ザンビ〜東京壊滅編〜 (ルコル)
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とある少女との出会いと仲間
1話


?「ここが東京か。酷い有様だなこりゃ・・・」

 

 

辺りは一面廃墟だらけの街を見て、一人の少年が呟いた。

 

 

彼は、篠崎剣斗。

 

 

キリスト教の教会本部に所属する悪魔祓い師である。

 

 

現在剣斗は、教会からの依頼により、ある事が原因で壊滅状態になってしまっている東京に来ていた。

 

 

何故、東京が壊滅状態になっているかと言うと・・・

 

 

?「ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

 

?「グアアアア!!!」

 

 

?「アアアアアア!」

 

 

剣斗「クソ、さっそくお出ましかよ!」

 

 

それはザンビという謎のバケモノ達によってそうなってしまっているからだ。

 

 

剣斗「しかもこいつら全員、神人じゃねえか!!」

 

 

ザンビというのは生と死の狭間にいる存在で、見た目通りの生きる屍である。

 

 

ホラーなどの定番であるゾンビと似たようなものである。

 

 

今回、剣斗に襲いかかって来ているのは、そのザンビよりもやっかいな存在、神人である。

 

 

神人とはザンビの成れの果てであり、記憶、思考、感情をすべて失い、ただ本能のままに、人間を襲うバケモノである。

 

 

また神人はザンビとは違って、脳を破壊しようが、心臓を撃ち抜こうが、決して殺すことは出来ない。

 

 

剣斗「とりあえず、火を放って動きを止めるか、殺すことは出来なくても、肉体を焼けば、骨だけになって、しばらくは動けないだろ。」

 

 

剣斗はここで魔法を発動させる。

 

 

剣斗「焔よ来たれ!我が求むのは全てを焼き尽くす焔の雨!!【ブラストレイン】!!!」

 

 

魔法が発動し、神人目掛けて、炎の雨が降ってくる。

 

 

神人達「グアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

 

 

炎の雨が容赦なく、神人の肉体を焼き尽くす。

 

 

それから、少しして、神人達は骨だけになってしまった。

 

 

だが、その瞬間すぐに再生が始まる。

 

 

剣斗「今のうちにここを離れよう。」

 

 

ザンビや神人は音に反応して寄ってくる習性があり、剣斗はすぐにその場を離れた。

 

 

それからは、ザンビや神人と遭うことなく、なんとか、隠れられそうな場所を見つけ、そこに隠れた。

 

 

剣斗「ここなら、安心だな。」

 

 

ひとまず、剣斗はそこで休憩をとることにした。

 

 

剣斗「それにしても、本当に酷い有様だなこりゃ。」

 

 

剣斗は辺りの瓦礫や散乱している物を見てそう呟いた。

 

 

剣斗「ったく。教会も無茶な任務出すなよな。行ったら、完全に終わるまで帰ってくるなって。無茶振りにほどがあるだろ。」

 

 

剣斗は教会から依頼されているというが、実は完全に終わるまで、帰れないという規定があるのだ。

 

 

理由はもちろん、ザンビの呪いを拡散させないためである。

 

 

分かってはいるが、剣斗は愚痴を言わない訳には居られなかった。



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2話

剣斗は休憩してからしばらくすると、再び行動を開始した。

 

 

剣斗「次に神人に遭遇した時に浄化の力を使って見るか。」

 

 

剣斗はもしまた神人に遭遇したら、修行で得た新しい特殊な力、浄化の力を使うと決めていた。

 

 

ここで試して置かなければ、この力を得た意味が無くなる。

 

 

そう剣斗は思っていた。

 

 

剣斗「さて、力を使おうと決めたものの神人どころかザンビの気配もないな。」

 

 

しかし、肝心な時に剣斗はザンビや神人と遭遇出来ないでいた。

 

 

その時だった。

 

 

ダダダダダダッ!!!ダダダダダダダダッ!!!

 

 

剣斗「近くで戦闘があるのか!?」

 

 

銃声を聴いた剣斗は、その方向行ってみることにした。

 

 

現在の東京は壁で覆われ、外に出る事は出来ない状態だ。

 

 

壁を登ろうとすれば、機銃で撃たれる。

 

 

だが、政府は完全に東京に生き残った人々を見捨てたわけではなく、ドローンで食料や武器を運んで来てくれる。

 

 

しかし、どこに落とすか分からず、生き残った人々達で武器や食料の奪い合いが発生する可能性がある。

 

 

それが剣斗はネックであった。

 

 

剣斗「あまり他の連中とは会いたくないが、こう神人達との遭遇率が低いと埒が明かない。」

 

 

剣斗はそう言って、戦闘のある方向へと向かった。

 

 

戦闘が行われている場所に来てみると、何人かの高校生くらいの年齢の人たちが神人の群れと戦っていた。

 

 

剣斗「しかし、ありゃ押されてるな。」

 

 

ここで助けに入ってもいいが、物資の奪い合いが発生する可能性がある。

 

 

正直このまま見捨ててもよかったのだが、浄化の力を試すには絶好の機会だった。

 

 

剣斗「おい、今すぐ撤退しろ!!」

 

 

戦闘中だった高校生達は、急に声を掛けられた為に呆気に取られていた。

 

 

?「な、なんだよ!?お前は!!」

 

 

?「急に割り込んで来て何!?」

 

 

剣斗「このままじゃ、ジリ貧だ!!あいつらは死なない!!」

 

 

そこで高校生達のリーダーらしき人物が、前に出てきた。

 

 

?「みんな、撤退しよう。このままじゃやられる。ここで喰い殺されたくはない。」

 

 

リーダーがそう言うと、高校生達はその提案を受け入れ頷いた。

 

 

?「誰だか知らないけど、助けてくれてありがとう。」

 

 

