神殺しの大空は異世界でも世界最強!? (大空の剣聖)
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設定1

以前のリメイクしようと思います、すみません。


設定

名前:沢田綱吉

年齢:16歳

性別:男性

神器:赤龍帝の籠手、赤龍帝の指輪ver X

真・創造祖龍神皇帝の腕輪

禁手:赤龍帝の鎧、赤龍帝の死炎鎌 等

魔力:無限 聖力:無限 神力:無限

絶力:無限 崩力:無限 冥力:無限 呪力:無限

スキル:超直感(神レベル)

死ぬ気の炎

大空・嵐・雨・晴・雲・霧・雷、大地・氷河

山、川・森・沼・砂漠・夜・闇・光、神

雪・闇夜・光天・虹、朝、昼、夜空、極神、

傲慢(大空+嵐+雨+晴+雲+霧+雷)

憤怒の炎(大空+嵐)、怠惰の炎(大空+雨)

嫉妬の炎(大空+晴)、暴食の炎(大空+雲)

色欲の炎(大空+霧)、強欲の炎(大空+雷)

純白の炎(大空+嵐+雨+晴+雲+霧+雷+大地+氷河+山+川+森+沼+砂漠+夜+闇+光)等

武器・XグローブverVG・Xブレード・Xガンナー・匣兵器

アニマルリング:天空ライオン(ナッツ)

アニマルリング:虹龍(アウラ)

武器

XグローブverVG 、Xガンナー、

匣兵器、 黒龍刀、白龍刀、Xナイフ、

所持品

NEWボンゴレリング(全属性)SSSランク

原型(オリジナル)ボンゴレリング(全属性)Aランクオーバー

マーレリング(全属性)Aランクオーバー

カルディアリング(全属性)SSSランク

チェーロリング(全属性)SSSランク

タイズリング(全属性)SSSランク

ジャッジメントリング(全属性)SSSランク

創造と再生のリング XXXランク

備考:人間である沢田家光と神である沢田奈々(アマテラス)との間に生まれた半神半人の沢田綱吉である。

ロヴィーノ事件後綱吉達は高校一年生になり平穏な生活を過ごしていたが、実はボンゴレX世候補は表向きで本当のボンゴレX世の影武者に仕立てられやってもない罪を被せられ奴隷の如く扱おうとし更にはリボーン.ビアンキ、フウ太、ランボ、イーピン、獄寺、ボンゴレファミリー、キャッバローネファミリーに裏切られ絶望しそうになるが、それでもなお、信じてくれた山本武、クローム髑髏、六道骸、雲雀恭弥、笹川兄妹、家族である沢田家光と奈々と明聖、日本神話神々、歴代の赤龍帝の先輩に支えられ無実を証明しボンゴレとの決着を付け事件を解決した。裏切り者のボンゴレ・キャッバローネファミリーとリボーン達と元凶である者は1人残らず、復讐者に投獄されボンゴレ&キャッバローネファミリーは壊滅し、事件は解決し一般人に戻ったが、一年の間だけ入学した学校で異世界トータスに巻き込まれる。

 

名前:八重樫雫

年齢:17歳

容姿:原作通り

使用流派:八重樫流

備考

お節介焼きの苦労人

剣術の才能は山本武には劣るが素晴らしい物を持っている。

山本武の従兄妹で海鳴沙耶とは再従姉妹

 

名前:白崎香織

年齢:17歳

容姿:原作通り

備考

笹川了平と京子の従姉妹

 



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第1話大空の転入



リメイク作品ですけど、読んでくれる読者様だけついて来な!


 

転入当日父家光に言われた言葉が引っかかっていた。

 

「外見は先生には見えないだろうがちゃんとした先生だ」と

 

どう言う事だ?と聞いてみたがハハハと笑ってスルーされた。

 

そんなこんなでツナは学校の職員室に来ていた。

 

コンコン

 

「失礼します、転入して来た沢田綱吉です、畑山愛子さんおられますでしょうか?」

 

すると職員室の奥からちbゲフンゲフン背の低い女性が出て来た。

 

「あっ、貴方が家光さんの息子さんですね!私が貴方の担任の畑山愛子です、よろしくお願いします。」

 

「こちらこそよろしくお願いします。」

 

「あの、つかぬ事を伺いますが父とはどう言う仲でしょうか?」

 

「そうですね、私の車が調子悪くなってしまった時に偶々部下の方と一緒におられて車を見てくださった時に知り合って貴方の事を聞いたのです。」

 

「そうですか、俺の事を…余計な事を。」

 

「ん、なんか言いましたか?」

 

「いえ、何にもないです。」

 

「では教室へ案内するのでついて来て下さい。」

 

先生に案内されて教室の前に来ると

 

「では沢田君先生が呼ぶまでここで待っていて下さい。」

 

先生はそう言うと教室の中に入って行く。

 

「はーい!みんな静かに、知っている人もいるかもしれませんが転入生が来ます!」

 

「転入生ですか?こんな時期に?」

 

「まぁ、訳ありなので聞かないであげて下さい。」

 

「愛ちゃん先生、男子ですか?女子ですか?」

 

「男子ですよ。じゃあ呼びますね、入って来て下さい!」

 

カラカラ、カラカラ、ピシャ。

 

ツナは先生の横に移動する。

 

「では自己紹介してもらいます。ではお願いします。」

 

「沢田綱吉、16歳、趣味、ロードバイクとゲームをすること。

好きな物事、天体観測、料理、修行。嫌いな物事、特に思いつかない。

まぁ、よろしく頼む。」

 

「はい、ありがとうございます。沢田君の席は八重樫さんの隣が空いてますね、そこに座って下さい。」

 

「沢田君よろしくね。」

 

「こちらこそよろしく頼む。」

 

そして、授業を受けたりして休憩時間になると

 

ツナはある生徒に声をかける

 

「なぁ、ちょっといいか?」

 

「う、うんどうしたの?」

 

「校内を案内して欲しいんだが、いいか?」

 

「あ、うんいいよ!あっ、ぼく南雲ハジメよろしく!」

 

「沢田綱吉だ、よろしく頼む!」

 

スッと手を出すとハジメも手を出して握手する。

 

そしてツナとハジメが教室を出て行く。

 

「どうしたの雫ちゃん?」

 

「香織、沢田君の周りの空気…」

 

「空気?空気がどうしたの?」

 

「見て気付かない?周りの空気と比べて異常に澄んで見えるのよ。」

 

香織は雫に言われた通り見てるとツナの周りだけ異常に澄んでいるのが見えた。

 

「…雫ちゃん、沢田君って何者なんだろう?」

 

「さぁ、わからないわ。でも悪い人じゃ無いと思うわ」

 

「そうだね!」

 

その後ツナはハジメと話をしながら校内を案内して貰った。互いにアニメや漫画が好きな事もあって意気投合した。

 

その後も授業を受けて帰った。

 

ツナは母親から買い物をして帰る様に言われ、買い物をしてしっかりとお会計を済ませ店から出てバイクで帰えっている途中に女性の叫び声が聞こえた。

 

ツナは叫び声が聞こえた場所に行くと、同じクラスの八重樫雫と同じクラスの白崎香織がいた。

二人は異常なオーラというよりは禍々しいオーラを放っている魔物に襲われそうになっていた。

 

「こ、来ないで!」

 

「雫ちゃん、ど、どうしよう!」

 

その時

 

「システムコール、サーマルエレメント、エアリアルエレメント、フォームエレメント、アローシェイプ、ディスチャージ!!」

 

ズドドドドドドドドドドドドドドド

 

炎矢と風の矢が合わさり蒼炎の矢となり魔物を襲い燃やし尽くす。

 

そしてツナは炎を魔力で水を作り出し消してから元の状態に戻す。

 

「…こんな遅くに何やってるんだ?八重樫と白崎。」

 

「さ、沢田君どうしてここに?それよりもあれはなんなの?」

 

「そ、そうだよ!あれは何?」

 

「何って、何言ってんだ?幻覚でも見たんじゃ無いか?」

 

「はぐらかさないで!幻覚な訳ないでしょ!」

 

「そ、そうだよ、あれは現実だよ!」

 

「はぁ〜わかった教えてやるよただし他言無用だ、他の奴には話すなよ、それを守れるなら話す。」

 

ツナは真剣に表情で二人に問う

 

「わ、わかったわ。守る」

 

「わ、私も守るよ。」

 

「あれは魔物だ。」

 

「魔物ってゲームじゃ無いんだから冗談言わないでよ!」

 

「冗談で言っていると思うか?」

 

「えっ?ま、まさか本当なの?」

 

「この世界には悪魔や天使、堕天使なんか伝説上の存在や空想上の存在は存在する。」

 

「例えば伝説最強の武器といえば何を思い浮かべる?白崎」

 

香織は少し考えると

 

「アーサー王の約束された勝利の剣(エクスカリバー)かな!」

 

「そうか」

 

ツナは魔法陣から武器を取り出す。

 

あえて言っておく話しをする前に結界を張っている為ツナと雫と香織以外いないし見られていない。

 

ツナは魔法陣から武器を取り出し雫たちに見せる。

 

「沢田君この武器は?」

 

「先程白崎が言っていた、約束された勝利の剣(エクスカリバー)だ、勿論本物のな。」

 

「「!?」」

 

「な、なんで貴方が持っているのよ!」

 

「俺は学校に転入する前に旅をしていた。その時に見つけた泉がかの有名なアーサー王伝説に出て来る泉だったわけ、それで泉の女神に認められてこの剣を俺が貰ったわけ。勿論ケルト神話の主神スカサハの許可は貰っている。」

 

「凄いわね、それにしても綺麗ね。そう思うでしょ香織?」

 

「うん、武器とかあまり詳しく無いけど綺麗だね。」

 

「まぁ、信じるか信じ無いかは君達次第だけどね。」

 

「まぁ、目の前で起きたことを信じ無いわけ無いでしょう!」

 

「そうだよ!沢田君魔法使えるんだね!」

 

「あれは魔法じゃなくて、神聖術な!」

 

「「へぇ〜」」

 

「まぁいいや。」

 

ツナは剣を鞘に納め固有空間にしまう。そして結界を解く。

 

「もう遅いから家まで送るよ。」

 

「ありがとう!助かるわ!それと助けてくれてありがとう!」

 

「そうだね、助けてくれてありがとう!」

 

「どういたしまして。さて行きますか?」

 

「「うん!/えぇ!」」

 

その後ツナは香織と雫を家まで送り届けてからバイクに乗って帰った。

 

 

 

 



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第一章 第2話 大空異世界に召喚される



今回もついて来れる読者様だけついて来な!


 

転入初日から魔物事件を解決してから、数日が過ぎた、白崎と八重樫から名前で呼ぶ様に言われ名前で呼ぶ事になった。

 

ツナは朝から相棒の超直感が警鐘を鳴らしている。異世界に呼び出されない事を願いながら、念の為必要な食料やら衣服などを保存用匣の中に収納する。勿論自分の武器である物を全て固有空間にしまい学校の準備をしてバイクで学校に行き匣に仕舞う。

 

学校に行くと既に雫と香織がいた。

 

「おはようツナ!」

 

「おはようツナ君!」

 

「おはよう。香織、お前見ていると中学の時の同級生に似ているな。」

 

「えっ、そうなの?なんていう名前の子なの?」

 

「笹川京子」

 

「えっ?えぇ!!?待って京子ちゃんの事知っているの?」

 

「同じ中学だったし。」

 

「私の従姉妹だよ!凄いよ、雫ちゃん私の従姉妹と同じ中学だったて!」

 

「香織落ち着きなさい、という事は私の従兄妹とも同じ中学なのね!」

 

「ん?従兄妹、誰だ?」

 

「山本武よ。」

 

「武は俺の親友だよ、ちなみ武の従兄妹の海鳴沙耶は俺の幼馴染。」

 

「えっ?嘘でしょ?沙耶姉と幼馴染なの?」

 

「あぁ、他にも幼馴染いるけどまぁいいや。」

 

するとハジメが教室に入って来た。すると

 

「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 

相変わらずか檜山の糞野郎は

 

南雲ハジメはオタクであるが身嗜みが悪いわけでもないし至って普通の少年だ、檜山達は南雲曰く小悪党集団にああいう風に言われるのは俺を通じて八重樫雫と白崎香織と仲が良いからだ。

 

「よっ!おはようハジメ、なんか眠そうだな、また徹夜か?」

 

「おはよう南雲君、もう少し早く来なさいよ。」

 

「南雲君おはよう!今日もギリギリだよ、もっと早く来なよ」

 

「ああ、おはよう、ツナ、八重樫さん、白崎さん」

 

香織と雫はハジメに対してフレンドリーなのでツナも二人の事を信頼している。

 

すると謎の威圧感を感じとったツナは周りを見渡すとハジメとツナの事を睨む様な視線を送っているのがわかった。

 

ツナは意思返しとして殺気や威圧を送っている生徒全員に一割に満たない殺気を放つ、すると殺気を放たれた生徒全員は顔面蒼白状態になっていた。

 

「沢田と南雲おはよう。あいつらまだ懲りて無いのか、大変だな。」

 

「おう、二人ともおはよう!ほっとけよあいつらの事なんて勝ってにやらせとけ!」

 

この二人は天之河光輝と坂上龍太郎だ、天之河は思い込みの激しい正義馬鹿だが、ツナが友人であるハジメの事を馬鹿にされた事でブチ切れ強制的にその思い込みの激しさを直した。思い込みの激しさはなんとかなったが正義馬鹿なのは治らず多少マシになっただけだった。

坂上龍太郎はツナに近接戦闘を挑んだが返討ちにあったというよりは、瞬殺された為弟子にしてくれと言う熱血漢、悪くいえばただの脳筋野郎。

勿論弟子の件は断った。

 

そして授業を受けて昼休みになったが朝から警鐘を鳴らしている超直感が

さらに強くなった。

 

周りを見ると購買組はもう既に出て行っていたのか人数が減っている。

そして教室には四時間目の授業行っていた畑山愛子(25歳)が数人の生徒と談笑していた。

 

「南雲くんとツナ君珍しいね、教室にいるの。お弁当? よかったら一緒にどうかな?」

 

香織がそう言うと不穏な空気が教室に漂いそしてツナとハジメを睨んで来るがツナがすかさず殺気を放って黙らせる。

 

「俺は良いがハジメは?」

 

「あ~、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河君達と食べたらどうかな?」

 

「南雲、しっかり食べないと倒れるぞ、俺の分けてやるから一緒に食おうぜ!」

 

「そうだぞ南雲、身体が持たないぞ!俺のも分けてやるから一緒に食おう。」

 

「南雲君一緒に食べましょう。」

 

「だってさ、お前の事をちゃんと思ってくれる奴がいるんだ、大切しろよ。」

 

「ええとじゃあ、一緒に食べようかな。」

 

そうして昼食を食べ終えて片付けると警鐘がガンガンにレッドシグナルを鳴らす。

 

ツナの様子様子を見ていた雫が

 

「どうしたのツナ?」

 

「……嫌な予感がする!」

 

「えっ?嫌な予感って?」

 

すると光り輝く円環と幾何学きかがく模様が現れたからだ。その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気がついた。全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様

 

「魔法陣だと!まさか異世界転移とかじゃねぇだろうな!」

 

 その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。

 

 自分の足元まで異常が迫って来たことで、ようやく硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

 

その後カバンやペットボトルなどが置いてあるが、人が全くいなくなった事で神隠し事件と世間を騒がす事になるのだった。

 



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第3話 大空異世界に降り立つ



今回もついて来れる読者様だけついて来な!


購買組を除く教室にいた者達全員が突如現れた魔法陣によって異世界に召喚された。

魔法陣による光が収まり周りを見渡すと、まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。その壁画には、金髪の中性的な顔の人物が描かれていた。

 

そしてツナ達の周りには白地に金の刺繍を施した法衣に身を包みその傍に錫杖を持ち祈りを捧げる様な格好をした人達が三十人近い人数いた。

そしてその内の一人、法衣集団の中でも特に豪華で煌びやかな衣装を纏い、細かい意匠の凝らされた烏帽子のような物を被っている老人が進み出て来てツナ達に話しかけて来た。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

ツナは名前を聞いた瞬間胡散臭い奴だと思った。

 

そしてツナ達は十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に案内されていた。そして全員が席に着くと何故この世界に召喚されたのか説明するようだ。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

この世界はトータスと呼ばれている。そして、トータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族の三種族

 

 人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配していて、亜人族は東の巨大な樹海の中で生きているらしい。

 

 この内、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。

 

 魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きく、その力の差に人間族は数で対抗して来たという。戦力は拮抗しており大規模な戦争はここ数十年起きていないが、最近、異常事態が多発しているという。

 

 それが、魔人族による魔物の使役だ。

 

 今まで本能のままに活動する彼等を使役できる者はほとんど居ない。

使役できても一、二匹程度だという。だがその常識が覆されたのだ。

 

 この意味する所は、人間族側の〝数〟というアドバンテージが崩れたということ。つまり、人間族は滅びの危機を迎えている。

 

そして説明が終わり、そして次に

 

「あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神、そしてこの世界を創られた至上の神。おそらくエヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと、それを回避する為に貴方方を召喚された。貴方方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される前に、エヒト様から神託があったのですよ。貴方方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい。」

 

イシュタルは何故か恍惚とした表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろうか。

 

 

ツナが、神の意思〟を疑う事なく、しかしそれどころか嬉々として従うであろうこの世界の歪さに言い知れぬ危機感と恐怖を覚えていると、突然立ち上がり猛然と抗議する人が現れた。

 

畑山愛子先生だ。

 

「ふざけないで下さい! 結局この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっとご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

ツナは父親に言われた事を思い出していた。

 

あぁ、そう言う事か親父。納得したよ、確かにこの人は間違いなく先生だ。きっと自分の事よりも生徒達の身を案じて行動する良い先生だ。

少し信じて見ても良いかもしれない。

 

とツナは思っていた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

場の雰囲気が静寂で満ちる。重く冷たい空気が全身に乗し掛かっているようだ。誰もが何を言われたのか分からないという表情でイシュタルを見る。

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

「先ほど言ったように、貴方方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えません、貴方方が帰還出来るどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

 

「そ、そんな……」

 

「それって、帰還させるつもりがないと言っていると同義だよな、普通なら帰還の事も頭に入れてから召喚魔法を発動する筈だと俺は思うがそこんとこどうなんだ?」

 

「それは…」

 

「答えられないか?まぁいい、そもそも俺達が帰還出来るとは思ってもいないだろうからな。帰す気がないのに召喚して思う様に操ろうとあんたの言う神エヒトはとんだ詐欺師か策略家だな。」

 

「そ、そんな事はありません!詐欺師や策略家など滅相もない!」

 

ツナの言葉を聞きクラスメイトはパニックになる。

 

「嘘だろ? 帰れないってなんなんだよ!」

「嫌よ! なんでもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ!ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

そこで天之河

 

「みんな落ち着け!沢田もみんなの不安を煽るな。」

 

「ん、悪い。不安を煽るつもりは無かったんだが、俺が発言しなくてもパニックになってたと思うぞ。」

 

「…確かにそうだな。」

 

そして天之河が机をバンと叩きパニックになるクラスメイトを黙らせる。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実だ。それを知って、放って置くなんて俺には出来ない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う!人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

そこでツナが、

 

「お前本気で言ってんのか?お前本当に舐めてんのか?お前のお得意の正義感じゃないのか?戦争だぞ、俺を除いてお前も含めた全員がつい最近まで戦った事の無い素人がいきなり大きな力を持ったからって戦場に出て勝てるわけないだろ!

それになお前、魔人族も俺達と同じ様に感情を持ち家族がいて、または恋人がいるかもしれない。それでもお前はそいつを殺せんのか?捕虜にすればいいとか、捉えればいいとかと言う甘い考えは求めてない。正義感とか感情で考えんな!よく頭で考えて答えを出せ!覚悟を持たないままだとお前いつか冗談抜きで死ぬぞ。」

 

ツナは真剣な表情で言葉を紡いだ。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

「もう一度問う、天之河それでも戦うのか?」

 

「俺はお前に言われるまで深くは考え無かった。ただ正義感のまま突っ走ろうとしていた。確かに戦争に参加するなら覚悟を持たないと行けないと思った。だけどこの世界の人達を見捨てる事は出来ない!だから俺は戦う。」

 

「…そうか、一つ言って置く世界を救った英雄は最初から世界を救う為に行動したわけじゃないと思うぞ。目の前の事に真剣に向き合って来た結果世界を救ったと言うだけだと思うぞ。ただし英雄は功績を残し周りに認められなきゃ英雄にはなれないし、力の使い方を間違えれば唯の化け物だ。」

 

「あぁ、頭に入れて置く。」

 

「そうか…お前が良く考えて決めたなら覚悟を持って取り組めよ。俺は知らん、勝手にしろ。」

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

 

「龍太郎……」

 

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」

 

「雫……」

 

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

 

「香織……」

 

ツナが口を開く

 

「悪い香織、きつい事言うかも知れないけど許せ。香織、誰かがやるからと言うなら戦場に出ない方が良い、と言うよりは出るな。はっきり言うとそんな感じだと戦場に出て一番最初に死ぬ可能性がある。誰かがやるからじゃない、自分の意思で決めろ!そうじゃなきゃ生き残れない可能性が大きい。だから自分の意思で決めろ!これはお前の為を思って言っている。」

 

「…もう私は決めたんだ、戦うと。でも心配してくれてありがとう。」

 

先生は「ダメですよ〜」て言っていたが結局全員が参加する事になった。

 

ツナとハジメは気がついていた。イシュタルが事情説明をする間、それとなく光輝を観察し、どの言葉に、どんな話に反応するのか確かめていたのを。正義感の強い光輝が人間族の悲劇を語られた時の反応は実に分かりやすかった。その後は魔人族の冷酷非情さ、残酷さを強調するように話す。おそらく、イシュタルは見抜いていたのだろう。この集団の中で誰が一番影響力を持っているのか。

 

しかしイシュタルは見誤った、天之河よりも強く優しいツナ事沢田綱吉

の存在をツナの影響力は天之河よりも大きいその為自分の思惑通りにならないかと思ったがなんとか納得する形に収まった事を良しとした故に沢田綱吉に目をつけられていた事をそしてこの世界の神が終焉に近づく音が少しずつ大きくなっていく事に気付かずにいた事を。

 

そして世界的宗教のトップなら当然なのだろうが、油断ならない人物だと、ツナとハジメは頭の中の要注意人物のリストにイシュタルを加えるのだった。

 

 



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第4話 ステータスプレート

今回もついて来れる読者様だけついて来な!


戦争参加の決意をした以上、ハジメ達は戦いの術を学ばなければならない。いくら規格外の力を潜在的に持っていると言っても、元は平和主義にどっぷり浸かりきった日本の高校生だ。いきなり魔物や魔人と戦うなど不可能である、ツナを除いては。

 

しかし、その辺の事情は当然予想していたらしく、イシュタル曰く、この聖教教会本山がある【神山】の麓の【ハイリヒ王国】にて受け入れ態勢が整っているらしい。

 

王国は聖教教会と密接な関係があり、聖教教会の崇める神―創世神エヒトの眷属であるシャルム・バーンなる人物が建国した最も伝統ある国というこだ。国の背後に教会があるのだからその繋がりの強さが分かるだろう。

 

 

そしてツナ達は今聖教教会の正面門にやって来た。下山しハイリヒ王国に行くためだ。

 

 聖教教会は【神山】の頂上にあるらしい、凱旋門潜るとそこには雲海が広がっていた。

 

 高山等特有の息苦しさなど感じなかった為高山にあるとは気がつかなかった。おそらく魔法で生活環境を整えているのだろう。

 

そしてイシュタルの案内で王宮に案内された。

ツナ達は王宮に着くと真っ直ぐに玉座の間に案内された。

 

ツナは嫌な記憶を思い出すので顰めっ面になっている。

 

すると雫が

 

「ツナ、どうしたのよ?そんな顰めっ面な顔をして。」

 

「あぁ、なんでもない。」

 

「何でもないわけ無いでしょ!」

 

「沢田どうした?」

 

「嫌な記憶を思い出しただけだ。」

 

「そう、それなら良いけど。」

 

「何かあったら言えよ?」

 

「あぁ、すまない雫、坂上。」

 

ツナ達は王宮の中を歩いているとメイド等の使用人とすれ違うのだが、皆一様に期待に満ちた、あるいは畏敬の念に満ちた眼差しを向けて来る。ツナ達が何者か、ある程度知っているようだ。

 

ツナはハジメを見るとハジメは居心地が悪そうに、最後尾をこそこそと付いて行くのでそれに着いて行く。

 

巨大な両開きの扉の前に到着すると、その扉の両サイドで直立不動の姿勢をとっていた兵士二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たず扉を開け放った。

 

 イシュタルは、それが当然というように悠々と扉を通る。光輝等一部の者を除いて生徒達は恐る恐るといった感じで扉を潜った。

 

 扉を潜った先には、真っ直ぐ延びたレッドカーペットと、その奥の中央に豪奢な椅子――玉座があった。玉座の前で覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって待っている。

 

そしてその隣には王妃と思われる女性、そしてその更に隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年、十四、五歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えていた。更に、レッドカーペットの両サイドには左側に甲冑や軍服らしき衣装を纏った者達や文官らしき者達が三十人以上並んで佇んでいる。

 

 玉座の手前に着くと、イシュタルはハジメ達をそこに止め置き、自分は国王の隣へと進んだ。

 

 そこで、おもむろに手を差し出すと国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程度のキスをした。どうやら、教皇の方が立場は上のようだ。これで、国を動かすのが〝神〟であることが確定だな、とツナとハジメは内心で溜息を吐く。

 

ツナは内心思った、つまりこの国は神の道化という事かと嘲笑った。

自分の意思で決めず神の意思で動くとは正に道化でしかない。

 

それからはただの自己紹介。国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒといい、王妃をルルアリアというらしい。金髪美少年はランデル王子、王女はリリアーナという。

 

 後は、騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介された。ちなみに、途中、美少年の目が香織に吸い寄せられるようにチラチラ見ていたことから香織の魅力は異世界でも通用するようである。

 

ツナにはどうでもいい事なので殆ど聞いていない。

 

ツナの目的はただ一つこの世界の神エヒト殺し、元の世界に帰る事

勿論一人で出来るなんて思ってはいない、かの神々史上世界最強・最恐・最凶サイキョウと言われた邪神ロヴィーノも仲間共に力を合わせやっと倒す事が出来たのだから。

 

その後、晩餐会が開かれ異世界料理を堪能した。見た目は地球の洋食とほとんど変わらなかった。たまにピンク色のソースや虹色に輝く飲み物が出てきたりしたが非常に美味だった。

 

 王宮では、ツナ達の衣食住が保障されている旨と訓練における教官達の紹介もなされた。教官達は現役の騎士団や宮廷魔法師から選ばれたようだ。いずれ来る戦争に備え親睦を深めておけということだろう。

 

ツナはこの世界の神に意のままに操られる気はさらさらない、寧ろツナは神エヒトを殺す気満々でいる為この世界がどうなろうと知ったこっちゃない、立ち直り未来に向かって歩もうと言うなら復興の手伝いはするし、絶望するなら放っておくだけだ。

 

「あっツナどう?楽しんでる?」

 

「雫か、まぁそこそこ。」

 

「明日から修行ねお互い頑張りましょう。」

 

「俺は別にこの世界の者がどうなろうとどうでもいい、雫や香織、友であるハジメに危害を加えると言うなら神エヒトを殺すだけだ。」

 

「ツナ、私達の事を大切にしてくれるのは嬉しいけど、本当に戦わないの?」

 

「戦うか戦わないかは自分の意思で決める、ただそれだけだ。」

 

そこに香織が来た。

 

「あっツナ君と雫ちゃんここにいた!」

 

「香織かどうしたんだ?」

 

「ツナ君と雫ちゃんたらずっと端っこの方にいるんだもん中央の方に行こうよ。」

 

「いいんだよ、俺は別に戦争なんざ参加する気は無いし。」

 

「やっぱり考え変わらない?」

 

「変わらないな、さっきも雫に言ったけど俺は香織や雫、友であるハジメに危害を加えると言うなら神エヒトを殺すだけだ、それが俺のこの世界で戦う理由だ。」

 

するとそこにドレスを着た女性がやって来た。

 

「この世界の為に戦っては貰えないのですか?」

 

「戦う理由がないな、俺は俺の大切な者の為に戦う、この世界の者がどうなろうと知ったこっちゃない。」

 

「神エヒトの命ならばなんでもやりそうなお前達を信じる事は俺には出来ないからな。つうかお前誰だ?」

 

「ちょっとツナ!?この人はねこの国のお姫様よ!名前はリリアーナよ。」

 

「ありがとう雫。まぁ俺は元の世界に帰ることしか興味ないからな。人に戦えと言う前に自分がお手本として戦ってみせろ!戦う事もしない者にとやかく言われる筋合いはない。」

 

そういうとツナはその場去る。

 

「はぁ、ツナったら、確かにツナの言い分もあるけど。」

 

「まぁまぁ雫ちゃん、ツナ君は命令するだけじゃ誰もついて来ないって事が言いたかったんだと思うよ。」

 

「そりゃそうでしょうねツナは余り人を信じないから。」

 

 その後晩餐が終わり解散になると、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。天蓋付きベッドに愕然としたのはハジメだけではないはずだ。豪奢な部屋にイマイチ落ち着かない気持ちになりながら、それでも怒涛の一日に張り詰めていたものが溶けていくのを感じ、ベッドにダイブすると共にその意識を落とそうとしたが出来ず外に出て準備運動をするそして有幻覚で作った木刀で素振りをする。

 

勿論認識阻害の結界と視認阻害の結界を張って。

 

十分くらい素振りをしてから木刀を消し結界を解除して部屋に戻ってシャワーを浴びて眠りについた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日から早速訓練と座学が始まった。

 

 最初に集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

その時ツナは

ステータスプレートねぇ、あれ?これって俺ヤバくね?もしかしたらバレるんじゃね?神殺しの事どうしたもんか…そうだ有幻覚で偽装しよう、そうしよう!なんて思っていた。

 

そして非常に気楽な喋り方をするメルド。彼はフランク性格で、「これから戦友になろうというのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。

 

 ツナ達もその方が気楽で良かった。遥はるか年上の人達から慇懃いんぎんな態度を取られると居心地が悪くてしょうがないのだ。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

「アーティファクト?」

 

「アーティファクトって言うのはな、現代では再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

 なるほど、と頷き生徒達は、顔を顰しかめながら指先に針をチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。ツナも同じように血を擦りつけ表を見る。

 

 すると……

 

=======================

沢田綱吉 16歳 男 レベル:1

天職:魔導士(騎士王・魔導帝王・英雄・祖龍神皇帝・神殺しの大空・赤龍神帝王、真なる赤龍神炎光帝・赤龍帝・赤龍帝王)

筋力:500[Error]

体力:1000[Error]

耐性:600[Error]

敏捷:900[Error]

魔力:800[∞]

魔耐:800[∞]

技能:全属性適性・複合魔法・光技・闇術・神聖術・付与術・滅龍魔法・滅神魔法・滅悪魔法・全属性耐性極・物理耐性極・剣神術・銃神術・剛力・縮地・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+効率上昇][+身体強化][+魔力錬成]・呪力・崩力[+魔力+呪力]・冥力[呪力-呪]・絶力[+冥力+魔力] 想像構成[+イメージ補強力超上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・創造魔法[+魔法創造][+アイテム創造][+技能創造][+銃創造][+刀剣創造]・超高速魔力回復・偽装・限界突破・毒素分解EX・超経験値獲得・武器召喚・真名解放・言語理解・日本神話の神々の加護[+即死無効化][+状態異常無効化]・和剣鍛造[+魔剣鍛造][+聖剣鍛造][+神剣鍛造][+聖魔剣鍛造]

===============================

 

 

 表示された。

 

ツナは知らなかった本来のステータスはもっと高いがエヒトにより本来のステータスを封印されていることを

*本来のステータスは[]の中の数値である。

 

メルド団長からステータスの説明がなされた。

 

「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだ。まぁそんな奴はそうそういないがな。」

 

 どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしい。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇し、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大解放だぞ!」

 

 メルド団長の言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。地道に腕を磨かなければならないようだ。

 

「次に〝天職〟があるだろう? そいつは簡単に言えば〝才能〟だ下の方にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

ツナは自分のステータスを見てヤバいと冷や汗をかいた。天職が四つある事自体イレギュラーだ。バレれば自身の身が危なくなる可能性もある為ツナはステータスを偽装した。

 

 

 

ツナは偽装を完了するとハジメに話し掛ける。

 

「ハジメどうだった?」

 

「いや、ちょっとね…」

 

「そっかまぁお互い頑張ろう。」

 

「そうだね、地道にコツコツとやって行こう。」

 

「その勢いだ!」

 

ツナはハジメと話しいた。そして

 

メルド団長の呼び掛けに、早速、光輝がステータスの報告をしに前へ出た。そのステータスは……

 

============================

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

==============================

 

 こいつが勇者か

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

 

「いや~、あはは……」

 

まぁ今は笑えるかもしれないが今後その余裕も無くなると思うだろう。とツナは考えていた。

 

そしてツナのステータスを見ると目を丸くして見ていた。

 

「お、おいこれは光輝より凄いぞ!全ステータスがレベル1の段階で俺以上だとマジで凄いな!」

 

「沢田見せてくれないか?」

 

「別に見世物じゃないんだが。」

 

ツナ天之河に対して真顔で言う。

 

「頼む。」

 

ツナは天之河にステータスプレートを渡す。

 

沢田綱吉 16歳 男 レベル:1

天職:魔法剣士

筋力:500

体力:1500

耐性:600

敏捷:800

魔力:1000

魔耐:1000

技能:全属性適性・複合魔法・付与術・全属性耐性・物理耐性・剣術・剛力・縮地・超高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

天之河はそれを見て固まった。

 

「え?ははは、上には上がいたか。」

 

「技能が多くても使いこなせなければ意味は無いからな」

 

「うん、綱吉のいう通りだ。」

 

「確かにそうだよな。」

 

「俺は非戦闘系が良かった。例えば錬成師とか。」

 

「え?何故だい?」

 

「色んんな武器作れるから、技能なんて後から増えて行くんだからさ俺が錬成師だったら銃を作るかな?」

 

「!?」

 

ハジメが反応する。

 

「後はバイクとか、ロケランとかアニメの武器とか作れそうだし、元の世界に帰ったら、彫金師とか出来るからかな。」

 

「確かに錬成師ならではの良さがあるな!」

 

ツナ天之河が話していると

 

今まで、規格外のステータスばかり確認してきたメルド団長の表情はホクホクしていたメルドが、「うん?」と笑顔のまま固まり、ついで「見間違いか?」というようにプレートをコツコツ叩いたり、光にかざしたりする。そして、ジッと凝視した後、もの凄く微妙そうな表情でプレートをハジメに返した。

 

「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」

 

「いいなぁ、ハジメある意味良い意味で最強だな、そう縁の下の力持ちだ。」

 

「何故なら、戦う者が使う武器はハジメの様な錬成師や鍛治師がいないと作れないわけだだからハジメの様な存在は貴重だと思う思うよ。」

 

そこで話を聞いていなかったのか檜山大介が、ニヤニヤとしながら声を張り上げる。

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

檜山ウゼェ、実に不愉快だ。いつか捌くとツナは内心思っていた。

 

「さぁ、やってみないと分からないかな」

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」

 

メルドの表情から内容を察しているだろうに、わざわざ執拗に聞く檜山。本当に嫌な性格をしている。取り巻きの三人もはやし立てる。強い者には媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行動だ。事実、香織や雫などは不快げに眉をひそめている。

 

 

「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」

 

「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

 

「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」

 

次々と笑い出す生徒に香織が憤然と動き出す。しかし、その前にウガーと怒りの声を発する人がいた。愛子先生だ。

 

「こらー! 何を笑っているんですか! 仲間を笑うなんて先生許しませんよ! ええ、先生は絶対許しません! 早くプレートを南雲君に返しなさい!」

 

 ちっこい体で精一杯怒りを表現する愛子先生。その姿に毒気を抜かれたのかプレートがハジメに返される。

 

ツナは我慢の限界まで余裕があるがイラッとしたので檜山とその取り巻きと笑った生徒に一割の殺気を放つ

 

「「「「!?」」」」

 

檜山とその取り巻き達はツナの方を顔面蒼白にしながら見てきた。

 

「実に不愉快だ、特に檜山とその取り巻き共。少し黙れ。」

 

ツナは殺気出しながら檜山達に言う。

 

そして、愛子先生はハジメに向き直ると励はげますように肩を叩いた。

 

「南雲君、気にすることはありませんよ! 先生だって非戦系? とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。南雲君は一人じゃありませんからね!」

 

 そう言って「ほらっ」と愛子先生はハジメに自分のステータスを見せた。

 

=============================

畑山愛子 25歳 女 レベル:1

天職:作農師

筋力:5

体力:10

耐性:10

敏捷:5

魔力:100

魔耐:10

技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解

===============================

 

 ハジメは死んだ魚のような目をして遠くを見だした。

 

「あれっ、どうしたんですか! 南雲君!」とハジメをガクガク揺さぶる愛子先生。

 

 確かに全体のステータスは低く非戦系天職である事は一目でわかるのだが……魔力だけなら勇者に匹敵して、更に技能数なら超えている。糧食問題は戦争には付きものだ。ハジメの様にいくらでも優秀な代わりのいる職業ではないのだ。つまり、愛子先生もチートだったのだ。

 

 ちょっと、一人じゃないかもと期待したハジメのダメージは深い。

 

「あらあら、愛ちゃんったら止め刺しちゃったわね……」

「な、南雲くん! 大丈夫!?」

「あれで天然だから恐ろしいよなぁ……」

 

 反応がなくなったハジメを見て雫が苦笑いし、ツナは天然は恐ろしいと思い、香織が心配そうに駆け寄る。愛子先生は「あれぇ~?」と首を傾げている。相変わらず一生懸命だが空回る愛子先生にほっこりするクラスメイト達。

 

 ハジメに対する嘲笑を止めるという目的自体は達成したものの、上げて落とす的な気遣いと、これからの前途多難さに、ハジメは乾いた笑みを浮かべるのだった。

 

ツナは殺気を解き、ハジメにある才能を見出していた、まだ芽吹いていないがそれは強者となる才能。

故に、どの様に開花させるか考え物だと思った。

そしていつの日かこのトータスに語られることになるだろう。神殺しの大空とそれを支えた親友の錬成師の話を。



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第5話 最弱とイジメ


今回もついて来れる読者様だけついて来な!


ハジメが自分の最弱ぶりと役立たず具合を突きつけられた日から二週間が経った。

 

 現在、ハジメは訓練の休憩時間を利用して王立図書館にて調べ物をしている。その手には〝北大陸魔物大図鑑〟というなんの捻りもないタイトル通りの巨大な図鑑があった。

 

 なぜ、そんな本を読んでいるのか。それは、この二週間の訓練で、成長するどころか役立たずぶりがより明らかになっただけだったからだ。力がない分、知識と知恵でカバー出来ないかと訓練の合間に勉強しているのである。

 

 そんなわけで、ハジメは図鑑を眺めていたのだが……突如、「はぁ~」と溜息を吐いて机の上に図鑑を放り投げた。重い音が響き、偶然通りかかった司書が物凄い形相でハジメを睨む。

 

 ビクッとなりつつ、ハジメは急いで謝罪した。「次はねぇぞ、コラッ!」という無言の睨みを頂いてなんとか見逃してもらう。自分で自分に「何やってんだ」とツッコミを入れ再び溜息を吐いた。

 

 ハジメはおもむろにステータスプレートを取り出し、頬杖をつきながら眺める。

 

 

==================================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:2

天職:錬成師

筋力:12

体力:12

耐性:12

敏捷:12

魔力:12

魔耐:12

技能:錬成、言語理解

=================================

 

これが、二週間みっちり訓練したハジメの成果である。「刻み過ぎだろ!」と、内心ツッコミをいれたのは言うまでもない。ちなみに光輝はというと、

 

==================================

天之河光輝 17歳 男 レベル:10

天職:勇者

筋力:200

体力:200

耐性:200

敏捷:200

魔力:200

魔耐:200

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読

高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

==================================

 

 ざっとハジメの五倍の成長率である。

 

おまけに、ハジメには魔法の適性がないこともわかった。

 

 魔法適性がないとはどういうことか。この世界における魔法の概念を少し説明しよう。

 

 トータスにおける魔法は、体内の魔力を詠唱により魔法陣に注ぎ込み、魔法陣に組み込まれた式通りの魔法が発動するというプロセスを経る。魔力を直接操作することはできず、どのような効果の魔法を使うかによって正しく魔法陣を構築しなければならない。

 

 そして、詠唱の長さに比例して流し込める魔力は多くなり、魔力量に比例して威力や効果も上がっていく。効果の複雑さや規模に比例して魔法陣に書き込む式も多くなる。それは必然的に魔法陣自体も大きくなるという。

 

それでもイレギュラーは存在するツナ事沢田綱吉だ。

ツナは魔力操作の技能を持っている為魔方陣及び詠唱の過程を必要としない。更に強力な魔法も使える為はっきり言って一人で国を相手にすることが出来るのだ。

 

ツナは何故図書館に来ているのか、それは訓練だけじゃなく知識を持っていないとどんなに強くても勝てるものも勝てない為だ。

 

ツナとハジメが訓練城に行くと既に何人もの生徒達がやって来て談笑したり自主練したりしていた。どうやら案外早く着いたようである。

 

ツナはハジメに話し掛ける。

 

「ハジメ非戦系でも最低限近接戦闘は出来るようになろうか。」

 

「そうだね、相手してくれるかい?」

 

「いいよ、やろうか。」

 

ツナはハジメのレベルに合わせ丁寧に教える。

 

「そう、そう!そんな感じ。良い感じだね。」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、これはちょっとキツイね。相手の力を利用するから後手に回ってしまう。」

 

「まぁ、あくまでさっき戦い方はカウンターヒッターの戦い方だしね。」

 

そこで、

 

「よぉ、南雲。なにしてんの? お前が訓練しても意味ないだろが。マジ無能なんだしよ~」

 

「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」

 

「なんで毎回訓練に出てくるわけ? 俺なら恥ずかしくて無理だわ! ヒヒヒ」

 

「なぁ、大介。こいつさぁ、なんかもう哀れだから、俺らで稽古つけてやんね?」

 

ハジメは檜山達を無視してツナに向き直る。

 

「ツナ頼むよ!」

 

ツナハジメの真っ直ぐな瞳を見て思った、こいつ覚悟を決めた眼をしている。

 

「そうか、行くぞ!」

 

そこからは近接戦闘の押収だった。もともとハジメは飲み込みは早い方だ。それに加えてアレンジ力も。ツナが教えたカウンターヒッターの戦い方を自分なりに考えアレンジしてツナと撃ち合っている。

 

ツナは手加減しているのだが、この成長力は素晴らしいと思う。

 

そこで檜山が

 

「無視してんじゃねぇええ!!」

 

檜山はハジメに殴り掛かってくるがハジメはカウンターヒッターの戦い方で檜山の懐に潜り込んで腹に一発強力な一撃を放つ。

 

「ぐふぁあ!?」

 

その様子見ていた檜山の取り巻きがハジメに魔法攻撃して来るが軽快なリズムステップで避け一人ずつ殴り飛ばす。

 

ツナはそれを見て納得のいく顔をしながら見ていた。そして周りにいた生徒はハジメの姿を見て唖然としていた。

 

パチ、パチ、パチ

 

「Congratulations !いや、流石ハジメ強くなっているね。」

 

「いや、まだまだだよ!でも動き易くなったよ!」

 

「そうか、それは良かった。」

 

そこで倒れていた檜山が

 

「南雲ぉおおおおお!!!!!!」

 

それに気づいていたツナとハジメは、襲いかかってくる檜山に対して二人の回し蹴りが炸裂する!

