速度で背後に回った上で接近したのだが、

 

「グオオオオ!!」

 

突然アニラーザが何も無いところに拳を突き出したかと思えば21号の背後から拳が出現し21号の背中を殴り飛ばしたのだ。

 

「…っ!」

 

飛ばされながら21号は魔術で縄の様なものを生成し岩場に一瞬で巻きつけ自らをそれで引っ張る事で場外への落下を防ぐ。

 

そして多少なりとも離れてしまったが為に21号の次に戦闘力の高い悟飯の気を探知して瞬間移動。

 

「21号さん!大丈夫ですか!?」

 

「別に問題なーし。しかもたったこれだけで攻撃の種がわかるなんて収穫ものだわ。」

 

心配する悟飯を尻目に21号はアニラーザの攻撃の威力と性質から作戦の構築を開始。

 

しかし、アニラーザは自身の一撃を受けても平然としている21号を最優先排除対象にしたのか隣にいた悟飯に目も向かずにその大きな拳を振り下ろす。

 

咄嗟に2人はその場を蹴って回避し、その援護をせんと人造人間コンビが気弾の乱射でアニラーザの視界を塞ごうとするもアニラーザには効果が無いのかその気弾に一瞬怯んだがそれだけであり再度発射されるその気弾の嵐をその身体に喰らいながらも意に介さず平然と退避する21号を追う。

 

だがそれでも稼がれた時間は決して無駄では無い。

 

その時間で21号はアニラーザの欠点とそれを利用した作戦の構築を完了させ

気によるテレパシーでそれを全員に伝達した。

 

その作戦が今やっている戦法である。

 

そもそも、アニラーザの恐るべきところというのは完全な無機物の機械の弱点である機械の関節部をペパロニが入り所謂生物兵器化した事で消滅した事。

翼が生えているという空中への逃げ道がある事。

そして、超音波の反射から相手の動きを探知する事でその大きさという力及び質量による威力増加という利点を、反対に大きすぎる事で大雑把な攻撃にしかなり得ないという弱点で潰す事無く補填している事の3つが主である。

 

逆に言えば、アニラーザの欠点はどうやっても機械である事。

いくらペパロニという人間を取り込んだとしても人間としての理性、思考パターンは機械のアルゴリズムでは解析、解読は不可能である。

でなければ、アニラーザは唯獣の様に吠えたりはせず雄弁に饒舌に己の有利を語ってみせているだろう。

あるいは、人間と機械の完全な融合を果たし喋れるという選択肢も無いわけでは無かったが純粋な戦闘力の低下があった為にその可能性を選ばなかったのかもしれないが。

 

ともあれ、何が言いたいのかというと機械はその演算能力故に複数を相手取る時に相手の戦闘能力を判断、何が、誰が最も自分にとって最も脅威であるのかを確定させてしまうという当たり前にして致命的な特徴があるという事だ。

それが例え、どんな精密さを誇り人間と遜色ない思考パターンを有していてもアニラーザの根本は機械。

 

そして、機械という分野において21号の右に出るものは今、この瞬間、この場において存在せず、生物兵器であるアニラーザのあらゆる機関を掌握し手中にする事が可能だ。

だが、それには多少なりとも時間がかかる上にあのような巨体を掌握するにはなるべく長い時間接近しなければならない。

故に21号は自らを囮とすることによりアニラーザへの干渉を開始。

その為の作戦も各自に伝達し他のメンバーはそれを承認。

21号の防衛に専念し、その時を待っている。

 

何故この様なまわりくどい事をしているかといえば、それはアニラーザの大きさと戦闘力にある。

アニラーザの戦闘力と大きさがあれば武舞台ごと自分達を落とす事など容易であり、そうなってしまえば羽を生やせるアニラーザの一人勝ちは免れない。

 

あからさまな弱点である額のコアを破壊すれば話は簡単だろうがそんな所の装甲が脆弱な筈が無い。

更に言えば、この後に待ち構えている第11宇宙こそが本番だという事を21号は直感していた。

あのトッポというのは問題ない。彼の戦闘力程度ならば21号ではなくともベジータやターレスなどで事足りる上、彼の元には父であるフリーザが向かった。

彼がどれ程の切り札を隠していたとしてもフリーザなら問題なく脱落させる事が出来る。

そんな力があるからこそ21号はフリーザの力を尊敬し、父と呼ぶ。

 

だが、問題はもう1人の方。

恐らく彼と交戦しているターレスが僅かな時間で気の大幅な低下をしている事から彼は相当な程の実力者。

それだけならばまだ良い。問題は彼の気が一向に落ち着いたままだという事。

つまり、彼はまだまだ余力を残しておりその実力は未知数。

科学者としての判断と流れる数多の戦士の血による直感から21号はジレンに対する警戒度は最大値となっており、だからこそこんなまわりくどい手段を使ってでも余力を残したままターレスの援護に向かうと判断したのだ。

 

アニラーザが21号に対し攻撃を開始してから3分。

徐々にだがアニラーザの動きが愚鈍になっていく。

それは21号の干渉が脳にまで影響を及ぼし始めた合図であり、作戦の完遂まで残り僅かだという事を示すサインでもあった。

 

「今!!」

 

21号がそう叫ぶと戦士達は一同に集結。

最大限に気を集中させ、一気に解き放つ。

完全に支配権を奪われたアニラーザは迎撃も回避も出来ずに額のエネルギー炉に4人の気の奔流が直撃。

堅牢な防壁で一時は耐えたもののやがてひびが入りバキリと音を立てて粉砕した。

 

「ゴアアアアアアアアアア!!!!?」

 

エネルギー炉の破壊により大きく力を減衰させてしまったアニラーザは苦悶の表情で壊れたエネルギー炉を抑えようと吠えるが、身体がいう事を聞く筈もない。

そんなあからさまな隙を歴戦の勇士である彼らが見逃すはずもなく第2射が今度はアニラーザの胴体に直撃。

防御も出来ないアニラーザの身体はその気の威力の為に更に空へと吹き飛び

そのまま何も出来ずに場外へと落ちていった。

 

アニラーザの脱落が大神官から伝わるとすぐに21号は仲間に伝達する。

 

「後はジレンって奴だけね、急いで向かうわよ。」

 

「…どういう事だ、あのトッポって奴の所にも…。」

 

「あっちにはパパがいるし、あの女共にはブロリーがいるわ。それであいつらは十分倒せるし問題ないのよ。それよりも…。」

 

その瞬間、爆音が響き各々は驚愕する。

何故なら、

 

「ベジータの気が……!!?」

 

「それにターレスさんも……!!?」

 

ベジータ、そしてターレスの気が先程よりも更に弱くなっている事に気付いたからだ。同時に悟空が何をしようとしているのかも目に入る。

 

自身の予想よりもターレスとベジータの気の減りが早い事から思った以上に時間が無い事を判断した21号は即座に移動を指示。

その様子に4人は頷き悟空、ベジータ、ターレスの元へと急行するのだった。

 

 

♦︎

 

時は少しだけ遡る。

 

 

「だりゃりゃりゃ!!!」

 

「ヌ…オオオオ!!!」

 

ブルーに変身したベジータとプライド・トルーパーズのNo.2であるトッポの死闘は激しさを増す一方であった。

神の気というのならばベジータが上をいくが単純な力ならばトッポの方が上という拮抗状態の中、拳が、脚が、気がぶつかり合い大地を穿つ。

 

しかし、そうした攻防が激化するにつれベジータの攻撃の鋭さ、そして重さが次第に増していくのをトッポは感じた。

拳をぶつけ合っているトッポだからこそ気付いたそれは、トッポにとっての猛毒であると気付いたのは直ぐ後。

 

自分に慣れ始めている。

 

サイヤ人の中でも天才的なセンスを持つベジータ、彼はトッポという強敵との戦闘の中で己を鍛え、今この瞬間にも爆発的に成長していた。

そこに気付いた時、彼は自身の拳の重さ。つまりは己の正義が傲慢たるサイヤ人のプライドに敗北しつつあるという事実に気付かざるを得ないという事にも繋がっていく。

 

正義感が強いトッポにとってサイヤ人という第一印象は孫悟空のソレ。

神々に対しても厚顔で振る舞うその態度は正しく宇宙を滅ぼす悪だとトッポは断じた。

 

悪・即・斬。

 

全宇宙を危機に晒した第7宇宙という存在は正しく悪。

ならば、正義である己がそれを倒さなくてはならない。

なのに、己は今そんなサイヤ人に対して遅れを取り始めている。

受け止める腕はだんだんと感覚が消えてきた。

ダメージも次第に増え、苦悶の声を上げて必死に耐えている己を恥じた。

 

だが、まだ自身の方が上だと確信を持って判断したトッポはその観察眼で間を見切りベジータの乱撃に無理やりねじ込む形で気弾を放ち両者の間で爆破。

 

衝撃でお互いの距離が離れたその瞬間にトッポは決着をつけるべくその紅き気を両手でもって集約させ一気に解き放った。

 

「己の正義の全てを込めて!!おおおお!!!」

 

「ちっ!!ファイナル……フラァァァァシュ!!」

 

対するベジータもこれを避けるのでは無く迎撃するという選択肢を取り自慢の技であるファイナルフラッシュを放つ。

お互いのエネルギー波が衝突し辺り一帯に紫電が走り近くの地形をあらかた崩壊させていく。

 

「ぐ……!!」

 

「ぐぐぐ………!!!」

 

先に均衡を破ったのは……ベジータだった。

ベジータにはこんなところで躓いている暇は何処にも無い。

今のベジータが抱くのは純粋な怒り、自身よりも上の存在が何人もいる事への怒りだ。

力の大会のメンバーが揃ったあの時、ベジータは感じ取ったのだ。

カカロットの他にも俺より上の奴がいる。しかもそれはフリーザ親子であると。

 

当時に比べればフリーザへの怒りというのは時が流れるにつれ鎮静化していっているのは確かだ。

だが、それでもベジータにとって最初に抱いた野望こそがフリーザを超える事。

あれからもう10年以上経とうとする今であってもあの絶望の権化から抜け出す事すら出来ていなかったという事実は、地球に馴染み、家族をしっかりと愛せるようになったベジータにとっての過去の残骸から這い出てきたものだ。

奴の顔を見るたびにあの屈辱の日々が蘇る、だがもう今の自分は奴隷ではないという怒りを込めた決意。

 

そして、神の気という新たな領域に達した事で再び芽生えたNo.1への渇望が合わさりベジータの秘められた力の鍵はその気持ちに呼応するようにゆっくりとその扉を開ける。

 

「これで…終わりだぁぁぁぁ!!」

 

「ぐ……おおおおお!!!!!?」

 

眠れる力を呼び覚ましたベジータの咆哮がトッポの信念を超え

トッポは自身のエネルギー波を飲み込んだファイナルフラッシュの一撃に飲み込まれ、そのまま爆発を起こす。

 

爆風が晴れ、満身創痍のトッポが姿を現わす。

ご自慢のスーツは見るも無残に破けちりその息は荒い。

最早、決着まで秒読みにも等しい状況でトッポは己の正義の脆弱性を認識した。

 

「はぁ……はぁ……お…お…!!」

 

「もうそこまでにしておくんだな。貴様のダメージではもう立ち上がれもしないだろう。」

 

ベジータは、倒れ臥すトッポに近づきそう忠告する。

と、同時にベジータの隣にフリーザが降り立つ。

 

「おやおや…随分と決着が遅いので手助けして差し上げようと思ったのですがねぇ……。」

 

「黙れ、少し前にはもういただろうが貴様…!今更何の用だ!」

 

「いえいえ、お優しいベジータさんにはこの方は落とせないだろうと思いましたので…あちらの手助けでもしてはいかがでしょう?」

 

「…ジレンって野郎の事か。」

 

「ええ、どうやら孫悟空さんも手助けに行ったターレスさんも随分と苦戦しているようですので…こちらの始末は私に任せてあなたはサルらしく次の戦いに向かってくださいな。」

 

ベジータは悟空とターレスの気が弱くなっている事、そしてそんな2人を相手どってなおも少しも気が減っていないジレンに驚愕する。

そして、その強さにサイヤ人としての本能からこのままでは2人の負けが濃厚である事を察したベジータは渋々ながらも承諾する。

 

「……いいだろう。貴様が裏で何を企んでいるのかは知らん。だが、今は目を瞑ってやる。…俺たちの宇宙を守る為にな。」

 

「おやおや、随分と甘くなったようで。ま、任せておきなさい。」

 

「…ふん。」

 

フリーザに釘を刺し、ベジータはジレンの元へと向かうべくその場を離れる。

残っているのは倒れ臥すトッポとそれを見下すフリーザ。

 

「…さてと、こんな所に倒れてもらっても邪魔なだけですし。私が優しく落として差し上げましょう。」

 

フリーザのそんな声を掠れる意識の中で耳にしたトッポは自身へと問いかける。

 

何故、自分は悪に負けた?

 

自分の正義が弱い……己の覚悟が足らなかったせいだ。

 

ならば、ここで脱落するのか。

 

否!断じて否!!我が宇宙を守る為!私がここで斃れる訳にはいかぬ!!

 

ならば、捨てろ。己が信念を。

 

 

そうだ、捨てなければならぬ。

弱き正義を切り捨て、私は勝たねばならぬ。

ジレンは仲間を切り捨てる覚悟をして強さを手にした。

ならば、私も自身の信念を捨てる覚悟を決めて生き残る為の全力を尽くそう!

 

そう決心したトッポは立ち上がり、フリーザの前へと立つ。

 

「…ほう。ご自慢の正義とやらで立ち上がりましたか…ですが、そんな無様な姿で一体何が出来ると?」

 

「……らぬ。もう、正義など…いらぬ。覚悟は…決めた!!」

 

トッポの体から先程の紅き気ではなく紫の気が溢れ出てくる。

それをフリーザは知っているし、識っている。

わざわざ下手な芝居まで打ってベジータを排し自身で始末しようとしたのはこれを見るためだったのだから。

 

トッポの咆哮が轟き気の質が先程とは桁外れに圧を増す。

胸には何かの紋章のようなものが浮き出ており、今までのトッポとは違うナニカを感じさせるには充分なほどの気迫が伝わってくる。

 

フリーザも本番と言わんばかりにゴールデン化し、嗤う。

 

「さぁ…私の修行の最終段階と参りましょうか。」

 

先ずは小手調べにと指先で軽く気弾を放つ。

しかし、それはトッポに当たることなくその場で霧散し粒子となって消え失せる。

 

それを観客席で見たビルスは驚愕し、ベルモッドは勝利を確信する。

そう、これは破壊神だけが許された破壊のエネルギー。

つまりは今この場に立っているトッポは破壊神そのものにも等しい。

 

だからこそ、フリーザはそうなって貰う必要があったのだ。

フリーザが修行により創り上げた破壊は未だ不完全であり、完成には何処かが足りないような不足感を味わっていた。

 

そんな中フリーザは思い出した。破壊神トッポという存在を。

破壊を完全に掌握したあれならば自身の足りなかったナニカを見つけることが出来、フリーザの破壊は完全なものになるに違いないと。

 

 

「さぁ……あなたの覚悟とやらを見せていただきますよ?」

 

そして、

 

「破壊。」

 

その時が、訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー。

・フリーザ
力の大会に参加しようと考えた主な目的はこれ。
流石のフリーザでも一度見ただけであの破壊を真似できる訳がない。
さて、結果はいかに。

・21号
その気になればアニラーザをジレンにぶつける事も出来たが邪魔になるだけなので排除。

・ターレス
超サイヤ人4の特性を生かしたゴリ押し戦法でジレンの弱点を探っている状態。
しかし。

・ブロリー
ケフラと戦闘中。

・ジレン
未だ無傷、最強の名に狂いなし。

・ビルス
あれ、これ思った以上にヤバいぞ?

・ベルモッド
破壊神トッポにジレン……やはりお前たちは最高だ。

・悟空
秘策の準備。


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強者の素質

「オオオ!!」

 

「オラァ!!」

 

ブロリーの剛腕とケフラの細腕がぶつかり合う。

身長が約二倍近く差がある2人、当然長身であるブロリーがケフラを押し潰すような形になっているのだが、驚くべきなのはそれを多少汗を流しながらも受け止めているケフラの方か。

 

お世辞にも筋肉質とは言える筈もないその細身の肉体から溢れ出るパワーはさっきまでブロリーに圧倒されていた少女達とは到底考えられない程の増幅を果たしている。

いくら、ブロリーが超サイヤ人になる事が出来ずケフラはフルパワーの超サイヤ人に変身しているとはいえ縮まった差というのは余りにも大きい。

 

「はぁ!!」

 

「ぬぅ……!!」

 

ケフラがもう片方の腕でブロリーの拳を弾き、ガラ空きになったボディに一撃。

それを受けて初めてブロリーは仰け反るが、そのダメージは僅か。

すぐさま反撃といわんばかりに更に力を増した一撃をケフラに振るう。

ケフラは咄嗟に防御態勢を取るもその上からブロリーの剛腕が突き刺さる。

 

両腕にヒビが入る音が耳に入りながらケフラは数十メートル吹っ飛ばされる。

だが、すぐに立ち上がり高速移動を繰り返しながらブロリーへと迫る。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

迎撃に入ったブロリーの剛腕を今度は避けて、懐に入り込みラッシュ。

一撃、また一撃がブロリーに突き刺さり不動の体勢であったブロリーの肉体が次第に揺らいでいく。

 

「な……にぃ……!!」

 

「ははは!!!すげぇぜ!この力!あのバケモノをこんなにも!!だがまだだ!アタシの…いや、アタシたちの力はこんなもんじゃねぇぞ!!」

 

みなぎる力を込めた一撃でブロリーを殴り抜き、数歩下がらせた瞬間

両手に3つの赤き気弾を作り出して投げつける。

それはふらつくブロリーに着弾、彼を中心として大爆発を引き起こす。

 

別の世界ではブルーさえ圧倒したケフラの実力は今この場に残った選手の中でもトップクラスであり、更にケフラの力はまだまだ上がある。

このままケフラの成長が止まることなく続けば、悟空やベジータ、ターレスといったサイヤ人の中でも最高峰のメンバーにも牙を立て喰らいつく事が出来るだろう。

 

だが、忘れてはいけない。

ケフラの前に立っているこの男こそ、フリーザが手中に収めてるべきだと判断した唯一にして最凶の成長スピードを誇る文字通りの規格外であるという事を。

 

「オ、オオオオオオ!!!」

 

爆風が晴れると同時にしてブロリーが吠える。

その咆哮に呼応する形でブロリーの纏う気が今までとは比較にならない程爆発的に上昇し、ブロリーが発する何百倍に匹敵、否それ以上の重さを誇る気の圧がケフラを襲う。

 

「……っ!!上等だぁぁぁ!!」

 

その余りの圧にケフラは無意識に一歩下がってしまう。

一拍置き、それに気付いたケフラは持ち前のプライドが刺激された怒りと目の前の強敵に対するサイヤ人の闘争本能が刺激された悦びが奇跡的に組み合わさりケフラのステージもまたブロリーの気に応える形で上昇。超サイヤ人2へとその姿を変えスパークを放ちながらブロリーへと突貫する。

 

ブロリーはそれを受け止める形でケフラを待ち構え、ケフラの拳をガードする事なく己の肉体だけで完全に防ぎ、ケフラを全力で殴り抜く。

それに血反吐を吐きながらもケフラはそのどう猛な笑みを更に深め、ダメージを気にする事なくとにかくブロリーを殴る。

 

その繰り返しは最早戦いではなく猛獣の奪い合いだ。

 

殴り、殴られ、殴り、殴られ、殴る!!

