ハイスクールダークディケイド (ダークディエンド)
しおりを挟む

帰還

駒王町にある廃墟に突然現れたオーロラカーテンの中から、1人の少年が現れる。彼の名は兵藤一誠。昔、この世界から突然弾き出され、その弾き出された先で得た力を使い数多の世界を巡り、漸くこの世界に帰って来たと言った所である。

 

「漸く帰ってこれたぜ、駒王町。にしても……ったくこいつのせいで酷い目にあったな。まあ、こいつが無ければ俺は帰ってこれなかったのも事実だし、複雑なもんだな」

 

そう言う一誠の手には黒いバックルが握られている。ダークディケイドライバーと言われるそのバックルを彼が見つけたのは世界から弾き出された先の闇の中であり、彼はこれのおかげで世界を渡る力を手に入れこの世界に帰ってこれたのだ。しかし、この世界に帰ってくるまでに本来とは別の物語を歩んだ世界なんてのをいくつも渡る事になった為、彼にとっては力を与えてくれたモノでもあり面倒ごとの種でもあるのだ。特にとある『王』と関わったばっかりに、身体に異物を入れられる羽目になった時は、流石に帰れなくなっても良いから捨てようと思ったほどだ。

 

「はぁ、今更家に帰ったところで何言われるかわかんねえよなぁ。多分、10年以上行方不明扱いされてるだろうし、でも一応帰ってみますかね。気味悪がられりゃ、それでも良いさ」

 

一誠は家に帰る為、記憶を頼りに歩き出す。10年も経てば街並みも変わるもので記憶にない道が出来ていたり、逆にあった筈の建物が無くなっていたり、軽いタイムトラベラーになった様な感覚を味わいながら、なんとか家に辿りついた一誠。表札にはちゃんと兵藤と書かれている為、間違いなく彼の家であろう。少し、緊張しながらインターホンを押す。反応は無かったが、少ししてドアがゆっくりと開いた。

 

「はい?誰ですかこんな時間に」

 

出てきたのは女性、記憶よりも少しだけ老けているが女性は間違いなく一誠の母である兵藤誠奈であった。10年振りの母との再会に言葉が出ない一誠を余所に、誠奈は感極まった様に抱きついてきた。

 

「一誠!?一誠よね!」

 

「……わかるのか?」

 

「当然よ。自分の息子が分からなくて親は名乗れないわ。それにしても無事だったのは嬉しいけど、10年以上もどこに行ってたのよ。心配したんだから」

 

「……ゴメン」

 

「良いのよ。帰ってきてくれたならそれで。さあ、家に入りましょう。お帰り、一誠」

 

「……ただいま」

 

母に引っ張られ、家へと入る一誠。時間的に、父である兵藤一八は未だ仕事の最中の様だ。家の中には、見知らぬ少女がいるが、誠奈曰く妹らしい。一誠が行方不明になった後、産まれたとのことなので知らないのは当然だが、逆に彼女からすれば一誠は不審者以外の何者でもない。誠奈から教えられ、漸く昔から親に聞かされていた行方不明になった兄であると理解したらしい。未だ不安そうにオドオドと話しかけてくる。

 

「お兄……ちゃん?」

 

「まあ、そうなるらしいな。では、自己紹介と行くか。俺は兵藤一誠。今年で確か17かな?君は?」

 

「わ、私は兵藤八奈。14歳です」

 

「14……って事は俺が行方不明になってすぐ産まれたのか?」

 

「そうね。一誠が居なくなって、一年も経たない内に出産したの」

 

そんな他愛もないような事を話しながら、久し振りの家族との会話を噛み締める一誠。途中、父の一八も帰宅し久し振りに兵藤一家は揃ったのであった。

 

 

 

 

 

 




妹ちゃんは一誠が居なくなったことによるバタフライエフェクトの様なもんです。あと、こういう系に多いと思われる一誠の家族(特に兄弟)が転生者という展開はございません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

変身

この世界に戻って来てから、数日が経った。この数日間、一誠は世界を渡っていた十数年年ですっかり変わった駒王町を見て周り、何がどう変わったのかを理解し始めていた。昔頻繁に行っていた駄菓子屋が今はコンビニになっていたり、空き地だった場所に家が建っていたり、自分の記憶の中の駒王町と実際の駒王町との違いを修正しながら、彼は駒王町を歩き回る。そんな中、彼はこの世界にも人間以外の種族がいると知った。

 

「旨そうな人間だなぁ…」

 

と言うよりも、目の前にいる存在がそれを教えてくれたと言うべきか。蜘蛛の下半身と人間の上半身を持つその化け物を人間と言い張るには無理がある。今、一誠は廃墟の中にいた。理由は簡単で、十数年前は此処は廃墟では無かった為、懐かしく思った彼はその廃墟に入ったのである。その結果がこの化け物との対峙。見慣れてるとは言え、この世界にもこう言う存在がいると思うとうんざりしてくる。結局、自分の生まれた世界でも戦う事になるのかと。

 

「もう使わないと思ってたんだけどな」

 

「何を言っている?」

 

「教える必要はない。…変身!」

 

『KAMEN RIDE DARK DECADE』

 

ダークディケイドライバーを装着し、左腰辺りに出現した黒いホルダー通称ダークライドブッカーから一枚のカードを取り出し、ダークディケイドライバーに挿入し読み込ませる。この世界における初のダークディケイドへの変身だ。電子音と共に、数多の幻影が一誠へと融合する様に重なり一誠の姿が変わる。

 

「貴様、神器持ちだったのか!」

 

「神器?この世界にはそんなのがあるんだな」

 

「まあ良い!少し力を持ってるからと言って、所詮は人間だ!死ね!」

 

「おっと」

 

聞き慣れない言葉にこの世界特有の物かと納得しながら、突進して来た化け物を避ける。このまま戦っても良いのだが、折角の初変身なんだからとバックジャンプで大きく後退し、ダークライドブッカーから別のカードを取り出し、ダークディケイドライバーに挿入する

 

「お前には勿体無いけど、『王』の力を味わわせてやるよ」

 

『KAMEN RIDE OOO』

 

『タカ!トラ!バッタ!タ!ト!バ!タトバタ・ト・バ!』

 

変身したのは、最も欲深き『王』が初めて変身した三色のライダー、オーズタトバコンボ。一誠にとって『王』は二度と会いたくもない人間であるのは確かだが、それでもこの力を得られた事だけは彼に感謝しても良かった。それ程までに、オーズは使い易く様々な状況に対応できるライダーなのだ。

 

「さあ、来な!」

 

「図に乗るなよ人間め!」

 

振るわれた拳を蹴り上げ、ガラ空きの胴体に駆け出し跳び蹴りを放つ。呻き声を上げながら倒れ込む化け物を他所に、一誠は新しい黄色いカードを取り出し、ダークディケイドライバーに挿入する。

 

「これで決まりだ」

 

『FINAL ATTACK RIDE O O O OOO!』

 

「殺す!殺す!!」

 

「フッ…ハァ!」

 

