さよならティターンズ (フォード2)
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第1章 0084年~0086年 登場人物設定

登場人物紹介(年齢は0084年当時)

 

①ハリソン・ライアン大尉(28)

イギリスのスウィンドン出身。 1年戦争時は連邦軍所属。0082年には幼なじみと結婚し、子供を1人もうけている。隊では唯一の既婚者だが、連邦軍の給料遅配に悩まされていた過去を持つ。ティターンズに入隊した理由は高い給料と安定した地位に魅力を感じたから。(一人称はわたし)

 

 

 

②ストラス・チャーリー中尉(26)

ドイツのツヴィッカウ出身。コロニー落としでシドニーに旅行していた両親を失った事からジオンを憎んでいる。1年戦争時に連邦軍に入隊、デラーズ紛争ではザクを2機撃墜する成果を上げている。ティターンズに入隊した理由もジオンに復讐したい一心からだった。(一人称はオレ)

 

 

 

③アストロ・ホセ少尉(22)

メキシコのエルモシージョ出身。0082年に連邦軍に入隊。デラーズ紛争以降はスペースコロニーの輸送警備とデブリ掃除任務を行っていた。ティターンズに入隊した理由は毎日の退屈な任務に飽き飽きし、刺激を求めていたから。(一人称は俺)

 

 

 

④アモン・マイク少尉(22)

アメリカのオハイオ州出身。実家はトウモロコシ農家。0082年に士官学校を卒業し、北米の連邦軍基地に配属される。基地ではジオンから押収したザクやゲルググのテストパイロットを担当。0084年には憧れを抱いていたティターンズに入隊する。現在はコンペイトウ基地所属。(一人称はぼく)

 

 

 

⑤ルーカス艦長(48)

サラミス改級『セイロン』の艦長を務めている。1年戦争時には、サラミス級の副長を務めていた過去を持つ。

 

 

⑥ソフィー副長(40)

サラミス改級『セイロン』の副長を務めている。艦長を支えるしっかりもの。時には艦長に、はきはきと意見を言うことも。

 

 

 

 

 

①エルガー・ハウゼン中尉(30)

サイド3のマハル出身。1年戦争から戦い続けているベテランパイロット。乗機は黒に塗装したゲルググで、ビームナギナタを活用した格闘戦を得意としている。帰るべき故郷を失った事をきっかけにジオン残党として活動を開始した。

 

 

 

②ユリユス・アーサ軍曹(24)

サイド3の2バンチ出身。乗機はリック・ドムⅡ。1年戦争終結時は月面都市『グラナダ』にいた。戦後も連邦軍に抵抗を続けるが部隊が壊滅したところをエルガーに助け出された。

 

 

③レイズナー・アルバトロ曹長(25)

サイド3の11バンチ出身。乗機はリック・ドムⅡ。1年戦争終結時はサイド3にいたが、ジオン共和国の姿勢に幻滅。共和国に不満を持つパイロットとしてエルガー率いる部隊に参加している。



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第1話 ぼくがティターンズに入隊?

宇宙世紀0083年の12月、ジオンの脅威を再認識した地球連邦軍は『ティターンズ』を結成した。ティターンズはジオン残党を掃討することを目的に作られた特殊部隊である。ティターンズは地球圏の治安維持を主な任務としている。




 マイク少尉はティターンズに憧れを抱く青年だった。彼の故郷は北アメリカで麦やトウモロコシを育てている農園にある。

 

 彼はジオンに対して強い復讐心を抱いていた。彼の故郷はデラーズ・フリートのコロニー落としによってメチャクチャになったからだ。マイクはジオンに復讐したいという一心で連邦軍に入った。

 

 宇宙世紀.0084年の6月、マイクは北米の連邦軍基地で整備中のジム改を眺めていた。その時、小隊のジャック・シュナイダー少尉が彼に声をかけた。

 

 茶髪で黒い瞳の青年が後ろを振り返った。身長は165cm以上はあり、がっちりとした体型をしている。

「マイク、マックス少佐がお前を呼んでいるぜ」

 

「マックス少佐が? 一体何の用だろうな」

 

 マイクは急いで少佐のもとに向かった。彼は少佐の部屋を3回ノックしてドアを開いた。彼は直立不動の姿勢で「マイク少尉です。部屋に入ります」と言った。

 

「入っていいぞ。さっさと入れ」

 

マイクは「失礼します」と言った後に45度のお辞儀をした。

 

「マックス少佐、お呼びでしょうか? 」

 

「マイク少尉、ジャブローから転属命令が来ている」

 

 命令書にはティターンズへの入隊を許可すると書いてあった。

「貴様は栄転だ。存分にジオン残党と戦ってこい」

 

 マイクは信じられないといった表情をしている。彼は嬉しく思う反面、小隊で一番の仲良しであるジャックとの別れを辛いと感じた。

 

 モビルスーツデッキではジャックが待っていた。ジャックがマイクに駆け寄って話しかけた。

「どうだった。また、少佐に文句でも言われたのか? 」

 

「ジャック、いい知らせと悪い知らせがある」

 

「まずはいい知らせから聞かせろよ」

 

「びっくりするなよ。ぼくはティターンズに入隊できるんだ」

 

「良かったじゃないか。俺はお前を誇りに思う」

 

「ありがとう。希望が実現して嬉しいよ」

 

 

 ジャックは悲しそうな表情をしている。士官学校からの知り合いであるマイクとの別れが惜しいのだろう。

「ジャックとはこれでさよならだな。テストパイロットとして腕を競いあってきたのに」

 

「俺もお前に追い付くぜ。ティターンズで待っていろよ」

 

「ジャックならすぐにでも追いつけるよ」

 

 

 

 UC.0084年の7月、マイク少尉はサラミス改級『セイロン』に所属する小隊に配属された。小隊には、メキシコ系の白人で黒髪のホセ中尉。黒髪で髭を生やしたチャーリー中尉。イギリス系の白人で金髪のライアン大尉がいた。

 

 

 マイクは新任の挨拶を小隊の先輩方にしている。 少尉は直立不動の姿勢をとり、挙手の敬礼をした。

「今日から配属になりました。アモン・マイク少尉です」

 

「私は小隊長のハリソン・ライアン大尉。今日から君も小隊の一員だ」

 

「オレはストラス・チャーリー中尉だ。お前が新任だな」

 

「俺はアストロ・ホセ少尉。仲良くいこうぜ」

 

 

 一通りの挨拶が終わった時、隊長のライアン大尉は今からブリーフィングを始めると発言した。隊長は申し訳なさそうな顔をしながら、マイクに任務の内容を語った。

 

「マイク少尉。着任早々すまないが警戒任務に当たってくれないか」

 

「了解しました。ライアン隊長」

 

「ライアン隊長、自分はティターンズの誇りにかけて任務を遂行します」

 

 

 そんな訳で少尉は着任してすぐに任務に出される破目になった。だが、少尉はまったく気にしてはいない。むしろ、その表情は喜んでいるといった表現がふさわしいだろう。

 

 黒いパイロットスーツに着替えたマイクは、ジムクゥエルに乗り込んだ。マイクはジムクゥエルをサラミス改のカタパルトに設置し、オペレーターから出る発進許可を待った。

 

《ジムクゥエル 発進どうぞ》

 

「アモン・マイク 行きます! 」

 

 

(2話に続く)

 



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第2話 初めての実戦

登場人物紹介(年齢は0084年当時)

ハリソン・ライアン大尉(28)
イギリスのスウィンドン出身


ストラス・チャーリー中尉(26)
ドイツのツヴィッカウ出身


アモン・マイク少尉(22)
アメリカのオハイオ州出身


アストロ・ホセ少尉(22)
メキシコのエルモシージョ出身



 ライアン小隊はサイド1付近の警戒任務に出かけた。チャーリーがモニターに映る機影を捉えた時にはもう遅かった。

 

「敵機発見。ザクが急速接近」

 

「チャーリー中尉、敵は何機いるんだ? 」

 

「敵は3機。識別信号はジオン公国で間違いありません」

 

「発砲を許可する。ジオン残党を殲滅しろ」

 

「了解、ジオン残党を掃討します」

 

 

 先頭のライアン大尉は右ペダルで加速、左ペダルで減速操作をしつつ、ザク F型に接近した。ライアンはザクの攻撃をシールドで防ぎ、ジムライフルを連射している。だが、ザクは巧みな操縦で攻撃をかわし続けた。

 

 マイクは隊長を援護しようとチャーリー中尉の前に出た。マイクは隊長を援護できない状況をもとがしいと感じていたのだ。

 

「マイク、お前は後ろで見学するんだな。まだ、ジムクゥエルに慣れていないだろう」

 

「くそっ 新入りだからってバカにしやがって」

 

「マイク少尉 聞こえているぞ」

 

「はっ 失言でした」

 

 ライアン隊長はリック・ドムにジムライフルを連射。リックドムは90mm弾の直撃を浴び、丸い火の玉に包まれた。

 

 チャーリー中尉はザクにドックファイトを仕掛けていた。ジムとザクがマシンガンを撃ち合っている。チャーリーは一気に間合いを詰めてザクの左腕を破壊した。

 

 ライアン隊長は接触回線でチャーリーに指示した。隊長は中尉を信用しているからこそ背中を任せたのだ。

「後ろのザクはチャーリー中尉に任せたぞ」

 

「了解しました。オレはザクを潰します」

 

 

 

 その頃、マイクは後方から迫るザクに恐怖心を抱いていた。恐怖心に駆られたマイクは、片腕のザクにジムライフルを連射している。彼は汗がびっしょりと濡れた手でトリガーを引いていた。

 

 マイクはオープン回線で「こっちに来るな。来るな」と叫んでいた。この戦闘がマイクにとっては初めての実戦だった。

 

 

 チャーリー中尉はデラーズ紛争で活躍したパイロットだ。中尉はマイクを厳しく叱った。

「マイク少尉、気合いを見せろ。気合いを」

 

「お前がザクを牽制しろ。オレがザクを落とす」

 

「わかりました。やってみます」

 

 チャーリーはマイクの前に出て片腕のザクの注意を引いた。チャーリーはモニターの照準環をザクに合わせ、ザクの胴体に90mm弾を叩き込んだ。

 

 コロニー落としで家族を失ったチャーリー中尉はジオンを深く憎んでいる。復讐心が彼を戦いに駆り立てていた。中尉はザクを撃墜した瞬間に「ジオンめ、ざまあみやがれ! 」と叫んだ。

 

 マイクは、わなわなと焦った声で言った。コックピットには弾切れの警告音が鳴り響いている。

 

「弾切れだと。もう、30発撃ち尽くしたのか」

 

 シールドの裏にある予備のマガジンをマニピュレーターで掴んだ時、チャーリー中尉の怒鳴り声が聞こえた。

「マイク、前をしっかり見ろ。ザクがいるぞ」

 

「しまった。ザクに先手を取られた! 」

 

 マイクの前にはヒートホークを手に握ったザクがいた。マイクはメインモニターに映し出されたザクに恐怖心を抱いた。大きく見開いたモノアイは、まるで自分をにらんでいるように見えたのだ。

 

 マイクはシールドを投げ捨て、右手に握ったビームサーベルでザクを何回も斬りつけた。無我夢中の状態に陥ったマイクは、ヒートホークごとザクを叩き斬ったのだ。

 

 

 チャーリーが接触回線で話しかけた。中尉はマイクの土壇場での思い切りに感心したようだ。

 

「マイク、すごいじゃないか。やればできるな」

 

「チャーリー中尉が援護してくれたからです」

 

「今度 オレがお前を特訓してやる。覚悟しとけよ」

 

 マイクは笑みを浮かべながらガッツポースをした。彼は「ジム改とは違う。ジムクゥエルは機動力がいい」と自機の性能をほめた。

 

 

 



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第3話 少尉いびりは嫌だ

不死身の小隊編は、第3話から第6話まで続きます。


 デラーズ紛争はジオン残党の活動が活発化するきっかけになった。ジオン残党は、4月には月面都市「エアーズ市」での労働争議。9月以前には気化弾頭によるジオン共和国へのテロ未遂行為「シルバーランス事件」を引き起こしている。

 

 サラミス改級『セイロン』はアレキサンドリア級『アル・ギザ』の横に並んだ。彼らは無事に合流ポイントにたどり着けたのだ。

 

 アレキサンドリア級『アル・ギザ』では艦長がミーティングを始めていた。ミーティングルームにはパイロットと乗組員を含めて20人以上が集まっている。

 

『アル・ギサ』の艦長が作戦内容を説明している。

 

「サイド1にある廃棄コロニーにジオン残党が出入りしているという情報があった。これは、付近を航行していた民間船から得た情報だが信頼できる情報だろう。我々は廃コロニーの調査と残党勢力の鎮圧を行う」

 

「戦力の配置だが、エリアス大尉の第7小隊は後方支援を頼む。ベイト大尉の第6小隊とライアン小隊は廃コロニー内部の調査が任務だ。ジオン残党を見つければ攻撃しても構わん。私が許可する」

 

 

 艦長によるミーティングが終わった。人々がミーティングルームを出ていく。ライアン小隊も部屋を退出しようと席を立った時、第6小隊に所属している中尉が2人の少尉に声をかけた。

 

 彼らに声をかけてきた中尉は袖をまくり、胸元まで服をはだけていた。顔は30歳を越えたぐらいで口髭を生やしているのが特徴だなとマイクは思った。

 

 モンシアという名前の中尉が言った。

「少尉が2人混じっているじゃないか」

 

「俺達はガキ共のお守りをさせられるのかよ」

 

 ベイトと呼ばれた大尉がモンシア中尉を止めた。

「まぁ、落ち着けよ。モンシア」

 

「彼らもティターンズの一員だ」

 

 士官学校を卒業した軍人は叩き上げから妬まれると先輩から聞いていたが、これほどとは思わなかった。マイクは感情を顔に出さないように口をむっと閉じた。

 

 ライアン大尉が2人の少尉に退席をうながした。2人はミーティングルームから出ていった。

「ホセ少尉とマイク少尉は早く母艦に戻れ」

 

「はっ 了解しました」

 

 申し訳なさそうな表情のアデル中尉がライアン大尉に謝った。

「うちのモンシアがすみません。彼は腕は良いんですが口が悪くて」

 

 

 不死身の第4小隊は、1年戦争で戦死者を1人も出さずに生き残ったことで知られている。デラーズ紛争でもジムカスタムに乗って活躍しており、紛争後はティターンズに入隊したほどの腕前を持つ凄腕のパイロットだ。

 

 ライアン大尉はホセとマイクをなぐさめた。

「2人とも気にするな。バカにされたら見返してやればいい」

 

「私は1年戦争を戦った世代だ。1年戦争で誰も欠けずに生き残った小隊があると聞いたことがある」

 

「えっ、ライアン隊長は1年戦争を戦った過去が」

 

「マイク、私はジム後期型に乗ってジオンと戦った。ソロモンとア・バオア・クーは地獄そのものだったよ。大勢の仲間が死んだ」

 

 

(第4話に続く)



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第4話 不死身と呼ばれたやつ

 ライアン小隊は調査のために廃コロニーに向かった。サラミス改級『セイロン』からは4機、アレキサンドリア級『アル・ギサ』から3機のジムクゥエルが発進している。

 

 廃コロニーの入り口からザクとリック・ドムが姿を表した。 廃コロニーがジオン残党の拠点になっているという情報はどうやら本当だったようだ。

 

 ザクは120mmのザクマシンガン、リック・ドムは90mmのMMP-80マシンガンを装備していた。ジオンはライフルの銃口をこちらに向けており、敵対意識がある事は明らかだ。

 

 ライアン小隊の面々にも緊張感が高まった。マイクとホセが緊張して顔が強ばっていたのに対し、ベテランのライアンとチャーリーは余裕がある表情をしていた。

 

 マイクは思わず言葉を口走ってしまった。

「うあっ、敵だ。ジオンがいるぞ」

 

「マイク、それぐらいでうろたえるな! 」

 

「チャーリー中尉、以後は気をつけます」

 

 

 モンシアはジオン残党が動かない事にしびれを切らした。彼はマイクとホセに命令した。

「お前ら、スペースノイド共にぶっぱなせ!」

 

「了解しました。モンシア中尉」

 

 マイクはコックピットの中で「まだ、攻撃が当たる距離ではないのに」と文句を言った。

 

「これは命令だ。わかっているだろうな。ホセ少尉は了解したぞ」

 

「マイク少尉、モンシア中尉の指示に従います」

 

 マイクはモンシア中尉の要求に答え、ジム2用のビームライフルを放った。彼はモンシア中尉の意図が分からないという理由で不服の態度を示したのだ。

 

 

 モンシア中尉は「覚悟しやがれ、ジオン共」と言いながらジオン残党に突っ込んで行った。ジオン残党は、まるでモンシアを誘い込むようにコロニーの反対側に移動を開始した。

 

 モンシア中尉は一人でジオン相手に先行している。アデルとベイトはモンシアを引き留めようとしたが無駄だった。

「逃がすかよ。宇宙人ども」

 

「ジオンなんていうのは、もう時代遅れなんだよ! 」

 

 

 第6小隊のベイト隊長はモンシアの独断行動に呆れてしまった。

「モンシア、敵の作戦かも知れないぜ」

 

