GOD SPEED STRATOS (ジャズ)
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プロローグ

初めまして、ジャズと申します!
仮面ライダージオウのカブト編をみて書きたくなりました。
駄文なので暖かい目で読んでいただけると幸いです。


ーー二〇XX年ーー

 

『ーー続いてのニュースです。世界で初めて《IS》を動かした男性の《織斑一夏》君が、《IS学園》に入学することが決まりました。調べによりますと、織斑君はあらゆる国や機関からの干渉を受けないIS学園にて、彼の身の保護のため』ープツンー

 

 

???「…やれやれ、あの日から毎日このニュースか」

 

そう言って、少年はうんざりしたようにテレビのスイッチを切る。

少年の名は《天道総輝(テンドウソウキ)》。

 

???「無理もない。今の女尊男卑の風潮がひっくり返るかもしれないんだ。おそらく、世界中があいつに注目しているだろう」

 

総輝のつぶやきに答えたのは、彼の祖父である《天道総司(テンドウソウジ)》。かつて地球外生命体《ワーム》から人々を守るため、《仮面ライダー》として戦っていた“天の道を往き総てを司る男”だ。だが、それも今は何十年も前の話。年齢も既に還暦を過ぎてあるのだが、彼のその美貌は仮面ライダーとして活躍していた頃から衰える気配を見せない。

ちなみに総輝の両親は海外で働いており、今はこの屋敷に総輝と総司の二人で生活している。

 

総輝「“女尊男卑”か……お祖父ちゃんがライダーだった頃はまずなかったんじゃないか?」

 

総司「まぁな。もし今《仮面ライダー》が現れたら、女性権利団体が黙っていないだろうな」

 

総司の言いたいことを察し、総輝も苦笑いを浮かべる。

 

総司「…それより、今日は学校でISの適性検査があるんだろう?」

 

総輝「ああ.あまり気乗りはしないがな…」

 

総輝はやれやれと首を振って答える。

織斑一夏がISを動かしたということがあってから、現在全国で男性を対象としたISの適性検査が行われている。彼以外のIS操縦者を見つけるためだ。

だが総輝はそれを受けたいとは思っていなかった。なぜなら、ISというのは女性しか扱えないものなので、織斑一夏という男性操縦者が現れたからと言って自分がISを動かせるとは限らない。つまり時間の無駄だと思っていたからだ。

そんな彼を見て、総司は軽く笑って

 

総司「おばあちゃんが言っていた……」

 

そして、人差し指を上に立てて

 

総司「“真の才能は少ない。そしてそれに気づくのはもっと少ない”…ってな。お前の中にも、まだ隠された才能があるかもしれない。“食わず嫌い”はダメだぞ。何事にも挑戦してこそ、新たな発見というものがあるんだ」

 

総輝「…そうだな、分かった。とりあえず受けてみる」

 

そして、制服に着替えて準備を済ませた時、玄関のインターホンが鳴った。

 

総輝「お出迎えか……人気者は辛いな…」

 

???「総輝ーーー!!学校行こうぜーーー!!!」

 

玄関からは少年の活発で元気な声が響く。

総輝はやれやれと首を振って、玄関から出る。

門の前には総輝と同じ制服を着た少年が立っていた。

 

総輝「うるさいぞ大牙。朝っぱらから大声を出すな。近所迷惑だ」

 

玄関から総輝を呼んでいた少年の名は《加賀美大牙(カガミタイガ)》。天道総司の友人であり好敵手の《加賀美新》の孫である。

彼ら祖父どうしのつながりもあり、総輝と大牙は幼馴染の関係にある。

 

大牙「何だよ、今日は一緒にIS適性検査を受けに行くって約束だったろ?」

 

総輝「分かってるさ」

 

そう言いながら総輝はガレージへと向かう。そこには赤いバイクが止めてあった。先端にはカブトムシの角のような意匠が見られる。

これは、かつて天道総司が仮面ライダーカブトとして活動していた頃に使っていたバイク、《カブトエクステンダー》だ。もう何十年も前のバイクなのだが、総司が普段念入りに手入れしており、さらにカブトエクステンダーの耐久が非常に高いのもあって今も何の問題もなく動く。

ちなみに総輝は中学を卒業すると同時にバイクの免許を取ったので、現在は総輝の移動手段として用いられている。

 

総輝がバイクのエンジンをふかしていると、玄関から総司が出てきた。

 

総司「よう、大牙。わざわざ総輝を迎えにきてくれたのか」

 

大牙「あ、総司さん!おはようございます!!」

 

総司「…相変わらず朝から元気だな。その性格も、あいつ譲りなのかもしれないな」

 

総司が懐かしむように呟く。

そして、総輝がヘルメットをかぶり、いよいよ出発の準備が整った。

 

総輝「じゃあ、行ってくる」

 

総司「ああ、気をつけてな」

 

大牙「総司さん、行ってきます!」

 

そして、総輝と大牙は同時に走り出した。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

二人が学校につき、会場である体育館には既に行列ができていた。

そして、行列の先には日本製のISである《打鉄》が二つ置かれている。

 

総輝と大牙が列に並ぶと、皆の視線が一斉に二人に向けられる。

 

『おい、天道だ』『加賀美もいるぞ』『あいつらも受けにきたのか……』

 

総輝と大牙は、学校では知るものがいないと言っていいほどの有名人だった。二人とも勉強、スポーツ面で誰よりも秀でており、かなりのイケメンである。

それに加えて、片や絵に描いたような俺様系男子、片や学校随一の熱血系男子だ。これほどのスペックを持ちながら、注目を集めない方が無理な話だ。

 

そして、いよいよ総輝と大牙の番に回る。

 

総輝の目の前には《打鉄》が鎮座しており、その横にメガネをかけた童顔の女性が立っていた。

 

「では、このISに触れてみてください」

 

言われて総輝はISへと手を伸ばす。

するとその時だった。

 

総輝「(?!な、何だこれは?!頭の中に、情報が無理やり……!)」

 

咄嗟に手を離すと、打鉄が光を放っていた。

 

???「そんな!ISが反応した?!」

 

童顔の女性は目を見開いて両手で口元を押さえている。

すると隣でも、同様の騒ぎが起こっていた。

総輝が隣を見ると、そこには《打鉄》を纏った大牙が何とも言えない表情で立っていた。



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第一話 入学

どうも、ジャズです!
短い文ですが、基本的にはこの文量で行こうと思っています。
では、スタート!


 

総輝と大牙がISを動かしてから数ヶ月、今日はいよいよ学校の初日である。

通う学校はIS学園。彼らがISを起動させてから僅か数週間で話がまとまり、諸々の手続きを済ませて入学が決まった。その間、様々なマスコミの取材、企業からの勧誘、果ては世界中の研究所から誘拐されかけるような事態まで起こったが、総輝と大牙はそれらを全て撒き、全て断り、全て返り討ちにしたのはここだけの話。

 

玄関では、総輝がIS学園の制服を着て、いよいよ出発しようとしているところだった。

 

総司「もう行くのか」

 

総司が奥から総輝を見送るために出てくる。

 

総輝「ああ。学園まで少し遠いからな。あのバイクを使っても、少々時間がかかる」

 

総司「そうか。荷物はそれだけでいいのか?」

 

総輝「ああ。向こうは全寮制らしいからな。必要なものは全て送っておいた」

 

すると総司は、何かを思い出したように「少し待ってろ」と言い残し、部屋へと戻っていく。

そして、玄関に出てくると、彼は銀色のスーツケースを持って現れた。

それを見た総輝は目を見開く。

 

総輝「じいちゃん、これは……!」

 

そのスーツケースには、カブトムシを模したマークに《ZECT》という文字が入っており、フタを開けると銀色のベルトが入っていた。

 

総司「持っていけ。使い方は分かっているな」

 

総輝「ああ…でも、これは……」

 

総輝は少々戸惑っていた。

当然だ。これは総司がかつて《仮面ライダーカブト》に変身するためのアイテムだ。しかしそれは、選ばれたものにしか使うことはできない。総輝はこれを扱う自信が無かった。

 

総司「俺が持っていても、もうこれは使えないからな。お婆ちゃんは言っていた…“力というのは受け継がれていくものだ”…ってな。それに、お前は俺の孫だ。お前に出来ないことなど何一つない。お前は“天の道を往き、総てを輝かせる太陽”だ。自分の力を信じろ。お前ならきっと使いこなせる」

 

総輝「…分かった。使わせてもらう」

 

総輝はスーツケースを受け取ると、ドアを開けていよいよ玄関から出た。

そして、スーツケースやその他の荷物をバイクに収納し、エンジンをかける。

 

すると、遠くから青いバイクが走ってきて総輝のそばで停止する。

ヘルメットを挙げると、乗っていたのは大牙だった。

 

大牙「よう!もう準備は出来たのか?」

 

総輝「ああ…お前、そのバイク…」

 

総輝は大牙が乗っているバイクを見る。

バイクの車体は全体的に青で統一されていた。そしてその先端には、クワガタムシを思わせる牙のような造形が作ららていた。総輝が乗っているカブトエクステンダーと対をなすような形状だ。

 

大牙「え?ああ、《ガタックエクステンダー》さ!俺もじいちゃんからこれをもらったんだ!あと、銀色のベルトも」

 

総輝「そうか…」

 

そこまで聞くと、総輝は納得したように頷き、ヘルメットを被る。

 

総司「二人とも、気をつけてな」

 

総輝「ああ、行ってくる」

 

大牙「総司さん、行ってきます!!」

 

そして、二人は同時に走り出した。

 

大牙「なあ、どうせならクロックアップして行かね?」

 

総輝「バカか」

 

そんなやりとりをしつつ、彼らはIS学園へと向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーIS学園・一年一組教室ーー

 

クラスの女子たちの視線が、一斉にある方向へと向けられていた。

当然だ。何故ならその視線の先には、IS学園にいるはずのない男性の生徒がいるからだ。しかも三名も。

 

一番前の席に座っているのは、世界で初めてISを動かした男性の《織斑 一夏》が座っており、その後ろに《加賀美 大牙》、そして少し離れたところに《天道 総輝》が座っていた。

 

クラス中の視線が集まっているため、当然彼らの心境は穏やかではない。

 

一夏「(うわぁ…もし一人だけだったら……いや、考えないようにしよう)」

 

大牙「(そんなに珍しいものなのか…?まるで動物園のパンダになった気分だな)」

 

総輝「(晩飯何作ろう……)」

 

……否、総輝だけは視線を集めても動じるどころか晩飯のメニューを考えていた。

 

しばらくすると、部屋の扉が開きメガネをかけた童顔の女性が入ってきた。

 

???「はーいみなさーん!それではSHRを始めます!

みなさん、入学おめでとうございます!私は、副担任の《山田 真耶》です」

 

大牙「(《山田 真耶》……やまだまや……逆から読んでも……やまだまや……)」

 

大牙がそんな思考をしてる間にも、彼女はどんどん話を進める。

 

真耶「では自己紹介に入りますので、名前順からお願いします」

 

そして、滞りなく自己紹介が進み、次は織斑一夏の番になる。

 

真耶「では、織斑君お願いします」

 

一夏「ひゃ、ひゃい!」

 

一夏は跳ねるように立ち上がり、

 

一夏「えっと…織斑 一夏です……」

 

他に何を言うのだろう…と、周囲の女子たちが期待の目で彼を見つめる。

 

一夏「……以上ですっ!!」

 

まさかの言葉にクラス中の女子がずっこけた。

キョトンとして立ち尽くしている一夏の頭に、勢いよく黒い物体がぶつけられる。

 

???「全く…自己紹介も満足にできんのか?」

 

一夏の頭を殴りつけたのは、黒スーツを着た凛々しい女性だった。それを見た一夏はギョッとした顔になって

 

一夏「ヴェ?! 千冬姉?!」

 

一夏の頭に再び黒い物体がぶつけられる。

黒い物体の正体は出席簿だった。

 

千冬「織斑先生だ!馬鹿者」

 

彼女の名は《織斑 千冬》。かつてISの世界大会である“モンドグロッソ”の初代チャンピオンであり、《ブリュンヒルデ》の名で知られる世界最強のIS操縦者である。また、一夏の実の姉でもある人物だ。

 

千冬は生徒たちの方を向いて

 

千冬「諸君、私がこのクラスの担任である《織斑 千冬》だ。君たち初心者を一人前のIS乗りにするのが私の仕事だ。ISのことで何かあれば私に質問しろ。直ぐに理解し行動しろ。返事は“はい”か“イエス”のみだ。分かったな?」

 

彼女がそこまで言うと、部屋が耳をつんざくような悲鳴に包まれた。

 

 

「キャアアアアァァァァァ!!!!!」

「千冬様よ!!」

「私、貴女に憧れてここまで来ました……北九州から!!」

 

千冬はこの事態にやれやれと首を振って

 

千冬「全く…何故私のクラスにはこんなに馬鹿が集まるんだ?仕組まれているのか…?」

 

しかし彼女の言葉は騒ぎをよりヒートアップさせた。

 

「千冬様ァァ!!もっと!もっと罵ってェ!!」

「そして時に優しく!!」

 

千冬「……山田先生、自己紹介を続けさせろ」

 

 

騒ぎが続く中で、千冬は自己紹介の続行を促した。

 

真耶「あ、はい。分かりました…では加賀美君、お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大牙「はい゛っ゛!!!!!!!

 

大牙は過剰とも言える大きな返事をして勢いよく立ち上がる。彼の大きな声であれほど騒がしかった教室が一瞬で静まり返り、視線が一斉に大牙の方へ向けられる。

 

大牙「初めまして、《加賀美 大牙》と言います!!ISのことは全く分からないので、色々と教えてくださると嬉しいです!では、よろしくお願いします!!!!」

 

緊張しているのか、やや早口で喋ると、ストンと椅子に座りなおす。

直後、再び教室中が歓声の声でも覆われる。

 

「熱血系イケメンきたあぁぁぁぁぁ!!!」

「どこかのテニスプレイヤー並みの熱さ……嫌いじゃ無いわ!!!」

「熱い!熱すぎて、教室の温度が上がってる!!」

 

千冬「静かにしろ!まだ自己紹介派終わっていないぞ!!」

 

真耶「で、では…次の人お願いします」

 

そして、自己紹介は再び再開された。以降は特に詰まることなく着々と進められ、そしていよいよ三人目の男子の番がやって来た。

 

真耶「では次、天道くんお願いします」

 

すると総輝はゆっくりと立ち上がり、人差し指を天に向けて

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた……“世の中で覚えておかなければならない名前はただ一つ。《天の道を往き、総てを輝かせる太陽》”……」

 

そして総輝は天に向けていた人差し指を今度は窓の方に向ける。すると、空から雲に隠れていた太陽の光が漏れ出し、一筋の光となって総輝を照らす。

 

総輝「俺の名は《天道 総輝》。以上だ」

 

そう締めると総輝はゆっくりと座る。

直後、本日最大級とも言える黄色い悲鳴が教室を埋め尽くした。

 

「絶滅したと思ってた“俺様系イケメン”!!」

「ああ…なんて神々しい……」

「眩しい!眩しすぎて天道くんの顔が見れない〜!!!」

 

そして中には気絶している女子もいる。

真耶はと言うと、総輝のあまりにも堂々とした自己紹介に感激して盛大な拍手を送っており、千冬はもう何もいえずにただ片手で両目を覆っている。

千冬は察してしまったのだ。問題児ばかりが集まると先程自分は言ったが、今年のクラスはそのレベルでは無い。

世界でISを動かせる三人の少年達。しかしそれらは全て、規格外の問題児ばかりだった。一人は自身の愚弟、一人は超熱血男子、そして最後の一人は天上天下唯我独尊男子。

今年のクラスは大いに荒れる……それを予感した千冬は先に起こるであろう多くの問題に頭を悩ませずにはいられなかった。

 




ああ…早く彼らを変身させたい!
お読みいただきありがとうございました!
感想など待ってます!!


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第二話 クラス代表

HRが終わると、一夏は早速大牙と総輝の元へ行った。

 

一夏「よう、俺は織斑 一夏だ。男同士、よろしくな!」

 

一夏は人当たりの良さそうな笑顔で右手を差し出す。

 

大牙「おう!さっきも言ったが、俺は加賀美 大牙だ!こちらこそよろしく!!」

 

まずは大牙が握手に応じる。

 

総輝「…天道 総輝だ」

 

対して総輝は相変わらずの雰囲気を纏ったまま一夏の握手に応じる。

 

一夏「にしてもお前ら、すごい自己紹介だったな。よくみんなの前であんな堂々とできるなあ」

 

大牙「いや、俺も結構緊張してたぞ?お陰で早口になるわ大声になるわで、初回からちょっとやらかした感がある」

 

総輝「大声なのはいつものことだろう」

 

大牙「んだとぉ?!」

 

総輝「ほらそう言うところだ」

 

彼らがそんなやりとりをしていると、1人の女子生徒がやって来た。

 

???「一夏」

 

彼女は一夏の名を呼ぶ。

 

一夏「よう、箒」

 

彼女の名は《篠ノ之 箒》。一夏の幼馴染で、ISの生みの親である《篠ノ之 束》の妹である。

 

大牙「ああ、シノノノノさん。どうかしたか?」

 

箒「“篠ノ之”だ、“の”が一個多い。少しこいつを借りていいか?」

 

総輝「好きにしてくれ」

 

箒「感謝する。行くぞ、一夏」

 

一夏「わぁっ、ちょっと引っ張るなって!」

 

一夏は箒に無理やり引っ張られて外へ駆り出されていった。

 

大牙「“篠ノ之”……どっかで聞いたことあるような…」

 

大牙が顎に手を当てて何かを思い出すように思案する。

 

総輝「それはあれだろ…IS開発者の篠ノ之博士のことだろう?」

 

大牙「ああ、それだ!同じ名字ってことは、あいつはもしかして……」

 

総輝「十中八九、博士の血縁者だろうな。“篠ノ之”なんて名字、世界中を探してもそうないだろう」

 

そこまで話すとチャイムが鳴ったので、2人は次の授業の準備に取り掛かる。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

一夏「(……どうしよう……)」

 

現在、一夏は危機的状況に落ちていた。

そう、授業の内容が全く分からないのだ。

 

真耶「ーーーーここまでで分からない人はいますか?」

 

誰も手を上げない。この空気で手を挙げる勇気は一夏にはなかった。

すると真耶は一夏の方へ近づいて

 

真耶「織斑君は大丈夫ですか?」

 

それを聞いて安心したのか、一夏は意を決して

 

一夏「……あの、先生…」

 

真耶「はい、何でしょう?」

 

一夏は少し深呼吸し、

 

一夏「……ほとんど全部分かりません」

 

真耶「……え?」

 

その場にいた全員が耳を疑い、真耶は思わず聞き返した。

大牙は表情が固まり、総輝は溜息をついた。

 

すると、教室の端の方にもたれかかっていた千冬が険しい顔で一夏の元へ歩く。

 

千冬「…織斑、入学前に渡された参考書は読んだのか?」

 

一夏「参考書…?ああ、あの分厚いやつか……すみません、電話帳と間違えて捨てちゃいましt…ヴェイ!!」

 

一夏の頭に黒い出席簿が勢いよく振り下ろされ、スパァァンという軽快な音を立てた。

 

千冬「“必読”と書いてあっただろ馬鹿者!再発行してやるから一週間で覚えろ」

 

一夏「あ、あの量をですか?!」

 

千冬「や・れ」

 

一夏「……ハイ」

 

千冬の雰囲気に圧倒され、一夏はただ肯定の返事をするしかなかった。

 

真耶「あ、ちなみに加賀美君と天道君は大丈夫ですか?」

 

大牙「あ、はい。今のところは…」

 

総輝「問題ありません」

 

千冬「少しはこいつらを見習え」

 

一夏「……ハイ」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

授業が終わり、一夏は再び大牙と総輝の元へ来ていた。

 

一夏「あの本の内容、殆ど覚えたのか?!」

 

大牙「言ったろ?大体だよ」

 

総輝「俺は殆ど暗記している。それより、よければこれを使え」

 

そう言って、総輝は三冊のノートを取り出す。

 

一夏「これは?」

 

総輝「あの参考書の内容を全て覚える必要はない。要点だけまとめたものだ。これを覚えたらISに関する授業は大体ついていける」

 

そう言われて、早速一夏と大牙はノートを見始める。

 

一夏「おお…すげぇわかりやすいなこれ」

 

大牙「流石だな総輝」

 

総輝「当然だ。俺を誰だと思っている?………“俺様”だぞ?」

 

総輝は得意げな顔で言う。

一夏と大牙は苦笑いを浮かべている。

 

一夏「お、おう……流石は天の道を往く男だな」

 

大牙「一夏、こいつはいつもこんな調子だからな。早く慣れろよ?」

 

一夏「……善処する」

 

すると、彼らの後ろから女子生徒が話しかける。

 

???「ちょっとよろしくって?」

 

一夏「んー?」

 

大牙「あぁ?」

 

総輝「……」

 

そこにいたのは、縦ロールの金髪のいかにも貴族の子、という感じの少女だった。

彼らの反応を見て女子生徒は信じられない、と言う表情で

 

???「まあ!何ですの、そのお返事は?!この私に話しかけられるだけでも光栄なことなのだから、それ相応の態度というものがあるんじゃないかしら?」

 

大牙「(何言ってんだこいつ)」

 

総輝「(……面倒な奴が来たな)」

 

一夏「悪いな、俺たち君が誰だか知らないし」

 

すると少女はすごい剣幕で彼らに迫る。

 

???「なっ…私を知らない?!この《セシリア・オルコット》を?!イギリス代表候補生にして、入学試験主席のこの私を?!」

 

セシリアという少女は顔を赤くして机をバンバンと叩きながら叫ぶように述べる。

 

一夏「あ、質問いいか?……“代表候補生”って何?」

 

一夏の言葉に周囲で聞き耳を立てていた女子たちは一斉に転び、セシリアはわなわなと体を震わせている。

 

セシリア「信じられませんわ……日本の男性という名は、皆知識が乏しいものなんですの……?」

 

すると総輝が代わりに答える。

 

総輝「こいつと一緒にしないでもらいたいな。一夏、代表候補生というのは、IS国家代表として選出されるやつらのことだ」

 

一夏「……つまり?」

 

総輝「まあ、オリンピック代表候補選手みたいなものだ」

 

一夏「ああ、なるほど!」

 

一夏が納得したように頷く。

 

セシリア「そう!私は選ばれた人間、つまり“エリート”なのですわ!本来なら、私のような人間と同じクラスになるだけでも奇跡……!その現実をもう少し理解していただける?」

 

大牙「へえ」

 

総輝「ほう」

 

一夏「そっか、それはラッキーだ」

 

彼らの淡白な反応にセシリアの目は鋭く光る。

 

セシリア「…貴方達、私をバカにしているんですの?」

 

大牙「まさか」

 

セシリア「…まあでも、私はエリートですから?泣いて頼まれたら、教えて差し上げてもよくってよ?何せ私、入試で唯一教官を倒したエリートですから!」

 

一夏「あれ?俺も倒したぞ?教官」

 

するとセシリアは今まで以上の剣幕で一夏に詰め寄る。

 

セシリア「は、はあ?!」

 

すると続けて大牙も

 

大牙「ん?一夏も倒したのか?俺も倒したけど」

 

総輝「…俺も勿論倒した」

 

セシリア「…ど、どうやって倒しましたの…?」

 

一夏「なんか向こうから突っ込んできたから避けたらそのまま壁につっこんで動かなくなった」

 

大牙「殴り続けてたらシールドエネルギーがいつのまにかなくなってた」

 

総輝「攻撃をかわしてそこに回し蹴りを食らわせた」

 

すると丁度タイミングよく授業開始のチャイムが鳴った。

 

セシリア「っ!続きはまた後で聞きますから!!」

 

そう吐き捨てるように一言いってからセシリアは先へと戻っていった。

 

総輝「(やれやれ……面倒な奴に目をつけられてしまったな)」

 

総輝は溜息をつきながら授業の準備をした。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

授業に入ろうかというタイミングで、千冬が何かを思い出したように切り出す。

 

千冬「…そうだ、再来週行われるクラス対抗戦に出るものを決めていなかったな。クラス代表とは、対抗戦だけでなく生徒会や委員方に出席する…まあクラス委員みたいなものだ。自薦他薦は問わん。だれかいないか?」

 

すると、クラスの女子達が手を挙げて希望を次々に口にする。

 

「はいはい!織斑君がいいと思います!」

「あ、私も!!」

「ううん、ここは加賀美君でしょ!」

「だよね!熱血系の加賀美君なら優勝間違いなしでしょ!!」

「貴方達、わかってないわね……ここはやっぱり、“天の道を往く男”、天道君一択でしょ!!」

「ああ〜っ!!それ私が言いたかったのに!!」

 

それを聞いた三人は驚いたりやっぱりかと諦めた表情になったり当然とばかりに笑みを浮かべていた。

 

千冬「他にはいないか?無ければこいつらの中から選ぶことになるぞ」

 

すると、後ろに座っていたセシリアが机をバンバンと叩きながら叫ぶ。

 

セシリア「納得がいきませんわ!!」

 

彼女のヒステリックな叫びにクラス中の視線が集まる。

セシリアはそれを気に留めず

 

セシリア「そのような選出は認められませんわ!!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!私に、このセシリア・オルコットに、そのような屈辱を一年間味わえとおっしゃいますの?!」

 

セシリアはますますヒートアップしていき、その口調もやや過激なものになっていく。

 

セシリア「実力でいけば、私がクラス代表になるのは当然!それを物珍しいからといって極東の猿にされては困ります!私ははるばるこの島国までISの鍛錬に来たのであってサーカスを見にきたのではありませんわ!!」

 

その言葉にさすがの総輝もピクリと眉を動かし、大牙も不快そうな表情になる。

 

セシリア「そもそも、私にとってはこのような後進的な国で暮らすのは耐え難い苦痛で…」

 

一夏「…イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一^不味い料理で何年覇者だよ?」

 

セシリア「なっ?!」

 

セシリアに反論したのは一夏だった。

 

セシリア「貴方……私の国をバカにしますの?!」

 

一夏「先にバカにしてきたのはそっちだろ?!」

 

そして、セシリアと一夏の口論が始まり、流石に看過出来なくなった千冬が彼らを止めるために口を開いた時だった。

 

総輝「…お祖父ちゃんが言っていた……」

 

総輝がそう言いながらゆっくり立ち上がり、セシリアと一夏も口論をやめ彼を見る。そして総輝はセシリアと一夏を見つめ、

 

総輝「“未熟な果物はすっぱい。未熟者ほど喧嘩をする”ってな」

 

セシリア「なっ…貴方、私が未熟者だと言いたいんですの?!」

 

すると今度は大牙が割って入った。

 

大牙「だってそうだろ。お前は今自分が言ったことの意味わかってるか?この国が後進的だとか、極東の猿だとか言ってたけど、その理論だと今俺たちの担任である織斑先生とお前が乗ってるISを開発した篠ノ之博士も後進的な国の猿ってことになるぞ?」

 

それを聞いてセシリアは最初は訝しんだ表情だったが、冷静さを取り戻してついにその意味が理解できたのか、徐々に顔が青ざめていきやがて何も言えなくなり俯いた。

 

総輝「それと、お前もだ一夏」

 

一夏「え?お、俺?!」

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた…“男はクールであるべき。沸騰したお湯は蒸発するだけだ”ってな。一々あんな挑発に乗るな。無用な争いを生むだけだ」

 

総輝にそう言われ、一夏も黙り込んだ。

静かになった教室を見渡し、千冬は今度こそ口を開く。

 

千冬「…では、候補は織斑・オルコット・天道・加賀美の4人でいいな?一週間後の月曜、第三アリーナでクラス代表決定戦を行う。4人は各自で準備しておくように。では、授業を再開する」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜放課後〜

 

男子三人が集まっていると、真耶と千冬が彼らに近づいていった。

 

大牙「どうしたんですか、山田先生?」

 

真耶「みんなに、寮の鍵を渡しておこうと思いまして」

 

一夏「え?自宅から通うって聞きましたけど」

 

一夏の疑問に千冬が答えた。

 

千冬「今のお前たちは世界で数少ない男性操縦者だからな。自宅から通うのでは、何が起こるかわからない。だからここIS学園で保護も兼ねて寮で暮らしてもらう」

 

一夏「そうか…あ、でも荷物は…」

 

千冬「荷物は最低限の物は送っておいた。感謝しろ」

 

一夏「は、はい……」

 

一夏は引きつった表情で答えた。

 

真耶「では鍵を渡しますね。寮には食堂があるので是非使ってください。部屋にはキッチンもあるので料理もできますよ。あと、大浴場があるのですが、織斑君たちはまだ使えないので部屋のシャワーを使ってください」

 

一夏「え?何でですか?」

 

一夏の疑問に真耶は顔を真っ赤にし、総輝と大牙は一歩引き、千冬は呆れた顔でため息をついた。

 

千冬「…お前は女子と一緒に風呂に入るつもりか?」

 

一夏「え?あ、いや、入りたくないです!」

 

真耶「そ、それはそれで問題が……」

 

大牙「お前ホモだったのか」

 

一夏「違う!!」

 

総輝「…お前とは同じ部屋になりたくないな」

 

一夏「違えって!頼むからそんな目で見ないでくれぇ〜!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

寮の部屋についた大牙と総輝はそのあまりの豪華さに思わず息を呑んだ。国立の学園の寮であるはずなのに、それはまるで高級ホテルの一室のような内装だった。

 

大牙「これは……すごいな…」

 

総輝「相当金がかかってるな。まあ、元は女子校だから、清潔感と上品さを求めたらこうなったのだろう」

 

大牙「あとはIS操縦者だから、その期待も込めてこんな豪華なんだろうな」

 

そして、それぞれが荷物を置いて部屋のあちこちを見て回る。

 

総輝「…キッチンも中々だな。あとは素材さえあればそこそこの料理もできる」

 

大牙「お前の料理かぁ…総司さん譲りのセンスがあれば女子たちもイチコロだろうな」

 

総輝「当然だ。お祖父ちゃんが言っていた…“本当に美味しい料理は食べた人の人生まで変える”ってな」

 

大牙「なら、人生まで変えるほどの料理、期待してるぜ?」

 

総輝「任せろ」

 

すると総輝は、大牙の足元にある銀色のアタッシュケースに目をつける。

 

総輝「…お前もそれを貰ったのか?」

 

大牙「ん?…ああ、これか。爺さんが持って行けってさ。因みに俺は、今度の代表選はこれで行こうと思ってる」

 

総輝「そうか……だが、《仮面ライダー》になるには《ゼクター》に認められないといけないんだろ?」

 

大牙「あ……」

 

大牙は忘れていたのか、口をぽかんと開けてフリーズする。

 

総輝「…俺も、お祖父ちゃんからそのベルトを貰ったんだが、まだゼクターには認めれたかどうかわからない……大牙、今夜試してみるか?俺たちが《仮面ライダー》になるに相応しいかどうか」

 

大牙「試すって……どうやって?」

 

総輝「なに、そんなに難しい事はしないさ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

その夜、総輝と大牙は外に出て、人気のない場所に来ていた。

彼らの腰には銀色のベルトが巻かれている。

 

総輝「…さあ、応えてもらうぞ。俺たちが、ライダーになるに相応しいか……」

 

大牙「…さあ来い!《ガタックゼクター》!!」

 

二人は同時に、天に向かって手を伸ばす。

 

すると、「ブウゥゥゥゥン」という羽虫が飛ぶ音が近づき、暗闇の中から赤いカブトムシと青いクワガタムシが飛んでくる。

そう、《カブトゼクター》と《ガタックゼクター》だ。

 

カブトゼクターは総輝の周りを飛び回り、ガタックゼクターは大牙の頭上を周回する。

そしてそれらは同時に総輝と大牙の手に収まる。

 

大牙「俺を認めてくれるのか……ガタックゼクター…!」

 

総輝「やっぱりお祖父ちゃんの言った通りだ……俺が強く望みさえすれば、運命は絶えず俺に味方をする!」

 

そして、二人は顔を見合わせると強く頷き、総輝はカブトゼクターを左肩の前に構え、大牙はガタックゼクターをやや引き気味に構える。そしてそれらをベルトにセットしようとした時だった。

 

千冬「何をしている!!消灯時間は過ぎてるぞ!!」

 

総輝「……」

 

大牙「……」

 

このあと、彼らは反省文を五枚に渡って書かされた。

 

 




お読みいただきありがとうございます!
ついに、彼らが仮面ライダーの資格を手にしました!
次回はクラス代表決定戦です。
仮面ライダーの活躍、精一杯書かせていただきます!
では、また次回!


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第三話 カブトに選ばれし者

どうも、ジャズです!
色々飛ばしちゃった感がありますが、早く変身させたくてこうなっちゃいました!
戦闘描写が難しかったですが、精一杯書かせていただきました!
では、どうぞ!!


 

〜クラス代表決定戦当日〜

 

その日、一夏と大牙、総輝の三人は第3アリーナのピットに来ていた。

 

真耶「さて、織斑には今日専用機が届いています。しかし天道君と加賀美君、貴方達分は用意できなかったので、申し訳ないんですけど、お二人は…訓練機で戦って頂きます」

 

しかし、真耶の説明に総輝が意見を述べた。

 

総輝「いえ、その必要はありません」

 

千冬「何?」

 

総輝「俺たちは今日、これで戦います」

 

総輝はそう言いながら腰に巻いた銀のベルトを見せつける。

 

千冬「…なんだそれは?」

 

総輝「まあ見ていてください。一夏は準備に時間がかかるでしょう?最初は俺がいきます」

 

そう言って、総輝はアリーナの方へ歩いて行った。

 

千冬「なっ、おい待て!!……まったく、何をするつもりだ?」

 

大牙「心配ありませんよ、先生」

 

千冬「何?」

 

大牙「だってあいつは……“天の道を往く男”ですから」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

アリーナに出た総輝を待っていたのは、既に自分のISを展開して空中で待機している、対戦相手のセシリアだった。

生身で出てきた総輝を見て、セシリアはピクリと眉を動かす。会場に集まった生徒達の間でもどよめきが起きる。

 

セシリア「……貴方、これだけ人を待たせておいて一体なんのつもりですの?生身で出てきたということは、即ち降伏と見なしますが?」

 

総輝「…オルコット、お前は以前こう言っていたな……“自分は選ばれたエリートだ”と」

 

セシリア「……ええ、事実ですもの。それが何か?」

 

総輝「たしかにお前はエリートなのかもしれない。だが所詮その程度だ。俺は違う。なぜなら俺は……天に選ばれしものだからな」

 

そう言うと総輝は右手を高く掲げる。

すると、上空から赤いカブトムシーー《カブトゼクター》ーーが飛来し、総輝の手の中に収まる。

 

セシリア「なっ……なんですのそれは?!」

 

総輝「教えてやる……本当の太陽の輝きがどんなものかをな」

 

そして、総輝はカブトゼクターを左肩の前に構え、力強くあの言葉を口にする。

 

総輝「変身!」

 

《HENSHIN》

 

総輝が腰に巻いた銀のベルトにカブトゼクターをセットすると、そこを中心に六角形のパネルが総輝の全身を覆っていき、やがてそれは完全に総輝を覆い尽くす。その全身は銀色のアーマーで出来ており、所々に赤いペイントと左肩には《ZECT》の文字が書いてある。

この瞬間、総輝は完全に《変身》した。

 

彼の変身に会場のざわめきはより大きくなる。当然だ。彼の姿はISと呼ぶにはあまりにもかけ離れた形状となっている。

だがそんなざわめきの中で、ある一人の少女がこう呟いたーーーー「《仮面ライダー》…」と。

 

〜管制室〜

総輝の変身に驚いたのは会場だけでは無い。

ISスーツも着ずに出て行ったかと思えばいきなり姿が変わるのだ。無理もない。

 

真耶「なっ……なんですかあれは?!」

 

一夏「これが……総輝のIS……?」

 

千冬「《全身装甲》のIS……いや、違う……あれはそもそもISなのか……?」

 

千冬だけは冷静に総輝のISを分析していたが、答えは出なかった。

そんな彼らの疑問に答えるものがいた。

 

大牙「…あれはISではありませんよ」

 

真耶「なんですって?!」

 

一夏「ISじゃないって……?」

 

千冬「ならば、あれはなんだと言うのだ?!」

 

三人は一斉に詰め寄るが、大牙は落ち着いて答えた。

 

大牙「あれはカブト……《仮面ライダーカブト》です」

 

 

〜アリーナ〜

 

セシリアもまた、目の前の総輝の姿に驚かされていた。

 

セシリア「なんですの?!貴方のそのISは?!」

 

総輝「今は知る必要はない。お前には関係のないことだ」

 

そう言いながら総輝ーー否、カブトは手に持ったカブトクナイガンの銃口をセシリアに向ける。

 

セシリア「チ、チャンスをあげますわ!!」

 

総輝「ごちゃごちゃと煩い奴だ。もう試合は始まっているんだぞ」

 

そう言ってカブトは発砲した。

銃弾はセシリアのIS、《ブルー・ティアーズ》の浮遊装置であるPICを正確に打ち抜き、セシリアの飛行能力を奪う。

 

セシリア「(しまった!でも、まだ飛べますわ!)ならば……お別れですわ!!」

 

セシリアはお返しとばかりに手持ち武器である《スターライトmkⅢ》を発砲する。

しかしカブトはそれをあっさり避けると再び発砲、セシリアに命中させてシールドエネルギーを削っていく。

セシリアも負けじと応戦するが、カブトが上手く避けるため当たらない。

 

セシリア「ならば……《ブルー・ティアーズ》!!」

 

セシリアは腰にスカート状に装備されたビット兵器、ブルー・ティアーズを起動する。

すると、四つのビームビットが展開され、カブトを包囲するように四方に構える。

 

セシリア「さあ、踊りなさい!私、セシリア・オルコットと、ブルー・ティアーズが奏でる円舞曲で!」

 

そう言うと、四つのブルー・ティアーズが一斉に火を噴く。しかし、

 

総輝「……お前の円舞曲に付き合うつもりはない」

 

カブトは四方からひっきりなしに攻撃されているにもかかわらず、それらの攻撃を最小限の動きで交わしていく。

しかしさっきと違い、流石に反撃することはできない。

 

セシリア「私の攻撃にここまで耐えたのは貴方が初めてですわ……」

 

セシリアは素直に賞賛の言葉を述べる。事実、彼女の360度から繰り出されるオールレンジ攻撃を全て躱すなど不可能に近い。

 

セシリア「ですがこれで……終幕ですわ!」

 

セシリアは自身の持つ《スターライトmkⅢ》と四つのブルー・ティアーズを同時に発砲する。

流石のカブトもこれを避けることはできず、直撃して大爆発が起こる。

爆発の煙の中から、吹き飛ばされたカブトが地面を転がりながら出てくる。

 

セシリア「あら、まだ生きておられましたか。ですがこれだけの砲撃を受ければ、シールドエネルギーがゼロになるのも時間の問題ですわね」

 

総輝「……」

 

カブトは無言で立ち上がる。

 

セシリア「最初に変身した時は何事かと思いましたが、所詮は不恰好な男性のIS擬き。飛べもしない貴方のそれでは、私の敵ではありませんわ」

 

総輝「…お前、何故そうも男を見下すような態度を取る?」

 

セシリア「……はい?」

 

思わぬ言葉にセシリアは聞き返す。

 

総輝「最初の頃からそうだった、お前は俺たちに対して高圧的な態度をとり続けていたよな…何故だ?」

 

セシリア「……決まっていますわ。男というのはそういう生き物でしょう?」

 

そう言ってセシリアが思い出すのは、彼女の実の父。彼は婿養子である立場から、彼女の母に対してどこか卑屈な態度だった。セシリアはそんな父が嫌いだった。

そして、両親を事故で亡くし、幼くしてオルコット家を継ぐことになった自分にやってきたのは、家の資産や金を目当てに近づく陰険な男たちだった。だから彼女は必死に勉強し、家の資産を守り続けてきた。

そんな男たちを見てきたからこそ、セシリアは男性が嫌いだったのだ。

 

セシリア「……男というのは陰険で、卑屈で、弱い生き物ですわ。だから私は、貴方たちがクラス代表になるのは許せないのです!私は今まで、必死に努力して国家代表候補の地位まで上り詰め、そしてはるばるここまでやってきたのです。それなのに……それなのに貴方達は、ISに関してろくに関わっていないにもかかわらず、私達と同じ場所で、果ては私よりも上の地位まで行こうとしている……男だからと言って、そんなことが許されていいはずがありませんわ!!だから……だから……!」

 

セシリアは銃口をカブトの方に向け、

 

セシリア「だから私は、貴方を絶対に倒します!貴方を倒して……男とは所詮こんな生き物だと、公衆の前で見せつけてやります!覚悟なさい!!」

 

そして、いよいよトドメをささんとトリガーに指をかける。

 

総輝「そうか……ならば所詮、それがお前の限界だ」

 

セシリア「なんですって?」

 

カブトはーーーー総輝はマスクの下からセシリアをじっと見据えて

 

