A lot of world~全て遠き理想郷~ (紅 幽鹿)
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プロローグ

これは一度消したA lot of world~全て遠き理想郷~の再構成です。

では、プロローグどうぞ!


 とある場所に二つの影が闘っていた。

 一人は、金髪にスカイブルー色の瞳、服装が神父服(カソック)の少女が銃剣(バヨネット)を持ち、もう一人は、神父服を着た少女とは違った色合いの金髪。本来なら白色であるはずの強膜が黒く染まり金色の瞳。背中から6対の白色と黒い羽根が生えており、顔が神父服を着た少女に同一人物と言って良いほど似ており、黒い鎧の様なものを着て、両手には何処かいような雰囲気を出している装飾銃が握られていた。

 二人がいる場所は『宇宙の核』と言え、『座』と呼ばれ続けた場所……『神座』、『太極座』、『王冠』、『ジュデッカ』、『頂点』、『底』と呼ばれている場所……。

 二人が闘っている場所である『座』とは、『神』が自身の『願い』を流れ出させ、『宇宙』を塗り替えるシステムで、『神』となった者はさまざまな『法』を宇宙に流れ出させた。

 ある神は、人類を『善と悪』に分け、善と悪を永劫闘い続けさせる世界にし、ある神は、『善が悪を滅ぼす為に悪であれ』と、人々に『原罪』を埋め込み、ある神は、他者、己自身の中にある『原罪』の存在が許せず、原罪を浄化し救済しようとし、ある神は『こんな結末は嫌だ』と言う『渇望』を流れ出させ、人々が己の人生を永久無限に繰り返すような世界にし、ある神は、『全てを抱きしめたい』と死しても来世の保証をする生まれ変わりの理がある世界にし、ある神は『唯我』とあらゆる人間が自己のみを愛する世界にし、ある神は『化外を生まない』と人々の多様な価値観を尊重し、各々に見合った死後を与える世界にした。

 そして、二人はその『座』の権利を掛け闘っていた。

 少女が銃剣を振い、少年が装飾銃で銃剣を受け止める。

「これが、貴様が今までにしてきたことの『答え』なのか?!」

「ああそうだ、これが私の『答え』だ!」

「ガッ!」

 少年がガードが薄くなっていた少女に蹴りを喰らわし、少女は数メートル吹き飛ぶが、すぐに体勢を立て直し……

「第三天、天道悲想天!!」

「無駄だ!」

 少女が言うと同時に、かつて文明を滅ぼした一撃が少年に向かって放たれるが、少年が装飾銃の引き金を引き、装飾銃から放たれた銃弾が『塩の柱』に直撃すると、『塩の柱』は凍り、砕け散った……。

「よく聞け、アンデルセン!これが私を信じ託してくれた。僕の愛しい人達に捧げる愛だ!!」

 少年の言葉に少女……アンデルセンは銃剣の柄を強く握りしめる。

「ふざけるなッ!貴様を信じ、貴様と共に歩もうとしたセラスの気持ちを踏みにじっておいて、なにが愛だ!なにが捧げる愛だッ!修羅道至高天、幕引きの一撃!」

 少女から一撃で相手を死に至らしめる『幕引きの一撃』が、少年に向かって放たれるが、少年は先程と同じように凍らし、砕く……。

 だが……。

「第四天、永劫回帰」

「クッ!」

 少年が凍らし、砕いたはず『塩の柱』と『幕引きの一撃』が『回帰』し、少年は二つの攻撃を何とか避けるが……。

 直後、少年の頸にアンデルセンの銃剣が迫ってきていた……。

 そして……。

「後は任せた、娘よ」

「任された、クソ親父」

 少年の頸が宙に舞い、身体が崩れ落ちる……。

 こうして、『第八天・極夜の凍結』博麗(はくれい)幸夜(こうや)は消滅した。

 

~~~~~

 

 

「これからキミの名前は幸夜だよ。……この名前は、不安な夜を幸せに変えるような子になってほしいから」

「そして、私たちにとって大切な家族『だった』子の名前……」

「私達みたいに『記憶』があるかは分かりませんが、あなたは私たちにとって大切な家族ですよ」

 声が聞こえる……どうして?私は消滅したはず……

 私は声が気になり、目を開ける……

「(ど、どうして)」

 そこには……

「オギャー!(どうして、父さん、母さん、姉さんがいるんだ?!)」

 私の家族……ソウル父さん、紫(ゆかり)母さん、美鈴(みすず)姉さんがいた。

 



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第1話~出会い~

新年明けましておめでとうございます!!
今年もよろしくお願いします!
では、第1話をどうぞ!


 

 

 私がこの世界に転生して五年の月日が経った……

 とりあえず、自己紹介でもしておこう。

 私の名前は八雲(やくも)幸夜(こうや)、年齢は五歳……精神年齢は……まあ気にしないでくれ。

 そして、転生したこの五年間で分かったことがある。

 それは、この世界には私の知り合いが『記憶』を持った状態で転生しているという可能性があること……実際に私の家族が『記憶』を持っている。

 それを知った私は『親友』にも『最愛の人』にも会えると思ったが……

「……くだらない」

「何か言ったか、幸夜?」

「……何も」

 おっと、どうやら口に出てしまっていたようだ。

「それで話は変わるんだが……幸夜、一緒に行かないのかい?」

「行かない……お見舞いには、父さんたちで行ってきてくれ。私にはそのお見舞い先の家に知り合いなんかいないのでね」

 父さんの知り合い……確か高町(たかまち)士郎(しろう)さんだったか?その人たちと父さん達は仲が良いらしい。父さんはその高町士郎さんと、母さんは高町士郎さんの妻、高町(たかまち)桃子(ももこ)さんと、姉さんは同級生である高町(たかまち)美由希(みゆき)さん、その兄である高町(たかまち)恭也(きょうや)さんと、それで父さん達は私とその高町家の一番下の子供、高町(たかまち)なのはと仲良くさせようとしているらしいのだが……くだらない。

 父さん達は私が『幸せ』になってほしいと思っているようだが……幸せなど要らぬ。幸せは遠ざかっていけばいい。たった独り、何処までも、歩き続けるのだ、永遠に……。

 ああ、本当に……。

 本当に、くだらない……。

「それじゃあ父さん、私は外に行ってくる」

「ああ別に良いけど……本当にそんな恰好で行くのか?」

 父さんが私の恰好を見て言う……。

 まあ、当然か……。今の私の恰好は、髪を黒と白のリボンで結んでポニーテールにし、首に包帯を巻き、顔を狐のお面で隠し、黒のズボンに黒の服、その上から黒のコートを羽織り、ズボンの方に銀時計を付けて、黒の編み込みブーツを履いていると言う、十人中十人が怪しいと思う姿だ。

 だが……。

「大丈夫、父さん。私の『能力』で私の姿の違和感を『終焉(こわ)せば』不審者に見られない……では、行ってくる」

 私は家の玄関の扉を開けて、外に出る。

 

~~~~~~

 

 玄関を出た後、私は目的も決めず散歩をする。

 私がこの世界に転生して出来た趣味の一つだ。

 私が散歩をしながら考え事をしていると、私の『中』から声が聞こえてくる。

【幸夜、本当に良いんですか?】

「(何がだ、エターナル?……それと、私の『聖遺物に宿る魂』としての状態ではなく、『デバイス』として話せばいいだろう?)」

【いえいえ、私的には此処の方が快適ですので……それで話は変わりますが……本当にあなたにとっての『大切な人達』を探さなくて良いのですか?】

「(探さない。縁が合えばまた会えるだろう?)」

【……分かりました】

 私は、エターナルとの会話を止めて意識を周りに向けてみると、いつの間にか公園のベンチに座っていたことに気が付き、砂場の方に意識が行く。

 砂場には、一人の少女が遊んでいた。

 私はその少女が気になり砂場の方に足を運ぶ……

 少女はそんな私に気が付いたのか、視線をこちらに向ける。

「あなた誰?」

「私かい?私は通りすがりの子供さ……キミは一人で何をしているんだ?親はどうした?」

 私の言葉に少女の表情が暗くなる。

「おとうさんがけがをしちゃって、おかあさんもおねえちゃんもいそがしいの。だから、なのはひとりなの」

 なに?……ならこの少女は一人で今まで遊んでいたのか?父親の怪我と理由で他の家族からの『愛情』を受けなかったのか?

「……くだらない」

「え?」

「くだらない……と、言っているんだ。来い、お前の家族の所に連れて行ってやる」

 私は戸惑っている少女の腕を無理やり引っ張り、この少女と似た『魂』の波動に向かう。

 

~~~~~~

 

 私は少女の『魂』に似た波動を辿り、病室の前にいた。

 病室の前にある名札には『高町士郎』と書かれていた……はて、何処かで聞いたことがあるような?

 私は病室の扉を開け入ると、ベットの上に包帯を巻いて寝ている男性とその家族と思う女性、そして……。

「幸夜、どうしたんですか?」

 私の両親と姉さんがいた……

「なのは!」

「おかあさん!」

 なのはと呼ばれた少女がベットの近くに座っていた女性に抱きつく……まさか……

【そのまさかだと思いますよ】

 私はエターナルの言葉に確信する。……私が連れてきたこの少女の名前は、高町なのは……母さん達が私に会わせたかった少女なのだろう。

 すると、少女の母親らしき人物が私に気づいたのか、私の方を見た後、母さんの方に視線を向ける。

「紫(ゆかり)、この子は?」

「この子は前、桃子に話していた子よ。私とソウルさんの愛の結晶で美鈴の弟の幸夜よ」

 母さん、その紹介は止めてくれ。父さんが顔を真っ赤にして恥ずかしがってる。とりあえず、自己紹介をしておこう……

「初めまして、八雲(やくも)幸夜(こうや)です」

 私は頭を下げ、挨拶をする。

「初めまして、私は幸夜君のお母さんの友達の高町(たかまち)桃子(ももこ)です。そして、この子が……」

「高町なのはです」

 自分の母親の続きを言うように少女が自身の名前を言う。

「それで、幸夜はどうして此処に来たんだ?」

「……ちょっと、そこの少女のくだらない話を聞いてね」

 私は父さんの問いに答えながらベットに寝ている男性に近づき、今からすることを少女とその母親に見えないようにベットの側に立つ。

「■■■■」

 この世界の住人なら誰でも『理解できない』言語で詠唱し、『魔術』を発動をさせると……

「うっ……こ、此処は?」

「お父さん?!」

「士郎さん?!」

 私が使用した『前代の世界』の魔術効果によって、男性の意識が回復し、少女とその母親が驚き、喜ぶ。

 私はそれをしばらく見た後、男性に挨拶をする。

「初めまして、八雲幸夜です」

「キミがソウルの……初めまして、高町士郎です」

「士郎さん、一つ良いですか?」

「何だい?」

 私は男性に許可を取ってから、今、最も言いたい言葉を言う。

「士郎さん……まあ、他のご家族の方々にも言ってほしいのですが……あの少女に謝って下さい。あの子は、家族が大変だから……皆が大変だから……と、本来なら家族の『愛情』を受けたいのに、我慢をしてきたんです。だから、謝って下さい。そして、『愛情』を与えてください……そうしないと将来、確実に……『自己を愛さず、他者しか愛さない』人間になります」

 私の言葉に士郎さんが驚き、暫くして少女に謝る。

 この光景を見た後、私は病室から出て行こうとすると……

「ま、待って!」

 少女に呼び止めら、私は少女の方に振り向く……

「あ、ありがとう!……そ、そのまた会えるかな?」

 私は少女の質問に沈黙していると、少女の顔が段々泣き顔になってくる……

【幸夜、早くしないとあの子泣いちゃいますよ】

 確かに……泣かれるのは面倒だ。

 私は懐から私が製作したうさぎさん人形を取り出し、少女に渡す。

「……私に感謝なんて、くだらない」

【フフ、素直じゃないですね】

 私は念話で、家に戻ることを母さんたちに伝え、病院を出た後に人気のない場所で『スキマ』を開き、家に戻った。

 

 





幽「みなさん、新年明けましておめでとうございます!」

幸「おめでとうございます」

幽「そして、新年早々ですが……すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

幸「誠心誠意で謝れ、作者」

幽「本当にこの作品を一度消してしまって、申し訳ございません!!」

幸「とりあえず、消した理由を言ってみろ」

幽「はい!一度消した理由ですね、今後の物語の流れを考えながら前の時のプロローグから読んだんです」

幸「それで、消したと?」

幽「はい、やり直した方がいいと思い、消して、もう一度しました……」

幸「ハァ~、それで今回の話の変更点は何だ?」

幽「それは、こちらです!」


・幸夜の服装と包帯を首に巻いていること


幸「これだけか?」

幽「でも、首の包帯は重要……ではないけど」

幸「とりあえず、もう一度謝っとけ」

幽「皆様、今回の件で迷惑をおかけしました。誠に申し訳ございません!ですが、ぜひ出来れば今後ともよろしくおねがいします!!」

幸「よろしく頼む。では」

幽「さようなら~」


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第2話~聖遺物・冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)

本日二回目の投稿です♪


 私が出掛けの支度を終え、玄関で編み込みブーツを履いていると……

「幸夜、何処か出掛けるのですか?」

「おはようございます、藍(らん)さん。少し散歩に行ってきます」

 私は我が家のお手伝いさんで、家族の一人『八雲(やくも)藍(らん)』さんに挨拶をする。

「分かりました。それと幸夜様」

「はい。何ですか?」

「ソウルが、『今日は、散歩は早めに終わって帰ってこい』と申しておりました」

「分かりました。ありがとうございます」

 私は藍さんにお礼を言ってから、玄関から出て行く。

 

~~~~~~

 

 私が玄関から出ると、庭の手入れをしている人物を見つけ、その人物は私に気が付いたのか庭の手入れを止め、私の方を見る。

「おはようございます、幸夜さん。お出掛けですか?」

「おはよう、美鈴(メーリン)。少し散歩に行ってくる」

 私は我が家の門番である『紅(ホン)美鈴(メーリン)』に挨拶をする。……彼女は本来なら、別の所の門番をしているはずなのだが、彼女の本来の主人が何処にいるのか分からないらしい。

 ちなみに、我が家は大豪邸だ。理由は母さんが創った会社――『八雲グループ』だったか?――と父さんの『仕事』でお金がけっこうあるからだ。

「じゃあ、行ってくる」

「いってらっしゃい」

 私は美鈴に挨拶をしてから庭を横切り、門を通り外に出た。

 

~~~~~~

 

 家から出た私は近所にある『多摩川』に着き、土手に寝そべり、暫く目を瞑っていると……。

「かかっ、お前さんや儂と少し喋らんか?」

 チッ、聞こえてきた声に内心苛立ちを覚えるが、とりあえず目を開け後ろを振り向くと、そこには、鍵穴の付いた首輪を付け私と同じくらいの年齢の褐色肌の少女が立っていた……。

「……くだらない。貴様と喋るより此処で寝ていた方が有意義だ。」

「何気に酷いこと言うの~。それと、ちゃんと名前で呼んでくれんか?儂はお前さんに名付けられた名が好きなのじゃよ」

「……くだらん」

 私と喋っている少女の名は『ムルムル』……私の眷族で「 」の搾りかす。私の全てを奪い、私が最も憎悪する存在。

 そして……

 本来あそこで消滅するはずだった私を転生させた『張本人』の一人だ……。

 私はムルムルの存在を無視し、眠りについこうとすると……。

「マシュマロ……食べる?」

 今度はムルムルとは違う声が聞こえ、もう一度眼を開けると、ニコニコと笑いながら白い雪のような少女が私にマシュマロを差し出して来ていた。

「……貰おう」

 私は少女からマシュマロを受け取り、狐のお面を少し外してから食べる

「おいしい?」

「ああ、おいしい」

 私の言葉に少女のニコニコ度が増す。

「私は榊原(さかきばら)小雪(こゆき)だよ」

「私は八雲幸夜だ」

「じゃあね~」

 少女はバイバイと手を振りながら去っていた……一体、何だったんだ?

 

~~~~~~

 

「……ただいま」

 多摩川での謎の少女……榊原小雪との出会いから数時間後、私は帰宅した。

「お帰り、幸夜」

 スーツに着替えた父さんが私に着替えてくる。

「父さん、『仕事』?」

「ああ、『弘輝(こうき)』と一緒に食人鬼(グール)狩りにね」

 父さんの友人の『榊原(さかきばら)弘輝(こうき)』さん。父さんと同じ『請負人』で、『請負人』の中じゃあ、結構強い部類に入る人らしい。……って、『榊原』?まさかあの少女の血縁者か?……まあ、私には関係ないことだが……とりあえずこれだけは言っておこう……

「父さん、顔とか体のシルエットとか完全に美少女だからといって、その人と甘い雰囲気になっちゃいけないよ」

 私の言葉に父さんがズコッとこける。

「あのね!俺は男だよ!お・と・こ!どうして男の弘輝と甘い雰囲気になるんだよ?!」

「……父さんの伝説その一、幼稚園、小学校、中学校、高校で学年問わず一年間で、ほぼ全ての男子生徒に告白され、男子にはモテたが、女子にはごく一部にしか好意を持たれず、ほぼ全ての女子が敵だった」

「ゴフッ!」

 ショックのせいか、父さんの膝が震え始めるが……そこら辺は無視だ、続けよう。

「父さん伝説その二、父さんと同期の男性の初恋の相手はほとんどが父さんで、その中には士郎さんと弘輝さんも含まれる」

「や、止めて!お父さんのライフはもうゼロなんだよ!お父さん、泣いちゃうぞ?こうやって、頬を擦り合わせ続けるぞ」

 父さんが、涙目で私に抱きつき、プニプニと柔らかい頬を私の頬に擦り合わせてくる……。おい、父さん、何か鼻息が荒くなってきてないか?

「フフフ、幸夜♪幸夜♪コウヤァ♪」

 何故か恐怖を感じるぞ?

「父さん、仕事は良いの?」

「ハッ、そうだった。それじゃ、行ってくる!」

「いってらっしゃい」

 私は父さんを見送ってから、部屋に戻ろうとすると……。

「幸夜お兄ちゃん、帰ってたの?」

「ああ、今帰った所だよ……橙(チェン)は何をしてたんだ?」

 私は家族の一人『八雲(やくも)橙(チェン)』の方に視線を向ける。

「私?私も散歩に行ってたんだ。あと、幸夜お兄ちゃん、藍しゃまが食事の時間だって、それと、後で遊ぼうね♪」

 私は橙に引っ張られるようにリビングの方に向かった。

 

~sideout~

 

~side小雪~

 

「えへへ~♪」

「あら、どうしたの小雪?」

 今日出会った子を思い出して僕が笑っていると、お母さんが話しかけてきた。

「あのね、今日多摩川に遊びに行ったらね、キツネさんのお面を付けてたね子を見つけてね、マシュマロあげたら食べてくれたんだ~♪」

「そう、よかったわね」

「うん!」

 お母さんが僕の頭を撫でてくれる。

えへへ、あのキツネのお面の子にまた会えるかな?

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 食事を終え、母さん、姉さん、藍さん、橙で食後のお茶を飲んでいると……やはり来たか……人数は……七人程度か?……そのうちの二人は美鈴と闘ってる……

 私達は『裏』の方面にも活動している為、こう言う侵入者は多い……さてと

「母さん、少し客が来たようだ。お相手してくるよ」

「そう……気を付けるのよ」

 私は『スキマ』を開き、その中に体を沈めて行く……

【幸夜、今回は私を使いますか?】

「(ああ、だが『創造』は使わない。『活動』と『形成』だけ使う)」

【わかりました】

 さてエターナルとの会話も終わったことだ……『喰い』に行くか……

 

~sideout~

 

~side三人称~

 

 八雲家の敷地内、その敷地内には武装した五人の成人男性達がいた。

「今から、屋敷に侵入してこの一家を攫う」

「「「「了解」」」」

 侵入者の中でリーダー格であろう人物が仲間たちに呼びかけ、残りの四人が頷く。

 しかし、彼らは後悔するだろう。この家に侵入するのでは無かったと……。

「初めまして、侵入者諸君」

「だ、誰だ?!」

 侵入者たちは突然聞こえてきた声に驚き、武器を構えて声が聞こえた方を向くと、そこにいたのが子供……しかも、攫う対象だった八雲幸夜だった事に武器を構えるのを止める。

「おいおい、対象が一人で来たよ」

 侵入者の一人がニヤニヤしながら近づくが……

「近づくなよ、人間……」

「なっ……」

 幸夜に近づいて行った侵入者は幸夜に睨まれた瞬間、動けなくなり、次の瞬間、侵入者の体は氷漬けにされる。

「な、なんだ?!」

「なに、ただ『聖遺物』の『活動』で氷漬けにしただけだが……まあ、貴様らに言っても理解はできないか……」

 仲間の一人が氷漬けにされたことに他の侵入者たちは驚き、幸夜の冷たい声に恐怖し、幸夜は侵入者たちに銃を握る様な形にした手を向ける。

 

「形成(イェツラー)――      冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)」

  Yetzirah――           Mary Gewehr

 

 幸夜の手に冷気が集まり、禍々しい一つの装飾銃が出現する。

 

    「世界の全てよ凍れ、    美しいまま永遠に」

Seien Sie gefrorene Welt alles, und ist schön; in Ewigkeit

 

 彼は詠う、彼だけの祝詞を……

 

「祈れ、祈れ、祈れ、祈れ」

 辺りに女性の歌声が響き渡る。

 

「その祈りを砕いてやろう」

 幸夜が続くように歌う。

 

「罪人の血は処刑道具に捧げよう」

 侵入者たちは恐怖し、思う。

 

「罪人の肉は処刑場に捧げよう」

 ここは処刑場なのだと……自分達は今から処刑されるのだと……

 

「渇きを癒せ、空腹を満たせ」

 自分たちの血肉は処刑場の渇きを癒す為の物になるのだと……

 

「祈れ、祈れ、祈れ、祈り続けろ永遠に」

 次の瞬間、幸夜が『冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)』の引き金を引き、侵入者の一人の頭が弾け、血の雨が降る。

「撃て!撃てぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 幸夜に恐怖した侵入者たちは当初の目的を忘れ幸夜を殺そうと引き金を引き、弾幕を張るが……

「何なんだよ!何なんだよこの子供は?!」

「何で空中を走りながら向かって来てるんだ?!」

 幸夜は侵入者たちが発砲した銃弾を『足場』にして、侵入者たちとの距離を詰める。

「バイバイ」

 侵入者たちに近づいた幸夜は、侵入者の一人の頭に銃口を突き付け発砲し、侵入者の頭は『凍りながら』粉々になり、辺りに血と氷漬けにされた脳と眼球が飛び散る。

 残り二人の侵入者のうち、一人はナイフを取り出し、幸夜の心臓を刺そうとするが、幸夜は『冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)』でナイフを弾き、そのまま引き金を引き、足に銃弾を喰らった侵入者は脚が凍り、砕け散り、倒れ、幸夜は自分の足で倒れた侵入者の頭を踏む潰す。

「クククッ……ヒヒヒッ……アハハハハハハ!!!!!!」

「ヒッ!」

 幸夜の笑い声に最後に残った侵入者は腰を抜かし、そんな侵入者に幸夜はゆっくりと歩み寄る……

「た、助けて!!」

 侵入者は命乞いをするが……

「助けてほしいのか?……だが、駄目だ」

 幸夜は引き金を引き、最後の侵入者を殺した……。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 最後の侵入者を殺した後、私は聖遺物に意識を向ける。

「(『魂』は『喰ったか』?)」

【ええ……しかし、マズいですね……こんなマズい魂は久々ですよ】

「(そうか……まあ、『魂の質』が小さいからな……)」

【そうですね……それより、胸の辺りは大丈夫ですか?】

「(大丈夫だ、ちょっとした熱と痛みを感じるだけだ)」

 私は服を捲り、胸の辺りにある彼女との契約の証でもある『銃痕』を見ながら言う。

【そうですか……。それで、美鈴さんの方はどうですか?】

「(先程まで感じていた『魂』は、もう無くなってる。つまり、美鈴の所は終わってるようだ)」

【では、美鈴さんの方に向かいましょう】

「(そうだな)」

 私は美鈴の方に向かい、死体を『スキマ』の中に入れそのまま家に戻って行った。

 





幽「はい、どうも二回目です♪」

幸「後書きだ。とりあえず、今回の変更点をまとめろ」

幽「了解!」

・幸夜とソウルの絡み

・お父さん伝説

・銃痕

幽「です」

幸「ちなみに、父さん伝説はまだまだあるから楽しみにしておいてくれ」

幽「では、皆様また次回にお会いしましょう」

幸「みなさん、さようなら」


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第3話~氷牙騎士・狼騎~

今回のお話は、幸夜君のお仕事のお話です。
ちなみに、ある事が原作とは異なってる所があります。
では、第3話をどうぞ!


 榊原小雪との出会いと侵入者を喰ってから、一年が経ち私は六歳になり、近所の公立の小学校に通っている。ちなみに、服装は普段通りで、狐のお面を着けている。学校には、『他人には見せられないような傷がある』という嘘で通している……まあ、一部分は本当だが。

 私は、前世での知識や「 」を喰って以来、膨大な知識がある為、学校など言っても無意味なのだが……。それと、もの好きな友人が三人ほど出来たのだが……私みたいな『悪(クズ)』に友人など……くだらない。

「コウヤ~何してるの~?」

「何、少し考え事をな……」

 私に喋りかけてきた人物はあの多摩川の土手で出会った少女、榊原小雪……彼女は小学校入学式の時に再開し、その時友人になった……。

 まあ、事実を言うと、小雪の両親と私の両親が掛けてくる謎のプレッシャーによって、私は友達になったのだが……。

 余談だが、この時ムルムルが笑ってきたので、三割ぐらいの威力の蹴りで何処かの『国』に蹴り飛ばした……と、余談は此処までにしておこう……。

「あーちょうちょだ~♪」

「小雪、そっちは道路だ」

 私は道路に蝶々を追いかけようとした小雪の手を掴み、動きを止める。……こう言う所を見て小雪の両親は可愛いと言っているらしいのだが、しっかりと教育してほしい……まあ、ちゃんと『愛情』があることはいいことだが……。

「おやおや、ユキにも困ったものですね」

「そうですね若」

「……見ているなら、止めろ」

 私は残りの物好きな二人に文句を言う。

 一人は、私が通っている学校がある『川神市』の『葵紋病院』の院長の息子の 葵(あおい)冬馬(とうま)、同じく副院長の息子、井上(いのうえ)準(じゅん)だ。

 この二人とは小雪繋がりで友人となった。

 ちなみに、冬馬は『バイセクシャル』……所謂『両性愛』で、準は『ロリコン』だ。……この年で二人の様な性癖を持つとは……この『世界』はどうなってる?

「しかし、冬馬と準……最近、貴様暗い雰囲気だが……何かあったのか?」

「うんうん、何だか二人とも暗いよ」

「いえいえ、そんなことはありませんよ」

「嘘だッ!」

「……小雪。いきなり大声を出すな……耳が痛い」

「……ごめんなさい」

 私の言葉に小雪がしゅん、と落ち込む……止めてくれ、それをやられると子犬に見えて物凄く困るんだが……。

【【お前さん(幸夜)は、動物が好きじゃからな(ですからね)。】】

「(黙れ、エターナル、奴隷(ムルムル))」

【お前さん、今、奴隷と書いてムルムルと言ったじゃろう?!】

 私は奴隷(ムルムル)の声を無視して、二人の言葉に耳を傾ける……。

「若、誤魔化してもこいつらには分かっちまうみたいだ……」

「そうですか。どうやらあなたたちには分かってしまうのですね。」

「……それで何があった?」

「信じていたものに裏切られたとでも言うんですかね。……私は父に憧れていたんです。父のような他の人に尊敬される人間になりたかった。しかし、現実は非常なものです。実は父は病院の立場を利用して医療品の横流しをしていたんです。そして準も院長の右腕である副院長の息子。私たちには悪事に染まっている男たちの私はあの男と同じ血が流れているんです。」

「それでか……」

「軽く言うなよ。……俺たちはそいつらの跡を継ぐんだからよ。」

「ん?なんで~?」

「なんでって。……さっきも話した通り俺と若は悪人の子供だ。蛙の子は蛙っていうだろ。」

「宿命と言うんですかね。」

 私は二人の話を聞いて、一つの感想が出来た……まあ、とりあえず。

「フン、くだらん」

 私の言葉に冬馬達が首を傾げる。

「それはどういう意味ですか?」

「だから、貴様らの考えがくだらん。確かに親が悪人なのはショックかもしれないが、親は親だ。貴様らは貴様らだ。親が悪人だろうが何だろうが貴様らの人生を勝手に決める権利なんてない」

「うん♪冬馬は冬馬、準は準だよ。」

 二人は衝撃が走ったような顔をしている。

「それと、少し難しい話をするが……貴様らの父親が……否、人間が罪を犯すのは当然だ。……人は生まれながらにして『悪』。人と言うのは、生まれ、人生を歩んでいくうちに『理性』と言う『善』が生まれる。だから人が罪を犯すのはしょうがないのだよ。それに『座』にいた『第二天』の『堕天奈落』……『人々に原罪を埋め込む』理で、人が罪を犯すことはある意味、世界の絶対的ルールの一つだ」

「……幸夜の言葉は理解できませんでしたが……何だか憑き物が落ちたような気がしますよ。ありがとうございます。幸夜、ユキ」

「そうですね。ありがとな、幸夜にユキ」

「えへへ~♪どういたしまして」

「フン、私に感謝など……くだらない」

 それに……この世界には貴様らの父親よりも酷い『悪(クズ)』がいるからな……

 

~~~~~~

 

 学校から帰宅し、家の中に入ると、『赤い手紙』を持った藍さんが玄関の前に立っていた。

「幸夜、お仕事です」

 私は藍さんから手紙を受け取り、手紙を『魔導火』と呼ばれる火で焼くと、文字が浮かび上がる。

「久々ですね……それでは、行ってくる」

「はい、いってらっしゃいませ」

 私はランドセルを藍さんに預け、目的の場所に向かった。

 

~~~~~~

 

「(本当に此処で良いんだな?)」

【ええ、ここからきわめて強い『邪気』を感じます】 

「……そうか」

 時間は夜……私はエターナルに話しかけ、ここに『始末対象』がいることを確認する。

 私は帽子を深く被り直してから、『葵紋病院』の中に侵入した……

 

~sideout~

 

~side冬馬~

 

 私は自分の父の不正を世間に証明する為に、病院内の父の部屋に不正の証拠を探しに来たのですが……

「中々、見つかりませんね……」

 私はパソコンのファイル、本棚に隠されているファイルなどを見つけ中身を見ますが、その中身は父が処分したのか、書類も残っていませんでした……。

「一体、何処に隠したのでしょうか?」

 私はまだ探していない場所を探そうとすると……

「冬馬よ、探しているのはこれか?」

「ッ?!」

 声が聞こえた方向を向くと、そこには一冊のファイルを手にした父がいました。

「冬馬よ、お前は賢い子だと思っていたのだがな……」

「私はあなたの不正を暴き、あなたに罪を償ってもらいます!!」

 私が父に向かって言うと、父は突然笑い出し……。

「そうかそうか……冬馬よ、私は腹が減ったよ」

 この父の言葉を最後に私は意識を失った……。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

「そうかそうか……冬馬よ、私は腹が減ったよ」

「チッ……」

 私は『始末対象』がいるであろう部屋の一室に入ると、男と私のよく知る人物……冬馬がいた。

 私は冬馬と男に視認されない速度で動き、冬馬を気絶させ、冬馬と男性の間に立つ。

「誰だ貴様は?」

「……貴様を始末しに来たものだ」

 私は服の中から『ソウルメタル』と呼ばれる金属で出来た小太刀と、ハンドガンを取り出すし、私の取りだした武器を見て、男は笑う。

「なるほど、その年齢でその武器、貴様が噂の『魔戒騎士』か?」

「どんな噂かは知らんが、とりあえず肯定はしておこう。それと昔は魔戒騎士と呼ばれていたらしいが、現在は『始末屋』の一種類だ」

 私は『魔戒銃』を男に向かって発砲するが、男は弾丸を避け、私にタックルをし……

 パリンッ!と、私と男は窓ガラスを突き破り、私は男に拘束されながら地上へと落下していく。

「クッ!」

「ガッ!」

 私は男の腕を『魔戒剣』で刺し、男の拘束から脱出し、そのまま地上に着地する。

「貴様ッ!……グォォォォォォ!!!!!!!」

 私に憎悪の視線を向けていた男だったが、突然、雄叫びをあげると、男の周りに黒い靄のような物が現れ、黒い靄が男を囲み黒い靄が晴れると、そこには体の肉がむき出しで所々に黒い鎧を着た悪魔のような姿をした怪物がいた。

「あの『ホラー』は?」

【あれは、『ホラーエビル』ですね。大方、彼の邪な心に反応して彼に寄生したのでしょう……幸夜?】

「(ああ、分かってる)」

 私は『魔戒剣』を上に掲げるように持ち、切っ先で円を描くように回し『魔戒銃』の銃口を円の中心に向け、そのまま引き金を引くと円から光が降り注ぐ。

 そして、青く輝く鎧と青色の狼を模したような仮面が装着され、私は『氷牙騎士・狼騎(ロキ)』へと変わり、ゆっくりと『ホラーエビル』に向かって歩いていく……。

「グォォォォォォ!!!!」

「シッ!」

「ギャッ!」

 『ホラーエビル』が跳びかかってくるが、それを避けながら回し蹴りを喰らわし、倒れた『ホラーエビル』の方を向きながら『魔戒銃』の銃身に『魔戒剣』を取り付け、『魔戒剣銃』にし……。

「フンッ!」

「ギャァァァァァァァァ!!!!!」

 『魔戒剣銃』で発砲しながら『ホラーエビル』に近づき、剣の部分で『ホラーエビル』を一刀両断し、『ホラーエビル』は断末魔を上げながら消滅した……。

「……始末完了」

 そして、翌日のニュースで『葵紋病院』の『不正』と、『葵紋病院』の『院長』が『行方不明』が発表された……

 




幽「はい、どうも3回目です♪」

幸「後書きだな、それじゃあ、恒例のあれだ」

幽「了解!」

・幸夜の学校での嘘

・始末対象が悪魔でなくホラー

・幸夜が魔戒騎士

幽「です」

幸「ちなみに、私が魔戒騎士と言うのは、この作品が前々回の時の設定だな」

幽「うん。前々回のを修正して前回の時は魔戒騎士と言う設定を無しにしてたんだけど、今後に出てくるキャラの存在を考えると、魔戒騎士設定が必要だったんだ」

幸「そうか」

幽「それと、この世界では魔戒騎士と言う存在は『始末屋の一種』に組み込まれていて、魔戒騎士は本当に極少数しかいないんだ」

幸「その極少数の一人が、私だな」

幽「そうだね」

幸「では、皆様また次回にお会いしましょう」

幽「みなさん、さようなら!」


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第4話~テロ~

今回は過激表現多しです。
そして、突然なことが起こります。
では、第4話をどうぞ!


 

 

 ホラーを倒してから二年が経ち、私は小学三年生になった。

 この二年間で私の周りは変化していった。

 一つは、冬馬と準が自分たちの父親の不正を暴き、準の父親は刑務所、冬馬の父親は『行方不明』……実際は私がホラーに憑依されていた彼の父親を殺したのだが……。

 二つ目は、準が『ハゲ』になった……理由は、小雪が準の頭を剃刀で剃ったからだ。

 そのせいか分からないが、準のロリコン度が『増加』した…… 

 三つ目は、小雪達意外に友達が出来た……その友達の名前は『九鬼(くき)英雄(ひでお)』

 九鬼とは、色々あって、『王』とはどういう存在かを話していたら仲良くなった。

 そして、現在……

 私と小雪は何故かパーティ会場に来ていた。

 まあ、理由は分かっている……

 一つは九鬼に招待された。

 二つ目は、父さんと小雪の父親はそれぞれ『バニングス』と『月村(つきむら)』の娘の護衛の任務を受けてこの会場におり、母さんは『八雲グループ』の『社長』として、小雪の母親はその『秘書』としてこの会場におり、私と小雪はその息子、娘としてこの会場に来ている。

 そして先程から、たくさんの人達から挨拶を受けているが……

 くだらない……今まで挨拶してきた奴らは『下心』丸出しで挨拶をしてくる……くだらないくだらないくだらない……

 ハァ~、私は『座』にいた時はこんな奴らまで『愛情』を与えていたのか……まあ、それが強く抱いた想いだからな……それに、今でも『愛情』を与えていたいと想っているしな……ハァ~、本当にくだらない……

「ねえねえ、幸夜~僕、お腹すいちゃった~」

 小雪が私の着ている黒いコートの袖を握りながら言ってくる。

「そうか……なら、向こうに行こう」

「うん♪」

 私は小雪を連れて、食事があるテーブルに向かう。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 食事のテーブルに向かった後、小雪はご飯を食べ、私はそんな小雪を見ていた。

 しかし……流石『九鬼(くき)』と『霧夜(きりや)』の共同パーティーだ……食材の質が良いな……。

「ねえねえ、幸夜。幸夜は、こんな時でお面を着けてるの?」

「ああ、そうだが……」

「ふ~ん」

 この会話を最後に小雪はご飯を食べるのに専念した。……一体どうしたんだ?

「すずか、こっちよ!」

「待ってよ、アリサちゃん!」

 む、『すずか』に『アリサ』?確かこの名前の人物達は父さん達の『護衛対象』だったはず……。

 私は声の正体が気になり、後ろを振り向くと……。

「ほら、早く食べましょうよ」

「う、うん」

 そこにはドレスを着た父さん達の『護衛対象』の『アリサ・バニングス』、『月村(つきむら)すずか』がいた。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

「へ~そっちも大変なんだね~」

「そうなのよ。さっきから大人がね~」

「八雲君、食べないの?」

「あぁ」

 『アリサ・バニングス』、『月村(つきむら)すずか』を発見して数時間……私と小雪は彼女達と仲良くなっていた……。

 ……何故だ?!一体、数時間で何が起こったというのだ?!私達は普通に喋っていた筈……流石にこの私でも動揺するぞ!!

 ……ハァ~、一旦逃げ出すか。

「小雪、少しトイレに行ってくる」

「いってらっしゃい~」

 私は少し落ち着く為にトイレに向かった……。

 そして、私は頭を冷やし終え、トイレから戻ると……。

 会場が燃えていた……。

 

~sideout~

 

~side英雄~

 

 ぬかったわ。まさかテロリスト如きが九鬼の警備網を抜けてくるとは……。

 我が名は九鬼英雄。

 誇りある九鬼家の長男である。

 今日は九鬼家と霧夜グループが共同で出資したホテルの開店祝いのパーティーがあった。

 我自身、あまり興味はなかったが、八雲殿、榊原殿と我が友『幸夜』と『すずか』と『アリサ』が出席すると聞き、パーティーに出席したのだが……。

「出口はどこだぁ!?」

「腕が痛い!誰か助けてくれ!!」

「きゃああああ!?」

「ここから出してくれ!!」

 突然の爆発で会場には火が回り出した。

 参加者たちは皆この事態に錯乱状態になっている。

「くっ、仕方ない!狼狽えるな!!助かりたいなら身を低くして出口に迎え!幸い、出口はふさがっておらぬ。女子供を優先的に落ち着いて降れ!!」

 まったく、いい大人が情けない!これだから庶民は……。だが、致し方なし、我はそんな庶民を導かなければならね。何故なら我は九鬼英雄だから。生まれながらの王にして、皆の英雄(ヒーロー)なのだから!!