剣斗「礼はいい。早く行け。」

 

 

?「分かった。」

 

 

リーダーがそう言うと、高校生達のグループは撤退して行った。

 

 

そしてそこに残ったのは神人の群れと、剣斗だけだった。

 

 

神人「グアアアアアアア!!!!!」

 

 

神人「ギシャアアアアアア!!!!」

 

 

神人「グオオオオオオオオオ!!!」

 

 

剣斗「さて、頼むから効いてくれよ!!!」

 

 

剣斗はそう願いを込め、浄化の力を発動させた。

 

 

その瞬間、眩い光が剣斗と神人達を包み込んだ。

 

 

包み込まれた神人は徐々に動きが鈍りだし、異形の姿から元の人間の姿へと戻り始めた。

 

 

剣斗「よっしゃ、なんとか成功したか。」

 

 

そして神人達は完全に元の人間の姿へと次々に戻って行った。



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3話

篠崎剣斗


教会からの任務で壊滅した東京の調査と事件の収束のため、東京に派遣された悪魔祓い師の少年。修行の際に得た浄化の力と魔法を駆使し、ザンビや神人達と戦う。年齢は17歳。キリスト教関係の高校に通っている。



浄化の力


剣斗が持つ神人達と対抗し得る唯一の力。あらゆる悪しき力を浄化する事が出来る。この力で、ザンビや神人を人間に引き戻すことが出来る。



ザンビ


突如として、現れた異形の怪物。元は人間であり、100年前に生き埋めにされた女性の呪いを受けて怪物化した存在。陰陽道では生と死の狭間を彷徨うモノとされる。生き残った人間に噛み付き、呪いを感染させ、仲間を増やす。倒すことは出来るが、心臓を撃ち抜くか、頭を潰さない限り倒せない。



神人


ザンビの成れの果て。ザンビが自身で繭を作り、その中で一定時間経て成り果てた化け物。記憶、思考、感情をすべて失っている。殺すことは出来ず、跡形もなく消し飛ばしても決して死なない不死身の存在。


剣斗は先程まで神人となっていた人々から呪いが消えている事を確認すると、ホッと溜め息をついた。

 

 

剣斗「ふぅ、呪いは完全に浄化されたみたいだな。」

 

 

剣斗(しかし、残美信仰か。それがこんなにも恐ろしいことを引き起こすなんてな。)

 

 

そんな事を考えていると、神人となっていた人々の中の一人の男性が目を覚ました。

 

 

?「あれ?オレは一体何を?」

 

 

剣斗「目を覚ましようだな。」

 

 

?「君は?」

 

 

剣斗「オレは篠崎剣斗だ。東京の調査に来たキリスト教の悪魔祓い師だ。」

 

 

?「君が助けてくれたのか?」

 

 

剣斗「ああ。」

 

 

その男性は辺りに倒れてる人々を見ながら、そう言った。

 

 

剣斗「神人になっていたことは覚えているか?」

 

 

男性「いや、ぼんやりとしか分からない。ザンビにされた時の事ははっきり覚えているがな。」

 

 

剣斗「そうか。」

 

 

修也「そう言えば、オレも名乗っていなかったな。宮川修也だ。よろしく。」

 

 

剣斗「ああ、よろしくな。」

 

 

修也な少し不安そうに、まだ倒れてる人々を見て、聞いてきた。

 

 

修也「彼らは大丈夫なのか?」

 

 

剣斗「呪いは完全に浄化されたからもう大丈夫だと思うぞ。」

 

 

修也「そうか。それでこれからどうするんだ?」

 

 

剣斗「そうだな。とりあえずここら一帯の神人を全て元に戻す。神人は殺せないから、人間の状態に引き戻すしか対抗する術がないからな。」

 

 

修也「君にそんな力があるのか?」

 

 

剣斗「ああ、修行しているうちに偶然手に入れてね。オレも良く分かってないんだ。だから使えなくなるうちに使って置こうと思っている。」

 

 

修也「そうなのか。」

 

 

修也は少し考えて剣斗に一つの提案を出してきた。

 

 

修也「剣斗くんだったか?これから一緒に行動しないか?」

 

 

剣斗「いいのか?食料や武器は分配になるぞ?」

 

 

修也「また神人に戻るのは嫌だしな。君といる方が生存率が上がりそうだしな。」

 

 

剣斗「そうか、分かった。」

 

 

修也「ああ、これからよろしく。」

 

 

こうして、剣斗は修也と行動を共にすることになった。

 

 

その後は、目を覚ました神人から元に戻った人々に事情を説明し、安全な場所に送り届けた後、そこに結界を張り、そこを任務活動の拠点とした。

 

 

そして剣斗と修也は、再び行動を開始した。

 

 

ちなみに剣斗は浄化の力を「セフィロト」と名付けた。

 

 

由来は、聖なる樹からそのまま取った。

 

 

剣斗「よし、ここら辺で良いだろう。修也さん頼む。」

 

 

修也「分かった。」

 

 

修也はそう言って、移動中にドローンが落として来た武器の中にあった手榴弾を瓦礫の山に投げ付け、起爆させた。

 

 

ドカアアアン!!!

 

 

その手榴弾の爆発音でわらわらと、ザンビや神人の群れが湧き出てきた。



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4話

神人「グオオオオオオオオオ!!!」

 

 

ザンビ「キシャアアアアア!!!!」

 

 

剣斗「来たか。オレの後ろに隠れていろ!」

 

 

修也「あ、ああ!」

 

 

剣斗は湧き出てきた神人達に対し、冷静且つ真剣な表情でそう言い、セフィロトを発動した。

 

 

剣斗「セフィロトよ!かの者達を浄化せよ!!!」

 

 

カァァァァァァッ!!!!!!

