知ることが一番大切なこと。 (おつかてげ)
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プロローグ

わたしはハッピーエンドは嫌いだ。

 

 

 

どうもつじつま合わせでみんなが喜ぶ内容を書いているようにしか思えないからだ。

そんなになんでも最後が上手くいくはずがない。

 

楽しいことばかりなんてありえない。

 

 

 

 

 

 

わたしはハッピーエンドが物語の全てだとは思わない。

 

 

 

本当の真実。トゥルーエンドが必ず隠されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、お父さんとお母さんは?」

 

「……」

 

「まだ帰ってこないの?それなら二人が帰ってくるまで唯、いい子にして待ってる!」

 

 

 

 

 

「唯…お父さんとお母さんはお星様になったんじゃ。」

 

「……え?」

 

「だからもう帰ってこない。これからはわしらと一緒に住むんじゃ。」

 

「それはどういうことなの…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…またこの夢か。」

 

 

わたし星河唯(ほしかわゆい)。今日入学式を迎える高校生。幼い頃に両親を亡くし、今は一人でアパートを借りて暮らしている。

 

 

やはりトラウマというものはなかなか拭えないものらしい。未だに同じ夢ばかり見る。最悪の目覚めだ。それに加えて…。

 

「まるでわたしの今の気持ちのようね。」

 

 

 

 

自虐気味にわたしは言った。外を見ると激しく雨が降っている。今日は入学式というのに縁起が悪い。

 

 

 

「とりあえず起きて準備しないと。」

 

 

 

 

 

 

 

 

準備がひと通り終わり少し時間に余裕が出来たので、普段は見ないテレビの電源をいれる。すると、アナウンサーの元気な声が聞こえてくる。

 

 

 

『 今日の一位は〇〇座。〇〇座のあなたは今日運命を変える出会いがあります!ラッキーアイテムは…』

 

すぐにチャンネルを切った。

 

 

 

「そんなこと起こるわけない。」

 

 

 

占いなんて当たらない。運命なんて変わらない。

 

わたしがそれを一番知っている。

 

 

 

 

「そろそろ出ないと。」

 

 

そしてわたしはため息混じりに言う。

 

 

 

「また《私》になるのか…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間というものは不思議なもので無意識でやっていたことに自分が気づいてしまうと急に違和感が生まれる。

 

 

学校にいる時の《私》と家にいる時のわたしで性格が違うことに気づいてから、学校の時の自分の姿が演技のように、無理をしているように感じてしまう。

 

 

正直、学校の時の私は好きではない。

 

 

そしてタチの悪いことに学校の私は性格の違いにはおそらく気づいていない。

そんなことを悩む暇がないくらい明るいから。

 

わたしはそっと呟く。

 

 

 

「わたしの気持ちにもなってよね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドアを開けると少し肌寒く感じた。恐らく雨の影響だろう。

そんなこともお構い無しに目の前を歩いている小学生達は元気いっぱいだ。色とりどりの傘をさして、恐らくクラス替えで新しく出来たであろう友達と仲良く話している。

その姿を見てわたしは少し心苦しい。

 

 

 

小学生に嫉妬しているわたしは大人気ないのだろうか。

 

いや、恐らく嫉妬の相手はあの子たちではない。

 

 

 

私自身だ。

 

友達が多く、みんなに知ってもらっている私が羨ましくてたまらない。

 

でも、誰にこのことを相談すればいい。誰に助けてもらえばいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしを見つけて…。」

 

 

 

 

 

 

 

目の前を駆け足で通り過ぎていく小学生の姿を見つめながらわたしは一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第1話 運命の始まり

校門につくと不思議と雨は少しずつやみ始めた。

 

よかった〜!今日はせっかくの入学式だから雨はちょっと嫌だったんだ。

天気予報も雨が降るのは朝だけって言ってたから当たりだね!