 出口へとむかう庶民たちを眺めながら、我は自然な足取りで、我の前に立っていたメイドへと声をかける。

「そこのメイド、貴様先程から我のことを気にかけているようだが、・・・名をなんという?」

 我に声をかけられたメイドは驚いたような顔をする。

「あ、ああ……あずみ。私の名は忍足(おしたり)あずみだ。・・・なんでわかったんだ?依頼主からはあんたに連絡はいってないはずなんだが?」

「ふっ我は九鬼ぞ。その程度のことも見抜けなければ王の一族など名乗れぬわ!」

「あずみ、そこに霧夜の娘がおるだろう。そやつも助けろ、此処で失うには惜しい」

 そういって我は一人の倒れている女を指差す。

 名前は『霧夜(きりや)エリカ』。霧夜グループの娘で、パーティーに来ていたのだが、先程起こった爆風に巻き込まれ、気絶してしまっている。

 ドガガァァァァァン!と、爆発音とともに巨大な衝撃が我たちがいるホテルを襲った。

「な、何が起こってるの!?」

 先程の衝撃で霧夜の娘も目を覚まし、場の状況がわかっていないらしいく、落ち着き始めた参加者たちも再び錯乱し始める。

 バン!!と、銃声で会場全体が静まり返った。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 火の勢いがどんどん増す会場の中で、私は月村とバニングスが脱出したのを確認し、小雪と九鬼達を探しに会場の中を歩いていた……。

 小雪達は大丈夫だろうか?……大勢の人間が死ぬのは構わんが、小雪達には無事でいてほしい。私のような『悪(クズ)』を『友達』と言ってくれているのだから……そのように言ってくれる人間をもう二度と失いたくない。

 そして、暫く歩いて行くと武装した六人ほどの人間と無駄な筋肉を付けた人間が一人……計七人の人間が九鬼と小雪が拘束され、その七人の足元に『血塗れ』のメイドが倒れている……。

 すると九鬼と小雪とメイドは私に気づいたのか……

「バカ者!!何故、逃げなかったのだ幸夜!!早く逃げるのだ!!」

「そうだよ!早く逃げて、幸夜!!」

「その人達の言う通りだ!霧夜お嬢様を連れて逃げろ!!」

 と、必死な様子で私に訴えてくるが……私の答えは決まっている……。

「……断る」

 私の返答に三人が驚く。

「九鬼、小雪……私は『悪(クズ)』で『殺人鬼』だ……だが、私のことを『友達』と言ってくれるお前らを見捨てて逃げたら……それこそ私は……『悪(クズ)』以下の『クズ』になってしまう」

「貴様、八雲幸夜だな?貴様も人質になれば、金もたんまり手に入るな……おい!」

「後ろだ、幸夜!!」

 筋肉男の言葉と九鬼の声が重なると同時に私の背後にいた人物が襲いかかってくるが……。

 私は跳びかかってきた男を避け、そのまま男の首にヘッドロックのように腕を掛ける。

「な、何故、避けれた?気配を消していたのに……」

 男は苦しそうな表情になりながら言う……この男、面白い事を言うな……。

「お前、生きてるのに気配を完全に消せると思うのか?それと、貴様は『認明不可』だ」

直後、ボキッ!と、男の首の骨が折れた音が辺りに鳴り響く……。

「貴様、死ね!」

 カチャッと、筋肉男の言葉を合図化の様に残りの六人が銃を構える……。

「死ね!」

 バン!と、今度は銃の発砲音が会場に響く……。

「「幸夜ァァァァァァァ!!!!!!」

 九鬼と小雪が私の名前を叫ぶ……私が撃たれたと思ったのだろ……だが……。

「な、何故だ?!」

 倒れたのは私ではなく、二人の武装した人間だった。

 倒れた二人の頭には銃痕があり、私の両手には愛銃である『大量殺戮祭(オーバーキルパレード)』が握られている。

 敵と小雪達は私が銃を持っていることに気づき、そして、理解しただろう……。

 私が倒れた二人を『撃ち殺した』と……。

 すると、敵の一人の体が震えていた……。

「そ、そんな……。狐の面にその服装、それにその二丁のハンドガン……そんな、そんな」

「お、おいどうした?」

 突然、怯え出した自分の仲間が気になったのか、筋肉男は近づくが、震えていた男は今度は筋肉男に怒りをぶつける。

「ど、どうしてここに『零崎』がいるんだよォォォォォ!!!!!!」

 その男の言葉に筋肉男以外の武装した敵の顔が真っ青になっていた……。ふむ、筋肉男以外はどうやら知っているようだな。なら……。

「どうやら私を知っている者もいるらしいが、自己紹介しておこう。私は『零崎(ぜろざき)紅識(こうしき)』、『零崎一賊』の末弟だ。さて、零崎を開幕しよう」

 私は『大量殺戮祭(オーバーキルパレード)』を構え直し、敵に視線を向けた……。

 

~sideout~

 

~side三人称~

 

「さて、零崎を開幕しよう」

 幸夜……否、紅識はナイフが付いた二つのハンドガン……『大量殺戮祭(オーバーキルパレード)』を持った片腕を銃口が下に向くように真っ直ぐに伸ばし、もう片腕を曲げ、銃口が下に向くように構える。

「ほざくなよ、餓鬼!!」

 テロリストのリーダー格の男の言葉を合図に残りのテロリストたちは、体が震え顔を真っ青にしながらも銃を構え、引き金を引くが、紅識は敵の死角に入りながら移動し、銃弾を避け、二人のテロリストに接近し、腕をクロスさせるような形にし『大量殺戮祭(オーバーキルパレード)』の銃口を向け、引き金を引くと、テロリスト二人の頭が吹き飛ぶ。

「うわぁぁ!!」

 殺されたテロリストの近くにいたテロリストの仲間が叫びながら発砲するが、幸夜は飛んでくる銃弾を避け、そのテロリストに接近し、『大量殺戮祭(オーバーキルパレード)』に付いているナイフでテロリストの銃を持っている腕を切断し、さらに幸夜はナイフで首を斬り、テロリストの首がその場に落ちる。

「ク、クソ!」

 いつの間にか幸夜の背後に移動していた、テロリストが引き金を引くが……。

「こ、こいつ?!し、『死体』を『盾』に使いやがった!!」

 幸夜に向かって放たれた銃弾の全ては、幸夜が床に倒れていたテロリストの死体を持ち上げ、盾に使うことで銃弾はテロリストの死体に全弾あたり、幸夜は盾に使った死体を捨てると、『大量殺戮祭(オーバーキルパレード)』でテロリストの腕、脚、頭、腹を撃ち、辺りにテロリストの血肉、脳、腸が飛び散り、床にこびりつく。

「な、な……」

 テロリストのリーダ格の男は目の前の光景に戸惑う……。

 まだ少年の目の前の黒服の少年に自分以外の仲間が数分で始末されたからだ。

 そして、狐の面で顔が隠れているが、リーダ格の男は少年が自分の仲間を殺していく度に仮面から覗く少年の瞳に『狂気』が宿っていることが何故か分かった。

 生き残ったリーダー格は知らない、零崎一賊が『最悪』と呼ばれていることを……。

「安心しろ、零崎に敵対する者は皆殺しだ」

 この言葉を聞いた瞬間、リーダ格の男は最後の手段に移行する。

「て、てめぇ!そこを動くなよ!動いたらこの二人の命h「良いぞ……既に奪ったからな」……へ?」

 リーダー格の男の言葉を遮る様に、いつの間にかズボンの方に付けていた銀時計を握った幸夜が喋り、幸夜の隣にはリーダー格の男に捕まっていた筈の小雪と英雄が、何が起こったのか分からない?と言う表情で立っていた。

「久々に『時間を止めた』が……結構、疲れるな……まだ、この身体での戦闘に慣れていないからか?」

「て、てめぇ!!何しやがった?!」

 リーダー格の男はうろたえる。……当然だ、自分が捕まえていた筈の子供がいつの間にか奪われているのだから……。

「私が『時を止めた』……と、行っても貴様は信じないだろう?……それと、返すよ」

 ポイッと、幸夜はリーダー格の男の目の前に『ある物』を投げる……

「う、腕?」

 投げられたのは根元から引き千切られた様な後がある腕……

「ああ、『貴様』の腕だ」

「はい?……ぎ、ギヤァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

 次の瞬間、リーダー格の男は自分の腕が千切られていることに気づくと、叫び声を上げ、膝から崩れ落ちる。

 そして、幸夜は腕の痛みで混乱している男に近づき、その首に蹴りを放ち……

「Fuck you(くたばれ)」

 幸夜の蹴りが直撃したリーダー格の男の首は捩じ切れた……

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

「「「幸夜!!」」」

「「小雪!!」」

「お父さん!お母さん!」

「英雄――――!!」

「姉上!」

 会場から脱出した後、小雪には両親が、九鬼には、九鬼の姉『九鬼(くき)揚羽(あげは)』さんが、私には父さんと母さんと何故か此処にいる姉さんが抱きしめてきた。

「幸夜、大丈夫ですか!?痛いところはありませんか?!」

「幸夜、大丈夫?!私の知り合いの病院に行く?!」

「幸夜、大丈夫か?!俺、今からあのテロリスト共の組織を血祭りにあげるからな!!」

「姉さん母さん大丈夫だから……それと、父さん組織の血祭りはムルムルに『お願い』してるからしなくても良いよ」

 私は姉さん、母さん、父さんの順で対応していく。……さて、ムルムルの奴『首輪』も外してやったんだから……しっかりと始末してほしい……が、たぶんアイツの事だから数人ぐらい生き残りを出すだろうな……はぁ、後で私も動くか、零崎一賊に仇名す者は『老若男女人間動物植物の区別なく容赦なく皆殺し』だ……。

 すると暫くして、揚羽さんが私の所に近づいてきた……。

「幸夜、この度は弟を救っていただき礼を言う」

「揚羽さん、何度も言いますが、私は『悪(クズ)』です。だから、礼などしないで下さい。」

「しかしだな……」

「それに私は、自分の『ルール』に従っただけです。それでも、礼が言いたいって言うなら……後ろの執事を何とかして下さい……私達が困るんで……」

 揚羽さんが父さんの方を向くと、そこには後ろにいる執事……『ヒューム・ヘルシング』を見て、顔中に汗を流している父さん達がいた。

「ふはははははは!確かに八雲殿と幸夜と美鈴がヒュームを倒して以来、あのような状態が続いておるな!」

「笑い事じゃないですよ……」

 私と父さんと姉さんは、以前にヒュームさんを倒して以来、ヒュームさんに目を付けられている。父さんは再戦の相手に、私と姉さんは揚羽さんと同じ弟子にしようとしているらしい……。

 それと余談だが、私は揚羽さんに「将来、九鬼に来ないか?」と誘われている。

 そんなやり取りをしていると、小雪が俯きながら私達に近づいていた。

「……幸夜」

「……分かっただろ?私は『悪』だ。さっきも見ただろ?私は『殺人鬼』なんだ。だから私は小雪達の友達にふさわs「それは違うよ、幸夜」……なに?」

「確かに幸夜は人殺しかもしれないけど、そんなの私には関係ないよ。幸夜は私達を守ってくれた。だから、私達は友達だよ♪」

 小雪は、満面な笑みを浮かべ私に抱きついてきた……。彼女はこんな私でも友人と言うのか?何て無垢すぎるんだ……。

「そ、それに……」

「それに?」

 すると、小雪は顔を赤面させ、体をもじもじさせる。

 そして……

「幸夜、大好き!!」

「むぐっ?!」

【なっ?!】

 私は小雪にキスをされ、中で声が響く。

 お、おい。周りの野次馬共、何ニヤニヤしてるんだ解体するぞ。

「えへへ、幸夜にキスしちゃった♪」

 それと、小雪は本当に8歳か?

 突然な事が起こり過ぎて、私は逃げるように『スキマ』の中に入って行った。

 






幸「後書きだな、恒例のあれだ」


・幸夜が零崎としてテロリストを始末

・小雪が小雪にキス


幸「だな。ちなみに、作者はちょっと私と『お話』をしてこれない」

幸「では、皆様また次回にお会いしましょう」



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第5話~いじめ~

今回、かなり修正しました。
そして、あるキャラがヤバいです。
では、第5話どうぞ!


 

 

 九鬼、霧夜主催パーティーテロ&小雪のキス事件から数日が経った。

 今日、私は武術の総本山と呼ばれている『川神院』の敷地内に来ていた。

「あ、幸夜!」

 すると、一人の少女が私の名前を呼びながら頭から飛び込んでくる。

「一子(かずこ)か……毎回言うが、いきなり頭から飛び込んでくるのは止めてくれ……」

「う、ごめんなさい」

 私に飛び込んできた少女……『川神(かわかみ)一子(かずこ)』の雰囲気がしゅんっとなり、一子の瞳には涙が溜まる。

「べつに良いさ」

 私が一子の頭を撫でると、一子は気持ちよさそうに目を細める。

「それで、一子。鉄心(てっしん)さんは何処かな?」

「おじいちゃん?おじいちゃんなら、奥にいるよ?」

「そうか……それじゃあ、また後で」

「うん!」

 私は一子に別れを告げ、ここのトップである『川神(かわかみ)鉄心(てっしん)』の所に向かった。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

「フォフォフォ、久々じゃの~」

「お久しぶりです、鉄心さん」

 私は正座した状態で深く頭を下げながら、鉄心さんに挨拶をする。ちなみに、狐のお面を付けたままだ。

「フォフォフォ、幸夜よ、そんなに畏まらんでもええぞ?」

「いいえ、年上に敬意を払うのは当然ですので……」

 私の言葉に鉄心さんは嬉しそうな表情になるが、すぐに溜息をつく……まあ、何故溜息をするのか理由は分かっているが……

「ハァ~百代(ももよ)も、おぬしのように礼儀正しく精神が強ければ良かったのじゃが……」

 『川神(かわかみ)百代(ももよ)』……鉄心さんのお孫さんで一子の姉……その力はまだ小学四年生でありながら、大人の武術家を余裕で倒すほどの力を持っているが……。

「私の精神が強いかどうかは置いておいて……確かにそうですね。あの小娘の力に対する『飢え』は一言で言えば……くだらない。……力を求めることは悪くないがその力を求める『想い』も『渇望』も『願い』が無い。あれでは、ただ『飢え』をしのいでいる『獣』だ」

「おぬしもそう思うか?だから儂はおぬしに百代と闘って欲しいんじゃが……」

「くだらない……と、失礼。それは前回と同じで断らせてもらいます。今の私が小娘と闘ったら、まだ全然強くない小娘の心は『完全』に砕けますよ?」

 私の言葉に鉄心さんが苦笑いを浮かべる。

「そうじゃな……だが、百代が成長すれば闘ってくれるんじゃろ?」

「ええ……その時になったら、鉄心さんのタイミングでお呼び下さい」

「その時はよろしく頼むぞ?」

「はい」

 私は立ち上がり部屋の扉を開け、部屋を出ようとするが、鉄心さんに止められる。

「そうじゃ、幸夜よ」

「なんですか?」

「最近、この辺りで殺人事件が起こっておるのは知っておるか?」

「……はい、知ってますよ。確か巷を騒がしてる事件ですよね?」

 鉄心さんが言っている事件とは、川神市で起こっている連続殺人事件で、被害者は今日で14人と言う、現代日本ではありえないと言って良い数の被害者数だ。

 被害者たちは、年齢、職業、性別、趣味、趣向、性格など全てバラバラで、無差別らしい。

 そして、被害者たちの共通している所は、見るに堪えない惨殺死体になっていることぐらいらしい。

「どうやら、『13人』もの被害者が出ておるらしいからの、おぬしも気をつけるんじゃぞ」

「……はい」

 私は一度、鉄心さんに礼をしてから部屋を出た。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 翌日……今日は学校があり自分のクラスで授業を受けているのだが……。

「おいおい、どうして学校に来てるんだよ!小雪菌!幸夜菌!」

「そうよ!そうよ!」

 絶賛、私と小雪はいじめを受けていた……。

 ちなみに、教師にいじめを話したのだが、全然解決しない……逆に以前よりいじめが酷くなった。

 あと、いじめの理由は……知らんが、大方、私と小雪が『金持ち』の息子と娘だからだろう。

 ハァ~くだらん。とりあえず、私と小雪の机の中に詰められた汚物とかその他諸々を取り除くか……

「お~い、皆見てみろよ!幸夜菌が小雪菌の机も綺麗にしてるぞ!」

「ヒュウ~ヒュウ~、流石菌同士の夫婦!」

 周りの生徒が笑い始める。ハァ~本当にくだらん。むしろ小学生でこのような罵倒や手の込んだことができると逆に褒めたくなる。

 私は汚物やその他諸々を袋に詰めた後、机を片付けた後、物陰に隠れ……私の能力の一つ【創造と終焉を司る程度の能力】を使用する。

「創造開始(クリエイト・オン)」

 私が呟いた後、何も無かった場所に、真新しい机が出現し、私はそれを教室に持っていき、授業を受けた。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

「ねえ、マシュマロ食べる~?」

「おい、こっち来るなよ、小雪菌!」

 今は放課後、小雪は近くにいた男子生徒にマシュマロを渡そうとするが、男子生徒はそれを嫌がる。

「ねえ、幸夜菌はどうして学校来るの?」

「そうだよ、さっさと学校から出て行ってよ」

 私の方でも男子生徒と女子生徒が罵倒してくる。

【何ですかこの餓鬼共、先程から幸夜を罵倒して!!】

【そうじゃ!!お前さん、こやつら全員呪っていいか?】

「(エターナル、少し落ち着け。ムルムル、お前もだ。所詮、子供の戯言だ、無視でもしておけ)」

 私の言葉に中にいるエターナル達が静かになり、意識を教室に向ける。

「小雪菌の家族も全員菌だよな!」

「幸夜菌の家族もだろ!」

「僕の家族や幸夜のことを馬鹿にしないでよ!!」

 小雪が泣き崩れ、それを見て生徒達は笑い始める。

 ……まて、こいつら

 

 

 

 

 

 

 イマ、ナンテイイヤガッタ?

 

 

 

 

 

 

 

~sideout~

 

~side小雪~

 

「僕の家族や幸夜ことを馬鹿にしないでよ!!」

 僕は泣きながら膝をつき、他のみんなは笑い始める。

 もう止めてよ!止めてよ!止めて!!

「誰か……助けてよ……」

 もう、こんなつらい気持ちはやだよ……。

 バキッ!!!と、音が聞こえてみんなの笑い声が止まり、音がした方向を向くと、そこには割れた机と拳を振り下ろした状態で立っている幸夜がいた。

 そして……。

「黙れ、餓鬼共……」

「「「ヒィッ!」」」

 冷たい幸夜の声に、みんなが怯える。

「今、私と小雪の家族を侮辱した奴は誰だ?」

 皆は僕と幸夜の家族を馬鹿にした子の方を向く。

「そうか……そいつか」

 幸夜はゆっくりとその子に近づいて行き……

「……フン!」

「ギャッ!」

 その子の顔を殴り、殴られた子は血を流しながら倒れる。

「痛い!痛い!痛い!俺の顔が!!歯が!鼻が!」

 殴られた子の顔は、鼻が折れ、歯が折れて、そんな子に幸夜は近づいて……

「おいおいどうした、ゴミ?たかが歯が折れて、鼻が折れただけだろう?ホラ、これでも食えよ!!」

 幸夜はさっき僕達の机の中に詰め込まれていた汚物を無理やりその子の口に詰め込めながら……

「痛ぇか?痛ぇだろ――嬉し涙流せやオラァッ!」

 幸夜はその子のお腹を殴り、その子は嘔吐する。

 幸夜は残りの皆の方を向き……。

「てめぇら、私達が黙っていれば家族まで侮辱しやがって……今後、小雪をいじめ、私達の家族を侮辱してみろ……栄えある15、16人目はてめぇら餓鬼共だ!!その腐った脳で理解できたか?!ア゛ァ゛?!」

 幸夜の言葉にみんなが首を縦に動かし、幸夜が僕の手を掴んで、立たせてくれる。

「それじゃあ、帰るか小雪?」

「う、うん」

 僕と幸夜がランドセルを持って、教室を出ようとした瞬間……。

「お前ら、一体どうしたんだ?!」

「チッ!……」

 教室に担任の先生が入ってきて、教室の状態を見て驚いて、幸夜が舌打ちをする。

「先生!アイツが!アイツが!!」

 一人の子が幸夜を指さして、先生がこっちに近づいてくる。

「八雲、一体どうしてこんなことをしたんだ?」

 先生がまるで、全部幸夜が悪いと言う表情で言ってくる。

 幸夜は悪くないのに!!皆が悪いのに!!

 幸夜は僕の代わりに皆の事を怒ってくれたのに!皆からのいじめを幸夜が守ってくれただけなのに、なのに、なのに!!許さない、許さない、許さない、ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ……。

 僕の頭の中がグルグルと回る中、幸夜はもう一度舌打ちをした後に……。

「偉そうにするな、役立たずのビッチ先生」

「なっ?!……八雲、その言葉、どういう意味か知っていて使っているのか?」

「当然だろ?それとも何か?発情先生とでも呼べばいいのか?」

 幸夜の言葉に先生の顔が真っ赤になり、幸夜を怒ろうと口を開こうとするけど……。

「何だ?発情先生や役立たずのビッチ先生と言われるのが嫌なのか?ハッ!私がいじめの事を言っても何の解決もしず無視して、家庭訪問で見た私の母親に欲情して……正直言って臭いんだよ。貴様は……気づいてないと思っていたのか?それに、小雪や他の女子生徒を見る視線や授業中に勃起……。不愉快だ、不愉快すぎる……。貴様のようなロリコン……失礼、これだと準に失礼だな……。人間(ゴミ)が何故、学校にいる?なぜ、教師をしている?あれか?教師になれば、女子生徒を性的な意味で触れると思ったか?その母親を性的な意味で触れると思ったか?くだらない、くだらな過ぎるぞ。……まあ、こんな考えをしている私もくだらないがな……。ああ、本当に何故貴様のような奴が教師をしてるんだ?とりあえず、教師やめろよ。止めて、引きこもりにでもなってろよ」

 幸夜の言葉で放心状態になった先生を無視して、幸夜と私は教室を出て行った。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 学校から帰った後、私が参加しているグループ『風間(かざま)ファミリー』達が良く遊ぶ、原っぱに来ていた。

 理由は簡単、小雪の新しい友達をつくる為だ……しかし……。

「悪いな、定員オーバーだ」

 と、風間ファミリーの軍師で厨二病の『直江(なおえ)大和(やまと)』

「私も反対だ。悪いが今の方が心地いいからな」

 と、鉄心さんの悩みの種、川神百代

「わ、私も」

 と、元いじめられっ子『椎名(しいな)京(みやこ)』

「ぼ、僕も」

 と、影の薄い少年『師岡(もろおか)卓也(たくや)』

「俺様もだぜ」

 と、筋肉を無駄に付けている少年『島津(しまづ)岳人(がくと)』

「私は賛成よ!幸夜の友達なら安心だし、新しい友達ができるのは嬉しいわ!」

 と、風間ファミリーの『癒しキャラ』で、いつも努力している少女、川神一子

 そして、今はいないが風間ファミリーのリーダー『風間(かざま)翔一(しょういち)』……通称『キャップ』と私の八人で風間ファミリーは構成されている。

「反対5で賛成2だな」

 大和(ちゅうにびょう)が、ニヒルを間違えたような表情から何故か勝ち誇ったような表情で私を見る……。

 ちなみに大和(ちゅうにびょう)は私も同じ厨二病だと思い、ライバル視している……。

 私は素なのだが……?

「そうか……なら私にも考えがある」

 風間がいれば結果は変わったかもしれんが、しょうがない。

「私は今から風間ファミリーを抜ける」

「「「「「「「なっ?!」」」」」」

 私の言葉に皆が驚き、私は背を向ける。

「お、おい!ちょっと待てよ」

 大和(ちゅうにびょう)は私を呼びとめようとするが……。

「それじゃあ、縁が合ったら、また会おう」

 私は小雪を連れて帰って行った。

 

~sideout~

 

~side小雪~

 

 幸夜が学校のいじめっ子を殴った次の日、いじめは無くなっていて、皆が謝ってきた。

 そして、朝の会が始まると担任の先生ではなく、別の先生が入ってきた。どうしてだろう?

「え~……担任の先生が昨日辞職しましたので、私がこのクラスを受け持ちます。それと、鈴木君だが、顔の骨が折れたことと心の病気でしばらくは学校に来れないそうだ」

 先生の辞職に、心の病気?どうしてだろう?

「それで、急なんだが……八雲君が家庭の事情で別の学校に転校しました。それで、今日は手紙を……」

 先生の言葉は途中で聞こえなかった……え、幸夜が転校?

 ど、ドウシテ?僕が何かしちゃったから?僕のせいで幸夜がいじめっ子を殴ったせいで?

 ど、どうしよう、き、嫌われちゃったのかな?

 や、嫌だよ。嫌だよ、嫌だよ、嫌だよ!幸夜に嫌われたくないよ!!

 そ、そうだ。謝ろう。謝れば、許してくれるかな?

 僕はそう考えながら、クラスメイトそれぞれが幸夜に出す手紙に『ごめんなさい』と書き続けた……。

 

 

 





幽「恒例のあれです」


・幸夜と鉄心の最後のやり取り

・小雪がヤンデレ?に覚醒?


幸「……作者、なんてことをしてくれたんだ?」

幽「あはは、まあいいじゃないか?それと、読者の皆さんは鉄心さんと幸夜のやり取りの秘密に気付くかな?」

幸「さあな」

幽「では、みなさん次回会いましょう。では!」



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無印編
第6話~動き出す物語~


 私は夢を見る。

 この場面が夢と分かる理由は、もうすでに私が過去に体験したことだからだ……。

 私の周りには……死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体……。

 この死体は全部私の大切な人達だ……。

 大切な人達の死……認めない……認めたくない……認めてなるものか!!

 なぜ?どうして?どうして、私が愛する人達は消えてしまう?

 ……許さない、許せない、許したくない、許してなるものか、私から大切な人を奪う『神』を『世界』は絶対に許せない……。

 大切なものが奪われるのなら、全てを凍らしてやる……。もう、奪わせない。

「流出(アツィルト)――」

   Atziluth――  

 次の瞬間、私は『座』に『流出』し、『第七天』は死んだ。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

夢の場面は変わり、辺りは暗い森になる。

暗い森の中、少年は『何か』を探る。

少年は既に手負いの状態で、『何か』がそんな少年の目の前に現れる。

少年は赤い宝玉を懐から取り出すと、周りには明緑色の魔法陣が広がる。

 それを見た『何か』は、草むらを掻き分けて近づいていく。

「絶えなる息 光となれ! 許されずものを 封印の輪に!」

 少年は呪文を唱え、『何か』は少年に飛び掛る。

「ジュエルシード! 封印!」

少年の手から極光が広がり、『何か』を光に包み込む。

「グボァァァッ!!!」

しかし、『何か』は少年の攻撃を間一髪躱して逃げ、その姿を消していった。

「逃がし……ちゃった……追いかけ……なく……ちゃ」

少年は膝をつき、そのまま倒れこむ。

「(誰か! 僕の声を聞いて! 力を貸して!! 魔法の……力を!!)」

 こうして、夢は終わった。

 

~sideout~

 

~side???~

 

 初めまして、私は『博麗(はくれい)霊夢(れいむ)』よ。

 私は『普通』の小学生三年生……と、言うのは嘘。

 私は……私の知り合いもだけれど……俗に言う『前世』の記憶と言う物を持っている。

 ちなみに、私の死因は『自然死』……100歳あたりまで生きて、最後は『最愛の人』と『最愛の子供達』に看取られたわ……その時、『彼』の言った言葉、分かる?彼ったら、「霊夢、僕はキミを愛している」って、言ってくれたのよ!キャァァァァァ!!!!嬉しい!!!!!

 ……失礼、取り乱したわ。

 ちなみに、私の通っている学校は『私立』……お金がかかる学校だけど、私の『母親』が出してくれていて、『博麗神社』もお賽銭がいっぱいになっている。

 と、こんなのことを私が考えていると……。

「「おはよう!霊夢ちゃん」」

「おはようだぜ!霊夢」

「「おはよう、霊夢」」

「おはようございます。霊夢さん」

「おはよう。なのは、すずか、アリサ、『魔理沙』、『咲夜』、『妖夢』」

 私の友人の高町なのは、月村すずか、アリサ・バニングス……そして、私と同じ『前世』の記憶を持つ、『霧雨(きりさめ)魔理沙(まりさ)』、『十六夜(いざよい)咲夜(さくや)』、『魂魄(こんぱく)妖夢(ようむ)』が教室に入ってきて、挨拶してきたので、私も挨拶をする。

 そして、担任の先生が教室に入ってきたので、なのは達は自分達の席に座る。

「今日から、このクラスに新しい人が一人増えます、みんな仲良くしてあげてくださいね。」

と、先生が言うと、周りの生徒達が「男女どっち」、と聞く。

「男の子です。……では、転校生君入ってきてください。」

先生の合図と共に転校生が教室に入り、転校生の姿を見てクラス全体が驚きによって静かになる。

ちなみに、私も転校生の『姿』をみて驚いている。

転校生は、この学校の指定服を普通なら『半袖半ズボン』の所を『長袖長ズボン』にしており、首に包帯を巻き、顔には狐のお面を付けている。

転校生は一礼してから、自己紹介を始める。

「はじめまして、八雲幸夜です。私は家庭の都合で隣町の『川神市』から引っ越してきました。これから皆さんと仲良くしていけたらいいと思っています。それと、この格好は持病の対策ですので、あまり気にしないで下さい。どうぞよろしくお願いします」

もう一度、一礼をして自己紹介が終わり、拍手が終わると担任の先生が……。

「じゃあ、八雲君は……博麗さんの横が空いてるわね、そこに座ってください。」

「……はい」

転校生が席に座ると同時に、チャイムが鳴り、朝のHRが終わる……転校生の名前が『八雲幸夜』って……もしかして?!

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

私の自己紹介が終わり、先生が教室から出るとクラス全員が私の周りに集まった。

「趣味とか好きなものは?」

「趣味は散歩、好きなものは人形です」

「得意教科は何?」

「社会と家庭科と音楽です」

……これが噂に聞く、転校生に対する質問攻撃か……。

まあ、質問ぐらいで疲れないが……。

「「「「「「「………」」」」」」」

七つの視線が私に集中しており、そっちの視線の方で精神が疲れていく……。

特に魔理沙、咲夜、妖夢……そして、霊夢の視線が強い……。

彼女達は私が前世……『博麗幸夜』かどうかを考えているのだろうが……。

くだらない。……私も彼女達に自分が『博麗幸夜』と言いたい……霊夢に今も『愛している』と伝えたい……だが、私は穢れてるんだ……たくさんの血で……それに、霊夢の気持ちも『前世』と同じでないかもしれない……だから、私の今の考えは……くだらない。

「ちょっと!あんた達、幸夜に質問があるなら順番に言いなさい!幸夜が疲れちゃうでしょ!!」

 私が考え事をしている様子が、バニングスには疲れているように見えたのだろう……バニングスの一言で、みんなが列になりはじめ、質問攻めが開始される。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

時間は過ぎ、今は放課後……

なのは達は塾に向かい、私は家に向かっていた……

ちなみに、私はなのは達と仲良くなった……まあ、霊夢、魔理沙、咲夜、妖夢の視線で精神が一気に削られていったが……。

それと、いつかなのはの家族が経営している『翠屋』に行くことになった。

理由は、あの時のお礼をしたいらしい……最初は断ったのだが、なのはが「幸夜君のお父さんとお母さんが、行かないと『犬猫百科事典』と『動物秘蔵写真』を燃やすよって言ってたよ」発言で行くことにした……この時、我が家に帰ったら両親に『復讐』することを誓った。

 やはり、父さん伝説を暴露し続けるか……。と、考えていると……。

【幸夜、魔力反応です!】

「(……ああ、私も感じた)」

 私は魔力を感じた場所に急いで向かった。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

謎の魔力反応を感じた場所に私は向かったが……。

[幸夜?]

「……何も言うな」

「じゃがお前さん……これは……」

 私達は目の前にいる存在に言葉を失っていた……ちなみに、エターナルはデバイスとして喋っている。

 私達の目の前には体長五メートルのネズミがいた……。

 この世界に来て初めて見たぞ……。『プライミッツ』のお土産に持ち帰るか?ハァ~、とりあえず……。

「ムルムル」

「了解じゃ!」

 私がムルムルの名前を呼ぶとムルムルは大きく頷き、ムルムルの手に一冊の『本』が出現し、私はそれを受け取る。

「……我が世界とこの世界を拒絶したまえ」

 私が本を開き、『起動呪文(キーワード)』を言うとこの世界からこの場所が『隔離』される。

 私の使った本は、ムルムルが『管理』し、私が所持している魔導書の一冊『絶界(ぜっかい)の魔導書』……この魔導書の効果は、魔導書を発動させている半径5メートルの場所を『世界』から『隔離』する……そして、この隔離内で物が壊れても、魔導書を解除すれば『世界』の『修正力』によって、元の姿に戻る。

「エターナル、セットアップ」

[セットアップ]

 次の瞬間、私は光に包まれ、私の姿は黒色のドレスの上に暗い紫色の鎧と言う鎧ドレスの姿に変わり、両手には青色宝石が付いた指輪から銀色で蒼い線が入っている二丁拳銃……『モード・ゲヴェーア』に姿を変えたエターナルを持っている。

[幸夜……来ます!]

「ゴォォォォォ!!!!!!」

「フッ」

 巨大ネズミが雄叫びを上げながら此方に突っ込み、エターナルの合図で私は上に大きく跳躍する。

「まずは、あの機動力を無くすか……」

 私は二丁拳銃の銃口を巨大ネズミの足に向ける。

「shoot(シュート)!」

[アイス・ツァプフェン]

「ハッ!」

 二丁拳銃の引き金を引くと、銃口から血色(ちいろ)をした氷柱の形をした魔力弾が発射され、魔力弾は巨大ネズミの両足を貫き、巨大ネズミの足を凍らされ、そのまま上空から地上に落下する時に巨大ネズミに踵落としを喰らわし、着地する。

「ゴォォォォォォ!!!!!!!」

 巨大ネズミは、魔力弾と踵落としが効いたのか雄叫びを上げる。

「エターナル……モード・ツヴァイ」

[モード・ツヴァイ]

 カシュン、とエターナルから一つ空薬莢が排出されると、エターナル形が二丁拳銃からそれぞれ黒色と白色の刀身が細く、両方の柄に鎖を繋げた双剣……『モード・ツヴァイ』になる。

「エターナル……カードリッジロード」

[カードリッジロード]

カシュン、カシュン、と今度はエターナルから二つの空薬莢が排出され、双剣の刀身が血色に光る。

「我が敵に血色をした、死の吹雪を……」

[トイフェル・シュネー・トライベン]

 私が双剣を振うと、双剣から血色の二つの斬撃が放たれたと同時に巨大ネズミの周りに吹雪が起こり、その吹雪で巨大ネズミが徐々に凍り始め、凍った巨大ネズミに斬撃が直撃すると、巨大ネズミは木っ端微塵に砕け散った。

 ちなみにこの魔法は、魔法生物などに使った場合、巨大ネズミのように砕け散るが、使用相手が人の場合砕けない……くだらない。

「お前さんや、あれは何じゃ?」

「何だ?」

 私はムルムルが指を刺した方向……巨大ネズミが砕け散った場所には青色の宝石があった。

「何だ、この宝石は?」

[わかりません……ですが、一応封印をした後に私の中に保管しておきましょう]

「ああ……」

 私はエターナルの案に賛成し、懐から封印用の札を取り出し、宝石に貼ってからエターナルの中に入れる。

……とりあえず、家に帰ってから調べるか。

 

~sideout~

 

~side霊夢~

 

 今は夜……私は魔理沙と咲夜と妖夢に買い出しを手伝ってもらっていた。

「手伝ってもらって、悪いわね本当に」

「別に気にすることないぜ」

「ええ、そうね。私もついでに買い物できたし」

「そうですね……」

 と、私達は話しながら曲がり角を曲がった瞬間……黒い毛むくじゃらの物体と、それと戦うテレビでよくやるような魔法少女の姿をしたなのはと、今日、動物病院に預けたフェレットだった……。

 ……え、何で?

 ふと、魔理沙たちの顔を見ると魔理沙たちも驚いているらしい……。

「リリカル・マジカル!」

なのはが杖を持ち、呪文のような物を言おうとした瞬間……。

「きゃぁぁぁッ!」

なのはは、黒い毛むくじゃらの物体によって、塀にたたき付けられていた……。

黒い毛むくじゃらの物体は触手の先端を槍のような形にする。なのはに伸ばそうとする。

ッ!ヤバい!!

と、思った瞬間、なのはがいた場所に槍が貫通する……が

「やれやれ、なのはは一体何をしているのかしら?」

「え?!」

槍が貫通した場所にはなのははおらず、驚愕の表情をするなのはの隣には咲夜が近くに立っていた……。

いつ見ても、咲夜の『時間を操る程度の能力』は便利よね。幸夜も言ってたわね。「咲夜の能力は便利で良いな~」って、こんなこと考えてる場合じゃなかった。

「夢符≪夢想封印 集≫」

私は一枚の札……『スペルカード』を取り出して、黒い毛むくじゃらの物体に向けて発動すると、複数の光弾が黒い毛むくじゃらの物体に向かって放たれ、直撃する。

「魔符≪ミルキーウェイ≫」

魔理沙もスペルカードを取り出し発動すると、無数の星屑が黒い毛むくじゃらの物体に直撃する。

「奇術≪ミスディレクション≫」

 咲夜も私達と同じ様にスペルカードを発動し、私と魔理沙の攻撃でボロボロになった黒い毛むくじゃらの物体に無数のナイフを放つ。

「人符≪現世斬≫」

 最後は妖夢がスペルカードを発動し、何処からか取り出した刀で黒い毛むくじゃらの物体を切り裂く。

「……な、なのは今だよ!!」

「え……あ、うん!リリカル・マジカル!」

「封印すべきは忌まわしき器。ジュエルシード!」

「ジュエルシードを封印」

[シーリングモード。セットアップ]

 なのはの持つ杖の様な物の姿が変わり、ピンク色のリボンの様なもので黒い毛むくじゃらの物体を拘束する。

[スタンドバイレディ]

「リリカルマジカル ジュエルシード、シリアル21 封印!」

 次の瞬間、黒い毛むくじゃらの物体は青い宝石き変わった……さて、とりあえず

「なのは、あれと、その姿と喋るフェレットもどきについて説明しなさい」

「「あ、あははははは」」

 静かな辺りになのはとフェレットもどきの重なった声とパトカーのサイレンの音が響いた。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 巨大ネズミを倒し謎の宝石を封印した後、私は家に帰っていた。

「ただいま、藍さん」

「お帰りなさい、幸夜様。幸夜様のお部屋に前の学校の友人からの手紙を机の上に置いておきました」

「ありがとう……」

 私は藍さんにお礼を言った後、謎の宝石を調べる為に自室の方に向かった……。

 



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第7話~血の伯爵夫人~

今回は短いです。
では、第7話をどうぞ!