「あの人に学習機能はないんでしょうか? 」

 

 

 

 

ライアン大尉はチャーリー中尉に質問した。ライアン隊長は慎重な性格で知られている。

「チャーリー、奴らはジオン残党なのか?」

 

「大尉、認識コードからもジオンである事が明らかです」

 

 チャーリー中尉が敵機確認の報告をした。

「ザク F型を3機、リック・ドムを2機確認。残党は1時の方向にいる」

 

 ライアン大尉が小隊にすばやく指示を出した。戦いでは指揮官の指示が部下の命を左右する。指揮官のミスで部下が危険な状況に陥る事は少なくない。

「了解。小隊は前面の敵に集中しろ。各機散開」

 

 4機のジムクゥエルは一斉に散開した。マイクは、ザクにジムライフルを連射しているがいっこうに当たらない。ザクは左右に軌道を変えながら攻撃をかわしている。

 

 マイクは、ザクの乗り手は1年戦争を生き残ったパイロットだろうかと考えた。その証拠にザクはジグザグに機体を動かしながら攻撃を避けていた。

 

 ライアン大尉がマイクに助言を送った。

「あれはチェーンアップしたザクだな。見ればわかる」

 

「ザクが動く方向を予想して撃て。お前ならやればできる」

 

 マイクは右ペダルを踏みこみ、スラスターを吹かした。マイクはジムライフルを連射モードに切り替え、弾がなくなるまで連射した。90mm弾はザクの胴体に命中し、ザクは爆散した。

 

 マイクはコックピットの中で残念がった。

「腕の良いパイロットだったな。出てこなければやられなかったのに」

 

 

 チャーリー中尉は部下の成長を嬉しく思った。オレがシミュレータと模擬戦で鍛えたからだと自画自賛した。

「マイク、良くやったぞ。その調子だ」

 

「はっ この調子で尽力します」

 

 

 

 一方、ベイト隊長率いる第6小隊はリック・ドムと交戦していた。2機のリック・ドムは機動力を生かして小隊と戦っている。ジムクゥエルはジム・ライフルを撃って相手の出方を伺っていた。

 

 ベイト大尉が後ろにつかれたぞと注意した。

「モンシア、後ろにドムがいるぞ」

 

「んもっ、当たるかよ」

 

 リック・ドムはMMP-80マシンガンから90mm弾をばらまいている。モンシア中尉は、ジムクゥエルを半回転させて攻撃をかわし、ジム・ライフルを連射してリック・ドムを破壊した。

 

 モンシア中尉はリック・ドムを相手にドックファイトに入った。リック・ドムが8時の方向でマシンガンを撃ち、ジムクゥエルが2時の方向でジム・ライフルを発射している。

 

 

 その時、廃コロニーから緑色に塗装されたチベ級巡洋艦が姿を表した。チベ級はアレキサンドリア級とサラミス改級に向けてメガ粒子砲を発射している。連邦軍の動きを牽制しているようだ。

 

 チャーリー中尉が言葉をつまらせながら言った。その表情には汗が見られる。

「巡洋艦がいるとは聞いてないぞ。情報部め」

 

「それにしてもでかい船だ。そして火力もある」

 

 

 サラミス改級からライアン小隊に通信が入った。オペレーターは繰り返し小隊に帰還を呼び掛けている。

 

《モビルスーツは補給のために帰還せよ。繰り返す。補給のために帰還せよ》

 

 

 ライアン隊長は母艦に「帰投する」と返答した。そして部下にも今後の予定を伝えた。

 

「モビルスーツは補給のために帰還だ。我々はチベ級を追撃する」

 

「大尉、我々は追撃戦に移行するのか? 」

 

「中尉、そういうことだ。艦内で腹ごしらえをしておけ」

 

 

(5話に続く)



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第5話 ティターンズ VS ジオン残党

 アレキサンドリア級『アル・ギザ』とサラミス改級『セイロン』は、暗礁空域に逃げ込んだジオン残党を追跡している。

 

 サラミス改級『セイロン』は、アレキサンドリア級よりも先行して船を進めていた。戦艦やモビルスーツの残骸が多い暗礁地域での捜索は簡単にはいかない。

 

「艦長、チベ級重巡洋艦が反転しました。速度を維持したまま本艦に接近しています」

 

「オペレーター、チベ級を視認しているのか?」

 

「いえ、まだチベ級を視認できていません」

 

 

 ルーカス艦長はほほえんだ。いよいよ決戦の時が来たと確信したからだ。

「追いかける手間が省けたな。打って出るか」

 

「ECMを最大発信。セーフティロック解除」

 

 オペレーターが艦長に顔を向けた。艦長は次々に指示を出している。

「残り1分で有効射程距離に入ります」

 

「チベ級がいる方向にビームを撃て。砲術科は腕の見せ所だぞ」

 

 

 オペレーターが艦長に現状を報告した。サラミスとチベは互いにビーム砲を撃ち合っている。

「チベ級がミサイル発射、12発も来ます」

 

「ええい、対空機銃を撃て。弾幕を張れ」

 

「撃たれたら撃ち返せ。反撃だ! 」

 

 乗組員はブリッジ員に話しかけていた。その顔には余裕が感じられず、焦りの表情を見せている。

「軽巡洋艦が重巡洋艦相手に戦うのか」

 

「軽トラにダンプがぶつかるようなものだな」

 

「きっとろくな結果に成らないぞ」

 

 チベ級から放たれたミサイルがサラミスの右舷に命中した。ブリッジ員も体を大きく揺すられている。サラミス改級は第2弾のミサイルを回避しながら、メガ粒子砲を30秒ごとに連射している。

 

 ルーカス艦長はジオンの腕前に感心していた。艦長は決して慌てずに落ち着いている。

 

「ジオンの亡霊もなかなかやるらしいな」

 

「だが、ミサイル1発で軽巡洋艦は沈まんよ」

 

「副長、被弾状況を知らせろ。報告は短く簡潔に」

 

 

 副長が被弾状況を艦長に報告している。艦長は少しも焦ってはいない。艦長はずれた帽子を被り直した。

 

「サラミスの右舷に被弾。被害状況は微小です」

 

「被害状況を確認した。空気漏れはないか? 」

 

「艦内の空気漏れはありません」

 

「ところで艦長、味方の到着を待たないのですか? 」

 

「状況は本艦に不利だな。サラミスでは火力が足らない」

 

「副長、アル・ギザに応援を求めよう。」

 

 

 

 艦長はアレキサンドリア級『アル・ギザ』に助けを求めようと行動を起こした。

「通信長、信号弾を用意してくれ。アル・ギザに本艦の場所を知らせる」

 

「それと同時にレーザー通信の用意も頼む。回線開け」

 

 

 艦長は『アル・ギザ』にレーザー通信を繋いだ。その左手は電話を強く握りしめている。

 

「こちら、サラミスのルーカス艦長だ。アル・ギザの艦長に通信を繋いでくれ」

 

「私がアル・ギザの艦長だ。用件は何だ?」

 

「ジオンから攻撃を受けている。救援を依頼したい」

 

「了解した。モビルスーツをそちらに派遣する。ベイト大尉率いる第6小隊を救援に行かせよう」

 

「艦長 救援に感謝する。貴艦の武運を祈る」

 

 

(第6話に続く)

 



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第6話 モンシアがジムでやってくる

 サラミス改級『セイロン』は艦に近づくジオンのモビルスーツに手を焼いていた。ライアン隊長が2人に作戦内容を指示している。

「ホセとチャーリーはモビルスーツの足止めをしろ」

 

「ティターンズの一員ならやってみせろ」

 

 マイクとホセは自信ありげに答えた。

「了解しました。敵の足を止めて見せます」

 

「了解。スペースノイドには負けませんよ」

 

 マイクが接触回線でホセにしょんぼりと文句を言った。マイクはチューブから口にコーヒーを吸い込んだ。

「やれやれ。ぼくは腹が減ったよ。ハンバーガーを食べたいな」

 

「俺もマグダニエルのバーガーが食べたいぜ」

 

 

 ホセとマイクはジオンの攻撃をかわすことが精一杯。2人は2機のザクF型と1機のリック・ドムを相手に戦っているが、ジオン残党の速い動きに翻弄されている。

 

 マイクがおろおろとした声でつぶやいた。マイクには気の弱い所があった。

「ホセ、ドムにシールドをやられた」

 

「マイク、シールドぐらいどうでもなる」

 

「それよりもリック・ドムを何とかしないとな」

 

「強力なバズーカだ。当たらないようにしろよ」

 

 

 

 その時、ジムクゥエルのセンサーが3機の機影を捉えた。2人は第6小隊が助けに来てくれたと知って安心した。マイクの顔には安堵の表情が浮かんでいる。ホセはほっと一息ついた。

 

 ベイト大尉がライアン大尉に言った。

「第6小隊がモビルスーツを叩きます。母艦の護衛に回ってください」

 

「ベイト大尉、ジオンのモビルスーツは第6小隊に任せます」

 

 

 第6小隊が来てライアン小隊は一気に勢いづいた。ライアンとチャーリーはハイパー・バズーカをチベ級に放っている。2人は対空放火の嵐を気にせずにハイパー・バズーカから砲弾を打ち込んだ。

 

 ライアンが船の弱点を攻撃するように指示した。

「チャーリー、エンジンの方に回り込め」

 

 チャーリー中尉は自身を鼓舞した。

「対空放火が怖くて戦争ができるか。オレがティターンズなんだぞ」

 

 

 ベイトはビームサーベルでザクに斬りかかった。ザクは左に回避行動を取ったが、モンシアはそのチャンスを逃さずに、後ろからビームサーベルで胴体をぐっさりと貫いた。

 

 アデルはザクが振りかざしたヒートホークをシールドで受け止めた。アデルはジムライフルから90mm弾をザクに叩き込んだ。もろに衝撃を受けたザクは頭とシールドが吹っ飛んでいる。

 

 ジムスナイパー2は、手にL-9ビームライフルを構えた。ジムのパイロットは望遠スコープの中央に目標を捉えてトリガーを引いた。ビームはリック・ドムの胴体を真っ二つに貫いた。

 

 ジムスナイパー2の2番機は、L-9ビームライフルのバイポッド(二脚)を岩に固定した。パイロットは息を大きく吸って呼吸を落ち着かせてから、チベ級のブリッジにビームを叩き込んだ。

 

 

 ライアン隊長が全員の無事を確認して言った。

「敵の壊滅を確認した。センサーにも反応なし」

 

「これより小隊はサラミスに帰還する」

 

 4機のジムクゥエルはサラミス改級『セイロン』に次々と着艦した。マイクは任務が終わった達成感を感じていた。ホセはジオンとの戦いが終わってほっとした表情を見せている。

 

 



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第7話 小惑星基地 攻撃命令

第7話から第9話まで続きます


 宇宙世紀.0085年3月、ティターンズはジオン残党が拠点にしている小惑星基地の攻略を開始した。作戦には3隻のサラミス改級『セイロン』と『ダッチハーバー』と『セントルシア』が参加している。

 

 艦隊が持つモビルスーツは合計で10機と言ったところだ。その内訳はジムクゥエルが5機、ジムキャノンⅡが2機、ハイザック先行量産型が2機、ザク強行偵察型が1機という編成になっていた。

 

 サラミス級から発進したザク強行偵察型は、偵察用カメラを腰と、右肩と左肩に設置しており、右手にはカメラ・ガンを持っている。

 

 ザク偵察型を見たチャーリー中尉がけらけらと笑っている。中尉は皮肉を込めた口調でこう言った。

 

「ティターンズがザクを使うとは滑稽だな」

 

「でも、ザクは良いモビルスーツですよ」

 

「マイクは自分の意見を言うようになったな。良いことだ」

 

 

 ホセはハイザックに強い嫌悪感を示していた。ジオンの象徴であるザクが気に入らないようだ。

 

「随分とジオン色が濃いモビルスーツだが。俺はハイザックに乗るのは遠慮するよ。気に入らないね」

 

「ホセ、実を言うと俺はザクに乗った事があるんだ」

 

「マイク、それは初耳だ。知らなかったぜ」

 

 

 

 

 サラミス改級『セイロン』のルーカス艦長はマイクを手に取った。艦長は久しぶりの実戦にわくわくしている。

「総員、第2戦闘配備から第1戦闘配備へ移行」

 

「艦隊は横一文字隊形に移動。微速前進」

 

 艦内のふいんきも急を告げている。戦闘開始の放送が繰り返し流れているからだ。艦のクルーは急いで持ち場に向けて走っている。

《第1戦闘配備。繰り返す、第1戦闘配備》

 

「各員は持ち場に急行するように。パイロット」

 

 

 ブリッジの乗組員が急いで艦長に報告した。小惑星を目前にして敵艦を発見したのだ。

「10時の方向にムサイを2隻、ザンジバル級を1隻確認」

 

「艦の進路変更、10時の方向に艦首を向けろ」

 

 砲雷科でも敵艦発見の連絡を受けた。砲雷長が大きな声で言った。

「ムサイにビーム砲をお見舞いしてやれ」

 

「2連装メガ粒子砲 1番と2番を30秒ごとに発射」

 

「1番 2番を30秒ごとに発射」(復唱)

 

「ミサイル全門装填。発射用意」

 

 サラミス改級『セイロン』はムサイの左右エンジンを破損させた。熱核融合エンジンの誘爆によりムサイは轟沈。爆発する光がブリッジからも見えている。

 

「ムサイの撃沈を確認。ムサイが沈みます」

 

 たちまち『セイロン』が集中砲火を浴びる破目になった。ブリッジの横をビームが通り過ぎる程の砲撃を受けている。ブリッジにいる乗組員の表情にも焦りが見える。

「ザンジバルとムサイの抵抗激しく、前進困難」

 

「ダッチハーバー被弾。艦隊から離脱します」

 

 

 サラミス改級『セイロン』はムサイ級のビームに被弾した。被弾した右舷では乗組員が汗をかいて隔壁閉鎖と消火剤防御を行っている。誰もが被害を最小限に食い止めようと必死だった。

 

 ルーカス艦長は乗組員に現状を問い合わせた。艦長は冷や汗をかいている。

「オペレーター、被害状況を知らせろ?」

 

「右舷に被弾しましたが、まだ戦えます」

 

「ビーム砲を一斉射だ。ムサイに応射」

 

「了解。ムサイに応射します」

 

 

 その時、オペレーターがレーダーに急速接近する機体に気づいた。オペレーターは慌てた表情で敵機発見の報告をした。

 

「右舷からモビルスーツが4機接近。機種はリック・ドム」

 

「対空機銃で敵モビルスーツを攻撃。弾幕を張れ」

 

「右舷の弾幕が薄いぞ。何をやっているんだ」

 

 

「オペレーター、ジムクゥエルに敵を迎え撃つように伝えろ」

 

「了解。彼らに敵機接近。直ちに攻撃しろと伝えます」

 

「追伸、艦長は非常に怒っていると追加するように」

 

 

 

 

(8話に続く)



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第8話 あいつに勝ちたい

 ティターンズは3隻のサラミス級で小惑星基地を攻略する作戦を開始した。ライアン小隊は『セイロン』に近づく敵モビルスーツの排除を試みている。

 

 ライアン隊長は頭をかきながら小隊のメンバーに「艦長は非常に怒っている。後で私が弁明しておく」と言った。

 

 

 チャーリーはザク偵察型から送られた情報を分析していた。敵の数はティターンズを少し上回っている。

「敵さんの数は全部で13機。ザクが4機、リック・ドムが8機、ゲルググが1機か」

 

 

 ライアン隊長は黒いゲルググとマシンガンの撃ち合いをやっていた。残党のなかでも、1機しかいないゲルググは攻撃をあっさりと避けている。

 

 

ゲルググのパイロットがライアン隊長に向けて言った。口元はにやけているが目は笑っていない。

「ぬるい。ぬるい。動きが読めるぞっ! 」

 

 

 マイクはライアン隊長を援護しようとゲルググに接近した。1年戦争からのベテランである隊長が苦戦している。彼はゲルググのパイロットが凄腕に違いないと確信した。

 

 ゲルググはビーム・ナギナタでジムライフルを切断した。マイクは左手に握ったビームサーベルを素早く降り下ろしたが、ゲルググはヒートナギナタでビームサーベルを受け止めている。

 

「しまった。ジムライフルが! 」

 

「どうした。貴様の実力はそんなものか? もっと楽しませてくれよ」

 

 マイクは技量が相手より劣っていることを強く自覚した。ゲルググのパイロットが強いことを身を持って実感したのだ。彼は「ここでやられるわけにはいかない」と意識を集中させた。

 

 

 ゲルググが接触回線を使って通信を開いた。黒いモビルスーツからはしゃいだ声が聞こえる。

「私はスペースノイドのために戦っている。貴様はどうだ? 」

 

 マイクはティターンズの誇りを頭に思い浮かべた。彼は自身の行動が正義だと信じて疑っていなかった。

マイクは「ぼくは地球の平和と治安を守るために戦っている」と堂々と胸を張って言った。

 

 

 ゲルググのパイロットはマイクの考えにガッカリした。思想教育で教えられるような陳腐な内容を言っているだけだと思ったのだ。

「フハハハ、貴様には強い信念がないんだよ。強い信念が」

 

