俺のほんとにしたいことは (ぱんどらぼっくす。)
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導入
だからサッカーが嫌いだ。
拙い文章になると思いますが、付き合って頂けたら幸いです。
俺はサッカーが好きだった。
小学生の頃に見た試合で、チーム全体が仲間の為にフィールドを駆け回り、ボールを奪いパスを繋ぐ。ゴールを決めて全員で喜びを分かち合う。
心が躍った。俺もこんなサッカーがしたい!
小学生だった自分はそんな風に思っていた。
この試合を見てから今まで以上にサッカーへの思いが強くなった。
クラブチームでの練習も今まで以上に真剣にやり、練習後も少しでも上手くなる為に努力をした。
コーチを捕まえ、トラップ、パス、ボールキープなど様々な練習をやっていた。
そして、とある強豪チームとの試合で、チーム全員が勝つために力を合わせた。味方のミスも全員でフォローしあい、ゴールを奪われても奪い返す。最後に逆転のゴールを決め、試合終了の笛が鳴る。
あの時のことは今でも忘れることはできない。そのくらい嬉しかった。試合に勝てたのが、なによりもチーム全員で戦い、勝利し、喜びを分かち合えたのが。
だからこそ、中学生となった今、サッカーが嫌になっているのかもしれない。
小学生の頃にほかのチームメイト以上に努力をしたこともあり、技術的には、ほかの人より頭一つ抜き出ていた。それでも、同年代や先輩にだって負けたくなかったから、さらに努力をした。
そのかいもあって、一年生ながらレギュラーとして試合に出ることができた。最初の頃は良かった。自分がミスをしても誰かが支えてくれた。試合に負けてもどこが悪かったかみんなで反省した。
負けたのが悔しかった。だからもっと練習をした。次は勝つために。
気が付いたら、周りの誰よりも上手くなっていた。そのころには、チームの雰囲気は変わってしまっていた。
ーあいつが一人でなんとかしてくれるでしょ。
ー全部あいつがやってくれるよ。
試合をしても、支えてくれる人はいなかった。味方がパスをくれても、次の動きがない。
フィールドに味方が10人いても試合をしているのは自分ひとりだけ。そんなワンマンプレーに変わっていった。
試合に勝った。みんなが喜んでいる。なのに嬉しくない。
試合に負けた。みんなが責める。どうして自分だけ?
こうなってしまったのは、自分が悪いのか?試合に勝ちたいから努力した。それが間違っていたのか?
わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。
そしてサッカー部をやめた。みんなに止められたが、もう何も聞きたくない。
ただ一人、公園でボールを蹴る。いつからサッカーが楽しめなくなったんだろう。
2年生になり、親が転勤することになるらしい。それに伴い転校が決まった。
場所は東京らしい。そういえば、東京にはフットボールフロンティアで40年間無敗の帝国学園がある。
「そこなら、何か変わるかな。変わんないのかな。別にいいか。」
転校先は徳康中学校というそうだ。ちょうど1年前にサッカー部が創設されたらしい。
帝国学園ではなかったことにがっかりしている自分がいる。転校先でサッカーをしようなんて思っていないのに。
引っ越しが終わり、初登校の日になった。
学校から早めに来るように言われていたので早めに家を出る。
学校に着くと、朝早いのにかかわらず、グラウンドで朝練をしている人たちがいた。全員が懸命に1つのボールを奪い合いあっている。
「あれがサッカー部か。人数も10人しかいない。だけどみんな楽しそうだ。」
ーそこに自分も入れたら、なんてことは考えても言えなかった。
「危ない!」
その声に意識を戻され、目の前にボールが飛んできた。咄嗟ではあったが難なくトラップし、ボールを蹴り返す。
「サンキュー!凄いキックだなぁ!」
声をかけてきた人がいたが職員室に行かなければならないと伝え、その場を後にする。
ボールを蹴った感覚がまだ残っている。
ーああ、サッカーがしたい。でも前みたいな思いはしたくない。
なんで、サッカーのことを考えるとこんな気持ちになるんだろう。
「ああ、きもちわるい。」
だから俺は、サッカーが嫌いだ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
以上が本主人公の身の上の話となります。
次回より、皆様から頂いたキャラクターを出していきたいと考えています。