 

 

 黒い毛むくじゃらを倒した後、フェレットもどきの話を聞いた私達の答えは……。

「馬鹿じゃないの?」

「馬鹿だぜ」

「「馬鹿ですね」」

「はうっ!」

「あわわ、ユーノ君?!」

 私達の言葉にフェレットもどき……『ユーノ・スクライア』が心にダメージを負ったのかバタッと、倒れて、なのはがそれを心配する。

「霊夢ちゃん達、少し酷いの……」

「いや、酷いもなにも……無謀にも仲間も連れてこずに、自分ひとりで探して、さっきの毛むくじゃらに怪我を負わされて、挙句の果てに平和に日常を過ごしていた私達に助けを求めてきたのよ?それを馬鹿と呼ばずになんて呼ぶの?」

「そ、それは……」

 私の言葉にユーノの雰囲気がさらに暗くなり、なのはが言葉に詰まったことによってさらに暗くなる……けれど、まあ……。

「だけどユーノ、その……『ジュエルシード』だっけ?それを探すの私達が手伝ってあげるわ」

「……え?」

 私の言葉が意外だったのか、ユーノが不思議そうに此方を見てくる。まあ、そうでしょうね。さっきまで文句言ってた相手が手伝うって言うんだから……

「ど、どうして、手伝ってくれるんですか?」

「手伝う理由?……そうね、私達が手伝う理由は……」

 ……きっと『幸夜』この場にいたら手伝うって言うはずだから。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 青い宝石を調べ小雪の手紙の『ごめんなさい』と言う文の羅列に少々戦慄し、学校から帰った後、私は高町家が営業している『翠屋』に来ていた……。

 翠屋に来た理由は、士郎さんにあの時お礼がしたいからだそうだ。

 私自身断りたかったんだが、両親の私のお気に入りの人形と動物写真を燃やすと言われたので来た……。

 ちなみに、両親には復讐として父さん伝説の暴露&『二人なんて大っ嫌い!!』と言っておいた……二人が暴走してなければいいが……。

「はい、幸夜君これも食べてみてね」

「……ありがとうございます」

 私は桃子さんからショートケーキを貰い、フォークで分けながら食べながら、後ろから感じる視線……正確には、私の背中越しで桃子さんを見る視線の元を探る。

 ……成人男性が五人……こんな時間帯に男が五人……怪しいな……。

「桃子さん、私はこれで失礼します」

「そう?なら、今度またいらっしゃい」

「……はい」

 私は翠屋を出た男達を追うため、翠屋を出た……。

 

~sideout~

 

~side三人称~

 

 辺りが暗くなっているなか、山の中で先程、翠屋にいた男達が写真を手に持ち話し合っていた……。

「こいつらが今回の標的だ」

 男達は手に持つ写真を見ながら話し合う。

「確か、『高町桃子』と『高町美由希』、『高町なのは』だったか?」

「ああ、『龍』の依頼だ。まずそいつらを誘拐して、『高町士郎』と『高町恭也』を始末する……」

「そうか……なら、その二人を殺した後……その三人を好きにしても良いんだよな?」

 男の一人が下品な笑いを浮かべながら、確認する。

「『龍』からは何も聞いてないから……別に良いだろう」

「マジか?!よっしゃ!」

 男達は下品な笑みを浮かべ喜ぶ……。

 それが、一人の『化物(ばけもの)』の怒るとも知らずに……。

「形成(イェツラー)――      血の伯爵夫人(エリザベート・バートリー)」

  Yetzirah――            Elisabeth Báthory

 男達に声が聞こえたと同時に、男の一人の首に鎖が巻き付き、鎖に巻きつかれた男は声を出す暇もなく暗闇に引きずり込まれ……。

「ギャァァァァァァァァァ!!」

「な、何だ?!」

 直後、暗闇の中から山全体に響き渡っているのではと思う程の悲鳴を聞き、男達は慌てて辺りを見渡す。

 すると、暗闇の中から狐面を付けた黒ずくめの子供……八雲幸夜が出てきた。その手に暗闇の中に引きずり込まれた男の『生首』を持って……。

 幸夜は生首を男達の方へ転がし、ゆっくりと男達に近づいていき……。

「彼女達はやっと『平穏』と言うものを手に入れたんだ……それを壊そうなど……。てめぇら、さっさと、美しく……否!醜く!残酷に!この大地から往ねやァァァァ!!!!!!!!!!」

 

 

~sideout~

 

~side士郎~

 

「桃子、幸夜君はもう帰ったのかい?」

「ええ、士郎さん」

 私は桃子の言葉を聞いて、残念に思う。

「幸夜君には夕飯を御馳走してあげたかったな」

「そうね。とてもおいしいご飯を作って、幸夜君を喜ばせたかったわ♪」

 その場面を想像したのか、桃子がとても嬉しそうな表情をする。

 本当に幸夜君には感謝しないと……幸夜君が私達に言ってくれた言葉によって、今の『家族』がいる。

 年下の子……まあ、『ソウル』達の家族なら『年上』だろうと思うが……幸夜君には本当に教えられたよ。『家族』の『愛情』と言う物を……。

「ねえ、士郎さん?今度は紫達と一緒に家族同士でお出掛けにでも行きましょう?」

「それは良いね。なのはの友達のアリサちゃんにすずかちゃんや『月村家』の人達も一緒に行こう」

「うふふ、それはとても賑やかになるでしょうね♪」

「ああ、そうだね」

 私と桃子はその場面を想像して、笑い合った。

 

~sideout~

 

~side三人称~

 

「や、止めろ!!た、助けてくれ!!」

 男達と幸夜がいた山の中は、この世の光景ではない物が広がっていた……。

 今生きているのは、幸夜と命乞いをしている男だけ、他の男達は無残な死体……正確には、体のいたる所に悲惨な傷があり、まるで『拷問』された後の様な状態になっていた。

 幸夜は無言で男の首を掴み、自分の背後に存在する聖母マリアをかたどった、中が空洞で高さ2メートルほどの大きさの人形……『拷問器具』である『鉄の処女(アイアン・メイデン)』に放り込み……。

「苦しんで死ね」

 幸夜は鉄の処女(アイアン・メイデン)の扉を閉め、扉から突き出された長い釘によって、中にいた男は串刺しにされ、鉄の処女(アイアン・メイデン)からは男の断末魔と血液が流れ出た……。

 





幸「後書きだ」

幽「そして、恒例のあれです」


・男たちは首切断でなく、拷問によって殺される


幸「作者、今回出てきた聖遺物の説明もするぞ?」

幽「了解!」

聖遺物:血の伯爵夫人(エリザベート・バートリー)
発現形態:事象展開型
形成時効果:日記に記された『拷問器具』の数々を自在に召喚・使役
この聖遺物は、ハンガリーのチェイテ城に居を構えていた、悪名高き血の伯爵夫人『エリザベート・バートリー』が、 獄中で書き記したとされる拷問日記が素体となっており、 聖遺物の性質上サディストや自壊的な人間と相性が良い。

幽「です」

幸「つまり、この聖遺物と私は相性が良いということだな」

幽「そういうことかな?」

幸「そういうことだな」

幽「そうか……。では、みなさん次回会いましょう。では!」





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第8話~もう一人の魔法少女~

 私の目の前には、死んだ男達の死体がある……。

 私はその死体を壊し続ける……。

 死ね……。

 死ね、死ね……。

 死ね、死ね、死ね……。

 死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね!!

 この男達は、家族の『愛情』がある『高町家』を壊そうとした……こんな人間(ゴミ)は要らない!!

 この世から醜く消えてしまえ!!!!!!!!!!!!!

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

「幸夜、起きなさい。幸夜」

「……姉さん?」

 私が夢から覚めると、腰に届くほどの長さの銀髪、少し幼さが残る顔に金と紅色の虹彩異色(オッドアイ)をした女性……私の姉の『八雲(やくも)美鈴(みすず)』の顔が見えた。

「おはよう姉さん」

「おはよう、幸夜」

 私は姉さんに挨拶をする。

「幸夜、今日は『月村家』に遊びに行く約束でしたよ」

 そうだった……確か私は姉さんと一緒に『月村家』のお茶会に行くんだった……。

 なのは達曰く「前回、サッカーの応援に来なかったから、絶対に来てね!」だそうだ……。

 なのは達は私と仲良くしたいのか、こう言うことに積極的に誘ってくる……。私はなのは達と仲良くなるつもりなのないのだが……。

 私は『悪(クズ)』だ……私の様な奴がなのは達と一緒にいてはいけないのだ……。だが、私がそれでもなのは達と共に行動するのは、私が『悪(クズ)』だと知らなくても……『友達』と言ってくれるからなのだろうか?

 それとお茶会に参加する理由はもう一つ……。

 私がお茶会に参加するのは、急に魔力を持ち始めたなのはの事が気になるからだ……。

 

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

「美鈴様、幸夜様、いらっしゃいませ」

「私達が最後ですか?」

「はい」

「そうですか」

「では、こちらにどうぞ」

 月村家に来た私達を迎えてくれたのは、月村家のメイドの一人『ノエル・K・エーアリヒカイト』さんだ。

「私は忍達の所に行きますから、幸夜はすずかちゃんの所に行ってなさい」

「わかった」

 姉さんは、ここ月村家の『当主』で、すずかの姉で恭也さんの『恋人』の『月村(つきむら)忍(しのぶ)』さんの所に向かい、私はノエルさんに案内された場所に向かう。

 そして、目的の場所に到着した私が見た光景は……。

「お待たせしました!お紅茶とクリームチーズクッキーでー……えぇぇぇぇぇ?!!」

 月村家のメイドの一人『ファリン・K・エーアリヒカイト』さんの周りを猫とフェレットがくるくる回り、ファリンさんもなぜか一緒に回るという光景に遭遇した。

 そして、ファリンさんはバランス崩して倒れそうになり……む、紅茶が。

「フン」

「危ない、危ない」

 私は地面を思いきり蹴ることで、その場から加速した状態で移動しファリンさんの体を支え、何故か『前世』と同じメイド服を着た咲夜が紅茶トレイを支えて救出した。

「こ、幸夜君!何時の間にいたの?!」

 私がいたことになのは達が驚く……まあ、地面を蹴って移動するあの動き方をしたらなのは達には『瞬間移動』したように見えるから仕方が無い……。

 ちなみに、さっきの移動では『魔力』も『氣』も『霊力』も使っていない、ただの身体技術だ。

「先程来たばっかりだ……他のみんなは?」

「霊夢は神社で巫女の仕事、妖夢は住んでいる家で庭師の仕事、魔理沙は……キノコ狩りに行っているわ」

 私の問いにアリサが返答する。

「幸夜君、それよりも座ったら?」

 私はすずかの言葉に従い椅子に座り、なのは達と一緒に紅茶を飲む……ふむ、良い匂いだ……。

「ねえ、こんな時に言うのは場違いかもしれないけど、此処にも出たらしいわよ」

「出たって何が?」

 アリサの言葉になのはが首を傾げながら聞く。ふむ、一体何が出たんだろうな?

「ほら、朝のニュースでやってたじゃない?」

「もしかして、隣町の川神市に出てた通り魔が鳴海市に出たって言うニュースのこと?」

「そう、それよ!」

「………」

「幸夜君、どうしたの?」

「いや、何でもない」

 咲夜の無言のジト目を正面から受け、少々居心地が悪くなっているのを感じていると、少し態度に出てしまったのか、なのはを心配させてしまった……。

 アリサにすずか……すまん、それは私だ。

 あの時、あまりにも怒りを感じてしまった私は、男達を一人残らず『拷問』によって殺し、その後、遺体の全てを悲惨な姿に変えた後に、男達の遺体をどこかの路地裏に放置、そのまま帰宅すると言う暴挙に出てしまったのだ。

 クソッ、あれは零崎紅識として殺人ではなく、八雲幸夜としての殺戮だったのだが、死体を残すなど……。だが、あれはあれで、『龍』とか言う奴に対しての『警告』と言う事で良しとするか……。

 そんなとき魔力を感じた。この魔力……あの宝石か?

 すると、なのはとフェレットがキョロキョロし始め、その様子を見た咲夜が溜息をつき、急にフェレットが走りだす……。

「ユーノ君!」

「なのは、転ぶわよ」

 なのはも立ち上がりフェレットを追いかけ、それに続くように咲夜がなのはを追いかける……。

 これで確定だな……。なのは達があの宝石に関与している。

 さて、私も行くか……。

「すずか達、少し悪いが姉さんの所に行ってくる」

「どうしたの?」

「何、姉さんに預けものをしていたのを思い出してな」

「そうなんだ、いってらっしゃい」

 すずかとアリサの言葉に軽く手を振りながら屋敷の方に向かう……と思わせて、裏庭の方に向かう。

 さて、これでどうするか……さすがになのは達にバレるのは不味い……もう、私の私服自体が怪しさ全開のだがな……仕方が無い、あれを使うか……。

 

「形成(イェツラー)―― 黄金聖餐杯(ハイリヒ・エオロー)」

  Yetzirah――     Heiliger Eolh

 

 次の瞬間、私の肉体は『黄金の獣』と敵味方から怖れられ、聖遺物の資格を有する素体とまでなった人物の肉体へと変わる。

 私はそのまま走り続け、なのは達に追いつくと同時に、フェレットが結界のようなものを張る。

 やはりなのは達は『魔法』に関与していたのか……。

 そんな事を考えてると魔力が膨れ上がり、光が溢れる。

 警戒を強め、光を睨む。

 そして光が収まりそこに現れたのは……巨大な猫。

「ヤバい、あの猫持ち帰りたい」

 目の前の光景につい本音が出てしまう……。たしかあの猫は、先程フェレットを追いかけていた子猫だ……。

 一体何がどうなればあんなにでかくなる?

「……とりあえずは様子を見るとするか」

 さすが今の状況では手を出そうとも思わない。

 なのはと咲夜とフェレットもこれには予想外だったのか呆けた顔をしている。

 しばらくなのは達の様子を観察していると、別の魔力反応を見つけた。

 私は魔力反応のあった場所に視線をやると……。

 電柱の上に少女が一人と森の中に狼が一匹いた……。

 なのはが服の中から赤い宝石を取り出そうとした瞬間、電柱に立っていた少女が放った黄色い閃光が猫に直撃した。

 なのは達もはじめは驚いていたが、なのははすぐに魔法少女のような格好になり、空を飛び、なのはともう一人の少女は互いに杖を向けあう。

 そして、電柱の少女の杖が鎌の形状に変化して戦いが始まった。

「……そろそろ止めるか」

 咲夜の『能力』を使われたら、電柱の少女は敗北するし、結構危険なことになるかもしれんしな……まあ、どうでも良いが。

「とても素晴らしい劇の最中ですが、少し邪魔をさせていただきますよ?」

「「なのは!」」

「フェイト!」

 私の声を聞いた瞬間、咲夜とフェイトと呼ばれた少女と森から出てきた赤色の狼はこちらを警戒する。

「貴方、誰ですか?」

「私の事は『神を運ぶ者』……『クリストフ・ローエングリーン』とお呼び下さい。その宝石に少し興味がありまして、頂きに参りました」

 私の言葉にフェイトがデバイスを構え、狼は唸り声をあげる。

「そうはいきません。バルディッシュ」

「イエッサー。サイズフォーム。セットアップ」

 フェイトの言葉と共に杖が応え、杖が再び鎌に変化する。

 フェイトが一気に踏み込み、鎌を振り下ろす。

 ……だが

「無駄ですよ」

「くっ!」

 鎌で攻撃された私の肉体は無傷で、私はフェイトを蹴る。

「このっ!!」

 赤い狼が私に飛び掛かるが……。

「だから無駄と言っているのです」

 赤い狼に攻撃されても、私の肉体は無傷だ。

「なら、これならどう?!」

 次の瞬間、私の周りをナイフが取り囲んでおり、そのナイフが私の体に降り注がれ、辺りに土煙が舞う。

「さ、咲夜ちゃん!な、何してるの?!く、クリストフさんが……」

 なのはが驚いたような表情で咲夜に聞き、私がナイフで串刺しになった所を想像したのか顔を青褪める……。

「なに甘いこと言ってるの!!こいつは危険よ!殺す気で行かなきゃ私達が殺られるわ!!」

「そこのお嬢さんの言う通りですよ」

「「「「「ッ?!」」」」」

 私は服に付いた土を払いながら話す。

「『聖餐杯は壊れない』……それと、そこのお嬢さんのようにある程度の『覚悟』が無ければ、この劇からはご退場することをオススメしますよ……では、宝石を頂きましょうか」

 私は服から、ムルムルが管理している魔導書の一冊を取り出す。

「我は気高き悪で、欲望の悪魔なり」

 私が呪文(キーワード)を言うと、本から黒い光が放たれ巨大猫の体内に浸蝕すると同時に猫の体は元の大きさに戻り、その猫の上には、黒い紐状のようなもので縛られた宝石が浮いていた。

 私が使った魔導書は『七つの大罪』と言うシリーズの一冊で名前を『マンモン』

 マンモンとは『強欲』を司る悪魔で、この本にはその悪魔が封印されており、この本の持ち主の欲を満たすのがこの本の能力だ。

 私は今回『猫の中にある宝石が欲しい』と言う欲望で、本の能力を使い、宝石を取り出したのだ。

「では私はこれにて失礼します。」

 私はなのは達に背を向け、この場から立ち去った……ように見せかけすぐ近くの木の陰に隠れ、聖遺物を解く。

 なのは達がその場から去ったのを確認し、私はフェイトの方に向かって走り出す……。

 私が走り続けると……。

「……いた。『創造開始(クリエイト・オン)』」

 私は走りながら、刃が潰れたナイフを創り、そのまま跳躍する。

 そして……。

「ガッ?!」

「フェイト?!」

「そこを動くな、犬……動けばこいつの首を刎ねる」

「くっ!」

 私はフェイトを地面に組み倒した状態でナイフを首に近づけ、犬を脅す。

 ちなみに、ナイフは刃が潰れている為、首は刎ねれない……まあ、私の力なら首を刎ねれるが、断面が綺麗にならない……やっぱり首の断面は綺麗でないと……と、話が逸れた。

「私がする質問に答えろ、そうすれば殺さない」

「……答えなければ?」

「結果は分かっているだろう?」

 私はフェイトの首にさらにナイフを近づける……。

「わ、分かりました」

「では、まず最初の質問だ……あの宝石の名称は何だ?」

「あ、あれは『ジュエルシード』と言う名前です」

「では、その宝石の能力は何だ?」

「ね、『願いを叶える』能力です」

 願いを叶える?……なるほど、だから猫やネズミが大きくなったりしていたわけだ……だが、くだらない。願いを叶える宝石?そんなもの唯の『ゴミ』でしかないだろう。『願い』とは『叶えられる』物ではない、『叶える』ものなのだ……それに『宝石』に願いを託すなど……くだらない。

「では、どうしてそれを集める」

「そ、それは言えません……」

「そうか……」

 私はフェイトの表情を見て、それ以上聞くのを止め、ナイフを退けてからフェイトを立たせる。

「では、最後の質問……否、お願いか?」

「な、何ですか?」

「私と協力関係を結んで貰いたい」

 

~sideout~

 

~sideフェイト~

 

「私と協力関係を結んで貰いたい」

 狐面を付けた人物の言葉に、私と『アルフ』の思考が停止する。

「何、ふざけたこと言ってるんだい?!」

 アルフが声を上げて、拒否しようとするが……。

「これならどうだ?」

「「なっ?!」」

 私達は、狐面を付けた人物の取り出した物に驚く……狐面を付けた人物が持っている物は……

「ジュエルシード?!」

 アルフが驚く。彼の手の中には封印状態のジュエルシードが二つあったからだ。

「これをやる。その代わり協力しないか?」

「どうして、そこまで協力したいんですか?」

 私は疑問を狐面を付けた人物にぶつける……

「なに簡単だよ……もう二度と奪われたくないだけだよ」

 狐面を付けた人物の言葉を聞いた瞬間、私とアルフは黙った……。

 そして、何故かはわからないけど。狐面を付けた人物が仮面の中で寂しそうな表情をしたように見えた……。

「アルフ……この人と協力しよう?」

「なっ?!フェイト、何言ってるんだい?!さっき、あんなことされただろう!?」

「そうだけど……アルフ、この人なら信用できると思うんだ。それに……」

 この人は、わたしが生まれる前から知っているような気がする……。

 私の言葉にアルフが諦めたような表情になる。

「私達はあなたと協力します」

「フェイトに変なことしたらガブッといくからね!!」

「ああ、これからよろしく」

 狐面を付けた人物と私は握手をする。

 あ、そうだ……肝心なことを聞いてなかった

「あの~……あなたの名前は?」

「私か?私は八雲幸夜だ」

 私達と幸夜はこうして協力関係を結んだ。

 




変更点

・お茶会での会話です

これからもよろしくお願いします!!


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第9話~敵対~

 

 フェイト達と協力関係を結んでしばらく経った。 

 私は学校生活をこなしつつ、フェイト達とジュエルシードを探しに行く。

 そんな行動が日常になりつつあった……。

 ちなみに余談だが、『クリストフ・ローエングリーン』の正体が私だと、フェイト達には教えておいた。

 そんな日常の休日、私達は家族旅行に来ていた……まあ、高町家と月村家とアリサ、霊夢達も一緒だが……。

 それと別行動だが、フェイト達も此処に来ている。理由は、ここにジュエルシードの反応があったからだ。

「いや~温泉だ~♪温泉だ~♪」

「酒が美味いねぇ~♪」

「……二人とも、もう少し静かにしてくれ」

 今現在、私は我が家の『おじいちゃん』と『おばあちゃん』と一緒に温泉に入っている。

 ここで、おじいちゃんとおばあちゃんについて説明しよう。

 まずは、おじいちゃんからだ。

 おじいちゃんの名前は『伊吹(いぶき)ユメ』。今年で七十歳だ……だが、実年齢と肉体年齢が一致していない。父さんと同じで、日に焼けていない雪のような白い肌に、蒼と翠の虹彩異色(オッドアイ)に、女顔で低い身長……まあ、ぶっちゃけると外見が『ショタ』だ。

 次におばあちゃんだ。

 おばあちゃんの名前は『伊吹(いぶき) 萃香(すいか)』。今年で七十歳だ……だが、こちらもおじいちゃんと同じように年齢と姿が一致しない。薄い茶色のロングヘアを先っぽのほうで一つにまとめ、真紅の瞳を持ち、身長は低い……ぶっちゃけると外見が『ロリ』だ。

 ……おばあちゃんの姿を見たら準が暴走しそうだな……まあ、そんなことしたらばあちゃんの『怪力』+おじいちゃんの『怪力』で、準が地球とさよならしてしまうのは確実だな……。

「幸夜~♪」

「何、おばあちゃん?」

 温泉の中でまったりしているおばあちゃんが私に声をかけてくる。その手には酒が入っているであろう瓢箪があった。

「幸夜、最近秘密にしてあることがあるだろう?」

「ああ、あるよ」

 私は、おばあちゃんの質問に即答する。

 ちなみに、おばあちゃん達には私がジュエルシードを探しているのは内緒にしている。

「そうかい~。どんな事をしてるのか分からないけど、気をつけるんだよ~」

「もし何かあったら僕達にすぐに言ってね~」

 ……おじいちゃん、おばあちゃんの言葉は嬉しい。

「……悪いが先に出てる」

 だが、二人を……否、家族を今回の事に巻き込みたくない……。私は湯船から上がり、旅館の方に戻って行った。

 

~sideout~

 

~sideなのは~

 

 温泉から出て、幸夜君と合流するために一旦部屋に向かう途中で……。

「はあ~い、オチビちゃん達」

 急に橙色の髪の女性に話しかけられた。

「ふむふむ。君かね、うちの子をアレしてくれちゃってるのは」

 女性が近づいてきて、明らかに好意的ではない視線で私を見てくる。

「あんま賢うそうでも強そうでもないし、ただのガキンチョに見えるんだけどな」

「え?え?」

 いきなりの話に混乱してしまって反応できない。

 と、そんなとき……。

「人違いじゃないの?おばさん」

「お、おば……」

「霊夢ちゃん?!」

 霊夢ちゃんが女性と私達の間に立って、霊夢ちゃんの言葉にすずかちゃんが驚く。

「おばさん。貴方に選択肢をあげる。一つ、この場からすぐに立ち去る。二つ、私に大人の助けを呼ばせる。三つ、私に変態扱いをされてから立ち去る。さあどうする?」

 霊夢ちゃんの言葉を聞いて、魔理沙ちゃん、妖夢ちゃん、咲夜ちゃんが苦笑いを浮かべる。

「あははは、ごめんね。知ってる子によく似てたからさ」

「そう。なら今度から気をつけなさいよ」

 女性の人も苦笑いを浮かべながら私達に謝罪をして、霊夢ちゃんは鬱陶しそうに言う。

「そうだね。そうするよ。ごめんね。にしても可愛いフェレットだね。撫で撫で」

 霊夢ちゃんのおかげで、女性の怖い視線がなくなりほっと胸を撫で下ろす……その瞬間

「(今のところは挨拶だけね。忠告しとくよ。子供はいい子にしておうちで遊んでなさいね。お痛が過ぎるとガブッといくわよ)」

 これって念話。

「さあって、もうひとっぷろ行ってこようっと」

 女の人はそんな言葉を残して、お風呂の方に行ってしまった。

 もしかしてこの前の子の味方?

 それとも新たな敵さん?

 私は霊夢ちゃん達の方向を向く……。

「霊夢ちゃん達?」

 霊夢ちゃん達は黙って女性の方を見ながら、浴衣の袖……霊夢ちゃん達の『スペルカード』を隠している場所に手を入れていた……。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 色々あり今は夜、父さん達はお酒でワイワイと楽しんでいる。

 それで、私の現状はというと旅館の屋根で気配を殺した状態でなのは達が行動するのを待っている状態だ。

「……来たか」

 なのは達が旅館から出てくる。

 私はなのは達が移動していくのを見ながら、気づかれないように移動する。

 すると、橋の上にフェイトとアルフ、その近くになのは達の姿を発見する。

 さて、私も行くか……。

「創造開始(クリエイト・オン)」

 私は五本のナイフを創り、なのは達の足元に投擲する。

「キャッ?!」

 突然、足元に突き刺さったナイフを見てなのはは驚き、霊夢達は戦闘態勢の状態で私を探している。 

 私は隠れている場所からなのは達に私の姿を見せる。

「こ、幸夜君?」

 なのはが驚いたような声を上げ、声こそ上げないが霊夢達も驚いたような表情になる。

「縁が合ったな……さて、知っていると思うが自己紹介をしておこう。私の名前は、八雲幸夜。そこの少女の協力者だ。『人外最悪』、『大量殺戮祭』、『血濡れ姫』……まあ他にも色々あるが、好きな方で呼びたまえ」

 さあ、楽しい舞台を開幕しよう。

 

~sideout~

 

~sideなのは~

 

 幸夜君が、この前の子の協力者だったことに驚いていると、今日旅館であった女性が変化した、オオカミが私たちを襲い、ユーノ君が周りに結界を張って護ってくれた。

「なのは!あの子をお願い!」

「させるとでも!」

「させてみせるさぁ!」

 ユーノ君とあのオオカミが光に包まれて消えた。どこに行ったの?

「なら、私達も移動するか」

 ユーノ君達が移動したのを見て、幸夜君が服の中から一枚のカードを取り出す……。

「転符≪アネモネ≫」

 次の瞬間、強い風が吹くと同時に幸夜君と霊夢ちゃん達は消えた。

「結界に強制転移魔法。いい使い魔を持っている」

 この前の子がわたしに言ってきた……ちがうよ。

「ユーノくんは使い魔じゃないよ。わたしの大切な友達」

「それでどうするの?」

「……話し合いではだめなの?」

「私はジュエルシードを集めないといけないの。そしてあなたたちも集めている。だったら私たちは敵同士。」

「っ、そういうことを決めつけないために話し合いって必要だと思う!」

 この前の子は深刻そうな顔で言った。

「話し合いだけでは、言葉を交わすだけではなにも変わらない。……伝わらない!」

 この前の子は、いつの間にか私の後ろに回り込んでいて、攻撃を私は飛んでなんとか攻撃をかわす。

「かけて。それぞれのジュエルシードを1つずつ。」

 こうして、わたしたちの勝負が始まった……

 

~sideout~

 

~side三人称~

 

 なのはとフェイトの勝負が始まった時、こっちでは別の戦いが始まろうとしていた……。

「「「「装符≪武装形態≫!」」」」

「エターナル、セットアップ」

[セットアップ]

 幸夜と霊夢達は光に包まれ、光が晴れると……幸夜の姿は黒色のドレスの上に暗い紫色の鎧と言う鎧ドレスのバリアジャケット、『モード・ゲヴェーア』状態のエターナルが握られ、霊夢達は『前世』に着ていた服に、それぞれの武器が握られている。

「一つ質問良いかしら?」

「何だ?」

「貴方は幸夜さんよね?」

「……YESだ」

「それd「もう質問はそれだけで十分じゃろう?」……あなた誰よ?」

 霊夢達は幸夜の答えに嬉しそうな表情になり、霊夢がさらに幸夜に質問をしようとした瞬間、幸夜の影から褐色肌の少女……ムルムルが現れ霊夢の言葉を遮る。

「儂か?儂は八雲幸夜の『眷族』のムルムルじゃ。それじゃあ、お前さん。儂は刀とナイフを持った方を引き受けるのじゃ」

「……好きにしろ」

 幸夜の言葉にムルムルは笑顔を浮かべ、次の瞬間には咲夜と妖夢と一緒に消えていた……。

「それでは……潰し合おうか?」

 幸夜は銃の引き金を引き、血色の光弾が霊夢と魔理沙に向かっていくが、霊夢と魔理沙はそれぞれ『弾幕』を放ち、光弾を破壊する。

「今度はこっちの番よ。夢符≪夢想封印 集」!」

「魔符≪ミルキーウェイ≫!」

 霊夢と魔理沙は『スペルカード』を発動し、複数の光弾と無数の星屑が幸夜に向かって襲いかかる。

「エターナル、カードリッジロード」

[カードリッジロード]

 カシュンとエターナルから一つの空薬莢が排出され、銃口に冷気が集まって行く。

「ここからは、誰にも侵されない領域である……」

「[氷聖域(アイス・アイン・ハイリヒトゥーム)」]

 詠唱を行い幸夜が引き金を引くと、全方位に赤い氷の盾が形成され、霊夢と魔理沙の攻撃は全て防がれる。

「疾ッ!」

「グッ!」

 攻撃を防いだ幸夜は、霊夢に接近しながら銃を持つ場所を銃身に変え、グリップで霊夢の腹を殴る。

「霊夢?!このッ!魔符≪スターダストレヴァリエ≫」

「……甘い」

「ガッ?!」

 霊夢が殴られた所を見て、魔理沙はスペルカードを発動し、箒に乗った状態で幸夜に突進するが、幸夜は箒に乗った状態の魔理沙に回し蹴りを喰らわせ、回し蹴りを喰らった魔理沙は箒から落ちる。

「魔理沙!」

「分かってるんだぜ!」

 霊夢はスペルカードを魔理沙は小さな火炉……『ミニ八卦炉(はっけろ)』を取り出す。

「霊符≪夢想封印≫」

「恋符≪マスタースパーク≫!」

 複数の光弾と超極太レーザーが発射され、幸夜に向かっていく。

「これは流石にヤバいな……」

 霊夢の『夢想封印』と魔理沙の『マスタースパーク』が自分に向かってくるのを見ながら、幸夜もバリアジャケットの中から『スペルカード』を取りだす。

「死符≪終焉炎(エンデ・フランメ)≫」

「なっ?!」

「嘘だろ?!」

 幸夜が発動した『スペルカード』から黒い炎が発射され、黒い炎は『夢想封印』と『マスタースパーク』を消し去り、それを見た霊夢と魔理沙は驚き、反応が一瞬だけ止まってしまう。

 ……その一瞬の停止がこの勝負の決着だった。

「エターナル、カードリッジロード」

[カードリッジロード]

 カシュン、カシュン、カシュンとエターナルから三つの空薬莢が排出され、銃口に冷気と血色の光が集まって行く……

「氷の世界、永遠の氷河……我は許さぬ、裏切り者には永遠の凍結を!」

「「しまっt「[永遠(エターナル)・氷結地獄(コキュートス)]」 

 霊夢と魔理沙は自分達の反応が一瞬だけ遅れたことに気づくが、幸夜の詠唱は既に終わっており、銃から発射された光弾が魔法陣を作り、その魔法陣の上にいた霊夢と魔理沙を魔法陣の中心に出現した巨大な血色の氷山の中に閉じ込める。

「氷壊(ブロークン)」

「「キャァァァァァァァァ!!!」」

 幸夜がキーワードを言った瞬間、霊夢と魔理沙を閉じ込めていた氷山は爆発を起こし、中にいた霊夢と魔理沙を爆発に巻き込む。

「……すまない」

 幸夜は気絶した霊夢と魔理沙を抱きかかえると、フェイトとなのはがいる場所に向かった。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 霊夢達との勝負を終え、戻ってきたころにはフェイトとなのはの勝負はフェイトの勝利と言う形で終わっていた……。

「フフフ、お前さん、お前さん。儂も勝ってきたぞ」

 私が勝負を終えたフェイト達の行動を見ていると、ボロボロになった咲夜と妖夢を抱えているムルムルが、いつの間にか私の隣に立って話しかけてきた。

「そうか……なら、さっさとその二人を置いて私の影の中に戻っていろ」

「ブー、お前さん……なんか冷たいn「なんか文句でもあるのか?」あ、ありません!!すぐさま影の中に戻ります!!」

 ムルムルはビシッ!と敬礼をしてから、逃げるように私の影の中に入って行った……さて

「(フェイト)」

「(何、幸夜?)」

「(私は霊夢達を旅館に置いてくる。あと、両親に手紙を書いてくるよ)」

「(分かった、じゃ私達は先に帰ってるね)」

「(ああ、了解した)」

 私はフェイトと念話で話した後、四人を抱え旅館に移動した。

 

~sideout~

 

~side美鈴~

 

「ふぁ~よく寝ました~」

 私は目を覚まし、外の風に当ろうと窓を開けると……。

「うん?」 

 ピラッと、何かが窓から私の足元に落ち、私は落ちた何かを拾います。

「手紙……でしょうか?」

 私は二つ折りにされた紙を広げ、書かれている文を読みます……

「え~……『しばらく友人の家に厄介になります。探さないで下さい。――幸夜より』………え?」

 手紙の内容に私の思考は一瞬固まります。

 え、つまり……これは……。

 こ、幸夜の家出宣言?!

 



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第10話~花と調和~

 

 温泉での一件から数時間が経ち、私はフェイトの家に来ていた。

「迷惑をかけるかもしれないが、これからよろしく頼む」

「いえいえ、こちらこそ」

「……あんた達、本当に礼儀正しいね」

 私はこれからお世話になるフェイトに対して頭を下げると、フェイトも頭を下げ、そんな私達に呆れたような声で言うアルフ。

 私がフェイトの家に来たのは至極簡単、ジュエルシード探しをすぐに行えるようにするためだ……。

「それよりも幸夜、風呂に入ってきたらどうだい?」

「む、何故だ?」

「アンタ今の姿見てみなよ」

 私はアルフに言われたように自分の姿を見る……そこまで酷くはないが土汚れがあるな……いつのまに?

「……確かに、このままでは部屋を汚してしまうな……お言葉に甘えさせて貰うとしよう」

「そうしな、そうしな」

「お風呂はそこにあるから」

 私はフェイトに風呂場まで案内され、脱衣所の扉を閉めた……。

 

~sideout~

 

~sideフェイト~

 

「良し、今のうちだよフェイト」

「で、でも~」

「何を此処で戸惑ってるんだい?幸夜の素顔を見たくないのかい?」

「それは……見たいけど」

 私は今、あることで悩んでいた……。

 それは、幸夜の素顔についてだ。

 彼は、ジュエルシード探しを手伝ってくれていて、とても頼りになる仲間……けど、いつも包帯と狐のお面を付けていて素顔が見れない……。だから、素顔が見えるようにアルフが幸夜にお風呂に入るように仕向けてくれたけど……。

「でも……やっぱり幸夜の迷惑になっちゃうだろうし……だけど、素顔は見たいし……」

 私が頭を抱えて悩んでいると、アルフが私の肩を掴んで……。

「あたしはここでフェイトを応援することしかできない。だけどフェイトには、フェイトにしかできない、フェイトならできることがあるはずだよ。誰もフェイトに強要はしない、自分で考え、自分で決めるんだよ。自分が今、何をすべきなのか。 まぁ、後悔の無いようにね」

「アルフ……」

「それに、幸夜の奴、替えの服を持っていくのを忘れてるから、フェイトが届けてあげなよ」

「う、うん」

 私はアルフから幸夜の替えの服を貰い、風呂場の方に向かう。

 わ、私はただ替えの服が無くて困っている幸夜に服を渡すだけ。うん、大丈夫。大丈夫……。

 私は自分に暗示?を掛けて、脱衣所の扉を開ける。

「幸夜、替えの服が置いてあったから持ってきた……よ」

「ああ、ありがとう」

 私は目の前の光景に言葉を失う……。

 凛とした女の子の様な顔に雪のような白い肌、首回りに切り傷、胸の辺りには撃たれた後の様な傷があり、色素が薄い金髪、左右とも色が違う眼……。

 ……あれ?幸夜って男の子だよね?

 私は目の前にいる子の性別が気になり、下の方を見てしまった……見てしまったのだ。

 私の見た場所には……。

「ブハッ?!」

「フェイト?!」

 私は生温い何かが鼻から出て行くのを感じながら、私の視界はブラックアウトした……。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

「「ごめんなさい!」」

「いや別に謝らなくても良いんだが……」

 私は目の前で土下座をして謝ってくるフェイトとアルフに困る……。

「ハァ~……とりあえず土下座を止めたらどうだ?そして今回のあれは不慮の事故だ……気にするな」

「うぅ~本当にごめんね」

 フェイトがもう一度、謝ってくる……良い子だなフェイトは……。

「それにしても目の前の子が幸夜ね~」

「何か不満があるのか?」

「別に~いつも仮面で顔を隠してるからどんだけヤバい顔かと思ったらだけさ……」

 ……この犬、少しO☆HA☆NA☆SHIしてやろうか?

「……なんか一瞬だけ寒気がしたんだけど」

「……気にするな……それで今日のジュエルシードの探索だが私に考えがある」

「「考え?」」

「ああ……フェイト、持っているジュエルシードを貸してくれ」

「うん、良いよ」

 私はフェイトからジュエルシードを貸してもらい、私が持ってきたトランクの中から海鳴市の地図を取り出し、その地図を床に広げる。

「一体何するのさ?」

「見ていれば分かる……『創造開始(クリエイト・オン)』」

 私は小さいナイフを創り、ナイフで指を斬り出血させる。

「こ、幸夜?!アルフ、救急箱どこ?!」

「確かあっちだよ!!」

「オン・ビロバクシャ・ノウギャ・ヂハタエイ・ソワカ」

 フェイトとアルフが慌てているがそれを無視して、地図に梵字の『サ』を書き、書いた梵字の上にジュエルシードを乗せ、呪文を唱えると梵字が発光し、置いてあったジュエルシードの内、二つが地図上の別々の個所に移動し、止まる。

「こ、幸夜、ば、絆創膏貼ろう!」

「フェイト落ち着け……ほら」

「あれ?傷がもう直ってる?」

 私は慌てているフェイトを落ち着かせる為に、先程斬った指を見せ、既に傷が治っている指にフェイトは驚く。

「それよりもフェイト、これを見てみろ」

「これは?」

「これは、私が『千里眼』と言う眼を持っている神様……『広目天(こうもくてん)』の力を使ってジュエルシードを探した結果だ」

「アンタって本当に規格外だね……」

 アルフの呆れた表情を私は無視をし、フェイト達に説明する。

「今回見つかったのは二つ……私達は此処から一番近いジュエルシードをいただこう」

「二つとも取らないの?」

「ああ……無茶して両方取りに行って失敗するよりも、片方を取りに行って成功した方が良いだろう?」

「うん、そうだね」

「なら、この案で決定だな……それじゃあ、移動を楽にする為にスキマを開くぞ」

 私はスキマを開き、その中にフェイトとアルフが入って行く。

 ……それとフェイト達には言っていないが、一番近いジュエルシードを選んだ理由……。

 別の方のジュエルシードでなのは達の魔力と霊力……そして……

 なのは達の近くに姉さんの魔力を感じたからだ……。

 

~sideout~

 

~side霊夢~

 

 私達はジュエルシードの魔力を感じて、ジュエルシードを探しに来たんだけど……

「貴方達、一体何をしてるんですか?」 

 私達の目の前には幸夜の姉の八雲美鈴さんが立っていて、私達に説教をしている……。

 ……どうしてこうなった?

 確か私達はジュエルシードに取り込まれて巨大化した犬と戦っていて、戦っている最中に犬の戦闘スキルが上がって、なのはがやられそうになった所に、空から美鈴さんが降ってきたんだっけ……。

「なのはさん、戦闘中はもっと集中しなくてはいけませんよ。それと……」

「美鈴さん!後ろ、後ろ!」

 と、私が思いだしている内に説教は続いており、ジュエルシードに取り込まれた犬が後ろから美鈴さんを襲おうと腕を振り上げ、なのはが慌てる……けど

「ハッ!」

 背後から襲おうとした犬を美鈴さんはアッパーで上空に吹き飛ばす……。

「ふえっ?!」

 なのはは目の前の光景のせいで、変な声を出し、目を丸くする。

上空に吹き飛ばされた犬を見ながら美鈴さんは髪に付けているリボンを解くと、リボンが白と黒が入り混じった槍に変わる……え、まさか?!