 

防御など不要、戦術、戦略、小細工など無い唯の殴り合いだ。

骨が折れようが、肉が拳の威力で引きちぎれようが、その拳がボロボロになろうがそんなものなんて事無い。

 

これは2匹の獣の喰らい合い。

どちらがその痛みに耐えられずに一歩引くまでのタイマン。

身長差があろうが、気の大きさが違おうが、そんなものこんな場では無意味と同義語だ。

 

男も女も関係ない獣共の殴り合いは2人が尋常ではない成長と比例するように激化し、凄惨となる。

 

歯が折れるか欠けるかして、飛び散り。

肉が削がれた部分の骨が砕けてその場に舞う。

 

その光景は幾年も生きるビルスやベルモッドといった破壊神すらも目を背ける程だ。

 

だが、そんな猛攻を仮にも人の姿である者が耐えるにはいささか硬度というものが足りないのは明確な事実であり、決着が付くのはそれから間もない時だった。

 

ケフラが、一歩、仰け反った。

 

そんな隙を卓越した反射神経を有するブロリーが反応する事など最早当たり前。

その一歩下がった体にねじ込むように地を砕き、天を裂くブロリーの剛腕から放たれるブローが突き刺さり、ケフラは背後にそびえ立つ全てを破壊しながら吹っ飛ばされていく。

 

が、ケフラは場外ギリギリで意識を取り戻し、地面を抉り抜きながらなんとか脱落を回避する。

 

「ヒュゥ……ヒュゥ……。」

 

肋骨が折れ、恐らく呼吸もままならないまましかしケフラは意識をはっきりさせ手を握り拳を作る。

だが、誰が見ようともケフラの体力は最早風前の灯火。

どんなに振り絞っても後一撃が限界の状態だ。

 

「……上等だ。これにアタシたちの全部をぶつけてやる……!!」

 

覚束ない足を引きずりながらケフラは一歩、また一歩とブロリーに向かって歩きだす。

己の、ケールとカリフラが持てる全て以上を振り絞り両手に気の螺旋を収束させ。

 

そして、生涯の中でも最強の強敵の目の前へと立った。

 

 

「……。」

 

ブロリーは肩で息をしてはいるもののケフラと比べればまだまだましな方であり既に右手に迎撃には充分な気が収束されていた。

 

「………。」

 

「……。」

 

もう、2人の間に言葉は無い。

ただ、その時を待つだけ。ケフラの額から垂れるたった一滴の血が地面へと滴り落ちるその時を。

 

ーー血が、落ちた。

 

「ハァァァ!!!!」

 

先に放つはケフラ。

両手から放たれた自身の全てがブロリーの身体を飲み込まんと迫る。

 

だが、ブロリーは。

 

「オオオオ!!」

 

なんと、自らその気の奔流へ走り出し飲み込まれる。

それに好機を感じた否かは定かでなくともケフラは意識を保っていた残りわずかの気すらこの一撃に捧げて全力も全力で咆哮する。

 

「アタシたちの………勝ちだぁぁぁぁ!!」

 

 

「いや、オレの……勝ちだ!!」

 

ブロリーはあの気の奔流を真正面から突破してそれを打ち破り超至近距離からそのエネルギー波を解き放つ!!

 

「うぁぁぁぁぁぁ!!!!?」

 

緑の閃光に呑まれたケフラはそのまま抗う事も出来ず、そのまま場外へと一直線に飛ばされたと同時にポタラが砕け、そのまま観客席へと落下していく。

 

流石の神の道具と言うべきか、本来ケフラで受けた重症のダメージはかなり軽減されたらしくケールもカリフラも怪我はいくつかの骨折に抑えられ痛みを堪えながらケールはシャンパに謝り、カリフラはブロリーに再戦を求め吼えたてる所をキャベに宥められていた。

 

しかし、勝者となったブロリーのダメージも大きく大猿の気が霧散すると同時に膝をつく。

 

「はぁ……はぁ…。」

 

流石にブロリーであろうと受けた痛みと疲労の多大なる蓄積、そしてケフラとの戦いの最後に無茶をした傷痕は無視できるものではない。

 

寧ろ、ブロリーの成長が少しでも停滞していれば敗れていたのはブロリーの方であった。

それぐらいブロリーが受けたダメージは大きかったのだ。

 

だが、ブロリーは本能で悟っている。

真の闘いは今こそ始まっているという事。

爆音と轟音を上げ、今まさに皆が一斉に掛かっているあの男こそが最大にして最強の敵だという事をブロリーは感じ取り再び立ち上がろうとするも膝が笑ってしまいうまく立ち上がれず、逆にその場に倒れこんでしまう。

 

瞬間、強烈な眠気がブロリーを襲い抗いはしたもののその悪魔に打ち勝つ事が出来ずにブロリーはその場でゆっくりと眠りについたのだった。

 

♠︎

 

破壊が迫る。

 

一切合切何かもを万物全ての悉くを消し去る破壊のエネルギーだ、無論気を抜けばフリーザの全身を一瞬にして粒子へと変え、その存在を無へと変えるだろう。

 

そんな理不尽にも程があるエネルギーの塊を、フリーザは。

 

ーー敢えて、何もせずに受け入れた。

 

「………っ!」

 

自分を構成する何かが薄れていく感覚と共に破壊のエネルギーが自らを飲み込まんとその活動を開始する。

その破壊の全てをフリーザはただ黙して叫びそうになるのを堪え、目を閉じる。

 

自らが生み出したものでは感じ取る事が出来なかった破壊という概念を敢えて喰らう事によって肌で感じ、自分では気付く事が出来なかった穴をゆっくりと埋めていく。

 

そして。

 

「……馬鹿な、馬鹿な!馬鹿な!馬鹿なぁ!!!?」

 

その光景を目にしたトッポは目の前の現実を受け止められずに叫ぶ。

自らの全てが無意味だったと嫌でも自覚してしまうほどのものが其処にはあったからだ。

 

「クク…さぁ、このゴールデンフリーザの真の力を見せて差し上げましょう!!」

 

破壊の中でフリーザが嗤い、徐々にその力を解放させていく。

すると、破壊のエネルギーはまるでフリーザの全身に纏わり付くような形で縮小。

 

「ハァァァァァ!!!」

 

トドメにその黄金の気を解放させれば、破壊は完全にフリーザの体へと吸収されていった。

 

「……ふぅ。これが破壊神の力……ようやく手に入れましたよ。」

 

それに伴ってフリーザの黄金の気にはトッポが纏っている破壊のエネルギーの濃密で禍々しいオーラが加えられ更なる成長を果たした事が目に見えて解る。

これこそが、フリーザの思い描いた完成形。

身勝手の極意を破りさる為の切り札。

 

ーー擬似的な破壊神化である。

 

「さてと、もう用も済んだことですし無様に落として差し上げましょう。」

 

そう言うとフリーザはゆっくりとトドメを刺すべく歩き出す。

この姿を得られた事で最早トッポなどという雑魚に利用価値は無い。

いわば、用済み。ゴミはゴミ箱に、というやつである。

 

「舐めるな、第7宇宙!!たかが猿真似如きで私に勝てると思うなぁ!!破壊!!」

 

再度、トッポから破壊のエネルギーが放たれるも、フリーザはそれを防ぐ事もせずにただ歩きながら、身に纏う破壊のエネルギーだけで破壊のエネルギーを文字通りの塵へと還していく。

 

「何ぃ……!!……破壊!破壊!!破壊っ!!!」

 

驚きに目を見開くトッポだったが直ぐに立ち直り破壊のエネルギーを乱射するが、もうフリーザにとってトッポの生み出す破壊なんぞ、吹き抜けるそよ風と大差ない。

 

「…もうそれはこのゴールデンフリーザの前では無意味ですよ!」

 

やがて、フリーザはトッポの眼前へと接近し終えると一瞬でトッポの胴体に5発のパンチ、顔面に2発のキックを叩き込む。

 

「ガッ……!!」

 

白目をむき倒れこむトッポの首を尻尾で巻き取り投げ飛ばし、追撃に1発気弾を打ち込んで、場外まで飛んだ所を確認した所で起爆。

 

トッポは全身が焼け焦げた状態で落下し、脱落の旨が大神官の口が告げられる。

 

フリーザはそれと同時にその破壊神化を解除し、大きく息を吐く。

何故、破壊神化を解除したのかというとぶっつけ本番故に安定性に欠けるそれをいつまでも展開したままでは近いうちに時間切れになり敗北を喫する事をフリーザは痛いぐらい識っていたからだ。

 

フルパワー化しかり、初期のゴールデン化しかり。

 

「それに、体力をこんな所で消費して勝てるほどジレンさんは簡単ではないでしょうし…まぁ、歩いていきますか。」

 

そう呟くとフリーザは最後の戦場へとゆっくりと歩を進める。

今までとは全く異質の気の奔流を感じ取りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・ブロリー
超サイヤ人化なしだと大体これぐらいかなと思った。
映画を見る限り、かなり成長したブルーと互角らしき描写はあったので。
現在疲労による気絶中。

・フリーザ
念願の対抗策をゲット、身勝手の極意が余りにも強いのでジレンのようにパワーによる押し潰しを画策した結果がこれ。
現在可能な展開時間はフルパワー化や復活の「F」のゴールデン化と同じ五分。

・ジレン
ジレン無双始まるよ。

・トッポ
生贄

・ケフラ
一言でいうなら相手が悪かった。
一応、ターレスに勝てるぐらいの計算ぐらいには成長した模様。





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絶対的な力

地面に数滴血が垂れ落ちる。

 

「ぜぇ……ぜぇ……ち、畜生め…。」

 

闘いから僅か数分、いくら超サイヤ人4による肉体強化があれど流石に何千、何万とあのジレンの攻撃を受け身も取らず真正面から受け止め続けた鬼のような耐久力に限界が訪れていた。

残されたサイヤパワーも僅かとなりながら膝をつき悪態づけるターレス。

その眼前に立つは未だ無傷で立つ第11宇宙最強の男。

 

「…俺の攻撃をこれほど受けてなお倒れないその精神力は認めよう。だが、お前では俺には勝てん。」

 

膝をつくターレスの耐久性を評価しながらそれでも己との差を埋める事は叶わない事を指摘し、ターレスを武舞台から落としに掛かる。

 

「さらばだ、戦士よ。」

 

ジレンが気弾を生成し今正に放とうとしたその瞬間ジレンの側頭部に蹴りが炸裂。ダメージは無いにせよ現れた新たな敵を見据えるべく、後方に回転しながら着地する。

 

「……ちっ、あーぁこれじゃあ立場が全く逆じゃねぇか。」

 

ターレスは現れた男に舌打ちしつつも少し皮肉を交えて笑う。

 

「選手交代だ。貴様はカカロットを連れて大人しく下がっていろ。」

 

「べ、ベジータ……すまねぇ。」

 

「…とっとと下がれ、戦いの邪魔だ。」

 

現れた男ベジータは、膝をつくターレスと未だ界王拳の疲労が抜けきれず立ち上がれない悟空の目の前に立つ。

 

「…貴様は確かトッポが……ふん、そういう事か。」

 

「後は貴様だけだ、ジレン!行くぞ!」

 

ジレンはトッポが敗北したと勘づき一瞬だけ蔑む目になったが、直ぐに眼前の敵へと視線を戻す。

 

ベジータはターレスが悟空を担いで離れたのを気で確認してからブルーに変身しジレンへと迫り、その強靭な胸板に連続で拳と蹴りを叩き込む。

だが、ジレンはその膨大な気の圧により完全に攻撃を無効化しているため微動だにせずに膝うちでベジータをくの字に曲げさせてから後頭部に肘打ち。

 

その威力は計り知れずベジータは二転三転しながら地面に転がる。

そこにジレンは追撃の気弾を放つ。

 

「…っ!!」

 

ベジータは咄嗟に地面を気弾で起爆させ、強制的に体勢を戻した事でそれを回避。

軽く深呼吸をした後、再びジレンへと突撃する。

 

「…芸の無いやつだ。」

 

ジレンは先程と全く同じ形で迫るベジータを非難し、構えも取らずに待ち構えようとしたが、歴戦の戦士の直感が無意識の内にジレンを防御の体勢へと変えていた。

同時に起こったジレンの腕に発生した僅かなシビれはその直感が正確だったと僅かながらジレンは戦慄した。

 

「なっ……!」

 

「…ちっ!だだだだだ!!!」

 

ベジータは僅かに舌打ちするもすぐさま攻撃を再開。

先程と全く速さが変わらない筈のその攻撃にジレンは防御体勢を摂り続けていた。

それは、単純にベジータの成長速度にようやく体が追いついた事の証でもあった。

トッポとの戦いの中で急激な成長をしその戦闘力を大幅に上昇させたベジータだったが、それはあくまでも怒りによる潜在能力の一時的な解放に過ぎなかった。

故に戦いが終わった後、移動しながら冷静さを取り戻したベジータはその怒りによる解放で得た戦闘力の引き出し方を短時間の内に模索。

段階的に肉体にその気を慣らすことによってベジータはあの戦いで得たまま眠っている潜在能力を引きずり出しているのだ。

 

そして、ついにジレンの防御を弾き飛ばした事でジレンはその反動で地面を引きずる。

その好機を逃さんと後方へ高速移動、咄嗟に出した横薙ぎの拳を難なく頭を下げる事で躱し前方へ潜り抜けて腹部へと鋭い蹴りを突き出す。

 

「貴様の実力はそんなもんじゃ無い筈だ!!」

 

だが、それをジレンは掴んで引っ張り同時に拳を突き出して殴り飛ばす。

それに負けじと後方へバク転しベジータはギャリック砲を放つも迫り来るジレンは容易く弾き飛ばしてタックル。

右フックで体勢を崩し、アッパーで空中に浮かせ、ダブルスレッジハンマーで再び地面へと叩き落とす。更に叩き落とされた事で僅かに浮いたその瞬間を狙って気弾を発射。

 

「グォォォァァォァ!!??」

 

今度は避けることが出来ずに真正面からそれを喰らってしまったベジータは数メートル先まで運ばれていくも、

 

「な、めるなぁぁぁ!!!」

 

体内の気を放出させた事で出来た気と気の僅かな隙間から滑り落ちるようにその気弾から脱出する。

 

だが、脱出した事による疲労は相当なものでありベジータは肩で息をしながらジレンを睨みつける。

 

「チッ…タフな野郎だぜ…!!」

 

「お前はどうやっても俺には勝てん…!諦めて自らの足で武舞台から降りろ…!」

 

「断る!!」

 

「…そうか、わかった。」

 

ジレンはターレスの時と同じようにベジータの力を完全に把握し結論付けると同時に自らの足での武舞台からの退場を勧告するもベジータはそれを断固として拒否。

ジレンはそれを聞き、自らの手でトドメを刺さんとベジータの元へと気弾をとばす。

 

だが、

 

「悪りぃが…それはさせねぇよ!」

 

再び戻ってきたターレスによってそれは防がれる。

とはいえ、ターレス自身はもう既に限界が近い状態であり先ほどの防御ですらかなりギリギリの防御だった上にかなりの気とサイヤパワーを消費した。

その為残りも少なくなった今の状態で次はこう上手くはいかないだろう。

 

「また貴様か…だが、何人来ようが同じ事。纏めて場外に落としてやる…!」

 

流石に2度も妨害されれば、ジレンも多少は頭にくるようで僅かな怒りを滲ませ先ずは近くにいるターレスへと急接近、懐に入り込み稲妻を喰らうように拳をねじ込む!