 

「「暫く寝てろ!/寝てなよ!」」

 

「ぐふぁあああ!!!」

 

二人の回し蹴りが綺麗に決まり檜山はぶっ飛ばされる

 

「何やってるの!?」

 

 その声にツナとハジメは「あっ…」

 

「いや〜ハジメと近接戦闘の訓練してたら檜山がハジメにちょっかい掛けて来てそれでハジメが無視して俺と訓練してたら檜山達が殴り掛かって来たからハジメが檜山達を帰り打ちにしたその後また檜山が襲い掛かって来たから俺とハジメの二人で回し蹴りしたら綺麗に決まった感じだ。」

 

「は?南雲が檜山達を帰り打ちにした?マジか!」

 

「周りにいるやつに聞いてみれば良いさ、俺は最後の回し蹴りしかしてないからな。」

 

「光輝聞いたか?南雲が檜山達を帰り打ちにしたんだってよ。」

 

「あぁ、周りの奴に聞いた檜山達を相手取って帰り打ちにしたって。どうやったんだ?」

 

「俺が教えた。」

 

「沢田が南雲に近接戦闘を教えたのか?」

 

「俺が教えたのは近接戦闘の基礎とカウンターヒッターの戦い方だけだ。後はハジメ自身が自分で考え編み出した物だ。」

 

「凄いな、ステータスプレートを見せてくれないか南雲!」

 

ハジメはステータスプレートを天之河に渡す。

 

==================================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:3

天職:錬成師

筋力:100

体力:80

耐性:60

敏捷:70

魔力:80

魔耐:80

技能:錬成・大空の加護[+即死無効化][+状態異常無効化]・言語理

=================================

 

物凄く成長していた。

新たな技能として大空の加護があったこれはいわゆるツナによる加護だ。

つまり大空であるツナの信頼を得る度に成長速度等がどんどん上がっていく。

 

「凄いじゃないか!この調子で頑張って行こう!」

 

「ありがとう」

 

「それよりもどうするの檜山達は。」

 

「ほっとけ、自業自得だ。クラスの仲間を好き好んで傷つける奴に治癒を掛ける必要は無い。」

 

「それもそうね。」

 

「そうだね、ほっとこうか!」

 

その後厳しい訓練をした。その後訓練が終了した後、いつもなら夕食の時間まで自由時間となるのだが、今回はメルド団長から伝えることがあると引き止められた。何事かと注目する生徒達に、メルド団長は野太い声で告げる。

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」

 

そう言って伝えることだけ伝えるとさっさと行ってしまった。ざわざわと喧騒に包まれる生徒達の最後尾でツナとハジメは天を仰ぐ。

 

(……本当に前途多難だ)

 

(…て何も無いといいが)

 



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第6話 月下の語らい


今回もついて来れる読者様だけついて来な!


【オルクス大迷宮】

 

 それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現するダンジョン。

 

 だがこの迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気がある。それは、階層により魔物の強さを測りやすいからということと、出現する魔物が地上の魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているからだ。

 

 魔石とは、魔物を魔物たらしめる力の核をいう。

 

 良質な魔石を持つ魔物ほど強力な固有魔法を使う。固有魔法とは、詠唱や魔法陣を使えないため魔力はあっても多彩な魔法を使えない魔物が使う唯一の魔法である。一種類しか使えない代わりに詠唱も魔法陣もなしに放つことができる。魔物が油断ならない最大の理由だ。

 

 ツナ達は、メルド団長率いる騎士団員複数名と共に、【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者達のための宿場町【ホルアド】に到着した。新兵訓練によく利用するようで王国直営の宿屋があり、そこに泊まる。

 

ツナが何故戦争に参加しないと言っていたのにいるのかと言うとこの世界事をもっと知る為である。

 

 そして久しぶりに普通の部屋を見た気がするツナとハジメはベッドにダイブし気を緩めた。全員が最低でも二人部屋なのにツナとハジメだけ一人部屋だ。「まぁ、気楽でいいさ」と、少し負け惜しみ気味に呟くハジメ。寂しくなんてないったらないのだ……

 

 明日から早速、迷宮に挑戦だ。今回は行っても二十階層までらしく、それくらいなら、ハジメのような最弱キャラがいても十分カバーできると団長から直々に教えられた。

 

 ハジメとしては面倒掛けて申し訳ないと言う他ない。むしろ、王都に置いて行ってくれてもよかったのに……とは空気を読んで言えなかったヘタレなハジメである。

 

 しばらく、借りてきた迷宮低層の魔物図鑑を読んでいたハジメだが、少しでも体を休めておこうと少し早いが眠りに入ることにした。学校生活で鍛えた居眠りスキルは異世界でも十全に発揮される。

 

 そしてその頃、ツナがウトウトとまどろみ始めたその時、ツナの睡眠を邪魔するように扉をノックする音が響いた。

 

 少し早いと言っても、それは日本で徹夜が日常のツナにしてはということで、トータスにおいては十分深夜にあたる時間。怪しげな深夜の訪問者に、すわっ、檜山達かっ! と、ツナは、緊張を表情に浮かべる。

 

 しかし、その心配は続く声で杞憂に終わった。

 

「ツナ君起きてる? 白崎です。ちょっと、いいかな?」

 

なんですと? と、一瞬硬直するも、ツナは慌てて扉に向かう。そして、鍵を外して扉を開けると、そこには純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの香織と黒色のネグリジェを来た雫がいた。

 

「……なんでやねん」

「「えっ?」」

 

 ある意味、衝撃的な光景に思わず関西弁でツッコミを入れてしまツナ。よく聞こえなかったのか香織はキョトンとしている。

 

 ツナは、慌てて気を取り直すと、なるべく香織を見ないように用件を聞く。いくらリアルに興味が薄いとはいえ、ツナも立派な思春期男子。今の香織と雫の格好は少々刺激が強すぎる

 

「あのな香織と雫その格好で女性部屋に行くならまだしも男の部屋に行くにはどうかと思うぞ。」

 

「えっ?格好?」

 

香織と雫は自分の格好を見直すと顔をカァと赤くしていた。

 

「はぅう、どうしよう恥ずかしいよ。」

 

「はぁ、ちょっと待ってろ。」

 

ツナは自分の荷物から羽織るものを持って来る。

それを香織と雫に掛けて見えないようにする。

 

「あ、ありがとうツナ君///

 

「ありがとうツナ///

 

 

「どういたしまして。」ニコ

 

「「///」」

 

「それでだ大丈夫だったか?訪ねて?」

 

「あ~うん。大丈夫だよ。えっと、どうしたのかな? 何か連絡事項でも?」

 

「ううん。その、少しツナ君と話たくて……やっぱり迷惑だったかな?」

 

 最も有り得そうな用件を予想して尋ねるが、香織は、あっさり否定して弾丸を撃ち込んでくる。 気がつけば扉を開け部屋の中に招き入れていた。

 

「ありがとう。」

 

「悪いな夜遅くに。」

 

 なんの警戒心もなく嬉しそうに部屋に入り、ツナと香織は、窓際に設置されたテーブルセットに座った。

 

 若干混乱しながらも、ツナはは無意識にお茶の準備をする。といっても、ただ水差しに入れたティーパックのようなものから抽出した水出しの紅茶モドキだが。ツナは香織と雫と自分の分を用意し香織と雫に差し出す。そして、向かいの席に座った。

 

「ありがとう」

 

「すまない。」

 

 紅茶モドキを受け取り口を付ける。

 

 香織がその様子を見てくすくすと笑う。ツナは恥ずかしさを誤魔化すために、少々、早口で話を促した。

 

「それで、話したいって何、明日のこと?」

 

 ツナの質問に「うん」と頷き、香織はさっきまでの笑顔が嘘のように思いつめた様な表情になった。

 

「明日の迷宮だけど……ツナ君には町で待っていて欲しいの。教官達やクラスの皆は私が必ず説得する。だから! お願い!」

 

 話している内に興奮したのか身を乗り出して懇願する香織。ツナは困惑する。ただツナがやる気が無いからというには少々必死過ぎないかな? と。

 

ツナは香織の表情を見て足手纏いとか考えていないな、なんならかの理由があるはずだとツナは思っていた。

 

「えっとな……確かに俺はこの世界の為に戦おうとは思わないけど……流石にここまで来て待っているっていうのは認められないんじゃ……」

 

「違うの! 足手まといだとかそういうことじゃないの!」

 

 香織は、ツナの誤解に慌てて弁明する。自分でも性急過ぎたと思ったのか、手を胸に当てて深呼吸する。少し、落ち着いたようで「いきなり、ゴメンね」と謝り静かに話し出した。

 

 

「あのね、なんだか凄く嫌な予感がするの。さっき少し眠ったんだけど……夢をみて……ツナ君が居たんだけど……声を掛けても全然気がついてくれなくて……走っても全然追いつけなくて……それで最後は……」

 

 その先を口に出すことを恐れるように押し黙る香織。ツナは、落ち着いた気持ちで続きを聞く。

 

「最後は?」

 

 香織はグッと唇を噛むと泣きそうな表情で顔を上げた。

 

「……消えてしまうの……」

「……そっか」

 

「………」

 

夢だからと安心出来る物じゃ無いな何かの予兆じゃ無いといいがとツナは思っていた。

 

 そしてしばらく静寂が包む。

 

 そして再び俯く香織を見つめるツナ。

 

 確かに不吉な夢だ。しかし、所詮夢である。そんな理由で待機が許可されるとは思えないし、許された場合はクラスメイトから批難の嵐だろう。いずれにしろ本格的に居場所を失う。故に、ツナに行かないという選択肢はない。何故なら神エヒトを殺す為に経験があるとはいえ知識が必要だ

 

 ハジメは、香織を安心させるよう、なるべく優しい声音を心掛けながら話しかけた。

 

「夢は夢だ、香織。今回はメルド団長率いるベテランの騎士団員がついているし、天之河みたいな奴も沢山いる。むしろ、うちのクラス全員チートだし。敵が可哀想なくらいだよ。俺戦闘経験は豊富だし、実際にやる気無いところを沢山見せているから、そんな夢を見たんじゃないかな?」

 

 語りかけるツナの言葉に耳を傾けながら、なお、香織は、不安そうな表情でツナを見つめる。

 

「それでも……それでも、不安だというのなら……」

「……なら?」

 

 ツナは若干恥ずかしそうに、しかし真っ直ぐに香織と目を合わせた。

 

「俺を支えてくれないかな?」

「え?」

 

 自分の言っていることが男としては相当恥ずかしいという自覚があるのだろう。既にハジメは羞恥で真っ赤になっている。月明かりで室内は明るく、香織からもその様子がよくわかった。

 

「香織は〝治癒師〟だよね? 治癒系魔法に天性の才を示す天職。何があってもさ……たとえ、俺が大怪我することがあっても、香織なら治せるよな。その力で俺を支えてもらえるか? それなら、絶対俺は大丈夫だから」

 

 しばらく、香織は、ジーとツナをを見つめる。ここは目を逸らしたらいけない場面だと羞恥に身悶えそうになりながらツナは必死に耐える。

 

 ツナは、人が不安を感じる最大の原因は未知であると何かで聞いたことがあった。香織は今、ツナを襲うかもしれない未知に不安を感じているのだろう。ならば、気休めかもしれないが、どんな未知が襲い来ても自分には対処する術があるのだと自信を持たせたかった。

 

 しばらく見つめ合っていた香織とツナだが、沈黙は香織の微笑と共に破られた。

 

「変わらないね。ツナ君は」

 

「?」

 

 香織の言葉に訝しそうな表情になるハジメ。その様子に香織はくすくすと笑う。

 

「ツナ君は、私と会ったのは高校に入ってからだと思ってるよね? でもね、私は、中学二年の時から知ってたよ」

 

その意外な告白に、ハジメは目を丸くする。必死に記憶を探るが全く覚えていない。

 

 う~んと唸るハジメに、香織は再びくすりと笑みを浮かべた。

 

 「私が一方的に知ってるだけだよ。……私が最初に見たツナ君は土下座してたから私のことが見えていたわけないしね」

 

「……は?」

 

「……え?」

 

「だって、ツナ君。小さな男の子とおばあさんのために頭を下げてたんだもの」

 

「どういう事なの香織?」

 

 その言葉に、ツナは、ようやく思い当たった。確かに、中学生の頃、そんなことがあったと思い出す。

 

 男の子が不良連中にぶつかった際、持っていたタコ焼きをべっとりと付けてしまったのだ。男の子は泣き、それにキレた不良がおばあさんにイチャもんつけるし、おばあさんは怯えて縮こまり、中々大変な状況だった。

 

 偶然通りかかったツナもスルーするつもりだったのだが、おばあさんが、おそらくクリーニング代だろう――お札を数枚取り出すも、それを受け取った後、不良達が、更に恫喝しながら最終的には財布まで取り上げた時点でつい体が動いてしまった。

 

 といっても喧嘩など無縁の生活だ。厨二的な必殺技など家の中でしか出せない。仕方なく相手が引くくらいの土下座をしてやったのだ。公衆の面前での土下座は、する方は当然だが、される方も意外に恥ずかしい。というか居た堪れない。目論見通り不良は帰っていった。

 

その後、雲雀さんから聞いたがその後風紀員によってボコボコにされキッチリ不良が御老人から取り上げた財布とお金は風紀員によって返却されその不良達は警察に捕まったそうだ。

 

「強い人が暴力で解決するのは簡単だよね。光輝くんとかよくトラブルに飛び込んでいって相手の人を倒してるし……でも、弱くても立ち向かえる人や他人のために頭を下げられる人はそんなにいないと思う。……実際、あの時、私は怖くて……自分は雫ちゃん達みたいに強くないからって言い訳して、誰か助けてあげてって思うばかりで何もしなかった」

 

「そうか、昔の俺を見られていたのか」

 

「ねぇ香織、香織があの時の事を後悔しているならば次その様な事があったら行動に移せばいいだけの事よ。」

 

「そうだよね。」

 

 香織が自分を構う理由が分かったツナは、香織の予想外の高評価に恥ずかしいやら照れくさいやらで苦笑いする。

 

「だからかな、不安になったのかも。迷宮でもツナくが何か無茶するんじゃないかって。不良に立ち向かった時みたいに……でも、うん」

 

 雫と香織は決然とした眼差しでツナを見つめた。

 

「私と香織がツナ君を支えるよ」

 

 ツナはその決意を受け取る。真っ直ぐ見返し、そして頷いた。

 

「ありがとう」

 

「気にするな、お前達は俺が守るから!」

 

「ありがとうツナ///

 

「ありがとうツナ君///」

 

 それから直ぐツナは苦笑いした。

 

 それからしばらく雑談した後、香織は部屋に帰っていった。

 

香織が帰った後でツナと雫で話をする

 

「それでツナ話しって何かしら?」

 

「あぁ、それは香織の事頼むな。」

 

「もしもの事があった時に香織の事支えてやって欲しい。」

 

「それは言われなくてもわかってるわ。でもなんで?」

 

「もしもの事があった時はって話、後檜山達小悪党組みには気をつけろよ、何をしでかすかわからないからな。」

 

「そう、わかったわ、気を付けておくわね。」

 

「あぁ、そうしてくれ。」

 

「それじゃあ帰るわね、お休み!」

 

「お休み!」

 

そして雫は自分の部屋に戻って行く。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 深夜、香織がツナの部屋を出てハジメ部屋に行き夢の中の出来事を話して自室に戻っていくその背中を無言で見つめる者がいたことを誰も知らない。その者の表情が醜く歪んでいたことも知る者はいない。

 

 



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第7話 トラップ

読者の皆様ご愛読ありがとうございます!

楽しんで頂けていますでしょうか?

楽しんで頂けているのであれば幸いです。

では行きましょうか!

「今回もついて来れる読者様だけ着いて来な!」



現在、ツナ達は【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。

 

 ツナとしては薄暗い入口を想像していたが、まるで博物館の入場ゲートのような入口があり、受付窓口まである。制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。

 

 なんでも、ここでステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのだとか。戦争を控え、多大な死者を出さない措置だろう。 

 

 入口付近の広場には露店なども所狭しと並び建っており、それぞれの店の店主がしのぎを削っている。まるでお祭り騒ぎだ。

 

 浅い階層の迷宮は良い稼ぎ場所として人気があるようで人も自然と集まる。馬鹿騒ぎした者が勢いで迷宮に挑み命を散らしたり、裏路地宜しく迷宮を犯罪の拠点とする人間も多くいたようで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したのだとか。入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれるので、迷宮に潜る者は重宝しているらしい。

 

 ハジメ達は、お上りさん丸出しでキョロキョロしながらメルド団長の後をカルガモのヒナのように付いていった。

 

 迷宮の中は、外の賑やかさとは無縁だった。

 

 縦横五メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、【オルクス大迷宮】は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。

 

 一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。

 

 と、その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

 その言葉通り、ラットマンと呼ばれた魔物が結構な速度で飛びかかってきた。

 

 灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。ラットマンという名称に相応しく外見はねずみっぽいが……二足歩行で上半身がムキムキだった。八つに割れた腹筋と膨れあがった胸筋の部分だけ毛がない。まるで見せびらかすように。

 

 正面に立つ光輝達――特に前衛である雫の頬が引き攣っている。やはり、気持ち悪いらしい。

 

ちなみにツナはハジメと共に最後尾にいる。

 

 間合いに入ったラットマンを光輝、雫、龍太郎の三人で迎撃する。その間に、香織と特に親しい女子二人、メガネっ娘の中村恵里とロリ元気っ子の谷口鈴が詠唱を開始。魔法を発動する準備に入る。訓練通りの堅実なフォーメーションだ。

 

 光輝は純白に輝くバスタードソードを視認も難しい程の速度で振るって数体をまとめて葬っている。

 

 彼の持つその剣はハイリヒ王国が管理するアーティファクトの一つで、お約束に漏れず名称は〝聖剣〟である。光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという“聖なる”というには実に嫌らしい性能を誇っている。

 

 龍太郎は、空手部らしく天職が〝拳士、その姿は盾役の重戦士のようだ。

 

 雫は、サムライガールらしく〝剣士〟の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち、一瞬で敵を切り裂いていく。その動きは洗練されていて、騎士団員をして感嘆させるほどである。

 

 ハジメ達が光輝達の戦いぶりに見ていると、詠唱が響き渡った。

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ――〝螺炎〟」」」

 

 三人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。「キィイイッ」という断末魔の悲鳴を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する。

 

 気がつけば、広間のラットマンは全滅していた。他の生徒の出番はなしである。どうやら、光輝達召喚組の戦力では一階層の敵は弱すぎるらしい。

 

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

 生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド団長。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな」とメルド団長は肩を竦めた。

 

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

 メルド団長の言葉に香織達魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。

 

 そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。

 

 そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。

 

 現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだという。

 

 ハジメ達は戦闘経験こそ少ないものの、全員がチート持ちなので割かしあっさりと降りることができた。

 

 もっとも、迷宮で一番恐いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多くあるのだ。

 

 この点、トラップ対策として〝フェアスコープ〟というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。

 

 従って、ハジメ達が素早く階層を下げられたのは、ひとえに騎士団員達の誘導があったからだと言える。メルド団長からも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われているのだ。

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

 メルド団長のかけ声がよく響く。

 

 ここまで、ハジメは特に何もしていない。一応、騎士団員が相手をして弱った魔物を相手に訓練したり、地面を錬成して落とし穴にはめて串刺しにしたりして、一匹だけ犬のような魔物を倒したが、それだけだ。

 

 基本的には、どのパーティーにも入れてもらえず、騎士団員に守られながら後方で待機していただけである。なんとも情けない限りだ。それでも、実戦での度重なる錬成の多用で魔力が上がっているのだから意味はある。魔力の上昇によりレベルも二つほど上がったのだから実戦訓練はためになるようだ。

 

(ただ、これじゃあ完全に寄生型プレイヤーだよね、はぁ~)

 

 再び、騎士団員が弱った魔物をハジメの方へ弾き飛ばしてきたので、溜息を吐きながら接近し、手を突いて地面を錬成。万一にも動けないようにして、魔物の腹部めがけて剣を突き出し串刺しにした。

 

(まぁ、なんか錬成の精度が徐々に上がっているし……地道に頑張ろう……)

 

 魔力回復薬を口に含みながら、額の汗を拭うハジメ。騎士団員達が感心したようにハジメを見ていることには気がついていない。

 

 実を言うと、騎士団員達もハジメには全く期待していなかった。ただ、戦闘に余裕があるので所在無げに立ち尽くすハジメを構ってやるかと魔物をけしかけてみたのだ。もちろん、弱らせて。

 

 騎士団員達としては、ハジメが碌に使えもしない剣で戦うと思っていた。ところが実際は、錬成を利用して確実に動きを封じてから、止めを刺すという騎士団員達も見たことがない戦法で確実に倒していくのだ。錬成師は鍛冶職とイコールに考えられている。故に、錬成師が実戦で錬成を利用することなどあり得なかった。

 

 ハジメとしては、何もない自分の唯一の武器は錬成しかないと考えていたので、鉱物を操れるなら地面も操れるだろうと鍛錬した結果なのだが、周りが派手に強いので一匹相手にするので精一杯の自分はやはり無能だと思い込んでいた。

 

 ちなみに本邦初公開である。王都郊外での実戦訓練で散々無様を晒した末、考え出した戦法だ。

 

ちなみにツナはまだ戦っていない。ただ後ろをついて歩いているだけ。

 

 

 小休止に入り、ふと前方を見ると香織とツナの目が合った。ツナを見て微笑んでいる。

 

そして雫と共に歩いて来る。

 

「ツナ君まだ戦っていないでしょ?」

 

「あぁ、まぁそうだな。やる気はないけど。」

 

「ツナは戦闘系の天職なんだから戦えるでしょ!」

 

「まぁ、みんなの戦いぶりを見ていて面白いからな、特にハジメの近接戦闘と錬成の組み合わせは凄いと思うぞ。雫の剣技も中々の物だ。」

 

「そ、そう?ありがとう///」

 

「まぁそろそろ俺も戦おうか、戦争なんざやる気はないが、俺も久しぶりに暴れたいからな。」

 

そして一行は二十階層を探索する。

 

 迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通だ。

 

 現在、四十七階層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはない。トラップに引っかかる心配もないはずだった。

 

 二十階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層への階段があるらしい。

 

 そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、また地道に帰らなければならない。一行は、若干、弛緩した空気の中、せり出す壁のせいで横列を組めないので縦列で進む。

 

 すると、先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。どうやら魔物のようだ。

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

 メルド団長の忠告が飛ぶ。

 

 その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。

 

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

 メルド団長の声が響く。光輝達が相手をするようだ。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。光輝と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。

 

 龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。

 

 直後、

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

 部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

「ぐっ!?」

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

 

 体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。

 

 まんまと食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。

 

 ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が香織達へと迫る。

 

 香織達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。避けるスペースが心もとないからだ。

 

 しかし、発動しようとした瞬間、香織達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。

 

 なんと、投げられた岩もロックマウントだったのだ。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて香織達へと迫る。その姿は、さながらル○ンダイブだ。「か・お・り・ちゃ~ん!」という声が聞こえてきそうである。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。香織も恵里も鈴も「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。

 

「おい、気を抜くな!死にたいのか!」

 

 慌ててツナがダイブ中のロックマウントを斬り伏せる。

 

 香織達は、ツナに対して「ありがとう」と言っている傍らメルドを含めた騎士団達は唖然としていた。

最後尾にいた筈のツナが一瞬にして最前線に移動しロックマウントを二体とも斬り伏せたのだから。ただし斬り伏せたはいいが斬撃によって壁が崩れてしまった

 

 その時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

 

 そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

 グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。

 

「素敵……」

 

 香織が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。そして、誰にも気づかれない程度にチラリとツナに視線を向けた。もっとも、雫ともう一人だけは気がついていたが……

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルド団長だ。

 

「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

 しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。

 

 メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

「団長! トラップです!」

「ッ!?」

 

 しかし、メルド団長も、騎士団員の警告も一歩遅かった。

 

 檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。

 

 魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。

 

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

 メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

 

 部屋の中に光が満ち、つ達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

 ツナ達は空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。

 

 尻の痛みに呻き声を上げながら、ツナとハジメは周囲を見渡す。クラスメイトのほとんどはハジメと同じように尻餅をついていたが、メルド団長や騎士団員達、光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。

 

 どうやら、先の魔法陣は転移させるものだったらしい。現代の魔法使いには不可能な事を平然とやってのけるのだから神代の魔法は規格外だ。

 

 ハジメ達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。天井も高く橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっており、落ちれば奈落の底といった様子だ。

 

 橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせ様ならば掴むものもなく真っ逆さまだ。ツナ達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

 

 それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 雷の如く轟いた号令に、急いで動き出す生徒達。

 

 迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現しからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が……

 

 その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

――まさか……ベヒモス……なのか……

 

 

 



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第8話 ベヒモス



今回もついて来れる読者様だけついて来な!


橋の両サイドに現れた赤黒い光を放つ魔法陣。通路側の魔法陣は十メートル近くあり、階段側の魔法陣は一メートル位の大きさだが、その数がおびただしい数である。

 

 小さな無数の魔法陣からは、骨格だけの体に剣を携えた魔物〝トラウムソルジャー〟が溢れるように出現した。空洞の眼窩からは魔法陣と同じ赤黒い光が煌々と輝き目玉の様に辺りを見回している。その数は、既に百体近くに上っており、尚、増え続けているようだ。

 

 しかし、数百体のガイコツ戦士より、反対の通路側の方がヤバイとハジメは感じていた。

 

十メートル級の魔法陣からは体長十メートル級の四足で頭部に兜のような物を取り付けた魔物が出現したからだ。もっとも近い既存の生物に例えるならトリケラトプスだろうか。ただし、瞳は赤黒い光を放ち、鋭い爪と牙を打ち鳴らしながら、頭部の兜から生えた角から炎を放っているという付加要素が付くが……

 

 メルド団長が呟いた〝ベヒモス〟という魔物は、大きく息を吸うと凄まじい咆哮を上げた。

 

「グルァァァァァアアアアア!!」

 

「ッ!?」

 

 その咆哮で正気に戻ったのか、メルド団長が矢継ぎ早に指示を飛ばす。

 

「アラン! 生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ! 光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」

 

「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も……」

 

「馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」

 

 どうにか撤退させようと、再度メルドが光輝に話そうとした瞬間、ベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。このままでは、撤退中の生徒達を全員轢殺してしまうだろう。

 

 そうはさせるかと、ハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張る。

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――〝聖絶〟!!」」」

 

そこでツナが右手を前に出して魔法を発動する。

 

「リフレクション」

 

するとベヒモスは突っ込んで来た威力をそのままベヒモスに与える。

 

「グルァアア!?」

 

そしてツナはリフレクションを破壊する為魔法を発動する。

 

「リフレクションバースト!」

 

ツナはリフレクションを破壊しベヒモスにダメージを与え爆風を起こしベヒモスから距離を取る。

 

「ちっ、ほんの少しダメージが入っただけか」

 

そして二メートル四方の最高級の紙に描かれた魔法陣と四節からなる詠唱、さらに三人同時発動。一回こっきり一分だけの防御であるが、何物にも破らせない絶対の守りが顕現する。純白に輝く半球状の障壁がベヒモスの突進を防ぐ!

 

 衝突の瞬間、凄まじい衝撃波が発生し、ベヒモスの足元が粉砕される。橋全体が石造りにもかかわらず大きく揺れた。撤退中の生徒達から悲鳴が上がり、転倒する者が相次ぐ。

 

 トラウムソルジャーは三十八階層に現れる魔物だ。今までの魔物とは一線を画す戦闘能力を持っている。前方に立ちはだかる不気味な骸骨の魔物と、後ろから迫る恐ろしい気配に生徒達は半ばパニック状態になっている。

 

 隊列など無視して我先にと階段を目指してがむしゃらに進んでいく。騎士団員の一人、アランが必死にパニックを抑えようとするが、目前に迫る恐怖により耳を傾ける者はいない。

 

 その内、一人の女子生徒が後ろから突き飛ばされ転倒してしまった。「うっ」と呻きながら顔を上げると、眼前で一体のトラウムソルジャーが剣を振りかぶっていた。

 

「あ」

 

 そんな一言と同時に彼女の頭部目掛けて剣が振り下ろされたが

 

ガキィン

 

 死ぬ――女子生徒がそう感じた次の瞬間、トラウムソルジャーの剣が弾かれ更に足元が突然隆起した。

 

 バランスを崩したトラウムソルジャーの剣は彼女から逸れてカンッという音と共に地面を叩くに終わる。更に、地面の隆起は数体のトラウムソルジャーを巻き込んで橋の端へと向かって波打つように移動していき、遂に奈落へと落とすことに成功した。

 

 橋の縁から二メートルほど手前には、座り込みながら荒い息を吐くハジメの姿があった。ハジメは連続で地面を錬成し、滑り台の要領で魔物達を橋の外へ落としたのである。いつの間にか、錬成の練度が上がっており、連続で錬成が出来るようになっていたおかげだ。錬成範囲も少し広がったようだ。

 

 錬成は触れた場所から一定範囲にしか効果が発揮されないので、トラウムソルジャーの剣の間合いで地面にしゃがまなければならず、緊張と恐怖でハジメの内心は一杯一杯だったが。

 

 魔力回復薬を飲みながら倒れた女子生徒のもとへ駆け寄るツナとハジメ。錬成用の魔法陣が組み込まれた手袋越しに女子生徒の手を引っ張り立ち上がらせる。

 

 呆然としながら為されるがままの彼女に、ハジメが笑顔で声をかけた。

 

「早く前へ。大丈夫、冷静になればあんな骨どうってことないよ。うちのクラスは僕を除いて全員チートなんだから!」

 

「死んだらゆるさねぇよ、生きて帰ろうぜ園部!」

 

 自信満々で背中をバシッと叩くハジメと隣にいるツナをマジマジと見る女子生徒は、次の瞬間には「うん! ありがとう!」と元気に返事をして駆け出した。

 

ハジメは周囲のトラウムソルジャーの足元を崩して固定し、足止めをしながら周囲を見渡し、ツナがそれを斬り伏せる。

 

 誰も彼もがパニックになりながら滅茶苦茶に武器や魔法を振り回している。このままでは、いずれ死者が出る可能性が高い。騎士アランが必死に纏めようとしているが上手くいっていない。そうしている間にも魔法陣から続々と増援が送られてくる。

 

「なんとかしないと……必要なのは……強力なリーダー……道を切り開く火力……天之河くん!」

 

「ハジメ、俺も行く!共に戦おう!」

 

「うん!行こう!」

 

 ツナとハジメは走り出した。光輝達のいるベヒモスの方へ向かって。

 

ベヒモスは依然、障壁に向かって突進を繰り返していた。

 

 障壁に衝突する度に壮絶な衝撃波が周囲に撒き散らされ、石造りの橋が悲鳴を上げる。障壁も既に全体に亀裂が入っており砕けるのは時間の問題だ。既にメルド団長も障壁の展開に加わっているが焼け石に水だった。

 

「ええい、くそ! もうもたんぞ! 光輝、早く撤退しろ! お前達も早く行け!」

 

「嫌です! メルドさん達を置いていくわけには行きません! 絶対、皆で生き残るんです!」

 

「くっ、こんな時にわがままを……」

 

 メルド団長は苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

 この限定された空間ではベヒモスの突進を回避するのは難しい。それ故、逃げ切るためには障壁を張り、押し出されるように撤退するのがベストだ。

 

 しかし、その微妙なさじ加減は戦闘のベテランだからこそ出来るのであって、今の光輝達には難しい注文だ。

 

 その辺の事情を掻い摘んで説明し撤退を促しているのだが、光輝は〝置いていく〟ということがどうしても納得できないらしく、また、自分ならベヒモスをどうにかできると思っているのか目の輝きが明らかに攻撃色を放っている。

 

 まだ、若いから仕方ないとは言え、少し自分の力を過信してしまっているようである。戦闘素人の光輝達に自信を持たせようと、まずは褒めて伸ばす方針が裏目に出たようだ。

 

「光輝! 団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」

 

 雫は状況がわかっているようで光輝を諌めようと腕を掴む。

 

「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ? 付き合うぜ、光輝!」

 

「龍太郎……ありがとな」

 

 しかし、龍太郎の言葉に更にやる気を見せる光輝。それに雫は舌打ちする。

 

「状況に酔ってんじゃないわよ! この馬鹿ども!」

 

「雫ちゃん……」

 

 苛立つ雫に心配そうな香織。

 

「神聖なる鎖よ、我らに仇なす敵を捕らえよ! セイクリッドチェイン!!」

 

そして光の鎖がベヒモスを縛り上げる

 

 その時、二人の男子が光輝の前に飛び込んできた。

 

「南雲君!、ツナ!?」

 

「なっ、南雲!?、沢田!?」

 

「南雲!?、沢田!?」

 

 驚く一同にハジメは必死の形相でまくし立てる。

 

「早く撤退を! 皆のところに! 君がいないと! 早く!」

 

「いきなりなんだ? それより、なんでこんな所にいるんだ!  ここは俺達に任せて南雲は……」

 

「そんなこと言っている場合じゃねぇだろ!!こっからは俺とハジメで相手する。」

 

 ハジメに撤退するように促そうとしたがツナが光輝の言葉を遮って、ツナは乱暴な口調で怒鳴り返した。

 

 いつも見守るような大人しいイメージやこの世界に来てからは戦争なんざ興味もないと言った様な態度とは違うギャップに思わず硬直する光輝。

 

「あれが見えないの!? みんなパニックになってる! リーダーがいないからだ!」

 

 光輝の胸ぐらを掴みながら指を差すハジメ。

 

 その方向にはトラウムソルジャーに囲まれ右往左往しているクラスメイト達がいた。

 

 訓練のことなど頭から抜け落ちたように誰も彼もが好き勝手に戦っている。効率的に倒せていないから敵の増援により未だ突破できないでいた。スペックの高さが命を守っているが、それも時間の問題だろう。

 

「一撃で切り抜ける力が必要なんだ! 皆の恐怖を吹き飛ばす力が! それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ! 前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」

 

 呆然と、混乱に陥り怒号と悲鳴を上げるクラスメイトを見る光輝は、ぶんぶんと頭を振るとハジメに頷いた。

 

「ああ、わかった。直ぐに行く! メルド団長! すいませ――」

 

「下がれぇーー!」

 

 〝すいません、先に撤退します〟――そう言おうとしてメルド団長を振り返った瞬間、その団長の悲鳴と同時に、遂に障壁と光の鎖が砕け散った。

 

 暴風のように荒れ狂う衝撃波がツナと

 

ハジメ達を襲う。咄嗟に、ハジメが前に出て錬成により石壁を作り出すがあっさり砕かれ吹き飛ばされる。多少は威力を殺せたようだが……

 

 舞い上がる埃がベヒモスの咆哮で吹き払われた。

 

 そこには、倒れ伏し呻き声を上げる団長と騎士が三人。衝撃波の影響で身動きが取れないようだ。光輝達も倒れていたがすぐに起き上がる。メルド団長達の背後にいたことと、ハジメの石壁が功を奏したようだ。

 

 光輝が問う。それに苦しそうではあるが確かな足取りで前へ出る二人。

 

「やるしかねぇだろ!」

 

「……なんとかしてみるわ!」

 

 二人がベヒモスに突貫する。

 

「香織はメルドさん達の治癒を!」

「うん!」

 

 光輝の指示で香織が走り出す。ハジメは既に団長達のもとだ。戦いの余波が届かないよう石壁を作り出している。気休めだが無いよりマシだろう。

 

 光輝は、今の自分が出せる最大の技を放つための詠唱を開始した。

 

「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!――〝神威〟!」

 

 詠唱と共にまっすぐ突き出した聖剣から極光が迸る。

 

 先の天翔閃と同系統だが威力が段違いだ。橋を震動させ石畳を抉り飛ばしながらベヒモスへと直進する。

 

 龍太郎と雫は、詠唱の終わりと同時に既に離脱している。ギリギリだったようで二人共ボロボロだ。この短い時間だけで相当ダメージを受けたようだ。

 

 放たれた光属性の砲撃は、轟音と共にベヒモスに直撃した。光が辺りを満たし白く塗りつぶす。激震する橋に大きく亀裂が入っていく。

 

「これなら……はぁはぁ」

 

「はぁはぁ、流石にやったよな?」

 

「だといいけど……」

 

 龍太郎と雫が光輝の傍に戻ってくる。光輝は莫大な魔力を使用したようで肩で息をしている。

 

 先ほどの攻撃は文字通り、光輝の切り札だ。残存魔力のほとんどが持っていかれた。背後では、治療が終わったのか、メルド団長が起き上がろうとしている。

 

そしてツナが

 

「クソッたれ!、最悪なフラグ立てやがって!やってねぇよ!無傷だよ!」

 

 そんな中、徐々に光が収まり、舞う埃が吹き払われる。

 

 その先には……

 

 無傷のベヒモスがいた。

 

「…嘘だろ」

 

 低い唸り声を上げ、光輝を射殺さんばかりに睨んでいる。と、思ったら、直後、スッと頭を掲げた。頭の角がキィーーーという甲高い音を立てながら赤熱化していく。そして、遂に頭部の兜全体がマグマのように燃えたぎった。

 

「ボケッとするな! 逃げろ!」

 

 メルド団長の叫びに、ようやく無傷というショックから正気に戻った光輝達が身構えた瞬間、ベヒモスが突進を始める。そして、光輝達のかなり手前で跳躍し、赤熱化した頭部を下に向けて隕石のように落下した。

 

光輝達は、咄嗟に横っ飛びで回避するも、着弾時の衝撃波をモロに浴びて吹き飛ぶ。ゴロゴロと地面を転がりようやく止まった頃には、満身創痍の状態だった。

 

 どうにか動けるようになったメルド団長が駆け寄ってくる。他の騎士団員は、まだ香織による治療の最中だ。ベヒモスはめり込んだ頭を抜き出そうと踏ん張っている。

 

「お前等、動けるか!」

 

 メルド団長が叫ぶように尋ねるも返事は呻き声だ。先ほどの団長達と同じく衝撃波で体が麻痺しているのだろう。内臓へのダメージも相当のようだ。

 

 メルド団長が香織を呼ぼうと振り返る。その視界に、駆け込んでくるハジメの姿を捉えた。

 

「坊主達! 香織を連れて、光輝を担いで下がれ!」

 

 ハジメにそう指示する団長。

 

 光輝を、光輝だけを担いで下がれ。その指示は、すなわち、もう一人くらいしか逃げることも敵わないということなのだろう。

 

 メルド団長は唇を噛み切るほど食いしばり盾を構えた。ここを死地と定め、命を賭けて食い止めるつもりだ。

 

 そんな団長に、ハジメは必死の形相で、とある提案をする。それは、この場の全員が助かるかもしれない唯一の方法。ただし、あまりに馬鹿げている上に成功の可能性も少なく、ハジメが一番危険を請け負う方法だ。

 

 メルドは逡巡するが、ベヒモスが既に戦闘態勢を整えている。再び頭部の兜が赤熱化を開始する。時間がない。

 

ツナはこの国の刀をしまい雫に渡す。

 

「ツナ!?何武器しまっているの!早く構えなさい、死にたいの!」

 

「安心しろ死ぬつもりは全く無い。」

 

そしてツナはリングと一つの匣兵器を出してリングに炎を灯し匣に炎を注入する。

 

「開口」

 

すると匣からニ梃拳銃のXガンナーを取り出す。

 

その頃ハジメは

 

 

「……やれるんだな?」

 

「やりますよ、ツナも一緒ですから!」

 

 決然とした眼差しを真っ直ぐ向けてくるハジメに、メルド団長は「くっ」と笑みを浮かべる。

 

「まさか、お前さん達に命を預けることになるとはな。……必ず助けてやる。だから……頼んだぞ!」

 

「はい!」

 

そこにツナが来て

 

「良く言うぜ、そんな体たらくで。」

 

「くっ、言い返す言葉も無い。」

 

「さてと、いっちょ戦いますか!」

 

「うん!」

 

メルド団長はそう言うとベヒモスの前に出た。そして、簡易の魔法を放ち挑発する。ベヒモスは、先ほど光輝を狙ったように自分に歯向かう者を標的にする習性があるようだ。しっかりとその視線がメルド団長に向いている。

 

 そして、赤熱化を果たした兜を掲げ、突撃、跳躍する。メルド団長は、ギリギリまで引き付けるつもりなのか目を見開いて構えている。そして、小さく詠唱をした。

 

「吹き散らせ――〝風壁〟」

 

 詠唱と共にバックステップで離脱する。

 

