Journey through the Decade from 11 for 19 (サードニクス)
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ビルドの世界
第1話 クローズ爆進、ビルド再生


平成二期のリマジですね。いわゆる合作。
ビルドの世界はわたしが担当です。


鳴り響くサイレンの中、男は女の手を取って駆け抜けた。二人の息遣いは荒く、しかし追っ手はさらに追い立てる。

諦めが心に浮かんだ頃、追撃のようにガーディアンが現れた。

 

「やるしかないね…」

「ああ」

 

『ハザードオン!』

 

 

 

「うわああああああ!!!」

 

次の瞬間、女が見たのは薄暗い天井であった。狭い部屋の中で、今の悪夢を思案する。恐怖心が燃える中、彼女は縮こまり、ごめんなさいと、震えながら呟いた。

 

「もう、5年前なんだね…」

 

そして彼女、『霧海(きりみ)セント』はのっそりと起き上がり、いつものように立ち上がる。メガネをかけると、深い溜息と共に歩みを進めた。

 

 

 

 

第1話「クローズ爆進、ビルド再生」

 

 

 

 

「また、世界が融合すると言うのか?また…俺に壊せと…!!」

 

「…今回は話が違います。僕は役割故にあなたをああやって突き放さなければなりませんでした。しかし、今は違う。あなたは歴史を決定し、それは揺るがないものとなりました」

 

荒れ果てた地の中で、士は瓦礫に腰掛けて目の前の紅渡の声を聞いていた。言っていることは相変わらず訳の分からないことであるが、敵意はないであろうと言うのは見える。

 

「僕も、あなたの世界の紅渡ではなく…キバの紅渡に戻ることにしましょう。僕の役割は終わりです」

 

「それって…どう言うことだ?」

 

「ま、こう言うことさ」

 

オーロラに消える渡の背を見送る、その士の背に声がかかる。誰かと思って振り向いてみれば、見覚えのある二人組である。

 

「翔太郎に…フィリップか!」

 

「変な言い方だが…あんたを旅に送るのは俺たちの役割になったわけだ」

 

「要件から言うなら…9つの世界を救えと言うことさ」

 

二人の繋げた言葉を受け、士は納得できない様子ながら頷いた。そして仕方ないなとでも言わん姿勢で立ち上がり、ディケイドライバーを手に取った。

 

「破壊も救済も…俺の得意分野だ!」

 

「頼もしいねぇ。さて、こいつなら心配ないな」

 

「ああ、帰ろう翔太郎」

 

そうして微笑んだ二人が士の背中を押し、そして視界は一瞬で写真館へと移った。相変わらずの様子で、栄次郎とキバーラが話していて、それは相変わらずの旅の日常である。

 

「あっ、士くん。なんかぼーっとしてたけど」

 

「ああ、なんでもない」

 

そう言って、栄次郎が自分用にコーヒー入れた瞬間、それを奪って飲み干し、別の部屋へと向かった。

そこにかけられていたロール絵は、前までのものとは違う、新たな絵である。

赤いドライバーと地球が描かれており、どこか不穏な空気を見せるものだ。

 

「ビルド…」

 

無意識のうちに呟いた知らぬ名に驚くが、だがこう言うことは慣れたものである。薄く溜息をつくと、どんな世界なのか確かめるべく外へと出た。

 

「…研究者か何かか?」

 

見れば、その服装は白衣である。胸にかけられた名札には『ファウスト国立研究所研究員 門矢士』の文字が書かれていた。

 

「なるほど。だいたいわかった」

 

『門矢研究員!フィールドワーク中ですが、脱走者について居場所の情報です!今から送る場所へと向かってください!殺害は禁止!確認ののちエージェント佐渡(さど)に連絡を!』

 

「了解…っと。さて、とりあえず役に徹してみるか」

 

通信機からの声が消えたかと思えば、続けてポケットの中のデバイスに位置情報が届いた。近くの森の中の廃墟らしく、そう時間はかからない場所である。位置をしっかりと確認し、マシンディケイダーを目的地へと走らせた。

 

「ねぇセント!バイクが来てる!」

 

そしてその廃墟の中で、男が騒いでいた。『陸谷(りくや)リュウガ』がその名である。その声を聞いたセントは、焦った様子で一階へと降り、物陰へと隠れた。

 

「ごめん、また任せちゃうよ…」

 

「気にしないで」

 

優しく言葉をかけるリュウガであったが、目の前に現れた士へと向き直った視線は鋭いものだ。そしてどこからともなくクローズドラゴンを取り出し、さらにビルドドライバーを装備する。

 

「ここを嗅ぎ付けられるとはね…国の犬がっ!」

 

『wake up!』

 

「国の犬ねぇ…」

 

相手が戦闘態勢を取ったのに合わせ、士もまたディケイドライバーを装備した。かたやボトルをセットし、かたやカードを抜く。

 

『KAMEN-RIDE』

 

『cross-z dragon!』

 

そして同時にアイテムを装填し、リュウガはビルドドライバーのレバーを回し始めた。そして展開されたスナップビルダーがリュウガを囲み、ボディを成す。

 

『Are you ready!?』

 

「「変身!」」

 

『wake up burning!get cross-z dragon!yeah!』

 

『DECADE!』

 

「でやああああ!!」

 

真っ先に駆け出したのはクローズである。対しディケイドは軽くいなし、ライドブッカーを構えた。対しクローズもビートクローザーを構え、二人の剣が同時にぶつかる。

 

「だぁっ!」

 

「おっと、結構強いな…」

 

「余裕っぽい態度取りやがって。俺たちをあんまりナメないで欲しいよ」

 

クローズがまた構え直したのに対して、ディケイドは剣でのぶつかり合いでは分が悪いと銃モードへと変えた。しかしせいぜいいい勝負といったところだ。お互いさらに手を変えた。

 

『special tune!』

 

『ATTACK-RIDE』

 

クローズがロケットフルボトルを使ったのと同時にディケイドはカードを挿入。お互い技のシークエンスを終えた。

 

『ヒッパレー!ヒッパレー!ミリオンスラッシュ!』

 

『BLAST!』

 

ディケイドの連続銃撃が舞う中、クローズが剣を投擲し、爆炎と共にディケイドに向かった。それを跳ね返すように銃撃をぶつけると、今一度クローズがキャッチ。剣からの爆炎を推進力にディケイドに向かった。

 

「なかなか派手にやるなっ!」

 

「うるさい!」

 

『ヒッパレー!スマッシュスラッシュ!』

 

クローズ自身振り回されるような斬撃をギリギリで避けながら、近接銃撃を当てていく。だがクローズのダメージは大したものではなく、どう手を打とうかと士は思案した。

 

「炎か。…それならこいつだな!」

 

『FORM-RIDE DEN-O ROD!』

『ATTACK-RIDE BOKU NI TURARETE MIRU?』

 

「僕に釣られてみる?…ってな!」

 

「姿が…別物に…?ビルド以上に見た目が変わるんだね」

 

「ほーう、ビルドか、いいことを聞いたぜ!」

 

決め台詞を無視されつつデンガッシャーロッドモードをいつものように手で撫でると、クローズへと駆け出した。対しクローズも掃除機ボトルをセットし、スマッシュスラッシュを発動する。

 

「だああああ!!」

 

「引き寄せて…距離感が変わっただと!?」

 

「離れることはできないよ。俺が間合いを決める!」

 

そうして切り上げたのち、後ずさったディケイドをさらに引き寄せるそして突きを繰り出し、ディケイドを転ばせた。

 

「なるほど、それなら…!」

 

「来いっ!」

 

続けて引き寄せたその時、ディケイドは土に剣モードのライドブッカーを突き刺し、さらにデンガッシャーをクローズに向かって手放した。するとどうだ、掃除機ボトルの効果で向かっていくではないか。

 

「これは…っ!」

 

『FINAL-ATTACK-RIDE D-D-D-DEN-O!』

 

胸前に構えたビートクローザーで防ごうとするが、掃除機ボトルの効果がそこから発動している以上、それは胸に引き寄せると言う意味である。ソリッドアタックの効果で拘束された時にはすでに遅く、ディケイドは飛び上がっていた。

 

「だああああーーッ!!!!!」

 

そしてその蹴りをクローズへとぶつけ、青い炎と共に爆発が起きた。クローズ側が必殺を発動していた都合もあり、ディケイドも多少ダメージを負っているのも事実だ。しかし、変身が解けているリュウガを見れば勝敗は明らかである。続けて、士も変身を解いた。

 

「くそっ…俺たちをまた…連れ戻すのか…」

 

「…そうらしいな。だがその前に聞かせろ。ビルドは誰だ。お前は違う!」

 

「…お前には関係ないだろ。知ってるくせに」

 

「知ってたら苦労はないんだがなぁ」

 

そうしてため息をついたその時、木の陰からボサボサとした髪をポニーに束ねた女が現れた。その手には、ゼリー飲料のような何かが握られている。

 

「見つけたよ。アタシにも連絡くれよな門矢研究員!こいつらひっ捕らえて来いってんだろ?変身前でよかったな。生身じゃこいつらには勝てねぇ!」

 

『スクラッシュドライバー!』

 

「こいつら…?クローズ以外にもいるのか?」

 

「あぁ?そこにいんだろビルドがよぉ。霧海セントが!」

 

「そう言うことか…」

 

そして、エージェント佐渡こと『佐渡(さど)カズミ』はゼリーを構え、リュウガに対して挑発するようなモーションをとった。対し、リュウガは立ち上がって今一度変身しようとする。

 

「ダメだよリュウガくん!再変身は危ない!」

 

「…再変身だァ?じゃあ誰にやられたんだ」

 

「さぁ?誰だろうな…変身!」『KAMEN-RIDE』

 

そう言いながら、スクラッシュゼリーの蓋を回転させたカズミの前に、士が立ちはだかった。怪訝な表情の彼女の前で、士はカードをセットする。

 

『DECADE!』

 

「なんのつもりだ士研究員!それにそのアイテム…プロジェクトエボルトのどれでもないな。…いいね、燃えるぜ!」『ロボットゼリー!』

 

「変身!」

 

『潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!』

 

ディケイドが変身を終えた直後にカズミも変身を終え、グリスとなる。そして二人の拳が同時にぶつかり、若干ではあるがディケイドが押された。

 

「なるほど、大したことはなさげだなぁピンク色ォ!!」

 

「マゼンタだ!」

 

「あっそう!」

 

お互いの怯みによりグリスとディケイドに距離が空いたその時、二人同時にアイテムを取り出した。グリスはユニコーンと冷蔵庫ボトルを、ディケイドはカメンライドカードである。

 

『シングル!』『ツイン!』

『ツインブレイク!』

 

「どりゃあああああああああ!!!!」

 

『KAMEN-RIDE BLADE!』

『ATTACK-RIDE BLAYROUSER!』

 

冷気をまとった突撃の、その目の前にオリハルコンエレメントが展開された。驚くカズミであるが今更避けようもない。吹っ飛ばされつつ着地し、通り抜けてブレイドの姿に変わるディケイドを迎え撃った。

