電磁のヒーローアカデミア〜Unlimited Evolution〜 (オクトリアン)
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門屋電磁:パスト

はじめまして!ハーメルンではじめて小説を投稿させて頂きます、オクトリアンと申します!今回は僕のヒーローアカデミアとデジモンアドベンチャーとのクロスオーバー作品となります!両方とも大好きな作品なので、この考えがビリッときたー!となりすぐに行動に移し描きました。しかし、処女作なのでおかしな所や読みにくいなどの意見がある場合は自由に感想欄にお描き下さい。ネタバレやアンチコンメントはしないように最低限のマナーを守ってご覧下さい。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

《···ぇ》

 

 

 

う····んぅ···

 

 

 

《···ねぇ···て》

 

 

 

だれ?···ぼくをよんでいるのは···

 

 

《···ぇ···ぉきて···》

 

 

 

とーさん?···かーさん?···

 

 

 

《···ねぇ···おきて···》

 

 

 

ちがう···じゃあだれのこえなの····?

 

 

 

《ねえ···起きて···》

 

 

 

どんどん声が大きくなってる···いったいだr

 

起きて〜!!」オナカノウエニドシーン

 

いったぁぁぁぁぁーー!!!???

 

「ゲホゲホ···いったぁ···だれぇ···?」

 

「あ、起きた!良かった〜まただめかと思ったよ!」

 

「だからだr···」チラッ

 

ぼくが声のする方に頭を向けるとそこには···

 

 

あまりぼくと身長は変わらないが黄色の皮膚をし、手と足には鋭い爪が生えている恐竜がいた。

 

キエェェェエエェェェャァァァァァァシャベッタアアアアアアーーー!!!

 

「ちょ、ちょっとまって!落ち着いてよーー!!」

 

 

しばらくして落ち着いたぼくは恐竜のような生き物にたずねた。

 

「君は···恐竜···なの···?」

 

「恐竜?違うよ。ぼく達はデジモンって呼ばれているんだ。」

 

「デ、デジモン···?君は···だれ?」

 

「ぼく?ぼくは《ザー!!》···だよ!」

 

ぼくが目の前にいるデジモン···?という生き物に名前を聞こうとすると、テレビがダメになるとよく聞こえるような音で名前がよく聞こえなかった。

 

「ちょっ、ちょっと待って!さっきなんて言ったの?それとなんでぼくの名前を···?」

 

ぼくは目の前にいるデジモンに質問をしたけど···

 

「ごめんね、ホントはひとつひとつ質問に答えたいんだけど、時間がもうないんだ。」

 

そう言ってぼくの質問は無かったことにされた。

 

「たんとぉ···たんとぉ····ちょくれつ···だっけ?」

 

···なんて言おうとしているんだ?

 

「···もしかして、単刀直入って言おうとしてるの?」

 

「そーだよ!たんとーちょくにゅー!って言おうとしたんだ!それでね電磁、たんとーちょくにゅーに言うけど···僕達の世界、『デジタルワールド』を助けて欲しいんだ!」

 

「『デ···デジタル···ワールド···?』そんな場所···聞いたこともないよ?」

 

「それは当たり前のことなんだ。普通のひとはデジタルワールドだけでなく、僕達の存在も知らないんだから。でも電磁は違う、君はデジタルワールドに認められた『選ばれし子供たち』の一人なんだよ!」

 

···な、何を言っているんだ?普通のひとはデジタルワールドのことは分からない?ぼくは選ばれし子供たちの一人?ど、どういうこと···?

 

「ね、ねえ···君は何を言っているの···?もっと詳しく···!」

 

ぼくが詳しく聞こうとすると、目の前にいるデジモンが徐々に薄れていく。

 

「···やっぱり、初めてだからデジタルワールドと君の心との繋がりがまだ弱いみたい···ゴメンね、君と話せるのは今回はここまでのようだね。」

 

そう言って徐々に宙へと浮かんでいく。

 

「ちょっ!ちょっと待ってよ!!まだ聞きたいことが沢山あるんだ!!!」

 

「···ゴメンね、いつか必ずまた会えるよ。その時まで待ってて欲しいんだ。その代わり、僕達の力を君に上げるよ。僕達ときみの力で君達の世界を、そしてデジタルワールドを····すくっ···て···

 

そう言ってデジモンは消えていった。

 

「まって!待ってよ!君達の力って、一体なんなんだよーーー!!!

 

大声を最後に、ぼくは夢から目を覚ました。

 

 

これはぼく、『門屋 電磁《かどや でんじ》』が四歳の時に見た夢である。


 

 

あの夢を見てから三日がたった頃、ぼくはとーさんとかーさんに連れられてアメリカのカリフォルニア州にいる知り合いに逢いに行くことになった。その人はとーさんの古い友人で、赤ちゃんの時だがぼくのことも知っているみたいだった。

連れられた場所は他の高いビルよりも一際目立つ高いビルだった。

とーさんとかーさんの後ろをついて行くようにぼくもビルの中に入る。

数十秒の間エレベーターに乗り、着いた場所は90階にあるオフィスだった。

とーさんがオフィスの前の扉をノックし、中から男の人の声が聞こえたのを確認してとーさんとかーさんはオフィスに入っていった。その後ろをぼくはついて行くように入っていった。

 

「よぉ、デイブ!四年ぶりだな、元気だったか!?」

 

「おお、久しぶりだな《ダイナ》!それに《ブレイン》も!」

 

「お久しぶりですね、デビットさん。ほら、電磁も挨拶しなさい。」

 

そうかーさんに言われてとーさんとかーさんの後ろから出てくる。

ちなみに《ダイナ》と《ブレイン》はとーさんとかーさんのヒーローネームだ。

とーさんが『古代ヒーロー《ダイナ》』、かーさんが『エレキヒーロー《ブレイン》』だ。とーさんとかーさんは二人ともあの有名な雄英高校からの卒業生だ。そこで二人は出会ったらしい。とーさんは自称『オールマイトとエンデヴァーの同級生』と言っているが···その真実はぼくはまだ知らない。

 

「は、はじめまして···ぼくは···門屋電磁って言います···よ、よろしくお願いします!デビットさん!」

 

「HAHAHA、元気のいい子じゃないかダイナ、やっぱり君の子だな。ちゃんと話すのは初めてだな電磁くん、私は『デビット·シールド』、よろしく『パパー、これは何処にしまえば良いの〜?』おっと、忘れていたよ、それをそこに置いてこっちに来なさいメリッサ。」

 

「はーい。」

 

隣から女の子の声が聞こえ、デビットさんの後ろの扉から金髪の女の子が出てきた。

 

「おお!久しぶりだなメリッサちゃん!また大きくなったなぁ!」

 

「お久しぶりです、ダイナおじ様!ブレインおば様!今年で七歳になりました!」

 

「大きくなったわね〜!あ、そうだメリッサちゃん、これ私が焼いたクッキーなんだけど、パパと一緒に食べてね♪」

 

「わぁ〜!ありがとうございますブレインおば様!パパ、後で一緒に食べよう!」

 

「ああ、そうだな···おっと、電磁くんはメリッサのことを知らないんだったな。覚えているかいメリッサ、三歳の時にダイナとブレインが連れてきた赤ちゃんのことを。その時の赤ちゃんがそこにいる電磁君なんだ。」

 

「えっ!あの時の赤ちゃんが!?」

 

そう言ってぼくをマジマジと見る。

 

「はじめまして!私は『メリッサ·シールド』、よろしくね!えっと···」

 

「は、はじめまして···ぼ、ぼくは門屋電磁···よろしくお願いします、メリッサ···お姉ちゃん。」

 

「!よろしくね、デンジ!パパ、向こうでデンジと遊んでていい?」

 

「ああいいとも、気をつけて遊ぶんだよ。」

 

「電磁も気をつけて遊ぶんだぞ。」

 

『はーい!』

 

そう言ってメリッサお姉ちゃんはぼくの手を引いて奥の部屋に連れていく。

 

「それでデイブ、メールを見たが新しい発明品が出来たって本当か?しかも俺みたいな異形型の個性にぴったりな物を。」

 

「ああ、ついこの前に完成したばっかりだ。それを使えば異形型の変化や力の強弱の出力が楽になるぞ!」

 

「それは凄いな!それで、その発明品は何処に···?」

 

「発明品なら、今さっきメリッサ達が入った部屋に···!」

 

デビットがそう言いながらメリッサ達が入った部屋の方へと体を向けた瞬間、その部屋から眩い光が漏れだした。

 

「こ、これは何なんだ、デイブ!?」

 

「わ、私にも分からない···!メリッサ達は!?」

 

そう言って立ち上がるデビットの後ろをダイナとブレインが追いかける。


 

〜数分前〜

ぼくとメリッサお姉ちゃんの二人で奥の部屋に入ると···

 

「うわぁ〜!いっぱいあるー!!」

 

「フフッ、ここにはパパが作った発明品が沢山保管されている···言わば保管庫よ。」

 

「へ〜!」

 

メリッサお姉ちゃんと一緒に歩きながら発明品を見ていると···

 

「···ん?メリッサお姉ちゃん、これはなぁに?」

 

ぼくが指をさした先にあったのは、ぼくの手のひら位の大きさの機械だった。

 

「え?ああそれ?それが今日パパがダイナおじ様達を読んだ理由の発明品よ!名前は確か···『Variant Vice《ヴァリアントヴァイス》』···略して『VーVICE《ブイヴァイス》』よ!」

 

「『ブイヴァイス』かー···カッコイイなー!···ねえ!これ付けてみてもいい!?」

 

「えっ?うーん···(あんまり乱暴に扱っちゃだめって言われたけど···デンジだから大丈夫ね!)良いわよ!」

 

そう言ってメリッサお姉ちゃんは机の上に置いてあった『ブイヴァイス』を手に取り、付いてあったベルトでぼくの腕に固定した。

 

「はい!これでOKよ。」

 

「ありがとう!わぁ〜!やっぱりカッコイイな〜!···いつかぼくもとーさんとかーさんみたいな立派なヒーローになれると良いなー。」

 

「へ〜、デンジってヒーローになりたいんだ。きっとなれるわよ!だってダイナおじ様とブレインおば様の子供なんだから!」

 

「···うん!ありがとう、メリッサお姉ちゃん!」

 

そう会話をしていると、急にパソコンが立ち上がった。

 

「···うん?ねえメリッサお姉ちゃん、このパソコンって電気ついてたの?」

 

「えっ?そんなはずはないわ。だってパパがダイナおじ様達をお出迎えする時にちゃんと消したもの。」

 

ぼくとメリッサお姉ちゃんが会話をしている間にもパソコンの画面は独りでに動き、『ゲートセンサー』と書かれたものが画面に現れた。

 

「な、何···これ···?」

 

「私も何が何だか···ってデンジ!『ブイヴァイス』が!」

 

メリッサお姉ちゃんに言われて『ブイヴァイス』の方に視線を向けると、なんと『ブイヴァイス』から淡い光が放たれていて、画面にはたくさんの0と1が流れていた。

 

「デ、デンジ!変なボタンとか触った!?」

 

「さ、触ってないよ〜!急に光出して···うわぁ!」

 

『ブイヴァイス』の光はどんどん強さを増してくる。そこに···

 

「メリッサ!これはなんの光だ!?」「パパ!」

 

「電磁!大丈夫か!?」「とーさん!」

 

とーさんとデビットさんが部屋に入ってきた。

 

「デイブ!お前はすぐにパソコンを!俺は電磁の腕に着いている機械を外す!」

 

「わかった!」

 

とーさんとデビットさんはすぐに行動を開始するが···

 

「···クソっ、ベルトが外れない!!デイブ!!!」

 

「こっちもあらゆる手で消そうとしているが···全く効果がない!」

 

「チッ!ブレイン!!」

 

「今逆探知をやってるけど···発生源が掴めないのよ!」

 

「発生源が分からないだと!?そんなことがあるのか!??」

 

そうこうしている間にも、どんどん光は強くなっていく···

 

「どうしたら···ってデンジ!『ブイヴァイス』が!!」

メリッサお姉ちゃんの声を聞いて『ブイヴァイス』の方に視線を移すと···なんと『ブイヴァイス』が変形を始めていた。

 

「お、おいデイブ!この機械には変形機能まであるのか!?」

 

「そんな機能はつけた覚えはないぞ!?一体どうなって···!」

 

デビットさんがそう言った瞬間、この部屋全体が光に包まれた。

 

うわぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!

