貴方の欲望はなんですか?『完結』 (サルスベリ)
しおりを挟む

踏み出した先に石があってさ

 
 頭空っぽにして書いてみた。常識とか理性とか置き去りにしてみた。R-18にならないように注意するだけで、他はすべて投げ捨てて。

 決して、色々なことに詰まったとか、アイディアが出なかったというわけではないので。

 では、どうぞ。

 読むか読まないかは自己責任でお願いします。







 

 艦娘とは、海からの脅威『深海棲艦』に対する最後の手段である。

 

 提督の学校に入ったとき、そんなことが教本に書いてあった気がした。

 

 人間の武器ではどうしょうもない深海棲艦に対して、唯一有効な攻撃手段を持ち得るのが艦娘であり、その彼女達を指揮するのが提督と呼ばれる人種。

 

 そう、即ち我々のような。

 

 かっこいい、そう思う人はいるかな? そうかそうか、大勢か。なるほど、皆の意見は十分に解った。

 

 第二次世界大戦から六十年以上、戦争のなかった平和な日本の中で、唐突に始まった生存戦争。

 

 偉い学者さん達が色々な理屈をこねくり回して頭を働かせて、色々と考えて『それっぽい結論』だしてくれたので、今日の自分達は『提督やろうぜ』なんて言葉に踊らされて、こうして適性試験なんてものを受けるのだが。

 

 確かに魅力的だ。人類を護る楯、人類の守護者。うん、エミヤに憧れたことはあった。いい話だと思う。でも、どちらかっていうと英雄王のほうが好きなんだ。

 

 こう、立っているだけで敵を殲滅。素晴らしい、一歩も動かずに敵が倒れていくなんて憧れる。

 

 財力がないから、宝物庫が空っぽ。うん、知ってる。気づかないようにしていただけだから、大丈夫。

 

 前世でも平民、転生しても平民。いや、素晴らしき普通の生活だったりする。

 

 褒めてくれるなよ、泣けてくるぜ。

 

 転生した時に神様ってやつにはあった、と思う。なんだか曖昧な記憶しかないが、『何かあげようか』って気楽に聞いてくるから、『王の力が欲しい』って願った。

 

 願ったんだけど、背後に宝物庫が開く気配なんてない。念じても宝具が飛び出すことはないんだぁ。

 

 別の可能性も含めて『ギアス』かなぁって思って、色々と試してみたんだけど瞳の中に何か浮かぶなんてこともない。

 

 他の王様って何があったかな、いや騎士王とか征服王かなって可能性もあったかもしれないが。

 

 世間ではワンチャンなんて言うらしいけど、そんな技能を持っているわけもない。

 

 学校の成績? うん、平凡だったぜ。多少、戦略とか戦術が優れているかなって言うレベル。それも百人中三十位に入れるかどうかってレベルだからな。

 

 運動はそれなりにできるけど、誇れるようなものじゃない。

 

 ただ、実技はなんだか高評価だったな。実際に艦娘の指揮もとったけど、凄くすっきりする。

 

 『何時もより動けました、ありがとうございます』なんてお礼を言われた日には、こっそりとガッツポーズしたもんだ。

 

 だってさ、あんな美人が笑顔をキラキラと振りまいて、自分のほうに走ってきたんだぜ。思わず両手を広げた俺は悪くない。

 

 がっつり飛び込んできた時の感触は、絶対に忘れない。あんな砲塔や魚雷を操っているのに、柔らかくていい匂いがした、とかこっそりと思っても仕方がないじゃないか。

 

 今は思春期、異性が眩しいのは当然のこと。自然の摂理だ。

 

 さてと、現実逃避はこんなところでいいかな。

 

 

 過去のことより、現在のことが大切だ。昔の偉い人はよく言った。いや過去の行いから現在が変化するんじゃないの、と思ったのだが。

 

 さて、では現実から目を反らすのをやめて、向かい合おう。

 

 『朝倉・雄一、提督試験に合格したことを証明する』。うん、ここは大丈夫。提督の学校に行ったんだから、卒業すれば提督になるのは当たり前。

 

 『横須賀鎮守府への着任を命じる』。

 

 どういうこと。

 

 え? 横須賀って、日本の四大軍港の一つだよね。四大鎮守府とか呼ばれている一つに、新人が投入。

 

 うわ、これってブラック鎮守府の立て直しか、生贄に選ばれたってこと。

 

「がんばれ」

 

 俺の顔の横で笑顔で親指を突き出す妖精さんに、思わず涙を流してしまう。

 

「大丈夫だ、何とかなる」

 

 本当かよ。まあ、今までこの妖精さんが言ったことで、『現実にならなかったこと』はないからいいけど。

 

 よし、ここで悩んでいても仕方がないか。あのすっごい笑顔で扉をあけている人のところへ行こう。

 

「提督!! さあ、こちらですどうぞ!」

 

「あ、はい」

 

 キラキラと星でも飛んでるんじゃないかってくらい、笑顔満開なんだけど、どうしたのこの人。

 

 あ、よく見たら『大和』だった。

 

 え? 俺の送迎のために大和が来るって、どういうこと?

 

 




 
 短いのですが、序章とかプロローグ的な何かですので。

 基本的に思いついたアイディアを形にした、神様転生になります。

 神様、別作品のテラだったりしますが、ご了承ください

 馬鹿と呼ばれる彼が転生させた人間が、普通の人生を送れるわけがないってことで話が始まりますので、どうぞよろしくです。





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

逃げたくなった時くらい泣いてもいいじゃない

 
 深読みなし、複線なんて貼らない。

 のんびりゆっくり、ほのぼのと書いていくのみ。

 ノープランの上にプロットなし。

 だから途中で放り投げてもご容赦を。




 

 すっごい笑顔で出迎えにきた大和と、ニコニコ笑顔の武蔵。

 

 左右を女性に挟まれて送られる車の中。

 

 うん、なんというか二人とも脅威だ。戦艦だぜ、戦艦。普通に相手と殴り合うような艦娘が左右にいるっていうのにさ、いい匂いしかしないんだぜ。

 

 香水でも使ってるの? あ、艦娘は化粧をしないって本当? え、今日は気合入れてきた。

 

 赤い顔で二人が言うもんだから、『そうか』としか答えられなかったけど。

 

 なにこの可愛い子たち。え、本当に艦娘。あの映像で見たことがある、大和型の二人なの? 

 

 だって戦艦棲姫を殴り飛ばしていたじゃないの。本当に殺気しかないって顔で。何がどうして、そんな年頃の女性って顔で笑っているのさ。

 

 あれ、運転手に見覚えがあるんだけど。

 

 マジか。運転手と助手席に座っているの一航戦だ。なんで赤城と加賀までいるわけ。どういうこと。

 

「提督は、演習で駆逐艦一隻で戦艦三隻を撃沈した、というのは本当なのか?」

 

 うわ、懐かしい話題だね、武蔵さん。

 

「あれは駆逐艦の子が練度が高かったから、勝てただけさ。俺は適当に声をかけただけ」

 

「そうか。なるほど、自分の功績を誇らない、素晴らしい人だな」

 

「いや、待ってどうしてそうなる?」

 

「謙遜しなくていい。あの時の資料は貰っている」

 

 深く頷く武蔵に、誰もが同意したように頷いている。

 

 あれ、ひょっとして俺のこと違う評価になっている? これが世間で言うところの勘違い系か。うわ、ならどうしよう。まともな指揮なんてその一回だけ、図上演習とかボロ負けのほうが多いくらいなのに。

 

 鎮守府についたら、すぐに電話して配属先を変えてもらおう。

 

 あれ、提督の上官って何処になるんだ。防衛省は深海棲艦が出てからすぐに名称変更で、防衛軍になったから、防衛大臣に人事権があるんだっけ?

