ガタノゾーア in FGO (深淵を泳ぐもの)
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ガタノゾーアのステータス

クラス:降臨者(フォーリナー)

真名:ガタノゾーア

マスター:藤丸立香

性別:?(現在は女性になっている)

身長:本来は200m

体重:本来は20万トン

出典:ウルトラマンティガ

地域:ルルイエ

属性:混沌・悪・闇

好きなもの:何かを滅ぼすこと

嫌いなもの:大いなる闇にも屈しない人の光

天敵:グリッターティガ

 

ステータス

筋力:B

耐久:EX

敏捷:A +

魔力:A + +

幸運:C

宝具:EX

 

クラススキル

 

領域外の生命:EX

ガタノゾーアが宇宙の外側、つまり『外宇宙』から来たことを示すスキル。外見と名前で二体の『外の神(クトゥルフとガタノソア)』が元となっていると思われるガタノゾーアはこのスキルをEXで持つことができる。また、このスキルを持つものに対して星の抑止力が働くことはない。

 

正気喪失:E −〜EX

自分の姿を見たものを狂気に陥りさせることが出来るスキル。現在幼女の姿をしているガタノゾーアではE−だが、宝具で戻った本来の姿及び高ランクの千里眼等でガタノゾーアの本当の姿を見た場合、ランクがEXへと跳ね上がり、見たものは発狂するか石になるかのどちらかもしくはその両方になる。本来の姿であれば写真や精密に書かれた絵でも効果を発揮する。

 

女神の神核:D−

邪神であり、一応現状は女性だからとついたスキル。当然ランクは低く、宝具を発動すると効果をなくす。

 

神性:EX

邪神とは言え神そのものであるガタノゾーアはこのスキルをEXで持つことができる。

 

邪神:EX

他のフォーリナーと違いその身に宿したのではなくそれそのものであるガタノゾーアだけが現状持ち得るスキル。このスキルを持っていると自動的に神性がEXランクになる。また、EXランクともなるとその気になれば1日とかからず、地球の生命体全てを滅ぼすことができるほどの力を持つ。

 

対魔力:EX

魔術に対抗する抵抗力。グリッターティガと同等かそれ以上の光を纏った魔術でのみガタノゾーアにダメージを与えられる。

 

スキル

 

石化:EX

ガタノゾーアの本来の姿を何らかの方法で見た者は発狂するか石になるかのどちらか二択もしくはその両方になる。サーヴァントになった事により、元となった二体の邪神の片方の逸話がスキルになったもの。幼女の状態のガタノゾーアを見ただけでは発動しない。

 

擬人化:EX

文字通り。ガタノゾーアが人になる際についたスキル、と言うより所謂大きすぎる人外がサーヴァントとして呼ばれる際は基本ついてくるスキルであり、大抵EXランクで取得している。外見は本人の意思で変えられるが現状はスク水幼女となっている。これについては、ガタノゾーア曰く小回りが利くからとの事。

 

魔術(クトゥルフ神話):EX

二体の邪神が元となっていると思われるガタノゾーアは、『そちら側』の魔術を使うことができる。こちら側の魔術とは一線を凌駕したものが多い。

 

邪神召喚:A +

元となった二体の邪神(特に片方が)その神話内でも結構上の存在であり、擬人化して言葉を発せられるようになった事もありガタノゾーアは魔術(クトゥルフ神話)を使用することによって邪神を召喚することができる。が、一説によるとその神話内でも属性があり対立が起こっているらしく、元となった邪神が両方とも水属性である為、対立している風属性の邪神は召喚することができない。また、万物の王や門にして鍵と呼ばれるガタノゾーアの元となった邪神よりの圧倒的に上にいる者は召喚できない。

 

宝具

 

旧支配者(クトゥルフ・オブ・ガタノソア):ランクEX 種別:対星宝具

ガタノゾーアを本来の姿に戻し、あらゆるステータスがEXへと跳ね上がる。効果としてはそれだけだが、本来の姿のガタノゾーアが現れるということは、世界が闇に包まれるのと同義であり、地球はガタノゾーアの放つシャドウミストに覆われあらゆる生命は絶滅を待つだけとなる。が、一応ガタノゾーアがやろうとしなければそうなることはない。また、幼女の状態でも本来の力の一端は使うことができる。この宝具を発動するとルルイエが浮上し、何体ものゾイガーが出現する。ゾイガー達もガタノゾーアの意思で動く為ガタノゾーアにその気がなければ破壊活動を行うことはない。

 

大いなる闇(ガタノゾーア):ランクEX 種別:対人(自身)宝具

常時発動型の宝具。グリッターティガ同等かそれ以上の光を持つ攻撃でないと魔術にしろ物理にしろ大したダメージになることはない。また、精神汚染や魅了などを完全に無効化する。どこぞの尼の宝具や英雄王の持つ乖離剣ですらガタノゾーアに届くことはない。

 

詳細

 

地球そのものを闇で包み、光の巨人であるウルトラマンティガを一度は倒し、そして人の持つ光に敗れた邪神。その昔クトゥルフがイダ=ヤアーとの間に子を儲けた際にクトゥルフが面白半分でガタノソアと自分の一部を混ぜ合わせ生み出した存在。立場的にはガタノソアの弟(息子)でそれ以外の兄弟神からしたら兄(父)のようなもの。クトゥルフの一部が混じっているからかクティーラの存在を認知している。また、クトゥルフからルルイエの一部の管理を任されており、ティガ本編で浮上したのはその任された一部だったりする。クトゥルフたちが封印される中、ガタノゾーアは眠っていた為難を逃れた。故に、目覚めるとルルイエの一部と共に浮上する。因みにゾイガーはガタノゾーアがダゴンやハイドラを独自に弄ったもの。

 

戦闘においては基本シャドウミストと触手による蹂躙スタイル。接近戦もできなくもないが、現状幼女の姿を取っているため手足のリーチが短いが故に自分から仕掛けることはあまりない。紫色の光線を放つこともできる。

 

デモンゾーアに関する出来事は怨念だったこともありあまり覚えてはいないが、再びティガに負けたことだけは鮮明に覚えている。二度もティガに負けたものの特に恨みはない。自分が弱く、相手が強かった、ただそれだけ。




オリジナル設定は盛ってこそだと思うのだよ。原作でどういう存在及び立場なのかあまり語られなかったためにその辺を考えてみました。私が忘れているだけかもしれませんがね。


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特異点F
邪神の目覚め


再スタートというわけです


一般枠の募集に見事受かり、カルデアへとやって来た藤丸立香は自分以外の47人のマスターの補欠的な扱いになるはずだった。しかし、カルデアの管制室で起きた謎の爆発とそれによって引き起こされた火災。運良く管制室にいなかった彼女は、自分を先輩と呼ぶ少女……マシュ・キリエライトが心配になり管制室へと向かった。そこで瀕死のマシュと共に、突発的なレイシフトに巻き込まれ、特異点Fへと飛ばされてしまい、デミ・サーヴァントと化した後輩のマシュと途中合流したオルガマリー・アニムスフィアと共に襲いくる骸骨兵を退けて、ようやく初めてのサーヴァント召喚を行おうとしていた。

 

願わくばとても強いサーヴァントをと願いを込めて、詠唱なしでサーヴァントを召喚するための道具である聖晶石を召喚サークルに投げ込む。光が弾け、それが一箇所に集まり人の形をかたどる。光が治るとそこにいたのは幼女だった。スク水を着て、その背にはデカイアンモナイトの様な貝殻を背負っている。その幼女が口を開いた。

 

「はじめまして。()はクラスフォーリナー。真名は……聞きたいか?」

 

「えっとできればお願いしたいかな」

 

「そうかそうか。なら言おう。ガタノゾーアだ。よろしくな。人間(マスター)

 

ガタノゾーアは薄く笑みを浮かべながらそう言う。だが、見た目が幼女なため、あまり強そうには見えない。だからこそ、立香は何ができるか聞いて見ることにした。

 

「ほう。妾の実力を疑っていると見える。と言ってもこの姿では当たり前か。なら、今から飛来する矢を全て防ぎきってみせよう」

 

「え?」

 

上を向いたガタノゾーアにつられ立香も上を見ると、キラリと何かが光り大量の矢が降り注いできた。マシュが、立香を守ろうと前に出ようとするが、それよりも早くガタノゾーアは息を吐くと共に黒い霧の様なもの……シャドウミストをここにいる4人を覆うように吐き出し、そのシャドウミストに触れた矢は例外なく破壊された。

 

「どうだ?妾の力を見ての感想は?」

 

吐き出したシャドウミストを吸い込みながら立香にそう尋ねるガタノゾーア。その言葉にああついでにと付け加え、

 

「そこでこっちの様子を見ている奴らも片付けてやろう」

 

そう言って、目から紫色のビームを放ち、影でこちらを覗いていた2人を消滅させるガタノゾーア。そして、先ほどの言葉を再び立香に投げかける。

 

「すごい!すごいよガタノゾーア!こんなにちっちゃいのに!」

 

「勘違いするな。小回りが利いて動きやすいからこの姿になっているだけだ。本来の妾はもっとデカイ」

 

「そうなの?でもその背中の貝殻は重いんじゃ」

 

「いや、とても軽いぞ?なんなら持ってみるか?」

 

そう言うならと貝殻を少し手で下から押してみる。想像以上に軽かった。立香は驚きのあまり、マシュやオルガマリーにも持ってみなよと進める。

 

「わっ!本当に軽いですね。みた感じ重そうなのに」

 

「ね。私もびっくりしたよ。所長もどうです?」

 

しかし、オルガマリーはその呼びかけに応えず、なにやら考え事をしているようだ。

 

「ガタノゾーア?何処かで聞いたことあるような」

 

「所長?どうかしました?」

 

「え?あ、いえなんでもありません。それよりもサーヴァントは召喚できたのだから先に進みましょう」

 

「なら、俺も連れて行ってくれや」

 

突如聞こえた知らない男の声に、ガタノゾーア以外が辺りを見渡すと、近くの瓦礫の中から青いフードの男がこちらにやってきていた。警戒態勢に入りながら、オルガマリーが代表して話しかける。

 

「貴方は?」

 

「俺はキャスターのサーヴァントさ。この聖杯戦争で召喚された。真名は、まあ教えてもいいか。クー・フーリンだ」

 

「貴方があの光の御子。なぜ、私たちに近づいてきたのですか?」

 

「あー堅苦しいのは苦手だから、いつも通りでいいぞ?で、俺があんた達に近づいた理由はこの聖杯戦争は色々おかしくなっちまったからな。原因であろう奴を倒そうにも俺1人じゃ力不足で、『泥』によって黒化したサーヴァント程度ならなんとかなるんだが。現にランサーの野郎は倒したぜ?まあ、でも結構苦戦しちまったし、やっぱ冬木でキャスターは無理だわ」

 

「そうなのね。こちらとしても戦力が増えるのは嬉しいし、立香、仮契約でもしなさいな」

 

「え、私がですか?」

 

「そうよ。マスター適性があるのは貴女だけなんだから」

 

「わかりました」

 

オルガマリーにそう言われ、クー・フーリンと仮契約を結ぶ立香。その様子を見て、ガタノゾーアはクー・フーリンに手を差し出した。クー・フーリンはそれをいまいち理解できていなさそうな表情で見つめる。それを感じ取ったガタノゾーアはこう言う。

 

「握手……と言うのだろう?仲間になったものにはする行為だと思っていたが、違ったか?」

 

「ああ、そう言うことか。……本当に信頼していいんだよな?」

 

「ああ、勿論だ。“光”の御子、クー・フーリン」

 

 

そうして、2人は手を握り合った。



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vs.アーチャー

それから、クー・フーリンの言う原因がいる場所へ向かう途中、マシュがクー・フーリンとの特訓を得て、宝具を本物では無いものの発動できる様になったことと、ルーン魔術を使って敵をおびき寄せることによって戦闘経験を相当数積むことになったこと以外は特に何もなかった。そして、もう少しで目的地だと言うタイミングでそいつは現れた。

 

「おっと、これ以上行かせるわけにはいかないな」

 

「チッ!アーチャーテメー、まだセイバーのイエスマンやってんのか?」

 

「え?あれがアーチャー?」

 

クー・フーリンの言葉にそう反応したオルガマリー。しかし、それもしょうがないだろう。なぜなら、今現れたアーチャーはその手に双剣を持っているのだから。これでアーチャーとは一体どう言うことだろうか。

 

「私は別にイエスマンをやってるつもりはないのだがね。だが、敗者は勝者に従うのは当然だろう?だから、これ以上先に行くと言うのなら、貴様らを始末させてもらう」

 

「ハッ!なら決着つけるとしようか!今回俺はキャスターだが、だからと言って遅れを取るつもりはねえ。嬢ちゃん達、行くぞ!彼奴は多彩な武器を投影してくるから気をつけろ!」

 

そう言って、アーチャーに突貫するクー・フーリン。それを見て、キャスターって後方支援するものじゃ無いの?と思う立香。それはオルガマリーも同様の様で、自分の常識を改めなくちゃねなんて言っている。

 

「クソ!盾のサーヴァントと言うのは思いの外厄介だな!!」

 

そう叫ぶアーチャー。実際、先程から彼の攻撃はことごとくをマシュによって防がれている。クー・フーリンとの特訓が生きている様だ。その上、キャスターであるクー・フーリンとの戦闘は今回が初であり、クー・フーリンの行動全てが新ネタなのだ。クー・フーリンがランサーであったなら、もう少しまともにやりあえたかもしれないが、キャスターの彼は持ち前の杖を槍の様に使い、その攻撃の隙をルーン魔術で補っているため、徐々にアーチャーは押され始める。

 

「なら、これはどうだ!」

 

後ろに大きく飛び退き、持っていた双剣を消し、矢の様に伸びた剣と弓を投影するアーチャー。形が変わったとはいえ、その剣にクー・フーリンは見覚えがあった。

 

「テメー!それは叔父貴の!」

 

「悪いが、前にも言ったかもしれんが私には誇りなどと言うものはないのでね。自分好みに改造させてもらった。……I am the bone of my sword(我が骨子は捻れ狂う)……偽・螺旋剣(カラドボルグ・II)!」

 

その詠唱と共に放たれた剣は、周囲の空間を削り取りながら、クー・フーリンではなくマシュへと飛んで行く。厄介な盾のサーヴァント。まずそちらから始末しようとアーチャーは考えたのだ。自身に飛んでくると防御態勢に入っていたクー・フーリンではマシュは救えない。かと言って、マシュ自身もあれを防ぎきれるかは怪しい。が、ここにはもう1人いるのだ。先程から静観を決め込んでいたガタノゾーア(邪神)が。

 

「何!?」

 

アーチャーの驚きの声が周囲に響く。それもそうだろう。アーチャーが放った偽・螺旋剣は突然マシュの前に躍り出たガタノゾーアの手によって打ち砕かれた。今まで、数々の敵を葬ってきた偽・螺旋剣。かのヘラクレスですら防御態勢に入ったそれを、ガタノゾーアは掴んで潰したのだ。僅か一瞬だが、アーチャーは目の前の光景に理解が及ばず、思考に空白が訪れる。その隙をクー・フーリンが見逃すはずがなかった。杖で地面につき、自身の宝具の一部である腕を召喚し捕える

 

「しまっ!」

 

気付いた時にはもう遅い。捕えられたアーチャーはそのまま地面に叩きつけられ、マシュの方へと放られる。マシュは、放られたアーチャー目掛けて盾をフルスイングし、それが直撃したアーチャーは近くの壁まで吹っ飛ばされた。

 

「あ、ありがとうございます。ガタノゾーアさん」

 

「ん?ああ、良い良い。仲間がやられそうだったから助けただけだ。それより、まだ彼奴は倒れておらんぞ」

 

「ああ、ガタノゾーアの言う通りだ。彼奴はあんなんじゃやられねえよ」

 

全員が警戒態勢に入る中、壁に叩きつけられた影響で起こった煙の中から再び矢の様に長い剣がガタノゾーア目掛けて打ち出された。先程と同じ様に受け止めようとした瞬間、剣は大爆発を起こす。それによって起こった爆風で、煙は晴れ、多少ふらついているアーチャーが言った。

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)。これならダメージは免れまい」

 

「ああ、そうだな。ダメージは……な」

 

爆発が収まり、ほぼ無傷のガタノゾーアが土埃を払いながらそう言う。これにはアーチャーは絶句するしかなかった。壊れた幻想と言うのは、魔力の篭った宝具を壊し、それによって起こる魔力の爆発である。故に、魔力が詰まっている程、威力は上がる。先程の剣を投影する際、アーチャーはほぼ全ての魔力を込めた為、今までで一番の威力となったはずなのに、食らった対象はケロッとしている。これで絶句せずどうしろと言うのか。そんな彼にガタノゾーアが告げる。

 

「悪いな。()はその程度で倒される気は毛頭無いのでな。まあ、相手が悪かったと諦めるんだな」

 

魔力をほぼ使い切り、これ以上魔術を行使することができないアーチャーは動くサンドバックと大差なかった。しかし、ここにいる全員が必要以上にボコる様なことをしないので、アーチャーはクー・フーリンの一撃で消滅した。

 

「おいおい、ガタノゾーア。お前、一体どんな耐久してんだよ。あれは俺だって下手すりゃ消滅モンだぜ?」

 

「さてな。まあ、宝具の効果とだけ言っておこうか」

 

最も、『奴』程の『光』は例外だがな。と誰にも聞こえない様な小さな声で呟くガタノゾーア。そんな事はつゆ知らず、初のサーヴァント同士のまともな戦闘を見た立香とオルガマリーは気を引き締め直していた。これから戦うのは今戦ったアーチャーよりも強敵なのだ。だから、多少恐怖で足が震えているのは正常な証であろう。

 

「じゃあ、そろそろ行くか?」

 

一通り準備を終えた辺りで、立香たちにそう聞く、クー・フーリン。この先に待つセイバーの真名は先程聞いた。聖剣エクスカリバーの使い手アーサー王。そんなビックネームが所謂ラスボスなのだ。不安がないわけでは無いが、やらねばならない事だからと自分を奮い立たせ、立香は強く頷く。そして、一行はアーサー王の待つ洞窟の最奥へと進んで行った。



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vs.セイバー

「あの、私にルーン魔術を教えてくれませんか?」

 

セイバーの待つ最奥へ行くまでの最後の休憩を取っている時、マシュは突然クー・フーリンにそう言った。クー・フーリンは多少驚きながらその理由を聞いた。

 

「私が何かしらの理由で盾を手放している時に先輩に危機が及んだら、私は先輩を守る手段がないんです。シールダーなのに、盾がないだけで先輩を守れなくなるのはどうかと思ったので」

 

「なるほどな。そんじゃあ聞くが、ルーン魔術についてどの位知ってる?」

 

「えっと、書物に書かれてる事くらいです」

 

「そうか。まあ時間もねえから、アンサズだけ教えてやるよ」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ、だが素質無しと思ったらやめるからな」

 

そう言って、クー・フーリンはマシュに宣言通りアンサズだけを教えた。大体十分程でマシュはアンサズをマスターしたので、その後少し休み最奥へと足を踏み入れた。

 

「ーほう。面白いサーヴァントがいるな」

 

恐ろしいまでの威圧感を放ちながら、反転した騎士王はそう言った。その背後には大聖杯が鎮座している。オルガマリーは大聖杯を見て信じられないと言った表情をしている。

 

「さて、貴様らは私を倒すためにここに来たんだろう。ならば、これを防いで見せろ」

 

そう言うと共に、セイバーの持つ黒き聖剣に魔力が集まり始める。それを見た立香は宝具を放つつもりだと理解し、マシュに宝具の発動を指示する。その指示をマシュが聞き、宝具を発動するのと、黒き聖剣から闇が放たれるのはほぼ同時であった。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!」

「私が、先輩を、みんなを守ってみせます!真名偽装登録、宝具、展開!」

 

ぶつかり合った2つの宝具は、聖なる盾の勝利に終わった。ただ、それで力を使い切ってしまったのか、マシュはその場に崩れてしまった。そんな彼女を見て、ガタノゾーアとクー・フーリンが互いを見やる。

 

「新米の嬢ちゃんがここまで頑張ったんだ。あとは俺らの仕事ってね!」

 

「ああ、倒すとしようか」

 

左右に分かれ、挟み撃ちの様にセイバーに迫る2人。しかし、カルデアから通信でサポートしているロマ二・アーキマンからセイバーは大聖杯を繋がっていて実質何発でも宝具が撃てると通信が入る。実際、彼女は直感で危険と判断したガタノゾーアに狙いを定め、宝具を撃つ体制に入っていた。

 

「残念だったな。食らうがいい!」

 

その言葉と共に放たれた闇。しかし、闇そのものであるガタノゾーアにそれは全くと言っていいほどダメージを与える事はなかった。むしろ、撃ってる最中に接近しセイバーを殴り飛ばす。

 

「なに!?」

 

「無駄だ。たかだか闇を纏った程度の攻撃が闇そのものに通じると思うか?」

 

「貴様、何を言っている?」

 

「わからない方が良いぞ。()の名を知ればお前は死ぬ。まあ、最も知らなくても死ぬがな」

 

瞬間、セイバーの直感が発動し、セイバーは首をかしげる様に横にする。すると先程まで顔があった場所を紫色の光線が通った。それを見たガタノゾーアは感心した様に手を叩く。

 

「よもや今の避けるとは、少し甘く見ていた様だ。だが、妾ばかり見ていていいのか?こっちは2人いるのだぞ?」

 

その言葉にハッとするももう遅い。セイバーはクー・フーリンが宝具によって召喚した茨の巨人の中心部にある檻に叩き込まれ、そのまま巨人の纏う業火に焼かれ始めた。しかし、その程度ではセイバーは倒されはしない。檻の中で再び宝具を放ち開けた穴から外へと逃げる。がしかし、セイバーは地に降りる前に、ガタノゾーアの背負う貝殻から伸びる触手に絡め取られ空中に固定された。

 

「クッ!なんて力だ!魔力放出しても引き裂くどころか緩めも出来んとは!」

 