誤字・脱字などありましたら、報告していただけると嬉しいです。
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サッカー部への勧誘
グラウンドを離れ、職員室へと向かう。やがて、目的の職員室にたどり着く。数回ノックをし、中からの返事が返ってきたことを確認してから、
「失礼します。転校してきた結乃です。」
そう一言告げてから、室内に入る。
「結乃君、こっちである。」
声のする方を見てみると、部屋の奥に強面の男性がいる。どうやら先ほどの声の主は彼らしい。彼のもとまで行き、あいさつをする。
「ウム、おはよう。吾輩が君のクラスである2年2組の担任を務める坂本英彦である。時間通りの行動であり安心したのである。吾輩のクラスにいる遅刻魔にもぜひ見習ってほしいものだ。」
そう笑いながら話す。どうやら転入先のクラスには遅刻魔がいるらしい。
「君にはSHRの時に吾輩と共に教室に向かってもらうのである。吾輩が合図をしたら教室内に入ってきてくれたまえ。」
「わかりました。」
-それでは行くのである。そう言った先生の後に続き教室へと向かう。
「そういえば、君は前の学校ではサッカー部に入っていたのであったな。」
「あ、はい。」
急に話しかけられたこともあり、少しドキッとした。
「吾輩は、サッカー部の顧問をしているのである。昨年に創設されたばかりであって部員は少ないが、皆いい表情で練習しておる。今朝もグラウンドで練習していたであろう。」
「はい、みんな楽しそうにやっているように見えました。」
声が暗くなってしまう。その様子に心配したのか先生が声をかける。
「どうしたのだね?転校初日で緊張しているのか。なに、心配いらない。吾輩のクラスは問題児を除き、皆良い生徒である。それよりも、どうかねサッカー部に入部しないかね?」
「...考えてみます。」
ーサッカーはもうやめたんです。頭ではそう思っていても口では言えなかった。
ああ、中途半端な自分が嫌になる。やめるって決めたのに、結局サッカーから離れられないでいる。
そして、教室につく。先生にここで待つようにといわれ、教室のドアの近くで待つ。
すると、正面から一人の少女が走ってくる。
「やばい!!また遅刻だ!また坂本先生に怒られちゃうよ!」
その言葉を聞いて彼女が件の遅刻魔であることが分かった。相当に焦っていたのか入り口付近にいた自分に気づくことなく教室に入っていく。
「---に入ってきてもら「ごめんなさい!!遅れました!!」舞埼!君はまた遅刻をしてきたのであるか!!」
「先生、これには深いわけが...」
「君の言い訳は聞かん。早く席に着くのである。君が急に入ってきたせいで転校生が入ってこれないではないか。ゴホン、では結乃君入ってくるのである。」
中でひと悶着あったみたいだが、名前を呼ばれたので教室に入ることにする。教室に入り黒板の目まで行く。教室内の視線が自分に集中する。先生に促され自己紹介をする。
「転校してきた結乃要です。よろしくお願いします。」
「結乃君の席は窓際の空いている席である。席についてくれたまえ。」
先生の言葉に従い席に着く。すると、隣の席に座っていた先ほどの少女が話しかけてくる。
「キミ、さっきボール蹴ってくれた人だよね!ボクは舞埼友紀!!よろしくね!!サッカー部に入るの?」
「よろしく。部活に入るかはまだ考えてる。」
「えぇ~、あんなすごいキックができるのにもったいないよ!」
「舞埼!SHRの最中である!私語はやめるのである!」
「ごめんなさい!」
ーやっぱりあの時ボールを蹴り返さない方がよかったのか。なんて考えたが、サッカー部に誘われたことは素直にうれしかった。
本心ではサッカーがしたいと思ってる。でもそれはできない。自分のせいでこれ以上サッカーを嫌いになりたくないから。
チームのみんなで戦うはずのフィールドには俺しかいない。そんな経験はもう二度としたくないから。
近いうちに、そう思っている自分が変わるきっかけが来るということをこの時はまだ知る由もなかった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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本編
気持ちを偽るな
リアル事情でバタバタしておりました。
騒がしかったSHRが終わり、1時間目が始まる前の少しの時間には、転校生にとってお約束ともいえる質問攻めが起こった。
