おもしろエピソードを、投稿風に。 (以知記)
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マトン事件
私が以前、ネパール料理店に行った時の話を聞いて下さい。
おいしいネパール料理を食べに行ったのに、その美味しさを忘れてしまうほどの出来事だったのです。
「事件は会議室で起きてるんじゃない!客席で起きてるんだ!」
みなさま、こんにちは。
ペンネーム「О(オー)」と申します。
私が以前、ネパール料理店に行った時の話を聞いて下さい。
今から10年ほど前、私が友人Pと二人で、美味しいネパール料理を食べに行った時のことなのですが、その美味しさを忘れてしまうほどの出来事が起きてしまったのです。
その頃、インドカリーのお店はすでにたくさんあったのですが、ネパール料理専門店というのが私の家のまわりには一軒だけしかなく、インドカリーが大好きな私とPは興味があり、行ってみることになったのです。
ネパール料理とインド料理の違いってどんなのかなって、とっても楽しみにしながらお店に入りました。
そのお店はレストランとしては珍しく、壁沿いにグルっとお席が並んでいて、真ん中は広くあけてありました。
私たちは角のお席に案内されて、私が壁側、Pがその向かい側に座りました。
私の記憶が間違ってなかったら、私たちのテーブルはお店の西側の壁の南の角だったはずです。
店員さんにメニューをいただいている間に、お若い男性のお客様がおひとり、ちょうど私と向かい合せになる席にお座りになって、慣れた様子で注文をされているのが見えました。
初めてのお店で迷いながらもランチセットを注文した私たちのすぐそばに、3人連れのご家族が座られました。
そのご家族は、南側の壁の西の角のお席に座られました。
建物の壁の出っ張りの都合上、私から見ると右隣りのような、斜め前のような位置になるお席でしたので、自然と私の視界にご家族のお姿が見えました。
20代中ごろのお嬢様とそのご両親(お年のころは60歳前後くらいでした)のようで、仲良く三人でメニューをご覧になっているところが見えていて、あぁ微笑ましいなぁと思っておりました。
私事なのですが、インドカリーやネパール料理が大好きなのに、実は私はマトンやラム、つまり羊肉が食べられないのです。
Pは羊肉ならばマトンもラムも大好きなので、私が羊肉を嫌いになった某所でのジンギスカンの味を払拭できたらと考えてくれて、
「Oちゃん、よかったら私のカリーも食べてみてね!」
って言ってくれた直後、事件は起きました。
「マトンって何?」
「何かのお肉じゃない?」
「メニューの感じからして、お肉っぽいよねぇ」
という会話が聞こえてきました。
会話の主は、私の右側に座られたご家族でした。
私はちょっと迷いました。
お席が隣だから聞こえてしまったとはいえ、私がお教えしたら、ご家族の会話を聞いてしまったようで、不快に思われるかもしれないなって思ったんです。
何より、この時点で私の目の前では
「Oちゃんって、どこでジンギスカン食べたんだっけ?」
という具合に、Pがマトンをテーマに会話を繰り広げ始めていたのです。
もしかしたら、私たちの会話で気が付いてくれたら・・・なんて淡い期待をしたのですが、その期待は見事に打ち砕かれました。
「マトンって馬じゃない?」
お隣のお席から、お父様がはっきりとおっしゃってしまったのです。
しかも、これだけでは終わりませんでした。
「あー、馬ねー!」
お嬢様が納得されてしまわれたのです。
これは・・・いったいどうしたことか・・・
小さいお声だったらよかったのですが、けっこうしっかりとしたお声で「馬」とおっしゃったため、私と、私の向かいのお席の若い男性には聞こえておりまして、思わず目が合ってしまいました。
失礼ながら、笑うのを堪えるのに必死でした。
こういう時、人間って真顔になろうとするんですよね、なぜなんでしょう?
私もキュッと口を結び、一生懸命に真顔になろうとしておりました。
しかし、Pには全然聞こえていなかったのです。
「ジンギスカンってさー、マトンの鮮度がよくないとダメなんだよ。鮮度のいいマトンだったり、カリーみたいな味付けだったら、Oちゃんもきっと食べられるよ!」
お席の関係か、はたまたBGMを流すスピーカーの位置の関係か。
いずれにせよ、この時の私には、目の前のPが「暇を持て余した神々の悪戯」にしか見えなかったのです。
なんで今このタイミングでお前は「マトン」という単語を発した!?