 

 く、授業を寝ていたことがここで裏目に出るとは。

 

 いやちゃんと聞こうよ、俺。

 

「つきました、提督」

 

「え、もう?」

 

 気がついたら鎮守府にいました。うわ、嘘だろう。そんなに時間経ってないでしょうが。

 

「提督が着任された!」

 

 武蔵の大声にちょっとビクッとしていると、盛大な歓声が聞こえてきて。

 

 あ~~もうどうしてそうなっているのかな。

 

 なんだか鎮守府の周りを艦娘達が一列に並んで出迎えていた。

 

 マジで、どうしてこんな評価になっているのかな、誰か教えてくれ。

 

 頭を抱えたくなったが、笑顔で迎えてくれる以上は立ち止まるなんてことはできなくて、そのまま手を振りながら鎮守府に入っていくしかなく。

 

 鎮守府の建物は、とにかく素晴らしい。なんてこと言わないからな。細かいところまで綺麗に掃除されているけど、そんなことはどうでもいい。

 

 提督室に案内されて、イスに座るように促されたことも、まあ当たり前のことかもしれないが。

 

「では、提督、最初の任務をお願いします」

 

 大淀が持ってきてくれた資料に目を通そうとして、ビシッと固まってしまう。

 

「え、マジで? 何かの冗談?」

 

「冗談ではありません。提督、『お傍付き』の艦娘を選んでください」

 

「はい?! いやいや、何それ、どういう意味?」

 

「提督の身の回りの世話を『心身ともに行う』艦娘のことです」

 

「おう」

 

 何たることか。まさか、鎮守府が綺麗だったから気がつかなかったが、もう洗脳されているとは。

 

 前任者め、見た目に現れないように念入りに洗脳して調教していたな。

 

 く、油断した。まさか本当にブラック鎮守府だったなんて。どうする、まずは何をすればいい。

 

「いや、大淀、必要ない。俺は自分のことは自分で出来る・・・」

 

 からと言いかけて、視界に妙なものが入ってきた。

 

 なんか、この世の終わりみたいな顔をした大淀と、ここまで付き添ってきた大和、武蔵、赤城、加賀の絶望した顔だった。

 

「から、だが。まあ、秘書艦は必要だな、うん」

 

「提督! ありがとうございます」

 

 ふ、笑えば笑え。あんな悲しい顔した美人さん相手に、『いらない』なんて言えるほど俺は強くないんだよ。

 

 クッソ、転生して二十年は立っているし、前世だってあるんだ。突っぱねるくらいできるだろうが、俺。未だ思春期ですか、この野郎。

 

 『発情期ですね、この野郎』とか返ってきた気がしたが、気のせいだろう。

 

「じゃぁ」

 

 無難に選べ。無難だぞ。この状況下で、状況説明ができる艦娘、洗脳を受けていなさそうな、新人の。

 

 ダメだ、解らん。練度で判断すればいい? 残念でした、全員が九十越えです。おい、なんだよ、この鎮守府。本当に新人が配属されていい場所か。ブラックだからか、ブラックだったからか。

 

「提督?」

 

 ちょっと大淀さんや、そんな不安そうな顔しないでくれますかね。俺が悪いみたいじゃないですか。

 

「吹雪にしよう」

 

「はい、他はどうなさいますか?」

 

 秘書艦って一人じゃないの?! あ、この大所帯じゃ、一人じゃ回らないか。大淀は、外そう。事務処理はできるかもしれないが、洗脳されている子を近くにおいたら何が起きるか解らない。

 

 朝、起きたら隣に裸で寝ていたなんてことない、と言い切れない。

 

「そうだな。ならば」

 

 考えろ、考えるんだ、朝倉・雄一! 

 

 比較的まともそうな、正常な思考を保っていられる艦娘。洗脳を受けていなさそうな子はどの子だ。

 

「では叢雲にしよう」

 

「承りました」

 

 どうだ、この選択は?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さてと、では改めて。

 

「二人とも、話を聞かせてほしい」

 

「なんでしょう、司令官」

 

「なんなりと質問しなさいよ」

 

 吹雪と叢雲だけの提督室の中で、俺は周りの目を気にしつつ小さく声を出した。

 

「誰に言われた? 何がこの鎮守府にあった?」

 

「はい?」

 

「何の話?」

 

 ク、まさか二人は外れか。無難に初期艦の中から選んだのが間違いか。

 

 だが判断材料がない以上はここから始めるしかない。

 

「最初に言っておくが、俺は提督としてここにいる。それ以上を望むつもりはないからな」

 

「はい、もちろんです、司令官」

 

「何を言っているの? 私達はそう思っているわよ」

 

「ならば、この『お傍付き』制度はどういう意味だ?」

 

 突きつけるように話を振ると、二人はきょとんとした後に、『ああ、そうか』と納得した様子だった。

 

「実は、前任者が」

 

「まさか、艦娘に色々と酷いことをしたのか? 性的虐待でも有ったか?」

 

 ついに真相に辿り着いたのか。逸る気持ちからそう告げたが、二人は顔色一つ変えずに首を振った。

 

「性的って、まあ、あんたが望むならいいけど」

 

「待とうか、叢雲さん!」

 

「何よ?」

 

「いや、俺が望んだら『してあげる』って聞こえるから、今の発言はかなり不味い」

 

「え? そういうつもりなのだけど?」

 

 何を言っているんだ、という顔をしている叢雲に、やはり洗脳されていると解った。

 

「あ、ああ! あのですね、司令官。そういう意味じゃないんです」

 

「何が違うんだ、吹雪。君たちは前の提督にそういった洗脳を・・・」

 

「ばっかじゃないの。洗脳されていたのは、前の提督よ」

 

「は?」

 

 叢雲が言い放った言葉に、俺は思わず間抜けな顔を晒してしまった。

 

 彼女が言うところによると、前任者は『超』がつくほどの社畜だった。二十四時間戦えますか、ではなく三百六十五日働けますかだった。

 

 艦娘の指揮、資材の調達、鎮守府内の整備・整頓、在庫確認、艦娘達の生活環境の向上・維持。

 

 色々と手を出して頑張り続けた末に、倒れて入院。以後、防衛軍管理下において療養中。

 

 あ、そう言うこと。で、そんな場所の後任ってなると縁起が悪いと誰もがやりたがらない。

 

 いくら四大鎮守府の一つであっても、前任者が過労で倒れましたなんてところに行きたがる酔狂者はいない、と。

 

「そっか、そっか。なるほど・・・・・・ってじゃ俺に対して盛大に歓迎してくれたのは?」

 

「そっちは、その」

 

「まあ、それはね」

 

 なんで赤い顔して二人とも見つめあっているわけ。え、女の子同士で色々とあったの?