 

 

そんなことを一人で思っていると、私が通う高校、山吹高校が見えてきた。

 

 

 

 

「今日からここで高校生活が始まるんだ…!」

 

 

私の気持ちは一気に高まり、次第に急ぎ足になる。

 

 

 

 

そして、そのまま校門をくぐろうとしたが、突然何かに引き止められたような気がして思わず一度立ち止まる。

 

 

 

「なんだろ?この感じ…。」

 

 

 

 

理由はわからない。でもなぜかこの一歩が私の運命を変えるような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これまでの生活が変わっていくような気が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、気のせいでしょ!」

 

たぶん、入学式だから緊張してるんだ。うん、きっとそうだ。

 

 

 

 

 

「よし!気にしない気にしない!」

 

 

そして、私は校門をくぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく進むと靴箱の前に人だかりができていた。おそらくクラス分けの看板があるのだろう。

 

人が多いのでとりあえず、離れた位置から自分の名前を探す。

 

 

 

 

 

「えっと、私のクラスは…」

 

 

「ガバッ!」

 

 

 

突然目の前が真っ暗になった。

 

 

 

「だーれだ?」

 

 

聞き覚えのある明るい、声が聞こえてくる。

 

 

 

「もー、また由貴ね。」

 

 

 

目隠しをしてきたこの子は小野由貴(おのゆき)。私の中学の同級生で、三年間同じクラスだった。少しいたずら好きなところがある。彼女のトレードマークであるオレンジ色の髪が今日も眩しい。

 

 

「えへへ、ごめんって。」

 

子どもっぽく無邪気に笑うその顔を見るとどうしても叱れない。

 

 

 

 

「私たちまた一緒のクラスみたいね!」

 

「うん!高校でもよろしくね!!」

 

 

お互い笑顔で挨拶する。そこへ、黒髪の一人の男子生徒が声をかけてきた。

 

 

 

「相変わらず元気だな。」

 

『瞬!!』

 

私たちは同時に叫んだ。

 

彼は梶原瞬(かじわらしゅん)。私と由貴の友達で彼も中学の時三年間同じクラスだった。いつも周りが見えているので突っ走りがちな私と由貴はよく助けられている。

 

 

「瞬もまた同じクラスなんだ!」

 

私は嬉しくて声を弾ませる。

 

 

 

「おう、高校でもよろしくな。」

落ち着いた口調で瞬が答える。

 

 

 

 

「もう、瞬ってば、私と同じこと言ってる!」

 

「お前と一緒にされるのはごめんだな。」

 

「ええ!なんで!?」

 

 

二人のやり取りを見て思わず微笑んでしまう。

 

「もう、二人とも変わんないなー!」

 

 

すると、二人は言う。

 

 

 

 

『唯には言われたくない!』

 

 

綺麗に揃った二人の声を聞いてまた笑ってしまった。

 

 

 

 

 

そう《私》は昔からずっと変わらない。楽しいことが大好きだし、笑うことも大好きだ。

だからこれからも…。

 

 

「ズキッ!」

 

突然の頭痛と共に頭に映像が浮かんでくる。

 

泣いている一人の男の子。そして、それを見ている一人の女の子。

 

これは葬式…?

 

 

そこで映像は終わり、気づけば頭痛も治っていた。

 

 

 

 

 

「なに、今のは…?」

 

今の景色どこかで…。

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの唯?」

 

不思議そうに由貴が聞く。

 

 

 

 

「ううん!ちょっとぼーっとしてただけ!」

 

由貴は少し首を傾げたが、やがていつもの笑顔に戻った。

 

 

由貴の笑顔を見て、瞬も頷いていた。

大丈夫だと判断したんだろう。

 

 

 

 

 

 

「そろそろ時間だしとりあえず教室に行くか。」

 

瞬が時計を見ながら言った。

 

 

「りょーかい!ほら唯も行こ!」

 

 

「あー!もう!ちょっと待ってよー!」

 

 

(とりあえず後で考えよ。)

 

 

 

私は切り替えて二人の後を追った。それでもあの男の子の涙はずっと頭の中で引っかかったままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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第2話 出会い

『 ーーじゃあまた始業式でねー!』

 

 

 

 

入学式後の最初のホームルームが終わり、私はクラスメイトと別れ、由貴と瞬に声をかける。

 

「二人は今日どうする?」

 

すると、由貴が少し申し訳なさそうに答える。

 

「ごめーん…。私、今日はちょっと予定があるんだ…。」

 

続けて瞬も、

 

「おれも今日家の手伝いがあるからすぐに帰らないといけないんだ。」

 

 

一緒に帰ろうと思っていたので少し残念だけど二人とも忙しいのはいつもの事だから仕方がないよね。

 

 

 

 

「おっけー!じゃあ二人ともまたねー!」

 

「ばいばーい!」

 

「またなー。」

 

 

 

そういうと、二人は先に帰っていった。

 

 

(仕方ないから一人で帰ろ!)

