最強!最強!!最強!!! (ヒイラギP)
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最強!最強!!最強!!!

テスト前だわー勉強だっっっっるいのだわー思いつき小説だわー人気出たら連載にするのだわー


俺は生まれてこのかた一度も勝ったことがなかった。だが、自分が強いと信じて疑わなかった事から、妄想最強の男と呼ばれ、悪意はなかったものの、村の人達に散々いじられまくって、恥ずかしい思いをしていた。

そんな俺に転機が訪れたのは、曇天を貫いて下界に神々が降臨したあの時だ。

神々は、俺たちにレベルとスキルの概念を半ば強制的に押し付け、勝手に作った教会で今日もカードゲームや宴会などで馬鹿騒ぎしながらこの世界に数年後生まれると予言された魔王の討伐を待っている。

そして、お待ちかねの俺のスキルは幻体同一と言うユニークスキルだった。

その真価に気づいた時にはもう我慢できずに叫び散らしながら村中を走り回ったものだ。

なんと幻体同一は自分の想像した自分になると言う世界の均衡を破壊して余りある恐ろしいスキルだったのだ。

その規格外さを表すように今、俺は早馬すら置いて行くほどの速さで駆け抜けている。なぜなら、俺の仕事は郵便配達だからだ。

受け取った荷物は村長から、先日村を出た商人に対する緊急の手紙だ。どうやら盗賊の目撃情報がある道をうっかり進路に組み込んでしまったらしく、訂正したコースと謝罪の言葉を込めて手紙にしたものを届けろ。と言うことらしい。

商人は馬車で移動しているので、馬より早い俺が行くことが人材的にも物資的にも効果的だ。浮いた人件費や食料費分、俺のお賃金が少しだが高くなる。配達業を個人でやる事に決めたのは、これが理由でもある。もう一つは、照れ臭いが、世界のどこかのドラゴンの巣にいる先輩に憧れてのことだ。邪竜ファフニールとの激闘の末に、異種間での愛に目覚めてその世界に邪竜ファフニールの子孫をだいたい年に30匹は生み出し続けている俺の敬愛する人類の敵事、ユーク・マイロード先輩は、俺の一人称が僕だった頃にこの村の郵便配達の仕事を個人でしていた。

糸のように伸びきった風景が視界の外に流されて行くのを感じながら、風より速く森を抜けようとすると、何やら妙な音がした。

それは、足音のような、だが金属が擦れるような音もする。

王子がこの村に来るのはまだまだ先のことなのに武装した集団がいるのはおかしいと思い、気配を無くして背後からその集団を監視する。

その集団はナイフに近い小ぶりな短剣を弄びながら、何やら道の脇に潜んで何かを企んでいるようだった。

というかこいつら絶対盗賊だろ。と思わざるを得ないほどに柄と人相と雰囲気と運と人間性が悪いその男たちは、ガラガラと音を立ててやってきた馬車を確認するとその醜悪な顔をさらに歪めて騒めき立った。

その馬車は煌びやかで、馬の毛並みもよく、更に体格も大きい。どう考えてもそこいらの商人とは思えなかった。

頭の中にそれはもう最悪な打算が生じる。やんごとなき身の上の方に恩を売るか、略奪しきって気が緩んだ盗賊をふん縛って略奪品をさらに略奪してやるか、というものだ。ぶっちゃけあの馬車は、王子のものと似ていることから、王族かそれに近い権力を持つ貴族のものとみて間違いない。そういった方々の物品には家の紋章が入っていることが確定しているため、持ち物を奪っても売り飛ばせない上に簡単に犯罪者になれるジョブチェンジアイテムとくれば選択肢は二つに一つだった。

早速恩を売ることにした俺は大義名分を得るために盗賊が決定的な攻撃をするのを待つ。対して頭のいい相手ではないので、盗賊は後ろも確認しないで馬車の横に突撃していった。

同時に俺も道の脇から飛び出す。視界の中では盗賊が馬車の馬に剣を突き刺して馬車から逃げる手段を奪おうとしているところだった。

人に行かなくてよかった。人質を使われることを考えていなかった俺は相手が時間をかけて馬車を攻略しようとしていることに安堵のため息を漏らして、そのままの流れで馬の脚を切りつけた盗賊(盗賊Aとでも呼ぼうか)の髪の毛を掴んで地面に引き倒してやる。30を超えた男の髪は女とはまた違う意味で命だ。それに痛みも伴うので、羽を雑に落とした鶏のように無様に喚いてくれた。

俺の思惑通り、盗賊A以外の盗賊(こいつらはBとCでいいか)は盗賊Aの悲鳴を聞いてすぐさま馬車から意識をそらす。仲間意識が強いようで、犬のようにワンワン吠えて威嚇してきた。可愛い奴め。

俺がニヤついていると言いがかりをつけてきた盗賊Bが腰に刺したレイピアで俺の喉元を突き刺そうとしてくるが、俺は最強なのでレイピアが折れるに違いない、そうだそうと決まっている。俺は強い最強イケメンなろう主人公。

自己暗示から幻体同一が発動して、本当にレイピアの方から折れた。それにしてもとっさに出てきたなろう主人公ってなんのことだろうか。今度、物知りカラバにでも聞いてみようか。

どうやら獲物が折れて、一緒に戦意まで折れてしまった盗賊Bは尻餅をついて逃げようとする。お前らは尋問してこの馬車がなぜここを通るのを知ったのか聞き出さなきゃ(拷問的な意味で)いけないのだから、逃げるなんてダメに決まってるだろ。

というわけでへし折れたレイピアの尖っている方を投げて足を地面とディープキスさせてやった。赤いヨダレをダラダラ垂らしやがって、いやらしい奴め。盗賊Bも獣のような喘ぎ声をあげて喜んでいる。いいぞ、このままお仲間の心もレイピアのように折ってしまえ。

