ブラック・ブレット【蒼き閃光】 (ウィキッド)
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始まり
はじまりの物語


※初めての作品です。
読みにくい、文章力皆無、更新遅いという負の三拍子がそろっています。
ご注意ください。
基本原作に沿いますが途中にオリジナル展開、チート、微ハーレム、中二要素が入って来ます、苦手な方はご注意ください。
アンチヘイト、R-15は保険です。


少年はこの世の地獄を目の当たりにしていた。

周りには崩壊した建物、生きるのをあきらめている人、以前までは『ヒト』だったものが見えた。

少年『水木蒼矢』はそれらの光景を見ても止まらずに走り続けた。

 

ウイルス性寄生生物『ガストレア』、奴らは人間を容赦なく狩る、平然と、何事もないように、ただ狩る。

父は家族を守るために奴らに喰われ母を守るために兄は母の近くにいる。

何もできない自分が悔しく、奴らから身を守る場所を探しに行った。そしてあまり被害が出ていない建物を見つけ、急いで家族のもとに向かった。大事な母親と兄、そして新しく生まれてくる妹のためにも…

 

家につくと安心した様子でこちらを見る二人がいた。

 

「母さん!兄さん!ここより安全な場所をみつけたよ!」

 

そう告げると母は悲しそうに、兄は少し怒気を含んだ表情でこちらを見た。

 

「どうしたの?早くいこうよ!」

 

すると兄は静かな声でこう言った。

 

「…今の母さんをどこかに連れて行けると思うのか?」

「…え?」

「今の母さんを歩きまわすことはやつらの餌にするのと同じだと思うのだが?」

 

確かにそうだった。母は現在子供を身ごもり満足に動くことは難しそうだった。

そんなことも気づかなった自分を殴りたかった。

そんな時突然頭に柔らかな感触を感じ、顔をあげると笑顔の母さんが自分の頭を撫でてくれていた。

 

「家族のために頑張ったのでしょう?ありがとう、でも心配させないで?あなたたちは私の大事な宝物なんだから」

 

とても柔らかい声だった。とても温かく感じる声だった。

でもこの幸せは長くは続かなかった。

 

「グルァアアアアア!!」

 

奴らの声だった、いつの間にか家の近くまで来て、今にも母さんに飛びかかろうとしている。

兄は恐怖で動けないみたいだった。

なら自分にしか母さんを守ることが出来ない、そう考えるのと同時に体は動いていた。

母の前に立ち、盾になった。

すぐさま跳ね飛ばされ意識が飛びそうになる、痛い…

しかし奴らの攻撃はやまない、腕が折れ、目を食われ、ついには両足も喰われてしまった。

そこで意識は途切れた。

 

 

 

目を覚ますとそこは蛍光灯がチカチカと光る天井が見えた。

ここはどこだろう?いったいボクはどうなったのだろうか?そんな事を考えているなか横から声が聞こえた。

 

「左目、さらに両足も喰われたのか、君もついてないな。いや生きているのだからついているのか?」

 

手術着の女の人が何か言ってる。

 

「おはよう!水木蒼矢君。最悪の目覚めだろうけどね。突然だけど君はもう少しで死ぬ。」

 

なにを言っているのかよくわからない。

 

「しかし、君には選択する権利がある。」

 

女の人の濁った眼がボクの残った方の眼を覗き込む。

 

「一つは人間であることを選択し生きることをやめること。もう一つは生きることを選択し、人間であることをやめること。だ」

 

もしも。

 

「一つ…質問しても…いいですか?…」

 

もしも、ボクの大切な人たちが生きているなら。

 

「ボクの母や兄、妹は…生きていますか…?」

 

ボクは生きたい、生きてみんなを守りたい。

 

「ああ、もちろん生きているよ。」

 

その返答がきければもう十分だった。

 

「ボクは生きたいです。人間をやめてでも生きたいです!」

 

女の人はにっこりと笑い。こう告げた。

 

「よろしい。君は自分で自分の運命を選択した。ならば私は君の希望にこたえよう。」

 

そう告げられ、ボクは意識がだんだん遠のいていった。

 

「そうそう忘れるところだった。君が襲われたときに助けてくれた人から伝言を預かっているんだった。『あとでお嬢様のところに来るように』だそうだよ?君の知り合いには貴族でもいるのかい?」

 

凛ちゃんのとこのロンさんかなぁ、あとでお礼を言いに行かなきゃなぁ…。

こうして僕は意識を手放した…。

 

 

 

 

そして水木蒼矢の戦いは始まった…。




短くてすいません、誤字脱字は見つけ次第修正します。


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左右の義足、左目の義眼

すいません、駄文です、原作ルートまではまだいけません。

※修正いたしました


目が覚めると、そこは白い部屋だった。

 

「ここ…どこ…?」

「ここは病室だよ、一応ね。」

 

白衣を着た女の人がいた。

 

「あなたは…だれですか?」

「ああ、記憶が混乱しているのかな?私は室戸菫、君の命の恩人の一人だよ。覚えとくといい。」

 

 

彼女、室戸菫と名乗った女性は僕に詳しい状況を教えてくれた。

・僕の左右の足はバラニウムというガストレアに有効である物質で作られた義足になったこと。

・左目の義眼は数秒先の未来を予測できるようなものであること。

・今は安静にする必要があるが、近いうち戦闘訓練を受けてもらうこと。

などである。

 

「何個か質問があります。えっと…室戸さん?」

「菫でいいよ、君と私の仲だ。遠慮はいらん」

 

「僕の家族は無事なんですか? 無事だとしたら今どこに?」

「君の兄の煉侍くん、母親の白さんは金蜂家で保護されているよ。安心したまえ、二人とも無事だ」

「……本当ですか?」

「さすがにこんな嘘はつかないよ私は」

 

よかった……本当に良かった。もしも、母さんたちを救えてなかったら……

 

「ありがとうございます!」

「お礼はいいよ。というより私には君にお礼を言われる資格はない。……ほかに質問は?」

 

菫さんの言葉に疑問を抱いたが、聞いても答えてはくれなさそうなので、次の質問をする。

 

「えっと、次にこの義眼ですが、数秒先の未来が見えるとはどういうことですか?」

「そのままの意味だよ。その眼は未来を計算し、最も起こり得るものを映し出す。負担が大きいのが

難点だがね。」

 

負担が大きい?使いすぎるとどうなるんだろう?

 

「あの…使いすぎるとどうなるんでしょうか?」

 

菫さんは何事もないかのように言った。

 

「脳に負担がかかりすぎて死ぬ。よくて廃人化だね。」

「なんてものを付けるんですか!」

「未来を予知するほどの計算をするんだから負担は大きいのは当たり前だろうよ。そのかわりに精度は保障するよ。」

 

もしもこれで精度が保障されてなかったら僕はこの眼を抉り取っただろうなぁ…

 

「眼の事はもういいです……。次に義足についてですが。このデザインはなんなんですか?」

「なんなんですかとは失礼だな、……かっこいいだろう?」

 

ボクの足についいてる義足は、つま先、踵の先に一本の大きく長いとげがついている。とげというよりも剣先に近いだろうか。さらに膝にはより長いとげがついてる。長さは30cmくらいだろうか。

 

「いくらなんでも長すぎません!?日常生活に負担でますよ!?」

「大丈夫だよ。左眼でとげのon,offはできるようになってるよ。眼を起動してみたまえ」

 

ためしに起動してみると。

 

『おはようございます。マスター』

 

………手術後だからかなぁ、変な声が聞こえる……気のせいだよね?

 

『無視はさみしいです。マスター。……未来予測しまくって殺しますよ?』

 

なんか物騒なこと言ってるよ!!気のせいじゃないよ!!

 

「菫さんなんですか。なんか声が聞こえてくるんですけど。」

「ああ、その声の事か。私が付けた機能だよ。きみがそのまま眼を使うのは難しいだろうから、アドバイザーを付けたんだ。すごいだろ?」

 

菫さんが誇らしげに胸を張る。

 

「確かにすごいですね。でもなんか殺すとか聞こえてるんですけど…?」

「照れ隠しだろう。きっと。それよりとげをしまわないのかい?」

 

そうだった。えっと……どうするんだろう?

 

『マスター。どうします?』

 

しまいたいけどどうすればいいんだろう?

 

『簡単です。マスターがしまいたいと思えば私が何とかします。』

 

その直後僕の足は普通の足のように変化した。

 

「ふむ、眼の使い方は大丈夫そうだね。ちなみに足のとげの先からはバラニウムの液体がでるようにしているよ。ほかにも麻痺効果や、人体に影響が出る毒も出せる。」

「なんか…すごいですね。」

 

眼のアドバイザーをオフにしながら言う。

 

「他には両足に仕込んでいるカードリッジの推進力によるとてつもない攻撃力を出せるようにしたね。」

「なんで、そんなに強力なものを付けたんですか?!」

 

菫さんは真顔になりこう告げた。

 

「『復讐』のためだよ。私の彼氏のね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

菫さんの彼氏はガストレアに殺されたらしい。その復讐ために僕をこんなに強化しているというのだ。

 

「まぁ一番の理由はそうだが、他には金蜂家のお願いだからだ」

「凛ちゃんのですか!?…なんで…?」

 

金蜂凛…僕の幼馴染で、かなりのお金持ちの娘らしい。基本厳しく家族以外には必要以上の助けや施しなどはしない子だ。そんな子がどうして…?

 

「彼女は泣きながら頼んでいたよ。『蒼矢を助けてくれるなら、私の人生を上げます。だから助けてください。』と言って余分に予算をだしてくれてね。せっかくだから、当初の予定よりも強力なものにしたんだ」

 

どうしてだろう?僕に人生を犠牲にするほどの価値があるのだろうか?

…わからない。

 

「手術前にも言ったが、お屋敷で待っているそうだよ?あとで行くといい。」

 

この疑問は…あとで彼女に聞いてみよう。

 

「わかりました。最後の質問です。戦闘訓練とは誰が教えるのですか?菫さんですか?」

 

菫さんは呆れたように言った。

 

「蒼矢くん。君はこのウサギにも負ける強さの私からおそわりたいのかい?…金蜂家の戦闘部隊が教えるそうだよ」

 

「金蜂の戦闘部隊というと『雀蜂』ですか?」

 

凛ちゃんが依然話していた気がする。とても強い人達らしい。

 

「そうだ。…死ぬなよ?」

「そんなに強い人たちなんですか?!」

「うわさだと隊長は一人で国を落とせるらしいよ。人間をやめてるとはおもわないか?」

 

…大丈夫かなぁ

 

 

「まあ、無理はまだしないでくれよ?君には少し興味があるしね。」

「ははっ御冗談を…」

「…たまには会いに来てくれよ。案外寂しいのだから。」

 

このひともさびしいと感じるんだと驚く。

 

「わかりましたよ。菫さん。」

「ありがとう。蒼矢くん。こんどはコーヒーでもおごるよ。」

 

…僕コーヒー飲めないんだけどなぁ

 




誤字、脱字報告、アドバイスなどがあったらお願いします。


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金蜂家

すいません、駄文で、


次の日僕は金蜂家に来ていた。

 

「相変わらず大きいなぁ~。迷いそうだよ。」

 

僕の家の何個分くらいなんだろう?想像もつかないや。

 

「蒼矢様、お嬢様の部屋へご案内いたします。」

 

僕を出迎えてくれたのは眼鏡をかけた初老の執事ロンさん、銀髪のショートカットヘアーのメイド見

習いサラちゃんだった。

 

「すいません…お願いします。」

 

この二人にもいつもお世話になっているなぁ。

 

「いえ、こちらこそ病み上がりに申し訳ございません。」

 

ロンさんとサラちゃんは頭を下げて言った。

…なんか、悪いことしてないのにすごい罪悪感かんじるなぁ。

 

「頭を上げてください。お二人とも。僕もこの義足に慣れておきたかったのでちょうどいい運動ですよ。」

「そういっていただけると幸いです。ではご案内しましょう。」

 

そういって二人は僕を凛ちゃんの部屋に案内してくれた。

 

 

「では、ごゆっくり。」

 

案内された部屋に入るとそこには少し不機嫌そうな、赤と白が織り交ざった服を着た赤目の少女がいた。

腰まで伸びる長い金髪が窓から差す光に反射してとてもきれいに輝いている。

間違いない。凛ちゃんだ。

 

「凛ちゃん。こんにち「こんにちは。じゃないわよ。全く来るのが遅すぎるのよ。」

「でも、それ「言い訳はあまり好きではないわね蒼矢くん?」…はい…すいませんでした。」

 

お礼を言うのが遅くなったのは事実なのだから謝ろう。素直に、うん。

 

「よろしい。」

 

彼女はにっこりと笑った。

 

「義足には慣れたかしら?体はどこか痛む?」

「さすがにすぐには慣れないね。眼も変な感じがするし。でもそれ以外は大丈夫だよ。」

 

…腕は折れているけどね…

 

「そう、ならいいわ。詳しい話は菫から聞いているかしら?」

「えっと、戦闘訓練を受けてもらうってことは聞いたよ。」

 

そう告げると、凛ちゃんはため息をついた。

 

「…あの医者、肝心なこと伝えてないわね…。いい?蒼矢くん。あなたにはこの家で暮らしてもらうわ。」

「…ふぇ?」

 

変な声が出たのはしょうがないと思う。

 

「凛ちゃん?どういうこと?」

「いい?蒼矢くん。君はいま戦闘訓練も受けてないし、実戦経験もない。でもその義足、義眼は強力だわ。いえ、強力すぎる…だからその力をある程度使いこなせるまでは私の家で保護することにしたの。」

 

…なるほど。菫さんが言ったとうりの機能があるなら、確かに強力すぎる力だ。

 

「でもいくらなんでも住むなん「拒否権はないわ。あなたのご家族の許可もいただいてるし」

 

…なんともはやい仕事でした。

 

「いいじゃない、ここならある程度安全よ?あなたのご家族も落ち着くまでここに泊めさせてあげるし。」

 

こうなった凛ちゃんはもう止められないよね。

 

「…わかったよ。これからよろしくね。凛ちゃん。」

「ええ、よろしく。蒼矢くん。」

 

 

凛ちゃんの部屋を出て次に案内されたのは、母さんと兄さんのいる部屋だった。

母さんの黒髪を梳かしていたらしく兄さんの手にはくしがあった。

 

「よう。蒼矢!足のほうはどんな感じだ?」

 

兄さん‐煉侍は笑顔でこちらに話しかけてきた。

 

「早く慣れさせるよう頑張るよ。これからね。母さんの具合はどう?」

「大丈夫よ、蒼矢。あなたこそ大丈夫?」

「だいじょうぶだよ母さん。でも戦闘訓練が近いうちに始まるらしいから少し緊張してるかな。」

 

戦闘訓練という言葉を聞いてから母さんの顔は曇り、兄さんは悔しそうだった。

 

「…ごめんなさいね私のせいであなたの人生を台無しにしちゃって…母親失格だわ…」

「すまねぇな蒼矢。おれが代わりになるべきなのに…」

 

二人ともとてもつらそうだった。でも僕は、

 

「僕は母さんを守れて安心したよ。だから二人ともそんな顔しないでよ。」

 

後悔はしない。

二人は驚いた顔をしていた。そして、すぐ笑いがこぼれた。

 

「いい顔するようになったわね、蒼矢。」

「ああ、いまだったら兄と弟っていう立場も逆になりそうだぜ。」

 

…そんな変なこといったかなぁ?僕。

そのあと、二人と少しの雑談をしてから僕はある部屋に案内された。

 

 

その部屋は、汚かった、そしてとてつもなく酒臭かった。「雀蜂」の隊長さんの部屋らしい。

隊長さんらしい人はベットで寝ている。

ロンさんに少し部屋の外で待っていてほしいといわれた。

ただ待っているのも暇なので、サラちゃんに話しかけてみた。

 

「ねぇ、サラちゃん?」

「…なんですか。ソーヤさん」

 

眠そうな目をこちらに向けるサラちゃん。

 

「『雀蜂』の隊長さんってどんな人?こわい?」

 