 

 

 

周りを見ると、私以外のクラスメイトは全員帰っているようなので戸締りをして私も教室を出る。

 

 

(えっと、確か職員室に鍵を返さないといけないんだよね…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渡り廊下を通って職員室に向かっている途中に外を見ると雲ひとつない青空が広がっていた。

 

(あんなに朝雨が降ってたのに天気って面白いな~。)

 

 

 

そんなことを呑気に思っていた私はハッとした。

 

 

「あ、傘!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やっぱりそうだよねー。そりゃ帰る時に雨止んでたらみんな忘れるよ~。)

 

 

どうやら忘れ物をしているのは私だけではなかったようだ。いくつか忘れられた傘が立てかけてある。

 

 

 

 

(なんか気づいた私えらいかも!)

 

 

少し勝ち誇りながら自分の傘を取ろうとすると誰かと手が交差した。

 

 

 

(ん?誰だろう?)

 

 

不思議に思い、顔を上げると優しい表情をした男子生徒が笑っていた。

 

 

「うわ~~!?び、びっくりした!!」

 

 

私は思わず大きい声を出してしまった。

 

 

「あ、ごめんごめん、驚かせちゃったかな?」

 

 

男子生徒は少し申し訳なさそうに言った。

 

 

 

「え、ううん!誰もいないと思ってたからびっくりしただけだから大丈夫!」

 

「それならよかった!」

 

 

 

 

 

あー、びっくりした!いきなり目の前に男の子の顔が現れたから慌てちゃった…。

 

 

ん?今、ここの傘を取ろうとしてたってことはこのクラスの子か…。

 

じゃあ自己紹介しないと!

 

 

 

 

「私、このクラスの星河唯!よろしくね!」

 

男子生徒はいきなりの自己紹介に少し戸惑った顔をしたがすぐに気を取り直して同じように自己紹介をした。

 

 

「僕は鈴村(すずむら)つかさ。こっちこそこれからよろしくね!」

 

爽やかな笑顔で返されて思わず私は顔を赤らめる。

 

 

(ちょっとカッコいいかも…。)

 

 

「星河さん?顔赤いけど大丈夫?」

 

私はハッとして我に返った。

 

 

「え、ええ!?あ、だ、大丈夫大丈夫!あはは~。」

 

 

(カッコよくて赤くなったなんて言えないよ…。)

 

 

 

「うーん、少し心配だから家まで送っていくよ!」

 

「え、ええ!?大丈夫だよ帰れるから!」

 

 

「ここで会ったのも何かの縁を感じるし…。それに星河さんとも色々話してみたいから。」

 

「う、うん!じゃあお言葉に甘えて!」

 

 

(こんな運命みたいなことあるの…!?)

 

 

 

 

 

普段動じない私がこんなに戸惑ったのは瞬と由貴に去年のエイプリルフールに、

 

「俺たち実は付き合ってたんだ。」

 

って嘘をつかれた時以来だろう。

 

 

 

でも、今日の衝撃はその時以上だ。

 

 

 

 

 

「それじゃあ、帰ろっか!」

 

「う、うん!あ!教室の鍵職員室に返さないと!」

 

「じゃ、それも一緒に行こっか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓から差し込む春の日差しが二人の姿を明るく照らす。そして、それに比例するかのように二人の影も色濃くなっていく。

 

 

 

 

 

 

 

この時の二人は、お互いが傘を忘れたから起きた偶然の出会いだと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、これは必然の出会い。それに二人が気づくのはもう少し後の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第3話 初めての帰り道

職員室に鍵を返し終わり、私たちは話しながら校門に向かう。

 

 

 

「星河さんの家ってどっち?」

 

「えっと~!ここを真っ直ぐいって、右にいって、それから~!」

 

「ごめん、わかんないや。」

 

 

「じゃあ私が案内する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

校門の近くにはこの学校自慢の桜並木がある。ここは今がちょうど見頃らしく満開の桜が校門を彩っている。

 

 

「私、登校の時全然気づかなかったけどすごく綺麗だね。」

 

「え、星河さんこんなに咲いてるのに気づかなかったの?」

 

「入学式で浮かれてて周りが見えてなくて…。」

 

「ははっ、星河さんっておもしろいね。」

 

「もー、今バカにしたでしょ!」

 

「ふふ、してないしてない。」

 

 

 

 

なんだろう。つかさ君と話してるとすごく落ち着く。彼の優しさも関係しているのだろうが、どうもそれだけではない気がする。

 

 

「とりあえず星河さんの家に向かおうか。」

 

「はーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…といっても私の家はそんなに遠くはない。学校から歩いて十分程なのでそんなに深い話はできなかった。