怒りの形相で起き上がった化け物の横振りの一撃を変化したバッタレッグの跳躍で避け、タカヘッドで狙いを定めつつ空中に展開された三色のリングを1つずつ潜り抜け化け物に両足蹴りを叩き込む。タトバキック、それがこの技の名前であり、オーズの必殺技の1つである。これを食らった化け物は当たった瞬間爆発し消滅、一誠はゆっくりと地に立った。

 

「まったく強く無かったけど、こいつ以外にも化け物はいるんだろうなぁ。嫌になるぜ」

 

首を回しながら、こいつ以外化け物はいないと言い切れれば良いのだが、今までの経験上一体で終わるなんて事はあり得ない。何処かに隠れているのか、それとも人間社会に紛れ込んでいるのか。どちらかは分からないが害になるなら倒すのみだと結論付け変身を解除しようとした時である。

 

「━ッ!」

 

「ハァ!」

 

扉から入って来た誰かの一撃を腕を交差させて防ぐ。瞬時に後方へバックジャンプし距離を取り、その人物を見る。そこで一誠は内心舌打ちをした。視線の先、自分を攻撃したであろう白髪少女とその後ろの数人、人の形をしているとは言え先の一撃は重く少女の見た目から出せるものでは無い。ともなると、先の化け物の仲間の可能性もある。この状態のオーズで大勢を相手取るのは少し辛い、隙を見てフォームを変えようとダークライドブッカーに手を伸ばしつつ、構えを取る。

 

「さて、先の化け物のお仲間さんか?」

 

「…貴方こそそうなんじゃ無いんですか?」

 

「ハッ!冗談よしてくれよ。俺は降りかかる火の粉を払っただけ」

 

「それが本当なら神器を解いて下さい。そうすれば此方も手を出しません」

 

そう言われて馬鹿正直に解く奴なんていないだろうが、あえて一誠は変身を解除した。誠に忌々しい話だが、グリードがメダルに戻らない様にと1枚ずつ『王』に埋め込まれた異物、コアメダルは殆んどの攻撃を防いでくれる盾にもなる。相手が如何に強いかは分からないが、流石に平気だろうと考えた末の変身解除である。それでも不安はあったもの変身解除と同時に相手が構えを解いたのを見て安堵した。

 

「本当に解いてくれるとはな」

 

「嘘はつきませんよ。貴方からは嗅いだ事のない匂いがしたので不安でしたが、話が通じる様で良かったです」

 

「匂い?」

 

「…気にしないでください。それより、部長から話があるそうです」

 

「部長?」

 

「私よ。はじめまして謎の戦士さん?私は、リアス・グレモリー、以後お見知り置きを」

 

少女の後方から近付いてきた紅髪の少女、リアスはそう名乗ってきた。部長という事は何かの部活だろうかと思いながら、先の化け物を知っている事を考えると仮面ライダー部とかそんなんだろうか。そんな事を考えながらも、一誠は自己紹介を始めた。

 

「俺は一誠、兵藤一誠」

 

「兵藤一誠…10年以上もの間行方不明だったって言うあの兵藤一誠?」

 

「それで合ってる」

 

「10年以上もどこに居たのかとか気にはなるけど、一番気になるのはさっきの姿ね。明日は暇かしら?」

 

「ああ」

 

「なら、明日会えないかしら?駒王学園って分かる?そこに夕方頃来て欲しいのだけど」

 

「夕方…五時位か?」

 

「そうね」

 

学校にすら行っていないのだから、基本暇しかない一誠は頷いた。先の化け物等、此方としても聞きたい事が多々あるので、これは好都合であった。多少此方のことも話さないといけないが、この世界について知れるなら少し位話してもお釣りが来る。世界を渡る能力を持っているなど隠さねばならない事もあるが、それでも先の話を思い出すと聞かれるのはダークディケイドについてだろう。もっと言えばオーズの状態から直に変身を解除した為、オーズの事を話すだけでも済むかもしれない。

 

「じゃあ、明日の夕方にまた会いましょう?」

 

「ああ、明日な」

 

そう言葉を交わし、一誠は廃墟から出て行った。その際、話に参加してこなかった数人の内の1人から睨まれたが、それを気にするほど器が小さくない一誠は気付かないフリをし振り返ることもなく帰路に着いた。

 

 

 

 

 




先代オーズの世界
原作との相違点
・先代オーズが紫や橙のメダルが出来上がるまで全メダルの取り込みを行っていない(結局暴走はした)
・10枚揃ってメダルに戻られると厄介なので一枚ずつコアメダルを一誠に埋め込んだ(1枚ずつの為均衡が保たれ、辛うじてグリード化は避けられている)

先代オーズ
オーズとの相違点
・どうあがいても先代が知れなかったフォームには変身不可(タマシーやスーパータトバなど)
・メダジャリバー使用不可


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

悪魔

筆(?)が乗ったので投稿です


翌日、約束の時間に間に合う様に家を出で駒王学園の校門前に着いた所、昨日の白髪の少女が待っていた。

 

「よ、昨日ぶりだな?えーと…」

 

「塔城小猫です」

 

「小猫…小猫ね。よろしく。で、俺はどうすれば良いの?」

 

「こっちです。付いてきて下さい」

 

そう言って歩き始める小猫を追って行くと、辿りついたのは旧校舎であった。如何にも使われていなそうな雰囲気を醸し出しているが、小猫はそんな事は関係無いとばかりに中へと入っていった。隠れ家の様なものだろうかと考えながら、一誠も後を追う。

 

「ここです」

 

そう言われ、案内された部屋に入ると昨日の面々が揃っていた。リアスだけが見当たらないが、シャワーの音がする為十中八九彼女が浴びているのだろう。呼び出しといてそれはどうなんだと思いつつも、壁に背を預けリアスが出てくるまで待つ。

 

「ごめんなさいね。少し忙しくて、シャワーを浴びている暇がなかったの。座ってもらって大丈夫よ?」

 

髪を拭きながら現れたリアスは、そう一誠に言ってきた。この時間に浴びるという事はこの後も何かあると言うことかと考えながら、とりあえず近くのソファーに座ってから改めて自己紹介をする。

 

「改めまして、俺は兵藤一誠。そんなに友達が居たわけじゃないけど、親しい奴からはイッセーって呼ばれてる。よろしく」

 

「ええ、よろしくね。一誠君。私はリアス・グレモリー。この部活、オカルト研究部の部長をやっているわ。副部長はそっちの━」

 

「姫島朱乃と言います」

 

「あ、どうも」

 

ぺこりと頭を下げる朱乃に釣られて一誠も頭を下げる。次いで紹介されたのは先ほど本人から名前を聞いた小猫。羊羹を食べながら、目だけこっちに向けての挨拶だった。余程菓子が好きなのだろう。

 

「で、残りは男子2人か」

 

「ええ、木場祐斗と砂月兵次よ。兵次はつい先日うちの部活に入ったのよね」

 

「よろしくね、一誠君」

 

「おう、よろしく」

 

差し出された手を握り祐斗と挨拶を交わす。兵次の方は機嫌が悪いのか一誠を見向きもせず舌打ちをしながら何か考えに耽っている様だ。一通りの挨拶を終え、リアスの口から出た言葉は常人ならば混乱必須の事であった。

