月を砕いた舟の上で (酸化クロム(弐))
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第一話

初投稿になります。どうかよろしくお願いします

名前の読みかぶりがあったので修正(6/14)


『《こちらレイクコントロール。出撃中のアクトレス各員は通信状況を知らせ》』

 

 

物心ついた時から、どこか既視感のようなものを感じていた。

 

 

『こちら白桃(しらもも)、通信状態良好です~』

 

 

初めて聞く単語でも、どこかで聞いたことがるような気がしたし、とあるグループが解散するときの会見だって、ああ、今そんな時期か、という感想が沸いて出た。

 

 

『こちら(すめらぎ)、同じく通信に問題なし』

 

 

いまのこの状況だって、どこか似たような事を自分の指先でやっていた気もする。

 

……おっと自分の番だ、応答しなければ。初陣だし、緊張もしてるんだろう。

 

 

「こっ、こちら河瀬。音声明瞭、通信に問題なし、です」

 

 

詰まってしまったがなんとか回答。次回は滑らかに答えれるようにしないと。

 

 

『《よし、各員との通信状況問題なし。このままランデブーポイントまで進み、そこで後詰の部隊と合流せよ》』

 

『後詰、ですか?』

 

『《そうだ。もともと河瀬の初陣の為に小型ヴァイスの多いと目される宙域に出てる訳だが、君たちの出撃前に大型出現の可能性が報じられてな。 湖西(こせい)事務所の所長が上に掛け合って叢雲本社から後詰の部隊を送ってもらっていたらしい。 ふっ、いい上司じゃないか》』

 

『あー、そうですね~。 ももの時もそんな感じでした~』

 

 

いや正直返答とかどうとかはいいんだ。もっと私にとって大事な、そう、初出撃よりも大事なことがある。

 

 

『《よし、ランデブーポイントに到着したな。 ……ちょうどいいな、叢雲隊からの通信が入っている。 せっかくだ、これも経験だと思って河瀬、応答しろ》』

 

「は、え!? 私がですか!? 」

 

『《そうだ、異論は認めない。 通信のチャンネルはA7だ、いけるな? 》』

 

 

そう、初出撃以前に聞いていない。こんな事態は聞いていない。

 

 

「こちらランデブーポイント、湖西事務所所属アクトレス河瀬翠。叢雲本社隊の応答を願う」

 

 

『はい、こちら叢雲工業所属アクトレス、吾妻楓です。どうかよろしくお願いいたします』

 

 

原作キャラクターとの会話が発生するなんて聞いてない……!

 

 

痛む頭を押さえながら、私、河瀬翠は、これまでの2つの人生を振り返るのだった。

 

 

私の最初の記憶はどこかの教会。小さい頃の、ほんとにちいさい頃の記憶なんて皆ないようなものだけど、教会の、孤児院かな、に、入って一年たった頃に引き取られて今住んでる場所に来て小学校に入学したから、つまり、孤児院に入ったのはそれくらいの年なわけで。

でもそうしたら、やっぱり”小さい頃で覚えてることは無い”、って言って良いんじゃないかな。

 

ああそう、さっき言ったけど今の私は”親”に引き取られて、一緒に幸せに暮らしている。後で聞いた話だと両親は子供ができない病気になってしまったらしい。

二人とも本当の娘のように愛してくれるし、私もさっき言った通りで二人がほんとの親みたいなものだ。だからよく見聞きする”ギクシャクする養子と里親”なんて事態はなかった。

 

……ああ、ごめん。自己紹介が遅れた。よくあるのは自己紹介は最初にあるからね。しっかりとしておかないと。

 

 

はじめまして。私の名前は河瀬翠。

 

年齢は、初出撃の時で16。

 

住んでいるのは琵琶湖シャード。珍しい、半分近くが湖になってるシャード

 

職業は高校生、兼、新人アクトレス。

 

 

 

そして、多分、この先が一番肝心で、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元、”隊長”、です。

 




主人公紹介:河瀬 翠(かわせ みどり)

