たとい、エースと呼ばれても (丸亀導師)
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人物・乗機・艦艇
キャラクター・艦艇設定


主人公

 

岩本 鉄郎(いわもと てつろう)

 

名前の由来

 

旧帝国海軍のエースパイロット

岩本 徹三(いわもと てつぞう)

 

宇宙戦艦ヤマト原作者の別の作品

銀河鉄道999の星野 鉄郎(ほしの てつろう)

 

から付けた。

 

キャプテンハーロックのような容姿。

服装

戦術科の制服を好んで着るため、しばしば航空隊からはきちんと制服を着るように言われていたが、戦果からか次第に言うものはいなくなっていた。

 

階級は一等宙佐(一佐)

 

2199時 30歳

 

もとは、しがない商社マンだったが心筋梗塞で死亡。

何者かにより、肉体を強化されてこの世界に産まれ落ちた。

格闘や射撃の腕は並みの兵士よりも少し上程度であるが戦闘機での高G戦闘において、

並みのパイロットの数10倍の耐久値を誇る。

戦闘機動は、ACE COMBATで言う主人公達、

特に『メビウス1』のような動きとなるため、通常、機体の方が先に悲鳴をあげると言う脅威的な操縦を行う。

 

それゆえについたあだ名は、「デストロイヤー」

一人だけ魔改造し、リミッターが解除された殺人的な機体を載って戦っている。

 

尾翼のエンブレムは、ハヤブサという鳥類。

 

開戦からこっちすべての海戦に、航空隊として参加しており、開戦時、戦闘機で駆逐艦3隻、巡洋艦1隻を撃沈し、敵航空機30機以上を一人で撃墜する戦果を唯一上げた人物。

 

戦闘の度に艦艇が沈められるため、

ガミラス、特に銀河方面軍からは、エンブレムのハヤブサを「凶鳥」とよんでいる。そのため、よく敵パイロットに絡まれる。

 

酒に弱く、ビール中ジョッキ一杯でダウンしてしまう。

 

かつて二番機に『山本 明生』がおり、自らの飛行に付いてくる彼を見て、非常に感動していた。

(山本 明生 は、限界ギリギリだった。)

 

 

佐々木 華奈(ささき かな)

 

享年21歳

 

主人公の元思い人。2193年の遊星爆弾により、基地ごと破壊され命を落とした。

本来は企業から選抜派遣された技術士官であるが、パイロットとしての腕もそれなりであり、実証試験機を自ら

操縦して試験を行う変わり者と噂された。

 

肌、髪、瞳はマーズノイドの血を色濃く受け継いでおり山本 玲と同じ色

顔の輪郭・パーツはメルダ・ディッツ

 

最終階級 三尉

 

 

ヴィルヘルム・ヴァム・デスラー

 

総統であるアベルト・デスラーの甥

ランハルト・デスラーの兄に当たる。

大叔父であるエーリック・ヴァム・デスラーの後を継ぎ、現在ヴァム家の当主となっている。

本来お飾りであったが、12歳の時よりその手腕を振るい初め、異様なまでの才能を見いだし、アベルトからは警戒を持たれている。

 

レジスタンスへと資金を供給するスポンサーとして活動する他、あわよくばガミラスの実権をヴァム家へ、取り戻そうと画策している。

 

年齢 16歳

 

 

 

メカニック

オリジナル機体

 

92式空間艦上戦闘機

ガミラス戦役以前に開発された89式空間艦上戦闘機の改修量産型。89式ではガミラス機に対して決定的な打撃を与えるに困難であるため、武装、速力の両面の強化を行われた。

艦隊の損耗とともに生産も縮小され、現在はほぼ残っていない。

 

 

武装

機銃×2

機関砲×4

空対空ミサイル6発(翼下ハードポイントに8発搭載可)

 

全長15.2m

 

全幅6.5m

 

複合輻流式コスモエンジン(流星22型)

 

 

 

92式空間艦上戦闘攻撃機

 

92式艦戦の武装搭載量を増やした機体、同時進行で急造されたため、見た目もほぼ同じ機体である。

本来の艦上空間攻撃機が、ガミラス航空機により撃墜され易かったために、臨時急造され配備された。

 

 

武装

 

機銃×2

機関砲×4

空対空or空対空ミサイル6発(翼下ハードポイントに12発搭載可)

 

全長15.2m

 

全幅6.5m

 

複合輻流式コスモエンジン(流星22型)

 

 

 

12試空間艦上戦闘機

コスモゼロの技術実証機として製造された機体。

コンピュータ制御での飛行、プラズマビーム機銃等の実験のために作られた。

コンピュータによる自立戦闘試験で岩本と戦闘を行い、コンピュータは破れ去る結果となったが、ヤマト出撃時通常の戦闘機として改装されて岩本の乗機となる。

俗称「零式丙」

 

武装

 

プラズマビーム機銃×4

機関砲×1

 

ミサイル12発(各種)

 

 

オリジナル艦艇

 

 

ショウカク型航空母艦

第一次内惑星戦争時、宇宙艦隊の防空能力が疑問視された折り、建造計画が立案され、第二次内惑星戦争前建造され実戦投入された。

 

そしてガミラス戦役時、各国の空母と共に作戦に従事し、メ号作戦まで生き延びた。

航宙空母として地球で最初に建造されたため、他国の空母よりも耐久性に難があった。

 

火星海戦では、後方で航空機中継基地と航空母艦の2つの役割を担っていた。メ号作戦で艦隊とともに撃沈された。

 

外伝的なの考えてます。

 

武装

 

対空パルスレーザー砲連装16機

RAM小型自立ミサイル発射機8機

 

航空機56機

 

全長270m

 

全幅37m

 

同型艦4隻

 

 

バトル・オブ・マーズ

 

第2次火星沖海戦後に起きたガミラスと地球の制空権争い。

双方の航空機、空母の全力投射による大規模な空戦となった。地球本土からの航空機を最大限火星に送り込んでの戦闘は、技術面で劣る地球側の最大の抵抗となった。

しかし、同時刻最初の遊星爆弾の地球への着弾により、地球側のはらった犠牲は意味のないものとなった。

 

 

土星沖海戦

 

国連宇宙軍により設定された防衛ラインを、ガミラス軍が勧告を無視し突破しようとしたために起こった戦闘。

始まりの海戦。

この戦闘により国連宇宙軍は壊滅的打撃を受け、

ガミラスとの技術力の差を思い知らされることとなる。

 

 

機動艦隊壊滅戦

 

ガミラス軍による最大の脅威であった、国連宇宙軍の遊撃艦隊である空母機動艦隊を破壊するための戦闘。

この戦闘により国連宇宙軍は、空母戦力の9割を損耗し

実質的制海圏を全て失うこととなった。



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始まりへ至る道
Fast battle


西暦2191年4月2日 火星沖機動艦隊 駐留基地

 

俺達は今日の朝、突如として特別ブリーフィングルームへと召喚された。それも、大隊長である三佐だけでなく小隊長である三尉の私、果てはその部下の新人まで全員が参加することとなった。

 

会場に到着すると俺の部隊の直属の上司である、坂之上三佐がいた。

 

「三佐おはようございます。」

 

「ああ、おはよう。」

 

「いったいなんなんですか?こんな仰々しい催し物今まで行ったことなんて無いですよ?」

 

「俺にもわからないな。今から説明するとはぐらかされたよ。」

 

暫く整列して待っていると、放送が入った。

なんと国連宇宙軍本部からのダイレクト通信だ。

 

内容は、未確認の知的生命体によるコンタクトの艦隊が近付いているということ。それにともない機動艦隊は、遊撃艦隊から、連合艦隊に組み込まれ艦隊を編成するという内容であった。

 

そして、それにともない特別攻撃隊の編成を行うことが発表された。通知は明日早朝には届くものとなった。

 

艦隊は数日前に地球への帰還が命令されていたために、艦内の多くは落胆の色があった。

そして、俺も家族にあう約束を果たせないことを連絡し、戦場への準備を取っていたところ通知が届いた。

皆この事を楽観視していた。

 

そして、特別攻撃隊の編成員に俺は配置転換されていた。編成員は、一隻の空母に移乗となった。これが後に最後の空母と呼ばれる翔鶴であった。

 

そして、更に選抜メンバーにはとある特別任務が与えられた。

ガミラス艦隊への無通告攻撃命令である。

聞いたとき初めてこの出来事の重大性を理解した。

それほどまでにガミラスが驚異だと言うことだ。

逆に言えば原作では機動艦隊が存在しなかったからこそ、イソカゼが先制攻撃をさせたのだろう。

 

第一次防衛線と設定された土星から、火星まではデブリベルトによって進路の障害とすることが出来るが、そうなった場合、戦略物質であるコスモナイトを奪われることとなる。

それを見越しての第一次防衛線であった。

 

 

 

西暦2191年4月29日 天王星、土星中間領域

 

国連主力第一艦隊は天王星からガミラス艦と並走するように地球への道を進んでいた。

内惑星艦隊の第二艦隊は遅れて土星へ向け前進を続け、中間領域で第一艦隊と合流し、そこでガミラスを叩くのが作戦である。

 

俺が載っている翔鶴は、第一艦隊から外れ土星の影から航空隊を発艦、ガミラスに攻撃を仕掛ける。

単艦とするのは少しでもレーダーに写らないようにするためであり、これによりガミラスを挟み撃ちするという完全な奇襲の意味を持つ。

 

そしてこの日運命の火蓋が切って落とされた。

 

作戦序盤我々は計画通りに土星裏側から発艦し、ガミラス艦隊へ向け進んでいった。

(当時ガミラスは我々と同じ

光速のレーダー《以後旧レーダー》

を使用していたのだと後々わかったが、本来ガミラスが使用していたレーダーであればこの作戦は失敗していた。敵の慢心によって作戦は一時的に成功となる。)

 

土星の発する電磁波の影響により通常、この空間では

旧レーダーは使用不可の状況に陥る事によって、我々の

存在は秘匿されるものとなった。

それによりガミラスへの接近は比較的容易となっていた。

 

編隊がガミラスに近付くにつれて徐々にガミラス艦隊の全容が明らかになっていく。

戦艦?を中心に巡洋艦?が上下にサンドイッチするように配置され、その前方後方へ駆逐艦?が展開している。さらにその後方では、ヒトデのような艦艇を守るように駆逐艦?が球体を造るように取り囲み、一種の輪形陣を形作っている。

 

ということは、ヒトデが空母である可能性が高い。

しかし、周囲に航空機を確認できないため発艦をしていない。もしくは航続力に難があると見ていた。

 

ガミラスの戦力はざっと見ても50隻ほどある艦隊であった。

それに対して国連軍は200隻は下らない大艦隊だ。

普通であるならば、負ける要素はない。だが、相手は恒星間航行が可能な艦隊。普通ではない。

だからこそ、この攻撃隊だった。

 

しかし、我々が攻撃体制に入った直後、国連宇宙軍からの攻撃命令が沖田艦隊に通達されたのか、突如として発砲を行った。これでは奇襲の意味が無いではないか。

 

我々も遅れ馳せながら対艦ミサイルをガミラス艦へと、発射する。数瞬後、ミサイルが着弾した。

各々無線を入れ勝利を分かち合おうとした。

その時、一隻の地球艦が一撃で葬り去られたのだ。

 

戦慄した。レーザーもそして、我々の放った対艦ミサイルもガミラスには通用していない。

それどころか、ガミラスのレーザーは地球軍の艦をまるで紙切れのごとく破壊していく。

 

こちらも黙ってみていた訳ではなかった。

ミサイルは破壊力が足りない、その影響でガミラス艦へあまり通用していないが、それでも艦隊が撤退する時間は稼ぐことが出来る筈だ。

 

「全機!散開して敵艦隊への攻撃を続攻せよ。少しでも時間を稼ぐぞ!」

 

航空隊長の命令により全機が迅速に行動を開始する。

各機散開し、地球軍へ追撃するであろう駆逐艦を中心に攻撃を始める。

 

駆逐艦は装甲が薄いため今回のミサイルでも撃沈が狙えると考えていた。そのときだ、何処からともなく、未確認の戦闘機が出現した。ガミラスのヒトデ型から出てきた戦闘機がこちらを猛然と追ってくる。

 

攻撃体制に入っていた味方は突然の出来事になす統べなく一機また一機と落とされていく。

そのときだ、自分の肉体の異常さに気が付いた。まるでロボットにでもなったかのように異常な旋回でも全く苦しくない。むしろ心地よく感じていた。

 

暫くすると景色すら緩やかに流れていくようになる。まるで時を操るがごとく視界が曇りひとつない、敵機がこちらを撃とうとする軌道が見える。それを糸でも手繰るかのように、するすると避けていく。

 

いつの間にか敵機と自機の場所は入れ替わり、相手が混乱するうちに引き金を引いた。

ミサイルは撃てない、ロックオンすら遅すぎる。

 

そうして、撃ち落とすと別の目標に向け動き始める。

体が脳が敵を殺す。

自分の無双が始まったかのようだった。

一機、また一機と葬り去っていく。

 

余裕が出てくると、さらに敵の駆逐艦にさえ攻撃箇所がピンポイントで見え初め、そこに向けミサイルを叩き込む。すると先程のようにミサイルが弾かれることがない。むしろ効果的に破壊を行っている。

 

だが、弾が無い。駆逐艦4、巡洋艦1、おそらく敵機を30ばかし落としただろうか。

それでもまだまだ敵はいる。

第二艦隊から発艦した増援が、第一艦隊の後退を支援するため合流した。

 

翔鶴が合流をはたしているが前線へ出てきている。いや、こちらが押し込まれているのか。

ガミラスの駆逐艦の突撃をイソカゼ型がどうにか押さえている。艦対艦ミサイルは結構効くようだな。

 

やっと落ち着いてきた。隊長や僚機に通信を行うも雑音と、砂嵐の音しか聞こえない。

どうやら特別攻撃隊の生き残りは俺だけのようだ。

だが、仲間が死んだというのに、心がとても晴れやかだ。まるで自分のいきる場所を見つけたかのように。

 

時を置くごとにガミラスからの攻撃が止み始めた。

特に第二艦隊が出てくると同時にガミラスが潮のように引いていった。航空戦力ではこちらが優位にたったからだと、本能的に気づいた。

 

だが見ろ、第一艦隊はおよそ3割が撃沈され、残存艦ですら攻撃を受けていないものは少なかった。

ガミラスによる追撃が起こらなかったのは、不幸中の幸いであった。

 

この戦闘によりガミラスとの正面からの戦いは、こちらが圧倒的不利ということが明らかとなり、戦闘の影響により土星までの制空権、制海権を損失することとなった。大敗北である。

 

第一次防衛線から、第二次防衛線である火星までの後退を余儀なくされた。

また、損耗の著しい第一艦隊は地球へと帰還し第二艦隊が火星の守りを固めることとなった。

 

この後、散発的な戦闘が継続される事となる。

 

私は第一艦隊とともに地球へと帰還し、戦闘での表彰と、偽りの英雄とする報道をされた。

数ヶ月、軍大学で対ガミラス用戦術の研究がなされ

アドバイザーとして呼ばれた。

 

そんな時だ華奈にであったのは。




誤字 感想 評価 お願いします。

本当に戦闘描写って苦手です。
何より文章の構成力が欲しいです。



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フクジュソウ

西暦2191年 9月 兵器試験場

 

機動艦隊から地上勤務に回されて2週間ほどたったある日。新型の空対艦ミサイルの実証試験が行われていた。

私は実戦時のミサイルの破壊力不足を、報告しこれが元となって、同時旧式となっていた対水上艦艇用のミサイルを宇宙にもしよう可能とするプロジェクトがあった。

 

それに私は呼ばれることとなった。

水上艦艇用のミサイルは、宇宙艦艇に対して攻撃力が過剰であったがために従来の対艦ミサイルは小型飽和攻撃用であった。

 

開発主任である、とある技術者とともにミサイル格納庫で、実物を見せてもらっていたが、どうもこれだけで終わるはずがない。

 

「それで、私が呼ばれたのはこのミサイルのエキシビションを見せるためだけではない筈ですが。」

 

「そうだった。入りたまえ。」

 

ミサイル格納庫の小さな扉が開かれ中からはマーズノイドの女性が表れた。歳は私とはそれほど離れていないように見えるが、正直言って凛々しいという言葉がよく似合う、そういう女性だ。

 

「紹介しよう、彼女は新型艦上戦闘攻撃機開発部のメンバーで、今回の対艦ミサイルの考案者である、

佐々木 華奈 三尉だ。

彼女は正規の軍人ではなく、技術士官として今回君のパートナーとなる人物だ。」

 

はあ?

 

「ちょっと待ってください、そんなの初耳ですよ?だいたいこの娘は本当に技術士官なのですか?」

 

するとだ、開発主任よりも佐々木三尉が怒って言った。

 

「それは、私が若いから行っているんですか?それとも女だから?」

 

「いや、両方だよ。普通そういうのは、ある程度経験があり書類の作成とか、欠陥を見つけるのが上手い中年ぐらいが付くのだが。」

 

それで更に機嫌を悪くする。

 

「確かに私には、経験が無いです。しかし、私には他とは違う閃きと、判断力があります。」

 

「まぁまぁ、互いに矛を納めて。彼女はテストパイロットも行える非常に優秀な人材だよ。

君の《早期開発》というノルマを達成するためには、彼女が必要だよ。」

 

渋々了承した。これが俺と華奈の出会いであった。

 

それからというもの、実証試験機を飛ばしたら不具合の報告、また飛ばしたら報告という日々が続いた。

いつの間にか信頼関係のようなものが芽生え始めていた。

 

周囲からは《若者は良いなぁ》なんて感じの目線が感じられるくらいには、親密になっていたが付き合っていると言うわけではなかった。

 

2ヶ月という時間は二人の垣根を捕るには充分な時間で、何より互いに信頼できるものを得たことにより作業効率は上がっていた。

 

この時期まだまだ地球圏には余裕があり、食料問題は起こっておらず闇市もなかった。

都市はきらびやかで、無駄な高層化ではなく都市は大きく栄えていた。

 

余裕があるため勿論軍関係者も、警戒体制を行いつつも周囲に悟られぬよう休日を与えられるということを、情報操作の一環として行われていた。休日返上での作業等言語道断である。

 

そのため意外とこの頃は休暇が多かった。

俺の場合は第二機動艦隊が元々長期航海からの帰還途中からの戦線へ、とんぼ返りとなったのと重なったお陰でこれ程の長期間滞在となった。

 

休暇の際には華奈さんと共に、過ごすことも増えていて二人が共通してわからない、ファッション等にも手を出しつつ過ごしていた。が、戦時であるから当然酒は飲めない。いつ招集されても良いように、常に連絡をとれるようになっている。

 

だけれども、非常に楽しく、戦時だというのを忘れてしまいそうなほど有意義な時間を過ごす。

きっとこれは一時の夢物語の様なものだろうと、そう感じていても、今はこれに浸っていたかった。

 

あるとき、彼女を後部座席に載せて飛行実験を行う事となった。

アクロバティックな操縦をした場合どういう影響が出るのか、エンジンは負荷に耐えられるか、という試験だった。

 

彼女は俺の後ろに載りたいとこのとき、言っていた。本来は、後部座席にあるはずのデータ収集用の機械が最初から取り外されていたのは、そのためだったか。と、その時は初めて行った工員がグルだと、わかった。

 

実際彼女の載る理由はあった。計算上では無いはずの気流の乱れがエンジンから見つかっていた、シミュレーションデータでは不可能と結論付け、実機でもう一度同じ現象を作り上げるのがベスト、と言われた。

 

そこで、《パイロットと共に自分が載れば一番分かりやすい》と、考えたのだろう。彼女は載るといって頑なたった、と言うわけだ。

 

このとき、俺は彼女に弱気な言葉を吐いていた。

「俺はこの星を護りきることが出来るだろうか。」

と。

 

そうしたら

「何でそんなにも全てを背負った見たいに言っているの?そんなの出来っこないじゃない。でも一人で出来なくても、このチームや多くの兵隊さん立ちと協力していけば良いんじゃない?」

 

と言われた。《そうだよな、確かに俺は転生してきた。だけど特別な力と言ったら、戦術的なことしかできない肉体だけだ。なら全体のことは気にせずに、目の前の出来ることをやれば良いじゃないか。》

と、考えられるように彼女がしてくれた。

 

「ハッ。そうだよな一人で戦ってる訳じゃ無いよな。」

 

彼女がその時どんな顔をしていたのかわからない。ただ俺の正体に薄々感ずいていたのではないだろうか。

 

そこからというもの、彼女との接点はますます増えていった。きっとこれが急接近の元だったのだろう。

彼女と一線を越えるのはそう遠くなかった。そして、彼女との結婚を前提といた交際が始まった。

 

それから1週間も経たない間に、第二機動艦隊へ集結することとなった。定期的な第一機動艦隊との交代、火星へと進む。しかし、それでも彼女との交際は解消されず俺に「待っているから」と言ってくれた。

 

そして、地球に帰還すると彼女の両親と合い自分と彼女の関係を認めてくれるよう、説得した。

幸いなことに、彼女の父親は軍属で俺の事をよく知る人物だった。そのお陰でもある。

 

そこから一年の月日が流れ、突如として平和は終わりを迎える。

 

第一次火星沖海戦の始まりであった。

 




感想、評価、誤字等よろしくお願いします。

今回もちょっと難しかったです


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カ号の裏で…

西暦2192年12月25日

 

この日は普通であるなら、聖なる日として世界中で祝われるはずの日である。しかし、いまここ、国連宇宙軍極東方面軍のドック内部では、異様な緊張感で満たされていた。

 

ガミラスの艦隊が再度火星に向け前進を開始したという知らせが、地球へともたらされたからだ。

現在地球にある艦隊は修理中のものから、新造のものまで全てを駆り出す。そんな雰囲気が形成されている。

 

そして、我々第二機動艦隊はそことは違う、もう一つのドックに終結していた。

 

 

第二機動艦隊作戦司令艦ブリーフィング

 

諸君、忙しいところ集まってくれてありがとう。長い休暇はどうだったかな?

さて、我々は新しい装備を手に入れ、遂にガミラス艦に対抗可能な空対艦ミサイルを導入した。

これにより我々機動艦隊はますます、宇宙軍の主力となり得るものであろう。

 

さて、新兵器の話はここまでだ。諸君らも聞いている通り、ガミラス軍が行動を開始した。

接敵は、およそ一月後だと言われており、また火星沖での戦闘となるだろう。

 

火星沖で行われる艦隊戦は、戦艦を主軸とした編成がなされており、対ビーム撹乱剤を散布して敵を待ち構える魂胆だ。しかしながら航空機に対しては無力というのは変わりない。

 

航空戦力に関しては、第一機動艦隊及び火星基地のグラディウスが担当することとなっている。

それでも敵の航空機の総数がわからない以上、敵の航空機を引き付ける必要が出てくる。

 

そこで、我々第二機動艦隊が火星~木星間のアステロイドベルトへと、突入。ガミラスの前哨基地へと強襲を仕掛ける事となった。

我々は派手に動かなければならない。そして、カ号作戦と同時に動き出さなければならない。

 

一見矛盾するも、これを行わなければ航空機が火星へと殺到することだろう。

よって、アステロイドベルト内での敵航空機の誘引を行う。

 

航空機は戦闘機のみ使用される。我々はあくまでも囮である。そこは充分に気を付けるように。

 

 

そんな感じで言われたとしても、どう気を付ければ良いのだろうか。それが皆の考えだ。

我々はいつも通りに戦うだけ。

気掛かりなのは、航空隊に新米が入隊していることだろう。

 

あいつは何割生きることが出来るのだろうか。それだけが気がかりであった。

乗艦である旗艦翔鶴へと門をくぐる。

後はいつも通り、自分の部屋へ行き荷物を整理するだけだと思っていた。

 

だが、ルートである格納庫へ入ったとき、何やら整備員が大勢一ヶ所に集まっているのだ。

よく見ると、一ヶ所だけでなく複数箇所塊が出来ていたが。

 

一番近くの塊から聞き覚えのある声が聞こえる。

覗くと、整備兵に機体の変更点や癖を教えている彼女の姿があった。気が付くと体が動いていた。

 

「何でいるんだよ。」

 

向こうもこちらに気が付いていたらしく、

 

「私は命令されたから来ただけ、それに新しい機体は一見すると元の機体と同じだけど、色々と変更点があるし画像だけでは説明しきれない部分もあるからかな?」

 

こんな危険な場所に彼女が来るとは予想していなかった。

何と言うことだろうか。

 

まあ、彼女の性格だ、説得は無意味なものとなり、結局アステロイドベルトまで、何事もなく到着した。

そう何事もなくだ。恐ろしいことに、一度たりとも小惑星が艦の近くへ接近することがなかった処か、望遠画像でも、一ヶ所にしか見当たらなかった。

 

小惑星を一ヶ所に固めたような大型の岩塊が存在している。それの内部から光が漏れている。

岩塊に対して巡洋艦、駆逐艦が攻撃体勢に入る。

そこから待つこと一時間、国連から攻撃命令が発せられた。

 

光学迷彩を解き、艦隊が姿を表し、攻撃を開始する。ミサイルと粒子砲の雨が岩塊に直撃していく。

火星からの報告により火星に向かっていた敵航空部隊がこちらへ向かってきているという。

 

我々の作戦は概ね成功と言うところだろう。

さて、ここからは俺たちの出番だ。

航空隊が発艦準備に入る。オペレーターと更新をしていざ出撃と言うところで横槍が入った。

 

『岩本君聞こえる?敵はこの一年間私たちと同じように機体をアップグレードしてるかもしれない。だから気をつけて。』

 

「俺だけじゃなくて皆にも言ってやってくれよ。」

 

向こう側はどうなっているんだろう、気になるがそれは後回しだ。

 

『総員発艦作業を続けつつよく聞け。敵航空機の総数が判明した。およそ600だそうだ。対して我々の艦隊は8隻が全力投射して586機。第一機動艦隊がこちらへ航空機を飛ばして来ると連絡があったが、連中の手助けなしでかたずけるぞ!!爆撃機を優先的に攻撃せよ!!』

 

艦から射出される衝撃を受けながら考える。果たしてこの作戦は上手く行くのだろうかと。

 

その懸念通り最悪の事態となった。

機動艦隊が帰還命令を受信したのだ。それを発艦した全ての機体に通達した。だが守る奴は誰一人いない。

 

『小隊長何故、誰も帰還しないのですか?』

 

新米の俺の僚機が疑問を投げ掛けた。

 

「このまま帰投しても、空母が必ずやられる。なら待機して敵機を落とした方が、艦隊の損害は少ない。それに、帰投は帰りながらでもできるからな。」

 

目の前の空間には既に、敵機が群れていた。

 

 

第二機動艦隊 空母翔鶴

 

「誰も命令を受諾しません。艦長。」

 

「それもそうだろう、艦は対空戦闘に移行する。

艦隊司令に通達、指揮を委譲せよ。君では役不足だ。」

 

「返信来ました。《フザケルナ》です。それと、全艦艇に対空戦闘用意です。巡洋艦タイコンデロガ、データリンクを送ってきました。護衛艦隊迎撃を開始します。ミサイル到達まで580秒。また、航空隊接敵まで620秒」

 

「敵要塞の動きは」

 

「ありません。完全に沈黙しました。旗艦から入電、《輪形陣を維持しつつ取り舵一杯、戦線を離脱せよ。》です。」

 

艦隊が動き出す、地球へと帰還するために。

 

「ミサイル到達まで5.4.3.2.弾着!今!レーダー上からおよそ40機消滅を確認。航空隊交戦に入ります。」

 

 

 

岩本機

 

完全な乱戦だ。右を見ても左を見ても上を見ても、敵と味方が入り乱れ、航空戦を行っている。

各言う私もその一部、目の前の敵を落とすのみ。

動きがやけに単調だ。二度目のロールをしようとしたので、動きをあわせで機銃で落とすと、後方からの攻撃を左に反らしつつ機体の噴射を利用して背面に回る。

急なGが体にかかるがそんなもの今はどうでも良い。

 

「ファルコ2生きてるか?お前は爆撃機のみを攻撃しろ。」

 

『攻撃しろったって何処にいるんですか。』

 

「何?」

 

攻撃を流れ弾を避けつつ周囲を確認する。爆撃機が見当たらない。まさかと思い望遠を最大にする。しかし、それでも見当たらない。そうか…敵もこちらと同じと言うことは…。罠か。無線のスイッチを切り替える。

 

「翔鶴!聞こえるか!これは罠だ。はじめからこっちなんて眼中にない。爆撃機なんて一機もいない!」

 

『どういうことだ。』

 

「言った通りだ。」

 

 

 

空母翔鶴

 

『翔鶴!聞こえるか!これは罠だ。はじめからこっちなんて眼中にない。爆撃機なんて一機もいない!』

 

「どういうことだ。」

 

『言った通りだ。』

 

「レーダーに感あり、この反応は未確認の艦隊です。

艦隊が…突如として出現しました。」

 

「成る程、そういうことか。敵はワープ航法を使用することが出来るということか。であるならば、最大出力で進むしかない。少しでも被害を抑えるために、なんとしてでも。」

 

強制的に戦闘室に入ってくるものがいる。

「失礼します。技術士官の佐々木三尉です。お話があります。この状況を打破する考えがあります。」

 

「技術士官が何かね我々は今忙しいんだ!とっとと出ていけ。」

 

「いやまて、聞こうじゃないかその方法を。」

 

「はい、それは」

 

 

岩本機

 

「おい、司令室損耗率どのくらいだ!?こっちはもう30機は落としたぞ。」

 

それでも宇宙にはまだまだ敵機がうようよと飛び交う。

 

『全機に通達、帰還せよ。これより、反物質兵器を使用する。効果半径に入るな。』

 

マジかよあれ使うのか。確か2発しかなかったやつだよな。

だが、殿として時間を稼がなきゃな。

 

「ファルコ2,3帰還しろ。殿は、俺たちACESが引き受ける。なぁに、みんな一騎当千だから大丈夫さ。なあ、ジョン、チャック、フェルナンド」

 

『そうさ親友さて、しっかり時間を稼がなきゃな。』

 

『当たり前だろ?ああ、俺の愛しの艦に傷を着けさせる訳には行かないからな。』

 

『愛しいかはさておき、艦は失いたくないからな。』

 

「さあ、いこうか?イナゴの群れの中に。」

 

 

結果として、大激闘の末敵の足止めに成功し全員が艦に帰投した。翔鶴並びに空母はほぼ無傷で巡洋艦、駆逐艦は損傷艦を自動操縦に切り替えて囮の艦隊を編成し最短ルートを取らせた。

 

元々損傷艦の推進剤は底を付きそうだった事もあり、廃棄処分と兼ねて一石二鳥だな。

帰還までの間に敵の艦隊が来ることはなかった。

未確認の情報だが、反物質兵器で敵艦を2隻ほど撃沈に成功したそうだ。コストがバカにならないからそんなに使えないが。

 

格納庫を出て休憩所に一時退避する。

俺の行動を予測していたかのように華奈が表れた。

 

「よかった。ほんとうによかった。落とされてなくて。」

 

「あの程度じゃ撃墜されないさ、まあ2割は死んだが。それよりも、まさか彼処で反物質兵器の使用を打診するとは、君も肝が座ってるね。」

 

「出し惜しみしても沈められるなら道連れが多い方が良いと思っただけよ。でもね、貴方のあの行動は赦せない。」

 

顔に怒りが浮かんでいる。

 

「殿になったことか?だが、あのときはあれが最善だったんだ。艦隊に取り付かれる訳には行かなかったからな。」

 

「全部戦闘機なら関係ないはずよ。」

 

「いや、無人機がいた。体当たりされたらどうなるか考えたくも無いだろ?」

 

それを聞くと黙って考えるように頭を抱えてしまった。

こうなると一時間は考えるだろうな。

休憩所だと邪魔になるんだがなぁ。

 

艦隊が地球に到着する頃には、カ2号作戦が行われていた。どうやら敵の航空戦力に大打撃は与えられた様であった。

 

しかし、それでも制空権を取ろうとガミラスは躍起になった。それが後にバトル・オブ・マーズという大規模空戦に発展していく。




感想、評価、誤字等よろしくお願いします。

そろそろ外伝終わりかな?