 

「まずは言っておきたい事があるのだけど、私たち悪魔なのよ」

 

「へぇ」

 

最も一誠は常人とはかけ離れた生活をしていたので、その程度では驚きもしないが。蝙蝠の様な羽を生やした面々は特になんのリアクションも起こさない一誠を不思議そうに眺めていた。

 

「えっと、驚いたりしないの?」

 

「いや、昨日の化け物に比べれば羽が生えた程度そんなに」

 

嘘である。世界を渡り、色々と見てきた一誠はこの程度では驚きはしないのは当然だが、それを話すと色々とややこしくなるのは目に見えてるので、昨日との化け物に比べてと言っておく。話を聞く限りは昨日の化け物も悪魔だったらしいが、何故こんなにも差があるのだろうか。それは後々聞くとして、彼は来るであろう質問を待った。

 

「私たち悪魔についてはこんなものね。それで、次は貴方が私たちに昨日の姿について教えてくれるのよね?」

 

「何が聞きたい?」

 

「まずは貴方の神器の名前かしら。出来れば見せてももらいたいわね。良いかしら?」

 

「それ位なら別に断る事もないしね。こいつはダークディケイドライバー、昨日の様に変身することが出来る代物だな」

 

取り出したダークディケイドライバーを見せながら、一誠はそれについての説明を開始する。無論、すべては話さないし、神器ではないという事を教える訳でもないが。そんな中、リアスは再び変身して見せてくれないかと聞いてくる。別に断る理由もないので、一誠は昨日と同じオーズのカードを取り出して、装着したダークディケイドライバーに挿入する。

 

『KAMEN RIDE OOO』

 

『タカ!トラ!バッタ!タ!ト!バ!タ・ト・バタ・ト・バ!』

 

「これで良いかな?」

 

「ええ、ありがとう。ちょっと観察させて頂戴ね」

 

初めてのダークディケイドを介さずの別ライダーへの直接変身だった為、若干不安だったがどうにか上手くいった様である。リアスは色々と観察している様なので、少し待ってから変身を解除する。彼女は何か納得した様に何度か頷いていた。

 

「なるほどね。私もそんなに神器を知ってる訳じゃないけど、珍しいタイプみたいね」

 

「そうか?」

 

「ええ、少なくとも私が知ってるものにそういうのは無いわね」

 

納得した様なそぶりを見せながら、神器じゃないから当たり前なんだよなと心の中で呟く。そんな時、リアスは何かを思いついた様に一誠に話しかけた。

 

「ねえ、兵藤一誠君。貴方、悪魔にならない?」

 

「はい?」

 

言ってる意味がよく分からず、そんな間抜けな返答になってしまった。リアスは一度咳払いし転生悪魔について説明を始めた。その話が出た一瞬、兵次の方から殺意が飛んできたが下手に反応するわけにもいかなかったので敢えて流し、リアスが目の前に置いたチェスの駒を見つめた。

 

「これは?」

 

「これがさっき言った悪魔の駒(イーヴィルピース)よ。残っているのは、『戦車』と『騎士』『僧侶』。私としては『戦車』か『騎士』が良いと思うのだけど、どう?」

 

「長生き出来るってのは魅力的だが、遠慮しとくよ。俺は人間として生きていたいしね」

 

「そう、残念ね。でも、気が変わったら言って頂戴、何時でも待ってるわ」

 

「気が変わったらね。多分ないと思うけど」

 

それでも監視はしたかったのか、それとも力を持つ一誠を手元に置いておきたかったのか、時折この部活に顔を出してくれないかと提案された。無理矢理悪魔にされそうになったら抵抗する気ではあったとは言えそれ位なら問題無い為それを軽く了承し、その後は部活動を始めるらしいので、一誠は邪魔にならない様に帰路に就くのであった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

堕天使と赤い奴

お待ち頂いていた皆様お待たせしました


それから数日後、一誠は公園のベンチに腰掛け今後どうするかを考えていた。と言うのも、仕方のないことだが彼の最終学歴は小学校である。世界を渡り知識があるとは言え、行方不明になったのは小学生になるより前、中学にすら通えていない一誠はバイトをすることが出来ず、だからと言って高校にも行けない彼は昼間から街をぶらつく位しかやることが無かった。だからこその将来への不安があるのである。

 

「あ、あの」

 

「ん?」

 

どうするかなぁと考えていると、突然背後から話しかけられた。英語ではあったが、喋れない訳ではないので、無視はせずに振り返るとそこには金髪のシスターがいた。手に地図の様なものを持っているのを見るに迷ったのであろう。最近出来た場所ならば案内は出来ないが、聞いたところ教会に行きたいらしい。十数年前は確かに運営していたが、今はどうか分からないと伝えると、シスターは迷ったような素振りを見せた後、一応行ってみたいと言った為、一誠はシスターをその教会へと案内する事にした。

 

「人の気配はするけど、やってはなさそうだね」

 

予想通りというべきか、教会は運営されてなかった。誰かがいる様な気配は感じるものの、教会だというのに訪れる人がいない時点で運営されているとは言えないだろう。ただ、そのシスターは教会内にいる誰かに用があったらしく礼を言って教会へと入って行こうとして何かを思い出したかの様に立ち止まり、一誠に向き直った。

 

「名前を名乗るのを忘れていました。私はアーシア・アルジェントと言います。後日、もしかしたらまた会うかもしれませんし名前を教えてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「ん?ああ、一誠だ。兵藤一誠」

 

「一誠さんと言うのですね。今は手持ちがないのでお礼が出来ませんけど、また会えたらその時にお礼をさせて頂きます」

 

「良いさ。礼が欲しかった訳じゃないし」

 

「そうですか。また会いましょう一誠さん。主のご加護があらんことを」

 

よくテレビで見る様な祈りのポーズをとるアーシアを見て本当にそんなポーズするんだなと思いながら、一誠も別れの言葉を言って教会から離れて行った。近いうちにまた会うだろうと、根拠のない確信を持ちながら。

 

     *

 

その数日後、実際に一誠は偶然街中でアーシアと出会っていた。一誠は妹である八奈の買い物の付き添いで近所のスーパーに来ていたのだが、その帰り道に困ったようにウロウロしている彼女を発見し、また何かあったのかと話しかけたのだ。

 

「どうした?何か困りごとでも」

 

「あ、一誠さん。いえ、これと言って困っている訳ではないのですが…」

 

「ちょっとお兄ちゃん!?」

 

突然八奈が驚いた様に叫びながら一誠の胸元を掴み顔を自身の顔の近くまで引き寄せる。余りにも突然だった為、特に対処出来なかった一誠は若干首を痛めながらも何だよと八奈に文句を言った。

 

「いや、何だよじゃなくて!知り合いみたいな雰囲気だけど、お兄ちゃんシスターさんと知り合いなの?」

 

「つい先日な。迷ってた所を目的の場所まで送っただけだが」

 

「でも、ここの教会って使われてないよ?」

 

