ボクとカノジョと召喚獣 (気分は少年)
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プロローグ

はじめまして。これが初投稿になります。誤字、脱字などあればご指摘の方お願いします。文才はありませんが。


 文月学園は科学とオカルトと偶然によって開発された『試験召喚システム』を導入した進学校である。

 1年生時は試験召喚獣の授業がある以外は他の学校と同じである。

 しかし2年生からは、クラスはA~Fという学力のランク順に振り分けられる。

 各クラスごとに教室の設備に差があり、一番ランクの高いAクラスと最低ランクのFクラスでは、天と地ほどの差がある。

 そのため、文月学園の生徒たちは、少しでも良い設備のクラスに入るため勉学に努めている。

 もちろん、下位クラスとなってしまった生徒たちにもチャンスがある。

 それが『試験召喚システム』を使い行われる、試験召喚戦争(試召戦争)である。

 試召戦争は召喚獣を用いた、各クラスごとの戦いであり、戦争に勝利したクラスは、負けたクラスと設備の交換ができるのである。召喚獣は召喚者のテストの点数が、強さに変換されるため、文月学園の生徒たちは勉強し、召喚獣を強くすることでよりよい学園生活を送るために、上位のクラスに挑んでいく。

 こうして、絶え間ない努力をした者たちが、よりよい設備を手にし、努力しなかったものたちは最底辺の設備に甘んじることとなる。

 

 だがしかし、この世の中、努力が必ずしも報われるとは限らない。

 たとえば、野球などのスポーツ選手を例に挙げてみよう。小さなころから練習をし、プロを目指し努力をしたとしても体の故障や不幸な事故などが原因で早期に引退に追い込まれてしまうなど、世の中にはどうしようもないような理不尽なできごとが存在している。

 そして、明日行われる「振り分け試験」に臨むため、日々努力してきた《彼女》にも、その不幸が襲いかかっていた。

 

 

―振り分け試験前日の夜―

 

<木下家>

木下母「38度8分。残念だけど・・・明日は休んだ方がいいわね。」

 

優子「そんなの駄ゴホッ・・明日は振り分け試験なのよ。もし休んだら確実にFクラスにゴホッゴホ。」

 

木下母「そんな状態じゃまともにテストなんて受けられないわ。もし途中で悪化して倒れたりしたらどうするの。」

 

優子「明日までに熱が下がれば問題ないでしょ。たかが風邪くらいでゴホッこれまでの努力が水の泡なんてまっぴらゴホッ御免だわ。」

 

木下母「明日までに熱が下がれば確かにいいかもしれないけど、この風邪のウイルスはかなりしつこいわよ。明日までに下がるとは思えないわ。」

 

優子「・・・・・・・」

 

 

 なぜ彼女がこんな状態になったか。すべての始まりは2週間前に父親が熱を出したことから始まる。

 医師の診断の結果はただの風邪だったが、なかなか熱が下がらず、看病していた母にもうつり、その後秀吉に、最後に優子がその餌食となってしまった。

 

木下母「まさか家族全員にうつっちゃうとはね。秀吉は今日の時点で熱も下がって明日は問題ないけどあなたはやっぱり無理よ。とにかく今は風邪を治すことだけ考えましょう。」

 

優子「(母さんが心配していってくれているもわかるけど・・・・・)」 

 

優子「とりあえずもう寝る。お休み。」

 

 ここで母さんと口論するより、少しでも寝て体を回復させた方がいいと判断した。

 

木下母「わかったわ。おやすみなさい。」

 

 そういって母さんは電気を消して私の部屋から出て行った。

 

優子「(とにかく今は少しでも休んで体力を温存しないと。明日は早めに起きてもし熱が下がってなければ・・・・こっそり抜け出してでも行くしかないわね。)」

 

 そう考えながら優子は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 




プロローグはこんな感じですがいかがでしょうか。ありがちな設定ですが楽しんでもらえれば幸いです。


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第1話 振り分け試験当日

なんとか1話書き上げました。しかし、原作という土台があっても書くのは大変です(-_-;)毎日投稿している人たちはすごいです。



―振り分け試験当日の朝―

 

 木下優子は、けだるい体を起して熱を測っていた。頭痛に、のどの痛みがあり、熱が高いためか意識が少しボーウとしている。

 

 念のため熱を測ってみたが・・・

 

優子「38度5分・・・ほとんど変わりなしね。」

 

 ベッドからゆっくり起き上がり制服に着替え、鞄の中を確認して優子は部屋を出た。

 

 リビングの手前で中を確認すると母さんが朝ご飯を作っていた。

 

優子「見つかったら絶対止められるわよね。といっても家から出るには、ここは通らないといけないし・・・・。」

 

 

 優子はどうやってきずかれずに通り抜けるか考えていると、母さんは朝食の準備が終わったらしく、一息ついた後にリビングから出て行った。

 

優子「トイレにでも行ったのかしら?とにかくチャンスね。」

 

 誰もいなくなったリビングを抜けて玄関に辿り着いた優子は靴をはき、こっそりと家を出た。

 

 

 

 優子が家を出たと同時に、木下母はトイレから出た。その時、玄関から音が聞こえ、もしやと思い優子の部屋を確認する。

 

木下母「制服も鞄もない!!あの子ったらっっ」

 

 娘を連れ帰るためにいそいで部屋を出ると、ちょうど準備を終えた秀吉が出てきた。

 

秀吉「おはようなのじゃ母上。そんなに慌ててどうしたのじゃ?」

 

木下母「秀吉!!優子ったら私に止められるからって勝手に家を抜けだして学校に行ったみたいな

の。急いで追いかけないと!!途中で倒れてるかもしれないわ。」

 

秀吉「そうであったか。確かに姉上ならば、何が何でも学校に行くじゃろう。母上は仕事に行く準

備もあるのじゃろうし、ワシが今すぐ追いかけて姉上を連れ戻してくるのじゃ。」

 

木下母「確かに今日は昼から重要な会議があるからそのための準備はしておきたいわね。けど秀吉の言うことを優子が素直に聞くとは思えないけど?あの娘かなりの頑固者よ。誰に似たのやら。」

 

秀吉(それは間違いなく母上からの遺伝じゃろうな・・・・・)

 

秀吉「普通の状態の姉上ならば無理じゃろうが、今は熱で体も弱っておるし、ワシだけでも大丈夫じゃろう。いざとなれば母上の携帯に連絡するゆえ一先ずはわしにまかせてくれんかのう?」

 

 秀吉の言うとおり、木下母にも準備すべきことがあったため

 

木下母「わかったわ。そこまで言うのなら、一先ずは任せるけどなにかあったら連絡しなさい。仕事よりもあなたたちの方が大事なんだから。」

 

 

秀吉「了解なのじゃ。それでは行ってくる。」

 

 そういって秀吉は姉を追いかけるため急いで家を出た。

 

 

 

 

《明久side》

 

 

 その頃、吉井明久は文月学園に向かい歩いていた。

 

明久(今日はとうとう振り分け試験か。難しいって噂だけど僕なら大丈夫だよね。いざとなれば秘密兵器もあるし♪)

 

 頭の中でそう考えながら進んでいくと、大切な友人であり、元気の源である秀吉が走って登校しているのをみかけた。

 

明久「どうしたんだろ?まだ時間はあるのにどうしてあんなに急いでるのかな?」

 

 明久は気になったので秀吉を追いかけた。そして追いついたところで明久は秀吉が誰かと話していることに気付き、近づいてみてみると・・

 

明久「エエエエエェーーーーーーー!!!!秀吉が二人いる!!!!!!どういうこと????」

 

 とおもわず叫んでしまった。

 

 

 

《優子・秀吉side》

 

 ややふらつきながら、優子は学校までの道を歩いていた。状態としてはかなりきついが、彼女は強い精神力でなんとか耐えしのいでいた。

 

優子(とにかく学校までいけば、試験が始まるまでに少し休めるし、この状態だとAクラスにいける

可能性は低いと思う。でも試験も受けずにFクラスになるのは避けないと。) 

 

 優子はそう言い聞かせながら歩き続けていた。

 

秀吉「待つのじゃ姉上。」

 

 後ろから秀吉の声が聞こえたので振り返りなるべくいつもどおりに対応する。

 

優子「あら、秀吉そんなに急いであたしに何か用。(用件はまぁ察しがつくけど。)」

 

秀吉「聞かずともわかるじゃろうに。母上も心配しておる。おとなしく家に戻ってくれんかのう」

 

優子「あんただって今日がどんなに大切な日かわかってるわよね。それにこれくらいの風邪、どうってことないわ。」

 

秀吉「本当にそうであるならこっそりと家を抜けださずとも、堂々と母上に大丈夫であることを示すはずじゃろう?そうしなかったのは姉上自身も今の状態は最悪じゃとわかっているからじゃろ。」

 

優子「あたしが大丈夫だといえば大丈夫なのよ。」

 

秀吉「姉上、そうはいっても顔も赤く風邪声になっておる。体も安定せずふらついておるぞ。これ以上話を聞かんのであれば、母上に連絡し、2人がかりで家に連れ戻すことになるがよいのか?母上の仕事にも差し支えてしまうが。」

 

優子「・・・・・・」

 

 そう言われると優子も強く言い返すこともできない

 

優子「(斯くなる上は秀吉を気絶させて携帯を奪って、学校に着くあたりで母さんに、「学校の近でなんとか追いついたので、先生に協力してもらい保健室で寝かせたのじゃ。」みたいなメールを送ってごまかすしかないわね。)」

 

 優子は秀吉を一撃で気絶させられるように、すきをうかがう。

 

秀吉「(なんじゃ!!姉上から殺気を感じるのじゃ!!)」

 

優子「(!!!ひるんだわね秀吉、一撃で決「エエエエエェーーーーーーー!!!!秀吉が二人いる!!!!!!どういうこと????」」

 

 優子が秀吉に一撃加えようとしたとき大きな声が聞こえ、優子も秀吉もそちらに振り向いた。

 

 

 

 

《三人称side》

 

 

秀吉「なんじゃ明久じゃったか。いきなり叫んでどうしたのじゃ?」

 

明久「いや・・・だって秀吉がなんで2人もいるの!!僕の目がイカレテルノ?」

 

秀吉「落ち着くのじゃ明久。こちらはわしの双子の姉上じゃ。」

 

優子「(秀吉の友達?みたいね)秀吉の姉の優子よ。」

 

明久「ごごごめんなさい。いきなり大きな声出して。僕は秀吉の友達で吉井明久っていいます。よろしく木下さん。」

 

 明久はいきなり叫んでしまったことへの謝罪と自己紹介を行う。

 

優子「別に気にしなくていいわ。こういうこともそこまで珍しいことでもなかったし。」

 

明久「それより2人ともこんな道の真ん中で何を話してたの??木下さんは顔が赤いし・・・ 聞いてもいいかな??」

 

秀吉「ふむ。実はのう・・・・・・・・・」

 

 秀吉は明久に事情を説明し始める。

 

優子「(はぁはぁ、いけないっ、さっき一撃入れるために集中していたせいか、かなり消耗しちゃったみたい。周りが歪んで・・・・・)」

 

  限界が来たのか優子の意識はそこで途切れた。

 

 

秀吉「・・・・というわけなのじゃ。」

 

明久「そうだったのか。そういうことならお姉さんをとめないt・・・」

 

 会話の途中で明久は優子の方を見るとかの優子がゆっくり倒れかけるのが目に入った。

 

明久「危ない!!」

 

 間一髪、明久は優子の肩を掴んで支える。秀吉も優子の異変に気付き、姉に声をかける。

 

秀吉「姉上しっかりするのじゃ!!・・・・駄目じゃ意識がないようじゃ。救急車を呼ぶべきかの」

 

 そう言って秀吉は携帯を取り出そうとしたが、明久はそれを止める。

 

明久「秀吉、救急車を待つより直接病院に運んだ方が早いよ。僕も手伝うから急いでお姉さんを運ぼう。」

 

秀吉「明久よ、協力感謝する。それではよろしく頼む。」

 

 そういって2人は、協力して優子を病院まで運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでになります。何か間違いやご意見がありましたら、ご指摘の方お願いします。


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第2話 病院にて

病院までの移動は省きます。




 明久と秀吉は病院まで無事に優子を運びこんだ。秀吉は、母親にこのことを連絡するため、一旦外へいき、明久は病院内の椅子に座り、秀吉を待ちつつ休憩していた。

 

 しばらくすると、母親との連絡を終えた秀吉が戻ってきた。

 

 

 

秀吉「すまん明久待たせたのう。母上とは連絡がついたのじゃ。急いで向かうと行っておった。ところで姉上の容体はわかるかのう?」

   

明久「お医者さんの話だと熱はかなり高いけど、とりあえずは大丈夫って言ってたよ。」

 

秀吉「それはよかったのじゃ。」

 

