モモンガさん!それをㅤ殺すなんてㅤもったいない! (朝潮)
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お試し
1話


 

 

 

薄暗い部屋にて。

男と女が1人ずつ、情事に励んでいた。

ちゅぱちゅぱと水音が上がる。

 

「はぁむ…はぁ…はちゅ…ちゅぷ…ん…んはぁ…」

 

女は、椅子に座る男に跪いている。

 

「上手くなったな、エンリ。」

「はい…ありがほうございまふ…」

 

恋焦がれる少女のような顔で、女は股座(またぐら)に顔を埋め込んでいる。

その口には、ガチガチに熱り勃った怒張が含まれている。

エンリ・エモットは、正当な報酬として支払われたこの男の所有物だ。

今は、興奮して立派に立ち上がった男の性処理を手伝っている。

 

「ちゅ…ぷちゅ…ちゅるる…ちゅぱ…んぷ…」

 

エンリ・エモットは、喉の奥の肉壁まで届く大きな棒を、全て口の中へ咥え込んでいた。

そしてそれを、至上の幸福とも思っていた。

 

「そろそろ出るぞ。もっと吸付け。」

「ふぁい…はむ!はちゅっ…ちゅずずっ…ちゅぱぱ…」

 

エンリは激しく口を動かし始めた。

ラストスパートにと、口の中で舌を棒に絡め、撫で付ける。

男は、あるタイミングでエンリの後頭部を押さえつけた。

その瞬間、エンリの口の中に熱く滾る精が解き放たれた。

 

ぶびゅーっ♡びゅびゅーっ♡ぶびゅびゅっ♡

 

「んむっ!?」

 

エンリは喉奥に押し付けられた苦しさと生臭さを感じながら、自分によって男が達した事に喜ぶ。

びゅく、びゅく、と途切れ途切れに吐き出される精。

それをこぼさないようにと口いっぱいに頬張る。

 

「はー!はー!…良かったぞ、エンリ。」

 

男は、押さえつけていた手を離してエンリを解放する。

一度放って落ち着いた肉棒を、ずるりと口から引き抜いた。

その際、エンリは尿道に残った最後の最後まで搾り取るまで、吸い付いた。

ちゅぽん、と抜けた後、エンリの口と男の肉棒との間に艶めかしく糸を引く。

エンリは口から出ていく尊い人物に物悲しさを感じた。

 

「いつも通り、飲み込んではいないだろうな?」

「ふぁい…んヘぁ…」

 

舌を突き出し、その上にたった今与えられた精子を乗せて男へと見せた。

それが、男が喜ぶと知っての行為だ。

 

「舌の上でしっかり味わって飲み込め。」

「はん…ちゅず…っ」

 

エンリは、言われた通り濃厚な濁液を舌の上で転がし、ゆっくりと嚥下する。

生臭い粘液を、愛おしそうに一滴残らず飲み込む。

その姿を見ながら、男はエンリの頬を撫でる。

エンリ・エモットにとって、主人の精液を味わい、そして撫でられ愛してもらえるこの瞬間は至上の喜びだった。

 

「ぜんぶ、飲み干しました…」

「よくやったな。えらいぞ。」

「はぁ…ありがとうございます、きるゆー様ぁ…」

 

男の名はきるゆー。

アインズ・ウールゴウンのギルドメンバーが1人。

吸血鬼の真祖。正当なる血統種族だ。

 

 

 




ごめんみんな…また新しい作品に手を出してしまった…


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*第1章ㅤ-第1話 終わりと始まり
2話


まだ1話、しかも投稿できる最低文字数で
このお気に入りと評価の数はどういうことよ…





 

 

 

「ちょ…やばいやばい…!全然アップデートが終わらないんだが…?」

 

オレはなかなか進まないアップデートにやきもきしていた。

読み込みが遅すぎてイライラと足がガタガタ震える。

突然だがこのユグドラシルというゲームなのだが、今日をもってサービスを終了する。

 

「くっそ…早く終わってくれねえかな…こんな事なら前々からアプデしとくんだったぜ、くそが…」

 

アインズ・ウールゴウンのギルド長、モモンガさんからメッセが来たのはつい最近。

要約して、ユグドラシルが終わる前に、集まりませんかという内容だった。

引退していくギルメンたちを見て、少しずつイン率が下がっていた。

ここ1年、いや、2年はログインしていなかったかな。

だから、最後に自分で作ったNPCだけでも愛でていこうと考えていた。

…が、アップデートの内容がこんなに重いとは…

 

チクタクと、いくら急いでいても止まってくれない電子時計を見やる。

時よ止まれ!ヘブンズタイム!!ザ・ワールド!!!タイムスト〜ップ!!!!

…なんてね。全然止まんねえや。

 

「100%キター!やっとか、待ちわびたぜ…」

 

アップデートだけでユグドラシルのサービス終了までかかるかも、と覚悟していた頃、アップデートが終了した。

オレはやっとアプデの終わったユグドラシルを起動する。

さぁて、モモンガさんの招集にメンバーは何人くらい集まってるのかな?

 

アインズ・ウールゴウン

それは、ユグドラシルの中でもかなり有名な「異形種」、そして「社会人」限定のギルド。

オレはそのメンバーのうちの一人で、昔はそのことにちょっとした優越感に浸っていた。

最近は全くログインしていなかったし…やっぱモモンガさん怒ってんのかなあ…

アプデすらしてなかったのは、ギルメンに会うのが気まずいからだったりするしな。

 

 

 

開始直後オレがログインしたのは、ナザリック地下大墳墓内にあるオレの自室だ。

…あ、ナザリックなんたらっていうのは、ギルド「アインズ・ウールゴウン」の拠点の名前ね。

オレ含めたギルメンたちで作った、最高の城だ。

 

「うーん、あと10分か…本当にギリギリだったな…」

 

懐かしい、本当に懐かしいBGMと共に、オレはユグドラシルにログインが完了した。

オレが最後に見た時と情報ウィンドウの感じが少し変わってるな。

こんなとこアップデートすんなよ…

 

「っとと、こんな事してる暇ねぇな…」

 

オレは慌てて現在ログインしているギルドメンバーの情報を探る。

こんな時間だし、もう誰もいなくなっていてもおかしくはない、が…

 

「おーっ!!モモンガギルド長居る!やったぜ!」

 

半分諦めていたオレは、喜びの舞を舞う。

さて、モモンガさんがいるのはどこだろうか。

そしてギルドメンバー装備のリングオブアインズウールゴウンを使用した。

この装備は、ナザリック地下大墳墓内ならば転移し放題というショートカットアイテムだ。

 

「とりあえず最初は玉座の間で〜…って居たわ!見つけたぜ、モモンガギルド長!」

「きるゆーさん!」

 

ノリノリで小躍りしながら転移したら、そこに目的の人物はいた。

3mは超えるかというほどの大きな巨体。が、その内部は骨のみで肉体は無い。

手っ取り早くいうとでかいスケルトンって感じ。

スケルトンとオーバーロードとじゃ天と地もの差があるが…

 

その性格のお人好しとオッサンなのだろうが可愛い言動により、ギルド内で癒しキャラと言わしめたモモンガさん。

彼は、このアインズウールゴウンのギルド長だ。

 

「お久しぶりです、きるゆーさん。」

 

モモンガさんが、昔の通り敬語のままオレに話しかける。

なぜかギルド長なのにみんなに敬語なんだよな、この人…

そういう所も、どこか茶目っ気があって親しみやすいんだよな。

 

「久しぶり、モモンガさん。遅くなってごめんな。アプデがクソ長くて…」

「いえいえそんな!来てもらえただけで嬉しいです!」

「あー…そういう感じ。」

 

メンバーのログイン表示がないことから、なんとなく予想していたが…

あんまり集まらなかった、あるいは誰も来なかったみたいだな。

 

「おーおー、プレアデスが勢揃いで、こりゃまた。」

 

そこにいたのはプレアデスとセバスチャン、そしてアルベド。

オレは一年ほど会っていなかったモモンガさんに、昨日会ったばかりの友達のように接する。

オレはモモンガさん達ギルメンの前ではこんな感じだったし、モモンガも今更よそよそしい態度になって欲しくもないだろう。

 

辺りを見回して、玉座の間にアインズウールゴウンへ所属するNPCが勢揃いしていた。

ただ、メイドのNPCはいないな。どうせなら、オレの作った子に会いたかったのだが…

もうそんな時間はなさそうだ。その数に圧巻されたが、オレはモモンガさんの隣に出ているコンソールに気がついた。

 

「ん…?これ、アルベドの?」

「ああ、それですね…最後に、設定だけでも見ておこうと思ってたんですよ。」

「あ〜。タブラくんの設定長いからなあ…よく見ようと思ったなあ、モモンガさん。」

「いや…全部見るつもりは…」

 

モモンガさんがもごもご言いあぐねているのを聞きながら、設定が編集されている最中なことにオレは気がついた。

よく見れば、モモンガさんの手にしているのはスタッフ・オブ・アインズ・ウールゴウンだ。

このアイテムはゴッズアーティファクトを七個も使っている。l

ゲームの理を変えるほどのアイテム、ワールドアイテムにも引けを取らない超絶レア装備だ。

これを使えば、作成者でなくとも強制的に設定を書き換えることもできる。

 

「あれ?もしかして何か書き換えた?」

「いやいや!そんなんじゃ!」

「最後だからっていけないんだ〜!タブラさんに言っちゃおうかな〜?w」

「ちょちょ!やめてくださいよきるゆーさん…!」

 

あわあわ慌てるモモンガさん。やっぱ、いじり甲斐があるのも変わんないな。

設定を確認しても元々の設定を知らないため、何が変わっているのかはよくわからない。

ただ、設定好きのタブラさんが設定分の文字数を余らせるはずないため何かを消した、あるいは書き換えたのだと思われる。

(実はビッチである、との表記を消したということはモモンガさんが墓まで持っていった)

 

「フーン…じゃ、オレが書き換えちゃおっかな?」

「えっ!?ちょ、きるゆーさん?」

 

残りの文字数は11文字。さて、何を入れるか…

オレはカタカタキーボードを弾いて一文を追加させた。

 

ーモモンガさんを愛していー

 

「ちょっ!?きるゆーさん!?何を…!」

「ははははっ!良かったな、モモンガさん!ナザリック1の美人に愛されてるぞお!」

「ダメですよ、こんなことしたら…」

 

オレは自分の行動にツボってしまい、お腹を抱えて笑いまくる。

特に、最後の1文字を書けなかったこともそれに拍車をかけた。

ああ、深夜テンションって怖い。

するとモモンガさんもキーボードに指を重ねてカタカタ文字を追加し始めた。

 

「うん?なになに?」

 

新たに追加されたのはこうだ。

 

ーきるゆーさんを愛していー

 

「ちょおおおいいいっ!オレを巻き込むなよ!」

「お互い様ですよ!」

 

そしてモモンガさんは、前文の文字を消してまでしっかりとした文へと書き換えた。

ああ、タブラさんの設定文が…

 

ーまさに外見だけであれば完璧なきるゆーとモモンガを愛しているー

 

でも、これだとオレとモモンガさんが外面だけ完璧なように見えるな…

こんなくだらない、中学生同士のやりとりにオレとモモンガは笑い合った。

オレ達はひとしきり笑い合った後、アルベド本人の目の前で行なっていたことに気が付き少し気まずくなってしまった。

相手はNPCなんだけどな…

 

ちなみに、原文はこうだ。

ーまさに外見だけであれば完璧な美女だ。ちなみにビッチである。ー

 

こんな事、普段なら絶対に冗談でもやることはない。

引退したとは言えギルメンたちが作った子供達を、不用意に玩具にはできない。

ただ、今日はユグドラシル最後の日だからな。

こんな戯れでも、タブラさんはきっと許してくれる。

 

 

 



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3話

 

 

 

オレがログインできた時にはもう11時50分だった。

こんなやりとりだけで、もうかなり時間が経ってしまっている。

 

「そろそろ12時近いですね。」

「そうだねえ…」

 

コンソールには現在の時間が表示されている。

現在の時刻は11:56分。大した話はできなかったか。

ただ、昔のように馬鹿みたいな話ができてオレは満足だった。

モモンガさんはどうだったのかな?

 

「そろそろお別れか、モモンガギルド長。」

 

モモンガさんの悲しげな雰囲気に当てられる。

モモンガさんが他のゲームを遊ぶとは限らないし、もしかしたらこれが一生の別れかもしれないんだ。

 

「長い事インしなくなってごめんな。久しぶりに、楽しかった。」

「いえいえそんな!今日来て頂けただけで、嬉しかったです…」

 

…でも、オレはどうせなら笑顔で別れたい。

 

「…なあ、モモンガさん。最後なんだしさ、その堅っ苦しい話し方やめにしない?」

「えっ?話し方、ですか?」

「確かに今更だけどさ、モモンガさんずっと敬語だったでしょ。最後に、ギルド長らしい威厳のある感じで締めようぜ?」

 

11:57:30

 

オレはポコポコときらびやかな装備の施された肩を叩く。

そんな弱攻撃に、モモンガさんは迷惑そうな顔をしていた。

(ユグドラシルでは広い自由度の割に表情のアニメーションはない。つまりはモモンガは一年中迷惑そうな顔をしていることになる)

 

オレとモモンガさんは同年代だった。

それなら敬語は外してくれと言われたため、遠慮無く仲良くさせてもらっていたのだが…

モモンガさんの方は敬語がスタンダードなようで、年下のギルメンにすら丁寧な口調を徹底していた。

今思うと、アレはもしかすると職業病ではなかろうか。そしてついぞ他のギルメン達へも敬語が取れることはなかった。

 

「…初めてで少し難しいですけど、魔王ロールみたいな感じで行きますか。」

「おお、いいね、それ!」

「そうですね…じゃあ。コホン。」

 

11:58:00

 

モモンガさんは大きく咳払いをして、空気を変えた。

絶望のオーラまで出して、こりゃガチだな。

 

「プレアデス。そして守護者たちよ、聞け!今日でこの世界、ユグドラシルは崩壊を迎える。…だが!アインズ・ウールゴウンは不滅だ!」

「…ブフッ!」

 

11:59:00

 

オレは、思わず吹き出してしまった。

だって、さっきまで敬語の及び腰だった人が急に…w

 

「ちょ、きるゆーさん!?」

「ごめんごめん。でも、面白くってつい」

「カッコつけた私が恥ずかしいですよ…」

「ごめんってば。」

 

しかし、オレは笑いを止めることができなかった。

深夜テンションって怖い。

 

「って、時間マジでヤバいぜ?」

「ああもう!きるゆーさんが口挟むから…」

「いや、だってあれは誰でも笑うって…」

 

11:59:30

 

「じゃ、本当にお別れだな。来世(別ゲー)でまた会おうぜ!モモンガさん!」

 

11:59:50

 

ニヤニヤしながらクサい台詞を吐く。

最後なんだしこのくらい良いだろう。

 

「きるゆーさん!あの…!」

「…ん?」

 

最後に最後。

モモンガがオレを呼ぶ。

しかし、その口からは何も言葉が出てこなかった。

…短い時間だったけど、楽しかったよ。モモンガさん。

 

12:00:00

 

まったく。楽しい時間だったな。

さようなら、ユグドラシル。さようなら、ナザリック。

 

…さようなら、モモンガさん。

 

12:00:01

 

12:00:05

 

12:00:10

 

「ん?」

「あれ?」

 

あとはログアウトを待つのみだったのだが…

12時を回ってもオレとモモンガがログアウトする気配はなかった。

なんだこれ?

 

「…あれ?時間が…」

 

モモンガも不審に思ったようで、髑髏の頭が首を傾げていた。

ま、オレにとってはもう少しモモンガと話したかったからどうでもいい。

積もる話もあることだ。運営が対処するまでぐだぐだ話でもしていようか。

 

「っていうか、何でゲーム落ちないんだ?運営がサボったか?」

「考えにくいですが、ログアウトしないってことは、あるいは…」

 

チャットやGMコールもコンソールも機能しなかった。

…でも情報ウィンドウは出るな。どういうことだ?

 

「GMコール、発動しませんね…どうしますか?」

「そうだなあ…ってかコレ、もしかしなくてもゲームに閉じ込められてない?」

「コンソールが出ない以上、ログアウトも出来なさそうですね…私、今日も仕事なんですよ…」

「オレもだぜ、モモンガさん。ネットで騒げば大問題になりそうだなあ、コリャ。」

 

オレは運営に頭の中で合掌した。

ま、オレからたらどうでもいいことだが…

 

「…モモンガ様、きるゆー様…?」

「「!?」」

 

オレとモモンガは、同時に驚愕を露わにした。

聞こえるはずのない第三者の声が聞こえてきたからだ。

 

「いかがされましたか?」

 

それは、若く可憐な女の声だった。

うちのギルドには女性プレイヤーは3人存在していた。

しかし、こんな声、聞いたことがない。

…というか、その声の主は側に控えていたアルベドのように思えた。

声の聞こえる方向には、アルベドしかいなかったから。

 

「あ…アルベド…?」

 

その声の発生源はアルベド。

…いや、アルベドだと!?

オレが困惑する間に、モモンガさんがアルベドに問いかけた。

 

「アルベド…なのか?」

「はい。ナザリック地下大墳墓、守護者統括。アルベドです。」

 

アルベドから、可愛い女の子の声がする。

…は??アルベドから声が…??

 

「?」

「?」

 

オレとモモンガさんは、互いに顔を見合わせて疑問を浮かべた。

ドユコト??

 

「えっ!?きるゆーさん、顔動いてますよ、顔!」

「えっ!?ドユコト!?」

 

オレはびっくらこいた!と腕を広げて大げさにリアクションを取った。

顔が動いている…?モモンガさんはガイコツだから顔がどうなってンのかわっかんねーな…

ユグドラシルには、表情の実装すらされていなかった。

真顔のまま、感情は表情アイコンで伝えることはできるが…

 

オレは待機コマンドを使っているはずが勝手に動いているアルベドの方を見やる。

 

「っ!?」

 

瞬間、オレの中におかしな衝動が駆け抜けた。

それは、例えるなら性の衝動のようなものだった。

アルベドのあまりのオレの心をくすぐる姿に、オレはフラっと倒れかけた。

アルベドはサキュバスだ。服装も、それなりに誘惑的なものを着用している。

 

「大丈夫ですか!?きるゆー様…」

 

そんなオレを心配したのか、アルベドが大きな声をあげた。

ンだ、これ…っ!?露出した上乳と肩…白い肌がオレを誘う。

ああっ!()()()()()()!!()()()()()()!!

 

「クソ…これ…吸血衝動…?」

 

オレの種族は吸血鬼。血を吸ってナンボの種族だ。

自制していなければ、噛み付いてしまいそうだ。オレは咄嗟に口を隠す。

それを見たモモンガが驚いたように問いかける。

 

「どうしました!?大丈夫ですか、きるゆーさん!?」

「…モモンガさん…ちょ、ヤバいかも…」

 

オレは突然襲う意味のわからない感覚に、ヨロヨロと倒れる。

そんなオレに、アルベドはこの世の終わりを見たかのような顔を近づける。

ヤメロコラァ!!この異常はきっとお前が原因なんだよ!!

 

「きるゆー様!きるゆー様!?ああ、どうしましょう…!?」

「アルベド…」

 

アルベドの顔が…口が動いている!?

って事は…いや、そんなはずは…いや、もしかすると…!?

オレは衝動に突き動かされ、アルベドのその露出した首元に噛み付いた。

 

「あぁん♡」

「えっ!?きるゆーさん!?な、何を…!?」

 

ガリ!と擬音がつくほどに、激しく歯を立てる。

アルベドは一切抵抗を見せず、というかむしろオレに体を差し出すように近づけた。

理性を蒸発させ、目の前の女を貪る事にしか意識が行かなくなってしまう。

モモンガさんが隣で動揺しているが、そんな事に気を配る余裕はなかった。

 

 

 




アルベドさん大歓喜



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-第2話ㅤ階層守護者
4話


 

 

 

噛み切った肌の奥から、ゆっくりとどろりとした鉄分がじんわりと出てきた。

その傷口に、オレは夢中になって吸い付いた。

喉の奥へ血が流れ落ちていく。

 

瞬間、何かが頭の中を駆け巡った。

 

 

 

3Dグラを作っているタブラ・スマラグディナさん。

アルベドを守護者統括として設定したギルメン達。

こちらをいやらしい目線で見つめるペロロンチーノさん。

 

この走馬灯のような記憶の濁流は、楽しかった思い出から寂しいものへと段々変わっていった。

 

最後に、一言別れを言ってからは戻ってくることのなかったタブラさん。

ギルドメンバーが去り、暗い玉座の間で待機させられる守護者達NPC。

1人、玉座の間に座るモモンガさん。

 

最後に見たのは、モモンガさんがアルベドコンソールを操作している場面だった。

モモンガさんは、設定文の最後に書かれていた、ビッチであるという文を削除した。

そして、ギルメンがログインしたことを知らせる効果音が鳴り、オレが現れた。

 

────まさか、これはアルベドの記憶…?

 

 

走馬灯が終わり、オレの意識はアルベドに噛み付いているところまで戻っていた。

ちゅうちゅう。ちゅうちゅう。と、いやらしく啜る。

吸い上げる度、舌先に甘美な味わいを覚える。ああ、美味しい…

これを続けていると、段々と吸血衝動がおさまってきた。

 

「はぁっ…う、ふぅん…はぁっ…♡と、とても…気持ちが良いですぅ…♡きるゆー様ァ…!」

 

オレは、このままずっと味わっていたい衝動に駆られる。

が、すぐ隣で発せられたアルベドらしきものの声で我に帰った。

 

「って、オレは何を…!」

 

ちゅぽん!と音を響かせて、オレはアルベドから離れた。

舌先に残る甘い味を残念に思ってしまう。

…いやいや!オレはなんて事を…

っていうか、その前にハラスメントに厳しいユグドラシルが、R18行為を容認している。

これは…一体どういう事だ…

 

「はぁ…はぁ…き、きるゆー様ぁ…もっと、吸血してください…」

 

それはもう、アルベドの顔はかなりの愉悦に歪んでいた。

その顔は、多くの男が引いてしまっても仕方がないようなものだった。

だが、オレはそんなアルベドにも興奮を覚えた。

 

「あぁ!きるゆー様ぁ…♡これからベッドにでもどうですかぁ…?」

「…いや。多少落ち着いた。」

 

フラフラと鳴りながらも、オレはアルベドをやんわりと拒絶する。

というか、何なんだ、この状況は…

 

「あの…きるゆーさん…?」

「あぁ…悪い…多分()()()()が発動した。」

 

「吸血衝動」吸血鬼(ヴァンパイア)系種族が取ることの出来る、パッシブスキルの1つだ。

スキル、吸血。吸血時のダメージ力の幾らかのHPを回復する。

吸血衝動は、吸血の際にMPも回復するようになり、更にその回復量の割合を上昇させる。

…設定テキストには、吸血力の上昇と引き換えに、自分の気に入った者の血を吸う衝動に駆られる。と書かれている。

だが…

 

「吸血衝動って、スキルのですか?」

「多分…というか、絶対そうだ。じゃないと、こんなの説明がつかない。」

 

肩に噛み付くなんて、吸血衝動じゃなければゾンビだ。オレはゾンビになったのか?

 

「あの…何か問題がございましたか?」

「…GMコールが効かないようだ。」

「!…お許しを。無知な私には、GMコールというものに心当たりがございません…」

 

アルベドは心底申し訳なさそうに答える。

アルベドが動いている。アルベドがしゃべっている。

NPCが、勝手に動いて、勝手に喋って…

 

「?」

「?」

 

オレとモモンガさんは再び顔を見合わせる。

なんじゃこりゃ?

 

「セバス!」

「は。」

 

オレが混乱しているうちに、モモンガさんが行動し始める。

え、セバスが答えた!え、アルベド以外のNPCも喋っとる…

 

「大墳墓を出て、ナザリックの周辺地理を確認せよ。」

「…かしこまりました。」

「プレアデス達は9階層に上がり、侵入者の警戒にあたれ。」

「かしこまりました。」

 

え、え、え、え???

何でモモンガさんはこの状況に順応してるん???

オレが混乱しているうちに、セバスとプレアデスは出ていってしまう。

え、ナニコレ…

 

「では、私はどういたしましょうか。」

「アルベド。そうだな…第四、第八を除く各階層の守護者に6階層の闘技場まで来るように伝えよ。時間は、今から一時間後だ。」

「かしこまりました、モモンガ様。」

 

腰から生えた羽をぴょこぴょこと動かしながら、アルベドも出て行く。

後ろ姿エロいな。特に、女性的なラインを出しているお尻…

 

「っく!…また…」

 

オレは、再び湧き出した吸血衝動に、口を押さえて抵抗する。

 

「…大丈夫ですか?きるゆーさん。」

「はい、まあ…ちょっと危なかったですが…」

 

最後の最後まで、時間までナザリックにいたい。

そんな、ほんの軽い気持ちだった。

オレ達は、そしてナザリックは、ユグドラシルは。

どうなってしまったんだろうか。

 

 

 




スキルとその設定は適当に考えました


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5話

 

 

 

アルベドが退室して、NPC達がいなくなったところでオレ達はほっと息を吐き出した。

 

「一体、何なんですかね、これ…」

「わかりません。でも、しばらくはここから出られないのは確定みたいですね。」

「そうですね…ああ、僕明日早いんですよ…」

「オレもです。」

「…さっきから何で敬語なんですか?」

「あ、いや、その…さっきのプレアデス達に対するモモンガさんの威厳に当てられてさあ…」

 

オレは頭を掻きながら苦笑いする。

NPC達に、まさにナザリックの支配者然とした態度で接しているモモンガさん。

あんな姿を見て、気安く接せるほどオレの心は強くなかった。情けない事だが…

だが、指摘されてしまった以上戻す他ないか。

 

「もしかしたら…ゲームの世界が現実になった、とか…?」

「はは、まさかあ…」

「ですよね。そんなまさか…」

「「…」」

 

出ないコンソール。効かないGMコール。

コマンドで動く事しかできなかったNPCが動き、喋り出した事。

表情、そしてしゃべる言葉に合わせて口が動いている事。

更には、先程のアルベドへの吸血衝動により溢れ出した情欲。

どう考えても、そうとしか考えられないんだよな。

 

「ところで、よくあんな冷静で居られたな、モモンガさん。」

「これは…何というか。慌てるとすぐに気持ちが落ち着くんですよ。きっと、きるゆーさんと同じでユグドラシルのスキルが発動しているんだと思います。」

「なるほど。精神作用無効化か…あれ?じゃあ何でオレには発動しないんだ?」

「?さあ…吸血衝動のスキルで上書きされてるとか、ですかね?」

「なるほど…」

 

いまいち腑に落ちないながらも、オレは無理矢理納得した。

 

「っていうか、モモンガさん。アルベドの設定、消したのビッチっていう設定ですよね?」

「えっ!?!?えっ!?」

「吸血でアルベドから記憶を吸い出せました。モモンガさんはアルベドみたいな子が好みだったんですかぁ??」

「ちょっ!ちっ、ちがっ!あ、あれは!あのままだとかわいそうだと思って…!」

「はいはい、わかったわかった。」

「違うんですよ、きるゆーさん!」

 

え?墓まで持っていった、ってのはなんだったんだって?

馬鹿だなあ、ここは大墳墓(ナザリック)だろ?

 

「わかりましたから。今は現状を考えましょう。」

「そのニヤニヤ顔は絶対わかってない顔ですよね!?」

 

何せ、こんな小さな事でうだうだいってられない程大きなことが起きてしまっているのだ。

モモンガさんが階層支配者達を呼んだのは一時間後。

こんな無駄話で時間を潰している暇はないのだ。かっこわらい。

 

「まだ状況が掴めませんが…ゲームが現実のようになって、スキルが勝手に発動する。…ここまでは確定で良いですかね。」

「そうみたいだな。本当の現実になったのかは一考の余地ありだが…にしても、小説みたいな話だな。」

「ですね…」

 

オレ達は2人で考え込んだ。

骸骨が唸ってるのビジュアル的に面白いな。

 

「本当にユグドラシルが現実になって、それからゲームから出られなかったとすると…オレ達は、NPC達にどう接していけばいいと思う?」

「それは…ギルメンとして、NPCの上に立つものとして、それ相応の態度をとるべきだと思います。」

「…だよなあ。オレ、ただの平社員なんだけど…」

「私もですよ。」

 

2人は頭を抱えて悩み始めた。

つまりはロールプレイ、って事だよな…

 

 

 

 

 

第六階層。

双子のダークエルフが管理する闘技場。

そこには、ヴィクティムとガルガンチュアを除く全ての階層守護者が揃っていた。

彼らは皆膝をつき、こうべを垂れていた。

 

「面を上げよ。」

 

サッ!と訓練された衛兵のように統率のとれた動きで顔を上げる階層守護者達。

モモンガさん、絶望のオーラ出てますよ…

お漏ーラしてますよ、モモンガさん。モモンガさーん?

全然引っ込めないことから、もう垂れ流し続けることに決めたのだろう。

んじゃオレも、という形で絶望のオーラをレベルIVで発動させる。

ギルド長のモモンガさんはVだったため、少し身を引いての判断だ。

これ、中位程度のレベルならオーラを感じただけで即死するぞ…

 

「よく集まってくれたな。感謝しよう。」

「感謝など勿体ない!我ら、モモンガ様、きるゆー様にこの身を捧げた者たち。ご命令に従える事が何よりの喜びでございます。」

 

な、なんなんだ、この圧は…信頼が、責任が重い…

オレは、モモンガさんとNPCたちとの会話を聞きながら、遠い目をしていた。

話はモモンガさんが進めることとなった。この人、魔王ロールとか得意そうだし。

ギルド長ということで、NPC達に対する対話を全て押し付けた。

 

…っていうか、ナザリックの外が草原って…

ここ、ユグドラシルでもないのかよ…どこだよ…

ユグドラシルが現実になったというより、ナザリックが異世界に転移した、という考え方の方が近そうだ。

え?オレ達への評価を聞くんですか?ちょ、勘弁してくださいよ、モモンガさん…

え?美麗美丈夫?え?至高の、何だって?え?端倪すべかろかれられる…ハァ?なんて言ったの!?

…あ、なんか落ち着いてきた。これが精神作用無効のスキルか…

 

「最後に、きるゆーさんからお前達に伝えたい事があるようなのだ。」

 

モモンガさんが、オレへ前へ出るように促す。

これは、オレが事前にモモンガさんへお願いしていたことだ。

オレには、守護者各員にどうしても言わなければならない事があった。

 

「すいまっせんでっした!!!!!」

 

とりあえず、DOGEZA!DA!

 

オレが勢い良く頭と膝を地面に付けると、守護者達がどよめいた。

ああ、地面が土だから手が痛い…

 

「オレは一度ナザリックを見捨てた身。こんな事を言える立場ではないかもしれないが…」

 

「こんなオレを、どうかナザリックで再び活動する事を許してもらえないだろうか!!」

 

心の底から叫んだ。

ここで断られたら、オレはこんなわけのわからない世界で1人で生きていかなければならなくなる…

まあ、先の発言を聞くにそんなことはないとは思うが…これは()()()だ。

 

「あっあああああ頭をお上げください!!!」

「オ止メクダサイ!キルユー様!!」

「えっと、えっと!き、きるゆー様は何も悪くないです…!」

「私たちにとってはお帰りなされた事だけで至上の喜びでございます!!」

「そんな!きるゆー様が謝るような事では!!」

「それも見放されるような私どもが悪いんです!!」

 

うるせ!うるせえな!!一度に全員が叫ぶな!

それもそれぞれ別のことを喋るから何を言ってるのかわからん!!

 

「…許してくれるか。お前たち…」

 

オレは、きっと許してくれているのだろうと判断して顔を上げた。

何も聞こえなかったため、全員が全員罵詈雑言を履いているという可能性もあったが…

 

「勿論でございます!きるゆー様に悪いところなどございません!」

「ああっ!きるゆー様にそのような姿勢を取らせてしまうなど…我が人生一生の不覚です…!」

「申し訳ございません、きるゆー様ぁ…!」

 

だぁかぁらぁ!一度に喋るなって…

ただ、今度は何となく聞き取れた。怒っている様子ではなさそうだ。

というか、シャルティアちゃんに至っては涙を流していた。

こんな事で泣くなよ…

オレはシャルティアちゃんの瞳に溜まった雫を、指先で拭ってやる。

 

「大切なお前を泣かせてしまった。すまないな。」

「…っ!っ!…はふぅ…♡」

 

シャルティアちゃんはオレに触れられ、恍惚とした吐息を漏らす。その表情は、まるで恋する乙女。

もうなんなの…

 

「…お前たち。そのくらいにしておいてくれないか。きるゆーさんと今後のことに関する大切な話をしなければならない。」

 

オレが困惑していることを察してか、モモンガさんが助け舟を出してくれた。

こんな状況にしたのはオレなのに、悪いのが階層守護者たちみたいになっとる…ごめんなお前たち…

 

「お前たちの気持ちは受け取った。これからは、ナザリックへ。そしてモモンガさんへ絶対の忠義を誓おう。」

「きるゆーさん。そろそろ…」

「わかった。」

 

オレは影の眷属をこの場に残し、モモンガさんと転移でこの場を後にした。

視覚共有、聴覚共有、場所把握などなど出来ることは多岐にわたる。

しかも空気に溶け込み実体を持たないため、気づかれにくい。

眷属を残したのは、オレたちがいなくなった後のNPCの言動を監視してその忠誠が本物かどうか確認するためだ。

 

「でも、土下座はやりすぎたっぽいな…」

「当たり前ですよ。あれ、どう見ても()()ですよ。」

 

確かに、オレから見ても階層守護者のギルメンに対する忠義は本物だったように見えた。

が、本当かどうかは未だ分からないだろう。

オレたちがいる場で謀反を企てる馬鹿はいないからだ。

 

「ちなみに、眷属を残して彼女らを監視してる。色々と言っているようだけど、忠誠心は本物っぽいな。」

「へえ…そういえば、きるゆーさんは潜伏とか暗躍が得意でしたね。それで、どんな話をしてるんですか?」

「あー、今はシャルティアちゃんとアルベドが喧嘩してますね。」

「喧嘩って…大丈夫なんですか!?」

「ああ、まあ…平和的なものだよ。下着が濡れたか濡れてないか、っていうのが最初の火種だから…」

「ペロロンチーノさん…」

 

モモンガさんもなんとなく察してしまったようだ。

 

 

 



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-第3話 カルネ村の戦い
6話


 

 

 

ナザリックが、暫定異世界へ転移してから、なんやかんやで数日。

結局、元の世界には帰る見込みもなく、そしてGMコールがつながる様子もない。

モモンガさんと話し合い、もういっそのことこっちの世界で生きよう、という話になったのだが…

 

アルベドから吸血されませんかと1日最低でも3回聞かれることと、同じヴァンパイアだからかシャルティアちゃんが舐めるような視線を向けてきて少し寒気を覚えること以外は平穏な日常だった。

 

異世界とはいえ、冒険がないと退屈なものなのかとか考えていた。

遊び相手にはプレアデスがいたため、そこまでやることがなかったわけではないのだが…

 

オレのスキルのせいでいい女を見ると吸血してしまいたくなるため、オートマトンやアラクノイドの子たちをメインで遊んでいた。

あれから、吸血は自重している。

人様の血を吸うなんてはしたない真似、それもギルメンから作られたNPCにできるはずがない。

 

オレはナザリックでの生活をある程度楽しく過ごしていた。

 

「うーん…」

「うーん…」

 

オレとモモンガさんは、大きな鏡を前に2人で唸っていた。

このアイテムは「遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)」という。ただの鏡と思うなかれ。

そこに映るのは鏡に反射したオレ…ではなく、ナザリックの付近だと思われる草原の映像だ。

 

「このあたりは草原ばっかりか。まさかとは思うが、文明がないような世界に飛ばされた、って事はないか?」

「その可能性はありますが、想像したくないですね…」

「まあな…この世界にいる知的生命体がナザリックの関係者だけってのはちょっとなあ。」

 

初めは、ナザリックでする事もないオレは、オレが作成したプレアデスの()()()で遊んだりしながらもまあまあ楽しく過ごしていた。

マリーはオートマトンなので吸血衝動が発動しない。

モモンガさんと違って現状特に危機感を持っていないオレにとってはいい遊び相手になってくれた。

 

そんな頃、モモンガさんが面白いアイテムを見せてきた。

それこそ、この「遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)」だ。

初めは面白いオモチャを手に入れたと思っていたオレだったが、まず操作がわからない。

今は段々とわかってきたが、そこまでに結構な時間が経っている。

更には、鏡に面白いものが映らない。オレが見ているのはさっきから草原ばっかりだ。

こんな作業にもとうとう飽き始め、動物でもいいから写ってくれないかと思っていた頃。

 

「あっ!きるゆーさん、今の建物じゃないですか?」

「えっ、ウソ!?どこどこ!?」

 

オレは、クラフトゲームで始めて村を見つけたときのような感動を覚える。

行き過ぎた画面を戻し、再度確認してみると確かに建物があった。

更には遠くて荒いが人のようなものも見える。よかった、この世界にも人間はいたみたいだ。

 

「でも、随分と賑やかですね。お祭りかな?」

「そうかも?」

 

モモンガさんのいう通り、確かにこの村の中は人の往来が激しかった。

というか、走り回っているような…

オレは鏡を操作して、村の様子を確認してみる。

 

「あー。こりゃお祭りだ。」

「こんなタイミングでこんな事ってあるんですね…」

 

祭りは祭りでも、血祭りの方だった。

まあ、これは見てしまったら見過ごせないな。

 

「よし。じゃあオレ行ってきます。」

「えっ!?」

「えっ?」

 

オレ、なんか変な事言ったか?

モモンガさんはなんでそんなに驚いてるんだ?

 

「相手の力もわからないのに、危険ですよ!」

「え、でも…人が殺されるところを見て、見過ごせないでしょう。」

「…きるゆーさんは、そう思うんですか?」

「普通はそう思うだろ?」

 

そう答えたところで不思議に思った。普通はそう思う、だ?

いやいや、普通の人間ならこんな場面を見せられたら卒倒しているだろう。

鏡に映っているのは、完全にR18Gな映像だ。しかも作り物ではない。

 

「僕はそうは思いません。…オーバーロードだからでしょうか…」

「そうだろうな。スキルが勝手に発動していることを考えたら、それが一番説明がつく。」

 

吸血衝動。精神作用無効化。

これらのスキルが勝手に発動することから、他のスキルや種族特性が勝手に反映されていることは想像に難くない。

オレも、人が死ぬところを見て平然としてられるくらいだしな。

 

「モモンガさん。オレは助けに行きたいです。」

「…わかりました。」

 

モモンガさんは自身の尖った顎に手を置き少し考え、決断を下した。

さっすがモモンガさん!

 

「ですが、僕も同行します。」

「いや、それはちょっと…」

「なんでですか!?」

 

突然叫び、そして再び大人しくなる。興奮状態が無効化したのだろう。

 

「突然骸骨が現れたらそれこそびっくりするでしょ。最悪、敵だと思われても知りませんよ。」

「いや、まあ、そうかもしれないですけど…」

「せめて、同行するのはプレアデスにしてください。あ、できればマリーで…」

「…わかりました。でも、絶対に無茶はしないでください。相手が強かったら、すぐに逃げてきてくださいね。」

「わかってるって。」

 

鏡の中では、少女が背中を騎士に切りつけられていた。

まったく。男の風上にも置けないな。

これにはさすがのモモンガさんも不快に思ったようで、ゴーサインを出してくれた。

 

上位転移(グレーター・テレポーテーション)。」

 

オレの姿は、ナザリックからかき消えた。

 

 

 



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7話

 

 

 

転移した瞬間、騎士が村娘に斬りかかろうとしているのを見つけた。

 

心臓掌握(グラスプ・ハート)

 

ぐしゃり、と、手の中で柔らかな心臓を握りつぶすような感触を感じた。

と同時、片方の騎士の心臓が押し潰れた。

 

「ぶぺぁっ!?」

 

奇声を発しながら、その男は死に絶えた。

口から大量の血液を吐き出しているため、血の水たまりができている。汚ねえな…

この程度で死ぬとは…なんだ、即死耐性も持っていないただの雑魚じゃないか。

 

「た、助け…」

 

オレが何かしたのを感じ取ったのか、もう1人の騎士は尻餅をついて命乞いを始めた。

無様だ。無様すぎる。同じ男とは思いたくないな…

 

「はぁ?お前はそう言っていた奴を助けたのか?」

「ひ、ひぃ…」

 

オレが許す気がないことを悟ったのか、男は腰を抜かしながらもジタバタ暴れ始める。

這いずって逃げるつもりなのだろうが、鎧が重くてうまくいかないようだ。

 

「はぁ…本当に無様だな」

 

そんな姿に更に失望し、オレは軽く手を横薙ぎに振るった。

 

バシャ!

 

その騎士は、一瞬にして体を切断させて死に絶えた。

眷属の攻撃ですら一撃か。これは相当レベルが低いように見えるな。

オレは我が物顔で人を殺し回る騎士達を虐殺できることに喜びを覚えた。

 

オレのカルマ値は−100。

人を殺して回る悪人とはいえ、人を殺しても罪悪感が生まれるどころか、もっと殺したいとも思ってしまう。

気に入らない人間ならば何人殺しても心が痛むことはない。

 

「あ、あの…!助けていただき、ありがとうございました…!」

「あ、ありがとうございました!」

 

オレが考察をしていると、件の女の子がオレへ向かって話しかける。

その隣には、その女の子が庇っていた2回りほど小さな女の子。

今までよく見ていなかったが、なかなかどうして可愛い顔立ちをしている。

村娘らしく適度に焼けた肌に、それなりに手入れされ結われた髪。少し古臭い衣服。

 

「ゔっ…!」

 

人間の頃と比べて何倍、下手したら何十倍も鋭敏になった鼻が血の匂いを感じ取り、途端に抑えられなくなった吸血衝動に、オレは蹲り口を押さえる。

クソ…吸血衝動のことを全く考慮に入れてなかった…

今吸血するわけにはいかない。してしまったら、オレはあの騎士と変わらない。

 

「大丈夫ですか!?」

 

女の子が、斬られて痛む背中を気遣いながらもこちらへ近づく。

いや、近づくな。大丈夫じゃないのはお前のせいなんだ…

と言いたいが、それはこの子の傷を癒してからだ。

背中に一文字の傷があるそのままでいるのは辛いだろう。

 

「…少し気分が悪い。あの騎士のうちのどちらかが、精神作用系の魔法を使ったのかもしれない…」

 

吸血衝動をサラッとこの世にいない他人に押し付け、適当な嘘を並べる。

女の子はそんな!と悲しい顔を見せてくれた。

見ず知らずのオレの心配をしてくれるのか。可愛い上に優しい。天使か。

 

「お兄ちゃん、いたいの?」

 

うへえ、幼女か…子供もいなかったオレには扱い方がわからないぞ…

撫でてればいいのかな?いや、通報されたくないからやめておこう。

 

「…いや、大丈夫だ。心配してくれてありがとうな。」

 

意識を強く持ち、口から手を離す。

鼻腔をくすぐる美味しそうな匂いをできる限り無視して、勤めて笑顔で答える。

早く止血してやらないとマズいな。失血量的にも、オレの心情的にも。

オレはアイテムボックスから下級治癒薬(マイナー・ヒーリング・ポーション)を取り出した。

 

「これで回復するといい。」

「これは…?」

 

うーん、この世界にはポーションがないのか?