「あーそれは案内した俺も現地で知ったけど、そこで誰かと会う予定だったらしい」

 

「あんな所で待ち合わせって、なんか怖いね」

 

一誠としては怖いより怪しいと思う感情の方が強く、怖いと言う八奈にそうか?と返してた後、一誠はアーシアに八奈の事を紹介した。

 

「始めまして。八奈です」

 

「アーシアと言います。よろしくお願いします」

 

挨拶する2人を見て、仲良くなれそうだと思う一誠。そんな一誠に思い出した様にアーシアが話しかけた。

 

「一誠さん。さっきは困り事はないって言ったんですけど、実は一つだけ」

 

「どうした?」

 

「実は、一誠さんに教会に案内してもらった翌日、恥ずかしながらまた迷ってしまってその時に案内してくれた人がいるんですけど、後にその人が悪魔だって分かって、それで私は良い悪魔もいると思える様になったんですけどそう思わない人もいてどうすればその人を納得させらるかって」

 

「あーそれはそうとう難しいんじゃないか?不可能に近いと言っても良いかもな。俺も俺の追っかけみたいな事してる奴がいてそいつにやめる様に言ったけど、いくら言っても聞いてくれなかったし」

 

「え!?お兄ちゃんストーカーされてるの!?

 

「いや、流石にもう追ってこないとは思うけど、あいつも大概だしなぁ」

 

世界を渡ってると度々ダークディケイドの力を知りたいとやらで突っかかって来ていた奴の顔を思い出しながら、きっと大丈夫と思い込む事にした一誠。そんな時であった。

 

「見つけたわよ。アーシア」

 

黒いカラスの様な羽を生やしたボンテージみたいな服装をした女性が降りて来た。リアス達が悪魔だとバラした時に見せて来た羽とは別物である事から、その女性は悪魔では無いと推測できる。

 

「いやです!もうあそこには戻りません!」

 

「って言ってるけど?」

 

「何貴方?私はアーシアとはしてるの。一般人は邪魔しないでもらえるかしら」

 

「無理矢理連れて行くなら邪魔くらいはしてやろうかと思ってね。どっち道俺らを殺すんだろ?」

 

「あら、察しが良いわね。見られた以上殺すのは当然でしょ?」

 

こう言う輩は何度か会ったことがある。勝手に巻き込んで理不尽に殺しにかかって来る面倒くさいタイプ。出来れば仮面ライダーである事は隠したい一誠としては1人の時の方が有難いのだが、今回は標的がアーシアであるためにそうはいかない。八奈に後で色々と話すことになるなと思いながら、一誠はダークディケイドライバーを装着した。

 

「!神器持ち!?」

 

「今更気づいても遅い!変身」

 

『KAMEN RIDE DARK DECADE』

 

その電子音と同時にドライバーから飛び出した複数枚のプレートが女性を弾き飛ばし、一誠はダークディケイドへと変身した。何が起きたのか飲み込みきれずに唖然とする2人を守る様に前に立つ一誠。

 

「え……な、え?」

 

「言いたい事はあるだろうが、それは後だ。下手に動くなよ」

 

状況を飲み込みきれずにいる八奈とアーシアを背に、一誠は女性と対峙する。

 

「人間の癖に堕天使である私に歯向かうなんて良い度胸じゃない!いくら神器持ちだからって調子に乗らないことね!」

 

女性は手元に光の槍を形成し、一誠へと投合する。それを一誠はダークライドブッカーをソードモードに変えて弾き、そのままガンモードに移行させ発砲、それを避けた隙を突くつもりだったのだがそう上手くはいかず放たれた弾丸は新たに作り出された光の槍に防がれてしまった。

 

「いずれ至高の堕天使になる私に、この程度で歯向かって来るなんてね」

 

「いずれって事は今はまだ普通って事だよな?堕天使さん。それに俺だって本気なんざ出してないさ」

 

「減らず口を!!」

 

激昂した堕天使は光の槍を2つ作り上げて、一誠へと斬りかかる。一誠もそれを迎え撃つべく再びソードモードに戻したダークライドブッカーで迫る光の槍を受け止めた。守る対象が真後ろにいる事もあり下手に動けないながらも堕天使と切り結び、僅かに大降りになったタイミングを見落とさず、蹴りを離し距離をあけさせる。一気に決めようとダークライドブッカーに手を伸ばしたその時、

 

「!チィ!!」

 

殺気を感じ取り、一誠はその方向から飛んできた赤い魔力弾を弾き飛ばした。すぐ様堕天使に気をつけながらその方向を向くと、そこに居たのは赤い鎧を纏った人型の何か。堕天使の仲間かそれとも別の勢力か。検討の付かない一誠は警戒しながらソイツが何をするのか観察していた。

 

「物語の……」

 

「は?」

 

「物語の邪魔をするな!!」

 

「どう言う意味だ!?」

 

意味不明な事を叫びながら一誠に攻撃を仕掛けて来た赤いソイツは、そのスリムな外見に見合う速度で一誠との距離を詰め拳を放った。ライドブッカーでそれを受け止め、蹴り上げを放つもソイツはバックステップを踏むそれを回避する。

 

「物語だなんだと意味不明な事を!」

 

「貴様が知る必要はない!!アーシアはここでその堕天使に連れて行かれる。そう言うストーリーなんだ!イレギュラーな貴様は邪魔するな!そもそも、貴様はなんなんだ」

 

言ってる事は相変わらず意味不明だが赤いソイツは強かった。錯覚かもしれないが、徐々に能力が上がっている様な印象も受けられる。ソイツが堕天使にさっさとアーシアを拐う様に言い、ソイツを捌ききれなかった一誠はアーシアを助けることは出来ず、アーシアは堕天使に拐われて行った。

 

「誰だか知らないけど、助かったわ。ほら行くわよアーシア」

 

「アーシア!!クソ!なんなんだお前は!」

 

「これで良いんだ!これこそが正しいストーリーだ!貴様にはわからんだろうがな」

 

「拐われるのが正しいわけないだろ!」

 

そう言って斬りつけるもソイツは跳躍してそれを避け、足早にこの場を去っていった。

 

「クソ!なんなんだあいつは」

 

悪態を吐きながら変身を解除した一誠を唖然と見つめる八奈。明らかに苛ついている表情だったが、八奈の方を向くと同時にソレは鳴りを潜め、一誠はいつもの調子で八奈にこう言った。

 

「一回家に帰ろうか。そこで色々話すよ。さっきの姿とか10年以上もの間、俺がどこで何してたのかとかね」

 

 

 

 

 

 

 




赤いのは皆さん予想は付くだろうけど彼です。原作至上主義なんでしょうかね?あ、因みに本来の禁手とは鎧の形が変わっています。本文でも書いてますけど、本来よりもスリムになってます。所謂暗躍用形態ってとこですかね。なんで一誠とまともにやり会えるかってのは乱入するまでに倍加能力使いまくったからです。
話は変わるんですけど、ダークジオウとか見てみたいと思う今日この頃。黒ってなんかカッコイイですよね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たなるライダー

