女の子に憧れているTS男子と男の子っぽいと言われるサバサバ女子 (s.s.t)
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女の子に憧れているTS男子と男の子っぽいと言われるサバサバ女子

続かないので初投稿です。


「愛ちゃん、一緒に帰ろー」

「キモイ、話しかけんな女装野郎」

「ひど~い」

 

高校に入学してから1ヶ月が経過したが、中学の時に比べて幼馴染の愛ちゃんは僕に冷たくなった。

家が隣同士で家族同然に育ってきて、ずっと仲良しだったのに。

幼い頃は漫画みたいな結婚の約束をしたこともあったのに。

 

いったいどこですれ違ってしまったんだろう。

まったく心当たりがない。

 

「お前が高校デビューで女子の制服を着始めたからだよ、変態女装野郎」

「デビュー大成功だぜ」

 

私服OKの高校っていいよね~。

一部の学校行事は制服着用義務があるけど、普段は僕みたいに男子がスカート履いても怒られないし。

愛ちゃんもスカートって色々面倒くさいからいつもパンツスタイルだし。

でも制服着用の時は男子制服じゃないといけないのがちょっと不満。

 

「なんでお前は女子制服を普段から着てるの?」

「行事以外でもいつも制服の子なら他にもいるじゃん」

「なんで男子制服じゃないの?」

「だってスカート履きたかったし。ここの女子制服かわいいし」

「恋ちゃん、バイバ~イ」

「あ、バイバイまた明日~」

「そんでもってなんでお前は普通に受け入れられてるの?」

「似合ってるから特に気にならないんじゃない?」

「いや似合ってるけど。男が女子制服着てるだけで果てしなくキモイから、変態ナル女装野郎」

「ナルじゃなくて客観的事実だもん」

 

我ながら見た目は女子そのものだと思うんだよね。

小さい頃から髪を伸ばしてるから自前でロングヘアだし。

みんな服装がバラバラだから僕が女子制服着てても目立たないし。

違和感がないんだからそういう見た目の人だと思えばすぐに慣れちゃうんじゃないかな?

 

名前も(れん)だから女の子としても通用するというか、むしろ漢字を見ると女の子寄り?

何事にも恋のような情熱をもって取り組んでほしいっていうお父さんお母さんの願いが由来らしい。

似たような名前の愛ちゃんは全てを包み込むような深い愛をもって誰にでも接してほしいっていうのが由来らしいけど、最近は僕への愛が足りてないと思う。

 

「というわけで、もっと優しくして♡」

「女装やめたら考えてやるよ、変態ナルぶりっ子女装野郎」

「愛ちゃんの愛がほしーい」

「もういいからさっさと帰るよ、恋」

「はーい」

 

まあ、キモイキモイ言いながらも一緒に帰ってくれるところはやっぱり優しいなと思う。

指摘すると不機嫌そうに否定されるからわざわざ口には出さないけど。

 

 

 

―★★★―

 

 

 

翌日。

今日は土曜日だ。

 

休日はたっぷり寝る派の僕は普段ならお昼過ぎまで寝てるところだけど、今日は珍しく8時くらいに目を覚ました。

愛ちゃんは1年生ながらバレー部でレギュラー入り確実と言われているスポーツ万能女子なので、休日は部活の朝練で早起きだ。

朝練がない日も自主的にランニングをしているので、いつも6時くらいには起きているらしい。

 

今日はバレー部の練習は一切ないので、ランニングが終わったら愛ちゃんも暇なはずだ。

せっかく(僕基準で)早起き出来たし、朝ごはん食べたら愛ちゃんの家に遊びに行こうかなー。

 

なんて、のんきなことを考えながら洗面所で顔を洗おうとした僕は鏡を見てハッとした。

 

 

「嘘……僕、女の子になってる?」

 

 

 

―★★★―

 

 

 

……っていう遊びをするのが僕の日課なんですね、ハイ。

以前にツイッターでそういうネタの女装漫画を見てから僕も真似したくなっちゃって。

朝起きたら髪が伸びていて自分が女の子になっているって、夢があるシチュエーションだよね。

元々長い髪だから意識したことなかったけど、この遊びをしているとちょっとだけ女の子になった気分を味わえる。

 