 

 

 

 

しばらくして光が収まり、辺りに静寂が訪れた。

デビットさんがパソコンを見ると、何事もなかったかのように画面には何も映ってはいなかった。

 

「一体···なんだったんだ?」

 

「分からない、メリッサ、電磁、無事···!デイブ!メリッサ!」

 

とーさんがいきなり叫びデビットさんとメリッサを抱えて部屋の奥の壁にぼくから距離を獲るように離れた。かーさんも同じように離れた。

 

「お前···電磁は何処だ!電磁を何処にやった!?」

 

とーさんはいきなりぼくに向かってそう叫んだ。

 

「ちょっ、ちょっと待ってよとーさん!電磁はぼくだよ!!」

 

「で、電磁なの···?」

 

「かーさんまで何を言っているの?とーさんとかーさんの子供なんだから間違えるわけないじゃない。」

 

「···なら電磁、今、自分がどんな姿しているか見てみなさい。」

 

そう言ってかーさんは携帯電話を渡してきた。どうやら内カメラになっているようだった。

 

「うん···。」

 

そう言って携帯電話に手を伸ばしている途中に、ぼくは気がついた。

ぼくの小さな手の面影はなく、肌が黄色になっており、大きな爪が生えていた。

 

(えっ···?この手って···!あの夢であった···!!)

 

ぼくはその手でかーさんの携帯電話を手に取り、自分の姿を見た。

 

(やっぱり···!)

 

そこに映っていたのは···三日前の夢であったあのデジモンそのものの姿だった。

普通なら少しは騒ぐ所だが、電磁は騒がなかった。まるで自分の体が最初からこの姿になることを分かっていたかのように、この時を待っていたかのように····。

 

「お前が電磁ならば···『個性』···なのか?だがこんな恐竜は見たことがないぞ。」

 

「まだ発見されていない新種の恐竜か?それとも、既存の恐竜の突然変異体か···『とーさん、デビットさん。恐竜じゃないよ。』電磁くん···?」

 

ダイナとデビットの考察を遮るように電磁は言った。

 

「この生き物は恐竜じゃなくて『デジモン』っていって、コンピュータ内に存在する『デジタルワールド』で生息する生物なんだよ。」

 

「で、電磁くん···一体何を···?」

 

電磁は初めから知っていたかのように説明をする、その姿にデビットは混乱する。否、デビットだけではない。ダイナもブレインも同じように混乱している。

 

「そして、この生き物の名前は·····」

 

『ぼく?ぼくは·····』

 

 

 

 

 

「『アグモン』」

 

 

この日、ぼくの個性、『デジタルモンスター』略して『デジモン』が発生した。


 

 

 

 

 

 

 

あの日から二年の月日がたった。電磁は六歳、つまり小学一年生になっていた。

 

「電磁ー、ちょっと良いー?」

 

ぼくは部屋から出てくる。

 

「どうしたのー、かあさん?」

 

「ちょっとデパートでこの紙に書いてある物を買ってきて欲しいのよ。お願いしてもいい?」

 

「うん!いいよ!」

 

「ありがとう!お釣りで好きなお菓子ひとつ買ってきても良いわよ。」

 

「はーい!行ってきまーす!」

 

ぼくは財布が入ったバックを持って近くのデパートに向かっていった。

 

二十分ほど歩いてデパートに到着した。

 

「えーっと···買うものは···」

 

デパートの食品売り場を歩いていると···

 

「あれ?あそこにいるのって···おーい!梅雨ちゃーん!」

 

「あら、電磁ちゃん。電磁ちゃんもお買い物?」

 

「うん、もってことは梅雨ちゃんも?」

 

「ええ。私もお買い物よ。」

 

今ぼくが話している女の子のは『蛙吹梅雨』ちゃん、ぼくが保育園にいた時に出会った子だ。それから一緒に遊んだり、お互いの家に行ったりしたている仲のいい友達だ。

初めはぼくは蛙吹ちゃんって呼ぼうとしていたけど、梅雨ちゃんと呼んでって言っていたので梅雨ちゃんと呼んでいる。

梅雨ちゃんははじめからぼくのことを電磁ちゃんって呼んでいる。

ちなみに小学校も一緒だ。

 

「梅雨ちゃん、買い物が終わって一回家に帰ったら一緒に遊ばない?」

 

「ケロ、良いわよ。どこで遊ぶの?」

 

「それは近くの公園で···!ちょっと待って!」

 

そう言ってぼくはデパートの三階にあるテレビの方に向かって行った。

テレビに映っていたのは···

 

「どうしたの電磁ちゃん?···あら、映っているの電磁ちゃんのお父さんじゃない。今日も頑張っているわね。」

 

そう、テレビに映っていたのはぼくのとうさんである。さっきも説明した通り、とうさんはプロヒーローでヒーローネームは『古代ヒーロー《ダイナ》』、個性は『恐竜』だ。

今日もとうさんは大きな体型の敵《ヴィラン》と交戦している。

 

「ケロ、今日も電磁ちゃんのお父さんは凄いわね。」

 

「うん!とうさんはぼくの誇りで、ぼくの目標なんだ!だからいつか必ずとうさんみたいなヒーローになってみせる!」

 

「ふふ、電磁ちゃんならきっと出来るわよ。」

 

そう言って二人で一緒に家に帰って遊ぶことがいつもの日常だった。

辺りに銃声が響くまでは···

 

「動くな!!ここにいるやつは全員一階に降りてこい!!!」

 

今、ヒーローを志す者に最初の受難が降り掛かる···。


 

 

老若男女が集う楽園に敵《ヴィラン》が土足で踏み込んだ。

今動けるのは、敵に気づかれていない門屋電磁と蛙吹梅雨だけだった。

二人は外に助けを求めるため、行動を開始する···!

次回、《電磁のヒーローアカデミア》

『門屋電磁:オリジン〜爆裂進化!グレイモン〜』

今、冒険がさらに向こうへと進化する



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門屋電磁:オリジン〜爆裂進化!グレイモン 前編〜

皆さんお待たせしました!オクトです!
今回は第二話の前編となります。
第二話の構成をすると、合計二万文字以上行くという計算にたどりつき、長すぎると視聴者様が飽きてしまうと思い、二話構成にさせていただきます。ご了承の程よろしくお願いします。
さて今回は前回、突如としてデパートに現れたヴィランを前に電磁達はどうするのかという所で終わりましたが、電磁はどうするのでしょうか?
最後に、UAが1000回を超えていることに驚きました!更に感想を頂き、共感してもらえて良かったです!
不定期ですがこれからも頑張って投稿したいと思っています!
後、意見や感想などは最低限のマナーを守ってお書き下


パァンと乾いた音がデパート中に広がった。

 

「動くな!!ここにいるやつは全員一階に降りてこい!!!」

 

ぼくと梅雨ちゃんは音と声がする方向に向き、三階の渡り廊下から下を覗いた。

そこに居たのは、覆面をした場違いな男達四人だった。しかし、男達の手には銃や斧などを持っていた。

それを見たぼくは反射的に梅雨ちゃんの手を引いて三階にあるベンチの下に隠れた。

しばらくするとしたから男達の言葉が聞こえてきた。

 

「···これで全員か?なら全員、ここに携帯電話と財布を置け。もし逆らったら···」

 

そう言って三階のガラスに銃口を向け、

パァンと音がなり、三階のガラスに穴を開けた。

そのガラスの近くにぼく達はいた。

梅雨ちゃんを見ると、今にも泣きそうな顔をしていた。

 

「ケ···ケロォ···」

 

「つ、梅雨ちゃん···落ち着いて···」

 

そう言って慰めるが、ぼくも泣きそうな顔をしているはずだ。

梅雨ちゃんを慰めながらぼくは再び下を見た。

 

「どうなるかは賢いお前達なら十分に理解出来たはずだ。さあ、早くここに置け!」

 

その言葉が言われ、集められた人達は怯え、震えながら指定された場所に財布と携帯電話を置いていく。

 

「お、お前達の目的はなんだ!何故こんな!」

 

携帯電話と財布を入れていく途中に、一人の男性が覆面の男に聞く。

三度銃声が響き、男達に理由を聞こうとした男性の足に銃弾が通過した。

 

「グァァ···ァァァ···!!」

 

「ごちゃごちゃうるせえ、さっさと財布と携帯電話を入れて戻れ。」

 

そう冷酷に言い、その男性に銃口を向ける。

十二分後くらいにはそこに集められた全員が財布と携帯電話を入れ終わった。

 

「···良し、ここにいるやつ全員は携帯電話と財布を置いたな?なら先程の質問、俺達の目標を教えてやるよ。」

 

そう言いながら集められた老若男女を見渡す。

 

「まあ言うなれば···

 

小遣い稼ぎって言うのが正しいな。俺達も女と遊んだり色々したりするのには金が必要だからよ、だからお前達の携帯電話を売っぱらって金にしたり、お前達の電子マネーでお前達と同じように買い物をするだけだ。」

 

ヘラヘラとそう言いながら集められた人達の周りを歩く。

 

「あと、お前達は俺達がサツやヒーロー共から逃げるための人質として有効活用させてもらうぜ。

まあ安心しろ、俺達が逃げ切ったら解放してやるよ。まあ、解放するのは魂だけだがなぁ〜はーっはっはっはっー!!」

 

男達はリーダー格の男の高笑いにつられて一人、また一人と高笑いをしていく。

その様子を見ていた集められた人達は青ざめたり、泣きわめいたり、怒ったりしていた。

しかし、誰も男達に立ち向かおうとはしなかった···。

 

 

その様子を三階でぼくと梅雨ちゃんは見ていた。

ぼくは恐怖で足がガクガクして、目から大粒の涙を流していた。

その状態のまま梅雨ちゃんの方に向くと、梅雨ちゃんも大粒の涙を流し、「パパ···ママ···」と言っている···。

ぼくはその状態の梅雨ちゃんを見て更に恐怖が湧き···震えながらの声で「梅雨ちゃん···」と言った。

その声に反応して梅雨ちゃんはぼくの方に向く···

 

「梅雨ちゃん···逃げよう···?裏口から逃げれば···ヒーローを呼んで···何とかなるから···ね?」

 

ボロボロと涙を流しながらそう言った。

 

「ケ···ケロォ···でも···私達が逃げれたとして···あの人達は···?」

 

「き、きっと大丈夫だよ···!ぼく達がヒーローを呼んで···助けて貰えば···それでいいんだよ···それで···。」

 

「電磁ちゃん···」

 

大粒の涙を流しながらぼくは自分の両手を見た。

 

(とうさん···これで···いいんだよね···?ぼくはまだ子供なんだから···逃げても···許して···くれるよね···?)

 

両手に涙を流しながらぼくはそう思った。

 

 

その時に、右腕に巻いてあるベルトに気がついた。

ぼくはそのベルトを見ると···そこにはぼくの手のひら位のデバイスがついていた。

 

(逃げても···良いの···?)