「当然だ。サーヴァントになった(大幅に弱体化した)とは言え、その程度では脱け出せんよ。では、トドメだ」

 

再び放った紫色の光線はセイバーの胸を貫いた。それと同時に触手を緩め、セイバーを地に落とす。これで終わりだろうと思ったが、セイバーは消滅を始めながらも立ち上がった。

 

「ここまでか。しかし、貴様は一体なんだ?自身のことを闇そのものだとか、そもそも私の約束された勝利の剣が効かないなど、普通のサーヴァントとは思えんな」

 

「わからない方がいいと言っているだろう。まあ、それでもと言うのなら名前だけは教えてやろう。ガタノゾーアだ」

 

「!!成る程な。どうりで敵わないわけだ。有名なのは3000万年前の超古代文明だが、それ以外にも文明を滅ぼしてきた『闇の邪神』。それが貴様だろう?」

 

「ご名答。お前が反転していなければ多少は勝負になったかも知れんがな」

 

「フッ、嘘はもっとわからない様に言うんだな。さて、カルデアの使者達よ!!覚えておけ。聖杯探索……グランドオーダーは始まったばかりだ」

 

そこまで言って、とうとう限界が来たのか。セイバーは光の粒子となり消えて行った。それにより、聖杯は立香達が手に入れたのだが、勝者が決まった事でこの聖杯戦争は終了し、クー・フーリンもまた消えて行った。

 

「次はランサーでって思ってたんだが、もしまたキャスターで呼ばれたらちゃんとルーン魔術を教えてやるよ。嬢ちゃん」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

消え側に言ったクー・フーリンの言葉に頷くマシュ。これでキャスターとしてクー・フーリンを召喚できれば、マシュはルーン魔術を完全に習得できるだろう。そんな中、所長は先のセイバーの発言に疑問を抱いている様だ。そして、

 

「いやあ、まさかここまでやるとはな」

 

ソイツは現れた。



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『外』からの干渉者

拍手をしながら現れた男を知っている立香とマシュとオルガマリーは揃ってその男の名を叫んだ。

 

「「「レフ!!」」

 

しかし、その後の反応は三者三様だった。オルガマリーは喜びながらレフに駆け寄り、マシュはデミ・サーヴァントになった影響かレフから邪悪な雰囲気を感じ取り警戒態勢に入り、立香はレフと多少しか話していないのでその場に佇むだけだった。

 

「ああ!レフ、レフ!生きていたのね!」

 

「ああ、生きていたとも。最も、貴様は死んでいるがな」

 

「え?」

 

理解できないと言わんばかりの表情を見せるオルガマリーに、レフは全てを語った。オルガマリーがすでに死んでいること、未来が焼却されていること、そして、レフの正体。しかし、そうは言われても納得できないのが人間である。オルガマリーは納得ならないとレフに詰め寄る。それを鬱陶しく思ったのか、レフは指を鳴らし、空間に真っ赤になったカルデアスが映し出され、オルガマリーはそれに吸い込まれる様に浮かび始めた。

 

「え!?」

 

「オルガマリー、君には私から慈悲をやろう。さあ、カルデアスに触れるがいい。最も、どうなるかは君が一番知っているだろうがな」

 

高笑いをしながらそう告げるレフ。しかし、それが癇に障ったのか。オルガマリーは怒りの表情を浮かべ叫ぶ。

 

「ふざけないで!私は、誰にも認められないまま死ぬわけにはいかないのよ!レフ!覚えてなさいよ!絶対貴方をー」

 

それ以上続けることは叶わず、オルガマリーはカルデアスに取り込まれた。唯一なんとか出来る可能性のあるガタノゾーアはじっとオルガマリーとカルデアスを見つめていた。オルガマリーがカルデアスに取り込まれたのを見届けて、レフは再び口を開いた。

 

「最期まで泣き噦ると思っていたが、やはり人類は思い通りにいかんな。ああ、頭にくる」

 

「レフ!貴方、所長の事をなんだと!」

 

「騒がしいぞ。やはり、温情で生かすのではなかったな。……いや、ここで殺せばいいか」

 

「!!先輩!」

 

「邪魔だ」

 

レフの発言を聞き、立香を守るために前に出たマシュはレフの魔術を行使した腕の一振りで吹っ飛ばされる。しかし、それを見た立香は近づいてくるレフを臆する事なく睨みつけ、ガタノゾーアも立香を守るために、2人の間に入り込む。

 

「頭にくるな。その目、この状態でなんとか出来ると思っているのか?このサーヴァントも私にかかれば一捻りできるだろう」

 

「甘く見られたものだな。()も」

 

その言葉に反応して、ガタノゾーアがレフを殺すために動き出そうとしたその時、何処からか飛来した魔力弾がレフの下半身を消し飛ばした。

 

「な……にぃ!!」

 

あまりの威力に消しとばされなかった上半身すらも吹っ飛ばされる。地面を無様に転がりながら、自身の下半身を消しとばした人物を見て、レフは叫んだ。

 

「何故だ。何故貴様が生きている!?貴様は先程、カルデアスに取り込まれ消滅したはずだ!!オルガマリー!」

 

レフの視線の先には、先程カルデアスに取り込まれた筈のオルガマリーが立っていた。信じられない量の魔力を纏って。オルガマリーはそのまま無言でガンドを放ち、先程の下半身の様に上半身を消し飛ばそうとするが、当たる前にレフが何処かへ転移したのでそれは叶わなかった。

 

「所……長?」

 

「そうよ。他に誰に見える?」

 

「で、ですが先程所長は」

 

マシュが言いにくそうにそう言う。それを聞いたオルガマリーは空を見上げ、言った。

 

「確かに、カルデアスに取り込まれた私は消滅しかけた。でも、私は助けられたの」

 

「誰に……ですか?」

 

「『ツァトゥグァ』そう名乗っていたわ。常に眠たそうな眼をしながらどこかヒキガエルに似た頭部を持ち、体色や体毛からはコウモリやナマケモノの姿を連想できたわ。『余は人間の生き方を見るのが好きだから人理を焼却されたら困る』『手助けをするのはエイボンに続いて2人目』『人理を修復したら褒美をやる』とか色々言いながら私に力をくれたの。この溢れんばかりの魔力もそうだし、これも」

 

そう言い、オルガマリーは手の甲を見せる。そこには令呪が光り輝いていた。

 

「『それくらい簡単だ』って言ってたわ。マスター適性がない私に、令呪を宿らせることが簡単だなんてふざけてるわよね。でも、多分彼らは私たちの理解できない『ナニカ』なんだと諦めたわ。彼が教えてくれた『向こう側』の魔術を知って、この世界には私たちが知らない生き物が多くいるって理解したもの」

 

それを聞きながら、ガタノゾーアは昔会った空腹時以外は割と温厚なツァトゥグァの事を思い出す。エイボン以外に手を貸すとは思わなかったが、これもこれでいいだろうと思う。と、そこにロマ二からの連絡が入る。

 

『当然通信が切れたけど、大丈夫かい!?って、所長!見れたのはレフによってカルデアスに取り込まれそうになっていた場面までだったけど、あの状態から生存したんですか!?』

 

「……まあ」

 

流石にツァトゥグアのことは言わないほうがいいと思ったのか、嘘をつくオルガマリー。まあ、言っても理解されないと思うが。しかし、ロマ二はオルガマリーの手の甲を見て、驚きの声を上げる。

 

『所長!どうして令呪が!?それに魔力も爆発的に増加してるし』

 

そこに気づかれては真実を言わざると得ないと思ったが、オルガマリーはあるものに助けられ令呪と魔力を貰ったと結局多少の嘘を織り交ぜて答える。その答えを聞いたロマ二が思い出した様に叫んだ。

 

『そ、そうだ!こんなことしている場合じゃない!そこはもう崩壊を始めているんだ!こっちもレイシフトの準備はしているが、そっちの崩壊の方が早いかもしれない!』

 

「何ですって!?もう一回死ぬなんて嫌よ!ロマ二、なんとかしなさい!」

 

『分かってます!もう少し……よし!OKだ!』

 

ロマ二がそう言うのとともにレイシフトが成功した。



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戦力強化のお時間です

特異点Fから無事戻ってきたが立香達を待っていたのは、何故か女性なレオナルド・ダ・ヴィンチとロマ二だった。が、その日は立香の疲れがピークに達していたため、立香を休ませる為にも説明は明日にするとして今日は解散となった。

 

「さあ、話をしようか。『光の巨人』に敗れた『邪神』ガタノゾーア」

 

解散と言っても、実際にここからいなくなったのは、立香とマシュだけである。まあ、当然と言うべきか、カルデアの人員達はガタノゾーアについて知っているようだ。まあ、最もオルガマリーはツァトゥグァにあった際に教えてもらった様だが。

 

「私たちが聞きたい事は1つだ。何故、私たちに協力するんだい?言っちゃあなんだが、君……いや貴方は『破壊する側』だろう?」

 

「ああ、そんな事か。そうだなぁ、気まぐれ……とでも言っておこうか。安心するが良い。()は絶対裏切らない。そう約束しよう」

 

「そうか。ならその言葉を信じるよ」

 

納得はしてないだろうが、一応信じてくれる様だ。ガタノゾーア的にもそっちの方が嬉しい。なんせ今回の事件の黒幕には色々言いたいこともあるのだ。とりあえず、立香とマシュはガタノゾーアに関する事を知らないっぽいので黙っておく方針を取ることにした。

 

 

翌日、戦力強化を図る為に、立香達は召喚室へときていた。オルガマリーと立香で計2回召喚するらしい。本来1人のマスターにサーヴァントは1人だが、今回は事態が事態なので仕方ない。

 

「どっちからやりましょうか」

 

「私は後でいいわよ」

 

「そうですか、じゃあお先に召喚しますね」

 

そう言って、召喚サークルに聖晶石を投げ込み、2回召喚する。1人目は、特異点Fで共に戦ったキャスターのクー・フーリンであった。

 

「よう。この姿で呼ばれたって事はあの嬢ちゃんにちゃんとルーン魔術を教えるとしますかね?」

 

「はい!お願いします」

 

「よし、いい返事だ。マスター、トレーニングルームとかってあるか?」

 

「ありますよ」

 

「じゃあ、そこ借りるわ。行くぜ嬢ちゃん。あいや、これから一緒に戦うんだしマシュって呼ぶか」

 

「私はどっちでも構いません」

 

そんな会話をしながら、2人はトレーニングルームに向かっていった。それを見送った後、場所を変わり、オルガマリーが召喚を開始する。召喚できたのは、大きな黒いリボンをつけた白い衣装の少女であった。

 

「はじめましてマスター。私はまだまだ半人前の剣士なので、セイバー・リリィもしくはアルトリア・リリィとお呼びください。単純にリリィでもいいです。これからよろしくお願いします」

 

その少女、セイバー・リリィはそう言う。アルトリアと聞いて思い出すのは特異点Fで倒した黒い聖剣を持った彼女なのだが、目の前の少女はそれには似ても似つかない雰囲気をまとっている。ロマ二曰く、あの騎士王は何らかの影響で別の側面が強調された姿ではないかとの事だが、先程の半人前宣言も含めてこちらが通常のアルトリアだとは思えない。そこの所が理解できなかったので、セイバー・リリィに聞いてみる。すると、彼女はアルトリア・ペンドラゴンの可能性の1つだと言う。アルトリアという存在である以上行き着く結果は同じだとしても、過程が同じとは限らないらしい。セイバー・リリィはその過程の1つなんだそうだ。

 

もう少し、色々聞きたかったが特異点が見つかった様で、ロマ二に呼ばれた為、お話はそこで一旦切り上げて、立香達は次の特異点に行くための準備を開始した。



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第一特異点:邪竜百年戦争
第一歩と目が合ってしまった立香


見つかった特異点の場所はフランスで、時代は百年戦争が終結した15世紀。そこに行くためにレイシフトをし、無事フランスについた立香達は草原に立っていた。ほぼ全員が関心を持って辺りを見渡す中、なぜか立香だけがじっと動かずその場に佇んでいた。それを見たガタノゾーアはレイシフトの特性上、出会ってしまう可能性のある『存在』を思い出しながら、どうかしたかと声をかける。立香から返ってきた答えはこうだった。

 

「見間違いだとは思うんだけどね?レイシフトの最中に、何かと目があった気がするんだよね」

 

ああ、やはりかと手で顔を覆うガタノゾーア。偶然この会話を聞いていたのか、ロマ二が通信越しにそんな訳ないと立花に言う。それもそうだねと立香は気のせいであったと思うことにしたようだが、ガタノゾーアは違う。確信を持って立香は『角ばった時間』に棲む存在に目を付けられてしまったと考える。時間などと言う概念が生まれる前から存在しているが、今のサーヴァントと化したガタノゾーアでも十分倒せはする。しかし、問題は『猟犬』ならまだ良いが『王』だった場合は骨が折れる。それに、ガタノゾーアが知る存在の半数以上は見ただけで大抵の常人は発狂する。それは『猟犬』や『王』も例外ではない。面倒なことになったと内心舌打ちをしながら、ガタノゾーアは来るべき時のために少し気を引き締めるのだった。『奴』は目を付けたものの所に来るまで多少時間がかかる上、出現する際にも突然そこに現れるわけではない。故に対処のしようはいくらでもある。

 

「さて、どうしてやろうか?」

 

対処方をいろいろ考えていると、立花に声をかけられそちらに意識を向ける。砦が有ると立香が指を向けた方を見ると、確かに砦があった。何人か人もいるようだ。

 

「まずはあの人たちに聞きに行こう。情報収集は大事だもんね」

 

「そうね。でも良い?もし勘違いで現地の人に襲われても、殺しちゃダメよ?峰打ちにしなさい」

 

オルガマリーの忠告に誰もが頷く。そしてそのまま砦に近づきそこにいる人に話しかける。

 

「先輩。ここは私におまかせください。……あの、すいません」

 

「だ、誰だ貴様ら!り、『竜の魔女』の仲間か!?」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!違います!そもそも『竜の魔女』なんて知りません!」

 

「……そ、そうか。と言うことは異国の人間か?すまないな。今この国は悪魔と契約し復活したジャンヌ・ダルクの手によって滅ぼされようとしているんだ」

 

その砦の兵士の言う事はにわかには信じられなかったが、この地のどこかに聖杯があると考えると、時期的にジャンヌ・ダルクが死んだ後の時代の様なので、何者かが聖杯を使って生き返らせたという可能性は十分にあった。そんな事を話していると、鐘の音が鳴り響き、兵士の1人が敵襲を知らせる。ただ、敵襲してきたのは人間ではなくワイバーンであった。

 

「うそ!?この時代にワイバーンなんて!?」

 

「ああ、あれこそが『竜の魔女』の率いる兵士のような存在だ。行くぞ皆の者!先の様にもう一度追い返す!」

 

大声で叫び兵士達はワイバーンを迎え撃つ。しかし、戦いは始まる前に終わった。ガタノゾーアがシャドウミストを吐き出し、ワイバーンを1匹残らず殺したからである。砦の兵士達はそんなことをしでかしたガタノゾーアを驚愕の表情で見る。そんな中、クー・フーリンがガタノゾーアに近づき、

 

「おいおい、俺らの分の残しといてくれよ。せっかくの初戦闘だと思ったのによ」

 

と茶々を入れる。が、今はそれに答えるよりも早くやるべき事があると考え、ガタノゾーアは兵士達に声をかける。

 

「……その『竜の魔女』の居場所はわかるか?」

 

「いや、知らない。それよりも今のはなんだ?ワイバーンを倒してくれたって事は、『竜の魔女』の味方ではないという事はわかるが……」

 

「ふ、知らぬ方が良いぞ?()のことを知れば知るほど、基本おかしくなるからな。特に普通の人間は」

 

幼女とは思えない威圧感を放ちながら言うガタノゾーアを見て、兵士達は言っていることが本当だと悟る。その後、立香達は少し話たり負傷者の傷を簡単な魔術で治したりした後、その砦から立ち去った。

 

「あの、アレってなんなんでしょう?」

 

砦から少し離れたあたりで、セイバー・リリィがそんな事を言う。彼女は空を指しており、そこには謎の光の輪の様なものがあった。ロマ二に聞いてみた所現状はわからないから解析すると返答がきた。それと同時に霊脈を探してくれとも頼まれ、まずは霊脈を探す事になった。



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ジャンヌ・ダルクとメフィラス星人

ロマ二から霊脈の大体の位置を聞いた立香は、そこへ向かう途中で『竜の魔女』では無いと言うジャンヌ・ダルクと出会い、話を聞くために、霊脈のある場所へ行く通り道にになっていた森の中で安全を確保した後、小休止する事にした。

 

「では、説明をお願いします。ジャンヌさん」

 

マシュがそう言うと、ジャンヌは話し始めた。まず、自分とは別にもう1人ジャンヌ・ダルクがいる事、そいつが『竜の魔女』と呼ばれている事、そして一応サーヴァントの調停者(ルーラー)として召喚されはしたもののルーラーとしての力のほとんどが使えない事。以上3つを話し終え、ジャンヌは口を閉じた。

 

「もう1人の自分か……なんか面倒な事になってんな」

 

「でも、これでここが特異点になってる理由がわかったわ。この時代のフランスのあり方はそれだけで他国に色々影響を与えたから、もしこの国が崩壊したら歴史が停滞してしまうかもしれないってことね」

 

立香とマシュがジャンヌにカルデアについて教えている最中、クー・フーリンとオルガマリーはそんな事を言っていた。もっとも、クー・フーリンの方はランサーだった時に呼ばれた聖杯戦争でもっと複雑な自殺を考えているアーチャーにあった事があるのだが、記録としてしか知識にないのでイマイチ実感を持てなかったりする。

 

「とりあえず、もう1人のお前を倒せばいいのだろう?」

 

「そう言う事になるのでしょうか」

 

ガタノゾーアの言い分に頷くセイバー・リリィ。頷かなくとも此処にいるほぼ全員がそうするべきだと思ったが、何処にいるかがわからない以上まずは戦力を強化するために霊脈もある場所へと向かう。

 

 

『よし、そこだ。そこが霊脈が一番強い』

 

森の中のある場所で、ロマ二はそう言った。それを聞いて、召喚のための準備をマシュとオルガマリーが始める。多少時間がかかるようなので、立花はジャンヌと話す事にした。ちなみに、セイバー・リリィとクー・フーリンは辺りに危険生物がいないか見回りをし、ガタノゾーアはその2人が倒し損ねた敵がいた場合此処にいる立花達を守る為にその場に留まっている。

 

「ジャンヌってさ。ルーラー以外のクラス適正ってあるの?」

 

「いえ、私が他のクラスになる可能性は絶対にありません。霊基を弄られればその限りではありませんが」

 

「そうなんだ……あれ?でもジャンヌって剣とか使ってなかったけ?」

 

「確かに何回か使いましたしこの旗で何人も殺したことは事実ですが、少なくとも『座』は私を『そういう存在』と認識した様です。敵国の人間からしたら私が調停者(ルーラー)なんてふざけるなと思われるかもしれませんが」

 

「そっか。でも、私はセイバーとかランサーのジャンヌも見てみたかったな」

 

「セイバーはわかりますが、ランサーですか……私槍は護身術程度しか習っていませんが、もしかして旗を槍の様に振るからですか?」

 

「そうそう。ジャンヌの戦い方を知らないけど、きっと適正があると思うんだ」

 

そんな他愛ない話をしていると、オルガマリーとマシュの準備が終わった様で呼ばれる。レイシフトにも許容人数はあり、それを超えると不具合が起こる可能性が上がるので、そう多くは召喚できないが、オルガマリーと立香が1人ずつ召喚出来るくらいには空きがある。ならば、その分戦力を増加してしまおうという事である。

 

「立香、貴方この前先に引いたのだから今回は私が先に召喚するわ。良いわよね?」

 

「大丈夫です」

 

「じゃあ、お先に」

 

そう言って、聖晶石を召喚サークルに投げ込む。投げ込んだ聖晶石が砕け、光を放った。しかし、その瞬間にガタノゾーアだけは見た。今まさに召喚されようとしていたサーヴァントを押しのけて、それはあたかも召喚された様に姿を現した。特徴的なサングラスをした何故かバニーガールの様な服を着た女性。

 

「はじめまして。私の名はメフィラス。クラスはキャスターという事にしておこうかな」

 

そう名乗る女性にもっとも早く反応したのはロマ二であった。その名を聞いた瞬間、数ある資料の中から1枚の資料を引っ張り出して、驚愕の声を上げる。

 

『メフィラス!?メフィラスってあの『光の巨人(ウルトラマン)』と戦ったって言うメフィラス星人!?でも、そうだとするとメフィラス星人は倒されてないから召喚なんて出来ないはずだ!』

 

「そうだね。私は確かにやられていないが、私の頭脳があれば召喚自体に割り込む程度簡単だ。私としても、未だに勝てない『地球人の心』がなくなるのは忍びないのでね。こうして協力しに来たわけだ。そうだ、確かに君は立香と言ったね。どうだい?全てが終わった後、この地球を私にくれないかな?」

 

「それは出来ないかな。もし、渡したら私がしてる事の意味がなくなっちゃうから」

 

「そうだろうねぇ、そう言うと思っていたよ。だが、これで安心した。私が地球を去ってからこれまでに、どれ程『地球人の心』が変化したか気になっていたが、サトル君の様な人間は未だ残っている。やはり、当時破れたものに勝ってこそ真に地球を支配したと言えるだろうからね」

 

ハハハハハと一通り笑った後、召喚を行なったオルガマリーを見る。突然目を向けられたオルガマリーは咄嗟に目をそらしそうになったが、なんとか踏ん張った。

 

「な、なによ」

 

「いや、なかなか面白いことになっている人間がいるなと思ってね。ああ、安心してほしい。先ほども言ったが、今は君たちの味方だ。一応、サーヴァントと同じ様になる様に召喚されたはずだから、令呪も通じるはずだ」

 

「そう。まあ、何はともあれよろしくね。メフィラス」

 

スッと手を出すオルガマリー。もう既にガタノゾーアという存在がいるせいか、『光の巨人』関連の存在の召喚に割と慣れはじめていた。固く握手をし、さっさと召喚する様に立香に言う。