盗賊Bを利用してほかの盗賊に投降を呼びかける。死にたくないだろーっていう言葉を出来るだけ遠回しに、更には相手の耳に心地いいように言ってやれば、盗賊どもは投降を選びたいとソワソワしだした。

ここでまた盗賊B君に協力してもらおうかと思う。彼の元にささっと近づいて、折れたレイピアを抜くと、患部に手をかざせば傷が治るのだ、そう決まっている。俺は聖女、正ヒロイン、治癒チート。

自己暗示の途中で、一瞬女になってしまったが、更に俺は男だち○こついてる。と暗示をかければ元に戻った。

盗賊Bは俺の起こした奇跡を目の当たりにして、より一層驚き、うわ言のように神よ神よとブツブツブツ・・・

神様なら今頃コンビファイトでもやっているはずだ。そもそも人間個人に神様が救いを与えたことなんて、聖典の中にあるお話にしか存在しない。

だが、いい流れだ。盗賊Bはほかの盗賊を上手く言いくるめて、なんとか俺の傘下につかせてもらおうとしている。いらないよ。

俺が用事があるのは、この間にも先に進み続けている俺の村の商人とやんごとなき身の上のこの馬車の中にいる王族どのだけだ。

話がまとまったらしく盗賊Bが俺にひざまづいてくるので、お前らの身柄を俺がもらえるように交渉してやるから、とりあえず身柄を拘束させろといえば、疑いの一つも持たずに、俺に縛られた。盗賊Cは、何かを諦めたような顔で口をつぐんで流れに身を任せていた。そして盗賊Aは一瞬にして変わり果てた盗賊Bに驚愕していたが、まぁ、お前が信じるっていうなら。と納得していた。お、ツンデレホモかな。

ついでと言っては何だけど、お前らに情報を流したのは誰だと聞けば、信心深い盗賊Bがすぐさま漏らした。おぉう王族の次女様何やってんすか。

流れるように盗賊たちの身柄を確保した俺は、馬車の扉をノックする。

盗賊を無力化したと言っても、盗賊本人達に参ったと宣言させてもなかなか出てこないので、扉をあけて直接話すことにする。

そっと扉をあけようとすると、その影から素早く剣が飛び出してきた。これが我が村に伝わる絵魔本ショージーヨメーンゲの通りに行けば、俺はこの剣と恋に落ちることになってしまう。それは嫌なので剣の腹を咄嗟に指でつまんでへし折る。体を強化しなくても、手の力で剣を折ることくらいならできるのだ。

いつもなら、これで多少は落ち着いて話を聞く以外の道がない事を理解してくれるのだが、私が姫を守らなくては、などと自らを奮い立たせて拳を向けてきた。怖いよ。なんで勘違いされてる俺がこんな圧倒的な力を持った中ボスみたいなムーブしなくちゃいけないのだ。

俺は当然勘違いだ。と何度も言って聞かせようとするし、一度も反撃しないようにしている。何なら無抵抗で殴られたっていい。勘違いと分かってもらえたらその時にむしり取れる権利や押し付けられる恩が莫大に上がるからだ。

そんな俺に悪魔的発想が降りてくる。あぁダメダメこれは外道すぎる。あー体が勝手にー、魔法を使ってしまうー。と言うわけでこの戦闘は今から記録魔法でばっちし録画録音写真撮影される事となった。

どうせならと説得をもっと激しく行う。なぜ善行をしたはずの私めがこのような目に合わなくてはならないのか。さぞ高い身分をお持ちなのでしょう。ですが、ですがね、私達のような一般人を冤罪で襲うなどと許されていいはずがありません。と、迫真の演技。ジョブ、アクターとかないかな。多分オスカーいけると思う。

そんな感じで、証拠映像で脅す準備はバッチリ。というかこれくらいしないとこの恩を使って約束事を取り付けても、反故にされかねない。貴族を束ねる王族がクソ野郎共でないはずがないのだ。

しばらく執事らしき少年の俺の飼い猫以下のへなちょこ雑魚雑魚パンチでいなしのリズムゲームを楽しんでいると、馬車の中から、ナオトもうよろしいのでは。と澄んだ女の声がした。やった女だ。王女でも姫でも、王族にとっては、王自身を除けば重要な広告塔だ。なので、発言力もなかなかに高いはず。加えて、俺の村は、第2王子の親友にして幼馴染が住む村として微妙に優遇されてる上に、たまに王子自身が遊びにくる何気にすごい村なのだ。故に王族には悪い印象もなく、下手をすれば底辺貴族よりかはマシな扱いをされる俺の村の人達なら、王も笑顔で約束を受けてくれるはずだ。王の親バカさ加減に感謝。繰り返しやったぜ。

話を戻して、馬車から降りてきた声の主はなんと王族の長女である、フラム様だった。イェーイついてるー。

このお方は、聖女なんて呼ばれてアイドルまがいのことをされておられる頭お花畑ウーマンとして名が知れており、最も有名なエピソードで言えば、道を歩いている時に運悪くぶつかってしまった少女に対して、近衛騎士は即座に切り捨てようとしたが、なんと姫はそれをやめさせ、倒れた少女に手を差し出して、怪我はないかしら。などとおっしゃられた方だ。いいコマーシャルだこと。

私の執事がすいませんと言った感じて謝ってくる姫。おいやめろ頭を下げるな、きつい要求を出しにくくなるだろうが。この姫様もしかして策士なのではないかと訝しんでいると、俺に殴りかかってきた姫の執事が姫に促されてこちらに謝罪してきた。