転生してアリス・ギア・アイギスの世界に来た人物詳しくは次回紹介。
前世も女で、隊長だった。



感想お待ちしております、よろしくお願いします。


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第二話

2話です。すこし悩みましたが、先に初出撃イベントを終わらしてしまおうと思います。

あと、検討した結果、桃科さんは名字を「白桃(しらもも)」に替えました。

ごめんよふみふみ……


今日の出撃は東京シャードを離れて琵琶湖シャード近海で、とのことでした。

 

以前にもあって、その時行ったのは私ではなかったのですが、どうやら叢雲傘下の事務所所属の人が初出撃らしく。

その後詰としての出撃だとか。

 

いつもと違う宙域ではありますが、新人さんの為とあらば、この吾妻楓、全力でサポートしましょう。

 

 

当然ながら東京シャードと琵琶湖シャードはそれなりに距離はあります。でも今回は大型の出現の可能性が急に高まったとかで、高速艇での移動になりました。

 

「ねぇねぇ、今日は移動が長いね、どこ行くの?」

「リン、聞いてなかったの? 今日は救援で琵琶湖シャードまでいくってオペレーターさん行ってたよ」

「あれー、そうだっけ?」

「リン……」

 

少しぼんやりした様子で疑問を投げ掛けたのは日向リンちゃん、それにクールに答えたのは小鳥遊怜ちゃん。私のチームのメンバーでリンは焼夷属性、怜ちゃんは冷撃、私は雷のバランスのとれたチーム。

 

と、そこに通信が入る。

 

『お嬢さん方、ご歓談中申し訳ないがそろそろだ。ハンガーの方に移動を頼むぜ』

「了解いたしました。 直ちに向かいます」

『俺はお嬢さん方を放出したらその時点での宙域で待機する。 いいか、絶対に帰ってこいよ』

 

高速艇のパイロットのおじさんがそう言うのにうなずきを返し、私はハンガーに出てギアを装着。琵琶湖シャードの管制宙域に切り替わったのを確認すると、管制官に繋ぎつつ、宇宙にこぎだした。

 

「こちら叢雲社所属アクトレス、吾妻楓以下2名。琵琶湖シャード管制、応答願います。」

『《こちら琵琶湖シャード管制。ようこそ本シャードへ。貴方たちの目的は、湖西事務所のサポートで合ってる?》』

「はい、それで問題ありません。」

『《了解しました。 今ランデブーポイントの座標を送信します。 確認次第、そちらに向かってください。》』

「……座標を確認しました。これよりランデブーポイントに移動を開始します。」

『《特に急がなくても大丈夫です。湖西事務所のアクトレスも、まだ戦闘は開始していませんし、観測できる範囲でのワープドライブの予兆もありませんから。》』

「了解しました」

『《ああ後、湖西事務所さんに新人さんが居るのは知ってる? その子の経験の為に、2チーム間の通信をその子がすることになってるの。 優しくしてあげてね?》』

「そうでしたか。 そういうことならこの吾妻楓、微力ながらお手伝いいたします。」

『《気負わなくていいからね? ……それじゃあ改めて、移動をお願いします》』

「『『了解」』だよ~』

 

思わずまったりと返したリンを睨むが、彼女はどこ吹く風、といった雰囲気である。

まあそんなリンはいつもの事だし、怜ちゃんの方を見ても、やれやれといった様子。

 

私はひとつ、気合いを入れ直すとランデブーポイントに向けて舵を切りました。

 

 

 

道中ヴァイスの出現も、その兆候もなく。

しばらく移動していると、やがて目視で何人かのアクトレスを確認しました。

それとほぼ同時に管制が通信で目の前の集団が湖西事務所の人間で、今から通信を開く、と言ってきました。

 

向こうから開いてくる、とのことなので合流しつつ少し待機しているとやがて開いた通信の向こう側から、やや緊張している硬い声が。

そういえば私にもこんな頃がありましたね、と思いつつ、回線を繋ぎ、私も応答します。

 

 

 

 

『こちらランデブーポイント、湖西事務所所属アクトレス河瀬翠。叢雲本社隊の応答を願う』

 

 

 

 

「はい、こちら叢雲工業所属アクトレス、吾妻楓です。どうかよろしくお願いいたします」

 