 

「おらあああ!!!」

 

「…危ないな!」

『Thunder』『Metal』『Slash』

 

さらにブレイラウザーで斬りかかる。ツインブレイカーがそれを防ぎ、さらに押すが、ディケイドは左手でカードをラウズ。鋼鉄化によって攻撃を防御しつつ、電気をまとう斬撃で切り返した。

 

「ったく、こっちは連続戦で疲れてるんだがな」

 

『FINAL-ATTACK-RIDE B-B-B-BLADE!』

『ATTACK-RIDE SLASH!』

 

「知るかァ!!」

 

『スクラップフィニッシュ!』

 

「どりゃあああああああ!!!」

 

グリスが飛び上がる中、ディケイドはブレイラウザーを今一度構え、さらに先ほどの戦いで刺さりっぱなしだったライドブッカーを抜いた。そしてライドブッカーを投げつけ、その上に光の刃を重ねた。

 

「激情!情熱!熱風!アタシを止めるには足りねぇぞおおおおお!!!」

 

「だったら重ねるだけだ!」

『Slash』『Thunder』『Lightning slash』

 

同時にライトニングスラッシュも重ねがけをし、光の刃をX状へ。アタックライドの影響で光刃まで現れ、ディケイドの攻撃はさらに激しいものとなる。

 

「うああああああ!!!!」

 

「うぐっ…!」

 

そして同時に爆破が起き、二人共々地面に転がる。ディケイドの方は変身解除である。グリスは仮面の中で笑いながら、フェニクスボトルをセットした。

 

『チャージボトル!』『潰れな〜い!』『チャージブレイク!』

「一時撤退だ。…ったく!」

 

そして赤い不死鳥の炎をまとい、空へとその姿を消した。その様子を見て、セントとリュウガは顔を見合わせ、訝しげな様子である。

 

「あんた…なんで…」

 

「連れ去るっていうのがどうも怪しい。あんたらが世界を滅ぼすってわけでもなさそうだしな」

 

「…味方、なのか」

 

「そいつがビルドだってんならな」

 

そうしてセントに目を向けてみれば、彼女の表情は暗いものである。何かしらの事情を感じ、士は口をつぐんだ。

 

「私は…ビルドなんかじゃない…ましてハザードなんてっ!!」

 

「落ち着いてセント。大丈夫、君は優しい、誰も傷つけない。落ち着いて、息を吸って」

 

リュウガがなだめるように、優しく語りかける。セントはビルドに対し何かしらトラウマがあるらしいということが分かり、士はため息をついた。

 

「…あ、えっと、そのお兄さん。門矢研究員?」

 

「門矢士だ」

 

「…士さん、多分敵じゃないよ。ボトルの適合が見られないの。…つまりファウストの手がかかっていない」

 

「本当に?じゃあ士さんこのボトル振ってよ」

 

「…こうか?」

 

言われた通りロックボトルを振ってみれば…どうだ、適合を示す数式のビジョンが空中に現れるではないか。疑いの目を向けるリュウガであるが、続けて士がボトルを振ったことで、その視線は驚きに変わる。

 

「いやおい待てよ、なんで全部適合すんだよ。おかしいだろ、ギャグか?」

 

「俺に言われても困るな」

 

「…特殊体質?ではない。エボルトの事情から鑑みれば…そう、異世界の住人ってのが一番有力」

 

それを聞き、士は目を見開いてセントの方を見た。彼女も彼女で、自慢げにニヤッと笑いを浮かべた。当てられたことなどまずないので、新しい感覚だ。

 

「…あんた、まだ変身はできそうか?」

 

「ああ、問題ないが」

 

「…じゃあ行くぞ。嗅ぎつけられた以上君も来なきゃいけないけど」

 

「本当に行く気なの?まあ、君がそうしたいならそうするけど」

 

どこに行く気だと士が言いだす前に、リュウガは地図を渡した。それは国会議事堂を指し示しており、まさかここに突っ込むのかと顔をしかめた。

 

「嫌なら手伝ってくれなくても結構だよ」

 

「フン、誰がそう言った」

 

そうしてマシンディケイダーに乗り込む横で、ライオンボトルでビルドフォンをマシンビルダーへと変えた。セントはリュウガの後ろに乗る形で乗り込み、2台が発進した。

 

 

 

 

「あぁーくっそー…。強かったなあのマゼンタ色」

 

「何をしてるんだニンジン」

 

「うっせーぞロン毛。昼休憩だよ昼休憩」

 

コンビニ弁当をベンチで頬張るカズミの前に、スーツを着た長髪の男が立っていた。名は樋川(ひかわ)ゲントクである。

 

「お前はどうなんだよ樋川議員さんよ」

 

「出張を終えたところだ。国会議事堂に向かう」

 

「あっそ、頑張れよ」

 

そしてゲントクの背を見送った時、ベンチの隣にユウスケが座り込んだ。カズミ的にはなぜ自分の隣かという気分であったが、見れば周りはどこも埋まっていた。なるほどと頷いたその時、彼女のバッグからボトルがこぼれ落ちた。

 

「おっと、危ない」

 

「あー、ナイスキャッチ、サンキュー!」

 

ユウスケの向けたサムズアップに対して、カズミはどこか安心させられるものを感じ、ニヤッと笑みを浮かべた。

そんな時。

 

「うぅ…ぐぉ…」

 

『緊急通告!東京都千代田区公園内でスマッシュが出現!位置情報を…』

「いらねぇよ、目の前に現れやがった!」

 

『スクラッシュドライバー!』

『ロボットゼリー!』

 

「疲れてっけど…人命かかってりゃそれどころじゃあねぇなッ!」

 

目の前で暴れるマッシブな機械的な赤の怪物『ランニングスマッシュ』に対して、口をお手拭きでぬぐいながらカズミはポーズをとった。その横でユウスケもアークルを出現させ、クウガへとなるべくポーズを取っていた。

 

「「変身!」」

 

『潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!』

 

クウガドラゴンフォームとグリスが同時に変身を終え、その目を見合わせた。ユウスケはなるほどという感じだが、カズミは驚き気味である。

 

「まあいいか、行くぜっ!」

 

「おう!」

 

適当に枝を拾い上げ、ドラゴンロッドへ。クウガとグリスの連続攻撃がランニングスマッシュへと繰り出される。しかし相当なスピードである。上手いこと攻撃をかわし、二人へと拳をぶつけた。

 

「けっこーかてぇな」

 

「なら…こっちだ!」

 

グリスがハチボトルを装填すると同時にクウガもペガサスフォームへ。二人同時に構え、スマッシュと距離を空けた。

 

「銃とか持ってない?」

 

『シングルブレイク!』

「銃だぁ!?ねぇよ!」

 

「えっ…持ってると思ってたな…」

 

落胆するクウガの方へ、ランニングスマッシュが直線走行を始め、突進を繰り出した。避けられないというそこへ、グリスが駆け出す。

 

「邪魔だァ!!」

 

正面から相手の勢いも利用しつつツインブレイカーをぶつけ、毒針による大ダメージを与えた。怯みながら逃げようとするスマッシュの背を見てクウガへと駆け寄った。

 

『ツイン!』『ビームモード!』

 

「ホラよ」

 

「サンキュー!」

 

そして、冷蔵庫ボトルをセットして変形させたツインブレイカーを渡す。瞬間、ツインブレイカーはペガサスボウガンへとモーフィングされた。逃げゆくランニングスマッシュの背に標準を合わせ、グリップを引く。

 

「たぁー!!」

 

「アタシも…もいっぱぁつ!」

『スクラップフィニッシュ!』

 

手放したその瞬間、ランニングスマッシュの背を弾丸が貫く。ボトルの成分そのままにモーフィングされたため、そこには冷蔵庫の属性とハチの貫通性能が付与されていた。続けて薄い氷に覆われたスマッシュへと、グリスはキックを繰り出し、スマッシュを粉々に砕いた。

 

「うわああああああ!!!」

 

「おーわりっと。…これは電車か?」

 

緑の爆風からボトルに成分を回収しつつ、カズミは満足げな様子である。ユウスケもスマッシュとなっていた人が無事であったのを確認し、大事をとって救急車を呼んだ。

 

「おっと、いつもはアタシの作業なんだがね。助かるぜ。…あんちゃん名前は?アタシ佐渡カズミっての」

 

「俺は小野寺ユウスケ。ま、事情あって旅をしてるってとこかな」

 

「…ふーん。…あぁーー!!!!」

 

戦闘が終わって安堵の空気が流れる中、突如カズミが絶叫をあげる。見れば、先ほどの戦いに巻き込まれてコンビニ弁当が地面に落ちていた。

 

「アタシの…アタシのゴマだれ牛しゃぶヘルシーサラダうどん598円がァー!!」

 

「…あー、えっと、あっちにラーメン屋があるよ。俺が奢る」

 

「…いいのか!?」

 

 

 

 

「止まりなさい君たち!見学なら…うおっ!」

 

必死で止める警備員たちを無視し、マシンビルダーとマシンディケイダーは国会議事堂へと突っ切っていく。最終的には正面玄関を突き抜けて中央広間へと突入した。

 

「貴様たちか。…侵入者たちは」

『スクラッシュドライバー!』

 

その士たちの前に、ゲントクが二階階段より飛び降りつつ現れた。そして伊藤博文の銅像を前に、クラックボトルを取り出す。

 

『デンジャー!』『クロコダイル!』

「この国の安全を脅かすなら…何人も俺の前で立たせない」

 

「覚えがないな。ま、世界なら破壊してるけどな。お前たちはこの先に用があるんだろ、行け!」

 

「助かるよ士さん」

 

変身の準備を終え、構えるゲントクの前で、士はカードを見せつけるように構えた。睨み合う中、2人が声を上げる。

 

「変身…」

「変身!」

 

『割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オーラァ!』

『KAMEN-RIDE DECADE!』

 

ビーカーに紫の液体が満たされるその目の前で、10の影が士に重なる。そしてビーカーが砕け、ディケイドの体がマゼンタに染まったことで二人は変身を終えた。

 

「はっ!」

 

「フン!」

 

駆け出した二人の拳が同時にぶつかり、さらにキックも同時にヒット。少し距離を空けた二人であるが、それぞれトランスチームガンとライドブッカーによる射撃戦へと切り替え、中距離戦が始まった。

 

「行くよセント」

 

「うん…」

 

2人はライダーバトルを尻目に、奥の床をぶち抜いて地下へと向かっていった。ローグが止めようとするが、ディケイドがそれを邪魔し、2人は無事地下へと入ることができた。

 

「ファウストの地下秘密研究所は…こっちだ。あったよ」

 

そして慎重にリュウガは扉を開けた。その薄暗い不気味な光景に嫌悪感を覚えつつ、奥へと進んでいく。

そして厳重に閉じられた扉を破壊し、保管倉庫へと侵入した。

 

「…覚えていたとはな」

 