異世界モノといえばファンタジー、というオレの考えは早計だったか。

 

「これはポーションといって、飲めば体の自然治癒力を…」

「ポーション?こんな色のポーション、見たことない…」

 

いや、あるのかよ。

まあ確かに、違う世界のポーションが、ユグドラシルのポーションと全く同じとは限らないか。

 

「これは秘密裏に作られた特殊なポーションだ。色は違っても効果は期待して良い。」

「ありがとうございます…んくっ…」

 

ずっと辛そうにしていたこともあって、そう言うと女の子はぐいっとポーションを呷る。

すると瞬く間に背中の傷が塞がり、服の亀裂だけが残った。

 

「うそ、すごい…」

 

なにやら驚いているが、ここでじっとしているわけにもいかない。

今もなお、村の中では大虐殺が行われているのだから。

 

「…お待たせしました、きるゆー様。」

 

マリー・ドールマ・イータ。オレの作り出した、最高傑作と言っていい愛しの娘。

金の長髪が腰まで伸びていて、右目は前髪で隠れている。

とても長いまつ毛の下にある瞳は閉じられた糸目で、自分では開けることができない。

開けたところで中には眼球に模した球が入っているだけだ。

体は関節人形のような見た目をしていて、関節はボールでできている。

見た目通り、木人形に命を吹き込まれた人形娘だ。

…と言っても、今はゆったりとしたローブにガントレットを装備しているため、可愛い関節は見えないが。

オートマトンだとバレない方が動きやすいと言うモモンガさんの配慮だろう。

 

「マリー。状況は聞いているな?」

「はい。できるだけたくさんの人を助けましょう!」

 

マリーのカルマ値は驚異の+300

悪のギルドとして名高いアインズ・ウール・ゴウンのマイナス勢の多い中、正義感の強いたっち・みーさんの作ったセバスと同じ高さだ。

マリーは助けられるなら助けたい、という純真な女の子として設定した。

代わりに、色々と不憫な子なのだが…その話は後々。

 

「マリー。その子たちはオレが助けた村の住民だ。しっかりと守ってやってくれ。」

「わかりました。」

 

マリーは糸目のまま、嬉しそうに微笑んだ。

さて、正義の味方ごっこの時間だ。

 

 



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8話

 

 

 

目についた騎士を、片っ端から殺し回る。

小さな女の子の方は、マリーが手で目を隠していた。

 

「ひいっ!た、助け、たしゅけ…」

「黙れ。」

 

グチャ!

 

霧の眷属が、騎士の体を鎧ごと引き裂いた。

やはり、この騎士は手を振り払うだけで死んでしまう。

レベルで言うと1桁より上のものはいないようだ。

 

「全く。この程度の力で大きい顔をしているとはな。」

 

イラつくな。本当にイラつくぜ。

どんな理由があるのかは知らないが、こんなに()()()()()()()()を…

…って、違う違う。まったく、吸血鬼のスキルのせいで思考がおかしくなってきている。

 

「あの。きるゆー様は旅の方なのですか…?」

「…そんなところだ。」

 

様かあ…良いなあ。

主従プレイみたいで。

 

…いや、待て待て。名前を知られるのまずくないか?

ユグドラシルからこの世界に来たのがナザリックのメンバーだけとは限らない。

ギルド、アインズ・ウール・ゴウンはユグドラシルでは悪名高いギルドだった。

もしこの世界に他勢力が転移していたとしたら、オレ達のことを敵視されてもおかしくはない。

特に、きるゆーの名前は、他ギルドに密偵や偵察を行うアサシンとして嫌われまくっていたからな…

 

「…特殊な事情があって名前を言うわけにはいかないんだ。悪いが、オレの名前は忘れてくれないか?」

「そうですか…」

 

そんな悲しい顔をするな。

オレがいたいけな村娘をいじめているみたいじゃないか。

 

「それでは、オレのことはブラッドで頼む。」

「はい。ブラッド様!」

「ところで、お前達の名前を教えてくれないか?」

「私はエンリです。エンリ・エモットです。」

「ネムだよ!」

 

ああ。可愛いな、くそ。

マズイな、今すぐにでも血を吸いたい…

 

「すみません。私が不用意に名前を呼んでしまったばかりに…」

「お前が謝る必要はない。マリー。」

「ですが…」

「もう良い。謝るな。お前は悪くない。」

「…はい。」

 

2人の側についているマリーが深々と頭を下げる。

それをオレはやめさせる。別にマリーの失態じゃない。

オレの考えが浅かっただけだ。

 

「ふむ?村人が一箇所に集められているな。」

 

騎士を殺して殺して、殺して殺して。

そして村の中心部分に近づくと、生き残った村人を囲うように騎士が立っていた。

はて、何をしているのやら…

 

「マリー。お前は2人と共に物陰へ隠れていろ。」

「はい。」

 

オレは無駄にややこしくしてしまわないよう、マリーへと指示を飛ばした。

考えにくいがもし強者がいたとしても、村人を連れて出て行くよりは戦いやすいだろう。

…が、エンリ・エモットが呼び止める。

 

「あの!」

「…何だ?」

「お気をつけて。」

「ありがとう。」

 

あーーーーーいじらしい!可愛いなあ…

決めた。この村救ったお礼に血を吸わせてもらおう。

そのためにも、恩義を尽くしたくなるような働きを見せないとな。

 

「ん?何だ貴様…ぐおぉお!?」

 

オレに気づいた瞬間、命を散らす騎士。

ああ、かわいそうに。

 

「ひ、ひい…っ」

「この男は何だ!?」

「触れずに殺したのか…」

「この男を捕らえよ!」

「貴様何者だ!」

 

それぞれ警戒しながら武器を構える騎士達。

正義ごっこのロール、うまく振る舞えるだろうか。

 

「お前のその愚かな疑問に答えてやろう。我が名はBLOOD(ブラッド)。…いたいけな少女に頼まれてな。今はこの村の味方をしている。」

 

少し大仰に手振りを交え、騎士達に貴方方の敵ですよと伝える。

 

「…そして、私の目的は、お前達を殺すことだと知れ。」

「か、金をやる!!金貨200…いや!500でどうだ!?」

「そんな物に釣られるなど…いや、ふむ。待てよ?」

 

オレは少し考える。

金か。そう言えば、オレ達はこの世界の金を持っていない。

ここで資金を調達するのも悪くない選択か…?

 

「そんな…」

 

村人達が青ざめる。うん、でもまあお前たちを見捨てる気はないが。

 

「だ、そうだがお前達。それ以上の金を報酬として出せるか?」

「…すみません、それほどの蓄えはこの村には…」

「そうか…」

「ですが!!助けて頂けた時には、村人皆貴方様に忠誠を誓います!どうか!どうかお願いします!!せめて妻だけでも…!!」

「うるせえぞジジイ!」

 

まくし立てる村人(話からして多分村長?)に蹴りを入れる騎士。

ま、こいつに温情をかけられたら君たち死ぬもんな。

 

『きるゆー様…』

 

マリーから伝言(メッセージ)が飛ぶ。

安心しろ。別に助けないわけじゃねえよ。

オレは、ひとまず蹴りを入れた騎士へ右指を銃の形にして向ける。そして…

 

「ばん。」

 

ぐちゃ!

 

銃の反動を受けた仕草をすると、その騎士は頭を潰され死に至った。

空気に溶けている霧の眷属は、こちらの意思を読み取って勝手に攻撃してくれる。

後でコウモリに戻して褒めてやろう。

 

「その行動は不快だ。…残念だったな、騎士たちよ。お前たちはオレの機嫌を損ねてしまったようだ。」

「き…貴様ら!奴を抑えろ!!俺の逃げる時間を稼げ!!!」

 

オレが再び敵に回ったことを察知した男…きっとこの騎士の隊長が叫ぶ。

うるせえ奴だな。オレは、そいつへと手を向ける。

遠距離の攻撃しか見せていないオレを足止めとは、笑えるな。

 

「ひ、ひい!わかった!金をやる!!金貨1000枚でどうだ!?許して頂けないだろうか!!!」

「ああ、いいぞ。」

「ほ、本当ですか…!」

 

一筋の希望が見えた、とばかりに表情があからさまに変わる騎士。

 

「だが、1000では駄目だ。お前が金を借りてでもすぐに払えるだけ全ての金。そしてこの村へ今後一切関わらないこと。それで手を打とう。」

「そっ、それは…」

「ああ、そうか。今すぐに死にたいのか。すまないな、気がつかなくて。」

「わかった!わかった!!それでいい!それでいい!!」

 

面白いなコイツ。オレが脅すとすぐに手のひらを返す。

ま、最初から何人かは生きて返すつもりだった。

この村に手を出せばタダじゃ済まないぞ、と伝えるためにな。

 

「では、お前には眷属を付けておく。嘘をつくなよ。お前が少しでも約束を違えた瞬間、お前を喰い殺す。」

「は、はい…」

「準備ができたらそいつに話しかけろ。すぐに飛んでいくからな。」

 

オレは新たにコウモリを生み出し、その男の肩に取り憑かせた。

コイツがいれば、眷属を仲介してその場の映像を見たり会話ができる。

 

「では、そこの男以外で助かりたい者はいるか?」

 

はあ?何驚いてるんだよ。コイツの金で助けるのはコイツだけだから。

…お金のせいで正義の味方ロールは無理だったよ…

 

 

 

「助けていただき、ありがとうございました…」

 

相手の資金を限界まで搾り取るオレに、少し恐れているかのような態度を取る村長。

せっかく救ってやったのに、そんなにそわそわしないでくれ。

 

「もしかすると報酬の心配をしているのか?」

 

1つの可能性に思い当たり、少し悪いことをしたと考える。

この村、どうみても金を持っているとは思えない。

金をせびられたらどうしようかと考えているのかもしれない。

 

「安心してほしい。オレが欲しいのは1つだけだ。」

「それは一体…?」

「エモット家の人間を、こちらで引き取りたい。」

「エモット…ですか。」

「何か問題でも?」

「いえ…その、申し訳ないのですが、本人に確認を取ってみてもよろしいでしょうか…?」

「そうだな。マリー。待たせている者を呼んで来てもらえないか。」

「はい。」

 

オレが命令し、マリーが扉を開ける。

すると、そこにはエンリ・エモットが立っていた。

既に呼んでいた事に、村長夫婦は驚いている様子だった。

 

「さて。話は聞いていたな?」

「は、はい…」

 

エンリ・エモットを扉の前で待たせていた。

それは、俺たちの話を聞いてもらい、交渉を円滑に進めるため。

 

「では、お前はどうしたい?」

「私は…」

 

エンリは一瞬の迷いもなく、自身の希望を話し始める。

 

「恩人であるブラッド様が私を欲しいのであれば、断るつもりはありません。…ですが、ネムだけは…」

「ああ。オレがネムを欲するのは、両親と別れた上に姉とまで離れてしまってはかわいそうだと思っての判断だ。安心して欲しい。お前にもネムにも、嫌がる事をするつもりはない。」

 

ずっと我慢していた吸血はさせてもらうけど。

というか、幸せにしてあげたくて言っているだけだしな。

綺麗な物を着て、美味しい者を食べて、暖かい布団で寝て欲しい。

オレの望みはそれだけだ。オレは推しが幸せなら投資を惜しまない性格なんだよ…

 

「…わかりました。私に異存はありません。」

「そうか。それは良かった。…という事で、村長。報酬の話はこれで終わりで良いだろうか。」

「はい。…村を救っていただき、ありがとうございました。」

「あっ、ありがとうございました!」

 

エンリ、村長、その妻。そしてマリー。

部屋にいた全員がオレに向かってこうべを垂れた。

うん。敬われるのは気分の良いな。

…って、マリーまでお辞儀しなくても良いんだよ。

 

 

 




エンリ・エモットとネム・エモットを手に入れた!


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報奨
9話


 

 

 

「とりあえず、噛ませてもらえる?」

「へ?」

 

オレは堅っ苦しいロールを取り止め、エンリへと話しかける。

エンリは、「噛む」というのがどういう事なのかと疑問を顔に浮かべていた。

 

「お前の首筋に噛み付いて、血を飲みたい。良いか?」

「へっ?へっ??」

 

わけがわからない、というエンリを見て、オレは耳打ちする。

 

「オレはヴァンパイアだ。誰にも言うなよ。」

 

エンリの肩がびくりと震える。怖がっているのかな?

オレは背中の中心に意識を集中させ、翼を発現させる。

バサ!と大きな音を立てて、真っ黒な()()()が現れる。

翼といっても鳥などのものとは大きく異なり、左右共に手のような形をしていた。

肩甲骨の辺りから突き出ていて、先に進むにつれて段々と太くなっている。

羽のようなものはなく、先端は5本に分かれ、爪のように鋭く尖っている。

ゲーム時代ではビジュアルを変えるだけの機能だったが、爪の数を増やしたり減らしたりできる。

そしてこっちに来てからは伸ばしたり掴んだり出来る、第3、第4の手のような存在となっていた。

 

オレはエンリの露出している首筋を触り、スリスリと撫で付けた。

翼を出してしまったせいか、吸血衝動が高まったかのような気がする。

 

「はぁっ…はぁ…んっ…」

「で、どう?噛んでもいい?」

 

肌を触られただけで、恐怖からなのか、くすぐったいのかビクビク震えるエンリちゃん。

このために報酬として貰ったと言っても過言ではない。

断られたらどうしようかなあ…

 

「はい…どうぞ…」

「ありがとう。」

 

オレはエンリの頭を横に傾かせ、首に噛みつきやすいような格好にさせる。

肩の服をはだけさせ、健康的に焼けた肌と日焼けのない白い肌の境界を堪能する。

日焼けっ娘ってエロいよな。

 

「かぷ…」

「んっ!」

 

じわり。

血が滲む。

 

舌に鉄の味を感じながら、ちゅう、ちゅうと流れ出る血液を吸い取る。

そして、エンリ・エモットの生涯の記憶が頭に流れ込む。

 

…お母さんの事、好きだったんだな。

自分も傷ついているはずなのに、妹を庇って…

全く。こんないたいけな姉妹にも、異世界は容赦がない。

 

ああ、ああ。甘い。とても甘い。

喉に流れる。美味い。最高だ。

 

「っはぁ!はぁ!あっ…!はぅう…」

 

耳元でエンリの熱い吐息を感じる。

マズイな。股間が反応してきた。

どういう原理かわからないが、吸血と性欲には深い関わりがあるようだ。

吸血の時に、どうしても性的興奮を感じてしまう。

 

「ちゅ…ちゅるるっ!ちゅる!ずず…」

「はぁう!はぁ、はぁ…はぁん…」

 

刺激したい。触りたい。シコりたい。…が、今ちんこを触るのはマズい。

きっと止まれなくなる。止まらなくなる。

オレは、その代わりにエンリの年頃の胸に手を伸ばす。

 

「ひゃああっ!?う、うぅ…ブラッド、さまぁ…」

 

もにゅ。もにゅ。むにゅ。

 

服越しとは言え、女の胸部には初めて触った。

が、なるほどこれは…超柔らけえ。

突然の展開に、泣き出してしまいそうなエンリ。

ああ、興奮する…

 

「ちゅるるるっ!ちゅるる!っはぁ!…エンリ。」

「はぁ…はぁ…ブラッド、さま…」

 

潤んだ瞳で見つめるエンリ。

何の調味料も振られていない、素朴で可愛い村娘。

良いじゃないか。村娘万歳。

 

ふに。ふに。ふに。

 

そうして触っているうちに、一箇所に別の感触を覚える。

ツンツンと張り、少し硬くなってきているようだ。

オレはその硬くなった箇所をくいくい引っ掴む。

 

「っはぁっ!?ひぃ…そ、ソコは…」

 

触って欲しそうにピンピンと主張していた。

むしろ、触ってやらない方が失礼にあたる。

 

くに、くに。くり、くり。

 

「はっ…はぁあ…んぅ…」

 

硬いとは言え、しっかりと弾力がある。

硬いグミのような感触。

いずれは口で味わってみたいものだ。

 

「ちゅ、ちゅ、ちゅる…ちゅぷっ…」

 

エンリの傷口から満足するだけ吸い取って、口を離した。

オレの感じる吸血衝動は、どうやら空腹に似ている。

ここまで満腹になっていれば、しばらく…最低でも1日は吸血衝動が起きないと思う。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

 

膝がガタガタ震わせ、ついに立てなくなってしまってエンリは膝をついた。

服は乱れ、顔も上気していて、情事の後と言われても違和感のないものだった。

エッロ…また吸血衝動が出ないうちに離れよう。

性欲が昂れば吸血衝動の効果が強くなってしまうのは確認済みだ。

腹いっぱいとはいえ、デザートは別腹、なんて言うからな。気を付けておいてもいいはずだ。

 

「マリー。オレはやる事ができた。エンリを休ませておいてあげてくれ。」

「…は。」

 

下がったところで惚けていたマリーに、命令を下して現実に戻させる。

…マリーには少し酷なことをしてしまったかもしれないな。

 

マリーはオレが作ったNPCであり、設定もオレが考えて書き込んだ。

当時は、今では恥ずかしくなってしまうかのような事も考えていた。

 

マリーは、「血の通っていないオートマトンという種族故に叶わぬ恋をきるゆーに抱いている」のだ。

吸血を、したくてもできない。されたくてもできない。

そんなロミジュリばりの種族のしがらみを持っている、不憫で不運な人形娘…という設定。

 

…と言うのを、当時夢見がちだった独り身のオレは妄想していた。

冷静になって今思うとかなり恥ずかしいが…

 

 

 

屋外では、生き残った村人が死体を布に包みせっせか運んでいた。

村の共同墓地へ土葬して弔うらしい。

 

「その女性を貰っていっても良いか?」

 

オレが探していたのは、モモンガさんと一緒に鏡で見ていた、エンリの母親。

エンリの記憶を覗いてしまってから、どうも気になっていたのだ。

2人の娘を生んでいるはずがまだまだ若く、どこか優しさを感じる女性。

美人とまではいかないまでも、エンリのような愛嬌を持っている。

恋愛経験のない男が、優しくされたらコロッと落ちてしまうような、そんな感じ。

 

「私は、村長に報酬として、エモット家の全てを要求した。ならば、その死体も私のものだ。違うか?」

「い、いえ…その通りです。」

「では問題はないな。君は別の死者を弔ってあげてほしい。」

「はい…」

 

村人はオレがこの女に何をするつもりなのか、恐ろしいものを見たと言う表情でそそくさと逃げていった。

いや、別に変なことをするつもりはないんだが…

まあ、どうせこの後全員に洗脳を施すつもりだ。

今呼び止めて誤解を解く必要はないだろう。

 

オレは村の外れへ移動して、エンリの母親を地面に降ろす。

アイテムボックスを開いて、中から、手の中に収まるほど小さな杖を手に取った。

このアイテムの名は蘇生の短杖(ワンド・オブ・リザレクション)

使い切りのアイテムだが、死者の完全蘇生を可能にするアイテム。

 

真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)

 

それを、オレは躊躇いなく使用した。

確認したが、100近く残っていた。

ここで1つ使うくらいはどうってことないはずだ。

 

「…けほっ…こほっ…」

 

小さなエフェクトの後、エモットの母親は、小さく、しかし確かに息を吹き返した。

 

「どうも、こんにちは。良いお天気ですね。」

「は、はひ…?な、だ、れ…?わ…わらひは…」

 

混乱している上に舌が回っていない。

蘇生直後でまだ体がうまく動かないようだな。

 

「喋りづらそうだな。…喋らなくても良い。黙ってオレの話を聞いてくれ。」

 

まだ理解できていない様子の母親は、ゆっくりと頷いた。

 

「カルネ村に騎士が強襲を仕掛けてきた。それで、生き残っているのは半分にも満たない。」

「!」

「オレは騎士達を殺して、あるいは追い返して村を救ったものだ。」

「ありはほう…がはいます…」

「ああ。…だが、村の全員を救えたわけじゃない。現にアンタは夫と共に騎士に殺された。娘達を逃がす時間を稼いでな。」

 

暫くは不思議そうな顔をしている。

そして、段々と思い出してきたようだ。

 

「へんりは…ねむは、ぶひなんでひょうは…」

「ああ、無事だ。…とは言え、これからどうなるかはわからないが。」

「そへは、どういう…」

「彼女達はオレが貰い受けたんだよ。」

「もらい…?妾というこほでひょうか…」

「まあ…そういう言葉が近いかな。」

 

親の前でいうことではないが、はっきり言っておかなければならない。

 

「いや。実際には、エモット家の人間を報酬として貰った。お前も入ってるんだよ。わかるか?」

「へ…?」

「オレは自分で言うのも恥ずかしくない程度には優秀な魔法詠唱者(マジック・キャスター)だ。訳あって死んだお前を、蘇生魔法で生き返らせてやったんだ。」

「なん…と…」

 

エモット母は大きく目を見開き、そして膝をついてこうべを垂れた。

この世界では、強い人間にはこれほどの敬意を抱くものなのだろうか。

 

「あり…はほうごはいます…ほんとうに…ありはほう…」

「頭を下げる必要はない。こちらの都合で呼び戻しただけだ。」

 

吸血時の記憶共有により、エンリやネムがかわいそうだと思ってしまっただけだ。

オレが甘っちょろいのは認めよう。これは、本当にオレの、ただの我儘だ。

ああ…モモンガさんにどう説明しよう…

 

「わたひは、娘たちとくらへるのでひょうか…?」

「お前が望むのならな。」

「そう、でふか…」

 

エモット母の両の目から涙が流れた。

エンリの記憶にある優しい母の像と一切の相違がなかった。

娘達のことを、本当に愛していたのだろう。

 

「夫…夫は、生き返らへてふれないのへひょうか…」

「悪いな。それは無理だ。この魔法は、一生に使える回数が限定されてる。そうポンポン使うわけにはいかないんだ。」

 

ユグドラシルで貯めていたアイテムが尽きる、と言う意味でな。

マリーは蘇生魔法を使えるが低位のもので、生き返らせる人間のレベルが低いと失敗し灰となってしまう。

さっきの騎士ですら無理だろうから、ただの村人では成功する確率は0だ。

 

「そんな貴重なものほ…ありはとうほはいます…」

「だから頭下げなくて良いんだって。礼はその分だけの忠義で返してほしい。」

「わはりました…」

 

 

 



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-第4話ㅤ死の支配者
10話


 

 

 

あれから生き残った村人を全て集め、エモット家以外の村人に洗脳魔法を行使した。

騎士達からエモット母は辛くも逃げ切った、という記憶を捏造した。

エモット家に施さなかったのは、蘇生させたのを覚えていればそのことに対して恩義を感じたままにさせておくためだ。

感謝なら、いくらしてくれても問題はないからな。

 

その後、ガゼフ・ストロノーフなる騎士と合流。

目的が同じだったため、協力関係を結びニグンとかいう隊長率いる魔法軍を撃退した。

まさかの第七位階魔法の天使召喚を使用され、しかしワンパンで倒してきた。

この世界のレベルは低すぎる、と思っていたが、上には上がいるらしい。

まあ、第七位階程度なら脅威でもなんでもないが…

 

「見ていましたよ、きるゆーさん。」

「ひゃいっ!?」

 

帰還後、オレはモモンガさんにニヤニヤした笑みで出迎えられた。

(骨なので本当にニヤニヤしていたかはわからないが…)

 

「ああ、すみません…勝手にアイテムを使ったりして…」

 

オレは蘇生の短杖(ワンド・オブ・リザレクション)の使用後、更にゴブリンの角笛をエンリに使用させた。

ゴブリンの角笛とは、500円課金ガチャのハズレアイテム。

使用するとゴブリンを何匹か呼んで使役することができるゴミアイテムだ。

…なのだが、レベル一桁で騎士相当なこの世界ではかなり有用なアイテムだろう。

 

どうやら村人達が死んで、村の存続が危ぶまれていたらしい。

人手が足りず困るだろうということで、使っても問題ないアイテムを押し付けた。

人手が足りないのであればとナザリックの魔物を貸し与えることも考えたが、モモンガさんに相談も無しに約束するのは気が引けた。

 

「助けた人間に吸血してましたよね?」

 

オワタ…あのシーン見られてた…

なんでそんなとこ覗いてんだよ!エッチ!スケベ!

 

「違うんですよギルド長!ヴァンパイアにとって吸血は、食事と同等の価値を持ってるんだ!…かといって、ナザリックのNPCを吸うわけにはいかないし…」

「はははは。なんて、ちょっとからかってみただけです。気持ちはわかりますよ。」

「勘弁してくださいよ…ショックで心臓動き出すかと思ったぜ…」

 

いや、本気で。

今胸の中でバクバクいっててもおかしくない。

 

「それで、本題ですが。…この世界に、ユグドラシルの魔法やモンスターが存在している件です。」

「それはオレも気になった。低級魔法もそうだが、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)。…アレが出てくるとは驚いた。」

「私も見ていましたよ。随分と派手に倒してましたね。」

「いや、騎士共が雑魚ばっかだったからちょっと楽しくなって、つい…」

「きるゆーさんも、多少アンデットの種族に引っ張られてるみたいですね。」

「まあ…人殺しても、なんとも思わなかったしな。」

 

やはり、人間の時と性格や考え方が変わっているのだろうか。

そう考えると、過去のオレが死んでしまったようで少し寒気を覚えた。

 

「ニグンとかいう男がアレのことを最高天使とか言っていた。この世界の国家戦力は、アレが最大戦力だと思いたいな。」

「それはどうでしょうか。…あの魔法にモンスター。この世界に、他のプレイヤーが存在している可能性があります。だとしたら第十位階。果ては世界級。ワールドアイテムの存在があってもおかしくないと思います。」

「可能性というか、実際そうなんだろうな。じゃないと説明がつかない。…っかー!面倒なことになったな。」

 

転生したプレイヤーねえ…

ユグドラシルにはナザリックの陣営に勝てるような勢力は無かったとは思うが…

胃がキリキリと痛む。ああ、エンリちゃんに癒されたい…

 

「それで。きるゆーさんはカルネ村の処分はどうするつもりなんですか?」

「へ?オレに聞くの?…オレは折角助けたんだしこらからも支援して行きたいと思ってるんだが…」

 

オレはギルド長に全ての決定権があると思っていた。

オレは正直頭のいい方じゃないし、そういう方面は全てアルベドかモモンガさんにやってもらいたいんだけど…

 

「わかりました。この村は保護下に入れましょう。どうやら、恩も売れているようですし。使い道はありそうです。」

「はは…命を救われたからかな?こっちの世界特有の考え方だね。」

「お祭りでも開いてみたらどうですか?カルネ村の英雄、ブラッド記念日、みたいな。。」

「勘弁してください…」

 

あっちに行ってもこっちへ行ってもブラッド様、ブラッド様。

村人たちは間違いなくかなりの恩義を感じているようだった。

吸血鬼だから、血液、という安直に考えた名前だからあんまり呼ばないで欲しかったんだが…

 

「これはこの村以外にも武勇伝として広まって行きそうだな…」

「良いじゃないですか。村を救った英雄、ブラッドさん。」

「やめてくださいよ…」

 

はあ。胃が痛い…この後マリーで遊ぼう。気分転換だ。

 

 

 

「私がアインズ・ウール・ゴウンの名で何か大きな事をしでかします。そうしたら、ブラッドはアインズ・ウール・ゴウンなる者を敵視している、みたいな情報を流して欲しいんです。」

「敵視? それはどういう…?」

「この世界に転移したプレイヤーがいたとして。もし、そのプレイヤーがアインズ・ウール・ゴウンのメンバーだったら?」

「それは…でも、リスクが高くないですか?」

「私もそれは考えました。…が、もしこの世界に仲間がいる可能性が少しでもあるなら…」

「モモンガさんの考えはわかりました。…でも、オレがナザリックへ敵対する意味は…?」

 

敵対とは穏やかじゃない。

ブラッドはアインズ・ウール・ゴウンのメンバー、と言ったほうが早いのでは?

 

「アインズ・ウール・ゴウンは異業種ばかりのギルド。もし、ナザリックが人間の敵と見られた場合どうなるでしょうか。」

 

確かに、それはちょっとまずいかもしれない。

この世界の人間全員が相手となると、少し骨が折れる。

 

「私たちが負けるとは思いませんが、もしその中に強力なプレイヤーがいたら打撃を受けてしまうかもしれません。」

「考えたくない事だが、そうだな…」

「ブラッドがアインズ・ウール・ゴウンと敵対しているならば、その時に矢面に立つのは、当然強者である冒険者ブラッド。」

「なるほど…確かに、敵対している陣営と裏で繋がっている、ってのは最悪なシナリオだな。」

「そして、ナザリックを強襲するとなれば、確実にブラッドに話がいく。」

「不意を打とうとした相手を待ち構えることができる、か…」

「はい。ですので、きるゆーさんにはこの世界の文明に触れて、そこで冒険者として名声を上げて欲しいんです。」

「な、なるほど…」

 

面倒ごとかと思ったが、これはもしや異世界転生のテンプレってやつなのでは?

つまりは、冒険者になって俺TUEEEして来い、って事でよろしいか?

 

 

 




作者がアインズ様みたいに頭良くないから進行がこれでいいのかわからない…
世界征服に向けて、おかしいところとかまずい点とかあったら教えてください。
世界征服しようと思ったことがないから勝手がわからない…


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第11話ㅤ今日のぷれあです①

閑話的な


 

 

 

「ということで、さしあたってきるゆーさんには、一番近いエ・ランテルに向かって冒険者になり、名声をあげて欲しいんです。」

「ま、この世界のレベルは全体的に低いみたいだからそれは簡単だな。」

「きるゆーさん1人では、NPCたちは納得しないでしょう。誰か1人、共をつけなければならないでしょう。」

「マリーにしましょう!!」

「いや…マリーは村人との面識があるので、できればカルネ村の管理を任せるつもりなんですけど…」

「それも同時進行でマリーに頼もう。何も住み込みで見張らせるわけではないんでしょ?」

「まあ…マリーが納得すればそれでもいいと思います。」

「じゃあ、今すぐに呼んできてもらおう。」

 

オレは部屋を出て、掃除か何かの作業をしている一般メイドを呼び止めた。

 

「フォース。モモンガさんの私室にマリーを呼んできてくれ。」

「わかりました!きるゆー様…」

 

メイドは頼みごとをされただけで嬉しそうだ。

こちらをチラチラと探るような目線を送ってくる。

 

「?どうした?早く頼む。」

「は、はいっ!」

 

フォースは慌てて、下品にならない程度にパタパタと走って行った。

向かうは、食堂。食事中であろうマリーの元だ。

 

 

 

「マリー・ドールマ・イータ。きるゆー様が、至急お部屋に来られるようにとの事です。」

「あっ!わかりました。ありがとうございます。フォースさん。」

 

マリーは食堂を出て行った。

その様子を、同じく食堂にいた姉妹たち(プレアデス)が見ていた。

その視線は、羨望というのが相応しい物だった。

 

「む〜。いつもマリちゃんだけずるいっす。」

「仕方ないでしょう。マリーはきるゆー様がお造りになられたお気に入りなのだから。」

「えー。私もきるゆー様と会いたいっす。」

「それは私もよ。」

 

まずはルプスレギナ・ベータが不平をこぼした。

赤髪の、愛嬌のある褐色人狼(ワーウルフ)

歯に衣を着せない、と言った言葉が似合う、美人で巨乳で(重要)声が可愛い(重要)次女。

 

それに反応したのは、ユリ・アルファ。

長い髪をキッチリとまとめ上げた、秘書然とした首無し騎士(デュラハン)

もちろん美人のプレアデスの長女にして副リーダー。

そして、ルプスレギナを2回りは超えるかと言うほどの爆乳(重要)。

 

「マリちゃんが羨ましいっす。私もきるゆー様と遊びたいっす!」

「きるゆー様は遊んでおられるわけではないのよ。」

「嘘っす!だってエンちゃんは遊んでもらったって言ってたっす!」

「!」

 

それに反応したのは、三女のナーベラル・ガンマ。

この姿以外に姿を変えることのできない二重の影(ドッペルゲンガー)

少しドジの入った古き良き和風美人を体現したクール系美人。

澄ました顔をしながらも、興味津々と聞き耳を立てていたようだ。

 

「それは…えっ?そうなの?」

「詳しく話を聞きたいわ。」

「…呼んでみるっすよ!」

 

主食とするため食堂には寄らないソリュシャン・イプシロン。エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ。

そして燃料のようなドリンクを飲むため、他のプレアデスほど来る頻度が多くないシズ・デルタが呼ばれた。

これで、マリー以外のプレアデスが全員揃った状態となる。

 

「エントマ。あなたに聞きたいことがある。」

「?」

 

エントマは、こんな所になぜ呼ばれたのかと可愛く首を傾げた。

 

「あなた、きるゆー様のお部屋に呼ばれたことがあったでしょう。何をしていたの?」

「しりとり…という遊びをしていました。」

 

ゴロゴロピシャーン!

聞いていたプレアデスたちに、雷が落ちたかのような衝撃が走る。

 

「しり…とり…!?」

「なんて卑猥な…!」

「エンちゃんずるいっす!」

「ち、違うよぉ…」

 

エントマは、勘違いされていることに気がついて手をワタワタ動かす。

エントマの顔が擬態でなければ、顔が真っ赤になっていただろう。

 

「しりとり…言葉遊び。最後の言葉を繋げるゲーム。」

「いやに詳しいわね…」

「シズ!まさかあなたもやったことがあるの?」

「シズちゃんずるいっす!」

 

シズが捕捉すると、新しい敵を見たとばかりに問いただす姉妹たち。

ルプスレギナは、至高の御方とする事ならばどんなことであろうと羨ましい様子。

 

「っていうか、なんでエンちゃんとシズちゃんだけなんすか〜?私もきるゆー様と遊びたいっす〜!」

「それは私も同意見。マリーは仕方ないとしても、シズとエントマが呼ばれて私たちが呼ばれないのはおかしいわ。」

「そうね。」

「…では、その「しりとり」とやらを練習してみるのはどうでしょう。上達すれば、もしかすると…」

「きるゆー様に呼んでもらえるかもしれないっす!」

 

ルプスレギナは、新しいおもちゃを見つけたペットのように、キラーンと瞳を輝かせた。

どうやら他のプレアデス達も意気込みは十分なようで、やる気に溢れていた。

 

「じゃ、私からっすよ!じゃあ、きるゆー様!っす!」

「時計回りで、次は私ね。ま、ま…マリー・ドールマ・イータ。」

「たくさん食べたーい!」

 

ぴょんと飛び上がって答えるエントマ。しかしその回答は固有名詞ではないためルール違反だ。

…が、しりとりをよく知らないプレアデスたちはそのことに気が付かない。

 

強欲の魔将(イビルロード・グリード)。」

「ドラゴン。」

「あ!最後に、んがついたら負けなんだよぉ。」

「えぇ?最初に言っておいて欲しいわ。」

 

最初に負けたのはソリュシャン。

エントマの、ルールの説明不足により終了してしまった。

 

「次はシズからね。」

「…もふもふ。」

「…え?」

「もふもふ。」

「…そうっすか…ふ、っすね。ふ…フラットフット様っす!」

「「「!!」」」

 

プレアデスたちは気が付いてしまった。

上手くいけば、至上の御方々の名前を呼ぶことができることに。

 

「マーレ・ベロ・フィオーレ様。」

「まんぷくー!」

「クアドラシルさん。」

「…あら?んが付いたのでは?」

「クアドラシル!るです、る!」

「うーん…セー…フ?」

「ナーちゃんは負けず嫌いっすねぇ…」

「るね。る…あ、るし★ふぁー様。」

 

ギリ…

誰が発したのか、激しい歯ぎしりが聞こえた。

皆一様に、してやられたと言う表情を浮かべている。

特に自らの失態によってチャンスを回してしまったナーベラルはとても悔しそうだ。

 

「…マフラー…」

 

シズが自らのマフラーを触って答えた。

そして、順番が回ってきたルプスレギナは他の姉妹たちと顔を見合わせた。

 

「この場合は、次の文字はらでいいんすか?」

「…きるゆー様はどちらでも良いって言ってたわぁ。でも、前やった時は母音を使ったわ。」

「じゃあ、あっすね。あ、あ、あ…あ!アイn…」

「いいえ!らよ。絶対にらでやるべきだわ。」

「へっ…へ?いやいや、さっきあって決めたっす!」

「いいえ、決まってないわ。私はらで進めるべきだと思います。」

「ヤダー!絶対あっすよ!アインズ!ウール!!ゴウン!!アインズー!!」

「らです!絶対にらです!異論は許しません!」

「あっすよ!絶対にあっす!きるゆー様が仰られていたことなら間違いはないっす!」

「きるゆー様はどちらでもいいと…」

「いーえ!絶対あっす!!あー!!」

「ら!ら!らー!!」

 

この喧嘩はしばらく続いていたという。

何をやっているんだか…

 

 

 




R18作品だけど、日常系も需要あったりするかな?


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エンリさんの御奉仕
12話


 

 

 

オレは、ブラッドの名声を広めるという指令をモモンガさんから与えられた。

ユグドラシルでの力があればそう難しいことではないはずなので、オレにもできるだろう。

…と思っていたのだが、プレアデス達がオレの部屋に押しかけて

数日遊んでいたらモモンガさんからやんわりと怒られた。ぐすん。

 

これは完全に職務放棄したオレが悪いため、オレの心を癒してくれるであろうエンリちゃんの元へと向かった。

建前としては、エ・ランテルへと向かう前に一度様子見とエンリの血を求めて、という事にしている。

 

「ブラッド様!」

「ブラッドさま!」

 

オレは村人にエモット家が住んでいるという家を教えてもらい、そこへ向かった。

すると、すぐに家の外でせっせか働いていたエンリ、そして妹のネムに捕捉された。

 

「おー。元気にしてたか。2人とも。」

「げんき!」

 

ネムはその小さな体でオレの足へしがみついてきた。

なかなか可愛いな。この歳の子に血を吸うのはアウトなんだろうかとか考えてしまう。

 

「こら、ネム。ダメでしょ。ブラッドさんが困っちゃう…」

「いやいや、そんなことはないよ。…そうか。ネムは元気か。嬉しいぞ。」

 

とはいうものの、足を掴まれたままでは動けない。

ヴァンパイアの能力値を生かして、力に物を言わせてネムを抱き上げる。

ネムは突然の抱っこにキャッキャと嬉しそうだ。

 

「村の様子はどうだ?」

「はい!ブラッド様の与えてくれたゴブリンさん達のおかげで、大変だったはずの復興ももう終わりました。ありがとうございます!」

「いいって事よ。」

 

照れてか、変な言葉遣いになってしまった。

こういう、いたいけな女の子に真摯にお礼を言われるとむず痒いな。

オレが人知れず照れていると、エモット家の中から1人の女性が現れた。

 

「ブラッド様!よくおいでなさいました。」

 

オレが死の淵から蘇らせた、エモット家の母親。

名をオーマ・エモット。エンリの記憶から探ると、この歳31になるようだ。

元の世界ならば、そろそろ結婚に焦りたくなるような歳だ。

が、どうやらこっちの世界の人間は寿命が極端に短い。

故に早めに、15、6くらいで結婚、と考えるのが一般的なようだ。

…まさに、エンリがそのくらいの歳なのだが。

 

「大したおもてなしはできませんが、どうぞ上がっていってください…」

「ああ、いや。村がどうなっているのか、少し見て回るつもりなんだ。」

「そうでしたか…わかりました。ネム!お料理作るの手伝ってくれる?」

「え〜!私ブラッドさまと遊びたい〜!」

「こら。ブラッド様は忙しいんだから、そんな暇は…」

 

エンリがネムを窘めようとするが、オレはそれを止める。

…いや、止めようとした。その前に、エモット母…オーマが言う。

 

「ブラッド様に食べていただく料理を作るの。一緒に作らない?」

「! 作る!」

 

ネムの機嫌が180度代わり、むしろ手伝いたいとばかりに目を輝かせた。

オレはそんなネムを地面におろしてやり、オーマの元へと向かわせた。

さすがは母親。娘の扱い方を心得ているな…

オーマは、家へ踊る前にこちらを向き一礼し、そしてなにやらエンリにウインクを送った。

 

「っ…」

 

それを見たエンリは、なにやら顔を赤面させてた。

…何なんだ?

 

 

 

村人に会う度、ブラッド様、と感謝の意を伝えられる。

マジの英雄だな、これ…

果てには、オレの隣を歩くエンリへ羨望の眼差しを送る村娘もいた。

まあ、アバターの外見設定はかなり凝ったからな。

村の救世主で、しかも年頃が17、8歳くらいの若い銀髪赤目のイケメン。惚れないはずないな。

オレはそんな落ち着かない状況にムズムズして、エンリとともに死んだ村人が住んでいたであろう空き家へと入った。

村娘に欲情する前に、今のうちに吸血してしまおうと言う魂胆だ。

 

「あの…2人の時は、きるゆー様と呼んでも良いでしょうか…」

 

ふむ。

確かに、どうせ知られているのなら、呼ばれ慣れている名前の方が良いかもな。

ブラッドって、なんか自分の名前の実感ないし。適当につけた名前だし。

 

「では、きるゆー様。あの…ここにもご奉仕をしたほうがよろしいでしょうか…」

 

エンリは地面に膝をつき、オレの足の間に入り込んだ。

何を…と考えていたすきに、エンリはとても恥ずかしそうにしながらもオレの股間に手を伸ばした。

 

「な、ど、どうしたんだ、いきなり…」

「こうしたら喜ぶって、お母さんが…」

 

エモット母、ナイスすぎる…

 

「あの…迷惑だったでしょうか…」

「いや!そんなことは全然ない。続けて欲しい。」

「…はい。」

 

エンリは、促されたことによりもっと顔を赤くさせる。

さあ、これでご奉仕しなければならなくなったぞ、エンリちゃん!

