転生者vsSCP (TSOK)
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±0

結局、こうなるのか。

 

 

 

 彼は今、道路の真ん中で迫りくる車に轢かれようとしている。

 近年流行っている低燃費を謳う軽自動車であったのなら致命傷を免れる可能性はあったかもしれない、しかし見えているのはスピードのついた巨大なトラックだった。

 彼は車との衝突までの与えられた僅かな猶予の中、倒れる形となっているのでその場から動くに動けず、出来ることと言えば目を見開いてその時が来るのを必死に覚悟するぐらいだ。

今の所、彼がこの人生で最後に見た風景はトラックのナンバープレートになりそうである。

とても不幸なことに、それは彼が今のところ一番避けたい死の風景とソックリだった。

 

 これは自殺ではない。

 車道にいた子供を、明らかに信号を無視して突っ込んでくるトラックから庇ってしまったからだった。

 いささか安全意識の欠ける坊やの方は歩道側で何が起きたかも分からず転げて、怪我と言えば突き飛ばされた際にできた膝の擦り傷ぐらいだったので、その点については不幸中の幸いだったかもしれない。

 それを喜ぶ時間は彼には与えられていなかったけれども、ともかく彼の目論見は成功を収めていた。

 自身の安全を除いてだったが。

 

 しかし、だからといってこの状況が崇高なる自己犠牲精神の究極の形による発露によって引き起こされたものでもない。

 彼は殆ど咄嗟の判断でそうしただけであって、己が死んでもいいなどとは微塵も、一欠片も思っていない。

 むしろその逆だ、酷く死ぬことを恐れていた、生き汚いとか自分に甘いとか言われる、そういうタイプの人間として生きていた。

 横断歩道を渡る時はいつも左右を確認し、動く車がないかしっかりと見据えて、早足で白線を渡りきって、もし突っ込んでくる車があったのならこうやって逃げると脳内で想像するぐらいの徹底ぶりだった。

 だからこそだ、その癖によってこのままでは子供が車に轢かれると気づいてしまったのだから、死にたくないのに死地に自ら飛び込んでしまうなんて皮肉的な状況に陥ってしまった。

 なぜそこまでやるかは死の恐ろしさを知っていたからだった。決して慣れることのない苦痛と恐怖の果に自らの人生が全てなくなってしまうことの恐ろしさを知っていた。

 積み上げてきた何もかもが影も形もなくただ記憶の中だけにしか存在しなくなってしまう虚しさを実感していた。

 老後すら見越して必死に貯めていた貯金が下ろせなくなった事は彼の心に多大な徒労感を覚えさせていた。

 受験に勝ち抜いて志望校に合格した努力ですらなかったことになった。

 輝かしい未来も、味わうべき苦渋も、その全てを奪い去られて、彼はまた一から始めていた、その途中の出来事が車に轢かれようとする今である。

 つまるところ彼は以前に一度死んでいる。広義で言うところの転生者である。チベットの偉い坊さんではないがなぜだかそうなってしまっていた、ただの人だった

 特に何の神様を信仰しているわけでもないし、彼の信仰心が発生する場所といえば腹痛の際にこもる便所ぐらいで。

 ともかく二度目の死を目前として彼が思うことは早く終わってくれという懇願である。

 1度目はそれはもう酷かった、自らの腹の中身がぶちまけられ垂れ下がった腸の塊を浴びながら、中途半端に残った意識のまま最期の時を過ごしたのだ。

 筆舌に尽くしがたい激痛と悪臭に後悔、人生の終わりを路上で迎えるなど想像だにしない未成年には衝撃的すぎる出来事だった

 目の前に迫る質量は前回の比ではない、今回は一撃で楽になれるだろうから救いかもしれない。

 

 激突の間際、彼はやはり死にたくないと強く、強く願った。

 しかし彼を襲った力は、その願いを容易く刈り取り。

 

 そして。

 