その2人の背に、声がかかる。振り返った先には、白衣の男が立っていた。胸の名札に書かれた『ファウスト国立研究所研究員 鹿島(かしま)ナリアキ』の字を見て、リュウガはビルドドライバーを装備した。

 

「お前の名前…覚えてるぞ。いや、薄暗くて見えづらいがその顔もだ。…セント、危ないから下がってて」

『wake up!』『cross-z dragon!』

 

「ビルドは戦わないのか?」

『bat…』

 

「黙れ。…今日だけでプロジェクトエボルトの姉妹機3つとも見るとは思ってなかったよ」

 

クローズドラゴンを構えながらため息をつき、リュウガはナリアキを睨みつけた。対しナリアキもトランスチームガンにバットロストボトルをセットして、変身すべく構える。

 

『Are you ready!?』

『ミストマッチ…』

 

「変身!」

「蒸血!」

 

『wake up burning!get cross-z dragon!yeah!』

『bat…ba bat…fire!』

 

煙の中から火花とバイザーを輝かせ、ナイトローグが姿を現わす。同時に変身を終えたクローズとその拳がぶつかる。

 

「やれやれ…」

 

『ビートクローザー!』

 

続けてクローズはビートクローザーを構え、ナイトローグへ斬りかかった。ナイトローグはうまくそれをかわすと、近距離射撃を浴びせる。

 

「くそっ…やっぱ疲労があるな」

『special tune!』

 

「リュウガくん…ごめんなさい…臆病な私で…凶暴な私で…」

 

「セント!俺は君がそんな顔をすることの方が嫌いだ!俺を心配するなら…笑顔で送ってよ!」

 

「お熱いな…!」

 

ライトボトルを装填しながら、クローズは後ろのセントへと言葉をかけた。それを受け取り、セントは今にも砕けそうな笑顔で、リュウガを応援し始める。

 

「頑張って…君なら…きっと勝てる!目的を果たせる!私が信じてる!」

 

『ヒッパレー!スマッシュスラッシュ!』

「…ああ、ありがとね!!」

 

無理やり作った笑顔に結果としてさらに心を痛めるが、だがそれでもやる気が出るというもの。一転して光まとう斬撃でナイトローグを押し返した。さらに電撃を飛ばし、ダメージを与え、転ばせる。

 

「…あった、ゲットだよリュウガくん!」

 

「ナイスだよセント!さて、お暇しますか!」

 

「逃すか!」

 

そうして逃げようとするクローズの背に、寝たままの姿勢で銃撃を浴びせる。さらに柱を掴み、大きく回る姿勢で寝技のキックを繰り出した。

 

「寝技はブラッドスタークのウリだろうが…」

 

クローズは怯みながらも、セントの手を握って出口を目指した。しかしナイトローグがスチームブレードを構え、クローズへと振り下ろす。ビートクローザーで防御には成功するが、動けない状況である。

 

『ELEK STEAM!』

 

「雷を使えるのは私もだ。大人しく捕まってもらう!」

 

「くそっ…」

 

じわじわと押されていき、肩に当たったあたりでダメージも入り始める。いつまで耐えられるかという、その時。

 

『special tune!ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!』

 

「リュウガ君なら…大丈夫!」

 

『メガスラッシュ!』

 

セントの手でセットされたのはラビットボトルである。セントの声が彼の背中を押し、赤い刃がスチームブレードを押し返し始めた。それはライダーシステムに潜む、感情に呼応するシステムの賜物である。

 

「ああ、大丈夫だよ!今なら俺は…負ける気がしない!」

 

「うわぁ!!」

 

最終的に、完全にナイトローグを追い返し、壁に叩きつけた。変身解除までとはいかないが、大ダメージを与えることに成功だ。その隙にクローズとセントはハシゴを登っていき、地上へと飛び出した。

 

『FINAL-ATTACK-RIDE D-D-D-DECADE!』

 

『クラックアップフィニッシュ!』

 

「ぐああああああ!!!」

 

「うぐっ!…はぁ、はぁ…!」

 

そうして中央広間に出た瞬間、ローグとディケイドのキックのぶつかり合いが目に飛び込んだ。両方ダメージを負っているが、疲労もあってか地に倒れ伏したのはディケイドである。

 

「…おい、大丈夫か樋川議員!」

 

「防衛大臣…!」

 

膝をつくローグの元へ、さらに男が現れる。石塚(いしづか)ソウイチ防衛大臣である。ローグの苦戦の様を見て、彼もボトルを取り出した。

 

「お前もこの国に仇なす者か…!」

『cobra…』

 

「蒸血…!」

 

『ミストマッチ…co cobra…cobra…fire!』

 

そしてブラッドスタークがディケイドの前に立ちはだかる。もう終わりかと思った、その時。青い光が広間へと放たれた。

 

『KAMEN-RIDE』

『O-JA!』『SAGA!』

 

仮面ライダー王蛇と仮面ライダーサガがブラッドスタークとローグの前に出現。そして突撃する二人の前に、飛び降りる形で海東が現れた。

 

「この間に君たちは逃げたまえ。士もだ」

『KAMEN-RIDE DIEND!』

 

「お前に感謝するとはな…!」

 

皮肉気味に吐きながら、ライドブッカーで威嚇射撃。できた隙にクローズもマシンビルダーを用意し、ディケイドもマシンディケイダーに乗り込んだ。「冷たいこと言うね」と呟く海東を背に、彼は国会議事堂を後にした。

 

「…どーしよ。俺たちの隠れ家見つかっちゃったね」

 

「うん、次にどこかないか探そっか」

 

「…住む場所がないならしばらく俺のところに来るか?」

 

士が何気なく言ったその言葉を聞き、2人は喜びの表情を向けた。そして同時に頷き、光写真館に厄介になることを決めた。

 

「いやそんなこと言われてもね、『俺の家』じゃないからね!私のお家!」

「そうです!だいたい士君自体居候でしょう!」

 

「いいだろ2人ぐらい」

 

「えぇー、でもなぁ」

 

「…セント、他にいい場所を探そう」

「だね…」

 

「あっ、おい」

 

出て行こうとするセントの寂しそうな背を見て、栄次郎は唸り始めた。しばらく経ち、ため息。仕方ないねと空き部屋へ案内した。

 

「君、えっと…」

 

「陸谷リュウガです。こっちは霧海セント」

 

「うん、私は光栄次郎。こっちは孫の夏美。リュウガ君は士くんと一緒に寝てね。セントちゃんはこっちの空き部屋にね」

 

栄次郎の案内の通りに荷物を置き、リュウガは戦いの疲れ故に倒れこむように腰を下ろした。

 

「…カメラだ」

 

セントもセントで、疲れ果てた様子である。部屋に置かれたカメラへと、何気なく目を向ける。夏美はその様子を見て、セントのそばへと寄った。

 

「このデジカメもう壊れちゃったんですけどね。この倉庫はそう言うの置いてるんです。あ、掃除はしてるんで清潔ですよ!」

 

「これ使ってもいい?この辺の壊れたカメラとかフィルムケースとか」

 

「ええ、いいですけど…」

 

「ありがとう。えっと、夏美さん」

 

セントのぺこりと言う丁寧なお礼を受け止め、それほどのことでもないと自慢げに言い、隣へと座った。

 

「…さて、この液晶にコネクトして…よいしょっと」

 

そしてバッグから取り出した工具で作業を始める。その様子を士とリュウガも見に来て、彼女の作成を見届けた。

 

「完成!名付けてエボルモニター!これを…」

 

5分ほどで完成した小さなモニターを置き、かばんを今一度漁る。そして地下研究所から盗み出したエボルドライバーを置き、そのスロットにエボルモニターを差し込んでレバーを回した。

 

「この赤いベルト…絵のベルトだ…」

 

『……ん?あれ!?外が見える…って、君は!タクミじゃないか!』

 

モニターに映ったのは、白い髪をしたリュウガの姿である。だがリュウガもセントもそれに動じる様子はない。淡々とした様子で会話を始めた。

 

「こんな姿だけど…私は空真(そらま)タクミではないよ。始めましてエボルト。私は霧海セント」

 

『セント、ねぇ…。いやどうもそっくりだが…。違うと言うからには違うんだろうね。なんか僕のそっくりさんも居るし』

 

画面の中で訝しげな様子であるが、動じているわけでもない。新たにカメラを分解して開発作業を進めつつ、セントは話を続けた。

 

「あなたの力を借りたいの。お願い…できる?」

 

『…その顔でされたお願い、断れるわけないだろ。いいよ、もちろん君に力を貸すさ』

 

エボルトの快い対応に、2人は安堵した。これで味方が増えると、胸をなでおろしたその時。

 

『現在、文京区にスマッシュの情報が…』

 

テレビから中継である。それを聞き、またかとため息をついた。リュウガと士が外に出る中、その背にセントもついた。

 

「君は別に大丈夫でしょ。もうエボルトも居るんだし」

 

「これの使用データを取りたいの。8割完成してたんだけどね、まさかカメラからあんなちょうどいいパーツが取れるなんてね」

 

その手にドリルクラッシャーを握りながら、マシンビルダーの後ろに乗り込む。そして2台同時に発進し、出現情報のある場所へ飛ばした。

 

「…居たぞ」

 

目的の場所では、大柄な銀のボディのウォールスマッシュが暴れていた。士とリュウガはお互いの顔を見合うと、同時にベルトを装備、変身シークエンスを始める。

 

『wake up!cross-z dragon!』

『Are you ready!?』

 

「「変身!」」

 

『wake up burning!get cross-z dragon!yeah!』

 

『KAMEN-RIDE DECADE!』

 

同時にクローズとディケイドが並び立ち、ウォールスマッシュへと向かった。鈍重ながら防御力と攻撃力は凄まじく、2人とも楽勝と言える様子では無い。

 

「お前がそう来るなら…!」

 

『FORM-RIDE KIVA DOGGA!』

 

対しディケイドはキバへとカメンライド。ドッガハンマーでの重い一撃を浴びせた。その様子を、鳴滝は物陰から見ていた。

 

「今までの世界で飽き足らず…新たな世界まで破壊する気か。おのれディケイドっ!」

 

そして彼が手を広げたのと同時にオーロラが現れ、そこからは多数のハードガーディアンが姿を現す。そして一気にディケイドへと襲いかかり、ウォールスマッシュの相手はクローズのみとなった。

 

「ぐああああ!」

 

消耗しきった彼がしっかり相手できるはずもなく、簡単に変身解除にもって行かれてしまった。さらに気も失っている。絶体絶命の彼を抱きかかえ、セントは安全な場所を求めて路地裏へ走り去った。

 

「だあああああ!!」

 

「とおりゃっ!」

 

そんなウォールスマッシュの元に現れたのはグリスである。さらにはクウガマイティも到着し、ハードガーディアンとウォールスマッシュの相手を始めた。

 

「助かったぞ。…何かあったら困るからな!」

 

そしてディケイドの方は戦力がいないセント達の後を追った。狭い道を抜けていく、そんな時。

 

「イヤーー!!!来ないで…!」

 