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英雄と呼ぶな、敗北者と呼べ

毎回毎回、誤字報告ありがとうございます


地球に帰還することおよそ6日、傷付いた艦艇が全てドックに入れられている。

しかし、この程度の被害で済んだことは実に良いことではないだろうか。なにせ、第一機動艦隊は空母3隻を失い駆逐艦・巡洋艦合わせて26隻も失ってしまい、今や戦力の半数が消えたことになる。

 

だが、第二機動艦隊は駆逐艦・巡洋艦が合わせて4隻沈んだ程度、戦力の低下は免れないが最悪の事態は免れた。

 

逆にカ号作戦参加艦艇、特に戦艦を有する連合艦隊は、戦力の7割を失い最早艦隊としての行動に支障をきたすレベルである。

 

これも沖田艦隊によるカ2号作戦の成功によって、帳消しに何とかなっている。沖田艦隊は非常に練度が高いだけでなく、良い司令官に恵まれた艦隊だ。

だが、我々の誘引作戦のお陰で敵の航空機は、戦線に投入されなかったのは見るに、我々も無駄ではなかった。

しかし、時は刻一刻と迫ってきていた。

 

 

国連軍極東管区

 

その日、俺は彼女と共に俺たちの戦闘データから、敵の航空機のデータを抽出していた。

戦闘で得たデータを機体の制御cpuに組み込み、無人機として自立戦闘をさせようという試みだ。

 

このcpuは、俺の戦闘データを元に造られるため、非常に強力になると思われた。

だが、いざ実証機に組み込むと予想外の出来事がおきた。機体が機動に耐えられず、空中分解を起こすのだ。どうやら俺は無意識の内にセーブすることによりこれを免れテイルようだ。

 

試験は何度も何度も行われ、次第に機体の形状も定まって来ていたある日のこと、遂に運命の時がやって来た。

当日、俺も気が付く事が出来なかった。一月後が遊星爆弾の初到達の日になるとは知らなかったのだ。

 

その日も試験を行っていた。そこに一本の要請が入った。

 

「なんですって?今から艦隊へ合流しろ?」

 

『そうだ、悪いが至急集まってくれてこれは命令だ。君に拒否権はない。』

 

「ちょっと待ってください。何処にいくかくらい教えて下さい。」

 

『火星だ。さあ、早くしろ。』

 

あの焦り様はなんだ。

 

「どうしたの?」

 

「至急艦隊へ帰還することになった。悪いがデータの収集はまた俺が戻ってきてからになる。」

 

「大丈夫。貴方が帰ってくるまでは、AI同士で戦わせるから。自己進化って素敵でしょ?」

 

「かもな…。必ず戻る。それまで待っていてくれ。」

 

「わかってる。あなたは必ず戻ってくる。いつもそうだから。」

 

これが彼女の最後を見たとき。

会話は、宇宙から交信で行えたから。

 

艦隊へ到着してからの一言めは

 

「おめでとう。君は二階級特進で今日から三佐だ。」

 

である。何故にと思ったが、聞いてみれば

 

「これから我々は火星において、一大航空作戦を行う。ガミラスが火星へ航空部隊を発進させたのが確認されたからだ。そこで、我々国連軍は総力を上げてそれを撃退することとした。本土の迎撃部隊も加えて。」

 

「要するに新兵に毛が生えた程度の連中を、指揮下に置いて被害を最小限にしたいと?無理な話です。彼らの練度は日増しに良くなっているのに対して、我々はどんどん下がっています。」

 

「だからこそ、今やらねば我々は本土を失うことになる。ここで叩かねば時間すら稼げない。」

 

「わかりました。艦隊の指揮官は誰ですか?」

 

「ニコラス・A・アンダーセンだ。彼ならば上手く立ち回れるだろう。」

 

「そうですか。地球を頼みます司令。」

 

「そうだな。お前も艦隊を頼むぞ?坊主」

 

昔からの付き合いと言うものは上司と言えど変わらぬものなのだろうか。

私に飛び方を教えてくれた、彼もまたこのときに帰らぬ人となる。

 

何事もなく港を出る艦隊。見送るものはおらず、ただむなしく夜空を天へと登っていく。

それは死出の旅となると艦内の人間は誰しもがそう思っていた。

 

それから十数日後、火星に艦隊が到着する。

火星と言っても衛星軌道だ、火星とはある程度の距離がある。

そこから機が次々と発艦していく。

 

迎撃部隊の連中は円筒回転シリンダー式簡易輸送船から、発艦していく。(ヤマト艦内の原型)

目の前の火星には、前々回の戦域で破壊された艦船が、スペースデブリとして前を塞いでいる。

 

それでも航空機にとって隙間はある程度あるため、戦闘は可能だ。

暫くすると、編隊の向こう側から赤い光のようなものが見え始めた。ワープしてきたのだ、ガミラスが空母(ヒトデ型)を連れてやって来たか。

 

それだけではない、ゴマ粒のような小さな点々がとてつもない数こちらへ向かってきている。あれが、敵の本命か。

 

『いいか、各隊相互支援を忘れるな。一人十機を落とすまで死ぬことを禁ずる。良いな!』

 

「了解、よく聞いたか?大隊各機新人はとにかく逃げろそして、生き延びろ。尻についたのはベテランが落としてくれる。だから今は生き延びる事だけ考えろ。ベテランも一人で戦おうとするな。そういうのは俺一人で十分だ。みんな勝とうぜ!」

 

『了解。思う存分暴れるとしよう。』

 

『本当に隊長は鼓舞が下手だな。』

 

『戦闘ではあんなに頼りがいが有るのにな。』

 

「言うじゃないか。じゃあ誰が一番多く撃墜出来るか競走でもしようか?」

 

『『ハハッ冗談言わないで下さいよ。』』

 

周囲を見渡せば多くの編隊が形成されている。

その数およそ五千。火星における戦闘に投入できる最大戦力だ。

だが、その半数以上が新兵からなるもの、対してガミラスはそれをAIで補っている。

数はこちらが敵の倍。しかし、性能と練度は覆す事が難しい。

 

宇宙空間では早期発見から敵に捕捉されずに行う攻撃は正直言って不可能に近い。

センサーの性能もさることながら、肉眼で捕捉する事が出来るのがその大きな要因だ。光学迷彩は、一度のみ使用できるが、今回は奇襲でないし何より敵の方がレーダーでこちらを捕捉している。

 

よって、航空機同士の超至近距離での格闘戦がこの戦いの勝敗を分ける。

そして、相法の先陣が激突した。

まるで戦国時代の足軽が戦い会うが如く、次々と突撃していく。

 

色が混じり合い、乱戦が始まる。

右も左も乱戦状態。どうやら言い付けどうりに編隊を組んで戦闘を行うものが殆どで、たまに見るエース級は単機で複数を相手取り戦っている。

 

そして、各言う俺も複数機が俺を追いかけ回す。

執拗に俺だけをつけ狙うこの機体は一機は確実に有人機だ。しかも腕が良いやつ。後の6機?は無人機だ、機械的なランダム性を有する動きをしていやがる。

 

「ファルコ隊全機、まだ生きてるな?敵のエースを引き付ける。」

 

話をしている最中今度は正面からおそらく有人機がこちらに来る。

 

「俺は正当な評価を受けているらしい。俺の事は援護せず他の隊を援護せよ。拒否権はない。」

 

各機了承したのか俺から離れて、別部隊へと向かう。

さあ、追いかけっこの始まりだ。

ヘッドオンした敵にミサイルをお見舞いするが、そらされる、それは計算の内。

エンジンの出力を上げてスペースデブリに突っ込む。続けて同じコースに飛び込んでくる敵機が2機デブリに衝突する。

 

艦艇の残骸を糸を縫うように飛行する。やはりAIは処理が追い付いていないようだ。

デブリの不規則な動きに幻惑され次々と爆散していく。だが、やはりエース級は一味違うようだ。憑いてくる。

 

だから、機体をギリギリまで奴に近付ける。後ろから機銃で撃たれるが気にする必要はない。

そして、次の瞬間機体を一挙に減速、やつ等の真後ろに着き形勢は逆転。

 

たとえエースたちと言えど、俺は半ば人外に足を突っ込みかけている、彼等に負けるわけがなかった。彼等はデブリからの脱出を試みた。だが、私がそれをさせまいと撃墜した。

 

そして、デブリ内部を通って敵本体に到達し、そこでも空戦が行われていた。

相法が相手側に殴り込みをかけるような闘いが数時間にわたって行われ、徐々にではあるが数が減っていきデブリの仲間入りをするものたちが多くなっていく。

 

そんな中で、地球もガミラスも母艦を攻撃することが出来ないでいる。あまりにも航空機の密度が高すぎるため援護すらままならず、ましてやデブリによって主砲すら届かない。

 

地球側に苛立ちはない。なぜなら本来の目的である敵航空機部隊の壊滅を達成できればそれで良いのだ。

あわよくば母艦を破壊する。どうせ航空機を失った母艦はただの箱にすぎないのだから。

 

そして、俺の目の前で味方を食い潰そうとする敵がいた。非常に良い動きをしている。さぞ名のあるパイロットなのだろうか。

だからここで落とすのが後々良いことになるだろう。

 

まとわりつく敵を交わし味方とやつの間に割り込む。注意がこちらに向いたようだ。

 

『あ、ありがとうございます。』

 

「礼を言うくらいなら戦え、敵はまだまだたくさんいるんだ。さて、」

 

彼は俺を殺すことに躍起になるだろう。彼を眼中から消し仲間を落としていけば自ずと俺だけを狙うようになるさ。

 

彼の機体を無視し、有人機だけを狙い落としていく。

一機また一機と落とすとともに彼の動きも鋭くなっていく。

ああ、そうだそれで良い、俺だけを狙えそうすりゃこっちの被害は少なくなるんだ。

 

俺は既に60を越える数を落としていた。

推進剤も心許なくなってきたそして、彼が動き出した。

最早止まることなどしない。ただ闘牛のようにこちらに来る。腕は良い、だが感情的になれば自ずと動きが単調になる。

 

やはり彼等も我々と同じ《ヒト》であると言うことか。感情があり、怒りが存在する。何の感慨も無く彼との戦いをしたが流石に、機体の限界が近い。短時間で終わらせなければ、と言ったところだがなにやら向こうも動きがおかしい。

 

疲れだろうか?終わりはあっけないもので、何と敵のコックピット上部を掠めるようにこちらの銃弾が真横から当たった。そしたら首が消えていた。

 

様子がおかしいのは、敵の全体だったようだ。何故か帰還していく。まるで潮が引くが如く、去っていく。

俺にとっての問題は燃料が底を付きそうだということだ。

 

幸いなのだろうか、先ほど首を跳ばした機体は風防が壊れているだけだ。要するにあれを飛ばせば帰還できる。

 

「まさか死人の機体に載るとはな。うん?これはタグか?文字が書いてあるが、読めないな。顔も跳ばしたせいでわからないしな。すまないな、機体を借りるぞ。」

 

うん、作りは似てるか、同じような生物が作るものは似ているものが多いからなこれもそれなんだろう。

よし、何とか行けるか。その前に通信を入れとかなきゃな。

 

「あー、こちらファルコ1。翔鶴応答願う。」

 

『こちら翔鶴。どうした。』

 

「敵が撤退して余裕が出来たのは良いのだが、燃料が底をついた。ただ帰還する方法はあるので土産とともに帰る。くれぐれも撃たないでくれよ?」

 

『本当に帰ってこられるのか?』

 

「大丈夫だ。問題は無い。」

 

『了解した。貴君の帰還を楽しみに待っている。』

 

そこから母艦へと戻る。艦隊に近付いたら警告を受けた。バンクと手信号で合図をしたら着艦を認められた。

勿論警備が出てきたが仕方の無いことさ。

 

それから生体検査して本人と確認されてから、ブリーフィングルームへと入室した。

皆は絶望した顔をしている。なぜだ。

 

「どうしたんだ?そんな暗い顔をして…。」

 

「地球に…、遊星爆弾が落下したらしい。」

 

「何だと?どういうことだ。まさか、俺たちは囮にされたってことか?何処が被害を被った!!」

 

一人が苦虫を噛み潰したような顔で言った。

 

「極東方面の技術開発部、種子島付近だ。」

 

その時の記憶はそれで跳んでいる。

後から聞いたが大分俺は取り乱したようだ。

 

この戦いから地球は更に劣勢にたたされることとなる。




次回 機動艦隊壊滅


感想、評価、誤字等よろしくお願いします。

次回で外伝終了です。


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機動艦隊壊滅

機動艦隊同士の戦闘が陽動であり、その隙に地球へは遊星爆弾が降り注ぎ、華奈は研究員たちとともになくなった。


あれから3年の月日が流れた。

時は西暦2196年

 

ガミラスからの遊星爆弾は衰えを知らず、次々と地球へと降り注ぐ。

初めのうちは艦隊による必死の迎撃により、遊星爆弾を破壊することに成功していたが、徐々に世界的に艦艇の稼働率が低下していき、遂には遊星爆弾が突破していくようになった。

 

稼働率の低下は散発的に現れるガミラスの艦艇による、奇襲が駆逐艦や、巡洋艦に傷を負わせて修復に時間を費やせられているのが原因であった。

 

このとき、既に航空機による敵艦艇への攻撃手段が確立されていたが、ワープによって突如として出現する敵艦を捕捉するにはまだ機体の性能が不足していた。

 

俺は、研究の続行をすると共に新人育成プログラムの一環として航空候補生の教育を任されていた。

パイロットは、先の火星沖での損害(およそ2000が未帰還1000がパイロットとしての戦闘不可)を未だに引きずっていいた。

 

この年の前年の卒業生は非常に優秀な人物が揃っていた。

特に山本明生、加藤三郎、両名は非常に優秀であり、加藤は指揮官として、山本はパイロットの技術として他を置いていくほどの実力者出であった。

 

そして、この年、山本 玲君が航空科の門をくぐり私の生徒となった。記念すべき年である。彼女もまた優秀であった事をここに記しておく。

ほんの数ヶ月しか教えていないが。

 

「さて、今日の授業はここまでとする。後は今日から模擬訓練が始まる。今まで行った耐G訓練や、練習飛行を思い出して行うように。以上。」

 

「起立!礼」

 

私が教室から出ると、やはり彼女が続いて出てくる。

 

「岩本教官!」

 

「何かな?」

 

「はい、教官がこれから艦隊の方へ転属となると聞いたもので、それで…。兄の事をお願いしたく。」

 

「ああ、そんなことか。わかってるよ、優秀な部下ほど失いたくないからね。特に彼は私の情熱に再び火を灯した。君もね。だから必ず守りきって見せる。」

 

この時期の俺は色々と冷めていた、戦場に出ると途端に熱が戻り鬱憤を晴らすがごとく戦う。学校では普通の教師のような皮をかぶり自分を偽っていきる日々。

 

しかし、彼女等兄妹によって、灰から再び熱をおび出していた。戦場での熱ではない。守りたいと言う熱が。

 

その日彼女達訓練生と初の模擬戦を行った。

勿論私はアグレッサーとして上がって、彼女達訓練生を相手に連携とはいかに大切かということをみっちり教える事になった。

次の日には艦隊へと赴いていた。

 

 

一年ぶりに翔鶴へと乗り込み航空隊の面々と顔を合わせる。俺の二番機は代替わりして、山本が俺の後ろに付くことになった。彼は非常に見所のある男だ、なぜなら変態的な俺の機動に着いてこれるのだ、もう信頼とかどうでも良い。そこに痺れた、こりゃすごい奴になると。

 

他の面々も腕が立つ連中ばかり、空母は二個一修理で4隻になってしまったがそれでも現時点での最高戦力をかき集めていた。

 

だが、この作戦は納得いかない。これではまるで餌だな。

翔鶴は今回の作戦での旗艦となったため、司令室にはこの作戦を立案した国連軍の参謀が乗り込んでいる。

そこへ早足で向かった。

 

「岩本二佐入ります。」

 

『ああ、入ってくれ。』

 

日本語での返答か。まさか、艦長が変更されたか?

 

「今君を呼ぼうと思っていたところだよ。岩本二佐、いや英雄殿。」

 

「ほお、私をなぜ呼ぼうと?高倉参謀。

司令、前司令であるアンダーセン提督は何処に?」

 

「彼との連絡は途絶している。もはや別の大陸との行き来は一切不可能だ。よって、機動艦隊は極東方面軍の傘下に入った。君には航空隊の指揮をお願いしたい。」

 

「私に?こんな犬死にするような作戦を立案しておいて、私に航空隊の指揮を取れと?冗談ではない。」

 

そこで、高倉は全てを俺に打ち明けた。

 

「この作戦の意味を君には伝えなければならない。

我々人類の存亡がこの作戦には、かかっているのだ。」

 

「人類の存亡?なぜ。」

 

「外宇宙から我々へ向け、信号が送られてきた。一方的なものであったが、藁にもすがる思いで我々はそれを信じようとし、そして遂に二週間後大使が送られてくることとなった。」

 

「その陽動のために2万人の命を代償にしろと?」

 

「だから君を、岩本、お前を呼んだんだ。お前が指揮をして、戦えばそれだけで戦力が削れるのをある程度軽減できるからな。」

 

高倉が俺を見下すように言い放つ。

教官時代からいけ好かないやつだったが、こんな作戦立案して来るとは思わなかった。

いやまてよ、この作戦の立案の仕方どこかで見た記憶がある。そう確か、この世界の理である宇宙戦艦ヤマトでのメ号作戦か?

まさか、あれもこいつが関係しているのか?

 

「だとしても、俺はそんなもの背負いたくはない。」

 

そしたらニヤリとした顔で、

 

「お前は英雄になっちまったんだ。受け入れろ俺の作戦をな。さて、お集まり頂いた各艦の首脳の方々、今回の作戦は人類にとって非常に重要なものと…」

 

各艦に、死ぬことを前提とした作戦が告げられる。先ほどの俺との話を聞いていたものだから、おおよそを知っていたが、全員が賛成をしたわけではなかった。

しかし、人類のためならと全員が作戦を了承した。

 

その結果、多くの犠牲を伴うとしても…

 

 

結果だけ言おう。我々は戦略的に勝利を手にする事に成功した。

外宇宙からの来訪者は火星へ無事到着し、我々へ現状の打破となる技術を提供する事になった。

 

そして、我々はと言うと木星と火星の中間地点に置いて、ガミラスと長期間となる戦闘を行い、艦艇の損耗率はおよそ8割にも登った。

戦術上これほどの大敗となったが、我々の本来の目的は果たされたのだ。

 

この戦いでは、新型空対艦ミサイルが配備されガミラス艦にも少なくない損害を与えることに成功した。

私も少なからずというか、ガミラスの巡洋艦を大破航行不能に陥らせることに成功した。

 

しかし、未帰還機が7割を越えた。山本君はしっかりと帰って来た。この後山本君は本土の防空戦で命を落とすこととなる。

空母は残り一隻翔鶴のみが生き残り、その他の艦艇は自沈処理された。

 

この戦いで地球は展開可能な外洋艦艇の悉くを損失し、実質沖田艦隊のみが、地球圏での戦闘続行艦隊となった。

 

翔鶴と生き残った艦艇10隻は沖田艦隊へと編入され、最後の役目『メ号作戦』でほぼ全損する。

我々は生き残り、最後まで抗うことを決意した。

 

この戦闘での功績により俺は一佐となり、実質艦隊航空隊、防空航空隊、双方の凖司令官待遇となった。




感想、評価、誤字等よろしくお願いします。

今回戦闘描写省きました。
これで、主人公視点の外伝を終わりとします。

仕事の関係上執筆が遅れております。
何卒、ご容赦のほどお願い申し上げます。


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本編 2199
第1話 海戦


宇宙戦艦ヤマト2199の二次を書いてみました。
どうぞ、よろしくお願いします。


西暦2191年天王星監視ステーションからの警告により、未知の文明から初の接触が行われた。

 

それに呼応し、国連は、国連宇宙軍内惑星艦隊を出撃させ、威嚇・牽制と同時に、件の艦隊の撃滅を目的としていた。

 

 

西暦2191年、艦隊所属特殊攻撃隊

 

コーハー、コーハー

息づかいだけが聞こえる。

周囲の景色に広がるは、暗黒の世界。そこに散りばめられた星たちは変わらずに瞬いている。

 

今、我々は敵艦隊に向け攻撃をする。だが、勝てない戦。どれ程僚機を救えるかは己の腕次第。

 

『各機、無線封止解除、敵艦隊へと肉薄攻撃を開始する。味方艦隊からの砲撃も行われている。くれぐれも同士討ちにならぬよう、高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応せよ。新人は逃げ回るだけで良い。生き残れば次に活躍出来るからな。』

 

全く、確かにパイロットになりたかったけど、こんな人類の危機に戦わなくちゃならないとは、本当に戦争は嫌だな。何より、絶対に勝てないだろ。

 

『おい、聞いてるか?どん尻、お前は一番の若輩者だ。しっかりと俺の後ろに付いてこい、そうすれば必ず生きて帰れる。』

 

言われなくともやって見せるさ。

 

西暦2199年1月17日

 

『…て。お…て…い。起きて下さい!!』

 

また、あのときの夢か。

 

「うん?何だよ」

 

「出撃命令です。ガミラス艦が冥王星沖に進出してきたそうです。急ぎ出撃準備を!!」

 

「わかった。」

 

急ぎ、ヘルメットを着用し自らの搭乗機にのる。

旗艦キリシマから発進を行った。

 

「各種機器正常に作動、各補助翼、姿勢制御ブースター正常に作動。エンジン正常。いつでも出撃できるぞ!!」

 

「発信シーケンス5、4、3、2、1発進どうぞ。」

 

エンジンを、急激に加速させる。そして、キリシマのカタパルトから射出される。

さあ、空戦の開始だ。

 

2199年1月17日メ号作戦、艦隊防空任務に付き、出撃。敵はガミラスと名のる、異星文明。恒星間航行可能な文明と、恒星系内部から出たことがない文明が、戦争をすれば自ずと、どちらが有利かわかるだろう。

 

航空機に関して言えばそこまで驚異的ではない。もっともパイロットの腕しだいになるが。

 

はじめの頃はよかった。まだ熟練のパイロットが多く、制空権争いはこちらに有利になることもあった。しかし、今ではすり減らされ見るも無惨だ。

 

そして、今回のメ号作戦で更に多くのものたちが犠牲となる。人類の存亡と、この人員を天秤にかけた結果である。しかし、少しでも犠牲を減らさねば。

 

『各機聞こえるか?これより艦隊戦が行われる。我々の仕事は敵航空機による、艦隊戦中の艦艇への攻撃を防ぐことである。

いかな戦艦といえど航空機の攻撃には成す統べない。

攻撃機は、敵戦艦を多く葬ってほしい、諸君らの新型

そして、新人パイロット諸君は絶対に単独飛行を行ってはならない。

諸君らは生き残り次の戦に備えねばならない。

各々の仕事を全うすることを願う。』

 

さて、俺は俺の仕事をするだけだ。

 

『ハヤブサ01へ、君だけに聞こえる無線だ。たった今、国連軍からの直接命令が来ました。〈旗艦キリシマのみ護衛せよ。他艦の安全は、僚機に任せよ〉です。命令は…受けとるかは、あなたが決めてください。』

 

全くそういうのは地球から出撃する前に言うことじゃないのか?

 

「キリシマへ、その命令は受諾できない。私は、わたしの出来ることをしよう。」

 

『貴方らしいですね。わかりました航空隊のことよろしくお願いします。』

 

わかってるさ。

 

「全機聞こえるか?これより数時間の間艦隊上空で待機することとなる。非常時であるが自動操縦に切り替えておけ、敵が現れ次第に攻撃を行う。一隻でも多く敵を潰すことでこちらの損害を少なくする。

我々航空隊だけが、敵に対して唯一有効打を与えられる。心してかかれ。」

 

さあて、敵さんはいつお出ましになるかな?

 

 

それから、20分後戦闘が開始された。

 

『バカめ。』

 

バカめか。こりゃ全滅に近い被害になるだろうな。

 

「全機、敵艦隊へ突撃を開始せよ。一隻でも多く葬り去るぞ!!」

 

ガミラスの艦隊へ向け全機が突き進む。その時、ガミラスの空母から小型の飛行物体が発進した。

 

ガミラスの航空機がお出ましか。

 

「攻撃機隊は、そのままガミラスへ突撃を続行!!戦闘機隊は、直掩機はそのままに残りは攻撃隊を援護しつつ敵機の破壊、及び対空砲を破壊せよ!!」

 

こっちは対艦装備がないからな。航空機の殲滅しかないな。

 

艦上航空隊は猛烈な戦いとなる。

航空機の能力はガミラス側にあるが、単調な動きをするUAV(無人戦闘機)であるため動きを着実に読み、新米ですら撃墜出来ている。

 

こちらはどうかと言えば一人で制空権を確保している。来る敵来る敵、UAVであるため単純な作業とかす。

後ろをとられても急G旋回をし、簡単にひねり込めてしまう。後は、後ろから対空ミサイルや、機銃を撃てば撃墜できる。

開戦初期は敵にも有人パイロットがいたが、そのことごとくを私が落としたために敵の腕ききがいない、敵も人手不足か。

 

しかし、艦隊は艦隊戦を強いられているため数をどんどん減らしている。こちらの主砲は何一つ効果がない。このままでは全滅するのも時間の問題だろう。

 

 

その時ガミラス側にも損傷艦がちらほら見えて来ていた。駆逐艦程度だが、攻撃隊による宇宙魚雷で撃沈も出ているが…

 

「やはり威力不足か。」

 

92式空間艦上戦闘攻撃機では、ミサイルの搭載量も機体の速度も足りないか。

 

『全機帰投せよ!繰り返す全機帰投せよ!』

 

何かが起きたか?原作通りなら、イスカンダルの船が到着したはずだ。

 

生き残ったのは、キリシマとムラサメ型?歴史が少し変わったのか。

 

今は逃走に集中しようか。殿のユキカゼが、戦っているなかやはりガミラス機が十数機来たので、簡単に落として行くとしようか。

 

「全機先に行っていろ。あいつらを片付けた後に行く。」

 

『気をつけて下さい。』

 

動きがUAVとは違う。有人機か。

 

いいねぇ。動きが良い、プログラムされた単調な動きじゃない。ちゃんと血が通った生き物の判断する動きだ。

 

敵機はこちらを目の敵にしてるな。

 

『鳥だ、凶鳥がいる。全員やつを落とすぞ、今こそ仇を討つときだ。』

 

『無理な深追いはするな!戻れ!繰り返す!戻れ!』

 

何やら無線に入っているが、ガミラス語はさっぱりわからんのだがな。きたきた、じゃあ殺っていきましょう。

 

十数機とヘッドオン(正面から真っ向勝負)をかける瞬間的に機銃を撃ち、当たらないように余計な動きをせずに微調整をする。まずはこれで2機。

 

すれ違うと同時にインメルマーン(『つ』の字状に急旋回)を行い敵機の背後につくと、機銃を点射また数機落とす。

 

どうやら諦めが悪いようなので、一機一機散らしつつ確固撃破していった。

艦隊との距離を一定に保ちつつ行っていたために、ガミラス艦隊は既に目視圏外となっていた。

戻るとしよう。

 

数十分飛行すると、艦隊にたどり着いた。

「こちらハヤブサ01よりキリシマへ、着艦許可願う。」

 

『着艦は許可出来ない。機体を艦の真横に付けた後、アンカーボルトで固定する。地球降下までに機体を投棄し、乗艦せよ。』

 

収容数オーバーか。

 

「了解した。ちなみに聞くが、帰艦機は全体の何割だった。」

 

『およそ半数です。』

 

「そうか。帰艦員へ伝えてくれ、良く生き残った。これからも頼むぞと。」

 

『伝えておきます。貴方の体調はいかがですか?』

 

「すこぶる元気だよ。まだまだ、戦い足りないかな。」

 

これくらい言っとかないと、他の連中が気分を落とすからな。

 

しかし、あれほど落としてもたった二隻しか生き残らないとは。歴史の修正力は伊達ではないか。

 

だが、ツルギが生き残っているからな。もしかしたら、ヤマトに僚艦が付くのか?

だとしたら、ヤマト乗員の生存率が上がるか?それとも余計な犠牲が増えるか、か。




後程、メカニックや主人公のことを書いておきます。

評価、感想、誤字等ありましたら、よろしくお願いします。


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第2話 メ号の成就

艦隊と共に帰還の途に付き、地球へと帰って来た。

宇宙から見える地球には今はもう海など、見る影もなく大地は焼け爛れ、生物が生きて行ける環境では無くなっていた。

 

これ程までにガミラスの力は強大だ。原作通りに艦隊の損害が多くなったことにより、完全にアウトレンジ爆撃に切り替えて、近くに来るときも必ず強襲空母を随伴してくるようになっている。

 

本土防空隊は対処するが、如何せん技術的に劣っているが故に大きな損害を与えられずにいた。

そんなに折に今回の艦隊戦があった。

間違いなく、艦上機隊は防空隊に吸収されるだろう。

もはや、載せる船もなく人員もいなければ、確実にこの壊れた地球に配属となるだけだ。

 

そうして、およそ一月の航海の後、船が地球への侵入コースへ乗る。その後は、偽装ドックへ二隻で共に入った。

 

 

帰還後まず最初にやるべきことは、負傷兵の救護、戦闘に参加した兵員の確認。それから、帰還機の整備等々かなり豊富にある。

 

特に戦闘に参加したものたちの健康管理には徹底的に行われている。

昨今、艦上機載りたちに宇宙放射線病の患者が出始めていた。

これは、船よりも壁が薄く長時間の間外へと出されるために起こった事例だ。

そのため万が一を考え、私も含め多くの艦上機パイロットには、帰還後の定期検診が義務付けられていた。

 

そして、私の主治医はあの佐渡先生だ。あの先生は腕は超一流でたよりあるんだが、酒ばかり飲んでいるからな、いずれ体を壊さないかこちらが心配になる。

 

診察室に入るといつも通りの佐渡先生だ。

 

「次はおお、君かねエース君か。君は診察しなくても健康体だと思うんだがなぁ。」

 

「義務ですから、それはそうと精密検査の結果はどうです?変わりありませんか?」

 

「ああ、宇宙放射線病の兆候も観られないし、むしろ人間離れした耐久力を持っているよ。

しかし、たいした耐久力だなあ。どうやったらあんな無茶な動きが出来るんだ?」

 

「それは、生まれつきですから。(小声)そう言えば、沖田提督の体調はいかがですか?」

 

「うむ、あまり良いとは言えないな。正直に言えば艦隊運用を辞めて治療に専念して欲しいくらいだ。」

 

「そうですか、あの人も変に英雄にされていますから、録な休暇を取っていませんし、何よりもはやそれを言っている場合ではありませんから。

先日、艦隊が事実上の壊滅となりました。もはや我々に戦う力はない。ヤマト計画以外は。」

 

「君にもその話が来たのか。」「ええ、航空隊の司令だそうです。長旅になりますよ。」

 

「では今のうちに酒をたらふく買っておかねばな。」

 

そう言って笑っている。流石だなぁ。

 

診察室を出て帰宅する。帰宅と言っても実際の家は遊星爆弾によって破壊されているから、無いんだけどね。

だから、寮に寝泊まりする。

 

おお?明かりがついているな、と言うことは奴ら非番かな?こっちは生死をかけて戦ったのに、防空隊は呑気だな。

 

ちょうど彼等もいたか。

 

「やあ、加藤くん今日はローテーションで休みの日だったかな?」

 

「ハッ!これは岩本一佐、いつ帰還されたのですか?」

 

「ついさっきだよ。それにしても、勢揃いだな。いいか?これからは、君たちが防空を担う要となる。油断は絶対にするなよ。

どんなエースでも一瞬の隙が命取りとなる。山本くんのようにね。」

 

そう言うと、加藤はイラついたように私に対して言葉を発した。

 

「その話しは辞めてもらえませんか。死人に対してのそう言うのは、それにやつは、山本はそんな慢心をするようなやつじゃなかった。」

 

こういうやつは、嫌いじゃないな。友人のためなら上官とすら殴り会える気迫があるやつは。

 

「そうか、君は彼の親友だったか?悪かったね正直言い過ぎたよ。今は気が立っているのかな。今回も惨敗だよ。」

 

そう言って、彼らから離れた。きっと哀愁漂う背中だったろう。

明日は基本的に何もないし、ちょうど良いから山本君の墓にでも行ってみるかな。

 

しかし、そんな中でも戦争はあるわけで、結局のところ厳戒体制のまま出撃待機命令だ。非番なんて無かった。

 

 

そこで私は防空隊の格納庫へ集合となり、防空隊格納庫に待機となるが、私の機体が見当たらない。これで戦えと言うのか?

よし、そこの知り合いの整備長に聞いてみるとするか。

 

「お久しぶりです。私の機体が見当たらないのですが、どこにあるのですか?」

 

「あー、これは岩本一佐あなたの機体はここにはありませんよ?(小声)あなたの機体は、既にヤマトに積み込み作業中とのことです。この事は他言無用ですよ?」

 

「では変わりの機体を貸してくれ。必ず戻ってくる」

 

「駄目です。あなたが乗る機体は必ずどこか不具合が出ますので、載せることは出来ません。」

 

それでも諦めずに周囲を見渡すと、あった。コスモゼロ

だ。しかもご丁寧なことに2機ある。

 

「あれはダメなのか?」

 

整備長が、コスモゼロをみてこういった。

 

「あれですか?まだ駆動試験をしてない未完成の52型ですよ。

戦いなんてとんでもない、飛ぶのがやっとですよ。うん?何だ?おい!!そこのやつ降りろ!!ったく人の話を聞かないで発進しやがった。

加藤二等宙尉!!とめろよ!!あ、すいません。」

 

あー主人公と、島君かこう見るとほんとうに無鉄砲だな。しかし、整備長すごい怒ってるなぁ。

 

「いやいや、私のことを気にせずに無断出撃した二人を心配してください。

それに加藤くんは悪くないよ。

あの二人どこかで見たことがあると思ったら、火星の二人か。腕は確かだと思うのだが、しかし若すぎるな。」

 

「あんたも充分若いと思いますが?」

 

「お世辞を。それでは、待機室に戻ります。ご迷惑をおかけしてすいません。」

 

格納庫を後にする。余談ではあるが、周囲のパイロットたちの目はまるで、動物園へパンダを見に来た子供のような眼差しだった。

 

後日聞いた話だがあのあと、原作通りコスモゼロは墜落して二人は無事生還したそうだ。

そして、本来選抜されていた者たちは、ものの見事にガミラスの攻撃の直撃を喰らったようで全員が戦死。

 

今度こそ山本君の墓参りだ。今日中に終わらせるぞ。

 

 



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第3話 ヤマト計画

私のところに連絡が来た。どうやら本来の乗員が先のガミラスからの空爆により全員戦死したようだ。

これで原作通りの道になったと思ったんだが、そうは問屋がおろさない。

 

ムラサメ型が1隻残存したおかげで船員が少々余ることとなった訳だが、そこに新型の巡洋艦をあてるようだ。

 

こちらに流れて来た情報によれば、擬似的な波動エンジンを使用して、ムラサメ型の純粋な速力と攻撃力を上げた船のようだ。

 

例えば、

20サンチ連装高圧増幅光線砲×3基が

 

20サンチ陽電子衝撃砲×3基

 

に変化したやつなのだそうな。

 

それゆえに主砲の砲身が長くなっている。

 

こりゃ実弾も撃つね間違いない。まあ、ワープ出来ないみたいだし、途中までしか付き添いは無さそうだけど。

 

そんな報告を受けていると、とある人物から連絡が舞い込んだ。何々?重要人物の護送及びそれら秘密の共有?