 極一部の者にとって非常に残念なことであるが、この国の警察組織の初動能力は優秀だ。

 通報を受けてまず近場の交番から警官が現場に駆けつけ、警察署からの応援が数分もしないうちに続々と駆けつけてきた。

 必要最低限の時間で準備を整えた彼らは当初、これを単純だが痛ましい事件だと思っていた。

 一方、凄まじい衝撃音を聞きつけて近隣の住居から出てきた住人たちは事故現場を取り囲んでスマートフォンをカシャカシャと鳴らしていた。

 凄惨すぎる事故現場の情景を、現代の残酷さとも評される無関心さが包んでいたが、そんな人々を警官たちは手際よくさばき本業を為そうとした。

 だが次第に、事故現場の状況が彼らを混乱させていく事になる。

 事故を起こした食肉加工会社のロゴが入ったトラックは停車して、運転手はすでに死亡していた事がわかっていた。

 死因はまだ特定されてないが、衝突の際に生じたであろう外傷を除けば、何らかの発作による意識不明からの暴走だったことが伺えた。

 元は白かったはずのトラックの前面は不格好に歪み、血液によって斑で塗られており、何が起こってしまったかを明瞭に語っている。

 そして目撃者の証言で、事故はこうであったらしい事を彼らは突き止めた。

 車道にいた子供を、近くを歩いていた男子学生が暴走したトラックから庇い、倒れ、そのまま轢かれてしまった、と。

 ここまでなら痛ましいだけの事故であって、翌日には近くの電柱に供え物の缶ジュースや花束などが湧いてくるだけで済んでいただろう。

 逮捕すべき相手はすでに死亡したために現場での仕事は殆どなくなっていたはずだった。

 後は被害者遺族が、このトラックを管理していた会社を相手に訴訟でもすれば警察の手を離れる様なそんな、有り触れた悲劇のはずだった。

 だが目撃者たちは口をそろえてこう言ったのだ。

 轢かれた少年は何事もなかったように現場から走り去ったという。

 現場にひと目で致死量と思われる血液を残して。

 

 集団パニックによる幻覚とでも結論づけようとした警官たちは状況を見聞してから、すぐにその考えを改め、そして頻りに首をひねった。

 轢かれたならば残るであろう死体がないのである、どこにも。一切。

 少なくともぶつかったと思われるトラックの前面に肉片がこびり着いても良かったが後から到着した鑑識が調べた所で何も出ない。

 トラックの下部に巻き込まれているのかもしれないと調べたがソコからも何も見つからずに調査は終わった。

 例えば電車における人身事故の場合、死体はぶつかった時の衝撃からまるで爆発したかのように四散してしまうことがある。

 実際そういった人身事故によって粉々になった被害者の死体が駅のホームにいた他の乗客に高速でぶつけられた結果、二重三重の被害を齎す事があった。

 もしかしたら被害者の死体はその様に破裂してという考えもないものではなかったが、それを見越しての捜索は結局無駄に終わった。

 回収されたのは現場付近の家まで飛び散った血痕が精々で、肉片や衣服の一部はついぞ見つからなかった。

 では何らかの奇跡が起こって被害者が生存して現場から立ち去ったとしても、無事ではすまないだろうから近隣の病院を調べたが、これも空振りになった。

 そういった患者が搬送された記録は一切なく、その後も近隣で死体が発見されたという報告はなかった。

 ましてや町中を血だらけの学生が歩いているなどという通報も。

 その少年が立ち去った方向は住宅街方面であったが、経路上に監視カメラは少なく、聞き込みからも有力な情報を得られずに終わった。

 残されたのは大量の血液だけで被害者は不明なまま、一旦この事故は記録され、後に公的には存在しなくなった。

 直接の関係者たちはそんな事があったかすらも覚えていないと、首を振るだろう。

 

 何故なら駆けつけた警官たちの中に、この奇妙すぎる状況に心覚えがある者がいたからだ。

 彼はある組織の末端に属する感覚器官のようなもので、普段はあらゆる場に潜んで、異常なことがあれば直ちにある場所へ報告を行う、忠実で優秀な構成員の一人だった。

 そして彼の報告は直ちに伝播し、この事故が異常であると然るべき部署で認められ、仄暗い場所で動き始める者たちがいた。

 静かに、姿を見せず、ただ人類と世界に対して貢献を捧げるためだけに。

 




出典元
SCP財団日本支部
http://ja.scp-wiki.net/


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+3  記録 会議 新聞

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対象: ███

インタビュアー: █博士

付記:███は████と親しかったとされる学生です。

 

<録音開始>

 

█博士:では今から録音を開始します、自己紹介をおねがいします。

 

███:はい、俺の名前は███、████高校の1年生です。

 

█博士:彼、████とはどんな関係でしたか?

 

███:同級生で、アイツとは友達だったと思います、俺はそう思ってました、よく遊びましたし。

 

█博士:彼に普段から何かおかしな所はありましたか?

 

███:おかしな所ってほどじゃないけれど、少し個性的だったとは思います。

 

█博士:個性的というのは?

 

███:色々なことに詳しかったりだとか、あと下校中は異常なくらい車に気をつけてました、前にビビりすぎだろって聞いたら子供の頃、車に轢かれて酷い怪我をした事があってそれ以来って答えてました、多分マジでトラウマだったんじゃないかなぁ、よっぽどですよ、だからああいう生き方してたんですかね。

(事件記録193267-1発生以前の████に事故記録及び傷害による通院記録などは存在しない)

 

█博士:生き方とは?

 

███:金遣いが荒い?っていうか気前が良かったかな、小遣いもらったからってマック奢ってもらったりとか、欲しいものはすぐ手に入れてるみたいでした、人間いつ死ぬかわからないから今を全力で楽しむべきだってよく言ってましたよ、ある日突然自転車で海まで行こうとかいい出したりとか、ふらっと入った店で大食いチャレンジに挑戦したりとか、思いつきを実行に移す速度がとても速かったです。

 

█博士:なるほど、学校ではどうでしたか?