 

「はいはい。急かさないでくださいよ所長」

 

そう言いながら、召喚サークルに聖晶石を投げ込む。瞬間辺りに異様な匂いが立ち込め始めた。



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ミゼーア

その異臭が辺りを漂い始めた瞬間、ガタノゾーアの目つきが鋭くなった。この異臭は『角ばった時間』に棲む存在が『こっち』に現れる時に発生するものであり、『それ』はガタノゾーアの予想よりも早く、その上想定していない方法でやってきた事を示していた。内心舌打ちをするが、来てしまったものは仕方ないと割り切り、ひっそりと戦闘態勢に入る。そんな中それは現れた。

 

「やあ、僕はミゼーア。クラスは復讐者(アヴェンジャー)。よろしくね」

 

ニッコリと笑いながらそう告げるミゼーア。顔こそ普通の女の子であったが、その腕には肥大した歪な爪があり、恐ろしく長い尻尾を備え、頭部には対となる獣の耳が3つ生えており、そのどれもが3人を除いた全員に恐怖を与える。その3人と言うのは『そう言う存在』であるガタノゾーアとこれまた『そう言う存在』であるツァトゥグアにあった事により耐性が出来たオルガマリーと宇宙人であり精神構造が人間と違うメフィラスである。それ以外は、精神を恐怖で蝕まれ、あまりの恐ろしさに狂気に心が染まりそうになる。

 

「おい」

 

が、ガタノゾーアがそう呟くと、全員が我に返り平常心を持ち直した。それをみて面白くなさそうな顔をするミゼーア。ガタノゾーアはそんなミゼーアを睨みつける。

 

「貴様、何しに来た?」

 

「何しにって、僕と目を合わせたそこの彼女に会いに来たんだよ。過去の偉人を呼び出すなんて事やってるからそれを利用して、こうして早めに来たわけさ」

 

「なるほどな。で、我が人間(マスター)を殺すのか?」

 

「オイオイ、僕達の目的は君も知っているだろう?何処ぞの馬の骨とも知らない奴に横取りされるのは癪なんでね。手を貸してやろうってわけさ。でも、さっきので発狂してたらそれはそれで殺してたかもね」

 

なんの悪気もなくそう言うミゼーアに小さく悲鳴をあげる立香。そして、それを守る様に前に出るマシュとクー・フーリン。そんな彼らをみてミゼーアはおどけた様に肩を竦めた。

 

「ハハハ、冗談だよ。でも、この程度でいちいち恐怖に呑まれてちゃこれから大変だよ?そっちの彼女はわかってるかもしれないけどね」

 

そう言って、先程狂いかける事のなかったオルガマリーに目を向ける。ツァトゥグアにあった手前その発言をオルガマリーは否定できないのであった。

 

「まあ、何にせよ僕は君達に協力するよ。理由はさっきガタノゾーアに言った通りさ。それに早くこれたのはいいんだけど、一応僕もサーヴァントとして扱われるみたいだ。だから、令呪さえ使えば僕を殺せるかもね」

 

口角を釣り上げながらそう告げるミゼーアに立香は直感的に令呪は通じないと察した。だからこそ、ミゼーアが差し出した手を握ることができなかった。

 

「信用されてないみたいだね。まあ、当然か。でもね、時間に干渉してるから僕みたいなのに目をつけられるんだよ?しょうがない事とはいえ、僕らにはそっちの事情なんて知らないからね」

 

下手したら喰われるかもよ?とまでは言わなかった。ミゼーアがいる以上、他の『住民』や『猟犬』なんかはやって来ないので余計な心配をかけるわけにはいかない。それによって、やる気が削がれてしまうのは清浄に棲むもの全てその中でも特に人間を憎むミゼーアにとって、それはとてもよろしくないからである。そんなミゼーアの心中を知らない立香には気になることがあるようだ。

 

「僕らって事は、何人も君みたいなのがいるの?」

 

若干怯えながらそう聞いてくる立香。それを聞いてちょっと失敗したかなと思いながら、その質問にミゼーアは答えた。

 

「うん。いるけど、僕がいる以上来ないよ。僕が最も上の存在だからね。まあ、僕が呼べばくるけど、どうする?呼ぼうか?」

 

「いや、遠慮しとくよ」

 

「それが懸命だよ。まあ、よろしくね。信用してくれなくてもいいけどさ」

 

ニコニコと笑いながらそう言うミゼーアにガタノゾーアがいい加減姿を変えろと言うそれを聞いたミゼーアはそのおぞましき部分を人と同じ容姿に変えた。

 

「これでいいかい?ガタノゾーア」

 

「ああ、あんな姿をずっとしてたら、怖がられるだけだぞ」

 

「そっか。ごめん、そこまで気が回らなかったよ」

 

立香にそう言うミゼーア。それを聞いて謝れるんだなと思う立香。それで少し気持ちが緩んだのもあるが、結局の所、召喚したサーヴァントとは仲良くなりたいと思ってる立香なので、とりあえず恐怖心を押し込めて、ミゼーアと話そうと決め、他愛もない話題を振るのであった。



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黒いジャンヌ

その後、ジャンヌの提案で情報収集のために、ラ・シャリテへと向かうことになった。ロマ二からもつい先程までサーヴァントの反応があったが、いまは離れて行ってるから安全とのこと。最も、その反応がもう1人のジャンヌと関係があった場合は、情報収集はほぼ絶望的と言ってもいいだろう。因みに反数名以上が未だミゼーアを疑っている状況だが、当の本人はどこ吹く風である。

 

「あ!皆さん!大変です!町の方から煙が……!」

 

ラ・シャリテのある方を指差し、そう叫ぶセイバー・リリィ。見ると確かに煙が上がっている。瞬間、ジャンヌが血相を変えてラ・シャリテの方へ走り出した。

 

「ちょ!?ジャンヌ!?クー・フーリン追って!ミゼーアも!」

 

「任せなあ!」

 

「りょーかい」

 

「メフィラス!貴方も行きなさい!」

 

「任せたまえ」

 

 

不完全な召喚なのにも関わらず、Aを誇る俊敏を駆使して1人ラ・シャリテへと駆けるジャンヌを1人にするわけにもいかず援護にクー・フーリンとミゼーア、メフィラスを回す。それによって先についたその4人は惨状を目にした。生ける屍(リビングデッド)が我が物顔で闊歩し、死体を食い荒らすワイバーン。それを見ながら、昔あった納骨堂の神は生ける屍(リビングデッド)を見たら、どう思うのか疑問に思うミゼーア。その傍、この惨状に怒りを示したジャンヌが1人、ワイバーン達へと突撃する。

 

「やめなさい!」

 

「おい!むやみに突っ込むな!」

 

突撃したジャンヌを見て、援護に回りながらそう言うクー・フーリン。殺到するワイバーンと生ける屍(リビングデッド)をなぎ倒していくジャンヌ。その傍で、無惨な死体をその形だけでも多少”マシ”にしていくメフィラスとミゼーア。そんな感じで、ワイバーン達を全て倒した辺りで、立香達が合流した。

 

「はあ……はあ……」

 

「ジャンヌ……その……大丈夫?」

 

「……ええ、問題ありません。なぜ、もう1人の私がこんな事をするのか本当に理解に苦しみますが、それだけです」

 

死者を弔いながら、そう言うジャンヌの顔には遣る瀬無さが滲み出ていた。そんな中、ロマ二から、先の反応が戻ってきているとの通信が入る。本来なら逃げるべきなのだろうが、ジャンヌがもう1人の自分の真意を問いただしたいとの事で、ここに残る事となった。そしてやがてやってきたもう1人のジャンヌは、突然笑い出した。

 

「アハハハハ!見なさいよジル!!私の”絞りカス”が──ってそう言えば、ジルは連れてきてなかったわ」

 

もう1人のジャンヌ、黒いジャンヌは残念そうにそう言った。それを見たジャンヌは、信じられないと言わんばかりにこう叫ぶ。貴方は一体誰なんだ、と。その質問に黒いジャンヌは当たり前のように返した。

 

「あら?それは貴方が一番理解しているじゃない?”もう1人の私”。とうしてもわからないなら名乗ってあげます。私はジャンヌ・ダルク、蘇った救国の聖女」

 

「少なくとも私は自らを聖女などと思ってません。故に貴方も聖女であるはずがない。しかし、それよりも私が知りたいのは、”なぜこの村を襲ったか”です」

 

「何故?何故も何も彼らは私を、ジャンヌ・ダルクを信じているなんて言いいながら、あっさり裏切った人間だからです。報復ですよ報復。やられたからやり返す……当然のことでしょう?そもそも、主の声が聞こえない以上、主もこの国を見限ったのではなくて?だから、私はそれを代行しようと言うのです」

 

「それのどこが──」

 

「うるさいわね。現実を見ようともしない癖に、偉そうに。私は成長したの。成長した私こそが真のジャンヌ・ダルク!」

 

そう高らかに宣言する黒いジャンヌを他所に、ガタノゾーアは思う。裏切られた程度で、その国を滅ぼそうと思い立つのなら、果たして『光の巨人』どもは何度地球を破壊しただろうかと。所詮はその程度の愛国心しか無かっただけだと、ガタノゾーアは勝手に納得した。その横で、ミゼーアが笑い出した。

 

「何がおかしいのです?」

 

「いや、おかしいも何も、自分が”どう言う存在”か理解してないのに、良くそこまで口が回るものだなって思っただけだよ」

 

「なんですって!?……もういいです。バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン。彼奴らを殺しなさい!」

 

ミゼーアの言葉が余程頭にきたのか、黒いジャンヌは”狂化”をかけたサーヴァントの内、ランサーとアサシンにそう告げ、黒いジャンヌと指名されなかったサーヴァント達は、何処かへと向かって行ってしまった。

 

「あの者達の血と肉と腸、私に譲ってくれませんこと?」

 

「強欲なやつだ。なら、私は魂を頂こうか。次は血を譲れよ」

 

「勿論ですわ王様。……私より美しい者の血は、一体どこまで私を美しくしてくれるのかしら?」

 

「マスター……来ます!指示を!」

 

「オルガマリー、こちらも戦闘準備に取り掛かろう」

 

「わかってるわよ!メフィラス!リリィ、行くわよ!」

 

そうして、戦闘は起こった。しかし、立香はここであることに気づく、さっきまで居たはずのガタノゾーアが何処にも見当たらないのだ。指示を出しながら、知っていそうなミゼーアに聞いてみる。すると、ミゼーアはとてもイイ笑顔を浮かべ、

 

「ああ、ガタノゾーアなら先に行ったよ。”現実”を突き付けにね」

 

そう答えた。



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嘘と生ける炎

黒いジャンヌは、制圧したオルレアンにある城の玉座に腰を下ろしていた。ミゼーアに言われた事が原因で、彼女は結構苛立っていた。彼女の周りには誰もいない。召喚し狂化を施したサーヴァントは立香たちを始末する様に命じて、出ていってしまったし、彼女が頼りにしているジル・ド・レェもこの場を離れていた。

 

「さて、少し話をしようか?」

 

突然、扉が開かれそんな声が聞こえた。入ってきたのはガタノゾーアだった。いくら殆どのサーヴァントが出払っていると言ってもファヴニールを城付近に配置していたのに、どうしてガタノゾーアは入ってこれたのだろうか。答えは簡単である。黒いジャンヌはガタノゾーアが手に持つ『ソレ』を見て全てを察した。

 

「あ、貴女……まさかファヴニールを!?」

 

「ん?ああ、あの龍か。邪魔してきたのでな。捩じ切ってやった」

 

そう言って、手に持っているファヴニールの首を黒いジャンヌへと投げる。そも大半はガタノゾーアが完膚なきまでに潰してきたのでファヴニールの首は魔力が黒いジャンヌに届くまで持たず、空中で光の粒となって消えた。瞬間、このまま近づかれるのはまずいと思った黒いジャンヌはガタノゾーアに向けて手を向ける。すると、ガタノゾーアは炎に包まれた。

 

「ここまで来た事は褒めてあげる。でも、ファヴニールに勝てたからって私にも勝てると思ったの?舐められたものね。私が味わった苦痛、貴女にも味わわせてあげる」

 

燃え盛る炎を見ながらそう言い笑い始める黒いジャンヌ。ファヴニールを倒したのは驚いたが、それでもこれだけの炎で燃やせば流石にタダでは済まないだろう。そう考えていた。

 

「ふむ。この程度か?」

 

しかし、そんな声とともに炎の中から伸びてきた一本の触手が黒いジャンヌを本気で抵抗しても抜け出せないほどの力で縛り上げる。燃え盛っていた炎もガタノゾーアの腕振り一回で散らされた。目立った外傷はなく、残った火の粉を払いながら、黒いジャンヌにこう言った。

 

 

本当の炎ってものを見せてやろう

 

 

そこで黒いジャンヌは気づいた。ガタノゾーアから伸びる触手がもう一本あり、それが黒いジャンヌが中心になる様に地面に魔方陣を描いていることに。触手が驚くべき速さを持って魔方陣を描き終わるとともに、ガタノゾーアは謎の呪文を唱え始めた。

 

 

フングルイ ムグルウナフ クトゥグア フォーマルハウト ウガア=グアア ナフル タグン イア クトゥグア

 

 

3回ほど唱え終わったあたりだろうか。和かに笑いながら、ガタノゾーアはその名を呼んだ。

 

「来い。クトゥグア。奴を──」

 

 

燃やせ

 

 

瞬間、魔方陣から現れた火柱が黒いジャンヌを包み込んだ。一瞬にして喉までも焼かれ悲鳴を上げようにも、掠れた音しか口から出てこない。自身の記憶にある火刑がちっぽけに思えるほどの熱さ。このまま消滅するまで焼かれ続けるのかと思う黒いジャンヌだったが、ガタノゾーアが魔方陣を消したため、そうはならなかった。

 

「奴に出てこられると面倒だからな」

 

そう言って魔方陣を消したガタノゾーアの近くには先の火柱がまるで意思を持っているかのごとく火球に変わり浮かんでいる。ガタノゾーアは涼しい顔をしているが、周囲は燃え始めている事から如何に温度が高いかわかるだろう。

 

「ぁ──ぅ──」

 

喉が焼かれ声が出せない黒いジャンヌにガタノゾーアはゆっくりと近づく。火球の方はその場から動く気配はない。

 

「さて、まずはお前が造られたものだと言うことを理解させてやろう」

 

ガタノゾーアは無造作に黒いジャンヌから黄金の杯を抜き取った。何が起こったのかもわからずに、黒いジャンヌは聖杯を引き抜かれた事によって自身の身体にできた穴とガタノゾーアが手に持つ聖杯を交互に見やる。そんな彼女にガタノゾーアは話しかけ始めた。

 

「可哀想になぁ。お前は利用されたんだ、他人の復讐のためにな。いわばお前はソイツからしたら隠れ蓑のようなものだ」

 

「ぇ──ぁ──?」

 

ガタノゾーアが何を言っているのか理解できない黒いジャンヌ。この身を焦がす程の憎悪も作られたものだと言うのだろうか。もしそうならば一体誰が。そんな疑問に答えるように、ガタノゾーアは話し続ける。

 

「ここに来るまでにお前の言っていたジルという奴を見てきたが、お前、何故奴を殺さない?狂化をかけているようにも見えんし、奴だってフランス人だろう?もしや、自分の事を信じてくれるからとは言わんよな?お前はフランス人に信用され、そして裏切られたから祖国を滅ぼすと言っていたものな」

 

反論しようにも、口からはヒューヒューと掠れた音しか出ず、ガタノゾーアはそれを全く気にせず語り続ける。

 

「まあ無理もないか。そうなるようにお前は造られたのだものな。他でもないジル・ド・レェの手によってな」

 

「ぇ──?」

 

「大凡、造り出した瞬間殺されるのを危惧して『自分には手を出さない』ように弄ったのだろうな。聖杯ならそれくらいわけなかろう。お前、一度でも奴に反抗したことあるか?」

 

その質問に黒いジャンヌは言葉を詰まらせた。確かに思い返してみれば、どんなにイラついていてもジルには基本当たらなかったし、当たったとしてもジルの出す案をいい案だとして採用していた。そう考えると、黒いジャンヌがやって来たことはほぼジルが裏で操っていたと言っても過言ではないかもしれない。

 

「それに、お前の事なぞ駒としてしか考えてないだろうからな。実際、奴はいつまでたってもやってこない。ああ、もしかしたらお前がフランスを滅ぼした後で、お前の存在を消すように聖杯に願って成りかわるつもりだったのかもな」

 

ありもしない事をと思いたかった黒いジャンヌだが、ここにジルが来てないことは事実なのだ。ならばやはりガタノゾーアの言う通り、自身は駒だったのだろうかと疑問が芽生える。実際は、彼の宝具がガタノゾーアの手により暴走させられて彼はその対応に追われているだけなのだが、それを知らない黒いジャンヌはそう考えるしかなかった。

 

「ジル・ド・レェよりジャンヌ・ダルクの方が名が知れているからな。そういう意味でも、『ありもしない側面』を浮き上がらせてまで造り出したかったんだろう。お前をな。そうでなければ、聖杯に力を望んだ方が簡単だろう。となると、お前は名前から何から何まで利用されるために生み出されたという事か。それに、お前の名前に目がいって奴の名はあまり目立たなくなるだろうから隠れ蓑にもなるしな」

 

本人が来られない事を知っているガタノゾーアは有る事無い事全部、まるで事実のように語る。それを聞いていると、黒いジャンヌの中に疑問が浮かび上がってくる。自分がやって来た事は全部ジルの手の上の出来事であり、ジルはそれを見て嗤っていたのではないか。そう考えると、ジルへの殺意が現れ始める。

 

利用するだけ利用して最後は裏切る?ふざけるな。ならば先にこちらが殺す。今の自分が出せる全力ではダメだ。彼が想像した自分の記憶にあるこの炎では物足りない。私は真の炎というものを知った。彼が想像すらできない熱さ、痛み。彼に私を作った事を、私を利用しようとした事を後悔させるならそれくらいはやらなくてはならない。

 

そう彼女が考えた時、今の今まで浮かんでいるだけだった火球がこっちを見た気がした。そして、緩やかに形を変え、聖杯を抜かれた時にできた穴から彼女の中へと侵入し、聖杯を抜かれた事で不安定になっていた霊核と一体化し、再構築し始めた。負っていた傷もそれにより回復した。

 

「ほう。これは面白い結果になったな」

 

この展開は想定外だったガタノゾーアは面白そうに口角を釣り上げる。ガタノゾーア的には、色々言って精神を砕く算段だったが、これはこれでいいだろう。拍手しながら、黒いジャンヌへと近づいた。

 

「奴は割といい奴でな。力を求めれば与えてくれる。それで、お前これからどうする?」

 

そう聞かれた黒いジャンヌは新たに手に入れた力を実感しながらこう告げた。

 

「決まってるでしょ?私を利用しようとしたジルを殺す」



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契約

同時刻、別室にいたジル・ド・レェは海魔を相手取っていた。なんの前触れもなく、突然彼の宝具である『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』が暴走し大量の海魔が出現、所持者であるはずのジルに襲いかかったのである。キャスタークラスではあるものの正規の魔術師ではない為、魔術行使のほぼ全てを宝具任せにしているジルだが、元帥と呼ばれたその腕に偽りはなく、部屋に飾ってあった剣を手に取り海魔を斬り殺していく。宝具からはいつまでも海魔が召喚され続けていたが、ふとしたタイミングで海魔は召喚されなくなり、暴走も収まっていた。

 

「ハッ!まさかジャンヌも!?」

 

安心したのも束の間、自分がこうなったのならジャンヌもなっているのではと考えたジルは王座へと駆けて行った。

 

「ジャンヌ!!ご無事ですか!?」

 

「あら、ジル。どうかしましたか?そんなに慌てて」

 

扉を開けたジルの目に映ったのはなんの異常もなさそうなジャンヌだった。自分の思い過ごしだったかと安心したジルは先の異常を伝えておこうとジャンヌに近づく。

 

「ジャンヌ、お伝えしたいことが」

 

「なに?私が聖杯によって造られた存在だって告白でもする気になったかしら?」

 

「……なんのことですかな?」

 

「そう。あくまでシラを切るのね。まあ、分かりきってたことだけど、彼奴の言ってたことは本当だったってわけね。……ジル、私を造ってくれた事だけは貴方に感謝してあげる。だから、盛大に葬ってあげるわ。あの女と同じようにね!」

 

ジャンヌが叫ぶとともに、ジルは業火に包まれた。自分が想像していたよりも、熱く痛くそして苦しい。霊基にすら響く業火の中でジルは焼かれ続ける。

 

「私を利用しようとした事への後悔は『座』ででもゆっくりする事ね。さようなら、ジル」

 

その言葉とともに、ジャンヌは火力を上げる。ジルは消滅する間際、ジルは今までジャンヌの陰にいた事により見えなかった邪神(ガタノゾーア)を見た。そして理解した。自分の宝具で呼び出せる海魔が勝手に召喚され自身に襲いかかってきた理由が。つまり、ジルが使役していたのは下級も下級に過ぎない異界の神もどきであり、自身の覗いた深淵何ぞ上辺だけで、眼に映る存在こそが高位の神であり真の深淵に潜むモノであると。そして、このジャンヌの力もその邪神から得たものだと。

 

「オオォォ……ジャンヌ……やはり……貴方は……神に……」

 

その言葉は業火に掻き消されたが、ジルにとってはそれは些細な事。ジャンヌが神と共にいる。それだけが重要だった。満ち足りた気持ちになりながら、ジルは消滅した。

 

「……さて、ここで待っててもいいんだけどこんな茶番さっさと終わらせるためにも、あのマスターちゃん達にでも会いに行くとしましょうか」

 

 

 

 