「世界調和槍(ワールド・ハーモニクス・ランス)!」

 美鈴さんは『宝具』……『世界調和槍(ワールド・ハーモニクス・ランス)』を犬に向かって投擲する。

 槍に貫かれた犬は元のサイズに戻り、美鈴さんは落ちてくるジュエルシードと犬をキャッチして、槍は美鈴さんの隣に突き刺さる……。

「ちゃんと、説明して下さいね?」

「「「「「はい……」」」」」

 私達は美鈴さんの笑顔と先程のアッパーを見て、頷くしかなかった……。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 私達はジュエルシードがある所に来たのだが……。

「あら、幸夜、久しぶりね?」

「久しぶりですね、幽香さん」

 私の目の前には、癖のある緑のショートボブに、真紅の瞳。 白のカッターシャツとチェックが入った赤のロングスカートを着用し、その上から同じくチェック柄のベストを羽織って、手には日傘を持っている女性……『風見(かざみ)幽香(ゆうか)』さんがジュエルシードを手に持ち立っていた。

 最悪だ……フェイト達も幽香さんの持つジュエルシードに気づくが、声を出さない……なにせ、幽香さんの持つ日傘には、まだ、真新しい血液が付いているのだから……。

「幽香さん……その宝石は?」

「これ?私が此処で育てている花を無茶苦茶にした奴の『身体の中』から出てきたわ」

「そうですか……幽香さん、その宝石頂けませんか?」

「そうね~……私と闘ってくれたら良いわよ!」

「チッ……普通、急に攻撃してきますか?」

 いつの間にか接近してきた幽香さんの攻撃を防ぎ、バックステップで距離を取る。

「フェイト!すぐに結界を張れ!!」

「は、はい!!」

 今の光景に驚いて固まっていたであろうフェイトに結界を張らせると同時に、私は幽香さんに向かって駆け出す。

「疾ッ!」

 私は幽香さんに向かって回し蹴りを放つが、幽香さんはそれを少しの移動だけで避け、日傘をカウンター気味に振り下ろしてくるが、私は回し蹴りの勢いを殺さず、そのまま片腕で弧を描くように幽香さんに向かって回し……。

「一喰い(イーティングワン)!」

「ッ!」

 幽香さんは日傘での攻撃を無理やり止め、地面に転がるような形で避け、避けられた攻撃は背後にあった木に直撃し……ごっそりと喰われたかのように抉り取られ、木が倒れる。

「「ッ?!」」

 フェイトとアルフが息を呑んだことが分かる。それは、当然かもしれない……私は『平手打ち』で木の幹を抉ったのだから……。

「その技は、いつ見ても凶悪ね」

「そういう技ですからね」

 幽香さんは笑顔だが、額からは汗が出ている。

 だが、闘う事は止めないようだ。瞳がギラギラと獰猛に光っている。

「創造開始(クリエイト・オン)」

 私は能力を使い、褐色の西洋剣を『創造』し、幽香さんの日傘と打ち合う。

斬り、防ぎ、弾き、突き、流し、斬る。そんな攻防を続けて数十合、余力はあるが私と幽香さんは互いに距離を取る。

 次の一手で、勝負を決める。と、互いに考えた故の行動だ。

 私は西洋剣を居合いのように構え、幽香さんは日傘の先端をこちらに向ける。

「慈悲なる氷の刃(アルマス)!!」

「マスタースパーク!!」

 『宝具・慈悲なる氷の刃(アルマス)』の『真名解放』を行い、幽香さんに向かって振うと、氷の斬撃が放たれ、幽香さんの日傘の先端からは極太レーザーが発射され、斬撃とぶつかり合う……。

「「ハァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」」

 お互いの技に力を籠め、斬撃とレーザーは膨れ上がって行き……。

 ドガァァン!!と、爆発を起こし、爆風と土煙が起こる……。

 そして……。

「私の勝ちですね……」

「そうね……」

 土煙が晴れると、ボロボロになり、体の数か所が氷っている幽香さんがいた……。

「はい、約束の宝石よ」

「ありがとうございます」

 幽香さんにジュエルシードを手渡され、私はお礼を言い、この場から少し放心状態のフェイトとアルフを連れ、去ろうとすると……。

「私、このままじゃあ仕事に行けないんだけど?」

 幽香さんは自分の氷った部分をニコニコと見せつける……分かってますよ。

「創造開始(クリエイト・オン)、創造終了(クリエイト・オフ)」

 『創造』の力でボロボロになった服を直し、その工程を終了させ、氷を無くすために新たな工程を行う。

「終焉開始(エンド・オン)、終焉終了(エンド・オフ)」

 『終焉』の力で、氷の存在を『終焉』させ、幽香さんの腕を元の状態に戻す。

「フフ、ありがとう。あと、ソウルに近々会いに行くって言っておいてね」

 幽香さんは優しく微笑みながら、この場から立ち去った。

 

~sideout~

 

~side霊夢~

 

 美鈴さんに助けて貰った後、私達はジュエルシードともう一つのグループ……フェイト達のことを説明した……。

 したのだけど……。

「フフフ……そうですか……そのフェイトと言う雌猫(おんな)が幸夜を誑かしたのですか……クスクスクス」

 黒い笑みを浮かべる美鈴さんがいた……隣でなのはが「美鈴さんのイメージが崩れて行くの」って言ってたけど……。

 美鈴さん、幸夜と自分の『彼氏』の事になると暴走するのよね……いつもは清楚で女性の中の女性って言う性格だけど、二人が絡むと……ねえ?

「み、美鈴さん?」

「何ですか、なのはさん?」

「あの~このことは内緒にしていてくれませんか?」

「……良いでしょう。ただし、私もジュエルシード探しを手伝わせて貰いますからね?」

 こうして、私達は美鈴さんと言う強力な助っ人とジュエルシードを手に入れた。

 




今回の変更点

・美鈴ちゃん、アッパーで犬を吹き飛ばす。
・幸夜君、一喰いを使う。
・幸夜君、宝具を使用する。

の三本でした。また読んでくださいね。では!


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第11話~宝石の暴走~

 

 幽香さんと戦い、ジュエルシードを手に入れてから数日が経ち、私達は現在フェイトの家で待機している状態だ……。

「う~ん、こっちの世界の食事もまあ、中々悪くないよね」

「ほら、プライミッツご飯だよ」

「ワン!」

 待機している間、アルフは人間の姿でドックフードを食べ、私は白い小型犬のプライミッツにご飯を食べさせている。

「さて、うちのお姫様は……っと」

 アルフは食事を食べ終えると、フェイトを呼びに寝室に向かって行った……。

 さてと、私も準備するか……。

 私は服の中から、『ドラグノフ狙撃銃』を取り出し、『実弾』を装填した……。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 夜……私達はジュエルシードを探しに街に出て、建物の上から街を見下ろす。

 フェイト達が言うには反応は此処らしいのだが……。

「フェイト、この辺かい?」

「うん。この辺りだと思うんだけど大まかな位置しかわからないんだ」

「確かにこれだけゴミゴミしていると探すのも一苦労だね」

「アルフの言う通りだな……それで、どうする?」

「ちょっと乱暴だけど周辺に魔力流を撃ちこんで強制発動させるよ」

 街中での強制発動……結構危険だが……。

「待て、それなら私がやろう」

「大丈夫?結構疲れるよ」

 フェイトが私を心配そうな表情で見てくるが……。

「安心しろ、私はその程度では疲れんよ……。それに、今回はフェイトがなのは以外に邪魔されないように援護するだけだからな……」

 私は、足元に置いてあるドラグノフを見る……。今回は絶対に姉さんが来るはずだ……その対応の為に私はドラグノフを持ってきた……。

「それとアルフ、強制発動をした瞬間、広域結界を張ってくれ」

「分かったよ」

「では……やるぞ」

 私の足元に魔法陣が出現し、魔力が一気に流れ出し、天候が変わっていった……。

 

~sideout~

 

~side霊夢~

 

 私達がジュエルシードを探している途中、なのはの帰宅時間になって、美鈴さんがなのはを送って行こうとした瞬間……。

「こんな街中で強制発動?!」

 さっきまで、晴れていた天候が曇りだし、雷が落ちる……。

 これを見たなのはは走り出し、私達はなのはを見失わないように走る。

「レイジングハート、お願い!」

「「「「装符【武装形態】!」」」」

「ハルモニア!」

[イエス、マイスター。セットアップ!]

 美鈴さんの指に嵌めてある白のリングに黒の宝石が付いた指輪から声が聞こえ、次の瞬間、私達の服装は変わり、美鈴さんの服は白と黒の二色で騎士が着そうな服に変わり、その手には白と黒の二振りの槍、私達もそれぞれの武器を手に持ち、ジュエルシードの所に向かう。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 私が魔力流での強制発動を行いしばらくすると、青い光が溢れる。

 どうやら、ジュエルシードが発動したようだ。

「見つけた!」

「けど、あっちも近くにいるみたいだけどね」

 アルフの視線を辿り見てみると、ジュエルシードの近くにはなのはと霊夢達……そして、姉さんがいた。

「早く片付けよう。バルディッシュ!」

[シーリングモード・セットアップ]

 バルディッシュが変形し、なのはとフェイト、お互いがジュエルシードに向かって杖を構える。

 私はドラグノフを構え、姉さん達の牽制の為に足元に弾を撃ち、姉さんは飛んできた銃弾を二振りの槍で弾き、動きを止める。

 そして、二人の杖から放たれた桃色の光と金色の光がジュエルシードに突き刺さる。

「リリカル、マジカル」

「ジュエルシード、シリアル19」

「「封印!」」

 二人の言葉と共にさらに一回り大きな砲撃がジュエルシードに突き刺さり、ジュエルシードの溢れる光は消え、なのはがゆっくりとジュエルシードに近づいていく……。

 

~sideout~

 

~sideなのは~

 

 アリサちゃんやすずかちゃんとも初めて会った時は、友達じゃなかった。

 話を出来なかったから。分かりあえなかったから。

 アリサちゃんを怒らせちゃったのは、私が本当の気持ちを思っていることを言えなかったから。

「やった。なのは、早く確保を」

「そうはさせるかい!!」

 オオカミが襲いかかってくるけど、ユーノ君がシールドを張って守ってくれた。

 ユーノ君のシールドが破れて、フェイトちゃんと私の視線が絡み合う。

 目的がある同士だから、ぶつかり合うのはしょうがないのかもしれない。

 だけど、知りたいんだ!

「この前は自己紹介できなかったけど、わたしはなのは。高町なのは。私立聖祥大付属小学校三年生」

 私はもう迷わない、霊夢ちゃん達みたいに真っ直ぐに行けないかもしれない……だけど、この想いは貫いてみせる!

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

「この前は自己紹介できなかったけど、わたしはなのは。高町なのは。私立聖祥大付属小学校三年生」

 私はこの眼でなのはの瞳を見る……。あぁ、覚悟に満ちた瞳だ……どんなことがあろうと、自分の想いを貫こうとする意志がある者の瞳だ……。

「あぁ、やはりどの時代も人というのは素晴らしい……」

 私はドラグノフを捨て、跳んで、姉さん達の前に降り立つ。

「あら、ドラグノフは使わないんですか、幸夜?」

 姉さんが微笑み、デバイスとバリアジャケットを解除しながら言ってくる……クッ、理由は分かっているくせに……。

「なのはのあんな瞳を見たら、流石の私も狙撃などと言う無粋な行為などしないさ」

「そうですか」

 姉さんが嬉しそうに答え、霊夢達も嬉しそうな表情になっている……どうして、そんな嬉しそうな表情になるんだ?

「「では……」」

 私と姉さんの声が重なり、霊夢達は私と姉さんから距離を取る……。どうやら、私と姉さん二人で闘わせてくれるらしい……。ありがたい。

「八雲家長女……『人外最優』八雲美鈴!」

「八雲家長男……『人外最悪』八雲幸夜!」

 私と姉さんは互いに脚に力を入れ……。

「「いざ、参る!!」」

 私と姉さんは同時に駆け出し、お互いに片腕で弧を描くように回し……。

「「一喰い(イーティングワン)!」」

 同じ技がぶつかり、互いの技の威力は相殺される。

 そして、互いに違う攻撃を繰り出そうとした瞬間……。

 世界は一瞬だけ『白』に染まった……。

 私は元の色に戻った世界を見て、魔力が流れ出ているジュエルシード、それぞれのデバイスに罅が入ったなのはとフェイト……。

 世界が一瞬だけ白に染まったのは、あのジュエルシードのせいだろう。だが、私達の肉体に変化はない……。それは、まだ初撃……劇で言う序章だ……故に次に来るのは『本命』……。

 次の瞬間、私の予想は当たることになる。

 ジュエルシードから、膨大な魔力の奔流が流れる……。

 クッ!姉さんの能力ならこの場所の近くにいる霊夢達なら助かるだろう……。だが、ジュエルシードの近くにいるなのはとフェイトがいる……デバイスを使えない彼女達はどうなる?

 ……ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 彼女たちとは会って数日しか経っていない、赤の他人のような存在かもしれない……。だが、私にとっては彼女達はもう私の『刹那』……ありふれた『日常』だッ!

 ならどうする八雲幸夜?彼女達を助ける為にお前ならどうする?

「創造開始(クリエイト・オン)!」

 私は歪な形の短剣を創りだし、そのまま、私自身の心臓に突き刺した……。

 

~sideout~

 

~side フェイト~

 

 私は二度目の魔力の奔流に飲み込まれて、しばらくしてから眼を開けるとそこには地面が抉れて、建物が崩壊していた……。

 あれ?でも、痛くない……傷も一つも付いてない……どうして?

「幸夜さん?!」

 すると、幸夜がいた方から、驚いたような声が聞こえてきた……。

 嫌な予感がして、すぐにその場所を見た……。

 そこには……。

 心臓部分に短剣を刺し、大量の血で出来た水溜りの上に立っている幸夜がいた……。

 え、どうして?

「宝具『裏切痛み(ベッレイアルペイン)』で、キミ達のダメージを私が全て受けた……安心しろ、キミ達に後遺症は無い……」

 幸夜の声は、まるで母親が小さい子供をあやすように優しい声だった……。だけど、そんな姿を見て安心なんかできないよ!!

 そして、幸夜は暴走状態のジュエルシードを見ると……。

「形成(イェツラー)――   冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)」

   Yetzirah――        Mary Gewehr

 

  「世界の全てよ凍れ、    美しいまま永遠に」

Seien Sie gefrorene Welt alles, und ist schön; in Ewigkeit

 

 幸夜の手の中に、一つの装飾銃が出現する……。

 何、あの装飾銃?私はあの装飾銃が怖い……。

 私は幸夜の出した装飾銃に禍々しい何かを……まるで、何人かの人を……沢山の人を■■してきた様な禍々しさを感じて恐怖する……。

 でも……。

 どうして、あの装飾銃を握る幸夜を見て、涙が流れるんだろう?

 

~sideout~

 

~sideなのは~

 

 私は二度目の魔力の奔流に飲み込まれて、しばらくしてから眼を開けるとそこには地面が抉れて、建物が崩壊していた……。

 あれ?でも、痛くないの?……傷も一つも付いてない……どうして?

「幸夜さん?!」

 すると、霊夢ちゃんの驚いたような声が聞こえてきた……。

 嫌な予感がして、すぐにその場所を見る……。

 そこには……。

 心臓部分に短剣を刺し、大量の血で出来た水溜りの上に立っている幸夜君がいた……。

 え、どうしてなの?

「宝具『裏切痛み(ベッレイアルペイン)』で、キミ達のダメージを私が全て受けた……安心しろ、キミ達に後遺症は無い……」

 幸夜くんの声は、まるで母親が小さい子供をあやすように優しい声だった……。どうして?どうして、幸夜君はそんな状態になってるの?……私達のダメージを全て受けたってどういうことなの?

 そして、幸夜君は暴走状態のジュエルシードを見る……。

「形成(イェツラー)――   冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)」

   Yetzirah――       Mary Gewehr

 

  「世界の全てよ凍れ、    美しいまま永遠に」

Seien Sie gefrorene Welt alles, und ist schön; in Ewigkeit

 

 幸夜君の手の中に、一つの装飾銃が出現する……。

 私はあの装飾銃を怖いと感じた。

 私は幸夜君の出した装飾銃に禍々しい何かを……まるで、お兄ちゃん達と行った博物館で展示されていた……人を■■してきた道具の様な禍々しさを感じる……。

 でも……。

 あの装飾銃を握る幸夜君を見て、悲しくなるのは、どうしてしてなの?

 

~side霊夢~

 

 私達は二度目の魔力の奔流に飲み込まれて、しばらくしてから眼を開けるとそこには地面が抉れて、建物が崩壊していた……。

 あれ?でも、痛くない……傷も一つも付いてない……どうして?

 私は不思議に思いながら顔を上げると……

「幸夜さん?!」

 私達の目の前には、心臓部分に短剣を刺し、大量の血での水溜りの上に立っている幸夜さんがいた……。

「宝具『裏切痛み(ベッレイアルペイン)』で、キミ達のダメージを私が全て受けた……安心しろ、キミ達に後遺症は無い……」

 幸夜さんの声は、まるで母親が小さい子供をあやすように優しい声だった……どうして?どうして、あなたはいつもそうなの?『前世』でもそうだった……どうして自分が傷つくことで、私達を守ろうとするの?

 そして、幸夜さんは暴走状態のジュエルシードを見る……。

「形成(イェツラー)――   冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)」

   Yetzirah――        Mary Gewehr

 

  「世界の全てよ凍れ、    美しいまま永遠に」

Seien Sie gefrorene Welt alles, und ist schön; in Ewigkeit

 

 幸夜さんの手の中に、幸夜さんの聖遺物の一つ……『冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)』が出現して、その引き金を引いた……。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

「形成(イェツラー)――   冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)」

  Yetzirah――        Mary Gewehr

 

  「世界の全てよ凍れ、    美しいまま永遠に」

Seien Sie gefrorene Welt alles, und ist schön; in Ewigkeit

 

 私は聖遺物『冷酷女王銃』を『形成』し、引き金を引く……。

 聖遺物『冷酷女王銃』の形成時効果は『氷の魔弾』を撃つこと……この魔弾である程度のものは凍結させることが出来る……。

 故に、暴走状態のジュエルシードを凍結という形で封印できる。

 私は封印したジュエルシードを素手で掴み、フェイトの所に向かう。

「こ、幸夜……」

 私がフェイト達の所に向かうと、フェイトとアルフが心配そうな表情で此方を見てくる……あぁ、そう言えば剣を刺した状態で血だらけのままだったな……

 私は自分の心臓に刺した短剣を抜く。

「安心しろ、これ位の怪我大丈夫だ。短剣の方も心臓を突き破るくらいの威力は無いさ」

「「で、でも……」」

「ほら、今もちゃんと歩けている、意識もしっかりしている。だから、安心しろ」

 フェイト達の心配そうな表情はまだ続いているが、とりあえずなのは達の所を向き……。

「では、ごきげんよう」

 私は足元にスキマを開き、フェイト達の家に向かった……。

 さて、フェイト達をどうやって説得するかな?

 



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第12話~異世界の人物との出会い~

今回は小説家になろうで投稿されている『神龍崎 和刀』様の『幻想とチートと異世界?―Tradition Die Welt Eine Geschichte― 』の『龍炎タクト』君とのコラボ回です!

では、第12話どうぞ!


 

 ジュエルシードの暴走から時間が経ち、私はジュエルシードを探していた……。

 まあ……あの時、血塗れになっていたから当然のようにフェイト達に止められたが、フェイト達の目の前で能力を使い、傷を全て治して、さらに言葉で説得させた。

「さて……何処を探すか……うん?」

 私が悩みながら歩いていると、ポケットに入れてあるケータイから着信音が鳴り、画面に『神ちゃん(虚乳)』と表示されているのを確認してから、電話に出る。

「もしもし……」

[もしもし、幸夜君ですか?]

「そうですよ、神さん」

 私の電話相手は神さん……『別世界』の神だ。

「それで……『依頼』ですか?」

[ええ、依頼です]

 やっぱりか……神さんの依頼をジュエルシードの捜索の為に断ろうとした瞬間……。

[依頼内容は『始末』、対象はある魂、報酬は、その魂が飲み込んだジュエルシードです]

「その依頼引き受けた」

 神さんの言葉を聞いた瞬間、私は即座に依頼をすることに決めた……。

 

~sideout~

 

~side???~

 

 どうも初めまして、俺は『龍炎(りゅうえん)タクト』と言います。

 俺は現在、真っ白な空間にいます……。まあ、此処が何処なのか分かってるけど……。

「やあ!皆の神様ちんだよ♪」

「黙れ、うざい、歳を考えろ……」

「わ~お、いきなりの暴言」

 急に出て来て、訳が分からない事を言った残念な美人さんこと、俺が今過ごしている世界に『転生』させた、張本人……神に対して俺は暴言を吐く。

「それでですね、タクトさんにお願いがあるんですよ」

「随分と急だな、おい」

「お願いとは言うのですね~」

「無視か、ゴラ!」

 駄神のいつも通りの対応に俺は内心で溜息をつく……

「お願いとはですね~私の所から『別世界』に逃げた『転生者』の魂を『消滅』させて来て下さい」

「……ハァ?」

 ……この駄神は今、何て言いやがりましたか?

「Pardon?」

「無駄に発音が良いですね。もう一度、言いますよ?私の所から『別世界』に逃げた『転生者』の魂を『消滅』させて来て下さい」

「……なんでさ?」

 駄神の言っている言葉の意味は分かってる……。だけど、どうして『消滅』させないといけないんだ?

「どうしてって言う顔をしてますね?……まあ詳しい理由は向こうでの『協力者』に聞いて下さい……それと、あなたには拒否権はないですよ!!」

 すると、俺の足元に大きな穴が開く……。

「ふざけんなァァァァァァァァァ!!!!!!!」

「お達者で~」

 俺は駄神の声を聞きながら、落下していった……。

 

~sideout~

 

~side神~

 

 タクトさんが落ちて行くのを見届けた後、私は再びある資料を見る。

「八雲幸夜……『人外最悪』と呼ばれて、人外(バケモノ)から化物(バケモノ)になり、さらに『流出』して神になった、元『第八天』ですか……」

 さて、二人が出会い、どう影響するのかは分かりませんが、私はあえてこう言いましょう……。

 

 では一つ、皆様これから始まる歌劇をご観覧あれ。

 その筋書きは、ありきたりだが。

 役者が良い。至高と信ずる。

 ゆえに面白くなると思うよ。

 

 

 

 

~sideout~

 

~sideタクト~

 

「またこれかよォォォォォォォ!!!!!!!!!」

 神に落とされた後、俺は人生で二度目の縄なしバンジージャンプを体験していた……。

【タクトうっさい、少しは落ちつけ】

「アンリ!これが落ちついて……グベッ?!」

 俺の『中』から聞こえてくるアンリの声に意識を取られ過ぎた俺は、地面に顔面をぶつけて着地することになった……。

「いっ……痛くない……」

【当然だ、今のお前は『聖遺物』と契約してんだ、そんな事じゃダメージは負わねえよ】

 ……そんな事って言うけど……上空約2000メートルからの落下は普通にペッチャンコだぞ。

 と、色々考えてたんだが……。

「「「「「「「グゥゥゥゥゥゥゥ……」」」」」」」」

「あれ、なにこの状況?」

 俺の周りを何か地球外生物みたいな形をした奴らに囲まれていた……。

 そして……。

「ギャオ!!」

「ちょっ?!」

 地球外生物の一匹が、俺に襲いかかってくるが、俺は地球外生物の攻撃を避ける。

【おい!】

「分かってる!!」

「【形成――】」

 Yetzirah――

 

 俺は意識を集中し、『ある物』を『中』から引き出す。

 

「【愛しい人よ、我が腕の中で眠れ】」

Eine liebe Person schlaft in meinem Arm

 

「【――聖典・神殺しの魔聖剣(モーセ・ユダ・ルシファー)】」

 俺達だけの祝詞を詠うと、俺の左腕から聖遺物、『聖典・神殺しの魔聖剣(モーセ・ユダ・ルシファー)』が生え、瞳は真紅色に髪は鈍い銀色に変わる。

「ハッ!!」

 俺は左腕に生えているチェーソンで襲いかかってきた地球外生物を斬り裂く。

「「「「「「「「「ギャオ!!」」」」」」」」」

 俺が一匹を斬り裂いた瞬間を合図のように他の地球外生物が襲いかかってくるが……。

「ハァ~協力者を探していたら、何だこの生物は?……とりあえず、汚物は凍結だ」

 次の瞬間、俺に襲いかかってきた地球外生物は凍り、穿たれた……。

「それで、キミが協力者かな?」

 声が聞こえた方を向くと、そこには狐面を被り、首に包帯を巻いた黒ずくめの人物がいた……。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 神さんに指定された場所に行くと、一人の青年が地球外生物に囲まれていた……。

【幸夜……】

「(ああ、囲まれてるのが『協力者』だろう……)」

【それ位、私にだって分かります。私が言っているのは……】

「(協力者が『聖遺物』を持っていて、『協力者』の中にある『別の魂』が『流出位階』に達していることか?)」

【そうです……】

「(あまり気にするな。協力者自身が流出位階に達しているわけじゃない……。さて、とりあえず……)ハァ~協力者を探していたら、何だこの生物は?……とりあえず、汚物は凍結だ」

 私は聖遺物の『活動』を発動し、地球外生物たちを凍らし、見えない弾丸を銃を『使わず』に放ち、凍った地球外生物たちを穿った。

「それで、キミが協力者かな?」

 私は、地球外生物たちに囲まれていた青年に声をかけ、青年はこちらを振り向いた……。

 

~sideout~

 

~side三人称~

 

 タクトに声をかけてきた幸夜は、ゆっくりとタクトに近づいていく。

「初めまして、私は八雲幸夜だ」

 タクトは『聖典・神殺しの魔聖剣(モーセ・ユダ・ルシファー)』を戻してから、幸夜と握手をする。

「龍炎タクトだ、よろしく。俺の事は気軽にタクトって呼んでくれ」

「なら、私の事は気軽に幸夜と呼んでくれ……それで、タクトはどうしてこの世界に来たかは知っているか?」

「ああ、俺がいた世界からこの世界に逃げた転生者の魂を消滅させるんだろ?でも、どうして消滅させるんだ?」

「その理由は移動しながら言おう」

 そう言って、幸夜は『スキマ』を開く。

「『スキマ』?!」

「どうした?」

 タクトは幸夜の開いたスキマを見て驚き、そんなタクトを見て幸夜は首を傾げる。

「なあ、もしかして幸夜は『境界を操る程度の能力』を持っているのか?」

「タクトは『~程度の能力』の事を知っているのか?ちなみに私の能力は『創造と終焉を司る程度の能力』と『血液を操る程度の能力』とタクトと同じ『聖遺物』だ……まあ、他にも能力はあるが……それと、『境界を操る程度の能力』は私の母さんの能力で、遺伝かどうかは知らないが、私は『スキマ』を開くことが出来るんだよ」

「『創造と終焉を司る程度の能力』ってチートだろ……それに『聖遺物』も……って、母さん?もしかして、幸夜のお母さんの名前って……」

「八雲紫だが?」

「(嘘だろ?!)」

 突然、驚いた表情をしたタクトに対して幸夜はもう一度首を傾げるが、驚いた表情のタクトをスキマに入れ、自分もスキマの中に入って行った。

 

~sideout~

 

~sideタクト~

 

 タクトは先程の幸夜の言葉に驚いていたが、スキマの中を歩いていたおかげか、とりあえず冷静さを取り戻した。

「それで、さっきの質問なんだが……」

「ああ……タクトは『原罪』って知ってるか?」

「キリスト教神学の用語。簡単に説明すると、アダムとイヴから受け継がれた罪のこと。だったか?」

「まあ、そんな感じだ」

「それで、その原罪と消滅させる転生者の魂には何の関係があるんだ?」

「人は誰しもその中に『罪(シン)』を持っていて、その転生者の魂が『罪(シン)』の中で最も強力な『七つの大罪』を全て犯して、地獄を開く『門』になりつつある」

 幸夜の説明にタクトは疑問を持った表情になり、その表情を見た幸夜はさらに詳しく話す。

「『門』はこの世と『地獄』を繋ぐことになって、『門』を通じて、この世に色々な『禍』がこの世に蔓延することになる……っと、話している間に目的地に着いたようだな」

 幸夜は話すのを止めると、『スキマ』の中ら身体を出し、タクトも続くように『スキマ』から身体を出す。

「あれが目標らしいな……」

【何と言うか……】

「でかいな……」

【ああ、でかいな】

 タクト達は目の前にいる転生者の魂と様々な肉片が付いた体長四メートル位の存在に言葉を失う……。

「どうせ身体が大きいだけの存在d「■■■■!!!!」………」

「おい!なんか物凄い雄叫び上げてるぞ?!」

【まるで、モン○ンのモンスターみたいな雄叫びだな……】

 幸夜の言葉を遮る様に、転生者の魂は雄叫びを上げ、それを聞いたタクトは驚き、アンリは雄叫びの感想を言う。

「アクセス―――我がシン」

「ッ?!まずい!」

【これは?!】

「おい、まさか!」

【そのまさかだろう……】

 転生者の魂が発した言葉を聞いた幸夜達は、これから起ころうとする事を理解する。

「(おい、アンリ!俺達も……)」

【無理だ、まだ『創造』を使っていないから、『暴食』の『罪』にはアクセスできない】

「なら……「アクセス――我がシン」え?」

 タクトの言葉を遮るように幸夜は転生者の魂と同じことを言う。

「イザヘル・アヴォン・アヴォタヴ・エル・アドナイ・ヴェハタット・イモー・アルティマフ……イフユー・ネゲット・アドナイ・タミード・ヴェヤフレット・メエレツ・ズィフラム 」

 転生者の魂の腕の肉が変化し、禍々しい気配を漂わせる砲身に変わる。

「おお、グロオリア。我らいざ征き征きて王冠の座へ駆け上がり、愚昧な神を引きずり下ろさん 主が彼の祖父の悪をお忘れにならぬように。母の罪も消されることのないように その悪と罪は常に主の御前に留められ、その名は地上から断たれるように 彼は慈しみの業を行うことを心に留めず、貧しく乏しい人々、心の挫けた人々を死に追いやった 彼は呪うことを好んだのだから、呪いは彼自身に返るように 祝福することを望まなかったのだから、祝福は彼を遠ざかるように 呪いを衣として身に纏え。呪いが水のように腑へ、油のように骨髄へ、纏いし呪いは、汝を縊る帯となれ ゾット・ペウラット・ソテナイ・メエット・アドナイ・ヴェハドヴェリーム・ラア・アル・ナフシー 」

 次の瞬間、転生者の持つ砲身の銃口から、あらゆるものを溶かすほどの超高温の魔性を孕んだプラズマ砲が幸夜達に向かって発射されるが……。

「ルキフェル・ユダ・パイモン・タナトス・アリオク・アスラフェル……コダール・ザパン・アスタロト・モロク・ハルファス・シャックス・ビフロンズ・アバドン・ガミジン」

 幸夜の目の前に魔法陣の様な物が出現する。

「黎明の子、明けの明星よ、あなたは天から落ちた。もろもろの国を倒した者よ、あなたは切られて地に倒れた。暁の子、天使よ、どうして天から落ちたのか。 天使よ、あなたは地獄の深い穴に落とされ、しかも底の底まで落とされる。虚飾のクウィンテセンス。 肉を裂き骨を灼き、霊の一片までも腐り落として蹂躙せしめよ。死を喰らえ―――偽・無価値の炎(メギド・オブ・ベリアル)」

 転生者が放ったプラズマ砲は、幸夜の目の前にある魔法陣から出現したあらゆるものを『腐敗』させる『メギドの炎』で作り出された巨大な壁によって防がれる。

「まさか、『暴食』のシンを使ってくるとは……」

「■■■■!!!!!!!」

 転生者の魂は雄叫びを上げると、影から地球外生物たちが出現する。

「タクト!」

「おう!」

 幸夜の呼びかけに、タクトは何をするのかが分かったのか、幸夜の呼びかけに答え、幸夜の服の中に何故か入っていたプライミッツが外に飛び出し、タクトは意識を自分の中に集中させる……。

「「【形成――】」」   

  Yetzirah――

「人類殺し(プライミッツ・マーダー)」

    Primate murder

「【聖典・神殺しの魔聖剣(モーセ・ユダ・ルシファー)】」

      Mōšeh Jew Lucifer

 

 次の瞬間、小型犬位の大きさだったプライミッツは体長二メートルを超える巨大な姿に変わり、タクトの左腕からは異形の形をした剣が生え、瞳は真紅色に変わる。

「行くぞ、プライミッツ!」

「オォォォォン!!!!!」

「ハァァァァァ!!!!!!」

 地球外生物たちは、幸夜の蹴りによって首や胴体を千切られ、プライミッツに喰われ、踏み潰され、タクトの『聖典・神殺しの魔聖剣(モーセ・ユダ・ルシファー)』によって、切り刻まれ、肉塊にされていく……。

 地球外生物はこの惨状から逃れられない……。

 聖遺物『人類殺し(プライミッツ・マーダー)』の『形成』時効果は、『人に対しての絶対的殺害権利』だが、それでも地球外生物たちは逃れられない……。プライミッツとの霊的格に圧倒的な差がある為、『絶対的』ではないが、プライミッツには地球外生物に対して『ある程度の殺害権利』を持っている。

 そして、タクトの聖遺物『聖典・神殺しの魔聖剣(モーセ・ユダ・ルシファー)』の『形成』時効果は『切断』……この聖遺物に切断出来ない物は無く、神、悪魔、不死者さえ殺せる。

 地球外生物たちは次々と殺され、その魂は幸夜の中にある聖遺物、プライミッツ、『聖典・神殺しの魔聖剣(モーセ・ユダ・ルシファー)』に『喰われ』、地球外生物たちは『完全消滅』した……。

「さて、早いがタクト、そろそろ終曲(フィナーレ)といこうか?」

「そうだな……じゃあ、幕を降ろすか」

 幸夜の側にプライミッツが立ち、タクトは意識を集中させていく……。

 

「ああ、誰が私の魂から取り去ってくれるのだろうか」

   Ach,wer nimmt von meiner Seele

 

「人は古より変わることなく神々と争い、定められた運命を破壊するため疾走する」

Die Menschen kampfen mit den Gottern ohne Wechsel vom alten Galoppieren, das Schicksal geweiht zerstoren

 

 幸夜とタクトは自分達の『渇望(ねがい)』を具現化する為の言葉を紡ぎだす……。

 

「この秘密、重たい荷物を

 Die geheime,schwere Last,

 それは隠そうとすればするほど

 Die,je mehr ich sie verhehle,

 一層強く私を捉えるのだ?」

 Immer mächtiger mich faßt?

 

「だが幾度となく敗走してきた

 Wurde immer wieder, aber Niederlage

 だからこそ強く、何よりも強く

 Das ist, warum stark, starker als das, was

 全てを守護するために強くなろう」

 Wurden alle stark zum Schutz der

 

 詠唱を続ける二人の身体に異変が生じ始める……。

 

「お聞きください、天におわします父よ」

 Hör' es,Vater in der Höhe,

 

「龍となって喰らい尽くせ、その一撃で全ての害為す者を喰らえ」

Essen Sie alle, die Schaden anrichten mit einem einzigen Schlag seiner Ein Drache geworden verschlingen Tsukuse

 

 幸夜の頭に白い犬耳が生え、髪は真っ白に染まり、手と足も段々と獣の様な形に変わっていき、タクトの方は身体からゆっくりと異形の剣が生えていく……。

 

「異郷より訴えている御身の子のことを

 Aus der Fremde fleht dein Kind:

 お与え下されんことを、すぐに私を包むように

 Gib',daß er mich bald umwehe,

 御身の遣わされる死による命の息吹を!」

  Deines Todes Lebenswind!

 

「そは誰も知らぬ届くことのない新たな創造

 Seo neue Schopfung kennt nicht jeder, der nicht erreicht

 我が渇望こそが全てを守護する龍となる」

 Herzlich Willkommen auf meiner Drachen der Schutzherr aller Begierde

 

「「創造(ブリアー)!」」

  Briah――

 

「死生観・死を与える者(メメント・モリ・タナトス)」

    Memento mori Tanatos

 

「序曲・害食龍護」

 Ouvertüre Schützen Sie den Drachen Diät Schaden

 

 詠唱が終わると、彼らの体の変化は終了する……。

 彼らが行ったのは、『永劫破壊(エイヴィヒカイト)』の『四位階』あるうちの『三位階』目……『創造位階』

 創造位階は使用者の『渇望』を『ルール』とする『異界』を作り出す能力。

 創造位階には二種類あり、一つは『~になりたい』『~でありたい』などの自己に向ける願いで、自分自身を願った通りの形に変える異能が発現する『求道型』で、もう一つは、『~したい』『~だったらいいのに』などの他者や外界に向ける願いで、外界を自分の願った通りの形に塗り替える異能が発現する『覇道型』があり、二人が行ったのは『求道』の『創造』、幸夜が『創造』に使った渇望は『安らかな死を与える存在でありたい』、タクトの渇望は『全ての生を護る為に害為すモノを喰らいたい』だ……。

「幸夜……その姿……」

【何か……あれだな?】

 タクトとアンリは今の幸夜の姿を見て、タクトとアンリは言い淀む……。幸夜の今の姿は、頭に白い犬耳が生え、幸夜の両手両足は白い毛色の獣の腕に変わっている。

「この姿はあまり気にするな……それと……フンッ!」

 転生者の砲身からもう一度、幸夜達に向かってプラズマ砲を放つが、幸夜の蹴りがプラズマ砲に当たると、プラズマ砲は霧散した……。

「こんな姿だと思って油断してたら……危険だぞ?」

「……マジかよ」

【幕引きか……】

「生憎だが、私の『創造』時効果は『歴史を強制的に幕を引く』ものではない、私のは『死を与える』……ただそれだけ能力、故に姿が無い『概念』など殺せないが、さっきのプラズマ砲や生物……姿、形がある物だけしか殺せない……」

「【(いや、それだけども強力なんですけど……)】」

 幸夜の『創造』の説明にタクト達は心の中で突っ込む。

「それじゃ……行くぞ、タクト!」

「おう!」

 幸夜とタクトは同時に転生者の魂に向かって走り出す。

 転生者の魂は砲身からプラズマ砲ではなく、砲弾を放ってくるが、その全てを幸夜が蹴りとパンチで『殺し』ていき、タクトは上空に跳び上がり……。

「【血晶収束!!】」

 タクトは『創造』時効果の一つである『血液の操作』で、先程殺した地球外生物の血液を鋭利な刃物状にし、その全てを転生者の魂の脚に突き刺し、動けないようにする。

「■■■■■!!!!!!!!!!」

 転生者の魂は上空のタクトに向かって腕を振り上げるが……。

「させるか!!」

 幸夜が振り上げた転生者の魂の腕を蹴り、腕は消滅する。

「決めろ、タクト!!」

「【ウォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!】」

 タクトとアンリは雄叫びを上げながら、腕に生えた剣を転生者の魂の首に突き立て、首を『切断』した……。

 首を切断された転生者の魂の肉は段々と腐れ落ち、転生者の魂は消滅し、瘴気は霧散した……。

「依頼……完了だな……」

「ふぅ~、疲れた~」

 幸夜とタクトは『創造』を解き、元の姿に戻り、幸夜は腐りきった肉の中から、ジュエルシードを取り、エターナルの中に入れる。

「(あの魂が『暴食』の『罪(シン)』が使えたのは、これのせいか?)……タクト、そろそろ戻るか?」

「そうだな……流石にこんな所に長くいたくないしな……」

 タクトは腐った肉を見てから答え、幸夜は『スキマ』を開き最初にいた場所に戻った……。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 幸夜達は最初に出会った場所である、森に戻っていた……。

「それじゃあな、タクト……」

「ああ……だけど、さよならじゃないぜ。『世界』は違うけど、また会えるから……『またな』、幸夜」

「ああ、そうだな……『またな』タクト」

 タクトの言葉に幸夜は仮面越しだが、確かに笑い、二人はガッチリと握手をし、別れの挨拶を交わす。

「今度、そっちがピンチになったら教えてくれ、今度は私が助けに行くよ」

「そっちこそ、ピンチになったらいつでも助けに来るぜ」

 タクトの後ろに『穴』が出来始める……。

「ああ、それとタクト一つ言っておきたいことがある」

「何だ、幸夜?」

「キミの中にいる『魔龍』には少しだけ気をつけろ……それと、そのタクトの『渇望』……もし『流れ出す』事になったら、その『渇望』を良く考えろ……この二つは忠告だ」

「なっ?!幸夜、アンリの事を知って……」

 タクトが言葉を言い終える前に、幸夜はタクトを押し、『穴』の中に入れる。

「ちょっ?!」

 タクトが『穴』の中に入ると、『穴』は閉じた……。

「では、また会おう……『異世界』の私の『友人』……龍炎タクト」

 幸夜はそう呟いてから、その場を去った……。

 



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第13話~乱入者~

 

 私は異世界から来たタクトと一緒に転生者の魂を消滅させ、フェイト達と合流する為マンションに戻ったのだが……血の臭い?