エンリちゃんに性知識が乏しいことは記憶を覗いたことで知っている。

中に入れて出す、と言うことくらいは知っているようだが、男根の慰め方などは知らないはず。

と言うことは、この短い期間で母親に仕込まれてきたのだろう。

なんという…くっ…エロッ…想像を掻き立てられるな。

 

「ひゃあ!…あ、あの、ごめんなさい…」

 

大きな声を出してしまったエンリはすぐに謝る。

どうしてエンリが驚いてしまったのかというと、それは…

エンリが恥ずかしがりながらも、母親にエッチな奉仕を教わっているのを想像したら…その…ねえ。

 

「こ、これ…一度出してしまった方が良いですよね?」

 

恥ずかしいながらも、年頃ながらに興味はある様子。

オレの、ズボンの中で窮屈そうに膨れている部分を興味深そうに見ている。

 

「…そうだな。」

 

かくいうオレも、心臓が止まっているため赤くはならないが照れまくっている。

こんな惨めなところ見られたの初めてだよ…

エンリは、オレのズボンを手間取りながらもいそいそと脱がした。

手馴れてない感じがあってとてもいい…

 

「大きい…」

 

エンリが目を見開いて、オレの肉棒へと釘付けになっている。

もう、勘弁してください…

 

「その…失礼します…」

 

エンリはしばらく呆然と見つめた後、ふるふると首を振って手を伸ばす。

さわさわ、と優しく撫でるエンリの柔肌。

そんな初めての刺激に、俺の愚息はヒクヒクと反応する。

 

「すごい…びくんびくん動いてる…」

 

その実況ヤメテ…

エンリは、意識していっているのではなく、ただ純粋に思ったことが口から出ている様子だ。

 

「じゃあその…始めますね。…初めてなので、痛かったらおっしゃってください…」

 

そして、エンリのその小さな口が、オレの頭を口に含む。

ふるふるとした唇が、肉棒へとぴっとりとくっついた。

 

「かぷ…ん、んむ…」

 

オレの股間に、プニプニとした感触が伝わる。

そんな弱い刺激だが、それだけで気持ちが良かった。

 

「あっ…」

 

初めての心地よさに、思わず声が漏れてしまう。

いや、男が喘ぐって誰得だよ…

オレは口を引き結び、こちから漏れ出る声を意識して我慢する。

 

「ちゅ…ん…んちゅ…」

 

エンリは、亀頭の部分にちゅっちゅとキスのような刺激を始めた。

そして、竿の部分を親指でスリスリとこする。

練習したのかな、と考えてしまうくらいに迷いがない。

きっと、本当にオレを喜ばせるためにいろいろなことを練習してきたのだろう。

はあ、吸血で記憶を覗くのが楽しみだ…

 

「じゅううっ…じゅるる…んっ…」

 

エンリの口が、深いところまで入ってきた。

ちょうど、棒の中間くらいの位置までがエンリの口の中へ隠された。

すごい…暖かい、柔らかい。気持ち良い…

 

「ちゅ…ちゅちゅう…ちゅるるっ!」

 

そして、激しく吸い付く。

舌が棒に絡みつく。唾液が口の中に溜まってきている。

ねっとりとした動作で、口内が蠢く。

う…これ、ヤバイいかも…

 

「んっ♡んん♡んぶっ!んんぅ…」

 

エンリのぎこちない初心者フェラにちんこをビクビク言わせていると、エンリはこれまで以上に美味しそうにちゅうちゅう吸い付いた。

じゅうじゅう、と唾液を絡めて、オレの棒に吸い付く。

 

「エンリ…出る…!飲んでくれ…!」

「んっ!ん♡んっ…♡ちゅぷ…んぅ…」

 

びゅびゅ♡びゅるるっ♡びゅくびゅく…♡

 

オレはこの世界へ来て始めて、激しくエンリの口の中へ吐き出した。

エンリは、射精と同時に大きく目を見開いた。

そして、その全てを口で受け止める。

 

 

 




エンリちゃんと遊ぼう。


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13話

 

 

 

「んっ…んぷっ…こく…こく…」

 

エンリは、ちゅうちゅう吸い付きながら、口の中にたっぷりと吐き出された精を飲み込む。

その姿がどうにもいじらしくて、可愛らしく、興奮する。

 

「ちゅぷ…んはぁ…はあ、はあ…おいし…です…」

 

エンリは、オレからずるる、と口を離す。

その引き抜かれる感触に、不覚にもまた快感を覚えて反応する。

吐き出した際に少し萎んでいたものが、ゆっくりと、むくむく起き上がる。

 

「気持ちよかったですか…?」

「最高だ。」

 

オレは一切のお世辞なく、エンリを褒めそやす。

処女でも、そんなエロい表情ができるんだな…

 

「それにしても、随分と上手いな。」

「えっと…れ、練習したので…」

「村の男と?」

「ちっ、違いますっ!!」

 

オレは恐る恐る聞いたが、エンリは慌てて首を振る。

この世界の貞操感は、処女のエンリの記憶からは分からなかった。

操を立てること自体に重要性が無いのかとも考えたが、エンリの反応を見るにそう言うことでもなさそうで安心した。

自分が処女厨とは考えたくは無いが、しかし自分を一途に思ってくれることが悪いとも思えない。

 

「夜、寝る前に、お母さんと一緒に練習して…」

「お母さんと?」

 

母娘の、夜のエッチな練習。

エロすぎる響きだ。

 

「指をくわえさせられて、歯が当たらないように練習したり…吸ったり、舐めたり…」

 

何それエロい…と言うか、エモット母よ。娘に何て事させてるんだよ…

とも思ったが、よくよく考えればネットなんてない、本すらも贅沢品なカルネ村。

性技を伝えるには、こうやって実践的な練習をさせるしかないのかもしれない。

 

「エンリ。その、もう一回いいか?」

「! はい、任せてください!」

 

エンリは求められたのが嬉しいのか、気持ちの弾んだ様子でオレのものをもう一度手に取った。

クソ可愛い…もうエンリと結婚して幸せになるだけでいいんじゃないかな…

 

「もう大きくなってる…」

 

指で握り、さわさわと感触を確かめるエンリ。

そして、再び口の中へにゅるる、と入り込む。

さっきよりもヌルヌルする…

 

「んっ…んぷぷ…ぷちゅっ…じゅるる…じゅる…っ」

 

エンリも段々と慣れてきたようで、口全体を使って奉仕をする。

最初は控えめだったものが、じゅぷ、じゅぷ、と大胆になっていく。

唾液を絡め、奥から吸い出すようにすする。吸い込む。舐めとる。

射精後すぐの敏感なときに、この刺激はまずい…

 

「じゅるるっ!じゅる…んぷぷっ…ぶぷっ!ちゅる…」

 

吸い付きがどんどんと激しくなっていく。

これは…バキュームフェラってやつなのでは…

エンリの口が、ひょっとこのようにオレの肉棒の形に窄み、射精を促す。

見ようによってはとても不細工になってしまっている顔に、何故だか興奮した。

 

「エンリ…もう…」

「ちゅずっ!ちゅるるっ!いっふぁい…ふぁひて…ちゅっ!ちゅちゅるっ!」

「あ、また…」

 

びゅーっ♡びゅびゅっ♡びゅくっ♡びゅるるっ♡

 

二度目の射精。早くも再放送。

先程の射精とも変わらない勢いで、エンリの口の中へとぶちまける。

 

「ふぁ…しゅほい…」

 

ぴゅーぴゅーと出される精を、エンリは頬張る。

オレは今度はすぐに飲まないようにとお願いして、エンリの口の中を堪能する。

射精後の余韻を、口の中で贅沢に堪能する。

滑って生暖かいのがとても心地よい。

 

「ちゅう…ちゅうううっ…」

 

エンリが、尿道に残る最後の最後まで吸い尽くそうと吸い込む。

あー、それ今やっちゃダメなやつだ…気持ちよすぎる…

オレは満足するまでエンリの口の中を堪能した後、頭を掴んで引き離した。

 

「ありがとう…良かったよ。」

 

お礼を言う。

いや、本当に良い経験をさせてもらった。

最高のサービスに満足していると、エンリは不意に立ち上がり、椅子に座るオレの上に跨った。

オレが疑問に思っていると、エンリは続ける。

 

「あの…もしよかったら、こっちでも…」

 

そう言うと、エンリはスカートを少しずつめくり始めた。

 

「いや!イヤイヤ!ちょっとまって、それはちょっと…」

 

いや、それはまずい。

フェラさせたのもまずけど、セックスはまずい。

興味はあるが、戻れなくなってしまいそうだ。

 

「そうですか…」

「じゃあ、その代わりに血を吸わせてもらえないかな。」

「喜んで!」

 

悲しそうな顔をするエンリに、オレは代案を提案した。

これなら、どうせもうやってしまっているため問題は少ないだろう。

 

かぷ…

 

オレは、前回の傷痕のあるエンリの首へ噛み付く。

そして傷を付け、血を流してからそれを啜る。

 

「あっ…!あぅ…あっ…はぁ…はぁ…」

 

エンリもアルベドも、何故か吸血中は妙に艶っぽくなるんだよな…

その意味を、オレは吸血の記憶共有で知ることになる。

あ、これめっちゃ気持ち良いんだ…そりゃあこうもなるわな。

って、エンリ、エモット母とそんな事…やば、興奮する…

ああ、なるほど、性行はオーマ母の入れ知恵か。

村の英雄と結婚できたら滅茶苦茶玉の輿だもんな…

 

「きるゆー様…」

「お前…目の色変わってないか?」

 

吸血を終わらせた後、オレはエンリの異変に気がついた。

目が真っ赤に染まり、処女にはふさわしく無い淫靡な表情を浮かべている。

 

「はぁむ…かぷ…ちゅぷぷ…」

 

エンリが、肩に歯を立てる。

しかし、その程度の筋力では俺の防御を突破することはできない。

傷1つつくことはないだろう。

が、それでも構わないとばかりにエンリはオレの肩に甘噛みを続ける。

 

これ、もしかしてヴァンパイア特有の、血を吸った人間を同族にするとか言うアレか…?

エンリ、人間種から吸血鬼になっちゃった…

 

 

 



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14話

 

 

 

「眷属化」

敵MOBを攻撃した場合、確率で発動する吸血鬼(ヴァンパイア)種限定スキル。

魅了状態の状態異常にかけ、一定時間味方を攻撃するようになってしまう。

そしてこのスキルは、自分が敵よりレベルが高く、そしてレベル差が大きいほど成功確率は高くなる。

 

恐らくは、このスキルが原因と思われるが…

ユグドラシルの時とは、効果が多少違っているようにも思える。

確かに、噛んだことによりダメージを負わせたのは間違いはないのだが。

 

「エンリ。よく聞け。お前は吸血鬼(ヴァンパイア)になっている。」

「ちゅっちゅっ…ちゅぷぷっ…ちゅるっ…んふ?」

 

あれからずっと、エンリは出るはずのない血を求めて俺の肩をハムハムしている。

おかげで、俺の肩から鎖骨までの部分がもうよだれでベトベトだ。

ああ、これは確かに()()()()にかかっていますね…

 

吸血欲求というのは性欲と深い関わりを持っている。

例えば、性的に興奮すると吸血をしたくなってしまう。

興奮が加速すると、自分の意思を抑えられないようなことになってしまうこともある。

アルベドを吸血した時の俺や、今のエンリのような状態だな。

…つまり、エンリは今、とても性的に興奮している状態のようだ。

 

「吸血したいんだろう。飲ませてやるから少し待ってろ。」

 

そしてこれは、ある程度の血を摂取することで収まる。ソースはオレ。

正直、これはこれで甘噛みされるだけならオレは一向に構わないのだが…

いつまでも肩をちゅうちゅうさせるわけにもいかない。

 

オレは、自らの親指を口の中に入れ、噛み切る。口の中に、鉄の味が広がった。

…うーん、自分の血は美味しく感じないんだな。厄介な事だ。

 

「ほら。飲め。」

 

オレはエンリの口の中に、親指を無理矢理押し込んだ。

すると、エンリは俺の指を大人しく吸い始めた。

それはまるで赤子がミルクを飲むかのような光景だった。

 

「ちゅう…ちゅ…んちゅ…ちゅるる…」

 

大人しくなったのは良かったが…

エンリの事は、これからどう扱っていけばいいんだろうか。

 

「とりあえず、その目と吸血欲求はどうにかしないとな…」

 

村娘の瞳の色が変われば、村人たちは気になるだろう。

というか、この世界にもヴァンパイアがいて、そしてそれがオレと同じ特性を持っていたら、エンリやオレが人間ではない事に勘付かれてしまうかもしれない。

それは最悪ではないが、少々面倒だ。

 

上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)

 

創造系の魔法で作り出したのは、カラーコンタクト。

色は勿論、元のエンリの瞳の色だ。

正直諦め半分だったのだが、これもアイテムの一種という事だろうか…

 

「毎日これを目に取りつけろ。付け方は教えてやるから、しっかり覚えるんだぞ。」

「ちゅ…ちゅっ…ふぁい…」

 

そんなに飲んで飽きないのか、エンリは蕩けた表情でオレの血を飲み続ける。

まあ、確かに吸血鬼にとっては新鮮な血が一番のご馳走だからな。

わからなくもないが、できれば話半分はやめて欲しいんだが…

 

「我慢できなくなれば、また吸わせてやる。それまで他の血は吸うなよ。」

「はむむ…ふぁい…」

 

エンリには定期的な介護が必要になってしまった。

また近いうちに、様子を見に戻らなければならない負だろう。

…という事に喜んでいるオレもいた。

オレはエンリのことを想像以上にかなり気に入っているようだ。

 

 

 

エンリの家で昼食をご馳走になってからその後。

別れを惜しまれながらもオレはエモット家から脱出した。

ここは魔界だ。一度入ったらなかなか出ていけない…

特にネムのイヤイヤ攻撃はずるい…オレにどうしろと言うんだ…

 

「きるゆー様!」

 

遠くから、オレを見つけたルプスレギナがパタパタと走って来た。

その姿は、さながら飼い慣らされた忠犬だ。超可愛い。

 

「ご用事は終わりましたか?」

「ああ。待たせて悪かったな。」

「そんな!待てと言われれば、喜んで待ち続けます!」

 

この可憐な少女の名はルプスレギナ・ベータ。

プレアデスの1人で、今はカルネ村への挨拶回りのようなことをさせていた。

そして、今日からオレのお供として冒険へ付いて来ている。

 

初めはマリーをお供と考えていたのだが…

他のプレアデス達がゲームでお供の座をかけてマリーへ勝負を仕掛けるという事件が起こったのだ。

そしてマリーは何故かそれを快諾。

 

色々なゲームで遊び、競い、そして叱られ。

ゲームにて運良く王座を勝ち取ったのが彼女、ルプスレギナ・ベータだったという訳だ。

オレは正直、最悪マリーでなくても吸血衝動が起きないシズかエントマあたりが良かったのだが。

まあ、そんな事を勝利の美酒に酔っている彼女に言えるはずもなかったが。

…そんな理由もあり、エンリに吸血を頼みにカルネ村へと寄ったという経緯があった。

 

「…ルプスレギナ。別に、普段の喋り方で良いぞ。」

「? どう言う事でしょうか?」

「いつもなら、語尾にすって付けてるだろ。」

「そ、そんな!至高の御方の前でそんな言葉遣いは…」

「このオレが許す。普段の砕けた態度で接しろ。ルプスレギナ・ベータ。」

「へっ…?わ、わかり…わかったっす…」

 

ルプスレギナは必要以上におどおどとしている。

姉妹と話している時と比べて、かなりキャラが違うな。

オレの前でも、あの元気な姿を見せて欲しいのだが。

 

「冒険者のチームを組むくらいだ。このくらいの距離感が丁度いいはずだ。そうは思わないか?ルプスレギナ。」

「は、はい。その通りだと思い…いや、思うっす!」

「ならば、オレも砕けた話し方を行った方が良いな。ルプスレギナ。…いや、ルプーと呼んだ方が良いか。」

「る、るぷー…」

 

ルプスレギナは噛みしめるように呟き、ゆっくりと顔を染めていく。

うーん。オレの抱いていた、ルプスレギナのイメージと少し違うな…

こんな恋する乙女だったか?

 

「ルプー。早速、エ・ランテルへ向かおう。もう、モモンガさんに怒られるのは御免だ。」

「そうですね…あ、いえ!そうっすね。」

「慣れないか?」

「はい…至高の御方に、このような…こんな言葉遣いで接するなんて…」

「…まあ、そうだよな。」

 

NPC達の、ギルメンに対する忠義は素晴らしいものだ。

それは、初対面の相手にもフレンドリーなルプスレギナも同じだ。

…アイツを除いては。

 

「少しずつでいいからな。」

「はい!…っす!」

 

はー、可愛い。褐色元気獣っ娘可愛い。

撫でたい。触りたい。もふりたい。言ったら触らせてくれないだろうか。

そんなくだらないことを考えながらオレ達は、村人達に見送られながらカルネ村を後にした。

 

 

 

(きるゆー様から、知らない女の匂い…?)

 

 

 



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-第5話ㅤ2人の冒険者
15話


前回書き忘れてしまったんですが、アンケの結果です。

マリー・・・・117票 / 16%
|────────|

ルプスレギナ・217票 / 30%
|───────────────|

ユリ・・・・・ 91票 / 13%
|──────|

シズ・・・・・132票 / 18%
|─────────|

ナーベラル・・ 157票 / 22%
|───────────|


投票ありがとうございました!
思っていた以上にオリキャラに入ってて嬉しかったです。


 

 

 

冒険者組合。

モンスター討伐や護衛といった、力ある者を必要とする依頼を依頼、受注できる組織。

エ・ランテルのその支店にて、新しい冒険者が生まれようとしていた。

 

「ブラッド様と、ルプス様ですね。」

 

なにやら書類を書き書きさせられ、エンリの記憶にあった文字を思い起こしながら書き綴った。

…が、手が慣れていないためぐちゃぐちゃな字になってしまったのを見とがめた受付嬢。

字の下手なオレを見兼ねて、代わりに書いてもらうこととなった。

オレからしたら、字が書けないなんて恥ずかしいなんてものじゃなかったが、字の書けない人は割といるらしい。

数字にして約50%ほど、半数の人間が字を書けないようだ。

まあ、紙が安くないこの世界において、読むのはともかく字を書く機会はあまり無い。

 

「この人間は良いっすね。きるy…じゃなくて、ブラッドに謙ってて好感が持てるっす。」

 

受付嬢が書類を書き込んでいる隙に、ルプスレギナ…ルプーがこっしょりと耳打ちする。

美女の耳打ちは惚れそうになるからやめてほしい。

 

「はい、では登録が完了しました。今日であなたも冒険者です。私どもは、お2人を歓迎致します。」

 

定例文なのか、受付嬢は笑顔で言い放った。

 

「ありがとうございました。依頼の受注はすぐにできますか?」

「組合の登録が初めてなのでしたら、依頼の難度や、報酬。組合内での規則などを説明している()()を受けて頂いた後となります。」

「そうですか。その講習とやらを、今から受ける事は?」

「可能です。宜しければ、私がご説明しますよ。」

「では、お願いします。」

「畏まりました。立ったままではお疲れになるでしょう。別室へどうぞ。」

 

受付嬢は立ち上がり、奥にある扉へ促す。

終始笑顔で行うその所作に、ルプーは少し不機嫌そうになる。

 

「やっぱり嫌いっす。あの女…分不相応にもブラッドの妾を狙ってる顔っす。」

 

再びルプーが耳打ちしてきた内容はそんなものだった。

そんな訳ないだろ…

 

実際のところ、受付嬢は礼儀正しい上にもし強くなれば顔も強さも一級品な超優良物件だ。正妃は隣の彼女でいいから、私もお手つきになれないかな、なんて考えていたためあながち間違いというわけではなかったのだが。

 

 

 

「んで、どうするルプー。まだ日が高い。何か依頼でも受けてみるか?」

「そうっすね…私はそれでいいと思うっす。」

 

講習とやらの説明を受け切った後、オレとルプーは依頼板へと向かう。

ふーむ。最低ランク(カッパー)の依頼は…っと。

 

「薬草採取に、雑魚モンスター討伐…後は手紙の配達といったお使い程度のものか…まあ最低ランクだしな…」

 

この歳になってお花摘みなんてこのオレがやらなければならないのか。

オレは思わず心の中でガックリと肩を落とす。

 

「オイオイ。ガキが。いい女連れてんじゃん?」

 

後ろから、随分と威勢のいい声が聞こえた。

はは、笑える。もう絡まれたぜ。

ガキとは誰のことだ、と一瞬思ったが、そういえばオレのアバターはイケメン美少年。

確かに、熟年のおっさんにはガキと言われても仕方がないか。

 

視線を向けると…うん?いかにもって感じの男がいた。

オレの本当の年齢の方が高いんだけどなあ。

元の姿で老けてると思われるよりは若いと思われる方がいいか。

 

「アンタはオレの同業か?オレの名はブラッドだ。」

「ハハハ。もう一丁前に冒険者気取りか。」

 

オレ達の様子を伺っていた者達が、そこらかしこで笑いが起きる。

冒険者、というよりはただの荒くれ者というのが正しい表現のような人種だ。

冒険者が全員こんな感じだと思ったら他の冒険者が可哀想だ。

 

「人間…その態度は…」

 

オレは、ルプスレギナが何か失言をしてしまう前にその肩に手を回す。

ルプー。顔が狼になっちゃってるから。可愛い顔が台無し…に、なってないな。怒れる美人可愛いな。美人って得だわ。

 

「いやあ、すまなかった。んで。何の用かな?」

「なに、新人にここのルールってのを教えてやろうと思ってな。洗礼ってヤツ?」

「へえ…何分初めてのものでなあ。そいつはありがたい。」

「じゃあ、まずは授業料ってヤツを払ってもらおうか。初めてなんだから銀貨1枚で許してやるよ。」

 

その男は、ニヤニヤした下卑た笑みを浮かべる。

カモとでも思われたか?

 

「うーん。それは少しまずいなあ。」

「ああん?払えねえってのか?」

「なに。今は手持ちが金貨しかなくてな。」

「じゃ、それでいいぜ。」

 

オレはポケットに手を突っ込み、中から金貨を数枚取り出す。これは、例の騎士達から巻き上げた資金だ。

どうやらあの隊長は金をかき集めている最中に殺されたようで何千枚もの金貨を手に入れることは出来なかったが、ほかの兵士から合計で数百枚が集まった。

男はそんな事情のオレの手の中の金貨を1枚奪い取った。

 

「銀貨99枚は…」

「はあ?馬鹿かお前。そんなに持ち歩いてねえよ。」

「では、その金貨を返してもらえませんか。」

「へへ…これはもう俺のモンだ。そうだよなあ、お前ら。」

 

その意見に賛同する仲間たち。

はあ。このくらいでいいか…

 

「組合内での争いは禁止。…だが、それは先に窃盗や傷害を行なった相手などの特殊な事例を除く。」

「は?」

 

オレは、薄笑いを浮かべていた男の頭を掴む。そして、そのまま上に持ち上げて中空へ浮かべる。

 

「いっ…!いででで!いでえ!うがあ!」

 

アイアンクローのまま持ち上げてるんだ。

痛いに決まっているだろう。

 

「テメ…このヤロ…うがああっ!」

 

ジタバタ暴れていたので、握力を強めるとそれもおさまる。

 

「実力差がわからないとは、可哀想に。」

「この…テメ!離しやがれ!」

 

なんか同じようなことしか叫ばないなあ。

離せと言われたため手を緩めると、男はそのまま地面に崩れ落ちた。

また威勢良く突っかかると思ったが、少し身を引いている。

 

「とりあえずその金貨は返してもらうとして。…初めてなんだ。銀貨1枚で許してやろう。」

「はぁ…?なんで…」

「実力差を教えてやったんだ。授業料を払うのは当然だろ。」

「クソ…てめえ調子に…」

 

言い終わる前に手を伸ばすと、勢いよく飛び退かれた。

どうやら学習能力はあるようだ。

 

「銀貨なんて…持ってねえ…」

「…そうか、それは残念だったな。」

「あ、あの…組合で揉め事は…」

 

そうしているうちに、騒ぎを聞き付けた受付嬢がやって来た。

見咎められてしまったなら仕方がない。

 

「すみません。…お前達、上には上がいる事を覚えておけ。さっさと行け。」

「…っ!」

 

オレが許可すると、男とその仲間たちは跳ねるように逃げていった。

少しやりすぎたか?闇討ちとかして来なければいいんだが。

 

「騒ぎを起こしてしまったすみませんでした。」

「いえ、初めから見ていたので…」

 

オレは一礼して職務に戻ろうとしていた受付嬢を呼び止める。

 

「ああ、ついでにお願いしたいことが…」

「は、はい。何でしょうか…」

「カッパーのできる、1番難しい仕事を見繕ってほしい。ここにはどうも簡単なものしかなくてな。」

「…でしたら、私達の仕事を手伝いませんか?」

「…?」

 

── 運命は変えられない!

 

 

 



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16話

 

 

 

オレは。いや、オレたちは、モンスター討伐にエ・ランテル近郊の森近くへとピクニックに来ていた。

相対するのは、オーガやゴブリンといった、雑魚モンスターの集団だ。

とはいえ、オーガに関してはカッパーの新人からすると雑魚とは言えないかもしれないが。

 

「来ます!前衛はお願いします!ブラッドさん!ルプスさん!」

「任せろ。」

「ちゃっちゃと殺っちゃうっすよ。」

「2人はオーガをお願いします!抜けて来たゴブリンはこちらで対処します!」

「はいよ。」

 

彼らは漆黒の剣。先程冒険者組合で話しかけて来た人物の所属しているパーティーだ。

強いモンスターと戦いたいならとオレたちに話しかけて来たらしい。

彼らがして来た提案は、自分たちのモンスター討伐の手伝いをしないかというもの。

どうやら、あの騒ぎの一件で多少なりとも腕に自信があると見たらしい。

オレとルプーは、渡りに船とその提案を承諾した。

 

「オーガがこちらへ来た場合、「要塞」を使用して私が抑える!ダインは足止めを。ルクルットはゴブリンを奥から狩っていってくれ。ニニャは防御魔法を私にかけて、その後、攻撃魔法で支援を。」

「承知したである。」

「まかせとけ!」

「うん、了解。」

 

ほう。流石はチームリーダー。戦況分析が良くできている。

とりあえず透明化してから突っ込むオレにはできない所業だ。

 

「ルプー。半分ずつ分けようか。左三匹がお前。右三匹がオレだ。」

「わかったっす!」

 

やる気になってる姿が可愛いぜルプー。

思わず後ろから抱きしめたくなってしまうほどだ。

…しかし、オレはその前にオーガを仕留めなければならない。

なんとも遣る瀬無い。

 

「んじゃ、悪いが死んでもらおう、オーガ共。」

 

オレは、剣を構えてオーガを迎え撃つ。

 

オレの職業は盗賊系を多く取っている。

特に暗殺者(アサシン)に関しては一番手を込めた。

…が、暗殺者(アサシン)の攻撃にはその特性上毒攻撃や騙し討ちなどの地味なものが多い。

 

剣を使っているのは、名声を高めるという今回の目的を遂行させるには剣を使ったド派手な戦闘をする方が手っ取り早く有名になりやすいと考えての判断だ。

それに、使っているのが魔剣ともなれば話題性は抜群のはずだ。

 

「ガァァアアアッ!」

「ちょっと黙ってろ。」

 

ぱすっ!

 

咆哮を上げ、向かってきたオーガを一刀の下に斬り伏せる。

やべー。切れ味ぱねー。

血飛沫もとんでもねー。

オレが元の桐生快人で、アンデットになっていなければ気分が悪くなっていたかもしれない。

オレ、昔からスプラッタって苦手だったし。

 

「ハハ。ちょっと楽しいかも。」

 

でも、今はなんだか、モンスターを殺すことが楽しい。

まさに、ゲームをやっているような感覚だ。

 

「す、すごい…オーガを一撃で…」

「ミスリルどころか…オリハルコン…?いや、アダマンタイト…?」

 

漆黒の剣のメンバーが一様に驚く。

いや、これでアダマンタイトレベルなのか…?

 

「ま、剣の性能がありますからね。これくらいできないと。」

 

オレは、すぱっ!と同じようにオーガを絶命させながら返答する。

オレが持つのは、魔剣、ブラック・スターズ。

全てを切り裂く、宵闇の剣。

 

…という箔を付けた、完全に見た目だけで選んだかっこ良い片手剣。

闇をも飲み込むかのような黒い刀身は、何故か光に反射してギラギラ光る。

この武器は、元はプレイヤーメイドのものだ。

その厨二心をくすぐる見た目に、ユグドラシル内で一目で気に入って購入した。

 

名前の由来は多くの黒星。つまりは、連敗を意味する。

どうしてこんな名前なのかというと、エンチャントするスキルを間違えてしまい、この剣が戦闘向きなものではなくなってしまったという悲しい過去を持つためだ。

 

…なのだが、この世界にとってはエンチャントがされているだけでとても強い武器へと早変わり。

この不名誉な名前を付けられたブラック・スターズも大喜びだ。

ごめんな。ずっとアイテムボックスで寝かせてて…

 

鎧強化(リーン・フォース・アーマー)!」

植物の絡みつき(トワイン・プラント)!」

 

あちらでも戦闘が始まったみたいだな。

…どれ。助太刀に行ってみるとしますか。

 

「ブラッド!こっちも終わったっす!」

 

ルプーの方も、オーガを問題なく殲滅できたようだ。

いや、しかし。ルプーの武器は金属製の大きな聖杖だ。

そんな女の子が持てないような重そうなものを、ブンブン振り回して叩きつけて攻撃する。

向こう側は、死体から察するにこっちよりも酷い惨劇が起きていたようだ。

 

…確かに派手なのはいいことだが、こういう方向で有名になるのはちょっとな。

鮮血姫、みたいな二つ名がついたらどうするつもりだ。

 

「マジックアロー!」

「すまない、ニニャ!」

 

あー、でもこれオレが行かなくとも勝てそうだな。

流石に、ゴブリン程度になら遅れを取らないか。

 

「ブラッドさん!ゴブリンが逃げます!支援お願いできますか!?」

「勿論!」

 

オーガがやられたことにより統率を失い、オレたちに背を向け逃げ出すゴブリンに追いつき、全て斬り捨てた。

ゴブリンは死の絶叫を叫びながら絶命した。耳障りだなあ。

 

 

 



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17話

 

 

ンフィーレア・バレアレ。

エンリの記憶の中にあった、おそらくエンリにほの字の少年。

エ・ランテルで薬師をしている祖母と一緒に暮らしていて、時々カルネ村に薬を売りに来る。

 

エンリの記憶にあるのは、全て青いポーションだ。

だが、ユグドラシルにて青いポーションは存在しない。

ユグドラシルとこちらのアイテムで効果が違う可能性がある。

 

陽が傾き始めてからモンスターを追い回すのをやめ、仕事を終えた。

オレはモンスターの換金を漆黒の剣のメンバーとルプーに任せ、バレアレ家の店へと来ていた。

 

「すみませーん。」

「はーい。」

 

出てきたのは、記憶にあるンフィーレア・バレアレその人だった。

祖母ではなくいきなり当人が出てきたことに驚いたが、まあ良い。

別に怪し事をしにきた訳じゃないんだ。

 

「最近冒険者になった者です。ポーションを見せてくれませんか?」

 

冒険者相手だと同業同志敬語も外れるが、どうも相手が店員や受付の場合敬語が出てしまうようだ。

これは、こんな姿になっても心は日本人、という事なんだろうか。

舐められたくないから敬語はやめたいんだけどなあ。

 

「はい、わかりました。少し値が張りますが、大丈夫ですか?」

「ポーション1つくらいなら余裕で。お金も、命には変えられないですから。」

「それもそうですね。少しお待ちください。」

 

やはり、ンフィーレアが持ってきたのは小瓶に入った青い液体。

オレは鑑定用のためポーションを1本のみ購入する。

 

「ポーション1本、金貨一枚です。」

「OK。」

 

オレはポケットに手を入れているように見せて、カウンターの下の方でアイテムボックスを開いた。

今は人がいないから良いものの、毎回こうするわけにもいかない。

財布とかないとまずいな。

 

「ところで、薬屋さん。実はこんなものを持っているんですが…」

 

オレは再びアイテムボックスを操作し、ユグドラシル産の下級治癒薬(マイナー・ヒーリング・ポーション)を取り出す。

 

「これもポーションだと思うんですが、見たことはありますか?」

「…これ…!」

 

ンフィーレアが大きく目を見開く。

おや、やはりこっちの世界にも赤いポーションがあるのか?

 

「すみません、僕では鑑定ができないので…祖母に鑑定してもらってもいいですか?」

「勿論です。」

 

 

 

「んひひひ!これは凄い!これは凄い!」

 

…どうしてこうなった。

オレの前では、悪い魔女のような見た目で悪い魔女のような笑い方をする老婆が大騒ぎしていた。

 

「ンフィーレア!これは誰にも開発できなかった完成されたポーションじゃ!」

「それって…!」

「これが、これこそが神の血を示すポーション!()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まさか、本当だったとは…」

 

え、なに?どうしたの?

またユグドラシルTUEEEなの?

 

「おんし!これはどこで手に入れたものじゃ!?」

 

オレは興奮した老婆に詰め寄られた。

こんな大ごとになるとは…考えなしだった。記憶操作をするか?

にしても、記憶をどう書き換えるか…

 

 

 

ガヤガヤと声の飛び交う飲食店。

オレとルプー、そして漆黒の剣のメンバーはそんな場所にいた。

 

「いやー!まさかお2人があんなにお強かったとは!」

 

報酬を受け、山分けをした頃にはもうすっかりと夜だった。

オレたちの加入のおかげでいつもより稼げたと嬉しそうな漆黒の剣のメンバー。

一緒に食事でもと誘われ、今はとある飲食店で打ち上げをしていた。

 

「これなら、ルプスちゃんみたいな美人を連れてることにも納得だな。」

「噂に名高い、かの王国戦士長に匹敵する強さであるな。」

「ふっふっふ。当然っすよ!」

 

ああ、もしかしてその戦士長ってのは、ガゼフ・ストロノーフとかいうダンディな男の事か。

図らずとも知り合いの名が出てきて驚いた。

別に面識がある事を隠すこともないが、自分から言うことでもないだろう。

 

「ところで、漆黒の剣とはどう言う意味なんだ?」

「あ、それはですね。ニニャが…」

「やめてください!若気の至りですから…」

「恥じるところは、ないのである。」

 

ニニャが慌てている。何かまずい事を聞いてしまったのか?

オレたちが気まずくなっているのを尻目に、ルプーは来た料理に目を輝かせている。

オレはエモット家で手作りを食べたが、ルプーはこっちの食事は初めてだもんな。君は大物だよ。

 

「漆黒の剣というのは、昔いらっしゃった十三英雄の1人が持つ剣に因んでいるんです。」

 

…十三英雄。

エンリの記憶にあるのは、200年以上前の昔話の中に登場する、とてもすごい人たち…というざっくりとした情報のみ。

村の小さな男の子たちが十三英雄ごっこなるものをしていた記憶もあるため、エンリが男だったらもう少し詳しかったのかもしれない。

が、その場合は吸血もしなかっただろうし言っても仕方のない事だ。

 

「なるほど。ニニャが恥ずかしがっている理由も、わかった気がするよ。」

「勘弁してください…」

 

小さな頃、ごっこ遊びで夢見ていたものを追い続けている…みたいな事だろうか。

男子ならばヒーローに憧れるのは当たり前のことだが、歳をとって振り返ると恥ずかしくなる事もある。

 

「そいつを発見するのが、俺たちの第一の目標って訳。」

「そして、出来ればその魔剣を1人ずつ装備したいって、そう、僕が昔…」

 

ニニャが顔を赤くして照れながら答える。

…にしても、コイツからはどうも…

いや、勘違いだと思いたいが。

 

「もしよければ、ランクが上がるまでで良いので、期間限定でうちのパーティーに加入しませんか?」

「そりゃあいい!ルプスちゃんと一緒なら大変な狩りでも楽しくなりそうだぜ。」

 

別に断る理由はない。

…が、名声を広めるなら、1つのパーティーだけでなく色々なパーティーと組んだ方が良いかもしれない。

オレは決めかねてルプーへと視線を向けると、シチューのような料理を食べている彼女と目があった。

ルプーは特に興味がなさそうだ。そのままシチューを食べ続けている。

私はどっちでも良いっすよー、なんて声が聞こえた気がした。

 

「オレたちは良いんですが…ペテルさんたちにはメリットはあるんですか?」

「強い人がいれば、それだけ戦闘の安全度が上がりますからね。」

「それに加え、その魔剣。まさに漆黒の剣にも劣らぬ名剣と見たのである。」

 

そりゃあ君達の名前から思い出して選んだ武器だしな。

そのパーティー名の元ネタの武器がどれほどのものかは知らないが、絶対にそれよりもこっちの剣の方が絶対に強いしかっこいいと思う。

 

「これほどの実力ならば、僕たちが追い抜かれるのも数日かもしれませんが…どうでしょうか?」

「…今日は楽しかったよ。」

 

オレがそう言ったことにより、漆黒の剣のメンバーが肩を落とした。

断られたと思ったのだろう。

 

「それが、もう一度味わえるなら…それも良いかもな。」

「ブラッドさん!」

「皆さん。改めて、よろしくお願いします。」

「ずずずっ!ぷはぁ!あ、私もついでにお願いするっす!」

 

オレが頭を下げると、器につがれたものをすべて飲み干したルプーが後に続いた。

ルプーは人間と関わるには心配になるようなカルマ値だったが…どうやら杞憂だったようだ。

心の底では何を思っているかはわからないが、今のところは仲良くできている様子。

 

「これだけ強ければ、すぐに有名になるさ。となれば、昔仲間だったって冒険者仲間に自慢できるしな!」

「ルクルット!すみません、ブラッドさん、そんなつもりは…!」

「ははは。いやいや。もしオレたちが有名になったら、周りに自慢して回ってもいいぜ。」

「美人なお付きの事も、忘れないで広めてほしいっす!」

「勿論!よし、言質とった!」

 

オレの名前を触れ回ってくれるのなら、それは良い宣伝になる。

迷惑行為をするようなパーティーならともかく、漆黒の剣にならむしろそれは積極的にやってもらいたい事だ。

 

「では、これから組む臨時パーティーを祝って!今日はパーっといきましょう!」

「良いっすね!私、おかわり食べたいっす!」

「やるねえ、ルプスちゃん。」

 

…仲間って良いな。

 

 

 



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-第6話ㅤ旅路
18話


 

 

 

…そうか、こうなっちゃうのかあ。

 

「ンフィーレア・バレアレです。皆さん、今日はよろしくお願いします。」

 

オレたち漆黒の剣合同パーティーの前には、昨日の薬師がいた。

中途半端な記憶操作が仇になったか…

赤いポーションの事はそのままで、オレの姿を別人と思い込ませた。

…が、どこから嗅ぎつけたのかンフィーレアは漆黒の剣を探し当てた。

 

実のところ、装備している魔剣が同じものだったからなのだが…

 

「依頼の内容は、カルネ村近くの森での薬草採取、及びカルネ村へ往復するまでの警護です。」

「それなら、依頼料に加えて組合の報奨金まで受け取れますね。」

「それは素晴らしいな。」

 

こりゃ決定ムードだ。止める理由も思い浮かばない。

偶然ということもあり得ないこともないが、ンフィーレアがオレに接触してきたのがポーション絡みだという事は予想がつく。

怪しまれたら、また記憶操作でなんとかするしかないか…

今度は、誤った情報を植え付けて徹底的に。

 

 

 

…カルネ村は、オレの知らない間にいつから国になったんだ?

そんな事を考えてしまうほどに見事な木造の壁が出来上がっていた。

 

「あんたら何者だ!?」

「…コイツら、ゴブリンか?」

「なんでゴブリンがこんな所に…」

 

ゴブリン達は、皆武装していて、皆弓を、剣を、槍を。

こちらに向けて臨戦態勢を取っていた。

その様子に漆黒の剣のメンバーも武器を手に取った。

まあ、ただの村だと思ってこんなのが出てきたら驚くわな。

 

「武装を解除してもらいたい!」

「俺たちも、出来るだけ戦闘をしたくはないんですよ。」

 

ゴブリンが皆口々に言う。

冒険者が村にきたことで、かなり警戒しているようだ。

オレは前に出て、ゴブリンたちへと顔を見せる。

 

「あー。大丈夫だ、お前たち。」

「ブラッドの旦那!」

「どうも。」

 

エンリに「ゴブリン将軍の角笛」を使わせた時、召喚されたゴブリンとは顔合わせを済ませている。

ゴブリンたちには、主人であるエンリを助けた恩人である、というざっくりした感じで説明をしおいた。

というわけもあって、このゴブリンたちはオレのことをぞんざいに扱う事はない。

 

「私もいるっすよ!」

「!」

 

その様子から、ルプーもゴブリンたちとの面識はあるらしい。

しかし、ルプーの姿を見た瞬間ゴブリンたちに緊張が走った。

モンスターだから、ある程度の危険察知能力を備えているのかもな。

ルプーのカルマ値の低さを本能的に察しているのかもしれない。

 

「ゴブリンさん。どうしたの?」

「…エンリ!」

「ンフィーレア!」

 

その立派な壁の中から、エンリ・エモットが現れた。

うーん…これは、三角関係か…

 

 

 

 

 

「き…ブラッド様。ようこそ、カルネ村へ。」

 

漆黒の剣のメンバーは村を観光。ンフィーレアはエンリにカルネ村の状況を説明してもらっている。

そしてオレとルプーはマリーに出迎えられ、どこかしらに案内されていた。

 

「マリーちゃん。それにブラッド様、ルプス様。」

「こんにちは!」

 

出会う先々で、マリーは村人たちと親しげに挨拶を交わしている。

カルマ値300とまでなると、こうも違うのか。

ルプーはゴブリンたちに警戒されまくっていたというのに。

 

「随分と慕われているようだな。」

「いえ…畑仕事や力仕事を手伝っているので。」

 

マリーは少し照れて答える。

さすがオレの娘。よくできた子だ。

 

「というか、この村に住んでまでやる事あるか?」

 

話を聞いてみると、マリーはカルネ村に住み込みで生活しているらしい。

住んでいるのは、先の件で亡くなった村人の使っていた空き家の一つだという。

 

「はい。まずは、前のように攻め込まれても安全なように防壁を作りました。」

「まあ、これならモンスターにしろ人間にしろ、攻め入るのは諦めるしかないっすね。」

 

にしてもやりすぎなんだよ。巨人でも攻めてくんのか?

 

「そして、これから開催する英雄祭の準備を…」

「英雄祭?」

「って、なんすか?」

「英雄祭は、村を救った英雄のブラッドさんを祀って行うお祭りです。」

「は!?え!?オレそんな事聞いてないんだけど?」

「はい。モモンg…失礼。アインズ様がブラッド様には内密で進める事、と…」

「あのヤロ…」

 

あの冗談が、まさか本気だったとは…

別にフラグ回収とかいらないんだよ。

 

「あ、そろそろです。」

「って、ここエンリの家だろ。言ってくれればオレにもわかったぞ。」

「ふっふっふ。秘密にしてサプライふぎゃっ!」

 

俺たちの方を向いて微笑んでいたマリーは地面の凹凸に足を取られ、つんのめってそのまま地面へダイブした。

あー、パンツが…

そういえば、設定にたまに不運なドジっ子を発動させる、みたいな属性を付けていたような…

 

 

 

「ブラッド様〜!」

「おー、ネム。いい子にしてたか?」

「してたよ!えっとね!ちゃんと毎日、お手伝いしてたよ!」

「それはすごいな!」

 

元の世界に、子供は、というか恋人すらいなかったが…子供がいたらこんな感じなんだろうか。

オレはネムを抱え上げてクルクル回す。ネムはロリ可愛い。

 

「ブラッド様。何度も何度もネムがすみません…」

「いや。ネムが嬉しいならそれでいい。だよなー?」

「なー!」

 

はー。クソ可愛い。

 

「ね、ね!ブラッド様!私がすり潰したエンカイシがあるの!見たい?」

「おー、見てみたいなあ。エンカイシは村の特産品なんだっけ?」

「そうなの!」

 

エンカイシとは、とある一定期間にしか採取できない薬草のことだ。

短期間しか採取でいないため、とても貴重なもの。鼻につくような独特な臭いがする。

…もちろんこれはいつも通りエンリの記憶からの知識だ。

 

「あっちにあるのは、ぜーんぶネムが潰したんだよ!」

「そりゃ凄いな!大人でもこの量は難しいかもな。」

「でしょ?へへーん!」

「ネムはすごいなあ!」

 

あー、ネムの幼女エネルギーが強すぎてオジサンになってしまう…

ネムの父親になりたい。結婚しよう、オーマ・エモットさん。

…いや、兄も捨てがたいな。エンリ、結婚しよう。

 

「ネム。…私はブラッド様にお話があるから、そのくらいに…」

「えー!お姉ちゃんだけずるいよう…」

「大切な話なの。ごめんね…」

「…はぁ〜い。」

 

ああ、しょんぼりしちゃった。

おのれエンリ、許さんぞ!

気が狂うまで吸血(きもちよく)してやる。

 

 

 



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19話

前回のアンケ結果です

エンリ
|─────|
92 / 21%

エンリ+オーマ
|──────────|
176 / 39%

エンリ+ネム
|────|
63 / 14%

エンリ+オーマ+ネム
|───────|
116 / 26%

投票終了駆け足ですみません。
投票ありがとうございました。


 

 

 

エンリがネムから離れた後、エンリは吸血の提案をしてくれた。

スパン的には少し早いが、吸わせてくれるのならば据え膳。

オレは恥ずかしそうに服をずらし肩を露出させるエンリへと噛み付く。

 

「はぁ…いやぁ…はぅ…はぁん…」

 

エンリの肩口をちゅぷちゅぷと啜る。

エンリが喘ぐ。とても気持ち良さそうだ。

 

「ひゃ…ひゃあん…あぅ…」

 

どうせオレのためとか言いながら、自分が気持ち良くなりたかっただけなんだろ?

後でオレの血も飲ませてやるからな、エンリ。

 

「あっ…あっあっあっ…!」

 

驚かせてやろうとギリリ、と強く噛んでみると、なにやらエンリの体が跳ねた。

結果的に、驚かされたのはどうやらオレの方だったようだ。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

エンリはなにやら大きく息を乱している様子。

一体どうしちゃったんでしょうねえ。

 

「んっ!はぁむ!」

 

エンリは前回のことをもう忘れてしまったのか、無謀にもオレの首筋へ噛み付いた。

 

「はむ…はむ…はぐ…」

「だから。いくら吸血鬼(ヴァンパイア)になったとしても、レベル1程度じゃオレに傷一つつけられないの。」

「んんむ…ちゅっ…ちゅぱっ…」

 

しつこいようだが、もう一度説明させてもらう。

吸血鬼は、性欲が高まると吸血欲が高まる。つまり、エンリは今大変に興奮している。

そして、それは吸血鬼になりたての、オレとエンリのような者には我慢できないほどの欲求となる。

エンリで好き放題補給できているオレはともかく、エンリが吸血したのはオレの指から出た血だ。

そんな部分に傷をつけたところで、肩や首の血管から出る量とは比べ物にならないほど少ない。

 

「ひるゆー…ひゃま…ちゅちゅっ…わらひ、もう我慢できふぁへん…じゅるるっ…」

 

首筋に吸い付きながら喋ってるから、なに言ってんのかさっぱりわからん。

 

「はやく…ほひいんです…ひるゆぅさまのぉ…」

「ちんちん?」

「んふぅ…ちゅちゅっ…しょれでも良いれふ…」

 

いい加減口離せよ。

あーあ、また唾液でベタベタだ…

まあ、エンリの唾液なら仕方ないと納得できるが。

オレは自らの肩に爪を立て、小さく傷跡を作る。

瞬間、エンリは弾かれたように飛びついた。

 

「約束通り、オレ以外の血は吸ってないみたいだな。えらいぞ。」

 

必死になってオレの血を飲み下すエンリの頭を撫でる。

全く。この様子だと、またオレの話は聞いてないな?