総輝「お前はそうやって、俺たちを見下すことしかできない。だから教えてやる。男というのは、こういうものだということをな……!」

 

そう言って、総輝はベルトのカブトゼクターの角を少し上げる。

すると、警告音ともチャージ音とも取れる音とともに電流が走り、銀の装甲が徐々に浮き上がっていく。

そして、

 

総輝「キャストオフ!!」

 

《CAST-OFF》

 

総輝がカブトゼクターの話角をレバーのように後ろは引くと、再び電子音声が流れ銀の装甲が勢いよくパージされる。

 

セシリア「きゃっ?!」

 

装甲の一部が自分の方へ飛んできたのでセシリアは思わず両手で頭をガードする。

ガードを解いて目に移ったのは、装甲が外れてスマートな形になったカブトの姿だった。

そして、下顎を起点にカブトムシの角のような形のカブトホーンが上がる。

 

《Change Beetle》

 

そう、この姿こそ、仮面ライダーカブトの真の姿。

 

セシリア「まさか…《一次移行》?!」

 

カブトの形態変化にセシリアは再び驚かされが、すぐに落ち着きを取り戻す。

 

セシリア「…っ、ふん!防御を捨てて速さで勝負するおつもりでしょうが、残念ながらこの場からは逃げられませんわよ?今度こそ、これで終わりですわ!!」

 

そして、再びブルー・ティアーズのすべての砲門が火を吹いた。

レーザーの雨はすべて余すことなくカブトに降り注ぎ、大爆発を引き起こす。

この瞬間、セシリアは自身の勝利を確信し不敵な笑みを浮かべたーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーしかし次の瞬間、信じがたい光景が目に飛び込んだ。

四つのブルー・ティアーズが何故か同時に爆発したのだ。

 

セシリア「(なっ……?!)」

 

すると今度は、手に持ったスターライトmkⅢが半分に切り裂かれ、爆発する。

 

セシリア「何が……起きているんですの……?!」

 

そして今度は後ろから強い衝撃が襲い、セシリアは地面に落下する。

うつ伏せになって倒れたセシリアの前に何かが立ち止まった。

セシリアが見上げると、そこにいたのは無傷で自分自身を見下ろすカブトの姿があった。

 

ー総輝視点ー

 

凄まじい数のビームが自分に向かって飛んでくる。

これを受ければひとたまりもないだろう。まして今は、防御を捨てた状態なのだ。

…だが、ライダーフォームになったカブトには切り札がある。そしてこの切り札こそ、仮面ライダーカブトが最強と言われる所以である。

 

総輝「ーー《クロックアップ》!」

 

《Clock Up》

 

総輝はベルトの右側にあるスイッチを弾くように押す。

すると、電子音声が流れた後にすべての時が止まった。

自分に降りかかるはずだったレーザーの雨は直撃する寸前でスローモーションで動き、地面に舞い上がる塵や埃、観客の人々の動き、そして目の前のセシリアに至るすべてが時が止まったように遅くなる。

 

総輝「すごいな……これがクロックアップか」

 

総輝は初めて体感する高速の世界に少し感動を覚えるとともに、その場から悠々と歩き出す。

 

総輝「…さて、まずはあれをどうにかするか」

 

まず、総輝は四つのビットを標的にする。

総輝はカブトクナイガンをクナイモードにすると、その場から飛び上がって一つ目のビットを切り裂いて破壊する。

それを立て続けに行い、四つのビットをすべて破壊し終えると、今度は空中に浮遊しているセシリアに向かってジャンプし、手に持ったライフルを破壊すると、今度は背後に回って背中のスラスターを破壊する。

 

《Clock Over》

 

ここで、タイムアップの音声がなる。

世界がスローモーションの状態から通常に戻る。

直後、彼の背後で『ガッシャアァァァン!!』という音がなり、振り返るとそこには、カブトに飛行ユニットを破壊され飛べなくなったセシリアがうつ伏せになって倒れていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

セシリアは一体何が起きたのか訳がわからず、混乱した状態でカブトを見上げる。

 

セシリア「…あ、貴方……一体、何を……しましたの……?」

 

セシリアはやや震えた声で尋ねた。

カブトは無言のままセシリアを見下ろしている。

 

セシリア「(一体……何なんですの、この男は……?何故、なぜこれほどの力を……)」

 

気づけば、セシリアの身体は震えていた。ISの装甲がガチャガチャと音を立てているのが自分にもよく聞こえる。

 

セシリア「(これは……そうか、私は恐れているんですわ……私は今まで、これほど手痛くやられた事など無かった)」

 

カブトはしばらくセシリアを見下ろしていたが、しばらくするとくるりと背を向けて歩いて行く。

セシリアはその背中を見つめることしかできない。

身体が震えて、立ち上がることも出来ない。

 

セシリア「(私はこのまま……負けてしまうの……?私が見下した、この男に……?)」

 

その時、セシリアの頭に今まで自分が見てきた男たちが走馬灯のように流れて行く。他人の顔色を伺って媚びへつらうもの、金目当てに近づいてくるもの、それら全ては自分にとって情けない者ばかりだった。

 

しかしこの男はどうか。己に絶対の自信を持っており、他人に媚びへつらう事など有りはしない。そして、自分には無い強さを持っている。

 

ーーー勝ちたい。セシリアはその時、純粋にこう思った。クラス代表の為でも、男性が憎いからでもない。この男、《天道 総輝》という男に勝つことが出来れば、自分は更なる高みへ登れるかもしれないーーーー

セシリアはそこまで考えると、震える身体に鞭打って立ち上がった。そして、真剣な眼差しでカブトーー天道 総輝を見据える。

 

それに気づいたカブトがゆっくりと振り返る。

 

総輝「……ほう。まだ立ち上がることができたか」

 

セシリア「……ええ。おかげさまで正直、ギリギリですけれど」

 

セシリアは不敵な笑みでそう返す。

 

総輝「どうする?その状態でまだやるか?」

 

セシリア「当然ですわ。ここまで来て中断などあり得ません。私は戦います……ですがそれは、代表候補生としてでも、クラス代表候補としてでもありませんーーひとりの戦士、《セシリア・オルコット》として、私は最後まで貴方と戦います」

 

総輝「……そうか。ならば俺も、全力でそれに応えよう」

 

そう言ってカブトは、全身をセシリアの方に向けた。

 

セシリア「(ビットやライフルは無し、シールドエネルギーも僅か……でも、諦めない!!)《インターセプター》!!!」

 

セシリアは最後の武装、近接武器である短剣を取り出して構えた。

カブトもカブトクナイガンを逆手に持って構える。

 

セシリア「ーー参ります!!」

 

セシリアは残ったブースターを全開にしてカブトに肉迫する。

 

セシリア「はあっ!!」

 

カブトの目の前まで近づくと、インターセプターを上段から振り下ろす。

カブトはそれを躱すと、カブトクナイガンでセシリアの腰を斬りつける。

そこからは一方的だった。セシリアの攻撃はカブトにあっさり避けられ、反対にセシリアはカブトの攻撃を受け続けている。それでもセシリアは必死に食らいつくが、戦況はもはや覆ることはない。

 

そして、カブトのカウンターの蹴りがセシリアに命中し、セシリアは後方へ大きく吹き飛ばされる。同時に、ブルー・ティアーズのシールドエネルギーが残りレッドゾーンに到達する。

するとカブトは、カブトクナイガンを捨ててセシリアに対して背中を向けた。

 

セシリア「(くっ……まだ、まだですわ!!私は負けない……負けるわけにはいかない!!)はああああああああっっっ!!!!!」

 

セシリアは咆哮を上げながら、最後の力を振り絞ってスラスターを全開にしてカブトに急接近する。

その間、カブトはカブトゼクターの足についた三つのボタンを順番に押す。

 

《ONE》

《TWO》

《THREE》

 

そして、カブトゼクターの角を元に戻す。

すると、タキオン粒子がチャージアップされる音が鳴り響く。

 

総輝「《ライダーキック》!」

 

そして、ゼクターホンを再び後方へ展開する。

 

《RIDERーKICK》

 

電子音声が流れると共に、青い電流がカブトの体を伝って一度頭部へ行き、そして右足の方へ降りる。

セシリアがカブトへ到達すると同時に、カブトは振り向きざまに回し蹴りを食らわせる。

 

総輝「はっ!!!」

 

回し蹴りはセシリアの頭部を直撃し、セシリアは時計回りに回転しながら倒れる。身体には電流が走り、そして

 

セシリア「きゃああああああっ!!!」

 

セシリアのブルー・ティアーズが大爆発を起こす。

そして、爆炎の中からISが解除され、ISスーツの状態のセシリアが地面を転がりながら出てくる。

 

その反対側には、ゆっくりと体を起こしながら人差し指を天に向けて立つカブトの姿があった。

そして同時に、試合終了のアナウンスが流れる。

 

《試合終了 勝者:天道 総輝》

 




お読みいただきありがとうございます!
カブトの初戦闘シーン、如何だったでしょうか?
個人的に、総輝がカブトに変身するシーンあたりから、カブトのBGMである《ONLY ONE》を流しながら読んでいただけるとより盛り上がると思います!是非、試してみてください!
あと、評価などもつけてくれると嬉しいです!
では、また次回!


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第四話 vs戦いの神

お待たせしました!ガタック戦です!!
戦いの神の戦闘、ご堪能ください!!
BGMは《FULL FORCE》がオススメです!!


〜管制室〜

 

総輝とセシリアの試合が終了した時、管制室は静まり返っていた。

しかしそれは、決して戦いの結果に白けたとかそういうのではない。皆驚きすぎて言葉も出ないのだ。

見たことのないIS、しかもそれは一次移行し、さらには一瞬でセシリアのISに致命的なダメージを与え結果的に勝利した。

 

沈黙を破ったのは、真耶のケータイの通知音だった。

 

真耶「……!あ、お、織斑君!君の専用機が届いたそうです!」

 

真耶の言葉に全員がはっと我に返り、

 

千冬「そ、そうか……加賀美、織斑。次の対戦はお前達だ。織斑は私について来い。加賀美、お前は試合の準備を……」

 

そこまで言うと、千冬はあることに気づく。

 

千冬「…加賀美、もしやお前も……?」

 

大牙「はい。俺も持っています」

 

そう言って、大牙は腰に巻いた銀のベルトを見せる。

それを見て千冬はため息をついて、

 

千冬「……分かった。ならば次の試合、お前はそれを使え。特別に許可してやる。但し、天道もだが試合後は尋問に付き合ってもらうぞ」

 

大牙「了解しました」

 

そう言って、大牙はアリーナの方へ歩いて行き、一夏は千冬に連れられ専用機の方へ歩いて行った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜アリーナ〜

 

約数十分後、一夏は専用機の《白式》を纏い、大牙は総輝と同様に制服の上から銀のベルトを巻いた状態で出てくる。

 

一夏「なぁ、大牙。総輝もそうだけど、お前らのそれって一体何なんだ?」

 

大牙「…試合前だから今は詳しく言えない。これが終わったら話すよ。今はとりあえず、試合に集中しようぜ?」

 

一夏「……そうだな。全力で行くぜ!」

 

そして、一夏は戦闘態勢に入る。

大牙は右手を天高く掲げる。

すると、空から何かが飛んでくる。それは、青いクワガタムシだった。

 

一夏「……総輝のやつとは違う?」

 

そして、それは大牙の右手に収まった。

 

大牙「よく見ていてくれ一夏。これが、俺が爺ちゃんから受け継いだ力だ!!」

 

そして、青いクワガタムシーー《ガタックゼクター》ーーを右肩に構え、あの言葉を力強く唱える。

 

大牙「変身!!」

 

《HENSHIN》

 

カブトの音よりもやや高でエコーがかかった音声が流れ、その直後に六角形のパネルが大牙の全身を覆っていく。

数秒後、大牙の全身は完全に覆われる。カブトのそれと同様に、かなり重厚な見た目だが、カブトと違い色味は青で、両肩にはバルカン砲ーー《ガタックバルカン》ーーが付いており、顔の部分は赤で染まっている。

 

大牙「行くぞ、一夏!!」

 

 

〜管制室〜

 

管制室では再びどよめきが起きていた。

 

真耶「また《全身装甲》のIS?!天道君といい、彼らは一体どこであれを……?」

 

千冬「いや、あれはおそらくISではない」

 

千冬の言葉に真耶は目を見開いて、千冬の方に顔を向け、

 

真耶「えっ、ISではないって……では、あれは何なのですか?」

 

千冬「天道の試合の時、加賀美が言っていた言葉で思い出した……数十年前、つまりISが登場するずっと前のことだ。この日本で、人知れず町の平和を守り続けた奴らがいたらしい。奴らの名は、《仮面ライダー》……そう言われている」

 

真耶「《仮面ライダー》……?私も、噂程度で聞いたことはありますが、それは都市伝説では無かったのですか?実在するかどうかは、記録が残っていないので検証のしようもありませんし……」

 

千冬「確かにな。まあそれは、この試合が終わった後にでもあいつらに聞けばいい……なぁ、天道?」

 

そう言いながら、千冬は後ろを振り返る。

その先には、先程試合を終えたばかりの総輝が歩いて来ていた。

 

総輝「やれやれ……こうなることは覚悟していましたが、なるべくお手柔らかに頼みますよ」

 

千冬「それは、お前たち次第さ……さて、私の愚弟はかつてのヒーロー相手に、どこまでやれるかな?」

 

そう言って、彼女は再び視線をモニターに移した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ガタックはその場から全速力で駆け出し、一夏に殴りかかる。

 

一夏「うわっ?!」

 

一夏はまだ操作に慣れていないのか、反応が遅れてそれを受けてしまう。

 

一夏「くっ……やったなぁっ!!」

 

一夏はお返しとばかりにISの右腕でガタックを殴りつける。ガタックはガードするものの、パワーが桁違い過ぎて吹き飛ばされてしまう。

 

一夏「今度はこっちの番だぁっ!!!」

 

今度は一夏が白式のスラスターを吹かせてガタックに急接近する。

そのままスピードに乗ってガタックを殴りつけるが、その拳はガタックの両手に受け止められた。

 

一夏「何っ?!」

 

大牙「そう簡単にーーテメェの番はくれてやるかぁ!!!」

 

大牙はそう吠えると、一夏に頭突きを食らわせる。ISには絶対防御があるので一夏自身にはダメージはないが、ISのシールドエネルギーは削られる。

そのまま頭突きを連打するガタックだったが、一夏が両腕を振りほどいて一蹴りしガタックとの距離を取る。

そして一夏は、装備である刀を取り出し、再びガタックへ肉迫し斬りかかる。

 

一夏「食らえ大牙あぁぁ!!!」

 

一夏は上段から刀をガタックに向けて振り下ろすが、ガタックはそれを片手で掴む。

 

大牙「甘いぜ一夏!!喧嘩ってのはなぁ……拳でするもんなんだよおぉぉ!!!」

 

そう言うと、ガタックは反対側の手で一夏の腹を思い切り殴る。

 

一夏「ぐっ……!!」

 

大牙「まだまだァァ!!」

 

ガタックの連続拳が休む間も無く一夏を襲い、白式のシールドエネルギーはみるみる減少して行く。

 

一夏「(くそっ……このままじゃ!)」

 

一夏はたまらずISのスラスターを吹かせて全力で後退する。

しかし、そこへ追い討ちをかけるようにガタックの両肩に装備された《ガタックバルカン》が火をふく。

 

バルカンの弾は白式に命中し、体勢を崩された一夏は地面へ落下する。

チャンスとばかりに、ガタックはバルカンを一斉射する。

一夏のいた場所から大爆発が起き、誰もがこれで勝負が決まったと思った。

 

しばらくして、爆炎の中から一夏が現れた。

しかしよく見ると、彼のISの形が大きく変化している。

 

それを見て、観客席からはざわめきが起こる。

 

「まさか……一次移行?!」

「織斑君って、今まで初期設定の状態で戦っていたの?!」

 

大牙「一夏……」

 

一夏のディスプレイには、《フィッティング完了》の文字が浮かび上がっている。

 

一夏「どうやら、この機体はようやく“俺専用”になったらしい」

 

すると、今度は別の画面が表示される。

 

一夏「《雪片弐型》……?雪片って、千冬姉が使ってたやつだよな……どうやら俺は、世界で最高の姉さんを持ったよ」

 

直後、一夏の持つ剣が展開し、エネルギーの刃が現れる。

 

一夏「…でもそろそろ、守られるだけの関係は終わりにしなくちゃな。とりあえず、俺は千冬姉の名前を守る!」

 

それを見て、大牙は一瞬ポカンとしていたが、直後に高笑いをあげる。

 

大牙「はっ……ははははっ!!いいねぇ、一夏!!お前は最高だ!!なら俺も、本気を出させて貰うぜ!!」

 

そう言うと、大牙はガタックゼクターの角を少し展開する。

すると、オレンジの電流が全身を走り、徐々に分厚い装甲が浮かび上がる。

 

大牙「《キャストオフ》!」

 

《CASTーOFF》

 

大牙はガタックゼクターは角を完全に後方へ持って行く。

すると電子音声が流れて、ガタックの装甲が吹き飛ばされる。その中から、青を基調としたスマートなボディのガタックが現れる。

両肩のガタックホーンが頭部へ上がり、さながらクワガタムシのような顔になる。

 

《Change Stag Beetle》

 

一夏「青い……クワガタムシか?」

 

大牙「まあ、そうだな。二つ名があるみたいだが忘れちまった」

 

一夏「そうなのか……でも、これで仕切り直しと行こうか!」

 

大牙「ああ!!こっからが俺たちのステージだぁ!!」

 

そう言って、大牙はライダーフォームになったガタックの両肩に装備されたガタックダブルカリバーを引き抜き、構える。

 

しばらく見合っていた二人だったが、飛び出したのは同時だった。

 

一夏の雪片が再び上から振り下ろされ、ガタックの左右の刀が上斜め方向から振り下ろされる。

それらは同時にぶつかり合い、激しい火花を散らす。

 

そこからはまさに両者互角の戦いだった。

一夏の剣をガタックが止め、ガタックの反撃を一夏がいなし、そして再び一夏がガタックへ仕掛けるーー

 

二人の漢が繰り広げる戦いは観客を魅了し、中には永遠に続くのではと思うものさえいた。

しかし、その均衡は長く続かなかった。

突如、一夏のシールドエネルギーが残り僅かなのを告げるアラートが鳴り響く。

 

一夏「なっ、どうして……まさか、この刀の影響なのか?」

 

一夏は冷静に原因を分析し、ガタックから一度距離を取る。

そして、真剣な眼差しでガタックを見据え、

 

一夏「……大牙、頼みがある」

 

大牙「どうした?」

 

一夏「俺のシールドエネルギーは、もう残り僅かだ。だから、次の一撃で決着をつけないか?俺は次の一撃に全力をかけるから、大牙も……」

 

大牙「……わかった」

 

納得した大牙は、ダブルカリバーを両肩に戻す。

 

一夏「……ありがとう」

 

大牙「おう……そのかわり、手加減は無しだからな?」

 

一夏「もちろんだ!」

 

一夏はにっ、と笑うと、雪片を中断に構える。

対してガタックは、腰のガタックゼクターにつけられたスイッチを押す。

 

《ONE》

《TWO》

《THREE》

 

そして、一度ゼクターの角を元に戻す。

タキオン粒子があるチャージアップされる音がなる。

 

大牙「……行くぞ一夏ぁ!!」

 

そう叫ぶと、大牙は走り出す。

 

一夏「これで終わらせるぞ……大牙あぁぁ!!」

 

一夏もスラスターを全開にして大牙に接近する。

そして、ある程度近づいたところで、一夏は雪片を右腰あたりに引く。

大牙はガタックゼクターの角を再び後方へ展開する。

 

大牙「《ライダーキック》!!」

 

《RIDERーKICK》

 

オレンジ色の電流が腰のゼクターから頭部へ上がり、ガタックホーンで増幅された後再び下へ行き、右足に収束される。

そして、ガタックは左足を起点に飛び上がり、ボレーキックの要領で一夏に向けて右足を振る。

一夏も雪片をガタックに向けて左腰めがけて振る。

 

「「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」

 

二人の全力の一撃がぶつかり合い、大きな放電現象を発した後に大爆発を引き起こすーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー《勝者:加賀美 大牙》

 

試合終了のアナウンスが流れ、それと同時に煙が晴れる。

その中に立っていたのは、堂々と胸を張って仁王立ちするガタックの姿だった。

 

 




お読みいただきありがとうございます!

ガタックの戦闘、いかがだったでしょうか?
自分の文章センスがないばかりに、至らない部分があるかもしれませんが、自分なりに精一杯書かせていただきました!!

感想などありましたらどんどんお願いします!
評価などもつけていただいたら嬉しいです!!
では、また次回!!


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第五話 高速の戦い

どうも皆さん、ジャズです!
今回でクラス代表戦は終了です!


加賀美 大牙と織斑 一夏の戦いが終わり、大牙と一夏は管制室に戻っていた。

管制室では、腕を組んでモニターを見つめる千冬と、ポケットに手を入れながら立つ総輝、そしてモニター前の椅子に座る真耶が待っていた。

千冬は歩いてくる二人に気づくと、

 

千冬「ああ、お前たちか。ご苦労だったな」

 

一夏「…ごめん、千冬姉。俺負けちゃった……」

 

一夏が申し訳なさそうな顔で頭を下げる。

 

千冬「“織斑先生”だ…まあいい。初心者にしてはいい戦いだったじゃないか。雪片の特性にもギリギリのところで気付けたようだし、そこは褒めてやろう。

今回の戦いで気づいただろうが、お前のISの単一仕様能力ーー《零落白夜》ーーは、自身のシールドエネルギーを消費する代わりに敵ISのシールドエネルギーに直接ダメージを与えられる諸刃の剣だ。今後はそれに気をつけて使え」

 

そこまで説明すると、千冬は大牙と総輝の方を向いて

 

千冬「さて、四人の中でお前たちが勝ち残ったわけだが…尋問の前に、クラス代表の決着をつけなければな。とはいえ、時間がもう押しているからあまりかけられないが……」

 

すると総輝が大牙の方を向いて

 

総輝「…大牙、インターバルは何分必要だ?」

 

大牙「え?ああ、まあ……そんなに疲れてないし、十分もあれば」

 

総輝はそれを聞いて頷きながら

 

総輝「そうか。織斑先生、十分後に決勝戦ということでいいでしょうか?」

 

千冬「別に構わんが……お前たちの試合にかけられる時間はもうそれほどないぞ?精々5分くらいだ。それまでに決着をつけられるか?」

 

総輝「問題ありません……1分で勝負をつけます」

 

総輝は不敵な笑みでそう返した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜10分後〜

 

『これより、一年一組クラス代表の決勝戦を行います』

 

会場にアナウンスが流れ、観客の視線が闘技場に集まる。

そして、両端のピットから総輝と大牙が歩いて出てくる。

二人はある程度まで近づくと、足を止める。

 

大牙「…お前と勝負するの、もう何度目かな?」

 

総輝「さあな。数えたこともないから分からん」

 

大牙「だな……勝たせて貰うぜ。今回は」

 

総輝「無理だな……お前は俺には勝てない。なぜなら俺は……天の道を往き、総てを輝かせる太陽だからな」

 

そう言って、総輝は天に向かって手を伸ばす。

そこに、空から飛んできたカブトゼクターが収まる。

 

大牙「……なら、俺は《戦いの神》の名にかけて、お前に勝つ!!」

 

大牙も右手を上に高く掲げると、空から飛んできたガタックゼクターをその手に収める。

 

総輝「変身」

 

大牙「変身!!」

 

《HENSHIN》

 

二人はゼクターを同時に腰のベルトにセットする。

そして、六角形のパネルが全身を覆い尽くすと、二人はそれぞれのゼクターの角を少し展開する。

ゼクターを中心にカブトには青い電流が、ガタックにはオレンジの電流が流れ、装甲が少し浮かび上がる。

そして、二人はゼクターの角を完全に展開する。

 

「「キャストオフ!」」

 

《CASTーOFF》

 

電子音声が流れ、浮かび上がった装甲が周囲へ吹き飛び、スマートな赤と青の装甲が露わになる。

そして、カブトムシの角が、クワガタムシの角が上に上がる。

 

《Change Beetle》

 

《Change Stag Beetle》

 

「「クロックアップ」」

 

《CLOCK UP》

 

以下、総輝と大牙の決着がつくまで一瞬の出来事である。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

クロックアップを発動した二人の周囲の世界が変わる。

舞い上がる塵や埃は動かなくなり、観客の声はやんで無音の世界に入る。

 

大牙「うおおありゃあぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

まず攻撃を仕掛けたのは大牙の方だった。

全速力で駆け出し、カブトに殴りかかる。

カブトはバックステップを取りながらガタックの拳をガードしていき、隙を見てカウンターの一撃を放つ。

カブトの一撃がガタックの腹に入り少し後退するが、もう一度連続拳をカブトに打ち込む。

しかし、カブトはそれらを最小限状態をそらしたり手でいなしたりするなどして回避し、一瞬の隙を見つけ蹴りを放つ。ガタックはその衝撃で後ろへ転がる。

 

大牙「クッソォ……まだまだあぁぁぁぁぁ!!!」

 

ガタックは立ち上がり、両肩のガタックダブルカリバーを引き抜いて再びカブトへ接近する。

カブトもカブトクナイガンを取り出し、そのまま剣術戦を始める。

とはいえガタックの方が手数が多いのは明白で、先程まで的確にガタックの攻撃をいなしていたカブトもこれを全て防ぐのは困難で、今度は逆にガタックの攻撃を受けてしまう。

 

総輝「くっ……」

 

大牙「うおおおおお!!」

 

ガタックの剣戟は止まず、カブトはそれらをほぼ全て受けてしまい、今度はカブトが吹き飛ばされる。

 

総輝「…ほう、中々やるな」

 

大牙「お前こそ」

 

そう言って少し言葉を掛け合うと、再びカブトとガタックはぶつかり合う。

カブトは今度はクナイだけでなく、拳や蹴り技も織り交ぜてガタックの剣を防ぐ。対してガタックは、左右のガタックダブルカリバーで応戦する。しかし、拳や蹴り技を組み合わせることで手数も増え、トリッキーな攻撃を生み出せるようになったカブトにはもう通じず、形勢は再びカブトに傾いていた。

そして、カブトの回し蹴りがガタックの顔面にヒットし、後方へ大きく吹き飛ばされる。

 

大牙「くそっ……こうなったら!!」

 

ガタックは立ち上がると、左右の剣を肩に収めて腰のガタックゼクターのボタンを押す。

《ONE》《TWO》《THREE》

そして角を戻し、タキオン粒子をチャージアップする。

 

それを見たカブトも、腰のカブトゼクターの足に装着されたボタンを順番に押す。

《ONE》《TWO》《THREE》

そして、角を元に戻す。

 

「「《ライダーキック》!」」

 

《RIDERーKICK》

 

二人は同時にゼクターの角を展開し、それぞれの角に電流が走り、そして右足に収束される。

そして、カブトとガタックは走りだし、同時に空中へ飛び上がる。

 

二人の飛び蹴りが衝突し、大爆発が起こる。

 

《CLOCKーOVER》

 

ここでクロックアップが終わり、世界は再び元のスピードに戻る。

爆炎の中からガタックが吹き飛ばされて地面に仰向けになって倒れ込み、ガタックゼクターがベルトから離れて変身が解除される。

 

そして、爆炎が晴れて中から現れたのは、例の天を指差すポーズで立ち続けるカブトの姿があった。

 

《勝者:天道 総輝》

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜管制室〜

 

管制室では、もう何度目か知れないどよめきが起きていた。

 

真耶「お、織斑先生……私は、長い瞬きでもしていたんでしょうか…?今の一瞬の間に…一体何が……?」

 

真耶が声を震わせながら千冬にそうたずねる。

 

千冬「分からん……私にも何が起こったのかさっぱりだ……」

 

千冬も落ち着いてはいるが、その額には冷や汗が出ており、驚きを隠せていない様子だった。

 

千冬「全く……これは想像以上の脅威のようだな」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一方その頃、別の場所でこのクラス代表決定戦を見てい人物がいた。

 

???「嘘……」

 

紫がかった長髪に、不思議の国のアリスのようなエプロンを身につけ、頭にはウサギの耳を模したカチューシャを付けている。

 

彼女の名は《篠ノ之束》。ISの開発者である自他共に認める天才科学者である。

今は全世界の政府から追われる身となっており、逃亡生活を続けている。

一夏の専用機である《白式》の戦闘データを見るため、IS学園のシステムをハッキングして一連の試合を見ていた。

 

だが、そこで彼女は目を疑う光景を目にする。

そう。総輝と大牙、すなわち《仮面ライダー》の登場だ。

彼らは国家代表候補生、そして自分の制作したISをも圧倒し勝利を収めた。

普段は飄々としたつかみどころのない性格で、常に微笑を浮かべている彼女だが、今はその両眼は限界まで見開かれ、額には脂汗が浮かび、体はガタガタと震えている。

 

束の異変に気付いた使用人の《クロエ・クロニクル》が彼女に駆け寄る。

 

クロエ「束様、どうなさいましたか?」

 

クロエが呼びかけるが、束は聞こえていないのか、その呼びかけにも応じない。

 

束「あれは……まさか……《仮面ライダー》……?」

 

束は震えた声でそう呟いた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜IS学園〜

 

その夜、総輝と大牙は千冬に呼び出され、地下にある小さな部屋に来ていた。

総輝と大牙はテーブル席に座り、向かい側には千冬が座っている。それはまるで、刑事ドラマの事情聴取の場面のようだった。

 

千冬「…では、単刀直入に聞くぞ天道、加賀美。あれは一体なんだ?」

 

彼女の問いに答えたのは総輝だった。

 

総輝「五十年前の対ワーム戦用に開発された《マスクドライダーシステム》…です」

 

千冬「《マスクドライダー》…つまり仮面ライダーというわけか」

 

真耶「織斑先生、見つけました。これが五十年前の仮面ライダーです」

 

すると、真耶がタブレット端末を持ちながら千冬のもとにくる。

そこには、先程の代表戦で披露されたカブトとガタックが怪物と戦っている画像や映像が表示されていた。

 

真耶「《マスクドライダーシステム》は、1999年に渋谷に落下した隕石から発生した《ワーム》に対抗するため、秘密組織《ZECT》が開発した…いわば、違う系統のISとも言える存在です。第1形態である《マスクドフォーム》、そしてそこから《キャストオフ》する事で《ライダーフォーム》になるという、二段階変身を取り入れたシステムです」

 

千冬「《キャストオフ》…なるほど、モチーフが昆虫と言うだけに、蛹からの脱皮ということか。しかし、見たところマスクドフォームの防御力は非常に高そうだが、それを捨ててライダーフォームになるメリットはあるのか?」

 

大牙「あります。大ありです。ライダーフォームには、全身に流れる《タキオン粒子》を使って時間流を操作して、高速移動を可能にするんです」

 

真耶「理由は《成虫ワーム》に対抗するためですね。ワームの成虫態は共通の能力としてクロックアップを持っているため、ライダーフォームにならなければまず太刀打ちすらできません」

 

千冬「なるほど…先程のお前たちの試合が一瞬で終わったのも……」

 

大牙「はい、クロックアップを使って決着をつけました」

 

千冬「…では最後に、もう一つ質問だ。お前たちはこれを、どこで手に入れた?」

 

総輝「それは簡単な話です。俺たちの祖父が仮面ライダーだったからです」

 

真耶「その記録もあります。当時の仮面ライダーカブトが《天道 総司》、そして仮面ライダーガタックは元警視総監の《加賀美 新》となっています」

 

千冬「なるほど……わかった。では、《マスクドライダーシステム》をお前たちの専用機として認定する」

 

真耶「お、織斑先生!いいんですか?!」

 

千冬「構わん。お前たちは別に、IS学園の生徒たちに危害を加えようとか、そんなことは考えていないのだろう?ならば別にいいさ。祖父さんたちから受け継いだ力を、取り上げる訳にも行かんだろう。

但し、カブト及びガタックの使用は《緊急時のみ》とする。普段の授業では訓練機を使ってもらうぞ。いいな?」

 

総輝「了解です」

 

大牙「わかりました」

 

千冬「…では、学長には私から話しておく。これにて尋問は終了だ。お前たちはもう部屋に戻れ」

 

そう言って、千冬は部屋から出て行った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

〜学長室〜

 

千冬「……以上が、私からの報告です」

 

千冬はそう言って、先程自分が聞いてきた総輝と大牙の《仮面ライダー》に関する情報を学長に報告した。

それを聞いた学長は顎に手を当てて

 

学長「…彼らのISは、その《仮面ライダー》を使用させるのか?」

 

千冬「はい、《仮面ライダー》は彼らが正当に受け継いだ力です。それを剥奪する必要はないと判断しました。但し、《仮面ライダー》の使用は緊急時に限り、という条件つきですが」

 

学長「……では私からも、一つ条件を追加する」

 

千冬「……なんでしょうか?」

 

学長は一呼吸置いて

 

学長「…彼らを、クラス代表候補から外して頂きたい」

 

千冬「…理由をお聞きしても?」

 

学長「ISの登場によって、世界は今《女尊男卑》思想が蔓延している。そんな中で、かつての男性の力の象徴である《仮面ライダー》の存在が公になればどうなるか……君に分からないわけではあるまい?」

 

学長のいう事も最もだった。

もし、《仮面ライダー》が再び現れたとなれば、女性権利団体が黙ってはいない。あらゆる手段を使ってIS学園に圧力をかけ、最悪総輝と大牙の退学、引いては国家追放という事態もあり得る。

 

そこまで察した千冬は、苦虫を噛み潰したような表情で

 

千冬「……承知しました。では、そのように致します」

 

千冬も納得したわけではなかった。

総輝も大牙も、己の全てを賭けて代表候補決定戦を戦った。にも関わらず、それを無効にされるのはかつてISの国家代表として世界を相手に戦った千冬としては受け入れがたいものだった。

とはいえ、学長が憂慮している事態も彼らにとっては非常にまずいことだ。千冬は私情を捨て、彼らに決定事項を伝えることを決意し、静かに学長室から退出した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

セシリアside

 

セシリアは総輝との試合が終わった後、他人の目を避け真っ先に自室へ戻り、シャワーを浴びていた。

試合でかいた汗を流すために入ったのだが、彼女はシャワーを浴びながらボーッとしていた。彼女の脳裏に浮かぶのは、今日行われた代表選。

誰が来ても負けるはずがないと思っていた。なぜなら自分はIS国家代表候補生で専用機持ち、しかも相手はISに触れてまだ間もない初心者たち。結果など目に見えて明らかだった。

しかし実際は……まさしく“完敗”だった。自分の射撃兵装は全て破壊された上、最後の足掻きで見せた近接戦も自分の攻撃は相手に届かず、挙句自分から突っ込んで逆にカウンター攻撃を受けて試合終了。自分で言うのもなんだが、周りから見て自分はどれだけ無様に映っただろう。

だが、屈辱を感じると同時に、あの試合以降自分の中で男性に対する印象が大きく変わったのもまた事実だ。今まで自分は男というのは卑屈で陰険な生き物だと思っていた。

しかし、今日戦った男はーー天道 総輝は違った。自分に対して卑屈になることも、陰険で姑息な手を使って試合をする事もなく、ただ堂々と、真っ直ぐな姿勢で自分に向かってきた。

 

セシリア「(天道 総輝さん……)」

 

風呂から上がると、夕食がまだだったことを思い出し、一人食堂へと向かう。

時間が少々遅かったのか、食堂にはほとんど人は残っていなかった。ある意味自分にとっては幸いだったが。

適当に料理を注文し、誰もいない席で食事にありつこうとするが、今日の試合のことが頭から離れず何故か食べ物が喉を通らない。

せっかくの料理が冷めてしまうのは分かっているが、中々箸が進まない。

その時だった。

 

???「お祖父ちゃんが言っていた。“食事の時間は天使が降りてくる。そう言う神聖な時間だ”ってな。そんな顔してたら、天使が逃げてしまうぞ」

 

聞き覚えのある声が後ろから聞こえ、振り返るとそこには今日試合をして頭から離れない人物が立っていた。

 

セシリア「て……天道さん?!」

 

総輝はトレイに料理を乗せたままフッと微笑むと、

 

総輝「前、座るがいいか?」

 

セシリア「えっ、ええ……どうぞ……」

 

セシリアの返事を聞き、総輝は何も言わず前に座り、そのまま料理を口に運ぶ。

 

総輝「…ふむ、流石はIS学園だ。料理の味も中々だ。まあ、俺やお祖父ちゃんの料理には劣るがな」

 

そんなことを呟きながら食べていた。

 

セシリア「あ、あの…天道さん」

 

セシリアが今日の事で話しかけようとすると

 

総輝「今は取り敢えず、料理を食え。料理は出てきた瞬間が一番美味しいんだ。話はそれから聞いてやる」

 

そう言いながら総輝は食べ続ける。

セシリアも総輝に言われて箸を再び進め始める。不思議なことに、料理はすんなりと喉を通り始めた。

 

〜数分後〜

 

総輝「…ふう、ご馳走さま」

 

セシリア「ご、ご馳走さまです…」

 

そして、食器とトレイを戻して二人並んで歩き始めた。

 

セシリア「あ、あの……天道さん……」

 

セシリアがおずおずと話しかける。

 

総輝「……クラス代表、俺と大牙は候補から外れることになった」

 

総輝の言葉にセシリアは目を見開く。

 

セシリア「えっ……そ、それはどうしてですの?!貴方は私に勝ったのに……」

 

総輝「俺のISは少々特殊でね。なんでもそれを公になるのを防ぐためらしい」

 

セシリア「そ、そうだったんですか……」

 

確かに、言われてみれば自分が見た総輝のISは少し変わった形をしていた。

 

総輝「だから、クラス代表はお前と一夏の二人から選ぶことになるそうだ」

 

セシリア「でしたら!」

 

突然、セシリアが声を上げたので総輝は振り向く。

 

セシリア「でしたらあの……私も……降ります」

 

総輝「……何故だ?」

 

セシリア「…私は、間違っていましたわ。今まで私は、男を見下してばかりいた……ですが、貴方のような男性もいるのだと、思い知らされました。それにあの場で、この国を侮辱するような発言をしてしまった私に、クラス代表になる資格はありませんから……」

 

総輝「……そうか。なら、織斑先生には俺から言っておこう」

 

セシリア「ありがとうございます……あ、あの!」

 

セシリアは去ろうとする総輝を呼び止める。

セシリアは頬を赤く染めながら

 

セシリア「あの……よろしければ、“セシリア”と呼んでいただけますか?私も、これからは“総輝さん”とお呼びしたいのです」

 

総輝は目を閉じてふっ、と軽く笑い、

 

総輝「……わかった。よろしくな、セシリア」

 

セシリアは目を輝かせて満面の笑みで

 

セシリア「〜っ!はい!総輝さん!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜次の日〜

 

真耶「では、一組のクラス代表は織斑一夏君に決まりました!一繋がりで縁起が良いですね!!

 

一夏「チョットマッテクラサイヨ!!ソリャナイレショ!!俺大牙に負けて、総輝もセシリアに勝ったんでしょ?!ナズェ俺なんディス?!」

 

喚く一夏に千冬が答えた。

 

千冬「天道と加賀美は特殊な事情があってな。その事はまたの機会に話す」

 

一夏「なんっ、じゃあセシリアは?!」

 

セシリア「私は辞退させていただきました。私もまだまだ未熟ということがよくわかりましたので」

 

千冬「先日も言ったが、これには拒否権はない。任された以上は責任を持ってやれ」

 

一夏「ソンナァ……ウェイソンナァ!!」

 

真耶「では、授業を始めます!」

 

一夏「ナジェダァ!!

 

千冬「うるさい馬鹿者!!」

 

 




お読みいただきありがとうございます!
クラス代表戦、ようやく終了しました〜!
なんとかひとだんらぬ着いたかな?という感じです。
次回くらいにあの子を出そうかな〜……

では、また次回もよろしくお願いします!!