 私は、血の臭いのする原因があるであろう部屋まで行き、そこの扉を開けると……。

「あ、幸夜……」

 涙を流しているアルフと身体の至る所に鞭傷を付け、寝ているフェイトがいた……。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

「なるほど……つまり、フェイトの体の傷はフェイトの母親がやったものか……」

「そうだよ、あのババアが……」

 アルフの憎悪の籠った声を聞きながら、私はフェイトの体の至る所にある傷を見る。

「アルフ、お前の話では、フェイトの母親は相当フェイトの事を嫌ってるようだが……」

「そうだよ!フェイトがこんなにも頑張っているのに、アイツは褒めるどころか、こんな酷いことをするんだよ!こんなことをしている奴が、フェイトの事を好きな筈が無いよ!!」

 アルフはまるで訴えるように、言ってくるが……。

「だが、私はどうもその母親がフェイトの事を嫌っているとは思えん……」

「どうしてだい?!」

「理由は、フェイトにある傷だ……この傷は一見、酷そうに見えるが、そこまで酷い傷ではない、暫くすれば普通に回復して、傷跡も残らない……それで、私がそう思う最大の理由は……この傷から憎悪などの負の感情が見られない……むしろ、その母親は泣いているように感じる……」

「如何いうことだい?」

「質問するが、フェイトの母親は昔は優しかったか?」

 私の質問にアルフが暫く考えこみ……

「……確か優しかったよ。だけど、急にフェイトに対して冷たくなったんだよ」

「そうか……」

 どうやら、何か裏がありそうだな……。

「とりあえず、フェイトの傷を治そう」

 私とアルフは寝ているフェイトの傷の治療を始めた……。

 

~sideout~

 

~side三人称~

 

 フェイト達が海鳴市にいる頃、まるでRPGに出てくるような城の形をした『時の庭園』、その『時の庭園』の一室で、一人の女性が泣いていた……。

「うっうっ……フェイト、ごめんなさい、ごめんなさい。フェイト……」

 泣いている女性……プレシア・テスタロッサは自分の娘の名前を呼びながら謝罪の言葉を口にし続けている。

「どうしたのです、プレシア・テスタロッサ?」

 そんなプレシアの背後から、仮面を付け道化師の様な姿をした男が現れる。

「アルバート!」

 プレシアは自分の背後に立つ男の名前を憎悪の籠った声で呼び、姿を見る。

「そんな眼で見ないで下さいよ……興奮しちゃうじゃないですか」

 自分を見るプレシアの眼にアルバートは頬を赤らめ、身震いする。

「……変態」

「フフ、自覚していますよ。それと、私の言ったことはちゃんと守っていますよね?守ってないのでしたら……」

「ちゃ、ちゃんと守っているわ!だから、あの娘には……フェイトには手を出さないで頂戴!」

 プレシアの表情はフェイトを鞭で叩いていた時とは違い、自分の子を守る母親の表情をしていた……。

「フフフ、あなたが約束を守っている間は大丈夫ですよ。ですが……あの娘自身は大丈夫ですかね?」

 そう言い残し、アルバートは闇の中に消えて行った……。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 フェイトの傷の治療を終え、フェイトが目覚めたと同時にジュエルシードの発動を感じ、私達はとある公園に来ていたが……。

「バリアーが硬すぎるよ!」

「根っ子がうっとしいわね!」

 ジュエルシードが発動し、物語に出てきそうな姿に変わった木がバリアーは発動するし、木の根っこは伸ばすしと、手強くなっていた為、私達はたまたま遭遇したなのは達と共に戦っている。

「(木の根っこがうっとおしい……なあ、『暗黒天体』か『超新星爆発』の魔術、使って良いか?)」

【絶対に、駄目です!】

【使ってはならんぞ!】

「……冗談で言ったつもりなんだが……ハッ!」

 エターナルとムルムルとそんなやり取りをしながら、『モード・ツヴァイ』にしたエターナルで木の根っこをバラバラに切り刻む。

「幸夜、どうします?」

「……姉さんの能力でどうにかならない?」

 木の根っこを世界調和槍(ワールド・ハーモニクス・ランス)で払いながら近づいてきた姉さんに聞かれ、姉さんの能力『調和を司る程度の能力』でどうにかならないか聞くが……。

「私も考えてみましたが、無理ですね。能力を使ったと同時に結界が消え、周りに認識されてしまいます。幸夜の能力ではどうですか?」

「私も姉さんと同じだ……それに、『創造と終焉を司る程度の能力』を使ってもなのは達に『終焉』が当たる可能性がある」

「そうですね……とりあえず私は、なのはさん達の手助けをしてきますね……ハッ!」

 姉さんは迫りくる木の根を槍の高速連続突きで破壊してから、空中に浮く木の根の破片を足場に跳躍し、なのはたちの所に向かった。

 そして……。

「何よこれ?!」

「何これ?!」

 突然、驚いたような声が聞こえ、その声が聞こえた場所を向くと……。

「あ、アリサちゃん?!」

 アリサと黒髪の坊主頭で眼鏡を掛けた少年がそれぞれ違う場所に立っていた。

 

~sideout~

 

~side???~

 

「ハァ~鬱だ……」

 僕、野比のび太はそんな言葉を溜息と同時に出した。

 今日も学校で、学友、幼馴染達にいつも通りイジメられ、ガキ大将でジャイアンと呼ばれている幼馴染に殴られ、先生に心配されるが何でもないと言い続ける毎日……。

「鬱だ……」

 そんな風に顔を伏せていたからだろうか、僕は自分の周りが変化していたことに気づいていなかった……。

「何よこれ?!」

 女の子の大きな声が聞こえて、僕は顔を上げると僕の目の前には怖い顔をした木の怪物にコスプレ?の様な姿をした女の子達に全身黒ずくめで狐のお面を被った子にオオカミがいた。

「何これ?!」

「あ、アリサちゃん?!」

 さっき聞こえてきた声の女の子とコスプレをして木の怪物と戦っている女の子は、どうやら知り合いらしい。

 すると、木の怪物が僕に向かって根っこを伸ばしてきた。

「うわっ?!」

 僕の頭の中では『死』と言う言葉が浮かびあがり、眼を瞑りながら恐怖と来るであろう衝撃と痛みを我慢する為に身体を強張らせるけど……。

 ……あれ、全然痛くない?

 僕は恐る恐る眼を開けると……。

「えっ?」

 僕が元々いたであろう場所に根っこが突き刺さっていて、僕はそこから数メートル離れていた。

 ちょっと待って、僕は……『棒立ちの状態でここまで移動』したの?

 

~sideout~

 

~sideアリサ~

 

「ハァ~なのはの馬鹿……少しは私達にも相談しなさいよ」

 私は溜息と同時にそんな言葉を出していた。

 なのはの奴、分かりやすいのよ。私とすずかがどれだけ心配してるか……少しは考えなさいよ。

 そんな風に友達に対しての愚痴をこぼしていたからなのか、私は自分の周りが変化していたことに気づいていなかった……。

「何よこれ?!」

 ふいに私が顔を上げると、私の目の前には怖い顔をした木の怪物にコスプレ?の様な姿をしたなのは達がいた。

「何これ?!」

「あ、アリサちゃん?!」

 私の声で、私の事に気が付いたなのはが驚きの声を上げていた。

 すると、木の怪物が私に向かって根っこを伸ばしてきた。

「きゃっ?!」

 私は咄嗟の行動で、後ろの方に体重を移動させて動いた。こんな事をしても無駄なのに……けど

「えっ?」

 私の体を凄い勢いで後ろに移動し、私の体があった場所に根っこが突き刺さり、私は元の場所から数メートル移動していた……い、一体何が起きたの?

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 私は自分の身に起こった現象に驚いているアリサと少年の方を見る。

【幸夜、あれは……】

「(ああ……だが、如何いうことだ?……アリサとあの少年は『聖遺物』と『契約』している)」

 しかも……。

「(少年とアリサの聖遺物には既に大量の魂が宿っている……)」

 何故だ?……まあ、とりあえずはジュエルシードを何とかするか……。

「なのは、フェイト!私達があのバリアーを破壊するからジュエルシードを二人で封印しろ!」

「うん」

「分かったの!」

 私の言葉に二人が頷き、私は霊夢達の方を見る。

「妖夢、咲夜、私達であの木の根を破壊し、霊夢と魔理沙はバリアーを破壊してくれ!……創造開始(クリエイト・オン)」

 私は『創造』を使い、一本の日本刀を創りだす。

「呪符≪斬撃の呪い≫」

「奇術≪ミスディレクション≫」

「人符≪現世斬≫」

 日本刀を振い、ありとあらゆる物を切断する『呪い』を放ち、木の根を切断し、咲夜は無数のナイフを木の根に放ち、ナイフで木の根を地面に縫い付け、妖夢は取り出した刀で木の根を斬り裂く。

「霊夢、魔理沙!」

「夢符≪夢想封印 集≫」

「恋符≪マスタースパーク≫」

 複数の光弾と超極太レーザーが発射され、バリアーを破壊し、二つの弾幕は止まることなく木に直撃し、次の瞬間には木は元の姿に戻り、ジュエルシードが出現する。

[シーリングモード・セットアップ]

[シーリングフォーム・セットアップ]

「ジュエルシード、シリアル7!」

「封印!」

 辺りが一瞬だけ光に包まれるが、光は直ぐに晴れ、封印済みのジュエルシードが空中に浮かぶ……

「……ジュエルシードには、衝撃を与えたらいけないみたいだ」

「うん。昨夜みたいなことになったら、私のレイジングハートも、フェイトちゃんのバルディッシュも可哀相だもんね……」

「だけど……これは譲れないから」

 そう言って、フェイトはデバイスを構える。

「私は、フェイトちゃんと話をしたいだけなんだけど……」

 なのはもデバイスを構える。

 この場にいる誰しもが二人を止めたり、動いたりはしない……ここからは、彼女達二人が主人公の劇だ……。

 二人が同時に飛び出し、互いのデバイスがぶつかり合う……だが、突然青い光が溢れ、レイジングハートとバルディッシュが何者かに止められた。

「ストップだ!」

 乱入者に唖然とする二人。

「ここでの戦闘は危険過ぎる。」

 現れたのは、黒いコートを着た少年、手にはデバイスが握られている。

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ!詳しい事情を聞かせてもらおうか。」

 少年……クロノ・ハラオウンはそう言い放った。

 



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第14話~時空管理局~

今回、新たな東方キャラが出ます。
では、第14話をどうぞ!!


「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ!詳しい事情を聞かせてもらおうか。」

 突然現れた少年はそう言い放ったが……。

 時空管理局……なんだそれは?

「(アルフ、時空管理局とは何だ?私達の敵か?)」

「(敵の様なもんだよ!フェイト、幸夜、撤退するよ。離れて!)」

 直後、アルフは少年に向かって魔力弾を放ち、魔力弾は避けられたが地面に直撃し、辺りに土煙が上がる。

 そして、フェイトは空中に浮かぶジュエルシードを取りに行くが……。

 チッ、あの少年フェイトを撃ち落とす気か。

 私は少年の方から感じた魔力に気がつき、フェイトの所まで一気に跳躍し、フェイトを魔力弾から守る様に抱きしめながら片腕を振い、向かってきた魔力弾をかき消す。

「大丈夫か、フェイト?」

「こ、幸夜?!//////」

 地面に降りて、フェイトを見ると顔が赤くなっていたが……うむ、怪我はしていないようだな。

「ここは私が喰い止める……フェイトを連れて退け、アルフ」

「わ、分かったよ」

 私はアルフにフェイトを預け、アルフはこの場から離脱するために空を飛ぶが……。

「悪いけど、逃がさないぜ。」

 次の瞬間、フェイトを抱えていたアルフに向かって、炎で出来た鳥とカラフルな光弾と銃弾のような形をした光弾が向かって行く……。

「フンッ!」

 私はもう一度片腕を振るい、それらをかき消し、私はアルフ達が逃げたことを確認した後、前方を見ると懐かしい人物達がいた……。

「妹紅(もこう)、輝夜(かぐや)、座薬」

「久しぶりだな、幸夜」

「久しぶりね、幸夜」

「久しぶ……誰が座薬だァァァァァァ!!」

 誰だ、感動の再開で叫ぶ奴は?

「おい、座薬。感動の再会場面で何を叫んでいるんだ?」

「あんたが叫ばせてるんでしょうが!あと、座薬って言うな!」

 ふむ、やはりこいつは昔からイジりがいがあるな……。

「少しは黙りなさい……座薬」

「姫様も?!」

 輝夜の言葉でショックを受けたのか、うなだれる座薬……もとい、鈴仙(れいせん)

「それで、久々の再開だけど……そこをどいてくれないか?」

「だが断る」

「そうか……」

 訪れる沈黙、そして……。

「不死≪火の鳥-鳳翼天翔-≫」

「難題≪龍の頸の玉-五色の弾丸-≫」

「波符≪赤眼催眠(マインドシェイカー)≫

 妹紅は火の鳥を模した炎弾の塊を、輝夜はカラフルな色のレーザーと丸弾で構成された弾幕を、鈴仙は座薬弾を全方位に発射させ、自身の能力である『狂気を操る程度の能力』を発動させて座薬弾を分裂、再拡散させ、私に放ってきたが……。

「無駄だ」

 私は聖遺物の『活動』を使い、向かってきた弾幕を全て『凍結』させ、砕く……。

 自分達のスペルカードを防がれた三人は、新たにスペルカードを取り出すが……。

「三人とも止めなさい!」

 空中にモニターが出現し、モニターに映っている女性の声が妹紅達を止める。

「妹紅、この人は?」

「この人は、私達の上司で……」

「リンディ・ハラオウンと言います。出来ればお話を聞かせていただけませんか?」

「急な提案だな、少しは間と言うものを取ったらどうだ?……(『メアリー』どうする?)」

妹紅の上司の提案に少しだけ文句を言いながら、私はエターナルの『本来の名前』を呼び、意見を聞く……。

【幸夜、ここは彼らの言うことを聞いておきましょう。もし、何かあっても幸夜なら逃げ切れます。それに……】

 私は、自分の身体に起こった『異常』に混乱しているアリサと少年の方を見る……。

「(……そうだな)……リンディ・ハラオウンだったな?」

「はい、そうですが」

「そちらの言う通りにしよう。ただし、私達に危害を加えないと約束するのであればだがな……」

「約束します」

 リンディ・ハラオウンは私の言った条件を即答で了承した……ふむ、一応は信用できるか……。

「それじゃあクロノ達、彼らをアースラに案内してあげて」

「了解です。すぐに戻ります」

 クロノ・ハラオウンはリンディ・ハラオウンの言葉にそう返答し、私達はアースラと言う場所に案内されることになった。

 

~~~~~~~~~

 

~~~~~~~~~

 

 私達はクロノ・ハラオウンに連れられて、アースラ内にいた。

 ちなみに、なのは達はアリサに問い詰められている……まあ「これは一体どういうこと?!」と、アリサに聞かれた私が、「なのはに聞いてくれ、私もなのはに巻き込まれたんだからな……」と嘘を言ったせいだが……。

「なのは、さっきから何言ってるの?!」

「ちょ、ちょっとアリサちゃん落ちついて欲しいの?!目が、目が回る~」

「あ、アリサさん。落ちついて……」

「これが、落ちついていられるわけないでしょうが~!!」

 なのは、美鈴姉さん……アーメン。

【とても、賑やかですね】

「(ああ、そうだな)」

【面白いの~】

「(なら、貴様を愉快な蝋人形にしてやろう)」

【儂だけ毒舌?!】

 私はいつも通りのやり取りをしてから、辺りをきょろきょろと見渡している少年の方に近づく。

「初めまして、私は八雲幸夜だ」

「ぼ、僕は、野比のび太」

 私達は自己紹介をして、握手をする。

 すると、のび太は私が顔に付けているお面が気になるのか、視線をお面に集中させていた。

「気になるのか?」

「え、あの、その、ご、ごめんね!」

「別に良いさ、私自身こう言うのには慣れている……まあ、お面を付けているのは癖だと思ってくれ」

「癖?」

「ああ……」

 私の信じていた世界が奪われ、壊され、裏切られ……そして、私が忌むべき世界を生んでしまった時からの……。

「キミもそんな格好では窮屈だろう。バリアジャケットとデバイスは解除していい」

 周りを見ると、既になのは達は自分達の装備を解いており、あのフェレット……確か、ユーノだったか?……の正体が人間の男の子だと知ってパニックになっていた……今まで知らなかったのか?

「ああ、すまない」

 私はクロノ・ハラオウンに言われたとおり、バリアジャケットとデバイス『だけ』を解き、私服姿に戻るが……。

「………」

 無言の状態でニコニコと笑顔でいる鈴仙が、私に向かって掌を上に向けた状態で出していた……。

「何だ?」

「だ・し・て」

「……ハァ~、受け取りたまえ」

 やはり、昔の知り合いは甘くなかったな……私は服の至る所から、刀剣類、重火器類、ワイヤー類、毒薬や化学薬品を出す。

 そんな光景を見ていた、なのは、アリサ、のび太、ユーノの表情は驚いたまま固まっており、霊夢達は苦笑いを浮かべ、クロノ・ハラオウンは表情を険しいものへと変えるが、すぐに表情を元に戻す。

「では、こっちに来てくれ」

 私達はクロノ・ハラオウンに扉の前に連れて行かれ、扉が開かれた先には……『和』が存在した。

「お疲れ様。まぁお二人とも、どうぞどうぞ。楽にして」

 目の前には正座して、友好的な対応をしているリンディ・ハラオウンがいた。……この部屋は彼女の趣味か?

「どうぞ」

「あ、は、はい……」

 そこへ、クロノ・ハラオウンが手馴れた手付きで羊羹とお茶を出し、なのはは緊張したような声で受け取っていた。

「まずは自己紹介ね。私がこのアースラの艦長のリンディ・ハラオウンです。そこのクロノの母親になるわね。それと、妹紅さん達の『秘密』も知っています」

 妹紅達の秘密?それは、如何いうことだ?

「えっと、高町なのはって言います」

「ユーノ・スクライアです」

「博麗霊夢よ」

「霧雨魔理沙だぜ」

「十六夜咲夜よ」

「魂魄妖夢です」

「八雲美鈴です」

「アリサ・バニングスよ」

「の、野比のび太です」

「高町なのはさん、ユーノ・スクライア君、博麗霊夢さん、霧雨魔理沙さん、十六夜咲夜さん、魂魄妖夢、八雲美鈴さん、アリサ・バニングスさん、野比のび太君ですね」

 リンディ・ハラオウンがなのは達の名前を確認するように言った後、リンディ・ハラオウンは此方に顔を向けてきた。

「そして、あなたは?」

「妹紅達の『秘密』を知っていると言うことは、私の名前は知っていると思うが?」

「私は、あなたの自身の口から聞きたいです」

「ハァ~」

 笑顔のまま言ったリンディ・ハラオウンに対して私は息を吐き、お面を取り、素顔を晒す……まあ予想通り、なのは、ユーノ、アリサ、のび太、クロノ・ハラオウン、リンディ・ハラオウンは驚いているが……。

「八雲幸夜。先程、自己紹介をした美鈴姉さんの弟だ。あと、こういう顔だが、私は男だ。女と勘違いはするな……」

 自己紹介を終えると、なのは達はこれまでの経緯をリンディ・ハラオウンとクロノ・ハラオウンへと話し始めた。

 そして、経緯を聞いたリンディ・ハラオウンは少し息を吐いた。

「そうですか。……あの『ロストロギア』ジュエルシードを発掘したのはあなただったんですね」

「……はい。それで、僕が回収しようと……」

 リンディ・ハラオウンの言葉にユーノが申し訳なさそうに顔を伏せる。

「その考えは立派だわ」

「だけど、同時に無謀でもある」

 リンディ・ハラオウンは変わらない笑顔でユーノを賞賛するが、クロノ・ハラオウンは真剣な表情で腕を組み、厳しい口調でそう言い放った。

 そんなクロノ・ハラオウンの言葉を聞き、ユーノは僅かに悔しさを滲ませる。

 そんなユーノを横目で見つつ、なのはは話題を変えるために、リンディ・ハラオウンに話し掛けた。

「あの、ロストロギアって、何なんですか?」

「遺失世界の遺産。……って言ってもわからないわね」

 ロストロギア……遺失世界の遺産か……ほとんど直訳だな。

 説明によると、ロストロギアとは過去に何らかの要因で消失した世界。もしくは滅んだ古代文明で造られた遺産の総称であるらしいが……。ふむ、良くあるオーバーテクノロジーの産物の様なものか?と考えていると、クロノ・ハラオウンが口を開く。

「使用法は不明だが、使いようによっては世界どころか、次元空間さえ滅ぼすほどの力を持つことになる危険な技術……」

「然るべき手続きを持って、然るべき場所に保管されていないといけない代物。……あなたたちが探しているロストロギア、ジュエルシードは次元干渉型のエネルギー結晶体。いくつか集めて特定の方法で起動させれば、空間内に次元震を引き起こし、最悪の場合、次元断層さえ巻き起こす危険物……」

「君とあの黒衣の魔導師……金髪の少女がぶつかったときに起こった振動と爆発。あれが次元震だよ」

 あれがそうなのか……まあ、最悪の場合、私の暗黒天体でジュエルシードを破壊すればいいだろう。

 ふと、なのはの方を見ると、なのはは思考に没頭しており、そんな中リンディ・ハラオウンが話を締めくくる。

「……そんなことが起こらないために、私たち管理局がいるのよ。過ちは繰り返してはいけないの」

 リンディ・ハラオウンはそう言うと、少しお茶を飲み、なのは達に静かに告げる。

「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収については、時空管理局全権を持ちます」

「「え……?」」

 リンディ・ハラオウンの言葉になのはとユーノ、声には出してはいなかったが霊夢達唖然となる。

 そこに畳み掛けるように、クロノ・ハラオウンが静かに話す。

「君たちは今回のことは忘れて、それぞれの世界に戻って元通りに暮らすといい」

「でも、そんな……」

「次元干渉に関わる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの話じゃない」

 そう冷たく言い放つクロノ・ハラオウンではあるが、その言葉も一理ある。なのは、今まで魔法など知りもしなかった一般人……客観的に見れば、クロノ・ハラオウンが言った言葉は正解かもしれん……。

「まぁ、急に言われても気持ちの整理がつかないでしょう。今夜一晩ゆっくり考えて皆で話し合って、それからゆっくり話をしましょう?」

 リンディ・ハラオウンはなのはの心情を察したかのように言うが……。

「そう言うことですか、なら私達はジュエルシードの件から手を引きましょう」

「え?ど、どうしてですか、美鈴さん?」

 美鈴姉さんの言葉になのはとユーノは驚くが、霊夢達は納得したような表情だった。

「なら、私も帰るとs「ちょっと、待って下さい」……何故だ?」

「幸夜君から先程話したロストロギアの反応が確認されました」

「「え?」」

「………」

 リンディ・ハラオウンが真剣な表情で言い放った言葉に、なのは達は驚く……チッ、聖遺物に気が付いたのか……。

「あなた達が持つロストロギアを渡してくだs「断る」どうしてですか?」

「ならば逆に聞こう……貴様らは、私から家族を奪う気なんだな?」

「……それは、如何いうことですか?」

「プライミッツ、メアリー」

 私の呼びかけに応じ、プライミッツが私の服の中から外に飛び出し、メアリーは魂を『形成』し、姿を見せる。

 突然現れたメアリーに対して、なのは達は驚くが、前世から知っている霊夢達はそこまで驚かなかった。

「紹介しよう、貴様らがロストロギア扱いする物の名前は聖遺物……プライミッツとメアリーは聖遺物と私が持つ聖遺物に宿る魂だ。そして……のび太とアリサの身体に起こった不思議な現象の原因でもある」

 私はひどく大げさな動作をして、彼らに向かって言い放った。

 

~sideout~

 

~side三人称~

 

「え?こ、幸夜、如何いうこと?」

 幸夜が言った言葉にアリサは聞き返す、なにせ自分自身に起きた『異常』がリンディ達が先程まで言っていたロストロギアのせいだと言うのだから……。

「まずは、聖遺物について説明しよう……ちなみに、私が言っている聖遺物と良く一般に言う聖遺物は違うぞ。聖遺物は人間の思念を吸収することにより自らの意思を持ち、絶大な力を持つようになったアイテムの総称だ、そして聖遺物はとある魔術師が組み上げた複合魔術『永劫破壊(エイヴィヒカイト)』と呼ばれる理論が必要だ。そして、これが最も特徴的なものだが……聖遺物は『人を殺せば殺すほど強くなる』」

 幸夜の言葉に辺りの空気は凍った……。

「人を殺せば殺すほど強くなるってどういうこと?」

「ふむ、良い質問だ……聖遺物に組み込まれている永劫破壊(エイヴィヒカイト)は発動に人間の魂を必要とし、使うには常に人間を殺し続けねばならない。先程言ったが、殺せば殺すほど強くなっていき、殺した数に相当する霊的装甲を常に纏うようになる。」

「つまり、如何いうこと?」

 凍った空気の中、アリサが幸夜に質問し、幸夜の答えにアリサは分からず、首を傾げる。

「実際に体験してもらった方が良いか……」

 この言葉と同時に、幸夜はアリサとのび太の手首を握り壁に叩きつけると、ドンッ!と、壁が凹みアリサとのび太の手首は壁にめり込む……。

「あ、アリサちゃん?!」

 突然の事に、なのは達は立ちあがり、クロノはアリサとのび太を助けようと動くが……。

「う、嘘……」

「ど、どうして……」

「「痛みが全然ない……」」

 アリサとのび太の言葉にクロノは立ち止まり、アリサとのび太は自分達の異常に恐怖する……。

「それが、霊的装甲を纏うと言うことだ」

 幸夜はアリサとのび太の手首を放し、手首を放されたアリサとのび太はその場にへたり込む。

「で、でも私、人を殺したことなんてないわ」

「ぼ、僕もだよ」

「それは分かっている。だが、二人の聖遺物には何故か『莫大な魂』が宿っている。それが原因で、キミ達二人には強力な霊的装甲が纏われている……。まあ、雑な説明だったかも知れんが、ご理解出来て貰ったかな?」

「ええ、分かりました」

「だが、尚更、その聖遺物と言う物は管理局が管理する」

 リンディは頷き、クロノは真剣な表情で言う。

「暴走する危険があるからか?なら安心しろ、聖遺物はあまり暴走などしない……。まあ、使用者の暴走はあるが、私は二人が暴走を起こしたとしても、二人よりもレベルが上なのでね……簡単に抑え込める。それでも、管理すると言うのかね?」

「『正義』の為に管理するんだ!」

「正義の為?……クク……アハハハハハハハハ!!!!!……正義?正義だと?……くだらん」

「何がくだらないんだ?!」

 クロノの言葉に、幸夜は爆笑するが、その笑いも一瞬で終わり、幸夜の言葉にクロノの表情は怒りに満ちていた。

「それに、キミの様な『質量兵器』を大量に所持した人物には任せてはおけない!!」

「なら私は、自分達がまるで『正義』だと言っている『組織』には任せておけん!と、言っておこう、それに組織の名も気に入らん、『管理局』だと?自分達が全世界を『管理』しているつもりか?」

 幸夜の言葉にクロノはさらに怒りを出す……。

「フフフ、私は何か間違ったことを言っているか?なのはの心を利用して自分達に協力させようとしているリンディ・ハラオウン?」

「母さんの侮辱は許さないぞ!!」

「侮辱?私は事実を言っているだけだ……クロノ・ハラオウン貴様は言ったな?『君たちは今回のことは忘れて、それぞれの世界に戻って元通りに暮らすといい』、『次元干渉に関わる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの話じゃない』と」

「言ったが……それがどうした?」

「なら何故、今夜一晩ゆっくり考えて皆で話し合って、それからゆっくり話をする必要がある?」

「そ、それは……」

「話し合う必要など無いだろう?民間人に介入してもらう必要など無いのだからな……」

「だ、だが、キミが『質量兵器』を持っていた事実は違いないだろ?!」

「ああそうだが……そもそも此処は『管理外』の世界なんだろ?なら、貴様らの法律は此処では通じない……まあ、ここでも兵器を所持したら行けない法律があるが……生憎、私は『世界公認』なのでね。兵器の所持が認められている。それで如何する『自称正義の組織の狗』……此処で私を逮捕するか?」

 クロノは幸夜に近づき、幸夜に掴みかかり……

「僕と勝負しろ!」

「正義様お得意の決闘か?」

「僕が勝ったら、僕達の言うことを聞いてもらう!」

「私が勝ったら?」

「キミ達のロストロギアの所持に目を瞑る……」

「ヒュ~♪」

「クロノ?!」

 クロノの条件に幸夜は口笛を吹き、リンディは声を上げるが……。

「母さんは黙ってて!これは……」

 クロノは一度、言葉を切り……。

「僕の戦いなんだ」

 その瞳に『意志』を宿らせ、リンディに言い放った。

「……クロノ・ハラオウン、先程の非礼を詫びよう」

 クロノの言葉を、目を、見聞きした幸夜は頭を深々と下げクロノに対して謝罪し、突然の事にクロノは驚く。

「キミはどうやら、まだ、『狗』では無かったらしい……その戦いを受けよう。クロノ・ハラオウン……『半人前の正義の味方』よ、この『人外最悪』がお相手しよう」

 幸夜はもう一度、深々と頭を下げた。

 ここに、『正義』と『悪』の戦いが始まろうとしていた……。

 



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第15話~幸夜vsクロノ~

 

 クロノ・ハラオウンとの模擬戦を承諾した私は、アースラ内の訓練所に来ていた。

 他の皆は訓練所の内部を見ることが出来る、モニタールームにいる。

[二人とも準備は良いかしら?]

「ああ」

「はい」

 モニタールームのマイクから話しているのだろう、リンディ・ハラオウンの声が聞こえ、私達は返事をする。

[それで幸夜君、本当に良いのかしら?]

「良いと言っている。さっきの条件でクロノ・ハラオウンと模擬戦をする。言っておくが、貴様を舐めているつもりはないぞ……」

「ああ」

 私は、この模擬戦が始まる前にある条件をリンディ・ハラオウンに言った。……その条件とは、私は武器、デバイスを使用せず、自身の肉体とスペルカード一枚だけを使用して模擬戦を行うという条件だ。

 なのは達には反対されたが、此処までしないとクロノ・ハラオウンとの勝負が一方的な勝負になってしまう……。まあ、今の条件でも一方的になるかもしれんが……。

[では、始め!]

 リンディ・ハラオウンから開始の合図と共にクロノ・ハラオウンはデバイスを構え、私は片足を上げその側の手を腿につけ、反対の手を顔の前に持っていく構え方……『古式ムエタイ』の『ムエ・マーヤン』の構えを取る。

「来ないのか?」

「では、遠慮なく行かしてもらおうか?」

「ッ?!ラウンドシールド!」

 言葉と同時に私は片足で地面を蹴り、クロノ・ハラオウンに向かって飛び膝蹴りを放ち、クロノ・ハラオウンはシールドで防ぐが、威力を相殺できなかったのか、後ずさる……。

 私はそのままクロノ・ハラオウンとの距離を詰め、前蹴り、回し蹴り、顔と腹に向かって両突きを放つが、全てを防がれる……。ふむ、近接戦闘をこなし、この程度のスピードの攻撃はある程度は防げるのか……。

「今度はこっちからだ!」

 クロノ・ハラオウンは多数の魔力弾を放ち、私は全ての魔力弾を脚による連打(ラッシュ)で破壊する。

「スティンガーレイ!」

 先程の魔力弾とは違い、高速の魔力弾が此方に向かってくるが、私は壁を蹴り、上に跳ぶことで魔力弾を避ける。

「空中じゃあ、避けられないだろう?」

 クロノ・ハラオウンは、空中で身動きが取れない私に対して魔力弾を放つ。

「甘いぞ、フンッ!」

「なっ?!」

 私は近くに迫っていた天井に向かって、ある程度の力で蹴り放ち、天井に脚をめり込ませることで、ある程度動けるようにし、魔力弾を右腕で掻き消す。

 さて、『動』を全面的に出すか……。

「クロノ・ハラオウン……少し荒れるが、頑張ってくれ」

「何を言っt「ガァッ!!」グッ?!」

 私は唯のパンチをクロノ・ハラオウンに放ち、私の拳を喰らったクロノ・ハラオウンは数メートル吹き飛ぶが、すぐに体勢を立て直す。

「グルルル……」

 私は先程の構えとは違い、獣の様に四肢を地に付ける構えを取り、クロノ・ハラオウン目掛けて獣のように走る。

「スティンガースナイプ!」

 先程と同じ魔力弾が私に向かって放たれ、私は『本能』的に避けるが、避けた魔力弾は追尾型だったのか、魔力弾は私に迫っていた。

「スナイプショット!」

 クロノ・ハラオウンの言葉が合図だったのか、追尾型の魔力弾はさらに速度を上げ、私に迫ってきた。

「グルァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

 私も走る速度を上げ、クロノ・ハラオウンに向かって行くが、目の前に追尾型とは違う魔力弾が放たれ、私は二つの魔力弾に挟まれた状態になるが……。

「グルガァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」

「なっ?!」

 目の前に来る魔力弾を避けず、魔力弾が私に直撃するが、そのままクロノ・ハラオウンに跳びかかり、私の『牙』をクロノ・ハラオウンの首筋に立てる。

「で、貴様はどうする?」

「……僕の負けで良い」

 クロノ・ハラオウンは手を上げ、降参のポーズをした。

[二人とも、戻って来て下さい]