 

 

 

〜二年前〜

ぼくの個性が発覚して二日経ったあの日、ぼくととうさんとかあさんと一緒にデビットさんの研究室に来ていた。

 

「ようデイブ!それでどうだ?あの形が変わったデバイスのことは?」

 

とうさんはそうデビットさんに聞いた。

 

「やあダイナ、それがさっぱりなんだ。ブレインにも手伝って貰ってこのデバイスの電波の発生源を調べてもらったが···あの時と一緒で全く分からないんだ。」

 

あの時···ぼくの個性『デジモン』が発生した日だ。あの時にパソコンに出た『ゲートセンサー』の発生源を調べようとしたけど分からなかった時のことだろう。

 

「しかも···ダイナ、これを付けてくれないか?」

 

そう言ってあの形が変わった『ブイヴァイス』を手そうと渡した。

 

「何!?···大丈夫なのか、俺もあの時の電磁と同じようにならないのか?」

 

そう言って付けることを渋る。

 

「大丈夫だダイナ、一つ仮説が出来たんだ。もしそれが本当だったら···頼む、やってくれないか?」

 

「···たくっ、俺が友人に助けを頼まれたら断れないことを知って言いやがって···」

 

そう言いなから『ブイヴァイス』を手に取り、腕に付けた。

 

「ありがとうダイナ、恩に着るよ。」

 

「分かっているよ···ただし、何かあったら許さないからな。」

 

そうデビットさんと言いながら『ブイヴァイス』についてあるボタンを押そうとする。

 

「じゃあ···行くぞ!」

 

気合いを入れながらとうさんは『ブイヴァイス』についてあるボタンを押した。

 

 

「···何も起こらないじゃないか、デイブ?」

 

そう言いながら他のボタンを押すが、何の反応を示さない。

 

「やっぱりあの仮説は···」

 

そう言いながら、デビットさんは深く考え出した。

 

「パパ、考えるのはやることを全部やってからしてよ!」

 

デビットさんの横にいたメリッサお姉ちゃんがデビットさんを揺さぶる。

 

「!ああすまない、続いてだが···電磁くん、これを付けてくれないか?」

 

デビットさんはそう言ってぼくに『ブイヴァイス』を渡してきた。

 

「うん、分かった!」

 

そう言ってぼくは右腕に『ブイヴァイス』を付けようとしたが···

 

「あれ?ベルトってこうやって···あれぇ?」

 

上手くベルトを付けることが出来ずにいた。

 

「もう、何やっているのデンジ?ベルトはこうやってね···こうするの、分かった?」

 

メリッサお姉ちゃんがベルトの付け方を教えながら、ぼくはベルトを腕に付けることが出来た。

 

「出来た!ありがとう、メリッサお姉ちゃん!」

 

「どういたしまして!さあ、ボタンを押してみて!」

 

メリッサお姉ちゃんにそう言われたからぼくは『ブイヴァイス』の方に視線を向け···ボタンを押した。

 

すると、あの時と同じように強い光を放ち、光がぼくを包み込んだ。

そして光がやみ···メリッサお姉ちゃんに鏡を手渡された。

その鏡を見ると···

 

あの時と同じように、『アグモン』がそこに映っていた。

 

「やはりあの仮説は間違っては···」

 

「おいデイブ、さっきから言っている仮説ってのは何なんだ?」

 

「ああ、すまないダイナ。」

 

そう言ってデスクの上にあるパソコンを起動し、とうさんに見せる。

 

「電磁くんの個性が発生した時を覚えているか?あの時に変化したのは電磁くんだけではなく、この『ブイヴァイス』も変化していたことも。」

 

「ああ覚えている、だがそれがお前の考えた仮説となにか関係でも?」

 

「あの後この街にいる異形系の個性のヒーローにこれを付けてもらい、ダイナと同じように作動させて貰ったんだ。」

 

そう言いながらパソコンに表を画面に映し出す。

 

「だがどのヒーローもダイナと同じく、『ブイヴァイス』が全く反応を示さなかった。そこでひとつの仮説を立てた、もしかしたらこの『ブイヴァイス』は電磁くんしか反応しないのではないかと。そしたら···」

 

「本当に電磁しか変わらなかったと言う訳だな。」

 

「その通りだ、私が考えるにこの『ブイヴァイス』は、もう『ブイヴァイス』ではない別の物になってしまったというのが私の考えだ。」

 

「なるほどな···それでこのことはお前が言っていた個性についての会議に出すのか?」

 

「···いや、まだデジモンについてもこの機械についても分からないことが沢山あるからな。それに···」

 

「それに···何だ?」

 

「前に電磁くんからデジモンの話を聞いた時に、電磁くんは『選ばれし子供たち』の一人と言うのを聞いたんだ。つまり、電磁くんの他に『選ばれし子供たち』···つまり電磁くんと同じ『デジモン』の個性を持っている人がいる可能性があるという事だ。」

 

「電磁と同じ『個性』の子供たちがいる可能性があるというのか···」

 

そう言ってとうさんもデビットさんも難しい顔をする。

 

「パーパ!今日ダイナおじ様達を呼んだのはこのことだけじゃないでしょ!ダイナおじ様も難しい顔をしないで!」

 

その空気を変えようとメリッサお姉ちゃんが大声でデビットさんととうさんに呼びかける。

 

「!ああ、すまないメリッサ。今日来てもらったのはこの仮説を聞いてもらうためだけじゃないんだ。

 

 

このデバイス···『ブイヴァイス』を電磁くんにあげようと思うんだ。」

 

「何!?大事な発明品なのに構わないのか?」

 

「ああ、構わないよ。自分が作った発明品を使ってもらえるのは発明家にとってはこれ以上嬉しいことはないからな。」

 

「俺は構わないが···決めるのは電磁だ。どうする、電磁?」

 

ぼくはアグモンから元の姿に戻り、じっと『ブイヴァイス』を見つめ···

 

「うん!欲しい!」

 

そうデビットさんの目を見て言った。

 

「うん、電磁くんならそう言ってくれると思っていたよ。」

 

そうデビットさんは微笑んで言った。

 

「それで『ブイヴァイス』はめでたく電磁くんの物になったのはいいのだが···ひとつ考えがあるんだ。」

 

「何だ、デイブ?」

 

「これからはその機械のことを『ブイヴァイス』と呼ばずに別の名前で呼ぼうと思っているのだが···なにか意見はないか?」

 

そうデビットさんが言った。

 

「そうか、これはもう『ブイヴァイス』ではないのか。うーむ···なら、デジモンから取って『DーVICE《ディーヴァイス》』なんでどうだ!?」

 

とうさんが自信満々にそう言ったけど···

 

「ダイナ···私も考えたが普通すぎてその名前はボツにしたよ。」

 

そうデビットさんがスパッと切り捨てる。

 

「なにィ!?良い名前だと思ったのだが···」

 

そう言ってとうさんは肩を落とす。

するとさっきまで考えるような仕草をしていたメリッサお姉ちゃんが何かを思いついたように目を開け、

 

「ダイナおじ様!そのデジモンからとる案を採用して

 

 

『デジヴァイス』···なんてどうでしょう?」

 

そうメリッサお姉ちゃんが言った。

 

「『デジヴァイス』···カッコイイ!ぼくその名前が良い!」

 

ぼくはその名前が最初からその名前が決まっていたかのような思いを感じた···でも、その時に感じた物が何だったのかは分からなかった。

 

「電磁とメリッサちゃんが気に入ったなら···その名前で良いだろう、デイブ?」

 

「ああ、最終的に決めるのは電磁くんだ。電磁くんが気に入ったならそれで構わないだろう。」

 

そんなとうさんとデビットさんの話の横でぼくは『ブイヴァイス』改め、『デジヴァイス』を見てニコニコしていた。

 

「にっひひ〜!これでとうさんみたいなヒーローになれるようになれれば良いな〜!」

 

「フフっ、デンジって本当にダイナおじ様のことが好きなのね。」

 

「うん!だってぼくの憧れがとうさんだもん!いつか必ずとうさんみたいなヒーローになってみせるんだ!」

 

「デンジならなれるわ、ダイナおじ様みたいなヒーローに。」

 

「ありがとう、メリッサお姉ちゃん!それでメリッサお姉ちゃんはどんなヒーローになるの?ぼくのかあさんみたいなヒーローになるの?」

 

「私は···ダイナおじ様や、ブレインおば様のようなヒーローにはなれないわ。」

 

「え、どうして?」

 

「だって私···『無個性』だから。」

 

「えっ···メリッサお姉ちゃん、『無個性』···なの?」

 

ぼくはそうメリッサお姉ちゃんに聞き直すと、メリッサお姉ちゃんはコクリと頷いた。

『個性』というのは昔に中国で光る赤ちゃんが産まれてからどんどん世界に似たような現象が起こって、いつの日かその現象が当たり前のようになり、その超常現象のことを、『個性』と呼ぶようになった。

今じゃこの『個性』を持つ人は世界総人口の約八割が『個性』を持っている。

けれど···現実は平等じゃなかった。中には『個性』が発生しない子も中にはいた。残りの世界総人口の約二割がその人達、いつの日かその人たちのことを、『無個性』と呼ばれるようになった。

『個性』が現れてから、社会は変わってしまった。『個性』がある人が評価され、『無個性』の人は逆に評価されなくなった。

わかりやすく言うと···『無個性の天才』より、『個性持ちの凡人』の方が評価されてしまうという事だ。

 

「だから私···デンジみたいに立派なヒーローになるって目標は叶えられないんだ。」

 

「そんなぁ···」

 

「でも···、私は別の方法でヒーローになることに決めたの。」

 

「別の···方法で?」

 

「私は、ヒーローが使うサポートグッズを作って、ヒーローの手助けをしたいの!それはまた別のヒーローのあり方だと私は思うの!」

 

「ヒーローの···別のあり方···」

 

「それに、目標ならずっと傍にいるから。」

 

「それは···誰なの?」

 

「パパよ!デンジがダイナおじ様なら、私はパパが目標なの!確かに私は『無個性』で、やれることなんて限られていると思う···でも、それでも私は、私にしか出来ないことをやってヒーローである皆を助けたいの!私はそれも、ヒーローだと思うの!」

 

その時のぼくは、メリッサお姉ちゃんが言っていることは少ししか理解出来なかった。でも、メリッサお姉ちゃんが凄く立派なことを考えていたことは理解出来たんだ。

 

「メリッサお姉ちゃん、凄いね!ぼくもメリッサお姉ちゃんに負けないように頑張らなきゃ!」

 

「フフっ···そうだ!ねえデンジ!いつかデンジが立派なヒーローになったら、私の作ったサポートグッズを使ってくれないかしら?」

 

「ええっ!良いの!?」

 

「ええ、デンジだからこそ使って欲しいの!」

 

「···うん、分かった!ぼくが立派なヒーローになったら、必ずメリッサお姉ちゃんのサポートグッズを使うよ!」

 

「本当?ありがとう、デンジ!なら約束をしましょう!」

 

「うん、約束!」

 

そう言ってぼくとメリッサお姉ちゃんは小指を出す。

そして小指を絡め···

 

「私は立派な発明家になって、デンジをサポートることを約束するわ!」

 

「ぼくは立派なヒーローになって、メリッサお姉ちゃんが作ったサポートグッズを使うことを約束するよ!」

 

ぼく達はそうお互いの目を見て言い···

 

『ゆ〜びきりげんまん、嘘ついたら針千本の〜ます!』

 

そう約束をした。

 

 

 

〜現在·デパート内〜

ぼくは右手に付けられた『デジヴァイス』を見ている内に、メリッサお姉ちゃんとした約束のことを思い出していた。

 

(もしかしてぼくは···今最もヒーローに遠い行動をしてるんじゃ···)

 

ぼくはさっきまでの自分が恥ずかしかった。

ヒーローというのは人を守るために動く仕事で決して人を置いて逃げない仕事だっていうことをとうさんから教えられていたはずなのに、自分からそれをないがしろにしようとしていたのだ。

気づけばぼくは先程までの震えが弱くなっていた。

そしてぼくは再び「梅雨ちゃん」と声をかけた。

 

「梅雨ちゃん、警察に呼びかける非常用ベルって···どこにあったっけ?」

 

「ケロォ···確か各階に必ず三個はベルがあったはずよ···でもどうして?」

 

「うん···分かった。ぼくは、今からそのベルを押しに行ってくるよ。」

 

「ケロォ···!?ダメよ電磁ちゃん!もし見つかったら···」

 

「それでも、ぼくは行くんだよ。あの人達は助けを求めてるんだ、困っている人を助けるのが、ヒーローだ。ぼくはその事を、とうさんやかあさんから学んだんだ。だから···ぼくは行くんだ。」

 

「電磁ちゃん···」

 

そう言ってぼくはゆっくりと立ち上がり、しゃがみながらその場を見渡した。

 

(一番近いベルは···あそこだね!)