場所は変わり、ガタノゾーアの抜けた立香一行はバーサーク・ランサーとバーサーク・アサシンを倒し、その後出会ったはぐれサーヴァントであるマリー・アントワネット(ライダー)アマデウス(キャスター)を仲間に迎え、バーサーク・サーヴァント達を1人ずつ倒しながら確実に黒いジャンヌが根城にしているオルレアンへと近づいていた。その途中、戦力は多いに越した事はないという考えから他にもいるであろうはぐれサーヴァントを探そうと言う話になった。そして、いざはぐれサーヴァントを探しに向かおうとしたところで、突然火の玉が降ってきた。地面に落ちてきたそれは、地面についた途端火柱へと変わった。

 

「一体何事です!?」

 

ジャンヌが目の前の火柱を警戒しながら、そう叫ぶ。その火柱をその手の一振りでかき消し現れたのは、黒いジャンヌであった。ミゼーア以外の全員が瞬時に黒いジャンヌを囲う中、黒いジャンヌは降参を示すかのごとく、両手を挙げた。その姿を見て、クー・フーリンが疑いながら疑問を飛ばす。

 

「そりゃなんの真似だ?」

 

「なにって降参よ、降参。こんな茶番続ける意味もないし、あんた達は聖杯が欲しいんでしょ?はいこれ」

 

そう言って聖杯を取り出して、立香へと放り投げる黒いジャンヌ。咄嗟のことに驚いたが、なんとか聖杯を掴む立香。

 

「解せねえなあ。なんでこのタイミングで俺らに聖杯を渡す?なんか企んでるんじゃねえのか?」

 

「そうね。さっきも言ったけど、こんな茶番やるだけ時間の無駄なのよ。だったらさっさと終わらせた方がいいでしょう?」

 

「……茶番とはどう言う意味ですか。”私”」

 

「あんたも薄々気づいてたんじゃないの?私はジルが聖杯に願って造り出した存在だった。まあ、ジルはそれを隠してたけどね。そんな事実を知ったら復讐なんて馬鹿らしくなってきたのよ。なにやってもジルの掌の上とかやる意味ないでしょ?」

 

『なんだって!?じゃあ君は、聖杯によって作られたサーヴァントだとでも言うのかい!?』

 

話だけは通信越しに聞いていたロマ二が叫ぶ。今まで、聖杯でサーヴァントを造り出したなんて聞いたことないから当然だが。そんなロマ二を含めて、ここにいる全員に黒いジャンヌは全てを話した。それはガタノゾーアが言っていた事も入っているので、全員の中でジルだけが悪役となってしまうが、それは些細な事だろう。

 

「そう……だったんですか。あのジルがそこまで」

 

「利用するだけ利用しようとするなんて酷い人ね」

 

特にジャンヌ本人とマリーは色々思うところがあるようだ。マリーにとっては造られたものとはいえつい先ほど友人となった人物が利用されていたのだから当然だろう。黒いジャンヌは話し終えると立香に近づいた。

 

「それで、これは私からの提案なんだけど、貴女、私と契約する気は無い?」

 

「えっ?」

 

「私と契約して、私を貴女のサーヴァントにする気は無いかと聞いているのです」

 

「いいの?」

 

「いいのもなにも。今の私は色々と不安定ですからね。このままだと座に行けずに消滅してしまうかもしれません。まあ、登録されてないので当然ですが、私も生まれた以上即消滅は嫌ですからね。貴女と契約してサーヴァントになれば貴女とパスが繋がって消えなくて済む上、貴女達がこれからやろうとしてることに協力すれば、うまく行けば私も私として座に刻まれるでしょうから。それで、どうします?ああ、別にそっちの貴女でもいいのよ」

 

「私は遠慮しとくわ」

 

オルガマリーがあっさりと断る中立香が黒いジャンヌの提案を呑むべきか否かを考えていると、いつの間にやら背後に立っていたガタノゾーアが口を開く。

 

「色々と思うところもあろうが、こいつの力は本物だぞ?」

 

「あー確かにそうみたい。ガタノ、君なんかやったでしょ?」

 

「さてな」

 

ガタノゾーアの意見に同調するミゼーア。この2人が言うのなら、実力は相当なものだろう。そう考えると、立香の答えは決まった。

 

「わかった。じゃあ、ジャンヌと契約するよ」

 

「ええ、それが賢い選択です。ついでに名前も変えましょうか。私はそこの聖女とは違うんですから。そうですね、英語で変化するはオルタと言いますし、ジャンヌ・ダルク・オルタにしましょうか。うん、そうしましょう。これから私のことはジャンヌ・ダルク・オルタもしくはジャンヌ・オルタと呼びなさい」

 

ウンウンと満足そうに頷く黒いジャンヌ改めジャンヌ・オルタ。立香が聖杯を受け取った瞬間からゆっくりとだが歴史の修復が始まっていたので、急いでジャンヌ・オルタと契約をする立香。その後、はぐれサーヴァントの2人と別れの挨拶を済ませ、新しくジャンヌ・オルタを加えた立香一行は元の時代に戻っていった。



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キャスター・エミヤ

特異点から帰還した立香達は、サーヴァントを召喚するかどうか迷っていた。と言うのも現状でレイシフト許容人数が限界に達しているので、これ以上の召喚は誰かカルデアに待機させる事になるだろう。とはいえ、もし特異点先で1人になってしまった場合、緊急で送り出すサーヴァントがいないとなると合流するまで確実に相手の的になってしまうことになる。そう考えると召喚したほうがいいような気もする。

 

「今回は聖晶石が3つしかないから一回しか召喚できませんけど、ライダーとか召喚できると馬とか召喚できるサーヴァントだったら、移動の時短が出来ますね」

 

「そうね。それにアサシンとかだと気配遮断を使った情報収集とかも出来るわね。……と言うより、エクストラクラスが既に3人いるこの状況がおかしい気もするけど」

 

エクストラとはなんだったのかと頭を悩ませるオルガマリー。それを見て、困ったように笑う立香。話し合いの末、結局召喚することになった。未だ召喚できていないクラスのどれかが召喚されれば良いなと言う期待を込めて。

 

 

「今回は私が引くわね。貴女は、あの黒いジャンヌ……ジャンヌ・オルタと契約したのだし、良いわよね?」

 

「良いですよ。もしやばそうな奴が召喚されたときは私に任せてください」

 

いつでも令呪でサーヴァントを呼び出せるようにしながら、オルガマリーの召喚を見守る立香。ここに来る途中、ミゼーアに自分を触媒にしない?と笑いながら聞かれたが、嫌な予感がしたため丁重に断った。一番上の存在を触媒に召喚なんてしたら、その配下が来てしまうだろう。それはよろしくない。下手をすれば今度こそ狂ってしまうかもしれないから。

 

「クラスだけでも絞れれば良いけど、無い物ねだりしても仕方ないしさっさと召喚してしましょうか」

 

いつも通り聖晶石を投げ込んで、砕けた聖晶石が光を放ち人型を成す。光は次第に収まり、そこには白髪の青年が立っていた。

 

「サーヴァントアーチャー、召喚に──ん?……成る程そう来るか。失礼マスター、今回私はアーチャーではなくキャスターのようだ。このクラスで召喚されるのは初めてだが、なに足手まといにはならないさ」

 

そう語るキャスターに2人は見覚えがあった。あの黒き騎士王と戦った最初の特異点、そこでアーチャーとして自分達と対峙しサーヴァントにそっくりだった。黒化していたあの時とは違い、赤い外套をその身に纏っている。

 

「よろしくね、キャスター。早速で悪いけど貴方真名はなんて言うのかしら?色々と都合があってもうキャスターは1人いるから、真名で呼ぶことになるから教えて欲しいのだけど」

 

「そう言うことか。私の真名はエミヤだ。聞いたことないだろうが、私はちゃんとした英霊ではないからな。その辺は理解してくれ」

 

「ちゃんと英霊ではない?気になるけど、今は私たちに協力してくれるならそれで良いわ」

 

「ああ、そこは信用してもらえて構わない」

 

「そう、ならここの案内をするからついてきて頂戴」

 

キャスター改めエミヤを引き連れてカルデアを案内する事にしたオルガマリー。数分後、青いキャスターと赤いキャスターがバッタリ出会い口喧嘩を始めるのだった。



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一章登場オリ鯖ステータス

クラス:魔術師(キャスター)

真名:メフィラス

マスター:オルガマリー・アニムスフィア

性別:現在は女性

身長:2〜60メートル

体重:40〜2万トン

出典:ウルトラマン

地域:メフィラス星

属性:混沌・悪

好きなもの:物事が思い通りに進むこと、地球

嫌いなもの:暴力(自己申告)

天敵:地球人の心

 

ステータス

筋力:C

耐久:A

敏捷:A+

魔力:A+

幸運:B

宝具:EX

 

クラススキル

陣地作成:A

自身に有利な陣地「工房」を作り出すスキル。メフィラスの場合、無重力室を作り上げることが出来る。また、メフィラスほどのIQをもってすれば大体の陣地は作成出来る。多少時間はかかるが、地球に来た時に乗っていた円盤だって作れる。

 

道具作成(才):EX

少なくともIQが1万あるメフィラスに実質作れないものは存在しない。その気になれば、不老の薬だろうが、不死の薬だろうが作ってみせるだろう

 

対魔力:A

Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、傷をつけることができない。

 

スキル

 

テレポート:EX

その名の通りテレポートができる。自身以外に行う場合対象に手を向ける必要がある。EXランクともなると、一瞬にして地球から地球外に行く事など造作もない。

 

巨大化:A

対象又は自身を巨大化させるスキル。人間を怪獣サイズに巨大化させることもできるが、基本的にはメフィラスのさじ加減で大きさは変わる。

 

擬人化:EX

例によって、彼も大きすぎる人外のため付与されたスキル。外見は自由に変えることが出来る。

 

宝具

 

悪質宇宙人(メフィラス星人)

ランク:EX 種別対人(自身)宝具

メフィラスが本来の姿に戻り、あらゆるステータスが幸運を除きEXに跳ね上がる。擬人化状態でも本来の姿の力の一端を使うことはできる。

 

 

クラス:魔術師(キャスター)

真名:エミヤ

マスター:オルガマリー・アニムスフィア

性別:男

身長:187cm

体重:78kg

出典:Fate/stay night

地域:日本

属性:中立・中庸

好きなもの:家事全般(本人は否定)

嫌いなもの:未熟な自分

 

ステータス

筋力:D

耐久:C−

敏捷:C−

魔力:B++

宝具:?

 

クラススキル

陣地作成B+

自身にとって有利となる「工房」の製作が可能。彼の場合恩恵は全て宝具に向いている。

 

道具作成:B+

魔力を帯びた器具を作成可能。本来ならば、剣に特化した彼が盾や鎧などを投影する場合剣の時よりも2、3倍の量の魔力を必要とするが、このスキルによって必要量が減少している。また、宝具を修復・改造する際に補正がかかる。

 

対魔力:D

魔術への耐性。一工程の魔術なら無効化できる。魔力避けのアミュレット程度のもの

 

スキル

 

心眼(真):B

修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す”戦闘論理”逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

 

魔術:C−

オーソドックスな魔術を一通り習得している。

 

鷹の目:B+

鷹が遙か上空から獲物を狙うように、彼も超遠距離から対象を捉えることが出来る。

 

投影魔術:C+(条件付きでA+)

道具をイメージだけで複製する魔術。ただし、彼が使っているのは、一般的なそれとは少々性質が異なる。投影する対象が『剣』にカテゴライズされる時、ランクが飛躍的に跳ね上がるが、キャスタークラスの彼は『剣』以外のものを投影する際も、アーチャー時と比べて少しだけランクが上昇している。

 

宝具

 

無限の剣製(アンリミテッドブレードワークス)

ランク:E〜A++ 種別:対人宝具

錬鉄の固有結界。魔術師(キャスター)クラスで彼が呼ばれた理由。彼が視認した武器を瞬時に複製し、ストックする。ただし、複製した武器のランクは1つ下がる。陣地作成スキルの恩恵を最大限に受けているため、アーチャー時は不可能だった神造兵装の投影が劣化品とは言え可能となった。

 

永久に遙か黄金の剣(エクスカリバー・イマージュ)

ランク?

彼の騎士王が所持していたエクスカリバーの複製品。キャスタークラスになった事によって劣化品とは言えギリギリ投影可能になった本人曰く「奥の手中の奥の手」ビームは出ない。基本固有結界展開中のみ使用できるが、令呪3画を使ったフルブーストがあれば展開していなくても一度のみ使用可能。

 

 

クラス:復讐者(アヴェンジャー)

真名:ミゼーア

マスター:藤丸立香

性別:現在は女性

身長:不明

体重:不明

出典:クトゥルフ神話

地域:ティンダロス

属性:混沌・悪・時

好きなもの:愚かな人間

嫌いなもの:曲がった時間に生きる全て

天敵:ヨグソトース

 

ステータス

筋力:A

耐久:A

敏捷:A+++

魔力:A+

幸運:C

宝具:EX

 

クラススキル

復讐者:EX

 

忘却補正:EX

 

自己回復(魔力):EX

 

正気喪失:ー〜EX

邪神ではないが、ミゼーアの本来の姿を見た者は誰であれ狂気に蝕まれる。後述の擬人化スキルをどれだけ解除しているかによってランクが変動する。

 

領域外の生命(時):EX

この世の時間の流れとは違った時間の流れをしている場所から来たことを示すスキル。その世界で最も強いミゼーアはこのスキルをEXランクで持つことが出来る。

 

スキル

 

神殺し:EX

主神オーディンを食い殺したとされるフェンリルの原型となったと言われるミゼーアは並大抵の神であれば一撃で噛み殺す。

 

擬人化(魔術):EX

ミゼーアは他の擬人化持ちサーヴァントとは違い、後述の魔術で人の形を取ってるに過ぎない。立香が召喚した際に一部元のままだったのは、意図的にミゼーアが魔術をかけていなかったからだと思われる。

 

魔術(クトゥルフ神話):A

ミゼーアはガタノゾーアと同じく『そちら側』の魔術を使えるが、基本角ばった時間にいるため、全てを使えるわけではない。

 

時の番人:EX

角ばった時間にいるミゼーア達は曲がった時間に生きるもの達が本来の時間の流れに逆らった時、『匂い』を辿り対象の元へ顕界する。時間の流れに逆らう行為とは、タイムリープや未来予知などが該当しこれを察知すると単独顕界のスキルを持って現れる。ただし、ある一定以下の角がないと出現しない。

 

召喚:C++

曲がった時間に生きる全てを恨んでいるとは言え、サテュロスとドールとは協力関係にあり、ミゼーアはサテュロスとドールのみいくらでも召喚できる。

 

宝具

不浄なる時の角(ティンダロス)

ランク:EX 種別:対界宝具

 

本来交わることのない角ばった時間にある都市ティンダロスを固有結界としてこちら側に引っ張ってくる宝具。展開にこそ魔力を消費するが、展開された後はティンダロスに生きるもの達が維持のための魔力を支払う。これは後述の混血児も同等である。巻き込まれたものはティンダロスに棲むあらゆるものと出会い、襲われる事になるだろう。また、『猟犬』の粘液は生きており、皮膚に付着すると対象の身体を蝕む。人間やサーヴァントがこの粘液に感染し、かつ生存すると『ティンダロスの混血児』と呼ばれるクリーチャーとなる。サーヴァントが対象だった場合、クラスが強制的にバーサーカーに変化し狂化を付与する。また、混血児も含みティンダロスに生けるものは基本的にティンダロスに置いて最上位であるミゼーアの命令に逆らうことが出来ない。ちなみにこの粘液は洗い流せる。

 

クラス:降臨者(フォーリナー)

真名:ジャンヌ・ダルク・オルタ

マスター:藤丸立香

性別:女性

身長:159cm

体重:44kg

出典:忠実

地域:フランス

属性:混沌・悪・炎

好きなもの:何かを燃やす事、炎の精(炎の吸血鬼)

嫌いなもの:ジル・ド・レェ、自分を利用しようとする人

天敵:ジャンヌ・ダルク

 

ステータス

筋力:A

耐久:A

敏捷:A++

魔力:EX

幸運:D⁻

宝具:A+++

 

クラススキル

 

ダブルクラス:C

元々ルーラーだった彼女にクトゥグアが入り込む事でフォーリナーとなった為、ルーラー時に持っていたスキルをいくつか受け継いでいる。

 

領域外の生命:EX

その身に宿す存在が上位存在である為、本体でなく宿しているだけにもかかわらず規格外のランクを誇る。

 

正気喪失:B

彼女が使う炎はその身に宿る生ける炎そのものなので、そこから漏れ滲み出る狂気は人間の脆い常識や道徳心をあっけなく崩壊させる。これは彼女につきそう炎の精を見ても同様である。

 

狂気:B

人を狂わす存在を宿している以上、彼女も正気でいられるはずがなかった。まあ、クトゥグア自身が永続的な狂気に蝕まれている為、当然といえば当然かもしれないが。

 

神性:B

生ける炎を宿す彼女は半神といっても過言ではない高ランクの神性を持つ。

 

対魔力:EX

魔術による攻撃や呪詛そのものを受け付けない。ルーラー時に持っていたスキル。ジャンヌ自身の意思で一時的に弱めることもできたりする。

 

スキル

 

焔の魔女:EX

竜の魔女の変異スキル。その身にクトゥグアが宿っている以上、彼女はその配下である炎の精(炎の吸血鬼)を使役出来る。炎の精はそれぞれが独立した意思を持ち、ジャンヌが指示を出していないときはフサッグァという長の命に従って行動する。

 

不滅の現:EX

うたかたの夢になるはずだったスキルがクトゥグアと一体化した事によって変異したもの。例え誰かの願望、幻想から生み出された生命体だったとしても、クトゥグアと一体化する事により彼女は世界に1つの生命体として認められるに至った。未だ『座』に刻まれてないとはいえ彼女は彼女としての生を謳歌するだろう。

 

自己改造:EX

聖杯による特急改造。あんなに直ぐにクトゥグアと一体化出来たのもこのスキルのお陰だったりする。

 

魔術(クトゥルフ神話):A++

クトゥグアと一体化した事により、彼女はクトゥグアの知っている『そちら側』の魔術を使うことができる。

 

宝具

 

我が憎悪さえ燃やす生ける炎(ゲシュペンストケッツァー・ハスクトゥグア)

ランク:A+++ 種別:対軍〜対城宝具

自身の憎悪や憤怒を魔力に変換し、そこにクトゥグアの力を上乗せして対象を焼き尽くす。その威力は周囲を一瞬にして焼け野原に変えることすら造作もないほどである。



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第二特異点:永続狂気帝国
狂える者


オルガマリーがエミヤを召喚してから数日がたったある日、新たな特異点が見つかったと言われた2人はサーヴァント全員を連れては行けないので、誰を待機させるかを話し合っていた。フランスでサーヴァントを召喚した時点でギリギリだった為、2人ほど待機させなければいけないのだが、ガタノゾーア曰く、ジャンヌ・オルタは向こうについてから呼び出せるとの事なので、それを信じて、ジャンヌ・オルタは確実としてもう1人誰を待機させるかの話し合いである。

 

話し合いの結果、今回はセイバー・リリィを待機させる事にした。本人的にも異論はないとの事で、カルデアにセイバー・リリィとガタノゾーアが後で召喚出来るらしいジャンヌ・オルタを残し立香達は第2の特異点、ローマへとレイシフトを行なった。

 

 

ロマ二曰く、ローマの首都にレイシフト先を設定したらしいが、立香達がいたのは丘陵地であった。なにかの妨害でもあったのだろうか。まあ、場所は違えど時代は同じらしいから、歩いていけば首都にはいずれつくだろう。

 

「この時代にも、『アレ』はあるんですね」

 

空を見上げて、そう言うマシュの目線の先にはフランスにもあった光の輪。今のところ謎しかないらしいが、調査は続けていくらしい。わからない事は仕方ないので、早速立香はガタノゾーアにどうやってジャンヌ・オルタを召喚する気なんだと聞いてみた。

 

「ああ、オルタの中にいる存在を呼び出す応用の様なものだ。離れていろ、下手すれば燃えるぞ?」

 

そう言って、触手で地面を削り、魔法陣を書き始めるガタノゾーア。完全に書き上げた後、立香達は知らないが何時ぞやと同じように呪文を唱える。みるみる内に、魔法陣が赤い光を放ち始め、

 

「来い。ジャンヌ・オルタ(クトゥグア)

 

ガタノゾーアがそう告げると、魔法陣を中心に火柱が立ち上がった。その中から、火柱を腕で払って搔き消しながら、ジャンヌ・オルタが現れた。

 

「成る程、これが召喚されるって感覚なのね。なかなか面白い体験だったわ」

 

炎の精を引き連れながら現れたジャンヌ・オルタはそう言う。カルデアの面子は、数日前に炎の精は見ているので耐性があるが、ローマの住人は確実に耐性はないであろうから、見えないようにしといてと立香に言われ渋々従うジャンヌ・オルタ。オルガマリーはオルガマリーで、今の召喚の仕方には文句しかなかった。あんなのを見られたら、どう考えても敵対されて誤解を解くのに要らぬ時間を食ってしまうかもしれない。下手すれば戦闘ものだ。

 

「今後、やらないでちょうだいね?」

 

「ふむ、善処しよう」

 

「そこは了承して欲しかったんだけど、拒否されるよりはマシね」

 

この辺りで、新入りのエミヤはガタノゾーアが何者なのか大凡見当がついたが、立香には言わないでおいた。というのも、ダ・ヴィンチからわかってもマシュと立香には言わないでねと釘を刺されていたからである。となると、とミゼーアの方をちらりと見るエミヤ。その視線に気づいたミゼーアは、ニッコリと微笑んで見せる。危なく魅了されかかけるが、頭を振って回避。

 

「な、なあマスター。気づいているかね?近くで戦闘の音がする」

 

これ以上何かされないためにも、エミヤは自身のマスター、オルガマリーに話しかけた。先程から確かに戦闘音が聞こえている。それも音からしてそれなりに規模が大きい。この時代のローマにそんなことが起こったという話はない為、これが歴史の異常だろう。先の火柱が上がった時は一瞬止んだが、また再開したようだ。

 

「エミヤ、ここから見える?」

 

「生憎、丘の向こうのようでね。私の目は良いが、透視ができるわけじゃない。諦めてくれ」

 

「そう。なら、音源の方に急がないとね。行くわよ、立香」

 