私めの村は、第2王子様にご贔屓にして頂いているのですから、王族の方の窮地を見かけたのであらば、即座に助太刀いたすのが道理。つまりは、謝罪など不要で、当たり前のことをしたまでということにございます。

謝罪は受け取らない。俺は名誉か、権利か、金が欲しいんだ。と暗にメッセージを飛ばす。

すると、姫が、王族からあなたに直接仕事を依頼する。というのはどうでしょうか。と提案してきた。

マジでか、思ったよりもいい条件ではないか。ここで喜びを出してしまうと、報酬を決める時に足元を見られるので、できるだけ平常心かつ不敬罪でしょっぴかれることの無いように振る舞う。

姫によると、王国の近隣国であるクサモユール軍国で、ドラゴンが出現したので、援軍を送ることにしたようだが、ドラゴンが強すぎて、援軍が溶けに溶けまくって役に立たないらしい。

俺なら今日のうちに到着し、すぐさま問題を解決してみせると姫に豪語して、話を受ける意を示す。こういう時は、少し大げさに言うことによって、場の空気の主導権をこちらに持ってくることが大切だ。

勢いそのままに、仕事内容を決めていく。ドラゴンを倒すだけなら簡単にできるとアピールしながらも、最後の一撃くらいあげてやってもいいぞと遠回しに言う。主導権きてるきてると調子に乗っていたら、姫からならば最低でも3日以内にドラゴンが無力化されないのならば、あなたは一般の志願兵として扱い、そしてそのまま一般兵として入隊していただきます。と鬼畜アタックを仕掛けてきた。ほらやっぱり王族なんてクソだ。何が花畑だ。食虫植物園じゃないか。

ここで無力化といってきたのも人が悪い。これで俺がドラゴンを殺したとしたら、私は無力化と言いましたよね。入隊しろこのド農民がーとなる未来がワンチャン見えている。というか絶対やるという変な信頼が既に俺の中にはあった。

では、この盗賊たちをドラゴン討伐の援護として使わせてください。とお願いすると、二つ返事で許可が下りた。

仕事の中身がざっくりと決まったところで、俺の名前と、これからも依頼があれば承るとさりげなく伝える。これによって、次の仕事が入れば、俺は晴れて王族のアイドルから直接仕事を賜る何でも屋ということになる。でかい顔して王都を歩くのが楽しみで仕方がないぜ。

では、と助かったのか、ドラゴンに殺されて来いと言われているのかわからなくなって困惑した盗賊たちの縄を解いて、死なせる気は無いから安心しろと宣言する。

感激して涙を流す盗賊B。こいつからならお布施取れるやつだな。

クサモユール軍国に目を開ければ到着すると心の中で何度も復唱しながら、盗賊達に転移魔法を使うと言い渡して目をつぶらせる。俺を中心にした光の輪が盗賊達にも届き、全員が目を開けると、クサモユール軍国の門の前まで来ていた。これには盗賊3人衆もテンションが上がったようでBなんかは涙を流して、またもや奇跡を目の当たりに、おぉ神よ。とまた俺を神聖視していた。やめやめろ(乗るなエース)この国には国教があるのだから変な宗教を作ろうとしないでくれ、俺を反乱分子にして殺す気か。まぁこの国全体どころか、世界を相手にしても負ける気がしないほど、俺のスキルは強力だし、郵便配達員がそこいらの騎士や魔物、更には古代兵器軍を相手にして、負けるはずがないのだ。俺の先輩もファフニールと対峙するまでは、無敗の郵便王と呼ばれていたので間違いない。

虎やら狼やらの雄叫びを混ぜて5.000倍くらい邪悪にした感じの声がしたので、振り向くと1キロメートル先ほどで、ドラゴンが大暴れしていた。おほーでかい。

俺はガクブルする機械と化した盗賊3人衆にここで待てと命令を下して、すぐさまドラゴンと戦う騎士達の作戦本部と思われる場所に到着する。誰だとか、民間人が何故ここにとか言われたが、フラム様よりドラゴン討伐の援護に回れとの名を承りました。といえば、人手がどんどん足りなくなる戦場なので、凄く歓迎された。

というわけで、今からドラゴンを料理していきたいと思う。取り敢えず突っ込んでそのぶっとい4足のうち1足を殴りつける。

がぎんと金属質な音がして肩が痺れた。だが、ドラゴンも呻き声を上げて数は後ろに下がる。騎士達は最初なんだこいつと言った感じでジロジロ見てきたが、俺の拳がドラゴンに効くと見るや否や士気爆上げ状態で声援を送って来た。全く調子のいい奴らだ。俺はチヤホヤされるのは苦手なのだがね(フー↑チョーきもちぃぃぃ)まぁ、彼らの声援に答えるとするかな。

俺は、英雄になる。俺はドラゴンスレイヤー、ジークフリート、モ○スターハ○ター、最強!最強!!最強!!!