ああ、あのイスカンダルの少女か。

確かにイズモ計画の連中もリストに何人かいるようだが、途中での反乱を危惧してか。

私に言ってもねぇ、正直腕っぷしは悪くないんだが保安隊に勝てるかは微妙なんだよなぁ。

 

「岩本一佐何を一人でおっしゃっているのですか?」

 

「口に出てたか?何処くらいから。」

 

「イズモ計画辺りからです。」

 

「疲れてるのかな。聞かなかったことにしてくれ。

それと、古代進はヤマトの乗員となっているのか?」

 

「はい、彼でしたら戦術長に繰り上げで昇格となりました。」

 

これで原作通りか。

結局最後の休日はなかった。今日も山本の墓へは行けそうにないな。なんせ、沖田提督のもとへ召集がかかったからだ。盛大な祝い事の前に幹部で話し合いでもするのかな?

 

「行くとするか。」

 

 

駐機場待機室→移動中→沖田提督執務室

 

「岩本一等宙佐入ります。」

 

「ああ、入ってくれ。」

 

なかに入ると既に真田 志郎三等宙佐(以後真田三佐と表記)が既におり、他にも土方提督、佐渡先生までいらっしゃる。

 

「どうも、ここに居るなかで真田三佐だけだったかな面と向かって初めて話すのは。岩本 鉄郎一等宙佐だ。以後よろしく頼む。」

 

一応の握手ということで。

 

「はい、改めまして真田志郎三等宙佐です。貴方のことは常々聞いております。貴方の戦闘データのおかげで死傷者はだいぶ減りました。その節はありがとうございました。」

 

あのときのか、最低限人が死ぬのは嫌だったからね。

 

「そんなに言わなくても良いですよ。それで死者が減るのなら嬉しいことです。さて、話は変わりますが、ここにいるのは、ヤマト計画の実働部隊員の長を勤めるものたちで良いのですか?」

 

「その通りだ。君たちには重要部所の管理者としての立ち位置がある。そこで、イズモ計画のスパイが潜り込む可能性が出てきたのだ。」

 

次に土方提督が前に出てきたな。詳しくはかな?

 

「続きは私が話しましょう。私は、太陽系から出ることはかないませんが、ヤマトの期間までこの地球を守り抜かねばなりません。

そこで、イズモ計画の人員を旧式艦に封じ込めることに成功したのだが、一部ヤマトに潜り込んだ可能性があるだ。

君たちは信頼にあたる人物だと知っているからこそ君たちにこれを話したのだ。」

 

「わしには、スパイを見抜く力なんぞ無いぞ?まあ、酒とみーくんだけいればワシは良いんだがな。」

 

佐渡先生らしいな、真田の方を向くとなにやら考えているご様子。そっとしておこう。

 

「それでは、我々が見逃した場合ヤマト内部での暴動が始まるリスクがありますね。

相手の裏を掻くように、保安隊内部に我々の息がかかった人物を配置しましょう。秘密裏に。」

 

仲間を疑うしか無いか。正直言ってそんなことはしたくはないが。

 

「私は、仲間を疑いたくない。だが、イズモ計画だけは駄目だと思っているからここにこうしているんだ。

あれを選択したとして、またガミラスが来ればきっと逃げることになるだろう。それよりも人類が他の惑星で生き延びられる保証がない。

だから、ヤマト計画に全てを掛けます。」

 

そうでもしない限り、人間の人類の生き残る道はないだろ。なんせ、ガミラスは銀河系外から来てるからなぁ。

正直イスカンダルの真横とか知ったら、ヤマト計画凍結されかねないな。

 



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第4話 パレードの始まり

遂にこのときが来たか。

イズモ計画選抜メンバーが一ヶ所に集められ、イズモ計画の凍結とヤマト計画の始動を言い渡され、それぞれが家族との別れを惜しむ。

 

私も簡易仏壇の前で、この世界での両親へと行ってくる旨を伝へ一人しかいない寮を出る。出発予定まで後数時間か。

送迎のバスの如く87式兵員輸送車に揺られ、一路ヤマトの下へと向かう。輸送車の中は非常に静かだ。

多くのものがいるが、私が載っているせい静かになっているであろうことは明白であるが、もう少し話をしても良いだろうに。

 

道中そんなこともあったが、事故等はなくヤマトへ到着した。

 

「第3艦橋。確かに狙われやすい形だな。」

 

私が喋ると周りがビクつく。怖がるなよ、軍人だろ?

それともなにか?私は悪魔か、はたまた鬼か?

周囲の事を少し気にしつつも、上がろうとしたとき後ろから声をかけられた。

 

「岩本教官でありますか。」

 

振り向くと。おー、山本玲 三等宙尉がいた。

 

「山本君も選抜メンバーだったのか。あの日広場にいなかったから選ばれなかったと思ったよ。」

 

2199なら絶対にそう言うことはないのはわかるけどね。

 

「教官こそ、そのようなこと毛頭も考えていらっしゃらないのに、私が選ばれたのは既に知っておいでの筈では?」

 

不服そうな顔をしながらこちらに眼差しを送ってきている。教官と言っても二月位しかいなかったが。

その後、また艦隊に招集されて、直ぐに

『バトルオブマーズ』で出撃して惨敗したんだよなぁ。

航空隊だけであんな長大な距離飛ばす馬鹿は誰だったんだか。

 

「君がまさか主計科に行くとは思っても見なかったよ。それより、ここで立ち話をしていたら皆の邪魔だ。

なかに入ってからでも良いはずだろ?」

 

初めて会った時、彼女は兄の事をしつこく私に聞いてきた。自慢の兄が今どうしているのか、唯一の身内の事が心配だったのだろう。

 

 

場所は移動して、ヤマトカタパルト下のコスモゼロ格納庫。先に自分の部屋へ行っていたから少々時間が経ってしまったな。

そんなことより、コスモゼロは良い機体だな。こんなにも折り畳めるんだ。空母があったらさぞ多くの載っただろうに。

 

「それで?私に話があるとは?」

 

「改めまして、山本 玲 三等宙尉であります。

岩本一佐にお尋ねします。私はなぜ主計科配属なのでしょうか。」

 

やっぱりこの質問か。おおかた、加藤にはぐらかされたから、知り合いで話し掛けやすく事情を知っていそうな、ある程度上の立場の人間を探していたらたまたま私がいたのだろうな。

 

「君が主計科に配属になった理由かね?

そうだな、君はガミラスに明生君を殺されて私呪に走る可能性があったらか、というのはダメだろうな。

君の性格上そんなことはしない。

選抜したのは加藤君だよ。それ以上は考えればわかるとおもうよ。」

 

「貴方が航空隊の指揮官では、無いのですか?」

 

そりゃそう思うよな、最年長でトップエースが指揮官でない筈がないと。

 

「残念だが、私は『戦術科戦術長付きアドバイザー』 という形式上の役職だ。だから、加藤君に選抜は一任していた。しつこく加藤君に聞けば答えてくれるとおもうよ。それ以上の話は取り敢えず今は無しだ。いいな?」

 

そう言うと、私は格納庫を後にした。これ以上ばらすと不味い気がするからだ。私の権力を使う訳にはいかないしね。

少々遅れたが、着任の挨拶を沖田艦長へ言いに行かねば(使命感)。

 

艦長室に到着すると、中から声が聞こえる。この声は、古代君か。耳をそばたてて聞いてみると、どうやら話が順調に終わりそうだな。

このタイミングで良いかな?

 

「お話し中失礼します。入ってもよろしいでしょうか。」

 

「誰かね。」

 

「岩本 一佐であります。」

 

「入ってくれ。」

 

やはり古代君がいる。話は終わっているから別に影響はないはず。

 

「本日付けでヤマト戦術長付きアドバイザーに就任しました。岩本 鉄郎です。今後ともよろしくお願いします。古代戦術長もよろしくお願いします。

階級は私の方が上ですが、艦内順位は古代戦術長の方が上ですので、命令には従います。

何か分からないことがあれば頼って頂ければ幸いです。」

 

「岩本君。古代君は実戦経験がまだあまりない。

君の経験と彼の戦術眼によってこのヤマトの行く末を決めてほしい。」

 

「フッ。失礼、いや可笑しいですね。こんなにも多くの命を預かるなんて私でも初めてですよ。まだまだ、沖田艦長には頑張ってもらいますよ?」

 

古代君からすれば何を言っているのか。という感じだろうか?だが、それで良いんだ。

沖田さんの事に含みを入れることで、彼には全力を出してもらって覚醒してもらわなければ。

 

「私は、戻ります。どうです?艦長と古代戦術長もご一緒しませんか?」

 

結果として断られた。仕方ないよね。でも、これで彼の肩の荷が少しでも軽くなれば良いんだがなぁ。

 

第1艦橋に降りると、島君が森専務長にちょっかいを出そうとしていた。森くんはもっと柔く出来ないものかねぇ。

 

私が目に入ったのか、島君はこちらに敬礼をしてきた。そんなに固くしなくて良いのに。

 

「ここでは、島君君の方が立場上上だよ。そう固くならずにリラックス、リラックス。」

 

「そうですか。では、遠慮なく。」

 

古代君と違って固くないな。

 

少しすると第1艦橋要員が揃った。

副長である真田君が、号令を出しいつでも抜錨出来るようにしている。

 

「真田君。いや真田副長。岩本一佐です。よろしくお願いします。」

 

「こちらこそよろしくお願いします。」

 

愚直だが、判断は間違えないだろう。

 

 

船員の経験は不足しているがそれを補うのが、私と沖田艦長。そして、船内の年配組の務めだ。

 

多くの船員の命を預かるこのパレードは果たしてイスカンダルに到着出来るのだろうか。



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第5話 宇宙へ

ヤマトの発進シーケンスに入っている。最初は皆、落ち着きのない対応だった。そりゃ、実戦経験の少ない新兵の集まりのような集団だ、こんな重要な役職に着いたことがあるものは何人いることか。

 

沖田艦長が降りてこなければ俺、私が一喝しなければならなかったが、幸か不幸か、沖田艦長が現れたためこっちはやらずにすんだ。

 

発進するのだが、私は役職上、操艦するわけでもなければ、主砲の射撃号令を跳ばす訳でもない。

航空機のパイロット兼教官であり、戦術オブザーバーだから、今私に出来ることとすれば士気を高める位かな。

 

それは、良いとして真田君が私の事をジーっと見つめてくるんだ。なぜ緊張していないのか?とでも聞きたそうな顔をしてやがる。

流石の真田君も『こんなこともあろうかと』なんて言えない状況なのか。

 

「随分と落ち着いておられますね。やはり実戦経験が長いとこう言うことになれたりするのですか?」

 

まさか、本当に聞いてくるとは困るねぇ、何て返そうか。

 

「そうだね、やはり慣れだよ。遊星爆弾なら落とせと言われれば破壊可能だが、巨大な弾頭を持つ砲弾のようなものなのだろう?正直お手上げだよ。

でもね、自分の載っている船を信じるのが船乗りなんじゃないのかい?

まあ、俺は船乗りじゃないけどな。」

 

そう言って艦橋から出ようと試みる。

 

「岩本君、パイロットたちの事を頼んだ。彼等は船には慣れていないからな。」

 

「了解しました。必要とあらばランニングでも何でもさせて、船に慣れて頂きます。それでは失礼します。」

 

ナイスゥ沖田艦長。正直あの空間に俺がいてもやれることなんて何にもないからね。だったらパイロットたちをからかってやる方が有意義な時間だ。

 

廊下を歩くと多くの乗組員に出会う。会うたび敬礼をされるのはもうなれたが、有事の際は忘れても良いと思うんだが、ここがこの国の軍隊の官僚的な部分か。

 

 

そうこうするうちに、パイロットの待機室に到着する。外まで声が聞こえてくる、どうやら動揺を騒ぎで紛らわせようといているな。こりゃ楽しみだ。そうとなったら早速ドアを開けよう。

 

入ったら早速敬礼だ。だが、こいつらにはそれだけで終わらせたくはない。

 

「諸君始めましてのものは始めまして、岩本鉄郎だ。ここにいる連中はみんな船乗りではなく、パイロットとして配属されたものたちだろう。私は君達を応援すると共に、君たちがいったいこの旅でどれ程変わっていくのか。それが楽しみで仕方がない。」

 

「それはいったいどういう事でしょうか。」

 

原作には出てきてないパイロットか。

 

「君は谷垣三尉か、そのままの意味だよ。君達は、それこそ地上勤務が主体だったものたちだ。

従って、この宇宙船という閉鎖空間の中、どれ程自分を保っていられるだろうか。

皆こう思っているはず。『自分は変わらない』と。

だが、変わらざる負えない事態が必ず来るだろう。そのときに折れるか、跳ねっ返るかは君達しだいだと言っておこう。

私が言いたいのはそれだけだ。それでは、各員の奮闘と健康を祈る。」

 

言うことだけ言って帰る。絶対に怒ってるからな、こんな煽るような言葉普通は言わないだろ。

どう思うかは勝手だが、きっと言葉通り変わっていくだろうさ。

 

後ろから駆けてくる音が聞こえる。

振り向くと加藤君がいた。

 

「岩本さん、さっきのアレは何ですか。全員怒りに燃えてますよ。舐められたって。」

 

「それで良いんだ。今はね、いずれ気が付くさ、俺の言葉の意味を。さて、そろそろ時間だ君も持ち場に戻れ、こっちも戻らねばならないからな。」

 

後ろ姿がどう写ったのかはわからないが、融通の効かないやつに見えたかなぁ。本当に不器用にやるしかないな。

 

格納庫の整備士さんたちにあいつらはあんまり礼を言わないから、俺が言いに行かなきゃなぁ。加藤君、確かに隊長は荷が重いけど、整備士は大切にしなきゃだめだぞ。

 

それから方々へ、挨拶をして艦橋に戻ると発進シーケンスのあの場面に出くわした。エネルギー供給が世界中から送られてきているのは、壮観だな。

 

そして…

 

「抜錨!!ヤマト発進。」

 

「さらば、地球よ。必ず帰ってくる」

 

宇宙の彼方イスカンダルへの旅路が始まった。



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第6話 火星沖の残響

抜錨と共に旋回し全ての砲門が、惑星間弾道弾に向けられる。どうやら、キリシマと新鋭巡洋艦の攻撃はコースをずらせなかったようだ。威力不足なら仕方ないがね。

 

キリシマは分かる。だが新鋭巡洋艦がそんなんじゃガミラスに殺られるんじゃないか?

まあそんなに?地球圏にはガミラスはいないから、今回の航海中のガミラスとの戦闘で確実に仕留めるつもりだけど。

 

間を少し開けて、主砲による攻撃が行われた。見事弾道弾の破壊に成功し、はるか彼方のイスカンダルへの旅路が始まった。

 

まず最初の目的地として火星がある。あそこは形式上ガミラスと地球の空白地帯となっている。

そりゃ、そうだ。デブリが多く、ガミラスでも取り除くには数年かかるだろう。そう考えればいらないから、あそこにはガミラスが基地を作らなかった。

 

ああ、懐かしい闘いだ。あの慢心による大損害を被った戦い。逆転を掛けた起死回生の一手の戦い。そして、無駄に終わった制空の戦い。

あの星自体が墓標だ。

 

 

ブリーフィングルームに到着すると、火星からのワープ航法のテストを行うと。ただ徳川さんはあまり理解できてないようだ。

 

「あー要するに、紙とペンある?あ、ありがとう。

例えばこの紙の上に点と点があるわけ、で点と点の距離は1光年位有るとする。光の速度だと一年かかっちゃうけど、こうやって紙に穴を開ければ、瞬間的に到着できる。ということだよね?真田副長」

 

「かねがね、その言い方であっています。

皆さんに理解するように言えばそのようになります。

しかし、その説明どこで習いました?」

 

「ちょっとSF映画で。」

 

その後、波動砲の説明を受けてブリーフィングが終了した。

ちょうど時間帯的に火星と地球の火星寄り8割辺りか?

そろそろ展望デッキで見えるところだろうか。

に、展望デッキへ出た。そうすると、古代が一人火星を眺めていた。

まだ、小粒の火星だが速度が速いのだろう、ぐんぐん間を積めていく。既存の船ならここまで1日以上かかると言うのに。

 

「どうした?戦術長殿何か悩み事が有るのかね?」

 

「岩本一佐すいません。気がつきませんでした。」

 

改まって敬礼をする彼をみた。

 

「いや、こちらが気配を殺していただけだよ。ところで何を考えていたんだ?

もしかして、火星に来たというイスカンダルの使者のことかな?」

 

「はい、そうです。彼女は命をとして我々に波動エンジンとメッセージを送ってきました。

そして、彼女は今この火星に眠っています。

一佐はなぜここへ?」

 

 

手すりに手を付けて言った。

「この星は、多くの同胞やガミラスの血が流れた場所だ。一見するときれいだが、火星の衛星軌道には未だにデブリベルトが形成されている。

まさしく、この戦争で死んでいったものたちの墓標だと思ってね。こうして彼らの死を考えているんだ。」

 

驚いたような顔をしている。ガミラスがどういう存在かわからないのに私がこんなことを言っているせいだろう。

 

「ガミラス人を見たことは?」

 

「ありません」

 

「俺は見たよ。コックピット越しに、彼等は俺たちと同じような体格だった。いつかはわかり会えると信じてる。」

 

「そんな事が可能でしょうか?」

 

「きっと出来るさ。なんせ、我々は未だに交渉のテーブルに座ってすらいないのだから。」

 

そんな話をして、時間が過ぎて行きワープの試験を行う時間へとなっていった。

 

艦内の船員は全員宇宙服の着用を義務付けられた。私は艦橋員の格好ではなく、どちらかと言えばパイロットスーツを着ている。すごく浮いてるね。

 

ワープ酔いにはならないはず。この体は頑丈すぎるから。

 

 

 



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第7話 木星の脅威

さあさあ、ワープだよワープ。あの次元を使って地点と地点の間を抜けるあのワープ。

 

正直に言おう。ワープの瞬間に見えたワームホールのような『球体』あれが空間の穴になるんだろう。

 

そりゃそうだよな、三次元空間で二次元の穴を表現すりゃ球体の穴になるんだろうな。

しかし、ワープ中皆の意識が完全になかったみたいだ。

俺はちょっと長い時間が経過するくらいには認識出来てた。これが転生のせいなのか、肉体と魂に齟齬があるせいなのかわからないが、とにかくあの空間は嫌いだな。

 

ワープを終了するとそこには木星があった。

不測の事態ってやつだな。

ここで、確かエンジントラブルで木星上空にあるガミラスの浮遊大陸に不時着するんだったか?

 

おっと艦橋内が騒がしくなってきた。ここで迅速な対応が出来て当たり前、でなければ『大マゼラン』までの航海なんて夢のまた夢。

 

おっと彼等は知らないんだったか?イスカンダルの場所とガミラスの場所。

まさか敵地に乗り込むなんて思ってもないだろうなぁ。

 

無事?大陸に不時着し、大陸の生態系調査と同時並行して船内、船外の修復作業を始めた。

時間はそれなりにあるからね。訓練しないと。

さぁて、航空隊の連中はちゃんとトレーニングしてるのかな?

 

と、思ったが前から新見君が現れた。当然彼女は学があるから今回の大陸の件でも引っ張りだこなんじゃないかな?

 

「岩本一佐、失礼します。一つお話があるのですが。」

 

うん?

 

「何かな、大陸の件では私は専門家じゃないから、何も言えないが。」

 

「いえ、それではなくヤマト計画の展望についてです。貴方は、ヤマト計画の発案者の一人であったとお聞きしていたので。」

 

「ほお、そういう君はイズモ計画派だったそうだね。

どうだい?正反対の事業に参画するのは。」

 

「そこまで知っていましたか。正直に言いましょう、私は、今回のヤマト計画は失敗する確率が極めて高いと考えております。このような無謀なことは直ぐにでも辞めるべきです。」

 

「私にとってはイズモ計画も無謀な賭けだと思うがな。私の読みではガミラスは、銀河系外から来ていると思うんだよ。彼らの技術力は、我々とは遥かに別次元なものがある。特筆すべき場所は、ワープ技術だろうな。

あれを使えば、どこからだって地球にこれる。

何より、観測可能な惑星にあんなに生態系の星があったか?」

 

「それこそ憶測に過ぎません。第一それとイズモ計画に何の因果があるのですか?」

 

「少し考えれば分かるだろ。例え地球を見捨てても、ガミラスは必ずおってくる。そのときに、きっと人類は奴隷の道を歩み始めるんじゃないか?

話はここまでだ。良く考えてくれ。」

 

「待ってください!」

 

そう言って彼女から離れる。誰も近くにいなくて良かったな。新見君。きっといたら、今頃保安隊の連中の此方側が直ぐ動いただろうに。

どうしてこうやってしまうのだろうか。

 

また艦内を歩いていると、顔を青くした人が大勢医務室にいた。ハハーン、ワープ酔いか。こりゃ当分戦闘機は飛ばせないな。

大半が航空隊の面々じゃあしょうがないだろ?

 

警報か。

ガミラスが来たか。始めての波動砲、この目で見なくては。



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第8話 選択肢

急ぎ艦橋へ、走る走る。

この目で波動砲の発射を見てみたい。

あの画面の向こう側でしか見たことのなかった、とてつもない力を。

 

 

「おい、どうしたんだ。岩本君!説明してくれ。それと、きちんと検査を受けなさい!!」

 

「佐渡先生!急いでるんです。ガミラスが来たんですよ!艦橋へ行くので、検査は後日お願いします。」

 

「お前は大丈夫そうだなぁ。」

 

佐渡先生を後ろに見ながら、艦橋へ。

 

間に合ったか。

 

「間に合いましたか。」

 

全員が何に?という感じの顔をしているな。大丈夫俺もそう思う。

 

「岩本戦術補佐、緊急時です。ふざけないでください。」

 

「わかってるさ。それより、ガミラスから攻撃があったそうだが。」

 

「それならば心配はない。君が来る前に戦闘は殆ど終わっている。」

 

艦長、早いよ初戦闘も見たかったな。

 

「艦長、意見具申。波動砲の試射を兼ね、この大陸に対して攻撃を行いたいと思います。」

 

真田君良いよーそのままいっちゃえ。

 

その後トントン拍子に進み波動砲が発射された。

見事に大陸は消滅、しかし凄い衝撃と閃光だった。

艦橋内では浮かれているもの、浮き足立つもの、呆けているもの。

 

艦長は、『勝って兜の緒を締めよ。』といわんばかりだ。

 

戦術科の南部にちょっと言っておかなきゃならないことがあるから、この場で言わせてもらうか?

 

「南部君や、その他浮かれているクルーに言うがこれは戦争だ。例え波動砲を持っていたとしても、戦術的勝利に過ぎない。

我々の勝利は、イスカンダルからの帰還までだ。

今回の一部の勝利に受かれて良いものではない。」

 

周りからの視線は痛いけど、俺の役回りはこんなもん。

艦長が直々に言えば、艦長へのヘイトが高まってしまうからな。それが、当初からの予定通りだ。

 

それに、一時の勝利に受かれて第一次火星沖海戦みたいになるのは、真っ平ごめんだな。

 

そして、これからの航海、波動砲にだけ頼るということは出来ない。

 

 

時は進み、航路選択の場へとなる。

 

古代は後顧の憂いを断つという名目で冥王星を叩くべきだ。という。対して航海長の島は、短期コース。

つまり冥王星へ行かないコースを選択するという、戦術と航海の対立となった。

 

副長である真田は、最短コースを進むつもりだろうが、俺は反対だな。

 

「私は、古代戦術長の意見に賛成だ。後顧の憂いを断つのは重要だ。更に言えば我々が、太陽系外に出てから奴等が本格的に地球進攻を考える可能性だってあるわけだ。その点からみて、古代戦術長の肩を持つ。」

 

古代が驚いている。てっきり反対されるかと思ったのだろう。

 

「しかし、我々の計算よりも日数が減れば地球を救うことも出来なくなるが?」

 

「たが、このまま放置すると遊星爆弾の影響が深刻化するだけだ、遊星爆弾が無くなれば計算上の日数は減らせるのでは?」

 

真田が唸っている。きっとすさまじい速度で計算しているのだろう。少し考えれば分かると思うがな。

 

それにしても、島という男は非情になることが出来るのか、船の操船、航海術、そして決断力が有るのだから、イズモ計画派になったら厄介この上ないな。

 

「貴方の言ったことは分かるが、戦闘の時間がわからないのだ。我々には時間はないのです。」

 

「我々は、占領しなくて良い。陸戦が無いのなら、最悪1日もかからないと経験上思うのだが。」

 

このままいっても議論は平行線を辿ると思うな。

完全に古代の肩を持つ展開で尚且つ、真田、島と意見が完全に反対だな。

 

だが、沖田艦長はどちらかと言えばこちらよりだろう。だいたい、冥王星と逆にいっても結局は期間はそんなに変わるものじゃない。

 

なら、せめて人類の寿命を延ばすのが最善じゃなかろうか。

 

そんな事もあり、古代との接点ができた。

結局航路も沖田艦長の一言で、古代の案に決定された。

俺のせいで乗組員の溝が深くならない事を祈ろう。

 

そして、船は土星へと近付いて行く。

本来の航路を無視して。通常とるべき航路とは逆方向であるが、それでも光年単位からしたら塵にすぎない。

 

もっとも、ここまでの航行で亜光速で進んでいないから、これ程時間がかかるのだが。

 

そろそろ救難信号が来るはずだが…。

それにしても、展望デッキに来てるのに何で声を掛けないのか、こちらもそっちが声をかけてくれねば動き出すのは大変だぞ?

 

「それで?いつまで隠れているつもりだ?南部君。」

 

「バレていましたか。」

 

「君は非番だろ?休まなきゃダメじゃないか。」

 

「そういう一佐も、休まないのですか?」

 

「俺は航空隊みたいなもんだから、だいたい非番みたいなもんだよ…。起きているということは、何か不安なことが有るのか?それとも聞きたいことが?」

 

少し考える素振りをした後に

「はい、波動砲のことです。」

 

波動砲か、あのことか。

 

「戦略的な勝利と、一時の勝利か?

そのことなら気にしなくて良い。少々浮かれすぎに見えたので言っただけだよ。」

 

「では、なぜあのようなことを言えたのですか?」

 

「奴等のワープを見たことがあるか?俺は、この目で見た。非常に洗練されていて、我々のワープとは大違いだったよ。

だが、連中のワープと俺達のワープは、似ているんだ。」

 

「似ているとは。」

 

「そのままの意味だよ。だからこそ、波動砲のみに頼ってはいけない。連中も技術的に作ることは可能なはずだ。なんせ、我々よりも進んでいるからな。」

 

「だから浮かれすぎるなと」

 

「そうだ。たった一隻の船に出切ることはたかが知れている。」

 

そう言って宇宙空間に目をやる。彼もまた、私と同じように、宇宙を見ていた。

 

 




感想と評価お願いします。

最近ですが、仕事の都合上執筆が遅くなっております。
どうかご容赦のほど。



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第9話 ユキカゼ

波動エンジンの融解という事態が発生し、一路エンケラドゥスへ向け舵を切った。

波動エンジンの融解というイベントが会議中、出ることが無かったが、どうやら時間帯が本来より20分程早いようだ。

これでひと安心、かねがね原作通りに進んでいる。

 

 

土星の衛星、エンケラドゥスにコスモナイトの発掘をするという任務が加わり、技術部の連中は皆エンケラドゥスの廃鉱山へ行っている。

 

こういう時やはり航空隊は訓練をしている。ただし、機体を飛ばすような訓練はしていないが…。

VRでの訓練は実戦並みの訓練だ。しかし、恐怖が足りない。あの刺すような敵意、背筋が氷る悪感、戦闘の高揚感。少し物足りない。

 

おっと、用事があるんだった。榎本先任伍長のいない間にやらなきゃそんそん。さて、若者を誑かしてあいつのセッティングを充分にしておかなきゃな。

俺の機体をいつも整備してくれてる彼なんか良いかもな。

 

「二等宙位、ちょっと良いかな?」

 

「はい?こっこれは岩本一佐どうしてこんなところへ」

 

ほほほ、有名人はこういう時役に立つ、緊張してるからつけこみやすいぞぉ。

 

「折り入って頼みがあるんだが良いかな?」

 

「自分でよろしければ。」

 

「君の整備している機体で飛んでみたいんだ。できるかな。」

 

「わ、私の権限では難しいかと…。でしたら榎本先任へ話をしてみてはどうでしょうか。」

 

いやいや、それが嫌だから君にしたんだよ?とは、言えない。

 

「それなんだがね、先任伍長が本来、私の機体の調整を共にやる筈だったんだがね?それが、急遽出来なくなってしまったから、こうして君のところに来ているんだ。無論、艦長の許可はとってある。」

 

艦長の許可はある。ただし古代たちの護衛という形になるが。

 

「だからよろしく頼むよ。」

 

さて、更衣室に行って着替えてくるか。

 

更衣室に行くと…?なんで山本君がいるんですかねぇ。

ここ男子更衣室だよな。入り口で再度確認する。

これは、注意しなくてはな。

 

「こんなところで何をしているんだ?山本君」

 

「その声は、教官ですか。」

 

何だ何だ?暗い顔しちゃって。まさか、航空隊に配属されなかった事をそんなにも精神的に追い詰めていたのか?

 

「どうしたんだ?元気がないじゃないか。いつもの、ドスの効いた君は何処に行ったのかな?

やはり、航空隊になりたかったのか?」

 

「いえ、そうではなく。輸送機の操縦すらさせて貰えない事実にうちひしがれているだけです。」

 

確かに主計科じゃあのれないわな。

 

「もし、君を航空隊に入れることが叶うのだとすれば、有事の際のコスモゼロを、一機使ってみたらどうだ?

おっとこれは、オフレコだぞ?」

 

ちょっと顔が良くなったような。余計な入知恵をしてしまっただろうか。

さてと、気を取り直して早く着替えなければ。

 

更衣室を出るとちょうど二人が見えたので、急ぎ準備が終わった機体に乗り込む。

 

おっと先にいっちまったな?。こっちも発進スタンバイは出来ている。

 

「こちら岩本一佐発艦許可願う。」

 

『こちら第二艦橋。許可送る。くれぐれも事故のないように。コールサインはハヤブサだ。』

 

「了解、ハヤブサ発進します。」

 

まずは、二人とも緊張しているだろうから、なごませるとしようかぁ。

 

 

「古代戦術長、エスコートに任ぜられました、岩本鉄郎です。雪嬢共々どうか、星々の瞬きの旅を楽しんでください。曲芸飛行等も行いますので、どうかごゆるりと旅を楽しんでください。」

 

『何の冗談ですか?』

 

「え?二人とも緊張してると思ってね。それと、曲芸飛行については冗談で言ってない。」

 

向こうはちょっと和んだ事を祈ろう。

エスコート中はそれはそれは暇だから外を見る。

すると、基地以外の残骸が浮いている。土星沖撤退戦の名残か。あれも、ひどい戦いだった。

 

さてと、戦闘機動を試すか。

 

「これより航空ショーを始めます。」

 

シーガルの周辺を速度をあわせて旋回する。そこから一気に高度を上げエンジンを出力を下げて、重力の赴くまま降下、そこからエンジン出力を最大まで上げ、機首を上げて急旋回する。

 

そこからエンジン前回で急降下、上昇のダイブアンドズーム。インメルマン等を行い、機体の限度を確認した。

良い機体だ、俺のからだに付いてくる。

 

古代たちは見向きもしてないけど。

そろそろ、到着時刻か。

信号の発信源周辺をぐるりと旋回し続ける。

あぁ、編隊であったのなら追悼の意を込めて、ミッシングマンフォーメーションをしていただろう。

 

『ハヤブサ、こちらヤマト。先程の機動は何か?繰り返す、先程の機動は何か?』

 

「別に意味はない、始末書ならあとで書く。それよりも、発信源に到着した。残念ながら生存者は絶望的な状況だ。船体があるだけでも驚きだよ。」

 

『もっと正確にお願いします。』

 

「ユキカゼが、発信源だ。生存者無し、ただ下の様子を見るに少々人数が少ないようだ。」

 

古代には相当ショックであろうに、唯一の身内を失う気持ちは痛いほどわかる。

ただ、そう時間が許してくれる訳もなく時間が来てしまった。

 

ユキカゼの乗組員の遺体は、埋葬され丁重に葬られた。

そうこうしていると、古代がやって来た。

 

『岩本一佐、兄の最後を聞かせてください。』

 

「沖田さんから聞いていると思うが、私から言えることは、彼は、守君は良い艦長であり、判断力も卓越したものもあった。彼がこの場にいればどれほど頼もしかったことか。

だが、死んだとは限らないのではないか?向こうも進んだ文明を所持している。捕虜は必ずとるだろう。」

 

意外な顔をされた。だが、事実は事実だそういうものだと思えば良いんだ。




感想、評価、誤字等よろしくお願いします。


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第10話 襲撃

side岩本

 

上空から猛進する土煙が見える。

なんだ?いや、まてよ。確か本来はここで古代たちが敵に遭遇して、『森 雪』が拐われそうになったはず。

だが、今回はそれが起きていない…。だとすると、遅れてこちらに来たか!