 

███:学校生活では優秀だったと思います、教育委員会のヒトならアイツの成績ぐらい簡単に見れるんでしょう? みんな中学から慣れない高校で何かしら苦労してたんですけど、アイツだけ涼しい顔して熟してました、全部予習済みって感じで、本人に言ったら鋭いなって笑われましたよ、まぁ家で全部勉強してきてるだけだって答えてましたけど。

先生たちへの受けも良かったと思います、授業とかではおとなしい優等生やってましたし。

 

█博士:他になにか、彼について印象的な事はありますか?

 

███:あー、怖い話とかホラーとか好きだったみたいです、怖い話とか詳しかったみたいで、俺はわかりませんけれども、ずっと見てないと首の骨を折ってくるえすしーぴーなんちゃらっ。

 

█博士:その怖い話について、他に何か、詳しく聞いたことはありますか?

 

███:ど、どうしたんですか、ええと、そういった話は何回か聞きましたけど……興味なかったんで、作り話でしょって言ったら、その後は話題に出さなくなったし……たまたま怖い話の話題になったから出ただけで。

 

█博士:わかりました。

 

███:それで思い出したんですけど図工……美術の時間とかアイツ変わったのをたくさん作ってました、まぁ俺から見ても不気味っていうか、よくわからないやつ?をいっぱい、何だこれって聞いたらそれも怖い話が元だって言ってましたね、だから俺のオリジナルじゃないって、アイツ本当ホラー好きだったんだな。

 

█博士:なるほど。

 

[███は頭を抱える]

 

███:……ああ、でもそういうホラーとかが好きだからってアイツが犯人だとか言うつもりはありません、警察の人にも何度も言ったけれど……家にも行ったことがありますが、端から見ても家族との仲は良かったと思います、そういうのはなかった、と思います、だから俺信じられないんです、未だに。

 

<録音終了>

 

数度のインタビューの後、████の学校関係者全員に記憶処置が行われました。

現在財団の収容下にあるSCP-███、SCP-███、SCP-███、SCP-████の情報を████が正確に把握していたかについては調査中です。

████の制作した物品からは異常性は確認されず、この事と事件記録193267-1との関連性は未だ不明です。

 

 

 

写真の中には幾つかの絵、粘土細工が収められている。

目だけがよく彫り込まれた猫のようなもの、顔を隠している怪物、電球を踏み壊すハイヒール、テディベア、エトセトラ。

それらは彼の担任教師が偶然撮影し、保管していたものだった。

正直それ自体の出来は拙いとは言えるし、これらの絵や粘土細工に異常性は確認されなかったが、どこか鬼気迫るものを感じてしまうのは気の所為ではあるまい。

何故なら、我々はそれに既知感を覚える様に教育されているからだ。

口々に漏れた呻き声が会議室を揺する、対応する班が拡大されこの事案に対して初めて触れる職員がいたからだろうか。

しかしこんなものは序の口に過ぎないだろうという諦観が存在した。

 

「これを例の人物が?」

 

あるエージェントが眉を顰めてそう言った、その一般人とは何らかの不死性を発揮し、姿を晦ましているからだった。

視線を戻せば、それらの絵や粘土細工には我々の、財団のシンボルが刻まれていることに目眩がする気持ちだった。

見間違いようがない、████は知っている可能性が非常に高い、これらが一体どんな存在で、どこにいるのかを。

何もかもが暗闇の中にあるように気持ちが悪かった、████は何故それらを知っているのか。

 

「どういった経路で……」

「これを見ろ、我々のセキュリティは意味をなさない」

「ミーム汚染に抵抗がある可能性もある」

「生類創研との関係まで疑わなければならんぞ」

 

その線は潰されたと見ていい、要注意団体及び要注意人物との関係性を浮かび上がらせるために惜しみない調査が行われたものの何もかもが空振りに終わっていた。

逆に████がどこにでもいるような学生であるという事を証明してしまっただけで、その異常性がより強烈に映るだけだった。

財団の機密を幾つも知り、不死性を発揮する存在が野放しでいいわけがない。

全くの白紙から浮かび上がってきたこの異常な人物の身柄が、財団と敵対的要注意団体

に渡った場合は簡単に想像できる。

利用されてしまえばそれは財団に対する致命的な攻撃にもなりうる、一度収容違反が発生し、財団という檻が壊されれば流出する異常存在によって我々の知覚できる世界は何百回でも滅び去るだろう。

恐らく████はこれ以外にも財団に収容されている異常存在の姿、特性を熟知している。

いや、現在財団に収容されていない異常存在の情報すら、把握しているかもしれない。

これらの写真の中には我々の知らない幾つかの存在と物品が財団のマークが刻まれた上で

絵や粘土細工として残っている。脅威でしかなかった。

核弾頭を厳重に収容できればsafeだが、その使い方を知っている人間がソレを手に入れてしまえば、簡単に破滅の道へと変貌させてしまう。

我々が扱っているのはそのようなものばかりだ。世界は常に薄氷の上に存在している脆いものなのだ。

この様な異常存在が今まで素知らぬ顔をして生活をしていたのだと思うと、私は自らの身体を苛む寒気を払うことが出来なかった。

今回の個人の特定によって行われた幾つかの調査によって████の潜在的危険性は跳ね上がったと見ていい。

上層部へ報告しなければならない。絶対に████は収容しなければならないと訴えるために。

 