今まで使ってきた幻体同一の中でも一番の出力が出ているのを自覚する。その実感が更に俺の自信を高める。いつのまにか握られていた西洋剣で迫るドラゴンのブレスを迎え撃つと、一切の抵抗なく真っ二つに割れた。

ドラゴンがブレスを放ち終えた瞬間に一瞬の隙が垣間見える。力一杯その大きな爪に向かって剣を振り下ろす。

当然割れる。当然切れる。当然殺せる。暗示をかけるごとに出力も防御力も上がって行く。

ドラゴンはついに焦り始めたようで、足も尻尾もブレスも全部使って、それはもうフルファイアな感じで俺を殺そうとしてきたが、悉く効かない。すまんな、絶対耐性は初めに会得しておくものだろう。

ドラゴンはもう錯乱しているようで、自分の口が焼き切れるほどの熱量でブレスを撃とうとしている。そうなれば予備動作も長くなるので、タイミングを合わせて下顎に蹴りを入れれば、口の中で暴発して喉が黒焦げだ。もう詰めにかかってもいいだろうか。素早さのギアを上げてドラゴンが視認できないスピードで動きながら、絶対に千切れない自作ロープでドラゴンを縛りつける。

そう、俺はドラゴンを生け捕りにしようというのだ。理由はもちろんお分かりですね(ワザップジョルノ)。姫が鬼畜な命令で俺を兵士にしようとしたからです(ワザップry)。ドラゴンを引き渡される楽しみにしておいてください(ワザ)。いいですね()。

というわけで、ちょちょいとドラゴンを生け捕りにした俺は大歓声を上げて俺を出迎える騎士達に盛大なガッツポーズで答えると、盗賊3人衆を回収して夜のクサモユール軍国の酒場街に消えていった。

そして、たった1日でドラゴンを無力化されたとの報告を受けた姫は、面白い人が現れましたね。と一言だけ恐ろしい顔で漏らした後、一瞬で美しい薔薇の笑顔に戻ったが、それをバッチリ見ていた執事はそれはもう盛大にビビった。そして笑顔で威圧されて黙ったとか。

そんなこんなで、ドラゴンスレイヤーを超えし者、ドラゴンピースメイカーという絶対に名乗りたくない称号を手に入れた俺は、名前を変えた盗賊3人衆を連れて村に帰ることにした。

余談だが、称号についているドラゴンという言葉は、別にドラゴンを相手にしたからとかいうわけではなく、オリンピックのメダルの金とか、銀とかそういう接頭語として使われている。ちなみに、遠い遠い国では、ゴブリンばかり倒していたせいでゴブリンスレイヤーなどという称号を手に入れたものもいるらしい。ゴブリンというのは、称号の最低位で、取ろうと思ってもなかなか取れない位には簡単にその上のオーガが取れる。つまりその男は本当にゴブリンばかりを倒して、地道に功績点を稼いだのだろう。ゴブリンに恨みでもあるのだろうか。

村の近辺にワープして、門をくぐると村長が怒り心頭な様子で俺を待っていた。どうやら商人が帰ってきたらしく、更には手紙なんぞ受け取ってないというものだから俺が仕事をサボったと判明して説教をするということだった。

俺はその問題の根源である盗賊を排除したと伝えたものの、盗賊が1グループだけとは限らないだろバーカと罵られるだけだった。もっとな意見だったので村長には平謝りするほかなかった。

いくら最強の力を持っていようと、コミュニティの中にいる限りは大した力を持たないというのが、物理的な力の限界を表している。

うなだれて家に帰るついでに、物知りカラバになろう主人公ってどういう意味か尋ねたところ、お前みたいなやつと返された。いや、でも少し違うか。などとブツブツ言い始めたものだから、なろう主人公ってーのも多分俺みたいな超絶イケメンハイテクボーイなんだなと強引に会話を終わらせた。そして帰ろうとしたらボーイしかあってねーよと反論を受けた。誰がいくつになっても童心を忘れないナイスガイだ。褒めても何も出ないぞ。カラバは微妙な顔をした。

さて、俺が連れてきた盗賊3人衆は、俺が壊滅させた盗賊に囚われていた。ということにして、俺の郵便配達仕事の雑用をやらせている。

盗賊Cがここで才能を発揮し、書類整理では、自己暗示を使わなければ、俺でも勝てない程に成長していた。盗賊Bは、その持ち前の純粋さからカウンター業務。そして盗賊Aはべらぼうに手が器用だったので、酒場で料理の修行をさせてもらう事になった。郵便配達の適性は全くと言っていいほど無い。本人達は、経済的理由から盗賊になったらしく、真っ当な仕事ができて喜んでいる。

だが、あの雰囲気に人相で根っこがいい奴らってギャップが強いなぁ本当に。

てな訳で、最強な俺は、魔王でも魔神でもチャチャっと始末できるうえに、王族のコネと弱みになる隠し撮りを持ち、3人のなかなかに真面目な働き手を待ち、彼女も嫁もいないいい男だ。

あれから俺はフラム様の使いっ走りが本職なのではないかと錯覚する程王族から回ってくる仕事で圧殺されかかったり、婚活をしようとしたら、フラム様から仕事が回ってきたり、近所の美人さんといいところまで行った瞬間に馬に乗った騎士様が、フラム様からのお仕事です。なんて言ってきたり、休みの日に寝ていたらフラム様が第2王子様と一緒に村に来た挙句、お兄様、こちらがドラゴンピースメイカー様ですわ。なんて紹介されたうえ。ほう、猛者だなみたいな目で第2王子にガンを飛ばされた。おう、見せもんじゃねーぞあぁん助けて。

そんなこんなで、予言の数年が経ち、王族クエストにも慣れてきた頃。神から告げられた衝撃の真実がこちら

なんか、お前が仕事だ仕事だって殺し回った魔族の中に目覚める前の魔王がおったわ(爆)。

ざっけんな!俺、キャバクラ行ってくる!

えっと、騎士様が何の用で、えっ王都にファフニールですか。わかりました。

転移!到着!最強パンチ!はい、ドラゴンスレイヤー。

いくら功績を挙げても一向に恋愛にたどり着かない事に絶望して俺は叫んだ。いくら強くなっても、もてなきゃ意味がないんだよなぁ。と。何故、女の子といい感じになるとフラム様から仕事が回ってくるのかと。

今日も明日も俺は仕事漬けだよきっと、きっとな。やだなー。




読んでくれてありがとー
感想くれてもいいのですよ?
ですよ?