しかも、さっきより大きな声になってるよね!?
隣のお席の会話が私の脳内でリピート再生されてしまい、笑わないように必死になる私に、さらなる仕打ちが訪れました。
「じゃあ、ラムって何?これもお肉かな?」
再び、お隣のお嬢様が大きめのお声でお父様にご質問されたのです。
この時、私の向かいのお席の若い男性にも、私たちのところにもランチプレートが運ばれてきていて、私はPからもらったマトンを試しに食べようとしていた時でした。
口の中でしっかり咀嚼するフリをしながら、またしても笑わないように必死になる私の目の前では、若い男性が一生懸命に召し上がっておられました。
お兄さん!もしかして私を置いていく気なのね!
そう思わずにはいられないほどの勢いで、若い男性はカリーを召し上がっていらっしゃいました。
そうとは知らないPは、真顔になろうとする私の顔を見て、
「マトンだめだった?やっぱりラムから試す方がよかったかな?」
と、心配そうに私を見るのです。
しかも、Pの声はさらに大きくなっていました。
なんでボリュームあがってんの!レストランではいつもそんな大きな声でお話しないでしょ!!
なんでこんな時に音量を大きくしたんだぁぁ!
しかもなんでPまで一生懸命な顔で会話してんの!
ご存知の方も多いかと思いますが、ラムは子羊のお肉で、大人であるマトンよりも臭みがないため、Pは私を気遣ってくれた上での「ラム」発言だったのですが、これが次の事件を生みました。
まぁ、なんとか食べられるよ・・・と返事をした私を、隣のお席のお父様がジーっと見てらっしゃったんです!
うわぁぁぁぁぁ!見つかったぁぁぁぁぁぁぁ!!
どどどどどしよう!どうしたらいいのぉぉぉぉぉ!!
私の背中を流れる汗は、カリーに入っているスパイスの効果なのか、それとも冷や汗なのかわかりませんでした。
ここから後は、私も向かいの若い男性と同様、一生懸命にカリーをいただきました。
一生懸命食べてて、この時のカリーの辛さがどうだったのか、よく覚えていません。
ナンをちぎるのがもどかしく感じたのはよく覚えています。
なんでこんな時に根菜の酢漬けが!?
あぁぁぁネパールのお漬物ってシャキシャキしてて歯ごたえがいいから、一刻も早く完食したい今の私には不向きだわぁぁぁぁ!
ってか、味わって食べたいよぉぉぉ!!
そうこうしているうちに、お隣のご家族のところにもランチプレートが運ばれてきて、美味しそうに召し上がっておられましたが、お父様だけは、こちらに耳をそばだてているのがよくわかりました。
お父様、あなたはきっと隠密活動はできないと思います。
水戸〇門に出てこられる由〇か〇るさんはすごいんですよ・・・
そして、私の目の前では、Pの「マトン&ラム談義」がまだまだ繰り広げられました。
なんでこんな時に限って、「羊」って言ってくれないの!?
今の私は、声を出したら笑ってしまうから「羊」って言えないのよ!!
あっ!お兄さんがお会計を!あぁぁ待ってお兄さん置いていかないで!!
なんとか食べ終わった私たちの目の前に出てきたチャイが、なんと恨めしかったことでしょう。
なんで最後に飲み物出てくるの・・・あぁ、チャイも注文したんだったっけ・・・
難局を乗り越えて疲労困憊だったので、チャイはすっごく美味しかったはずなんです。
Pは美味しかったって言ってましたし、絶対美味しいはずなんですが、味を全然覚えておりません。
とりあえず、この状況下においてチャイを吹き出さずに飲み切った私を誇りに思っています。
お会計をしてお店を出て、私の車に乗り込むと、
「Oちゃんごめんね、何か怒ってたよね、ほんとにごめんね。」
と、Pが謝ってくれました。
Pからすれば、私の表情は怒っているように見えたそうで、なんとかしなくては!と一生懸命に会話してくれていたのですが、Pが話せば話すほど、私が無口になっていったため、Pはさらに一生懸命に「羊肉談義」をしてくれていたのです。
悪気なくPがお話してくれているのは私もよくわかっておりましたし、これは私が謝るべき状況だと思うので、まずはPに事情を説明しました。
「えぇぇぇぇ!なんでそんな面白い状況なのに教えてくれなかったの!」
言えないでしょ!
