七夕 (亜梨亜)
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七夕

「七夕って色々と理不尽だと思わないか?」

「何が」

「織姫と彦星はただ天の川渡ってイチャイチャしたいだけじゃん?短冊に願いとか書かれても「いや知らんが」って感じじゃないのかなって」

「言われてみれば、まあそうだね」

「お前考えてみろよ、例えば織姫と彦星がドキドキしながらエッチしようとしてたとするじゃん?」

「しねーよ」

「電気消して、彦星が織姫の羽衣を脱がせたその瞬間に下界から「彼女欲しい」とか「彼氏欲しいです」とか「インスタグラマーやってます!@なんとかかんとか フォローお願いします♡」みたいな願い事ひっきりなしに聞こえてきたらもうノイローゼになるぜ?新手のプレイかよ」

「お前の脳内何色?ピンク?真っ黒?」

「お願い事プレイ」

「それだけ聞くと互いにして欲しいことを言い合うみたいなプレイに聞こえる」

 

「そもそもリア充に願いを叶えてもらおうって魂胆がムカつくよな」

「意味がわからない」

「リア充の幸せにあやかろうとしてるのがムカつく」

「お前の沸点どこにあるの?」

「沸点なぞとうの昔に爆発したわ!水蒸気爆発」

「リア充だけじゃなかったんだ、爆発するのって」

 

「この時期になると駅とかにも笹が飾られるじゃん」

「あー、よく見るね」

「あれ室内に置いてるからそもそも織姫も彦星も願い事見えねえだろ、なんの意味があるの」

「あーゆーのは書くことに意味があるんじゃないの?」

「で、そういう場所は願い事じゃなくてさ。アホなこと書くやつとか宣伝始めるやついるんだよ。さっき言ったインスタグラマーとかな」

「あとは「胸が大きくなりますように」とかな」

「あーゆーのムカつくよな。願い事を書けっつってんの」

「お前さっき願い事書くやつムカつくって言ってなかった?」

 

「何が言いたいかって言うとやれ七夕だからってやんややんや騒ぐ奴がムカつく」

「ただの陽キャに劣等感感じてる陰キャじゃん、それ」

「二人のイチャイチャくらい静かにさせてやれってんだよな。周りが騒ぎ立てるものほどめんどくさいもんないだろ」

「お前織姫と彦星相手にどこ目線で言ってんだよ」

「てか結論リア充がムカつく」

「織姫と彦星含まれてんじゃねえか。お前七夕向いてないよ」

 

 

「……まあ、でも今年の七夕は嫌いじゃないかもな」

「さっきまで文句言いまくってたくせにどういう風の吹き回しだよ」

「だって、晴れてるじゃん。それこそ風の吹き回しが良かったんだろうな」

「あー、そういえば七夕って基本的に雨降るかめっちゃ曇るかの二択だもんね」

「こうやって綺麗な天の川を眺めたりするのは俺は割と好きだ。多分、元々七夕ってこういう楽しみ方するもんだろ?」

「お前、意外とロマンチックだよね」

 

「星、綺麗だな」

「そうだね」

「……月も綺麗だな」

「……ふざけてるの?」

「俺は一切合切四六時中ふざけていない」

「その言い方がふざけてるように聞こえる」

 

「今頃織姫と彦星はイチャイチャせっせだろうな」

「ムードぶち壊したね」

「ムカつくから短冊に願い事書いて邪魔してやろうか」

「お前さっきまでムカつくって言ってたこと全部やるつもり?役満だよそれ?」

「…………ほら、書いた」

「……何書いたの、見せてよ」

 

 

 

 

 

 

──お前と付き合えますように。

 

 

 

 

 

 

「笹に結んでくる」

「……あたし七夕嫌い。お前ほんとムカつく」

「願い事、叶うといいな」

「叶えてやるよ、バカ」



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