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弟子!男の娘!!デンジャー!!!

少しでもBLが嫌だってやつ。
男の娘をBLって呼ぶな殺すぞってやつ
そんな奴は危険だぜ?
TSを匂わせるようなものもある。
つまりは性癖って事だ。


やぁ!おまたせ!俺は名実ともに最強な現在フリーの高所得イケメンだ。今日も今日とてフラム様の使いっ走りをしている。なんたって相手は王族なので、いくら疲れていても仕事を断るわけにはいかない。

今回は猛暑で不作に陥った村に片っ端から行って食料を届け、更には暑さを凌ぐ為に氷霊石の設置作業を行うという仕事だ。次で最後になる。

 

いきなりワープで目の前に出て行ってしまうと混乱を招いてしまうため、村から離れた場所に出現する。離れたと言ってもそこまでの距離があるわけでもないのですぐに到着するだろう。

 

 

程なくして村到着すると、入り口で待っていた村人の歓声が聞こえた。

今の俺は、みんなのアイドルフラム様公認の紋章が入った服を着ているため、村人たちには大人気だ。

 

今回の仕事内容を告げて担いでいた荷物を下ろす。重さ的に言えば、馬二頭分といった所だが、俺は最強なのでどんなに重くても行動に支障はない。

 

あとは村の中心の集会場に氷霊石を設置するだけだ。これは魔術的素養が必要な作業だが、安心してほしい俺は最強だ。余裕である。

と、思っていたが、この村には珍しく魔術師がいるようだ。最強とはいえ仕事が減るのは嬉しいので任せることにする。

こっそり魔術を使って、内容魔力と耐久力を高めてから渡す。ちょっとした気遣いが独身を脱却するテクニックだと思うのだ。

 

「わーーーー!!!ふぉぉぉぉ!!!!!」

 

魔術師は手にした氷霊石が魔術的に強化されていることに気づいたようで光に透かしたり、鑑定のスキルを使って術式を解読しようとしたりと興味津々な様子だったが、ふと我に帰るといそいそと取り付けの作業に入った。

 

小一時間ほど村に滞在して休憩して、その後、村人とコミュニケーションを取ることにする。国への不満があればフラム様に伝える。これは常に俺に課せられた仕事である。このような王都から離れた場所ではどうしても監視の目が行き届かないので、不正を行う役人貴族や盗賊が増えるのだ。堂々と王都に近い我が村周辺で盗賊をしていた A B C 共は盗賊としては度胸しかないバカの部類に入るだろう。

 

「社会福祉が整ってるのはいいけど、俺が過労死してしまいそうなほど仕事まみれなのはどうかと思うんだよなぁ」

 

ふと、休憩中に思い出したのはフラム様、ひいてはこの国のことだった。

 

 

 

この国の王族は基本的に政治家気質。地位が大事で名誉が欲しい。保身を怠らないし野心家だ。例外と思われていたフラム様も猫を被っていただけで正当な王族の血を流していることは確かだった。

だが、腐れ外道なアイツらでも国が国民によって動くことを知っている。不正を行う貴族へのヘイトが上流階級全体へと向けられるのを怖がった王族は不正にめちゃくちゃ厳しい。そして国民に対してはゲロ甘といっても良いのではないだろうか。

 

不敬罪や王族特権などの王族ファーストな制度もあるが、国民は無償で3年間の教育を受けることができる。公平な裁判を受けることができるなど他の国にはない法律がある。極め付けには書類審査と面接、委員会の審査に合格すれば、階級にかかわらず王に謁見する事が認められるなどと言う絶対王政と民主制の間を行くような政治をしている。

郵便配達業で様々な国を見てきたが、ここまで民と深く関わっている行政機関は無かった。そこは素直に尊敬する。

 

実態は次女が長女を暗殺しようとしたり、親の寝室には子供は入る事ができなかったり、貴族が国民に成り下がりたがるほどのブラック官僚仕事だったりする。俺は王族と関係を持ってしまったばっかりに雑用という無限に仕事を回せる役目を押し付けられてしまったのだ。王族公認と言うステータスに目が眩んだ俺のミスだ!くそぅ!

 

 

 

休憩をしていると小屋の中に誰かが入ってくる気配がした。

「村の人にここにいると聞いて、きました。この度はですね、先程の氷霊石について、教えてほしいと思いまして、ですね」

お時間ありますか?と聞いてくるのはこの村の魔術師だ。最強たる俺の最高な魔術に感激して、指導してもらいたいとのことだ。

もちろん即OKだ。誰かに頼られたり、羨望の眼差しで見られたり、嫉妬されるのは最強たる俺の責務だと考えている。特に嫉妬は気持ちがいいからもっとしろ!

 

幻体同一を手に入れる前から、魔術の鍛錬を欠かさなかった俺は、いわば魔術博士だ。魔力が足りずにミミズをめっちゃ元気にする程度の魔術しか使えなかったが、今では知識のままに、あるいは応用も加えて好きに術式を行使できるようになった。これだけは物知りカラバにも負けないと自負している。

目をキラキラさせている魔術師君にあの魔術式についてゆっくり再現しながら教えて行く。

「あの術式は案外簡単なんだ。土系最低位のディグムってあるだろ?あれば分解すると、[土][に][空間][を][作る]と分けられるんだ。

これを差し替えればいい。魔術式の特殊な言語形態については俺が出している《今から始める魔術言語》と言う本を読んでくれ。魔術連盟の補助もあってこの国内なら格安で買えるぞ。

そしてできるのが[魔力][の][空間][を][拡張する]魔術式になるんだが、ここで注意点がある。式を分解した時に、分けられる個数が同じでないと魔力が逆流して痛い目にあうことになる。具体的には・・」

「結構!です!」

「そうか、魔術単語の個数にはとにかく気をつけてくれ。

耐久面での強化もこれを応用している。こっちに使っている術式は無属性中位のエンチャントだけどな。魔術単語を二つ取り替えるだけでいいんだ。楽でいい。こんな感じで、使いたい式と似ている魔術を知っていると書き換えが楽になるから、出来るだけ沢山の魔術を覚えておいたほうがいい。・・・こんなものだ」

「わぁ、ありがとう、ございます。僕!精進!します!」

ん?僕?・・・まさか!