「それは貴様の考えか? 違うだろう。上から押し付けられた思想を我が物顔で語るのか」

 

「スペースノイドにアースノイドの何がわかるって言うんだ! 」

 

「私は貴様と違って強い信念に基づいて行動している。己の正義を信じて戦っているからな」

 

 

 マイクは瞬間湯沸し器状態になった。地球にコロニーを落下させたジオンの言葉に激昂した。

「なんだと、それがテロリストの言う言葉か! 」

 

「この私をテロリスト呼ばりか。ふざけるな小僧」

 

「このイカレポンチ野郎が。えらそうに! 」

 

 

 その時、ジムキャノンⅡが2機のモビルスーツに向けてビームを盛んに連射した。ゲルググのパイロットは蹴りを入れてジムクゥエルを突き放した。

 

「私はハウゼン・エルガー。貴様を倒す敵だ」

 

「ぼくはアモン・マイクだ。覚えておけ」

 

 マイクはコックピットのモニターを拳で叩いた。

「ぼくはあいつに勝ちたい、勝ちたいんだ。ぼくは強くなりたい」と悔しがった。

 

 

 2機のリック・ドムⅡがゲルググを迎えに来た。いずれも90mmマシンガンを装備している。

「中尉、ザンジバルに戻れなくなりますよ」

 

「すまんな。レイズナー、ユリユス」

 

「ザンジバルに撤収する。撤収だ」

 

 

 ライアン隊長がマイクに声をかけた。彼は強敵と戦った部下に励ましの言葉をかけたかった。

 

「お前は充分に頑張ったよ。援護に感謝する」

 

「マイクは母艦に戻って補給を受けろ。Eパック式のビームライフルを取ってこい」

 

 マイクはしょんぼりした声で「了解しました。ライアン隊長」と答えた。

 

 

(9話に続く)



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第9話 ジオン残党を叩け

 1機のジムクゥエルが3機のモビルスーツと戦っていた。ザク FZ型はヒートホークでクゥエルのコックピットを貫いた。ジムのパイロットは「うあっー」と断末魔の叫びをあげている。

 

 ライアン隊長はビームサーベルを振った。前進を指示するサインだ。ライアン小隊はムサイを守る3機のモビルスーツに突撃した。

 

 

 チャーリー中尉はザクと交戦中。中尉は右や左へ機体を動かしながら、右手に握ったビームサーベルでザクF2型の胴体を上下真っ二つに切り裂いた。

 

 マイクは2機のリック・ドムを相手に戦っている。彼はリック・ドムの右腕に1発、コックピットにとどめの1発を放ってドムを1機撃破した。しかし、2機目のドムが放ったジャイアントバズーカに右足を破壊されてしまった。

 

 マイクは声をあげて叫んだ。ドムの奇襲にびびったのだ。

 

「隊長、右足をやられました」

 

「なにぃ コックピットに直撃を食らったのか?」

 

「違います。モビルスーツの右足です」

 

「おいおい。びっくりさせないでくれよ」

 

 

 マイクはリック・ドムを牽制するためにEパック式ビームライフルを撃ち続けた。モニターに表示されるエネルギー残量は少なくなっていく。だが、リック・ドムは攻撃をやめない。

 

「残弾は2発しかない。それにしてもXBR-M84aは使いやすいな」

 

 ホセがジムライフルをリック・ドムに連射した。マイクを助けに来たのだ。マイクはホセに「感謝するよ」と言った。ホセは「お礼は飯をおごってからな」と返している。マイクは笑いながら了承した。

 

 

 その頃、ザク強行偵察型は隕石に隠れて偵察を続けていた。だが、ジオン残党に発見され、その場から尻尾を巻いて逃げていた。ザク偵察型には武装と言えるものが何もないのだ。

 

「こちらズール、敵に発見された。救援を求む」

 

「ホテルからズールへ、了解。急行する」

 

 護衛のハイザックは、母艦の『セントルシア』にザク偵察型を帰還させようと必死だった。なにしろ、偵察用モビルスーツは数が少なく貴重だ。ハイザックはザク偵察型の手をつかみ、母艦までザクを引っ張った。

 

 ジオン残党はハイザックの見た目にむかついていた。その外見はジオンの名機ザクを連想させる。残党はティターンズに聞こえるようにオープン回線でハイザックをけなしていた。

 

「ザクはジオンの誇りだ。その誇りを汚すとはな」

 

「その姿が気にいらんのだ。連邦のザクもどきが」

 

 

 

 ハイザックのパイロットもオープン回線で負けじと言い返した。

「ハイザックをバカにしやがって。乗りたくて乗っているわけじゃねぇんだぞ」

 

「負け惜しみを言いやがって。むかつく野郎だぜ」

 

 

 状況の不利を悟ったのだろうか。リック・ドムとザクが撤退を始めた。2機のジムキャノンⅡは、背中を向けて宙域から離脱する敵にキャノン砲からビームを浴びせている。

 

 ジオン残党はムサイとサンジバルにモビルスーツを収容し、最大戦速で宙域を離脱した。ティターンズの艦隊は後を追おうともしなかった。

 

 

 

 マイクはライアン隊長に悔しそうな表情で突っかかった。ジオンをみすみす逃すなど少尉には耐えられなかったのだ。

「なぜ、ジオン残党の後を追わないのですか? 」

 

「マイク、追い詰められたネズミはネコを噛むという話を知っているか? 」

 

「いえ、知りません。袋のネズミは追いかけるなということですか? 」

 

「ネズミは必死に生き残ろうするからな。手痛い反撃を食らいたくないだろう」

 

 

 



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第10話 ハイザック いらないよ

 UC.0085年の7月、コンペイトウ基地でチャーリー中尉がライアン大尉に話しかけていた。チャーリーはイタリア産ブランデー「WILDHAWK」を飲みながらガラス越しに宇宙港を眺めている。

 

「それにしてもあいつは真面目すぎるな」

 

「隊長、マイクのことですか? 」

 

「そうだ。ジョークの一つも言えんとは」

 

チャーリーがあきれた顔で言った。

「おまけに酒もタバコもしないときた。一体、やつは何を楽しみに生きているんだ? 」

 

「チャーリー、今の若者は私達とは違うんだ。彼らを理解しないといけないな」

 

 チャーリー中尉の楽しみは酒、タバコだった。

 

「隊長、今日は船が少ないように見えますが」

 

「中尉、今日はサイド1で大規模な作戦が行われるらしいな」

 

「今日はアレキサンドリア級もいないようで」

 

「アスワンは、月から来る輸送艦の護衛に行ったよ」

 

 

 

 マイクとホセは基地にある食堂に入った。数人の連邦軍兵士がさっと席を立って食堂を出ていった。他の連邦軍の兵士もこそこそと耳打ちをしている。マイクは嫌な空気が充満していると感じた。

 

 マイクがホセにしょんぼりとした声で言った。

「俺達は避けてられているのかな」

 

「エリートを嫌っているんだぜ。あれは」

 

「まったく、はっきりと言ってほしいよ」

 

 

 マイクはホセに別の話題を降った。場の空気を変えるために必要だったからだ。互いに興味があるモビルスーツの話題を持ちかけた。

「コンペイ島基地にジム2は来ないのか? 」

 

「まだ、この辺境の基地には来ないらしいぜ」

 

「マイク、連邦軍がジムクゥエルを使い始めたぜ。連邦軍のやつに聞いたら訓練に使うと言っていたが」

 

「ああ、ジムカラーは明るい感じでイメージが良いな。赤と白の塗装がジムにはお似合いだよ」

 

 

 マイクは小惑星での戦闘でハイザックを見たことを思い出した。ハイザックは強烈な印象を小隊に残していた。マイクはホセに言葉の真意を問いただした。

 

「ホセ、ハイザックに乗るのが嫌なのか? 」

 

「あんなザクもどきに乗りたがるものかよ。俺は嫌だぜ。まるで嫌がらせじゃないか」

 

「ぼくも連邦がザクを使うなんて信じられないよ」

 

 

 ライアン隊長がにやにやしながら近づいてきた。

「ホセはハイザックに乗りたくないらしいな」

 

「これはライアン隊長。失礼しました」

 

「いや、敬礼はよせ。座ったままでいい」

 

「ハイザックの話か。あれがそんなに嫌なのか? 」

 

 

 ホセは隊長に向かって単刀直入に質問した。

「ライアン隊長はハイザックをどう思いますか? 」

 

「私は性能さえ良ければ何でもいいと思っている」

 

「ハイザックは連邦軍も導入する事が決定しているからな。決して性能が悪いモビルスーツではないだろう」

 

 

 ホセはチャーリー中尉にも話をふった。

「チャーリー中尉はハイザックをどう思います」

 

「オレか、オレはティターンズがザクを使うのは気に入らないな。できるならジムクゥエルに乗り続けたい」

 

ライアンはチャーリーの肩を叩いた。

「今度、お偉いさんにジムクゥエルの近代化改修を申請してみるか。認められるかどうかはわからないが」

 



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第11話 模擬戦 ひたすら訓練

 宇宙世紀.0085年10月、コンペイトウ基地のルンガ沖

 

 サラミス改級のブリッジではライアン隊長が模擬戦の様子を遠くから見守っていた。

 

《模擬戦のルールは簡単。先に相手をロックオンした方が勝ちだ》

 

《状況開始。模擬戦を存分に楽しめよ》

 

 

 Eパック式ビームライフルを装備した3機のジムクゥエルが模擬戦を繰り広げていた。このビームライフルは、ガンダムTR-1ヘイズル、コンペイトウ所属のジムクゥエルが使用している事で知られている。

 

 チャーリー中尉はマイクの後ろにピッタリついた。マイクを照準環(スコープターゲット)の中央に捉えていた。

「後ろを取ったぞ。どうだマイク」

 

 マイクは機体を急速反転させた。マイクはフットペダルを踏み込み、機体を急加速させた。

「ロックオンさせてたまるか! 」

 

 ホセ少尉は、不用意にもチャーリー中尉の進行方向に姿を現してしまった。チャーリー中尉は即座にロックオン、撃墜判定を下した。

 

「ホセ少尉 うかつだぞ。ちゃんとシミュレータで訓練したのか? 」

 

「はい。言われなくたって訓練してますよ」

 

「まったく、口うるさい上官だぜ。口をチャックしてくれよ」

 

「少尉、無駄なおしゃべりが多いぞ。無駄な動きもな」

 

 

 

 マイクは岩の陰に入ってチャーリー中尉をやり過ごした。

「やっぱり デブリに入ってやりすごそうか」

 

無線からチャーリー中尉の怒鳴る声が聞こえた。

「やり過ごそうなんて甘い考えだぞ」

 

「バン。お前はこの瞬間に死んだ」

 

 

 

 

 訓練から帰還後、マイクは愛機ジムクゥエルの調子をスパナを持つ女性メカニックに聞いていた。

 

「モビルスーツの調子はどう? 」

 

「悪くないわ。調子いいぐらいよ」

 

 アレクサ軍曹は隊でも気の強い性格で知られている、歳は20代、身長は170cm以上で赤みがかかった髪が特徴の女性だ。

 

「チャーリー中尉にこっぴどく絞られたようね」

 

「ほら、あなたはすぐに顔に表情が出る。むすっとしない」

 

「はい、はい。アレクサの言うことはよくわかりましたよ」

 

 

 

 

 

 ホセはアナハイム製の赤い自販機でコーラを3本買った。ホセはマイクにコーラを投げてよこした。

 

「ほらよ。俺のおごりだぜ。感謝しろよ」

 

 マイクは投げられたコーラを無事にキャッチした。

「わざわざ買ってきてくれたのか。感謝するよ」

 

「次の模擬戦では絶対負けねぇからな」

 

「望むところだ。負けられない戦いになるな」

 

 

 

 ライアン隊長はチャーリー中尉と訓練内容を話し合っていた。

「若い世代も育ってきたな。これからのティターンズを支える世代だ」

 

「ええ、若いやつは士気旺盛ですから。育てがいがありますよ」

 

「目標に邁進するやつも多いからな。やる気があるのは良いことだ」

 

 



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第12話 宇宙海賊と遭遇

 宇宙世紀.0086年1月、ライアン小隊はコンペイトウ基地周辺を哨戒していた。4機のジムクゥエルは付近にジオン残党がいないかどうかを警戒している。

 

 最近、自動砲台が破壊された事件があり、ジオン残党の仕業ではないかと噂されていた。ジオン残党はコンペイトウ基地(旧ソロモン要塞)を目の敵にしており、衛星を破壊する動機は充分にあったからだ。

 

チャーリー中尉が慌てた表情で言った。

「隊長、民間の輸送船から救難信号です」

 

「チャーリー、信号はどこからだ? 」

 

「ここから近いです。救援に行くべきでは」

 

 小隊は急いで救難信号が発信された場所に向かった。

小隊の存在に気づいたのだろうか。ザクはモノアイをこちらにジロリと動かしている。ザクはマシンガンを民間船に向け、小隊を牽制した。

 

「隊長、識別信号は不明。IFFも応答なし」

 

「チャーリー中尉、やつらは宇宙海賊なのか?」

 

「わかりません。ザクが3機いるのは確かです」

 

「隊長、どうします。やつらを駆逐しますか?」

 

「様子を見てからだ。民間人の犠牲を出したくない」

 

 

 宇宙海賊はザクの上半身にゲルググやリック・ドムの足を付けたモビルスーツを使用しているようだ。その異様な姿はティターンズのパイロットを混乱させた。

 

 マイクはモニター越しにチャーリーと会話していた。ホセは肩をすくめながらケラケラと笑っている。マイクもチャーリーにつられて笑った。

 

「なんだ、あのモビルスーツは?」

 

「まるで合成獣のキメラですね。あのザクは」

 

「マイク、ザクにゲルググやドムの足がついているな」

 

「かっての名機があの有り様ですよ。これはひどい」

 

 すると、ホセは「宇宙海賊の思い通りにやらせるものかよ」と言ってザクに立ち向かっていった。その様子を見たライアン隊長は激怒した。隊長はホセの独断行為を修正するべきだと決意した。

 

「先行するなと言っただろうに。あいつは! 」

 

「私はティターンズの誇りに誓って民間人に犠牲を出したくないんだ」

 

 ライアン隊長は怒り口調で小隊に指示を出している。モニターに映し出された顔はまるで鬼のようだ。

 

「チャーリーは右、マイクは左。私は後ろから援護する」

 

「ドムの足つきは速いぞ。動きに気を付けろ」

 

 ティターンズという名前を聞いただけで宇宙海賊は震え上がった。海賊から見れば、ティターンズはジオン残党掃討を任務とする悪名高き集団だからだ。

 

 

 ホセはザクが放つ120mm弾をシールドで防ぎつつ、パックパックからの居合い切りでザクに斬りかかり、コックピットの横にビームサーベルを突き刺した。

 

 

 ザクの頭に照準をあわせたチャーリー中尉は、ジムライフルをモノアイに向けて発射した。ザクのパイロットは視界を塞がれて慌てているようだ。手をじたばたしながら民間船から遠ざかっていった。

 

 ゲルググの足つきはリック・ドムの足つきを連れて民間船から離れた。輸送船と民間人にはなんも被害もなく、我々は目的地のスペースコロニーまで彼らを誘導した。

 

 小隊はサラミス改級『セイロン』に戻った。ライアン隊長は厳しくホセを叱った。モビルスーツデッキに乾いた音が響く。

 

「一人の勝手な行動が民間人を危険にさらす時がある」

 

ホセは自分の考えをきっぱりと主張した。

「でも、結果的に民間人の命を救えました」

 

「ホセ、お前はすみませんと言えないのか」

 

「ライアン隊長、以後は勝手な行動は慎みます」

 

「報告書を書いたら許してやる。今回だけだぞ」

 

 



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第13話 グラナダ名物 月面ピザ

 宇宙世紀.0086年3月、コンペイトウを出港したサラミス改級『セイロン』は、補給と隊員の有給休暇のために月面都市グラナダに入港した。

 

 サラミス級の乗組員には、当直を除いて1日の休暇が与えられた。乗組員とパイロットは大喜びでグラナダの街へと繰り出している。外出許可が出たマイクとホセは解放感あふれる表情を見せていた。

 

 ライアン隊長とチャーリーは2人に声をかけた。

「ホセ、マイク、休暇を楽しんでこい」

 

「くれぐれも喧嘩はするなよ。喧嘩は」

 

「隊長、俺が血気盛んな若者に見えますか?」

 

「ああ、元気があり余るほどにな」

 

 

 マイクは黒ズボンに青ジャケット、ホセは青いジーパンに緑のジャケットを着ている。

「マイク、名物を食って腹ごしらえしたいぜ」

 

「グラナダなんかに名物があるのか?」

 

「お前知らないのか? グラナダ名物といえば月面ピザだろ」

 

「ぼくは、月面都市に来たことがないから」

 

「俺は何回もグラナダに来たことがあるからな。おすすめのピザ屋があるんだ。案内するぜ」

 

 

 マイクとホセは赤い看板のピザ屋に入った。店内は人でこみ合っており、グラナダでも人気の店ということがわかる。席につくと赤毛の店員さんが銀トレイに載せた水を持ってきた。

 