 

「違うから」

 

 とても冷たい顔で告げる叢雲に、思わず両手を上げて降参してしまう。

 

「それはその、司令官が『妖精さん達に好かれる王様』だから、私たちにも影響が出ているんですよ」

 

「へぇ~~~え?」

 

 何それ? え、『王の力』ってそういう種類の転生特典だったの。

 

「おかげで私たちも体調がよくなって実力以上の力を発揮できるわけ」

 

「え? え? マジで?」

 

「マジよ。正確に調査したわけじゃないけど、練度1の艦娘が練度40の艦娘の艦隊を単艦で撃破できるくらいには、力が上がるみたい」

 

「そこにプラスして妖精さん達の効果も上がるみたいですよ」

 

 叢雲と吹雪が交互に説明してくれたことに、俺は『うわぁ』と内心で声を出した。

 

 つまり、俺は提督じゃなくて効果的なアイテムか補助魔法のようなもの、というわけか。

 

「まあ、それを知った『上』が横須賀に丁度いいからで配属したんじゃないの?」

 

「なるほど。ああ、良かった。俺自身の不当な評価じゃなくて」

 

 心底良かったよ。これなら俺は普通に取り繕うことなく、鎮守府での提督生活を送れるってわけか。

 

「しかしなぁ」

 

 王の力って、そういうものかな。

 

「違うよ。そっち副産物的なもの」

 

 定位置といわんばかりに俺の肩に乗っている妖精さんが言った。

 

 え、じゃあ何?

 

「今ならできるんじゃないの?」

 

 何が?

 

 疑問を感じて横を向いたとき、提督室の窓から入ってきた光が遮られて、室内が暗くなった。

 

「日が沈んだかな?」

 

 あれ、吹雪と叢雲が蒼白な顔になって壁際に寄っているけど、どうしたのさ?

 

「あんた、それ何よ?」

 

「何って」

 

「司令官、『そちらの方』は知り合いですか?」

 

「そちらの方?」

 

 二人が震える指先で示すのは窓の外、俺も顔を向けた先にいたのは。

 

「はい、『王の力』。人には入らなかったから、そのものを上げたよ」

 

「おう、ジーザス」

 

 鎮守府の外には、こちらを見下ろす巨大な生物の顔が。

 

「初めまして、『ゴジラ』様」

 

 彼はこちらをチラリとみた後、あの有名な泣き声を放ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 





 映画で、『キング・オブ・モンスターズ』やっていた。

 モンスターの定義って、『人間以外』ってことなら妖精とか艦娘も範疇でしょう、的な無理やりの暴論。

 で、人間以外の王様ならば、どういうことでしょうねぇ。





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

話は最後までちゃんとしましょう

 
 抽象的なもの言いって世の中にあるよね。

 空気読めって、空気を読める人ってすごいと思う。

 的な話です。




 

 突然のゴジラ襲来に揺れる鎮守府、ついでに近隣の町とかも大騒動になる最中で、当人の俺はというと。

 

「え? どういうこと?」

 

「王の力を望んだから」

 

「は? え?」

 

 妖精さんに詰問中。叢雲と吹雪は退室してもらった。

 

 確かに王の力を望んだ、望んだけど何処がどうしてゴジラなのか。怪獣王だからか、王様ってそっちじゃないって。

 

 妖精さんの説明によると、だ。

 

 俺が王の力を望んだ、それだけしか言わなかったのが原因らしい。

 

 言われた方は悩んだ、『王の力』と一口に言っても色々ある。

 

 英雄王から始まって、騎士王、征服王、暗殺王に、精霊王に、霊王とか、勇者王、鬼眼王、機神王とか。これに『キング』なんて読み方も王様ってなったらさらに色々ある。

 

 普通なら、ギアスだろうって思うのだが、あいつはそんなこと考えていなかったらしい。

 

 せっかくだから全部で。あ、入らないって爆笑していたって言われた時は、軽く殺意湧いた。

 

 そりゃ、そんだけ色々と『王様の力』入れたら、人間に入りきるわけがないじゃん。普通に考えれば解ることなのに、そいつは考えなかったって話だ。

 

 結論として、人の身に入らないなら人以外の何かに入れて追従かければいいやって投げたとさ。

 

 投げんなよ。人にあげるもんだぞ。

 

 何かいいのないかと探していたら、いるじゃないかと閃いたのが『怪獣王』。

 

 ゴジラに全部ぶちこんだから、さすがの『超生命体』。不死身の『怪獣王』は見事に全部の王様の力を取り込んだ、と。

 

「え? じゃ、あれが俺の転生特典」

 

「イエス」

 

「え、艦娘への影響とか妖精さんへの影響力は?」

 

「王様なら皆から愛される、忠誠を向けられるは必須」

 

 うわぁ、チートや。なんだ、それ。

 

「消して」

 

「死んで」

 

 即答だった。間髪入れずってきっとこういうことなんだろうな、と思うくらいにすぐに答えが来た。

 

 追従かけてはいるが、あれも俺の一部なので消すってことは俺の存在すべてを消すってことになるらしく。

 

「平凡が恋しい」

 

「転生者に平凡は不要、平穏もなし、いざ、覇道を歩まれよ」

 

 何処の軍師だ、この野郎。思わず妖精さんを握りつぶしそうになったのだが、何が面白いのか『キャッキャ』と大笑い。

 

 ク、潰してやりて・・・・・っと待った。ふっと気がついた、先ほどから窓の外が神々しいまでの光に溢れていることを。

 

「戦艦王ってのもいるらしいぞ」

 

「余計なこと言ってんじゃねぇ!!」

 

 ゴジラ様の口が光を放っているけど、あれって『波動砲』のチャージ音じゃないのか?

 

 戦艦王ってのがいるとして、戦艦すべてってことか。いっそのこと軍艦王ってのもいるかもしれないな。

 

「いるな」

 

「現実逃避してんだよ、察しろよ」

 

「空気を読めなんて、我ら妖精には無理、我らの創造主はもっと無理」

 

「てめぇの主の話なんてしてないんだよ!」

 

「チャージ終わるみたい」

 

 ちょっと待てよ! ここ鎮守府、そんな波動砲なんてもんぶっ放したら何が起きるか解らないって!

 

「あっちに撃て!」

 

 咄嗟にゴジラに指示した方向は、海の向こうだって思っていたのに。

 

「あ」

 

「おお」

 

 何故か、ゴジラの口は内陸部に向いていて。

 

「対空戦闘!!」

 

 まずい、あれって富士山のほうじゃね?! と思った俺は咄嗟に上空を示したんだけど。

 

 ゴジラの背びれから一斉に幾筋もの光線が昇って行った、と。

 

「え? なんだそりゃ?!」

 

「拡散波動砲背びれバージョンだな」

 

「シン・ゴジラも交じっているのか?」

 

「ゴジラは全にして個。すべてのゴジラは同一の存在であるべし」

 

 ちょっと待って、何その超理論。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気を取り直そう。とりあえず、波動砲も撃てるゴジラってことだな。

 

「提督、ではあれは?」

 

「私の友人だ」

 

 もうこれで押し通すしかねぇぇぇぇぇぇ!

 

「随分と奇抜な友人ですね」

 

 奇抜で理解を示してくれるなんて、吹雪は優しいな。これが世間で言うところの『マジ天使』か。

 

 違う違う、現実逃避したいんだ。俺が察してやれ。

 

 とりあえず、ゴジラは鎮守府の建物の横にいる。海に面した場所に半ば体を埋めるように、そこから一歩も動かない。

 

 妖精さん曰く、『追従かけているから百メートル以内にいないと暴れる』らしい。暴れるんかい、あんな『王様てんこもりの超生物』が。

 

「竜王ってどれのことだと思う?」

 

 妖精さんがそっと耳打ちしてきたことに、寒気を感じた。

 

 まさか、ド●クエもありなのか?