サラちゃんは少し考え、

 

「基本優しいけど、起こった時と訓練時はやばい。」

 

やばいってなに?やばいって?。

 

「見ればわかると思うよ…思います。」

「敬語はいいよ。そんな年変わらないし。」

 

なんというか敬語を使われるとくすぐったく感じるんだよねぇ。

 

「わかった。ソーヤ。」

 

うん。これが落ち着く。

その後少しの雑談をしていると、ロンさんが出てきた。

 

「蒼矢様お待たせいたしました。どうぞ。」

 

部屋に入るとさっきよりはきれいになっており、においも花の香りがする。

隊長さんは…眠たそうな声と眠たそうな目でこちらに話しかけてきた。

 

「あー。うん、『雀蜂』の隊長のケイ・リーズだ、よろしくな、坊主。」

 

短めな黒髪、身長もそんなに高くなく、痩せている。本当に隊長さんなのかと疑問に思った。

でも、彼からは「やばい」雰囲気が出てる気がする。なんとなくだけど。

 

「よ、よろしくお願いします!」

「あー、かしこまんな。訓練中はよろしくな。」

 

そう告げると、また眠ってしまった。

 

こうして屋敷の案内は終了し、自分の部屋に案内されベットに入った。

心配なことしかないが、とにかく強くなろうと決心したのだった。

 

 

 

 

 

こうして「水木蒼矢」は物語に組み込まれ始める。

 

 




キャラ紹介

水木蒼矢

青髪で小柄な男の子。女の子に見えなくもなく、友達によくいじられている。
この話のときは6歳。

義眼の人工AI
正式名称不明だが蒼矢は「アイ」と呼ぶことにした。
基本蒼矢好き

水木煉侍

赤髪、高身長と、蒼矢の正反対の見た目をしている。
この話のときは10歳

水木白

黒髪で現在妊娠中の女性。蒼矢、煉侍の母。家族思いの優しい人。

水木黒土

白髪の男性。白を守り死亡

金蜂凛

金髪、赤目の女性。蒼矢の幼馴染で蒼矢に惚れている。
赤目ではあるが、「呪われた子供たち」ではない。
この時は6歳

ロン・クリーク

金蜂家の執事長。
初老の男性で眼鏡をかけている。昔はすごかったらしい。

サラ・カシス

金蜂家のメイド見習い
赤目で、銀髪、で小さい女の子。
「呪われた子供たち」でもある。
このときは4歳

ケイ・リーズ

金蜂家特殊戦闘部隊「雀蜂」の隊長である。
戦闘時は「やばい」が、それ以外は気さくな兄さんである。
ビールが大好き。

次回から十年後に跳び、原作ルートに入ります。
あと、感想もらうと喜びます


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黒の銃弾と蒼き閃光
十年後の始まり


もう、駄文です。
次回蓮太郎でます、木更、聖天子でます。



俺が金蜂家にすみ始めてから10年。俺は菫さんに呼び出され、病院に来ていた。

いったい何の用だろう?

 

「菫さーん。来ましたよー?」

 

菫さんは病院の霊安室を拡張して自分の部屋を作っている。これっていいのかなぁ。

 

「扉のデザインもなんか不気味だし…」

 

扉を開くとそこには……

 

マッチョの男の死体がこちらを見ていた。

 

「うぇお!?」

 

死体の後ろから笑い声が聞こえた。

 

「ファハアッハハハ!!相変わらず君は驚かし甲斐がある。」

 

菫は死体の後ろから顔を出していった。

 

「ようこそ。蒼矢君、私の、私による、私のための楽園へ。」

「…心臓が止まるかと思いましたよ、菫さん…。」

 

昔はここに来るとよく気絶していたなぁ。今じゃ慣れてしまったけど。

 

「で、今日は何の用ですか?早く帰らないと学校の宿題が出来ません」

 

微積とか意味わからんし余裕をもって始めたいのだ。

菫は死体を置いて、こちらに顔を向ける。

 

「ふむ、用件は3つだ。まず、君の妹の桃ちゃん。調子はどうだい?」

「…元気ですよ。かなり冷静な子ですけど…。」

 

俺の妹、水木桃は『呪われた子供たち』だった。でも母も兄も、凛さんも、みんな優しく扱ってくれた。そのおかげで彼女はまともな状態で暮らしている。

浸食率も低い状態を維持しており、今は学校で遊んでいる。

 

「ふむ、ならいい。では二つ目だ、君の調子はどうだ。義足、義眼どちらも支障はないか?」

「大丈夫ですよ、あまり使いたくありませんが戦闘時での動きもいつもと同じです。」

「ならいい…最後に、君に近いうち会ってもらいたい人物がいる。」

 

会ってもらいたい人物?

 

「珍しいですね、死体大好きなあなたが生きている人とかかわりを持つなんて。」

「きみも結構毒舌になってきてるね。事実だけど。…君と同じく私が手術を行った人間だ。」

「会って、どうすればいいんですか?」

 

菫はこちらにコーヒーを渡しながら言う。

 

「彼はね、不幸顔で、ヘタレで、ロリコンな変態さんだ。君との接点が多いから一度会わせてみるのもいいかと思ってな。あぁそうだ君は不幸顔ではないね、女顔だ女装してみないか?」

「ヘタレなのは認めてもいいかもしれませんがそれ以外は違います!あと女顔言わないでください。」

 

凛さんも「真顔で性転換してみたら?」とかいうしそんなに女顔かなぁ?

 

「まぁ、冗談は置いといて本当に会ってほしいんだ。彼は「力」を使うのを恐れているようだしね。君と話せば何か変わるかもしれない。」

「まぁ今日でなければいいですよ。桃も呼びます?」

「やめときたまえ、襲われるぞ彼は幼女趣味だからな」

 

…会いたくなくなってきたなぁ。

 

「で、彼の名前はなんですか?」

「彼は「里見蓮太郎」。君と同じ『民警』の一人で君と同じ勾田高校に通学している」

 

驚いた……、まさか同じ高校だとは思わなかった、しかも同じ民警。共通点結構あるなぁ、確かに。

 

「わかりました、では明日声かけてみます。コーヒー御馳走様でした」

 

菫は微笑み、「また来てくれよ」といった。

 

 

金蜂の家に帰ると、サラちゃんと珍しく凛さんが出迎えに来てくれた。

 

「ただいま。凛さん珍しいねお出迎えなんて」

 

凛さんはいつもどうりの不機嫌そうな顔で

 

「おかえり。伝えることがあるから仕方なくよ。明日の放課後私と一緒に防衛省まで来て」

 

防衛省?またなんで?

疑問が顔に出ていたのか、凛さんはすぐに理由を教えてくれた。

 

「天子ちゃんからのお呼び出しよ、私とあなた、そしてケイの三人がね」

「隊長も!?なにがあるの?隊長が呼ばれるなんてよっぽどの事じゃない?」

 

あの人素手でガストレアふき飛ばせる人だよ?

 

「内容は聞いてないけど、面倒なことには違いないわ。そこで明日の放課後私の護衛もかねてついてきなさい」

「了解。でも行く前に会いたい人がいるんだけど」

 

凛さんの眉がピクッと動いた気がする

 

「…会いたい人?」

「同じ学校の里見って子。菫さんに会ってほしいって頼まれて」

 

凛さんは少し考えてこう言った。

 

「私も行くわ。その”智美”って子を見てみたいわ。」

 

なんで、そんなに不機嫌そうなんだろ?

 

「あと蒼矢あとで私の部屋に来なさい。チェスでもしましょ」

 

昨日もやったんだよね…チェス。俺の勝ちだったけど。

 

「ソーヤ、負けないでね、執事長と賭けてるんだから…」

「勝手に賭けないでくれるかな!?サラ!?」

 

というよりロンさんも賭け事するんだな。

 

「サラ…あなた主に賭けないなんていい度胸してるわね?」

 

後ろに般若が見えてるよ。凛さん。

 

サラが凛に連れて行かれるのを見届け、自分の部屋に入ると妹の桃がいた。

俺のベッドの下を覗き込んでいる状態で…

 

「…何やってんの?桃」

 

すると桃は紫色の髪を揺らしながらこちら見て、焦りもせずにこう言った。

 

「兄さんは、大人の本を持ってないんですか?」

「なに言ってんの!?何言ってんの!?」

 

本当に何言ってんの!?

 

「いえ、煉兄さんに『蒼矢のタイプを知りたいならベットの下を探れ、そこに大人の本がある。その中身の女がタイプだ!』と電話で教えてもらったので確かめてました」

 

…何教えてんだあのバカ兄…!

 

「桃…お前にはそういうのを見るのは早いし、おれは持ってないよ」

 

桃が驚いたように目を見開き

 

「兄さんにはタイプな人がいないのですか!?なんでもいいんですか!?」

 

と迫ってきた。怖い

おとなしくてやさしいひとがタイプだといって何とかごまかしたけど…後で兄貴を殴りに行こう。

 

夕食後、凛さんの部屋に向かう時にケイ隊長に会って、「頑張れよ!」と言われた。ものっすごい笑顔で。

 

「嫌な予感しかしねぇ…」

 

だって部屋の中から

 

『おとなしく…やさしい…私はおとなしくてやさしい…!』

 

って声が聞こえるもん。隊長に何か吹き込まれたのか?

 

「入るよー凛さん。」

 

許可をもらって部屋に入ると。ピンクのパジャマを着た凛がいた。

 

「あら…早いわね。待ってていまクッキーでも用意するから。」

 

「飲み物は紅茶でいい?それともジュース?」

 

うん。確定

 

「大丈夫?眠いのだったら今日はチェスはやめましょうか?」

「凛さん、隊長に何か吹き込まれたろ?」

 

凛はビクッと震え。こちらを向いた。

 

「…ナンノコトカシラ、ワタシニハワカラナイワ」

 

カタコトで言われても信憑性ないよ。冷や汗も出てるし。

 

「なにを言われたかわからないけど、いつもの凛さんに戻ってくれたらうれしいよ。そっちのほうが好きだし。」

 

凛は少し驚き、顔を赤く染めながらうなずいた。

 

「そうね。やっぱいつものままがいちばんね。…あと蒼矢、凛ちゃんでいいわ。」

「…わかったよ凛ちゃん。…照れるね、やっぱ」

「昔は何ともなかったんだから慣れなさい。」

 

そういって凛さんはチェスの準備をし始めた。

 

「明日の放課後、教室の前に向かいに行くから待ってなさいね。」

「ああ、そのあと『里見』さんに会いに行くんだね」

「…ええそうよ、『智美』さんに会いに行くのよ…!」

 

なんかチェスの駒からひびが入るような嫌な音が聞こえるんですけど…

 

「…もう十年なのね、あなたが来てから。」

 

凛は昔を思い出してるように話しかける。

 

「そうだね、いろいろあった気がする。」

 

桃が生まれ、母さんが死に、兄貴が金蜂家を出て民警の事務所を立ち上げたり、ハロウィンパーティやクリスマスパーティも行った。

貴族のパーティにもつれられ聖天子様とも知り合ったり、サラちゃんの秘密を聞いたり、ロンさんに料理を教えてもらったり、隊長に風俗みたいなところに連れてかれかけたりもした。

…ほんとにいろいろだなぁ。

結局なんでおれの手術のためにお金をかけたのかはいまだに聞けてない。…ヘタレだなぁ俺。

 

「この十年はとても楽しかった。これからも続くといいわね。」

 

彼女は微笑みながら言った。

その笑顔がとてもきれいだと俺は感じた。

 

 

「はい、チェックメイト」

「…あなた強いわね。やっぱ」

 

チェスの勝負は俺の大勝利でした。悪いね、ロンさん。




アドバイス、感想あればお願いします、駄文ですが。
桃のガストレアモデルはもう少し後で出します。


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里見蓮太郎

すいません。駄文はいりませんか。安いですよ。

いつもよりもひどいです。


次の日、2時限目の授業終りに凛ちゃんからメールがあった。

 

『事情が変わり4時限目の後に行く事になったわ。サラと一緒に迎えに行くから待ってて。』

「授業サボるしかないかぁ…」

「なにぶつぶつ言ってんだ?」

 

俺のつぶやきを聞いていたらしく後ろの席から声が聞こえた。

彼の名前は上田智也。一応俺の友人だ。

 

「いや、民警の仕事が入っちゃって、午後の授業サボる必要が出てきたんだよ。」

 

それを聞いた智也は、ニヤッと笑った。

 

「ノートならジュース4本で見せてやってもいいぜ?」

 

こいつ…しかも4本って…

 

「仕方ない、頼むわ。」

「よっし!頼まれた!…しかし大変だなぁお前も。」

「…もう慣れたよ。あっ、そうだ。話は変わるけどお前里見蓮太郎って知ってる?」

 

俺はほかのクラスの情報は全然知らん。アイにでも頼めば別だけど、見返りがデカすぎる。

 

「うーん…聞いたことないな。生徒会長か委員長にでも聞いてみるか?」

「委員長は職員室だし、生徒会長か…面倒だけど行ってみるか。次の授業少し遅れるかもしれん。」

 

智也にそう告げ、生徒会室に向かった。

 

「んで、何の用や?えっと…蒼矢ちゃん?」

 

勾田高校生徒会長こと司馬未織

和服が似合いそうな美人で学園祭のミスコンで圧倒的な差で一位を取った彼女と話すのは少し緊張する。

 

「いえ、司馬さん。里見蓮太郎って人どこのクラスかわかりますか?」

 

すると彼女は、目をすこし鋭くした。

 

「…何で知りたいん?理由教えてくれへんとウチも教えとうあらへんやけど?」

 

まぁ、手術のことを除いて話せば大丈夫だろう。

 

「室戸菫という人に会ってほしいと頼まれたんです。理由はそれだけです。」

 

そう告げると彼女は少し驚いたようだった。しかしすぐ笑顔になり、

 

「ええよ。ウチが一緒についていく条件なら。」

 

…仕方ない。彼のクラスさえわかれば今後は一人で会いに行く機会も多くなるだろう。

俺はその条件を受け入れ、未織に連れて行かれた。

会いに行くまでに未織にいくつか質問された。

 

「蒼矢ちゃんは民警なん?」

「ええ。司馬さんは?」

「未織でええよ。ウチはちゃうよ、里見ちゃんの支援はしとるけど。蒼矢ちゃんはIP序列はどんくらい?」

「…十八万ちょいです。恥ずかしながら…」

 

…低いなぁ、と我ながら思う。

それを聞いた未織は少し安心したように見えた。

 

「あら、里見ちゃんより低いんやなぁ。序列」

 

…彼はやっぱり強いんだろうなぁ、俺より。

 

「…強くなりたいなぁ。」

 

その後、少しの雑談をしながら彼のクラスに向かった。

 

「里見ちゃーん?おるー?会いたい言うてる子おるんやけどー?」

 

その声にクラス全員がこちらに注目する。

…頭を抱えてる人がいる、彼が蓮太郎だろうか?