 ホセはメニュー表をパラパラとめくっている。

「ピザは決めたが ドリンクは何にするんだ」

 

「コーラにする。炭酸は好物なんだ」

 

「店員さん、月面ピザとコーラを2人前」

 

 ホセはマイクに向かって得意げに言った。

「これがグラナダ名物の月面ピザさ」

 

「月面ピザはうまいだろう。しょっぱくないコーラもあるぜ」

 

「おかわりがしたくなるぐらいうまいよ」

 

 その時、ピザ屋に皿が割れた音が響き渡った。赤毛で気の弱そうな店員が「すみません」と店長と思わしき人に謝っている。店長らしき人は「もういい」と言って奥に入ったようだ。

 

「ホセ、基地から脱走したグナー大尉をどう思う」

 

「ガルバルディBに乗ってエゥーゴに逃げた人だろう」

 

「テストチームにビームライフルを向けたらしいな」

 

「エゥーゴのスパイに違いないよ。あの人は」

 

 

 マイクはホセの話をうなずいて聞いている。マイクはホセに前から気になっていた事を質問した。

「そういえば、ホセは地球のどこの出身なんだ?」

 

「俺は北アメリカ大陸のメキシコ出身だ」

 

「お前は軍を辞めたら何をしたいんだ」

 

 マイクは前から考えていたことを口に出した。

「ぼくは実家の農園で働こうと考えているんだ。農園でトウモロコシや小麦を育てようかな」

 

「俺は故郷でパン屋でもやろうと思っている。軍を辞めたら来いよ」

 

「必ず行くよ。アメリカからメキシコは近いから」

 

 

 



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第14話 大気圏 降下

 宇宙世紀.0086年3月、サラミス改級『セイロン』は地球に降下するためグラナダを出港した。艦内ではライアン隊長によるミーティングが行われている。

 

 サラミス改級『セイロン』はオーバーホールに入る。モビルスーツかない状態では任務がこなせないという理由でドック行きを命じられたのだ。

 

 ティターンズの公式見解ではエゥーゴをテロリストと認識していた。マイクはエゥーゴが反地球連邦政府運動の親玉であることは知っていたが、詳しいことは知らなかった。

 

 

 ライアン隊長が任務の内容を説明している。

 

「最近、地球と宇宙で反政府運動の動きが活発化している。そこで、コンペイトウ基地から地球に応援部隊を出す事になった。我々は北アメリカに降り、そこからキリマンジャロ基地へ行く」

 

「特にジオン残党と手を結んでいるエゥーゴは要注意だ。エゥーゴは連邦軍から持ち逃げしたモビルスーツで武装しているという目撃証言もある」

 

 

 マイクがホセに尋ねた。シャトルが降りる場所をど忘れしたのだ。

「マイク、アメリカのどこに降りる予定だっけ? 」

 

「ホセ、アメリカのキャリフォルニアベースだよ」

 

「えっ カリフォルニアベース?」

 

「カリフォルニアじゃない。キャリフォルニアだ! 」

 

 

 ライアン小隊に所属する4人はサラミス改級から大型シャトルに移った。もちろん、4機のジムクゥエルもシャトルのカーゴスペースに載せている。

 

 シャトルは地球周回低軌道から離れて大気圏に突入する準備を始めた。ホセはマイクに1年戦争の英雄を知っているかと聞いた。

 

「マイク、アムロ・レイ大尉を知っているか? 」

 

「1年戦争の英雄だろ。ガンダムのエースパイロットだった」

 

「士官学校の教科書にも空中戦が紹介されていたな。地上からジャンプして戦ったって」

 

「地球でアムロ・レイの空中戦を試してみたいぜ」

 

 

 シャトルが地球周回軌道からコースを変更して1時間が立った。シャトルは迎え角40度の姿勢で大気圏に突入。シャトルは大気圏に突入した衝撃でガタガタと揺れている。

 

「ホセ、機体の前方がオレンジ色に光っているよ」

 

「すごいな、シャトルが大気圏に入ったのか」

 

 マイクは隊長に話しかけた。彼は始めての大気圏突入にわくわくしていた。

 

「隊長、窓の外がどんどん明るくなっていますね」

 

「マイク、あれはプラズマが発生しているんだ」

 

「まるで溶鉱炉みたいな色だ」

 

 

 大気圏を突破したシャトルは高度を下げて着陸体制に入った。シャトルは空力ブレーキをかけつつ、展開したドラッグシュートで減速しながら滑走路に着陸した。

 

「マイク、やっと地球に着いたな。長い旅だったよ」

 

「ホセ、自分は北アメリカに帰れて嬉しいよ」

 

「マイク、寄り道する時間はないらしいぜ」

 

「それは残念だな。オハイオに行けないなんて」

 

 

キャリフォルニアベースにはジムクゥエルが警備に当たっていた。それもスプリッター迷彩のジムだ。ライトグレー色のジムはジムライフルを下方に構えていた。

 

 

 ライアン小隊は2台の輸送機にジムクゥエルを乗せてキャリフォルニアベースを出発した。もちろん目的は、ジオン残党の掃討である。

 

(第15話に続く)

 

 



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第15話 戦車 マゼラアタック

 ティターンズに所属するライアン小隊は、キャリフォルニアベースからジオン残党の拠点に向けて移動を開始した。輸送機のミデアは降下する場所を探して高度を下げている。

 

「オートバランサーの地上用セッティング終わりました。これでいつでも出撃できます」

 

チャーリー中尉はミデアのメカニックに「どかないと潰すぞ」とちょっかいを出した。メカニックはジムクゥエルの足に踏み潰されそうになった。

 

「隊長の私が先に降下する。降下開始」

 

「ゴルフ2 降下」

 

「ゴルフ3 降下します」

 

「ゴルフ4 降下するぜ」

 

 

 ライアン小隊は、ミデアから砂漠に降り立った。地面に降り立ったライアン小隊の視界にはザクJ型が1機、マゼラアタックが2両視認できる。ジオン残党が拠点にしている村が近くにあるのだろう。ライアン隊長はそう確信した。

 

 マゼラアタックのパイロットは自車両に近づくジムクゥエルを見て満足そうに笑った。

 

「連邦め、本当の戦争を教えてやる」

 

「まずはHEAT弾で狙い撃つ。175mm砲弾を食らいやがれ」

 

 ライアン隊長はマゼラアタックから放たれた砲弾を横にジャンプして避けた。ライアンは小隊のメンバーに次々と指示を出している。

 

「ジオンの戦車だ。マイクは稜線の影に隠れろ」

 

「ホセは動け。狙い撃ちにされるぞ」

 

「チャーリーは敵の動向を探れ」

 

 

 マゼラアタックは、後退しながらジムクゥエルとの距離を取っていた。ジオンのパイロットは指揮官の指示が的確であることを内心ほめていた。相手にとって不足はないと思いながら。

 

「初弾は外したか。照準は経験で合わせる」

 

「まずはHEAT弾を撃つ。次弾はAPFSDS弾を装填」

 

 

 マイクはコックピットの中で目をキョロキョロ動かしていた。彼はマゼラアタックを視認できていない。

 

「マイク、止まったら撃たれるぞ。機動しろ」

 

「チャーリー、第2弾が来るぞ。仕留められるか」

 

「任せてください。ティターンズにたてついたことを後悔させてやりますよ」

 

 チャーリーはスラスターを吹かしてジャンブし、太陽を背にマゼラアタックに向けてライフルを連射した。マゼラアタックの上面は装甲が薄く、弱点と指摘されている箇所だ。

 

 マゼラアタックのパイロットはジムから距離を取りつつ、全速で後退した。ジオン残党はザクを前面に出しながらも未だ抵抗の動きを見せている。

ザクはマシンガンを連射しつつ、隊で最も前進しているチャーリー中尉に接近した。

 

「しまった。2番がやられたか」

 

「全速後退。敵の射程から退避する」

 

 

 ジムクゥエルはマゼラアタックから放たれたAPFSDS弾を右足に浴びた。チャーリー中尉が操縦するジムは片足を引きずりつつ後退している。彼はジムに近づきつつあるザクJ型を警戒しつつ、小隊に応援を求めた。

 

「ペネトレーターを食らったか。厄介な戦車だな」

 

「大尉、ジムの足を損傷しました。ザクの射程から外れるまで援護の必要があります」

 

「私は決して部下を見捨てたりはしない。これだけは約束する」

 

「マイクとホセは前進してチャーリーを支援しろ。私が後ろから援護する」

 

 

 

 

(第16話に続く)

 



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第16話 仲間の危機

 チャーリー中尉はマゼラアタックから放たれた攻撃で足を損傷した。中尉のジムクゥエルにザクJ型が迫りつつある。ザクは砂漠の大地を60kmで歩いている。

 

 モニターには眉間にシワをよせたチャーリー中尉が映し出された。中尉は怒りで顔が真っ赤になっている。

「マイクとチャーリーは好戦的な宇宙人を叩き潰せ」

 

「オレは後回しでいい。さっさとマゼラアタックを始末しろ」

 

 マイクは思わず突っ込みを入れたくなった。

「宇宙人じゃない。スペースノイドだよ」

 

 マゼラアタックのパイロットがスコープを覗きながら言った。

「焼夷榴弾発射。ジムをビビらせてやる」

 

 マイクは慌てふためいた。目がキョロキョロと動いている。彼は明らかに動揺していた。

「うああっ、機外温度1200度です」

 

「マイク、止まるんじゃねぇ。足を動かせ」

 

「マイク、これはナパーム弾だ。大したことない」

 

 

 マイクは横にジャンプして射線から外れた。マゼラアタックはHEAT弾を発射したが、ジムが動いたために照準を外している。

 

 

 ライアン隊長はチャーリー中尉に接近するザクJ型にジムライフルを連射した。ザクは機体を横にスライドさせているが、ザクの動きを読みきった隊長に軍配が挙がった。

 

「マゼラアタックの砲塔は旋廻できない。ホセは背後から攻撃しろ」

 

「了解しました。敵の後ろをとります」

 

 ホセはジムのスラスターを最大限に吹かし、マゼラアタックの後方に着地した。ホセは戦車のキャタピラに90mm弾を浴びせている。マゼラアタックの動きを止めようとしているのだ。

 

「隊長、敵の後ろを取りました」

 

「ホセ、でかしたぞ。今からそっちに行く」

 

 マゼラアタックはジムクゥエルの接近に即座に対応した。マゼラアタックはホセがいる方向に車両を素早く動かし、照準をジムクゥエルに合わせた。

 

「APFSDS弾装填。ジムの装甲を貫いてやる」

 

 

 ホセはコックピットの中で叫んだ。スモークによりメインモニターの視界が見えない。

 

「IRスモークのおかげで赤外線センサーが効かないぜ」

 

「しまった。マゼラアタックにロックされた」

 

 

 マイクが発した突然の提案にホセは困惑した。とても正気の行動とは思えなかったからだ。

「ホセ、ぼくがマゼラアタックに突撃する」

 

「そんな無茶なことをするな。やられるぞ」

 

「マイクは援護もなしで突撃するのか! 」

 

「隊長、自分は仲間のためなら命をかけれます」

 

 マイクは自らを奮い立たせ、マゼラアタックに正面から突貫をかけた。マイクは90mm弾を連射してマゼラアタックの車体を破壊した。戦車が帰る場所をなくしたのだ。

 

「ぼくは仲間を死なせはしない。生き残るためにあいつを倒すんだ! 」

 

 マゼラアタックは車体から分離し、砲塔だけを空中に飛行させた。ジムクゥエルは頭部の60mm機関砲を発射し、マゼラアタックを撃破した。だが、砲塔から放たれた最後の1発を食らって地面に倒れこんだ。

 

 

 ライアン小隊はジオン相手に勝利を収めた。マイクはハッチを開けて小隊に無事を知らせている。彼はマゼラアタックから食らった最後の一撃をシールドで防いでいた。

 

「隊長、ぼくは無事です。チャーリー中尉は? 」

 

「中尉はキャリフォルニアベースに戻る。ジムクゥエルを修理する必要があるからな」

 

 

 チャーリー中尉はかかとを揃え挙手の敬礼をした。

「隊長、オレは先に基地に戻ります。ご武運を」

 

「チャーリー中尉 少しでも体を休めろよ」

 

「了解しました。ライアン隊長殿」

 

 

 

 

 



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第17話 ジム改を撃て

 北米を後にしたライアン小隊は、アフリカ大陸にあるキリマンジャロ基地に入った。4人は基地の食堂で食後のコーヒーを飲んでいる。

 

 午後1時にライアン小隊はミデアに乗り込んだ。いつもと違う事はモビルスーツがハイザックという事と、特殊部隊が乗り込んでいるということだ。

 

 ライアン隊長は輸送機『ミデア』の中で任務の内容を説明している。

「今日は、連邦軍から提供された情報を元に反連邦政府組織の拠点を制圧する。敵の戦力は少ないが油断するなよ」

 

 ミデアから降り立った4機のハイザックは反政府運動の拠点に向けて足を進めていた。彼らは到着までの暇つぶしにハイザックについて語りあった。

 

「マイク、ハイザックの調子はどうだ? 」

 

「ジムクゥエルより操縦はしやすいです。操縦性も癖がなくて、素直に反応しますね」

 

「隊長、それにしても360度スクリーンは慣れませんよ。ジムとはコックピットが違うので違和感しかないです」

 

 ライアン隊長は頭をかきながら「私もシミュレータで練習はしたんたが自信ないな」と言った。

 

 ライアン隊長は小隊のメンバーに意見を聞いて回った。

「チャーリー中尉、ハイザックに乗った感想はどうか?」

 

「俺はジムを乗り継いで来ましたから。まるでザクに乗っている気分です」

 

 

「ホセはどうなんだ? ハイザックに乗るのが嫌なんだろう」

 

 ホセは不満たらたらといった表情をしていた。

「隊長、自分はティターンズがハイザックを使う理由が分かりません」

 

 ライアンはホセを諭すように真面目な顔で言った。

「ハイザックはコストパフォーマンスが良い。安く作れて数を揃えられるモビルスーツは戦力を増強できる」

 

「我々にはハイザックのような多用途任務をこなせるモビルスーツが必要だったのさ」

 

 

 

 

 ライアン小隊は岩影に隠れながら偵察を行った。反連邦政府組織が拠点にしている村には民間人もいるようだ。ライアン隊長は迅速に鎮圧を行い、よけいな犠牲を出さないようにと訓示を出した。

 

 マイクはモビルスーツの数が情報部の情報よりも少ないことを気にかけていた。彼はあと1機はどこにいるのだろうかと疑問を抱いている。

 

「情報ではモビルスーツは3機のはずだが、後の1機はどこにいるんだ」

 

 ハイザックはビームライフルを構えた。ハイザックはビームライフルの銃口をジム改へと向けている。 一発でモビルスーツを破壊しようと狙撃を試みているのだ。

 

「チャーリー、ジムを狙撃できるか? 」

 

「隊長、やって見せますよ。見ててください」

 

「ジェネレータに当てるなよ。ドカンと爆発するからな」

 

 チャーリー中尉は必ず当たると信じて引き金を引いた。ビームはジム改の腕をピンポイントに破壊した。ジムは機体のバランスを崩しながら地面に倒れこんだ。

 

 僚機のジム改はジムマシンガンを構えたが、ザクマシンガン改による直撃を食らっている。 ハイザックは地面に120mm弾の薬莢をばらまきながらマシンガンを連射した。

 

 

 

 マイクは急速に接近する機体をレーダーに捉えた。彼は白色のハイザックをモニター越しに確認した時、自身の目を疑った。あるはずのないモビルスーツがそこにいたからだ。

 

「なぜ、ハイザックがここにいるんだ」

 

 白いハイザックはジムマシンガンを連射しながらマイクに接近してきた。マイクはヒートホークをブーメランのように投げ、ハイザックを牽制した。

 

「最新の機体が流失しているだと。連邦軍に裏切り者がいるのか? 」

 

 マイクは接触回線でチャーリー中尉に話しかけた。

 

「中尉、ハイザックが逃げます。追いますか? 」

 

「隊長は追うなと言っている。後は連邦軍に任せるらしい」

 

「ええい、中途半端なことを」

 

 ハイザックは対した抵抗を見せずに村から立ち去った。ライアン隊長は連邦軍の一般部隊に任せても大丈夫だと判断した。ハイザックはここから遠くには逃げられず、1機だけではろくな抵抗もできないはずだと考えたのだ。

 

 

 

 

 

 ケプラー製ヘルメットを被り、防弾チョッキを着たアルファの隊員が壁を遮蔽物にしながら接近中。正面からは6輪装甲車に乗ったデルタの隊員が村に近づいている。

 

《こちらアルファからデルタへ。突撃を開始する》

 

《こちらデルタ。了解した》

 

《アルファ部隊は前へ、一気に村を制圧する》

 

《了解。突撃を支援する》

 

 壁から身を乗り出したアルファの隊員が『M72A1』プルバック式アサルトライフルを連射し、攻撃を開始した。後方からは体に給弾ベルトを巻き付けた隊員が『M299』機関銃を撃ちまくっている。

 

「武器を持った村人は敵だ。武器を持たない村人は民間人だ」

 