 

 ニンマリと笑う妖精さんに、『あ、あの時の神様と同じ笑顔だ』と思ってしまった俺は、決して負けたわけじゃない。

 

 今なら俺はこいつを殺せる、と思っちゃダメだ。思った結果の拡散波動砲だ。あれのために衛星が何個が潰れたらしく、『何か知らないか』と鎮守府に電話が来たばかりじゃないか。

 

 知りませんと答えたはいいが、『本当か?』とかなり怖い口調で訊かれたので確実にバレている。

 

 よし、このまま知らないで押し通そう。世の中、逃げるが勝ちだ。

 

「では提督。業務を進めてもよろしいですか?」

 

「すまない、大淀、頼めるか?」

 

 できるだけ尊大に言ってみるが、彼女は嫌な顔せずに書類を差し出してくれた。輸送計画か。まずは鎮守府の資材を溜めないと、かな?

 

「前任の提督のおかげで鎮守府の資材は潤っていますが、新人提督がやるべきことといえば、まずは資材集めです。提督は実務経験があまりないご様子なので、まずは基本からやっていきましょう」

 

「ありがとう、大淀。では、輸送任務だが」

 

「はい、第一から第八艦隊まですべて準備済みです」

 

「え? あの」

 

「この大淀がいるかぎり、提督の手を煩わせることはありません」

 

 眼鏡を少し持ち上げて自信満々に告げる彼女に、頼もしいなんて言葉は浮かばなかった。

 

 貴方、最初に俺に経験積ませる的な話をしていませんでしたか。聞き間違いですか、それとも俺には計画書さえ作成させないつもりですか。

 

「すでに作戦案は防衛軍司令部に送信済みです」

 

 それ、俺の許可が必要じゃないの。サインがいるんじゃないの。なんで大淀の名前とサインで許可が下りるの。

 

 馬鹿なの司令部。何考えてるの、司令部。

 

「じゃ、号令をかけるか」

 

「すでに全員、出撃済みです」

 

「あ、そう」

 

 なんだろう、とてつもなく虚しく感じる。提督って、こういう仕事だったっけ? いや違うんじゃないかな。

 

 あれ、目から汗が。熱くないのにな。

 

「というわけで、提督には今日はのんびりと過ごしていただきます」

 

「え、あ、はい」

 

 なんか、無言の圧力を感じました。これって、やっぱり艦娘、洗脳されてんじゃないの。前任者が過労で倒れたから、『今度は仕事させない』って考えにとりつかれてませんか。

 

「じゃ、鎮守府内を見てくるか」

 

「いけません、提督。いくら提督とはいえ、一人で鎮守府内を歩くなどと」

 

 え、なんで止められるの。え、吹雪と叢雲も頷いているし、どうして?

 

「理由を聞かせてくれ、大淀。俺はここの提督じゃないのか?」

 

「はい、提督です。ですが、艦娘の中には提督のことを・・」

 

 やっぱりブラックだったんじゃないの?! いや、待て、早まるな。先ほどの会話から、その可能性は極めて低いと考える。

 

 それに、だ。もし艦娘の中に提督のことを嫌っていて、攻撃してくる輩がいたとしても、今の俺にはゴジラっていう頼もしい味方がいる。何があってもゴジラの中の『王様の力達』がどうにかしてくれる。

 

 はず!!

 

「提督のことを囲って外に出さないように飼うと願う者もいますので」

 

 予想の斜め上でしたよ、こんちきしょう!

 

「今、飼うって言いましたか?!」

 

「はい、二度と倒れないように、一室に監禁してすべてのお世話をすればいい、という『提督ニート化計画』派閥が」

 

「なにその派閥?! 俺に仕事するなっていうのか?!」

 

「申し訳ありません、提督。しかし、彼女達の気持もわかります。目の前で提督が倒れて、か細い息をしている時の恐怖は! 私たち艦娘にとっては自分が死ぬよりも恐怖なのです!」

 

 涙を堪えて必死に訴える大淀と、すでに泣いている吹雪と叢雲。ああ、三人の気持ちはよく解る。艦娘達の気持もよく解る。

 

 けれど、何故だろう。感動する場面だというのに、俺の心に吹き込むのは虚しい気持ちだけだった。

 

「大淀、ありがとう」

 

 お礼は言っておこう、一応だけど。

 

「その、派閥があるというならば、他にもあるのか?」

 

「あります」

 

 涙を拭い大淀が真面目に話す。真面目、だよな。真顔で真剣な口調で話すから大真面目な話だよな。

 

 なんだよ、その『提督玩具化』とか、『提督ペット推奨』って! 俺をどうしたのさ、お前ら!

 

「わ、解った。俺はここにいよう」

 

「はい、お願いします」

 

 一礼して大淀が執務室を出ていく。

 

「ちなみに、二人はどの派閥だ」

 

「私は提督はそのままご自由にです」

 

「ええ、仕事しないなんてありえないわ」

 

「派閥の名前は?」

 

 何故か言葉を濁す二人に対して嫌な予感がして、さらに強い口調で問いかけると。

 

「提督『象徴化』です」

 

「俺に何させたいの?!」

 

 それ不味い! 色々な意味で不味いから! 今の日本でそれをやったら国家反逆罪じゃ済まないから! 国家の転覆をもくろんだって言われても否定できないから!

 

 お、恐ろしい。今まで聞いた派閥の中で、最も恐ろしい派閥の艦娘を、傍に置いてしまった。

 

 不味い、ここは本気で不味い場所だ。ブラック鎮守府なんて目じゃない、もっと怖い場所に来てしまった。

 

 思い返すと、俺が逃げ出したいと思ったのは、それが最初の瞬間だった。

 

 

 

 

 





 常識を投げ捨てる、後に残ったのは何かと考える。

 理性、欲望、それだけかと考える。常識があるから理性も欲望もできるのだから、投げ捨てたものに付随したものが残るのはあり得ない。

 となると、残るのは『周りの環境による圧迫』じゃないかぁって話。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

困難から逃げられないから消し飛ばした

 

 いいたいことはあるけど、言葉に出来ないこともあるので。

 何が言いたいかというと。

 まあ、色々な思惑は重なるってことさ。







 

 お、恐ろしい話を聞いた。

 

 まさか、安全かなと思っていた二人が『象徴』化の派閥なんて。そんなこと現代の日本でやらかされたら、確実に怖い人たちが出てくる。

 

 どうするべきか。いや、どうしたら一番いいかを考える。

 

 逃げるって選択肢は簡単だ。何しろ俺には『ゴジラ』様がいる。全力で使えば国家だろうと軍隊だろうと簡単にねじ伏せることができる。

 

 しかし、だ。ゴジラ単体でも簡単に終わりそうなのに、あのゴジラはただのゴジラじゃない。

 

 全ゴジラの能力を持った上に『王の力』もあるってことは、だ。

 

「お、恐ろしい」

 

 艦娘達より何より、自分の転生特典が本当に恐ろしいものだと知った。

 

 ク、こうなればやはり逃げるしか。いや、このまま何事もないように過ごした方がいいのでは。

 

 葛藤か。

 

 どうするべきか悩んでいると、窓から視線を感じた。

 

「あ」

 