 

 

 

20██年██月██日更新

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██新聞██号

██月██日、██県███町の民家の焼け跡から、この家に住む████さんとその妻である██さんの遺体が見つかった。またこの家の長男である██さんの行方が分からなくなり、警察は事件に関係があると見て現在捜索中である。 




なるべく模倣したのですが、それっぽくないところがあったら指摘していただけると幸いです

出典元
SCP財団日本支部 http://ja.scp-wiki.net/
SCP-1048 作者Researcher Dios様 http://ja.scp-wiki.net/scp-1048
SCP-096 作者Dr Dan様 http://ja.scp-wiki.net/scp-096
SCP-1836-JP 作者HURUMOTO65様 http://ja.scp-wiki.net/scp-1836-jp
SCP-040-JP 作者Ikr_4185様 http://ja.scp-wiki.net/scp-040-jp
SCP-173 作者Moto42様 http://ja.scp-wiki.net/scp-173


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+0.5 生誕

 どこか遠くで、サイレンの音が聞こえたような気がした。

 そのせいで目覚めたのかも知れない、恐る恐る瞼を開いた。

 沈みかけた陽が仄かに差し込み、辺りを浮かび上がらせている。

 床にはマットレス、壁にはクリーム色の靴べらがフックに掛けられている。

 靴入れの中には、ハイヒール、革靴、草臥れたスニーカーが並んでいた。

 息を吸うとミントの芳香剤、続いて合皮の複雑な匂いが鼻をつく。

 靴の匂いだ。見渡すまでもなく此処が自宅の玄関だと知覚した。

 そして、そのまま一人で呆然とうずくまるしかなかった。

 迎えてくれる家族はいなかった、今日は一人の予定だった。

 サイレンが聞こえなくなるまでじっとしていると、聞こえてきたのは自分の心臓が鼓動する音だった。

 自分が本当は死んでいて、意識だけ家に辿り着いたのではないかと息を潜めていたから少しだけ安堵する。

 それでも倦怠感は消えなかった。気絶していたのか寝ていたせいなのかわからないが、全身が鉛で出来たように重い。

 いくら記憶を掘り出そうとしても、どうやって自分がここに辿り着いたのかすら覚えていなかったのが余計に体を重くする。

 制服や靴すら脱いでいなかった、履いたまま土間に足を放り投げていたから。

 家の扉を開けてすぐに倒れ込んでしまったのだろうか、もう想像するしかない。

 特に頭が重かった。重力に身を任せ、横になっているとそれが和らいでいる気がした。

 滑りやすくてあまり好きじゃなかった柔らかな玄関マットが、今はありがたい。

 だがうかうかと眠っていることも出来ずにいた、妙に胸騒ぎがする。

 衝突した際の世界がバラバラになってしまうような衝撃の、その余韻がまだ心を揺らしている。ブラックアウトの後、自分に何が起こったのだろうか。

 気分だけは不思議と落ち着いている、諦めているのかもしれない、自分の人生以上にわけがわからないことがついに起きてしまった。

 この二度目の人生は優しくマトモな両親、特に不自由のない生活、健康な体を与えられ、恵まれているぐらいだった。

 授業は退屈だが学校生活も二度目なため、要領よく学業を成立させることが出来て、今じゃ模範的な優等生にだってなれている。

 特別なことと言えばこの記憶ぐらいで。最近は本当に以前の自分は生きていたのだろうかと疑問に感じることもあるくらいに平凡だったけれども。

 平行世界に生まれたとも今でも思っている。

 突拍子もない考えだが、平行世界であるという根拠は例えば前世で好きだった怪談創作サイトが丸々存在しないことなどが挙げられた。

 ネット環境を与えられ、真っ先に調べてみたら一切痕跡がなかった時は驚いたが、今ではそういうものだと受け入れていた。

 関連する単語で軽く調べてみても出てくるのはどこかの企業の頭文字だけだった。

 年代的にはとっくに存在していてもおかしくないはずだったが、こういった差異が以前の世界との違いとなって俺から見える範囲に露見しているのだろう。

 きっと調べれば歴史上の出来事もどこかしら相違があるに違いない、調査の試みは俺の歴史知識のあやふやさ故に失敗しているが。

 今まではとりあえずそういった認識で生きてきた。

 転生、二度目の人生、死んだはずなのに与えられた全く新しい人生を。

 俺がこの体に宿るはずだった人格を生まれる前から消してしまったかも知れないが。

 そして与えられていながら、二度目の死を迎えてしまうはずだった。

 