 明久から話を聞き、秀吉は少しほっとしたが、次の瞬間重大なことを思い出した。

 

秀吉「しまった!!明久、今は何時じゃ?振り分け試験が始まってしまう。」

 

明久「落ち着いて秀吉。残念だけどもう試験は始まってるよ。」

 

 それを聞き秀吉は明久に大きな罪悪感を抱いた。

 

 

 文月学園の振り分け試験はとても厳しい。試験時間までに教室に入れなければ、試験を受ける権利を失ってしまう。さらに、体調不良などによる途中退席でも、それまでの試験結果にかかわらず全教科0点となってしまう。体調管理も試験の内と言われているため、そこに反論の余地はない。

 つまり、現時点で木下姉妹(誤字ではありません)と明久の試験結果は0点、Fクラス入りが確定してしまったのである。

 

 

 

秀吉「なんと!!すまぬ明久。関係ないお主を巻き込み、試験をすっぽかせてしまった。」

 

明久「あの場合は仕方ないよ。あそこで秀吉とお姉さんを見捨てて、振り分け試験に行くなんて僕にはできないよ。それに秀吉だってもし僕と逆の立場だったら同じように助けてくれたでしょ。」

 

 

 明久は真剣な顔で、秀吉に自分が思ったことを伝える。そこに一切の迷いを感じさせない明久の言葉に秀吉も自分の気持ちを感謝の念をこめて伝えた。

 

秀吉「明久、お主が友達で本当に良かった。それと改めて、姉上を助けるのを手伝ってくれてありがとうなのじゃ。

 

 秀吉はとても嬉そうな顔で明久に笑い掛けた。その純真な笑顔を向けられた明久はたまらず吐血した。

 

明久「っっっっっっぐはっ!!!!!」

 

秀吉「なっ!!!いきなりどうしたんじゃ明久!!」

 

 

明久「(秀吉のこの笑顔、なんて破壊力だ!!危うく天に召されるところだったよ(-_-;)いや違うか、秀吉のこの笑顔を見ながら死んでいけるならむしろ本望じゃないか!!しかし、なんという可愛さなん

だ。損所そこらの核兵器より強力だよ。」

 

 

秀吉「???明久聞いておるか、明久。」

 

 

 秀吉は明久に呼びかけるが彼の意識は完全にトリップしていた。

 

秀吉「駄目じゃのう、まったく聞こえておらんようじゃ。」

 

 少々あきれながら明久の様子をうかがっていると、急に明久は秀吉の方を向き、手をつかんだ。

 

秀吉「なななんじゃ明久!!いきなり。」

 

明久「秀吉僕は決めたよ。学校を卒業したら君にプロポーズするよ。そして毎日味噌汁を作ってくれないかい?(秀吉の笑顔は僕が守る。)」

 

 その真剣な言い方に秀吉はやや気圧されたがすぐに、もはやテンプレと化した言葉をいう。

 

秀吉「だからわしは男じゃといっておるじゃろう。明久よ、何度言えばお主はわしを男として認知してくれるのじゃ・・・やはり明久は明久なんじゃな。」

 

 若干疲れたように秀吉は言った。

 

明久「僕は僕ってどういう意味???。」

 

秀吉「そのままの意味じゃよ。それよりまた1年間同じクラスじゃ。よろしく頼む。」

 

明久「うんそうだねまたよろしく。ところで雄二とムッツリー二はどうなるかな?まぁ2人ともバカだしFクラスで決まりだよね。また4人一緒になるね。」

 

秀吉「明久。お主も人のことが言えると思うておるのか。」

 

明久「何言ってるのさ秀吉。僕をあの2人と同じレベルにしてもっらちゃ困るよ。今回の振り分け試験も自信があったし、いざという時の秘密兵器もあったしね。」

 

 ドヤ顔で自信満々にしゃべる明久に秀吉は『秘密兵器』という単語が気になり聞いてみた。

 

秀吉「秘密兵器とはなんなんじゃ??」

 

 

明久「よくぞ聞いてくれたね。特別に見せてあげるよこれが秘密兵器さっっっ!!!」

 

 そう言って明久が取り出したのは3本の鉛筆だった。よく見ると上の方に番号が書かれていた。

 秀吉はまさかと思いつつも聞いてみる。

 

秀吉「ただの鉛筆に見えるが・・・どのあたりが秘密兵器なのじゃ?」

 

明久「まずはこれ!!数学はストライカーΣⅤ、次に現国のプロブレムブレイカ―、最後は歴史のシャイニングアンサーだ!!正解率高いんだよね。」

 

秀吉「・・・お主の人生はサイコロの性能に左右されてきたのか。呆れを通り越して頭が痛くなってきたのじゃ。」

 

 

 

 こんな会話をしていると、木下母が病院に到着した。

 

 

木下母「おまたせ秀吉。それと君が吉井君ね。優子を助けてくれたって聞いたわ。本当にありがとう。」

 

 木下母は明久に頭を下げる。

 

明久「!!頭をあげてください。僕は当然のことをしただけですから。」

 

木下母「わたしがきちんと娘を見ていれば、吉井君に迷惑もかからなかったし、そのせいで振り分け試験も受けられないんでしょ。」

 

明久「試験は受けられませんでしたけど、また仲のいい友達と同じクラスでバカをやれるので気にし  ないでください。」

 

木下母「でも」

 

秀吉「母上、明久は気にしておらんよ。先程の言葉が明久の偽らざる気持ちじゃ。」

 

 秀吉も母に諭すようにに話しかける。

 

木下母「うーーん。やっぱり私自身申し訳ないわ。今度必ずこのことに対するお詫びをさせて頂戴。」

 

明久「そそそんな別に僕は「明久、ここは母上の気持ちを汲んではくれんか。」・・・わかりました。この件はいずれまた、ということで。」

 

 

木下母「うん、ありがとう吉井君。それじゃ私はお医者さんに優子について話を聞いてくるわ。2人はどうする?」

 

秀吉「母上。会社の方はいかなくてもよいのか?行くのであれば仕事が終わるまで、わしが姉上に付き添うが?」

 

 

木下母「今朝にも言ったでしょ秀吉。仕事よりあなたたちが大事だって。あの後、私がいなくてもいいように同僚と部下に連絡して仕事の引き継ぎをさせたから大丈夫よ。上司が少しうるさかったけど、き

ちんとO☆HA☆NA☆SHIしたら快く休暇をくれたわ。」

 

 ニコニコと笑顔でそう答えた。

 秀吉は若干母から目をそらしつつ。

 

秀吉「そうじゃったか。それならどうするかのう。いまさら学校に行っても仕方がないし。」

 

明久「それなら僕の家の来てゲームでもしない?」

 

 

秀吉「明久の家か。せっかくじゃしお邪魔させてもらおうかの。というわけで母上、明久の家に行ってくるのじゃ。」

 

木下母「わかったわ。それじゃ吉井君また会いましょう。」

 

 

 そういって木下母は歩いて行き、明久と秀吉も病院をでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




秀吉とのイベントばかりあげていますがあくまで明久×優子です。といってもくっつくのはまだ先で、いつにするかもまだ検討してます。次から学園生活に入ります。


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第3話 新学期とFクラス

ここからは学園生活に突入します。今回はかなり長くなりました


 春休みが終わり文月学園は、今日から新学期を迎える。文月学園の生徒たちはそれぞれ不安と期待が入り混じった表情で、学園の校舎に向かっていく。入り口では教師が生徒の一人一人に封筒を手渡している。

 封筒を受け取ると自信満々に封を開けるもの、なかなかあけることができないもの、急に祈りだすものまでいる。この封筒の中身は、振り分け試験の結果、どのクラスに所属するかが、書かれているからだ。雄たけびをあげながら、自分の教室に向かう者もいれば、肩を落とし静かに行く者もおり、かなり対照的な光景である。

 

 

 

 校舎のチャイムが鳴り始めた頃、吉井明久は通学路を全速力で駆けていた。

 

明久「不味い!!チャイムが聞こえた。急がないと!!。」

 

 明久は校門を抜け、校舎の入り口に着いた。そこでドスのきいた声に呼び止められた。

 

 

???「吉井、遅刻だ。」

 

明久「あ、鉄じ・・・西む・・・鉄人先生。おはようございます。」

 

 明久は軽く頭を下げて挨拶をした。

 

 

鉄人「吉井、お前はHRを保健室で過ごしたいのか?」

 

明久「ははは、嫌だな~西村先生、そんなジョーク「では歯を喰いし」申し訳ありませんっ!!」

 

 

 鉄人が攻撃の構えを取り始めたので、すぐさま自分の非を認め鉄人に謝罪する。うん、やっぱり日本語って難しいや。

 

 

鉄人「まぁいい、頭をあげて早くこれを受け取れ。」

 

 そう言って鉄人は僕に封筒を手渡す。中を開ければ案の定Fクラスと書かれた紙が入っていた。

 試験を受けなかったので分かっていたが、こんな呪いの文字見たいな書き方をしなくてもいいんじゃないだろうか。

 

 

明久「(ここでいろいろ考えても仕方がないし早く教室に行こう。)」

 

 封筒をしまい校舎の中に入ろうとすると鉄人が声をかけてきた。

 

 

鉄人「吉井。振り分け試験の件については聞いている。結果的にFクラスになってしまったが、お前のしたことは間違ってないし、誇っていいことだ。残念ながら振り分け試験を特別にもう一度させてやることはできないがな。」

 

明久「(あれ?もしかして褒めてくれてるのかなぁ?)」

 

 そんなことを考えながら立ち止まる。

 

鉄人「なにを立ち止まっている、急いで教室に行け。」

 

 そう言われて僕は自分の教室に向かうため校舎の中に入った。

 

 

 階段を上がり、教室のあろ3階の廊下に辿り着くと僕は唖然としてまたもや立ち止まってしまう。

 

明久「凄い!!なんなのこの教室。ものすごく大きい!!」

 

 目の前の教室は通常の5倍はくだらないであろう大きさだった。

 

明久「たぶんこれがAクラスだよね。少し気になるし覗いてみよう。」

 

 大きめの窓があったので覗いてみると、教壇の上に眼鏡をかけた知的な女性が立っていた。

 

明久「(あの人は確か学年主任の高橋先生だ。)」

 

高橋先生「まずは設備の確認をします。ノートパソコン、個人エアコン、冷蔵庫、リクライニングシート、その他の設備に不備のある方はいますか?」

 

 普通の高等学校ではありえない設備の確認である。

 

 

明久「ここまで凄いとさすがAクラスとしか言いようがないよね・・・」

 

高橋先生「教科書や参考書、冷蔵庫の中身もすべて学園側から支給されるので、他にも何か要望があれば遠慮せず申し出てください。」

 

 

明久「驚いたな~。こんな待遇が待っているからみんな頑張って勉強できるのか・・・」

 

 

高橋先生「では次にクラス代表を紹介します。霧島翔子さんは前へ。」

 

 

翔子「・・・はい。」

 

 そういって答えたのは黒髪で整った顔立ちをした綺麗な女の子だった。

 

翔子「・・・霧島翔子です。よろしくお願いします。」

 

 

そう言って霧島さんは自己紹介を終えた。

 

 

高橋先生「では次は窓側の生徒から・・・・・・」

 

 

 霧島さんが席に戻るのを見届けると、僕はFクラスへ向かうため、歩き出した。

 しばらく歩き、僕は『二年F組』と書かれたプレートの前で、立ち尽くしていた。見た目はどう見ても廃墟にしか見えない凄惨な教室に呆然とする。しかし、いつまでも立ち止まっているわけにもいかないので、Fクラスの扉を開けた。

 

明久「すみません。ちょっと遅れちゃいました♪。」

 

???「早く座れ、うじ虫野郎!」

 

 扉を開けた途端に掛けられた言葉は突然失礼な罵倒だった。声のした方に目を向けると、僕の悪友である坂本雄二が教壇に立ちながら僕を見ていた。

 

 

明久「・・・雄二、何やってるの?」

 

 いきなりの罵倒に対する怒りも忘れ、雄二に尋ねる。

 

雄二「先生が遅れているみたいでな、代わりに教壇に上がってみた。」

 

明久「なんで雄二が代わりに上がるの?」

 

 当然の疑問を口にする。すると雄二はニヤリと口の端を釣り上げ言った。

 

雄二「俺がFクラスの代表だからな。つまり、お前を含めこのクラス全員が俺の兵隊というわけだな。」

 

 そう言って雄二はふんぞり返りながらFクラスの生徒を見下ろしていた。

 

雄二「とりあえず席に着いたどうだ。特に決まってないと思うぞ。」

 

明久「席といっても卓袱台と座布団しかないよね・・・。さすがはFクラスだね。Aクラスとは、天と地以上の差を感じるよ。これが格差社会ってやつだね。」

 