 

「里見ちゃーん?おらへんのー?菫せんせに会うよう頼まれとるらしいんやけど?」

 

その直後頭を抱えてた男がこちらに向かってくる。

 

「わざわざお前が呼びに来るなよ…未織。目立つんだし。」

 

その男は菫が言っていたとうりの不幸顔、寝不足なのか目元には隈が出来てる。

 

「いいやん?里見ちゃん照れへんでも。それより時間ないから用件を伝えとき蒼矢ちゃん」

 

そうだった、蓮太郎を教室からだし、小声で話しかける。

 

「初めまして里見蓮太郎さん、菫さんに会ってほしいと言われてきました。」

「…用件はなんだ?」

 

今伝えてもいいが、出来れば二人きりで話したい。

 

「すいません、できるならば二人きりで話したいんですけど。」

 

そう告げると、

 

「わかった。未織、自分のとこ戻っといてくれ。おれはこいつと二人っきりで話がある。」

 

そういうと未織はからかうように

 

「…里見ちゃん、そういう趣味やったん!どうりでウチのアプローチがきかへんはずやわ…。」

「違います!」

「違ぇ!」

 

…なんか女子たちがこっちをキラキラした目で見てるんですけど…

なるべく気にしないようにクラスから離れて行った…

 

「んで、お前も『新人類創造計画』の手術をうけたんだな?」

 

そんな名前だったんだ。知らなかった。

 

「ええ。そうらしいですね、初めて名前を知りましたけど。」

「敬語はやめてくれ、同い年だろ?」

 

敬語で話すほうが慣れてるんだけどな。

 

「わかった。それで里見はどこを手術した?」

 

蓮太郎は困ったような顔をし、

 

「…あまり教えたくねぇんだ。悪いが内緒な?」

 

むぅ仕方ない。ならもう一つ聞きたいことを聞こう。

 

「里見は今日防衛省に呼ばれてるか?」

「?いいや呼ばれてないが?」

 

俺よりも序列の高い里見が呼ばれてないとなると…凛ちゃんからの指名で俺は呼ばれるんだな。たぶん。

 

「ならいいや、…あとお前ってロリコンで変態なんだって?」

「待て待て!先生になに吹き込まれたかしらんが全部ウソだ!。俺を社会的に抹殺するためのウソだから!」

 

嘘らしい。

 

「今度ロリ…里見の所のイニシエーターとうちのやつ会わせたいんだが、ダメか?」

「今ロリコンって言いかけたよな?よな?……別にいいぜ、仲良くするんなら。」

 

その後携帯の番号を交換し別れた。今度彼とはじっくりと話してみよう。

 

4時限目終了後凛ちゃんからメールがあった。

 

『わたしリンチャン。今校門の前にいるの。早く来て。』

 

…本来のネタならあっちが近づいてくるんじゃないっけ?

 

「智也いってくるわ」

 

おーう、と言う返事を背に俺は校門に向かった。

 

校門の前には里見、凛ちゃん、サラ、美和女学院の女性がいた。なんかチワワと戯れてる。

 

「里見、なにやってんの?ついに犬にも欲情してんの?」

「なに言ってんだ!?」

 

どうやら違ったらしい。

 

「蒼矢。ケイとレンは先に行っているわ。私たちも急ぎましょう」

 

チワワを撫でながら凛ちゃんは言う。

 

「言動と行動が一致してないよ。…レンもくるんだ」

「ケイのイニシエーターだからね一応」

 

あの子は苦手なんだよなぁ。

 

「凛ちゃん!交代よ!撫でさせて!」

 

美和女の制服を着た女性は犬が好きなのだろうか?すごい撫でたそうにしてる。

 

「木更さん…。そろそろ行こうぜ?」

 

木更と呼ばれた女性は、名残惜しそうにチワワを眺めているが、あきらめて立ち上がった。

 

「そうね…行きましょうか。凛ちゃんも一緒にいこ?」

「ええ、行きましょう?木更。」

「二人とも知り合いだったんだ?」

 

その発言に凛ちゃんは呆れたようだった。

 

「…覚えてないの?天童木更よ。昔パーティーとかで蒼矢も会ったことあるはずだけど?」

 

やべぇ。全然覚えてない。

 

「すいません。覚えてません…」

「でも私も蒼矢君のことはあまり記憶にないわ。里見君も覚えてないし。」

「悪いな。全然覚えてない。凛の方はうっすらと覚えていたんだけどな。なぜかおまえは覚えてないんだよな特徴のある髪の色してんのに」

 

…別にいいし、どうせ影薄いし…

 

「みなさま、そろそろ急がないと電車に間に合いませんよ」

 

サラの一言をはじめに、みんな急いで駅に向かった。

ああ、そうだ一応アイを起こしとこう。

左目のアドバイザーをオンにすると

 

『…どうせ私は戦闘以外だと役立ちませんよ。出番ないですよ、ニートですよ…』

 

なんか、すごい愚痴ってんだけど…

 

『マスター…今まで暇でしたが、現在進行形で暇です、ingです。なんとかしてください』

 

近いうちにたくさん利用させてもらうから、それまで我慢するように。

 

『…了解しました。…っち』

 

舌打ちしたよ。こいつ。

そんなやり取りを頭の中で行いつつ電車に乗り込んだ。




次回は影胤、天子、伊熊、延珠出したいです、
誤字脱字あったら教えてください。
感想もアドバイスも受け付けております。

※誤字修正しました


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シルクハットと拳銃

駄文、駄文、駄文!駄文しかないわ!この小説


防衛省の第一会議室に案内され中に入るとそこにはたくさんの人間がいた。

椅子に座っているのが民警会社の社長たち、その後ろのいかにも戦闘専門ぽいっのがプロモーター達だろう。

 

「ケイのやつ…どこにいるのかしら?」

 

凛ちゃんにそう言われ辺りを探してみても、隊長の姿は見当たらない。

 

「…ケイさんはぁ…トイレにぃ…向かいましたぁ…」

 

間延びしたような声を出すのは。

 

「あらレン、そうだったのね。」

 

短めの黒髪の少女、レンは相方の行方を知らせるとすぐに空いてる椅子の後ろに隠れてしまった。

 

「相変わらず、人見知り激しいよなぁ…」

「とりあえず座りましょう。木更たちもほら。」

 

レンが向かった席のとなりが空いている、あそこが木更たちの場所かな。

凛ちゃんに続いて向かおうとすると。

 

「おいおい、最近の民警も落ちぶれたなぁ。こんな道歩いてるだけで死にそうなガキどもですら民警だぁ?くだらねぇ。」

 

ムキムキの髑髏のフェイススカーフをした男が絡んできた。

里見は木更を、俺は凛ちゃん庇おうと前に出ると、男の目が鋭くなった。

 

「あぁ?」

「アンタ、なんだよ。用でもあんのか?」

 

里見と男がにらみ合い、そして、里見が吹っ飛ばされた。

 

「痛っ…何しやがる!!」

「ムキになんなよ?挨拶だぜ?」

 

周りから笑い声が漏れる。

 

「里見。こんな骨が大好きな筋肉で体が出来てそうな犬男に絡む必要はないわ」

 

凛ちゃんのその言葉に男は。

 

「おい!そこのアマ!なんていった!」

 

まぁキレるよな。しかたない、仲裁に入るか。

 

「まぁまぁ、あなたも凛ちゃんも落ち着いて」

 

それでも男は止まらず、

 

「下がってろ優男。…こんなガストレアから生まれたような「赤目」のやつに雇われてるなんて民警として終わってるぜ?」

 

……今なんつった?

 

「おい、ムキ公。いまの発言撤回しろよ」

「あぁ?事実だろうがよ。事実を否定する必要なんてどこにも、」

 

男はしゃべるのをやめた。いややめさせた……俺が男の首もとに足を当てて。

 

「三度目はない。撤回しろ」

 

男は後ろに飛びのき、

 

「ふ、ふざけんな!!」

 

突っ込んできた。

今度は当てようと足を構えると、俺は気づいた。

男と俺の間にはワイヤーが張り巡らされていることに。

犯人はわかるが、今は対処が先だ。こいつを殺してはいけない。癪だけどこれ以上問題は起こしたくないしね。

足でワイヤーを切ろうとすると

銃声が聞こえた。

 

「はいはい、お三方落ち着きなされって。」

 

声の先を見ると銃を上に向けた隊長がいた。

 

「隊長、助かりました。これ以上問題は起こしたく無かったので」

「蒼矢よ、おめぇもすこしは我慢強くなれよ。はげるぜ?」

 

…はげないし

 

「それに、サラもワイヤーしまえよ。もちろんこの場所にいる全員のをな」

 

…いつのまに全員に仕掛けていたんだろう。

 

「申し訳ありません。ケイ隊長。あまりにもこの男が無礼だったので」

 

サラは棒読みので謝罪の言葉を口にした。

サラは暗器のスペシャリストで、桃と俺にも教えてくれている。

 

「いくら社長が好きだからって、後先考えずに行動すんなよ」

「「反省してます」」

 

俺とサラで謝罪すると、隊長は

 

「よし、あんたも命救われたんだからいいだろ?伊熊将監?」

 

伊熊と呼ばれた男は舌打ちをし、自分の席の方に向かった。

隊長もレンの所に向かっていった。

 

「なぁ蒼矢。お前メイドさんにあの人、ケイ?っていう人だっけ。…ひょっとしてかなり強い?」

「俺、サラは何とも言えないけど隊長は序列100番台に入っていたことあるらしいよ。」

 

そう告げると里見と木更が驚いたように目を見開いた。

 

「100番!?あの人何者なのよ!」

「木更、声がデカいわ。それより早く座りましょう」

 

そう告げると凛ちゃんは自分の席に、木更もしぶしぶ席に向かっていった。

俺も向かおうとすると、サラが里見と俺に向かって小声でしゃべった。

 

「…お二人とも、警戒を続けててください。…血の匂いがします、かなり遠くで。ですが。」

「…マジ?」

「ほんとかよ?えっと…サラ?」

「ええ、ですが確実性はないです、ついでに私たちは信用性もないので今この場で話しても信用されませんね」

 

つまり、何か起きないよう警戒するしかできないということか。

 

「しかたない。里見、サラ何が起きても対処できるようにしとこう。」

「あぁ…」「了解です」

 

その後俺とサラは凛ちゃんの後ろに、里見は木更の後ろの位置に移動した。

少しするとモニターに白い女性が映し出された。

 

「…天子ちゃんか。」

「公共の場だと聖天子様と呼びなさい」

 

小さな声でつぶやくと凛ちゃんに注意されてしまった。

聖天子はこちらを見て軽く微笑みそしてすぐに表情をまじめなものにした。

 

「ごきげんよう、みなさん」

 

 

 

その一言から依頼内容の説明がはじまった。

依頼内容は感染源ガストレアの排除とそのガストレアに取り込まれているケースの回収だった。

ケースの中身について木更が質問したが、教えられないといわれてしまった。

 

「…たぶん碌なものではないだろうな。」

「だいたいの予想はついてるわ。ここでは教えられないけど」

 

木更と聖天子の対話が終わりそうな頃。突然大きな笑い声が聞こえた。

 

「フハハハハハハハハハ!!」

 

そこにはシルクハット、燕尾服、仮面をつけた男がいた。

 

『マスター。おそらくもう一人います。』

 

アイの声を聞き、そのことを凛ちゃんに伝えると。

 

「わかっているわ。この建物内で何人か殺している。」

 

……本当にこの人はすごいや。

 

「私は蛭子、蛭子影胤だ。無能な民警諸君、私とゲームをしてみないかい?」

「影胤といったかしら。あなたの相棒はここに来るまでに何人斬ったのかしら?血の匂いがすごいのだけど。」

 

凛が問いかけると、影胤はすこし驚いたように質問に答えた。

 

「ほう…なかなかやるね。殺害方法まで予想できているとは。質問の答えだが、何人かはわからないね。言うなれば『貴様は今までに食べたパンの枚数を覚えているのか?』ということだ。」

「なるほど。私の家では結構食べてるわね。」

 

……なにいってるんだろ。凛ちゃんは…

 

その後、里見と影胤がはなし、後ろから小さい女の子が歩いてきた。

 

「…蛭子小比奈、10歳。」

…親子か?

 

「わたしのイニシエーターであり、実の娘だ。金蜂の御嬢さんが言っていた相棒だよ。話が途中だったね、ゲームの内容は『七星の遺産』をかけて勝負するということだ。私たちとね。」

「……あんなもの何に使うの?私には理解できないわね。」

 

凛ちゃんと天子ちゃん以外は七星の遺産とやらは知らないようだ。

その後、さっきのムキ公が攻撃したが何かにはじかれてしまった。

 

「蒼矢。周りが銃を撃ちはじめたらあなたも銃で攻撃しなさい。できるだけ複数の箇所を狙って。」

「……了解」

 

たぶん凛ちゃんは相手の戦闘力を見るつもりなのだろう。

言われた通りに周りの人間たちとともに銃で攻撃をした。頭も腹もシルクハットでさえ傷をつけることはできなかったが。

 

「名乗ろう里見君、金蜂の御嬢さん、聖天使殿、私は元陸上自衛隊東部方面第787機械化特攻部隊『新人類創造計画』蛭子影胤だ。」

 

やはり、同類か…めんどうだな

影胤は里見にプレゼントというものを渡した。……中身は人の首だった。

 

嫌なもの渡すよなぁ。あの仮面

 

その後聖天子から詳しい説明を受け、解散した。

 

「なぁ凛。七星の遺産っていうのはなんなんだ?」

 

里見が凛に尋ねるが

 

「後々わかると思うわ。蒼矢君とサラの二人は桃ちゃんの迎えに行っていいわ。ケイとレンは私についてきて。」

 

そう告げ先に出て行ってしまった。

 

「里見、俺も妹の迎えに行ってくる。悪いな。」

 

なにか聞きたそうな里見に謝りサラとともに桃のいる小学校に向かった。

 

桃を迎えに行き夕食の買い物も終え、すっかり暗くなった道を三人で雑談しながら歩いていくと、

 

「やぁ。金蜂のところの少年。奇遇だね。」

 

銃をこちらに向けていた蛭子影胤と小比奈出会った。

いつのまにかサラも銃を向け、戦闘態勢をとっていた。

少しの沈黙の後影胤は銃をおろし

 

「銃を下してくれたまえ。話がしたい。」

 

…話?

 

「…サラおろしてくれ。」

 

俺がいうとしぶしぶ銃を下してくれた。

 

「ところで君のイニシエーターはどこにいるんだ?そのメイドくんか?」

「パパ。あいつ斬ってみたい。」

 

小比奈がサラを指さす。

 

「ふむ。右腕だけ落としなさい。」

 

影胤がそういうと同時に小比奈がとてつもない速さでこちらに向かってきた。

 

「っ!!」

 

が、飛んできた四本のナイフによって止まる。

 

「兄さんの相棒は私です。…クズども」

 

俺の隣で怒気をはらんだ声が聞こえる。桃だ。

小比奈は一本防げなかったらしく。頬に傷がついていた。

 

「…そこのちっこいの。名前は?」

「…水木蒼矢の妹。水木桃、モデル・スネークのイニシエーター…」

「モモ、モモ。覚えた。私の名前は蛭子小比奈。モデル・マンティスのイニシエーター」

 

二人が互いに睨み合っている中、影胤が話を始めた。

 

「延珠ちゃんといい桃ちゃんといい小比奈のお気に入りが良く見つかる日だ。さて、蒼矢くん。用件は1つだ。私の仲間にならないか?」

「仲間?」

 

影胤はうなずく。

 

「わたしにつけば力も金も女も手に入る。どうだ?こちらにつかないか?」

「あいにくだが、おまえについていくぐらいなら変な宗教団体に加入するほうがマシだね」

 

影胤は残念そうに

 

「しかたない。今日はあきらめよう次回までに考えが変わっていることを期待しているよ。」

 

そういって影胤は帰って行った。

 

「兄さん。追わなくていいんですか?」

「別に、面倒事は避けたいしね」

 

…ほんとうに、面倒事は避けたいな。

 




木更「空気」
里見「air」

アドバイス、感想誤字報告あればお願いします。


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追撃作戦

お久しぶりです。お気に入りが9件もなっていて驚いています。
久しぶりなので文が変になっていると思いますので機会があれば修正しますのでよろしくお願いします。


影胤にさそわれた日から数日後、俺は菫先生の所に呼び出されていた。

 

「いやーすまないね呼び出してしまって」

 

「いや大丈夫ですよ、特に用事もないですし」

 

凛ちゃんはケースを探してはいるみたいだけど本気では探していないし今は何もすることがない

 

「そうかならいい。君を呼び出した理由はひとつだけ、これを受け取れ」

 

そういって彼女は3本の注射器をこちらに渡してきた。

 

「これは?」

 

「AGV試験薬、もしもの時のためだ」

 

「……もらっときます」

 

影胤たちと争う機会があるかもしれないしすなおに注射器をもらう。

 

「あとで蓮太郎くんにもわたそうと思っているができるだけつかうなよ?というより使う状況になるな」

「そうなりたいですよ……」

 

菫先生が入れてくれたコーヒーを飲もうとした直後に僕の携帯が鳴る。凛ちゃんからだ

 