……なぜ死んでいないのだろう。

 その疑問が心のなかで無視できないほどに大きくなっている。

 今更ながら俺はあのとき飛び出してしまったのかと肝が冷えた。

 本当に咄嗟の出来事だった、あの子供は無事だっただろうか、それすらわからないままだ。

 それにしたってあんな質量に高速で追突されたら生きていたとしても、瀕死の重傷を負って然るべきなのは誰にだってわかる。

 トラックもただでは済まなかったと思うが、俺は無傷だった。

 それどころか傷一つない、どこからか出血してるわけでもない。

 関節がギクシャクとして痛かったが、それは硬い玄関の床の上で眠りについた故のモノだということは理解していた。

 そして痛みがあるということは生きていることにほかならない。心臓は鼓動をやめてはいない。

 だが、これはきっと正しくない、不自然だと感じた。

 死ぬということは何も感じなくなってしまうことだったと覚えている。

 まるで電源をオフにしたみたいに落ちる瞬間すらわからなかった。

 だからこそ、ただただ気持ちが悪くなってしまった。

 死んでいなければおかしいと自分でも思ってしまうほどに。

 あるべきことが正しく履行されていない気まずさか、この体調のせいか、わからないが。

 突然、胃の奥を引っ張られるような吐き気がこみ上げてきた。

 それなのに腹が減って、どうしても我慢ができなくなり痛む節々を無視して立ち上がった。

 ふらつく足取りで裸足のまま、リビングを抜け、台所へとたどり着いた。

 開けっ放しになっていた冷蔵庫を覗く、冷気が目覚めたばかりの過敏な肌に痛い。

 とりあえず何でも良かった、手当たりしだいに食そうと思った。食欲がソレを許していた。

 近くにあったジャムの瓶を開けて指で掬って舐め取った、魚肉ソーセージを牛乳で流し込んでチーズに辛子明太子を塗って飲み込む。

 冷蔵庫の奥の方にあったせいか冷えてしまって粘土みたいになったマックのハンバーガーに齧り付きながら、バニラシェイクを啜った。

 味はどうでもいい、舌が飢えで痺れているみたいで、胃袋をいいだけ満たしたあと、散らばったパッケージや空になった瓶を見て唖然とした。

 明らかに自分がおかしくなっていることがわかった。

 ストレスによる過食だろうかと、頭のどこかの未だ冷静な部分が呟く。

 なくなってしまったものはしょうがないにしろ、このままではマズイと思った時、脳が激しく痛みはじめた。

 じっと耐えた後、瞼を開くと散乱していたはずのゴミはもうどこにもなかった。

 探すようにあたりを見回すと、ダストボックスには先程のゴミが突っ込まれている。

 間髪入れず頭痛がしてくる。脳の内側から外側へ向かって針が刺されているような今まで経験したことのない痛みだった。

 呻く。壁に頭を持たれかけてしまう、若干収まったところでまた歩き出す。

 駄目だ、もうずっと気味が悪い、きっと部屋に戻って一眠りすれば、狂ってしまった調子も、この気持ち悪いなにかもリセットできる気がした。

 そう思っていると、いつの間にか階段を登り終えていたのか自室の前にいた。

 何もかもがコマ送りにされているような錯覚に陥る。

 首を振って馬鹿な考えを追い出そうとしたが、余計気持ち悪くなるだけだった。

 飢えからくる吐き気は収まったが、今度は風邪のときに感じる悪寒が脳と背筋に襲ってきていた。

 開いたままの扉をくぐると部屋は変わらず俺を迎えてくれていた。

 ちょうど入ったところにある棚に飾られた、井戸の底の虎型認識災害が相変わらず強い視線で俺を見つめていることに少しだけ勇気づけられた。

 纏っていた寝間着でそのままベッドに倒れ込み布団に包まって、また考え始めてしまう、思考はくるぐると渦巻いていた。

 背骨と脳幹を震わすような寒さが思考を冷やしていく、やはり俺はもう死んでいて、幽霊なのではないかと。

 そして自己反論する、アレだけの食欲を示しておいて今更死んでいるなんてことはない、きっと自分は何かの間違いで生きている、大丈夫だ。

 何もかも変わらずに明日も普通に学校に行けるだろうと、せめて楽観的に考えることにしたとき、思い出した。

 今日の朝、登校する前になにか食べようと思ったら冷蔵庫に目ぼしいものが入ってなかったこと。

 昨日の晩、両親は今日仕事で家を空けているからと、ご飯は自分で何とかしなければいけないよって言われお金を渡されていたことも。

 だから、今日は学校から帰ったらスーパーに寄ろうとして、あの道を通ったんだ。

 




出典元
SCP-040-JP 作者Ikr_4185様 http://ja.scp-wiki.net/scp-040-jp


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+1 薄緑

事件記録193267-1

 

SCP-████ » 事件記録193267-1

 

日付: 20██年██月██日██時

 

場所: 日本国██県███町██-██████

 

概要:「子供がトラックに轢かれた」という複数の通報によって現地警察が到着した事故現場には、損傷した中型トラック1台と大量の血痕が残されていました。

 

