ステイタス上がらないけどスキルがチートだから問題ないよね!……多分 (アステカのキャスター)
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はじめてのおんけい
面白半分で書いてみました!!評価してくれると嬉しいです!では行こう!気まぐれ投稿だよ!!
ねえ知ってる?
この世界にはチートと呼ばれる部類があるんだよ?(by偽豆しば)
例えるなら早熟するスキルとかレベルを一時的に上げる魔法とか……何それ欲しいと思うものがある。
ぶっちゃけ欲しいですハイ。
そう思ってオラリオに来た15歳独身童貞、因みにまだ成長期だから背は伸びる……筈だ!(希望)
否!そんなことはどうでもいい!神が娯楽に飢えているように人間だって娯楽に飢えている!世界にはまだまだ楽しい物語が沢山ある筈だ!俺はそれを見届けるためにオラリオの地に足を踏み入れたのさ!ワッハッハ!
とか言っているうちに3週間たった。
因みに身長のせいか完全に門前払い、あと動機が不純とか言われた。なにおうっ!一攫千金やハーレムを目指している冒険者だっているだろうっ!俺だって、俺だって別に冒険者やってもいいじゃないか!(血涙)
とか言ってもステイタス無いと死にます。1階層ならまだしも深く潜れないし、けど神様見つからないとか無理くね?何これイジメ?神さまのイタズラなの?畜生恨むぞ神サマ!!いや恩恵は欲しいけども!!
「あ……ら…ら………?」
3週間経ち、いよいよ金が尽きた俺は路上で餓死寸前でぶっ倒れていた。何たる不運、ゲーム開始前にゲームオーバーとか笑えない。スタート地点から俺は間違えていたのだ。
結論 : 神様に出会えるのも……運ゲーだった。
ガクリッ……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……っ、ぐ――――――――」
身体が、とてつもなく重い。喉がカラカラに渇く。まるでベッドに縛り付けられているような圧を、身体中に感じていた。
「おや、起きたかね?」
「っ、あ?」
身体にかかる圧に、全身全霊で逆らいながら首だけを横に向けると、そこに端麗な顔立ちの青年がいた。身に纏う灰色の法衣ローブ、群青色の髪を伸ばし、にこやかな顔立ち、だけどその整い過ぎた顔立ちは、ともすれば、人間では為しえぬもののようにも感じた。
「おぬしはかれこれ一週間眠っておったのだ。栄養失調に過労、何か飲むかね? 食事であればもう少し待ってもらいたいが」
「一週、間?」
その言葉に思わず寝台ベッドから飛び起きようとすると、バランスが上手く取れず、転ぶ。注射器で栄養剤が打たれていたのだろう。腕や足は少し痩せていた。
「――――――生きてる。助けてもらったって感じか。ありがとうございます」
「よい。私も路上で死にかけていた子供を見捨てるなんて酷な事は出来なくてな。助かって良かった」
「いやホントありがとうございます」
「まあ、何にせよ、今は身体を休めることだ。食事や治療は私が提供し――」
「…………ミアハ様?」
そう言って隣に座り込んだ少女は、どこか茫洋とした印象で、どうにも内心がつかみづらい感じだった。
「……それで、貴方はどこの『ファミリア』? 連絡がつくようなら、治療費をお願いしたい……」
「………………」
困った。非常に困った。この質問には心底困った。ファミリアどころか文無しで瀕死(餓死)寸前の俺を治療してもらったので、治療費は何が何でも支払いたいが、無職かつ身元不明の自分には支払う当てなどない。答えようもなく、言葉に詰まっている。
「いや、ナァーザ。この者は何処の『ファミリア』にも属しておらぬ、いわば流れ者なのだ。当然支払う当てもないようだし、今回は請求することも――」
「――――ミアハ様?」
彼女の発言で、気温が一気に下がった気がした。
「ウチは施薬院のファミリア。対価をもらうのは当然……」
「しかしだな、金銭を所持しておらぬのだぞ?」
「……そうやって、皆に良い顔して回復薬ポーションを配りまくるから、ウチは貧乏……」
「いや、そんなことは無い。配るときには『今後ともご贔屓に』と言って回っておる」
「…………それでお客が来たことがない……」
そんな感じで、犬耳の少女が延々と目の前の神様への愚痴を暴露していったが、ある程度のところで、提案を出させてもらった。
「待てよ……?今は確かにお金がない。それは事実だ。なら取引しないか?」
「取引?文無しの貴方が?」
「そう、文無しの俺が出せるもの、それは労働力だ。見た感じ今この店は寂れて閑古鳥が鳴いている。質は悪くなさそうなのに神様のご厚意が財政を傾かせているのかわからないけど……」
ミアハ様に言葉が突き刺さる。まあ財政が悪化している中で優しさは更に悪化させる。ファミリアの財政、いやこのお店自体が借金を背負っていると見える。
「そこで提案だ。因みに聞くけどこのファミリアは貴女以外の団員は居るか?」
「居ない。零細ファミリアな上に、私のせいで借金抱えている」
「成る程、更に店の経営は傾いている。崖っぷちに立たされてるって訳だ」
「ッ……それが何?哀れだとも言いたいの?」
「ああっとごめん。いやいや単に現状確認さ。俺だって何も知らない所に自分を売り込むのはごめんだしね」
「売り込む……?」
「ああ、俺の出せる対価は1つ、労働力だ。だからこそ俺は貴方に頼みたい」
俺はミアハ様の前に跪いて懇願する。どちらにせよ俺を救ってくれた善神だ。なら俺の人生を捧げる価値はあるだろう。さっきまでとはおちゃらけた口調から一転して真剣な眼差しで目の前の神を見た。
「神、ミアハ様。俺をこのファミリアに入れてくれませんか?」
この時ほど、俺は緊張した事は無かっただろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「という訳で!新しく【ミアハ・ファミリア】の団員になりました!トワ・クラヴィウスです!よろしくナァーザ団長!」
「ナァーザでいい。それよりトワは冒険者になるの?」
「ああ、先ずは借金返済とこの店の売り上げを伸ばすことから始めようか。ミアハ様に恩恵を授からないと話は進まないし」
冒険者になるには神様の恩恵が必要らしい。
それがステイタス。スキルや魔法など色々あるが、どんなものでも欲しい。なんせ冒険者になる事が出来ればまだ見ぬ世界もあるだろう。ならば!俺はどんなものでもバッチコイ!!
トワ・クラヴィウス
力 :I0
耐久:I0
器用:I0
俊敏:I0
魔力:I0
≪魔法≫
【
・1段階回復魔法
・状態異常・呪詛の解除
・魔法範囲内にいる人間の傷の完全修復
詠唱『全ての毒あるもの、害あるものを断ち、我が力の限り、人々の幸福を導かん』
【
・2段階回復魔法
・回復持続状態を付与
・状態異常・呪詛の無効化
・魂が解離していない限り蘇生が可能
『冥府の神よ見るがいい、貴様らの役目はもう終わりだ。人は死を克服した。我が命ある限り、人々の幸福を砕かせはしない』
≪スキル≫
【
・ステイタスが上がらない
・スキル欄・魔法スロットが無限になる。
・羨望すればするほどスキルの獲得率が上昇する。
・羨望すればするほど魔法の獲得率が上昇する。
・見たい相手のステイタス閲覧権。
【
・対象とした人物とステイタスを同列にする。
・ステイタスを把握していなければ発動不可。
・発動時間地上は無制限、ダンジョン内は2日
「ファッ!!?」
初めてのステイタスを見た瞬間思わず吹き出した。
魔法が!魔法があるよ!ありがとうございます!
じゃなくて!何だこのスキル!?
【
しかもステイタス閲覧権ってアレか?鑑定みたいな?そんなのアリかよ!?(自分の才能に身震い)
あと【
夢にまで見たチート!ありがとうございます!
いやいや待て待て待てステイ!!
これってつまり『ぼくのかんがえたさいきょうのれべるいち(笑)』になれますってことだよね?絶対最初のスキルが原因だよね!!
てか魔法も同じく、死にたくないからと言う事を羨望したから手に入れたっぽいよなぁ?つまり
スキルが最初に刻まれたからこそ魔法がそれについてきたって感じだな!浅ましく生きて来た甲斐があったぜ!
いやチートだわこれ……
誰だよチートが欲しいとか言った奴!俺でしたすいませんでした。ミアハ様も思わずにっこり(してません)。驚愕しながらも冒険者になる方法と魔法について教えてくれた。しかも懇切丁寧にだ。俺の事情を聞かずにだ。
『ヤダ女の子だったら惚れちゃう♡』とか思った瞬間ナァーザさんから殺気が出ていたヤバイ死ぬ(畏怖)
因みに回復魔法に関しては同業者の【ディアンケヒト・ファミリア】に匹敵するらしい。何それ超便利。スキルを見るに英雄の才能が少しあったらしいのか?まあ知らないけど……
神の改造無しでこれはマジパネェ。今日から俺の事はビーターと呼ぶがいい!!ふはははは!
いや本当どうしようこれ………
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はじめてのぼうけん
評価と感想書いてくれると嬉しいです!では行こう!
3週間前、俺は冒険者になりたいとギルドを訪ねたはいいがファミリアに入っていないと冒険者になれませんと門前払いされた俺。あの時は色々無知な故かハーフエルフの職員にこっ酷く怒られてそれを宥めるピンクの髪をしたヒューマンの職員により救出された。ホントありがとう。
いやーあの時本当怖かったなー(涙目)
なんせ階級主みたいに見えたもん(恐怖)
いやマジでマジで死にかけたからね?死にかけたからね?