 

「古代!!ガミラスの地上部隊がこちらに向かっている。至急迎撃に向かうが、もしもの場合がある。最善の選択をし、船へ帰還せよ。」

 

『待ってください。シーガルでの帰投は困難です。そのため我々はユキカゼ船内での防衛に勤めます。』

 

「わかった。くれぐれも用心しろ、こちらも全力はつくすが武装の搭載は対艦使用じゃないから、そちらに撃ちもらすかも知れない。そのときは、君が守ってくれ。」

 

『はい、二人を全力で守ります。』

 

二人?そうか、シーガルにはもう一人載っていたんだっけか?忘れてた。

それよりも、どうして駆逐艦が来るかなぁ。確かいなかったよな?やっぱり俺がいるから戦力が増強されているのか?素直にヤマトの方へ行けば良いのに。

 

「かかってこい、相手になってやる。」

 

 

side 山本 玲

 

敵の襲撃が始まった。ヤマトはエンジンの不調により動くこともままならず、補助エンジンで進もうにも乗員の収容が終わっていない。

それどころか、収容ハッチと99式の発艦システムが同じという欠陥により航空機すら飛ばせない始末だ。あの二機を除いて。

 

私は今かけている。主計科からちょうど艦尾へと移動中に起きた今回の襲撃で、パイロットとしての経験があり、真っ先に出撃できるのは私しかいない。

 

コスモゼロの格納庫に到着した。

耐Gスーツに着替えコスモゼロに搭乗しようとすると、整備員にとめられた。

 

「何をしているんですか?発進許可は出ているんですか?」

 

「今は有事です。それに岩本一佐からの有事搭乗権限をいただいております。沖田艦長もわかっています。(嘘)

今すぐに出撃体勢を整えていただきたい。」

 

少し、考えたのち

 

「わかった、健闘を祈る」

 

と言ってコスモゼロをカタパルトへと移動させていく。

横目で加藤さんがわたしの事を見て叫んでいた。どうやら急いでこっちに来て事情を聞いて激怒しているようだ。

だが、まだばれた訳じゃない。

 

私を追って加藤さんが発艦したようだ。

無線で文句を言われたとしても今は有事だ、だからこそ急ぎガミラスの戦車隊並びに強襲揚陸艦だったか?を落とさなければと、説得し戦闘に入っていった。

 

 

 

いったい誰に似たのだろうか、山本 玲が誰かさんと同じ様なことをやってることを露ほども知らずに、岩本は戦闘を行っていた。

 

side岩本

 

いやーやっぱり対空ミサイルじゃ効かないな。

いくらクリピテラだからって、対空ミサイルで沈んでちゃ船としてどうなのかなと思ってたところなんだが、

さて、じゃあ本格的に沈めようじゃないの。

 

やつの上へ急上昇をかける。本来やつのミサイルは対艦用のためこちらの機体へのホーミング性能は高くない。だからこそやつのミサイルを全て、正面から回避する。

 

そして、ダイブするかのように敵艦の後方に備え付けてあるミサイル発射管へ無誘導のロケットのように対空ミサイルを叩きつけた。

 

あの船はそこが弱点だ。前回の戦闘でも今回の戦闘でもやはり、弾薬庫へと爆発が浸透し艦橋下部が見事なまでに吹き飛んだ。

 

それでも動き続けているため、エンジンを完全破壊すべく残り4発の内2発をまた無誘導で行い、破壊に成功した。

 

ここで、下の状況を確認する。

戦車はクリピテラを叩く前にあらかた片付けたと思っていたが、隠れていたものがあったらしく、古代君が必死に戦闘を行っていた。

 

おっ、なんと独力でかたずけやがった。と思うと、森君と抱き合っているではありませんか、互いに気付いていない様子だが、『応答願います。ハヤブサ応答願います!!』通信が回復したか。

 

「こちらハヤブサ。通信が回復したようだ。」

 

『良かった。(小声)現在ガミラスからの攻撃を受けそれを撃退しました。そちらにもガミラスが行った可能性があります。油断せずにすぐさま離れてください。』

 

「心配はいらない。既にガミラスを全滅させた。それよりもシーガルをもう一機こちらに寄越してもらえないだろうか。先程の戦闘で、破壊されてしまった。私の機体へ搭乗させることは出来ない。至急救援を頼む。

ああ、負傷者は無し、ただ重要な案件ができた。

案件はそちらへ到着後に話すとする、以上通信終わる。」

 

『ちょっと待って…。』

 

ふう、良かったか。存外信頼されていないのか、それとも俺の実力を知らないのか。ただ心配してくれているのか。わからないなぁ。

 

そんなこともあったが、二人を生暖かい目で見ながらおっと。

 

「原田くん、救援がすぐに来るそうだ二人に負傷箇所が無いか調べておいてくれ」

 

『え?りょ、了解しました。』

 

居たことを忘れていたが、原田くんが確かこのときに加藤との関係が深くなっていくんだったか?

しばらくすると、コスモスファルコン隊とヤマトが直々に現れた。収容人数を考えれば妥当だな。

 

 

収容された後、エンケラドゥスを出立した。古代は艦長への報告へ私は、無断出撃したという山本君のもとへ行った。

そこには加藤君が山本君へ説教を行っている、航空隊の面々が私の存在に気が付きまた敬礼をしている。

どうしてそんなに固いんだよ。

 

「敬礼は良い、各自の作業に戻ってくれそれと、今は非番だ。階級を気にしないでくれ、こっちも肩が凝ってしまうよ。」

 

そして、山本君の方へ行く。

 

「スゴいパンチだな、ヤマトの備品を壊さないでくれよ?手に入れるのは難しいからな。

さて、無断出撃をしたそうじゃないか。命令を待たずに出撃することは軍法会議ものだが、今回は最善だったとおもう。

だが、次同じことをしたら君の階級を降格し、独房行きになることを覚悟せよ。だから、今回は不問とする。

それと、君が航空隊になってくれたら個人的には嬉しいよ。」

 

「待ってください、玲を航空隊に入れるつもりですか。」

 

怒りの形相だな。

 

「私はただ、嬉しいと行っただけだよ。では、玲君持ち場に戻りたまへ。」

 

敬礼をして自分の持ち場へ戻って行く背中を見る。

ああ、明生君が生きていればきっとあんな感じなのだろうな。

 

「なぜ、玲を不問としたのですか。」

 

「彼女は私を真似ただけだ。私は無断出撃が常態化していたからな。強くは言えんよ、特にこういう時はね。

だから、君が航空隊の隊長なんだよ。私では、自分自身の制御が難しいからね。」

 

それに、話の本筋から逸れすぎるとこっちの記憶とずれてくるからな。

 




感想、評価、誤字等よろしくお願いします。


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第11話 破られた罠

戦略防衛構想(SDI)

かつて米軍が冷戦時に構想した、軍事計画。
またの名をスターウォーズ計画という。

衛星軌道上にミサイル衛星やレーザー衛星、早期警戒衛星などを配備、それらと地上の迎撃システムが連携して敵国の大陸間弾道弾を各飛翔段階で迎撃、撃墜し、アメリカ合衆国本土への被害を最小限に留めることを目的にした。
また、これらの構想とは別に、波長が長く、大気圏での減衰が少ない点を生かして、地上設備から発射し、軌道上の「ミラー衛星」で反射させて目標に命中させる方法も研究された。



艦内の中央作戦室に首脳陣が参加する作戦会議が開かれた。議題は、冥王星にあるガミラス軍基地の攻略計画だ。

 

それにともない、現在ガミラスの戦力の分布や冥王星の地形データからガミラス基地の大間かな座標を算出し、それに対する攻撃手段と、一連の流れを計画していた。

 

原作2199では、ここで南部が波動砲に頼る発言をし航空隊への誹謗中傷を行ったあげく、沖田艦長から半ば叱咤のごとき決定を行われていたが、今回はどうだろうか。

 

話は、原作通りに進んでいた、古代が作戦を発表したところで南部から声が上がった。原作通りにならなければ良いが…。

 

「戦術長並びに全員に伝えなければならないことがあります。」

 

一同が南部の方を向く、全員が向いたことを確認するとおもむろにモニターの方へ移動し、古代の隣に着いた。

するとモニター上に、ある古い古い戦略計画を出した。

 

「今から私が話すのは、およそ200年前にアメリカが計画した軍事計画です。

その計画の名は、SDI=戦略防衛構想、通称スターウォーズ計画というものについてです。」

 

加藤が彼に対して聞き返した。

 

「SDI?それが、今の冥王星とどういう関係があるんだ?」

 

「皆さんそう思っているでしょうが、遊星爆弾の現状の発射方法をわたしなりに考えた結果、このSDIというものにたどり着きました。

知っての通り私は南部重工の御曹司です。南部重工は軍事品等を扱っておりかつて私は、その軍事品への関心から軍へと入りました。」

 

そこまで聞いて、ふと思った。南部君は自分の家から多くのデータをこの船に持ち込んでいるのだろうかと。そんなどうでも良いことを考えながら聞いていた。

 

「その中で、もっとも興味を抱いたのがこのSDIでした。これは、人工衛星を使用して弾道ミサイルの迎撃を行おうとした計画でもあり、人工衛星によって地上からのレーザーを反射して敵地に攻撃を行うという、二つの目的のために計画されたものです。」

 

そこまで聞いて、真田が動いた。

 

「では、南部砲雷長はガミラスがその反射衛星によって遊星爆弾を発射していると考えたわけか?」

 

「その通りです。かつてはスターウォーズ計画と言われた馬鹿馬鹿しい計画ですが、ガミラスほどの技術があれば可能と考えました。」

 

そこまで聞いて古代が動く。

 

「では、俺の考えたこの作戦では不十分な部分があるということか。であるならば、ヤマトによる接近はかなりリスクの大きいものとなるのは、間違いないな。」

 

そこまで聞いていると、このままだと作戦が放棄されそうになったので嫌々声を上げるとするか。

 

「いや、戦術長の作戦は実行に値するものと私は考える。そうすると、現実問題、敵の衛星の即時発見が肝となるだろう。そうなると、ヤマトは既に捕捉されている可能性だってあるわけだ。だからこそ、パイロットたちには周囲で異常なものがあった場合の連絡を密にとるようにしなければならない。」

 

そんな感じで話が進み、作戦自体はそのままに内部での警戒量を大幅に引き上げたことにより、原作以上に攻撃からの防御に気を使うようになった。

波動防壁自体も即座に展開する事を可能としたため、出力の調整も容易になることだろう。

 

しかし、あの南部があそこまで調べ上げるとは考えなかった。

原作通りに物事を進めたかったが、一言あるだけであれほど変わってしまうのは少々不味いことになったな。積極的に関われば関わるほどわからなくなるとは。

 

 

その後航空隊とのブリーフィングに移った。

何故か横に山本君がいる。ここは原作通りだがなんだろう。山本君が原作以上に古代への距離が近いように見えるのは気のせいだろうか。

 

いや、気のせいじゃない。若干顔を赤らめているぞ!!ヤバいそっちまで変わるの?駄目だからね?それじゃあ、古代が森君を助けられなくなっちゃったりするからね。

どうするか…。「…さ。岩本一佐?」

 

「うん?あ?ああ、何かな。」

 

古代から心配されているぞ。

 

「話を聞いていなかったんですか?」

 

「いや、作戦の内容はわかったからね。少し、考え事をしていたんだ。どうやって敵衛星を見つけるのかとね。」

 

そんなにジロジロこっちを見ないで話しずらいから。

 

「敵の衛星は全方位散らばっている可能性がある。もし光を反射する物体があった場合でも攻撃を加えてはならない。ヤマトに攻撃を加えられた場合でもだ。」

 

ざわざわとうるさいねぇ。

 

「静かに、話は終わっていない。今回の作戦はあくまでも、ガミラスの基地の破壊だ。ヤマトに攻撃が加えられる覚悟をしなけりゃ今回の作戦は成功しないだろう。良いか?絶対に攻撃をしてはならない。見つかった場合作戦は失敗する。以上だ。」

 

本当に士気を下げるのが上手いなあ、俺は。

だいたいみんなわかるだろうに、そんなに釘を刺さずとも良いじゃないか。

 

古代からまだ話があるようだ。

 

「なお、今回の作戦では岩本一佐は単独での作戦となります。」

 

「それは聞いてないぞ」

 

「冗談です。岩本一佐は、山本隊として敵の捜索と破壊を行ってください。」

 

「了解した。戦術長。よろしく頼むよ山本隊長。」

 

にこやかに。笑みを浮かべて。さて、ロケットポッドを有りったけ搭載してぶちこんでやる。

 

後に聞いた話によるとこのときの私は、凄く邪悪な笑みを浮かべていたそうだ。




感想、誤字等有りましたらよろしくお願いします。
よろしければ評価の方もよろしくお願いします。


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第12話 冥王の攻防

ヤマトから飛び立つやいなや、まるで渡り鳥の群れのように機体を隊列に組んでいく。

その一糸乱れぬ動きは、ひとつの生き物がごとく動き始める。

 

『後二分で無線封鎖です。各機必ず帰還してください。』

 

「山本隊長、気負い過ぎる必要はない。みんな気楽に行こう。」

 

山本君やその他のパイロットからは、緊張感が伝わってくる。どうもぎこちない。

それはそうだろう。なんせ彼らは一度たりとも帰還が出来ない空域で戦闘を行ったことが無いのだ。

 

本来は防空隊。即ち本土での戦闘を目的とした部隊の出身者たちで構成されているために、こうやって、敵地に乗り込んで戦うことや、母艦から発艦しての制空権争いをしたことがない。

 

それゆえに緊張していて、焦りも出てくるだろう。

本来ならば私が指揮をとり、制空戦をすれば良いのであるが、戦闘に専念せねば彼らが被弾したとき、守りきる自信がないのが本音だ。

 

明夫君が生きていて、この場にいてくれれば全幅の信頼を寄せるが、もうこの世にはいない。

だからこそ、視野角が広い女性で尚且つ精神的にも強い玲君を隊長に推すこととした。彼女ならば出来ると信じて。

 

彼等には話していないが、今回の作戦でヤマトは完全な囮と決まっている。艦長と副長そして、私しかその事実は知らない。

 

暫くしても彼等から笑い声を伴う会話はなかった。

無線封止が開始され、全機が冥王星へ向け宇宙を突き進む。やはりここでも艦船の残骸が散見される。

その中から反射衛星を突き止めるのは至難の技だろう。

 

たとえ見つけても、それでもこちら側からは連絡を取ることは愚か、電波を発することすらできない。

艦長たちの健闘を祈るしかない。沈まないとは限らない、それが戦争だ。

 

デブリ紛れ突き進む。

暫くして、冥王星の裏側からピンクか、紫の光が何かに衝突して曲がりながらこちらとは逆方向に進んで行くのが見える。ああ、発射されたか。あとは、時間との戦いだな。

 

第二射、第三射とたて続けに攻撃がヤマトを襲っているであろうその頃、我々はやっとのことで冥王星の裏側へ到着した。

そこからは、しらみ潰しの探索の始まりとなる。ヤマトが攻撃を受けていたがために、大間かな敵の基地の予測が付いていたが、どの程度の基地であるか全くもって確認できていない。

 

基地の規模によっては、航空隊の弾薬だけでは足らない可能性がある。その場合、砲台をピンポイントで爆撃する必要がある。

 

古代の部隊は北側から、こちらは南側からの攻撃とし

二機で1グループの分隊での行動となった。

戦力の分散となってしまうがこれが確実な方法だ。

 

ヤマトが囮になっているからこそ可能なこの作戦は、必ず成功させねばならない。

 

 

 

いくつかのクレーターを越えた。どうやらこちらは外れのようであった。

すぐさま、分散した機と共に北上していく。

突如として無線封鎖を破ることとなった。

 

どうやら古代、加藤隊が敵と接敵し、戦闘を開始したようだ。

急ぎこちらも合流するため、巡航速度をあげる。

燃料はまだまだ十分にある。

 

暫くすると地平の彼方から弾幕が見えた。

戦闘が激化していく。

まだ迎撃機が、上がってきていないところを見るに、序盤であろう。

 

だが、当たりのハズレと言ったところか。

基地は基地だが、格納庫らしきものがない辺り功を焦ったか?山本君から通信が入る。

 

『ガミラスの迎撃機と接敵これより航空戦に入ります。各員、戦闘を続行し速やかに敵基地を攻撃せよ。』

 

それに対してこう答えよう。

 

「山本君、これはガミラス基地の中枢部ではない。

攻撃を限定的なものに留め、中枢部の攻撃を優先せよ。そうすれば迎撃システムも沈黙する。」

 

『しかし…。わかりました。各員、岩本機に続き敵基地に突貫せよ、ただし被弾したものはヤマトへ帰還してください。』

 

わお、こっちに着いてくるの?

やだね、こっちは制空戦闘で忙しいんだ。

 

「山本君、君が引き連れていってくれ、あの数は君では無理だ。」

 

渋々といった様子で、山本君は隊を引き連れて衛星砲台の方へ向かって行った。

それと時を同じくしてヤマトからのミサイル攻撃が基地を襲う。

 

さぁて、戦闘機隊のご到着かい?

全く原作よりも数が多いじゃないか。

さあ、天使とダンスだ。

 

 

side山本

 

岩本一佐に押し切られるかたちになってしまった。

あの人は強情だから、頑なにこちらを認めようとしない。

それよりも、敵機はオーロラの方角からやって来た。

古代さんもそれに気が付いたのか、私と同じようにオーロラの方角へ向かっている。

 

うっすらと後方を見ると、岩本一佐が敵機は複数機と一人で戦闘を行っているのが見えた。全機がオーロラに突入しようとするなか、たった一機で戦闘を行っているのだ。

誰一人それを咎めようとする人はいない。

まるで最初からそんな存在がいなかったかのように。

 

私も皆と同じように、咎めようとしていなかった。

だが、加藤さんだけが違った。

 

『あのままじゃ、あの人だって落とされる。

これより援護に向かう。』

 

と言って加藤さんは、何機か伴い岩本一佐の援護へ向かった。

そのとき思った。何故、岩本一佐の事を無かったように思ったのだろうと。それだけで背筋が凍る思いだった。

 

 

side岩本

空戦中突如として加藤君が戻ってきた。

わかるよ、心配なんだろう?大丈夫、大丈夫。この戦闘機たちそんなに強くないから。

機動だって常人レベルだし、同じ機動をとろうとするから落とすのは比較的楽なんだよなぁ。

 

フットペダルと操縦管を最大限使って、宇宙空間で捻り込みを行って後ろをとったり、ACESのヴィルコラクみたいな突如として停止する機動を使用したりと、敵を翻弄する。

 

そのたびに敵からの殺気が徐々に恐怖に呑まれて行くのが見えるのだ。実に愉快である。

と、同時に味方からも奇異の眼差しを感じたりと、面白いことこの上ない。

 

そんな戦闘をしていたら、ヤマトからの攻撃と航空隊の攻撃により、オーロラ内部の基地が破壊され、航空隊が基地から離脱した少し後に、ガミラスの艦艇が外に現れた。

全速力で逃走を謀ろうとするなか殿として、旗艦のワープ時間を稼いでいたガミラスの艦艇が沈んでいく。自発的な殿か…。

 

こちらも残りの敵を片付け、帰投する。

加藤君はやはり腕が良いな。明夫君が亡くなってから、更に腕が上がったか。

 

こうして、冥王星の戦闘は幕を閉じた。




評価、感想、誤字等ありましたらよろしくお願いします。

なお、今回の戦闘での主人公の戦価
戦闘機31機
基地対空陣地29機

加藤の撃墜数
戦闘機6機
基地対空陣地8機

ガミラスの戦力が増強されるという現象が起きているため主人公がいない場合確実に失敗する。


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第13話 光年の船出

あの戦いから十数時間後、国連からの最後の通信が入った。ヤマトがガミラスの冥王星基地を破壊し、遊星爆弾による壊滅的な破壊を完全に止めたことを、地球の民衆は非常に喜んでいるとかなんとかそういう内容だ。

 

途中で通信が切れてしまったが、致し方ないだろう。

超空間通信は、まだまだ我々には新しい技術だから調整が難しい。

更に言えばもうすぐへリオポーズ(銀河からの放射線を防ぐ太陽の強力なシールド)を抜ける。

太陽系の外縁部であるから、所々で電波障害が発生しているのだ。

 

へリオポーズに到達する前に、ささやかな祭りと称して太陽系赤道祭を開くことをここに、沖田艦長の立案で実現されることになった。

 

祭りというものに関して日本人は実に敏感に反応したのか、直ぐ様多くのものたちが祭の準備に取り掛かっていた。それとも、最初からそういう計画だったのかもしれない。そこは、わからないが。

 

ともかく、皆忙しい合間の精神的にリラックスできるこの時を思う存分楽しもうとしているのだ。

こっちもそれ相応に楽しまねば損というものだろうな。

だからこそ、いま艦橋下の廊下にいるのだがそこでコスプレをしている女性士官に何か言うことも無いだろう。

 

こっちを見て固まってやがる。正にヤバいやつに見つかったという顔をしているな。笑い返して、何も見なかったという風に立ち去るのが最善であろう。

後ろからため息なのかそんな音が聞こえるがキニシナーイ。

 

会場に到着すると既に多くの乗組員がグラスを片手に談笑している。そんな中に俺が入っていくと少し静かになる。これはショックだ。嫌われているのか、はたまた誤解されているのか、俺はそんな冷徹な人間じゃないのにな。

 

変に英雄としての型が着いてしまっているから話しかけずらいのだろうか。いつも階級付きで呼ばれてしまう。

このままだと一生このままなんじゃないか?

 

そうしていると、新見君がやって来て俺の横に並んだ。

 

「岩本さん、楽しんでますか?皆とってもあなたの回りに集まろうとしないようですけど。」

 

「そうなんだよ。皆遠慮しちゃってね、お邪魔虫かな?俺はそんなにお固い官僚みたいな人間じゃないからさ、もっと肩の力を抜いて欲しいものだよ。

それよりも新見君は良いのかい?こんな男の近くにいて、皆と混ざれば良いじゃないか。」

 

「いいえ、あなたがつまらなさそうにしていたので、助け船をと、思いまして。お節介でした?」

 

「いやいや、ありがとう。」

 

グラスを持ちながら二人で話をしていると主計科の隊員?の子が話をかけてきた。

 

「あの、岩本さん?とお呼びしても良いですか?」

 

「勿論良いとも。今は仕事中じゃないだ。リラックスするのが一番さ。むしろ階級で呼ばれたくないな。それで何かな?」

 

もじもじしながら何か話そうとしてるな。

正直美人が多いから皆かわいい。

 

「あの、昔からファンでした。それで、一緒に食事でもと思いまして。」

 

「食事かい?良いよ、後ろの子達も。

まあ、その前に艦長の話を聴かないとね。」

 

結構いるものだな。むしろ俺にファンがいたのが驚きだ。

 

食事を始める前に艦長から今回の赤道祭の話を聴き、これからの旅路の安寧を願うような話をしていたら、こっちにもマイクを向けてきた。

 

「あー、マイクを艦長から頂いてこうして喋るのですが、なにぶん始めてですので緊張しております。

さて、これから我々は遥かなる旅路が始まります。これから先どうなるか皆目検討が付きません。

だからこそ、今この時を楽しみましょう。今日は無礼講ですから、階級を気にせずやっていきましょう。さあ、艦長。お願いします。」

 

そして、艦長の話を少しして祭りが始まった。

周りからは談笑している声が聞こえる。

俺に声をかけた子や他の子達はコスプレをしているのだ。成る程そういう仲間か。

 

彼女たちからコスプレをしてほしいと言われたが丁重にお断りした。そうこうしていると古代君と山本君が出ていくのが見えた。

用事を思い出したと言って、彼女たちから離れると宇宙服に着替えいざ甲板へ。

 

と、二人とも既に話を始めているな?

 

「おい、こっちにも変わりになるやつはいるぞ?」

 

「おっ、こりゃあ英雄さんじゃないか。こんなところでどうしたんです?」

 

「英雄なんてもんじゃない。ただの敗残兵さ。ところで、人手が足りないだろ。地球と連絡とりたいやつと交代させてくれ、良いだろう?甲板長。」

 

「へぇ、了解しました一佐。おいっさっき話してただろ?有りがたく行ってこい。」

 

若い三人が礼を言いながら去っていく。

 

「俺は甲板長と共に作業するから、二人は別の作業をしておいてくれ、頼むよ。」

 

二人は突然の事で何を言っているんだという感じだが、了承したのだろう。作業に取り掛かっていた。

 

こちらも順次作業を始めていく。先程行った三人が帰って来て、交代で連絡をしに行っているようだ。そりゃ皆連絡したいだろうよ、変える場所に待ち人有りならな。

 

「本当に若い奴等は良いですねぇ。羨ましいですね。」

 

「ええ、そうですね。甲板長は、良いんですか?連絡をしなくても。」

 

「俺は、いいんですよ。後々連絡をしますので。それよりも、一佐は行かなくても?」

 

「私は、帰る場所に守るべき人はいないので。なにより、この船が無事に帰れるのならそれで充分です。」

 

「年のわりに、考えが歳とってますね。」

 

「よく言われますよ。だいたい、この戦争のせいですけどね。」

 

互いに笑いながら作業をした。甲板長とはそれなりに長い付き合いだったりする。俺が階級で呼ばれるのが嫌なのを知って言ってくるんだから、良いやつなのか俺が嫌いなのか。

 

作業を終えるとお祭り騒ぎも終盤といったところであろうか、幾人か酔いつぶれているものが見える。

思う存分に楽しんだと見えるな。

 

誰もいない休憩室に足を運ぶ

 

「星名准尉、調査の具合はどうだ?」

 

「彼等はまだ尻尾を出してきません。誰かも検討が付いていませんので。」

 

「こちらは一人だけ、新見一尉が恐らくはイズモのものだろう。彼女の周囲をマークしてほしい。必ず、連中は動く、そのときが最後だ。頼むよ?」

 

「はい。しかし、岩本一佐は本当にパイロットなんですか?」

 

「俺はパイロットさ。」

 

ここからが忙しくなるぞ、何せこっからガス状生命体に、ガミロイド、異空間、いろいろバリエーション豊かだな。




評価、感想、誤字等有りましたらよろしくお願いします。

明日からまた、仕事で更新が遅くなりますので、
どうかご容赦の程を。



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第14話 恒星の恐怖

航海が続き各々の想いを載せて艦は、前へと進んでいく。

艦橋内に全員が揃っているなか、沖田艦長は最後に地球の姿を見せてくれた。あの子がかつて住んでいた美しかったあの星を。

 

そして、瞬く間にグリーゼ581星系へとワープした。

グリーゼは、かつてのイズモ計画での対象星系だった。そんな星に来たら必ず新見君は取り乱すだろうな。

だが、そんな事よりもワープ。一瞬であるが地球方面に何か光るものが見えた気がした。

気のせいであれば良いが。

 

艦長が艦橋から離れた。

どうやら何事も起こらなかったようで良かった。

だが、新見君が席を外し艦長の後を追うように艦橋から退室する。それを横目で見つつ。

 

「副長、周囲の警戒を大に引き上げてくれないか。」

 

「どうして、それが必要なのか。」

 

「嫌な予感がする。ここまであまりにも順調すぎるんだ、一波乱起きるぞ。俺達は網にかかったのやもしれん。」

 

古代がこちらを向いて言った。

 

「岩本一佐、どうしてそう言いきれるんですか?

この宙域には隠れる場所など何も無いというのに。」

 

「いや、巨大なものがある…!」

 

艦が傾斜する。

副長が、直ぐに建て直すよう命令を出し事なきを得たが、強化された太陽風に煽られた形となっている。

 

真田が艦の建て直しをするのなら俺は、

 

「全員これは、第一波だ。まだ何か来るぞ!!警戒を厳となせ!真田、これはどういう現象だ。」

 

「太陽風ですね。だが、これは明らかに人為的な数値であるというところです。」

 

「何があった!!」

 

艦長が上から降りてくる。

先程よりも更に、事細かく説明している。

そりゃ艦長が一番正しい判断を言う確率が高いからな。

俺は、だいたい三番目位だろう。

 

「後方から重力波反応!!ワープ反応です!!」

 

ということは、ガス生命体か。

 

艦長の容体が思わしくないな。

「艦長!!意見具申」

 

「何だ。」

 

「ワープアウト同時攻撃の可能性があります。現時刻から数時間程、古代への兵装使用の一任を願いたい。」

 

艦長と目が合う。

 

「わかった。古代自分の判断で攻撃を行え。たとえ私の許可が無くとも、兵装の使用を可能とする。良いな。」

 

これで少し時間が稼げるか?

 

そして、ガミラスの艦がワープから出てくると同時にミサイルを発射する。

まっすぐ、こちらへ突き進む中、古代が迎撃の指示を行い見事に撃破して見せた。

 

しかし、それだけでは終わらなかった。

破壊した後から巨大なガスのような物体が意思をもってこちらへと接近して来る。

 

それに対して艦長が下した結論は唯一の逃げ道、恒星へ突入することだ。

恒星への降下を初め艦の外部温度が急上昇し、それにともないガス生命体も巨大化していく。

 

「真田、艦は何度まで耐えられるんだ?」

 

「理論上、波動防壁での制限温度はない。しかし、…。」

 

「俺達は人間は耐えられないか。最低でも宇宙服が必要か。」

 

そう言うや真田が艦長へ、全乗組員へ宇宙服を身につけさせる許可をとり、実行に移した。

艦内の温度はどんどん上昇していく。

クルーにも何人か倒れたものがいるようだ。

 

非常に暑いのだが、それでもガス生命体から逃げる道はほかになしなのだが、正面の恒星何か変だ。

 

更に逃げるために前へと進む。ガスはすぐ後ろまで迫っているというのに、なんだろうか、暑さのせいでもガスのせいでもない、この背筋が凍るような気配はなんだ。

 

前方に巨大なプロミネンスが出来る、だが背筋の気配はこれではない。

波動砲で蹴散らすことが出来るから正直な話怖くなど無いのだ。

 

「後方から熱源!!ガミラス艦からの攻撃です。」

 

嘘だろ?原作には無かっただろ?まさかプロミネンスに飲み込まれなかったのか?

 

モニターを見ていると森君に目が行く。なにやら顔が青ざめてないか?

 

「ほ、報告します。ガミラス艦の真下に、巨大な生体反応です!!」

 

生体反応?それがこの悪寒の答えか。沖田艦長も少し恐怖の色が見える。

 

ガミラス艦の真下に出現したのは巨大なワームのような生命体。それが太陽の内部から突如として出現しガミラス艦を呑み込んでいった。なんと巨大な生物であろうか。地球なんかよりも巨大かもしれない。

 

ワームは、我々には目もくれることなく再び恒星の内部へと消えていった。我々の危機はこうして、去っていったのだ。

 

後日思い出したのだが、あれはフリーの創作サイトに出てくる太陽を蝕む存在ではないだろうか。

ということは、やつはただ口を開けて上に登ろうとしただけなのだろう。

 

数日後俺は艦橋にいた。艦長は休憩中、副長兼技術長である真田はガミロイドの解析に没頭し、新見に関してはあの巨大なワームの研究と仮説をたてているため役職と階級の関係上私が艦長代理を勤めていた。

 

現在のローテーションでは、俺が艦長代理を勤めている間、古代が完全にヤマトの兵装の管理を行っている。

と同時に古代への、戦術のレクチャーや足りない経験を教える教師のようになっている。

 

本来であれば艦長がやるべきであるが、南部君は少々判断力が足らない、経験が古代以上に少ないためでもあるからそこは、致し方ないだろう。艦長が南部君の世話をしているということだ。

だが、安心してほしい

伊達に士官候補生の教官をやっていた訳ではないのだ。

(直ぐに前線へとんぼ返り)

 




評価、感想、誤字等有りましたらよろしくお願いします。

今回登場した生物は某創作サイトのさる生命体です。
気になるかたはscp-2682で検索してください。


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第15話 オルタ

どうしたのだろうか、妙にアナライザーが上機嫌だ。そんなにも彼には嬉しいことがあったのだろうと考えると、そう言えばアナライザーはガミロイドと会話をしていたそうだから、それか?