 

 

 

 

 

そう、返答した、瞬間。もちろん無いものだが、空気が変わった。

 

『あがつま……かえで……?』

「……? ええ、私は吾妻楓ですが……」

 

そう、改めて返答をした、その時。

 

『______!』

 

声にならない叫びが聞こえた。一瞬、どこから聞こえたのかわからなかった。ややあって、今通信を開いているのは湖西事務所の、新人さんだな、と思い至って、

 

 

エリア通信で管制官の慌ただしい声が聞こえてきた。

 

 

 

『《河瀬翠のバイタルデータに異常を観測した、周辺アクトレスは状況を知らせろ!》』

『こちら湖西事務所、白桃です。翠は急に叫びだして頭を抑えています! こちらから観測できるのはそのくらいです!』

「こちらは叢雲、吾妻です。私が通信に応答した時にその異常が起こりました。接触しますか?」

『《二人に感謝する。管制としては現状は異常の観測で精一杯だ。エミッション適性値のギア装着中の急変動など、前代未聞だぞ……! 》』

「エミッションの、急変動……?」

 

 

 

 

 

エミッション適性。

平たく言えば、対機械生命体用兵装、アリスギアを扱う為の適性です。一部例外はあるものの、一般的には思春期の女子に多く見られます。

さらに、一般には年齢にともなって減少します。その減少には個人差があり、ある時全て無くなってしまう場合、緩やかに減少していく場合、あるいは30代に突入しても実戦に耐えうる適性を保持している人間も存在します。

 

 

しかし、しかしです。

 

 

新人が、それも出撃中に急変動するのはおかしいとしか言えないのです。

 

 

『《ベイルアウト準備! これ以上は何が起こるかわからんぞ! 》』

ベイルアウトとは緊急の脱出手段。シャード側から発動し、アリスギアが安全保証限界に到達したアクトレスを宙域から強制的に脱出させる手段です。

ベイルアウトならば一気に回収できる。河瀬というアクトレスに何が起こったのかわからないが回収して精密検査を受ける方が良いだろう。

それを言おうと口を開き___

 

『警報! 重力変動、数値から小型ヴァイス群の出現と予想、タイミングは____! 吾妻、後ろ! 』

 

唐突なヴァイス出現の警報。しかもアリスギアは後方への攻撃手段を持ちません。

 

迎撃の為、振り返り_____

 

 

 

『そこっ! 』

 

 

 

青白いビームが、後ろから駆け抜けて行きました。

 

 

 

 




2話です。切りが良いのでここでカットします。


ちなみにですが、CVイメージは

高速艇のおじさんはファットマン(ACVDより)
琵琶湖シャードの管制官はフィオナ(AC4シリーズ)とセレン・ヘイズ(ACfA)をイメージして書いてます。


キャラクター間の他人称がわからなくてつらみ……




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第三話

はい。三話です。

ベーコンのせいで遅くなりましたが戦闘シーンはばっさりカットです。


 あの青色の宝石を初めて見たのはいつだったっけ。

 

 

 薄らとした意識の中に規則的な音が聞こえて目を開けた。

 視界に入ってきたのは病的な白で、詰まるところの『知らない天井だ』、というやつだろうか。

 ん?『知らない天井だ』? こんな言い回し耳にした記憶は無いが……、ああ、そっかそっか。耳にしたのは『私』か。

 

 「あ、河瀬さん、目を覚まされたのですね。お加減はいかがですか?」

 

 そんな声が聞こえたのでなんとか横を向くとこれまた目に飛び込んでくるのは白色を来た人。ああ、ここは病院かと納得して、とりあえず返事をして口を開くもひゅー、と掠れた音しか出なかった。

 

 「ああ、ごめんなさい。……そうですね、私の声が聞こえたら頷いてください」

 

 まるで結構な間声を出してないみたいに掠れた喉だったが、その人は意を汲んでくれて首の動きで返事できる質問をしてくれた。こくり、となんとか頷くと、軽く何個か質問をしてきた。痛いところは、だとか、体に違和感は、だとかを聞いた後、体温や脈なんかを簡単に調べて、まだ寝たいか、と聞くので首を縦に振る。正直すごく眠い。