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第六話 クラス代表就任式

一年一組の生徒たちは、実習授業のためグラウンドに出ていた。

すると、ジャージ姿の千冬が生徒たちの前に出る。

 

千冬「ではこれより、実習授業を開始する。専用機持ちは前に出てISを展開しろ」

 

セシリアと一夏は言われた通りに自身のISを展開する。

セシリアは慣れているので一瞬でできたが、一夏は中々展開できない。

 

一夏「……あれ?」

 

千冬「早くしろ。熟練のIS操縦者は1秒とかからないぞ」

 

一夏「そ、そんなこと言ったって…」

 

するとセシリアが一夏に声をかける。

 

セシリア「一夏さん、それほど難しく考える必要はありませんわ。頭の中でイメージすればいいのです。自分がISを展開している姿を、頭の中で描いてみてください」

 

言われて一夏は目を閉じ、言われた通りにイメージする。

すると、右腕のガントレットが光り一夏は白式を纏っていた。

 

一夏「で、できた……!」

 

千冬もそれを見て満足したように頷き、

 

千冬「…では天道、加賀美も“打鉄”を装備しろ。四人で同時に飛行演習を行う」

 

言われて総輝と大牙はそばに置いてあった訓練用ISの打鉄を纏う。

 

千冬「では、飛べ!」

 

セシリア「はい!」

 

三人「「「了解!」」」

 

まず、セシリアが空中へ飛び、それに続いて男子三人も飛翔する。

 

セシリアと総輝が並んで飛び、そのすぐ後ろに大牙、それに追従するように一夏が飛んでいる。

 

千冬『どうした織斑。性能ではお前の白式が一番高いはずだぞ?』

 

一番後ろを飛んでいる一夏を見かねて、千冬が通信で一夏に発破をかける。

 

一夏「そんなこと言ったってな……《自分の前に角錐を展開するイメージ》とか言ってたけど、なんかうまく出来ないっていうか……」

 

一夏がそんなことをぶつぶつと呟いていると、セシリアが減速して一夏の隣へ並び、

 

セシリア「一夏さん、イメージは所詮イメージですわ。自分がやりやすいようにすればいいんです」

 

総輝「その通りだぞ、一夏」

 

すると今度は総輝がセシリアと反対側に一夏の隣へ行き

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた。“あらゆる成功はイメージすることから始まる”ってな。山田先生が角錐がどうとか言ってたが、それにこだわる必要はない。例えば、自分が空を飛んでいる姿を思い浮かべてみろ。そうすればもっとやりやすくなるはずだ」

 

一夏「自分が……飛んでいる姿……」

 

すると、一夏の飛ぶ速度が徐々に上がっていき、先程までの覚束ない感じはなくなっていた。

 

大牙「うおっ?!すげえじゃねえか一夏!!」

 

一夏「総輝とセシリアがアドバイスしてくれたおかげだ!ありがとな、二人とも!!」

 

セシリア「そんな、私ではなく総輝さんのアドバイスがあったからこそですわ!」

 

総輝「そんなことはない。お前のアドバイスも、代表候補生らしい的確なものだった。ISに関してはあまり詳しくないからな。俺も是非教授願いたい」

 

セシリア「は、はい!喜んで///」

 

セシリアは満面の笑みで、頬を赤く染めながらそう答えた。

それを見たとき、大牙は悟った。セシリアは総輝に惚れていると。

そして一夏はこう思った。“セシリアのやつ、顔真っ赤だけど大丈夫か?熱でもあるんじゃないか”と。

 

しばらく飛び回っていた四人だったが、ここで千冬から通信が入る。

 

千冬『よし、では四人とも急降下から完全停止してみろ。目標は地表10㎝』

 

セシリア「では、まずは私がいきますね」

 

総輝「ああ、よろしく頼む」

 

そしてセシリアは地表へ降りていく。

 

千冬「……11.5cmというところか。まあ、及第点だな」

 

セシリア「あ、ありがとうございます」

 

総輝「ーーでは、次は俺が行こう」

 

そう言って、総輝は急降下を開始する。

体をすり抜ける風がより強くなり、地面が近づくスピードがどんどん早くなっていき、総輝といえど若干体が強張る。

しかし、そこで冷静さを欠く総輝ではない。地面との距離を慎重に見極め、早過ぎず、かつ遅過ぎないタイミングがいつなのか測る。

 

総輝「(ーーここだ!!)」

 

そして、体の向きを上下反転させ、足を地面に向ける。

スラスターを全開に吹かせ、急降下でついたスピードを緩めていく。

そして、ついに地面に足がつく。

総輝の着地を見ていたクラスの女子達からは盛大な拍手が起き、総輝はそれを受けながら打鉄から降りた。

 

千冬「初心者にしては中々の出来じゃないか。これからも精進に励めよ」

 

総輝「ありがとうございます」

 

総輝は千冬からの賛辞に頭を下げながら静かに答えた。

 

セシリア「総輝さん!流石ですわ!!」

 

セシリアが満面の笑みで総輝に抱きつく。

 

総輝「お前が手本を見せてくれたお陰だ。ありがとうな」

 

セシリア「えへへ……///」

 

総輝がセシリアの頭を撫でながらそう言った。

頭を撫でられてセシリアはだらしない笑顔になっている。

 

大牙「ーーよし、次は俺が行ってみる」

 

そう言って、大牙は急降下を開始する。

 

急降下を開始した大河を見て、千冬は思わずため息をついた。

 

千冬「ーーあいつは馬鹿なのか?急降下しろとは言ったがーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー地面に向かって垂直にいくやつがあるか!!」

 

とんでもない角度で急降下する大牙を見て、クラスのメンバーからはどよめきが起きている。地面に向かって頭から垂直に降下するなどきわめて危険なことこの上ないからだ。ISには絶対防御があるとはいえ、何が起こるかはわからない。

 

一方の大牙はある程度降りると体を反転させてスラスターを全開に吹かせる。

しかし、一気についたスピードを中々落とすことができない。

 

大牙「(ヤベェ!!)ふんぬ〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!!!!」

 

大牙は歯を食いしばって打鉄に着いたスラスターを全て思いっきり全開にする。

それによって少々スピードは落ちるものの、完全に殺すことはできずに地面に激突し土煙が起こる。

 

煙が晴れると、大牙は地面に右膝をついて、右手の拳を地面に打ち付けている体制を取っていた。

相当強い力で打ち付けたのか、右手の拳を中心に地面にはひび割れが起きている。

 

千冬「まったく、あんな急降下をする奴があるか馬鹿者が。こっちは内心ヒヤヒヤしたぞ。着地と同時に膝立ちで拳を地面に打ち付けたことで、急降下でついた勢いをそのまま地面に移して無傷でいられたようだが、今後はあんなやり方はするなよ?」

 

大牙「はいっ!すみませんでした!」

 

大牙はそのままISからおりた。

 

千冬「…さて、残るは織斑だけか……」

 

そう言って千冬は空を仰ぐ。

その視線の先には、一夏がこちらに向かって急降下しているのが見える。

すると、何かを察した総輝が大牙に向かって

 

総輝「大牙、今すぐそこから離れろ。一夏が凄い勢いで落下してくるぞ」

 

大牙「まじか!」

 

大牙は慌ててその場から飛び退く。

その約5秒後、一夏がものすごい勢いで地面に激突した。

大きな土煙が上がり、それが晴れると一夏が落ちたところに直径5メートルくらいのクレーターが出来ていた。

 

箒「一夏あぁぁぁぁぁ!!!」

 

大牙「うわぁ……派手に逝ったなぁ」

 

真耶「加賀美君、漢字が違うと思うのは気のせいでしょうか?!」

 

総輝「……彼奴は流星に……」

 

「「「「なってない(ません)!!!」」」」

 

一夏「なんかみんな酷くない?!」

 

一夏が起き上がりながらそう叫んだ。

 

千冬「グラウンドに穴を開けてどうする馬鹿者」

 

一夏「も、もう少し白式が答えてくれたらいけたんだよ……」

 

千冬「機体のせいにするな。訓練機でありながら、加賀美はちゃんと着地したし、天道は代表候補生を超える見事な着地をして見せたんだぞ、お前にもできるわけないだろうが」

 

一夏「こ、これからも鍛錬に励みます……」

 

千冬「……よろしい。では、これにて実習は終わりだ。各自次の授業には遅れないようにな。

それから織斑、お前はグラウンドを元に戻しておけよ。

では、解散!」

 

千冬の号令とともに、生徒達が戻っていく。

その中で、総輝と大牙、箒の三人が一夏に駆け寄った。

 

大牙「一夏、俺たちも手伝うぜ」

 

箒「この規模はお前一人で終わらせるには困難だろう」

 

一夏「ありがとうみんな。気持ちは嬉しいんだけど、三人とも次の授業に遅れちまうぜ?迷惑はかけられねぇよ」

 

総輝「そんなことはない。寧ろ、人数が多い方が早く終わるだろう。それに、今日の主役に倒れてもらっては興醒めだからな」

 

大牙「あー」

 

箒「確かにな」

 

一夏「???」

 

一夏だけが何のことを言っているのかわからない様子だったが、とりあえずグラウンドの整備に取り掛かった。

四人でやったおかげで、休み時間中に終わらせることができ、次の授業には全員間に合うことが出来た。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜放課後〜

 

一同「「「織斑君、クラス代表就任おめでとう!!!」」」

 

その日の放課後、一組のメンバーが食堂の一角を貸し切り状態にして、一夏のクラス代表就任式を開いたのだ。

テーブルには普段絶対食べられないような豪華な食事が用意され、一夏の周りにはクラスの女子達が群がっている。

 

箒「…楽しそうだな、一夏」

 

箒がジト目で一夏をにらみながら小声でそう言うと、

 

一夏「…楽しそうに見えるか?」

 

と、苦い表情でそう返した。

そんな二人の間に割って入るように

 

大牙「何だよ二人もシケた面してよぉ〜!せっかくのパーティなんだからもっと楽しもうぜ!!」

 

と、箒と一夏の肩を組んでそう言った。

 

箒「なっ、何をする!気安く肩を組むんじゃない!」

 

大牙「んだよつれねぇなぁ〜」

 

大牙は口を尖らせなが離れた。

未だにむすっとしている箒を見かねたセシリアが箒に声をかける。

 

セシリア「箒さん、そんな顔をしてはいけませんよ。せっかくのパーティなんですから、もっと楽しまないと」

 

箒「そ、そうは言ってもだな……」

 

するとセシリアが箒の耳元へ近づき、

 

セシリア「……そんな顔をしては、一夏さんの心が離れてしまいますわよ?大好きな殿方の為にも、ここは盛大に祝ってあげてくださいな」

 

箒「ーーっ///」

 

箒はその瞬間顔を真っ赤にして

 

箒「お、お前はにゃにを言っているのりゃ!!わ、私がこいつと……そ、そんにゃことあるわけがにゃいだろう!!///」

 

セシリア「(明らかに動揺してますわね)」

 

箒「そ、そういうセシリアはどうなのだ?!天道の隣にいなくてもいいのか?!」

 

セシリア「そ、そんなこと言ってもっ!肝心の総輝さんがどちらにいらっしゃるのかわからないのですわ!!」

 

総輝「俺を呼んだか?」

 

セシリア「ひゃああぁぁぁぁぁ!!!」

 

急に背後から現れた想い人の声にセシリアは驚く。

 

セシリア「そ、総輝さん!!びっくりさせないでくださいまし!!」

 

箒「どこに行っていたのだ?」

 

総輝「クッキーを焼いていたんだ。パーティだからな」

 

そう言って、総輝は皿いっぱいにクッキーの乗った大きめの皿をテーブルの上に置く。

すると、女子達が我先にとクッキーを一つずつ手に取る。

 

「〜〜!美味しい〜!!」

「何これ?!こんなクッキー食べたことない!!」

「凄い!これ本当に手作り?!」

 

と、口々に感想を述べていった。

そして一夏と箒、大牙、セシリアもクッキーを頬張る。

 

一夏「うまっ?!」

 

箒「なっ……何だこのクッキーは?!」

 

セシリア「口いっぱいに広がる程よい甘さ……サクサクとした口当たりの良い食感……パサパサとせずちょうどいいしっとり感……素晴らしいですわ!!」

 

と、総輝のクッキーを絶賛していた。

 

大牙「流石だな、総輝。プロ並みの腕前だ」

 

総輝「プロ以上……そう言ってもらいたいな」

 

そうして、クラスのみんなが総輝の手作りクッキーを堪能していると、カメラを持った女子生徒がやって来た。

 

???「はーい、ちょっと失礼するよ!私は《新聞部》二年の《黛 薫子》です!ちょっと取材させてもらってもいいかな?」

 

一夏「え?あ、はい……構いませんけど」

 

薫子「ありがとう!それじゃあ、クラス代表に就任した意気込みを聞かせてくれるかな?」

 

一夏「えっと……頑張ります」

 

一夏の回答に薫子は口を尖らせながら

 

薫子「え〜?もっとなんかないの〜?例えば『命、燃やすぜ!』とか『ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!』とか」

 

一夏「いやそれどんな決め台詞ですか……」

 

薫子「それじゃあ次は、対戦相手だった加賀美君!何か一言あるかな?」

 

大牙「ああえっと……まあ、俺は一夏と戦ったから、こいつの実力ならきっと、優勝も目指せると思います。頑張って欲しいです」

 

薫子「おお!これはいい一言!

それじゃあ次は、セシリアさん、何かあるかな?」

 

セシリア「私は今まで、男性に対して見下す態度を取っていました。でも、その考えは誤りだと気付かされました。

一夏さんがクラス対抗戦で勝てるよう、代表候補生として精一杯支えます」

 

薫子「イギリスの代表候補生が指導するなら、心強いことこの上ないね!

では、最後に天道君お願い!」

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた、“つゆの味は見ただけではわからない”ってな。 一夏にも、隠れた才能や力があるかもしれん。これを機に、一夏が“さらなる段階(NEXT STAGE)”へ登ることを願う」

 

薫子「天道君らしい一言ね!

それじゃあ最後に、記念撮影をするからみんな並んで!!」

 

言われて総輝達は横一列に並ぶ。

 

薫子「いい絵だね!それじゃあ行くよ!

35×51÷24は?」

 

三人「「「え?」」」

 

総輝「74.375だ」

 

薫子「正解!」

 

思わぬ掛け声に戸惑う三人だったが、構うことなくシャッターが切られる。

 

一夏「あれ?箒…って、みんな入ってるじゃん」

 

セシリア「これって四人の写真ですわよね?いいんですか?」

 

薫子「全然問題ないよ!」

 

大牙「いいのかよ」

 

総輝「やれやれ…」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜IS学園入口〜

 

その夜、一人の少女がIS学園に乗り込んだ。

 

???「ここがIS学園……」

 

そう呟くと、少女は不敵な笑みを浮かべる。

 

???「待ってなさいよ……一夏!!」

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます!
というわけで、セシリアが総輝にデレました!!
正式なヒロインにするかは未定ですが、セシリアの気品さが総輝には合ってると思います。

そして、最後に出て来た少女、皆さんはお分かりですよね?
では、また次回!!


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第七話 転校生はチャイナ娘

どうも皆さん!ジャズです。
前回、鈴の設定を変えると言いましたが、すみません!
鈴の設定は原作通りで行きます!なので前回の鈴のセリフは後ほど変更させていただきます!
そして、お気に入りが100を突破しました!!みなさん、本当にありがとうございます!こらからも頑張ります!


一夏のクラス代表就任式から一夜明けてーー

 

一夏「ーー二組のクラス代表が変更になった?」

 

箒「ああ、なんでも中国からの転校生に変わったそうだ」

 

一夏と箒、セシリアと大牙は総輝のテーブルを中心に集まっていた。クラス代表決定戦以降、このメンバーが固定になって来ている。

そして今日の話題は、二組のクラス代表についてだった。

 

大牙「え、転校生?なんだってこの時期に」

 

セシリア「ふふん!私の存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら?」

 

総輝「確かに、セシリアも含めてこのクラスには色々固まりすぎている。世界でたった三人のIS操縦者、そしてIS国家代表候補。これだけのメンツが全て一組に固まっている。まあ、だからこその織斑教諭なのだろうが……」

 

すると周りに集まっていた女子が

 

「でも専用機持ちは一組と四組だけだし、余裕だよね!」

 

と口にする。

その時だった。

 

???「その情報、古いよ!!」

 

と元気な女子の声がクラスに響く。

全員がその方へ視線を向けると、そこには黒髪のツインテールの長髪に、肩を露出させた独特の制服を身につけた少女が得意げな顔で立っていた。

 

???「二組も専用機持ちがクラス代表になったから、そう簡単に優勝出来ないから!!」

 

一夏「鈴……?鈴なのか?!」

 

???「そうよ!あたしは中国の代表候補生、《凰鈴音》!今日は宣戦布告に来たってわけ!」

 

そう言って、鈴は一夏を指差す。

 

総輝「(……あれが二組の代表……)」

 

一夏「…鈴、何カッコつけてるんだ?全然似合わないぞ?」

 

と、一夏が吹き出しそうなのを必死に抑えながら言う。

 

鈴「な、何てこと言うのよあんたは?!」

 

すると、総輝が鈴を指差して

 

総輝「凰鈴音と言ったか?後方注意」

 

直後、鈴の頭に黒い物体が勢いよく振り下ろされる。

 

鈴「痛っったあぁぁぁ!!!」

 

涙目で振り返ると、そこには千冬が鈴を見下ろしていた。

 

千冬「もうSHRの時間だぞ。さっさと教室に戻れ」

 

鈴「げっ、千冬さん?!」

 

千冬「織斑先生と呼べ」

 

千冬はそう言いながら鈴の横を通り過ぎ教室に入る。

 

鈴「……っ!また後で来るからね!絶対逃げんじゃないわよ!!」

 

そう言って鈴は逃げるように一組の教室を後にした。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

昼食時、総輝と大牙、一夏たちはいつも通り食堂に来ていた。

しかし、彼らがいつも座る席には鈴が座っていた。

 

鈴「待ってたわよ一夏!」

 

腕を組んでこちらを見ており、テーブルにはラーメンが乗っている。

 

一夏「おう鈴!悪いな待たせて」

 

一夏もトレイに料理を乗せて鈴の待つテーブルに座る。

総輝と大牙、セシリア、箒は隣の席へと座る。

 

一夏「ところで、いつ日本に帰ってきたんだ?戻るなら連絡くらいしてくれればいいのに」

 

鈴「それだと劇的な再会が台無しでしょう?てゆうかあんた達こそ何でIS動かしてんのよ。あんたが動かした時はそりゃ驚いたけど……」

 

一夏「まあ、俺もこんなところに入ることになるとは思わなかったんだけどな」

 

そんなやり取りを隣の席から見ていた箒がついに立ち上がり、

 

箒「一夏!そろそろこの女との関係を教えろ!」

 

一夏「ああそうか、箒とはちょうど入れ違いだったんだよな。こいつは《篠ノ之箒》。前に話しただろ?箒が《ファースト幼馴染》で、鈴が《セカンド幼馴染》ってとこか」

 

箒「ファースト……ファーストか!」

 

ファーストと聞いて、箒は少々嬉しそうだ。

 

鈴「…初めまして。これからよろしくね」

 

箒「…ああ。こちらこそ」

 

笑顔で言う彼女たちだったが、何故かその額の間には火花が飛び散っているように見えた。

 

鈴「…ところで、そちらの男子たちの事も聞きたいんだけど?」

 

鈴が隣の席の方を向いてそう言う。

それに気づいた大牙が鈴の方を向いて

 

大牙「初めまして。《加賀美 大牙》だ!よろしくな!!」

 

鈴「ええよろしく…すごい熱血漢ね」

 

総輝「…《天道 総輝》。“天の道を往き総てを輝かせる太陽”だ」

 

鈴「…よ、よろしく……(な、何?この超俺様系男子は?!)」

 

鈴は総輝のオーラに圧倒される。

 

大牙「…まあ、こいつはいつもこんな感じだから早く慣れてくれ」

 

それに気づいた大牙が気を利かせてそう言う。

 

鈴「ぜ、善処するわ……」

 

セシリア「私はイギリス代表候補生のセシr」

 

その時だった。一夏が時計を見て

 

一夏「やべっ、あと10分しか時間がない?!」

 

大牙「マジか?!」

 

箒「急ぐぞ!!」

 

皆が急いで料理を食べる中、総輝は一人席から立ち上がった。

 

大牙「総輝?!もう食べたのか?!」

 

総輝「お前達が喋り込んでいる間も食べ続けてたからな」

 

鈴「ちょ、ちょっとまってよ!私ももう少しで食べ終わるから!!」

 

総輝「それは無理な相談だ。先に行ってるぞ」

 

「「「「「この薄情者〜!!!」」」」」

 

セシリア「私の自己紹介はどうなったんですの〜?!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

場所は変わって、とある施設の中に三つの黒いISが鎮座しており、そこから繋がれたコードが一つのコンピュータに繋がっている。

そして、そのコンピュータのキーボードを目にも止まらない速さで打ち込むひとりの女性。紫がかった長髪にうさ耳のカチューシャ、不思議の国のアリスを連想させるエプロンを身につけた女性。

彼女はISの生みの親である《篠ノ之束》である。今彼女は、この三つのISの開発の最終段階に来ていた。

その瞳はいつもの気だるげで緩い目ではなく、真剣でキリッとした研究者のそれだった。

 

束「……これでよし。あとは……」

 

その時、扉が開かれ、白い長髪の少女が入ってくる。

彼女の名は《クロエ・クロニクル》。束の使用人のような人物だ。

 

クロエ「束様。コーヒーをお持ちしました」

 

束「ありがとうくーちゃん。そこ置いといて」

 

束はクロエに見向きもせずに礼を述べる。

しかし、コーヒーに手をつける様子はない。

 

クロエ「…束様、そろそろお休みになった方がよろしいのではないでしょうか。もうすでに3日は徹夜で作業をされています。これ以上続行されると……」

 

束「…心配かけちゃってごめんね?でも、どうしてもやらなくちゃいけないんだ。あたしは超えたい……超えなくちゃならないの。彼らに……《仮面ライダー》に」

 

クロエ「…なぜ、そこまで《仮面ライダー》に拘るのですか?」

 

束「あたしはね、くーちゃん。ISを開発したのは、宇宙へ進出するのと同時に、もう一つ目的があったの。昔、《仮面ライダー》は男性の力の象徴といってもいい存在だった。でも、女性にはそんなのはない……だからあたしはISを作ったの。女性でもヒーローになれる……いわば、女性版の《仮面ライダー》……それが《IS》なんだよ」

 

クロエ「……つまり、束様にとって《仮面ライダー》は、あってはならない存在……いえ、はっきり申し上げると“邪魔な存在”だと…?」

 

束「そんな事ないよ?確かに、仮面ライダーが現れたのは束さんもびっくりだけど、あたしは単純に知りたいだけ。仮面ライダーの、かつてあの国を影で守り続けた、ヒーローの力を」

 

クロエ「…だから、クラス対抗戦に乱入させる形で、無人機を襲撃に向かわせると」

 

束「無人機が襲撃してきたとなれば、確実に生徒に危害が及ぶ。だとすれば、彼らは必ず現れる。目的はいっくんでも、あの中国の代表候補生でもない……《天道 総輝》と《加賀美 大牙》……《仮面ライダーカブト》と《仮面ライダーガタック》だから」

 

そして、ついに無人機の開発の最終段階が完了し、その瞳が光り、生命が宿る。

 

束「……さあ、行っておいで。彼らを……《仮面ライダー》と戦うために……」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

その夜、総輝が少し夜風に当たるために外に出ていた時だった。

 

???「……うっ……えぐっ……」

 

誰かの啜り泣く声が聞こえた。音がした方向に歩いてみると、階段に座り込んで泣いている少女がいた。

彼女は総輝の知る人物だった。

 

総輝「……こんなところで、何で泣いてるんだ?鈴」

 

鈴「えっ?」

 

鈴はこちらに気づくと、真っ赤になった目を丸くして総輝を見る。

 

鈴「……総輝?何でこんな所に?」

 

総輝「少し夜風に当たりにな。お前こそ、一体何があったんだ?」

 

鈴は総輝から目を逸らして

 

鈴「……笑わないって、約束してくれる?」

 

総輝「ああ。泣いている女の子の話を誰が笑えるんだ?」

 

そして鈴は、ポツリポツリと語り始めた。

曰く、一夏と離れ離れになる際、鈴は一夏に告白をしたそうだ。内容は、「料理が上達したら毎日酢豚を食べてもらう」と言う、俗に言う味噌汁プロポーズだった。

 

総輝「…つまり、お前が勇気を出して言った告白を、一夏は履き違えて解釈していた、と言うことだな」

 

鈴「そうよ!!私の一世一代のプロポーズを、“タダメシくれるんだろ?”ってあいつは言ったのよ!!あーもう!!ホントにムカつくわあの唐変木の朴念仁め!!」

 

鈴はそう言うと立ち上がり、

 

鈴「あー!思い出したらなんかムカついてきた!!クラス対抗戦であいつと当たったらぶっ飛ばしてやるんだから!!!」

 

総輝「……フッ」

 

鈴「なっ!あんた……笑ったわね?!」

 

総輝「いや、 漸くお前らしくなったな、と思ってな」

 

鈴「何よ?私が失恋で泣くのは良くないって言うの?」

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた。“人は人を愛すると弱くなる。けど恥ずかしがることはない、それは弱さじゃないから。弱さを知る人間だけが強くなれるんだ”ってな」

 

鈴「弱さを知る人間だけが…強く……」

 

総輝「一夏の唐変木ぶりには、俺も少々呆れている。クラス対抗戦で当たれば、お前の思いを全てあいつにぶつけてやれ」

 

鈴「……うん。そうね、そうするわ」

 

総輝はどこか吹っ切れた表情の鈴を見て安心したように笑い、

 

総輝「それじゃあな。もうすぐ消灯時間だ。早く戻らないと、織斑先生の鉄拳が落ちるぞ」

 

鈴「それは勘弁願いたいわね」

 

そして寮に戻り、それぞれの部屋に行くため別れる時、

 

鈴「さっきは、ありがとね。励ましてくれて」

 

総輝「俺は何もしていないぞ。ただお祖父ちゃんの言葉を言っただけだ」

 

鈴「それでもよ。あんたがそばにいてくれたから、あたしは立ち直ることができた。明日は一夏をボッコボコにしてやるんだから、しっかり見てなさいよ!」

 

総輝「俺は一組だからな。一夏に負けられては困るんだが、まあ心の中でお前を応援してる」

 

鈴「ふふっ、ありがとね。それじゃお休み!」

 

総輝「ああ、お休み」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

〜クラス対抗戦当日〜

 

アリーナには学校中の生徒が集まっていた。

そして一回戦は、一組対二組、つまり「一夏対鈴」の対戦が始まろうとしていた。

ピットには、準備をする一夏と、その見送りに来た箒とセシリア、大牙が来ていた。

 

箒「頑張ってこいよ、一夏!」

 

セシリア「一夏さん、練習通りにやればきっと勝てますわ!」

 

大牙「一夏ぁ!負けんじゃねぇぞ!!」

 

一夏「ありがとう箒、セシリア、大牙」

 

『発進準備が完了しました』

 

音声が流れ、一夏はカタパルトへ足をのせる。

 

一夏「織斑一夏、《白式》行きます!!」

 

ーーーーーーー

 

同時刻、反対側のピットには鈴と、彼女を見送るため総輝が来ていた。

 

総輝「…まさか、初戦からあいつと当たることになるとはな。ちょうど良かったじゃないか」

 

鈴「…一応あたしとあんたは敵なんだけどね?まあ頑張るけど」

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた、“戦いはへそでするものだ”ってな」

 

鈴「はいはい、天道語録をありがとう」

 

『発進準備が完了しました』

 

そして鈴は両足をカタパルトに乗せる。

 

鈴「凰鈴音、《甲龍》出るわよ!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

アリーナに出た二人は、空中で向かい合う。

 

一夏「鈴!俺が勝ったら、昨日鈴が怒った訳を聞かせて貰うからな!」

 

鈴「ええいいわよ!言っとくけど、あたしが勝ったらあんたには何でも言うことを聞いてもらうからね!!」

 

一夏「勿論だ。行くぞ!!」

 

そう言って、二人は同時に飛び出す。

まず先制攻撃を仕掛けたのは一夏だった。右手の《雪片弐型》をスピードに合わせて一気に振り下ろすが、鈴も代表候補生とだけあって簡単には食らわない。

 

鈴「そんな見え見えの攻撃、当たるわけないでしょう!!」

 

鈴は後退しながら両肩のバルカンを連射する。

しかし一夏は、普段のセシリアと箒との特訓を生かし、それらをうまく躱しながら鈴に接近する。

鈴もある程度近づかれたところでバルカンでの牽制をやめ、近接武器である《双天牙月》を取り出し迎え撃つ。

そして、二人の距離が一気に縮まり、ぶつかり合おうとした時だった。

 

突如、上空から数本の光線が撃たれ、アリーナの地面に直撃して大爆発を引き起こす。

 

一夏「何だ?!」

 

煙の中から現れたのは、三つの歪な形をした黒いIS。

 

一夏「何……ロックされてる?」

 

鈴「一夏、あたしが時間を稼ぐから、その間にあんたは逃げて」

 

一夏「何言ってるんだよ?!相手は3機いるんだぞ?一人で倒せるわけないだろ!!」

 

鈴「あんたがやったって倒せないでしょ!!」

 

鈴がそう叫んだ直後、鈴に向かって太いピンクのレーザービームが撃たれる。

 

一夏「鈴!!」

 

一夏が咄嗟に飛び出して鈴を庇う。

直後、一夏はビームの奔流に呑まれ、大爆発を引き起こす。

 

鈴「一夏あああぁぁぁ!!」

 

一夏はISを解除され、そのまま地面に落下する。

それを確認した3機のISは、今度は鈴を標的に定める。

 

鈴「…よくも、やってくれたわね!!」

 

鈴はそう叫ぶと、《龍咆》を発射する。

直後、見えない力に弾かれたように、三つのうちの一つが弾き飛ばされる。これは、鈴のISである『甲龍》の最大の特徴で、空間に圧力をかけ砲身を作り、そのまま空気を圧縮して砲撃する衝撃砲だ。弾丸は勿論砲身も見えない為、発射タイミングがわからない為回避するのは非常に困難な兵装である。

これが有効と見た鈴は、続け様に龍咆を打ち出す。

しかし、敵ISはもう龍咆を見切ったのか、巧みに体を動かして回避する。

 

鈴「嘘でしょ?!」

 

直後、鈴に向けて三つのISからビームのガトリングガンが発射され、鈴はそれを避けることが出来ず、スラスターに被弾して墜落する。

 

鈴「きゃあああああっっ!!」

 

そして地面に落ちた鈴に、三つのISが近づく。

 

鈴「(あたしは……ここで死ぬの?一夏に何も言えず、守ることもできずに……)」

 

そして、ISのビーム砲が光を放ち始める。

 

鈴「……いや……いやだ……やめてよ……」

 

鈴の悲痛な声も届かず、光は徐々に強くなる。

 

鈴「だれか……助けて……!!」

 

その時だった。アリーナの側面の壁が大爆発し、大きな穴が開く。

三つのISがその方向へ視線を移し、鈴もそこを見て目を見開く。

煙が晴れると、そこにいたのは総輝だった。

 

鈴「総輝?!!何やってるのよ!!生身で出てくるなんて無謀過ぎるわ!!早く逃げて!!」

 

しかし総輝は余裕のある面持ちでアリーナの中央へ足を運び続ける。

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた……“太陽が素晴らしいのは、塵さえも輝かせることだ”ってな。よく見ておけ、鈴。これが太陽の輝きだ」

 

そして総輝は右手を掲げる。

すると上空から赤いカブトムシーー《カブトゼクター》が飛来し、総輝の右手に収まる。

そして総輝は、カブトゼクターを掴んだ右手を左肩の前に持ってくる。

そしてーーーーー

 

総輝「変身!」

 

《HENSHIN》

 

掛け声と共に、カブトゼクターを腰の銀のベルトにセットする。電子音声が流れ、六角形のパネルが総輝を覆っていき、分厚い銀の装甲を作り出す。

そして、変身が完了すると、銀の戦士ーー《仮面ライダーカブト》は三つのISと対峙した。

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます!
さて、次回は無人機とカブトの戦いです!!是非お楽しみに!!
小説の評価、感想などもお願いします!!


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第八話 カブトの力

お待たせしました、ジャズです!
今回はvs無人機回です。
タイトルにもありますがカブトの力、ご堪能ください!!


一夏と鈴を見送った後、総輝達は管制室のモニターで試合を見ていた。

 

試合が始まってしばらく経った時だった。

管制室の窓ガラスを何かがコンコンと叩く音がした。

音に気づいた総輝がその方向を見ると、窓の外にはカブトゼクターが飛んでいた。

 

それを見て何かを察した総輝は、誰にも気づかれる事なく外へと出た。ゼクターが資格者の元に自分から現れる時、それは即ち緊急事態が起こる前兆なのだから。

 

総輝が管制室を出た直後、室内にけたたましい警告音が鳴り響く。

 

大牙「な、何だ?!」

 

真耶「システム破損!何かが遮断シールドを貫通してきたみたいです!!」

 

モニターを操作していた真耶が険しい表情で事態を伝える。

 

千冬「試合中止!

織斑、凰、直ちに退避しろ!!」

 

千冬がマイクを使ってアリーナにいる二人に伝える。

モニターの映像を見ると、地面の爆炎の中から3機の黒いISが姿を現した。

一夏達は3対2という不利な状況に立たされている。

 

セシリア「先生!私にISの使用許可を!!」

 

セシリアが千冬に進言するが、千冬は首を横に振る。

 

千冬「……これを見ろ」

 

千冬がモニターの一部を指差す。

そこには、遮断シールドレベル4と表示されていた。

 

箒「緊急時のシャッターも扉も全てロックされてる……まさか、あのISの仕業?」

 

千冬「おそらくな。これでは、避難することも救援に向かうことも出来ない」

 

皆が固唾を呑んで見守る中、最悪の事態は起きた。

一夏が3機のISが放ったビームの本流に呑まれ、爆煙を上げて墜落したのだ。

 

箒「一夏あぁぁぁぁぁ!!!」

 

箒が撃墜された一夏を見て絶叫する。

アリーナの鈴もまた、激昂して3機のISに攻撃を仕掛けるが、奮戦虚しく撃墜される。

 

セシリア「そんな……鈴さんまで?!!」

 

箒「このままじゃ……二人ともやられる!!」

 

この場にいる全員が今にも飛び出しそうな勢いだったが、アリーナのシールドがロックされている以上、動く事はできない。

何か手はないのか、そう思案している時だった。

 

大牙「……あれ、総輝は?」

 

大牙の言葉にハッとして、皆は辺りを見渡す。

 

箒「おかしいな……さっきまでいたはずなのに」

 

千冬「……まさか!」

 

千冬が何かを察して叫んだ直後だった。

 

アリーナの一角が爆発し、その中から総輝が現れたのだ。

そして、右手にカブトゼクターを構え、腰のベルトに装填し《変身》、3機の黒いISと対峙する。

 

セシリア「総輝さん?!」

 

大牙「あいつ……いつの間に」

 

皆が驚く中、千冬はマイクを手に取り

 

千冬「…天道!どうやってそこに入ったのかは知らんが丁度いい。一夏と凰がやられ、救援も望めない今はお前が頼りだ!」

 

直後、アリーナの総輝から返答がくる。

 

総輝『勿論そのつもりです。ですが、状況が状況なので手加減出来ません。可能なら、敵ISの完全破壊の許可を…』

 

すると千冬は、ニヤリと笑い

 

千冬「…IS学園に無断で侵入、ハッキングによって生徒たちの逃げる手段を奪って危険に晒し、挙句大事な生徒一人と弟を手にかけようとしたんだ。遠慮はいらん………

叩き潰せ!」

 

それを聞いて心得たとばかりに、総輝ーーカブトはカブトクナイガンのアックスモードでISに切りかかる。

 

真耶「織斑先生?!!何言ってるのですか?!幾ら彼でも、3機のISを相手取るなんて無謀過ぎます!今すぐ彼を下がらせてください!」

 

真耶が必死の表情で千冬に訴えるが、千冬は余裕の表情で返す。

 

千冬「心配いらん。忘れたのか、真耶?あいつは人々を救うヒーロー……《仮面ライダー》だぞ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

千冬『ーー叩き潰せ!』

 

それを聞いた総輝は、直ぐさま敵ISに攻撃を仕掛ける。

敵は不意打ちを食らって後退し、距離をとる。

その隙に、総輝は鈴の元へ駆け寄る。

 

鈴「あんた……そのISって……」

 

総輝「説明は後だ。今は一夏を連れて後退しろ。後は俺がやる」

 

鈴「そんな、あんた一人じゃ無理に決まってるじゃない!あたしも…まだ戦えるから……!」

 

鈴は立ち上がろうとするが、落下の衝撃で体を打ったのか、苦痛で顔を歪める。

 

総輝「そんな状態じゃそれこそ無理だろう?ここは俺を信じて下がってろ」

 

そう言って総輝は鈴を抱え、一夏も回収すると自分が出てきた穴へと二人を放り込んだ。

そして、再びアリーナへと戻りISと向かい合う。

 

ふと、総輝は何かに気づいた。

 

総輝「(おかしいな……何故俺と鈴が話している時攻撃してこなかった?)」

 

先程までの総輝達は、攻撃するなら絶好のチャンスだった。にも関わらず、目の前のIS達は自分に鈴と相談し、更には鈴と一夏を避難させる時間も与えた。

ついさっきは、一夏と鈴を殺そうとする程の勢いで攻めていたはずなのに、それを見逃したのは何故なのか。

 

ここで総輝の中にある仮説が浮かび上がる。

 

総輝「……一つ聞く。お前達は何の目的でここに来た?」

 

だが、目の前の三つのISは答える気配はない。

返答を待っていた総輝だったが、突如3機のうちの一つが発砲してきた。

総輝は持ち前の反射神経でそれを間一髪で躱す。

しかし、攻撃を躱す為に体を動かしたその先に、別のISが待ち構えており、その長い腕を思い切り振りかぶり、総輝を殴り倒そうとしていた。

それに対して総輝も、アックスモードのカブトクナイガンを後方へ大きく引き、そして一気に突き出す。

敵ISの拳と銀の斧が同時に衝突し、大きな火花を散らす。

衝撃で双方ともに後ろへ大きく吹き飛ぶ。

しかし、今度は総輝の背後に更に別のISが周り込んでおり、総輝はそれに気づかずそのISによって再び吹き飛ばされる。

体制を大きく崩した総輝を見て、これを好機と踏んだ3機のIS達は総輝を取り囲み、三方向から一斉にガトリングガンを斉射する。

三方向から攻撃を受けている為総輝はまともに避けることも動くこともできず、ただひたすらに攻撃を耐える。幸い、マスクドフォームの防御力は優秀で簡単には貫通しないが、次第にマスクドフォームの装甲がダメージによって削れていく。このままではいずれマスクドフォームの装甲は完全に破壊される。

 

すると総輝は意を決して立ち上がり、ガトリングガンの銃弾の雨の中、カブトゼクターの角を少し上げる。

直後、アラーム音ともチャージ音とも取れる音が鳴り響き、全身に青い電流が走って銀の装甲が少し浮き上がる。

 

総輝「《キャストオフ》!」

 

《CASTーOFF》

 

総輝はカブトゼクターの角を完全に後方へ持っていく。

電子音声が流れた直後に、浮き上がった銀の装甲が一斉に周囲へ吹き飛ぶ。

秒速2000メートルで飛ぶ鉄塊は、総輝を取り囲んでい3機のISの身体を直撃し、吹き飛ばす。一部はその鋼鉄の体に深々と刺さり、また一部はガトリングガンの砲身を破壊する。

アーマーを解除したカブトの真紅の装甲が露わになり、下顎を起点にカブトホーンが上に上がる。

 

《Change Beetle》

 

吹き飛ばされたIS達は少々のダメージを負いながらも、カブトを仕留めんとその禍々しい腕を伸ばして一斉に掴みかかる。

しかし、その腕がカブトに届くことはなかった。

カブトは腰の横に付けられたボタンを押す。

 

総輝「《クロックアップ》」

 

《Clock Up》

 

自分に届くはずだった三つの腕は直前で静止する。

その隙に、カブトはカブトクナイガンのクナイモードを構え、3機のISに斬りかかる。

 

この時点で、総輝はある程度の確証を得ていた。

今自分が対峙している三つのISーーそれらはすべて、無人機であると。

動きがどこか機械じみていたり、総輝達が会話している最中に何もしてこなかった事も、相手が人で無いのなら合点が行く。

高校生の割に博識な総輝でも、ISに触れた時間は圧倒的に短い。なので、ISに関しては素人同然だ。

しかしそれは、常識に囚われにくいという事でもある。ISは有人で無ければ動かないのが常識だが、ISに触れて間もない総輝だからこそ、そのような常識に囚われず相手が無人であるという結論に至ることが出来た。

最も、相手が有人機であろうと、既に千冬から破壊命令が下りていた為、容赦する気は総輝には無かったわけだが。

 

クロックアップによって相手が静止状態である事を生かし、総輝はまず一つ目のISに集中攻撃を与える。

カブトクナイガンのクナイモードで滅多斬りにし、その黒い装甲を切り裂いていく。

 

やがてその鋼鉄の体が切り裂かれたことによって分離していく。そしてその中から血は出てくることはなかった。これによって、敵ISが無人であるということが裏付けられた。

それを確認した総輝は、直ぐさま二つ目のISを破壊しに掛かる。先程と同じように、クナイモードの斬撃を叩き込んでいく。

そして、二つ目のISも切り刻んだところで、無情にもタイムアップの時間がくる。

 

《Clock Over》

 

その音声が流れると共に、全ての時間が元どおりに流れる。

同時に、切り刻まれた二つのISが大爆発を引き起こす。

 

カブトは、最後に残った1機のISと向かい合う。

最後のISはしばらく静止していたが、ガトリングガンの砲身が破壊されており接近戦しか出来ない為、直ぐに右腕でカブトに殴りかかる。

しかし、カブトに接近戦など無謀にも等しい。ましてや人のように動くわけではない無人機の攻撃では、一つ一つの動作が単調で読みやすく、また動作ごとに少し動きが止まる為隙も多い。

前進しながら左右の拳を交互に振りかぶるISだが、カブトはそれをバックステップをとって下がりながら双方の拳を上手くいなし、一瞬の隙に蹴りやパンチを打ち込む。

 

そして、ISの右パンチが来るがカブトは上半身を伏せることでかわし、すれ違いざまにISの右腰をクナイモードで斬りつける。

《ONE》

 

次に、今度はカブトが振り向いた勢いで左手のアッパーでISの顎を打ち上げる。

《TWO》

 

そして、敵ISが反撃とばかりに再び殴りかかるが、その攻撃を読んでいたカブトは上体を僅かに逸らす事であっさりかわし、そのまま右足の蹴りをISに打ち込む。衝撃でISは後方へ大きく吹き飛ばされる。

《THREE》

 

ここで、カブトゼクターの三つのスロットルを押し終えたカブトは、カブトゼクターの角を元に戻しタキオン粒子をチャージアップ、ISに背中を向ける。

敵ISはこれを好機と見たのか、スラスターを吹かして全速でカブトに急迫する。

 

 

ーーだが、無人機は知るはずもないだろう。

カブトが敵に背中を向けるのは、敵に攻撃のチャンスを与えるわけではない。カブトが背中を向ける時……それは、仮面ライダーカブト流の“死刑宣告”である事をーー

 

 

 

総輝「ライダー…キック」

 

総輝は必殺技の名を静かに唱え、カブトゼクターの角を再び後方へ展開する。

 

《RIDERーKICK》

 

カブトゼクターから青い電流が走り、カブトの角へ到達してそこで増長する。

やがてそれは再び下へと流れ、右足へと収束する。

同時に、敵ISがカブトへとその右手を突き出す。

しかしその拳が届く前に、カブトは左足を軸に体を反時計回りに回転させ、青い電流で輝く右足を敵ISの頭部へと叩き込む。

 

総輝「はあっ!!!」

 

勢いよくぶつけられた右足は見事に敵ISの頭部に命中し、その衝撃でISは再び後方へ大きく吹き飛ばされる。そして地面に仰向けとなって倒れ込み、その体には青い電流が流れ、その鋼鉄の体は大爆発を引き起こす。

 

その後、敵ISが全て排除され、安全状態となったアリーナの全ての隔壁が解放され、全生徒が再び光を見る。

一体何が起きたのか、全員がアリーナの方へと視線を向ける。

 

彼らが見たのは、アリーナから上がる三つの爆煙。

そしてアリーナの中央に、赤い装甲が日の光に照らされ眩く輝き、堂々とした佇まいで空をーー否、天を指差して立ち続ける《仮面ライダーカブト》の姿だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜束のラボ〜

 

束「…あ〜あ…負けちゃったかぁ〜……」

 

IS学園のモニターをハッキングし、先程まで行われた自分の作った3機の無人機と仮面ライダーカブトの戦いを見ていた束は、椅子の背もたれにゆったり持たれながら呟いた。

 

彼女は仮面ライダーを倒すために新たにコアを開発して無人機を送り込んだのだが、不思議と悔しさは湧いてこなかった。

その代わり湧いてきたのは、“仮面ライダーの力を知りたい”という純粋な好奇心だった。あの圧倒的な力を解析、あるいは手にする事が出来れば、ISはさらなるステージへ到達する事が出来るかもしれない。束の中に湧いたのは、技術者、科学者としての新たな興味だった。

ふと、束は別のモニターに目を移す。そこには、二人の男子生徒の画像があった。

束はそれを見てニヤッ、と笑い

 

束「束さん、君たちに興味持っちゃったなぁ〜。この責任は、取ってもらうよ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……加賀美君、天道君?」

 

身内や千冬、そして一夏以外に束が興味を持った瞬間だった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜IS学園〜

 

その夜、IS学園では今日襲来した3機のISの解析が行われていた……

 

真耶「やっぱり、この3機は無人機だったみたいです。コアも未登録のものでした」

 

千冬「……そうか」

 

解析を行っていた真耶からの報告に、千冬は顔色を一つ変えずに返す。

 

千冬「無人機の状態は?」

 

真耶「……思った以上にダメージが大きいですね。

特に酷いのは最後に攻撃を受けた一機……《ライダーキック》を受けた個体は、本体が既に原型を留めておらず、コアにまでダメージが及んでいました。

残りの2機も本体が修復不可能なくらいまで破壊されていました。

もしこれに人が乗っていたらと思うと……襲撃者といえど、危うく天道君が人殺しになるところでした」

 

真耶がため息をつきつつ呟くように言う。

 

千冬「(束……もしこれがお前のやった事なら、お前は何の為にこれを作った?お前は一体、何がしたい?)」

 

千冬の疑問は、誰にも届くことはなかった。

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
主人公の無双シーンって、見てるのもそうですが書いててもすごく楽しいしスカッとしますよね!今回書いててすごく楽しかったです!こんな無双が許されのも、カブトならではですよね〜
では、また次回もよろしくお願いします!!