『ケースが影胤の手に渡ったらしいわ。詳しくは会って話したいからお屋敷で待っています』

 

「すいません、ちょっと用事ができたみたいで」

 

「ん?……ああ、愛しの姫君からの誘いならば仕方ないな行きたまえ」

 

菫先生はからかいながら手を振る。僕はなるべく急いで凛ちゃんの所に向かう

 

 

「蒼矢くん。状況はまずいわ。」

 

「ケースがってことは七星の遺産があいつらの手に渡ったってことだよね」

 

「ええ、なんとかして儀式を止めないと」

 

「儀式?」

 

凛ちゃんに聞き直すと、しまったという顔をされた。

 

「あなたは気にしなくていいわ。今はとにかくケースを取り返さなきゃ」

 

「わかったよ」

 

「天使ちゃんから民警へ影胤を倒すために集まるよう言われているわ。あなたもそれに参加して」

 

「凛ちゃんはどうするの?」

 

「ちょっと気になることがあってね。木更と協力して調べるわ。ケイとサラは私についてきてもらうからあなたと桃ちゃんだけでの任務よ」

 

凛ちゃんがこちらの目を見て話しかける。その様子は少女ではなく、当主としてのものだ。

 

「水木蒼矢。あなたに命じます。蛭子影胤、蛭子小比奈を撃破し必ず生きて帰ってきなさい」

 

「わかりました。社長。あなたのご期待に応えさせていただきます」

 

 

 

 

指定された場所に行くと多くの民警たちがいた。俺と桃は凛ちゃんに言われあるコンビのもとに向かっていた。

 

「オマエふざけてんのか?」

 

「俺だってやだよテメェのような筋肉と行動を共にするなんて」

 

本当に凛ちゃんの指示じゃなければこんなやつの所に行きたくないんだけどな。

現在俺たちは伊熊将監とそのイニシエーターの千寿夏世と話をしている。

 

 

 

「足引っ張ったら殺すぞ? 優男」

 

「言ってろ雑魚」

 

「あ?」

 

「あん?」

 

にらみ合う俺と伊熊。身長差があるので俺が伊熊を見上げる形になるが気にしない

 

 

「落ち着いてください二人とも」

「そうですよ兄さんらしくもない」

 

夏世と桃に止められ仕方なくにらみ合いをやめる。

 

それにしてもこんなに民警が集まるのなんて初めてだと思いながらあたりを見回すと見知った顔がこちらに向かってくるのが見えた。

 

「里見と、そのイニシエーターか」

 

里見とそのイニシエーターと思われるオレンジ色のツインテールの少女だ

 

「お、蒼矢か」

 

「蓮太郎。知り合いか?」

 

「俺と同じ学校の水木蒼矢、で妹の……」

 

桃が俺の前に出てお辞儀をする。

 

「水木桃です。よろしくお願いします。」

 

「藍原延珠だ!! よろしく頼むぞ!」

 

二人が握手をする光景を見て里見は微笑む。たぶん俺も微笑んでいるだろうが、

 

 

今度は俺の後ろにいた伊熊が前に出て里見に話しかける

 

「役立たずのガキが何の用だ」

 

「その件はありがとう。借りができたな」

 

「なっ!」

 

里見と伊熊が言い争い?を始めている中俺は夏世に尋ねる

 

「あいつらなんかあったのか?」

 

「ええ、この間里見さんが影胤と戦闘を行い敗北しました。その後彼病院までを運んだのが将監さんです」

 

「へぇあいつもいいとこあるじゃないか」

 

 

夏世が伊熊の腕を引っ張りこちらに連れてくる。

 

「将監さんそろそろ時間です」

 

「てめぇ! 今度足引っ張ったらぶっ殺すからな!!」

 

伊熊はこちらを不機嫌そうな目で見てくる。

 

「優男。てめぇなにニヤついてんだ」

 

「いや~お前って案外いいやつだなと思って」

 

「なっ! テメェぶっ殺すぞ!!」

 

「この戦いが終わったら相手になってやるよ。ツンデレさん?」

 

「じゃぁな里見。俺らは社長の指示でこいつらと行動するよう言われているから」

 

「おお、気をつけろよ」

 

 

 

 

森の中俺たち4人は影胤達を探していた。こういう時は静かに移動するものだが俺はどうしても気になっていたことを伊熊に尋ねた。

 

「なぁムキ公」

 

「あ? なんだ優男」

 

「お前はイニシエーターを何だと思って戦ってる?」

 

伊熊はめんどくさそうにこちらをにらむ

 

「なに当たり前の質問してんだテメェ。道具だろ」

 

「それはどういう意味だ?」

 

「……そんままの意味だ」

 

それっきり会話もなく、ただ歩みを進める。すると青い光が見えた。

 

 

「あの光は……味方のでしょうか?」

 

「近づいてみるか」

 

そこには味方ではなく、巨大なガストレアがいた。見たこともないタイプで俺らは固まってしまった。

その後、ピンっ という音が聞こえ夏世が何かを投げていた。

 

「やべっ!!」

 

直後閃光と爆発音が俺らを襲った。

 

 

 

あの後なんとか爆発には巻き込まれなかったが爆発音に目を覚ました大型のガストレアたちに追われ伊熊と桃と離れてしまった。現在は夏世と二人で行動中だ。

 

「すいません……」

 

「できるなら投げることを教えてくれてほしかったな。それよりこれからどうするかなぁ」

 

これからどうするかを考えていると夏世がこちらを不思議そうに見てくる

 

「……怒らないんですか?」

 

「え、怒られたいの?もしかして夏世ちゃんってM?」

 

「ふざけないでください」

 

冗談だよ。だから睨まないでくれ

 

「いや、今怒っても状況は解決しない。だったら怒る必要はないでしょ」

 

「確かにそうですが……」

 

釈然としない夏世の頭を軽くなでる。驚いた顔をしているが俺は気にしない。

 

「気にすんなって。あのタイプの奴は俺らの中では誰も見たことないタイプだったんだし誰でも焦るって。それより真っ先に行動したのはいい判断だと思う」

 

夏世は少しほほを染めて俯いた。

 

「とりあえず二人を探そう。そう離れてはいないだろうし」

 

「……ですね」

 

俺はアイを起動しいつでも戦いに備え、夏世も銃を構えながら進む

しばらくすると前のほうから声が聞こえてきた。

 

「一応警戒してください」

 

「ああ」

 

慎重に声のほうに向かうするとそこには

 

「里見?」

 

そこには里見と延珠がいた。

 




ありがとうございました。
アニメまでには一巻の内容終わらせたいと思います。
感想、アドバイス、誤字修正お待ちしております。


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分断(桃&伊熊)

駄文ですがよろしくお願いします。
今回は桃、伊熊サイドのお話です。


夏世さん、兄さんとはぐれてしまってから数分。現在は伊熊さんと行動を共にしています。

兄さんが夏世さんとフラグを立ててないことを祈りつつ兄さんに携帯で連絡をする。

……つながらない

 

伊熊さんの方はどうだろう?

 

 

「伊熊さん。つながりますか?」

「ああ?見ればわかんだろうがよ、クソッタレ!」

 

伊熊さんが通信機をつかみながら叫ぶ

 

「おい、行くぞついてこい」

「どこにですか?」

「テメェは本来の目的を忘れたのか?ああ?」

 

「冗談です、そんなに睨まないでください」

 

ただでさえ怖い顔なのにもっと怖くなりますよ?

言ったら怒られそうなので言いませんが

 

 

少し沈黙が続いてきたので質問しますか。

 

「ねぇ伊熊さん。質問いいですか?」

 

「あ?」

 

「あなたは私たちイニシエーターをなんだと思っていますか?」

 

伊熊さんは驚いたような顔をしている。そんな変な質問だったでしょうか?

 

「呪われた子供? 相棒? はたまた家族? それとも……道具?」

 

「んなもん……道具に決まってんだろうが」

 

「なぜ決まっているのでしょうか?」

 

「……あ?」

 

「私は兄さんとは血のつながっている兄妹ですが、社長やサラさんとも家族のような関係だと思っています」

 

伊熊さんは何もしゃべらない。

 

「それに、私の友人は私が赤目でも変わらずに接してくれます。 それでも私たちイニシエーターは道具なのは決まっていることなのですか?」

 

少しの沈黙の後伊熊さんは答える。

 

 

「……テメェにはわかんねぇかもしれねぇが、かないっこねぇ夢語れば語るほど辛ぇ思いをするん奴だっているだよ」

 

「だったら俺らに道具として使われたほうがいい。俺らに使われている間だけは”あいつ”の存在は正当化できる」

 

 

その答えは一切の迷いがなかった。だから私はその答えは否定しない。

 

 

「――——なるほど。兄さんと社長が気に掛けるわけだ」

 

私はつぶやいていた時、微笑んでいた気がする

 

 

私は伊熊さんにある質問をした。

その質問をしたとき彼は悪いことをして怒られたときの子供のような表情をしていた。

だがそれも一瞬のことですぐに今までにないほど私をにらむ

 

 

「この作戦が終わったら答えを聞かせてくださいね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いていると二つの人影が見えた

 

「……あれは」

「見つけたな。俺はもう一度連絡してみる、テメェはここで待機だ」

 

伊熊さんが私から離れて連絡をしに行く。その隙に私は隣にいるであろう人物に声をかけた。

 

「……そこにいますよねレンさん?」

「……何でわかるんですかぁ?」

 

私の声に応え、姿を現すレンさん。彼女のガストレアモデルは”カメレオン”。

能力上裸の状態であるが今ここには私しかいないので気にしない。

 

「私のガストレアモデルは蛇ですよ? あなたの能力は効きません」

「あぁ熱探知できるんでしたねぇ。 それで何の用ですかぁ?」

 

「兄さんにAGV試験薬は使わないでおいて欲しいと伝えてほしい」

 

「はぁ……意味が分かりませんが、承りました」

 

私の言葉の真意をレンさんはわかっていないようだったが了承し姿を消した。

 

 

(さて、ここからが問題ですね)

 

 

「おら、行くぞ」

「どうするんです?」

 

「まわりの奴らと奇襲をかける。……気に入らねぇけどな」

 

「……すいませんが私はイニシエーターのほうを担当してもいいですか?」

 

「あ?なんでだ?」

 

「影胤のバリアを破ることは私には絶対できません。私の武器は火力がないですから」

 

ナイフを見せながら言う。私の武器はサラさんと同じで暗器や投げものが多い。毒を塗っているので当たれば

強いが当たらないなら論外だ。

 

「だったらイニシエーターの相手をするしかないじゃないですか。あっちだったらまだ何とかなります」

 

「チッ!仕方ねぇな。その代り邪魔すんなよ」

 

「はい、もちろん」

「行くぞ」

 

 

伊熊さんが影胤に攻撃を開始し、私は小比奈にナイフを投げる。もちろん、はじかれてしまうが。

 

「モモだっ!」

 

小比奈が目を光らせこちらに向かってくる。

 

 

「来なさい虫女」

 

小比奈に向けてナイフを数本投げる。しかしすべてはじかれてしまう。

 

接近戦では分が悪いと思い一定の距離を保つように逃げる。

逃げている間にもまわりの民警たちは血を流して死んでいくが気にしてられない。

 

ポケットから手榴弾を出し、小比奈に向かって投げる。

 

「っ!!」

 

軽い爆発が起き、煙が辺りを覆う。

 

 

煙が晴れると同時にこちらへ小比奈が突っ込んできた。

驚いて固まっていた私は肩を斬られる。

 

「タノシイネッ!モモ!!」

「この戦闘狂が!!」

 

致命傷は負っていないがあまり状況はよくない。たぶんナイフは投げれない

回復できないほどの傷ではないが、時間がかかる。

 

(このままだと……伊熊さんのほうも持たないだろうし……賭けに出ますか)

 

「レンさん今です!」

「っ!?」

 

 小比奈が後ろを振り向き攻撃をふるう、がそこには何もいない。

騙された、そう気づいた小比奈は私の方に急いで振り返る。相手は百番台、さすがに長い隙は見せてくれない。

でも、至近距離まで近づけるだけの時間はできた。

 

小比奈の首筋に噛みつく。それと同時にある”毒”を流し込む

 

「がっ!」

「引っかかりましたね」

「何をした……」

「簡単です蛇といえば毒ですよ。ああ安心してください死ぬような毒ではないですから。ただ―――」

 

小比奈は私が言い終わるまえに倒れ、私は口についた彼女の血をぬぐう。

 

「しばらくの間は五感がだいぶ鈍くなりますけど」

 

ナイフを持ち、小比奈に近づく。すると大きな剣が飛んできて私と小比奈の間に刺さった。

 

 

「伊熊さん!?」

 

剣が飛んできた方向を見ると血まみれの伊熊さんと無傷の影胤がいた。

 

「残りは君一人だ。……私の仲間にならないか?」

 

「娘に毒を与えたやつを平然と勧誘する奴なんて御免です」

 

しかし、このまま戦っても負けることは確実。どうするか考えているとある人物が見えた。

 

(この策だったらうまく逃げ切れるかもしれない。よし!)

 

 

「レンさん今です!!」

 

影胤の後ろの方向へ叫ぶ。

 

 

「さっきも小比奈に同じ手を使ってたね。残念効かないよ」

 

影胤が銃をこちらに構える。その瞬間

 

「ぐっ!」

 

「今です!!」

 

「感謝します!! ほら伊熊さん行きますよ!」

 

 

相手は何が起こったのかはわからないでしょう。敵の姿も確認できないのだから。

しかし、仕組みは簡単。というより完全に運でしたけどね。

兄さんに連絡を終え私の所に戻ってきたレンさんが状況を察し影胤に近づいた。

そして、私の叫びを合図にレンさんが落ちていたナイフを拾い斬りつける。

能力の性質上ナイフは見えているのでもし影胤が振り返っていたらまずかったですが小比奈にハッタリをかけていたことが幸いでしたね。

 

 

レンさんが作った隙を無駄にしないよう急いで伊熊さんと彼の剣を背負い森の中に入る。

そしてある程度距離を離し、レンさんの到着を待つ。

 

しばらくしてレンさんが現れた。

 

「どうするんですこれからぁ?」

「……とりあえず兄さんの所に向かいましょう。私に出された社長の任務は何とか完了しましたからね」

 

私はレンさんに案内されながら兄さんのもとに向かった。

虫の息ながらも生きている伊熊さんを背負って

 




次回はたぶん蒼矢サイドに戻り、その後凛サイドに行くかもしれません。
それと、UAが1000超えてて驚きました!
お気に入り数もいつの間にか二桁に。
本当にこんな駄文にありがとうございます!もしよろしければこれからもお付き合いのほどよろしくお願いします。


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戦う理由

遅くなりました。
……アニメに間に合いませんでしたね。すいません
※修正しました


火をおこし遭遇した里見達と共に情報を交換し合う

 

「それにしても、お互いよく無事だったな」

 

「ああ、誰かが爆発物を使ったおかげでひどい目にあったぜ」

 

ビクッと夏世の体が震えるのを見えた。それを見てため息をつく。

 

(気にしなくていいのに……はぁ)

 

「あ〜悪い、それ俺だわ」

 

夏世がこちらを見るが気にしない。

 

「……なんでそんなことしたんだ?」

「見たこともないガストレアがいて焦ったんだ。スマン」

「どんなのだ?」

 

里見にあの時の様子を伝える。すると里見は少し考えるように俯く。

 

「たぶんそいつは蛍のガストレアだな」

「蛍?」

「ああ、しかも植物種と混ざった特殊タイプだな」

「さすが菫先生お墨付きの虫オタクの里見だな」

「虫オタク言うな虫オタクって」

 

一応は褒めてるんだぞ? 一応

 

「それにしてもこれからどうします?」

 

どうするか4人で考えていると夏世の通信機が鳴り、伊熊の声が聞こえた。

どうやら影胤に奇襲をかけるらしい。

 

「聞こえた通り将監さんたちが奇襲をかけるそうです」

「そうか、なら俺たちも合流するとしようか。里見達はどうする?」

「お前たちがいいなら俺もついてくぜ」

 