「あ、はい!」

 

向かった先で見えてきたのは、少数対多数の戦闘だった。両方とも意匠は違えど、『真紅と黄金』を掲げている。どちらに加勢するか、そんなのは言うまでもなかった。

 

「少数の方を助けよう。サーヴァントじゃないから、峰打ちを頼みたいんだけど……いける?」

 

「少し難しいが、やってみよう」

 

「峰打ちね。やった事ないけど、マスターの命令は出来るだけ守ってあげるよ」

 

「チッ、めんどくさいわね。敵なら燃やせば良いじゃない。燃やせば」

 

先ず、ガタノゾーア、ミゼーア、ジャンヌ・オルタがそんな風に言いながら、敵陣に突っ込んでいった。まあ、彼女らだけでも大丈夫だとは思うが、エミヤとクー・フーリン、メフィラス、マシュが後方支援に回ることにした。瞬く間に、多数側は劣勢となっていき、9割方倒し終えたあたりで、少数側にいた少女が声を発する。

 

「剣を収めよ!勝負ありだ。貴公たちの働き、眼を見張るものがあったぞ。首都からの援軍であるにせよ、そうでないにせよ、良い働きであった。褒めてつかわすぞ」

 

「えっと……貴方は?」

 

「む。余の事を知らぬとなると、どこか遠方からの使いか?まあ良い。余は、ネロ・クラウディウスである」

 

アーサー王に続き、ネロ・クラウディウスまで女性だったとは驚きではあるが、まあそう言うこともあるだろう。と言うより、もういっそのこと歴史の重要人物はみんな女だと思っておいたほうがいいかもしれない。そんな中、敵軍の大将だと思わしき男がゆっくりと姿を現す。ネロは、その男を見ると再び剣を構えた。

 

「叔父上……いや、カリギュラよ。今日こそ決着を……ん?」

 

そこで、ネロは疑問を覚えた。いつものカリギュラと様子が違うのだ。いつもならば、真っ先にネロに目を付け襲いかかってくるカリギュラが、今日に限っては全く別のところを見ていたのだ。その視線の先にいるのは、ミゼーアとガタノゾーアである。

 

「あ……ああ……」

 

怯えた様な声を出す。カリギュラに、立香達は首を傾げた。そんな中、全てを理解したミゼーアとガタノゾーアは残念そうに首を振った。

 

「あれは、気づいたな」

 

「無駄に理性なんて残すからだよ?」

 

カリギュラが怯えている理由。それは彼がサーヴァントであり、クラスが狂戦士(バーサーカー)であることが原因だった。と言っても、ただクラスがバーサーカーなだけならば問題はない。問題なのは、狂っているにも関わらず理性が多少残っている事だ。狂ったが故の本能と残してしまった理性が、カリギュラに目の前の2人の正体を理解させる。本来なら、そこで狂うことで精神は安定を図ろうとするが、そもそも狂っているのでそれも出来ず、結果彼は天敵に狙われた獲物の様に、ただ怯えるだけしか出来ない。

 

「あ……アア……アアアアア……」

 

筈だった。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️────!!!」

 

「ほう」

 

「へぇ」

 

感心したように、ミゼーアとガタノゾーアが声を上げる。そう、カリギュラは残った理性を捨て、無理矢理狂う事で怯えから抜け出したのだ。真の狂える者(バーサーカー)になったカリギュラは雄叫びを上げながら、立香達へと突っ込んでくる。本能のままに、最も脅威となるミゼーアとガタノゾーアに攻撃を仕掛けようとするも、マシュが間に割って入りその一撃を盾で受ける。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️──!」

 

「させません!」

 

「喰らいなぁ!アンサズ!!」

 

マシュが防いだ事により一瞬動きが止まったカリギュラにクー・フーリンがルーン魔術による火の玉を放つ。しかし、カリギュラは即座に後方に飛びそれを避けた。しかし、着地するよりも早くカリギュラに近づいたメフィラスが近距離でグリップビームを放ち、それが直撃したカリギュラは吹き飛んだ。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️──!!」

 

受け身を取りながら着地したカリギュラは流石にこのままだと部が悪いと判断したのか。追い討ちとばかりにエミヤが放った矢を避けながらその場から去って行った。



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暗黒星人

カリギュラを退けたカルデア一行はネロ達に歓迎されていた。なんでも、突如として現れた連合ローマ帝国にネロ率いる現ローマ帝国は負け越してたらしい。領地は取られ、戦線も下がり続けた結果、ついに首都間際まで攻め込まれてしまったのが、先の戦いであったのだとか。立香達も見たように、あのままだと敗北濃厚で都市に攻め込まれるのも時間の問題だったので、立香達の助太刀はとても助かったとの事。

 

立香達を向かい入れ行われたちょっとした歓迎会。それは、1人の兵士がやってきた事で終わりを告げた。

 

「恐れながら皇帝陛下に申し上げます!東門にて敵の侵入を許してしまったとの事です!」

 

「なに!?何人だ!」

 

「1人との事です!居場所も既に掴んでいるとの事!」

 

「ほう。ならば、こちらから攻めるとするか。それで、何処にいる?」

 

「はい!それは……」

 

報告をしながら、ネロに近づいていた兵士はそこまで言って何故か口を閉じた。

 

「どうした?報告を続けてくれ」

 

「いや、もう言うことはない。これで俺の任務は終了だからな」

 

「は?」

 

「死ね。皇帝」

 

そう言って兵士は誰が反応するよりも早く持ち前の剣をネロの胸に突き刺した。そのままネロを蹴り飛ばし、兵士は怪しく笑みを浮かべ、高笑いをし始めた。

 

「フフフ、ハハハハハハ!邪神というのも大したことないな!」

 

「ガタノゾーア!ネロさんをお願い!」

 

「任せろ」

 

「そんな!なんでネロさんを!?」

 

「何故だと?なら、これでわかるか?」

 

兵士はそう言うと、ゆっくりとその姿が変わっていった。その姿に、メフィラスとガタノゾーアは見覚えがあった。正確にはガタノゾーアは本人がルルイエで寝ている時に意志を持った触手が外の様子を見ている時の記憶にある程度だが。

 

「ババルウ、お前か」

 

「ああ、お前メフィラスか。面白い姿だな。何故、人間の姿をしている?」

 

「それは今はいいだろう。それより、何故お前がそちら側に協力している?」

 

「俺の目的は『奴』の故郷である地球を破壊することだ。ならまずは人類を消滅させるのも一興だろう?しかし、俺としては貴様がそちらにいることが驚きだな。未だに、地球の心とやらにご熱心か?まあ、どうでも良いがな。後はこれで終わりだ」

 

ババルウ星人は両手を胸に添え、再びその姿を変えた。それは、誰もが知っている光の巨人(ウルトラマン)のように見えた。

 

『あれは、ウルトラマン!?』

 

「違いますよロマニ君。あれは……」

 

ロマニの台詞を否定し、メフィラスはあの姿がウルトラマンではないと言う。その根拠は本来のウルトラマンにはない筈のものが胸と両肩にある事だ。スターマークとウルトラブレスター。この両方を持ち、尚且つウルトラマンにそっくりな存在はメフィラスは1人しか知らない。

 

「宇宙警備隊隊長、ゾフィー」

 

「ご名答。褒美に死をくれてやる」

 

ババルウ星人は胸に添えた両腕の内、片腕だけを真っ直ぐ前に突き出した。瞬間、最強の光線が放たれる。

 

「M87────────!!」

 

迫り来るM87光線を止めるべく、マシュとエミヤが前へ出る。次いで少しでも時間を稼ぐ為、クー・フーリンが宝具の応用でエミヤ達よりも前に木の壁を作り出す。一瞬耐えたように見えた壁もすぐさま蒸発し、全く衰える事なくM87光線は立香達に襲いかかる。

 

「宝具、展開。私が守ります!」

 

「私も加勢するとしよう。I am the bone of my sword(身体は剣で出来ている)……熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!」

 

そして、光の国最強の一撃と2人の展開した盾はぶつかり合った。瞬間、エミヤの持つ盾の花弁が1つ砕け散る。

 

「グッ!」

 

「なんて威力!」

 

嘗ての黒き騎士王の一撃をも超える火力。もし、エミヤかマシュのどちらかがいなかった防げてはいなかったかもしれない。そうでなくとも、ゆっくりと盾は壊れ始めている。そんな攻防の裏で、立香にネロの事を頼まれたガタノゾーアは彼女の傷の治癒を行おうとしていた。

 

「無事……ではなさそうだな。皇帝様」

 

「ハハ……無様なところを見せてしまったな」

 

「仕方あるまい。奴の変装は()やミゼーアですら見破れぬ完璧なものだ。あれを見破れるのは光の巨人の王(ウルトラマンキング)位だ。さて、死なせるわけにはいかんのでな、傷口を見せてみろ」

 

そう言って、ガタノゾーアは服をはだけさせ傷口に触れる。当然ネロが呻き声をあげる。

 

「何を?」

 

「治癒だ。目を閉じて、本来のお前の姿を思い浮かべろ。早急にな。さもなくば死ぬぞ?」

 

「ふ、何をするのかわからぬが、良い。そなたを信じよう」

 

ガタノゾーアに言われた通り、目を閉じて何時もの自分を思い浮かべるネロ。それだけでガタノゾーアの魔術は効果を発揮する。

 

「今、妾とお前は傷口を通じて1つになっている。故に、傷ついた(トコロ)も直ぐに何時もの形像(カタチ)を取り戻す。ほら、目を開け」

 

言われた通りネロが目を開くと傷はすっかり無くなっていた。しかし、衣服についた血が先のことが嘘ではないと証明している。立ち上がり、少し動いてみるが不調は全くなかった。

 

「これは……凄いな。余の周りにも大勢の者がいたが、これ程の事が出来る奴はいなかったぞ」

 

「ヒトと妾を一緒にするな。さて、こちらはもういいぞ立香」

 

「わかった!」

 

ここまで、ジャンヌやミゼーア達でババルウ星人を攻撃しなかったのは理由があった。それは、下手に動いてネロにとどめを刺されると立香達のオーダーは終わりを告げてしまうから。だから、ネロが復活するまでエミヤとマシュに防いでもらう必要があったのだ。

 

「マシュ交代!ジャンヌ、ミゼーア!お願い!!クー・フーリンは援護を」

 

「エミヤ下がりなさい!メフィラス頼んだわよ!」

 

「漸くね。さあ、燃やしてあげるわ!」

 

「僕の目を欺いた事は褒めてあげるよ。お返しに、無残に殺してやる」

 

「木々よ、奴の動きを封じろ!」

 

「2人は正面からか。なら私は背後を取ろう」

 

炎を使い圧倒的な加速で迫るジャンヌ・オルタとほんの少しだけ魔術を解いて本来の力を引き出しそれに並走するミゼーア、瞬間移動でババルウ星人の後ろに回り込むメフィラス。三方を塞ぎ、その上クー・フーリンが召喚した樹木がその身体を拘束する。拘束した上での3人の攻撃は確実に当たるものであったが、当たる直前ババルウ星人はその場から消えた。

 

「え?」

 

それは誰の発した言葉だったか。何が起きたかわからない面々を置いて、メフィラスだけがババルウ星人のいた場所に落ちていた髪の毛を掴んだ。

 

「成る程、分身ですか」

 

「分……身?」

 

「そう、分身です。彼は髪の毛から分身を作り出せるんですよ。力量は本体と微塵も変わらない事は知っていましたが、まさか能力まで……」

 

『ババルウ星人。嘗て『赤き獅子(ウルトラマンレオ)』やウルトラ兄弟たちと戦ったって言うウルトラの国と地球を滅ぼそうとした宇宙人だったかな?メフィラス』

 

「ご名答。私と彼は昔から馬が合わなくてね。まあ、地球を破壊したい彼と侵略したい私とでは当然と言った所だが、そろそろ決着をつける事になりそうですね」

 

「その話がマジだとしたら厄介な奴が敵になったもんだ。まあ、今回の一件はそんな奴にはもってこいだもんな。しかも、そう言う事をしてくる奴ってのは総じてアサシンクラスだからな。気配遮断を持ってねえと良いんだがな」

 

アサシンのクラススキル『気配遮断』はアサシンクラスであっても持ってないサーヴァントもいる。変身能力に分身を生み出す力、その上で気配遮断など持っていたら厄介この上ない。そう考えてのクー・フーリンのこの台詞であった。

 

「東門の守備隊が心配だ。そなた達のちからをかしてくれるか?」

 

その言葉にもちろんと返し、立香たちは東門へと向かった。

 

 

東門についた立香たちの目に入ってきたのは、数多のババルウ星人と戦闘を繰り広げる守備隊の姿であった。ただ、誰がどう見ても劣勢と言えるだろう。

 

「ちょっと多すぎじゃない?」

 

「髪の毛の数だけ増えるって事の恐ろしさがわかりますね」

 

「でも、これなら思う存分暴れられるチャンスって事よね。マスターちゃん、もう峰打ちなんて言わないわよね?」

 

「うん。思いっきりやっちゃって!ただし、守備隊の人達には注意してね」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

そう言って飛び出したジャンヌ・オルタとほぼ同時にミゼーアとガタノゾーアも飛び出した。輝かしいまでの笑みを浮かべてる2人はババルウ星人の残滅に向かう。ガタノゾーアはその後ろでシャドウミストをばら撒き始めた。

 

「アハハハ!やっぱり峰打ちなんて柄じゃないわ!炎よ、我が意に従え!!」

 

「僕たちはそう言う存在だからね。まあ、運が悪かったと諦めるんだね」

 

「妾まで巻き込むな」

 

言葉どうりに炎を操って、瞬く間に半数のババルウを焼き消すジャンヌ・オルタ。魔術で耐性の無い味方には幻覚を見せつつ魔術を少し解除し、その異形の腕で薙ぎ払うミゼーア。2人の活躍とガタノゾーアの出すシャドウミストをポカンと眺める守備隊の面々。ネロは先の戦闘で多少慣れたのか興味深そうに見ている。

 

「ちょっと敵が可哀想になってきたかな?」

 

「先輩もですか?私も少しだけ……」

 

「まあ、可哀想だとは思うけど同情はしないわ」

 

「ハハハ!伝承の俺より暴れてんじゃねえか?」

 

「流石は……と言ったところか」

 

「侵略を終えたとしてもまだ壁はありそうですね」

 

その残滅タイムを見ながら感想を漏らすカルデアの面々。本来なら加勢に行くべきなのだろうが、下手に動くと巻き込まれそうなのでここは任せたと言った感じである。そして、それは最後の一体が髪の毛に戻るまで続いた。

 

「流石に本物はいないか。敵も馬鹿じゃないらしい」

 

「本物も混じっていれば楽だったんだけどなぁ」

 

「良い暴れっぷりだったぜ。次は俺も混ぜろよってお?おお!」

 

クー・フーリンの視線の先には再びのババルウ軍団。どうやらまた分身を作った様だ。先の蹂躙を見るだけだったので、すっかり火のついたクー・フーリンが今度は先陣を切って飛び出す。キャスターといえど、ケルト民族の彼にとって先の行為はお預け以外の何物でもないのだ。杖を槍のように構えて、その上でエミヤが投影した槍を持ち所謂二槍流の様に戦闘を始める。

 

「あはは……やっぱりケルトの人って血の気が多いんだね」

 

「クー・フーリンさんはその中でも特別多い方だと思いますけど」

 

「マシュ、よく考えなさい。あんな伝承持ちが血の気多くないわけないでしょう?」

 

獰猛な笑みを浮かべながら、数十体のババルウ星人とランサークラスでもないのに互角にやり合うクー・フーリン。と言っても、彼だけではその数百はいるであろうババルウ星人全員を相手取るのは難しい。が、未だ暴れたりなかったらしいジャンヌ・オルタとミゼーアは既に戦い始めている。ガタノゾーアも今回は触手を使って戦うようだ。

 

「なら、私は遠距離に徹する事にするか。マシュ、君はマスター達を守ってくれ」

 

「了解です。エミヤ先輩」

 

「ふ、良い子だ。さあ、こちらも仕掛けるとするか。偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!!」

 

いつぞやの黒いアーチャーも使っていた一射が地をえぐり、着弾と同時に爆発する。流石にそれでは倒しきれないが、それを連射すれば話は別である。投影魔術を駆使し、何度も打ち込む事でババルウ星人を倒していく。しかし、倒しても倒しても分身が補充され、永遠に続くかと思われたこの戦いも、夜を迎え漸く終わりを告げた。



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野営地へ

ババルウ軍団との戦いの翌日、まずは霊脈確保の為にエトナ山へと向かう事にしたカルデア一行。ネロはやるべきことがある為同行できなかったが、特に障害もなく目的についたのだった。が、ついてからが問題だった。自然発生したであろう死霊系の怪物が群がっていたのだ。まあ、ガタノゾーアがシャドウミストですぐさま一掃したのだが。

 

『よし、接続を確認した。しかし、先のが自然発生だったとしたら大した霊脈だね』

 

『確かにそうだね。さて、私から伝えたい事があるんだけど良いかい?』

 

「あれ、どうしたの?ダ・ヴィンチちゃん」

 

『実は、君たちがそっちで奮闘している間にこっちも色々やっていてね。ジャンヌ・オルタがそっちにいるからあんまり変わらないけど、一応レイシフトの許容人数の上限を増やせたから知らせておこうと思ってね。緊急時にリリィをそっちに送ったとしてもあと1人くらいなら召喚しても問題ないよ。なんなら、リリィを送ることもできるけど、どうする?』

 

「そうね。緊急時に誰も呼び出せないのは危険だからリリィには引き続き待機してもらうわ。やってみたいこともあるしね」

 

『了解。じゃ、引き続き頑張ってね。所長、立香ちゃん』

 

そう言って、一方的にダ・ヴィンチは通信を切ってしまった。ロマニは何か言いたそうだったが、仕方ないだろう。また後で通信すれば良いのだ。それよりも、立香はオルガマリーの言った事が気になっていた。

 

「所長、やりたいことってなんですか?」

 

「サーヴァントを召喚する際に、触媒があるとそれに所縁のある英霊が召喚されやすくなるの。それで、サーヴァントそのものを触媒にすれば良いんじゃないかと思ったのよ。と言うわけで、クー・フーリン。貴方を触媒にしたいんだけど」

 

「俺ぇ!?」

 

「そうよ。うまく行けば貴方の師匠のスカサハその妹のオイフェ、それにフェルグスなんかが召喚できるかもしれないじゃない?」

 

「いや、今の俺はその誰とも会いたくねえんだが。しかもそれって下手するとメイヴの野郎が来ちまうかも知れねえって事だろうが。嫌だぞ俺は、彼奴には会いたくねえからな」

 

「そう。なら、出ないように祈る事ね。まともに戦力になれそうなサーヴァントを召喚するにあたって、貴方が一番適任なのよ。エミヤは真っ当な英霊じゃないらしいから不安だし、メフィラスは下手するとババルウ星人みたいなのが召喚されるかもしれないし、ジャンヌやミゼーアたちはアレだし」

 

「アレってずいぶんな言い方だね」

 

「事実でしょ。で、リリィはもしかしたら円卓の騎士が喚べるかもしれないけどカルデアにいる。ほら、貴方が最適じゃない?」

 

「まあ、そりゃそうだが……はぁ、わかったよ。くれぐれもメイヴは召喚すんなよな」

 

「出ないように願ってはみるわ。じゃあ、お願いね」

 

そう言って、オルガマリーは召喚を開始する。クー・フーリンの士気の為にも、メイヴには出るなと願いながら。結果、召喚されたのは何処かクー・フーリンに似た青年だった。ただ、手には朱い槍を持っている。カルデア一行が不思議に思う中、その青年は名を名乗る。

 

「アルスターのクー・フーリンだ。クラスはランサー。ま、よろしく頼むぜ」

 

「あ?なんだ。若い時の俺じゃねえか」

 

「って事はアンタは将来の俺ってわけか。しかし、その姿はなんだ?ランサーじゃねえのか?」

 

「まあ、色々あってな。今回のクラスはキャスターって訳だ」

 

「……イジメか?」

 

「ま、俺も最初はそう思ったけどよ。キャスターはキャスターで良い時もあるぜ。まあ槍は使いたいけどな」

 

どうやら青年もクー・フーリンであったようだが、キャスターのクー・フーリンの発言を信じるならキャスターよりランサーのクー・フーリンの方が若い時代の時のクー・フーリンの様だ。とりあえず、ランサーのクー・フーリンに事情を説明する。

 

「なるほどなぁ。まあ、なんであれ戦闘は任せな。敵は噛み殺してやるからよ。知的な俺に変わってな」

 

「言うじゃねえか。若くても俺って事か。しかし、呼び方はどうする?俺もこいつもクー・フーリンだとややこしくないか?」

 

キャスターのクー・フーリンの疑問はもっともだが、ちょっと話し合った結果、召喚したマスターが違うので各自自分が召喚した方をクー・フーリンと呼び、そうではない方をクラスで呼ぶと言うことになった。やりたい事は出来たので、ここにはもう用はないため、立香達は、早急に首都ローマへと戻り、そこでネロからガリアへの遠征を行おうとしている事を聞くのだった。

 

 

当然、ガリアへの道のりは長く、ガタノゾーアが触手で襲撃を仕掛けてくる兵士達を倒しているので、無駄な体力を使っていないとは言え、それなりの疲労が、オルガマリーと立香を襲う。マシュも含めてサーヴァントはそもそも人と体力の桁が違うし、ネロや兵士達は馬に乗っているので疲れは見えないが、オルガマリーと立香は徒歩である。と言うのも、2人共々落馬しかけたため、ちょっと恐怖心が出来てしまった故に馬に乗っていないのだ。

 

『もう少しでつくから頑張ってね』

 

と言うロマニの言葉を信じ、歩き続けていると野営地が見え始めた。しかし、何を思ったのかミゼーアとガタノゾーアは何故かそこで止まってしまった。

 

「どうしたの?2人とも」

 

「多分だが、()達がここに入るとロクでもない事が起こりそうでな。それに──」

 

そこまで言って言葉を切り、馬上で頭を抑え体調が悪そうなネロを触手を使って自分の方へ引き寄せる。数秒後、ネロがいた場所を剣が通過していった。

 

「──敵は待ってはくれんだろ?」

 

その言葉をガタノゾーアが言うのと、クー・フーリン達が構えを取るのはほぼ同時であった。野営地から、1人の少女がこちらにやってくる。頭痛に苛まれながらも、視界に収めたその少女にネロは見覚えがあった。

 

「ブーディカ?」

 

「そうだよ、皇帝様?それ以外に誰に見える?」

 

そう言う少女は、記憶にある彼女そのものだった。何故と疑問が浮かぶも、頭痛がそれを口に出す事を許さない。ここ最近で一番の痛さであった。

 

「何故って言いたそうだね。良いよ、答えてあげる。あたしの目的はあんた達への復讐だよ。ネロ皇帝」

 

糸でもつけていたのか、先の剣がブーディカが手を動かすと手元に戻ってくる。ガタノゾーアのことは知っているのか、すぐに突っ込んでくる様な気配はない。

 

「でも、こんなにいるのは想定外だったなぁ。手分けして別れると思ってたんだけど、早くしなきゃ目覚めちゃうのに」

 

「目覚める?何のことだ?」

 

「教える訳ないでしょ。それより、あたしに早くネロを渡してほしいんだけど?」

 

「悪いがそうはいかねえな。どうしてもってんなら、俺ら全員倒すんだな」

 

「アハハ、それは困るね。ケルトの英雄に喧嘩は売れないかな。っとちょっと話し過ぎちゃったか」

 

「圧政!!!」

 

瞬間、野営地から筋肉(マッスル)が飛び出してきた。その太い腕から放たれる一撃を弾き返しながら、ブーディカは舌打ちをする。

 

「もうちょっと寝ててくれてもいいんじゃないかなぁ!」

 

「ははは。姿を偽りし圧政者よ。汝がつけしこの傷が我が力となる」

 

「さすがはスパルタクスだ。もっと念入りに眠らせておくんだったなぁ、ってスパルタクスが起きたってことは──」

 

「当然あたしもいるよ!」

 

「─だろうね!」

 

筋肉─スパルタクスに気を取られていたブーディカに斬りかかったのは、これまたブーディカであった。2人のブーディカ。何処かで同じ様なことがあった様な気がすると思う立香達。ただ、いつまでも見ているだけとはいかないのでそろそろ介入しようかと思った時、それを察したのか、もう一人のブーディカは剣を空高く掲げた。瞬間、戦車が現れ彼女はそれに乗り逃亡した。

 

「ははは。逃げるかそれもまた良し。すぐさま追いついて愛をくれてやろう」

 

「あーはいはい。その前に、ネロ公に色々話さなきゃいけないから、追いかけるのは無しだよ」

 

「そのネロはあまりの頭痛で気を失っているがな。それで?先の奴はお前の偽物か?」

 

ランサーのクー・フーリン以外はババルウ星人の事があるのですんなりと受け止めて、こっちのブーディカが本物であろうと当たりをつけていた。ネロが起きたら話すと言うブーディカの言葉を信じ、立香達は野営地で休憩する事にした。

 

 

「う、うぅん?」

 

「あ、ネロ公。起きたね」

 

「ハッ!ブーディカ、そなた何故裏切った!!