 窓からこちらを見ているゴジラ様がいた。

 

 うわぁ~~逃げられないなぁ。

 

「・・・・・・か、考えてみれば天国のような仕事場じゃないか」

 

 そうだ。職場に男は俺一人、周り中は綺麗な女の子ばかり。仕事といっても執務室にいるだけ、座っているだけで後は周りが勝手にやってくれる。

 

 ビバ、働きやすい職場。

 

 思い込むしかねぇ、弱虫だと笑いたければ笑えばいい。俺は自分の身が大切なんだ、誰だってそうだろうが。それに、周りの評価も気になるんだよ。いい人でありたいとか、欲望なんて持ってないさって真人間に見られたい。

 

 嘘です、本当は『あ、かっこいい』とか艦娘達に言われてチヤホヤされたいのが本音です。

 

「よ、よし、じゃ気を取り直して」

 

 鎮守府内を見回るか、いや出歩くと拉致されるって言われたような、まあいいか。あのゴジラ様がいる以上は俺は安全だ。

 

 俺の周りの世界が大変なことになるかもしれないが。

 

 気を取り直して、行くぞ。

 

 と、思わず外にいるゴジラ様を見た瞬間に、俺は急いで執務室のイスに座った。

 

 なんだよ、あれ。どういうことだよ。なんで気合を入れただけでゴジラ様が金色の鎧をまとった上に聖剣と乖離剣を握っているわけ。

 

 背後に浮かんでいるのって艤装か? ヤマトっぱくて片方が宇宙戦艦っぽいので、もう片方が霧だったた。その後ろに広がる剣とか、何してんのよ。

 

 いや待て待て、あの足元にずらりと並んだあいつらはなんだ?

 

 全員が、見覚えのある刀を持った人型サイズのゴジラってなんだよ。斬魄刀か、いや仮面ライダーとか特撮系の武器じゃないか。

 

 『王の力』って第四次のライダーの宝具まで入ってるの?!

 

「行かないので納めてくれませんか?」

 

 声は聞こえなかった。でも、その視線が『え、行かないの、ヘタレ』とか言ってそうだったけど、何とかゴジラ様は武装を収めてくれた。

 

 怖ぇぇぇぇぇぇ! なんだよあれは!? どういう原理だよそれ! 宝具だけじゃなくて艤装って! マジで戦艦王とか軍艦王とかあるの?! 鬼火とか霊魂とか見えたけど。

 

 シャーマンキングまで取り込まれていますか?! お、おい、どういことだよ、誰か説明してくれよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し錯乱していたようだ。色々とヤバいことが執務室の机の紙に書かれているけど、まあいいだろう。

 

 『行けるぜ世界征服』、『さあ、全軍突撃だ』とか書いてあるが、忘れよう。こんなものはゴミ箱に。

 

 おぅ・・・・・危ねぇぇぇぇ!! なんかレーザー俺の机の上に紙だけ焼いていったんだけど!

 

 なにこの反応の速さ! しかも鎮守府の建物に傷一つないってどういうこと!? 空間無視!? 単体でワープとかやったの?!

 

 ちょっと待った! 俺の意思どおりってことは・・・・。

 

「いや俺は平穏が大好きです!」

 

 動き出しかけたゴジラ様に向けて叫ぶ。いや、確実に世界を滅ぼしに行きかけたでしょう。

 

 動き出しかけたゴジラ様が振り返ると、足元にいた大勢の兵士たちが一斉に消えていきました。

 

 あ、危なかった。あれってスパルタン部隊だよな。あっちに空母って、マクロスじゃんか。なんだよ、スパルタン部隊で歩兵やって、航空戦力がバルキリーって何処の宇宙戦争だよ。

 

 あ、あっちにエイリアンとかプレデターとかいるわ。さらに向こうに獣化兵いやがる。

 

 待ってくれ、俺のライフがゴリゴリと削られるんだけど。

 

「怪獣王の威光は果てしない」

 

「いやがったな、妖精。説明しろ」

 

「王とは配下がいてこそ、忠臣は必ず王に従う者。ならば、呼べばすぐに答えるが必定じゃないか」

 

 あっさりと言いやがって。なんでそう、危ないことを『当然』って顔で言えるかなぁ。

 

「く、おまえを殺したい」

 

 あ・・・・・・・うん、そうだったね。拳を握って妖精を睨んだら、そこにブラックホールが発生。原始の塵に帰っていったよ。

 

 ピンポイントで対象をブラックホールにぶち込めるって、すげぇなぁ。俺は完全に錯乱しているような思考で、ゴジラ様に祈りをささげるのでした。

 

「提督さん」

 

「え、はい。えっと、瑞鶴だったっけ?」

 

「そう」

 

 にっこり笑顔で入ってきたのは、ツンデレ空母じゃなかったなぁ。すっごい笑顔なんだけど、何があったの?

 

「ちょっとだけいいかな?」

 

「いいけど、どうしたの?」

 

「ん~~ちょっとね」

 

 一歩一歩と近づいてくる彼女に、何か嫌な予感がしてきた。

 

 え、待って、この瑞鶴、『どの派閥』?

 

「ちなみに、だが。瑞鶴、おまえは俺をどう思っている?」

 

「提督さんのこと? そんなの決まっているじゃない」

 

 笑顔だ。とても可愛い笑顔で頬を染めているのだが、何故か寒気が止まらない。ダメだ、近づけたら俺の何かが失われる気がする。

 

「私の大切な提督さんだよ。ねぇ、提督さん、私と一緒に、ね」

 

 可愛い。素直にそう思えるのだが、俺の第六感が警鐘を鳴らしている。

 

「さあ・・・・・」

 

「そうはさせません!」

 

「ちぃ! 加賀さん!」

 

 はいぃぃ?! なんか窓を割って空母が飛び込んできたんだけど!

 

「貴方達『提督愛玩ペット派閥』の好きにはさせません」

 

「何よ! 『提督監禁派閥』が偉いって言うの!?」

 

「違います、私達は『提督ニート化派閥』です」

 

 どっちでも同じだろうが、おい!

 

 なんで真面目な加賀が、ニート推奨の派閥にいるんだよ!

 

「退かないというなら」

 

「そっちが先でしょ」

 

 睨みあう二人は弓を取り出し、そして執務室に航空機が舞った、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕日が今日も綺麗だ。

 

「すみません、提督、以後、気をつけますので」

 

「あ、うん、誰にだって間違えはあるから」

 

 土下座する瑞鶴と加賀から視線を反らす。

 

 綺麗な夕日じゃないか、水平線に沈む太陽を見つめていると、些細なことなどどうでもいいように感じてしまう。

 

「ほら、二人とも、心が洗われるようだろう?」

 

 心地よい風だ。そうだ自然とは、人の心を洗ってくれるのだろう。

 

「提督、では」

 

 大淀の声に、俺は大きく頷いた。

 

「お任せください、提督。この大淀、提督のために鎮守府の防備を上げてごらんにいれます」

 

「頼むよ」

 

「ええ、熱線やレーザーなどに負けない鎮守府を! ご友人も住めるような場所にして見せます!」

 

 拳を握って宣言する大淀に、俺は答えられず『壁のなくなった執務室』で夕陽を眺めていた。

 

 うん、身の危険って感じちゃダメだったね。

 

 ゴジラ様の熱戦は、やっぱり強いなぁ。

 

 本日の被害、鎮守府全損、更地になりました。以上。

 

 

 

 

 




 
 転生特典って、色々な人が望むじゃない。自分の欲望に忠実に選ぶ人もいれば、今後のことを考えて選ぶ人もいるわけでしょ。

 でもさ、すべて『感情直結』なんだよね。意思ともいうけど、安全装置って掛けられないよね。

 というわけで、ゴジラは主人公の危機意識に反応して原因を排除したってわけさ。

 周辺被害、許容範囲内でしょ、ゴジラからして見れば。





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

前途多難って実はそんなに大変じゃない


 かなり日本にとって重要な鎮守府を継承しました。

 頑張ろうと思ったら、転生特典が鬼畜でした。

 鎮守府が更地になりました。




 これが前回までの話!