 

「ぐぅぉ!!?…へっ!捕まえたぜ!!ベジータァ!!」

 

しかし、ターレスはその捻じ込まれた拳を腹筋で固定し更に両手を持ってジレンの右腕を抑え込む。

 

「ちっ!!はぁ!!」

 

僅かな時間ではあったものの固定された腕に驚いたジレンをベジータはそのまま蹴り飛ばす。

 

「どういうつもりだ!ターレス!俺の邪魔をしやがって!!」

 

「しゃぁねぇだろう?カカロットの作戦なんだからよ?」

 

「何?カカロットだと?どういう事だ!?」

 

ジレンがそのまま吹き飛ばされ、岩場に激突すると共にベジータは自身の邪魔をしたターレスに問い詰める。

だが、ターレスが答えた悟空の作戦という情報はベジータを驚かせるには十分であった。

 

「あ〜…俺にもよくわからねぇんだが…ま、いいさ。お前、合体13号っての知ってるか?」

 

「何?何故そこで奴の名が出てくる?」

 

ターレスが伝えたのはかつて、ベジータ達に猛威を奮った合体13号。

悟空、ベジータ、トランクスにタイムパトローラーであるシャロットという当時における最強サイヤ人4人が束になって漸く勝てた相手である。

 

何故、今になって彼の名が出てたのか。

ベジータは思考を巡らせ答えに行き着く。

 

「…いや、わかった。カカロットの奴は元気玉を作り上げ吸収する事で無理矢理復帰する気か。」

 

「まぁ、大体合ってるが…ちょいと違うな。カカロットはそれで1つ壁を壊せる気がすると言ってたぜ。」

 

「…そうか!あの時と同じ…!!ちっ!俺たちはまた時間稼ぎって訳か。」

 

そう、悟空の作戦は元気玉を作り上げ吸収する事でジレンとの戦闘の中で感じ取っていた殻を強制的に破る事にある。

しかし、それには多大な時間と気が必要。

とてもじゃないが消耗しているターレス1人ではどうしても集まらない。

 

「おう、そして…。」

 

「お待たせしました!ベジータさん!ターレスさん!」

 

「俺がどこまで抗えるかは分からんが…協力させてもらうぜ。」

 

だが、運良くターレスが悟空の元を離れ、元気玉の準備をしてた時にアニラーザの撃破が完了した他のメンバーが合流。

無限のエネルギーを持つ17号、18号。

数多のエネルギーの結晶かつ体力の回復や傷の治療ができる21号のアンドロイドチームが悟空の護衛兼気の供給班として残り。

 

ある程度まで、気を渡し終えた悟飯とピッコロが疲弊したベジータとターレスの援護班としてジレンの前に立ったのだ。

 

「…また、新手か。まぁ良い1人1人倒す手間が省けただけだ……!!」

 

奇しくもナメック星でクウラと相対し時間稼ぎをしていたメンバーが揃い、相手はあの時と同じく圧倒的な格上。

瓦礫を吹き飛ばして起き上がったジレンはその紅蓮のオーラを滲ませ眼前にいる4人を打ち倒すべく歩き出す。

 

「……貴様ら!俺様の足を引っ張るなよ!」

 

「へーへー!わかってるぜおぼっちゃまよぉ!」

 

「はい!」

 

「いくぞ!!」

 

最早、何を言っても無駄だと判断したベジータは諦めて共闘を承諾。

せめて足だけは引っ張ってくれるなと喝を飛ばして先行する。

 

それに追従するようにターレスが、ジレンを囲むように悟飯とピッコロが配置に着いた。どうやら、メインは戦闘力が高いベジータとターレスで行い、サポートを悟飯とピッコロが行うようだ。

 

「はぁぁ!!」

 

「おらぁぁぁ!!」

 

先ずは両者が鋭いラッシュを行う事でジレンの手足を防御へと強制的に移行させる。

ベジータはその巧みな気の利用で、ターレスはサイヤパワーの低下があるとはいえそれでも十分に強力な自慢の剛力でジレンの肉体に少なからずダメージを与えられる事は検証済み。

 

故にジレンといえど…否、ジレンだからこそこの攻撃を防御し、ダメージを最小限にする事は必然的な行動なのだ。

 

「ぐぬ……小賢しい!」

 

とはいえ、実力差は圧倒的にジレンが上。

いくら数で攻めようともその僅かに生じる隙を見破られればそこから反撃してくるのが真の強者というものだ。

ジレンは両腕で両者のラッシュを弾くと目力による乱打で2人同時に攻撃、後方へと吹き飛ばす。

 

が、その2人が一瞬ニヤリと笑って高速移動で消えた瞬間。

 

「逃げ道は無いぞ!魔空包囲弾!」

 

ジレンの周りを気弾の弾幕が囲み、一斉にジレンへと直撃し大爆発を起こす。

そこに追撃といわんばかりに悟飯が魔閃光。

爆発の上から更に爆発を起こすも、俄然ジレンは無傷でそこに立っている。

 

「…くだらん…」

 

その爆風の中、先程避難した2人がジレンへと迫る。

ベジータは前方からボディーブロー、ターレスは後方から側頭部への蹴りというようにジレンの直前にまで迫るも。

 

「技だ。」

 

ベジータの拳は右手で抑えられ、ターレスの蹴りは左腕でしっかりと防がれる。

 

「ちっ!!」

 

「その傲慢さがある限りお前達は俺に一生勝てん…!ふん!!」

 

ジレンはベジータ達の攻撃から感じ取れる傲慢を見抜き、無情に告げた上で

2人のそれぞれの部位を高速で投げつける事でその場で回転させ、高速の回し蹴りで両者を同時に蹴り飛ばす。

 

「ごぉ!!!?」

 

その攻撃は的確にベジータ達の脇腹を打ち抜き、そのまま勢いを殺せぬまま、岩場へと直撃し、岩が破壊された事による砂埃が起こる。

 

「ベジータさん!ターレスさん!くっ!!」

 

咄嗟に悟飯が叫ぶが、眼前にジレンが迫った事で防御を固めるが、

 

「む……。」

 

「へっ…捕まえたぜ…!!」

 

ジレンの腕を巻き込むようにして胴体をぐるりと一周するような形でピッコロの伸ばした腕がジレンを拘束していた。

だが、それはジレンにとって大した事はなく、力任せにピッコロの腕を引きちぎる。

 

「がぁぁぁ!!?…なんてな!くたばれ!!」

 

腕が引き千切られ、苦悶の顔を見せるピッコロだが事前に掌に仕込んでおいた気弾が起爆。

腕は連鎖的に血を撒き散らしながら爆発し、ジレンの目にピッコロの血が張り付いて目潰しとなる。

 

「悟飯!!」

 

「はい!!だりゃりゃりゃ!!!」

 

ピッコロが作ってくれた隙を無駄にせんと悟飯は連続でジレンの急所に蹴りを叩き込み、最後に蹴り飛ばす。

 

「ぬぅ……!!」

 

ベジータ、ターレスに比べれば劣る攻撃ではあったがそれでも、持ち前の才能と天才性に活かした観察眼でベジータの模倣をする事によりジレンにダメージを通す事に成功した。

 

「か…め…は…め…波ぁぁ!!」

 

「ふん!!」

 

追撃にかめはめ波を放つも、それは気の流れを察知したジレンの剛腕が弾き飛ばす。

 

「くっ!!」

 

「おおおお!!」

 

ここに来て初めてジレンが咆哮し、先ず的確にサポートしてくるピッコロへと一瞬で迫る。

 

「しまっ…!!」

 

腕を再生した直後ともあり、僅かに硬直していたその隙をジレンは気の荒ぶりで感じ取り好機を逃さんと先程とは明らかに威力が違う拳をピッコロの腹へと叩き込ませ、めり込ませる。

 

「ご……ぁ……!!」

 

その一撃でピッコロは白目を剥きながら両膝をつき、倒れかけるも更にもう一撃と腹に気弾を滑り込ませて上空へと運び起爆。

その後から黒焦げではあるものの息はあるピッコロが気絶しながら場外へと落下していく。

 

「ピッコロさぁん!!!くそぉ!!」

 

それに激昂する悟飯がジレンへ迫るも、ジレンの目力によるラッシュが全身を打ち、最後に地面へと叩きつけ更に頭と両足を両手で掴んでもう一度叩きつける!

 

「ぐ……ぁ……。」

 

悟飯は反撃と、気弾を生成しようと気を練るもその痛みに耐え切れずそのまま倒れ込む。そしてジレンはそんな彼の足を掴んで一回転した後に投げつけ悟飯もまた、場外へと落ちていった。

 

「…後はお前たちだけだ。お前たちを倒し、残る第7宇宙の選手全てを倒し第11宇宙は俺が救ってみせる…!!」

 

2人が場外へと転送されたのを確認し、ジレンは起き上がったベジータとターレスを睨む。

 

「傲慢…そう言ったな…。」

 

「悪ぃがそいつは俺たちサイヤ人の誇りでな、消す事なんざ出来ねぇんだよ。てめぇみたいな正義の味方サマとは違ってよ。」

 

「…だから、俺はこの誇りを持ったままジレン!貴様を倒す!!」

 

「そういうこった…サイヤ人の底力…みせてやらぁ!!」

 

先程まで意識を失い見るからにボロボロの2人はそれでも闘志と不敵な笑みを浮かべる。

ターレスは残った力の全て、そしてその限界の底までをも使い紅蓮の気を。

ベジータは、あの時開けた扉という名の殻をもう一度食い破り、ブルーの新たなステージへと足を踏みいらんと全霊の気を解放する。

 

紅蓮の閃光と、蒼の閃光がジレンを挟んで発生し武舞台を大きく揺らした。

ターレスは身体を纏うように紅蓮の気が迸り、ベジータは髪の色に更に青が増し、気の質も先程とは違い煌びやかさの中に荒々しい奔流を感じる。

 

「これが俺の…俺たちの全てだ!ジレン!!」

 

「オオオオオ!!!」

 

ベジータとターレスが同時に地を蹴ってジレンへと接近する。

その速度はとてもではないが、別人級の速さであり動きも攻撃の鋭さも先程とは格段に向上している。

 

「……来い!!」

 

それでもなお、ジレンの目には余裕の色。

攻撃を受けた腕が先程よりも痛みを感じる事から2人の評価を上方修正し、更にそのマグマのような気を解放する。

 

「だだだだだ!!」

 

「おおおお!!」

 

だが、サイヤ人のワンマンプレイが奇跡的に噛み合っているという何千分の一を常に叩き出している2人の連携にジレンのペースは乱されていくも、飛んできた左右の蹴りを片腕の横薙ぎから発生する衝撃波で弾き飛ばし、ベジータが飛ばされながら放ったエネルギー波を気を纏った拳圧で吹き飛ばす。

 

そして、その爆風の中から現れたターレスのブローを剛腕で弾き、体勢が上に仰け反った所を鉄山靠で弾き飛ばす。

 

「でえぇ!!」

 

更に背後から迫るベジータの拳を片手で受け止める。

 

「良い拳だ…流石にここまで生き残った戦士という事はある。だが!それでは俺は倒せん!!」

 

そして、その拳を引っ張り体勢を崩した所で気を纏った拳で一閃。

ベジータのプロテクターを容易く破壊し、ベジータはそのまま一直線に岩場に激突する前にジレンが背後から蹴り飛ばし、更にそれに追いついた上で岩盤に叩きつける!

 

「づぅ……!!まだだぁ!!」

 

決して無視できないダメージを追いながらも気の解放でジレンを仰け反らせ、真っ直ぐに蹴り飛ばす。

その速度にターレスが追いつき、背中に膝をぶつけ顔面をダブルスレッジハンマーで地面に叩きつけ、自身は天高く跳躍する。

 

「合わせろやぁ!!カラミティ……!!」

 

「俺に命令するなぁ!!ファイナル……!!」

 

「む…!!」

 

ジレンの上ではターレスが、そして正面ではベジータが。それぞれ全力で大技を繰り出す。

 

「ブラスター!!」

 

「フラァァァァシュ!!」

 

紫の閃光と黄色の閃光が同時にジレンを襲う。

だが、

 

「ハァァァ!!むん!!」

 

なんとジレンは更にもう一段気を解放する事によりその攻撃を霧散させたのだ。

 

「ちっ……バケモノめ!!…ぐっ!!?」

 

降り立つターレスはそのジレンの実力に戦慄するが、同時にサイヤパワーが完全に消え去りターレスの超サイヤ人4はこれで完全に打ち止めとなってしまった。

 

「……終わりか。」

 

「ターレス!!…ちぃ!!」

 

ベジータもまた、先程の一撃で体力を大幅に消費したのか纏う気にブレが生じており、ベジータもまた限界が近づいていた。

 

ジレンは膝をつきもう立ち上がれそうにもないターレスへと近づく。

 

「ちっ…俺の負けか。いいぜ、やれよ。」

 

ターレスは震える体に鞭打ち、眼前に立つジレンに対し不敵に笑う。

 

「…さらばだ。」

 

ジレンが、ターレスに向かって気弾を今正に放とうとしたその時。

 

「む…!!?」

 

唐突にジレンは直感的に腕を突き出す。

そこに、誰かの腕がぶつかり衝撃波を生む。

 

「ぐぉぉぁぁ!!?」

 

もう立つ事も出来ないターレスはその衝撃波により吹っ飛んでいくが、それはベジータによって受け止められる。

 

「あれは…何だ?」

 

「さぁな……だが。」

 

ジレンの先に立つ者。

それは。

 

「………。」

 

「孫…悟空。」

 

白き神々しい気を纏った悟空だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・ジレン
無双中、これでもまだまだ余裕な様子。
因みにこの後もまだまだ無双する。
なんだ、こいつ。

・ベジータ
キラベジータだのキュアベジータだの言われている姿へと覚醒。
因みに原作よりも強く設定しているが…あれでは焼け石に水である。

・ターレス
流石に体力が限界の上、サイヤパワーもこれで完全に消費したので実質リタイア。お疲れ様です。

・悟飯
実力不足。
学者をやってたブランクがある限りジレンには勝てません。

・ピッコロ
トリッキーな事をいっぱい出来るので、ジレンにとっても結構ウザい事が出来る策士。
が、この人も実力不足です。

・悟空
身勝手の極意(兆)の状態。
因みに強さはアニメでケフラと闘った時に相当しているが、体力的には21号とかいう万能のお陰でほぼ全回復なのでそれ以上。

・フリーザ
拾った。


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前座

…それは最早、超が付くほどの達人の視界ですら捉える事が不可能の領域へと突入していた。

 

「……」

 

「……っ!」

 

耳から伝わる拳がぶつかり合う音は一瞬にして何百、何千と重なり。

目から送られる情報は既に幾分かの情報を見逃していく。

 

ベジータが、そしてターレスが見ている戦闘は正に神を超えた先にあるモノ。

一撃が必殺となるジレンの攻撃の全てが、悟空には一撃も当たらない。

 

これが破壊神すら習得が困難と言われる身勝手の極意のまだ入り口だとは誰がどう見積もったとしても想像出来ないだろう。

 

ジレンの拳が弾幕となりながら悟空を襲うも、その一切を回避あるいは受け流しこちらもと言わんばかりに拳の弾幕によってジレンと拮抗する。

 

やがて、その攻防が互いの拳が弾かれ体勢が崩れる事で決着するもジレンはすかさず拳に気を纏い一閃。

だが、気付けば悟空は既にジレンの背後。

 

「だりゃぁぁぁ!!」

 

ここで初めて悟空が咆哮し、ジレンへと回し蹴りをするもジレンは最低限の動きをもってこれを回避。

蹴りの軌跡が一瞬煌めいたかと思えば即座に爆発を起こした。

 

「……」

 

今度はジレンが悟空との距離を即座に詰め乱打。

悟空もまた迎撃に転じるも悟空の目が一瞬瞬くと同時に戦況はジレンへと一気に傾いていく。

 

「ぐっ……くっ……!!」

 

拳がぶつかり合う残像が徐々にジレンの拳を希薄にし、それと比例するようにして悟空の拳の軌跡を露わにしていく。

何故かと言えば、実はこれは単純な話であり悟空の純粋な経験値の不足がこの戦況において大きく影響を及ぼしている。

 

悟空の瞬きは、言ってしまえば身勝手の極意が僅かに揺らいだ証。

 

回避、受け流しにおいては悟空の身勝手の極意は完成されており、証拠として今までは手も足も出なかったジレンのあらゆる攻撃を時に避け、時に躱しとその時と状況に合わせた無意識下の最善手をうっている事からもそれが伺える。

 

だが、問題は攻撃。

拳を、蹴りを、気弾を、カウンターを。

繰り出そうとする瞬間、悟空の脳内では一瞬の内に何億通りの攻撃手段が浮かび上がる。

だが、身勝手の極意とはそれすらも無意識下の最善手を打つもの。

思考、そしてそれに対する判断が。本来絶大な威力を生み出す筈の身勝手の極意に枷を付ける事となる。

 

結果、技の精度が鈍りジレンに攻め込む隙を与え、こちらは一向に有効打を打てないという悪戯に体力と時間を浪費する最悪の展開へと進んでいるのだ。

 

だが、ここで悟空を非難できない。むしろ賞賛されて然るべきだ。

彼の身勝手の極意は未完成ながらもその精度はビルスをして驚嘆させるもの。

この場において、最も恐ろしいのはその神々の究極と対峙してなお拮抗どころかそれを上回るジレンの方だ。

 

無論、ジレンとて決して手を抜いて闘える程今の孫悟空は油断ならない強敵である事を理解してはいる。

むしろ、今まで闘ったどの相手よりも手強く、巧く、そして恐ろしい敵であるとジレンは確信した上で闘っている。

 

それでも、彼はたったひとりでプライド・トルーパーズの強豪たる面々の頂点に上り詰め、破壊神すら超えた先にある頂へと立った男。

そして、強さの先を今もなお追い続ける求道者たる彼にとっては今の悟空ですら不足の相手だったというだけの事。

 

これが、最強の体現。

 

全宇宙最強たる彼の真骨頂は、未だ見えず。

 

ここで悟空は乱打による攻防を強制的に中断、拳の衝撃波を利用して後方の残された壁に着地し、彼が出せる最大の技を繰り出す準備を始める。

 

「か……」

 

即座にジレンは拳圧を撃ち出して、壁を破壊。

悟空はそれを跳躍する事で回避し、壁が崩れた事で出来上がった瓦礫へと着地する。

 

「め……」

 

一点集中では無意味と判断し、ジレンは広範囲に及ぶ乱打を選択。

次々に瓦礫が塵となる中悟空のかめはめ波は更に収束する。

 

「は……」

 

遂に瓦礫が完全に無くなり、空中に放り出された悟空ではあるが、落下しながらもジレンの攻撃を滑るように回避。

遂にジレンの真上に到達する。

 

「め……!!」

 

そしてかめはめ波が最大の収束を迎え、今まさに解き放たれようとする中においてもジレンは不動のままそれを睨む。

 

「波ァァァァ!!!」

 

悟空のかめはめ波が解き放たれ、ジレンへと迫る。

会場はその余波で大量の穴が空き、ある部分ではその穴によって部分ごと崩落する所まであるほど。

今までの悟空が放ったどのかめはめ波よりも熱く、そして強い。

正に最大にして最強のかめはめ波。

 