「ーこれが俺が行方不明になってた間に体験した事だ」

 

自宅に帰った後、一誠の部屋で八奈は彼のこれまでを聞いて唖然とした。一誠が彼女に配慮して世界から弾き出されたとは言わず、気付いたら世界移動をしていたと嘘をついたとは言え、それ以外はほぼ事実を話したのだからこうなるのも仕方ないと言える。

 

「じゃあ、お兄ちゃんは正義の味方(仮面ライダー)って言う存在ってこと?」

 

「黒いけどな。まあ、そういう事だよ」

 

「そう……なんだ。でも、それのお陰でお兄ちゃんは帰って来れたんだよね?」

 

「ダークディケイドライバーを手に入れた時に世界を渡る力も手に入れたからな」

 

こんな感じにねと横に手を翳し、オーロラカーテンを展開しすぐ様消す。

 

「あれを通れば別の世界に行けるし、世界を渡らなくとも別の場所に行くことも出来る」

 

「便利だね。学校とか遅刻しそうになっても平気って事でしょ?」

 

「まぁ、そう言うことかな?」

 

学校に行けない一誠としてはその発想はなかったので、返答は若干疑問符の残る言い方になってしまった。

 

「ねえ、やっぱりお兄ちゃんは仮面ライダーとしてアーシアさんを助けに行くの?」

 

「行くさ。仮面ライダーってのもあるかもだが、何よりまず友達だからな。向こうはそう思ってなくても俺はそう思ってるし、なら助けなきゃね」

 

そう言って立ち上がり、部屋から出て行こうとする一誠。それを八奈が声をかけて止めた。

 

「私も何か手伝える事ないかな。な、なーんてあるわけないー」

 

「あるよ」

 

「ーえ?」

 

なんでもないことの様に言ってのけた一誠は、再びオーロラカーテンを展開しそこに手を突っ込み2つの物体を取り出した。懐中時計となにかのベルト、若干嫌なものを見る様な目付きになりながら一誠は八奈にそれを投げ渡した。突然投げ渡されたそれをなんとか受け取る八奈。

 

「これ、なに?」

 

「俺の所為で生まれたライダーが使っていた変身ベルトだよ」

 

「お兄ちゃんの所為でってどう言うこと?」

 

「さっき俺の追っかけをしてる奴がいるって言ったろ?そいつ曰く、世界の破壊者(ディケイド)の忘却された歴史。それがダークディケイドであり、忘却された故にダークディケイド自体には歴史が無かったらしいんだが、俺が見つけて旅をして本来存在しない歴史が出来上がってな。歪みが出たらしいんだ歴史そのものに。それが原因で生まれたらしい。とある魔王のいる世界に行った時にそれが形となって襲いかかってきたけど、俺とその魔王で倒して変身に必要な道具だけ念のため取っといたんだよ」

 

魔王が恐ろしく強くてさなんて笑いながら告げる一誠になんと反応したら良いかわからない八奈。とりあえず、ベルトと懐中時計の名称を聞いてみる事にした。

 

「ベルトはジクウドライバー、懐中時計みたいなのはケルンライドウォッチって言うんだけど、ライドウォッチには種類があって基本的にはケルンの部分に他のライダーの名前が入るんだと。魔王様が言ってたわ。俺としては別のライダーになる気はなかったから、使わなかったけど使い方は教わったから教えてやるよ」

 

相変わらず魔王というのが誰かわからないが、言われた通りにジクウドライバーを腰に巻き、ケルンライドウォッチを90度回転させスイッチを押し起動させる。

 

『ジクウドライバー』

 

『ケルン!』

 

喧しい音を発したそれを同じく音声を発したジクウドライバーの右側のスロットに差し込み、ドライバー上部にあるスイッチを押す。すると、ドライバー自体が傾き、八奈の背後に燃え盛り焼け落ちながらも反回転に動く時計が現れる。

 

「え?なにこれ!?」

 

背後に突然そんなものが浮かび上がった八奈は当然の様に驚きの声を上げる。一誠は世界を旅した経験上殆どのライダーの変身を見てきたので余り驚きはないが、八奈はパニック一歩手前と言ったところか。大丈夫だから安心しろと八奈に告げてから、一誠は最後の手順を教える。

 

「それでドライバー自体を回せば変身は完了だ。あ、変身って掛け声は忘れるなよ」

 

「ドライバーを回せばって……ええい、ままよ!変身!!」

 

半ばヤケクソ気味にそう叫び、八奈はドライバーを一回転させた。

 

『ライダータイム!仮面ライダーケルン!』

 

「身体が燃え始めたんだけど!?大丈夫なの?お兄ちゃん!」

 

そんな音がジクウドライバーから響き、八奈の身体が一瞬にして炎に包まれる。当然慌て続ける八奈を他所に、背後の燃え盛る時計から『ライダー』の文字が飛び出しそれが顔面にぶつかった瞬間、八奈を包んでいた炎は全て消え去り全く別の姿になった八奈がいた。

 

「え?え?え?」

 

「おめでとう。無事、変身出来たよ」

 

「あ、ありがとう?って違うよ!いきなり燃えるわ気づいたら変身完了してるわもうちょっと説明してよ!物凄いビックリしたんだよ!?」

 

「あーそれは悪かったけど、習うより慣れろって言葉があるだろ?」

 

流石に身体が燃えるなんてのは事前に知っておいて覚悟を持って挑みたかったと言う八奈を笑いながら見る一誠。彼としてはドッキリみたいなものだったので、想像通りの反応を示してくれた八奈に一応は謝罪したものの、あー面白かったなどと言う始末である。そんな彼に一言文句でも言ってやろうと息を吸い込んだあたりで、八奈はハッと何かを思い出した様に冷静になった。

 

「こんな事して遊んでる場合じゃ無かった!早くアーシアさんを助けに行かなきゃ」

 

「それもそうだな。じゃ行こうか」

 

そう言って一誠はオーロラカーテンを展開し、2人は一瞬にしてあの堕天使がいるであろう教会へと辿り着いた。着いたことを確認してから一誠はダークディケイドライバーを装着し変身する

 

「変身」

 

『KAMEN RIDE DARK DECADE』

 

変身完了した一誠は教会の扉が大きく開けられっぱなしな事に疑問を持った。誰かが先に来ているのだろうか。一体誰が?アーシアが連れ去られたのを知っているのは自分たちだけの筈なのに。

 

「一応、警戒しておくか」

 

そうボソリと呟いて、一誠は八奈と共に教会へと入っていった。

 

 




オリジナルありってタグ付けてるけど、ちゃんとオリジナルライダーってタグにした方がいいのだろうか。以下ケルンについて

仮面ライダーケルン
ダークディケイドの歴史が作られた事によって生まれた歪みから生まれた仮面ライダー。オーマジオウがいる世界に一誠が行った時に一誠に襲いかかるも、オーマジオウが気まぐれで一誠に手を貸した為あっけなく倒された。その後、一誠が変身アイテムを保管していたが八奈の手に渡る。モチーフは仮面ライダーコア。ケルンはコアのドイツ語読み。モチーフがモチーフだけにアナザーウォッチも使う事も出来る。変身音のテンポと容姿は皆様のイメージにお任せします。専用武器はないが代わりに炎を操れる。必殺音声は『タイムブレイク』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