 

「んっ…んっ…おいし…です…んくっ…んぷっ…」

 

途中途中で感想を挟みながら、エンリはオレの血をコクコク飲み続けた。

 

「ご馳走様でした…あの。」

「何だ?」

「こっちの方も、吸い出した方が良いでしょうか…?」

 

エンリが提案したのは、ズボンの中でテントを張っている部分の処理。

何だか手慣れてきている感じがして嫌だなあ。

 

「いや。今日は無しだ。」

「そうですか…」

「代わりに、お前にやってもらおうかな?」

 

オレの突然の呼びかけに、エンリは不思議そうな顔をしていた。

 

「大人しく出てこい。もうわかってるから。」

 

すると観念したのか、扉の奥からオーマがおずおずと現れた。

 

「お、お母さん…!?」

「す、すみません!ブラッド様…こんな事を…」

「契約では、オーマ。お前もオレのもののはずだ。…違うか?」

「…いいえ。」

「ならばお前もこっちに来い。」

 

オーマは渋々エンリとともに奉仕へ加わった。

夫に操を立てたかったのか?

だが、オレにはそんなこと関係ない。

それに、別に性交渉をしようってわけじゃない。

未亡人のご奉仕。胸が高鳴るじゃないか。

 

「あの、私のような年寄りに、このような…」

「オレには、お前も十分魅力的に感じる。」

「…はい。」

 

照れたな。

どうやら、自分が呼ばれたことに困惑していたようだ。

 

この年の未亡人は再婚できる事などほとんどない。

何故なら、この世界の結婚適齢期は15、16歳。

わざわざ年を食った女を嫁に取るよりも、若い女を選ぶ方が良いに決まってるからだ。

こっちの世界では30過ぎの女を相手にするには特殊な性癖を持つものだけだ。

 

が、元の世界にいたオレの目から見ればせいぜいが同年代が良いところ。

経産婦だとしても、未亡人なのだからおかしなところは全くない。

 

「本物を使って、男の喜ばせ方をエンリに教えてあげてくれ。」

「…はい。」

 

女の性欲のピークは30代あたりだという。

オーマは、その有り余る気持ちを持て余しているはずなのだ。

 

オーマは、オレをズボンの上からさすり始めた。

思わぬ刺激に驚いた。意外と気持ち良い。

それは前座だったようで、オーマはすぐさまズボンを脱がしにかかる。

ボロンと飛び出す肉棒に、オーマは眼を見張る。

 

「…エンリ。男の人は、優しい刺激に弱いの。こうしてゆっくり撫でるように触ってあげるの。」

 

その動きは、まさしくフェザータッチ。

オレの肉棒が、嬉しそうにビクンビクンと震えた。

エンリは、その様子をまじまじと見つめている。

興味津々って顔だな。

 

「でも、ゆっくりだけじゃダメ。時には強く、時には激しく。緩急をつけて。」

 

オーマは、きゅっ、きゅっ、と手で握りしめて包み込む。

時々押し寄せる刺激に、焦らされてる感じがしてもどかしいな。

 

「ここまでが下準備。そろそろ口を使ってあげるの。」

 

そう言うと、オーマは舌を出して棒に絡め、チロチロと舐め始める。

ねっとりとした柔らかく、生暖かい舌が肉棒の周りをずるずると這いずり回る。

さすがは未亡人…セックステクニックが一味違う。

エンリは恥ずかしがって手で顔を隠してしまったが、ちゃっかりと指の隙間から母の情事をガン見している。

 

「んへぁ…ん…んぁ…んっ…」

 

ペロペロと竿部分を舐めていた舌が、段々と上へ上り詰めてくる。

そしてついにはカリ首にまで達し、溝をほじくるように舐め回す。

オレはついつい腰が引けてしまった。

 

それを見たオーマは薄く笑い、こびり付いた汚れを刮ぎ取るように舌を動かす。

クルクルとカリ首の周りを舌を回転させて刺激する。

鳥肌が立ち、ぞわぞわぞわ、と心地よい射精感が込み上げてくる。

が、しかし、オレは何故だか対抗心を覚え、その快感をグッと押さえ込んだ。

 

「あ…あぇ…れおれお…」

 

オーマは勝負とばかりに、亀頭に舌を押し付ける。

そしてズリズリと擦り始める。この刺激はまずい、新体験だ…

あまりの快感に、肉棒が勝手に痙攣する。

 

そろそろ限界。そう思った頃、オーマが動いた。

突然肉棒を口の中に咥え、内頬の柔らかい部分で包み込む。

突然の環境の変化に驚く隙もなく、口内の舌が絡みつく。

 

「ちゅずずっ!ちゅるる!じゅるるるっ!じゅぷぷ…」

 

唾液と舌と内頬。全てを使って、射精を煽りまくる。

まるで、これまで我慢していたオレをあざ笑うかのように、激しい濁流のような快感が腰から頭に突き抜ける。

あっ、これ無理だ…

 

びゅーっ♡びゅびゅっ♡びゅるるるっ♡びゅびゅびゅっ♡

 

いつもより長い射精が続き、オーマはそれを全て口で受け止めた。

オーマがエンリの口淫を指導しただけあって、本物は凄かったな。

まるでオレの中の全てを吸い取られたようだ。

そして、やはり最後の一滴まで搾り取るように、射精後の余韻中にちゅうっと強く吸い付く。

強力なバキュームで、オーマは尿道に残る精液を吸い出す。

賢者タイムにこの刺激は良くない。うん、良くない。

なぜなら…オレの愚息が、また起き上がってしまうからだ。

 

 

 



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20話

 

 

 

「はぁ…はぁ…な、なるほど…良かったぞ…」

 

上から褒めるが、満身創痍なこの様子では少し無理があるな。

ただでさえエンリと同じか、少し上ほどの見た目なのだ。

これでは威厳も何もあったもんじゃない。

 

「ありがとうございます、ブラッド様。」

 

オーマはあまりにも情けないオレを微笑ましく思ってか、年上の余裕を見せている。

経験はなくとも同年代なんだよ!

 

「あっ…また。もう一度鎮めましょうか?」

「…頼んだ。」

 

最後のお掃除に興奮してすぐに復帰したオレの肉棒を、驚いたように見つめるオーマ。

どうもこの体になってから、興奮するとすぐに元気になってしまう。

やはり、肉体も見た目年齢に若返っているんだろうか…

 

「はむ…ちゅっ…ちゅぷん…」

 

オーマの口の中は魔窟だ。

全てを搾り取る魔性の咽喉だ。

 

オーマは2回目にしてもう弱点を見つけたようで、オレの弱いところを的確についてくる。

さっきの、ペロペロなんて生易しいものじゃない。

舌が肉棒をべろんべろんといやらしく蠢き回る。

その舌が這い回る度、信じられないような快感が腰を突き抜けた。

 

「っ…また、出る…飲め…!」

「じゅるっ…じゅずず…ちゅるるっ…」

 

一度出して刺激に敏感になっているオレは、すぐに次の限界を感じた。

オーマは口の中でくちゅくちゅと射精感を煽り。

 

びゅー♡びゅびゅびゅっ♡びゅるるるっ♡

 

「はぁ…はぁ…はぁ…。ふう。」

 

オレが射精の余韻に浸っていると、オーマが中に残っている精子をちゅうちゅうと吸い出す。

それやめろ。

 

 

 

オレは、これほどの能力を持つオーマの血が欲しくなった。

吸血は先ほどエンリで済ませていたはずだが…

どうやら、本当に()()()()()()()らしい。

 

「オーマ。血を吸わせてくれないか?」

 

腕のような奇妙な形の翼が、背中部分から飛び出した。

オレがエンリの血を吸っていた所は見ていたはずだ。

オーマは、むしろ納得したという様子だった。

 

「…どうぞ。」

 

断る理由のないオーマは、やはりエンリへの吸血を見ていたのだろう。

エンリと同じようにきていた服をずらして、日焼けのしていない肌を露出させる。

そしてこれまたエンリと同じく、白くて美味しそうな肌。

 

「いただきます。」

 

オーマが快感に喘ぐ姿を見てみたかった。

どすけべフェラで散々オレをいたぶってくれたお礼だ。

オレはオーマの肩口に噛み付き、肌を噛みちぎる。

 

「っ!」

 

そして、すぐに口を離した。

 

「ゔぇっ!うえっ!」

 

惚れ込んだ男。愛し合った日々。

初めて交わった時の幸せな感情。

初めて子供を作った日。

何にも変えがたい、可愛い子供達。

そして、殺された夫。殺された自分。

 

死んだ夫への、オーマの愛が伝わってくる。

そして、散々感情移入をさせた後に、その男は目の前で無前に殺された。

 

「ぅ…うげぇっ!」

 

男が好きという感情を流し込まれただけで気持ちが悪い。

それなのに、結末がこうだ。とても気分が悪い。

 

…記憶共有に、こんなデメリットがあるとは…

これからは、出来る限り処女以外の血は吸いたくないな。

出来ればキスもまだで、恋心を抱いたことの無いような女がいい。

 

「大丈夫ですか!?」

「…ああ。まあな…」

 

慈悲で生きかえらそうにも、オーマの夫は既に土葬されている。

墓を掘り起こしてまでどこに埋まっているかわからない死体を探そうとは思わない。

女ならともかく、男にそこまでの労力をかける義理はないのだ。

 

「…私の血は、美味しくはなかったのでしょうか…」

 

そう悲しそうにするな。

オーマの記憶を啜ってから、この女の考えていることが手に取るようにわかる。

愛娘を救ってくれた、そしてもう一度守るチャンスを与えてくれた恩人。

ほんの少しでも恩返しがしたいのだ。

 

「そんな事はない。もう一度貰うぞ。」

「あっ…」

 

一度見てしまったものは仕方がない。

今度から気をつければいい話だ。

オレは、もう一度オーマの肩へ口をつける。

 

「あっ、あっ…はふぅ…な、に…これ、気持ち良…」

「ちゅ…ちゅちゅっ…ちゅるる…んちゅ…」

「ぁ、いっ…ぁ、あ!…あふ…ふぁ…」

 

…幸せで、良かったな。

 

 

 

「あっ!すごい…まだまだ元気ですね。」

 

恥ずかしいことに、オレの愚息はもう一度起き上がっていた。

まあ、あんなに耳元で喘がれたらな…

 

「…見ていたでしょう、エンリ。今度はあなたがブラッド様にご奉仕してさしあげなさい。」

 

オーマは、今度はエンリにオレの性処理を促した。

いや、これエンドレスなんじゃ…

突然呼ばれたエンリは大きく飛び上がり、見入ってしまっていた自分にを恥じた。

 

「じゃあ…その。よろしくお願いします…」

 

こちらこそ。

エンリは股間に話しかけているような視線で挨拶をする。

そしてじっくりと見定め、パクりと口内へ迎え入れた。

 

「はむ…ん…んむ…んちゅ…」

 

エンリは、やはり拙いながらも自らの仕事を全うする。

なかなか慣れず時々歯が当たってしまうが、それも含めて愛らしい

ちゅうちゅう吸い出して、赤子のようだ。

母娘の、ちんこ越しの間接キスにも興奮するな。

 

「はん、はん…ちゅちゅっ、ぷはぁ…」

 

口の中から肉棒を引きずり出す。

ねとー、と唾液が肉棒へ垂れ落ちる。

あー、エロい。滅茶苦茶エロい。どこでこんな技を覚えてきたんだ。

 

「きるゆー様…」

「何だ?」

「きるゆー様の昂り、こちらで鎮めて差し上げたいです…」

 

エンリは、椅子に座っていたオレの上に、のそのそと覆いかぶさる。

そして、オレの膨らみとエンリの穴。股間同士をくっつけた。

これはアレだ。オーマの悩殺テクニックとして教わった技だな。

 

「私の純潔、きるゆー様に、もらって欲しい、です…」

 

エンリの顔は真っ赤だ。

よほど勇気を出して言ったのだろう。

だが…

 

オーマが、エンリへゴーサインを出している理由はわかった。

この世界、強い人間が正義なのだ。それは権力然り、資金然り、戦闘能力然り。

そして色々な強さを持つ人間は、何人もの妾を持つのが普通なのだ。

もし憧れを抱いているのなら、あからさまに気に入られているオレへ妾に入るのがエンリにとって一番の幸せ。

それ以外の一切の打算なく、オーマはそう考えていた。

 

「いや、オレは…」

 

オレはナザリックに所属する者。

現地人と、簡単に関係を持ってしまって良いのだろうか。

もう手遅れ感もあるが…

 

「体の関係を持って、この村にオレを縛りつけようとしているのなら、その必要は…」

「そんなつもりはありません!」

 

叫ぶエンリは、瞳に涙を溜めていた。

 

「見返りとか、お礼とか。そういう事じゃ、ないんです…私が、したいんです…取るに足らない村娘ですが、どうか…お願いします…」

 

 

 




この作品を読んでいるということは…ということで、なんとなく予想はついてますが…

もしンフィー側が多ければすっぱりと諦めましょう。


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人生で一度の贈り物
21話


前回アンケートの結果です。

美味しく頂いた。 760 / 94%
──────────

ンフィーレアへと返納した。 51 / 6%


圧倒的!ごめんねンフィー…
でもアンケは絶対だから仕方ないね。


 

 

 

「…そうだな。」

 

…ここまで言われて、断るってのもな。

 

「…後悔するなよ。」

「しません。」

 

どうやら、エンリは本気のようだ。

まあ確かに、オレにも種族ごとまるっと変えてしまった責任もある。

生涯、なんて約束はできないが、出来る限りは守ってやりたい。

モモンガさん…いや、今はアインズさんか。

アインズさんには、情が移りすぎだと怒られてしまうかもな。

 

「…最初は痛いらしい。覚悟しとけよ。」

「は、はいっ!」

 

エンリはオレが処女を受け取ることを察した。

素朴なスカートの中に手を入れ、下着を触る。

ガサガサしたかぼちゃパンツ?のようなものだった。

下着事情は改善の余地ありだな。

 

エンリは、オレの行動に真っ赤にして俯いている。

最後までするなら、こんなもんじゃないぞ。

オレはその下着の中に、お腹側から手を滑り込ませた。

 

「…っ!」

 

エンリが恥ずかしそうにしているのを見るのも一興か。

腰。おなか。太もも。そしてその下。

全てがとても柔らかい。マシュマロみたいだ。

 

ぷにぷにと柔らかな感触の肌の中に、触れる違和感。

…そうか。もうこの年の子には()()()()()のか。

オレは何度も何度もなぞって確認する。

柔らかいな。まだ産毛のようだ。

 

そして、最も重要なのはその更に下。

いまから大人になる、最も女性らしい部分。

エンリのそこは少し湿っていた。

これはもっと濡らさないと挿入りそうにないな。

 

「少し触るぞ…」

「えっ…えっ?えっ?えっ?」

 

オレは困惑するエンリを置いて、穴の中に指を一本差し入れる。

エンリの中はとても暖かく、きゅうきゅうとオレの指を締め付ける。

指一本でこれだけ窮屈なら、チン子が挿入ったら痛いのもわかる。

せめて、出来る限りほぐしておいてやろう

 

エンリは処女の上、この穴に何かを入れること自体が初めてだ。

オレは壊れ物を扱うように、ゆっくりと指を移動させる。

 

「っ…き、きるゆー…さま…」

 

エンリは、オレにすべて身を任せていた。

オーマは何となく察しているが、エンリはオレを童貞だと思っても見ていない。

オレも初めてなんだ、ごめんな…

 

くちゅ…くちゅ…

 

中の方で、押したり曲げたりしてみる。

痛そうだったら止めて、大丈夫そうなら再開する。

指で膣を傷つけないよう、そして処女膜を破ってしまわないよう、最新の注意を払う。

 

「あっ♡は…っ♡」

 

うん。ここね。

しばらくぐちゅぐちゅやっていると、エンリの気持ち良い場所を見つけた。

腰が跳ねて逃げようとしたので間違いない。

オレは翼を広げてエンリを掴み、逃げないように包み込む。

 

「あっ…や…そこ、は…」

 

ピンポイントで狙い撃ちしていると、ぽたぽた愛液が流れてくる。

準備万端、って感じだが。

エンリの反応が面白いのでもう少し続けてみようと思う。

 

「あっ、あっあっ!あっ!あ!あぅう…」

 

指を上方向に持ち上げ、小さく動かす。

エンリは、上側に加えられるこの刺激が好きな様子。

オレはその反対側の陰毛側からもトントン刺激を送る。

 

「あぁっ!ぁ…あっ!?…ゔ、あぁ…」

 

…っていうか、声大丈夫かこれ?

女性経験がないからアレだが、エンリの声は大きい、と、思う。

現代日本と比べれば素人建築と言っていいくらいの建物だ。

多分、家の外まで響いてる。昼間からこれは…

オーマも、エンリの痴態を見ながらあらあらうふふといった感じで口元を押さえている。

 

「…これを吸ってろ。」

「しゅみませ…んむ…」

 

オレは肩に傷をつけてエンリへ差し出す。

エンリは申し訳なさそうに、その傷口へ吸い付いた。

これで多少なりとも声は抑えられるだろう。

 

くちゅ…くちゅり。

 

「んっ…ん゛む…っ!」

 

一生懸命に食らいつくエンリの頭を撫でた。

オレの肩で血をはむはむしているエンリは、ちょうど撫でやすい位置にあったからだ。

翼で抱きしめられているような気分になっていたエンリは、更なる刺激に驚く。

今のエンリは、心の底から幸福が溢れ出しているかのようだ。

 

「…見てみろ。これは全部お前のココから出てきた汁だ。」

「…」

 

オレはエンリのおまんこから指を引き抜き、見せつける。

そこには、糸を引く粘性の体液がべったりと付着していた。

エンリはその様子をむせられ、もう一段階顔を染める。

 

「そろそろお遊びは終わりだ。脱がしてもいいか?」

「…。はい。」

 

エンリは少し迷った後、しっかりと頷いた。

オレはスカートに両手を差し入れ、腰のあたりへ伸ばす。

そして、左右の端を掴んで引きおろす。

 

一箇所エンリの愛液でシミができている。

 

「これから大人になる場所をよく見せてくれ。」

「は、はい…どうぞ…」

 

はじめに目に入ったのは、短い金の産毛。

それが上品に可愛く下腹部へと生えている。

エンリの女性器は、綺麗な一筋の裂け目だった。

初めて侵入を許した膣口は、それでもぴったりと閉じている。

一切の下品さを感じさせない、清廉で完璧なおまんこだ。

 

オレは興味本位で、エンリのおまんこをくぱあと左右に開いてみる。

まだ誰にも見せたことがない、エンリの一番大切な部分。

開いた秘裂はとても鮮やかな赤色で、見ようによっては多少グロテスクとも思えた。

中からドロドロとした濁った液体が流れ出て、光に反射してテラテラと光っている。

 

オレは、エンリの穴の入り口に自らの肉棒を押し当てる。

中から溢れでる愛液がオレの肉棒を潤わせる。

ぐちゅぐちゅになってるおまんこが、今か今かと挿入を待ち望んでいるかのようだ。

 

「最後に聞く。エンリ。体までではなく、お前の心まで、オレが貰ってしまっていいんだな?」

「…はい。私の全ては、きるゆー様のものです…」

「いい返事だ。」

 

オレはエンリと目を合わせて問う。

それにエンリは、しっかりと頷き、返事を返した。

その瞳は、まるで恋する乙女。

オレがうら若き少女から懸想されるなんてな。

元の世界なら、絶対にありえないことだっただろう。

…穴の位置は確認した。これで挿入を失敗したら相当恥ずかしいぞ。

 

「…挿入れるぞ。力抜けよ。」

「はい…あっ…」

 

つぷ…くにゅ…

 

オレの頭が、ゆっくりとエンリの膣壁を押し広げていく。

エンリの、プニプニとした入り口を超えて、体内へと侵入していく。

 

 

 




星雲さん
評価コメントありがとうございました。
にらさん
評価ありがとうございました。

最近評価の見方がわかったので、お礼を書いていくことにしました。


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22話

 

 

 

ぐ、ぐ、ぐ、ぐ…

 

口の中へ入れていた肉棒を、奥へ奥へと押し込んでいく。

濡らしたお陰か、ゆっくりとだがエンリの中へと挿入っていく。

 

「ゔ…ぁ…うぅ…」

 

先っぽだけで既にこれか。

やめた方が、とも思ったが、結局いつかは経験することだ。

 

「…エンリ。一気にいくぞ。」

「は、はい…」

 

せめて、時間をかけないよう一度で終わらせよう。

オレはそう考えてエンリの肩を掴んだ。

そして首筋に噛み付きながらずぶっ!と奥まで差し入れる。

きっつ!ちんこが食いちぎられそうだ…

 

「ふぅうう…っっ!」

 

それと同時、エンリからうめき声が漏れる。

腹の底から声を我慢するような声だ。

相当に痛いのだろう。オレの肩を強く抱きしめている。

オレは、痛みが少しでも紛れるように吸血を続ける。

 

「ゔ…ぅあ…あっ…あぅ…」

 

痛みと快感。

エンリは上下からの別々の感覚に飲まれていた。

暫く吸血を続けて、エンリの様子を見ながら口を離す。

 

「これで処女卒業だ。良かったな。」

「はい…はい…っ!」

 

エンリの処女と共に、オレも童貞を卒業した事になった。

エンリの膣は、気持ち良い悪い以前に、締め付けが強すぎてよくわからなかった。

エンリほどではないだろうが、痛いと言ったほうが近いかもしれない。

 

「…動かしても大丈夫そうか?」

「大丈夫、だと思います…」

 

オレは確認を取ってから、ゆっくりと腰を動かし始めた。

 

ぐちゅ…ぐちゅ…

 

ギチギチと痛いくらいに締め付けられる肉棒を抜き差しする。

エンリは破瓜の痛みに耐えながら、健気に抱きついてくる。

ふんわりとした胸の柔らかさと、汗と女の子特有の匂いが混ざった芳しい香り。

その2つがオレの興奮をさらに高め、勝手に肉棒をヒクヒクと痙攣させる。

 

「う…ぅあ…きるゆ…さま…」

「今日は気持ち良いと感じなくても良い。ゆっくりと育てていこう。」

 

エンリを宝物のように優しく抱きしめながら囁いた。

オレは、ぬぷぬぷと奥側の方を中心にピストン運動を続ける。

 

「かぷ…ちゅるる…ちゅぷ…んっ…」

 

吸血を再開させると、エンリの下腹部から突き上げる、刺すような痛みを感じ取れた。

…が、それ以上に頭の中は幸福でいっぱいだった。

情けないことに、フェラで何度も搾り取られた後の敏感な愚息は、今すぐにでも暴発してしまいそうだ。

 

「そろそろ、射精る…中でいいのか?」

「お願いします…」

「子供ができるかもしれないぞ?」

「はい…頑張って産みます…!」

 

そういう事ではない…いや、そういう事なのか。

こっちの世界では、他種族の子を孕んだ時以外での堕胎は一般的ではないようだ。

あってもお腹へ強い衝撃を与えて強制的に堕ろすか、生まれた後の赤子を殺すかのどちらか。

単純な避妊するしないではなく、避妊するか出産するかなわけだ。

 

びゅ♡びゅびゅびゅっ♡

 

あれだけ射精した後だ。流石に勢いが弱い。

これであれば量も少ないだろう。

オレは、まだそこまで強く結婚や子供を作ることへの願望はない。

…いや、ネムみたいな可愛くて良い子ならば話は別だが…

 

「はっ…はっ…はぁ…な、中で出てるの…わかります…とっても熱いです…」

 

耳元でエンリが実況する。

健気で可愛い、俺には勿体ないほどの良い子だ。

 

「よく頑張ったな、エンリ。…気持ちよかったぞ。」

「あ、ありがとうございます…」

 

改めて言われると恥ずかしかったのか、エンリは顔を赤らめた。

そして、膣肉がキュンと締まる。連動していて面白い。

俺はずるりとエンリの中から引き抜いた。

 

「あっ…」

 

エンリが切なそうに声を漏らす。

そして、抜き出した肉棒の後から、精液と愛液と、それかr破瓜の血液が混じる赤く染まった粘液が流れ落ちる。

エンリが生娘から大人の女性へと一歩前進した証拠だ。

 

「エンリ。掃除してくれるか?」

「わかりました。」

 

エンリは一切の躊躇なく頷いた。

そして、自らの膣へ挿入っていた肉棒へ顔を近づけた。

エンリは股間から汁をたらたら流しながら、オレのちんこへと一切の躊躇なく奉仕を始める。

 

「ん…かぽ…んちゅ…んっ、んっ…ん…」

 

エンリは言われた通りに、オレの股間に絡みつく赤く染まった液体を舐め取る。

 

「ちゅ…ちゅぷっ…ん…んちゅう…ちゅる…」

 

射精して硬さを失った肉棒が、再び動き出した。

硬さを取り戻そうと、半勃ちの状態でエンリの刺激にピクピク反応する。

もう起きるな。これ以上やったらむしろ痛くなる…

 

エンリは肉棒の根元を掴み、そのままぐっぐっと亀頭まで押し上げる。

尿道に残っていた、少量の精液がとろりと顔を出す。

それを、エンリは舌で舐めとり奉仕は終了した。

だからそんな技をどこで覚えてくるんだよ。

オレはせめてものお礼にとエンリの頬に手を添える。

 

ちゅ…

 

そして、優しく口付けを落とした。

まったく。オレはエンリを随分と気に入ってしまったようだ。

 

「お疲れ様。初めてなのに、良くできていたわね。」

「お、お母さん…」

 

エンリの顔が、ぼっ!と羞恥の色に染まる。

どうやら奉仕することに集中していて、母親が見ていることを忘れてしまっていたらしい。

オーマはオレたちの初夜(夜ではないが)の邪魔にならないよう部屋の隅で静かにしていた。

痛みで精一杯のエンリが忘れてしまっていても仕方がない。

 

「いや。本当に良かった。初めてでこれなら、将来が楽しみだな。こらからも頼む。」

「はいっ!」

 

それにしても、本当に子供ができてしまったらどうするか。

その場合は、オレもカルネ村に移住したほうが良いよな。

ただ、その事をどのタイミングでナザリックへ報告するか…

まあでも、モモンガさんならいつものニヤニヤ顔で許してくれる気がする…

メンバーの結婚も純粋に祝える人だからな。

 

 

 




caster9さん。姉妹の兄で弟さん。
評価ありがとうございます!


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-第7話ㅤ森の賢王
23話


 

 

 

「森の賢王?」

「はい。」

 

森へと薬草採取を行いに出るンフィーを、オレたち+漆黒の剣のメンバーで護衛していた。

その間に、世間話がてらなかなか面白そうな話を聞いた。

 

「この森をテリトリーとしていて、数百年も前から生きていると言われている強大な魔獣です。」

「なんでも、蛇の尻尾を持つ白銀の四足獣で、叡智に溢れ魔法も使えるとか。」

「ふぅん…」

 

森の主ってところか。

にしても、叡智ねえ…

倒す必要もないだろう。現れれば、適度に追い払ってやればいい。

強そうならば、従属させてナザリックへと連れ帰るのも良いな。

 

「どんなに強い相手でも、ブラッドならチョチョイのチョイっすよ!」

「ははは…」

 

ルプーが快活に、腕をブンブン振り回す。

オレじゃ無くとも、お前のその1振りでワンパンだろうな。

 

「あの…ブラッドさん。」

「何だ?」

「森の賢王が現れたら、殺さずに追い払ってくださいませんか?」

「ああ、まあ…どうしてだ?」

 

元々そのつもりではあったが…

 

「これまでカルネ村がモンスターに襲われなかったのは、森の賢王がこの辺りを縄張りとしていたからです。」

「なるほど。それを殺してしまうと…」

「カルネ村に、モンスターが…」

 

確かに、それは由々しき事態だ。

正直、他の人間が死ぬのは心苦しいが仕方のない事だ。

…が、エモット家の人間が死ぬのは困る。大変に困る。

 

「いくらなんでもそれは…」

「わかった。出来る限りやってみよう。」

「えぇっ!?」

 

ルプーは、心の底では人間が苦しむことを望んでいる。

本心は、モンスターが攻めてくることを望んでいるはずだ。

オレはしっかりとルプーにも釘を刺す。

 

「ルプー。殺すなよ?」

「わかってるっすよー。」

 

信用されていないと思ったのか、ルプーはそっぽを向いて頬を膨らませた。

可愛い。

 

「相手は何百年も生きてる魔獣だぞ!?」

「強者にのみに許された態度であるな…」

 

 

「あー。すみません、少し尿意が…」

「…ブラッド。それはレディの前で言う事じゃないっすよ。」

「お前以外の前じゃ言わねえよ。」

「早めに戻ってきてくださいね。」

「わかってる。」

 

オレはンフィーレアに後ろ向きでひらひら手を振って不自然にならない程度に出来る限り離れる。

と、なると…魔獣使いのアウラが適任だな。

そして、魔法へ気を張って万が一にも音が漏れないように処置をする。

 

伝言(メッセージ)。」

「きるゆー様!どうされましたか?」

 

アウラへメッセージを飛ばした瞬間、1コールで出た。

いや、コールなんていう機能はないが…

 

「森の賢王という魔獣を知っているか?どうやらこの辺りにいるようなのだが…」

「森の賢王、ですか…申し訳ありません。そのようなモンスターの情報は持っていません…」

「そうか…お前は今こちらに来られる状況にあるか?」

「はい!」

「ではアウラ。すぐに上位転移でこの森まで来い。お前には、森の賢王を誘導してもらいたい。」

 

ついでだ。

その森の賢王とやらがどの程度の強さなのか調べてみるとしよう。

 

 

 

 

 

「ダインさん。次は、この薬草をお願いします。」

「承知したのである。」

 

ダインは植物成長(グロウ・プラント)の魔法を使ってンフィーレアの薬草採取を手伝っていた。

森祭司(ドルイド)は妙な魔法を使うな。畑仕事で重宝しそうだ。

 

「!静かに!」

 

鳥たちが一斉に、何かから逃げるかのように飛び立った。

ルクルットが鋭い声をあげ、地面に耳を付ける。

 

「…何か、来る…?」

「まずいな、こりゃ。デカいのが何かこっちへ向かってきてる。」

「森の賢王…でしょうか…」

「多分な。何しろ相当デカい。俺たちじゃ無理だ。」

「ブラッドさん…」

 

そうそう。

こういう展開を期待していたんだ、オレは。

アウラはうまくやったようだ。

 

「そうだな。ここはオレが引き受けよう。」

「私もお供するっす。」

「それでは、私たちはンフィーレアさんを森の外まで護衛します。」

「あー。頼んだ。」

 

あー…ですよね。依頼者を一番に守るのが冒険者ですよね。

これじゃ、森の賢王と戦う事すら証明できねえ…

 

「っ!?」

 

何かが飛来し、それをオレは片手で受け止める。

パワーはまだまだだったがスピードが出ていた事と不意を突かれたこともあって、オレは3センチほど後ろへ押された。

が、そこから踏ん張って力に任せて押し戻す。

蛇…なるほど。こいつは確かに森の賢王らしい。

 

「某の初撃を完全に防ぐとは見事である。」

「…それがし?」

 

叡智とかなんとか言っていたから喋るかもとは思っていたが。

また妙にキャラの立った奴な気がするな…

 

「某の縄張りへの侵入者よ。今逃走するのであれば、先の見事な防御に免じて某は追わないでおくが…どうするでござるか?」

「ござる?」

 

いや…なんか、寒い。

忍者に憧れ持った入国したての外国人みたいだ。

それで、オレはどう反応すればいい?

 

「いや、それは無理な相談だ。」

「それは残念でござるな。では某の威容に瞠目し、畏怖するが良い!」

 

どすん!どすん!

大きな音を響かせ、木々の隙間から森の賢王が姿を現わす。

銀の毛並み。四足獣。蛇の尻尾。会話ができるだけの知能。

確かに、情報に間違いはない、が…

 

「こいつは…」

 

完全に、尻尾が蛇で滅茶苦茶にデカいだけのハムスターだった。

何だコイツ…

 

 

 




八木 洋さん。
評価コメありがとうございます!
ー彼女の登場ももうそろそろですね。考えておきます。

Bibaruさん。くららんさん。神天宮さん。
紅月 雪さん。アルビレオイマさん。†-りっちぃ-†さん。
評価ありがとうございました!


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24話

 

 

いや、完全に予想外だ。

藪をつついたら蛇に加えてこんなものが出るとは、誰が予想できるか。

 

「驚いて声も出ぬか。しかし、この姿を見て恐怖せぬその心意気には関心でござる。」

 

ぱっと見可愛いハムスターだが、何せ大きさが大きさだ。

オレより高く、オレよりも太い。下手したら二倍くらいある。

うーん、やっぱり可愛いとは言えないな…

 

「ブラッド!コイツ、面白い見た目っすね。」

「そうか?面白いというか、うーん…」

 

オレは、もっとカッコ良いいきものを想像していたんだが…

例えば、オオカミとか。トラとか。

 

「何をコソコソ言っているでござるか。そろそろ命の奪い合いをするでござる!」

 

いや、もうそんなテンションじゃないんだって。

オレは、強くてかっこ良い魔獣と戦えるかもってワクワクしてたんだよ。

それがお前…ハムスターって…

 

「某の支配する領地へ侵入せし者よ。某の糧となるでござる!」

「…はあ。戦うのはやめだ。こんな姿の相手に剣は向けられねえ。」

 

こんな見た目の動物へ剣を向けたり、あまつさえ傷つけてしまいでもしたら、動物愛護の団体から猛烈な講義が来てしまう。

 

「何を言っているのでござるか。まさか、未だ勝敗の分からぬうちに降伏とはありえんでござろう。」

「…もういい。喋るな。」

 

オレは面倒になり、絶望のオーラを発動させる。

レベルは最小の1。

低位のものへ恐怖を与え、敵の戦意を削ぐスキル。

ルプーは、戦うつもりだったオレが絶望のオーラを発したせいか不思議そうな顔だ。

 

「いひゃああ!まけ!某の負けでござる!」

「あー、はいはい。わかったわかった。」

 

ぐでん!と転がり、腹を見せる賢王。

ハムスターも服従のポーズやるんだなあ、なんて妙なことを考えてしまう。

 

「コイツつまんないっすねー。もっと必死になれないんすか?」

「言うな。」

 

こんな所でドSを出すな。

というか、ルプーの()()は魔獣相手でも有効なのか。

 

「おい、賢王とやら。」

「殺さないで欲しいでござるよ〜」

 

先の上からの態度とは一変、媚びを売るような可愛い声を上げる。

 

「殺さねえから。追い返すだけっていう依頼だから。」

「そうでござったか…先程の殿への態度、謝罪するでござる…」

 

殿って呼ぶな。

 

「いや、そういうのもいいから。とりあえず、巣穴に戻ってくれるかな。それで全ての問題は解決する。」

「そうでござるか…」

 

賢王はがっくりと肩(ハムスターにも肩はあるのか?)を落とした。

あからさまに落ち込んでいる。

ま、俺たちにはどうでもいいことだ。

 

「ルプー。報告に戻るぞ。もう安全だってな。」

「待って欲しいでござる!」

「あん?」

 

まだ何か?とオレはハムスターを見やる。

 

「某は、殿の見事な気迫に見惚れたのでござる!どうか殿に仕えさせて欲しい所存。」

「いや、結構です。」

「なんと!?」

 

いやいや。ハムスターを連れて歩きたくないし。

ペットとしてはデカすぎるし。

 

「…いや、待て。うちのトップに聞いてみる。良ければ連れて帰ってやる。」

「本当でござるか!」

「え、この魔獣飼うんすか?」

「モモンガさんさえ良ければな。」

 

確かシズはもふもふ好きという可愛らしい設定があった。

地球でもハムスターはかなりメジャーな愛玩動物。

持って帰ったら、シズが喜んだりはしないだろうか。

オレの目からも、サイズが小さければ可愛いと思う。小さければだが…

 

伝言(メッセージ)。」

 

オレは、今度はモモンガさんへとメッセージを飛ばす。

ナザリックで、ペットを飼っていいかの確認だ。

モモンガさんはオレのお母さんかよ…

 

「ブラッドさん。何か問題でもありましたか?」

「あー、問題というか、相談というか。とある森でハムスターを見つけた。飼ってもいい?」

「え?え?なんですか?」

「だから、ハムスターを飼ってもいいかって話です。サイズはモモンガさんより大きいです。」

「…それ、本当にハムスターですか?」

「さあ…鏡で見れますか?こんなのなんですけど…」

 

オレはモモンガさんが遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を取り出すのを待つ。

その間に、ひっくり返ったままの賢王をツンツン突こうとしていたルプーを止める。

不用意に触るな。野生の動物はどんな病気を持っているかも分からない。

 

「うわ!完全に、ハムスター…ですね、これは…」

「ただ、降参してオレの傘下へ入りたいと言ってる。どうだ?」

「あ、いや…今ちょっと混乱してるので。ブラッドさんはどう思ってるんですか?」

「オレはいらないと思うんだが…シズが好きそうだと思ってな。」

「ああ、シズですか…確かにシズはハムスター好きそうですね。」

 

ん?モモンガさんは設定好きのオレと違って、NPCの事をよく知らなかったはずだが…

あれからしっかりと確認したのかな。

モモンガさん真面目だしな。ありそう。

 

「加えて、このハムスターは森の賢王と呼ばれるこの国では有名な強い魔獣らしい。もし使役できれば知名度が上がると思うんだが…」

「まあ…ブラッドさんが良いなら、私も問題ありません。」

「そうか…おい、良かったな賢王。うちのトップが許すってよ」

「本当でござるか!」

 

何がそんなに嬉しいのか、賢王は弾んだ声で答えた。

 

 

 

 

「こ、これが…森の賢王…?」

「…の、ようだな。」

「そうでござる!某は森の賢王。そして今は殿に仕える者でござる。」

 

結局、連れ帰ることになった。

未だにこれでいいのか迷ってはいるが…

 

「すごい!なんて立派な魔獣なんだ!」

「これだけの偉業を成し遂げるとは!確かにルプスちゃんを連れまわすだけはあるわ。」

「強大な力と英知を感じるのである!」

「私たちでは皆殺しにされていました。さすがはブラッドさんです!」

「あぁ〜〜〜〜…ま…まあ…な…」

 

オレは目を逸らしながら答えた。

ええぇ…この世界では、これが強そうに見えるのか…

よく見ると、ルプーもウンウンと頷いていた。

え?っまさか、お前もなのか!?

 

「あー、すまん、ンフィーレア。オレは追い返すつもりだったんだが、コレにどうしてもと言われてな…」

「あ…いえ…!それは、仕方ないです…ブラッドさんは、とても強いお方なので…」

 

「あの、ブラッドさん!僕に、ブラッドさんの強さを、かけらでも教えて欲しいんです!僕には薬学の知識に少しは自信もありますし、荷物運びでも、なんでもします!僕を、あなたのチームに入れてもらえませんか…!僕は、カルネ村とエンリを守りたい…!」

 

チームに、か…

大きくでたな、ンフィーレア。

 

「…それが、オレのものだとしても?」

「っ!」

 

ンフィーレアは、エンリからエモット家がブラッドの庇護下に入ったことを告げられていた。

それをオレは、エンリの記憶をのぞいた時に知った。

ンフィーレアの恋心を知る由もないエンリは、それはもう無慈悲にンフィーレアへと惚気た。

流石に吸血や口淫などのことは話していなかったが…

その恋する乙女なエンリに、ンフィーレアは自らの恋が散った事を悟っていた。

 

「はい。エンリが誰を好きになっても。僕は、僕の好きな人に幸せでいて欲しいんです。」

「…そうか。だが、チームに入れるのは無理だ。実力がない者が不相応な事をすれば、すぐに死ぬ。オレにそこまで迷惑をかけるな。」

「…すみま、せんでした…」

 

…はあ。

オレは、ンフィーレアにはある程度の情を持っている。

これからどんどん強いモンスターと戦っていく予定のオレについてくれば、待ち受けるのは死のみだ。

特に、全体攻撃を食らえば即死だろう。

 

「だが。…カルネ村は守ってやる。折角守った村だ。最後まで面倒は見よう。」

「あ、ありがとうございます…!」

 

 

 




末岳産さん。餅つき 兎さん。
評価ありがとうございました!

フラムグラスさん。
最高評価、コメントありがとうございます!


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-第8話 死を切り裂く双剣
25話


 

 

 

「…ん?」

 

眷属が何かを伝えて来ている。

何かよくないことが起きているな。

オレは、眷属と視界をリンクさせて漆黒の剣の状況を探る。

 

「では、「ハムスケ」という名前でよろしいでしょうか?」

 

受付嬢は、なかなか返事をしないオレに不思議そうな顔を向けてくる。

 

「…ルプー。オレは大切な用事を思い出した。後は頼んだ。」

「え?ちょ、ブラッド?」

 

オレはルプーをおいて、冒険者組合を飛び出した。

 

 

 

バレアレ家の工房。

何もなければ、ここで漆黒の剣とンフィーレアが待っているはずなのだが…

中には、見たことのない2人の男女がいた。

1人は肩まで伸びた金髪赤目の痩せ気味な女。

もう1人は、長いローブの気色の悪い色の肌のハゲた男。

 

うぞうぞ動いているのは漆黒の剣のメンバー。

こいつらは死んでいるようだ。

それも、死後に死体をゾンビへと変えられている。

 

そして、その足元には気絶させられたンフィーレア。

こちらは生きている。

 

「…」

 

カルネ村を襲った騎士の分隊長が殺された後。

オレは、眷属に監視している人物が危なくなったら知らせろと命令を出していた。

そして今回、眷属からの知らせが来て、ここまで急いでやって来た。

 

「なっ!お主は…」

「邪魔だ。」

 

オレはハゲ頭のマジックキャスターへ平手を打つ。

すると、男は面白いように吹き飛んだ。

ドン!と音をさせて壁へとたいあたりしてしまったその男だが、死んではいないようだ。

 

オレのカルマ値は−100。

友好的な人間には情を、敵対的な人間には何倍もの仇を返す。

罪のない人間なら温情を与えるし、気に入らない人間は躊躇いなく殺す。

それがオレだ。

 

「ぶ、ら…さ…」

 

ニニャは虫の息だが生きているようだ。

散々嬲ったのだろう、体には多くの傷跡が付いている。

そして胸にはさらしが。その下には、発展途上の小さな膨らみ。

ニニャはおんにゃのこだったらしい。

うーん、予兆はあったが…

 

「…瀕死だが、死んではいないようだな。」

「アンタがブラッド?フーン、なかなか良さそうな武器もってるね〜。」

 

言われてオレが腰の魔剣に目をやった瞬間、女の姿がブレた。

瞬間、左目に熱を感じた。

…ああ、確かに早いな。反応できなかった。

 

「…痛ぇなあ。」

「なっ…」

「あー痛ぇ。死んだかと思った。」

 

オレが手を伸ばすと、女は武器をオレの目へ刺したまま飛び退いた。

 

「…刺突武器か。オレと同じ暗殺者か?いや、それにしては筋力が高いな。短剣使いの方の戦士か。」

「なっ、なんでそんな…っ」

「ああ、これ?痛覚無効なんだ。残念だったな。」

 

オレは左目の奥まで突き刺さったスティレットを引き抜く。

ぐじゅり、と嫌な音が鳴って血が噴き出した。

 

「人外が…」

 

女が、一歩後ろに下がる。

オレと戦うには相性が悪いとでも悟ったか。

 

「よくも、やってくれたな。女。」

「…」

「教えてやろう、似非ゆるふわ系。このパーティーはな。オレの名声を高めるために必要な者だったんだ。」

「ふふ…くくく…ねえ、仲間殺されて怒っちゃったの?」

 

口を三日月型に歪めて笑う女。

それを見た瞬間、オレの中で切れた。

 

「この…くそぉぉおおおおがぁぁあああああ!!!!!!」

 

 

 

 

「ったく。こういう時に精神異常無効化されてもな…」

 

…が、すぐに切れた何かは結び直された。まったく…

オレは、叫びながら絶望のオーラをレベルIで漏らしていた。

強い魔物として知られている森の賢王、改めハムスケが一瞬で降伏を宣言したこのオーラ。

それに女は、顔を青くしながらもよくに耐え切っている。ハムスケよりは根性があるみたいだな。

 

この腹の怒りは収まらないが…落ち着け。この女を殺すのは良くない。

動きを見るに、この世界ではかなりの手練れ。

 

デスナイトと比べれば強さはお察しだが、強い人間種というのは利用価値があるかもしれない。

ガゼフ・ストロノーフという表舞台の人間とは違い、裏の人間ならば拾ってしまっても問題ないだろうしな。

何より、モモンガさんなら絶対にそうする。

ナザリックへの貢献を考えろ。ここで、オレの私情だけで殺すわけにはいかない。

 

睡眠(スリープ)

 

オレは立つだけで精一杯の女を放置して、ニニャへと近づき睡眠状態へと誘う。

ニニャまでまとめてオーラの餌食になっているが、許してほしい。

…あ、何かアンモニア臭が…

 

オレは何も見なかった事にして、ユグドラシル産の赤いポーションをかける。

すると、ニニャの体は全回復した。

 

「オレは、憎い相手に復讐するなら、殺すのではなく生かしたまま何度も痛めつける方が好きだ。」

「…」

「お前もそうなんだろ?奇遇だな。」

 

最後の意地なのか、膝がガタガタ震えているが立ったままでいる。

 

「はは…化け物が…どこに潜んでやがった…」

「上には上がいる。覚えておいた方がいい。」

「あ…がっ!ごほ…ごほっ!ご、ごの゛ぉ!」

 

オレは、女の首を持ち上げて壁へと押し付ける。

こんな形で持ち上げたのだ。気管が詰まってしまっているだろう。

 

「さて。お前はこれからどうされたい?」

 

 

 




ボリダンプさん。高評価ありがとうございました!