 

でも縦に振った後その人の顔を見た記憶が無くて、どうやら私はまたすぐに寝てしまったようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

私がアクトレスを志したのはいつ頃だったか、あんまり覚えてないけど、そのきっかけというか、トリガーというか、根幹になった"あれ"に出会ったのは、中学になってすぐぐらいの事だったはずだ。

その頃にはお義父さんとお義母さんに完全に懐いていたけど、なぜかその日はふと思い付いて、まっすぐ家に帰らずに琵琶湖畔に寄って帰った。

そこで見つけたのはなんかごつい、白と黒の物を湖に向けてる人だった。気になって話かけたかったけど、結構な集中してるような雰囲気だったのですこし距離をおいて見てたら、その人がなんとなく振り向いたんだろう、視線があった。

なんとなく気まずげな空気の中、先に口を開いたのはその白い物を構えていた人だった。

 

「やあ、こんにちは。僕になにか用かな?」

「あ、えっと、こんにちは。 その、何してるのかな、って思って。 それってなんですか?」

「ん? ああ、こいつの事かい?」

言いながら白いのをポン、と軽く撫でるのこくり、と頷くと、こいつはな、と前おいて答えてくれた。

 

「こいつはカメラだよ。お嬢ちゃんもカメラぐらいは知ってるだろう?」

「ええ、カメラは知ってますけど、そんなに大きいというか、長いのは知らないです……」

「はは、そうだろうな。 こいつはな、ああ、見てもらう方が早いかな。 ちょっとこっちおいで」

 

そう言ってその人が手招きをするのでそれに答える。近寄ると、その人はカメラ? の向いている方向を指差してこう聞いてきた。

 

「僕が今指差してる方向、まあ、カメラが向いている方向だけど、そっちに何かしらが居るのは見えるかい? 」

「んんーーーーーー? あー、なにかオレンジ? あのオレンジの、ですか?」

「お、お嬢ちゃんは見えるか、目がいいね。 じゃあカメラ覗いてごらん」

「はぁ……」

 

まあ、ここまで来たらなんとなく予想は付く。きっとあのオレンジが見えるんだろう。

半ば興味の対象がカメラ?からあのオレンジ色に移ってるのを自覚しつつ、その人が指差す部分を、覗く、と。

 

 

 目に飛び込んで来たのは、想像よりも、ずっと鮮烈なオレンジと、それを上回る程強烈な、けれどしなやかな青だった。

 

 

 

 

「――――――――――――――――――――――――!? 」

 

 

 

 

「見えたか? あれはな…………」

 

 

 その人がその後も何か言ってたけど頭には入ってない。それほど、あの青色に私は目を奪われていた。なんでか、なんて無粋だろう。ただただ、私は”それ”に釘付けだった。

 ふと、その次に、私は今覗いてるがカメラだって思い出して、

 

「これ」

「うん? なんだい?」

「シャッターってどこですか」

 

 なんて、相手を無視してぼそりと言っていた。あとあと聞けば結構怖かったらしい。

 

「あ、ああ、ここだよ」

 

 その言葉に、一瞬だけ指さす場所に目を向けると視線は”青”に戻して、シャッターには手探りで指をかける。

 

 

 

 その、数拍の後に。

 

 

 

 ”青”がこちらを、見て、その羽を、広げて、

 

 

 

 

 瞬間、私は―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……懐かしい、と言っていいのだろうか、頃の夢を見た。たしかあの時いいタイミングでのシャッターで、綺麗な写真が取れて、それがきっかけでカメラの沼に浸かったんだっけ。

 

 ともあれ、おはようございます。”私”、は、河瀬翠です。

 

 

 えーっと、とりあえず目が覚めたのでナースコールでも呼びましょうか、えいや。

 

 

 

 

 なんか人がどやどやと来て広くはない病室が埋まった。なして?

 




とりあえずはここまで。

次は、早いと、いいな……。



あ、ちなみにベーコンってのはもう一本の投稿させていただいてるオリジナルのことです。よろしければそちらも。


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