 

どこの中学だったのか、好きな食べ物はなにか、誕生日はいつかなど、その程度のものだった。

 

それでもつかさ君は私のたわいもない質問に笑顔で答えてくれた。

 

 

 

 

(つかさ君ってすごく優しいな…。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが私の家だよ!」

 

 

話しているとあっという間に私の家についた。

 

 

 

「アパートに住んでるんだ。」

 

 

「そうなんだ!今はちょっと色々あって一人で住んでるんだけどね…。」

 

 

 

するとつかさくんは驚いた顔をして言う。

 

「え?実は僕も今一人で暮らしてるんだ。」

 

「え!?本当!?」

 

「それに、星河さんの家にも結構近いんだ。」

 

「じゃあつかさくんの家も教えて!」

 

「あ、それじゃあ案内するよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つかさくんの家は私の家から歩いて五分程で着くアパートにあった。

 

 

私は、自分の事情もあるのでつかさくんがどうして一人暮らしをしているのかは聞けなかった。

 

 

そして、つかさくんも同じように聞いてこなかった。恐らく踏み込みすぎてはいけないと配慮をしてくれたのだと思う。

 

 

 

 

 

つかさくんは自分のアパートを見つめながら言った。

 

 

「結構古いアパートだから見た目はそんなに綺麗じゃないんだけど結構住みやすいんだ。」

 

「へー!いいな。でも見た目もちょっと味があるから私は好きだよ!」

 

 

「ふふっ、ありがとう。」

 

 

そして、私は続けて言う。

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、つかさくんと私ってご近所さんだったんだね!」

 

 

 

すると、つかさくんが少し考え込む。

 

 

 

「ご近所さん…。」

 

 

 

「あれ、私、なにか変な事言ったっけ?」

 

 

 

 

 

「ううん!ちょっとぼーっとしてただけ!」

 

笑顔で返すつかさくん。

 

 

(私が由貴と瞬に言ったこととそっくり…!)

 

 

 

「ふふっ…!」

 

「どうしたの星河さん?」

 

 

 

「私たちって似てるね!」

 

「え?ええ?」

 

 

 

 

「それじゃ、つかさくんまた学校でねー!」

 

「え、う、うん!気をつけてねー!」

 

 

 

私はこれからの学校生活に胸を弾ませながら駆け足で帰っていく。

 

 

(ふふっ、楽しみだなー!)

 

 

 

周りはいつの間にか濃いオレンジ色に染まっている。彼と話していた時間はあっという間だった。

 

 

 

つかさくんの顔を思い出すとつい、少し顔が赤くなってしまう。

 

 

もしかしたら私は彼に惹かれているのかもしれない。

 

 

 

(こんな顔つかさくんに見せられないよ~…。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、家に近づくにつれてあれだけ軽かった足取りが次第に重くなっていく。

 

それと同時に、幸せな気持ちも少しずつ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕焼けが次第に暗闇に侵食され、夜へと変わっていくように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第4話 届かぬ願い

「ただいまー。」

 

真っ暗な部屋の中にわたしの声だけが響く。当然返事が返ってくることはない。

 

簡単な言葉なのに聞きたい人からはもうずっと聞いていない。

 

 

 

明かりをつけ、ベットに座ると疲れが一気に押し寄せてきた。

 

(はぁ…疲れたなぁ。)

 

 

 

わたしは明かりをつけたままベットに潜り込む。

 

(少し寝よ。)

 

目を閉じるとすぐにわたしの意識は深く底まで沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、星になったってどういうこと?」

 

「……遠くで見守っていると言うことじゃ。」

 

「どうして!?なんで?」

 

「……。」

 

「わかんないよ…。おじいちゃん…。」

 

 

 

 

 

祖父の思いやりも辛かった。結局は両親が死んだという事実は知ることになるのに…。

 

さらに、死因については全く教えてくれなかった。何回も教えて欲しいと頼んでも祖父は答えてくれない。

 

 

わたしは次第に両親の死因について祖父に聞くことがなくなっていった。それと同時に祖父に不信感を持つようにもなった。

 

 

そしてわたしは中学から一人暮らしを始める事を決めた。

 

祖父も心配して反論していたが、わたしも聞く耳を持たなかったため、

 

「そうか…。でも唯が生きていくための手伝いはさせてくれ。」

 

 

と言って、わたしの一人暮らしは認められた。

 

 