その直後、ベヒモスの頭部が一瞬前までメルド団長がいた場所に着弾した。発生した衝撃波や石礫は〝風壁〟でどうにか逸らす。大雑把な攻撃なので避けるだけならなんとかなる。倒れたままの光輝達を守りながらでは全滅していただろうが。

 

ベヒモスの動きをハジメが止めツナは銃で攻撃する。

 

ツナは死ぬ気の炎銃にチャージして撃ち抜く。

 

ズガァアン、ズガァアン、ズガァアン

 

耳をつんざく様な音を鳴らしベヒモスを撃ち抜く。

 

 

雫はカラン、カラン、カランという音を聞いて音の正体を拾い上げ

ポケットにしまった。

 

「ハジメ、後どの位持ちそうだ!」

 

「そろそろキツイかもしれない!」

 

「そうか、ハジメベヒモスの地面を盛り上げる事は出来ないか?」

 

「難しいと思うけどやってみる!」

 

「頼む!」

 

ツナも銃に死ぬ気の炎をチャージして撃ち抜く。

 

ハジメはツナの指示通りベヒモスの地面を盛り上げようと奮闘する。

 

「――〝錬成〟!」

 

その間に、メルドは回復した騎士団員と香織を呼び集め、光輝達を担ぎ離脱しようとする。

 

 トラウムソルジャーの方は、どうやら幾人かの生徒が冷静さを取り戻したようで、周囲に声を掛け連携を取って対応し始めているようだ。立ち直りの原因が、実は先ほどハジメが助けた女子生徒だったりする。地味に貢献しているハジメである。

 

「待って下さい! まだ、ツナ君と南雲君がっ」

 

 その間に、メルドは回復した騎士団員と香織を呼び集め、光輝達を担ぎ離脱しようとする。

 

 トラウムソルジャーの方は、どうやら幾人かの生徒が冷静さを取り戻したようで、周囲に声を掛け連携を取って対応し始めているようだ。立ち直りの原因が、実は先ほどハジメが助けた女子生徒だったりする。地味に貢献しているハジメである。

 

坊主達の作戦だ! ソルジャーどもを突破して安全地帯を作ったら魔法で一斉攻撃を開始する! もちろん坊主がある程度離脱してからだ! 魔法で足止めしている間に坊主が帰還したら、上階に撤退だ!」

 

「なら私も残ります!」

 

「ダメだ! 撤退しながら、香織には光輝を治癒してもらわにゃならん!」

 

「でも!」

 

 なお、言い募る香織にメルド団長の怒鳴り声が叩きつけられる。

 

「坊主達の思いを無駄にする気か!」

 

「ッ――」

 

その頃ツナはベヒモスを相手にしながら超直感によって嫌な予感を感じ取っていた。

 

 

メルド団長を含めて、メンバーの中で最大の攻撃力を持っているのは間違いなくツナであるが、ツナは現在ハジメと共にベヒモスと戦闘中だ、次に天之河を少しでも早く治癒魔法を掛け回復させなければ、ベヒモスを足止めするには火力不足に陥るかもしれない。そんな事態を避けるには、香織が移動しながら光輝を回復させる必要があるのだ。ベヒモスはハジメの魔力が尽きて錬成ができなくなった時点で動き出す。

 

「天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん――〝天恵〟」

 

 香織は泣きそうな顔で、それでもしっかりと詠唱を紡ぐ。淡い光が光輝を包む。体の傷と同時に魔力をも回復させる治癒魔法だ。

 

 メルド団長は、香織の肩をグッと掴み頷く。香織も頷き、もう一度、必死の形相で錬成を続けるハジメと必死にハジメが止めるベヒモスを倒そうと奮闘するツナを振り返った。そして、光輝を担いだメルド団長と、雫と龍太郎を担いだ騎士団員達と共に撤退を開始した。

 

 トラウムソルジャーは依然増加を続けていた。既にその数は二百体はいるだろう。階段側へと続く橋を埋め尽くしている。

 

誰もが、もうダメかもしれない、そう思ったとき……

 

「――〝天翔閃〟!」

 

 純白の斬撃がトラウムソルジャー達のド真ん中を切り裂き吹き飛ばしながら炸裂した。

 

 橋の両側にいたソルジャー達も押し出されて奈落へと落ちていく。斬撃の後は、直ぐに雪崩れ込むように集まったトラウムソルジャー達で埋まってしまったが、生徒達は確かに、一瞬空いた隙間から上階へと続く階段を見た。今まで渇望し、どれだけ剣を振るっても見えなかった希望が見えたのだ。

 

「皆! 諦めるな! 道は俺が切り開く!」

 

 そんなセリフと共に、再び〝天翔閃〟が敵を切り裂いていく。光輝が発するカリスマに生徒達が活気づく。

 

「お前達! 今まで何をやってきた! 訓練を思い出せ! さっさと連携をとらんか! 馬鹿者共が!」

 

 皆の頼れる団長が〝天翔閃〟に勝るとも劣らない一撃を放ち、敵を次々と打ち倒す。

 

 いつも通りの頼もしい声に、沈んでいた気持ちが復活する。手足に力が漲り、頭がクリアになっていく。実は、香織の魔法の効果も加わっている。精神を鎮める魔法だ。リラックスできる程度の魔法だが、光輝達の活躍と相まって効果は抜群だ。

 

 治癒魔法に適性のある者がこぞって負傷者を癒し、魔法適性の高い者が後衛に下がって強力な魔法の詠唱を開始する。前衛職はしっかり隊列を組み、倒すことより後衛の守りを重視し堅実な動きを心がける。

 

 治癒が終わり復活した騎士団員達も加わり、反撃の狼煙が上がった。チートどもの強力な魔法と武技の波状攻撃が、怒涛の如く敵目掛けて襲いかかる。凄まじい速度で殲滅していき、その速度は、遂に魔法陣による魔物の召喚速度を超えた。

 

 そして、階段への道が開ける。

 

「皆! 続け! 階段前を確保するぞ!」

 

 光輝が掛け声と同時に走り出す。

 

何故こんなにもツナが苦戦しているかと言うと、戦闘している場所が問題なのとハジメと共闘するにあたり強力な一撃にはそれなり時間がいる為だ。

ハジメが頑張っているのに手を休めていられないので高威力かつスピードが速い技で対応しているのだ。

 

「皆、待って!ツナ君と南雲君を助けなきゃ! ツナ君と南雲君がたった二人であの怪物を抑えてるの!」

 

香織の言葉に困惑するクラスメイト達が、数の減ったトラウムソルジャー越しに橋の方を見ると、そこには確かにハジメとツナの姿があった。

 

「なんだよあれ、何してんだ?」

 

「あの魔物、上半身が埋まってる?」

 

「怪物から血が吹き出している?」

 

「オレンジの炎?」

 

次々と疑問の声を漏らす生徒達にメルド団長が指示を飛ばす。

 

「そうだ! 坊主達がたった二人であの化け物を抑えているから撤退できたんだ! 前衛組! ソルジャーどもを寄せ付けるな! 後衛組は遠距離魔法準備! もうすぐ坊主の魔力が尽きる。アイツらが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」

 

「沢田、南雲、待ってろ!今行く!」

 

ツナはその声が聞こえたのか大きな声で天之河に向かって。

 

「来るな!邪魔だ!天之河そこでクラスの奴ら守ってろ!」

 

その声で天之河は足を止めた。

 

『X SKY CAOS SHOT』

 

ズガァアン、ズガァアン、

 

「ハジメ!」

 

ツナはハジメに魔力回復薬投げ渡しハジメはそれを飲み回復する。

 

ビリビリと腹の底まで響くような声に気を引き締め直す生徒達。中には階段の方向を未練に満ちた表情で見ている者もいる。

 

 無理もない。ついさっき死にかけたのだ。一秒でも早く安全を確保したいと思うのは当然だろう。しかし、団長の「早くしろ!」という怒声に未練を断ち切るように戦場へと戻った。

 

 その中には檜山大介もいた。自分の仕出かした事とはいえ、本気で恐怖を感じていた檜山は、直ぐにでもこの場から逃げ出したかった。

 

 しかし、ふと脳裏にあの日の情景が浮かび上がる。

 

 それは、迷宮に入る前日、ホルアドの町で宿泊していたときのこと。

 

 緊張のせいか中々寝付けずにいた檜山は、トイレついでに外の風を浴びに行った。涼やかな風に気持ちが落ち着いたのを感じ部屋に戻ろうとしたのだが、その途中、ネグリジェ姿の香織を見かけたのだ。

 

 初めて見る香織の姿に思わず物陰に隠れて息を詰めていると、香織は檜山に気がつかずに通り過ぎて行った。

 

 気になって後を追うと、香織はとある部屋の前で立ち止まりノックをした。その扉から出てきたのは……ハジメだった。

 

 檜山は頭が真っ白になった。檜山は香織に好意を持っている。しかし、自分とでは釣り合わないと思っており、光輝のような相手なら、所詮住む世界が違うと諦められた。

 

 しかし、ハジメは違う。自分より劣った存在(檜山はそう思っている)が香織の傍にいるのはおかしい。それなら自分でもいいじゃないか、と端から聞けば頭大丈夫? と言われそうな考えを檜山は本気で持っていた。

 

 溜まっていた不満は、憎悪にまで膨れ上がっていた。香織が見蕩れていたグランツ鉱石を手に入れようとしたのも、その気持ちが焦りとなってあらわれたからだ。

 

 その時のことを思い出した檜山は、たった二人でベヒモスを抑えるハジメとツナを見て、今も祈るようにハジメとツナを案じる香織を視界に捉え……

 

 ほの暗い笑みを浮かべた、その様子を一人の少女と少年が見ている事に気付かずに。

 

檜山が暗い笑みを浮かべている頃ツナの超直感が警鐘を鳴らし始めた。

 

ツナは気を抜く事なく更に引き締め戦闘に臨む。

 

その頃、ハジメはもう直ぐ自分の魔力が尽きるのを感じていた。既に回復薬はない。ツナに貰った回復薬もきれた、チラリと後ろを見るとどうやら全員撤退できたようである。隊列を組んで詠唱の準備に入っているのがわかる。

 

 ベヒモスは相変わらずもがいているが、この分なら錬成を止めても数秒は時間を稼げるだろう。その間に少しでも距離を取らなければならない。

 

 額の汗が目に入る。極度の緊張で心臓がバクバクと今まで聞いたことがないくらい大きな音を立てているのがわかる。

 

 ハジメはツナとアイコンタクトで意思疎通を図り二人でタイミングを見計らった。

 

 そして、数十度目の亀裂が走ると同時に最後のツナの攻撃をベヒモスに打ち込みハジメの最後の錬成でベヒモスを拘束する。二人同時に一気に駆け出した。

 

ツナとハジメが猛然と逃げ出した後、地面が破裂するように粉砕されベヒモスが咆哮と共に起き上がる。その眼に、憤怒の色が宿っているだろう鋭い眼光が己に無様を晒させた怨敵を探し……

 

 そしてツナとハジメを捉えた。

 

 再度、怒りの咆哮を上げるベヒモス。ツナとハジメを追いかけようと四肢に力を溜めた。

 

 だが、次の瞬間、あらゆる属性の攻撃魔法が殺到した。

 

 夜空を流れる流星の如く、色とりどりの魔法がベヒモスを打ち据える。ダメージはやはり無いようだが、しっかりと足止めになっている。

 

 いける! と確信し、転ばないよう注意しながら頭を下げて全力で走るハジメとツナ。すぐ頭上を致死性の魔法が次々と通っていく感覚は正直生きた心地がしないが、チート集団がそんなミスをするはずないと信じて駆けるハジメ。超直感が警鐘を鳴らす中必死に走るツナそしてベヒモスとの距離は既に三十メートルは広がった。

 

 

 思わず、頬が緩む。

 

 しかし、その直後、ツナとハジメの表情は凍りついた。

 

 無数に飛び交う魔法の中で、一つの火球がクイッと軌道を僅かに曲げたのだ。

 

 ……ツナとハジメの方に向かって。

 

 明らかにツナとハジメを狙い誘導されたものだ。

 

(なんで!?)

 

(クソッ、嫌な予感が的中した。ハジメだけでも逃す!)

 

 疑問や困惑、驚愕が一瞬で脳内を駆け巡り、ハジメは愕然とする。

 

 咄嗟に踏ん張り、止まろうと地を滑るハジメの眼前に、その火球は突き刺さったかに思えたがツナがハジメを庇い着弾の衝撃波をモロに浴び、来た道を引き返すように吹き飛ぶ。直撃は避けたし、内臓などへのダメージもないが、三半規管をやられ平衡感覚が狂ってしまった。

 

 ツナはフラフラしながら少しでも前に進もうと立ち上がるが……

 

 ベヒモスも、いつまでも一方的にやられっぱなしではなかった。ツナが立ち上がった直後、背後で咆哮が鳴り響く。ツナに庇われ前を走らされていたハジメは思わず振り返ると三度目の赤熱化をしたベヒモスの眼光がしっかりツナを捉えていた。

 

 そして、赤熱化した頭部を盾のようにかざしながらツナに向かって突進する!

 

 フラつく頭、霞む視界、迫り来るベヒモス、遠くで焦りの表情を浮かべ悲鳴と怒号を上げるクラスメイト達。

 

 ツナは、なけなしの力を振り絞り、必死にその場を飛び退いた。直後、怒りの全てを集束したような激烈な衝撃が橋全体を襲った。ベヒモスの攻撃で橋全体が震動する。着弾点を中心に物凄い勢いで亀裂が走る。メキメキと橋が悲鳴を上げる。ハジメはツナを助けようと戻って来る。

 

橋が崩壊する前にツナは檜山が俺とハジメを狙って魔法を発動したのをしっかり見ていた。

 

 そして遂に……橋が崩壊を始めた。

 

ハジメはツナを助けようと最後の力を振り絞って引き上げる

 

 度重なる強大な攻撃にさらされ続けた石造りの橋は、遂に耐久限度を超えたのだ。

 

「グウァアアア!?」

 

 悲鳴を上げながら崩壊し傾く石畳を爪で必死に引っ掻くベヒモス。しかし、引っ掛けた場所すら崩壊し、抵抗も虚しく奈落へと消えていった。ベヒモスの断末魔が木霊する。

 

 ハジメもなんとか脱出しようと這いずるそしてそこでツナが捕縛魔法バインドをハジメに巻き付けメルドさんがいる場所まで投げ飛ばしメルドさんがキャッチすると橋が崩れる。

 

(ああ、ダメだな……)

 

 そう思いながら対岸のクラスメイト達の方へ視線を向けると、香織が飛び出そうとして雫や光輝に羽交い締めにされているのが見えたそして

他のクラスメイトは青褪めたり、目や口元を手で覆ったりしている。メルド達騎士団の面々も悔しそうな表情でツナを見ていた。

 

 そして、ツナの足場も完全に崩壊し、ハジメは手を必死にツナに向かって手を伸ばすが届かず涙を流すハジメは仰向けになりながら奈落へと落ちていった。徐々に小さくなる光に手を伸ばしながら……

 



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第9話 奈落の底

ザァーと水の流れる音がする。

 

 冷たい微風が頬を撫で、冷え切った体が身震いした。頬に当たる硬い感触と下半身の刺すような冷たい感触に「うっ」と呻き声を上げてツナは目を覚ました。

 

 ボーとする頭、ズキズキと痛む全身に眉根を寄せながら両腕に力を入れて上体を起こす。

 

「痛っ~、ここは……俺は確か……」

 

 ふらつく頭を片手で押さえながら、記憶を辿りつつ辺りを見回す。

 

 周りは薄暗いが緑光石の発光のおかげで何も見えないほどではない。視線の先には幅五メートル程の川があり、ツナの下半身が浸かっていた。上半身が、突き出た川辺の岩に引っかかって乗り上げたようだ。

 

「そうだ……確か、ハジメが落ちそうなのを庇って、その時橋が壊れて落ちたんだ。……それで……」

 

 霧がかかったようだった頭が回転を始める。

 

 ツナが奈落に落ちていながら助かったのは全くの幸運だった。

 

 落下途中の崖の壁に穴があいており、そこから鉄砲水の如く水が噴き出していたのだ。ちょっとした滝である。そのような滝が無数にあり、ツナは何度もその滝に吹き飛ばされながら次第に壁際に押しやられ、最終的に壁からせり出ていた横穴からウォータースライダーの如く流されたのである。とてつもない奇跡だ。

 

 もっとも、横穴に吹き飛ばされた時、体を強打し意識を飛ばしていたのでツナ自身は、その身に起きた奇跡を理解していないが。

 

「よく思い出せないけど、とにかく、助かったんだな。……はっくしゅん! ざ、寒い」

 

 地下水という低温の水にずっと浸かっていた為に、すっかり体が冷えてしまっている。このままでは低体温症の恐れもあると早々に川から上がる。ガクガクと震えながら服を脱ぎ、絞っていく。

 

 そして、パンツ一枚になると固有空間から鞄を取り出し、そこから着替えの下着や服の上下を取り出し着替える。濡れた服や靴や靴下などは母奈々から最初に教わった生活用魔法で洗い乾燥させ鞄に畳んで入れ新しい靴や靴下を出し履く。

 

「ぐっ、まだ寒いな……」

 

ツナは錬成魔法で地面の岩を暖を取れるように形に変え暖をとる為に魔法を使う。

 

 望むのは火種の魔法だ。その辺の子供でも十センチ位の魔法陣で出すことができる簡単な魔法。

 

 しかし、今ここには魔法行使の効率を上げる魔石がないが、ツナには関係ない。ツナには魔力操作がある為無詠唱な上に魔法式要らずである、それに加えて全属性魔法適正を持つ為魔法に関してはチートである。

 

だがツナは遊び心を持って魔法式を書き詠唱してみる。

 

「求めるは火、其れは力にして光、顕現せよ、〝火種〟 ……言いたいことがあると言えば、長い!長すぎる!たった火を起こすだけでこの詠唱は長すぎる!マジであり得ない!」

 

 魔法詠唱の長さに文句を言いつつも、それでも発動した拳大の炎で暖をとる。

 

「ここどこだ。……だいぶ落ちたんだと思うが……さて帰れるか?……」

 

 暖かな火に当たりながら気持ちが落ち着いてくると、次第に不安が胸中を満たしていく。

 

 無性に泣きたくなって目の端に涙が溜まり始めるが、今泣いては心が折れてしまいそうでグッと堪える。ゴシゴシと目元を拭って溜まった涙を拭うと、ツナは両手でパンッと頬を叩いた。

 

「やるしかない。なんとか地上に戻ろう。大丈夫、きっと大丈夫だ」

 

 自分に言い聞かせるように呟き、俯けていた顔を起こし決然とした表情でジッと炎を見つめた。

 

 二十分ほど暖をとり服もあらかた乾いたので出発することにする。どの階層にいるのかはわからないが迷宮の中であるのは間違いない以上、どこに魔物が潜んでいてもおかしくない。

 

 ツナは慎重に慎重を重ねて奥へと続く巨大な通路に歩を進めた。

 

 ツナが進む通路は正しくは洞窟といった感じだった。

 

 低層の四角い通路ではなく岩や壁があちこちからせり出し通路自体も複雑にうねっている。二十階層の最後の部屋のようだ。

 

 ただし、大きさは比較にならない。複雑で障害物だらけでも通路の幅は優に二十メートルはある。狭い所でも十メートルはあるのだから相当な大きさだ。歩き難くはあるが、隠れる場所も豊富にあり、ハジメは物陰から物陰に隠れながら進んでいった。

 

 そうやってどれくらい歩いただろうか。

 

 ツナはそろそろ疲れを感じ始めた頃、遂に初めての分かれ道にたどり着いた。巨大な四辻である。ツナは岩の陰に隠れながら、どの道に進むべきか逡巡した。

 

 しばらく考え込んでいると、視界の端で何かが動いた気がして慌てて岩陰に身を潜める。

 

 そっと顔だけ出して様子を窺うと、ツナのいる通路から直進方向の道に白い毛玉がピョンピョンと跳ねているのがわかった。長い耳もある。見た目はまんまウサギだった。

 

 ただし、大きさが中型犬くらいあり、後ろ足がやたらと大きく発達している。そして何より赤黒い線がまるで血管のように幾本も体を走り、ドクンドクンと心臓のように脈打っていた。物凄く不気味である。

 

 明らかにヤバそうな魔物なので、直進は避けて右か左の道に進もうと決める。ウサギの位置からして右の通路に入るほうが見つかりにくそうだ。

 

 ツナは息を潜めてタイミングを見計らう。そして、ウサギが後ろを向き地面に鼻を付けてフンフンと嗅ぎ出したところで、今だ! と飛び出そうとした。

 

 その瞬間、ウサギがピクッと反応したかと思うとスッと背筋を伸ばし立ち上がった。警戒するように耳が忙しなくあちこちに向いている。

 

(やばい! み、見つかった? だ、大丈夫だよな?)

 

 岩陰に張り付くように身を潜めながらバクバクと脈打つ心臓を必死に抑える。あの鋭敏そうな耳に自分の鼓動が聞かれそうな気がして、ツナは冷や汗を流す。

 

 だが、ウサギが警戒したのは別の理由だったようだ。

 

「グルゥア!!」

 

 獣の唸り声と共に、これまた白い毛並みの狼のような魔物がウサギ目掛けて岩陰から飛び出したのだ。

 

 その白い狼は大型犬くらいの大きさで尻尾が二本あり、ウサギと同じように赤黒い線が体に走って脈打っている。

 

 どこから現れたのか一体目が飛びかかった瞬間、別の岩陰から更に二体の二尾狼が飛び出す。

 

 再び岩陰から顔を覗かせその様子を観察するハジメ。どう見ても、狼がウサギちゃん(ちゃん付けできるほど可愛くないが)を捕食する瞬間だ。

 

 ツナは、このドサクサに紛れて移動しようかと腰を浮かせた。

 

 だがしかし……

 

「キュウ!」

 

 可愛らしい鳴き声を洩らしたかと思った直後、ウサギがその場で飛び上がり、空中でくるりと一回転して、その太く長いウサギ足で一体目の二尾狼に回し蹴りを炸裂させた。

 

ドパンッ!

 

 およそ蹴りが出せるとは思えない音を発生させてウサギの足が二尾狼の頭部にクリーンヒットする。

 

 すると、

 

ゴギャ!

 

 という鳴ってはいけない音を響かせながら狼の首があらぬ方向に捻じ曲がってしまった。

 

 ツナは腰を浮かせたまま硬直する。

 

 そうこうしている間にも、ウサギは回し蹴りの遠心力を利用して更にくるりと空中で回転すると、逆さまの状態で空中を踏みしめて・・・・・・・・地上へ隕石の如く落下し、着地寸前で縦に回転。強烈なかかと落としを着地点にいた二尾狼に炸裂させた。

 

ベギャ!

 

 断末魔すら上げられずに頭部を粉砕される狼二匹目。

 

 その頃には更に二体の二尾狼が現れて、着地した瞬間のウサギに飛びかかった。

 

 今度こそウサギの負けかと思われた瞬間、なんとウサギはウサミミで逆立ちしブレイクダンスのように足を広げたまま高速で回転をした。

 

 飛びかかっていた二尾狼二匹が竜巻のような回転蹴りに弾き飛ばされ壁に叩きつけられる。グシャという音と共に血が壁に飛び散り、ズルズルと滑り落ち動かなくなった。

 

 最後の一匹が、グルルと唸りながらその尻尾を逆立てる。すると、その尻尾がバチバチと放電を始めた。どうやら二尾狼の固有魔法のようだ。

 

「グルゥア!!」

 

 咆哮と共に電撃がウサギ目掛けて乱れ飛ぶ。

 

 しかし、高速で迫る雷撃をウサギは華麗なステップで右に左にとかわしていく。そして電撃が途切れた瞬間、一気に踏み込み二尾狼の顎にサマーソルトキックを叩き込んだ。

 

 二尾狼は、仰け反りながら吹き飛び、グシャと音を立てて地面に叩きつけられた。二尾狼の首は、やはり折れてしまっているようだ。

 

 蹴りウサギは、

 

「キュ!」

 

 と、勝利の雄叫び? を上げ、耳をファサと前足で払った。

 

(……嘘だろ!?マジかよ!……)

 

 乾いた笑みを浮かべるツナ。ヤバイなんてものじゃない。ツナ達が散々苦労したトラウムソルジャーがまるでオモチャに見える。もしかしたら単純で単調な攻撃しかしてこなかったベヒモスよりも、余程強いかもしれない。

 

 ツナは、「戦ってもいいけど面倒臭い」と、表情を浮かべながら警戒隊勢に入る。

 

 すると

 

カラン

 

 その音は洞窟内にやたらと大きく響いた。

 

 下がった拍子に足元の小石を蹴ってしまったのだ。あまりにベタで痛恨のミスである。ツナの額から冷や汗が噴き出る。小石に向けていた顔をギギギと油を差し忘れた機械のように回して蹴りウサギを確認する。

 

 蹴りウサギは、ばっちりツナを見ていた。

 

 赤黒いルビーのような瞳がつなを捉え細められているツナはは蛇に睨まれたカエルのような顔をした。

 

 やがて、首だけで振り返っていた蹴りウサギは体ごとハジメの方を向き、足をたわめグッと力を溜める。

 

(来る!)

 

 ツナが本能と共に悟った瞬間、蹴りウサギの足元が爆発した。後ろに残像を引き連れながら、途轍もない速度で突撃してくる。

 

 気がつけばツナは、全力で風を槍の形に変え蹴りウサギの腹を貫いた。

 

 直後、一瞬前までツナのいた場所に砲弾のような蹴りが突き刺ささり、地面が爆発したように抉られた。硬い地面をゴロゴロと転がりながら、尻餅をつく形で停止するツナ。そして陥没した地面を貫く風槍を見る

 

 蹴りウサギはお腹を抑え痛むお腹を抑えゆらりと立ち上がり、再度、地面を爆発させながそしてツナに突撃する。

 

 ツナは咄嗟に地面を錬成して石壁を構築するも、その石壁を軽々と貫いて蹴りウサギの蹴りが地面にに炸裂した。

 

 咄嗟に複数の魔法障壁を張り攻撃を防ぐ

 

「ぐぅっ、危な!――」

 

 見ればまだ蹴りウサギは余裕そうに見える。

 

 蹴りウサギの目には見下すような、あるいは嘲笑うかのような色が見える。完全に遊ばれているようだ。

 

 ツナはその態度にムカつき戦闘態勢に入り腕に炎を纏う。

 

そしてツナは蹴りウサギに対して滅龍魔法で応戦する。

 

「火龍の斬撃!」

 

ザッシュ!ドゴォオオオオン!!

 

「キュ、キュウ〜」

 

バタリと蹴りウサギは力無く倒れた。

 

ツナは蹴りウサギを倒した後焼き尽くし消滅させる。

 

ツナは、奥に進んで行こうとした時魔物は現れた。

 

 その魔物は巨体だった。二メートルはあるだろう巨躯に白い毛皮。例に漏れず赤黒い線が幾本も体を走っている。その姿は、たとえるなら熊だった。ただし、足元まで伸びた太く長い腕に、三十センチはありそうな鋭い爪が三本生えているが。

 

「よぉ、熊なのかパンダなのかよくわからんが一応爪で攻撃するみたいだし爪熊にしとくか、まぁこの階層にいるといことは強いんだろ?なぁ俺を楽しませろよ!」

 

「行くぞ爪熊!魔力貯蔵は充分か、ここで俺はお前を倒し、神エヒトを殺す!」

 

ツナは滅龍の魔力を高める

 

「うぉおおお!!火龍の咆哮!!」

 

ゴォォオオオオオオオオオ!!

 

爪熊はそれを魔力を宿した爪を大きく振りかぶった攻撃で切り裂く

 

その隙をツナは見逃さず縮地法を使い爪熊の顔面に攻撃を叩き込む。

 

「火龍の鉄拳!」

 

ドゴォオオオオン!

 

「グゥオオオウ!?」

 

爪熊物凄い勢いと威力で壁に叩きつけられ壁を破壊していくき爪熊が止まったと思えばそこには水溜まりと光輝く神結晶が有った。



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第10話番外編 お粗末な悪意を断罪する豹変する錬成の魔王



今回もついて来れる読者様だけついて来な!


響き渡り消えゆくベヒモスの断末魔。ガラガラと騒音を立てながら崩れ落ちてゆく石橋。

 

 そして……

 

 瓦礫と共に奈落へと吸い込まれるように消えてゆくツナ。

 

 その光景を、まるでスローモーションのように緩やかになった時間の中で、ただ見ていることしかできない香織は自分に絶望する。

 

 香織の頭の中には、昨夜の光景が繰り返し流れていた。

 

 月明かりの射す部屋の中でツナの入れたお世辞にも美味しいとは言えない紅茶モドキをツナと雫とで飲みながら三人で話をした。あんなにじっくり話したのは初めてだった。

 

 

 夢見が悪く不安に駆られて、いきなり訪ねた香織と雫に随分と驚いていたツナ。それでも真剣に話を聞いてくれて、気がつけば不安は消え去り思い出話に花を咲かせていた。

 

 浮かれた気分で部屋に戻ったあと、今更のように自分が随分と大胆な格好をしていたことに気がつき、羞恥に身悶えると同時に、特に反応していなかったツナを思い出して自分には魅力がないのかと落ち込んだりした。一人百面相する香織と同室の雫と一緒に悩んだのも黒歴史だろう。

 

 そして、あの晩、一番重要なことは、香織と雫が約束をしたことだ。

 

 〝ツナ君を雫ちゃんと一緒に支える〟という約束。香織の不安を和らげるために提案してくれた香織のための約束だ。奈落の底へ消えたツナを見つめながら、その時の記憶が何度も何度も脳裏を巡る。

 

 どこか遠くで聞こえていた悲鳴が、実は自分のものだと気がついた香織は、急速に戻ってきた正常な感覚に顔を顰めた。

 

ハジメはツナに助けられ後にハジメは助けようとするが叶わずそのまま気絶した。

 

その後ハジメはメルドに担がれ自室まで運びこまれたのだ。

 

目を覚ましたハジメは己の拳を血が出るくらい握り締める。

 

ハジメは一緒に強くなろうと言っておきながら出来なかった。ツナが転入して来て初めての友人のツナを助けられなかった。助けて貰ったのに助けられなかった。ハジメは己の無力さを呪った。

 

ハジメは決意した檜山を断罪した後強くなってツナを探しに行くと。

きっと生きている。

ツナは生きていると心に言い聞かせる。

俺は強くなる、そして助けに行く!その言葉と共にハジメは豹変する。

 

そしてハジメは香織の元に行くと

 

「離して! ツナ君の所に行かないと! 約束したのに!ツナ君を私と雫ちゃんがぁ、雫ちゃんと私が支えるって! 離してぇ!」

 

 飛び出そうとする香織を雫と光輝が必死に羽交い締めにする。香織は、細い体のどこにそんな力があるのかと疑問に思うほど尋常ではない力で引き剥がそうとする。

 

 このままでは香織の体の方が壊れるかもしれない。しかし、だからといって、断じて離すわけにはいかない。今の香織を離せば、そのまま崖を飛び降りるだろう。それくらい、普段の穏やかさが見る影もないほど必死の形相だった。いや、悲痛というべきかもしれない。

 

「香織っ、ダメよ! 香織!」

 

 雫は自分の感情を押さえつける、そして香織の気持ちが分かっているからこそ、かけるべき言葉が見つからない。ただ必死に名前を呼ぶことしかできない。

 

「香織! 君まで死ぬ気か! 沢田はもう無理だ! 落ち着くんだ! このままじゃ、体が壊れてしまう!」

 

 それは、光輝なりに精一杯、香織・・を気遣った言葉。しかし、今この場で錯乱する香織には言うべきでない言葉だった。

 

「無理って何!? ツナ君は死んでない! 行かないと、きっと助けを求めてる!」

 

そこでハジメが来ると

 

「ハジメくん大丈夫なの!?」

 

「南雲君!大丈夫!?」

 

「俺の事はどうでもいい、安心しろツナは生きている。」

 

「「「「!!」」」」

 

「ハジメくん、本当にツナ君生きているの?」

 

「あぁ、大丈夫だ。」

 

「本当なのか!嘘じゃないだろうな!?」

 

「嘘でも冗談でも無い!言っていい事と悪いことがあるだろうが!」

 

ハジメは天之河の胸ぐらを掴みながら天之河に言う。

 

「…悪い、そうだよな。」

 

「アイツには即死無効化の技能があるそれにツナは天之河より強い。、だから生きている。」

 

「そうか……」

 

「それよりも犯人を捕まえないとな」

 

「犯人?何のだ?」

 

「最後生徒全員の魔法攻撃が放たれた時魔法の一つが突如軌道を変えて曲がって来た。その時俺とツナに対しての攻撃だった。ベヒモスに向いて放たれたと魔法と見せかけてのな」

 

「その時ツナが俺を庇い先に走らせたんだがその時一人だけ悪意に満ちた笑顔をしていた奴がいた。」

 

「あれは事故じゃ無いのか?」

 

「確実に故意で行われたものだ。それが一発だけじゃ無いからな数発はあった。」

 

「そ、そんな」

 

「犯人はわかっているのか?」

 

「あぁ、檜山大介だよ。」

 

「奴は俺とツナの事を快く思って無かったからな。」

 

「あぁ、成る程そう言うことか!」

 

「わかっただろ。」

 

その後

 

ハジメ達はみんなと合流した。

 

メルドさんに話をして納得してもらった。

 

その後ハジメ達は迷宮から抜け出し集まっていた。

 

天之河達は理解している為大丈夫だが突如ハジメが殺気を出した事に周りは顔面蒼白にしながらな見ていた。

 

「さてと何か言う事はあるか檜山大介。」

 

「な、何をだよ!」

 

「ほぅ、しらを切るか」

 

ハジメは殺気を出しながら笑顔で檜山に歩み出す。

 

「南雲くんなに笑っ…」

 

「光輝?」

 

「雫見てみろ、南雲の表情顔が笑っているのに眼が笑って無い。」

 

「相当切れてるのね南雲くんは……」

 

隣では香織も殺気を出している。

 

「テメェ、バレて無いと思ったら大間違いだ!テメェはベヒモスに対して魔法を一斉に放つ時テメェは誤爆と見せかけて俺とツナを狙っただろ。」

 

「な、何のことだよ!、あ、あれは事故だろ!」

 

「本気でそう思っているのか?そして何を焦っているんだ?やっていないなら堂々としていればいいのに。」

 

「ハジメ待て、どう言う事だ?」

 

「メルドさんが俺とツナの援護の為魔法を一斉に放つ指示をした時誤爆があっただろ。」

 

「あぁ、あったな。綱吉にぶつかって吹っ飛んだやつだな?」

 

「あぁ、そうだ。あれは実際事故に見せかけた故意に行われたものだ。」

 

「なっ!?」

 

その話を聞いていた生徒達全員と騎士全員が驚愕の表情に変わる。

 

「放たれた魔法はベヒモスに向かっていくはずだったが、突如軌道を変えて俺とハジメに向かって来た。それが二回程あった。」

 

「本来俺にに一発、ツナに一発当てる筈だったのだろうどれも高威力の魔法だ。まぁ、二発ともツナが庇い俺はくらっていないけどな。特に俺には属性耐性が無い。それを知っているのはステータスプレートを見た檜山とツナとメルドさんと先生だけだ、メルドさんと先生は導く立場の人だから除外。俺はツナと共に走っていたから除外後はお前だけなんだよ檜山、それにお前は俺とツナの事を快く思って無かっただろ。何故なら俺とツナは香織と仲が良かったからな。テメェは香織の事が好きだったもんなぁ、俺を虐めてたのもそれが気に食わなかったからだろ。本来ならツナも虐めようと思ってツナに突っかかったが帰り打ちにあったから俺のみにしたところだろうがな。好きな人に振り向いて欲しければ虐めなんてしてんじゃねぇよ!テメェの程度が知れるんだよ!そんな逆効果に決まってんだろ!それに俺はお前が魔法放つ時憎悪に満ちた笑顔で魔法を俺達に向けて放つのを見たんだよ!これでも言い逃れする気か?」

 

「そうだよね、私見たもん檜山が南雲くんと沢田君に魔法を放つところを!」

 

「俺も見たぞ!檜山が魔法使って二人を事故に見せかけて攻撃するの!」

 

闇術使いでビーストテイマーの清水と魔法少女の園部優香が証言した。

 

すると檜山は

 

「クソォオオオオ!!!死ね南雲オオオ!!!」

 

檜山は武器である剣を振りかぶって攻撃しようとするが

 

「俺は……テメェより切れてんだよ三下ァアア!!」

 

檜山の剣による攻撃をかわし一本背負いで地面に叩きつける。

 

「ぐぅうううう」

 

それでも檜山は抗おうとするが檜山はステータスではハジメ以上だが今の状態のハジメには敵わない。

 

ハジメの隠し技能・怒りの瞬間爆発

効果・短時間だけ全ステータスを相手のステータスの10倍のステータスにする。

 

「半永久的に苦しめ。」

 

天之河が話しかけて来た。

 

「南雲何をするつもりだ!?」

 

ハジメはツナが付与術を持って付与した魔法カード使用し檜山のステータスを一般レベルに落とし、さらに言語理解以外の技能を消し、さらには人に危害を加えようとしたり悪事を働こうと思うと闇の呪いによって身体が麻痺して行く。死ぬ事は無いが苦しみが強くなる魔法で本来敵の捕虜等に使用するものだがハジメは容赦なく使用する。

 

「ぐわぁあああああ」

 

檜山はハジメの使用した魔法によって苦しみ出すが痛みに耐えきれず気絶する。

 

「な、南雲?」

 

「なんだ?」

 

「檜山は死んだのか?」

 

「いや、死んではいない、彼奴程度の三下を俺自ら殺してやる価値も無い。ただ、気絶しているだけだ。まぁ、この呪いはツナ以外決して解呪する事は出来ないがな、例え神父でも修道女でも神だろうと。」

 

『!?』

 

「まぁ、帰ろうぜ。」

 

「そうだな、取り敢えず帰るか」

 

「うん、そうしようか。」

 

「そうね、色々あって疲れたわ。」

 

「…南雲くん?」

 

「何か考えているの?」

 

「八重樫?」

 

「貴方まで居なくならないでよ。もう友達を失いたくないのだからお願いだから無茶はしないでね。」

 

「ふっ、安心しろ俺は簡単には死なないよ。」

 

「白崎、殺気を解け檜山には呪いを施した。」

 

「うん、ありがとう。」

 

ホルアドの町に戻った一行は何かする元気もなく宿屋の部屋に入った。幾人かの生徒は生徒同士で話し合ったりしているようだが、ほとんどの生徒は真っ直ぐベッドにダイブし、そのまま深い眠りに落ちた。

 

そしてその後ハジメ達は王宮に戻り檜山はメルド達の尋問を受けている。

 

 



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第11話 奈落の底の封印部屋

今回もついて来れる読者様だけついて来な!


ツナは爪熊を殴り飛ばした先に神結晶と神結晶から出た神水の水溜りを見つけた。

 

ツナは爪熊を炎で焼きつくし灰にして神水を以前神器で作り出した容器に入れて固有空間にしまった。

 

そこで思い出した。神器といえば使えるのか、使う事が出来れば戦いが有利になる。

 

そこでツナは魔物が入って来ないように視認阻害結界と防御結界を張って神器の中に意識を集中させる。すると

 

久し振りに精神世界に来た。

 

おーい、ドライグ、ミラ〜いるか〜?