それにしても評価で1が何度か来ますねえ。
折角ありがたいことに10評価を貰って一時期赤い色になってたのに…
この作品が面白くなかったのなら仕方ないこととは思いますが、せめて1話目で判断するのやめて…


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26話

この差を覆すことはできないとは思いますが、アンケートはまだ募集中です。

後今回変なスキル作りました。ごめんなさい。


 

 

 

「ナ…なァアめるナぁあぁああ!!!」

 

喉を詰まらせながら、喉を引き裂くような叫び。

そして、己を掴んでいる手を殴り、引っ掻き、刺す。

この世界の人間にしてはSTRが高いようで、攻撃された場所の皮膚が赤く跡が付く。

 

「こっ…こんな…ドゴデェェエエエ!!」

 

女は、これほどの実力差を見ても諦めない。

ま、諦めたら殺されると思っているだろうし当たり前か。

 

「絶望のオーラ。レベルII。」

「ひっ!…ひぁ…」

 

が、オーラの出力を上げたことでそれも終わる。

レベルIIは恐慌。思考すらまともに働かないはずだ。

 

「言ったはずだ。上には上がいると。」

「た、たひゅけ…」

「何だって?」

 

オレはギリ、と締め上げる。

女はこれまで以上にジタバタと暴れだすが、そこにはこちらへの攻撃意がなくなっていた。

敗北を理解し、逃げるための攻撃から、ただの逃亡へと変化した。

こうなって仕舞えばもう逃げることすらできないだろう。

 

「おね…が…や…ぁ…」

 

ああ、ついに泣いちゃった。

なら初めからそんなことしなきゃいいのに。

 

…ま、お仕置きはこの程度でいいだろう。

オレのこの怒りも少しは晴れた。

女の首から手を離し、オーラも切る。

 

「…そうだな。お前のその無様な姿に免じて許してやろう。」

「はぁ…っ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!」

 

喉をつかまれ呼吸が満足にできていなかった女。

手が離れた瞬間に大きく息を吸い込み、荒い呼吸を繰り返す。

スキルは切ったはずだが、女はこちらを恐怖の目で見つめていた。

 

「今すぐに下れ。命だけは助けてやる。」

「…」

 

女はかなり迷っている様子。

あれだけ恐怖を植え付けたのに、即答できないとはやはりこの女は強い。

 

「即答できないようなら…」

「わかった!わかったから!私を好きにしていい!」

「そうか、それは丁度良かった。お前が欲しかったんだよ。」

 

女の頬に汗が流れる。

極度の緊張を感じている様子。

 

「オレたちの下に付け。お前はなかなかに使える。」

「わ、わかった…」

 

オレは、スティレットを突き刺された左目を拭う。

拭われた血の下から出てきたのは、すでに再生した目玉。

オレは吸血鬼(ヴァンパイア)っぽいというだけで自動回復スキルを取っている。

 

「な…っ!?」

 

こっちの世界では珍しいスキルなのか、女が驚く。

トロールもこっちの世界にはいたはずなんだけどな。

 

「変な気は起こすなよ。大人しくしてろ。」

 

オレは女に釘を刺し、ニニャを起こす。

状態回復をした後に頬をペチペチと何度か叩くと、目を覚ました。

 

「あ、あれ、ここは…ブラッドさん?…って、この格好は一体…!?」

「大丈夫か?お前の最後の記憶を教えてくれ。」

「えっと、ンフィーレアさんの工房に報奨金を受け取りに来て…それで…」

 

ニニャはしばらくブツブツと考え込み、そして大きく狼狽した。

そして、オレに助けを求める。

 

「ブラッドさん!ペテルが!ダインが!ルクルットが…!」

「わかってる。」

 

ニニャがオレにすがり付く。

さらしに巻かれた押しつぶされている胸が当たった。

そんな事で興奮したわけではないが…

今なら、ニニャに吸血の欲求を感じた意味がわかる。

 

「生き残っていたのはお前だけだ。他のメンバーはゾンビにされていた。」

「ぞ、ゾンビに…僕の前で、皆が…」

 

それとは別件で。ただ、なんとなく血を吸いたい気分になってしまった。

なんとなくね。お菓子をつまみたい気分になっただけだ。

 

「生き返らせる方法がある。」

死者復活(レイズ・デッド)ですか?…でも、あの魔法は不死者(アンデッド)には…」

「その心配はない。綺麗にまるっと元通りとはいかないが。その代わりにお前の全てをよこせ。」

「全て…ですか?」

 

ニニャが驚いてこちらを見据える。

目でどういうことかと訴えかけている。

 

「そうだ。体を動かす権利。喋る権利。そして、自分の体の所有権。全てをオレに預けるんだ。」

「そ、それって…」

 

ニニャは、今の状況をも忘れて顔を熱らせた。

女を捨てた自分。だが、目の前で見せられたブラッドの強さ。

ニニャにも、女の本能でこの強い男と一緒になれたら、と一瞬でも考えてしまったことがあった。

 

「蘇生魔法では無理な、仲間3人の復活。安い対価ではないと思うんだが、どうだ?」

「…わかりました。それでお願いします。」

 

ニニャは迷うことなく決断した。

内心で、どちらも報酬なのでは、と考えてしまった自分を恥じた。

 

種族進化(レイズ・スピーシーズ・アンデッド)。」

 

オレが発動させた魔法は、アンデッドの種族進化(レイズ・スピーシーズ)

低いレベルの弱い種族に限るが、個体を引き継いで種族を進化させることができる。

これも吸血鬼っぽいスキルだと思ったオレが雰囲気作りのために取った地味スキル。

アンデッドはアンデッドにしか進化できないという縛りもあるが、今回ならこれで事足りる。

 

オレが漆黒の剣のメンバーを変えたのは吸血鬼(ヴァンパイア)

ゾンビは意思疎通すらできないが、吸血鬼ならば自我を持っていて、真祖と比べればほんの少しだが強くもなる。

 

 

 




河童の奴隷さん。Kuroshiba。さん。
評価コメントありがとうがございました!

WBXさん。燃えるタンポポさん。ショーゴスさん。天魔刀さん。シャト6さん。
犬野郎さん。堕落人さん。優希@がんばらないさん。ぽりだんぷさん。
tirotiroponnさん。わたやんさん。
評価ありがとうございました!

こんなに同時にいっぱいもらえて…
デイリー2位に上がっているのは確認できました!
これでも2位なんですね…と、思っていたら現在はこの作品が1位とのこと!
やったー!ありがとうございます!
皆様のおかげですありがとう!!


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27話

 

 

 

「えっ、この状況何すか?」

 

従魔登録を終わらせてきたのだろう、ルプーが工房へとやって来た。

ルプーが困惑してしまうのも仕方がないことだ。

 

ガクガク足腰を震わせて今にも崩れ落ちそうな女。

服を剥かれた男だと思っていたお漏らし女。

気絶している吸血鬼3人と、ついでに薬師1人。

ついでに伸びてるハゲ頭も1人。

 

自分でも思う。なんだこの状況。

 

「漆黒の剣が襲われて殺されたようだ。」

 

オレは簡単にルプーへと状況を説明する。

…が、オレもこれ以上のことは知らない。

女に問いただす必要があるな。

 

「死後、吸血鬼へ落として復活させた。こいつらにはまだ利用価値がある。…お前は、こいつらの死ぬ姿を見たかっただろうが。」

「いや〜、確かに見れなくて残念っすけど…」

 

やっぱりか。

オレは、今度は似非ゆるふわ女の方に目を向けて続ける。

 

「そこの女はかなり強い。持って帰ってナザリックの戦力にしたい。」

「あの魔獣と同じ扱いっすか?そんなに必要っすかね?」

「敵にいるより味方にいた方が良いに決まってる。ハムスケ同様管理はオレがするからお前達には迷惑かけない。」

「…そうっすか。」

 

ルプーが何やらむくれた様子で顔を背けた。

何…?拷問やりたかったみたいな?

とりあえずモモンガさんに連絡入れて、許可を取ってみるか…

 

伝言(メッセージ)

「キルユーさん、どうしました?ハムスケに何か問題が…」

「あ、いや。そっちとは別件だ。」

 

ちなみに、ハムスケと命名したのはモモンガさんだ。

とりあえず名付けの希望を聞いてみて、出たのがハムスケだった。

相変わらず名付けが可愛い。

 

「天使と戦っていた男と同程度に強い人間を見つけた。」

「あの男と?確か、こっちの世界ではかなり強いんでしたよね。」

「そうだ。アレは王国の戦士長だったから手は出せなかったが、こっちのはどうも裏社会の人間のようだ。」

「裏社会…」

 

モモンガさんは少し考え込んでいる様子だった。

ナザリックもとうとう裏社会へ進出か?

裏で国を牛耳ることができれば、色々と動きやすそうだな。

 

「ついでに配下にした人間と一緒に持って帰りたいんですけど、良いですかね?」

「それは…ナザリックの庇護下に入れるということですか?」

「あ、いえ。オレのペットにしようかなと…」

「ペット!?ん!?え!?人間の話でしたよね!?」

「ええ、まあ…」

 

手に入れたとはいえ、エンリは大切にしたい。ペット扱いは避けたい。

そこに関してこの女なら、執着もなければ大切にする義理もない。

むしろ、仲間を殺してくれたお礼がしたいくらいだ。

 

「ん、んんっ!…しっかりと躾けるなら大丈夫ですよ。」

「ああ、そのつもりだ。」

 

よし、モモンガさんからのゴーサインも出た。

とりあえずはこの女も吸血で支配下に落として…

いや。その前に色々と試してみるか。

 

「とりあえず…人間種魅了(チャーム・パーソン)。」

 

オレは女の顎を掴み、顔を向かせる。

女に触れてから震えていた体が落ち着きを取り戻す。

 

「さて女。お前の名前を聞こうか。」

「…クレマンティーヌ。」

「そうか。ではクレマンティーヌ。お前は何故バレアレ家へ侵入していた?」

「…叡者の額冠を使える人間を攫うため…」

 

ンフィーレアのタレントの力を欲したわけか。

まあ、オレから見てもかなり強力なものだ。

欲しいやつはいくらでもいるだろう。

 

「叡者の額冠とは?」

「エ・ランテルを落とすのに必要なマジックアイテム…」

「落とすだぁ?誰かからの命令か?」

「…法国から逃げるために、大きな事を起こして混乱させるために…」

 

そんな大きなことをしていたのか。

そして、オレは意図せずそれを止めてしまったと。

…そいつは利用できるな。

オレは魔法の効果を停止させ、クレマンティーヌの意識を戻す。

 

「今のは…人間種魅了(チャーム・パーソン)…!?」

 

あのハゲには、記憶操作を行いクレマンティーヌ、そして叡者の額冠の記憶を消去。

そして死の螺旋の準備を整えてやるオプションも付けてやった。

最後に眷属を取り憑かせて、これで下準備は完璧に終わった。

 

「よし。ハゲがことを起こす前に騒ぎが大きくなると厄介だ。撤収するぞ。」

 

オレは転移門(ゲート)を発動させ、漆黒の剣のメンバーも含めてナザリックへと運び出す。

吸血鬼へと進化させた奴らはニニャ、ルプーと共に空き部屋へと置いておく。

ルプーには彼らが起きた時に状況説明と、そして吸血の欲求が出た時の制圧を頼んである。

人間を捕獲し、それを殺す場合、殺す前に血を吸い出す血液パックとしても働いてもらうことになりそうだ。

 

「クレマンティーヌ。まずは裸になってもらおうか。」

「くっ…この…」

 

ハゲがエ・ランテルを攻め入るまで、オレはクレマンティーヌで遊ぶことにしよう。

最終目的は、スキルや魔法なしでクレマンティーヌを従属させる事。

…というか、オレは洗脳とか調教だとかの仕方なんて知らないぞ。

シャルティアにでも聞くかな…あいや、シャルティアはソリュシャンに付き添いで外出中か。

帰ってくるまで、一人で色々やってみるか。

 

 

 

「はぁあ。…面白くないっすねえ。」

 

 

 



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帰還
28話


 

 

「こんな場所で、1人裸。なかなか開放感あるだろ?」

「…」

 

クレマンティーヌは悔しそうな顔で従っていた。

今は従っておこう、と考えているのがわかる。

 

「まずは、服従の証に足を舐めてもらおうか。」

 

その皮を剥がすため、俺はあえて屈辱的な命令を下す。

この命令を下した時、プレアデス達ですら喜ぶか嫌がるか想像がつかない。

さて、どうだ?

 

 

 

クレマンティーヌは、自身の力に自信を持っていた。

国内で勝てる人物を数え、愉悦に浸れる程度に。

故に、この状況から勝てなくても、逃げることは何とか、と考えていた。

 

自分が恐怖に慄いたのは、この男は何らかのスキルを使用したから。

ならば、この男にスキルを使われなければ勝利する道は残っている。

この化け物は、即死させなければすぐに回復してしまう。

それに、目をえぐり抜いても死なない、痛みもない厄介な相手だ。

 

まさかとは思うが、奥の手…武器に仕込んだ魔法も、ダメージは与えても殺せなければ回復されてしまうかもしれない。

その手札を切れば、もう手がない。ならば、この魔法は逃げるために使う。

殺すのではなく逃げる。今更追われる組織が増えたところで一緒のことだ。

幸いなことに、支配下に置くということは、今のところは殺す気は無いようだ。

ならば、その間に脱走する環境を整える。

 

 

 

この…この私に、「足を舐めろ」だあ…?

このクレマンティーヌ様に…足を…

 

「どうした?早く舐めろ。」

 

男は、椅子に腰掛けて私に足を突き出す。

裸のまま、地面に這いつくばっているのが私だ。

私には椅子はない。服もない。靴だってない。

魔法を込めた武器も収集したプレートも、全て取り上げられてしまった。

 

私は、舌を小さく突き出す。そして、男の足に押し当てた。

こんな男、すぐにでも拷問にかけてやる。殺しはしない。

できるだけ苦しめて、まだ苦しめて、もっと苦しめて、それから殺す。

 

「違えよ。もっとベロベロ舐めるんだよ。」

 

足が、口の中へ押し込まれる。

痺れとも痛みともつかない味が舌先に広がった。

クソ、クソクソ…何で私がこんな事…

 

「うぐっ…ゔっ…うげぇっ…」

「そうそう。丹念に、心を込めて綺麗にしろよ。」

 

勝手に言ってろ。

私はこんなところで飼い慣らされるようなタマじゃねえんだよ…

 

 

 

命令すれば、クレマンティーヌは足を舐めた。

とりあえずのところ、心を折る。そして、自分がどれだけ弱いのかを教えてやる。

最終目標は、クレマンティーヌが自分からナザリックへと降ることだ。

どれだけべたべたになったのか、口から引き抜くと、つう、と唾液が糸を引いた。

 

「よくできたな。これは褒美だと思ってくれ。」

 

俺は、唾液でベタベタになった足をクレマンティーヌの髪の上に置いた。

そして、そのまま頭を踏みつける。

足裏に少し抵抗を感じたが、圧倒的な力でねじ伏せる。

正直、漆黒の剣のメンバーを殺されたことの怒りはまだ収まっていない。

 

「礼はどうした?クレマンティーヌ。」

「あ゛…ありがとう…ございます…」

 

プライドが高いだろうクレマンティーヌは従順だ。

こいつはナザリックの利益になる可能性がある。

ここで壊してやるのはもったいない。

 

ただ、どうしても血を吸う気にはなれなかった。

連れてきたはいいものの、ぐっと価値が下がってしまったな。

モモンガさんはしっかりと躾けろって言っていたしな…

 

「痛み。絶望。快楽。お前はどれが好みだ?」

 

オレは、足をクレマンティーヌからどけて問いかける。

準備も想定もしないまま持って帰ってきたのだ。

これからのプランもない。

とりあえず、思いつく嫌がらせを並べてみた。

 

「どれが良いか聞いているんだが?」

「ぜ、絶望…」

 

返答を催促すると、慌てて選んだ。

クレマンティーヌが選んだのは、手っ取り早い絶望。

他の2つは今後の生活に支障が出ることになる。

痛みで体を欠損してしまったら力を失うことになる。

快楽で訳も分からない薬を使われたらまともな生活には戻れない。

先を見据えるクレマンティーヌは、乗り越えられるのは絶望のみと判断した。

 

「絶望のオーラ。レベルⅡ」

 

が、次の瞬間に思考がひっくり返された。

 

「ごっ…ごめ…ごめんなさっ…ごべんな゛ざい゛…っ!ごめ、なさ…」

 

オーラだけでは死なない程度のレベル。死ぬ一歩手前の状況だ。

耐えられるわけがない。こんな化け物に見つかったのが運の尽きだったのだ。

クレマンティーヌは、口から吐瀉物を撒き散らしながら何度も謝り続けていた。

 

…それほどか。この女にはやりすぎはないと思ってはいたが、汚ねえな。

オレは再び足でクレマンティーヌの頭をぐちゃり、と吐瀉物の元へと落とす。

地面とキスをしたクレマンティーヌは動かない。いや、動けない。

少しでも動けば、オレに反すれば死ぬことが理解できていた。

 

…ま、さすがにこれで勘弁してやることにするか。

心の底では、殺して欲しいと懇願するまで痛みの限りを尽くしてやりたいが…

いつまでも根に持っていては大人気ないな。

 

 




オーラのレベルを4から2に変更しました。
ハムスケが1で降伏したならハムスケに勝てる程度のくれまんちゃんはレベル2がお似合い。
ちなみに2は決まれば一定時間戦闘行為が取れなくなる恐慌らしいので丁度良い。
4は狂気で、かかれば状態異常回復を使わないと永続ないらしいのでそこも厄介。


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29話

 

 

 

仲間を殺されたとは言え、男連中はヴァンパイアにはなってしまったものの蘇った。

ニニャも酷い姿だったが死んではいなかった。

そもそも、結果的にニニャを手中に収めることができたため悪いことばかりではなかった。

オレの思っていたシナリオとは大分と違ってしまうが。

 

「いや、すまなかったな。少し腹が立っていた。」

 

オレはクレマンティーヌの頭から足を退け、不遜な態度で謝った。

少し弱みにつけ込まれてしまうかと危惧もした…が、反応がない。

 

「顔を上げろ。」

 

命令を下してみるも、顔を地面へと落としたまま動かない。

何か企んでいるのかと警戒は怠らないまま顔を上げさせてみると、完全に気絶していた。

先程の謝罪の連呼はとても嗜虐心をくすぐられたが、そのあまりの重圧に耐えられなかったようだ。

しまったな。少し虐めすぎてしまった。現地人ながらあまりにも頑張るので限界を見誤ったか。

それよりも、クレマンティーヌに触った事で吐瀉物が手に付着してしまった。

 

清潔(クリーン)

 

詠唱一発で、床とクレマンティーヌの顔、そしてオレの指から汚物が消え去った。

本来吐瀉物を片付けるのは一仕事なんだが。魔法って便利だなー、と呆れてしまう。

 

「…ったく。本当にこれで大丈夫なんだろうか…」

 

まず裸にひん剥いて自尊心を折り、力でねじ伏せて上下関係を体に叩き込む。

オレの足りない頭で絞り出した方法だ。ま、後でシャルティアやニューロニストにでも師を仰げば良いだろう。

一番手っ取り早いのは痛みで恐怖心を誘う事らしいが、もうそんな気分ではなくなってしまった。

それに、痛みでの調教はクレマンティーヌの前にオレの心が折れかねない。

アンデットの精神作用効果が効いているはずなのだが、オレの心はどうも人間寄りのようなのだ。

 

「こいつは前途多難だな。」

 

オレは気絶してしまったクレマンティーヌの調教を一時諦め、別室で待機させていた漆黒の剣のメンバーの様子を見に行くことにした。

勝手に連れてきてしまったのだ。当然オレが世話を見るべきだ。

 

束縛(バインド)、んでもって悪夢(ドリーム・デーモン)

 

クレマンティーヌには夢の中で勝手に調教されてもらうことにしよう。

調教という面ではオレよりもこの女の方が詳しいだろう。この方が効率が良い。

クレマンティーヌは束縛した後に指輪でオレの部屋へと転移し、その辺に転がせておいた。

自室なら誰かが勝手に入ってくることはないだろう。

その後再び指輪で待たせてしまっている部屋へと転移した。

 

「きるゆー様。お待ちしておりました。」

 

オレの入室を認めたルプーは、流れるように綺麗な所作で片膝を付いた。

毎回止めるのは面倒だが、これはNPCにとってしなければならないこと。

彼女らの気持ちを考えると、やめてくれとは口が裂けても言えない。

 

「お前の手を煩わせてすまなかったな。立て。」

「とんでもございません。」

 

ナザリック内で冒険者の演技は一旦取り止めだという事を言わずもがな理解しているルプー。

出迎えの礼を終わらせ、立たせる。ニニャ達にはこう言う礼も教えておかなければいけないな。

主に、他NPCから守るために。ただでさえ外から拾ってきた人間だ、やっかみも多いだろう。

 

「あの…ブラッドさん…ですよね?」

「その通りだ。ニニャ。」

 

奥に立っていたニニャが恐る恐ると聞いてくる。

ルプーやオレの態度がこれまでとの印象が全く違うことに戸惑っている様子。

 

「ブラッドさん。これは一体…」

 

ペテルがメンバーを代表として疑問を投げてきた。

種族進化によって一時的に気を失っていたニニャ以外のメンバー達も起きているようだ。

よく見ると、ルクルットは床に転がって目を回している。

吸血衝動でも起きてルプーにやられでもしたか?

 

「結論だけ言うと、第一に漆黒の剣はオレの組織へと所属してもらう。

これは絶対である拒否権はない物と思ってくれて良い。

第二に、お前達は今や人間の体ではない。無理やり蘇生させたために不死者(アンデット)となった。

ニニャは未だ人間だが、そのうちお前達と同じく不死者(アンデット)になる予定だ。」

 

次から次へと聞かされた衝撃の言葉に、漆黒の剣はついてこられていない様子。

まあそこはニニャにでも説明してもらおう。

自分がオレの所有物になったことも含めてな。

 

「次からオレを見かけた時には礼をするんだ。ルプー…ルプスレギナ・ベータの真似をするように。」

「は、はい。」

「かしこまりました、っすよ。」

 

ルプーがニニャへと鋭い視線を飛ばした。

吸血鬼(ヴァンパイア)に上がったメンバーはともかく、人間族(ヒューマン)でありレベルの低いニニャはその視線だけでも息苦しくなるような重圧を覚えたことだろう。

 

「ま、ここでの儀礼はそのうちな。」

 

オレはルプーがニニャとしたように視線で止めさせる。

ニニャがこの状況に順応できないのは仕方がない。

…のだが、ルプーの目はなにやら厳しいままだ。

 

「あの…ブラッドさん。これから、私たちはどうなるのでしょうか…」

「どうなる、とは難しい質問だな。折角助けたわけだから別に取って食ったりはしない。安全はオレが保障しよう。だが、そのまま返すつもりもない。不死者(アンデット)にしてしまったからな。」

 

ゾンビになってさえいなければ、蘇生させるだけで済んだのだが。

それもこれもあのハゲのせいだ。クッソ…

 

「これからの事は仲間と話し合って決めるつもりだ。それまでここで大人しくしていて欲しい。」

「…わかりました。今は、あなたとルプスさんを信じます。」

 

ペテルはオレたち二人を警戒しながらもそう言ってくれた。

生き返らせた事と吸血鬼にされた事。

プラスマイナスでプラスな印象になってくれれば良いのだが。

 

「ニニャ。お前は確か魔法技術を覚えるのが早い、とかなんとかいったタレントを持っていたな。」

「はい…正確には、魔法習得技術ですが…」

 

モモンガさんは、ユグドラシルには無かった「タレント」や「武技」といったスキルに興味がある。

こちらの世界にきた事で、ユグドラシルには無かった別種の力が手に入ることに期待しているようなのだ。

ニニャを手に入れたのは、そういう意味でも良かったと言える。

このことも踏まえて、これから起こる死の螺旋の儀式とやらをモモンガさんに報告しないとな。

 

「ルプスレギナ。オレはこれまでの事をギルド長に報告に行ってくる。もう少しここで待っていてくれるか。」

「お任せください。」

『きるゆー様。アインズ様から重大な報告があるため、帰還次第お連れしろとのことです。』

『…わかった。』

 

突然の伝言(メッセージ)に驚きつつも、ちょうどいいとオレは指輪を使い玉座の間へと転移した。

 

 

 




今話を投稿するにあたってこの作品を読み返して思いました。
誰だこんな良いところで更新止めたのは

更新復活するかは未だ確定しておりません。
他作品で書く書く詐欺をしてしまったので…
読者の皆様におかれましては多大なるご迷惑を…


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30話

 

 

 

「きるゆー様!…こほん。お帰りなさいませ。」

「アルベドか。出迎えご苦労。」

 

指輪を使い玉座の間へと転移した瞬間、アルベドが、目を輝かせてオレの名を叫んで詰め寄る。

アルベドが近づいてきたことにより、ぞわり、と身体中の毛が逆つ。

ひい、ひい。怖い怖い。

 

一瞬我を失ったかのように見えたアルベドだったが、咳払いと共に直ぐに真面目モードへと切り替わりった。

オレは不自然にならないようアルベドから若干距離を取る。

あの件以来、アルベドにここまで近寄られたのは初めてだ。

 

「ギルド長。話があるとの事だが?」

「きるゆーさん。今のところ計画は順調のようだな。」

「少し妙な事件に巻き込まれたが、概ねはな。」

「その事件というのは?」

 

少し長くなるが、情報を共有しなければならない。

吸血鬼の、漆黒の剣の事も頼まなきゃならないしな。

 

 

 

「───その賊というのが、不死者(アンデット)の男と刺突剣使いの女の二人組という訳だな?」

「そうだ。そして、アインズさんに話を通してある戦士長と同じかそれ以上の力を持つ者でもある。ナザリック(ここ)に連れ帰ってきたのがその女だ。」

「裏社会の人間、とか言っていたか。」

 

ポーションを渡した女の冒険者。

ンフィーレアのタレント。

森の賢王。

漆黒の剣。

これまでの経緯を軽く流した後、本題の2人についての話となった。

 

「男の方は記憶を魔法で弄り、女の記憶を消した上でエ・ランテルへの攻撃の準備を整えさせている。冒険者ブラッドの名声の足がかりになってもらう予定だ。」

「…そうか。今回はそちらから対処すべきか…」

「何か不備でもあったか?」

「いや、その判断は適切だ。が、タイミングがなあ…」

 

なにか悩んでいる様子のモモンガさん。

オレは面倒事に巻き込まれる前に、続けてクレマンティーヌの事情も報告する。

 

「女の方は随分と複雑な事情があるようでな。どうやら出身はスレイン法国で、そこからとあるアイテムを盗んでこの国へと逃亡しているようだ。今回の事件に関わっているのは、大きな事件を起こす事で少しでも足跡を消して追っ手を撒いくのが目的のようだ。」

 

スレイン法国。

クレマンティーヌの出身国だと思われる国。

レベル30前後程度のクレマンティーヌをもってしても逃亡の困難な国。

クレマンティーヌ然り、他の国と比べかなりの力を持っていると考えられる。

 

「ふむ。それで、そのアイテムというのは?」

「これだ。」

 

オレは異空間から叡者の額冠を取り出す。

見た目はただの綺麗な装飾の付いた白銀の髪飾りだ。

 

「これは叡者の額冠。装備主を物言わぬ人形にすることで、人知を超えた魔法を行使することができるようになる。…と言っても、せいぜいが第6位階までだと思うがな。」

「これは興味深い。ユグドラシルでは再現不可能なアイテムか。」

「オレが持っていてもしょうがない。使うことはないだろうが、アインズさんに預けても良いか?」

「そうだな。私が受け取ろう。」

「頼んだ。どうやらこの世界は、低レベルの者しかいないというわけではないようだ。」

 

ユグドラシルでは有り得ない効果を持つアイテム。

つまり、この世界で創造されたということだ。

こんな低レベルの世界でこんなアイテムが作れるとは、優秀な魔法技師がいるのか。

 

───あるいは、元ユグドラシルプレイヤーが作り出したのか。

何らかのアイテムで、それこそ世界級(ワールドアイテム)なんかで作成されたものという可能性もある。

 

「きるゆー様。そのような者へ不用意に接するのは危険だったのでは?」

「…確かにそうだった。すまないな。」

「!私どもにとって、御方々の安全が何よりの幸せです。わかって下されば、これ以上のことはありません。」

 

アルベドが本当に心配そうな声を出したため、つい謝ってしまった。

だが、言われてみれば少し危険な真似をしていたかもしれない。

あの時はつい感情に任せて事を進めてしまっていたが、ルプーもいなかった。

オレはこの世界を甘く見ていた。たかが低レベルと侮り油断して攻撃も受けた。

情けない。本当に情けない。

 

「ところで、きるゆー様。アインズ様。先程から気になっていたのですが…」

「何だ?」

 

アルベドは口を開け、しかし言葉にする事を躊躇った。

オレたち2人を見て、何やら迷っているようだ。

…アルベドが気になっている、聞くのを躊躇うような気になっている事とは。

転移してまだ数日だと言うのにNPC達に知られたくない事が沢山出来ているオレの背中に、冷や汗が流れる。

例の村娘と性交された理由をお教え下さいとか言われたら…

 

「アルベド。お前の知恵には期待している。例えどのような小さな疑問でも口に出して欲しい。」

「あ、ありがとう…ございます…くふっ、くふふっ…」

 

オレの焦りを知ってか知らずか、モモンガさんは話の先を促した。

アルベドは上がる口端を抑えてはいるものの、しかし不気味とも取れる笑い声が漏れている。

わ、笑ってる…何聞かれるんだ?コワイ…

 

「御二方は、どうして口調を崩されていないのでしょうか?」

 

しかしアルベドが口にしたのは、オレの全く予想出来ていないものだった。

あまりにも死角から飛んできた質問に、一瞬脳が活動を停止させた。

 

「な、何で、そんな事…」

「ここには、私以外の階層守護者やプレアデス、メイドがおりません。普段のお言葉遣いをなされないのには、何か事情があるのでしょうか…?」

 

お前がいるからだよ!…と叫ぶわけにはいかず、オレもモモンガさんも返答に困ってしまった。

というより、状況についていけていなかった。

やっと感情抑制のスキルが発動して冷静になってきたが…

 

「あー。コホン。アルベドよ。普段の言葉遣いとは何の事かな?」

「はい。お二人で会話されている時の、砕けた話し言葉の事でございます。」

 

先に復活したモモンガさんの白々しい質問に、アルベドは的確に答えた。

アルベドには、オレたち2人が支配者ロールをしていた事がバレていた。

 

「恐れながら、私はお2人が我々の為に無理をなさって演技をされている事を理解しております。」

「…」

 

オレは背筋を凍らせた。

モモンガさんは頭に手を置いて天を仰いだ。

 

初めから看破されていたのだ。

その上で、踊ってくれていただけとは。

なんて滑稽なんだ…

 

 

 



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31話

 

 

 

「そうか、お前は知っていたか。他に私達の演技に気が付いている者はいるか?」

「いいえ。私だけでしょう。」

 

オレよりも早く復活したモモンガさん。

アルベドにバレているならデミウルゴスにも、とういう訳ではないようだ。

玉座の間に座しているアルベドだからこそ気がついたのかもしれないな。

 

「あの…これは御2人がスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで設定なされた事では?」

 

オレはモモンガさんの方を振り返った。

スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンと言えば、言わずもがなあの一件だろう。

だが、何か特別な事をした覚えはないが…

 

「…そうですか。それも偶然、だったのですね。」

「ああ、実を言うとな。」

「であるならば、私はその偶然に感謝をしなくてはなりません。そのおかげで、こうしてアインズ様やきるゆー様のお側で寄り添えるのですから。」

 

口を三日月の形に変え、腰から伸びる黒い羽をパタパタとはためかせる。

興奮状態になってしまったアルベド。うん?どういう事だ?

 

「お前にはあの時の記憶もあるのだな。」

「勿論です。御方々との思い出は一瞬たりとも忘れる事などありません。」

 

モモンガさんが言いたかったのはそういう事ではないと思うが。

設定とか言い出したためにもしかしてと思ったが、ゲーム外などのメタ的な融通が効いているわけではないようだ。

 

「すまないな。お前の前であんな…タブラさんの気持ちを無視してしまうような行動をしてしまって。」

「私は気にしておりません。それに、タブラ・スマラグディナ様も、きっとお許しになります。」

 

アルベドがにっこりと笑みを零した。

滅茶苦茶に優しい…気を抜くとコロっといってしまいそうだ。

 

「それに、このような事態になってしまったのですから。結果的には良い決断だったのではないでしょうか。」

「そう言ってくれると助かるよ。」

 

いつも通り、NPCの前では分からない事も誤魔化そうとも思ったが。

それはオレ達の演技を見抜いたのを打ち明けたアルベドに申し訳が立たない。

 

「…悪い。話に付いて行けないんだが…どういう事だ?」

「きるゆーさん。書き換えた設定の全文を覚えていますか?」

「いや、さっぱりだ。」

 

モモンガさんは敬語になった。

オレたち2人の時の口調に戻したようだ。

 

「まさに外見だけであれば完璧なきるゆーとモモンガを愛している、だ。」

「それ自分で言ってて恥ずかしくないのか?」

「…」

 

オレは聞いただけでぞわりと鳥肌が立った。

数日前の事なのに、既に黒歴史になってしまっていた。

 

原文はこうだ。

ーまさに外見だけであれば完璧な美女だ。ちなみにビッチである。ー

 

それが、文字数制限のせいで

 

ーまさに外見だけであれば完璧なきるゆーとモモンガを愛しているー

 

と変更した。

 

「これは、私たちの外見だけは完璧だと…つまり、中身までは完璧ではないという事を知っているという意味にも捉えられます。」

「無理矢理な気もするが、確かにそれが一番近い解釈な気もするけど…」

 

モモンガさんはオレの言葉を軽く無視し、説明を続けた。

まあオレもいじり続けるつもりはなかったが。

そもそも、この話題はオレにもダメージ入る。

 

「アルベド。これからは私たちのフォローをしてもらえると助かる。何せ私たちは…」

「はい。私の全てを以って、御二方の力になりましょう。」

「頼んだ。」

 

これは心強い味方を得たな。

上位者ロールをするにあたって、知らない、わからないだと格好がつかない。

そういうポンコツな部分をアルベドがフォローしてくれるのなら安心だ。

 

「…アルベド。」

「はい、何で御座いましょうか。きるゆー様。」

 

アルベドがこちらを見つめてくるだけで、ぞくりと鳥肌が立つ。

…しかし、いつまでも怖がっているわけにもいかない。

オレは真っ直ぐにアルベドの目を見つめる。

 

「アルベド。お前の気持ちを知って、オレがどんなにお前達を悲しませていたか思い知ったよ。」

「…はい。」

 

ギルドメンバーが去ったことによる深い絶望。

モモンガさんまでいなくなってしまうのでは、という恐怖。

この地の主人を少しでも疑ってしまった自分への苛立ち。

───そして、自分たちを見捨てた者。オレたちへの()()()()()

 

アルベドの記憶を覗き見なければ、オレもあの時土下座まではしなかっただろう。

オレよりも余程ギルメン達の事を尊敬していた。憧れていた。愛していた。

そんな気持ちを知っていながら、NPC達を見捨てる事はしたくない。

 

「オレはもう、隠れたりすることはない。約束する。」

「はい…はいっ!…これ以上のことは、ありません…っ」

 

しまった、守護者統括サマを泣かせてしまった。

タブラさんにぶっ転がされるな、こりゃ。

オレは慰めるようにアルベドの肩をポンポンと叩いた。

昂まった気持ちを表すかのように、黒い翼がぴょこぴょこと跳ねるのが可愛らしくも美しい。

是非撫でてみたい。撫でて触覚があるのか調べてみたい。

羽の一本一本を手入れしたい。マッサージしたい。

 

書き換える前のアルベドに聞くと別の回答が帰ってきそうだが、言っても仕方のない事か。

どうやら失望しているような様子はないし良かったというべきか。

 

 

 

アルベドとの会話も1段落した頃、眷属から知らせが入った。

知覚共有をしてみると、ハゲの頭越しにとあるモンスターが見えた。

 

「…モモンガさん。どうやら、例の男がスケリトルドラゴンを召喚したみたいだ。」

「スケリトルドラゴンですか。その程度なら全然問題はありませんね。」

 

スケリトルドラゴン。

第六位階以下の魔法を無効化する、ユグドラシルにも存在していたアンデットモンスターだ。

 

「じゃ、オレはあのモンスターを倒してくる。モモンガさんの話はその後でも大丈夫か?」

「はい、今はそっちに集中してください。できるだけ派手にやっちゃってくださいね。」

「任せろ。」

 

オレは親指を立ててから指輪を使い転移を行う。

向かうはルプーのいる部屋だ。あいつも連れて行かなきゃな。

 

「いってらっしゃいませ。」

 

オレが転移で消えた場所へと、アルベドが深く深くお辞儀をしていた。

 

 

 




九尾さま。サリエリキキさま。志島かなとさま。ryo505さま。岸辺正雀さま。
評価のほど、本当にありがとうございます。
特に他作品にもご支援いただいているエリキキ様には多大なる感謝を…

エンリちゃんとスローライフする話とか読みたい。
何でないんですか?私が書けってことですか???
エンリメインのお話があればおススメください。


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-第9話ㅤ漆黒の剣士
32話


 

 

 

エ・ランテルの冒険者組合。

そこではとある2人組の冒険者の話題で持ちきりだった。

 

かのラナー王女にも引けを取らない程に美しい、ルプスという神官(クレリック)

そんなルプスの隣に並ぶに相応しい、見たものを惹きつける端正な顔立ちの戦士、ブラッド。

数日前にエ・ランテルへ来たばかりで情報が少ないながら、様々な噂が飛び交っていた。

その見た目から、まるで御伽噺から出て来たのではないかと例える者すらいたくらいだ。

そんなただでさえ目立つ2人が、更に話題を持って帰ってきた。

 

「お前見たか?あの魔獣の姿。」

「見た見た!かなりデカかったな。」

「でかいだけじゃねえ。ありゃかなりの強さだろうよ。」

 

バレアレの息子の指名依頼を受けていたのは、両者が有名であるが故に多くの人間が知る事だった。

帰還した際には噂の人物を一目見ようと押しかけた者たちが見たのは、叡智に溢れた大きな魔獣。

しかもその魔獣はトブの大深林に住まう「森の賢王」だというのだ。

2人が去った後、その事を話題にしない者はいなかった。

 

「あの2人、一体何者なんだろうな。」

「あんな美人見た事ねえぜ。」

「男の方も負けてなかったな。」

「俺は他国の王族と言われても信じるぞ。」

「その上実力もあるたぁ、神様ってのは意地悪だねえ。」

「あんな魔獣を下しちまうくらいだ。また何か大きな偉業を成すのは間違いないだろうよ。」

 

冒険者組合がまるで酒場のような喧騒に包まれた頃。

賑やかな雰囲気は、1人の飛び込んできた兵士によって壊された。

 

「スケリトルドラゴンだ!!墓地の方からスケリトルドラゴンが来てるぞ!!」

 

 

 

ォォォォオオオオオ!!!

 

共同墓地から現れた、巨大な龍の形をした人骨の塊。

スケリトルドラゴンと呼ばれる強力なアンデットモンスター。

ミスリル級以上の実力がなければ相手取るのは難しい相手だ。

更には魔法への絶対耐性を持っているため、魔法職とは相性最悪の敵。

 

「命が惜しいものは下がれ!!」

 

相対するは、銅級(カッパー)のプレートを下げた冒険者、ブラッド。

数日前に冒険者登録をしたばかりのはずが、エ・ランテルでかなりの噂になっている人物だった。

 

「戦える自信のない者や魔法詠唱者は住民の避難を手伝ってやれ!戦える奴は手を貸してくれ!ここで食い止めるぞ!」

 

冒険者組合に連絡が入った頃には、スケリトルドラゴンは既に門を越え、街中へと侵入していた。

それもそのはず、スケリトルドラゴンは空を飛ぶことができるのだ。

 

「俺は残るぞ!(ゴールド)の維持を見せてやる!」

「おいアンデット!こっちへ来い!俺たちが相手だ!」

「住民たちはやらせない!」

 

殆どの者が背を向けて走る中、十数人が残った。

スケリトルドラゴンは強力なモンスターの中でも、ミスリルの冒険者でも相手取る事の出来る比較的倒しやすいモンスターだ。

とは言え、魔法への完全耐性を持つ特性は厄介極まりない。

 

ルルルゥゥゥゥウウ…

 

スケリトルドラゴンは、足元で叫ぶ小さな人間に目をつけた。

その4つの目で男に狙いを定めると、片足を振り上げた。

 

「避けろ!」

 

誰が叫んだのか、スケリトルドラゴンの標的になっているブラッドを心配しての言だった。

しかしブラッドは、虫を踏み潰さんと振り下ろされた巨大な足を漆黒の魔剣で受け止めようとしていた。

スケリトルドラゴンと剣とが衝突する瞬間、誰もが彼が吹き飛ばされる情景を想像した。

が、その想像は裏切られることとなった。ブラッドは、しっかりとその足を受け止めていたのだ。

 

「何!?」

「馬鹿な!?」

 

スケリトルドラゴンは3、4メートルほどの大きな体をしている。

尻尾も合わせれば全長5メートルは超えるだろう。

そんな巨体を剣一本で支えているのだ。並大抵の身体能力ではない。

 

「私の事も忘れないで欲しいっすよ!」

 

そこに現れたのは話題のもう1人の冒険者。ルプスだ。

まともな聖職者は使わないであろういかつい殴打武器をぶん回し、体を支えていた反対側の足を撥ね飛ばす。

足を形成していた人骨がバラバラと飛び散り、殴打した部分が破壊された。

スケリトルドラゴンは体勢を大きく崩し、そのタイミングでブラッドも剣を振り抜く。

小気味良い音と共に、スケリトルドラゴンの前足が呆気なく切り離された。

 

「嘘だろ…」

「スケリトルドラゴンをこうも簡単に沈めるのかよ…」

「こりゃオリハルコン以上の実力だぜ。」

 

残った冒険者たちも、2人のその圧倒的な実力に呆気にとられてしまった。

まだ戦いは終わっていないが、この2人がいたら負けるはずがない。

そんな確信が生まれ始めたのだ。

 

「何だ、この程度か。心配して損したぜ。」

 

ブラッドが魔剣を振るうと、人骨が吹き飛び、骸流が下がる。

他の冒険者たちは自分たちの出番はないと悟った。

決着はもうすぐだろう。

 

負の光線(レイ・オブ・ネガティブエナジー)!」

 

負のエネルギーを受けたスケリトルドラゴンが、受けた傷を回復させた。

そこにいた者は思ってもみない状況に驚愕した。このドラゴンが何者かに使役されていると悟ったからだ。

スケリトルドラゴンを操る程の魔法詠唱者(マジックキャスター)だ。こちらもかなりの実力があると予測できる。

冒険者たちは腕の経つ仲間の魔法詠唱者(マジックキャスター)達を住民の非難に向かわせたことを後悔した。

 

「強力な冒険者がいない日を狙ったというのに、まだ貴様のような冒険者がまだこの街にいたとはな。」

 

嗄れた声を出しながら、フードを被った男が現れた。

この男がスケリトルドラゴンを使役していたと見て間違いないだろう。

 

「お前がこのモンスターを街へ仕向けたのか?」

「如何にもそうだが?」

「何故このようなことをする。」

「フン。お主等に言ってもわかるまい。」

 

襲撃者の男は、一貫して完全にブラッドを見下したような態度を取った。

その横で、ルプスがこれでもかと言った風に殺気を撒き散らす。

 

鎧強化(リーンフォース・アーマー)下級筋力増大(レッサー・ストレングス)下級敏捷力増大(レッサー・デクスタリティ)死者の炎(アンデッド・フレイム)盾壁(シールド・ウォール)!」

 

それによってかよらずか、男は一度に様々な支援魔術が重ねがけた。

次々にスケリトルドラゴンの体が光り輝く。

 

「お主等は少し強いようだからな。これで力の差を埋めさせてもらったよ。」

「それはどうかな?強化魔法程度で埋まる差じゃないと思うんだがな。」

「生意気な口を…死の宝珠よ!!」

 

男が、なにやら手に持っていたどす黒いオーラを纏う宝珠を天に向かって捧げた。

瞬間、宝珠が闇のオーラを深め、召喚魔法を行使させた。

 

───ォォォオオオゥウ!!