 

ぼく達がいる三階にあるベルで一番近いのは渡り廊下を渡った先にある柱についてあるベルだ。

そこに向かおうとしたら、後ろから梅雨ちゃんが着いてこようとしていた。

 

「電磁ちゃん···私は電磁ちゃん一人で行かせないわ。」

 

「梅雨ちゃん···ぼくは大丈夫だから、あそこにある非常用階段から外に逃げて欲しいんだ。それで外にいるヒーローに···」

 

「だって電磁ちゃんは···いつも一人でやろうとしているじゃない。もしバレたらどうするの?」

 

「それは···『私が後ろにいたら、電磁ちゃんの後ろは見ることは出来るし···それに私にしか出来ないことがあるかもしれないじゃない。それに···私は、電磁ちゃんを一人にさせたくないの、お願い、電磁ちゃん。』···分かったよ、梅雨ちゃん。でも、危険だと思ったら直ぐにぼくを置いて逃げてね。」

 

「ケロォ···分かったわ。でも電磁ちゃんもいざとなったら、私を置いて逃げてね。」

 

「···うん。」

 

ぼくは梅雨ちゃんの言葉に弱く返すことしか出来なかった。

 

 

ぼくと梅雨ちゃんは渡り廊下の手前までつき、周りを見渡していた。

 

(梅雨ちゃん、あの敵《ヴィラン》達は?)

 

(···ここにはいないわね、多分大丈夫よ。)

 

お互いに小声で情報を確認し合い、しゃがみながらゆっくりと渡り廊下を歩き出す。

見つからないように歩き、ベルまで残り数メートルの所までは来れた。

 

(良し、ベルの近くにはあの敵はいない···行こう。)

 

そう思って音を立てないようにゆっくりとベルの方に足を進めようとする。

すると、後ろから服を掴まれた。

 

(つ、梅雨ちゃん···どうしたの···?)

 

ぼくは小声で梅雨ちゃんに何故服を引っ張ったのかを聞いた。

すると梅雨ちゃんは下の階をを指さす。

ぼくと梅雨ちゃんは再び下を見る。

そこには一人の敵が上に上がって来ていた。

 

(電磁ちゃん、このまま行ったら鳴らせたかもしれないけど···確実に捕まってしまうわ。)

 

(ありがとう梅雨ちゃん、教えてくれて。でも···どうして急に上の階に来るように···?)

 

ぼくと梅雨ちゃんが柱の死角に隠れ、やり過ごそうと考えていた時···

 

(···?何かしら?)

 

ぼくと梅雨ちゃんの上から降り注いでいた日光が梅雨ちゃんだけ一瞬遮られた。

それが気になり、上を見た。

昼近くだからか太陽は真上に輝き、日光を振りまいている。

本当に、それだけならどれだけ良かったか。

 

(···!!)

 

梅雨ちゃんは気づいた、日光の中に何かがあることに···。

そして、気づいてしまった···。

それは、肩から手首までに龍のような翼を生やした男がこっちを見ていた。

 

(···ッ!電磁ちゃん···!電磁ちゃん!)

 

ぼくに向けて梅雨ちゃんは急いで声をかける。

 

(?どうしたの、梅雨ちゃん?)

 

ぼくは静かに梅雨ちゃんのほうに向くと、梅雨ちゃんは上を指さす。

 

(上?···!!)

 

上を見ると梅雨ちゃんが見た男がこちらを見ていて、携帯電話に向けてなにか話している。

 

(間違いない···僕達は誘い込まれていたんだ···。わざと気づいていないフリをして、僕達をここに誘い込んだんだ···!)

 

ぼくは順調すぎることに疑問を持って少し考えればわかることだったのに考えなかったことが悔しかった。

 

(電磁ちゃん···どうするの?)

 

梅雨ちゃんがぼくの顔を覗き込んでくる。

 

(···梅雨ちゃん、四階に行こう。四階にある子供洋服売り場には非常階段と非常用ベルがある。あそこに行ってそこのベルを押しに行こう!)

 

(···分かったわ。)

 

お互いに頷き合い、四階に続く階段をのぼりだす。


 

敵が人質をとり監視をしている時、一人の敵の電話から着信音がなる。

 

「あ?どうした?」

 

そう電話をかけた人物に向けてそう言葉かえす。

 

「あのガキ二人が動き出した、おそらく見られていることに気づいた。」

 

電話をかけたのは電磁と梅雨ちゃんを見ていたあの男だった。

 

「···バレないようにしろって俺は言ったよな?」

 

男は上を見上げそう言う。

 

「悪い、この時間帯だとガラスに陽の光が当たって見えにくくなるから体を前に出さないと見にくいんだよ。」

 

電話でそう言葉を言われ、少しだけ怒りわ感じる顔をするが直ぐに戻す。

 

「まぁいい···上がって行ったガキ共は?」

 

「ああ、あのガキ共は四階に上がって子供洋服売り場の方へ行きやがった。あそこにも非常用ベルがあるのを知ってやがるな、あのガキ共は。」

 

「だから賢いガキは嫌いなんだ···おい、二階にいる奴にも言っておけ。四階に上がって非常用ベルを押しに来るガキ二人を捕まえろってな。」

 

「分かった。」

 

そう言って電話は切れた。

 

「おい、四階にいる奴って···まさかアイツのことか?」

 

電話を切った男に別の男が話しかけてくる。

 

「ああ···アイツなら喜んでやるだろうな。何せ俺たちの中で一番イカれているのはアイツだからな。」

 

そう男は笑いながら言った。

 

「俺はアイツの思考がまっったく理解できないんだよな···

 

 

あのイカレ性犯罪者はよ···。」

 

 

 

 

 




デパートに突如現れたヴィランを前に、捕まった人たちを助けるために門屋電磁と蛙吹梅雨は行動を始めた。
しかし二人は既にヴィランの手の中にあった···。
それに気づき再び動き出した二人に、ヴィランの魔の手が忍び寄る···。
そして、魔の手を払うために電磁は、『勇気』を振り絞る···!
果たして、二人は捕まった人たちを助けることは出来るのか···!?
次回、《電磁のヒーローアカデミア》
『門屋電磁:オリジン〜爆裂進化!グレイモン 後編〜』
今、冒険が更に向こうへと進化する


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門屋電磁:オリジン〜爆裂進化!グレイモン 後編〜 その上

皆様、待たせてしまい誠に申し訳ございませんでした!オクトです。
リアルの方が忙しく、中々こちらの小説に手をつけることが出来ませんでした。次も恐らく遅くなってしまう可能性があるので、気長に待って頂けたら嬉しいです。
そして本来、一話で終わらすはずの話が思った以上に長くなってしまい、後編その上として上げさせて頂きます。
さて今回は前回、ヴィランの襲撃を受け、一度は逃げようとするが過去の自分の言葉を思い出し、ヴィランに立ち向かうことを決意し、電磁と梅雨ちゃんは非常用ボタンを押しに行くのだが···行く手にヴィランが立ちはだかり、押しに行けない電磁達···電磁達は無事に非常用ボタンを押し、捕まっている人々を助けることが出来るのか!?
最後に、後書きにアンケートを実施していますので、是非投票して頂けたら嬉しいです。そして、どしどしコメントもください!皆様のコメントが私の力となりますので、是非感想、意見コメントをよろしくお願いします!!
後、コメントを書く時は最低限のマナーを守ってお書き下さい!


「ここには···今は誰も居ないみたいだね、今の内に行こう、梅雨ちゃん。」

 

「ケロ、分かったわ電磁ちゃん。」

 

僕たちは今、四階に上がってすぐのおもちゃ売り場の前にいた。

ここにもヴィランがいるだろうと警戒して上がってきたのだが、店員どころかヴィランの影も形もなかった。

(ここには誰も配置しなかったのか?)という疑問を胸にしまい、おもちゃ売り場に足を入れる···。

 

「···電磁ちゃん!階段を上がってくる音が聞こえるわ!」

 

突然、梅雨ちゃんが微かな音に気づき声をかけてくる。

 

「本当!?なら隠れなきゃ···梅雨ちゃんはあそこの棚の後ろに隠れてやり過ごして、ぼくはあそこにある箱の中に隠れるから。」

 

そう言ってぼくが指をさしたのは地面に置いてある大きさが一メートルに満たない箱だった。

 

「分かったわ···あの箱は電磁ちゃんくらいじゃないと入らないものね。でも···気をつけてね。」

 

その言葉に頷いて返し、箱の方へと歩んでいく。梅雨ちゃんも棚の後ろへと向かって行った。

 

そう言えば言っていなかったが···ぼくの身長は梅雨ちゃんよりも小さい。

言ってしまえば、ぼくの今の身長は一メートルに届くか届かないかくらいしかない。

つまり、さっきの箱には少し膝を曲げるだけですっぽりと入るのだ。

梅雨ちゃんはぼくより身長が高いからこの箱に入れるだろうが入るとするなら膝をしっかりと曲げないと入らないため、見つかった時に素早く行動出来ないから棚の後ろにかくれさせたのだ。

梅雨ちゃんは普通に隠れる人に比べて隠れるのが上手い、おそらく梅雨ちゃんの『個性』が関係しているのだろう。

それに、ぼくが隠れているこの位置なら軽く音を出したりすれば、ぼくが出した音が気になってよってくるはずだ。その間に梅雨ちゃんがここから抜け出せば、ぼくに意識が集中して、梅雨ちゃんに意識が向かわないはずだ。大丈夫、今度こそ上手く行くはず···。

そう考えているうちに足音が近づいてきた、ぼくは急いで箱の蓋を閉めた。

ぼくは梅雨ちゃんが見つからないことを祈っていた。


 

コツコツと足音がなる。

一人の男が止まったおもちゃ売り場には物音一つしない。

それでも男はそのおもちゃ売り場へと足を踏み入れた。

 

「···ここにいるのかなぁ〜?出ておいで〜?坊やとお嬢ちゃん〜?今出てきたら〜···余り痛い目に合わせないからね〜。」

 

おもちゃ売り場にねっとりとした男の声が響き、おもちゃ売り場を包み込む。

それは隠れている二人にとってはどれほどの恐怖だろうか?

 

「···あれれ〜出てこないね〜?大人の言うことを聞かないなんて偉くないね〜。それじゃあ···おじさんと隠れんぼをしたいのかなぁ〜?子供は遊ぶのが好きだからな〜?よーし、十秒数えたらおじさん探し出すからな〜?」

 

そう言って男は両手を顔に付け、十秒を数え出す。

 

「い〜ち···に〜い···さ〜ん···」

 

ゆっくりと数えられる十秒に二人は身を強ばらせる。

電磁は箱の中で、梅雨は棚の後ろで両手をついてしゃがみ、すぐに別の場所に隠れられるように構えている。

 

「よ〜ん···ご〜お···ろ〜く···」

 

大丈夫、見つかったたらすぐに動き出せば逃げられる確率は少しは上がる、必ず二人で一緒に逃げるんだ。そう電磁は決意していた。

 

「な〜な···は〜ち···きゅ〜う···」

 

しかし現実は···

 

「じゅ〜う!」

 

現実は非情であった。

 

 

大きな音と共に、梅雨の髪の一部を切りさきながら、梅雨の真上を何かが通り過ぎ、真横に倒れてきた。

梅雨は横に倒れてきたものを見ると、それは棚だった。

梅雨は恐る恐る棚の方へと視線を向けると···

棚が無くなっていた···。

否、棚が無くなっていたのでは無い、棚は下の段の、梅雨ちゃんが隠れていたほんの一部を残し、切られていた。

 

「ふふふ〜、お嬢ちゃん見〜っけ!」

 

ねっとりとした声が梅雨の上から聞こえてくる。

梅雨は震えながら上へと顔を上げていく。

そこには男がニタリと笑っており、右手には大きな斧が握られていた。

梅雨は本能的に理解した、今すぐ逃げなければ殺されると···。

しかし···身体がピクリとも動かせないのだ、まるで蛇に睨まれた蛙のように···。

 

「おやぁ?逃げないのかい?お嬢ちゃんは隠れんぼは見つかったらおしまいってことをちゃんと知っているんだねぇ〜偉いねぇ〜。」

 

そう言いながら、梅雨へと手を伸ばしていく。

 

「大丈夫だよぉ?おじちゃんと一緒に、下の階にいる皆の元にいこうねぇ〜?楽しいイベントがあるからねぇ〜?」

 

梅雨は動けず震え続けていた。このまま捕まってしまうと、諦めていた···。

 

ガコンッ!!