 

「いや、あたしは裏切ってないよ。説明するから、聞いてくれる?」

 

「うーん。まあ、嘘をつくとは思えんしな。良し、聞こう」

 

ブーディカの話を纏めると、突然自分とそっくりな例のブーディカが現れ、その事に驚いてしまった隙を突かれたらしい。まあ、大方ババルウ星人だろうが、一応変身できる怪獣や怪人はババルウ星人だけではないので決めつけるのは良くないだろう。しかし、ここにいる誰もが見破れない変身能力を持つババルウ星人の厄介さを再確認するには十分だった。ただ、今後もババルウ星人が現れることはあるだろうから、ブーディカ達にも情報を提供する。

 

「それは厄介だね。あのあたしも変身したババルウ星人だったわけか。さて、あたしとスパルタクス以外みんなやられちゃったし、もうここもダメだね。もうちょっとここで食い止めるつもりだったけど、攻めに行こうか」

 

「うむ。余もそれが良いと思うぞ。だが、今日は疲れもあろう。故にゆっくり英気を養ってくれ。明日、攻め込むとしよう」

 

その言葉に従い、立香とオルガマリーの人間組は明日に備え眠りにつく。ネロは先程まで寝ていたので、眠れないようだったがキャスターのクー・フーリンがルーンを使って無理やり眠りにつかせた。ランサーの方は待ちきれないといった感じで、槍の手入れをしている。皆、明日の戦いに備えて準備をしつつ、夜を過ごす。



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ガリア奪還

翌日、立香たちはガリアを取り戻すための行動を開始した。といっても、無駄な戦闘を避けるためにガタノゾーアがシャドウミストを全員を囲う用に展開するだけだが。

 

「さて、このあたりでいいか?」

 

「そうだね。じゃあ、露払いは私たちに任せて。ネロ公、ちゃんとガリア取り換えしてきてね」

 

「うむ!任せよ」

 

ガタノゾーアがシャドウミストを吸い込み、ブーディカは言葉通りスパルタクスと共に敵陣に切り込んでいく。立香たちはその隙を縫って駆け抜けていく。しかし、敵兵の数は多く二人では完全に露払いを仕切れず、その上このタイミングで新敵のゴーレムが現れたため、途中でランサーとキャスター両方のクー・フーリンが露払いに参加し、立香たちはついにここの大将と対面した。

 

「よくここまでこれたな……と言いたいところだが、そんな存在が何人もいたのでは、やれやれどちらが悪かわからんな」

 

「何を言うか!悪はどう見ても貴様らのほうであろう」

 

「ふむ、知らぬが仏とはこのことか。まあ良い、私はカエサル。ガイウス・ユリウス・カエサル。聞いたことくらいはあるだろう。それで、私と戦う貴様の名は?」

 

「ネロだ。余は、ネロ・クラウディウス!貴様を討つ者だ!」

 

「そうか。では、始めようか。我が黄金剣も時にはふるってやらねばな」

 

「言うな、黄金は余のものだ!」

 

カエサルとネロが戦いはじめ、当然立香たちも参加する。やることは簡単で、マシュがその一撃を防ぎ、ガタノゾーアが剣を弾き飛ばし、ネロが止めを刺す。カエサルは、特に表情を変えることもなくその場に崩れた。

 

「はぁ、そもそもセイバーなんてクラスで呼ばれたこと自体が間違っているというのに、相手がコレでは当然というべきか。……そこの客将、名は?」

 

「藤丸立香です」

 

「オルガマリーよ」

 

「貴様らがマスターというものだろう。こちらのソレとは気配が随分と違うな。どちらが正しいかはどちらでもいいが、あまり変な奴ばかり召喚するなよ。それと、もし私を呼ぶならもっと適したクラスで呼んでくれ」

 

そう言い残し、カエサルは消滅した。どことなく暗い顔をしたネロがオルガマリーに話しかける。

 

「……本物だったのか?」

 

「カエサルがってこと?」

 

「うむ。死んだ者が生き返るなどあまり信じられることではないが、先のガタノゾーアが余にやってくれたことを考えると、余が知らないだけでそういうこともあるのかとな」

 

「厳密には生き返ってるわけじゃないけど、あのカリギュラも今のカエサルもサーヴァントというものなの」

 

「サーヴァント……?」

 

そう話して、オルガマリーがネロにサーヴァントについて話している間、立香たちはババルウをどうするか話し合っていた。誰も見破れない以上、厄介この上ない相手であり、早めに倒しておくに限る。されど、だれも見破れない以上どうしようもなく、結局、だれもオルガマリーがネロに対してサーヴァントについて教えきるまでに、具体的な案を出すことが出来なかった。

 

 

 

 



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古き神

ガリアを奪還した立香たちは、帰路を進んでいる最中に奇妙な話を聞いた。なんでも古き神が現れたらしい。ガタノゾーアたちからすればほとんどの神が新しいのだが、あくまで今を生きる人間から見ると古いといったところか。それとも、ガタノゾーアたちや旧き神すら知らないもっと前の神か。それはわからないが、できれば自軍に引き入れたいというネロの発言の下、その神が目撃された島へと行くことになった。

 

       *

 

「三半規管が強化されていて助かりました。もし強化されていなかったらと思うと……想像したくありませんね」

 

「うむ!なかなかの航海だったな!」

 

ネロはそう言うが、残念ながらネロ以外のほとんどの人はひどい航海だったと思うだろう。何故ならば、その島へは船で行かねばならなかったのだが、ネロの操縦があまりにも荒く、ついてきた兵は酔って船から出てこれなくなってしまった。立香とオルガマリーは幸運にも三半規管が強かったので酔うことはなかったが、それでも多少の気持ち悪さを覚えながらその島へと降り立った。

 

「ふふ、ご機嫌よう、勇者の皆様。ようこそ、形ある(・ ・ ・)島へ」

 

そこへ一人の少女が待っていたとばかりに姿を現し、立香たちにそう声をかける。その身に纏う神性からしてその少女が女神であることがわかる。本人曰く一応サーヴァントでもあるらしい。ゆっくりと一行を見て、一瞬複雑そうな顔をしたが、すぐさま笑みを浮かべた。

 

「どんな勇者が来たのかと思ったけど、サーヴァントに見たこともない存在と私よりも古い……いえこれを言うのは野暮かしらね。それで、私に何の用かしら?最初に言っておくけど、私は駄妹(メドゥーサ)と違って戦闘なんてできないから、もしそういう頼みをするためにやってきたなら諦めることね」

 

残念なことに、交渉をするよりも早く本人の口から戦力になれないと告げられてしまう。神にも種類はあるのだという。彼女は戦うことを求められた神ではない。故にサーヴァントになった際に最低限は得たがそれだけとのことだ。

 

「そういえば、自己紹介をしていなかったわね。私は、ステンノ。ゴルゴーンの三姉妹、その一柱。貴女たちが勇者だったなら、戯れにご褒美をあげても良かったのだけれどそうではないようですし」

 

それに勇者とは真逆の魔王がいるものねとまでは流石に言わなかったが、目線だけをその三人に向ける。実際は、その内の二人は確実に娯楽を楽しむであろうが、気まぐれで怒りを買って消滅させられかねない可能性がある以上、下手に綱渡りはしたくはないのだ。

 

「そうか……それは残念だ。確かに余は皇帝であって勇者ではないからな。まあ、なりたいと思ったことは何度かあるが」

 

「ふふ、勇者はなりたいと思ってなれるものではなくてよ?」

 

「わかってはいるのだがな。ただ、やはり憧れというものは捨てられんのだ」

 

ネロとステンノがそんなことを話していると、ロマニから何者かがこの島へと接近しているとの連絡が入る。反応からしてサーヴァントであるようだが、普通に泳いで迫ってきているようだ。サーヴァントであればそれくらいできないことではないだろうが、ここまで追ってくるとなると誰かは大体予想がつくというもの。

 

「ネロォォォオオオオオオ!」

 

その追ってきた人物、カリギュラは水の中からゆっくりとその姿を現した。あの時に捨て去った理性も戻っているようだ。相も変わらずネロを狙っているようだが、ネロ自身も覚悟を固めたようで持ち前の得物を構える。

 

「ネロオオオオ!」

 

「来るか、叔父上!今こそ『皇帝』を討ち取る時だ!行くぞ」

 

「クー・フーリン、エミヤ援護しなさい!」

 

「了解した」

 

「任せな!」

 

跳躍し、全体重を乗せた拳を振り下ろすカリギュラ。それは生身のネロが耐えきれるものではない。しかし、オルガマリーの指示を受けたランサーのクー・フーリンが、ネロが受けるよりも早くその朱槍で受け止める。受け止められたことで生じる一瞬の硬直、その隙を突くようにエミヤが矢を放ち、ネロは剣を突き出す。しかし、カリギュラは片手で剣をはじき、朱槍を掴みそれを軸として飛来する矢を蹴り飛ばした。しかし、さすがにそこからクー・フーリンに向かって攻撃をすることはできず、すぐさま槍を放し後方へと下がる。

 

「ネロ!ネロォオオオオ!!」

 

「むう、流石は叔父上だ。何という身のこなし」

 

「ハハッ!そうこなくっちゃなぁ!!」

 

「クー・フーリン援護して!」

 

「おう」

 

感心するネロを尻目に、クー・フーリンはカリギュラへと突撃する。突き、薙ぎ払いといった猛攻を加えるもカリギュラはそれを捌きカウンター気味に拳を放つ。しかし、クー・フーリンの後方より火球が飛来し、カリギュラの動きを阻害する。阻害された動きはそのまま隙となり、クー・フーリンはカリギュラを大きく蹴り飛ばした。そして火球を飛ばした人物、キャスターのクー・フーリンの方へと飛び退いた。

 

「ナイスアシストだったぜ」

 

「てめえは俺だからな。どう動くかくらいは手に取るようにわかんだよ。さて、マシュやるぞ」

 

「は、はい!」

 

教わった通りに空中にルーンを描くマシュを見て、満足そうに頷きながらキャスターのクー・フーリンも己の杖を振るう。

 

「「アンサズ!!」」

 

二つの火球が蹴り飛ばされたカリキュラムへと襲い掛かる。その合間を縫ってエミヤが放つ矢も飛来する。火球こそかき消すことが出来たが、矢までは防ぎきれずその肩を貫通した。いかにバーサーカーといえど肩に穴が開けば片腕を使うことは困難になるだろう。ランサーのクー・フーリンは再びカリギュラへと突撃するが、今度はネロも共にカリギュラへと接近する。人間であるネロはサーヴァントそれも最速に近いクー・フーリンと同等の速度で剣戟を繰り出すのは不可能である。しかし、今回に限ってはその差が相手のリズムを狂わせ結果的に追い込むことになった。

 

()った!!」

 

連続突きからの不意を突いた足払い。それにより体勢を崩したカリギュラの首を朱槍が貫き、その胸を剣が大きく切り裂く。それが致命傷となり、カリギュラはその場に崩れ落ちた。

 

「ネロ……ネロ……おまえは……とても……月の、女神よりも……聖杯よりも……美しい……」

 

そう言い残し、カリギュラは消滅した。それを複雑そうな顔で見送るネロを他所に付近の森からいつの間にか姿が見えなくなっていたガタノゾーアたちが誰かを捕えながら戻ってきた。

 

「アハハハハハハ!見事に捕まってしまったのだな。しかし、不意を突かれたのならタマモ地獄をお見せできぬのも致し方なし。煮るなり焼くなり好きにするのだな、アタシも好きにする」

 

「いきなり燃やしにかかってくるとかおかしくない!?|ドラゴンステーキなんて笑えないわよ!」

 

「隠れてたくせに何言ってんのよ。寧ろ本当にやらなかっただけ感謝してほしいくらいよ」

 

「……どうした?」

 

喧しい二人のサーヴァントを現在進行形で触手で絡めとっているガタノゾーアは、どこに行ってたんだと言わんばかりの目線を受けて不思議そうにそう返した。カリギュラがこの島にたどり着いた辺りで、隠れていた二人の気配を察知したガタノゾーア、ジャンヌ・オルタ、ミゼーア、メフィラスはまずメフィラスの瞬間移動で背後に回り込み、不意を突いてジャンヌ・オルタがわざと盛大に火をおこしそちらに注意を引かせ、ミゼーアが魔術を用いて拘束し、そしてガタノゾーアが触手で捕える。そんなことをしていたわけだが、無断で行ったためにマスター二人からそんな視線を投げかけられるもの仕方のないことだった。

 

「あら、捕まったのね。あなた達」

 

「知り合いなの?」

 

「ええ、あるものを作るためにね。現界する時に引っ張ってきて手伝ってもらってたから」

 

「そうよ!だから解放しなさい!」

 

「……良かろう」

 

そう言って、解放するガタノゾーア。もしも何かがあってもどうとでもできる故、警戒はすれどいつもの自然体に戻る。他の三人もそうだ。

 

「それで、貴女たちはサーヴァントよね?」

 

「ウム。では名乗らせていただこう。我こそはタマモナインの一人タマモキャットなのだな。クラスはバーサーカーだワン!で、こっちはエリザベートだな」

 

「なんであんたが言っちゃうのよ!」

 

「エリザベートはわかるけど、タマモキャット?聞いたことないけどバーサーカーってことは元々は弱い英霊なのかしら」

 

残念ながら普通に強い英霊であるタマモキャットであるが、本人は特に何を言うのでもなくただただ笑っているのみでやはりカリギュラとは違えどバーサーカーなのだなと思わざるを得ない。念のために共に戦わないかとネロが誘ってみるも、ステンノが無理やり引っ張ってきた影響かこの島から出ることが出来ないらしい。本格的にこの島へとやってきたのは無駄骨かと思ったが、ステンノがカリギュラを倒した御礼として連合ローマ帝国の首都、その位置を正確に教えてくれるとのこと。これだけでも、大いにこの島にやってきた価値があるといえるだろう。その情報を元に作戦を考えるために、一行は再びあのネロの荒い航海の下本拠地へと帰って行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




文才が欲しいです。戦闘はやはり書くのが難しいけど、それ以上に今から1.5部のカルデア産サーヴァントをどのタイミングで召喚するか考え中だったりする。それと、イベントのキャラなのにガッツリストーリーに絡んでくる約数名。まあ、そっちはこれ以上増えなければなんとかならんでもないけど、やっぱり問題は1.5部だな。ヘラクレスとかそれだけで無双が加速しちゃうしなぁ

あ、早ければ今日遅くとも明日までにはガタノゾーアにちこっと加筆しますが、まあ詳細を少し書くだけなので別に見なくても問題ないです


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暗黒vs悪質

「──やはり、守るべきものなき戦いでは……」

 

首都ローマへの帰還中にスパルタ王ことレオニダスを退け、一行は無事に帰還を果たした。計画を立てつつも少しゆっくりできると思ったのも束の間、足止めを受けている客将として扱われている荊軻と呂布を含む特別遠征軍の帰還を手助けをすることにはなったが、彼女たちが持ち帰った情報とステンノから得た情報を照らし合わせて、あとは攻め込むだけとなった。戦況はこちらに傾いているといっても過言ではないらしいが、厄介なのがやはりババルウ星人であった。そもそも一般兵では勝てない程に強いうえに分身と変身である。これほど厄介な相手はそういない。それでもこの好機を逃すわけにもいかず、ついに連合ローマ帝国の本拠地へと攻め込むこととなった。雑兵では相手にならず、現ローマ軍は進撃していく。進めば進むほど敵兵の中にババルウ星人が混ざり始めたが、それでも速度を落とすことなく突き進む。

 

「ハハッ!初めて見たときゃ女に化けてたこともあって不意打ち上等の汚いやろうかと思ったがやるじゃねえか。これでこそ滾るってもんよ!」

 

「やっぱこういうときばっかはランサーが良かったなって思っちまうな」

 

二人のクー・フーリンは流石というべきか当然というべきか完璧なまでの連携が取れていた。キャスター故に後方支援に回っている方は若干不服そうではあるが。また、マシュは残念ながら未だ戦いというものになれてない為、最前線とはいかないが、それでも立香やオルガマリーをきっちり守っているあたり相手が最前線を行くガタノゾーア達の討ち漏らしだけとはいえ流石と言えるだろう。そしてついに、立香たちは一番奥に待っていた本体と思われしババルウ星人と対面した。

 

「俺の変身すら見抜けなかったくせに、ここまでこれたのか」

 

「君の分身が弱すぎたんじゃないかな?」

 

「なんだと?」

 

ミゼーアの返しが気に入らなかったのか顔をしかめるババルウ星人。それに対しミゼーアもミゼーアで初めて受けたといっても過言ではない屈辱だった為に会ったら受けた屈辱の礼として即刻殺してやろうと考えていた。殺意むき出しでババルウ星人を抹殺するために動き始めようとしたがメフィラスそれを止める。

 

「なに?僕はさっさとあいつを殺したいんだけど」

 

「貴方が受けた屈辱はわからないでもありませんが、私も彼とは長い付き合いですからね。ここは私にやらせてくれませんか?貴方はこの先も敵サーヴァントが出た時のためにマスターたちと一緒に行って欲しいのですが」

 

「え!?メフィラス貴方もしかして一人で戦う気!?」

 

「ええ、彼の相手なんて私一人で十分ですよ。ですから、ミゼーアさんお願いできませんか」

 

ミゼーアとしては全力を出さずとも速攻で終わらせることが出来るだろうが、メフィラスとババルウ星人には因縁があるように見える。考えの違いが発端だろうが、規模は違えと似たような関係であるヨグ=ソトースが相手だったらと考えて、確かに横からかっさらわれるのは癪に障る。ともなると、ここは大人しくメフィラスの願いを呑むのが良いだろう。

 

「分かったよ。でも、後で追いついて私の出番がなかったなんて言わないでね」

 

「ハハハハハ。それなら私は彼に集中できるというものですよ。では、行ってください」

 

そう言われたら仕方ないと立香たちは再び進軍する。後に残るはメフィラスとババルウ星人のみ。瞬時にメフィラスは人の姿から本来の姿に戻り、逆にババルウ星人はメフィラス星人がかつて戦った光の巨人、ウルトラマンへと変身を遂げた。

 

「また、懐かしい姿をとりますね」

 

「ふん。おまえは、こいつに負けたんだろう?」

 

「負けたのではなく、私が撤退しただけですよ。宇宙人同士の争いなんて仕様がないですから」

 

「言い訳か?勝てなかった以上負けと大差ない。認められないのなら俺が完膚なきまでに負かしてやる」

 

「やれますかね?貴方に」

 

瞬間、ババルウ星人は八つ裂き光輪を放ちメフィラス星人はあの時と同じようにペアバンド光線で相殺。次いで、飛び上がったババルウ星人を追いメフィラス星人も飛行を開始。ババルウ星人はメフィラス星人の方に向きを変え、スラッシュ光線を放つ。再びそれをペアハンド光線で相殺し、あの時とは違い瞬間移動で後ろに回り込み叩き落す。