だって声を出したら絶対に笑いを抑えられないもん!
そのくらいピンチだったんだから!!
このあとからしばらくは、ネパールと聞くとあの日のことを思い出してしまって、条件反射のように笑いをこらえてしまうようになってしまいました。
ネパール料理の美味しさに目覚めたのは、数年後のことです。
今ではすっかりネパール料理にハマっておりまして、お気に入りのお店に何度も行かせていただいておりますが、あの時のお店にはいまだに行けずにおります・・・。
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2018年以知記の重大ニュース「タヌキ(仮)狂騒曲」
2018年、以知記はタヌキのようなものに遭遇致しました・・・。
皆さま、ご無沙汰しております。
以前、マトン事件に遭遇いたしました、O(オー)でございます。
2019年も始まって、すでに二月。
節分もとっくに過ぎてしまい、春一番の便りも届いてまいりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今ごろになって、去年の重大ニュースなんてどこの時代遅れかと言われるかもしれません。
しかし、よろしければぜひとも、皆さまにお聞きいただきたいと思いまして、遅筆ながら文章をしたためさせていただいております。
それは、昨年2018年の春、満開だったソメイヨシノが葉桜になって間もないころのことでございました。
春の陽気に誘われ、分厚いダウンコートや冬のお布団をしまおうとしていた友人P(別称・平あげは)を手伝うため、この日は朝早くから友人Pの自宅にお邪魔させてもらっておりました。
いつもお庭を悠々自適に歩く、友人P家のワンコのシベリアンハスキー。
ワンコをこれでもかと甘やかす存在である私が通ると、必ずと言っていいほどワンコは私に
「どっか撫でていってよ~」
と言わんばかりに近寄ってくるのに、どうしたことでしょう。
明らかにテンションが高くなっている様子が見て取れたのです。
ワンコはお庭の木に前足をかけ、どうやら上を気にしている様子。
そこは友人Pのお部屋のあるあたりだったのですが、友人Pやご家族の姿はなかったので、きっとお部屋にいるであろう友人Pを待っているのだなと思い込んでしまいました。
この日は、友人Pがダウンコートをホームクリーニングできる洗剤を持っているとのことで、私のコートも一緒に洗わせてもらうことになっていたので、友人Pが準備してくれている間に、私はお布団を干しておこうと、二階のベランダに上がりました。
少しでも長い時間、日光があたるとお布団がフカフカになって気持ちが良いですよね。
晴れた日が続いていたこともあり、友人Pが大好きなフカフカのお布団になるようにと、急いでベランダの手すりについた砂ぼこりを拭きとってしまおうとした時でございました。
ベランダの角にふと見えた、大きな毛玉。
私は何の疑問も持たずに、声をかけてしまいました。
「なんでこんなとこに上がってんの、怒られちゃうよ?」
そう、私はその毛玉の色合いから、友人P家のシベリアンハスキーだと判断してしまったのです。
しかし、その後すぐに異変に気が付きました。
シベリアンハスキーにしては小さいのです。
それでもまだ、私は自分の目の前にいるのがシベリアンハスキーだと思っていたため、
「勝手におうちの中に入ってきたから、怒られると思ってそこで丸まってるんでしょ?じゃあどうして二階まで上がってきちゃったのよ~?」
などと、呑気なことを言っていたのでございました。
こんなに声をかけたのに、それでも動かない、私の目の前にある大きな毛玉。
ここまでくると、さすがにこの鈍感な私でも、自分が何か思い違いをしているのではないかと考え始めました。
ベランダで今、私が見ている光景の違和感は、私が思っているものと何かが違う。
けれど、その違和感が何なのか判断できず、焦り始めておりました。
すると。
毛玉からひょっこり、顔が見えたのでございます!!