大事なので2回言いました。
説教で思わず人を殺せるんじゃないかってくらい怖かったです。無知のまま冒険者にならない!って言われて引き下がったけど……
そんな辛い過去はもう無いのさ!やっとファミリアに入れたんだから!!キャフォウ!!あれ?なんか説教魔から殺気が……
「3週間ぶりミィシャさん。やっとファミリアに入れました」
「おおー!3週間前は恩恵無しで冒険者になりたいとか言ってた君にもついに」
「うぐっ……その節はご迷惑をおかけしました」
「いや、気にしなくても良いよ……それで、今日は冒険者登録でいいんだよね?」
笑顔を浮かべて対応してくれるミィシャさん。
良い人だなぁ、この人。思わずお母さんと呼んでしまいそう。
「はい。ミアハ様がファミリアに加入してくれたので冒険者登録に来ました」
「もう一度聞くけど本当に冒険者になる気? 一応命の危険だってあるんだよ?」
『オマエみたいなチビっこで冒険者になるわけ?』なんて喧嘩を吹っ掛けてきてる訳じゃ無く『大丈夫?危険だよ』と此方を心配しての言葉だろう。まあ、俺の年齢はバリバリ15歳だしね。誤解されているかもしれないけど大丈夫。問題ない。
「なります。因みに俺ヒューマンでスキルが訳ありなんで色々迷惑かけると思うんでそこんところよろしくです☆」
「んんっ?」
お茶目かつ不穏な台詞を冗談だと聞き流したミィシャは恐らくここで聞き流したのが間違いだった。
ミィシャはのちに語る。
この子は世界有数のトラブルメーカーだったと……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「〜〜〜〜♪」
気がつけば俺は十階層に来ていた。十階層にはオークやインプ、ハードアーマード、シルバーバッグなど大型のモンスターが大量にいる。出現頻度はそれ程でも無いけど、初めての冒険者デビューに鼻歌混じりにナイフを振るうとモンスターは消滅して魔石を残していった。
「やっぱあのスキルが強いなぁ。人のステイタスを
そう、今俺がやっているのは他者のステイタスの
【ガネーシャ・ファミリア】所属ハシャーナ・ドルリアって人のステイタスを確認した後、実際に使えるか試してみた。
なんとびっくり。買ったリンゴが握り潰せました!勿体無かったけど!いやマジでちょっと人間辞めてるよ冒険者って……
「ただ、やっぱり肉体との
技術云々は正直言って無理だ。Level1.2ならまだしもLevel4になれば乗った事無いのに馬を乗りこなせとか言ってるのと同じ、正直なところ前後左右に飛んで躱す事しか出来ない。敵の目の前で回避が出来ないのだ。
こればかりは慣らしてから経験を積み、レベルに合わせて技術を習得していくしか無い。実際永遠のLevel1には時間に余裕がある。
いそがなくてもいいじゃないか。にんげんだもの。(byトワ)
『ブモォオオオオオオオオ!!』
「?」
あっれー?今何か牛みたいな咆哮を上げたモンスターの鳴き声が聞こえたような……。しかも下層から上層へ上がってきてるような気がするんですけどー。気のせいなら今日の俺の探索は終了しまーー。
『ブモォオオオオオオオオ!!』
「気のせいじゃなかったー!」
ですよねー!ダンジョンには何があるか分からない!
そんな気はしてた!そんな気はしていたぜ!ありがとう5秒前の俺の直感!マジで後で恨む!
「うっし!やってやりますか!」
そう言った俺は助走を付けて目の前の牛のモンスター目掛けて斬りかかった。しかし刃が体表に当たった瞬間、バキッと嫌な音がナイフから聞こえた。
「あっ、ああああああ!支給品のナイフがっ!?」
俺が冒険者になることを支援してミアハ様が出してくれたなけなしの金で買ったナイフが砕け散った。
畜生!初心者セットの防具要らないからナイフだけ売ってくれとケチ臭く値切って買った3000ヴァリスのナイフが粉々になった。貧乏なファミリアからしたら3000ヴァリスは高いんだぞぅ!弁償しやがれ!!
『ブモォオオオオオオオオ!!』
「とりあえず、ナイフ分お前の魔石で払え!!」
右手のアッパーで牛のモンスターの顎を砕くと魔石を残して消えていった。ありっ?呆気なかったな?Level2カテゴリーのモンスターだったの?だったらナイフ使わなければよかった……。グスン。
「ち、畜生……頑張って値切ったナイフが無残な姿に……支給品で性能あんまし良くなくても勇気を出して買った初めてのナイフなのに……ありがとう……さよなら支給品のナイフ」
「あ、あの〜大丈夫ですか?」
膝ついて地味に悲しんでいると何か山吹色の髪をしたエルフさんに声を掛けられた。
知ってるかい?俺は可愛いものが大好きだ!目の前のエルフ娘は可愛いし眼福だ!
「大丈夫大丈夫。ちょっと頑張ってくれた支給品のナイフに悲しんでただけだから。よくよく考えたら10階層までよく持ってくれたよなぁ。ホントありがとう、そして安らかにお眠り」
「いや支給品のナイフじゃないですか!オーダーメイドならまだしも支給品のナイフでそこまで!?」
「馬鹿野郎!貧乏ファミリアにとって、支給品のナイフでも高いんだよ!ナイフ術やってみようかなって思い付きで買ったあのナイフには 1日と言えど愛着があったんだよ!」
「あっ、はい」
ありがとう、3000ヴァリスの支給品のナイフ。君の事は忘れない。
まあそれはさておき、さっきの牛のモンスターだ。切り替えの早い男?いいじゃないかまた新しいナイフを使えるんだから。 1日しか持たなかったけど。
「あっ、ツノ落ちてる。ドロップアイテムだ」
「切り替え早いですね……あの、ミノタウロスがここにきたの私達の不手際だったので……その、すみません」
「………」
「………」
「可愛いから許す」
「そんな理由で!?」
はっ!?口に出てしまっていた!
いや可愛いは正義だし許す!可愛いし!実際に怪我負ってるわけでもないしね!
と気持ちは昂ぶっているが、真面目に答える。流石にふざけた状態で誤魔化しているように見えるのも嫌だし。
「まあ、怪我した訳でもないから心配しなくていいよ。というか、俺に構ってていいの?他のミノタウロスが上層に逃げてるんじゃないか?」
「はっ!?そ、そうでしたすみません!私もう行きます!」
「気をつけてねー可愛いらしい妖精さん」
急いで上層に向かうエルフの娘に手を振って送り出す俺。
思ったことが口に出てしまう癖、なんとか治そうかなぁ?
「〜〜〜〜〜〜♪」
それはともかく、あんな美少女に出会えたのだ。俺的に今日は素晴らしい日だと言う確信があった。ナァーザさんも笑えば美少女なんだけどねぇ。
鼻歌を歌いながらもこの後めちゃくちゃモンスターを倒した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「10階層ぉぉおおお!?冒険者になったの今日だよね!?パーティー組んだとかじゃなくて!?」
「うん。という訳で換金方法教えて♡」
「♡つけても説明しないと納得できないよ!?えっ!?もしかしてステイタス偽ってる!?」
「いやいや、諸事情により俺は10階層まで行けるんですよ。まあそんな説明じゃ納得できないですよね?まあ知ったこっちゃないので換金方法教えて♡」
「え、エイナ〜〜!!」
「ちょっ!?助けを求める人チェンジして!」
あの人可愛いけどおっかないし!!おのれ策士ミィシャめ!中々粋な事をしてくれる(白目)
しかも時既に遅し。書類整理をやっていたエイナさんに泣きつくミィシャさんが事情を話すと笑顔でこっそり逃げようとした俺の肩を掴み笑顔のまま……
「ト・ワ・君。すこーーーーーーーし“お話”しようか………!」
有無を言わせぬ迫力で別室に連れて行かれた。
別室の椅子に座り、エイナさんと向かい合う。
明らかに機嫌が悪そうなエイナさんに対し、僕はビクビクしながら尋ねる。
エイナさんは笑顔だが、目が笑っていない。
「トワ君、私ね…………ミィシャから面白い話を聞いたんだ♪」
「僕が話したことなんでね……えへへ?」
思わず一人称が僕になってしまった俺。何だろう?美少女の笑顔は大好きだ。美少女ではあるエイナさんの顔は笑顔で、声も音符がつくほど軽やかそうなのに、何故か冷や汗が止まらない。
エイナさんは俺の肩にポンッと手を置き、
「さあ、どういう事か説明してくれないかなぁ………!?」
こめかみに怒りの筋を浮かび上がらせ、ヒクついた笑顔で迫ってきた。あれ?これ3週間前のトラウマが鮮明にフラッシュバックしてきた。
そうか、今日が命日か(錯乱)
「ひぃぃぃぃぃぃっ!!」
情けなく声を上げた。
でも、エイナさんは容赦してくれない。
「トワ君。君、冒険者登録したの今日だよね?」
「は、はい…………」
「その時にLv.1って報告したよね?」
「い、イエッサー………」
「じゃあどうして今日冒険者登録した新米冒険者の君が10階層まで到達できるのか教えて欲しいなぁ………!?」
「ひえぇぇぇぇぇっ!」
エイナさんは俺が怯えるほどの威圧感を持って俺に迫っていたけど、突然その威圧感を消し、身なりを正した。あれ?助かったのか?
いやー雷雲が去って雨雲に変わったようだよかった!ずぶ濡れることに変わりはないけど!!