ストロングスマッシュが親子の元へ迫っていた。ディケイドが助けようとするが、ハードガーディアンの邪魔が入る。どうしようもないというその時、真っ先に駆け出したのはセントであった。ストロングスマッシュの腕を押さえ、親子に逃げるよう促す。

 

「うぅっ…」

 

だが、彼女もまた生身である。払いのけられただけで、全身傷だらけであった。しかし、依然生身で対抗しようとする。

 

「なぜ変身しない!ビルドになれるんじゃないのか!」

 

「私は…誰も傷つけたくない!あんな兵器になるのなんて…ごめんだよ!」

 

「兵器になるようなやつは…自分を投げうって人を助けようとしないだろ!お前は正義にために戦える本当の強さを…持っているはずだ!」

 

「…強さ」

 

今一度投げ出されたその目の前に、リュウガのビルドドライバーが転がっていた。一瞬の葛藤ののち、彼女はそれをしっかりと掴んだ。

 

「私は…私は…うぅっ!!」

 

「セントッ!!」

 

そして装備したその瞬間、ストロングスマッシュはセントを壁へと押さえつけた。うめき声をあげながらも、セントはボトルを取り出し、一振り。ビルドドライバーへ挿入した。

 

『ラビット!』『タンク!』

『ベストマッチ!』

 

「うおおおおおおお!!!!」

 

自分を無理矢理、そしてギリギリ奮い立たせながら、彼女はレバーを回す。前面に展開されたスナップビルダーがストロングスマッシュを押しのけ、ビルドの半身を成した。

 

『Are you ready!?』

 

その問いかけに、完全にYesとは言えない。だが、こうなってしまえば戦うほかないのも事実である。

 

「変身!!」

 

戦いの準備とばかりにファイティングポーズをとり、今一度その手を広げた。同時に彼女をアーマーが挟み込む。

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』

 

そして、二色の戦士仮面ライダービルドが、そこに復活した。

 

「…行くよ」




次回、仮面ライダーディケイド

『エボルラビット!』

「作る、形成すると言う意味の、ビルドだ!」

「仮面ライダーブラッドと名付けよう!」

「潤動ッ!」

「紛れも無い人間だ!」

「第2話 ラブアンドピースの法則」

全てを破壊し、全てを繋げ!



なんか思ったより早くスタートですね。というわけでこんにちは。最近いつも眠いサードニクスです。
今回ビルドの世界ということで、女主人公やら全く変身しないやら本編味方ライダーみんな出すやらで結構思い切ってやりました。
ビルドは私の性とすごく合った作品で、いっぱいアイテム使わせたい病患者には効くものなのです。
ちなみにランニングスマッシュとウォールスマッシュはオリジナル怪人です。
そういうわけで第1話いかがだったでしょうか。感想くれると喜びますよ。
上でも述べたように本作はいわゆる合作なので、俺が書きたいという方は私の活動報告からどうぞです。


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第2話 ラブアンドピースの法則

というわけで今回でわたし担当分終わりです。
アマゾンズあたり書くかもですが。


『FINAL-ATTACK-RIDE D-D-D-DIEND!』

 

『クロコダイル!ファンキーブレイク!クロコダイル!』

 

ディエンドとサガ、そして王蛇の攻撃に、ブラッドスタークとローグは若干であるが押されていた。そしてディエンドが放った必殺を放ったタイミングで対応できたのはローグの方のみである。

 

「喰らいたまえ」

 

「誰が…!」

 

2人の銃撃がぶつかり、爆風を巻き起こした。しかし双方にダメージはなく、お互いの状況はあまり変わらない。

 

「まあいいか、時間稼ぎには成功だ」

 

『ATTACK-RIDE INVISIBLE!』

 

今一度迫ってくるローグとブラッドスタークを前に、ディエンドは姿を消してしまった。数秒ののち、ディエンドが逃げたのを確認し、ため息とともに2人は変身を解いた。

 

 

 

 

第lim[n→0]sin²2(x)/{1-cos(x)}話 ラブアンドピースの法則

 

 

 

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』

 

「…行くよ」

 

自信なさげに、セントは歩き出した。その手に握ったドリルクラッシャーをストロングスマッシュにぶつけ、さらにラビット側の足で反発力を活かしたキックを叩き込んだ。

 

「おぅう…」

 

「今度はこっちだよ…!」

 

さらに今度はタンク側で蹴り上げをかまし、高威力の左ストレートを決める。そして転ぶストロングスマッシュを前に、新たにハリネズミボトルを取り出し、セットした。

 

『ハリネズミ!Are you ready!?』

 

「なるほどな」

 

そしてハリネズミタンクとトライアルへと姿が変わる。棘の拳で的確にダメージを与えていき、さらに高威力のキックで追撃をかけた。そして怯んだ隙に、さらにボトルを変更する。

 

『消防車!ベストマッチ!Are you ready!?』

 

「ビルドアップ!」

 

『レスキュー剣山!ファイヤーヘッジホッグ!イェイ!』

 

ファイヤーヘッジホッグフォームである。救急車側のシステムで警察と消防に連絡を飛ばしつつ、あたりの避難状況を確認した。

 

「逃げ遅れてる人は…そっちね!」

 

そして拳でストロングスマッシュを退け、銃モードのドリルクラッシャーで瓦礫を吹っ飛ばす。行く手を阻まれていた男性が逃げていったのを確認し、ストロングスマッシュを見据えてレバーを回した。

 

『Ready go!ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』

 

「やああああああ!!!!」

 

左手のラダーをぶっ刺し、水を注入しつつ縮めながら接近、描かれる円グラフを突き抜け、右手の拳を叩きつけた。

同時に緑の炎とともにスマッシュが爆発し、中から人が倒れ出る。改造されていた女性の安全を確認し、今度はディケイドと戦うハードガーディアンに目を向けた。

 

「どりゃあ!!」

 

ビルドの拳で怯んだそこに、ドッガハンマーが叩きつけられる。その隙に、ビルドは先程採集したボトルを振った。瞬間、ゴリラのレリーフだけに入っていた茶色は全体へと広がり、ボトル全体が透明度を増した。

 

『ゴリラ!Are you ready!?』

 

「今度もパンチ系かぁ…」

 

ゴリラ消防車のトライアルに姿を変え、今一度パンチを叩き込んだ。アーマーが硬いガーディアンには棘の攻撃よりも面の攻撃の方が効くらしく、こちらの方が効果的だ。

 

「そろそろ片付けるか」

 

『FINAL-ATTACK-RIDE K-K-K-KIVA!』

 

続いてディケイドは必殺技を発動した。雷鳴の暗闇の中、トゥルーアイによって拘束されたガーディアンへ、月明かりとともに拳を叩きつける。そして爆発とともに闇が晴れ、ガーディアンが一体粉々になっていた。しかしまだ全滅ではない。

 

『KAMEN-RIDE 555!』

『ATTACK-RIDE 555 SHOT!』

 

「次はお前だ」

 

ディケイドファイズへとその姿を変え、ファイズショットでの格闘戦へ移行。その横でビルドもコミックボトルを振り、フォームチェンジの準備をした。

 

『コミック!Are you ready!?』

 

「今度はこいつだよ…!」

 

そして消防車側がコミックに。素早く相手のデータを取り、執筆と製本機能で「マンガで分かるハードガーディアン」を印刷した。そしてパラパラと見て、相手の弱点を確認し、レバーを回す。

 

『Ready go!ボルテックアタック!』

 

「ここだっ!」

 

説明通りに背中のバッテリー側に回り込み、描いた放物線を縄にしてキャッチ。その背中に重い一撃を叩き込んだ。そして大きく怯んだチャンスを見て、ディケイドも準備する。

 

『FINAL-ATTACK-RIDE F-F-F-555!』

 

「だぁーー!!!!」

 

ショートしながら固まるハードガーディアンへ、正面からグランインパクトを叩き込んだ。ついに耐えきれず爆発し、また粉々に。続いてウォールスマッシュとハードガーディアン達の方へ向かった。そんな時、ビルドがエアコンの室外機の上に置いていた本に目が行く。

 

「これは…お前がさっき見てたやつだな」

 

「うん。ハードガーディアンのマンガ風詳細説明書だよ」

 

「見やすいな。何だこのキャラ、やけにゆるキャラ風だな。…ま、だいたいわかった」

 

そう言って適当に投げ捨てると、今一度ウォールスマッシュの方へ走り出した。続いて走りつつビルドは忍者ボトルを振り、ドライバーにセットする。

 

『忍者!ベストマッチ!Are you ready!?』

 

「ビルドアップ!」

 

『忍びのエンタテイナー!ニンニンコミック!イェイ…!』

 

今度はニンニンコミックフォームである。専用武器4コマ忍法刀を使い、ウォールスマッシュへ斬撃を叩き込んでいった。グリスも同様にツインブレイカーでの攻撃をしており、二人の攻撃にウォールスマッシュは押されていく。

 

『火遁の術!火炎斬り!』

 

『ディスチャージボトル!潰れな〜い!ディスチャージブレイク!』

 

さらに4コマ忍法刀の火炎攻撃と、消しゴムボトルによって透明化したグリスの不意打ちを喰らい、大きく怯みを見せた。

 

「どりゃあ!」

 

さらにクウガもパンチを浴びせ、ついには膝をついた。その隙を狙い、三ライダー揃って必殺技を発動する。

 

『分身の術!』

『Ready go!ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』

 

『スクラップフィニッシュ!』

 

まず地面にグリスとウォールスマッシュを焦点とした楕円が現れる。そして実体化させた擬音、手裏剣型エネルギー刃、ビルド直接の斬撃がその楕円を滑って攻撃を浴びせた。続いてグリスとクウガの同時キックである。

 

「うぉおおお!!」

 

うめき声をあげながら緑の爆炎を吹き上げ、スマッシュ撃破。中の人間の無事を確認したタイミングで、消防車ハーフボディが呼んでいた救急車が到着した。そしてビルドはグリスが回収したダイヤモンドボトルを奪い取り、振り始めた。

 

「おいそれアタシの!トドメ刺したのアタシじゃん!」

 

「どうでもいいでしょそんなの」

 

レリーフだけであった水色が全体を染め、クリアーに変化。ゴリラボトルと同時にビルドドライバーにセットした。

 

『ゴリラ!ダイヤモンド!ベストマッチ!』

 

「ったく、フリーダムにやりやがるぜ」

 

そしてレバーを回し、スナップビルダーを形成。4コマ忍法刀を投げ捨て、ポーズを取ってフォームチェンジを迎え入れた。

 

『Are you ready!?』

 

「ビルドアップ」

 

『輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イェイ…』

 

そしてゴリラモンドフォームが爆誕した。ディケイドが相手するハードガーディアン達の元へ向かい、戦闘が始まる。だが、防御力がやけに高い相手複数にさすがに苛立ちを覚えたのか、ディケイドはカードを取り出した。

 

『FORM-RIDE 555 ACCEL!』

『ATTACK-RIDE 555 POINTER!』

『FINAL-ATTACK-RIDE F-F-F-555!』

 

「10秒で片付けてやる!」

 