だが。

 

「………」

 

その一撃もジレンにとっては片手でこと足りる。

 

「むん!!」

 

ジレンから放たれた気弾は容易くかめはめ波を貫き、悟空を巻き込んで天へと昇る。

やがて、頂点に達した気弾はそのまま爆発。太陽もかくやという熱さをもって会場を照らした。

 

やがて、その気弾が晴れ中からかめはめ波をバリアーのように変形させる事で何とかジレンの一撃の直撃を防ぐ事に成功した悟空が現れる。

 

だが、その目には先程のような光や威圧感は無く普段の優しき黒目に戻ってしまっていた。

 

「くっ……」

 

そして、バリアーが崩れると同時に悟空は落下し地面へと追突する。

 

墜落した悟空の近くにはベジータ、そしてターレスがおりその全員が満身創痍。その近くにジレンが降り立ってもなお立ち上がる事すら既に困難であり、特にサイヤパワーを全開まで使い切ったターレスは起き上がり意識を保つ事すら危なげとなっている。

 

「……終わりだ、サイヤ人」

 

悟空との戦闘を終えてなお、ジレンの表情には余裕が残っており傷という傷は精々が右腕に出来た打撲痕。

そんな絶望的な状況においてなお悟空の闘志は揺らがず。

むしろ、不敵な笑みをもってジレンを見つめた。

 

「……へへ、そうでもねぇさ」

 

「……な」

 

にを。と、ジレンが言葉を紡ぐ事は無かった。

何故ならば、ジレンの全身を一瞬にして鋭い痛みが襲ったからだ。

 

「ぬぐぅ……!!?」

 

いかなジレンといえども全くの無防備であるならば明確なダメージを受ける。

現にジレンが今受けた傷は先程の物のどれよりもその強靭な肉体に色濃い痣を残していた。

 

とはいえ突然の襲撃、更に己が全く気付けなかった攻撃ともありジレンは目の前のサイヤ人よりもその不可視の敵に対し最大限の警戒を放つ。

紅蓮の気が迸り、次は喰らわんと直感と観察眼をフル回転させ、一撃の元に屠らんとする。

 

だが、一瞬。

ジレンの思考に僅かな停止時間が起きたかと思えば、目の前にいたサイヤ人はジレンの前から姿を消し。

先程まであった嫌な威圧感は消えていた。

 

「………小賢しい奴だ。第7宇宙の奴め」

 

自らの戦士としてのプライドが傷ついた事と、折角追い詰めたサイヤ人を仕留められなかった事における自分の怒りで流石のジレンも怒りを隠す事は出来なかったようで、半ば八つ当たりのように地面を陥没させ直ぐさま遠くから感じ取れた悟空の僅かな気を察知し、今度こそ回復も何もさせずに纏めて武舞台から引きずり落とさんとジレンは地面をかけるのだった。

 

 

♠︎

 

一方、ジレンが鬼の形相で迫っている頃。

 

「いやー助かったぞ!」

 

「……ちっ!」

 

3人のサイヤ人は再び21号の元へと戻ってきており、悟空とベジータがアンドロイドチームからの治療を受けていた。

だが、既にターレスは協議の末に武舞台からの脱落を決意し時間稼ぎをする為に一番に今出来る最高の回復を施した上で既にジレンの元へと向かっている。

 

というのも、ターレスの超サイヤ人4には高濃度のブルーツ波とそれに伴って体内から創り出されるサイヤパワーが必須であり。

21号の頭脳をもってしても、サイヤパワーの生成は現時点では不可能と判断。

結果、ターレスはジレンと拮抗するという事自体が最早不可能でありターレス自身も絶え間ない疲労感は体力の回復だけでは拭えるものでは無いと確信した為捨て駒上等で己の意地を通しに行ったのだ。

それに着いて行く形で18号がサポート役として追従。

 

よって、今現在この場にいるのは悟空、ベジータ、21号、17号。

そして。

 

「さてと…そろそろ大詰めと行きましょうか」

 

「……うん」

 

3人を時間停止によって救出した張本人たるフリーザ、そしてそれより少し前に回収されたブロリーの6人である。

 

力の大会も残り僅かな時間となった今、下手に逃げ隠れの一手を打ったところでそれを成す力もジレンから言わせれば些細なものでしかない事を身勝手の極意の悟空との戦闘から推測したフリーザはそう結論づける。

 

もっといえば、そんなぬるい手を打つのは戦闘本能剥き出しのサルであるサイヤ人には到底肯定できる物ではないし、ここで仲間割れでもしてしまえば敗北及び消滅するのは自身だ。

 

ならば最速かつ最短の強襲をもって一気に決着を付けるというお粗末にも作戦とはいえない代物を提案するのは本意では無いにしろそうせざるを得ない状況ということには違いなかった。

 

ここにいるのがサイヤ人ではなく、ギニュー隊長やスラッグ、メタル戦士であればこんな無駄な事に頭を回す必要も無かったのだが…そこまで考え、無駄だと断じフリーザは思考を切り替える。

 

この選択にしたのは他ならぬ自身。更にその彼らは別件に回した以上今使える駒で確実な勝利を目指すだけ。

 

ただ、この提案するのに際してフリーザが歯痒かった事が1つ。

 

 

端的にいってしまえばサル嫌いは何があっても治らなかった、という事である。

 

 

♦︎

 

倒れ臥す2人を見つめ、躊躇なく場外に叩き落とせば再度思考が止まった感覚と自分の肉体に痛みが走る。

 

「………っ」

 

殴られた打点から恐らくいるであろう場所を推測し、そこを睨み付ける。

立っていたのは自分を見つめ嗤う小柄な人物、似たように嗤う女性、そして闘志を滾らせ唸り声をあげる大柄の男。

その中の小柄な人物を見たジレンは確信する。

こいつこそが、第七宇宙のいわばリーダー格であること。そしてこいつさえ打倒してしまえば第七宇宙は間違いなく瓦解すると。

 

ならばとジレンは即座にフリーザを打倒せんと、21号にもブロリーにも目を向ける事なく接近。

フリーザもまた時間停止にて回避、そして反撃を入れようとするが

 

「捉えたぞ・・・!」

 

なんとジレンがここにきて停止した時間を認知するに至る。

これにはフリーザも多少目を開くも、いずれ看破されたのが今だっただけと即座に解除。

迫るジレンの鉄拳を体を半回転させて回避し、両腕をジレンの前に突き出す。

 

そして、パァン!!と小気味の良い音をたてる。俗に言う猫だましだ。

 

そんなある意味突然の奇襲に怒り、そして数々の打撃を受けたことで研ぎ澄まされたジレンの意識と視線の全てその両手に向く。

そんな僅か0,1コンマにも満たない隙はこの超戦士にとっては致命的。

 

即座にフリーザが顎に膝、更に回転を加えた踵落としを頭頂部に打ち込みジレンは地面へと激突。

爆発するように砂埃が舞うがジレンの気でそれはすぐに消え失せ、それに乗じて挟み込むように追撃しようとした21号の加速をつけた蹴りとブロリーの剛腕を掴む。

 

「邪魔だ!」

 

そう言い、そのまま地面に叩きつけ、双方の体を勢いよくぶつけ合わせた後にその腕力で投げ飛ばす。

 

「かはっ・・!」

 

「ぐぅ・・!」

 

痛みに苦痛の声を漏らす2人に見向きもしないままジレンはすぐさまフリーザへと突貫。

 

それを21号は今にも飛び出しそうなブロリーを抑えながらもまるで悪戯が成功した子供のような顔で見ていた。

 

 

迫り来るジレンに拳を突き出す。ジレンはそれを受け止め流し、殴る。

それを両腕をクロスさせガードし、腕を掴んで背負い投げ。

しかし、宙に浮いたジレンは気を解放してそれを拒絶。逆に利用する形で空を蹴って鳩尾へと拳を突き刺す。

が、それを半歩下がり同時に気の膜で衝撃を緩和するも。

 

「ふんっ!」

 

ジレンは尻尾を踏みつけ、動きを制限。

剛腕から繰り出されるラッシュ全てをその顔面目がけて叩き込む!

 

尻尾を踏みつけられ衝撃も緩和できない状態で殴り続けられるが、ジレンがとどめの1発で気弾を放とうとした瞬間。

超能力で近くの地面をくり抜き、ジレンを挟み込む。

 

「ぬぐっ・・!小賢しい!!」

 

すぐさま砕き、懐へ潜り込んでボディブロー。

からの気の薙ぎ払いで、強制的にその圧力で停止させる。

 

「これで・・・終わりだぁぁぁぁぁ!!」

 

そして本気の気を拳に纏わせ、一閃。

込められた気は、懐で圧縮し爆発。気が体を吹き飛ばしていく。

 

やがて、解放された気は霧散しジレンは場外へ落とそうとして気付く。

 

(・・・違う!!これは奴では・・)

 

 

「その通りです」

 

声が聞こえたその瞬間、ジレンの視界がグニャリと曲がり周りを見渡せばさっきまで戦っていたはずのフリーザ。

そして、21号とブロリーが周りを囲んでいた。

 

同時に倒れている者もグニャリと曲がり、その姿がフロストであることがわかる。

 

「・・・何をした?」

 

「あなたの脳をほんの少しだけ弄らせていただきました。・・まあ、それも微々たるもの。

ですが、あなたという男の戦闘を観察するには丁度良かった。そして・・」

 

フリーザがジレンに向かって指を指す。

すると、ジレンは突然激しい疲労状態に陥る。

 

 

「っ・・・!?」

 

先ほどまでとはうって変わり夥しい程の発汗にジレンは戸惑いを隠せない。

 

だが、それに対しての疑問を思考する余裕を与える事なく前方からはゴールデン化したフリーザ。

左右からは21号とブロリーが迫る。

 

「くっ・・舐めるなぁ!!」

 

流石のジレンといえど乱れ続ける気を通常に戻すのは容易ではない。

しかし、その問題を無理矢理気を最大限に引き上げるという荒療治で強制的に上書きすることで解決。

 

前方と左右からの猛攻を神速を超えた打撃の嵐で逆に押し返し

その勢いで後退したその一歩を見逃す事なく、三方向同時に大量の気弾を速射。

フリーザは気弾を壁を張って反射するも即座にかき消され、その壁ごと拳が突き刺さる。

21号は時ずらしや一瞬だけの時とばしを使いわけ回避するも一瞬で背後に回られ脇腹を砕くような重い蹴りを受け吹っ飛ぶ。

ブロリーはバリアを張りながらそのまま突進。

フリーザ、21号が吹っ飛ぶ中彼はジレンに迫り、その顔を掴んでヘッドバット。

だがそれにひるむ事なくお返しといわんばかりにヘッドバットを繰り出し、仰け反ったブロリーの顔面を真っ直ぐ殴りとばす。

 

だが、すぐさま気弾の嵐がジレンを襲い当然叩き潰すが、瞬間ジレンの足元の地面が切り取られたように消失。

同時に強烈な重力がジレンにかかりジレンは高速で落下していく。

ジレンは、重力の魔術をかき消し空中に飛散する僅かなカッチン鋼のカケラを蹴って、武舞台に戻ろうとする。

 

だが

 

「オオオオオオオオ!!!」

 

ブロリーが壁を蹴って空高く浮かんでからジレンに向かって急降下。

ジレンを巻き込んで場外めがけて落下していく。

 

しかしここで幸運はジレンに微笑む。

近くに浮遊した岩場を見つけジレンは体を捻りながらブロリーごとそこへ激突。

 

「グゥゥゥゥ!!!」

 

頭から激突した事で完全に激昂し、理性を殆ど失ったブロリーはさっきとうって変わりその本能のままがむしゃらな攻撃を繰り返す。

重量級の2人の激突を受け、少しずつではあるがヒビが入り始めている地面を確認したジレンはそんな獣の剛腕を受け流す。

同時に気弾を胴体にめり込ませ爆破。更に仰け反ったブロリーの顎を踵で蹴りぬいて脳を揺らす。

焦点がズレ始め意識朦朧とし始めたブロリーだったがその蹴りがむしろプラスに働いたのかその目はジレンを正確に捉える。

そして蹴られた足を掴んで引っ張りあげ

 

「しまっ・・」

 

そのまま、4度叩きつけ上に放り投げてから頭を掴んで跳躍。

再び地面へと叩きつけトドメに口を開き全力の光線を放たんとする。

 

だが、ジレンはあえて岩場を気で破壊。

これにより手足が自由となったため爆発波で強引に手を引き剥がし

空中で暴れるブロリーを足場として跳躍。

 

「グォォォォォォ!?」

 

その勢いでブロリーは脱落。

ジレンは武舞台への復帰に成功するのだった。

 

 

岩場での戦闘を遠視で把握していたフリーザ、21号両名は即座に作戦を次段階へと移行。

武舞台へと着地したジレンの前へと立つ。

 

「おや、随分とお疲れのようですね?そろそろ立っているのも辛いのでは?」

 

そう言うフリーザの目には見た目はそれほど大きな違いは無いが気の乱れは尋常ではないほどに荒ぶっているジレンの姿が映っている。

それもそのはず。

ブロリーからの猛攻の最中もジレンへの干渉は続いており内外の気の調整に集中を取られていた。

そこに先程の攻撃によって決して無視できないダメージが加わり、一瞬だけ気が減衰した事により更にその負担が増えていた。

 

 

「・・それがどうした」

 

とはいえ、肉体的ダメージはそこそこでまだまだ余裕が残るジレン。

猛火を滾らせフリーザへと迫る。

 

 

「お気づきではない?あなたからは先程のような絶対的な力は全く感じません」

 

「・・何が言いたい」

 

「あなたは敗北するということです。・・この私達にね!」

 

破壊の力を覚醒させそう宣言した瞬間、ジレンの顔があからさまな憤怒となり勢いよくフリーザへと突撃する。

 

「あらあら・・単純脳なのね!」

 

ジレンの拳を受け止めたフリーザを尻目に21号は3人に分身。

1人をフリーザのサポートへ、残りの2人は隅に散開し光線の結界を展開。

ジレンの行動範囲を限定させ最高の牢獄へと閉じ込める。

 

その中でフリーザ親子の鮮やかな連携を的確に捌きながらも、結界から放たれる無数の気弾を躱していくジレン。

どんどん手数が増え、手段が増えていく親子の連携は悪質を極め幾多の悪党を退治したジレンですら思わず目を剥くほど。

拳を捌けば、死角から蹴りが飛び。

気弾は避けても異空間の裂け目がそれを回収し一面を覆う程の嵐が襲う。

 

極めつけには21号の不死身という性質を使い、羽交い締めからの自爆や彼女ごと巻き込んだ殺傷性の高い一撃。

更にはフリーザごと地面を破壊したり、破壊のエネルギーを精密操作し気弾を一切無効化するなど。

不死身と破壊の理不尽の権化コンビは一手づつ、しかし確実にジレンを追い詰めていく。

 

強者たる余裕は既に消え、あらゆる手を全力で潰さざるを得ないジレンは疲弊していく中でこんな考えがよぎる。

 

“もしかしたら、自分は負けるのではないか”

 

それを考えたその瞬間、ジレンにはある記憶が蘇る。

 

今なお尊敬する師の死。

弱さ故に離れていったかつての同志。

 

ジレンの強さの裏にはいつだって悪と敗北があった。

 

敗北は全てを失い、悪は全てを奪っていく。

 

強き者なら認め、それを打ち砕く。

悪ならば、その矜持を打ち砕いて正義を示す。

それを行える『強さ』だけが全てを亡くしたジレンの最後の拠り所だった。

 

しかしどうだ?

 

正義はまさに悪に敗れて折れそうになり。

強さという防波堤もまた挫かれ、脳裏には敗北が浮かんだ。

 

「・・・ふざけるな・・!」

 

追い詰められその敗北というトラウマが刺激されたジレンはナニカが切れた。

凄まじい気の嵐がジレンを包み、無意識下に眠っていた力を呼び覚ます。

 

「はあああああああ!!!!!」

 

その余波で結界は消失。

あたり一帯は火の海となり上半身があらわとなり鬼神と化したジレンがゆっくりと迫る。

 

フリーザはここで初めて冷や汗を流す。

ここまでは良い。

だが、ここから先は全くの未知数だ。

 

あのサル共がさっさと決めてくれなければ・・

 

こちらはいつ落ちてもおかしくはないのだ。

 

 

先程とは違い今度はジレンに戦いの天秤が傾く。

何でも利用してようやく優位に立っていたのにそれが一切無駄になっては更にだ。

 

拳と拳がぶつかり合い拮抗するも

 

「俺はどんなことがあっても絶対に・・負けん!!」

 

「ぐぁ・・!?」

 

力の差が出た以上、ジレンがあらゆるものを上回る。

それは気弾さえも例外では無く、ジレンの気弾は既にフリーザでは破壊しきれない程。

放たれた気弾を回避しながら、手加減の余裕もないと完全に殺しにいくフリーザと21号だったが。

 

 

「っ・・!?」

 

ここにきてフリーザは時間切れを起こし、破壊神化が解け体力が大幅に低下。

同時に21号もまた考えつく限りの策を出しきってしまう。

 

「はぁ・・はぁ・・」

 

「・・終わりだ」

 

ジレンがフリーザとそれを庇いながら回復に気を渡す21号の前に立つ。

 

だが、それでもフリーザは笑っていた。

 

 

「えぇ・・終わりですよ・・」

 

 

 

・・前座はね。

 

 

その瞬間、ジレンは咄嗟にガード。

流星の如く繰り出された拳を受けた衝撃で後方に大きく飛ばされるもその目はしっかりと最後の敵を見つめていた。

 

 

「・・何者だ」

 

 

 

 

「俺はきさまを倒す者だ!!」

 

 

 

宇宙の生き残りをかけた最後の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナーはお休み。
次回やります。

ここまで遅れた事を謝罪し、次回はもっと早く投稿出来るよう頑張ります。


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蒼紅決着

「んじゃあまぁ・・いっちょいくぜ!」

 

「今さら何をしようが俺は負けん!!誰にもだっ!!」

 

瞬間、紅蓮に燃える赤と蒼炎に煌く蒼とが空でぶつかり合い火花を散らす。

繰り出される攻撃は徐々に熱く、鋭く、そして進化していく。

 

ジレンの燃え盛る剛腕がゴジータを殴り抜ければ、負けじとゴジータもアッパーを顎に叩き込む。

が、これは大した一撃にはならなかったのかすかさずジレンが一撃。

だが、ゴジータは拳の起動を鮮やかに逸らし懐へ入って肘打ち。

からの渾身の横蹴りをジレンの頬へと直撃させ叩き落とす!