 

 

セフィロトを発動させ、聖なる光の奔流が辺りを覆った。

 

 

神人達はその光に包まれると、徐々に動きを止め、神人の状態から、徐々に人間の姿へと戻って行った。

 

 

修也「す、すごい。神人達が元に戻って行く。」

 

 

剣斗「ふぅ、この辺りに神人はもういないようだな。」

 

 

修也「そのようだな。」

 

 

二人は顔を見合わせ辺りを確認し、神人達の気配はもう無いと警戒を解いた。

 

 

その時だった。

 

 

一人の少女がこちらに剣斗達の元に走って来た。

 

 

剣斗「何者だ!!」

 

 

剣斗はまた警戒心を剥き出しにし、魔法を発動しようとした。

 

 

修也「待つんだ!その子は神人でもザンビでも無い!人間だ!!」

 

 

修也に止められ、剣斗は警戒を解き、魔法を発動させるのやめた。

 

 

少女「誰か!!助けてぇ!」

 

 

修也はその手に手鏡を持っていた。

 

 

修也「ザンビや神人は鏡に歪んで写るんだ。彼女は歪んでいない。」

 

 

その少女はこちらに助けを求めて来た。

 

 

剣斗「大丈夫か!?」

 

 

修也「もしかして生存者かな。」

 

 

剣斗「そのようだな。あれ?この子の着ている制服、フリージア学園の制服だ!!キミは、フリージア学園の生徒なのか!?」

 

 

剣斗は気になって訊いてみた。

 

 

フリージア学園は教会からの報告によると、3ヶ月前に関係者全員がたったの7日で行方不明になったと言われている全寮制の女子校である。

 

 

彼女はそのフリージア学園の生存者かもしれないのだ。

 

 

少女「い、いえ。わ、私はフリージア学園の生徒ではありません。この制服は前の避難所で頂いた物です。」

 

 

修也「そうか。君も避難所で生活していたのか。」

 

 

剣斗「避難所?」

 

 

修也「ああ、オレは避難所で生活していたんだ。だが、ザンビの群れに襲われて壊滅したんだ。」

 

 

少女「私のいた所も形は違いますけども、壊滅しました。親友が私をに、逃がしてくれて・・・グスッ、うわあああん!!!」

 

 

その少女はそう言いながら、その場に泣き崩れた。

 

 

剣斗「よしよし、辛かったな。もう大丈夫だ。」

 

 

修也「そう言えば、フリージア学園って言ってたけど、そこがどうかしたのか?」

 

 

剣斗「ああ、実はな。」

 

 

剣斗は泣き崩れた少女の背中をさすりながら、今現在のフリージア学園の状況を修也に、なるべく簡潔に説明した。

 

 

修也「それは本当なのか!?」

 

 

剣斗「ああ、本当だ。フリージア学園の関係者は全員7日間で失踪した。」

 

 

修也は今聞かされた事実に驚愕していた。



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5話

その後、剣斗達は安全な場所まで移動し、落ち着きを取り戻した少女から話を聞くことにした。

 

 

剣斗「まずキミの名前から聞いておこうか。オレは篠崎剣斗。キリスト教の教会から派遣された悪魔祓い師だ。」

 

 

修也「オレは宮川修也だ。彼によって神人の状態から、元に戻してもらったんだ。」

 

 

杏奈「一ノ瀬杏奈です。助けてくれてありがとうございます。」

 

 

剣斗「キミは初めはどこの避難所にいたんだ。」

 

 

剣斗がそう聞くと、震えながらもしっかり答えてくれた。

 

 

杏奈「私は、西東京病院に連れていかれてそこで避難生活を送っていました。」

 

 

剣斗「なんだって!?」

 

 

修也「知っているのか?」

 

 

剣斗「ああ、そこの病院は前から非道な人体実験が行われていると噂があってな。いずれ調査が入る予定だったんだ。」

 

 

その話を聞いて杏奈は、そこで起こった惨劇を全て語ってくれた。

 

 

杏奈「これが私のいた所で起こったことの全てです。」

 

 

剣斗「そんなことがあったのか。その天津圭って女医師がザンビの呪いを広めていたか。」

 

 

杏奈「ザンビって呪いから発生しているんですか?それに神人って?」

 

 

剣斗「ああ、順を追って説明するよ。」

 

 

剣斗はザンビの呪いについて、神人について、杏奈に分かりやすく説明した。

 

 

杏奈「100年前に生き埋めにされた女性の怨念から始まったんですね。あとは神人・・・ザンビの成れの果てで殺すことも出来ないって・・・」

 

 

剣斗「ああ、残念ながらそうなんだ。」

 

 

修也「そろそろ拠点に戻らないか?暗くなる前に、行かないとヤバそうだぞ。」

 

 

剣斗「ああ、そうだな。杏奈さん、立てるか?」

 

 

杏奈「はい、大丈夫です。」

 

 

三人は立ち上がり、荒れ果てた東京の街中を拠点を目指し、歩き始めた。

 

 

その道中、神人の群れに遭遇したが、剣斗のセフィロトによって全員を元の人間の状態に戻された。

 

 

その後は神人から元に戻った人々に事情を説明し、その人たちと拠点に戻った。

 

 

拠点に戻ると、剣斗に男性が一人、話しかけて来た。

 

 

男性「さっきはありがとうな。まさか人間に戻れるとは思わなかったよ。」

 

 

剣斗「いえ、任務ですから当然ですよ。それに神人に対抗出来るのは、今の所オレしかいないので。」

 

 

男性「けど、ここを拠点にして大丈夫なのか?」

 

 

剣斗「ええ、今は強力な結界を拠点一帯に貼っているので、ザンビはおろか、神人さえ入って来れませんよ。」

 

 

剣斗はそう言って、男性を安心させた。

 

 

だが、一つ心配な事があった。

 