事情聴取と目撃者の証言から轢かれたのは男子学生(以下SCP-████)であることが判明しましたが、SCP-████は事件後に現場から無傷で立ち去ったという証言も含まれており、その場における警察の調査では血痕以外の遺体と思われるものを発見することが出来ませんでした。

 

また周辺地域において該当する人物の発見及び医療機関への接触が見られず、SCP-████が失踪するという事態に陥りました。

 

この異常性から現地警察に潜入していたエージェントにより、財団に報告が為されました。

 

███分後、日本国内一般緊急出動プロトコル、カバーストーリー『警察による現場検証』の適用による現場封鎖の後、協定によって警視庁公安部特事課、及び、財団調査チームが派遣され、更に詳細な検証が行われました。

 

トラックの損傷の度合いは明らかに高速で人間にぶつかったことを示唆しており、これは通常の人間が確実に絶命するだけの衝撃力を与えたことが判明しました。

残された血痕の量は成人男性の致死量の約二倍であり、SCP-████は調査初期の段階においては不死性、もしくは何らかの人型実体であることが考慮されていました。

付随して血液検査が行われましたが、異常性のない血液であったためにサンプルが回収されるだけに留まりました。

(血液成分の詳細は事件記録193267添付資料ろ-4を参考してください)

 

ハーパー霊素監視装置による調査結果はネガティヴであり、死亡者はトラックの運転手のみが確認されました。検屍の結果、運転手は自然的理由によって事件発生以前に死亡していた事が証明されています。

 

 

すでに現地警察によって周辺の捜索は終了していた。

結果は空振りだった、遺体と思わしきものはついぞ回収されずじまいだった。

死体が消失したという考え方もできるが、目撃者たちの記憶検査の結果は1つの答えを導き出している。

轢かれたとされる男子学生は、中型トラックの直撃を受け、致死量の血液を残しながらも現場から逃走を図り、その目論見は達成されてしまったことを。

ならば市内全域へと捜索を拡大しなければならない事は明白であった。

彼らの出番だった。失せ物探しは職業上避けられない行為となりつつある。

そしてその失せ物は大抵の場合において、通常の警察の手に余るものばかりだった。

 

「人の皮を被った化け物が、野放しにされたと考えろ」

 

捜索を任されたエージェントリーダーは、直属の部下に重々しく言い放った。

その様な存在が、人間に擬態し社会に何食わぬ顔で混ざり込んでいる可能性が提示された事に対する恐怖がそこに込められていた。

最悪の想定の一つだった。

財団が最も恐れる事態を引き起こす要因になりかねなかったからだ。

恐らくあの事件は対象にとってもアクシデントだったのだろう、だからこそ今回露見した事は突破口になり得るかも知れないとも彼は思った。

他にも手がかりは幾つも残されている、それらを頼りに辿っていくしかない。

また、こうも考えられた。

対象がこの事件によって自らの異常性に初めて気づいてしまったかもしれないと。

自分が周囲から隔絶した存在であると知った時の人間の反応は様々だ。彼は知っている。

ただの一般人がもしそうなった場合、自暴自棄になったら、ということも考えなければならない。

現場からの逃走ということは、自宅へと帰ったという見方が妥当なように彼には思えた。

学生というからには学生服を着込んだ若い見た目をしていたのだろう。

本当に対象が若かった場合、自分に訪れた好ましからぬ変化をどう思うだろうか。

拒絶か、驚愕か、寛容か、あるいはその全てか。

人間というものが、自らの常識の尺度を超える現実に遭遇してしまった場合、精神そのものが常識へと戻ろうとしてしまう事がある。

これが、そうなのかもしれない。

今頃、家に帰り、自室のベッドで世界を拒絶するように布団に包まり、対象は自らに起こった変化に戸惑い、怯えているのかもしれない。

だが、もう、何もかも遅い。……確保、収容、保護だ。

自らの遠い過去を脳のどこかで思い出しながら、エージェントは指示を出し、チームを動かしていく。

 

「4tトラックの直撃にも無傷で耐えられる人型実体だ、機動部隊ですら手こずる可能性があるが身柄を押さえなければいけない」

 

「まず監視カメラを虱潰しにしろ、必ず映っている、野次馬共の携帯を回収しろ、幸いなことに我々に知覚できないということはないらしい」

 

「特事課との連携を密にしろ、連絡要員を張り付けておけ、彼らは慣れている」

 

「近隣の中学校、高校の記録を参照しろ、制服から学校だけでも特定する」

 

捜索が、彼らの戦いが始まった。

それがすぐに終息に向かうことを誰もが願っていた。

 

 

事件記録193267-1 映像資料い-2

 

付記:事件193267-1発生直後、携帯端末によって撮影された映像である。

 

[再生開始]

 

[雑音、現場周辺のアスファルトを映している]

 

撮影者:誰か轢かれたのか?人が轢かれたぞ!