まあ制服のスカートだけじゃ物足りないし、ファッションとかスイーツとかの女の子文化には興味津々なんだけど、やっぱり世間の目がね。

見た目では男ってばれないから気にしなければいいのかもしれないけど、恥ずかしいものは恥ずかしい。

それに学校の中はまだ服装自由だからという言い訳で自分を誤魔化せるけど、外に出ると『女装している』という意識が強すぎて素直に楽しめない。

 

だから、女の子に憧れはあるけどそれはあくまで憧れで。

僕の名前と同じ。

愛のような真剣な感情ではなくて、憧れているだけの恋なんです。

 

 

なーんてちょっぴりセンチメンタルを気取ってみたけど、本当に女の子になっても困るし。

常識的に考えて戸籍とか日常生活とか色々問題だらけだよ。

本物の高級車は買えなくても高級車のミニチュアで満足できる人の心理というか、偽物でも女の子に見える容姿なだけ僕は恵まれているよね。

 

男らしい体格じゃなくて良かった良かった。

ちなみに僕の愚息も男らしくない体格です。

なんちゃって。

 

 

脳内でくだらない下ネタを挟みつつ、洗顔料を落としてタオルで軽く水気を吸い取り、今度はトイレへ向かう。

女の子はトイレも大変だって聞くから、こういうところでは男で良かったと思う。

 

まあ僕の場合は中学時代に駅のトイレでホモ営業をかけられたのがトラウマになって、必ず個室を使うようになったからそこは女子との共通点かも。

知らない大人の男性が僕の肩をたたいて下の方を指差すから何かと思ったら、自分の男性器を指差してたんだよ?

何が起きているのか理解できなくて曖昧に笑っていたらケータイを出されて、画面を見たら「名前と年齢を教えてください」ってメモ帳に書いてあるの。

それでも意図がわからなくて愛想笑いで返したら、OKだと思われたのか「ホテルに行きませんか」っていうメモ帳を出されて。

 

……すっっっっっっごい怖かった!

全部無言でやり取りしているのも怖いし、いつも使ってた駅のトイレがハッテン場だったというのも怖いし!

あれ以来駅のトイレは絶対使わないようになったけど、それ以外のトイレも男の人の目が怖くて個室しか使えなくなった。

愛ちゃんとは何でも話す仲だけど、さすがにこの件のことだけは話せていない。

 

外出時のトイレは個室を使うようになった影響で、家でも座って用を足すのが習慣になったよ。

いえーい、ますます女の子に近づいたね(空元気)

 

なんで自分でトラウマを掘り返して朝から落ち込まなきゃいけないんだろう。

気が付けば便座の前で立ったまま考え込んでいたようで、正気に戻った僕はようやくズボンを脱いで便座に座った。

 

 

 

 

 

……?

 

 

 

 

 

?????????

 

 

 

 

 

……なんで?

 

…………あれー、僕の愚息は家出中なのかな??

 

………………まさか、本当に僕、女の子になっちゃった???

 

 

 

―★★★―

 

 

 

 

「大変だ大変だたいへんたいへんたいへんたいだー!」

「変態はお前だ」

「愛ちゃんヘルプ!」

 

パニックを起こした僕はとりあえず両親を探したが、リビングには『デートに行ってくるからご飯は自分で何とかしてね』というお母さんの書置きが残されているだけだった。

自分の子供に『恋』なんて名前を付けるだけあって両親は今でもアツアツなのだが、今日だけはやめてほしかった。

次に思い浮かんだ頼れる人間が愛ちゃんだったので、すぐさま電話をかけた次第である。

 

「僕、女の子になっちゃった!」

「は? 何言ってるの? お前が毎朝やってる恥ずかしい遊びの話?」

「なんでそれ知ってるの!? また母さん経由!?」

「そうだけど。私これからネットで猫動画見ながらベッドでゴロゴロしなきゃいけないから。忙しいからお前の遊びに巻き込むな」

「それ絶対暇だよね!? いやそうじゃなくて本当に女の子になっちゃったの!」

「あ、それともどっか遊びに行く? 久しぶりにゲーセン行きたいから付き合って」

「話聞いて!? あーもう、とにかく今からそっち行くから!」

「はいはい、女装してきたら殴るから」

「しないよ!」

 

学校以外で女装するのは恥ずかしいから、女性服も持ってないよ!