 あまりにも粗末な設備に僕のテンションは最悪だ。さっきAクラスを見てしまったことも原因だろう。そしてそこに雄二が追い打ちをかけてくる。

 

雄二「意外だな明久。お前が格差社会なんて難しいことを知っている(笑)とはな、意外だった。」

 

明久「キサマッ!!喧嘩を売ってるんだな!!そうなんだな。良いだろうかってやる、表に「すみませんが席についてもらえますか?HRを始めますので。」」

 

 

 後ろから担任の先生らしき声が聞こえたので、雄二との決着は次の機会にし、僕と雄二は適当な席に座った。

 

 

福原先生「えー、おはようございます。2-F組担任の福原慎です。よろしくお願いします。」

    「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されていますか?不備があれば申し出てください。」

 

 

Fモブ「せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入ってません!!」

 

福原先生「我慢してください」

 

Fモブ「せんせー、俺の卓袱台、足が折れて「我慢してください」できるか――――――!!」

 

福原先生「冗談です。木工用ボンドが支給されてるので、各自で修繕してください。」

 

Fモブ「せんせー、窓が割れていて風がさむいです。」

 

福原先生「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請をしておきます。ですが皆さん。必要なものがあれば極力自分たちで調達するようにしてください。」

 

 

 ここまでくると僕も現実逃避したくなってくる。

 

福原先生「では、廊下側の人から自己紹介をお願いします。」

 

 

 先生の指示で、順番に自己紹介が行われる。

 

土屋「・・・土屋康太」

 

 一言、それだけで自己紹介を終えたのは1年のころからの友人、土屋ことムッツリーニだった。

 

秀吉「ムッツリーニは相変わらずじゃの。」

 

 ふと隣から秀吉の声が聞こえたので振り向いた。

 

明久「おはよう秀吉。」

 

秀吉「おはようなのじゃ明久。今は自己紹介中ゆえ話は後にせぬか?」

 

明久「そうだね。ゴメン。」

 

 残念だけど秀吉の言うとおり僕は話を切り上げた。

 

島田「島田美波です。ドイツからの帰国子女なので日本語の読み書きは苦手です。趣味は吉井明久を殴ることです☆」

 

 僕に手を振りながら自己紹介をしたのは、去年からのクラスメートの島田さんだ。僕を殴ることが趣味とは・・・彼女はもう僕の天敵だ!!

 少し冷や汗をかき、僕の番が来た。

 

吉井「吉井明久です気軽に『ダーリン』と呼んでください♪」

 

「「「「「「「「「「ダァァーーリーーン!!!」」」」」」」」」」

 

吉井「すみません。今のは無しでお願いします。」

 

 場を和ませようとしたけど逆に吐き気が止まらなくなってしまった。Fクラス恐るべし。

 しかしそれも次の瞬間吹き飛ぶ。

 

秀吉「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。」

 

 あぁ、なぜだろう。秀吉を見るだけで癒される。この男だけのムサイ教室にたった一人の女子だからだろうか?

 

吉井「(あっ、違うか。たしか秀吉のお姉さんもFクラスのはずだから女子は木下姉妹の2人だった。)」

 

島田「(なぜかしら。急に吉井を殴りたくなったわ)」

 

 

 島田さんから殺気を感じるが気にしないでおこう。それが一番良いはずだ。タブン・・・

 

吉井「(でもおかしいなぁ。お姉さんが見当たらないや。もしかして、また体調不良で休んでるのかな。後で秀吉に聞いてみよう。)」

 

 

 その時、教室の扉が開き誰かが入ってきた。

 

 

吉井「(もしかして木下さんかな?)」

 

 そう思い視線を向ける。

 

???「あの、遅れてすいま、せん・・・」

 

福原先生「ちょうど良かったです。今自紹介をしているところなので姫路さんもお願いします。」

 

姫路「は、はい。あの、姫路瑞希といいます。よろしくお願いします。」

 

 姫路さんが自己紹介を終えると男子生徒の一人が手を挙げた。

 

Fモブ「姫路さん。質問いいですか?」

 

姫路「あ、は、はい。なんですか?」

 

Fモブ「なんでここにいるんですか?」

 

 たしかにそれはここにいる人たち全員の疑問である。しかしもう少しソフトな言い方もあるだろうに・・・やはりここはFクラスであった。

 

姫路「その・・・振り分け試験の最中、高熱をだしてしまいまして・・・・」

 

 

 試験中の途中退席は0点となるので、その言葉を聞き、クラスのみんなは納得したかにみえたが

 

Fモブ「そういえば俺も熱の問題が出たせいでFクラスに。」

Fモブ「ああ、化学だろ?あれは難しかったな。」

Fモブ「俺は弟が事故にあったと聞いて、実力が出せなくて」

Fモブ「黙れ一人っ子」

Fモブ「前の晩彼女が寝かせてくれなくて」

Fモブ「今年一番の大ウソありがとう」

 

 バカばかりだった・・。これは姫路さんを少しでも元気づけるためのジョークであると信じたい。

 

姫路「え、えーと。一年間よろしくお願いします。」

 

 自己紹介を終え、姫路さんは僕と雄二の間の席に着いた。やはり緊張していたのか、安堵の息を吐いて卓袱台に突っ伏した。

 

雄二「姫路」

 

 雄二は唐突に姫路さんに話しかけた。

 

姫路「は、はい。何ですか?えーっと・・・」

 

雄二「坂本だ。坂本雄二。よろしく頼む。」

 

姫路「あっ姫路です。よろしくお願いします。」

 

雄二「姫路、体調の方はまだ悪いのか?」

 

明久「それは僕も気になる。姫路さん体調はどう?」

 

姫路「よ、吉井君!?」

 

 姫路さんは僕の顔を見て急に驚く。こんなリアクションされると何気にショックだなぁ。

 

雄二「すまんな。明久がブサイクで驚いただろう。」

 

 雄二はとことん僕とやりあいたいらしい。

 

姫路「そ、そんな。目もぱっちりしてるし、顔のラインも細くて綺麗だし、全然ブサイクじゃないですよ!むしろその・・・」

 

雄二「そう言われるとそうかもしれんな。俺の知人にも明久に興味を持っているやつがいた気がする。」

 

明久「雄二!!!それはホント!!!誰な「そ、それって誰ですか!?」」

 

 姫路さんが僕の声を遮って雄二に詰め寄る。

 

明久「(やっぱり女の子ってこういった恋バナとかすきなのかな?)」

 

雄二「確か久保利光だったかな」

 

 雄二の口から発せられたのはどう考えても男の名前であった。

 

明久「・・・・・・・・ぐす」

 

雄二「泣くな明久。安心しろ、半分冗談だ。」

 

 もう半分とは何なのか気になるが、きかない方がいいきがしてきたのでやめておく。

 

雄二「話を戻すが体調は大丈夫なのか姫路?」

 

姫路「あ、はい。もうすっかり平気です。」

 

福原先生「はいはい、皆さん私語はやめて静かにしてください。」

 

福原先生は、教卓を叩いて警告してきた。すると「バキィッ」と音がしたと思ったら教卓がバラバラに崩れ落ちてしまった。

 

福原先生「え~・・・・替えを用意してきます。少し待っていてください。」

 

 先生は教室から出ていった。

 先生がいなくなったので僕は秀吉にお姉さんのことを聞くことにした。

 

明久「ねぇ秀吉ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」

 

秀吉「うむ?何じゃ聞きたいこととは・・・もしかして姉上のことかの?」

 

明久「うん、そうだよ。教室を見渡しても見当たらないし・・・!!もしかしてまだ具合が悪いの?」

 

 僕なりに木下さんがいない理由を考えていると、悪い予感がして思わず聞いてしまう。

 

秀吉「体調の方はもう大丈夫じゃ、今日いないのは別に理由があってのう。」

 

明久「別の理由?聞いてもいいかな?」

 

 どうやら体調の方はいいらしい。でも別の理由とは何だろう?あらためて秀吉に聞いてみる。

 

 

秀吉「理由はいたって簡単での。明久、お主じゃよ。」

 

明久「僕が原因!!どうして?」

 

 どうして僕なんだ?木下さんとはあれから会ってもいないはずだけど・・・

 

秀吉「この前の件で姉上は、身内であるわしや母上だけでなく、関係無いお主にまで迷惑をかけてしまったであろう。その結果お主もFクラスじゃ。そのことに関して姉上もかなり悩んでおってのう。お主にどう詫びたらいいかわからんそうじゃ。それゆえ顔を会わせづらいようじゃ。まさかわしも学校を休むくらい思い悩むとは思わなんだがな。」

 

明久「まさかそこまで悩んでたなんて、僕は別に気にしてないんだけど・・・」

 

秀吉「わしも姉上にはそのように説明したのじゃがな・・・なにぶん根本的な部分で姉上はまじめで頑固で意地張りでのう。なんとか明日には登校させるゆえ、心配は無用じゃ。」 

 

明久「(つまり木下さんは、自分のせいで僕がFクラス入りしてしまったと自分を責めているのか)」

 

 

 木下さんに図らずも迷惑をかけているなんて僕は考えもしてなかった。そんな彼女のために自分には何ができるのだろうか。ふと姫路さんが目に入った。姫路さんも木下さんと同じで体調不良の結果Fクラス行きとなってしまった。本来なら2人ともAクラスに行くだけの力を持っていたのに・・・

 

 僕は普段使わない頭を精一杯働かせ考える。

 

明久「(木下さんの罪悪感を解決し、なおかつこの状況を解決できる方法・・・・・!!)」

 

 問題が一気に解決できる案を僕は見つけた、思いついたら行動あるのみ。

 

明久「秀吉、雄二と話したいことがあるんだけど一緒にきてもらってもいい?秀吉のお姉さんにも関係のあることだから。」

 

 まず僕は秀吉に同行を求めた。秀吉は了承してくれたので、雄二のところまでいき、話しかける。

 

明久「雄二。ちょっといい?」

 

雄二「ん?何だ明久、秀吉もか?」

 

明久「ここじゃ話にくいから、廊下でいいかな?」

 

雄二「別に構わんが。」

 

 そう言って立ち上がった雄二と秀吉と一緒に廊下にでた。

 

雄二「それで、何なんだ話とは?」

 

明久「試召戦争を起したいんだ。できればAクラスに。」

 

 僕は簡潔に自分の考えを伝える。

 

雄二「ほぅ、まさかお前の方から試召戦争をやろうなんて言い出すとはな。なにか理由でもあるのか?」

 

明久「実は秀吉のお姉さんに関係することなんだ。秀吉、雄二に振り分け試験の時とお姉さんの事情を話してももらっていいかな?」

 

秀吉「姉上の件か?わかったのじゃ。」

 

 秀吉は事の経緯を雄二に説明する。

 

雄二「なるほど。姫路だけでなく木下優子までも体調不良でFクラスというわけか。」

 

明久「そうなんだ。それに木下さんは、僕を巻き込んでしまったことを気にしてるみたいで・・・試召戦争で勝利して設備が良くなれば、木下さんの僕に対する罪悪感を少しは減らせるんじゃないかと思ったんだ。」

 

秀吉「・・・明久お主は。」

 

明久「それに木下さんも姫路さんも本来はAクラスに行けたはずなのに、こんな廃墟みたいな教室で1年を過ごすなんて気の毒だよ。あの2人はもっと良い設備のある教室で過ごさせてあげたい。だから協力してほしい!!」

 

雄二「いいだろう。俺も初めからAクラス相手に試召戦争するつもりだったしな。」

 

 

 意外だな、雄二はあまり教室の設備には関心の無い奴だと思ってたのに。秀吉も同じこと思っていたようで雄二に尋ねていた。

 

秀吉「以外じゃな。お主も設備に不満があるのか?」

 

雄二「別におれは設備に興味なんかないさ。ただ世の中学力がすべてじゃないことを証明してみたくてな。」

 

明久・秀吉「????」

 

雄二「姫路に加え木下優子もいるならAクラスを倒す策も――――――おっと、先生が戻ってきたようだ。教室に戻るぞ。」

 

 雄二は先に教室に戻って行った。

 

秀吉「明久、わしらも戻るとしよう。」

 

 僕は秀吉にうなずいて一緒に教室に戻った。

 

福原先生「では、気を取り直して自己紹介の続きから始めてください。」

 

須川「えー、須川亮です。趣味は―――」

 

 しばらくして雄二以外の自己紹介が終わった。

 

福原先生「えー、あと木下優子さんもFクラスです。本日は体調不良で休みだそうです。では、最後にクラス代表の坂本君、自己紹介をお願いします。」

 

雄二「了解」

 

 そう言って雄二は教壇に上がり、自信に満ちた顔で僕たちをみる。

 

雄二「Fクラス代表、坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、すきなように読んでくれ。」

 

 一通り自己紹介を終え、雄二は一息ついた後、また話し出す。

 

