魔軍司令親衛隊隊長の恋愛! (ディア)
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wiki風設定

ジゼルのwiki風設定です!ネタバレ注意!


ジゼル(ダイの大冒険)

 

このページのジゼルはダイの大冒険を原作とした登場人物のジゼルを紹介する。

 

 

経歴

魔界で生まれ、竜との間の子供ということで同族には敬遠されていたが、ハドラーに救われ、その後ハドラーのメイドとして働いた。しかし、自分とハドラー以外の住人が人間によって殺され、ジゼルは人間を恨むようになるが、この当時人間不信に陥っていなかったバランによって恨むことをやめた。だが今度はハドラーの助力になろうとしてダイを含めた様々な敵と戦い続ける。しかしバランの説得を忘れている訳ではなく、人間と共存する考えを持ち続けている。

 

逸話

ジゼルは原作初期からいるが当初はモブキャラの一員ではしかすぎなかった。しかし結果的には重要なキャラとなってしまった。

 

容姿

容姿については竜と魔族のハーフであるがほぼ人間のそれであり、ポップにしてマァムを差し置いて凄いスタイルと言わしめるほどで、ヒュンケルが一目惚れするほどの美人である。しかしマトリフはセクハラに走ることはなく戦闘になった。

 

性格

普段は温厚、平和主義、母性溢れる性格だがハドラーや子供が絡むと暴走し周りが見えなくなり暴力的になる。ハドラーが死んだ時に葬式をしたり生き返った時は感動するなど魔王軍の中では感情的である。また毒舌家でもあり、特に同僚に関しては容赦がない。だが部下達の忠誠心が高く部下から信頼されており、バーンやハドラーからも信頼度も高い。ちなみに生みの親であるハドラーを貶すフレイザードも同じ生みの親であるジゼルのことを慕っており、一度はジゼルを殺そうとしたアルビナスも和解して以降慕っている。

 

料理

料理の腕は非常に高い。ヒュンケル曰く、「アバンやミストバーンが用意した飯よりも美味い」らしい。また、ハドラーに弁当を作ってあげたりなどジゼルの料理好きがわかる。

 

戦闘

戦闘についても非常にレベルが高く、ナンバーズシリーズの最強とも言っていい雑魚モンスター達(後の部下であり、成長したクロコダインを追い詰めたベン含む)をわずか一分で一掃するほどで、当時成長していなかったとは言え、ギガブレイクをほぼ無傷で耐えたクロコダインを一撃で気絶させるなどの事をやってのけている。しかしマトリフの運が良かったとは言え、負けてしまうなど詰めの甘い部分もある。デイン系呪文、あるいはデイン系の魔法剣などを吸収して回復することもできる。これは「○○で回復」を再現したものである。また火炎大地斬を声だけでかき消したりすることも出来る。また、ベンがトドメを刺したとは言えドラゴンクエストJOKER2の裏ボスであるオムド・ロレスをバランとほぼ二人で倒すなどのこともやっており、戦闘面ではバランにも「お前と竜魔人となった私がいればいかなる兵器も太刀打ちできん」と信頼していることと、魔界にいた時にドラゴンクエストJOKARのラスボスのガルマッゾをほぼ一人で倒しており、魔王軍の主力となっている。

またモシャスでエスタークになったり、ダークドレアムをその身に宿したりすることも可能。

 

特技

正拳突き、回し蹴り、受け流し、ハートブレイク、アイス・ハートブレイク、カウンター、いなずま、ジゴスパーク、しゃくねつ、輝く息、オーロラブレス

呪文

ヒャド、ヒャダルコ、ヒャダイン、マヒャド、バギ、バギマ、バギクロス、デイン、ライデイン、ギガデイン、ホイミ、べホイミ、ベホマ、ザオリク、マホカンタ、ルーラ、トベルーラ、バシルーラ、モシャス

 

オーロラブレスについて

オーロラブレスはメドローアのモデルとなったもので威力は作中最強である。だが時間がかかり過ぎるという致命的な欠点があり、仲間がいないと実質この技は出来ない。しかしガルマッゾと闘った時に後のジゼルの代名詞となるジゴスパークを受けて暴走した際には無制限に出せた。

 

仕事面

ハドラーよりもバーンに指名された仕事をこなすことが多く、無茶苦茶な仕事(オムド・ロレスを連れて帰って来いなど)を押し付けられることもある。ただそれはハドラーやバーンに信頼されているからこその任務であるため、重要な役割をもっている。尋問も得意としており、数十年に一度しか喋らないと言われるミストバーンの口を開かせたり、ダイを葛藤させ一時的とはいえ人間不信にさせるほどである。また変装も得意で、認識のあったダイやレオナに気づかせないほどの上手さである。

その一方で方向音痴である描写が見受けられることもある。

 

恋愛

ジゼルはハドラーに一途であり、性格面にもそれが現れているが報われなかった。その一方でヒュンケルはジゼルに好意を持っているため複雑な関係になっている。




訂正があればすぐに感想までどうぞ!
話しが進み次第ここは更新します!