 私達はリンディ・ハラオウンに言われたとおり、訓練所から出て、皆がいる場所に移動する。ああ、クロノ・ハラオウンにこれは言っておくか……。

「クロノ・ハラオウン」

「何だ?」

「私は『組織の正義』は嫌いだが、『個人の正義』は好きだし尊敬できる。だから、キミのような人間は好きだし尊敬も出来る」

「きゅ、急に何を言うんだ……」

 私の言葉にクロノ・ハラオウンは混乱しているのか、あたふたとし始める……。クク、こいつは座薬と同じでイジりがいがあるな……。

「これからよろしく……クロノ」

「こちらこそよろしく……幸夜」

 私達は互いの名前を呼んでから、握手をした。

 

~~~~~~

 

クロノとの模擬戦を終えた後、私達は皆がいる場所に戻ってきたが……。

「クゥ~ン、クゥ~ン♪」

「アハハ、くすぐったいよプライミッツ」

 何故、ユーノはプライミッツに顔を舐められているのだろうか?

 すると、私が戻ってきた事に気が付いたプライミッツはユーノから離れ、私の服の中に入り……。

「(幸夜、幸夜、ユーノにユーノに可愛いって、可愛いって言われたよ////)」

「(そうか、よかったな)」

 念話で私に嬉しそう伝えてきたプライミッツの頭を撫で、私はリンディ・ハラオウンの方を向く。

「リンディ・ハラオウン、約束の件だが……」

「……分かりました。私達は貴方達が所持しているロストロギアには関与しません」

「感謝する。……だが、流石に勝負に勝っただけで見逃してもらうと言うのは私としては、申し訳ないのでね……。等価交換として、私が彼女達と合流するまでの間は協力してやろう」

 私の言葉にリンディ・ハラオウンは訝しげな表情で私を見てくるが……。

「……分かりました。ご協力お願いします」

 私はリンディ・ハラオウンと握手を交わすと、姉さんが念話で話しかけてきた。

「(幸夜、一体どういう風の吹きまわしですか?あなたが、こんな組織の協力をするなんて……)」

「(なに、彼らを利用しようとしているだけだよ)」

「(利用ですか?)」

「(彼らは『管理局』と名乗ってるんだ、それなりの情報を持っているはずだよ)」

「(情報ですか?……それで、幸夜は何が欲しいんですか?)」

「(……今回の黒幕の情報)」

「(今回の黒幕ですか?)」

「(姉さんにだけ言うけど、今回の騒動はフェイトの母親が関与している。だけど……)」

「(そのフェイトさんの母親を裏で操る本当の黒幕がいると、幸夜は言いたいのですね?)」

「(……良くわかったね)」

 そう念話で伝えると、姉さんは頬笑みながら……

「(お姉ちゃんの『勘』ですよ)」

「(……本当によく当たる『勘』だね)」

 姉さんの言葉に私は苦笑いを浮かべる。そして、姉さんがなのは達の方を向き、しばらく無言で見つめ合っていたが、リンディ・ハラオウンの方にいつの間にか近づいており、一度なのは達の方を向いて頬笑み、リンディ・ハラオウンの方を向き……。

「リンディさん、私達もあなた達に協力しましょう。これは私となのはさん達の総意です」

「あ、ありがt「ですが、条件があります」じょ、条件ですか?」

 姉さんは指を二本立てた状態をリンディさんに見せる

「条件は二つです。一つ目は、私達の行動に対して拘束はせず、私達の行動は私達の意思を尊重すること。これは、私達は協力するとは言いましたが、貴方達に所属するわけではないからです。二つ目ですが、この協力関係の間、この事件に関係する貴方達の組織がもつ情報を公開することです。これは、私達の安全を確保するためです。これを守っていただけるなら、協力します」

「はい、ご協力お願いします」

 姉さんの条件にリンディ・ハラオウンは暫く考えこむが、彼女達にとってなのは達の能力や現地人がいた方が良いと判断したのだろう、リンディ・ハラオウンは姉さんと握手を交わした。

「あ、一つ言い忘れてました」

「何でしょうか?」

 姉さんはリンディ・ハラオウンと握手を交わしながら、ふと思い出したかのように言い……。

「もしも、もしもですよ?約束を破りましたら……」

「ッ!」

 此方からも分るほど、姉さんは握っている手の力を強めており、リンディ・ハラオウンは苦痛に表情を歪める。

 そして……。

「塵一つ残しませんので」

 姉さんは某吸血鬼や某神父の様な笑みを浮かべながら言う……とりあえず姉さん、その笑顔を止めてくれ、なのは達の表情が引き攣ってるし、恐怖で身体が震えてる。あと、姉さんは私と同じで握力が強いんだから、もう少し力を抑えて……さすがに、リンディ・ハラオウンの手が潰れて、血飛沫が噴くシーンなんて誰も望んでないからね?

 



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第16話~会話~

今回は幸夜君の『異常』の一部が現れます


 リンディさんと約束を交わした後、のび太とクロノ以外の私達は高町家に向かっていた。

 うん?自分でも気づかない内にリンディ・ハラオウンの呼び方が変わっていたが……まあ、くだらないな……気にする必要はないか……。

 ちなみに、高町家に向かうのは、なのはが今後動きやすいようにする為だ。

 さて、そんなこんなで高町家に着いたんだが……。

「……グスッ、幸夜ぁ、大丈夫だった?」

「怪我はないかい?誰かに傷つけられてないかい?」

「幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜幸夜……」

「ご飯は食べてたの?しっかりと寝てた?おトイレはちゃんと行けた?」

 ……ドウシテココニイヤガルンデスカ?あと、いい大人達が泣きながら子供に抱きついてるんですか?抱きつかれて苦しいどすが?それと父さん、人の名前を連呼しないで何故か知らないけど怖いんですが?

【幸夜、言語が色々と混乱してますよ】

【かかかっ、最高じゃな】

 メアリー、人の思考をあまり読まないでくれ。ムルムル……後で、オボエテイロヨ……。

【お、お前さん、何故か嫌な予感がするんじゃが……】

 ムルムルの発言は無視をするとして、とりあえず私に抱きついている父さん達を剥がす。

「おじいちゃん、私は大丈夫。おばあちゃん、私には傷一つ付いてないだろ?父さん、怖い。母さん、ちゃんとご飯は食べたし、睡眠もしてたし、排泄もしてたさ」

 私の言葉を聞いて一人だけ……まあ、父さんの事なんだけど……を除いて安堵の表情を浮かべて、父さんは父さんで「幸夜に怖いって言われた……」と、絶望したような表情でブツブツ言ってる。

 ふと、横を見ているとなのはが士郎さん達に叱られていて、アリサは父親であるデビットさんと母親であるヘスティアさんに抱きしめられてた。

 こう言う光景を見てると微笑ましく感じるが、ここでリンディさん達にとっての爆弾発言をするか……。

「父さん達……私達は魔法にかかわることになった」

「「幸夜君?!」」

「幸夜?!」

 なのは、リンディさん、アリサが私の想像していた通りの反応を示すが、私の魔法と言う単語を聞いた士郎さん達はどこか遠い目をして……。

「「「「「「魔法か~」」」」」」

「え、あの、魔法をご存じで?」

 同じようなタイミングで士郎さん達が言葉を発し、それを聞いたなのはとアリサが面白い表情で反応している中、リンディさんが士郎さん達に尋ねると……。

「「ソウルに巻き込まれて」」

「「紫に巻き込まれて」」

「「美鈴に巻き込まれて」」

 ……おい、この返答は流石の私でも予想してなかったぞ。あれか?私達は高町家とバニングス家を魔法関係に巻き込む呪いでもあるのか?

「とりあえずリンディさん、魔法の事を包み隠さずに高町家に説明して下さい。私はアリサの事をバニングス家に説明しておきます」

 リンディさんに伝えた後、私はバニングス家の方に向かった。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 私はアリサに説明するかどうかを聞きアリサが承諾したので、デビットさんとヘスティアさんにアリサの中にある聖遺物を説明すると……。

「やはりか……」

 デビットさんとヘスティアさんの反応はまるで、こうなる事が『分かっていた』かのような反応だった。

「やっぱりって、どういうこと?」

 アリサの表情は困惑していた……。当然だ、自分に起こっている事を両親は予測していたような口ぶりだからな。

「……アリサの中にある聖遺物は元々、私が契約していた聖遺物なの」

 ヘスティアさんはしゃがみ込んで、アリサを抱きしめながら言う。

 ……待て、今ヘスティアさんは何と言った?『元々は私が契約していた聖遺物』だと?……ちょっと、待ってくれ。確かに一つの聖遺物に複数の人間が契約していた事例はあるが、ヘスティアさんは『元々は』と言った。と、言う事は、彼女はもう聖遺物と契約していないと言う事だ。

「少し待って下さい。ヘスティアさんが言っている事はほぼ不可能では?」

 聖遺物と契約したら、基本的には聖遺物と同化し、霊的に強い繋がりを持つことになる。だから、聖遺物を元の持ち主から強奪するのは極めて困難であり、奪い方としては、一度相手に殺され魂を吸収された後、相手の内側から体と聖遺物を乗っ取るという荒業のみぐらいだ……。

 だが、この荒技には相手の支配を振り切る強靭な魂が必要で、いくら魂が強くても、奪う相手と聖遺物との結びつきが強い場合は奪う事が出来ず、成功する確率は極めて低い。

「ええ、幸夜君が言う通り不可能に近いわ。だけど、それを出来る可能性がある人物が一人はいるでしょ?」

 ヘスティアさんの言葉に私はある人物に……てか、身内に思い当たる……。

「まさか、母さんが?」

「そうよ。紫の『境界を操る程度の能力』で私と聖遺物の契約を弄くってもらったのよ」

 ……こういう話を聞くと、母さんがどれだけチートなのか分かるよな。流石『全ての事象を根底から覆す能力』って比喩されるほどはあるな……。

「ヘスティアさんがどうやって聖遺物との契約を破棄したのかが分かりました。ですが、どうしてヘスティアさんはアリサに聖遺物との契約をさせたのですか?」

 それは、私とアリサの疑問だった。

 元、聖遺物の使徒だったヘスティアさんだったら知っていた筈だ、聖遺物の燃料が『殺した人の魂』だと言う事を……。

「……私がアリサに契約させたのは、アリサを……自分の娘を『また』失いたくなかったのよ」

「ま、ママ、『また』ってどういう事?それに、失いたくなかったって……」

「……アリサ、私がこれから話す事は全部真実よ。嘘偽りはないわ……アリサにとっては辛い話かもしれないわ……だけど、聞いてくれる?」

「……うん」

 混乱するアリサをヘスティアさんは強く抱きしめ、その瞳で真っ直ぐアリサを見つめながら言う。私はその場から離れようとするが、デビットさんに止められ、私もヘスティアさんの話を聞く。

「アリサ、あなたにはお姉ちゃんがいたの……」

 ヘスティアさんの言葉は衝撃的な言葉だった。私がデビットさんの方を向くと、デビットさんは無言で頷いた。

「貴女のお姉ちゃんの名前はアリス、アリス・バニングス。生きていたら美鈴ちゃんと美由希ちゃんと同じ年齢だったわ」

 生きていたら……この言葉で考えられる事は……。

「アリスは10歳の頃に……」

 ヘスティアさんはそれ以上言わなかった。いや、思い出すこと自体が辛くて喋れないのかもしれない。だが、この話ではアリサと聖遺物と契約させた理由が解らない。

「ママ、急な話だったけど、私にお姉ちゃんがいた事は解ったわ。で、でも、私と聖遺物の契約をさせた理由が解らないわ……どうして、契約させたの?」

「アリサ、あなたは、あなたは……」

 ヘスティアさんは、アリサから目を逸らし、口を閉ざしたが、決心したのか視線をアリサに戻し、先程の事実よりももっと衝撃的な事を口にする。

「アリサ、あなたは5歳の頃に瀕死の状態になったの」

「……え?」

「わ、私は、アリサをアリスの時のように失いたくなかったの……自分の、自分勝手な理由かもしれない……だけど、だけど!私は失いたくなかった!もう二度と、自分の愛おしい我が子を失いたくなかった!だから、アリサと聖遺物の契約をさせたの……あなたを失いたくなかったから……。アリサ、ごめんなさい。ごめんなさい……。」

 ヘスティアさんは泣き崩れ、デビットさんは唇を噛み、悔しそうな表情をしている。二人は自分のしてしまったことに、自分達の弱さに、自分の娘を人から人外に変えてしまった事が悔しいのだろう。

 そんな中、アリサは泣き崩れたヘスティアさんを抱きしめ……。

「ママ、パパ、ありがとう!」

 笑顔で、一言で、彼女の気持ちをデビットさんとスティアさんへと伝えた。

「ア、アリサ、私達を怨まない?」

 ヘスティアさんとデビットさんは驚いていた。アリサに怨まれると、アリサを人外へと変えた自分達を憎むと思っていた二人にとって、アリサの言葉は衝撃的だったのだろう。

「怨む?だって、ママ達は私のことを思ってやってくれたんでしょ?なら、怨まないわよ。まあ、最初は聖遺物だとか、自分の身体能力の変化とかで混乱してたけど……。だけど、もう一度言わせてね。私を愛してくれてありがとう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ、ママ、大好き!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 デビットさんとヘスティアさんはアリサを抱きしめ、泣いていた。泣いて泣いて泣いていた。普段なら、いい大人が思っているが……この考えがくだらない。それ位、二人が流している涙は美しかった。アリサを想う心が美しかった。アリサの想いが美しかった。

 偶にはこんな結末も……。

「悪くない」

 私はこの状況を見て、久々に嬉しくなった。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

「グスッ、ご、ごめんなさい幸夜君」

「すまないね、こんな所を見せてしまって」

 暫くして、二人は泣き止んでいた。

「いえいえ。それで、お二人に言いたい事があります」

「何かな?」

 私は、デビットさんとヘスティアさんの前で正座し……

「アリサのことは、娘さんのことは私に任せて下さい」

 私が言葉を発した瞬間、辺りの空気が凍った。うん?何かおかしなこと言ったか、私?

「こ、幸夜。そ、それって//////」

「あ、アリサはやらんぞ!!」

 アリサが頬を染め、デビットさんが叫ぶ……。急にどうしたんだ?

「あの、何を勘違いしているのか分かりませんが、私はアリサの聖遺物の操作について任せて下さいというつもりで言ったのですが?」

「あ、そっちね。ハァ~、良かった~」

 ヘスティアさんも安心したかのように、息を吐く。それ以外に何があると言うんだ?

「でも、私の聖遺物はママと同じように紫さんになんとかして貰えば……」

「それは危険だ」

「どうして?」

「聖遺物には四つの位階……まあ、ゲームとかで言うレベルだと思ってくれればいい。四つのレベルがあるんだが、アリサの場合、まだレベル1にすら達していない。最低、レベル2までは達してないと聖遺物が暴走して、最悪の結末を引き起こす」

 私の言葉にアリサは頷く。

「だから、アリサよりレベルが上の私がアリサに聖遺物の制御方法を教え、最低でもレベル2に上げるつもりだ」

「分かったわ。でも、幸夜は私より上って言ったけど、どれ位なの?」

「……それは内緒だ」

 流石に、『流出位階』に達してるとは言えないな……。

「だから、デビットさん、ヘスティアさん、アリサの事を私に任せてくれませんか?」

「それは、私達のセリフよ。幸夜君、あなたには迷惑を掛けるかもしれないけれど、アリサの事をよろしく頼むわ」

「幸夜、私からもお願い。私に聖遺物の制御の仕方を教えて」

 私は二人の言葉に頷いた。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 バニングス家との話し合いが終わり、なのは達の所に戻ると、あっちも話し合いが終わったらしい。

 なのはの喜んでいる様子から、話し合いは成功したようだな。

 私はリンディさんの所に向かい、バニングス家との話し合いを終えたことを伝えた。

「では、なのはさん達の事は任せて下さい」

「はい、お願いします」

 リンディさんと桃子さんが言葉を交わしている中、士郎さんが私に近づいてきていた。

「幸夜君、勝手かもしれないけど、なのはのこと頼むよ」

「はい、命に変えても守りますよ」

 すると、士郎さんは顔を顰めていた。何故だ?

「幸夜君、気持ちは嬉しいけど『命に変えても』なんて言っちゃ駄目だ。命は大切なんだから」

「何を言ってるんですか、士郎さん?」

 アハハ、士郎さんは面白い事言うんですね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の『命の価値』なんて、これ位しかないでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 直後、士郎さん達の眼は見開かれていた……。そんなにも驚く事はないと思うんだが?

「じゃあ、母さん。先に帰ってるね」

 私はその場で『スキマ』を開き、久々の我が家に向かった。

 



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第17話~空き地~

 

 高町家の一件から翌日、私と妹紅とリンディさんはのび太の家族に説明をする為に、のび太の家に向かっていた。

 他のメンバーはと言うとアースラで待機だ。それで、何故このメンバーなのかと言うと、私は聖遺物についての説明でき、リンディさんは妹紅達の上司で、妹紅は消去法で決まった。

 どのような消去法かというと、まずは管理局に属しているかどうかだ。この時点で、クロノ、鈴仙、輝夜、妹紅、エイミィしか残らず、さらに消去法で、クロノは戦闘員、エイミィはオペレーターとして削除し、鈴仙、輝夜、妹紅が残った。そこで、三人について考えると……鈴仙の場合、私が鈴仙をイジる。イジって、イジって、イジりまくって、結果に支障をきたすかもしれん……うん?なら鈴仙をイジるのを止めればいいって?それは無理だ、私は鈴仙をイジることを強いられているんだ!……まあ、そんな理由はくだらないか。そして、輝夜だが……まあ、アイツはあれだ。うん。

 それで、最終的に妹紅となったのだが……。

「妹紅?」

「何だ、幸夜?」

「ちょっと、離れてくれないか。少し歩きづらい……」

「い・や・だ」

 私は妹紅と腕を絡めながら歩いていた……。そして、妹紅に離れてくれるように頼むが、拒否されると言う現象……私が何をした?そして、リンディさん微笑むな、何とかしろ。

「……昨日、私が帰った後に母さん達に何か言われたのか。リンディさん、妹紅?」

「言われたけど、これは私がやりたくてやってるんだ」

「フフフ、内緒よ」

「………」

 母さん達、アトデオボエテクダサイマセヨ……。

「それにしても、幸夜君の髪は不思議な色ね」

 まるで、話を逸らすかのようにリンディさんが言ってきた……。

「ああ、私は劣性遺伝子持ちだからな」

「劣性遺伝子?」

「ああ、だから私の髪がこんな色なのは、染色体の数がおかしいからだし、虹彩異色(オッドアイ)なのも、生物として必要なある程度の感情や欲求が『欠落』してるのも、その他諸々も、それが原因だ」

「その、ごめんなさい……」

 私の説明を聞いたリンディさんが申し訳なさそうに謝ってきたが……。

「別に良いですよ。それに私の場合は、五感などが鋭くなってるから、まあ、プラマイ0ですから……。それに、そう言うのは私だけじゃなく、私の家族の殆どが言えますからね」

「幸夜、それってどういう事だ?」

「おじいちゃんの場合、身長が伸びない、120cm以下のまま。父さんの場合、出血した時血が固まらない、姉さんの場合、自分の体温を感じることが出来ない。その代わり、それぞれが突出した才能を持っているんだよ、妹紅」

「あ、だから美鈴さんは真冬なのにすっぽんぽんでいたり、凍った川を全裸でゆったりとした動きで泳いでも平気そうな顔をしてたんだな」

 と、妹紅は納得したかのように言った。……よく考えると姉さん、前世はどんだけ無茶な事をしていたんだ?そう言えば、全裸で冷えた姉さんの体を刻義兄さんはよく温めてたな……方法はこの場では言えないようなことでだが……。と、考えながら横を見てみると、リンディさんが考え事をしているのか、難しそうな表情を浮かべていた。

「……どうしたんですか、リンディさん?」

「え、あ、な、何でもないわ。それよりも、幸夜君は前世では奥さんがいたのよね?」

「ええ、いましたよ」

 すると、私の言葉にリンディさんは急にテンションが上がったのか……。

「前世の奥さんは、霊夢さん、魔理沙さん、咲夜さん、妖夢さん、鈴仙さん、輝夜さん、妹紅さんかしら?!」

 ……テンション上がり過ぎだろ。

「……霊夢さんですよ」

「あら意外、そうやって手を絡めてるから妹紅さんかと思ってたわ」

 なら、言うな。あんたのせいで、私の腕が現在進行形でギリギリと謎の音を鳴らしてるんだぞ……。

「ふ~ん、なら幸夜君は、霊夢さんと付き合ってるのかしら?」

「いいえ、付き合ってませんよ」

 それには妹紅も驚いたらしい、腕から鳴っていた音が消えた……。

「あら、付き合わないの?」

「付き合うもなにも、彼女が今でも私を好きでいてくれているとは限らない。それに、今は今、昔は昔ですよ。もし、彼女が他の男を好きになったのなら、私は応援しますよ」

「なら、彼女が幸夜君のことを好きでいたら、幸夜君は霊夢さんと付き合うのかしら?」

「さあ?案外、私の心も変わってるかもしれませんよ」

「……なら、私にもまだチャンスがあるのかな?」

 私とリンディさんとの会話を聞いていた妹紅は、ボソッと誰にも聞こえないであろう声量で言うが、彼女は忘れていないだろうか?私は常人より五感が鋭い事に……。

「ああ、あるかもしれんな」

「なっ?!き、聞こえてたのか?///////」

 妹紅は顔をみるみる赤くしていき、リンディさんはニヤニヤしている……おい、誰かこのニヤニヤしてる奴を止めてくれ

「それにだ、今言うのは可笑しいかもしれんが、私が霊夢さんと出会ってなかったら、私は妹紅に惚れていたと思うぞ」

「ふぇ?!///////」

「よ、良くそんな事を真顔で言えるわね。恥ずかしくないの?」

 妹紅は赤かった顔をさらに赤くし、リンディさんは呆れた表情で此方を見てくる……まあ、偶には恥ずかしくなるが、私は『欠落製品』だ。ある程度の恥ずかしさなど、最初から『欠落』してるのさ……。

「まあ、その話は置いておいて……リンディさん、のび太の家が分かりますか?」

「ええ、このまま真っ直ぐ行けば、のび太君の家に着くはずよ」

「そうですか……うん?」

 私はリンディさんと会話をしながら、ふと、通り過ぎようとした空き地の方を見ると、私達と同年齢位の人間が複数人で何かを取り囲んでおり、その取り囲まれている物を良く見ると……。

「のび太?」

 服がボロボロになったのび太がいた……。

 

~sideout~

 

~sideのび太~

 

「のび太、何で今日の野球に参加しなかったんだ!!」

「そうだ、そうだ!!」

 僕は友達である『ジャイアン』と『スネ夫』に理不尽な怒りをぶつけられ、近くにいる『しずかちゃん』と『出来杉』は助けてくれない……。

 普段なら試合には行っていたかもしれない……。だけど、昨日から僕の身体能力は『異常』になった。

 いつもの僕なら、この身体能力に喜んでいたと思う……。だけど、この身体能力は異常過ぎたんだ……。どんなに攻撃されても痛みを感じない……。その証拠に、さっきからジャイアンに殴られても痛くも痒くもない……。だから、僕は『喜び』よりも『恐怖』をおぼえた。

「の~び~太~、さっきから無視とはいい度胸じゃねえか!!」

「のび太のくせに生意気だぞ!!」

 まあ、だけど、この痛みを感じないのは良いのかもしれない。だって、今まさに振り下ろされようとしているジャイアンが持つ木製バットで、痛みを感じる事が無いのだから……。

 けど、ジャイアンの木製バットが僕に届くことはなかった。

 何故なら……

「貴様らは、一体何をしている?」

 昨日会ったばかりだけど、ぼくと友達になってくれた狐面を被った幸夜が、ジャイアンの持つ木製バットを止めていたからだ……。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

「貴様らは、一体何をしている?」

 本当にこいつらは何をしてるんだ、人に木製バットを振り下ろそうとするとは……まあ、聖遺物の使徒であるのび太には痛くも痒くもないと思うが……正気を疑う。

「な、何だよお前は!?それよりもバットを放しやがれ!!」

 この中で一番体格が良い少年が、木製バットを放せと叫び始める。この少年、所謂ガキ大将と言う奴か?

「私か?私はのび太の友人だ。そして、バットは放さん」

 私は逆にバットを強く握りしめ……。

「ば、バットが折れた?!」

「折れたぐらいで驚くな……フンッ!」

「ブゲッ?!」

「じゃ、ジャイアン?!」

 持っていたバットを圧し折った後、グーで1割2割ぐらいの力で少年を殴り、殴られた少年は変な声を上げ、地面に膝をつく。

 ちなみに、平手打ちではなくグーで殴った理由は、平手で殴った場合、少年の体の肉が抉れていたかもしれない……。いや、確実に抉れていたな……。

「さて、文句がありそうだな。そこの少年」

 私がガキ大将君を殴った事が気に入らなかったのか、頭が良さそうな少年が此方を睨んでいた……。

「文句もなにも、どうして武(たけし)君を殴ったんだい?!キミに武君を殴る理由なんてないだろう!!」

 少年は激昂した。今現在、自分の抱いている怒りを全て吐き出すかのように言った……。ふむ、理由か……。理由ならあるんだがな……。

「のび太が私の友人だからだ」

「それだけかい?」

「それだけかい?とは、随分な言い方だな?むしろ、それ以外の理由がいるか?」

「キミの言っている事は理不尽だ。キミは理不尽な理由で武君を殴ったんだ!!」

「ふん、くだらんな。理不尽な理由だと?それなら、のび太は何故、服がボロボロなんだ?何故、木製バットで殴られかけていたんだ?何故、貴様らは助けようとはしなかったんだ?それこそ、私も納得できるような理由だろうな?」

「そ、それは……」

 先程まで激昂していた少年が、黙り込む……。

「ふん、その様子から見るに、貴様の言葉で言うなら、のび太は理不尽な理由で暴力を受けていたらしいな」

 黙り込む少年を無視して、私は茫然としていたのび太に近づき立ち上がらせる。

「のび太、キミの家まで道案内してくれないか?」

「う、うん」

 私達は空き地から離れ、のび太の案内で家の方に向かって行った。

 



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第18話~ネコ型ロボット登場~

更新遅れてすみません!!

では、第18話をどうぞ!


 私達は空き地でのび太と遭遇した後、そのままのび太の案内で野比家に到着したのだが……

「の、のび太君?!一体どうしてそんなに服がボロボロなんだい?!」

「あはは、ちょっと裏山で転んじゃって」

「もう、しっかりしてよね!」

「ごめんね、ドラえもん」

 私達は目の前の光景に言葉を失っていた。何故なら……。

「(こ、幸夜、私達の目の前で青いタヌキが喋ってるぞ?!)」

「(あれは、タヌキと言うよりはロボットだろ?いや、それよりも完全にあれはオーバーテクノロジーの塊だろ……)」

 私達が驚いた理由……それは、タヌキか何か分からんが、青色のロボットがのび太と会話していたからだ……。すると、のび太との会話が終わって、後ろにいた私達に気づいたのか、此方に視線を向けてきた。

「のび太君、この人達は?」

「え~と、この人達は昨日知り合った人たちで……」

「八雲幸夜」

「藤原妹紅だ」

「初めまして、私はリンディ・ハラオウンと言います」

「初めまして、ぼくドラえもんです。22世紀から来た猫型ロボットです」

 表情では出さなかったが、内心ドラえもんの言葉に驚いていた……

「(幸夜……さっきの言葉)」

「(ああ、……あれでネコ型ロボットだと?)」

「(そこじゃないだろ?!注目すべき場所は別にあるだろ?!)」

「(22世紀と言うところか?そんなこと、心底どうでもいい!!私にとっての問題は、あれが猫型と言う所だ!!)」

「(ちょっと落ち着けよ!この『超過剰動物愛者』!!)」

 落ちつけ、落ちつけだと?!猫型だぞ!アイツは猫型と言ったんだ!!猫型なのに何故耳が無い?鈴は……うん、あるようだな。だが、駄目だ。耳が無いのが駄目だ!うさ耳が無い鈴仙と同じで駄目だ!そう言えば、どうして鈴仙はうさ耳を付けてないんだ?正直に言うと、前世の鈴仙のスタイルでうさ耳、絶対領域だったら、ど真ん中のストレート三振バッターアウト!!って感じだったのだが……うん?今私の性癖を一気に暴露したような気がするが……まあ、良いか。

 まあ、私が言いたいのは……。

「(私はウサギより犬!犬より猫だ!)」

「(意味わかんねぇーよ!それより幸夜、下を見てみろ……)」

「(下?ふん、下に一体何が……)」

 そこには牙剥き出しで、私を睨んでプライミッツさんがいた……。

「(……幸夜?)」

 念話でプライミッツさんの声が聞こえる……。

「(……はい)」

「(僕の耳が可笑しくなったのかな?犬より猫って聞こえたんだけど?)」

 プライミッツ様の睨みが鋭くなる……。

「(いや、私はねk「(噛み千切るよ?)」ハイ、イヌハデゴザイマス)」

 だが、私の言葉が駄目だったのか、プライミッツ様は私の上着から中に侵入しようとする……。や、やばい、噛み千切られる……クッ、こうなったら!

「(そう言えば、ユーノの奴は犬が好きだっていってたな~)」

「(ふぇ?)」

 お~プライミッツ様から一ふぇ頂きました。

「(ほ、ホント、ホント。もう、プライミッツを性的な意味で襲うのを耐えるのが大変だって)」

「(ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、僕を襲う?……ふぇぇぇぇぇぇ///////////)」

 プライミッツは私の言葉が効いたのか、その場で蹲る……。すまん、ユーノ。お前に変な性癖を付けてしまった……。そして、プライミッツ……その、なんかすまん。

「と、とりあえず。上がっても良いかしら?」

「ど、どうぞ」

 私達のやり取りを見ていた、リンディさんと妹紅は苦笑いを浮かべ、のび太とドラえもんは不思議そうに首を傾げていた。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

「あの~、何かの冗談でしょうか?」

「いえ、全て本当の事です」

 私達はドラえもんとのび太に案内された居間に入った後、のび太の母親である玉子さんにリンディさんが魔法の事を説明し、玉子さんは困惑した表情を浮かべる。

 ふむ、久々に普通の反応を見た気がするな……まあ、昨日の事は例外だが……

「そんな魔法なんてありえないよ!昔は魔法と言われた不思議な出来事も、すべて現代の科学で解き明かされているんだよ!」

 と、22世紀から来たらしいドラえもんが言うと、説得力があるかもしれんが……

「かかっ、駄目じゃぞ猫型ロボット。そう言う先入観が、世を見る視界を狭めてしまうんじゃ」

「「うわっ?!」」

 私の影から上半身だけを出してきたムルムルを見て、のび太とドラえもんは驚いたのか後ろに仰け反り、妹紅とリンディさんも声には出していなかったが驚いていた……あ、こいつの事を説明するのを忘れていた……まあ、くだらないことだな。

「とりあえず、私の影の中から完全に出ろ」

「もう、お前さんのい・け・ず♪」

「………」

 ……殺すか。

 「ちょ?!じょ、冗談じゃ!す、すぐに出るから、ちょっと待っておれ!出る、出る、出るから、出るから『なんちゃって星占術』や『食人影(ナハツェーラー)』を使おうとするな?!」

 私が行おうとした事が解ったのか、ムルムルは物凄い勢いで私の影から脱出する……チッ!そのままそこにいれば、『暗黒天体』で飲み込んだ後、『超新星爆発』で跡形もなく消滅させるか食人影(ナハツェーラー)に喰わせてやったものを……。

「そ、それでキミは?」

 のび太が恐る恐るといった感じで、ムルムルに尋ね。ムルムルは無い胸を大きく張り……。

「儂の名前はムルムルじゃ。八雲幸夜の性奴r「黙れ」ムグッ?!」

 あまりにも不愉快すぎる言葉を放とうとしたムルムルの口を片手で掴むように塞ぎ、そのまま……。

「ムグッ?!ムグッ?!ムグッ?!(訳:砕ける?!砕ける?!砕ける?!)」

 顔を掴んでいる力を段々上げていき、ムルムルからメシメシッ!とヤバそうな音が鳴る。

【こ、幸夜。流石に許してあげればどうですか?】

「(だがな……)」

 ちなみに、この会話中でも手に力は緩めず、段々上げている。

【確かにムルムルが言おうとした事は、私も少し許せません。ですが、流石にこれ以上するのは……】

「(………)」

【ですから、蹴りにしましょう!】

「(……うん?)」

 メアリー、何か話の流れが可笑しくないか?

【彼女は幸夜の○奴隷と言おうとしたのですよ?そんな、羨ま……ではなくてですね。そんな、不適切な事を言おうとしたのですよ?それに、彼女は一度も貴方とヤッたことなんてないでしょう?私だって一回くらいしかないのに……では、なくてですね!え~と、あの~、その~、とりあえず蹴りましょう!】

 ……助けて、メアリーがぶっ壊れた。

 とりあえず、メアリーから言われたとおりムルムルから手を放す。

 私から解放されたムルムルは、数回、私に掴まれた所を擦り……。

「もう♪お前さんたら、そういうプレイをしたいのなら、こんな人目が沢山ある場所じゃなくて、もっと少ない所でじゃな♪」

 ……イラッ

「月の裏までぶっッ飛びやがれぇぇぇぇぇぇ!!」

「イタァァァァァァァァァァァァ!!!!」

「窓ガラスが?!」

【スカッと爽やか!】

 ムルムルを全力で蹴飛ばし、私に蹴られたムルムルは尻を抑えながら、のび家の窓ガラスに直撃、窓ガラスを粉々にし、そのまま空の彼方まで吹き飛んで行った。

 すまん、のび太。窓ガラスを破壊した。そして、メアリー。いつものお前に戻ってくれ。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

「いまので魔法の存在を認めてくれるかな?」

「うん、今のを見せられたら認めるしかないね」

 とりあえず、魔法の存在を分かってもらうために割れたガラスを魔法で修復、蹴飛ばされてボロボロになったムルムルをスキマで取り出し、魔法で回復させる所を見せた。

「お、お前さんや、儂がマゾよりだからと言って、あの蹴りは流石に……興奮しt」

「駄目押しのもう一本!!」

「プギャッ?!」

 魔法の存在をさらに確信してもらうために、ムルムルに頭突きを喰らわし、私の影に入れる。

 フハハハ、けーねさん直伝の頭突きは痛かろう!……ふむ、ここらでこのテンションを止めるか、のび太達がひいてる……。

「では、リンディさん。のび太のお母さんに残りの説明をお願いする。私は、のび太とドラえもんと少し話してくる」

「分かりました」

 リンディさんと玉子さんはこの場に残り、私と妹紅とのび太とドラえもんは、のび太の部屋に向かった……。