それぞれの質問に対し、一言二言で返しているうちに授業が始まる。そんなことを繰り返しているうちに1日の授業がすべて終わり、放課後となる。
「結乃君は部活はやるの?まだ決めてなかったらサッカー部なんてどうかな!!すっっごくたのしいよ!!」
舞埼友紀と名乗った彼女は、アホ毛をしっぽのように動かし興奮した様子で話しかけてきた。
「悪いけど、まだサッカー部に入るかは、決められない。まだ引っ越したばっかりで、この街に何があるかわからないから帰りがてら見て回ろうと思ってる。」
「そっかー。じゃあ見学は?それならいつ帰ってもいいでしょ?」
「すまない、舞埼はいるか?」
厳つい雰囲気を纏うでかい男子が教室の入り口から声をかける。自分と会話をしている舞埼を見つけ、こちらに地数いてくる。
「聞いたぞ、舞埼。また遅刻したみたいだな。」
「げ、小代。」
「げ、とはなんだ。どうして朝練には出たのにSHRに遅れたのかは聞かないが、遅刻しないように気を付けてくれ。2年生となった今、後輩に恥ずかしいところは見せられないだろう。」
「ゴメン。次から気を付けるよ!ところで小代君、こっちが結乃君でサッカー部の入部希望者だよ!」
小代に怒られたことで、一瞬だけシュンとした舞埼であったが、すぐに元気を取り戻して言う。
「本当か!?…俺は、小代 辰飛己。サッカー部の部長でポジションはゴールキーパーだ。よろしく頼む。」
「いや、まだ入ると決めたわけじゃない。とりあえず今日は見学をさせてもらうことにする。」
「歓迎します。ぜひ見ていってください。」
古代の後に続き、グラウンド付近まで移動する。
グラウンド付近に来ると、すでに何人かの生徒がボールを蹴っていた。
ここで待っていてくれと言って着替えるため部室へと向かう小代を呼び止め、
「悪いけど、今日は少し用事があるから少し見たら帰るつもりなんだ。」
「そうなのですか?ならば時間の許す限り見ていってください。」
そう言って今度こそ部室へと向かって行った。
小代が練習着に着替えグラウンドに来ると本格的に練習が始まる。
パス練習や、1対1といったボールキープ、ボール奪取の練習が始まる。
みんなが真剣に、そして楽しそうにサッカーをしている。
-彼奴らは楽しそうにサッカーをしているんだな。
そう思えるほどに、必死でボールを追いかける彼らは輝いていた。
「あんなに楽しそうにやってるのに、俺が入ったらまたチームを壊しちまう。」
そうして俺はグラウンドを後にする。
学校の帰り道にサッカーができるくらいに広い公園を見つけた。練習風景を見たからだろうか、無性にボールが蹴りたくなってきた。
一度家に帰り、運動できる服装に着替え、ボールをもって公園に向かいボールを蹴り始める。
所々で技を入れるようにリフティングを行う。エラシコやクライフターンといったフェイントを混ぜつつドリブルを行う。
ーあぁ、やっぱりボールを蹴ると楽しくなる。試合がしたい。ボールを蹴ることに夢中になっていたあまり、時間を忘れていた。
気が付くと、いつの間にかあたりは暗くなってきていた。
ボールを蹴っていると不意に聞き覚えのある声がする。
「随分と楽しそうにやっているんですね。本当にサッカー部に入るつもりはないのですか?」
声の主は小代だった。俺は小代がいること気が付くとすぐさま顔を顰める。
「楽しそうにやってると思ったら、暗い顔をしていったいどうしたんですか?何かサッカーができない理由でもあるのですか?」
小代の問いに正直に答えようと思った。ここで嘘をついてしまったら、サッカーが好きという自分自身にまで嘘をついてしまうような気がしたから。
「俺は、前の学校のサッカー部を滅茶苦茶にしたんだ。楽しそうにやってた彼奴らを俺は、だから俺にサッカーをやる資格なんてないんだ。」
「なら、どうしてさっきまで楽しそうにボールを蹴っていたんだ。君がサッカーが好きだってことはすぐにわかりました。前の学校での事なんて気にする必要なんてない。俺たちとサッカーをしよう。」
「やめてくれ。俺は、独りでいいんだよ。」
「サッカーが好きな気持ちに嘘をつくな!」
その言葉が心に突き刺さる。頭の中が真っ白になり、何も言い返せなかった。
「明日、放課後に勝負をしよう。貴方が勝ったのなら、もう勧誘することはしません。俺が勝ったなら、俺たちと一緒にサッカーをやろう!」
-絶対に勝ちます。そう言い残し、小代は去っていった。
しばらく何もできなかった。勝負なんて、彼奴が勝手に言ったことだ。受ける必要なんてない。そんな風に思っていた。