「トワ君」
「は、はい?」
今までとは違う澄んだ声。
「このままだと君、Lvの虚偽報告で迷宮の探索を禁止することになるよ?」
「なっ、なんですとぅ………!」
「疑いが掛かるって事はファミリアの税を誤魔化してるって事にもなるしね。実際昔あったんだよ」
「ミィシャさんミィシャさん。じゃあどうやったら信用してもらえますかね?」
「んー?ステイタスを実際に見るとか?」
「駄目じゃん!?」
ステイタスとは、その人が今まで歩んだ軌跡、得手、不得手を示すモノである。ステイタスがばれるというのは冒険者として死んだも同然。つまりステイタスを知るというのは相手の全てを掌握したと言っても過言では無い。
すべてに対して中立を示すギルド職員とはいえ、個人のステイタスを知る程じゃないし、知って良い訳でも無い。無論、悪用なんて考えていないが相手の人生の全てを知る訳だからそう安安と見せる訳にはいかない。
「今から見るものは誰にも話さないと約束する。もしトワ君の【ステイタス】が明るみになるようなことがあれば、私は相応の責任を負うから。君に絶対服従を誓うよ」
真剣な表情でそう宣言した。
いや絶対服従って、なんかエロいから。
まあ、だが俺のスキルの異常性は見てもらった方が早いのかもしれない。正直な話俺はこれからどんどん深層にも行くだろう。一々言い訳は苦しいし事情を話した方が楽か……。
「……分かりました降参降参。あ、言っても無理かもしれませんが、俺の【ステイタス】はかなり特殊なので覚悟してください」
「えっ?う、うん………!」
「ミィシャさんも担当だし見てもいいですよ。他言無用でお願いしますよ?」
「わ、わかった」
エイナさんとミィシャさんは心の準備は出来たと言わんばかりに表情を引き締める。
でも、俺の【ステイタス】は違う方向にぶっ飛んでるから多分無理だろうな。
エイナさんとミィシャさんが【ステイタス】を確認する。
ミィシャさんもエイナさんも
「……………………」
「……………………」
エイナさんとミィシャさん無言になる。
目をこすり、何度も何度も読み返している様子が解る。
そして、
「な、なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!??」
「うえええええええええええええええ!?!?」
「あっはははははははははは!!!」
驚愕の大絶叫がその口から放たれた。
俺は腹を抱えて爆笑する。
「何このスキル!?完全にレアスキルじゃない!!」
「まあそうなんですよね。つまり俺はLevelの壁をぶち破れるって事ですよ」
「Level1とは思えないスキルだね……」
「いやー照れますなー」
「「褒めてないっ!!」」
声を揃えて反論する2人。確かにレアスキルだ。
俺のスキルは冒険者とは別ベクトルにレアなのだ。冒険者になれない冒険者、英雄になれない英雄。色々総称がありそうだ。因みにこのスキル万能だがダンジョンに長期間潜るのに向いてない。
「まあこれで証明出来たでしょ?このあり得ないスキルについて」
「ま、まあ」
「私、頭痛くなってきた………」
「という訳で換金方法を教えて♡」
「もう勝手にして……」
エイナさんが指差す方向に魔石の換金場所があった。
俺は服を着て魔石の換金場所に向かう。
今日の収穫は8万6000ヴァリスでした!拍手!
今日はご飯を食べに行こう!!
トワ・クラヴィウス
種族 : ヒューマン
容姿 : 銀髪長め、顔立ちはアイズに似ている。だが男だ。
身長 : 165㎝(自己申告)本当は156㎝
装備 : 支給品のナイフ(破損)、黒のロングコート、拳には包帯を巻いている。
所持ヴァリス : 8万6000ヴァリス
【ステイタス】
力 :I0
耐久:I0
器用:I0
俊敏:I0
魔力:I0
≪魔法≫
【
・1段階回復魔法
・状態異常・呪詛の解除
・魔法範囲内にいる人間の傷の完全修復
詠唱『全ての毒あるもの、害あるものを断ち、我が力の限り、人々の幸福を導かん』
【
・2段階回復魔法
・回復持続状態を付与
・状態異常・呪詛の無効化
・魂が解離していない限り蘇生が可能
『冥府の神よ見るがいい、貴様らの役目はもう終わりだ。人は死を克服した。我が命ある限り、人々の幸福を砕かせはしない』
≪スキル≫
【
・ステイタスが上がらない
・スキル欄・魔法スロットが無限になる。
・羨望すればするほどスキルの獲得率が上昇する。
・羨望すればするほど魔法の獲得率が上昇する。
・見たい相手のステイタス閲覧権。
【
・対象とした人物とステイタスを同列にする。
・ステイタスを把握していなければ発動不可。
・発動時間地上は無制限、ダンジョン内は2日
こんな感じかな?
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うさぎがあらわれた!
1700万ダウンロード記念の嫁ネロが呼符で!?
オルジュナを引こうとしたらジャンヌが来ました!!
さあ今日も育成育成♪
ダンジョン探索を終えて、ミアハ様にステイタス更新をしてもらう。ステイタスが上がらないのは知っているが一応確認だ。あのスキル【
「トワ、終わったぞ」
「はぁい。どれどれ・・・・はっ!?」
【ステイタス】
力 :I0
耐久:I0
器用:I0
俊敏:I0
魔力:I0
≪魔法≫
【
・1段階回復魔法
・状態異常・呪詛の解除
・魔法範囲内にいる人間の傷の完全修復
詠唱『全ての毒あるもの、害あるものを断ち、我が力の限り、人々の幸福を導かん』
【
・2段階回復魔法
・回復持続状態を付与
・状態異常・呪詛の無効化
・魂が解離していない限り蘇生が可能
『冥府の神よ見るがいい、貴様らの役目はもう終わりだ。人は死を克服した。我が命ある限り、人々の幸福を砕かせはしない』
≪スキル≫
【
・ステイタスが上がらない
・スキル欄・魔法スロットが無限になる。
・羨望すればするほどスキルの獲得率が上昇する。
・羨望すればするほど魔法の獲得率が上昇する。
・見たい相手のステイタス閲覧権。
【
・対象とした人物とステイタスを同列にする。
・ステイタスを把握していなければ発動不可。
・発動時間地上は無制限、ダンジョン内は2日
【
・自身が可愛いと認識したものを護る時のみステイタス超越補正
「あれぇ!?なんか早速増えてるうううううううううううううううう!?!?」
可愛いは正義と言ったよ!?
確かに言ったけどもこんな恥ずかしいスキルが発言するなんて聞いてないんですけど!?
しかも超越ってなんだよ!?恩恵を超えるって事ですか!?
いや可愛い人は大好きだよ?あのエルフさんと出会っただけでこんなことになるとかおかしくねぇかああああ!?
まっ、いいんですけど(切り替えの早い男)
「あのミアハ様?やっぱりこれって異常ですか?」
「異常だな。本来ならスキルは自身に見合ったスキルが発現したりはするのだが、トワの場合は全く違う。スキルを羨望したりある種の感情によってそれがスキル獲得の条件になっているのだろう」
「うわぁ、異常じゃないですかそれ。神々が与えた恩恵を超越してるって事ですよね・・・」
ステイタスが写された羊皮紙を手に入れると自分のスキルを改めて見る。新しいスキル【
「ん?何だこれ?p.s……追伸?」
ステイタスの1番下の欄に小さな文字でこう書かれていた。
『可愛いは正義だよね!わかるとも!』
俺はグシャっと羊皮紙を握りつぶしていた。因みにもう一回写そうとしてみたら今度は写らなかった。この羊皮紙を見るとミアハ様も理由が分からず困った顔をしていた。なんかすいません。
「何故だろう……スキルに遊ばれている気がする」
スキルの悪ふざけなんじゃないかという事を考えながらもこのスキルについてちゃんと法則を知ろうと俺は思った。一応言っておくけど【
因みに稼ぎの五万ヴァリスをナァーザさんに渡したら目を見開いて後喜んでいた。借金返済まであと600万ヴァリスらしい。明日はもうちょい深く潜ってみようかなぁ?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝8時、割と健康的な時間に起きた俺は昨日のナイフを見る。持ち手はあるが刃は無く1日で使い潰してしまったのは少し罪悪感があるが、支給品として考えるならよくもった方だろう。
とは言え俺は武器屋とか言った事はないんだよなぁ。ポーションなら結構持っているけど……
さて、どこに行けばお手頃価格な武器が手に入ーーー
「あの……」
「!?うわぁ!」
背後から声をかけられ、だが先ほどの気配の人物なのかはわからないが声をかけてきたのは僕と同じヒューマンの少女だった。
服装は白いブラウスと膝下まで丈のある若葉色のスカートにその上からエプロンをつけている。
髪の色は薄鈍色でポニーテル、容姿的に滅茶苦茶可愛いと思う。
その少女は俺の警戒した挙動に驚愕に揺れていたがそれをみた俺は警戒態勢を解き、その人に話し掛ける。
「す、すみません。気配がなかったから変な動きをしてしまって。びっくりしましたよね?」
「い、いえ、こちらこそ驚かしてしまって……」
こちらが謝るとあちらも頭を下げてきた。
「それで、俺に何か用ですか?可愛いらしいお嬢さん?」
「あ……はい。これ、落としましたよ」
彼女が見せてきたのは紫紺の色をした結晶だった。
これは魔石か……?いやまて、何かおかしいぞ。
昨日魔石を全部換金したのは確認済みだ。
「へぇ〜、可愛い顔の割に小悪魔っぽい事しますね。まあすっごく可愛いから役得ですけど」
「えっ?」
「それ俺のじゃなくてあなたの物ですよね?」
「えっそんなことないですよ⁉︎」
そう尋ねると彼女はウルウルした目をして俺を見上げる。
可愛い。けど、嘘とわかりやす過ぎるのが怖いなぁ。
美人ではあるが、嘘をつく魔女っ娘って言った所か。うむ、悪くない!!悪くないけど流石に嘘をつかれたらちょっと怖い部分がある。そう考えていると彼女は慌てた様子になり
「ま、待ってください!騙していたのは謝りますから話を聞いてください‼︎」
「いいですよ〜。お話程度なら」
可愛い子との会話は好きだし、この子から敵意を感じないので一先ず話を聞くことにした。
「えっとですね……実は私、あそこの飲食店に勤めてまして、知り合った冒険者をお得意様にしたくて……」
そこに勤めてるのだろう店員さんは自分が働いてる場所を指差す。
「飲食店ですか?」
「はい!結構人気なんですよ?」
「可愛い店員さんがいっぱい居て?」
「はい!店員には可愛い子が沢山いますよ!」
「そして帰る際に莫大な金額を請求されると?」
「えっ⁉︎ち、違います‼︎そういうお店じゃありません‼︎」
あっ、違うのね。よかった。流石にこんな子がそのようなお店の従業員だったら俺は落ち込んでしまう。
そう考えていると先ほどやりとりしていた店員さんが拗ねたようにしている。
「はぁ〜…冒険者さんに私の働くあの酒場でご飯を召し上がって頂きたかっただけなのに……私の良心は傷つけられてしまいました、そんな私を慰めてくれる優しい人はいないのかしら〜?」
「わぁ拗ねてる。可愛い」
「コ、コホン!!それにぃ、最近冒険者になりたてで、銀髪の女の人がお店に来てくれないかなぁ?」
ん?……
「俺、男なんですけど?」
「……えっ??」
「……えっ」
いや何困惑してるのこの人、そんなん見りゃ一発で……
言った俺が言うのもなんだが自信ないな。
「ご、ご冗談がお上手ですね。そんなんじゃ可愛い女の子は惑わされませんよ?」
「いや違うから、ガチだから」
「ま、まさか〜」
「君は俺の第一印象からしてどう思ってるの?」
女の子でも流石にキレるよ?