 指揮官と思わしき人が手信号で合図をした。アルファ隊員が旗を掲げた建物にスタングレネードを投げ、機関銃で内部を制圧している。犠牲者が出ようと知ったことではない。

 

「我々はティターンズだ。手をあげろ」

 

《クリア。建物の制圧完了》

 

 反連邦政府組織は、建物の窓から機関銃を連射し、ロケット弾をデルタの装甲車に発射している。デルタの隊員は84mm無反動砲で建物をぶっ壊した。

 

《あのうるさい機関銃を黙らせろ》

 

《了解。建物をぶっ飛ばします》

 

《クリア。機関銃を排除》

 

 アルファの隊員はライフルを構える村人に銃口を突きつけた。アルファとデルタの隊員は『M72A1』ライフルで抵抗する村人を片っ端から排除しながら村の調査を続けている。

 

《アルファ、デルタ共に村の制圧を完了した》

 

《よくやった。村の調査を続けろ》

 

 

 村にいる民間人は突然の出来事にびっくり仰天。村人には腰を抜かして地面に倒れこんだ人や「ティターンズは帰れ」と叫ぶ村人もいた。

 

 ティターンズの隊員は吐き捨てるように言った。

「誰が地球の平和を担保していると思っているんだ」

 

「何も知らない村人どもめ」

 

 隊長は制圧部隊の指揮官に作戦の終了を告げた。村人の制圧部隊に対する感情も良いとは言えず、これ以上の長居は不要だと判断したのだ。

 

「ライアン大尉、そろそろ調査を終えるのが妥当だと進言します」

 

「拠点制圧作戦を終了する。今回は味方に犠牲が出なくて幸いだったな」

 

「だが、神を信じる狂信的な集団には通用しないぞ。連中は死を恐れない。自爆攻撃もいとわないからな」

 

 

「ええ、あの集団の思想は理解できません。死を恐れぬ過激派は滅んでほしいものです」

 

 



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第18話 束の間の休息

 ライアン小隊はアルジェリアで発生した争乱を沈めるためにアフリカの後方基地に派遣された。基地は廃校舎を利用したあくまでも一時的な物だ。恒久的な施設ではないらしい。

 

 基地ではモビルスーツの補給と整備が行われていた。メカニックはあちこちを走り回りながら部品を運んでいる。特に砂漠地帯だと足回りやフィルターに砂が溜まるのでオイルを使って洗い流す必要があるのだ。

 

 今日の昼食は現地調達されたドネルケバブだ。中東ではファーストフードのようなものとして知られている。ケバブはとてもポピュラーな食べ物らしい。ソースはチリソースとマヨネーズが用意されていた。

 

「ケバブはラム肉がうまいな。ソースが効いてるぜ」

 

「ギリシャではヨーグルトソースが普通らしいが」

 

「隊長、その組み合わせはあり得ませんよ」

 

「ケバブにはチリソースが一番の組み合わせですよ」

 

「いや。マヨネーズこそが最高の組み合わせだろ」

 

 ホセのある一言をきっかけに小隊ではケバブにかけるソースについて持論をぶつけ合っていった。もちろん、ぎすぎすとした口調ではなく、やんわりとした口調で。

 

 

 

 ホセはマイクにティターンズに入隊する前はどこいたのか聞いていた。マイクは自身の過去を語り始めた。

 

「地球ではテストパイロットをしていたな。ジオンのモビルスーツを操縦する仕事だ。ザクF2型やゲルググの情報を集めるテストをやっていたよ」

 

「基地にはサイド3出身者で構成されたアグレッサー部隊がいたな。それはもう凄腕のパイロットばかりだった。1年戦争を生き残ったベテランには敵わなかったよ」

 

 

 ホセはマイクからザクに乗った話を聞いていたことを思い出していた。彼はジオン嫌いだが、立身出世と刺激を求めてティターンズに入った。

 

「俺は宇宙でデブリ掃除をしていた。デラーズの反乱後はコロニーを警備する任務も加わったな。毎日、退屈な任務ばかりで飽きていたんだ」

 

「その頃、ティターンズ結成の放送をテレビで見た。退屈な任務にあくびが出ていた頃だ。まさにうってつけの組織だと思ったよ。俺は刺激を求めて組織に入ったのさ」

 

 

 チャーリーも自身の過去を語り始めた。チャーリーがジオンの復讐のために入ったことは知っているが、以前の経歴は隊長以外は知らないようだ。

 

「オレはデラーズ紛争の時、地球軌道艦隊にいた。オレ達はコロニーを破壊する任務を上から命じられていた。上官のバスク大佐はソーラシステムでコロニーの破壊を試みていたな。オレはあの大きな人工物が地球に落下する閃光を見たんだ」

 

「オレはジム改に乗ってジオンと戦った。緑色のモビルアーマーは恐ろしい敵だったよ。ソロモンの悪魔が乗っていたと聞いたときは心臓が止まると思った」

 

(第19話に続く)



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第19話 アフリカ民族解放戦線

ハイザック 形式番号 RMS-106

ハイザックはザク譲りの高い操作性を誇っている。

ハイザックは、ビームライフルとビームサーベルを同時に使用できない問題を抱えていた。これはタキム社ジェネレータの相性がジオン系モビルスーツとは合わなかったからである。




 ライアン小隊は、後方の基地からミデアに乗って出発した。小隊はアルジェリアの砂漠の中をハイザックで歩いている。

 

 マイクはハイザックのコックピットの中で「気温は20度、今日はいい天気だ」とつぶやいた。

 

 

 マイクは村まで歩く作戦をめんどくさいと感じていた。彼らはミデアを降りてから20分以上も砂漠の地面を歩いていた。

「隊長、敵の所まで輸送機で行きましょうよ」

 

「マイク お前は地対空ミサイルに撃墜されたいのか」

 

「いえ、そういう訳ではありません。めんどくさいと思いまして」

 

「作戦を成功させるためには歩くしかない。奇襲攻撃を成功させるためにはな」

 

 

 

 ライアン小隊はティターンズに所属する部隊と合流した。ルイス小隊との合流ポイントに着いたのだ。ルイス隊長はジムスナイパーⅡ、トムソン中尉とジョンソン中尉はジムキャノンⅡに搭乗している。

 

 マイクはモビルスーツを前に興奮していた。そう、彼はモビルスーツマニアなのだ。

「ジムスナイパーはかっこいいな。わくわくするよ」

 

「ジムキャノンは頑丈そうだ。頼れる味方だよ」

 

 

 

 ティターンズが掃討する目標は丘の下にあった。民族解放戦線以外は誰も住んでいない村だ。民間人を巻き込む心配や、余計な犠牲を出さないことを一切気にしなくてもよいターゲットだ。

 

 村の建物は日干しレンガで建造されている。中央に道路があり、両端には平屋の建物が建ち並んでいる村だ。ヤシの木の影にはジオン製のモビルスーツも見え隠れしている。

 

《作戦開始時刻だ。各自 時計会わせ》

 

《村に突撃する。敵モビルスーツはすべて破壊しろ》

 

《了解。有効射程に入った敵から攻撃します》

 

 

 

 村の方では急いでモビルスーツを立ちあげていた。デザートカラーのモビルスーツが5機以上ある事が視認できる。モビルスーツの無許可保有は犯罪だ。法律に違反する行為だ。

 

 チャーリーがロングライフルを構えている。中尉は突っ立ったまま動かないザクに照準を合わせた。戦場では止まった者から撃たれる。

 

「ターゲットのザクを確認。狙撃する」

 

「動くなよ。90mm弾が外れるからな」

 

 

 2機のドムがボバー走行をしながらティターンズの部隊に接近している。いずれも武装は90mmのMMP-80マシンガンだ。ドムは機動力を生かしながらティターンズの攻撃を避けつつ、クラッカーを投げた。

 

「閃光弾だ。何も見えないぞ」

 

「ホセ うろたえるな。センサーを使え」

 

「了解、サーモグラフで赤外線を探知します」

 

 

 やつらはティターンズを全く恐れていない。恐れるどころか、余裕がある動きを見せつけている。やつらは死というものを恐れていないのだろうか。

 

 2機のドムはボバー走行をしながら90mmのMMP-80マシンガンを連射していた。ホセは120mmのザクマシンガンで撃ち返しているがあまり威力がない。対モビルスーツ用には威力がないのだ。

 

 

 ドムのスパイクシールド打撃はホセ少尉の頭を大きく揺さぶった。ハイザックはオートバランサーによって転倒を免れたが、ホセの視界はふらふらと揺らいでいる。

 

「くそっ、コックピットがへこんだ」

 

「狙撃班、聞こえているか? ドムがジムキャノンの方に行ったぜ」

 

 

ルイス大尉は無線で即答した。

「こちらスナイパー、ドムを狙撃する」

 

 

(第22話に続く)



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第20話 アルジェリアの戦い(1)

 ライアン小隊は民族解放前線との交戦状態に突入 機動性が高いハイザックが前方と側面で敵を引き付け、後方のジムスナイパー2が敵を狙撃、ジムキャノン2が支援攻撃を行うという作戦を行っている。

 

 狙撃班のジムスナイパー2はL-9ビームライフルのバイボット(2脚)を地面に置いて、狙撃するタイミングを伺っている。パイロットはモニターに目を凝らしながらトリガーを引いた。

 

「ロックオンした。ドムを狙い撃つぜ」

 

 ビームが先頭をボバー走行していたドムの胴体を貫いた。後ろの1機は即座に回避行動を取ったがもう遅い。前からはジムキャノン2、後ろからはハイザックが接近している。

 

「アフリカの治安を乱す反政府組織め、覚悟してもらおうか」

 

「もう逃げ場はないぞ。お前は前門の虎 後門の狼だ」

 

 ジムキャノンⅡとハイザックに挟まれたドムはボハー走行で攻撃を必死に避けていた。トムソンとジョンソンが操縦するジムキャノンⅡは肩のビーム砲を連射している。彼らはドムの両腕をビームで破壊し、行動不能に追い込んだ。

 

「今頃、パイロットは顔面蒼白だろうよ」

 

「トムソン、ドムを絶体絶命の状態に追い込めたな」

 

 

 

 

 その頃、ライアン大尉とマイク少尉は村に側面攻撃を仕掛けていた。敵の戦力を正面と側面に分散させる事が狙いらしい。

 

 村の中央にはザクキャノンとゲルググがいた。どちらの機体もマシンガンのような飛び道具は持っていない。ザクは支援攻撃、ゲルググは戦闘指揮を行っているのだろう。

「ガトリングキャノンを装備したザクを確認」

 

「隊長、ゲルググは指揮官機だと思われます」

 

「私も同じ意見だ。おっと、ガトリング砲の攻撃が来るぞ」

 

 ライアンとマイクは日干しレンガの家を盾にした。ザクキャノンは肩のガトリング砲を撃ちつつ、腰のビック・ガンからロケット弾を連発している。ロケット弾によって日干しレンガの家は全壊状態になった。

 

「なんて強力なロケット弾だ。たいした破壊力だな」

 

「落ち着け、チャーリー達が支援に来てくれる」

 

「自分は何もしないで待つことが一番嫌いなんですよ。敵に突撃しましょう! 」

 

ライアンはマイクをビシッと叱った。

「お前はガトリング砲の餌食になりたいのか! 」

 

 マイクはライアン隊長に突っ掛かった。

「では、ガトリング砲の弾薬が尽きるまで待つのでしょうか」

 

 ライアン隊長は部下の心配をしていた。1年戦争で多くの仲間を見送った実体験が頭をよぎった。

「そうだ。下手に飛び出していって死なれたら困るからな」

 

 

 マイクは大穴が空いた民家からザクマシンガン改を連射している。だが、民家に穴を開けるだけでゲルググにはダメージを与えられていない。

 

「弾が切れそうだ。弾はそこで倒れているザクから調達します」

 

「仕方ない。私が囮となって援護する」

 

 

ライアン隊長はビームライフルで敵モビルスーツを牽制し続けている。ザクキャノンはハイザックが動く方向にカドリング砲を放っている。ライアン隊長はビームをカドリング砲に向けて発射した。

「いい子だ。私に食らいついたな」

 

「よし 今がチャンスだ。家から飛び出せ」

 

 

 隊長はザクキャノンのカドリング砲を破壊した。マイクはチャーリーが倒したザクからマシンガンを奪い取り、弾の補給に成功した。

 

 

 

 

(第21話に続く)



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第21話 アルジェリアの戦い(2)

 ハイザックはザクから奪ったザクマシンガンを両手で構えた。マイクは前進しながらマシンガンを連射している。

 

「ガトリング砲はもう使えない。ザクキャノンを戦闘不能にするぞ」

 

 マイクはありったけの弾丸をザクキャノンに叩き込んだ。ザクマシンガンの装填数は100発以上と多いが、威力が弱いのが難点だ。

「これで終わりだ。覚悟しろ」

 

 

 ライアン隊長は隊長機のゲルググと交戦していた。ゲルググはヒートホークで接近戦を仕掛けている。ライアンはヒートホークにシールドを真っ二つにされたが1歩も後ろに退いていない。

 

「このゲルググ、気合いがあるパイロットが乗っているな」

 

「おそらく、以前はザクに乗っていたのだろう。ヒートホークを使いなれているな」

 

 だが、ライアンは負けられないと歯を噛みしめた。なにしろ、原隊送り(出戻り)になったら嫁さんと子供を食わしていけない。連邦軍の給料は遅れがちでティターンズのように高給ではないからだ。

 

 ライアンはゲルググが降り下ろしたヒートホークをビームライフルで受け止めた。たちまちに、ライフルのEバックが爆発した。その隙をついたハイザックはヒートホークを何回も何回もゲルググの頭に降り下ろした。

 

「ゲルググに負ければ部下にも示しがつかない」

 

「メインカメラを破壊すれば戦闘はできないはずだ。モニターが映らないからな」

 

 ゲルググのパイロットは手をあげて降伏した。ライアンは条約に乗っ取って降伏を了承。隊長はパイロット4人と女や子供を村の中央に集めた。村の捜索を邪魔されないためには1か所に集合させる必要があったのだ。

 

 

 村の子供はひどくおびえた表情をしている。突然、村を攻撃した軍隊に恐れを抱いているようだ。ライアン隊長は地球に残した家族の顔を頭に思い浮かべた。

 

「パイロットはキリマンジャロまで連行する。女と子供は解放だ」

 

「子供と女は解放してやれ。彼らに罪はない」

 

 

 ライアン隊長は、見せしめを目的に村を焼き払う命令を下した。上層部からも同じ命令が出ている。たちまちにライフルと弾薬が村の中央に積み上げられた。

 

「武器と弾薬はすべて焼き払え。バソコンや通信機器も没収する。情報を分析する必要があるからな」

 

 

 

 ライアン隊長はルイス小隊のルイス隊長、トムソン、ジョンソンに向けて敬礼した。

「ルイス小隊 ご苦労でした。任務は以上で終わりです」

 

「ライアン小隊は捕虜のパイロットを連れてキリマンジャロ基地に帰還する。一旦、丘まで後退だ」

 

 村の中央には戦闘機からナパーム弾が投下された。投下地点は炎と黒煙が空高く上がっている。ヤシの木も激しく燃え上がった。

 

 小隊は村を見渡せる丘から様子を見守った。あたり一面にガソリンの焦げ臭い匂いが立ち込めている。マイクはコックピットを開けて臭いを嗅いだ。ガソリン臭い匂いが鼻を刺激した。

 

 

 ティターンズが不法移住者の村を焼き払っている話はあまりにも有名だ。不法移住者は1年戦争のどさくさに紛れて地球に移住した人が多い。移民先のコロニーをジオンに破壊された人々は地球に住むことを望んだ。

 

 村を離れたライアン小隊は、キリマンジャロ基地で4人の捕虜とハイザックを降ろした。4人は輸送機のミデアでアラビア半島のアデン基地に向かい、HLVで宇宙に帰還した。

 



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第22話 サイド2まで出張だ

 UC.0086年7月、サイド2の21バンチでは激しいデモ活動が繰り広げられていた。警察署の周りをデモ隊が取り囲み、ティターンズの鎮圧部隊とにらみあっているという状態だ。

 

 デモ隊はスペースノイドの権利向上とティターンズの弾圧反対を叫びながら警察署まで行進した。警察署の入口にはバリケードを置かれており、署の屋上には狙撃手と観測手を配置していた。

 

 マイクとホセは、ライアン隊長の進めもあり、デモ隊を鎮圧する作戦に参加した。2人はバイザー付きヘルメットとホディーアーマーを身につけ、 ポンプ式のショットガンの銃口を下に構えていた。

 

 鎮圧作戦には、ハイザックとジムクゥエルを動員しているが、どちらのモビルスーツもケースレス弾を採用したジム・ライフルを持っている。これは薬莢で人々が怪我しないように人道的な配慮がされた結果らしい。

 

「マイク、隊長と中尉はジムクゥエルに乗っているんだな」

 

「サイド2には補給を受けに来ただけだったのにな。隊長のお人好しにはがっかりした」

 

「サイド2で休暇がもらえると思ったのに。正直退屈な任務だよ」

 

 マイクは「この経験が何の役に立つのだろうか」とつぶやいた。彼は、ティターンズがジオン掃討からスペースノイドの弾圧に主軸を移している事態に賛同していなかった。むしろ、批判的に見ていた。