雄二「さて、皆に一つ聞きたい。卓袱台に腐った畳。隙間風だらけの窓。汚い埃。恐らくみんなの知りうる限りここは最低の教室だろう。────それに比べて、Aクラスは、冷暖房完備の座席はリクライニングシート、その他豪華設備もろもろ・・・・お前たち、不満はないか?。」

 

    『『『大ありじゃぁっ!!』』』

 

 まさにFクラス男子たちの魂の叫びである。

 

雄二「よし、ならクラス代表として提案する。俺達Fクラスは、Aクラスに試召戦争を仕掛けようと思う。」 

 

 

 Fモブ「何言ってんだ、勝てるわけないだろ。」

    「これ以上設備が落ちたらどうするんだ」

    「姫路さんと木下姉妹がいればいい」

 

 Fクラスの反応はかなり否定的だった。雄二はどうやって彼らを説得するのだろうか。

 

雄二「安心しろ、勝てる根拠はこのクラスにはある。それを今から説明する。」

 

 雄二は得意の不敵な笑みを浮かべる。

 

雄二「おい、康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないで前に来い。」

 

 

姫路「は、はわっ」

 

土屋「・・・・・!!(ブンブン)」

 

姫路さんはスカートの裾を抑えて急いで遠ざかり、康太と呼ばれた生徒は必死に顔と手を左右に振り、否定する。往生際の悪いことに、顔についた畳の後を隠しながら歩きだした。

 

雄二「土屋康太。こいつがあの有名な寡黙なる性識者(ムッツリーニ)だ。」

 

Fモブ「ムッツリーニだって!!」

   「やつがそうなのか?」

   「だが見ろ!頬にある畳の跡を未だに隠そうとしているぞ。」

   「なるほど、確かにムッツリーニの名に恥じないスケベぶりだ」

 

土屋「…………(ぶんぶん」

 

 それでもなお否定するが、畳の跡を手で押さえている姿がとてつもなく哀れであった。

 

雄二「さらに姫路と今日はいないが木下優子もいる。この2人については言わずともわかるだろう?」

 

Fモブ「そうだ!!俺たちには姫路さんと木下さんがついている!!」

   「あの2人ならAクラスとも戦える!!」

   「彼女たちさえいれば何もいらないな。」

 

雄二「俺も全力を尽くす。」

 

Fモブ「たしか坂本って、小学生の頃は神童と呼ばれていたらしいぞ。」

   「振り分け試験では手を抜いていたのか」

   「これってすごい面子じゃないのか?なんか行けそうな気がする。」

 

 教室内は先ほどとは打って変わり、みんなの士気は最高潮に達していた。そして雄二は、ついに号令をかける。

 

雄二「では、全員筆をとれ!!まずは手始めにDクラスを落とす!!」

 

Fモブ達「「「「「おおーーーーっ!!」」」」」

 

 クラス内はもの凄い熱気に包まれ、皆の目は燃えているようにみえた。

 

雄二「よし!明久、Dクラスへの宣戦布告の使者をお前に任せる。この大役はお前にしかできないだろう。」

 

 普通の人が聞けばとても信頼に満ちた言葉だっただろう・・・しかし、雄二が僕に任せたのは『宣戦布告の使者』ではない。『宣戦布告の死者』である。

 

明久「嫌だよ!!下位勢力の宣戦布告の使者は、酷い目に遭うって聞いてるよ!!」

 

雄二「明久、そんな噂なんて信じてるのか?そんなの上位クラスが、試召戦争を仕掛けられにくくするために流したデマに決まってるだろう。大丈夫、やつらが危害を加えることはない。騙されたと思って行って来い。」

 

 雄二は力強く断言する。そこには一切の欺瞞も感じさせなかった。

 

明久「わかった、雄二を信じるよ。使者は僕に任せて、じゃぁ行ってくるね。」

 

雄二「ああ、頼んだぞ。」

 

 

 クラスメイト達の歓声と拍手を受け、僕はDクラスへと向かった。

 

 

 

 

 

 




新年明けましておめでとうございます。今回はかなり長くなったので、何か表現のミスや、誤字、脱字やご意見、ご指摘があればよろしくお願いします。


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第4話 作戦会議

それでは続きになります


 人間、体を動かす時最後にものをいうのは精神力である。特に体に疲労が溜まり、動かしにくかったり、眠たかったり、寒かったりで布団から出られないときなど、そこから這い出るには強い意志が必要である(本人談)。

 それは吉井明久も例外ではない。一言でいえば、今の彼の状態は満身創痍、しかし彼はFクラスに向かう廊下を進む。今の彼を突き動かすのは、ただ一つの強い殺意(おもい)である。

 

明久「(ゆぅぅ――――うじぃぃぃぃ―――――!!!殺ス、殺ス、コロス。アノオトコ、イカシテオクモノカ。)」

 

 明久はなんとかFクラスまで辿り着き、その扉を開けた。

 

明久「ゆぅぅ――――うじぃぃぃぃ―――――!!!よくも騙したなぁ―――――!!」

 

 そして、瞬時に標的を発見し、残りの力を振り絞り飛びかかった。

 

雄二「やっぱそうきたか!!くらうかよっと。」

 

 雄二はそばにあった卓袱台を盾にしこちらに向ける。

 

明久「!!なっっ雄二キサガっ!!!」

 

 気付いた時には、もはや止まることもできず、僕は卓袱台に突っ込み、床に倒れた。

 

雄二「それで、宣戦布告はちゃんとしてきたんだな?」

 

明久「・・雄二、その前にいうことがあるだろぉっ!!Dクラスのやつら、いきなり襲いかかってきたよっ!!」

 

雄二「やはりそうきたか。ああ、そうそうご苦労だったな明久、安らかに眠れ。」

 

 そういって雄二は十字を切る動作をする。

 

明久「勝手に殺すなっ!!しかもやはりって、使者への暴行は予想してたな!!わかってて僕を騙したな!」

 

雄二「当然だ。これくらい予想できなきゃ代表は務まらん。」

 

 平然と言いやがったコイツ、このウラミいつか晴らす。

 

姫路「吉井君、大丈夫ですか?」

 

 僕の状態を心配したのか、姫路さんが駆けよってくれた。

 

秀吉「明久、今手当するから待っておれ。」

 

 秀吉は救急箱を持って駆け寄ってきてくれた。

 

明久「大丈夫だよ、姫路さん。まだ痛いけど、なんとか動けるようになってきたから。秀吉もありがとう。でもどうして救急箱なんて持ってるの?」

 

秀吉「うむ、演劇の小道具じゃ。まさか本当に治療することになるとは思わなんだが・・・・」

 

 僕に説明しながら、秀吉は手慣れた手つきで治療を始める。

 

明久「秀吉手際がいいね。演劇での練習の成果かな?」

 

姫路「本当です、速くて無駄もないですし。」

 

 そう聞くと秀吉は、少し遠い目をしながらいいにくそうに

 

秀吉「・・・いや何というか、・・日常を生きる貫くために必要じゃったとういことかのう。」

 

明久・姫路「???」

 

 なんだろう、今の秀吉からは哀愁が漂ってくる。

 

秀吉「とりあえずこんなもんじゃろう。少しは良くなったかの?」

 

 

明久「うん、ありがとう秀吉。大分良くなったよ。」

 

島田「吉井、ホントに大丈夫?」

 

明久「島田さんも心配してくれてありがとう。大丈夫だよ、秀吉の治療が上手だったから。」

 

 まさか島田さんまで心配してくれるとは思わなかった。きっと彼女も本当は心のやさし「良かった、ウチがまだ殴っても大丈夫よね♪」・・・・違う!!彼女の心にはきっと鬼が住んでいるっっ!!

 

明久「やっやめてよ島田さん!!!今度こそ死んじゃう。」

 

秀吉「島田よ、これ以上は明久が不憫じゃ・・・ここは拳を引いてくれんか?」

 

 秀吉は、僕と島田さんの間に入り、島田さんを説得する。

 

島田「やーねー2人とも、冗談に決まってるじゃない。さすがに今の吉井をこれ以上痛めつける趣味はウチには無いわよ。」

 

 そう言ってニカッと笑い掛ける島田さん。彼女の冗談はシャレにならない。

 

雄二「もういいか?それで、開戦時刻だがちゃんと告げたか?」

 

明久「一応今日の午後に開戦予定と告げてきたよ。」

 

雄二「よし、なら屋上で作戦会議だ。いつものメンツに、姫路と島田も参加してくれ。」

 

 そういって雄二は先に外へ出て行った。あいつは少しでも友人をいたわる心を身につけるべきだろう。

 

姫路「あの、吉井君。痛かったりしたらいってくださいね。私、手伝いますから。」

 

 雄二とは反対に優しい姫路さん。雄二に彼女の爪の垢でも飲ませれば、少しは優しくならないだろうか。

 

明久「ありがとう姫路さん。でもさすがに女の子に無理はさせられないよ。」

 

秀吉「明久の言う通りじゃ、もしものときは、わしとムッツリーニでカバーするから大丈夫じゃ。」

 

明久「何言ってるのさ、秀吉も女の子なんだから無理しちゃだめだよ。」

 

秀吉「だからわしは男じゃといっとるじゃろう。」

 

土屋「・・・・そんな些細なことは気にするな。それより早く屋上にいかないと時間がなくなる。」

 

秀吉「わしにとっては些細なことではないのじゃが・・」

 

 秀吉はぶつぶつ呟いていたが、僕たちは屋上へと向かった。

 

 

 

 

 

屋上に着くと雄二がフェンスの前に腰をおろしていた。

 

雄二「やっと来たか。ところで明久、今日の昼くらいはまともなもん食べろよ。」

 

明久「それならパンでもおごってくれる?」

 

姫路「えっ!吉井くんは普段、お昼を食べないんですか?」

 

 少し彼女驚き、僕に聞いてきた。きっと彼女は規則正しい生活をしているんだろう。その・・・・なんというか・・・発育もよさそうだし。

 

明久「一応は食べてるよ。」

 

雄二「明久、世間一般では水と塩を舐めることは食事に入らんぞ。」

 

 雄二が哀れむように声でいう。

 

明久「失礼な!!砂糖だってあるよ。」

 

姫路「吉井君、たいして変わってないと思うんですが・・・」

 

島田「調味料が主食って、普通体がおかしくなるとおもうんだけど・・・・」

 

 なぜかみんなの目が妙に優しい。それが逆に僕にはつらい!!

 

 

明久「し、仕送りが少なくってさ、仕方がないんだよ。」

 

雄二「飯代まで趣味に使いこんでるからだろう。自業自得だ。」

 

 

・・・趣味ってお金がかかるよね。

 

姫路「・・あの!!よかったら私がお弁当を作ってきましょうか?」

 

 姫路さんから突然の優しい言葉。

 

明久「本当にいいの!?久しぶりにまともな物が食べられるよ。」

 

姫路「はい。明日のお昼でよければ。」

 

 姫路さん、今の君は天使に見えるよ。

 

島田「・・・吉井だけに作ってくるなんて瑞希って吉井にはずいぶん優しいんだね。」

 

 何だろう?島田さんはなにかおもしろくなさそうだな。

 

姫路「あ、いえ!よろしければ皆さんにも。」

 

雄二「俺たちにも?いいのか?」

 

姫路「はい!ご迷惑でなければ。」

 

秀吉「それは楽しみじゃのう。

 

土屋「・・・・・(コクコク)」

 

島田「お手並み拝見させてもらうわ・・・・でもさすがに全員分は瑞希も大変だろうから、ウチも作ってこようかしら。」

 

 姫路さんの負担が大きいと考えたのか、島田さんも弁当を作ってくれるようだ。

 

姫路「美波ちゃん?もしかして気をつかわせてしまいましたか?」

 

島田「まぁ、さすがにこれだけの人数分だと大変だと思うし、2人なら負担も半分になるでしょ。それとさっきは嫌なこと言ってごめんなさい。」

 

 そう言って島田さんは姫路さんに謝った。

 

姫路「あ、あの気にしないで下さい!それに美波ちゃんは私のことを気遣って、お弁当を作ってきてくれるんですから。」

 

島田「ありがとう瑞希。」

 

姫路「どういたしまして、美波ちゃん。」

 

 

 2人とも打ち解けあったみたいで何よりである。

 

雄二「さて、そろそろ試召戦争の話といこうじゃないか。」

 

 ここに来たのは作戦会議のためだったがすっかり忘れていた。

 

秀吉「しかし雄二。なぜDクラスから攻める?段階を踏むのならEクラスじゃろう?」

 

姫路「そういえば、確かにそうですね。」

 

 秀吉の疑問はもっともだろう。

 

雄二「理由は色々とあるが、Eクラスは戦うまでもない相手ということだ。」

 

明久「でも僕たちよりクラスが上だよ?」

 

雄二「確かに、振り分け試験の点数がそのまま形となっているからEクラスの方が点数はいい。だがそこまで離れているわけでもない、それと今のFクラスが保有しているメンツをいってみろ。」

 

明久「美少女4人にムッツリが1人と鬼畜が1人とバカが大量にいるね。」

 

雄二「誰が鬼畜だと!?」

 

秀吉「雄二!反応するところはそこではないじゃろう!美少女の数が1人多い!!」

 

 秀吉と木下さん、姫路さん、島田さん、数はあっていると思うけど・・・まさか!!