 

 多難っていい言葉だって知った今日この頃、夜空を見上げながら寝るのもいいものだなと無理やりに思いこみながら、無理やりに眠った夜。

 

 睡眠薬がないと眠れないとか思っていたら、ぐっすりと眠れましたよ。

 

 ちくしょう、夢魔王とかいるのか。世界は広いから夢関係の王様っているかもしれないけど、そんな伝承を実感したくなかった。

 

「ああ、いい一日でありますように」

 

 とか言ってみたら、ゴジラ様が隣で背伸びして地鳴りが起きた。

 

 ちょ?! なんで背伸び!? あれか!? 疲れたのか、疲れたんか? さすがのゴジラ様も鎮守府を更地にすると疲れるとか・・・・ないな。

 

 ありえるわけがない、ゴジラ様単体でも日本を何度も壊滅させた強者だ。たかが一鎮守府を更地にしただけで疲れるなんてね。

 

 チラリとゴジラ様に目線を向けて見るのだが、ばっちり見つめられてました。

 

 怖ぇよ、マジで。だって、目線が『合う』んだぜ。

 

 『なんだ、用事か?』なんて言われてる気がしてきたぜ。あれって、俺の転生特典なんだよな、自律行動ってどういう理屈なんだ。

 

 あ、俺の感情直結か。いや、待て待て、じゃ俺が鎮守府を更地にしたのか、なんてやつだ。

 

 

 

 

 

 

 あ、俺か。

 

 

 

 

 

 いやいやいや、俺は酷くない。まともだ。本当にまともだ。ただ、転生特典を望み過ぎただけなんだ。

 

 

 そうだ、そうに違いない。人間、身の丈に合わない能力は身を滅ぼすというが、本当なんだな。

 

 前途多難って、誰か言っていた気がするが、気のせいとしておこう。忘れたい、本当に・・・・・・って!?

 

「嘘ですからね! ゴジラ様!!」

 

 あっぶねぇぇぇぇ! 今ゴジラ様の瞳が赤くて翼みたいなものが見えたぞ! あれギアスだ! 何それ、そんなものまであるの?!

 

 『王の力』ってすげぇぇぇぇな! 世界征服も夢じゃないぜ! こうなったら世界を侵略して蹂躙して、かの征服王のように颯爽と!!

 

 いやいや、待った、ここは英雄王のように豪快に。

 

 ふふふふふ、夢が膨らむなぁ。

 

 

 

 

 

 

現実逃避だよ、馬鹿野郎。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝起きて、着替えて、簡易テントから出たら、目の前に重厚な作りの執務室『だけ』があった。

 

 妖精さんの技術って凄いな、すっごいな・・・・ですよね、ゴジラ様?

 

「お願い、違うといって」

 

 両手を組んで祈りを捧げて懇願したのだが、世の中は無情でございました。

 

 ゴジラ様の手が光ったと思ったら、目の前に同じ執務室が。

 

 うん、そんな気がしてた。あ、妖精さん達もいるね。ああ、とてもいい笑顔で土下座している。

 

「我らが王に!」

 

「妖精王に!」

 

「我らが絶対なる支配者様に!!」

 

 うん、本当にそんな気がしていた。

 

 もう気にしない、気にしないように執務室に入って。

 

「あ、提督」

 

 速やかに扉を閉めました。

 

「どうしました?」

 

「何してんのよ?」

 

 中から吹雪と叢雲らしき声がするが、気のせいだ。あの二人はまだ毒されていないはずだ。崇拝とか意味が解らないが、いたってまともな性格のはずだ。

 

 そう信じている。

 

「提督? あ、司令官って呼んだ方がいいですか?」

 

「何してんのよ。いいから入りなさい」

 

「いやいやいや!! ちょっと待って! お願いだから心の準備させて!」

 

 二人じゃない、絶対に違うと思っていても、声は二人のものだから。

 

「心の準備ってなんですか?」

 

「そうよ、いいから入りなさい」

 

「うん! 入るよ! 入るからさぁ! なんでミニスカメイド?!」

 

 心の底からの叫び声をあげてやるぜ。

 

 ミニスカに胸空きのフリフリメイドって誰の趣味?!

 

「あ、これですか? 提督のお友達がくださいました」

 

「なんか『着ろ』って言われているみたいだから着たんだけど、あんたの趣味じゃないの?」

 

 違う、と否定できない。ドアノブを握り締めたまま、俺は固まっていた。

 

 確かに好きだ。こう、ゴスロリ衣装なのに何処かセクシーとか、かなりドツボにはまる格好だ。幼さを感じさせつつ、大人の魅力が少しあって、子供から大人に昇る最中の魅力を余すことなく感じさせる衣装なんて、まさにこの世の天国かと錯覚してしまう。

 

 そうか、最果ての海とやらは、こんなところにあったか。今なら俺は、シャア・アズナブルやイスカンダルといい酒が飲めそうだ。

 

「いや、いいから」

 

 黄金の波紋から黄金の杯とか出てきたけど、飲む気なんてないから。いいからそれしまって。

 

 さて、何処まで語ったか。ゴジラ様の気遣いはありがたいが、今は違う話だ。つまり何が言いたいかというと、俺はロリコンじゃない。ただ、幼子の危険な魅力については、完全に否定などできないだろう。

 

 人は禁忌と言われたら、迷わずに飛びつきたくなる性質があるのだから、決して間違いではない。いや、間違いなのだろう。これから育つひな鳥に対して、邪な感情を抱くのは間違っている。

 

 けれどだ、諸君。あえて言おう、『カスである』と。幼さの中にある魅力、大人の色香に勝るとも劣らないあの威力を前にして、人は戦慄せずに終われるものだろうか。

 

 否! 断じて否である! あの危うい魅力を極めずして『萌え』などは語れない。幼子が育ち、様々な魅力を描き出して、大人の色香へと到達する様を一生かけて見ていたいと思えるのは、男として当たり前のことではないだろう。

 

 それに! 艦娘は成長しない、確か精神面では成長するかもしれないが、外面的なものは成長しない。多少、年を重ねたような身体的特徴の変化はあるかもしれないが、それでも成長しないのだ。

 

 ああ、楽園はここにあった。我が最愛の『アヴァロン』がここにあるのだ。

 

 ふ・・・・・解っている。

 

 

 

 

 

 

 

 現実逃避だ、馬鹿野郎。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいから二人とも制服を着ろ!!」

 

 その日、俺は初めて提督命令なるものを使ったことを、俺の内心に深く刻んでおく。

 

 ついでに、ゴジラ様の尻尾の付け根に、『初の提督命令は制服着ろ』と明記されていたのを発見し、かなり落ち込んだのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督、これが鎮守府の再建計画です」

 

「ありがとう、大淀」

 

 さらりと提出される書類を見つめ、チラリと横に立つ二人を流し見る。

 

 うん、やっぱりその制服が一番、落ち着く。ゴスロリメイドとか、フリフリホワイトロリとか、チャイナとか着物とか、そんなのは執務には関係ない。

 

 昔は、そんな女性に囲まれてなんて、考えたこともあったが。

 

 いや誰だってそう考えるだろ、こう美女から美少女までが、様々な衣装で俺を囲んでくれる、そういう夢想は男なら一度はするものだ。

 

 などどと考えながら、俺の目線は書類を見ていく。

 

 うわ、余計なことを考えながらでも読めるし、修正点も浮かんでくる。

 

 これも『王の力』なのかな?