4人そろって影胤の所に向かおうとすると突然延寿が立ち上がり、叫ぶ

 

「なにかくるぞ! 蓮太郎」

 

延珠のその言葉で警戒を強くする。

 

「……何も来ないぞ?」

「む? 気のせいだったか?」

 

 

いや、ちゃんと来ている。ほかの人には見えていないだろうが。

 

「レン? どうした?」

「あなたの場合は義眼の力でですが、さすがにこうも見破られると自信がなくなりますぅ」

 

しょんぼりした様子で黒髪の少女、レンが現れる。顔だけだが。

それを見た延珠は幽霊でも見たかのように驚き、里見にしがみつく。

 

「どういうことなのだ蓮太郎!この女突然出てきたぞ!。しかもあ、頭だけ!!」

「落ち着け延寿。俺の予想だと多分彼女のガストレアは----」

「ええ。蓮太郎さんの考えてる通り私は”カメレオン”のガストレアモデルです。……頭だけなのは能力の性質上全裸でいないとだめなので。それより、蒼矢さん。桃さんから連絡です」

 

レンがこちらに近づき、内緒話をするように小声で話しかける

 

「”AGVを使わないでほしい”とのことです」

「……ああ、わかった」

「では私は桃さんのサポートに向かいます」

 

レンは姿を消した。……一緒に行動すればいいのに、どこか抜けてるよね。

 

気を取り直して俺たちも向かおうとすると銃声が聞こえた。

 

「始まったようですね」

「よし、行こう」

「すみませんが、私は残ります」

 

夏世の言葉に驚く

 

「なんで!?」

「聞こえませんか?」

 

夏世に言われ耳を澄ますとどこからかガストレアの雄叫びが聞こえる。

 

「誰かが残らないといけないんです」

「別にお前が残る必要はないだろ? 俺と桃が残る」

「私が里見さんたちと一緒に影胤達と戦う場合3対2。私がここに残り、水木さんと桃さんが里見さん達と共に戦う場合は4対2。……どちらが勝率が高いかわかりますよね?」

 

どうやっても引く気はない、夏世の顔はそう語っている

 

「……危なくなったら必ず逃げなよ?」

「大丈夫です、ある程度時間稼ぎをしたら隙を見て逃げ出しますから……将監さんのこと、お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏世と別れ、ある程度進み、俺は足を止める。

 

「悪い、里見。頼みがある」

 

俺の顔を見て考えていることが伝わったらしく里見は何も言わずにただうなずいた。

 

「死ぬなよ?」

「お互いにね」

 

そうして里見と延珠は森の奥へ、俺と桃は今来た道を走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、セーフ」

 

俺の登場に驚き、固まっていた夏世だったがすぐに状況を理解し俺に怒鳴る

 

「あなたはバカなんですかッ!? 私の方よりも里見さんたちの方の援護に行った方がいいのはわかるでしょう!?今からならまだ間に合います、里見さんたちの方に向かってください!」

 

夏世が俺に向かって叫ぶ。今まで一番真剣な顔だ。

 

「里見達だったら大丈夫だろ。第一お前、隙を見て逃げるっていうのあれ、うそだろ? おまえは最後まで逃げずに戦いきる」

「何を根拠に?」

「根拠なんてないさ。ただ、俺だったらそうする」

 

ため息を吐きながら夏世はつぶやく

 

「あなたと私は違います」

「かもな。まぁ一番の理由はほかにあるんだ」

「なんです?」

「自分の力で助けることができる人を助けたい、守れる人を守りたい、ただそれだけだよ。くだらないかもしれないけど俺が戦う理由はそれなんだ」

 

夏世はあっけにとられたような顔をし、そして小さな声でつぶやいた

 

「……くだらなくはないですよ」

「……ありがとな」

「仕方ありません。二人で全力を出してここを守り抜きますよ」

 

夏世は雄叫びの聞こえる方にグレネードランチャーを構える。

それにならって俺も戦闘の準備をしようとするが、後ろの方から聞きなれた声が聞こえた。

 

「兄さん!」

 

桃が誰かを背負ってこちらに向かってきた。……あれは

 

「将監さん!!」

 

血まみれの伊熊将監だった

 

 

 

 

 

 

「……こいつはひでぇな」

 

体中に穴が空き、血があふれている。正直生きているのかどうかわからない。

脈を測ろうと伊熊をおろすと伊熊が消え入りそうな声で言う。

 

「夏世か……?」

「残念俺だ」

 

俺の顔を見て伊熊は顔をしかめる。

 

「単刀直入にいう。このままだとお前は死ぬ」

「んな……ことはわかってる」

「そこで一つ。バカなギャンブルをしてみないか?」

 

俺は懐から三本の注射器を取り出す。

 

「ここにAGV試験薬というお前の体を治す薬がある」

 

夏世と伊熊が驚いた顔をする。

 

「しかしこいつは20%でガストレア化する。それを三本だ。これの意味わかるな」

 

伊熊に注射器を握らせる

 

「人間のまま確実に死ぬか、化物になる可能性が高いが生き残るか。どっちを選ぶ?」

 

伊熊は少し迷い、そして

 

「いい選択だ」

 

注射器を三本すべて同時に突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴッ!があっ!」

 

注射器を差した伊熊は白目になりながらのたうち回る。しかしあふれ出ていた血は止まり、傷はふさがっている。

ガストレアにはならなかったようだが、細胞の再生による痛みで暴れているのだろう。

やがて動きが止まり、伊熊は倒れる。痛みで気絶しているだけのようだ

 

「将監さん!」

 

「今は目覚めるのを信じて待つしかない。それよりあいつ等を何とかしないと」

 

奥の方にガストレアの赤い目が見える。伊熊が目覚めない今、こいつをかばいながら戦わないといけない。

覚悟を決めて前方をにらみつける。

 

「アイ、戦闘準備」

 

『了解いたしましたー!』

 

軽やかな声と共に両脚から大きな棘、両膝からも鋭い棘が飛び出る。

 

「ガストレアに言葉が通じるかはわからないけど名乗らせてもらう」

 

義眼が戦闘モードに変わり思考が加速される。

 

「陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊『新人類創造計画』。水木蒼矢。……守らせてもらう」

 

 

 




次回は三人称になるかもしれません。

誤字等あったら報告お願いします。

あと、戦闘シーンでは技名言った方がいいですかね?


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凛サイド

今回はいつもより駄文度がひどいです。
すいません


蒼矢達と蓮太郎たちが分かれてから少し後のこと。凛は木更と共に会議が行われているであろう防衛省に向かっていた。

 

「木更、用意はできているのよね?」

「ええ。しっかりと証拠をつかんだわ」

 

「ケイ、サラ。大丈夫だとは思うけど気を抜かないでね」

「「了解」」

 

「失礼するわ」

 

凛は勢いよく扉を開けた。

いきなりの登場に聖天子含めた全員が一瞬固まる。

 

「何事です!……金蜂さん!?」

 

「ごきげんよう、本日は皆様に見てもらいたいものがありまして。木更」

「これを」

 

木更は懐からとある一枚の紙をだし、聖天子に渡す

 

「これは、傘連判。……!」

 

連判状の中に書いてあった一つの名前を見て聖天子が驚く

 

「あら、顔色がすぐれないようですね。轡田大臣」

 

名前を出された轡田大臣は木更達を睨みつけ、つばを飛ばしながら叫ぶ

 

「こ、これは、何の冗談だ!」

 

「あなたの部下が持っていたものです。ずいぶんと古風ですね、直筆の傘連判なんて。まぁ、言いたいことはわかりますよね? 大臣、あなたが蛭子影胤の背後で暗躍していた依頼人ということです。」

 

 

「……この会議室内は国防を担うべく置かれた超法規的な場です!これ以上勝手な発言は許可できません」

 

聖天子の一言に乗っかり大臣が吠える

 

 

「そ、そうだ。貴様らは薄汚い民警の犬! さっさと帰れ!!」

 

喚く大臣に凛は近づいた。そして

 

「なんだ?文句があるなら――――」

 

大臣の頭をつかみ、勢いよくテーブルにたたきつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「その薄汚い犬に追い詰められてんだよテメェは」

 

顔を強打した大臣は鼻血を出しながら凛をにらみつけるが彼女はひるまない

 

「納得できるような反論があるなら聞いてやる、なければその汚い口を開くな」

「ふざ「開くな、といったはずだが? ……3度目はないぞ?」……」

 

大臣はまだ文句がありそうな顔をしていたが口を閉じた

 

「木更、続けろ」

「え、ええ」

 

キャラが変わったような凛の態度に驚きながらも木更は話をつづける

 

「……聖天子様、私はこの事実を知って一刻も早くお知らせせねばといてもたってもいられずここに馳せ参じました。聖天子様もスパイを排除せねば落ち着いて議事を進めることはできないのでは?」

 

聖天子は少し考え、菊之丞に顔を向ける。菊之丞は頷き、警備員を呼ぶ

 

「連れて行け」

 

「そ、そんな!」

 

「ああ、少し待ってくれます?」

 

警備員に連れて行かれそうになっている大臣を止め、凛は話しかける

 

「大臣、あなた二日前に私の家に来ましたか?」

「……なんのことだ?」

「いえ、実はですね。二日前に私の家にあるものが届いたんですよ」

 

 

赤いリボンがあしらわれた箱を出し、この場にいる全員に見えるようにテーブルに置く。

 

「なんだそれは?」

 

「見覚えはありませんか?」

 

しばらくして誰かが震えた声をあげる

 

「以前影胤の持ってきていたものに似て……ま、まさか!」

 

 

 

「……中身は丁重に埋葬させていただきました」

「……だれが入っていたのだ?」

 

菊之丞に尋ねられ、凛は少しの間をおき答えた。

 

「三ヶ島ロイヤルガーターの取締役、 三ヶ島影似」

 

「なっ!」

 

「誰がやったのかはわかりません、目的も全く。大臣が犯人の可能性も考えてましたが……どうやら違うようですね。では用件は終わりましたので、私と木更は退室します」

 

 

「お待ちください!」

 

聖天子が出ていこうとする二人に声をかける

 

「すみませんがこの作戦が無事終了するまであなた方をこの部屋から出すわけには参りません」

「……しかたないわね」

 

凛は言葉とは裏腹に軽い足取りで聖天子の隣の席に座った。

菊之丞がそれを見て顔をしかめるが凛は気にする様子はない。

 

 

「凛ちゃんの言うとうりそういうことなら仕方がありませんね」

「木更……貴様」

 

怒気を含んだ低い声で菊之丞は木更をにらむ

 

「お久しぶりですね、天童閣下」

「地獄より戻ってきたか」

「ここに来たのは偶然にすぎませんよ。考えすぎです」

「戯言を……」

 

木更は氷のような目で菊之丞をにらみつける

 

「すべての『天童』は死ななければなりません。天童閣下」

 

 

「……二人を止めたほうがいいのでしょうか」

「大丈夫よ。いくら仲が悪くてもここでやり合うことはないはずだし、もしそうなってもサラとケイがいるわ」

「そうですね凛さん。でも時間もないので……二人とも、その辺で。……天童社長、里見ペアの勝率はいかほどだと思いますか?」

 

菊之丞との話をやめ木更は少し考えるそぶりを見せ聖天子の問いかけに答える

 

「彼が全力を出して戦うのなら30%。私の期待を足していいなら……絶対に勝ちます」木更の言葉に笑いながら反論する

「失礼だが天童社長、二十九人もの民警が殺され、あちらには『新人類創造計画』の生き残りがいる。勝ち目は30どころか10%もない」

「一人? 違いますよ」

 

木更の言葉に周りがざわめきを起こす。

 

「十年前、里見君が天童に引き取られてすぐに私の家に野良ガストレアが侵入して、私の両親を食い殺しました」

 

「……不幸な話だと思うが、それが何か関係あるのかね?」

「それがあるんですよ。−−−−里見君は私をかばい右手に右足、それに左眼を抉られました。その彼の執刀医を担当したのがあの室戸菫」

 

木更が室戸菫の名前を出した瞬間辺りがよりいっそうざわめく

 

「まさか!」

「頃合いですね……菊之丞さん、みなさんに彼らのスペック表をお配りしてください」

 

 

「馬鹿な! ……もう一人いるのか? ガストレア戦争が生んだ人間兵器が!」

 

「里見さんはカードリッジの推進力を利用した超火力。一方影胤は斥力フィールドによる絶対防御」

 

「絶対防御VS超人的な攻撃力。まるで最強の矛と盾の戦いね。矛盾は絶対に起きないけど」

「東京エリアの希望は彼だけです。……祈りましょう」

 




多分次回で一巻の内容が終わります。

二巻の内容は少しキャラ崩壊があるかもしれません

















……感想お待ちしております


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協力

すいません、もう一話だけ続きます。
相変わらずの駄文ですがよろしくお願いいたします。
あとキャラ崩壊注意?です


「水木さん、その義足」

 

夏世が俺の義足を見て驚く。ああ、そういえば言ってなかったな

 

「うん、俺も新人類創造計画の機械兵士の一人なんだ」

 

「驚きました……でもそれなら里見さんではなくあなたが影胤の方に向かったほうが良かったのでは?」

 

「大丈夫。里見も俺と同じ機械兵士だから」

 

「……なんであなたと里見さんが私たちよりIP序列が低いんですか?」

 

「いろいろ事情があるんだよ」

 

「のんきに話してないでください二人とも!来ますよ!」

 

桃の言うとうり話してる場合じゃないな。

俺は突進してくるサイのようなガストレアを見て、地面を踏みしめる。

 

金蜂流戦闘術攻の型二番――――

 

「彗星!」

 

破裂音と共にカードリッジが排出され、視界が加速し、桃たちから離れていく。そして俺の膝がガストレアの頭に突き刺さった。

 

岩のような肌に刺さった棘を抜くと同時にガストレアは体をよろめかせ横に倒れる。

 

「この棘って相変わらずえぐいな……っと」

 

別のガストレアがこちらに向かって突進してくる。 まったく、息を吐く暇もないな

 

金蜂流戦闘術攻の型四番――――

 

足に力を込め、ガストレアの顎に向けて蹴りを放つ。

カードリッジによる推進力で強化された蹴りを食らったガストレアは上空に吹き飛ぶ

 

「兜砕き!」

 

そして落ちてきたところに踵落としを当てる

 

「兄さん! すみませんがそちらは任せます!」

 

妹ながら酷なことを言う。ステージⅢ、Ⅳを一人で相手するなんてかなりきついんだが

 

「仕方ないか」

 

森の奥から大量の赤色が覗いているのが見える。 戦いはまだまだ長引きそうだ

 

 

 

 

何匹か倒しても数は減ってる気がしない。

 

「うおっ!」

 

いつの間にか俺の近くに来ていたゴリラのようなガストレアに投げられ地面を何度かバウンドする。痛ってぇ

 

体を起こすと桃と夏世がいた。……かなりの距離飛ばされたんだな

 

「兄さん! 大丈夫ですか!?」

「……星が見えたよ」

「どうやら大丈夫そうですね。水木さん、状況はどうだと思いますか?」

 

少しは心配してほしいなー。まぁ余裕がないから仕方ないのかもしれないけど

 

「最悪だね、カードリッジの数がだいぶ少なくなってきている。棘に仕込んである液体バラ二ウムもほとんど尽きた」

 

このままだとジリ貧だな。何とかしないと

 

 

「っ!」

 

遠くからものすごい速さで何かが飛んできた。その飛んできた何かは夏世に当たり夏世は吹き飛ぶ。

そして吹き飛ばされた先には別のガストレア。

 

「まずい!」

 

急いで夏世の方へ向かおうとした瞬間。俺の頭上を何か大きいものが飛んでいった。

その大きいものは夏世を攻撃しようとしていたガストレアに刺さる。

あれは……剣?