 

墓地の方から遠吠えが聞こえる。

そこにいる者達には、それが何によるものなのかすぐに理解った。

墓地の方から2体目のスケリトルドラゴンが飛来してきた。

家屋を押し潰し、男を守るようにして舞い降りる。

 

「如何に優秀な戦士でも、2匹を相手取るのは厳しかろう。」

 

男は愉快そうに同じように強化魔法を唱え、2匹目のスケリトルドラゴンの強化も終わらせた。

その間、ブラッドとルプスは強化が終わるのを黙って見ていた。

 

「攻撃して来ぬとは、怖気ずいたか。」

「…それで終わりか?」

「何?」

「下がっていろ、ルプー。格の違いを思い知らせてやる。」

「後は任せたっすよ、ブラッド。」

「戯言を!行け!スケリトルドラゴン!」

 

ニコニコと戦線から下がるルプスに、男が雄叫びをあげる。

指示に従った2匹のスケリトルドラゴンがブラッドへと同時に迫る。

そして、まるで鏡写しのように先ほどと同じく前足で踏み潰した。

 

「おお!」

 

…かのように見えたが、ブラッドは剣を収め、両手で1匹ずつのスケリトルドラゴンの足を支えていた。

それだけで、スケリトルドラゴンは足を動かすことができなくなってしまった。

 

「何だと!?」

「やはり、この程度か。」

「お、お主は何者だ!その肉体能力は何だ!武技を使っているのか!?」

 

ブラッドは、それぞれのスケリトルドラゴンの足を己の身体能力だけで押し返した。

スケリトルドラゴンは面白いように蹌踉めき、背後へと後ずさる。

 

「さて。そろそろお前の演説にも飽き飽きしてきたところだ。この魔剣の力を以ってして、そのスケリトルドラゴンを葬り去ってやろう。…いや、アンデットに葬るは不適切だったかな?」

「こ、こんな短時間で、儂の夢が…有り得ん!有り得るかぁ!」

 

再び魔剣を手に取り、体を横に逸らして上段へ構える。

隙の多い構え方だったが、それを見たローブの男は何やら不気味なものを感じとった。

なにか大きな攻撃が飛んでくるのではないのかという予感だ。

 

「スケリトルドラゴン!あの者を殺せ!」

 

スケリトルドラゴンへの命令より早く、ブラッドは魔剣を振り下ろした。

魔剣を振り抜くと同時。白く、神々しい光がエ・ランテルの天に延びた。

その光の中心にいた片方のスケリトルドラゴンが、中心から真っ二つに切断される。

 

「何だ!何なのだその武器は!」

「今回は2連撃の大サービスだ。食らえ。」

 

振り下ろした魔剣をそのまま振り上げるようにして斬撃を放つ。

白い大きな光と共に、魔剣は男を巻き込んで、斜めからもう一匹のスケリトルドラゴンの体を斬り裂いた。

 

閃光流星(フォトン・ミーティア)

 

2匹の骸龍と1人の男を巻き込んだ天に昇る2つの白い柱は、ゆっくりと消え始めていた。

 

 

 




仮想敵Aさま。生死郎さま。
評価のほどありがとうございます!


こんな所詳しく書くんじゃなかった…
次から不要なシーンはニグン戦みたいに3行で簡潔にまとめる。

※ミスリルをゴールドに変更しました。
ミスリルだとスケリトルドラゴンを倒せるみたいですね…


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33話

 

 

 

エ・ランテルを襲撃したスケリトルドラゴンを討伐し、ウキウキ気分で宿屋を決めてナザリックへと帰還したオレとルプー。

直後に、モモンガさんからシャルティアが何者かに精神支配をかけられているという事を聞かされた。

本来、不死者(アンデット)は様々な状態異常にはかからない。シャルティアが精神支配など受けるはずない。

モモンガさんはこの世界特有の能力である「タレント」に、アンデットにもかけられる精神支配があったのかもしれないと推測していた。

 

ギルドのNPC欄でシャルティアのネームが赤く変化していた事を確認したモモンガギルド長はナザリックの警戒度を最大レベルまで引き上げた。

そしてカルネ村で在中の警護及びナザリックとの橋渡しをしていたマリー、

聖王国付近で見つけた動物に目をつけ何やら動いていたデミウルゴスの2人をナザリックへと呼び戻していた。

セバス・ソリュシャン組は、精神支配を行った何者かに対する()()()としてそのまま任務を続行していた。

囮とはいえ食いつかせる気はなく、獲物がかかる前に引き上げその犯人を割り出すつもりのようだ。

 

翌日、モモンガさんは超位魔法…つまり、第十位魔法を超える魔法を課金アイテムを使ってまで使用し、シャルティアの状態異常解除を試みたがこれを失敗。

超位魔法ですら解除できなかった事から、この現象が世界級(ワールドアイテム)によって引き起こされたのだと断定。

モモンガさんはオレやNPC達の抗議を聞かず、単身相性の悪いシャルティアへと戦いを挑んだ。

激闘の末、精神支配を受けたシャルティアを一度殺し、ナザリックに貯蔵してある(と言ってもモモンガさんが1人で貯めたであろう)ユグドラシル内通貨で蘇生させ状態異常をリセットさせた。

この世界の法則がユグドラシルでの仕様と違う可能性は十分にあったが、どうやら蘇生した時状態変化が初期状態に戻るのはこちらの世界でも同じだったようだ。

 

オレは息を吐いてずっと浮き足立っていた心を落ち着かせた。

そして、一息つくためにとナザリック内部の自室へと向かった。

 

 

 

部屋に入ると、熟した雌の匂いがムワっと鼻につく。

熟れた果実より甘く、男を誘うフェロモンのようだ。

むせ返るようなあまりの匂いに、たまらずオレは鼻に手をやった。

 

「これは…何だ?」

 

ズボンの下から、素直な事が取り柄の愚息がぐぐぐっと迫り上がる。

同時に、喉が乾いてくる。この感じは覚えがある。血を渇望しているんだ。

最近では慣れてきた上にエンリで定期的にガス抜きをしているからか、扇情的な女を見ても簡単に吸血衝動を抑えることが出来ていた。

こんなに興奮させられたのは本当に久しぶりだ。

 

「やっと来たかこのっ!離しやがれ!!」

 

ベッドの上に、ロープのようなもので縛られ、芋虫のようにうぞうぞのたうち回る裸の女がいた。

ムラっと誘われる雌の匂いをさせた女が、裸で縛られている。まさにまな板の鯉。

オレは脳で考える前に脊髄反射で女の体に貪りつく。

 

「っ!?な、何だよ…?」

 

───前に、咄嗟に踏み止まった。

この女…クレマンティーヌは、拷問にかけることを快楽として感じているような人間だ。

そんな女の記憶を啜ってしまって大丈夫なものか。

それ以前に、オレの仲間を傷つけたこんな女の血を吸うのはオレのプライドが許さない。

 

「この…アンデッドがっ!いつまで!」

「悪い悪い。ちょっと立て込んでてお前のことをすっかり忘れていたよ。」

「なっ…」

 

噛み付く前に首元へ伸ばした手を、喉に添えて少し圧迫する。

激しく吸血衝動に誘われるが、冷静を装ってクレマンティーヌの体を見下ろした。

 

「何日も忘れてた野郎が今更来て何の冗談?私の体に発情でもした?」

 

強い口調だが少し震えている。虚勢か?

セックスを怖がっているようにも思えないが。

それに、何日も開けた覚えはない。あれから長くとも24時間といったところだ。

悪夢(ドリーム・デーモン)が何かしたのだろうか。

 

「そうだな。確かに魅力的な体だ。」

 

溢れ出る欲望を抑えきれず、肌をつう、と撫でる。

回復魔法のある世界だから珍しくもないが、傷ひとつない綺麗な肢体だ。

痩せ型の癖して胸はしっかりと乗っている。

巨乳というほどはないが、ウエストが細い分バランスが良く引き立って見える。

 

その下には鼠蹊部が左右から女性的な美しいラインを描いている。

そして年の割に少し薄めな、髪と同じ金色の毛の茂み。

奥にはじっとりと愛液まみれのおまんこがダラダラとヨダレを垂らしていた。

おまんこから汁がベッドのシーツにダラダラと流れ落ち、じんわりと大きなシミを作っている。

この惨状は一体…

 

興奮しているせいか、前回は全く目にも入らなかったクレマンティーヌの裸体から目が離せない。

組み敷いて雌を自覚させながら屈服させたい。

ぷよんと重力に従い潰れている胸を揉みしだいて吸い付きたい。

その濡れそぼった肉壺へ怒張を突き入れ嘶かせたい。

痛いくらいに頑なったモノが、下腹部でイライラしている。

この女を征服しろと叫んでいる。貫けと唆してくる。

 

「アンタも所詮男って事だよね。ほら、好きなように犯せば?縛っておかなきゃ怖くてセックスもできない小男が。」

 

冷静に見せるため焦らすように触っていたのが災いしたのか。

クレマンティーヌの声ももう耳にも入ってこない。

どれだけ濡れているのか確認しようと、親指で半開きになっている膣口を広げてみる。

そのぷっくりと膨れた膣肉は柔らかく、むにいっと左右へ広がった。

そして、悶々とするような甘ったるい性臭とともに、どろりと透明な液が奥の方から流れ落ちてきた。

 

ぞくり。

 

匂いの元を直接嗅いだせいか、体中の毛が逆立つ。思わず生唾を飲み込んだ。

クレマンティーヌの膣奥から流れ落ちた愛液は、秘裂を流れ落ち肛門へ流れ、更にシーツへと伝わりシミをほんの少し広げた。

愛液を一日中垂れ流して、来るはずもない男を待っている。

ここへ挿入りたいと主張している竿を突き入れたら、どんなにか。

 

エンリの元へ、と一瞬思った思考は何処へやら。

この生意気な女に一泡吹かせてやろうと全身が訴えている。

いっそ暴力的なまでに湧き上がる性欲が、震えながらも弱音を吐けないこの女を分からせてやれと煽る。

 

 

 




ISUKAさま。ドスメラルーさま。アルト&シェリルさま。普通のニートさま。PACCBETさま。
高評価ありがとうございました!!


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唾棄
34話


 

 

 

オレはクレマンティーヌの顎を押さえつけて上を向かせる。

その間にズボンを脱ぎ捨てる。

信じられないほど硬くなり、今にも爆発しそうなほどだ。

 

ぐじゅ…

 

クレマンティーヌの肉壺は何故か分からないがぐちゅぐちゅにほぐれている。

愛液でシーツに漏らしたような大きなシミを作るくらいだ。前戯をしてやる必要はなさそうだ。

というより、この女に前戯なんて必要ない。今からする行為は愛のある子作りでないのだ。

 

「…っ!くふ…っ…」

 

ぐぷぷぷ。

 

膣口へ添えただけで、潤滑油となった愛液のおかげでぬるぬると一気に滑り込んだ。

膣内(ナカ)はとても暖かく、じっとりと濡れていて極上のステーキのようだ。

エンリで感じた、引きちぎるとも押し出すとも感じられた抵抗が全くない。

 

オレの暴れまわる剛直を、その身で全て受け入れた。

とろけるように柔い膣肉が、ふんわりと肉棒を包み込む。

 

ピストン運動をするために支えにするクレマンティーヌの腕を持つと鳥肌が立っていた。

膣がきゅうう、と緊張し、腹筋がヒクヒクと痙攣している。

しかしそんなところに注意を払う余裕はなく、見つけた収納ケースの感触を丹念に確認する。

 

「どう?化け物さん。洋梨で散々広げられたおまんこの味は。」

「…」

 

洋梨とは、と少し考え、とある拷問器具を思い浮かべる。

この女、どんな人生を歩んできたんだ。傷は回復魔法かポーションかで癒したのだろうか。

吸血を躊躇って良かったと少し薄ら寒さを覚えながらも、膣肉の柔らかさはもしかしたらそれ由来なのかもと思う。

この柔らかさは、最近まで男を知らなかったエンリでは有り得ない感触だ。

…いや。何かとエンリと比べるのも良くないな。

 

「良いじゃないか。柔らかくほぐしてもらえたか?」

 

ただ差し入れただけなのに、大量のひだが絡みつき、そそりあっがった筋をなぞる。

まるで、幾多もの指で嬲られているような感触。

今すぐにでもぶちまけてしまいたい。吐き出したい。

…と、正直に答えるわけにもいかず無難に言い返した。

 

「その後熱々にされて焼き切られたんだよね。柔らかいステーキみたいに、じゅうじゅうね。」

 

ニヤニヤとチェシャ猫のように笑いながら、さっきから嫌な想像をさせてくる。

わざと萎えさせようとしているのか?

生憎、雌臭をプンプンと漂わせたままでは効果はないだろう。

そうでなくても、ここまで煽られたお陰か萎れるようなことはない。

 

仲間を殺されて腹が立つ。

濃い雌の匂いで誘われて腹が立つ。

こんな女でも、気持ちよくて腹が立つ。

 

柔らかい代わり、締め付けはあまり良くない。

さらなる快感を求めるには、こちらが動くしかない。

オレは腰を(もた)げ、思い切り奥を突く。

 

ぐちゅっ!ぐちゅっ!ぐちゅぶっ!ちゅぶぶっ!

 

男を迎えたおまんこが悦び、これまで以上に愛液を流れ落とす。

その愛液が膣内で奥でひだと肉棒によりかき回され、結合部で激しく音を鳴らした。

 

ぐちっ!ぐじゅずっ!ぐぽっ!ぐぷぽっ!

 

怒りを叩きつけるように、乱暴に腰を振り下ろす。

相手の事を何も考えていない独りよがりのセックス。

 

「…っくっ!…っ!…っぁ!」

 

クレマンティーヌは血が出るほどに歯を噛み締め、声を堪えている。

あながち独りよがりではないのかもしれない。

最初からずぶ濡れで期待しまくりだったもんな。

 

ずちゃぁっ!

 

腰を突き上げると、肉棒がひだをかき分けて押し拡げる。

クレマンティーヌの体が少し跳ね、膣壁がキュッと締まって肉棒を抱きしめる。

膣内が圧迫され、激しいピストンにより泡立った愛液が体外へと押し出された。

 

ぐぷぷっ…

 

腰を引くと空気の圧力で肉棒へ吸い付いた膣肉が持ち上がる。

カリがひだを引っ掻いて逆撫でし、激しく快感を煽る。

 

ひだひだが多い。あまりにも多い。

ぐずぐずに濡れそぼった、ミミズのようにうねり回る膣壁。

溜まった肉棒を掃除するように、膣壁が肉棒を優しく撫で回す。

変幻自在に形を変えるおまんこはオレの形に吸い付いてくる。

敏感な裏筋やカリ首の奥まで余すことなく汚れをこそぎ落とす。

もう限界だ。半強制的に煽られた情欲は、諸悪の根源たるクレマンティーヌへ激しくぶちまけられた。

 

ぶっぴゅるるるっ!びゅるるっ!びゅくるるるっ!

 

子供が出来る事を全く考えてもいない無責任膣内射精。快楽だけを求めた末の暴挙。

使い捨てオナホへと精を吐き出すように、クレマンティーヌへ種付ける。

なんて気持ち良いんだ。

 

強く、いっそ痛いほどに抱きしめたクレマンティーヌが腕の中でもがく。

逃がさない。子宮の中へ、すべて押し込んでやる。

どくんどくんと痙攣しながら内に溜まった欲望を吐き出し続けた。

 

ようやく精を吐き出すのをやめたオレの愚息。

刺激が少ないようにゆっくりと引き抜いた。

 

ずにゅにゅ…

 

オレの肉棒を離さない柔らかなまん肉が肉棒を頂点に山のように持ち上がる。

亀頭が抜かれ、栓のなくなったおまんこから泡立つ愛液とともにどろりと白濁の精が溢れ落ちる。

 

ごぽっ…

 

オレの形に広げられたままの膣穴がぽっかりと広がっている。

あれだけ濃かった雌の匂いは、オレの雄の匂いと混ざり合い目立たなくなっていた。

 

一旦抜いたことにより、少し気分が落ち着いてきた。

…まったく。こんな自分が嫌になる。

オレはあの時から全く変わってねえな。特に今のは完全にレイプだし。

相手が犯罪者とは言え、何をやっても良いわけではない。

 

しかし、毒を食らわば皿までとも言う。

ねっとりとおまんこ汁に汚れた肉棒。

それをクレマンティーヌの口元へと持っていく。

一度吐き出したにも関わらず、全く硬度が失われていない。

 

「お前の出した汁だ。舐め取れ。」

「…」

 

特に脅すこともなかったが、クレマンティーヌは従った。

快楽に屈服したわけではないだろう。

どういう意図なのか、何を恐れてかは分からない。だが、従順なのは良いことだ。

噛み切ろうと歯を立ててはいるが、防御力を抜けずむしろ良い刺激になっている。

 

「舌を使って舐め取れ。」

 

噛み切るのは無理と悟ったか、クレマンティーヌは喉奥まで突っ込まれえずきながらお掃除フェラに準じた。

チロチロと生暖かく小さな下がうぞうぞと這い回る。

緩やかな快楽と共に興奮していた頭が冴え、完全に冷静さを取り戻した。

この興奮は何かのスキルによるものなのか、それともオレ自身の願望によるものなのかはっきりわからない。

未だ治らない吸血衝動も問題だ。誘われるままクレマンティーヌへかぶりつくわけにはいかないしな。

 

 

 



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35話

 

 

 

それにしても、吸血鬼という種族にも困ったものだ。

元来吸血鬼は人間や家畜を襲うものだ。

伝承では、美しい女を狙ったり子供を孕ませることもある。

それが所以か、こちらの世界に来てから性欲が異常だ。

 

吐き出したことにより一度興奮は収まった。

が、敏感な部分を舐る舌に、肉棒が口内で頭を擡げる。

お掃除フェラで済ますだけのはずが、もう一度吐き出さなければ収まりがつかない。

 

がぽっ!ぐぽっ!ぐぷっ!ぐぷぷっ!

 

血を吸えないストレスを、口の中に全てぶつける。

喉の奥の奥。咽喉へ亀頭を擦り付ける。

 

ぐぶっ!ぐぽぽっ!がぼぉっ!

 

やってしまったものは仕方がない。

もう一度だけ、もう一度だけこの体を借りよう。

 

どぴゅるるっ!びゅるるるっ!ぶぷぷっ!ぶぷ…っ!

 

口いっぱいに吐き出された精液を、溢れないように口に貯める。

どくどくと吐き出している最中にもピストンを続け喉奥を押し上げる。

 

ごぱぁっ…

 

喉奥まで挿入れられて、口に入りきらなかった精液を嘔吐した。

シーツがベトベトに濡れてしまうが今更だ。

 

「何出してるんだ。しっかり飲め。」

 

オレはクレマンティーヌの頭を引っ掴み、吐き出した精子へと押し付けた。

絶望のオーラを出しても良いが、あのスキルに頼りすぎるのも良くない。

力でグリグリと押さえつけ、全て舐め取るまで続けた。

しばらくして、シーツの上の白濁液をチロチロと舐め始める。

 

「偉いぞ。ご褒美をあげないとな。」

 

膣口へ指を乱暴に突っ込み、ぐちゅぐちゅと中に残っている精を掻き出す。

ほとんど流れ出てしまったが、残った少量が愛液と共に溢れ出てくる。

それを指に掬い、糸を引かせながら持ち上げクレマンティーヌの口へと差し入れる。

これで精液と愛液と唾液を絡ませたミックスジュースの完成だ。

 

「お前の飯はこれだけだ。しっかり飲まないとな。」

 

クレマンティーヌの舌にぬすぐりつける。

不服そうにしながらも、特に抵抗する様子は見せない。

 

しかしクレマンティーヌの事は完全に忘れてたな…

シャルティアが乗っ取られた事で大騒ぎしていたからすっかりと頭から抜けていた。

 

それに、オレはこのエ・ランテルで冒険者をやっている間は宿屋で寝泊まりしている。

ナザリック内の自分の部屋に帰ってくることはなく、よって思い出すこともなかった。

冒険者組合から何か連絡がある場合、オレが借りている宿屋に来るだろう。

その部屋にオレがいないのはおかしい。

 

予想通り、冒険者組合からブラッドへシャルティアの討伐の依頼が来たしな。

共同墓地の一件でミスリルにまで上がったオレとルプーに声をかけるのは自明の理。

これはエ・ランテルに在中している冒険者の中でも数人しかいない希少なランクだからな。

 

シャルティアが帰ってきたら洗脳ないしは調教の仕方を教わろうと思っていたが、こんな状況だしな。

今は、他のNPCにお説教を受けて落ち込んでいるであろうシャルティアには容易に触れられない。

落ち着くのを待つのがベターだろう。

 

…そういえば、悪夢(ドリームデーモン)には、自分に一番効果のある調教をされている夢を見せろと命令していたんだったな。

クレマンティーヌはどんな夢を見ていたんだろうか。

オレは前回同様人間種魅了(チャームパーソン)を使った。

 

ナザリック(ここ)へ来て何をされた?全て話してみろ。」

「なんでアンタがそんなこと聞くの?まあ良いけど…恐怖心を大きくするスキル?のようなものを使って吐かされて。私のスティレットを針金みたいにぐにゃぐにゃに曲げてくれちゃったよね。オリハルコンでコーティングしてある魔法武具を片手で捻り潰すの見せられたら、わざわざ敵対しようとは思わないわ。」

「それにしては随分好戦的じゃないか。」

「アンタなら私の性格知ってるでしょ?誰に対しても弱み見せる訳ないって事。」

「じゃあ今までの態度は全部虚勢なのか?」

「当たり前でしょ。私が勝てる訳ないし。第一に届くか届かないか…私の見立てでは、力は互角でも戦闘能力は第一席次の方が上だよ。私の攻撃が当たるくらいだし。でもあのスキルと回復力も含めるとわからなくなってくるね。」

 

いよいよわからない話が出てきた。

第一席次とは?クレマンティーヌが所属していたという、漆黒聖典の順位付けのようなものか?

件の男、戦士長ガゼフストロノーフとの邂逅で水を差してきた陽光聖典にはそんなものはなかったと思うが。

まあ、掘り下げて長い話を聞くようなことでもないだろう。

気になればもう一度スキルで聞き出せば良いだけだ。

 

「話が逸れてるな。」

「ああ、ゴメンゴメン。えーっとその後は…媚薬で身体中敏感にされたまま3日くらい放置させられて…お陰でまんこがびっしょぬれだよ、どうしてくれんの?気がついたら縛られてるし。それからアンタに思いっきり犯されたくらい?私の吐いた精液舐めさせられたっけ。気持ちよかったけど軽イキしかしてないから、もうちょっとシて欲しいんだけどさあ…もう1回戦やらない?」

「…そうか、ありがとう。悪夢(ドリームデーモン)。」

 

オレはスキルの効果が残っている状態のまま、悪夢を発動させた。

先程までペラペラと喋っていたクレマンティーヌは、突如眠りこけた。

もう一度夢の中で調教されてもらうことにしよう。

 

というか、性欲は発散できたものの吸血衝動は治らない。

吐精したおかげで我慢できないとまではいかないが、血を吸いたくて仕方がない。

 

転移門(ゲート)。」

 

 

 



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扉の向こうでは…
第36話ㅤ今日のぷれあです②


 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

 

(きるゆー様の反応が消えた…転移門を行使されたみたい…)

 

ルプスレギナは荒い息をしながら、扉へともたれかかった。

 

ルプスレギナは人狼(ワーウルフ)だ。

その特性から、感覚が鋭敏で、耳や鼻からいやでもいろいろな情報が入ってくる。

離れていなければ、扉越しですら音や匂いを感知することができる。

 

熱い吐息が漏れる。

こんなの、身体がどうしても火照ってしまうに決まっている。

 

(ユリ姉だって、ソーちゃんだって、あの澄ましたナーちゃんだってこうなるはず。)

 

あのよく遊んでもらっているエントマですら、いや、だからこそ泣いて羨ましがったきるゆー様の側仕え。

きるゆー様と間近で話した時、ルプーと愛称をつけられた時、その名で呼ばれた時。

天にも登るとはこういうことかと実感したルプスレギナだったが、今感じているこの感情の昂りはそれ以上のものだった。

 

「すぅぅぅぅううう……はぁ…すう…はぁ…すぅう…はあぁ…」

 

扉の向こうの更に奥。遠くに薄っすらとだが確かに感じる子種の匂い。

妙な女の匂いと混ざってはいるが、ルプスレギナには嗅ぎわけることができた。

いつの日か、カルネ村できるゆー様から感じた妙な匂い。

発情した雌の香りと共に栗の花のような匂いがしていた。

先程まで中の声すら聞いていたルプスレギナには今ならわかる。

あれは子種の匂いだったのだ。

 

こんなの不敬だ。あまりにも不敬すぎる。

 

「でも、これ…」

 

ルプスレギナは素早く周りを見渡し、探知系のスキルまで使用して辺りに人がいないことを確認する。

この階は御方々の自室が並んでいるため清掃のメイド以外で早々人がくるということはないが、完全に人がいないことを再度確認する。

大きくスリッドの入ったスカートを横にずらして、違和感のある股間の部分を確認する。

 

べちゃあ…

 

何度も見たことがある自分の秘所は、しかしルプスレギナが見たことがない程の惨状となっていた。

ショーツがぐちゅぐちゅに濡れそぼり、重みを増して肌に張り付いている。

そのショーツでさえ抑えきれなかった洪水が太ももに垂れ落ち、膝上まである長いソックスを濡らしている。

更には広げたスカートが裏地とクロッチ部分にねばっとした糸を引いた。

鼻が良いだけに感じる自分で感じる、自分の蒸れた匂いにクラクラときてしまう。

 

ルプスレギナは人狼故にそういう周期が来る。

だが、その発情期でもこんなことにはならない。

せいぜいが少し気持ちが昂り、頭の中で御方の子種が欲しいと想像して慰める程度でおさまる。

だが、今はどうだ。それと比べてあまりにも酷い。あまりにも発情している。

 

ルプスレギナは、本音を言うならば今すぐにでもどこか人のいない場所へ転移して自分を慰めてしまいたかった。

そんなことをして仕舞えば、恐らくはこれまでした事がない程に激しく、そして長い間悦んだ事だろう。

だが、今のルプスレギナはこの場所を離れるわけにはいかなかった。

 

何故なら。

 

この扉の先から、ほんの微かにだがきるゆー様の子種の匂いが漂ってきているからに他ならない。

それはルプスレギナにとっては拷問に近いとも言える所業だった。

今すぐにでもこの扉を開け放ち、その場所へと向かってしまいたい。

そんな本能が叫ぶ中、必死に理性を働かせて耐える。耐える。耐える。

この扉をあけて仕舞えば、もう我慢できるはずなどないことは自明の理。

主人の自室の扉を不在を承知で勝手に開けてしまうのは不敬中の不敬だ。

しかし主人の扉へもたれかかり盛るなどその時点で他の墳墓の住民が聞けば不敬の極みだが、そんな事にはたどり着いていない様子。

 

「はぁ…はぁ…っ…きるゆー…さまぁ…」

 

ルプスレギナは浅ましくヘコヘコ腰を振り始めた。

それは意図した行動ではなく、身体が本能のままに勝手に動いてしまっていた。

地面に這い蹲り少しでも隙間から匂いを嗅ごうとしないだけまだマシかもしれないが。

 

叶う事ならば、今すぐにでも涎を垂らし待ちぼうけているクレヴァスを掻き回したい。

それができたならば、これまで生きてきた中で一番幸せだろう。

だが、こんな場所でそんなことをする訳にはいかない。それは不敬だ。

せめて、せめて脳裏にこの匂いを刻みつけられるだけ刻みつけてから部屋に戻ろう。

 

きるゆー様に呼ばれる。きるゆー様に触れられる。きるゆー様に撫でられる。

手と手が触れ合い、腕を伝い、二の腕まで上がり、肩に回って、それから…

 

「っっ!!」

 

その瞬間、腰が、がっくんと飛び跳ねた。

思うように力が入らなくなり、その場に思わずへたり込んだ。

 

(今のは…まさか、想像しただけで…?)

 

暫く呆然として、気をやったのだと理解したのはそれから数秒してからだった。

触れてなどいないのに、きるゆー様に触れられることを想像しただけでこの有様だ。

自分の体はどうなってしまったのか、と足元から駆け上がる快感にルプスレギナは身震いした。

この状況。誰かに見られるわけにはいかない。しかし、足腰が言うことを聞かずもう立つのは無理だ。

もう少しこの場所にとどまっていたいのだが、部屋の前でへたり込んでいるところを見られでもしたら大変な罰を与えられてしまうやもしれない。

そう考えたルプスレギナは、きるゆーから承ったリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを発動させる。

一瞬の光学エフェクトの後、ルプスレギナはその場から姿を消していた。

 

 

 

ここなら、この部屋なら。誰にも咎められることなく秘事ができる。

ルプスレギナは転移後、一切の躊躇いなく蜜の溢れ出る秘壺へと指を突き入れ…

 

ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ♡ぐちゅちゅっ♡ぐちゅっ♡

 

「ッッッッッ〜〜〜〜〜⁉︎⁉︎⁈」

 

激しくかき回した。

もう彼女の頭の中には手加減や歯止めといった言葉は抜け落ちていた。

もはや鬼気迫るといった様子で自らの股を弄り回す。

 

くちゅっ♡ちゅこちゅこ♡ちゅこ♡ぐちっ♡ぐちゅぐちゅ♡

 

「ハッ♡ハッ♡ハッ♡ハッ♡あっ♡あぐぅっ♡あゔっ♡」

 

指を押し込み、折り曲げ、掻き回し。

思いつく限りの動きで内側の壁を刺激する。

ルプスレギナの淫口からは泡立って白濁した涎が止まらない。

水音をかき鳴らしながら、あまりにも恥ずかしいイキ顔を晒しながら発情した雌犬は情事に耽る。

 

 

 

彼女が落ち着いた頃には、部屋の中が辺り一面水浸しの状態となっていた。

壁にすらかかっているのは、穴から垂られ流しただけでは飽き足らず、何度か潮を吹いた所為だ。

なんども、何度も何度も絶頂して、意識を飛ばしかけ、それでもなお自らを攻め続けたルプスレギナ。

ようやく正気へと戻った彼女は、しかし未だ余韻に浸り正常な思考を取り戻せないでいた。

 

それにしても、きるゆー様のお情けを受けていたあの女。

クレマン…なんだかと言ったか。

妙な計画を立てて御方のお手を煩わせたことで多大なる迷惑をかけたこと、そしてきるゆー様の知人を殺すなどという不敬。

万死に値する。極刑に処すべきだ。

が、お優しいきるゆー様は命を助け、更には直々に調教を行っているという。

その上お情けまで受けておいて、何なのだ。あの女風情が。

私にはそんな空気にすら欠片もなったことがないと言うのに。

 

「きるゆーさま…」

 

汁に塗れた手を見つめ、ルプスレギナの切なく1言が響いた。

 

 

 




おっすおっすさん、真夏日さん、たままさん、猫飯喰らう者さん、ソルテさん。
高評価ありがとうございました!


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夜這い
37話


 

 

 

転移門が開いた先はカルネ村。オレが向かったのはエンリの家だ。

 

ニニャという手もあったのだが、オレはモモンガさんとアルベドに窘められ、漆黒の剣の面々をナザリックからエ・ランテルへと返していた。

配下にしてナザリック内で行動するよりは、情報収集役として冒険者を続けてもらった方が都合が良いという事だ。

ナザリックを漆黒の剣のホームにしてしまうと転移魔法が超高度なこの世界では移動の都合が悪いということもある。

それに加えて、チームを組む事もデメリットがあるらしく、パーティー云々の話は白紙へと戻された。

彼らは元いた宿屋へと泊まっているため、ニニャだけを呼び戻すのは抵抗がある。

と言うか、そんな事をしたら変な勘違いをされてしまいそうだ。

 

 

 

カルネ村は静かだった。

 

それも当たり前。カルネ村は遠郊の貧しい小さな集落だ。

ランプで光を灯して夜中を過ごすような非生産的な生活はできない。

見張り以外は早く寝て太陽と一緒に起きる健康的な暮らしをしている。

その見張りもオレが召喚させたゴブリンや、眠ることの出来ない種族であるマリーがしているため人間は誰も起きていない。

本来なら転移した瞬間に迎えに来ていたであろうそのマリーも、オレが探知阻害の指輪をつけているためオレの存在にすら気付くことはないだろう。

 

完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)

 

気が付く事はないだろうが、念には念を入れて家への侵入にも適している第9位魔法の隠蔽を行なった。

スキルを使った瞬間、オレの体は霧のように空気に溶けていく。

これはスキルの効果ではなく、オレ自身の特性によるものだ。

 

ユグドラシルでは何の意味も無かったキャラクターに紐付けされたフレーバーテキスト。

しかしそれはこちらの世界において大きな意味を持っていた。

 

例えば、オレは自らの設定欄に「吸血鬼なので不可視化系のスキルや魔法を使用した時には霧に変化する」と言う設定を書き込んでいた。

本来ならこれはオレが勝手に妄想を書いただけで、ユグドラシル内においてオレが霧に変わる事などゲームシステム的に出来なかった。

が、こちらの世界に来てから本当に霧になることが出来てしまっている。

 

フレーバーテキストに関しては設定厨だったタブラさんに感化されて色々と書いてはいたのだが、それをオレはこちらの世界に来てから未だ確認できずにいる。

何故なら、オレの書いたフレーバーテキストはパンドラの箱。

記憶と共にゴミ箱へと投げ捨てたい真っ黒な黒歴史なのだから。

 

…思い出しただけで鳥肌が立ってきた。この事を考えるのはもうやめよう。

そんな事より、今はエンリの血を吸うことが先決だ。

オレは空気に乗りながら扉の隙間をすり抜けて、家の中へと侵入を果たした。

 

2つのベッドを繋げた大きな寝床で、エンリ、オーマ、ネムの順に仲良く川の字で寝入っていた。

もしまだ起きているようなら驚かせてしまっては悪いと思い家の外に転移したのだが、杞憂だったようだ。

オレは霧化を解除してエンリの枕元へと立った。

 

つい先程まで相手をしていたクレマンティーヌと比べて、あまりにも素朴な少女。

クリクリとした大きな目は愛嬌があるが、全体的に垢抜けない田舎娘といった印象を受ける。

しかし、何故だろう。オレには顔の整ったゆるふわ系美人のクレマンティーヌよりも、これまで共だって行動してきた完璧に近い容姿をしたルプーよりも魅力的に映る。

 

「エンリ。起きているか。エンリ。」

 

ネム達を起こさないよう、小声で囁き尋ねる。が、やはり起きている様子はない。

オレはエンリの口に自らの唇を重ね、優しいキスを落とす。

オレがもしあの女とキスをしていたなら、こんな事はしなかっただろう。

綺麗なエンリに、()()()()を付けたくはない。

寝ているエンリの柔らかな唇に吸い付く。唇で咥えて優しく食む。

 

しばらくはむはむと唇の感触を楽しんでいたが、時期に我慢できなくなり舌を差し入れた。

唇を強引に押し退け、幼い口内へと侵入する。

しっとりと濡れた唇の裏側を味わい、舌で歯茎をなぞる。

しかし閉じた顎がそれ以上の侵入を許さなかった。

 

煩わしい。親指で顎を引かせて、強引に口を開かせる。

舌を吸い、絡み合わせ、内頬を無遠慮にベロベロ舐め回す。

つき立ての餅のように柔らかな頬肉を堪能して、口内へ吸い付く。

構内に分泌されている唾液を啜り、エンリの口をカラカラに乾かせた。

代わりに、舌から滲み出るオレの唾液をエンリの口内へと塗りたくる。

 

ここまでしてもエンリは目を覚まさない。

口内を蹂躙されるがまま、気持ちよさそうにスヤスヤ寝息を立てている。

ここまでされて気が付かないのか。オレは少し子供染みた苛立ちを覚えていた。

オレはエンリの舌を吸って自分の口内へと招き入れ、出来るだけ優しい力で噛み付いた。

 

「んっ…?んぅ…」

 

流石に痛みに気がついたのか、エンリは小さく身じろぎ、ゆっくりと目を開けた。

寝ぼけ眼で目をぱちくりしていたが、今の状況を察して大きく目を見開いた。

そして体を大きく動かし暴れ出そうとするエンリを止めて口を離す。

 

「きるゆー…さま…?」

「こんな深夜に悪いな。少し血を分けてもらいに来た。」

 

言うが早いか、オレは再びエンリの口へと吸い付く。

噛み切った舌から滲み出る血を啜る。エンリは

それどころか、オレに追いつこうと必死にオレの舌と動きを合わせ、擦り付け合う。

互いにキスの経験は乏しく、拙い。それでも飽くことなく口内で交尾を続けた。

 

口と口の間から小さな水音が漏れ出て、ひやりとする。

隣ではオーマガ、ネムが寝ているのだ。特にネムは絶対に起こすわけにはいかない。

だが、今更止められない。こんな美味い唾液や血液を目の前に辞めるなんて選択肢はない。

だから、出来るだけ口と口とを密着させて、音の出る隙間を無くす。

 

ちゅう、ちゅう…ちゅっ、ちゅっ…

 

それでも小さな音が静かな部屋に響いてしまう。

しかし、そんな些細な事は思考の何処へやら、2人は夢中で互いの口内を舐め合う。

 

 

 




Tentacle_nurseryさん。ISUKAさん。岸辺正雀さん。壁ワロタ(笑)さん。
高評価ありがとうございます!