 

 

 

 通信機から雑音混じりの無線が聞こえた。司令官から作戦を開始するとの指示があった。

 

『各員 準備はいいな。今から鎮圧作戦を実行する。これは注意事項だが頭や胴体に水平射撃をするなよ。後でマスコミやメディアに批判されるからな。以上』

 

 ティターンズの鎮圧部隊は一斉にデモ隊に突撃した。マイクとホセは、ショットガンを4連発しながら部隊の突撃を援護している。マイクはフォアエンドを後ろに引いてリロードし、チューブに催涙弾を3発装填した。

 

 

 だが、催涙弾はガスマスクとゴーグルで完全装備している一部のデモ隊に効き目は見られない。マイクは「なんて用意周到な人だ」とデモ隊の装備に驚嘆している。

 

 鎮圧部隊の司令官は、デモ隊を後退させるために放水を指示した。放水車から強力な放水が始まり、デモ隊はズルズルと後ろに追いやられている。まるで水に押し流されるように。

 

『放水開始。デモ隊を制圧しろ』

 

 デモ隊は、鉄パイプと黒い傘を持ってジュラルミン製の盾に突進した。鎮圧部隊はジュラルミン製の盾で地面をガツガツと叩いてデモ隊を威嚇している。そして、盾の角を斧のように降り下ろして、デモ隊の腹や足を殴りつけていた。

 

 デモ隊は、「ティターンズの横暴を許すな」「スペースノイドに対する弾圧を止めろ」と叫んでいる。しかし、多数に無勢といった状態でティターンズの鎮圧部隊囲まれてしまった。

 

 

 ティターンズはデモ隊の顔を警棒で殴り付け、頭を地面に押さえつけた。中にはデモ隊を足蹴りし、痛みつけている隊員もいる。ティターンズに抵抗し、逃げ遅れたデモ隊は黒いバンに連行された。これから取り調べを受けることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 



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第23話 マクダニエルでハンバーガーを

 宇宙世紀.0086年の7月、サラミス改級「セイロン」は月面都市フォン・ブラウンに入港した。乗組員の有給休暇を消化するためである。

 

 ホセがマイクに集合場所を確認している。マイクは黒の革ジャンに青のジーパンを着ていた。

「マイク、遅刻したら罰金1万ドルな」

 

「わかった。1時までに用事を済ませるよ」

 

「ところで、隊長と中尉はどこに行くって? 」

 

「barでビリケードとダーツをするらしいぜ」

 

「昼間から酒かよ。中尉は酒を飲まないと生きられないのか」

 

「イワンのバカみたいじゃないか。笑えるよ」

 

 

 

 午後1時、マイクとホセはディック鉄砲店の入り口をくくった。店内は照明がついておらず、薄暗い雰囲気を醸し出している。

 

 店長が「いらっしゃい」と2人に挨拶した。マイクは欲しい拳銃を口にした。

 

「小型の拳銃を探しているんだ。例えば、GLOCK19やGLOCK26のようなポケットに入る物が欲しい」

 

「お客さん、銃に詳しいね。軍人さんかい? 」

 

「ええ、まぁ」

 

 マイクは単刀直入にほしい商品を告げた。彼はグロックシリーズのような信頼性が高い拳銃を求めていた。

「グロック26の在庫あります? 」

 

 店長は嬉しそうな表情で拳銃を解説していた。

「グロック26はオーストリア製だ。引き金を引けば9mm弾を発射できる」

 

「お客さん、グロック19やワルサーPPKはどうかな。これもいい銃だよ」

 

 マイクはグロック26のスライドを引いて、空撃ちしながら感覚を確かめていた。

「グロック26の値段は? 9mm弾込みで」

 

「グロック26は700ドル50セントだ。装填数は10発と少ないが。それでいいのか? 」

 

 マイクは店長の問いに「それでいい。拳銃は信頼性がないといけない」と答えた。彼はケースに入ったグロック26を大切そうに抱えながら店を出た。

 

 

 

 

 2人はマクダニエル・ハンバーガーで昼食を取った。マクダニエルはコロニーや月を中心に展開するハンバーガーチェーン店だ。マイクはベーコンチーズバーガー、ホセはアボガドバーガーを食っている。

 

「マクダニエルは8ドルでポテトとコーラがセットでついてくる。価格の安さが魅力的だな」

 

「テレビでもCMをバンバン流しているもんな。さすがはチェーン店だぜ」

 

「古き良き開拓時代に思いを馳せ 変わらぬ味をお届けするってな」

 

「牧場で育てた牛のパデイはボリュームがあっていいな」

 

 

メキシコ系であるホセはアメリカに一種の希望を抱いている。彼は中産階級の豊かな生活を夢見ていた。

 

「そういえば、マイクはアメリカでも拳銃を持ち歩いたのか?」

 

「アメリカではM840 SPを使っていたよ。昼間でも物騒だからね」

 

 ホセは苦笑いした。メキシコはギャングとドラッグが蔓延していると言いそうになったのを必死に堪えた。治安悪いアピールをしても何の得にもならないからだ。

 

 

 マイクの脳裏にはショットガン『ベネリM3』を構える父親の姿が浮かんていた。彼の父親はジオンの地球侵攻やコロニー落としの混乱から農場を守るために武装していたのだ。

「父はAR-15とM1911を持っていた。でも、ぼくはガバメントには古臭いイメージがあって気に入らなかったんだ」

 

 ホセは首を横にかしげながら言った。アメリカ系にはガバメントを使うイメージがあったからだ。

 

「アメリカ系は45口径にこだわると聞いていたが。イメージと違うな」

 

 マイクは笑いながら答えた。彼は45口径のガバメントが時代遅れの産物だと考えていた。

 

「それはステレオイメージだ。一種の偏見だよ」

 

 

 

 

 

 



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第24話 ガルバルディβ 出撃

第24話から第26話まで続きます


 宇宙世紀.0086年8月、ティターンズはサイド4(新名称はサイド6)におけるパトロールを強化していた。

 

 先行するガルバルディ隊は、コロニーや戦艦の残骸が点在する宙域でザンジバルを発見した。ガルバルディβはモノアイの点滅による停船信号をザンジバルに送っている。

 

「手順に乗っ取って降伏する機会を与えよう」

 

 ガルバルディβはザンジバルの進路を防ぎ、ブリッジの横を掠める危険な飛行をしている。パイロットのローライ隊長はザンジバルのブリッジに接触回線で話しかけた。

 

「貴艦の所属を明らかにしろ。また、降伏しない場合は貴艦を撃沈する」

 

 

 ザンジバルのオペレーターが艦長に慌てふためいた表情で報告した。

「艦長、グラナダ所属のガルバルディから停船信号です」

 

「リック・ドムⅡを出す準備をしろ。ムサイからもザクを緊急発進」

 

「エルガー中尉が何とかしてくれる。それまで持ちこたえろ」

 

 その頃、ムサイの後期型ではモビルスーツを発艦させる準備が進められていた。乗組員は誘導棒を振りながら

発艦準備を行っている。

 

《モビルスーツを射出する。各員は退去せよ。退去せよ》

 

 

 

 ザンジバルの艦長は堂々とした口調で返答した。ジオン公国軍人の誇りを胸に抱いて。

 

「我々はジオン公国だ。ティターンズの命令には従わないし、臨検にも応じない」

 

 

 ガルバルディβはブリッジから手を離してビームライフルを構えた。パイロットのローライは「了解した。ブリッジをビームライフルで破壊する」と即答した。

 

 だが、岩影に隠れていたゲルググがジャイアントバズーカで狙いを定めていた。ガルバルディはこの攻撃をシールドで防いだが、突然の奇襲に怒り心頭。「ジオンをぶっつぶせ! 」と仲間に指示している。

 

 2番機のバルダ中尉、3番機のボルガ中尉が後に続いた。3番機はシールドをバズーカに吹き飛ばされたが、即座にバーニア噴射を行って体勢を立て直した。パイロットの熟練ぶりが伺える。

 

「ガルバルディは装甲が薄いから。バズーカが当たったら大変だ」

 

 

 2番機はエーデル中尉が操縦する黒いゲルググと交戦。バルダはシールドの裏からミサイルを2発放って敵の裏をかく作戦に出た。だが、ミサイルをゲルググに避けられたバルダは拍子抜けた顔をしている。

 

「これでも食らえやがれ。ありゃ、当たったと思ったのに」

 

 

 ローライ隊長はバルダとボルガに指示を出しつつ、頭から発射した信号弾でジムクゥエルに敵機発見の知らせを出した。

 

「2番機と3番機、敵の動きに翻弄されているぞ」

 

「我々はニュータイプじゃないんですから。動きが読めませんよ」

 

「アムロ大尉のように『敵の動きが読めるぞ』と言ってみたいもんです」

 

「確かにアムロ・レイは敵を142機撃墜したエースパイロットだが」

 

 

 

 

 

 

 ジムのパイロットであるチャーリーは前方で発射された2発の信号弾を視認した。信号弾はミノフスキー粒子が濃い宙域で敵機発見や撤退の際に使われるものだ。

 

「前方で信号弾を確認。これは敵機発見の知らせです」

 

「私とホセはサラミスの護衛をする。チャーリーとマイクはガルバルディの援護にいけ」

 

「了解。マイクの面倒はしっかり見ますよ」

 

「よろしく頼む。私は母艦を護衛する任務があるのでここを離れられん」

 

 

 

(第25話に続く)



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第25話 ガルバルディβ 反撃に出る

 サイド4(新名称サイド6)をパトロールしていたガルバルディβに黒いゲルググが襲い掛かった。敵はゲルググだけではない。リック・ドムⅡが3機もいるのだ。

 

「リック・ドムが3機だと。ちょっと多いな」

 

「バルダ、ボルカ。いつも通りなんとかなるさ」

 

 ガルバルディβのパイロットは、モビルスーツの性能を最大限に生かして戦っている。機体の性能を生かすのも、殺すのもパイロット次第という言葉があるように。

 

 ガルバルディβは戦艦やコロニーのデブリに身を隠し、リック・ドムⅡの攻撃を凌いでいた。

リック・ドムはセンサーに反応があった場所に片っ端から口径90mmのマシンガンを叩き込んでいる。

 

 ローライは、マシンガンにマガジンを装填しているリック・ドムを狙撃した。ローライは長距離間攻撃が可能なビームライフルをドムに発射。ビームはドムの胴体に直撃し、火の玉が上がっている。

 

「見事命中。ビームライフルはレンジが効くからな」

 

 

 

 エルガー・ハウゼン中尉は、僚機がやられる瞬間を目の当たりにした。中尉は部下をこれ以上死なせないために方針を180度変えた。3人は積極的な攻勢に出ることにしたのだ。

 

「2人共、遠慮するな。ジャンジャン撃て」

 

「エルガー隊長、それでは弾薬が足らなくなります」

 

「あっちにもこっちにもティターンズがいるんだぞ! 出し惜しみをするな」

 

 エルガーはジャイアントバズーカから砲弾を次々に放った。ガルバルディβはゲルググとリック・ドムから距離を取りつつ、ビームライフルを盛んに撃っている。

 

 

 ローライ隊長は「何とかなるさ。応援が来るまで持ちこたえてやる」と意気込みを入れた。彼は部下にも目を配りつつ、敵の動きからも目を離さなかった。

 

 

 

 

 マイクとチャーリーが戦場に到着したのはちょうどその時だった。マイクはジム・ライフルを連射したが、ゲルググはビームナギナタをぐるぐると振り回し、弾丸を弾き飛ばした。

 

 

 マイクは遠距離攻撃では埒があかないと判断し、ビームサーベルを抜いて接近戦に持ち込んだ。彼はゲルググが投げ飛ばしたジャイアントバズーカを弾き飛ばした。両者のビームサーベルとビームナギナタが激しくぶつかっている。

 

「ゲルググがあればティターンズなど屁でもないわ」

 

「その声に聞き覚えがある。お前はエルガー・ハウゼンか? ぼくはアモン・マイクだ」

 

「フハハ、貴様は組織の正義を信じるティターンズの小僧か」

 

「何がおかしい。なぜ、ぼくを見て笑う」

 

「貴様は真実を何も知らないんだなぁ。30バンチコロニーの悲劇を。あれは悲しい事件だったぞ」

 

「お前は何を言っているんだ! 」とマイクは一拍置いて言った。

 

 

 チャーリー中尉が2人の会話に割り込んだ。中尉はマイクに「少尉、惑わされるな。騙されてはいけない」と断言した。。

 

 

 エルガーは舌打ちをした。いらついた表情でチャーリー中尉に斬りかかったのだ。

 

「人の話に割り込むなと親から教わらなかったのか~」

 

「しょうがないやつだな。礼儀を教えてやる」

 

エルガーは「反応が遅いんだよ」と言ってジムクゥエルのシールドを切り裂いた。チャーリーは急いでパックパックからビームサーベルを抜いた。

 

 

 

 

(第26話に続く)

 



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第26話 黒いゲルググ

 ライアン小隊は隊を2つに分けて戦っている。ライアンとホセはザク改、チャーリーとマイクはゲルググとリック・ドム2と交戦していた。

 

 

 ビームナギナタとビームサーベルが激しくぶつかり合っている。チャーリーとエルガーは互いの技量を認めつつ、エゴをぶつけ合っていた。

 

「ジオン残党はテロリストなんだよ! ジオン残党は! 」

 

「貴様も30バンチ事件の真実を知らないようだな。ティターンズは30バンチの住民を毒ガスで全滅させた。貴様らが1500万人を皆殺しにしたんだぞ」

 

「それは嘘の情報に決まっている。30バンチの住民は伝染病で壊滅したはずだ」

 

「事件の真実を知らないだと。知らなかったでは済まされないぞ」

 

 

 

 ザンジバルが信号弾を2発打ち上げた。撤退を知らせる合図だ。ゲルググは2機のリックドムと合流し、マイクとチャーリーの前から姿を消した。

 

 エルガー中尉はコックピットの中で「また会おうぜ。ティターンズの小僧」とつぶやいた。

 

「ユリユス、レイズナー。ザンジバルに帰るぞ」

 

「エルガー隊長、ムサイはどうするつもりですか? 」

 

「今から拾う。見捨てるわけにいかんだろう」

 

 

 

 

 

 ゲルググとジムクゥエルが戦っている頃、3隻のサラミス改級は3機のザク FZ型(ザク改)と交戦していた。ザクはMMP-80マシンガンとバズーカを構えて攻勢をかけている。

 

 角つきのザク改はザクバズーカを2本持ち、左右交互に砲弾を発射していた。隊長機のザクはバズーカを1本投げ捨てるとマシンガンに武装を持ち替えた。

 

 

 ザクの迎撃に出たジムⅡの3番機は90mm弾の直撃を浴びて爆散。2番機もバズーカを食らった衝撃でコロニーの残骸に機体をぶつけた。残るモビルスーツは1番機と4番機だけになった。

 

「ドイツ頭が来たぞ。気をつけろ」

 

 2番機のパイロットは「このポンコツめ、ビームライフルが使えるだけじゃないか! 」と悪態をついた。ジムⅡはザク改のバズーカ攻撃で片腕を損傷している。

 

 

 ジムⅡの1番機、つまりジムⅡ部隊の隊長機はジムクゥエルに応援を求めた。彼はジムⅡだけでは場を支えきれないと判断したのだ。当初の予定ではジムⅡが前衛、クゥエルが後衛を務める予定だったのだが。

 

「角つきに3番機がやられた。2番機も動けない」

 

「了解。ライアン小隊が前に出る。ジムⅡ隊は後退してくれ」

 

「承知した。ジムⅡ隊はサラミスの護衛に回る。隙をついて2番機の回収もする」

 

 

 ライアン隊長とホセはジムⅡに替わってザクに戦いを挑んだ。ザク改は機動力を生かしつつ、適度に攻撃を仕掛けている。ホセはジムライフルを連射したが、肩のシールドに攻撃を防がれてしまった。

 

「ドイツ頭め、なかなかやるな」

 

 

 ザク改は隕石を足で蹴ってさらに加速した。ジムクゥエルが後を追いかける。ザク改がMMP-80マシンガンからグレネード弾を放つ。ジムクゥエルがグレネード弾を避ける。

 

 ザク改が信号弾に気づいた。3機はバーニアを吹かして一気に離脱。2人は後を追いかけようとするが、ムサイにメガ粒子砲を浴びせられて追撃を断念。ライアン小隊はまたしてもエルガー達を取り逃がした。

 

 ザンジバルとムサイは全速力で離脱した。目指す目標はラグランジュ5の周回軌道だ。サイド4

 



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第27話 ジオン残党のザンジバル

UC.0086年10月 ザンジバルの艦内で

 

 ザンジバルはサイド1とサイド4があるラグランジュ5を周回していた。船はエンジンを止めて周回軌道に乗っている。

 

 艦隊はザンジバルとムサイだけになった。ティターンズのジオン残党狩りは年々厳しくなっている。

 ティターンズは小惑星や廃棄されたスペースコロニーに監視の目を光らせ、ジオン残党を根絶やしにしようと試みているのだ。

 