 

「見事だ、大淀。完璧じゃないか」

 

 でも、そんなの言わない。間違って言ってしまったら、なんか余計な混乱に巻き込まれるような、そんな気がするから。

 

「お誉めにあずかり、光栄です」

 

 眼鏡を光らせながら告げる彼女に、やっぱり只者ではないと感じてしまう。

 

「では、これで再建を行っていきます」

 

「よろしく頼む」

 

「はい、それと提督。様々な派閥が、今回の一件を重く受け止めています。くれぐれも、一人で出歩かないように」

 

 おう、そうなのか。

 

 念を押して退室していく大淀に、俺はにこやかな笑顔を浮かべながら、内心で頭を抱えていた。

 

 なんだよ、重く受け止めるって。どういうことだ、それ。鎮守府が更地になったのが、そんなに重要なことか。

 

 重要だろうが。横須賀鎮守府が更地だぞ、絶対に方々からクレームが来るに決まっている。

 

 きっと、言わないだけで、大淀のところに苦情やお説教なんかが来てるんだろうな。それを俺に悟らせないなんて、大淀はいいやつだ。

 

「後でねぎらうべきか」

 

「はい、何か?」

 

「何でいるの!?」

 

 ポツリと呟いた瞬間、大淀が目の前に立っていた。

 

「艦娘ともなれば、提督の呟きに即座に反応するのは当たり前です」

 

「そんなバカなことあるか!?」

 

 叫んで否定したのだが、吹雪や叢雲が大きく頷いているから、本当のことらしい。

 

 俺は急激に寒気がしてきた。そんなこと普通はあり得ない。絶対にまともじゃない。

 

 となると、だ。 

 

 ゴジラ様、何かしましたよね? 何したんですか? 訓練王とか、付与王とかありませんよね? 艦娘にスキルとか付けてませんよね?

 

 縋るようにゴジラ様に顔を向けると、相手はこっちを見ずに水平線に顔を向けていた。

 

「やっぱあんただろ!!!」

 

 そして、ゴジラ様の咆哮が周辺に響き渡り、遥か遠くの海底で火山が噴火したという。

 

 なんで解るかって? いや、ゴジラ様の視覚と急に繋がってさ、慌てふためく深海棲艦の姿まで見えたからさ。

 

 絶対、殺すって言われたよ、笑ってくれ。

 

 

 

 

 




 
 
 やり過ぎ注意、暴走まっしぐら。

 でも止められないし、止めたくない。

 なんか、途中で変な電波を拾ったけど、まあいいか。

 光源氏ってすげぇ人だったんだなぁって話?






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王の威光は遍くすべてを照らすのであった

 

 王様って凄いんだぜ、的な。

 ある意味で最終話みたいな。

 放り投げる形での終わりもあっていいみたいな。

 でも、当初の予定通りのエンディングだったりします。

 さて問題です、この物語のオリ主の転生特典は何だったでしょう?






 

 

 やあ、みんな、朝倉・雄一だよ。元気かい、そうか元気か。なら良かったと言っておこう。世界は平和で穏やかで、ちょっとした争いごとはあっても戦争とかない世界だといいな、とか思っちゃうんだよね。

 

 戦争万歳なんて危険な思想は持っていなかった。俺が最強、絶対無敵、誰も逆らえない、なんてことあっていいかなって想像したりして。

 

 そんな人たちに言っておこう。

 

 悪いこと言わないから、そんな考えは捨てろ。

 

 じゃないと、痛い目どころじゃないからな。

 

 さてと、どこから話したらいいかな。

 

「敵部隊出現! 何時もの連中です!」

 

「まったく懲りない奴らだ、また向かってくるとは」

 

「第一艦隊、第二艦隊を差し向けて撃滅しよう」

 

「そうだな、我らが王のために」

 

 目の前でそんな会話が流れているけど、俺は完全に無視して泣きたくなるのをグッと堪えて、必死に『平穏万歳』しか考えていない。

 

 何でだって? 

 

 だってさ、俺の転生特典が黙ってないからさ。

 

 ああ、そうそう俺が横須賀鎮守府に着任してから一年たったぜ。

 

「では行こうか、深海棲艦達よ」

 

「そうね、艦娘も遅れないようにしなさい」

 

 あ、ああ、もうどうしてこうなったのやら。

 

 敵の敵は味方なんて生易しいことはない、今まで戦っていた連中すべてが俺に従うって世界は、すっごく。

 

「我らが王に世界を差し出すために!」

 

 すっごく、生き難いなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が望んだのは『王の力』だった。色々な王様の力をギュッと濃縮してゴジラに入れられて、今の世界に生まれ落ちた。

 

 生まれたときになかったのは、本人が望んでなかったからとか、危険とは無縁な生活だったからとか、妖精が言うには細かい話があるらしいけど、俺は完全無視だ。

 

 深海棲艦が鎮守府に押し寄せたその時、俺は死を覚悟したね。こっちの艦娘達は優秀だけど、万を超えるような深海棲艦が押し寄せたら、いくらなんでも多勢に無勢だ。

 

 艦娘達は俺を逃がそうとしたんだけど、俺は逃げるつもりなんてなかった。

 

 お飾りだろうと俺は提督だ、提督が最初に逃げ出してどうするって言うんだ?

 

 だから俺は立ち向かうつもりで拳を握って、そこからチラリとゴジラ様を見た。だってこれは俺の転生特典、俺が危なくなったら助けてくれるはずだからとゴジラ様を見つめたら、相手は滅茶苦茶『アクビ』していた。

 

 え、なんで、これから一大決戦なのに、あくび? 暇なの? 危険じゃないの、あの海が消えるくらいの深海棲艦が危険じゃないって、どういうことなんでしょう?