 

明久「ちょっと秀吉、島田さんをまさか男だと思ってるの?確かに島田さんは、乱暴でその辺の男より男らしくて胸が小さ腕の関節があり得ない方向にいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 

 

島田「一度死になさい。」

 

 島田さんの関節技が僕にがっしりと極まる。おかしい!僕はただ秀吉に島田さんは女の子だと説明してただけなのに!!

 

土屋「・・・雄二、それより何がいいたい」

 

 こちらをスル―してムッツリーニが雄二に尋ねる。

 

雄二「まぁ、要するに姫路に問題が無い以上、Eクラスとは正面から戦っても勝てる。それより余計な戦いをして、上位のクラスにこちらの戦力を知られることの方が問題なんだ。」

 

明久「何が問題なの?」

 

雄二「今Fクラスには本来はいなかったであろう2人がいるだろう?」

 

秀吉「姉上と姫路のことじゃな。」

 

 確かに、アクシデントがなければ2人とも本来はAクラスのはずだったんだよなぁ。

 

雄二「その通りだ。こんな最底辺のバカの集まりにAクラスレベルの、いわばジョーカーを2人も有している。だからこそ二人の存在が知られないうちに戦争を起こす必要があったんだ。知らなければ相手はこちらを無謀なアホどもと油断して隙が生まれるが、知られると対策を取られてしまうからな。」

 

明久「それなら最初からAクラスに挑んだ方がいいんじゃない?」

 

雄二「残念だがこのままじゃAクラスには勝てない。Dクラス戦はAクラス打倒のための布石だ。まずは目の前の敵を撃ちとる。」

 

姫路「あの、坂本君ちょっといいですか?」

 

雄二「うん?何だ、姫路?」

 

姫路「はい、私は振り分け試験を途中退席してしまったので、持ち点は今0点なんですが・・・」

 

秀吉「ついでにいうと、わしと姉上に明久も0点じゃ。」

 

明久「そうだよ雄二、切り札の姫路さんと木下さんが参戦できないんじゃ、勝ち目がないんじゃないの?」

 

 雄二はどうやってDクラスを倒すのだろうか。

 

雄二「それをふまえて今から作戦を説明する。」

 

雄二の作戦

 

1.戦いが始まり次第、僕と秀吉と姫路さんは補充試験を受ける。

 

2.補充試験が終わるまで、他のメンバーは守備に徹し、戦線を維持する。

 

3.僕たちの補充が終わり次第全戦力投入、Dクラス代表までの道を作る。

 

4.姫路さんがDクラス代表を倒す。

 

雄二「まぁ、こんなところだ。なにか質問はあるか?」

 

明久「これでホントに大丈夫なの?2番目の戦線維持はどうやるの?」

 

雄二「それに関しては、島田が頼りだな。」

 

島田「えっ、ウチが!?」

 

雄二「ああ、お前の数学の点数はBクラスレベルだからな。数学を軸に、指揮をとってもらうことになる。負担はかかるがよろしく頼む。」

 

島田「うん、わかったわ。任せなさい!!」

 

 島田さんは力強くうなずいた。

 

雄二「ムッツリーニは、敵の情報収集を頼みたい。相手の出方を逐一報告してくれ。」

 

土屋「・・・心得た。」

 

 雄二は、ここに居る全員がやるべきことを伝えると一息いれ最後に締める。

 

雄二「それじゃぁ俺たちの初陣。派手にかましてやろうじゃないか!!」

 

 

「「「「「おうっ!!」」」」」

 

 もうすぐ開戦である。僕たちは絶対に勝つ!!

 

 




いかがでしたでしょうか。誤字やご意見などあればよろしくお願いします。


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第5話 Dクラス戦

こんばんわ~。時間がかかりましたがなんとかUPできました。駄文ですが・・・。


 昼休みの終わりのチャイムが鳴れば、Dクラスとの試召戦争が始まる。僕たちFクラスは雄二の指揮のもと、作戦の最終確認を行っていた。

 

雄二「前線部隊の指揮は島田、中堅部隊は須川に任せる。いいか、敵とは一対一で戦わず、複数で取り囲んで戦え。ローテーションを組んで、少しでも長く時間を稼げ!!」

 

Fクラス「「「「「了解!」」」」」

 

 ここでとうとう開戦の合図であるチャイムが鳴り響く。

 

雄二「さぁ開戦だ!!」

 

 前線のメンバーは島田さんを先頭に教室から出陣した。僕たちも回復試験を受けるため、移動した。

 

 

 

《明久side》

 

 回復試験の教室では学年主任の高橋先生がいた。

 

高橋先生「それでは試験を始めてください。」

 

 開始の合図とともに問題に集中。ペンを走らせた。

 

 

 

 

 

《美波side》

 

 

一方廊下ではFクラスとDクラスの戦いが始まっていた。

 

「「「「試験召喚獣召喚(サモン)!!」」」」

 

 

Dクラスモブ平均 数学95点

    vs

Fクラスモブ平均 数学48点

 

 

島田「隊列を乱さず、最低でも2人以上で組んで確実に叩いて!!そこまで絶望的な点差じゃない!!Fクラスの意地を見せるわよ!!」

 

 

Fクラスモブ「「「了解!!」」」

 

 

Dクラスモブ 数学93点

   vs

Fクラスモブ 数学44点、50点、46点

   

Dモブ「なっ貴様ら複数で!!」

 

 

Fモブ「「「死ねぇ――――!!」」」

 

Dモブ DEAD  

   vs

Fモブ 数学44点、50点、46点

 

複数で襲いかかり、Dクラスを1人倒した。

 

Dモブ「そんな!!」

 

 唖然としている彼に背後から巨大な影が現れた。

 

鉄人「戦死者は補習!!」

 突如現れた鉄人こと、西村先生が戦死した生徒を捕まえ、連れていく。

 

Dクラス戦死者「へっ、ちょっと、いっ嫌だ!補習室なんて行きたくない!!」

 

鉄人「黙れ!!戦死者は戦争が終わるまで補習室で特別講義だ!!たっぷりと指導してやる。」

 

Dクラス戦死者「誰か!!助けてくれ――――!!」

 

鉄人「安心しろ。補習が終わるころには、趣味が勉強、尊敬する人は二宮金次郎、といった理想的な生徒に教育してやろう。」

 

Dクラス戦死者「それは教育じゃなく洗脳だ!!だ、だれか、イヤァァァーーーーー」

 

 戦死した生徒は断末魔の叫びをあげながら消えていった(アーメン)

 そのせいか、両軍の士気はかなり下がった。

 

島田「ちょっと待ちなさい、何逃げようとしてるの!!」

 

Fモブ「し、島田!たのむ、俺はまだ死にたくないんだ!!」

 

 彼の恐怖が周りに伝染したのか、敵味方問わず逃げ出そうとするものが現れ始めた。

 

島田「あんたたち、男のくせになに逃げ腰になってんの!!見てなさい!!」

 

 そう言ってウチは敵に勝負を挑む。

 

島田「島田美波、Dモブに数学勝負を申し込みます。」

 

Dモブ「何!!」

 

 勝負を申し込まれれば絶対に受けなければならない。ここで逃げれば敵前逃亡となり、彼は補修室送りとなる。

 

Dモブ「くそっ!!やってやる!」

 

島田・Dモブ「「試獣召喚(サモン)」」

 

 ウチと相手の召喚獣が現れる。ウチの召喚獣は軍服にサーベルという装備、相手は鎧に剣といった装備だった。そしてその上に点数が表示される。

 

 島田美波 数学168点

 

  vs

 

 Dモブ 数学78点

 

Dモブ「ば、バカな、Fクラスのくせにこんな点数!!」

 

島田「悪いけど数学ならDクラスになんて負けないわよ!!」

 

 相手はウチの点数に気を取られ無防備、今がチャンスと思い召喚獣を突撃させる。そしてウチの召喚獣のサーベルが相手の召喚獣の胸を貫いた。

 

 島田美波 168点

 

  vs

 

 Dモブ DEAD

 

Dモブ「し、しまった。」

 

鉄人「戦死者は補修!!」

 

Dモブ「そ、そんな!!いーーーーーやーーーあああぁぁぁ」

 

 またもや突然現れた鉄人に連れて行かれる。

 

島田「あんたたちにはウチがついてる!!全員、戦うのよ!!」

 

 ウチは、Fクラスの連中の士気を上げるため鼓舞する。

 

Fモブ「し、島田隊長!!あんた男だよ!!」

   「かっこいい!!」

   「一生ついていきます!!」

 

 何気に男呼ばわりされたけど、ここは我慢する。

 

島田「何としてもここは守りきる!!全員隊列を組み直し迎撃開始!!」

 

Fモブ「「「「了解です!!姉御!!」」」」

 

 そういってウチ達はまだ、とまどっているDクラスの前衛部隊に攻撃を開始した。

 

 

 

《雄二side》

 

 廊下で誰かが鉄人に連れて行かれる叫びを聞き、ながら戦況の確認を行っていた。

 

雄二「ムッツリーニ、今のところ前衛はどうなっている?」

 

土屋「・・・島田を中心にかなり押している。」

 

雄二「戦死者の状況は?」

 

土屋「・・・こちらは2人が戦死したが、あっちは8人戦死している。」

 

雄二「!!まじか、いくらなんでも凄すぎないか?」

 

土屋「・・・島田がかなり奮戦している。5人は島田が戦死させた。」

 

雄二「こいつはDクラスも予想外だろう。しかし何かしらの手を打ってくるはずだ。ムッツリーニ、このままDクラスの様子を探ってくれ。」

 

土屋「・・・(コクリ)」

   

 俺の指示に無言でうなずき、突如消えた。

 

雄二「さて、何事もなければいいが・・・」

 

 

 

《美波side》

 

 今のところ戦況はこちらに優位に傾いている。そのおかげでこちらの士気はどんどん上がり、一方のDクラスは・・・

 

Dモブ「おい、これはやばいんじゃないか?」

   「なんで俺たちが押されてるんだ。」

   「くそっ、戦死はいやだ!!」

 

 士気はかなり低下しており動きも鈍くなっている。

 

島田「(このままなら何とかいけそうね)」

 

 そう思いながら指示を出していると。Dクラスの方から誰かが近づいてくる、縦ロールを ツインテールにした女の子・・・

 

???「美波お姉さま!!こんなところでお会いできるなんて美春は感激です!!」

 

 ああ、しまった・・・さっき頭に浮かんだ言葉って、今思うとフラグだったわ。

 

清水「試獣召喚(サモン)です。」

 

 そう言って美春は召喚獣を出す。

 

島田「くっ、誰か交代を!!」

 

清水「逃がしません、お姉さまに捨てられて以来、美春はこんな機会をずっと待っていました。今なら保健室のベッドが空いています。さあ、美春と一緒に遥かなる頂にまいりましょう!!」

 

 目光らせながら美春が近づいてくる。ウチは防衛本能からか無意識のうちに召喚獣を呼び出していた。

 

島田「っ試獣召喚(サモン)!!!」

 

 

島田美波 化学56点

 

  vs

 

清水美春 化学94点

 

 対戦教科は化学、一対一じゃ少し厳しい・・・、助けが欲しいけど、美春以外にもかなり増援を出してきたようで、かなり押されているため、自分で何とかしなければならない。

 

島田「来ないでっ!!ウチは普通に男子が好きなのよ!!」

 

清水「嘘です!お姉さまは美春のことを愛してるはずです!」

 

島田「あーもうっ!このわからずや!」

 

 ウチは召喚獣を突撃させる。こうなったら美春は、補習室に送って自分の身を守るしかない!!