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本編
魔王軍地上侵略前


やっとダイの大冒険始めました。というか何やっているんでしょうか…まだORISHU終わして無いのに…


 〜鬼岩城〜

 ここ鬼岩城にてかつての魔王にして現魔軍司令ハドラーは書類仕事をしていた。

「ふう。こんな物でいいか」

 今日もハドラーは書類仕事をバッチリと終え、自分の主である大魔王バーンに報告しておこうと立ち上がった。

 そんな彼はとても有能であり、部下であるバランやミストバーン達に力こそ劣るが書類に関しては凌ぐほどである。

 しかし彼はとある悩みを持っていた。決して書類の量が多いとか、部下が自分に対して反抗的だとかそんなものではない。寧ろ反抗的でも文句は言わない。

 

 そんな彼の悩みとは。

「ハドラー様〜♡」

 いきなり魔族の女性が現れ、ハドラーに抱きつき頬ずりを始めた。

「ええい、離れんか!! ジゼル!」

 

 ジゼルと呼ばれた魔族は、魔王軍の魔軍司令親衛隊の隊長でもあり、戦闘面においても魔軍司令候補としても名高いのだが、スイッチが入るとハドラーに恋しているせいか、公私混同問わずにいちゃつくのだ。

 

「嫌ですよ〜ハドラー様が大好きだからこうやって頬ずりしているんじゃないですか」

 ジゼルは幸せそうな顔をハドラーに見せて、上目遣いで見る。

「いいから離れろ!」

「は〜い」

 ジゼルはシュンとなり、渋々とハドラーから離れた。

 

 これがハドラーの最大の悩みである。

 しかも魔王軍はハドラーの悩みを解決しようとはしない。

 

 主であるバーンは面白がり、ミストバーンはハドラーに胃薬をあげたり、バランは自分の過去を思い出し、フレイザードは完全無視、ヒュンケルは何故か凄まじい形相でこちらを見ていたり、ザボエラはジゼルの身体を凝視していてジゼルのお仕置きにあって入院させられたり、クロコダインに至ってはハドラーを祝う準備もしている。

 

「はぁ……誰かなんとかしてくれ」

 そんなハドラーのつぶやきも通じない。

「ハドラー様、万歳! ジゼル様、万歳!」

 何故なら自分の直属の隊である魔軍司令親衛隊もハドラーを祝う準備をしており、四面楚歌だった。

 

 

 

 〜会議室〜

 

 今日は魔軍司令と軍団長のみの会議でどの様に地上を攻めるか相談する会議だ。

「あ〜……はるばる遠征ご苦労。ではこの書類を見てくれ」

「この書類は?」

「この書類はハドラー様が先日書かれた、戦闘員が戦闘面に対する不満及び、戦闘アイテムの普及についての提案書です」

「おい、ジゼル」

 ここでハドラーが若干不機嫌そうにジゼルを睨んだ。ジゼルは軍団長ではないためここにいるべきではなく、会議室に誰も入らない様に警備しているのが当たり前だ。

 

 六人はハドラーの言うことは

「何故ここにいる!? ジゼル!! とっとと出て行け!!」

 と予想していたが

「俺のセリフを取るなジゼル!! メラゾーマ!」

 ハドラーの行動はジゼルにメラゾーマを唱えた。

「甘いですよハドラー様」

 ジゼルはメラゾーマを回避して、余裕の笑みを見せていた。

「ふん!」

「あうっ!」

 ハドラーはジゼルの顔を殴り、気絶させた。ジゼルの顔は喜んでいたが見なかったことにした。

 

「やれやれ。資料を見て少し待っていてくれ」

 ハドラーはそう言うと会議室から出て、ジゼルを運んだ。

 軍団長達からは生暖かい目で見られ、それ以外の部下達からは毎日の様に「ハドラー様、ジゼル様、万歳!」とか言う声が上がり、今にも結婚式をあげそうな勢いである。

 

 これが魔軍司令ハドラーに襲いかかる難儀な日常である。




ハドラーが好きな女性を書こうと思ってこの作品を書きました。
ハドラーが好きな女性(?)はアルビナスですがそれだとつまらないので。
感想どしどしご応募ください!