『Start up』

 

そしてアクセルフォームへと変わり、加速。空中に跳び上がった直後にポインターを背中にぶつけ、強化クリムゾンスマッシュを一気に叩き込んだ。続いてビルドも余った個体の前に立ち、必殺を発動する。

 

『Ready go!ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』

 

周りのハードガーディアンの残骸がダイヤモンド化しつつ、双曲線を描いて激突した。そして拘束されたハードガーディアンへ拳を叩き込む。即死効果が発動して爆散し、同時にディケイドもハードガーディアン達を爆破した。

 

『3…2…1…Time out Reformation』

 

アクセルフォームが解除され、ディケイドも変身を解除した。それと同時にユウスケも変身を解除。だが、ビルドとグリスは依然変身したままである。

 

「…さて、アタシをぶっ倒すか?」

 

「…」『忍者!Are you ready!?』

 

『隠れ身の術!ドロン!』

 

グリスが戦闘態勢を取るが、ビルドは応じる様子はない。忍者ダイヤモンドのトライアルとなり、4コマ忍法刀で士とリュウガ共々姿を消した。

 

「…っと。ごめんね、急に戻って来ちゃって」

 

そして彼女らがたどり着いたのは光写真館である。煙を払いながら、セントはドアをくぐった。その頃リュウガも目を覚まし始め、エボルドライバーの前に三人並んで座り込むのであった。

 

『お帰り!また人を助けたのかい!タク…ミ…じゃあないんだっけ。たしかにタクミは地毛が黒だったなぁー。タクミの方が女口調っぽかったしねー』

 

「…そうなんだ」

 

寂しげに頷くセントの髪色は綺麗な栗色である。メガネが反射してよく分からないが、その視線が落ちているだろうというのは容易に想像できる。

 

『…君たちは何者、なんだい?』

 

「空真タクミのクローン。…事情あってね、ファウストで作られたの」

 

『なるほど、どおりでソックリなわけだ』

 

エボルトの無垢な笑顔を受け、セントの胸は痛むばかりである。その横顔を見て、リュウガは彼女以上に暗い顔であった。

 

『君は僕のクローンかな!』

 

「…半分正解だよ」

 

そういって彼は、自分の胸元からクローズドラゴンを取り出し、画面の前に置く。それを見て、エボルトは訝しげな様子を見せた。

 

『これは?』

 

「俺の本体。…これに君のクローンボディとエネルギー増幅成分を与えたのが俺さ」

 

「なんだと?」

 

さりげなく吐いた告白に対し、士も驚愕の表情を見せた。むしろエボルトはため息をつき、なるほどと悲しげに呟いた。

 

『僕は…いや君も…利用されてた存在なわけだ』

 

「ま、それが嫌で逃げ出して来たのさ」

 

『ところで…タクミはどうしてるんだい?』

 

「……それは」

 

エボルトの問いに対し、セントは言葉に詰まる。だがその様子で察したのか、エボルトの顔は一気に悲しみに染まった。

 

『君は…彼女の知能を残すため…かな。でも君は…それを君のために使うべきだよ、霧海セント。君は、空真タクミじゃあなく、霧海セントなんだから…』

 

「うん、優しいんだね、エボルト」

 

そうして、また無理をしながら笑顔を浮かべた時、扉を開けてユウスケが帰宅した。士は特に気にしていなかったが、数秒ののち、顔をしかめた。

 

「お邪魔します!」

 

後ろにカズミがいるのである。士がドアの前に立ってセントたちを見せないようにするが、カズミからすれば意味不明な行いであり、若干の苛立ちが見える。

 

「通してくれよー」

 

「通ればいいだろ」

 

「塞いでんじゃねぇか。なんでだよ」

 

「さぁな」

 

「ああもうめんどくせぇな!どけよカメラ男!」

 

「誰がカメラ男だ…。やめろ、掴むな、やめろって言ってるだろ…!」

 

「アタシのこと農家って馬鹿にしてんのか!?」

 

「初めて知ったぞそれ!」

 

「あーもーどーけーよー!!」

 

「だーれーがー…っと、うわあ!」

 

ガヤガヤいがみ合っているうちに、ついに士が転んでしまう。そしてその上にのしかかるように倒れたカズミが、セントと顔を合わせてしまった。

 

「あぁーーーー!!!!見つけたぞてめぇ!ここに潜んでやがったか反逆者!…エボルドライバーまで盗みやがって…!」

 

そしてエボルドライバーを掴んだ瞬間、眼前にエボルモニターが飛び込んだ。驚きで投げ出したエボルドライバーをリュウガが掴み、危ないでしょと釘を刺した。

 

「あっすまねぇ。ってかそいつは誰だ。…エボルトか!?」

 

『その通りだよ、えっと、佐渡(さわたり)カズミ』

 

「名札のふりがなちっさくて見えねぇのか?さどって読むんだよ。サド!」

 

『すまないね。…悪いがこの子達の居場所は…ここは言わないでくれるか』

 

エボルトの言葉を聞き、カズミは訝しげな表情を見せた。そしてセント、リュウガ、エボルト、ついでに士の顔を見て、訳がわからんという様子で口を開いた。

 

「…そいつらに利用されたって聞いたんだがな。お前のエネルギーを奪ってスマッシュを作ったとか」

 

『はぁ!?むしろ逆だ!いいか、スマッシュを作ったのは石塚ソウイチだ!僕の宇宙船であるパンドラボックスを勝手に開け、そしてエネルギーを解放した!反対するタクミに無理やり僕をこの器に閉じ込めさせた!さらにはクローンを産み出して利用しようとする!…騙されてんだよ』

 

「…信用ならねぇ」

 

正直を言えば、カズミからすれば衝撃の連続であった。だが彼女にも立場や懐疑心というものがある。やはり納得できないという様子で、無言のまま玄関へ向かった。

 

「おい…佐渡」

 

「…今回は見失ったと報告しておく。勘違いすんな、さっきの救命行為に協力したから特別にだ」

 

視線すら向けずにそういうと、何故か電車ボトルを置いて自分自身のバイクに乗って去って行ってしまう。どこに行ったのか、何しに行くのかというのが気になり、リュウガはマシンビルダーを起動した。

 

「ったく…あれ、こっち行ったよね」

 

「…ああ、俺も行くよ。アイツはきっと俺たちの味方になってくれる」

 

走り出そうとするリュウガの横でユウスケもビートチェイサーを用意し、エンジンをかける。そして並走し、カズミの行った後を追い始めた。

 

「ったく…」

 

カズミはカズミで、訳がわからない気分であった。農家だったというのにいきなり訳のわからない男に、「ロボットに適合するから」とエージェントに勧誘され、正義感のために戦って、ようやく男のことを信じてもいいかなという時にこれである。

 

「…真偽の程確かめさせてもらうぜ」

 

そして国会議事堂の前で止め、正規の入り口から地下研究室へと入っていった。そこに居たのはまぎれもない石塚ソウイチであり、ちょうどいいとばかりにカズミは歩み出る。

 

「…スマッシュを産んだ原因、あんたなんだって?」

 

「…ほう?誰がそんなことを言ったんだね」

 

「エボルトだよ。あんたはアタシらを騙してんだってな」

 

それを聞き、ソウイチは少し悲しげにため息をついた。カズミはそのため息が「そんなデマにホイホイと」の呆れであることを期待していた。…だが。

 

『cobra…』

 

「蒸血」

 

そのため息は、「始末しなければならないなんて」という惜しみのものであることを知った。

 

『ミストマッチ…co cobra…cobra…fire!』

 

「エボルトか…。奴からどこまで聞いたか知らんが…そしてどうやって聞いたかも知らんが…。こうなればもはやこれしかあるまい」

 

迫り来るブラッドスタークに対抗すべくスクラッシュドライバーを用意するが、ロボットゼリー共々銃撃で吹き飛ばされてしまった。遠くに拾いに行ける状況でもない。

 

『steam break cobra!』

 

そしてさらに必殺を発動。もはや死しかないのかと目をつぶった。

だが、いつまでたっても光弾は自分を襲わない。恐る恐る目を開ければ、そこには防御態勢のローグがいた。

 

「ぼさっとしてるなニンジン。さっさと拾ってくるんだな」

 

「言われなくてもわぁーってるよ!」

『ロボットゼリー!』

「変身!」

 

『潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!』

 

二人が並び立ち、同時にブラッドスタークへ向かった。対しスタークはスチームブレードで迎え撃つ。

 

「樋川議員…お前!」

 

「あんたの攻撃的姿勢は国を歪ませる。防衛大臣、俺はあんたを追い出して内側からこの日本を直すつもりだったんだよ」

 

ローグも同じくスチームブレードでもってぶつかる。押されるのはスタークの方である。さらに切り上げをぶつけ、スタークを吹っ飛ばした。

 

「なるほど…バレているならこうしても問題ない訳だなァ!!」

 

立ち上がりながら、スタークは謎のエネルギーをトランスチームガンにねじ込んだ。そしてその銃撃を放ったと同時に、二人は広域にぶっ飛ばされ、同時に壁に叩きつけられる。

 

「これは…!」

 

「冥土の土産って奴だ、教えてやるよ。霧海セントや陸谷リュウガの話は聞いたか?」

 

「なんのことだよ」

 

「知らないなら知らないでいいさ。…俺はエボルトから肉体を構成してるメインエネルギーを奪い、俺自身に注入した。こいつは元々コブラの性質を持ったエネルギー体でな。俺の体内には常にコブラの成分が溢れてると思っていい」

 

そう告げたかと思えば、スタークはその手を広げてコブラ型エネルギー体を放った。まっすぐにグリスの方へと向かっていき、口を開く。

 

「…なんのつもりだ!!」

 

『クロコダイル!ファンキーブレイク!クロコダイル!』

 

それを銃撃で防ごうとするが、もはや遅く、エネルギー体はグリスに噛み付いて、床に叩きつけた。さらには投げ出し、変身解除されながらカズミは床を転がった。

 

「…カズミ!」

 

「うるせぇぞロン毛…ごほっ」

 

血を吐きながら地に伏すその様を見れば、大丈夫とは言えないのがわかる。ユウスケとリュウガが到着し、そのカズミの様を見て絶句する。

 

「…っ!」

 

「体に力が入んねぇ…」

 

ボソッと呟きながら、彼女はスクラッシュドライバーとゼリーを取り出した。そして目の前のリュウガへと押し付けるように渡し、その手を離した。

 

「これ…」

 

「試作に使われてたゼリーだ…。ドラゴン…!」

 

「なるほど…あんたの意思、受け取ったぜグリス!」

『ドラゴンゼリー!』

 

病院に連れていくようユウスケに任せ、リュウガは変身の準備をした。手をクロスさせたのち右手を下げ、レバーを操作、ゼリーがリュウガを覆った。

 

『潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!!』

 

そしてビーカーが砕け散ると同時に、水色の戦士クローズチャージが現れる。ローグも今一度構え、スタークへと向かった。

 

「蛇の攻撃に気をつけろ!」

 

「了解!」

 