エンリ可愛いが過ぎる…


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38話

 

 

 

オレはエンリの頭を持ち上げて無我夢中に唇に吸い付いた。

エンリは抵抗する事なく、オレの舌を受け入れて慰めるように舌を動かす。

寄り添うように舌を絡ませてくるエンリ。たまらなく愛おしい。

 

「ん…ちゅ…ちゅぷ…ぷ…ん…ぷぁ!…はぁ…はぁ…」

 

息を吸うことも忘れ、夢中で愛し合った。

息苦しくなり、それでも口を繋ぎ続け、限界寸前で口を離した。

エンリの口が名残惜しそうにオレの舌へと吸い付くが、その程度の力ではキスを続けることはできない。

口を離した瞬間、互いに荒い息を繰り返す。

 

オレはエンリの頭を手で持ち上げ上半身を起こさせた。

窓から入る薄い月明かりが、エンリの顔を照らす。

頬をうっすら蒸気させるエンリは珍しく髪を下ろしていた。

編んでいる髪も勿論素敵だが、髪を下ろしたエンリはまた別の可愛さがある。

 

「今日は髪を下ろしてるんだな。寝るときはいつもそうなのか?」

「えっと、はい。編んだままだと髪が痛むので…」

「綺麗だ。たまには、下ろした時のエンリも見たい。」

 

髪を梳くように頭を撫でながら、耳元に囁いた。

こんな事、こっちの世界に来る前は絶対に言えなかったな。

と言うか、言う相手すらいなかった訳だけど…

ゲーム内で設定したイケメンになって、更に自分に絶対に逆らえない相手にならやっと言える。

そんな度胸があれば、彼女とは言わなくても女友達くらい作れただろうし…

 

「そっ、そうでしょうか…」

「うん。」

 

ま、それも今はどうでもいい。

オレのエンリはこんなにも可愛い。もうそれだけで充分だ。

 

オレはもう一度唇をくっつけて、服の上から胸へと手を出した。

安価なごわごわとした服の感触の奥に、しっかりとした柔らかな質感を確かに感じた。

普段から胸の辺りが乳袋を作っているとは思っていたが、エンリの胸は意外に質量がある。

かと言って巨乳というわけでもない。

掴んでみるとオレの手にフィットするちょうど良い大きさのエンリっぱい。

普段は大人しい色が原因なのか服の上からはセクシーな感じは受けない。

触ってみるとこんなにも柔らかくいやらしいのに不思議なことだ。

 

「きるゆ…さま…」

「どうした?嫌だったか?」

「そんな事ありません。」

 

エンリが切なそうに声を漏らした。

隣の2人に配慮してボソボソと小声で声を交わす。

エンリの吐息交じりの囁き声が耳に心地良い。ずっと聞いていたいくらいだ。

エンリの声も聞きたいが、キスもしたい。どうにかして同時にできないものか。

 

「服、脱がしてください…直に触って欲しいです。」

「良いのか?気付かれたら言い訳できないぞ。」

「ネムはベッドの端っこです。大丈夫ですから…」

 

エンリはオレの肩に手を回し、おねだりをするように囁いた。

エンリの声を聞くだけで背中から快感がゾクゾクと走り抜けていく。

まるで耳が丸ごと犯されているみたいだ。

エンリの着ている寝巻きは上と下が一続きのワンピースのような作りをしている。

胸まで脱がそうと思えば脱がさないのは下の肌着だけとなってしまう。

というか、そこまで脱ぐと言う事はエンリは完全にその気でいるようだ。

オレも当初は血を吸わせてもらえればそれでいいと思っていたが、エンリと抱き合っているうちにそれだけでは満足できなくなってきてしまっている。

 

「腰、上げてくれ。」

 

エンリはベッドの上に座っているため、腰を浮かせて手を上げるだけで寝巻きはすっぽりと脱げた。

本来ならば服に隠されている肢体が、月光に照らされて浮かび上がる。

これまでエンリとは着衣のままフェラ、着衣のままセックスと色々な事をしてきたが、裸を見るのはこれが初めてだ。

後に残ったのはさらしのように緩く巻きつけるタイプの下着に、子供が履くような色気のないかぼちゃパンツ。

 

「綺麗だ…」

「っ…!」

 

だが、正直オレはクレマンティーヌが防具の下に着込んでいた布切れを見た時よりも興奮した。

自分の裸を人に、それも男には見られ慣れていないエンリが、元々赤かった顔をかああっと更に赤くする。

 

カルネ村には高級な下着を買うような余裕はない。

買うにしても行商人に頼んで取り寄せてもらわなければならない。

そんな事までしてエッチな下着を履かせたいかと言われたら、まあ…オレはYesな訳だが…

いつの日か、王都で流行りの下着を着てもらおう。

 

胸部のさらしを外すと、膨よかに育った双丘が現れた。

その真っ白なお山の頂には小さな乳頭が鎮座していた。

乳首が見えてしまうだけでこんなにエロいものなのか。こんなに興奮してしまうものなのか。

初めて見るエンリの生の乳房に、オレの目は釘付けになってしまっていた。

触られて敏感になったのか、頂上の桜色の突起は小さい自身を主張するかのようにぷっくりと膨らんでいる。

 

とても触ってみたい…押したら、摘んだら、舐めたらどうなってしまうのだろう。

エンリもそうだが、オレも異性の体というものには知識が乏しい。

探究心だけが先行して、すぐにでも無茶苦茶に犯し尽くしてしまいたくなる。

だが、焦ることはない。この可愛い村娘はもうオレのものなのだ。

まずはじっくりと身体の隅々まで観察しようじゃあないか。

 

こうして、エンリの体をじっくりと見たことはなかったが…

たかだか村娘にしては、とても綺麗な体をしていた。

肌も瑞々しく、撫でたり舐めてしまいたいくらいだ。

だが、エンリは自ら村のため、家のために働く良い子なのだ。

その証拠に手や足の皮は力仕事の影響か厚く、可哀想に潰れた豆もできてしまっている。

エンリが元々綺麗な身体だったのかもしれないが…もしかするとオレが渡したポーションを飲んだせいかもしれないな。

下級治癒薬(マイナー・ヒーリング・ポーション)は使用した者のHPを50回復する。

レベル1であろうエンリのHPは多くて20あれば良い方だ。

騎士に切られた傷を回復させ、余剰分で体にあった異常を全て取り除くくらいされていてもおかしくはない。

オレはどこかに傷やシミがないかくまなく探して見ることにした。

 

「もっとよく見せてくれ。」

「恥ずかしい…です…」

 

オレがじっと観察していると、恥ずかしくなったのか腕で体を隠そうとするエンリ。

そんな恥ずかしがり屋なエンリの腕を取り、キスを落とす。

そのまま強引にベッドへと押し倒して唇を貪った。

まるで先程までの焼き直し。

だが、今回は激しくキスをしながらも裸になってさらけ出された胸を触る。

傷つけてしまわないよう力を入れず、撫でるように揉みほぐす。

 

直でおっぱいを触ったのは初めてだ。手のひらに感動を感じる。

素晴らしい。素晴らしい。なんという感動、なんという感触。

すべすべした柔肌を押すとむにゅりと押し返してきて、まるで手に吸い付いているみたいだ。

マシュマロのようにもっちり柔らかく弾力がある。これは凄い。ずっと揉んでいたくなる…

 

「ん…ちゅ…ちゅぱ…ぷぁ…きるゆ…さま…はんむ…んむ…んちゅ…ちゅ…♡」

 

最初は胸を揉まれることに恥ずかしそうにしていたエンリも、次第に体をこちらへと預けてくるようになった。

オレを信頼してくれたのだろうか。エンリの一挙一動に、ドキドキと胸が高鳴る。

オレはそんなエンリの乳頭を優しく指で摘まみ上げた。

 

「っ!」

 

オレの腕の中で、エンリがびくっ!と小さく震えた。

口を口で塞いでいたので声は漏れてはいないが、痛かっただろうか。

少し様子を見ようとツンツン、クリクリと指の上で転がしてみる。

エンリは腕の中で悶えながら、口はオレの舌をちゅうちゅう吸ってきて嫌がっている様子はない。

オレはエンリの様子を見ながら、乳首をこれまで以上に優しく摘んでクリクリと弄ぶ。

ここだけ少し柔らかさが違う。グミのような弾力の強さだ。

 

「気持ち良い?」

「わかりません…でも、少しピリピリします…」

「それは嫌な感じ?」

「じゃ、ないです…」

 

オレはおっぱいを揉んでいてとても楽しいが、それはエンリが嫌な思いをしてまでしようとは思わない。

全力で揉みたいが、エンリが嫌というのなら鋼の精神で我慢しよう。

だが、嫌ではないのなら堪能し尽くすまでたくさん揉ませてもらおう。

 

 

 




岸辺正雀さま。松江陸さま。高評価ありがとうございます!
アークスさま。評価コメありがとうございます!
とても励みになります。


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39話

 

 

 

「お願いします…こっちも、触ってください…」

 

エンリは胸だけを弄られて、どうにも我慢ができなくなってしまったようだ。

それもそのはず、オレはエンリの胸に誘われるがままもう何十分とキスして揉んでを繰り返していた。

顔も完全に肩の力は抜けきり、とろんとした表情を見せている。

エンリはオレの手を取って、自らのかぼちゃへと誘う。

指に触れる、生暖かい感触。下着はぐっしょりと湿っていた。

 

「おっぱい触られて、こんなに期待してたのか?」

「そんなこと…」

「でも、こんなに濡れてる。」

 

くち…くち…

 

下着の上から股間の割れ目を擦っているだけなのに、水音が確かに聞こえる。

おまんこが、もっと欲しいと涎を垂らしている。エンリが興奮している証だ。

これ以上このかぼちゃの上から触っていたらびしゃびしゃになってしまうのも時間の問題だ。

オレはエンリを驚かせてしまわないよう、ゆっくりと手をかぼちゃの中へと差し入れる。

エンリは抵抗することなくオレの手を受け入れた。

引き締まった思わず頬ずりしたくなってしまうお腹から、鼠蹊部をなぞるように下へ、下へと降りていく。

そして本来他人が触れてはいけない部分へと到達する。

指先に、さわさわとした上品な穂先のような感触を覚えた。

本来であれば寄り道をして遊ぶ事も考えたが、今用事があるのはこの部分ではない。

オレは泣く泣くその草むらをすり抜け、更に下。女の子の一番大切な部分へと辿り着く。

 

一度は繋がった事があるとは言え、自分から触ってみるのは初めての淫丘。

まずはその感触に驚いた。プニプニとしていて、まるでおっぱいを触っているようなのだ。

これが恥丘か。なるほど、この名称をつけた人間は天才か。

まさに人類の始まりを感じるに相応しい部位。ダブルミーニングだったとでもいうのか。

 

オレは感動に打ち震えながら、柔らかな女の子の肢体を堪能する。

もっちりぷにぷに、じっとりすべすべ。押したり撫でたり摘んだり、好きなように弄り倒す。

これだけで至福だと言うのに、この中には更に穴があって、そこから体の内部へと挿入り込めるわけだ。

 

「女の子を悦ばせるのは初めてだからあまり上手くできないと思う。痛かったら言って欲しい。」

 

下着を履いたまま、エンリはオレの指の愛撫を受け入れた。

まずは驚かせてしまわないよう、秘裂の周りを撫でて液を広げる。

産毛のような薄い毛を手首に感じながら、焦らすようなスピードで撫でる。

そうしているうちに、奥の方から新しい涎が垂れ始める。

 

「中、挿入れて欲しい?」

 

何か言いたげな、それでも自分から言い出せないエンリに問いかける。

エンリは口では答えず、首を縦に振ることで応えた。

 

アダルティなビデオで見た事だけの薄い知識でどこまで戦えるか試してみようではないか。

まずは中指を、爪で引っ掻いてしまわないよう、慎重に突き入れる。

潤滑液ならエンリがいくらでも出してくれるためスムーズに挿入った。

つぷつぷと膣の壁いっぱいの()()を掻き分けて、奥の方へと進んでいく。

エンリの膣内(ナカ)はとても熱い。本当に吸血鬼なのかと疑ってしまうほどだ。

それに、やはりキツい。膣壁が指をぎゅうぎゅう押して今にも押し戻されそうだ。

指一本でいっぱいいっぱいのこんな狭さで、よくオレのモノが挿入ったものだ。

 

自らの内部に入っていく指に、エンリは怖いのか股間に這わせている反対側のオレの手を握ってきた。

いつも積極的で忘れてしまうが、エンリだってあまり経験がある訳ではないのだ。

エンリが怖くならないよう、しっかりと握り返してやる。

 

「こうしたら、怖くなくなる。口を開けてごらん。」

 

餌を待つ雛鳥のように、素直に口を小さく開けるエンリ。

オレはそんな可愛いエンリの口に自分の口を被せた。キスをするためだけではない。

オレは高い治癒力で既に塞がってしまっているエンリの舌の傷口をもう一度噛んで開く。

オレが噛み付いた瞬間に体を硬ばらせたが、その後は寧ろ血を吸って欲しいとばかりにエンリは舌を押し付けてくる。

オレに吸血をされていると一定の快感は覚えるようだが、今回はそれが目当てではない。

 

指の方は順調に進み、第二関節を超えてなお挿入り続ける。

エンリが奥からえっちなお汁を流してくれているおかげでやりやすいったらない。

そして同時に、エンリの記憶が流れ込み今のエンリの状態を正確に知る事が出来た。

これは吸血による記憶共有を永続して行うことで相手の今の身体の状況を隅々まで知ることのできる応用技。名前をつけるなら感覚共有と言ったところか。

今のオレはエンリの感じている事、考えている事まで全てが手に取るようにわかる。

これがあれば、セックス初心者であるオレでもエンリのことを気持ち良くしてやることができるはずだ。

 

指を挿入れながら挿入れられている感覚を自分の事のように感じると言うのは、なんというか、ヘンな感じだ。

今のエンリの状態は「痛くはないが気持ち良くもない。身体の中に異物があって怖い」といった感じ。

この状態が続くのは可哀想なので早く不安をなくしてあげたいが、自分でも触ったことのない場所の気持ち良い場所を探すなんて文字通り手探りだ。

優しく曲げたり押したりさすったりしてみるが進捗は芳しくない。

それどころかせっかく抜けていた力が緊張してしまって再びカチカチに固まってしまった。

 

しかし、ここで諦めるわけにはいかない。絶対にエンリを悦ばせてみせる。

こんなに尽くしてくれる、こんなに想ってくれるエンリの期待に応えてあげたい。

ここまで来たら男の意地だ。エンリを幸せにする。その一心で、エンリの弱点(気持ち良いところ)を探し続ける。

 

そして、エンリの体がピクンと震えた。膣の穴がきゅううんと激しく締め付ける。

その一瞬後に、吸血による記憶共有でエンリが一瞬快感を感じた事を知る。

やっと見つけた。そうか、ここがエンリの気持ち良い所か。

 

「ここ、気持ち良い?触っていい?」

 

ずっと続けていた吸血を一旦中断し、エンリに問いかける。

唇は繋ぎすぎて互いにもうふにゃふにゃになっていた。

答えなど聞く前からわかりきってはいた。

エンリはGスポットもうまく見つけられない無能なオレにずっと焦らされ続けたのだ。

エンリはオレの目を見つめたまま手をぎゅっと強く掴んで、オレはそれを肯定だと受け取った。

 

ゾリゾリゾリ…♡

 

入り口付近の浅い場所。上側の()()を、逆なでするように指を動かす。

腰を駆け抜ける快感の嵐に、大当たりだと喜び勇んで擦りまくる。

 

「っ…♡っ♡」

 

大きな声を出してしまう前に、慌てて口を塞ぐ。

そのまま血を吸って今のエンリの状況を確かめた。

瞬間強い快感が流れ込み、オレまで思わず腰を引いてしまう。

これ以上の感覚共有はまずいかもしれない。だが、オレには外すという選択はできなかった。

 

くち♡くりくり♡ずり♡ずり…♡こりこり♡ぐちぐち♡

 

「っっ〜♡んっ♡っっっ♡♡」

 

強めに押しても気持ち良いことがわかり、気持ち良いポイントの周りをぐるぐると回るように撫でながら押し込む。

この部分には小さな固いものがあるようで、そこの周辺なら何をしても大概気持ち良いようだった。

 

くちゅくちゅ♡くり♡ぐぽっ♡ぐぽっ♡ぐぽっ♡

 

「っ♡っっ♡っ〜〜〜♡っっっ♡っ♡んっ♡」

 

気持ち良いならこのまま行けるところまでいってしまおう。調子に乗って、少しだけ激しく指を動かしてみる。

指を折り曲げ、強く押し付けて快楽を貪る。ゆっくりと、何かが駆け上がってくるような感覚を覚える。

腰が砕けるような、いっそ暴力的なまでの「気持ち良い」が続いて、そして一線を超えた。

何かが来る。どこかに飛んでいく。そんな例えが相応しい、不思議な感覚。

腰が勝手に飛び跳ね、ガクガクと痙攣を始める。自分の意思では止められない。

チカチカと火花が散る。世界が回る。気持ち良い。気持ち良い。

じんわりと暖かい幸せな感じが広がり、ゆっくりと腰の力が抜けていく。

エンリは絶頂した。

 

 

 




岸辺正雀さん。ヤーパムさん。ryogaさん。咲さんさん。settaさん。
高評価ありがとうございます!


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40話

 

 

 

「っぷはぁ…んっ…はぁ…はぁ…」

 

口を離してよく見てみると、エンリは発情した雌の顔をしていた。

恍惚な表情を浮かべて、熱い色気をムンムンと振りまいている。

 

「きるゆーさま…」

「どうした?」

「なんだか、私…変なんです…お腹がポカポカして、ムズムズして…」

 

指を引き抜くと、生暖かくべっとりとした粘液が糸を引いた。

エンリの身体の中で人肌に暖められた指が少しずつ冷めていく。

エンリの温もりが消えて、少し名残惜しさを感じる。

 

「もっと欲しいっって、思ってしまうんです。こんな気持ち、初めてで…」

 

エンリが手を触れたのは、ずっと前からその硬さを維持していた股間の逸物。

張ったテントは一切萎むことなく、寧ろどんどん大きくなっているようにも見える。

エンリはズボンの上から先の方を指でしこ、しこと肉棒を育てるかのように摘む。

エンリの絶頂をその身をもって感じ、抑えに抑え続けていた興奮が一斉に流れ込んでくる。

未だ余韻が残っているようだ。ただ触られているだけなのに、抜けてしまいそうなほど気持ち良い。

 

「エンリ。今日は…」

「お願いします…きるゆー様のことを考えていると、胸がきゅうって締め付けられてつらいんです。何をしてても、あなたのことを考えてしまうんです。どうやったら喜んでくれるかなって。どうやったら、気持ちよくできるかなって。」

 

エンリは震えていた。

いまにも泣き出してしまいそうに目が潤んでいる。

 

「それでも、今日なんて私だけ、ずっと気持ちよくしてもらってばっかりで…きるゆー様のお役に立ちたいんです…」

 

エンリの、心からの言葉だった。

エンリは、受けた恩をオレへと返したいのだ。

まあそれは全くの間違いで、オレはエンリたちからもうたくさんの物をもらっているし、お礼というのなら吸血でたくさんしてもらっている。

 

「そのままだとおちんちんつらいですよね?私、頑張ります。精一杯、気持ちよくしてみせます。だから…私の中で、気持ちよくなってください…」

 

恥ずかしいのか、小さかった声がさらに小さくなっていく。

エンリの言葉に胸が痛む。彼女はこんなにも純粋なのに、オレときたら…

 

「エンリ…ごめんな。」

 

血を吸うことが躊躇われた、クレマンティーヌの代わり。

オレがどう言い訳をしようと、その事実は揺るぎない。

 

「そんな…どうして…?」

「今のオレには、エンリを抱く資格がない…」

「そんな事…」

「さっき、エンリ以外の女を抱いてきた。」

 

きゅう、っとエンリが握っていたオレの服が強く握られた気がした。

が、それも一瞬。オレが勘違いかと思ってしまうほど短い間だった。

 

「ごめん…ごめんな。エンリ…」

 

これは懺悔だ。

エンリという聖母の前で、オレは自分の犯してしまった罪を嘆く。

オレはこんなにも腐っているのに、エンリを抱いてしまっても良いものか。

良いよ、と。そんな事ないよ、と言って欲しかった。

エンリなら、オレの罪を赦してくれるのではないか。

 

「…許しません。」

 

オレはなんて浅ましかったのか。

エンリの言葉に、オレは眩暈を覚えた。

 

「その人より、ずっとずっと、ず〜っと可愛がってくれないと、許しません…」

 

エンリが覚えた感情は、怒り…などではなく嫉妬だった。

自分でもまだ1回しか愛し合った事がないオレが、他の女と宜しくやっている。

その事にどうしても嫉妬して、胸が苦しくて、張り裂けそうで。

つい普段は言わないような意地悪が口から出てしまった。

 

「…わかった。約束する。」

 

今日もエンリは、こんなにも良い子だ。

オレはズボンを脱ぎ散らし、ガチガチに硬くなっている肉棒をエンリの前に晒した。

もう何度も触ったその肉棒は、しかしこれまで見ていたよりも少し大きいような気がした。

 

「では、その…どうぞ…」

 

エンリはオレが挿入しやすいよう自らの股を開き、更には両手で微かに桜色に上気した膣の外側にぷっくりと膨らんだ肉を左右に開いた。

開かれた桃色の亀裂の中からむわっとした淫臭と共に、とろりと愛液が滴った。

ここまで状況を整えられて、我慢できる男がいるだろうか。

オレは躊躇なく自分の息子をエンリの肉汁溢れる柔肉へと突き立てた。

 

ずるるるるっ!

 

前回はあんなに苦労して引き裂いたというのに、エンリの膣液のおかげで全くの無抵抗で飲み込んだ。

エンリの中は暖かく、そしてぬるぬるしていた。つぶつぶの壁が優しく肉棒を包み込む。

竿を撫で回すような感触を一身に受けた肉棒が、その一瞬の快感にビクビク痙攣した。

ぐちゅぐちゅに解れて、膣壁のひだがまるで数多の指のようにじっとり絡みつく。

ぷりぷりのひだひだを掻き分けた先には、ここが一番奥だとはっきりわかる壁があった。

膣壁にあるひだに比べると硬い、こりこりとした不思議な感触。

初めての時と比べて、こんなにも違うものなのか。

 

ぱん、ぱん、ぱん、ぱん…

 

「あっ…♡はっ♡はぁっ♡んぁ♡ぁ♡」

 

ゆっくりと腰を振ると、クレマンティーヌとも、前回のエンリとも違う、強烈な快感が腰を駆け抜けた。

エンリの膣は強い締め付けで引き締まり、動かすとまるでゴシゴシ擦られているようだ。

これはまずい。あまり動かしてしまうとダメだ。すぐに限界がきてしまう。

気持ちよすぎてどうにかなってしまいそうだ。それなのに、腰が止まらない。

この気持ち良いのをずっと感じていたい。この穴に一生挿入れていたい。

ちゅぷん!ぱん!っぷぱん!たぱんっ!

 

「んっ…はぁむ…かぷっ!んむっ!んむ…んむ…」

 

肩口に噛み付いて、一生懸命届かない筋力値でオレの防御を突破しようとしてくる。

本気で噛み付いているのかどうかはわからないが、もぐもぐと肩を咀嚼するように歯を動かされ、少しくすぐったい。

良いところなのだから邪魔しないで欲しいのだが、オレだけ吸ってエンリにはお預けというのも可哀想だ。

オレは必死に食らいつくエンリの口を引き離し、歯型のついた中心に爪を立てて傷を作る。

皮膚を貫通し、真っ赤な血が流れ出たことを確認した後、エンリの頭が肩口に来るように抱き直す。

 

ぱちっ♡ぱちゅっ♡ぷちゅっ♡ぷちっ♡

 

そして再び、エンリの底へ肉槍を突き立てたまま腰を振る。

ミシ…ギシ…とベッドが軋み嫌な音が鳴ってきた。

少し不安だが、もう直ぐ達しそうなのだ。今止めるわけにはいかない。

 

「エンリ。少し激しくいくぞ。」

 

答えを聞く前に、オレは腰をエンリに強く押し付ける。

これまでより深く、そして強く突き刺さるオレに、エンリの腰が飛び跳ねる。

膣の壁がうねうねうねり、オレの肉棒を引き締めてくる。

 

くちっ♡くちっ♡くちゅっ♡ぱちゅっ…♡

 

「エンリ…エンリっ!イくぞ、中に…っ!」

「は、はいっ…来てください、あつ〜いおせーし、いっぱい…」

 

エンリの放った突然の隠語に、ぞくぞくぞく、と背筋を快感の嵐が駆け巡った。

そしてその瞬間、クレマンティーヌの時は何だったのかと思う程溜まりに溜まっていた精液のダムが決壊した。

ぐんぐんと白濁が尿道を駆け上がってくる間も、飽きもせずエンリの膣肉に肉棒を擦り続ける。

そして、これまで以上の強い突きを入れた瞬間、鈴口から大量の欲望が吐き出された。

 

ぶぴゅるるるっ!びゅるるっ!びゅるっ!ぶぴゅっ!どく…どくっ

 

「っっ♡っ♡♡っっ〜〜〜♡♡」

 

最後はエンリの頭を抱きしめて、強く下側へと押さえ付けてできるだけ奥の方へと吐き出した。

鈴口を子宮口に押し付けて、子宮の中に全部注ぎ込む。

腕の中でビクンビクン暴れるエンリを感じながら、人生で一番気持ちの良い射精を楽しむ。

 

肉棒が跳ねて精子が飛び出る度、少しずつ力が抜けていく。

激しかった勢いも時間とともに衰え、暫くすると肉棒の痙攣もおさまった。

しかし、力が吸い取られていくような気持ち良い射精の余韻が抜けない。

 

「気持ちよかったですか?」

「ああ…これまでで一番気持ちよかった。」

「本当ですか?嬉しいです…」

 

不安そうに聞いてくるエンリに、オレは嘘をつかなくて良いことを感謝した。

 

「もっと、ください…きるゆー様の、もっと欲しいです…」

「これ以上すると、2人を起こしてしまう。我慢してくれ。」

「でも…」

 

エンリはそれでも、といった様子でオレの体に指を擦り付けてくる。

あれからお腹の底が疼いて仕方がない。もっと感じたい。

吸血したことで性欲が抑えきれなくなってしまっている。

しかし、あれだけベッドの上で暴れまわって、2人が起きていないのは奇跡だ。

これ以上の事をするとなると絶対に起こしてしまう。

 

「約束、しましたよね…?」

「…わかった。でも場所は移そう。」

 

そして、結局オレが折れた。

そのことを持ち出されると痛い。

 

転移門(ゲート)が開き、オレとエンリがエモット家から抜け出した後。

オーマは不意に片手を上げて、ネムの頬へと添えた。

危惧していた状況ではないようで、ネムはスヤスヤ寝息をたてていた。

オーマはネムの頭を撫で、かつての自分を想い耽る。

 

(これも遺伝なのかしら。全く、年頃ね…)

 

 

 




ワール=シュタットさん。にらさん。
高評価ありがとうございます!

毎日更新はあと何日かは続くはずです。


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緩やかなるカルネ村
41話


 

 

 

1言だけ言い残すとしたら、エンリは吸血鬼ではなくサキュバスだった。

だとしても朝まで元気におせっせとは一体どういう了見なんだ。

おかげでもう日が昇ってしまっている。

エモット家の目の前に転移した頃にはオレの体力はレッドゲージだ。

そんなことを知ったか知らずか、エンリは扉を開け放った。

 

「おねーちゃん!どこに行ってたの?」

「き…じゃなくて、ブラッド様と少しお話があって…」

「ブラッド様?」

 

続いてオレが扉から顔を出すと、ネムがキラキラした表情でオレを見上げていた。

そして次の瞬間には突撃攻撃に入っていた。オレは少し屈んでネムの抱擁を受け止める。

オレはピンチだったHPバーがぐんぐんと回復していく幻影を見た。

どうやらネムの物理攻撃には相手を回復させる効果があるらしい。タレントかな?

くっついているネムをそのまま肩に抱え上げて、オレは家の中に足を踏み入れる。

 

(朝までしっぽり…若いって良いわね…)

 

オーマは少しそわそわしているように見えるが、まさか起きてたってことはないよな?

それとも、細心の注意は払ったはずのシーツに何か散っていたのか、朝帰りの娘を見て動揺しただけかもしれない。

何にせよ、オレ達が何をやっていたかなど彼女には筒抜けのようだ。

幸いと言っていいのか、エンリは何も感じていないようなのでこのままスルーさせてもらおう。

 

「ブラッド様はご飯を食べて行かれるんですか?」

「そうだな…オーマ。今からでもオレの分の朝食も作れそうか?」

 

オレは頭にへばりつくネムを軽く撫で、椅子の上に下ろして、自らもその隣の椅子へと腰掛けた。

舌ったらずな口で綺麗な敬語を使うじゃないか。

可愛いなあ。本当に可愛いなあお前は。

 

「はい。まだ始めたばかりなので大丈夫ですよ。」

「じゃあ頼めるか。」

 

普通の返答だ。どうやら何か突っ込む気はないらしい。

突っ込むのは男の仕事だ。

 

「わかりました。では、美味しいものを作りますね。」

「期待してる。」

「私も作るよ!楽しみにしててねっ!」

「お、おう…」

 

オレの座っていた椅子をよじ登って、背中から顔を出したネム。

お前さっきまで隣に座ってなかったか?いつの間に…

 

「こら、ネム!行儀の悪いことしないの。」

「はぁい」

 

しかしこの行為はエンリ的にはアウトだったようだ。

ネムは渋々といった様子で椅子を降りる。

もし椅子が壊れでもしたら危ないからな。

 

「ネム〜。ご飯作るならおいで。」

「はぁい!」

 

オーマの呼びかけとともにネムがオレの元を離れてトコトコと走っていく。

ああ、ネム…行かないで。帰っておいで…

 

「出来上がるまでに暫くかかるので、ブラッド様は村を散歩なされるのはどうでしょうか。エンリも一緒に。ね?」

 

オーマは台所から顔だけ振り向き、エンリへとバッチリとウインクを飛ばした。

くそ、あまりにも綺麗だ。こんなん惚れてまうやろ!と叫びたくなってしまった。

 

 

 

「あの、さっきはネムがすみません。普段はとても良い子なんですけど…」

「いや…子供は元気なのが一番だ。」

 

結局オレたちは家から追い出された。

朝食なんてそんなにかからないだろうから軽く一周したら充分な時間だろう。

寝てないこともあって日差しがやけに眩しい。

オレは高位の真祖(トゥルーヴァンパイア)だから日光なんてなんでもないが、エンリも平気そうだ。

 

「お父さんがいなくなっってから、ネムは我儘をあまり言わないようになったんです。でも、ブラッド様が来た時には少し…もしかすると、お父さんの代わりに甘えているのかもしれません。」

「父の代わりか…ま、それも悪くはないな。」

 

ネムのような娘なら何人いても良い。

オーマと結婚すればネムは娘になるが、エンリと結婚したらネムは義妹か…

妹か。妹も良いな。お兄ちゃん呼びのネムは破滅的な可愛さとなってしまうだろう。

いや、義妹は義妹でもそういう義妹ではないが。

 

「す、すみません…ブラッド様の前でこんな事。もう、忘れようとはしているんですが…」

「…いや。忘れるな。そんなことはオレが許さん。」

「え?」

「お前達を生んだ親の記憶だろう。大切に取っておけ。」

 

エンリはぽかんとした表情でオレを見上げた。

なんでそんなに驚いているんだ。そんなに意外な事か?

思い出す度に悲しいなら、忘れてしまった方がいい事もある。

だが、人間の死は簡単に忘れて良いものではない。

 

どこかで、人間は2度死ぬと聞いたことがある。

1度目は肉体が死んだ時で、2度目は誰からも存在を忘れ去られた時だ。

思い出す人間がいるのなら、そいつはまだ死んでいない。

オレの背中に、この胸に、1つになって生き続ける。

……あれ?

 

「オレは、お前の親が命を張って騎士を引き付けエンリとネムの逃げる時間を稼いでいた事を知っている。

そのおかげでオレはエンリ達が殺される前に間に合った。

そんな男を尊敬こそすれ、忘れろなんて言うはずがないだろう。」

 

オーマの記憶を覗いた事で情が移った所為もある。

これもマッチポンプの一種になるのだろうか。

オレがエンリの父親を生き返らせていたら、どうなっていたのだろうか。

親のことを思い出させてしまった所為か、沈んだエンリの頭を抱きかかえた。

早朝ということもあり、目に見える範囲に人がいないから助かる。

 

「お前の父は立派な男だ。オレの勝手な都合で助けられなくて悪かったな。」

「…」

 

エンリがオレを恨んでいる事実はない。寧ろ母だけでも生き返らせた事に心より感謝をしている。

が、それは全てを納得したという事ではない。オレはエンリの後頭部を乱雑に撫でた。

 

「エンリの姐さん!」

 

誰だ、オレとエンリの会話に水を差すのは!

……なんだ、角笛でエンリが呼び出したゴブリン達か。

エンリの記憶によると、彼らはよく働いているようだ。

働きは良いのだが、どうやらエンリを憧れの対象として見ているようなのだ。

 

「おっと…お邪魔でしたか?」

「いや。そんな事はない。」

 

ゴブリンに見られるのを嫌ってか、エンリはパパッと離れていってしまった。

オレが抱いた所為で出来てしまった髪の乱れを直すその顔は少しばかり赤い。

 

「お前達はよく働いているそうだな。礼を言おう。ありがとう、ジュゲム。」

「あの…そのゴブリンさんはゴコウさんですけど…」

 

エンリの記憶で、彼ら全員の名前を聞いたことはあるのだが。

カイジャリが顔に大きな傷がある奴で、コナーが骨付きの奴。ウンライがアフロのゴブリン。

ここまでは良い。しかし特徴の無い普通のゴブリンの違いはオレには見分けがつかない。

正直覚える必要もないと思うためあやふやな奴は適当に呼んでいる。

ただ本人達は間違えたところで誰も訂正してこないので覚える事も出来ない。

 

「おっと、すまないゴコウ。お前達のおかげでこの村は助かっている。」

「いえ…」

 

まともに言葉を発せないジュゲム改めゴコウに近づき、エンリに聞こえない声量で呟く。

 

「ただエンリに指一本でも手を出してみろ。喉を縊り潰して引き千切り体はチリすら残さずに消し飛ばして頭はギルドに討伐証明部位を提出してやる。わかったな?」

 

これだけは譲れない。ゴブリン共にはきっちりと釘を刺しておく。

こっちの世界のゴブリンは知能や理性があり言葉も喋ることが出来る。

それはわかっているのだが、色々な漫画で大活躍のイメージを覆すのは難しい。

不安になって少し脅してしまっても仕方がない事だ。うん。

 

「その事を肝に命じて、これからも頑張ってくれたまえ。褒美代わりと言ってはなんだが、何か必要なものがあればマリーを通じて遠慮なく提案して欲しい。便宜を図ろう。」

 

汗を流して動けなくもなってしまったゴブリンに、少し言い過ぎたかと労をねぎらってやる。

大きなことはできないが、肉や服、防具といった物資の斡旋くらいならいくらでもやってやろう。

 

「あの…何を話されていたんですか?」

「物資の相談だ。不足なものがあればマリーに頼んでくれ。」

 

様子のおかしいゴブリンに、心優しいエンリは不安になったようだ。

嘘は言っていない。嘘はな。

 

 

 




赤さ他さま。高評価ありがとうございました!

今回でがっこうぐらしの文字数を超えましたね。
他の作品も書きたい。時間が足りない…頑張れ。


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42話

 

 

 

「それで…その、ゴブリンさん。私はブラッド様に町の案内をするようお母さんから頼まれているので…」

「はい、わかりました。伝えてきますね。」

「すみません。」

「いえいえ、そういう事なら納得ですよ。」

 

エンリが何事かを謝り、ゴコウがオレから逃げるように走り去って行った。

すぐに逃げたそうにしていたし、必要以上に怯えさせてしまったか…

またゴブリン達と壁ができてしまった気がするが、ここは譲れない。

それよりも、オレが理解できない会話をしているのが引っかかる。

 

「今のはなんの話だ?」

「炊き出しの事です。もう少し先でしているので、見に行きませんか?」

「…そうだな。」

 

オレ達は炊き出しを行っているという村の広場まで散歩がてら歩を進める事にした。

散歩がてらというか、デートがてらというか。

つい先程までこの女の子がオレの上で善がっていたなんて信じられるか。

時間を忘れて盛っていたエンリが慌てて朝だから帰らないとと言い出した時は正直最近の子の元気にはついていけないとすら思った。

転移門でカルネ村に飛んだ時、急いで服を着たが、実は寸前までセックスしていた。

よくもまあこんな純真無垢な笑顔ができるものだ。

 

「ブラッド様。おはようございます。」

「おはようございます。」

「おはようございます、ブラッド様。」

「ああ、おはよう。」

 

屋外に出ている村の女の子たちが一様にこちらへとお辞儀をする。

オレは手を振ってそれに答えてやると、きゃあきゃあとはしゃぎながら身内話に盛り上がっている。

女が3人集えば姦しい、とはよく言ったものだ。

これでもう何人目かの挨拶。まるで出迎えられているかのような応対だ。

こんな早い時間に、それも女の子ばかりが外に出ているのは少しおかしい。

何かの情報網があるのかと勘ぐってしまうな。

 

オレの勝手なイメージだが、貧しい村は高齢化が進んでいると思っていた。

が、むしろカルネ村に関してはむしろ若い子達よりも老人の方が珍しい。

一番多いのが3、40代くらいの中年で、次に多いのが10代そこらの若い世代だ。

お金のないただの貧村では老人は早く死ぬし、若い子は結婚適齢期が早いためすぐに子供を作るから多いのだとか。

行き場のない焼き討ちにあった村の生き残りが、このカルネ村へと集ってきている事もそれに発破をかけているようだ。

 

 

 

広場には屋外に木製の長机と椅子が並べられていて、青空教室のようになっている。

椅子には両手では数え切れない数のゴブリンが礼儀正しく座って会話をしていた。

少数だがゴブリン達に混ざって人間もちらほら見える。

誰も料理を食べている者はいないため、まだ食事はできていないようだ。

 

「ブラッド様!村に来られていたんですね。」

「つい今しがたな。」

 

遠くから歩いてきたオレ達を見つけて、村娘の1人がパタパタ走り寄って丁寧に話しかけてきた。

ゴブリン達もオレを視界に捉えると、会話を一度取りやめて一礼をくれた。

 

「こうやってゴブリンさん達や家族を亡くされてご飯を作るのが難しい人達でも美味しい料理を食べられるようにしているんです。」

「なるほどな。」

「私も、毎朝ゴブリンさん達の料理を作っているんですよ。」

 

エンリは恥ずかしそうにはにかみながら呟いた。

オレが口達者に凄い、偉いと褒めそやすと、エンリはそんな事ないと満更でもない様子で謙遜した。

 

「ゴコウさんはいつも手伝いをしている私がなかなか来ないから心配して見にきてくれたんだと思います。」

 

なるほど、朝には帰りたいと言っていたのはこの理由もあってのことだったのか。

オレはそんなゴブリンを脅してしまった事に申し訳なさを感じ、目線でだけでも謝ろうとゴコウを探す。

周りを見渡したがゴブリンが多すぎて、どれがゴコウかもうわからなくなってしまった。

 

「もしかして、ブラッド様も食べて行かれるんですか?」

「いや、悪いな。ここには少し様子を見にきただけだ。今日は先約がある。」

 

名も知らぬ無邪気な村娘ちゃんが期待した様子で話しかけてきた。

しかし、残念な事にオレはネムやオーマと食事を摂ると約束してしまっている。

この村娘ちゃんの期待を裏切るのも心苦しいが、ネムの期待を裏切ってしまうのは無理な話だ。

オレはエンリの頭をポンポンと叩く。()()()()()だと理解してくれた方が話は早い。

 

「皆さ〜ん、お鍋ができましたよ〜。」

 

暫く会話を交わしていると、足の生えた大きな鍋が現れた。

いや、鍋を持っている奴が後ろにいるようだ。鍋は勝手に歩かない。

というかよく見るとその鍋を両手で一生懸命に運んでいるのは、世界一可愛いオレの娘だった。

どうやらマリーもこの炊き出しには一枚噛んでいるらしい。

それを見たゴブリン達は席を立ち、口々に料理やマリーを褒めそやした。

そしてどこからか器を取り出し、マリーが何かの汁物を器に注いでいく。

ゴブリン達の動作には迷いがなく、この炊出しが日常的なものなのだと実感させられた。

 

オレはそんなマリーの様子をじっと見つめていた。

ふとマリーの完全に閉じている目がこちらへと向いた瞬間、彼女の方が大きく揺れた。

そしてわかりやすくアワアワと慌てた後、マリーはオレの元へと駆け寄った。

マリーはオレ達から1メートルほど間を置いて立ち止まり、土の上だというのに躊躇いもなく跪いた。

 

「きっ…ぶ、ブラッド様…お越しになられていたのですか。」

「構わない。探知阻害の指輪をつけていたのはオレだ。」

 

オレはマリーの礼を受け取り、その後手で制して辞めさせる。

というか、気付かれていたら色々と気まずいからお前は気付かないままでよろしい。

そしてマリーが慌てて投げ捨ていたおたまはゴブリン達が地面に落ちる前にしっかりと受け止めていたので不問とする。

 

 

 




にらさま。岸辺正雀さま。
高評価ありがとうございます!
そして毎度感想をくださっている皆様ありがとうございます!
とても励みになっています。


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43話

 

 

 

「平和な村だな。ついこの間、あんな凄惨な事件があったというのに。」

「それもブラッド様のおかげです。私たちがこの村に住めているのは、ブラッド様の遣わしてくださったマリーさんとゴブリンさん達のおかげですから。」

 

炊き出しの様子を一通り伺った後、食事を食べられないマリーを伴って今度はエモット家までの道を引き返していた。

 

「って事は、頑張ったのはお前って事か。ほら、ご褒美だぞ。」

「あっ、あの…っ」

 

オレは意地悪そうな笑みを浮かべながらマリーの喉元へと手を差し出した。

そして、ひんやりとした感触の木製の顎をこしょこしょとこしょばせる。

まるで、猫や犬を可愛がるかのように。

マリーはその褒美を一身に受け、行き場のない両手をあわあわ彷徨わせた。

こうして、オレはよくマリーで遊ぶ。主の行動を諌める事は配下にはできない。

 

「…そうか、なるほど。こういう手もあるのか。ククク…良いことを思いついたぞ。」

 

それをヒントに、オレはとある()案を思いついた。

これは配下たちが大喜びするに違いない。今からその時が楽しみだ。

思わず邪悪な笑みが零れだすオレに危機感を抱いたのか、はたまたオレの手から逃れたかっただけなのか。

拘束の緩んだ隙にマリーはオレの手の中から抜け出した。

 

「こら、待て。主人の褒美を無下にするとは何事だ。もっとこっちへ来い。」

 

まあそんなお粗末な脱出でオレがマリーを逃がす事はなく、主人から逃げた罰という名目で高級木材で出来ている真っ白な頬を撫で回していた。

逃げ出す前よりも接触が多くなってしまったマリーはというと、あうあうと言いながら木製のはずの頬がなぜか赤くなっていく。

 

不意に、心臓がどきりと跳ねた。…悪い意味で、だ。

心臓を直接掴まれた(グラスプハート)ような錯覚を覚える。それに、なんだか無性に背中が痒くなってきた。

…過去のオレよ。「あうあう」は無い。その設定文を書くのはよせ…ヤメロぉ!