 

それは食料についてだ。

 

 

どうやら、拠点にはいくらかの食料が備蓄されていると、修也が教えてくれた。

 

 

だがこの先、神人を元に戻し、人々が増えて行き、いずれ食料が底を尽きる。

 

 

それによって、奪い合いが発生するかが懸念された。



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6話

剣斗「修也さん、食料はどれくらいある?」

 

 

修也「今の人数だと、1ヶ月持つかくらいかな。それくらいはあるよ。」

 

 

剣斗「そうか。どっちにしろ物資は回収しなきゃいけないな。どうやらこの付近は生き残った人間たちはいないようだ。ここら辺に上手く落としくれればいいが。」

 

 

政府がドローンで落とす食料や武器は常にランダムであり、いつどこに落とされるのかはその時まで分からない。

 

 

故に落とすの見かけたらすぐさま取りに行かなくてはならない。

 

 

また周辺に物資が落ちているかもしれないので、辺りを探索する必要もある。

 

 

その時杏奈が大声でこちらに駆け寄って来た。

 

 

杏奈「篠崎さん!物資が運ばれてきました!!」

 

 

剣斗「本当か!?」

 

 

杏奈「は、はい!」

 

 

杏奈に誘われ、外の上空を見てみると今まさにドローンが物資を隣の建物の屋上に落としたのが見えた。

 

 

剣斗「修也さん、杏奈さん、今のうちに回収しよう。」

 

 

剣斗達は、すぐさま行動を開始した。

 

 

男性「物資を取りに行くのか?気を付けてな!」

 

 

剣斗「はい、行ってきます!」

 

 

先程の男性に見送られ、剣斗達は物資が落とされた隣の建物へと急いだ。

 

 

そして、隣の建物に入口に来ると異様な雰囲気が漂っているのを、剣斗は感じた。

 

 

剣斗「二人とも、気を付けてくれ。おそらく神人がいる。」

 

 

剣斗はその場で神人の気配を察知して、動きを止めた。

 

 

剣斗「隠れよう。」

 

 

修也「ああ。」

 

 

杏奈「こ、怖い・・・」

 

 

剣斗「ごめんな、杏奈さん。物資を運ぶのに人手が足らなくて、他の人に頼んでも良かったけど、あの人達はまだ完全に信用出来なくてな。まだ二人なら、信用出来る。」

 

 

杏奈「あ、ありがとうございます。」

 

 

そんな会話をしていると、杏奈が少し驚いた顔をした。

 

 

杏奈「あ!摩耶!雪穂!彩菜」

 

 

修也「知り合いか?」

 

 

杏奈「はい、鳴沢摩耶、桂雪穂、一色彩菜です。前の避難所で一緒だった子達です。」

 

 

杏奈はどこからともなく現れた神人を指差して、そう言った。

 

 

剣斗「あの三人もフリージア学園の制服を来ているな。」

 

 

杏奈「雪穂と彩菜は元々、フリージア学園の生徒なんですよ。摩耶は私の大事な親友です。」

 

 

剣斗はその場で少々考えて、杏奈に訊いた。

 

 

剣斗「あの三人はもう神人となっている。殺してやる事はもう出来ない。だけど、助けたいか?」

 

 

杏奈「は、はい!助けたいです!!なにより摩耶にもう一度謝りたい!!」

 

 

剣斗「そっか、分かった。あの三人、元に戻してあげよう。」

 

 

剣斗そう言うと、三人の神人達の前に立ちはだかった。



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再会
1話


剣斗が神人達の前に飛び出すと、神人達は、餌を見つけたと言わんばかりに、剣斗に襲いかかって来た。

 

 

剣斗「セフィロトよ、かの者達を浄化せよ!!!」

 

 

剣斗は神人達の襲撃に臆すること無く、セフィロトを発動させる。

 

 

カァァァァァァッ!!!

 

 

神人「オオオ・・・」

 

 

神人「ウ、ウアア・・・」

 

 

神人「アアア・・・」

 

 

セフィロトの聖なる光に包まれた神人達は活動を停止し、徐々に人間の姿へと戻って行き、最終的に完全に人間に戻り、その場に崩れた。

 

 

杏奈「す、すごいみんな元に戻った。」

 

 

修也「ああ、何度見ても驚かされるな。」

 

 

剣斗「これでよし!呪いは完全に浄化された。もう大丈夫だぞ。」

 

 

剣斗がそう言うと、杏奈が神人から元に戻った摩耶達の所へ駆け寄った。

 

 

杏奈「摩耶!彩菜!雪穂!!」

 

 

杏奈が呼び掛けると、摩耶達はゆっくりと目を覚ました。

 

 

摩耶「あ、杏奈?」

 

 

彩菜「あれ?ここは・・・」

 

 

雪穂「私・・・確か・・・」

 

 

杏奈「摩耶!!彩菜!!雪穂!!うわあああん!!」

 

 

杏奈は三人が目を覚ますと、泣きながら三人に抱き着いた。

 

 

摩耶「杏奈!無事だったんだ!!」

 

 

雪穂「杏奈!!良かった!!」

 

 

彩菜「無事でなによりだよ!」

 

 

杏奈達はしばし、抱き合いながら、再会を喜んだ。

 

 

剣斗「元に戻せて良かったよ。」

 

 

剣斗は抱き合ってる杏奈達に、そう声を掛けた。

 

 

摩耶「もしかして、あなたが助けてくれたんですか?」

 

 

剣斗「ああ。君らにかけられていた呪いを浄化させてもらったよ。」

 

 

雪穂「呪い?」

 

 

彩菜「??」

 

 

剣斗はこれまでの経緯と、この騒ぎについて、摩耶達に簡潔に分かりやすく説明した。

 

 