「さらばだボーイ・・・」

「はい、さよう、なら」

やはり男であったか(絶望)。まぁ、下心は大体2割程度だったからダメージは少ない。彼の魔術センスはとても良くて、組み替えもあの調子ではすぐにマスターするだろう。はは、弟子一号だぁ・・・

 

 

 

この後、あのやり取りを聞いていた何人かの村人が話しかけてきたのでつい話し込んでしまった。特に今の国に対しての不満もないとの事だったので帰ろうとしたが、もうあたりが暗くなっていることに気がついた。

 

 

 

なんとご好意で、魔術師君の家でご飯を食べさせてもらうことになった。

焼きたてのパンとシチューが体に染みて行く。今回の仕事が結構な激務だったからか、温かい食事がいつもの数十倍美味しく感じられる。そしてこの魔術師君の女子力の高さだ。いや、よせ。いくら出会いがないからって男はダメだろう。俺はノンケだ。ちなみに魔術師君は俺のより先に食事を済ませていたらしく、俺の向かい側に座っている。風呂上がりの姿でだ!!風呂上がりの姿でだ!!!何故!?

落ち着け、同性ならこれくらい当たり前だ。それに風呂に入るのなんて当たり前の事じゃないか。何を動揺するか、そんなんだから嫁どころか彼女もできないんだ。うっ・・・

「どう、なさい、ました?」

上目遣いで尋ねてくる魔術師君。うぼぁ!

「い、いやぁ・・・その、えー・・料理が!料理が美味しかったから!感動しちゃってね!あーあ!俺、料理できないから、毎日作ってもらいたくなっちゃうよー!なーんてね!あはは!はは、は・・・」

「え?ま、毎日、ですか?僕は、村の魔術師、なんです、からぁ」

困っちゃいますよ。って・・・可愛いかよー!あー!あー!相手は男だー!男なんだー!何口走ってんだ俺!そして魔術師君!頬を赤らめないでほしい!結婚することになるぞ!いいのかぁぁ!?!?

「冗談だ。魔術師君。そもそも俺達、同性だからね」

「僕は、ゾームク、です。名前で、呼んでください。センセ」

耳から脳に直接響くような甘い痺れが走る。いつのまにか俺の耳元まで移動して、囁き声を出す魔術師君ことゾームク君。可愛い声しやがって!!まさかこの男、男の娘属性だけでは飽き足らずにあの属性まで持っているのか!?

「ゾ、ゾームク君!?一体何を」

「僕の、固有スキルは、反転。だから性別なんてあってないようなもの。センセ、僕赤ちゃん、産んで?」

一瞬の戦慄。そして、がしりと俺の腕が掴まれた。ゾームク君は明らかに冷静ではない様子で、俺のある一部を凝視している。怖い。愛弟子かと思ったらノンケだって構わずTSさせてくるヤベーやつだったのだ。

「そういうのはな!好きな人とやるもんなんだよ!」

「センセ、優しいし、頭いいし、強い。顔は普通だけど・・・ちょっと冴えない感じが、個人的に、ベストマッチ。センセのこと、もっと尻たい。体で、教えて?」

「悪ノリが過ぎるぞゾームク君!?俺に女体化願望はないし、男の子供を産むような性癖は持ち合わせていない!」

「じゃあ!僕が!メスになる!!!」

「そうゆう問題じゃあねーんだよぉぉぉ!!!」

家の外へと走る。走って走って、それでも後ろから聞こえてくる足音は一定距離を保っている。このままでは逃げられない。いつか捕まって、責任を取らされるか取られるか、どっちみち俺は獲られるわけだが・・・。

だが、これでは終わらない。俺には幻体同一がある。必死に俺は音より速いと思い込んで、加速する。ははは!余裕だった。もう足音は聞こえない。それに気づいた瞬間から笑いが止まらない。ははは!ははは!

 

「もう、終わり、ですかぁ?セ・ン・セ?」

 

俺はスキルなんてものを生み出した神を、この時ばかりは呪った。

 




「僕は、やりたいように、やった。センセ?好きに、するといい」

「俺は、最強。俺は、最強。俺は、最強。俺は、最強」

「センセ、消えた!?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ははは!ワープだ!流石に逃げ切ったな!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「特定の、魔術。使っておいて、よかったぁ・・・」


嗚呼!逃れられない!!


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転生!勇者!リス狩り!?

おまたせ


 はぁい?勇士ぃ?……では無く、これまた安定のGOD案件である。魔王無き世界に勇者が来るそうだ。魔王の復活に合わせてやってくる予定だったようだが俺が倒してしまったせいで必要ない最強戦士がやってくるハメになったようだ。はぁ!?バーカ!特に俺にバーカ!生まれた時から失業とか可哀想がすぎる!いや俺、なんて言った?最強、戦士?最強は俺だ!なんだ勇者って!最強戦士って!御伽噺か!いや魔王って時点で相当に……更に神様に魔改造されてしまったこの世界の住人(筆頭は俺)も十分御伽噺だ!今更だったことに気が付いた俺は来る最強戦士との最強決定戦に臨むべく、肉体改造(ランニング)とイメージトレーニング(肉体改造(物理))を開始した!