 

「遅いですね」

 

「なに!?ぐあ!!??」

 

落下するババルウ星人に追い打ちでグリップビームを放つが、そこはババルウ星人。落下しながらも八つ裂き光輪を放ち相殺を狙った。しかし悲しいかな、グリップビームはペアハンド光線を超える威力なのだ。当然のように八つ裂き光輪を打ち破りババルウ星人に直撃した。

 

「クッソ!!」

 

怒り心頭といった感じで地面を殴り、ババルウ星人はウルトラマンの必殺技であるスペシウム光線を放った。しかし、そんな見え見えなものに当たるはずもなく瞬時に着地し急接近、勢いそのままに前蹴りを放つ。

 

「グ!?」

 

「これくらい彼は避けましたよ。このままでは貴方は彼より弱いということになりますね」

 

「貴様ァ!」

 

姿に似合わない台詞を叫びながら、ババルウ星人は再び姿を変える。ウルトラ兄弟最強と名高いゾフィー。性能だけでいえばウルトラマンより確かに強いと言えるだろう。

 

「死ねぇ!メフィラス!!」

 

「怒りに任せると碌なことになりませんよ。まあ、かく言う私もあの時は怒りに身を任せた結果失敗したようなものですが」

 

怒りで大振りになっている一撃を受け流し、あえて瞬間移動で距離を取る。そして、思惑通りババルウ星人はゾフィーの持つ最強の光線であるⅯ87光線を放つ。

 

「ハハハハハ!今回は盾を張る奴もいない!今度こそ消滅させてやる!」

 

Ⅿ87光線が迫る中、メフィラス星人はグリップビームの構えを取る。ウルトラマンとメフィラス星人はほぼ同等の実力を持つと言っていいだろう。だから普通に考えればウルトラマンより強いゾフィーの放つ光線をメフィラス星人はどうすることもできないだろう。普通ならば。

 

「なに!?」

 

ババルウ星人が驚愕の声をあげる。メフィラス星人が放ったグリップビームはⅯ87光線と拮抗するばかりか逆に押し始めたではないか。その理由はⅯ87光線にあった。この技は、ゾフィーが鍛えに鍛え抜きたどり着いた最強の光線である。故に、ゾフィー以外の者は十全に扱うことが出来ず、威力は大きく下がるのだ。ウルトラマン等が使うスペシウム光線もそうだが、極限まで磨き上げた技をそう簡単に(たとえそれが変身などによって同じ能力を持っていたとしても)他人がそう簡単に使いこなすのは不可能なのだ。実は、あの時マシュとエミヤだけで防げたのもこれのおかげだったりする。

 

「念のために宇宙警備隊の事を調べていたことが功を奏しましたね。まあ、あの時は彼はまだただの隊員でしたから出来たのでしょうけど」

 

「俺がメフィラスに負ける?ありえない、ありえない!俺は、俺は今ゾフィーなんだぞ!?こんなこと認められるか!!」

 

意地になっているのかババルウ星人はどうにかしてⅯ87光線で押し返そうとするが、無情にも徐々にババルウ星人に迫るグリップビーム。そして、ついに完全にⅯ87光線を押し切ったグリップビームが直撃したババルウ星人を起点として大爆発を起こし、そこにはもうババルウ星人の姿はなかった。

 

「思ったよりも時間がかかってしまいましたね。急いで向かうとしましょうか」

 

特に思うこともなく人の姿に戻り、瞬間移動を使って立香の下へと向かった




アレキサンダーは?って人がいると思うので説明いたしますと、レフがババルウ星人を見てこれ以上呼ぶ必要はないなと判断したため、召喚されてません。あと、基本的に○○星人とかは擬人化時のみ星人と記載しておりません。


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破壊の大王

「──さて、どこまで進みましたか?」

 

「ひっ!?……ってメフィラスじゃない。突然目の前に現れるのは流石に心臓に悪いからやめて頂戴」

 

「おや、失礼。次からは気を付けますよ。それで?」

 

「これから最終決戦よ。相手の最後の『皇帝』も分かったし、まあそれで一回ネロが戦意を失いかけたけどね」

 

「タイミング的には丁度良かったようですね。では、作戦を聞かせてもらえますか?」

 

「簡単よ。私たち(カルデア組)とネロが城へ突入して、ブーディカたちには万が一にもローマ軍が全滅しないようにここに残ってもらうことになってるわ。みんなはもう先に行ってるから、私たちも早く行くわよ」

 

そのオルガマリーの言葉に応えるように、メフィラスは瞬間移動を駆使しオルガマリーと共に一気に先に行った立香たちへと追いついた。事前に察知する程度造作もない約三名を除き、当然現れた二人に驚愕する立香やマシュたち。彼女らも今まさに最奥の間に足を踏み入れようとしているところであった。合流のタイミングはパーフェクトと言えるだろう。

 

すべては我が槍に通ずる(マグナ・ウォルイッセ・マグヌム)!」

 

「いきなり!?」

 

「無駄だ」

 

容赦などしないと言わんばかりに、扉を開けた瞬間放たれるロムルスの宝具。迫りくる樹木の奔流、されどそれはガタノゾーアが吐き出したシャドウミストによって誰に届くこともなく瞬く間に死んでいく。今まではガタノゾーアが意識して弱めていた為に、対象は死ぬまではいかず衰弱程度で済んでいたが本来は触れただけで常人は死ぬ、というより生命あるものは大抵即死である。

 

「命を宿すものを使った不意打ちは()には通じんぞ」

 

「ローマに仇なすものよ。(ローマ)と言えどお前だけはローマと認めることは出来ん」

 

明らかな殺意を持ってガタノゾーアを睨むロムルス。それに対しガタノゾーアは余裕そうにロムルスを見返した。先手を取ったのはロムルス、その敏捷を活かしガタノゾーアに迫る。しかし、ガタノゾーアの敏捷はそれよりも上だ。振られた槍を受け止め、動きを止めるため触手を伸ばす。ロムルスは瞬時に槍を手放し後方へと跳躍、触手を回避した。ガタノゾーアはその手に残った槍を遠くへと放り投げ、一歩後ろへ下がった。

 

「決着をつけてこい」

 

「うむ!まっかせよ!」

 

それと共に入れ替わるようにネロが飛び出す。人間とサーヴァントでは実力に差がありすぎるが、ガタノゾーアとロムルスの攻防の最中、ネロは二人のクーフーリンとマシュからのルーン魔術とミゼーアから魔術による強化を受け、今一時のみサーヴァントと一人でも戦える力を得ていた。かつてない程の絶好調の中、ロムルスとネロがぶつかり合う。

 

「来るか、ネロ」

 

「うむ!余は、ローマ帝国第五皇帝として神祖……いや、ロムルス!そなたを倒す!!」

 

「良いだろう。来い、愛し子よ。槍はないが、されどローマはここにある」

 

ネロの剣をその手で受け止め、そのまま振り回し、上へと放り上げる。それを追うように跳躍し、拳による一撃を加えようとするも強化されているネロは空中で姿勢を整え、その場で回転し拳を回避し逆に蹴り落とす。ロムルスはそれを受けながらも華麗に地へと降り、独特の構えを持って同じく着地したネロを迎え撃つ。振るわれた剣を今度は受け流し、腹部へと蹴りを放つ。本来ならば、普通の人間がそれを喰らっただけで意識が吹っ飛ぶほどの威力を誇るが、生憎と強化を得たネロはこの程度で意識が飛んだりはしない。痛みを感じないわけではないので呻き声こそ上げるも歯を食いしばってロムルスの胸部を切り裂いた。

 

「ヌォ!?」

 

「流石神祖だ。だが、これなら」

 

胸部を斬られたことで、僅かに後退するロムルス。そこを押し切るように怒涛の剣戟を加えていくネロ。なんとかそれを捌いているが、捌ききれない分が確実にロムルスの身体に傷を負わせていく。一撃、二撃とロムルスに届く刃の数は少しずつ増えていき、遂にその首元まで迫った。

 

「──押し切る!童女謳う花の帝政(ラウス・セント・クラウディウス)

 

極限まで強化されたネロが一撃を放ったその一瞬、辺り一帯は黄金の劇場と化しそれを見たロムルスは満足そうに笑みを浮かべながらその場に膝をついた。

 

「……眩い、愛だ。ネロ。永遠なりし真紅と黄金の帝国。そのすべて、お前と、後に続く者たちへと託す。忘れるな。ローマは永遠だ。故に、例え、何者に侵されようとも、世界は永遠でなくてはならない。心せよ……」

 

そう言って消滅したロムルスを見送るネロ。その顔は少し悲しそうに見える。その背に声をかける者はおらず、しかし不愉快な声はあたりに響く。

 

「いやはや、まさかロムルスを倒すとは。気にする価値もない無能どもだと思っていたが、道端に転がる犬の糞のように目障りだな、君たちは」

 

聖杯を手に現れたレフは評価を改めるようにそう言い放った。オルガマリーが消し飛ばしたはずの下半身もしっかり再生され、見下すように立っている。

 

「レフ、大人しく聖杯を渡すなら見逃してあげてもいいわ。それとも、また下半身を吹っ飛ばされてみる?」

 

「随分と生意気なことを言うじゃないか。え?オルガ。我が王より賜った聖杯の力に貴様らが勝てるとでも?」

 

あの時と同じように指先を向けながらそう言うも、レフは忌々しそうに顔を歪めながらすぐさまその表情を変え嗤う。聖杯の力、この言葉を聞けば並大抵の魔術師ならば恐れを覚えるだろう。しかし、オルガマリーは違う。ツァトゥグァと会い、『向こう』の魔術を知った彼女には聖杯程度で恐れを抱いたりはしない。

 

「チッ……気に入らないな。ならば見せてやろう!我が王の寵愛をなぁ!!」

 

微塵も恐れを抱かないのが気に入らなかったのか、レフは持っていた聖杯を見せつけるようにその身体に取り込んだ。それにより変貌していくレフを見ながら、果たしてこの変貌中に何度殺せるか脳内でシミュレーションするミゼーアとその余りの醜さに若干気分が悪くなる立香。

 

『フハハハハハ!どうだ?これこそが我が王の寵愛だ』

 

殺害数が少なく見積もっても千を超えた辺りで、漸くレフは完全変貌を終えたようだった。わざわざでかくなって攻撃が当たる面積を増やす愚行を見て、ジャンヌ・オルタはこいつはバカなんじゃないかと思う。まあ、実際はとても強くなっているのだが、生憎とクトゥグアと一体化した彼女には全く脅威にならないので仕方ないのだが。

 

『それでは改めて──』

 

「もう良いよ」

 

『──は?』

 

何時までもこちらを見下すような態度が気に入らなかったのか。それとも、ただ単純に飽きただけか。それは分からないが、レフは名を改めて名乗ることも、その力を見せることも許されずミゼーアによって倒された。

 

「そんなばかな……」

 

受け入れがたい現実を目の前に、人の姿に戻ったレフはそう呟いた。何故、ただの一撃で自分はやられたのか。それよりもまず、自分はいつやられたのか。気づいたら倒れていたと言う他にない現状はレフをどんどん混乱させていくが、万が一にも自分がやられた際の保険を思い出し、レフは再び嗤い始める。

 

「……古代ローマそのものを生贄として、私は、最強の大英雄の召喚に成功している。見ろ!これこそが、貴様たちの世界の終焉!さあ人類(せかい)の底を抜いてやろう!七つの定義、その一つを完全に破壊してやろう。──我らが王の、尊き御言葉のままに!来たれ!破壊の大英雄アルテラよ!!!!!」

 

「────」

 

召喚されてその少女にガタノゾーアは見覚えがあった。ルルイエで寝ているときに外を見ていた触手が記憶している。まあ、記憶の中の少女はもっと大きかったが。

 

「──黙れ」

 

「え?」

 

何故小さいのか少し考えている間にあちらには動きがあったようだ。何やら喧しく騒いでいたレフが気に入らなかったのか召喚されたアルテラはレフをその剣で切り裂いてた。

 

「聖杯を吸収してる!?」

 

驚愕の声をあげる立香。決着まではもう少しかかりそうである。

 

 




一万字とか書ける人を尊敬する今日この頃。てか、ジャンヌって人に向かって初めて砲撃したり、集団戦闘を始めた人って聞いたけどマジ?


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アルテラ・ザ・スフィア

「フフフ、フハハハハハ!」

 

アルテラに斬られたレフは何故か笑い出した。まだ復活する手段でもあるのかと警戒を強めるカルデア一行を他所にレフの笑い声は不気味に辺りに響き渡る。それを目障りに思ったのかアルテラがもう一度得物を振りかぶった時、レフの身体から何かが二つ飛び出した。一つは光の粒子のような何か、もう一つは飛行する何か。どちらとも永年地球を見続けてきたガタノゾーアですら知らないもので、流石に少し警戒をする。

 

「ああ……これを持たされた時は何のことかと思ったが、成程こういうことだったのか」

 

その言葉を最後にレフは完全に事切れたようだった。飛行する物体はアルテラへ、光の粒子はガタノゾーア達へと飛んできた。四つに分かれ、マシュ、ガタノゾーア、ジャンヌ・オルタ、ミゼーアへと飛来するもジャンヌ・オルタはその炎を使い完全に焼却した。残りの三人も盾、触手、爪を使って振り払おうとするも逆に光の粒子が付着してしまう。特にマシュは盾を経由し全身に回り、とっさにメフィラスが瞬間移動をさせようと手を向けるが、それよりも早く三人に付着した光の粒子はその付着部から離れどこかへと飛んで行ってしまった。何が目的だったのかは分からないが、それよりも気になるのはアルテラだろう。

 

「え……なにあれ」

 

向かってきた光の粒子を先に対処すべく目を離していたアルテラを再び見たとき、立香はそんな声を漏らした。姿が変わっていたのだ。剣は腕と一体化し、剣を一体化していない方の腕は灰色の籠手のようなものが付き、胸部には目のようなものが浮かび上がっていた。所々にアルテラの面影を残してはいるものの異形の化け物のような姿へと変貌していた。

 

「文明……破壊……星……破滅……人理焼却。人よ、『私』と同化せよ。破滅を回避するために、『私』こそが『未来』だ」

 

「?何を言って」

 

軍神の剣(フォトン・レイ)

 

「まずい!!──I am the bone of my sword.(身体は剣で出来ている)熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!グッ!?」

 

 

意味不明な言葉を紡ぎながら、異形と化したアルテラはノーモーションで宝具を発動した。一体化した剣──神の鞭が回転を始め七色の光をまき散らしながら突っ込んでくる。花弁が開きそれを受け止めるも一瞬のうちにして七つの内の六つがはじけ飛び、七つ目にもひびが入り砕けそうになるがガタノゾーアが魔術を施しなんとか耐えている状況になる。

 

「──あ、マシュ!宝具お願い!!」

 

「はい!宝具、展開します!」

 

一瞬の出来事で理解するのに数秒かかってしまったが、それでもすぐさまマシュに宝具を使うよう指示出来るのは成長した証だろうか。マシュが加勢し、何時ぞやと同じようにマシュとエミヤによるカルデア一行が誇る最強の盾が完成する。今回は、ガタノゾーアによる魔術の補強も入っているのであの時よりも強力であると言える。

 

「大人しく『私』と同化しろ人類」

 

「意味の分からないこと……メフィラス!」

 

未だに意味不明なことを話すアルテラに何とか一撃加えようと説明もなくオルガマリーはメフィラスにガンドを放った。即座にその意図を察知したメフィラスは自身に飛んできたガンドをアルテラの真横に瞬間移動させる。咄嗟に反応するも避けること敵わず、アルテラは横へと吹っ飛んで行った。

 

「ガタノゾーア!ミゼーア!追撃お願い!」

 

「言われなくとも」

 

「わかってるよ」

 

ガタノゾーアが紫色の光線を放ち、ミゼーアが接近しその爪で引き裂かんと接近する。しかし、アルテラが手を前に突き出すと爪と光線は何かに阻まれてアルテラに届くことはなかった。亜空間バリア、それがミゼーアの爪を阻んだものの正体。振るわれた神の鞭をその爪で受け止めたミゼーアは、しかし威力を防ぎきれずに吹っ飛ばされる。

 

「ミゼーア!?」

 

「相当強化されてるねコレは」

 

心配そうな立香を他所に吹っ飛ばされたミゼーアは宙を蹴り地へと着地し、そう感想を述べた。アルテラに何かが纏わり付いているのは分かったが予想以上と言ったところか。未だ健在のミゼーア対して追撃をすべくアルテラが動き始めるが、すぐさまその身体が燃え上がった。

 

「燃えろ!」

 

「──」

 

「あら、こっちに来るのね。良いわ、相手してあげる。キャスターのクーフーリン、援護なさいな」

 

「言われなくてもやってやるよ。ガタノゾーアも手伝えよ」

 

「仕方ないか」

 

杖を突きたてて地面から樹木を召喚しアルテラを拘束、その上でガタノゾーアの触手が絡めとる。普通のサーヴァントならこれで動くことは出来なくなるだろうが、このアルテラはその全てを引きちぎりジャンヌ・オルタに迫る。ジャンヌ・オルタの持つ黒い旗と神の鞭がぶつかり合い、押し切られたジャンヌ・オルタは後方に吹っ飛び壁に激突した。

 

「なんて力してんのあいつ。って危な!」

 

「──」

 

「させねえよ!エミヤ!」

 

「ああ」

 

普通のサーヴァントとは比べ物にならない速度で神の鞭を突き刺さんと迫るアルテラを避け距離を取る。地面に亀裂を入れながら跳躍し、弾丸のように降ってくるアルテラにランサーのクー・フーリンが側面から蹴りを放ち行動を妨害する。それと同時に、エミヤが矢を数本放ちその全てを壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)で爆発させる。

 

「──」

 

「チィ!全く効いてないなこれは」

 

「なら」

 

「これは」

 

「どうかしらね?」

 

爆煙を払いながら、今度はエミヤに斬りかかるアルテラ。先の攻撃を見て、受けるのは不利と考えたエミヤは避けることに専念しながら愚痴を漏らす。しかし、瞬時に接近したミゼーアが爪で打ち上げ、ガタノゾーアが全方位から再生させた触手で滅多打ちにし、ジャンヌ・オルタが旗を突き刺し業火で自分ごと極限火力で焼き尽くす。余りの火力で爆発が起こり、アルテラとジャンヌ・オルタは互いに吹っ飛んだ。

 

「恐るべき耐久力ですね」

 

「──文明を破壊する」

 

「まだ元気ですか」

 

普通のサーヴァントならもう既に消滅してるであろうにと呆れるメフィラス。マスターたちやネロに被害が出ないようにサポートに徹しているメフィラスは手を出さないが、まともにダメージを与えられてるのは規格外三人位だろう。エミヤたちも動きの阻害位は出来るだろうが、与えてるダメージはほぼゼロと言って良さそうだ。

 

「あーもう!何なのよあいつ!!ガタノゾーア貴方なんか弱点とか知らないの?」

 

「あの少女の事なら知ってるが、融合してるアレは見たこともない。地球産じゃないだろうな」

 

「そんなの見ればわかるわよ!さっきの割と本気だったんだけどね」

 

「こっちで僕の敵になれるのは例外を除いていないと思ってたんだけど、ちょっと認識を改める必要がありそうだね」

 

「私は、破壊の……『私』は完全無欠の生命体。人、有機物、無機物、惑星、あらゆるものを融合し完成したのがこの『私』」

 

「僕が受け止めよう」

 

ぶつぶつと呟きながら斬りかかってきたアルテラの神の鞭をミゼーアが爪で受け止める。先ほどとは違い確実に止められるだけの力を込めて完全に受け弾き飛ばす。しかし、弾き飛ばすと同時にアルテラが手を前に出し亜空間バリアを張ったことでガタノゾーアたちは追撃は出来ずに終わった。

 

「後ろががら空きだぜ!」

 

「アンサズ!」

 

「理解できない。なぜ『私』を否定する?」

 

「何時までも意味不明なこと言ってんじゃないわよ!」

 

亜空間バリアは一方にしか展開できず、後ろから不意を突いたクー・フーリンたちの攻撃が入り、それに対処するために後方に亜空間バリアを展開した瞬間、ジャンヌ・オルタが炎を纏った拳で殴り、一瞬怯ませ炎を纏った回し蹴りで壁へと蹴り飛ばす。

 

「クー・フーリン!宝具を使いなさい!」

 

「おうさ!」

 

「ガタノゾーア!アルテラを拘束して!」

 

「先のようにはいかんぞ?」

 

立ち上がったアルテラをどこを防がれても拘束できるように全方位から触手で襲い拘束する。手を向けてその方向に亜空間バリアを張るのなら、拘束し手を上に向けてしまえば前方は防げないだろう。魔術による強化もかけてあるので先ほどのように引き千切られることもない。

 

「行くぜ。……ぶち抜け!穿ちの朱槍(ゲイ・ボルク)!!」

 

朱い槍に魔力が迸り、ランサーのクー・フーリンは必殺の一撃を放つ。因果逆転の呪いの槍がアルテラと一体化した何かの核を貫いた。

 

「やった!」

 

「いや、ありゃやれてねえな」

 

「まさか、回復してるの?」

 

「面倒だね。でも、これで……!へぇ、僕と一体化しようって?そんなのごめんだね。ジャンヌ・オルタ、燃やせ」

 

「言われなくたってやるわよ!」

 

しかし、それはそんなことでは死にはしない。分裂と再融合を繰り返し、元の形へと戻りながらアルテラの霊核を再び侵食し始める。だが、確かに空いた穴からミゼーアが無理やり手を突っ込み霊核ごとそれを引っこ抜き、ならばとミゼーアとの一体化を図るそれをジャンヌ・オルタが完全に焼却した。霊核を抉り取られたアルテラも肉体の維持が出来ずに緩やかに消滅を開始している。後は聖杯を回収すれば、この特異点は終了である。

 

 




というわけで、ダイナで視聴者にトラウマを植え付けたスフィアと謎の光の粒子が出ましたね。アルテラ好きの人には悪かったと思ってる。因みにガタノゾーアがスフィアのこと知らなかったのはダイナ本編が2017年からの出来事だからです。FGOは2015年勃発だからね。そもそもガタノゾーアが2010年に死んでますから、どっちにしろ知らないんですけど。