~~~~~~

 

~~~~~~

 

「のび太君、それは本当なの?」

「………」

「のび太君、どうして黙ってたの?!いつもは僕を頼ってくるじゃないか!」

「いつもとは全然違うから……ドラえもんに心配かけたくなかったんだよ!」

「バカッ!のび太君のバカッ!」

「ごめんね、ドラえもん」

 二人はお互いを抱きしめる……。おい、何だこのラブコメ臭は?いじめられていた事についてと聖遺物について話したらこうなるとは、誰も予想してなかったぞ?

「さて、二人とも良いかな?」

「あっ、ごめんね」

「あっ、ごめんのび太君/////」

 おい、猫型ロボット。何故、のび太を見て顔を赤くしている?お前、オスじゃないのか?

「とりあえず、聖遺物については分かってくれたか?」

「うん、どれぐらい凄い効果があって、どれぐらい危険なのかは分かったよ」

「それはなによりだ」

 それぐらい理解してくれたのならもう十分だろう……。

「なら、私とのび太は一旦、先程説明したアースラと言う場所に行くが、キミは此処で待っていてくれ、キミに来られるとまた面倒なことになりそうだからな……」

「分かったよ」

 どうやら、リンディさん達の方も説明が終わったらしい、下で動く気配がする……。

 ああ、最後にドラえもんに言っておこう。

「ドラえもん、のび太に何が起ころうとも、キミが最後まで支えてやれ」

「当然、僕はのび太君の親友だからね!」

 私の言葉にドラえもんは力強く返答をした……。

 ……親友か。ドラえもんの言葉を聞き、私は『アイツ』の姿を思い出してしまった。

 アイツは、今何処で何をしてるんだろうな……。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 のび太の親に説明し終わり、アースラに戻った私達だが……。

「死にさらせぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

「燃え散れぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 輝夜と妹紅が喧嘩を始めた……。『前世』で、良く見た光景だな。

 さて、何故このような光景になったかと言うと、私は妹紅に腕を強制的に組まれたままアースラに帰還し、その光景を輝夜達に見られたからだ……。

 そのせいか知らないが、輝夜を応援する者はいるが、妹紅を応援する者はいない……。

 ふむ、これでは妹紅が可哀想だな……。こうなったのも私の原因でもあるからな……しょうがない。さて、のどの調子を整えて……。

「妹紅、頑張って!」

 あざとく、ぶりっこみたく両手を顔の下まで持っていき、上目遣いをしながらヒロインが主人公を応援するような声色で妹紅に向かって言い放つと……。

「オォォォォ、震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!!」

「クッ、熱気が凄いっ!」

 妹紅の炎の力が上がり、輝夜が一瞬だけ怯むが……。

「だけど、私は負けない!負けてはならないのよ!私達は負けられない!!」

 輝夜は強い意志を宿した瞳で妹紅を睨む……。気品のある雰囲気を醸し出し……。

「アンタだけ羨ましすぎるのよぉぉぉぉぉぉ!!難題≪蓬莱の弾の枝-虹色の弾幕-≫」

 一瞬で気品は消えさった……。

「HAHAHA、羨ましいだろぉぉぉぉぉぉ!!蓬莱≪凱風快晴-フジヤマヴォルケイノ-≫」

 妹紅、キャラがぶっ壊れてないか?まあ、しかし、この光景は……。

「おもしr「面白いじゃないわよ、この馬鹿っ!!」……痛ッ、くわないな。何をする、鈴仙?……すまん、座薬」

「どうして、言い直したのよ?!それよりも、火に油を注ぐような事をしないで!!」

「お、妹紅を火に例えたのか……上手い、座布団10枚」

「え、えへへ……。じゃなくって!どうして、あんなことしたのよ変態!!」

「私は変態ではないぞ」

「変態よ!私に『前世』でしてきたことを思い出してみなさい!」

 『前世』でした事?……鈴仙のスタイルが好みのタイプだと言っただろ?鈴仙のうさ耳を触っただろ?うさ耳を撫でまわしただろ?うさ耳をしゃぶった(事故だが)だろ?

「ふむ、鈴仙のうさ耳を撫でまわし、しゃぶっただけだろ?」

「何、軽く言ってんのよ変態!」

 む、さっきから変態変態と失礼な……。

「動物の耳があったら、撫でまわし、しゃぶるのは当然だろ?」

「当然じゃないわよ、このド変態!!」

「ムッ」

 鈴仙から腰の入った、良いパンチを顔面に喰らった……。む、解せぬ。

 と、こんな感じのやり取りをしていると、先程まで妹紅達の方を観戦していたアリサがこちらの様子が気になるのか、観戦するのを止め此方に来ると、何故か恐る恐ると言った感じで……。

「ね、ねえ、あんた達って付き合ってんの?」

 とんでもない爆弾を落としやがりました。

「ふむ、別につきあt「つつつつ付きああああ合ってないわよ!/////////」……何故、動揺する?」

「別に動揺なんかしてないわよ!!/////////」

 そう言う割には、顔が赤くないか?

「そう……ちょっと、安心ね」

 鈴仙の言葉を聞いたアリサはボソッと誰もが聞こえない程の大きさで呟いた……まあ、私はバッチリ聞こえているのだが……。何が安心なのだろうか?

 と、妹紅達の光景を見ながらアリサの言葉の意味を考え続けたが、答えは出なかった……。

 ちなみに、妹紅と輝夜のバトルは数時間後に引き分けと言う形で終わり、その後リンディさんに説教されていた。

 



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第19話~共同戦線~

更新遅れてすみません!
では、第19話をどうぞ!


 

 私達がアースラに協力して、十日が経っていた……。

 この十日間でジュエルシードも順調に集めれ、アリサとのび太も私の特訓によって、聖遺物の『活動』に至れた。

 ちなみに、特訓内容は聞くなよ?まあ、ヒントは二人の『不死性』ゆえに出来る特訓だ。

 さて、今度はどんな特訓をするかな?と考えていると……。

[エマージェンシー、捜索域の海上にて大型の魔力反応を感知]

 艦内に警報が鳴り響き、放送が流れる。

 ふむ、そろそろこの場所とはサヨナラのようだな……。

 私はリンディさん達がいる場所に向かって行った。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 私がリンディさん達のいる場所に着くと、そこには荒れ狂う海で必死に飛んでいるフェイトがモニターに映っていた。

 やはり想像通り、フェイトは強制発動させたか……。

「あの、私、急いで現場に!」

「その必要はないよ。放っておけばあの子は自滅する。仮にしなかったとしても、力を使い果たした所で叩けばいい」

「でも……!」

「今のうちに補獲の準備を」

 クロノが指示を出す中、モニターには、苦しそうなフェイトが映り、それを見ているなのはにリンディさんは言う……。

「私たちは常に最善の方法を取らないといけないわ。残酷に見えるかもしれないけど、これが現実……」

「でも……」

 なのはの声に元気はない……。確かにリンディさんが言う事は正しく、クロノの行動も正しい……。

 だが……。

「くだらんし、つまらんな」

「どういう意味だ?」

 私の言葉に一同が私に注目し、クロノに関しては睨んでいる。

「確かにリンディさんやクロノのは正しい……だが、その行動は組織としての行動だ。別にそれが悪いとは言わん。貴方達は組織に所属している人間で、『一人を犠牲にして多数を救う』……ああ、それは正しい選択だよ」

「幸夜君?!」

 私の肯定するかのような言い草になのはは、何か言いたげな表情を浮かべる……。なのはは私の言葉を聞いていなかったのか?

「だが、その選択はマニュアル通りでつまらん」

「マニュアルだと?」

「ああ、マニュアルだよ……。一を犠牲にして多数を救う……。正直言って聞き飽きた言葉だ。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……!!お前ら人間はすぐ同じような言葉を使う!!決められたセリフを!台本に書かれているようなセリフを!自分達が正義だと言う奴等はどんな時代でも、どんな世界でも、どんな場所でも、一を捨て、九を救うとほざく!そのくせ、自分達の大切な人が『一』にいたら戸惑い、結局『十』を失う……。ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!!なら、最初から九を捨て一を救え!他人を殺してでも大切な人を救え!それが『悪』と言うのなら『正義』なんてクソくらえだっ!そんな正義そこらへんの野良犬にでも喰わせてろ!!」

 私の言葉に一同呆然とする……しまった、熱くなり過ぎたか……。

「すまん、話が逸れたな……。まあ、とりあえず私はフェイトの所に向かわせてもらう……。元々、そう言う契約で協力していたからな」

 私はスキマを開き、体をスキマの中に沈めていく……ああ、これだけは言っておくか。

「なのは、待ってるぞ」

 私はそれだけをなのはに伝えて、フェイト達の所へ向かった。

 

~sideout~

 

~side三人称~

 

 幸夜がスキマの中に消え、スキマが完全に閉じた後、アースラ内は静寂に包まれていた……。

「さて、私も行きますか」

 そんな静寂を破ったのは美鈴だった。

「美鈴さん?!」

「リンディさん、私も最初に言った筈です。私達の行動に対して拘束はせず、私達の行動は私達の意思を尊重することと。ですから、私は私の意思を尊重させていただきます……ですが」

 美鈴はなのはの方を向き、しゃがみこんで目線を合わせ、なのはの肩を優しく掴む。

「なのはさん貴女はどうしたいですか?」

「え?」

「なのはさんは、幸夜の言っていたようなマニュアルの様な正義を実行したいですか?それともまた別の正義を実行したいですか?……大丈夫ですよ、正直に答えて下さい」

 そう言われ、なのははリンディやクロノを見て、モニターに映るフェイト達を見て、目の前で優しく微笑んでいる美鈴を見て、色々な気持ちが混ざったような表情をし、一度、顔を俯かせるが……。

「わ、私、フェイトちゃんを助けたいです!」

 なのはは俯かせていた顔を上げて、美鈴の方を真っ直ぐ見る。

「どうしてですか?」

「その……マニュアル通りの正義とか悪とか、何が一番正しいとか分からないけど……けど、私はフェイトちゃんを助けたい!フェイトちゃんとお話がしたい!!」

 なのはの言葉に美鈴はまるで娘の成長を喜んでいる母親の様な表情を浮かべると、懐から一枚の札の様なものを取り出す。

「どうやら、幸夜が渡してくれたこれは、無駄にならなくて済みそうですね」

「幸夜君が?」

「ええ、きっとこうなる事が分かってたんでしょうね。と、言うわけで、私達も現場の方に向かわせてもらいますね、リンディさん。文句は後でお聞きしますから……それと、アリサさんとのび太君は待機してて下さいね……それで、妹紅さん達は?」

 美鈴の問いに妹紅はニヤッと笑いを浮かべ……。

「勿論、行くに決まってるだろ」

「まあ、当然よね」

「そうですね」

「妹紅、輝夜、鈴仙?!」

 妹紅の言葉にクロノは驚きの声を上げるが……。

「クロノ、三人のこれは何時もの事でしょ?」

「ですが……」

「それに約束の方も確かにそう言う約束をしました……ただし、これだけは守って下さい」

「何をですか?」

 一同がリンディを見つめるなか、リンディはゆっくりと口を開く。

「全員、無事に戻ってきて下さい」

 その言葉に美鈴は微笑みながら、首を少しだけ縦に振り……。

「了解しました。では……転符≪アネモネ≫」

 次の瞬間、アースラ内に強い風が吹くと同時に美鈴達はアースラ内から消えていた……。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 私がスキマから出ると、フェイトの方に雷が向かっていた……。

「創造開始(クリエイト・オン)」

 私は、雷を斬ったと言う逸話がある日本刀『雷切』を創りだし、フェイトと雷の間に入る様に移動して、向かって来ていた雷を雷切で切り裂く。

「すまないフェイト、遅くなった」

「幸夜?!」

 私の登場に驚いたような表情を見せるが、フェイトよ、驚くのはまだ早いぞ?

「幸夜君、フェイトちゃん!!」

「フェイトの邪魔をするなァァァァ!!!!!」

「違う、僕達はキミ達と戦いに来たわけじゃない!」

「少しは落ち着いたらどうですか?」

 なのは達が風と共にこの場所に現れ、なのははフェイトに近寄ってくるが、それを見たアルフがフェイトの邪魔をしに来たと勘違いをし、自分を縛っていた雷を噛み千切り、なのはに襲いかかろうとするが、ユーノの防御魔法と姉さんの能力によって止められる。

「フェイト、アルフ、ここは共同戦線だ!それに、早くジュエルシードを何とかしないと大変なことになるぞ?」

 私の視線の先には、竜巻が増え、謎の怪生物が出現していた……。

「フェイトちゃん、二人できっちり半分っこ」

「よし、私はフェイト達が封印しやすいようにするか……霊夢さん、魔理沙、咲夜、私達は怪生物を、姉さん、妹紅、みょん、座薬、輝夜で竜巻を!」

「こんな時にも座薬言うなァァァァァァ!!」

「みょんって言わないで下さい!」

「真面目にしなさい、鈴仙!」

「私ですか?!」

 鈴仙の叫びと妖夢の可愛らしい訴えを無視し、とりあえず私達は、怪生物の方へ向かう。

「うわ、近くで見るとエグいわね」

「SAN値直葬物じゃないのか、これは?」

「それだったら、もう私達は狂気に陥ってるわよ」

 霊夢さん達の言う通り、その怪生物は一言で言うと……気持ち悪かった。

 色々な海の生物が合体したかのような姿で、常人が見たら発狂しそうだ……。

「さっさと、片付けようぜ!」

「それもそうね……」

 魔理沙はミニ八卦炉(はっけろ)』を、咲夜はスペルカードを一枚取り出す。

「恋符≪マスタースパーク≫!」

「≪咲夜の世界≫」

 次の瞬間、一匹の怪生物の周りには無数のナイフが出現し、怪生物は全身ナイフだらけになっていき、最後には超極太レーザーに飲み込まれ消滅した……何あれ、滅茶苦茶、残酷な合体技じゃないですか……。

 と、そんなことを考えていると、霊夢さんが先程の技を見て思い出したかのように……。

「そうだ、幸夜さん。久々に『あれ』をやりましょう」

「ああ、『あれ』だな」

 霊夢さんは懐から一枚のスペルカードを取り出し、私は霊夢さんの手と重ねるようにそのスペルカードを持つ。

「「合体符≪夢想封印・焉≫!」

 スペルカードを発動させると、無数の黒色の光弾が発射され、怪生物は光弾が中った個所から消滅していく。

 私と霊夢さんが使ったスペルカードは、霊夢さんの夢想封印と私の『創造と終焉を司る程度の能力』の『終焉』を合体させたもので、この夢想封印が中ると、中った部分を『終焉』という形で消滅させる。

 私は怪生物が完全に消滅したのを確認して、辺りを見渡すと妹紅が炎で、座薬と輝夜が光弾で竜巻を消し去り、妖夢が「斬れなぬものなど、あんまり無い!」と豪語していた楼観剣で竜巻を切り裂き、姐さんは『調和』という形で竜巻を消滅させ、なのはとフェイトはジュエルシードの封印を成功させていた……。

「ちょっと幸夜さん、いつまで手を握ってるのよ//////」

「あ、すまない」

 頬を赤く染めながら言う霊夢さんに何故か申し訳なくなり、私は霊夢さんから手を放し、その時、霊夢さんが少しだけ淋しそうな表情をしたのは気のせいだと思いたい……あと、魔理沙達から殺気交じりの視線が送られているのも、気のせいだと思いたい……魔理沙がボソッと「略奪愛……寝取るしか……今度、全員で……」とか、言ってるのも、気のせいだと思いたい……。

 私は不穏な言葉を頭の隅に追いやりつつ、フェイトとなのはの方へ向かったのだが……。

「ウゥゥゥ……」

「どうしたんだ、フェイトは?」

「さ、さあ?」

 何故かフェイトが不機嫌そうな表情で私を睨んでいたので、なのはに聞いてみるが苦笑いしか浮かべなかった……まあ、なのはとフェイトの雰囲気が良いから、そこらへんは気にしないでおこ……ッ?!

「「キャッ?!」」

 嫌な予感がした私は、なのはとフェイトの体を強く後ろの方へ押すことによって、私との立ち位置を交換させると、直後、私の方に紫色の雷が降ってきた……。

「ガァァァァァァ!!!!!!!」

「幸夜君!」

「幸夜!」

 私は素手の状態で雷を防ぎきるが、両腕は黒焦げになってしまった……暫くは使えなさそうだな……。

「アルフ、フェイトを連れて行け!!」

「わ、わかったよ!」

 私は人間形態になったアルフにジュエルシードを蹴り渡し、受け取ったアルフはフェイトを抱えながら、魔力弾を海面に投げつけことによて、水飛沫による目くらましをし、この場から離脱した……。

 

 

 

 

 

 

 



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第20話~表と裏~

皆様、遅れてすみません!!

では、第二十話をどうぞ!



 

 海での共同戦線を終えた後、私は鈴仙を連れてアースラ内にある医務室に来ていた。

 医務室に誰も居ないことを確認し、符を使って扉が開かないようにする。

 ……流石に今からする光景を第三者に見られると不味いからな。

 符に呪力を込め終え振り向くと、鈴仙が顔を真っ赤にしていた……何故だ?

「そ、その幸夜?/////」

「どうした?」

「あ、あのね。確かに私たちは身体は子供でも精神的には大人よ?でも、だからって人の居ない医務室に連れ込んで、しかも扉を開けられないようにするなんて……」

 鈴仙、勘違いしてないか?君が考えてるような事は絶対ない、だから頬を染めるな、目を瞑るな、口を窄めるな。

 現在の鈴仙の身体に私は興味はないッ!!

【何気に酷いですね、幸夜】

 メアリーの非難が聞こえるが、私は気にしない。

 私はいまだに目を瞑っている鈴仙の肩に手を置くと、ビクッと肩が強張ったのを感じる。

 私は鈴仙の耳に顔を近づけ……。

「はむっ」

「ウキャァァァァ!!」

 医務室で、知り合いの耳をしゃぶってアッパーを喰らう小学生がいた……てか、私だ。

「急に何をするんだ?」

「それはこっちのセリフよ!耳を噛まないでよ!」

「噛んではないしゃぶっただけだ!」

「どれも一緒じゃない!」

 そう言いながら鈴仙は私がしゃぶっていた方の耳を触り、顔をしかめる。

「耳がべたべた……」

「官能的だろ?」

「……私に喧嘩を売ってるのかしら?」

 拳を震わせながら、鈴仙は言う。……鈴仙に喧嘩を売る?いやいや、私はただ鈴仙を弄ってるだけさ。取り敢えず、当初の目的を果たすか。

 私は銀のトレーと消毒済みのピンセットと術を施したメスを鈴仙の目の前に出す。

「何これ?」

 懐疑的な視線を向けてくる鈴仙に先ほど黒焦げになった腕を見せると、鈴仙は驚いたような表情になり……。

「まだ、再生してないの?!」

 そう、聖遺物の使徒であり化け物でもある私がまだ傷の回復が出来ていないのだ。

 まあ、そもそも私があの程度の攻撃で傷つくこと自体が可笑しいのだが、やはり以前より弱体化している……。

 だが弱体化していたとしても、この程度の傷の回復なら一瞬なのだが今回は回復が遅い……。いや、回復自体がされないのは可笑しすぎる。

「これで、腕を切開して腕の中にある何かを取ってくれ。たぶんそれが、再生の邪魔している原因だ」

「で、でもここは医務室だと言っても無菌じゃないのよ?」

「そんなものは関係ない。原因さえ取り除けばすぐ再生する。それなら、感染症の心配はない……さあ、やってくれ」

「……分かったわよ!」

 私は鈴仙の前に腕を突き出し、鈴仙はメスを入れ切開し始める。

「ちょ、ちょっと、肉が腐ってるわよ!」

 鈴仙に言われ覗いて見る……うわぁ、普通なら切断ものの腐敗だぞ?と、考えているうちに鈴仙はメスからピンセットに持ち替えており、再生の邪魔をしていた原因を取り出し終えていた。

 すると、腐っていた肉はグチュグチュと床に落ち、無くなった部分を補うかのように新たな肉が生まれ、手術創は元々無かったかのように閉じていき、黒焦げになっていた腕が元の白い肌に戻る。

「幸夜これは?」

 先程まで私の腕の中に入っていた物であろう。鈴仙が銀のトレーに乗せて見せてきた物は、逆十字の形をしたカプセルに薊の花が入っていた物だった。

「呪いだな」

「呪い?」

「ああ、そのカプセルの薊の花は聖書では罪の植物とされている。それを触媒に逆十字を刻んだカプセルを相手に打ち込むことで発動する、対象を気絶することすら許されない痛みを与え続け、肉を魂を腐らせる呪いだ」

「それがさっきの雷の中に?」

「ああ、本来ならあの程度の魔法でダメージは負わないが、呪いは別だ。私は呪いに干渉しやすい性質だからな」

 言いながら、私はもう片方の腕にメスで鈴仙がやったように切開し、ピンセットでもう一つのカプセルを取り出し銀のトレーに入れ、見ると腕の再生は既に終わっていた。

「さて、戻るか」

 銀のトレーを持ち、貼っていた符を外し魔術で焼却してから鈴仙と共に医務室から出ていった。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 私たちがなのはたちのいる場所に着くと、モニターには露出が激しい服を着たおばさんが映っていた……。

「……目が腐る」

「ちょっ、いきなり失礼なの?!」

 私の言葉になのはがツッコミを入れてくるが……しょうがないだろ、いい歳したおばさんが肌をあんなに露出させると……見たら腐るって……あれか、無間叫喚地獄か何かか?

「で、このモニターに映ってるBBAは誰だ?」

「フェイトさんのお母さんのプレシア・テスタロッサさんだそうですよ」

「この素敵な女性が?」

「凄い変わりようなの?!」

 なるほど流石はフェイトの母親だな、まあ、フェイト宅で見た写真とは違うように感じるが……気のせいだろう。

「で、姉さん。このプレシアさんは、あっち側の魔法を使うのか?」

「説明を聞く限り、そのようですよ」

 ふむ、ならば違うのか?

「どうしたんですか、幸夜?」

 姉さんが心配そうな表情を浮かべて、表情に出てしまっていたか?ふむ、ならちょっとした冗談で安心させよう。

「姉さん」

「はい、何ですか?」

 私は鈴仙の隣に立ち、鈴仙の腕に自分の腕を絡ませ……。

「紹介するね、私の旦那様////」

 私は恥ずかしそうな声色で言う。この時、恥じらう乙女のような表情をするのを忘れない。

「「「「「「「ハッ?」」」」」」」

「え、ちょ、え?!」

 瞬間、空気が凍った。面白いほどに凍った。そんな中、鈴仙が面白いほど狼狽えている。

「な、何言ってるのよ幸夜?!」

「ひ、酷い!私にあんな事しておいて!!」

「いや、だから何言ってるの?!」

「私の閉じているものを無理矢理こじ開けたじゃない!!」

 私はその場に泣き崩れる真似をすると鈴仙はその場で狼狽えていると……。

「鈴仙さん」

「ヒッ、美鈴さん。ち、違うんですよ、幸夜の言っていることは出鱈目で!」

「ええ、分かってますよ」

「そ、そうですよね。分かってくれてますよね?!」

 姉さんの言葉に安心したのか鈴仙は胸を撫で下ろす……流石にこの程度は嘘だと分かるか……。

「ええ、ですから……とりあえず裏に行きましょうか?」

 姉さんが、物凄くいい笑顔で鈴仙にとっての死刑宣告を言い放ち、鈴仙の顔を真っ青にしながら助けを求めるように周りを見渡すが……。

「「「「「「「………」」」」」」」

 皆が冷たい瞳で鈴仙を見ており、それぞれ陰陽玉、ミニ八卦炉、銀のナイフ、楼観剣、蓬莱の玉の枝を準備しており、妹紅に関しては背中から炎の翼を生やし、いつでも鈴仙を焼却できる準備をしている……流石に助けるか。

「待って、姉さん!」

「なんですか、幸夜?大丈夫ですよ、私たちがきっちり鈴仙さんにO☆HA☆NA☆SHIしておきますから」

 鈴仙に向けていたいい笑顔ではなく、とても安心できる優しい表情を私に向けてきた。

 私はそんな姉さんの腕を掴み、涙を瞳に浮かべながら掴んでいない方の腕で自分のおなかを撫で、その意味が分かったのか姉さんが顔を青褪める。

「ま、ま、まさか、こ、こ、幸夜」

「うん、できたみたい……」

「そんなわけあるかァァァァァァ!!!!!」

 鈴仙の全身全霊であろうツッコミが艦内中に響いた……。

 

~sideout~

 

~sideプレシア~

 

「フフフ、自分の娘になかなか酷いことをするじゃないですか、プレシア?」

「黙りなさい、アルバート!」

 私は目の前に現れたアルバートを睨み付けるが、アルバートは気持ち悪い笑みを浮かべるだけだった。

「いえいえ、事実じゃないですか。まあ、私が脅しているからと言う理由があるかもしれませんが……ですが、あそこまで傷つけられないでしょう?」

「黙りなさい……」

「ああ、そうでしたね。彼女はしょせん人形……あなたの娘のアリシアのにせm「黙りなさい!!」おやおや、恐ろしい形相だ」

 私は魔力弾を放つがアルバートは障壁を使わずに片手で平然と受け止め、粉々にする。

「気を付けてくださいよ、今のは手加減してくださったようですから咎めませんが……次同じようなことをしたら、あの人形がどうなってもしりませんよ?」

「ッ……」

 私は悔しさで唇を噛む……さっきの魔力弾だって、手加減なんてしていなかった……むしろ、アイツを殺す勢いで放ったものだ……なのに!!

「おや、お客さんのようですよ?!」

 そう言うと、アルバートはその場から消えると同時に爆発音が辺りに響き渡り、土煙の中からフェイトの使い魔であるアルフが現れる……。

 きっと、フェイトの様子を見てこっちに来たのね。

 アルフは殴り掛る勢いで向かってくるが、私の障壁によって拒まれる。しかし、アルフは障壁を破り、私の服を掴む。

「アンタは母親で、あの子はアンタの娘だろ!あんなに頑張っている子に、あんなに一生懸命な子に、何であんな酷いことが出来るんだよ!!」

 そんなこと分かってるわよ、フェイトがどれだけ私のことを思って頑張ってくれていることくらい……。

 表情に出てしまっていたのか、服を掴んでいた力が少しだけ緩む。私は片手をアルフの腹部辺りまでもっていき、魔力弾を放つ。

 魔力弾を喰らったアルフは数メートル吹き飛び、その場に崩れ落ちる。

「あの子は使い魔の造り方が下手ね、余分な感情が多すぎるわ」

「フェイトは、アンタの娘は、アンタに笑ってほしくて、優しいアンタに戻ってほしくて、あんなに!……ウグッ」

 ……演じなさい、プレシア・テスタロッサ。私はフェイトたちの敵じゃないといけないの、フェイトやその使い魔を守るためにも……。

「邪魔よ……消えなさい!!」

 私は取り出していたデバイスをアルフに向けるが、アルフは地面に穴をあけこの場から脱出した……。

 

~sideout~

 

~sideアルバート~

 

 アルフがこの時の庭園から脱出したのを見て、内心ほくそ笑む……。

「ここまでは、原作通りですね」

 私の計画が進んでいる証拠です……後は、最終決戦あたりでアリシアの存在をバラし、フェイト・テスタロッサに絶望を与える……。

 ククク、あぁ、楽しみですね、絶望の中にいるフェイト・テスタロッサの肉体を貪るのが、今から想像しただけでも……いきり勃ってしまいますよ。

 まあ、不安要素として何故かこの世界にいる東方キャラや八雲美鈴、八雲幸夜と言う存在……まあ、八雲幸夜は男のようですし、殺しましょう。そして、女性たちには絶望を与え……。

 ククク、クハハハハハハハハハハ!!!!!!!!






幽「はい、後書きです!」

幸「皆様、お久しぶりです。長い間、待たせてすまない」

幽「本当にすみませんでした!!」

幸「それで、作者。どうして遅れたんだ?」

幽「いや、あの……壊されたんだ」

幸「壊された?」

幽「家族に、まあ、事故みたいな物だからしょうがないんだけど、データを保存していたUSBが破壊されたんだ……」

幸「だが、念のためにそのUSBの他にも、予備と予備の予備のUSBもあったんだろ?……まさか」

幽「うん、三本とも破壊された……」

幸「……作者」

幽「次回はなるべく早く投稿できるようにします。どうか皆様、見捨てないで下さい!」

幸「私からも頼む」

幽「では、皆様また次回にお会いしましょう」

幸「みなさん、さようなら」


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設定(幸夜、メアリー、プライミッツ、ムルムル、デバイス)

設定です
女性陣は3サイズ付です。
過激な表現?もあります
よろしくお願いします

それと、皆様にお願いがあります。
お願いの内容は活動報告に記載しておきますので、よろしくお願いします!!


名前:八雲幸夜(やくもこうや)/零崎紅識(ぜろざきこうしき)

 

身長:125㎝

 

体重:25㎏

 

年齢:9歳

 

家族構成:祖父・伊吹ユメ、祖母・伊吹萃香、父・八雲ソウル、母・八雲紫、姉・八雲美鈴、義姉・八雲藍、橙、門番・紅美鈴

 

職業:始末屋、人形師、小学生

 

魔力量:測定不能

 

魔力光:血色

 

ルーン:氷

 

大アルカナ:死神

 

星占術:天蠍宮

 

所有聖遺物:冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)、人類殺し(プライミッツ・マーダー)など

 

武装形態:武装具現型(メアリー使用時)/特殊発現型(プライミッツ使用時)

 

発現:覇導型/求導型

 

位階:流出

 

創造:???

:死生観・死を与えるもの(メメント・モリ・タナトス)

 

流出:???

 

咒:極夜の凍結

 

理:???

 

罪:虚飾

 

主に使う術:陰陽術、星占術、食人影、呪術、法術、洗礼詠唱、人形使い

 

二つ名:大量殺戮祭(オーバーキルパレード)、人外最悪、血濡れ姫、拷問姫、二代目USC、

欠落製品、化け物喰い、氷結騎士、人形遣い(ドールマスター)

 

容姿:顔はFateのセイバーオルターを幼くし、瞳が金と翠のオッドアイで、髪は白と黒のリボンで結んでポニーテールにしている。首に包帯を巻き、常に狐のお面を付け、黒のズボンに黒の服、その上から黒のコートを羽織り、ズボンの方に銀時計を付けて、黒の編み込みブーツを履いているとというあやしさ全開の姿

詳細:この物語の主人公。前の世界では、霊夢と夫婦で二人の子供がいたが、時が経ち霊夢が死んだことによって一度心が壊れる。だが、周りのお陰で立ち直り、普段のように生活をしていた。

だが、「 」と呼ばれる存在が幻想郷に現れ、自分にとって大切な人達、幻想郷の人達を皆殺しにされ、心が完全崩壊する。

そして、壮絶な殺し合いの末「 」を喰らい、この世界の理を流れ出させている『神』を許せないと一時的な感情で否定し、『大切なものを奪われる前に凍らせたい』、『奪わせない』と言う渇望を流れ出せ、『完全凍結世界』を創り、『第七天』を消し去った。その後、自分の創った世界を見て自分の愚かさに気づき、自分の代わりとなる『神』を探し、殺されることを望むようになり『神』を探す為に『世界』を旅するようになる。その過程で死にかけていた『セラス』と言う女性と「 」の搾りかすの『ムルムル』を眷族にし、『アンデルセン』と言う女性のシスターと殺し合い敗北、死亡する。

そして『座』の『ルール』によって『消滅』するはずだが、ムルムルと『ある人物』の力により、この世界に転生する。幸夜は劣性遺伝子持ちで、髪、瞳、肌の色の他に、生物として必要なある程度の『感情』や『三大欲求』である『食欲・睡眠欲・排泄欲』が『欠落』している。

ちなみに、幸夜の首にある斬首痕は敗北者としての証、胸の銃痕はメアリーとの契約の証である。

『座』にいた時の影響か、ほとんどの聖遺物は使用でき、活動位階~創造位階まで使用できる。

太極に関してはあまり使用できないが、天魔達の太極は地獄という形で再現することができる。そして、幸夜は前世のとある時に『零崎』として目覚めた為か、この世界でも五歳頃に『零崎』が目覚めた。零崎としての名前は、零崎紅識。零崎としての戦闘開始の合図は「零崎を開幕する」「人間証明を始めよ」である。紅識は『人間証明』を行いそれに『証明完了』した者は殺さず、『証明不完了』の者を殺す殺人鬼で、その証明完了ラインは誰にも解らない。強さは、ただの蹴りで人体の一部を捩じ切ることができ、ただのパンチで頭を粉砕することができ、握力は、軽く頭を潰すことができる。しかし、幸夜は普段の生活で力をセーブしている。「 」を喰らったことにより、元々の質や強度、保有量が有った『魂』が強化され、その質と強度は『座』にいた歴代の『神』を凌ぎ、歴代『最強』の神と呼ばれていた。だが、幸夜曰く、現在は力がかなり衰えているらしく、その理由は『本来の心臓』ではないからである。さらには、ダークネスドライバー、ダークネスメモリーと言う物も消失している為、十全の力を出せてはいない。

 

 

名前:メアリー

 

身長:165㎝

 

体重:53㎏

 

3サイズ:B90/W61/H88

 

年齢:???歳

 

容姿:水色の髪、翡翠色の瞳、雪の様な白い肌で水色の髪を腰の高さまで伸ばしており、傾国の美女と言われてもおかしくない美貌を持っている。服装は白い着物で、戦闘時は白い色の鎧を着ている。詳細:幸夜の持つ『聖遺物』、『冷酷女王銃(メアリー・ゲヴェーア)』の中にある魂で、「人類で最も穢され、儚い魂」と呼ばれている。

生前はとある国の王として、民のために戦い、民のための政治を行い民衆に愛されていたが、それを良しとしなかった夫、貴族たちの謀略によって王の地位から転落、牢屋に閉じ込められる。

牢屋に閉じ込められた後、その美貌の為に夫や性別関係なく貴族、兵士たちから凌辱の限りを尽くされるという生活を長年過ごし、最後は愛犬であったプライミッツと共に愛銃で処刑された。ちなみに、生前は子供が一人もいなかった……。

死後、その魂は聖遺物の魂として宿っていたが、幸夜出会う前の間に契約した者達は『活動位階』止まりで暴走し、『形成位階』に到達したとしても契約者の前には一度も姿を現さず、聖遺物の本来の力を使わせなかった。

そして、幸夜と契約することになり、最初に契約した時点で『形成位階』まで達した幸夜に興味を抱き『形成』と言う形で姿を現す。

だが、やはり前世での出来事のせいで、幸夜に対して暴言を吐いたり、暴力を振るったりと心を閉ざし、幸夜もメアリーに良い印象を抱けず、両者の関係は最悪であった。

しかし、とあることが原因でメアリーは心を開き、今では二人とも信頼し合っていおり、メアリーは長年、幸夜と共に生き、幸夜の優しさに触れ続けているうちに幸夜のことを深く愛するようになった。

 

 

 

名前:プライミッツ

 

身長:158㎝

 

体重:50㎏

 

3サイズ:B73/W50/H70

 

年齢:???歳

 

容姿:白色の髪に碧色の瞳、メアリーと同じような白い肌、髪は肩の高さまで伸ばしている。服装はいつも白のワンピースを着ている。詳細:幸夜の持つ『聖遺物』、『人類殺し(プライミッツ・マーダー)』が人間に変化した姿。生前はメアリーの愛犬であり良き友人でメアリーと共に戦場を駆け抜けていた。だが、メアリーが牢屋に閉じ込められた後、犬から人間の姿になれることメアリーを陥れた人物たちにバレ、メアリーと同じように牢屋に閉じ込められる。

そして、プライミッツは両性具有であった為、メアリーと同じように凌辱の限りを尽くされるという生活を長年過ごし、最後はメアリーと共に愛銃で処刑されたが生きており、自身の命が尽きるまでその国にいる人たちを全員食い殺し、国を滅ぼした。

そのことが原因なのか、プライミッツは『聖遺物』、『人類殺し(プライミッツ・マーダー)』となり、幸夜と契約するまでの間、長い眠りにつく。

長い年月が経ち、幸夜と契約したときにメアリーと久々に再会し、喜んでいたが、メアリーと幸夜の関係にショックを受け、良き友人であるメアリーと自分を大切にしてくれる幸夜に仲良くなって欲しいため色々努力するがすべて失敗に終わった為、あることがきっかけで仲良くなった二人を見て一番喜んだのはプライミッツである。

幸夜のことが大好き娘であるが、最近はユーノが気になるらしい。

 

名前:ムルムル

 

身長:110㎝/175㎝

 

体重:19㎏/57㎏

 

3サイズ(大人時):B88/W64/H85

 

年齢:???歳

 

容姿:『未来日記』に出てくる『ムルムル』と同じで、鍵穴の付いた首輪を付けている。詳細:元「 」で、「 」の搾りかす。幸夜の全てを奪った存在で、名前は幸夜が『ムルムル』を眷族にする時に適当に考えて付けた。元々は「 」のその物であったが、幸夜に喰われたことにより、ほとんどの力を失い消滅しかけた所を幸夜が、幸夜の持つ『魔導書』の『管理人』としての役割を与え、消滅を回避させた。首輪は幸夜の眷族になる時に付けられたもので、この首輪はムルムルの「 」としての『力』を封じる為と、ムルムルが保管している『魔導書』の『力』が漏れないようにする為に付けており、幸夜があるキーワードを言い、鍵穴に鍵を刺すと、「 」としての力と魔導書の力を使用することができ、体も成長する。

 

名前:エターナル・ゼロ愛称:エターナルAI:女性(メアリー)種類:インテリジェントデバイス待機時:青い宝石が付いた指輪使用時:モード・ツヴァイ【干将・莫邪の刀身を細くして、両方の柄に鎖を繋げた双剣に変わる】    モード・ゲヴェーア【銀色で蒼い線が入っている二丁拳銃に変わる】    

バリアジャケット:セイバーオルターの鎧ドレス詳細:このデバイスはメアリーが管理人格をしている。幸夜が魔術・魔法を使うときの触媒にもなり、ホラーなどの邪気も感知する。性格は結構明るいが、冷静さもある。幸夜の事を【幸夜】と呼ぶ。



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第21話~変態(サイコ)~

アンケートの方、まだ続いています。
ご協力お願いします!!
詳しくは活動報告をご覧ください
では、第21話どうぞ!


 

 鈴仙が危うくこの世からさよならしかけた日の翌日、私たちはなのはとフェイトの対決の観戦をしていた。

 え、いろいろ早すぎないかって?……細かいことは気にするな。

 まあ、それはさておき、二人の勝負はなのはの勝利という形で幕を下ろしたのだが、最後の決め方に問題があった……。

「お、おい、どうしてみんなこっちを見るんだぜ?」

「いや、絶対あの『鬼畜』魔法教えたの魔理沙だろ?」

「いやいやいや、確かに私はマスタースパーク的なものを教えたが、あんな『鬼畜』技は教えてないぜ?!」

「バインドしてあんな魔法を放つなんて『鬼畜』ね」

「えぇ、『鬼畜』ですね」

「しかもあの魔法、周囲にあった魔力まで使ってるわ」

「『鬼畜』の極みですね」

「あれ絶対『全力全開』じゃなくって、『全力全壊』じゃねえか?」

「もう、なのはは『三代目USC』で良いんじゃない?」

 と、私たちで好き放題、言っていると……。

「鬼畜じゃないもん!!」

 なのはの叫びが辺りに響き渡った。

「全力全壊じゃないもん、全力全開なの!それに、三代目USBって何なの?!」

「「「「「「「アルティメット・サディスティック・クリーチャーの略」」」」」」」

「そんなのいやなの!!」

 ちなみに初代USCは幽香さん、二代目は……誰だろうか?

【二代目は幸夜の事ですよ】

 なっ、失礼な!私はあそこまでの加虐者ではないぞ?!

【いやいや、拷問器具を好んで使う時点で……って、幸夜?!】

「チッ、しまった!」

「フェイトちゃん?!」

「クッ、クゥ……」 

 メアリーとの会話で意識を逸らしてしまっていた私は、気づいた時には雷の魔法がフェイトを含めた周囲へと放たれており、威力が強いのかフェイトは顔を歪め気を失い、バルディッシュも砕けていた……。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 気絶したフェイトを連れ、私たちはアースラへと戻ってきていた。

 フェイトはすぐに意識を取り戻し、ある程度の治療をしてからその手に手錠を掛け、私たちと一緒にリンディさん達が居る場所に来ていた。

「お疲れ様。それからフェイトさん?初めまして」

 待機状態のバルディッシュを見つめ暗い表情をしたまま、フェイトは顔を俯かせ、そんなフェイトをアルフは心配そうに見つめている……。

「フェイトちゃん、良かったら私の部屋……」

 リンディさんに念話で言われたのだろう。なのはが、フェイトを自分の部屋に連れて行こうとするが、モニターに局員とフェイトの母親プレシア・テスタロッサ……そして、フェイト・テスタロッサと言う少女の存在を根元から覆すような『もの』が映し出されていた。

「えっ……」

「あっ……」

 それをみたなのははとフェイトは驚きの声をあげる。画面に映し出されたそれは、液に満たされたカプセルの中にフェイトと瓜二つの少女が入ってい光景だった……。

『私のアリシアに、近寄らないで!』

「いけない、局員たちの送還を!」

「了解!」

 次々とプレシアに倒されていく局員たちを見て、リンディさんはエイミィに指示をだし、エイミィは送還の準備を始める。

 そんな中、モニターに映るプレシアはアリシアと呼ばれた少女が入っているカプセルの方にゆっくりと歩み寄り、少女を愛おしそうに見つめている……。

『もう駄目ね、時間が無いわ。ジュエルシードでアルハザードに辿り着けるかわからないけど……でも、もういいわ……』

 プレシアは淡々と、まるで誰かに皆に聞かせるようにプレシアは話を続ける。

『この娘を失ってからの暗鬱な時間も、そして、この子の身代わりの人形を娘扱いするのも……』「ッ!?」 

 プレシアの言葉に、フェイトはビクッと体を震わせ、なのははそんなフェイトを心配そうに見つめている……。

『聞いていて?あなたのことよフェイト。せっかくアリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけ……役立たずでちっとも使えない、私のお人形』 

 自身の存在を否定されるような言葉を言われた為か、フェイトは辛そうに顔を俯かせている。

 ふむ……まあ、先ほどからあのようなことを言われ続けていれば、辛いだろうが……くだらないな。

「おい、露出癖BBA、形から入ってるようなBBA、歳を考えろ歳を」

『ハァ?!』

「こ、幸夜君?!」

「プッ!」

 私の言葉にプレシアは過剰に反応し、なのはがオロオロとし始め、霊夢さんが噴出す……この時、プレシアに青筋が浮かんでいることについては気にしなくていいだろう……。

「BBA、何時までそんな三文芝居を見せるつもりだ……正直言って、くだらなさ過ぎて欠伸が出そうになったよ」

『何を言っているの?これは私の本心よ』

 本心……本心ね……。

「BBA、私に嘘は意味がないぞ?私は嘘には敏感なんだ、貴様が本心でフェイトのことを貶してないことくらいわかる。それと、フェイト……」

「幸夜……」

 私は、いまだに顔を俯かせているフェイトの肩に手を置き、フェイトは顔をこちらに向け、そんなフェイトに安心させるように微笑みながら……。

「フンッ!!」

「イタァァァァァァァイィィ!!!!!」

「「「「「「『えぇぇぇぇぇぇ?!』」」」」」」

 フェイトに慧音さん直伝の頭突きを喰らわし、あまりの痛さの為かフェイトは絶叫しながらその場に蹲り、今の光景を見たプレシアを含め全員は驚きの声をあげる。

「こ、幸夜、い、一体何するの?!」

 フェイトが頭を擦りながら、涙目で私に詰め寄ってくるが……。

「もう一発!!」

「ヒウッ!!」

「「「「「「『酷い!!』」」」」」」

 今度は威力低めの頭突きを喰らわし、フェイトは可愛い声をあげ、全員からは非難の声が上がる。

「フェイト、今頭突きをされて痛いのは誰だ?」

「え、わ、私だけど?」

「なら、アルフの主は誰だ?バルディッシュの主は誰だ?私と一緒にジュエルシードを集めていた少女は誰だ?母親のことを思って頑張っていたのは誰だ?」

「え、そ、それは……」

「お前だろ、フェイト・テスタロッサ?アリシア・テスタロッサじゃない。幼いころの記憶は確かにアリシアと言う少女のものかもしれない……だが、私たちとの出会いや、今の記憶は、共に一瞬一瞬を生きた記憶はお前の物だ……お前自身の物だ」

「幸夜……」

「安心しろフェイト、あのBBAがもしも本心からお前を否定していたとしても、少なくともアルフやなのはや私やメアリーやプライミッツや……ここにいる全員はお前を……アリシア・テスタロッサと言う少女ではなく、フェイト・テスタロッサと言う少女として見ている……と、言うわけだBBA」

 私はモニターに映るBBAを睨み付け……。

「アリシア・テスタロッサ、誰だそいつは?そんな奴は知らんし、見えんし、聞こえん……私たちが、知っているのは、見えているのは、聞こえているのは、フェイト・テスタロッサと言う少女だ!分かったか、クソババア!」

 私はフェイトを抱き寄せながらババアに向かって言い放つ……この時、殺気交じりの視線が複数来たが……気にしないでおこう。

 画面の向こうのババアは先程までの表情とは違い、どこか淋しそうに、どこか愛おしそうにフェイトを見つめていた……。

 そして、プレシアが何かを伝えようと、口を開こうとした瞬間……。

『駄目じゃないですか、プレシア。あなたの正直な気持ちを伝えようとしては』

 プレシアとは違う声が聞こえると同時にプレシアの身体から腕が生え、その手にはプレシアの物であろう臓器が握られていた……。

 突然のことで周りは呆然とするが、事態を把握したと同時に、こういうことに慣れていないであろう、なのは、フェイト、アルフ、ユーノ、アリサ、クロノの達の顔は真っ青になっており、画面の方に視線を戻すと、プレシアが崩れ落ち、抜き取った臓器を持っている仮面を付け道化師の様な姿をした男が立っていた……。

『初めまして、皆様。私は、アルバート・ゴート。よろしくお願いします』

 男……アルバートは薄気味悪い笑みを浮かべながら、挨拶をする。

『いやはや、危うく私の計画……私が出ている時点で失敗しているようなものですが……まあ、良いでしょう。取り敢えず、別の案が浮かんだわけですし』

 アルバートは先程と同じような笑みを浮かべながら、自身の足元にいるプレシアを見る。

『言ったはずですよ、プレシア?フェイトに対して、大嫌いと言いなさい、絶望を与えなさい、と……あなたは私との約束を破りました』

『お願い……フェイトには手を出さないで……』

 弱弱しい声だったが、プレシアの言葉はここにいる全員に聞こえていた。さっきまでフェイトを貶していたプレシアとの違い、フェイトとアルフは戸惑っている。

『聞きましたか、フェイト・テスタロッサ?プレシア・テスタロッサの今までの行動は全て貴女を守るためだったのですよ』

 アルバートはプレシアから視線を外し、こちらに視線を戻しながら話し続ける。

『プレシアは貴女のことを心底、愛していたのですよ。一人の大事な娘としてね』

「母さん……」

 フェイトの瞳には涙が溜まっていく……親が自分の事を愛してくれていた……子供にとってこれ以上嬉しいことはないだろう。

『良かったですね、フェイト・テスタロッサ……では、プレシアを殺しますか』

「えっ……」

 アルバートの言葉にフェイトの表情が固まり、そんなフェイトを見てアルバートは愉快そうに笑う……。

 『フェイト・テスタロッサ、私は貴女に絶望して欲しいのですよ。ですから、貴女の目の前でプレシアを殺します……さあ、どんな殺され方を見れば絶望しますか?断頭?縦に半分?横に半分?達磨?串刺し?それとも、殺されその遺体を蹂躙される様を見れば絶望しますか?』

「お願い、止めて……」

 懇願するフェイトの表情を見て、アルバートは表情を歪めていく……。

『良いですねぇ、良いですねぇ。その表情、サイコォですよぉ……その表情が、プレシアを殺したらどうなるか……考えただけでイッちゃいそうですぅ』

「変態ね」

 霊夢さんが、この場にいるほとんどの人達が思ったであろう素直な感想を述べると、アルバートは心外だとでも言いたそうな表情に変わる。

『何を言ってるのですか?性癖なんて人それぞれですよ。脚が好きな人がいれば、手が好きな人がいる。胸が好きな人がいれば、尻が好きな人がいる。髪が好きな人がいる。目が好きな人がいる。首が好きな人がいる。唇が好きな人がいる。においが好きな人がいる。人を痛めつけることが好きな人がいる。痛めつけられる事が好きな人がいる。死体を好む人がいる。……私だってそれらと一緒ですよ。絶望に沈んでいく女の肉体を貪るのが、凌辱の限りを尽くすのが好きなだけですよ……では、殺しますね』

 アルバートはプレシアを殺すために、視線をプレシアが倒れていた場所に向けると……。

『へっ?』

『サラダバーじゃ!』

 手ぬぐいを被って唐草模様の風呂敷包みを背負うと言う、大昔の泥棒の格好をしたムルムルがプレシアを抱えた状態で、私が開いていたスキマに沈んでいく光景があった……。

「ただいま~なのじゃ」

「お帰り……それじゃあプレシアを置いて、お前があの変態(サイコ)野郎の相手してこい」

「だが断るのじゃ!」

 私の言葉でドヤ顔で胸を張りながら言うムルムル……ふむ

「セイッ!」

「バルスッ?!」

 とりあえずドヤ顔にイラッとしたからパイルドライバーを喰らわした……後悔はしてない。

『き、貴様ぁ!!』

 モニターを見ると、アルバートが怒りによって顔を歪めていた……ふん、自分の趣味を妨害されてそんなに怒るのか

『殺してやる、殺してやるぞ、クソガキィィィィ』

 殺す、殺すか……

「それは無理だな……」

『何だと?』

 私は狐面を付け……。

「私が貴様を殺すからな」

 さらに顔を歪めたアルバートを映したのを最後に、映像は砂嵐に変わった……。



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第22話~姉崩壊~

久しぶりの投稿です。
では、第22話をどうぞ


 

 モニターが砂嵐に変わった後、私はリンディさん達に許可を得てから、ムルムルが持ち帰ってきたプレシアがいる医務室の方に向かう。

「こ、幸夜」

「安心しろフェイト、今からプレシアの治療をする……プレシア、少々きついが我慢してくれ」

 傷口の中に手を入れ、私はアルバートに抜き取られた臓器のあった位置を確認する。

「グッ、ガッ!」

 体内を弄られているため、プレシアは苦悶の声を上げ、表情を歪める。その度にフェイトは心配そうな表情でこちらを見てくる……ふむ、この位置からして腎臓か……。

「フェイト、これから見ることは内緒にしていてくれ……」

「え、う、うん……」

 フェイトは何が何だか解らないといった表情を浮かべていたが、頷いてくれた……さて、やるか……。

 私は傷口に入れて手に付着したプレシアの血を全て綺麗に舐め採る……。

「こ、幸夜、な、何してるの?」

「プレシアの遺伝子情報を取り込んだだけだ……」

 フェイトが完全に引き攣った表情で見てくるが……気にしてはいけない。プレシアの肝臓を創るには必要な行為だ。

「創造開始(クリエイト・オン)」

 能力でプレシアの肝臓を創り、創った肝臓を傷口から体内に入れる。

「こ、これで大丈夫なの?」

「いや、まだ終わってない」

 懐に入れてあった符を数枚取り出し、符をプレシアの傷口の中と外に、符を持った手で五芒星を切り、意識を集中させる……。

「オン・アビラ・ウンケン・ソワカ……一(ひ)二(ふ)三(み)四(よ)五(い)六(む)七(な)八(や)九十(ここのたり)布瑠部(ふるべ)由良由良止(ゆらゆらと)布瑠部(ふるべ)」

 真言と布瑠の言を唱えると、置いた符が淡い光を放ち、みるみるとプレシアの傷口が塞がっていき、顔色も良くなっていく。

「これで、大丈夫だ」

「ありがとう幸夜……母さん、母さん」

 フェイトは私に感謝を述べると、涙を流しながら眠っているプレシアを抱きしめる……フェイト、私に感謝はくだらない……。が、こう言う光景が見れたなら……悪くない。

「それでは、私は先に戻るぞ」

 私はフェイトに一言告げてから、医務室を出てなのはたちがいる場所に向かった。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

「では、リンディさん、先ほどの変態(サイコ)野郎の事を知っていますよね?」

「え、ええ……」

 私はプレシアの治療を終え、ここに戻ると同時にリンディさんに詰め寄り、リンディさんは顔を後ろの方に逸らしながら頷く。

「アルバート・ゴードは、数か月前、管理局から脱走した死刑囚よ」

 死刑囚と言う言葉に私と姉さん……てか、前世からの知り合い組とクロノ達、管理局組以外の人達が息を呑む。

「アルバートは数か月前、ある罪を犯して監獄に収容されていたのだけど……」

 ある罪ってあれだろ?どうせ、殺人犯した後の死姦だろ?

「脱走され、今に至ると?」

「ええ……本当にごめんなさい」

 リンディさんの言葉を繋げるように姉さんが言い、リンディさんは私たちに頭を下げながら謝罪する。

「いや、別にリンディさんの責任ではないんですから、リンディさんが謝罪する必要はないですよ」

 姉さんの言うとおりだな、謝罪するとしたら管理局の上の奴らだろう……。

「まあ、そんなことより霊夢さんよ」

「何、幸夜さん?」

「今からあの屍姦趣味野郎をボコボコにしに行こうと思うんだが?」

「そんな装備で大丈夫かしら?」

「大丈夫だ、問題ない」

 と、霊夢さんとやり取りをしてから、スキマを開き入ろうとすると、リンディさんが慌てたような表情で止めにかかってきた。

「幸夜君、向こうは次元震が起きていて危険なのよ!?」

「大丈夫、大丈夫……それじゃあ、来たい人は後からついて来るように……アリサとのび太は待機、では」

「幸夜君?!」

 リンディさんの静止の声を無視し、私はスキマの中に入った。

 

~sideout~

 

~side美鈴~

 

「モニター、映ります!」

 幸夜がスキマの中に入った後に、エイミィさんの言葉に皆さんの視線がモニターの方に向きます。

『ふむ、これまた激しい歓迎だな』

 モニターには幸夜と無数の傀儡兵が映し出され、感想を言う幸夜の声色は嬉しさが混じっています……あぁ、やっぱり。

「不味いわ!クロノ、すぐに「大丈夫ですよ、リンディさん」どういうこと?」

 私はリンディさんの言葉を遮るように発言し、リンディさんは私の発言に疑問を持ったのか首を傾げます。

「言葉の意味ですよ、それに……」

「幸夜さん、暴れ足りないらしいから最悪、巻き込まれるわよ」

 私の言葉を繋げる様に霊夢さんが発言します……むむ、流石、元夫婦だけありますね。で、ですが、私はお姉ちゃんなのです。霊夢さんも知らない癖を私は知っているのですよ!

フハハハハハハハ!

「基本ネタ発言するときは、欲求不満な時なのよね~」

 なん……だと……orz

「み、美鈴さん。大丈夫ですか?!」

「え、えぇ、ちょっとした絶望を味わっただけですから、大丈夫ですよ」

 クゥゥゥゥ、憎い、霊夢さんが憎い、若干ドヤ顔している霊夢さんが憎い!

「それに、幸夜さんが言ってくれたもの……霊夢さんは実の家族より僕のことを理解してくれてるよねって」

「ゴハッ!」

「にゃっ?!美鈴さんが血を吐いて真っ白に?!」

 とんでもない発言を聞いた瞬間、私の視界がブラックアウトした……。

 

~sideout~

 

 

~side幸夜~

 

 

 何故だろうか……今、身内がとんでもなく恥ずかしい醜態を晒しているような気がするのだが?

【たぶん気のせいですよ】

【気のせいじゃ、気のせいじゃ】

 本当に気のせいだろうか?まあ、気にしたら負けと言うやつだな……さて、殺りますか。

 私は目の前にいる傀儡共に視線を向ける……。

「初めはこれで行こうか……星符《流星群》」

 スペルカードに埋め込んでおいた星占術の術式を発動し、億の魂を百の流星として降らせ、その圧倒的魂の質量で傀儡共を粉砕していく。

「ほう、まだ傀儡共は増えるか……なら、つぎはこれだ」

 流星群によって潰された分を補うかのように増えた傀儡共を見て、私の気分が高揚する。フフフ、なら次はこれだ。

「怒りは短い狂気である     自然に従え」

Ira furor brevis est. Sequere naturam.

 

 無数の星々を掌大にまで凝縮して傀儡共に向け弾け飛ばし、宇宙規模の大熱波を発生させ、増えた傀儡共を業火によって塵にする。

【ちょ、ちょ、ちょっと幸夜、殺り過ぎじゃないですか?!】

【これはオーバーキルと言うものではないか、お前さん?!】

【こ、幸夜、これ以上は危ないよ!】

 ふはははは、何も聞こえん、聞こえんぞ!!

「このようにして星に行く 厳しい法であるが、それでも法である」

Sic itur ad astra.      Dura lex sed lex.

 

 次はグレート・アトラクター……銀河吸収面体の大激突を発生させ、この空間内にできた超重力で傀儡共を押しつぶす。

【【【もうやめて、傀儡兵たちのライフゼロよ!】】】

 次は何にしようか?グランドクロス?暗黒天体創造?素粒子間時間跳躍・因果律崩壊?と、考えていると……。

「ごめんなさい、幸夜さん。遅れたわ」

「いやいや、もう少し遅くでも大丈夫だったさ」

 霊夢さんたちが転移魔法で来ていた……それより、姉さんの表情が暗いのは何故だ?

「な、なあ、霊夢さん、何故、姉さんはあそこまで表情が暗いんだ?」

「それは……」

「幸夜!!」

「きゅ、急にどうしたんだ姉さん?」

 霊夢さんの声を遮りながら、姉さんは僕と霊夢さんの間に割り込むようにして入り、私の肩を強く握る。

「こ、幸夜は、幸夜はお姉ちゃんのことがギライナンデズガァァァァァ」

「ほ、本当にどうしたんだ?」

 いきなり号泣し、人の服に鼻水を付着させる姉さんに若干引くと……。

「やっぱり、ギライナンデズネェェェェェ……ウワァァァァァァ!!!!!!!」

 ……いやほんと、どうしてこうなった?てか、姉さん周り見て、なのはとかクロノとか霊夢さんたちが引いてるから、顔を引き攣らせてるから。

「姉さん、私は姉さんのこと嫌いじゃないから」

「ぼ、ボンドデズカ?」

「ああ、むしろ大好きだよ」

 なるべく笑顔で本心を言う……私はシスコンなんだ、姉さんのことを嫌いになるわけないじゃないか。

「幸夜、幸夜、もう一回、もう一回だけ言ってください」

「え?まあ、良いけど……姉さん、大好きだよ」

 もう一度、笑顔で言うと姉さんは顔を俯かせる……ど、どうしたんだ?

「ふ、フフフ、フフフフフフフフフフフフ」

 こ、怖っ?!え、本当にどしたんだ?

「音符《ペザンテ》」

 姉さんが顔を俯かせながらスペルカードを発動すると、複数の音符型の弾幕が傀儡兵に向かっていき、弾幕が傀儡兵を押し潰す。

 そして、髪に付けているリボンを解き、リボンを世界調和槍(ワールド・ハーモニクス・ランス)へと変える。

「フフフ、こんな傀儡ども排除して、あの変態を潰して……今回の事件を早く終わらせて幸夜をギュッとするんだァァァァ!!」

「幸夜さん……」

「お願いだ、何も、何も言わないでくれ……」

 変なことを叫びながら傀儡兵の大群に突っ込んでいた姉さんを見て、霊夢さんが私の肩に手を置き、何とも言えない表情で此方を見てくる……。何か本当にすみません……。



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第23話~混沌~

やっと、やっと更新できました(泣)

長い間、お待たせしてすみません!!

では、第23話をどうぞ!!



 姉さんが傀儡兵の大群に突っ込み、何とも言えない空気が流れている中、クロノが私に近づき、これから何をするかを簡潔に説明してきた……ふむ、これ以上この場を暴走させない為に魔力炉の封印とアルバートの捕獲の二班に分けるのか……なら。

「私一人でアルバートの所に向かう、後のみんなは魔力炉の所へ向かってくれ……」

「なっ、君は何を言ってるんだ、アイツがどれぐらい危険なのか分かってるのか?!」

 クロノは表情を険しくしながら私に詰め寄り、なのはやユーノ、アルフ達は心配そうにこちらを見てくる……。

「私なら大丈夫だ。私は強いぞ?それに、よく言うだろ……目には目を歯には歯を、悪には悪をだ……」

 それに、アイツは私が殺さないと気がすまないからな……。

「まあ、その話は置いておいてだな……傀儡兵の数が増えてないか?」

「言わないでくれ、軽く現実逃避したいんだが……」

 いつの間にか増えていた傀儡兵の数にクロノの表情が別の意味で険しくなる……。

「とりあえず、私は変態の所に向かうが……そんな装備で大丈夫か?」

「大丈夫だ、問題ない」

 ……何故だろう?滅茶苦茶心配になるんだが……仕方がない。

「クロノ、ここにプライミッツを置いていくぞ」

「な、何を言ってるんだ?」

 フフフ、クロノ今からお前の表情を凍りつかせてやる……。

「形成――    人類殺し(プライミッツ・マーダー)」   

Yetzirah――  Primate murder

 次の瞬間、小型犬位の大きさだったプライミッツは体長二メートルを超える巨大な姿に変わる。

「グォォォォォォォ!!!!!!!」

 形成状態になったプライミッツが雄叫びを上げると、衝撃波が発生し前方の傀儡兵を木っ端微塵にする……って、姉さん?!姉さん、巻き込まれてるよね?!

「逝けやヴァルハラァァァァ!!」

 姉さんは衝撃波を避け、某ヤンキー中尉みたいなことを言いながら槍を振り回し、傀儡兵を串刺しにしていく……。

「姉さん……って、みんな大丈夫か?」

 姉さんの豹変に驚愕しつつも、プライミッツのこの姿に慣れている前世組以外を心配する……。予想通りだが、クロノやなのはは顔を青褪めさせ、怯えている。

 聖遺物『人類殺し(プライミッツ・マーダー)』の『形成』時効果は、『人に対しての絶対的殺害権利』、この効果の為か、プライミッツが形成状態の時の姿を見ると並以下の人間は発狂し魂が消滅し、並かそれ以上の人間は消滅したりはしないが、プライミッツに対して恐怖を覚え、顔を青褪めさせる。まあ、慣れれば平気らしいが……。

 その証拠に、慣れていないユーノは怖すぎるのか体を震わせて……。

「か、カッコイイ!!」

「ハ?」

「グゥ?」

 予想していなかった言葉に私とプライミッツは素っ頓狂な声を出しながらユーノを見ると、ユーノは瞳をキラキラさせながらプライミッツを見ていた……。

「ゆ、ユーノは平気なのか?」

「平気って、何がだい?」

「い、いや、気にしないでくれ……」

 きょとんと首を傾けながら答えたユーノに、若干戦慄しながら意識を『中』の方へ向ける。

「(なあ、メアリー……)」

【言わないでください。私もちょっと予想外過ぎて困ってるんです】

 ハハ、頭を抱えて屈んでいるメアリーが幻視出来るんだが……。

「じゃ、じゃあ、行ってくる」

 私はプライミッツを置いて、混沌と成りつつあるこの場を後にした。

 

~sideout~

 

~side霊夢~

 

「霊符《夢想封印 散》」

 スペルカードを発動して、自分の周囲に弾幕を撒き、近づいてきた傀儡兵を粉砕する。

「ハァ、この人形呆れるほど多いわね」

 さっきから倒しても倒してもすぐ増える……あれかしら、一匹見たら三十匹はいるって言うやつかしら?

「ハッ!……って、霊夢さん!余裕なら、こっちの方を手伝ってください!!」

「五月蝿いわね、こっちもこう見えても忙しいの……よッ!」

 妖夢が文句を言ってくるけど、私は霊力で強化した腕で放った裏拳で傀儡兵を粉砕しながら文句を言う。

「それに余裕云々だったら咲夜でしょ、能力的に考えて!」

「確かにそうだぜ!」

「二人の言うとおりですね!」

「え、何?今、私ディスられてるの?」

 私、魔理沙、妖夢で咲夜に対して文句を言いながら傀儡兵をそれぞれ粉砕して、咲夜は若干顔を引き攣らせながら傀儡兵を無数のナイフで無残な姿に変える。

「キミ達、もっと真面目にやってくれ!」

 と、クロノは私たちの態度が気に入らなかったのか文句を言ってくる。けど……。

「真面目に!って言われても、正直あの四人と一匹がほとんど粉砕してるから、緊張感が持てないのよね」

「……それを言わないでくれ。正直、僕も若干真面目に戦っているのがアホらしく思えるんだ」

 そう言うクロノの視線の先には、槍を持って傀儡兵に対して無双している美鈴さんと、傀儡兵を鎖型のバインドで纏め、一気に捕食するユーノ&プライミッツ、二人とも先程まで戦ってたの?と、疑問に思うくらいラブラブ雰囲気を醸し出しながら抜群のコンビネーションで傀儡兵を倒す、なのは&フェイトと若干空気になっているアルフがいた。

 ちなみに、フェイトとアルフはついさっきこっちに来た。

 その時、ピンチになったなのはを王子様のように助けたフェイトと、若干頬を赤らめたなのはが視界に映ったけど、私は気にしない!

 と、意識がそれちゃったわね。まあ、簡単に言うと私たちの目の前には混沌とした光景が広がっていると言う訳よ……。

 ハァ、まあ、あと少しだし頑張りますか。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

 あの混沌とした場所を抜け出し変態(サイコ)野郎の所へ向かう途中、目の前に生気を感じられない女が現れた為、私は物陰に隠れて様子を伺う。

「(メアリー、あれは……)」

【はい、人の形をしていますがホラーですね】

「(だけど、様子が変じゃないか?ホラーにしては憑依されている人間の生気が感じられない)」

【……あれはたぶん、術で素体ホラーに死体を被せたものだと思います】

「(……つまりあれか?人という着ぐるみを素体ホラーが着ているという事か?)」

【はい、そういう解釈でいいと思います】

 メアリーの言葉に私は苛立ちを感じながら、服から魔戒銃と魔戒剣を取り出し、銃身に剣を取り付け魔戒剣銃に変える。

「私自身もあまり褒められるような奴じゃないが……チッ、胸糞悪いことをするな変態(サイコ)野郎」

 私は物陰から一気にホラーに向かって駆けて行き、私の存在に気づいたホラーは、被っていた人間の身体を破き本来の素体ホラーとしての姿を晒す。

 私は魔戒剣銃を袈裟斬りで振るい、ホラーは翼を広げ飛ぶことで回避、そのまま飛行しながら蹴りを放ってくるが、私は上体を大きく反らし攻撃を避け、ホラーの身体が私の上を通過する時に魔戒銃剣の引き金を引き、法術で加工したソウルメタル製の銃弾をホラーに喰らわす。

「(メアリー、素体ホラーにしては丈夫じゃないか?)」

【術でホラーを強化しているんだと思いますよ。幸夜、早くトドメを】

「分かってる!」

 魔戒剣銃の切先を上に向け円を描くように回し魔戒剣銃の引き金を引き、狼騎(ロキ)の鎧を召喚、装着する。

 

【挿絵表示】

 

「貴様の陰我、私が切り裂く!!」

「ガアアアアアア!!」

 雄叫びを上げながら向かってきたホラーをカウンターで切り裂き、ホラーは跡形もなく消滅した……。

 私はホラーが消滅したことを確認してから鎧を解く。

「(……行くぞ、メアリー)」

【はい……さっさと、終わらせましょう】

 私は魔戒剣と魔戒銃を仕舞い、変態(サイコ)野郎の待つ最深部に向かって駆け出した……。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

「(ここか、メアリー?)」

【はい、ここが最深部です】

 素体ホラー以降、何の妨害もなく最深部まで到着することが出来、私たちの目の前には大きな扉があった。

「(さて、どうやって開けようか?)」

【普通に開ければ良いじゃないですか】

「(いや、普通に開けたら変態(サイコ)野郎に攻撃されるだろ?)」

【なら、スキマで行けばいいじゃないですか】

「(いや、それだと普通すぎじゃないか?)」

【……幸夜は一体何を求めてるんですか?】

 メアリーの呆れたような声色を聞き傷つく……いやだって……なあ?

【お前さんよ、普通に扉をぶっ壊して登場!で、いいんじゃないかな?】

「(SO✩RE✩DA)」

 と、長時間空気となっていたムルムルの案に賛成し、私は拳を構え腰を落とす。この時、メアリーが溜め息をつき、ヤレヤレと首を振っている姿が幻視できたが、私は気にしない!

「メテオール・ファウスト!!」

 魔力を纏わせた拳で『光速』の正拳突きを扉に放ち、周囲をボロボロにしながら扉を粉砕する。

「おーい、変態(サイコ)野郎、野球しようぜ」

 私は扉の破片を投げ、部屋の中に入いると……。

「流石にこれは予想外ですよ」

 頭を押さえしゃがみこんでいる変態(サイコ)野郎がいた。

「予想外というのは、素体ホラーを倒されたことか?」

「それもですが……。一番の予想外は、初っ端に石を投げつけられ、ピンポイントに頭にぶつけられたことですよ。何ですか、そのコントロールは?」

「まあ、あれだ……つまらん才能だ。それより、貴様は元法師で素体ホラーに術を施したのも貴様か?」

 頭を摩りながら立ち上がる変態(サイコ)野郎に警戒しながら答え、質問する。

「ええ、そうですよ。闇の術に魅了され、その術を習得していることがバレて法師の資格を剥奪されたんですよ」

「よくそれだけで済んだな」

「いえ、実際は私のような者を始末する影の魔戒騎士や法師が来たんですよ」

 変態(サイコ)野郎はその当時のことを思い出しているのか、仮面越しで微妙にわかりづらいが遠い目をしている。

「それで?」

「いや、闇の術と私本来の持つ能力で殺しましたよ。無論、法師の方は殺害後ヤりましたよ」

【チッ、クソ野郎が……この死姦短○○野郎!!】

 と、ニタニタと笑いながら変態(サイコ)野郎が言い、奴の言葉にメアリーが普段じゃありえない言葉で毒突く……まあ、色々と予想通りだな。

「おや、怒らないんですね?」

 私の様子が予想外だったのか、奴は笑いを止め首を傾げる。

「私は正義信者(潔癖症)じゃないからな。そこまで、怒りは覚えないさ」

 まあ、殺意は覚えるがな……。

「そうですか……ああ、そう言えば」

 変態(サイコ)野郎はポンと手を叩き、今思い出したかのように……。

「あの素体ホラーの人間の肉体、その殺した法師なんですよ」

 奴の言葉を聞いた瞬間、私は魔弾を装填済みのダブルアクションのリボルバー、コルト・キングコブラを取り出し、銃口を変態(サイコ)野郎に向け狙いを定め、引き金を引こうとすると……。

「ッ?!」

 手が勝手に動き奴に定めたはずの銃口が狐面を割り口腔へ侵入。

 そして、引き金が引かれ……。

【幸夜?!】

 とんでもない激痛を感じながら薄れゆく意識の中で、変態(サイコ)野郎は邪悪な笑みを浮かべていた……。




幽「Hi、以前コンタクトに変えたら、全然知らない男子の同級生に可愛いねと言われ、恐怖を感じメガネに戻した方、幽鹿です」

幸「Hi、狐面を外すと初見の人に驚かれる方、幸夜です」

幽「皆さん、大変長らくお待たせしました!」

幸「読んでくれている方、本当にすまなかった」

幽「これからは、なるべく早く更新できるように頑張ります!!」

幸「ですので、どうか見捨てないでください……」

幽「よろしくお願いします!!」

幸「それでは皆様、次回、出会うまで……」

幽「さようなら~」


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第24話~不死~

投稿しました!

前回より早く投稿できたので、嬉しいです!

次回もこれ位のペースでやれるよう頑張ります!

では、第24話どうぞ!


 

 なのは達が魔力炉の封印を終えアースラに戻ってきた頃、アースラ内は慌ただしくなっていた。

「あ、アリサちゃん。一体どうしたの?」

「な、なのは……幸夜が、幸夜が……」

「幸夜君がどうしたの?!」

「あ、あれ……」

「なのはさん達、見ては駄目!!」

 なのはは自分たちが時の庭園に行く前より慌ただしくなっているアースラ内に驚き、近くにいたアリサに聞くと、アリサは顔面を蒼白にしながらモニターを指差し、リンディがなのは達を静止しようとするが遅かった……。

 なのは達の視線の先には、脳漿をぶち撒け血溜まりの中で倒れている幸夜がいた。

「い、イヤアアアアアア!!!!!!」

 モニターの映像を見て、なのはは目の前の光景を認めたくないのか、顔を手で覆い叫びながらその場にしゃがみ、フェイトはショックでその場に静かにへたり込む。

『フフフ、私は法術の他に天から頂いた才能(とくてん)がありましてね。その能力は悪意を操ること……私に対しての悪意ある攻撃は消せたり、返せたりできるんですよ。だから、銃弾は私ではなく、貴方を穿ったんですよ。まあ、説明しても聞こえてはいませんか』

 アルバートは楽しそうに歪んだ表情で笑いながら、ゆっくりと幸夜の死体へと近づき、幸夜の着けている狐面を外す。

『おや、これはこれは……所謂、男の娘と言うやつですか?』

 と、幸夜の素顔を見たアルバートは、何かを思いついたのか歪めていた表情をさらに歪め舌舐りをする。

『私は男色ではありませんが……面白そうです、ヤりますか』

「エイミィ!」

 幸夜の服に手をかけ始めたアルバートに、リンディは次に何が起こるかを理解しエイミィにモニターを消すように指示しようとするが……。

『まあ待て、お主たちよ』

 幼い声が聞こえ、アルバートは服に手をかけるのを止め振り返り、リンディはエイミィに指示するのを止め、アースラ内の全員がモニターを見る。

『貴方はさっきの……』

『儂は眷属のムルムルじゃ!キラッ☆』

『そうですか……それで?』

『つ、冷たい反応じゃの』

 横ピースをしながら名乗ったムルムルを冷たい目で見るアルバートに、ムルムルは頬を引き攣らせる。

『まあ、お主のその反応は大目に見てやろう!と、話がそれてしまった……儂はな、その倒れておる者と契約しておってな』

『それが?』

『契約の内容はまた理不尽でな、能力の制限、儂が死んでもそやつは死なんが、そやつが死んだら儂も死ぬ……。まあ、それ以外は基本自由じゃがな』

『だから、それが何だって言うんですか?!』

 ムルムルの意図が解らない為か、アルバートは苛立ち声を荒らげる……。

 それは、前世組を除くアースラ内にいる者たちも同じだった……。アルバートのように声を荒らげる者はいないが、ムルムルに対して何を言ってるんだコイツは?と、言ったような視線をモニター越しに向けている。

『おや、理解できなかったか?なら、そんなお主にも解り易いように説明してやろう』

 と、小馬鹿にしたような態度で言うムルムルに対して、我慢の限界を振り切ったのか、アルバートは幸夜の元を離れ、ムルムルを殺そうと近づくが……。

あやつが死んで、何故儂が生きておるんじゃ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)?』

 その言葉にアルバートは動きを止め、そんな馬鹿な……ありえない!といった気持ちを抱きながら、幸夜の死体がある方を振り向くと……。

『なあ、酷いじゃないか……』

『ッ?!』

『痛いんだぞ、苦しいんだぞ……なあ、酷いじゃないか……なあ?』

 ゆっくりと、血溜りの海から立ち上がる幸夜に全員が息を飲んだ。

 ありえない、ありえてはならない。それは、そういう光景だった。

 |死んだはずの人間が生き返る(・・・・・・・・・・・・・)、この世ではありえない光景、誰もが否定したくなる光景があった。

 幸夜はゆっくりと、まるでゾンビのようにアルバートに向かっていく……。それは、あまりの恐ろしさに、前世組以外のアースラ内にいる者が顔面蒼白になるくらいの恐ろしさで、アルバートは恐怖のためか、尻餅をつき後ずさる……。

 そして、そんな恐怖で支配された空間で妹紅、輝夜、霊夢が口を開く。

「覚えておいた方がイイぜ、あれが不死者(死ねない)奴の恐怖だ」

「それで幸夜の言ってる苦しみが、不死者(死ねない)奴の特典(呪い)よ」

「そして、それが聖遺物が……永劫破壊(エイヴィヒカイト)がもたらすものよ」

 三人はアリサとのび太の方に視線を向け、二人はその言葉に蒼白になりながらも、静かに頷いた……。 

 

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

「痛いんだぞ、苦しいんだぞ……なあ、酷いじゃないか……なあ?」

 聖遺物と私自身の能力によって再生し、ゆっくりと変態(サイコ)野郎に近づくと、変態(サイコ)野郎は私に対する恐怖のせいか尻餅をつき後ずさる。

 おいおい、さっきまでお前はそんなキャラじゃなかったろ?どうした、そんなに今の私が怖いのかァ?そんなに怖がらなくてもいいじゃないかァ。

「来るな、来るな……来るなあァァァァァァ!!」

 変態(サイコ)野郎は狂ったように法術を発動し、光弾を放ち私に直撃し、それを見た変態(サイコ)野郎は安堵した様子になるが……。

「な、何故だ?!ど、どうして貴様は死なないんだ?!何故、私の能力が使えない?!」

 無傷の私を見て、変態(サイコ)野郎が安堵した表情がまた恐怖に潰される。それより、貴様は何故死なないとか言ったか?それはな……。

「貴様より魂の格が、質が違うんだよ……」

「ハァ?……ッ、ギャァァァァァァ?!」

 私の言葉に変態(サイコ)野郎は気の抜けた表情になるが、その顔は一瞬で苦痛に歪む。さっきから、こいつ表情がコロコロ変わるなァ……。まあ、苦痛の原因は私がコイツの両脚を踏み潰したのが原因だが……。

 私は痛みで叫び続ける変態(サイコ)野郎にアイアンクローをかまし、さらなる痛みに変態(サイコ)野郎は絶叫し、暴れだすが……。

「五月蝿い、終焉開始(エンド・オン)終焉終了(エンド・オフ)」 

 終焉の能力を使用した後、突然静かになった変態(サイコ)野郎を担ぐ。

「お疲れ様じゃったな、お前さんよ」

「お前は空気だったな馬鹿(ムルムル)

 私はスキマを開き、ムルムルと共にアースラに移動した……。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 アースラに戻った私を待っていたのは、化物を見るような視線をする奴らと、心配してくれていた人たちだった……。

 なのは達には泣きながら抱きつかれ、霊夢さん達からは呆れられ、リンディさんと姉さんからは説教された……解せぬ。

 とりあえず、リンディさんに死んではいない変態(サイコ)野郎を渡し、プレシアとアルバートが意識を取り戻すまでの間、私たち協力組は自由にして良いと言われた為、私は霊夢さんと世間話をしている。

「フフフ、そんな事があったのね。……ところで、幸夜さん?」

「うん、どうした?」

「今回、よくあの変態を殺さなかったわね?普段の幸夜さんだったら殺してたでしょ」

「……いや、あの変態(サイコ)野郎は殺したさ」

「え?でも、あの変態は生きて……あ、そう言うこと」

 コテッンと可愛らしく首を霊夢さんは傾げるが、私の言葉の意味に気づいたのかポンと手を叩く……まあ、意味が分かってなくてもそろそろ……。

「か、か、か、艦長大変です!!」

「ど、どうしたの?」

 女性の局員が慌てた様子で現れたことに、リンディさんは驚きつつも対応する。

「あ、アルバート・ゴードが、あ、赤ん坊に!!」

「「「「「ハァ?」」」」」

 女性局員の発言にアースラ内の空気が凍り、可愛い霊夢さんが私をジト目で見てきた。

「と、とりあえず来てください!!」

「え、ええ……」

 リンディさんは女子局員に連れられ変態(サイコ)野郎がいる場所へと向かっていった……。

「それで幸夜さん、一体何したの?」

「簡単さ、奴の記憶、歩き方、言葉の発し方、文字の読み書き、記憶する能力を終焉(こわした)だけさ……私の能力のルールは知ってるだろ?」

「ええ……。終焉(こわした)物は幸夜さんしか創造(なお)せない……ハァ、あの変態ご愁傷様ね」

「ああ、アイツはずっと体がデカい赤ん坊のままさ……。ちなみに、アイツの能力も終焉(こわして)おいた」

「だからあの時、能力が使えないとか叫んでたのね」

「そう言うこと。まあ、とにかく……」

「「一件落着ってことね(だな)」」

 私と霊夢さんはお互いに顔を見合わせ、微笑んだ……。

 