ー翌日の放課後、俺は小代との勝負の為にグラウンドに向かっていた。
早く試合の場面が書きたいけど、そこまでつなげる話もこだわりたい。
あ、これダメなやつかもしれん。
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全力勝負
本小説では、必殺技の威力ゲームシステム上の数値では考えてはいません。
なんでこの技が簡単に破られるのか、と考える方がいるかもしれませんがこのような理由ですのでご了承ください。
グラウンドへ向かっている間、ずっと考えていた。
俺は、またサッカーをすることができるのか。今まで自分の本心を隠していた殻は小代によってヒビが入った。これは自分自身と向き合うための試練なのではないか。
そういった気持ちと、これを最後にサッカーから離れよう。そういった気持ちに挟まれていた。
グラウンドに着いた。すでにサッカー部の面々は揃っているらしい。
彼らの自分に向ける反応は様々だ。
好奇心の目を向けるもの、値踏みをするように見るもの、我関せずの反応をするもの。
そんな彼らの前を横切り、小代の前まで行く。
「ちゃんと来てくれたみたいだな。」
「自分の好きなものから逃げたくはなかったからな。」
古代の言葉に対し、ぶっきらぼうな態度で答える。
「このグラウンドに慣れていだろう。何本か蹴ってグラウンドの感覚をつかんでもらって構わない。」
「そうさせてもらう。」
勝負を始める前に、何本かシュートをするなどしてコートの感覚をつかみ、本番に備えた。
「では、始めるとしよう。勝負は君がペナルティエリアの外からシュートを放ち、俺がそれを止める。シュートを止めれば俺の勝ち、止められなければ君の勝ちだ。3回中先に2回勝った方の勝ちだ。」
「わかった。」
そういった後、小代はゴールの前に立つ。彼からとてつもないプレッシャーを感じる。それと同時に、なんだか懐かしい気がする。こんな風に勝負をするのは何時ぶりだろうか。
これから起こる勝負を前に、サッカー部の面々はそれぞれの思うことを話していた。
「彼奴が舞埼と小代が誘ったていうやつか?チームメイトになるかは知らんが、俺様が見極めてやろう。」
「そうだよ!小代との勝負もきっとすごいものになると思うよ!!」
「キャプテンとの勝負、おれスッゲー楽しみだ!」
ひときわ大きな体を持つ茶髪の男子と、これから始まる勝負に興味津々といった様子の舞埼が話をしていて、元気のある小柄な男子が食い入るように見つめる。
「んにゃー、かりぇをどこかで見たことがありゅ気がすりゅんだよねぇ。」
「綿雲さんが見たことあるならどこかで活躍していた選手だったんですかね?」
ふわふわとした印象を与える活舌の悪い女子と、雪のように白い長い髪を持った少女が話す。
「あの人、相当鍛えているわね。」
「そうみたいだね~。さっきシュートしてた時も体の軸がまっすぐだったし。」
「体の軸がまっすぐってすごいことなんッスか?」
「実際はすごいことだと思うッスよ。ジブンはどうしても重心が利き足の方に傾いちゃうので。」
冷静に結乃の分析を行う若干つり目の女子に、真面目そうな銀髪の女子が続く。
それに対し、活発な男子と、ヘッドフォンを首にかけている女子が話す。
そして、勝負が始まる。
1本目。
俺はボールの右側を擦り上げるように横回転をかけて、上がったボールにボレーシュートを行う。
『スパイラル...ショットォ!』
蹴られたボールは螺旋状に空気を裂きながらゴールへと向かう。
それに対し、小代は灰色のオーラを纏い始める。
「ハァァァァァ!『マジン・ザ・ハンド!!』」
小代の声に呼応するように背後にガラクタによって形作られた、所謂「ガラクタノマジン」が現れる。マジンの巨大な手が向かってくるボールを受け止める。
しばらく拮抗した後、ボールは完全に小代の手に収まった。
「キミの実力はこんなものか!!全力でこい!」
今のシュートは本気ではあったが、全力ではなかった。小代のことを甘く見ていた。いや、俺自身が自惚れていたんだ。全員が俺よりも下なんだと、そんな考えだから止められた。
向こうは全力の勝負を望んでるんだ。なら、俺も全力で答えなければ、サッカーを愛する者に対して無礼に当たる。心は決まった、この後どうなろうと今の俺の全力をぶつけてやろう。
「次は、次こそは決める。」
2本目。
「ありがとう。お前との勝負のおかげで気持ちが吹っ切れた。この後がどうなろうと、俺は俺の全力でお前からゴールを奪う。行くぞッ!」