摩耶「そうだったんですか!?100年前に生き埋めにされた女性の怨念がこの災厄を起こしているなんて!!」

 

 

雪穂「それに私達は、神人っていう不死身の化け物になってしまってたのか。」

 

 

彩菜「そうだったのね。」

 

 

修也「説明はだいたいこれくらいにして、まず自己紹介して置かないか?」

 

 

剣斗「それもそうだな。」

 

 

修也の提案を受け入れ、摩耶達と剣斗と修也はそれぞれお互いに自己紹介をする事にした。

 

 

剣斗「オレは篠崎剣斗。キリスト教の教会の悪魔祓い師をしている。今はこの事件の調査をしている。17歳だ。よろしく。」

 

 

修也「オレは宮川修也。君らと同じように剣斗くんに神人から元に戻してもらった。18歳だ。よろしくな。」

 

 

摩耶「鳴沢摩耶です。よろしくお願いします。」

 

 

雪穂「桂雪穂だ。助けてくれありがとうな。」

 

 

彩菜「私は一色彩菜です。よろしくね。」

 

 

自己紹介が終わると、この後の動きについてどうするか話し始めた。



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2話

剣斗「それで、神人から元に戻って早々悪いんだけど、この後オレたちはこの建物の屋上にある物資を回収するんだ。三人にはそれを手伝ってもらいたいんだ。」

 

 

摩耶「はい、もちろんです。」

 

 

雪穂「分かった。確かに東京がこんな状況だし、このままだと、今度は餓え死にしちまうからな。」

 

 

彩菜「分かったよ。せっかく人間に戻れたんだしね。」

 

 

三人は剣斗の頼みを笑顔で快諾した。

 

 

剣斗「ありがとう。助かるよ。」

 

 

杏奈「それで物資を回収した後は何するんですか?」

 

 

杏奈はその後の予定について気になったのか、首を傾げながらそう聞いて来た。

 

 

剣斗「あとは、神人探しかな。」

 

 

修也「もしかして、周辺の神人を減らして行くのか?」

 

 

剣斗「ああ、そのつもりだ。修也さんよく分かったな。」

 

 

修也「オレもそう思ったから聞いただけだよ。」

 

 

摩耶「あのーすみません。もしかして、ザンビよりも神人の数の方が多いんですか?」

 

 

剣斗はその質問に対して、少し苦い表情で返す。

 

 

剣斗「ああ、もうほとんど神人だらけだと、予想しているよ。っとそろそろ行こうか。」

 

 

剣斗はそう言うと、入り口先の奥の階段から屋上へと登り始めた。

 

 

修也達も、それに付いていく。

 

 

登っていくと、屋上にに出る扉があり、そこから屋上に出てみると、先程ドローンが落とした物資があった。

 

 

剣斗「これが物資か。」

 

 

摩耶「中身を確認してみましょう。」

 

 

修也「そうだな。」

 

 

中身を確認すると、かなりの食料と武器があった。

 

 

剣斗「結構あるな。」

 

 

雪穂「そうだな。これなら結構持ちそうだな。」

 

 

彩菜「そうね。武器もかなりある。」

 

 

杏奈「武器も強そうなのばかり。心強いですね。」

 

 

物資の中には食料や武器も豊富にあり、剣斗達はひとまず安堵した。

 

 

摩耶は安堵した表情しながら、杏奈を見て話し掛けた。

 

 

摩耶「杏奈、ちょっといい?」

 

 

杏奈「うん、どうしたの?」

 

 

摩耶「杏奈、今まで黙っててごめんね。祐奈の事。」

 

 

杏奈「そ、それは・・・」

 

 

剣斗「祐奈?」

 

 

雪穂「それって、杏奈のお姉さんの事?」

 

 

彩菜「祐奈って言うんだね。」

 

 

摩耶「うん、そうだよ。」

 

 

修也「何かワケありの様だね。」

 

 

摩耶と杏奈は過去にあった出来事を話し始めた。

 

 

杏奈「私には双子の姉がいたんです。」

 

 

摩耶「そうです。杏奈には双子の姉がいました。」

 

 

雪穂「杏奈のお姉さん。祐奈さんはザンビに襲われてザンビになってしまったんだよ。」

 

 

摩耶「それで私はザンビになって行く祐奈を見ていられずフェンシングの剣で延髄を突き刺して殺したんです。」

 

 

摩耶と杏奈は悲痛な表情を浮かべながら、当時あった出来事を話してくれた。

 

 

摩耶「杏奈!ごめん!ずっと黙ってて!!!」

 

 

杏奈「私の方こそごめん!!あの時、摩耶の事置いていったりして!!うわあああん!!」

 

 

剣斗はこの時、一つ疑問に思っていた事があった。

 

 

剣斗「そう言えば、あの施設は爆撃されたはずだったよな。それなのに、何故無事だったんだ?」

 

 

摩耶「はい、それはですね。爆撃される前におそらく神人でしょうか。それに噛まれてしまい、ザンビ化してしまったからです。爆撃によって施設は破壊されましたが、運良く巻き込まれずに生き延びたからです。」

 

 

剣斗「そうだったのか。他の収容者はどうなったんだ?」

 

 

摩耶「本宮花蓮さん、飯野ゆかりさんという雪穂達の後輩がいたんですけど、本宮さんは私達の前でザンビ化しました。ですがその場で延髄を破壊して私が倒しました。飯野さんはその後は知りませんが、多分ザンビに・・・」

 

 

その後、摩耶は杏奈が教えてくれた事と同じような事を話してくれた。

 

 

そしてその話が終わると、剣斗達は、結界の張ってある拠点に食料と武器を届けに戻った。



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3話

拠点に戻って来た剣斗達は、まず生還者達に食料や水を分け与えた。

 

 

それが終わると、すぐさま次の準備に取り掛かった。

 