こうしてマリーは意図せずオレから解放されることに成功したのだった。

策士め。

 

 

 

マリーが隣に来てからというもの、村の女の子達はオレに声を掛けてくる事はなくなった。

女の子がいないというわけでは無い。むしろ集まってきている。

しかし何故か先程までとは違い、遠巻きから眺めているだけで近付いて来ようとはしないのだ。

マリーの美貌に恐れをなしたか。はっはっは。どうだうちの娘は可愛いだろう。最高だろう。

 

女の子から話しかけられる事はなくなった。

なくなったのだが、話しかけてくる人数はむしろ増えていた。

というのも、オレというよりはマリーを見て話しかけてくるのだ。

マリーはこの村に良く馴染んでいるようで、おっちゃんおばちゃん連中がお世話を焼いて来る。

例えるなら…そう、近所の子供を可愛がっている感じか。

 

「こうして見てみると、お前達はよく似ているな。」

 

そんなさなか、2人の姿を後ろから眺めつつそんな言葉がポロリと出た。

普段はエンリが髪を纏めて編んでいるためかそんな印象は受けなかったが、今は下ろした状態だ。

マリーは薄い金色の腰上までの長髪で、エンリは栗毛色の背中までの長髪。

それほど似ているわけでもないが、2人並んで歩く横顔が、どこか重なって見えた。

 

「いっ、いえ!私はこんなに綺麗じゃないですよ!髪の色だって、マリーさんは光に輝くような金色で、私の方はくすんだ栗毛ですし…」

「そうかな?エンリの髪も綺麗だよ。」

 

確かに、マリーの髪と比べてしまうと流石に劣ってしまう。

木製ドールの自動人形(オートマトン)である彼女の髪は比喩ではなく本当の作り物なのだから。

触れれば絹のような手触り艶やかな髪は光に透かすと小川のせせらぎのようにキラキラと輝く。

風に吹かれて髪がたなびくその様子は絵画から出てきた妖精のようだ。

 

マリーはオレの好みをこれでもかと追求した至高の人形である。

オプションはオレが作ったものの、ベースはヘロヘロさん…いや、ヘロヘロお師匠様が作成してくれている。

数多なるメイドを量産した現役プログラマーであるヘロヘロさんの技術はそれはそれは素晴らしいもので、特にマリーの造形美たるや女神そのもの。そこらの一般人が敵うものではない。

オレが見たこっちの世界の住民の中で一番の美人であるクレマンティーヌでも、身内びいきの入ったエンリでも無理だ。

言葉遊びみたいになってしまうが、絵に描いた美人と絵に描いたかのような美人は違うのだ。

 

だが、だからといってエンリの髪が汚いのかと言われればそんなことがあろうはずもない。

明るさの強い栗毛色は、それはそれで落ち着きのある色合いだと言える。

 

「マリーもそう思うだろ?」

「はっ、はい…っ」

 

いきなりの振りに、汗腺などないはずのマリーが汗を飛ばす。

球関節の指をモジモジとさせながらそれでもしっかりと頷いた。

エンリもエンリでオレの配下であるところのマリーに未だ恐縮してしまっている。

2人も何やら態度が余所余所しい。前に、オレがエンリの胸を揉んでいるところを見られたことがあったが…あの時から2人の仲は進展していないのだろうか。

父親に胸を揉まれていた女と話すのは確かに気まずいだろう。

あれは悲しい事件だった…

 

「ほ、ほら、見えて来たぞ。ネムたちはもう待ってるかもな。」

「そ、そうですね…」

 

オレはそこまで考えてオレにできる事は何も無いと判断して話題を強引に捻じ曲げた。

エモット家からはかなり遠くから離れた場所でそんな話題を振ってしまったため不自然にはなってしまったが。

オレまで気まずい空気に飲まれてしまいそうだ。

家に着いたら、まずは一番にネムに癒してもらうとしよう。

 

 

 



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44話

 

 

 

「きるゆーさま。泊まって行って!」

 

前略。今オレはネムにせがまれている。

ネムが、寝る間になって帰ろうと思っていたオレを引き留めたのだ。

 

 

「こら、ネム。あまりきるゆー様にご迷惑をかけないの。」

「そうよ。きるゆー様にだって予定があるんだから。」

「やだ!」

 

ネムは嫌々と首を振って、オレの腰に抱きついてくる。

そしてオーマ。フォローは有難いのだが、オレに予定はない。

何故か悲しくなるからあまり言わないでほしい。

 

「ま、今日くらいはいいだろう。勿論、2人が良ければだけが。」

「本当!いいでしょ、お母さん!?」

「きるゆー様がご迷惑でないのなら…」

「ネムの頼みなら迷惑なんて思わないよ。」

「本当?きるゆー様大好き!」

 

オレは腰から離れないネムを抱き上げた。

キャッキャと喜ぶネムをベッドへと運ぶ。

ネムを寝かしつけようとしていたオーマやエンリも、オレが一緒に寝るならとベッドへと入ってきた。

結局、ベッドを2つ合わせてエンリ、オレ、ネム、オーマの順で川+1の字になった。

ネムがぎゅっと小さな手で手を握ってきたので、そのままそっと握り返す。

そんな中、ネムが突然爆弾を投下する。

 

「私、きるゆー様と結婚したいなあ。」

 

突然のネムの告白に、エンリとオーマが驚く。勿論、オレも驚いていた。

まさかネムまでもがオレの妻の座を虎視眈々と狙っていたとは。

…いや。これはアレだな。アニメでよくある、娘がお父さんと結婚する!ってやつだな。

 

「きるゆー様。私と結婚してくれますか?」

「そうだな。もう少し、ネムが15、6になった頃もまだそう思ってたら考えるよ。」

「えー!」

「ネムには少し早いんじゃない?」

「そんな事ないもん。私だって結婚したい!」

 

いくらこの世界が日本と比べて結婚適齢期が半分でも、1桁の子供が結婚するにはまだ早い。

というかしたらオレの方が人格を疑われる。

 

「ネム。どうしてきるゆー様がいいの?」

「だって一番かっこよくて、一番強いんだもん。」

「きるゆー様はかっこよくて強いだけじゃないのよ。」

「そんな事わかってるよう。優しくて偉くて。あと、力持ち!」

 

エンリも妙な方向に流れを作らないで欲しい。

なんか嫉妬から来ている気もするし。

 

「私、おねーちゃんの次でもいいよ。」

「えっ!?」

 

心臓がどきりと跳ね、一瞬オレの声が漏れたのかと思ったが、声を出したのはエンリだった。

 

「私、おねーちゃんとだったら一緒にお嫁さんになりたいな。」

「ネム、何を言って…」

「エ・ランテルの偉い人には、お嫁さんが何人もいるんだって。他の人なら嫌だけど、おねーちゃんとならいいよ。」

 

一夫多妻は容認、というか黙認されている。

日本のような戸籍がしっかりとしていないため、愛人を作って囲い込むなんて事も簡単なのだ。

別にオレにはそんな気はないが。

 

「そうね、ネム。あなたがお姉ちゃんくらいの歳になったら、また考えてあげるわ。」

「はぁーい。早く大人にならないかなあ。」

 

ネムは小さくぼやいて、それでも納得したのかそれ以上意を唱えることはなかった。

 

すぅ、すぅ…

 

それからしばらくして、規則正しい寝息を立てていた。

ちゃっかりと握った手はそのままで。

 

「ネム、寝ちゃいましたね。」

 

ネムが寝たかと思ったやいなや、エンリがすすす、と身を寄せる。

全く抜け目がない。可愛い。

エンリはオレにしなだれかかると、耳元に口を寄せてきた。

そして、こしょこしょと囁き始める。

 

「きるゆーさま。もう眠られましたか?」

「いいや。」

 

吸血鬼は夜の貴族とも呼ばれる。

オレに、それとエンリとオーマは夜には強いのだ。

 

「ネム、やっぱりきるゆー様がいる時は我儘になるみたいです。」

「昼の続きか?」

「はい。でもまさか、あんな事を言い出すなんて…」

「小さくても、やっぱり女の子だな。なかなかしっかりしてるよ。」

「私、わかるんです。本気だって。多分、初恋なんだと思います。私もそうですから。」

 

耳元で囁かれるだけでもドキドキしているのに、そんな事を言われたのでは溜まったもんじゃない。

オレは今すぐにエンリを抱きしめてしまいたい衝動に駆られた。

そして、あわよくば滅茶苦茶にしたい。昨日みたいに、お腹の中で悦ばせたい。

 

「あんなネム、初めて見ました。本当に楽しそうで、普段は本当にいい子で…でも、いい子なんですけど、無理をしてるって言うか、ネムがネムじゃないみたいで…きるゆー様がいると、昔の、あんなことが起こる前のネムに戻ったみたいで…っ…ぅっ…ご、ごめんなっ…さい…」

「わかってるよ。」

 

必死に涙を止めようとしているエンリの肩を抱き寄せた。

その体はとても華奢。繊細に扱わなければすぐに壊れてしまいそうだった。

 

「迷惑だって、分かってます。こんなこと、お願いするべきじゃないって。でも…ネムとも、一緒にいてあげてください…」

「オレが何処かに行くとでも思ってるのか?」

「でも、きるゆー様の居場所は…」

「ここも立派なオレの家だ。いなくなったりしないよ。」

 

エンリが、オレの体の上にのしかかってきた。

そして、体を預けて口を付ける。唇と唇をくっつけるだけの、優しいキス。

ちゅっ、ちゅっ…と小さな音が鳴る。

 

「ネムがかわいそうだぞ。」

「でも、今日はネムがべったりだったじゃないですか。ネムばかりずるいです。」

「寂しかったか?」

「寂しかったですよ。」

 

オレがネムばかり構っていたから、少し拗ねてしまっているようだ。もうなんなの。可愛い。

 

「ネムはいっぱい遊んでもらったんだから、このくらいは大目に見てくれないと嫌です。」

「悪かったな。ほら、これで許してくれ。」

「あっ…」

 

オレはエンリの頭をぐぐっと寄せ、唇へ吸い付いた。

初めは隣に家族がいる状況に遠慮していたエンリも舌を差し出してくちゅくちゅと奉仕に徹した。

後頭部へ手を回し、舌を使って狂おしい程口内を蹂躙する。

 

「ひるゆ…ひゃま…」

 

エンリが控え目に肩を押したので、一旦結合を解除する。

オレとエンリとの口に、銀の橋が架かった。

エンリの口元が月の光を受け、てらてらと輝いていた。

 

「これ以上されると…吸いたくなっちゃうので…」

「どっちが?」

「もう…意地悪。」

 

冗談めかして、つんつんと頬をつつかれた。

その後小さく、両方(血も精液も)と答えたエンリは恥ずかしくなったのかオレの胸に顔を埋めた。

しばらくぐりぐりとしていたエンリの、頭を撫でて宥める。

そして。

 

「あの…やっぱり、我慢できません…」

 

何度も何度もちゅっ、ちゅっ、とキスをくり消していると、エンリが腰を擦り付けてきた。

匂いを擦り付けるかのように、ゴシゴシと強めに擦る。

あまりにもいやらしいおねだりに心臓が跳ねるが、今日は無理だ。

健気に寝てまで離さなかったネムの手を離すわけにはいけない。

 

「だめだ、我慢しろ。」

「そんな…」

「また今度な。」

 

浅ましく腰をフリフリさせるエンリ。正直めちゃくちゃに可愛い。

だが、ネムの手を離してしまうのは無理だ。

それに、今盛ってしまうと止まれない気がする。

 

「エンリの髪は本当に綺麗だ。夜だけしかこの姿を見れないなんて勿体無いくらいだ。」

 

片手で髪を掬い上げる。

掬ったそばから、さらさらと掌から滑り落ちて行った。

 

「あの、普段から下ろしておいたほうが良いでしょうか…?」

「いや。編み込みのエンリも可愛いよ。それに…」

 

オレは近かったエンリとの距離をさらに詰め、唇と唇をくっつけた。

 

「可愛いエンリはオレだけが知っていればいい。この時のエンリはオレだけのものだ。他の男には見せるなよ。」

「はっ、はい…」

 

それから、オレたちは寝るまでずっと軽いキスを何度も交わした。

 

 

 




これにてカルネ村の閑話回は一旦終わりです。
とりあえず連続更新もストップです。


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*第2章ㅤ-第1話 絶望の幕開け
45話


 

 

 

シャルティアが操られたり、ガチバトルしたり。

ナザリックを揺るがす大事件が起きてから、はや数日。

ようやく落ち着いてきたナザリックは、通常運転へと戻っていた。

 

「げふ…もう一杯…」

 

第九階層に存在する、ショットバーのような雰囲気の部屋。

そこでは、酒を浴びるように飲み続ける1人の吸血鬼がいた。

そのあまり上品とは言えない飲みっぷりに、自ら誘ったマスターである副料理長は既に後悔をし始めていた。

その少女は、バーには不釣り合いな幼い見た目をしながら、その手にはピッチャーのような大きなグラスを持っている。

 

「そろそろ帰ってお休みになられては?」

「嫌ぁ…帰りたくないの…」

「そうですか…」

 

そんな中。バーの扉を開き、少女に近づく男がいた。

何を隠そう、至高なる御方が1人。きるゆー。つまりオレだな。

 

カウンターに突っ伏して、飲んだくれを演出するシャルティア。

我ら不死者は状態異常に対して完全耐性を持っている。

毒になったり操られたり酔ったりは本来無いはずだが。

 

「やあ彼女。そんなに落ち込んでどうしたんだい。」

「誰でありんすかぇ…」

 

机に頭を乗せたまま、くるりと頭を回しこちらを見るシャルティア。

瞬間、両肩を跳ねさせて背筋を伸ばし、きっちりとした姿勢で頭を下げた。

面接官を相手にした就活生のようだ。

 

「きっ…きるゆー様…申し訳ありません。」

 

シャルティアが気付かないのも仕方がない事だ。

付け外しが面倒なため、オレは最近探知疎外の指輪を付けっぱなしにしているからな。

 

「マスター。ここの1番良いものを1つずつ。」

「かしこまりました、きるゆー様。」

 

副料理長へオーダーを伝えて、妙な場面を見られてガチガチになっているシャルティアへ体を向ける。

 

「まあそう固くなるな、シャルティア。今回は落ち込んでるお前を慰めてやろうと思ってな。」

 

シャルティアが操られた時、オレは何もできなかった。

万が一にでも負けた時のためのギルド運営と、復活の方法を探すためにどちらかが1人残らなければならないのは説明された利、モモンガさんが、ギルド長であり間接的に敵対させてしまった自分が責任を持つ、といって聞かなかった事もあるが。

確かに、ナザリックを運営しているのも、シャルティアを派遣したのもモモンガさんだけれども。

だからと言って、オレに責任が無いと言うのは嘘だろう。

せめて、シャルティアのフォローだけでもしておきたかった。

 

「お待たせいたしました。」

 

触手の腕が二つのグラスをテーブルに置いた。

二色の色鮮やかなグラデーション。コップを傾け、シャルティアを翼の腕で包み込む。

 

「えっ、えっ、え?」

「今回の件に関してはギルド長もシャルティアに罪はないと言っていたはずだが…」

 

突然掴まれ、混乱しているシャルティアの頭を、指のひらでぐりぐり撫でる。

翼とは言えど、感覚はある。腕の中で華奢な体がぴくぴくと震えていた。

 

「へ、へへへ、あの、へへへ…」

 

酔っぱらったかのように頬を上気させ、顔がゆるゆるになるシャルティア。

これは、成功と言ってもいいだろう。

 

カルネ村でマリーを撫でて、思いついたことがある。

褒美としてスキンシップを与えるのは、NPCにとって至上の喜びではないか、と。

今回はその試策というか。とりあえずシャルティアに試してみようという考えだ。

 

「これ以上落ち込んでいるのであれば、モモンガさんも気を揉むことになる。気にするなとは言わないが、そろそろ落ち着け。」

「は、ハイ…」

 

オレが入ってきた時よりもガッチガチになっているシャルティア。

声も裏返って、もうなんだか可哀想になってきた。

 

「この失態は、この世界への慢心を捨てることで取り戻せ。同じ失態を演じないようにな。」

 

未練がましいねっとりとした視線を受けながら、翼を離す。

思った通り、頭を撫でたりするのは特別な褒美として有用そうだな。

少しモモンガさんに提案してみるか。

 

 

 




久しぶりに読み返したら面白かったので(自画自賛)他作品の息抜きに少しだけ。
数話投稿するつもりですが、約束はできません。


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新たな火種
46話


 

 

 

「殿〜!そっちに行ったで御座るよ!」

 

尻尾を鞭のようにしならせ、巨大なトカゲを追いかける、こちらも巨大なハムスター。

この間テイムというか、勝手に配下になった森の賢王。今はハムスケと名乗っているが。

オレは乗り気ではなかったのだが、何せモモンガさんが自ら名付けをしたり、武技を覚えさせようとしていたりとノリノリなのだ。

モモンガさんは分からないだろうが、こいつを連れていると何だか気が抜けるのだ。

オレとモモンガさん以外には何故か威厳があると見えているのがせめてもの救いか。

 

「ルプー。少し離れてくれ。」

 

オレは剣を振りかぶった状態で止め、トカゲがこちらまで迫るのを待つ。

ハムスケから逃げているということはそれ以下のレベルなのだろうが、その先で構えているのはそのハムスケをオーラだけで屈服させる吸血鬼だ。

とは言え、オレとルプーは指輪で気配を遮断しているので、逃げ出すことはないのだが。

 

閃光両断(フォトン・ディバイド)

 

光の軌跡を残しながら、中心から真っ二つに切り裂いた。

どさりと崩れ落ちて、内蔵をぶちまける。…うげ。しまったな。これでは買取価値が下がってしまう。

オレたちは今、昇進と報酬狙いでギガントバジリスクとかいう魔物討伐の依頼を受けていた。

ギガントバジリスクとは名前通り巨大な蛇蜥蜴だ。

その体液は猛毒で、近寄ると視線で石化させられる厄介なモンスター。

勿論、オレとルプーなら余裕でレジストできる程度のものだ。

 

「おー。派手にやったっすねえ。」

「やらかしたな。これでは持って帰るのも一苦労だ。」

 

精神が変化していなければ、一発で吐いてしまうようなグロさ。

カッコつけてスキルなんて使わなければ良かった。素材も定価の半分で売れるかどうか。

 

「こいつは配下の素材にして、もう一匹探しても良いが…まあ探すのも手間か。」

「出来れば早く帰りたいっすねー。この辺り、暑くて暑くて……」

「そうだな。ハムスケ、ついて来い。報告に行くぞ。ルプーは先に帰っても良いがどうする?」

「まさか。どこへでもお供するっすよ。」

 

それにしても、バジリスクの依頼は金策も兼ねていたのだが、一時の感情でもったいないことをしたな。

 

 

 

エ・ランテルのギルドへ報告を行なった後。

メンバーを吸血鬼にしてから初めて、ニニャへと会いに行った。

近況報告と、それからシャルティアの離反騒動があり、結局お流れになっていたニニャへの吸血をするためだ。

当然だが、エンリの事もあり吸血はしても手を出す気はない。そもそも好みではない。

 

「なかなか時間が取れなくてすまないな。」

「いいえ、お忙しい所ありがとうございます。」

「ところで、その後どうだ。良くやっているか。」

「はい。実は、あれからもうひとつランクが上がりまして…」

 

吸血鬼になってからもエ・ランテルで活動している漆黒の剣。あれから少しずつ実力を見せているらしい。

種族的に人間を超えたのだから、当然でもあるが。

種族のことはできる限り頑張って隠して欲しいものだ。

 

「それでは本題だが。今日は血を少し分けてもらいたいと思っている。その血の質によっては、今後も定期的に吸いたいと考えている。」

「そうでしたか…実は、

メンバーに頼まれて何度か血を吸わせたことがあるのですが…大丈夫でしたか?」

「…まあ、大きな問題はないだろう。」

 

悪いことと言えば、オレが男に血を吸われる記憶を読み取ってしまうだけだ。

嫌と言えば嫌だが、飲みたくなくなる程の事ではないな。

しかし、そうか。吸血対象を用意していない吸血鬼を野放しにしておくのは良くなかったか。

他人の血は無闇に吸わないようにとルプーから説明はされているはずだが、食欲や性欲と繋がっている吸血を禁止することはできないからな。

その血に、特に光るものがなければ、ニニャを漆黒の剣の吸血対象にするか。

 

「ところで、吸血の前に何個か質問がある。大事なことだから偽りなく答えてくれ。」

「はい、わかりました。」

「まずは、性的経験があるのか。そして異性同性に関わらず、憧憬を覚えたことがあるのか。」

 

オレの吸血には、血を吸った相手の記憶を追体験する強制効果がついている。

シャルティアとの戦闘の件もあり、改めて説明文やスキル詳細を色々と調べてみた結果。

吸血時の記憶の共有は、スキルではなくきるゆーというプレイヤーのフレーバーテキストに書き込んだ効果だった。

つまり、意図せずエンリに使って吸血鬼にしてしまった「眷属化」とは違い、自分で効果をオフにできないのだ。

ご存知の通りこの効果はまた厄介なもので、吸血相手が女性の場合オーマの時のようなとても悲しいことが起きてしまう可能性があるのだ。

かと言って、男相手に吸血するのは勘弁願いたい。そもそも吸血欲求すら湧かない。

個人的には、吸血に1番抵抗がないのはンフィーレア。それでもギリギリアウトだが。

 

「け、経験はありません。姉を奪われてからすぐに男として生きてきましたから。好きな相手も、そうですね。生まれてから1番魅力的に思ったのはブラッドさんですが。それでも、恋愛感情とは違うと思います。」

「そうか、ありがとう。最後に、人生で1番怖かった記憶は何だ。」

「そうですね……仲間が殺され、拷問された時でしょうか。私は殺される前に助けて頂けましたが。」

「そうか…それは、遅くなってすまなかったな。」

「いいえ、いいえ!ブラッドさんにはとても感謝しています。私が今ここにいるのは、ブラッドさんのおかげですから。」

 

確かに、クレマンティーヌに遊ばれた記憶は見たくはない。

しかし、それはオレが間に合わなかったから起きた事。

全てを知るため、そして自分への戒めのため。

オレはニニャの記憶を見る事に決めた。

 

「それでは、血を吸わせてもらう。覚悟はできているか?」

「は、はい。よろしくお願いします。」

「うむ。」

 

前のボタンを外し、肩口をはだけさせる。意外と白いな。

肩に口を付け、そのまま歯を立てる。

 

「んっ……」

 

意外と可愛らしい声を上げる。

まあ女だったのだから、意外と、ということはないか。

アルベドとオーマ、エンリに続いて、4人目の吸血対象だ。

じわりと溢れた血を舌の上で少し馴染ませ、味わってから嚥下した。

そして、ニニャの人生の記憶が流れ込んでくる。

 

「……そうか。……そうか。」

「あの?」

「ニニャは…姉を取り戻すために冒険者になったんだな。」

「どうして、それを…」

「そういうスキルだ。」

 

実際は違うのだが、面倒なのでスキルで通した。

 

「はい。実は、姉が貴族によって攫われた事がありまして。それが1番辛い過去です。姉を奪われた日のことは、未だ心に忌まわしき記憶として残っています。」

「そうだったか…」

 

クレマンティーヌの件は劣ったようだが、その時と変わらないほどの激情が、ニニャの心の中で静かに燃えていた。

 

()()()()に手を出すとは。よくも、よくもやってくれたな。」

 

そしてその記憶は、見せてはいけない人物へと受け継がれたのだった。

 

 

 



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47話

 

 

 

最初の頃は、記憶の中の憎悪が怖かったり、吸血衝動が煽られたりと近づきたくない存在だったが。

オレとモモンガさんの()()が看破されてから、アルベドはオレの中でとても気がおけない相手となっていた。

それに加え最近はエンリのおかげで吸血衝動も出ないため、逆にアルベドを頼らない理由がなくなった。

 

「って事で。知恵を貸してくれ、アルベド。」

 

ニニャの姉…ツアレと言うらしいが、彼女が未だ生きているのなら確保したい。

ついでに、掻っ攫っていった領主とやらにもひと泡吹かせてやりたいものだ。

 

「きるゆー様。御方のお話に口を挟んでしまうことをお許しください。」

「…続けて。」

「そのような者に、助ける価値があるのでしょうか。そもそも、あのような下等種族と関わる事自体反対だったのです。あの者達は如何程の役に立ちましょうか。」

 

漆黒の剣とチームを組んだり、ナザリックに連れ帰ることを反対されたのは記憶に新しい。

ルプーがカルマ値の割に人間とも仲良くできていたことから忘れていた。

アルベドはガチガチの人間アンチだった。

 

「アルベド。…すまない。オレの自分勝手な判断を許してくれ。」

「いえ…御方の行動に口を出すなど出過ぎた事を言いました。」

「…お前の言う事は正しいのだろう。情を捨てられたらどれほどか。」

「きるゆー様は、人間への慈しみが深くいらっしゃいますから。虫の羽音すら掬えるのは、その尊きお心故。しかしその声が御方の心を乱していると考えると、どうしても憤りを隠しきれないのです。」

 

アルベドの言には静かな怒りが篭っていた。それは、これまで思っていたことをぶちまけた、と言った感じだった。

その怒りの矛先が人間でなければちびっていたかもしれない。

 

「真祖に変わる前、オレは人間だった。どうしても人間と自分を重ねてしまう。」

「きるゆー様は、元人間だったのですか…!?」

「アルベドは知っていると思っていたが。幻滅したか?」

「滅相もございません、とんでもございません!」

 

肯定が返って来るとは思わなかったが、万が一、億が一にでも否定されなかったらと思うと背筋がヒヤリとした。見捨てられなくて良かった。

 

「しかし、そのような背景があったとは、存じ上げなかったとは言え差し出がましいことを口にしてしまい、大変申し訳ありませんでした。」

 

アルベドはこちらが引くくらい謝罪の姿勢を見せた。無知は罪とか言い出したので、なんとか膝をつく前に止めさせた。

とりあえずツアレの保護には協力はしてくれるようだ。どう考えているかは置いておいて。

 

「その女を探すのであれば、まずは(くだん)の領主を制御する必要がありますね。それから、国に根を張っている八本指とかいうゴミ共も探し物には使えると思います。この際、その組織を叩き潰し、傘下に入れておくのが宜しいでしょう。」

 

どうやらアルベドは、ツアレ共々この国の裏社会を全て纏めて手に入れるつもりらしい。

このまま遂行されれば、エ・ランテルの半分をナザリックが支配する事になるが…まあ、何の問題もないか。

 

「モモンガ様へ進言し、許可が取れましたらデミウルゴスと作戦を練ろうと思います。」

 

 

 

 

 

「月が綺麗ですね。」

「あなたは…お噂はかねがね聞いています。私に何か御用でしょうか。」

 

月光だけが部屋を照らす。

完全不可視化…オレにとっては霧化を解いて、ラナー王女へと話しかける。

想像していた反応とは違い、彼女は椅子から立ち上がり、不用意にこちらへと近づいてきた。

 

「ベルから遠ざかっても良いのですか?」

「アダマンタイト級の冒険者さんが私の私室に直接訪問されるとは、何かお話があっての事でしょう。それとも、侍女を呼んでお飲み物をご用意した方が宜しいかしら。」

 

ズーラーノーンの使役するスケリトルドラゴン2匹を倒したことでカッパーからミスリルに。

翌日、吸血鬼を討伐した(と言う事になっている)事で、見事級飛ばしでアダマンタイトへと昇格した。

リ・エスティーゼにアダマンタイトは二組存在する。そして、オレ達黒の鮮血が三組目となったわけだ。

 

「豪胆なお方ですね。…座っても?」

「どうぞ。」

 

再び椅子に座り、手で着席を促すラナー王女。

オレは手で示されるまま高級な椅子に腰掛ける。

確かに座り心地は良いが、ナザリック(うち)のとは比べ物にならないな。

 

「本日は提案があって参りました。落ち目のリ・エスティーゼを捨て、こちら側につかないか、という提案です。」

 

足を組み、交渉のテーブルについた。影の中でデミウルゴスが蠢く。

 

「それでは、交渉を始めましょう。黄金の姫様。」

 

 

 




かずねこさん。重田さん。Re:ZEROさん。もっつぁれら123さん。因幡守さん。
高評価ありがとうごいます。

良いチーム名が思いつかなかった…
蒼の薔薇、朱の雫、漆黒。
とりあえず色を入れようと思いましたが。鮮血なのに黒って…死体の血だったのかな??
ルプスレギナが褐色で黒衣。そしてきるゆーが黒髪黒翼なので結局黒に。
もっとどうにかならんかな。綺麗にハマるものを思いついたらこっそり教えてください。
あ、でも募集したものを感想の欄で書くのは規約的に良くないっぽいのでご遠慮ください。


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嵐の前の
48話


 

 

 

ゆさゆさと、質の良いマットレスがたわむ。

ベッドの上に腰掛け、その上にエンリが向かい合う形で座っていた。

互いの息遣いを感じながら腰をリズミカルに前後させ、オレの上で美しく踊るエンリ。

髪を褒めたあの日から、エンリは2人きりの時に良く髪を下ろしてくれるようになった。

今日も、結っていた髪を下ろして優しく奉仕してくれている。

 

「エンリ、八本指と言う組織を聞いたことはあるか?」

「は、八本指ですか。聞いた事、ないと思います…っ」

「そうか。王国は、八本指なる組織が裏社会を牛耳(ぎゅうじ)っているらしい。薬物とか、違法娼館とかね。」

「そ、そうなんですか…んっ!ご、ごめんなさい、イきます…ッ!」

 

体を弓なりにしならせて、そのまま後ろに倒れていきそうなのを抱き寄せる。

食生活が改善したからか、出会った時と比べて心なしかふくよかになったように思う。

勿論太っていると言うわけではなく、むしろもう少しふっくらしたほうが健康的に良さそうなのだが。

本人に言っても悲しませてしまうため心の中にしまっておく。

 

「はぁ…はぁ…はぁ……ごめんなさい、私だけ先に…」

「気にするな。」

 

呼吸と連動し、きゅっ、きゅっ、と断続的に締め上げられる。

乱れた息のままもたれかかったエンリを抱きしめ、肌と肌とで体温を感じ取る。

まだまだ細い背中に手を回し、手慰みに撫で回す。すべすべしていてとても心地が良い。

 

ナザリック(うち)が、その八本指を壊滅させて乗っ取る計画を立ててるんだけど…エンリはどう思う?」

「どうって、そんな。私はただの村娘ですよ?難しいことは…」

 

街へ行くどころか、村からも数えるほどしか出たことがない典型的な田舎の村娘であるエンリ。

オレも別にアドバイスを期待して話したわけではない。手の内や腹の探り合いなどの舌戦ではなく、ただの雑談だ。

加えて、裏社会を支配することをもしかするとエンリに良く思われないのではないかと危惧していた。

かと言って、モモンガさんが動いている時点で今更止められるわけではないのだが。

 

「いやいや、そうじゃなくて。…そうだね、じゃあ、ただの村娘なりに、軽い気持ちで思ったことを言って欲しい。良いと思うとか。悪いと思うとか。はたまた、怖そうだとか。」

「そうですね。壮大すぎて想像もつきませんが…良いことだと、思います。これからは、その悪い組織をきるゆー様達が運営していく、ってことですよね?これまでより、うんと良くなあると思います。」

「…そうかもな。いや、そうだろう。」

 

余程の利益がない限り、この時点で将来的に王国を潰す事が決定している。

エンリの想像している未来はおそらく来ることがない。

これはラナー王女も納得の上での事であり、交渉次第ではむしろ喜んで協力するとの事だ。

確かに、彼女から聞いた情勢はなかなかに酷いものだった。

1番に挙げられるのは、王都の半分以上を八本指が支配しているという事。

これはラナーの奴隷売買禁止法の政策によって少し解消されたようだが。

上層部は貴族同士で争うことしか考えていない。どころか、敵国に機密情報を流し金を受け取っている者までいる。

果てには、王子が麻薬の流通を手助けしている始末。

ガゼフやラナーをはじめ、有能な人間も多いのだが。その上でこの様なのだからこの決定も頷ける。

 

「そろそろできそうか?エンリ。」

「良いですよ。」

 

杞憂も晴れた事で、改めてエンリの体を堪能する。

再び腰の上でいやらしいダンスが始まり、今度はまた違った動きで責め立てる。

頬に手を添えられ、エンリから施される優しく触れるだけのキス。

何度かちゅっちゅと口付けを落として、エンリは恥ずかしそうにはにかんだ。

フェラだのセックスだのやってはいるが、なんだかんだ言ってエンリはキスが好きだ。

舌と舌を絡ませ合う激しいものも好きだが、今してしまうとエンリの好意を壊してしまう気がして気が引けた。

代わりに、起き上がってエンリをベッドの上に押し倒す。

騎乗位でゆっくりと腰を振っていたエンリは、オレの突然の行動に驚いている。

 

「エンリ…今度はこっちから…」

「あっあっ…だめ……今日は悦ばせてあげようと思ってたのに……」

 

…まあ、こんな日もあっていいか。

ベッドシーツに広がる髪をかき分け、後頭部に手を置いて少し頭を上げさせる。

オレはエンリが行っていように、唇を押し付けるキスを繰り

返す。

まるで子供同士の付き合いだ。

 

「この上のザラザラしてる所、好きだよな?」

「はっ、はい、あっ…好きです……んはぁっ!…好き…」

 

激しくはない。しかし、弱点を的確に責め立てる。どちらかというと甘い快楽だ。

我慢できないのか、エンリは時折びくりと体を跳ねさせる。

そんなエンリが可愛くて、口だけではなく、頬、首、鎖骨と、色々なところに唇を押し付ける。

 

「ん…あっ…そこ、気持ち良いです…もっと…」

 

亀頭の先をぐりぐり押し付けたり、とんとん小突いたり。

エンリの急所に、色々なアプローチを繰り返す。

膣壁の蠕動が激しく強くなっていく。肉ひだが射精を煽るように逆撫でる。

そろそろ、頃合いかもしれない。腰の抽送を早めて、腰を打ちつけるように動かす。

 

「あっ、あっ、あっ、はぁんっ!…んっ!んぁっ!はぁ、はぁ…っ!」

 

ぐちっ!にちっ!づちっ!づちゅっ!

 

早くなった事で、結合部の水音が大きく鳴り始める。

ふるふると震える年相応にふっくらした胸。

 

「は、激し…っ!ま、また、いく…っ!」

「オレも出る…エンリ…」

 

エンリの、気持ち良さの涙で潤んだ瞳。

それがとろけたような表情に見えて、その瞬間絶頂に至った。

 

びゅく…びゅるるるっ…びゅるるっ…びゅぷっ……!

 

「あっ、はぁっ…あっあっ…ぁ、イく、んッ……」

 

吐精の快感のまま、亀頭を膣ひだに擦り付ける。エンリの絶頂のタイミングがズレたので、弱点に押し付けてもう一歩快感を送り込む。

腰が抜ける程の痺れるような刺激の後、エンリも絶頂を迎えた。

手足を使いオレにしがみつき、下腹部から流れる電流のような快感を容受する。

断続的に起き、止まらない快感。ひくひくと腰を痙攣させ、互いの性器の痙攣を感じ合う。

部屋には、しばらく2人の息遣いだけが鳴っていた。

 

 

 



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49話

 

 

 

「おお。思ったより立派じゃないか。」

「すごい…」

 

たっぷり愛を確かめ合って、日が上り始めた頃。

汗と唾液と。色々な汁で汚れたオレ達は、セバスとソリュシャンが滞在している屋敷の風呂を借りていた。

ナザリックにも()()()風呂やプールのような室内浴場が存在するのだが、基本的に人間を嫌っているNPC達に申し訳が立たないのでそこに入るのは断念した。

ナザリックに招いてセックスしたのは…まあオレの部屋にしか入れていないことで許してほしい。

 

「はあぁ…」

 

石鹸で互いの体を洗い合い、2人同時に浴槽の中へと沈み込み、ため息をこぼす。

離れた場所に座ろうとしたエンリの腕を掴み、座ったオレの足の間にすっぽりと抱え込む。

湯船のお湯が、じんわりと身体中をあたためる。風呂というものは何度入っても気持ちが良いものだ。

 

「私、お風呂に入るの初めてです。」

「……そうか、村には風呂のついた家なんてなかったか…」

 

確かに、エンリと互いに初めてを交換し合った時も、水を浸した布で体を拭いていた。

カルネ村ほど貧しくなくとも、基本的に平民の家には風呂がない。貴族のふりをする為とはいえ、拠点を風呂のある屋敷を選んでくれた事に感謝だ。

ちなみに、オレには風呂に入らないなんて不潔!だとかいう感覚は全くない。

オレも元の世界では風呂には入ったことがない。モモンガさんと、ナザリックの風呂に浸かって2人で感動したほどだ。

 

「銭湯でも作るか〜」

 

家ひとつひとつに風呂を作るのは無理だとしても、銭湯を建築するのはどうだろうか。

作るにしても、材料や作り手の問題もある。カルネ村に銭湯を建設する計画は、1ミリたりともナザリックの利益には繋がらない。

ギルド員の威光でメンバーを無理矢理納得させることは可能だろうが、それもちょっと違うよな。

かと言って、大金を払って現地住民に建ててもらうのも馬鹿馬鹿しいしな。

 

「せんとう、を作る…ですか?」

「ん〜、銭湯っていうのは…大衆向けの大きな風呂屋さんって感じかな。村のみんなで、大きなひとつの風呂を使い回すんだ。」

「使い回す…」

 

エンリは銭湯を知らないようで、イメージが湧かないのか首を捻っている。

ちなみに、この世界に銭湯が無いというわけではない。エンリの知識がカルネ村の中で完結しているだけだ。

 

「ん…あっ…くすぐったいです…」

 

手のひらに収まる柔らかなおっぱいを堪能しながら考える。

建築できたとして、水源の問題もある。川から水を引くのが1番なのだが、労力がかかりすぎる。

魔法で作るにしても銭湯を作っても魔法詠唱者がいないと入れません、では困るよなあ。

無限の水差しを使うのも現実的ではないし。

 

カルネ村には色々と欠陥がある。

不足しているものがあれば遠慮なく要求しろと言っているのだが、今のところお願いされたのは食料のための資金援助のみ。

マリーは木製なので風呂に入れない。村人達はこれまで風呂に入ったことがないから必要と思わない。

これでは要求されることがなのも頷けるが……

 

「…今日一日は村について回るか。」

「えっ?」

 

オレは自らの目でカルネ村の現状を見て回ることにした。

惚れた女に貢ぎたくなるのは男としてたり前の本能だ。

 

「冒険者のお仕事は大丈夫なんですか?」

「ギルドで1番難易度の高いギガントバジリスクの討伐も終わった事だ。一日くらい休んでも文句は言われないだろう。」

「そうですか。じゃあ、今日はずっと一緒ですね…」

 

ニニャの姉の捜索のため、八本指を襲撃する事と相成ったは記憶に新しい。

この件は、先日対談の場を設けたラナー王女が裏で糸を引くことになっている。

襲撃の目的を誤魔化すために色々とやらかすようで、準備も相応にかかる。作戦開始までにはまだ時間がある。

…しかし、王女が糸を引くとは良い響きだな。

 

「エンリ。乳首が…」

「きるゆー様がえっちな手で揉むからですっ」

 

手慰みにエンリの胸をぷにぷにして遊んでいたら、山の頂きで桜の花弁が屹立していた。

これには登山に挑戦した登山家が喜ぶことだろう。

 

 

 

 

カルネ村にて。

エモットの家にて食事を摂ってから、それぞれが自らの仕事へと赴く時間。

まあカルネ村では仕事の時間が決められているわけではないが。というかそもそも時計がない。

まずオレはエンリと共に村所有の畑を見て回ることにした。

カルネ村は基本的に自給自足をしている。殆どの村人が畑仕事に携わっているのだ。

 

「わーい!高ぁい!きるゆー様ぁ〜!」

「もう、ネム!外ではブラッド様!それに、あんまり困らせないの。」

 

全く…一晩中運動していたと言うのに何でこんなに元気なんだか。

精も根も搾り取られたオレはこんなにも日差しがつらいというのに。

ネムもお手伝い程度に仕事をしているのだが、残していくには忍びないので今日はオーマに休みをもらうことにした。

 

「む…」

 

ちなみに、オレが仕事を休むからといって頼まれ事が大好きなNPCを休ませるわけにもいかず。

今回はルプスレギナもついてきている。彼女も、オレに肩車されているネムを見て口をもにゅらせていた。

 

「ブラッド様。ルプス姉さん。おはようございます。」

「おはようマリー。どうだ、村の調子は。変わりないか。」

「はい。みんな元気ですよ。貧しくて痩せてた子達も、しっかり肉がついてきました。」

 

カルネ村の護衛兼監視要員のマリーは、現在村に住んでいる。

クワのような農作業具を持ち、畑へと向かっていた所オレたちと出会した。

 

「マリーも見事に村の住人っすね。」

「えへへ…」

 

褒められてないだろ、それ。マリーは嬉しそうに照れているが。

 

「マリーは今は何の仕事をしているんだ。」

「はい。今は主に畑仕事を手伝わせて頂いています。私は緑の手を持っているので…」

「緑の手か…地味だが有用なスキルだったな。緑の手と太陽の祝福はゲーm…こほん。昔から、とても役に立っていた。」

「ありがとうございます。」

 

マリー・ドールマ・イータ。彼女の名前はマリーゴールドから取っている。

そのこともあって、戦闘に関わらないものでも、植物系のスキルがたくさんぶち込んである。

 

「緑の手って?」

「確か植物育成系のスキルだったような…ポーションとかの作成に役に立つっすよ。」

 

ネムの疑問にルプーが答えた。

ユグドラシルの自由度はどのゲームをも超える。植物を育てることも当然可能だ。

そして、それに関したスキルも存在する。戦闘系スキルを抑えて取得するかと問われれば頷く人間はほぼいないだろうが。

PVP推奨のユグドラシルでは、プレイヤーが戦闘に関係のないスキルを取ることは少ない。

 

「これからどのような仕事をするのか聞いても良いか。」

「はい。私はこれから畑にお水をあげて、少し成長させた後、新しい畑を作るために土を耕します。」

「新しい畑を作るのか?」

「周りの村からの避難民が多いので、最近は畑を増やす仕事もしているんです。特産品のエンカイシも、短期間で採取できなくなってしまうので。安定収入は期待できなくて。」

 

確かに、マリーはこの村で1番力がある。ゴブリン達が行うよりかは余程効率的だろう。

しかし…なんというか。ルプーでは無いのだが、少しもにょる。

 

「オレも少し手伝わせてもらうぞ。問題ないな。」

「でも、きるゆー様に畑仕事なんて…」

「いいから。早く案内するんだ。」

 

 

 




suzuki101さん。弥紀さん。黒乃輝さん。やなクマさん。文太さん。
高評価ありがとうございます。


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50話

 

 

 

「エンリ。お前は休んでいても良いんだぞ。」

「いいえ、大丈夫です。それに…折角の一緒にお仕事ができる機会を逃したくないので。」

「物好きな奴だな。」

 

オレとエンリ、そしてマリーは、新しい畑の開拓をしていた。クワで土を掘り返し、ある程度柔らかくほぐす。

なかなか力の必要な作業だが、この中で1番力の弱いエンリですら吸血鬼なのだ。この程度の畑作業に音を上げるはずもない。

 

ちなみに、アンデットだからと言って、日差しを受けて燃えたりダメージを受けたりはしない。

しかし、オレ達吸血鬼は夜にその真価を発揮する。相対的に見て、昼間の方が力が出ないのは事実だ。

加えて、一晩中まぐわっていたエンリは一睡もしていない。まあヴァンパイアは睡眠を必ずしも必要としないが、家族と暮らしているエンリは毎晩睡眠を取っている。

そんな中、殊勝にもエンリは休みを固辞して働いているのだ。

 

ルプーは木陰で何やらネムと草花を摘んで遊んでいる。

楽しそうに見えるが何をしているんだろうか。

 

「後はスキルで土に太陽の光と栄養を一日馴染ませると、良い畑の完成です。」

「そのスキルで育てた土にはどんな効果があるんだ?」

「含めた栄養によりますが、一日程度だと収穫量や成長速度、味がおおよそ倍になります。」

「スキルって凄いんですね…」

「いや…緑の手はその程度の能力だったか?」

「いいえ。しかしこれ以上の品質を作ってしまうと、村の自立ができなくなってしまいます。それに、税の問題もありますから。」

 

「これから、村で家族を失った子達のお家を回って、お洗濯やお掃除のお手伝いをして、お昼になったら炊き出しの準備、午後からは他の予定がなければ、村の畑を見て回って、虫を退治したり間引きしたり、元気がないものにはスキルを使ったり…」

 

一応護衛兼連絡役として配置していたはずだが。馴染みすぎではないだろうか。

 

それから一日、マリーについて回った。

暫く村を見て回ったが。足りないものは多いが、村人は現時点での生活にかなり満足していた。

というかマリーが色々手を回して村人達の不満を全て解消していた。有能か。

マリーは村の全員と友好な関係を築けているようで、彼女が村の中核となっていることは間違いないようだ。

村を直接的に守った本人であるオレよりも、信頼が厚い気がするのは気のせいだろうか。

 

マリーらの仕事がひと段落ついて、ここで一日連れ回す事になったルプー以外とは解散する事となった。

オレ達は転移門(ゲート)を使い、エ・ランテル付近の物陰に飛んで。

そこから徒歩で街の中へと帰還し、チームの根城にしている宿屋へと戻ってきていた。

 

「ルプー。いや、ルプスレギナ。ここに座れ。」

「こ、この椅子にでしょうか…」

「そうだ。」

 

結局、一日遊んでいたルプー。オレが名前を呼ぶと、びくりと身を固まらせていた。怒られるとでも思っているのだろうか。

ネムの気を引いて遊んでくれていた事に感謝することはあっても怒ることはない。

そもそも、今日一日は休暇扱いだったのだから何をしていても良いのだ。

オレはルプスレギナの三つ編みを持ち上げ、先に留めてある髪飾りを見つける。

 

「これを解いてしまっても良いか?」

「は、はい。私の髪の一本に至るまで、至高なる御方のお望みのままに…」

 

留め具である髪飾りを外し、二つに別れた編み込みを解く。

解放された後ろ髪がふわりと広がる。艶のある綺麗な赤毛だ。

 

上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)

 

スキルを使い、ブラッシング用のヘアブラシを作り出す。

風呂上がりのエンリが、櫛で髪を梳かしているのを見て思いついた。これは配下の褒美に使えるかもしれない、と。

勿論思いついてすぐに、エンリの髪もくまなく梳かしあげた。

 

邪魔な帽子もとり外し、ルプスレギナの髪を邪魔するものは無くなった。

左右に尖り突き出した赤毛がある。これは…髪?耳?

ケモミミだった場合痛めてしまうといけないためこの部分には手を出さないようにしよう。

 

首元に手を差し入れ、髪を一房掬う。

ブラシの毛が地肌に当たらないよう、髪を浮かせてブラシを滑らせる。

すー、と引っ掛かりなく毛先まで梳く。

先ほどまで結っていたのが嘘のように、一切の癖がない。

 

「ブラシの通りが良い。しっかりと手入れされているな。」

「あっ…あの…きるゆー様、これは一体…」

「褒美だ。」

 

ルプスレギナの髪がサラサラすぎて、ブラッシングの意味が全くない。

しかしNPC達にはこの行為自体が何物にも変え難い褒美になるはずだ。

髪を持ち上げて、丹念にブラシを通す。正直雰囲気でやっていて、これで合っているのかわからないが。

 

「これまで、黒の鮮血の片割れとして良く仕えてくれた。これは心ばかりの返礼だ。足りないと言うのなら望むものを用意しよう。」

「そのような事があろうはずが御座いません!御方に仕えるのは、我らナザリックに席を置く者全ての望み。お傍にいさせていただける事自体が至上の喜びです。」

 

そうは言うものの、耳なのか髪なのか、左右に尖る毛の塊がへにょっと垂れ下がった。

言動が一致していないため不思議に思っていると、ルプーは杞憂を告げる。

 

「それよりも、褒美を頂けるということは…きるゆー様をお支え出来るのもこれまでということでしょうか…」

「ああ、いや。勘違いをさせてしまったようだな。側仕えを交代するというわけではない。これからも頼む。」

「はい!」

 

人狼であるからか、ぶんぶんと振られる尻尾を幻視した。

こうして髪を梳いていると、本当に犬猫の毛繕いをしているようだ。

 

「突然こんなことを言い出して悪かったな。モモンガさんと話し合っていたんだ。お前達の忠義への返礼はどのようにして行えば良いのか。」

「御方々がそのような事を……しかし、先程も申し上げた通り、我々の至上の喜びは御方々に仕える事。ご命令していただける事こそが褒美です。」

「はは、ありがとう。ルプスレギナ。…しかしだな。オレ達にも、お前達の労をねぎらう機会を与えてはくれないか。」

 

ついでにとばかりに、オレはルプスレギナの頭の上に手を置いた。

髪の流れに沿うように、何度か髪を上から撫で付ける。

 

「ひあっ…あ、えっ…あの…っ…あ、ぁ、ィく……ッ」

 

ルプスレギナはふるふると身を震わせていた。

感動に身を震わせているのなら良いのだが。

 

これの評価が良ければ、モモンガさんからもアルベドかシャルティアなんかにやってあげれば手放しで喜ぶだろう。

彼女達はこと()に関しての拘りが強いからな。

 

「きるゆー様。作戦の準備が完了致しました。いつでも開始できます。」

「そうか…それでは今夜より、計画の第一段階を開始する。」

 

そしてついに、アルベドより待ち侘びたメッセージが届いた。

その日、王国を支配するその第一歩が踏み出される。

 

 

 



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