セフレ以上恋人未満 (ソアさぁん!)
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1話 セフレ以下
一目惚れなんて、存在しないと思ってた。見た目だけで好きになるなんて、そんなもの本物の恋とは言えないではないか。だが、どうやら人というものは単純らしい。
仕事帰り。私は1人でたまに通う居酒屋へと足を運んだ。横開きのドアを開け、カウンター席に着く。いつもなら男性客で溢れかえっていたのだが、タイミングが良かったのか、向かいにできた新しい居酒屋のせいなのかほとんど客はいない。私としては静かでいいのだが、お店としてはたまったものでは無いだろう。
せめて私が少しでも売上げに貢献してあげようと、何故か上から目線になりながら品を決め、店員さんに声をかける。
「すみません 」
「はい! 」
元気よく返事を返してくれたのは、女性店員さん。このお店に女性なんていたかなとメニューから目を離し、店員さんを見る。
つい、目を見張り、硬直してしまった。
「あ、あの、ご注文は……? 」
「す、すみません。生ひとつお願いします 」
見惚れてしまい、店員さんに迷惑をかけてしまった。謝罪しながら注文をすると、かしこまりと店員さんは店の奥へと消えてしまった。しかし。
「可愛かったなぁ、あの店員さん 」
元々、私にそっちの気はなかったはずだ。片手で数えきる恋愛は全て男性とだったし、なんなら経験だってある。しかし、ここまで見惚れてしまったのは初めてだ。
「ま、女同士で付き合えるはずもないけどね 」
「お待たせしました 」
ビールだけだからだろうか。予想以上に早く提供され、独り言が聞こえてないか心配になる。もし聞かれてたら、気持ち悪がられ、この店の店員全員に情報が共有され、陰でいじられ続ける恐れがある。そんな事になったらこの店に通えなくなってしまうから勘弁して欲しい。
提供されたビールを一気に煽り、すぐに追加を注文する。あまり頻繁に飲酒はしない方だが、そのせいか1度に多くなってしまう。それでも酔いつぶれないように制限はしているのだが、なんせ可愛い店員さんがいるのだ。注文すれば会話ができるとおっさん的な思考を働かせてしまい、ついついいつもより多く頼んでしまった。そのせいか、何杯目か忘れ始めた辺りからの記憶が全くなかった。
カーテンの隙間から朝日が射し、私の顔面に直撃する。あまりの眩しさに目を覚まし、体を起こした。頭が痛い。昨日飲みすぎたか。薄らと目を開けると、そこは知らない部屋だった。低血圧と二日酔いのせいでイマイチ状況が理解できない。とりあえず携帯を取ろうと、周辺をまさぐってみると、柔らかい何かに触れた気がした。しっかりと掴み、何度か握ってみる。ムニムニと、手に吸い付くような感触だ。癖になりそう。何だか、1部が硬くなってきた。指先でそこをなぞる。
「ンッ 」
ん?今のはなんだ?辛いのを我慢し、目を開く。目に入った光景に、思わず酔いと眠気が吹っ飛んでしまう。昨日の可愛い店員さんが、裸で私の横で眠っていた。私は思わずベットから飛び降りてしまった。
「おはようございます、有彩さん 」
なんで私の名前を知ってるの、とか、なんで裸なの、とか、色々聞きたいことはあったが、驚きのあまり声が全くでない。
「昨日あんなに激しかったのに、まだ足りませんでしたか? 」
「き、昨日!?いったい私なにをしたの!? 」
私の慌てようが面白いのか、店員さんはニヤニヤしながら覚えてないんですかと尋ねて来る。ちなみに一切覚えていない。
「ナニって、ナニですよ 」
私は、私は……昨日知り合った女の子に手を出してしまったらしい。
「て言うか、有彩さん。ビックリして動きがオーバーになるのは分かりますけど、あまり激しく動くとおっぱいが揺れてとてもエッチですよ? 」
「え!? 」
言われるがまま下を向き、自分の姿を確認する。何一つ見に纏わぬ、産まれたままの姿。
私は悲鳴をあげ、そのまま床に座り込んでしまった。
店員さんはそんな私に近寄り、布団を羽織らせてくれた。
「ところで、有彩さん 」
しっかりと布団を体に纏い、顔以外隠した時、店員さんはスマホを見せてきた。て言うか、服着るか私みたいに布団羽織って。
どうやら動画を流すらしく、音量を調整して再生ボタンを押す。すると、私の声が流れてきた。嫌な予感がする。
『店員さん可愛い。抱いて 』
寝言のような声。数秒の動画はそこで終了し、さらに操作を続ける。いや、もう嫌な汗が溢れてるんですが。
『し、しおりぃ、わたし、もう……!ッ! 』
『キスして……ん…… 』
「も、もうやめて! 」
勝手にスマホを操作し、停止させる。店員さんが少し残念そうな顔をするがこれ以上自分の喘ぐ声を聞かされていたら気が狂いそうだ。
「そんな動画撮って、何が目的なの……? 」
「目的?そんなの無いですよ? 」
「どういう事? 」
「だって、有彩さんが撮ってって言ったんですよ? 」
こんな自分が、嫌になってくる。
「本当にごめんなさい! 」
さっきまで驚きすぎて、大切なことを忘れていた。そもそも私が酔い潰れて、変なことを口走ったせいでこんな事になったのに、私だけ動揺して、自分を正当化しようとしていた。そんな自分が本当に本当に嫌になる。謝ったところで許されることでは無いかもしれない。でも、謝らなければいけないと、私は思った。
店員さんは何かを言いかけ、途中で止める。そして何かを考え、閃いたらしい。
「じゃあ、キスしてください。後、私のお願いを1つ聞いてくれたら、許します 」
目を瞑り、顔を近づけてくる。もう少し抵抗があるものかと思ったが、意外とそんなことは無かったらしい。まぁ、シてる時もキスはしたし、これが最後、そして、これで罪が償えるなら、安いものだ。私は唇を重ねた。女の子の唇は、男性のものと違い柔らかく、そして心地がよかった。
なんだか名残惜しくもなりながらも唇を離す。後は、お願いとやらを聞いて終わりだ。
「お願いって、なに? 」
「私のセフレになってください! 」
とてもいい笑顔で、お願いされた。
私はまた思考が鈍るのを感じた。いったい、これから私はどうなってしまうんだ?