 

「聖居で俺にケンカ売ってたのに何だぁ? このザマは?」

 

後ろから声が聞こえ、何が起こったのかを察した。

 

「ようやくお目覚めか。寝起きで悪いが手を貸せ」

「仕方ねぇな。足ひっぱんなよ」

 

『闘神』が目覚めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「将監さん!」

 

夏世がガストレアに刺さった剣を伊熊に投げる。結構な速さで飛ばされた剣だったが伊熊はタイミングよくキャッチし、その勢いを活かしたまま近くのガストレアを斬る。

 

「ぶった切る!!」

 

……負けていられないな。俺も頑張るか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妙ですね」

 

伊熊が目覚めてから数分後、順調にガストレアを撃退している中、夏世がつぶやいた。

 

「なにが?」

 

「ガストレアの数が減ってきてます」

「あん? そりゃ倒してるから減るに決まってんだろ?」

 

「確かにそうですが……減りの速さが異常です。先ほど私に向かって何か飛ばしてきた奴も見当たらないのが気になります」

 

「そういえば何を飛ばされたんだ?」

 

「たぶんですが、土と石を固めたものかと。結構な威力です、私のグレネードランチャーがが完全に折られました」

 

銃の残骸を見てみると確かに茶色の何かがついている。

一体どんな奴なんだよ。

俺は周りを見てみるがそれっぽいガストレアは……えっ?

 

 俺は奥で大きいガストレアが小型のガストレアをまわりの地面ごと食べているのを見つけてしまった。

 

「なっ! ガストレアがガストレアを食うだと!?」

「……ゲームとかだったらああいうことすると強くなるんだよなー」

 

若干現実逃避が入っている気がする……

 

『マスター! なんか来ます!』

 

今まで黙っていたアイが警告する。その警告を聞きガストレアの方に意識を向けるとこちらに向けて口を開けていた。

 

「まずい! 避けろ!」

 

俺の叫びを聞き、全員横に飛ぶ。直後さっきまで立っていた場所に何かが通過し、後ろにあった岩を砕いた。

 

「さっき夏世に攻撃した奴と同じ奴だな……厄介だな」

「でもあのガストレア一匹で終わりみたいです」

 

確かに目に見える範囲ではあれだけだが……

 

「あいつがほかの奴を食べたのか……それともまわりがあいつから逃げたのか……」

「ケッ! なんにしろ俺たちのやることは決まってる」

 

伊熊の言葉に全員頷く。考えていることは同じようだ。

 

「「「「全力で倒す!」」」」

 

 

 

 

 

とはいったものの……どうしたものか。

 

「幸い今はこちらに攻撃はしてきませんね」

「あの砲弾を作るのに時間がかかるようですね。兄さんカードリッジの残数は?」

「残り五発だ」

「私のナイフも残り少ないですし、ワイヤートラップを仕掛けてもあいつは突っ込んでくる気がしません」

 

 

まさに八方塞がりか……どうしたもんか。

考えを巡らせていると夏世がに話しかけてきた。

 

「水木さん。聞きたいのですが残り五つのカードリッジでどれぐらいの速さを出せますか?」

 

「結構な速さが出るだろうけど、あのガストレアに届く前には減速しちゃうだろうね」

「……なら……すれば……」

 

夏世は顔を上げこちらに向かって言う。

 

「いけるかもしれません」

 

なんだって?

 

「ですが……」

 

夏世は伊熊を見て、続きを渋る。

 

「なんだ?」

 

「伊熊さんと水木さんが協力しないといけないんですが……」

 

……うん。伊熊の性格から俺と協力って無理じゃない? 

 

「あのなぁ夏世。いくらなんでもこの命がかかってる状況で俺が自分のわがままで渋ると思うか?」

「見えます、思います」

 

伊熊が夏世に近づいてこめかみをぐりぐりする。……いたそー

 

「痛いです!痛いです!」

「確かに今までの俺だったらそうだったかもしれねぇが……」

 

伊熊はこめかみから手を離す。そして夏世に目線を合わせ話しかける

 

「今はちげぇんだよ。だからさっさと言え、夏世。てめぇの作戦だったら絶対成功する」

 

……驚いた。伊熊にいったい何があったんだろ?

一緒に行動していた桃に小声で聞いてみる。

 

「桃。伊熊に何かしたのか?」

「私は何もしてませんよ。ただ伊熊さんが答えを見つけただけです」

 

それ以上はなにも教えなかった。むぅ。兄としてなんか複雑。

 

夏世は伊熊の変わりように驚いたようだが、すぐに作戦を伝えた。

 

「内容は簡単です。あのガストレアに届く前に減速してしまうのだったら減速してもガストレアの体を貫ける速さを保てばいいんです」

「どういうこと?」

「つまり、こういうことです」

 

 

 

作戦の内容は本当に簡単だった。

伊熊の剣の上に俺が乗り、それを飛ばす。そして頃合いを見て加速し、ガストレアを貫くというものだ。

確かに速度は保たれるが……俺を何だと思ってるんだよ。

ほかの作戦を考える時間も無いし我慢するけど

剣で手が切れないよう桃から防刃グローブを借り、指を通す。

 

「準備はいいか優男」

「いつでもいいいぜ」

 

剣の上に乗り、側面をしっかりと掴む。

伊熊が剣を回転させる。だんだん早くなりそして勢いよく離した!

 

「オラッ!!」

 

こちらに気づいたガストレアが回避行動を取ろうとした、がさらにカードリッジを使用し加速する。

剣が壊れる音が聞こえるが気にしない、気にする余裕がない。

回避が不可能と知ってかガストレアは土の砲弾を飛ばす。しかし小さい。

義足と砲弾がぶつかるが、それでも俺は止まらない。そして

 

「うらぁぁぁぁ!!」

 

ガストレアの体を貫いた。

 

 

 

 

「やった……ん?」

 

貫いた、貫いたんだけど……止まらない

 

「あれ、これやばくね? ぐぉ!」

 

いくつかの木を破壊し大きな岩に激突し、止まる。衝撃が体に伝わり意識が飛びそうになる。

 

……絶対俺の体のこと考えてなかったよね。この作戦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たぶんこれで終わりですよね」

 

「さて、あのガキの方に向かうか、蒼矢! テメェが先頭で進めよ!」

 

「なんでだよ!」

 

「テメェが一番強いからだよ! こん中では!」

 

「今一番傷だらけなのも俺だけどね!?」

 

ついでに序列も一番下だからね!

 

「見ましたか夏世さん。あれがツンデレのデレた瞬間ですよ」

 

「ええ桃さん。いつの間にか将監も水木さんのこと名前で呼んでますし」

 

おーい、聞こえてるぞ。まったく。男のツンデレってうれしくないよ。

 

そんなやり取りをしている中ポケットの携帯が鳴る。凛ちゃんからだ。

 

「もしもし?」

『ああ蒼矢君? 連絡よ、里見達が影胤達を撃破したわ。でも新たな問題が発生したわ』

 

「問題?」

 

『ステージⅤがこちらに向かってきてるわ』

 

「えっ!?」

 

世界を滅ぼした十二体のガストレア。そのうちの一つが東京エリアに向かってくる。

それって、かなりやばいんじゃ?

 

『ああ、大丈夫。里見達が何とかするようだから。あなたたちは作戦を終了していいわ』

 

「いいの? てか里見達はどうやって倒すの?」

 

『それがね――――』

 

 

 

 

 

通話を切り、内容をみんなに伝える

 

「えー。里見達が影胤を倒したそうだ。でもステージⅤが来るらしい。」

 

ステージⅤ。その言葉を口にした瞬間空気が重くなる

 

「兄さん。私たちはどうするんです? ステージⅤ相手じゃ勝ち目はないですよ?」

 

「いや、俺たちは作戦終了。戻って来いって」

 

「あのガキは?」

 

「里見達はステージⅤを倒すらしい」

 

みんなが驚いたように目を開く

 

「どうやってです?」

 

「天の梯子をぶつけるらしいよ。ステージⅤに」

 

ガストレア大戦の遺物。線形超電磁投射装置である『天の梯子』。その兵器をミサイルのように飛ばす。

その作戦を聞いたとき、冗談を言ってるのかと思ったよ。

 

「……大丈夫なんですか? そんな作戦で」

 

夏世が心配する

 

「大丈夫」

 

「……本当に大丈夫なのか?」

 

「大丈夫」

 

「……ずいぶんと信頼してんだなあのガキのこと」

 

「理由はないけどあいつらだったら何とかしてくれる。そんな気がするからな」

 

「チッ!」

 

「今のは嫉妬ですかね? 桃さん」

 

「かもしれませんね。夏世さん」

 

「テメェら! 聞こえてんぞ!」

 

……元気だなぁ。みんな

 

「……とにかくここから出ようか。凛ちゃんが迎えを寄こすらしいし」

 

こうして、俺たちの影胤討伐作戦は終了した。後は里見達次第だ。

 俺たちは凛ちゃんに指示された地点に向かった。




なんか、夏世が考えた作戦にしてはいい加減だったような気がする……


感想ありがとうございます。めっちゃやる気出ました!


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一件落着

駄文です!伊熊のキャラ崩壊中!
それでもよろしければお願いいたします


結論から言うと里見達はステージⅤを撃破した。

そして、今俺と桃はというと聖天子がいる聖居にいた。

 

「式典に呼ばれるのなんて久しぶりだな」

「兄さんは昔から社長の付き添いで何回か参加してますからいいですけど私は初めてですよ」

 

ステージⅤを倒し東京エリアを守った里見達のお祝いの式典についていくことになったのだ。

 

「あら、結局制服できたのね」

「サラがいろいろ選んでくれたけど一番落ち着くのがこれだからね」

 

「ふふっ。あなたらしいわね」

 

そういって笑う凛ちゃんはドレスを着ていた。

汚れ一つない白いドレスは凛ちゃんの金髪をいつもより目立たせている気がする。……うん綺麗だ

 

「よう」

「あれ、伊熊? それに夏世。どうしたんだこんなところで」

 

話しかけてきたのはいつものタンクスーツに身を包んだ伊熊とフリルのついた服を着ていつもよりおしゃれな格好をしている夏世だった。

 

「私が呼んだのよ」

 

「凛ちゃんが?」

 

凛ちゃんは将監に近づき話しかけた。

 

「伊熊将監。単刀直入に言うわ。あなた、うちで働かない?」

 

「は?」

 

「三ヶ島影似が殺されたということはご存知よね?」

 

「……ああ。会社が大騒ぎだ」

 

「これからどうするのかしら」

 

「あん?」

 

「三ヶ島社の中であなたは強い方。でもあなたを鍛えてくれるような人はいないんじゃないかしら?」

 

「……」

 

「今回の戦いで身に染みたでしょ? あなたは弱い」

 

確かに今回の戦いで伊熊は影胤に傷一つ与えられなかった。伊熊自身そのことを悩んでいるだろう。

 

「うちにはあなたより強いものがたくさんいるわ。あなたさえ望めば鍛えることもできる」

 

凛ちゃんは詰め寄る

 

「扱いは平等。給料もしっかり出す。ただし、訓練中の命の保証はしない」

 

更に詰め寄る

 

「この条件でもう一度問うわ。伊熊将監、あなた家で働かない?」

 

そして最後に伊熊の目を覗きこみながら問いかけた。

 

「……いくつか追加してほしい条件がある」

「言ってみなさい」

 

伊熊は俺の方を指さす

 

「一つ、あいつより強くなるようにしてくれ」

 

……俺より?

 

「あなたの努力次第だけど。いいわ」

「二つ、社長を殺した犯人を見つけたら俺にやらせてくれ」

 

まぁこれは納得がいった。なんやかんやで社長と仲良かったらしいからね

 

「いいわ、見つけたら真っ先にあなたに伝える」

「最後に、……せてくれ……」

「? 聞こえないわ」

 

伊熊が俯きながら小さな声でぼそぼそとつぶやく。

 

「……やってくれ」

「声が小さいわ。もっと大きな声で――――」

 

「夏世に! 学校に行かせてやってくれ!!」

 

 

周りの人たちに聞こえるぐらいの声で叫ぶ伊熊。うん、普通にうるせぇ。

 

「今度はデカすぎるのよ! あなたは声のボリュームを最小か最大にしか調節できないの!?」

 

 

「え? 将監さん?」

 

夏世がポカーンとした顔で伊熊を見上げる。

 

「理由を聞いてもいいかしら」

「そこのガキに説教されてな。」

 

俺の右隣、桃を指さす。

 

「説教したのか?」

「年上に、しかもほぼ初対面の人に説教できませんよ。……まぁ質問はしましたけど」

「どんな?」

 

「”夏世さんの可能性を、自分の可能性を自分自身で潰していることに気が付いてますか? ” だとよ」

 

桃が答える前に伊熊が先に答えた。

 

「むかつくが、確かにそいつの言うとうりだ。俺はあいつの存在を正当化できるのが戦いだけだと考えていた」

 

伊熊はいつもの様子からは考えられないような弱弱しい声で語る。

 

「ただ、それだと『夏世』としてではなく、『道具』としての存在を正当化していることに気づいた。……そいつに言われてな」

 

「恥ずかしいことに俺はこいつのことを全然知らねぇ。どうすればいいのかもわからねぇ。ただ」

 

真っすぐな目、しっかりと芯を持っているような声で凛ちゃんに言う。

 

「俺はこいつにいろいろな世界を見せてやりたい、いろいろな可能性を見せてやりたい。そう思ったんだよ。あの死の淵で」

 

 

「……将監さん、あなたも世間のこと全然知らないじゃないですか」

「うっ!」

 

夏世の辛辣なコメントに唸る伊熊

 

「それにあなたらしくないです。脳筋な将監さんらしくないです」

 

「てめ「でも、とてもうれしいです。ありがとうございます」……」

 

夏世は伊熊にお礼を言った。

その笑顔に今までのような冷たさはなく、年相応のたいような笑みを浮かべて

伊熊は照れ臭そうに頬を掻いて目線を夏世からそらしている

 

「んで? 条件を呑んでくれんのか?」

「OKよ、でも学校は指定させてもらうわ」

 

その言葉に伊熊は不信感を抱くがすぐに凛ちゃんが説明をする

 

「ああ、安心して桃ちゃんも通ってるような普通の学校だから。知り合いがいたほうが夏世ちゃんにもいいでしょ?」

 

それを聞くと伊熊はうなずいた。……こいつ親ばかになるんじゃね?

 

「ほら、始まるわよ」

 

「しっかし、里見が千番台かぁ……なんか置いてかれた気分」

「一応私たちと伊熊さん達も上がりましたけどね」

 

「ん? なんか騒がしいな」

「どういうことだよ!なんで父さんと母さんの名前がここで出てくんだ!」

 

 

騒ぎの中心を見てみると里見が聖天子につかみかかろうとしていた。

瞬間。

息の根が止まりそうなほどの強さ殺気を感じた。殺気の出現元は……隣からだ

 

「凛ちゃん。落ち着いて」

「落ち着いてるわ、ただあの里見(バカ)が天使ちゃんに触れたら首と体を分けるけどね」

 

凛ちゃんの殺気に気づいたのか里見は聖天子に触れることはなかった。

 

「おまえ……」

「社長と呼びなさいな」

「社長……あんたなにもんだ?」

 

伊熊の問いに凛ちゃんは当たり前のように答える

 

「私は金蜂家の当主。それだけよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのあと家に帰る途中。ケイさんの運転する車に乗る俺と凛ちゃんと桃。

伊熊と夏世は今までの荷物まとめてくるので別行動だ。

 

「そういえばまだ言ってなかったわね。お疲れ様、蒼矢」

 

凛ちゃんが思い出したようにお礼を言った。

 

「はは、死ぬかと思ったよ」

 

「大丈夫、あなたは死なないわ」

「理由聞いてもいい?」

「私が一番信頼しているからよ」

「……ありがとう」

 

理由になってないよ、と突っ込みたいけど突っ込んだら怒られそうなのでやめておく

 

「今日新人二人の歓迎会があるからサラとロンの手伝いをしてあげてくれる?」

 

「うん、わかった」

「私も少し休んだら手伝うからお願いね」

 

そうして凛ちゃんは自分の部屋の方に向かった。しかし思い出したように振り返り挑戦するようにこちらを指さした。

 

「あ。あとでチェス勝負よ! ここ数日忙しくて勝負できなかったんだから」

 

……またロンさんとサラが賭けをしてるのかな? まぁいいや

 

「全力で相手させてもらうよ」

 

こうして、いろいろあった数日間は終わりを告げ、またいつもの日常に戻る。

いや、二人新しく入ったから少し騒がしくなるかな?