女装してない方が愛ちゃんも優しいしね!(女装しないとは言っていない)

 

通話を終えて急いで着替え始める。

 

私服のレパートリーはユニセックス系が多いから性別が変わっても不都合はない。

というか冷静に考えて、女の子になっても体格が変わってない僕って何なんだ。着替えていて何の違和感もない。

いやそもそも女の子になること自体があり得ないことなのか。

やっぱり冷静になれていないな。はやく愛ちゃんの家に行こう。

 

 

着替え終わったら急いで家を出て、玄関の鍵を閉めて隣の家へ直行。

インターホンを鳴らしたら、30秒くらいして2階にある愛ちゃんの部屋から人が下りてくる音がする。

 

 

緊急事態なんだから急いで! のんびり降りてこないでよ!

幼馴染なのになんで窓からお互いの部屋を行き来できないのさ!

隣の家同士なのに距離が離れすぎだよ!(無慈悲な10m)

いやいや、プライバシーもあるんだしそんな漫画みたいな建築の家がそうそうあるわけないじゃないか。

冷静になれ僕、びーくーる。

 

「お待たせ」

「愛ちゃん! 僕女の子になっちゃったんだよ!」

「それさっきから何回も言ってるけど本当なの?」

「本当だよ!」

「ふーん?」

「ひゃっ」

 

いきなり愛ちゃんに股をまさぐられた。

僕の言葉を確かめるためなんだろうけど、方法が男前すぎる。

いや男女逆だと通報ものだから逆に女の子らしいのか? 女の子らしくはないな。

でもこれで確認はできただろう。僕の幼馴染は話が早くて助かる。

 

「お前のブツって小さいし触ってもわかんないや」

「ひどい!」

 

さすがにそれは僕でも傷つくよ!

一緒にお風呂入るのは小学生でやめたから今の僕は知らないでしょ!

 

「触ってもわからないから服脱げ」

「ここで!?」

「家の中でだよ。私の部屋来て」

「いやいや! どっちにしろ服脱ぐのは恥ずかしいって!」

「今は女同士なんだろ。恥ずかしくない恥ずかしくない」

「キャー、変態!」

「変態はお前だ」

 

 

 

僕の幼馴染は、話が早すぎる。誰か助けて。

 

 

 

―★★★―

 

 

 

「結論として、乳はないけど女性器は本物だから女になってる」

 

 

愛ちゃんの部屋で全裸にされて、大事なところをマジマジと見られてしまった。

確実ではあるけど、これを実行できる愛ちゃんはもはやサバサバしているとかいう領域ではないと思う。

タイトルに偽りありでは……?

 

 

「長年の夢が叶って良かったね、恋」

「僕、別に女の子になりたかったわけじゃないんだけど」

「女の子みたいなことはしたいのに、女装は恥ずかしいとか言って矛盾の塊だったじゃん。女になれたんだから解決でしょ」

「こういうのはそういう単純な話じゃ……うーん?」

 

言われてみれば、これでもう誰に憚ることもなくファッションもスイーツも楽しめるのでは?

今の僕は女の子なんだから、女性服を買っても問題ないし、女の子しか並んでいない原宿スイーツのお店にも行けるのでは?

 

「いやでも、急に女の子になっちゃったらみんなびっくりするだろうし!」

「元々学校じゃほぼ女子扱いなんだから問題なくない? 学校以外じゃそもそも男だって認識されてなかったし」

「う、うーん?」

 

言われてみれば、日常生活に支障は出ないのかな?

 

「……トイレの問題とか?」

「ウチの学校なら案外女子たちも受け入れるんじゃない? ダメでも多目的トイレ使えば?」

 

言われてみれば、男女共用のトイレを選べばいいのかな?

 

「……戸籍とか?」

「人間が管理している以上はミスはあるでしょ。現実に恋の体が女になっているんだから、女だって言い張れば戸籍のミスだったことになって訂正できるんじゃない?」

 

言われてみれば、そういうものなのかな?

むしろ男性だと証明できないから女性になるしかないのでは?