俺からしたら身長と女顔はコンプレックだし。弁明聞いてくれないし。
「こんな可愛い子が男の子の訳がない!!」
「OKよく分かったよ。どうやら貴女は女の子に話しているらしい。別人みたいなんでそれでは失礼しま」
「わぁーー!!待って待ってすみません謝りますから!!」
振り向いて立ち去ろうとした俺の腰を掴んで引き摺られながらも止めようとする。ええい役得だがなんか嬉しくない!
「はぁ〜……折角今日の夕飯はあの酒場でご飯を食べようと思ったのになぁ〜……僕の良心は傷ついてしまいましたグスン」
「ご、ごめんなさい。あんまりにも綺麗な容姿だったから女の子に見えてしまって……」
「グフッ!?フォローになってないよそれ……まあいいよ、じゃあお詫びとして何処か安くて頑丈な武器屋を知らない?その情報で手打ちにしてあげるよ」
「あっ、それなら【ヘファイストス・ファミリア】のお店の上の階にお手軽な値段で武器を売ってますよ?なんでも駆け出しの鍛冶屋さんが作ったものらしいので」
それはいい事を聞いた。
【ヘファイストス・ファミリア】はミアハ様に聞いた中じゃトップクラスの武器を販売している。それこそ名剣だったり英雄が持つ武器とか色々値段は安いものでも数百万。高いものだと数千万や数億ヴァリスの値が付くものもあるらしい。
「……では今日の夜に伺わせてもらいます」
「はい。お待ちしています♪」
「あっ、俺はトワ・クラヴィウスです。貴女は?」
「シル・フローヴァです。では今日の夜お待ちしています」
なんか終始やり込められた気分を感じるが心地よく感じるのは何故だろうか。
「魔女っ娘とは言え可愛いしね」
ダンジョンに出会いを求めるってのも悪くない。
まだダンジョンに潜ってないけど。
因みにお店に行ったらまだやってなかった。
開店時間聞いておくべきだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふんっ!」
「グギャァ!?」
近づいて来るゴブリンに正拳突きで爆散させる。
ふっ、俺の右は世界を狙えるぜ。魔石まで爆砕したけど。
「5階層だとあんまし敵が居ないか……まあ素手だし12階層までにしておくか」
ナイフを構えた白髪の子の目の前に居たゴブリンを横から奇襲する事に成功し、一匹の首を爆散させる事に成功した。
やった、上手くいったぞ。
そんな思いと共に少年を安心させるために顔だけ少年を振り返る。
地味に鏡に向かってどんな風に振り返ったらカッコ良く見えるのか研究していたソレ、俗に言うキメ顔をキメて、トワは口を開いた。
「大丈夫か?少年」
トワは敵に囲まれていた少年に割って入り、拳を振るう。負けじとナイフで敵に応戦する少年。即興とは言え即席パーティとは思えない動きをしている。やり易い。
「いい動きだ!やるじゃん少年!」
少年は危機的状況に陥った少女を助けられ、あの時と同じ状況に歯軋りをする。だが無茶はしていた。ダメージもあれば敵に囲まれた時は危ないと思っていたが、それも銀髪であの人に似た人に助けられた。
自分が悔しかった。情けない。これでは昨日と変わらない。
「うああああああああっ!!」
最後の敵をナイフで仕留める。
5階層のコボルト相手にここまでの戦いは中々筋がいいんじゃないか?まあスキルに頼りっぱなしの俺からしたら分からないけど。
「大丈夫か?」
「だ……」
「?」
「だああああああああああああああっ!!」
「ファッ!?」
なんか逃げられました。
ええー、俺そんな怖いかな……
うわーけっこー傷付く。緊張して逃げ出したのか?
顔赤かったし……まさか惚れられた?いや俺男ですしおすし。
人生初の英雄の真似はうさぎに逃げられる結果で終わった。
……ショボン(´・ω・)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
オラリオにきて日が浅い上にここに訪れるのは基本的に早朝なため、記憶の中にあるお店を見つけるのも一苦労だった。
そのようにメインストリートを彷徨っているうちにようやく目当ての店を見つける。因みにミアハ様は旧友の神と飲みに行ったらしく、ナァーザさんはあと少しで新薬が出来そうだからいいと言われたので一人で食べにきた。
「……ここでいいんだよね?」
シルさんの働いている酒場、『豊穣の女主人』。
凄い名前だなぁと看板を仰ぎながら、入り口から店内を窺う。
カウンターの中には料理やお酒を振る舞う恰幅のいいドワーフの女将さんや、今朝のシルさんと同じ服装のキャットピープルやエルフなど多種族の少女達がてんてこ舞いに動き回りお客さんの注文をとっては料理を運んでいた。
…もしかして店のスタッフって女性しかいないのか?
………酒場の名前の由来をなんとなく察したよ。美人さんが多いからいいけどね。
「トワさんっ」
いつの間にかシルさんは俺の隣に立っていた。
なんでいつも気配みたいなのがないのだろうか。
「ああ、シルさん、約束通りきました」
「はい、いらっしゃいませ」
シルさんはそういい、入り口をくぐってから澄んだ声を張り上げる。
「お客様一名はいりまーす!」
俺は店内へ進むシルさんの後に続く。
「では、こちらにどうぞ」
「はい、ありがとうございます」
案内されたのはカウンター席だった。
席に座るとそこは曲がり角の席で誰も座ってくることがない場所だった。カウンター内側にいる女将さんと向き合う感じになっている。
「あんたがシルのお客さんかい?ははっ、冒険者の癖に可愛い顔してるねぇ!」
「あっははは、泣いていい?」
「何でもアタシ達に悲鳴を上げさせるほど大食漢なんだそうじゃないか!じゃんじゃん料理だすから、じゃんじゃん金を使ってくれよぉ!」
「シルさん?」
「……てへっ♪」
「すっごく可愛いですがダメです」
溜息をつきながらもメニューを取ろうとすると同じタイミングでメニューに手を伸ばす人と目があった。
「「あっ」」
なんと昼間のウサギくんでした。
「わっああああああああっ!?」
「昼間のウサギくんじゃん!って逃げないで俺は男だし!」
「へっ……?」
「全く、勘違いしてたのか君は。俺はトワ・クラヴィウス。れっきとした男のヒューマンだよ」
「う、嘘おおおおおおっ!?」
もう泣いていいですか?いいよね?……グスン
この後、滅茶苦茶仲良くなって色々話したけどね?
この後の騒動が起きるまでは……
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けんかをしよう!
「俺は男だし」と言うまでの流れが無いと言われたのでちょい訂正、ソード・オラトリア12巻凄い胸熱な展開でした。思わず涙が出てしまいそうでした。
「ひ、昼間はすいません! その……緊張して逃げちゃって……」
「いいさ別に。そのかわり話し相手くらいにはなってくれよ? 俺1人で寂しく食べるより誰かと食べたいしね」
「そ、それくらいなら……」
「あっ、俺はトワ・クラヴィウス。【ミアハ・ファミリア】の新人だ。よろしくなウサギくん」
「ぼ、ぼ、僕はベル・クラネルです! よ、よろしくお願いしますトワさん!!」
顔を真っ赤にして震えた手で握手を求める。
滅茶苦茶緊張していますなー。
まっ、まさか……!? このウサギくんそっち方面!?
「はっはっは、緊張しすぎだよ。まさか……惚れたか?」
「そ、そんな! 違います! あの……一目惚れした相手に似ている顔なので……」
「ほほぅ、ぜひ聞かせてくれたまえベルくん。今宵は長いんだ! 色々な話をしようぜ! なんせまだオラリオに来てから1カ月くらいしか経ってなくてね」
「ぼ、僕でよければ……」
そう。俺の娯楽は冒険について聞いたり英雄譚を読んだり楽しい話は大好きだ! なんせ冒険者だったり、生きる人々が紡ぎ出す物語ほど面白いものはないしね!