 

であるなら友人が出来ることは良いことなんだが、正直に言ってこの場合良いことではない。なんせ敵勢宇宙人の開発した対人用兵器だ。何を搭載しているかわかったものではないからな。

 

どうして近くに保安隊を置かないか疑問でならないね。

まあ、その結果ガミロイドが自爆することは無いんだが、そこは今どうなるかわからないから、正直緊張するね。さあ、そうと決まれば早速研究室へ行こう。

 

 

さて、目の前では現在進行形で絶賛お話し中であるガミロイドとアナライザーだが、こんなにもガミロイドが静かだと興味が出てくるな。

 

「おい、ちょっと良いかな?」

 

「ナンデショウカ?ゲンザイ、ワタシハ、『おるた』トノ、コミュニケーションクンレンヲ、オコナッテイルノデスガ。」

 

「いや、随分と楽しそうだったからね。私も混ぜてほしいと思っただけだよ。君がアナライザーが話していた『オルタ』君かな?」

 

少し、ビクビクと痙攣している。恐怖からなのか、もしくは単なる故障によるものなのかはわからないが、だが感情があるようには見えるな。

 

「おるたガコワガッテイマス。ドウカ、おるたヲイジメナイデイタダキタイ。」

 

「苛める気なんてさらさら無いよ。それよりも聞きたいことがあるんだ。オルタが女神と呼ぶ存在がこの艦に居るということを、君が話していたのを聞いてね、それに、興味がわいたんだ。」

 

実際にアナライザーが話していた所なんて聞いてないし、何より興味なんて無い。だが、ガミロイドの限界と言うものには興味があるな。

無人機は、性能があまり良くは無かったが、このガミロイドというものはかなり良さそうだからな。

 

そうして考えているとついにオルタが言葉をはっした。

 

「ト、トモダチニナッテクレルナラハナシテモイイ。」

 

「そうか、じゃあ今日から私は君の友達だ。私たちが友達なら、アナライザーも私に遠慮せずに話をしてくれよ?」

 

こうして、私たちの秘密の会議が始まった。

最初はどうも警戒されていたようだが、時間が経つにつれて徐々に警戒の色が消えていった。

そして、どうやら完全に私の事を信用したようで色々と話を始めた。特に女神の事を。

 

彼が、私に女神の事を聞いてくるが、私はわからないと返し、では私が見つけて来てあげようかなどと言うと喜ぶように声が弾む。

アナライザーがそれに対して、権力の乱用ではないのかと言ってたが、権力とはこうやって使うものさ。

 

という感じで進んで行ったから、まあ信頼は厚いよ。なんせガミロイドの頭脳は戦闘用だから騙すのは簡単だったし、非常に楽に事を進ませてもらった。

 

で、奴の話によるとユリーシャ(女神)はどうやら意識だけは覚醒しているとのことだ。だからこそこうして、航法装置の近くに来たんだが…。

 

『貴方は、何者ですか?』

 

そらきた、

 

「私は、私だ。君は何者なのかな?」

 

『私も、私よ?貴方は体と肉体が完全に別の存在のようだけれど。』

 

「ほぉ、じゃ私はワタシであって、わたしではないということか?君から見たら。起きてくれたらもっと良く話が出来るんだがなぁ。」

 

『それはだめ、まだ私が起きるのははやいわ。』

 

「人を見極めるつもりか。」

 

これに対して返答がなかった。その後いくら待っても話しかけてきやしない。完全に失敗だな。そう思っていると

 

緊急警報?あぁ、遂に脱走したか。まあ、当然だよなあいつの心は女神に囚われているから、思考まで女神一色になっている。こう言うのを止めるのは友達の仕事だぞアナライザー。

 

「おい、あんたの敬虔な信徒が独房から脱走してあんたに会いたいそうだが、どうするよ。」

 

返事は無いか。

 

私はその場に留まる。もしもの場合ここで彼を待ち受けて止めなければならない。でなきゃイスカンダルに行けなくなっちまうからな。

 

数分後警戒が解除され、見事にアナライザーがケジメをつけた。自分の手で友達を殺すという最悪の事を彼はやってのけたのだ。

称賛に値するものであるが、本来ならこのような事態を起こさないよう厳重に警戒すべきであった。

幹部一同は、反省しこのような事態が今後起きないよう保安を強化するはめになったのだった。

 

 

その日のラジオは「観測員09号の心」というものであった。詳しい内容は割愛するが、要するに今回の騒動と非常に似ているような内容であった。

 

ロボットが心を持つ、いやロボットが心を持っていても可笑しくはない。むしろ人間が何故心を持っているのだろうか。我々もロボットと同じで、色々な考え方をするように、プログラムされた上で動いていると言えなくもない。

 

そう考えると人間とロボットの違いはあまり無いのではないか。そう思ってしまった今回の事件であった。

 

ちなみに今回のラジオは、きっと真田が持ち込んだものであろう。こういう作品が好きそうなやつだからな。

 

色々な事件が起こるが、我々は今日もまたイスカンダルへと突き進む。このいつ終わるとも知れない旅路を。




評価、感想、誤字等ありましたらよろしくお願いします。



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第16話 失いしものたち

これは夢か。ああ、昔の住んでいた家か。

目の前に立っているのは若い頃の俺と、華奈か。

『行ってくるよ。』

 

『まって、どうして貴方がいかなきゃならないの?』

 

『それはね、君を守るためだから。俺に出来るのはこれしか無いんだ。』

 

『他にも、防空隊だって有るじゃない。』

 

『防空隊は駄目だよ。あれでガミラスを止めることなんて出来ない。だから、外征して敵を叩くんだ。

そんなに悲しまないでよ。俺はまだ生きてるよ?

そうだ、帰ったら式を挙げよう。な?』

 

『必ず帰って来て。』

 

『勿論さ。』

 

いつも、ここで目が覚める。いい加減この呪縛から逃れないとな。

 

 

 

ヤマトはかなり銀河系の外縁に進んでいる。

もう幾度もワープを続けているため、操艦もタイミングも手慣れたもので、熟練という感じが漂っているが、不安材料がある。

 

ヤマトの航法装置には、ユリーシャが入っているはずだ。現在彼女が眠りから目覚めている。

これが何を意味するのか。そう、彼女の気分次第でヤマトの行き先が変わってしまうということである。

 

ワープに入ったが、なんだ?周囲の時が止まっているかのようにいや、捻れている?のか。

まさか、航法装置に異常がみられたか。となると、あの娘が勝手に動き回りだすぞ。

 

そう思っていると、真田からこの空間に付いての情報が提示された。曰く次元断層に入り込んでしまっていると。

更に機関室の方からは、波動エンジンからエネルギーが放出され続けているという事までも入ってきた。

 

「艦長このままでは波動エンジンの完全停止の可能性があります。一時的に動力を補助エンジンのみに切り替えた方が宜しいのではないでしょうか。」

 

「私も副長と同意見です。波動エンジンが停止すれば我々は宇宙の漂流者となりましょうそうなったら最後、二度と外には出られません。」

 

こういう時、多数決がものを言うはず、それに真田の言っていることは9割正しかったりするからな。

艦長の方を向き目で確認し合う。

 

そして、艦長が森君に指示を飛ばし航法装置へと向かわせた。その後周囲の探索を続行していたが、どうも計器に頼りすぎるきらいがあるのが乗員の悪いところだ。

艦内放送でもするか。

 

「艦長少々艦内放送を行っても良いですか?」

 

艦長からの了承は驚くほどに迅速に出された。

 

「各員計器のみに頼るな。この空間では何が起こるか我々にはわからない。目視を使用しつつ艦外を見ることが出来るものは、外に注力してほしい。以上だ。」

 

さて、ここでガミラス艦が出てくると良いんだが、バッドエンドだけにはなりたくないね。

 

 

はたして、艦の左前方つまり11時程の方角からガミラス艦が現れた。レーダーよりも目視による発見となった。

古代がすぐさま攻撃の指示を仰いでいた。

沖田艦長はガミラスの艦がこちらを攻撃してこないことを、わかっているかのように動く。

そして、回線を開いた。

 

向こう側の艦長との話の結果、ガミラス側からこちらに使者を寄越すことになった。

流石の交渉力、切り札がこちらには有ることを利用したその手腕、正直軍人でなかったらきっと偉大な人物になったんだろう。

 

ちなみに先導役を選抜するのに私が口を出し、強引にだが山本君に決定した。古代でも良かったんだが、山本君の方が腕が良いし、何より俺の弟子ということにすれば良いかなぁと思ったからなんて言えない。

 

左舷格納庫へと移動したんだがなんだこれは、

 

「なんだこれは、使者に対して失礼だと思わないのか?こんなにも大勢の保安隊を入れる必要がどこにある。

それに、銃を持っているなど…。」

 

それに伊東が反論する。

 

「相手は異星人です。なにより、敵対勢力の使者です。警戒するのは当たり前ではないですか。」

 

「君は政治がわからないのか?こういう交渉ごとはな相手にこちらが対等だと思わせなければならない。特にこの場合はな。だからこそ今すぐ保安隊をここから外せ、これ命令だ。艦長からの指示でもある。」

 

数分睨み合うが諦めたのか、格納庫から出ていく。

これで悪い印象ではなくなるはずだ。と、格納庫がゆっくりと開き赤い機体が入っていく。

 

止まるとキャノピーが開きパイロットが現れる。

女性型の人間か、ガミロイドではないな。

ヘルメットが取られる。

 

華奈に似ているな

 

それ誰なんですか?

 

榎本さんあなたには関係ありません

 

そうひそひそとしながら見る。

さあ、俺も行くとするかな?

 

会談を行う部屋へとパイロットが移動し始めた。

護衛と称して後ろに付いていく。

古代は何やら驚いた様子でこちらを見ていた。まあ、予定では俺は部屋に入らないからな。

こっちは正直別の用事だからね。

まあ、だから会談の内容如何によっていきなり中に入ろうと思う。

 

話は順調に進んでいるようだが、遂に初接触の話になった。こちらの先制攻撃に対しての非難が語られる。

それに対して古代たちが反論をしようとしているが、頃合いだろう。

 

「失礼するよ。」

 

「岩本一佐どうして…。」

 

「うん、君たちの話している内容が気になってね。」

 

「貴方は何者だ。」

 

「自己紹介が遅れた。私はこの船の実質No.2をやらせていただいている、岩本鉄郎一佐、君たちで言う大佐だ。

以後よろしく頼む。」

 

「これは失礼した。私は、今回連絡将校として貴艦に乗艦した、メルダ・ディッツ少尉です。」

 

「さて、彼女が言ったことは概ね正しい。皆は知らないがな。勿論沖田艦長もご存じだ。

ただ、ディッツ少尉、貴君等とは少々事情が異なるがな。」

 

メルダがこちらに対して何か言いたげだが、言わせずにそのまま言う。

 

「あの時私は、貴艦隊に対して攻撃命令を受けていた。

上層部が設けた一線を越えた場合のみ攻撃を行うと言う内容だった。そして、あの時我々が先制攻撃を行ったんだ。つまり、君たちが我々の指示に従わなかったからこそ、我々は攻撃せざるを得なくなったということでもある。これは艦長も知らないことだ。」

 

「では何故貴君はそれを知っているのか。」

 

「私は、航空機による奇襲を命令された特殊攻撃隊に所属していたからだ。その命令を私は実行した。」

 

周囲に沈黙が訪れる。

 

「まあ、要するにそちら側にも非はあるということだ。それだけは忘れないで頂きたい。言いたいことはそれだけだ。それと、時間があればで良いのだが、後で貴女に渡したいものがある。古代君、続きを頼む。」

 

身勝手に乱入してかきみだして後は丸投げ。本当に勝手だな俺は。だから上層部から嫌われるんだよ。

 

俺が断ち切った話は再び始まる。

原作よりもメルダの警戒心が薄いのが救いだな。これなら山本君が暴走することもないかな。ただ、俺の背中が危なくなるかもしれないが。

 

おっと話が終わったか。時間はまだあるな。

 

「先程渡したいものがあると言ったが」

 

ポケットからドッグタグを出す。

 

「これなんだが、解読したところディッツという部分だけわかった。君の名字が入っていたから、親族かと思いここに持ってきた。」

 

メルダへテーブルの上で渡す。

 

「これは…。兄の名前だ。銀河方面で行方不明となっていたがまさか、このような形で知ることになるとは。どこでこれを。」

 

「第4惑星沖海戦だろうか君たち風に言えば。そこで交戦したなかに、君の兄の機体があった。こちらも随分と墜されたよ。私がやらなきゃ損害は遥かに出ていた。君の兄を殺したのは私だ。だが、君の兄に救われた。」

 

古代が既に退室し、山本君だけが残っているなかこんなことを言う。

 

「兄がどうしておとされた後に貴君を救えるのか。」

 

「操縦が非常に上手くてね。被弾が殆どなかった。お陰で機体をそのまま使うことができた。それで、自分の艦に戻ったんだ。だから、君のお兄さんに救われたということだ。」

 

「では、貴君は私の仇ということか?」

 

「それを言ったら、この艦の人間は全員ガミラスが仇だ。」

 

「お互い様ということか。」

 

「ああ、そうさ。なあ、山本君。」

 

「は、はい。」

 

山本君には強引にでも納得してもらわねば。

 

「では、私は退室するよ。女性同士、異種族交流でも頑張ってくれ。」

 

そして、ヤマトはガミラス艦に曳航されて波動砲を発射された。これによって我々は脱出に成功。

しかし、外に出て早々ガミラス艦隊により攻撃され、共に進んだガミラス艦は撃沈された。見事に時間を稼いでくれたのだ。

 

 




感想、評価、誤字等よろしくお願いします。

今回でヒロインが誰かわかりましたか?


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第17話 理解と感情

あの後、私に対する周囲の眼はいっそう懐疑的なものとなっていた。ガミラス人を擁護するような部分をより、強調する感情に押し流されているのだろう。

 

そりゃそうだ。自分達の信じていたことを、上のやつが悉くメチャクチャにして、あまつさえ戦争の原因の一端が自分達にあると言うことを認めたくないのだから、当事者である私に、その矛先が向いていくのは必然だろう。

 

だが、これでメルダに対する風が少しでも和らぐのではないだろうか?いや、むしろ風当たりが強くなってしまうかもな。

だとするとあまり擁護しすぎない方が良いのか?う~ん。イカンイカン。メルダのことばかり考えているな。

あの子にそんなにも似ていたのだろうか。

 

気が付くと格納庫にいた。

 

おいおい、冗談にもほどがある。

そんなに深く考えていたか?おお?おいおい、パイロット達がこっちを睨み付けているな。こんなにも嫌われるかね。

 

そう思いつつ艦橋に戻ろうとしたところ、加藤に声をかけられた。

 

「待ってください、岩本さん。話したいことがあります。」

 

「全員揃って私に何を聞きたいんだ?ガミラスとの初接触時のあの戦いのことか?

それとも、俺の言ったあの発言のことか?」

 

少し、殺気立ったように発言を行うと、返答が帰って来た。

 

「!そうです。何故クルーに言わなかったのですか?

軍機であるのはわかります。しかし、我々は共に戦い命を預けたいわば家族のような存在です。それほどまでに我々が信用出来なかったのですか?」

 

「はぁ。私が気にしていたのは、艦内の士気だ。別に信頼していなかった訳ではない。だが、万が一このことが公になった場合、はたして全てのクルーが君達のように戦うことが出来るだろうか?

最悪、反乱を起こす連中がいないとも言えない。」

 

「では、あのタイミングで何故話したのですか?」

 

「あのままだと、血気盛んな連中が彼女を殺すのではないかという懸念があったんだ。そうしたら今度こそ戦争は終わらなくなる。」

 

「勝つ方法があると?」

 

「勝つんじゃない、講和だよ。ガミラスはあれほどまでに頭が良いのだ。なら、話し合いで戦争を終わらすことが出来ない訳がない。勿論、こっちとあっちが対等にならなければ意味がないが?

これで、納得したかな?」

 

どうも怪訝そうな面持ちであるが、今はこれしか言えないだろう。これ以上言うと完全に未来の情報になっちまうからな。

 

「わかりました。今はそれで納得します。しかし、いずれ真実を聞かせてください。」

 

会釈で返答する。

 

「それでは私は巡回に戻るとする。くれぐれも、暴走だけはしないでくれ?」

 

ザッという音が聞こえそうな敬礼をされた。頼もしい限りじゃないか。

 

そして、艦橋へ向けて歩いていくが、寄り道をしようじゃないか。

順路を変えて医務室へ、佐渡先生が酒を飲まないように見張っていた、確か原田君だったか?がいる。

 

その横には身体検査を行っているメルダの姿が見えるな。今日は骨格の検査をする予定だった筈だな。

異星人のサンプルとしてだいぶ検査が進められていた筈だ。明日は血液検査だろう。

 

「佐渡先生、経過はどうです?」

 

「うん?なんじゃ、岩本君じゃないか。何か用が有るのか?」

 

「いえ、たまたま通りかかったものですから。ところで彼女、どうです?」

 

「ああ、非常に不思議なことに骨格の作りもそうだが、触覚や視覚等の感覚器官はわしら人類と非常に似ているな。この分だと、血液検査も同様の結果になるかもしれんぞ?」

 

「そうですか。健康状態はどうです?どこか悪いとかそういうところは」

 

「いたって健康だな。う?おぬし、どうして彼女の体を気にかけているんじゃ?もしかして、あの娘に恋心を抱いているんじゃないだろうな。」

 

「あー。その可能性は充分ありますね。どうしてこっちを見てるんだ?原田二等宙曹。そんなに私に興味があるのかね?」

 

「いえいえ、違います。ただ、本当にメルダさんの事を好きなのかなと。」

 

「本当のところ私にもわからないな。」

 

「でも、素敵です。異星人同士のラブロマンス。今みたいじゃなかったら良かったんでしょうけれど。」

 

何で、君がショボくれてるんだよ。

 

「君には加藤君がいるだろ?それで気を戻してくれ。」

 

少しずつ顔が赤くなっている。図星か。

 

「大丈夫だ。誰にも言わん。それよりもメルダが医務室から出たがっているようだが?」

 

こちらをじっと見つめているメルダがそこにいた。

 

「お前が話しかけるからじゃろう。良し出て来てくれ、検査結果は良好だ。」

 

検査服を着たメルダが目の前に立っている。

彼女は着替えた後きっと独房へ入れられるだろう。

なら、俺がエスコートしても良いんじゃないだろうか?そうすれば話をすることが出来るし、何よりこの艦内の味方と思わせることも出きるだろう。

 

「私の見舞いに来るのが貴様とはな。」

 

「相も変わらず口が悪いな。翻訳機のせいにしておこうか?」

 

あって早々睨み合うかたちとなるが、こちらの方が身長が高いため見下ろすように見つめあう。

かなりかわいいな。ツンとしたところがたまらない。

本当彼女にそっくりだ。

 

「こらこら、こんなところで見つめ合うんじゃない。やるならよそでやりたまえ。」

 

「わかりました。では、お嬢さん。着替え終わりましたら、部屋までお送りさせていただきます。」

 

それから少し歩いた。実は歩く方向をちょっと変えてみて、独房の反対方向を歩いている。

 

「先程から疑問に思っていたのだが、独房とは逆の方向へ歩いていっていないか?」

 

「流石だね、君の気分転換になればと思ってね。どうだい?少しは違うんじゃないか?」

 

少し考えた素振りを見せたが

 

「そうでもないな。行為はありがたいが、私は別にそこまで追い詰められている訳ではない。

だが、この艦の甘味には驚かされたが。」

 

「甘味。というと君達の星には甘味が無いのか?

砂糖を主成分に作る植物が存在しないのかい?」

 

「砂?糖?というものに該当するものが無いのだ。」

 

ほう、砂糖が存在しないせいでその文化も違ったものになると。

 

「私もね、ガミラスの料理を食べてみたいと思っているんだ。どういう料理が多いんだい?辛いのとかしょっぱいとか、色々あるが…。」

 

「そうだな、たとえば…。」

 

メルダから振られた甘味の話から料理の話が広がっていく。途中展望室によって長々と話を続けていた。

笑顔で笑う彼女は、華奈に似ていた。それでも違う人だと理解しつつも、その笑顔は脳裏に刻み付けられるものだった。

 

何時間たったのだろうか。

ふと、メルダは話を変えてきた。

 

「そういえば、貴様等の星を私は見たことがなかったが、どういう星なんだ?」

 

地球の話か、だがここでこの話は不味いかもな。俺がここに居るから、監視を続ける連中が外で待機してやがる。

 

「そうだな、記憶にある地球はとても青く輝いていて、宇宙に輝く宝石のようだ。今は見るも無惨だがな。」

 

「そうか、私も見てみたかったなそんな星。

我々の星は、あまり綺麗なものではない。濃緑と茶色く濁った星だ。昔は綺麗だったそうだが、私は見たことがない。」

 

「じゃあ、もし戦争が終わったらお互い星を案内し合おう。そうすりゃきっと、互いを認められるさ。」

 

「今まですまなかったな。劣等民族等といって、食文化は遥かにそちらが上だ。」

 

そろそろ良い時間になっていた。

きっと明日は、山本君と戦闘機で戦うのであろう。

そして、この艦を離れることとなるはずだ。

せめてこの時を楽しもうと心に決めていた。




評価、感想、誤字等よろしくお願いします。

アンケートもよろしくお願いします。


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第18話 友情

いつも誤字の訂正ありがとうございます。


昨日の彼女との話は実に良いものだった。何よりガミラスの食文化は、ヨーロッパ圏に非常に良く似たものであることがわかった。

糖に非常に敏感なのである。

 

ヨーロッパでは中世、砂糖を白い黄金と例えていたほどのものであるから、砂糖自体が存在しないガミラスにとって、砂糖はどれ程の価値になるだろうか。

戦後はこういう食料の方からアクセスを広げて行くのがベストだろうな。

 

報告は、まあ今すぐにはしなくても良いだろう。

尋問した内容何て言われたら、彼女や後のガミラス人に悪い印象を持たれかねない。

ただでさえ俺の手はガミラス人の血で濡れているのに、そこから信用まで無くしたのなら、交流なんて不可能だ。

 

で、確か今日は血液の検査だったか?

じゃあ、今日も行くとしようかな?

この宙域ではガミラスも出てこないから、正直暇なんだよねぇ。恒星と恒星の間だと休める星がないから当たり前だが。

 

次のワープで原作では彼女を解放する筈だ。

それまでに、少しでも友好的になってガミラスと地球の架け橋になってほしいな。

 

と医務室に行くと、なんだなんだ保安隊がいるじゃないか。まあ、捕虜の扱いだから本来は彼等の管轄だから、別に不思議なことじゃないが、どうもしゃくにさわる。

特に伊藤は、憎しみでどうなっているか分かったものじゃないしね。

 

「保安部の方々ご苦労。」

 

「これは、岩本一佐。」

 

こちらが声をかけたら敬礼された。伊藤はいないようだ。なら安全だろう、

 

「岩本一佐何故こちらへ?」

 

「うん、捕虜の事を観察しに来た。君らは下がって良いぞ?それとも、私の護衛をしてくれるのかな?」

 

怪訝な顔を少しして、

 

「はい、岩本一佐の護衛を勤めさせていただきます。」

 

一人が護衛としてメルダと私に付いてくるようだ。

 

「私が何をしようとも他言無用だ。いいな?」

 

二人は頷いた。そうと決まれば行くとしよう。

 

「やあ、体調はどうかな?」

 

「体調は万全だ。ただ、実験動物にされた気分ではあるが。」

 

当然だろう、俺だって血液から骨格、果ては肉体の機能全部調べられたらそう思う。

今日は監視がいるから寄り道もしないで行くとするか。

 

部屋へ向かう途中、

「そういえば、君の処遇が決まった。次のワープ後、解放だそうだ。」

 

護衛の連中は目を見開いた。この人何で敵にそんなことを言うんだ?敵な感じだろう。

 

「そうか、妥当であろうな。貴君等は私のような不穏分子を抱えていられる余裕は、無いのだろう?」

 

「そういうことだ。だが、私はひとつだけ聞きたい。ガミラスで、このようなことを行った場合、それは法律上有効なことなのか。」

 

「我々からしてみれば、捕虜をみすみす殺すことはしない。我々だって捕虜にこの様なことはしない。一番欲しいものは情報だからな。」

 

「だろうね、なんせ事実上死刑と同じだからな。

寧ろ死刑より酷い、最悪の場合君は宇宙で独りぼっちのまま死ぬことになる。私としては非常に残念でならない。」

 

「ふっ。敵の心配か?本当に貴様は変わっているな。他の連中は私への憎悪を多少なりとも持っているが、あなたはもっていない。」

 

「私は、もう吹っ切れているからね。喪ったものは帰ってこない、だから前を向いて行こうとね。」

 

そんな話をしていたら独房に到着した。

 

「今回もエスコートありがとう。あなたは、信用に足る人物だな。」

 

「そんな者じゃないさ。そうそう、きっと山本君が君を訪ねてくるだろうから、そのときは手合わせお願いするよ。彼女より腕の良い相手が欲しかったからね。君はその実力がある。」

 

「わかった。私からも質問がある。あなたもパイロットだと聞いているが、どの機体なんだ?」

 

「君を迎えにいった機体の色ちがい、灰色の機体で尾翼に鳥のエンブレムが付いてるやつだ。なんだ?まさか私と戦いたいのか?じゃあ、またこの艦に来たとき模擬戦をやろう。ボコボコにしてやるよ。」

 

「その言葉、そっくりそのまま返させてもらう。」

 

互いに笑いながら別れた。

 

「どうして、あれにあのようなことを言ったのですか?」

 

護衛の一人が話しかけてきた。少し怒っているか?

 

「なに、彼女たちも人類だと思ったからね。争いが終わったときの橋渡しをお願いしたいだけさ。」

 

睨み付けてくる彼の眼孔に私がどのように写っているのかはわからない。だが、一つだけわかるのは俺を憎しみの標的にしたようなそんな目だ。

 

さて、その後は原作通り山本君がメルダを格納庫に連れていき、彼女の機体を稼働状態にして宇宙空間で戦闘を無断で行うという、軍法会議もの(俺もかけられそう)のことをやってのけた。

 

ただ、原作と違うところはなんと山本君のエンジンが、故障しなかったこと。

おかげで機体を損失することがなかった。

 

戦闘は結局のところドローとなり、まあメルダ優勢の状態で終結した。

 

そして、彼女をとうとう解放する時が来た。

本当に大丈夫であろうか?原作と少しだけ違うことが起きてきているから、バタフライ効果みたいにヤバい方向に変わるんじゃないのか?

 

言葉に出してはならない。言霊があるかもしれないしな。だから、絶対に言葉にしてはいけない。

 

さあ、彼女の船出だ。

格納庫へやって来た。

「おい、メルダ君。達者でな、また会うときが来たら共に肩を並べられればいいな。」

 

タラップに足をかけながらこちらを振り向く。

「ああ、あなたと共に肩を並べられる日が来ることを願っているよ。」

 

最高の笑顔が帰って来た。

ガミラスの敬礼と共に、そしてこちらはヤマトの敬礼で返して。

 

 

sideメルダ

 

ヤマトでの出来事は私にとってとても良い経験になったのだろう。

特に、山本、岩本の二名とはとても良い友人になれた筈だ。

 

私が初めてあったとき、彼らを劣等な人種だといったが、今ならその私を否定できよう。

しかし、あの岩本という男。私にかなり良い待遇を与えてくれていた。

 

私へ憎しみの矛先を向けぬよう、自分の方向へ憎しみの視線を集中させるという技量。

空戦でもそのようなことをやっているのであろうことから、かなりのパイロットなのだろう。

 

やつ、いや彼は確かに兄の仇の筈だ。だが、自然と憎しみはわかなかった。それどころか、なんと言えば良いのだろう。好意?なのかを感じた。

 

互いの欠点を知りつつも話し合う、あのときはとても私の心を癒していた。心から話が出来る(敵)は彼が初めてだ。いったい何なのだろうか。

 

そう考えながら宇宙を飛んでいると、救難信号を聞き付けたのか艦隊がゲシュタムジャンプをしてきた。

 

願わくば彼と、山本と敵対したくはないものだな。




感想、評価、誤字等よろしくお願いします。



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第19話 目的地

メルダが去ってから数日後、我々は銀河系から飛び出し、大マゼラン銀河との空白地帯を進もうとしていた。

それに際して、首脳陣による会議が開かれていた。

 

真田と、新見によりこれから先ガミラスの攻撃が薄くなるという説明がなされていた。

それに呼応して、古代が楽観的意見を発したが、それに島が怒りに任せたような返答をしたため非常に嫌悪なものとなった。

 

これもメルダの一連の言葉による波紋が広がるどころか、俺の言葉によってさらに拡大されていたせいでもあろう。要するに俺のせいだ。

 

未だに島は、自分の父親がしたことを心から信じることが出来ないでいるようで、それがこの喧嘩の元となったのだろう。

 

しかしながらそんな事で喧嘩をするとはガキか?

まあ、納得しかねることもあるだろうがそれを受け入れるのも大人というものでないだろうか?

 

そんな事より、俺には真田と新見に言わなくちゃならないことがある。

 

そう考えていると、沖田艦長が二人を叱りつけた。

二人は艦長の言葉に押され息を飲むように静まり返った。そんな中俺が更なる波紋を呼び起こす?

 

「艦長がいった通りだ。餓鬼じゃあるまいし、そんな事で喧嘩をするな。

それよりも、私は副長と新見君に言いたいことがある。」

 

新見がこちらを厳しい目で睨み付けてきた。

 

「何でしょうか。私達の推論が宛にならないとでも良いいたいのでしょうか。」

 

俺は首を縦にふって言った。

 

「ああ、君らは大切な事を忘れている。ガミラスは、ワープ航法を我々よりも高い精度で成功させることが出来る文明であるということ。

そして、この艦が進むうちに敵艦の数が俄然増えてきていると言うことを。」

 

驚いたようにこちらを見ているな

 

「まさかと思うが計算式だけに頼った訳じゃないよな。大マゼランだって立派な銀河だ。ああいう文明があったって可笑しくはないだろ?」

 

それに対して新見が反論する。

 

「ですが、文明の出現確率は恒星系の数に比例すると考えられ、そうなると自ずと銀河系内に文明がある確率が、高いはずです。」

 

「要するにどうやっても銀河しかあり得ないと?

巨大なワームホールを維持できる技術があれば、理論上は銀河間を行き来出来るそうだが?」

 

それに対して真田が答えた。

 

「確かに理論上は可能だ。だが、それには莫大なエネルギーを必要とする。それこそ太陽のような恒星を丸ごとシステムにしない限り、エネルギー供給が間に合わない。」

 

「なら、可能性は零じゃないんだな?」

 

「そうです。」

 

「なら、古代。君は楽観過ぎた。警戒は持続していなければならない。少々時間をとってしまった。すまない。」

 

会議終了後、俺は真田と共に研究室に行った。

と言うよりも、メルダとのことを聞きたいようだ。

 

「先ほどの言葉なのですが、なぜ我々の推論を頑なに否定しようとしたのですか。やはり、彼女との話に何かしらのヒントを得たのですか?」

 

「ああ、そうだな。故郷はどんな星なのかと聞いてみただけさ。そしたら何と答えたと思う?

はるか彼方にあるとそう言ってたんだ。」

 

「それが、我々の推論を否定する切っ掛けですか。」

 

研究室をぐるぐると歩き回りながら、俺は返答した。

 

「その昔、ス◯ーウォーズという映画があって、その代表的なフレーズが『遠い昔、遥か彼方の銀河系で』

というものだったんだ。そこからだよ、もしかすると別の銀河から、我々の銀河へ攻撃をしているのではと考えたのは。」

 

真田が思考に入った。遥か彼方という言葉がやはり気になったようだ。

 

「では、なぜ我々に言わなかった。」

 

「君なら必ず新見君に言うだろう?