 

[カメラが向け直され、大量の血液が飛散している事故現場及びトラックが映る]

[女性の悲鳴、数秒間の子供の笑い声]

 

撮影者:誰か救急車を!

 

[トラック周辺に靄が発生し、映像の解像度が極度の低下を示す]

[数秒間の子供の笑い声]

 

撮影者:大丈夫か君!?

 

[撮影者の声に反応する素振りを見せないまま、損傷が見られないSCP-████が立ち上がる]

[数秒間の子供の笑い声]

 

撮影者:火だ!燃えてるぞ!

 

[靄をトラックの出火と誤認した撮影者が遠のき、SCP-████が画面外へと消える]

[複数人の悲鳴、十数秒間の子供の笑い声]

 

[再生終了]

 

 

当初からSCP-████の異常性の分類について議論が交わされましたが、██博士の提言により、事故現場においてカント計測器が用いられました。

その結果、現場におけるヒューム値は事件後█時間が経過したにもかかわらず███Hmという値が計測され、これによりSCP-████が現実改変者である可能性が考慮されました。




出典元
SCP財団日本支部
http://ja.scp-wiki.net/

誤字報告感謝



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+1.5 望むべきではなかった

「せんせぇさぁ、今日は遅れるんだってー」

「えーせんせーが遅刻すんのー?」

「違うって昨日の事故で職員室ゴタゴタしてんの、集会あるかもって!」

 

そんなお喋りを廊下でしていた女子たちが、互いにめんどくさーと笑い合うのが聞こえる。

どことなくみんながソワソワしている感じがした。外敵の侵入で騒がしい蜂の巣みたいに。

何時もはそういったざわめきを姦しく思っていたけれども、自分の日常の一端が戻ってきたように思えて密かに、僅かに俺は安堵していた。

どうやらここも変わってないようだ、という安心感があった。

その気持をおくびにも出さないようにしながら、教室に入り、おはっすといつもと変わらない挨拶をして、友人たちとの会話の輪に加わる事ができた。

そこそこ仲のいい連中だったのでなんの気兼ねなく色々聞けたおかげか、昨日の状況が断片的にだが俺にもわかってきた。

もちろん、こちらも事故の話題で、現場から消えた生徒について盛り上がっている。

どうやら教室全体は朝からそれ一色なようだ。無理もないかもしれない。

みんな噂は大好きだし、俺も大好きだ、もちろん他人のに限られるけれども。

それが被害者行方不明、残された大量の血痕と若干怪しい方向に逸れていれば、美味しいスパイスになることは確かだ。

そりゃあ、ソソられる事だろう。自分のことじゃなけりゃ、さぞ楽しんでたに違いない。

消えた生徒はどうやらこの学校の生徒らしいと早いことにもう広まっていたようだ。

恐るべきかな高校生の噂ネットワーク。

もしこの世界に財団が居たらつくづく大変だろうなと思う。

ソレ専門の機動部隊やwebクローラーなどで片っ端から削除依頼とかしてるのだろうか。

別に収容も何もした覚えはないが、明らかに封じ込め失敗とでも言うべき事態だった。

教室の窓の外に広がる、青い、青い空を見て、どことなくアンニュイな気持ちになった。

それでも、こんなときだからこそ平然とすべきだと自分に言い聞かせた。

 

「やっぱ消えたのって、うちの生徒だったのか?」

 

何も知らないという態度と口調を演じながら、びっくりするほど白々しい言葉が口から出てきていた。

だが、それに隣席の佐藤圭が答えてくれる。

そうだ、確かにウチの生徒だったらしい、と。些か冷静に。

オカルトとかの話は特に興味をソソられないらしいが、話自体は聞いてはいたのだろう。

すでに生徒たちの間で面白半分に犯人探しならぬ被害者探しってのが始まってるとも教えてくれた。

何じゃそりゃあと笑いながら、俺は少しだけ冷や汗をかいたが杞憂に終わった。

こんな日に限って学年で欠席者が一人も居なかったそうなのだ。

これでは目星すら立たない。目立つような怪我をしているようなやつも居ない。

おまけにそんな捜索状態であるから被害者も、名乗るに名乗り出れないんじゃないかという話になったようだ。

今日の自分の判断に少しだけ感謝した。

大事を取って休もうかと思ってもいたが、こうして日常を取り戻すために登校している。

おかげで現代の学生魔女狩りの災禍から逃れることが出来たみたいだった。

ただ学校に来る途中でいきなり全身が崩壊したり、肉塊カルト由来の“にくにくしいもの”に突然なるのではないかと内心怯えたものだ。

外に出ない所を包丁でちょっと切ってみたりもしたが、無事に赤い血は流れ出てきていた。

あのときの安堵感ったらなかった、傍目から見れば危ないリストカッターだが。

傷もすぐ治るというわけでもなく、絆創膏の下では完全に塞がっているわけではないので異常な再生力をこの体が有しているってわけでもなさそうだ。

自分という意識が、すでに死亡した体を人形みたいに無理やり動かしているような状況でもないようだし。

ひとまず経過を見るついでに、この素晴らしき日常を謳歌すべきだろう。

自らの身体に至っては、そんな思考放棄にも似た結論に達したわけである。

途方も無いこと過ぎてさっぱり検討がつかなかっただけとも言う。

 