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番外編 動き出す陰謀

こんにちは、ジャズです!
今回は番外編なので短いです。
そして、衝撃の展開があります!!


 

ーー《亡国企業》ーーそれは、第二次世界大戦の頃から裏世界で暗躍している組織。その活動目的、組織の規模、構成員の詳細、拠点の場所などが一切不明の謎の組織。

 

そんな時組織の拠点にある、薄暗い部屋にある円卓のテーブル。そこに7人の男女が座っており、全員が同じ軍服のようなものを着用しており、その表情はやや険しかった。

今、亡国企業の幹部会議が行われており、その議題となっているのはーー

 

「ーー本当なのか?IS学園に《仮面ライダー》が復活したというのは?」

 

やや初老の男性が尋ねると、その隣に座る女性幹部がテーブルに搭載されたモニターを操作しながら答える。

 

「間違いありません。こちらをご覧ください」

 

そして、テーブルの中央に映像が流れる。

そこに写っていたのは、クラス代表決定戦の時のカブトとガタック、そして先日IS学園を襲撃した3機の無人機相手にたった一人で圧倒するカブトの映像だった。

 

その映像を見ながら、先ほどの女性幹部が説明する。

 

「分析の結果、個体名は《仮面ライダーカブト》および、《仮面ライダーガタック》と判明。五十年以上前、日本の渋谷に落下した隕石から発生した怪人、《ワーム》に対抗するため、《ZECT》と呼ばれる秘密結社が開発した対ワーム戦用兵器《マスクドライダーシステム》、その第1号と第5号です」

 

「マスクドライダーシステム……そんな昔のシステムが、何故今頃になって……」

 

「理由は不明です。ですが、この映像から察するに、おそらく性能は五十年前と劣化していないかと考えられます」

 

すると、今度は別の幹部が

 

「その、《マスクドライダーシステム》にはどのような能力があるのだね?」

 

「パワーに特化したマスクドフォーム、そして成虫ワームに対抗する為に《キャストオフ》し《ライダーフォーム》となります。この時得られる能力として、身体に流れるタキオン粒子を操作し時間流を変え、常人には視認不可能な速度で行動する《クロックアップ》が使えるようになります」

 

彼女の説明に、会議室の幹部たちから「おおー」と言う声が上がる。

 

「《クロックアップ》……それは恐ろしい力だな。もし、この力を手に入れられたら、我々の戦力も大いに強化されるだろう」

 

「しかし、その《マスクドライダーシステム》は現在どちらもIS学園にあるのだろう?」

 

「そんなもの、IS学園から強奪すれば!」

 

「いけません!お忘れですか?あそこには世界最強の《ブリュンヒルデ》が……」

 

そして会場を沈黙が包む。

するとその時だった。

 

???「ご心配には及びません」

 

会場のドアを開け、金髪の長身の女性と、黒い衣服に身を包んだ少女が入ってきた。

 

「これはこれは……実働部隊指揮官の《スコール・ミューゼル》殿。して、一体何の用かね?」

 

スコールと呼ばれた女性は、その後顔に妖艶な笑みを浮かべてこうつげた。

 

スコール「……我々《亡国企業》は先日、《マスクドライダーシステム》、その入手に成功しました」

 

会場から大きなどよめきが起こった。

 

「そ、それは本当なのかね?!」

 

スコール「ええ……《エム》」

 

スコールは隣に立つ《エム》と言う少女を呼ぶ。

すると、少女はその右手をゆっくり上に上がる。

直後、どこからともなく黒い何かが部屋に入って飛来する。それは会場の円卓のテーブルを飛び回った後、少女の手に収まるーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーそれは、()()()()()()()だった。

 

エム「変……身……」

 

少女は低い声でそう呟くと、、そのカブトムシを腰の銀のベルトにセットする。

 

《HENSHIN》

 

低い電子音声が鳴り、そして少女の体を黒い六角形のパネルが包んで行く。

現れたのは、銀の分厚い装甲に黄色い目の戦士だった。

 

エム「……《キャストオフ》……」

 

《CASTーOFF》

 

再び低い音声が鳴り、銀のアーマーが周囲へ吹き飛ぶ。

 

そして現れたのは、スマートな身体に黒いアーマー、よく見るとその胸部アーマーには電子配線のような赤いラインが走っている。

そして、その顔に黒いカブトムシの角が上がる。

 

《Change Beetle》

 

そしてその目に黄色い光が宿る。その光には、どこか憎しみが宿っているように見えた。

 

会場の幹部たちはあっけにとられている。

そんな彼らを見て満足げな顔のスコールが説明を始める。

 

スコール「……これは、《マスクドライダーシステム》の第0号、全てのマスクドライダーの元になった存在。

黒き太陽……《ダークカブト》です」

 

すると、向かいに座る男性が

 

「……まさかそんなものが……それを使えば、《クロックアップ》やその他の情報も……」

 

スコール「ええもちろん。既に《クロックアップ》の解析を始めております。解析が終了すれば、亡国企業の全ISに《クロックアップ》の搭載を目指しております。

そして、この《ダークカブト》のデータから、かつて《ZECT》に存在した全てのゼクター、及びマスクドライダーシステムの復元作業を行なっているところです」

 

会場はもう何度目か知らない大きなどよめきに包まれる。

 

「…それで、君たちは次に何をするんだい?」

 

スコールはパネルを指差して説明を始める。

 

スコール「我々にとって現在最も邪魔なのは、IS学園に存在する1号と5号です。そこで、IS学園が敢行する夏の合宿……あそこを奇襲します」

 

ーー恐るべき計画が、始まろうとしていたーー

 

 




と言うわけで、エムこと織斑マドカが《ダークカブト》に変身しました!!!
これはこの小説が始まる時から決まっていたことなんです。マドカってダークカブトが合うと思ったので。

では、また本編で!!


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第九話 ボーイズ・ミーツ・ボーイ

お待たせしました!ジャズです。
前回書き忘れてましたが…………

UAが一万を突破してました!!!読者の皆様、本当にありがとうございます!
これからも頑張ります!!


〜ある夜・総輝と大牙の部屋〜

 

真耶「部屋を移ってもらいます」

 

総輝「はい?」

 

唐突に言われた部屋替え宣言に、総輝と大牙はポカンとしていた。

 

大牙「あの……なんでですか?」

 

すると真耶は、申し訳なさそうな顔で

 

真耶「…実はここだけの話なんだけど、転校生が来ることになってね……それで、新しく部屋割りを決めた結果、君たちの部屋割りが変わっちゃったの」

 

総輝「(また転校生か……)ちなみに、どんな奴なんですか?」

 

真耶「それがね……何と、男子生徒なの!!」

 

真耶の言葉に二人は目を見開く。

当然だ。男子生徒と言うことは即ち、四人目の男性IS操縦者と言うことなのだ。

 

大牙「新たな男性適正者……まあ三人もいるんだし、また出てきても不思議じゃないか」

 

真耶「そう言うことだから、悪いんだけど、二人のうちどちらかが移動して欲しくて……」

 

大牙「そう言うことなら」

 

話し合いの結果、大牙が部屋を移ることになった。

 

大牙が部屋を出た後、総輝は一人考え事をしていた。

 

総輝「(……四人目の男性IS操縦者……だが、もしそうならニュースなどで話題になっていないのはどう言うことなんだ?)」

 

試しに、総輝は部屋に付けられたテレビの電源をつける。

そして様々なチャンネルを見るが、男性IS操縦者に関するニュースはどこのテレビ局も取り上げていなかった。

 

総輝「(一体どう言うことなんだ……?)」

 

総輝の疑問は深まるばかりだった……

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

一方大牙は、新たな部屋に到着していた。

 

大牙「ここか……」

 

ここで大牙はふと気付く。

 

大牙「(……ん?まてよ、総輝は部屋に残って、一夏は箒と同じ部屋、新しい男子は総輝の部屋……てことは……)」

 

大牙は結論に至って顔が徐々に青ざめていく。

 

大牙「(女子と相部屋かよオォォォォォ!!!!)」

 

大牙は心の中でそう叫んだ。

 

大牙「(くそ……とはいえ、ここでじっとしてても仕方ねぇ!相部屋の人にはきっちり説明して……よし、いくぞぉ!)し、失礼しますっ!!」

 

大牙は勢いよくドアを開けて中に入った。

 

大牙「今日から相部屋になる加賀美大牙です!よろしくお願いします!!」

 

すると、奥から少女が出てきた。

水色の髪に赤い瞳、そしてメガネを掛けている。

彼女を見て大牙は目を見開いた。

 

大牙「あれ……簪……なのか……?」

 

それを言われた少女も目を見開く。

 

簪「えっ……大牙……なの……?」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

二人はベッドに向かい合って座っていた。

 

大牙「驚いたぜ。まさか簪もこの学校に来てたんだな」

 

簪「びっくりしたのはこっちだよ……何でIS動かしてるのよ……しかも総輝君まで……」

 

彼女の名は《更識簪》。更識家は昔から対暗部用暗部の家として伝わっている。そのため、元警視総監である《加賀美陸》の頃から加賀美家とは縁があり、現警視総監の《加賀美新》と元更識家当主、簪の父との繋がりで、簪と大牙は言うなれば幼馴染のような関係なのだ。

 

大牙「俺もまあ、一夏がIS動かさなきゃこんなとこ来なかったんだけどな。まあでも……お前と再会できたし良かったわ」

 

簪「ちょ……大牙……///」

 

大牙にそう言われて顔を赤くする簪。

ここでふと、聞きたかったことを思い出し、身を取り出して尋ねる。

 

簪「あ、あの!…大牙って……その……か、《仮面ライダー》、なの?」

 

大牙はそう聞かれると真剣な表情になり、

 

大牙「……ああ、そうだ。俺は……《仮面ライダーガタック》だ」

 

それを聞いて簪はパアッと顔を輝かせる。

 

簪「す、すごい……大牙が、仮面ライダーだったんだ……!」

 

簪は昔から勧善懲悪物のヒーローが好きなのだ。

今の簪の心境は、憧れのスターにあったファンのそれだろう。

ここで簪は思い切って

 

簪「じゃ、じゃあさ……変身!してみてよ」

 

大牙「えっ?ここでか?」

 

簪「うん!せっかくだし、間近で見てみたいの!!」

 

簪はまるで子供のように目をキラキラと光らせてせがむ。

大牙は少しため息をついて

 

大牙「……わかった。そこまでいうなら……」

 

そう言って大牙は徐ろに立ち上がり、右手を高く掲げる。

すると、部屋の中に青いクワガタムシーー《ガタックゼクター》が飛来し、大牙の右手に収まる。

 

大牙「変身!!」

 

《HENSHIN》

 

電子音声がなり、大牙を六角形のパネルが包んでいく。

物の数秒で、変身が完了した。

 

 

簪「すごい……ほんとに仮面ライダーに……!」

 

大牙は変身を解く。

ベルトから離れたガタックゼクターはしばらく部屋を飛び回っていたが、やがてどこかへと飛び去っていった。

 

大牙「……まあ、積もる話はこのくらいにして、そろそろ風呂入ってくるわ。もうすぐ消灯時間だしな」

 

そういって、大牙はシャワールームへと歩き出す。

 

大牙「つーわけで、これからよろしくな、簪」

 

簪「あ、うん!」

 

簪は満面の笑みでそう返した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

〜次の日〜

 

真耶「今日は何と、転校生が来ています!!しかも二人!!」

 

真耶の言葉から始まったSHRは、大きなどよめきを生んだ。

一夏も少し戸惑っているようだが、総輝と大牙は落ち着いていた。何せ、転校生が来ることは既に知っていたからだ。(とはいえ、聞いていたのは一人だけだったので、転校生が二人いることに対して多少驚いてはいるのだが)

 

そして、真耶の合図でドアが開き、二人の人物が入ってくる。

一人は、金髪に男子用の制服を着た生徒、もう一人は銀髪で見た目は女子なのだが、その制服は特徴的でまるで軍隊のようなものだった。

 

まず、金髪の男子が自己紹介する。

 

???「初めまして。《シャルル・デュノア》です。フランスから来ました。ここに僕と同じ境遇の方がいると聞いたので本国より転入を……」

 

その時、第六感が働いて何かを察した男子三人は、咄嗟に両耳を手で塞ぐ。

直後、耳をつんざくような歓声が沸き起こった。

 

「キャアアアアアアアア!!!!!」

「男の子よ!四人目の男の子よ!!」

「守ってあげたくなる系の美少年!!」

 

女子たちの黄色い歓声に、シャルルは戸惑っている。

 

千冬「静かにしろ」

 

千冬の一声で教室入って一瞬で静まり返る。

 

真耶「では、次はラウラさん、お願いします」

 

ラウラと呼ばれた銀髪の少女は一歩前に出ると

 

ラウラ「《ラウラ・ボーデヴィッヒ》だ」

 

と一言。

 

真耶「……あの…い、以上ですか?」

 

ラウラ「以上だ」

 

真耶がおずおずと尋ねるが、ラウラはバッサリと返す。

 

一夏「何なんだ……」

 

一夏が小声で呟くと、ラウラがそれに気づいて一夏の方を向く。

 

ラウラ「…貴様が織斑一夏か?」

 

一夏「え?ああ、そうだけど……」

 

その直後だった。

『パァン!!』という甲高い音が教室に響く。

ラウラが一夏の頬を平手打ちしたのだ。

 

一夏「なっ……!」

 

突然の事に驚く一夏。そんな彼をラウラは鋭い目つきで睨み、

 

ラウラ「私は認めない……貴様が織斑教官の弟など……!」

 

と低い声でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大牙「てめ゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!!!!一夏にいきなりビンタとぁどういう了見じゃゴルァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!!

 

一夏へのビンタに激怒した大牙が立ち上がり、ラウラの胸ぐらを掴んでブンブンと前後に振り回す。

直後、大牙の頭を黒い物体と白い何かが直撃する。

 

大牙「いでっ?!」

 

大牙が振り向くと、総輝と千冬が鋭い視線で彼を見ていた。

 

大牙「総輝、何すんだよ?!」

 

総輝「少しは落ち着け、大牙。お前がそんなことをしたところでそいつには何も響かんぞ」

 

千冬「その通りだ、加賀美。教室を見てみろ、お前の叫びでみんな怯えてるぞ。少し頭を冷やせ。

だがお前もお前だ、ラウラ。私の弟にいきなり平手打ちとは……あまり感心せんな?」

 

ラウラ「…も、申し訳、ありません……ォェ」

 

ラウラは顔が真っ青だ。

先程大牙が首を振り回したせいで酔っているのだ。

教室に静寂が訪れた事で、千冬も一息つき

 

千冬「…まあ、少し揉め事もあったが、これからお前たちと過ごしていくクラスメイトだ。仲良くしてやってくれ。

一限目は一組と二組との合同演習だ。遅れたやつはグラウンド10周だからな。それから織斑、天道、加賀美」

 

呼ばれた三人は千冬の方を見る。

 

千冬「お前たちはデュノアの面倒を見てやれ。同じ男同士だ、色々教えてやれ」

 

一夏「分かりました」

 

総輝「了解です」

 

大牙「うす」

 

シャルルは一夏達の方へ歩くと、

 

シャルル「初めまして、僕は……」

 

シャルルが自己紹介しようとするが、総輝がその前に彼の手を握る。

 

シャルル「ふあっ?!///」

 

総輝「………」

 

何故か顔を赤くするシャルルを総輝は少し見つめていたが、

 

総輝「自己紹介の前に、移動が先だ。面倒な方になるからな」

 

一夏「そうそう!とりあえず走るぞ!」

 

そして、四人は一斉に走り出す。

 

総輝「俺たちはアリーナの更衣室を使うから、早めに慣れてくれ」

 

シャルル「う、うん……///」

 

シャルルは未だに顔を赤く染め、モジモジとしている。

 

そんな彼の様子に気がついたのか、

 

大牙「どうしたんだよそわそわして。トイレか?」

 

シャルル「ち、違うよ!!」

 

その時だった。目の前の廊下から他クラスの女子達が飛び出してきた。

 

「見て!転校してきた新しい男子よ!!」

「者共!出合え出合えぇぇ!!!」

 

前方にも女子、後方にも女子。まさに万事休す。

 

すると、大牙と総輝が顔を合わせ、強く頷く。

 

総輝「…大牙」

 

大牙「ああ!」

 

そして総輝は、シャルルをお姫様抱っこで持ち上げる。

 

シャルル「ええっ?!わああぁぁ〜〜!!/////」

 

ますます顔が赤くなるシャルル。

しかし、総輝はそれに目もくれない。

そして……

 

総輝・大牙「「クロックアップ!」」

 

そう言うと、二人は猛ダッシュする。

勿論、生身の状態でクロックアップなど出来ない。

だが、総輝と大牙はどちらも五十メートル走は6秒台である。つまり、本気でダッシュするこの二人には、たとえエリートの集まりであるIS学園の女子達でも追いつかない。

言わば、《クロックアップ(笑)》である。

 

一夏「えっおい!俺を置いていくなあぁぁぁ!!!!」

 

無情にも置いていかれた一夏。

彼も全速力で走るが、大勢の女子達に阻まれ距離はどんどん開いていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

〜男子用更衣室〜

 

大牙「……何とか……着いたな……」

 

全速力で走ったため、大牙は多少息を切らしている。

総輝は顔色ひとつ変えず、シャルルを下ろす。

 

総輝「突然すまなかったな。あの場はああする以外手は無かった」

 

しかし、シャルルは聞こえていないのか、ボーッとして突っ立っている。

 

大牙「…シャルル?」

 

シャルル「……えっ、あ、はい!!何でしょうか?!」

 

シャルルは驚いてやや早口になる。

 

大牙「さっきからどうしたんだ?なんかお前変だぞ?」

 

シャルルは少しムッとしたのか、頬を膨らませながら

 

シャルル「そんな事ないよっ!ただ、最初だから……少し緊張して……」

 

大牙「ああ、なるほど!それもそうだな。

俺は《加賀美 大牙》だ。まあ、大牙って呼んでくれ」

 

シャルル「うん、よろしくね大牙。それで、えっと……」

 

シャルルは先程から黙ってじっとシャルルを見つめている総輝の方へ視線を向ける。

総輝もそれに気づくと、例の指を天に向けるポーズをとり

 

総輝「俺は《天道 総輝》、“天の道を往き、総てを輝かせる太陽”だ」

 

シャルル「……あ、うん……よろしく……」

 

シャルルは総輝の自己紹介に少し戸惑った様子だ。

大牙はまたやってるよとばかりにあたまを抱えている。

 

大牙「シャルル、こいつはいつもこんな感じだから。早めに慣れてくれ」

 

シャルル「うん、頑張るよ……」

 

ふと、大牙は時計を見る。

 

大牙「うわっ、ヤッベェ?!もうこんな時間だ!二人共急ぐぜ!!」

 

総輝「そうだな。遅刻しようものなら、あの人の出席簿が頭に飛んでくる」

 

そう言って、二人は一斉に上着を脱ぐ。

その瞬間、彼らの引き締まった上半身が惜しげもなく露わになる。

 

シャルル「っ/////」

 

途端、シャルルは顔が真っ赤になり、両手で顔を抑えて後ろを向いた。

 

総輝「………」

 

大牙「何だよシャルル?お前も早く着替えろよ」

 

シャルルは顔を反対側に向けたまま

 

シャルル「…うん……着替えるよ……でもその……あっち、向いててね…?」

 

大牙「え?ああ、まあ……別に着替えをジロジロ見るつもりはないけどさ……何でもいいけど、とりあえず早く着替え」

 

シャルル「な、何かな?」

 

大牙「」

 

大牙が次に振り向いた時、シャルルは既にISスーツを着終わっていた。その間、わずか1秒にも満たない時間だ。

 

大牙「お前…まさか《クロックアップ》使って着替えたのか!」

 

シャルル「く、くろっくあっぷ?」

 

聞き慣れない単語にシャルルは疑問符を浮かべる。

総輝は大牙に冷静にツッコミを入れる。

 

総輝「そんな訳あるか。制服の下に着込んでいたんだろう?」

 

大牙「…だよな!!いやぁ〜わかってたようん!そうだ、そうだよな!!そうに決まってるよな!!」

 

シャルル「あ、うん!そうそう……あはははは…」

 

大牙「…けどさ、なんかISスーツって常に着るのって嫌じゃね?なんか引っかかるし」

 

シャルル「ひ、引っかかって……?/////」

 

シャルルは今日何度目か知らないが、再び顔を真っ赤にする。そんな彼を、総輝はなんとも言えない表情で見つめていた。

彼が教室に入ってから、総輝はシャルルを観察し続けていたのだが、彼の仕草はとても男性とは言えないものだった。寧ろ、女性と言えばしっくりくるだろう。

彼らが服を脱いだ時のリアクションや、先ほどの大牙の発言に対する反応もそうだ。もし男子なら、それらは全く気にしないのが普通の筈だ。

 

総輝「(……少しカマをかけてみるか……)」

 

何を思いついた総輝は大牙の方を向き

 

総輝「…なあ大牙。何が引っかかるんだ?」

 

大牙「え?」

 

シャルル「?!」

 

大牙は発言の意図が分からないのか、総輝に問い返す。

対してシャルルは目を見開いた。

 

総輝「お前さっき、“引っかかる”って言ってたな?シャルルはそれが何なのか分かっていないらしい。だから教えてやってくれ……

 

()()()()()()()()()()()

 

シャルル「ぁ……ぁ……」

 

シャルルは全てを察したのか、声にならない声を出しながらガタガタと震えている。もうその顔はリンゴのように真っ赤だ。

 

大牙「何って…………そりゃお前、チn」

 

シャルル「わぁーーわぁーーわぁーーーーーー!!!!//////////」

 

シャルルはもう限界だったのか、両耳を塞いでその場から一気に飛び出した。

 

 

大牙「……何だアイツ?」

 

総輝「………」

 

二人はなんとも言えない顔でシャルルが走っていった方を見ていたが、時間が押していることを思い出し再び猛ダッシュする。

ちなみに一夏は見事に遅刻し、千冬の出席簿を頭に食らっていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

グラウンドには、一組と二組の生徒が整列していた。

彼女たちの前にはジャージ姿の千冬が立っている。

 

千冬「今日からお前たちには、実習訓練を行ってもらう!まずは戦闘を実演してもらおう。凰!オルコット!」

 

呼ばれた二人は前に出る。

 

鈴「はあ……なんであたしなのよ……」

 

セシリア「こういうのは見世物みたいで気が進みませんわ」

 

二人共気だるそうに呟く。

そんな二人を見て千冬はため息をつき

 

千冬「…お前ら少しはやる気を出せ。

あいつに良いところを見せられる良い機会だぞ?」

 

千冬は彼女たちにしか聞こえないように言った。

その瞬間、二人の目が輝く。

 

セシリア「やはりここは代表候補生、セシリア・オルコットの出番ですわね!」

 

鈴「実力の差を見せつける良い機会よね!」

 

と、それぞれドヤ顔で言う。

それぞれ意中の相手は違うのだが、彼女たちの豹変ぶりに皆戸惑っている。

 

シャルル「ねえ、織斑先生あの子たちに何を言ったのかな?」

 

一夏「俺が知るかよ……」

 

シャルルが小声で一夏に尋ねるが、一夏は肩をすくめて答える。

 

セシリア「それで?相手は一体誰ですの?鈴さんですか?」

 

千冬「慌てるな馬鹿者。対戦相手はもうすぐやってくる」

 

その直後、空から何かが落下してくる音が聞こえてくる。

それは、訓練機の《ラファール・リヴァイブ》を装備した真耶だった。

 

真耶「きゃあぁ〜〜!!ど、どいてくださぁ〜〜〜い!!」

 

彼女は大牙が立つ方へ落ちてくる。

瞬間、大牙は側にいた一夏を引き寄せる。

 

一夏「ウェ?!ちょ、ナニヤッテルンディス?!」

 

大牙「“ライダーミガワリ”!!!」

 

そう言って、大牙は一夏を自分の前に押し出して盾のようにする。

直後、一夏と大牙が立っていた場所に大きな土煙が巻き起こる。周りの生徒が心配そうに覗き込むが、煙が晴れると全員が顔を真っ赤にし、目を背ける。なぜなら……

 

真耶「お、織斑くん……その、困ります……こんな……///」

 

一夏が真耶の豊満な胸部の上にのしかかっていたからだ。

 

一夏「えっ……な、な……?!!」

 

真耶「ああ、でも……このまま行けば、織斑先生がお義姉さんで、それはそれで魅力的な……///」

 

何かとんでもないことを口にする真耶だったが、一夏は慌ててその場から飛び起きる。

 

大牙「(危ねぇ……一夏を盾にしてなきゃ俺がああなってたのか……)」

 

ちなみに大牙は、一夏を盾にした事で巻き込まれずに済んだ。

 

一夏「あ、あのすみません!これはその、事故で……」

 

その時、一夏の頬を何かが掠め取った。

 

セシリア「おっほほほ!残念、外してしまいましたわ」

 

見ると、セシリアが笑顔で一夏に銃口を向けていた。

だがその目は笑っていなかった。

すると今度は、《ガキン!》という金属の重厚な音が響く。

振り向くと、鈴が二振りの剣を連結させていた。そして……

 

鈴「いちかあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

あろうことか、それを生身の状態である一夏に向けてブーメランの如く投げ飛ばしたのだ。

 

一夏「うわぁぁぁぁぁ?!!!」

 

突然の出来事で対処もできない一夏だったが、直後に二発の銃声が鳴り響き、鈴が投げた剣を撃ち落とす。

 

全員が銃声の鳴った方を向くと、そこにはスナイパーライフルを構えた真耶がいた。しかし今の真耶の目つきはいつものドジっ子教師のそれでは無く、どこか戦闘のプロ……例えるなら、トップアスリートのそれであった。

皆がそのギャップにたじろいでいたが、真耶はすぐにいつもの笑顔で

 

真耶「…織斑くん、怪我はありませんか?」

 

と問いかける。

一夏は戸惑いつつも

 

一夏「あ、はい……大丈夫です……」

 

千冬「山田先生は、元日本代表候補生だ。今くらいの射撃なら造作もない」

 

真耶「昔のことですよ……それに、候補生止まりでしたし」

 

真耶は照れながら立ち上がる。

 

その後、セシリアと鈴のコンビ対真耶の対決が行われたが、真耶が元代表候補生としての実力を見せ、この後は各班に分かれての実習が行われた。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

班長になったのは、代表候補生の鈴とセシリア、専用機持ちの一夏とシャルル、ラウラ、そして仮面ライダーの二人である総輝と大牙の七人だ。

 

しかし、やはり男子の一夏達には女子達が我先にと殺到した。結局彼女達は千冬の(血も涙もない)班わけによって漸く始まった。

 

一夏「じゃあまずは、起動と歩行の練習から始めようか」

 

鈴「勝手に動かしちゃダメよ?怪我しても知らないんだからね」

 

セシリア「まずは順番に、起動させて見て下さいな」

 

ラウラ「テキパキと行動しろ。時間は限られている」

 

シャルル「落ち着いてやれば出来るよ。最初はゆっくりとね?」

 

大牙「気合いだ気合い!!それがあれば出来る!!!」

 

総輝「難しく考える必要はない。普段どおり、自分が歩いている時の感覚でいけば良い」

 

それぞれの班長が、一般生徒達に的確な指示やアドバイスを出し、順調に進んでいた。

 

一夏「総輝、そっちはどうだ?」

 

総輝「問題ない。俺を誰だと思っている?」

 

一夏「そうだったな」

 

一夏はふと、あたりを見渡す。

 

一夏「…みんな教えるのが上手いなぁ」

 

総輝「お前こそ、女子達を上手くエスコート出来ているじゃないか」

 

一夏「そ、そんなことねぇよ」

 

すると、「馬鹿者!!」という怒鳴り声が聞こえたので、声がした方向を見る。

先ほどの怒鳴り声を上げたのはラウラだった。

 

ラウラ「テキパキと動けと言っただろ!!そんなことではISを操縦する事など出来んぞ!!!」

 

ラウラは一般生徒に対して、まさにスパルタとも言える教え方をしていた。女子達は皆半泣きの状態だ。

 

セシリア「……なんですのあれ」

 

鈴「ちょっと厳しすぎじゃない?」

 

シャルル「…あれはまるで軍隊だね」

 

隣で教えていたシャルル達が苦笑しながら呟く。

 

一夏「いや、あいつは本当に軍人だよ」

 

シャルル「え?どういう事?」

 

一夏「少し前にな。訳あって千冬姉がドイツ軍で臨時の教官を務めたことがあるんだ。多分あいつは、その時の生徒だったんだと思う」

 

鈴「あんな小さい子が、軍人……」

 

鈴が信じられない、という表情で呟く。

すると今度は、「気合いだ!!気合いが足りねぇ!!!」という叫び声が聞こえる。

一夏達は大体察したが、その方向を見る。

 

大牙「もっとだ!!もっと気ィ張れェ!!!もっともっと、熱くなれよオォォォォォォーーーー!!!!!!」

 

一夏「……あっちはあっちでなぁ……」

 

セシリア「気合いでどうにかなる問題ではないと思うのですが」

 

全員がその場でため息をついた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

授業が終わり、一夏達は屋上で昼食をとることになった。

 

シャルル「あの……僕もここにいて良かったのかな?」

 

シャルルが気まずそうに一夏と総輝、大牙の三人に尋ねる。

 

一夏「いいに決まってるだろ?」

 

大牙「そうそう!同じ男同士なんだし、仲良くみんなで食おうぜ?」

 

シャルル「ありがとう、二人とも優しいね!」

 

と、満面の笑みで返す。

 

箒「あ、あの…一夏?実は今日、お前に弁当を作ってきたのだが……」

 

そう言って箒は、ピンクの布に包まれた弁当箱を取り出し、一夏に渡す。一夏は早速その料理を食べてみる。

 

一夏「おお、すげえ美味いな!」

 

箒「う、うむ。それなら良いのだ」

 

平静を装っているが頬が緩んでいる箒。

 

鈴「一夏!箒のばっかり食べてないで、あたしも作ってきたんだから食べなさいよ!」

 

そう言って、鈴はタッパを開ける。

 

一夏「うお!酢豚じゃねぇか!」

 

鈴「まあね。あんた食べたいって言ってたでしょ?」

 

一夏「サンキューな、鈴!」

 

セシリア「んんっ!!実は私も、今朝偶々早起きして、こんなものを用意してきましたの」

 

そう言ってセシリアがバスケットを取り出し、蓋を開ける。

中に入っていたのは、サンドウィッチだった。

 

一夏「おお!美味そうだな!」

 

大牙「セシリアって料理も作れたんだな!!」

 

セシリア「ええもちろん!!それでですね、あの……よ、よろしければ、総輝さんに是非食べて頂きたいなと…//」

 

総輝「俺に?」

 

セシリア「ええ!食べて頂けませんか?」

 

総輝「フッ……なら、貰おう」

 

そう言って、総輝はサンドウィッチを1つ取り出す。

 

一夏「あの、俺も1ついいかな?」

 

大牙「お、俺も!」

 

シャルル「ぼ、僕も1ついいかな?」

 

セシリア「勿論、構いませんわよ?たくさんありますので、どんどん取ってくださいな!」

 

箒「ならば、私もいただこう」

 

鈴「みんなが食べるなら、あたしも貰うわ!」

 

そして、全員の手にセシリアのサンドウィッチが渡ったところで、それを一斉に口にする。

 

一同「?!!」

 

セシリア「お味はいかがでしょうか?」

 

一夏「う、うん……(なんだ、見た目はすごく良かったのに、とても食べられるような味じゃねぇ……!!)」

 

シャルル「す、すごく、個性的な、味だね……(下処理が全くされていないであろう野菜……しかも何?生魚を挟んでるの?!)」

 

鈴「ううっ(ヤバイ……吐きそう……)」

 

箒「うっ…(こいつ……自分で味見というものをしていないのか?!)」

 

セシリア「そうですか!あの、大牙さんは如何ですか?」

 

大牙は顔を真っ青にして

 

大牙「……ぶ…………」

 

一同「ぶ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大牙「豚の餌あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーーーーー!!!!!

 

 

と叫び、空高く飛んで行った。

 

セシリア「ぶ、豚の……餌……?!」

 

セシリアはショックのあまり目を見開き、ガタガタと震えている。

 

鈴「(あー、もう言っちゃう?)」

 

シャルル「(そうだね、本人のためだし)」

 

箒「あ、あのセシリア?そのサンドウィッチ、自分で食べてみたらどうだ?」

 

そう言われて、セシリアは涙目で自身のサンドウィッチを口にする。

その瞬間、セシリアの顔が真っ青になった。

 

 

一夏「……な?」

 

セシリア「わ、私とした事が……このような料理を作ってしまうなんて……」

 

ふと、セシリアは何かを思い出して

 

セシリア「あ、あの総輝さん!私の料理は……」

 

そう言って、早期の方に視線を向ける。

 

総輝「……ふむ、中々クセのある味だな」

 

なんと彼は、顔色1つ変えずにセシリアのサンドウィッチ(?)を食べていたのだ。

 

一夏「そ、総輝?!!」

 

シャルル「ええっ?!普通に食べてる?!!」

 

箒「こ、こんなことを聞くのはあれだが……大丈夫なのか?」

 

総輝「まあな。だが、せっかくセシリアが自分の時間を割いて作ってくれたんだ。食べないのはもったいないだろう」

 

セシリア「あ、あの……でも、作った自分が言うのも何ですが、私のサンドウィッチは……」

 

すると総輝は人差し指を天に向けるポーズを取り、

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた……“どんな食材にも調味料にも勝るものがある。それは、料理を作る人の愛情だ”ってな。

このサンドウィッチは、セシリアの愛情がこもった最高の料理だ」

 

セシリア「そ、総輝さあぁ〜〜ん!!!///」

 

セシリアは顔を真っ赤にして総輝に抱きつく。

総輝はそんなセシリアの頭を優しく撫でながら

 

総輝「だが、セシリアは料理の基本がまだ分かっていないみたいだからな。今度、一緒に料理を作ってみようか」

 

セシリア「はい!よろしくお願いします!」

 

セシリアは満面の笑みで返す。

 

箒「(男前……)」

 

シャルル「(男前だ……)」

 

鈴「(くっ……セシリアめ!羨ましい!あたしも一夏にあんな風に……///)」

 

一夏「(すげえ……さすが総輝だ)」

 

ちなみに、この後セシリアは実際に総輝に料理を教えてもらい、皆がびっくりするほど料理が上手くなったのだが、それはまた別の話。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

〜その夜〜

 

総輝と相部屋となったシャルルは、部屋のテーブルでくつろいでいた。

 

シャルル「総輝って、放課後はいつも特訓をしてるんだっけ?」

 

総輝「ああ……まあな。そうしなければ、皆についていけない」

 

シャルル「なら、僕も加わらせて!専用機持ちだから、力になれると思うんだ!」

 

総輝はふっ、と笑い

 

総輝「そうか……なら、是非頼もうか」

 

シャルル「うん!