最近な新見君の様子がおかしい。何か良からぬ事を考えているかもしれない。だから、あえて言わなかった。

それに、彼女は元イズモ計画の立案者の一人だったからな。」

 

「まさかと思うが、新見一尉がヤマトを占拠すると考えているのか。」

 

真田にしては感情を露にしている。信じられないという顔だ。

 

「警戒しておいて損は無い筈だ。」

 

真田はこちら側の人間だ、こちら側は情報を広めなければ、このままでは無意味な犠牲が出るかもしれない。

 

「話はこれくらいにして、そろそろ良い時間だ。どうだ?一緒に食堂でも。」

 

「いや、オムシスの食事は正直好きではありませんので。」

 

「わかった。」

 

悪気はなさそうだな。まあ、オムシスの原料は俺たちのクソみたいなもんだからな。

 

「艦長には話していないのですか。」

 

「あの人にこれ以上心配事を押し付けたくはない。」

 

そして今日も寂しく飯を食う。というより、誰も食堂に居ないだと!!そうか、一時間早かったか。

 

食事を済ませぷらぷらと歩き、格納庫へ行って操縦訓練を数時間行い、パイロットたちとの意見交換をして

ルーティーンである展望室へと向かう。

山本君が一人で黄昏ている。

 

「そんなところでどうした?失恋でもしたのか?」

 

無言だ。だが、どうやら図星だな。

 

「そうか、失恋か。初恋だったのか?」

 

「…。はい。馬鹿馬鹿しいですよね。パイロットになってからこんな感情を抱くなんて。正直自分でも驚いています。教官は恋はしたことはないんですか?」

 

何て質問するんだ。

 

「あるさ、しかも今だってしてる。」

 

「え?お相手は?」

 

「秘密だ。さて、俺はそろそろ持ち場に戻るぞ。失恋したって諦めるなよ?いざというときは奪ってしまえ。

なんてな。」

 

艦橋へ戻った瞬間。ガミラスからの攻撃を受けた。

 

 

帝都バレラス

sideメルダ

 

ヤマトからの解放から幾日か経ち、私も艦隊に救助された。それから、身体の異常の有無を徹底的に調べあげられ、ここ帝都に到着した。

 

なぜ、帝都なのだろうか。別の植民惑星や、拠点でも良かったであろうと思っていたのだが、どうやら父上の命令により帝都へ召喚されたようだ。

 

父上…。職権濫用はどうかと思います。

 

一目散に軍司令部に行き父の執務室へ入った。

目の前に父である、ガル・ディッツ提督がいる。

機嫌がすごく悪そうだ、いや悪いに決まってる。だって、あの座り方(足組)で椅子に座るのは決まって頭に血が上っているときだからだ。

 

「メルダ・ディッツ少尉であります。召喚に従いまいりました。」

 

「メルダか。こちらに来なさい。」

 

父が私を近くに呼び、すくと立ち上がった。そして、私を抱き締めた。

 

「良く戻って来てくれた。私は、嬉しく思う。」

 

ああ、父上もやはり親なのだな、声に嬉しさが滲み出ている。私がいなくなればこのディッツ家も無くなり、最後に残されるのは父のみ。

愛するものも、全て喪った父はどうなっていたのだろうか。暴走の果てに身を落とすのだろうか。

 

「すまない、取り乱した。何よりお前が無事に帰ってきてくれたことを嬉しく思う。

だが、軍人として何があったのか報告くらいまともに出来ないのか?」

 

ここから父親ではなく、ディッツ提督としての姿か。

私は絶対に言うことは出来ないだろう。言ったとしてもそれはきっと嘘に塗り固められたものだ…。

最近の私は何処か可笑しいのだろうか。

 

あの艦から戻ってからというもの、デスラー総統のやり方に不満を覚えて仕方がない。あのテロン人たちをこの目で見てしまったせいなのだろうか。

 

「どうしたメルダ。この父、ガル・ディッツにも言えないのか?」

 

「…すいませんお答えできません。私は話すことは出来ないのです。」

 

「なぜだ。」

 

「話したら最後彼らが攻撃を受けるのではと、考えてしまうから。」

 

「彼らとは?誰のことだ。」

 

慌てて口を塞いだ。どうして口から出てきたんだろうか。父だから安心してしまっているのか?

 

「それと、報告によればディルクのタグを持っていたそうだな。誰から受け取った。まあ、アイツが戦死したのはあの星系だ。言わずともわかる。どんなやつが、ディルクを殺したのか聞いたのか。」

 

ここまで来たら何を言っても無駄なのだろう。

 

「タグを渡した者が、殺したのは自分だと。そう言っていました。ただ、彼は悪気があったわけではなくそうせざるを得ない程に、戦争の中で生きているのです。本来はもっと優しい人です。」

 

「そんなやつか、お前が好意を寄せる人物なんだ。いずれ会ってみたいものだな。」

 

恐る恐ると言った具合に、話をすり替える。

 

「ところで何故父上は、帝都に帰還を?」

 

「ドメルの昇進祝いでパレードが開かれる。それに呼ばれたのだ。ドメルはテロン人の艦。ヤマトを叩くことになるだろう。」

 

ああ、なんということかあの名将ドメルがヤマトを狙うのか。どうにか彼らには生きて欲しいのに。

ガミラス人でありながら心配だ。

だが何故だろうか、あいつらなら出来ると信じている自分がいる、ことに驚きを感じなかった。

 

 




感想、評価、誤字等よろしくお願いします。

今回、なんか書きずらかったです。


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第20話 一匹狼

艦橋へ戻ったつかの間、ガミラスからの攻撃が船体を揺らす。

ミシミシと魚雷の衝撃が艦橋まで伝わってきている。

だが、レーダー員は誰一人としてそれを察知できていないようであった。

 

突如としての魚雷攻撃は、一種の恐怖とでも言えるものだ。姿が見えなければ攻撃など出来ないのだから。

きっと潜水艦が船舶への攻撃に使われ出したときも、こんな心境だったのだろう。

 

そんな中沖田艦長の判断の早さは正直驚いた。

真田や古代たちが判断をくだす遥か前に、現状最適解を導き出すその手腕。

成る程、艦隊を指揮する司令長官になれるわけだ。

 

理論だけでなく直感と経験による動きは、この艦で真似できるやつはいないだろう。古代は素質はあるが、まだまだ経験不足だ。

 

それよりも現状の問題として、恐らくは潜水艦による攻撃であろう予測は付くが、それに対して有力な方法を未だに導き出せない艦橋員だろう。艦長におんぶに抱っこかよ。

 

小惑星帯の内部に行くことによって、こちら側は完全に防戦一方となった。

だが、それだけではない。四時間もの過度の緊張そしていままで長いこと体を酷使していたのか、沖田艦長は病に倒れた。

 

さあ大変だぞ、俺を含めた乗員の中で対潜戦術を教わったのは極少数だ。真田は勿論のこと俺よりも数年遅れた世代は、潜水艦の運用停止によって戦術を完全に破棄された後の世代だ。判断を誤る可能性がある。

 

そんな中、副長である真田が艦の指揮をとるのだが、何処か不安を感じる。真田は理論的だ、それは良いことだが、軍人として非情さが足りないと、個人的に思う。

 

そして、そこに新見と古代の全く異なる対ガミラス艦戦術を提出されれば、真田は自ずと非情ではない方法を選ぶ。

 

艦長が倒れてから更に一時間の時が流れた。艦橋では、皆殺気だっていた。動こうにも動けないこの我慢比べ。

先に本体が動いた方が確実に殺られる。わかっていようが、若いものには特に辛抱が足りなくなることもある。

 

そこで、新見と古代が現状の打破を目的とした作戦を立案して、真田へと持ってきた。

 

新見の作戦は、艦本体による亜空間ソナーを利用した対潜哨戒。(現代で言ったところのアクティブソナーだ。)

正直このデカイ艦でやるべき方法ではない。

 

古代がシーガルによる対潜索敵を行うことを具申しているが、この小惑星帯の中で飛ぶことは自殺行為だと言われているところだ。ここで俺が出れば、死なないやつが出てくる筈だ。

 

「では、私がシーガルの操縦を担当しよう。小惑星帯なら飛びなれているからな。」

 

三人の会話に俺が水を指す。いつものパターンだ。

 

「ですが、その場合貴方の身に危険が及ぶ可能性があります。第一、シーガルに乗るのは貴方だけではないのです。」

 

「だがな副長、いや真田。リスクを恐れては前には進めないと思わないか?新しいソナーは言わば、アクティブソナーだ。発した場合こちらの位置を相手に気取られる可能性が高すぎる。相手の大まかな場所が予測出来ているならともかくな。」

 

それに新見が返答する。

 

「それでは、一佐は戦術長の肩を持つと言うことですか?ですが、亜空間ソノブイの効果半径自体、ソナーよりも、効果範囲は短いものです。」

 

「だからこそだ、まずはシーガルでソノブイを投入その後、敵が見つからない場合はソナーで探索範囲外を限定し索敵を行う。その方が確率的に見つけ易いんじゃないか?それに、陽動にもなる。どうする?副長」

 

結果として相法を行うことに決定したのだが…。

 

「なんで俺だけ零式丙に載らなきゃならんのだ?」

 

「そりゃ、あんたデブリ帯を高速で駆け抜けることが出来る唯一の人間だからだよ。」

 

榎本が言うには、やるならば徹底的にと言うことで、真田が二機編成でソノブイを投下するということだ。

こっちについてるやつは、シーガルに繋がっておりデータをヤマトへ送信することになっている。

 

そして、それによりに大まかな位置情報を把握した上で、ガミラス艦へソナーはをぶつけるという事らしい。

これなら確実だけどさ。

 

「戦闘機でデブリ帯を飛ぶのは結構大変だぞ?」

 

「そこは、我々整備にお任せあれ。新品同様にしてあるからさ。」

 

「何言ってんだ榎本曹長。お前らもシーガルに載るんだよ。」

 

「わかってますよ。」

 

「古代を頼むぞ。」

 

戦闘機に搭乗し、艦後部のカタパルトから放出される。このとき、エンジンを最低限の出力にすることによって

ヤマトの情報を最小限にした。

 

ガラス越しの眼前に広がるは、小惑星群。ヘルメットバイザーに進路が表示される。

それとは別に、いつも潜在意識が勝手に敵へ場所がマーカーされるのだが、敵の場所がわかれば紙飛行機マークが表示されてそこまでいくのだが、今回は写ってないから潜在意識でも場所がわからないようだ。

 

指定された位置に到着したらソノブイを投下する。

慣性によって小惑星に当たらないよう慎重に。

あと一つ。順調だこれなら…?

なんだろうか、小惑星にはあり得ないかくかくと動く物体がある。それが止まりヤマトの前へ…まさか。

 

「ヤマト!直ちに発進しろ!魚雷来るぞ!!

 

言葉と同時に空間が揺らぎ、ヤマトへ魚雷が飛んでいく。

 

「畜生め!だったら」

 

魚雷の後方へ追いすがり、機銃で一本迎撃に成功したが、もう一本がヤマトへ向かっていく。

ヤマトが前進を初めなんとか反らすことに成功したが、もはや油断できない。早く見つけなければ。

 

『岩本一佐何がありました!』

 

「奴っさん、ドローンも使ってやがる。ヤマトは丸見えだ。」

 

畜生がそうやって修正していくってのか?死人を減らせないってか?冗談じゃねぇ殺ってやる。

一瞬だが、魚雷が出現した瞬間空間が揺らめいた。機の行動半径10秒までなら艦を防空出来る。

 

最後のソノブイを投下し、急ぎヤマトへと帰路に付く。

発射地点はわからないが、揺らぎは見える。

三本か、なら直撃コースを真っ先にそして上へ行くコースを次か。

 

出現箇所まで魚雷の後方を付いていく。そして、出現した瞬間に機関砲をお見舞いして全て叩き落とした。

その時、ヤマトの主砲が仰角を上げ左旋回し始めた。

どうやら発見したようだ。

 

その後、ヤマトは潜望鏡を破壊して俺と、シーガルを収容しワープ航法で逃げた。

 

終わった。無事被害を最小限にして。

スーツを脱ぎ体を洗って艦橋へ戻る。

パイロット連中からの眼差しがウザいくらいに輝きを持っている。

 

途中、医療室に立ち寄って艦長の見舞いをした。

佐渡先生と艦長の容態に対して話し、より艦長のフォローを厚くしなければと心に決めた。

 

艦橋のドアの前にたっていたら新見君が中から現れた。

なにやら悔しそうなそんな表情で、けれども何か嬉しそうなそんな笑顔だ。

 

艦橋でも眼差しが俺を待っていた。

 

「副長、迅速な判断感謝する。お陰でヤマトの被害は最小限だ。」

 

「いや、私の方こそお礼を言わなければなりません。あのとき、機体を出していなければ我々は一方的にやられていたでしょう。」

 

とにかく乗員の命が助かって良かった。

 

「副長、艦長へ見舞いに行ってこい。指揮は任せろ。

さあ、状況は一応警戒体制だ。気を抜くなよ?」

 

 

 

sideメルダ

 

私は未だ本星から出立出来ないでいた。

きっとこれも父の権力によるものなのだろう。全く権力の乱用にも程があるというのに、娘を止めるためだけにそれほどのことをするとは。

 

今日も総統府の軍司令部でデスクワークをするはめになっている。全くこれでは体が鈍ってしまう。そんな中でもやはり食事は欠かせない。だが、ヤマトの中で食べた食事の方がこちらよりも数倍美味しいのだ。

食文化で我々は負けているな。

 

そんな中会話が聞こえてきた。

 

『銀河方面のフラーケン中佐が、テロンの船を仕留め損なったんだって。』

 

『嘘だろ。あのフラーケンだぜ?どんだけテロンの船は優秀なんだよ。』

 

「すいませんが、その話もっと詳しく教えていただけないでしょうか。」

 

「うん?君は…。ディッツ提督のご息女の。」

 

「はい、メルダ・ディッツ少尉です。」

 

「ほう、それでどうしてその事が気になったのかね?」

 

「はい、以前私は銀河方面に勤めておりました。

その時テロンの艦が我々と戦闘を行っておりました。かつての敵が今どうなっているのか知りたくなった所存です。」

 

「そうか、俺の同期のフラーケンという実験艦の艦長がいるんだが、先日やつがテロンのヤマトとか言う艦と、戦闘状態となり仕留められなかったそうだ。

あいつは、かなり癖があったが優秀なやつなんだ。

それが倒せないとなると、ヤマトはとてつもない艦だな。一個分艦隊に相当する戦力だろう。」

 

「ありがとうございます。」

 

話を聞いて安堵する自分がいる。ヤマトが沈められなくてと。あの人が死んでいないと。

何故、ここで彼らの顔が出てくるのだろうか。わからない。

 

「では、我々は仕事に戻るよ。君も前線に戻ったらヤマトに気を付けるんだ。

私はエルマー・ヴァイセンベルク中佐だ。何かあったら訪ねてくると良い。」

 

「話はしなかったが、私はブルーノ・アインハルト中佐だ、互いに同期さ。よろしくな。」

 

いい人で良かった。ここでもし詮索されたら私など収容所送りだろう。

最近あのような光景が多くなってきている。この国は何処かおかしくなっているのだろうか。

 

何はともあれ、私はヤマトの所在を突き止めておく必要がある。テロンとガミラスの架け橋となるためにも。

全く何を考えているのだ。

 




感想、評価、誤字等よろしくお願いします。

作品が序盤から中盤に移行し終盤に行くまでどれ程かかるでしょう。
序盤、中盤、終盤。隙がないものは絶対に作れないと思う。むしろ透きだらけなのだろうか。


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第21話 魔女との遭遇

今日もまたヤマト宇宙をイスカンダルへ突き進む。

あの一件から巡航時は、航空機による索敵を取り入れてまたあのような奇襲をやられないよう航行を続けている。

 

航空機には亜空間ソノブイを取り付けた専用機体を割り当て、初の飛行では何故か古代と森君が搭乗している。

挙げ句のはてには、喧嘩まで始めていやがるが、どう聞いても痴話喧嘩だ。お暑いこって

 

「艦長。若いって良いですね。」

 

「岩本君、君も私からすれば充分若い。それにまだ20代ではないか。」

 

「そぅですね。どうも磨耗してまして、自分の実年齢と時間の感覚がおかしいんです。」

 

「疲れが出ているのではないか?休んだらどうだ。」

 

艦長に心配されるとは、どうして喋ったのだろうか?本当に疲れが出ているのかもしれないな。

 

「では、お言葉に甘えまして休ませていただきます。

失礼します。」

 

艦橋から退室する。

うっ?何だ、目眩がする。本格的に何かの病気か?

ああ、佐渡先生に見てもらうために医務室に行くか。

廊下を歩いていると、乗員が倒れている。しかも一人一人二人ではない、何だこの数はまるで何かの伝染病かあるいは攻撃か?

 

「オイ!君たち起きないか!オイッ!」

 

反応なしか、完全に眠りの世界に閉じ込められているのか?だとすると、攻撃だな。これでは全員眠っていると考えるのが妥当か?一人で何を相手にするんだろうか。

どうも20年以上の月日が記憶を薄めている。この相手の目的は何だったか。

 

なんだ?後ろから気配がする。

ホルスターに手を伸ばし、97式を握る。

不意に後ろから声が聞こえた。

 

『何をしているんですか?岩本二尉』

 

え?そんな筈はない彼女は死んでいるのだ、なのに何故後ろから彼女の声が聞こえる。

周囲の風景も試作機のテスト飛行場の、格納庫へと変貌を遂げている。そして、褐色で瞳は紅く髪は銀色のマーズノイド特有の姿が現れた。

 

「佐々木三尉、これはどう言うことだ。」

 

『どうとは?革新技術の実証機の試験の途中じゃないですか。忘れてしまったんですか?』

 

「いいや、しっかりと覚えているよ。ちなみに今は何年なんだ?」

 

『西暦2194年ですよ。それよりも、新しい推力変更ノズルの大気圏内での音速航行試験を行いますよ?

私よりも岩本二尉の方がテストパイロットとして、限界を出せるからって来たじゃないですか。』

 

「違うよ、君は2193年の遊星爆弾の落下によって死んだじゃないか。」

 

『遊星爆弾ですか?一体だれがそんなものを落とすんですか?』

 

「ガミラスだよ。君は、死んだんだ。ここにはいないし、何より彼女は俺のことを岩本二尉何て呼ばない。

最初は岩本さんと呼んでいたよ。

さあ、君は誰だ。」

 

彼女が眉間に皺を寄せ、姿が変化する。肌は白く、色素が抜け落ちたかのようで、白人なんかよりも白くまるで白磁のような色である。

耳は尖り、エルフやバルカン人のようでガミラス人とも違う。全く別の種族だ。

 

『まさかこれほどまで精神が強いとは』

 

言葉がわかる、まさか思念で会話をしているのか?

 

「動くなまずは何をしているのか話してもらおうか?」

 

『フフッ!』

 

急に右へ動く、壁をすり抜けて。

 

マジかよ、そりゃテレパシーとかも使えるわけだな。

思い出せやつが何をしていたのかを、原作を思い出すんだ…。確か、そうヤマトの航路を変更するためだったか?

 

だとすれば…、波動エンジンを止めなければ。

ここから機関室までは速くても15分はかかる。

何より、どうやらあいつは夢で人を動かすことも出来るようだ。

 

周囲を見ればまるでゾンビのように、乗員が立ってこっちに向かってくる。全く、どうして損な役回りばかりなんだろうな。森君と古代頼みになっちまうだろ。

全くだらしない連中だ、もっと精神を鍛えた方が良いんじゃないのか?

 

ゾンビのような乗員は、それほど力が強いと言うわけでもなく、寝惚けたように歩いてくる。そのなかに、山本君の姿を確認した。彼女ならもしかしたら起きるんじゃないか?

 

考えたら即実行、周囲の連中を倒しながら近付き腰へタックルの形で突撃。そのまま米俵を担ぐが如くそのまま廊下を走り抜ける。以外と軽いな、もっと筋肉で重いと思ったんだがなんだ羽のようだな。

 

好しそろそろ良いだろう。

そういえばどうやって起こそうか。息を止める?キス?はダメだ。だとすれば明生くん、力を貸してくれ。

 

ペンダントを掴み、語りかける。

明生くんから聞いた、彼女の黒歴史を。

するとだ、何てことはない直ぐに目を覚ました。顔色はあまり良くないし、意識も混濁しているようだが。

 

「山本君、起きるんだ。起きないと、更に嫌な過去を話すことになるぞ?」

 

「教官、それは辞めていただけますか?」

 

「よし、その意気だ。これから機関室に行く。一人であの人数を突破するのは少々骨がおれるから、力を貸してくれないか?」

 

「わかりました。事情は聞きませんが、攻撃を受けていると解釈しても?」

 

うなずく。

さあ、いくぞ?

 

 

そのあと、強引に突破して機関室に到着すると古代が向こうから現れた。挟み撃ちだ。白い奴を波動エンジンに閉じ込め何とか撃退に成功した。

 

艦内の人員全員の介抱をするはめになったが、拿捕されるよりは良いだろう。

 

 

sideメルダ

 

ハァ、私は未だに本星から出られない。前線では多くの兵士が戦っていると言うのに、情けない限りだ。

定時で家に帰宅する毎日、たまに飛行訓練等をしているが、それでも鬱憤は溜まるもの。

 

そこで、兄の墓参りをしようと考えた。

ここ集団墓地はいつも、仄かに暗く死者を埋葬するにはうってつけの場所だ。

 

墓に花を添えて戻ろうとすると、前にドメル上級大将の奥方であるエリーザ様がいた。

声をおかけした方が良いだろうか?と考えていると向こうもこちらに気が付いたのか、こちらを見ている。

 

「エリーザ様でしょうか?私はガル・ディッツが娘、メルダ・ディッツ少尉です。お会いできて光栄です。」

 

「こちらこそ、エリーザ・ドメルよ。貴女もお墓参りなの?」

 

「はい、戦死した兄の…。奥方さまはどうして?」

 

「エリーザで良いわ。私は、死んだ息子のためにこうして来ているの。」

 

「そうでしたか、すいませんでした。」

 

「いいのよ?暗い話はそれくらいにしましょう。それよりも、貴女軍人なの?好きな人はいらっしゃるのかしら。」

 

「以前まで銀河方面軍に勤めておりました。一時行方不明となってから、半ば本星へ軟禁されています。好きな異性ですか?それは…。わかりません」

 

「銀河方面軍というと今噂の、テロンの船のことね。

好きな人がわからないというけれど、気になる人はいるのね。でも、どうして好きだと思えないの?」

 

「それは…」

 

「きっと複雑な事情ね。それ以上話さなくて良いわ。

それより、これから定期的に会わない?貴女の知らないこととか色々教えて上げる代わりに、恋愛の相談に乗ってあげるから。」

 

これから、エリーザさんとの関係が深くなり、私の中の彼への恋が芽生え始める原因となったのであった。

 




感想、評価、誤字等よろしくお願いします。

次回の更新は、主人公の思い出となります。


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第22話 満たされぬ旅路

誤字の訂正いつも有難うございます。


『総員戦闘配置に付け!!繰り返す、総員戦闘配置。』

 

その声が聞こえた途端に布団から飛び起き、パイロットスーツを着て格納庫へと直行する。

 

到着すると既に幾人かがファルコンに搭乗完了し、いつでも出撃出来るようにしていると、

『戦闘体勢を解除します。繰り返します…』

 

ふーん、これで何回目だろうな、おちおち寝れもしない。搭乗していた連中も、搭乗しようとしていた連中も一様に疲れたようなそんな顔をしている。

無理もないだろう。銀河系から離れてここ数日の間、ガミラス艦が威力偵察を行っているのか頻繁に来るようになった。

 

戦争なのだからまあ、こんな事結構珍しくも無いのだが、若い連中はこれに辟易しているようだ。

実際、彼等はガミラスと拮抗状態だったころ空軍学校にも入っていなかったやつらもいるくらいなのだから、初めての出来事で対応が後手に回っているのだろう。

 

それ以外にも色々と理由はあるが…。

 

「おい、玲君ロッカーに罪はない。あまり蹴らないでくれよ?皆もな、ここ数日敵があまりにも散発的に来るから、おちおち寝れもしないのだろう。

君らが航空隊に入る前、こういう事は良くあった。だから何だと言われればそれまでだが、敵がこちらを正当に評価していなければこういう動きにならないのも事実だろう。だからまずは胸張ってくれ。」

 

「では、いつになったら向こうから仕掛けてくるんですか?」

 

「そうさな、近日中に攻撃を仕掛けてくると俺は思う。それも、これまでの規模を遥かに越える、そういうのが。まあ、冗談だけどな。しっかりと休めよ。」

 

ガヤガヤと話し声が聞こえてくるが、不満のある声は聞こえなかった。

ただ、このあと加藤君に『岩本さんも冗談言うんですね。』なんて言われて、『まあ、人間だからな』と返したのは俺の心に余裕が有るからだろうか。

 

そんな事よりも今オムシスが大変な事になっている。度重なる戦闘の末、遂にオムシスへの負荷がピークを迎え壊れてしまったのだ。そのため数日間の修復作業を行っているが、修復の目処はたっていない。

 

それどころか食料の枯渇が懸念されるようになってきた。

食事とはこの艦の数少ない娯楽の一つ、そのため徐々にではあるが、艦内の雰囲気が悪くなっていっている。

 

こんな時にイズモ計画派は着々と力を溜めているのだろうな、移住可能な惑星を彼等は探していた、そして銀河系から離れた場所を、敢えて選定していたはずだから、この付近の惑星へ移住を計画しているのかもしれない。

 

やることが多いなぁ

 

『ねぇ、何を考えているの?』

 

「今後の展望、と現状の不安要素の取り除き方とか。…?誰だ?」

 

目の前にいるのは岬百合亜?いや、違う髪型が若干違う?いや?纏う雰囲気もか、だとすると

 

「本当に君は誰だ。その体に入っているのは岬君じゃないな?」

 

「そう、私は私。でもあなたはどうなの?」

 

「どうとは?」

 

「あなたの体はあなたのもの?それとも貴方のもの?あなたこそ何者?人?幽霊?」

 

何だと?俺の正体に薄々気がついているのか?

 

「俺は俺だよ。それ以上でもそれ以下でもない。たとえこの身体を乗っ取っている亡霊のような存在であろうとも、俺は生き残ってやる。君の事は誰にも話さない、君が自主的に話さない限りは。」

 

「そう、私は別に構わないのだけれど。」

 

そういうと再び歩きだした。

何だったんだいったい。イスカンダル人は本当に不思議な存在だな。

 

まあ、良いだろう。さて、書類仕事にでも戻るとするか?部屋で書類(電気的な)を片付けた。

 

 

 

それから暫くした後、艦橋へと入った。

副長、真田がいた。

 

「岩本一佐、今は非番ではないですか。」

 

「いやー、非番なんて言ってられないからね。私なりに、オムシスと、食料の計算をやってみたんだが、ちょっと見てくれないか?」

 

「いや、私は畑違いですので私が見ても意味がないのでは?」

 

「まあ、そうなんだがね?艦内の現状を見てみてさ、食事が無くなる恐怖というのを改めて実感したんだ。

それに目を通すのも悪いことじゃ無いさ。」

 

二人して考え込んでいる。そのとき、

 

「レーダーに感有り、ガミラス艦です。」

 

真田が直ぐ様ワープに入るよう命令する。

 

「まて、敵は何隻でどの程度の距離だ!過去のデータと照らし合わせてくれ。」

 

照らし会わされたデータでは、今までよりも追跡距離。

そして、その規模が多くなっていた。

そう、まるで魚を網に追い込むように布陣している。

 

「真田、もしワープした場合重力の影響で進路が曲がる可能性は?」

 

「確かにあります。まさかそこに敵がいると仮定しているのですか?」

 

無言で頷く。

 

「だが、ワープしなくても敵はこちらを包囲しているだろうな。なら敵中を突破するしかない。どうやら敵さんも本気で潰しに来たらしい。」

 

「…。」

 

驚愕の顔でこちらを見ている。

どうした?顔を触ったときわかった。俺は笑っていた。

ああ、俺は渇いているのか?だからこうして、戦うのがこんなにも嬉しいのだろうか。

 

 

sideメルダ

 

最近同僚たちと、話をする機会が増えた。

父上からしたら嬉しいことなのだろう、最近父上が家にいるときに帰ると、嬉しそうに笑っているのが良く目に入る。

 

そんな日も長くは続かない。ある日あろうことかあの

ドメル提督が総統へ爆破テロを行ったと言う、情報が駆け巡った。

 

上層部は何とか箝口令を敷いているが、末端までその話で持ちきりだ。これは士気にも関わるであろう事態だ。

 

ヤマト討伐に向かっていはずなのだから、ヤマトの情報も手に入る。ヤマトはドメル艦隊の旗艦へ肉薄攻撃を行って来たようだ。しかし、術中の内であったことからあと一歩に追い込んだそうだが、そこでドメル艦隊に召集が入ったようだ。

 

やはり安心する、彼等が生きてくれて。やはり、ヤマトはイスカンダルへと向かってきているのだろう。

あれほどのエネルギーを得られるのは、オリジナルの設計だからかもしれない。

 

それよりもだ、ヤマト討伐に赴いていたドメル艦隊が到着する間、私たちは経理や、もろもろの書類仕事でてんてこ舞だ。

これならばパイロットをやっていたほうが遥かに楽で、私の性にあっている。ああ、コックピットが懐かしい。

上からの命令には逆らえない。特に父上の命令では。

 

これが今の私の日常。しかし、まさかこの出来事が私にまで波及するなどこのときの私は考えもしなかった。

 




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第23話 余地無き未来

誤字の訂正毎度有難うございます。


「なに?艦長が倒れた?で、容態は」

 

「命の別状は無いそうです。私もそれを聞くまでは、心配で仕方がありませんでした。」

 

「うーん。今は艦橋は任せろ、古代と一緒に行ってこいよ。恩師なんだろ?私は良い、それほど親しい仲という訳じゃないからな。」

 

「良いのですか?」

 

「真田君。君がそんな顔をしているんだ、よっぽどの事じゃない限りはそんな顔をしないだろ?それに、艦橋での仕事はお前が一番多く知っているのがちょうど良いからな。」

 

真田の顔は少し眉をしかめていたが、行けるとなるとそれも少なくなった。感情が少ないけれど、やはり人の子なんだなと、このとき思った。

 

暫く艦橋で、指揮をとっていると二人が戻ってきた。二人とも何と覚悟の決まったようなそんな雰囲気をまとっている。

他の連中はビーメラの方に気が行って気が付いていないだろうがね。

 

艦橋では新見君が不穏で仕方がないな、せわしなく動いてはビーメラの事を細かく分析しようと、躍起になっている。それどころか生き生きしているぞ?

 

特に居住可能惑星だと言うことがわかれば、移住が出来ることを口からこぼす、真田の機嫌が悪くなったぞ?

真田はヤマト計画に命をかけているからな、それほど地球が元に戻ってほしいと願っているのだろうし、その妥協案であるイズモ計画なんて、奴は許さないだろう。

 

うん?この場面何処かで見たような?まさか、あれか?アニメで見たやつか?最近記憶が薄れているからか、どうも思いだし辛い、確か…そう反乱の兆しだったかな?

 

そう思い出したとき、既に二人は艦橋から出ていた。

さあて、俺はどんな仕打ちを受けるのかな?反乱軍の諸君。

 

俺は反乱が起こるのを、ただただ艦橋で待っていた。まるでそれに気が付いていないかのように、俺にはそれを見届ける義務があると、というのは建前で実際のところ今更動いても遅い。既に反乱軍に加担する警備と此方側の警備の目星を付けてある。後は彼、星名君がなんとかするだろう。

 

っと。来たな。

艦橋の扉が開かれる。

中からは保安隊と新見一尉が現れた。

 

「なんだなんだ?騒々しいな、何があったんだ?反乱か?それとも今君たちが反乱を起こしているのか?」

 

「ええ、現時刻をもってこのヤマトを我々が占拠します。岩本一佐には、我々への協力をお願いしたい。」

 

「伊東よ、それは無理な話だ。ヤマトをイズモ計画に使用しようとしているのだろうが、それは許容できない。」

 

「英雄はもう一人の英雄を裏切ることが出来ない。という事で良いんですな?」

 

「英雄じゃない。英雄なら開戦の引き金を引くような命令は受諾しない。第一君らとは相容れない。」

 

「良いでしょう。おい、彼を尋問室へ連れていけ。」

 

両脇を固められ扉に入るとき言った。

 

「新見君、君は何一つわかっていない。」

 

彼女はどんな顔をしていただろうか。

そんなことより、今尋問部屋にいる。

何故かって?連中に協力するとき、俺を尋問したいヤツが交換条件で出してきたそうだ。

 

で、今対面に座しているのが件の俺を尋問したいヤツ。

彼女(草加飛燕(ヒエン)だったか?)は、俺に聞きたいことが有るそうだ、あの開戦の日の出来事の真実を。

 

「あの時我々は確かにガミラスヘ無通告の攻撃を行った。それがこの戦争の原因だが?」

 

「無通告?天王星の監視ステーションが、再三ガミラスヘの停船勧告を行っていたはずです。攻撃と撃沈を示唆することも。それでも近付くガミラスが悪いはずですが?」

 

「半分あっている。確かに停船勧告は出した。だが、我々は攻撃に関する通告をしていない。特に何処までが限界ラインだとは言っていない。だからこそ、我々も悪いんだよ。」

 

それを聞いた彼女は更に顔を怒りに満ちた様子で言った。

 

「嘘だ!父がそのようなことをするはずがない。父は、ガミラスに殺されたんだ。」

 

「それを見捨てたのは私たちの世代だ。その事実を受け入れる事が出来るかは、人それぞれ努力が必要だと思う。受け入れるかどうかは君次第だ。」

 

まるで受け入れられない。そんな感じが漂ってきている。それに、今にも銃で頭を撃ち抜かれそうな、そんな感じだ。

回りの保安隊の連中もそわそわし始めている。大方どうしてこんなことになったのか、わかっていないのではないだろうか。

 

「君たちも言ってくれよ。私が言ったことは真実だ。にもかかわらず、彼女は私を殺そうとしているぞ?これは、立派な規律違反だ。助けてくれよ。」

 

こっちをチラチラ見ているから、迷っているのか?

もう一押しか?

 

「君たちの行いは立派な反乱だ。君たちにはわからないと思うけど、今帰っても人類は確実に絶滅するぞ?