 

「はああああ・・・!!ずうぇりやぁぁぁぁ!!」

 

更に追撃の流星群にも勝る気弾の嵐を天高くから発射。

 

「おおおおお!!!」

 

ジレンはこれを全て拳で撃ち落とし、ゴジータへ肉薄。

再び2人は落下しながらの拳のぶつけ合いへと突入。

目に止まらぬ攻防の中、ジレンがゴジータの攻撃を強引に薙ぎ払う。

 

「しまっ・・」

 

弾かれたゴジータは大きな隙を晒してしまいその土手っ腹に乱打の嵐をもろに喰らい

顎を下から殴り抜かれ、更に脳天へと回転を加えた踵落としを受けて地面へと激突する。

 

すぐさま受け身をとるが上空ではジレンが既に高出力のエネルギー波を発射。

回避は不可能と判断し、こちらもかめはめ波で対抗する。

 

「ぐうううう!!」

 

「ぬああああ!!」

 

だが、ジレンの業火はゴジータのかめはめ波すらその圧倒的な力でもって押し通る。

 

「終わりだ!!」

 

そう言ってジレンが拳を握ればかめはめ波は霧散。

ジレンのエネルギー波はゴジータを巻きこんで地面へと着弾。

辺り一面全てを更地にする程の大爆発を引き起こす。

 

が、ゴジータはその起爆を逆に利用。

岩場に着地したジレンに奇襲を仕掛けるもギリギリの所でジレンが回避。

その回避を先読みした蹴りはジレンも同時に繰り出した蹴りと相殺して弾かれる。

だが両者が離れたのは一瞬で直ぐに接近手四つをもって拮抗する。

 

「・・どうやって俺の攻撃から逃れた・・!!」

 

「種明かしをしてやろうか?」

 

「戯言をっ!!!」

 

挑発するゴジータに激昂したジレンだったが、膝打ちが腹に炸裂。

後方に一歩大きく下がる事で衝撃を緩和し先程よりも更に威力を増したエネルギー波を放つ。

 

「ふん!」

 

しかし、ゴジータは前方に気のヴェールを張りこれを反射。

ジレンがそれを叩き落とし爆風が舞った瞬間

高速で回転し威力の増したゴジータの回し蹴りがジレンの顔面ど真ん中へと炸裂。

 

乱立した宙にある岩場をいくつも破壊し地面を抉り抜きながら激突。

直ぐさま起き上がるジレンに対しゴジータは両手に高密度の気弾を携え猛スピードで接近する。

 

「ぬぅぅぅぅ・・!!おおおおおお!!」

 

ジレンはそれを数多の気弾で応戦するが、ゴジータは最低限の動きだけで全て躱し

 

「ぐぉ!!??」

 

接近したその瞬間に不可視の乱打で背後へ

更に後頭部に横蹴りを二発。振り向いた瞬間に顎を蹴り上げ脳を揺らす。

 

ジレンはよろめき体勢を立て直そうとするが、それをさせじと二発の気弾が直撃。

 

「はぁぁぁ・・!!だだだだだだだだだっ!!」

 

それを好機とみたのかゴジータは畳みかけるように気弾を乱射。

その全てがジレンへと着弾し起爆。

そして、右手へ虹に輝く気弾を収縮させ投げつける!!

 

「ぐがぁぁぁぁぁ!!???」

 

その凄まじい威力にジレンは絶叫。

虹の軌跡が煌く爆発にその身体を晒す事となった。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・くはっ・・!」

 

爆風が晴れ、全身が焼けボロボロなジレンが姿を現す。

明らかに肩で息をしているその姿には先ほどまでの覇気はなく

そして疲れとダメージが大きいのかジレンは自らの身体を支え切れずに膝をついた。

 

そう、膝をついた。

それはこの大会で無双の力を誇ったジレンの限界が遂にきたという事。

第7宇宙の戦士というこの大会でも屈指の強さの相手を前にしてもなお最強を示したジレン。

 

だが、幾多のダメージや疲労、精神的ダメージが重なりゴジータの一撃がトドメとなって

遂に無敵の城は瓦解した。

 

つまり。

 

「・・・・・」

 

強さを信じてきたジレンの心もまた瓦解したのだ。

 

♠︎

 

「おやおや・・これはそろそろ決着ですかね?意外にも呆気ない幕切れでしたよ」

 

「ま、あれだけやられてれば当然ね。むしろ良くやったほうよあのゴリラ」

 

一方、体力もそこそこに回復し破壊神化は無理だがゴールデン化ぐらいならば出来るようになったフリーザと

自身のダメージを分身に肩代わりさせる事で全快した21号は戦いの場から一歩離れた岩壁から戦いの様子を眺めていた。

 

「・・終わったぞ」

 

そんな彼らの下に別件を終えた17号が合流する。

 

「おや、お疲れ様です。ですがこちらもそろそろ決着のようですよ」

 

「そうか・・まぁ、こっちが勝って何よりだ」

 

「ええ、全くです。それで?そちらはどうでしたか・・まぁあの席を見れば明白ですがね」

 

そう言ってフリーザが指差すのは観覧席。

そこには第7宇宙と第11宇宙だけが座り大分小さくなった席があった。

そう、17号の別件とはいわゆる生き残りの後始末だった。

人造人間たる彼にはこの舞台に立つ誰もが持つ気が存在していない

つまり、相手に気付かせる事無く武舞台から脱落させるという芸当が可能なのだ。

 

そんな初見殺しにも等しい行為に気付けるのはこの場においても一握り。

第7宇宙ではフリーザと21号。

他宇宙であればヒット、アニラーザ、そしてジレン辺りが該当するだろう。

逆を言えばそれ以外には対処はほぼ不可能。

更に最序盤でフリーザから受けた攻撃もあって他宇宙は全滅。

第7宇宙の戦士を除けば、残る敵はジレンただ1人となっていた。

 

そのジレンもこうして膝をついた以上、第7宇宙の勝利は確実。

現にベルモッドは項垂れ、ビルスは今にも小躍りしそうな雰囲気を隠そうともしていない。

そんな様子を17号は一目見て、僅かに顔を顰めて、そしてゆっくりと腰を下ろした。

この場が滅びをかけた生存競争だと分かった上で自分は参加したし、家族が守れたという事にも安堵しているのは事実。

故にこの感情に意味は無いと17号は結論し前を見る。

 

ゴジータがジレンへと近づき決着をつけようとしたその時。

 

 

「何をしている!!ジレン!!」

 

声が響く。

その声にジレンは反応する事は無くゆっくりと項垂れている。

 

「その情けない姿がお前の最期なのか!!?」

 

返事は無い。

ジレンの心は既に割れたガラス細工に等しい。

 

「今まで何の為にお前は全てを捨て力を磨いてきた!その磨かれた誇りは一体何処に置いてきたんだ!!」

 

僅かに指が動く。

だが、ジレンは動かない。

信じてきたものが砕かれたジレンはきっとこの場の誰よりも弱く、脆い。

 

「負けを確信し、自分が信じられなくなったか?・・オレもそうだ。

自分の正義の弱さを知り、オレはそれを切り捨ててしまった・・誇りを、捨ててしまった」

 

「だが!!」

 

 

「お前は違うだろうジレン!!」

 

瞼が僅かに開く。

 

「お前は強い!!何よりも!誰よりも!!お前が信じられずともオレは信じている・・最期まで!!」

 

「そうだ!お前は強い!!だから俺はお前に憧れ、強くなろうと努力した!!いつか、お前に仲間と認めて貰いたかったから!!」

 

別の声がジレンへ響く。

ディスポの声を皮切りにそれは更に増していく。

カーセラルがココットがクンシーが声をあげ、ジレンを鼓舞していく。

それら一つ一つが闇の底にあったジレンの心に少しづつ光を差していく。

 

弱者と切り捨て、蔑んできたはずの唯の仕事仲間だっただけの声。

裏切られたあの時から信じなくなった他人の声が、姿が今のジレンにはこれ以上に無いほど暖かい。

 

そして、今まで項垂れていたベルモッドも顔を上げる。

 

「頑張れっ!!ジレン!!」

 

破壊神の威厳もへったくれもない決死の表情で放った声。

それが、ジレンが閉じ籠もっていた最後の殻を木っ端微塵にぶっ壊した。

 

眼から一雫、涙が滴ったのがわかってジレンは笑う。

そして、最後の力を振り絞って立ち上がった。

 

もう、ひとりぼっちじゃない。そう信じられたから。

彼は彼のために・・こんな自分を信じてくれた者のために彼は再び立ち上がれた。

 

ジレンの眼前に立つゴジータはその顔を見て笑う。

そこに修羅はなく、ただの不敵に笑う戦士がいたからだ。

 

 

「・・・決着、つけようぜ」

 

「・・ああ!」

 

 

♠︎

 

「・・かぁぁぁ!!!」

 

「はぁぁぁ!!」

 

違いに突進し弾かれる2人。

だが互いに笑って再びぶつかり合い目にも止まらぬ攻防が始まる。

とはいえ、ジレンの体力はすでにギリギリであるため右ストレートを弾かれ

裏拳からの横蹴りで柱に激突する。

 

「くっ・・!」

 

柱に埋まり、痛みに苦しむジレン。

それを見逃さず、空中の岩場を高速にけって加速し飛び蹴りを繰り出す。

が、これを当身の応用でその勢いのままゴジータを受け止め

更にその一瞬で無数の乱打を叩き込み、裏拳で逆に柱へと叩きつけ更に膝撃ちでもっと凹ませた上で

ダブルスレッジハンマーで叩き落とす。

 

ゴジータは飛ばされる中で回転し、地面を引きずりながらも着地。

柱を蹴って急接近するジレンに合わせて気を解放。

 

「ぬぉぉぉぉ!!!」

 

「だぁぁぁ!!」

 

繰り出される互いの拳の衝撃は地面へと流され、大きな亀裂ができる。

ジレンは蹴りをガードさせ、その反動で距離を取る。

 

「ぬぅぅぅ・・・!かぁぁ!!」

 

そこから全力のエネルギー波を放出。

しかし、ゴジータはそれを滑るようにして接近、強烈な一撃をジレンへと叩き込む!!

 

「かっ・・」

 

更に蹴り上げ、膨大な気でジレンを固定。

 

「んんんんん・・・・!!かぁぁぁぁ!!!」

 

腕を交差させ、勢いよく開放。

すると浮いていたジレンの中央から特大の気が溢れ出し、蒼の柱となって爆発する。

ジレンは満身創痍になりながらも立ち上がるも僅かにふらつく。

 

「ぐぅぅぅぅ・・・!!ま、まだだ・・まだだぁぁ!!!」

 

紅蓮に燃えながら咆哮したジレンは残る気の全てを右手に収縮。

太陽さえも超越した熱さの気弾を生成する。

 

 

同時にゴジータもまた全ての気をかめはめ波へと乗せる。

 

「かめはめ・・・」

 

そして。

 

「オオオオオオオ!!!!」

 

ジレンはそれを全霊を込めて投擲。

 

「波ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ゴジータもまた全力のかめはめ波を放った。

 

2つの気功波はその場を焼き尽くしながら拮抗。

初めの内は執念からジレンが押すも

 

「ぐぐぐぐっ・・・・おおおおおお!!!」

 

「波ぁぁぁぁぁぁ!!」

 

やがて、蒼の光は紅蓮を焼き尽くしジレンはその光に包まれた。

 

(・・これが、第7宇宙の・・)

 

絆の力か・・

 

そう考えたのを最後にジレンは意識を失い武舞台から落下していった。

 

 

(またやろうぜ・・ジレン!)

 

 

「ジレンさん、脱落です」

 

そう大神官が宣言し、ここに力の大会は第7宇宙の勝利にて閉幕した。

 

 

♠︎

 

それからの事を簡潔に語ろう。

結果として最優秀賞を取ったフリーザであったが、超ドラゴンボールの使用を辞退。

 

「私は、大して興味もありませんのでご自由に」

 

ならばと、悟空がその権利を受け取り全宇宙の復活を願い

全ての人、宇宙は元通りへとなった。

 

悟空達は地球に戻って傷を癒し。

時には、互いに競い合ってその力を高めていく。

 

まさにみーんな幸せのハッピーエンドというやつだろう。

 

 

「まぁ、そんなものはありはしないのですがね」

 

 

力の大会から半年。

 

地球から、太陽が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

・悟空
今度は一対一でジレンに挑みたいと願う戦士。
・・果たして願いは叶うのか。
合体に対しては割と寛容だった。
身勝手の極意が未完成に終わったため実力的には原作以下。

・ベジータ
まだまだ諦めないサイヤの王子。
実は魔人ブウ戦において件のNo. 1発言はしていない。
合体は最後まで渋った。
が、ブルマやトランクスのために泣く泣く決断した。
後、既に一回合体していてそんなに拒否感がなかった事も原因の1つだろう。


・人造人間17号
セルジュニアを狩れる、子持ちの一般人。
実は後始末の際、無傷で全員叩き落とした猛者でもある。
力の大会後ブルマから世界一周旅行のチケットを貰い家族サービスを達成。
お前のような一般人がいるか。


・ジレン
恐らく、今作において1番精神的に成長した枠。
第7宇宙をたったひとりで壊滅寸前まで追い込んだ。
因みに、一歩間違えれば逆転勝利もあり得た。
意図せずして師の願いを叶えた。


・人造人間21号
真のmvp。
恐らく21号のサポートが無ければ何回も全滅していただろう。
ヒット、ジレンとの戦いで細胞の活性化を果たし更に成長した。

・ブロリー
あの後、農場に帰りチライ、レモ、バアからの抱擁を受ける。
大猿の力を完璧にコントロールする事に成功し今では惑星の殆どを農場と化した。
家族は嬉しい悲鳴をあげている模様。
今作はこれでクランクアップです。

・フリーザ
ジレンとの戦いでさらに成長。
破壊神の力のさらなる発展、発掘、成長を遂げ
遂に・・・。



次回から最終章です。




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進軍開始

警告。

この先、タグ注意。

苦手な方はここで退避する事をお勧めします。


本当によろしいですか?


・・・では、最終章開幕です。


 ーー惑星フリーザ。

かつては数百とあったその名はビックゲテスターによる吸収と合体を繰り返し

第7宇宙最大規模の移動惑星となったフリーザ軍精鋭部隊の拠点地である。

 

そんなフリーザ軍精鋭部隊・・一騎当千、万夫不当の兵達…総数5億3000万の兵士達は今日この日の為に惑星の中心へと集結していた。

そこには部隊長であるドドリアを始めとした精鋭の中の精鋭の姿もある。

彼らは膝をつき、我らが主が姿を表すのをただ黙して待っていた。

 

そして・・彼が姿を表す。

 

「皆さん。・・遂に総取りの時間が・・我々が宇宙の征服者となる日がやってきました」

 

その特徴的な足音とともにフリーザが彼の威光を表すような玉座へと座り

それに追従する形で21号がフリーザの横へと立つ。

 

「先ずは、ここまで私に付き従い働いて下さったあなた達に感謝を。

あなた達がいなければ少なくとも私はここに座ってはいません」

 

その言葉を部下達は噛み締め上を向き、王命を待つ。

我らが敵をその命において殲滅し必ずや勝利を献上せんと誓いを立てながら。

 

「さて、先日通達した通り我々の最後の獲物となるのは・・この星です」

 

21号が手に持っていたリモコンを押し、大大とその画像が映し出される。

その星は青く煌く美しい星。近辺の月から撮影したからかその美しさは更に際立っていた。

 

「名を地球、この星には決して放っては置けない科学技術そして自然資源が数多く眠っています。

しかし、ここには決して少なくない障害があり、私がここを最後としたのはそれが原因しています」

 

再び21号がリモコンを押せば2人の男の画像が映し出される。

 

「名を孫悟空、そしてベジータ。どちらもサイヤ人です・・ですが今の我が軍では問題ではありません」

 

悟空、ベジータの顔にばつ印が付き、燃えるように消失する。

フリーザはそれを見て嗤い、命令を下す。

 

「今回の命令は簡単・・彼ら及び全地球人の殲滅です。人種、性別、年齢関係なく彼らがこの星に住んでいたという痕跡を無にし、踏み躙りなさい。手段、方法は問いません・・自由にやりなさい。

・・ですが、自然だけは破壊しないように」

 

「「「はっ!!!」」」

 

「よろしい。では先ずは主要都市を叩きます。ドドリアさん、貴方は東を」

 

「へい!」

 

「ザーボンさんは西を」

 

「了解しました!」

 

「南はガーリックさん」

 

「必ずや!」

 

「北はリルドさんにお願いしましょう」

 

「はっ!」

 

「遊撃隊はスラッグさんにお願いします」

 

「いいだろう」

 

「次にターレスさん、そしてギニュー特戦隊の皆さんには荒野地帯に中継基地の設置と防衛。

特にターレスさんには神聖樹の設置をお願いします」

 

「いいのか?」

 

「構いません、既に神聖樹の研究と対策は完了していますのでご心配なく」

 

「なるほどねぇ・・あいよ、了解したぜ」

 

「お任せを!」

 

「そして最後に・・21号さん」

 

「ん?」

 

「貴女はブルマさんの・・いえ、彼女の一家が有する全ての知識の吸収と完全破壊をお願いします」

 

「はーい。わかったわパパ?」

 

 

「さぁ・・・戦争の時間ですよぉ・・ホーッホッホホ!!」

 

 

 

夥しく動く兵が物資や機械、予備の最新型スカウターなど百を超える宇宙船へと積み込んでいく。

その殆どが機械やメタル戦士によって積み込まれてはいるが、指紋認証が必要な兵器や精密機械などは非戦闘員が積み込んでいく。

 