俺はボールを頭上へと蹴り上げる。
『ゲイ...』
蹴り上げたボールに全力を込めたオーバーヘッドキックを行う。
『ボルグ!!』
ボールは、紅いオーラを纏った鋭い槍のようになり、一直線にゴールへと迫る。先ほどのシュートとは威力も速さも違う、俺自身の全力だ。
小代は先ほどと同じようにオーラを身に纏い、自らのマジンを顕現させる。
『マジン・ザ・ハンド!!』
マジンの巨大な手に紅い槍が突き刺さる。
「ウオオオオオオオオッ!!」
そして、紅い槍となったボールは、マジンを貫くようにしてゴールに入った。
「これが、君の全力か。今のシュートから、君の思いは伝わった。次は必ず止める。俺たちとサッカーをしてもらうために!」
3本目。
「これが最後だ。俺は、必ずお前からゴールを奪う!」
「望むところだ!必ず止める!」
「「勝負ッ!!」
俺は再び全力を込めたシュートを放つ
『ゲイ...ボルグッ!!』
シュートを放った瞬間にわかった。これは、今までで1番威力の籠ったシュートであると。
そして、小代もまた感じ取った。このシュートは先ほどよりも強くなっていることを。
「ッ!…見事ッ…!だが、止めて見せるッ!」
小代は、細い目を見開き、前傾姿勢を取る。そして灰色のオーラを出し、向かってくるシュートを睨み付け、両手を強く握りしめる。
すると、先ほどとは違い、背後から「古びた部品や歯車等をごちゃごちゃにしてできた竜の咢」が現れる。
「『屑鉄の咢』!!」
その竜の咢は向かってくる紅い槍を小代ごとかみ砕く。
大きな力と力のぶつかり合いにより砂埃が舞い上がる。
小代は止めたのか、止められなかったのか結乃を含めサッカー部全員が砂埃が収まるのをじっと見つめる。
やがて、空を舞っていた砂埃が消える。そこには、両手と自分の体で挟むようにシュートを受け止めていた小代の姿があった。
小代はニヤリと笑って
「止めたぞ。この勝負俺の勝ちだ!」
そう高らかに宣言した。
――――悔しい、とてつもなく。
自分の中で最高のシュートが止められた。でも、悔しさのほかにどこか満足をしている自分がいた。
「約束だ。サッカー部に入ってくれるな?」
「ああ。約束だからな。また、勝負しよう。次は必ず勝つ。」
「何時でも相手になろう。これからよろしく頼む、要。」
こうして俺は、小代との激戦の末サッカー部へと入部したのであった。
今回まで小代を主軸に添えたストーリーとなりましたが、次回以降ほかの皆様のキャラクターを絡ませていこうと考えております。
ここまでお読みいただいたことに感謝いたします。
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初めの一歩
次回以降も日が開いてしまうことがあるかもしれません。
今更になりますが、こんな作品にお気に入り登録をしていただいた方々に感謝いたします。
小代との勝負の結果、俺はサッカー部に入部することになった。
これから、新たな環境でサッカーをやり直す。つい、昔を思い出してしまう。
あの頃のように、全力でサッカーを楽しむことができるだろうか。
そして、夜が明け朝が来る。
昨日からではあるが、部活としてサッカーをする準備をしている自分に両親が喜びながらもどこか不安を感じながら声をかけてくる。
その声に「心配いらないから」と返した。あの日をきっかけに自分自身が変わり始めていることを改めて実感することができた。
そして今、俺は学校へと向かっている。今朝は朝練の予定が無いらしい。
その道中、後ろから声を掛けられる。振り向くとそこには、ふわふわとした雲のような印象を感じる少女がいた。
「おはよ~。きみ、ゆにょくんだよね?きのーきゃぷてんと勝負してた。」
彼女に対してあいさつを返す。
「あーしは、わたぎゅ、わちゃ・・・えありらよ?いや~、きのーはしゅごかったねぇ~。」
「勝負なんて久しぶりだったからな。」
「サッカー部にゅは、きょーきゃらきゅるの?」
「ああ、そのつもりだ。」
「そっかー、じゃあ楽しみにしちぇるね!」
そんな会話をしているうちに学校へと着く。
転校してから3日もたてば、それなりに学校でも慣れてくる。しかし、人付き合いが苦手な自分には、まだ気兼ねなく話すような友人はいない。
自分の席に着き、時間ギリギリに教室へと入ってくる舞埼に担任である坂本先生が小言を言う。そんな風に一日が始まっていく。
そして授業が終わると、舞埼がせかすように話しかけてくる。
「今日の授業は終わったから部活の時間だね!!早く行こうよ!!」