変わりの星なんて見つからない。『喋らないで!!』何故なら銀河系の外こそがガミラスの勢力範囲なのだから。」

 

全員目を大きく見開いている。

 

「薄々感づいていたんじゃないか?銀河を離れてからの方が、ガミラスの動きが活発なことに。だからこそ、今ここで帰還しても、人類をぬか喜びさせるだけなのだ。さあ、選べ。彼等と共に帰り人類を殺すか。我々と共に一縷の望みを掛けてイスカンダルへ行くか。」

 

「だからなんだって言うの?私はガミラスを殺せばそれで!」

 

周囲の保安隊員が彼女へ銃を向ける。

 

「俺たちは家族を助けたいから、連中に協力した。だが、今の話を聞いて心変わりしたよ。死者と心中なんてごめんだ。」

 

そのとき、通信音声が流れ出す。

始まった。奪還作戦が今始まった。

我々は彼女を縛り上げ、動けないようにすると部屋の外で待機しているものたちを懐柔した。

 

戦力として我々は徐々に大きくなっていく。

遂には機関室へと到着し、波動エンジンの推力を停止し、ワープさせないようにする。

 

そのとき、再び艦内のアナウンスが流れた。

どうやら艦橋でも事態が起こったようで、我々は勝利したのだ。

 

そして、艦橋であった森君のユリーシャ疑惑。それを私は否定した。

 

 

sideメルダ

 

デスラーを引き摺り降ろせ!我々は決して屈しない。今なお多くの者が命を落とし、殺し殺されている。

見よ!この帝都を、嘗てのような美しい姿も、今では軍のデスラーの主導で統制され、見るも無惨ではないか!」

 

最近帝都ではこのような事を口にするものが、増えた。そして、それを取り締まる親衛隊も大動員されている。

 

「この戦いにより我々ガミラスは…?!」

 

スッと彼の頭を何かが抜けていく。狙撃されたのだろう。今では、このような事をすれば裁判など無しに射殺される。

 

今日は聖イスカンダルの日であったはず。軍歌が流れそれを市民が旗を振って祝う。私が小さい頃はこのようなものではなかった。

もっと厳かで、心が洗われるようなそんなものだった。

 

私は今勉強をしている。

ガミラスの政治体制の変貌を、嘗て大公国であったときガミラスは他の星系との連合体制を行っていた。その時は、ガミラスが他の星系を保護する形でいた。

 

しかし、内乱の後デスラーが総統に就任すると外部への圧力を強め完全な植民地とし、完全な帝国となった。

それによって外へ外へと外征を進め、今では誰の得にもならない戦争が続いているという。

 

私には今この国は末期なのではないかと思うところがある。一人の英雄に全てを背負わせたツケが回ってきたのだと。

 

こんな事をやっているからか、最近尾行されているような気がしてならない。私も彼等と同じような事になるのだろうか。

 




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第24話 ゲート

誤字の報告ありがとうございます。


艦長たちと共に、解析したデータを真田の説明で聞きに来た。まず現在の航海日程は戦闘や諸々のトラブルにより大幅に遅れているという。

 

そこに来て、古代が持ち帰ったデータ上の亜空間ゲートを使用することで、旅路を更に短縮し三万光年先に進むという計画だ。ただ、それにともない一つの問題があった。

 

それはこのゲートを管理する種族がガミラスであること、そしてゲート付近の敵の排除、掃討。

そしてゲートコントロール衛星の制圧だ。

 

これらは、現在付近の宙域でのガミラスの反応が無いことを考慮し、航空隊の防空網を形成しつつ索敵を行うこととし、速やかに衛星を制圧する事が決定された。

 

その後、俺と真田、沖田艦長、佐渡先生と共に自動航法室へと行き今後の身の振り方、特にいかにして真実を公表するかという事を話した。

 

特に自動航法室の中にはユリーシャが眠っている。今は身体だけがここに有り、心?魂?は百合亜君の身体を乗っ取っている状態だ。たとえ仮宿と言えど百合亜君は体の異変に気付いて来ているようだから、心労が心配だ。

 

そんな事もあったが、航海は何事もなく順調に進んでいく、たまには新見君の事でも見に行くかと、行き当たりばったりで行動する。正直な話暇なのだ、戦闘の高揚感というものが足りない…。

ん?俺はこんなにも戦闘狂だっただろうか。

 

「失礼する。新見君に話があって来たんだが、開けてくれるかな?」

 

「新見一尉にですか?しかし、艦長の命令がない限りたとえ一佐と言えど、勝手に出すわけには行きません。」

 

「だろうと思って許可をとってある。これでも駄目かな?」

 

そう言うと、どうぞどうぞと扉を開けた。

そこには体育座りをして角で丸くなっている新見君がいた。片手には写真を持って。

 

「やあ、思い出に浸るのに邪魔だったかな?」

 

声をかけるとこちらを向いた。

 

「一佐ですか。いったい私に何のようで?」

 

「君にとって最悪の結末を話に来た。」

 

「最悪の結末?ですか?いったいどういうことですか。」

 

「ああ、ここに真田くんが解析したデータがある。

あのビーメラで見付けたものだが、そこにはガミラスの情報があったよ。奴等は銀河の外からやって来たという仮説を証明するのにうってつけの存在だった。」

 

「まさか、ガミラスが外からやって来ていると?」

 

彼女は少し青い顔をしている。

そりゃそうだろう。彼女はガミラスを銀河系の内部の方から来ていると考えていたようだから、もし計画が成功した場合。

 

彼女は人類を死地に追い込んで、自滅する道を歩ませた存在になってしまうだろう。

そう考えた彼女は自分の事を責めているようだった。

 

「一佐、それだけでここまで来てくれたのですか?」

 

「いいや、少し昔話をしたくてね。真田はゲートの方へかかりきりだし、君らが学生の頃の事を聞ける相手が今は、君しかいないのでね。」

 

 

そう、彼女たちとの出会いは遊星爆弾が激しくなってきた頃、我々機動艦隊が戦略的大勝利を納める数年ほど前のこと。

 

3人組は学校のなかではかなりの有名なものであった。

稀代の天才、努力家の秀才、卓越した奇才

誰がどれに当てはまるか、天才は真田、秀才は新見、奇才は古代(守)。

当初、天才と秀才はピンと来たが奇才だけはパッとしなかった。

 

彼等は学生にも関わらず、非常に優れていた。

正直な話、俺なんかよりも余程優れている。特に学者がわからない俺は、守の才能だけはわかったほどに。

負けない戦い方を知っている。それだけでも凄まじい。

 

そんな彼等との接点はなんと、食堂だった。

当時は特別講師として行った学校の中でまさか出会うとは思わなかったが、意外と三人とも打ち解けていた。

ある種の仲間意識が芽生えるほどに。

 

 

そんな話をしていたら、時間が経過していた。確かそろそろゲートが開く頃か。

 

「新見君面白いものを見よう。ゲートが開くどうだい?」

 

「遠慮しておきます。」

 

「そうか。」

 

一人で見るゲートの開通は寂しいものだった。

 

 

 

sideメルダ

 

 

『いたぞ!止まれ!』

 

ハァハァ、まだ、追ってくるか。いい加減諦めてほしいものだな。

 

私は逃避行を続けていた。

ドメル将軍の反乱罪の通告を受け、父は総統府へと参じたそうだが、なんと言うことだろうか。事もあろうに共謀の罪に問われていた。

 

あの父を拘束するなど、総統府の連中の頭はどうかしているのではないのだろうか。

だいたい父がそのようなことをするはずがないのだ。

何かの謀略かはたまた陰謀か私にはわからない。しかし、父が拘束されたことは事実だ。

 

そして、娘である私にも追手がやって来たのだ。

私への追手は昔馴染みのものが、危険を知らせてくれたおかげで、私は何とかこうして逃げているのだが、如何せん数が多すぎる。

 

デスラーの爆殺後、首都の警備はいっそう強化されて、今では都市一つがまるごと要塞のようだ。

それでも裏道まで網羅することは難しいようで、何とか追っ手を掻い潜ることが出来た。

 

私はフェンスの前にいた。

目の前の光景にある種の絶望と、忌避感を抱いて。

彼等は、反乱分子と特定されたものを輸送艦に押し込んで、収容所惑星へと送り込む。

 

私がそこで、立ち尽くすわけ、それはエリーサ・ドメルがいたことだ。録な尋問を受けないまま、そのまま収容所惑星へと移送されていくのだろう。

もしかすると他の人々も皆そうなのかもしれない。

 

今ここにいても私は見守ることしか出来ない。

何故このようなことになったのだろうか。

私の帝国への不信感が、ピークを迎えようとしていたとき、私の後ろへ一台の車が停車した。

親衛隊ではない、いったい何者であろうか。

 




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第25話 バランの影

感想・誤字等ありがとうございます。


我々はバランへの道をゲートを使用することによって短期に終わらせる事が出来るようになった。

しかし、問題は未だに残っている。

 

我々は向こう側を知らない、向こう側にはどれ程のガミラスがいるのかそれを知る術は敵の偵察機による偵察しか存在しない。

 

艦長室にて、バラン開通の報告と今回立案された作戦の検討を行っている。

俺には選抜権は存在せず、加藤が選抜権を所持している。

 

正直言って俺が志願するつもりであった。

それなのに、艦長に止められた。何故かと問えば、自分の命は恐らく長くはないこと、何時死ぬともわからぬこの身では、この艦を支えるには足りない。この艦には柱が必要であるという事を。

 

それでも、俺は答えた。条件を付けて、志願者が現れない場合、俺が偵察の任に付く。正直言って志願者は現れないであろうと、そう思っていた。

だが、一人志願者が現れた。篠原だ。

 

篠原弘樹一見チャラチャラした外見をしているが、内面は筋の通ったやつだ、正直な話嫌いじゃない。

だが、こういうやつ程生き残って欲しいものだ。

何故彼は志願したのだろうか?普通ならば、皆嫌々かヤケクソでやるだろうに。

 

まるで、『俺がやらなきゃ誰がやる』なんて顔をして話をしている。

作戦まで後、15分。何か言ってやった方が良いか?

そう、あいつの生存率を上げるような。

 

「おい、篠原君。」

 

機体の近くにいた連中が一斉にこちらを見た。彼の機体に近付き矢継ぎ早に言う。

 

「大変な任務に就いたな。私から一つだけアドバイスがある。もしも、ばれたらまずは敵艦にへばり付け。そうすれば攻撃は自ずとしてこなくなる。信用するかは君次第だが、これだけは言おう。必ず帰ってこい、これは命令だ。」

 

ヘルメットを被っているから声は聞こえないし、どんな表情をしているかわからない。ただ、静かにしかし、しっかりと敬礼が返ってきた。

こういうやつは絶対に死なない。

 

そうこうしている内に出撃の時間だ。

彼は地獄のなかを突き進むべく機体を加速させていく。

タイムリミットは、後二時間、何処まで彼は出来るだろうか。

 

そんな緊張の中でも、パイロット連中は陽気?である。何故かって?篠原の帰還祝いを計画しているからだ。

あいつの好物を密かに調達し、調理をしている。

最近出来た有事での炊事を全員が出来るからか、非常に旨いものを作るだろう。

 

だが、そう上手くいく筈もなく、彼等が待っていた篠原は現在昏睡状態である。

佐渡先生曰く、それほど重い怪我ではなく、極度の緊張状態からの離脱に伴う気の緩みが深い眠りを誘ったのだとか。

 

昏睡状態というよりノンレム睡眠に近い状態のようだ。ただし数日は目を醒まさないだろうと、航空隊の連中には知らせないが、もし知ったのなら篠原を叩き起こしに来るだろうからな。

 

篠原が持ち帰ったデータから、作戦を練り始めるが、正直な話、艦長、俺、古代、真田だけで作戦を練るのは非常に困難なことがある。

かといって加藤は戦術よりも、航空隊の指揮官があっているし、森君や島君は門外だから頼りになり辛い。

 

だから、もしも次に作戦を練るような事があれば誰かを推薦して、共に模索するようにしよう。

と、今回の作戦終了後に艦長に直談判しに行くとしよう。

 

そして、ヤマトは敵中に単身突撃をかます。

当初の予定通りとは行かなかったものの、バラン内部への突撃へ成功。

その後バランを突っ切り、大マゼラン銀河方面のゲートへと直行。

波動砲で敵艦隊もろとも、銀河系方面のゲートの破壊に成功した。

 

篠原の持ち帰ったデータがなければ、今回の作戦は成功しなかっただろう。

今回の任務に参加した彼には沖田艦長からの訓示と、俺からの勲章を与えた。

 

勲章は、死んだ友人が持っていたものを仮で採用した。

地球へ帰還した後で、正式のものをと約束した。

 

 

sideメルダ

私が収容所護送船を見送った後、訳のわからぬものたちから接触があった。

彼等は、反デスラー主義を掲げたものたちで、言ってしまえば、今回の騒動の原因でもある。

 

そんな彼等が私に接触を謀ってきた。要するに私を利用しようとしているのではないだろうか?

私はこれでもガル・ディッツの娘だ。いい御輿になるんだろうさ。

 

だが、それでも彼等を利用するしか現状を打開する術はない。そちらが私を利用するのならば私もそちらを存分に利用させてもらおう。

 

「ん…メルダさん?」

 

「んあ?すまない少し考え事をしていた。」

 

「そうですか。そう言えば、今貴女の事が軍の一部で話題になっていますよ?敵と内通した裏切り者だと。」

 

彼等の所持する車の中で聞かされた。

現在の私の立ち位置、そう私はガミラスの裏切り者だと、情報の出自はわからないが、大方総統府の中で私や父と派閥争いをしていたやつらからであろう。

 

「確かに私は彼等ヤマトの乗組員と接触をした。だが、その情報は大きな間違いだ。彼等とは次元断層からの脱出の折り、一時的に休戦を結んだだけなのだ。」

 

「それにしては、ヤマトの情報をここ数十日の間調べ続けていたようですね。」

 

こいついったい何処まで私の事を知っているんだ?

背筋が凍る思いだ。

 

「まあ、僕らには関係有りません。むしろ好都合です。何れ彼等との接触を図らなければなりませんので、その時はご助力お願いしますよ?

それと、貴女には良い知らせです。ヤマトが単身バラン星を抜けて、ガミラス本土へ接近中だそうです。良かったですね。

あっと、そう言えば銀河方面軍のことで調べものをしていましたね?確か、『凶鳥』の事ですか?航空隊の連中は、肝を冷やしていたそうですよ?」

 

凶鳥?私が調べていたのは、彼の事だ。戦場伝説の登場人物のような非現実的な存在ではない。もっとも、凄まじい腕ではあったが。

 

「そんな伝説は調べていない、私が調べていたのは一人のパイロットの事だ。」

 

「二人ともその辺にしておけ、付いたぞ?」

 

なんと運転席で運転していたのはあの日出会ったアインハルト中佐、そしてよく見ると助手席にはヴァイセンベルク中佐だった。

だとしたら私と話をしていた彼は、いったいどれ程の階級なのだろうか。

 

「ごめんね。名乗るのが遅れたよ。

僕の名前はヴィルヘルム・ヴァム・デスラー。

アベルトの甥に当たるものだよ。」

 

私はとんでもない者たちと接触してしまったのではないだろうか。




評価・感想・誤字等よろしくお願いします。


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第26話 我らは来た

誤字の指摘ありがとうございます。


sideメルダ

 

あの日あの後、私は安全な場所という名の、屋敷の中で寝泊まりをした。それはとても豪勢な物で、正直な話私の家よりも立派であった。

その中で彼自称デスラーの甥は、私に告げた。

 

『私に協力するかしないかは、君が決めることだから強制はしないよ。でもね君はきっと我々と合流する。今は君の思うまま動いて見ると良い。』

と。

 

そこで相変わらず警備がお留守な、総統府までやって来たのだが父の部下であり、私の恩師であるヘルダー中佐が拘束され、連行されていく最中であった。

 

そこで私が中佐を呼び止めようとしたところ、ちょうど到着したのか私の護衛の二人が私を引き留めた。

私は中佐が連れていかれるのも、父が連行されていくのも止めることもできず、ただ自分が追われるのを必死で逃げるしかない。

 

ならば私は、あの悪魔のような青年を利用しようか。

彼の力は実に絶大なものであるのが、屋敷を見るだけでわかった。あれは、デスラーとは違う歴史のあるという重みと、説得力だ。

 

それでも私は彼を利用する立場を一貫していなければならない。彼に呑み込まれ、彼のマリオネットになってはならない。彼とは対等な立場でなければ。

 

そうと決まれば、彼等と行動を共にするのが最善手であろう。私に謀略は似合わないが、自分を家族を守るためなのだ、私は悪魔をも欺こう。

 

 

sideドメル

 

私が勾留されてから幾日が経ったであろうか。

後一歩でヤマトを仕留めることが出来たというのに、私はこうして牢の中にいる。

 

彼等は今どうしているだろうか、まるで天命に導かれるように、都合よく私はこの牢にいる。

戦に運は付き物というが、これほどの運は私とて聞いたこともない。

 

そう思案していると、私は牢から解放された。

 

総統が私の嫌疑を晴らしてくれはしたものの、妻の罪状は相も変わらず晴れぬまま。

そして、再びヤマト討伐を言い渡された。

 

今の私にはかつての艦隊を運用するほどの信頼はない。

私に委譲された艦隊は旧式の空母群。

兵は新兵、そして歴戦の老兵たち。

顔馴染みが昔からの顔馴染みや、かつて私を指導してくださった方々も中にはいた。

 

更には私がもっとも嫌いな搦め手を行うための、特殊任務部隊がいた。彼等はシュルツの同郷の者たちで、構成されている。テロン人は彼等と同じ肌の色をしているからこその選抜であろう。総統もお人が悪い。

 

私たちは航空隊を主体とした作戦を行うが、総統から頂いたテロンでの銀河方面軍の航空戦闘の公式記録を幕僚達と共に参照していた。

 

その中では驚くべき事もあった。初期の戦闘からある機体による損害が、日に日に増加していく様子だ。

この存在によりシュルツ達は、遊星爆弾によるアウトレンジ爆撃をする程に、航空隊が追い詰められていく。

 

時には未帰還機が、投射兵力の凡そ4割を越えていきその破壊されたブラックボックスからの情報には全て、同じエンブレムと01の数字が描かれた機体が写っていた。

時には艦艇すら奢るそれに、シュルツ達はこれに名を付け、最大の警戒を寄せていた。

 

名は『凶鳥』白く酷く目立つ機体に、赤色の塗装で施された獲物を捕らえようとする鳥類のエンブレム。

機体が変わろうとも、色とエンブレムだけは変わらず戦場を駆ける姿はまさに狩りだ。

 

幕僚であり、エースパイロットでもある、ライルに至ってはあの冷静な男とは思えないほどに興奮する始末だ。

これほどの存在が、テロンには多くいるのだろうか?

ヤマトの指揮官しかり、このパイロットしかり。

 

この戦い、どちらが勝つか見えない。

 

 

side岩本

 

これから向かうのは決まっている場所、決戦の地『七色星団』か。

艦の全体をブリーフィングで、決定した航路は原作通りだ。

 

航空隊の連中の練度も上々だが、彼等には足りないものがある。母艦の軽視だ。

彼等は本来基地航空隊、つまり基地の防空と敵への攻撃を行うものだ。

 

彼等は『移動する基地・耐久力のない基地』という概念がない。

それによって防空戦闘は、ある程度の損害を良しとされる場合がある。

 

だが、ヤマトは耐久時間が決められていて、地上基地よりも脆い。防空戦力は厚くなければならないが、限られた数しかいない。

 

しかも空母戦での敵機の誘引という方法を知らない。

簡単に言えば、母艦から離れすぎるという事で

例えるならば、小学校低学年のサッカーのようにボールに一直線だ。

 

その癖を何とかしなければと、そう訓練をやっているんだが、如何せん染み付いた染みを落とすのは並みの努力じゃ無理のようだ。

 

「何度言えば解るんだ?敵にくっついてノコノコ出ていって、ヤマトを沈められては意味がないんだ。」

 

全員からはそんな無茶なという眼差しが来る。

もっと前からやっておけば良かったと、俺自身後悔している。

 

「いいか?戦闘機は無理矢理にでも振り払え、まずはヤマトを攻撃する攻撃隊を落とすんだ。最悪戦闘機だけを相手取るチームを組め。そうすれば役割分担できるからな。」

 

「俺だってこんなこと言いたくないが、俺も出る。

最低でも40機は落として見せるが、それでも二百機来たら残り160機だ。しかも一方向から来るとは限らない。俺達がいるのは、直すのが容易な基地じゃなくヤマトだ。何よりもヤマト第一に考えてくれ。」

 

こんなことして意味があるのだろうか。

彼等を守るのは地球のためだ、少しでも被害を減らせば地球に帰還する可能性も大きくなる。

 

そんな訓練が終わり、自室に戻ろうとした時、百合亜君?いやユリーシャがいた。こんなところで何をしているのやら。

 

「ねぇ。貴方は、何のために戦っているの?」

 

「唐突だな。そりゃ、地球の為だが?」

 

「嘘よ。貴方は彼女のために戦っている。貴方の恋人のために。」

 

「死人は関係ない。俺は今ある地球のために…」

 

「いいえ?でも、彼女はそれを望んでいない。彼女は貴方が貴方のやりたい事のために、戦ってくれる事を望んでいるの。」

 

「どういう事だ。では彼女は俺の直ぐ側にいると?」

 

「でも、貴方とは今日でお別れ。だから、真っ直ぐ生きて欲しいそうよ。」

 

彼女との会話のあと、物思いに耽っていた。

そんな中でも食事はせねばと、食堂へ。

そんな時、玲君が食堂へ現れた。

 

そして、説いた。自分のやりたい事のために戦うとはどういう事か。と。

 

答えは単純だった。かつての復讐心で動いていた彼女は、今ではメルダとの再戦のために生きようとしていること。恋をしたことを言われた。

 

ああ、単純な事だった。俺は死者との約束のために今まで生きてきた。恋や、生者との約束などこれっぽっちもなかった。

そう。誰かを守りたいという気持ちが、足りなかった。

 

だからこそ、変えよう。少しずつ、まずはメルダにもう一度会うこと、そして教え子達を守ろう。

 

「ありがとう。答えが見つかったよ。俺は前へ進めそうだ。」

 

玲君がキョトンとした顔だった。

 

後日

「さあ、今日もやろう。俺が教えたいことは、一つだけ全員が生き残る方法だ。」

 

さぁ、再スタートだ。




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第27話 七色を血で染めて

ヤマトが七色星団に到達した。

一時的に磁気乱流に巻き込まれ、艦の安定を失ったがそこは流石に慣れたもので直ぐさま体勢を立て直す。

 

パイロット連中が、機に搭乗しているなか俺は艦橋にいる。正直な話俺も準備はしてある。

機体は最後に出撃する順番であるから、問題はない。

服もパイロットの着る服装ではあるが、今回はちょっと違う。

 

空母乗りの着る、緑を主体とした服装をして艦橋へと入った。艦長以外は実際に初めて見る服を着ている俺を、珍しそうに見ている。

 

するとレーダー手から敵発見の報がはいった。

緊張感が艦内に充満する。

 

「艦長、俺は機体の方へ行きます。」

 

「わかった。」

 

「この戦い、激しいものになりそうです。」

 

扉を前に台詞を言う。

艦橋から出ると皆慌ただしく、戦闘配置に付いていた。

俺も急いで格納庫へ向かう。

 

船外から振動が伝わってきている。始まったようだ。

第一波攻撃は艦直上からの不意討ちから始まる。

艦を守る防空隊は敵艦への攻撃に熱心になっているから、防空任務に付いている奴が誰一人いない。

 

格納庫へと到着した、俺の機体と予備機だけが残っている。

 

「岩本だ!今から出撃する。後部ハッチを開いてくれ。」

 

『待ってくれ!攻撃されているのに今から開けるのか!?』

 

「一瞬だ!艦長が出撃のタイミングを計ってくれている。頼む!」

 

『了解しました!』

 

機体に搭乗して出撃を待っていると

 

『山本、コスモゼロ行きます!』

 

彼女が出撃した。あの出撃方法なら弱点を下さずに済むのだが、こちらを選んだのが悪かったか。

 

『出撃カウント始めます。五秒前、4,3,2,発信どうぞ!!』

 

「ファルコン1出るぞ!」

 

後ろ向きに射出され、エンジンを一気にふかす。

俺が出た瞬間ハッチは閉じられた。

そして、心地の良いGが体にかかる。レーダーに写し出される敵機を確認し、脅威度の高いと判断したもの即ちまだ攻撃手段を所持しているものたちへ、攻撃を開始する。

 

 

side ドメル

 

「第一次攻撃隊の攻撃は成功しました。しかしながら、敵艦の損害軽微なり、再度の攻撃の要求。」

 

流石にあれだけでは落とせぬか。

 

「司令!!第二次攻撃隊の損耗率現在2割、なおも増大中!こんな損害率なんて見たことない!」

 

やはりヤマトに乗艦していたか、凶鳥という名も伊達では無いわけか。

 

「第三次攻撃隊を急がせろ。奴が第二次攻撃隊に目を奪われている間にヤマトを沈める。」

 

だが、どんなに強くともたった一人では百以上の敵を相手に動くことなど到底不可能だ。

この凶鳥が、人間の範疇で収まるのであればの話だが。

いつの世にも必ず出てくる、戦争神話の英雄が彼等の側に産まれたか。

 

 

side名も無きパイロット

 

今回の戦いには自分で志願したけどさ、こんな…こんな事になるなんて思いもよらなかった。

目の前にいる味方が一機また一機と、落とされていく。

何なんだ、連中の赤い機体はわかる。動きが人間の動きだから。

 

でも奴は違う、ああ!!また一機落とされた。次は俺か?それともまた別の…くっ来るな!!

うわぁ!もうダメだ。あれ?生きてる、何で…。

 

外を見ると僚機が俺の身代わりとなって落ちていく姿がある。

ああ、何でこんなにも死ななくちゃならないんだ。

気が付いたら、俺だけが生き残っていた。

隊長も、友人も皆いない。

 

爆弾を外した俺にまるで興味を無くしたかのように、翔び去っていく奴の尾翼には“赤い鳥”が描かれていた。

 

 

sideメルダ

 

私は今奴の館にいる。つい最近協力関係を築いた少年だが、やはり不気味にも程がある。この年齢で当主というのもあれだが、何よりも年齢相応の感情の昂りとかそういうのを微塵も感じない。私でさえ、抑えられない時があるというのに。

 

「これで僕らは正式な協力関係になったんだけど、僕は形式上、メルダ少尉の雇い主と言うことになるね。それで、早速だけどある任務についてほしいんだ。」

 

無邪気に言うが、その顔は私を値踏みするかのような目をしている。

 

「では、その任務の説明をお願いしたいのですが、司令殿?」

 

「ハハ、そうだね。では君の念願の、父上の奪還を行うつもりなんだ。そこで君には偽名と、特務中尉の階級を授けたいと思う。詳しくは、作戦本部の二人に聞いて?結構長くなるし、今手元に資料はないからね。デスラーが見たら最悪だからね。」

 

そうは言うが、諜報部は手中に納めている癖によく言う。さらに、こいつの話からして、現在のガミラスでこいつを支持する勢力はなかなか多く、兵器開発局や、財務局何かはこいつの傘下に収まっているようだ。

 

「そうそう、ドメルがまたヤマト討伐へと向かったそうだよ。旧式の空母を四隻も持っていったんだから、今度はどうなるだろうね。僕はヤマトは、勝てないんじゃないかなと思っているんだけど、君はどうかな?」

 

「率直に言えばわかりません。ただ、もしかするとヤマトが勝つと言うことになるでしょう。ヤマトには、彼等がいますから。」

 

そう、負ける訳がない。彼等には妥協できない理由がある。そういうものたちが負けるのならば、この戦争で私たちが反乱勢力となる筈がない。

そのまま叩き潰されるのが落ちだろう。

 

「私は、彼等に掛けているのです。私たちの運命を。」

 

奴の目は私を真っ直ぐに見つめていた。

 

 

side山本

 

良くやった。そういう言葉が皆から聞こえてくる。悲しみを堪えてそういうのを聞いていると、やはり心が痛む。

 

私なんかよりも、遥かに一佐の方が敵を落とし、あまつさえ敵に振り回されていた味方までも救って見せた。

あの人間の出来ないような動きは、一佐ならではだが、正直いって悔しい。一佐のような操縦が出来ていたのなら、私はもっと多くを救っていたのではないだろうか?

 

だが、そんな力を持っていても救えないものが有ることを再度認識させられた。

 

森船務長を奪われてしまった事だけは変わらない。古代さんは、大丈夫だろうか。

古代さんにまとわりついていた、忌々しい影がなくって嬉しく思っている自分に反吐が出る。

 

慰めにいこうとも思わない。下心見え見えだから。

それよりも、一佐の事も気掛かりだ。あんな運動をしたのだ内臓が破裂していても可笑しくはないのに、平然とデブリーフィングで私たちを、メタメタに言いはなった。自分のせいでもあると、言ってはいたが。

 

もしも、またこんなことが有るなら私は、次こそは一佐に荷が、古代さんに傷がつかないよう。限界を越えて見せなければならないんだ。




誤字、感想、評価、よろしくお願いします。


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第28話 再会

誤字訂正ありがとうございます。


一人渓谷を飛ぶ。まるで鳥になった気分だ。鳥と違うのは、俺は機械の中にいてその巨体を操縦していると言うところであろう。

 

古代からの連絡が途絶えた事を確認した俺は、武装もそこそこに、収容所惑星へと出撃した。今回俺は敵の基地を叩かなければならない、一人で。

これ以上航空隊の面々に負担を増やすわけには行かない。

 

だから、一人で良いのだ。その方が気楽で、何より発見されづらい。

残り三分、そろそろ渓谷を抜ける。その先に示されるは、森くんが連れ去られたであろうガミラスの基地。

 

古代も一緒に収容されているのだろうか?それでも別に良いがな、中で混乱させてくれればそれで良い。

さて、何故か煙が出ているな。こりゃドンパチやってるな。

 

 

~数時間前~

 

宇宙葬が行われている。

ドメルとの戦いは熾烈を極め、多くの乗組員に犠牲が出た。パイロットも十人以上が未帰還となり、仲の良い者たちとの別れを惜しむ者たちで、艦内は非常に暗いものだった。

 

宇宙葬は、艦長が発案したものだった。永久の別れを惜しんでいては前へは進めない。故に非情ではあるが、彼等を地球へと連れ帰られるものではないと、宇宙での別れとなった。

 

俺の力で犠牲は少しは減らすことが、出来たであろうか?出来たと思いたい。

正直な話、これ以上の犠牲が出た場合ヤマトの継戦能力は著しく低下するだろう。

 

もうひとつ心配事がある。今回の戦闘ではっきりと分かった。俺の耐G性が地球の頃よりも上がっている。

人間を辞め始めているのだ。後で佐渡先生に診察してもらおうか?

 

そんな事をブリーフィング中に考えていると、新見君に声をかけられた。彼女はその能力によって必要な存在であるが故にこうして、会議にも出席している。

 

「あぁ、すまない少し考え事をしていた。それでなんでしょう。」

 

呆れた顔をして、ある惑星への補給を兼ねた探索を提案するものだった。

勿論ガミラスの勢力圏だということを、充分理解したうえでのことだろう。

 

俺はこう答えた。

「ガミラスの基地がある可能性は極めて高いだろう。

だが、もしもそうであれば森くんもきっとそこにいる。」

 

そう言ったのだが、古代はこちらを睨み付けるように見てきた。相当根にもっているのかもしれない。其ほどまでに、愛していたのであればこれほどの怒りは納得か。

 

そこで艦長が気を効かせたのか、古代は偵察任務に付くことになった。怒りに任せて作戦を考えてしまっては堪ったものではないし、何よりこういう時は一人の方が良いだろう。流石に偵察機では敵を見付けても攻撃はすまい。

 

と、ふと、ここ数日俺の周囲から視線を送っていたある存在の気配を感じないことに、気が付いた。

確かに肉体を取り戻してはいるが、船内に気配が無い?

 

まさかと思ってももう遅い、どうやら古代と共に出撃したようだ。どうやって保安隊から姿をくらませたのだ?

それよりも、早くこの事を艦橋に伝えなくては。

と駆け込んでみたものの、事態はより深刻のようだ。

 

なんと、何かしらのトラブルか、シーガルが墜落したと言う。

古代のバイタルデータから、生存は確認できたもののそれがまるで車両に載せられて動くほどの速度で移動したようだ。

 

これで、この星にガミラスがいる可能性が極めて高いレベルとなった。そこで航空隊に出撃命令が出たのだが、前回の戦闘で多くの機体と共に、搭乗員が負傷した。

それにより出撃できるものが限られていた。

 

さらに、この中で大気圏での戦闘に慣れているのは、さらに少ない。

彼等の大半は地球環境の激変した空しか飛んだことの無いものたち。

生物が生存可能で、天候の急な変化に対応出来るのは、ほぼいない。

だから、俺が選ばれることとなった。

 

何よりこれ以上の、戦力低下を避けたいというのもあるし、俺が志願したからでもある。

 

 

そして、冒頭へと続く。

 

さて、ガミラスの基地が有るところで煙が上がっているのだから、内乱であろうか?