男の後方から大きな音が聞こえるまでは

 

「うん?何のo『ベビー···フレーイム!!』ぎゃあああああああああああああああ!!!水ッ!!!水ゥゥゥ!!!!」

 

梅雨が顔を上げると、男の頭がパチパチと音を立てて燃えていた。

男は我慢出来なくなったのか、おもちゃ売り場の壁に設置してあった消火器に向けて、走り出した。

梅雨が男のいた場所へと視線を戻すとそこには···

 

「梅雨ちゃん!ごめん!大丈夫!?」

 

箱から体を半分出して梅雨ちゃんに喋る、『アグモン(電磁)』がいた。

「で···電磁ちゃぁぁん···。」

 

梅雨ちゃんは涙を流し、震えながら電磁の名前を呼ぶ。

電磁は箱の中から飛び出し、アグモンのまま梅雨ちゃんの手を取り、走り出す。

 

「今のうちに逃げよう梅雨ちゃん!それと···ごめんね、こんなことを考えないで危険な目に合わせて···」

 

電磁は後悔していた。自分の近くに隠れさせておけばもっと早く助けることが出来たはずなのに···こんな危険は予想出来たのにと···でも···

 

「···構わないわ電磁ちゃん、あの時に私がもっと早く逃げていれば良かったのに逃げなかった私が悪いの···電磁ちゃんは悪くないわ。」

 

梅雨ちゃんは少し俯きながらそう言った。

 

「···うん。」

 

ぼくはそう返すしか出来なかった···。

 

「ぜえぇー···ぜえぇー···俺の自慢の髪が···」

 

電磁によって頭に火を付けられた男は、すぐさま近くに備えられていた消火器に向かい、自分の頭に向かって掛けていた。

 

火は消火器によって消えたが、頭に塗ってあったポマードに引火し、ポマードは全て燃えて、男の髪は下に垂れていた。

更に髪からは焦げた臭いが少ししていた。

男はギリギリと歯ぎしりをし···

 

「許せねえぇ···あの二人のガキ共を必ずぅ···捕まえてこの斧で真っ二つに斬り裂いてやるぅ···!」

 

男は手を上にかざすと、男の手に斧が現れた。

そして男は斧を握りしめ、二人を追うために走り出した···。

 

「はあ···はあ···電磁ちゃん、非常用ボタンまであとどのくらいなの?」

 

梅雨ちゃんと電磁は手を繋いだまま非常用ボタンへ一直線に走っていた。

 

「はあ···あの角を曲がって···その突き当りを右に曲がるとその奥に非常用階段があるから···その出入口に非常用ボタンは着いてるよ。」

 

電磁は走りながら梅雨ちゃんの質問に答える。

 

「そう···分かったわ、なら一直線に(カツーン···カツーン···)···何の音?」

 

梅雨ちゃんが言った一言に、足が止まる···。

(カツーン···カツーン···)

その音はどんどん大きくなり···

(カツーン···カツーン···!)

電磁達の方へと近づいてきていた。

 

「た、大変だ!梅雨ちゃん、急いで逃げよう!」

 

電磁は梅雨ちゃんの手を握りしめ、奥へと走ろうとする···。しかし···

梅雨ちゃんは電磁の手を握ったまま動かない。

 

「梅雨ちゃん!早く!早く逃げよう!早くしないと『電磁ちゃん』···何、梅雨ちゃん?」

 

電磁が逃げるために梅雨ちゃんを急かすが、梅雨ちゃんが静かに電磁の目を見て名前を呼ぶ···。

 

「電磁ちゃん···焦ってない?いつもの電磁ちゃんならもっと落ち着いて対処出来ていたわ。」

 

梅雨ちゃんは電磁の目を見て、はっきりとそう言った。

 

「ぼ、ぼくはただ···梅雨ちゃんや···捕まってしまった人たちを助けたくて···」

 

電磁は梅雨ちゃんの言葉にしどろもどろに返すことしか出来なかった。

 

「電磁ちゃん···

 

 

ヒーローは、たとえ迷ったとしても、自分と仲間を信じることが出来る人よ。」

 

「···え?」

 

梅雨ちゃんの言葉に電磁はそう返すことしかできなかった。

 

「この言葉···電磁ちゃんなら分かるわよね?ブレインさん···電磁ちゃんのお母さんが言ってたことよ。迷ったらまずは自分の出来ること、そして仲間と一緒に出来ることをを冷静に考え、そこから一番ベストな行動することが、ヒーローとして当たり前のことだって。いつもの電磁ちゃんなら···この言葉を忘れずに行動出来ているはずよ。でも、今の電磁ちゃんはこの言葉を忘れているわ。電磁ちゃん、今私達が出来る一番ベストな行動は···私達で作戦を立てて、私の『蛙』の個性と、電磁ちゃんの『デジモン』ちゃんの個性を使って非常用ボタンまでたどり着くことよ、だから···一人で闘わないで?

 

今は···私も一緒に闘うから。」

 

梅雨ちゃんは電磁の手を両手で包み込み、そう言った。

そして梅雨ちゃんの目には、薄らと涙が浮かんでいた。

 

「···ごめん、梅雨ちゃん···ぼく···ぼくは···」

 

電磁は涙をポロポロと零し、俯く。

 

「反省は後よ電磁ちゃん、今は一緒に作戦を考えて、一緒に逃げましょう。」

 

そう言いながら、梅雨ちゃんは電磁の頭を優しく撫でる。

 

「···うん。」

 

電磁は涙を拭いながら返事をする。

カツーン···!カツーン···!

 

「···!もうだいぶ近くに来てる···梅雨ちゃん、どうする?」

 

電磁は梅雨ちゃんの方へと向き、そう質問する。

 

「周りを見て何か出来るか考えて見たけど···これとこれを組み合わせれば···」

 

そう言って二つのものを指さす。

 

「これとこれ···なるほど、あの現象を利用するんだね!」

 

ぼくはこの二つを使って起こる現象を、この前にテレビで見たことがあるんだ。

 

「ええ、でも···この作戦、今度は電磁ちゃんを危険な目に合わせてしまうわ···。」

 

そう言って、梅雨ちゃんは電磁を心配しながらそう言った。

 

「···大丈夫だよ梅雨ちゃん。ぼくはこれまで梅雨ちゃんに危険な目に合わせてしまったから···今度はぼくの番だよ。

それに···リスクをおわないで勝つことなんて出来ないから。」

 

「ケロ、分かったわ···私は奥の紳士服売り場に隠れているから···気をつけてね···。」

 

そう言って梅雨ちゃんは紳士服売り場の方へと走っていった。

 

「今度は···失敗しない!」

 

そう言って頬を叩き、己を鼓舞した。

そしてぼくは···()を持ってある場所へと走り出した···。

 

カツーン!カツーン!

ヴィランは己が持っている斧が地面へと当たりながら走っていた。

 

「はあぁ···はあぁ···殺してやるぅ···殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやるうぅぅぅぅぅ···!!!あのガキ共ぉぉぉ···俺がちょっと優しくしただけでこんな目に合わせやがってぇぇぇ···特にあのチビの方はゆるせねえぇぇぇ···!!!俺様自慢のヘアーを焦がしやがってえぇぇぇ!!!」

 

鼻息を荒くし、そう言いながらヴィランは逃げたであろう通路を走っていた。

そして二人が曲がったであろう角を曲がり···

 

「もう逃げられないぞガキ共ぉぉぉ!!!···あ?」

 

男は叫びながら角を曲がると、そこは人の気配が全くない通路しかなかった。

 

「チッ!もう非常用ボタンの方に向かって行きやがったか···!」

 

そう言って通路の先へと向かう···

 

「···お〜っと危ない危ない···そういえばもう一人のちっちぇガキは小せえから簡単に隠れることが出来るんだったなぁ〜···どうせおじさんが怒りに任せてこの通路を突き進んで行くところを見てまた不意打ちしようとしているんだろうが、ものすご〜く冷静なおじさんはこのぐらいじゃあ、騙されないぞぉ〜?」

 

そうニヤニヤしながらおもちゃ売り場の方へと足を進めて行く。

 

(ま、マズイ···もしバレたら···いや、考えちゃダメだ!)

 

電磁はアグモンの姿のままとある場所に隠れていた。

 

「さーてと···さっきの隠れんぼの続きと行こうかぁ〜?」

 

そう外から声が聞こえてくる。

 

(さ〜てと···何処に隠れている?怪しいのは···まずはあそこにあるおもちゃ売り場から少し離れた椅子の下だ、あのガキの身長ならあそこには寝転がれば入れるからな。次に···あの大きめのぬいぐるみだ、これも同じ理由であのガキなら入れるからな。それに···ここにもあそこと同じように丁度同じ大きさの箱もあるな···隠れられるのはこのぐらいか···さ〜てと、何処に隠れてやがる?)

 

男は周りを見ながら電磁が隠れていそうな場所を見る。そして、狙いが決まったのか、そこへと足を進める···。

 

(!ち、近づいてきた···!)

 

電磁は足音が近づいてきたことに焦り出すが、動いてはだめだと己に言い聞かせ、無理矢理落ち着かせる。

そして、男は斧を振り上げ···

 

「怪しいのは···このぬいぐるみだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そう吠えながらぬいぐるみに斧を振り下ろす···

 

「と、見せかけてぇ?」

 

ことはせずまた別の場所へと足を進める。

そして移動した場所に足を止め···

 

「実は俺の考えた場所の何処でもない···

 

この鏡の後ろだろぉぉぉぉぉ!!!」

 

そう言って、鏡に向けて斧を振り下ろす。

振り落とされた斧は鏡を叩き割り、鏡の破片が辺りに散らばる。

そして、鏡の先には···

 

 

 

斧で切れ込みが入り、ヒビが入った壁しかなかった。

 

「あ、あれ?違った??」

 

男は顔を赤くしながらそう言った。

 

「それじゃあ···」

 

男はそう言って走り出し···

 

「この椅子の下かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

急ブレーキをかけ、椅子の前に止まって斧を振り下ろす···椅子は真っ二つになり、スポンジを散らしながら重力に逆らわずに切られた場所から地面に着くが、そこにも電磁の姿はない。

 

「ちぃ!···やっぱりぬいぐるみの中かぁぁぁぁぁ!!!」

 

男は舌打ちをし、急に方向転換をして最初に切ろうとしていた大きめのぬいぐるみの方へと走り、走ったままの勢いを活かしぬいぐるみの胴を切り裂く。

ぬいぐるみは切られた所から綿を散らすが、やはりと言っていいか、電磁の姿はない。

 

「〜〜っ!!!箱の中ぁぁぁぁぁ〜!!!!!」

 

男は怒りがどんどん抑えられなくなり、そのまま箱の方へと向かい箱を斧で切り裂くが、電磁の姿は影も形もなかった。

 

「〜〜〜〜〜っ!!!!!居ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜!!!!!!!!」

 

男はついに堪忍袋の緒が切れ、自分が切り裂いたぬいぐるみと箱の残骸に八つ当たりと言わんばかりに斧を振り下ろし続ける。

 

「居ねぇ!居ねぇ!居ねぇ!居ねぇ!居ねぇ!居ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜!!!」

 

男は何度も斧を下ろしたあと、体力が切れたのか分からないが斧を振り下ろすのをやめた。

 

(ぜぇ···ぜぇ···何処に隠れやがったあのガキは···まさかもう既に非常用ボタンに辿り着いてやがるのか?!)