「たっ、たっ・・・・・・タヌキぃぃぃぃいい!?なんでこんなところにタヌキがいるのぉぉおおおおぉぉ!!なんでPの家にタヌキがいるのよぉぉ~!!」
焦った私は、勢いよく窓を閉め、大きな毛玉ことタヌキが入ってこれないようにしたことを確認してから、部屋を飛び出しました。
そして、一階にいるであろう友人Pを大きな声で呼んだのです。
「二階のベランダにタヌキがいるの!!」
すると、友人Pと一緒にいたPママも部屋から出てきて、
「え?」
「お布団干そうと思ったら、ベランダの隅っこにタヌキがいるの!!」
「タヌキ?」
この時、二人は驚くよりも訝しんでいる表情でした。
私が突然、突拍子もないことを言い出したために、ベランダで起きていることを信じてもらえてないのだと思って、もう一度説明しようとしましたが、それよりも先に友人Pが声を出しました。
「二階にタヌキ?どうやって登ったの?」
「わかんないけど、タヌキがいるの!」
「Oちゃん、落ち着いて。タヌキは木登りができないから、二階に上がるとなると、玄関から入って階段を上がるしかないんだよ?」
「・・・・・・え。」
じゃあ私が見たアレはなんだったの!?と、新しい謎にパニック寸前になっていた私のところへ友人Pが来てくれて、
「どこにいるの?」
と言いながら、大きな毛玉のいるところへ行こうとするのです。
私にはこの時の友人Pが、巨大な隕石から地球を守ろうとする宇宙飛行士達の映画に出てくる主人公のように見えました。
なんて頼もしいお姿なのでしょう・・・。
などと思っておりましたら、
「タヌキは木登りができないの。おそらく、いるのはアライグマだよ。」
「えっ!?」
「だって、お指の形が違うから、タヌキは木登りができなくって、アライグマは木登りができるんだよ。」
「なるほど・・・。」
さすがは友人P、動物のことにはとっても詳しいです。
そして、ベランダにいる大きな毛玉を確認してもらうと、やはりアライグマとのこと・・・。
さて、ここからが大変なのでございます。
と申しますのも、アライグマは外来種のため害獣指定を受けております。
また、狂犬病のウイルスを持っている可能性があるため、そう簡単には手出しができません。
そこにきて、オオカミに近い犬種であるシベリアンハスキーがいるため、アライグマを襲わないとも限りません。
まさに一刻を争う事態となってしまったのです。
そんな中、友人Pの判断はとても早かったのでございます。
「業者さんが来るまでどのくらい時間がかかるかわからないし、来てくれてもどうやって駆除するのかわからないから、ワンコの興奮状態が収まらないようなことになっても困るから、なんとかしてアライグマを家の外に出したいの。」
そこで、私がアライグマの苦手なもについて検索し、友人Pがワンコを家の中に入れました。
やはりアライグマに気がついているワンコ、すでに興奮状態に入りつつありましたが、ワンコの大好物を使って家の中に誘導されていきました。
検索したところ、アライグマは煙が苦手とのこと。
この間もずっとベランダで丸くなっていたので、ワンコのためにお庭でつけていた蚊取り線香をベランダまで持っていきました。
最初はジッとしているだけでしたが、私が近づけるところまで蚊取り線香をグッと寄せると、数分のうちにベランダから下に降りて行ったのです。
よし!と思ったのもつかの間。
アライグマは、玄関ドアの横にある外灯の上で丸まっていました。
ここからどうすればいいのやら、と思っていると、友人Pが外灯のそばにある犬小屋の屋根伝いに下りていけるように、家にあるものを持ち出してきて、あっという間に猫ちぐらのようなものを組み立てたのです。
そうはいっても簡易のもののため、ほうきなどを立てかけていくのが精一杯だったので、果たしてどうなるやら・・・と思っていると、今度は玄関先でつけていた蚊取り線香の煙に反応してしまったらしく、アライグマはベランダへと戻ってしまったのです。
しまった、うっかりした・・・ごめんね・・・。
自分の犯したミスの重さに反省しつつ、今度は玄関先においてあった蚊取り線香も持ってベランダにあがると、さすがに蚊取り線香2つはきつかったようで、アライグマは再び玄関横の外灯の上へ。
しかし、アライグマはどこにいるかわらないワンコいおびえているようで、なかなか動こうとしない。
かと言って、あまりアライグマのにおいを家じゅうにつけさせるわけにもいかない・・・。
すると友人Pはすかさず、
「Oちゃんごめん、アライグマがいるあたりのベランダを、何かでたたいて音を出してみて。」
との指令を出してくれました。
興奮状態にあるワンコを放ってはおけないため、私が行くのが良いだろうという判断でございます。
家族の一員であるワンコを最優先に考える、友人P。
また、興奮状態にあるワンコが多少暴れても自分が抑えるんだという、私を守る判断もしてくれたのです。
ならば、その期待に応えるしかない!