どういう施設が有るかはわからないが、つまりはそういうことだろう。

 

きっと反デスラー派が動いての事だろうから。

そうか、ここが件のガミラスの収容所惑星か。

渓谷を抜け、基地の全貌が明らかとなった。

さあ、仕事の始まりだ。

 

 

sideメルダ

 

父を救出し、いざ牢から出ようとそうしていると、連絡がはいった。

なんとも笑える話で、一隻の艦が港を出たと言う事だった。

 

それと同時に殿の航空隊が残されて、我々の艦の出港を邪魔をしていると言う事だった。

そこで基地内部にいる私たちを頼ってきたのだ。

 

私だってそうなれば出撃したいが、この施設の形状からどうも直ぐには出撃出来そうになかった。

何故なら私たちは、この施設のコントロール施設。

にいたからだ。そこで、私は古代進と、イスカンダルのユリーシャ様を見つけてしまった。

 

初め私を視たときに敵だと判断したのだろうか、銃をこちらに向けていたがユリーシャ様の言葉で、それを辞めた。

その後連絡が入ってきたのだ。私たちは、室内から空を見詰めることしか出来なかったが、そこで空に違和感を感じた。

 

そう、ヤマトの艦載機それも玲が搭乗していたものの色ちがい白色?腹の部分と機首の部分は灰色だが、前は無かったと思うが、まさか岩本か?

 

パイロットだとは聞いていたが、その動きに見惚れていた。素晴らしい戦闘機動、縦横無尽に空を駆ける。

だが、同時に恐れとそうで有って欲しくないという思いに駆られた。私の見間違い等では無かったと、そう彼の機体には鳥のエンブレムが輝いていた。




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。


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第29話 旅路の先に…

後日の指摘ありがとうございます。


ガミラスの収容所での一連の事件が起きてから数刻程たった頃、俺の通信と古代の緊急通信によって、ヤマトがこの惑星へと降り立った。

 

紛いなりにもガミラスの拠点であるから、傷付いた艦艇の修復作業を行うこととなった。それだけではなく、収容所にいたガミラスの要人、ガル・ディッツ提督との会談の席を持つこととなったのだ。

 

そして、その席に俺が参列することとなった、階級上こう言う事柄には、縁があるので辞退することも出来ず、我が愛機のセッティングが少し遅れることとなる。

 

~会議室~

 

「すいません遅れました。」

 

「良い、まだ会談は始まっていない。それに要人たちも来てはいないからな。」

 

空いている席に腰を掛ける。急いで来たからか、まだ手が油臭いかもしれない。大丈夫か?

 

『お連れしました。』

 

全員が席を立つ。初めは艦長からの挨拶が始まった。

そこから各々自己紹介と言ったところだ。

俺の席順は三番目、真田副長の後。

次は俺か。

 

「はじめまして、私は岩本 鉄朗。階級は一佐。そちらで言うところの大佐を拝命しております。また、先の基地上空での空戦を行っていた。パイロットであります。以後お見知りおきを。」

 

向こう側は、なにやら俺のことをまさかの表情?で見ていた。もしかして、無人機か何かだと思ったのか?

でも、メルダがいるからそれは無いと思うが…。

 

そして、会談ではあるが結局のところ双方の意見の食い違いや、立ち位置の違いによって同行する事は叶わぬこととなった。

 

しかしながら、一応の休戦状態となり積極的な戦闘の停止という同意を得ることに成功した。

これには互いに安堵したかのようだった。向こうからしてみれば、現在の戦力ではヤマトへの勝ち筋が見えないこと。こちらから言えば、これ以上の戦力の低下を避けたかったところになる。

 

場所は変わって収容所の休憩室。

平行線の会談の後になったが、ディッツ提督が俺への個人的な質問を行ってきた。

平行線を辿る事に辟易し始めていたから、気分転換だったのだろう。

 

「君がメルダの話していた『岩本』という者で間違いないんだな?では、私は君に礼を言わなければならないな。」

 

「礼ですか?何の事でしょう。私は別に娘さんにした覚えは無いのですが。」

 

「いや、私が軍での生き方しか知らなかったばかりに、娘は女性として生きる事をしてこなかったのだが、帰艦してからというもの、なにやら歳相応なところも出てきたのでね。良い経験があったのやもと思いましてね。」

 

「そう、かしこまらないでください。第一私が彼女にしたことは、今平行線を辿っている話をして、私の罪を告白しただけですからね。

その他は、私の部下の『山本 玲』というものが娘さんを変えたのだと思います。」

 

「そうかな?それにしても、良い戦闘軌道だったよ。まるで機械のような限界の見えない動きだ。私達のパイロットは君の事を『凶鳥』と呼んでいてね。非常に恐怖の対象となっているんだ。」

 

「もしや、私がご子息を撃ったのを恨んでらっしゃる?」

 

「息子を殺した相手を恨まない父親はいない。だが、お互い様というものだろう。君からも何かを失ったような、そんなものが感じ取れる。」

 

「まあ、貴方に直接的な恨みはありませんが、それに恨みで動いていませんし。

今は恨みではなく、愛で動いていますから。」

 

「愛?誰への」

 

「貴方の娘さんにです。認めてくれますか?」

 

「認められんと言ったら?」

 

「実力行使をするまでです。」

 

そんな話をした後でも以外と話せるようで、娘の自慢をしてきた。やはり父親なのだなと感心させられると共に、メルダの何処に惹かれたのかとか、根掘り葉掘り聞いてきた。

 

メルダのヤマト派遣が、白紙になることはなく、半ばほっとしている。もしも、俺のせいでメルダがヤマトに来なかったら、どう考えても娘を取られたくないという現れだとも思う。逆に言えば、『ならばメルダを射止めて見せよ』と言わんばかりの配属か?

 

 

sideメルダ

 

父が岩本と話をしているのを、私は影から見ていた。

やはり彼があのパイロットであったと知ったとき、私は『戦ってみたい』という感情よりもむしろ憧れに近い感情があった。

 

そこまで聞いて二人ともまったくといっていいほどに、警戒心が無く、まるで友人と話をするようだった。

だが、そこで岩本は爆弾を落とす。

あろうことか、わ、私の事を好きだとそう、父に言ったのだ。

 

どうしたことだろうか、顔が熱い!

そこから、私を争うように取り合う二人がいた。

更にあの父が、私の事を非常に誉めてくれていた事には、努力の甲斐があったというものだと、心に思うだけでなく。どこかむずむずするものだった。

 

そんなことがあった後、玲とユリーシャ様と共に食堂へ行き、恋ばなとなったとき、私はなんと答えれば良いのかわからなくなっていた。

 

誰が好きだとかそう言うものを、この歳になって初めて言われたのだ。こうもなるだろう。

だが、果たして彼は私に告白するのだろうか?

それとも、告白せずにそのまま時が過ぎるのだろうか?

悶々とした心が残る。

 

こんなときは、格納庫にある自分の機体を点検するに限ると、そう思い来てみたが。

没頭できるものではなかった。そう、そこに彼がいた。

 

赤い機体が珍しいと言ってきたのだ。そこで貴方たちのも赤いではないかというと、『いやいや、こんな真紅の稲妻とか、赤い彗星だとかそんなやつみたいなのは、初めて見るよ』と言っていた。意味がわからない。

 

私は彼に問いただそうとした。しかし、どうやって切りだそうかと、思っていたらあっさりと言い放った。

 

「メルダ君。いやメルダ。俺は君の事が好きだ。愛していると言う意味で。」

 

初めて告白された。そこから、彼のペースだったのだろうか?だが、彼は紳士的で、無理やり襲うだとかはしない。返事は後日するという事で話は纏まった。だが、明日にはイスカンダルへ到着するだろう。

私はその前に答えを言わなければならない。

 

そして、その日がやって来た。返答をする間もなく、ヤマトはガミラスとイスカンダルのある宙域へとたどり着くと、波動砲に似た物を洗礼として見させられることになった。

 




感想、評価、誤字等よろしくお願いします。

最近仕事が立て込んでおり、投稿が遅れるや、内容への影響が出ております。

何卒ご了承のほどよろしくお願いします。


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第30話 共同戦

誤字の修正ありがとうございます。


デスラー砲が、艦体をかすめるかのように通過する。ちょうど、後ろにあったガス惑星に直撃して、惑星がおぞましくも悲鳴をあげている。

 

その直後、俺は格納庫へ猛ダッシュを始めた。

直ぐ様発進準備に取り掛かれるように。

と、体にじんわりと加速によるGがかかり始めた。

どうやら亜光速航行に移行したようだ。

 

格納庫へ到着すると既に数名が待機していた。

かつては20数名いた筈の隊員が、今では戦闘可能人数が僅かに6名か…。大部分が戦傷により、航空機に搭乗不可能になってしまっている中、この人数が集まるだけで奇跡ではあるか。

 

「皆速いな。」

 

「岩本さんこそ、遅いですよ。」

 

もはや階級など無いような者なのかもしれない。

これだけしか人数がいないのだ、こうなれば互いの連携によって勝敗が決まると言えるのではないか?

 

「さて、知っての通りガミラスの本星が目と鼻の先にある。そこから先制砲撃を加えられたわけだ。反れてくれたのが幸いだが、直ぐ様それを破壊しなくては我々は確実に殺されるであろう。

そこで、航空隊はヤマトの護衛をしつつ敵航空機の引き付けを行う。ヤマトは、亜光速航行にて攻撃を行うだろう。その場合我々は射出されれば、置いてきぼりを食らう。その覚悟は有るか?」

 

全員が俺の目を見ている。覚悟はあるようだ。

 

「良し、作戦の指揮は変わらず加藤、君に頼む。

私は、敵の新兵器とやらを相手取ることにしよう。

メルダ君から得た情報によると、無人機しかも高性能生産性度外視の存在が確認されている。

それを俺が一手に引き受ける。有人機は、頼むぞ。」

 

そう、メルダからもたらされた情報はガミラスの事だけではない。現在開発されている兵器の事を話してくれたのだ。

航空兵器は、無人で小型のUAVを搭載しており、並みの軌道ではない動きをするそうな。これに、加藤君たちを当てる訳には行かないのだ。

 

そうこうしているうちに出撃の号令が鳴り響く。

向こうも首都を、守ろうと必死だ。だが、誇りだか知らないが、こっちは文明、果ては星の命運がかかっているのだそうそつやられはしない。

 

ヒトデから敵の爆撃機が出てくるが、モッサリとした動きしか出来ない奴等はもはや的でしかない。

加藤たちは見事な連携によってやつらを翻弄していく。

 

それに対して俺は限界ぎりぎりまで、ヤマトの格納庫から発進しない。

離れるわけには逝かないのだ。

そして、奴等が動き出す。

 

今までのガミラスの機体からは想像できないような形状の戦闘機。形状は三百六十度曲面で構成された円盤状の機体。まるで、フリスビーだ。

下部から何かが、射出されたのが見えた。それは一直線にこちらへ来たかと思えば、途中で進路を直角に曲がりこちらの予想外の動きをしてくる。

 

うん、こいつはまるでガンダムに出てきそうな奴だ。便箋上ファンネルと呼ぶが、何よりその大きさだが、ミサイルよりも小さいそれが、自由自在にこちらを包囲するかのように動き出した。

数は6か。

 

本体の方も常軌を逸した動きで、こちらを捕らえようと来るかと思えば、常識の範疇の飛行すら行ってくる。

なんと殺りづらい相手であることか、普通なら中身の人間はミンチだろう。だが、AIだけってんならこんな動きも出来るわけか。

 

何よりどう考えても別勢力の機体。

ガミラスよりも技術が上のところから流れてきたのか、あるいは発掘したのか。

今はそんなのどうだって言い。

 

「コンピュータ、機体のリミッターを解除してくれ」

 

『リミッターを解除した場合、機体が耐えられない可能性があります。』

 

「壊れたって良い。一度きりなんだからな。それに、そのデータがお前の妹を形作るだろうさ。」

 

こいつに感情はないはずだが、少し悲しそうだった。

 

『わかりました。リミッター解除します。どうかご無事で。』

 

瞬間、操縦桿が軽くなる。機体の動きが更に敏感になり、各所から振動が伝わってくる。

敵を叩くには、同じ土俵に立たなければならない。

機動力で負けているのなら、機動力をあげるしかない。

 

周囲からのレーザー攻撃が殺到するが、それを敵の機体角度を見ながらぎりぎりのところで交わしていく。

敵をロックオンしようにも、あまりにも動きが直線過ぎるために、コンピュータの処理能力を上回る。

予想進路が想定した機動とはあまりにも違いすぎる。

 

システムが学習している間は、基本的に補助無しで戦わなければならない。

加藤たちに気を配っている時間がないほどに苛烈だ。

向こうも学習能力があるのか、徐徐にこちらの動きに合わせてくる。

 

逆に言えばこちらも慣れてきた。

だから、ミサイルは使えない。レーザーだけで落とさなければならないのか?いや、ミサイルを無誘導兵器として使う。そうでもしなければ当たることは無いだろう。

 

時間が経つにつれ奴は、攻撃を絞ってきていた。

エネルギーの残量が少ないのか、推進材が無いような機体のせいでわからない。

実質7対1の戦いであるが、下部充電式なのかUAVは時折本体に戻る事がある。そう、その時だが一瞬だけ機体が固まる。そこに勝機を見いだした。

 

奴もそれを解っているのか他のUAVをけしかけてくるが、一直線に奴に向かう。俺の周囲を飛んでいた奴等は

俺を後方からは撃てない。本体に当たるリスクが高すぎるから、そして、俺はやつを素通りした。

 

 

sideメルダ

 

玲たちと共に戦闘に参加した。途中でヴィルヘルム派がこちらの加勢をし始め、なんとも奇妙な戦いとなり始めていた。

私の機体にIFF登録を各機に伝達し、同士討ちを回避して残敵掃討を行いつつ、古代が進のを援護していた。

 

その時、波動砲の束がバレラスを破壊したのをこの目で見ていたとき、目の端に往く本かの光が交差しているのを確認した。

 

ヤマトの戦闘とは対称的に、派手さも何もないただ戦闘機同士の一騎討ち。

二つの戦いは終わっていない。

私は援護をしようと向かう。

その時、二つの機体は交差し、円盤型が爆発四散した。

 

だが、岩本、彼の機体の推進光が見えない。

まさか、と思ったがそこで通信がはいった。

 

『やあ、ディッツ少尉推進材が尽きてしまったよ。このままだとガミラス星に突入することになる。緊急着陸出来るところは何処だろうか。』

 

「私が先導する付いてきていただけるだろうか。」

 

『ありがたい、単機で行ったら確実に拘束されるからな。』

 

「いや、それでも拘束されるだろう。一応、敵国だぞ」

 

『ですよね。』

 

全く敵国内だと言うのにこうも緊張感がないとは、恐れ入るよ。

 

「まあ、私がいるのだ大船に載ったつもりでいてくれ。」

 

そうさ、私がこの男を守ってやらねばこいつは、ユリーシャ様がいう『流れ人』ならば誰かが導いてやらないと。




感想、評価、誤字等ありましたら、よろしくお願いします。


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第31話 終着駅

俺は今、見事なまでの貴賓室にいる。

隣にはメルダが座っているが、軍服ではなくどちらかと言えばドレスのようなそんな服装だ。

そして、対面するは今だ幼い顔立ちをしている青年?少年?がいる。

 

あの緊急着陸を無事に乗り越えたのは良いものの、結局はガミラスの捕虜という事になったのだが、目の前の少年の力によりこうやってイスカンダルへ向け、出港した。

 

しかし、この少年。ものすごくきな臭いというか、同族のようなそんな気がするのだ。

こいつ、絶対に存在していない人物のはずだ。

この歳で貴族の長を勤め、財界にも顔が利き、何より軍への干渉が出来るだなんて、どう考えても同じようなやつであろう。

 

「ああ、そう固くならないで?私はヴィルヘルム・デスラー。君達が敵対していたアベルト・デスラーの甥に当たるものさ。以後よろしく。」

 

握手を求めてきた。こう言うときは、敵対の意思を見せてはならないだろう。なんせ今俺は籠の鳥だ。

無礼をしたら何をされるかわかったものじゃない。

 

「お初にお目にかかる。私は、岩本鉄朗一佐であります。国連宇宙軍極東方面軍所属のパイロット兼ヤマトの戦術アドバイザーをしております。」

 

「それは存じているよ。隣のメルダくんとは確か面識があったはずだね。

さて、積もる話もあるとは思うんだが、これから我々はイスカンダルへと向かうとする。

目的は君の配達、それとアベルトの尻拭いとでも言えばいいかな?」

 

「かなり野心家なのですかな?イスカンダルの姫君と面識があると見える。」

 

「私は政治には口を出さないよ、ヒスさんは優秀な内政家だからね。デスラーの目が外を向いていたときには、いつも国内を纏めあげていたのは彼だった。だから彼に任せた方が良いからね。

それと、二つ目の質問にはただ『はい』とだけ言っておくよ。」

 

翻訳機の影響だろうか、それとも根っからの言葉使いなのだろうか?俺の言い方も悪いだろうが、どうも上から目線の言葉だ。

 

「それよりも、本題に入ろうか?

君は、ウルトラマンだとか、イデオンだとかそういう名称を聞いたことが有るか?」

 

おいおいおい、ちょっとまてまさかの直球勝負か?あのさどう考えても部外者のメルダが近くにいるんだが、そんなんで大丈夫なのか?

 

「あると言ったらどうなります?」

 

「そりゃ、喜ぶよ。なんせやっと見つけた同郷のものじゃないか。本当に嬉しいよ。」

 

メルダが目を見開いているぞ?なんだ?まさかそういう外の世界から来た連中が昔いたのか?

だとしてもあまりにも順応が早すぎないか?

 

「君も困惑していると思うんだが、我々ガミラスの一部や、イスカンダルには宇宙の外からやって来たものたちの記録が、僅であるが残っているそうだ。

そこで我々は『流れ人』と呼ばれているんだ。

メルダ君も、最初はお伽噺だと思っていたそうなんだが、君や私の事をユリーシャ様から聞いたのだろう。

そこでやっと理解したそうだ。」

 

『流れ人』ね。で、メルダはユリーシャからそれを聞いたと。う~ん、ユリーシャの事を大分信仰していたからな、そりゃ信じるだろうさ。

 

「それは、理解できた。同郷のものと言うことはわかった。それよりもだ、どうしてメルダがドレスを着ているんだ?」

 

よく見ると頬を赤く染めている。軍人というよりも一人の乙女といったところか?まあ、どちらかと言ったら、ヴァルキュリアだが。

 

「それかい?それはねぇ」

 

今ガミラスでの流行りや、文化的な部分の話を長々1時間話してくれた。

その間メルダは、終始無言であった。

長話をしている間にイスカンダルへ到着してしまうとは。

 

 

sideメルダ

 

奴は何を思ったのか私にこんな服を着せるとは、こっこんな服を着せて何をさせようというのか。だいたい、私は軍人だ命令とあらば仕方がないと割り切れるが、『君の意思で』と言われたら、どうすれば良いのかわからないじゃないか。

 

本当に奴の心理はわからない。

それよりも、私にこんな服を着せておいて私には話もさせない。この二人がどういう接点があろうとも『流れ人』というものが、どんなものであろうが知ったことではない。

 

私は、岩本に彼に憧れにも似た感情を抱いている。

だから、こんな蚊帳の外で話を進められるのは非常に不愉快だ。

 

「おい、いい加減話を止めないか。もうイスカンダルへ到着したんだぞ!」

 

「おっとメルダ君、そんな口を聞いてもいいのかな?」

 

「貴様は軍属では無い、従って貴様に私への命令権は存在しない。だいたい、貴様は財界を裏で操るだけで、正式な政治家でも無い。であれば、貴様の命令に私が従わないのは当たり前の事ではないか?」

 

岩本がそうなのか?と言った途端に態度を替え始めた。

どうやら岩本と同様の存在で、なおかつ奴が政治家ではないと判断したのだろう。

それは大いに間違いだが、一流の政治家ではないからヒスには勝てない、そんなやつだと見抜いたのだろう。

 

そして、奴の恫喝は何を潜め一人の小心者がそこに現れた。

 

「さて、行こうか?メルダもそう思うだろ?」

 

全く動揺しないとは、まさしく歴戦の戦士か。

 

 

sideヴィルヘルム(以後ヴィリー)

 

苦手だ。なんなんだこの男、政治将校とは違って凄まじく肝が座っていやがる。

こっちの話をずっーと聞いていながらそれでも、こちらの誘導に載ることがなかったやつなんて初めてだ。

 

翻訳機のせいか?だがまて、俺だって元は地球人だ。

特にヤマトの乗員は皆日本人なんだから、効果が無いはずがない。

鈍感すぎるのか?それか、そういう部分だけ長けているのか?わからなすぎる。

 

俺が先導して艦を出ると、ヤマト乗員とちょうど同時に出たのだろう合流した。

あの岩本とかいう男、かなり慕われていたのか乗員たちから、無事の生還を祝いの言葉で迎え入れられていた。

 

俺も同じ人生だったらあんなになっていたのかな?

無理か、俺には屋敷の中で飼い殺しされてた方が性にあってる。

 

いかんいかん、マイナスになると駄目な事しか起こらないぞ。ここは、社交的に挨拶でもしておこう。

そして、俺たちはスターシャ様の元へと馳せ参じた。

 

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。


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第32話 返答

俺たちはスターシャの元へと馳せ参じた。

コスモリバースシステムへと、ヤマトを改造する条件として、波動砲の封印を約束させられた。

 

本来その後あまり接点もないものなのだが、俺がいる性であろうか。いや、十中八九そうだろう。

現在俺は、彼女の座る玉座へと対面しているのだ。

いるのは俺だけじゃなく、ヴィリーも一緒だ。

 

「それで?どうして俺たち二人をここに呼び寄せたんだ?流れ人の話でもするつもりか?」

 

「おい!イスカンダルの姫にそんな事言っちゃ駄目だ。本当にすごい人たちなんだからな!」

 

おお、ヴィリーよお前はそんなキャラだったのか?

まるで、ドイツ帝国のヴィリーみたいだぞ。

 

「貴殿方二人をお呼びしたのは他でもありません。貴殿方に『流れ人』と私達イスカンダル、そして『アケーリアス』の対立の歴史を一通りお話ししなければならないと考えましたので、当事者である貴殿方をお呼びしました。」

 

そこから始まったのは、映像を交えた昔話である。

 

 

今より数万年前のこと、イスカンダルは波動エネルギーによって一大帝国を築いていた頃、ちょうど同時期に栄えていたアケーリアスと血を血で洗う骨肉の争いが永遠と続くかと思われた頃。

 

始まりは一隻の艦であったという、突如として艦隊戦に乱入し、イスカンダル・アケーリアス関係無しに無差別に攻撃を行った。その艦を皮切りに、イスカンダル・アケーリアス双方の被害が拡大して行った。

 

彼等は自らの事をティカーティケ(見放されたもの)と自称していた。各々多種多様な特殊な能力を持ち、私たちが争うのを調停すると、宣い見事なまでにそれをなした。

 

最後はなんともあっけない巻く引きであった、アケーリアスと徒党を組、決戦を挑んだが、彼らのうちのたった一人。全身が青く光輝く存在が手をかざした瞬間、全ての兵器。はたまた艦が、人員が瞬く間に分解され塵となっていた。

 

それにより、力を失いし二つの文明は滅びの道を歩いていこうとした。

その後、ティカーティケという存在が別宇宙からの流民では無いかと、学者たちが結論をつけたがあまりにも遅かった。と。

 

その後、その勢力は忽然と姿を消し二度と現れることはなかった。

 

要するにだ、俺やヴィリーが現れるずっと以前から、この世界はぐちゃぐちゃに掻き回されていたということだ。だから、俺が現れても物語の方向性は変わることはあまりないし、死んだやつが生きてるなんて事もあまり無い。

 

どんなに掻き回されていても、世界は辻褄が会うように修正力を発揮し、起こした出来事を無かった事すらできる。そして、余計な人物は姿を認識することすら出来なくなるのだ。

 

であるならば、俺がやらなければならないことは決まっているだろう。

 

 

sideメルダ

 

まさか、イスカンダルに来て海で泳ぐことになろうとは思わなかった。私は付き人として来ただけなのだが。

たが、楽しかった。これから我々と彼等は戦争状態から、休戦となり、イスカンダルの仲介の元、終戦へと至る。

 

らしい。どうも政治とかに私は弱いから、これから軍を担っていくというのに、勉強不足も甚だしいな。

そんな事を考えつつも、今はこの時を楽しもうとしている自分がいる。

 

そう言えば岩本は、まだ来ていないようだ。少し探しに行ってみるのも良いかもしれない。それに、この姿を見たら驚くかな?

 

そうしたらなんと、玲たちも付いてくるという。大所帯となってしまったがまあ良いか。

艦内の休憩室付近で彼の声が聞こえた。

 

『艦長、私はここに、ガミラスへとどまる所存です。』

 

『何故だ。君がいたから我々は今まで戦えた。その柱が無くなってしまったら我々は直ぐにでも瓦解してしまう。』

 

『いえ、現在の彼らを見ていると私は必要ありません。それよりも今は、後の事を考えガミラスにとどまり、一時的でも協力関係を築くために、誰かが留まらなければならないと、愚考しました。それに、私情ですがまだ答えを聞いていませんので、命令違反は覚悟の上です。』

 

『ふっ。わかった。皆には私が伝えておこう。だが、私と再び会うまで絶対に死ぬんじゃないぞ。』

 

『わかりました。ありがとうございます。』

 

あいつがガミラスへ残るのか?

形式上連絡将校の体であると思うがそれにしたって急すぎるのではないか?

ガミラスでは、今まで同盟関係を築いた国との連携を取った試しがない。どうしてこうも勝手なのか。

 

「失礼する!」

 

気が付くと室内へ突撃していた。

 

「お話しを聞いていましたが、貴方はどうしてそう勝手なのか。一人で全てを抱えようとしている。少しは私に相談くらいしても良いのでは無いのか!!」

 

私は何を言っているのだろう、これではまるで相談してこなかったことへ怒っているだけではないか。

 

「ちょっとまて落ち着け、何処から聞いてた?まさか最初からか?」

 

聞いていた内容を話しそれでも、相談に乗るくらいはしたいと、そう言ってしまった。そこで、艦長は薄すら気が付いたのであろう。彼が重要な事を隠していると。

 

そこで彼が話した内容は艦長を驚かせた。

彼の素性、そして今までの違和感の正体を。

それでも彼は、それを受け入れたらしく彼を快く送り出した。

 

そして、私も艦長の目の前で有ることを話すことを決心した。

 

「私は、貴方と夫婦となることは出来ない。少なくとも今は。だが、恋人からなら了承しよう」と。

 

我ながらなんて不器用なのか。

それでも彼との約束は果たした。きっと良いことが起こると信じて。




誤字、感想、評価。よろしくお願いします。

次回2199編最終話


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第33話 共同

誤字の修正ありがとうございます。


 

 

 

我らの新たなる友の力を見よ!!

 

無限に広がる大宇宙。星々は瞬き、生命はその息吹を感じる。

限り有る有限の命を、その力を存分に使い全てのものを手に入れようするのは、生命の性なのだろうか。

 

そんな宇宙で、星とはまた違う輝きが灯り、点いては消え点いては消えを繰り返し、聞こえるはずの無い絶叫が響き渡る。

片や魚のような形状をした艦が蠢き、片やトップヘビーで複雑な形をした艦が互を消し去りあっている。

 

そのすべてが、まるで生き物であるかのように一糸乱れぬ動きをするのは魚のようなものたち。

彼等は個艦の性能よりも、群れでの動きを取り入れ次々と複雑な艦を葬り去っていく。

 

そんな中で複雑な艦の指揮艦が、味方諸とも飲み込むような砲撃を繰り出す。『火炎直撃砲』彼等ガトランティスはそう命名しているこの兵器で、ガミラス艦が呑み込まれると思いきや、なんと巨大な盾を備えた艦がそれを防ぐ。

 

そして、直後に複雑な艦は大爆発を起こした。

艦の周囲には小さな機体が一つだけポツリと存在した。それが先程の原因であろう。しかし、たかが一機でそれらを落とすのは至難の技であろう。

 

では、これは誰なのか。

彼はテロン人、遠き故郷より我らの地に来て、双方の誤解を解き、戦争を終わらせた英雄である。

彼の名は『テツロウ・イワモト』かつて軍が『凶鳥』と呼んだテロン人のトップエースである!!

 

by帝国軍広報部銀河方面情報科新聞部ガロンヌ・パーク

 

 

 

side岩本

 

さて、そんな新聞?が配られてきたものの、何で俺の事を記事の一面に入れるのだろうか。解らなくは無いが、新しい総統が決まったにも関わらず、その事が話題に当たらない程までに、戦時に染まっているのだろう。

 

それにしてもこの言葉の後の文章はそれはそれは、皮肉の効いた良い味だったよ。

『テロンのトップエース』だ。正直なところ、微妙な存在と扱われてるだろうな。

一星系国家の力などたかが知れているからな。

 

ガミラスの艦内は、以外と快適な居住環境だ。むしろ、地球以上に艦内は快適に整えられている。長期間の航海が多いからか娯楽の類いは、潤沢なのだろう。

ただ、食事には甘味が少ない。砂糖と言うものを知らないのだろう。もし、化学式を教えたら金持ちになれるのでは?

 

そうそう、最近になってドメル艦隊の生き残りが、本国に帰艦したようだ。どうやら2199通り、方舟は存在したのだろう。その証拠に、バーガーの艦はかなりボロボロだったそうな。おまけにバーガーを説得に行った部隊も一割程犠牲となったと。

 

こうして聞くとかなりガトランティスは、強力な文明だとわかるが、それに輪をかけて当時のアケーリアスと、イスカンダルは化け物染みていたのだろうな。

それを叩き潰した、青色の奴はきっとアメコミ出身者なんだろうな。

 

コンコン

 

ノックか、まあ誰かはだいたい見当がつく。

 

「ああ、入って良いよ。」

 

『失礼する。』

 

俺の監視を理由に配属されたのは、メルダだった。実際のところ、俺を心配した上層部による手筈なのだろう。少しでも話し相手になるのが良いと上がったのは、メルダだった。それに、彼女であればむやみにこちらを攻撃出来ない。バックには強力な権力がいるからな。

 

「何の用なんだ?」

 

「貴方の報告書が提出されていないと言うから、こうやって取りに来たんだ。有り難く思えよ?」

 

「ああ、失礼。えっとこれが今日の分だ。それにしても、自動翻訳機は本当に便利だ。文字まで簡単に訳してくれるとは。これなら無理に覚える必要はないか?そうも言ってられぬか。ウ~ム」

 

「ゆっくり覚えてくれれば良い。それよりも見つかったのか?例の痕跡とやらは。」

 

「うん?いや、一切見付かってない。ここまで綺麗に無いってことは、この宇宙から拒絶されたと考えるしか無いかもな。ようは、連中はやり過ぎて宇宙自体が強制力を働かせた、と言ったところか?」

 

「じゃあ、鉄朗。お前のやってることは無意味になるんじゃないか。」

 

「そうも言ってられない。あのイスカンダルを追い詰める連中だ、もし、残ってたら宇宙がヤバイことになる。だから、責任を持って探さなきゃならんのだ。」

 

そう、最後に出てきた奴はきっとアメコミのヤベー奴に決まってる。最初の奴はきっとアルカディア号だろう。アルカディア号を見つけるのが早いかもしれないな。

所詮は単なるパイロット

たとえエースと呼ばれても、辺境の一惑星での話さ。

 

sideメルダ

彼がこちらに残って早1月の歳月が流れた。

ガミラス内部の政変も落ち着きを取り戻し、ヴィルヘルムはせっせと書類にサインをしている頃だろう。

 

そんな中、我々はガトランティスとの領土争いに、いそしんでいる。

今まで戦線を拡大していたツケが今になって現れだした。綻び始めた戦線を後退し、内部へと敵を引きずり込んで、全方位から殲滅する。

ドメル元帥亡き今、ドクトリンの見直しが行われていた。

 

ただ、今の私達にはあまり関係がない。

既存の戦術を駆使して、ドメル元帥の穴を上手く埋めていくのが、私達の任務だ。

確かにガトランティスは手強い相手だが、ドメル元帥が築き上げた戦術を私達なりに解釈をすることで、一時の時間を稼ぐことができている。

 

それほどまでに彼等は、蛮族のような突撃一辺倒の戦いかたをする。

しかし、徐々に学習してきていることは確かであろう。

だから我々も悠長にしている暇はない。

 

鉄朗は多少の不利を覆す力を持っているが、全体で見た場合その力は微々たるものだ。

だから、本国にも父上にも急いで貰わねば。

 

こいつはきっとこれからも無茶をするだろう。私にはそれを見届ける義務が有るのかもしれない。彼が死なぬように、私なりに努力していこうと思う。

 

「メルダ、これからもよろしくな。」

 

「何を今更、それくらいわかっているさ。」

 

今はこの時を、命があるこの時を楽しむとしよう。

 




さて、とりあえず2199編は終了とします。
後々外伝もの、地球での出来事をポツポツと書いていきたいです。目標としては一ヶ月に1更新くらいで、
作者が2202を見るまで本編は取り敢えず休載とします。正直なところエタりそうだったので、ひとまず休載します。来年の3月位には書き出せたらなと。
続きを書くとすれば、アルカディア号を出していきたいです。


取り敢えず他の小説を書きつつ、考えていきたいですね。ちなみに次の小説は、ゲート自衛隊とダークソウルのクロスとします。


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