 

 召喚獣同士がぶつかり合い、鍔迫り合いとなる。しかし、相手の方が点数が高いため、こちらの召喚獣が力負けし、武器が弾き飛ばされた。

 

島田「あぁっ!そんなっ!!」

 

清水「ここまでです!安心してください。美春もすぐお姉さまの元へいきますから!!」

 

 美春の召喚獣がとどめの一撃と、武器を振りあげウチの召喚獣めがけて振り下ろす。

 

島田「(ダメッ、回避が間に合わない)」

 

 諦めかけたその時、聞きなれた声が聞こえた。

 

 「「試獣召喚(サモン)!!」」

 

 突如2体の召喚獣が現れ、一体は美春の攻撃を防ぎ、もう一体は美春の召喚獣の頭に一撃を加えていた。

 

清水美春 化学28点

 

  vs

 

吉井明久&木下秀吉 化学44点、47点

 

 

清水「な、何者です!!」

 

島田「吉井、木下!!2人ともいいところに。」

 

秀吉「ワシらだけではないぞ。」

 

 そういって後ろを向くと、坂本率いる本隊も出てきていた。

 

吉井「島田さんたちのおかげでなんとか補充も完了しからね。作戦通りに一気に行くよ。」

 

秀吉「うむ、島田が達が頑張ってくれた分、ワシらも働かねばな。」

 

 そして2人の召喚獣は美春にとどめを刺した。

 

清水美晴 DEAD

 

  vs

 

吉井明久&木下秀吉 化学44点、47点

 

 

清水「美春の召喚獣が!!」

 

 そして美春は補習室へと連れて行かれる。恐ろしい形相で吉井を睨みながら。

 

清水「(美春とお姉さまの恋路を邪魔する豚がっ!このウラミ、オボエテオキナサイ!!)」

 

 美春からの邪気がもの凄かったが、坂本の声が響き意識をそちらに向ける。

 

坂本「俺たちの勝利は目前だ、全員でDクラス代表までの道をこじ開けろ!!」

 

 坂本の指示で、FクラスメンバーはDクラスに特攻をかけ始めた。

 

 

 

 

《明久side》

 

明久「秀吉、島田さん。姫路さんをDクラス代表のところまで送り届けるよ。」

 

秀吉・島田「わかった(のじゃ)」

 

 僕たちはFクラスのこじ開けた細い道を通り抜けDクラス代表を目指した。

 

 

Dモブ「これ以上は行かせるか!!」

 

明久「横溝君、お願い。」

 

横溝「任せろ。試獣召喚(サモン)

 

Dモブ「こ、こいつらこんなところまで、」

 

明久「西村君、足止めよろしく。」

 

西村「OK。試獣召喚(サモン)

 

 何度か妨害があったが、仲間の助けもあり、とうとうDクラス代表にまで辿り着く。

 

平賀「Fクラスのやつらがこんなところまで辿り着けるとは思わなかったよ。でも君たちだけじゃ僕は倒せないよ。」

 

 彼の周りにはDクラスの生徒がまだ5人いた。ここのフィールドは現代国語。数学なら島田さんの力で何とかなったけど、現代国語ではDクラス5人と平賀君は倒せないだろう。

 でも彼らは知らないぼくたちFクラスの切り札を!!

 

明久「やってみないとわからないよ。秀吉、島田さん行くよ。」

 

明久・秀吉・島田「「「試獣召喚(サモン)!!」」」

 

Dクラス近衛部隊「「「「「試獣召喚(サモン)!!」」」」」

 

吉井・秀吉・島田 

現代国語 51点、60点、17点

 

    vs

 

Dクラス親衛隊

現代国語 98点、90点、102点、95点、93点

 

 さすがに近衛部隊だけあって点数も高い。その点数差に平賀君も

 

平賀「残念だったね、数学勝負なら島田さんの力で何とかなったかもしれないけど、生憎前線での彼女の活躍は目立っていたからね。最後に取っておくべき切り札を最初から使うなんて、さすがはバカのFクラスだ。」

 

 平賀君はニヤニヤしながら自信満々にいい、僕たちを一瞥した。

 確かに彼のいう通りだ。だからいま切り札を使う。

 

明久「平賀君のいう通りだね。だから姫路さん、よろしくね。」

 

平賀・Dクラス近衛部隊「「「「「「は???」」」」」」

 

 彼らは『何言ってんだ、このバカは??』といった顔をしている。

 姫路さんは僕たちと近衛部隊を通り過ぎ、平賀君の前に出た。

 

姫路「あ、あの・・・・」

 

平賀「え?姫路さん。どうしたの?Aクラスはあっちでここは通らないと思うけど。」

 

姫路「Fクラスの姫路瑞希です。えっと、Dクラス平賀君に現代国語で勝負を申し込みます。」

 

平賀「・・・はぁ。どうも」

 

 未だに現状を把握できていないのだろう。平賀君は目を丸くし、ポカンとした顔をして召喚獣を出す。

 

姫路「えっと・・・試獣召喚(サモン)です。」

 

 

姫路瑞希 現代国語339点

 

   vs

 

平賀源二 現代国語129点

 

 

 

平賀「あ、あれ?どういうこと?」

 

 

 表示された圧倒的な点数差、とても勝負にはならないだろう。姫路さんの召喚獣は背丈の倍以上の巨大な剣を持っているが、平賀君はごく普通の装備といえる。

 

姫路「それでは行きます!!ごめんなさいっ」

 

 姫路さんの召喚獣は、その巨大な剣を持ちながらも素早い動きで平賀君の召喚獣に迫り、あっという間に一刀両断し、一撃で平賀君を下した。

 

 

姫路瑞希 現代国語339点

 

   vs

 

平賀源二 DEAD

 

平賀「い、一体何が起こったんだ。」

 

 

 その平賀君の呟きの直後、立ち会いの先生から終戦の号令がかかる。

 

 

現代国語教師「Dクラス代表が戦死したため、勝者Fクラス!!」

 

 こうしてDクラスとの試召戦争は僕たちFクラスの勝利で終わった。

 

 

 




と、いうわけでDクラス戦終了です。誤字やご意見、何かの間違いや不都合があれば、知らせてもらえると幸いです。
次回、やっと優子出番の出番があります。


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第6話 戦後対談と木下家

論文の合間に書いたのでupしてみました。
すいません。優子少ししか出てません


「Dクラス代表戦死により勝者Fクラス」

 

 その瞬間Fクラスからは歓声、Dクラスからは悲鳴が聞こえた。

 

Fモブ「やった―、これであの教室とおさらばだ!」

   「これでDクラスの設備は俺たちのもんだ!」

   「坂本ってやっぱり凄い奴だったんだな!」

   「姫路さん万歳!」

 

   『姫路さん!!坂本!!姫路さん!坂本!!姫路さん!坂本!!姫路さん!』

 

 テンションMAXのFクラスは雄二、姫路さんコールを始めた。

 

Dモブ「お、俺たちが負けるなんて・・・」

   「なんで姫路さんがFクラスにいるんだよ・・・・」

   「最低でもあと3カ月は廃墟で過ごすのかよ・・・」

  

 Dクラスの生徒たちは膝をつき、悔しさを顔に滲ませていた。そんな中、雄二は平賀君のもとにむかう。

 

雄二「平賀、そろそろ戦後処理の話し合いに入ろうか。」

 

平賀「ああ、ルールに則りDクラスの設備はFクラスに明け渡そう。ただ、時間もかかるだろうし作業は明日でもいいか?」

 

 クラス代表は勝てば英雄、負ければ戦犯、今回は僕らが勝ったが負けていれば雄二は僕たちの手により今頃は裏山に埋められていただろう。ちっ、運のいい奴め。

 

雄二「その必要はない。俺たちはDクラスとは設備の交換はしない。」

 

明久「雄二っ、何言ってるの!!せっかく勝ったのに。」

 

雄二「忘れたか?俺たちの目標はAクラスの設備のはずだろ?」

 

明久「それと設備の交換をしないのは関係ないだろ!!」

 

 雄二のいう通り、僕たちの目標はAクラスだ。だけど設備の交換をしない理由にはならない。

 

雄二「設備の交換はしないが、その代わりにDクラスにはやってもらいたいことがある。だから設備の交換はしない。」

 

平賀「・・・何だ、俺たちにやらせたいこことは」

 

 平賀君は少し警戒気味に尋ねる。

 

雄二「そう身構えるな、大したことじゃない。俺が指示をだしたら、窓の外にあるBクラスの室外機を壊してほしいだけだ。教師には睨まれるかもしれないが、3ヶ月間あの廃墟で過ごすよりはいいと思わないか?悪くない取引だろう?」

 

 雄二のいう通り、これは平賀君たちにとって悪くない取引だ。事故に見せかければ厳重注意を受けるだけで済み、Fクラスの設備へのランクダウンも避けられる。

 

平賀「こちらとしては願ってもない取引だが、なぜそんなことを?」

 

明久「そうだよ雄二。Bクラスの室外機なんて壊してどうするのさ。試召戦争とは関係ないと思うけど?」

 

雄二「ところがそうでもない。次のBクラス戦で勝つための作戦に必要ことだ。」

 

 

 

平賀「よくわからないけど、ありがたくその取引に応じさせてもらうよ。」

 

雄二「タイミングは後日詳しく話す。今日のところはここまでだな。」

 

平賀「ああ、わかった。Bクラス戦の健闘を祈ってるよ。」

 

 平賀君はそう言って去って行った。

 

雄二「さて、みんな!今日はご苦労だった。明日は点数の補充を行うから、それに備えてゆっくりと休んでくれ。解散!!」

 

 雄二の号令でみんな帰りの支度のためクラスに戻っていく。

 

明久「雄二、僕らも帰ろう。」

 

雄二「ああ、さっさと支度して帰ろう。」

 

 教室に戻るため、僕たちは歩きだした。

 

明久「雄二。さっきの取引だけど一体何のために室外機を壊すの?」

 

 教室までの道すがら、雄二に尋ねた。

 

雄二「さっきも言っただろ。次のBクラス戦に備えての下準備だ。まぁ、ほかにも理由はあるがな。」

 

明久「理由?一体どんな?」

 

雄二「明久、俺たちの目標は何だ?」

 

 コイツ、わかりきってることを何で聞いてくるんだ。そんなの決まってる。

 

明久「Aクラスに勝って豪華な設備を手に入れることでしょ。」

 

雄二「その通りだ。いいか、さっきDクラスと設備の交換をしたらクラスのやつらはどんなふうに考えると思う?」

 

明久「嬉しいと考えると思うけど?」

 

 Aクラスの設備と比べたらDクラスは普通すぎる設備だけど、Fクラスと比べれば天国だろうから皆嬉々として喜んだだろう。

 

雄二「そうだろうな。だが、それが落とし穴なんだ。人間ってのは妥協しちまう生き物だからな。」

 

明久「落とし穴??妥協??どういう意味?」

 

雄二「つまり、Dクラスの設備を手に入れちまうと、クラスの連中は『廃墟から脱出できたからもういいんじゃないか』とか考えるだろ?それだと戦争への意欲が削がれて、Aクラス戦を反対するやつらが出てくる可能性がある。負けたら設備のランクも下がるしな。」

 

明久「なるほどね。」

 

 雄二のいうとおり。僕たちFクラスの士気が高かったのは廃墟のような教室から抜け出したいという思いがあったからだ。それが達成されてしまえば士気も下がるだろう。意外にいろいろ考えている。

 

明久「それで、室外機を壊す意味は結局何なの?」

 

雄二「それは次の作戦会議のときに説明する。まぁ、俺に任せておけ。」

 

 ・・・・結局教えてくれないのか。

 

明久「わかった。もういいよ。」

 

 このまま食いついても教えてくれなさそうだったので、作戦会議まで待つことにしよう。それにもう教室に追いたし。

 

 2人は教室に入り、帰り支度を始めた。

 

秀吉「明久、雄二。ワシはこれで失礼する。」

 

 支度を終えた秀吉が僕たちに挨拶して帰ろうとする。すると雄二が秀吉に声をかけた。

 

雄二「秀吉。明日は姉の方をなんとか連れてきてくれ。点数を補充して次の試召戦争には戦力に加わってほしいからな。」

 

秀吉「うむ、心得た。姉上は必ず連れてくる。」

 

 そういって秀吉は教室から出て行った。

 

雄二「さて、帰るか明久。」

 

明久「・・・・・・」

 

雄二「おい、聞いてんのか?」

 

明久「ゴメン雄二!!用事思い出した。先に帰るね。」

 

 僕は立ちあがって急いで教室を出た。後ろから「おいっ!」と雄二の声が聞こえたがそんなの気にせず秀吉を追いかけた。

 

 

 

 玄関に着くと秀吉が見つかった。

 

明久「秀吉。ちょっといい?」

 

秀吉「なんじゃ明久?」

 

明久「あのさ、今から秀吉の家に行ってもいい?」

 

秀吉「姉上の件かの?」

 

明久「うん。試召戦争のとかこの間の事について話しておきたいんだ。お姉さんのことも心配だしね。」

 

 あの時のことを知ってるのは、ボクと秀吉と木下さんの他には雄二だけ。

 木下さんも、この事はあまり知られたくないだろうし、誰かに聞かれるかもしれない学校で話すより、この方がいいだろう。

 

秀吉「・・・ワシは構わんがその・・なんというか・・・のう・」

 

 秀吉の歯切れが悪い、どうしたんだろう?やっぱりいきなり押しかけるのは迷惑だったかな。

 