そう思った私は、急いでベランダへ戻りました。
この頃になると、部屋の中にいるワンコから、聞きなれない鳴き声がお庭にまで聞こえるようになっていました。
おそらく、アライグマはこのワンコの鳴き声にも怯えていたのでしょう。
じゃあなぜこの家を選んで入ってきたんだよ・・・。
そもそも論よりも、今はアライグマを外に逃がす方が先でございます。
私は友人Pの指示通り、二階にあったものでベランダのへりをたたき始めました。
やっぱりすぐには動かないかなぁ、これは持久戦かなぁ・・・と、アライグマとの根競べを考え始めた時でございました。
ガシャガシャガシャーーーン!!
何かが当たる時特有の大きな音がしたのです。
急いでお庭を見ると、友人Pが簡易で組み立てた、はしご替わりのほうきなどがお庭に散乱していました。
いったいどうなったかと急いで二階から降りてくると、先にお庭に出た友人Pが、
「どうやら逃げたみたいだよ。」
と、お庭を見回していました。
その後、お庭などを見てまわってもアライグマのいる気配はありませんでした。
そのかわりに、お庭にはどうやらアライグマが落下してできたらしいヘコミができていました。
しかし、アライグマは逃げていく際に外壁に「おもらし」をしていくという不始末をしてしまったため、重曹を大量に使って消毒する事態と相成りました。
簡易とはいえ、逃げ道として作った猫ちぐらならぬアライグマちぐらをなぎ倒し、さらにはちゃんと着地もできずお庭の土の上に落ち、挙句の果てにおもらしとは・・・
ドジすぎる。
そして、ようやくワンコをお庭へ。
ワンコは待ちかねたかのようにお庭に飛び出し、アライグマを探しているかのような見回りをしていましたが、しばらくすると逃げてしまったのがわかったようで、そのままお庭で番犬のような凛々しい表情で座っておりました。
日差しが強くなっていたのもあって、私も友人Pも汗だくになりつつ、ふと
「そもそも、どうしてあのアライグマはシベリアンハスキーのいる家に入ってこれたのか」
という疑問に立ち返りましたが、その答えはあっさりとわかりました。
毎朝、Pママがワンコのお散歩に出かけておられるのですが、この日はいつもと少し違う時間にお散歩に出たのだそうです。
その間に、アライグマが入ってしまったのではないか、と。
他の犬と違い、オオカミに近いシベリアンハスキーは犬特有のにおいがほとんどありません。
そのため、他のワンちゃんのいるおうちのにおいで、友人Pの家のワンコのにおいがわからなかったのではないか、という結論になったのです。
そしてアライグマが登った形跡のあった、雨水の排水管に巻き付いていた朝顔のつるを取り除く作業も完了させました。
朝顔のつるを滑り止めにしてのぼったとは・・・。
ワンコがお散歩から帰ってきて、アライグマはどんなに焦ったのでしょうね・・・。
その日の夜、事の顛末を聞いたPパパは、アライグマの写真を見ながら、
「生でアライグマを見たかったなぁ・・・。」
と、ちょっと残念そうにおっしゃっていたそうです。
アライグマは懲り懲りです・・・。
それから数日後。
私は日帰り出張のために、明け方から出発する日がございました。
まだ薄暗い中、自宅から出てきてすぐの側溝に、何かモジャモジャしたものが見えました。
何だろう?と思い、時間に余裕のあった私は近寄ってみて、どうやら気付かれていないようでしたので、しばらく観察することにしました。
が。
モジャモジャは一向に動きません。
私との距離、50センチほどしかないというのに。
寝てるのかもしれなから、そっとしておこう。
そう思って、通り過ぎようとした時です。
ガサガサガサガサ!
ドンッ!!!
なんと慌てたモジャモジャは、あろうことかわざわざ側溝のふたの方へ逃げようとして、側溝のふたで頭を打ち付けるという、まったくもってドジ極まりない行動をとったのです。
「寝ぼけてたのかな・・・ドジなアライグマ・・・・・・アライグマ!?」
そうなんです、お指がアライグマの特徴そのものだったのです!