 

男がそう結論を出し、手に持っていた斧を消して通路の方へゆっくりと歩いていく。

 

(良し···まずは第一段階は成功だ、次は···)

 

そう思って、電磁は自分の周りにある壁をコツコツと鳴らす。

 

「ん!?今こっちから音が···?」

 

そう言って男は振り返って周りを見るが、目立つものといえば机の上に水槽が置かれてあり、中には金魚のような形をしたおもちゃが泳いでいた。

それには『泳げ!金魚くん』という名前で売られていて、まるで本物の金魚のように動くおもちゃだ。

 

「怪しいのはこの水槽だが···あのガキがここに隠れれるか?水も入ってるから息も続かないはずだ···。」

 

じーっと水槽を見ながらそう言っている間にも水槽の中の金魚は自由に泳いでいる。

その中で一匹の金魚が壁に迫り、方向転換しようと回ろうとした時···

 

 

その金魚が忽然と姿を消した。

 

「な!?き、金魚が消えた!?ど、何処に行ったんだ!??」

 

男は金魚が消えた瞬間を見たため、軽いパニックに陥った。

だが、それは電磁達が望んでいたものだ。

 

ベビー···

 

ふと、小さな声が水槽の方から聞こえてきた。

 

「ん?何ださっきのこ『ガコンッ!!』!??」

 

男は声のした水槽をマジマジと見ていると、不意に水槽の蓋が勢い良く開き···

 

 

そこから『アグモン(電磁)』が飛び出した。

 

「な、なにぃぃぃぃいィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!???」

 

男は突然現れたアグモンに驚き、すぐに行動に移せなかったことが···

 

『フレイィィム!!!』

 

「うべばあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜!!!!!」

 

男の敗因だった。アグモンはあらかじめ貯めていた『ベビーフレイム』を男に向けて放ち、男は『ベビーフレイム』をモロにくらい壁まで一直線に飛んでいき、壁に勢いよくぶつかり、ズルズルと地面に落ち、頭をガクッと下げた。

 

「思いっきりやったけど···大丈夫かな···?」

 

そう言って電磁は水槽から出て、地面に降り、男の方へと警戒しながら近づいた。

男の顔を覗くと、呼吸はしているが白目を向き、電磁が男の顔の前で手を上下するが、男はなんの反応も示さない。

 

「とりあえず成功···かな?」

 

そう言っていると、後ろから梅雨ちゃんが駆け寄ってくる。

 

「電磁ちゃん、大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ梅雨ちゃん。それにしても···今回の作戦は上手くいったね。」

 

そう言って電磁は水槽の方へと顔を向ける。

ぼく達がやったのは、鏡と水槽を使った背面鏡水槽の原理を使ったトリックだ。ぼくが水の中に入り、水槽の蓋を閉めて鏡を通路側に置き、ぼくが鏡の後ろにいると、向こうからは見えなくなるという原理を使ったものだ。昔、今の個性社会では珍しいこの原理を使って行う手品がテレビでしていて、その時に梅雨ちゃんと一緒に見ていたからこの原理を知っていたんだ。

 

「このヴィランがこの現象を知らなくて良かったわ、もし知っていたらと考えると···ごめんなさい。」

 

そう言って梅雨ちゃんは頭を下げる。

 

「大丈夫だよ梅雨ちゃん、でも···一つだけ誤算があったとすると···

 

あの水槽の水かな?」

 

そう言ってもう一度水槽の方へと視線を向ける。

 

「ケロ?そういえば···水槽の水が結構減っているわね、それに、鏡と電磁ちゃんが入ったのに···どうして周りが全然濡れてないの?」

 

「うん、それなんだけど···鏡を取ったあと水槽に向かって蓋を開けたんだけど···水が並々注がれててね、入ったら周りがびしょびしょになってヴィランにバレるし···かと言って水を捨てに行く時間もなくて···それで···

 

 

あそこの水···ぼくが飲んで減らしたんだ。

でも、そのせいで今も結構お腹が水でタプタプなんだ、ちょっと苦しいや···。」

 

そう言いながら、電磁はお腹を摩る。

 

「···ごめんなさい、水槽の中の水のこと、全く考えていなかったわ···。」

 

「大丈夫、でも···非常用ボタンに向かうのは、少しゆっくりにして欲しいかな···?」

 

「わかったわ、それじゃあゆっくり行きましょう、あともうちょっとで着くわ。」

 

その言葉に頷き、非常用ボタンへと歩き出した···。

 

 

ぼく達が通路を歩いて数分、ぼくのお腹は落ち着いて走れるまで回復した。そして···

 

「あ、あったよ梅雨ちゃん!非常用ボタン!!」

 

「ようやくたどり着けたわね、でも近くでヴィランが待ち伏せしてるかもしれないわ···慎重に行きましょう。」

 

そう言って梅雨ちゃんはゆっくりと非常用ボタンの方へと向かって行く。

ぼくも梅雨ちゃんについて行こうと数歩進めた時···

 

(···!?)ゾクッ!

 

ぼくはバッと後ろを振り返ったが、そこには先程通った通路しかないが···その通路の奥から異様な気配がしたからだ。

梅雨ちゃんの方へ視線を向けると、梅雨ちゃんも同じようにぼくが見ている方を見ている。

 

(梅雨ちゃん···梅雨ちゃんも何かを感じ取ったんだね···)ボソボソ···

 

(ええ···どうするの?電磁ちゃん···)ボソボソ···

 

ぼくは梅雨ちゃんの方へ近づき、静かに梅雨ちゃんに話しかける。

梅雨ちゃんも同じような気配を感じたようだ。

すると···向こうからした異様な気配が···徐々にこちらへと向かって来るのだ。

 

「!走って梅雨ちゃん!!急いで非常用ボタンを押すんだ!!」

 

そう言いながらぼくは非常用ボタンへと走り出した。

梅雨ちゃんもその言葉を聞いて、梅雨ちゃんも非常用ボタンへと走り出した。

心がまるで後ろを振り返っては行けないと言っているような気分だった。

一心不乱に走り続け、ボタンが手を伸ばせば届く距離に来てボタンに向けて手を伸ばしボタンを押した···

 

 

グニュッ···と変な感触がした。

 

「···な、何だ···これ···!?」

 

ボタンを押したはずだったが···ボタンを押すのを遮るようにタコの足のような触手がボタンの前でうねうねと動いていた。

そしてその足はぼくと梅雨ちゃんの身体に巻き付き、後ろへと思いっきり引っ張られた。

 

「いや···!離して!!」

 

梅雨ちゃんはそう言って触手を外そうと暴れるが、全く効果がない···。

 

「うう···離せ!」

 

そう言って触手に噛み付くが、ビクリと動くだけで緩む気配はなかった。

すると突然、ぼくだけが勢いよく上に持ち上げられ、天井に身体を打ち付けられた。

 

「ぐっ!···ゲホッ···ゲホッ···」

 

痛みで肺の中にある酸素が全て吐き出される。咳き込み、痛みを耐えながら触手が伸びている方へと目を向けると···手の指が全て触手になっている男がいた。男はぼくを睨み、腕を動かし今度はぼくを床へと叩きつける。

 

「ガッ···!」

 

叩きつけられた痛みで声もまともに出ない、呼吸もまともに出来ない、そんなぼくの元に男はゆっくりと歩いてきた···。

 

「お前ぇ···このボクの美しく素晴らしいこの触手になんてことをしやがるんだぁ?これだから教育がなってないガキは嫌いなんだ。」

 

男は怒りが混ざった声でそう言った。

 

「···誰、なの···?」

 

ぼくは必死に頭を動かし、男の顔を見る。

そして男の顔を見て、ぼくは目を見開いた。

 


 

事件に巻き込まれる数日前···

 

あの日、とうさんは浮かない表情をして帰ってきた。

ぼくはそれが気になって夜ごはんを食べた後、とうさんにどうしてそんな顔をしてるの?って聞いた。

そしたらとうさんは···

 

「実はな電磁···とうさん、今日仕事で失敗してヴィランを逃がしてしまったんだ。それも警察が指名手配している凶悪なヴィランをな···。」

 

とうさんは顔に悔しさを浮かべながらそう言った。

 

「ええっ!?それって大丈夫なの!??」

 

ぼくは驚いてそう言った。憧れの存在であるとうさんが失敗したのがショックだったんだ。

するとかあさんが···

 

「電磁、とうさんだって失敗することはあるわ。それにね、人っていうのは失敗する生き物なの。でもね、そこから同じ失敗をしないように努力するのも人なのよ。大丈夫、今度はとうさんもヴィランを逃がさないようにするから。ね、とうさん?」

 

そう言ってとうさんに向けてウインクをした。

 

「···ああ、勿論だ!電磁、今度はどんなヴィランも逃がさないようにするからな!だからこれからも、俺の···いや、俺たちヒーローの活躍を見ていてくれよ!」

 

そうとうさんは言いながらぼくをギュッと抱きしめる。

 

「うん!頑張ってね、とうさん!かあさん!」

 

そうぼくは言った。

そんな会話をしていると···

 

「ん?···電磁、あのニュースをしっかりと見て覚えててくれ。今ニュースでやっているのが今日逃がしてしまったヴィランだ。このヴィランと出会ってしまったら、くれぐれも戦わないようにしてくれ。」

 

真面目な顔でそう言ってとうさんはテレビの方へと向く。

ぼくもそれに続くようにテレビを見る。

 

「···繰り返し、先程のニュースをお伝えします。今日、昼二時頃に警察が指名手配をしている凶悪ヴィラン『クリミニセスウォリー』が現れ、プロヒーロー、古代ヒーロー『ダイナ』が確保に赴きましたが···一瞬の隙をつき、逃走しました。えー···近くにあるコンビニの監視カメラには逃走しているクリミニセスウォリーらしき姿を撮した映像が残されていました。クリミニセスウォリーは···」

 


 

ーー三年ほど前から現れ、女子小学生を連れ去っては好き勝手に犯し、調教、飽きたら処分と称して殺している日本史上最悪の連続殺人性犯罪者···それが目の前にいる···

 

 

クリミニセスウォリー

 




凶悪ヴィラン『クリミニセスウォリー』は電磁を玩具のように痛めつける···。そして、ヴィランの魔の手は梅雨ちゃんの方へ···!何も出来ないことに絶望する電磁···。しかしそんな電磁に、誰かが話しかけてきた···。それは、電磁と同じ『選ばれし子供たち』の一人だった···!
次回、《電磁のヒーローアカデミア》
『門屋電磁:オリジン〜爆裂進化!グレイモン 後編〜 その中』
今、冒険が更に向こうへと進化する


ここから、アンケートの説明になります。
今回、アンケートで聞きたいことはズバリ!
『デジモンの説明を入れて欲しいか?』です!
読者の中には、ヒロアカのことは知っているけど、デジモンのことは余り分からない、という方もいるかも知れません。
そこでこの小説内で初めて出てきたデジモンには説明を出したいと思っています。
ちなみに、どのような説明になるかと聞かれたら···

アグモン 成長期 爬虫類型 ワクチン種
小型の恐竜の様な姿をした爬虫類型デジモン。まだ成長途中なので力は弱いが、性格はかなり獰猛で怖いもの知らず。両手足には硬く鋭い爪が生えており、戦闘においても威力を発揮する。
必殺技は口から火炎の息を吐き敵を攻撃する『ベビーフレイム』。

このような説明が小説中に入ります。
是非、アンケートに協力をお願い致します!


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門屋電磁:オリジン〜爆裂進化!グレイモン 後編〜 その中

皆さん、お久しぶりです。新型コロナウイルスで志村けんさんが亡くなってしまい、ショックを受けたオクトリアンです。志村けんさんのご冥福をお祈りします。
そして、遅れてしまい申し訳ございません!新型コロナウイルスの影響で学校がバタついてしまい、小説を書く時間が取れませんでした。
(まあ、本当は時間があったけどドラクエ11と6をやってたから徹夜で作る羽目になってしまっただけなんですg((殴)
さ、さて今回は、自分の父親であるダイナが逃したヴィラン、クリミニセスウォリーが登場!そして梅雨ちゃんが決意!!更に電磁は別の
『選ばれし子供達』の一人と出会う!!!
続きは小説をどうぞ!
後、新しく書いた小説、「東方龍獣伝 〜神獣と龍神と幻想郷〜」も見てくれたら嬉しいです。
最後に、質問や感想コメントは、最低限のマナーを守って、お書きください。



クリミニセスウォリー

 

電磁は自分の親が追っていた敵が目の前にいる···驚きで目を見開いたまま、電磁は言葉を失った。

 

「ク、クリミニセスウォリー···何で、こんな所に···。」

 

電磁は頭に浮かんだ単語を一語一語を喋るように、そう言った。

 

「僕も有名になったものだな···こんなガキにまで名前が知られるなんて。それに···サツにも感謝してることが二つある。

一つはこの名前のことだ。僕はこの名前をとても気に入っている、超人社会になってからよく聞くだろ?『名は体をあらわす』って。

もう一つは、公に罪を出してくれたおかげで!僕に捕まった女共がより絶望の表情を浮かべてくれるようになった!