介入者

「誰だ!」

 

教会に入るや否や、先に入ったのであろう人物が話しかけてきた。その人物に見覚えがあった一誠は咄嗟にオーズのライダーカードを出し、オーズへと変身した。

 

「確か木場だっけか?俺だよ」

 

『KAMEN RIDE OOO』

 

『タカ!トラ!バッタ!タ!ト!バ!タトバタ・ト・バ!』

 

「その姿、兵藤君かい?」

 

「ご名答。色々と姿が変わるんでな」

 

「本当に珍しい神器なんだね。所で其方は?」

 

「ああ、俺の妹だよ。俺に似た神器の持ち主でな」

 

「八奈です。よろしくお願いします」

 

「木場祐斗。よろしくね。八奈ちゃんも一誠に似たタイプの神器持ちなんだね」

 

一誠が世界を渡って手に入れた物である以上、この世界にそれについて当てはまる言葉はないのだが、一誠に合わせてそうと返しておく八奈。

 

「で、なんでお前らここに居るの?」

 

「ああ、実は兵次君がアーシアって子が連れ去られたから助けたいって言ってね。一誠君達は?」

 

「俺らも同じ。アーシアを助ける為だ。しかし、兵次の奴何処にいたんだ?」

 

「彼曰く見てることしかできなかったって言ってたから、偶々連れ去られる所を見たんじゃないかな。人1人抱えて飛んでるだろうから目立つだろうしね」

 

なんとなく違う気がするが、確証がない為それで納得しておくことにする一誠。次いで八奈がアーシアは何処かと木場に質問した。

 

「ああ、アーシアさんはそこの階段の先にいるよ。でも、少し前に一誠君と小猫ちゃんが入ったからもうそろそろ……あ、来たね」

 

「木場先輩何をって、一誠さんも居るじゃないですか。2人は分かるんですけど、貴方は?」

 

「あ、八奈です。一誠の妹の」

 

「そうですか。……私は小猫と言います」

 

恐らく隠してあったであろう地下への階段を指差す木場の説明が終わるかと言うタイミングで小猫がアーシアを抱えながら出てきた。2人が自己紹介をしてる中、アーシアが何故自分で歩かないのか、もっと言えば何故こんな状況で目を閉じているのかと疑問が湧いてくるが、死んでいるのだろうと彼は直感していた。確認のために木場に聞いてみると、彼は若干驚いた顔をしながら肯定した。八奈はそれを聞いて悲しそうだ。

 

「こんなことを言うのもなんだけど、一誠君よく気付いたね」

 

「まあ、伊達に10年以上も行方不明になってないとだけ言っておくよ。それで、なんでアーシアは死んだんだ?」

 

「実は、神器持ちは神器を抜き取られると死んでしまうんだ。そして、君たちもあった堕天使。彼女は多分アーシアさんの神器を抜き取って自分のものにしたんだと思う。合ってるかい?小猫ちゃん」

 

「はい。先輩があのエクソシストを引き受けてくれた後、私と兵次先輩は堕天使を追って地下に行きましたが地下にも多くのエクソシスト達がいたんです。1人1人はそんなに強くなかったんですが数が多くて助けられませんでした」

 

「じゃあ、あの堕天使は自分の為に他人を殺したって事!?」

 

信じられなさそうに八奈は言うが、一誠にとっては見慣れた事だ。その行為自体に対しては思う事はない。最も、友人の命を奪ったと言うことに関しては死で償わせても良いとは思っているが。

 

「それで、兵次の奴はその堕天使とやり合ってるのか?」

 

「そうですね。状況が状況だったので、私がアーシアさんを連れて来たわけです」

 

「なら、早く加勢に行かないとね」

 

「そうだな」

 

しかし、すぐ様助けに向かう必要はなくなった。誰かに吹っ飛ばされて来たであろう堕天使が隠れ階段から飛び出し、天井に激突したからだ。少し遅れて、堕天使を追う様に兵次が現れる。一誠はその際、彼の腕に展開されている赤い神器と思わしきものを見て、引っかかることがあったが、先に堕天使をどうにかせねばとそれは一旦置いておく事にした。

 

「一誠……来てたのか」

 

「まあな。目の前で誘拐されたんだ。助けにも来るさ」

 

「そうか。だが、手は出すな。あいつは、レイナーレは俺がやる」

 

俺の出番はなしかと思う大人しく一歩下がる一誠を見て満足そうにしながら、レイナーレを睨む兵次。相手はもうグロッキー状態だ。次の一撃で決まるだろう。

 

「私は至高のー」

 

「吹っ飛べクソ堕天使!」

 

羽を広げ逃走を図るレイナーレに素早く接近し、兵次渾身の一撃が叩き込まれるその瞬間、

 

「はーいストップー」

 

そんな気の抜けた声と共にあらゆるものが動きを止めた。そんな中で唯一動ける一誠は声のした方を見て、そして落胆した。長年一誠を追っかける少年がそこには居た。何でここまでと言う思いとやはり来たかと言う思いが一誠の中で渦巻く中、少年は楽しそうに笑った。

 

「分かっていたけど、世界から弾き出されて時間も何もかもが無くなった場所に行った君には効果ないみたいだね。ここは君が居た世界だからもしかしたらって思ったんだけどね」

 

「ツァイト、何しに来た?」

 

残念だなぁと微塵もそうは感じさせずに言うとツァイトに対し、一誠は警戒しながらそう聞いた。そして、その返答に返って来た言葉は、一誠の予想通りの言葉だった。

 

「何って僕は君……と言うよりダークディケイドについて知りたいだけだよ。まあ、それよりもまずは新しい仮面ライダーになった君の妹さんに挨拶しないとね」

 

「え、あれ?」

 

そう言って、ツァイトが手を向けると八奈だけが動き出した。不思議そうに止まっている辺りを見渡いる彼女に、ツァイトが声をかける。いきなり声をかけられた八奈は不審がり、一誠にツァイトの事を尋ねた。

 

「じゃあ、あれがお兄ちゃんのストーカー……!」

 

「まあ、そうなるな。で、今回お前は何しに俺らの前に現れたんだ?」

 

「新しいアナザーウォッチを作ってみたからさ。試してみたくなったんだよね」

 

そこで一誠はツァイトがゆっくりとレイナーレに近付いて居た事に気づいた。取り出したのは、ライドウォッチに似た何か。アナザーウォッチと呼ばれるソレを見た一誠は瞬時に動き出し、拳を振りかぶる。

 

「まあ、そりゃ妨害してくるよね。でも無駄だよ」

 

一誠の拳が当たるよりも早く、ツァイトはそのアナザーウォッチをレイナーレに向かって放り投げる。

 

『ライドプレイヤー……!』

 

低く野太い音声を発したアナザーウォッチは弧を描きレイナーレへと入っていった。面倒な事をしてくれたなと一誠はツァイトを睨み付ける。八奈はよく分かっていなかったが、先ほどの兄の慌てようから、何やら起ころうとしているのは理解できた。