生活費などを祖父に頼らなければいけないのは複雑な気持ちだったが中学生が一人で生きていくのは正直無理なので仕方がなかった。

 

ただ家事に関してはほとんど困っていない。料理は得意だし洗濯や掃除もできる。せめてそれくらいは自分でという意地もあったので上達するのは早かった。

 

 

それにしてもなぜ祖父はわたしに両親の死を隠そうとし、死因を教えようとしなかったのだろうか。

 

 

 

 

もしかすると、高校生になった今のわたしになら祖父は話してくれるかもしれない。

 

でも、自分から家を出ていったわたしにそんな資格はない。

今さら教えてくれなんてどんな顔をして言えばいいのだろうか。

 

 

 

「わたしはどうしたらいいの…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると目には涙が溢れていた。

 

(もうわかんないや…。)

 

とりあえず重い体を起こし、気分転換に家事などを済ませることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりだめね…。」

 

 

 

食事や洗濯などを一通り終わらせたが、やはり気分は晴れない。

 

時間を確認するとまだ九時前だった。

 

思ったより時間が経っていなかったのでわたしは外へ出る準備をする。

 

 

特に心が晴れない時にわたしはよく外に星空を見に行っている。星空を見ていると不思議と心が落ち着く。

 

 

今夜は普段より肌寒いらしいので厚着をしていつもの公園へ向かう。

 

「じゃあ、いってきます。」

 

 

 

 

 

 

 

「よいしょっと。」

 

 

 

いつものベンチに腰掛けて星空を見上げる。

 

 

わたしの家から歩いて二、三分の所に公園はある。

 

 

この公園から見える星空は本当に綺麗だ。それぞれ独自の輝きを放つ無数の星、その中で一段と強い輝きを放つ月。

そのどちらも、この星空に欠かせないものでありわたしの心を包み込んでくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもだったら。

 

 

なぜだろう。今日は星空を見ても心が晴れない。それどころか悲しい気持ちになる。この星空が私を飲み込んでいく気がする。

 

 

絶望するわたしの真上に一瞬流れ星が見えた。もし願いが叶うならわたしを助けて。

 

 

 

 

 

 

「わたしをみつけて…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「星河…さん?」

 

 

 

 

あの人の優しい声が聞こえる。

 

 

 

 

嫌だ。変わりたくない。

 

またあなたはわたしと変わって自分の輝きを増していく。

 

 

お願い…。出てこないで…。

 

 

 

 

 

 

 

わた…しに話させ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いまわたしたちが見ている星が存在する全ての星では無い。

星の中にはわたしたちが見ることが出来ない、誰にも知られていない星も無数にある。

 

 

 

 

 

 

わたしは見えない星。でも私は一際目立つあの一番星。

 

今日もわたしは私を恨めしそうに眺める。

 

 



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第5話 私の勇気

私は突然の出会いに驚いてしまった。

 

「つ、つかさくん!?こんな所で何をしてるの?」

 

「それは僕も聞きたいよ。星河さんこそどうしてここに?」

 

「え…。そういえばなんで私ここに来たんだろ…。」

 

「ふふっ。変な星河さん。」

 

「あ!そうだ!星を見に来てたんだった!ここの星すごく綺麗なんだ!」

 

 

するとつかさくんが驚いたように言った。

 

「へー!奇遇だね!僕もここにたまに星を見に来るんだ。それで今日も星空を見ようと思ってこの公園に来たんだ。そしたら泣いてる星河さんを見つけたから…。」

 

 

 

 

「え…?」

 

 

 

 

本当だ。なぜ、私は泣いてるんだろう。つかさくんに出会えて嬉しいはずなのに。こんなに楽しい気持ちなのにどうして涙が出ているんだろう。

 

「う、ううん!なんでもないから大丈夫!」

 

 

 

(気づいたら涙が出てるなんて、私も初めてのことだから不思議だな…。)

 

「本当に大丈夫?」

 

「うん、見ての通り元気だよ!」

 

「そっか、それならいいんだけど…。」

 

 

 

「ほ、ほら!つかさくんも座りなよ!」

 

私はポンポンとベンチを叩きつかさくんを隣に誘う。

 

つかさくんはまだ心配そうな顔をしていたがやがていつもの笑顔に戻っていった。

 

「うん。じゃあそうしよっかな。」

 

 

こうして、二人きりの天体観測が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが春の大三角って言われてる星だよ。」

 

「へー!じゃあ、あれは!?」

 

つかさくんは星についてとても詳しかった。

あまり詳しくない私の初歩的な質問にもすぐに答えてくれる。

 