そこまでは感謝してるさ···だがな、今、一つだけ不満があるとすれば···。」

 

そう言って電磁の体を再び触手で上に持ち上げる。

 

「『クリミニセスウォリー様』と···そう呼べぇ!!」

 

そう言って再び電磁を床に叩きつける。

 

「ぐあ···!うぅ······!」

 

電磁が叩きつけられた痛みで、苦痛の声を上げる。

 

「電磁ちゃん!」

 

梅雨の悲鳴がフロアに響く。

 

「チッ!近頃のガキ共は教育がなってねぇな!目上の奴には敬語を使いやがれってんだ。

···にしても、」

 

そう愚痴を漏らしながら、顔を梅雨の方へと向ける。

 

「こんな所に上玉なガキがいるとは思わなかったな。丁度いい、最近はクソヒーロー共から逃げるのに必死だったからな、ここでこいつを使って発散するのも悪くは無ねぇな。」

 

ニヤニヤとしながら、梅雨の方へと歩を進める。

 

「ひっ···!いや···、来ないで···!」

 

梅雨の顔は恐怖に震え、目には涙が浮かび、震えていた。

 

「っ!やめろっ!梅雨ちゃんに手をだすな!!

『ベビーフレーイム!!』

 

アグモン(電磁)は三度口に火をため、クリミニセスウォリーに向けて火を放つ。

しかし、その火球はクリミニセスウォリーに当たる寸前、クリミニセスウォリーが操る触手によって、防がれてしまった。

 

「···僕の自慢の触手を焦がしやがって···何をするんだこのガキィィィィ!!!」

 

そう叫び、電磁を床、壁、地面へと何度も叩きつける。

 

「ぐぅ!あぐ!うあぁ!」」

 

叩きつけられる度に、電磁は苦痛の声を上げる。

 

「電磁ちゃん!やめて!これ以上電磁ちゃんを傷つけないで!!」

 

梅雨は涙を流し、クリミニセスウォリーに向けて悲痛な叫び声を上げる。

すると電磁を床に叩きつけて動きを止めた。そして首を梅雨の方に向け、

 

「···止めて欲しいか、だったら止めてやるよ。代わりに···君の大切なものを全て貰うけどね!」

 

そう言って梅雨の方へと歩み、梅雨の肩を掴む。

 

「ひっ···いや···いや···!」

 

梅雨は恐怖で涙を流し、体を震わす。

 

「良いねぇ、その表情!思わず襲いたくなってしまうよ!」

 

そう言って梅雨の涙を舌で舐めとる。

 

「ひっ!嫌ぁ···」

 

梅雨は体をビクッとさせ、目を瞑る。

 

「ああ、最高だ!これまでヤってきた奴らより素晴らしい!これはゆっくり楽しまなければそんぎゃああ!」

 

光悦の表情を浮かべてたクリミニセスウォリーが急に苦痛の叫び声を上げた。そして怒りの表情を浮かべ、痛みの原因がある方へと顔を向ける。

梅雨はゆっくり目を開き、クリミニセスウォリーが向いている方へと顔を向ける。そこには···

 

 

 

「はあ···はぁ···ふゆひゃんひ(梅雨ちゃんに)···へを(手を)···はふは(出すな)···!」

 

クリミニセスウォリーの触手に噛み付き、肩で息をしているアグモンの姿があった。

 

「しつこいんだよこのガキャア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

 

クリミニセスウォリーは怒りの雄叫びを上げ、電磁を持ち上げて勢いよく地面へと何度も叩きつける。

 

「電磁ちゃん!!」

 

梅雨は何度目か分からない親友の名前を叫ぶ。

 

(私···どうすればいいの?誰か教えて···誰か電磁ちゃんを···助けて···!)

 

梅雨は目をギュッと瞑り、心でそう叫ぶ。

 

「梅雨···ちゃん···。」

 

電磁の声が聞こえ、目をゆっくりと開き、電磁と目が合った。

 

「はあ···はあ···

 

···問題ないよ(モーマンタイ)。」

 

その言葉に、目を開く。

 

ーぐすっ···えへへ···モーマンタイ!

 

電磁の言葉で、梅雨の古い記憶が呼び覚まされた。

 


 

「ぐすっ···ひっぐ···うぇぇぇん···」

 

ある時、公園の隅っこで一人の女の子が泣いていた。

 

「どうしたの?」

 

するとそこに女の子へ問かける声が聞こえた。

 

女の子が横を見ると、そこには同じ身長位の男の子がそこに立っていた。

 

「ぐすっ···だいじな···ひっく···かみかざり···ねこちゃんに···とられちゃったの···とりかえそうと···したけど···こわくて···うぇぇぇん···。」

 

女の子は泣きながら何が起きたかを説明した。

男の子は「そのねこちゃんはどこにいるの?」と聞くと、女の子は公園の真ん中に生えている木を指さした。

男の子はその木の下に行き、木を見上げると、そこには二匹の黒と白色の猫が座っていた。更によく見ると、白猫が何かを咥えているのが見えた。

男の子が見上げていると、女の子が涙を拭きながら近づいてきた。

そして男の子は···、

 

「よし!ぼくがとりかえしてくるよ!」

 

女の子へそう言った。

 

「···えっ?」

 

女の子はポカンとした表情をした。

そして女の子は男の子の言葉に疑問をもった。

 

「···どうして?どうして···たすけてくれるの?」

 

女の子はそう聞いた。

女の子にとって今近くにいる男の子はさっき出会ったばかりの他人だ。

なのに何故助けてくれるのかが理解できなかった。

すると男の子は、

 

「『お節介はヒーローの本質』、

 

とーさんからそう教わったんだ!」

 

男の子は笑顔でそう言って、木に登り始めた。

男の子は必死に木に引っ付き、数分後には猫がいる枝の近くまで来ていた。

 

「ねえ、それ···返して!」

 

男の子は猫に向けて、そう言った。

猫はフーッと鳴き、威嚇をしながら徐々に後ろに下がっていく。

そして、ヒラリと二匹とも下に降りようとした。

 

「ええええい!!!」

 

降りようとした猫に向けて男の子は、落ちないように枝で体を支え、両手を猫に伸ばした。

そして両手は、白猫をがっしりと捕まえることが出来た。

捕まえた白猫は、びっくりして咥えていた女の子の髪飾りを落とした。

そしてその髪飾りは女の子のそばに落ち、女の子は髪飾りを拾い、握りしめていた。

男の子はこれで大丈夫と思い、猫を枝に下ろした。

しかし、猫はゆっくりと男の子の方へジリジリと近づき···

 

男の子へ飛びかかった。

男の子は全く反応できず、白猫に左頬を引っ掻かれた。

 

「痛い!」

 

引っ掻かれた頬を抑えた。

引っ掻いた猫はヒラリと枝に降り、再び男の子へ飛びかかった。

 

ひいっ!

 

男の子の声が公園に響き、男の子の鼻が引っ掻かれた···。

 

 

 

「ぐすっ···ひっぐ···いたいよぉ···」

 

男の子は泣きながら、木の上から降りてきた。

 

「あ、あの···大丈夫···?」

 

女の子は男の子に近寄り、そう言った。

男の子はハッとしたような表情をし、右手で涙をグシグシと消し···

 

「ぐすっ···えへへ···モーマンタイ!」

 

笑顔でそう言った。

 

その時の女の子は、男の子が誰よりも『ヒーロー』に見えた。

 

これが、門屋電磁と、蛙吹梅雨が初めて出会った出来事だ。

 


 

梅雨は幼少期の出来事を思い出し、目を瞑った。

 

(···助けなきゃ、あの時に決めたの···今度、電磁ちゃんが困っている時には、必ず助けるって···。だから···!

 

 

 

電磁ちゃんは···私が守る!!だって···友達だもの!)

 

そう決心し、目を開いた。

その目は恐怖で怯えた目ではあるが、瞳の奥には勇気の炎が燃えていた。

そして梅雨は、何度も深呼吸をし、この状況を打開する策を考え始めた。

 

(今、ヴィランは電磁ちゃんに意識を全て向けている。もし、私が電磁ちゃんと同じようにこの触手に噛み付いたとして、電磁ちゃんへの意識は私に向けられて、電磁ちゃんは一時的とはいえ休むことが出来る···でも、電磁ちゃんは優しいから、また直ぐにヴィランの意識を自分に向けようとしちゃう···だから、私がやれることは···電磁ちゃんを助けて、ヒーローを外から呼ぶこと!その為には、あの非常用ボタンを押さなきゃダメ···でも、今私たちはボタンから離されて、仮に手が抜けたとしても届かない···でも、私には···!)

 

考えが纏まり、梅雨は体をなるべくボタンの方へと向け、息を吸う。そして···、

 

 

 

「はぁ···はぁ···思い知ったかクソガキがぁぁぁ···いい加減に諦めろよぉぉぉ···僕は早くあのガキをたのしみたいんだよぉ!!!」

 

クリミニセスウォリーは激昂し、電磁に向けて殺意を向ける。

 

ぜぇ····はぁ···まも···るんだ···ボクが···梅雨ちゃん···を···!

 

しかし、アグモン(電磁)の目は死んでおらず、ジッとヴィランを睨みつける。

 

「チッ!その目がムカつくんだよ!!さっさと死ねぇぇぇ!!!」

 

そう叫び、電磁を地面へと頭から落とす···。

 

 

 

 

ージリリリリリリリリリリ!!!!!

 

 

急に鳴り出したベルの音で頭が床に当たる直前にピタリと止まり、叩きつけられることはなかった。

 

 


 

「うし、完了っと。」

 

ヴィランを押さえ付け、警察に身柄を渡したばかりのプロヒーロー、

『古代ヒーロー ダイナ』は体をうえにググッと伸ばしていた。

 

ービーッ!ビーッ!

 

突如、彼が頭に付けているゴーグルからアラームがなった。

 

「っ!どうした、ブレイン?」

 

ゴーグルを目まで下げ、そう自分のサイドキック件、自分の妻のである

『電脳ヒーロー ブレイン』の通信を開始する。

 

「大輔くん!○○デパートでヴィランの襲撃が発生したの!そして···

 

電磁もそこにいるの!!」

 

「っ!何だと!?」

 

ブレインはデパートにヴィランが襲撃した事だけでなく、二人の愛する息子がそのデパートにいることをダイナに伝えた。

 

「ごめんなさい···私が···一人で···行かせたから···電磁は···!」

 

ブレインは、一人でデパートへ買い物を向かわせたことを後悔していた。

 

「···落ち着け、光。電磁なら大丈夫だ。アイツは···、

 

絶対に無事だ、俺たちの自慢の息子だからな。

信じろ、俺たちの息子を···!

俺もデパートへ向かう、ブレインもコスチュームを着てからデパートに向かってくれ!」

 

ダイナは電磁を信じ、冷静にブレインへと指示を出す。

 

「分かったわ、気をつけてね···大輔くん。」

 

そう言って通信が切れた。

 

「···待ってろよ、電磁!!」

 

そう言うと、ダイナの両腕が巨大な翼へと変わった。そして、翼を羽ばたかせ、空へ飛び上がり、デパートがある方へと飛んで行った。

 


 

ージリリリリリリリリリリ!!!!!

 

「チッ!しくじりやがったかあの変態野郎!!」

 

デパートの一階には、ヴィラン達の手によって電磁と梅雨以外のデパートにいる人達は人質として、一箇所に集められていた。

 

ー今の音は···?

ーもしかして···非常用ボタンが押されたの···?

ーそれじゃあ何れ···ヒーローと警察が来るのね!

ーやった!助かるんだ俺たち!!

 

人質となった人達が、非常用ボタンが押されたことに喜びを隠せずにいた。

刹那、再び大きな銃声が響き、放たれた銃弾は、一人の女性の足を貫いた。

 

「ううぅ···。」

 

「誰が喋っていいと言った。」

 

そのことを主犯格の男は良しとせず、足を撃ち抜かれた女性の苦悶の声を聞きながらそう言った。

 

「おいクロス、この中の誰でもいいから一人を連れて正面玄関の外で人質に銃口を向けて待機、もし怪しい動きをしている場合、直ぐに人質を殺せ。」

 

「了解、オラこいガキ!」

 

主犯格の男に指示されたクロスと呼ばれた男は、小さい男の子の手を掴み、乱暴に正面玄関へと連れていこうとする。

 

「助けてママ!ママーーー!!!」

 

「陽介!お願いします···!私が人質になりますのでこの子だけは···!」

 

その男の子の母親の女性が連れていかれるのを嫌がる男の子の手を掴み、ヴィランの男にそう懇願する。

すると男は女に近づき···、

 

「···分かったよ、人質をお前に変えてやるよ。」

 

そう言って、男の子の手を離す。

手を離された男の子は母親の元へと走り出す。

 

「代わりに···おじさんと行こうな!」

 

そう言って別の男が、男の子の手を掴む。

混乱する母親に向けて、

 

「確かに俺は願いは叶えたぜ?だが、他のやつは別だ。自ら人質になってくれて、ありがとうな?」

 

男は残酷にそう言った。

 

「ライオ、お前はそのガキを連れて南門へ行け。」

 

「了解、ボス。」

 

ライオと呼ばれた男は返事をし、男の子を連れて南門へと歩き始めた。

 

「助けてママ!!ママーーー!!!!」

 

「嫌···!