俺はこれからの日々を想像し、口が緩むのを感じた。

 




これで一巻の内容は終了です。
後二つおまけを入れたら二巻の内容に入ります。
……蓮太郎、木更との絡みをもっと増やせるようにしたいです


アクセス数5000突破誠に感謝感激です!
これからもよろしくお願いいたします。


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番外編
千寿夏世の日記


○月○日

 今日から金蜂さんのお屋敷に住むことになった。高価なものが多すぎて正直落ち着かない。

でもこれから長い間お世話になるのだから慣れないと……

 

○月□日

 私と将監さんの為にパーティーを開いてくれた。ケイさんにお酒を飲まされ金蜂さんは酔っ払ってしまった。水木さんは慣れているのか金蜂さんを背中に背負いながら部屋に運んでいった。

 ちなみに将監さんとケイさんとロンさんはパーティーが終わっていても飲み続けていた。

絡まれるのも嫌なので部屋に避難することにした。

 

 

 

○月△日

 桃さんとレンさんと一緒に訓練をした。訓練相手のサラさんに三人同時で襲いかかっても傷一つ付けることはできなかった。少し悔しい。でもお二人との仲が少し良くなった気がする。

 

 

 

 

○月☆日

 

 近いうち桃さんとレンさんが通っている学校に通うことになる。

 その学校には私達のような呪われた子供達も何人かいるらしい。それを知って少し安心したが……やはり緊張はする。

 そのことを桃さんに相談しようとしたら桃さんは白い布みたいな物を抱きしめて部屋に閉じこもってしまった。忙しいみたいなので邪魔はしないようにしよう。

 ちなみに水木さんがシャツを無くしたらしい。探すのを手伝ったが見つからなかった。いったいどこに行ったのだろう?

 

○月×日

 

 

 

 屋敷のみなさん(女性)と一緒に銭湯に行った。最初は呪われた子供だとあまり好い目で見られないから、と断ろうとしたが金蜂さんに無理やり連れてこられた。

しかし私の心配は杞憂だった。

 

 初めての銭湯なので使い方がわからないものがあり、困っていると使い方を教えてくれた優しい人がいた。

私が小銭を落とした時に拾ってくれる人がいた。

銭湯に来ていたお客はみんな私を普通の子供として扱ってくれた。

 

……嬉しかった。

 

 

 

 金蜂さんは銭湯では人気らしい。

子供達に遊ぶようせがまれて、お年寄りの方には息子の嫁にきてほしいといわれていた。

金蜂さんになんでこんなに人気なのか訊ねてみると「昔にちょっとね……」と照れくさそうに頬を掻いてた。

 

 

 着替えるときに金蜂さんが後でコーヒー牛乳をおごってくれるといってくれたがさすがに悪いと思い、断ろうとしたが息が詰まってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー彼女の背中に無数の、小さくない傷跡を見てしまったから。

 

「そんなにまじまじと見られると恥ずかしいわ」

 

 私の視線に気づいた金蜂さんが私の頭を軽くたたく。見てはいけないものを見てしまったような気がして申し訳ない気持ちになる。

 

「別に気にしてないわ。私はこの傷跡、嫌いではないし」

 

 金蜂さんはうそを言っているようには見えなかった。 何があったのか聞いてみたい気持ちもあったが、今はまだ聞くべきではない。そう思い私は先に脱衣所から出た。

 

 

 お風呂上がりに、結局コーヒー牛乳をおごってもらった。……苦かった。

その私の様子に金蜂さんは笑っていた。でもすぐにフルーツ牛乳を私にくれた。甘い

 

……このひとが人気者である理由が少しわかった気がする。

 

 

 



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臆病者

お久しぶりでーす! そして駄文でーす。はい


「―――――なた――愛――」

「――ね! 悪魔め!」

「―――――なさい。そして、ありがとう――――」

 

 

 大切な人の憎悪の声。涙を流しながら自分にお礼を言う女性。それぞれの声がノイズ交じりに聞こえてくる。

 これは夢だ。そう確信した。だって

 

――――――――彼らは私が殺したのだから

 

 

 

 

 

 

 場面が変わり、先ほどよりもノイズがひどくなる。

 

「この老いぼれ――に――ことなら――と」

「お嬢ちゃん。――あんたのために――した」

「いままでの私は死にました。そして今日これからはあなたのためだけに――――。――――ください」

「――見つけてくれて……ありがとう」

「兄さんは渡しません……ですが、感謝は――」

 

 

 自分は話しかけられていた。しかしどれも姿は見えない。そして――――

 

「何があっても僕は君の味方になるよ」

 

 姿は見えなくとも間違えるはずない私の一番愛する人の声が聞こえた。すると視界に広がるのはいつもの天井。

 

「夢、か」

 

……寝汗がひどい。シャワーを浴びなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 家にある訓練場にケイ、蒼矢、伊熊、夏世ちゃんを連れてきた。

 

「今日はなにをするんだ? ケイの奴が今回は特別な訓練をするって言ってたが」

「ええ、今日は私が訓練を受け持つわ」

 

「おいおい大丈夫かよ?」

 

 伊熊が私をバカにした様な顔で見てくる。いらっとした。

 

「夏世ちゃんと伊熊。同時に来なさい。夏世ちゃんはこれ使ってね」

「これは?」

「ライフル。弾はゴム弾だけどね」

 

 反動は強いし、威力も高いから扱いには注意してほしい。まぁ夏世ちゃんなら大丈夫でしょ。

 

「木刀? なめてんのか?」

 

 伊熊が私の武器を見てにらむ。

 

「これじゃないとあなたたち大けがするから」

 

 事実を言うと少し怒ったようだ。むすっとしてるのがわかる。

 

「躊躇しちゃダメよ」

「それじゃあ、はじめ!」

 

 ケイの合図と共に伊熊が大剣を振りかぶって近づいてくる。

 

「オラッ!」

 

 私は木刀を大剣の刃のついてない部分――側面にあて剣の軌道をそらす。

 

「力を入れ過ぎ。避けられたら隙だらけだわ」

 

 剣を弾き飛ばし、がら空きになった体に突きを食らわせる。伊熊の体は衝撃に耐えきれず吹き飛んだ。

 

 さて、夏世ちゃんは――っと

 私から距離をとりこちら向かって銃を構えていた。なるほど。私が近接用の武器を取り出した時点で離れたのか。

 夏世は一瞬の硬直の後引き金を引いた。

 

「狙いはいい、でも――――」

「え?」

「”金蜂流銃弾返し”」

 

 飛んできたゴム弾を弾き返す。弾は夏世ちゃんの手前に落ちて跳ね、どこかに飛んでいった。

 

 

「撃つとき一瞬止まったわね。その一瞬が危ないのよ。そして今も隙だらけだわ」

「なるほど、やっとわかった」

 

 伊熊が何か納得したようにつぶやく。

 

「? 何がかしら?」

「いや、あの人間やめたようなやつの上司がこんな小娘で務まるのかって疑問に思ってたからな。つか、あの時の様子から分かれよ、俺」

 

 あの時というと……ああ。里見が天使ちゃんにつかみかかろうとした時のことか。あれはまぁ私も大人げなかったような気はする。

 

「ふふ、見直したかしら」

「ああ。そうだな」

 

 

「隙ありです!」

 

 

「会話に意識を向けさせ、もう一人が撃つ。なるほど悪くないわね。でも」

 

 体を右にそらしてゴム弾を避ける。また銃弾返しをしてもよかったが木刀が折れる可能性も出てくるしね。

 

「声を出すのは撃ってからにしなさい。完全に会話に意識を向けてはいないんだから」

 

 私は木刀を夏世ちゃんの銃に向けて投げた。木刀は真っすぐ飛んでいき銃に刺さって止まった。

 

「私の訓練はここまでかしら」

 

 

 

 

 夏世ちゃんが疑問を持った目をこちらに向け、質問をした。

 

「金蜂さんは何でそんなに強いのですか?」

 

 強い、ねぇ。

 

「私は強くないわ。ただ、臆病者なだけよ」

「どういう――」

「夏世! 行くぞ」

「あ! 待ってください」

 

 そう、ただ臆病なだけ。だから私は自分の敵は徹底的につぶす。一切の容赦なく。たった一人で復讐を遂げる。

 本当にできるのだろうか? 一人で戦うことは難しいことだ。自分にできるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凛ちゃん? どうしたの?」

 

「え? 何がかしら?」

 

 気が付くと夏世ちゃんはいなくなり、代わりに蒼矢が近くに立って心配そうな顔をこちらに向けていた。

 

「何がって……怖い顔してたから」

「何でもないわ」

「ほんと? 体調崩してない?」

 

 そういって彼は私の額に手を当て熱を測る。 顔が熱くなるのがわかる。

 

「大丈夫、よ。だから離しなさい。手を。はやく」

 

「無茶しないでね?」

「わかってるわ」

 

 訝しげな顔をしながら蒼矢は去っていく。よかった顔を見られなくて。きっと今の私の顔は真っ赤に違いないから。

 

 

「ふふっ。さっきまで悩んでたのがバカみたい」

 

 私には味方がいる。彼がいる限り私は一人じゃない。臆病者だろうと何だろうと関係ない。

 彼が私と共にあるなら私は止まらない。金蜂凛は止まらない。

 

 

「今日の夜はトランプでもしようかしら」




次回からやっと2巻の内容に入ります


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狙撃主と蒼き閃光
めんどくさいこと


風邪ひきましたー!
それでは本遍どうぞ―!


 

 影胤の事件から数日後。俺は里見の家に向かうことになっていた。

 

「凛ちゃん、ちょっと里見の家に行ってくるよこの間桃を延珠ちゃんに紹介する約束したからさ。それに里見も俺に用事あるみたいだし」

「わかったわ。あ、でも待って」

 

 凛ちゃんは冷蔵庫から袋を取り出し、渡してきた。

 

「せっかくだからこれ持っていきなさい」

「リンゴ? それもこんなにたくさん」

 

「あなたのお兄さんからもらったものよ。私たちじゃ食べきれないから」

 

 兄さんは加減を知らないからなぁいつも食べきれなくてジャムとかにしちゃうんだよね

 

「あと、明日天子ちゃんに会いに行くわよ。ちょっとめんどくさいことになったわ」

「めんどくさいこと?」

「明日になればわかるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 以前教えてもらった家に着き、呼び鈴をならす。すると中から里見の相棒、延珠ちゃんがでてきた。

 

「む? たしかおぬしは……」

「水木蒼矢だよ延珠ちゃん。里見は?」

「蓮太郎はいま夕食の準備をしておる」

「蒼矢かー? 入ってきてくれ」

 

 里見に言われ中に入る。案外綺麗にしていいることに驚く。男子高校生の部屋って汚いもんだけど

 

 

 

「里見これ。もらいもんで悪いがこれ」

 

「おお、悪いな」

「で、用事ってのは?」

「ああ、そのことなんだが……延珠。悪いが先に風呂入ってくれ」

「? わかったのだ」

「あ、なら桃も一緒に入れてもらってもいいか?」

「ああ。お互い年が近いし話しやすいだろう」

「では着替えるのだ!」

 

 延珠ちゃんが服を脱ぎ始める。もちろん俺は目をそらしたよ? つかそらさないと桃に目をつぶされる

 

「ばっバカ! ちゃんと脱衣所で着替えろ!」

 

 苦労してそうだなぁ里見。俺の中で里見の評価がロリコンから苦労するロリコンに変化したよ。

 

「で、話ってのは? 延珠ちゃんに関することなんだろ?」

「ああ、実は延珠に新しく学校に通わせたいんだが……」

 

 里見によると少し前に延珠ちゃんは学校で呪われた子供たちということがバレ、やむを得ず学校を辞めたらしい。それで桃と同じ学校に編入させたい、ということだ。

 

「うん。俺だけの判断じゃ無理だね。凛ちゃんの指示を仰がないと」

 

 俺は携帯電話を取り出し凛ちゃんに電話する。

 

「もしもし凛ちゃん?」

『あら蒼矢。なにかしら』

 

 

「実は――」

 

 事情を説明すると少しの沈黙の後小さな声でつぶやいた。

 

『……近いうち里見と話がしたいわ。今度そっちの会社に行きたいのだけど』

「いつでもいいぜ」

 

『わかったわ。行くとき事務所のほうに連絡するから』

 

 

「それで? ほかに用事は?」

「ああ、どっちかっていうとこっちの方が本題なんだが――おまえの所のメイドについてだ」

「サラについて?」

 

「ああ、どうみても年が十歳を越えて見える。呪われた子供がそんなに長く生きられないだろ」

「サラは特別なんだ」

「特別?」

 

「ああ。サラは”作られた”呪われた子供たちなんだ」

 

 俺が告げた真実に里見は口を大きく広げ驚いている。まぁ俺も最初はそんな反応だったからね

 

「……は?それってどういうことだよ!」

「詳しくは凛ちゃんに聞いてくれ。俺も詳しく知らん」

 

 悪いね、本当に知らないんだ。本人に聞いてくれ。

 

 

 

 

 

 

 それから桃と延珠ちゃんの二人がお風呂から出て里見に夕食を食っていけといわれ準備を手伝っているとインターホンが鳴った。

 

「俺が出るよ」

 

 扉を開けるとそこには――――

 

「里見ちゃ〜ん」

 

 和服が似合ううちの高校の生徒会長、司馬未織が具合悪そうにして立っていた。

 

「看病……して〜」

 

 その言葉を最後に未織さんは頭から倒れた。……大丈夫かこれ?

 

 その後ろからもう一人女の人の影が見えた。あれは……木更さん?

 

「里見君……これ……お肉」

 

 半額のシールが貼り付けられている肉のトレイを受け取ると限界が来たのか顔が青くなり

 

「すき焼き……作って……」

 

 未織さんに覆いかぶさるように木更さんも倒れた。

 

「――それが司馬未織と天童木更の最後の言葉だった」

「だった、じゃねぇよ! あぁもう! 蒼矢、どちらか外に連れ出してくれ。俺は何も見なかったことにする」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後倒れていた二人も入れて一緒にすき焼きを食べている。それに加えて桃と俺もいるから結構な数が里見の部屋にいる。狭い。

 

「この和服は何者なのだ?」

 

 延珠ちゃんが未織さんに指をさす。

 

「司馬未織。俺たちに武器を提供してくれている『司馬重工』の社長令嬢だ」

「俺たちの学校の生徒会長でもあるね」

 

「悪いねぇ里見ちゃん」

「……ほんとよ」

 

 うわ、ものすごい不機嫌そうだ木更さん。まぁ見た感じ全然性格が違うしね。そりが合わないんだろう。

 

  そのあと未織さんと木更さんが喧嘩したりといろいろあり、外もだいぶ暗くなってきたころ。桃が寝息を立て始めた。

 

「ん、そろそろ俺帰るよ。桃も眠そうだし」

「わかった気をつけてな」

 

 桃を背中に背負い里見達に挨拶をして家を出る。すると入り口から延珠ちゃんが出てきてこちらに向かって叫んだ。

 

「桃! 今度天誅ガールズについてもっと詳しく教えるからな! 楽しみに待っているのだぞ」

「はい……ありがとうございます」

 

 眠そうだけど嬉しそうだな桃。うん、妹に友達ができてうれしいな兄としては。でも天誅ガールズかぁ。智也もはまってるんだよな。人気なのかな?