 

 いやいや、神様。俺知ってますよ。最強って最初に言ってる奴は大体噛ませになる定めにあるって、だから俺は万全の状態で戦うんです。ほら見てください!重力を操りながら見えないかまいたちの刃を飛ばして破壊力特化の詠唱改竄した魔術が秒間3000発出るようになりました!どれ一つとってもオーバーキル?わかってないですねぇ勇者ですよ?あの!勇!!者!!!!俺が子供の頃最強に憧れるきっかけになったあの!山を砕き雷を切る!強く優しく!全ての悪を滅ぼす光の権化!!!

 

 

何こいつ。うん。勇者。うん。……………………………いやいやいやいや!!!こんな、THE温室育ちって感じの奴が勇者な訳ない!チートが何だってほざいてる奴が!ありえない!だってこいつの心、最早魔王に近いじゃん!ふふふ、ハーレム!とか言ってるじゃん!見るからにアホじゃん!いやいやいや!成長系主人公かも知れない!……挑むか。

 

おーい!君が勇者?そうみたいだねぇ!おじさんと力比べしないかい?嫌って?あーダメダメ!この国のルールでさぁ……ルールはルールなんだよ。そう、脳筋なの。この村、この国、この世界!全部!全員!!脳筋なのぉ!だからおじさんと戦ってくれぇ!!はぁ!?嫌って言ってもやるんだよ!最強系おっさんとぉ、死合い、しよ?

 

最強の言葉に反応した勇者はへぇ、おっさんが最強?そうは見えないけどねぇ……そうだ、この世界の強い奴の基準も知りたかったところだしここで1発やってみようかなんて言い出すもんだからめっちゃ高まる期待。ごめん嘘。イラついた。100回殺締める。

 

戦闘開始直後、勇者の抜刀した剣の間合いが無限に変化した。概念操作系かぁ!ワクワクするなぁ!簡単にはやられないゾォ!こっちも不断の概念を格子状にばら撒いて剣撃を食い止める。嘘だろ?って顔をしてたけどこれで終わりじゃ無いって信じてる!

 

魔法の連打だぁ!色んな属性が使えるんだね。スキルで拡張しないといけなかった俺からすれば凄まじい天武の才なんだけど……当たり前だが、(外法だから知らないだろうし)詠唱改竄はしてこない!打ち込んできた魔法にその式を反転させた魔法をいちいち打ち込んで撃退する事でヒントは与えているんだ。気付きは学びの始祖にして発展系だ!頑張れ勇者!よぉぉし!俺もギア一個上げるかぁ!

 

あかん!勇者が死にかけとる!あ、死んだ。はい蘇生!死ぬ間際の記憶を曖昧にして、精神を限定的に弄って好戦的感情を一定時間爆発させるぞぉ!うおー!すげぇー!身体中の筋繊維を炸裂させながら近接戦闘を挑んできたゾォ!?無限の剣域を足場にして減速を知らない三次元戦闘ダァ!でも、理性でコントロールしてるわけじゃ無いみたいだな。体捌きで誘導してやればっと、そりゃ!

 

勇者の体がくの字に折れ曲がって30メートル上の上空に吹っ飛んでいく。この光景にたまらず蘇生。ディザスターデスピア砲の準備を始める。勇者が見たこともない魔法を使ってきた。あれはなんだ?へぇ、【攻撃】を【反射】する術式か。新しい魔術単語だ!嬉しいなぁ!知るか!ディアゴードン砲発射!反射したところにぃ〜!【全てを】【増幅】【反射】する!!うひゃー何百回か反射した後勇者側で大爆発!細胞レベルで蒸発した所で気が済んだので蘇生する。

 

ガタガタ震えてこっちを見てくる勇者。股間は漏らしたので濡れている。ここで優しい俺は優しい笑顔で優しく言葉をかけるのだ。おい、お前みたいなのが勇者とか幻滅させないでくれ、と。冗談である。正解はもう魔王は俺が倒したので就職先見つけるところから始めようか。であった。

 

縄で輪っかを作る内職に目覚めようとした勇者を速攻で原子分解して蘇生。走って逃げ出した勇者を原子分解して蘇生。泣き出した勇者をコンマ以外の時間で細切れにして蘇生。もうなんなんだよぉ〜!!!と半狂乱で殴りかかってきた勇者の足を払って地面に押しつけた後耳元で俺のとこで働かない?と誘う。

 

勇者は涙を流して喜んでいた。俺も働き手が増えて嬉しいよ。涙が出ちゃう期待外れなんだもん❤️

 

勇者の名前は小林 日向(こばやし ひなた)というらしい。変な名前だな。お前は今日からコバヒナだ。いいかコバ!

 

郵便配達の仕事はA B C共に教えさせればいいし、近接戦闘は難しいけど魔法なら教えられる。魔王無き世界でも大体の強者は魔王より5倍は強いこの世界だ。鍛えておいて損はないだろう。

 

コバヒナはこの世界の住人の強さの基準が俺になってしまったらしくスズメバチの巣に入ったカクレクマノミみたいになっていた。息も出来ずに辛そうだったので後ろに瞬間移動した後、そっと頑張れよと囁いたらその場で気絶した。もちろん殴って叩き起こした(1蘇生)。

 

そんな事件も3日の内に起こる修羅の国。世界?では勇者の出現など気にも止められない。フラム様に報告した所へぇ〜、それでお前またキャバクラ行ったみたいだな?殺すぞおら!(意訳)と言われ、仕事が増えた。金は溜まりまくってる。時間をくれ。……!!時間、止める。仕事、する。時間、余る。もっと……仕事が増える……コバヒナ殴るか……

 