 

「どうして女になったのかはわからないけど、こういうのはなるようにしかならないよ。受け入れろ、恋」

「……うん、そうだね!」

 

冷静に考えたら15歳の子供二人でこんな大きな問題解決できるわけないし、大人に相談しないといけないよね。

そうなるとお父さんとお母さんは夜まで帰って来ないし、それまでは暇になっちゃうな。

よし、愛ちゃんと遊ぶか!(冷静な判断)

 

 

 

―★★★―

 

 

 

「私はゲーセンに行きたかったんだけど」

「い~じゃん。せっかく女の子になれたんだから、買い物くらい付き合ってよ」

 

駅前のショッピングセンターはデパート3つ分くらいはありそうな規模で、ここら一帯では最大の商業施設だ。

僕が憧れていた女の子向けのアパレルがズラッと並ぶエリアもあれば、愛ちゃんご所望のゲーセンも3店舗ある。

端から端まで歩くだけでも20分くらい掛かるんじゃないだろうか。

 

「服くらいいつでも買えるだろ。私の部活休みはそうそう無いんだぞ」

「僕だって明日起きたらまた男の子に戻ってるかもしれないんだよ? チャンスは今日だけかも知れないんだから」

「じゃあ服買ったらゲーセン」

「その前にお昼でしょ。あそこのカフェ女の子ばっかりで入れなかったんだよね~」

「午前中ずっと服見るつもりなのか……」

 

楽しみだなー。

急に男に戻る可能性もあるから今日服を買っても無駄になっちゃうかもしれないけど、戻らない可能性もあるんだから最低限の洋服一式くらいは揃えたい。

別に今まで着ていたユニセックス系の服でも問題ないけど、やっぱり女の子になったならもっとふわふわヒラヒラした服も着てみたいし?

 

「そうだ、愛ちゃんがいつも行くお店教えてよ」

「私? 特に行きつけの店とか無いけど」

「え~、じゃあどうやって服とか決めてるの?」

「どうって言われても、見て気に入ったら買うとしか。あ、これいい」

 

どの店に入るか迷いながら歩いていたら、愛ちゃんはふと目に入ったボーイッシュ系のパーカーを手に取ってお会計を済ませてしまった。

即断即決だ。

やはり私の幼馴染は男前すぎる。

 

「愛ちゃんが全然参考にならな~い。愛ちゃん本当に女の子?」

「お前も私を脱がせて確かめてみるか?」

「せくはら~」

 

女の子になっても大平原の私と違って愛ちゃんは普通に起伏があるので、見なくてもわかる。

 

でも服はどうしよう? お店が多すぎるからどれも良さそうに見えて中々決められない。

あとやっぱり意識が男のままというか、お店に入るのは少し躊躇する。

 

「別に私が決めるの早いってだけだし、恋は時間を掛けて見ればいいよ」

「そう? ていうか今更だけど、愛ちゃんって私が女装するの嫌じゃなかったの?」

「男の恋が女装するのは男らしくないからキモイ、女の恋が女装するのは普通だしカワイイ」

「わー切り替えはやーい」

「女の子は女の子扱いするものでしょ?」

「愛ちゃんイケメ~ン。惚れ直した~」

 

やはり私の幼馴染は(ry

 

 

 

―★★★―

 

 

 

たっぷりショッピングを楽しんで、お洒落なカフェで甘いパンケーキを味わって、ゲーセンでクレーンゲームやプリクラをやって、僕は一日中女の子を満喫した。

そろそろ日も暮れる時間になってきたので、僕も愛ちゃんも自然と家の方に足が向く。

 

買った服はコインロッカーに預けてたから持ちながら移動する必要はなかったけど、遊び疲れたからか取り出した荷物は思いのほか重く感じた。

男の時もそんなに力はなかったけど、女の子になってからは体力も筋力もさらに落ちた気がする。

ちょっと買いすぎたかな~なんて考えていると、疲れた表情を見られたのか愛ちゃんに荷物を取られてしまった。

 

「重いでしょ、持つよ」

「あ~、また女の子扱いして~」

「今は女でしょ」

「違うよ、男の時も同じことしてたでしょ。そういう意味の『また』だよ」

「男の時はちゃんと男扱いしてた」

「本当に~?」

 

愛ちゃんって年々男らしい性格になってて、女子人気も上がってるからな~。

女子にモテるタイプのカッコイイ女性って感じで、ナチュラルにイケメンムーブを決めるところがあるし。

あんまり男扱いされてた気はしないな~。

 