 

「星河さんって凄い好奇心旺盛だよね。」

 

「だって気になるじゃん!」

 

「ふふっ。そういうのすごくいいと思う。でも気をつけないといつか、知ってはいけないことまで、知ってしまうかもしれないよ。」

 

「そんなことってあるのかな?」

 

「うん、きっとね。」

 

「も〜、つかさくんが言ってること難しいよ〜。」

 

「そんなに気にしすぎなくてはいいんたけどね。」

 

 

 

 

 

笑いながらつかさくんの言葉を聞いていたが、少し自分についての疑問が出てきた。

 

 

私の両親はいつ、どこで、なぜ死んでしまったんだろう。

それについてなぜか全く知らないということ。

 

そして、両親が居なくなっておじいちゃんの家で過ごしていたはずなのにその記憶がほとんどないこと。

 

なぜだろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…星河さん?」

 

つかさくんの声で私は引き戻される。

 

「あ、ごめんね、ちょっとぼーっとしちゃって…。」

 

「うーん。星川さんって普段は明るいけどたまに凄い考え込んでいる時あるよね。」

 

心配そうにつかさくんが言った。

 

 

「たまに考えちゃうことがあるんだ。でも大丈夫だから!」

 

少し強がる私につかさくんは優しく言ってくれた。

 

「言いたくないことがあるなら僕は無理には聞かないよ。でも本当に辛かったら僕が相談に乗るから、いつでも言ってきて。」

 

 

 

 

そう言い、また微笑むつかさくん。本当に優しいね君は。

 

 

「わかった!頼りにしてるねつかさくん!」

 

「うん!それじゃあ、そろそろ帰ろっか。家近くだし送っていくよ。」

 

「ありがと!」

 

 

 

 

そして、ベンチから立ち上がり私はずっと言いたかった言葉を勇気をだして言った。

 

 

 

「それでさ…、つかさくんが良かったらでいいんだけど…。」

 

「ん?なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…連絡先交換しよ!」

 

私の中で精一杯勇気をだした言葉だった。私って本当にこういう時はダメだな〜。

 

「うん、いいよ!」

 

つかさくんが簡単に答えたのを見て、緊張した私がばからしく、恥ずかしく思えてきた。

 

連絡先の交換が終わると、私は気持ちを悟られないように必死に笑顔を作る。

 

「ありがとう!これからもよろしくね!」

 

「うん。こちらこそ!」

 

 

 

そう言って私達は一緒に公園を出る。

 

 

 

顔がまだ少し熱い。さっきまであんなに冷えていたのに。

 

 

つかさくんに連絡先を聞けた嬉しい気持ちとその程度のことでドキドキする自分自身に対してもどかしい気持ち。

その両方を抱えたまま、家へ向かって歩いていく。

 

 

 

そしてもうこの時には涙を流していたことなんてすっかりと忘れていた。

 

 

 

 

 

 



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第6話 二人の策略

「それじゃあ、話し合いを始めまーす!」

 

由貴の元気な声が聞こえてくる。

 

 

山吹高校に入学してから一ヶ月。私は瞬、由貴、つかさくんと一緒に過ごす事が多くなった。

 

始業式の時、初めて四人で話したんだけど瞬も由貴もすぐにつかさくんと仲良くなった。

 

二人とも口を揃えていい人って言ってくれた。

 

それを聞いてなんだか私は少し安心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今私達は文化祭に向けてクラスで何をするのかの話し合いを行なっているのだが…。

 

 

「やっぱり喫茶店でしょ!」

 

「とりあえずみんなの意見を聞こうぜ。」

 

「え〜!絶対喫茶店だって!」

 

「はーい、他に意見がある人ー?」

 

 

文化祭のクラス委員は由貴と瞬に決まった。由貴は私とやりたがっていたが瞬とするのが正解だと思う。

 

瞬じゃないと由貴の暴走は止められない。私ではおそらく手に負えない。

 

 

 

 

 

いや、でも今日の由貴は瞬でも止められないかもしれない。

 

「みんな!もちろん喫茶店だよね!」

 

一週間前からずっと文化祭について話していたのですごい熱量だ。

 

 

 

私も普段勢いはある方だけど引くところは引く。でも由貴はお構い無しに突っ走っていく。

 

不思議と由貴が隣にいると私はある程度しっかりするようになっていた。

 

あれだ。自分より破天荒な人がいると自分がしっかりしないといけないと思うあの現象だ。

 

 

 

 

それにしても、この二人のやり取りを見ていると夫婦漫才を見ているくらい息が合っていて笑ってしまう。

 

 

 

 

少し気になってちらっとつかさくんの方を向くと、彼も二人を見て笑っていた。

 

それを見て私はなんだか嬉しくなった。

 

 

すると、突然つかさくんが私に気づき、笑顔を見せてきた。

 

(あっ…!?)