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ロモスにて…

こんなに筆が進むとは思いませんでした…


ジゼルとヒュンケルはハドラーの命令により、武具、薬草類など冒険には欠かせないものを買い占めていた。その理由は…

「勇者達は武器がなくては何もできまい。だったらなるべく買い占めておけば良い。」

と言う提案だった。勿論、クロコダインやバランから反対もあったが…

「武器があったから負けました…などとお前達はバーン様に言えるのか?」

と言い、クロコダインやバランを説得。

 

何故ジゼルとヒュンケルが買い占めに向かっているのかというと…ヒュンケルは魔王軍唯一の人間なので怪しまれない。ジゼルは変身魔法モシャスを使える中では一番人間臭かったのでばれたとしても問題はないからだ。

 

「ジゼル…何故司令殿が好きなんだ?」

ヒュンケルがいきなりハドラーについて聞いてきた。

「あのお方のおかげで私は助かったからね…」

ジゼルがハドラー様と言わないのは街中なので言ったら問題になるからだ。事実ヒュンケルも魔軍司令とは言っていない。

「そう…あれは…私がまだ幼い頃。」

 

~回想ジゼルSIDE~

私は竜と魔族のハーフとして産まれた。当然母親以外からは忌み子とかして嫌われ、迫害されていた。

母親がストレスで死んでからついに…

「お前のような竜とのハーフは死んじゃえ!」

同世代からもそう言われて、死のうかと辺りを彷徨っていた。

 

そんな感じで私はついに倒れた。

「大丈夫か?」

と声が聞こえてきた。その声こそハドラー様だった。

「助け…て…」

私はその声に身を委ねた。

 

ハドラー様は当時、近くの地域では有名な方で、私を匿ってもらいました。

「どうだ?身体の調子は?」

「おかげでよくなりました。ありがとうございます。」

「ところで何故お前は一人なんだ?」

この辺りの地域の魔族は群れで生活する習慣があり、一人で暮らすことは大変珍しかったのでハドラー様はそれを尋ねた。

私は事情を話し、ハドラーはそれを受け入れたのです。

「ふむ…なるほど。ようは竜と魔族のハーフだから迫害されたのだな。下らん。人間ならともかく、竜と魔族のハーフで揉めるなどあってはならんな。」

そしてハドラー様は動き、私を群れで生活できるようにしてくれたのです。

 

それはいつしか恋に変わりました。私もハドラー様も幸せでした。ところが…

「人間が攻めてきたぞ!」

「逃げろ!逃げるんだ!!」

人間による強襲によって私達の群れは私とハドラー様以外は全滅。そしてハドラー様は決意した。

 

「ジゼル…こんな犠牲者が二度と出ないよう、俺は地上の魔王となろう。地上を完全に制覇する時までは会えん…さらばだ!」

 

私はハドラー様を止めることができずに別れました。しかし、私を連れて行かなかったのは私が弱かったからです。私を守るために、ハドラー様はあえて連れて行かなかったのです。私も決意をしました。

 

私も強くなってハドラー様と一緒に闘いたい…

 

そう決意をして私はただひたすらに闘い、勝っては負けて、負けては勝っての闘いの毎日でした。

 

勝っても負けても、得られたものは大きかったです。そのおかげで色々な呪文や技も覚えました。だからハドラー様がなしでは私は語れません。

~回想終了~

 

「まさか司令にそんな過去があったとはな…」

実際にはジゼルはハドラーを美化しており、ハドラーはそんな大層なことはやっていない。

ハドラーは利用できるかできないかで判断し、救ってやっただけだし、一緒にいたのも家事に困っていたからだ。

 

「でしょ?だからヒュンケルもそんな立派な男になって欲しいの。」

ヒュンケルがハドラーを少し尊敬するようになり、美化されたハドラーは自分の父バルトスが産まれたのもそのせいだと思った。

 

~鬼岩城~

「ぶぁっくしょっい!」

ハドラーがくしゃみをして鼻水を垂らした。

「ハドラー様どうなされました?」

それを見たザボエラはハドラーの様子を伺った。

「いやまたジゼルの奴が俺の噂でも流しているんだろう…」

「念のため、風邪薬でも飲んでみたらどうです?ワシが用意しますので…」

「すまん…」

ザボエラに心配され、ハドラーはまたストレスが溜まった。

 

~ロモス~

なんだかんだで買い物は終わり、ジゼルはやることをしてから帰るといってヒュンケルに先へ帰らしてもらった。

 

「勇者でろりん様が幻のゴールデンメタルスライムを持ち帰って来たぞ!」

 

ジゼルが聞くには、ロモスでは勇者でろりんと名乗る者が現れ、しかも世界に一頭しかいないゴールデンメタルスライムを捕獲して帰ってきたらしい。ジゼルがやることは決まってきた。