友人P宅でのアライグマ騒動からの日数と、私の家の距離を考えると、あの時のアライグマの可能性がじゅうぶんにあったのです。
「えぇぇぇぇ・・・・・・。」
相変わらずのドジなアライグマ。
今頃どうしてるでしょうか。
どうか、人様に迷惑をかけることなく、静かにしていてほしいものです。
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2019年以知記の重大ニュース「タクシー事件」
またしてもご無沙汰してしまいました、O(オー)でございます。
マトン事件やタヌキ事件など、笑いには事欠かない友人Pと私の2019年の重大ニュースを聞いてください。
それは、2019年の11月の終わりの頃でした。
同じ11月の初めにPが前々から治療を行っている眩暈の症状がきつくなったことに加え、仕事の繁忙期でもあったために救急車に乗ってしまった、病み上がりのPの完全復活を祝って、画材の購入や美味しいランチなど、休憩も考慮しながらのお出かけをしようと、朝早くから私の運転で出かけておりました。
私たちが出発した時間は、ちょうど通勤ラッシュの時間でもあったので、渋滞を避けるために途中でコーヒーショップで朝ご飯を食べたりと、本当にのんびりと移動しておりました。
渋滞がひどいと、どうしても起きてしまうのが事故ですよね・・・この日も幹線道路で事故が起きているという、電光掲示板のお知らせを見て、大回りして渋滞を回避することにしました。
どういうルートかは知っているけど、今まで走ったことのない場所を通り過ぎるため、進行方向や車線変更などに気を付けて運転しつつ、途中のコンビニで探していた雑誌がないか見てみたりと、休日にしかできないような、のんびりとしたドライブをしておりました。
なぜ、朝早くにのんびりドライブをしていたかと言いますと、私Oには黄砂のアレルギーがあり、この日の前日も黄砂がたくさん飛来していたため、アレルギー薬を飲んでからの運転となったからなのです。
もちろん、普段から飲んでも副作用なんてないし、私にとってよく効くアレルギー薬ではあったのですが、あまり黄砂の飛来が多いと目薬やうがいをすることがあるため、お出かけそのものをやめて引き返してもいいようにと、Pが提案してくれたからでした。
病み上がりなのはPなのに、どこまでも人に優しいP・・・そんなPに嫌われる人なんているのかしら(これがいるからビックリなんですけどね)
やがて、私がもともと走行しようとしていた幹線道路に合流すべく、徐々に混雑してくる道をのんびり走っていると、私の前に一台のタクシーが車線変更して入ってきました。
そのタクシーを運転されていたドライバーさんのお年の頃は50歳くらいでしょうか、少し白髪の見える、短くさっぱりと切りそろえられた、とても清潔感のある男性が運転しておられました。
私もここの右折レーン、ちょっとわかりにくいなと思ってたんだよね、なんて話をしながら信号待ちをし、何度目かの青信号で大きな交差点を右折しようとした、その時でした。
私たちの前にいるタクシーが、幹線道路でひとつ左側の車線へ移動しながら右折し、我々はそのまま右側を走行しなければならなかったので、同じ右折でも少し角度が変わったその時に、事件が起きました。
なんと、タクシーを運転しておられたはずの男性が、タクシーの中から消えてしまっているのです!!
それなのに、タクシーは滑らかに車線変更を終えて、適切な速度で走行しているのです!!
「ちょ!P見てよ!」
「見てる!知ってる!見えてる!いや見えてないけど見えてる!いやでも見えてない!」
私の車の中の会話は軽いパニック状態でハチャメチャなことになってしまいました。
どうしても気になる、隣を走る無人タクシー・・・・・・とは言え、私自身が今運転をしているために、ひとつ左側の車線を走行するタクシーを凝視するわけにはいかなかったのですが、ちらちらと何度見ても、やはりタクシードライバーさんが忽然と消えてしまい、無人のタクシーが大きな道路を滑らかに走っているのです!!
これは一体・・・私の目の前で一体なにが起きているのか、さっぱりわかりませんでした。
「なんでやろう?なんでこんなことに・・・・・・P?どうしたん?」
さっきまで私と一緒に驚いていたPが、いきなり黙りこくって難しい顔をしておりました。
いや待って!この状況で真剣な顔して考え事しながら沈黙されたら怖いから!!
P!お願いやから何かしゃべって!!
マトン事件の時に黙りこくってしまったことはホンマに悪いと思ってるから!!反省してるから!!
だから何かしゃべってよーっ!!