それじゃ僕はお風呂に入ってくるね」

 

総輝「ああ、ゆっくりしてくるといい」

 

そう言って、シャルルは立ち上がって風呂場へと入った。

その直後、総輝の携帯電話が鳴る。

その相手は、大牙の祖父であり現警視総監の《加賀美 新》だった。

 

総輝「もしもし」

 

新『よう総輝!調子はどうだ?』

 

総輝「…それ、昨日も聞いてきたろ。俺は大丈夫だ、問題ない」

 

新『そうか!まあそうだよな。お前はあいつの孫なんだし。

ああ、そうそう。頼まれていた調査、終わったぜ』

 

総輝「すまなかったな、忙しいのに仕事を増やしてしまって」

 

実は、シャルルがこの学園に来ることがわかった総輝は、シャルルが男子だと言うことがどこか引っかかり、警視総監である新に彼の情報網を通じて調べてもらったのだ。

そして、その結果は……

 

新『デュノア社に男の息子がいるって言う情報は無かったぜ』

 

総輝「……そうですか。じゃあ、あいつは一体……?」

 

新『まあ待て。調べていくうち、興味深い情報が出てきたんだ。スマホに資料を送ったから、それを見といてくれ』

 

そう言って、新は電話を切った。

直後、総輝の携帯に添付資料が付いたメールが届き、すぐに彼はその添付ファイルを開く。

 

総輝「…これは……!」

 

そこに書かれていたのは、《シャルロット・デュノア》という“女性”に関する情報だったーーー

 

 

 

 

 




長かった〜!
お読みいただきありがとうございます!
と言うわけで、シャルル(シャルロット)とラウラ、そして簪を出しました!
簪に関しては、まあ彼女の家は対暗部用暗部と言うことで、警察組織のトップである新と大牙の家とは何か繋がりがあるだろうと言うことであんな感じにしてみました。
ん?これってもしや、大牙×簪ルートが……?
では、また次回!!評価、感想など待ってます!!


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第十話 シャルルの選択

どうも皆さん、ジャズです。
一昨日、ハーメルンを開いてビビりました……

ま・さ・か・の・評価がレッド到達!!!
本当に嬉しいです!まさかいきなりレッドゾーンなんて……
評価してくださった皆さん、本当にありがとうございます!
そしてこれからも、《GOD SPEED STORATOS》をよろしくお願いします!!


今日は土曜日、授業はなくアリーナが全面開放されているため、専用機持ちはアリーナで自主訓練を行っていた。

一夏もまた、月末に開催されるタッグマッチトーナメントに向けて、いつものメンバーで自主訓練をしていた。

 

箒「こう、ずばっ!!とやってがきん!!という感じだ!」

 

鈴「感覚よ感覚!習うより慣れろとかよく言うじゃない」

 

セシリア「防御の時は右半身を斜め上前方に5度傾けて、回避の時は後方へ二十度反転ですわ」

 

代表候補生の少女たちが口々に説明するが……

 

一夏「分からん!!」

 

一夏が頭を抱えて叫んだ。

 

箒「なぜ分からんのだ?!」

 

鈴「あんたねぇ……人が説明してるのにちゃんと聞きなさいよ!!」

 

セシリア「いいですか?もう一度説明しますが……」

 

と、再び彼女たちの説明(?)が始まる。

 

総輝「あの説明で、理解しろと言うのが難しい話だ」

 

彼女達の様子を腕を組んで見ていた総輝がため息をつきながら呟いた。

すると、

 

シャルル「ねぇ一夏、僕と模擬戦をやってくれないかな?白式と戦ってみたいんだ」

 

と、シャルルが自身の専用機、《ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ》を装備してやって来た。

 

一夏「シャルル!いいぜ、やろう!」

 

そう言って、一夏がアリーナの中央へと足を進めようとするが、ここで待ったをかける人物がいた。

 

総輝「ちょっと待ってくれ。シャルル、俺とやってくれないか?」

 

総輝だった。

実は、総輝は先日シャルルの正体及びこの学園に来た目的について全てを知っていた。今はまだそのことをシャルルーー否、シャルロットに伝えてはいないが、彼女とその背後にあるデュノア社の目的である一夏と白式のデータの流出を防ぐため、総輝は一夏とシャルロットが戦うのをさり気なく阻止していた。

 

シャルル「総輝?……いいよ、やろう!」

 

シャルルは嫌な顔を少しも見せずに総輝との勝負を受ける。

 

一夏「総輝がやるのか。なら、俺は後ろに下がってるな」

 

そう言って、一夏は総輝と場所を交代し、総輝とシャルルが相対する。

因みに総輝は専用機を持っていないため、訓練機の《打鉄》を使用している。

 

すると、観客席の方から「見てみて!シャルルくんと天道くんが模擬戦をやるみたいだよ!!」と、シャルルと総輝の試合に注目する生徒が増え始めた。

 

そして、試合が始まった。

まず、シャルルが両手にサブマシンガンを携え、それを総輝の方へ乱射しながら接近する。

総輝はそれを、複雑な動きで回避しながら前進する。

そして、二人の距離がほぼゼロになったところでお互いが近接武器を取り出し、近接戦闘に入る。

しかし、シャルルが専用機持ちであるとはいえ、近接戦闘では仮面ライダーである総輝に分があり、シャルルのシールドエネルギーは徐々に削られていく。

 

鈴「何よあれ。専用機持ちに訓練機であそこまで出来る普通?」

 

鈴が信じられない、という表情で思わず呟く。

箒もそれに頷きながら

 

箒「ああ。やはり、仮面ライダーは伊達では無いと言うことなのだろう」

 

セシリアは目を輝かせて

 

セシリア「流石ですわ総輝さん!」

 

とはしゃいでいる。

一夏は少し神妙な面持ちで

 

一夏「俺とあいつ……何が違うんだろうな。俺にも、あんな力があれば……」

 

と呟いていた。

 

総輝の猛攻に防戦一方だったシャルルだが、一瞬の隙に上空へと飛び上がる。

総輝もそれを追って上空へと飛ぶ。

 

シャルルは総輝が追ってくるのを確認すると、両手に再びサブマシンガンを取り出し、後方の総輝へと斉射する。

しかし総輝は、その弾丸の雨を体を回転させながら上手く回避し、スピードを上げて再びシャルルへ急接近する。

 

シャルル「くっ……」

 

シャルルは悔しそうな顔で歯ぎしりする。

総輝へとそんなシャルルの表情を見てしてやったりとばかりにニヤッと笑い、そしてさらに加速してシャルルのは背後に飛ぶ。

 

シャルルは“しまった!”と思い振り向こうとするがもう遅い。総輝は手持ちのソードでシャルルの背中のスラスターを斬りつける。

スラスターを斬られ、推進力を失ったシャルルは地面へと墜落していく。

 

地面に激突し土煙が起こり、総輝はシャルルが落ちたすぐ近くの場所に着陸する。

しかしシャルルはまだ終わってはいない。残ったスラスターを全力で吹かし、土煙を切り裂いて総輝へと急接近する。だが、総輝はシャルルの不意打ちが分かっていたとばかりにそれを右手で軽くいなし、シャルルはそのまま総輝の横を通り抜ける。これで、シャルルは総輝の背後へと回ることに成功する。シャルルは“今が好機!”と考え、再び総輝へと近づく。

 

総輝「はあっ!!!」

 

しかし、この状況こそ総輝にとって好機。シャルルが総輝に到達すると同時に、総輝は振り向きざまにカウンターの回し蹴りを発動し、左足を軸に右足を振り抜きシャルルの頭部に直撃させる。

 

シャルル「うわぁぁーーーっ!!!!」

 

その蹴りでシャルルは大きく吹き飛び、そのままアリーナの壁に激突する。その衝撃でシャルルのシールドエネルギーがゼロになり、ISが強制解除される。

 

これで試合が終了し、アリーナ中に歓声が沸き起こる。

鈴達も盛大な拍手と共に総輝に歩いて行く。

 

鈴「凄いじゃない!訓練機で専用機持ちを圧倒するなんて!!」

 

箒「うむ。シャルルの攻撃を少しも受けずに勝利するとは。見事だ」

 

セシリア「素晴らしいですわ、総輝さん!!私は感服致しました!!」

 

すると、壁に激突したシャルルが総輝の方へ歩いて行く。

 

シャルル「完敗だよ総輝。まさかこんなに手痛くやられるなんてね」

 

シャルルの表情には少し悔しさが滲み出ていた。

 

総輝はふっ、と笑い

 

総輝「当然だ。何故なら最強は俺だからな」

 

と返す。それに対して鈴達は苦笑しつつ

 

鈴「全力で否定したいけど、さっきの試合見たらねぇ……」

 

箒「ああ。私はお前が生身でも勝てない気がする」

 

セシリア「私は一度負けていますからね……しかも、ほぼ生身同然の状態で」

 

 

一夏「すげえな、総輝。どうやったらそんなに強くなるのか教えてくれよ」

 

総輝「一夏が勝てないのは、おそらく射撃武器の特性を理解していないからじゃないか?」

 

一夏はそれを聞いて顎に手を当てる。

 

一夏「う〜ん……一応、理解はしてるつもりなんだがなぁ」

 

シャルル「白式って“後付武装(イコライザ)”が無いんだよね?」

 

一夏はシャルルの言葉に頷き

 

一夏「ああ。何回か調べてもらったんだけど“拡張領域(バス・スロット)”が空いてないらしい」

 

シャルル「多分だけど、それって“単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)”に容量を使ってるからだよ」

 

一夏「ワン・オフ…?」

 

一夏が聞きなれない単語に眉をひそめると、総輝がため息をついて

 

総輝「…授業で習っただろう?“操縦者とISが最高状態になった時に発動する能力”の事だ」

 

一夏「ああ、なるほど。俺の場合は《零落白夜》がそれか」

 

一夏が納得したように頷きながら言う。

 

シャルル「初代《ブリュンヒルデ》…織斑先生の機体と同じ能力なんだよね?姉弟だからって同じ能力が出るものなのかな……?」

 

総輝「分からん。ただ1つ言えるのは、白式は初心者である一夏が乗るには、あまりにもピーキーすぎる機体と言うことだな」

 

一夏「あはは…でも、仮に射撃兵装があったとしても、それを上手く使いこなす自信は俺には無いな。だから寧ろ、刀一本という方が俺にはしっくり来るかもしれない」

 

彼らがそう語り合っていた時だった。

ふと、周りがざわついているのに総輝は気づく。辺りを見回すと、一点に目がいく。

そこにいたのは、黒いISだった。

 

「見て!ドイツの第三世代型よ!」

「まだトライアル段階って聞いたけど……」

 

ざわめきの中、そのパイロットの顔が露わになる。銀色の長髪に左目を覆う黒い眼帯。

そう、先日シャルルと共にやってきた、もう一人の転校生……

 

総輝「《ラウラ・ボーデヴィッヒ》……」

 

総輝がその名を静かに呟く。

すると、ラウラがその口を開く。

 

ラウラ「織斑 一夏……貴様も専用機持ちのようだな。ならば話は早い……私と戦え」

 

低く、威圧感のある声でそう告げる。

しかし一夏はそれに臆することなく答える。

 

一夏「……断る。戦う理由がない」

 

ラウラ「貴様になくても私にはある。どうしても戦わないと言うならーー!!」

 

そう言って、ラウラは右肩に装備されたレールガンを展開し、そして発射する。

突然のことで反応が遅れる一夏だったが、レールガンが火を吹く直前に動き出し、そして一夏の前に立ちふさがる者がいた。

 

総輝「ーーふっ!!」

 

総輝だった。

総輝は一夏の前に出ると、左足を軸に反時計回りで右足による回し蹴りを放つ。

レールガンの弾丸は右足を直撃するが、総輝の右足がそれを押し切り、弾丸をラウラの方向へ飛ばす。

弾かれた弾丸はラウラのすぐ横を通り抜け、壁に激突し大きな爆音と共に土煙を起こす。

 

ラウラ「貴様……」

 

ラウラが舌打ちしながら総輝を睨む。

総輝は再びラウラへと向き直る。

 

総輝「警告も無しにいきなり発砲とは。物騒な奴だな」

 

ラウラ「もう一人の男性操縦者……《天道 総輝》……」

 

すると、総輝の横にISを再展開したシャルルが両手にサブマシンガンを構えて立つ。

 

一夏「シャルル!!」

 

シャルル「いきなり戦闘を仕掛けるなんて、ドイツの人は随分と沸点が低いんだね!!」

 

ラウラ「フン……フランスの第2世代と、日本の訓練機か……そんな機体で、私の前に立ちふさがるとはな」

 

ラウラの言葉にシャルルはキッ、と鋭い視線でラウラを睨み

 

シャルル「いつまでも量産化の目処が立たないドイツの第三世代よりは動けるだろうからね!!」

 

総輝「機体の性能差が本当の実力差であるとは限らないぞ、ボーデヴィッヒ?」

 

そのまま両者のにらみ合いが続くが、ここで教師のアナウンスがアリーナに鳴り響く。

 

“そこの生徒!何をやっている!!”

 

その声に、ラウラは引き時を悟ったのか、ISを解除する。

 

ラウラ「…今日のところは引いてやろう。

織斑 一夏、貴様を倒し二度と動けなくしてやる」

 

吐き捨てるようにそう告げると、アリーナの奥へと姿を消した。

 

 

〜更衣室〜

 

 

男子更衣室のベンチで、一夏は思いつめた表情で座っていた。

そんな彼を不安げな表情でシャルルが覗き込む。

 

シャルル「…一夏、大丈夫?」

 

一夏「…ああ、大丈夫だシャルル。さっきはありがとうな」

 

一夏は無理に作った笑顔で返す。

そんな彼に、壁に腕を組んでもたれかかっていた総輝が声をかける。

 

総輝「お前は悪く無い。ラウラがあんな態度なのは、《第2回モンドグロッソ》での出来事が原因だろう?」

 

一夏「ーーっ?!」

 

総輝の言葉に、一夏は跳ねるように顔を上げ目を見開いて総輝を見つめる。

 

一夏「どうしてそれを……?」

 

総輝「……大牙の爺さんがな、そう言うことに関しては情報通なんだ。そこで知った」

 

一夏「……そうか……」

 

一夏はため息をつきながら項垂れる。

 

シャルル「第2回モンドグロッソ…?一体何があったの?」

 

話について行けていないシャルルがある総輝と一夏を交互に見ながら尋ねる。

 

一夏「…そうだな。今度、みんなに話すよ。第2回モンドグロッソで、俺の身に起きたことーー」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

一夏達がアリーナで訓練している頃……

 

〜とある整備室〜

 

大牙は、幼馴染である《更識 簪》に連れられて整備課の部屋へと来ていた。

そこには、一機のISが鎮座していた。

 

大牙「これって……」

 

簪「私の専用機ーー《打鉄弐式》」

 

簪の言葉に、大牙は目を見開く。

 

大牙「専用機って?でも、これって……」

 

簪「うん。まだ、完成してない」

 

そして簪は、この機体についてポツリポツリと語り出した。

曰く、この機体は日本代表候補生である自分に用意される予定だった専用機であったこと。

しかし、突如現れた高いケースである《織斑 一夏》のデータを取るため、彼の専用機である《白式》の開発の為に人員を割かれこの機体が未完成の状態で放棄された事。

それを、簪本人が自らの力で完成させると引き取り、現在は八割まで完成に至っている事。

 

大牙「そうだったのか……」

 

大牙がそう呟いた直後、どす黒いオーラのようなものが簪から流れる。

 

簪「ふ…ふふふ……そうだよね。女子の代表候補生なんてどこにでもいるしね。数少ない男性操縦者のデータを取る方が大切だよね。どうせ私なんか、お姉ちゃんにも劣る出来損ないだしね……笑え……笑いなよ……」

 

大牙「ちょ、ちょっと簪さん?!なんか凄いオーラ出てるよ?!」

 

簪「大牙はいいよね……どうせ私なんか……ふふふふ……」

 

大牙「簪いぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

 

〜10分後〜

 

 

なんとか簪を宥めることに成功した大牙。

 

大牙「全く……びっくりしたぜ」

 

簪「ご、ごめんね……?なんか最近、こういうの多くて……」

 

簪は頬を染めながら言う。

 

大牙「完全に病んでるじゃねぇか!!もう無理すんな!これからは俺が手伝うから!!」

 

簪「それはダメ!!!」

 

簪が突然大声を出し、大牙はビクッと体を震わせる。

 

大牙「か、簪……?」

 

簪はわなわなと体を震わせながら

 

簪「それじゃあダメなの……この機体は、私が……私一人で完成させなくちゃいけないの……でないと……でないと………お姉ちゃんを超えられないから!」

 

大牙「お姉ちゃん…?楯無さんをか?」

 

簪はこくっと頷き

 

簪「お姉ちゃんはロシアの国家代表で、この学園の生徒会長で、あの人の機体を自分一人で組み上げて……それなのに、それなのに私は……あの人に勝つ要素が何一つない……」

 

そう語りながら簪の顔は徐々に徐々に下へ下がっていく。

そんな彼女を見て、大牙は少しため息をついた後、簪の両頬をバシッ!と挟んで再び上に向ける。

 

簪「ふぇ……大牙……?」

 

大牙「しっかりしろ簪!!たしかにあの人はすげぇ人だ。俺自身も尊敬してる。

けどなぁ!!お前だってすげえやつだってこと、俺が一番よく知ってる!!簪が誰よりも負けず嫌いで、努力家な事を俺が知ってる!!」

 

簪「大牙……」

 

大牙「お前が困ってどうしようもなくなってるなら、俺がいつでも手を貸してやる!お前が悲しいときは、いつだってそばにいてやる!お前が傷つけられたなら、俺が守ってやる!それが……《仮面ライダー》だ!!」

 

簪「……っ////」

 

その瞬間、簪は顔が火傷したかのように熱くなるのを感じた。

 

簪「(こ、これってもしかして……告白?!大牙は私のこと好きって事なの?!あ、でも……大牙なら……)わ、わかった。よろしくお願いします……////」

 

大牙「おう!(良かった。心開いてくれたみたいだな。頑張れよ、簪……)」

 

その後、大牙は翌日も簪の専用機の開発作業を手伝う約束をし寮に戻って行った。

 

〜その道中〜

 

突如、少女の叫び声が響いたので大牙はその方向を見る。

司会に移ったのは千冬と、彼女に詰め寄るラウラだった。

 

大牙「(ラウラと織斑先生?何話してんだ?)」

 

少し気になった大牙は木の陰に身を隠し聞き耳をたてる。

 

ラウラ「答えてください教官!何故こんなところで……」

 

千冬はやれやれとため息をつきながら答える。

 

千冬「…何度も言わせるな。私には私の役目がある」

 

そんな千冬に、ラウラはさらに食いつく。

 

ラウラ「こんな極東の地で、一体どのような役目があると言うのですか?!お願いです教官、もう一度ドイツに戻って来てください!こんな場所では、あなたの能力は半分も生かされません!!」

 

千冬「…ほう?」

 

ラウラの言葉に千冬はピクリと眉を動かす。

 

ラウラ「大体、この学園の生徒達は貴女が教えるに足る者達ではありません!危機感に疎く、ISをファッションか何かだと勘違いしている。そのようなもの達に、教官が自ら教えるなど時間の無駄遣いもいいところで……!」

 

千冬「そこまでにしておけよ、小娘」

 

突如千冬が、ドスの効いた低い声で威圧するように言う。

その迫力に押され、ラウラは思わず押し黙る。

 

千冬「…少し見ない間に偉くなったな?十五にしてもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」

 

ラウラ「わ、私は……」

 

千冬「…今日はもう戻れ。私は忙しい」

 

たじろぐラウラを尻目に、千冬は元の声色で話す。

ラウラは歯ぎしりした後、逃げ出すようにその場から走り出す。

彼女をじっと見つめた後、千冬はその場から振り向かずに

 

千冬「…そこの男子。盗み聞きとは感心せんな?」

 

大牙「……気づいてたんですか」

 

大牙はおずおずと木の陰から姿を現わす。

 

千冬「…お前も早く寮に戻れ。夕食の時間だぞ」

 

そう言って千冬は立ち去ろうとするが、大牙は彼女を呼び止めた。

 

大牙「あの!」

 

千冬「…何だ?」

 

大牙「その、織斑先生は、ラウラとどう言う関係なんですか?」

 

千冬「……お前に話すことはない。知りたいのなら、一夏から聞くんだな」

 

そう言い切ると、今度こそ千冬は歩いて行った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

〜総輝とシャルルの部屋〜

 

訓練を終えた後、シャルルは先に部屋に戻りシャワーを浴びていた。

そしてその後から総輝が部屋に入った。

ベッドに腰掛けると、総輝はある考え事をしていた。それは、シャルルの正体ーー《シャルロット・デュノア》についてだ。先日に彼ーー否、彼女の正体とこの学園に来た目的について知ったのだが、彼はまだ本人にそのことについて話していなかった。

因みに総輝はもうすでにこの件についての解決の手は打ってあった。しかし、そのことを切り出すタイミングを見つけられずにいた。

 

総輝「(いつ切り出そうか……?)」

 

そう思案している時だった。

風呂場から『ガタン!』という音がし、シャルロットの「いったぁ!!」という声が響く。

総輝は反射的に立ち上がり、風呂場に駆け寄る。

 

総輝「シャルル、すごい音がしたが大丈夫か?開けるぞ?」

 

総輝はそう声をかけて、ドアノックに手をかける。

 

シャルル「わあっ、総輝?!まって、ちょっと待って!!」

 

シャルル(シャルロット)の慌てた声が響くがもう遅い。

総輝はその扉を一気に開ける。

 

総輝「……」

 

シャルル「……っ…////」

 

そこには、地面に蹲って座るシャルルの姿があった。

しかし、そこにいたのは男子ではない。膨よかな体つきに女性を象徴する胸の膨らみ。

 

総輝「(しまった!!)」

 

総輝は慌ててドアを閉める。

シャルルが女子であることは既に知っていた総輝だが、彼女が現在裸である事を完全に失念していた。

 

〜数分後〜

 

総輝がベッドに座っていると、シャルルが髪を拭きながらもう一つのベッドに腰掛ける。

しばらく沈黙が続いたが、不意に総輝が切り出す。

 

総輝「……すまなかった。まさか君が…(裸だったなんて)」

 

シャルル「う、ううん。大丈夫……悪いのは男だって偽ってこの学園に来た僕だから……」

 

総輝「ああ、その事なんだが……」

 

総輝は気まずそうな顔で、

 

総輝「君のことについては、既に知っていた。シャルル、いやーーシャルロット」

 

その瞬間、俯いていたシャルルの顔が跳ねるように起き上がる。

 

シャルル(以下、シャルロット)

「ど、どうしてそれを……?!」

 

震えた声でそうたずねる。

 

総輝「実は、 加賀美の祖父さんが警視総監でね。あの人に調べてもらったのさ。君の会社のことや、出自についても……」

 

シャルロットは目を見開いていたが、やがて寂しそうな笑顔で俯く。

 

シャルロット「……そっか。やっぱりダメなんだよね、嘘をついちゃ……」

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた……“手の込んだ料理ほど不味い。どんなに真実を隠そうとしても、隠しきれるものじゃない”ってな」

 

シャルロット「ははは……ぐうの音も出ないよ……」

 

シャルロットは乾いた笑いでそう返す。

 

総輝「それで、お前はこれからどうするんだ?」

 

シャルロット「きっと、本国に呼び戻されるだろうね。僕は代表候補生の資格は剥奪で、刑務所行きは確定かな?」

 

自嘲気味に言うシャルロットだったが、総輝は不意に立ち上がる。

 

総輝「そうじゃない、シャルロット。お前自身がどうしたいのかを聞いている」

 

シャルロット「ふえ?」

 

キョトンとしているシャルロットだったが、総輝は構わず続ける。

 

総輝「お前はデュノア社の操り人形ではない。一人の人間、“シャルロット・デュノア”だろう?ならばお前自身で、自分がどうしたいのか決めることはできるはずだ。お前はどうしたい?どんな人生を過ごしたい?」

 

シャルロットはしばらく沈黙していたが、やがてその両目に涙を浮かべてポツリ、ポツリと語り始める。

 

シャルロット「僕は……僕はこんなことしたくない……会社に縛られないで、自由に生きていきたい……もう嫌だ……嘘をつくのも……人も、自分も騙すのも……!」

 

シャルロットはいつのまにか総輝に抱きついて悲痛な声で自分の願望を語る。

総輝はそんな彼女の頭を優しく撫でながら言う。

 

総輝「……なら、自由になるか?」

 

シャルロット「えっ?」

 

シャルロットは思わぬ言葉に総輝の体から頭を話し、総輝を見上げる。

 

総輝「……実はな、既にシャルロットが自由になる為の手はもう打ってあるんだ」

 

シャルロット「え……ええぇぇぇ?!」

 

総輝「だがその前にシャルロット、お前一つ確認しておきたいことがある。お前は、デュノア社に……実家に何か未練はあるか?」

 

総輝の言葉にしばらく思案していたシャルロットだったが、

 

シャルロット「……無い、かな。二年前にお母さんを亡くしてから、僕はずっと会社の道具みたいに生かされてきたんだ。非公式ではあるけど、会社の機体のテストパイロットもやらされて、挙句こんなことまでさせられて……父と話したのも一時間にも満たないし……」

 

総輝「…そうか。ならばいい、ついてきてくれ」

 

そう言って、総輝はシャルロットの手を引いて部屋から出る。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

シャルロットが連れてこられたのは、職員室だった。

 

シャルロット「あの、総輝…?」

 

総輝「少し待ってろ」

 

そう言って、総輝は中に入って行く。

しばらくすると、総輝と共に千冬が出てきた。

 

シャルロット「お、織斑先生?!」

 

千冬「ああ、お前もいたのか。案外早くバレたものだな」

 

千冬は軽く笑いながらシャルロットに言う。

 

シャルロット「早くって……え?もしかして織斑先生……」

 

千冬「気づいていないとでも思っていたのか?まあ、確証はなかったから聞こうにも聞けなかったんだが、こいつが全ての証拠を持って来てくれてな。それにしても、男を演じるなら役者の勉強でもするんだったな。全く男らしさを出せていなかったぞ?歩き方然り、仕草然りなんだあれは。本当に男性になりきっていたつもりだったのか?あれならまだ私の方が」

 

シャルロット「分かりましたぁ!分かりましたから、もうその辺にしてください…」

 

シャルロットは涙目になって千冬の毒舌を遮る。

 

千冬「ふっ、冗談…ではないがこれは置いておこう。

さて、お前の処遇だが……一応聞くぞ。本当に、デュノア社に未練は無いのか?実の父から縁を切る覚悟はあるか?」

 

シャルロット「……そのことは、さっき総輝にも話した通りです。僕はもう、あの会社に縛られたくは無い…自由になりたいんです」

 

千冬はそれを聞いて満足したように頷くと、

 

千冬「…よくわかった。その言葉だけで、もう十分だ。あとは任せておけばいい」

 

そう言って、千冬は職員室へ戻ろうとする。

 

シャルロット「あの、何をするんですか?」

 

シャルロットの問いに答えたのは総輝だった。

 

総輝「加賀美の祖父さんが集めたこの証拠資料を、日本政府を通じてデュノア社に叩きつける。そうなればお前は身寄りが無くなるわけだが……お前には日本国籍が与えられる。そうすれば、この学園を卒業してもシャルロットはデュノア社にもフランスにも強制帰国させられることはない。勿論フランスに自分で帰ることも出来るが、お前は自由になれるんだ」

 

それを聞いてシャルロットはしばらく理解が追いついていないのかぽかんとしていたが、徐々にその意味を理解したのか、両目から涙が溢れでる。

 

シャルロット「…なれるの……?僕は、自由に……なれるの……?」

 

確認するように総輝に近づきながらたずねるシャルロット。そんな彼女を優しく抱きとめ、頭を撫でながら総輝は笑顔で答える。

 

総輝「ああ。今までよく我慢したな。これでもう、お前は何にも縛られることはない。自分の意思で、自分の人生を決められるんだ」

 

その瞬間、シャルロットは声を上げて泣いた。今まで押し殺していた全ての感情を溢れさせながら……

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

シャルロットが泣き止み、部屋に戻る途中。

 

シャルロット「…ありがとうね、総輝」

 

そう言われ、足を止めて総輝は振り返る。

 

総輝「礼には及ばない。お前が本当の笑顔でこれからを過ごせるのならば、安いものだ」

 

シャルロット「ふふっ……でも、どうして?なんで総輝は、ここまでしてくれるの?」

 

総輝「人を助けるのに、理由は必要か?」

 

シャルロット「でも、普通あってそれほど繋がりもない人に、ここまでする人なんていないよ。それに、日本の警察の人や政府の人まで動かすんだから……」

 

総輝はしばし思案したあと、ゆっくりと語り始める。

 

総輝「ある人が言っていた。“ヒーローとは、正義のために戦うんじゃない。人の笑顔と、夢と希望、そして自由を守るために戦うんだ”とな。俺は、お祖父ちゃんから受け継いだものがある。俺はお祖父ちゃんからこの国のヒーロー、《仮面ライダー》の力を受け継いだ。でも、それはただ戦うだけが全てじゃない……その他の方法でも、困った人を助けるのが、本当のヒーローなんだ」

 

シャルロット「…ヒーロー、か……一体君は何者なのさ?」

 

その問いに、総輝は右手の人差し指を天に向けて答える。

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた……俺は“天の道を往き、総てを輝かせる太陽”、《天道 総輝》だ」

 

シャルロットはしばらくぽかんと口を開けていたが、思わず吹き出す。

 

総輝「…何が可笑しい?」

 

少しムッとした総輝がシャルロットに問いかける。

 

シャルロット「ううん、違う違う。すごく言い得て妙だなと思ったんだよ。総輝は僕の心を照らしてくれた。さっきまで僕の心は、悲しい気持ちや悔しい気持ちでいっぱいで……まるで、雲が立ち込めて真っ暗だったんだ。

だけど君は、まさに太陽のように、僕の心を希望と言う光で照らしてくれたんだ……だから、何度でも言わせて?

 

ありがとう、総輝…僕のヒーロー」

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
今回、シャルロットの決断についてですが、これは私が本編で感じていた不満を総てこちらで解決させていただきました。
原作での一夏の処置って、このコメント欄でもあったんですが所詮は問題の先送りでしかないんですよね。つまり、シャルロットが卒業すれば後はどうするのか……
なので、もうこの段階で解決させちゃおうと考え、この展開にしました。賛否両論はあるかと考えますが、僕が一番いいと思ったのはこの方法だったので。
では、次回もよろしくお願いします!


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第十一話 停止結界vs高速のビジョン

今日ランキングを見たらこの小説が乗っててビビりました……初めて1ヶ月でまさかここまでくるとは……
ここまでこれたのも読者の皆様のおかげでございます。本当にありがとうございます!
さて、今回なのですが、前回「台本形式で読み辛い」というお声を頂いたので、今回はセリフの前にキャラ名を入れるのをやめてみました。もし、これで大丈夫そうであれば次回からこの形でいこうと思います。変則的で申し訳ないです!!
では、お待たせしました。本文スタートです!


 

ある日、総輝が廊下を歩いているとーー

 

「そ、総輝さん!!!」

 

後ろから総輝を呼び止める声が響いた。

振り向くと、そこには顔を紅潮させたセシリアが立っていた。

 

「どうしたんだ?セシリア」

 

「あ、あのですね……その……」

 

セシリアはモジモジとしており、中々切り出そうとしない。

 

「…?どうしたんだ一体」

 

見かねた総輝が声をかけると、セシリアは「ええいっ!」と意を決したように叫んで

 

「こ、今度の学年別トーナメントで!わ、私が優勝したら、その……わ、わ、私と……つ、つつつ付き合ってくださいましっ!!!!!」

 

「……ん?」

 

突拍子も無い発言に、一瞬思考が停止した総輝だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

次の日、教室ではある噂で持ちきりだった。

 

「ねぇねぇ聞いた?例の噂!」

「うんうん、今度の学年別トーナメントで優勝したら、学園の男子と付き合えるって話!!!」

 

殆どの女子達が件の噂の事を口にしていた。

その中には、鈴や箒も混じっている。

 

「も、もし私が優勝したら…い、一夏と付き合えると言うのか!」

 

興奮気味に言う箒に、鈴が箒の肩に手を乗せて

 

「残念だけど、あんたじゃ無理よ。専用機持ちじゃないもの?」

 

と笑みを浮かべながら言う。

箒は「ぐぬぬ…」と悔しそうに歯ぎしりしている。

その直後、クラスの扉が開き、男子四人(一人は女子)が入ってくる。

 

「よう、みんな」

 

爽やかな笑顔で挨拶をする一夏。

 

「みんな、おはよう」

 

天使のような笑みで挨拶するシャルル(シャルロット)。

 

「おはよう!!!」

 

クラス中に響く大きな声で挨拶するのは大牙。

 

「よう」

 

短く一言、いつもと変わらない雰囲気で挨拶する総輝。

 

彼らの姿を見た途端、クラスの女子達は慌ててその場から飛びのき、先につき始める。

 

「あ、あたし!そろそろクラスに戻るわ!!!」

 

そう言って、鈴も慌ててクラスから出て行く。

 

「わ、私も席に戻りますわ!」

 

セシリアも余所余所しい感じで席に戻り座った。

 

「何なんだ?」

 

「さあ……」

 

訳がわからず、首を傾げる一夏とシャルロットだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

〜放課後〜

 

誰もいないアリーナに、ISスーツを着た鈴は一人歩いていた。ここに着た理由は、学年別トーナメントに向けて特訓をする為だ。優勝すれば男子と付き合える……その噂が鈴のモチベーションを上げていた。

 

「あら?意外ですわね。てっきり私が一番乗りだと思っておりましたのに」

 

後ろから響いた声を聞き、鈴は振り返る。

そこには、ISスーツ姿で歩いてくるセシリアがいた。

 

「あたしはこれから学年別トーナメントに向けて特訓をするんだけど?」

 

「私も全くおなじですわ」

 

直後、二人の間に火花が飛び散る。

 

「…この際、どちらが上かはっきりさせるってのも悪く無いわね?」

 

「よろしくってよ。どちらが強くて優雅であるか決着をつけて差し上げますわ」

 

そして二人は、それぞれのISを展開し臨戦態勢に入る。

その直後、二人の間をなにかがすり抜け、轟音と共に土煙が舞い上がる。

なにが起きたのか、二人は慌ててあたりを見渡すと、黒い何かが視界に入る。

 

「あれは……!」

 

そこにいたのは、ドイツ製IS、《シュヴァルツェア・レーゲン》を展開し、不敵な笑みでセシリア達を見る少女、“ラウラ・ボーデヴィッヒ》だった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーイライラする!!

 

ラウラ・ボーデヴィッヒは湧き上がる怒りを抑えることができなかった。

原因はあの男、《織斑 一夏》だ。あの男は、自分の恩師である《織斑 千冬》の実の弟なのだが、彼がいたせいで千冬は第2回モンドグロッソで世界大会2連覇という栄冠を手放すことになった。

つまり、一夏は千冬に汚点をつけた張本人。故に自分は許せなかった。何故あのような男が千冬の弟で、しかも自分と同じ立場でISを学んでいるのか。

だから自分は、一夏を倒すーー倒さなければならないと感じていた。しかし彼は、自分には見向きもしない。勝負を何度申し込んでも、相手にすらされない。目の前に敵がいるのに、それと戦えないのがどれだけ屈辱的なことか。

 

そうして歩いていると、第三アリーナに到着した。理由は、特訓をする為だ……織斑 一夏を叩き潰すために。

だが、どうやら先客が二人いるようだった。しかもよく見ると、どちらも自分が知っている人物達。

 

「中国代表候補生の《凰鈴音》、イギリス代表候補生《セシリア・オルコット》……」

 

ラウラは彼女達の名を呟く。

すると、ラウラの中にあるアイデアが浮かび上がった。

 

あの二人は織斑 一夏のよく知る人物…ならば、あの二人を痛めつければ、必ず奴は現れる。そうすれば、否応でも私と戦うことになるだろうーーと。

 

そこまで考えたラウラは、思わずニヤリと笑みを浮かべると、すぐさま自身のISを展開し、そして発砲した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「あんたねぇ……この前から一体何のつもりなのよ?!出会い頭にレールガンぶっ放して!!」

 

鈴が叫ぶが、ラウラは意に介さない。

 

「中国の《甲龍》に、イギリスの《ブルー・ティアーズ》か……フン、データで見たときのほうが強そうに見えたな」

 

ラウラは静かにそう言う。

 

「…なに?やるの?わざわざドイツくんだりからやってきてボコられたいだなんて、大したマゾっぷりね!

それとも、ジャガイモ農場じゃそういうのが流行ってるの?」

 

「あらあら鈴さん、このお方は共通言語をお持ちでないようですから、あまり虐めるのは可哀想ですわよ?」

 

鈴とセシリアがそれとなく挑発するが、ラウラは全く動じていない。

 

「…貴様達のような奴らが、私と同じ専用機持ちとはな。数しか取り柄のない国と、古いだけが売りの国は、よほど人材不足と見える」

 

反対に、ラウラの挑発に鈴とセシリアは乗ってしまった。

 

「この人、スクラップがお望みみたいね!!」

 

「そのようですわね」

 

二人は最終安全装置を解除し、完全に臨戦態勢に入る。

 

「二人がかりで来たらどうだ?くだらん種馬を追いかける雌豚に、負けるような私ではない」

 

ラウラのその言葉で二人の中の何かが弾けた。

“種馬”……それが意中の相手を指すということを、二人は察してしまった。愛する者をそのような言葉で卑下された事に、かつてない怒りが沸き起こった。

 

「その“種馬”は、一体誰のこと指してんのよおぉぉぉ!!!!」

 

「貴女だけは許しませんわあぁぁぁ!!!!」

 

そして、二人は同時にラウラに飛びかかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

その頃、大牙は簪の専用機を組み立てる作業がひと段落ついたので、自室へ向けて歩いていた。

 

「大牙が手伝ってくれるお陰で、作業が今までより早く進んでる気がするよ」

 

「そうか?それなら良かったぜ。まあ、手伝うって約束だしな」

 

「えへへ……////」

 

大牙の言葉で顔を赤くする簪。

 

「(もし、学年別トーナメントまでに完成できたら、私が優勝して、それで……大牙と………!)」

 

簪がそんな思考に陥っている時だった。

 

「第三アリーナで専用機持ち同士が模擬戦やってるらしいよ!」

 

生徒達の慌ただしい声が響く。

それと共に、多くの生徒が走って第三アリーナの方へ向かって行く。

 

「僕たちも見に行こうよ!」

 

シャルロットの提案に皆頷き、第三アリーナへ向かう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

第三アリーナで総輝達が目にしたのは、セシリアと鈴のコンビを相手にたった一人で圧倒するラウラだった。

 

「ラウラ?!」

 

大牙が思わず叫ぶ。

 

鈴が龍咆を放つが、それはラウラに着弾する前に何かに阻まれる。

 

「あれは……?」

 

「AICだよ。《アクティブ・イナーシャル・キャンセラー》。停止結界とも呼ばれる」

 

総輝の問いにシャルロットが答える。

その後も、ラウラは巧みにAICを使用して攻撃を無効化、反撃で右肩のレールガン、そしてワイヤーブレードを使ってセシリアと鈴を圧倒する。

 

「こんなの…模擬戦なの……?」

 

簪が声を震わせながら呟く。

確かに、今のラウラの戦闘スタイルは模擬戦と言うより、最早一方的な暴力に等しかった。

ワイヤーブレードで二人を拘束し、飛び蹴りや拳を無慈悲に打ち込んでいく。

そんな光景を、大牙は無意識に拳を握りしめて見ていた。

 

「(こんなの……ねえだろ…ただあいつらを痛めつけてるだけじゃねえか!!)」

 

そして大牙は走り出した。

 

「ちょっと、大牙?!」

 

簪が後を追いかける。それに続いて、シャルロットと総輝も後を追う。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

戦闘が始まり、まず仕掛けたのは鈴からだった。

両肩の龍咆を一斉に斉射する。対してラウラは回避行動もせずにただ右手を前に出している。

 

そして着弾の瞬間、龍咆の弾丸は見えないバリアに阻まれたように動きを止め、爆散する。

 

「無駄だ。如何なる攻撃も、この《停止結界》の前では無意味だ」

 

ラウラは不敵な笑みでそう言うと、ワイヤーを射出し鈴の足をとらえる。

その直後、セシリアから二発のミサイルが発射され、ラウラはそれを回避するがその先には4機のビットが待機していた。

とっさにAICを使用してそれらを止めるが、セシリアはこの瞬間を狙っていた。

 

「動きが止まりましたわね!」

 

そう言って、《スターライトmkⅢ》を構える。

 

 

「……貴様もな」

 

ラウラは右肩のレールガンを展開し、すぐ様発射する。セシリアの銃とラウラのレールガンが同時に火を吹き、お互いの弾丸を相殺する。

その直後、ラウラがワイヤーで捉えた鈴をセシリアに投げつける。

セシリアと鈴はその衝撃で地面に落下する。

 

「こうなったらっ!!」

 

鈴は龍咆を発射しようとするが、

 

「…この状況で衝撃砲を使うのは愚策だぞ」

 

ラウラは右肩のレールガンで龍咆を破壊する。

しかし、ラウラがレールガンを撃ったその直後を狙い、セシリアがミサイルで攻撃、見事に命中させる。

その隙に、二人は後退し距離をとる。

 

「…あんな至近距離でミサイルぶっ放すなんて、あんたも中々無茶苦茶ね」

 

「苦情なら後でお聞きしますわ。でも、これなら流石にあの機体も……」

 

だが、煙が晴れると無傷のラウラがそこに居た。

 

「…終わりか?ならば今度はこちらの番だ」

 

するとラウラは、再びワイヤーを射出すると、それを鈴とセシリアの首に巻きつけ引き寄せる。

そして、ある程度引き寄せたところで、二人に殴る、蹴ると言った攻撃を加え始めた。

その攻撃で、二人の機体の装甲が徐々に破壊されていく。

 

シールドエネルギーがみるみる減少していき、やがて二人の目の前に《生命維持域超過》という警告のメッセージが表示される。このままではセシリアと鈴の命に関わる事態になる。

が、ラウラはそんな事にはお構いなしに暴行を続ける。やがて、なす術なく自分にやられる二人を見て、ラウラは優越感を感じ笑みを浮かべていた。

 

その時だった。

 

ラウラアァァァァァァァァァ!!!!

