5D's転性記 (紅月 燎)
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プロローグ:転生前夜

アニメは見てないけど、取り敢えず見切り発車でGO!



 

 

俺の名前は「小鳥遊龍一(たかなしりゅういち)

遊戯王が好きな普通の学生…のハズだった。

 

ある日、学校帰りにカードショップに寄って新弾を買ってウキウキしながら家に帰る途中の事。

 

目の前の親子連れにトラックが突っ込もうとしてたんだ。

 

俺はその親子を助けようと、持ってた荷物をその場に放り投げて走り出した。

そして…親子を突き飛ばして、代わりに俺が轢かれた。

 

猛スピードで突っ込んで来たトラックに轢かれたせいで、思い切り飛ばされて全身を強く打った様で、物凄く痛い。

何が何やら分からないくらい。集まって来た人達が何か言ってるがはっきり聞き取れない。

次第に全身が麻痺して来たのか、感覚が無くなって行く。

そんな中、俺が助けたであろう親子の言葉だけが、はっきり聞こえた。

 

「ありがとう…ごめんなさい…」

 

甲高いサイレンの音が遠くに聞こえた気がした。

 

 

 

それが最後。

俺は意識を手放した。

 

 

 

 

次に目を覚ました時、俺が居たのは真っ白な空間。

横たわっていた様なので取り敢えず身体を起こすが、目の前に広がるのは本当に何も無い、真っ白な風景。

上も下も、右も左も真っ白。

 

「ここは…?」

「ここは天界だ」

「!!?」

 

突然、背後から聞こえた声に振り向くと、そこにはスーツの上にトレンチコートを着た男が立っていた。

どこかで聞いた事有る様な声だが…どこだっけ?

 

「…と言っても、天界の端だが」

「あんたは…?てか、天界って…天国の事か?」

 

何がなにやらなので、浮かんだ疑問をそのまま男に問い掛ける。

 

「ふぅん…まず、私はカスティエル。天使だ。それと、ここは天国ではない。死者が天国と地獄に振り分けられる、その手前だ」

「天使…?天使って背中に翼生えてるはずじゃ…」

「普段から翼を出してては邪魔だからな…普段はこうしてしまっている」

 

次々と湧いてくる疑問に、天使を名乗る男・カスティエルは淡々と答えて来る。

簡潔な答えで分かり易くて助かる。

 

「なるほどね…で、俺は死んだのか…」

「そうだ。君は死んだ。本来死ぬ事になっていたあの親子の代わりに、君はトラックに撥ねられた」

「マジか…いや、撥ねられた所までは覚えてんだけどさ…本当に死んだとは…」

 

余りにも淡々とし過ぎてて、余計泣けて来る。

要は俺、身代わりじゃん…

 

「そう落ち込むな。君の勇気有る行動によって、あの親子は助かり、悲劇の運命を辿らずに済んだのだ」

「まあ、そうだな…うん」

 

ありきたりとは言え、そんな励ましのお陰で少し気分が良くなった。

…死んでるけど。

 

「さて、そんな君の勇気を称え、神からほんの少しご褒美だ」

「ご褒美?」

「好きな世界へ転生させてやろう…ただし、元の世界以外だが」

 

転生…生まれ変わりとも言うが、そう聞いて俺がどう思ったか。

簡単だ。

 

「神様転生キタァァァァァアアッッ!!!」

「五月蝿いぞ」

「あ、すんません(テヘペロ)」

 

テンションが上がり過ぎて叫んだら怒られました。

 

「ところで、どの世界に行きたい?神の力で何処にでも行かせてやれるが」

「んー…そうだなぁ…」

 

行きたい世界は沢山有る…が、やはり遊戯王の世界に行ってみたいと思うのはデュエリストとして当然だと思う。

あの世界で主人公やその仲間、そして敵キャラ達と戦ってみたい。

 

その中で、1番行きたいと思うのは…

 

「"遊戯王5D's "の世界で」

「ふぅん…アニメか?漫画か?」

「もちアニメ!…て、知ってんのね 」

「天国でも遊戯王は流行っていてな…私もやっている」

 

マジかよ…天使も遊戯王やってんのかよ…

それはさておき。本当に行けるのか?

 

「アニメ5D's …ふぅん、なかなか面白い。良いだろう、私が責任を持って送ってやろう」

「マジで!?メ蟹ックとか元キングとか満足さんとかブルーノちゃんに会えんの!?」

「それは君次第だ…では、行くぞ!」

 

カスティエルはそう言って右手を何も無い空間に翳すと、そこに黒い穴が開いた。どうやら、そこを通って転生する様だが…

 

「え…もう?」

「何か不満か?」

「いや…ほら、転生物の定番てさ、何か能力授けたりーとか有るよね?」

「知らんな…と言いたいが、神から"特典を与えろ"と言われてるのでな。それは後で教えるとしよう」

 

一瞬ガッカリしそうになったが、内容不明とは言え特典が貰えるみたいなのでホッとした。

 

「さて、小鳥遊龍一…転生の用意は出来ているか?」

「アンタはどこのナンバーズハンターだよ」

「良いからさっさと行け…私は早く仕事に戻らなければならんのだ」

「あ、はい」

 

妙に強い口調で言われたのでいそいそとカスティエルが開いた穴の前に行く。

穴の中を覗くと…うん。真っ黒。

 

「…コレ、本当に5D's の世界に繋がってんの?」

「大丈夫だ、問題無い」

「…何故だ、不安だ」

 

正直、転生そのものが未だに信じられない。

本当に転生出来るのか。そもそも俺は生きてて、これは夢なんじゃないか。

そんな不安と言うか淡い期待と言うか…そんな物を覚えた俺はなかなか目の前の穴に入れずに居た。

 

だが、俺の後ろに立つ天使にそんな俺の心が分かるハズも無く。

一向に踏み出さない俺に苛立ったのか、カスティエルが動いた。

 

「早く行かんか!凡骨がッ!!」

「え…うぉわぁぁっ!!?」

 

思い切り背中から蹴飛ばされ、穴の中へ強引にダイブさせられた。

 

「さあ…小鳥遊龍一。デッキからカードの剣を抜き、新たな世界で戦え!」

 

どこかで聞いた様なセリフが穴の中に響く。

 

「遊戯王5D's の世界へ、全速前進DA☆」

 

そして、最後のセリフで確信した。

 

「お前の声、社長じゃねえかあああああ!!!」

 

そんな叫びを最後に、俺の意識は再び遠くなった。

きっと、次に目覚める時は病院のベッドの上か、5D's の世界の何処かだろう…

そんな事を考えながら、俺は転生した。

 

 

 

 

「ふぅん…これで無事に転生出来たな」

 

天界の真っ白な空間の中、1人佇むトレンチコートを来た天使・カスティエル。

彼は自分が開いた穴を閉じると、溜め息混じりに呟いた。

 

「しかし…まさか本当にあんな人間が居るとは…」

 

《パパパパーン、パパパパーン(デンデン)パパパパーン(デンデン)》

 

意味深な言葉を呟く彼のコートのポケットから、エースモンスタ ー召喚のテーマ(初代)が鳴り響く。

 

「ん…はい、こちらカスティエル」

 

コートから取り出したのはスマホだった。

着信音がエースモンスター(ryとは中々シュールである。

 

「な…っ!?分かりました…はい…」

 

何やら指令を受けた様子の彼は通話の切れたスマホをポケットにしまうと、何も無い空間を見上げた。

 

「NA☆ZE☆DAAAAAA !!!」

 

どうやら、何か起きたらしい。

しかも、重大な何かが。

 



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