 エルガー達は、スペースコロニーのシンパから資金援助を受けていた。そのお陰で今でも戦い続けることができていた。だが、ジオン残党を取り巻く状況は悪くなる一方だ。

 

「同志のジャンク屋からモビルスーツの部品とオイルを買っているが、それもいつまで続けられるかわからん。ティターンズに見つかればおしまいだ」

 

 エルガー中尉はモビルスーツの整備に頭を悩ましていた。ゲルググはところどころ塗装が剥がれており、装甲にもへこみがある。お世辞にも整備状況は良いとは言えない。

 

「統合整備計画対象機のリック・ドムⅡ、ザク改は部品の融通が効くから整備が楽だが。ゲルググイェーガが手に入れば文句なしだ。ゲルググは部品の共有ができないからな」

 

 

 

 ユリウスはエゥーゴへの合流を提案した。エゥーゴの話はジオン残党の間にも知られている。エゥーゴはティターンズに対抗できる唯一の反連邦組織だと噂が広まっていた。

 

「エルガー隊長、我々もエゥーゴに合流しましょう。エゥーゴには我々のようなジオン残党も数多く加わっていると聞きます」

 

「エゥーゴか。スペースコロニーにいる同志からも同じ事を言われたよ。エゥーゴに参加したらどうだってな」

 

 

 レイズナーが口を開いた。彼はジオン共和国の姿勢に幻滅し、ジオン残党に参加している。

 

「私もユリウスの意見に賛同であります。エゥーゴはスペースノイド寄りの組織ですし、反連邦政府の姿勢も我々と一致しております」

 

「同志レイズナー。お前の言うとおりだ。エゥーゴはティターンズに対抗できる唯一の組織だ」

 

 

 

 エルガー中尉は胸のうちを吐き出した。彼はアクシズに対する失望感をあらわにした。

 

「この際はっきり言おう。私はアクシズに失望した。私はアクシズがジオン残党を回収する事態を待っていた。だが、我々の希望であるアクシズはいつまで待っても来ない。我々はアクシズから見放されたんだ」

 

「私はアクシズの帰還を待たない。エゥーゴに合流する。エゥーゴから支援を受ければティターンズとも互角に戦えるんだ。我々はスペースノイドのために再び立ち上がらなくてはならない」

 

 

 レイズナーとユリウスもエルガー中尉の考えに賛同した。

「我々も宇宙にいる同志のために戦いましょう」

 

「その通りであります。ファシストであるティターンズの支配を許してはなりません」

 

「同志達、続きは食事をしながら議論といこうか」

 

 

 エルガーは今日もジャガイモ、明日もジャガイモだと思いながらジャガイモのピューレを食っていた。ユリウスとレイズナーはそれだけでは足らぬとエナジーバーにかじりついている。

 

 



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第2章 グリプス戦役 第1話 ジムクゥエル改

ジムクゥエル 形式番号 RGM-79QC


武装はEパック式ビームライフル『XBR-M84a』を装備している。本武装は取り回しのよいショートバレルタイプを採用しており、単発モードと連発モードの切り替えが可能。Eパック1つにつき発射可能な弾数は7発となっている。


 UC.0087年の3月下旬、ライアン小隊は近代化改修されたジムクゥエル受領のためにグリプスの2バンチ(サイド7)に降り立った。

 

 フォラス技師に案内されてやって来たモビルスーツの格納庫にはジムクゥエルが4機置かれていた。小隊が乗ってきたジムクゥエルはグリプスでパイロット訓練機に使われるようだ。

 

 ライアン大尉はチャーリー中尉の肩を叩いた。

「ジムクゥエルの近代化申請が通ってよかったな」

 

「はい。ライアン大尉の多大なる尽力に感謝します」

 

 

 グリプス工廠のフォラス技師はジムクゥエルの近代化改修について熱く語っている。マイク少尉は、技師が根っからのモビルスーツマニアなんだろうと考えた。

 

「ジムクゥエルのジェネレータをジム2規格に交換したことで出力は1420kWから1518kWに上昇しています。また、パックパックを新型の物に換装し、角形のビームサーベルを2基装備しました」

 

「さらに、コックピットには全天周囲モニターとリニアシートを設置しています。360度モニターは状況認識能力の向上を狙ったものです」

 

 ジムクゥエルはガンダムMk2と同型のパックパックを装着していた。この改修はクゥエルの機動力を飛躍的に上昇させるが、ピーキな操作性になる事が問題視されている。そこでOSの書き換えを行い、パイロットごとに再調整する方針が取られた。

 

 

 ライアン大尉は興味無さそうな表情をしていた。大尉はモビルスーツに執着したこだわりを持っていなかった。

「ほう。すごいじゃないか。ハイザックより強そうだな」

 

「それでジムクゥエルは今日引き取れるんだな」

 

「もちろんです。今日からでも戦闘任務に投入できますよ」

 

 

 

 そこにティターンズの大佐がやって来た。金髪で青い眼をしたゲルマン民族系の将校だ。大佐はホセとマイクに何やら重大な発表をすると発言した。

 

「今日、私は2人に重大発表をする。少し時間をもらえないか」

 

 ホセとマイクは挙手の敬礼の後に45度のお辞儀をして「結構です。大佐殿」と言った。

 

 大佐も挙手の敬礼を即座に返している。

「ホセ少尉、マイク少尉、君たちは本日づけで中尉に昇進だ。今後も精進しろよ」

 

「はっ 背一杯の努力をいたします」

 

 マイクは内心喜んだ。0082年に士官学校を卒業してから5年間も少尉のままだったからだ。彼はジオン残党のモビルスーツを5機撃墜した記録が昇進に影響したのだろうかと邪推した。

 

 ホセは給料を増えることを好ましく思った。欲しいものがあれもこれも買えると頭の中で高速計算した。俺は出世に一歩近づいたとほくそ笑みを浮かべている。

 

 

 

 ライアン隊長は最近話題のエゥーゴについて尋ねた。彼は、ティターンズの本部に勤務している将校なら反地球連邦組織にも詳しいだろうと考えたのだ。

 

「最近はエゥーゴという反連邦組織が力を伸ばしていると聞きますが」

 

 ティターンズの帽子を被った中年の大佐が言った。

 

「エゥーゴはスペースノイドの自治権拡大を求める運動だ。連邦軍の一部の左派と反体制派の外部勢力が中心にいると聞いている」

 

「私が見た資料には、連邦軍から持ち出したジム改やジムⅡを武装していると書いてあった。やつらが独自の軍事力を持っている事は確かだ」

 

 

 ライアン大尉は大佐に礼を言った。

「大佐、疑問に答えて頂き感謝します。Mk2の件は無念でした」

 

「エゥーゴごときにガンダムMk2が奪われるとは思いもしなかった。本当に残念だ」



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第2話 ガンダムMk2が奪われた日

 時は0087年3月2日にさかのぼる。エゥーゴがティターンズの拠点からガンダムMk2を奪った日だ。そして、ティターンズとエゥーゴの間で戦争が始まった日でもある。

 

 

 その日、休憩室にはメカニックからパイロットまで大勢の人が集まってテレビを見ていた。わいわい がやがやと話し合っている。

 

 休憩室に足を運んだマイクは、テレビの前に人だまりができた訳をメカニックの軍曹に聞いた。

 

「テレビで面白い映画でもやっているのか? 」

 

「エゥーゴがサイド7を攻めたってよ」

 

「エゥーゴが? 一体なぜ。なんのために」

 

 

 艦内のテレビはサイド1のコロニー群から放送される電波を拾っていた。民間放送のアナウンサーはBreaking Newsを繰り返し伝えている。

 

「サイド7内において戦闘が確認されました。ティターンズに対するエゥーゴのテロ行為だと見られておりますが、原因など詳細については、発表されておりません。繰り返します」

 

 テレビの画面には連邦軍のジムⅡが赤いモビルスーツと戦う戦闘シーンが流れていた。明らかにジムⅡはエゥーゴに押されている。

 

「赤いモビルスーツ、見たことない機体だな。ふいんきはリック・ドムに似ているが」

 

「だろ。あんなモビルスーツ始めてみたぜ」

 

「反政府組織め、わざわざケンカを売りに来たのか」

 

「ケンカじゃ済まないよ。エゥーゴと戦争になる」

 

 

 その時、艦内放送が繰り返し鳴った。

《今から緊急ブリーフィングを始める。士官は全員ブリーフィングルームに集まるように》

 

 ブリーフィングルームには、ルーカス艦長とソフィー副長を始め、主だった士官やパイロットが勢揃いしている。ルーカス艦長はマイクを取って長い演説を始めた。

 

「我々はエゥーゴと戦争状態に入った。今こそ、地球圏の平和を守るためにティターンズが立ち上がるべきだ。諸君、エゥーゴを恐れることはない。地球の平和と秩序のために戦うティターンズこそが正義だ」

 

「我々はエゥーゴに負けるわけにはいかない。テロリストを野放しにするわけにはいかんのだ。エゥーゴはジオン残党を取り込み、勢力を拡大している。我々はテロリストに譲歩しない。必ず殲滅してみせる」

 

 マイクはルーカス艦長の演説を黙って聞いていた。彼は正義がティターンズにあることを改めて再認識していた。

 

 

 マイクはエゥーゴがサイド7を攻撃した理由をホセに尋ねた。ホセは「ネットの噂だと新型ガンダムが奪われたらしいぜ」と答えた。

 

「ネットの噂。それは信頼できる情報なのか? 」

 

「新型ガンダムと言えば、TR-1 ヘイズルしか思い浮かないな」

 

「グリプスで全く新しいガンダムが開発されていたのか。知らなかったよ」

 

「グリプスの連中、エゥーゴにモビルスーツに奪われて情けない奴らだな」

 

 



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第3話 銃撃戦 銃撃戦だ

 宇宙世紀.0087年4月初旬、サラミス改級『セイロン』はサイド7を後にし、サイド1とサイド4がある周回軌道を回っていた。宇宙海賊が数多く出没するサイド4の宙域を通過している時に事件は起こった。

 

 見張りについている乗組員が急を知らせた。黒い旗を掲げた宇宙海賊がサラミスに近づいていたからだ。

 

「ルーカス艦長、宇宙海賊が本艦に急速接近。このままでは乗り移られる危険性があります」

 

「よし、エンジン始動。臨界まで回せ」

 

「サラミスの進路変更。対空機銃で警告射撃」

 

 ブリッジにいる副長が宇宙用キュイの爆散を報告した。

「艦長、宇宙用キュイの破壊に成功。ですが、Eブロックに宇宙海賊が侵入しました」

 

「まるでコバンザメじゃないか。あの宇宙海賊は」

 

「艦長、さっさと海賊の接近を拒むべきでしたね」

 

「そうだな副長。宙賊の侵入をあっさりと許してしまったよ」

 

 

 ルーカス艦長は艦内に通達。武器を持って宇宙海賊と戦うように命令を下した。艦内の乗組員は急ぎ足で武器庫に向かっていった。

 

《総員、白兵戦の用意。拳銃とライフルを取れ》

 

《乗組員はエコーへ。丁重におもてなしをしてやれ》

 

 

 

 拳銃を受け取ったマイクはあきれた顔で「軍艦を襲うバカがいるか」と言った。武器庫にやって来た同僚も「目の前にいるんだよな。それが」とつぶやいている。

 

 マイクは連邦軍正式採用の『M71A1』拳銃にマガジンを挿入、セーフティを解除した後にスライドを引いた。これでいつでも引き金が引ける状態になった。

 

 

 宇宙海賊はジオン製のサブマシンガンを持ってEブロックに乗り込んきた。その数およそ12人、全員がジオン製のサブマシンガンで武装している。

 サラミスの乗組員は、パイロットとメカニックなど職種を問わずにライフルやハンドガンを握って抵抗した。

 

 海賊は宇宙服を着ているが、乗組員は着ていない。一目で敵味方の区別がつく状況だ。サラミスの乗組員と海賊の間で激しい銃撃戦が始まっている。

 

 チャーリー中尉は「撃て! 撃て! 撃ちまくれ」と叫んでいる。撃たれた海賊は「ぐふっ」と声を上げた。

チャーリーはマイクを援護しながらライフルを連射している。マイクも負けじと廊下の角から拳銃を5発撃った。

 

 女性メカニックのアレキサンドリア軍曹(アレクサ)がマイクに『M72』ブルパップ式ライフルとマガジンを渡した。マイクは壁に背を向けながら廊下の角から離れた。

 

「拳銃が何の役に立つの。ライフルを持ちなさい」

 

「助かるよ。アレクサ軍曹」

 

 マイク中尉は防弾チョッキから30発装填のマガジンを取りだしライフルに挿入、チャージンクハンドルを引き、セーフティのレバーをセミオートに切り替えている。

 

 マイク中尉は士官学校で習った通りに海賊の胸に2発、頭に1発を放った。海賊はもがき苦しみながら廊下に倒れた。さらに彼は『M72』ライフルをフルオートに切り替えて海賊を2人なぎ倒した。

 

 

マイクは「くそっ、ジャムった」と叫んだ。すかさず後ろからチャーリー中尉とホセ中尉が援護射撃を加えた。マイクはライフルのスリングを右肩に着け、両手に構えた『M72A1』拳銃を連射した。

 

 

宇宙海賊はサブマシンガンを連射しながらじりじりと後退している。「作戦は失敗した」と叫ぶやつもいる。



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第4話 ジオン共和国軍

 宇宙世紀.0087年6月、ジオン共和国のムサイ改軽巡洋艦、チベ改重巡洋艦がコンペイトウ基地のルンガ沖で待機していた。

 

 

 チベ改級の艦長はコンペイトウ基地の領海に入ってからそわそわしている。艦長は感慨深そうに呟いた。

 

「ソロモン。今ではコンペイトウと呼んでいるが。ここには7年ぶりに来たよ」

 

「艦長はドズル中将の元で戦っていましたか」と女性オペレーターは尋ねた。

 

「ドズル中将は立派な武人だった。中将はソロモン戦の時、自らを殿に我々が撤退する時間を稼いでくれた」

 

 

 

 ジオン共和国軍のムサイ改、チベ改はティターンズのとのランデブーポイントにいた。共和国軍とティターンズが訓練を行う宙域でじっと待機していたのだ。

 

 異変に気付いた女性オペレーターが艦長に報告した。

 

「ミノフスキー粒子の濃度が急上昇。レーダーにモビルスーツの反応があります」

 

「モビルスーツの数は6機。いずれもジオン公国軍所属と断定」

 

「サトウ中隊長に連絡を。モビルスーツの発進用意」

 

 

 サトウ中隊長はブリッジからの現状報告を聞きつつ、艦内電話で指示を出している。サトウは予想外の事態に驚いていた。

 

「ジオンの残党が攻めてきたって。艦長、数は何機だ? 」と驚いた。

 

「6機もいるのか! そいつはちょっと数が多いな」

 

「ムサイからハイザックを出せ。こちらもモビルスーツを出すぞ」

 

 

 サトウ中隊長はザク F型とリック・ドムを見つめた。外見はジオン独立戦争時とあまり変わらない。だが、中身は別物でコックピットにリニアシートが設置されていた。

 

 ジオン共和国軍の主力はゲルググ、リック・ドム、ザク F型とザク F2型が大半を占めていた。87年からはティターンズからハイザックの提供が始まり、戦力の強化が図られている。

 

 

 ムサイ改から角つきを含むハイザック(MS-106)が発進している。チベ改からはリック・ドムが4機、ザク F型が3機緊急発進した。

 

 サトウ大尉とオハラ少尉は、牽制目的でリック・ドムからバズーカを放った。だが、3機のザク改は90mmマシンガンを放ちつつ、距離を狭めつつある。

 

 サトウ中隊長はザクやリック・ドムの性能では厳しいと感じながらも必死に抵抗を続けていた。なにしろ、ジオン残党のリック・ドムⅡとザク FZ型(ザク改)は共和国軍モビルスーツの性能を上回っていたからだ。

 

 

「敵はリック・ドムⅡ 2機、ザク改 3機、ゲルググもいるぞ。共和国軍のプライドを見せつけてやれ」とサトウ中隊長は仲間に激を飛ばした。

 

 

 

 

 

 サラミス改級『セイロン』のセンサーもジオン残党の存在を確認していた。ルーカス艦長は艦内の乗組員に戦闘状態に入ると宣言した。

 

「艦長、前方で熱源探知。ザンジバルとムサイを確認」

 

「総員、いきなり第一戦闘配備だ」

 

「本艦はジオン共和国軍の救援に向かう。急げよ」

 

《第一戦闘配備。乗組員はノーマルスーツを着用。パイロットはモビルスーツデッキへ》

 

 ルーカス艦長は「副長、合同訓練は中止だな」と言った。ソフィー副長は「艦長、当たり前です」とそっけなく答えている。

 

 

 メカニックのアレクサ軍曹は「モビルスーツに火を入れろ。武器庫からビームライフルの用意を」と叫んでいる。

 

 マイクはメカニックのハーベイン曹長に「出られるの? 」と聞いた、曹長は「いつでも出られる。整備は万全さ」と親指を立ててみせた。

 

 メカニックのグランスルが誘導を行っている。マイクはカタパルトに向けてジムクゥエル改の足を一歩ずつ進ませている。カタパルトに載った機体はサラミスの甲板に姿を表した。