明久「秀吉、都合とか悪いなら諦めるけど?」

 

秀吉「いや、都合が悪いとかではなく・・・むしろ姉上と話してもらった方がいいんじゃが・・・いや、しかのう・・・うむむむ。」

 

 頭を抱えて考え込む秀吉。そんなところもかわいらしい・・・っじゃなくて。

 

明久「秀吉!?どうしたの?」

 

秀吉「明久、もしワシの家で何か信じられないものを見たとしても、誰にも言わないでくれるかのう?いや、もし話せばお主の命にも・・・」

 

明久「ひっ秀吉!!いきなりなにを言い出すの!?。」

 

秀吉「そろそろ行くかのう。もしかすれば、何事もなく済む可能性もある。」

 

 そして歩きだす秀吉。

 

明久「待ってよ!!秀吉の家に行くのになんでそんなに深刻なの!!一体秀吉の家に何があるの―――――!!!」」

 

           

 

 

 

 

 

 そして僕たちは木下家に到着した。見た目は普通の住宅だがこの中に一体何があるのだろう。

 不安ばかりが胸に立ち込める。

 

秀吉「では、明久。ついてくるのじゃ。」

 

 そして、秀吉は玄関を開け入っていき、僕もそれに続く。

 

明久「お、お邪魔しま~す。」

 

 控えめに挨拶しながら慎重に入る。見た感じ、玄関には特に変わったところはない。

 そして廊下を歩き、リビングに入る。ここも特に変なところも無く、ごく一般的であると思う。なぜ秀吉はあんなことをいってたんだろう。

 

明久「秀吉ったら、あんなに脅かすからどんな家かと思ったけど、ごく普通の家じゃないか。」

 

秀吉「う、うむ。そうじゃのう。(家自体に問題はないのじゃ。問題は・・・)」

 

明久「それで、僕はここで待ってればいいかな?」

 

秀吉「うむ、ワシは姉上を呼んでくるゆえここで待っておれ。動いてはいかんぞ!」

 

明久「う、うん。」

 

 秀吉は僕に念押しし、リビングを出ようとした。すると奥の方から階段を下りてくる音がした。

 

明久「誰か下りてくるみたいだね。お姉さんかな?」

 

秀吉「っ!!」

 

 僕はそう尋ねたが、秀吉はかなり慌てていた。

 

秀吉「明久!!すぐにここから出るんじゃっ、急いで!!」

 

明久「えぇ!!いきなりどうしたのさ?」

 

 秀吉は僕をリビングから出そうと、背中を押してきた。

 僕は理由がわからず混乱した。

 

秀吉「頼むのじゃ!!早く!!」

 

 秀吉が余りにも必死だったので僕はとりあえずリビングから出ることにしたが、その時向かいの方の扉が開いた。

 

優子「あら、秀吉帰ってたの・・・・えっ!!」

 

明久「えっ!!」

 

秀吉「間に合わなんだか・・・」

 

 その瞬間、僕が目にしたのは、上は少し大きめのジャージを着ていて、下は下着姿の木下さんだった。

 

明久「き、き、き木下さフゴォ!!」

 

 そしてその瞬間、目の前に拳が突き出され、顔に衝撃が走り、僕は意識を失った。

 

 

 

 

 




誤字、脱字、ご意見あればお願いします


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第7話 木下家にて(前半)

予想以上に遅くなりました。
オリジナル回はやっぱり難しいですね。
しかも予想以上に長くなってしまったので前半、後半に分けました。後半も早めに投稿します。



 気がつくと見慣れない天井が目の前にあった。

 起き上がろうとすると身体中から、痛みを感じたがなんとか起き上がり、周囲を見渡しながら記憶を整理する。

 

明久「え~と、確か学校帰りに秀吉の家にお邪魔して、リビングに入って、奥から木下さんが・・・!!」

 

 そこまで思い出すとその時の光景が目の前に浮かんでしまった。

 

明久「な、何を想像しているんだ僕は!!あのまじめで優等生な木下さんが、あんな恰好してるわけないじゃないかっ!!」

 

 頭を振って煩悩を振り払う。落ち着け僕、まずは冷静になるんだ。

 

明久「すぅ――――はぁぁぁぁ――――すぅ――――――はぁぁぁ―――。」 

 

 とりあえず深呼吸。何度か繰り返し、なんとか落ち着いてきた。

 『ガチャリ』と音がして、秀吉と木下さんが入ってきた。

 

秀吉「明久、目が覚めたのじゃな。」

 

明久「あ、うん。それよりここは?何で僕は寝かされてたの?体も何か痛いし。」

 

秀吉「ここはワシの部屋じゃ。先程の事は覚えておらんのか?」

 

明久「秀吉と一緒にリビングにいたよね?」

 

 その後の木下さんの事は、僕の見間違いか、今寝ていたときに見ていた夢に違いないので、それ以上は答えない。

 すると秀吉は、やや言いにくそうに。

 

秀吉「その後の事は覚えておらんのじゃな?」

 

明久「う、うん。」

 

 そう答えてちらりと木下さんの方を見る。

 彼女は、可愛らしいワンピースを着ている。ジャージに下着菅ではない。やはりさっきのは夢だったんだろう。

 それにしてもなぜか木下さんは、僕から目をそらしている。心なしか顔が少し赤いような気がする。

 

秀吉「そ、そうか。覚えておらんのか・・・・」

 

 秀吉は木下さんの方をちらちらと警戒するように見ながら答える。すると木下さんは僕の方を向き話しかけてきた。

 

優子「吉井君。ホントに何も覚えてないのね?」

 

 木下さんも僕に確認をとってきた。ここは『うん』とうなずく場面だろう。

 そう思って頷こうとしたが、木下さんを前にし、またもやあの場面が頭を支配し、思わず木下さんから目を逸らしてしまった。い、いけない、早く答えなければ。

 

明久「////うううん、ぼ、僕は何も見てないよ。」

 

秀吉「明久、動揺が表に出とるし、その言い方では・・・。」

 

優子「・・・・ふ~ん」

 

 秀吉は呆れたように、木下さんに至っては僕を『ジィ―』と睨んでいる。

 なんか不味そうな雰囲気になってきた。

 

優子「吉井君、人に話すときはその人の顔を見て話すのが礼儀だと思うけど?」

 

明久「そ、そうだね!。それは当り前だよ!!ど、どうしたの木下さん、いきなりそんなこと。」

 

優子「なら、どうして吉井君はあたしの方をみて喋らないのかしら?」

 

 そう言いながら僕に詰め寄ってくる木下さん。そんなこと言われても、顔を見ると『下だけ下着姿の木下さんが目に浮かんでしまうからです///』とは言えない。

 そんなことを考えていると・・・・

 

優子「吉井君、ホントは覚えてるんでしょう?」

 

明久「な、なにを?」

 

優子「あたしが水色の下着を穿いていたことを。」

 

明久「あれ?薄いピンクじゃな・・・・・はっ!!」

 

優子「そうね、その通りよ。」

 

 木下さんが満面の笑みを浮かべながら答える。

 笑っているはずなのに彼女からはとてつもない恐怖を感じる。というかさっきのは現実だったのか!!

 

明久「・・あの・・・その・・」

 

優子「まぁ、吉井君が全部悪いわけじゃないわよね。家の中とはいえ、あんな姿でいたあたしにも問題があったわけだし。」

 

 穏やかに僕に話しかける木下さん。だがこのままでは済まないだろう。

 なぜならさっきから顔は変わらず笑っているが、目が全然笑っていない!!

 

優子「でもねえ!!それじゃぁあたしの気が治まらないのよっ!!」

 

明久「ひぃぃぃっ!!!」

 

 彼女から発せられる殺気に、僕は動けなくなる。

 

明久「(このままじゃ殺される!!秀吉助けて!!)」

 

 命の危険を感じ、目で秀吉に助けを求める。

 秀吉に通じたのか、秀吉は頷く。

 

秀吉「あ、姉上、明久には助けられた恩もあるし、先程も顔に一発入れた後、マウウントポジションをとってフルボッコにしたじゃろう。ここは落ち着くのじゃ。」

 

 なんとか説得を試みる秀吉。というか身体じゅうが痛いのって、それが原因か!!

 

優子「ええ、そうね。吉井君には助けられた恩がある。そのせいでしょうね、『誰でもできる記憶消去術♡相手も記憶もノックアウト☆』の内容を実践したのに消去できてなかったから、無意識のうちに手加減してしまったのね。でも大丈夫!今度はそんなへましないから。」

 

 なぜそんな本を木下さんが持ってるのかとツッコミたかったがそうも言ってられない。

 どんどん僕に詰め寄る木下さん。目が完全に据わっている。

 

明久「ご、ごめんなさい!!!みたこと、嘘ついたこと謝るからどうかっ、どうかっお許しを!!」

 

 僕は床におでこを付け、精一杯土下座をする。僕にできることはこれくらいしかない!!

 

秀吉「姉上、明久もこうして謝っておるし、許してやってはくれぬか?」

 

 すかさず秀吉もフォローしてくれる。これで駄目なら、僕の命運は尽きるだろう。

 

優子「・・・・・・・・・・」

 

 無反応のままこちらに接近してくる姿はターミネーターのイメージと重なる。

 今の彼女は僕をターミネートするまで止まらないだろう・・・・・

 

明久「せめて、苦しまないようにお願いします・・・」

 

 もはや打てる手もなく、僕は運命を受け入れる。

 

???「盛り上がってるとこ悪いけど、一体どういう状況?」

 

 どこかで聞いた声がした。

 閉じていた目を開いてみると、そこに居たのは木下母の姿であった。

 

 

   




後半に続きます。
展開が遅いかなとも思うのですが、何か不満、ご意見あれば参考にしたいのでお願いします。
設定の間違いや、誤字脱字などあればそちらも報告してもらえると幸いです。


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第8話 木下家にて(後半)

どうも~お久しぶりです。
2月中に更新予定でしたがパソコンが壊れてしまい、更新ができませんでした<(_ _)>
タグで追加しましたが、オリキャラを2人ほど加える予定です。
では、続きになりますがその前に

ハーメルンよ、私は帰ってきた!!

すみません、言ってみたかったので


木下母「それじゃあ、落ち着いてきたところで状況説明をしてくれる?」

 

 あの後、突然の木下母の介入により、明久は一先ずことなきを得る。

 そして木下母は3人をリビングの移動させ、事の顛末を訪ねた。

 

明久「は、はい。実はですね。」

 

 僕が木下家に来てから起きたことを秀吉と一緒に説明した。

 (説明は省きます)

 

秀吉「そして今に至るわけじゃな。」

 

 

木下母「なるほど。だから優子はあんな様子なのね。」

 

秀吉「そういうわけじゃ。」

 

 優子さんはまだ怒っているようで、僕の方を恨めしそうに睨んでいる。

 

木下母「でも、秀吉も何で携帯で優子に連絡を取らなかったの?そうすれば回避できたでしょ?」

 

明久「そうだよ秀吉!!僕たちには携帯という素晴らしい連絡手段があったじゃないか!!」

 

秀吉「ワシの携帯は、昨日母上が洗濯と一緒に洗ってしまったじゃろう?それゆえ連絡できなかったのじゃ。」

 

木下母「そ、そういえばそうだったわね・・・・って、それなら吉井君に携帯借りればよかったんじゃない?」

 

秀吉「母上は、姉上やわしの電話番号とアドレス、覚えておるか?」

 

木下母「・・・・自宅なら覚えてるわよ。」

 

秀吉「自宅のも普段使わんから番号を覚えておらんのじゃ。」

 

木下母「なら仕方ないわね。」

 

秀吉「仕方ないのじゃ。」

 

 秀吉の言う通り、電話帳に登録すればいちいち番号を入力する必要もないから、自分の以外覚えてる人は少ないよね。

 金欠で僕の携帯が今使用できないのは、言わなくてもいいだろう。すべては文明の発達が原因なんだから。

 

 

木下母「うーん、結局は『不運な事故』ということになるのかしら?」

 

秀吉「そういうことになるのう。」

 

木下母「でも吉井君にとっては、幸か不幸かどっちかしらね(ニヤニヤ)」

 

明久「え、えっと、そのgfれおfひpfひh」

 

秀吉「明久、日本語どころか言語になっておらんぞ。」

 

 いきなりの話題転換にせっかくさっきまで忘れていた記憶が僕の脳内にフラッシュバック!!

 意外に意地悪な秀吉のお母さん。

 見てください、あなたの娘さんが顔を赤くしてプルプル震えながら、僕を睨んでますよ!!

 誰かっ、ヘルプミー!!