 

「アナザーライダーはそれに対応した力じゃないと倒せないと聞いたんだが?」

 

「ディケイドはアンデッドを封印せずに倒したり、魔化魍を清めの音を使わずに倒せるんだ。君だってダークとは言えディケイドなんだから大丈夫でしょ」

 

「なら、俺から取った力返してくれない?」

 

「それは無理かな。返しちゃったらアナザーウォッチを作れなくなっちゃうし。まあ、危なくなったら助けてあげるよ」

 

これでねと言いながら、何時ぞや一誠からダークディケイドの力の一部を奪って作り出したアナザーダークディケイドウォッチを見せびらかしてくる。笑みを浮かべながらツァイトが指を鳴らすと、再び時間が動き始めた。

 

「な……!?」

 

時が動き出した事により、兵次の拳がレイナーレに突き刺さったが、レイナーレは異形の怪人ーアナザーライドプレイヤーへと変貌を遂げていた。何が起こったのか分からず、一瞬硬直した兵次は次の瞬間殴り飛ばされる。

 

「兵次君!?」

 

「一体何が……?」

 

吹っ飛ばされた兵次を心配して近づく木場と、いきなり姿が変わったレイナーレに警戒を高める小猫。一誠と八奈も小猫の横に並び立った。ここで、小猫がツァイトの存在に気付いた。相変わらず不気味に笑っているだけの彼に少しばかり恐怖を覚える。

 

「あの人は?」

 

「はは、俺の知り合いだよ。追っかけみたいなもんだ。ただ、迷惑しかかけて来ないがな。八奈、小猫行けるか?」

 

「うん。多分大丈夫」

 

「大丈夫です。木場先輩は兵次先輩をお願いします」

 

小猫の言葉に頷く木場。ただ、仮面ライダーである自分と八奈は良いとして、小猫に関しては不安を拭えない一誠だった。

 

 

 

 

 

 

 




ツァイト
一誠がまだ幼かった頃に一誠からダークディケイドの力を意図的に一部だけ奪ってアナザーダークディケイドウォッチを作り出した。時を止めることができるが、スウォルツに貰ったとかでは無く生まれ付きのもの。スウォルツ達とは違い1日2回だけしか使えないが意識事止める事ができる。その能力を買われてタイムジャッカーの一員になる筈だったが、ジオウ云々よりもダークディケイドの方が気になったのでそっちの追っかけにシフトした経歴を持つ。オーロラカーテンも使える。

アナザーダークディケイドウォッチ
一誠から奪い取ったダークディケイドの力の一部が封じられている。ライダーの名前さえ知っていればそのライダーのアナザーウォッチを作り出せる能力を持つ。ただ、この能力で作ったアナザーウォッチで変身しても本来のライダーの歴史が消える事はない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

騒動の終わり

「じゃ、頑張ってね」

 

そう言って、教会の壁に背を預けるツァイトを尻目に、一誠達は目の前のレイナーレ改め、アナザーライドプレイヤーと対峙する。初戦がこれとは八奈に悪い事をしたなと思いながら、一誠は牽制としてダークライドブッカーをガンモードに変更し発砲した。レイナーレはそれを拳を振るってかき消した。その隙を突き、八奈が接近戦を仕掛ける。振るった右腕は防がれたが、反撃が来る前に腹部に蹴りを放ち僅かに怯んだ所に頭突きをお見舞いし回し蹴りで後方に吹っ飛ばす。

 

「ん?」

 

「どうしました?兵藤さん」

 

「いや、ちょっとな」

 

そこで一誠は、今まで何度か別世界で戦ったアナザーライダーよりアナザーライドプレイヤーは弱いのではないかと疑問を抱いた。そして、アナザーライドプレイヤーの胸部を見てそれは確信に変わった。右胸に小さく描かれたレベル1の文字。ライドプレイヤーが存在した世界のライダー達にはレベルがあり、それが高ければ高いほど強かった。もし、そのルールがアナザーライドプレイヤーにも適応されているのであれば、今の彼女はゲームでいう所の雑魚敵に過ぎない。そう結論付けた一誠は万が一にもレベルアップさせない様に、別のライダーのカードを取り出した。

 

「ゲームにはゲームってね」

 

『FORM RIDE PARA-DX Fighter Gamer Level50』

 

『デュアルアップ!Explosion Hit!KNOCK OUT FIGHTER!』

 

「また姿が……」

 

「ま、こう言うものだと受け入れてくれ」

 

パラドクスファイターゲーマーレベル50に変身した一誠は、既に八奈がほぼ滅多打ちにしているにも関わらずそこに加勢した。僅かだが、八奈の攻撃を避け反撃を繰り出していたアナザーライドプレイヤーも流石にどうしようもなくなったのか烏の様な羽を広げ、上空への退避を図る。しかし、教会に備え付けられてた長椅子が狙ったかの様に飛来しアナザーライドプレイヤーを怯ませた。その隙に跳躍した一誠の拳が、アナザーライドプレイヤーの腹部に突き刺さり地面に叩き落とす。。長椅子を投げたと思われる小猫の方を八奈が驚いた様に振り返ると、そこには次の長椅子を投げようと持ち上げている小猫の姿があった。

 

「何処からそんな力が?」

 

「後で話します。今は堕天使を倒しましょう」

 

「そ、そうだね。ねえ、お兄ちゃん?必殺技とかってあるの?」

 

「ライドウォッチのボタンを押してベルト回して、蹴りやらなんやらすればできるよ」

 

「あ、そうなんだ。えっと、こうかな?」

 

『フィニッシュターイム!タイムブレーイク!!』

 

ボクサーの様にジャブとストレートを繰り出す一誠の言葉通りにベルトを操作すると、ベルトからそんな音が鳴り響いた。それを見て、一誠もまた、別のカードをダークディケイドライバーに読み込ませる。

 

『FINAL ATTACK RIDE PARA-DX!』

 

『ノックアウト!クリティカルスマッシュ!!』

 

「八奈、合わせろ!」

 

「あ、うん!」

 

一誠のアッパーカットで打ち上げられたアナザーライドプレイヤーに八奈の蹴りが炸裂し、教会の壁にめり込んだ所で再び一誠が最後の一撃を放つ。壁を打ち破り、後方へと吹っ飛んで行ったアナザーライドプレイヤーだったが、完全に見えなくなる前にアナザーライドプレイヤーウォッチが排出される。しかし、一誠がそれを取るよりも早く、それを見越していたかの様にツァイトがそれを取ってしまった。

 

「お見事。景品としてコレあげるよ」

 

そう言って投げ渡されたのは、先のアナザーライドプレイヤーウォッチとは違うライドウォッチと呼ばれるものだった。こうして偶に打ち倒した景品としてどうやって入手したのか分からない入手経路不明のライドウォッチを渡してくるので、実は一誠は少しばかりライドウォッチを持っていたりする。いつもの様に展開したオーロラカーテンにそれを投げ込みながら、ツァイトを見る。

 