それが終われば次々と戦闘員が宇宙船へと乗り込んでいき、遂に総員が乗り込む。

総数にして百を超える宇宙船の大群はフリーザが乗り込んだコマンドシップを先頭として地球へと座標を指定。

5秒後、宇宙船の大群は地球を覆い尽くした。

 

♠︎

 

「・・んん?なんだ?」

 

男は不思議に思い空を見上げた。

時刻は正午をまわっており、天気予報は一日中快晴との予報。

しかも、先ほどまで燃えるほどの太陽が男を照りつけており

吹き出す汗の原因たる太陽に対しうんざりしていたばかりなのだ。

 

しかし、その汗は違う意味で吹き出すこととなる。

 

空に浮かぶは巨大な円盤。

その大きさはあまりにも現実味がなく男の思考は一時停止する。

だが、その余韻もなく下部に位置するハッチが開き、超高速で何かが落下し・・

 

「え?」

 

男を圧殺する形で着地した。

 

「ふぃ〜〜!あ?きったねぇ!なんか踏んじまったかな??」

 

瞬間、響き渡る悲鳴。

車を捨てて逃げるものや周囲の人を押し除けるもので都中が大混乱に陥る。

 

「うるせぇ奴らだぜぇ・・おいお前ら!!」

 

男・・ドドリアはその悲鳴に飽き飽きしながらも号令を出す。

それを合図として数万を超える兵士が宇宙船から飛び出し都を囲むように降り立つ。

 

「ぶっ殺せ!!」

 

その言葉を合図として兵士達は気弾を乱射。

無論対抗策など持ち合わせていないただの一般市民がどうこう出来るわけもない。

1人、また1人と破裂する袋のように弾け飛び、建物は倒壊し・・

ものの2分で東の都は消滅し、部隊は殲滅のため各地に散開した。

 

そして。

 

「あ・・ぁ・・」

 

「それじゃあ・・いただきま〜す!」

 

時同じくして、南の都では。

 

「お前ら!!魔族の恐ろしさをこいつらに見せてやれえ!!」

 

ガーリックjr率いる魔族部隊が襲来。

こちらはドドリアの隊とは違い、人間達を片っ端から食い尽くしていく。

臓物がそこら中に飛び散り、腐食した鉄の匂いがコンクリートへと染み込んでいく。

 

「まさか、今になって神への復讐が果たせるとはなぁ・・フリーザ様には感謝しなくては」

 

 

ガーリックは都の市長であった者を喰いちぎりながら、感慨深くなっていた。

だが、その思考を乱す者が、ガーリックの前に立ち塞がる者がいた。

 

「おい!そこまでにしておけよ!!」

 

「む・・?」

 

現れたのは武道家を離れ、プロ野球選手へと転向したヤムチャだった。

偶然近くの球場で試合をしていたヤムチャだったが、突如現れた魔族の軍勢が観客を襲うのを目にし

元戦士として魔族に立ち塞がったものの、チームメイトに大元を叩くべきだという叱責を受け

こうして魔族の大元であるガーリックjrの前に立ったのだった。

 

とはいえ、武道を辞めて久しいヤムチャと今なお人を喰い、魔族として成長を続けるガーリックjr。

戦力差は歴然でありヤムチャもそれは肌で感じ取っていた。

だが、託してくれたチームメイトのためにもヤムチャは震えそうになる足を押さえる。

 

「行くぞ!!狼牙風風拳!!」

 

そして自身の最大の技を持ってガーリックjrへと突貫するのだった。

 

 

そして北の都、中の都では。

 

「ゆけっ!!ルードよ!人間どもを滅ぼすのだ!!」

 

リルド将軍率いる機械部隊が、地球を遥かに超えた技術より生まれた科学兵器を存分に利用し虐殺を開始していた。

もちろんここはある意味地球の心臓ともいえる場所。

軍隊は総動員して対抗するもその威力は蚊以下。

 

北の都は壊滅し、中の都そしてキングキャッスルもまた滞在していた国王ごと焦土に消えた。

その直後、ルードそしてリルド将軍の前に立ったのは天津飯と餃子。

 

「貴様ら・・・許せん!!」

 

「・・・戦闘力が基準値を突破。フリーザ様へ仇なす者と判断し殲滅を開始する」

 

天津飯は怒りのまま、リルド将軍はフリーザへ仇なす者の処理としてぶつかり合った。

 

 

そして西の都、カプセルコーポレーションでは。

 

「アンタ達・・一体何なのよ!!?」

 

「私はフリーザ軍幹部が1人ザーボン。お前たちを殺しに来た者だ。」

 

ブルマの前に立つのはザーボン。

そしてその背後ではブリーフから知識を吸い取りお菓子にして食べている21号の姿がある。

 

「ママ!!」

 

「ブルマさん!」

 

そんなブルマの元に駆けつけてたのは悟天、そしてトランクス。

2人はつい先ほどまで部屋で遊んでいたがブルマに迫る巨大な気を探知し大急ぎでここに駆けつけたのだ。

 

「このお馬鹿!早く逃げなさい!!」

 

だが、ブルマはそれを叱責し逃げるように伝える。

 

「そんなの嫌だ!!僕がママを守るんだ!」

 

「僕たちだって強いんだよ!」

 

返ってくるのは当然否定の言葉。

彼らはまだ子供。命の優劣など付けられるはずも無いのだ。

 

「ふん、増援か・・お嬢。この餓鬼どもは私めにお任せし任を」

 

「りょーかい。コイツら美味しくなさそうだし構わないわよ?」

 

「御意」

 

ザーボンはそういうと一瞬で悟天とトランクスの頭を掴み天井を打ち破って何処かへと飛び去っていく。

 

「トランクッ・・・!!」

 

ブルマは叫ぼうとするも21号がその口を塞ぐ。

 

「はいはい、そういうのは良いからさっさと私に食べられて頂戴!」

 

21号はそういうと今度は頭を掴み何かを発動する。

 

(ベ、ベジー・・タ)

 

そこから生じる脱力感にブルマは抗えず意識を失うのだった。

 

 

♠︎

 

一方、ピッコロそして悟飯はそんな西の都へ向かわんと全速力で飛ばしていた。

 

「くそっ!なんだってこんな時に孫とベジータはいやがらねぇんだ!!」

 

「今はともかく西の都へ・・・ピッコロさん!!」

 

ピッコロは今この地球にいない悟空とベジータを恨み

悟飯は一刻も早く向かわんとするも前方から近づいてくる強大な気が迫ってきたことを伝える。

 

 

「ふん!!」

 

その気の持ち主は勢いよくピッコロに向かって拳を突き出しピッコロはそれをガード。

 

「ぬぅ!?」

 

「ピッコロさん!」

 

「ほう・・お前もナメック星人か」

 

現れたのはスラッグ率いる遊撃部隊。

スラッグに続く形で兵も姿を現して悟飯たちを囲む。

ピッコロはここで足止めされるのは良くない事としてすぐさま悟飯に檄をとばす。

 

「悟飯!ここはオレに任せてお前は先に行け!!」

 

「でも!!」

 

「良いから行けっ!!」

 

「・・わかりました!ご無事で!!」

 

悟飯は少し戸惑うが、ピッコロを信じて西の都へと飛ぶ。

だが、兵たちは追うことをせずにピッコロから注意を逸らさない。

 

「なんだ、やけにあっさり通してくれたじゃないか?」

 

「ふん・・あの小僧なら直ぐに死ぬ・・この気を感じないのか?」

 

ピッコロの質問にスラッグは不敵な笑みで返答する。

その言葉を聞いた瞬間、ピッコロの体に常識を逸した圧が襲いかかる。

ピッコロはその圧には覚えがあった。

忘れもしないあの絶望の気を。

 

「ま、まさか・・・」

 

 

そして、悟飯の目の前には。

 

「お久しぶりです。孫悟空の息子さん」

 

「フ、フリーザ・・」

 

今回の侵略軍の総大将フリーザが不敵に笑いそこに立っていた。

だが、悟飯が最も固まらせたのはそこでは無かった。

 

総大将がここにいた事でも、フリーザから発せられる尋常では無い圧に臆した訳でも無い。

フリーザが手に持っている四つの物体にあった。

 

「その手に持っているのは・・・一体何だ?」

 

「おや?意外に貴方も冷たい人ですねぇ・・貴方はこれらの正体を知っているでしょうに・・よぉく見てみなさい!」

 

 

そう言ってフリーザはそれらを悟飯に向かって放り投げ、悟飯の胸を血で濡らした。

ぶつかった衝撃で悟飯は咄嗟にそれらを受け止め、はっきりと見てしまう。

 

そう、見てしまう。

 

 

 

悟飯が愛した人々の首を。

 

 

 

「ぁ・・・あぁ・・・!!?」

 

友であり神であるデンデの。

義父であり恩人であるMr,サタンの。

母であり自身を大切に育ててくれたチチの。

 

そして。

 

「あ・・アアアアアアアア!!!???」

 

妻、ビーデルの首を悟飯ははっきりと目にしてしまった。

それを認識した瞬間、首は弾け悟飯の顔に大量の血と脳髄が付着する。

 

「フリー・・・ザ・・!!!」

 

「さて、貴方で私のウォーミングアップをするといたしましょう!」

 

フリーザの宣言とともに悟飯の理性は弾け飛ぶ。

 

「フリーーーーーザァァァァァァ!!!!」

 

そして、激昂し修羅となった悟飯はその怒りのままフリーザへと突貫するのだった。

 

そして、ユンザビット高地に新たな宇宙船が上陸する。

 

名をビックゲテスター。

その小型機が地球へと着陸し、大量のメタル戦士を放出する。

 

その数・・・10億。

 

 

ーー絶望はまだまだ終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




紹介コーナー

『地球の現在までの被害』

・主要都市全滅。
・政治体制完全崩壊。
・軍隊全滅

この他にも報道機関が軒並み全滅などありますが
追々紹介します。


・なんで悟空とベジータいないの?

ヒント『DRAGON BALL 復活のF 』

キャラクターについてはまた次回。


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「F」

 

 ーー時はフリーザ軍が地球へと侵略を開始する少し前に遡る。

 

 力の大会後、更なる成長の可能性を感じ、そしていつか来るであろう新たな強敵に対抗するために

悟空とベジータは今日とてビルスの星を訪れウイスの師事の元で修行におよんでいた。

 

「だだだだ!」

 

「ふん!」

 

そんな彼らは今組み手の真っ最中。

悟空は力の大会で引き出した身勝手の極意を再び出すために。

ベジータは独自の進化の更なる向上を目指して。

 

悟空のラッシュをベジータは裏拳で弾いて懐へ潜り込んでボディブロー。

それを悟空は膝で防いで防御し気弾を生成し即座に起爆、バックステップで距離を取る。

爆風が晴れた先には無傷のベジータが立っており、それを見てさらに闘志を高める。

 

「へへ・・やっぱベジータとの勝負はワクワクすんなぁ・・」

 

「ふん・・そう思うんだったらさっさと身勝手の極意を完成させるんだな・・」

 

ベジータの姿はブルーを進化させた状態となっており

更に彼は既にこの状態を自由に維持できる事から現在戦力的にはベジータが悟空を上回っている状態。

そういう事もありベジータは多少の余裕を持って戦っていた。

 

悟空もまた、ベジータとの間にできた僅かな差を理解しそれを埋めるため

チチから頼まれた農業をスルーして修行に明け暮れていたのだった。

 

だが、そんな一時も一瞬で崩れ去る。

 

「っ・・!?な、なんだこの気は・・!?」

 

「こ・・これって・・!?」

 

突如として、激しい気の重圧が2人の体にのしかかる。

気の荒ぶりとぶつかり合いは徐々に増え続け遂には。

 

「これは・・ピッコロ・・!?どうしてピッコロの気がどんどん小さくなってんだ・・!?」

 

「これは・・ま、まさか!?」

 

感じられる気が多すぎるせいで探知能力が混乱しているが

悟空はピッコロの気が小さくなっていく気配を感じ

ベジータはトランクス・・ではなくフュージョンしたゴテンクスかつその気がどんどん減っていく事に最悪の想像が脳裏に浮上する。

 

「カカロット!貴様が1番今探知できる気はなんだ!!」

 

「ベジータ・・?何を・・?」

 

「いいからさっさとしやがれっ!!」

 

ベジータは声を荒げ、悟空はそのただならぬ気迫に圧倒され即座に気を探し始める。

そして、悟空は今正に気が跳ね上がった気を探知する。

 

「あった!これは悟飯の気だ!」

 

「なら急げ!!さっさと俺を連れて瞬間移動しやがれ!!早くしろっ!!間に合わなくても知らんぞーー!!」

 

「わかった!!ベジータ!オラに捕まれっ!」

 

悟空がそう言い、ベジータは悟空の肩に手を乗せたのを確認してから悟空は瞬間移動。

その場には遠くから観察していた破壊神と天使だけが存在していた。

 

「ふむ・・ビルス様。この勝負どう見ます?」

 

「さぁね・・けどまぁ、どっちが勝っても・・」

 

「なんです?」

 

「僕の遊び相手が減るのは・・少し残念かな」

 

「・・そうですねぇ。私も貴重な次の破壊神候補が減るのは残念です」

 

「おい」

 

 

♠︎

 

 10億の白銀が空を覆い尽くす。

ソレらはやがて散開し、未だ存在する戦士達のもとへ降り立つ。

 

「これは・・どうなってるんだい」

 

「来るぞ18号!」

 

「やれやれ・・こんな老いぼれを狙ってどうすんじゃ全く・・」

 

カメハウスに。

 

「全く・・随分な量の客だ。子どもが目を痛めたらどうする」

 

自然保護区に。

フリーザ軍に仇なす戦力となりうる存在のもとにその戦士達は降り立っていく。

 

しかし、唯一そのメタル戦士が降り立たない場所があった。

 

「私が思うに、あなたはいつも何か1つ足りていないんですよ」

 

「あああああ!!!」

 

そこは、地球内で最も気が高まっている場所。

フリーザがウォーミングアップと称して悟飯と戦っている戦闘地である。

 

フリーザは片手で悟飯のラッシュを捌きながら、ゆっくりとしかし確実に耳へ届く大きさで説明を始める。

 

「ベジータさん、セルさん、魔人ブウそして・・私」

 

「そのいずれにおいてもその欠如があなたの決定的な弱点になっている・・理解していますか?」

 

「だりゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

悟飯の回し蹴りをフリーザは眼力で念力を発動させ停止。

悟飯がいくら気を開放して力を込めようとも足も体もフリーザの顔面近くから少しも動きはしない。

 

「ぐぎぎぎぎ・・・!フリーザァ!!!」

 

悟飯は激昂するもフリーザは涼しい顔で受け流す。

 

「覚悟、慢心せずいる器、注意力。そして・・」

 

フリーザはそのまま、手刀で悟飯の心臓を貫く。

 

「力量」

 

「ご・・ごはぁぁぁぁん!!」

 

そして、その有様を悟空が認識し絶叫したのはほぼ同時であった。

 

悟空の姿を確認したフリーザは薄らと笑う。

そうして悟飯から手刀を引き抜いて蹴り飛ばし

悟飯はそのままかつてセルゲームの会場があった大草原へと激突していく。

 

「おや、お二人方随分と遅いご到着で」

 

「だまれ!!」

 

悟空は悟飯のもとに向かい、ベジータはそのままフリーザへと殴り込む。

だがそれを片手で受け止めてフリーザは笑みを深くする。

 

「おや、随分と血気盛んですねぇ」

 

「今さら地球に何のようだ!!」

 

「決まっているでしょう・・侵略です。むしろそれ以外の何があるというのです?」

 

そう煽れば、ベジータは即座にブルーに変身しその気の圧でフリーザの手は弾かれる。

が、それを利用して腕を横薙ぎに振って周囲一帯を爆破。

ベジータは後方に退避するもその瞬間に結界が発動。

 

「なっ・・!?」

 

更にベジータの後ろには謎のゲートが出現。

べジータは結界ごとそれに飲み込まれていく。

フリーザはそれを悪辣な笑みで見送る。

 

「随分やる気なベジータさんには申し訳ないのですが・・私、あなたには興味無いんですよねぇ」

 

「く、くそったれぇぇぇぇ!!」

 

ベジータは何度も結界を破ろうとするも結局は無駄に終わり

 

「はぁ〜い、それじゃあ一名様地獄へご案内〜!」

 

という21号の声を最後にゲートは閉じた。

 

それを見届けたフリーザはゆっくりと地上へ降り立ち悟空に歩み寄る。

悟空の目線の先には既に息絶えた悟飯が倒れ伏しており、悟空からは尋常ではない程の怒りの気が放たれている。

 

「フリーザ・・おめぇ・・!!」

 

悟空は立ち上がり背後に立つフリーザを睨む。

が、それを意に解す事も無くフリーザは指を2本立て衝撃の事実を告げる。

 

「・・この数字が分かりますか?」

 

「・・・」

 

「後2人・・それが今この地球にいる地球人の数です。

そして、貴方をここでぶっ殺せば晴れてこの宇宙の支配はこのフリーザの物になる」

 

「・・おめぇは本当にどうしようもねぇ奴だ・・!おめぇはオラの大事なもんを全部奪っちまった

・・おめぇだけは・・絶対に、絶対に許さねぇ!!」

 

悟空はブルーに変身、そして界王拳も限界の20倍まで引き上げ激昂する。

 

「オレはおこったぞーーーッ!!フリーザーーーーーッ!!」

 

悟空の生涯最大の怒りを真っ正面から受けながらもフリーザは不敵に笑ってゴールデン化。

同時に加速し

 

「だりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「おおおおおお!!」

 

全力の右ストレートが両者に突き刺さる。

その影響で空が大きく割れたのを合図として決戦が始まった。

 

拳が突き刺さった両者は僅かによろめくも直ぐに立て直し次の攻防へ移る。

一瞬立て直すのが早かったフリーザが先制し右の拳で殴り抜こうとする。

悟空はそれを僅かに首をそらして回避し右肘の横薙ぎ。

しかしフリーザは頭を下げて躱し、起き上がりに左肘からの右アッパー。

これを体の重心を後方にする事で回避。

フリーザのボディがガラ空きになった所に左ブローを差し込むがこれは受け止められる。

 