 

叫び声とともに、ラウラの顔面に何かが直撃する。

衝撃でラウラは後ろへ少し吹き飛ぶ。

 

体制を整えて顔を上げると、そこには鋭い目つきでラウラを睨みつける大牙が立っていた。大牙がラウラの顔面に渾身の飛び蹴りを放ったのだ。

 

「てめぇいい加減にしろよ!!あんな戦い方があるか!!!一方的に痛めつけて、こいつらに何かあったらどうすんだ!!!!」

 

大牙がそう叫ぶが、ラウラは「ふん」と息を吐き出すと、

 

「何か問題があるか?私はただこいつらと戦っていただけだ。ただこいつらがザコだった…それだけのことだ。

ジャマだ、さっさとどけ。でなければお前から殺すぞ」

 

そう言ってラウラは、レールガンを大牙に向ける。

それを見て大牙は怒りを押し殺して、低い声で告げる。

 

「性根まで腐り切ってやがるなてめぇ…わかったよ。ならもう容赦はしねぇ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てめぇだけは絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛っ゛っ゛!!!

 

そう叫ぶと、大牙は右手を高く掲げる。

すると、遠くから何かが飛翔する音が響き渡る。ラウラはそれに気づくとあたりを見渡す。

すると直後、ラウラの周りを何かが直撃し、そして大牙の方へ飛んでいく。

 

Hirschkäfer(クワガタムシ)……?」

 

ラウラがそう呟いた直後、大牙の右手にクワガタムシ……《ガタックゼクター》が収まる。

 

「《変身》!!」

 

その掛け声と共に、大牙はガタックゼクターを腰の銀のベルトに差し込む。

 

《HENSHIN》

 

やや高めのエコーがかかった音声が流れ、大牙の体を六角形のパネルが覆っていき、やがて大牙は全身を青と銀の装甲でできたスーツに変身が完了する。

 

「何かと思えば、全身装甲の時代遅れのiISか……呆れたものだな。そんなものでこの私と戦うつもりか?」

 

ラウラはため息をつきながら、侮蔑の視線でそう言う。

すると、「大牙!!」と呼ぶ声が後ろから響く。

大牙が振り返ると、後ろには簪とシャルロット、そして総輝の三人がいた。

 

「…みんなは鈴とセシリアを下がらせてくれ」

 

大牙は彼らにそう告げる。

 

「大牙……わかった」

 

簪が心配そうな視線で大牙を見ていたが、やがて決意したように頷き、ISを解除して気を失って倒れている鈴とセシリアの方に駆け寄る。シャルロットも同じように駆け寄り、簪が鈴を、シャルロットがセシリアを背負って下がっていく。

残った総輝は、じっと大牙を見つめていた。

 

「……大牙…」

 

総輝は表情を変えずに静かに友の名を呼ぶ。

大牙はそれに対し、静かに頷いた。

 

「ここは俺にやらせてくれ」

 

大牙がそう言うと、総輝は少しの間黙っていたが、やがてふっ、と軽く笑うと、

 

「…いいだろう。やり過ぎるなよ」

 

そう言って、くるりと回って下がっていった。

それを見届けた大牙も再びラウラと向き直る。

 

「…相談は終わったか?ならば行くぞ」

 

その言葉を皮切りに、まず大牙が突っ込んだ。

だがやはりAICは突破できず、ラウラの前で金縛りにあったように動かなくなる。

 

「くそっ……!」

 

「さっきから何度も見ていただろう?この停止結界の前では、如何なる物も有象無象の一つでしかない」

 

そして、ラウラはレールガンを至近距離の大牙に向けて発砲し、大爆発とともに大牙は大きく後方へ吹き飛ばされる。

 

「ぐああぁぁぁぁっ!!」

 

「…やはり敵ではないな。第1世代のIS如きで、この私とシュヴァルツェア・レーゲンの前に立ちはだかろうとは。まして貴様のそのIS……どうやら飛べないらしいな?ならば尚更だ。飛べないISなど、虫ケラ同然だ」

 

吐き捨てるようにラウラはそう言う。

が、大牙は立ち上がると

 

「……だろうな。たしかにこのフォームじゃテメェとは戦えねぇ………だったら!!!」

 

そういって、大牙は腰のガタックゼクターの角を少し開く。

チャージアップの音と共にオレンジの電流が上半身を流れ、分厚い装甲が徐々に浮き上がっていく。

 

「《キャストオフ》!!」

 

《CASTーOFF》

 

ガタックゼクターの角を完全に後方へ展開すると、再び電子音声が流れ、浮き上がった銀の装甲が一気に吹き飛ぶ。

 

「なっ………くっ!!」

 

装甲の一部がラウラの方へ飛んでいき、ラウラはそれを思わず両手で顔の前を覆って防ぐ。

次にラウラが見たのは、青いスマートな人形のモノだった。

顔の両脇から、クワガタムシの角が上がり、両目が真紅に輝く。

 

《Change Stag Beetle》

 

「……ふん、姿を変えたところで、この停止結界を破れると思っているのか?」

 

ここで、停止結界……《AIC》についておさらいしておこう。

AICとは、ISの推進機関であるPICを応用したもので、対象物を一定の範囲内で強制的に停止させることができるというものだ。発動には多大な集中力を要するが、これによって一対一の対決では無類の強さを誇る。

……ただし、それはあくまで()()()()の話。

 

「うるせえ。精々高速のビジョンを見逃すなよ……ついてこれるんならな!!!」

 

そう、高速移動が可能な仮面ライダーの前では、AICなど無用の長物と化す。

 

《CLOCK UP》

 

大牙が腰の横についたボタンを叩きつけるように押すと、電子音声が鳴りーーーーー消えた。

 

「何っ?!!」

 

ラウラは慌てて辺りを見回すが、ガタックの姿は捉えられない。

直後、ラウラの後頭部を何かが直撃した。頭を衝撃が走りすぐ様後ろを振り返るが、そこには何もいない。

すると今度は腹部を殴られる感触がラウラを襲う。

 

「うぐっ……!!」

 

呻き声を上げて倒れそうになるが、なんとか踏み止まる。

だがその直後、ラウラの下顎が殴られ、衝撃で舌を噛み切ってしまい口の中に血が滲む。

 

「かっ………!!」

 

あまりの痛みに顔を歪めるが、尚も猛攻は収まらない。

後頭部が、腹が、足が、顔が、背中が……ラウラの全身を、絶え間なく衝撃と激痛が襲う。

なす術もなく、一方的に攻撃を受け続ける……これでは、まるで先程までの鈴とセシリアの様だ。

 

ダメージが限界まで蓄積され、意識が朦朧としてきはじめた時、ラウラの瞳はついにガタックを捉える。

 

「ーーーーーーっ?!!!」

 

ラウラの瞳に映ったのは、右足にオレンジの電流を走らせ、必殺技の《ライダーキック》を放とうとしているガタックだった。

 

「うおおぉぉぉおおおりゃああああああ!!!!」

 

オレンジの閃光がラウラに直撃するその直前、黒い何かがガタックの右足とラウラの間に入り込んだ。

それは、回し蹴りでガタックを大きく後方へ吹き飛ばした。

 

「そこまで!!!」

 

割って入ったのは、千冬だった。

 

「教官?!」

 

ラウラが驚いていると、千冬がラウラと大牙を交互に見て

 

「模擬戦をやるのは構わんが、少々やりすぎでは無いか?生徒同士で傷つけ合うのは、教師として黙認しかねる。この決着は、学年別トーナメントでつけてもらおう。それでいいな?」

 

「……教官がそう仰るなら」

 

ラウラはISを解除して地面に着地した。

 

「俺もそれで構わないっす」

 

大牙はガタックゼクターを取り外し、変身を解除する。

 

「……では、トーナメント当日まで一切の私闘を禁ずる。解散!!」

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます!
形式を変えてみましたが……いかがだったでしょうか?先に述べましたが、もし、前の方が読みやすければ次回からは台本形式に戻します。もしこれで大丈夫そうであれば次回からこの形で行きます。
ご不満な点や不明な点があれば遠慮なくおっしゃってください!できるだけ改善して行きます!
その他、感想などもお待ちしてます!!


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第十二話 強さとは…

遅くなりました、ジャズです!
七月中は、テストや色々な予定が詰まっていたので、中々進めることができませんでした。お待たせして本当にすみませんでした!
それと、もう一つ皆さんに言っておきたいことがあります。
この小説形式なのですが、前回台本形式を辞めると言いましたが、七月中に色々考えた結果、私は台本形式の方がやりやすいと感じたため、この小説は台本形式でいきます。混乱させてすみませんでした。

では、お待たせいたしました!今回はvsラウラ戦です!


ラウラとの戦闘を終え、鈴とセシリアは負傷していたため病室に来ていた。

 

鈴「別に助けてくれなくても良かったのに」

 

セシリア「あのまま続けていれば勝っていましたわ」

 

病室のベッドに寝かされた二人が頬を膨らませながら総輝と大牙に言う。

 

総輝「……そんな状態で本当に勝てたのか疑わしいな」

 

総輝が腕を組んでため息をつきながら言う。

それもそのはず、二人は今、全身を包帯で巻かれているほどの重症なのだ。

 

大牙「で、何だってラウラと戦うことになったんだよ?」

 

鈴「うぐっ!あ、いや…それは、その……」

 

セシリア「ま、まあ…乙女のプライドを侮辱されたからといいますか……」

 

大牙の問いに、二人はゴニョゴニョと言葉を濁しながら答える。

 

その直後、ドアが勢いよく開かれ、一夏が慌てて入って来た。

 

大牙「一夏じゃねぇか。どうしたんだよそんなに慌てて」

 

一夏「すまん2人とも、助けてくれ!」

 

その直後、病室に女子生徒の雪崩が飛び込んできた。

 

「織斑くん、わたしと組んで!!」

「加賀美くん、是非わたしと!」

「シャルルくん、わたしと一緒に組もう!」

「天道くん、一緒に天の道を往きましょう!!」

 

女子生徒たちは男子たち(1人は女子)に一枚の紙を見せつけながら我先にと迫る。

 

総輝「……なんだこれは」

 

総輝が女子生徒たちが持つ紙を一枚取り、書かれている内容を読む。

 

“今月末に行われる学年別トーナメントでは、より実践的な戦闘にする為、二人組での参加を必須とする。尚、締め切りまでにペアが決まらなかった時は抽選でのペアにする”

 

と書かれていた。

つまり、2人組みでの参加となった為、女子たちは数少ない男子と組もうとここへやって来たわけだ。

大体の事情を察した総輝は少し思案する。

 

総輝「(…俺なら別に、誰と組んでも構わないんだがな……ただそうなると、シャルが女子だとバレる恐れもある。織斑先生が知っているとはいえ、本人の口から発表があるまではこの事実は伏せておかないとな)」

 

そこまで考えた総輝はシャルの方をチラッと見た後、女子達に向き直り

 

総輝「…済まない、俺はシャルルと組むことになったんだ」

 

と、申し訳なさそうな顔でシャルの肩を組みながらそう言った。

シャルは一瞬驚いた顔になったが、総輝の意図を察したのか少し苦笑いで相槌を打つ。

すると、大牙も一夏の肩を組んで

 

大牙「ご、ごめんみんな!俺も実は一夏と組むことになったんだ!なぁ、一夏?」

 

一夏「えっ?あ、おう!!そうそう、その通り!ははは……」

 

一夏は一瞬戸惑った顔だったが、すぐに大牙の左肩に手を回してそう言う。

それを聞いた女子達は、少し残念そうな顔をしつつも部屋から退散する。

 

「そっかぁ〜、男子同士で組むなら仕方ないね〜」

「残念だなぁ〜」

「でも、これは大牙×一夏のカップリングが……ぐへへ」

 

最後の女子の独り言に少し背中に寒気を感じつつ、何とか女子の集団を退けることに成功した大牙と一夏はホッ、と胸をなでおろす。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜翌日・学年別トーナメント初戦〜

 

会場は大勢の人(99.9%が女子)で賑わっていた。

そして、アリーナには二対二向かい合う四機のIS。

 

第一回戦

《織斑一夏&加賀美大牙

vsラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒》

 

ラウラ「……まさか初戦から当たる事になるとは。待つ手間が省けたと言うものだな。織斑一夏」

 

黒いIS《シュヴァルツェア・レーゲン》をその華奢な体に纏い、眼帯で隠れていない方の目で鋭い視線を送りながら一夏に話しかけるラウラ。

 

一夏「…ああ、こっちも同じ気持ちだぜ。ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

一夏もそれに対して不敵な笑みを浮かべながら返す。

ラウラはそれに対して「ふん」と息を吐き出すと、今度は一夏の隣に立つ大牙に視線を移す。

 

ラウラ「貴様もな、加賀美大牙。織斑一夏とペアを組んでいるのは意外だったが丁度いい。ここであの時の屈辱を晴らさせてもらおう」

 

大牙「…上等だ。かかってきやがれ」

 

試合開始のカウントが残り数秒になり、アリーナに漂う緊張感が高まっていく。

そして、カウントはついにゼロになり、試合が始まる。

 

「「「叩きのめす!!」」」

 

三人が同時に叫んだ。

 

箒「(……あれ?私は?)」

 

 

箒は1人疎外感を感じていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

まず、一夏がラウラに雪片で斬りかかるが、ラウラが右手を伸ばすと一夏の動きが止められる。AICだ。

 

ラウラ「……開幕直後の先制攻撃か。分かりやすいな」

 

ラウラが不敵な笑みを浮かべながら言う。

 

一夏「……まあな。生憎、俺の機体の性質上、これしかできないんでね」

 

ラウラ「ならば丁度いい。ここで終われ」

 

そう言って、ラウラは一夏に向けてレールガンの銃口を向ける。しかし、一夏は動じない。

 

一夏「……ラウラ、忘れたのか?これはタッグマッチなんだぜ?」

 

一夏の言葉にラウラはハッとした顔になるが、もう遅い。

 

大牙「うおおおおおおりゃあああああああ!!!!!」

 

大牙がラウラの右側から右手のストレートパンチを頬に叩き込んだ。ラウラはそのダメージで数メートル吹き飛ぶ。

ラウラが一夏に気を取られている隙に、大牙が回り込んでいたのだ。

 

ラウラ「…訓練機でこれほどのパンチ力とは。貴様、只者では無いな」

 

大牙「たりめぇだろ!こちとら昔から、年の割に馬鹿みてぇに元気な爺さんに鍛えられてきたんだよぉ!」

 

そう言って、大牙は再びラウラに殴りかかる。

ボクシングのような高速パンチにラウラは対応できずにいる。AICは相手の動きを任意に止める事ができるので一対一の戦闘では無二の強さを誇るが、それを発動するには多大な集中力を要する。

そのため、今パンチの猛攻を受けているラウラはAICを発動させるほどの集中力を出すことが出来ずにいた。

加えて、この至近距離でレールガンを放てばその爆風で自分も大ダメージを受ける可能性があり、ラウラは有効な反撃手段を出さずにいた。

 

その時だった。

 

箒「はああっ!!」

 

箒が大牙に自身の刀で斬りかかったのだ。

 

箒「私を忘れて貰っては困る!」

 

再び、箒は刀を上段に構え、一気に振り下ろす。

しかし大牙は、その斬撃を左手で刀身を掴む事で受け止めた。

 

箒「なっ、白刃どりだと?!」

 

大牙「邪魔を………するなあ゛あ゛あ゛っ!!」

 

大牙は反対側の手で掴んだ刀身を思い切り殴りつける。

その攻撃で、箒の刀は真っ二つに折れた。

そして、今度は箒にパンチを連続で叩き込む。

 

大牙「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」

 

箒「くっ……!!(こんな漫画のような拳の連続……まともに反撃もできないっ!)」

 

刀を失った事で有効な反撃手段を失った箒は一気にシールドエネルギーを無くし、脱落する。

 

その間、一夏はラウラと接近戦を繰り広げていた。

一夏の雪片とラウラのエネルギーブレードが火花を散らしながらぶつかり合う。

 

一夏は箒ほどでは無いが、かつては剣道を嗜んでいた身。相手が代表候補生であっても、近接戦であれば善戦に持ち込むことは可能だ。

思うようにダメージを与えられないラウラは苛立ちを募らせ、痺れを切らして肩のレールガンを構える。

が、レールガンが火を噴く直前にそれは爆発した。

 

ラウラ「なっ……」

 

目を見開き、あたりを見回すと大牙がライフルを構えているのが目に止まった。

大牙が正確な射撃でラウラのレールガンを破壊したのだ。

 

ラウラは「チッ」と舌打ちすると、ワイヤーブレードを展開して大牙に巻き付ける。

 

大牙「くっ……ふんぬ〜〜〜〜〜〜っっ!!!!」

 

しかし、大牙は自分に巻きついたワイヤーを掴み取ると、それを力一杯引っ張る。その力でラウラは大牙の方へと引き寄せられる。

そして、ラウラが自分に到達すると同時に大牙は右の拳でラウラを思い切り殴りつける。その攻撃でラウラは吹き飛ばされ、アリーナの壁に激突する。

この好機を逃すまいと、一夏と大牙は同時に動き出す。

ラウラはそうはさせまいと、一夏の方に右手を伸ばした。

AICが発動し、一夏は強制的に動きを止められる。

すると、大牙がここで何かに気づいた。

 

大牙「(もしかして……AICは複数の相手には使えないのか?)」

 

そして一夏もそれに気がついたのか、大牙に目配せをする。大牙もそれに応じ、2人は揃ってラウラから距離を置き、再びラウラに接近する。

 

ラウラ「無駄なことを……」

 

そう呟くと、もう一度集中力を高める。

再び一夏は動きを止められるが、ニヤッと笑いかける。

 

一夏「……何度も言わせるなよ。俺たちは2人なんだって」

 

直後、大牙の飛び蹴りがラウラにヒットする。

そのダメージでラウラはよろめき、さらに一夏がここで決めるために単一仕様能力(ワンオフアビリティ)の《零落白夜》を発動し、ラウラに斬りかかる。

しかしラウラも簡単にはやられない。ギリギリのところで体制を立て直し、何とかその攻撃を躱す事に成功する。

一夏は攻撃に失敗すると、苦い顔で零落白夜を解除する。

 

ラウラ「ふっ、今のでシールドエネルギーが大幅に減ったようだな?貴様はもうまともに戦えまい!!」

 

ラウラは勝ち誇ったような笑みを浮かべると、一気に一夏に接近する。が、その行く手を大牙が阻んだ。

 

大牙「だからよぉ、これはタッグ戦だと……言ってんだろがぁ!!」

 

大牙はラウラを拳で思い切り殴りつけた後、背後に回って羽交い締めにする。そして、スラスターを吹かしてラウラを抱えたまま上空へと飛び上がる。

 

ラウラ「貴様、何を?!」

 

大牙はそれに対してラウラの耳元で呟くように言う。

 

大牙「ラウラ…俺と一緒に、地獄に落ちよう?」

 

すると、大牙はその体制から格闘技のドラゴンスープレックスの要領で一気に上下反転し、ラウラ共々頭から猛スピードで急降下する。

 

ラウラ「なっ…貴様、それをすれば貴様も一緒に……や、やめろおぉぉぉぉぉぉーー!!!」

 

ラウラの叫びも無視し、2人は地面に落下。大きな土煙が巻き起こる。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

地面に叩き落とされ、意識が朦朧としていく中、ラウラは昔のことを思い出していた。

 

ラウラは人工的に生み出された人間。ドイツ軍の舞台である《シュヴァルツェ・ハーゼ》部隊の隊長として、戦うために作られ、生み出され、育てられた。

当初、ラウラは“優秀”だった。部隊の中でも最高レベルを維持し続けていた。

しかしISが登場した時、その状況は一変した。

ラウラはISの適合性向上のため、左目に肉眼へのナノマシン移植手術を受けた。が、ラウラの肉体はその左目からやってくる情報量に対処できず、その結果、ラウラは失敗作の烙印を押されてしまった。

 

しかし、そんなラウラの前に現れたのが、織斑千冬だったのだ。彼女がラウラ達IS部隊の教官となったことで、ラウラは再び最強の座に返りつくことが出来た。

だからこそ、彼女は許せなかった。千冬が世界最強になる筈だった大舞台で、あの男がいたせいで彼女は優勝を逃してしまった。

そう、ラウラは織斑一夏を憎んでいた。だから彼を倒すためにここIS学園へとやって来た。

 

ラウラ「(……力が欲しい……)」

 

ラウラがそう念じた直後、ラウラの脳内に何者かの声が響く。

 

ーー“願うか?汝、己より強力な力を欲するか?”ーー

 

その問いに対し、ラウラは迷うことなく答える。

 

ラウラ「ーーー寄越せ!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ラウラのISを中心に、電流が流れる。

 

ラウラ「ぐっ……ああああああああああ!!!!!!!」

 

悲鳴とともに、彼女のISがスライムのようにウネウネと蠢き、そしてラウラの全身を完全に覆い尽くしてしまった。

 

大牙「なんだよ……あれ……?」

 

大牙は目の前の光景に只呆然としていた。

すると、一夏が声を震わせながら呟く。

 

一夏「あれは……雪片…?!」

 

目の前の変貌してしまったISの右手に握られていたのは、一夏の姉、千冬がかつて使用していた武器である雪片とよく酷似していたのだ。

そして更に、衝撃的な光景が彼らの前に現れた。

目の前の黒いナニカは、遂に人型となった。その姿は……

 

一夏「千冬姉……?」

 

そう、ISを纏った織斑千冬の姿とそっくりだったのだ。

直後、それは右手の刀を振るい、一夏を吹き飛ばした。

雪片の全てをコピーしたのか、一夏は残りのシールドエネルギーが消し飛ばされ、ISが強制解除される。

そして追い討ちをかけるように、偽の千冬は一夏へと近づいていく。一夏は体が震え、その場から動けない。

そして、とどめを刺さんと再び右手を振り上げた直後、何かが一夏の前に立ちはだかった。

 

大牙「一夏ああぁ!!逃げろオォ!!!!!」

 

大牙だ。

大牙は偽の千冬の刀を両手で受け止める。

しかし、その刀は雪片の性質を模しているため、その特性のせいで大牙の訓練機のシールドエネルギーも全て削られ、大牙は生身の状態で吹き飛ばされる。

 

一夏「大牙!!」

 

一夏は慌てて大牙に駆け寄る。

 

大牙「…大丈夫だ一夏。心配すんな」

 

大牙は何とか起き上がる。

一夏と大牙は、揃って目の前の黒いISを改めて見上げる。

すると、既に脱落していた箒も駆け寄ってくる。

 

箒「2人とも無事か?!」

 

一夏「ああ、この通りピンピンしてるぜ」

 

箒は安心したようにため息をつくが、

 

大牙「……にしても、何なんだこれは」

 

大牙が疑問を呈する。

すると、その問いに一夏が答えた。

 

一夏「多分だけど、これはモンドグロッソの時の千冬姉だ」

 

箒「千冬さんだと?!…ああ、でも確かに似ているな」

 

大牙「マジか……じゃあ一筋縄では行かなそうだな」

 

一夏「というか、今の俺たちにはもうISが無いから、どうすることもできないな……」

 

しかし、一夏のつぶやきに対し、大牙が不敵な笑みを浮かべて

 

大牙「…いや、まだ終わってねぇ。俺にはまだ、これがある」

 

そう言って、大牙は銀のベルトを何処からか取り出した。

 

一夏「お前それ…何処にしまってたんだよ?!」

 

大牙「俺のISの拡張領域に入れておいたのさ。まあ、正直使うことになるとは思ってなかったけどな」

 

そう言いながら、大牙は銀のベルトを腰に巻きつける。

 

大牙「と言うわけで2人とも、後は俺に任せて、安全な所まで下がっていてくれ。あいつは俺が何とかする」

 

一夏「ラウラは、どうするんだ?」

 

大牙「そりゃお前……助けるに決まってるだろ」

 

大牙が当然、とばかりに答える。

 

箒「助けるって……あんな奴をか?」

 

大牙「あんな奴って事はねぇだろ。あれでも俺たちのクラスメイトなんだし……まあ、あいつには後で何か奢って貰おうぜ」

 

一夏「そうだな……分かった、ここは頼むぜ!仮面ライダー!!」

 

大牙「おう!」

 

そう言って、2人は拳を打ち付けた後一夏は箒と共にその場から駆け出し、大牙はそれを見送った後再び黒いISに向き直る。

 

大牙「さてと……んじゃ、いっちょやるか!!」

 

大牙がそう言うと、上空からガタックゼクターが飛来し、大牙の右手に収まる。そして、大牙はそれを腰のベルトにセットする。

 

大牙「変身!!」

 

《HENSHIN》

 

電子音声が流れ、大牙の体を青い六角形のパネルが腰から徐々に覆っていく。

変身が完了し、ガタックマスクドフォームとなった大牙は、ガタックゼクターの角を後方へ展開する。

 

《CASTーOFF》

 

再び電子音声が流れ、マスクドフォームのアーマーがとてつもない速さで周囲に吹き飛ぶ。

そして、青い装甲があらわになり、頭部の角が左右から上に上がる。

 

《Change Stag Beetle》

 

ガタックライダーフォームとなった大牙は、肩に装備されたガタックダブルカリバーを引き抜き、構える。

すると、目の前の黒いISも右手の雪片を正面に構える。

しばらくにらみ合いが続いたが、やがて同時に飛び出した。

ガタックの剣と雪片がぶつかり合い、火花が飛び散る。

だが、模倣とはいえやはり世界最強は伊達ではなく、そのパワーで大牙は吹き飛ばされる。

地面に倒れこむ大牙だったが、なんとか体制を保つ。

しかし、そこへ目にも留まらぬ速さで黒いISは大牙に接近し、上から雪片を振り下ろす。

大牙はダブルカリバーを交差させる事で受け止めるが、その凄まじいパワーに徐々に押されていく。

 

大牙「くっ……ぉぉおおおおお!!!」

 

大牙は気合で何とか押し切ると、その場から後方へ飛びのき、距離を置く。

 

大牙「こうなったら……《クロックアップ》!!」

 

《CLOCKーUP》

 

大牙が腰の側面に付いたボタンを押すと、電子音声が流れ、世界の時間がほぼ停止する。

大牙はその場から駆け出し、黒いISの背後に回り込む。

が、ここで目を疑う光景が大牙の目に移った。

 

黒いISが、僅かではあるが後ろを向いているのだ。

 

大牙「なっ…クロックアップに反応した?!

………やっぱ偽物とはいえ、織斑先生って訳か!!」

 

とはいえ、やはりクロックアップ状態の大牙の速度には追いつかず、黒いISは対抗できずにいる。

だが、幾ら両手のダブルカリバーで斬りつけても、その装甲は中々切り裂けない。

とはいえ、ライダーキックではISごとラウラにダメージを与えかねない。

 

大牙「……悪いラウラ、少しだけ我慢してくれ、痛みは一瞬だ!!」

 

そう言って、大牙は手に持ったカリバーを反転させ、そしてそれらを噛み合わせ、鋏のような形態にする。

そして、大牙はそれを黒いISの腰に押し当てる。

 

《RIDERーCUTTING!》

 

音声が流れると共に、オレンジ色の電流がカリバーから一度ガタックの角に流れ、角の間で増幅した後再びカリバーに戻る。

 

大牙「ふんっ!!!」

 

そして、目一杯の力で鋏形態のガタックダブルカリバーを閉じる。

その瞬間、遂に黒いISの装甲が破れ、その中のラウラが露わになった。

 

大牙「ラウラ!!!」

 

大牙はラウラを抱きかかえると、急いでその場から離れた。同時に、クロックアップが解除され、時間流が通常に戻る。

大牙は気を失っているラウラを地面に寝かせる。

 

大牙「ラウラ!しっかりしろラウラ!!」

 

大牙はラウラを揺さぶる。

すると、ラウラの目がゆっくりと開かれた。

 

ラウラ「…ぅ……き、さま………かが…み……?」

 

大牙「気がついたか?!ったく、色々聞きてえことがあるが、とりあえず今は後だ」

 

そう言って、大牙は再びラウラを抱きかかえ、その場から歩き去ろうとしたその時だった。

 

一夏「大牙ああぁぁぁぁぁ!!後ろおぉぉぉぉぉ!!」

 

一夏の叫びがこだまし、大牙は慌てて後ろを振り返る。

すると、ラウラが抜けた事で無人であるはずのラウラのISが、未だに千冬の姿を保ったままこちらに斬りかかろうとしているのが目に入った。

 

大牙「くっ?!!」

 

大牙はラウラを抱きかかえたままその場から飛び退く。

直後、大牙が立っていた場所に雪片が振り下ろされた。

 

大牙「クソッタレが!!何で無人で動いてやがる!!」

 

大牙が吐き捨てるように言うが、黒いISは未だに止まる気配がない。

大牙はラウラを肩に担ぐと、全速力でダッシュし一夏と箒の元へ駆け寄る。

 

一夏「大牙!!」

 

大牙「大丈夫だ。とりあえずこいつを頼むわ」

 

そう言って、大牙はラウラを一夏に預ける。

そして、再び止まらない黒いISへと歩きだす。

 

ラウラ「よせ……無茶だ……!」

 

すると、ラウラが悲痛な声で大牙を引き留める。

大牙はその声を聞き振り返る。

 

ラウラ「あれは………全盛期の教官の全てをコピーしている……お前1人じゃ………勝ち目は無い……!」

 

大牙「……そうだな。相手があの織斑先生なら、ここにいるIS操縦者は誰一人勝てねえだろうな」

 

ラウラ「だったらっ……」

 

すると、大牙はラウラの言葉を遮るように

 

大牙「だったらどうする?あれをほっとくのかよ?」

 

ラウラ「そ、それは…………」

 

ラウラは何も言えなくなり押し黙る。

 

大牙「何だ?心配してんのか?

……ありがとよ。けど、それなら大丈夫だぜ。俺の強さは、お前も知ってるだろ?だから心配すんな。その閉じてねぇ方の目でよく見てな……仮面ライダーの力を!」

 

ラウラの頭を撫でながらそう言い切ると、大牙は今度こそ再び黒いISと対峙する。

 

大牙「……行くぜ、《アナザー千冬》。仮面ライダーの力、その身で味わいやがれ!!」

 

大牙はガタックゼクターのボタンを押す。

 

《ONE》

《TWO》

《THREE》

 

そして、ゼクターホーンを元に戻し、タキオン粒子をチャージアップする。

 

大牙「ライダーキック!!」

 

《RIDERーKICK》

 

ゼクターホーンを再び展開すると、音声とともにオレンジ色の電流が流れ、頭部の角で増幅していく。

その間に、大牙は駆け出し黒いISへと接近する。

黒いISも駆け出し、互いの距離が急激に縮まる。

 

大牙はある程度進むと、左足で飛び上がる。

それと同時に、後方の右足を横から大きく振りかぶり、ボレーキックで蹴りを放つ。

黒いISも刀を横から振り抜き、ガタックの右足とISの刀がぶつかり合い、大きな放電を起こす。

 

大牙「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

互いの力は暫く拮抗していたが、大牙の右足が徐々に押し始め、遂に黒いISの身体に直撃する。

大牙は黒いISを背に地面に着地する。

そして、立ち上がると同時に、黒いISは大爆発を引き起こした。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

夕日が医務室の中をオレンジ色に照らす中、ベッドに横たわるラウラはゆっくりと目を開いた。

 

「……気がついたか?」

 

声が響き、ラウラは視線を横に向ける。そこには千冬が座っていた。そしてその後ろに、大牙と一夏が立っていた。

 

ラウラ「わ、私は……何が起きたのですか……?」

 

千冬「……一応、機密事項の重要案件なのだがな……」

 

そうため息をつきつつも、千冬は説明を始めた。

ラウラがああなったのは、ラウラのISに積まれていた《ヴァルキリー・トレース・システム》、通称《VTシステム》と呼ばれるもので、ISの《世界大会優勝者(ヴァルキリー)》のデータを完全に《模倣(トレース)》するシステムだ。

しかし、操縦者に起こりうる危険を完全に無視するシステムであったため、IS条約によりその開発・運用その他全てに関わることを禁止されているものだ。

 

千冬「……ISの蓄積ダメージ、操縦者の精神状態や意思、いや、願望と言った一定の条件を満たせば、発動できるようになっていたらしい」

 

ラウラ「……私が……引き起こしたのですか……」

 

ラウラは悔しそうな顔で、シーツをギュッと掴む。

そんなラウラに、一夏は語りかける。

 

一夏「……なあ、ラウラ。お前が俺を敵視するのは、俺のせいで千冬姉が世界大会優勝を逃したからだよな……?」

 

ラウラは一夏に視線を移すが、何も言葉を発さない。

一夏は続ける。

 

一夏「お前の言う通りだ……確かに、あの時俺がドイツに居た所為で、千冬姉は優勝を逃した……

俺はあの時、誘拐されたんだ」

 

一夏の言葉に、ラウラは目を見開いた。

 

一夏「……それで、千冬姉は決勝戦を棄権して、俺を探したんだ。その時にドイツ軍が協力してくれたから、千冬姉はその礼として、ドイツ軍で教官を務めた。ラウラは、その時に千冬姉に出会ったんだろ?」

 

ラウラは無言で頷く。

すると、今度は千冬が言葉を続けた。

 

千冬「お前の言うように、あの時一夏がドイツに一人で来ていなければ、私は優勝していたかもしれん。

だが、お前も気づいているだろう?もしあの時、一夏があの場に居なければ、お前は私と出会っていなかった。違うか?」

 

ラウラ「……その……通り、ですね……」

 

すると、一夏がラウラのそばに寄る。

 

一夏「……なあラウラ。お前は知ってるだろうけどさ、俺すっごく弱いんだ。昔から千冬姉には守られてばかりでさ……そんな自分が情けなくて…だから強くなりたいんだ。強くなって、みんなを守りたい。

総輝や大牙みたいな《仮面ライダー》みたいにはならないだろうけどさ。でも、いつかは大切なものを自分の力で守れるようになりたいんだ。だからまずは、ISで強くなりたい。ラウラ、俺に力を貸してくれないか…?」

 

ラウラは暫く無言で一夏を見つめていたが、

 

ラウラ「織斑一夏……私は、お前のことを今はどう思っているのか、自分でもよく分からない……

でも、私のこれまでの非礼を許してくれると言うならば……幾らでも力を貸そう」

 

それを聞いて、一夏は優しく微笑み、

 

一夏「……ありがとう、ラウラ」

 

そう言って、ラウラの右手を両手で掴む。ラウラはその手を優しく握り返す。

 

大牙「……よかったな、一夏」

 

大牙は一夏の肩を掴みながら言う。

 

千冬「……そろそろ時間だ。行くぞ」

 

そして、三人は同時に歩き出すが、

 

ラウラ「……加賀美大牙」

 

ラウラが大牙を呼ぶと、大牙は立ち止まり振り返る。

ラウラは彼の顔を見つめながら問いかける。

 

ラウラ「何故……なぜ、私を助けた?」

 

大牙は真剣な瞳でラウラを見つめながら答える。

 

大牙「人を助けるのに、理由は必要かよ?」

 

するとラウラはガバッと起き上がる。

 

ラウラ「だが!私とお前は少なくとも試合の直前までは対立する関係だった筈だ!」

 

大牙「関係ねぇよ。俺とお前はクラスメイトだろ?それに、日本にはこんな諺があるぜ?《昨日の敵は友達だ》」

 

ラウラは暫く呆気に取られた顔をしていたが、呆れたように笑いながら

 

ラウラ「……呆れた奴だな。お前はお人好し、いや、正真正銘の馬鹿だな」

 

大牙「なっ……バカって言うなよ!せめて“筋肉”つけろよ!」

 

一夏「いやそっち?!そっちに怒るのお前?!」

 

ラウラはしばし笑っていたが、やがて窓の外に視線を移す。

 

ラウラ「……教官、暫く加賀美と、二人にしてくれませんか?」

 

千冬「…構わん。加賀美、寮には寄り道せずに戻れよ?」

 

千冬はそう言い残し、一夏と共に部屋から出た。

部屋には大牙とラウラが残された。

 

ラウラ「……私の話を、聞いてくれるか?」

 

大牙「何だよ、改まって……まあいいぜ。どんな話だよ?」

 

すると、ラウラは左目を覆っていた眼帯を外す。

 

大牙「お前それ…………」

 

ラウラ「驚かないのだな?これは、ISのセンサーの補助機能を持つナノマシンでな、《ヴォーダン・オージェ》と言う」

 

大牙「へえ……いや、俺はてっきり失明したのか怪我してるから付けてるのかと思ってさ」

 

ラウラ「……この瞳を見る者は皆、気味悪がるか好奇の視線を向けるかどちらかだったぞ。お前の感性はどうにかしているな……」

 

大牙「気味悪がる?何でだよ。綺麗な眼じゃねえか」

 

その瞬間、トクンとラウラの心臓が音を立てて跳ねた。

 

ラウラ「綺麗……だと……?」

 

大牙「ああ。赤と黄色で丁度グラデーションみたいな感じでさ、凄え綺麗じゃん」

 

ラウラ「……この瞳を綺麗だなどというものなど今まで居なかったぞ。やはり、お前は変わっているな……」

 

大牙「だからなんでそうなるんだよ、実際綺麗なんだしよ……んで、その眼がどうかしたのか?」

 

ラウラ「さっきも言ったが、この眼にはISのセンサー機能を高めることが出来るのだが、私の身体はこれを処理できなかった。故に私は失敗作の烙印を押されたのだ……」

 

それを聞いて、大牙は激怒する。

 

大牙「失敗作ぅ?!!ざっけんな!勝手に色々弄っといてそりゃねぇだろ!!……ん?失敗“作”ってどういう事だよ?」

 

ラウラ「ああ、私はお前たちのように親がいない。私は、試験管の中で人工的に作られた人間なんだ」

 

大牙「ふぅ〜ん。まあ、そこはどうでもいいけど」

 

ラウラ「どうでもいいのか?私としてはかなり大事な事だと……まあいい。とにかく、この眼のせいで、私は部隊の中でも最底辺の落ちこぼれになってしまってな……」

 

大牙「そこで出てきたのが、織斑先生だったと、そういうわけか」

 

ラウラは頷くと、自然と笑顔になり

 

ラウラ「あの人は私にとって救世主の様なものだった。あの人が教官になってくれたから、今の私がいる」

 

大牙「なるほど……けどよ、確かに織斑先生が教官だったからかもさんねぇけどよ、そこからまた這い上がれたのはお前自身の努力だったんじゃねえか?」

 

ラウラ「なに……?」

 

ラウラは少し驚いた様な顔で大牙を見つめる。

 

大牙「織斑先生はあくまで“教官”だったんだろ?なら、織斑先生に出来んのは結局教え子を導くことなんだよ。やり方とか、今どうすべきなのかを教えてさ……けど、結局それで変われるかどうかは自分次第だろ?だから、お前が今ここにいるのは、それはお前が必死こいて努力したからじゃねえのか?」

 

ラウラは目を伏せて少し黙り込んだ後、再び顔を上げて尋ねる。

 

ラウラ「だが、お前は私よりも強かった。教えてくれ、なぜお前はそれ程に強い?その、《仮面ライダー》とやらになれば、私も今以上に強くなれるのか?」

 

大牙はそれに対して少し考え込んだ後、ポツリポツリと語り始める。

 

大牙「ん〜〜〜………ラウラはさ、《強さ》ってなんだと思う?」

 

と逆に尋ねた。

 

ラウラ「強さ?ふむ……私にとって《強さ》とは、まさしく教官の様なものだな……周りの追従を許さない、圧倒的な力……私はそう思う」

 

大牙「……そっか……俺は、“誰かを守れること”が強さだと思うんだよな。そういう意味じゃ、一夏と似てんだけど。昔、俺のじいちゃん達は、《仮面ライダー》として街の人達を陰ながら守ってたらしいんだ。

俺は、その力を受け継いだ。だから、じいちゃん達みてぇに誰かを守れる様になりてぇんだ」

 

ラウラ「…まるで、織斑一夏の様だな」

 

大牙「…そうだな。一夏もおんなじこと言ってたな……でも、あいつがそう言うのは、昔織斑先生に守られてたからなんだよな。だからあいつは、そんな織斑先生みてぇに強くなって、誰かを守れる様になりたいって思ってる……多分織斑先生も、あの人が強ぇのは周りを圧倒するためじゃない…たった一人の弟である、一夏を守るために強くなったんじゃねえかな?だってそうじゃないと、世界大会の決勝すっぽかしてまで一夏を助けたりしねえだろうしな」