 

すると大きな赤い龍と白銀に赤いラインの入った龍がやって来た。

 

 

「相棒!無事だったか!」

 

「ツナ!無事だったのね!」

 

「あぁ、無事だ、神器って使えるのか?」

 

「それに関しては私が答えるわ、私の方は禁手は使えないけど普通の創造や能力は使えるようになっているから安心して、念話で私達とも話せるから、赤龍帝の籠手に関しては使えるわだから暫くの間はドライグと共に頑張って。直ぐにこちらも使えるようにするから。」

 

「そうか助かる。ミラよろしく頼む。」

 

「えぇ、任せておいて!ツナの為ですもの!」

 

「ドライグも頼むな!」

 

「あぁ、わかっている。相棒は強いが無茶だけはするなよ?」

 

「あぁ、わかった。」

 

すると奥の方から一人の女性がやって来た。

 

「ツナ〜」

 

「エルシャさん!?どうしてここに?」

 

「それは、ツナに会いに来たのよ!」

 

「えぇ、ツナが久しぶりにここに来たってドライグが言っていたから!」

 

「ツナ、たまには私ともデートしましょう❤️❤️」

 

「エルシャさん既に肉体無いじゃないですか、既に魂の状態でここに宿っているんですから。」

 

「それじゃあ、ツナが肉体を作ってよ!創造と再生のリングで。」

 

「エルシャさんの肉体って何処に埋められているんですか?」

 

「確かイタリアの……にあると思うわ。」

 

「肉体は腐らない様にしてあるんですよね?」

 

「えぇ、肉体の損傷も腐敗もしないように保護して埋葬してあるわよ。」

 

「本来墓荒らしをするのは赦される事ではないしやりたくもないんですけどエルシャさんの為ですのでやりますけど許して下さいね?」

 

「えぇ、もちろん許すわ。それで出来そう?」

 

「そうですね、おそらく出来ると思います。創造と再生のリングでやるのは最後の手段ですね。それでもいいなら。」

 

「ふふ、えぇそれでいいわ!それじゃあ元の世界に戻ったらよろしくね!」

 

チュ❤️

 

エルシャは唇にキスをする

 

「それじゃあまたね、ツナ!」

 

「あぁ、またねエルシャさん。」

 

ツナは精神世界から現実に戻り、神器を使いフェニックスの涙を12ダースとエリクサーを20本作成する。

 

ツナはステータスプレートを確認する。

 

=======================

沢田綱吉 16歳 男 レベル:55

天職:魔導士(騎士王・魔導帝王・英雄・祖龍神皇帝・神殺しの大空・赤龍神帝王、真なる赤龍神炎光帝・赤龍帝・赤龍帝王)

筋力:4500[Error]

体力:4800[Error]

耐性:5000[Error]

敏捷:5500[Error]

魔力:6800[∞]

魔耐:6800[∞]

技能:全属性適性・複合魔法・光技・闇術・心意・神聖術・付与術・滅龍魔法・滅神魔法・滅悪魔法・全属性耐性極・物理耐性極・剣神術・銃神術・剛力・縮地・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+効率上昇][+身体強化][+魔力錬成]・呪力・崩力[+魔力+呪力]・冥力[呪力-呪]・絶力[+冥力+魔力] 想像構成[+イメージ補強力超上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・創造魔法[+魔法創造][+アイテム創造][+アイテム転送][+技能創造][+技能譲渡][+銃創造][+刀剣創造]・超高速魔力回復・偽装・限界突破・毒素分解EX・超経験値獲得・武器召喚・真名解放・言語理解・日本神話の神々の加護[+即死無効化][+状態異常無効化]・和剣鍛造[+魔剣鍛造][+聖剣鍛造][+神剣鍛造][+聖魔剣鍛造]

=======================

 

ツナはステータスプレート原型のボンゴレリング指に装着して

奥を目指し進み続ける。途中トレントみたいな敵に出くわした時に攻撃方法がリンゴのような果物(味はスイカ)の実を投げて攻撃するという敵がいたので無我夢中で狩り尽くした。

リンゴ擬きの実は固有空間にしまつてある

 

そしてどんどん進んで行き50階層まで到着した。

 

 ツナは、この五十層で作った拠点にて銃技や蹴り技、錬成の鍛錬を積みながら少し足踏みをしていた。というのも、階下への階段は既に発見しているのだが、この五十層には明らかに異質な場所があったのだ。

 

 それは、なんとも不気味な空間だった。

 

 脇道の突き当りにある空けた場所には高さ三メートルの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。

 

 ツナはその空間に足を踏み入れた瞬間全身に悪寒が走るのを感じ、これはヤバイと一旦引いたのである。もちろん装備を整えるためで避けるつもりは毛頭ない。ようやく現れた〝変化〟なのだ。調べないわけにはいかない。

 

 ツナは期待と嫌な予感を両方同時に感じていた。あの扉を開けば確実になんらかの厄災と相対することになる。だが、しかし、同時に終わりの見えない迷宮攻略に新たな風が吹くような気もしていた。

 

「さながらパンドラの箱だな。……さて、どんな希望が入っているんだろうな?」

 

 自分の今持てる武技と武器、そして技能。それらを一つ一つ確認し、コンディションを万全に整えていく。全ての準備を整え、ツナはゆっくりXガンナーを抜いた。

 

 そして、そっと額に押し当て目を閉じる。覚悟ならとっくに決めている。しかし、重ねることは無駄ではないはずだ。ツナは、己の内へと潜り願いを口に出して宣誓する。

 

「俺は、生き延びて故郷に帰る、その為には神エヒトを殺す。その為にもここで死ぬわけにはいかないんだ。」

 

 目を開けたツナの目は覚悟を灯した瞳をしていた。

 

 

 扉の部屋にやってきたツナは油断なく歩みを進める。特に何事もなく扉の前にまでやって来た。近くで見れば益々、見事な装飾が施されているとわかる。そして、中央に二つの窪みのある魔法陣が描かれているのがわかった。

 

「? わならないな、少なくとも大昔の魔法式なんだろうな。」

 

 ツナはこの世界の情報を集める為勉強していた。

 

「相当、古いんだろうな。」

 

 ツナは推測しながら扉を調べるが特に何かがわかるということもなかった。いかにも曰いわくありげなので、トラップを警戒して調べてみたのだが、どうやら今のツナ程度の知識では解読できるものではなさそうだ。

 

「仕方ない、一通りやってみるか!」

 

 一応、扉に手をかけて押したり引いたりしたがビクともしない。なので、いつもの如く錬成で強制的に道を作る。ツナは右手を扉に触れさせさいしゆ錬成を開始した。

 

しかし、その途端、

 

バチィイ!

 

「うわっ!?」

 

 扉から赤い放電が走りツナの手を弾き飛ばした。ツナの手からは煙が吹き上がっている。ツナは悪態を吐きながら神水を飲み回復する。直後に異変が起きた。

 

――オォォオオオオオオ!!

 

 突然、野太い雄叫びが部屋全体に響き渡ったのだ。

 

 ツナはバックステップで扉から距離をとり、腰を落として手をホルスターのすぐ横に触れさせいつでも抜き撃ち出来るようにスタンバイする。

 

 雄叫びが響く中、遂に声の正体が動き出した。

 

「まぁ、ベタと言えばベタだな」

 

 苦笑いしながら呟くツナの前で、扉の両側に彫られていた二体の一つ目巨人が周囲の壁をバラバラと砕きつつ現れた。いつの間にか壁と同化していた灰色の肌は暗緑色に変色している。

 

 一つ目巨人の容貌はまるっきりファンタジー常連のサイクロプスだ。手にはどこから出したのか四メートルはありそうな大剣を持っている。未だ埋まっている半身を強引に抜き出し無粋な侵入者を排除しようとハジメの方に視線を向けた。

 

 その瞬間、

 

ドパンッ!

 

 凄まじい発砲音と共に電磁加速されたタウル鉱石の弾丸が右のサイクロプスのたった一つの目に突き刺さり、そのまま脳をグチャグチャにかき混ぜた挙句、後頭部を爆ぜさせて貫通し、後ろの壁を粉砕した。

 

 左のサイクロプスがキョトンとした様子で隣のサイクロプスを見る。撃たれたサイクロプスはビクンビクンと痙攣したあと、前のめりに倒れ伏した。巨体が倒れた衝撃が部屋全体を揺るがし、埃ほこりがもうもうと舞う。

 

「悪いが、空気を読んで待っていてやれるほど出来た敵役じゃあないんだ」

 

 いろんな意味で酷い攻撃だった。ツナの経験してきた修羅場を考えれば当然の行いなのだろうが、あまりに……あまりにサイクロプス(右)が哀れだった。

 

 おそらく、この扉を守るガーディアンとして封印か何かされていたのだろう。こんな奈落の底の更に底のような場所に訪れる者など皆無と言っていいはずだ。

 

 ようやく来た役目を果たすとき。もしかしたら彼(?)の胸中は歓喜で満たされていたのかもしれない。満を持しての登場だったのに相手を見るまでもなく大事な一つ目ごと頭を吹き飛ばされる。これを哀れと言わずしてなんと言うのか。

 

 サイクロプス(左)が戦慄の表情を浮かべツナに視線を転じる。その目は「コイツなんてことしやがる!」と言っているような気がしないこともない。

 

 ツナは、動かずサイクロプス(左)を睥睨する。ツナの武器、銃というものを知らないサイクロプスは警戒したように腰を低くしいつでも動けるようにしてツナを睨む。

 

 十秒、二十秒……

 

 いつまで経っても動かないツナに業を煮やしたのかサイクロプス(左)が雄叫びを上げ踏み込んだ。

 

 直後、顔面から地面にダイブした。

 

 足を踏み出した瞬間、ガクッと力が抜け、勢いそのままに転倒したのだ。サイクロプス(左)は、わけがわからないといった様子で立ち上がろうと暴れるがモゾモゾと動くだけで一向に力が入らない。

 

 低く唸り声を上げもがくサイクロプス(左)に、ツナがゆっくり近寄っていく。コツコツという足音が、まるでカウントダウンのようだ。ツナは、サイクロプス(左)の眼前までやってくると倒れ伏す頭に銃口を押し付けた。そしてなんの躊躇いもなく引き金を引いた。

 

ドパンッ!

 

 銃声が部屋全体に木霊する。

 

 しかし、ここで予想外のことが起きた。サイクロプス(左)の体が一瞬発光したかと思うと、その直後、直撃した銃弾を皮膚が弾いたのだ。

 

「むっ?」

 

 ツナは、おそらく固有魔法を使ったのだろうと推測する。どうやらサイクロプスの固有魔法は防御力を著しく上げるもののようだ。

 

 うつ伏せに倒れたままのサイクロプス(左)が、小馬鹿にしたように口元を歪めた。

 

 ツナは特に思うところもなく銃口を離すと、サイクロプス(左)の頭部めがけて蹴りを叩き込んだ。

 

 〝緋炎連脚〟により、ツナの蹴りはかつての蹴りウサギを思わせる美しい軌跡を描いてサイクロプス(左)をカチ上げ仰向けにひっくり返す。そして、あらわになった目に再度銃口を押し付けた。

 

 なんとなくサイクロプス(左)が「ちょ、ちょっと待って?」と言っているような気がするが、ツナは気にせず引き金を引いた。流石に、目まで強化することはできなかったのか、弾丸はあっさり貫通しサイクロプス(左)の頭部を粉砕した。

 

「ふむ、約二十秒か。ちょっと遅いな……巨体のせいか?」

 

 ツナは実験結果を分析するようにサイクロプスを見る。

 

 なぜ、サイクロプス(左)はいきなり倒れ動けなくなったのか。

 

 それは、パラライズのせいである。これは、モスラモドキから採取した鱗粉を手榴弾中に詰めて小規模な爆風で吹き散らし相手を麻痺させるというものだ。サイクロプス(左)が倒れるサイクロプス(右)に注目した瞬間に投げ込み鱗粉を撒いておいたのである。

 

「まぁ、いいか。後処理は後でやるとして……」

 

 は、チラリと扉を見て少し思案する。

 

 そして火龍の斬撃でサイクロプスを切り裂き体内から魔石を取り出した。血濡れを気にするでもなく二つの拳大の魔石を扉まで持って行き、それを窪みに合わせてみる。

 

 ピッタリとはまり込んだ。直後、魔石から赤黒い魔力光が迸ほとばしり魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、パキャンという何かが割れるような音が響き、光が収まった。同時に部屋全体に魔力が行き渡っているのか周囲の壁が発光し、久しく見なかった程の明かりに満たされる。

 

 ツナは少し目を瞬かせ、警戒しながら、そっと扉を開いた。

 

 扉の奥は光一つなく真っ暗闇で、大きな空間が広がっているようだ。ツナの〝夜目〟と手前の部屋の明りに照らされて少しずつ全容がわかってくる。

 

 中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。

 

 その立方体を注視していたツナは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。

 

 近くで確認しようと扉を大きく開け固定しようとする。いざと言う時、ホラー映画のように、入った途端バタンと閉められたら困るからだ。

 

 しかし、ツナが扉を開けっ放しで固定する前に、それは動いた。

 

「……だれ?」

 

 かすれた、弱々しい女の子の声だ。ビクリッとしてツナは慌てて部屋の中央を凝視する。すると、先程の〝生えている何か〟がユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。

 

「人……なのか?」

 

 〝生えていた何か〟は人だった。

 

 上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗のぞいている。年の頃は十二、三歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。

 

 流石に予想外だったツナは硬直し、紅の瞳の女の子もツナをジッと見つめていた。やがて、ツナはゆっくり深呼吸し決然とした表情で告げた。

 

「すみません。間違えました」

 

 

 

 

 



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第12話 むしろ勇者よりチート

今回もついて来れる読者様だけついて来な!


「すみません、間違えました」

 

 そう言ってそっと扉を閉めようとするツナ。それを金髪紅眼の女の子が慌てたように引き止める。もっとも、その声はもう何年も出していなかったように掠かすれて呟つぶやきのようだったが……

 

 ただ、必死さは伝わった。

 

「ま、待って! ……お願い! ……助けて……」

「嫌です」

 

 そう言って、やはり扉を閉めようとするツナ。鬼である。いえ、半神半人である。

 

「ど、どうして……なんでもする……だから……」

 

 女の子は必死だ。首から上しか動かないが、それでも必死に顔を上げ懇願こんがんする。

 

 しかし、ツナは言い返した。

 

「あのな、こんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されているような奴を解放するわけないだろう? 絶対ヤバイって。見たところ封印以外何もないみたいだし……脱出には役立ちそうもない。という訳で……」

 

 全くもって正論だった。

 

 だがしかし、普通、囚われた女の子の助けを求める声をここまで躊躇ためらいなく切り捨てられる人間はそうはいないだろう。元お人好しなツナは過去の出来事以来ピチュンしてしまったようだ。

 

 すげなく断られた女の子だが、もう泣きそうな表情で必死に声を張り上げる。

 

「ちがう! ケホッ……私、悪くない! ……待って! 私……」

 

 知らんとばかりに扉を閉めていき、もうわずかで完全に閉じるという時、ツナは歯噛みした。もう少し早く閉めていれば聞かずに済んだのにと。

 

「裏切られただけ!」

 

その言葉にツナは違和感を覚えた。何故なら相棒の超直感が違うと言っているからだ。

 

 もう僅かしか開いていない扉。

 

 しかし、女の子の叫びに、閉じられていく扉は止まった。ほんの僅かな光だけが細く暗い部屋に差し込む。

 

 十秒、二十秒と過ぎ、やがて扉は再び開いた。そこには、苦虫を百匹くらい噛み潰した表情のツナが扉を全開にして立っていた。

 

 ツナとしては、何を言われようが助けるつもりなどなかった。こんな場所に封印されている以上相応の理由があるに決まっているのだ。それが危険な理由でない証拠がどこにあるというのか。邪悪な存在が騙そうとしているだけという可能性の方がむしろ高い。見捨てて然るべきだ。

 

(なにやってんだかな、俺は)

 

 内心溜息を吐くツナ。

 

 〝裏切られた〟――その言葉に心揺さぶられてしまうとは。でも嘗て自分も信じていた師に友達に裏切られた過去を持つ。

 

 もう既に、クラスメイトの誰かが放ったあの魔弾のことはどうでもいいはずだった。この領域においてはまず地上に戻る最優先にしたかった。

 

 それでも、こうまで心揺さぶられたのは、やはりどこかで割り切れていない部分があったのかもしれない。そして、もしかしたら同じ境遇の女の子に、同情してしまう程度には前のツナの良心が残っていたのかもしれない。

 

 ツナは頭をカリカリと掻きながら、女の子に歩み寄る。もちろん油断はしない。

 

「裏切られたと言ったな? だがそれは、お前が封印された理由になっていない。その話が本当だとして、裏切った奴はどうしてお前をここに封印したんだ?」

 

 

 

 が戻って来たことに半ば呆然としている女の子。

 

 ジッと、豊かだが薄汚れた金髪の間から除く紅眼でツナを見つめる。何も答えない女の子にツナが「おーい。聞いてるのか? 話さないなら帰るぞ」と言って踵きびすを返しそうになる。それに、ハッと我を取り戻し、女の子は慌てて封印された理由を語り始めた。

 

「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

 枯れた喉で必死にポツリポツリと語る女の子。話を聞きながらツナは呻いた。なんとまぁ波乱万丈な境遇か。しかし、ところどころ気になるワードがあるので、湧き上がるなんとも言えない複雑な気持ちを抑えながら、ツナは尋ねた。

 

「お前、どっかの国の王族だったのか?」

「……(コクコク)」

「殺せないってなんだ?」

「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

「……そ、そいつは凄まじいな。……すごい力ってそれか?」

「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」

 

 ツナは「ヘェ〜」と一人納得した。

 

ツナは半神半人である為魔力操作もできるし陣も必要としない為そんなに凄いとは思わなかった。

 

「……たすけて…」

 

 ツナが一人で思索に耽ふけり一人で納得しているのをジッと眺めながら、ポツリと女の子が懇願する。

 

「……」

 

 ツナはジッと女の子を見た。女の子もジッとツナを見つめる。どれくらい見つめ合っていたが

 

「一つ言っておく恐らくお前の家族は好き好んでお前を裏切った訳じゃないと思う、何故なら吸血鬼というのは神の憑代に最適だからだ。それにお前は怪我をしても勝手に治るんだろう?だったらそれを神は利用しようとするのは当たり前だ、だけどお前の家族はそれを良しとしなかった。だからお前を守る為にここに封印した。何故かはわからない、恐らく神エヒトの目的を知ってしまったからだろう。それに俺はお前を助ける手段を持っていないんだ、悪いな。俺はお前を助けられる人物を一人知っている。俺はここを無事に出られたらそいつにお前の事を伝えとくよだから暫くの間待っていな。」

 

ツナは一つ嘘をついた助ける方法はあるがこの吸血鬼はハジメの力になってくれるだろうと思い。ハジメが助ける事でハジメが強くなるだろうと思ったから助けなかったのだ。

 

そして吸血鬼はそれを理解したのか数回頷いた。すると何かが迫って来ていた。

 

 その場所はちょうど……真上!

 

 ツナがその存在に気がついたのと、ソレが天井より降ってきたのはほぼ同時だった。

 

 咄嗟とっさに、ツナは縮地で距離を取り相手の姿を確認すると

 

 その魔物は体長五メートル程、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かしている。そして二本の尻尾の先端には鋭い針がついていた。

 

 一番分かりやすいたとえをするならサソリだろう。二本の尻尾は毒持ちと考えた方が賢明だ。明らかに今までの魔物とは一線を画した強者の気配を感じる。自然とツナの額に汗が流れた。

 

 部屋に入った直後は全開だった〝気配感知〟ではなんの反応も捉えられなかった。だが、今は〝気配感知〟でしっかり捉えている。

 

 ということは、少なくともこのサソリモドキは、吸血鬼と接触した後に出てきたということだ。つまり、吸血鬼を逃がさないための最後の仕掛けなのだろう。それは取りも直さず、吸血鬼を盾にすればツナだけなら逃げられる可能性があるということだ。

 

 だが身動きの取れない吸血鬼をチラリと見る。彼女は、サソリモドキになど目もくれず一心にツナを見ていた。凪いだ水面のように静かな、覚悟を決めた瞳。その瞳が何よりも雄弁に彼女の意思を伝えていた。吸血鬼は自分の運命をツナに委ねたのだ。

 

 その瞳を見た瞬間、ツナの瞳に覚悟が灯る。。

 

 

「上等だ。……殺れるもんならやってみろ」

 

 ツナは一瞬固有の空間から神水を取り出すと飲み干した。。

 

 

 試験管型の容器から神水が自分の体内に流れ込む。ここに来るまでに負った傷が一瞬で無くなり全快する。

 

 ツナは短時間で蹴りをつける為高火力で殲滅する事にした、吸血鬼を庇いながら闘うことは出来なくもないが面倒臭いので神器を使うことした。

 

「来い!赤龍帝の聖仗(ブーステッド・ドラグハート・エクセリオン)!」

 

 ギチギチと音を立てながらにじり寄ってくるサソリモドキ。ツナはレイジングハート・エクセリオンに似た武器を構えながら覚悟を灯した瞳で宣言した。

 

「行くぞ……戦闘開始だ!」

 



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第13話 最奥のガーディアン


今回もついて来れる読者様だけ着いて来な!


ツナは神器の赤龍帝の聖仗を構えてサソリ擬きの敵と対峙すると

ツナは体内で魔力と魔力ではないもう一つの力、魔力とは相反する力である呪力を綻びが無いように混ぜ合わせ新たな力を生み出す。

それは、森羅万象如何なる理も破壊し崩壊させる力。その名も崩力。

 

そしてツナは体内で生み出した崩力を使いサソリ擬きとの短期決戦に挑む。そしてツナは詠唱を始める。

 

「咎人達に、滅びの光を。星よ集え、森羅万象如何なる理も崩壊させ、全てを撃ち抜く光となれ。貫け!閃光! 」

 

スターライト・ルイーナブレイカー!!

 

ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン

 

蒼黒の閃光はサソリ擬きの魔物を飲み込み魔石ごと消滅させる。

 

「ふぅ、久々に使ったら疲れた。ん?」

 

ツナは後ろから視線を感じたので振り返ると先程の戦闘を見ていたのか

目を丸くして口をポカンと開けていた。

 

「どうした、そんな顔をして?ああ成る程先程の戦闘を見て驚いたのか。まぁ普通なら考えられないだろうからな。まぁいい、俺は行く。ちゃんとお前を解放してくれるであろう者にお前の事を伝える。ただしあいつが助けてくれるかはわからない。そこはお前が説得して解放してもらえるようににしろ。わかったか?」

 

「ん、わかった。」

 

「せめてもの償いとしてお前に名をつけようと思うがいいか?」

 

「ん、お願い名前つけて欲しい。」

 

「そうだなぁ、ユエなんてどうだ?俺の世界の言葉で月の意味を表す言葉だ。」

 

「ん、気に入った。ありがとう。」

 

「あぁ、別に大した事じゃない、元気でな。」

 

「ん、またいつか。」

 

「あぁ、またな。」

 

ツナは武装を解除し迷宮を進み続けた。

 

そして遂に、次の階層でツナが最初にいた階層から百階目になるところまで来た。その一歩手前の階層でツナは装備の確認と補充にあたっていた。

 

 

 ツナが最初にいた階層から八十階を超えた時点で、ここが地上で認識されている通常の【オルクス大迷宮】である可能性は消えた。奈落に落ちた時の感覚と、各階層を踏破してきた感覚からいえば、通常の迷宮の遥かに地下であるのは確実だ。

 

 銃技、体術、固有魔法、兵器、そして錬成。いずれも相当磨きをかけたという自負がツナにはあった。そうそう、簡単にやられはしないだろう。しかし、そのような実力とは関係なくあっさり致命傷を与えてくるのが迷宮の怖いところである。

 

 故に、出来る時に出来る限りの準備をしておく。ちなみに今のツナのステータスはこうだ。

 

====================================沢田綱吉 16沢田綱吉 歳 16歳 男 レベル:85

天職:魔導士(騎士王・魔導帝王・英雄・祖龍神皇帝・神殺しの大空・赤龍神帝王、真なる赤龍神炎光帝・赤龍帝・赤龍帝王)

筋力:9500[Error]

体力:9800[Error]

耐性:7000[Error]

敏捷:10500[Error]

魔力:9800[∞]

魔耐:9800[∞]

技能:全属性適性・複合魔法・光技・闇術・心意・神聖術・付与術・滅龍魔法・滅神魔法・滅悪魔法・全属性耐性極・物理耐性極・剣神術・銃神術・剛力・金剛・縮地・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+効率上昇][+身体強化][+魔力錬成]・呪力・崩力[+魔力+呪力]・冥力[呪力-呪]・絶力[+冥力+魔力] 想像構成[+イメージ補強力超上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・創造魔法[+魔法創造][+アイテム創造][+アイテム転送][+技能創造][+技能譲渡][+銃創造][+刀剣創造]・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・超高速魔力回復・偽装・限界突破・毒素分解EX・超経験値獲得・武器召喚・真名解放・言語理解・日本神話の神々の加護[+即死無効化][+状態異常無効化]・和剣鍛造[+魔剣鍛造][+聖剣鍛造][+神剣鍛造][+聖魔剣鍛造]

====================================

 

 ステータスは、初めての魔物を喰えば上昇し続けているが、固有魔法はそれほど増えなくなった。主級の魔物なら取得することもあるが、その階層の通常の魔物ではもう増えないようだ。魔物同士が喰い合っても相手の固有魔法を簒奪しないのと同様に、ステータスが上がって肉体の変質が進むごとに習得し難くなっているのかもしれない。

 

 しばらくして、全ての準備を終えたツナは、階下へと続く階段へと向かった。

 

 その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。柱の一本一本が直径五メートルはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が彫られている。柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。天井までは三十メートルはありそうだ。地面も荒れたところはなく平らで綺麗なものである。どこか荘厳さを感じさせる空間だった。

 

 ツナ達が、しばしその光景に見惚れつつ足を踏み入れる。すると、全ての柱が淡く輝き始めた。ハッと我を取り戻し警戒するツナ。柱はツナを起点に奥の方へ順次輝いていく。

 

 ツナはしばらく警戒していたが特に何も起こらないので先へ進むことにした。感知系の技能をフル活用しながら歩みを進める。二百メートルも進んだ頃、前方に行き止まりを見つけた。いや、行き止まりではなく、それは巨大な扉だ。全長十メートルはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が印象的だ。

 

「……これはまた凄いな。もしかして……」

「……反逆者の住処?」

 

 いかにもラスボスの部屋といった感じだ。実際、感知系技能には反応がなくともツナの本能が警鐘を鳴らしていた。この先はマズイと。それ故にうっすらと額に汗をかいている。

 

「だったら最高だろ。ようやくゴールにたどり着いたってことだろ?」

 

ツナは笑みを浮かべる。たとえ何が待ち受けていようとやるしかないのだ。

 

 そして、扉の前に行こうと最後の柱の間を越えた。

 

 その瞬間、扉とツナの間三十メートル程の空間に巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。

 

 ツナは、その魔法陣に見覚えがあった。忘れようもない、あの日、ツナが奈落へと落ちた日に見た自分達を窮地きゅうちに追い込んだトラップと同じものだ。だが、ベヒモスの魔法陣が直径十メートル位だったのに対して、眼前の魔法陣は三倍の大きさがある上に構築された式もより複雑で精密なものとなっている。

 

「おいおい、なんだこの大きさは? マジでラスボス?」

 

 ツナが流石に引きつった笑みを浮かべる

 

 魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにするツナ。光が収まった時、そこに現れたのは……

 

 体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

 不思議な音色の絶叫をあげながら六対の眼光がツナを射貫く。身の程知らずな侵入者に裁きを与えようというのか、常人ならそれだけで心臓を止めてしまうかもしれない壮絶殺気が叩き付けられた。

 

 同時に赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開き火炎放射を放った。それはもう炎の壁というに相応しい規模である。

 

 ツナはヒュドラの攻撃を縮地を使い回避し反撃を開始する。ツナのレイジングが火を吹き電磁加速されたレイジングの弾丸が超速で赤頭を狙い撃つ。弾丸は狙い違わず赤頭を吹き飛ばした。

 

 まずは一つとツナが内心ガッツポーズを決めた時、白い文様の入った頭が「クルゥアン!」と叫び、吹き飛んだ赤頭を白い光が包み込んだ。すると、まるで逆再生でもしているかのように赤頭が元に戻った。白頭は回復魔法を使えるらしい。

 

 青い文様の頭が口から散弾のように氷の礫を吐き出し、それを回避しながらツナが白頭を狙う。

 

ドパンッ!

 

「ついでに〝緋槍〟!」

 

 閃光と燃え盛る槍が白頭に迫る。しかし、直撃かと思われた瞬間、黄色の文様の頭がサッと射線に入りその頭を一瞬で肥大化させた。そして淡く黄色に輝きツナのXガンナーの弾丸も受け止めてしまった。衝撃と爆炎の後には無傷の黄頭が平然とそこにいてツナを睥睨している。

 

「ちっ! 盾役か。攻撃に盾に回復にと実にバランスのいいことだな!」

 

 ツナは頭上に向かって〝爆裂収束爆弾を投げる。同時にXガンナーの最大出力で白頭に連射した。更に雷槍を連発する。炎熱魔法の〝蒼天〟なら黄頭を抜いて白頭に届くかもしれないが、最上級を使うと一発の隙が大きいので狙われる事になる。なので半数以上を減らす必要がある。

 

 黄頭は、ツナの攻撃を尽く受け止める。だが、流石に今度は無傷とはいかなかったのかあちこち傷ついていた。

 

「クルゥアン!」

 

 すかさず白頭が黄頭を回復させる。全くもって優秀な回復役である。しかし、その直後、白頭の頭上ではが焼夷爆裂収束爆弾が炸裂した。摂氏三千度の爆裂収束魔法が炸裂する。白頭にも降り注ぎ、その苦痛に悲鳴を上げながら悶えている。

 

 このチャンス逃すか! とツナが神器を発動させ3カウントで禁手を発動させる。

 

禁手(バランス・ブレイク)!!

 

『Welch Dragon Balance Blaker』

 

「|赤龍騎士王の剣鎧《ブーステッドソード・ナイト・オーナー・スケイルメイル》!!」

 

「出でよ剣よ!」

 

ツナは魔法陣からエクスカリバーに似た剣に赤き龍の刻印が彫られている剣を呼び出し詠唱する。

 

「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流、燃え盛るは覚悟の炎、譲れぬは我が誇り!受けるがいい!」

 

約束された勝利の赤龍帝の剣(ウェルシュ・エクスカリバー)

 

 

ドカァアアアアアアアアアアン

 

ヒュドラは赤き光の奔流に飲み込まれて光の粒子となって消滅した。

 

 

「流石に……もうムリ……」

 

 何とかヒュドラを倒したツナはゆっくり意識を手放した。

 

 

 



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第14話 クラスメイトsaid  悪夢再び

今回もついて来れる読者様だけついて来いよ!


ツナが吸血鬼と接触し、サソリモドキとの死闘を生き抜いた日。

 

 光輝達勇者一行は、再び【オルクス大迷宮】にやって来ていた。但し、訪れているのは光輝達勇者パーティーと、小悪党組、それに永山重吾という大柄な柔道部の男子生徒が率いる男女五人のパーティーだけだった。

 

 理由は簡単だ。話題には出さなくとも、ツナの転落が、多くの生徒達の心に深く重い影を落としてしまったのである。〝戦いの果ての転落〟というものを強く実感させられてしまい、まともに戦闘などできなくなったのだ。一種のトラウマというやつである。

 

 当然、聖教教会関係者はいい顔をしなかった。実戦を繰り返し、時が経てばまた戦えるだろうと、毎日のようにやんわり復帰を促してくる。

 

 しかし、それに猛然と抗議した者がいた。愛子先生だ。

 

 愛子は、当時、遠征には参加していなかった。作農師という特殊かつ激レアな天職のため、実戦訓練するよりも、教会側としては農地開拓の方に力を入れて欲しかったのである。愛子がいれば、糧食問題は解決してしまう可能性が限りなく高いからだ。

 

 そんな愛子はツナの奈落への転落を知るとショックのあまり寝込んでしまった。自分が安全圏でのんびりしている間に、生徒が転落してしまったという事実に、全員を日本に連れ帰ることができなくなった可能性が高いということに、責任感の強い愛子は強いショックを受けたのだ。

 

 だからこそ、戦えないという生徒をこれ以上戦場に送り出すことなど断じて許せなかった。

 

 愛子の天職は、この世界の食料関係を一変させる可能性がある激レアである。その愛子先生が、不退転の意志で生徒達への戦闘訓練の強制に抗議しているのだ。関係の悪化を避けたい教会側は、愛子の抗議を受け入れた。

 

 結果、自ら戦闘訓練を望んだ勇者パーティーと小悪党組、永山重吾のパーティーのみが訓練を継続することになった。そんな彼等は、再び訓練を兼ねて【オルクス大迷宮】に挑むことになったのだ。今回もメルド団長と数人の騎士団員が付き添っている。

 

 今日で迷宮攻略六日目。

 

 現在の階層は六十層だ。確認されている最高到達階数まで後五層である。

 

 しかし、光輝達は現在、立ち往生していた。正確には先へ行けないのではなく、何時かの悪夢を思い出して思わず立ち止まってしまったのだ。

 

 そう、彼等の目の前には何時かのものとは異なるが同じような断崖絶壁が広がっていたのである。次の階層へ行くには崖にかかった吊り橋を進まなければならない。それ自体は問題ないが、やはり思い出してしまうのだろう。特に、香織は、奈落へと続いているかのような崖下の闇をジッと見つめたまま動かなかった。

 

「香織……」

 

 雫の心配そうな呼び掛けに、強い眼差しで眼下を眺めていた香織はゆっくりと頭を振ると、雫に微笑んだ。

 

「大丈夫だよ、雫ちゃん」

「そう……無理しないでね? 私に遠慮することなんてないんだから」

「えへへ、ありがと、雫ちゃん」

「雫ちゃんも無理しないでね?ツナ君の事好きなんでしょ?私もツナ君の事好きだから」

「そうね、私もツナが好きよ!香織と一緒にいる時と同じ位楽しかったもの。」

 

 雫もまた親友に微笑んだ。香織の瞳は強い輝きを放っている。そこに現実逃避や絶望は見て取れない。洞察力に優れ、人の機微に敏感な雫には、香織が本心で大丈夫だと言っているのだと分かった。

 

 ツナの死はほぼ確定事項だ、例え即死無効化が有ったとしても。その生存は絶望的と言うのも生温い。それでも、逃避でも否定でもなく、自らの納得のため前へ進もうとする香織に、雫は親友として誇らしい気持ちで一杯だった。

 

 だが、そんな空気は読まないのが勇者クオリティー。光輝の目には、眼下を見つめる香織の姿が、ツナの死を思い出し嘆いているように映ったらしい。クラスメイトの死に、優しい香織は今も苦しんでいるのだと結論づけた。故に、思い込みというフィルターがかかり、微笑む香織の姿も無理しているようにしか見えない。

 

 そして、香織と雫がツナを特別に想っていて、まだ生存の可能性を信じているなどと露ほどにも思っていない光輝は、度々、香織にズレた慰めの言葉をかけてしまうのだ。

 

「香織……君の優しいところ俺は好きだ。でも、クラスメイトの死に、何時までも囚われていちゃいけない! 前へ進むんだ。きっと、沢田もそれを望んでる」

「ちょっと、光輝!……」

「雫は黙っていてくれ! 例え厳しくても、幼馴染である俺が言わないといけないんだ。……香織、大丈夫だ。俺が傍にいる。俺は死んだりしない。もう誰も死なせはしない。香織を悲しませたりしないと約束するよ」

「はぁ~、何時もの暴走ね……香織……」

「あはは、大丈夫だよ、雫ちゃん。……えっと、光輝くんも言いたいことは分かったから大丈夫だよ」

「そうか、わかってくれたか!」

「天之河忘れてないか?」

「何がだ南雲?」

「お前よりツナの方が強いことを。」

「あ!悪い、忘れてた。」

 

 光輝のその言葉を聞いて香織は苦笑いするしかない。

 

 光輝はツナが自分より強い事を忘れていた。

 

 ちなみに、完全に口説いているようにしか思えないセリフだが、本人は至って真面目に下心なく語っている。光輝の言動に慣れてしまっている雫と香織は普通にスルーしているが、他の女子生徒なら甘いマスクや雰囲気と相まって一発で落ちているだろう。まぁ、最後のやり取りで全部台無しなのだが。

 

 普通、イケメンで性格もよく文武両道とくれば、その幼馴染の女の子は惚れていそうなものだが、雫は小さい頃から実家の道場で大人の門下生と接していたこと、厳格な父親の影響、そして天性の洞察力で光輝の欠点とも言うべき正義感に気がついていたことから、それに振り回される事も多く幼馴染として以上の感情は抱いていなかった。もっとも、他の人よりは大切であることに変わりはないが。

 

 香織は生来の恋愛鈍感スキルと雫から色々聞かされているので、光輝の言動にときめく事ができない。いい人だと思っているし、幼馴染として大切にも思っているが恋愛感情には結びつかなかった。

 

「香織ちゃん、私、応援しているから、出来ることがあったら言ってね」

「そうだよ~、鈴は何時でもカオリンの味方だからね!」

 

 光輝との会話を傍で聞いていて、会話に参加したのは中村恵里と谷口鈴だ。

 

 二人共、高校に入ってからではあるが香織達の親友と言っていい程仲の良い関係で、光輝率いる勇者パーティーにも加わっている実力者だ。

 

 中村恵里はメガネを掛け、ナチュラルボブにした黒髪の美人である。性格は温和で大人しく基本的に一歩引いて全体を見ているポジションだ。本が好きで、まさに典型的な図書委員といった感じの女の子である。実際、図書委員である。

 

 谷口鈴は、身長百四十二センチのちみっ子である。もっとも、その小さな体には、何処に隠しているのかと思うほど無尽蔵の元気が詰まっており、常に楽しげでチョロリンと垂れたおさげと共にぴょんぴょんと跳ねている。その姿は微笑ましく、クラスのマスコット的な存在だ。

 

 そんな二人も、ハジメが奈落に落ちた日の香織の取り乱し様に、その気持ちを悟り、香織の目的にも賛同してくれている。

 

「うん、恵里ちゃん、鈴ちゃん、ありがとう」

 

 高校で出来た親友二人に、嬉しげに微笑む香織。

 

「うぅ~、カオリンは健気だねぇ~、沢田君め! 鈴のカオリンをこんなに悲しませて! 生きてなかったら鈴が殺っちゃうんだからね!」

「す、鈴? 生きてなかったら、その、こ、殺せないと思うよ?」

「細かいことはいいの! そうだ、死んでたらエリリンの降霊術でカオリンに侍せちゃえばいいんだよ!」

「す、鈴、デリカシーないよ! 香織ちゃんは、沢田君は生きてるって信じてるんだから! それに、私、降霊術は……」

「というよりツナは死んでないし、つか勝手に殺すなって頭をハリセンで打っ叩くぞ。」

「あ〜ありえるね〜」

 鈴が暴走し恵里が諌める。それがデフォだ。そこでハジメもツナがやりそうなことを言い鈴が納得する。

 

 何時も通りの光景を見せる姦しい二人に、楽しげな表情を見せる香織と雫。ちなみに、光輝達は少し離れているので聞こえていない。肝心な話やセリフに限って聞こえなくなる難聴スキルは、当然の如く光輝にも備わっている。

 

「恵里ちゃん、私は気にしてないから平気だよ?」

「鈴もそれくらいにしなさい。恵里が困ってるわよ?」

 

 香織と雫の苦笑い混じりの言葉に「むぅ~」と頬を膨らませる鈴。恵里は、香織が鈴の言葉を本気で気にしていない様子にホッとしながら、降霊術という言葉に顔を青褪めさせる。

 

「エリリン、やっぱり降霊術苦手? せっかくの天職なのに……」

「……うん、ごめんね。ちゃんと使えれば、もっと役に立てるのに……」

「恵里。誰にだって得手不得手はあるわ。魔法の適性だって高いんだから気にすることないわよ?」

「そうだよ、恵里ちゃん。天職って言っても、その分野の才能があるというだけで好き嫌いとは別なんだから。恵里ちゃんの魔法は的確で正確だから皆助かってるよ?」

「うん、でもやっぱり頑張って克服する。もっと、皆の役に立ちたいから」

 

 恵里が小さく拳を握って決意を表す。鈴はそんな様子に「その意気だよ、エリリン!」とぴょんぴょん飛び跳ね、香織と雫は友人の頑張りに頬を緩める。

 

 恵里の天職は、〝降霊術師〟である。

 

 闇系魔法は精神や意識に作用する系統の魔法で、実戦などでは基本的に対象にバッドステータスを与える魔法と認識されている。

 

 降霊術は、その闇系魔法の中でも超高難度魔法で、死者の残留思念に作用する魔法だ。聖教教会の司祭の中にも幾人かの使い手がおり、死者の残留思念を汲み取り遺族等に伝えるという何とも聖職者らしい使用方法がなされている。

 

 もっとも、この魔法の真髄はそこではない。この魔法の本当の使い方は、遺体の残留思念を魔法で包み実体化の能力を与えて使役したり、遺体に憑依させて傀儡化するというものだ。つまり、生前の技能や実力を劣化してはいるが発揮できる死人、それを使役できるのである。また、生身の人間に憑依させることでその技術や能力をある程度トレースすることもできる。

 

 しかし、ある程度の受け答えは出来るものの、その見た目は青白い顔をした生気のない、まさに幽霊という感じであり、また死者を使役するということに倫理的な嫌悪感を覚えてしまうので、恵里はこの術の才能があってもまるで使えていなかった。

 

 一行は特に問題もなく、遂に歴代最高到達階層である六十五層にたどり着いた。

 

「気を引き締めろ! ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

 

 付き添いのメルド団長の声が響く。光輝達は表情を引き締め未知の領域に足を踏み入れた。

 

 しばらく進んでいると、大きな広間に出た。何となく嫌な予感がする一同。

 

 その予感は的中した。広間に侵入すると同時に、部屋の中央に魔法陣が浮かび上がったのだ。赤黒い脈動する直径十メートル程の魔法陣。それは、とても見覚えのある魔法陣だった。

 

「ま、まさか……アイツなのか!?」

 

 光輝が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。

 

「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

 

 龍太郎も驚愕をあらわにして叫ぶ。それに応えたのは、険しい表情をしながらも冷静な声音のメルド団長だ。

 

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ! 退路の確保を忘れるな!」

 

 いざと言う時、確実に逃げられるように、まず退路の確保を優先する指示を出すメルド団長。それに部下が即座に従う。だが、光輝がそれに不満そうに言葉を返した。

 

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ! もう負けはしない! 必ず勝ってみせます!」

「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

 

 龍太郎も不敵な笑みを浮かべて呼応する。メルド団長はやれやれと肩を竦め、確かに今の光輝達の実力なら大丈夫だろうと、同じく不敵な笑みを浮かべた。

 

すると後ろから

 

「調子に乗るなよ迷宮やダンジョン、戦場では一時の心の緩みが死を招く、故に決して油断しない事だ」

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

「ツ、ツナなんで貴方がいるのよ!?」

 

「落ち着け、雫、俺は今休憩中だ。それに俺は本体じゃない、質量を持った限りなく本物に近い有幻覚だ。」

 

「えっ!?」

 

「さてと、お前らを少しだけ援護してやるよ!」

 

「綱吉!無事か?」

 

「俺があの程度で死ぬ訳ないだろ、それより敵から目を晒すなよ。いつ敵が仕掛けて来るかわからないからな。」

 

「そうか……よし気を引き締めろ!」

 

すると

 

「グゥガァアアア!!!」

 

 咆哮を上げ、地を踏み鳴らす異形。ベヒモスがツナ達を壮絶な殺意を宿らせた眼光で睨む。

 

 全員に緊張が走る中、そんなものとは無縁の決然とした表情で真っ直ぐ睨み返す女の子が一人。さらに男の子一人。

 

 ツナと香織である。ツナと香織は誰にも聞こえないくらいの、しかし、確かな意志の力を宿らせた声音で宣言した。

 

「もう誰も奪わせない。あなたを踏み越えて、私はツナ君のもとへ行く」

 

「行くぞ、戦闘開始!」

 

 今、過去を乗り越える戦いが始まった。



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第16話 クラスメイトsaid2 クラスメイトとの再会と真・オルクス迷宮に封印された吸血姫と最奥の扉



今回も付いて来れる読者様だけ付いて来いよ!