ローグの警告通りコブラを華麗にかわし、ビートクローザーで斬撃を叩き込む。続けてローグも拳をぶつけ、双方同時に吹っ飛んだ。

 

「それなら…!」

 

「今度は撃たせん!」

 

今一度コブラの成分を使おうとしたところをローグは妨害し、隙を作る。そこへクローズは突撃し、ビートクローザーを叩き込んだ。

 

「これは…倒されたあいつの分だァ!!」

 

『special tune!ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!』

『メガスラッシュ!』

 

そこにセットされたのは腰横にマウントされていたロボットボトルである。鉛色のエネルギーが、スタークの体を引き裂いた。

 

「行くぞ…!」

 

「ああ」

 

『スクラップフィニッシュ!』

『クラックアップフィニッシュ!』

 

そして、二人が同時にキックを繰り出す。龍のエネルギーとともに蒼炎の蹴りが叩き込まれ、さらには噛みつくような連続挟み蹴りが繰り出される。

 

「ぐあああああ!!!」

 

有無を言わさぬ連続攻撃を受け、スタークは爆破ののち変身解除。その様を二人とも見届け、病院の方へと向かっていった。

 

 

 

 

 

「は…?」

 

「毒だと…!」

 

病院にて医師に告げられた言葉に、二人は耳を疑った。すでにユウスケは聞いていたのか、暗い顔をして椅子に座り込んでいる。

 

「…絶望的だとさ、フフ」

 

空っぽな表情でカズミはそう告げた。それを受け取り、一同は黙る他出来ることがない。ただただ悲しみながら、視線を落とすのみである。

 

 

 

 

「防衛大臣!」

 

「鹿島研究員…。エボルトを奪い返すぞ。スマッシュを出すんだ。例の新兵器もだ!」

 

椅子に座り込みながら、ソウイチは叫んだ。それを受け取り、ナリアキは仕方あるまいという様子で倉庫を開け、中からアイテムを取り出す。

 

『東京都千代田区でスマッシュが…』

 

「これは…」

 

そして、士の持っていたデバイスへと連絡が入った。その情報を聞き、セントと士がその地点へと向かう。

 

「あいつだね…」

 

「行くぞ」

 

ナリアキが用意したのだから当然であるが、そこにはスマッシュがいる。翼を持つフライングスマッシュと機械的なメタリックスマッシュだ。2人はそれぞれドライバーを装備し、向かっていった。

 

『ラビット!』『タンク!』『ベストマッチ!』

『Are you ready!?』

 

「「変身!!」」

 

『KAMEN-RIDE DECADE!』

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』

 

そして同時に向かっていきそれぞれスマッシュに拳を叩き込んだ。だがあまり大きなダメージというわけでもなく、二人揃って反撃をもらう。

 

「他の個体より硬いな」

 

『ATTACK-RIDE SLASH!』

 

ディケイド はスラッシュを発動し、斬撃を強化した。同時にビルドもドリルクラッシャーを用意しての攻撃へと切り替えた。

 

「ぐっ…」

 

だがこれでも大したダメージではなさそうである。その様子を見て、ビルドはリュウガから借りたボトルを取り出し、振った。

 

「じゃあこいつだ」

 

『パンダ!』『ロケット!』『ベストマッチ!』

『Are you ready!?』

 

「ビルドアップ!」

 

『ぶっ飛びモノトーン!ロケットパンダ!イェーイ!』

 

そして水色とモノトーンのロケットパンダフォームへ。ビーム砲での攻撃を行いつつ、爪での攻撃で追い込んだ。さらにロケット側で炎を放ちながらの加速パンチを浴びせ、メタリックスマッシュは大きく隙を見せた。

 

「いける…」

 

『Ready go!』

 

そして必殺を発動したその時、スマッシュを追う形でナリアキが現れた。そして倒されそうな手駒の様を見て、彼は新兵器を取り出した。

 

「…樋川議員なぞより私が持つにふさわしかったのだ。なぜ1号機が奴なのだ!」

 

『ギアエンジン!』『ギアリモコン!』『ファンキーマッチ!』

 

「潤動ッ!」

 

『フィーバー!』

 

『ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』

 

煙を纏ったまま、彼はスマッシュとビルドの間に立ち塞がる。そしてビルドの爪をはじき返しながら、ギアとともにヘルブロスが現れた。

 

『フィーバー!』

 

「なっ…!」

 

そしてビルドへと有無を言わせず殴りかかり、さらには近接銃撃を向ける。最終的に転び込んだビルドへ、今一度銃を向けた。

 

『ファンキーフィニッシュ!』

 

「死ねェーー!!」

 

「うわあああああ!!!」

 

目の前で光弾を浴びせられ、その姿はセントへと戻った。さらには今一度詰め寄り、ヘルブロスは銃口を向ける。

 

「これで最後だ…!」

 

「セントぉぉ!!!」

 

ディケイドが叫ぶがもはや無駄である。セントの状況を見るに、抵抗は不可能だ。どうしようもないと、絶望しかけたその時。

 

『ハザードオン!』

 

セントの胸から赤い光をまとい、ハザードトリガーが現れる。さらにエネルギーを放ってヘルブロスを怯ませ、さらには自動でビルドドライバーにセットされた。

 

『ドンテンカン!ドンテンカン!ドンテンカン!ドンテンカン!』

 

「やだッ!やめて、やめてッッ!!!」

 

『ガタガタゴットンズッタンズッタン!ガタガタゴットンズッタンズッタン!Are you ready!?』

 

「嫌だっ!!」

 

自動でレバーが回り、変身の準備が始まった。だがセントはそれを受け入れず、ビルドドライバーを投げ捨ててしまう。

 

「…フン、愚かだな、自分を受け入れきれないとは」

 

その様子を見て、ディケイドはマスクの下で怪訝な表情をした。対し、ヘルブロスはフッと嘲るような笑いを吐く。

 

「知らないのか?こいつはエボルトの成分純化作用のこもったハザードトリガー。そこに空真タクミのクローンボディを与えたものさ。だからこいつが使ったボトルは高純度のものへと変質する」

 

ダラダラと語ったかと思えば、また態勢を直してセントへと銃口を向けた。そして発砲したその時、華麗な動きで彼女は光弾を避ける。見れば、その髪は白く変質していた。

 

「やれやれ…戦意喪失中みたいなんでね!」

 

その腰に巻かれているのはエボルドライバーだ。つまり、彼がセントの体を借りているということである。ヘルブロスの攻撃を避けたかと思えば、彼女の持つラビットボトルを自身の能力でエボルボトルへと変異させた。

 

「どっこいせ」

 

そしてビルドドライバーをボトル状に変質させ、ライダーシステムボトルへ変えた。驚いた様子のヘルブロスを前に、両方をセットする。

 

『ラビット!』『ライダーシステム!』『エボリューション!』

 

『…Are you ready?』

 

「変身!」

 

クロスののち手を広げ、成分の塊となったスナップビルダーを受け入れた。最後にリングがセントの体を回り、そしてその中からライダーが現れる。

 

『ラビット!ラビット!エボルラビット!フッハッハッハッハッハッハ!』

 

「仮面ライダーエボル…ビルドフォーム!……そう、作る、形成すると言う意味の、ビルドだ!以後、お見知り置きを!」

 

現れたエボル ラビットフォーム、いや、ビルドフォームと呼びこととしよう。彼は記憶の中のビルド、空真タクミの真似をして、決め台詞とポーズをとった。

 

「なるほど。これを使うのは疲れるんだが…俺もそうは言ってられんな!」

 

『KUUGA AGITΩ RYUUKI 555 BLADE HIBIKI KABUTO DEN-O KIVA!FINAL-KAMEN-RIDE DECADE!』

 

そしてディケイドは、コンプリートフォームへとその姿を変える。ライドブッカーを構え、驚くヘルブロスへと駆け寄った。

 

「えぇー…なにその姿ぁ…」

 

ドン引きのエボルであるが、そう言ってる場合でもない。先程のビルドとは打って変わった様子で、ドリルクラッシャーでヘルブロスを追い詰めていく。

 

「くそっ…行けお前ら!」

 

ヘルブロスは一旦下がり、スマッシュらをけしかける。だが、それが効く相手でもない。お互い同時に必殺を構える。

 

『DEN-O!KAMEN-RIDE LINER!』『FINAL-ATTACK-RIDE D-D-D-DEN-O!』

 

『トレイン!クリエーション!Ready go!トレイン!』

 

「だああああああ!!!」

 

「どりゃああああああああ!!」

 

ディケイドと電王が並んで電車斬りを繰り出すその横で、エボルも似た技を繰り出した。そして同時にスマッシュが切り裂かれ、二つの爆炎がまきあがる。

 

「…ッ!」

 

「あとはあんただよ!」

 

「さっさとケリをつけるぞ」

 

「来るなッ!!」

 

タカとガトリングの成分を回収し、純化しつつ今度はヘルブロスへと向き直り、今一度二人が必殺を発動する。ヘルブロスの攻撃は効いている様子はなく、淡々と迫っていった。

 

『HIBIKI!KAMEN-RIDE ARMED!』『FINAL-ATTACK-RIDE H-H-H-HIBIKI!』

 

『ラビット!』『Ready go!エボルテックフィニッシュ!』

 

「はァッ!!!!」

 

「どりゃあ!!」

 

そして逃げようとする背中に声の刃をぶつけ、さらにエボルの横蹴りを叩き込んだ。瞬間、爆風とともにスーツが弾け飛び、その変身が解かれる。

 

『チャオ!』

 

「…鹿島研究員!」

 

「防衛大臣…!」

 

そしてほぼ同時にブラッドスタークが到着し、ディケイドとエボルの方を睨みつけた。なにを思ったか、エボルへと駆け出し、成分をまとったパンチを叩き込んだ。

 

「ぐあああああ!!」

 

そして引き剥がすようにエボルドライバーを奪い取り、ナリアキへと渡した。困惑する彼を前に、変身するのだと告げた。

 

「了解しました…ハハハハハ…!」

 

『やめろ…僕はお前らなんぞに…うぐっ…』

『エボルドライバー!』

 

「無理やりエボルトを押さえ込んでいるんだ…」

 

ブラッドスタークのその前で、ナリアキはバットボトルとエンジンボトルを取り出した。追いついたクローズチャージとローグたちの前、ベルトへと挿入する。

 

『コウモリ!』『発動機!』『エボルマッチ!』

『…Are you ready?』

 

「変身…ッ!!」

 

そしてレバーを回すと同時に、複雑で刺々しいペインビルダーが展開される。その様子にスタークすら絶句するが、ナリアキはむしろ嬉しげある。

 

『バットエンジン!フハハハハハ!』

 

そして巻きつくと同時にアーマーが形成され、新たなる仮面ライダーが、そこに誕生した。

 

「来たか樋川ゲントクゥ…貴様は前から気に入らない。私が変身する予定だったローグをお前が奪い…そのおかげで私の使うトランスチームシステムはナイトローグなどと呼ばれるッ!」

 

「逆恨みはなはだしいな…」

 