夜。宴をするため【ロキ・ファミリア】は『豊穣の女主人』を訪れきた。マジかー、確かにファミリア大きくなると宴とかするよね。上位派閥ってミィシャさんから聞いてるし。てか俺も入団試験以前に突っぱねられたし。
「よっしゃあ、ダンジョン遠征皆ごくろうさん‼︎ 今日は宴や! 飲めぇ‼︎」
「「「「「乾杯‼︎」」」」」
ロキの音頭に一斉にジョッキがぶつかる。
「団長、つぎます。どうぞ」
「ああ、ありがとう。ティオネ。だけどさっきから、ぼくは尋常じゃないペースでお酒を飲まされているんだけどね。酔い潰した後、僕をどうするつもりだい?」
「本当にぶれねえな、この女……」
アマゾネスが
……何それ詐欺じゃん。
「ロキ・ファミリアさんはうちのお得意さんなんです。彼等の主神であるロキ様がこの店をいたく気に入られて」
シルさんが興味津々と言う顔をしたベルに説明した。
「ロキ・ファミリアって有名なんですか?」
俺が不思議そうに聞くとびっくりした様子でベルが話す。
「トワさん知らないんですか!? このオラリオで一二を争う実力派のファミリアですよ!」
ベルが驚きの声をあげた。
大きい派閥だと思ったが意外にも大きいんだな。まあ雰囲気が違うもんな。纏う空気が歴戦の強者のそれだ。なんとなくわかる。
「うちが相手にもならんって言いたいんか、吠え面かかしたる! ──ーちなみに勝った奴がリヴェリアのおっぱいを自由にできる権利付きやァッ!」
「じっ、自分もやるっす⁉︎」
「俺もおおおお!」
「俺もだ‼︎」
「私もっ!」
「ヒック。あ、じゃあ、僕も」
「団長!?」
「リ、リヴェリア様……」
「言わせておけ」
前言撤回、変態の寄せ集めっぽい(主に男子、何故か百合が混ざってるけど)
本当に一、二を争うファミリアなのかなぁ……
さっき話してくれた金髪の女の子がアイズ・ヴァレンシュタインに夢中のベルくんの姿に、自然と苦笑を浮かべカウンターの残ったジュースに手を伸ばした。お酒は飲めるけど極力飲まない! ジュースの方が美味しいしね! (子供舌)
「俺ちょっとトイレ」
「あっ、はい」
俺はトイレに向かう。ジュース飲みすぎて尿意が近づいていた。
もちろん男子トイレだよ? ベルくん後ろで飲んでるジュース吹き出しかけてるけど俺男だからね? 慣れろよ流石に……
──しかし、その時だった。
【ロキ・ファミリア】からその声が上がったのは。
「そうだ、アイズ! お前のあの話を聞かせてやれよ!」
「あの話……?」
ヴァレンシュタインは心あたりがないのか首を傾げる。てか似てるね。身長はアレだが俺の顔とそっくりだ。唯一違うのは目と髪の色と性別かな? あれっ、結構多い。と思いつつドアを閉めた。
「あれだって、帰る途中で何匹か逃がしたミノタウロス! 最後の1匹、お前が5階層で始末しただろ!? そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎のよ!」
突然、頭に冷水をかけられた錯覚にベルは襲われた。
「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐに集団で逃げ出していった?」
「それそれ! 奇跡みてぇにどんどん上層に上がっていきやがってよっ、俺達が泡食って追いかけていったやつ! こっちは帰りの途中で疲れていたのによ~」
耳を塞ぎたくなる衝動に駆られる。しかし、ベルは俯いたまま青い顔をしながら震えている。
「それでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせぇ
身体中が火であぶられたように熱くなる。恥知らず、酒の肴、ただ自分は救われただけ、弱いままで意気地なし、根性無し、そんな聞こえもしない罵倒が聞こえているようだ。
「ふむぅ? それで、その冒険者どうしたん? 助かったん?」
「アイズが間一髪ってところでミノを細切れにしてやったんだよ、なっ?」
「……」
ヴァレンシュタインは……答えない。せめてもの良心なのか、それはわからないけどあの人もそんな話を聞きたくないようだ。
「それでその震えてた方、あのくっせー牛の血を全身に浴びて……真っ赤なトマトみたいになっちまったんだよ!」
「うわぁ……」
「アイズ、あれ狙ったんだよな? そうだよな? 頼むからそうと言ってくれ……!」
「……そんなこと、ないです」
「それにだぜ? そのトマト野郎、叫びながらどっか行っちまってっ……逃げるように走り去られて……ぶくくっ! うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんのおっ!」
「……くっ」
「アハハハハッ! そりゃ傑作やぁー! 冒険者怖がらせてまうアイズたんマジ萌えー!!」
どっと笑いに包まれる店内。その反対側にいるベルは大きな壁に隔たれているような気がしていた。
ガタン! とテーブルが音を立てて揺れた。
揺れる瞳で金髪の女の子、ヴァレンシュタインへと向けていた顔をテーブルにぶつける勢いで伏せたのだ。
ぎりぎりとテーブルに額を押し付けているベルは、泣いているように押し殺した息を漏らしていた。
「しかしまぁ久々にあんな情けねぇヤツを目にしちまって、胸糞悪くなったな。1人は泣くし」
「……あらぁ~」
「ほんとざまぁねぇよな。ったく、実力がわからないくせに立ち向かおうとするわ、あげくのはてに泣きわめくわ。そんなことするんじゃ最初から冒険者になんかなるんじゃねぇっての。ドン引きだぜ、なぁアイズ?」
今すぐあの口を塞ぎたい。けどベルにはそれができない。
弱いからだ。言い返せないからだ。当たり前だがベルはLevel1だ。Level5のあの狼に勝てない。通った経験も人生も違う。けど、あんな奴でも強者の位に入ってしまっている。ギリギリと歯を食いしばりながらも耐える。
「ああいうヤツラがいるから俺達の品位が下がるっていうかよ、勘弁して欲しいぜ」
「ベート、君酔ってるね?」
「ベートだって弱い時くらいあったじゃろうが」
「俺たちに比べればあんなのはゴミだ。ゴミをゴミと言って何が悪い。あーゆーのみたいなのがいるから俺達の品位まで下がるんじゃねぇか」
「いい加減そのうるさい口を閉じろベート、ミノタウロスについては我々の不手際だ。それを酒の肴にする権利はない。恥を知れ」
エルフの女性が仲裁に入る。その言葉にさっきまで
「おーおー、さすがは潔癖のエルフ様だ。なら、アイズはどう思うんだ? 震えてるだけのゴミが、あれが俺らと同じ冒険者を名乗ってるんだぜ?」
「……あの状況じゃあ、しょうがなかったと思います」
「何だよいい子ちゃんぶりやがって……なら質問を変えるぜ? あのトマト野郎と俺ツガイにするならどっちがいい?」
唐突に聞いてきたベート。どうやら彼なりに口説いているのかわからないけど
「ほら答えろよアイズ。雌のお前はどっちの雄に尻尾ふって、どっちの雄にメチャクチャにされてぇんだ?」
「私は、そんなことを言うベートさんとだけは、ごめんです」
「無様だな」
即答された
「うるせぇババアっ、じゃあ何か、お前はあのガキ共に好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのか?」
ベートはヒートアップしていく。もはや止まらない。ブレーキが壊れたかのように続けていた。
「はっ、そんな筈ねぇよなぁ。自分より弱くて、軟弱で、救えない、気持ちだけが空回りしてる雑魚野郎に、お前の隣に立つ資格なんてありはしねぇ。
まるでベルにトドメを刺すかのようにニヤニヤとしながら堂々と言った。
「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ!」
そうベートが言った瞬間、ガタッと音を立てベルが飛び出して行く。
「ベルさん!?」
椅子を蹴飛ばし立ち上がったベルは、弾き飛ばした俺に目もくれず店の外へと飛び出していった。突如響いた激しい音に集中する視線の中、脇目もふらず店の外へと出たベルは、夜の街の中へと姿を消していった。席に戻ったトワは隣にいた兎さんを探したが見つからないのでシルさんに聞いた。
「ん? ベルくん……逃げたのか?」
「えっ、あ、そうなんです……」
「……シルさんシルさん。ベルくんお金払った?」
「……払ってません」
「えっと……何があったの?」
「それは…………」
シルさんが大体の事を話してくれた。
さっきの話はどうやらベル君の話だったのだ。ミノタウロスの血を浴びてトマトみたいになり、それを酒の肴にして笑いものにした挙句、雑魚は冒険者やめちまえと罵倒していたらしい。
つまりまとめると……
「ミノタウロスを逃した【ロキ・ファミリア】の不手際がベルを殺しかけたのに笑いものにしたチンピラに言い返せず悔しくて食い逃げしてしまった、って所か?」
瞬間、酒場の騒ぎが凍りつくように止まった。
【ロキ・ファミリア】の視線が俺に向く。無言のまま俺の肩を掴む
ん? ちょっと待って? まさかと思うが……
「あれ……? シルさん、もしかして口に出てた?」
「思いっきり……って無意識だったんですか!?」
「えっとこう言う時なんだっけ……えっーと、てへっ♪」
「よし殺す」
「ちょ、ベートっ! 落ち着きなさいって! あんたも、さっさと謝りな! 殺されるよっ!」
アマゾネス特有の露出が激しい服を着た少女が慌てて忠告をしてくる。豊満な者が多いアマゾネスにしては、胸のサイズが少しばかり可哀想な少女がベートのズボンを掴み何とか手綱を取ろうとしていた。
が、そんな事すら跳ね除けて俺の胸倉を掴む。わぁ怖い。
「つかテメェさっきから調子に乗ってんじゃねぇぞッ! お前俺が誰か分かって口きいてんのか?」