「ふん!」

 

そしてその拳を引っ張られる事で当然悟空の体も引っ張られる。

それに合わせてフリーザは頭突き。

その衝撃で悟空が仰け反った瞬間、顔面に右拳が突き刺さって悟空は大きく吹き飛ばされる。

 

「はぁぁぁ!!」

 

悟空は回転して地面へ着地。

着地した衝撃を使って加速し、一瞬フリーザの目の前に来たと見せかけてから後ろへ回り込む。

そして横薙ぎの蹴りを放つもそれは読んでいたといわんばかりに裏拳で受け止められ。

更には裏拳に込められていたサイコキネシスで悟空の体は痺れてしまう。

 

「ぐぎぎぎぎ・・・!!!」

 

「おやどうしました?・・そんなところで立ち止まって!!」

 

フリーザは横回転しながらシッポで悟空の皮膚だけを鞭打という技術で三度抉ってから弾き飛ばし

吹っ飛んでいったところを瞬間移動で先回りして顔面に裏拳。

悟空はそれに耐えて反撃しようとするも振り向きざまに躱されて上空に蹴り上げられる。

 

「くっ!!」

 

悟空は上空で停止し、追撃のため上昇してきたフリーザを迎え撃つ。

 

「キィェェェェ!!」

 

迫り来るフリーザの肘打ちをガード。

右ストレートを繰り出すも目から放たれた怪光線を避けるため咄嗟に拳を引く。

が、それが隙を呼び逆に右ストレートを頬に受けて仰反る。

そのまま無防備になった腕を掴まれて地面に向かって背負い投げされる。

 

悟空はその勢いを殺し切れずに地面に激突。

しかし、すぐ様起き上がってフリーザへ接近した。

 

そこから起こるのは音速を超えた攻防。

あらゆる手、あらゆる手段を使って繰り広げられるソレは例えるなら色のない花火。

強さ故に本来見えるはずもない衝撃波は可視化し、しかもその余波で地面は崩れ去って海は先程からずっと裂けっぱなしだ。

地球もまた、その戦いに恐怖を感じているのだろう。

振動は戦いの激しさを増す毎に振動が大きくなっていっている。

 

だが、その激しさの一方で傷を増していくのは悟空ばかり。

対するフリーザは先程からずっと浮かべている笑みを一切崩さないまま攻撃の全てを無傷で捌き切っている。

 

「ふん!!」

 

ならば、この攻防を制するのもやはりフリーザ。

悟空は攻撃の僅かな悪手を読まれてしまい腹に膝がめり込む。

 

「がぁ!!?」

 

更にフリーザが繰り出したダブルスレッジハンマーを背中に喰らい悟空は再び地面へと激突する。

悟空は起き上がるもその瞬間、気で作りだされた鎖が地面から飛び出し悟空の体を縛りあげる。

 

「ぐ・・ぎ・・なっ・・!?」

 

悟空はなんとか引きちぎろうとするも外れない。

しかも、悟空の周囲には異常な程の気が収縮しつつあり。

 

そして。

 

「ばっ!!!」

 

フリーザがあげたその声によってその気は膨張、大爆発を引き起こした。

 

 

♠︎

 

フリーザはその爆心地を静かに見つめ

 

「・・キェッ!!」

 

その爆風に向かって、かつてメタルクウラを切り裂いた時と同じ技で斬りつけた。

だが、斬り裂かれ晴れたその場所に悟空はおらず。

代わりにフリーザの上空から気弾の嵐が降り注ぐ。

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」

 

「・・・・」

 

フリーザは上を静かを見上げ、バリアを展開。

その全てを防ぎ切りながらそのまま上空に向かって突進する。

 

「なっ・・!」

 

その勢いのまま悟空の更に上で停止。

 

「はぁぁぁ・・・!ふん!!」

 

片手で超特大の気弾を生成し発射する。

悟空もかめはめ波で応戦するも。

 

「ぐぐぐ・・・!」

 

「どうしたのかな?まさかその程度じゃないだろう?孫悟空!!」

 

フリーザが気の出力を更に上げれば、悟空のかめはめ波は徐々に押され。

 

「そらぁ!!」

 

もう1段階気を上げれば、かめはめ波は霧散し悟空はその気弾に飲み込まれていく。

 

「うわぁぁぁぁ!!!??」

 

それを確認してからフリーザは掌を握る。

するとそれは悟空を中心として圧縮。

 

「今度は・・死ぬかもね」

 

そのまま、もう片方の気弾で爆破されて射出され

地面を削りとりながらそれは進んでいき、海に到達してからそれは爆発した。

 

フリーザは今度は海を歩きながら、爆風が晴れた先を確認する。

 

「はぁ・・・はぁ・・・!!くっ・・!」

 

そこには何処か体が焦げ付いたのか煙を発し、着ていた胴着がボロボロとなった悟空がいた。

姿を見る限りブルーは維持しているものの、界王拳に関しては既に解除されており

その反動からか、悟空の息は大分荒いものとなっていた。

 

フリーザはその様子を見て嗤い、更なる絶望を与えようと悟空に対し最悪の事実を告げる。

 

「おやおや・・私はまだ半分の力も出していないのにその体たらくとは・・戦闘民族が聞いて呆れます」

 

「・・へへ、冗談きついぜ・・」

 

「冗談かどうかは貴方が1番よくわかっているはずでしょう?」

 

悟空はその事実に唖然とし、同時に今のままでは絶対にフリーザには勝てないと確信した。

 

(・・けど、こいつだけにはぜってぇ勝たなきゃなんねぇ・・!)

 

だが、フリーザに対する怒りと本能からなる闘志が悟空を奮い立たせある決断をする。

 

(・・この技はオラがあの世で使ってそれっきり・・けど、オラがフリーザに勝つにはこれしかねぇ!!)

 

「体もってくれよっ!!100倍界王拳ーーーーッ!!!」

 

悟空はかつてあの世で試し、そしてその危険度故に封印していた博打としかいえない己の限界を遥かに超えた100倍界王拳を発動。

その危険度は尋常ではなく、神の気を完全に制御出来るようになったブルーですらその影響は果てしなく大きい。

今にも体がはち切れそうな状態の中、悟空はフリーザへと迫る。

 

「だりゃぁ!!!」

 

その拳はフリーザが咄嗟に貼ったバリアを容易く砕き散らし、その頬に深く突き刺さる。

 

「うぐっ!!?」

 

「あああああ!!!」

 

吹き飛んだフリーザが体勢を立て直す暇すら与えずに後ろに回り込んで、三段蹴り。

からの蹴り上げで上空へ一気に吹っ飛ばし、フリーザの体は大気圏へつっこんでいく。

 

「か・・め・・は・・め・・!!」

 

が、ぎりぎりで停止したフリーザ。

だが、既に悟空の最高の一撃は用意済み。

 

「・・」

 

「波ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

フリーザが停止したその瞬間に放たれたかめはめ波。

体の負担を一切度外視し、かつ完成したブルーの気から放たれたその一撃を。

 

「かぁぁぁ!!」

 

フリーザはなんと片手で受けとめ、そして。

 

「破壊!」

 

破壊のエネルギーでもって、木っ端微塵に消し飛ばした。

 

「はぁ・・・はぁ・・はは・・」

 

飛散するかめはめ波のエネルギーを見て乾いた笑いしか最早出すことのできない悟空。

 

けれど、確かにダメージはあった。

フリーザの片手には決して無視できない火傷の痕が出来ていたのだ。

決して重いとはいえない怪我ではあるがそれでも悟空のかめはめ波はしっかりとフリーザに効いていたのだ。

 

「ふむ・・今のは随分と効いた・・けどそれでは到底私には敵いません。

・・どうやら手品もここまでみたいですし・・完全なるとどめを刺してしまいましょうか!」

 

だが、フリーザは手の火傷だけに対し悟空は最早満身創痍。

100倍という異常な倍率は悟空の体を蝕み、今の悟空にははっきり言って鼻くそをほじる気力も残っていない。

 

しかし、忘れてはいないだろうか。

サイヤ人は・・そして孫悟空という人間は・・

 

こんな極限にこそ、壁を壊して先に進む男だということを。

 

フリーザの気弾が悟空の体に接触しそうになるその瞬間。

悟空の体がブレた。そしてそれを認識すると同時にフリーザの背後へと回りこんでいた。

 

「・・っ!!」

 

咄嗟にガードしたフリーザの腕には多数の打撲痕が同時に浮き出たと同時に衝撃を発生。

その威力は完全に別人の域であり、ここにきてようやくフリーザの額に一滴の汗が流れる。

 

「・・これが、そうですか・・」

 

フリーザが振り返ったその先には。

 

白銀の髪、そして白銀の気を纏いし孫悟空の姿。

 

 

ーー身勝手の極意。ここに極まれり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 紹介コーナー。

現時点における被害者。

・全地球人
・神さま(デンデ)
・カリン
・魔神ブウ

他多数。


今回のメインキャラ紹介は最終話終了時に。

番外編に関する要望を今話投稿後の活動報告に載せておきます。
よろしければそちらもご覧ください。
最終話まで・・あと()話。
最後まで頑張ります。


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限界を超えて

 

 身勝手の極意。それは破壊神ですら為し得なかった技の極地。

攻撃、防御を含めたあらゆる面において最適かつ最高の動きを無意識下に選択。

更にその極意すら極まり完成された今、その一撃一撃が致命の攻撃にまで昇華。

 

仮に神という次元があるとするならばその最高位に悟空はこの土壇場において到達したのだった。

 

「・・・」

 

その目には先程まであった怒りはなく、静かな闘志の炎だけがそこにはあった。

 

「・・・」

 

フリーザもその目とそれに伴って別次元にまで跳ね上がった気を感じとり

静かに破壊神の力を解放。

 

両者はその気を昂らせながらその時を待つ。

気の奔流は瞬く間に空は暗黒に包まれ地球史上例を見ない異常気象に陥る。

2人の足元にある海は激しく渦巻き、更にその中心からは気の熱によって蒸発し続けている。

 

「・・・!!」

 

先に仕掛けたのは悟空。

神速を超えたスピードでフリーザへと突撃。

その際につき出された拳をフリーザは破壊のエネルギーを操作して前方に集中。

無意識を逆に操ってズラしてみせる。

 

悟空はそのまま海を裂いてフリーザの背後で急停止して回し蹴り。

これはフリーザが同時に横蹴りを繰り出して相殺する。

フリーザは悟空の足をシッポで巻き取ろうとするがそれは回避され

ならばとシッポから破壊玉を発射。

が、これも最低限の動きで躱されて逆にシッポを掴まれる。

 

「ちぃ!!」

 

フリーザは破壊を纏わんとするも、そんな暇すら与えないと言わんばかりに超高速のジャイアントスイングで投げ飛ばされる。

勢いよく飛んでいくフリーザは自身の背後に反射板を展開。

既に回りこんでいた悟空の攻撃を防御すると同時に自らすらも反射して体勢を立て直し悟空へと急接近する。

そのまま追いかけてきた悟空と手四つの状態になって拮抗。

 

「・・・!!!」

 

「く・・く・・くぃ!!」

 

フリーザはその状態のまま悟空の体を力任せに回し心臓に向かって膝打ち。

これは手に受け止められるもこれはフェイント。

即座に膝から気の刃を出して悟空の手を貫通させる。

 

「ぐぎっ・・!」

 

だが悟空も負けじとフリーザの側頭部を横蹴り。

 

「ぐぉぉ!?」

 

フリーザは気の刃が引き抜かれて海へと激突するも破壊玉を一発発射。

悟空は容易に躱すも、それは狙い通り。

悟空が躱したその瞬間に自身と破壊玉の座標を入れ替える。

 

「なっ・・!」

 

悟空はすぐさま気付くも既に遅い。

ソマーソルトキックで叩き落とされ更に追撃の気弾をもろに喰らってしまい

悟空はそのまま地球のコアへ一直線・・

となる前に、フリーザがその向きを調整。

深海深くを突っ切りながら、荒野の岩場で激突して爆発した。

 

フリーザはそれを見届けてから瞬間移動。

既に悟空は起き上がっており、ダメージもそこそこにフリーザへと接近する。

 

フリーザは先程と同じように受け流そうとして。

 

「ぐふっ・・!?」

 

自らの失敗を悟った。

そのまま神速の攻撃は舞踊のように美しい流れを描いてフリーザを的確に抉っていく。

だが、それを大人しく受け続けるフリーザではない。

殴られた際によろけた足を利用して罠を設置。

即座に発動し、自身と悟空との間から破壊の槍を出現。

悟空の攻撃を強制中断させて自身は天高く上昇。

 

「調子に・・乗るなぁぁ!!」

 

フリーザは激昂し、四方八方から気弾を放出。

それら全てが悟空1人を殺すために追尾してくる。

悟空はそれを避ける、あるいは捌くなりの最適な行動を取りつつフリーザへ迫る。

 

「おまけだ!」

 

しかしフリーザは更に切断性が高い円状の気弾を三発悟空に向かって放り投げる。

追尾性があり切断力も高いそれは身勝手の悟空でさえも確実に追い詰めんと迫っていく。

悟空もそれを消滅あるいは逆にフリーザに当てんとするもそれを読まれるかのように数多く配置されている気弾がその行手を阻む。

数えるのも億劫になる程の数、その全てが孫悟空ただ1人をまるで意志を持ったように追い詰めていく。

 

「・・・」

 

悟空はその一つ一つに対し最適の一手を打つ。

が、その一手は次の瞬間にフリーザが看破し潰していく。

打って、潰し、打って、避ける。

 

そして悟空が数にして億を超える気弾を対処したその瞬間であった。

一発の気弾が悟空の腕を掠める。

するとそこを基点として暗黒空間が発生。

悟空の左腕を喰い潰す形で圧縮。

 

悟空がその事を目で認識する前に肉が引き千切られ

骨が砕けちる音を耳にし。

 

「・・・」

 

ーー静かに次の手を打つ。

 

ただ対処するだけでは先程の繰り返しになってしまうと判断した悟空の細胞。

 

「かぁぁぁ!!」

 

ならばと最適の行動を一度排除し、肉体の限界を凌駕する気の開放をもって全てをかき消した。

自身の攻撃がかき消され、一瞬目を見開いたフリーザではあったが悟空の左腕の状態を思い出しすぐに冷静を取り戻す。

そのまま、地面へと降り立ち冷酷に嗤ってみせる。

 

「おやおや・・惜しい」

 

フリーザはぐちゃぐちゃになった悟空の左腕を見ながら更に悟空を動揺させんと言葉を重ねる。

 

「その出血量、長くは持たないでしょうねぇ・・もって後3分ほどでしょうか?」

 

「・・それがどうした」

 

「これだからサルは・・ま、良いでしょう。ではもう1つだけ」

 

「もうあなた以外はいません・・流石にこの意味はわかるでしょう?」

 

「・・・」

 

悟空の心に乱れは無い。

だが、悟空の体はズシリと何かとてつもない重圧がのしかかったのを感じた。

多量の出血からくる血圧低下や疲労からではなくもっと別のナニカ。

 

だが、悟空はそれから無意識に目を逸らす。

更に体はそれから逃げるようにしてぶれる。

 

「む・・」

 

悟空の多重残像が一瞬にしてフリーザの周りを囲み突撃。

即座に本体の気を探り迎撃せんとするフリーザだったが

 

(探れなっ・・・!?)