 

ゴールデンメタルスライムを野生に帰らせるか魔王軍に所属させる…

後々、ハドラーが地上に出れば勝手に魔王軍に所属するので野生に帰すことにした。

「へえ…」

そういうとジゼルはロモス城へと向かった。

 

「うんせ、うんせ…」

ズルズル…

ジゼルが見た先にはモンスターを連れている青い服を着ている少年の姿があった。

「面白いことしているじゃない…ちょっと観察してみよ。」

ジゼルの悪い癖が出て、寄り道をした。

 

~ダイSIDE~

俺の名前はダイ。爺ちゃんと一緒にデルムリン島で暮らしていたんだだけど…

 

「ゴールデンメタルスライムはもらった!」

 

とか言ってゴメちゃんをさらって行ったんだ!

 

で、その一味のずるぼんが買い物をしていたところをデルムリン島から連れてきたお化けキノコの力を借りて眠らせて小屋に連れたのはいいんだけど…

「これからどうするの?その娘?」

いきなり後ろから声をかけられた。

ダイSIDEEND

 

「うわぁぁぁ!」

ダイは後ろからジゼルが話しかけられたことに驚き、ずるぼんの方へと寄って行った。

「そんなに驚かなくていいじゃない…」

ジゼルは国の兵士と間違えられるような格好をしていた。そのためダイが驚くのは無理はない。

 

「お役人様!この子は私を監禁しようとしていたんです!どうかとっちめてやって下さい!」

ずるぼんが役人と勘違いしたのかジゼルにダイを捕まえるように訴える。

「こいつはゴメちゃんをさらった泥棒なんだ!」

ダイも役人と勘違いしたのかジゼルにずるぼんを訴える。

 

「あー…落ち着きなさい。私は役人じゃないわ。じゃあそこの僧侶から聞きましょう。」

ずるぼんが言うにはダイを捕まえろだのなんだのとそんなセリフばかりだった。

 

「次…そこの少年!」

「俺はデルムリン島に住んでいたんだけど、こいつらがやって来て友達のゴメちゃんをさらって行ったんだ。」

「そのゴメちゃんっては?」

「ゴメちゃんは、ゴメちゃんだよ。」

「外見的特徴は?」

「小さくて、金色の羽根が生えたスライムだよ。」

この時点でジゼルはダイの言うゴメちゃんは、ゴールデンメタルスライムとわかった。

 

「成る程…ちょっと待ってて。」

ジゼルはそういうとずるぼんに向かって薬を出した。

「何をする気!?」

「ちょっとした自白剤よ。これ飲んで王様のところへ行くとどうなるかわかっている?自白剤を飲みたくなければ大人しく本当のことを言いなさい。」

 

これはカマをかけた脅しだ。自白剤を飲むと明らかに不利になる。もし、何もやっていないならば自白剤を飲むだろう。だがずるぼんが選んだのは…

 

「…わかったわよ。」

あたりだった。

「素直でいい子ね~。」

ジゼルはずるぼんの頭を笑顔で撫でてダイから見れば母親みたいに見えた。

「…おばさ「はあっ!」っ~!!」

ずるぼんがジゼルのことをおばさんと言おうとしたのでジゼルはずるぼんのすねを蹴り、黙らせた。

「自白剤決定ね。」

ジゼルはそう言ってずるぼんを担いだ。

「ちょっと!話が違うわよ!!」

ずるぼんが抗議するが聞く耳持たない。

「あ~…そういえば少年の名前は?私はジゼル。」

「ダイだよ!」

「ダイ君も一緒にくる?」

「当たり前だよ!」

「それじゃ行こうか。」

 

~ロモス城内~

そして、夜になり宴会が開かれた。

「では勇者でろりんに「待った!!」何者じゃ!」

ロモス国王がでろりんに覇者の冠を渡そうとした時、ジゼルとダイ、そして縄に縛られているずるぼんがいた。

 

「そのでろりんの仲間が言いたいことがあるそうです。ずるぼん…早く言いなさい。」

「はい…」

ずるぼんはそう言って国王の前に立った。

「私達、でろりん一行は、そこのデルムリン島の少年ダイを傷つけ、ゴールデンメタルスライムを奪ったのです。」

そのことに城内は騒然…それはそうだ自分達の信じていた勇者の仲間が罪もない子供を傷つけたと言っているのだ。

「静まれ!」

国王の言葉で場は静まり、でろりん達は硬直した。

 

「でろりんよ…それはまことであるか?」

「いえ滅相もない…」

でろりんが否定するとジゼルがまた話す。

「そのずるぼんには自白剤を飲ませています。なんならそのずるぼんにでろりん一行がやってきたことを吐いて貰いましょうか?」

「やめてくれ!」

その言葉でロモス国王はでろりんが偽者の勇者だと確信した。

 