「恋は年々女の子らしくなっていくよね。今年はとうとう女装にまで手を出したし」

「好きだからしょうがないでしょー。恋ちゃんは女の子に恋をしているのです」

「どうしてそんな風になったんだか。初めて会った頃は普通の男の子だったのに」

「なんでだろうね~」

「またそうやって誤魔化す」

 

理由は僕も覚えていないなー。

漠然と女の子というものに強い憧れがあって、理想の女の子像があって……。

あれ、違うな。

『女の子』なんてあやふやな存在じゃなくて、最初に憧れた人がいたはず。

なのに、思い出せない。

まあ、目標とする姿ははっきりしているから別にいっか。

 

 

「恋は男に戻りたいと思わないの?」

「そりゃあ戻りたいとは思うよ。でも今日一日楽しかったし、女の子でもいいかもね~。愛ちゃんもあっさり受け入れているみたいだし~?」

 

女の子のままなら、憧れの人にもっと近づけるし。

男の僕に未練がないみたいな態度の愛ちゃんにはちょっぴり傷ついたから、皮肉めいた返しになってしまったけど。

 

 

「……別に取り繕っているだけで、本当に受け入れているわけじゃない」

「え~? でも僕が女装するの嫌がってたし、女の子の方がいいんでしょ?」

「女になってしまったものは仕方ないから受け入れるしかない。でも男に戻れるなら戻ってほしい。そして女装もやめてほしい」

「もーどうしてそんなに男の僕にこだわるの」

「そうじゃないと約束守ってもらえないだろ」

「約束~? 男じゃないと守れない約束ってなにさ」

 

 

そう僕が問いかけると、愛ちゃんは珍しく言い淀んだ様子だった。

少しの逡巡の後、思いもしなかった言葉が僕の耳朶を打つ。

 

 

「………………結婚」

「け」

 

 

あ、思い出した。

 

 

 

―★★★―

 

 

 

その後の帰り道はずっと、お互い無言だった。

家の前に着いたところで愛ちゃんが僕の荷物を渡してくる。

 

「ほれ、荷物」

「うん、ありがと」

「……」

「……」

 

何を言えばいいのかわからなくて、また無言になってしまった。

愛ちゃんはいつも通りの表情に見えるけど、よく見れば耳が赤い。

まあ、傍から見れば顔も耳も熱くてしょうがない僕の方がよっぽど真っ赤だろうけど。

 

……うん、まあとりあえず。

 

 

「小っちゃい頃にした結婚の約束をまだ覚えてるなんて、愛ちゃんって意外と乙女~」

「ぶん殴るぞ」

「暴力反対~」

「固く握りしめたグーで殴るぞ」

 

 

一度茶化して場の雰囲気を和らげておこう。

これから言おうとしていることは結構勇気がいるから、張り詰めた空気だと緊張に耐えられそうにない。

 

拳を振り上げる動作を見せ始めた愛ちゃんをなだめて、真面目な顔を作る。

思えば女の子に憧れを持ち始めてからはずっと笑顔でいるようになったから、こういう顔は愛ちゃんにも見せていなかったかもしれない。

僕の表情を見て、愛ちゃんも矛を収めて待ちの姿勢になってくれた。

 

 

意を決して、言葉を発する。

 

 

「男に戻れたら、約束守らせてね」

「そこは断言しろよ」

「痛いっ」

 

 

殴られた。

 

 

「まったく、こんな時まで男らしくない」

「だって~男に戻れるかどうかわからないし。それにやっぱり女の子への憧れはあるし~」

「時々そのセリフ言うけど、結局誰に憧れてるんだ」

「う~ん、僕が一番可愛いと思う女の子かな」

「だから誰だよ」

「小さい頃はとっても女の子らしかった、どこかの誰かさんとか?」

「……今のは少し男らしかった」

 

 

そういって顔を赤らめる愛ちゃんの笑顔は、あの頃のままだった。

僕が初めて出会った女の子。

僕が憧れている可愛い『女の子』である。

 

 

 

 

僕は『女の子』に恋をしている。

 

 

 

 




急に天啓が降ってきたので書いてみたけど、ここまでで力尽きました。
誰かこういう話書いて♡♡♡

ここまでお読みくださりありがとうございました。


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