先手は、光輝だった。

 

「万翔羽ばたき 天へと至れ “天翔閃”!」

 

 曲線状の光の斬撃がベヒモスに轟音を響かせながら直撃する。以前は、“天翔閃”の上位技“神威”を以てしてもカスリ傷さえ付けることができなかった。しかし、何時までもあの頃のままではないという光輝の宣言は、結果を以て証明された。

 

「グゥルガァアア!?」

 

 悲鳴を上げ地面を削りながら後退するベヒモスの胸にはくっきりと斜めの剣線が走り、赤黒い血を滴らせていたのだ。

 

 

「いける! 俺達は確実に強くなってる! 永山達は左側から、清水は使い魔で撹乱を、メルド団長達は右側から! 後衛は魔法準備! 上級を頼む!」

 

 光輝が矢継ぎ早に指示を出す。メルド団長直々の指揮官訓練の賜物だ。

 

「ほぅ、迷いなくいい指示をする。聞いたな? 総員、光輝の指揮で行くぞ!」

 

 メルド団長が叫び騎士団員を引き連れベヒモスの右サイドに回り込むべく走り出した。それを期に一斉に動き出し、ベヒモスを包囲する。

 

 前衛組が暴れるベヒモスを後衛には行かすまいと必死の防衛線を張る。

 

「グルゥアアア!!」

 

 

ベヒモスが踏み込みで地面を粉砕しながら突進を始める。

 

「させるかっ!」

「行かせん!」

 

 クラスの二大巨漢、坂上龍太郎と永山重吾がスクラムを組むようにベヒモスに組み付いた。

 

「「猛り地を割る力をここに! “剛力”!」」

 

 身体能力、特に膂力を強化する魔法を使い、地を滑りながらベヒモスの突進を受け止める。

 

「ガァアア!!」

「らぁあああ!!」

「おぉおおお!!」

 

 三者三様に雄叫びをあげ力を振り絞る。ベヒモスは矮小な人間ごときに完全には止められないまでも勢いを殺され苛立つように地を踏み鳴らした。

 

 その隙を他のメンバーが逃さない。

 

「全てを切り裂く至上の一閃 “絶断”!」

 

 雫の抜刀術がベヒモスの角に直撃する。魔法によって切れ味を増したアーティファクトの剣が半ばまで食い込むが切断するには至らない。

 

「ぐっ、相変わらず堅い!」

「任せろ! 粉砕せよ、破砕せよ、爆砕せよ “豪撃”!」

 

 メルド団長が飛び込み、半ばまで刺さった雫の剣の上から自らの騎士剣を叩きつけた。魔法で剣速を上げると同時に腕力をも強化した鋭く重い一撃が雫の剣を押し込むように衝撃を与える。

 

 そして、遂にベヒモスの角の一本が半ばから断ち切られた。

 

「ガァアアアア!?」

 

 角を切り落とされた衝撃にベヒモスが渾身の力で大暴れし、永山、龍太郎、雫、メルド団長の四人を吹き飛ばす。

 

そこでツナが動く

 

「神聖なる鎖よ、我らに仇なす敵を捕らえよ! セイクリッドチェイン!!」

 

神聖なる光の鎖でベヒモスを縛り上げる。

 

「天恵よ 遍く子らに癒しを “回天”」

 

「錬成!」

 

ハジメは錬成を使い香織をドーム状の盾で守る。

 

 香織の詠唱完了と同時に触れてもいないのに四人が同時に癒されていく。遠隔の、それも複数人を同時に癒せる中級光系回復魔法だ。以前使った“天恵”の上位版である。

 

そしてツナが

 

「天候満つる処に我あり……」

 

そしてベヒモスの足元と頭上に魔法陣が形成されていく。

 

「おいおい、何するつもりだ?」

 

ツナは詠唱を続ける

 

「黄泉の門開く処に汝あり……」

 

「なんなのこの魔法は……」

 

「見た事ないぞ!」

 

そしてツナの詠唱が終わりに入る

 

「いでよ、神の雷!……」

 

『インディグネイション!!!』

 

そしてベヒモスに神の雷の名に相応しい威力の雷撃がベヒモスの頭上から落ちる。

 

ズドォオオオオオオオオオオオオン

 

 

するとベヒモスは丸焦げになりそして魔石だけを残して消滅した。

 

 

「か、勝ったのか?」

「勝ったんだろ……」

「勝っちまったよ……」

「マジか?」

「マジで?」

 

 

 

 皆が皆、呆然とベヒモスがいた場所を眺め、ポツリポツリと勝利を確認するように呟く。同じく、呆然としていた光輝が、我を取り戻したのかスっと背筋を伸ばし聖剣を頭上へ真っ直ぐに掲げた。

 

「そうだ! 俺達の勝ちだ!」

 

「……」

 

ツナその場で喜んでいる雫や香織達を残して霧となって消えた。

 

「ツナ!やったよ!……あれ?ツナ?」

 

「どうしたの雫ちゃん?」

 

「香織、ツナを知らない?」

 

「あれ?ツナ君さっきまでいたのに……あっ、いた!」

 

ツナはハジメと話していた。

 

 「ハジメ、これやるよ!」

 

ツナは銃創造で作り上げたリボルバー式銃を二挺拳銃を渡す。

 

「これは銃か!」

 

「後一つ真・オルクス迷宮の第50層に行け。そこに吸血鬼が封印されている。きっとハジメの力になってくれるだろう。後こいつを火で焼いて食え。」

 

「これは何だ?」

 

「魔物の肉だ もちろん毒素は全部分解してある。普通の生肉と変わらないから安心しろ。それ食って新たな技能を手に入れろ。」

 

「魔物の肉を食ったら技能が手に入るのか!わかった!そうするぜ。

銃も有り難く使わせて貰う。」

 

「今俺は最下層の100層にいる。そこで一時期滞在するつもりだ。早く来いよ。お前なら来れるさ。」

 

「あぁ、辿り着いてみせる!」

 

すると雫と香織が来た。

 

「ツナは今どこにいるの?」

 

「現在、真・オルクス迷宮の第100層いる。」

 

「一人で大丈夫?」

 

「大丈夫だ、心配するな。」

 

「兎に角ハジメ、50層で吸血鬼を助けてやって欲しい、そして100層に行け!そこで何か分かると思う。」

 

「そうか、ツナがそう言うならそうなんだろう。わかった。」

 

「雫、これ使いなよ。」

 

ツナは固有の空間から1本の黒刀を渡す。

 

 「これは?」

 

「それは俺が鍛造した聖と魔を有する刀、聖魔刀・雫。水属性の刀だ。

それは絶対に錆びない刀、水で斬撃強化したり敵を斬り裂いた時に水で血を洗い流してくれるからきっと雫の力になってくれるよ。」

 

「こんないい刀を貰ってもいいの?」

 

「雫の為に作ったんだ!だから使ってくれると嬉しい。」

 

「ツナ、ありがとう!大事に使わせて貰うわ。」

 

「香織には、また今度あげるよ。それまで我慢してくれ。」

 

「うん、わかった。」

 

「じゃあ俺は行くよ、あと天之河」

 

「ん、何だ沢田?」

 

ツナはハリセン取り出して天之河の頭を思いっきり引っ叩く

 

スパァアアアアアアアン!!。

 

「いったー!?何するんだ!沢田!」

 

「何するんだ!じゃねぇよ!勝手に死んだ事にしてんじゃねぇよ!つか殺すな!しばくぞ!」

 

「既にしばいてんじゃん!」

 

「ウルセェ!さっさと真・オルクス迷宮に突入しやがれ!じゃねえと強くなれねぇぞ!あっ!そうだいい事思い付いた!良し転移魔法で一気に50層に送ってやろう!」

 

「えっマシで?送ってくれるのか!助かる!」

 

「待ってくれ!一旦王宮に戻らないといけないんだ!」

 

「そうか、ハジメだけでも連れて行きたいんだがいいか?」

 

「待って!私も行く!」

 

「そうよ!私もついて行くわ!」

 

「あのな、お前達二人は勇者パーティーの重要メンバーだろ?抜けるのはマズイだろう。それに天之河が暴走したら誰が止めるんだ?なぁ?」

 

「でも、ツナ君達も回復役必要でしょ!」

 

「確かに俺も回復魔法使えるけど得意ではないし、いてくれると嬉しいけど雫が大変だろ?俺と一緒だと危険がいっぱいだし、確実に教会敵に回すぞ?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「どういう事だ沢田?」

 

「俺の目的は最初から戦争なんかに参加する気はさらさらない。俺の目的は二つ、一つは元の世界に帰ること、そしてもう一つはこの世界の神であるエヒトを殺す事だ。」

 

「まっ、他言無用で頼む!じゃあ行くわ、行くぞハジメ。」

 

「あぁ、そろそろ行くか!」

 

「あっ、清水、頼むぞ?後、香織、雫覚悟が出来たら言いな、連れて行くから。」

 

「あぁ、勿論任せとけ。沢田も気を付けろよ!」

 

ツナは清水に対し手を上げて答え、ハジメと一緒に転移魔法で真・オルクス迷宮第50層に転移する。

 

そこで、ツナがユエと名付けた吸血鬼を助けハジメを強くする為ハジメが主に戦闘を行い銃技や近接戦闘能力や錬成能力をを鍛え進み続ける。そして今現在のツナとハジメのステータスが、

 

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:80

天職:錬成師

筋力:3580

体力:4890

耐性:3670

敏捷:4990

魔力:3960

魔耐:3970

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・大空の加護[+成長速度上昇][+即死無効化][+回復速度上昇][+攻撃力上昇][+耐性強化]・言語理解

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沢田綱吉 16歳 男 レベル:95

天職:魔導士(騎士王・魔導帝王・英雄・祖龍神皇帝・大空の王・赤龍神帝王、真なる赤龍神炎光帝・赤龍帝・赤龍帝王・黒魔(ダーク・セイヴァー)白鉄(セイヴァー)・超越者)

筋力:10500[Error]

体力:10800[Error]

耐性:9000[Error]

敏捷:12500[Error]

魔力:11800[∞]

魔耐:11800[∞]

技能:全属性適性・複合魔法・光技・闇術・心意・神聖術・付与術・滅龍魔法・滅神魔法・滅悪魔法・全属性耐性極・物理耐性極・剣神術・銃神術・剛力・金剛・縮地・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+効率上昇][+身体強化][+魔力錬成]・呪力・崩力[+魔力+呪力]・冥力[呪力-呪]・絶力[+冥力+魔力] 想像構成[+イメージ補強力超上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・創造魔法[+魔法創造][+アイテム創造][+アイテム転送][+技能創造][+技能譲渡][+銃創造][+刀剣創造]・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・超高速魔力回復・偽装・限界突破・毒素分解吸収EX・超経験値獲得・武器召喚・真名解放・言語理解・日本神話の神々の加護[+即死無効化][+状態異常無効化][+超成長速度上昇][・和剣鍛造[+魔剣鍛造][+聖剣鍛造][+神剣鍛造][+聖魔剣鍛造]・超胃酸強化・気配感知・魔力感知・生命感知・気配遮断・完全毒耐性・完全麻痺耐性・完全石化耐性・熱源感知・気配遮断・威圧・念話

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それからツナとハジメとユエで迷宮攻略を再開し、ユエの実力を見たり

ハジメとユエの茶番劇もといイチャイチャがあったり、敵を倒す為に操られたユエに向かって躊躇いも無くハジメが発泡したり、それを見てツナとユエが唖然としたりして何とかエセアルラウネを問答無用に撃ち殺し、ユエが機嫌を損ねた日から随分経った。あの後、気絶するまで血を吸われたハジメ。その甲斐あってか何とかユエの機嫌を直すことに成功し、その時ツナは背を背けながら腹を抱えて笑っていた。そして三人は再び迷宮攻略に勤しんでいた。

 

そして遂に、次の階層でツナとハジメが再開した階層から百階目になるところまで来た。その一歩手前の階層でツナとハジメは装備の確認と補充にあたっていた。相変わらずユエは飽きもせずにツナとハジメの作業を見つめている。というよりも、どちらかというと作業をするツナとハジメを見るのが好きなようだ。今も、ハジメのすぐ隣でハジメとツナ作業を交互に見ながらまったりとしている。その表情は迷宮には似つかわしくない緩んだものだ。

 

「ハジメ俺の案内はここまでだ俺は奥の最奥の部屋で待っているから最後試練二人で頑張れよ!」

 

「そうか、ツナはもう既にクリアしているのか、わかった俺達も試練を乗り越えて直ぐに追いつく、だから待っていてくれ!」

 

「あぁ、勿論だ!ただし死ぬなよ?」

 

「ああ、わかっているユエと二人で追いつく。」

 

「ユエ、ハジメの事支えてやってくれ、本来なら俺がこの迷宮から出た後で助けてもらえるように伝えるはずだったけど、こいつらも迷宮に来ていた事がわかってこうして予定より早く助かる事が出来た。だから頼むぞ?」

 

「ん、わかった。頑張る!」

 

「それは良かった、んじゃ後でな。」

 

ツナは霧となって霧散して消えた。



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第17話 歴史の真実



今回も付いて来れる読者様


ツナが真・オルクス迷宮の試練をクリアしオスカーの住居内を探索していると書物やらオスカーの所持していた鉱石やアーティファクトや素材を見つけた。特にめぼしい物が無いかと思いながらも探しているとアザンチウム鉱石というこの世界で一番の硬度を持つ鉱石があったので一つ残らず貰らって利用する事にした。他の鉱石や素材やアーティファクトも全て回収し、

さらに探索しているとオスカーの骸だと思われる亡骸があり指輪をつけていたので外し見てみると何かの模様が刻まれていたので念の為貰う事にした。そしてオスカーの亡骸を手厚く埋葬しさらに探索すると宝物庫と呼ばれるアーティファクトを複数見つけたので全て回収する。

 

そして魔法陣の上に乗ると映像だと思われるオスカー・オルクスが出現した。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

 話し始めた彼はオスカー・オルクスというらしい。【オルクス大迷宮】の創造者のようだ。驚きながら彼の話を聞く。

 

「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

 そうして始まったオスカーの話は、ツナが聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚愕すべきものだった。

 

 それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。

 

 神代の少し後の時代、世界は争いで満たされていた。人間と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。争う理由は様々だ。領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも色々あるが、その一番は〝神敵〟だから。今よりずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祭っていた。その神からの神託で人々は争い続けていたのだ。

 

 だが、そんな何百年と続く争いに終止符を討たんとする者達が現れた。それが当時、〝解放者〟と呼ばれた集団である。

 

 彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。そのためか〝解放者〟のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。〝解放者〟のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。

 

 彼等は、〝神域〟と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。〝解放者〟のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った七人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。

 

 しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。何と、神は人々を巧みに操り、〝解放者〟達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。その過程にも紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした〝反逆者〟のレッテルを貼られ〝解放者〟達は討たれていった。

 

 最後まで残ったのは中心の七人だけだった。世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。

 

 長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

 

「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

「貴方達は人々が神などに操られない様に、自由な意思下に過ごして行けるように神々に抗った集団だったんだな、俺はあんた達が間違った事をしようとしたとは思わない、生まれた世界は違えどこうして巡りあったんだあんたらの悲願である神エヒトは俺が殺す、だから来世では平和な世界に生まれて歩んでいける事を願っている。」

 

そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。同時に、ツナの脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいたためと理解できたので大人しく耐えた。

 

 やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まる。ツナはゆっくり息を吐いた。

 

 

「え〜と、何か新しい魔法……神代魔法っての覚えたみたいだな」

 

 

 普通なら神代魔法は習得不可能な魔法だ、何せ神代魔法とは文字通り神代に使われていた現代では失伝した魔法である。ツナ達をこの世界に召喚した転移魔法も同じ神代魔法である。

 

「何かこの床の魔法陣が、神代魔法を使えるように頭を弄る? いやこの場合は刻み込むと言った方が正しいか。」

「え~と、この魔法は生成魔法ってやつだな。魔法を鉱物に付加して、特殊な性質を持った鉱物を生成出来る魔法だつまり付与術の鉱物限定版と言った所か。」

 

その後ツナはオスカーから拝借したオルクス迷宮制覇の証を使い鍵のかかった部屋を開けて情報収集し温泉を見つけたので温泉に入る事にした。

 

その後は移動手段の確立や再び真・オルクス迷宮1階に転移し、鉱物系探査と錬成を使い神結晶と神水を探し調達しまたオスカーの住居に転移するとハジメとユエがいた。

 

「Congratulations!ハジメとユエ君達ならきっと大丈夫だと思っていた。よくやったな!」

 

「あぁ、本当死ぬかと思ったぜ、ツナ、お前一人で倒したんだろう?尊敬するぜマジで。」

 

「ん、本当!私でも無理!だから誇っていい!」

 

「ユエ」

 

「ん?」

 

ツナはユエの頬を引っ張り変顔にしたりする

 

「上から目線はやめなさい!」

 

「ん〜〜ほへんなはい〜〜」

 

「それならよろしい。」

 

その後ハジメとユエは生成魔法を習得した。その後ハジメとユエは風呂に入りに行ってる間に俺は魔物の肉とオスカーの住居域にある畑の野菜を使い料理を作る事にした。

 

「さて、何を作ろうか……よし!飯は無いから錬成で作った鍋でシチューを作ろう!」

 

その後調理を始めハジメ達が風呂から上がって着替えてくるとシチューは出来ていた。

 

「あれ?滅茶苦茶良い匂いがするがなんだ?」

 

「ん、良い匂い。」

 

「ん?あぁ風呂から上がって着替えて来たか、お前達が風呂に入っている間に飯を作ったんだ、食べるか?」

 

「あぁ、勿論だ!」

 

「ん!私も食べる!」

 

ツナは容器にシチューを入れて二人に渡し自分の容器にも入れる。

 

「これがハジメ達の世界の食べ物……美味しそう!」

 

「久しぶりに食べるなシチューは。」

 

「それでは手を合わせて」

 

「「「いただきます!」」」

 

ハジメは一口食べると

 

「美味っ!滅茶苦茶美味い!」

 

「ん!美味しい!何の肉?」

 

「二狼尾の肉と爪熊の肉を俺の技能の毒素分解吸収EXで完全に毒素を抜いてオスカーの住居内にあった畑から野菜を使いそして旅の荷物の中に入れておいた牛乳 と小麦粉を使って作ったシチューだ!」

 

「そうか、凄いな。」

 

その後食べ終わると皿を洗いそして話し合った末暫くはここに滞在する事になった。

 

 

 



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第18話 旅立ち




今回も付いて来れる読者様だけ付いて来な!


ハジメが、ユエに年上の貫禄を見せつけられ色々吹っ切れてしまった夜から二ヶ月が経った。奈落の底で、常識はずれの化物達を相手に体と心を作り替えてまで勝利し続けたハジメも、ユエの猛攻には太刀打ち出来ず勝率は0%だ。なので、ハジメは開き直って受け止めることにしたのだった。

 

後日、ツナはハジメからの報告を聞き

 

「おめでとう、ハジメとユエがいつか恋人になる事だろうと思っていたが、まさかのユエが先に手を出して恋人になるとは思わなかった。責任はちゃんととれよ!」

 

「あぁ、わかっている。」

 

「それなら良い。」

 

 元々、ユエの好意には気がついていた上、元の世界にも連れて行く約束までしていた。そして、ユエのアプローチに耐える理由も、目的を達成するまで気を緩めないためという何とも脆弱なものだった。なので、迷宮の攻略と確立された安全な拠点の入手、そして帰還のための明確な行動指針を得られてことで若干心にゆとりを持ってしまった以上、脆弱な理由では、ユエのアプローチに対抗することも出来ず、またその理由もなかったのである。

 

 そんな二人とツナは拠点をフル活用しながら、ツナ曰く、傍から見れば思わず“リア充爆発しろ!!”と叫びたくなるような日々を送っていた。

 

 

そしてこの二ヶ月で三人の実力や装備は以前とは比べ物にならないほど充実している。例えばハジメのステータスは現在こうなっている。

 

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

天職:錬成師

筋力:13950

体力:16190

耐性:12670

敏捷:14450

魔力:16780

魔耐:17780

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・恐慌耐性・全属性耐性・石化耐性・金剛・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・大空の加護[+成長速度上昇][+即死無効化][+回復速度上昇][+攻撃力上昇][+耐性強化]・大空の加護[+成長速度上昇][+即死無効化][+回復速度上昇][+攻撃力上昇][+耐性強化]・大空の加護[+状態以上無効化][+攻撃力上昇][+即死無効化][+成長速度上昇][+耐性強化]・言語理解

====================================

 

 

沢田綱吉 16歳 男 レベル:???

天職:魔導士(騎士王・魔導帝王・英雄・祖龍神皇帝・大空の王・赤龍神帝王、真なる赤龍神炎光帝・赤龍帝・赤龍帝王・黒魔(ダークセイヴァー)白鉄(セイヴァー)・超越者)

筋力:55000[Error]

体力:58000[Error]

耐性:20000[Error]

敏捷:20000[Error]

魔力:∞

魔耐:∞

技能:全属性適性・複合魔法・光技・闇術・心意・神聖術・付与術・滅龍魔法・滅神魔法・滅悪魔法・全属性耐性極・物理耐性極・剣神術・銃神術・剛力・金剛・縮地・魔力操作[+魔力収束][+魔力放射][+魔力圧縮][+魔力濃縮][+効率上昇][+身体強化][+魔力錬成]・呪力・崩力[+魔力+呪力]・冥力[呪力-呪]・絶力[+冥力+魔力] 想像構成[+イメージ補強力超上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・創造魔法[+魔法創造][+アイテム創造][+アイテム転送][+技能創造][+技能譲渡][+銃創造][+刀剣創造]・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・超高速魔力回復・偽装・限界突破・毒素分解吸収EX・超経験値獲得・武器召喚・真名解放・言語理解・日本神話の神々の加護[+即死無効化][+状態異常無効化][+超成長速度上昇]・和剣鍛造[+魔剣鍛造][+聖剣鍛造][+神剣鍛造][+聖魔剣鍛造]・超胃酸強化・気配感知・魔力感知・生命感知・気配遮断・完全毒耐性・完全麻痺耐性・完全石化耐性・熱源感知・気配遮断・威圧・念話

 

レベルは100を成長限度とするその人物の現在の成長度合いを示す。しかし、魔物の肉を喰い過ぎたのか、ある時期からステータスは上がれどレベルは変動しなくなり、遂には非表示になってしまった。

 

 魔物の肉を喰ったハジメとツナとの成長は、初期値と成長率から考えれば明らかに異常な上がり方だった。ステータスが上がると同時に肉体の変質に伴って成長限界も上昇していったと推測するなら遂にステータスプレートを以てしてもツナとハジメの限界というものが計測できなくなったのかもしれない。

 

 ちなみに、勇者である天之河光輝の限界は全ステータス1500といったところである。限界突破の技能で更に三倍に上昇させることができるが、それで3倍以上もの開きがある。しかも、ツナとハジメも魔力の直接操作や技能で現在のステータスの三倍から五倍の上昇を図ることが可能であるから、如何にチートな存在になってしまったかが分かるだろう。

 

一応、比較すると通常の人族の限界が100から200、天職持ちで300から400、魔人族や亜人族は種族特性から一部のステータスで300から600辺りが限度である。勇者がチートなら、ハジメは化物としか言い様がない。精神は豹変しているが、肉体の方はツナの浄化薬で元の身体に戻り、それから強靱な肉体へと変化している為肉体は純粋な人間の肉体のままだ。

 

ツナは神の血を流した上で身体の半分は神の肉体と言ってもいい。それに加えて神々史上最強・最恐・最凶サイキョウの邪神を倒したので、初期ステータスでも充分にチートの化物と言えるだろう。

 

新装備についても少し紹介しておこう。

 

 まず、ツナとハジメは“宝物庫”という便利道具を手に入れた

 これはオスカーが保管していた指輪型アーティファクトで、指輪に取り付けられている一センチ程の紅い宝石の中に創られた空間に物を保管して置けるというものだ。要は、勇者の道具袋みたいなものである。空間の大きさは、正確には分からないが相当なものだと推測している。あらゆる装備や道具、素材を片っ端から詰め込んでも、まだまだ余裕がありそうだからだ。そして、この指輪に刻まれた魔法陣に魔力を流し込むだけで物の出し入れが可能だ。半径一メートル以内なら任意の場所に出すことができる。因みにハジメも持っているのはスペアがあり、ハジメにツナがあげた為だ。

 

物凄く便利なアーティファクトなのだが、ツナとハジメにとっては特に、武装の一つとして非常に役に立っている。というのも、任意の場所に任意の物を転送してくれるという点から、ツナとハジメはリロードに使えないかと思案したのだ。結果としては半分成功といったところだ。流石に、直接弾丸を弾倉に転送するほど精密な操作は出来なかった。弾丸の向きを揃えて一定範囲に規則的に転送するので限界だった。もっと転送の扱いに習熟すれば、あるいは出来るようになるかもしれないが。

 

 

結論から言うと一ヶ月間の猛特訓で見事、ツナとハジメは空中リロードを会得した。たった一ヶ月の特訓でなぜ神業を会得できたのか。その秘密は“瞬光”である。“瞬光”は、使用者の知覚能力を引き上げる固有魔法だ。これにより、遅くなった世界で空中リロードが可能になったのである。“瞬光”は、体への負担が大きいので長時間使用は出来ないが、リロードに瞬間的に使用する分には問題なかった。

 

 次に、ツナとハジメは“魔力駆動二輪と四輪”魔導駆動スポーツカーを製造した。

 これは文字通り、魔力を動力とする二輪と四輪である。ハジメの二輪の方はアメリカンタイプツナは未来で乗ったバイク、四輪は軍用車両のハマータイプを意識してデザインした。車輪には弾力性抜群のタールザメの革を用い、各パーツはタウル鉱石を基礎に、工房に保管されていたアザンチウム鉱石というオスカーの書物曰く、この世界の最高硬度の鉱石+雷の炎の最大炎圧で最高純度+氷河の炎の最大炎圧で最高純度で表面をコーティングしてある。おそらくドンナーの最大出力でも貫けないだろう耐久性だ。エンジンのような複雑な構造のものは一切なく、ツナかハジメ自身の魔力か神結晶の欠片に蓄えられた魔力を直接操作して駆動する。速度は魔力量に比例する。更にツナはスポーツカータイプの車を作成した、こちらもオスカーが保管したアザンチウム鉱石とツナの固有空間にしまってあったオリハルコンを使い作成し、雷の炎の最大炎圧で最高純度+氷河の炎の最大炎圧で最高純度で表面をコーティングしてある。例え、最高威力のXX BUNERでも傷一つ付かないだろう。

 

更に言うとハジメがアザンチウム鉱石を使えるのはツナが分け与えた為だ。

 

 

更に、この四つの魔力駆動車は車底に仕掛けがしてあり、魔力を注いで魔法を起動する地面を錬成し整地することで、ほとんどの悪路を走破することもできる。また、どこぞのスパイのように武装が満載されている。ツナとハジメも男の子。ミリタリーにはつい熱が入ってしまうのだ。夢中になり過ぎてユエが拗ねてしまい、ハジメは機嫌を直すのに色々と搾り取られることになったが……

ツナはその様子を缶コーヒーを飲みながら見守っていた。

 

 

新兵器について、対物ライフル:シュラーゲンをアザンチム鉱石を使い強度を増し、バレルの長さも持ち運びの心配がなくなったので三メートルに改良した。“遠見”の固有魔法を付加させた鉱石を生成し創作したスコープも取り付けられ、最大射程は十キロメートルとなっている。

 

 また、ラプトルの大群に追われた際、手数の足りなさに苦戦したことを思い出し、電磁加速式機関砲:メツェライを開発した。口径三十ミリ、回転式六砲身で毎分一万二千発という化物だ。銃身の素材には生成魔法で創作した冷却効果のある鉱石を使っているが、それでも連続で五分しか使用できない。再度使うには十分の冷却期間が必要になる。

 

 

 さらに、面制圧とハジメの純粋な趣味からロケット&ミサイルランチャー:オルカンも開発した。長方形の砲身を持ち、後方に十二連式回転弾倉が付いており連射可能。ロケット弾にも様々な種類がある。

 

 あと、ドンナーの対となるリボルバー式電磁加速銃:シュラークも開発された。ハジメの基本戦術はドンナー・シュラークの二丁の電磁加速銃によるガン=カタ(銃による近接格闘術のようなもの)に落ち着いた。典型的な後衛であるユエとの連携を考慮して接近戦が効率的と考えたからだ。もっとも、ハジメは武装すればオールラウンドで動けるのだが。

 

 他にも様々な装備・道具を開発した。しかし、装備の充実に反して、神水だけは遂に神結晶が蓄えた魔力を枯渇させたため、試験管型保管容器十二本分でラストになってしまった。枯渇した神結晶に再び魔力を込めてみたのだが、神水は抽出できなかった。やはり長い年月をかけて濃縮でもしないといけないのかもしれない。

 

 しかし、神結晶を捨てるには勿体無い。ハジメの命の恩人……ならぬ恩石なのだ。幸運に幸運が重なって、この結晶にたどり着かなければ確実に死んでいた。その為、ハジメには並々ならぬ愛着があった。それはもう、遭難者が孤独に耐え兼ねて持ち物に顔をペインティングし、名前とか付けちゃって愛でてしまうのと同じくらいに。

 

ツナもハジメが武器の製造を行っている間ツナは錬成の技能をフル活用しアザンチウム鉱石やこれからも必要となる鉱石を作り出していた。

 

その頃ハジメは、神結晶の膨大な魔力を内包するという特性を利用し、一部を錬成でネックレスやイヤリング、指輪などのアクセサリーに加工した。そして、それをユエに贈ったのだ。ユエは強力な魔法を行使できるが、最上級魔法等は魔力消費が激しく、一発で魔力枯渇に追い込まれる。しかし、電池のように外部に魔力をストックしておけば、最上級魔法でも連発出来るし、魔力枯渇で動けなくなるということもなくなる。

 

 そう思って、ユエに“魔晶石シリーズ”と名付けたアクセサリー一式を贈ったのだが、そのときのユエの反応は……

 

「……プロポーズ?」

「なんでやねん」

「はははは……」

 

 ユエのぶっ飛んだ第一声に思わず関西弁で突っ込むハジメ。そしてツナは笑う。

 

「それで魔力枯渇を防げるだろ? 今度はきっとユエを守ってくれるだろうと思ってな」

「……やっぱりプロポーズ」

「いや、違ぇから。唯の新装備だから」

「……ハジメ、照れ屋」

「……最近、お前人の話聞かないよな?」

「……ベッドの上でも照れ屋」

「止めてくれます!? そういうのマジで!」

「そういうのは他の所でやれ。」

「ツナ……すまん。」

「あぁ、気にするな。」

「ハジメ……」

「はぁ~、何だよ?」

「ありがとう……大好き」

「……おう」

「お前ら……」

「「ん、なんだ?/何?」」

「爆発しろよ!末永くな!」

 

 本当にもう爆発しちまえよ! ツナはハジメ達に向かっていう。

 

それから十日後、遂にツナとハジメとユエは地上へ出る。

 

 三階の魔法陣を起動させながら、ハジメはユエに静かな声で告げる。

 

「ユエ……俺やツナの武器や俺達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」

「ん……」

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」

「ん……」

「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」

「ん……」

「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」

「今更……」

そこでツナがハジメにむかって言う

「ハジメ今更言ってもユエはついてくるのは変わらない、なら敵より強くなれば良いだけだ、ただし魔物は殺しても良いが人間は殺すなよ、やるなら半殺しまでそれ以上だと八割までだ。これはハジメの為でもユエの為でも俺の為でもある。」

「……わかった、確かに日本に帰った時親に顔向け出来ないのは嫌だからな。」

「わかっているなら良い。」

「ユエもわかったか?」

「ん、わかった義兄様。」

 

ツナは何故に義兄って思っていたが本人がそう呼びたいなら別にいいかと思っていた。

 

「俺がユエを、ユエが俺を守る。そしてツナが俺とユエを守る、そして俺とユエがツナを守る、それで俺達は最強だ。全部なぎ倒して、世界を越えよう」

 

「ん!」

 

「あぁ、さぁ始めようか俺達の冒険を!」

 

「あぁ!」

 

「ん!」

 

ツナはその瞳に覚悟を灯すと瞳が燈炎の色に輝くのだった。



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第19話 クラスメイトside3 前編 帝国と勇者達


今回も付いて来れる読者様だけ付いて来いよ!


ツナとハジメが解放者の住居にいる頃、勇者一行は、一時迷宮攻略を中断しハイリヒ王国に戻っていた。

 

 道順のわかっている今までの階層と異なり、完全な探索攻略であることから、その攻略速度は一気に落ちたこと、また、魔物の強さも一筋縄では行かなくなって来た為、メンバーの疲労が激しいことから一度中断して休養を取るべきという結論に至ったのだ。

 

もっとも、休養だけなら宿場町ホルアドでもよかった。王宮まで戻る必要があったのは、迎えが来たからである。何でも、ヘルシャー帝国から勇者一行に会いに使者が来るのだという。

 

 何故、このタイミングなのか。

 

 元々、エヒト神による“神託”がなされてから光輝達が召喚されるまでほとんど間がなかった。そのため、同盟国である帝国に知らせが行く前に勇者召喚が行われてしまい、召喚直後の顔合わせができなかったのだ。

 

 もっとも、仮に勇者召喚の知らせがあっても帝国は動かなかったと考えられる。なぜなら、帝国は三百年前にとある名を馳せた傭兵が建国した国であり、冒険者や傭兵の聖地とも言うべき完全実力主義の国だからである。

 

 突然現れ、人間族を率いる勇者と言われても納得はできないだろう。聖教教会は帝国にもあり、帝国民も例外なく信徒であるが、王国民に比べれば信仰度は低い。大多数の民が傭兵か傭兵業からの成り上がり者で占められていることから信仰よりも実益を取りたがる者が多いのだ。もっとも、あくまでどちらかといえばという話であり、熱心な信者であることに変わりはないのだが。

 

 そんな訳で、召喚されたばかりの頃の光輝達と顔合わせをしても軽んじられる可能性があった。もちろん、教会を前に、神の使徒に対してあからさまな態度は取らないだろうが。王国が顔合わせを引き伸ばすのを幸いに、帝国側、特に皇帝陛下は興味を持っていなかったので、今まで関わることがなかったのである。

 

 しかし、今回の【オルクス大迷宮】攻略で、歴史上の最高記録である六十五層が突破されたという事実をもって帝国側も光輝達に興味を持つに至った。帝国側から是非会ってみたいという知らせが来たのだ。王国側も聖教教会も、いい時期だと了承したのである。

 

そんな話を帰りの馬車の中でツラツラと教えられながら、光輝達は王宮に到着した。

 

 馬車が王宮に入り、全員が降車すると王宮の方から一人の少年が駆けて来るのが見えた。十歳位の金髪碧眼の美少年である。光輝と似た雰囲気を持つが、ずっとやんちゃそうだ。その正体はハイリヒ王国王子ランデル・S・B・ハイリヒである。ランデル殿下は、思わず犬耳とブンブンと振られた尻尾を幻視してしまいそうな雰囲気で駆け寄ってくると大声で叫んだ。

 

「香織! よく帰った! 待ちわびたぞ!」

 

 もちろんこの場には、香織だけでなく他にも帰還を果たした生徒達が勢ぞろいしている。その中で、香織以外見えないという様子のランデル殿下の態度を見ればどういう感情を持っているかは容易に想像つくだろう。

 

 実は、召喚された翌日から、ランデル殿下は香織に猛アプローチを掛けていた。と言っても、彼は十歳。香織から見れば小さい子に懐かれている程度の認識であり、その思いが実る気配は微塵もない。生来の面倒見の良さから、弟のようには可愛く思ってはいるようだが。

 

「ランデル殿下。お久しぶりです」

 

 パタパタ振られる尻尾を幻視しながら微笑む香織。そんな香織の笑みに一瞬で顔を真っ赤にするランデル殿下は、それでも精一杯男らしい表情を作って香織にアプローチをかける。

 

「ああ、本当に久しぶりだな。お前が迷宮に行ってる間は生きた心地がしなかったぞ。怪我はしてないか? 余がもっと強ければお前にこんなことさせないのに……」

 

 ランデル殿下は悔しそうに唇を噛む。香織としては守られるだけなどお断りなのだが、少年の微笑ましい心意気に思わず頬が緩む。

 

「お気づかい下さり有難うございます。ですが、私なら大丈夫ですよ? 自分で望んでやっていることですから」

「いや、香織に戦いは似合わない。そ、その、ほら、もっとこう安全な仕事もあるだろう?」

「安全な仕事ですか?」

 

「う、うむ。例えば、侍女とかどうだ? その、今なら余の専属にしてやってもいいぞ」

「侍女ですか? いえ、すみません。私は治癒師ですから……」

「な、なら医療院に入ればいい。迷宮なんて危険な場所や前線なんて行く必要ないだろう?」

 

 医療院とは、国営の病院のことである。王宮の直ぐ傍にある。要するに、ランデル殿下は香織と離れるのが嫌なのだ。しかし、そんな少年の気持ちは鈍感な香織には届かない。

 

「いえ、前線でなければ直ぐに癒せませんから。心配して下さり有難うございます」

「うぅ」

 

 ランデル殿下は、どうあっても香織の気持ちを動かすことができないと悟り小さく唸る。そこへ空気を読まない厄介な善意の塊、勇者光輝がにこやかに参戦する。

 

「ランデル殿下、香織は俺の大切な幼馴染です。俺がいる限り、絶対に守り抜きますよ」

 

 光輝としては、年下の少年を安心させるつもりで善意全開に言ったのだが、この場においては不適切な発言だった。恋するランデル殿下にはこう意訳される。

 

“俺の友達の女に手ぇ出してんじゃねぇよ

 

 親しげに寄り添う勇者と治癒師。実に様になる絵である。ランデル殿下は悔しげに表情を歪めると、不倶戴天の敵を見るようにキッと光輝を睨んだ。ランデル殿下の中では二人は恋人のように見えているのである。

 

「香織を危険な場所に行かせることに何とも思っていないお前が何を言う! 絶対に負けぬぞ! 香織は余といる方がいいに決まっているのだからな!」

「え~と……」

 

すると

 

「何も思ってない?な訳無いだろう、こいつにも何かしら思う事があるだろう、だが最前線で戦うと決めたのは香織自身だ!お前と一緒にいる方がいいか悪いかは香織自身が決める事だ、王族だか貴族だか知らないが戦いもしない奴が好き勝手な事を言わないで貰おうか。」

 

「だ、誰だ!」

 

「香織や天之河はもう気付いているんじゃないか?」

 

「……この声沢田か!」

 

「ツナ君出て来てよ!」

 

すると何も無い所から霧が現れ霧が晴れるとツナが現れた。

 

「「ツナ!/ツナ君!」」

 

「よっ!香織、雫元気だったか?」

 

「元気だったか?じゃないわよ!大丈夫なの?」

 

「まぁな、オルクス迷宮の攻略は終わった。」

 

「じゃあ、終わったら戻って来るの?」

 

「いや、戻らずそのまま次の迷宮を探しに旅に出る。」

 

「そうなの……」

 

「悲しい顔すんなよ雫、香織。お前らにはクラスメイトがいるだろう。な?」

 

「「……うん」」

 

ツナは雫と香織の頭を撫でる

 

「「///」」

 

すると後ろから我らの先生、愛子先生が

 

「沢田君!ここに戻って来ないとはどう言う事ですか!」

 

「俺は別にこの世界の人間がどうなろうとどうでもいいがこの世界の本当の歴史を知ったからには力が必要だ、だから次の解放者の迷宮に行く。」

 

「ツナ、この世界の本当歴史?って何?」

 

「簡単に言うとこの世界の歴史は改竄された物だと言う事だ。」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

そこにツナの前にゆっくり歩いて来る人物が来る。

 

「ん?お前誰だ?」

 

「ツ、ツナ!?この国のお姫様よ、名前はリリアーナ。」

 

「ありがとう雫。それでどうした?」

 

「生きておられて何よりです!オルクス迷宮の最新部には何があったのですか?」

 

「はぁ、何処に敵が潜んでいるかわからないのに貴重な情報を渡すわけないだろう。」

 

「そ、そうですか……」

 

「まぁ、沢田落ち着けよ。今本体か?」

 

「天之河君どう言う事ですか?」

 

「いや、前にベヒモス戦った時沢田にサポートして貰ったんですがその時限りなく実体に近い質量を持った有幻覚とか言っていたので。」

 

「おっ!よく聞いてました、少し成長したじゃないか!褒めてつかわそう!」

 

「ははぁー!!」

 

「何茶番劇してるんですか!沢田君本体じゃないんですか?」

 

「ん、そうだよ。今本体はぶっ倒れて寝ている所だから意識だけ飛ばしているだけだから。あっちが目覚めれば俺は消える。」

 

「ちょっと待って!ぶっ倒れてるって大丈夫なの!?」

 

「大丈夫、大丈夫。ちょっと疲れが溜まっただけだから。一応安全地帯だから。」

 

「もう、ツナったら私がいないと無茶なことして。」

 

「オカン雫登場。」

 

「誰がオカンよ、せめて奥さんにしなさいよ。」

 

「⁇奥さんよりも過保護な義姉?」

 

「じゃあ私が奥さん!」

 

「香織はブラコンの義妹その2」

 

「沢田……それはない。」

 

天之河が何か言ってくるが

 

「???」

 

ツナはよくわかっていない。

 

そして光輝達が迷宮での疲れを癒しつつ、居残り組にベヒモスの討伐を伝え歓声が上がったり、これにより戦線復帰するメンバーが増えたり、愛子先生が一部で“豊穣の女神”と呼ばれ始めていることが話題になり彼女を身悶えさせたりと色々あったが光輝達はゆっくり迷宮攻略で疲弊した体を癒した。

ツナは先生の二つ名に爆笑して笑っていた。

 

その後ツナは雫と香織にめちゃくちゃ甘えられた



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第20話 クラスメイトside3 後編 帝国と勇者達


今回も付いて来れる読者様だけ付いて来いよ!