「どうやら本当のようじゃな…このワシを騙そうとした愚か者を牢に叩き込め!」

「「「はっ!」」」

国王の命令に従い、兵士がでろりん達を抑えた。

「くそ~!」

という声が聞こえなくなったところでジゼルは立ち去ろうとした。

 

「待ってくれぬか?そこの婦人。」

ロモス国王に呼び止められ、ジゼルは立ち止まった。

「なんでしょうか?」

「お主がいなければあのでろりんとやらに騙されるところだった。ありがとう。礼とはいってはなんだが覇者の冠を貰ってくれぬか?」

ロモス国王は覇者の冠をジゼルに渡すと言ったのだ。

「…王様。私に褒賞を与えるならそこの少年ダイに与えて下さい。ダイは一人で、でろりん達に立ち向かおうとしたのです。私は無用な殺生を避けただけです。」

しかし、ジゼルは断った。あくまで与えられた仕事は武器を買い占めること。それよりも荷物が多くて、持てないのだ。

「そうか…ではダイ。君こそが勇者だ!」

そう言って国王はゴメちゃんを解放し、ダイに覇者の冠を渡した。

 

「では失礼します。」

「あっ、待ってよ!ジゼルさん!」

ジゼルは今度はダイに呼び止められた。

「どうかしたの?」

「その…ゴメちゃんを助けてありがとう!」

「どういたしまして。」

そう言ってジゼルは帰っていった。



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親衛隊隊長はワニ男に容赦ない

~鬼岩城~

「ハドラー様、ハドラー様!どこにいますか!?」

ジゼルはハドラーを探していた。その理由は…

「お弁当せっかく作ったのに…」

そう弁当だ。ジゼルは弁当を作ってハドラーに食べて貰おうとしたが…ハドラーがいないのでしょげていた。

 

「ジゼルよ。」

そこへハドラーの主である大魔王バーンが声をかけた。

「ハドラーは勇者アバンの討伐に向かっておる。」

 

勇者アバンとは人間の中ではハドラーを倒した英雄となっているが…どうも胡散臭いとジゼルは思っていた。

 

「勇者アバン?わざわざハドラー様が地上に復活した直後に行かせたんですか?」

「ジゼル、アバンを見くびるな。アバンの厄介なところは頭の良さだ。下手に軍団長を使えばこっちの戦力が読み取られるわ…!」

「しかし、ヒュンケルでも問題はないかと…剣術なら魔王軍の中でも強いですし。それにミストバーンから尋問して聞きましたよ…ヒュンケルはアバンの一番弟子だと。」

さりげなくとんでもないことをジゼルの口から出たが、ヒュンケルがアバンの弟子なのは事実なのでバーンは少し考え、ジゼルに語る。

「ヒュンケルは確かに強い。だがヒュンケルはアバンの弟子だ。師匠の技を使ったところで見抜かれる可能性が高い…」

「ハドラー様もアバンに何回か戦ったことがあります。しかも敵同士として戦ったのだから尚更…」

「ジゼル。もう賽は投げられたのだ。諦めろ。」

「はい…」

 

とそこへ光の玉がハドラーの座る椅子に向かって…止まった。そしてやがて形状は変わりハドラーとなった。

 

「ぬうぅぅ…!」

しかし、ハドラーの手は無くなっており胸に傷もつけられていた。

「ハドラー様!その傷はアバンにやられたのですか!?」

ジゼルは大慌て。無理もない。自分の愛する夫(ハドラー視点除く)が怪我をして帰ってきたのだから。

 

「違う…!アバンはメガンテで俺を殺そうとしたが失敗に終わり自滅した。この傷はアバンの弟子にやられたのだ…!ふんっ…!」

ハドラーはそう言うと腕を生やし、胸の傷を治した。

「あ~よかった…ハドラー様の命が助かって…あ、お弁当よかったら後で食べて下さいね。」

そう言ってジゼルは笑顔でハドラーに弁当を渡す。

「ジゼル…」

ハドラーはジゼルが弁当を作ってくれたことに感動していた。

 

「それにしてもメガンテか…よほどハドラーを倒す手だてが無かったのだろうな…」

バーンがそう言って、アバンがよほど追い詰められていたことを指摘する。

「はい…何しろ格闘、魔法においても私に負けておりました。故にアバンは最終手段として私ごと道連れにしようとしたのでしょう…」

「なにはともあれアバン討伐ご苦労!ゆっくりと休養を取って休むが良い。」

「ははっ…!」

ハドラーの声を境に、バーンの声が聞こえなくなった。

 