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性欲異常
まだまだ未熟ですが、暖かい目で見守ってください……
業務用のパソコンのキーボードを叩きながら昨日の事を思い出した。私は、年下の女の子に手を出してしまったのだ。
彼女の名は佐和 栞。20歳で職業不詳。おそらくフリーターだろう。行きつけの居酒屋で出会い、その後最後までシてしまった。いや、酔った勢いで誘ったらされてしまったのだ。
昨日はそんな彼女と連絡先を交換したのだが、まだ一言も連絡はない。さすがに出会ったばかりで連日会うなんて、付き合いたてのカップルでもあるまいし当たり前なのかもしれない。実際、若干安心している私もいる。昨日の栞の発言は、場の流れで言ってしまっただけかもしれない。ヤッたのも、私がウザイくらいにしつこく誘って、黙らせるために1度だけヤッたという可能性もある。
考えないようにしようとしても、気がつけば頭の中は昨日のことでいっぱいになっている。羞恥心や罪悪感が何度も押し寄せてくる。おかげでほかの作業に集中できず……
「佐藤! さっきから全く進んでいないじゃないか! 」
「はっ!すみません!! 」
上司に怒られてしまった。ため息を吐き、気を取り直して作業に集中するべくキーボードに手を置いた。
結局、思うように作業は進まないまま昼休みになってしまった。1度切り上げて、お昼を食べようとした時携帯の通知音がなった。誰だろうか。
「マジ? 」
通知を確認して、でた第一声がこれである。
夜、私は例の居酒屋の前で彼女のことを待っていた。お昼に来た連絡はこれのことである。というか、遅い。居酒屋のバイトが22時に終わると言われ、仕方なく残業してまで時間に合わせてこの場所まで来たのに。かれこれ30分は待っている。そろそろ帰ってしまおうか……
少しだけ覗いて、いなかったら帰ろうと入口を少しだけ開けてみる。すると、私が開けるのと同時に勢いよく扉が開かれた。驚いて尻もちをついてしまった。
「あ、有彩さん! 待っててくれたんですね! 」
「貴女ねぇ……! 」
まるで犬のように笑顔ではしゃぐ栞に呆れながら立ち上がり、砂埃を払う。
「遅れるなら、連絡入れなさいよ 」
「いやぁ、既読無視されてましたし、来てくれないのかと思いまして 」
それを言われると、私が悪いみたいになってしまう。
「わ、私は仕事で忙しかったの! 」
「えぇ、お昼にメッセージ送ったのにですか? 」
昨日と同じ、ニヤついた表情でまるで私を煽るように反論してくる。この子、居酒屋で働いてる時は真面目で可愛らしい子だと思ったのに、プライベートだとこんなに生意気なのだろうか。
「ねぇ、有彩さん。手、繋いでもいいですか? 」
さっきまでのだらしのない表情とは一変して、少し頬を赤らめ、真っ直ぐ私の目を見て手を差し出した。あまりの変わりように驚いて、勢いで良いと言ってしまいそうだったが、思いとどまる。
「なんでよ。私たち、体の関係は持っていても恋愛関係は築いてないでしょ。そういう事は、彼氏でも作ってやりなさい 」
別に手を繋ぐくらい、と思うかもしれないが、一線を置くのは大切なのだ。私達はあくまでセフレであって、恋人ではない。性欲を発散させることが目的であり、これは単なるお遊びなのだ。
「そう、ですよね 」
少し残念そうに、彼女は返す。なんで栞がいきなり手を繋ごうとしたのかは分からない。もしかしたら、栞は栞で私達の距離感が掴めていないのかもしれない。
遊び慣れてると思っていたのだけれど、案外そうでも無いのかな。
「ちょ、ちょっと! いくらなんでもはやすぎ、ンッ!」
ホテルに着いてすぐ、私はベッドに押し倒されて局部に触れられた。
「そんな事言って、有紗さんもう濡れてますよ。実は期待してたんじゃないですか? 」
「そ、そんな、こと……! 」
下着を脱がされ、下半身が顕になり、だんだんと頭もボーッとしてきた。次の日が平日だと言うことも忘れ、激しく絡み合う。
「アッ、アッ、ッッッ!! 」
「昨日の今日なのに、有彩さん凄いエロいですよ 」
「変な、こと、言わない、で……! 」
何度達したのかは分からない。ただ、私達は朝が来るまでお風呂でもベッドの上でも、何度も何度も絶頂し、また責められる。
結局一睡もしないまま朝日を拝んでしまった。今日も仕事だというのに、なにをしているのだろうか。男性で言う賢者タイムというものだろうか。自分に対しての嫌悪感が凄い。
何度もイッたからか、腰が痛い。しかし、せめてシャワーを浴びなければ。昨日も浴びたが、その後もかなり汚れてしまったから、さすがにこのままでは会社に行けない。
「ほら、お風呂行くわよ 」
「え、私も一緒でいいんですか? 」
「散々私の体いじっておいて、何よ今更 」
行かないなら1人で、とシャワールームに向かおうとすると、裸のまま着いてきた。私も裸だが。
「この後仕事とか考えたくないわ 」
「そんなに私とのセックス良かったですか? 」
「疲れたし眠いのよ 」
あんなに喘がせといて、そんな事を訊くなんて。この子は少し天然のSなのか。セックスの感想なんて恥ずかしくて言えたもんじゃないので、3分の2の本音を伝えながら欠伸をする。
「……あの、非常に申し上げにくいのですが 」
「なによ 」
「びしょ濡れの有彩さんにムラっと来たのでもう一回だけヤりませんか? 」
「え、嫌よ!遅刻しちゃうじゃない! 」
「早く終わらせますから! 」
「ちょっ、アンッ! 」
結局盛り上がってしまい、3戦ほどしていたら時間が無くなってしまい、遅刻ギリギリになったのは言うまでもない。
因みに、栞のメッセージは3日ほど無視し続けた。
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セフレ以上友達以下
「そろそろ許しては貰えませんでしょうか 」
日曜日。せっかくの休日なのに、昼間からオシャレな雰囲気のカフェでアイスコーヒーを飲んでいたら正面に座るセフレに許しを乞われた。原因はわかっている。先日のあの一件以来ろくに返信しなかった事で、私がまだ怒っていると思っているのだろう。正直、今は全く怒っていない。だが、面白いのでそのままにしておこうと思う。