 

それは叶わず全方位からの同時攻撃をモロに喰らってしまう。

 

「かはっ・・!ちぃぃぃ!!」

 

フリーザにしても決して無視できないダメージを受けて咄嗟に破壊のエネルギーを放出。

だが

 

「ふっ!!」

 

悟空はなんとフリーザと同じ破壊のエネルギーでそれを突破。

霧散したエネルギーに僅かに動揺したフリーザの水月に拳が突き刺さる。

 

「ごはぁ!?」

 

その勢いのまま吹き飛ばされ

海を水跳ねする石のように突き抜け

氷壁に激突する事で停止した。

 

「・・ぷっ!」

 

起き上がったフリーザは口の中に溜まっていた血を吐き出し

未だ痛みがひかぬ傷を考慮して破壊神化を解く。

 

「ごほっ!ごほっ!・・ちっ」

 

傷を触れば、数カ所の骨折が確認でき

フリーザはここにきて初めて命に関わる可能性のあった傷を負った。

つまりは動けば気のコントロールが大きく乱れ

破壊の力が制御できずに自滅する事は時間の問題。

 

故に解除したのだが

これで悟空との戦力差は完全に逆転してしまい

フリーザは自らの失態を悟った。

 

(・・使いすぎましたか)

 

フリーザは何も手を抜いてた訳ではない。

付け入る隙も先程までは一切与えてはいなかった。

 

だが、驕りはあった。

戦略には大きく幅があったはず。

だが、破壊という概念の便利性に依存した結果がこれだ。

フリーザが悟空に唯一勝っていたものは今台無しになった。

 

悟空が保有している性質上、もう破壊は使えない。

しかしまだ策はある。

 

フリーザは息を整える。

自らの純粋な力で神を超えるために。

 

 

一方で悟空は。

 

「づぅ・・!」

 

腕の切断面を気で焼き止血。

フリーザへ追撃せんとするも

 

「っ・・」

 

視界がブレ、その場に膝をつく。

だが直ぐに立ち上がり、フリーザへ迫る。

その時がゆっくりと自分に迫るのを感じながら。

 

 

♠︎

 

戦場は変われど戦いは終わらない。

 

迫る悟空を待ち構えていたフリーザは

予め用意していたものを展開する。

 

一手目。

 

操作の主導権を片手へ集中させ

事前に前方へ展開していた氷の槍を射出。

 

悟空はそれを避ける事無く全弾粉砕。

仕込んでおいた氷による体への氷結も気の熱で蒸発させ

発生した水蒸気を突っ切って間合いへ入り一閃。

 

が、その攻撃はフリーザに届く前に防壁によって弾かれ

僅かに距離が開く。

 

二手目。

 

もう片方の手で超能力を展開。

気で練り上げた糸を球状に変形させて発射。

当然全て弾かれ、地面に激突。

再び防壁へ悟空の神速の蹴りが炸裂。

二度も攻撃を受けた防壁は紙細工のように砕け散る。

 

更に悟空の攻撃は続く。

壁を蹴った勢いを利用して大きく後退。

近くの氷山を蹴って加速。

彗星を幻視する軌跡を起こしながら拳を突き刺さんとする。

 

しかし、三手目。

 

悟空の拳がフリーザの顔面に突き刺さらんとする瞬間

先程叩き落とされた糸の玉が炸裂。

 

地面から伸びてきて悟空の全身を拘束。

引きちぎらんとするその一瞬で悟空の腹に膝打ち。

流れるようにダブルスレッジハンマーで叩き落とし

 

「キェェェッ!!」

 

全力のエネルギー弾を連続で放つ。

 

落下する悟空は、糸を引きちぎりそのままフリーザへ接近。

エネルギー弾の雨を僅かな隙間を縫うように回避し

そのまま右頬を殴り抜ける。

 

「ぐがぁっ・・!?」

 

四手目。

 

吹き飛ぶフリーザは体勢を立て直し弓を形成。

矢を番え追ってくる悟空へ放つ。

が、悟空は不規則な動きで矢を避けフリーザの後方へ。

 

そのまま両足で蹴りあげようとするも

それを読んでいたフリーザは尻尾で両足を巻き取り

前方に一回転しながら投げ飛ばす。

 

悟空は地面に激突する寸前で回転。

地面を蹴って加速しようとするも。

 

五手目。

 

悟空の腰を何かが掴む。

咄嗟に振り払おうとし顔をみて驚愕する。

 

「・・・っ!?」

 

「ゴ・・ゴク・・ウ・・」

 

「はっちゃ・・?」

 

「ニゲ・・!」

 

そのひび割れた正体がかつての友人だと認識した瞬間。

 

 

ーーその場に爆音が響いた。

 

間髪入れずに六手目。

 

その爆風目掛けて、特大の気弾を投げ込む。

が、既に地面を蹴って加速した悟空はそれを弾き飛ばす。

気弾はそのまま地面へ着弾。

残っていた人造人間8号の残骸を巻き込んで爆発する。

 

加速し続ける悟空は僅かに顔を歪める。

だが、直ぐに表情は戻りそのままの勢いで接近。

喉元に迫る貫手を急停止からのけぞる事によって

指先が僅かに喉に触れるギリギリで回避。

手首を掴んで握り潰す。

 

「ぎぃぇ!?」

 

そのまま手首を弾き、無防備になった所で

顎目掛けて掌底。

 

「ッ……!!」

 

だが、そこで追撃を受けるフリーザではない。

のけぞった勢いのままサマーソルトキック。

悟空が回避した所で煙幕をはり視界を塞ぐ。

 

「……っ」

 

さらに蜃気楼を発生させ自らの姿を誤認。

そして真っ正面から跳び蹴りをかます。

悟空はそれを背後からの奇襲と誤認。

 

回避は失敗。

鋭い蹴りが悟空の鳩尾に突き刺さり

肋骨が数本折れる音が体内で響きながら悟空は吹き飛んでいく。

 

「がっ…!?」

 

地面を跳ねながらも手を地面に置き

引きずりながらもなんとか着地する。

 

その間にフリーザは砕けた手首を切断。

異空間から補肉剤を引っ張り出して腕に注入。

 

瞬く間に腕は再生。

最後の一手を打つ。

 

七手目。

 

先ずは瞬間移動で悟空の背後へ。

悟空が振り向き、反撃しようとしたその瞬間に時間停止。

 

「かぁ!!」

 

そのまま、心臓を貫手で抉ろうとする。

が、悟空の指先が僅かに動いたのを確認し

直ぐさま次のプランに変更。

時間停止の空間を悟空の半径1メートルだけにして空間を凍結。

再び悟空の動きが停止する。

 

そうした所で再び空間魔術で別空間と連結。

何処かに吹っ飛んでいた悟飯の死体を引っ張り出し

悟空の真っ正面に配置する。

 

そうして全ての工程を終了させたフリーザは

ゆっくりと気を充満させその時を待つ。

 

そうして数秒後。

凍結した空間はあっさりと粉砕され

再び悟空の拳が動き。

 

「……!!?」

 

そして止まる。

物言わぬ悟飯の体がふらりと悟空へよしかかり

悟空は咄嗟に抱きかかえる。

それは戦士として。

ではなく親としての本能が悟空の体を動かした。

 

そして、それすらも利用する外道がフリーザである。

 

指先に先程まで溜め込んでいた気を充填。

自身の全力のデスビームをもって悟飯もろとも悟空を撃ち抜いた。

 

「がっ……がぁぁぁぁ!!」

 

閃光が悟空の腹を貫く。

次に足、残った腕、胴体。

最後に脳天となったその時悟飯の首が僅かに傾く。

 

そのおかげで悟空は脳天の攻撃だけは何とか避ける事に成功。

だが、そのダメージは大きく悟空の体はそのままうつ伏せに倒れ込む。

 

悟空の隣には悟飯の死体が倒れ込み

悟空から流れる血が悟飯を紅くしていく。

 

「はぁ……はぁ…危なかった」

 

だが、フリーザもまた疲弊していた。

悟空とは違い気の消耗と研ぎ澄まされていた集中力が悟空が倒れたことによってぷつりと切れ、

追ってくる痛みにも相まって大量の汗と共に息を吐き出す。

 

実際の所フリーザもこの状況まで追い込むにはかなりの綱渡りだった。

もしも、悟空の消耗が自らの想定を下回っていたら。

もしも、悟空が記憶と違って甘ちゃんでは無かったら。

 

もしも、もしも、もしも。

 

そんな記憶頼りのフリーザらしからぬ博打の連続は何とか身を結んだらしい。

 

しかしフリーザはまだ気を緩めるわけにはいかなかった。

まだ悟空は死んでいない。

身勝手の極意が解除されていない以上油断は出来ない。

 

だが、自身も既に限界であるため

さっさと殺してしまおうと手をかざしたその時。

 

僅かに砂がぶつかり合う音をフリーザの耳が拾う。

 

「なっ…なんだと!?」

 

まだ死んでいないのも理解できる。

まだ立ち上がれるのも理解できる。

 

それは、孫悟空が孫悟空であるから。

フリーザの記憶には何度打ちのめされても立ち上がった主人公(ヒーロー)が確かに存在していた。

 

だが…だが!!

 

気が爆発的に増えるのだけは理解できない(・・・・・・・・・・)!!

 

動揺するフリーザを尻目に悟空は立ち上がった。

そして、悟空はその身に先程まであった何かが溶け合っていくのを感じた。

 

その正体は怒り。

神の領域に達した孫悟空でもなく

怒りによって覚醒するサイヤ人の孫悟空でもない。

 

地球で育ち。

多くの出会いと別れを繰り返した

仲間思いのただの孫悟空(ヒト)の怒りだった。

 

自分の星、自分の家族、そして自分の友。

それらを失った人としてならば当たり前の怒りが今神の御業すらも凌駕し

そして取り込んだのだ。

 

人間はいつしか神を超える。

 

幾多の人類が多くの研鑽と挫折の上で成し遂げたそれを。

孫悟空という男はたったひとりで成したのだった。

 

勿論そんな事をフリーザは知る由も無い。

フリーザは善人でなく、記憶の中でしか孫悟空を知らないからだ。

彼はずっと記憶の中の孫悟空を現実の孫悟空と混同して見ていた。

 

だから、フリーザには分からない。

 

悟空は咆哮する。

当たり前の怒りを力に変えて。

天国から微かに聞こえる仲間の声をも力にして。

 

「くたばれフリーザァァァァ!!!」

 

そして、悟空の姿が消える。

否、消えてはいない。

攻撃された。

 

フリーザが攻撃を攻撃と認識する前に悟空は攻撃を成立させていた。

 

「がはぁ!!?」

 

フリーザからしてみればいつの間にかに激痛が走って

氷壁に激突している。

 

さっきまで捕らえられた悟空の姿が全く見えない。

 

「ちぃぃ!!」

 

頼れるのは攻撃する一瞬だけ聞こえる風の音のみ。

その音だけを頼りに咄嗟に気合砲を放つ。

 

だが気づけばフリーザの腹には悟空の拳が突き刺さっている。

 

「ごぱぁ!!!?」

 

フリーザは突き刺さる腕を何とか掴み

そして悟空の顎を蹴り上げて吹き飛ばす。

 

そして、痛みで僅かに首を逸らした所で。

先程までフリーザの頭があった場所に悟空の蹴りが突き刺さる。

 

「!!!?」

 

ほぼ反射的に反撃しようするフリーザだが

その前に悟空の反対の足の踵に横面を抉られ地面を転がる。

 

「この…くたばりぞこないがぁ!!」

 

先程までの余裕そうな仮面は一気に崩され激昂するフリーザ。

しかし、その瞬間には肘打ちをくらって体勢を崩され

背中を蹴り上げられて空を舞う。

 

「ばっ!!」

 

気功波を撃って何とか急停止するも既にそこに悟空の姿は無い。

 

「はっ!!?」

 

フリーザは異常な気を感知し上を見るももう遅い。

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

悟空の全霊のかめはめ波は既に放たれ

奇跡的に出していた両手でそれを受ける。

 

「こんな…!!こんなもの……!!こ……!!」

 

更に危険性すらも度外視して破壊神化。

文字通りの決死の覚悟でそれを押し返そうとする。

しかし、その抵抗も虚しくフリーザはその閃光に飲み込まれる。

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そのまま、かめはめ波ごと地面に激突し爆発。

 

その場にはゴールデン化すら解け

地面に倒れ伏すフリーザの姿だけがそこにあった。

 

「はっ……はっ…!」

 

フリーザは何とか立ち上がるもそのダメージから直ぐに膝をつく。

見るからに重傷ではあるものの

ギリギリの状態で何とかフリーザは生き残った。

地面に着弾する寸前、なんとか破壊のエネルギーを生成。

 

僅かにかめはめ波を破壊して何十にも重ねた防壁がフリーザを生かしたのだ。

だが、既にフリーザの気は僅か。

立っているのも限界だった。

 

悟空はその眼前に立ち、気を掌に集中させる。

 

「終わりだ、フリーザ」

 

「終わり…?このフリーザが終わりだと…!!

それはどうかな……!!」

 

だが、フリーザはその笑みを絶やさない。

そして彼も残された気で悟空の気功波ごと悟空は殺さんとする。

 

そして、悟空の気が放たれる…事はなかった。

 

「かっ……!!?」

 

悟空は突然糸が切れたように倒れる。

そのまま苦しみ、もがき。

 

やがて、小さな息を繰り返すだけとなった。

その姿は身勝手の極意の象徴たる銀髪ではなく、孫悟空としての黒髪に。

気で何とか押し止めていた出血もその気が無くなったせいで溢れるように流れ出てていた。

 

その血は悟空の命の砂時計。

これが流れなくなったその瞬間悟空は死ぬだろう。

 

フリーザはそんな悟空に近づく。

 

「全く、危なかったですよ。

ほんの一瞬とはいえこのフリーザも死を覚悟しました。本当に…」

 

そのまま無慈悲に、両足の骨と腱を切断。

 

「よくもやってくれたな…!!」

 

「このまま貴様がくたばるの待つのも良いがそれではこのフリーザの気が治らん…!!」

 

その怒りのまま今度は腕の骨を砕き、腱を切断する。

そして、天高く飛翔し気を込める。

 

「貴様は…貴様だけはこのオレの手によって!!死ななければならない!!」

 

そのまま地上の悟空に向けてその憤怒のままに全力の気功波を放つ。

 

「オレに・・殺されるべきなんだーーーーーっ!!!!」

 

その一撃は悟空へと迫る。

悟空は薄れゆく意識の中で認識するも立ち上がる力は既に無い。

 

ならばその力を悟空だけに限定しないならばどうなるのか。

 

『悟空さ!!』

 

悟空の脳裏に聞こえたのはチチの声。

 

続くように仲間たちの声が響き悟空に力を与える。

その力は砕かれた右手を再生し、悟空は正真正銘最期の力で叫ぶ。

 

「オラの全てをこの拳にかける!!」

 

「龍拳ーーーー!!!」

 

そして、一発の気功波と龍が激突し・・・

 

 

ーーやがて、誰かの嘲笑だけが地球上に木霊したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回、最終回。


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永遠の帝国

 第7宇宙史上の決戦から幾星霜。

第7宇宙はその姿を大きく変えていた。

 

その中でも特段変わったのは星の数だろう。

幾多の星が破壊。あるいは合併を繰り返した事により

宇宙全体の星の数は何と7つまで減少していた。

 

現在第7宇宙は中央にある巨大惑星を中心とし

6つの惑星がそれを囲むように回っており

そしてその全てがかつて地球と呼ばれていた星の環境と酷似していた。

 

6つの惑星にはそれぞれの役割がある。

それらは第7宇宙を維持するための重要な役割を担っており

星々の住民たちもそれを理解し、平和を維持するために努力する日々。

 

なんて事もない。

永い戦争の時代は終わりを告げ

宇宙はただ1人の王の手によって永遠の統治の時代を迎えたのだ。

 

その王がいるのは宇宙の中心に座する巨大惑星。

そのまた更に中心にある巨大な宮殿の王座である。

 

その王への報告のため、今日も1人。

昨日と変わらぬ現状と王へと告げにやって来た。

 

「それでは本日のご報告させて頂きます…フリーザ様」

 

「ええ、お願いします」

 

王の名はフリーザ。

戦争の時代を終結させた英雄であり。

宇宙全体を永き時に渡って統べる大王である。

 

♠︎

 

さて、その後の話をしよう。

 

あの爆発の後、立っていたのはフリーザだった。

右肩には龍に噛みつかれた跡が残されており

フリーザ自体ボロボロの死に体だったが

それでも彼は生きていた。

 

フリーザは残された悟空の胴着らしきものが風に吹かれて

何処かに飛んでいくのを見たことを

最後に意識を失い約1週間その目を覚まさなかった。

最新鋭の治療ポッドで治療してもなお

目を覚まさず龍の傷痕がありありと残ったことから

孫悟空がいかにフリーザの命に肉薄したのがありありとわかる。

 

まぁ、それはともあれだ。

 

フリーザが起きた頃には既に地球は完全に掌握され

人類はただの1人も残さず滅び去った。

地球はその名前を失い惑星フリーザNo.4としてその姿を変えたのだ。

 

そして、フリーザは自らの悲願であった宇宙の帝王として君臨し

同時に彼自身もまた孫悟空という最大の目標を排したのだった。

 

そこから数年後。

 

唯一の同盟惑星だったナメック星が突然フリーザに対し隷属宣言を発表する。

というのもあのメタルクウラの一件以降、長らく燻りを見せていたナメック星人同士の対立が地球での決戦をきっかけとして爆発。

 

ナメック星人は、地球派とフリーザ派の2つに分かれて戦争を開始。

結果、ナメック星人の数は半減。

戦士タイプのナメック星人が多く所属していたフリーザ派が勝利したのだ。

 

宇宙の中でも屈指のやさしき性格はどこへやら。

性格も好戦的になってしまったナメック星人達はフリーザへの隷属を宣言。

ナメック星もその名前を失い惑星フリーザNo.7として組み込まれる事となった。

 

 

ちなみにこの結果を見届けたビルスはちょくちょく寝て起きては

フリーザと戦いそして眠りにつくというサイクルが今現在まで続いている。

 

地球での決戦から100年後。

 

フリーザは第7宇宙の縮小を決定。

幾百もある惑星をビッグゲテスターの力によって統合し

その惑星の数を7つにまで減らした。

 

そして、その惑星の1つ1つに役割を設け

同時に自らがいつでも介入できるような制度を制定。

最後に自らの惑星をビッグゲテスターと完全に融合させ

超ドラゴンボールの力でフリーザの威光を子孫絶える時まで永遠のものとした。

 

こうして今の第7宇宙は完成した。

人間レベルは全宇宙でも屈指の高さへとのし上がった事で

行われた第2回の力の大会を免除。

 

その宇宙の権威を他宇宙までに響きわたらせ

遂には宇宙のモデルとまで評されるほどにまで成長した。

 

そして、現在。

 

フリーザの帝国は永久不滅のものとなった。

かつて覇道を共に歩んだ部下の殆どは子孫へと移り変わり。

21号は最後の決着を果たした後フリーザ軍の最高顧問へとなり。

 

戦争は小国規模を除けば無い。

そんな平和な世の中がそこにはあった。

 

誰もが、その世の中に感謝し安息を生きる。

独自の発展を遂げて進化し、それらを大王へと捧げる。

 

報告を聞き終えたフリーザはそれを王座から見渡して微笑む。

 

 

…まぁ、こんな日々も悪くないだろう。

 

と。

 

そうして、世界は続いていく。

時の輪廻からもかつてあった歯車さえ置き去りにして。

 

 

いつまでも。

 

いつまでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 最後の紹介コーナー。

・フリーザ
全てを叶えた大王。
その道に最早障害はない。
甘ったるような平和と破壊神の挑戦という少しのスパイスと共に
永遠を生きていく。

・21号
いつか交わした約束を終え、フリーザ軍最高顧問に。
その顔にはあの時のような飢えた顔はない。
ただ、少しの寂しさがそこにはあったという。

・孫悟空
全力も全霊も何かもを出し尽くして負けた。
悔しさも勿論ある。
仲間や家族を守れなかった絶望もある。
それでも。
あの黄金と再び戦える日を願うのは
自らの性ゆえか。
それとも。

・ベジータ
逃げられなかった悲しき王子。
全てを失ってそれでもと戦って負けた。
いつか、その牙が届く時はあるのか。

・地球人の戦士
平穏は別の大きな平穏に塗りつぶされた。
ただそれだけ。

これにてフリーザの物語はおしまい。

最後までありがとうございました。
活動報告のほうにあとがきと次回予告みたいなものを載せておきます。

よろしければ是非。

それでは、またいつか。





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