 

優子「お母さん!!蒸し返さないでっ!!」

 

木下母「なにいってるの、重要なことでしょ。あなたの生活態度が招いたことなんだから、これを機に改めなさい。」

 

優子「っっっ・・・・・」

 

木下母「大体私が何度いっても・・・・・」

 

 秀吉のお母さんは木下さんにお説教を始めてしまった。

 僕と秀吉は、すっかり蚊帳の外になってしまったで、さっきからいろいろ疑問に思っていたことを秀吉に聞いてみた。

 

明久「ねえ秀吉、どうしてお姉さんはあんな恰好してたの?話を聞いてると普段からそうしてるように聞こえるんだけど。」

 

 どうも、しっかりとした優等生というイメージがついているから、未だに違和感がある。

 

秀吉「明久は、学校での姉上のイメージはどんな感じじゃ?」

 

明久「明るくて社交性のある、まじめな優等生ってイメージだよ。」

 

秀吉「そうじゃろうな、姉上はそんな優等生を演じておるからのう。」

 

明久「優等生を演じる?」

 

秀吉「うむ、以前わしも気になって姉上聞いたのじゃが、その時『演じるのは木下家の性分でしょ』と言っておったのじゃ。」

 

明久「性分?」

 

秀吉「そう、わしは舞台で役を演じるが、姉上は日常生活で優等生を演じる、といった具合にのう。まぁその反面、わしは勉学が疎かに、姉上は家での生活態度が堕落するということになっておるが・・・・」

 

明久「成程ね。確かに学校で無理に優等生を演じるなんて疲れちゃうよね。」

 

秀吉「まぁ、それが原因でこうなってしまったわけじゃが。」

 

明久「そうだね。それよりあっちの方は、まだ終わらなさそうだからもう少し何か話してようか。」

 

 

 聞きたかったことも聞けたので、秀吉のお母さんの説教が終わるまで、僕たちは雑談して時間をつぶした。

 

 

 

木下母「大分待たせちゃってごめんなさいね、吉井君。」

 

 お説教が終わるころには、もう日も暮れ、夕飯時の時間になっていた。

 

明久「いえいえ、気にしないでください。」

 

木下母「もうこんな時間だし、よかったら夕飯食べていかない?」

 

明久「え、いいんですか?でもご迷惑なんじゃ?」

 

木下母「そんなことないわよ。この前のお礼も兼ねて、ということでどうかしら?」

 

 この申し出はかなりありがたい。今日の夕飯は、塩水をおかずに砂糖という予定だったため、きちんとした食事にありつけるのは、願ってもないことだ。

 それにまだ木下さんともちゃんと話せてない。ここはご厚意に甘えさせてもらおう。

 

明久「では、お言葉に甘えさせてもらいます。」

 

木下母「さて、それじゃあ張り切って作っちゃおうかな。」

 

 そういうと木下母、台所に入って行った。

 明久、秀吉、優子の三人を残して。

 

 その場には言葉も無くただ沈黙が漂っていた。

 

秀吉「明久、夕飯までに目的を果たしたらどうじゃ。」

 

 どうしようかと考えていたとき、秀吉が提案する。

 

明久「そうだった、すっかり忘れてたよ。」

 

 いろいろあり過ぎて、ここに来た理由を忘れていた。夕飯をごちそうになる前に話しておいた方がいいだろう。

 

明久「あの、木下さん。実は話したいことがあって、きたんだけどいいかな?」

 

優子「・・・・何かしら?」

 

 まだ、木下さんの機嫌は悪いようで、少し言動が冷たい。仕方がないとは思うけど・・・

 

明久「試召戦争の事もあるけど、木下さん今日休んだでしょ。秀吉から振り分け試験の時のことまだ気にしてるって聞いて、やっぱり一度話しておいた方がいいと思って来たんだ。」

 

優子「確かにあれから吉井君と話せてなかったわね。一先ず、あの時の助けてくれてありがとう。あと巻き込んでゴメン。」

 

明久「どういたしまして。あと、試験の事なら気にしなくていいよ。設備は・・・まぁともかく秀吉やムッツリーニ、ついでに雄二も一緒のクラスだったし。だからそんなに気にしなくていいよ。」

 

 僕は自分が思っていることを正直に伝える。

 

優子「・・・そう言ってもらえて、あたしも少しは気が晴れたわ。ありがとう。」

 

 木下さんは、そう言ってわずかに笑みを見せる。

 でも少し表情に影が差しているように思える。

 まだ心の中では気にしているんだろうか、それなら・・・

 

明久「木下さん、実は僕たちFクラスは、Aクラスに試召戦争を仕掛けるつもりなんだ。」

 

優子「・・・・あたしの聞き間違いかしら?Aクラスに試召戦争を仕掛けるって聞こえたんだけど?」

 

明久「聞き間違いじゃないよ。僕たちFクラスは、Aクラスに試召戦争で勝って、その設備を手に入れるつもりなんだ。」

 

優子「いや、無理でしょ。」

 

明久「そんなあっさり!!」

 

 木下さんは僕の言葉を冷静に何の迷いもなく切り捨てる。

 確かに普通に考えれば、僕たちがAクラスに勝つなんて、できるはずはないだろう。

 それでも、可能性は0じゃない!!

 

明久「無理じゃないよ!!今日だってDクラスに試召戦争で勝ったんだ!!」 

 

優子「えっ!Dクラスに勝った?今日は登校初日で、振り分け試験の時の点数がそのまま反映されてるのに!!」

 

 木下さんは、信じられないといった顔で驚いていた。

 

秀吉「まぁ、にわかには信じられんじゃろうが、勝ったのは事実じゃ。」

 

優子「それなら今日の試召戦争、どうやって勝ったの?Dクラス相手とはいえ、点数の差は結構あったと思うけど。」

 

 事実を確認するためか、木下さんは質問してきた。

 

 僕は今日のDクラス戦を思い起こす。

 雄二の作戦や美波の前線での奮戦などあるが、やはり決定的だったのは・・・・・

 

明久「えっとね、決め手は姫路さんがいたことかな。」

 

優子「えっ!!なんで姫路さんが出てくるの?」

 

明久「うん、実はね・・・・」

 

 僕は姫路さんがFクラスの理由と、どうやって勝ったのか説明した。

 

優子「そっか、そんなことが・・・」

 

秀吉「姫路も姉上と同じく、災難であった。」

 

明久「木下さんも姫路さんも本来ならAクラスに行けるだけの実力があるのにね・・・・・」

 

優子「起きてしまったことは仕方ないわ。それより話を戻すけど、Aクラスはあたしや姫路さんレベルの人たちばかりよ。やっぱり勝ち目は無いと思うけど?」

 

明久「何も考えずぶつかれば勝てないだろうけど、作戦と準備しだいで勝つ見込みはあるはずだよ。」

 

 戦力の差は、雄二のたてる作戦と僕たちの気合いで補える!!

 レベル1でもボスクラスの相手に勝つ方法があるように(例:ポケモンBW シロナ戦)、FクラスでもAクラスに勝てる方法が必ずある!!

 

優子「・・・なんで吉井君はそんなに試召戦争にこだわるの?」

 

明久「どうしたのいきなり?」

 

 突然の質問に僕は意味がよくわからなかった。

 なぜそんなことを聞くのだろうか。

 

優子「あたしは無理って言ってるけど、吉井君は勝てるって言いきってるし、どんな目的があるの?」

 

 僕が試召戦争にこだわる目的、それは・・・

 

明久「えっとさ、木下さんは僕を巻き込んだこと気にしてるでしょ?そのせいでFクラスになったこととか。試召戦争で勝っていい設備を手に入れれば、木下さんの気も晴れるんじゃないかと思ったんだ。」

 

 

優子「ふぇっ!?あの・・・つまり吉井君は、あたしのために・・・・その・・試召戦争を?」

 

 もじもじしながら僕に尋ねる木下さん。

 頬も若干赤く染まり、なんだかとても可愛らしい。

 その姿を見てるとなんだかドキドキしてきた。

 

明久「あ、うん、それに姫路さんも、あの教室だとまた体調を崩しちゃうんじゃないかと心配になっちゃって。」

 

 『ピシッ』

 

 その瞬間、何かが壊れる音がした・・・・

 

優子「あら、そう。吉井君は、姫路さんのため(・・・・・・・)に試召戦争に臨んでるのね。」

 

 木下さんはなぜか急に不機嫌になった。言い方にもなにか棘がある。

 

明久「あの~木下さん?なぜ急に不機嫌に?」

 

優子「あたしは別に不機嫌じゃないわよ。吉井君は、なにを言ってるのかしら?」

 

 イエイエ、思いっきり不機嫌じゃナイデスカ。

 

優子「と・に・か・く試召戦争は、あたしもきちんと協力するから、安心しなさい。」

 

明久「は、はいっ!ヨロシクオネガイシマス。」

 

 ここは波風を立てないように、気をつけて対応しよう。

 別に、彼女の気迫に押されたわけじゃないんだからね!!

 

優子「それよりまだ時間もあるし、せっかくだから皆で勉強でもしましょうか。」

 

明久「へぇ、さすが木下さん。勉強熱心だね。秀吉、邪魔になるといけないし、僕たちは部屋で遊んでようか。」

 

秀吉「そうじゃのう、姉上の邪魔にならんようにせねばのう。」

 

 僕たちは、急いで秀吉の部屋に向かうため、歩き出す。

 木下さんの勉強の邪魔にならないように、静かに遊ぶとしよう。

 

優子「逃げるなっ!!」

 

 グイッ

 

明久・秀吉「「ぐはぁっ」」

 

 素早く離脱を試みたが、木下さんに襟を掴まれ、あえなく失敗する。

 

優子「聞こえなかったかしら?みんなで(・・・・)勉強するって。」

 

 まずい、なんとか誤魔化して勉強を回避しなければ

 

明久「えっと、今日は試召戦争の疲れもあるし、明日の補充試験に備えて頭を休ませないと。」

 

優子「それなら、少しでも点数を上げるために勉強しないとねぇ。」

 

秀吉「いやいや姉上、また根を詰めても体調を崩すだけじゃろうて。」

 

優子「あんた達2人は殆ど戦ってないし、問題ないでしょ。問答無用!!」

 

明久・秀吉「・・・・はい(なのじゃ)。」

 

 こうして、ご飯ができるまで僕と秀吉は、木下さんに勉強を教えてもらった。

 

 

 

 

木下母「それじゃあ、召し上がれ。」

 

 そういわれ、ふるわれた食事は

 

明久「これって、もしかしてビーフストロガノフ!?」

 

優子「なぜにロシア料理!?」

 

秀吉「名前はよく聞くが、実物は初めて見たのじゃ。」

 

 予想の斜め上を行くチョイスだった。

 

木下母「おかわりはたくさんあるから、吉井君も遠慮せず食べてね。」

 

明久「あ、はい。それでは遠慮なく。」

 

明久・優子・秀吉「「「いただきます。」」」

 

 久しぶりのまともな食事ということもあり、気付けば4杯もおかわりしていた。

 

 

明久「ごちそうさまでした。とてもおいしかったです。」

 

木下母「そう言ってもらえると作った甲斐があったわ。」

 

 ご飯、野菜、肉がそれぞれ大量に摂取できて、正直とても助かった。

 明日は、姫路さんと美波がお弁当を作ってきてくれるし、次の仕送りまでなんとかもつだろう。

 後はここで手に入れたカロリーを、なるべく消費しないよう、家に帰ってゆっくり休むとしよう。

 

明久「それじゃあ、「勉強を再開しましょうか。」・・・はい。」

 

 さりげなく帰ろうと試みるが、木下さんに先手を打たれ、勉強は再開された。

 

 

 

 

 

 

優子「うん、時間的に今日はここまでね。」

 

明久「お、終わったぁ~。」

 

秀吉「頭を使いすぎたのじゃ。」

 

 僕と秀吉は、力を使い果たし、床に寝転がった。

 

優子「2人ともこれくらいで疲れすぎ。普段から勉強してればこんなには疲れないわよ。」

 

明久「返す言葉もこざいません。」

 

優子「まずは一度習慣を付けることね、そこまで苦にならなくなるから。」

 

明久「勉強の習慣か・・・(正直続けられる自信ないや)」

 

優子「わかんなかったりしたらあたしが協力するし、頑張ってみない?」

 

明久「えっ、でも木下さんの勉学に支障をきたさない?」

 

優子「誰かに教えることは、自分の勉強にもなるから問題ないわよ。それとも、あたしじゃ不満かしら?(二コリ)」

 

明久「イエマッタクモッテフマンナドゴザイマセン。」

 

 さっき教えてもらった時もわかりやすかったし、ここはお言葉に甘えさせてもらおう。

 

秀吉「それより、もうそろそろ帰った方がよいのではないか?」

 

 そういわれ時間を確認。確かにもう帰って明日に備えた方がいいだろう。

 

明久「うん、そうだね。それじゃぁ、木下さん、秀吉また明日。」

 

 

 そして僕は木下家をあとにした。

 




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