右折をしたドライバーさんが車内から忽然と消え、Pが沈黙するまでそんなに長い時間ではなかったはずです。
しかし、私にはとても長い時間のように感じました。
そして、Pにしては珍しく考え込む時間が長いので、沈黙に耐えきれず、声をかけることにしたのです。
「・・・ねぇ?P?」
「わかった!そういうことか!!」
「うわぁぁぁぁえええぇぇぁぁ!?」
急に大きな声を出した友人Pに驚き、私は思わず奇声を上げてしまいました。
「あっ!ごめん!えぇっともう大丈夫たからね?」
「へ?何が大丈夫なん?」
「ほら、もう見えるはずだよ?」
Pにそう言われ、ちらっと横目でタクシーを見ると、なんとドライバーさんが乗っておられるではないですか!
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?なんで!?どういうこと!?」
私には、さっぱりわかりませんでした。
なぜ、ドライバーさんが消えてしまったのか?
なぜ、Pにはドライバーさんが見えるタイミングがわかったのか?
「Oちゃんね、黄砂がひどいから洗車できないって言ってたやん?」
「うん、黄砂がついたら布で拭いてしまったら傷になるねん。」
「でも、運転に差し障りない程度にうっすらついてるだけやったから、そのまま乗ることにして、万が一の洗車も考えてるやん?」
「そうやねん、もしかしたら反射して見えなくなったら困るから、その場合はすぐ停まらせてもらうって話になってるよね。」
西日本にお住まいの皆さまならばよくご存じかと思いますが、黄砂は一度付着するとなかなかとれません。
車のガラスとなると、拭けばいいやと思って雑巾などで拭いてしまうと、黄砂の粒子で車体を傷つけてしまう恐れがあるので、ガソリンスタンドなどによくある、泡たっぷりの手洗い洗車にしないとダメだと私の家族に言われているため、この日も視界に気を付けて運転しておりました。
「でね、車のフロントガラスってちょっと斜めになってるでしょ?」
「うん、直角ではないよね?」
「そのフロントガラスに黄砂がうっすらついちゃってるのと、この時期のこの時間の朝日の差し込む角度と、タクシーとの距離と角度から計算したら、確かに見えなくなるんだよね。でも暗算で出したから、細かいところは間違ってるかもしれないけど、ドライバーさんが見え始めた距離がだいたい予想通りだったから、概ね間違ってないと思うんだ!」
「・・・・・・はい?」
恐らく、この時の私の「はい?」の言い方は、杉〇警部の「はい?」というセリフにとても似ていたことでしょう。
そんな私の相棒の様子を、運転しながら視界の端っこで確かめると、先ほどまでの沈黙が嘘のような、Pの喜色満面な表情でした。
それは、Pが何らかの計算や想定していたことが、実際の出来事とぴったり合っていたことを喜んでいる時にいつも見る表情で、先ほどまでビビりまくっていた私は唖然としました。
Pは私と違い、数学や物理もできるのは知っていました。
でも、ビビっていた私にとっては長い時間とはいえ、ほんの数秒でそこまで計算していたとは・・・!!
状況が飲み込めてくると、人間は不思議と落ち着きを取り戻すものです。
それと同時に、先ほどまでビビっていた自分が恥ずかしく情けなくなるものです。
この時の私も、例外なく同じようになりました。
そして、Pに対してようやく伝えられたまともな言葉が、
「アンタは天〇の城ラ〇ュタに出てくる、飛行石の指し示す方向を船長に説明するシーンのシ〇タか!!」
という、元ネタがわからないと笑えないものでした。
幸い、Pはこのネタがよくわかってくれていたので、飲んでいたお茶を吹き出しそうになりながら笑ってくれました。
そうこうしているうちに、タクシーと私たちの進行方向が離れていき、タクシーの姿は見えなくなりました。
私たちはその後、渋滞している幹線道路を少しだけ走行したりしながら、無事に目的地の画材屋さんに到着することができました。
楽しそうに画材を選ぶPを見て、元気になってよかったなと思いつつ、そりゃあれだけ短い時間であそこまで計算して「人が消える」現象を私に説明できちゃうくらいだから、Pの考える話にはブレがないし設定もストーリーも緻密になるわなと、一人納得しておりました。
そんな私の大事な相棒のシー〇ならぬ、Pの体調には本当に気を付けて見ていかなきゃ。
だって、Pは私の大事な大事な大親友ですから!
おもしろエピソードを、投稿風に。
「タクシー事件」
完
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