それから三日、遂に帝国の使者が訪れた。

 

 現在、光輝達、迷宮攻略に赴いたメンバーと王国の重鎮達、そしてイシュタル率いる司祭数人が謁見の間に勢ぞろいし、レッドカーペットの中央に帝国の使者が五人ほど立ったままエリヒド陛下と向かい合っていた。

 

「使者殿、よく参られた。勇者方の至上の武勇、存分に確かめられるがよかろう」

「陛下、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝いたします。して、どなたが勇者様なのでしょう?」

「うむ、まずは紹介させて頂こうか。光輝殿、前へ出てくれるか?」

「はい」

 

 陛下と使者の定型的な挨拶のあと、早速、光輝達のお披露目となった。陛下に促され前にでる光輝。召喚された頃と違い、まだ数ヶ月程度しか経っていないのに随分と精悍な顔つきになっている。

 

ツナはそれを達観して見ている。

 

ここにはいない、王宮の侍女や貴族の令嬢、居残り組の光輝ファンが見れば間違いなく熱い吐息を漏らしうっとり見蕩れているに違いない。光輝にアプローチをかけている令嬢方だけで既に二桁はいるのだが……彼女達のアプローチですら「親切で気さくな人達だなぁ」としか感じていない辺り、光輝の鈍感は極まっている。まさに鈍感系主人公を地で行っている。

 

 そして、光輝を筆頭に、次々と迷宮攻略のメンバーが紹介された。

 

「ほぅ、貴方が勇者様ですか。随分とお若いですな。失礼ですが、本当に六十五層を突破したので? 確か、あそこにはベヒモスという化物が出ると記憶しておりますが……」

 

使者は、光輝を観察するように見やると、イシュタルの手前露骨な態度は取らないものの、若干、疑わしそうな眼差しを向けた。使者の護衛の一人は、値踏みするように上から下までジロジロと眺めている。

 

ツナはその様子を見て内心気持ち悪いと思っていた。

 

 その視線に居心地悪そうに身じろぎしながら、光輝が答える。

 

「えっと、ではお話しましょうか? どのように倒したかとか、あっ、六十六層のマップを見せるとかどうでしょう?」

 

光輝は信じてもらおうと色々提案するが使者はあっさり首を振りニヤッと不敵な笑みを浮かべた。

 

「いえ、お話は結構。それよりも手っ取り早い方法があります。私の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか? それで、勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」

「えっと、俺は構いませんが……」

 

 光輝は若干戸惑ったようにエリヒド陛下を振り返る。エリヒド陛下は光輝の視線を受けてイシュタルに確認を取る。イシュタルは頷いた。神威をもって帝国に光輝を人間族のリーダーとして認めさせることは簡単だが、完全実力主義の帝国を早々に本心から認めさせるには、実際戦ってもらうのが手っ取り早いと判断したのだ。

 

「構わんよ。光輝殿、その実力、存分に示されよ」

「決まりですな、では場所の用意をお願いします」

 

 こうして急遽、勇者対帝国使者の護衛という模擬戦の開催が決定したのだった。

 

 

 光輝の対戦相手は、何とも平凡そうな男だった。高すぎず低すぎない身長、特徴という特徴がなく、人ごみに紛れたらすぐ見失ってしまいそうな平凡な顔。一見すると全く強そうに見えない。

 

 刃引きした大型の剣をだらんと無造作にぶら下げており。構えらしい構えもとっていなかった。

 

 光輝は、舐められているのかと些か怒りを抱く。最初の一撃で度肝を抜いてやれば真面目にやるだろうと、最初の一撃は割かし本気で打ち込むことにした。

 

「いきます!」

 

 光輝が風となる。“縮地”により高速で踏み込むと豪風を伴って唐竹に剣を振り下ろした。並みの戦士なら視認することも難しかったかもしれない。もちろん、光輝としては寸止めするつもりだった。だが、その心配は無用。むしろ舐めていたのは光輝の方だと証明されてしまう結果となった。

 

バキィ!!

 

「ガフッ!?」

 

 吹き飛んだのは光輝の方だった。護衛の方は剣を掲げるように振り抜いたまま光輝を睥睨している。光輝が寸止めのため一瞬、力を抜いた刹那にだらんと無造作に下げられていた剣が跳ね上がり光輝を吹き飛ばしたのだ。

 

 光輝は地滑りしながら何とか体勢を整え、驚愕の面持ちで護衛を見る。寸止めに集中していたとは言え、護衛の攻撃がほとんど認識出来なかったのだ。護衛は掲げた剣をまた力を抜いた自然な体勢で構えている。そう、先ほどの攻撃も動きがあまりに自然すぎて危機感が働かず反応できなかったのである。

 

「はぁ~、おいおい、勇者ってのはこんなもんか? まるでなっちゃいねぇ。やる気あんのか?」

 

「やる気はあるだろうけどね、戦いを知らないのにここまで成長したんだある意味天才だと思うよ。」

 

「そりゃ、そうか。」

 

 

 平凡な顔に似合わない乱暴な口調で呆れた視線を送る護衛。その表情には失望が浮かんでいたがツナの言葉に納得すると元の表情に戻る。

 

 確かに、光輝は護衛を見た目で判断して無造作に正面から突っ込んでいき、あっさり返り討ちにあったというのが現在の構図だ。光輝は相手を舐めていたのは自分の方であったと自覚し、怒りを抱いた。今度は自分に向けて。

 

「すみませんでした。もう一度、お願いします」

 

 今度こそ、本気の目になり、自分の無礼を謝罪する光輝。護衛は、そんな光輝を見て、「戦場じゃあ“次”なんてないんだがな」と不機嫌そうに目元を歪めるが相手はするようだ。先程と同様に自然体で立つ。

 

 光輝は気合を入れ直すと再び踏み込んだ。

 

 唐竹、袈裟斬り、切り上げ、突き、と“縮地”を使いこなしながら超高速の剣撃を振るう。その速度は既に、光輝の体をブレさせて残像を生み出しているほどだ。

 

 しかし、そんな嵐のような剣撃を護衛は最小限の動きでかわし捌き、隙あらば反撃に転じている。時々、光輝の動きを見失っているにもかかわらず、死角からの攻撃にしっかり反応している。

 

 光輝には護衛の動きに覚えがあった。それはメルド団長だ。彼と光輝のスペック差は既にかなりの開きが出ている。にもかかわらず、未だ光輝はメルド団長との模擬戦で勝ち越せていないのだ。それはひとえに圧倒的な戦闘経験の差が原因である。

 

 おそらく護衛も、メルド団長と同じく数多の戦場に身を置いたのではないだろうか。その戦闘経験が光輝とのスペック差を埋めている。つまり、この護衛はメルド団長並かそれ以上の実力者というわけだ。

 

「おい、勇者。構えろ。今度はこちらから行くぞ。気を抜くなよ? うっかり殺してしまうかもしれんからな」

 

 護衛はそう宣言するやいなや一気に踏み込んだ。光輝程の高速移動ではない。むしろ遅く感じるほどだ。だというのに、

 

「ッ!?」

 

 気がつけば目の前に護衛が迫っており剣が下方より跳ね上がってきていた。光輝は慌てて飛び退る。しかし、まるで磁石が引き合うかのようにピッタリと間合いを一定に保ちながら鞭のような剣撃が光輝を襲った。

 

 不規則で軌道を読みづらい剣の動きに、“先読”で何とか対応しながら一度距離を取ろうとするが、まるで引き離せない。“縮地”で一気に距離を取ろうとしても、それを見越したように先手を打たれて発動に至らない。次第に光輝の顔に焦りが生まれてくる。

 

 そして遂に、光輝がダメージ覚悟で剣を振ろうとした瞬間、その隙を逃さず護衛が魔法のトリガーを引く。

 

「穿て、“風撃”」

 

 呟くような声で唱えられた詠唱は小さな風の礫を発生させ、光輝の片足を打ち据えた。

 

「うわっ!?」

 

 踏み込もうとした足を払われてバランスを崩す光輝。その瞬間、壮絶な殺気が光輝を射貫く。冷徹な眼光で光輝を睨む護衛の剣が途轍もない圧力を持って振り下ろされた。

 

 刹那、光輝は悟る。彼は自分を殺すつもりだと。

 

 実際、護衛はそうなっても仕方ないと考えていた。自分の攻撃に対応できないくらいなら、本当の意味で殺し合いを知らない少年に人間族のリーダーを任せる気など毛頭なかった。例えそれで聖教教会からどのような咎めが来ようとも、戦場で無能な味方を放置する方がずっと耐え難い。それならいっそと、そう考えたのだ。

 

 しかし、そうはならなかった。

 

ズドンッ!

 

「ッガァ!?」

 

 先ほどの再現か。今度は護衛が吹き飛んだからだ。護衛が、地面を数度バウンドし両手も使いながら勢いを殺して光輝を見る。光輝は全身から純白のオーラを吹き出しながら、護衛に向かって剣を振り抜いた姿で立っていた。

 

 護衛の剣が振り下ろされる瞬間、光輝は生存本能に突き動かされるように“限界突破”を使ったのだ。これは、一時的に全ステータスを三倍に引き上げてくれるという、ピンチの時に覚醒する主人公らしい技能である。

 

 だが、光輝の顔には一切余裕はなかった。恐怖を必死で押し殺すように険しい表情で剣を構えている。

 

 そんな光輝の様子を見て、護衛はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「ハッ、少しはマシな顔するようになったじゃねぇか。さっきまでのビビリ顔より、よほどいいぞ!」

「ビビリ顔? 今の方が恐怖を感じてます。……さっき俺を殺す気ではありませんでしたか? これは模擬戦ですよ?」

「だから何だ? まさか適当に戦って、はい終わりっとでもなると思ったか? この程度で死ぬならそれまでだったってことだろ。お前は、俺達人間の上に立って率いるんだぞ? その自覚があんのかよ?」

「自覚って……俺はもちろん人々を救って……」

「傷つけることも、傷つくことも恐れているガキに何ができる? 剣に殺気一つ込められない奴がご大層なこと言ってんじゃねぇよ。おら、しっかり構えな? 最初に言ったろ? 気抜いてっと……死ぬってな!」

 

そこでツナが

 

「やめとけ天之河、これ以上やってもお前に勝ち目はねぇよ。そこにいるおっさん基皇帝の言う通りだ剣に殺気一つ込められない奴が大層なこと出来るはずもないし、言ったよな正義感で突っ走るなと、戦いを舐めるなと、覚悟を持てとも言った筈だ。どうやらわかってなかったみてぇだな。」

 

「うっ、確かに自惚れていたようだ、これかは自分に出来る事を精一杯やって行く事にするよ。」

 

「まぁ、最初はそんなもんだろ。」

 

「ほぅ、お前さんよくわかったな俺が皇帝だって。」

 

「俺に幻術は効かない。それにあんた戦闘狂だろ。」

 

「ガハハハ!!戦闘狂とは言い得て妙だ。確かに俺は戦いが好きだ。」

 

「やはりか、そう言った奴は手におえねぇからな、めんどくさい。」

 

「ふむ、お前さん俺と戦ってみんか?」

 

「えっ?ヤダ。」

 

「即答!?」

 

「あんた弱いもん。」

 

すると周りの空気の温度が下がる。

 

「ほぅ、俺が弱いと言うか。」

 

「あぁ、弱いね。俺よりも、そして嘗てこの国の王族や貴族やクラスメイトさえも無能と言った錬成師よりもな。」

 

「ほぅ、それならば見せてみろ!お前の実力をな!」

 

「いいぜ、掛かって来いよ!」

 

ツナは腕を伸ばし手のひらを上に向け指を揃え親指を中に折り曲げ挑発するように折り曲げたり伸ばしたりする。

 

そして戦いが始まった

 

皇帝が刃引きした大剣を振り下ろすよりも早くツナは懐に潜り込み腹に掌底を打ち込みくの字に身体を曲がらせ、更に顎にアッパーを喰らわせ、最後に回し蹴りで蹴り飛ばす。

 

「遅せぇよ、そんなんで俺に勝とうってか?舐められたもんだな。」

 

「ツ、ツナ?死んでないわよね?」

 

「ん、生きてるでしょ。身体は頑丈みたいだし、まぁ脳震は盪起きてるだろうから大人しくしていた方がいい。顎殴って脳を揺らしたからな。」

 

「そ、そう。それにしても強くなったわね。ツナは私が守ってあげようと思ったのに。」

 

「あのな、普通逆だろ?その役目。」

 

「だって私の方が歳上だし、お姉さんだもん。」

 

「雫」

 

「抱きしめていいか?」

 

「ふぇ!?」

 

ツナは雫を抱きしめる

 

///

 

それを見た香織が

 

「雫ちゃんずるい!ツナ君私も抱きしめて!」

 

ツナは香織の額に人差し指と中指をコツンと触れさせ

 

「許せ、香織また今度な。」

 

「むぅ〜」

 

「それにしても沢田あの護衛が皇帝だってよく気づいたわね。」

 

「ん?あぁ、園部か。まぁな、しいて言うなら感だ。」

 

「感って、あんたねぇ〜」

 

ツナに皇帝と呼ばれた護衛は剣を納めると、右の耳にしていたイヤリングを取った。

 

 すると、まるで霧がかかったように護衛の周囲の空気が白くボヤけ始め、それが晴れる頃には、全くの別人が現れた。

 

 四十代位の野性味溢れる男だ。短く切り上げた銀髪に狼を連想させる鋭い碧眼、スマートでありながらその体は極限まで引き絞られたかのように筋肉がミッシリと詰まっているのが服越しでもわかる。

 

 

「ガ、ガハルド殿!?」

「皇帝陛下!?」

 

 そう、この男、何を隠そうヘルシャー帝国現皇帝ガハルド・D・ヘルシャーその人である。まさかの事態にエリヒド陛下が眉間を揉みほぐしながら尋ねた。

 

「どういうおつもりですかな、ガハルド殿」

「これは、これはエリヒド殿。ろくな挨拶もせず済まなかった。ただな、どうせなら自分で確認した方が早いだろうと一芝居打たせてもらったのだよ。今後の戦争に関わる重要なことだ。無礼は許して頂きたい」

 

 謝罪すると言いながら、全く反省の色がないガハルド皇帝。それに溜息を吐きながら「もう良い」とかぶりを振るエリヒド陛下。

 

「よぉ、おっさん。大丈夫か?」

 

「お前さんか、俺の負けだ本気ではないとはいえつい五割の力を出したにもかかわらず負けてしまった。」

 

「へぇ〜五割ねぇ、悪いけど俺にとっちゃウォーミングアップにもならないよ。俺は一割も出してない。」

 

「な、なんだと!?」

 

「本来これが戦いの中で俺とあんたが敵同士ならあんたは死んでいた。」

 

「あ、あぁ、そうだな。」

 

皇帝ガハルドは顔面蒼白にしながら引き攣った顔で頷いた。

 

その晩、部屋で部下に本音を聞かれた皇帝陛下は面倒くさそうに答えた。

 

「ありゃ、ダメだな。唯の子供だ。理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口だ。なまじ実力とカリスマがあるからタチが悪い。自分の理想で周りを殺すタイプだな。“神の使徒”である以上蔑ろにはできねぇ。取り敢えず合わせて上手くやるしかねぇだろう」

「それで、あわよくば試合で殺すつもりだったのですか?」

「あぁ? 違ぇよ。少しは腑抜けた精神を叩き治せるかと思っただけだ。あのままやっても教皇が邪魔して絶対殺れなかっただろうよ」

「だが、あの俺を倒した者は戦いの本質をわかっている。しかも俺が五割出したにもかかわらずあいつはウォーミングアップにもならないと言った。しかもみてわかるように手加減していた。マジでやっていたら確実に俺が死んでいた。末恐ろしいな、聞いた情報によるとオルクス迷宮を制覇したらしい、それにしても動きが全く見えなかった、もし敵に回したら恐ろしい事になりそうだな。」

「それに関しては同じ考えです。」

 

 どうやら、皇帝陛下の中で光輝達勇者一行は興味の対象とはならなかったようであるがツナには興味を持った。無理もないことだろう。彼等は数ヶ月前まで唯の学生。それも平和な日本の。歴戦の戦士が認めるような戦場の心構えなど出来ているはずがないのである。

しかしツナは違う。天之河達よりもいくつもの死戦を潜り抜けて来た強者である為である。

 

「まぁ、魔人共との戦争が本格化したら変わるかもな。見るとしてもそれからだろうよ。今は、小僧どもに巻き込まれないよう上手く立ち回ることが重要だ。教皇には気をつけろ」

「御意」

 

ちなみに、早朝訓練をしている雫を見て気に入った皇帝が愛人にどうだと割かし本気で誘ったというハプニングがあった。雫はツナが好きなのでと丁寧に断り、その後皇帝はツナにアッパーカットを喰らわせられぶっ飛ばされた。

その後ツナは雫と香織と話した後に霧となってきえ



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第ニ章 第21話 ライセン大峡谷と残念なウサギ




今回も付いて来れる読者様だけ付いて来いよ!


 

 

魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。奈落の底の澱よどんだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気にツナとハジメの頬が緩む。

 

 やがて光が収まり目を開けたツナとハジメの視界に写ったものは……

 

 洞窟だった。

 

「なんでやねん」

 

「おいちょっと待て!これは俺も想定外だよ!」

 

 魔法陣の向こうは地上だと無条件に信じていたツナとハジメは、代わり映えしない光景に思わず半眼になってツッコミを入れてしまった。正直、めちゃくちゃガッカリだった。

 

 そんなハジメの服の裾をクイクイと引っ張るユエ。何だ? と顔を向けてくるハジメにユエは自分の推測を話す。慰めるように。

 

「……秘密の通路……隠すのが普通」

「あ、ああ、そうか。確かにな。反逆者の住処への直通の道が隠されていないわけないか」

「そ、そうだよな……あははは……」

 

 そんな簡単なことにも頭が回らないとは、どうやら自分は相当浮かれていたらしいと恥じるツナとハジメ。頭をカリカリと掻きながら気を取り直す。緑光石の輝きもなく、真っ暗な洞窟ではあるが、ハジメもユエも暗闇を問題としないので道なりに進むことにした。

 

 途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されていった。二人は、一応警戒していたのだが、拍子抜けするほど何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光だ。ツナとハジメはこの数ヶ月、ユエに至っては三百年間、求めてやまなかった光。

 

 ツナとハジメとユエは、それを見つけた瞬間、思わず立ち止まりお互いに顔を見合わせた。それから互いにニッと笑みを浮かべ、同時に求めた光に向かって駆け出した。

 

 近づくにつれ徐々に大きくなる光。外から風も吹き込んでくる。奈落のような澱んだ空気ではない。ずっと清涼で新鮮な風だ。ツナとハジメは、〝空気が旨い〟という感覚を、この時ほど実感したことはなかった。

 

 そして、ツナとハジメとユエは同時に光に飛び込み……待望の地上へ出た。

 

 

 

 地上の人間にとって、そこは地獄にして処刑場だ。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を、人々はこう呼ぶ。

 

 【ライセン大峡谷】と。

 

 ハジメ達は、そのライセン大峡谷の谷底にある洞窟の入口にいた。地の底とはいえ頭上の太陽は燦々さんさんと暖かな光を降り注ぎ、大地の匂いが混じった風が鼻腔をくすぐる。

 

 たとえどんな場所だろうと、確かにそこは地上だった。呆然と頭上の太陽を仰ぎ見ていたハジメとユエの表情が次第に笑みを作る。無表情がデフォルトのユエでさえ誰が見てもわかるほど頬がほころんでいる。

 

「……戻って来たんだな……」

「……んっ」

「眩しい、でもやっと戻って来れた……」

 

 三人は、ようやく実感が湧いたのか、太陽から視線を逸らすとハジメとユエはお互い見つめ合い、そして思いっきり抱きしめ合った。

 

「よっしゃぁああーー!! 戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」

「んっーー!!」

「やっと戻って来れたぞぉおおお!!」

 

 小柄なユエを抱きしめたまま、ハジメはくるくると廻る。ツナ喜び思わず叫ぶ、しばらくの間人々が地獄と呼ぶ場所には似つかわしくない笑い声が響き渡っていた。途中、地面の出っ張りに躓つまずき転到するも、そんな失敗でさえ無性に可笑しく、三人してケラケラ、クスクスと笑い合う。

 

 ようやく三人の笑いが収まった頃には、すっかり……魔物に囲まれていた。

 

「はぁ~、全く無粋なヤツらだな。……確かここって魔法使えないんだっけ?」

 

 ドンナー・シュラークを抜きながらハジメが首を傾げる。座学に励んでいたハジメには、ここがライセン大峡谷であり魔法が使えない場所であると理解していた。

 

「……分解される。でも力づくでいく」

 

 ライセン大峡谷で魔法が使えない理由は、発動した魔法に込められた魔力が分解され散らされてしまうからである。もちろん、ユエの魔法も例外ではない。しかし、ユエはかつての吸血姫であり、内包魔力は相当なものであるうえ、今は外付け魔力タンクである魔晶石シリーズを所持している。

つまり、ユエ曰く、分解される前に大威力を持って殲滅すればよいということらしい。

 

「はぁ、空気の読めない連中はこれだから嫌なんだ。」

「さてと、どのくらいならいけそうだ?」

「……十倍くらい」

 

 どうやら、初級魔法を放つのに上級レベルの魔力が必要らしい。射程も相当短くなるようだ。

 

「あ~、じゃあ俺達がやるからユエは身を守る程度にしとけ」

「うっ……でも」

「いいからいいから、適材適所。ここは魔法使いにとっちゃ鬼門だろ? 任せてくれ」

「ん……わかった」

「さてと、やりますかね。」

 ユエが渋々といった感じで引き下がる。せっかく地上に出たのに、最初の戦いで戦力外とは納得し難いのだろう。少し矜持が傷ついたようだ。唇を尖らせて拗ねている。

 

 そんなユエの様子に苦笑いしながらツナとハジメはおもむろにXガンナーとドンナーを発砲した。相手の方を見もせずに、ごくごく自然な動作でスっと銃口を魔物の一体に向けると、これまた自然に引き金を引いたのだ。

 

 あまりに自然すぎて攻撃をされると気がつけなかったようで、取り囲んでいた魔物の二体が何の抵抗もできずに、その頭部を爆散させ死に至った。辺りに銃声の余韻だけが残り、魔物達は何が起こったのかわからないというように凍り付いている。確かに、十倍近い魔力を使えば、ここでも〝纏雷〟は使えるようだ。問題なくレールガンは発射できた。

 

 未だ凍りつく魔物達に、ハジメは不敵な笑みを浮かべる。

 

「さて、奈落の魔物とお前達、どちらが強いのか……試させてもらおうか?」

「行くぞ!油断はするなよハジメ!」

「あぁ!」

 

 スっとガン=カタの構えをとるハジメと二挺拳銃を構えるツナの眼に殺意が宿る。その眼を見た周囲の魔物達は気がつけば一歩後退っていた。しかも、そのことに気がついてすらいない。本能で感じたのだろう。自分達が敵対してはいけない化物を相手にしてしまったことを。

 

 常人なら其処にいるだけで意識を失いそうな壮絶なプレッシャーが辺り一帯を覆う中、遂に魔物の一体が緊張感に耐え切れず咆哮を上げながら飛び出した。

 

「ガァアアアア!!」

 

ズドンッ!!

 

 しかし、ほぼ同時に響き渡った銃声と共に一条の閃光が走り、その魔物は避けるどころか反応すら許されず頭部を吹き飛ばされた。

 

 そこから先は、もはや戦いではなく蹂躙。魔物達は、ただの一匹すら逃げることも叶わず、まるでそうあることが当然の如く頭部を吹き飛ばされ骸を晒していく。辺り一面が魔物の屍で埋め尽くされるのに五分もかからなかった。

 

 ドンナー・シュラークとXガンナーを太もものホルスターにしまったハジメとツナは、首を僅かに傾げながら周囲の死体の山を見やる。

 

 その傍に、トコトコとユエが寄って来た。

 

「……どうしたの?」

「いや、あまりにあっけなかったんでな……ライセン大峡谷の魔物といやぁ相当凶悪って話だったから、もしや別の場所かと思って」

「……ハジメが化物」

「ひでぇいい様だな。まぁ、奈落の魔物が強すぎたってことでいいか」

「いや、大した変わらんだろう、しいて言うなら奈落の方が強かった。」

「ツナの方がヤベェだろ!」

 

 そう言って肩を竦めたツナとハジメは、もう興味がないという様に魔物の死体から目を逸らした。

 

「さて、この絶壁、登ろうと思えば登れるだろうが……どうする? ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だ。せっかくだし、樹海側に向けて探索でもしながら進むか?」

「……なぜ、樹海側?」

「いや、峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌だろ? 樹海側なら、町にも近そうだし。」

「……確かに」

「そうするか。」

 

 ハジメの提案に、ツナとユエも頷いた。魔物の弱さから考えても、この峡谷自体が迷宮というわけではなさそうだ。ならば、別に迷宮への入口が存在する可能性はある。ハジメの〝空力〟やユエの風系魔法を使えば、絶壁を超えることは可能だろうが、どちらにしろライセン大峡谷は探索の必要があったので、特に反対する理由もない。

 

 ツナとハジメは、右手の中指にはまっている〝宝物庫〟に魔力を注ぎ、魔力駆動二輪を取り出す。颯爽と跨り、後ろにユエが横乗りしてハジメの腰にしがみついた。ツナは一人でバイクに乗る。

 

 地球のガソリンタイプと違って燃焼を利用しているわけではなく、魔力の直接操作によって直接車輪関係の機構を動かしているので、駆動音は電気自動車のように静かである。ハジメとしてはエンジン音がある方がロマンがあると思ったのだが、エンジン構造などごく単純な仕組みしか知らないので再現できなかった。ちなみに速度調整は魔力量次第である。まぁ、ただでさえ、ライセン大峡谷では魔力効率が最悪に悪いので、あまり長時間は使えないだろうが。

 

 ライセン大峡谷は基本的に東西に真っ直ぐ伸びた断崖だ。そのため脇道などはほとんどなく道なりに進めば迷うことなく樹海に到着する。ハジメもユエも、迷う心配が無いので、迷宮への入口らしき場所がないか注意しつつ、軽快に魔力駆動二輪を走らせていく。車体底部の錬成機構が谷底の悪路を整地しながら進むので実に快適だ。

 

 もっとも、その間もツナとハジメの手だけは忙しなく動き続け、一発も外すことなく襲い来る魔物の群れを蹴散らせているのだが。

 

 しばらく魔力駆動二輪を走らせていると、それほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。中々の威圧である。少なくとも今まで相対した谷底の魔物とは一線を画すようだ。もう三十秒もしない内に会敵するだろう。

 

 魔力駆動二輪を走らせ突き出した崖を回り込むと、その向こう側に大型の魔物が現れた。かつて見たティラノモドキに似ているが頭が二つある。双頭のティラノサウルスモドキだ。

 

 だが、真に注目すべきは双頭ティラノではなく、その足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら半泣きで逃げ惑うウサミミを生やした少女だろう。

 

 ツナとハジメは魔力駆動二輪を止めて胡乱うろんな眼差しで今にも喰われそうなウサミミ少女を見やる。

 

「……なんか来るぞ」

「……何だあれ?」

「……兎人族?」

「なんでこんなとこに? 兎人族って谷底が住処なのか?」

「……聞いたことない」

「じゃあ、あれか? 犯罪者として落とされたとか? 処刑の方法としてあったよな?」

「……悪ウサギ?」

「寧ろ駄目うさぎだろ。」

 

 ツナとハジメとユエは首を傾げながら、逃げ惑うウサミミ少女を尻目に呑気にお喋りに興じる。助けるという発想はないらしい。別に、ライセン大峡谷が処刑方法の一つとして使用されていることからウサミミ少女が犯罪者であることを考慮したわけではない。赤の他人である以上、単純に面倒だし興味がなかっただけである。

 

 相変わらずの変心ぶり、鬼畜ぶりだった。ユエの時とは訳が違う。ウサミミ少女にシンパシーなど感じていないし、メリットが見当たらない以上ハジメの心には届かない。助けを求める声に毎度反応などしていたらキリがないのである。ハジメは既に、この世界自体見捨てているのだから今更だ。

 

 しかし、そんな呑気なハジメとユエをウサミミ少女の方が発見したらしい。双頭ティラノに吹き飛ばされ岩陰に落ちたあと、四つん這いになりながらほうほうのていで逃げ出し、その格好のままハジメ達を凝視している。

 

 そして、再び双頭ティラノが爪を振い隠れた岩ごと吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がると、その勢いを殺さず猛然と逃げ出した。……ハジメ達の方へ。

 

 それなりの距離があるのだが、ウサミミ少女の必死の叫びが峡谷に木霊しハジメ達に届く。

 

「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

 

 滂沱の涙を流し顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けてくる。そのすぐ後ろには双頭ティラノが迫っていて今にもウサミミ少女に食らいつこうとしていた。このままでは、ハジメ達の下にたどり着く前にウサミミ少女は喰われてしまうだろう。

 

 流石に、ここまで直接助けを求められたらハジメも……

 

「うわ、モンスタートレインだよ。勘弁しろよな」

「……迷惑」

「逃げるぞ」

 

 やはり助ける気はないらしい。必死の叫びにもまるで動じていなかった。むしろ、物凄く迷惑そうだった。ツナ達を必死の形相で見つめてくるウサミミ少女から視線を逸らすと、ツナとハジメに助ける気がないことを悟ったのか、少女の目から、ぶわっと更に涙が溢れ出した。一体どこから出ているのかと目を見張るほどの泣きっぷりだ。

 

「まっでぇ~、みすでないでぐだざ~い! おねがいですぅ~!!」

 

 ウサミミ少女が更に声を張り上げる。

 

 それでも、ツナとハジメは、全く助ける気がないので、このまま行けばウサミミ少女は間違いなく喰われていたはずだった。そう、双頭ティラノがウサミミ少女の向こう側に見えたハジメ達に殺意を向けさえしなければ。

 

 双頭ティラノが逃げるウサミミ少女の向かう先にハジメ達を見つけ、殺意と共に咆哮を上げた。

 

「「グゥルァアアアア!!」」

 

 それに敏感に反応するツナとハジメ。

 

「アァ?」

 

「はぁ、普通なら雑魚の相手などしないだけど命は大切にしないとな。」

 

 今、自分は生存を否定されている。捕食の対象と見られている。敵が己の行く道に立ち塞がっている! 双頭ティラノの殺意に、ツナのの体が反応し、その意志が襲われている者を助けろと騒ぎ立てた。

 

 双頭ティラノが、ウサミミ少女に追いつき、片方の頭がガパッと顎門を開く。ウサミミ少女はその気配にチラリと後ろを見て目前に鋭い無数の牙が迫っているのを認識し、「ああ、ここで終わりなのかな……」とその瞳に絶望を写した。

 

 が、次の瞬間、

 

ズガァン!!

 

 聞いたことのない乾いた破裂音が峡谷に響き渡り、恐怖にピンと立った二本のウサミミの間を一条の閃光が通り抜けた。そして、目前に迫っていた双頭ティラノの口内を突き破り後頭部を粉砕しながら貫通した。

 

 力を失った片方の頭が地面に激突、慣性の法則に従い地を滑る。双頭ティラノはバランスを崩して地響きを立てながらその場にひっくり返った。

 

 その衝撃で、ウサミミ少女は再び吹き飛ぶ。狙いすましたようにハジメの下へ。

 

「きゃぁああああー! た、助けてくださ~い!」

 

 眼下のハジメに向かって手を伸ばすウサミミ少女。その格好はボロボロで女の子としては見えてはいけない場所が盛大に見えてしまっている。たとえ酷い泣き顔でも男なら迷いなく受け止める場面だ。

 

「アホか、図々しい」

 

 しかし、そこはハジメクオリティー。一瞬で魔力駆動二輪を後退させると華麗にウサミミ少女を避けた。

 

「えぇー!?」

 

 ウサミミ少女は驚愕の悲鳴を上げながらハジメの眼前の地面にベシャと音を立てながら落ちた。両手両足を広げうつ伏せのままピクピクと痙攣している。気は失っていないが痛みを堪えて動けないようだ。

 

「……面白い」

「……確かに面白い」

 ユエがハジメの肩越しにウサミミ少女の醜態を見て、さらりと酷い感想を述べそれに賛同するツナ。そうこうしている内に双頭ティラノが絶命している片方の頭を、何と自分で喰い千切りバランス悪目な普通のティラノになった。

 

 普通ティラノがその眼に激烈な怒りを宿して咆哮を上げる。その叫びに痙攣していたウサミミ少女が跳ね起きた。意外に頑丈というか、しぶとい。あたふたと立ち上がったウサミミ少女は、再び涙目になりながら、これまた意外に素早い動きでハジメの後ろに隠れる。

 

 あくまでハジメに頼る気のようだ。まぁ、自分だけだとあっさり死ぬし、ハジメが何かして片方の頭を倒したのも理解していたので当然といえば当然の行動なのだが。

 

「おい、こら。存在がギャグみたいなウサミミ! 何勝手に盾にしてやがる。巻き込みやがって、潔く特攻してこい!」

 

 ハジメのコートの裾をギュッと掴み、絶対に離しません! としがみつくウサミミ少女を心底ウザったそうに睨むハジメ。後ろの席に座るユエが、離せというように足先で小突いている。

 

「い、いやです! 今、離したら見捨てるつもりですよね!」

「当たり前だろう? なぜ、見ず知らずウザウサギを助けなきゃならないんだ」

「そ、即答!? 何が当たり前ですか! あなたにも善意の心はありますでしょう! いたいけな美少女を見捨てて良心は痛まないんですか!」

「そんなもん奈落の底に置いてきたわ。つぅか自分で美少女言うなよ」

「な、なら助けてくれたら……そ、その貴方達のお願いを、な、何でも一つ聞きますよ?」

 

 頬を染めて上目遣いで迫るウサミミ少女。あざとい、実にあざとい仕草だ。涙とか鼻水とかで汚れてなければ、さぞ魅力的だっただろう。実際に、近くで見れば汚れてはいるものの自分で美少女と言うだけあって、かなり整った容姿をしているようだ。白髪碧眼の美少女である。並みの男なら、例え汚れていても堕ちたかもしれない。

 

 だが、目の前にいる男達は普通ではなかった。

 

「いらねぇよ。ていうか汚い顔近づけるな、汚れるだろが」

「アホか、そんな事言っている暇があるなら逃げろよ!つか何でもとか言うなよ!」

 

どこまでも行く鬼畜道と正論。

 

「き、汚い!? 言うにことかいて汚い! あんまりです! 断固抗議しまッ「グゥガァアア!」ヒィー!まともな事を言ってくれる人がいるのに助けてくれないなんてあんまりですぅ お助けぇ~!」

 

 ツナとハジメの言葉に反論しようと声を張り上げた瞬間、てめぇら無視してんじゃねぇ! とでも言うようにティラノが咆哮を上げて突進しようと身をたわめた。

 

 ウサミミ少女は情けない悲鳴を上げて無理やりハジメとユエの間に入り込もうとする。ユエが、イラッときたのか魔力駆動二輪に乗ろうとするウサミミ少女を蹴り落とそうとゲシゲシ蹴りをかますが、ウサミミ少女は頬に靴跡を刻まれながら「絶対に離しませぇ~ん!」と死に物狂いでしがみつき引き離せない。

 

 そんな様子をみてコケにされていると感じたのか、より一層怒りを宿した眼光でハジメ達を睨み、遂にティラノが突進を開始した。

 

 直後、「はぁ」とため息を吐きながらもツナの手が跳ね上がり銃口がティラノの額をロックオン。コンマ一秒にも満たない時間で照準から発砲までプロセスを完了し、一発の銃声と共に紅蓮の弾丸がティラノの眉間を貫く。

 

 一瞬、ビクンと痙攣した後、ティラノはあまりに呆気なく絶命し、地響きを立てながら横倒しに崩れ落ちた。

 

 その振動と音にウサミミ少女が思わず「へっ?」と間抜けな声を出し、おそるおそるハジメの脇の下から顔を出してティラノの末路を確認する。

 

「し、死んでます…そんなダイヘドアが一撃なんて…」

 

 ウサミミ少女は驚愕も表に目を見開いている。どうやらあの双頭ティラノは〝ダイヘドア〟というらしい。

 

 呆然としたままダイヘドアの死骸を見つめ硬直しているウサミミ少女だが、その間もハジメとユエに蹴られながらもハジメにしがみついたままである。さっきから、長いウサミミがハジメの目をペシペシと叩いており、いい加減本気で鬱陶しくなったハジメは脇の下の脳天に肘鉄を打ち下ろした。

 

「へぶぅ!!」

 

 呻き声を上げ、「頭がぁ~、頭がぁ~」と叫びながら両手で頭を抱えて地面をのたうち回るウサミミ少女。それを冷たく一瞥した後、ツナとハジメは何事もなかったように魔力駆動二輪に魔力を注ぎ先へ進もうとする。

 

 その気配を察したのか、今までゴロゴロ地面を転がっていたくせに物凄い勢いで跳ね起きて、「逃がすかぁ~!」と再びハジメの腰にしがみつくウサミミ少女。やはり、なかなかの打たれ強さだ。

 

「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

 そして、なかなかに図太かった。

 

 ツナとハジメは、しがみついて離れないウサミミ少女を横目に見る。そして、奈落から脱出して早々に舞い込んだ面倒事に深い溜息を吐くのだった。

 



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第22話 シア・ハウリアの事情



今回も付いて来れる読者様だけ付いて来いよ!


「私の家族も助けて下さい!」

 

 峡谷にウサミミ少女改めシア・ハウリアの声が響く。どうやら、このウサギ一人ではないらしい。仲間も同じ様な窮地にあるようだ。よほど必死なのか、先程から相当強くユエに蹴りを食らっているのだが、頬に靴をめり込ませながらも離す気配がない。

 

 あまりに必死に懇願するので、ハジメは仕方なく……〝纏雷〟をしてやった。

 

「アババババババババババアバババ!?」

 

 電圧と電流は調整してあるので死にはしないが、しばらく動けなくなるくらいの威力はある。シアのウサミミがピンッと立ちウサ毛がゾワッと逆だっている。〝纏雷〟を解除してやると、ビクンッビクンッと痙攣しながらズルズルと崩れ落ちた。

 

「全く、非常識なウザウサギだ。ツナ、ユエ、行くぞ?」

「ん……」

「いざ、出発!って言いたいところだけど手を離せ!危ないぞ!」

 

 ツナとハジメは何事もなかったように再びバイクに魔力を注ぎ込み発進させようとしたが

 

 しかし……

 

「に、にがじませんよ~」

 

 ゾンビの如く起き上がりハジメの脚にしがみつくシア。流石に驚愕したハジメは思わず魔力注入を止めてしまう。

 

「お、お前、ゾンビみたいな奴だな。それなりの威力出したんだが……何で動けんるんだよ? つーか、ちょっと怖ぇんだけど……」

「……不気味」

「気持悪いゾ!」

「うぅ~何ですか! その物言いは! さっきから、肘鉄とか足蹴とか、ちょっと酷すぎると思います! 断固抗議しますよ! お詫びに家族を助けて下さい!」

「いや、意味がわからん。」

 ぷんすかと怒りながら、さらりと要求を突きつけるシア。それを意味がわからないと突き放すツナだがシアは案外余裕そうである。このまま引き摺っていこうかとも考えたハジメだが、何か執念で何処までもしがみついてきそうだと思い直す。血まみれで引きずられたまま決して離さないウサミミ少女……完全にホラーである。

 

「ったく、何なんだよ。取り敢えず話聞いてやるから離せ。ってさり気なく俺の外套で顔を拭くな!」

「汚いねぇよ!お前!」

 

 話を聞いてやると言われパアァと笑顔になったシアは、これまたさり気なくハジメの外套で汚れた顔を綺麗に拭った。本当にいい性格をしている。それにツナがツッコミを入れ、イラッと来たハジメが再び肘鉄を食らわせると「はぎゅん!」と奇怪な悲鳴を上げ蹲った。

 

「ま、また殴りましたね! 父様にも殴られたことないのに! よく私のような美少女を、そうポンポンと……もしや殿方同士の恋愛にご興味が……だから先も私の誘惑をあっさりと拒否したんですね! そうでッあふんッ!?」

 

 なにやら不穏当な発言が聞こえたので蹲うずくまるシアの脳天目掛けて踵落としをするハジメ。その額には青筋が浮かんでいる。

 

「誰がホモやゲイだ!ウザウサギ。っていうか何でそのネタ知ってんだよ。ユエと言いお前と言い、どっから仕入れてくるんだ…? まぁ、それは取り敢えず置いておくとして、お前の誘惑だかギャグだか知らんが、誘いに乗らないのは、お前より遥かにレベルの高い美少女がすぐ隣にいるからだ。ユエを見て堂々と誘惑できるお前の神経がわからん」

 

「そうだぞ、俺もハジメもいたって普通でノーマルで恋愛対象は女性だけだ!決してアブノーマルな性癖は持って無い!それに俺も元の世界にお前よりも遥かにレベルの高い女神の様な美少女幼馴染と義妹がいるし、俺達の帰りを待っているからな、お前の誘惑など意味が無い。それに王国には香織と雫もいるしな。」

 

 

 そう言ってハジメはチラリと隣のユエを見る。ユエはハジメの言葉に赤く染まった頬を両手で挟み、体をくねらせてイヤンイヤンしていた。腰辺りまで伸びたゆるふわの金髪が太陽の光に反射してキラキラと輝き、ビスクドールの様に整った容姿が今は照れでほんのり赤く染まっていて、見る者を例外なく虜にする魅力を放っている。

 

 格好も、ツナとハジメと出会ったばかりの頃の様なみすぼらしい物ではない。前面にフリルのあしらわれた純白のドレスシャツに、これまたフリル付きの黒色ミニスカート、その上から純白に青のラインが入ったロングコートを羽織っている。足元はショートブーツにニーソだ。どれも、オスカーの衣服に魔物の素材を合わせて、ユエ自身が仕立て直した逸品だ。高い耐久力を有する防具としても役立つ衣服である。

 

 ちなみに、ハジメは黒に赤のラインが入ったコートと下に同じように黒と赤で構成された衣服を纏っている。これもユエ作だ。当初、ユエはハジメにも白を基調とした衣服を着せてペアルック気味にしたがったのだが、流石に恥ずかしいのと、自身の髪が白色になっているので全身白は嫌だとハジメが懇願した結果、今のスタイルに落ち着いた。

 

そしてツナはジョットと同様のマントに黒のスーツにオレンジ色のネクタイに白のシャツを着ている。まるでその姿は伝説と謳われた初代大空ボンゴレI世と生き写しと言われても遜色ない姿である。

 

 そんな可憐なユエを見て、「うっ」と僅かに怯むシア。しかし、ハジメには身内補正が掛かっていることもあり、二人の容姿に関しては多分に主観的要素が入り込んでいる。つまり、客観的に見ればシアも負けず劣らずの美少女ということだ。

 

 少し青みがかったロングストレートの白髪に、蒼穹の瞳。眉やまつ毛まで白く、肌の白さとも相まって黙っていれば神秘的な容姿とも言えるだろう。手足もスラリと長く、ウサミミやウサ尻尾がふりふりと揺れる様は何とも愛らしい。ケモナー達が見れば感動して思わず滂沱の涙を流すに違いない。

 

 何より……ユエにはないものがある。そう、シアは大変な巨乳の持ち主だった。ボロボロの布切れのような物を纏っているだけなので殊更強調されてしまっているそれ凶器は、固定もされていないのだろう。彼女が動くたびにぶるんぶるんと揺れ、激しく自己を主張している。ぷるんぷるんではなくぶるんぶるんだ。念の為。

 

 要するに、彼女が自分の容姿やスタイルに自信を持っていても何らおかしくないのである。むしろ、普通にウザそうにしているハジメが異常なのだ。変心前なら「ウサミミー!!」とル○ンダイブを決めたかもしれないが……

 

 それ故に、矜持を傷つけられたシアは言ってしまった。言ってはならない言葉を……

 

「で、でも! 胸なら私が勝ってます! そっち女の子はペッタンコじゃないですか!」

 

〝ペッタンコじゃないですか〟〝ペッタンコじゃないですか〟〝ペッタンコじゃないですか〟

 

 峡谷に命知らずなウサミミ少女の叫びが木霊こだまする。恥ずかしげに身をくねらせていたユエがピタリと止まり、前髪で表情を隠したままユラリと二輪から降りた。

 

 ツナとハジメは「あ~あ」と天を仰ぎ、無言で合掌する。ウサミミよ、安らかに眠れ……。

 

 ちなみに、ユエは着痩せするが、それなりにある。断じてライセン大峡谷の如く絶壁ではない。

 

 震えるシアのウサミミに、囁ささやくようなユエの声がやけに明瞭に響いた。

 

―――― ……お祈りは済ませた? 