ハドラーはジゼルの作った弁当を食べ、クロコダインへの通信を用意した。

「クロコダイン…!クロコダイン…!」

「ハドラー様、どうやら寝ている様ですよ?」

「…っ!」

「あのワニは一度寝たら滅多なことじゃないと起きませんからね…」

「ジゼル、起こしてこい…」

「かしこまりました。ルーラ!」

 

悪魔の目玉を通してハドラーはジゼルがどの様に起こすかヒヤヒヤしていた…

 

『こらー!起きなさい!!クロコダイン!!!』

『なっ?!!ジゼル殿!?これにはわけが…』

『言い訳無用!!ぶっ飛べ!!』

『ぐおおぉー!!』

ヒューン…ドガッ!ガラガラ…

『クロコダイン、何か言うことは…?』

『申し訳ありませんでした…』

『よろしい。』

 

ジゼルの過激な起こし方にハドラーはまたストレスを貯め、胃がマッハで穴が空いていくのを感じた。

 

「ハドラー様。クロコダインを起こしてまいりました。」

ジゼルが悪魔の目玉の前に立ち、そう言って報告をする。

「ジゼルご苦労だ。クロコダインと変われ。」

ハドラーは苦痛を堪え、威厳のある顔でジゼルを褒める。

しかし、そこまではよかった…クロコダインの顔は変わっており、ボロボロだった。

「それでハドラー殿、俺に何か用でも…?ロモス攻略なら、もう寸前ですぞ。」

「あ、ああ…それもあるが、お前に倒して貰いたい敵がいる。」

「倒して貰いたい敵?」

クロコダインが疑問に思う…厄介な敵はロモスにはいなかったはずだ。少なくとも自称勇者の腕自慢の人間達を倒してきたのだ。どんな屈強な敵がいるかと思い、少し興奮する。

 

「奴の名前はダイ!」

「ぶっ!!」

ジゼルが吹いた。無理もない…少し前に助けた少年がハドラーを傷つけたからだ。

「こいつがそうだ…」

そう言ってハドラーは悪魔の目玉にダイを映す。

「(あちゃー…間違いないや。なんでよりによってハドラー様を傷つけるかな。)」

 

「ぶわっはっはっはっ!」

クロコダインはダイの映像を見て大笑い。

「何がおかしい!?」

「冗談はよしてくれ。仮にも獣王と呼ばれるこの俺にガキの相手をしろと?」

しかし、ボロボロの状態のクロコダインが言っても説得力皆無だった。

「奴を舐めるな。ダイは、俺にかなりの手傷を負わせた…この通りな。」

ハドラーはクロコダインに傷跡を見せる。

「なんと!?ハドラー殿が手傷を!?」

 

クロコダインは驚く。何しろハドラーはバランやミストバーンに劣るものの魔軍司令という立場である以上六軍団長の平均くらいの強さを持っている。むしろ、ハドラーを超えているバランやミストバーンがおかしいだけだ。ヒュンケルやフレイザードに関しては反則クラスの武器や技を持っていなければ勝てるくらいだ。

 

「もしかすると全盛期のアバンをも上回る力を持っている可能性がある…」

かつてハドラーを倒したアバンを上回ると言っているのだ。武人として戦わない訳には行かない。

「ハドラー殿にそう言わしめるほどの男…是非とも戦いたくなったわ!!」

そう言ってクロコダインが立ち上がろうとするが…

「うおっ…!」

少しヨレてしまい、情けなくなってしまった。

 

その元凶であるジゼルがクロコダインに近づき…

「クロコダイン、動かないで。」

「?」

「ベホマ。」

ジゼルはベホマを唱え、クロコダインの傷を癒す。

「おお…感謝する。ジゼル殿。」

「さっきやりすぎたし…お礼はいらないわよ。ほら行ってきなさい。」

「では、ハドラー殿、ジゼル殿。ダイの首を持って帰りますので少々お待ち下さい!」

クロコダインはそう言って、洞窟から出て行き、ダイを討伐しに行った。

 

~魔界~

その頃…魔界の竜族の頂点に立つヴェルザーはかつて自分と覇権を争った雷竜ボリクスのことを思い出していた。

 

~回想~

「何故お前は俺と互角に戦える…!俺よりも弱いはずだ!」

 

ヴェルザーがボリクスにそう言う。その通り、ヴェルザーは冥竜と呼ばれ、不死身であり、スタミナ切れの心配はない。一方、ボリクスは雷竜と呼ばれており雷を操る竜だ。雷は体力を多く消費する。明らかに勝率はない。

 

しかし、今押しているのはボリクスの方だ。だが息切れを起こしており、もう体力の限界を感じさせていた。

 