 

 

 

 

 翌日、凛ちゃんと共に天子ちゃんのいるところに来ていた。

 

「こちらです。水木様。金蜂様」

 

 護衛であろう人に案内してもらった扉を開ける。そこにはいつもテレビで見る白い姿の天子ちゃんがいた。

扉を閉じると彼女はこちらに近づき、飛び込んできた。

 

「お久しぶりです蒼矢君。お元気そうで何よりです」

「あなたも変わらずでなによりです。聖天子様」

 

 そういうと天子ちゃんは頬を膨らませ不機嫌そうになる。

 

「……昔のように話してください。いまこの部屋には私とあなたしかいませんので」

「しかし……」

 

「そうしないと口利きません。つーん」

 

 拗ねたように唇を尖らせる天子ちゃん。うん、かわいい。

 

「あぁもう! わかった。わかったよ天子ちゃん」

「ふふっ。はい天子ちゃんですよ」

 

「な~にいちゃついてるのかしら?」

「ぐぇ!」

 

 後ろから不機嫌な声と共に襟元を引っ張られ首が絞まり変な声が出た。

 

「全く。私もいるわよ。……久しぶり天子ちゃん」

「久しぶり、というほどではありませんけどね」

 

「明日はよろしくね」

 

「そうそう。俺ってどんな任務受けるの?」

「あら、言わなかったかしら。天子ちゃんの護衛よ」

「はい?」

 

「よろしくお願いしますね。蒼矢君」

 

天子ちゃんは笑顔でこちらに微笑んできた。

 

 

……何だろう嫌な予感しかしない。




ありがとうございましたー!アドバイス、感想、リクエスト何でも待ってマース


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任務初日

「なるほど、会談ですか」

 

 天使ちゃんが言うには明日大阪エリア代表の斉武大統領と会談を行うらしい。なぜこのタイミングかはおそらく菊之丞さんがいないからだろう。

 

 

「何も起こらないと信じたいのですが何があるかわかりませんからあなたに護衛を頼みたいのです」

「それに、英雄様も一緒よ」

「里見のこと?」

 

 英雄と聞いて思いつくのはこの間東京エリアを救った里見のことだろう。ガストレアステージⅤを倒したのだから確かに心強い。

 

「まぁ凄腕の民警が二人もいれば十分よね」

「俺は凄腕じゃないけどね」

 

 凛ちゃんが何言ってんだコイツ、とでもいいたいような顔でこちらを見る。

 

「あなたが本気出せば里見ぐらい楽に倒せる戦闘力はあるでしょ」

「いや、無理無理。アイの力全力で使えば何とかなるかもしれないけど」

 

 正直勝てる気がしない。良くて引き分けだろう。

 

「謙遜も過ぎれば嫌みに聞こえるわよ。もっと自信を持ちなさいな」

 

 背中を軽くたたかれ気合を入れられる。……まぁ信頼されているのはすごくうれしいけど

 その時コンコンと軽いノックの音が聞こえた。

 

「聖天子様。入ってもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」

 

 部屋の外から入ってきたのは若い長身の男性だった。

 

「水木さん。今回の護衛任務で隊長を務めていただく保脇さんです」

 

「よろしくお願いするよ、水木君」

「こちらこそ」

 

 保脇さんは笑顔でこちらに握手をもとめられる。

 

「そうそうこの後いいかな」

「はい?」

 

 

 あの後喫煙室に連れてこられた。あまり使われていないのだろうか少し汚い。聖居なのにいいのだろうか?

 そんなことを考えていると保脇さんがこちらに振り返った。

 

「単刀直入に言おう。君はこの任務から降りてくれ」

「なぜですか?」

「役者不足だからだ」

 

メガネをくいっとあげさも当然のように事実を告げた。

 

「確かに役者不足ですね。正直なぜ自分が護衛に選ばれた理由がわからないですし」

「それでは――――」

「でも、お断りします」

 

 遮るように断りを入れる。

 

「僕は金蜂凛の傀儡です。その彼女が命令したならば理由がわからなくても従います。自分に実力が無くても彼女が命令したならば自分はただ従うだけです」

 

頭をさげ謝罪する。顔は見えないが保脇さんは怒っているだろう。プライドが高そうな人だし。

 

「ですので彼女が命令したならばまだしもアナタの命令には従うことなんてありえません。すみません」

「――――それなりの礼はするが?」

「お断りします」

 

 強めに断言するとため息と共に何かを懐から出したような音が聞こえ、顔を上げるとそこには拳銃を取り出した保脇さんがいた。

 

「……残念だよ」

 

 向けられる銃口。とっさのことで反応ができない。死ぬことはないだろうが怪我はしてしまうだろう。

 俺は顔面を腕で防ごうとした瞬間カキンという音と共に保脇さんの驚く声が聞こえた。

 

「なっ!」

「これ以上やると、血を見ますよ?」

 

 遠くに弾かれる拳銃。

 そしてそれを行った人物――レンがいた。

 

「レン! いつのまに!?」

「お嬢様からもしもの時のために護衛を頼まれてましたから」

 

 飛ばされた拳銃に刺さっていたナイフを抜き取り保脇さんに刃先を向ける。

 

「それで? まだやりますか?」

 

 肌に張り付くような緊張感を感じる。その時こちらに走ってくるような音が聞こえ、扉が勢いよく開かれた。

 

「隊長! またですか!」

 

 舌打ちをしながら部屋から出て行く保脇さん。残されたのは自分と止めに入ってくれた男性のみ。レンはいつの間にか姿を消していた。

 ……沈黙が続く。

 空気を変えようと何か話そうとする。しかし相手の方から話しかけてきてくれた。

 

「今回の護衛任務副隊長の烏山と申します。先ほどは隊長が失礼を」

「なんであんなことを? さすがに発砲されそうになるとは思いませんでしたよ」

 

「実は……隊長は聖天子様に好意を抱いておりまして」

 

 なるほど。それで嫉妬していたと。しかも”また”ということは被害者は俺だけじゃないのだろう。

 ……残念だけど確か天使ちゃんには好きな人がいたはず。報われない恋をしている彼もかわいそうだがそのフォローをしている烏山さんがもっと大変そうだ。

 

 

「なんといいますか……ご苦労様です」

「……ありがとうございます」

 

 苦笑いしながら頬を掻く彼は本当に大変そうだった

 

□□□□□□

 

 学校帰りに蒼矢の家、金蜂の屋敷に寄り約束通りサラに会わせてもらうことになった。

 

「お帰りなさいませお嬢様」

 

 門をくぐり屋敷に入るとそこにはサラ、それに蒼矢。そしてメイド服を着た夏世がいた。……なぜ彼女もメイド服を着ているのだろう?

 

「……なんですか」

「いや、なんでもない!」

 

 夏世はこちらの視線に気づいたのだろうか不愉快そうな目でこちらを見る。あわてて目をそらす。

 

「お客様よ」

「いまお茶をお持ちいたしますね」

「サラ。里見は貴方に用事があるみたいだから」

「俺がやるよ」

「私も手伝います」

 

 屋敷の中に入ると大きな揺れを感じた。

 

「な、なんだ?」

「ああ気にしないで。馬鹿が馬鹿を鍛えているだけだから」

 

 そして大広間に案内された。そこには先ほど出ていったはずの二人がすでに紅茶の準備を終えて立っていた。

 

「さて、座りなさいな」

「いろいろ突っ込みたいことがあるがまぁいい。それより…………あんたの所のメイドが作られたってのは本当か?」

 

「ええ。そうですけど、それがどうかしましたか?」

 

 サラは首をかしげながら返答した。

 ……こちらとしては衝撃の事実なのだがこうも簡単に答えられてしまうと拍子抜けしてしまう。

 

「本当なのか?」

「ええ。私には多数のガストレアウイルスが体に混ざっています」

 

 数を数えるように指を折り始め、それが十を超えたあたりで数えるのをやめた。

 

「犬や猫から虫や鳥。ワニやミトコンドリアなど数多くのものが入ってますね」

 

「誰がそんな事を、いやまて」

 

 いろいろ疑問が湧くがそれよりも気になることがあった。凛たちのいうことが本当ならばどうしてもありえないことが起きている。

 

「なんであんたはガストレアになってないんだ? 浸食率は?」

 

 通常呪われた子供たちは常にガストレアウイルスによって少しずつだが浸食率が上昇続けている。それゆえに彼女たちは長く生きられることができない。

 実際にはどこまで生きられるかは個人差があるのでわからないが少なくともサラの年齢まで無事でいられることは無理なはずだ。

 

「サラがガストレアになっていないのは………」

 

 凜は紅茶を一口のみ、そして静かにカップを置き口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――偶然よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 拍子抜けしてしまい変な声が出てしまう。

 

「そんな驚いた顔しないでちょうだい。いくつか予測は立てられるけどしっかりとした理由がまだわからないの。ただ偶然、というのが一番納得できるのよ。それと誰が、と聞いたわね。残念がらあなたにはそこまでのことを教える義理はないわ」

 

 彼女は自分とあまり親しくはない。嫌われているわけでもないがそちらの事情を教えてくれるほどの中でもない。当然断られても仕方ない。

 

「こちらからも質問いいでしょうか?」

 

 サラが手を小さく上げ尋ねる。了承の意味を込め頷く。

 

「延珠ちゃんの浸食率についてです」

「延珠は……」

 

 彼女たちになら話しても大丈夫だろうと信じ話す。

 

「前回の戦いで浸食率が跳ね上がっている。いつガストレア化してもおかしくない」

 

 この事実を聞いても彼女たちは余り驚いたような顔はしていなかった。

 

「言っておくけど延寿ちゃんをサラと同じようにするのは無理よ。さっきも話したように原因がわからないのだから」

「……わかっている。でもなんでそんなことを?」

 

「いえ、ただ気になっただけです。不快な気持ちにさせてしまったのならば申し訳ございません」

 

 

「それで? 確か蒼矢から聞いた話だと延寿ちゃんに学校に通わせたいそうだけど。どうなの?」

 

「ああ、桃は普通の学校に通っているんだろ?」

 

「ええ、しかも呪われた子供ということを学園の全員が知っているわ」

 

 今日ここにきて一番の衝撃だった。思わず俺は身を乗り出す。

 

「そこに延珠を通わせたいんだが!」

「ふーん」

「いや、ふーんって」

「それで?貴方は私になにをくれるのかしら?」

「は?」

 

 凛はため息をつき冷えた目で自分を見る。

 

「里見蓮太郎。貴方は私と取引をしたいの?それともお願い?……どちらにしても私たちに何の利益もなければ断ることには変わりないけど。紅茶を飲み干したら帰りなさい。次にあなたと取引するときはマシになっていることを願うわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、里見と延寿ちゃん。桃と俺、そして護衛相手である聖天子様の五人はリムジンの中にいた。

 

「斉田武彦大統領と面識あるの? 里見は」

「一応な」

「どんな人なの? 俺は昔一回あった程度だからよく覚えてないんだ」

 

「アドルフヒトラー」

「「え?」」

 

 天使ちゃんと一緒に驚きの声を上げる。

 

「冗談、ですよね」

「マジだよ。斉武はやばい。ほかのエリアの奴らは気性が荒い奴ばかりだがその中でもダントツだ。注意しとけよ」

「わ、わかりました」

 

 そんな人と会うなんて緊張がすごい。天使ちゃんはどうなんだろう?

 見てみると肩が小さく震えていた。

 

「大丈夫?」

「少し、緊張してます。ダメですね、私」

 

 震える天使ちゃんの頭をなでる。

 

「ふぇ!?」

「リラックス、リラックス」

 

 桃もこうやると落ち着くんだよね。

 整えられた髪が少し崩れるが仕方ない。彼女の緊張をほぐすためだ。

 汚れ一つない綺麗な髪。しかし少し力ないような、儚さが感じられた。

 

 

「あの、もう大丈夫です」

「ん、そう?」

 

 撫でていた手を頭から離す。震えはすでに止まっていた。これなら大丈夫だろう。

 そしてビルの中に入ろうとすると顔を赤く染めた天使ちゃんが手をぎゅっと握ってきた。

 

「私のそば、離れないでくださいね」

「はいはい」

 

 そうしてビルの中に入ると中にいたガタイの良い男がいた。おそらく斉武大統領のボディーガードの一人だろう。

「ついてきてください」

 

 彼に案内された部屋に入るとそこにはソファーに座って何かの資料を読んでいる男がいた。

 

「始めまして、聖天子様」

 

 白髪の男が振り返りソファーから立ち上がる。

 

「……隣にいるのは天童のもらわれっ子と金蜂のもらわれっ子か」

 

 獅子を思わせるような外見に鋭い眼光。高身長にスーツ姿。俺が小さいだけかもしれないがものすごい威圧感を感じる。

 

――――これが斉武宗玄。

 

 固まっている俺と天使ちゃんを置いて里見が斉竹さんに近づく。そしてにらみを効かせながら告げた。

 

「テメェも生きてたか枯れ木野郎」

「お、おい、里見」

 

 天子ちゃんに言われたばかりなのに全く気にしていないような口調に驚く。天子ちゃんをみてみろよ魚みたいに口をパクパクさせちゃってるよ。

 

「ど、どうしましょう、蒼矢君」

 

 小声で俺の服の裾をつかみながら震えた声で話しかける。

 

「……大丈夫そうですよ」

 

「あの仏像彫は元気か?」

「けっ! 知るか。もう破門されたんだからよ」

 

 なんというかあまり悪い雰囲気ではないようだ。……お互い口は悪いが。

 そのあと会談が始まった。結果を言うと……あまりいいものではなかった。

 

「それにしても――――」

 

「聖天子様だ!」

 

 励まそうと天使ちゃんに声をかけようとするとクマのぬいぐるみを抱えた金髪の少女がこちらを指さしていた。

 

「聖天子様にこんなところで会えるなんて嬉しいです!」

 

『マスター。気をつけてください。なにかおかしいです』

 

 アイの真剣な声に意識を切り替える。

 

「里見。聖天子様を車の中に」

「わかった」

 

 もしものことを考え早く移動させようと里見に伝える。

 

「ごめんんさい。そろそろ」

 

 里見がリムジンの扉を開け入るように促すのを見て天使ちゃんは少女に謝る。

 

「ええー」

「ごめんね」

 

 残念がっている少女の頭を優しくなでる。

 

「ぶー。仕方ないですね。それじゃこれもらってください!」

 

 少女はクマのぬいぐるみを天使ちゃんに押し付けて離れる。

 そして一言。

 

「――――――天国に行くお祝いです。どうぞ」

 

 ぬいぐるみの目が一瞬光る。それを見て急いで天使ちゃんに近づく。

 

「危ない!」

 

 ぬいぐるみを蹴り上げ空に飛ばし、少し乱暴だが天使ちゃんをリムジンの中に投げ入れる。

 直後辺りに爆発音が響き、火薬のにおいが漂う。

 

「くっ! 走れ!」

 

 リムジンの中には里見がいる。何かあっても大丈夫だろう。煙が晴れ辺りを見回すがそこには先ほどの少女はいなかった。

 

「何が起きた?」

 

 周りの護衛たちが天使ちゃんと里見達が乗っているリムジンの後を追うのを見る中烏山さんが無線でこちらに連絡をしてきた。

 

「襲撃です」

『状況は?』

「敵はぬいぐるみ型の爆弾をこちらに投げつけて逃亡。見た目は小さい子供でした」

 

 情報を伝えると少しの沈黙の後烏山さんは訪ねてきた。

 

『呪われた子供か?』

「わかりません。目は赤くはありませんでしたが……」

 

 呪われた子供たちだったとしても常に赤い目をしているわけではないので断定はできない。

 

『ほかに何か気になることは』

 

「えっと、僕たちの方に来ている護衛の人って本当に信用できます?」

「どういうことだ?」

「いえ、ちょっと」

「……わかった。調べておこう」

 

 アイのことをあまり話すべきではないと思ったのでどう伝えようか悩んでいたが電話の向こうからため息と共に返事が聞こえてきた。

 

「苦労をかけます」

「隊長ほどではないさ」

 

 無線を切る。 辺りにはぬいぐるみの燃えカスが漂っていた。

 

「兄さん」

「ん?」

 

 桃がなにか白い紙きれのようなものを手に持っていた。

 

「これが落ちてました」

「”There is strong shadow where there is much light.” 光が多いところでは、影も強くなる、だと?」

「確か……ゲーテの言葉でしたね。ドイツの詩人の」

「……意味が分からん」

 

 わからないが、この依頼一筋縄じゃいかないな。

 



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