「あの、有彩さん?聞いてますか? 」
「聞いてる聞いてる。続けて 」
適当じゃないですかと栞はうなだれる。本当にこの子は表情がコロコロ変わり、見ていて飽きない。コーヒーをすすり、さっき運ばれたばかりのフルーツパンケーキに手をつける。甘い。口の中に鬱陶しいほど広がった甘味を打ち消すようにコーヒーを流し込む。若い頃はこのくらい、美味しく食べられたのに。私は無言でパンケーキの皿を栞の前へ差し出す。
「食べないんですか? 」
「私には甘すぎるのよ 」
「じゃあ、遠慮なく 」
さっきまでの暗い表情はどこへ行ったのか、栞は頬を緩ませながらパンケーキを食べ進める。
「歳はとりたくないもんね 」
「有彩さんはまだ若いじゃないですか 」
「嫌味にしか聞こえないわ…… 」
私たちの年齢差はたかが6つだけど、栞はピチピチの20歳で私はもうアラサー。そこには天と地程の差がある。特に肌とか。
「それなら、大丈夫ですよ 」
意味がわからずに首を傾げていると、パンケーキを食べ終わった栞は席を立ち私に耳打ちをする。
「今夜も、ホテルに行きましょう 」
「ちょっと、明日仕事なんだけど 」
「無理はさせませんって 」
半ば強引に押し切られ、夜にいつものホテルに行くことになってしまった。栞は用意するものがあるからと一時帰宅。私も夜まで家で休む事にした。まったく。さっきまで必死に謝ってたのにどういう神経をしてるのだろうか。まぁいい。とりあえず、夜まで寝よう。どうせまた朝まで眠れないのだろうし。私は10時にアラームをセットして眠りについた。
しっかりとアラームと同時に目を覚まし、私は約束のホテルに向かう。
ホテルのフロントには既に栞がいた。珍しい事もあるものだ。栞の手には何やら大きめの紙袋が握られている。
「何よその荷物 」
「あ、有彩さん! 遅いですよ? 」
荷物の事は部屋についてから話すと言い、栞は私の背中を押すように部屋へと連れていった。何故かテンションが高い栞を不思議に思うが私は押されるまま部屋へと連れ込まれた。
「さ、まずはお風呂入りましょう 」
「絶対襲うじゃない 」
「その節は本当にすみませんでした! 」
既に脱衣所で全裸になっていた栞はそのまま土下座をした。風呂に入るからって服を脱ぐのが早すぎる気がするが、そこはスルーしよう。
「ささ、有彩さんも早く脱いでください 」
「なんで一緒に入るの前提なの? 」
「え?セフレだからじゃないですか? 」
全く持って意味がわからない。しかし、今更何を言っても変わらないだろう。私は勘弁して来ていた服を脱ぐ。胸や尻が顕になる度に栞が満足気な声を出す。こいつはオヤジかなにかか。
「やっぱり、有彩さんの肌綺麗ですよね 」
唐突にそんな事を言ってきた。私も人並みには肌に気を使っているから、当然と言えば当然だとは思うが。
「褒めても何もしないわよ 」
「別に下心あったわけじゃないですよ!? 」
焦ったように弁明する彼女の姿を見てつい頬が緩んでしまう。どうやら、彼女との関係を私は嫌っている訳では無いらしい。この後髪や体を洗い浴槽に2人で入った後、何事もないままあがった。てっきり、襲われるものだと思っていたのだが。すぐに手を出してきた栞が大人しすぎるので不思議に思っていると、着替え用の服が無くなってしまっていることに気がついた。犯人はもしかしなくても栞だ。確信できる。
仕方が無いのでバスタオルを巻いて脱衣場を出た。
「なんで服持っていくのよ 」
部屋を見ると、洋服はテーブルの上に置いてあり、自分はちゃっかり服を着ている栞はベッドに腰掛けていた。
「バスタオル姿もエッチですね 」
「馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ 」
服に手をかけようとすると制止され、ベッドに招かれる。渋々バスタオルを巻いたままベッドに腰かけると、強引に押し倒された。
「お預けしてたからって、がっつきすぎじゃない? 」
栞は無言でバスタオルを奪い取り、うつ伏せにされた。やれやれ、どこまで性欲に忠実なのか。呆れてため息をつくと、直後冷たい液体が背中に塗りたくられた。突然の事で情けない声を出してしまった。栞は軽く笑いを堪えているようだった。
「いきなりなんなの? 」
「マッサージですよ。マッサージ 」
そう言うと、背中から腰にかけて手を動かしていく。どうやら、いかがわしい方ではなく普通のマッサージのようだ。なんだか安心する香りもする。気を抜けば眠ってしまいそうだ。
栞の手は腰から肩、腕、太腿へと移っていく。その辺りで私の意識は無くなってしまった。
「あれ、有彩さん寝ちゃいました? 」
返事はない。代わりに小さな寝息を返してくれた。よっぽど疲れていたのだろうな。せっかくの休日に私に付き合わせてしまって申し訳ない気持ちになる。
気持ちよさそうに寝ている相手を起こすのは可哀想なので、そのまま布団をかけてあげる。私も眠くなってきたし、今日は禁欲して眠るとしよう。私は布団に入り、スマホをいじった後、眠りについた。
「おやすみなさい、有彩さん 」
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セフレ以上カップル未満
私はどうやら、彼女との関係が満更でもないようだ。別に不満があったかと言われると特にはないのだが、同性でのセフレというものに正直少しだけ抵抗はあった。酔ってたとはいえ私から誘ってこの関係が始まったため断ることも出来ずにいたが、最近ではなんだかんだ私も受け入れてる節がある。別に私にそっちの気がある訳でもないし、恋愛感情がある訳でもない。
「あの、先輩? 」
声をかけられた方に向くと、数枚の書類を持った後輩の明日香ちゃんがが立っていた。
「どうしたの? 」
「いえ、聞きたいことがあったんですが、なにか考え事をしていたようなので 」
落ち着いた口調で彼女は話す。明日香ちゃんは大人しい性格で、それでいてしっかり者だ。仕事もよくできる。あと可愛い。
私はごめんねと謝り、彼女の質問にいくつか答えて自分の仕事に戻った。今、栞のことを考えていても仕方が無い。頬を叩き気合を入れ、目の前の仕事に取り掛かった……その時携帯の通知がなった。栞のからだ。
『今日、しませんか? 』