「黙れェ!この姿は…あえてマッドローグと呼ぼう。貴様を始末するまでの間だッ!!」

 

狂気的な叫び声をあげながら、マッドローグはトランスチームガンとネビュラスチームガンの2丁拳銃スタイルで迫った。

 

「くそっ…コンプリート持続はこの辺が限界か」

 

連戦による疲労というのもあり、ディケイドはコンプリートの力を保っていられないようである。ディケイドの姿へ戻り、スタークへと向かっていった。

 

「無駄だァ!!!」

 

だが、マッドローグの射撃がクローズとディケイドを阻む。セントはセントで先ほどのことに怯えきった様子で、ハザードトリガーを前に座り込んだままである。

 

「くっ…」

 

スタークは負傷ありながらの戦いだが、マッドローグの的確な攻撃がそれをカバーする。どんどん追い詰められたその時。

 

『ATTACK-RIDE STEAL VENT!』

 

空中からの銃弾が、スタークのトランスチームガンを狙った。撃ってきた方を見たときには、すでにロストボトルはディエンドの手の中である。

 

「よっと、やはり変わっていたようだね」

 

空のボトルに自ら濃縮した成分を込め、スタークはロストボトルを復活させた。見れば、飛び降りてきたディエンドの手の中のロストボトルは黒と金の配色へと変わっていた。

 

「だが…これは僕の求めるお宝ではなさそうだ。君が使いたまえ」

 

「…俺?…わかった」

 

受け取ったリュウガは怪訝な表情であったが、そのボトルを見て何を言っているか分かったようである。そして何を思ったか、ディケイドへとボトルとビルドドライバーを投げ渡した。

 

「あ?何がもくて…き……っと、体少し借りるよ!」

 

すると、変身を解いた士の髪が白へと変わっていた。中身もエボルトのようである。そしてビルドドライバーを巻き、ハザードトリガーを拾い上げた。

 

「だめっ…それはっ!」

 

「まぁほら、僕に任せなよ」

『マックスハザードオン!』

 

そしてハザードトリガーを装填し、さらにクローズドラゴンを受け取り、そこへコブラロストボトルをセットした。瞬間、クローズドラゴンがその色を変える。驚くリュウガをよそに、エボルトはグレートクローズドラゴンをビルドドライバーへセットした。

 

『グレートクローズドラゴン!』『ドンテンカン!ドンテンカン!ドンテンカン!』

 

「さて、君たちを巻き込む以上…一緒に変身ってことになるけど…」

 

「…やっぱりボトルの中に精神を移してたのか。俺は準備OKだよ」

 

「…私もエボルトになら、任せられるかも」

 

「…光栄だよ!」

『ガタガタゴットン!ズッタンズッタン!ガタガタゴットン!ズッタンズッタン!』

 

レバーを回すのに合わせ、管がリュウガとセントへと伸び、士のボディに液状化した二人が取り込まれていった。

 

『Are you ready!?』

 

「行くよ、変身!」

 

『オーバーフロー!wake up cross-z!get great dragon!ブラブラブラブラブラァ!ヤベーイ!』

 

そして黒煙と赤いエネルギーを輝かせながら、中から仮面ライダーが姿を現した。エボルにも通じるどこか禍々しいような姿であり、しかしその後ろ姿はまさしく正義の味方であった。

 

「あんたのコブラ成分、リュウガの成分強化能力、セントの成分純化能力!全て合わさって…無理やりではあるが僕の完全体を再現だ。そうさなぁ、仮面ライダーブラッドと名付けよう!」

 

スタークを前に、マントをはためかせながら長々と語った。完全に予想外の事態である。焦った様子でスタークは駆け出した。

 

「オラぁ!!」

 

そして荒々しく拳を叩き込む。そんなブラッドの精神内部には、真っ白な空間が広がっている。そして士、エボルト、セント、リュウガの4人が仲良く並んでいた。

 

「えっなにこれ。俺の予想をはるかに超えてるんだけど。これエボルトに主導権ある感じ?俺意識なくすと思ってた」

 

「私も…」

 

「イマジン的な感じだな。俺の体をありがたく借りてるんだ!勝てよ」

 

脳内で響く声にまとめて肯定を返しつつ、スタークへ拳をぶつけた。ぶっ飛んでいくスタークをよそに今度マッドローグへ向かう。

 

「どりゃああ!」

 

「うぐぁっ!」

 

さらにビートクローザーとドリルクラッシャーの二刀流で、素早い攻撃を叩き込む。怯んだマッドローグへ、さらにローグからの連続キックがぶつけられる。そしてディエンドも援護射撃をつないでいく。

 

「僕がこ…ん……っと、やっぱり俺の体を好き勝手されるのはいい気分じゃないな。イマジンどももそうだったけどな」

 

そんな中、士はブラッドの支配権を奪うと、ディケイドライバーのバックルをコンプリートフォームのように腰横へサイドバックルとして装着した。

 

『FINAL-ATTACK-RIDE D-D-D-DECADE!』

 

『スクラップフィニッシュ!』

 

さらにディメンションキックを繰り出し、続けてレバーを回す。同時にローグも必殺を発動し、構えた。

 

『マックスハザードオン!ガタガタゴットンズッタンズッタン!Ready go!オーバーフロー!グレートドラゴニックフィニッシュ!ヤベーイ!』

 

「だぁーー!!!」

 

前面に展開されたカードを通り抜けながら、ブラッドはマッドローグへ迫る。その背中には、ビルド、クローズ、エボル、ディケイドの影がいるようにも見えた。

 

「ぐああああ!!」

 

『FINAL-ATTACK-RIDE D-D-D-DIEND!』

 

「くらいたまえ!!」

 

続けてディエンドからの砲撃。さらにローグの噛みつくような蹴りが迫る。銃弾での抵抗も虚しく捕らえられ、擦り付け引きちぎるようなデスロールで壁に叩きつけられた。

 

「うわああああああああ!」

 

爆破ののち、マッドローグは変身を解かれた。そこへ、壁前で倒れていたスタークが駆け寄る。

 

「鹿島研究員!…くっ、休んでいてくれ。エボルドライバー、使うぞ」

 

『エボルドライバー!』

 

そしてスタークはエボルドライバーを装備し、ブラッドへと駆け寄る。ブラッドもブラッドっで戦闘態勢を取り、放ってきたコブラ型エネルギーを切り裂いた。

 

「取ったぞ…!」

 

「!?」

 

だが、スタークの目的は攻撃ではない。傍からスライディングで通り、コブラロストボトルを奪取していた。そしてブラッドの変身は解け、3人へと戻っていく。

 

「エボルト…!」

 

「うぅっ…なんのつもりだ」

 

ボトルを振ったかと思えば、成分を加えつつ出し、不安定な状態でエボルトに肉体を与えた。何事かと戸惑うエボルトへ、スタークは銃を向ける。

 

「まずい…やめろッ!!」

 

他のライダーたちが駆け寄るが虚しく、成分を込めた銃弾がエボルトの眉間を貫いた。かすかな息になりながら、エボルトは空を見上げる。

 

「タクミ…!」

 

最後の言葉は、地球に堕ちた自分を助けてくれた、面倒を見てくれた、恩人の名であった。そして彼の遺体は成分となり、コブラロストボトルへ戻っていった。

 

「そんな…嘘だッ!!!」

 

叫ぶリュウガであったが、しかし、そこにエボルトが居ないのは確かなことであった。セントが膝をつく目の前で、スタークは、先ほど生んだ紫と変異した黒のロストボトルを融合させ、エボルボトルを生み出した。さらにトランスチームガン をライダーエボルボトルへ変える。

 

『コブラ!』『ライダーシステム!』『エボリューション!』

 

「フフフ…ハァーッハッハッハッハ!!手に入れたぞ…未来を導く力!」

 

『…Are you ready?』

 

「変身…!」

 

『コブラ!コブラ!エボルコブラ!フッハッハッハッハッハッハ!』

 

士、海東、セント、リュウガ、ゲントク。五人の視線の前で。エボルは再び爆誕した。今度はエボルトフォームとでも言うか。エボル コブラフォームの姿を想像していただこう。

 

「なん…だって…!」

 

ふと、セントの中に記憶がフラッシュバックする。それは空真タクミのものであり、そして目の前のエボルの姿が描かれた資料であった。

 

「あれが…エボルト本来の姿…!」

 

エボルトを殺した者が本来の姿を気取るとはなんと言う皮肉であろう。怒りが湧くが、それは誰も同じことで、向かっていくローグとディエンドを追うように士とリュウガも変身した。リュウガの手に握られるのは、グレートクローズドラゴンの影響で生まれたドラゴンエボルボトルである。

 

「変身!!」

 

『KAMEN-RIDE DECADE!』

 

『wake up cross-z!get great dragon!イエエェェーイ!!!』

 

エボルが呼んだガーディアンやスマッシュたちの相手をしながら、エボルと戦う4人を見て、セントは戦わなければと、立ち上がった。

 

『やめろ…やめてくれええええ!!!』

 

だが、脳内に5年前の脱走の日が反芻される。それは、自我を失って関係のない人の命を奪った日。それは、リュウガによってどうにか止められた日。

 

「で、できない…」

 

そうして震えるセントの元へ、トライチェイサーに乗ったユウスケが現れた。ハンドルを抜いてバイクから降りつつ、彼は優しく語りかけた。

 

「俺は…さ、大事な人を亡くしてるんだ。…この世界でも、友達になれた人が、助からないって言われた」

 

そう言ってユウスケが思い浮かべたのはあねさんの顔である。弱々しく、語りかける声が、カズミとも重なりそのままに再生された。

 

「…俺は、それでも笑顔のために戦える。君は怖かったんだろ?でも、今なら…正義を信じられる、君なら!」

 

「…私」

 

『ハザードオン!』

 

ユウスケが紫のアークルを構えるその横で、セントも立ち上がった。そしてハザードトリガーをセットし、ゆっくり呼吸を整える。

 

「止めてくださいね、暴れたら」

『ラビット!』『タンク!』『スーパーベストマッチ!』

『ドンテンカン!ドンテンカン!ドンテンカン!』

 

「もちろん!」

 

『ガタガタゴットンズッタンズッタン!Are you ready!?』

 

「「変身!」」

 

『アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!』

 

そして現れた黒のハザードビルダーを受け入れるように目を瞑った。ユウスケの体が銀と紫の装甲変わっていく中、黒一色ボディと赤青オッドアイの戦士が現れる。

 

「…いける!自我が保てる…!もう怖くない!」

 

ディエンドとローグ、そしてグレートクローズはガーディアン達と戦い、ディケイドはエボルへと挑んでいる。だがディケイドの方が劣勢であり、援護へと向かわねばならぬとビルドは判断した。

 

「だああああ!!」

 

「くっ…!」

 

ビルドのパンチが入り、さらにクウガタイタンの斬撃が入る。クウガの攻撃は熾烈を極めていき、その一撃には怒りがこもっていた。

 

「よくもカズミを…!」

 