「いやいやちょっと!? 俺はこのオラリオに来てからまだ3週間と5日しか経ってないし、冒険者登録したのも昨日だし、有名どころでもほとんど知らないんですけど!?」
「……あん? なんだおめえ? もしかして駆け出しか?」
先程までの激高がウソだったかのように、声を落としたベートが首を傾げた。
「あーうん。そうだけど?」
「ちっ、なんだLv.1かよ。はんっ、Lv.1相手に本気になってもしょうがねぇ。おら、犬みてぇに這い蹲って許しを乞いな。そしたら許してやってもいいぜ」
「ベートッ!」
「黙っとけババァッ!! この雑魚に良いように言われちゃならねえのが基本だろうがよ! ここで舐められたら【ロキ・ファミリア】も舐められっちまうぞッ!」
「っく、そうだとしてもそれは──―」
「あー、うん。メンゴメンゴ」
「全く謝る気がない!?」
シルさんナイスツッコミ。
その通り、俺は謝る気なんてない。一応はこの人が悪いのだし、階級? レベル? 知った事ではない。ただ強いとひけらかすチンピラに頭下げるなんてごめんなのだ。
「でも君はさ、見るからに酔ってるから分からないかもしれないけど、君は……いや君達はミノタウロスを怪物輸送したって事だよね? 確かにダンジョンは未知で何が起きるかわからない」
「はっ!! 弱いなら冒険者なんてやめちまえって話だ!」
「けど、これは明らかに人為的な行為だ。君達は一歩間違えればミノタウロスを利用してベル君やまだ弱い冒険者を殺そうとした、とも取れる」
酒場の空気が更に凍りつく。
【ロキ・ファミリア】の団員なんて青い顔をしている。この話以前にLv5に喧嘩を売っている少年にこれから起きそうな最悪な展開が起こらないようにと爆弾が爆発しないようにと恐れているようだ。
「それを酒の肴にしちゃうなんて軽蔑を通り越して尊敬するよ。俺なら絶対出来ないねぇ、そんな恥ずかしい失態を酒の肴にするなんて小者みたいな事はさ?」
「……今、何つった?」
「怪物輸送を誇らしげに語る。そんな恥ずかしい失態を酒の肴にするなんて小者みたいな事、俺なら絶対出来ないと言ったけど? あっ、あと女の子を口説くならもう少しマシな口説き方しなよ。流石に悪趣味だし、そりゃフラれるよ」
ブチリ、とナニかが千切れる音を、その場にいた者たちは聞いた気がした。そして俺は瞬時に思った。
『あっ、やべっ、ちょっとやり過ぎた』と思いつつこの
「ッッッ!!!?? テメェエエエエエッ!!??」
「ベートッ!」
「ひっ」
怒りに飲まれた餓狼が吠え、その致死の爪を獲物へと伸ばす。
第一級の冒険者が怒りに我を忘れて放つ一切の手加減のない一撃。
「うおっ……と! 危ない危ない……」
それをしゃがんで躱す俺に今度はかかと落とし、完全に殺しにきている。まだ人間なんだから手加減する情くらいあると思っていたが、期待した俺が馬鹿だったようだ。地面を蹴って別の方向に飛び込む。
「というか俺まだ冒険者になってから2日しか経ってない素人に熟練冒険者のLv5が本気で来るなんてちょっと大人気ないんじゃないです……っか!? と何かと新しい新人いびりもあったもんですね!?」
「Lv5の俺の蹴りを避けれる奴を素人とは呼ばねえんだよ!」
「ここは酒場ですよ!? 冒険者とは別の人巻き込んだら危ないでしょ! 君、酔ってて周り見えてないし!?」
「酔ってねぇんだよクソガキ! いい加減当たれやクソがぁ!!」
「あっ、────ッッ!!」
「オラァ!!」
「ぐっ!?」
腕を交差させて顔の直撃は防いだが、その蹴りに勢いよく吹っ飛んだ俺は【ロキ・ファミリア】の宴のテーブルに突っ込んだ。散乱する食材や酒に割れるテーブルや食器、止めようとしたアマゾネスを振り切って追撃の蹴りを入れようと走る
「人の店で馬鹿みたいに騒いでんじゃないよアホンダラァアアアアァアアアアアアアアア!!」
「よっこいしょ、と」
俺はテーブルから起き上がる。流石にコートは料理で汚れてしまったが仕方ないのでハンカチで目立った部分を拭く。
「痛てて、流石にダメージはあるか」
「あ、あの大丈夫ですか!?」
「へーきへーき、大したダメージじゃないから……ってあの時のエルフさんじゃん」
「あっ、昨日の……!」
「まあ、気を遣わなくていいよ。一応喧嘩を売ったのは俺だしね。っとすいません女将さん、迷惑をかけちゃって、これは修理代と迷惑料です。これで気が済まないなら、俺は出入り禁止にして貰って構わないので」
俺はカウンターに大金の詰まった袋を置く。
「ふん、構わないよ。あの犬が吠え過ぎて煩いと思ってたところだよ。ただ、次はないよ」
「感謝します……それから、先程飛び出した少年の代金も頼みます。後で謝りに来ると思いますけど、あの子ちょっと自暴自棄になり掛けてるんで、シルさんならベルくんがこういう時何処に行くか分かりますか?」
「多分、ダンジョン……って危ないじゃないですか! まだベルさんLv1ですよね!?」
「ああ、だから探しに行ってくる。シルさんにも迷惑かけてゴメンね」
「……ベルさんをお願いします」
「任せて」
「ちょい待ちや」
俺はダンジョンに向かう為に走り出そうとするが、ある神の言葉に俺は静止する。神ロキだ。【ロキ・ファミリア】の主神の天界きっての
「神ロキ、謝罪が必要なら謝りますけど……」
「いんや、あれはベートが悪いから構わへんよ。けど、聞かせてくれへんか? 何であの時
その言葉に反応する俺、あくまで理由はわかっているのに語らせるのは趣味が悪い。避けなかった理由なんて簡単だが、敢えて口にしない。
「……答えがわかっていながら聞くのは趣味が悪いですよ?」
「いんやぁ〜? わからんなぁ〜、まあそれよりも聞きたい事は一つ、Lv1って言うてたのは嘘やない。にも関わらずLv5のベートの攻撃を躱して一撃を食らってもピンピンしてる。
普通だったらおかしい。
それは神ロキは『
扉の前で振り返り人差し指を口元に立てる。ニィと笑いながらもその顔は悪戯好きの子供のような笑顔でロキの質問に答える
「秘密さ! ミステリアスな男は語らない主義なんでね! それに、そっちの方が
ピクッとロキの眉が上がる。
そう答えた後に足早に去っていく少年を見て笑いが止まらなくなった。道化の神に対しての挑戦なのか挑発なのかは理解が出来ないが、ただ分かることはあの少年はこの神ロキが認めるほど面白い存在だと言う事だ。
「あ、あの……さ、さっきのは、嘘、ですよね」
「……何がやレフィーヤ?」
笑いながら椅子に浅く座り背もたれにダラリと寄りかかったロキが、視線だけをエルフの少女──―レフィーヤに向けた。
「っ、そ、その、あの銀髪の人が、れ、Lv.1だなんて……」
「嘘やないよ」
恐らく『
調べればすぐに分かるだろうが、彼は敢えて釘を刺した。面白くない行為は反則という言葉を含ませて自分を調べさせない。更に言い換えれば周りに迷惑をかけない為に『
「さっきの事だけどさ。何であの子は避けなかったんすか?」
「何やラウル、気づいとらんのかい。あれは単純な話やで? 躱せたけど、敢えて躱さなかったんや、ベートのせいでな」
「?」
「身を呈して
あのままベートの蹴りを躱していれば、後ろにいたシルはどうなっていたか。間違いなく大怪我だけじゃ済まないだろう。死ぬ事だってあり得たのだ。
ベートが周りを見えていないと指摘したのは的を射ていた。
誤って一般人を殺しかけたのだ。今回の件といいミノタウロスの件といい、酔っていたベートは2度人を殺しかけた。
「あんな可愛い顔して、随分男前な事してくれるわぁ」
けど、だからこそ分かる。あの少年は間違いなくロキが認める道化だった事に。あれは間違いなく異端者だ。だが、それと同時に面白いと思う自分がいる。
「嗚呼、だから下界は面白い」
ロキは再び酒を煽った。
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つよくなりたい!
ソードオラトリア12巻が面白過ぎて泣ける。
地面を蹴り抜き、すれ違いざまにモンスターを切る。背後のモンスターが断末魔の悲鳴を上げ、崩れ落ちる。
どれほどモンスターをそうしてきただろう。考えるよりも早く次なる獲物を求め、
あの言葉を聞いて、惨めな自分が恥ずかしくて、笑い種にされ侮蔑され失笑され、挙げ句の果てには庇われるこんな自分を僕は初めて消し去ってしまいたいと思った。
青年の言葉を否定出来なくて、言い返すことすら出来なくて、彼女にとっては路傍の石に過ぎなくて、そんな自分がたまらなく許せなかった。
『ゲェ、ゲェ』
「ハアァァァァァァァァ!!」
新たにモンスターを見つける。巨大な単眼を持つ蛙のモンスター、『フロッグ・シューター』。それに向かって地面を蹴り、ナイフで裂く。あり得ない速度で迷宮の下層を降りていく。まだ冒険者になって半月しか経っていない中、どう考えてもおかしい。
ベルはそんな事も疑問に思わずに6階層に足を踏み入れる。
ビキリ、ビキリと【ステイタス】によって強化された五感がその不穏な音を拾っていく。薄緑色に染まった、ダンジョンの壁面。そこから壁が破れた。
「あれは……」
現れたのは『影』だった。身の丈は僕と同じくらい。その体躯は頭から足先まで黒一色で限りなく人間に近いシルエットをしている。唯一、十字の形を描く頭部に顔面と思わしき手鏡のような真円状のパーツがはめ込まれている。
「『ウォーシャドウ』……」
得物を握り直し、構える。がしゃりっ、と後方からも音が上がった。振り向くとそこにはもう1体のウォーシャドウが産まれ落ちていた。『新人殺し』と呼ばれたこのモンスターに対抗できる最低のステイタスはLv.1のFは必要だ。集団で囲まれれば素人に勝ち目は無い。
(距離を取って、体勢を……な!?)