考えないようにした途端これだ……
『分かったわよ 』
『じゃあ、いつものホテル集合で!楽しみにしててくださいね! 』
小さくため息をつきながら携帯をしまう。画面に写った私はどんな表情をしてたかのか、自分でも分からなかった。
仕事が終わってホテル前。携帯をいじりながら栞を待っていると、大きな荷物を持った栞がやってきた。
「遅れてすみません 」
「何よその荷物 」
「いいものですよ 」
顔をニヤつかせながら私の手を引き、ホテルに連れ込まれる。いつもの様にチェックインして、お風呂でするんだろうなと考えていると、今まで聞いた事が無い様な「え」という声が栞から発せられた。
「満室、なんですか……? 」
「申し訳ございません 」
これには私もびっくりだ。まさか何も無い平日にラブホテルが満室になるなんて。何度も来たホテルだが初めてだ。肩を落としている栞を連れてとりあえず外に出る。この辺りにホテルはない事を栞も知っているのか立ち直る様子もない。
「そんなにしたかったの? 」
「……はい 」
悲しそうに頷く彼女の姿が、なんだか可哀想に思えてきてしまった。
そう、あくまで可哀想だと思っただけだ。
「ウチ、来る? 」
「え? 」
あまりにも予想外の発言だったからだろうか。栞は目を丸くして私の顔を見つめる。この子、顔はいいからあんまり見つめられるとこっちが照れてしまうからやめて欲しい。というか、いつまで金魚みたいに口をパクパクしているつもりなのだろうか。
「嫌ならいいわよ? 」
「い、行きましゅ! 」
顔を真っ赤にする栞を連れて私はホテルを後にした。
私の家は幸いホテルから遠くない。歩いても30分かからない程度だ。
「ホテルが満室なんて、思ってもなかったですね 」
「そうね。どんだけお盛んなんだって話しよね 」
そんなくだらない雑談をしながら歩いていると、あっという間に着いてしまった。鍵を開け、栞を入れると、再び顔を真っ赤に染めた。
もしかしてこの子、見た目によらず緊張しやすいのかな?
「お風呂、先に入っていいから 」
指差しで場所を示し、少しでも緊張がほぐれるようにと入浴を進める。私が栞から荷物を受け取り、部屋に戻ろうとすると服の裾を掴まれた。
「一緒に入らないんですか? 」
顔は真っ赤なまま、上目遣いで訊ねてきた。先にも言った思うが、この子は顔はいい。普段の私なら流されていたかもしれないが今日は別だ。
「お風呂狭いのよ 」
そう。物理的な問題で大人が2人入る事が不可能なのだ。今まではホテルのお風呂だったからは入れたのだが、家のお風呂ではそうはいかない。足を伸ばせば1人でも窮屈に感じてしまうのだ。事情を説明し、納得してもらおうとするが、栞は引かなかった。
「詰めれば!詰めれば大丈夫ですよきっと! 」
「そんなに一緒に入りたいの!? 」
しばらくそんなやり取りが続いたが、やはりしおりが引かなかったため私が折れた。
「お湯はるから、少し待ってて 」
本当はシャワーを浴びてもらおうと思っていたため準備していなかったが、2人で入るなら浴槽の方がいいだろう。2人で洗うスペースは本当にない。
お湯が溜まるまでお茶を飲んだり少し話したりして過ごしていると、あっと言う間にお風呂が沸いた。脱衣所に案内して先に入っててもらう。シャワーを浴び終えたタイミングで私が入る。
「すみません、無理言っちゃって 」
「本当よ 」
各部位を洗いながら横目で栞を見ると、少しだけ落ち込んでいるようだった。
「なんで、そんなに一緒に入りたかったのよ? 」
沈黙に耐えられず、話題を切り出す。栞は一瞬迷うような表情をした後、ゆっくりと話し始めた。
「私、人の家って少し苦手なんです 」
栞は足を組んで、三角座りでスペースを開ける。そのスペースに私が入った。やはり狭い。
「高校生の頃、友達と、友達の彼氏の家に遊びに行ったんです 」
水面スレスレまで顔を伏せ、組んでいる手に力が入るのが分かった。
「その時、昼間から友達とその彼氏はお酒を飲んでて、じゃんけんで負けた私がコンビニにお菓子などを買いに行ってたんです 」
顔を伏せたまま話す栞の体は、少し震えていた。
「私が出かけてたのは本の数十分だったんです。でも、その間に友達とその彼はかなり酔っていました 」
一呼吸おき、栞は顔をあげた。
「私、レイプされたんです。いくらやめてって叫んでも、やめてくれませんでした。友達も、笑いながら携帯で動画を…… 」
「ごめん 」
謝りながら、栞を抱きしめた。体重を栞にかけるようにして、思いきり。
「嫌なこと言わせて、ごめん 」
「いえ、いいんです 」
少し明るい声色で栞は言う。
「だって、そのおかげで今有彩さんに抱きしめてもらえてるんですから。それに 」
突然、何かが私の内腿を這うように動いた。驚いて、すぐに立ち上がろうとしたが栞が私の手を掴んで離さなかった。内腿を這っていたのは栞の右手で、優しく撫でながら私の陰部へと近づいてくる。
「いきなり何するの! 」
「すみません、有彩さん。この話のオチって、そこから私はタチになったってオチです。後、慰めてくれる時有彩さんの胸が私の顔に当たって我慢の限界だったんです 」
大切な場所を撫で、数回指先で弄るようにしてから中に入ってきた。風呂場に響く水音は、お湯なのか私のものなのかは分からない。
「声、我慢できてえらいですね。お風呂なので、響くと近所中に聞こえちゃうかもしれないですから 」
指を咥え、声を殺しながら荒くなった呼吸を整えようとする。
「あれ、さっきより締まってますよ 」
「そんな事、言わないで……! 」
指の動きが激しくなり、水音もさらに大きくなった。それに伴い、私も腰が動いてしまう。まだ足りない、もう少し。達してしまいそうで、まだ達せない。
「もうイきそうですか?あれ、有彩さん? 」
栞の声が少し遠く聞こえる。感覚が遠のく。そこから私の意識はなくなっていた。
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セフレ
気がつくと、自分の布団に横たわっていた。そうだ、私はお風呂で気を失ってしまったんだ。起き上がり、状況を確認する。服を着てるということは、栞が着替えさせてくれたんだろう。
そういえば、栞は?