そんな彼女の後を追い、グラウンドへと向かう。
グラウンドに着くとそこにはすでに部員全員がそろっていた。
「結乃君をつれてきたよ~!」
舞埼の声に全員が反応する。そして、小代から自己紹介をするように言われる。俺は小代に言われた通りに、みんなの前に立ち自己紹介を始める。
「結乃要。前の学校ではボランチをしたり、トップ下をやってた。事情があって少しサッカーから離れてはいたが、こうしてまたサッカーができることをうれしく思う。これからよろしく頼む。」
自己紹介が終わると朝出会った、えありという少女が声をかける。
「サッカー好きなりゃ大歓迎にゃのよー!――――――結乃くんっ。サッカー部へ、ようこそなのよっ。」
こうして俺の徳康中サッカー部でのサッカーが始まった。
今日のサッカー部の練習は、部員の自己紹介から始まった。
最初に自己紹介を行ったのは、銀髪のロングヘアーで前髪の1部を三つ編みにしたスレンダーな少女だ。
「私は桜羽 美咲よ。ポジションはトップ下をやってるの。これからよろしくね。」
「次は、俺様だな!俺様は...いずれこの学校の伝説となる漢!盾神 獅子雄様だッ!」
そういったのは長い茶髪と大柄な体を持つ獅子のような男子であった。
「初めまして!私、氷上 真白です!ポジションはフォワードです!」
雪のような真っ白な長い髪を1つに括った碧眼の少女が自己紹介をする。
「あらたみぇまして、あーし、えありらよ。よろしくにぇー? ……またかんりゃっ?」
「舞埼 友紀!!ポジションはサイドハーフ!よろしく結乃君っ!!」
「2年は俺で最後だな。キャプテンでゴールキーパーの小代 辰飛彦だ。一緒にサッカーができることをうれしく思う。」
えあり、舞埼、小代の順で自己紹介を行う。
「次は1年だな。風間から順に自己紹介をしてくれ。」
小代の言葉に、
「おっ、自分ッスか?自分は風間 春翔12歳、趣味はサッカーとサッカーと……あとサッカーッス!」
そう答えたのは元気のよい男子であった。
「次はおれだな!おれ、日ノ丸 昇!宜しくな!!サッカーは始めたばっかだけど、努力してすぐに追いついてみせるぜ!」
風間の次に言ったのは、 跳ねまくった赤髪、オレンジ色の目、八重歯が特徴の小柄な男子であった。
「次は自分ッスね。どうもッス、ジブンは弓月 来夢。よろしくッス。」
ウェーブのかかったセミロングの茶髪に、透き通るような翡翠色の瞳をしていて首にヘッドフォンをかけた少女が自己紹介をした。
「最後は私ね。葛城 真由美よ。よろしくね。」
肩のラインまで伸ばした明るめのブラウンの髪を外にはねさせて、若干つり上がった碧色の瞳を持つ少女が名乗った。
こうしてサッカー部の部員の自己紹介が終わった。
自己紹介の後は、軽いランニングの後に柔軟を行う。それから本格的な練習が始まった。
このサッカー部はパスを繋いで攻めあがるサッカーを意識しているとのことで、練習は主に動きながらパスをするような練習であった。
部員が俺を含めて11人しかいないため、最後のミニゲームのような練習でも半分ずつに分かれ、小代の守るゴールを攻める攻撃とそれを防ぐ守備を代わる代わる行った。
そうして練習が終わると、サッカー部の顧問でもある坂本先生がやってくる。
「来るのが遅くなってすまないのである。君たちに朗報があるのである。」
「朗報とはいったい何ですか?」
チーム全員を代表して小代が訪ねる。
「練習試合が決まったのである。対戦相手は、つい先日あの帝国学園に勝利したという雷門中である。」
「雷門中って、確か炎のエースストライカーって呼ばれてる豪炎寺修也がいるところじゃいたはず。」
「豪炎寺さんに会えるんですかっ!私、豪炎寺さんに憧れてサッカーを始めたんです!」
葛城のつぶやきに氷上が興奮した様子で答える。
「試合はいつなんですか!?」
楽しみで仕方がないといった様子の舞埼が聞くと、坂本先生は
「急ではあるが、次の土曜日つまりは明後日だ。昼頃から始める予定である。現地集合になると思うので、各自遅れないようにするのである。」
坂本先生の言葉の後に部員全員が試合ができる喜びから大きな返事をする。
そして学校の帰り道、俺は小代と話していた。
「ついに試合ができるまでに至ることができた。この調子で今年こそフットボールフロンティアに行くぞ。」
小代からは静かではあるが激しく燃えている闘志を感じた。
「まずは、雷門中との試合だ。帝国に勝っている以上、気を引き締めないとだな。」