しかし現場は血だらけだとか、警察が一杯来てるだとか。

結構、情報が錯綜しているのは気がかりだった。

俺はあの場でかなり出血したらしいが、帰ってきた時、制服には血痕がなかったはずである。

ワイシャツは流石に変えているが、今着ている制服がその時のものだった。

不可解ではある、昨日の記憶の欠落や白昼夢のような出来事といい。

俺の中でそういった特徴に思い当たるものは、創作物の中にしかない。

自分はもしやタイプグリーンのような存在になってしまったのだろうか?とフィクションな事柄を大真面目に考えてみる。

あれは厳密に言えば自分の利益のために能力を行使してしまうような排撃対象?に対するオカ連側の現実改変者の呼称だったから違うかもしれない。

いやいや、この場合だと俺は自らの生死を捻じ曲げるために様々な事柄を改変したのだから十分グリーン足り得るなと思った。

不死性の獲得なんて最たるものだ、これが履行されなければ世の中で気軽にKクラスがまかり通ってしまう。

これは間違いなく終了対象だなと思った、フィクションである財団やオカ連がいないとしても政府の秘密組織なんかに見つかってしまったら実験対象にされてしまいそうだ。

相槌の笑いに本物の感情を織り交ぜつつ、そんなこと『普通に考えてありえない』だろうと自嘲した。

まあ俺は何らかのラッキーで助かったのだろう、もう転生までしてるのだ。

今更何がきたところで何ともない、ただこの生活が続いてくれるなら文句はない。

考えようだ、痛い思いをするのはあれだけでいいが。

強くてニューゲームみたいなものと捉えよう。失ったものは取り戻してやろう。

くだらないことを考えていると、話は結局巡り巡って被害者は誰だというところに戻ってきていた。

 

「でもよぉ、ウチの通学路なのは確かだよな」

「俺もあそこたまに通るけどなー見れなかったわー」

「オイオイオイ、惜しかったなオマエ」

 

アリバイを作ろうと口を挟んで話を合わせながらも、件の被害者は目の前にいるぞと先程の考えを台無しにするかのように暴露したくなった。

刹那的な衝動に身を任せる様に人生のスタンスを置いていたが、これはいけない。

そもそも昨日の事故だってそれの延長線の気がする、いつの間にか範囲がガバガバになっていたのは自戒しなければならないだろう。

もちろんこの欲求は口を噤むことで抗った、無用なリスクは避けるべきだとわかっている。

それにこれから何が起こるかもわからない、現状俺にできることは何もなくなっていた。

表面上は何とかなったとしてもどこかで何かが代償として奪われているんじゃないかと恐れてもいる。

都合のいい奇跡なんて存在するのだろうかと、今更ながら疑り深くなっていたわけだ。

もちろんそんな製造元もわからない、値札のついてない奇跡の末に俺は生かされているという現状を棚に上げていたのだが。

 

そろそろ話すこともなくなってきたという所で、教室のスピーカーからベルの音が流れる。

いつの間にか始業時間が迫っていたようだ、みんな喋りながらも席に戻っていく。

なんだかんだとお利口な高校なのである。

二度目の高校受験も頑張った甲斐はあったなぁと思う。

両親もよく応援してくれたし協力を惜しまなかった、本当にいい人たちだ。

幸いなことに偏差値は前より上な所なので少し大変だが、これからの人生のことを考えればペイできるだろう。

さてやはりというか、当然のごとくいつもより遅い時間に先生が教室に入ってきて、ソワソワした空気の中で例の話題に触れてくれた。

もちろん居ないと思うけれど~から始まり、事故にあった生徒はちゃんと教師に名乗り出て念の為、病院に行って治療を受けてください、その事は絶対秘密にします(要約)とのお達しであった。

今ん所、無傷だし何も起きていないので治療には行く理由がないなと即断する。

もしこれで何かバレてしまって捕まってからの生体解剖はゴメンである。

死ぬような目にあっても回復するとか治験には大助かりだろう。

自分が、かの完璧な被験体になるつもりは一切ない。

この事件が風化するまで俺はじっとしてればいいだろう。

恐らくこの判断が一番ベターだ。

しばらくは窮屈な生活が続くかもしれないが構わない。

自分のこの素晴らしい人生を存続できるなら、多少の退屈、大変結構。

今のうちから大学のことを考えじっくりと勉強してみるのもいいかもしれない。

絶対に、前よりいい大学に入ってやる。

出来ないことはない。大学受験なら、前にもやったんだぞ。

キャンパスライフってやつへの憧れは未だ忘れてない。




出典元
SCP財団日本支部
http://ja.scp-wiki.net/

誤字報告感謝
魔法少女育成計画「黒」読みます




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