部屋の電気はついていたが、彼女の姿はどこにも見えなかった。キッチンやお風呂を探してみるが、いない。帰ってしまったのだろうか。一応、靴を確認しようと玄関へと向かう。もし、帰ってしまっていたらどうしよう。そんな不安が脳裏をよぎる。情けないところを見せてしまって、呆れられたかもしれない。面倒くさがられて、嫌われたのかもしれない。そんなことを考えながら、ゆっくりと玄関へと近づく。
そこに、栞の靴は無かった。やはり、帰ってしまったのだろうか。
布団へ戻ろうとするが、足に力が入らなく、その場に座り込んでしまった。どうしてだろう。なんで私、寂しいなんて感じてしまっているんだろう。
もともと、続けるのも無駄だと思っていた。栞の事も、セフレであることも。女同士で性欲を充たしたところで、生産性がないしやるだけ無駄なのだ。初めからこんな関係になるべきではなかった。ずっと思っていたはずなのに、なんで私は今、こんなに彼女のことばかり考えているんだろう。
頭が回らない。感情の整理もつかない。頭の中がボーっとしている。
「しおりぃ……」
消えてしまいそうなほど小さな声で彼女の名前を呼ぶ。
「ん!? 」
呼んだ瞬間、玄関のドアが開き、栞が驚いたように声をあげた。
「有彩さん起きたんですか!? というか、こんな所で何してるんですか!!ちゃんと横になってなくちゃダメですよ! 」
「栞? 」
「いったいどうしたんですか……って、泣いてるんですか? 」
栞に指摘され、頬を拭う。しっかりと濡れていた。しかし今、そんなことはどうでもいい。栞がいた。それだけでとても安心する気がする。あれ、安心したら気が遠く……
「有彩さん!? 」
せっかく安心できた栞の声も、遠くなってしまった。
目を覚ますと、見慣れた天井が視界に入った。少し頭がクラクラする。さっきのは夢だったのだろうか。それにしても、酷い悪夢だ。体を起こすと、額から濡れたタオルが落ちてきた。
「あ、目覚ましたんですね 」
キッチンから出てきた栞の手には新しい濡れタオルが握られている。
「取り替えようと思って、少しキッチン借りてました。あ、お水どうぞ 」
「ありがと 」
素直にコップを受けとり、一気に自分の体に流し込んだ。冷えた水が、私の体を生き返らせてくれる気分だ。
「有彩さん、すみません 」
「なんで謝るのよ 」
私が水を飲み終わったタイミングで、栞は頭を下げた。
「お風呂で、私が無理をさせてしまって有彩さんがのぼせてしまったので。それと、顔の赤みが引いていたので、買い物のために家を出てしまって、有彩さんを不安にさせてしまっていたようなので 」
「そう……ん? 」
後半部分が少し気になった。あれ、あれは私の夢では。
「まさか泣くほど不安にさせてしまっていたなんて、あれ、有彩さん? 」
私は耳を塞ぎ、布団にくるまった。いくら頭が回っていなかったからと言って、あんな醜態を晒してしまったなんて。
「あの、有彩さん 」
布団を軽く叩きながら名前を呼ばれたため、耳を塞ぐのを辞める。
「私、有彩さんと会うの、少し控えようと思うんです 」
普段の栞からは考えられないような真剣な声で、淡々と続ける。一瞬、驚いて反応してしまいそうになったが、黙って話を聞くことにした。
「いつも、私の都合で会ってもらって。仕事で疲れてるにも関わらず私の相手をしてもらって。それなのに私は有彩さんの機嫌を損ねてばっかりで。迷惑ですよね。女同士でセフレなんて。今日だって、有彩さんに無理をさせてしまいました 」
「別に、無理なんてしてないわよ 」
少しだけ反論してみる。しかし、栞は立ち直らない。
「ありがとうございます。有彩さんは優しいですね 」
そう言って、栞は布団に置いていた手を離し、立ち上がった。
「それでは、今までありがとうございました 」
カチャカチャと、栞が持ってきた荷物の音が鳴る。次第に足跡が遠くなる。本当に、このままでいいのか?確かに私は、この関係を良くは思ってなかった。これを機に関係を解消した方がいいのかもしれない。でも、さっき私は泣いていたではないか。このまま栞が出て行ってしまったら、もう二度と会えなくなってしまうかもしれない。
そう考えた時、私の体は自然と動いていた。布団から飛び出し、靴を履いていた栞の手を掴み引き止めた。
「有彩さンッ!? 」
いきなり引き止められて驚いていた栞に無理矢理唇を押し当てる。舌を押し込み、絡ませると、温かい吐息が漏れるのを感じた。
「ねぇ、私まだ満足してないわよ 」
惚けた顔のままの栞を部屋に連れ戻し、布団に押し倒す。
「待ってください、私…… 」
「タチなんでしょ?さっき聞いたわよ。でも、たまには歳上に身を任せなさい 」
服を脱がせ、肌をなぞる。くすぐったそうにしている栞をみていると、もっとしていたくなるが、先へと進む。胸に手を当て、優しく触っていく。少し硬くなったと部位を軽くつまむと、可愛らしい声がこぼれた。
「乳首、弱いの? 」
恥ずかしそうに両手で顔を隠し、頷く。舌で転がすように舐めると、露骨に息が荒くなるのがわかる。
舐めるのをやめ、太ももの付け根辺りに指を滑らせる。すると栞は、ビクッと体を震わせた。
「やっぱり、怖い? 」
「……はい。すみません 」
見ると、栞のソコは全く濡れていなかった。私が下手なだけかもしれないが、やはり、トラウマが強いのかもしれない。
「でも、有彩さんなら、いいかもしれません 」
涙目で、私の手を握る。
「いえ、私、有彩さんにして欲しいです 」
私は黙ったまま、栞のソコに指を当てた。周りをなぞるように触れ、開き、隠れている部分を刺激する。栞は体を震わせながら声を抑えようと口を抑えている。徐々に腰が浮いてきて、ソコも濡れ始めたため、中に入れる。