「なんでお前はこんなにライドウォッチを持ってるんだ?それに俺は使えないし、渡しても意味ないんじゃないか?」

 

「それは企業秘密ってやつかな。まあ、使えないのは知ってたけど、本当に景品のつもりで渡してたからあんまりその辺は考えてなかったんだよね。あ、でもジクウドライバーでは使えるんだし、妹さんは使えるんじゃない?ついでにアナザーウォッチも使えるかどうか試しといてよ」

 

これでさと言って、先のアナザーライドプレイヤーウォッチとは別のアナザーウォッチを投げ渡し、ツァイトは自身が展開したオーロラカーテンの中へ消えていった。一誠に関しては追う事も出来るが、それでは話がややこしくなるだろうと、この場で追うのはやめておいた。

 

「悪いな。面倒事に巻き込んじまって」

 

向き直りそう謝罪する一誠に、小猫と木場は特に何も文句は返さなかった。兵次は気絶しているが、起きていたら文句の一言位飛んできただろうと考えていると、教会の入り口から誰かが入ってきた。

 

「もう終わってたみたいね。それで、貴方達は何者かしら?小猫達を手伝ってくれたとは思うのだけど……もしかして、一誠君の関係者かしら?」

 

「いや、俺が一誠だよ。色々と姿が変わるもんでな。こっちは俺の妹だ」

 

「八奈です。よろしくお願いします」

 

変身を解除しながら言う一誠と、言ってから手間取りつつもなんとか変身を解除できた八奈。そんな2人を見てから、リアスは気絶している兵次へと視線を移した。

 

「これはあの堕天使の仕業かしら?」

 

「いや、俺の知り合いのせいだな。そいつがいなけりゃ兵次はちゃんと堕天使を倒せてたよ」

 

「そう。面倒な知り合いがいるのね」

 

「部長。持って来ましたわ」

 

「ご苦労様」

 

アナザーライドプレイヤーウォッチが抜けた事により元に戻ったレイナーレを朱乃が引きずる様に連れて来た。一誠としてはアーシアの方が気になるので、それについて聞いてみた所悪魔に転生する形で生き返ることができるらしい。

 

「じゃあ、アーシアはそっちに任せるわ。で、こいつはどうするの?」

 

「後片付けは私がしておくから、一誠君は気にしなくていいわ。それより、明日会えるかしら?貴方がさっき言ってた貴方の知り合いについてとか聞きたい事が出来たから」

 

「ああ、いいけど妹は学校があるからな。部活はやってないらしいが、それでも夕方辺りで頼む。この前の場所か?」

 

「それなら大丈夫よ。私達も、普通に勉強は受けてる訳だしどっち道その位の時間になると思うわ。場所はそれでお願いできるかしら」

 

「八奈はそれで良いか?」

 

「明日は暇だったから大丈夫だよ。お兄ちゃん」

 

アーシアの事はリアス達に任せて、一誠達は一足先に帰る事になった。リアス達が見えなくなった辺りでオーロラカーテンを展開し、家へと移動する。八奈は風呂に入ると言って風呂場へと向かったが、一誠は明日何処まで話すかと思考を巡らせる。ツァイトについて説明しながら、オーロラカーテン及び世界を渡れる事は隠さなくてはならない。八奈と言うかジクウドライバーについては拾ったとでも、貰ったとでも言えるから大丈夫だが。

 

「いっそ全部本当のことでも言うか?」

 

困った様に呟き、一誠は明日話す内容を考え始めた。

 

     *

 

「そう言う事だったのね」

 

「ああ」

 

翌日、一誠と八奈は約束通り先日の旧校舎へとやって来ていた。結局、殆ど真実を話してしまった。嘘吐きまくっていつかボロを出して疑われるよりも、真実を話してしまった方が良い友好関係を築けるだろう。ついた嘘といえば、『世界から弾き出された』を『気付いたら別の世界にいた』にした位か。

 

「大変だったんだね。一誠君」

 

木場の言葉に別にそうでもないと返す。大変だったのは事実だが、それ以上に得たものはある。それに、なんやかんやありはしたものの旅自体は楽しかったのも事実なのだ。

 

「さて、こっちの話はこれくらいか。で、アーシアはどうなった?兵次もだが、此処には居ないからな。本人に聞こうにも居なければ聞けないし」

 

「それ!私も気になってたんですよ!グレモリー先輩」

 

「八奈はまだうちの学園に入学してないから、先輩は要らないわ。それで、アーシアだったわね。あの子は昨日も言ったけど悪魔として生き返ったわ。因みに使った駒は『僧侶』ね」

 

「駒?」

 

「ああ、八奈は前回居なかったものね。良いわ、教えてあげる。ついでにこの前は説明しなかった各駒の特性もね」

 

前回いなかった八奈が疑問符を浮かべると、リアスはいつかと同じように悪魔の駒(イーヴィルピース)について説明を始めた。その最中八奈が悪魔にならないかと誘われたが、一誠がなったらなると断っていた。因みに兵次とアーシアが此処に居ないのは悪魔としての活動で遅れてるかららしい。

 

「じゃあ、俺らはもう帰るとするわ。八奈には仮面ライダーの力に慣れて欲しいし」

 

「え、慣れて欲しいって何するの?」

 

「オーロラカーテンで広めの所に移動して、そこで俺と戦うんだよ。つってもライドウォッチの使い方とかだけどな。それに、あいつの言いなりになるのは癪だが、アナザーウォッチが使えるかってのも試す良い機会だろ」

 

アナザーライドプレイヤーは弱かったから良いものの、今後そうとは限らない。ならば、少しでも経験を積んだ方がいいだろうと言うのが一誠の考えだ。それに、ジクウドライバーを使ってる以上、上手くいけばジオウ達と同じ様にウォッチを継承出来るかもしれない。一誠と戦った時は、オーマジオウが加勢した事もあり余りにも呆気なく倒されたケルンは未知の部分が多い。

 

「まあ、まずは八奈に仮面ライダーを続ける意思があるかだけどな」

 

「私?勿論あるよ。お兄ちゃんが仮面ライダーをやってるうちはね」

 

一誠の質問にそう返答する八奈。ならば早速とばかりに一誠はオーロラカーテンを展開し、何処か開けた場所へ移動するのだった。

 

 

 

 




エグゼイド関連のフォームライドってレベルまで表記した方がいいんですかね?一応本編では表記しましたけど。以下、アナザーライドプレイヤーの性能

アナザーライドプレイヤー
外見はライドプレイヤーを歪めた様な姿。バグスターに倒されるだけの雑魚キャラだった本編とは真逆の自身をRPGの主人公とした能力を持つ。人間や動物等を殺す事で経験値を得る事ができ、それによるレベルアップとレベルアップによる新たな能力の取得ができる。変身者が人間だろうが人外だろうが変身した直後のレベルは1個定。レベルが上がれば上がる程強くなるが、逆に言えばレベルが低ければ弱いので、経験値を稼ぐ暇のなかった本編のアナザーライドプレイヤーは言わば主人公がいきなりボスに挑んだ様な状態であり、勝てるはずが無かった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。