 

剣斗「さてと、このままこの周辺の神人を一掃しに行くか。とは言っても元に戻すだけなんだがな。」

 

 

摩耶「そろそろ行くんですか?」

 

 

剣斗「ああ、暗くなる前に行こうと思ってね。」

 

 

杏奈「気を付けて下さいね。夜になるとザンビや神人の活動がさらに活発になりますから。」

 

 

修也「闇に堕ちた異形の怪物だからなのか、夜と相性がいいのかな?」

 

 

雪穂「そうかもしれないな。」

 

 

彩菜「なんか言い得て妙だね、それ。」

 

 

そんな話をしていると、外から男性の悲鳴が聞こえて来た。

 

 

男性「だ、誰かぁー!!助けてくれぇぇぇ!!!うわあああああああああああぁぁぁ!!!!!!」

 

 

剣斗達は急いで外に出てみると、そこには男性を襲っている神人の群れがいた。

 

 

杏奈「キャッ!!」

 

 

摩耶「ヒッ!」

 

 

剣斗「クッ!遅かったか。」

 

 

修也「残念だがあの人はもうダメだろう。」

 

 

修也は悲痛な表情をしながら、ザンビにされていく男性を見てそう言った

 

 

彩菜「ねえ!雪穂見て!!」

 

 

雪穂「ああ!あの中にいるのゆかりと花蓮じゃないか!?」

 

 

雪穂と彩菜は神人の群れの中にいる二体の神人を指差しながらそう言った。

 

 

剣斗「なに!?知り合いか?」

 

 

雪穂「ああ、私達の後輩の飯野ゆかりと本宮花蓮だ。」

 

 

摩耶「そんな!私は確かに延髄を破壊したはずなのに!!」

 

 

修也「多分、狙いを外したんだろうな。」

 

 

剣斗「どうする?このまま放って置く訳にはいかないから、助けるぞ?」

 

 

雪穂と彩菜は少し複雑そうな表情をしていた。

 

 

だがすぐに頷き、剣斗に助けてあげてと言った。

 

 

剣斗「セフィロト発動!!」

 

 

剣斗は神人達の前に立ち塞がり、セフィロトを発動させた。

 

 

カァァァァッ!!!

 

 

セフィロトの力により、神人達は聖なる光に包まれ、動きを止めた。

 

 

そしてそのまま、神人達は、人間の時の姿を取り戻した。

 

 

男性「あれ?オレたち・・・助かった・・・のか?」

 

 

女性「も、元に戻った?」

 

 

剣斗「皆さん、大丈夫ですか?」

 

 

剣斗は元に戻った人達に声を掛け、事情を説明した。

 

 

剣斗「オレは教会から依頼された任務でこの東京に来ました。この事件を解決ために。」

 

 

男性「キミは一体・・・」

 

 

剣斗「オレはバチカン市国の悪魔祓い師です。」

 

 

女性「悪魔祓い師?」

 

 

剣斗「この騒動はある一人の女性の怨念によって引き起こされました。」

 

女性「怨念!?」

 

 

剣斗「はい。そしてオレはその怨念による呪いを浄化する力を持っています。皆さんを元に戻した力です。」

 

 

剣斗はその後もその力についてだったり、現時点の東京を状況などをなるべく詳しくかつ分かりやすく説明した。



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4話

元に戻った人達に説明をし終えた剣斗は、次に雪穂と彩菜の後輩だと言われるフリージア学園の制服を着た二人の少女に声をかける。

 

 

剣斗「二人とも、身体に異常はないか?」

 

 

少女「はい、大丈夫です。」

 

 

少女「私の方も大丈夫です。」

 

 

剣斗「そうか、それは良かった。オレは篠崎剣斗。さっきも言ったけど、バチカン直属の悪魔祓い師をしている。」

 

 

剣斗が安堵しながら自己紹介をすると、二人は自己紹介を返してくれた。

 

 

花蓮「私は本宮花蓮です。フリージア学園の一年生です。」

 

 

ゆかり「同じく、フリージア学園一年の飯野ゆかりです。助けてくれてありがとうございました。」

 

 

剣斗は二人が自己紹介を終えると、二人に気になっていたことを聞いてみた。

 

 

剣斗「二人は桂さんと一色さんの後輩だと聞いてるよ。」

 

 

花蓮「は、はい。」

 

 

ゆかり「そ、そうです。」

 

 

その事を聞かれた二人は少し、表情を曇らせた。

 

 

剣斗「ん?桂さん達と何かあったのか?」

 

 

ゆかり「はい、実は・・・」

 

 

ゆかりは雪穂達と何があったのか、表情を曇らせながらも教えてくれた。

 

 

花蓮とゆかりは、摩耶達と同じ施設に収容されていたと言った。

 

 

ザンビの集団の襲撃に遭う前、摩耶と杏奈、そして雪穂と彩菜は、その時にザンビに襲われたと思われる男性が遺体で発見されたため、後から来てからこの事件が発生したという理由で、当時、収容者達の監督をしていたフリージア学園の教師、本庄美奈子に疑いを掛けられていたと花蓮達は言った。

 

 

だが、摩耶達は断固としてそれを否定した。

 

 

その際、雪穂と彩菜と言い争いになり、二人に対して、暴言を吐いてしまい、そのまま喧嘩別れという形になってしまっていた。

 

 

その後、花蓮はその場でザンビ化し、皆を襲い、その場で摩耶に倒された。(結局は死んでいなかったが)

 

 

この施設での事件の全容は、摩耶達からすでに聞いていたため、その話自体はスッと入ってきたが、中でどんな会話が行われていたかまでは、把握し切れていないため、剣斗は重苦しい表情を浮かべた。

 

 