―――― ……謝ったら許してくれたり

―――― ………… 

―――― 死にたくなぁい! 死にたくなぁい! 

 

「〝嵐帝〟」

 

―――― アッーーーー!! 

 

 突如発生した竜巻に巻き上げられ錐揉みしながら天に打ち上げられるシア。彼女の悲鳴が峡谷に木霊し、きっかり十秒後、グシャ! という音と共にハジメ達の眼前に墜落した。

 

 まるで犬○家のあの人のように頭部を地面に埋もれさせビクンッビクンッと痙攣している。完全にギャグだった。その神秘的な容姿とは相反する途轍もなく残念な少女である。ただでさえボロボロの衣服? が更にダメージを受けて、もはやただのゴミのようだ。逆さまなので見えてはいけないものも丸見えである。百年の恋も覚める姿とはこの事だろう。

 

 ユエは「いい仕事した!」と言う様に、掻いてもいない汗を拭うフリをするとトコトコとハジメの下へ戻り、二輪に腰掛けるハジメを下からジッと見上げた。

 

「……おっきい方が好き?」

 

 実に困った質問だった。ハジメとしては「YES!」と答えたい所だったが、それを言えば未だ前方で痙攣している残念ウサギと仲良く犬○家である。それは勘弁して欲しかった。

 

「……ユエ、大きさの問題じゃあない。相手が誰か、それが一番重要だ」

「……」

 

 取り敢えずYESともNOとも答えず、ふわっとした回答を選択するハジメ。実にヘタレである。ツナは何も答えず黙秘する。ユエはスっと目を細めたものの一応の納得をしたのか無言で後席に腰掛けた。

 

 内心、冷や汗を流すハジメは、居心地の悪い沈黙を破ろうと話題を探すが何も見つからない。ハジメのライ○カードは役立たずだった。

 

 だが、ハジメが視線を彷徨さまよわせた直後、痙攣していたシアの両手がガッと地面を掴み、ぷるぷると震えながら懸命に頭を引き抜こうとしている姿を捉え、これ幸いにとシアに注意を向け話のタネにする。

 

「アイツ動いてるぞ……本気でゾンビみたいな奴だな。頑丈とかそう言うレベルを超えている気がするんだが……」

「……………………ん」

「…………バグウサギへの片鱗か?」

 

 いつもより長い間の後、返事をしてくれたことにホッとしていると、ズボッという音と共にシアが泥だらけの顔を抜き出した。

 

「うぅ~ひどい目に遭いました。こんな場面見えてなかったのに……」

 

 涙目で、しょぼしょぼとボロ布を直すシアは、意味不明なことを言いながらハジメ達の下へ這い寄って来た。既にホラーだった。

 

「はぁ~、お前の耐久力は一体どうなってんだ? 尋常じゃないぞ……何者なんだ?」

 

 ハジメの胡乱な眼差しに、ようやく本題に入れると居住まいを正すシア。バイクの座席に腰掛けるツナとハジメ達の前で座り込み真面目な表情を作った。もう既に色々遅いが……

 

「改めまして、私は兎人族ハウリアの長の娘シア・ハウリアと言います。実は……」

 

 語り始めたシアの話を要約するとこうだ。

 

 シア達、ハウリアと名乗る兎人族達は【ハルツィナ樹海】にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。兎人族は、聴覚や隠密行動に優れているものの、他の亜人族に比べればスペックは低いらしく、突出したものがないので亜人族の中でも格下と見られる傾向が強いらしい。性格は総じて温厚で争いを嫌い、一つの集落全体を家族として扱う仲間同士の絆が深い種族だ。また、総じて容姿に優れており、エルフのような美しさとは異なった、可愛らしさがあるので、帝国などに捕まり奴隷にされたときは愛玩用として人気の商品となる。

 

 そんな兎人族の一つ、ハウリア族に、ある日異常な女の子が生まれた。兎人族は基本的に濃紺の髪をしているのだが、その子の髪は青みがかった白髪だったのだ。しかも、亜人族には無いはずの魔力まで有しており、直接魔力を操るすべと、とある固有魔法まで使えたのだ。

 

 当然、一族は大いに困惑した。兎人族として、いや、亜人族として有り得ない子が生まれたのだ。魔物と同様の力を持っているなど、普通なら迫害の対象となるだろう。しかし、彼女が生まれたのは亜人族一、家族の情が深い種族である兎人族だ。百数十人全員を一つの家族と称する種族なのだ。ハウリア族は女の子を見捨てるという選択肢を持たなかった。

 

 しかし、樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】に女の子の存在がばれれば間違いなく処刑される。魔物とはそれだけ忌み嫌われており、不倶戴天の敵なのである。国の規律にも魔物を見つけ次第、できる限り殲滅しなければならないと有り、過去にわざと魔物を逃がした人物が追放処分を受けたという記録もある。また、被差別種族ということもあり、魔法を振りかざして自分達亜人族を迫害する人間族や魔人族に対してもいい感情など持っていない。樹海に侵入した魔力を持つ他種族は、総じて即殺が暗黙の了解となっているほどだ。

 

 故に、ハウリア族は女の子を隠し、十六年もの間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまった。その為、ハウリア族はフェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出たのだ。

 

 行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだ。未開地ではあるが、帝国や奴隷商に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだ。

 

 しかし、彼等の試みは、その帝国により潰えた。樹海を出て直ぐに運悪く帝国兵に見つかってしまったのだ。巡回中だったのか訓練だったのかは分からないが、一個中隊規模と出くわしたハウリア族は南に逃げるしかなかった。

 

 女子供を逃がすため男達が追っ手の妨害を試みるが、元々温厚で平和的な兎人族と魔法を使える訓練された帝国兵では比べるまでもない歴然とした戦力差があり、気がつけば半数以上が捕らわれてしまった。

 

 全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼等は、苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだ。流石に、魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろうし、ほとぼりが冷めていなくなるのを待とうとしたのである。魔物に襲われるのと帝国兵がいなくなるのとどちらが早いかという賭けだった。

 

 しかし、予測に反して帝国兵は一向に撤退しようとはしなかった。小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、兎人族が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。

 

 そうこうしている内に、案の定、魔物が襲来した。もう無理だと帝国に投降しようとしたが、峡谷から逃がすものかと魔物が回り込み、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。そうやって、追い立てられるように峡谷を逃げ惑い……

 

「……気がつけば、六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」

 

 最初の残念な感じとは打って変わって悲痛な表情で懇願するシア。どうやら、シアは、ツナやユエやハジメと同じ、この世界の例外というヤツらしい。特に、ユエと同じ、先祖返りと言うやつなのかもしれない。

 

ツナは話を聞き終わると胸糞悪い気持ちになった、仲間に裏切られる前の自分ならなんとか出来ないかと思っただろうが今ではそういう気持ちは変わらないが無闇とやたらと関わっていいのか考える様になった。元の世界でらなら容赦無く潰しただろうがここは異世界下手に出られないと考えていた。

 

そして話を聞き終ったハジメは特に表情を変えることもなく端的に答えた。

 

 「断る」

「俺は助けてもいいと思うぞ?」

「「!?」」

「但し条件付きだけどな。」

 

 



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第23話 契約完了

「断る」

「俺は良いと思うぞ。」

「「!?」」

「ただし条件付きだがな。」

 

 ハジメの端的な言葉で断るがツナが条件付きで受けると言った。すると何を言われたのか分からない、といった表情のシアは、ポカンと口を開けた間抜けな姿でハジメとツナをマジマジと見つめた。そして、ツナはシアの目の前で手を振ってみるがフリーズしているらしく動かない。ツナとハジメはバイクに跨りこの場を去ろうとすると、物凄い勢いで抗議の声を張り上げた。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと! 何故です! 今の流れはどう考えても『何て可哀想なんだ! 安心しろ!! 俺が何とかしてやる!』とか言って爽やかに微笑むところですよ!貴方も条件付きでってなんですか!普通無条件で受けるでしょう! そしたら流石の私もコロっといっちゃうところですよ! 何、いきなり美少女との出会いをフイにしているのですか! って、あっ、無視して行こうとしないで下さい! 逃しませんよぉ!」

 

 シアの抗議の声をさらりと無視して出発しようとするツナとハジメの脚に再びシアが飛びつく。さっきまでの真面目で静謐な感じは微塵もなく、形振り構わない残念ウサギが戻ってきた。

 

 足を振っても微塵も離れる気配がないシアに、ハジメは溜息を吐きながらジロリと睨む。

 

「あのなぁ~、お前等助けて、俺に何のメリットがあるんだよ」

「メ、メリット?」

「帝国から追われているわ、樹海から追放されているわ、お前さんは厄介のタネだわ、デメリットしかねぇじゃねぇか。仮に峡谷から脱出出来たとして、その後どうすんだよ? また帝国に捕まるのが関の山だろうが。で、それ避けたきゃ、また俺を頼るんだろ? 今度は、帝国兵から守りながら北の山脈地帯まで連れて行けってな」

「うっ、そ、それは……で、でも!」

「俺達にだって旅の目的はあるんだ。そんな厄介なもん抱えていられないんだよ」

「俺は本当に信頼出来る奴しか仲間とも思わないし、信頼出来ない奴がどうなろうと、その関係者がどうなろうと知ったこっちゃ無い。興味すらない。それが初対面なら尚更だ。」

「そんな……でも、守ってくれるって見えましたのに!」

「……さっきも言ってたな、それ。どういう意味だ? ……お前の固有魔法と関係あるのか?」

 一向に折れないハジメに涙目で意味不明なことを口走るシア。そう言えば、何故シアが仲間と離れて単独行動をしていたのかという点も疑問である。その辺りのことも関係あるのかとハジメは尋ねた。

 

「え? あ、はい。〝未来視〟といいまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか? みたいな……あと、危険が迫っているときは勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど……そ、そうです。私、役に立ちますよ! 〝未来視〟があれば危険とかも分かりやすいですし! 少し前に見たんです! 貴方が私達を助けてくれている姿が! 実際、ちゃんと貴方に会えて助けられました!」

 

「ユニの能力の劣化版か、確定した未来でもないのによく言えたな。」

 

「うぅ〜」

 

 シアの説明する〝未来視〟は、彼女の説明通り、任意で発動する場合は、仮定した選択の結果としての未来が見えるというものだ。これには莫大な魔力を消費する。一回で枯渇寸前になるほどである。また、自動で発動する場合もあり、これは直接・間接を問わず、シアにとって危険と思える状況が急迫している場合に発動する。これも多大な魔力を消費するが、任意発動程ではなく三分の一程消費するらしい。

 

 どうやら、シアは、元いた場所で、ツナとハジメ達がいる方へ行けばどうなるか? という仮定選択をし、結果、自分と家族を守るツナとハジメの姿が見えたようだ。そして、ハジメを探すために飛び出してきた。こんな危険な場所で単独行動とは、よほど興奮していたのだろう。

 

「そんなすごい固有魔法持ってて、何でバレたんだよ。危険を察知できるならフェアベルゲンの連中にもバレなかったんじゃないか?」

 

 ハジメの指摘に「うっ」と唸った後、シアは目を泳がせてポツリと零した。

 

「じ、自分で使った場合はしばらく使えなくて……」

「バレた時、既に使った後だったと……何に使ったんだよ?」

「ちょ~とですね、友人の恋路が気になりまして……」

「ただの出歯亀じゃねぇか! 貴重な魔法何に使ってんだよ」

「馬鹿だな、いやそれ以上の駄阿保で馬鹿じゃねぇか!」

「うぅ~猛省しておりますぅ~」

「やっぱ、ダメだな。何がダメって、お前がダメだわ。この残念ウサギが」

「そうだな…やっぱりダメだな、この残念駄阿保ウサギが」

 

 

 

 

 呆れたようにそっぽを向くツナとハジメにシアが泣きながら縋り付く。ハジメが、いい加減引きずっても出発しようとすると、何とも意外な所からシアの援護が来た。

 

「……義兄様とハジメ、連れて行こう」

「「ユエ?」」

「!? 最初から貴女のこといい人だと思ってました! ペッタンコって言ってゴメンなッあふんっ!」

「本当に阿保だ、こいつ。学習しないなぁ。」

 

 

 ユエの言葉にツナとハジメは訝しそうに、シアは興奮して目をキラキラして調子のいい事を言う。次いでに余計な事も言い、ユエにビンタを食らって頬を抑えながら崩れ落ちた。

 

「……樹海の案内に丁度いい」

「あ~」

「………そうだな、そうするか。」

 確かに、樹海は亜人族以外では必ず迷うと言われているため、兎人族の案内があれば心強い。樹海を迷わず進むための対策も一応考えていたのだが、若干、乱暴なやり方であるし確実ではない。最悪、現地で亜人族を捕虜にして道を聞き出そうと考えていたので、自ら進んで案内してくれる亜人がいるのは正直言って有り難い。ただ、シア達はあまりに多くの厄介事を抱えているため逡巡するハジメ。そしてツナはなるべく面倒くさい事は避けたいと言う考えを持つ。

 

 そんなツナとハジメに、ユエは真っ直ぐな瞳を向けて逡巡を断ち切るように告げた。

 

「……大丈夫、私達は最強」

 

 それは、奈落を出た時のハジメの言葉。この世界に対して遠慮しない。互いに守り合えば最強であると。ハジメは自分の言った言葉を返されて苦笑いするしかない。

 

 兎人族の協力があれば断然、樹海の探索は楽になるのだ。それを帝国兵や亜人達と揉めるかもしれないから避けるべき等と〝舌の根も乾かぬうちに〟である。もちろん、好き好んで厄介事に首を突っ込むつもり等さらさらないが、ベストな道が目の前にあるのに敵の存在を理由に避けるなど有り得ない。道を阻む敵は〝殺してでも〟と決めたのだ。

 

「そうだな。おい、喜べ残念ウサギ。お前達を樹海の案内に雇わせてもらう。報酬はお前等の命だ」

 

 確かに言っていることは間違いではないが、セリフが完全にマフィアである。しかし、それでも、峡谷において強力な魔物を片手間に屠れる強者が生存を約束したことに変わりはなく、シアは飛び上がらんばかりに喜びを表にした。そんな様子を見てツナは苦笑する。

 

「あ、ありがとうございます! うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったよぉ~」

 

 ぐしぐしと嬉し泣きするシア。しかし、仲間のためにもグズグズしていられないと直ぐに立ち上がる。

 

「あ、あの、宜しくお願いします! そ、それでお三人のことは何と呼べば……」

「ん? そう言えば名乗ってなかったか……俺はハジメ。南雲ハジメだ」

「俺はツナ。沢田綱吉だ。」

「……ユエ」

「ハジメさんツナさんとユエちゃんですね」

 

 二人の名前を何度か反芻し覚えるシア。しかし、ユエが不満顔で抗議する。

「それはあだ名だ、信頼できる者にしか呼ばせていない。ツナヨシさんだ、残念駄阿保ウサギ」

「……さんを付けろ。残念ウサギ」

「ふぇ!?」

 

 ツナとユエらしからぬ命令口調に戸惑うシアは、ユエは外見から年下と思っているらしく、ユエが吸血鬼族で遥に年上と知ると土下座する勢いで謝罪した。どうもユエは、シアが気に食わないらしい。何故かは分からないが……。例え、ユエの視線がシアの体の一部を憎々しげに睨んでいたとしても、理由は定かではないのだ!

 

「ほれ、取り敢えず残念ウサギも後ろに乗れ」

「早くしろ、時間は有限だゾ。」

 

 ツナとハジメがユエの内心を華麗にスルーしながらシアに指示を出す。シアは少し戸惑っているようだ。それも無理はない。なにせこの世界に魔力駆動二輪等と言う乗り物は存在しないのだ。しかし、取り敢えず何らかの乗り物である事はわかるので、シアは恐る恐るユエの後ろに跨った。

 

 とある魔物の革を使ったタンデムシートだが、ユエが小柄なので十分に乗るスペースはある。シアは、シートの柔らかさに驚きつつ、前方のユエに捕まった。その凶器を押し付けながら。

 

 その感触にビクッとしたユエは、おもむろに立ち上がると器用にハジメの前に潜り込む。ユエの小柄な体格は、問題なくハジメの腕の間にすっぽりと収まった。どうやら、背中に当たる凶器の感触に耐え切れなかったらしい。苦い表情で背後のハジメに体重を預けるユエにハジメは事情を察して苦笑いする。

 

 シアは「え? 何で?」と何も分かっていない様子だったが、いそいそと前方にズレるとハジメの腰にしがみついた。ハジメは特に反応することもなく魔力駆動二輪に魔力を注ぎ込む。決して思わず反応してしまいそうになるのを堪えている訳ではない。ないったらない。

 

 そんなハジメとユエの微妙な内心には微塵も気づかずに、シアはハジメの肩越しに疑問をぶつける。

 

「あ、あの。助けてもらうのに必死で、つい流してしまったのですが……この乗り物? 何なのでしょう? それに、ツナヨシさんとハジメさんもユエさんも魔法使いましたよね? ここでは使えないはずなのに……」

「あ~、それは道中でな」

 

 そう言いながら、ツナとハジメは魔力駆動二輪を一気に加速させ出発した。悪路をものともせず爆走する乗り物に、シアがハジメの肩越しに「きゃぁああ~!」と悲鳴を上げた。地面も壁も流れるように後ろへ飛んでいく。

 

 谷底では有り得ない速度に目を瞑ってギュッとハジメにしがみついていたシアも、しばらくして慣れてきたのか、次第に興奮して来たようだ。ハジメがカーブを曲がったり、大きめの岩を避けたりする度にきゃっきゃっと騒いでいる。

 

 ハジメは、道中、魔力駆動二輪の事やツナとユエが魔法を使える理由、ハジメの武器がアーティファクトみたいなものだと簡潔に説明した。すると、シアは目を見開いて驚愕を表にした。

 

「え、それじゃあ、お三人も魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」

「ああ、そうなるな」

「……ん」

 

 しばらく呆然としていたシアだったが、突然、何かを堪える様にハジメの肩に顔を埋めた。そして、何故か泣きべそをかき始めた。

 

「……いきなり何だ? 騒いだり落ち込んだり泣きべそかいたり……情緒不安定なヤツだな」

「喜怒哀楽が激しい。」

「……手遅れ?」

「手遅れって何ですか! 手遅れって! 私は至って正常です! ……ただ、一人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」

「「「……」」」

 

 どうやら魔物と同じ性質や能力を有するという事、この世界で自分があまりに特異な存在である事に孤独を感じていたようだ。家族だと言って十六年もの間危険を背負ってくれた一族、シアのために故郷である樹海までも捨てて共にいてくれる家族、きっと多くの愛情を感じていたはずだ。それでも、いや、だからこそ、〝他とは異なる自分〟に余計孤独を感じていたのかもしれない。

 

 シアの言葉に、ユエは思うところがあるのか考え込むように押し黙ってしまった。いつもの無表情がより色を失っている様に見える。ツナとハジメには何となく、今ユエが感じているものが分かった。おそらく、ユエは自分とシアの境遇を重ねているのではないだろうか。共に、魔力の直接操作や固有魔法という異質な力を持ち、その時代において〝同胞〟というべき存在は居なかった。

 

 だが、ユエとシアでは決定的な違いがある。ユエには愛してくれる家族が居なかったのに対して、シアにはいるということだ。それがユエに、嫉妬とまではいかないまでも複雑な心情を抱かせているのだろう。しかも、シアから見れば、結局、その〝同胞〟とすら出会うことができたのだ。中々に恵まれた境遇とも言える。

 

 そんなユエの頭をハジメはポンポンと撫でた。日本という豊かな国で何の苦労もなく親の愛情をしっかり受けて育ったハジメには、〝同胞〟がいないばかりか、特異な存在として女王という孤高の存在に祭り上げられたユエの孤独を、本当の意味では理解できない。それ故、かけるべき言葉も持ち合わせなかった。出来る事は、〝今は〟一人でないことを示す事だけだ。

 

 すっかり外見は毒素が無いとは言え魔物の肉を食べた事で変わってしまったハジメだが、人としての優しさもしっかりありその証拠に、ハジメはシアとの約束も守る気だ。樹海を案内させたらハウリア族を狙う帝国兵への対策もする気である。

 

 そんなハジメの気持ちが伝わったのか、ユエは、無意識に入っていた体の力を抜いて、より一層ハジメに背を預けた。まるで甘えるように。

 

「あの~、私のこと忘れてませんか? ここは『大変だったね。もう一人じゃないよ。傍にいてあげるから』とか言って慰めるところでは? 私、コロっと堕ちゃいますよ? チョロインですよ? なのに、せっかくのチャンスをスルーして、何でいきなり二人の世界を作っているんですか! 寂しいです! 私も仲間に入れて下さい! 大体、お二人は……」

「「黙れ残念ウサギ」」

「……はい……ぐすっ……」

「♪〜〜♪〜〜♪」

 泣きべそかいていたシアが、いきなり耳元で騒ぎ始めたので、思わず怒鳴り返すハジメとユエ。しかし、泣いている女の子を放置して二人の世界を作っているのも十分ひどい話である。その上、逆ギレされて怒鳴られてと、何とも不憫なシアであった。そんな三人を他所にツナは魔導駆動二輪を運転しながら歌を歌っていたただ、シアの売りはその打たれ強さ。内心では既に「まずは名前を呼ばせますよぉ~せっかく見つけたお仲間です。逃しませんからねぇ~!」と新たな目標に向けて闘志を燃やしていた。

 

 しばらく、シアが騒いでハジメかユエに怒鳴られるという事を繰り返していると、遠くで魔物の咆哮が聞こえた。どうやら相当な数の魔物が騒いでいるようだ。

 

「! ハジメさん! もう直ぐ皆がいる場所です! あの魔物の声……ち、近いです! 父様達がいる場所に近いです!」

「だぁ~、耳元で怒鳴るな! 聞こえてるわ! 飛ばすからしっかり掴まってろ!」

「SPEED UP!飛ばすぜ!」

 

 ツナとハジメは、魔力を更に注ぎ、二輪を一気に加速させた。壁や地面が物凄い勢いで後ろへ流れていく。

 

 そうして走ること二分。ドリフトしながら最後の大岩を迂回した先には、今まさに襲われようとしている数十人の兎人族達がいた。

 



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第24話 ハウリア族と合流

 

 

ライセン大峡谷に悲鳴と怒号が木霊する。

 

 ウサミミを生やした人影が岩陰に逃げ込み必死に体を縮めている。あちこちの岩陰からウサミミだけがちょこんと見えており、数からすると二十人ちょっと。見えない部分も合わせれば四十人といったところか。

 

 そんな怯える兎人族を上空から睥睨しているのは、奈落の底でも滅多に見なかった飛行型の魔物だ。姿は俗に言うワイバーンというやつが一番近いだろう。体長は三~五メートル程で、鋭い爪と牙、モーニングスターのように先端が膨らみ刺がついている長い尻尾を持っている。

 

「ハ、ハイベリア……」

 

 肩越しにシアの震える声が聞こえた。あのワイバーンモドキは〝ハイベリア〟というらしい。ハイベリアは全部で六匹はいる。兎人族の上空を旋回しながら獲物の品定めでもしているようだ。

 

 そのハイベリアの一匹が遂に行動を起こした。大きな岩と岩の間に隠れていた兎人族の下へ急降下すると空中で一回転し遠心力のたっぷり乗った尻尾で岩を殴りつけた。轟音と共に岩が粉砕され、兎人族が悲鳴と共に這い出してくる。

 

 ハイベリアは「待ってました」と言わんばかりに、その顎門を開き無力な獲物を喰らおうとする。狙われたのは二人の兎人族。ハイベリアの一撃で腰が抜けたのか動けない小さな子供に男性の兎人族が覆いかぶさって庇おうとしている。

 

 周りの兎人族がその様子を見て瞳に絶望を浮かべた。誰もが次の瞬間には二人の家族が無残にもハイベリアの餌になるところを想像しただろう。しかし、それは有り得ない。

 

 なぜなら、ここには彼等を守ると契約した、奈落の底より這い出た化物がいるのだから…

 

ドパンッ!! ズガァン!

 

 峡谷に二発の乾いた破裂音が響くと同時に一条の閃光と一条の燈炎の弾丸がが虚空を走る。その内の一発が、今まさに二人の兎人族に喰らいつこうとしていたハイベリアの眉間を狙い違わず貫いた。頭部を爆散させ、蹲る二人の兎人族の脇を勢いよく土埃を巻き上げながら滑り、轟音を立てながら停止する。

 

 同時に、後方で凄まじい咆哮が響いた。呆然とする暇もなく、そちらに視線を転じる兎人族が見たものは、片方の腕が千切れて大量の血を吹き出しながらのたうち回るハイベリアの姿。すぐ近くには腰を抜かしたようにへたり込む兎人族の姿がある。おそらく、先のハイベリアに注目している間に、そちらでもハイベリアの襲撃を受けていたのだろう。二発の弾丸の内、もう一発は、突撃するハイベリアの片腕を撃ち抜いたようだ。バランスを崩したハイベリアが地に落ちて、激痛に暴れているのである。

 

「な、何が……」

 

 先程、子供を庇っていた男の兎人族が呆然としながら、目の前の頭部を砕かれ絶命したハイベリアと、後方でのたうち回っているハイベリアを交互に見ながら呟いた。

 

 すると、更に発砲音が聞こえ、のたうち回っていたハイベリアを幾条もの閃光が貫いていく。胴体をぐちゃぐちゃに粉砕されたハイベリアが、最後に一度甲高い咆哮を上げるとズズンッと地響きを立てながら崩れ落ち動かなくなった。

 

 上空のハイベリア達が仲間の死に激怒したのか一斉に咆哮を上げる。それに身を竦ませる兎人族達の優秀な耳に、今まで一度も聞いたことのない異音が聞こえた。キィィイイイという甲高い蒸気が噴出するような音だ。今度は何事かと音の聞こえる方へ視線を向けた兎人族達の目に飛び込んできたのは、見たこともない黒い乗り物に乗って、高速でこちらに向かてってくる三人の人影。

 

 その内の一人は見覚えがありすぎる。今朝方、突如姿を消し、ついさっきまで一族総出で探していた女の子。一族が陥っている今の状況に、酷く心を痛めて責任を感じていたようで、普段の元気の良さがなりを潜め、思いつめた表情をしていた。何か無茶をするのではと、心配していた矢先の失踪だ。つい、慎重さを忘れて捜索しハイベリアに見つかってしまった。彼女を見つける前に、一族の全滅も覚悟していたのだが……

 

 その彼女が黒い乗り物の後ろで立ち上がり手をブンブンと振っている。その表情に普段の明るさが見て取れた。信じられない思いで彼女を見つめる兎人族。

 

「みんな~、助けを呼んできましたよぉ~!」

 

 その聞きなれた声音に、これは現実だと理解したのか兎人族が一斉に彼女の名を呼んだ。

 

「「「「「「「「「「シア!?」」」」」」」」」」

 

 ツナとハジメは、魔力駆動二輪を高速で走らせながらイラッとした表情をしていた。仲間の無事を確認した直後、シアは喜びのあまり後部座席に立ち上がりブンブンと手を振りだした。それ自体は別にいいのだが、高速で走る二輪から転落しないように、シアは全体重をハジメに預けて体を固定しており、小刻みに飛び跳ねる度に頭上から重量級の凶器巨乳がのっしのっしとハジメ頭部に衝撃を与えているのである。そのせいで照準がずれ、一匹目のハイベリアを一撃で仕留められなかったのでツナがその後討ち漏らしたハイべリアを仕留めた。

 

 ハジメは、未だぴょこぴょこと飛び跳ね地味に妨害してくるシアの服を鷲掴みにする。それに気がついたシアが疑問顔でハジメを見た。ハジメは前方を向いているため表情は見えないが、何となく不穏な空気を察したシアが恐る恐る尋ねた。

 

「あ、あの、ハジメさん? どうしました? なぜ、服を掴むのです?」

「…戦闘を妨害するくらい元気なら働かせてやろうと思ってな」

「戦闘時は邪魔してはならないからな罰として働け。」

「は、働くって……な、何をするのです?」

「なに、ちょっと飢えた魔物の前にカッ飛ぶだけの簡単なお仕事だ」

「!? ちょ、何言って、あっ、持ち上げないでぇ~、振りかぶらないでぇ~」

「逝ってらっしゃい。」

「ちょらちょっと字が違うじゃ無いですか!」

 

 焦りの表情を表にしてジタバタもがくシアだが、筋力一万超のハジメに敵うはずもなくあっさり持ち上げられる。

 

 ハジメは片手でハンドルを操作すると二輪をドリフトさせ、その遠心力も利用して問答無用に、上空を旋回するハイベリア達へ向けてシアをぶん投げた。

 

「逝ってこい! 残念ウサギ!」

「いやぁあああーー!!」

「おぉ!飛んだ、飛んだ!」

 物凄い勢いで空を飛ぶウサミミ少女。シアの悲鳴が峡谷に木霊する。有り得ない光景に兎人族達が「シア~!」と叫び声を上げながら目を剥き、ハイベリアも自分達に向かって泣きながらぶっ飛んでくる獲物に度肝を抜かれているのか、シアが眼前を通り過ぎても硬直したまま上空を見上げているだけだった。

 

 そして、その隙を逃すツナとハジメではない。滞空するハイベリア等いい的である。銃声が四発鳴り響き、放たれた弾丸が寸分のズレもなくハイベリア達の顎を砕き貫通して、そのまま頭部を粉砕した。

 

 断末魔の悲鳴を上げる暇すらなく、力を失って地に落ちていくハイベリア。シアを襲っていた双頭のティラノモドキ〝ダイヘドア〟と同等以上に、この谷底では危険で厄介な魔物として知られている彼等が、何の抵抗もできずに瞬殺された。有り得べからざる光景に、硬直する兎人族達。

 

 そんな彼等の耳に上空から聞きなれた少女の悲鳴が降ってくる。

 

「あぁあああ~、たずけでぇ~、ハジメさぁ~ん!ツナヨシさぁ〜ん!」

 

 慌ててシアの落下地点に駆けつけようとする兎人族達を追い抜いたハジメが、ちょうど落下してきたシアを見事にキャッチして、二輪をドリフトさせながら停止した。そして、抱えたシアをペイッと捨てる。

 

「あふんっ! うぅ~、私の扱いがあんまりですぅ。待遇の改善を要求しますぅ~。私もユエさんみたいに大事にされたいですよぉ~」

「それは当分ないな。」

「そんなぁ〜」

 

 しくしくと泣きながら抗議の声を上げるシア。シアは、ツナとハジメに対して恋愛感情を持っているわけではない。ただ、絶望の淵にあって〝見えた〟希望であるツナとハジメをシアは不思議と信頼していた。全くもって容赦のない性格をしているが、交わした約束を違えることはないだろうと。しかも、ハジメはシアと同じ体質である。〝同じ〟というのは、それだけで親しみを覚えるものだ。そして、そのハジメは、やはり〝同じ〟であるユエを大事にしている。この短時間でも明確にわかるくらいに。正直、シアは二人の関係が羨ましかった。それ故に、〝自分も〟と願ってしまうのだ。

 

 投擲とキャッチの衝撃で更にボロボロになった衣服を申し訳程度に纏い、足を崩してシクシク泣くシアの姿は実に哀れを誘った。流石に、やり過ぎた……とは思わず鬱陶しそうなハジメは宝物庫から予備のコートを取り出し、シアの頭からかけてやった。これ以上、傍でめそめそされたくなかったのだ。反省の色が全くない。

 

 しかし、それでもシアは嬉しかったようである。突然に頭からかけられたものにキョトンとするものの、それがコートだとわかるとにへらっと笑い、いそいそとコートを着込む。ユエとお揃いの白を基調とした青みがかったコートだ。ユエがハジメとのペアルックを画策した時の逸品である。

 

「も、もう! ハジメさんったら素直じゃないですねぇ~、ユエさんとお揃いだなんて……お、俺の女アピールですかぁ? ダメですよぉ~、私、そんな軽い女じゃないですから、もっと、こう段階を踏んでぇ~」

 

 モジモジしながらコートの端を掴みイヤンイヤンしているシア。それに再びイラッと来たハジメは無言でドンナーを抜き、シアの額目掛けて発砲した。

 

「はきゅん!」

 

 弾丸は炸薬量を減らし先端をゴム状の柔らかい魔物の革でコーティングしてある非致死性弾だ。ただ、それなりの威力はあるので、衝撃で仰け反り仰向けに倒れると、地面をゴロゴロとのたうち回るシア。「頭がぁ~頭がぁ~」と悲鳴を上げている。だが、流石の耐久力で直ぐに起き上がると猛然と抗議を始めた。きゃんきゃん吠えるシアを適当にあしらっていると兎人族がわらわらと集まってきた。

 

「ハジメ容赦無いな。」

「いい感じにイラッ って来たからな。」

 

「シア! 無事だったのか!」

「父様!」

 

 真っ先に声をかけてきたのは、濃紺の短髪にウサミミを生やした初老の男性だった。はっきりいってウサミミのおっさんとか誰得である。シュールな光景に微妙な気分になっていると、その間に、シアと父様と呼ばれた兎人族は話が終わったようで、互の無事を喜んだ後、ハジメの方へ向き直った。

 

「ツナヨシ殿とハジメ殿で宜しいか? 私は、カム。シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか。しかも、脱出まで助力くださるとか……父として、族長として深く感謝致します」

 

 そう言って、カムと名乗ったハウリア族の族長は深々と頭を下げた。後ろには同じように頭を下げるハウリア族一同がいる。

 

「まぁ、礼は受け取っておく。だが、樹海の案内と引き換えなんだ。それは忘れるなよ? それより、随分あっさり信用するんだな。亜人は人間族にはいい感情を持っていないだろうに……」

「そうだな、樹海を案内して貰えるなら命の保証は確約する。」

 

 シアの存在で忘れそうになるが、亜人族は被差別種族である。実際、峡谷に追い詰められたのも人間族のせいだ。にもかかわらず、同じ人間族であるハジメに頭を下げ、しかもツナとハジメの助力を受け入れるという。それしか方法がないとは言え、あまりにあっさりしているというか、嫌悪感のようなものが全く見えないことに疑問を抱くツナとハジメ。

 

 カムは、それに苦笑いで返した。

 

「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから……」

 

 その言葉にツナとハジメは感心半分呆れ半分だった。一人の女の子のために一族ごと故郷を出て行くくらいだから情の深い一族だとは思っていたが、初対面の人間族相手にあっさり信頼を向けるとは警戒心が薄すぎる。というか人がいいにも程があるというものだろう。

 

「えへへ、大丈夫ですよ、父様。ツナヨシさんハジメさんは、女の子に対して容赦ないし、対価がないと動かないし、人を平気で囮にするような酷い人ですけど、約束を利用したり、希望を踏み躙る様な外道じゃないです! ちゃんと私達を守ってくれますよ!」

「はっはっは、そうかそうか。つまり照れ屋な人なんだな。それなら安心だ」

 

 シアとカムの言葉に周りの兎人族達も「なるほど、照れ屋なのか」と生暖かい眼差しでハジメを見ながら、うんうんと頷いている。

 

 ハジメは額に青筋を浮かべドンナーを抜きかけるが、意外なところから追撃がかかる。

 

「……ん、ハジメは(ベッドの上では)照れ屋」

「ユエ!?」

「ユエ、今はその話をするな。場の空気を読め。」

「ごめんなさい」

 

ツナはユエにちゅう

 

 

 まさかの口撃に口元を引きつらせるハジメだったが、何時までもグズグズしていては魔物が集まってきて面倒になるので、堪えて出発を促した。

 

 一行は、ライセン大峡谷の出口目指して歩を進めた。



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第25話 帝国兵

 

 ウサミミ四十二人をぞろぞろ引き連れて峡谷を行く。

 

 当然、数多の魔物が絶好の獲物だとこぞって襲ってくるのだが、ただの一匹もそれが成功したものはいなかった。例外なく、兎人族に触れることすら叶わず、接近した時点で燈炎の弾丸が飛び頭部を粉砕されるからである。

 

 乾いた破裂音と共に燈炎と閃光が走り、気がつけばライセン大峡谷の凶悪な魔物が為すすべなく絶命していく光景に、兎人族達は唖然として、次いで、それを成し遂げている人物であるツナとハジメに対して畏敬の念を向けていた。

 

 もっとも、小さな子供達は総じて、そのつぶらな瞳をキラキラさせて圧倒的な力を振るうツナとハジメをヒーローだとでも言うように見つめている。

 

「ふふふ、ツナヨシさん、ハジメさん。チビッコ達が見つめていますよ~手でも振ってあげたらどうですか?」

 

 子供に純粋な眼差しを向けられて若干居心地が悪そうなハジメに、シアが実にウザイ表情で「うりうり~」とちょっかいを掛ける。

 

 額に青筋を浮かべたハジメは、取り敢えず無言で発砲した。

 

ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!