「確かにそうかもな…だが私には息子がおり、愛すべき妻がいる…私はその者のために戦っているのだ。どんなに力の差があってもお主の様にただ傲慢に竜族の頂点を目指すものと互角以上に戦えるのだ!」

ボリクスがそう言うと、稲妻を呼び寄せ、ヴェルザーに攻撃をする。

「くだらん…!その技もその信念も…俺は常に竜族の頂点に立つことだけを考えて来た。それを息子だの愛すべき妻だの…ふざけるな!!」

ヴェルザーがボリクスを押し返す。

「ぐっ…!」

ボリクスはヴェルザーの攻撃に耐えられなかったのか膝をつく…

「貰った!」

ヴェルザーがボリクスの首を噛みにかかる。

「しまっ…!」

それを避けようとするが手遅れ…そして決着がついた…

 

「俺の勝ちだ!」

そう宣言し、ヴェルザーは冥竜王と名乗る日が来た。

~回想終了~

 

「どうやら血は争えないものだな。お前の孫娘もお前と似たようなセリフを吐く…」

ヴェルザーはそう言ってキルバーンの送ってきた映像をもう一度見た。そこにはジゼルの姿があった…

「やはり…似ている。ボリクス、お前にな。」

ヴェルザーはそう言ってまた眠りについた。




と言う事でジゼルの祖父はボリクスという微妙なキャラでした。本当はボリクスを父親にしかったんですが年齢を考えると魔族の中でもあれなので孫にしました。
ジゼルの祖父をボリクスにしたのは○○○○○○を使わせたかったからですね。
あと、今のところギャグ限定ですが、クロコダインを飛ばすほどの怪力となると…そのくらいの強さがあれば十分だと思いました。
ジゼルがベホマを使えたのは母親の遺伝です。
それ以外に質問があればどうぞ。


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魔の森にて…

~魔の森~

クロコダインとダイが戦い、ダイは苦戦しながらも、少しずつ戦況を有利にし始め…そしてダイが飛び上がり…

「しまった!?朝日か!!」

ダイの後ろに日があり、それをクロコダインは直視した…そのため目が眩み、動けなくなった。

「でえええぇぇ!」

ダイの短剣がクロコダインを襲いかかり、誰もが目を潰すかと思われたその時…

 

ガシッ!

黒い影がダイの腕を掴み、そして…

「うわぁぁ!」

ダイの視点が回り、ついに…

「がはっ…!」

ダイは背中から地面へと投げられ、口から血を吐いた。

「「ダ、ダイ!!」」

 

そのダイを投げた犯人の正体は…ジゼルだった。

「ジゼル…なんの真似だ。加勢しに来たとでも言うつもりか?」

クロコダインは殺気を出し、ジゼルに構える。

「な、なんだ?あいつら仲間割れし始めだぞ?」

魔法使い風の少年ポップがそう言う…

 

「クロコダイン、あのままだと片目は潰れていた。戦士にとって独眼は致命的…それを救っただけ。」

「む…」

「それにこれ以上戦うのはナンセンスよ。退却しましょう…」

ジゼルがそう言うとダイが立ち上がり、身構えていた。

「……わかった。ダイ!この獣王クロコダインを怒らせたこと、ただでは済まさん!数日したらロモス城にて決戦だ!」

「ルーラ!」

ジゼルはルーラを唱え、クロコダインの洞窟へ移動した。

 

 

クロコダイン達がいなくなると、ポップは腰を抜かした…

「あ、危なかった…」

今のポップは文字通り顔面蒼白である。

「ええ…もしあの人と戦うなら今のクロコダインを軽々と倒せるだけの力が必要ね。」

ピンク髪の少女マァムがそう評価した。実際、ジゼルはクロコダインを一撃で吹き飛ばし怪我を負わせたほどだ。

 

「だけどスタイル抜群の姉ちゃんだったな…」

ポップはジゼルの身体を観察しており、女性だとわかった。ちなみにマァムの時は女性だとは気づかずに胸を触ってしまったため、よく観察した。

「それは私が男って言っているの!?」

マァムはポップの胸を掴み、怒る。当たり前だ。自分は男だと勘違いされ、あの魔王軍の女性に負けたと言われているようなものだ。

「んががが!そんなことは…!」

ポップはマァムに絞められ、失神した。

その後、ダイとポップはマァムが運び、ネイル村へと向かった。

 

 

~洞窟内~

 