私が栞にされて気持ちよかったところの周辺を重点的に刺激すると、いやらしい水音と栞の喘ぐ声がどんどん大きくなっていく。
「私もう、イきそうです……! 」
「好きな時にイッていいわよ 」
そう言って指の動きを早くすると、栞の中は更に絡みつくように締まっていった。
「有彩さん、キス、してもらってもいいですか? 」
涙を流しての訴えに、私はまた無言で唇を押し当てた。キスした途端、栞は体を痙攣させ、荒い息のまま布団で脱力した。
そこから、2人とも喋らなかった。セックスの余韻に浸っていたかったからだ。
しばらくして、呼吸を整えた栞はが口を開いた。
「たまには、タチとネコ交換するのも悪くないですね 」
「ちょっと。いつの間に私がネコになったのよ 」
他愛のない話が続く。ただの肉体関係のはずなのに、何故こんなにも会話が楽しいのだろうか。こんな関係が、ずっと続けばいいなんて思わない。でも、せめて今だけはこの関係を楽しもう。セフレ以前に、1人の友達として栞と接しよう。
「あ、有彩さん 」
「なによ? 」
「有彩さんって、意外とエッチ下手なんですね 」
私はすぐに栞に服を着させ、外に放り出した。タクシーは呼んであげたし、帰れるだろう。
この日から1週間、栞からの連絡は無視した。
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後輩以上友達未満
携帯が鳴る。通知を見ると、栞からだった。私が栞からの連絡を無視し始めて、もう1週間が経つ。そろそろエッチが下手と言われて受けた心のダメージは癒えたし、連絡を返してあげような。
画面をなぞり、栞とのトーク画面を開く。そこには『すみませんでした 』や『もう許してください 』などのメッセージが溜まっていた。
「あ〜、仕事中に携帯いじったらダメじゃないですか〜 」
文字を入力して、送信しようとしたその時、背後から明日香ちゃんが声をかけてきた。完全に油断しきっていたため、かなり驚いた。
「ど、どうしたの明日香ちゃん 」
「露骨に動揺してますね。少しわからない事があったので教えてもらおうかと思ったんですよ 」
書類を見せながら、何点か質問して、明日香ちゃんは自分のデスクへと戻って行った。真面目ないい子だ。さて、私も彼女を見習って仕事するか。既読はつけてしまったが、お昼休憩に返せばいいだろう。私は携帯をカバンにしまい、会社のパソコンとにらめっこを始めた。
お昼。連絡を返すために私は携帯を取り出す。私が既読をつけたことに気づいてないのか、栞からの催促の連絡はなかった。
「先輩、もしよかったら一緒に食堂行きませんか? 」
「あれ、珍しいわね。普段はお弁当なのに 」
「少し寝坊しちゃって作れなかったんですよ〜 」
こんなに真面目な明日香ちゃんでも寝坊するんだなと考えながら雑談を混じえつつ食堂へ向かう。2人とも注文を終え、テーブルを挟み向かい合った。
「で、先輩。なんでニヤニヤしながら携帯いじってたんですか? 」
「ニヤニヤなんてしてないわよ 」
「してましたよ〜 」
自分の顔を触ってみる。もちろん、今確認しても全く意味は無いことなどわかりきっている。
「恋人さんですか? 」
むせてしまった。明日香ちゃんは笑顔のまま続ける。
「図星なんですね〜 」
「違うわよ。私に恋人なんていないわ 」
「フリーなんですか?先輩、こんなに美人なのに 」
お世辞だとしても、正直嬉しいし照れくさかった。急いで話題をそらさないと、ボロが出そうだ。
「明日香ちゃんは、恋人いないの? 」
「私もフリーですよ。一緒ですね 」
お互い頑張りましょうと手を握ってくる。明日香ちゃんは可愛い子だから、てっきり彼氏くらいいるものだと思っていた。そこから話は盛り上がっていき、私と彼女の仲はかなり深まったと思う。話に一段落つく頃には、もう休憩の時間が終わりかけていた。
「そろそろ戻りましょうか 」
食器を片付け、仕事に戻ろうとする。しかし、明日香ちゃんに袖を掴まれ、止められてしまった。
「あの、先輩。よかったら今夜、飲みに行きませんか? 」
頬を少し赤らめ、なんだか恥ずかしそうに上目遣いで言う。せっかく仲良くなったのだ。ここで断る理由はないだろう。
「もちろんいいわよ 」
「ありがとうございます! 」
嬉しそうに頭を下げながら、少し急ぎ足で戻っていってしまった。なんであんなに慌てていたのだろうか?私にはよくわからない。
私は携帯を取り出し、既読無視を続けてしまった栞に対して『もう怒ってないわよ 』と送り、仕事に戻った。
夜になっても、栞から返信が来なかった。何かあったのだろうか。それとも、ただ仕事をしているだけだろうか。今まで、基本的に栞から連絡があったし、私からの連絡にはすぐ返してきたから、今までこんな事はなかったのだ。
「どうかしましたか? 」
明後日の方向へ行ってしまった意識が、明日香ちゃんによって戻される。一緒に飲んでいるのに、申し訳ないことをしてしまった。
「いえ、なんでもないの 」
「そうですか? 」
胸のもやもやを、ビールとおつまみで流し込む。やはり、ビールはたまに飲むと美味しい。
「ここのお店、私のお気に入りのお店なんですよ 」
駅前にある居酒屋。確かに、明るい雰囲気で女性でも入りやすいイメージのお店だ。それに個室もあるし、誰にも邪魔されないで飲めるというのはかなり大きい。
「連れてきてくれてありがとね 」
「いえいえ、私も先輩と来たかったんです 」
グラスを小さく鳴らし、楽しく飲む。しばらく飲んでいると、明日香ちゃんが潰れてしまった。
「大丈夫? 」