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幕間っぽい何か エミヤとガタノゾーア

ちょっとした小話みたいなものなので、短いです


第二特異点からカルデアに帰ってきたその日の夜。ガタノゾーアは誰もが寝静まったであろう深夜に、エミヤから話があると呼び出され、特に無視する意味もないのでこうして食堂に向かっていた。

 

「来てやったぞ」

 

「……ん?ああ、てっきり無視されると思っていたのだがね」

 

食堂に入り、何やら調理器具を弄っていたエミヤに声をかける。このカルデアの食堂は料理が出来るエミヤと彼に弟子入りしているセイバー・リリィが管理しているので、彼が調理器具を弄っていても問題ないのだが声をかけるまでガタノゾーアに気付かなかった辺り相当集中していたのであろう。自身とガタノゾーアの分の紅茶を淹れながら近くの椅子に腰かけるエミヤとその対面の椅子に座るガタノゾーア。エミヤはほんの少し迷うような表情を見せた後、意を決したように口を開いた。

 

「話とは何だ?」

 

「……邪神ガタノゾーア。これが名前で間違いないな?」

 

「ああ、そうだな。それで?」

 

「経緯は省くが俺は生前、正義の味方を目指していたんだ。だが、ある日世界が闇に包まれて、俺は自分の無力を悟ったよ」

 

「ほう?」

 

世界が闇に包まれる。そんなことが出来るのはそうそう居ないだろう。しかも、それを自分に伝えるということはエミヤは生前ガタノゾーアが地上に現れた時に生きていた人物だと言える。

 

「世界各国を襲う怪獣に、俺がその時憧れていた『正義の味方(ウルトラマンティガ)』が敗れたという事実。俺は縋る思いで願ったよ正義の味方が敗れるわけないとね。そして気づくと俺は光になっていたわけさ」

 

「なるほど、あの時の奴を形成している光の一人というわけか。それで、なぜその話を今する?」

 

「別に意味などないさ。ただ、私はお前がどういう存在かここにいる誰よりも知っていると自負している。だからこそ、なぜこちら側に付いているのか理解できなくてね」

 

「ああそんなことか。他の奴らも言っていたよ。()を知っている奴は基本そう危惧するからな。他の奴らに言ったことだが、気まぐれだ。()とて破壊する事しか能のないわけではないからな」

 

「気まぐれか、それを信じるしかないのが悔しい所だな。あの怪獣にすら勝てない私ではお前が何を考えていても止めることも……いや、一矢報いる事すら出来ないだろうからな」

 

諦めたように紅茶を啜るエミヤ。実際に、ガタノゾーアと真面にやりあえるのはミゼーアとジャンヌ・オルタ、次点でメフィラス位だろう。邪神に人間が勝つには類まれなる幸運が必要なのだから。ただ、投影魔術が使えるエミヤは廃人になる覚悟で挑めば一矢位は報いれるかもしれないが。

 

「私が話したかったことはそれだけだ」

 

そう言って立ち上がり、コップを片付けてその場を去っていくエミヤ。そんな彼を見送って、彼が淹れた紅茶を啜るガタノゾーアは珍しい偶然もあるものだとと思った。自身を倒した光の一人が英霊になり、サーヴァントとしてこうして出会う。別段どうする気もないが、なんとなくティガの事を思い出し本人も気づかぬうちに少しばかり笑みを浮かべていた。




まあ、エミヤが生きた時代的にティガとかの話組み込んだらこうなるよねって話でした。


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XX

「フォウ、フォウ」

 

「あれ?君が僕に会いに来るなんてね。君の性質上僕らに合うのはまずいんじゃないかい?……フォウって呼べばいいかな?」

 

「フォウ!」

 

自室でやることもなくのんびりと読書をしていたミゼーアは何の前触れもなく突然やってきたフォウに冗談交じりにそう話しかけた。ほとんどの人はミゼーアの言葉の意味が分からず首を傾げるだろうが、当のフォウはそこは心配いらないとばかりに鳴き声を発する。

 

「フォウ!フォフォウ!フォーウ!」

 

「え?人間どころかこの地球の生き物ですらない僕らは君の管轄外?アハハ!それはそうかもね。僕の場合は特にだけど。でもさ、ならどこぞの無貌はどうするのさ。あいつは人間社会にガッツリ混じりこんでるよ?」

 

「フォウ?」

 

「あー知らないのか。本人も自覚してない場合もあるから仕方ないのかな?ま、知らないなら知らないでいいんだよ。少なくとも今はジャンヌ・オルタ(クトゥグア)がいるから積極的には関わってこないと思うし」

 

「フォウ?フォーウ?」

 

「あいつはクトゥグアが苦手なのさ」

 

少しだけ可笑しそうに笑みを浮かべるミゼーアは不思議そうに首を傾げながら見上げるフォウを頭の上に乗せて、面白そうな気配を察知した為、自室から出ていった。

 

     *

 

第二特異点修復を終えた翌日、立香はベットの中で目を覚ました。今日は特にやることもなく、自室から出てカルデア内を適当にぶらつき始める。しかし、すぐさま空腹を感じ食堂へと歩を進めた。

 

「あら、立香。貴女、今から朝食かしら?」

 

「あ、所長。そうなんですよ。そう言う所長はもう済ませたんですか?」

 

「ええ、だからこれからサーヴァントでも召喚しようと思ってるわ。一応遠距離が出来るエミヤはいるけど、ちゃんとしたアーチャーも欲しいじゃない?あーでも前回も私がサーヴァントを召喚したのよね。立香、今回は貴女が召喚する?」

 

元々聖晶石は結構な数があったのだが、あの大爆発で大半が吹っ飛んでしまったために今は一気に大勢のサーヴァントを召喚することが出来なくなる位までには数が減っていた。ダ・ヴィンチが頑張って制作してるとはいえそう多くを作ることは出来ず、貴重なものであることに変わりはなかった。ならば、前回召喚した自分ではなく順番的に立香が召喚をすべきではないかと考えたオルガマリーは、訪ねつつ持っていた聖晶石三つを立香に渡そうとする。しかし、立香はそれを受け取らずポケットから黄金のチケットを取り出した。

 

「なによそれ?」

 

「ダ・ヴィンチちゃんが聖晶石を作る過程で出た余りを使って作ったものらしいです。これ一枚でサーヴァントを召喚出来るらしいんですけど、試作品だからうまく召喚出来るか試してくれって」

 

「それで変なものでも召喚したらどうするつもりなのかしら」

 

「だからこそ私に頼んだみたいですよ。ガタノゾーアにミゼーア、ジャンヌ・オルタまでいる君なら大丈夫さって言われました」

 

それはそうだろうが、オルガマリーはガタノゾーア達の本質を知っている。ジャンヌ・オルタに関しては彼女が身体の主導権を握っているようだから何とも言えないが、少なくともガタノゾーアとミゼーアは面白いと感じればそちら側につく可能性は十分にある。残念ながらそれを知ってるのは本人たちを除けば、オルガマリーだけなのでどうしようもないのだが。

 

     *

 

「じゃ、じゃあ行きますよ」

 

「ええ、何かあったらすぐ皆を呼ぶのよ?まあ、反応できればなんだけど」

 

「はは……そうですね」

 

実際、オルガマリーは邪神たちがその気になれば反応どころか認識すら出来ずに殺すことが出来る存在であることを知っているが、それを言ったところでどうしようもないので黙っている。一応オルガマリーのサーヴァントは連れてきているので、並大抵の事ならどうにかなりはするだろう。オルガマリーたちが見守る中で、立香の持つ黄金のチケットが光に変換され、それが人の形を取る。ただ、人ではなく人型のマシンであったが。

 

「ここにフォーリナーがいると聞いてやってきました。セイバーはいないようですが、確かにフォーリナー反応ありですね」

 

「えーと、あの?貴方が私のサーヴァントですよね?」

 

「はい?サーヴァント?……あ、ああ!あの火の玉が言ってたのはそういうことなんですね!ん?でもそれってある意味……いや、大丈夫でしょう!フォーリナー退治のためにはやむを得なかった事ですし!」

 

「??」

 

「ああ、紹介が遅れましたね。私はXX。これからよろしくお願いしますね、マスター君……でいいんですよね?」

 

「うん。私は藤丸立香。よろしくね、XX」

 

なにやら勝手に納得したらしいそのマシンのサーヴァントは残念ながら普通のサーヴァントではなさそうだった。XXなどという歴史上の偉人は少なくともここにいる誰も知らない。つまりはそういうことなのだろう。まあ、エミヤは若干顔が引きつってるような気もするが、きっと気のせいであろう。

 

「しかし、マスターですか。つまりは私の上司……のような立場なわけですよね。なら素顔も見せておくべきですね」

 

「素顔?」

 

聞き返す立香を無視してXXは再び発光し始め、光が収まるころには一人の女性に変わっていた。エミヤの顔の引きつりが深刻になる中、XXは得意そうに着脱可能な甲冑について語る。そんな時、召喚室の扉が開き、頭にフォウを乗せたミゼーアが入ってきた。ミゼーアはゆるりとXXを見た後何度か頷いた。逆に、ミゼーアを見たXXは目つきが鋭くなっていた。

 

「ふーん。僕たちの監視役としてと言ったところかな?ま、僕たちまだ何もしてないしね。手を出すわけにもいかないのかな」

 

「つかぬ事をお聞きしますが、貴方……フォーリナーですね?」

 

「いや、僕は復讐者(アヴェンジャー)だよ。残念ながらね」

 

「え、復讐者?こんなにもフォーリナー反応を感じるのに!?」

 

「否定はしないけどね」

 

「本当ですか!マスター君!」

 

「え、う、うん」

 

立香の肯定を聞いても、未だXXは納得できずにミゼーアを見る。しかし、残念ながらそれで突然クラスが変わるなんてことはなく、数分後XXは諦めたようにため息をついた。何故それほどまでにフォーリナーに拘るのか聞いてみるとなんとフォーリナー(とセイバー)を排除するためだと言う。ガタノゾーアもジャンヌ・オルタもいなくなるのは困るので、二人と戦うのは少なくとも全てが終わってからにしてもらうべく立香とオルガマリーは説得を開始するのだった。

 




エミヤがXXに反応を示していますが、XXはX(=アルトリア)の数シーズン後の姿なのでランサーのアルトリアよりはセイバーのアルトリアに近いと思うので、感覚的には数年後に知り合いに出会ったら八茶けてた的な感じになるのかなと思っているのであんな感じになりました。私の知らないところでちゃんとして情報があれば教えていただけると幸いです。そしたら書き直します。


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二章オリ鯖ステータス

アルテラ・ザ・スフィア

 

クラス:剣士(セイバー)

真名:アルテラ

マスター:レフ・ライノール→なし(強いて言えばスフィア)

性別:女性

身長:163㎝

体重:50㎏

出典:忠実、ウルトラマンダイナ

地域:中央アジア~欧州

属性:混沌・悪

好きなもの:自身との一体化を受け入れるもの

嫌いなもの:自身との一体化を拒否するもの

天敵:ウルトラマンダイナ

 

ステータス

筋力:EX

耐久:EX

敏捷:A⁺⁺⁺

魔力:C

幸運:C⁺

宝具:A⁺⁺⁺

 

クラススキル

 

対魔力:B⁻

本来はBランクなのだが、不純物(スフィア)が取り付いている為若干ランクが下がっている。

 

騎乗:EX

あらゆるものと融合できるスフィアと一体化している為、実質的にアルテラが騎乗できないものはない。

 

神性:B⁻

こちらもスフィアが混じってしまったせいで僅かにランクが下がっている。

 

単独行動(スフィア):EX

スフィアによる再生とチャージが繰り返されているので、魔力切れを起こすことがなくなっている。

 

スキル

 

暗黒惑星の紋章:EX

スフィアと一体化したことでスキル星の紋章が変化したもの。ほとんどの主導権がスフィアに乗っ取られアルテラ自身の自我はほぼ残っていない。

 

侵食(スフィア):EX

アルテラが無自覚に発動している文明浸食スキルがスフィアとの相性が良すぎたために文明に限らすあらゆるものを侵食するスキルになってしまったスキル。因みにこのスキルの最初の被害者はアルテラ自身であり、霊核含め完全にスフィアに乗っ取られる事になってしまった。

 

天性の肉体:A

本来はEXランクだが、スフィアとの同化により余分なものが付属された為ランクが減少している。

 

再生:EX

スフィアの力による再生能力。『核』を完全に破壊されるまでアルテラはスフィアの操り人形であり続ける。

 

宝具 

 

軍神の剣(フォトン・レイ)

ランク:A⁺⁺⁺ 種別:対城宝具

本来のアルテラが使うものとほとんど変わりがないが、スフィアによって異常なまでに火力が強化されている。また、魔力切れが起こらない為常に発動し続けることも可能となっている。

 

詳細

アッティラとも呼ばれる大王。本来はもっと先の未来で人類が対峙するはずのスフィアという存在に強制的に融合させられ、操り人形と化した。以降はスフィアの目標である自身と一つになることを果たすべくカルデア一行に襲い掛かる。筋力、耐久、俊敏が上昇しており、邪神たちと真面に戦える上、スフィアの回復能力もある為高い生存能力も得ている。『核』さえ無事ならわずか数秒で完治するが、逆に言えば『核』を破壊できれば良いためゲイ・ボルク等と相性が悪い。任意の方向に亜空間バリアを張ることが出来るが、手をその方向に向けなければならない。

 

 

ババルウ星人

 

クラス:暗殺者(アサシン)

真名:ババルウ星人

マスター:レフ・ライノール

性別:女性

身長:2~56m

体重:140㎏~2万8千トン

出典:ウルトラマンレオ、ウルトラマンSTORY0等

地域:ババルウ星

属性:混沌・悪

好きなもの:闇

嫌いなもの:光

天敵:ウルトラマンキング

 

ステータス

筋力:B⁺

耐久:A

敏捷:B⁺⁺

魔力:E

幸運:C

宝具:EX

 

クラススキル

 

諜報:-~A⁺⁺⁺

このスキルは気配を遮断するのではなく、気配そのものを敵対者だと感じさせない。何かに変身している時のみではあるが、例外を除き彼女が敵対していると気づくのは不可能である。

 

対魔力:E

魔術に対する抵抗力。Eランクでは、魔術の無効化は出来ずダメージを多少軽減するのみ

 

スキル

 

分身(髪):EX

自身の髪から分身を造り出すスキル。造り出された分身は本体と同等の力を持つ。

 

空間移動(異次元):D

異次元空間に自在に出入りできるスキル。アサシンクラスのババルウでは使いこなせない為、ランクが著しく低下している。Dランクだと一回使用するだけでも多大なる魔力を消費するため、基本的に使わない。

 

宝具

 

変身

ランク:EX 種別:対人(自身)宝具

ウルトラマンキング程の実力者でないと見破れない完璧なる変身能力。彼女が手で触れ、目で見たものはすべて変身出来るようになり、能力含めて本人と見分けがつかない。しかし、M87光線など努力の末得た力は変身するだけでは十全に使いこなすことは出来ず、それ相応の努力が必要になる。また、一定以上ダメージを受けるもしくは特殊な光線を受けると変身は解除されてしまう上、角を破壊されると何らかの手段で再生させるまで使用が出来なくなる。

 

手中に収めしウルトラの秘宝(ウルトラキー)

ランク:EX 種別:対星宝具

アサシンクラスでは使うことのできない星そのものを破壊する宝具。一応威力と範囲を絞れば星を破壊しなくても済む。また、普通に武器としても使用可能。

 

詳細

色々と出番の多いババルウ星人。その中のウルトラマンレオに出てきた個体。女性という裏設定があるらしいので性別は女性。メフィラス星人とは知り合いではあるが考え方の違いから仲が悪い。今回は個体が個体だけにアサシンクラスだが、弓兵(アーチャー)復讐者(アヴェンジャー)の適性がある。特に復讐者クラスはSTORY0の個体の為最も強く、実はアサシンクラスが一番弱い。例外的に馬場竜次(ババリュー)として召喚された時のみ属性が混沌・善へと変わり、クラスも偽物(フェイカー)になる。

 

謎のヒロインXX

 

クラス:降臨者(フォーリナー)

真名:謎のヒロインXX

マスター:藤丸立香

性別:女性

身長:154㎝

体重:48㎏

出典:コスモガーディアン三部作より、潜伏するもの

地域:サーヴァント・ユニバース

属性:秩序・善

好きなもの:休日、郷土料理

嫌いなもの:セイバー

 

ステータス

筋力:B⁺

耐久:B⁺

敏捷:B⁺

魔力:C

幸運:D

宝具:EX

 

クラススキル

 

領域外の生命:C

本人は気づいていないが、星の戦士と出会った際に少しだけその力を分けてもらっているので本来より少しランクアップしている。

 

コスモリアクター:B

輝けるセイバーにだけ許されるコスモなリアクター。様々なものをリアクトしている。設定とか。

 

単独行動:A

 

騎乗:A

 

スキル

 

乗着:EX

聖槍甲冑アーヴァロンの加護。甲冑はXXの周囲に、霊子として常に存在する。ただの着替えスキルとも。武装すると攻撃面での性能が格段にアップする

 

刑事の直感:E

犯人を突き止めるための天啓。事件解決においては使わない方が良いランク。場合によっては、デメリットがメリットになる、実はとても優秀なスキル

 

最果ての正義:A⁺⁺

宇宙の最先端にして最果てである『境界』からの力。『無』を食い破る力でもあり、宇宙を拡げる真理そのもの。星の戦士によってブーストが掛かっている。

 

対邪神:EX

彼女が出会った星の戦士が彼女にも言わずに与えた力その一。邪神に対抗する力そのものであり、このスキルがあれば、彼女は邪神同士の決戦に首を突っ込める程の力を得る。常に発動しているわけではなく、邪神に連なるものと対峙した際に勝手に発動し、XXを超強化する。

 

封印:EX

彼女が出会った星の戦士が彼女にも言わずに与えた力その二。邪神たちを封印するための力なのだが、邪神以外も封印することが出来る。

 

宝具

 

蒼輝銀河即ちコスモス(エーテル宇宙然るに秩序)

ランク:EX 種別:対人宝具

本人のその場のノリで色々と名前が変わるフォーリナーとセイバー特攻を持った宝具。対人宝具の割に相手は惑星ごと爆発するらしい。対人とは?

 

無銘星雲剣(ひみつみにあど)

ランク:EX 種別:対軍宝具

宇宙の天秤と言われるロンゴミニアドLRを使った銀河星雲切り。敵味方の区別なく発動するので、使い方によっては自軍も壊滅しかねない。

 

詳細

宇宙のどこかで星の戦士と出会い、フォーリナーがいる所に送ってあげるよとの好意に甘えた結果、監視役としてカルデアに送り込まれたサーヴァント擬き。本人は自身が監視役であるという自覚はない。基本的に原作のXXと変わりはないが、原作以上に邪神キラーとなっている。また、星の戦士により原作よりも強化されている上、邪神関連の存在が彼女を倒すと星の戦士がやってくるオマケ付きである。

 



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第三特異点:封鎖終局四海
いざ大海原へ


皆さんお久しぶりです。投稿が遅くなり申し訳ありません。短いですが楽しんでもらえたら幸いです。


XXへの説得の結果なんとかこの事件が終わるまでは味方側のフォーリナーやセイバーを始末しにかかるのを止めるように納得させたマスター二人は、数日の休息の後三つ目の特異点に赴こうとしていた。今回共に連れていくのは、マシュは当然として、立花がガタノゾーアとジャンヌ・オルタ、そしてフォーリナーは信用できないという理由でその見張りを申し出たXX、オルガマリーはセイバー・リリィとメフィラスとクー・フーリンを連れていくことになった。ロマニの話だと三つ目の聖杯は、1573年の特異点を中心に地形が変化した結果生まれた大海原のどこかにあるらしい。大海原のどこかとなると海の上、下手すれば既に海中にいるなんてことになるかもと考えて若干顔色が悪くなる立香。

 

「じゃあ、頼みましたよ。海の上にレイシフトってのは極力無いようにしますから」

 

「当然でしょ!極力じゃなくて絶対ないようにしなさい!」

 

不安を残す言い方をするロマニにオルガマリーが怒鳴る中、ダ・ヴィンチからセプテムの最後にアルテラを超強化したアレに関しては全く解析が進んでいない上、今回も現れる可能性があるから気をつけろと忠告が入る。カルデアにおいて最強と言っても差し支えない三人相手にほぼ同等までやりあえるようになるアレがこれからも出てくるかもと思うと気が滅入るが、それでもやらねばならないとレイシフトを開始した。

 

     *

 

「ふむ。セプテムが突破されたか」

 

ここではない何処かで、声の主は不気味に笑う。

 

「サーヴァント……中々に面白い存在だ。ここは一つ直々に超獣に改造してやってもいいのだがな、次の特異点は彼奴が担当だったか。ならば、このヤプールが手を貸すまでもないだろうが……そういえば彼奴もやり方は違えど、手駒を作ることは出来たんだったな。……フム、念のため少し援軍を送っておくとするか。どう使うかは彼奴次第だがな」

 

声の主、ヤプールは何か思いついたように巨大なフジツボのような怪獣を見た。そしてより一層不気味さを増した笑い声を上げながら、思いついた事の内の幾つかを実際に実行するためにその巨大なフジツボのような怪獣に指示し始めた。

 

「本来、少し先の未来で戦うスフィアを退けたのは、流石邪神と言ったところか。だが、スフィアを知らなかった以上カオスヘッダーも知らない可能性が高い。ともなれば……三人目のドッペルゲンガーでも造るか。奴らがどんな顔をするか楽しみだ」

 

名前はどうしようか等と呑気なことを言いながら、ヤプールは姿を消した。




聞いた話所長が復活したらしいじゃないですか。私は最初のケルベロスみたいなやつの宝具封印クリティカル祭りで進めないのですがね。いやーどんな理由で復活したのか、理由によってはこの作品根本から覆るかも?


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