 

 

慌てた私は思わず顔を背ける。

 

 

(はぁ〜。)

 

 

あれ以来、つかさくんとは何回か星を見に行っている。

 

そこで、その日あった出来事や星座についてなど色々な話をして仲良くはなってきている。

 

でもそれ以上の進展はまだない。だからこの文化祭で少しでも距離を縮めたいんだけど…。

 

(なんて言って誘えばいいの〜。)

 

頭を抱える私。しかしそれ以上に頭を抱えている生徒が前にいた。

 

 

「とりあえず他の案があるひ…」

 

「それじゃあ、多数決で喫茶店に決定〜!」

 

普段は冷静な瞬だが由貴と言い合いしている時だけはいつも冷静さを失っている気がする。

 

「いや、多数決してないし!…てか他の人意見聞いてないだろ!」

 

 

彼の健闘も虚しくクラスの出し物は喫茶店に決まってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前さ、もう少し周りの意見を聞けないのかよ。」

 

「だって、文化祭と言えば喫茶店じゃん!」

 

「いや、そういう問題じゃなくてだな…。」

 

クラス会が終わってもまだ二人は口論をしている。

 

「ふふっ、本当に二人って仲良しだよね!」

 

私が笑って二人をからかうと、

 

『仲良くない!!』

 

綺麗に二人の声が揃う。やっぱり相性ばっちりだよね。

 

 

 

 

「でも喫茶店、楽しそうだからいいと思うよ。」

 

つかさくんが二人の間に入って言う。

 

それを聞いて由貴は嬉しそうだ。

 

「でしょ!さっすがつかさくん!分かってるぅ!」

 

「はぁ…つかさも、こいつを乗せるようなこと言うなよな。」

 

瞬は呆れた表情をしている。

 

そして勝ち誇ったように由貴が言う。

 

「ふふん!もう決まった事だから変えようがないもんね!」

 

 

「はぁ…。もうそれでいいよ…。」

 

瞬はもう無駄だと悟り、抵抗することをやめた。

 

「ふふっ。それじゃあごめんね、今日僕ちょっと用事があるから先に帰らせてもらうね。」

 

 

そう言うとつかさくんは帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…それで、文化祭当日はどうする?」

 

瞬が突然話題を変える。

「え?四人で回るんじゃないの?」

 

 

「それがな、俺と由貴は当日結構忙しくなりそうで回る余裕そんなに無いかもしれないんだ。」

 

「そっか、そうなんだ…。」

 

私は少し残念なそうに返事をする。

 

「…だから、こっちでシフト唯とつかさで一緒にしておくから空き時間二人で文化祭回ってこいよ。」

 

 

 

 

「へ?」

 

突然の瞬の提案に私はつい間抜けな返事をしてしまった。

 

「だから、つかさと二人で文化祭回ってこいってことだよ。」

 

動揺する私に追い打ちをかけるように瞬は言った。

 

「え、ええ〜!!」

 

「うんうん!それがいいと思う!」

 

便乗する由貴。こういう時も息合わさなくていいから!

 

「え〜!でも恥ずかしいよ〜!」

 

「いいのかな〜?大好きなつかさくんが他の人に取られちゃっても〜!」

 

由貴がニヤニヤしながら言う。

 

 

「も〜!わかったよ!二人で回るよ!」

 

それを聞いて瞬と由貴はハイタッチする。本当にさっきまで口論していた二人とは思えない。

 

(なんか悔しいけど…。二人ともありがと。)

 

 

 

 

 

 

こうして私はつかさくんと二人で文化祭を回ることに決まった。

 

 

 

 



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第7話 二人で回る文化祭(前編)

(うーん…。)

 

 

 

最近少し腑に落ちないことがある。つかさくんと星を見に行った日の家での記憶はしっかり残っているのにそれ以外の日の家での記憶がほとんど無い。

 

 

まるで別の誰かが過ごしているかのように…。

 

こんな違和感を覚え始めたのはつかさくんと出会ってからだ。

 

 

彼と出会って楽しいことがどんどん増えてきている。でもそれと同時に考えこむことも日に日に増えている。

 