返事はない。完全に寝てしまったようだ。どうしよう。家に送ろうにも、住所がわからなければタクシーも乗れない。
仕方ない。近くのホテルに今日は泊まらせよう。一応私も。携帯を使い、ホテルの場所を調べる。すると、すぐ近くにかなり多くのホテルがある事が分かった。
「ほら、行くわよ 」
明日香ちゃんを背負い、そのホテルがある場所まで行くと、何故そんなにホテルがあるのかがわかってしまった。さすが駅前と言ったところか。居酒屋から出て路地に入ったところには、見事なまでのラブホ街が立ち並んでいたのだ。このまま明日香ちゃんを背負ったまま他のホテルを探すか?いや、そんなことをしていたら、私の体力が持たないかもしれないし、明日香ちゃんが風邪をひいてしまうかもしれない。葛藤の末私は、職場の後輩をラブホテルへ連れ込んでしまった。
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後輩以上セフレ未満
明日香ちゃんをベッドに寝かせて、私は上着をハンガーにかけてシャワーを浴びるために脱衣所へと向かう。
さて、これからどうしようか。いや、寝るだけなのだがあいにくベッドが1つしかない。後輩と同じベッドで寝るわけにもいかないだろうし。
お湯の温度が、じんわりと体に染み込んでくる。ホテルのお風呂だと、どうしてもあの日の夜を思い出してしまう。そういえば、あの日以来1人でもしていない。
疼く。
連絡を返さないようにしていたのは私なのに、なんて自分勝手なんだろう。
触れると、お湯とはまた別の液体が指に指との間に意図を引いた。
人肌に触れたい。体温を感じたい。栞にめちゃくちゃにして欲しい。
彼女の事を考えながら、指で撫でるように弄る。彼女なしてくれたように指を動かすが、全然足りない。やはり、私は下手なのだろうか。
シャワーを手に取り、興味本位で当ててみる。
「ーーーッ!? 」
その感覚に、思わず腰を抜かしてしまった。ギリギリ声を我慢することが出来たが、勢いがもっと強かったら危なかっただろう。
勢いはそのまま、もう一度お湯を当ててみる。口を抑え、明日香ちゃんを起こさないように気をつけながら。
息が荒くなり、切なくなる。自分では限界の直前に加減をしてしまうが、シャワーはそうはいかない。絶頂してもなお、お湯は降り注いだ。
正直、何回イったかわからない。欲求も満たされたため、私は着替えて部屋へと戻った。
「先輩、どこいってたんですか? 」
「あれ? 起きてたの? 」
明日香ちゃんがベッドの中央に腰掛けていた。寝ていたと思っていたから少し驚いたし、バレてないかが気が気でない。
「心配したんれすよ〜? 」
滑舌が回っていない。まだ酔いは覚めていないようだ。手招きされ、ベッドに座らされた。
「ここって、ラブホテルですよね? 」
「ええ、そうね 」
ニコニコしながら続ける。
「それって、そういうことですよね? 」
「え? 」
肩を押され、ベッドに押し倒される。
「先輩〜 」
頭をがっちりとホールドされ、胸に挟まれた。呼吸ができるようになんとかズレるが、限界だろう。
「明日香ちゃん、落ち着いて! 」
訴えかけても、返事がなかった。このままされるがままになってしまうのだろうか。
「明日香ちゃん? 」
再度呼びかける。返事はない。代わりに、小さい寝息が聞こえてきた。どうやら、寝ぼけていただけだったようだ。
仕方がない。今日はこれで寝よう。どうせ動くこともできないし。
「先輩、私、女の人もいける口なんですよ 」
本気か冗談かわからない寝言を聞き流し、私も眠りについた。明日の朝、明日香ちゃんがどんな反応をするのか少し楽しみでもある。
目が覚める。体を起こし、伸びをすると、目の前で後輩が土下座していた。
「どうしたの? 」
「いえ、昨日は先輩に介抱してもらった挙句、襲おうとしてしまったので 」
どうやら、記憶はあるらしい。お酒の力とは恐ろしいものだ。そういえば私が抱かれたのもお酒が入っていたからだった気がする。
「大丈夫よ。襲われてないし 」
「ありがとうございます 」
「昨日そのまま寝ちゃったし、シャワー浴びてきたら? 」
そう促すと、自分の匂いを確認した後、脱衣所へと入っていった。さて、この間にタクシーでも呼んでおいてあげよう。スマホを取りだし、電話番号を入力しようとして、一瞬手が止まった。私はアプリを開き、電話をかける。
『あ、有彩さん!お久しぶりです! 』
「うん、久しぶり。急で悪いんだけど、今日会えるかしら? 」
『いいんですか!? 』
「私が会いたいの。家でいい? 」
『もちろんです! 』
準備してきますねと、栞はすぐに電話を切ってしまった。
何故だろう。声を聞けて、なんだか嬉しい気がする。
「先輩、どうしたんですか? そんなに笑顔で 」
急いで自分の顔に触れてみる。確かに、私は笑っていた。
「やっぱり彼氏いるんですねー!? 」
首を横に振る。嘘ではない。私は笑顔のままで、明日香ちゃんに言った。
「大切な友達よ 」
明日香ちゃんは納得いっていないような表情をしていたが、少し強引にホテルの外へ連れ出し、タクシーを呼んで送り返した。もちろん、タクシー代も渡して。
1人になった私は、少し早歩きで家へと向かった。とりあえず、栞が来る前に片付けとメイクをしよう。鼓動が高鳴る。理由はきっと、久しぶりに友達と会うからだ。それ以外、有り得るわけがない。私は自分にそういいきかせた。
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セフレ以上恋人以下
静寂が続く。まだ昼だと言うのに布団を敷いて、その隣で私と栞は正座で向かい合っていた。しかし、目は合わせられない。