 

 

「マイク、ジムクゥエル改行きます」

 

 

 



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第5話 ジオン共和国軍と共闘

 ティターンズのサラミス改級『セイロン』はザンジバルとムサイ相手に戦闘状態に入った。

 

 

 ゲルググのパイロットは強気の姿勢を崩さない。ジオン共和国の包囲網をあっさりと突破。ティターンズに向けて突撃した。

 

「我々の狙いはティターンズ一本だ。共和国軍は無視するに限る」

 

「こうもあっさり突破できるとは。共和国はたるんでいるな」

 

 

 ジオン共和国軍はゲルググとリック・ドムⅡの動きに翻弄されている。共和国軍は若いパイロットが多く、敵の動きを読めていない。ようするに経験が不足していたのだ。

 

 ティターンズから見れば、共和国軍のモビルスーツはジオン残党とあまり性能が変わらない。サトウ中隊長は数を頼みにしながらジオン残党を挟み撃ちにする作戦に出た。

 

 

 ゲルググはハイザックから距離を取っていた。ハイザックのビームライフルは驚異の武器だ。エルガーは弾がなくなればマガジンを装填し、マガジンを撃ち続けた。だが、リック・ドムは片腕を失い大破、ゲルググも中破している。

 

 

 7年にもわたる歳月はあまりにも長かった。モビルスーツは時代の変化から取り残され、実弾中心の装備はビームの長距離射程に敵わなかった。

 

 

 

 

 ライアン小隊はライアンとチャーリーが後方で母艦の警護。マイクとホセが前方でジオン残党と戦っていた。ライアンは「大切なゲストを死なすわけにはいかないぞ」とメンバーに発破をかけた。

 

 

 マイクはザク改相手にドックファイトを仕掛けている。円形にグルグルと回るドックファイトだ。彼はザク改が連射するMMP-80マシンガンをシールドで防ぎつつ、ビームライフルで応戦している。

 

 マイクはEパック式ビームライフルの照準を定めた。彼は徐々にザクとの距離を詰め、「そこだ」と言い放ってから必殺の一撃を放った。

 

 

 マシンガンを失ったザク改は、ヒートホークで接近戦に持ち込んだ。ホセはパックパックから角型ビームサーベルを抜き、ザクの胴体を真っ二つに切り裂いた。ホセは「接近戦が仇となったぞ。ザク」と満足そうな表情でつぶやいた。

 

 

 

 最後に残った1機のザク改は接触回線で撤退を促した。パイロットのエルガーは悔しさのあまり歯を噛みしめた。そしてティターンズにいつか復讐してやると誓った。

 

「同志エルガー。行ってください」

 

「すまん。お前達の意思は必ず受け継ぐ」

 

 

 ザク改のパイロットは「エルガー隊に勝利あれー」と叫びながらティターンズに突撃した。ティターンズはビームライフルで集中攻撃を浴びせ、これを撃破した。

 

 

 マイクは「どうして無駄な抵抗だと理解できない。降伏すれば命が助かるのに」と頭を抱えた。彼は未だに抵抗を続けるジオンの考えが理解できなかった。

 

 ザンジバルはゲルググとリック・ドムⅡを収容後、急速回頭し最大戦速で宙域から離脱した。ティターンズはザンジバルを見逃した。



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第6話 ジオン残党のザンジバル(2)

 宇宙世紀.0087年6月、ティターンズとの交戦で痛手を負ったエルガー達はエゥーゴから補給を受ける事にした。

 

 彼らは月の暗礁区域でエゥーゴとランデブーを行った。ザンジバルの真横には2隻のサラミス改級がついている。エゥーゴを代表する緑色の船だ。

 

 1機のネモがザンジバルに着艦した。周りにはビームライフルを構えたネモとジムⅡが防備を固めている。

 

 エゥーゴの隊員が挙手の敬礼をした。

「私はエゥーゴのジャック中尉です。まずは着艦許可を出していただいた事に感謝します」

 

 ザンジバルの艦長とエルガー大尉はジャック中尉と握手を交わした。

 

「貴様がエゥーゴの使者か? ずいぶん若いな」とエルガーはつぶやいた。

 

「たった1人で乗り込んでくるとはな。勇気のあるやつだ」とザンジバルの艦長も感心している。

 

 

 

 エルガーとジャックは本題に入った。エゥーゴが彼らにモビルスーツを提供するという話である。

 

「エルガー中尉が望むのであれば、最新型のモビルスーツを提供します。例えば、最新のネモを4機引き渡しできます。ボウワ製ビームライフル、クレイバズーカといったオプションもつけますよ」

 

「エゥーゴがあなた方にサラミス改級を1隻提供します。その代わりといっては何ですが、我々と共に戦っていただけませんか? 」

 

 

 エルガーは皮肉混じりに母艦をののしった。その表情はほほえみを浮かべていた。

 

「ザンジバルは限界を迎えている。7年間オーバーホールに入っていないオンボロ老朽艦だぞ。まあ、新しい船が手に入るならよしとするか」

 

 

 

 エルガーは艦内の乗組員に改めて宣言した。エゥーゴに入ることに理解を求めたのだ。ジオン残党として生きるよりも、反政府運動組織の一員として生き延びる事を願うと。

 

「我々はエゥーゴに正式加入する。ティターンズに対抗するためにはこの道しかない。スペースノイドのために力を合わせて戦おうじゃないか」

 

 

 艦内の乗組員はざわついた。「きっと俺達を高く買っているんだぜ」「さすがに条件が良すぎると思わないか」「そんなうまい話があるのかよ」と賛否両論だ。

 

 

 エゥーゴのジャック中尉は「モビルスーツはパイロットがいないと動かせません。エゥーゴはパイロットや乗組員が不足しています。そこで皆さん方のお力を」と必死の様子で説得に当たっている。

 

 

 

 ジャック中尉は本題に話を戻した。

 

「正式な加入手続きは月に着いてから行います。モビルスーツの引き渡しも月面都市に降りてからです。ところで、このザンジバルは我々が引き取らせて頂きます」

 

 エルガーは、パイロットのユリウスとレイズナーにも同意を求めた。すると、ユリウスは「ティターンズと戦えるなら条件を飲みます」と即答した。レイズナーも「大尉に同意します」と言っている。

 

 

 ジャック中尉は「では、これから艦隊はフォンブラウン市に降下します。皆さんもしばらく休暇を楽しまれては」と言った。

 

 

 ザンジバルの艦長は艦内に指示を出した。

「ジャック中尉の発言は理解した。進路をフォンブラウンに向けろ」

 

 

 



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第7話 ユーコン級潜水艦

 ユーコン級潜水艦『U-66』のミサイルハッチが開いた。ひげ面の艦長は腕時計を見て「作戦時間だ。対地ミサイル撃て」と指示を出している。

 

 潜水艦のVLS(垂直ミサイル発射装置)から対地ミサイルが6発発射された。ミサイルはカラバが攻略を開始した海岸沿いの連邦軍基地に向けて放たれた。

 

 

 ミサイル発射から30分が立った。ソナー員が「前方に連邦の駆逐艦」と艦長に報告した。艦長は大声で「アラーム」と叫んだ。艦内には警報音が鳴り響いている。

 

 古参の軍曹は「のろまめ。新兵じゃねえんだぞ」「急げ。急げ」と乗組員をせかした。人が通れるサイズの狭い通路を乗組員達が走っている。

 乗組員は天井に吊るしたソーセージに頭をぶつけながらも各自配置についた。

 

 駆逐艦は5インチ砲を猛射。潜水艦の周りには水しぶきが上がっている。艦長は魚雷を緊急発射するように指示を出した。

 

「敵艦との距離2000。本艦に近づいてきます」

 

「1番管に魚雷装填。撃て」

 

「1番出ました」

 

艦長は潜望鏡から直進する魚雷を目視していた。

連邦の駆逐艦は右に転舵。機関全速の状態で魚雷を避けたのだ。潜望鏡をしまった艦長は潜航を命じた。

 

「ダイブ ダイブ」

 

「急速潜航。深さ100メートル」

 

「アイサー。急速潜航 深さ100メートル」

 

 

 ソナー員が耳をすましている。彼は魚雷の推進音を耳にとらえたのだ。ソナー員は予備のヘッドホンを艦長に渡した。

 

「海面に2本着水。これは魚雷です」

 

「魚雷の数はわかるか? 」

 

「数は2本。パッシブ式と有線魚雷です」

 

「デコイ発射。おとり魚雷を使え」

 

 

 連邦が放ったバッシプホーミング魚雷はおとりに引っかかった。魚雷はおとりが放つ音に誘われて爆発。ソナー員も爆発した音を耳で捉えていた。

 

「両舷機関全速前進。有線魚雷を振り切れ」

 

「アイアイサー。両舷機関全速前進」

 

 

 連邦海軍の軍艦はジグザグに航行していた。魚雷攻撃を警戒しつつ、潜水艦に爆雷と対潜ロケット弾を投下する準備を進めているのだ。

 

「艦長、スクリュー音が近づいています」

 

「両舷機関停止。電源をバッテリーに」

 

「もっと深く潜れ。深さ180メートルまで潜航」

 

「アイサー。深さ180メートルまで潜航」

 

 

 ユーコン級潜水艦は爆雷が破裂した衝撃で激しく揺れていた。乗組員の髪はベタつき、額からは汗が流れている。機関長は不安そうに上を見つめていた。機関室に海水が浸水しないか心配だったのだ。

 

 艦長は小声で「いまいましい爆雷め」とつぶやいた。副長も「俺もそう思います。艦長」とささやいた。

 

 ユーコン級潜水艦『U-66』が爆雷攻撃を受けてから15分が立った。海上では連邦の軍艦が次々と爆雷を投下している。乗組員は爆雷が投下された数をチョークで黒板に記していた。

 

 

 

 爆雷攻撃がやんで20分が立った。黒板には32発の印がついている。艦長はソナー員に敵艦の存在を尋ねた。ソナー員は「付近にスクリュー音はありません」と答えている。

 

「メインバラストタンクブロー」

 

「機関始動。深さ18メートルまで浮上」

 

「アイサー。深さ18メートルまで浮上」

 

 

 ユーコン級潜水艦は海上に潜望鏡を上げた。艦長は360度を潜望鏡で見渡している。艦船の姿はどこにも見当たらなかった。

 

 艦長は夕食を取るように命令した。艦長は士官室の通路に机を置いて飯を食っている。今日の夕食はソーセージとバターを塗ったライ麦パンだ。艦長は山盛りのソーセージをペロリと平らげた。

 

 

 乗組員は爆雷攻撃から生還した喜びを実感していた。「おい。おなら臭いぞ」 「ケツにコルクでも詰めとけ」と乗組員はふざけあっている。

 



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第8話 アッシマー飛行隊

 宇宙世紀.0087年8月、カラバは地球での勢力圏を広げつつあった。7月にはティターンズのニューギニア基地が陥落。ティターンズは太平洋の制海権を一部失うことになった。

 

 3日前、ジブチ基地がカラバに占領された。攻撃にはジオン残党のユーコン潜水艦から発射された対地ミサイルも使われたようだ。基地の守備隊はジブチ基地から一時的に撤退し、応援を要請した。

 

 その頃、ライアン小隊はジムクゥエル改の地上テストのためにアフリカに降下していた。彼らはデータ収集を目的に奪還作戦への参加を志願した。

 

 

 ティターンズは海側から基地への侵攻を開始した。2機のミデアは対空砲火をさけるために低空飛行を行っている。ミデアからベースジャバーが2台飛び立った。

 ジブチ基地に強行着陸したミデアからは守備隊の面々が続々と降りている。銃を構えた守備隊が司令塔に突撃した。

 

「ゴルフ1から各機へ。敵はジムⅡとネモの混成部隊だ。数は8機程だから余裕だろう」

 

 

 司令塔の屋上でチャーリー中尉機は狙撃用ビームライフルを構えた。中尉はスコープターゲットに捉えたジムⅡを一撃で破壊した。

 

「オレが援護する。マイクとホセは敵を誘い込んでくれ」

 

 マイクは「あれが新型のネモか」と始めて見るモビルスーツを観察していた。彼はネモに向けてビームを撃ちまくった。誘いに乗ったネモはジムクゥエル改を追いかけている。

 

「よし。いい子だよ。誘いに乗ってくれた」

 

 司令塔の影に隠れたマイクは、待ち伏せ攻撃作戦を実行した。彼は「そこっ」と叫ぶとネモに向けてジムⅡ用のビームライフルを撃った。

 

 1機のジムⅡがアクアジムの残骸にうっかり足を滑らせた。ホセはジムⅡ撃墜のチャンスを逃さない。即座にビームライフルを速射し、これを撃墜した。

 

 

 

 

 3機のアッシマーはミデアの護衛任務についていた。彼らはミデアが基地に強行着陸した事を見届けてからジブチ基地奪還作戦に加わった。

 

「隊長から各機へ。アッシマーの実力をカラバに見せてやれ」

 

 地上のジムⅡはアッシマーの1番機にビームを浴びせている。アッシマーはバレルロール機動で地上のビーム攻撃を全て回避した。パイロットはGに耐えながら操縦棹を引いてジムⅡの目の前に姿を表した。

 

 ジムⅡのパイロットは「モビルスーツが変形しただと」と仰天した。アッシマーのデカさに圧倒されてその場に立ちすくんでしまったのだ。ジムⅡのパイロットは戦場で迷いを見せるという失態をやらかして死んだ。

 

「戦場で迷いを見せるとは。あいつは素人か」

 

 敵の背後に回ったアッシマーの2番機は一撃でジムⅡを撃墜。ジムⅡの死角を見事について見せたのだ。アッシマーは揃いも揃ってベテランが操縦していると敵味方に見せつける格好になった。

 

 3機のアッシマーは地上のジムⅡに向けてビームを浴びせている。ジムⅡの攻撃はまったくアッシマーには当たっていない。ジムⅡは狭い基地内を動き回っているがまた1機、1機とアッシマーに撃墜されている。

 

 

 

 カラバの構成員はジープとトラック5台を使ってジブチ基地から逃走を図っている。トラックの荷台には我先にと人が群がり、もみくちゃの状態だ。トラックは基地の正面ゲートを突破し、砂煙を上げながら走り去った

 

 

 

 



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第9話 カラバ襲来

 ティターンズがジブチ基地を奪還してから2日経った。ライアン小隊は引き継ぎの部隊が来るまでの間、基地の警備を任されていた。

 

「司令。レーダーに反応。IFFは応答ありません」

 

「数は何機だ。ジオン残党か? それともカラバか」

 

「所属は不明。輸送機3機が北上してきます」

 

「ライアン小隊にスクランブル。アクアジムも出せ」

 

「了解。基地にアラート発令。第1戦闘配備」

 

 

 基地のハンガーに警報音が鳴り響く。ライアン小隊のパイロットはモビルスーツに向けて全力疾走で走った。彼らにはパイロットスーツを着る暇もない。

 メカニックがモビルスーツに火を入れた。ジムクゥエルの熱核エンジンが始動。誘導棒を持ったメカニックがハンガーの入り口に立ち、モビルスーツが足を踏み出して歩き出した。

 

 ボバートラックや6輪ミサイルバギーといった戦闘車両が3分以内に出動。基地の守備隊50人は連邦軍の自動小銃と5.56mm機関銃、リジーナ対MS誘導弾を持って戦闘配置についた。

 

 

 5分後、基地の上空にミデアが姿を表した。ミデアからは百式改が1機、ジムカスタムが2機、ネモが6機降下している。基地にはジムキャノンが配備されておらず、地対空ミサイルもなかったのだ。

 

 百式改のパイロットは対空砲火が一発も上がってこない事に不信感を抱いた。水際で敵の進行を止めようとしない。これはティターンズの作戦ではないかと疑問に思った。

 

 

 守備隊は6輪バギーから有線ミサイルを一斉射、敵モビルスーツの注意を引きつけた。だが、モビルスーツの反撃によってバギーは乗組員もろごと吹き飛ばされた。木っ端微塵だ。

 

 ジムクゥエル改は降下したカラバのモビルスーツと交戦状態に突入。味方はアクアジム2機を含めても6機しかない。アクアジムはジムマシンガンを連射し、ライアン小隊を後方から援護する形をとった。

 

「スペックが違いすぎる。この旧型ジムタイプでは敵わない」とパイロットは悔しそうに呟いた。

 

 

 

 マイクは青色のジムカスタムの武装に驚いた。敵はハイパーバズーカを2本持ち、また一方はジムライフルを両手に構えた2丁拳銃スタイルを取っていたからだ。彼はビームライフルを撃ちまくった。

 

 マイクは覚悟を決めて接近攻撃を決めた。ジムカスタムとジムクゥエルはビームサーベルを抜いて激しくぶつかり合った。

 

「なめるな。パワーが段違いなんだよ! 」

 

 

 百式改とジムクゥエル改はビームライフルを撃ち合っている。百式改は派手ななりをしているが、その見た目通り腕利きのパイロットが操縦していると見てとれる。

 

 

 チャーリーとホセは百式改を散々にけなした。チャーリー中尉が「なんだ? あの金ピカは」と言う。ホセも「趣味の悪い成金趣味だぜ」と激しく同意した。

 

 

 



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