 

 

つかさくんに出会ってから私は少しずつ変わっている。

 

これはいい事なのか、それとも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やめよ!こんなに考え込むの私らしくないね!」

 

 

今日は楽しみにしていた文化祭だ。いつまでもこんな気持ちじゃダメだよね。

 

 

「よーし!今日は楽しむぞー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「唯ー!おっはよー!」

 

教室についてすぐ、由貴の元気な声が聞こえてきた。

 

「おはよー!由貴!」

 

 

「ふっふっふっ…。」

 

由貴が怪しげな笑いを浮かべる。

 

「な、なに、怖いよ由貴。」

 

「ほらほら!あそこに今日のお相手さんがいるよ!」

 

指を指した先に、喫茶店の最後の準備をしているつかさくんがいた。

 

「もー!由貴!!」

 

「ふふっ!唯、がんばってね!」

 

 

由貴は笑いながら教室から出ていった。クラス委員の仕事で忙しいんだろう。

 

(それじゃ、私も準備しよっかな…。)

 

「おはよう!星河さん。」

 

「あ、つ、つかさくん!お、おはよ〜!」

 

「今日はよろしくね!」

 

「う、うん!こっちこそ!!」

 

それだけ言うとつかさくんは準備に戻っていった。

 

 

 

(も〜!一緒に回るの午後からなのになんかもう緊張してきたよ〜!)

 

 

私は顔が赤くなるのを必死に押え準備へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

午前中のシフトはあっという間に感じた。たぶん、喫茶店が予想以上に忙しく、時間が経つのが早く感じたからだろう。

 

それに忙しかったおかげで午後のことをあまり考えないで済んだ。考えてたらきっと自分の仕事に手がつかなかっただろうし…。

 

 

 

 

 

「星河さん、おつかれ!」

 

 

「う、うわぁ!もう、つかさくん急に話しかけないでよ!」

 

つかさくんはいつも急に話しかけてくる。

 

「あはは、ごめんごめん!それじゃ、行こっか!」

 

 

 

 

「うん!あ、私お腹すいたからどっかのお店に食べにいこうよ!」

 

するとつかさくんも頷きながら答えた。

 

「そうだね、僕もちょうどお腹すいてたからそうしよっか。」

 

「おっけー!えっと、何か近くに食べられるところは…。」

 

パンフレットを眺めていると近くに焼きそばを出しているクラスがあった。

 

「あ!私、焼きそば食べたい!つかさくんは何か食べたい物ある?」

 

「僕は特にないから星河さんの食べたい物でいいよ!」

 

それを聞いて私は少し嬉しくなった。

 

「わかった!それじゃあ焼きそば食べに行こ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボリューム満点の焼きそばを食べ終え、私達は校内を見て回ることにした。

 

「あの焼きそばすごく美味しかったねー!」

 

「うん、それに量もあったから僕はもうお腹いっぱいかな。」

 

「そ、そうなんだ!わ、私ももう満足かな!」

 

(まだ食べれるなんて恥ずかしくて言えない…。)

 

私は自分の本心がバレないように慌てて話題を変える。

 

「そ、そうだ!次はつかさくんの行きたい場所行こ!」

 

「え、でも…。」

 

少し遠慮しているつかさくん。

 

「私は食べたいもの食べたから次はつかさくんが行きたいところに行こ!」

 

 

「……それじゃあお化け屋敷行かない?」

 

「え…?」

 

思わぬ答えに私は少し固まった。

 

(どうしよう…。私、お化け屋敷すごく苦手なんだよな…。)

 

「嫌だった?」

 

(でもつかさくんがせっかく行きたいって言ってくれてるんだし…。)

 

「星河さん?」

 

 

「う、ううん!私も行きたい!お化け屋敷!」

 

(文化祭ぐらいならそんなにクオリティも高くないはずだから大丈夫だよね…!)

 

 

 

「よかった、じゃあ体育館に行こっか!」

 

これもまた思いもよらない場所だった。

 

「え、た、体育館?クラスの出し物とかじゃないの?」

 

「うん!山吹高校のお化け屋敷はOBさん達が毎年出しててすごく怖くて有名なんだ!」

 

私は必死に恐怖をこらえ、笑顔で答える。

 

「へ、へえ〜!そ、それは楽しみだね!」

 

(だ、大丈夫だよね…?)

 

 

 

こうして私は大の苦手なお化け屋敷へ行くことになってしまった。

 

 

 



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