~~~~~~

 

~~~~~~

 

 今回の事件の後日談……。

 簡潔的に言うと、テスタロッサ一家は裁判を受けることになり、変態(サイコ)野郎は、本来ならそのまま死刑囚として処刑されるはずだったが、赤ん坊状態になったため特別施設へ収監され、フェイトの元となった人物……アリシア・テスタロッサはプレシアの強い希望により彼女たちの故郷へ埋葬することになった。

 そして今日、私たちは裁判を受ける為に地球から離れるフェイト達の見送りに来ており、今なのはとフェイトがお互いのリボンを交換し、涙を流しながら別れを惜しんでいる。

「フム、実に感動的な別れだな」

「確かに……って、お前もミッドチルダに来るんだろ?」

「あ、そう言えばそうだったな……」

「素で忘れてたんかい?!」

 と、妹紅にツッコまれる。だってしょうがないだろ?その件を家族に説明したり、謝罪してくるリンディさん、クロノ、エイミィさんを宥めたり……色々と大変だったんぞ?

 ちなみに私がミッドチルダに行く理由は、アースラ内にいた出世を狙う局員の一人が私のことを上に密告《チクリ》やがったせいだ。そのせいで私は、管理局(笑)があるミッドチルダに向かうことになった。

 まあ、その密告者は今は土の中だがな……。

「幸夜そろそろ行くぞ」

「分かった、妹紅」

 妹紅に言われ、フェイト達がいる場所に向かうとなのは達が別れの挨拶をしていた。さて、私も一応やっておくか……。

「それじゃあ……姉さん、霊夢さん、魔理沙、妖夢、PAD長、後のこと……特に父さん母さんのことを頼む、本当に頼む。それで、アリサとのび太は私の言ったことをやるんだ。そうすれば、聖遺物の次の位階に達するためのきっかけは掴めるはずだ。あと、のび太。あのいじめっ子達がいじめてきたら教えたことをやれ」

「ええ、後は任せてください」

「幸夜さん、ミッドチルダのお土産よろしく」

「私は珍しい魔導書だったら何でも良いぜ」

「私はティーセッ……って、誰がPAD長だァァァァァ?!」

「さ、咲夜さん落ち着いて下さい!!こ、幸夜さん、私は料理本が良いです!!」

「言われなくてもちゃんとやるわよ!それで、きっかけを掴むだけじゃなくて、その位階に達してやるわ!!」

「僕も言われた通りやるよ。で、でも流石に金的を蹴るとか目潰しはちょっと……」

 と、姉さんはお淑やかな笑顔で、霊夢さんと魔理沙はいつも通りの様子で、咲夜は急に暴れだし、妖夢はそんな咲夜を羽交い締めにしながら別れの挨拶を、アリサは挑発的な様子で、のび太は若干顔を引きつらせながら言う……。

 てか、別れの挨拶してるの姉さんだけじゃね?他の皆はお土産の催促してるだけじゃね?それとのび太、金的、目潰しじゃないぞ。目潰しからの金的、急所攻撃の2コンボだ。

「お、お前ら、幸夜は観光に来るわけじゃないんだぞ。まあ、咲夜のPADだけは私が買ってきてやる」

「ま、まあ、お土産は買えたら買ってくるさ……咲夜はミッドチルダ製のピーエーディーでOK?」

「だからPADじゃないって言ってるでしょうがァァァァァァ!刺す、刺す、ぶっ刺す!!」

「さ、咲夜さん。その出したナイフを戻して、危ないですから!は、早く、早く逃げてください!!」

「「さ、サラダバー!!」」

 鬼の形相でナイフを取り出し始めた咲夜に妖夢は慌て始め、流石におちょくり過ぎたと妹紅と念話で反省会をしながら転移魔法を使う。

「幸夜ァァァァ!帰ってきたら覚えておきなさいよォォォォォォォ!!」

「キャァ、サクヤニランボウサレル、エロドウジンミタイニ」

「【エロ同人みたいに幸夜が?……グフッ】」

 最後までギャグを忘れないのが私だ。それと妹紅にメアリー、同じような反応をするな、怖いから、その表情怖いからと思いながら私はアースラに到着した。




幽「Hi、最近カップラーメン生活の方、幽鹿です」

幸「Hi、最近油揚げ生活の方、幸夜です」

幽「今回は早く投稿できました!」

幸「お前にしては頑張ったじゃないか」

幽「ああ!あと、もう一つ言いたいことがあるんだ」

幸「何だ?」

幽「読者の皆様……ねぇねぇ、新しい主人公が出ると思ってたのに幸夜が復活してNDK?ねぇ、NDK?」

幸「死に晒せ、作者」

幽「パザムッ?!」

幸「……すみません、うちのバカが大変失礼なことをしました……。皆様、次回もよろしくお願いします。では」


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第25話~質問会前~

お久しぶりです!久々の更新です!
色々とお待たせしてすみません!色々と忙しく中々投稿することができませんでした!!
色々と遅い作者ですが、これからもよろしくお願いします!!
では、短いですが……第25話どうぞ!!


 管理局があるミッドチルダに来てから早数週間……。

 私は携帯から流れるラジオ体操の曲を聞きながら、泊まっている管理局の宿舎で日課である筋トレを行っているが……。

 ハァ、いつになったら管理局(笑)の私に対する質問会もとい尋問会が行われるんだ?もう数週間だぞ?私には小学校があるんだぞ?テスタロッサ家の裁判があるからと言ってこれは長すぎじゃないのか?

「……ハァ、暇だ」

 この世界でやりたいこと全てやってしまったからなぁ……。霊夢さんにミッドチルダ産の紅白まんじゅう、魔理沙にミッドチルダ産の魔導書、咲夜にミッドチルダ産のティーセットとPAD、妖夢にミッドチルダさん著者の料理本、アリサにツンデレとはという題名の本をお土産で買い、のび太専用いじめ対策(物理)の本を筆跡したし、少しこの世界の人間がどの程度の強さかを知る為にゴスロリ、スク水、チャイナ服、ミニスカ、軍服、腋巫女服、メイド服を着て大勢の男達にわざと襲われ、相手をボコボコにしたり……後半、ろくなことをしてないな私。

「まぁ、溜息を吐いていても仕方が無い。とりあえずシャワーでも浴びるか」

 呟くように言いながら先程までの筋トレで掻いた汗を流す為、服を脱ぎバスルームへ向かうが……。

「幸夜、管理局のお偉いさんの質問会の時間が決まったわ……よ……」

 タイミングが良いのか悪いのか、尋問会の時間を連絡しに来た鈴仙が扉を開け入って来た……。

 昔から思うがコイツの私に対するハプニング多くないか?前世の時も私が着替えている時とか、私が≪自主規制≫してる時とか絶対遭遇するんだよなぁ。

「おい鈴仙、大丈夫か?」

「………」

「おい、鈴仙?」

 コイツ、さっきから微動だにしないぞ?何か心配になって来たんだが……本当に大丈夫なのか?

「ぱ……」

 ……ぱ?何を言ってるんだ鈴仙(ざやく)は?

「ぱ、ぱ、ぱ、ぱおぉぉぉぉぉぉん?!//////////」

「あ、鼻血出して倒れた」

 顔を真っ赤にしながら奇声を発して、鼻血を噴出させながら気絶した鈴仙を見て溜息を吐く。

「ハァ、ゆっくりとシャワーも浴びれないのか……」

 私は鈴仙の鼻に丸めたティッシュを勢いよく詰め――この時、鼻から変な音が聞こえたが気にしない――スキマを開き、皆の居る場所へ投げ捨てた……。

「……ふぅ、私も行くか」

 私は鈴仙と同じ場所……ではなくバスルームの方へと向かった。

 

~sideout~

 

~side妹紅~

 

「……鈴仙は何故あんな状態になってるんだ?」

「ハァ?そんなこと言われても私が知るわけ無いだろ……オイ、バカぐや。お前、聞いてこいよ」

「ハイハイ、分かったわよ。焼き鳥」

 鼻にティッシュを詰め、何処か遠い場所に意識を飛ばしている鈴仙を見てクロノが問いかけてくるが、私が知るわけ無いのでそのまま輝夜にパスし、輝夜はだるそうに返事をしてから鈴仙に近づく……って、コイツ今、私の事焼き鳥って言わなかったか?

「おーい、鈴仙」

「………」

「座薬てば~」

「………」

「おい、駄兎」

「………」

「……グスッ」

 輝夜は自分の呼びかけに対して反応を示さない鈴仙に対して、段々口が悪くなっていく……。おいおい、姫様(笑)を無視してやるなよ鈴仙。そいつ若干涙ぐんでるぞ。

「……妹紅」

「ヘイヘイ、分かったよ」

 クロノに視線を向けられた私は、肩を竦めてから輝夜と鈴仙の所に向かい……。

「とりあえず邪魔だ、バカぐや!」

「ウボラッ?!」

「失礼しま……キャッ、え、な、何?!」

 邪魔な輝夜を蹴り飛ばし、鈴仙の前に立つ……。この時、テスタロッサ家が入室し、蹴り飛ばされ壁にめり込んでいる輝夜を見て、フェイトが可愛い悲鳴を上げ尻餅をつき、アルフとプレシアが顔面を引き攣らせていたが、私は気にしない。

 さて、とりあえずはこの兎をどうにかしないとな……あまり乗り気はしないが……。

「てってれ、八意印のきつけ薬~」

 私は懐からドス黒い色をした液体の入った薬瓶を取り出し、蓋を開ける。

「うわ、クサッ!」

 蓋を開けただけでこの威力……鈴仙の鼻の下に塗ったらどうなるんだ?と、思いつつ指に液体を付け鈴仙の鼻下に塗り……。

「鼻が、鼻がひん曲がるぅゥゥゥゥゥゥ、な、なんてことするのよォォォォ?!」

 鼻を押さえ床を転げ回りながら文句を言う鈴仙と言う謎の光景が出来上がった。一体誰得な光景なんだ?

「妹紅、一体何なの?!そんなに幸夜のぱおーんを見た私が憎いの?!」

「いや、今の年齢の幸夜のぱおーんは平安時代の時に腐るほど見た……って、鈴仙お前……」

「え、あ、ち、違うのよ!あ、あれは事故なの!そう事故!だ、だいたい幸夜のぱおーん何て見たくなかったわよ!むしろ私が被害者だし!そうよ、あんな汚いもの見せられた私が被害者なのよ!」

「でも本音は?」

「そ、その……あんなにマジマジとは見たこと無かったし、あんなに小さくて可愛くて、綺麗で、そ、その、そう言うことを妄想して……ちょっと興奮した」

 駄目だコイツ……早く何とかしないと。と、鈴仙のキャラ崩壊に頭を抱えていると……。

「フム、私が此処に来るまでに何があったんだ?」

 後ろから声が聞こえ、私は鈴仙のキャラ崩壊から逃避をしたいが為に振り向くと……。

「うん?皆固まって如何した?」

 狐面を付け、平仮名で「こうや」と書かれた名札が胸辺りにある旧スク水を着た幸夜が立っていた……。

「「「「「「いや、お前が如何した?!」」」」」」

 私達のツッコミと言う名の声は重なって、部屋中に鳴り響いたのは言うまでもない……。

 

~sideout~

 

~side幸夜~

 

「「「「「「いや、お前が如何した?!」」」」」」

 私が部屋に入り声を掛けた直後、私の恰好を見た皆にツッコまれた……解せぬ。

「どうしてスク水姿なのよ、この変態!!」

「いや、私がこんな恰好なのは全部お前のせいだぞ、鈴仙」

「ど、如何いうことよ」

 いや、如何いうことよって……気づけよ。

「お前の鼻血で服が汚れて駄目になったんだよ」

「……あ」

 おい、なんだその「あ」って、「あ」って……。

「で、でも、別にスク水じゃなくても良いじゃない!やっぱり、幸夜は変態よ!」

 コイツはそんなに私を変態にしたいのか……。だいたい、この姿の何処が変態だと言うんだ?一応、これも仕事着なんだが……。

「ゴホン。お取り込み中悪いが、少し良いか?」

「何だ、クロノ?」

 と、鈴仙にボコスカ言われていると、クロノが鈴仙と私の間に割って入り、私は意識をクロノに向ける……この時、私の事をボコスカ言っていた鈴仙は私とクロノの会話の邪魔になると考えたであろう、妹紅達によって回収されていった……うん、輝夜?奴は壁に埋まったままだが?

「幸夜、とりあえずまともな服に着替えてくれないか?例の質問会が、あと数十分で始まるんだが……」

 そうなのか……だが、今私が持っているまともな服と言えば……。

「なあ、クロノ……まじかるーって言いながら人を爆殺させる魔法少女が着ているゴスロリ服か、魔女の鉄槌(マレウス・マレフィカム)と呼ばれた者が着ている軍服……どっちが良い?」

「僕はまともな服を着てくれと言ったんだが?」

「悪いな、この二着しかない」

 私が出した二つの服を見てクロノの眉間に皺が寄る……。仕方が無いだろ、この二着以外であと持っている服と言えば鈴仙の血が染み込んだ服と部屋着として持ってきたジーパンと黒Tシャツ……流石に失礼すぎじゃないか?

「ハァ、その二着しかないのなら軍服の方にしてくれ……ゴスロリ服の方は何か嫌な予感がする」

 お、クロノは鋭いな。ゴスロリ服を着ていた場合は尋問会中は虚ろな瞳で、まじかるーとしか言わないつもりだったしな……。

 ちなみに、これと同じようなことユーノに試したら効果は抜群だった。最初は根気よく話しかけてきたユーノだったが、まじかるーとしか言わない私に対して段々と精神崩壊を起こし、最終的には光に溢れていた瞳は虚ろな瞳に変わり、私が着ていた服とは違う魔法少女服を着せると……まじかるー♥としか言わない人間に変わってしまった……。すまんユーノ、後で絶対治すからな……。

「それじゃあ、早く着替えてくれ。そろそろ始まる時間だ。更衣室に案内する」

「ヘイヘイ」

 クロノに促されるように私は更衣室の方へと向かって行った……。

 




幽「Hi、最近某14歳神作品のキチヒロのような人物を出したいと思ってる方、幽鹿です」

幸「Hi、最近登場人物全員キチってるって素晴らしくね?と思ってる方、幸夜です」

幽「いやー、やっと投稿できました~」

幸「長い長い、遠回りだったな……」

幽「何故あんなにもキチヒロに意識がいってしまったのか……」

幸「お前は昔からそうだろうが……」

幽「どういうこと?」

幸「お前は友人たちが選ばないような、狂ってる系とか何かが欠陥している系が好きだもんな」

幽「む、昔からそういうのに惹かれるんだからしょうがないだろ?!」

幸「……まあ、頑張れ」

幽「ねぇ、なにその間は?」

幸「……それでは皆様、次回、出会うまで……」

幽「さようなら~……って、ちょっと待て!まだ話は終わってないぞォォォォォ!」


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