 

ラウラ「……誰かを……守る力か……」

 

大牙「ああ……だから俺は、これからも《仮面ライダー》としてみんなを守っていきたい。もちろんお前もな、ラウラ」

 

ラウラ「…………」

 

しばし沈黙が続いたが、やがて大牙はゆっくりと立ち上がる。

 

大牙「……さてと、俺はもうそろそろ行くわ。ちゃんと寝てんだぞ?」

 

そう言って、大牙は出口に向かって歩き出そうとする。

 

大牙「……そうだ、もう一つお前に言っときたい事があったわ」

 

そう言って、大牙は振り向く。

 

大牙「お前さ、ずっと自分が失敗作だとか、織斑先生が救世主だとか言ってたけどよ……それってもう“過去の話”だろ?そんな辛気臭ぇ過去なんて忘れちまって、これからは“未来の話”しようぜ?」

 

ラウラ「未来の……話……?」

 

大牙「ああ、どんなことでもいい。明日の朝飯何にしようとか、明日はどんな服着て行こう、とか……そんなくだらねえ事でも、未来の話すれば、明日が楽しみになるだろ?そうなりゃ、毎日が楽しくなんじゃん?だから、これからはもう過去の話はやめにして、未来の話して行けよな」

 

そう言い残し、今度こそ大牙は部屋を出た。

部屋には、一人ラウラが残っており、ただ静かな時が過ぎていた。

 

ラウラ「(《誰かを守る力》……か……そうか、私はずっと履き違えていたのだな。教官の強さが何たるかを。そしてそれは、織斑一夏も加賀美大牙も同じだった…)」

 

そこまで考えると、ラウラは自嘲気味に笑い出す。

 

ラウラ「…ふふっ、勝てないはずだな。私は織斑教官の事を、正しく理解していなかったのだからな……」

 

そしてラウラは、最後に大牙が言い残した言葉を思い出していた。

 

ラウラ「未来の話、か………」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

〜食堂〜

 

シャルル「トーナメント戦は、中止らしいね」

 

総輝「当然だろう。あんな事が起きたんだからな」

 

夕食時、多くの生徒で食堂が賑わう中、総輝とシャルルが向かい合って座ってディナーを楽しんでいた。

すると、少し離れたところで女子達が悲しそうな目で

 

「優勝チャンス無くなった……」

「交際……無効……」

「うわあーーーん!!」

 

そして、涙目で駆け出していった。

すると、そんな女子達と入れ違えで真耶が総輝とシャルルの元へやって来る。

 

シャルル「山田先生、どうしたんですか?」

 

真耶「二人とも、今日も一日お疲れ様でしたね!」

 

総輝「いや、俺たちは全く疲れていないのだがな…」

 

だが、真耶はそんな総輝の呟きを気に留めずに続ける。

 

真耶「でも、そんなお二人の労をねぎらう場所が、今日から解禁になったのです!」

 

何のことか分からず、総輝とシャルルは首を傾げる。

 

真耶「その場所とは……男子の大浴場です!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

一流旅館の温泉の様な大浴場の浴槽に、総輝は一人くつろいでいた。何故か大牙と一夏は中々やって来ない。

一人で使うには広すぎるが、総輝はそんな事を気にする事なく、一人のびのびと浸かっていた。

すると、大浴場の扉が開く音がする。

一夏と大牙もやって来たのか、そう思った総輝は扉の方を向く。

 

シャルル「お、お邪魔します……」

 

そこにいたのは、全身をタオルで巻いたシャルルだった。

 

総輝「シャルル……?ああ、そうか。お前はまだ表向きは“男子”なんだったな」

 

そう、シャルルはまだ自分の正体を公言していなかった。

シャルルは浴槽に入ると、総輝の隣に座る。

 

総輝「……なら、俺はもう上がろう。風呂はもう堪能したし。一夏と大牙には、もう少し待つ様に言ってくる」

 

総輝は立ち上がろうとするが、シャルルがそれを止めた。

 

シャルル「待って総輝!あの……話が、あるんだ……」

 

総輝「話……?」

 

総輝はシャルルに背を向けて座る。

 

シャルル「うん。その、僕ね……もう自分のことを隠すのをやめようと思うんだ」

 

総輝「……そうか。ならもう、これからはシャルロットとして……」

 

シャルル「そう、もう《シャルル・デュノア》じゃなく、《シャルロット・デュノア》として過ごすよ。それでね、総輝……」

 

シャルル、いや、シャルロットは振り返り、総輝の両肩を掴む。総輝の背中に女子特有の柔らかい感触が伝わる。

が、負担の男子ならここで動揺するところだが、総輝は全く動じる気配がない。寧ろ通常運転だ。

 

シャルロット「その……これからはシャルロットって呼んで?僕の、本当の名前で……」

 

総輝「……わかった。シャルロット」

 

シャルロット「……うん……///」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

〜翌日〜

 

真耶「き、今日は皆さんに、転校生を紹介します……」

 

真耶が引きつった笑顔で転校生の紹介に入る。

ざわめく教室の中へ入って来たのは、金髪の女子生徒だ。

しかし、皆はその顔をよく知っていた。

 

シャルロット「どうも、皆さん。改めまして、《シャルロット・デュノア》です」

 

真耶「ええっと……デュノア君は“デュノアさん”という事でした……」

 

直後、教室は大きな騒ぎが起きる。

 

「……え、女の子?」

「なぁ〜んだ、おかしいと思った」

「美少年じゃなくて美少女だったわけね」

「って天道君!同室だから知らないってことは……」

「じゃあ、同じ男子生徒の織斑君も加賀美君も……!」

 

一夏「ちょ、ちょっと待ってみんな!それは誤解だ!俺たちは何も知らな……」

 

弁明を図る一夏だったが、そんな一夏の言葉を遮る様に教室の壁が轟音を立てて破壊された。

中に入って来たのは……

 

鈴「一夏ああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

なぜか怒り心頭の鈴だった。

鈴は既にISを装備しており、肩の龍咆が発射体制に入っている。

 

一夏「待て鈴!!俺の話を少し聞いて」

 

鈴「問答無用!!!」

 

一夏「くっ……」

 

聞く耳持たずな鈴に対し、一夏は後ろの席の大牙を引っ張り出した。

 

一夏「《ガードベント》」

 

大牙「おいバカ!何したんだよお前?!!」

 

一夏「近くにいたお前が悪い!後こないだの仕返しだ!!!」

 

そして一夏は大牙を盾にするように前に突き出す。

そしてそんな大牙に龍咆がついに火を吹いた。

 

大牙「ちょ待て一夏、ヤメルルォォォォォォォォ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大牙が恐る恐る目を開くと、大牙は無傷だった。

 

大牙「ん……?」

 

大牙が無傷だった理由は、大牙の目の前にある人物が立っていたからだった。

その人物は……

 

大牙「ラウラ!!」

 

そう、ラウラだ。ラウラは既に自身のISを装備しており、AICで龍咆を止めたのだ。

 

大牙「た、助かったぜラウラ!」

 

ラウラは振り向くと、大牙の目をまっすぐに見つめる。

 

ラウラ「……大牙、私の未来の話を、聞いてくれるか?」

 

大牙「え?ああ、そのことか!いいぜ、聞かせてくれよ!」

 

大牙が満面の笑みで返す。そんな大牙にラウラはゆっくりと歩み寄り、そしてその顎に手を当てて自分の唇を押し当てる。

 

そう、《キス》ってやつだ。

 

「「「?!!」」」

 

総輝「……ほう?」

 

クラス中の女子達が目を見開き、総輝がニヤリと口角を上げる。

 

大牙の唇を話すと、ラウラは赤面しながらこう叫んだ。

 

ラウラ「お前は、私の嫁にする!決定事項だ、異論は認めん!!!」

 

大牙はしばらく呆気にとられていたが、やがてその意味を理解したのか、絶叫する。

大牙「ウソだドンドコドオォーーーーン!!!!!!!」

 

 




久々すぎて、すごいブランクを感じました。上手くかけていたでしょうか?
今回、ラウラが大牙のヒロイン枠に追加されました!
ああ、簪のメンタルが……((((;゚Д゚)))))))
では、また次回!!


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番外編2 地獄の男

やや明るめの大きなアリーナの中で、二人の女性が向かい合って立っていた。

一人は黒を基調とした服を着ており、ボロボロのマントのようなものを羽織っている。もう一人はISスーツを身につけている。

 

『では、これよりIS《アラクネ》・マスクドライダーシステム0号《ダークカブト》の模擬戦を開始します。両者、構えて』

 

アナウンスが流れ、ISスーツの女性、《オータム》は自身のISである《アラクネ》を展開する。顔はバイザーで覆われ、8本足のシルエットはさながら蜘蛛を連想させる。

それに対して黒の少女、Mこと《織斑 マドカ》は右手をゆらりと上げる。すると、どこからかダークカブトゼクターが飛来し、その右手に収まる。

 

マドカ「《変身》」

 

やや低い声でそう告げると、ゼクターを腰のベルトに装填する。

 

《HENSHIN》

 

カブトの音声よりもくぐもったような低い音声が流れ、黒い六角形のパネルがマドカを覆っていく。

そして、蛹のような分厚い黒と銀の装甲に不気味に輝く黄色い複眼が輝く。

マスクドフォームに変身完了したマドカは、続けてゼクターホーンを少し上げる。すると、『キュイイイイン』という音と共に黄色い電流が上半身に流れ、装甲が少し浮き上がる。

 

マドカ「《キャストオフ》……」

 

そして、ゼクターホーンを後方へ展開。

 

《CASTーOFF》

 

浮き上がった銀の装甲が周囲に弾け飛び、漆黒の装甲が露わになった。その胸部には、電子配線のような赤いラインが走っている。

そして、下顎から黒いカブトムシの角が上がり、その黄色い複眼に光が灯った。

 

《Change Beetle》

 

ライダーフォームへの移行が完了し、両者は無言で対峙する。

 

先に動いたのはアラクネの方だった。8本の足を器用に動かし、ダークカブトへ接近する。そして、右手に持ったブレードを振り下ろしていく。

ダークカブトはそれを上手く避け、隙を見てクナイガンのクナイモードで右腕を斬りつける。

しかし、マドカに戦闘の技量があるとは言え、ダークカブトはあくまで人の身体をそのまま反映するため、体格はそのままである。それに対し、アラクネの方はダークカブトの二倍ほどの体格があるため、有利なのはアラクネの方だ。

 

マドカ「《クロックアップ》」

 

《CLOCKーUP》

 

マドカはベルトの側面についたスイッチを押し、クロックアップを発動する。

瞬間、周囲の時間が変化し、アラクネの動きがほぼ静止状態となる。この時点で、ダークカブトはかなりの優位に立つことに成功する。

だがーーーーーー

 

オータム「《クロックアップ》!!」

 

《CLOCKーUP》

 

オータムの声にISから電子音声が流れ、アラクネもクロックアップ状態になる。

オータムはバイザーの奥でニヤリと笑うと、8本の足から紫色のビームを連射する。

マドカはそれを側転や後方転回を繰り返して被弾せずに躱していく。オータムは舌打ちをすると、今度は蜘蛛の糸を発射しマドカを拘束する。

 

マドカは右腕の制御を奪われるが、まだ自由の効く左手でゼクターのスイッチを押す。

 

《ONE》

《TWO》

《THREE》

 

そして、片手だけで器用にゼクターホーンを一度戻し、タキオン粒子をチャージアップする。

数秒チャージすると、再びゼクターホーンを展開する。

 

マドカ「《ライダーキック》」

 

《RIDERーKICK》

 

黄色い電流がゼクターから角へと走り、その黄色い複眼がより一層不気味に輝く。

そしてその場から駆け出し、勢いをつけてジャンプ。右足を突き出すと、その足底に黄色い電流が収束する。

 

マドカ「ハアアァァァーーーーッッッ!!!」

 

先程までの暗くも落ち着きのある声から一転、荒々しい叫び声と共に、マドカはアラクネへと飛び蹴りを放つ。

飛び蹴りは見事アラクネへと命中し、オレンジ色の大爆発を引き起こした。

 

《CLOCKーOVER》

 

ここでクロックアップが解除され、マドカは高速の世界から引き戻される。アラクネは未だに爆炎の中にいる。

だが、やがてその煙の中から、無傷のアラクネがゆっくり足を進めながら姿を現したのだ。

 

『そこまで!模擬戦はここで終了とします』

 

アナウンスが流れ、両者は距離を置く。

マドカは腰のダークカブトゼクターを外し、変身が解かれる。ゼクターはしばらくマドカの周りを飛んだ後、何処かへその姿を消した。

オータムもISを解除し、元のISスーツ姿に戻る。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

そして、先程の模擬戦をモニタールームで監視していた人物が二人。

一人は金色の長髪に赤いドレスを纏った長身の女性、亡国企業の実働部隊のリーダーである《スコール・ミューゼル》だ。

彼女は口元に薄っすらと笑みを浮かべながら、となりの人物に問いかける。

 

スコール「……如何でしたか?根岸代表?」

 

《根岸》ーーーーーーこの名を聞いたことのある者は多いだろう。

そう、かつて秘密結社《ZECT》の評議会のメンバーであった一人。その正体は宇宙から来た生命体である《ネイティブ》であり、当時の《ZECT》のリーダーである《加賀美陸》に対してクーデターを起こした後、その全権を完全に掌握し、人類を全てネイティブ化するという恐ろしい計画を実行した人物。

最終的にその計画は総輝と大牙の祖父、《天道総司》と《加賀美新》の二人によって阻止され、根岸もまた崩れ行くZECT本部に巻き込まれて行った……

が、彼はその後辛うじて生きており、《亡国企業》に拾われた後は彼が立てた計画を亡国企業内で評価され、現在は亡国企業の実質的なトップに返り咲いている。

 

根岸「……素晴らしい、の一言ですねスコール殿。まさかあの《クロックアップシステム》をISに搭載するのに成功するとは思わなかった」

 

スコール「お褒めに預かり光栄ですわ代表」

 

スコールはぺこりと頭を下げる。

根岸はそれを見て満足そうに頷いた後、再びモニターに視線を移し

 

根岸「しかし、ライダーキックを受けても破壊されないのは驚いた。一体どんなカラクリなのですか?」

 

スコール「簡単なことですわ。ダークカブトのライダーキックの出力を測定し、そのデータを元にアラクネのシールドエネルギーを大幅に増加しただけです。これならカブトとガタックのライダーキックを受けても、アラクネには傷一つつかないでしょう」

 

根岸「ハハハハハ!全く恐ろしいですな。これなら、IS学園にいる戦略など取るに足りない。

……そう言えば、IS学園に襲撃をかける日ももう直ぐですが、どんな作戦でいくのか決まっているのですか?」

 

スコール「ええもちろん。こちらをご覧ください」

 

スコールは手に持ったタブレットを根岸に手渡す。

そこには、白銀のISのデータが載っていた。

 

根岸「これは……アメリカの軍用IS《銀の福音》ですか」

 

スコール「流石根岸代表、よくご存知で」

 

根岸はなにかを察したのか、頷きながら

 

根岸「…成る程、これを強奪し臨海学校中のIS学園に奇襲をかけるわけですか」

 

スコール「いいえ、惜しいけれど違います。この《銀の福音》はあくまでフェイク。福音をエサにIS学園にいる専用機持ちを駆り出します。そうなれば、学園の戦力は織斑千冬は専用機を持っていないようですから、カブトとガタックのみと見ていいでしょう」

 

根岸「つまり、戦力が手薄になった学園を奇襲するわけですな?Mとオータムの二人で」

 

スコール「そういう事です。更に、ZECTに存在した全てのゼクターの復元も完了しています。資格者が現れれば、彼らも向かわせます。無論私も向かいますが、所詮は高校生の坊や二人。実戦経験の豊富なMとオータムの敵ではないでしょう」

 

根岸「フハハハハ!!!それは爽快だ!遂にあのカブトとガタックに復讐の機会が巡ってきたわけだ。私も是非現場で見たい者だ、カブトとガタックが無様に粉々になるのを」

 

スコール「ええ、是非ご覧になって頂きたいですわ。

でも、なにが起こるかわかりませんから、貴方はここで待っていて下さいな。必ず、カブトとガタックの首を取って戻って来ますので」

 

根岸「…期待しているよ?スコール君」

 

スコール「ええ、このスコールにお任せください」

 

すると、根岸がなにかを思い出したように

 

根岸「そういえば、《銀の福音》のパイロットはどうするのですか?幾ら強奪するとはいえ、無人ではISは動かんでしょう。一体、誰を乗せるおつもりなのですか?」

 

スコール「それにも心配は及びません。既にこの人物を用意してあります。貴方もよく知る人物じゃないかしら」

 

そう言って、スコールは根岸の持つタブレットの画面を切り替える。それを見て根岸は目を見開いた。

 

根岸「これは……!何故この人物を?」

 

スコール「亡国企業の情報網にかかれば、ネズミの一匹や二匹居場所を特定して捉えるなど造作もない事です。ましてやそれが、地獄の男であるならば」

 

根岸「しかし、彼は男性ですよ?しかも年齢的に考えて………まさか」

 

根岸は何かに気づいてスコールの顔を見る。

 

スコール「ふふ。既に彼には様々な実験や薬を投与しました。少々手荒な事もやりましたが、まあどうせ生き場を無くした地獄の亡霊。誰も文句など言わないでしょうね」

 

根岸「おやおや……年齢を若返らせ、しかも人為的に男性でISに乗れるようにするとは。綺麗な顔をして、つくづく恐ろしい事をやりますなぁ〜。ハハハハハ!」

 

スコール「いやですわ根岸代表、“綺麗な顔”だなんて。うふふふふふ……」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

亡国企業の地下。光も差さない真っ暗闇の中、鉄格子の奥で一人の人物が座っていた。その顔には生気が無い。

が、突如ピクリと首を挙げ、その瞳がゆっくりと開かれる。

その瞳は獣のようにギラギラと光、闇の中で不気味に輝く。そして、その口をゆっくりと開き、ドスの聞いた低い声でこう呟いた。

 

???「……今、誰か俺を笑ったか?」

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます!
今回、まさかの根岸を出しました!根岸のキャラ、しっかり出せていたでしょうか?
それと、最後に出てきた男、もうお分かりですよね?
では、次回もお楽しみに!!!


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第十三話 買い物デート

どうも皆さん、ジャズです!
最近暑いですね……皆さんはお体大丈夫ですか?
自分はクーラーの効いた部屋でのんびりと過ごしてますwもうクーラー無しじゃ過ごせない!
てか、スーツアクターさんって凄いですよね?絶対この時期仮面の下で汗だくになってるじゃ無いですか。
と、思いながら仮面ライダーを見てましたw


朝日が部屋の中に差し込み、寮の部屋のベッドを照らす。

大牙は朝日で目が覚め、起き上がろうと体を動かした時にあることに気づいた。

もう一人、誰かが自分のベッドにいることに。考えられるとすれば相部屋の簪だろう。

大牙は正体を確かめようと布団をめくった時、思わず悲鳴をあげそうになった。

 

ラウラ「う〜〜ん………」

 

そので寝ていたのはまさかのラウラだった。更に言えば、彼女は服はおろか下着すら身につけておらず、彼女の陶磁器のような艶のある白い肌が光に照らされ眩く光っていた。

 

大牙「うぎゃああぁぁぁぁ!!!!」

 

大牙は今度こそ悲鳴を上げた。

するとその声で目覚めたラウラが起き上がる。

 

ラウラ「……なんだ、もう朝か?」

 

眠たげに目をこすりながら大牙を見るラウラ。

そして、起き上がったことで布団が剥がれ、ラウラの全身が露わになった。

 

大牙「おまっ…いつの間に入ってきたんだ……ってオイ!バカ隠せ隠せ!!」

 

大牙は思わず両手で目をおおう。

そんな大牙を見てラウラは首を傾げながら

 

ラウラ「夫婦とは互いに包み隠さぬものと聞いたぞ?ましてやお前は私の嫁……」

 

大牙「いや違うから!というか嫁ってなんだ?!おかしくねぇ?!普通俺がお前のことを嫁って言うんじゃねぇの?!!」

 

ラウラ「ニッポンでは気に入った相手のことを“俺の嫁”とか“自分の嫁”とか言うそうだが?」

 

大牙「よし分かった。色々突っ込むところはあるが取り敢えず先に服を着ろ!!今やれ!すぐやれ!ライトナウ!!!」

 

大牙はラウラに対してビシッと指を指すが、ラウラは突如それを掴んで大牙に対して絞め技をかける。

 

ラウラ「お前はもうすこし寝技の訓練をすべきだな」

 

大牙「い、いでででででででっっ!!」

 

大牙はそれを引き剥がそうとするが、小柄とはいえ相手はプロの軍人、大牙のパワーを持ってしても離すことが出来ない。

 

ラウラ「寝技を磨きたいというなら…わ、私が相手になってやらんでもないぞ……?」

 

ラウラはここでやや顔を赤くしながら大牙に言う。

 

大牙「わ、わかった!わかったからとりあえず離せ!そんで服着てさっさと部屋から出てくれ!さもないと簪が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が……何……?」

 

突如、部屋の中にひどく冷え切った少女の声が響く。

大牙はそれを聞くと即座に顔が真っ青になり、ギギギ…と古びた機械のようにゆっくりと声のした方を向く。

 

簪「何、してるの…大牙?」

 

そこに居たのは、所謂ハイライトが消えたどす黒い瞳で大牙を見ている簪の姿があった。

 

大牙「ぁ……か、かん…ざし……!」

 

大牙は唇をわなわなと震わせながら彼女の名を口にする。

 

ラウラ「…無作法なやつだな、夫婦の寝室に」

 

そんな簪に対して、ラウラはあっけらかんとした声でそう言った。

 

大牙「コルルァ、ラウラァ!!余計なこと言うんじゃねぇ!」

 

大牙は慌ててラウラの口元を押さえるが、簪は「ふぅ〜ん」と言いながら一歩一歩、ゆっくりと大牙の方へと歩いて行く。

 

大牙「ちょ、待って落ち着いて簪!違う!これはあの、ラウラがだな……って、おい?何で薙刀なんか持ってんだよ?」

 

簪はいつのまにか、専用機の《打鉄・弐式》に装備されている薙刀を取り出した。

 

簪「……ふ、ふふふ……浮気…大牙が浮気……ふふふふふふふふふふふふふ」

 

簪は不気味な笑みを浮かべながらゆっくりと薙刀を構える。

 

大牙「待って簪ぃ〜!!頼むから俺の話を」

 

簪「馬鹿あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

簪は聞く耳持たず薙刀を思い切り大牙に対して振り下ろした。

 

大牙「うわあ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ!!!!!

 

大牙はかつての地獄の兄貴のように、直立の姿勢のままドアを、そして廊下の窓を突き破って吹き飛ばされていった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

都会へ向かうモノレールの二人座席に、一組の男女が座っていた。一人は金髪の女子、もう一人は端正な顔立ちで足を組んで座っている男子。

そして彼らは二人ともIS学園の制服を着ている。

 

シャルロット「…あ、あのさ、どうして僕を買い物に誘ってくれたの?」

 

金髪の少女、シャルロットはやや頬を赤らめながら隣に座る少年、総輝に尋ねる。

 

 

総輝「……もうすぐ臨海学校だろう?シャルロットは女子用の水着を持っていないと言っていたろう。俺も丁度新しいのを買おうと思ってたから、ついでにと思ってな」

 

シャルロット「………つ、ついでに?」

 

総輝の答えにシャルロットはがっくりと肩を落とす。

無論、シャルロットはそれを期待していた訳ではないが、シャルロットも恋する乙女。想い人と共にデートなどしてみたいものである。やや気落ちしていた時、総輝から思いがけない言葉が出てきた。

 

総輝「……と、言うのは目的の一つだ。なに、今日は一日オフなんだ。せっかくこうして出かけるんだから、色々な所を歩き回ってみないか?」

 

シャルロット「そ、それってつまり……?」

 

シャルロットはおずおずと表情に期待の色を滲ませながらたずねる。

 

総輝「ん?ああ、人はこう言うのを《デート》と呼ぶのか。まあ、シャルロットが良いなら、《デート》にしても良い」

 

それを聞いて、シャルロットはパアッと表情が輝いた。

電車が目的地に到着し、二人は揃って降りる。

するとシャルロットは総輝の方を向き、

 

シャルロット「あ、あのさ……お願いがあるんだけど……」

 

総輝「……何だ?」

 

シャルロットはすこし迷っていたのか中々切り出せずにいたが、意を決して右手を総輝に差し出す。

 

シャルロット「手を握って!!」

 

総輝は少し呆けていたが、フッと軽く笑ってシャルロットの右手を優しく掴む。

 

総輝「……しっかり掴まってろよ?」

 

シャルロット「〜〜〜っ////」

 

シャルロットは顔から湯気が出るほど真っ赤な顔になっていた。

ーーそんな彼らを後ろから覗き込む陰があった。

 

鈴「……ねぇ、セシリア?」

 

セシリア「…………」

 

鈴とセシリアだ。

彼女たちも自身の水着を購入する為に出かけていたのだが、偶然総輝とシャルロットを見かけたのだ。

そして、総輝がシャルロットと手を繋いだ時、セシリアの纏うオーラが一瞬にして冷え切った。

 

セシリア「あのお二方……手を……手を握っていますわ……ふふ、ふふふふふふふふふふ……」

 

鈴「うわぁ……(これが日本でいう《ヤンデレ》と言われるやつなのかしら?ちょっと引くわ〜。ていうか総輝もなにやってんのよ!あんた一夏ほど鈍くないんだから、セシリアの好意くらい気づいてるんでしょ?!もう!バカ!)」

 

鈴はセシリアの様子にドン引きしながら、こうなる原因となった総輝に対して胸の内で文句を言うのだった。

 

そんな彼女たちを総輝達は当然気づくはずも無く、他愛もない会話をしながら歩みを進める。

ふと、総輝は立ち止まる。

 

シャルロット「……総輝?」

 

シャルロットは突然立ち止まった総輝を見つめる。

当の総輝は顎に手を当てて何かを考えているようだ。

 

総輝「……日本では、親しい人間にはあだ名を付ける文化がある。シャルロットはもう皆知っている名前だからな。俺たちの間だけでいいから、あだ名を付けないか?」

 

シャルロット「え、ええっ?!いいの?」

 

総輝「ああ。そうだな………。

《シャル》はどうだ?短いし、覚えやすい」

 

シャルロット「シャル……うん!いいよ!すっごくいいよ!!」

 

シャルロットは総輝に抱きついて喜んだ。

そんなシャルロットを総輝は優しい笑みで見つめながら「そうか」と言いながら彼女の頭を撫でる。

 

シャル「(シャル…シャルかぁ〜////)」

 

一方、そんな二人を見て更にどす黒いオーラを撒き散らすセシリア。

 

セシリア「な、シャルロットさん……総輝さんに抱きついて………!許せませんわ……学校に帰ったらじっくり……!」

 

鈴「(…あたしもう帰ろうかなぁ……)」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ショッピングモールの水着売り場に二人は到着した。

すると、シャルロットは何かに気づき総輝の手を引き試着コーナーに駆け込む。

流石の総輝も戸惑いの表情を浮かべ、「どうしたんだ?」と尋ねるもシャルロットは人差し指を唇の前で立てるだけでなにも告げず、ただ試着コーナーのカーテンの隙間から外を覗き見るだけだ。

その視線の先には、セシリアと鈴の二人がいた。

が、セシリアはいつものお淑やかな雰囲気ではなく、闇のオーラを纏った別人のような表情になっている。

 

シャル「(……今セシリア達に出くわしたら確実に邪魔される……!)」

 

シャルロットは冷や汗をかきながら外を見つめていた。

そんな彼女の様子を後ろから不思議そうに見つめる総輝。

 

総輝「…外にだれかいるのか?」

 

シャル「う、ううん!だれも居ないよ!」

 

シャルロットは首や両手を振って必死に誰も居ないことをアピールする。

 

シャル「いいからとにかくここに居て!すぐに着替えるから!」

 

そう言ってシャルロットは制服の上着を勢いよく脱ぎ出した。

総輝は慌てて体を反転させる。

 

総輝「……やっぱり俺は外にいた方が」

 

シャル「いいから!直ぐに終わるから待ってて!」

 

総輝は居たたまれなくなり外に出ようとするが、シャルロットに必死に制止され止む無くその場にとどまる。

 

総輝「(全く……シャルは何を考えているんだ?)」

 

総輝はシャルロットが何故自分をここにとどめたのか理由がわからず、顎に手を当ててシャルロットが着替え終わるのを待っていた。

 

シャル「……お、お待たせ」

 

シャルロットの声に総輝はゆっくりと振り返る。

そこには、水着に着替え当てたシャルロットがやや恥ずかしそうにモジモジとしながら立っていた。

シャルロットの髪と同じ黄色を基調としたビキニはこれ以上なくシャルロットにマッチしていた。

 

シャル「…ど、どうかな?」

 

総輝「ああ……似合ってるぞ、すごく」

 

シャル「本当に?!ありがとう!」

 

総輝「…だが、まだあと一つ足りないな」

 

そう言って、総輝はポケットから黄色い花のついた髪飾りをシャルロットの髪に付ける。

 

シャル「えっ……そ、総輝?これって……」

 

総輝「ああ、お前が水着を選んでる間に買ったんだ。シャルに似合うと思ってな」

 

そして総輝は、試着室の内部にある鏡を指差し、シャル自身に見るよう促す。

シャルロットは鏡に映った自分を見て、一瞬目を見開いた。髪飾りというワンポイントではあるが、黄色い花がよりシャルロットを綺麗に魅せていた。

 

シャル「……わぁ……自分でもびっくりだよ。こんなにも変わるなんて……」

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた。《花は全ての女性を輝かせる》ってな。やっぱり、俺の見立て通りシャルは黄色い花が似合うようだ」

 

シャル「…え、えへへ……////」

 

その後、彼らは人目を盗んでなんとか試着室から脱出し、そのまま水着を購入したのだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

シャルロットの水着を選んだ後、彼らは昼食を取るため喫茶店に来ていた。そこはメイド服を着た女性や執事服の男性が接客を務めている。

何故彼らがそこにいるのか。それは、シャルロットが非常に興味を示したためだ。

 

シャル「うわぁ〜…まるでお城の中にいるみたい」

 

シャルロットは初めて見るメイド喫茶に感激していた。

そんなシャルロットを総輝は微笑ましく見ていた。

すると、彼らから少し離れた席に見覚えのある姿が見えた。

 

大牙「なぁ、簪……もう機嫌直してくれよ〜…」

 

簪「ツーン」

 

大牙と簪だった。

簪はむくれており、大牙はそれを宥めているようだった。

 

総輝「あれは…大牙と簪か」

 

シャル「あ、本当だ。偶然だね」

 

総輝とシャルロットは席を移動し、彼らのテーブルに向かって歩いて行く。

 

総輝「よう大牙、簪」

 

大牙「うおっ?!そ、総輝!」

 

シャル「奇遇だね。二人も買い物?」

 

大牙「あーー…まあ、そんなとこだ」

 

大牙は何故か冷や汗をかいている。

不思議に思った総輝が事情を聞くと、どうやら大牙がやらかしたらしい。

 

大牙「……まさかベッドにラウラが来るとは思わなかったんだよ……」

 

総輝「フッ、随分と懐かれたようだな」

 

大牙「他人事みてぇに言いやがって……」

 

総輝「他人事だしな」

 

そんな軽口を言い合う彼らを他所に、シャルロットは簪と話していた。

 

シャル「それでご機嫌斜めなんだね」

 

簪「……大牙のバカ…」

 

簪は俯きながらそう呟く。

 

シャル「あはは…でも、大牙も別に、悪気があってやったことじゃないと思うんだ……いや、というかそれ8割はラウラに原因があるよね…」

 

簪「むぅ〜…でも…」

 

簪は納得できていなさそうに頬を膨らませる。

 

シャル「大牙はね、試合の時に自分の全てを賭けてラウラを助けたんだ。だからラウラもあれだけ大牙に懐いたんだと思う。簪も、大牙が助けてくれたら嬉しいでしょ?大牙は別に、簪のことを蔑ろにしようとかそんな事は思ってない。大牙はみんなのヒーロー、《仮面ライダー》なんだよ」

 

簪「………」

 

簪はシャルロットの話を聞き、どこか思い詰めた表情になる。

 

すると、総輝たち四人に一人の女性が近づいてくる。

 

「ねえあなた達、今って暇?」

 

大牙「へ?」

 

シャル「え?えっと……まあ、暇かと言えば、暇ですね」

 

彼らの回答にうんうんと頷く女性。

 

「ねえ、少しバイトしてみない?」

 

総輝「……バイト?」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

総輝と大牙は執事服に着替え、シャルロットと簪はメイド服に着替えていた。

彼らに話しかけた女性はこの店のオーナーなのだが、人手が足りず少し頭を抱えていた。そんな時、店の中で一際輝く二組の男女カップル。少しでいいので彼らの力を借りられればと考えての行動だった。

特に断る理由もない彼らは二つ返事で了承、そのまま店の制服に着替えていたのだった。

 

シャル「ど、どう?変じゃ、ない…かな…?」

 

シャルロットはメイド服のスカートをひらつかせながら総輝に尋ねる。

 

総輝「ああ。よく似合っているぞ、シャル」

 

シャル「そう?え、えへへ…///」

 

シャルは頬を赤らめ、ニヤついた顔になっている。

 

大牙「おお簪!お前もよく似合ってんじゃねぇか!」

 

簪「ほ、褒めたって何も出ないから……///」

 

簪も頬を赤らめてモジモジとしている。

 

シャル「総輝も、すごく似合ってるよ?」

 

総輝「そうか。ありがとうな」

 

大牙「てかお前、違和感無さすぎんだろ。もう普段からそれで行けば?w」

 

大牙は冗談まじりでそういうが、総輝はため息をついて

 

総輝「…そんなことをしたら目立ちすぎて周りからの視線が痛いだろう。主に女性からの」

 

大牙「似合ってる自覚あんのなお前!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

着替えを終えた彼らは、早速仕事に入った。

主に出来上がった料理を客へ運んでいくホールの仕事だ。

 

総輝「お待たせしました、お嬢様。《ミニトマトとモッツァレラチーズのカプレーゼ》で御座います」

 

「あ、ありがとう、ございます…///」

 

総輝と大牙の男性チームは専ら女性客に料理を運ぶ。

総輝を見る女性客は皆顔が真っ赤だ。

 

シャル「本当に違和感がないね、執事服の総輝」

 

大牙「まあ、あれも爺さん譲りだな」

 

シャルロットと簪の女性チームは主に男性客に料理を運ぶ。男性客は皆、シャルロットと簪のメイド姿にすっかり虜になっているようだ。

店は彼らの活躍もあっていつも以上に繁盛しており、彼らは休む間も無く接客を続けていた。が、四人ともその表情は生き生きとしていた。

そんな彼らの臨時のヘルプももうすぐ終了の時刻が近づいてきた時、総輝は二人の男性客に違和感を感じていた。

 

総輝「(……あの客……何故この時期にあんな厚いコートを?)」

 

今はもう7月。あまりにも時期外れな格好に総輝は不信感を捨てきれなかった。

その時だった。

 

お前ら動くんじゃねぇ!!!

 

突如その男性客達は立ち上がり、コートを脱ぎ捨てその中からショットガンを取り出し天井に向けて発砲したのだ。

当然店内は騒然とし、総輝はテーブルの陰に隠れる。

しかも、その男性客のカバンにはどうやら他にも拳銃などが入っているのが見える。

 

一方、別の場所に隠れている大牙と簪、シャルロットの三人。

 

簪「あ、あれって本物……?」

 

シャル「どうだろうね……少なくとも下手に手出しするのは得策じゃなさそう」

 

大牙「そうだな……でも、なんとか隙を見てあいつらを……」

 

彼らがそう話している間、実行犯にゆっくりと近づいていく人物がいた。

店長の女性だ。

 

「お、お客様。お願いですから、どうか落ち着いてください。ここには他のお客様もいらっしゃいますし……」

 

店長の女性はなるべく彼らを刺激しないよう優しい口調で説得を試みる。しかし、

 

「うるせぇ!!」

 

「あっっ!」

 

男は銃の底で店長を思い切り殴った。そのまま店長はテーブルに激突し地面に倒れこむ。

 

「はっ!女尊男卑でもコイツの前じゃ何も出来ねぇようだなぁ!」

 

「お前らも余計なことすんじゃねぇぞ!さもなきゃコイツをぶっ放すからなぁ!!」

 

大牙「くそっ、あいつら…!」

 

大牙は物陰で悔しそうに吐き捨てる。

店長が殴られた事に強い怒りを抱いたが、相手が銃を待っている以上手出しは出来ない。

勿論、《仮面ライダー》に変身すれば一瞬で片付くがそんなことはできない。現在、あれは《IS》同様に扱われているため、外で使用するのは許されない。

 

どうする……必死に思考を働かせていた時だった。

 

「ぐおっ?!!」

 

突如、犯人が何者かに蹴飛ばされたのだ。

 

「くっ……何しやがんだてめぇ!これが見えねぇのか?!!」

 

もうひとりの男は相方を蹴った人物に対して銃を向けて脅しをかける。

しかし、犯人を蹴った男ーーー総輝はそれを気にとめることもなく、鋭い視線で犯人を睨む。

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた……《男がやってはいけない事が二つある。女の子を泣かせる事と、食べ物を粗末にする事だ》」

 

大牙達はその光景を見て一瞬思考が止まった。

 

大牙「(なああぁぁぁぁぁぁにをやっとんじゃああぁぁぁぁぁ?!!!)」

 

シャル「(そ、そうきいぃぃぃぃぃぃ?!!!)」

 

犯人は激昂し銃を向けながら喚き散らすが、一向に撃つ気配がない。それを見て大牙は何かを察した。

 

大牙「……そうか、あれはモデルガンだ」

 

簪「え?モデルガン……?」

 

大牙は頷き

 

大牙「ああ。さっきからあいつらは人に向けて一向に撃つ気配がねぇ。しかも、あいつらさっき天井に向けて撃ったよな?なら、銃弾の跡が残るはずなのにそれが無い。つまり、あいつらが使ってんのはニセモンだ」

 

シャル「なるほど…じゃあ…!」

 

大牙はシャルロットの言いたいことを察して

 

大牙「あいつらは俺と総輝に任せろ。シャルロットと簪は何か縛るもんを持って来といてくれ」

 

簪「わかった。気をつけてね、大牙」

 

大牙「おう!」

 

大牙は強く頷き、犯人へ向けて飛び出していく。

 

大牙「うおぉぉきゃくさまあぁぁぁぁ!店内での暴動はあぁぁ〜、おおぉひかえくださああぁぁぁい!!!」

 

大牙はそう叫びながら、銃を総輝に向けて構える男に思い切りボレーキックを食らわせる。

 

「ぐわああぁっっ?!!」

 

蹴られた男はその勢いで壁に激突する。

男は口元を拭った跡、険しい表情で総輝と大牙を睨みつける。

 

「てめぇら……こんな事して、タダで済むと」

 

大牙「それはてめぇらだあぁぁぁ!!!」

 

大牙はその男を後ろから羽交い締めにすると、そのまま持ち上げてドラゴンスープレックスを使い男を脳天からテーブルに叩きつける。凄まじい轟音と共にテーブルが破壊され、男は意識を失った。

 

「くっ……貴様ァ!!」

 

もう一人の男は総輝に殴りかかるが、総輝はそれを難なく躱す。

 

総輝「どうした?それで撃たないのか?」

 

総輝は口元に笑みを浮かべながらそうたずねる。

犯人は「ぐっ…」と唇を噛み締めながら尚も拳を振るい続ける。

 

総輝「…やはり、それはモデルガンなんだな。ならば残念だったな。本物でない以上こちらはお前を恐れることは無いし、何より……」

 

総輝はカウンターの回し蹴りを犯人に食らわせる。

 

「ガハッ……?!!」

 

総輝「そんな拳じゃ、俺は倒せん」

 

犯人は力尽きて地面にへたり込んだ。

その後、ロープを持ってきたシャルロットと簪が犯人を縛った。

 

大牙「……さて、あとは警察に任せて俺らはトンズラするか」

 

簪「うん。事情聴取とか面倒だし」

 

シャル「ここまでしたら、もう安心だね。早く学園に帰ろう」

 

そう言って、四人は少し駆け足で出口へ向かう。

 

「あ、あの!」

 

そんな彼らを、店長が呼び止める。

総輝と大牙はゆっくりと振り返った。

 

「あ、あなた達は一体……?」

 

その問いに対し、総輝と大牙はフッと笑い

 

総輝「……別に、俺たちは大した奴じゃ無い」

 

大牙「そうだな。ま、敢えていうとすれば……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「《通りすがりの仮面ライダー》だ」」

 

 

その後、一連の暴動を鎮圧した《通りすがりの仮面ライダー》は新聞で大きく報道されたのだった。

 

 




お読みいただきありがとうございます!
次回からはいよいよ臨海学校編!アニメ一期のクライマックスですので、精一杯頑張ります!!