ファンタジックアパルトヘイトことコバヒナだが、二週間も死にまくっていると危機回避能力がグングン伸びていく。俺の徒手空拳に二時間は避け続けられるようになった時は涙が出たね。次の瞬間原子分解され、蘇生された。概念防御壁を張るのを怠るからだぞ!(弱いと貫通する)

 

コバヒナがはじめての配達から帰ってきた。右腕と片目、対価として謎の剣。可愛い15歳くらいの女の子。成功報酬を持ってきた。……女の子ぉ!?!?羨ましいので成功報酬から1割を会社に寄越すように言った。今日は旨いものでも食べろよ。初めてコバヒナの恐怖以外での涙を見た。

 

コバヒナはどうやら人として持てる全ての才能を限界まで持てるというスキルがあるらしい。飲みの席でベロベロになりながらなんでそれで勝てないんだ!師匠は本当に人間か?と不快に言ってきたので、幻体同一の話をすると普通そっちを勇者に渡すだろぉぉぉ!!!と半狂乱になった。女の子に慰められて本当に惨めな奴だな。……流石にちょっと可哀そうだ。

 

次の仕事が決まった。腕と目を治そうとしたら、これは俺が過ちを忘れない為の〜とかほざいてる間に完治した。うそぉん!と言ったコバヒナだったが、半人前にもなってない郵便配達屋が何をほざくと説得したら涙目ですいませんでした!と叫んで女の子と共に駆け出していった。

 

そうだ。そうやって強くなれ!強くなっていつか俺を倒して見せろ!勇者よ!ふははははははははは!!!これ、俺が魔王ポジになるのでは?

 

ゾームク君が訪ねてきた。反魅了をかけたら反転スキルで魅了になってしまい重症化した。ワープで逃げた。

 

追いついてきた。ワープで逃げた

 

ワープで逃げた

 

ワープでry

 

どこまでも、どこまでも追いかけてくる。奴は常に俺の背後に……息が吹きかかる。ひぃっ!と悲鳴を上げると後ろから腹に手が回された。どうやら……ここまでのようだ……

 

コバヒナがこの窮地に登場!今なら空きだらけだぜぇぇぇ唸れ!俺の魅了!!!よし!キングボンビーはお前の物だ!

 

ん?キングボンビーってのはコバヒナの故郷にあるゲームの疫病神だ。プレイヤー同士で押し付け合うらしい。今の状況にぴったりだろう。

 

コバヒナがゾームクを落とした。つぇぇぇ!!!尊敬します!コバヒナ君!俺があんなにてこずったのに……イラッと来た。

 

コバヒナのデスカウンターが……増えない!手加減したとはいえ俺の概念崩壊式アウトブレイクを防ぐとは…!いいぞ!いいぞ!

 

勇者コバヒナのこともあり、新人教育の楽しみに目覚めかけた俺に当然如く仕事が舞い込む。達成報告を遅らせたのにもかかわらず、だ。おかしい。

 

魔王の子を名乗る女の子が辺境の町を焼き払ったらしい。総人口は5人だ。うーん邪悪!許せないなぁ!(功績が欲しいだけ)

 

魔王と聞いてコバヒナが立ち上がった。僕に任せてくださいと……一人称変えたんだね?こっちが素なんだ。うん。そっちの方がしっくり来てるよ。

 

コバヒナがなんか片腕を異形にして、女の子を連れて帰ってきた。目もなんかオッドアイになってる。ちょっとかっこいいので3回消滅させて蘇らせた。

 

そしたらコバヒナの奴大きくため息を吐いてこんな姿になってもまだ師匠には届かないか……って、なんかイキッてた不良が格闘技やって更生するドキュメンタリー番組みたいだった。感動したけど表には出さなかった。

 

正気を失ったコバヒナが殴りかかって来た。うぜぇ。見直した直後にこれかよ。でも、これは……うん。魔王の残滓だ。こいつ魔王の娘を辺境の騎士団から守るために契約しやがったらしい。いいなぁ。まさに勇者だ。

 

精神汚染をしているのは先代魔王の怨念だ。なら、先代魔王を殺した俺がケッチャコ……をつけるべきで、3秒で片付いた。

 

泣きたいぜ。怨念だけをしっかり飛ばすテクニカル手加減も炸裂したせいで、絶叫しながら消滅した先代魔王の残滓。すまん。俺は最強なんだ。最強は苦戦せず、悪びれず、いつも正義って訳ではなく、思うがままに世界を歪める者だ。

 

新魔王軍と名乗る奴らに魔王の娘が拐われたらしい。俺の預かり知る所ではないから放置した。村民に手を出す気配もなかったしな。コバヒナに胸ぐらを掴まれた。睨みを聞かせるだけで力が弱まる。そんなんだから女を取られるんだ。

 

あんたなら阻止できたはずだって?はぁ!?お前の力不足を棚に上げて俺に八つ当たりか?仮にも最強を一度でも目指したなら折れるな!お前が望むなら俺はお前を鍛える!だがな、お前の戦いに手出しをしたら、お前は一生俺以下だ!いいのか!?好きな女にいい所一つ見せられない弱い男のままでいいのか?嫌だろ?魂が拒絶するだろ?口だけで終わるなんて許せないだろ!?それが最強だ!お前はお前の最強を目指せ!才能が与えられてるなら全部最後まで成長させろ!願え!臨め!恥を捨てろ!そしたら俺がお前を強くしてやる!!!

 

あーあ。こいつは本物だ。一週間で魔術言語と術式改竄を習得しきりやがった。行けよ勇者!小林日向!

 

コバヒナが帰って来た。その顔は勇者のそれだった。ムカついたので全力で一回消滅させた。蘇生されたコバヒナは笑顔だった。



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