「ああ、俺自身も久しぶりの試合だ。足を引っ張らないように気を付ける。」
こうして二人とも、いや部員全員が雷門中との試合に向けて気持ちを高めていた。
それなのに、小代との勝負によって吹っ切れたはずの自分の中で、なぜか不安になっている自分がいた。
お読みいただきありがとうございました。
次回から試合の方に入っていきます。
自分の思い描くように文章を起こすことができるか不安ではありますが頑張ってみたいと思います。
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試合の前に
雷門との練習試合が行われる前日、全員が雷門との試合に向けモチベーションを高めていた。
サッカー部が立ち上がってから初めての試合だからということもあり、前日の練習にも力が入る。
現在、キーパー以外のメンバーを半分に分けたミニゲーム形式の練習を行っている。
「行きます!『疾風ダッシュ』!」
「ッ…速いッ」
氷上が疾風の如くのスピードで葛城を抜き去る。
「俺様がいる限り、ここは通さんッ!『ダッシュトレイン』ッ!!」
盾神が豪快なタックルで氷上からボールを奪う。
「今度はこっちの番だ!いけっ桜羽!」
「任せて!」
盾神から桜羽へとボールが渡り、攻守がかわる。
「(空いているスペースは、右側だね)来夢ちゃん、お願い!」
「了解ッス!一気にいくッス!」
「ごめん!裏を取られた!」
桜羽が舞埼が上がりすぎていたことで生じていた右側のスペースへ向けてロングパスを行い、弓月がそのパスを受け取りそのまま、サイドを攻めあがる。
「それ以上は行かせねぇッス!『サイクロン』!」
「残念、それは『残像』ッスよ!」
風間が弓月を止めるために必殺技を繰り出すが、弓月は残像によるフェイントを用いてそれを回避する。
「日ノ丸クン!後は任せるッス!」
「任せろッ!」
「自由にやらせるな!」
「うん!いっくよ~」
弓月から日ノ丸へとボールが向かうが、それを阻止するために綿雲が距離を詰める。
「うおッと!」
綿雲が距離を詰めてきたことで、日ノ丸が焦り、トラップミスをしてしまう。
トラップミスによって転がったボールは葛城の目の前へと転がってきた。
「おっと、ラッキー♪このボールはもらうわね!」
ボールを拾った葛城は、そのままゴールへと向かう。そのままゴールを狙える位置まで来ると、シュート体制に入る。
「行くわよッ!「やらせない」…嘘ッ!」
シュートを打つ寸前、結乃のスライディングによってボールは足元から離れてしまう。
「セカンド!」
結乃がこぼれたボールを取るように同じチームに声をかけるが、それよりも速く氷上がボールを拾う。
「決めます!『アイシクル...トルネード』ッ!!」
ボールを打ち上げ、追うようにして氷を纏いながら回転し飛び上がる。ゴールへと狙いすまし、ボールに力を籠めるようにシュートを放つ。
「止める!『マジン・ザ・ハンド』!」
小代のマジンとぶつかり合うが、マジンを押しのけるようにボールはゴールへと突き刺さる。
「見事。明日の試合に向け気合十分みたいだな」
小代が満足そうに言う。
「ええ、明日は憧れの豪炎寺さんと試合ができるんです!変なところは見せられないです!」
「真白ちゃんすごく楽しみにしてたもんね!」
今日の練習はここまでにしようと小代が言ったことでいつもより早く練習は終わる。
「そういえば、明日試合する雷門中ってどんなチームなんだ?」
日ノ丸が問いかける。
「ああ、日ノ丸が言ったように、明日の試合に向けて雷門中の分析を行っておきたくてな。それで今日は早めに練習を切り上げたんだ。綿雲、雷門中についてデータはあるか?」
「うん!ありゅよ~。」
チームメイトの目が綿雲へと向かう。
「まじゅはね、りゃいもん中は昔ものすっご~くちゅよいチームだったみたい。なんだけどいみゃは、あーしたちとおんなじほの様に最近試合ができりゅようににゃったみたいらよ。」
(※訳:まずはね、雷門中は昔ものすごく強いチームだったみたい。なんだけど今は、私達と同じように最近試合ができるようになったみたいだよ)
「そりぇで、チームにちゅいてにゃんだけど、やっぴゃり注意しなくちゃにゃのは、真白ちゃんのあきょがれでもある豪炎寺くんだね。でんしぇつのエースシュトライカ―っていわれるきゅらいすごいフォワードらよ!」
(※訳:それで、チームについてだけど、やっぱり注意しなくちゃなのは、真白ちゃんの憧れでもある豪炎寺くんだね。伝説のエースストライカーって言われるくらいすごいフォワードだよ!)