剣斗「事情はわかった。だがな、オレとしても東京をこのまま放っておくわけにも行かないんだ。神人を減らし、最後にはすべての神人を元に戻す。あの二人と仲良くしろとは言わない。助けた以上、オレには二人を守る責任がある。だから、オレに二人を守らせてくれ。」

 

 

剣斗は真剣な眼差しで二人にそう言った。

 

 

この東京を元に戻すには、東京中に蔓延る神人をすべて元に戻す必要がある。

 

 

それには助けた人々を守って行くしかない。

 

 

その事を花蓮とゆかりは分かっていた。

 

 

花蓮「わかりました。あなたと共に行動させて下さい。」

 

 

ゆかり「私もお願いします。」

 

 

剣斗「ありがとう。そして、これからよろしくな。」

 

 

剣斗は花蓮とゆかりの受け答えに笑顔で返しながらそう言った。

 

 

その後は、雪穂と彩菜、花蓮とゆかりは剣斗の立ち合いの下、しっかりと話し合い、和解が成立した。

 

 

和解が成立した後は、暗くなって来たため、剣斗達は拠点に戻り、一夜を明かしたのだった。



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5話

次の日、剣斗は窓から差し込む陽の光で目を覚ました。

 

 

携帯を見ると時刻は午前7時となっていた。

 

 

朝食を摂るには十分な時間だった。

 

 

携帯とは言っても電波が遮断しているためか、通話やメール、ネット検索などは出来なくなっている。

 

 

剣斗「さてと、そろそろ花蓮さんとゆかりさんが朝食を準備している頃か。」

 

 

剣斗はそう言うと、起き上がって朝食を摂るために生還者たちの所へ向かった。

 

 

生還者達の所へ来ると、すでに生還者達に朝食を運んでいる花蓮とゆかりの姿があった。

 

 

二人は昨日の晩、拠点で生活するにあたって、食料係を買って出てくれたのだ。

 

 

剣斗「おはよう。花蓮さんにゆかりさん。すまないな、食料係を買って出てくれて。」

 

 

花蓮「大丈夫ですよ。前の避難所でも食事係やってたので。」

 

 

ゆかり「そうですよ。助けてもらった恩もありますし、気にしないで下さい。」

 

 

剣斗「ありがとう。さてと、オレももらおうかな。」

 

 

剣斗はそう言って、花蓮達が用意してくれた朝食を生還者達と共に、ありついた。

 

 

食事後、剣斗は何人かを招集し、拠点での役割を生還者達に与えて行った。

 

 

剣斗「皆さん、集まってくれてありがとうございます。」

 

 

男性「いやいや、キミには恩があるからね。頼み事ならいくらでも聞こう。」

 

 

女性「そうですよ。私もちょっとした料理くらいなら出来ます。それくらいはさせて下さい。」

 

 

剣斗「わかりました。では貴方には、夜の見張りをオレと交代でお願いします。今は結界を張っているので、1日ごとの交代で大丈夫でしょう。オレは拠点周辺なら夜でも単独で探索出来る程度の能力があるので、朝と夜に休む時間も作れるので、その辺は気にしないでください。」

 

 

男性「わかった。確かにキミにはザンビや神人を元に戻す力があるから、その辺は頼りにさせてもらうよ。」

 

 

女性「それで、私は何をすればいいの?」

 

 

剣斗「そうですね・・・花蓮さんとゆかりさんと共に食料の管理をお願いします。」

 

 

女性「わかったわ!任せて!」

 

 

男性と女性は剣斗から仕事を与えられ、生き生きしながらその仕事を引き受けてくれた。

 

 

ちなみに男性は自衛隊隊員の早河祐也、女性は小料理屋の若女将の橋本未来と言うらしい。

 

 

そして残りのメンバーで剣斗と共に物資と食料の調達や、神人探しをこれからやって行くことになった。

 

 

剣斗「さてと、そろそろ行きますか!」

 

 

修也「行くのかい?」

 

 

剣斗「ああ、準備も出来たし行ってくるよ。」

 

 

修也「それなら、オレも行っていいかい?」

 

 

剣斗「それならちょうど、頼もうと思ってたんだ。お願いするよ。」

 

 

そして準備が出来た剣斗と修也と成人男性、二人の合計四人探索メンバーで拠点周辺の探索出るのだった。



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6話

探索を始めた剣斗達は、最初に神人探しを行うことにした。

 

 

少しでも多くの神人の数を減らして、安全性を高める為である。

 

 

剣斗「拠点周辺にも結構気配を感じるな。」

 

 

修也「オレにも分かる。神人の数が尋常じゃないよ。」

 

 

男性「本当か!?」

 

 

男性「でも、怖がってばかりもいられねぇ。」

 

 

周辺には、瓦礫が散らばっており、普通に探索を行うだけでも、崩落に巻き込まれるなどの相当な危険性がある。

 

 

それだけでなく、今、東京はザンビ惨禍によって壊滅状態にあり、その東京を支配しているのは、ザンビや神人達である。

 

 

彼らに噛まれれば、人間はたちまち、ザンビと化し、一定時間を経て、神人となる訳である。

 

 

剣斗「どうやら、お出ましのようだ。」

 

 

修也「二人とも、剣斗から離れないでくださいね。」

 

 

男性「ああ。」

 

 

男性「わかった。」

 

 

剣斗は神人の姿を確認すると、すぐさまセフィロトを発動させようとする。

 

 

男性「お、おい!!後ろからも来てるぞ!!」

 

 

しかし、後ろ側からも神人が現れた。

 

 

剣斗「何!?」

 

 

修也「しまった!!囲まれた!!」

 

 

剣斗「三人とも俺のそばを離れないで!!今から結界を張る!!」

 

 

剣斗はそう言うと、結界魔法を発動させた。

 

 

剣斗「光よ来たれ!我求めるは聖なる光の壁!!【エンシェントアーク・ブレイヴ】!!」

 

 

剣斗の結界魔法が発動し、白い結界が剣斗と修也達三人を包み込む。

 

 

神人「シャァァァァ!!」

 

 

神人「キシャァァァァァァ!!!!」

 

 

神人達は結界がある事が分からず、そのまま剣斗達に襲いかかる。

 

 

剣斗「無駄だよ!」

 

 

バリバリバリバリッ!!!!