 

「ご、ゴジラ様?」

 

 あ、こっちを見た。でも、見た後は興味なくしたように顔を戻して、首を振った。

 

 え、終わり? ここで俺は終わり? こんなことなら欲望のままに生きるべきだった。

 

 だって、転生特典『王様能力てんこもりゴジラ様』だぜ。ハーレムだって夢じゃない、美人の幼女からお姉さんまで望みのままにできるってもんだろ、よりどりみどりっていうのも決して叶わないものじゃないから、好き勝手できるって話だろ。

 

 豪邸に住んでも良かったのかな? お城みたいな家とか望んでも、ゴジラ様だったら簡単に建てられそうだし。

 

 いやいや、ひょっとしたら国とか持てたのかも。国家運営なんてできないけど、そこはゴジラ様に頼んで優秀な人材確保して、ギアスかけて逆らえないようにしてさ。

 

 もう地球事支配下におけたんじゃないかな。いや、アニメの兵器とか次々につくってさ、リアルなスパロボとかできたんじゃないの。

 

 今更になってやりたいことが浮かんできた。もう終わりなんて、そんなこと認められない。

 

 だって俺はまだこの世界を楽しんでない、自分の好き勝手に生きてない。いや好き勝手に生きることはどうかって思うくらいの道徳心はあるけど、でも男に生まれた以上は『こうしたいって欲望』はいくらでもあるさ。

 

 艦娘に囲まれて生活してるんだぜ。せっかく、提督になったんだからさ。

 

 いや、この世界の艦娘達は色々と地雷が多いけどさ、それでも見た目は美人ばかりなんだから、もっと『キャッハウフフ』的な話があってもいいんじゃないか。

 

 高望だったのかな、一個人がいくら神様に転生してもらったとしても、そういった欲望を叶えようとしたのが間違いだったのだろうか。

 

 後悔ってこういうものか。

 

「提督! 速やかに退避を」

 

「大淀、俺は最後まで残る」

 

「しかし!」

 

「俺は提督だ、皆の提督なんだ。だから、俺はここで最後まで見届ける」

 

 必死に説得してくれる大淀には悪いけど、俺はもう逃げないって決めた。自分勝手な妄想とかして、艦娘に危機感を覚えたこともあったけどさ。

 

 こう、必死に俺を逃げそうとしてくれる女性を置いて、一人で逃げるなんて男じゃない。

 

「ゴジラ様、勝てないならば俺に武器をください。俺だって男だ、逃げるなんて恥ずかしいこと出来ない」

 

 武器なんて使ったことないし、英霊みたいに戦えないことは知っている。でも、彼らのように華々しく戦えなくても、みっともなく逃げることはしたくないから、だから前向いて歯を食いしばって戦ってやる。

 

 だから! と決意を向けてゴジラ様を見たら、相手の目が俺を見ていた。

 

 

『なにいってんの、おまえ』と呆れたように。

 

 

 

 

あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は転生特典を舐めていた。神様の万能さを甘く見ていた。いや、あいつが神様かどうか知らないけど。

 

「神様じゃないね」

 

「あ、やっぱり」

 

「創造神クラスを何十匹と狩っているけど」

 

 

 

 

え、それってどういう化け物?

 

 

 

 

「世界を創造して破壊してを鼻歌交じりにやるけど」

 

 

 

 

ちょっと待って、なにそのキチガイ。

 

 

 

 

 

 

 と、とにかく話を戻そう。そう、あいつは万能だった。本当に自重って言葉がないくらいに、万能だったんだ。

 

「我ら深海棲艦、王をずっと探しておりました。貴君こそ、我らの王に相応しい存在。これより我らは貴方様の配下となり、手足となり、すべてを蹂躙して見せましょう」

 

「あ、はい」

 

 思わず頷いてしまった。

 

 ど、どういうことだよ?! え、待って、深海棲艦って敵じゃないの、なんで全員が俺の配下になっているの。

 

「配下ではなく、下僕としましょうか?」

 

 こ、怖ぇぇぇ!! な、なにこの人。なんで姫級がそんなこと言って笑ってるの。誰この人、公式が何か狂ったの?!

 

「なるほど、我らが提督が貴方達の王であると?」

 

「そうだ。我らはこの方に従う」

 

「同じ存在をいただくならば、我らは仲間ということだな?」

 

 え、ちょっと待って。なんで長門はそんなあっさりと認められるの。え、誰も疑問に感じないわけ。どうしてそうやって手を組めるわけ。

 

 わけわかんないよ、俺。

 

「提督、軍本部より出頭せよとの命令が届いています」

 

「あ、そっか」

 

 大淀が持ってきた電文を受け取ろうとして、俺の手は空を切った。

 

「え?」

 

「ですが、必要ないでしょうから、『おまえらが来い』と言っておきました」

 

 何してんですか、あんた?! 相手は日本の偉い人たちじゃないの?!

 

「さすが、大淀だな。解っている」

 

「そうだな、我らが王に来いなどとは、よほど死にたいらしいな」

 

「同感です」

 

 え、待って、俺の感覚がおかしいの。なんで、『万死に値する』って全員が頷いているわけ。

 

「い、いや、俺は行くよ、ちょっと話を聞いてくるからさ」

 

「我らが王はお優しいな、あのような下種どもを気にかけるとは」

 

 どうしてそうなる、長門。なんでそんなに日本の人々を見下しているわけ?

 

「そうだな、我らの王は優しすぎる。だからこそ、粛清は我らの役目か」

 

 おい、姫さんよ。どうしてそう短絡的に言うわけ。っていうか、誰も止めないってどういうことだ。

 

「では、戦略会議にしましょう」

 

 当然のように大淀が告げて、そして俺は止める間もなく世界征服を眺めることになったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、俺は世界の王様になったわけだよ。

 

 転生特典通りにまさに『王の力』を手に入れたってわけさ。

 

 あの後は凄かったね。艦娘と深海棲艦の連合軍が、各国を蹂躙していった。もう何処の『アルペジオ』ってくらいにさ。

 

 海から人類は叩きだされ、海上を移動する術は消滅。衛星軌道上ならばって当初は人類側は考えていたんだろうけど、ゴジラ様がいることは知らなかったのか、それとも気づいていても信じたくなかったのか。

 

 衛星軌道上まで届く対空砲に前に人類の人工衛星はすべて消滅。大陸内部に全人類が引きこんだので、ここで終了。

 

 なんてことはなかったのさ。

 

 艦娘の艤装がいつの間にか、『陸地を進めるようになっていた』。

 

「私たちが頑張りました」

 

「やりました!」

 

 おう、夕張と明石が頑張ったんだってさ。で、ゴジラ様も何かしたみたいでさぁ、もう蹂躙戦だったね。

 

 反対勢力は残らず駆逐。反論も社会的に封じ込めて、誰も反論できない世界の出来上がり。

 

 世界は俺の手中にって言うわけ。

 

「なんでだよ!?」

 

「王の力を望んだからじゃないの?」

 

「出たな元凶の妖精!! 説明しろよ!」

 

「おまえが望んだから」

 

 ビシッと指をさされて、俺は言葉に詰まった。

 

「王様になりたいんだろ? ハーレムが築きたいんだろ? 美人に囲まれたいんだろ? 好き勝手したんだろ? ほら、望の世界だ。どうだ、世界の頂点にたった気分は? すべての欲望がおまえの望みのままだぞ、良かったなぁ」

 

 妖精はケタケタと笑っている、これが俺の望の果て、欲望の結果だって言うのか。

 

 そんなことない、俺は、そんなことを。

 

 否定したくて顔を上げれば、そこには俺の転生特典が雄たけびを上げていた。

 

 ああ、間違いなく俺はこれを望んでいたのか、そうか。

 

「では次だ」

 

 妖精が無慈悲に問いかける、とても楽しそうに、とても無邪気に、体から力が抜けるような俺に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴方の欲望はなんですか?』

 

 

 

 

 




 

 というわけで、完結です。

 書き始めた最初のきっかけは、『高すぎる欲望は身を滅ぼす』ってところから始まりました。

 神様転生って、つまりはそう言うことなのかなぁと。

 バッドエンド的な終わりですが、見方によっては彼はすべての欲望を叶えて生きているわけで、ハッピーエンドじゃないかなぁと。

 考え方、感じ方は人それぞれです。





目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。