 

「あわわわわわわわっ!?」

 

 ゴム弾が足元を連続して通過し、奇怪なタップダンスのようにワタワタと回避するシア。道中何度も見られた光景に、シアの父カムは苦笑いを、ユエは呆れを乗せた眼差しを向ける。

 

「はっはっは、シアは随分とハジメ殿を気に入ったのだな。そんなに懐いて……シアももうそんな年頃か。父様は少し寂しいよ。だが、ハジメ殿なら安心か……」

 

 すぐ傍で娘が未だに銃撃されているのに、気にした様子もなく目尻に涙を貯めて娘の門出を祝う父親のような表情をしているカム。周りの兎人族達も「たすけてぇ~」と悲鳴を上げるシアに生暖かい眼差しを向けている。

 

「いや、お前等。この状況見て出てくる感想がそれか?」

「……ズレてる」

「流石残念駄ウサギの親か。」

 

 ユエの言う通り、どうやら兎人族は少し常識的にズレているというか、天然が入っている種族らしい。それが兎人族全体なのかハウリアの一族だけなのかは分からないが。

 

 そうこうしている内に、一行は遂にライセン大峡谷から脱出できる場所にたどり着いた。ハジメが〝遠見〟で見る限り、中々に立派な階段がある。岸壁に沿って壁を削って作ったのであろう階段は、五十メートルほど進む度に反対側に折り返すタイプのようだ。階段のある岸壁の先には樹海も薄らと見える。ライセン大峡谷の出口から、徒歩で半日くらいの場所が樹海になっているようだ。

 

 ハジメが何となしに遠くを見ていると、シアが不安そうに話しかけてきた。

 

「帝国兵はまだいるでしょか?」

「ん? どうだろうな。もう全滅したと諦めて帰ってる可能性も高いが……」

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら……ハジメさん……どうするのですか?」

「? どうするって何が?」

 

 質問の意図がわからず首を傾げるハジメに、意を決したようにシアが尋ねる。周囲の兎人族も聞きウサミミを立てているようだ。

 

「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵……人間族です。ハジメさんと同じ。……敵対できますか?」

「残念ウサギ、お前、未来が見えていたんじゃないのか?」

「はい、見ました。帝国兵と相対するハジメさんを……」

「だったら……何が疑問なんだ?」

「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと……」

 

 シアの言葉に周りの兎人族達も神妙な顔付きでハジメを見ている。小さな子供達はよく分からないとった顔をしながらも不穏な空気を察してか大人達とハジメを交互に忙しなく見ている。

 

 しかし、ハジメは、そんなシリアスな雰囲気などまるで気にした様子もなくあっさり言ってのけた。

 

「それはお前が気にする事ではない。」

「それがどうかしたのか?」

「えっ?」

 

 疑問顔を浮かべるシアにハジメは特に気負った様子もなく世間話でもするように話を続けた。

 

「だから、人間族と敵対することが何か問題なのかって言ってるんだ」

「そ、それは、だって同族じゃないですか……」

「お前らだって、同族に追い出されてるじゃねぇか」

「それは、まぁ、そうなんですが……」

「大体、根本が間違っている」

「根本?」

 

 さらに首を捻るシア。周りの兎人族も疑問顔だ。

 

「いいか? 俺は、お前等が樹海探索に便利だから雇った。んで、それまで死なれちゃ困るから守っているだけ。断じて、お前等に同情してとか、義侠心に駆られて助けているわけじゃない。まして、今後ずっと守ってやるつもりなんて毛頭ない。忘れたわけじゃないだろう?」

「うっ、はい……覚えてます……」

「だから、樹海案内の仕事が終わるまでは守る。自分のためにな。それを邪魔するヤツは魔物だろうが人間族だろうが関係ない。道を阻むものは敵、敵は、魔物は殺す人間の場合は半殺し最大で八割殺し。それだけのことだ」

「な、なるほど……」

 

 何ともハジメらしい考えに、苦笑いしながら納得するシア。〝未来視〟で帝国と相対するツナとハジメを見たといっても、未来というものは絶対ではないから実際はどうなるか分からない。見えた未来の確度は高いが、万一、帝国側につかれては今度こそ死より辛い奴隷生活が待っている。表には出さないが〝自分のせいで〟という負い目があるシアは、どうしても確認せずにはいられなかったのだ。

 

「はっはっは、分かりやすくていいですな。樹海の案内はお任せくだされ」

 

 カムが快活に笑う。下手に正義感を持ち出されるよりもギブ&テイクな関係の方が信用に値したのだろう。その表情に含むところは全くなかった。

 

 一行は、階段に差し掛かった。ハジメを先頭に順調に登っていく。帝国兵からの逃亡を含めて、ほとんど飲まず食わずだったはずの兎人族だが、その足取りは軽かった。亜人族が魔力を持たない代わりに身体能力が高いというのは嘘ではないようだ。

 

 そして、遂に階段を上りきり、ハジメ達はライセン大峡谷からの脱出を果たす。

 

 登りきった崖の上、そこには……

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

 三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、ハジメ達を見るなり驚いた表情を見せた。

 

 だが、それも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。

 

「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」

「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ? こちとら、何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」

「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

「ひゃっほ~、流石、小隊長! 話がわかる!」

 

 帝国兵は、兎人族達を完全に獲物としてしか見ていないのか戦闘態勢をとる事もなく、下卑た笑みを浮かべ舐めるような視線を兎人族の女性達に向けている。兎人族は、その視線にただ怯えて震えるばかりだ。

 

 帝国兵達が好き勝手に騒いでいると、兎人族にニヤついた笑みを浮かべていた小隊長と呼ばれた男が、ようやくハジメの存在に気がついた。

 

「あぁ? お前誰だ? 兎人族……じゃあねぇよな?」

 

 ハジメは、帝国兵の態度から素通りは無理だろうなと思いながら、一応会話に応じる。

 

「ああ、人間だ」

「はぁ~? なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か? 情報掴んで追っかけたとか? そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

 

 勝手に推測し、勝手に結論づけた小隊長は、さも自分の言う事を聞いて当たり前、断られることなど有り得ないと信じきった様子で、そうハジメに命令した。

 

 当然、ハジメが従うはずもない。

 

「断る」

「同じく断る」

「……今、何て言った?」

「断ると言ったんだ。こいつらは今は俺のもの。あんたらには一人として渡すつもりはない。諦めてさっさと国に帰ることをオススメする」

 

 聞き間違いかと問い返し、返って来たのは不遜な物言い。小隊長の額に青筋が浮かぶ。

 

「……小僧、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」

「十全に理解している。あんたらに頭が悪いとは誰も言われたくないだろうな」

「相手の実力も計れないのか修行し直して来い三下」

 

 ツナとハジメの言葉にスっと表情を消す小隊長。周囲の兵士達も剣呑な雰囲気でハジメを睨んでいる。その時、小隊長が、剣呑な雰囲気に背中を押されたのか、ハジメの後ろから出てきたユエに気がついた。幼い容姿でありながら纏う雰囲気に艶があり、そのギャップからか、えもいわれぬ魅力を放っている美貌の少女に一瞬呆けるものの、ハジメの服の裾をギュッと握っていることからよほど近しい存在なのだろうと当たりをつけ、再び下碑た笑みを浮かべた。

 

「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇが唯の世間知らず糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃんえらい別嬪じゃねぇか。てめぇの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやるよ」

 

 その言葉にハジメは眉をピクリと動かし、ユエは無表情でありながら誰でも分かるほど嫌悪感を丸出しにしている。目の前の男が存在すること自体が許せないと言わんばかり、ユエが右手を掲げようとした。

 

 だが、それを制止したのはハジメでは無くツナだった。。訝しそうなユエを尻目にツナが最後の言葉をかける。

 

「つまり敵対するってことでいいんだな?」

「あぁ!? まだ状況が理解できてねぇのか! てめぇは、震えながら許しをこッ!?」

 

ズガァン!!

 

 想像した通りにツナが怯えないことに苛立ちを表にして怒鳴る小隊長だったが、その言葉が最後まで言い切られることはなかった。なぜなら、一発の破裂音と共に、放たれた魔力の弾丸は四つに分裂し両腕両足を貫いたからだ。両腕両足を撃たれた小隊長は倒れる。

 

「ぐぁああぁあああぁああ!?」

 

 何が起きたのかも分からず、呆然と両腕両足を撃たれ倒れた小隊長を見る兵士達に追い打ちが掛けられた。

 

ズガァァン!ズガァァン!ズガァァン!ズガァァン!

 

 一発しか聞こえなかった銃声は、同時に、六人の帝国兵の両腕両足を貫いた。。実際には24発撃ったのだが、ツナの射撃速度が早すぎて射撃音が四発分しか聞こえなかったのだ。

 

 突然、小隊長を含め仲間の両腕両足を貫くという異常事態に兵士達が半ばパニックになりながらも、武器をツナ達に向ける。過程はわからなくても原因はわかっているが故の、中々に迅速な行動だ。人格面は褒められたものではないが、流石は帝国兵。実力は本物らしい。

 

だが相手が悪かった帝国兵は敵対する事無く撤退していればいいのにツナを怒られせてしまった事で怒りのトリガーを引いてしまった。

 

「このゲス屑野朗どもが決して許しはしない、もう二度とそのような愚行を行えない様にお前らを精神を恐怖に沈めてやろう」

 

ツナは体内の龍力と魔力掛け合わせて赤龍帝ドライグを具現化する

 

 兵士がガクガクと体を震わせて怯えをたっぷり含んだ瞳をツナに向けた。ツナはは二挺拳銃のXガンナーで肩をトントンと叩きながら、ゆっくりと兵士に歩み寄る。黒いコートを靡かせて死を振り撒き歩み寄るその姿は、さながら死神だ。少なくとも生き残りの兵士には、そうとしか見えなかった。

 

「ひぃ、く、来るなぁ! い、嫌だ。し、死にたくない。だ、誰か! 助けてくれ!」

 

 命乞いをしながら這いずるように後退る兵士。その顔は恐怖に歪み、股間からは液体が漏れてしまっている。ツナは、冷めた目でそれを見下ろし、おもむろに銃口を兵士の背後に向け撃つ。

 

「ひぃ!」

 

 兵士が身を竦めるが、その体に衝撃はない。ツナが撃ったのは重傷を負っていた背後の兵士達だからだ。それに気が付いたのか、生き残りの兵士が恐る恐る背後を振り返ると両腕両足を撃たれた小隊長を含めた全員が最低限歩けるくらいまで回復していた。。

 

 振り返ったまま硬直している兵士の頭にガチャと銃口が押し当てられる。再び、ビクッと体を震わせた兵士は、醜く歪んだ顔で再び命乞いを始めた。

 

「た、頼む! 殺さないでくれ! な、何でもするから! 頼む!」

「そうか? なら、他の兎人族がどうなったか教えてもらおうか。結構な数が居たはずなんだが……全部、帝国に移送済みか?」

 

 ツナが質問したのは、百人以上居たはずの兎人族の移送にはそれなりに時間がかかるだろうから、まだ近くにいて道中でかち合うようなら序でに助けてもいいと思ったからだ。帝国まで移送済みなら、わざわざ助けに行くつもりは毛頭なかったが。

 

「……は、話せば殺さないか?」

「お前、自分が条件を付けられる立場にあると思ってんのか? 別に、どうしても欲しい情報じゃあないんだ。今すぐ逝くか?」

「ま、待ってくれ! 話す! 話すから! ……多分、全部移送済みだと思う。人数は絞ったから……」

 

 〝人数を絞った〟それは、つまり老人など売れそうにない兎人族は殺したということだろう。兵士の言葉に、悲痛な表情を浮かべる兎人族達。ハジメは、その様子をチラッとだけ見やる。直ぐに視線を兵士に戻すともう用はないと瞳に殺意を宿した。

 

「待て! 待ってくれ! 他にも何でも話すから! 帝国のでも何でも! だから!」

 

 ツナの怒気に気がついた兵士が再び必死に命乞いする。しかし、その返答は……

 

「だったらさっさとここから去れ、さもなくば次は魂すら焼き尽くしてやろうか?」

 

 「ひぃっ」

 

帝国兵は足を引きずりながらその場を去って行った。

 

ツナは魔力と龍力を掛け合わせて具現化させたドライグを霧散させ怒気を解く。

 

 息を呑む兎人族達。ツナの行動に完全に引いているようである。その瞳には若干の恐怖が宿っていた。それはシアも同じだったのか、おずおずとハジメに尋ねた。

 

「あ、あのツナヨシさんは何故相手全員を最低限の回復と見逃しをしたのでしょう?……」

 

 はぁ? という呆れを多分に含んだ視線を向けるハジメに「うっ」と唸るシア。自分達の同胞を殺し、奴隷にしようとした相手にも慈悲を持つようで、兎人族とはとことん温厚というか平和主義らしい。ハジメが言葉を発しようとしたが、その機先を制するようにユエが反論した。

 

「……ツナは優しいし強い、例え俺とユエが組んでも勝てないくらいにはな、だがな、ツナは戦う者にとって無くてはならないものを壊した。それ故に最低限ここから去る事が出来るくらいには回復させここから立ち去らせた。。」

「戦う者にとって無くてはならないものですか?……」

「……それは、相手の戦う精神、相手の戦う為の心を壊したんだ。だから彼奴らは二度と戦う事は出来ない。」

「……そ、そんな、そんな事までしなくても、ここらから立ち去らせばいいだけでは。」

「……そもそも、守られているだけのあなた達がそんな目を義兄様に向けるのはお門違い」

「……」

 

 

 

 ユエは静かに怒っているようだ。守られておきながら、ツナに向ける視線に負の感情を宿すなど許さないと言わんばかりである。当然といえば当然なので、兎人族達もバツ悪そうな表情をしている。

 

「ふむ、ツナヨシ殿、申し訳ない。別に、貴方に含むところがあるわけではないのだ。ただ、こういう争いに我らは慣れておらんのでな……少々、驚いただけなのだ」

「ツナヨシさん、すみません」

 

 シアとカムが代表して謝罪するが、ツナは気にしてないという様に手をヒラヒラと振るだけだった。

 

 ツナは、無傷の馬車や馬のところへ行き、兎人族達を手招きする。樹海まで徒歩で半日くらいかかりそうなので、せっかくの馬と馬車を有効活用しようというわけだ。そしてツナとハジメは魔力駆動二輪を〝宝物庫〟から取り出しハジメの魔導駆動二輪に馬車を連結させる。馬に乗る者と分けて一行は樹海へと進路をとった。

 

 そこに残ったのはツナに両腕両足を撃たれ出血した帝国兵の血だけであった。



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第26話 シアの心情とハルツィナ樹海

七大迷宮の一つにして、深部に亜人族の国フェアベルゲンを抱える【ハルツィナ樹海】を前方に見据えて、ツナの乗った魔力駆動二輪とハジメが魔力駆動二輪で牽引する大型馬車二台と数十頭の馬が、それなりに早いペースで平原を進んでいた。

 

 ツナは一人で二輪に乗り、ハジメの二輪には、ハジメ以外にも前にユエが、後ろにシアが乗っている。当初、シアには馬車に乗るように言ったのだが、断固として二輪に乗る旨を主張し言う事を聞かなかった。ユエが何度叩き落としても、ゾンビのように起き上がりヒシッとしがみつくので、遂にユエの方が根負けしたという事情があったりする。

 

 シアとしては、初めて出会った〝同類〟である二人と、もっと色々話がしたいようだった。ハジメにしがみつき上機嫌な様子のシア。果たして、シアが気に入ったのは二輪の座席かハジメの後ろか……場合によっては手足をふん縛って引きずってやる! とユエは内心決意していた。

 

 若干不機嫌そうなユエと上機嫌なシアに挟まれたハジメは、二輪を走らせつつ遠くを見ながらボーとしていた。

 

 そんなハジメにユエが声をかける。

 

「どうして義兄様一人で戦わせたの?」

 

「ん?」

 

 ユエが言っているのは帝国兵との戦いのことだ。あの時、魔法を使おうとしたユエを制止して、ツナは一人で戦うことを選んだ。ユエが参加しようがすまいが結果は〝瞬殺〟以外には有り得なかっただろう、ユエとしては気になったのだ。

 

「ん~、まぁ、ちょっと確かめたいことがあってな……」

 

「……確かめたいこと?」

 

 ユエが疑問顔で聞き返す。シアも肩越しに興味深そうな眼差しを向けている。

 

「ああ、それはな……何となくだ」

 

ガクッ

 

聴いていた全員がガクッとなった。

 

「まぁ、しいて言うなら……」

 

 もう一つの理由は、ツナが自分に殺人をさせないようにする為だ。すっかり変わってしまったハジメだが、ツナは異世界とは言え人殺しさせたくない為、ハジメに人殺しを決してしないと約束させた。それ故ツナが戦ったのだった。

 

「とまぁ、……」

 

「……そう……義兄様は優しい。」

 

「あぁ、ツナは元の世界に帰った後の事も考えているからな。」

 

 

「あの、あの! 綱吉さんとハジメさんとユエさんのこと、教えてくれませんか?」

「? 俺達のことは話したろ?」

 

「いえ、能力とかそいうことではなくて、なぜ、奈落? という場所にいたのかとか、旅の目的って何なのかとか、今まで何をしていたのかとか、お三方自身のことが知りたいです。」

 

「……聞いてどうするつもりだ?」

 

「どうするというわけではなく、ただ知りたいだけです。……私、この体質のせいで家族には沢山迷惑をかけました。小さい時はそれがすごく嫌で……もちろん、皆はそんな事ないって言ってくれましたし、今は、自分を嫌ってはいませんが……それでも、やっぱり、この世界のはみだし者のような気がして……だから、私、嬉しかったのです。お二人に出会って、私みたいな存在は他にもいるのだと知って、一人じゃない、はみだし者なんかじゃないって思えて……勝手ながら、そ、その、な、仲間みたいに思えて……だから、その、もっとお三方のことを知りたいといいますか……何といいますか……」

 

 シアは話の途中で恥ずかしくなってきたのか、次第に小声になってハジメの背に隠れるように身を縮こまらせた。出会った当初も、そう言えば随分嬉しそうにしていたと、ツナとハジメとユエは思い出し、シアの様子に何とも言えない表情をする。あの時は、ユエの複雑な心情により有耶無耶になった挙句、すぐハウリア達を襲う魔物と戦闘になったので、谷底でも魔法が使える理由など簡単なことしか話していなかった。きっと、シアは、ずっと気になっていたのだろう。

 

 確かに、この世界で、魔物と同じ体質を持った人など受け入れがたい存在だろう。仲間意識を感じてしまうのも無理はない。かと言って、ハジメやユエの側が、シアに対して直ちに仲間意識を持つわけではない。が……樹海に到着するまで、まだ少し時間がかかる。特段隠すことでもないので、暇つぶしにいいだろうと、ハジメとユエはこれまでの経緯を語り始めた。

 

 結果……

 

「うぇ、ぐすっ……ひどい、ひどすぎまずぅ~、綱吉さんもハジメさんもユエさんもがわいぞうですぅ~。そ、それ比べたら、私はなんでめぐまれて……うぅ~、自分がなざけないですぅ~」

 

 号泣した。滂沱の涙を流しながら「私は、甘ちゃんですぅ」とか「もう、弱音は吐かないですぅ」と呟いている。そして、さり気なく、ハジメの外套で顔を拭いている。どうやら、自分は大変な境遇だと思っていたら、ハジメとユエが自分以上に大変な思いをしていたことを知り、不幸顔していた自分が情けなくなったらしい。

 

 しばらくメソメソしていたシアだが、突如、決然とした表情でガバッと顔を上げると拳を握り元気よく宣言した。

 

「ハジメさん! ユエさん! 綱吉さん!私、決めました! お三方の旅に着いていきます! これからは、このシア・ハウリアが陰に日向にお三方を助けて差し上げます! 遠慮なんて必要ありませんよ。私達はたった三人の仲間。共に苦難を乗り越え、望みを果たしましょう!」

 

 勝手に盛り上がっているシアに、ハジメとユエが実に冷めた視線を送る。

 

「現在進行形で守られている脆弱ウサギが何言ってんだ? 完全に足でまといだろうが」

 

「却下だ残念駄ウサギ!助けて差し上げるって上から目線腹立つな、現状足手纏いだしな。」

 

「……さり気なく『仲間みたい』から『仲間』に格上げしている……厚皮ウサギ」

 

「な、何て冷たい目で見るんですか……心にヒビが入りそう……というかいい加減、ちゃんと名前を呼んで下さいよぉ」

 

 意気込みに反して、冷めた反応を返され若干動揺するシア。そんな彼女に追い討ちがかかる。

 

「……お前、単純に旅の仲間が欲しいだけだろう?」

 

「!?」

 

 ハジメの言葉に、シアの体がビクッと跳ねる。

 

「一族の安全が一先ず確保できたら、お前、アイツ等から離れる気なんだろ? そこにうまい具合に〝同類〟の俺らが現れたから、これ幸いに一緒に行くってか? そんな珍しい髪色の兎人族なんて、一人旅出来るとは思えないしな」

 

「……あの、それは、それだけでは……私は本当にお三方を……」

 

 図星だったのか、しどろもどろになるシア。実は、シアは既に決意していた。何としてでもツナとハジメの協力を得て一族の安全を確保したら、自らは家族の元を離れると。自分がいる限り、一族は常に危険にさらされる。今回も多くの家族を失った。次は、本当に全滅するかもしれない。それだけは、シアには耐えられそうになかった。もちろん、その考えが一族の意に反する、ある意味裏切りとも言える行為だとは分かっている。だが〝それでも〟と決めたのだ。

 

 最悪、一人でも旅に出るつもりだったが、それでは心配性の家族は追ってくる可能性が高い。しかし、圧倒的強者であるハジメ達に恩返しも含めて着いて行くと言えば、割りかし容易に一族を説得できて離れられると考えたのだ。見た目の言動に反してシアは、今この瞬間も〝必死〟なのである。

 

 もちろん、シア自身が綱吉とハジメとユエに強い興味を惹かれているというのも事実だ。ハジメの言う通り〝同類〟であるハジメ達に、シアは理屈を超えた強い仲間意識を感じていた。一族のことも考えると、まさに、シアにとってハジメ達との出会いは〝運命的〟だったのだ。

 

「別に、責めているわけじゃない。だがな、変な期待はするな。俺達の目的は七大迷宮の攻略なんだ。おそらく、奈落と同じで本当の迷宮の奥は化物揃いだ。お前じゃ瞬殺されて終わりだよ。だから、同行を許すつもりは毛頭ない」

 

「それに目的が終われば元の世界に帰りる、そしてこの世界と俺とハジメの生まれた世界を半永久的に結界によって隔てて行き来出来ないようにする。そうするとお前は二度と家族に会えなくなる。それでも構わないというなら勝手にしろ。ただしハジメとユエを納得させる事が出来たならの話だけどね。」

 

「……」

 

 ハジメの全く容赦ない言葉にシアは落ち込んだように黙り込んでしまった。ハジメもツナも特に気にした様子がないあたりが、更に追い討ちをかける。

 

 シアは、それからの道中、大人しく二輪の座席に座りながら、何かを考え込むように難しい表情をしていた。

 

 それから数時間して、遂に一行は【ハルツィナ樹海】と平原の境界に到着した。樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えないのだが、一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい。

 

「それでは、綱吉殿、ハジメ殿、ユエ殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。お三方を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」

 

「ああ、聞いた限りじゃあ、そこが本当の迷宮と関係してそうだからな」

 

 カムが、ツナとハジメに対して樹海での注意と行き先の確認をする。カムが言った〝大樹〟とは、【ハルツィナ樹海】の最深部にある巨大な一本樹木で、亜人達には〝大樹ウーア・アルト〟と呼ばれており、神聖な場所として滅多に近づくものはいないらしい。峡谷脱出時にカムから聞いた話だ。

 

 当初、ハジメは【ハルツィナ樹海】そのものが大迷宮かと思っていたのだが、よく考えれば、それなら奈落の底の魔物と同レベルの魔物が彷徨いている魔境ということになり、とても亜人達が住める場所ではなくなってしまう。なので、【オルクス大迷宮】のように真の迷宮の入口が何処かにあるのだろうと推測した。そして、カムから聞いた〝大樹〟が怪しいと踏んだのである。

 

 カムは、ハジメの言葉に頷くと、周囲の兎人族に合図をしてハジメ達の周りを固めた。

 

「綱吉殿、ハジメ殿、できる限り気配は消してもらえますかな。大樹は、神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや、他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です」

 

「ああ、承知している。俺もユエも、ある程度、隠密行動はできるから大丈夫だ」

 

「わかった。」

 

ツナとハジメは、そう言うと〝気配遮断〟を使う。ユエも、奈落で培った方法で気配を薄くした。

 

「ッ!? これは、また……綱吉殿、ハジメ殿、できればユエ殿くらいにしてもらえますかな?」

 

「ん? ……こんなもんか?」

 

「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いや、全く、流石ですな!」

 

 元々、兎人族は全体的にスペックが低い分、聴覚による索敵や気配を断つ隠密行動に秀でている。地上にいながら、奈落で鍛えたユエと同レベルと言えば、その優秀さが分かるだろうか。達人級といえる。しかし、ツナとハジメの〝気配遮断〟は更にその上を行く。普通の場所なら、一度認識すればそうそう見失うことはないが、樹海の中では、兎人族の索敵能力を以てしても見失いかねないハイレベルなものだった。

 

 カムは、人間族でありながら自分達の唯一の強みを凌駕され、もはや苦笑いだ。隣では、何故かユエが自慢げに胸を張っている。シアは、どこか複雑そうだった。ハジメの言う実力差を改めて示されたせいだろう。

 

「それでは、行きましょうか」

 

 カムの号令と共に準備を整えた一行は、カムとシアを先頭に樹海へと踏み込んだ。

 

 しばらく、道ならぬ道を突き進む。直ぐに濃い霧が発生し視界を塞いでくる。しかし、カムの足取りに迷いは全くなかった。現在位置も方角も完全に把握しているようだ。理由は分かっていないが、亜人族は、亜人族であるというだけで、樹海の中でも正確に現在地も方角も把握できるらしい。

 

 順調に進んでいると、突然カム達が立止り、周囲を警戒し始めた。魔物の気配だ。当然、ツナとハジメとユエも感知している。どうやら複数匹の魔物に囲まれているようだ。樹海に入るに当たって、ハジメが貸し与えたナイフ類を構える兎人族達。彼等は本来なら、その優秀な隠密能力で逃走を図るのだそうだが、今回はそういうわけには行かない。皆、一様に緊張の表情を浮かべている。

 

 と、突然ハジメが左手を素早く水平に振った。微かに、パシュという射出音が連続で響く。

 

 直後、

 

ドサッ、ドサッ、ドサッ

「「「キィイイイ!?」」」

 

 三つの何かが倒れる音と、悲鳴が聞こえた。そして、慌てたように霧をかき分けて、腕を四本生やした体長六十センチ程の猿が三匹踊りかかってきた。

 

 内、一匹に向けてユエが手をかざし、一言囁くように呟く。

 

「〝風刃〟」

 

 魔法名と共に風の刃が高速で飛び出し、空中にある猿を何の抵抗も許さずに上下に分断する。その猿は悲鳴も上げられずにドシャと音を立てて地に落ちた。

 

 残り二匹は二手に分かれた。一匹は近くの子供に、もう一匹はシアに向かって鋭い爪の生えた四本の腕を振るおうとする。シアも子供も、突然のことに思わず硬直し身動きが取れない。咄嗟に、近くの大人が庇おうとするが……無用の心配だった。

 

 再度、ハジメが左腕を振ると、パシュ! という音と共にシアと子供へと迫っていた猿の頭部に十センチ程の針が無数に突き刺さって絶命させたからだ。

 

 ハジメが使ったのは、左腕の義手に内蔵されたニードルガンである。かつて戦ったサソリモドキからヒントを得て、散弾式のニードルガンを内蔵した。射出には、〝纏雷〟を使っておりドンナー・シュラークには全く及ばないものの、それなりの威力がある。射程が10m程しかないが、静音性には優れており、毒系の針もあるので中々に便利である。暗器の一種とも言えるだろう。樹海中では、発砲音で目立ちたくなかったのでドンナー・シュラークは使わなかった。

 

「あ、ありがとうございます、ハジメさん」

「お兄ちゃん、ありがと!」

 

 シアと子供(男の子)が窮地を救われ礼を言う。ハジメは気にするなと手をひらひらと振った。男の子のハジメを見る目はキラキラだ。シアは、突然の危機に硬直するしかなかった自分にガックリと肩を落とした。

 

 その様子に、カムは苦笑いする。ハジメから促されて、先導を再開した。

 

 その後も、ちょくちょく魔物に襲われたが、ハジメとユエが静かに片付けていく。樹海の魔物は、一般的には相当厄介なものとして認識されているのだが、何の問題もなかった。

 

 しかし、樹海に入って数時間が過ぎた頃、今までにない無数の気配に囲まれ、ハジメ達は歩みを止める。数も殺気も、連携の練度も、今までの魔物とは比べ物にならない。カム達は忙しなくウサミミを動かし索敵をしている。

 

 そして、何かを掴んだのか苦虫を噛み潰したような表情を見せた。シアに至っては、その顔を青ざめさせている。

 

 ツナとハジメとユエも相手の正体に気がつき、面倒そうな表情になった。

 

 その相手の正体は……

 

「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」

 

 虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人だった。

 



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第27話 やっぱり残念なのはハウリア

樹海の中で人間族と亜人族が共に歩いている。

 

 その有り得ない光景に、目の前の虎の亜人と思しき人物はカム達に裏切り者を見るような眼差しを向けた。その手には両刃の剣が抜身の状態で握られている。周囲にも数十人の亜人が殺気を滾らせながら包囲網を敷いているようだ。

 

「あ、あの私達は……」

 

 カムが何とか誤魔化そうと額に冷汗を流しながら弁明を試みるが、その前に虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。

 

「白い髪の兎人族…だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する! 総員かッ!?」

 

ドパンッ!!

 

 虎の亜人が問答無用で攻撃命令を下そうとしたその瞬間、ハジメの腕が跳ね上がり、銃声と共に一条の閃光が彼の頬を掠めて背後の樹を抉り飛ばし樹海の奥へと消えていった。

 

 理解不能な攻撃に凍りつく虎の亜人の頬に擦過傷が出来る。もし人間のように耳が横についていれば、確実に弾け飛んでいただろう。聞いたこともない炸裂音と反応を許さない超速の攻撃に誰もが硬直している。

 

 そこに、気負った様子もないのに途轍もない圧力を伴ったハジメの声が響いた。〝威圧〟という魔力を直接放出することで相手に物理的な圧力を加える固有魔法である。

 

「今の攻撃は、刹那の間に数十発単位で連射出来る。周囲を囲んでいるヤツらも全て把握している。お前等がいる場所は、既に俺のキルゾーンだ」

「な、なっ……詠唱がっ……」

 

 詠唱もなく、見たこともない強烈な攻撃を連射出来る上、味方の場所も把握していると告げられ思わず吃る虎の亜人。それを証明するように、ハジメは自然な動作でシュラークを抜きピタリと、とある方向へ銃口を向けた。その先には、奇しくも虎の亜人の腹心の部下がいる場所だった。霧の向こう側で動揺している気配がする。

 

「殺るというのなら容赦はしない。約束が果たされるまで、こいつらの命は俺が保障しているからな……ただの一人でも生き残れるなどと思うなよ」

 

 威圧感の他にハジメが殺意を放ち始める。あまりに濃厚なそれを真正面から叩きつけられている虎の亜人は冷や汗を大量に流しながら、ヘタをすれば恐慌に陥って意味もなく喚いてしまいそうな自分を必死に押さえ込んだ。

 

(冗談だろ! こんな、こんなものが人間だというのか! まるっきり化物じゃないか!)

 

 恐怖心に負けないように内心で盛大に喚く虎の亜人など知ったことかというように、ハジメがドンナー・シュラークを構えたまま、言葉を続ける。

 

「だが、この場を引くというのなら追いもしない。敵でないなら殺す理由もないからな。さぁ、選べ。敵対して無意味に全滅するか、大人しく家に帰るか」

 

 虎の亜人は確信した。攻撃命令を下した瞬間、先程の閃光が一瞬で自分達を蹂躙することを。その場合、万に一つも生き残れる可能性はないということを。

 

 虎の亜人は、フェアベルゲンの第二警備隊隊長だった。フェアベルゲンと周辺の集落間における警備が主な仕事で、魔物や侵入者から同胞を守るというこの仕事に誇りと覚悟を持っていた。その為、例え部下共々全滅を確信していても安易に引くことなど出来なかった。

 

「……その前に、一つ聞きたい」

 

 虎の亜人は掠れそうになる声に必死で力を込めてハジメに尋ねた。ハジメは視線で話を促した。

 

「……何が目的だ?」

 

 端的な質問。しかし、返答次第では、ここを死地と定めて身命を賭す覚悟があると言外に込めた覚悟の質問だ。虎の亜人は、フェアベルゲンや集落の亜人達を傷つけるつもりなら、自分達が引くことは有り得ないと不退転の意志を眼に込めて気丈にハジメを睨みつけた。

 

「俺達はお前達を奴隷等と言うふざけた事をする為に来たわけでは無いから安心しろ。お前達が攻撃等をして来なければ俺達はお前達を害しはしない。」

「俺達は樹海の深部、大樹の下へ行きたい」

「大樹の下へ……だと? 何のために?」

 

 てっきり亜人を奴隷にするため等という自分達を害する目的なのかと思っていたら、そうではないと言う。

神聖視はされているものの大して重要視はされていない〝大樹〟が目的と言われ若干困惑する虎の亜人。〝大樹〟は、亜人達にしてみれば、言わば樹海の名所のような場所に過ぎないのだ。

 

「そこに、本当の大迷宮への入口があるかもしれないからだ。俺達は七大迷宮の攻略を目指して旅をしている。ハウリアは案内のために雇ったんだ」

「本当の迷宮? 何を言っている? 七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰る事も叶わない天然の迷宮だ」

 

するとツナが

 

「いや、それはおかしい」

「なんだと?」

 

 妙に自信のあるツナの断言に虎の亜人は訝しそうに問い返した。

 

「大迷宮というには、ここの魔物は弱すぎる」

「弱い?」

「そうだ。大迷宮の魔物ってのは、どいつもこいつも化物揃いだ。少なくとも【オルクス大迷宮】の奈落はそうだった。それに……」

「なんだ?」

「大迷宮というのは、〝解放者〟達が残した試練なんだ。亜人族は簡単に深部へ行けるんだろ? それじゃあ、試練になってない。だから、樹海自体が大迷宮ってのはおかしいんだよ」

「……」

 

 ツナの話を聞き終わり、虎の亜人は困惑を隠せなかった。ツナの言っていることが分からないからだ。樹海の魔物を弱いと断じることも、【オルクス大迷宮】の奈落というのも、解放者とやらも、迷宮の試練とやらも……聞き覚えのないことばかりだ。普段なら、〝戯言〟と切って捨てていただろう。

 

 だがしかし、今、この場において、ツナが適当なことを言う意味はないのだ。圧倒的に優位に立っているのはツナ達の方であり、言い訳など必要ないのだから。しかも、妙に確信に満ちていて言葉に力がある。本当に亜人やフェアベルゲンには興味がなく大樹自体が目的なら、部下の命を無意味に散らすより、さっさと目的を果たさせて立ち去ってもらうほうがいい。

 

 虎の亜人は、そこまで瞬時に判断した。この件は、完全に自分の手に余るということも理解している。その為、虎の亜人はツナとハジメに提案した。

 

「……お前が、国や同胞に危害を加えないというなら、大樹の下へ行くくらいは構わないと、俺は判断する。部下の命を無意味に散らすわけには行かないからな」

 

 その言葉に、周囲の亜人達が動揺する気配が広がった。樹海の中で、侵入して来た人間族を見逃すということが異例だからだろう。

 

「だが、一警備隊長の私ごときが独断で下していい判断ではない。本国に指示を仰ぐ。お前の話も、長老方なら知っている方もがおられるかもしれない。お前に、本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」

  

 冷や汗を流しながら、それでも強い意志を瞳に宿して睨み付けてくる虎の亜人の言葉に、ツナとハジメは少し考え込む。

 

 虎の亜人からすれば限界ギリギリの譲歩なのだろう。樹海に侵入した他種族は問答無用で処刑されると聞く。今も、本当はツナとハジメ達を処断したくて仕方ないはずだ。だが、そうすれば間違いなく部下の命を失う。それを避け、かつ、つなハジメという危険を野放しにしないためのギリギリの提案。

 

 ツナとハジメは、この状況で中々理性的な判断ができるヤツだと、少し感心した。そして、今、この場で彼等を殲滅して突き進むメリットと、フェアベルゲンに完全包囲される危険を犯しても彼等の許可を得るメリットを天秤に掛けて……後者を選択した。大樹が大迷宮の入口でない場合、更に探索をしなければならない。そうすると、フェアベルゲンの許可があった方が都合がいい。

敵対する可能性は高いが、しなくて済む道があるならそれに越したことはない。人道的判断ではなく、単に殲滅しながらの探索はひどく面倒そうだからという事とその場合ツナは許さない為にその様な事はしないが。

 

「……いいだろう。さっきの言葉、曲解せずにちゃんと伝えろよ?」

「無論だ。ザム! 聞こえていたな! 長老方に余さず伝えろ!」

「了解!」

 

 虎の亜人の言葉と共に、気配が一つ遠ざかっていった。ハジメは、それを確認すると構えていたドンナー・シュラークを太腿のホルスターに納めて威圧を解いた。空気が一気に弛緩する。それに、ホッとすると共に、あっさり警戒を解いたハジメに訝しそうな眼差しを向ける虎の亜人。中には、今なら!と臨戦態勢に入っている亜人もいるようだ。

 

「お前等が攻撃するより、俺の抜き撃ちの方が早い……試してみるか?」

「……いや。だが、下手な動きはするなよ。我らも動かざるを得ない」

「わかってるさ」

「ハジメ、敵を増やすだけ時間の無駄だ。相手が攻撃して来た時だけにしておけ。」

「あぁ、そうだな、そうしとくか。」

 

 包囲はそのままだが、ようやく一段落着いたと分かり、カム達にもホッと安堵の吐息が漏れた。だが、彼等に向けられる視線は、ツナとハジメ達に向けられるものより厳しいものがあり居心地は相当悪そうである。

 

 しばらく、重苦しい雰囲気が周囲を満たしていたが、そんな雰囲気に飽きたのか、ユエがハジメに構って欲しいと言わんばかりにちょっかいを出し始めた。それを見たシアが場を和ませるためか、単に雰囲気に耐えられなくなったのか「私も~」と参戦し、苦笑いしながら相手をするハジメに、少しずつ空気が弛緩していく。敵地のど真ん中で、いきなりイチャつき始めた(亜人達にはそう見えた)ハジメに呆れの視線が突き刺さりそれをツナは見てハァとため息を吐く。

 

 時間にして一時間と言ったところか。調子に乗ったシアが、ユエに関節を極められて「ギブッ! ギブッですぅ!」と必死にタップし、それを周囲の亜人達が呆れを半分含ませた生暖かな視線で見つめていると、急速に近づいてくる気配を感じた。

 

 場に再び緊張が走る。シアの関節には痛みが走る。

 

 

 霧の奥からは、数人の新たな亜人達が現れた。彼等の中央にいる初老の男が特に目を引く。流れる美しい金髪に深い知性を備える碧眼、その身は細く、吹けば飛んで行きそうな軽さを感じさせる。威厳に満ちた容貌は、幾分シワが刻まれているものの、逆にそれがアクセントとなって美しさを引き上げていた。何より特徴的なのが、その尖った長耳だ。彼は、森人族いわゆるエルフなのだろう。

 

 ツナとハジメは、瞬時に、彼が〝長老〟と呼ばれる存在なのだろうと推測した。その推測は、当たりのようだ。

 

「ふむ、お前さんが問題の人間族かね? 名は何という?」

「綱吉だ、沢田綱吉」

「ハジメだ。南雲ハジメ。あんたは?」

 

 ツナとハジメの言葉遣いに、周囲の亜人が長老に何て態度を! と憤りを見せる。それを、片手で制すると、森人族の男性も名乗り返した。

 

「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さんの要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。〝解放者〟とは何処で知った?」

「うん? オルクス大迷宮の奈落の底、解放者の一人、オスカー・オルクスの隠れ家だ」

 

 目的などではなく、解放者の単語に興味を示すアルフレリックに訝みながら返答するハジメ。一方、アルフレリックの方も表情には出さないものの内心は驚愕していた。なぜなら、解放者という単語と、その一人が〝オスカー・オルクス〟という名であることは、長老達と極僅かな側近しか知らない事だからだ。

 

「ふむ、奈落の底か……聞いたことがないがな……証明できるか?」

 

 あるいは亜人族の上層に情報を漏らしている者がいる可能性を考えて、ハジメに尋ねるアルフレリック。ハジメは難しい表情をする。証明しろと言われても、すぐ示せるものは自身の強さくらいだ。首を捻るハジメにユエ、するとツナが固有空間から解放者の証を取り出して見せる。

 

「……これでいいか?」

 

 

「後は、これ。一応、オルクスが付けていた指輪なんだが……」

 

 そう言って、見せたのはオルクスの指輪だ。アルフレリックは、その指輪に刻まれた紋章を見て目を見開いた。そして、気持ちを落ち付かせるようにゆっくり息を吐く。

 

「なるほど……確かに、お前さん達はオスカー・オルクスの隠れ家にたどり着いたようだ。他にも色々気になるところはあるが……よかろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリアも一緒にな」

 

 アルフレリックの言葉に、周囲の亜人族達だけでなく、カム達ハウリアも驚愕の表情を浮かべた。虎の亜人を筆頭に、猛烈に抗議の声があがる。それも当然だろう。かつて、フェアベルゲンに人間族が招かれたことなど無かったのだから。

 

「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

 

 アルフレリックが厳しい表情で周囲の亜人達を宥める。しかし、今度はハジメの方が抗議の声を上げた。

 

「待て。何勝手に俺達の予定を決めてるんだ? 俺達は大樹に用があるのであって、フェアベルゲンに興味はない。問題ないなら、このまま大樹に向かわせてもらう」

「いや、お前さん。それは無理だ」

「どう言う事だ?」

 

 あくまで邪魔する気か? と身構えるハジメに、むしろアルフレリックの方が困惑したように返した。

 

「大樹の周囲は特に霧が濃くてな、亜人族でも方角を見失う。一定周期で、霧が弱まるから、大樹の下へ行くにはその時でなければならん。次に行けるようになるのは十日後だ。……亜人族なら誰でも知っているはずだが……」

 

 アルフレリックは、「今すぐ行ってどうする気だ?」とツナとハジメを見たあと、案内役のカムを見た。

ハジメは、聞かされた事実にポカンとした後、アルフレリックと同じようにカムを見た。そのカムはと言えば……

 

「あっ」

 

 まさに、今思い出したという表情をしていた。ハジメの額に青筋が浮かぶ。

「どう言う事だかな?ハウリア族の族長さん」

「カム?」

「あっ、いや、その何といいますか……ほら、色々ありましたから、つい忘れていたといいますか……私も小さい時に行ったことがあるだけで、周期のことは意識してなかったといいますか……」

 

 しどろもどろになって必死に言い訳するカムだったが、ツナとハジメとユエのジト目に耐えられなくなったのか逆ギレしだした。

 

「ええい、シア、それにお前達も! なぜ、途中で教えてくれなかったのだ! お前達も周期のことは知っているだろ!」

「なっ、父様、逆ギレですかっ! 私は、父様が自信たっぷりに請け負うから、てっきりちょうど周期だったのかと思って……つまり、父様が悪いですぅ!」

「そうですよ、僕たちも、あれ? おかしいな? とは思ったけど、族長があまりに自信たっぷりだったから、僕たちの勘違いかなって……」

「族長、何かやたら張り切ってたから……」

 

 逆ギレするカムに、シアが更に逆ギレし、他の兎人族達も目を逸らしながら、さり気なく責任を擦り付ける。

 

「お、お前達! それでも家族か! これは、あれだ、そう! 連帯責任だ! 連帯責任! ツナヨシ殿、ハジメ殿、罰するなら私だけでなく一族皆にお願いします!」

「あっ、汚い! お父様汚いですよぉ! 一人でお仕置きされるのが怖いからって、道連れなんてぇ!」

「族長! 私達まで巻き込まないで下さい!」

「バカモン! 道中の、ツナヨシ殿は優しいがハジメ殿の容赦のなさを見ていただろう! 一人でバツを受けるなんて絶対に嫌だ!」

「あんた、それでも族長ですか!」

 

 亜人族の中でも情の深さは随一の種族といわれる兎人族。彼等は、ぎゃあぎゃあと騒ぎながら互いに責任を擦り付け合っていた。情の深さは何処に行ったのか……流石、シアの家族である。総じて、残念なウサギばかりだった。

 

 青筋を浮かべたハジメが、一言、ポツリと呟く。

「…………」

「……ユエ」

「ん」

 

 ハジメの言葉に一歩前に出たユエがスっと右手を掲げた。それに気がついたハウリア達の表情が引き攣る。

 

「まっ、待ってください、ユエさん! やるなら父様だけを!」

「はっはっは、何時までも皆一緒だ!」

「何が一緒だぁ!」

「ユエ殿、族長だけにして下さい!」

「僕は悪くない、僕は悪くない、悪いのは族長なんだ!」

 

 喧々囂々に騒ぐハウリア達に薄く笑い、ユエは静かに呟いた。

 

「〝嵐帝〟」

 

―――― アッーーーー!!!

 

 天高く舞い上がるウサミミ達。樹海に彼等の悲鳴が木霊する。同胞が攻撃を受けたはずなのに、アルフレリックを含む周囲の亜人達の表情に敵意はなかった。むしろ、呆れた表情で天を仰いでいる。彼等の表情が、何より雄弁にハウリア族の残念さを示していた。

 

 



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