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第十四話 オーシャンズイレブン

更新遅くなりました!ジャズです。
ゼロワン、面白いですね〜!個人的に、不破さんの変身シーンでプログライズキーのロックを力任せに解除するシーンで笑いましたwでもかっこよかった!!

では、本編どうぞ!


夏の日差しが照りつける浜辺に、水着姿の少女達が飛び出す。

 

真耶「今11時です!夕方までは自由行動ですが、それまでに旅館に戻ること。良いですねー?」

 

「「「はぁ〜い!!」」」

 

ついに、IS学園の一大イベント、《臨海学校》がスタートした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ね〜おりむ〜、私たちと一緒に遊ぼう〜?」

「ビーチバレーやろうよ!」

「あ、天道くんと加賀美くんも一緒にやろう?」

 

水着姿の女子達に囲まれる三人の男子。

 

一夏「おう、良いぜ!」

 

大牙「言っとくけど、俺は全力で行くからな!」

 

が、その直後一夏の背中に飛び乗る者がいた。

 

鈴「わぁ〜、高い高ーい!」

 

鈴が一夏の両肩によじ登り、見事一夏に肩車される形になった。

 

一夏「な、何やってんだよ鈴!降りろって!!」

 

一夏は慌てて鈴を降ろそうとするが、しがみついているため中々降りない。

 

大牙「おい一夏、落とすなよ?」

 

一夏「いや、大牙も見てないで何とかしてくれ!」

 

そんなやり取りをしている彼らに近づく人影。

 

「あら総輝さん、こんなところにいらっしゃいましたの?」

 

青を基調とした水着を着たセシリアだ。

パラソルやシートなど色々なものを抱えている。

 

総輝「ああ、セシリアか。……ここでするのか?」

 

セシリア「勿論ですわ。レディとの約束を違えるなど、紳士のする事ではありませんわよ?」

 

そう言って、セシリアはパラソルをさして、シートを引きそこにうつ伏せになって寝転ぶ。

 

セシリア「…さあ総輝さん、お願いしますわ」

 

セシリアは上の水着を外し、総輝の方を見ながらサンオイルを取り出す。

 

総輝「わかった」

 

総輝も了承してセシリアの方へ歩く。

 

鈴「ちょっとアンタ!総輝に何やらせるつもりよ?!」

 

セシリア「見ての通り、サンオイルを塗って頂くのですわ」

 

大牙「え?お前そんな約束したの?」

 

総輝「…ああ」

 

大牙が驚いた顔で総輝に尋ねる。

総輝は頷きながらサンオイルを手に広げる。

そしてしばらく手で擦り合わせている。

 

一夏「何やってるんだ?」

 

総輝「サンオイルを手で温めているんだ。そのままだと少し冷えているからな」

 

そして、総輝はセシリアの背中にサンオイルを塗り始める。

 

セシリア「……ん……ふぅ……総輝さん、手慣れていますわね……?」

 

総輝「そうか?初めてなんだがな」

 

セシリア「初めてなんですの?それならば尚更凄いですわね……!」

 

そして、一通りセシリアの背中にサンオイルが行き渡った。

セシリアは何故か「はぁはぁ」と少し呼吸が浅く、早くなっている。

 

総輝「…こんなもので良いか?」

 

セシリア「い、いえ!折角ですし、手の届かない所までお願いしますわ!」

 

セシリアのその言葉に少しギョッとした顔になる大牙と一夏。

 

一夏「え?」

 

大牙「手の届かない所って…まさか……」

 

そして二人の予感は的中する。

 

セシリア「足の付け根や……その……お、お尻の方も……///」

 

「「ウェ?!!」」

 

思わず素っ頓狂な声を出す二人。

そんな二人に対して、総輝は

 

総輝「分かった。それじゃ失礼するぞ」

 

そう言って、セシリアの水着に手をかけようとする。

 

「「ストオオォォォォォォッップ!!!!!!!」」

 

そんな総輝の両肩を大牙と一夏型掴んで慌てて引き離す。

 

総輝「何だ。そんなに慌ててどうした?」

 

総輝は全く悪びれる様子もなく、ため息をつきながら至って普段通りのテンションで二人に尋ねる。

 

一夏「“どうした?”じゃない!何しようとしてたんだよ総輝!」

 

大牙「そうだ!!なにしれっと女子の生ケツ触ろうとしてんだお前!!ちったぁ自重しろこのヤロウ!!!」

 

鈴「アンタが自重しなさいよバカ!!!」

 

鈴が頬を真っ赤にしながら大牙を引っ叩く。

そんな彼らを他所に、セシリアは総輝を急かす。

 

セシリア「そ、総輝さんっ!早くお願いしますわ…///」

 

総輝「わ、わかった。それじゃあ……」

 

今度こそ総輝はセシリアの水着に手を伸ばすが、それを鈴が制した。

 

鈴「はいはーい!続きは私がやるね〜!」

 

鈴は両手をサンオイルで濡らして一気にセシリアの背中に塗り始める。

 

セシリア「んなぁっ?!ちょ、ひゃああっ!!く、くすぐったあっ!!」

 

セシリアは擽ったさにジタバタし始める。

鈴はそんなセシリアを押さえつけながらサンオイルを両足、両腕、両脇などまだ塗られていないところをどんどん塗っていく。

 

鈴「あと、ここもなのよね?」

 

そして遂に、鈴はセシリアの水着の中に手を入れた。

 

セシリア「ひゃああぁぁっ!!鈴さんっ!もういい加減に……」

 

セシリアはとうとう我慢できなかったのかうつ伏せの状態から立ち上がった。だが、彼女はこの時失念していた。

彼女の上の水着は今、外されていることを。

 

鈴「あっ」

 

大牙「げっ?!!」

 

一夏「うわぁっ!」

 

総輝「おっと」

 

全員が慌てて後ろを向く。

そんな彼らを見てセシリアもハッとして自身の胸元を確認する。

 

セシリア「ぁ……い、いやあああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

即座にブルー・ティアーズを部分展開して男三人衆をぶっ飛ばしたのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

大牙「いてて……」

 

セシリアにぶっ飛ばされ、頭をさすりながら起き上がる大牙。

するとそこへ、

 

簪「あ、大牙」

 

簪がやって来た。

 

大牙「おお、簪……ってええ?!!」

 

隣にバスタオルを全身に巻いてミイラのようになった人物を連れながら。

 

大牙「な、何だそのバスタオルお化け?!!」

 

バスタオルお化けと言われた人物は何も言葉を発さない。

 

簪「…ほら、大牙に見せたら?大丈夫だよ」

 

??「…だ、大丈夫かどうかは私が決める…!」

 

ようやく言葉を発したお化けの声に大牙はハッとした顔になり

 

大牙「そ、その声……まさかラウラか?!」

 

簪が困ったような笑顔でお化けの肩をポンポンと叩く。

 

簪「せっかく水着に着替えたんだから、ちゃんと見せてあげないと」

 

ラウラ「ま、待て!私にも心の準備という物があってだな……」

 

そんなラウラの反応に簪は悪戯な笑みを浮かべて

 

簪「ふーん……それなら、私と大牙だけで遊んじゃうけど……良いのかな?」

 

ラウラ「そ、それはダメだ!!………〜〜っええい!!」

 

ラウラは漸く意を決してバスタオルを投げ捨てた。

ラウラが身につけていたのは紺色のビキニだ。

身体はまだ発達の途中だが、軍人であるラウラのその肉体は引き締まっており、スタイルがとても良い。

 

ラウラ「……わ、笑いたければ笑うが良い……///」

 

頬を真っ赤に染め、普段の凛とした彼女からは想像もつかないほど恥ずかしそうな態度をとるラウラ。

 

簪「おかしなところなんてないよ?ねえ大牙?」

 

大牙「おう!すっげえ似合ってるし、可愛いぞ!」

 

ラウラ「なっ……!そ、そうか!私は可愛いのか……///」

 

俯きながら、それでも何処か嬉しそうなラウラ。

するとそこへ、今度は総輝達がやって来る。

 

総輝「よう。こんなところにいたのか」

 

彼の隣には、セシリアとシャルロットがいた。

 

シャルロット「うわぁ、ラウラ!その水着凄く似合ってるね!」

 

セシリア「ええ、とても。可愛らしいですわよ、ラウラさん」

 

同い年の女の子達から褒められ、益々上機嫌になるラウラ。

するとシャルロットが簪の方へ駆け寄り、

 

シャルロット「……ねえ、良いの簪?敵に塩を送るような真似して」

 

簪「……良くはないよ。でも……そうじゃなきゃ面白くないし」

 

と、不敵な笑みで返す簪。

 

大牙「あ、簪!!」

 

突然、大牙が簪を呼び、簪も大牙の方を向く。

 

大牙「その……簪もその水着、すげえ似合ってるぜ!」

 

親指を立てて満面の笑みで言う大牙。

簪も微笑み返し

 

簪「……言うのが遅いよ。もう……///」

 

と頬を赤らめながら呟くのだった。

 

総輝「さて、これだけ人数がいるが、どうする?」

 

一夏「それなら、ビーチバレーしようぜ!」

 

総輝の呟きに、何処からか現れた一夏が答えた。

その隣には箒と鈴がいる。

 

箒「今いるのは9人か……」

 

箒が周りを見渡して呟く。

 

「ビーチバレーですか〜、楽しそうですねー!」

 

そう言ってやって来たのは、黄色のビキニを着た真耶だ。

 

シャルロット「先生も一緒にやりますか?」

 

真耶「ええ!……織斑先生、如何ですか?」

 

真耶に促され、千冬もやって来た。

彼女の身につける黒い水着は、千冬の大人な雰囲気をより一層醸し出し、彼女の魅力を引き立てていた。

周囲の女子生徒も「うわぁ……」だの「織斑先生カッコいい……!」だのと口にしている。

 

千冬「……では」

 

真耶「はい!やりましょう!」

 

箒「千冬さんもやるのか。あーけど、それでも5対6になってしまうな……」

 

一夏「いや、大丈夫だろ。千冬姉一人で二人分の戦力になるし」

 

総輝「なら、チームはこれでいいな」

 

《総輝・セシリア・シャルロット・大牙・簪・ラウラ》

《一夏・千冬・真耶・箒・鈴》

 

そして、ついにビーチバレーが始まった。

ここにいる皆は運動能力が非常に高く、ハイレベルなラリーが続く。

総輝や大牙が勢いよくスマッシュを打ち、一夏や千冬が持ち前の反射神経でそれをレシーブ、箒や鈴がお返しにスマッシュを打つという流れが続く。

 

が、ここで異変が起きた。

箒の打ったボールがラウラの方へ飛んできたのだ。

 

大牙「ラウラ、そっちに行ったぜ!!」

 

大牙がそう叫ぶが、彼やその他のチームメイトは皆、ラウラなら大丈夫だろうという安心感を持っていた。

ラウラは軍人だ。彼女ならこの程度のスマッシュくらい容易くレシーブ出来るはず。誰もがそう思っていた。

……が、

 

ラウラ「……可愛い……私が……可愛い……」

 

ラウラは未だに大牙から言われた事で照れていた。

思考が上の空の状態だったので、ボールが来たことに気づかない。

ボールは遂にラウラの顔面に勢いよく衝突した。

 

シャルロット「ラウラ?!」

 

セシリア「ラウラさん、大丈夫ですの?!」

 

皆が慌てて駆け寄る。

 

ラウラ「か、かわ……可愛いと言われると……私は……あぅ……///」

 

簪「……もしかしてまだ照れてたの?」

 

大牙「おい、大丈夫か?」

 

大牙がラウラの顔を覗き込んだ瞬間。

 

ラウラ「ぁ……ぅああ…………ふにゃああぁぁぁぁーーー!!!」

 

ラウラが顔面を真っ赤にしてそのまま海へ突っ込んでいった。

 

一夏「追いかけた方がいいかな?」

 

千冬「放っておけ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

スコール「……では、皆準備はいいわね?」

 

亡国企業では、ついにIS学園襲撃の準備が整い、スコールはこれから出撃する者達を見回していた。

 

マドカ「……問題ない」

 

青紫の蝶のような形のIS、ブルーティアーズ二号機《サイレント・ゼフィルス》を纏ったMこと織斑マドカはいつも通りの落ち着き払った声で応える。

 

オータム「いつでもいいぜ」

 

蜘蛛型のIS《アラクネ》を纏ったオータムもいつも通り男口調でややぶっきらぼうに応える。

彼女達の反応にスコールは満足そうな笑みを浮かべ

 

スコール「……では、行ってきなさい」

 

と告げる。

直後、二機のISはスラスターを思い切り吹かせ、大空へ飛び立って行った。

上空で、彼女達に続きもう一機白いISが合流する。

 

オータム「オイ!手筈は分かってんな?失敗したらタダじゃおかねえぞ?」

 

オータムは白いISーー《銀の福音》に向けて威圧感のある声で告げた。福音は何も答えない。

 

マドカ「……オータム、《フェーズ1》を開始するぞ」

 

マドカがオータムの方を振り向き、静かに告げる。

 

「「「《クロックアップ》」」」

 

《Clock-Up》

 

直後、三機のISは爆風を残し姿を消した。

 

 




お待たせしたのに短くて申し訳ない!
それにしても、総輝のイメージはやっぱり水嶋ヒロさんを思い浮かべながら執筆しているのですが、あんな人がビーチバレーなんてやってたら周囲の女性が群がって来ますよね絶対w まあそれがイケメンの力ですが。

さて、遂に始まった臨海学校編。インフィニット・ストラトスの一つのクライマックスであるので、精一杯執筆させていただきますので、よろしくお願いします!


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第十五話 亡国の襲来

ーー臨海学校2日目ーー

 

夏の太陽の日差しが朝から照りつける中、起床時間となり目をこすりながら生徒たちは部屋からぞろぞろと出てくる。

織斑一夏もその中の一人であったが、ふと廊下に佇む人物に目がいく。

 

一夏「おはよう箒。どうしたんだ?」

 

箒は何も答えずただじっと廊下の外の庭を見ている。

不思議に思った一夏がその視線の方向を見ると、庭の地面に何かが刺さっているのが見えた。

そこにあったのは、地面から生えているうさ耳と《引っ張ってね❤︎》というメッセージの書かれた看板が立っていた。

 

一夏「なあ、これって……」

 

箒「……知らん。私は何も見ていない。

一夏も早く来い。朝食に遅れるぞ」

 

箒はそう言い残しそそくさとその場を後にした。

一夏はその場に一人取り残され、ただじっと例のものを見ていた。

すると、今度は総輝と大牙がやって来た。

 

総輝「よう」

 

大牙「おっす、一夏!どうしたんだ?」

 

一夏「ああ、総輝に大牙。ちょっとな……」

 

一夏が総輝と大牙の方を見た後、再び庭に視線を移し、二人もそれにつられて庭を見、絶句した。

 

大牙「…………なんだこれ」

 

総輝「俺たち宛か?」

 

一夏「俺たちと言うより、俺宛だろうな……」

 

一夏がため息をつきながら呟く。

 

大牙「一夏宛って……心当たりでもあんのか?」

 

一夏「まあな。多分俺の知り合いなんだが……」

 

総輝「……まあいい。それより、早くしないと時間がくるぞ」

 

一夏「……そうだな。とりあえずこれは放っておくか」

 

そう言って、3人が歩き出したその直後。

 

“ちょおぉぉっと待ったああぁぁーーー!!!”

 

何処からか陽気な女性の声が響き、同時になにかが上空から飛んでくるのが見えた。

 

大牙「なんだあれ?ニンジン?」

 

そう、ニンジンが……否、ニンジン型のロケットがこちらに向かって飛んできているのだ。

そして、それは庭に勢いよく落下し、大きな土煙を上げる。

煙が晴れると、ロケットが展開して中から1人の女性が飛び出した。お伽話に出てきそうな悪趣味なエプロンを身につけ、地面に刺さっていたものとよく似たうさ耳のカチューシャをつけた女性。

そう、誰もがよく知る《篠ノ之 束》その人である。

束は頬を膨らませながら

 

束「もぉ〜、ひどいよいっくん!この束さんの愛のメッセージを無視するなんてさぁ〜!!」

 

一夏の両肩を掴んで叫ぶ。

 

一夏「あー……どうもお久しぶです、束さん」

 

束「うんうん♪本当に久しいね、いっくん!

ところで、箒ちゃんはどこかな?」

 

一夏「あー、箒ならえっと……」

 

一夏が答えようとした瞬間、束は懐からうさ耳型の機械を取り出し

 

束「まあ、箒ちゃんの居場所ならこの《箒ちゃん探知機》で分かるんだけどね!」

 

大牙「(それなら何で聞いたんだよ)」

 

思わずそんなツッコミが出た大牙だったが、何故かそれを言ってはいけないような気がしたので何とか押し留めた。

 

束「それじゃあね、いっくん!また後でね〜!!

それから…………そうくんにがっくんも、また後で話そうね〜!!」

 

と、束は手を振りながら何処かへと走り去っていった。

 

総輝「……“そうくん”に“がっくん”って何だ?」

 

一夏「あぁ〜……」

 

総輝の問いに一夏は気まずそうに頬を掻き

 

一夏「多分束さんが付けた総輝と大牙のあだ名だよ。

お前ら束さんに目を付けられたんだ、残念ながら」

 

大牙「“目を付けられた”?何で?ってか“残念ながら”ってどう言うことだよ?」

 

一夏「その答えは、多分束さんに会った時に分かるよ。

とりあえず、早く飯に行こうぜ?朝っぱらから千冬姉のアイアンクローなんて食らったらたまったもんじゃない」

 

総輝「それは勘弁願いたいな。急ぐか」

 

そして、3人は急ぎ足でその場を後にした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

千冬「……よし、専用機持ちは全員揃ったな?」

 

その日、IS学園の専用機持ちであるセシリア・鈴・シャルロット・ラウラ・簪・箒・一夏が一堂に集められた。

理由は、それぞれが本国から追加武装が送られたため、各員がその武装をチェックするためだ。

ちなみにISという意味で専用機持ちではない総輝と大牙もこの場に呼ばれているが、彼らは専用機持ちたちの手伝いをする為に呼ばれている。

 

鈴「ちょっと待ってください。総輝と大牙は兎も角、箒は専用機が無いでしょう?」

 

鈴の言う通り、箒にも専用機が無い。

 

千冬「ああ、私から説明しよう。実はだな……」

 

と言いかけたところで、「やあぁぁっほおぉぉーーー!!!」という叫び声が響き、同時に箒と千冬の顔が渋る。

崖から先ほどの束が猛スピードで下り、そこから大ジャンプして千冬の方へと飛んでくる。

 

束「ちいぃーーちゃあぁーーーん!!!」

 

満面の笑みで千冬に抱きつこうとする束だったが、千冬が彼女の顔を鷲掴みしてそれを抑え込んだ。

 

束「やぁやぁ会いたかったよちーちゃん!さあハグハグしよう!愛を確かめあおうよ〜!」

 

千冬に押さえつけられながらも抱きつこうとする束。

そんな彼女に呆れたようなため息をつきながら

 

千冬「うるさいぞ束」

 

束「もぅ〜、つれないなぁ〜」

 

束は千冬のアイアンクローから離れると、後ろの岩陰に隠れる箒を覗き込む。

 

束「ハロー、箒ちゃん!」

 

箒「………どうも」

 

箒は観念したように立ち上がる。

 

束「ヤホー!久しぶりだね箒ちゃん!何年ぶりくらいかな?にしても大きくなったねぇ〜…………

特におっぱいが」

 

箒「ふん!!」

 

束の言葉に箒が思い切り回し蹴りを食らわせ、束は「へぶっ!!」と吹っ飛ばされる。

 

箒「……ぶっ飛ばしますよ?」

 

束「やってから言った!!箒ちゃんひどーい!!ねえ、ひどいよねいっくん?!」

 

一夏「あ……はあ……」

 

千冬「……束、自己紹介くらいしろ」

 

束「えー?めんどくさいなーもう」

 

と文句を言いつつ、束は自己紹介を始める。

 

束「ハロー!み〜んなのアイドル♪《篠ノ之 束》だよ〜!

終わり!」

 

と締めくくった。

 

鈴「“束”って……」

 

シャルロット「ISの開発者にして天才科学者の……」

 

束「ふっふっふ……今日は箒ちゃんの専用機を持ってきたんだ〜!」

 

セシリア「箒さんの……専用機を……」

 

束は得意げに胸を張る。

 

束「そのとぉ〜り!それじゃあ早速………と言いたいんだけど、その前に〜……」

 

束はくるりと振り向き、総輝と大牙の方を向く。

 

束「君たちが《仮面ライダー》……世界を守り抜いた“戦士”を受け継いだ者たち……か」

 

束はじっくりと総輝と大牙を見つめる。

 

束「…ふぅ〜ん。見た感じ、そこまで強そうな感じじゃないね〜。多分束さんやちーちゃんの足元にも及ばないだろうけど。

でも、天才の束さんにも分からないこともあるもんだね〜。こんな凡人が《仮面ライダー》に選ばれるなんて」

 

大牙「何でディスられてんだ俺たち?」

 

急に罵倒されあっけにとられる大牙。

が、総輝は違った。

 

総輝「………あんたは俺をかなり侮っているようだな。確かに、あんたみたいな人からすれば、周りの人間は皆凡人かそれ以下の人間に見えるんだろう。

だが俺は違う。俺が望みさえすれば、あいつはいつでもどこでもやって来る。何故なら……俺は《選ばれし男》だからだ」

 

束の瞳をじっと見据え、きっぱりとそう告げた。

それを聞き束はすうっと目を細め、

 

束「《選ばれし男》、ねぇ……まあ、何でもいいよ。君は正義の味方気取りのつもりだろうけど、束さんの邪魔をするなら…………私は本気でキミを潰すよ?」

 

総輝の元へ歩み寄り、声質は変わらずもどこか威圧感を含めた声でそう言った。

対して総輝も臆することなく束を見つめ、

 

総輝「“正義の味方気取り”か……まだ勘違いしているようだな。

覚えておけ。おじいちゃんが言っていた、《正義とは俺自身》。つまり………俺が正義だ」

 

総輝も負けじと低めの声でそう言った。

束と総輝の間にはピリピリとした緊張感が張り詰め、下手をすればここで闘争しかねない状況だった。

シャルロット達専用機持ちはアタフタとし、ここまで静観していた千冬も流石に見過ごせず苦言を呈そうと口を開く。

 

束「……プッ、あははははははははっ!!!」

 

が、千冬が何かを発する前に、束が高笑いしだした。

 

総輝「……何が可笑しい?」

 

束「あはははっ!いや〜、君は本当に面白い子だなぁ〜って。この束さんに面と向かってそんな事言えるの、世界広しといえどちーちゃんか君くらいだからね!」

 

束はまた飄々とした笑顔に戻りそう告げる。

総輝は未だに束を睨み続けている。

 

束「そんな怖い顔しないでよ傷つくなぁ〜!ちょっと君を試しただけなんだってば。

うんうん。でも私の見立て通り、面白い子だね!流石は《仮面ライダーカブト》。ますます気に入っちゃったよ〜!」

 

そして束は総輝の頭を撫で

 

束「という訳だから、改めてよろしくねそうくん!

あ、《天道 総輝》だから“そうくん”ね!いい?いいよね?いいに決まってるよね!拒否権はない!」

 

総輝「一方的だな。あと頭を撫でるな」

 

総輝はため息をつきながら束の手を払い除ける。

 

束「ふぇ〜ひどいよそうくん!こんな美人な束さんのナデナデを拒否するの〜?!」

 

総輝「要らん」

 

束「ぐっはぁ!!」

 

総輝に一言で両断され、涙目で胸を押さえながらうずくまる束。

が、直ぐに立ち上がり

 

束「まあでもそれがそうくんらしいね!

あ、あと君もよろしくね!《仮面ライダーガタック》のがっくん!」

 

ふと思い出したように大牙の方を向きいつもの笑顔でそう告げる。

大牙はというとあっけにとられ「あ?はあ……」などと言っている。

 

束「さて!それじゃ本題に戻ろうか。

じゃあみんな、空をご覧あれ〜!!」

 

束の言葉に皆が空に視線を移す。

すると上空から銀色の正八面体の物体が落下し、その直後銀色のプレートが解除され中から真紅のISが現れた。

 

束「これぞ、束さんお手製の箒ちゃん専用機。その名も《紅椿》!!全スペックが現行のISを上回る性能を持ってる、第四世代型ISだよ!!」

 

束の《第四世代型》という言葉に皆が目を見開いた。

 

ラウラ「《第四世代》……?」

 

セシリア「各国で、今ようやく第三世代の試験機が出来た段階ですわよ?」

 

簪「なのに、もう……?」

 

専用機持ち達は皆愕然とした表情で呟く。

 

総輝「……まあ、ISの生みの親ならそんな事容易だろう?」

 

束「そうそう!何たって束さんはてぇんさいだから!

さっ、箒ちゃん!今ここでフォーマットとフィッティングを済ませようか!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

無数のコートで繋がれた紅椿に箒が登場し、束がキーボードを目にも止まらぬ速さで打ち込んでいく。

 

束「箒ちゃんのデータはもう紅椿に入れてあるから、後は最新データに更新するだけだね!」

 

そして、数分でフォーマットとフィッティングが完了する。

 

束「設定完了!早いね〜、さっすが私!」

 

自信満々の表情で胸を張る束。

 

束「さあ箒ちゃん!試運転も兼ねて飛んでみてよ!箒ちゃんのイメージ通りに動くはずだよ!!」

 

箒「分かりました。行きます!」

 

そして、箒は勢いよく飛び出した。

 

鈴「は、速い……」

 

シャルロット「これが、第四世代型の加速なの……?」

 

鈴とシャルロットが愕然とした表情で呟く。

 

大牙「そうか?クロックアップよりは遅ぇだろ」

 

一夏「それと比べたらダメだろ!」

 

大牙の呟きに思わず一夏が突っ込んだ。

 

束「ど〜お?思った以上によく動くでしょ?」

 

箒『ええ、まあ……』

 

通信で箒が戸惑いつつ答える。

 

束「それじゃあ刀を出してみて!右のが《雨月(アメツキ)》で左のが《空裂(カラワレ)》ね〜!」

 

言われた通りに、箒は左右の手に刀を展開する。

 

箒「行くぞ……雨月!!」

 

気合を込めて右手の雨月を振るう。

すると、斬撃が赤い光を帯びて飛ぶ斬撃と化し彼方へと飛んで行った。

 

その後も紅椿の様々なテストが行われたが、それらは全て完璧と言っていいほどの成果を上げ、紅椿の持つ高い性能が披露された。

 

束「どう?すごいでしょ?最っ高でしょ!!てぇんさいでしょ?!!」

 

束は紅椿の見せた性能にかなりご満悦らしく、さながら世界を救った天才物理学者と同じような言葉を並べ始めた。

皆が紅椿の性能にあっけにとられていると、真耶が息を切らして走ってきた。

 

真耶「織斑先生、大変ですっ!!」

 

真耶が端末を千冬に渡す。

端末の内容を見た千冬は表情を一層強張らせた。

 

千冬「……テスト稼働は中止だ!!お前達に、やって貰いたいことがある」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

和風のテイストだった旅館の一室は、一変して軍の作戦勝ちのような様相を見せた。周囲には電子モニターやキーボード、更には大型パネルが並べられている。

集められた専用機持ち一同は、一体何が何だかわからず戸惑っている。

そんな彼らに対し、千冬はゆっくりと話し始めた。

 

千冬「……今から約二時間前、強奪されたアメリカとイスラエル共同開発の第三世代型IS、《銀の福音》通称“福音”が暴走状態で発見された。

情報によれば、無人のISという事だ。衛星による追跡の結果、福音はここから二キロ先の海域を通過することがわかった。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することになった」

 

千冬の説明に、皆の顔が緊張で引き締まった。

 

千冬「教員達は学園の訓練機を使用し、海域の監視及び封鎖を行う。

よって本作戦の要は、お前達専用機持ちに担当してもらう」

 

が、千冬の言葉に待ったをかける人物がいた。

 

一夏「ちょっと待ってくれ千冬ね……織斑先生!軍用ISを学園の生徒が対処するのか?!」

 

千冬「……そうだ。確かにお前の言う通り、学園の教員の方が福音を止められる確率も上がるだろう。

だが幾ら戦闘経験の豊富なIS乗りでも、訓練機で軍用ISを止めるのは不可能だ。性能に差がありすぎる」

 

総輝「それならば多少実力が劣っていようと、性能面で対処できる確率の高い専用機達でやろうと……そう言う事ですね?」

 

千冬「その通りだ。無論、君達の命に関わる重大な危険性がある事も重々承知している。もし今、この作戦から降りたいものがいるならば構わない、手を上げてくれ」

 

一瞬の静寂が部屋を包んだが、誰もそこから出るものは居なかった。皆の表情には恐怖心など無く、寧ろ覚悟を決めた表情をしていた。

 

千冬「……では、これより作戦会議を始める。意見のあるものは挙手してくれ」

 

するとセシリアが手を挙げた。

 

セシリア「目標の詳細データの開示を要求します」

 

千冬「いいだろう。だが決して口外するな。情報が漏洩した場合、諸君らには査問委員会による裁判と最低二年の監視が付けられる。天道、加賀美も同様だ」

 

総輝「了解です」

 

そして、画面に福音のデータが開示された。

それを見た皆の表情が一層強張る。

 

大牙「……なんだこの無茶苦茶な機体は?」

 

簪「広域殲滅を目的とした特殊射撃型……」

 

セシリア「私と同じオールレンジ攻撃が可能なようですわね」

 

鈴「それでいて高い高速機動性……厄介だわ」

 

シャルロット「この特殊武装が曲者って感じだね……連続しての防御は難しいと思う」

 

ラウラ「仮に射撃を躱して懐に潜り込めたとしても、格闘性能が未知数だ……偵察は行えないのですか?」

 

ラウラの問いに千冬は首を横に振った。

 

千冬「残念ながら不可能だ。この機体は現在も、超音速飛行を続けている。つまり……」

 

真耶「接触のチャンスは一回きり、と言う事ですね…」

 

箒「つまり、その一回で確実に仕留められる攻撃力を持った機体が、この作戦の鍵となるわけですね……」

 

そこで皆の視線が一夏に集まる。

 

一夏「……なるほど。白式の《零落白夜》か」

 

千冬「そう言う事だ。お前の機体なら、接近さえできれば軍用機であろうと一回で沈黙させられる」

 

一夏はしばし目を閉じ後、ゆっくりと頷き

 

一夏「……分かった。こうなったら、もう腹をくくるしかないよな。必ず成功させるよ」

 

鈴「よし、その意気よ一夏!」

 

鈴が笑顔で一夏の背中をバンと叩く。

 

セシリア「ただ、問題は……」

 

シャルロット「どうやってそこまで一夏を運ぶか、だね……」

 

一夏「そうだな。ただでさえエネルギー効率が悪い白式だ。福音とやる時は、できる限りエネルギーを残しておきたい」

 

簪「移動するだけで無駄なエネルギーを使うのは、ちょっと怖いよね……」

 

すると突如、天井の一角が開けられた。

 

束「ちょぉっと待ったぁ!!」

 

現れたのは《篠ノ之 束》だ。

 

一夏「た、束さん?!」

 

総輝「……また現れたか……」

 

総輝がもううんざりと言わんばかりにため息をつく。

 

束「聞いて聞いて!この作戦にはね、箒ちゃんの紅椿が最適なんだよ〜!!」

 

束の言葉に、皆が目を見開いた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

その後、再び外に集められた一同は、全員ISを纏った状態で待機していた。

そして束の説明曰く、紅椿が第四世代型と言われる所以は《展開装甲》呼ばれる機構を持つことにあり、一夏の白式の専用武装である《雪片弐型》を元に開発されたと言う。

よって、本作戦は一夏・箒メインで進められ、その他の専用機持ちは彼らのサポートという形で作戦内容が決定されて、現在は各員がそれぞれのISの最終チェックを進めている。

 

束「それにしても海で暴走なんて、10年前の《白騎士事件》を思い出すね〜」

 

千冬「……」

 

《白騎士事件》ーー今やその事件を知らない者はいないと断言できるほど、それは歴史の転換点だった。世界にISの有用性が示された日であり、同時に世界のバランスが一変した出来事でもある。

 

束「……でも、今こんな話ししても誰も信じないだろうな〜………あの時、()()()()()()()()()()()()I()S()()()()なんて」

 

一同「なっ……?!!」

 

束の衝撃的な言葉に皆が耳を疑った。

 

一夏「ち、千冬姉……それってどういう……」

 

千冬が口を開こうとしたその時だった。

ドゴオオォォォォン!!!』という轟音が鳴り響いたのだ。

 

千冬「なんだ、何事だ?!!」

 

すると、旅館の方から教員が息を切らして走ってきた。

 

「織斑先生、大変です!旅館が……謎のISに襲撃されています!!!」

 

千冬「何だと?!」

 

千冬は驚愕のあまり目を見開いた。

 

鈴「まさか、福音がもう来たの?!」

 

真耶「いえ、そんなはずはありません!福音は今も海洋を飛んでいる筈です!」

 

シャルロット「それじゃあ一体……?!!」

 

すると、千冬が指示を出した。

 

千冬「作戦は中止だ!!全員旅館の方へ向かうぞ!!」

 

ラウラ「ですが教官!福音は……」

 

千冬「生徒の安全が最優先だ!」

 

すると、総輝と大牙が千冬の元へ歩く。

 

総輝「織斑先生、ここは俺たちに任せてください」

 

千冬「天道、加賀美……?」

 

大牙「一夏達は福音の対処に専念させてください。旅館のISは俺たちで何とかしてみせます!」

 

千冬はしばし思案していたが、

 

千冬「……無理はするなよ?」

 

大牙「はい!!」

 

総輝「了解です」

 

そして、総輝と大牙は旅館の方へ駆け出した。

 

真耶「織斑先生、彼らだけでは……」

 

千冬「落ち着け、真耶。向こうには教員もいるし、いざとなれば私も出る。それに、ここで福音を止めなければいずれここも壊滅的な被害を受ける。今は福音が最優先だ」

 

真耶「でも、生徒達の身に危険が迫っているんですよ?!!」

 

納得できない真耶は叫びながら千冬に詰めよる。

すると、一夏が優しい笑みを浮かべながら

 

一夏「山田先生、大丈夫ですよ」

 

真耶「織斑君……?」

 

一夏「忘れましたか?あいつらは、人々を守るヒーロー、《仮面ライダー》何ですよ。あいつらなきっとみんなを守ってくれる。でも福音を止めなきゃここもやられるんです。だから俺たちも、福音を止めてみんなを守るんです」

 

凛とした表情でそう告げた。

そして、一夏は皆の方を振り返り、

 

一夏「みんな、準備は出来たか(Are you ready?)?」

 

鈴「いつでも行けるわ!」

 

セシリア「私もですわ」

 

シャルロット「僕も行けるよ!!」

 

簪「わ、私も……!」

 

ラウラ「無論、私も行けるぞ」

 

皆が威勢良く返す。

すると箒が不敵な笑みを浮かべながら一夏に歩み寄り、

 

箒「…お前はどうだ?一夏」

 

それに対して一夏も不敵な笑みで返す。

 

一夏「……出来てるよ」

 

そして一夏は千冬の方を向き

 

一夏「織斑先生、出撃許可を」

 

千冬はふっ、と軽く笑うと、

 

千冬「……よし、では作戦開始!!!」

 

一同「了解!!!」

 

そして、一夏達は大空へと飛んで行った。

そんな彼らを見送った後、束は千冬の元へ近づき、ポツリと呟く。

 

束「……ちーちゃん。いっくん、変わったね。何だか……凄くカッコよくなった……別人みたい」

 

彼女の呟きに対し千冬も若干寂しさの混じった笑顔で

 

千冬「ああ、そうだな……昔は私があいつを守らなければならないという使命感を持っていたが、それが逆転する日も、案外近いかもしれん。もしかしたら、あいつらに出会ったからなのかもな……」

 

そして千冬は再び表情を戻し

 

千冬「さて、我々も旅館の方へ急ごうか。被害状況を確認し、生徒の安全を確保しなければ」

 

真耶「はい!行きましょう!!」

 

束「束さんも手伝うよ〜!!」

 

そして3人は、駆け足で旅館の方へ向かった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

一足先に旅館へと戻った総輝と大牙。

だが彼らが先程まで過ごしていた立派な旅館は既に半壊状態となっており、2人は絶句してしまった。

 

大牙「ひでぇ……誰がこんな真似を!!」

 

総輝「例のISというのは何処だ……」

 

するとその直後、彼らの後ろに何かが着陸する。

 

オータム「よぉ、遅かったなぁ〜…《仮面ライダー》」

 

男勝りな女性の声が響き、後ろを振り返るとそこには蜘蛛型のISと紫の蝶型のISがあった。

 

大牙「テメェらか!!旅館をこんなめちゃくちゃにしたのは!!」

 

総輝「……一体何が目的だ?」

 

総輝の問いに蝶型のIS……《サイレント・ゼフィルス》のパイロットであるマドカが答えた。

 

マドカ「目的はただ一つ……貴様らだ。《天道 総輝》、《加賀美 大牙》」

 

大牙「俺たちだと?」

 

オータム「テメェら《仮面ライダー》は、オレ達《亡国企業》にとってすげぇジャマなんだよ……恨みはないが、ここで死ね」

 

総輝「俺たちを誘き寄せるためだけに、こんなふざけた真似を……」

 

総輝が怒気を含んだ声で言った。

 

マドカ「安心しろ、死者は出していない。まあ、多少の怪我人はいるだろうがな」

 

大牙「ざっけんな!!テメェらのせいで、どんだけの生徒が怖い思いしたと思ったんだ!!貴様らだけは絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛っ゛!!!」

 

オータム「……来いよ餓鬼ども。返り討ちにしてやるよ」

 

総輝「その言葉、そっくりお前達に返してやる」

 

総輝と大牙は右手を高く掲げる。

すると上空からカブトゼクターとガタックゼクターが飛来し、その手に収まった。

するとその直後、マドカがISを解除し生身の状態になる。

大牙は彼女の顔を見て驚愕した。

 

大牙「おまっ……その顔………織斑……先生だと?!!」

 

マドカは不気味な笑みを浮かべ

 

マドカ「私の名は、《織斑 マドカ》だ。いずれ《織斑 一夏》も、《織斑 千冬》も殺し、私が本物だという事を証明してやる」

 

すると総輝は頷きながら

 

総輝「ほう……だいたいわかった」

 

と呟く。

 

大牙「え?何だよ、何が分かったんだよ?!」

 

するとマドカは総輝の方を向き

 

マドカ「そして天道 総輝。貴様も、この場で私が消す。お前と同じ、“黒き太陽”の力でな……」

 

すると上空から黒いカブトゼクターが飛来し、彼女の右手に収まる。

 

大牙「なっ、ゼクターだと?!お前それをどこで……?!!」

 

マドカ「知る必要は無い。お前達はここで死ぬんだからな……」

 

そして、ダークカブトゼクターを腰のベルトへセットする。

 

マドカ「変身……」

 

《HENSHIN》

 

低い音声が鳴り、黒い六角形のパネルがマドカを覆っていく。そして、銀の走行に不気味に輝く黄色い複眼を持った《ダークカブト》に変身した。

 

更にマドカは、ゼクターの角を少し起き上がらせ、

 

マドカ「《キャストオフ》」

 

《CASTーOFF》

 

銀のアーマーを周囲に吹き飛ばし、黒いスマートな身体を露わにする。

胸部装甲には赤い機械的なラインが走り、そして頭のカブトホーンが上に上がる。

 

《Change Beetle》

 

総輝「…俺と同じだと……?くだらん。

おじいちゃんが言っていた……《この世で太陽は一つだけだ》。つまり……“太陽(カブト)”は俺一人だ」

 

 

そして、総輝はカブトゼクターを左肩の前に、大牙はガタックゼクターを右肩の横に持って行き、

 

「「変身!」」

 

《HENSHIN》

 

低い音声とエコーのかかった高い音声が同時に鳴り、二人の体をパネルが覆っていく。

マスクドフォームに変身した後、二人はすかさずゼクターの角を展開。

 

「「キャストオフ!」」

 

《CASTーOFF》

 

銀と青の走行が吹き飛び、赤と青のスマートな身体が現れる。

カブトの赤い角が上に展開し、その青い複眼に光が灯る。

 

《Change Beetle》

 

ガタックの青い角が左右から上がり、その赤い複眼が輝く。

 

《Change Stag Beetle》

 

カブト・ガタックそしてダークカブト・アラクネの二組はしばしにらみ合っていたが、やがて同時に飛び出し戦闘の火蓋が切って落とされた。

 




お読みいただきありがとうございます!
今回、久々に総輝が変身しました!いやぁ〜、それにしてもカブトとガタックの同時変身は良いですね!しかもギミックが似てるから余計にカッコ見える……!!

さて、次回は福音そしてダークカブトとアラクネとの戦闘回です。精一杯書かせていただきますので、どうぞお楽しみに!!!


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