「あとは、キーパーのえんどーくんかなぁ。かりぇがりゃいもんの支柱らよ。なんでもかりぇは1人でサッカー部をたちあぎぇて、今のチームをちゅくったみたいらんだって」
(※訳:あとは、きーぱーの円堂くんかなぁ。彼が雷門の支柱だよ。なんでも彼は1人でサッカー部を立ち上げて、今のチームを作ったみたいなんだって)
「そうか、大体わかった。あと綿雲、無理に早くしゃべろうとする必要はない。話しやすい速度で構わないからな」
早くしゃべることによって、かんでばかりの綿雲に小代が声をかける。
「明日の試合では、まず注意するのは豪炎寺でいいな。彼には1人がマークにつき、もう一人がそのカバーのように最低でも2人で対処しよう。」
「ですが、豪炎寺さんが警戒されるのは向こうも分かっているはず。豪炎寺さんのみを注意するのは危険ではないかしら」
小代の提案に葛城が意見を述べる。
「ああ、それも考えてある。今回の試合では、こちらの攻撃については葛城と桜羽から組み立てようと思う。相手の攻撃に対してだが、要を中心に対応してもらいたい。」
「俺が中心でいいのか?」
「相手のフォワードにはディフェンスの前で止めてもらいたい。ボランチの要にまず当たってもらい、ディフェンス陣にはそのカバーをしてもらって確実に止めよう。前からプレッシャーをかけるんだ、当然裏を狙ってくるだろう」
「それをジブン達、サイドバックで止めるってことッスね」
ディフェンス陣の方で話がまとまると、次は攻め方について話し合うこととなる。
「攻める時だけれど、日ノ丸や友紀の2人、場合によってはサイドバックの方も使ってサイドから崩すのが賢明ね」
「私もそれがいいと思う。あえて真正面からじゃなくてサイドから攻撃すれば、その分真白ちゃんが打ちやすくなると思うし」
「それなら、私がしっかり決めなきゃですね。緊張するけど、やってみせます!」
攻撃陣でも意見がまとまり、明日の試合に向け士気は高まった。
こうして俺たちは雷門中へと乗り込んだ
表現の仕方が難しい。
語彙力が欲しい。
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VS雷門 ①
すみません、今回は中途半端で終わります。
試合への興奮からかいつもよりも早く目が覚めた。
そのまま目がさえてしまったのでランニングでもしようと思う。
ランニングの準備をし、家を出る。
家を出てしばらくすると知った顔と出会った。
「あら、結乃もランニングかしら」
「いつもより早く目が覚めたからな」
「私は、この辺りを3周くらいするつもりだけれど、あなたも来る?」
「いや、遠慮する」
「そう...。じゃあまた後で」
そう葛城と言葉を交わし、葛城とは別の道へと走りだす。
しばらく走っていると、今度は盾神と出会った。
「おぉ、結乃か。お前も俺様と同じくランニングか?」
「そんなところだ」
「今日の試合だが、俺様がいるんだ。お前の出番なんてないかもな。ガハハハッ」
そういって盾神は走り去っていく。
ある程度走った後、最初よりもペースを上げ、家へと向かう。
家に帰った後、汗を流し昼からの試合に向け準備を行う。
少し早めに家を出て、駅へと向かう。
駅にはすでに何人かのメンバーが着いていた。
電車の時間が近くなってくるにつれ、1人また1人と増えていき、全員がそろった。
「全員いるな?この後の電車に乗って雷門中へと行くわけだが、移動中に迷惑になることはしないように」
「そんなこと心配しなくても大丈夫だよ~」
小代の声掛けに桜羽が明るく返す。
電車にに揺られ、目的の駅へと到着しそこから雷門中へと向かう。
「初めての試合ッ!スッゲーたのしみだぜ!」
「頑張って勝とうね!」
そんな他愛のない会話をしながら歩いていると雷門中へと到着する。
雷門イレブンはすでにアップを開始しており、こちらに気が付くと、バンダナを巻いた少年が元気よくこちらに駆け出してくる。
「徳康中か?俺は円堂守!今日はいい試合にしような!」
「徳康中キャプテンの小代だ。今日はよろしくお願いします」
両キャプテンのあいさつが終わるとこちらもアップを始める。
「豪炎寺さんは...あ、あそこに!」
氷上が豪炎寺を見つけると、ちょうどゴールへ向けてシュートを放ったところであった。
「さすが、豪炎寺さん!私も負けてられません!」
「鋭いシュートだ。豪炎寺はフリーで撃たせるのはまずいな」
「ああ、豪炎寺へのマークは頼むぞ。要」
「任せろ。だが、もう一人のFW、もっと警戒した方がいいかもしれない」
豪炎寺のシュートを分析し、試合へ向けて作戦を考えた。
一方、雷門中でも徳康中の分析を行っていた。
「相手のMFが厄介そうだな。カバーの動きが速い」
「あれを突破するには大変そうですね」
青い髪の少年と最も小柄な少年が話あう。
「向こうはやっぱり豪炎寺を警戒してるな」
「上等だ!雷門のストライカーは豪炎寺だけじゃねぇって教えてやる!」
「その意気だ染岡!お前のシュートを見せてやれ!」
「おう!俺のドラゴンクラッシュで先制してやる!」
豪炎寺が警戒されていることで逆に燃えている。
両チームともに試合に向け準備が整い、試合が始まる。
これが徳康中の初陣となる。
多分書き直すかも。
試合が不安になってきた。
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