バックステップ直後に背中に伝わる固い感触。
いつの間にか、壁際まで追い詰められていたのだ。
致命的な隙を見せた獲物に、ウォーシャドウの一体が一気に詰め寄る
「くっ、うおお!!」
繰り出される大振りに合わせて、右手に持つ短刀でカウンターの刺突を叩きこむ。
まっすぐ怪物の胸部を貫いたその一撃は、体内の魔石を見事に砕いた。
同時に、左腕を切られた痛みが襲う。切り裂かれた、深くは無いがダメージはある。血が垂れたナイフは『ウォーシャドウ』を切り裂き続けるが、あくまで対等に戦えているだけだ。集団に囲まれた。
「ぐっ……ああああああああああああああああっ!?」
今度は背中を鋭利な爪で裂かれた。集団戦で怖いのは背後を取られることだ。ダンジョンで背中を取られない為にはパーティーや装備が必須だが、今は酒場からダンジョンに来た為、装備はコートと護身用のナイフだけだ。
「ぐっ、くそおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
ナイフを持ち替えてモンスターに立ち向かった瞬間
「────全く、自暴自棄は良くないよ。ベルくん」
とてつもない速さの銀色がモンスターを通り過ぎる。
魔石を抉られて消え去るモンスター、風に棚引く長い銀髪、背は自分より少し小さいがその背中を2度も見た。
ウォーシャドウのさらに後方から小さな影が飛び込んできて、勢いそのまま右端の奴を殴り飛ばし、他の二体まで地面に転がしてしまった。一連の映像を網膜に焼き付け、そこでようやく人影の正体を知った。
「……ふう」
「……トワ、さん?」
今日初めて会ったトワが、夜中の人気のないダンジョンにいた。
「こんなところで何してるんですか、トワさん!」
「こっちの台詞さ。さっきの酒場で何があったか聞いてしまってね。君を追っかけて来たんだよ」
「っ……」
つまりは連れ戻しにきたということだ。こんな夜中に、装備もなしに、しかも入ったこともなかった新たな階層への無謀な攻略を止めに。それは、正しい。ああ、どこまでも理屈の上では、正しい判断だった。
だけど。
「……帰ってください! 僕はまだここで強くならなきゃいけないんだ!」
意地が。なけなしの矜持プライドが。帰ることを全力で拒否していた。
「断るよ」
「なんで! 何をすればいいかじゃない、何もかもしなければならないんだ! それを邪魔するんだったら……」
パァン!!
ベルの頰に痛みが走る。トワはベルの頰をスキルを使用せずに叩いた。困惑しながらも頰を抑えるベルに胸倉を摑みかかる。
「いいかいベルくん。悔しくて見返したいから強くなりたい。何もしなかった自分が許せないから強くなりたいって気持ちは分かる。けど、今君がやっている事は明らかに
トワは珍しく怒っていた。
温厚そうな彼はベルの胸倉を強く掴んで引き寄せた。同じ体格だったから顔は近いが、トワは気にしない。
「強くなりたい。その気持ちを否定するつもりは無い。けどね、今君が護身用のナイフで装備もなしにダンジョンに入った。食い逃げもした。今も君は多くの人に迷惑をかけた」
あの時、心配していたシルさんや女将とか色々、トワが言うべきでもないが、あの時は迷惑をかけた。反省するところは反省するのが常識だ。
「挙句、自暴自棄でダンジョンに潜った。悔しいから、強くなりたいと言う気持ちをぶつけるのは構わない。誰しもがある事だ。けど、今の君がやっているのは自分を大切にしない
トワの目はまるで断罪する神のような目をしていた。故に体が動かない。まるで神威に当てられたような金縛りにあったような感覚がベルを襲う。
「──いいか、よく聞け
さっきまでの優しい雰囲気から一変して口調すら変わる。とても2日前冒険者になったとは思えないほどに、そんなトワがベルに口を開く。
「俺は
掴んでいた手を離すとベルはドサッと体から力が抜けてその場に跪く。
トワはため息をつきながら魔石をポーチバッグに回収する。そしてベルくんの肩に手を置く。
「まっ、それが分かれば俺はそれ以上怒らないよ。強くなりたいんだろ? 俺は手を出さないからこのままダンジョン攻略していこうぜ」
「さ、さっきと言っている事が真逆!?」
「何言ってんだ。俺は自暴自棄は見逃さないけど、強くなりたいって言う男の子の意思は尊重するよ? 俺はあくまで君が倒れたら回収するのと、君が斬ったモンスターの魔石を回収するだけさ。強化種が出たら危ないし」
「うっ……」
「っと、その前に──ー」
ベルの怪我だ。腕と背中は浅くはないが血が出ている。
これは俺の魔法を使うチャンスではないか? そう思った俺は詠唱を開始する。
「【冥府の神よ見るがいい、貴様らの役目は終わりだ】」
「っ!? 詠唱……トワさん魔法を……!?」
「【人は死を克服した、我が命ある限り、人々の幸福を砕かせはしない】」
ステイタスは【ロキ・ファミリア】にいた山吹色の髪をした可愛いエルフを模倣する。Lv.3で魔力限界突破してんですけど……あの子マジパナいな。ともあれ、初めて使う回復、その効果を見る為にも詠唱を紡いだ。
「【
魔法が発動するとベルの体に優しい赤い光が纏われている。【
「す、凄い……傷が……!」
「さあ、ベルくん。これ以上は俺は何もしないけど、ついては行く。あとは君次第だ」
「で、でもお店に迷惑が……」
「開き直って迷惑かけれるだけかけちゃいな。あとで謝りに行くのは当然だけどね?」
まっ、お金払ってるしそこまで怒らない……と思いたいが、もうこの際迷惑かけれるだけ迷惑をかけてあとで死ぬ程謝ってまた1日ダンジョンに潜ればいい。だって俺はトラブルメーカーだしね。結構正論を口にしていても迷惑かけているのは事実だし。
「さあ、頑張れよベルくん。ウォーシャドウが8体、死なない限り俺が治してやるから思いっきりゴー!」
「よし、やってやる!」
「行ってこい!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
こうして一夜が明けるまでダンジョンに潜っていた。
ベルの体力と精神が尽きるまでトワはただただその姿を見届けていた。
────────────────────
「トワさん……」
「ん?」
「僕は馬鹿でした……」
「否定はしないよ」
「何もしてないくせに期待してた……」
「そうだね」
「弱い自分が悔しい……」
「うん……」
「トワさん」
「なんだい」
「……僕、強くなりたいです」
「……君ならなれるよ。英雄にだってね」
「……ありがとう……ございます」
安心したのかベルは寝息を立て始めた。トワは起こさないようにベルを背負い、彼のホームを目指した。ミアハ様に旧友の神が住んでいる場所を聞いておいてよかった。
────────────────────
「遅過ぎる……!」
錆びれた教会でヘスティアが呟く。
もう時刻は夜明け間近にも関わらずベルが帰ってこない。これは何かあったと考えた方がいい。
心配になったヘスティアが探しに行こうとしたとき、扉をノックされる。
「ベル君!」
この教会の隠し部屋を知ってるのはヘスティアとベルだけ。ならばノックしたのはベルだと思い扉を開けると、
「こんな時間に失礼します。神ヘスティア」
トワの言葉にヘスティアは彼が背負っいる少年に気付いた。グッタリと気を失っている少年を。
「俺はトワ・クラヴィウス。【ミアハ・ファミリア】の新参者です」
「ベル君!」
「心配しないでいいですよ。傷はもう治ってます」
気を失った後、トワは魔法を使って治癒していたので傷は完治している。
「一晩ダンジョンに潜っていたからかなり消耗しています。ゆっくり休ませてやってください」
「ダンジョン⁉︎ 何を考えてるんだい、しかもこんな格好で!」
「まあ男の子だから色々あったんですよ」
ベルが気絶しているせいか何故かトワに叫ぶヘスティア。
「ベルくんは強くなりたかったんだ」
「……何があったんだい?」
「それは俺が話して良いことじゃないので」
トワはベルをベットに寝かせるとここにもう用は無いとばかりに立ち去ろうとする。しかし、何かを思い出したように立ち止まる。
「神ヘスティア」
「な、何だい?」
「この子は多分強くなる。【剣姫】や【猛者】すら超えれるほどにね。この子が英雄になりたい気持ちを大切に。あっ、あと重傷とかなったら【ミアハ・ファミリア】を頼ってください。生きてさえいれば俺は治しますので」
静かにトワは微笑む。この少年は英雄への道を踏み出したのを確信して、背を向けてホームを出ようとする。
「当たり前さ。大事な僕の大切な子だからね。ありがとうトワ君、ベル君を助けてくれて」
『────ありがとう先生! 私の大切な友達を助けてくれて』
「え──?」
トワは後ろを振り返るとそこにはヘスティアしかいない。
今聞こえた子供の無邪気な感謝の声が聞こえた。
今の声は……幻聴?
「? どうしたんだい?」
「あ、ああいえ何も……」
そんな幻聴は耳から消えていた。不思議に思いながらも俺は【ヘスティア・ファミリア】の廃教会を出て行った。
────────────────────
翌朝、
俺がいつも通りギルドに行ってエイナさんに挨拶すると、エイナさんはヒクついた笑顔で挨拶を返し、
「トワ君、すこ──────ーし“お話”しようか…………!」
有無を言わせぬ迫力で別室に連れて行かれた。
別室の椅子に座り、エイナさんと向かい合う。あと、正直な事言っていい?あっ、死んだわこれ。
「そ、それでエイナさん…………お話とは…………?」
明らかに機嫌が悪そうなエイナさんに対し、俺はビクビクしながら尋ねる。
エイナさんは笑顔だが、目が笑っていない。やだ器用
「トワ君、私ね…………ついさっき面白い噂を聞いたんだ♪」
何だろう?
エイナさんの顔は笑顔で、声も音符がつくほど軽やかそうなのに、何故か冷や汗が止まらない。今日は記念碑か?俺の墓が建てられちゃう日なのか?(困惑)
あれ?前にも同じことがあったような気がしますマル
「う、噂ですか…………?」
「うん♪ その噂の内容がね、【ロキ・ファミリア】のベート・ローガ氏が新人にしか見えないヒューマンの少年と喧嘩したって噂をね♪」
「へー、ソレハスゴイウワサデスネー」
「それでそのヒューマンの少年の容姿が、長い銀髪に銀色の目の【剣姫】そっくりな見た目だったんですって♪」
「へー、ソウナンデスカー、ジャアオレダンジョンニイッテキマース」
逃げようとした矢先にガシッと力強く俺の肩を掴んだエイナさんの額には青筋が浮かんでいた。逃げるのは良くないと思ったので俺は本心を包み隠さずに伝えた。
「トワ君弁明は♪」
「反省はしているが後悔はしていない☆」
この後正座しながら二時間程こっ酷く怒られた。
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めがみにあおう!