その怒りのあまり、彼の体に電撃が通い始める。昔の彼なら、アルティメットになっていただろう。だが、彼は自分の負の感情を理解し、制御することができる。力だけを部分的に発現させ、その姿が変わっていく。

 

「紫に…!」

 

銀の部分が紫となり、紫は逆に金へ。見まごうこともなく、それはライジングタイタンであった。

 

「だあああ!」

 

「ぐあああ!!!」

 

ディケイドの攻撃で生まれた一瞬の隙に、ビルドとクウガの重い攻撃が叩き込まれていく。特に凄まじいのはビルドの連撃性能である。小刻みなパンチが確実にエボルを追い詰めた。

 

『タカ!』『ガトリング!』『スーパーベストマッチ!』

『ブラックハザード!ヤベーイ!』

 

そして次はホークガトリングハザードである。背中にウィングを展開し、ホークガトリンガーを構えた。

 

「くっ…!!」

 

空中を旋回しながらの銃撃にさらにダメージを負い、急降下キックに吹き飛ばされる。やはりセントは、ハザードを完全制御しているようであった。

 

「兵器なんぞにいいいい!!!!」

 

『オーバー・ザ・エボリューション!』

 

そんな時、エボルはさらなるアイテム、エボルトリガーを取り出した。それを見たビルドは、仮面の中で困惑の表情を作る。

 

「無理やり強化されたハザードトリガー…。それを使えば…死すらあり得るんだよ!?」

 

「死なばもろともだ!」

 

『…Are you ready?』

 

「ぐっ…うわああああああ!!!……変…身!!」

 

そして、全身から赤いエネルギーを放ちながら、シークエンスを終了した。瞬間、エボルは消滅し、そして虚無から新たな姿とともに現れた。

 

『ブラックホール!ブラックホール!ブラックホール!レボリューション!フハハハハハハハハ……!』

 

「ククク…ははは…ハッハッハッハッハッハ!!!成功だ…!これが最強の…国を動かす力だあああああ!!!」

 

黒い衝撃波を放ちながら、エボル ブラックホールフォームが立ち上がった。ダメージがあるようだが、それも気にならないほどの力のようであった。

 

「だあああ!!」

 

「うおっ…!!!」

 

エボルが掌底でディケイドをすっ飛ばし、クウガとビルドへ蹴りを叩き込んだ。ディケイドは変身解除、クウガは転倒、ビルドは膝をつくという形で、それぞれ余力に見合ったダメージを追う。

 

「使わせていただこう!」

 

そしてディケイドからはエネルギーを複製していたようである。手の上のライダーカードボトルをエボルドライバーにセットし、レバーを回した。

 

『カード!クリエーション!Ready go!カード!』

 

そして産み出されたのはライドブッカーである。すでにアタックライドブラストと近い効果が発動しているようであり、銃弾が連続で放たれた。

 

「大丈夫…?士さん…!」

『ラビット!』『タンク!』『ブラックハザード!ヤベーイ!』

 

生身の士をかばうようにビルドが立ったその時、掌に飛んできたビルドのカード達が、色付いた。それを今一度しまいながら、彼は立ち上がる。

 

「まだ立ち上がるか…!鳴滝とかいう男が言っていたが…異世界の住人なんだろう?我々など忘れて帰れ!命は奪わん!」

 

「それで去るようだったら…俺たちの旅はここまで続いていない!」

 

消えろと告げるエボルを前に、士はディケイドライバーを構える。その様子を見て、ソウイチは仮面の中でため息をついた。

 

「なぜこいつら兵器どもに味方する!所詮は平和のため利用されるべく生まれた存在だぞ!」

 

「…兵器だと?ふざけるな!誰かのために泣き、誰かのために笑い、誰かのために怒り、誰かのために生き、誰かのために戦う!自分の意思で愛と平和を求めるコイツらは…紛れも無い人間だ!それこそ…佐渡カズミやエボルトのような命を踏み潰して、ただ理想だけのために犠牲を厭わない。お前なんぞより人間らしい!…お前が作る押し付けがましい平和は必要ないね!」

 

「私の作る世界に対して…偉そうに…何様のつもりだ!」

 

怒りとともに吐き捨てたエボルの言葉に対し、士は不敵に笑う。そして、ライドブッカーよりカードを取り出した。

 

「何様…か。通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!」

 

『KAMEN-RIDE DECADE!』

 

そして銃口を向けるエボルの前に、仮面ライダーディケイドが立ちふさがる。ライドブッカー同士の斬撃がぶつかったのち、ディケイドは新たなカードを取り出した。

 

「試してみるか」

『FINAL-FORM-RIDE B-B-B-BUILD!』

 

「ちょっとくすぐったいぞ!」

 

「へ?」

 

困惑するビルドの背中に手を突っ込み、いつものように変形させて行く。今回はまず、ハザードトリガーそのままにラビットタンクの外見へ戻り、ラビット側とタンク側で真っ二つに別れた。

 

「ぎゃあああああ!!!セントおおおお!?」

 

「ひいいいいぃぃ!私が外れてる…左右の視界が分断されてるぅー!!でもなんか両手動く!!意味わかんない!!」

 

「ちょっと静かにしろお前ら」

 

そして双方が変形し、ウサギ型と戦車型へ。エボルへと攻撃を始めた。

 

「うわぁー!!すごい!意味わかんない!身体が2つになって同時に動いてるゥー!!」

 

柄にもなくハイテンションに叫びながら、キックと砲撃を浴びせた。だがエボルにとって大したダメージではないようだ。同時にライドブッカーで切りつけた、その時。

 

「ぎゃぁー!!私がバラバラに!?」

 

「…えっ、俺!?」

 

タンク側がバラバラになり、クウガの体の上にアーマーが乗った。その姿は、どこかタンクタンクフォームに似てもいる。もっとも、顔アーマーは右目だけであるが。

 

「…だいたい分かった!」

 

そしてラビット側のアーマーを迎えに行くように、ディケイドは空中へ跳んだ。そしてラビットラビットのようなアーマーをまとい、新たな姿が誕生した。

 

「おりゃああああ!」

 

「たぁ!」

『ATTACK-RIDE BLAST!』

 

クウガはライジングタイタンソードをキャタピラの加速と同時に叩き込み、エボルのパンチを胸部アーマーでガードした。続けてディケイドから高速で飛び回りながらの銃撃をもらう。

 

『Ready go!カード!』

 

「ならこっちだ!」

『ATTACK-RIDE SLASH!』

 

エボルが斬撃へと切り替えたに対し、ディケイドもスラッシュを発動。跳びながらでの連続斬撃に切り替えた。

 

「でやあああああ!!!」

 

『クラックアップフィニッシュ!』

 

「はぁ!」

 

『FINAL-ATTACK-RIDE D-D-D-DIEND!』

 

そこへ、ローグの噛みつきキックが叩き込まれる。エボルトリガーに受けたダメージで動けなくなったところへ、ディエンドの銃撃が入った。

 

「ぐわぁ!!」

 

『special tune!ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガスラッシュ!』

 

「たあああ!!」

 

さらに、グレートクローズがドラゴンボトルを込めて切り上げを繰り出し、エボルを空中へと叩き出した。同時にディケイドとクウガも飛び上がる。

 

『FINAL-ATTACK-RIDE B-B-B-BUILD!』

 

「行くぞユウスケ!セント!」

「ああ!」

「OK士さん!」

 

そしてラビットタンクのキックと同じグラフがエボルを挟み込み、その上にディケイドとクウガが立ち上がる。ディケイドパンドラがその技の名である。

 

「だあああ!!」

 

「てやー!!」

 

そして滑る勢いそのままに斬撃を繰り出し、続けてアーマーだったビルドがハザードフォームへと変形。背面からさらにキックを叩き込んだ。

 

「ぐわああああああああああ!!!!!」

 

その最後の一発はエボルを吹っ飛ばし、周りのガーディアン全てを巻き込みながら爆煙を吹き上げた。

 

 

 

 

「…もう、向かうんだね、士さん」

 

「ああ、俺は旅をしなくちゃならないんでな」

 

写真館へと帰ろうとするユウスケと士へ、セントとリュウガは寂しげな視線を送った。背中にその眼差しを受けつつ、2人はバイクを走らせる。

 

「あっ、士くん!ニュースやってますよ、こっちの仮面ライダーの!」

 

帰ってきて早々かかった夏美の声を受け、士はTVの前へと駆け出した。映っているのは事件のニュースである。

 

『樋川議員の告発より、石塚ソウイチ容疑者の技術の軍事利用が発覚しました。今後ライダーシステムは警察や自衛隊により、救助や防衛のため使われていく予定であり…』

 

「また、救ったんですね」

 

「まぁ、そうなるな」

 

そんなふうに頷きつつ、士は置かれた新聞に書かれていた『毒からの奇跡の復帰。治療は石塚容疑者の成分』の文字も見逃していなかった。

 

「よかったなユウスケ。ここに…」

 

そしてそのことを、誰よりも彼女と友情を築いていたユウスケに話そうとする。…が、新聞を持ったまま転んでしまう。さらに助けに駆け寄った栄次郎もだ。

 

「これは…」

 

転んで掴んだ勢いにより切り替わった背景ロールには、無数のメダルが描かれていた。銀のメダルの上に輝く赤黄緑のコインと、天の光へ伸びる赤い腕が、次の世界を示す。

 

 

 

 

「さて、この世界のお宝はいただいたよ!」

 

ディエンドはエボルトリガーを片手に、楽しげに告げた。警視庁本部に侵入者ということで、エボルクローズフォームはがっつり戦うつもりだったのだが。

 

「…あんたは協力者だったな。仕方ない、俺が怒られるとしよう。侵入者発見出来ず、俺は無駄足」

 

「助かるよ。例はいつかするさ」

 

『ATTACK-RIDE INVISIBLE!』

 

そしてディエンドは姿を消し、その姿をリュウガは仮面の下で見送った。




次回、仮面ライダーディケイド

「「ワァァァァ!?/キャァァァ!?」」

「働く怪人……か……」

「暴走したヤミーを倒すのが、俺たちの仕事だ」

「チッ!アイツはどこだ!」

「世界の破壊者?うーん、でもやっぱ、同じライダーなら助け合いでしょ?」

『タカ!トラ!バッタ!』

「第3話 ヤミーハンター・Anything OOO」

全てを破壊し、全てを繋げ!



というわけでビルド編完結です!!
鏡面ライダーさんのオーズ編をお楽しみに。
今回はとにかく詰め込みまくりました。19000文字超えってアホかよ!
ビルドのFFRはアーマーです。ラビラビタンタンを意識した感じですね。ハザードから変身というのは意外だったのでは。見た目ラビタンに戻ってますけどね。
十分に見せ場をあげられなかった子も居るかなというのが悔やまれるポイントであります。
…でもこんだけ頑張ったのだから褒められたいと思うのも当然の真理だと思うんです!
あと説教シーン。ここが書きたくてディケイド書いてるとこありますね。満足です。
今回の教訓は「お前にライダーを書かせると長くなる」ですね。反省!


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