 

 

神人「ギャァァァァ!!!!」

 

 

神人「グワァァァァ!!!!」

 

 

修也「神人達が弾かれた!?」

 

 

男性「す、すげぇな・・・」

 

 

男性「これなら大丈夫かもしれねぇ。」

 

 

修也達三人はそう言いながら、なんとか危機的状況を脱した事に安心していた。

 

 

剣斗「この結界には主に呪いや呪術的なモノを弾く効果がある。だから、呪いの塊そのものの様なザンビや神人には効果てきめんなんだ。」

 

 

ザンビや神人は、呪いをその身に受けた生ける屍である。

 

 

また、呪いを広める呪術的なあやつり人形みたいなものでもある。

 

 

そのため、ザンビや神人達は呪いや呪術的なモノを弾く剣斗の結界に触れようとすれば、弾かれ、その身を焦がす事になる。

 

 

剣斗「だが、彼らにかけられた呪いそのものは解くことは出来ないから注意しなければならないからな。」

 

 

修也「なるほどな。なんとなくわかったよ。」

 

 

剣斗は修也のその返事を聞くと、神人達が集まる中心に飛び出し、セフィロトを発動させた。

 

 

呪いを浄化された神人達は、たちまち人間の姿を取り戻して行った。

 

 

男性「あ、あれ?オレは一体・・・」

 

 

少女「あれ?私、なんでこんな所に・・・」

 

 

その様子を見ていた修也は一人の少女のことが気になり、剣斗に話し掛けた。

 

 

修也「剣斗、ちょっと気になる女の子がいるんだが。」

 

 

剣斗「もしかして、知り合いでもいたのか?」

 

 

修也「いや違う。あの子なんだけど、一ノ瀬さんに似てないか?」

 

 

修也は杏奈に似ていると思われる一人の女の子を指しながらそう訊いてきた。

 

 

剣斗「ああ、確かに似ている。というか瓜二つじゃないか?」

 

 

剣斗はその時、杏奈には双子の姉がいたと、本人から聞いていた。

 

 

その話を思い出し、これはもしやと思い、彼女に話し掛けてみる事にした。



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13話

剣斗は神人から元に戻った人達を結界の中に入れ、保護すると、杏奈の姉と思しき少女に声を掛けた。

 

 

剣斗「あの、すいません。もしかして、一ノ瀬祐奈さんですか?」

 

 

祐奈「あ、はい。そうです。一ノ瀬祐奈です。でも何で私の名前を?」

 

 

修斗「実は俺たちは今、あなたの妹の一ノ瀬杏奈さんと行動を共にしているんです。」

 

 

祐奈「え!?杏奈!?杏奈は無事なんですか!?」

 

 

剣斗「はい、無事ですよ。だから落ち着いてください。」

 

 

剣斗は取り乱す祐奈に優しく声を掛け、なだめた。

 

 

そして剣斗は祐奈を含む生還者達に、今の東京の状況を簡潔に説明した。

 

 

剣斗「残念ながら今の東京を壊滅的状況に陥っています。また首都東京は壁に覆われており、外に出る事は出来なくなっています。無理に出ようとすれば、軍の機関銃によって射殺されます。なので、壁には絶対に近づかないでください。」

 

 

生還者達は、その話を聞き、泣き出す者もいれば、悲痛な表情をしながらも受け入れる者もいた。

 

 

剣斗「そういえば、祐奈さん、まだ自己紹介していませんでしたね。オレは篠崎剣斗、キリスト教の悪魔祓い師です。」

 

 

修斗「俺は宮川修斗。彼に神人から元に戻してもらった一人だ。」

 

 

祐奈「改めまして、一ノ瀬祐奈です。助けていただきありがとうございます。」

 

 

祐奈達が自己紹介を済ませると、探索メンバーである男性の一人が話し掛けてきた。

 

 

男性「それで、剣斗くん。ざっと20人くらいは生還できた訳だが、この後はどうする?」

 

 

剣斗「午前中の探索は主に神人探しだったから、これで目的は達成出来たし、戻りましょうか。このままじゃ生還者達もまた神人や残美に襲われますからね。」

 

 

修斗「ああ、また午後にも探索しなければならないからな。これ以上無理して体力を減らしたらもったいない。」

 

 

そこで話が終わり、剣斗達は生還者達を引き連れて、拠点へと歩き出した。

 

 

その道中、祐奈はあることを疑問に思い、剣斗に聞いてきた。

 

 

祐奈「あの、篠崎さん。」

 

 

剣斗「剣斗でいいですよ。あと敬語もいらないですよ。」

 

 

祐奈「わかった。剣斗くんも祐奈でいいよ。敬語も無しでね。見たところ同い年みたいだし。」

 

 

剣斗「わかった。それでどうしたの?」

 

 

祐奈「うん、何で私生きているのかなって思って。」

 

 

剣斗「話は杏奈さんに聞いてるよ。祐奈さんは摩耶さんに殺されたって。残美になっていくキミを見ていられずに。」

 

 

祐奈はその事を聞くと、表情を少し暗くさせた。

 

 

祐奈「私もうっすらだけど覚えてるよ。摩耶にフェンシングの剣で刺されたこと。意識が残美の呪いに侵蝕されていく中でね。」

 

 

祐奈はその当時のことを詳しく、教えてくれた。



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