大変遅くなりました。感想待ってます。
怪物祭。
年に一度行われる催しだ。目玉イベントは【ガネーシャ・ファミリア】が闘技場でモンスターを調教する一連の流れを披露することだろう。
そのフィリア祭当日、何故か手紙が送られた。しかも速達で更に達筆な字で会って話がしたいと書かれていた。
「【フレイヤ・ファミリア】?確かオラリオ二大派閥の一つ……だっけ?」
「トワよ。どうかしたのか?」
「ああミアハ様、こんな手紙が……」
「むっ?なっ……!?フレイヤからの手紙とは……!」
「はい?」
大した内容ではないと思っていたが、美の神フレイヤからの直々のお達しは無視すればどうなるかわからないと言われたらしい。具体的に言って首チョンパだってさ☆
……何それ超コワイ。
「ま、まあそんな怖い顔するでない。本来なら泣いて喜ぶような事なのだ。何せフレイヤ直々に会いたいと言われるのだからな」
「先ずその前に何で一目ついただけでファミリアまで分かったんですかねぇ……。まあなんか視線は感じていましたけど」
「私も同行しようか?」
「一人でと書かれてるので……あと、魅了ってそんなヤバいものなんですか?全く想像が付かないんですけど」
「一言で言えば、恋に落ちる」
「それなんてチーター?」
あり得ねーだろ必中で
逆ハー派は面白そうだが……常日頃から男に寄られるのは嫌だな。
女の子なら大歓迎、むしろウェルカムだが、普通に女の子は好きって訳じゃなく、可愛いと思ったものが好きなのだ。それが多いのが女の子という事だ。因みに俺は攻めるタイプで受けるタイプじゃない。
とりあえず、ナァーザ団長に護身用にとナイフを貰った。まあそこそこ業物(Lv.1からすればだが)なんだが何?戦う事も視野に入れろと?まあ行く前にステイタス更新を念の為にする事にした。
【ステイタス】
力 :I0
耐久:I0
器用:I0
俊敏:I0
魔力:I0
≪魔法≫
【
・1段階回復魔法
・状態異常・呪詛の解除
・魔法範囲内にいる人間の傷の完全修復
詠唱『全ての毒あるもの、害あるものを断ち、我が力の限り、人々の幸福を導かん』
【
・2段階回復魔法
・回復持続状態を付与
・状態異常・呪詛の無効化
・魂が解離していない限り蘇生が可能
『冥府の神よ見るがいい、貴様らの役目はもう終わりだ。人は死を克服した。我が命ある限り、人々の幸福を砕かせはしない』
【
・罠魔法
・任意の場所に魔法陣を3つ設置
・魔法陣の範囲内の摩擦係数の調節権
『渾沌に七穴、英傑に毒婦。落ちぬ日はなく、月もなし。とくと我が策御覧じろ』
≪スキル≫
【
・ステイタスが上がらない
・スキル欄・魔法スロットが無限になる。
・羨望すればするほどスキルの獲得率が上昇する。
・羨望すればするほど魔法の獲得率が上昇する。
・見たい相手のステイタス閲覧権。
【
・対象とした人物とステイタスを同列にする。
・ステイタスを把握していなければ発動不可。
・発動時間地上は無制限、ダンジョン内は2日
【
・自身が可愛いと認識したものを護る時のみステイタス超越補正
「魔法……増えてる」
「驚かないのだな?」
「いやーなんか前回で感覚が麻痺しているから」
「ポーション飲むか?」
「要りません」
驚きはしたが、どうやら行動や思想によって羨望があれば習得しやすくなるチートスキルのようだ。地上では無敵、ダンジョンは長期的には無理だが……
不安しかない中、とりあえず俺は指定されたお店へと足を運んだ。
もう嫌な予感しかしないんだけど……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ここや、ここ」
祭に酔いしれる人の合間を縫って着いたところは大通り沿いにある喫茶店だった。
ドアを潜り音を鳴らすと、すぐに店員が対応してきた。ロキが一言二言かわすと、二階へと通される。
アイズがその場に踏み入れた瞬間感じたのは、時間が止まったかのような静けさだった。
そして次に嗅いだ事のある女性特有のいい匂い。
「よぉー待たせたか?」
「いえ、少し前に来たばかりだわ」
神だ。
女神がそこに存在していた。
だが、顔はフードを被っているため分からない。
「なあ、うちまだ朝食食ってないんや。ここで頼んでもええ?」
「お好きに」
どうやらロキとこの神は元々会う約束をしていたらしい。
やり取りしているところを見るに昔馴染みとでも言うのだろうか、天界での古い付き合いを感じさせるやり取りだった。
邪魔にならないように護衛の位置に控えているアイズは、フードの中の女神が銀髪であることを目にし、誰か察した。
(あれが……女神フレイヤ……)
これがアイズは初邂逅だった。
「ところで、いつになったら紹介してくれるのかしら?」
「なんや?紹介がいるんか?」
「彼女とは初対面よ?」
見目麗しい女神達の中でも殊更抜きん出た美しさを誇り、銀の双眸は見ただけで引き込まれそうになる。
【ロキ・ファミリア】と双璧を成す最大派閥【フレイヤ・ファミリア】の主神、フレイヤである。
「アイズ、こんなやつでも神やから、挨拶だけはしときぃ」
「………初めまして」
宴の夜にフレイヤはバベルの最上階から地上を見渡している。美を司る絶世の女神は顔を見るだけで全てを例外なく魅了する。
その後、軽い雑談を交えた後、ロキは本題を直球に切り込んだ。だが、アイズは意識を集中していた。気を抜けば魂まで酔わされそうなくらいの魅力だ。女のアイズとて例外ではなかった。
「率直に言うで。自分、何が目的や」
「何のことかしら?」
「惚けんなや。最近自分妙に動き回ってるようやけど」
アイズには無縁の話だった。女神フレイヤはバベルの最上階に君臨する女神だ。それが地上や神会でさえ出席するのは珍しいのだ。
それが最近、フレイヤは地上に降りているのがロキは知っていた。フレイヤの『魅了』は常に存在し、街では顔を隠さなきゃいけないくらいだ。まあフレイヤと判明するのには時間がかかったが。
「………男か」
「………」
ロキは目を細める。
互いに最大派閥同士、降りかかる火の粉は払うのは当たり前だ。【フレイヤ・ファミリア】は良識があるとは言いにくい。フレイヤの魅力に惹かれて入ったものが多い為、ある意味【ソーマ・ファミリア】のような荒くれ者達がフレイヤに忠義を尽くしたようなファミリアだ。
その空間の中、喫茶店の扉が開く。
そこには三日前に見たあの銀髪の少年だった。
「あっ」
「……ん?これ、お取り込み中?」
「ん?」
「あっ、来たわね」
フレイヤが朗らかに笑いながら、席を勧める。したたかなこの表情に少しだけ目を奪われそうになったが、
「あれれ、
「……こんにちは?」
「ああ!あの時の銀髪アイズたんやないか!!何でこんな所におるん?」
「あー、そこの女神様に聞いてください。俺も手紙で呼び出されたので」
「……なんやて?」
神ロキが神フレイヤを睨む。あれ?仲悪かったのか?
「少し確認したい事があったのよ。それに彼、面白いじゃない?」
「えっ?初対面なんですけど……」
「私の眷属が貴方を十二階層で見かけたのよ。それも冒険者登録2日もしないでね?」
「……っ!?」
「……まあ、否定はしないですけどそれが俺を呼び出すのに何の関係が?」
「ふふ、優秀な子には唾つけておきたいとは思わない?」
「うーん。なんか違う気がするのは俺の勘違いですか?」
「ううん。それも違うわ」
「違うんかい」
じゃあ何?ただ会いたいからとか言わないよね?大歓迎ではあるが絶対裏がある。だって加虐心がうずうずしちゃってるよこの人、女王さまもびっくりだよ!この人神だけどね!
「ちょっと近くに寄ってもらえるかしら?」
「んん?まあ別にいいですけど」
「フレイヤァ、まさか魅了する気ちゃうやろな?」
「そんな事しないわ。恐らくだけど
「えっ?」
フレイヤは俺の胸元にゆっくり触れた。
「ーーーーーーーーーーッッ!?!?」
触れた箇所所から全身に不快感が走る。駄目だ。まるで身体の中にある心臓を直接抜き取られてしまうような、何か大事な物が消えていくような嫌な感覚に思わず距離を取ろうとしたら体が動かない!
ダメ……これやばっ……!
「はいお終い」
フレイヤが触れるのを止めると何かしらの不快感が消えた。
だが、警戒してフレイヤから一歩下がる。下手したらマジでハート(物理)を抜かれるかと思った。
「ハァ……ハァ……い、まのは?」
「フレイヤ!何したんや!」
「何もしていないわ。強いて言うなら、彼の
「原……典…?」
「貴方はまるで鏡のよう、貴方は他人を写すけど鏡は鏡を写さない。まるで
「………?」
「多分、それは言うなれば主役ではなく……いいえ、これ以上は無粋ね。急用が出来たわ」
そう言うとフレイヤ様は店を後にして出ていった。
心臓を鷲掴みにされるような、何かを抜き取られるような感覚。
まさか…まさか……
「コレが……魅了?」
* 違います。
直接心臓を抜かれるような感覚があってたまるか。コレが恋なら男は全員告白前に心不全だろう、などと下らない事を考えながらコーヒーを啜った。
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「ふふ……成る程ね。あの医神の仕業ね?」
フレイヤがさっき触れたもの。それは一つの
医学書と言っても語弊がある。あの医学書には
そもそも、悠久を生きる神の中で完璧な蘇生薬など作れる神はいない。それは神威が有れば可能かも知れないが、下界で使用は禁止されている。
アレは世界の常識を崩しかねない。
人が神を目指すが辿り着くことは出来ない。だが、あの蘇生薬を使えば悠久を生きる神と同質のものになりかねない。
「アスクレピオスの弟子……歳は15とか聞いていたけど、本当は
軽い気持ちで言った言葉に……どれ程重要な情報があるのか。トワはまだ知らない
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