 

 

嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

親子の悲鳴が響き渡り、人質として別々に連れていかれた。

その様子を見ていた主犯格の男は携帯を取り出し、通話を始める。

 

「···ドラグ、もし空からヒーローが来た場合、直ぐに伝えろ。

『そっちが何かをした場合、人質を皆殺しにする』···とな。」

 

『了解。』

 

そう言って通話を終え、電話を切る。

 

「さあ堕落したヒーロー共···、

 

 

人質全員、無事に守ることが出来るかな?」

 

主犯格の男は笑ってそう言った。

 


 

ージリリリリリリリリリリ!!!

 

「ど、どういうことだ!?どうして鳴り出したんだ!?今ここには満身創痍のクソガキと僕、そしてあの上玉のガキしかいない筈なのに···!?」

 

クリミニセスウォリーが非常用ボタンがある方へと目を向ける、そこにはちその場から動いていない梅雨がいた。

 

 

梅雨の『舌』が約十メートルの距離伸びて、非常用ボタンを押していた。

それが蛙吹梅雨の個性、『蛙』の力の一つだ。

 

「な、なにぃぃぃぃぃィィィィィィィィ!!??

あのガキ、まさか『異形型』の個性だったのかぁぁぁぁぁ!!!」

 

個性は、梅雨のような『異形型』、No.2 フレイムヒーロー『エンデヴァー』のような『発動型』、そして、電磁の父 古代ヒーロー 『ダイナ』のような『変異型』の三種に分類される。

 

「はぁ···はぁ···梅雨···ちゃん···?」

 

電磁は肩で息をしながら、梅雨の方へと顔を向ける。

 

「電磁ちゃん、もう大丈夫よ。きっとすぐ、ヒーローが来てくれるから。」

 

梅雨は笑って電磁を安心させるようにそう言った。

 

「な·····

 

 

なんてことをしてくれたんだこのクソガキャァァァァァァァァァ!!!」

 

フロア全体にクリミニセスウォリーの叫び声が響き渡り、梅雨を捕まえている触手を持ち上げ、今度は梅雨を地面へと叩きつけた。

 

「あぐっ!」

 

そしてクリミニセスウォリーは梅雨へと近づき、何度も何度も顔を殴り始めた。

 

「このクソガキィ!!ほっといたからって調子に乗りやがってぇぇぇ!!!もう許さねぇ!!徹底的にお前から全て奪ってやる!!覚悟しろ!!!」

 

そう言いながら、何度も何度も梅雨を殴り続ける。

 

「や···やめろ···!梅雨ちゃんに···手を···出すな···!『ベビー···』」

 

「お前もいい加減しつこいんだよぉぉぉ!!!」

 

アグモン(電磁)が『ベビーフレイム』を放とうとした時、素早く触手を動かされ、また何度も壁や床に叩きつけられる。

 

「さっさと···くたばれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!

 

そう言って、電磁を柱へと叩きつけた。

 

「ぎっ···」

 

アグモンは一言だけを発し、ガクッと頭を垂れた。

 

そしてアグモンは光に包まれ、光が無くなると···、

 

そこには人の姿の門屋電磁へと戻ってしまった。

 

そして、電磁は頭を垂れたまま、ピクリとも動かなくなってしまった。

 

「電磁···ちゃん···?電磁ちゃん···!電磁ちゃん!!電磁ちゃん!!!」

 

梅雨が何度も親友の名前を呼んでも、電磁は一切、反応を見せなかった。

 

「はぁ、はぁ、ようやくくたばったか···。僕に反抗するからこうなるんだ。さてと···、」

 

電磁の方から梅雨の方へ向き、

 

「もう邪魔するものは何も無い。じっくりと楽しませて貰うよ!」

 

そう言って梅雨の服の襟を掴み、

 

「ふんっ!」

 

その掛け声と同時に手を下げ、梅雨の服を破る。

 

「いっ···、いやぁぁぁぁぁ!!!助けて電磁ちゃん!!電磁ちゃぁぁぁん!!!」

 

梅雨は涙を流し、電磁へ助けを呼ぶが···、電磁はピクリとも反応を示すことは無かった。

 

「もう諦めろよ、これから君は僕の玩具になって、一生を過ごすんだから。こんなに光栄なことはないぞぉ?」

 

そう梅雨へと下衆な笑いを浮かべながらそう言った。

 

いや···いやぁ···いやぁぁぁぁぁぁぁぁーー!!!

 

梅雨の悲鳴がフロア全体に広がるが、誰も、助けにはこなかった···。

 


 

暗い空間に、電磁は寝ていた。

そして電磁は、夢を見ていた···。

 

 

「とーさん、どうしてぼくをとーさんのサイドキックにしてくれないの?」

 

これは、電磁が五歳の時の記憶。

サイドキックとは、ヒーローの相棒や親友を意味する言葉である。

 

「うーん···電磁が強くなって、勉強が出来るようになったら考えても···。」

 

電磁の父、大輔が少し困った顔をして、電磁にそう言うと···、

 

「とーさんずっとそればっかりじゃない。ぼくだってもうアグモンのちからを十分使えるし、それにもう足し算や引き算だけじゃなくて、掛け算や割り算も出来るようになったんだよ?なのになんでダメなの?」

 

自分はもうこんなに出来るようになったと伝える膨れっ面の電磁を見て、大輔は困り、助けるを求めるように光の方へと顔を向けるが···、

 

(頑張れ、大輔くん♪)

 

そう言わんばかりに顔の横に拳を持ってきてグッ、と握った。

はぁ···とため息をつき、電磁の方へと向き···、

 

「···分かったよ。」

 

そう言った。電磁は顔をパァっと明るくした。

 

「ただし!俺が最後に出す三つの条件を達成出来たらな?この条件を達成したなら、電磁、お前を俺のサイドキックと認めてやる。それで良いか?」

 

しかし、大輔からの新しい条件を言われ、電磁は少し考える素振りを見せ、

 

「うん!」

 

電磁は元気よく返事をした。

 

「良し、いい子だ!それじゃあ条件を言うぞ?俺がだす最後の条件は···、

 

 

 

 

 

一つ、自分の強さ、弱さを認めること!

二つ、自分の強さと弱さを知って、これからどう改善するかを考えること!

そして三つ、自分がどんなヒーローになりたいか考えること!

この三つの条件をを達成出来たなら俺に言いに来い。

できるか?」

 

大輔は三つの条件を出し、電磁へ聞く。

 

「···うん!ぼく、がんばって三つのじょーけんをたっせーして、とーさんのサイドキックになってみせる!」

 

電磁は両手を上げ、そう言った。

 

「良し、いい子だ」

 

そう言って、電磁の頭を撫でた。

そしてその傍で、光は笑っていた。

 

 

そしてその夢が終わると、再び黒い空間へと戻った。

 

「···ダメダメじゃないか···、何が選ばれし子供達の一人だよ···、何が···アグモンのチカラを使えるだよ···、何が···賢くなっただよ···、何が···、とうさんのサイドキックになってみせるだよ···。」

 

電磁は自暴自棄になったように、自分の情けなさを口にする。

 

「ぼくが考えた作戦だって、全部失敗したじゃないか···、成功したのは、梅雨ちゃんが考えた作戦じゃないか···非常用ボタンを押したのも梅雨ちゃんだし···ぼく···全くヒーローらしいこと、全然出来てないじゃないか···。」

 

電磁は自分の不甲斐なさを悔やんでいる。そして気付かぬうちに、黒い空間へと徐々に体が沈んでいっているのだ。

 

「梅雨ちゃんの方が、よっぽどヒーローに向いているじゃないか···ぼくなんて···、ぼくなんて···、

 

 

 

 

ヒーローに·なんて··なれやしないんだ···。」

 

そう言って、もう全てがどうでも良いと感じ、電磁は抵抗せずに黒い空間へと沈み、電磁は···闇へと消えた···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(本当に···お前には守れないのか?)

 

 

「···えっ?」

 

不意に頭の中に声が聞こえ、電磁は素っ頓狂な声を出してしまった。

そしてゆっくり目を開けると、上からゆっくりと、橙色の光が降りてきていた。

 

(お前は本当にそこで夢を諦めるのか?随分簡単に諦めるんだな。

そんなのは夢じゃなくて、単なる妄想だな。)

 

光から聞こえる声に電磁はムッとする。

 

「あなたに何が分かるんですか!?ぼくはぼくなりに頑張ったんですよ!?それなのに···それなのに···負けて···アグモンのちからだって···ぼくには···もう···。」

 

電磁は顔に悔しさを滲ませる。

 

(···お前、本当に一人で戦っていると思っているのか?)

 

「えっ?だって···梅雨ちゃんやデパートにいた人が捕まってしまったんだもの、満足に戦えるのはぼくしか···。」

 

(そういう意味じゃない、本当に···アグモンは···デジモンは、ただの個性か?)

 

「···違う。」

 

光から急に、質問を投げかけられる。しかし、電磁は自然と返答していた。

 

(アグモンの力は、お前が操ってると思っているのか?)

 

「違う。」

 

(お前は、アグモンが嫌いか?)

 

「違う!」

 

(じゃあ、お前にとってアグモンは何だ?言ってみろ、電磁!)

 

「アグモンは···、

 

 

 

ぼくにとって!大切な友達の一人だ!!!!」

 

黒い空間で、ぼくの大声が響き渡る。

しばらくの間、静寂が訪れる···。

 

(良く言った!電磁なら、アグモンを任せても大丈夫だな。)

 

静寂を破ったのは、光からの喜びの言葉だった。

 

「アグモンを任せるって···どういうことですか?それに、最初から疑問でしたが、何故アグモンのことだけじゃなく、デジモンのことや、ぼくのことまでも知っているんですか?」

 

電磁は光に向けて、自分が感じた疑問を聞こうとする。

 

(いっぺんに質問してきたな···。えーっと、まず俺はな、電磁と同じ『選ばれし子供達』のうちの一人だったんだ。それで···ん?)

 

光かが質問に答えようとした時、黒い空間の上の方から光が溢れ、橙色の光がゆっくりと上にあがり出した。

 

(ちょっ!ちょっと待ってくれ!もう時間か!?)

 

慌てるように橙色の光は暴れるが、抵抗虚しくゆっくりと上へと上がってゆく。

 

(ああもう!電磁!!アグモンと会ったらこれを渡しといてくれ!!)

 

そう言うと橙色の光から小さな光が出てきた。

光は電磁の方へと向かい、ゆっくりと電磁の中へと入っていった。

 

(頑張れよ!俺たちの遺志を継ぐ新たな選ばれし子供!期待しているぜ!!)

 

そう言って徐々に橙の光が消えていく。

 

「ちょっ、ちょっと待ってください!せめて!せめて名前だけでも聞かせてください!」

 

電磁は立ち上がり、その光に向けて手を伸ばした。

 

(俺の名前?俺は···

 

 

 

 

 

 

 

八神 太一(やがみ たいち)!また会おうぜ、電磁!!)

 

そう言って、光は消えた。

それと同時に、黒い空間は光に包まれた。

 

うわぁぁぁぁーー!!!

 

そして電磁も、光に包まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(電磁···決してお前は···ひとりじゃない!パートナー(アグモン)と一緒に···強くなるんだ!!)

 

意識が遠のく直前に、そんな声が聞こえた気がしたーー。

 

 

 




次回予告
八神太一との会話を終え、目を覚ます電磁。
今度は、アグモンとの会話を始める。
梅雨を助けるために、ヴィランを倒すために電磁が勇気を出す時、アグモンの、『新たな力』が呼び覚まされる!!
次回『電磁のヒーローアカデミア 〜Unlimited Evolution〜』
「門屋電磁:オリジン 〜爆裂進化!グレイモン 後編〜 その下」
今、冒険が、更に向こうへと進化する。


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