「ねぇ、なんでいつも発情してる貴女が押し倒してこないのよ 」
「有彩さんこそ、普段は嫌がるくせに、なんで今日は布団敷いて待機してるんですか。枕元に水まで用意して。何回する気ですか 」
また静寂が訪れる。少しして、今度は栞から切り出した。
「有彩さん、あの時のキスのことなんですけど」
ビクッと身が震える。正直、流れに身を任せてした事ではあったが、私達は最初に会った頃に栞に要求されて以降キスはしていなかった。だから、私からするって言うのは、私がそういう関係を求めているって勘違いされても仕方がない。何とかして、誤解を解かないと。
「有彩さんって、エッチは下手ですけど、キスは上手いですよね」
頬を赤らめ、私の唇に指を当てながら言う。あれ、思っていた反応と違う。
「私、初めてですよ。キスだけであんなに気持ちよくなったの 」
「褒められてる気がしないわね 」
理性を保ち、冷静を装う。しかし、この一週間で私も溜まっている。このまま流されてもいいとさえ思ってしまっている。
「今日は、私が気持ちよくさせます 」
張り切っている栞に期待し、布団に身を投げる。私、今どんな顔をしているんだろう。
まずは、キスからだった。いつもなら胸を触るのに、数回軽いキスをして、その後に舌を入れてきた。
次に、胸。服の上から触られるが、刺激が足りない。そんな意図を汲み取ってくれたのか、栞はブラの中に手を入れ、指を這わせた。久しぶりに乳首を弄られ、つい声が出てしまった。
「興奮、してるんですね 」
「……言わないで 」
続いて、服を脱がされる。毛の処理とか大丈夫だったか心配になるが、杞憂だったようだ。
「相変わらず、綺麗ですね 」
お腹から指を滑らせ、局部に触れられる。
「なんでこんなに濡れてるんですか? 」
「私だって、欲くらい溜まるのよ! なんでさっきからそういう事聞いてくるの!? 」
「す、すみません。久しぶりの有彩さんとのセックスが嬉しくて、調子に乗っちゃいました…… 」
恥ずかしかったから指摘したのだが、栞は怒られたと勘違いしたのだろうか。凹んでしまっている。そういえば私って、栞に対してきつい当たりしてるような。今まで、何回連絡を無視したことか。
私が撒いた種だし、仕方ない。
私は腰を起こし、開脚をして栞に見えるように自分で開いて見せた。
「貴女とするから、こんな事になってるのよ。だから、栞の好きにして? 」
恥ずかしすぎて顔を見ては言えないが、それでも気持ちは伝わったのか、栞は再び私の局部に指で触れた。
外を軽く刺激されるだけで喘ぐ声が漏れてしまう。指では満足したのか、栞は顔を近づけた。息がかかり、少しくすぐったい。栞の舌がクリトリスを刺激し、腰が浮いてしまう。
「待って、そんなに舐められたらすぐにイッちゃうから……! 」
それでも舐めるのをやめてはくれず、情けない声とともに絶頂を向かえてしまった。腰が痙攣し、息が乱れる。水を取ろうと四つん這いになると、次は中に指が入ってきた。
「ちょ、私イッたばかり……」
クチュクチュといやらしい水の音と私の声が交わり、栞は更にヒートアップしていた。以前持ってきていた荷物の中からいくつかのローターを取り出し、クリと中を同時に刺激されたり、乳首に当てられたりと何度も絶頂させられた。
どのくらいしていただろうか。さすがに私も栞も疲れてしまい、水を飲み休憩をしている。
「どうしますか? 今日はもう終わりにしますか? 」
満足したような顔で栞は言う。この女、そんなに私をおもちゃでいじめて楽しかったのか? 私は栞の首に手を回し、もう一度布団に倒れる。
「おもちゃもいいけど、もっと栞の体で感じさせて 」
「本当に今日はどうしたんですか? そんなこと言われたら、私も我慢出来ませんよ? 」
「しなくていいわよ。もっと、貴女を感じてたいの」
再び、指が侵入してきた。今度はさっきより激しく動く。私の弱い所を刺激し、遠慮なく責めてくる。指が入ったまま何度もイき、人生で初めて潮をふいてしまった。布団はびしょ濡れになり、栞にもかかってしまい、恥ずかしさと申し訳なさで消えてしまいたくなった。
「有彩さん、そんなに気持ちよかったですか? 」
情けないところを見せて、幻滅されるかと思ったが、栞は嬉しそうに私に聞いてきた。服が濡れてしまったためか、栞もいつの間にか裸になっている。
「……貴女に抱かれて、気持ちよくなかったことなんてないわよ 」
「良かったです。あ、今から綺麗にしてあげますけど、もう出しちゃダメですよ? いつまでも綺麗になりませんからね 」
「待って、今舐められたら……! 」
栞の舌の刺激が気持ちよすぎて、また、やってしまった。今度は栞の顔に……
「大丈夫!? 」
「有彩さん、水飲みすぎですよ 」
「ごめんなさい! 」
さすがに顔にかかったのには怒ったのだろう。栞が怒って私が謝るといういつもとは逆の立場になってしまった。
「キスしてくれたら許してあげますよ 」
急いで持ってきたタオルで顔を拭きながら、栞は要求する。キスというのはきっと、あの夜と同じものの事だ。今更、軽いキスを求められてるとは思えない。しかし、上手くできるだろうか。あの夜は流れに身を任せていたが、今は違う。栞は目を瞑り、準備は出来てると言わんばかりに待っている。
私も、覚悟を決めるしかない。栞の顎を上げ、唇を付ける。舌を絡ませ、離す。
「はぁ、やっぱり、有彩さんのキスは最高です 」
栞は満足そうに布団に横たわり、眠ってしまった。本当なら直ぐにシーツを洗いたかったが、寝てしまったなら仕方が無い。私も横になり、掛け布団を被って眠りについた。
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