「何故俺を止めた?」

クロコダインがジゼルにダイとの戦闘を止めたことを質問する。

「さっきも言ったでしょ?私は貴方が戦士として致命的な傷を残したくないって。」

あのままであればクロコダインは間違いなく独眼となっており、戦士として致命的な傷を残しただろう。

「では…ジゼル殿は何故あの場から撤収したのだ?ジゼル殿ほどの強者なら楽に殺せただろうに。」

確かにジゼルは今のダイ達を倒せる力を持っていた。だが…

「貴方を撤収させるのに私が必要だったから。それだけ。」

彼女はハドラーに公私混同問わずにいちゃつくことでプラスの面が隠れがちだが、仲間思いで、優しい性格だ。

「ふっ…変わっているな。」

クロコダインはそれを笑ったが悪い思いはしなかった。

 

「だけど、貴方は宣言をした以上はあの子達を必ず仕留めないと駄目よ?わかっている?」

ジゼルはクロコダインを油断しないように釘を刺す。

「それもそうだな…あの屈辱は忘れん。だがそれ以上にあいつらがどれくらい強くなり、どこまで俺を脅かすのか楽しみだ。」

それはクロコダインにしっかりと伝わったのか、クロコダインは笑いながら立ち上がり斧を持った。

 

「じゃあ、ハドラー様と私の期待を裏切らないで頑張ってね。」

そう言ってジゼルはルーラを唱え、鬼岩城へと戻った。

「さて…どのように攻めるか…」

クロコダインは部下を呼び寄せ、ロモスに攻める準備をした。

 

~鬼岩城~

 

「ジゼル…何故、クロコダインと共闘しなかった?」

ハドラーがジゼルに対し、質問をする。

「では、ハドラー様。ハドラー様がクロコダインを高く評価している理由は何でしょうか?」

ジゼルはハドラーがクロコダインに対し高い評価をしているのは知っている。六軍団長の3人がクロコダインを評価している。

「…クロコダインの性格だな。」

クロコダインは正々堂々と戦い、武人としての誇りが高い。ハドラー、ヒュンケル、バラン、そしてミストバーンも評価している。

「それに下手に卑怯な手段を使っても彼の実力を下げるだけです。」

その通り、戦略的には良いのだが、卑怯な手段を使って精神が安定しなければいざ追い詰められた時に心で負けてしまうからだ。

「確かに…」

「なら、クロコダインの満足の行くように戦わせた方がよほどいいでしょう。クロコダインは追い詰められる程強くなりますから。」

 

「それもそうだな。ジゼル、下がって良いぞ。」

「お断りします。」

「何?」

「私はハドラー様と一緒にいることが幸せですから!」

そう言ってジゼルがハドラーに抱きつき、キスを求める…

「離せ馬鹿!」

しかし、ハドラーも必死でジゼルの顔を押してキスしないようにしていた。

 

ガチャッ!

ミストバーンがハドラーに胃薬を渡しに来たが運悪く、ハドラーとジゼルがいちゃつくのを見てしまったのだ。

「「あ…」」

このことに2人は硬直。ミストバーンが珍しく発言をした言葉は…

『ごゆっくり…』

それだけだった。

「って、ちょっと待てぇ!」

ハドラーが動こうとするもジゼルに身体を抑えつけられ、動くことが出来ない。それにこのまま動いたら間違いなく誤解される。故に声だけしか出せなかった。

「ハドラー様、夜は長いですから、ゆっくりしましょうね?」

ジゼルが残酷な一言を放ったことで、ハドラーは一気に胃が荒れるのを感じた。

 

~洞窟内~

クロコダインはザボエラと話していた。と言っても一方的にザボエラが話しを持ちかけているだけの話しだ。

「どうじゃ?ワシの作戦は完璧じゃ。もし成功させたならバーン様やハドラー様にも更に認められるぞ?」

ザボエラはクロコダインに話したのは卑劣な策で人質を取ると言うものだった。

「ふっ…笑わせるなよ、ザボエラ。大方、俺を利用してお前は『ワシの考えた作戦のおかげで勝てた』と…言うつもりだろう?」

「クロコダインよ、もし二回もあのチビに負けて失敗したらお主はハドラー様はともかく他の六軍団長からどう評価を受けるかの~?」

「む…」

 

ここでクロコダインは考える。ただ馬鹿正直に戦い負けたら上司であるハドラーや同じ武人のバランに笑われるだろうか?

否!

その考え自体が間違いだ!他人に笑われること気にしていては武人の誇りをすでに捨てたことと一緒だ!武人の誇りは自分のためにあるのだ。それを他人に認めて貰うなど本末転倒。

 

故にクロコダインが取った行動は…

ドガッ!

斧をザボエラの前で振り下ろし、地面に叩きつけた。

「消えよ…!ザボエラ、俺にそのような策を持ってきたのは間違いだ。」

「待ってくれ!クロコダイン…もう少し考えても…!」

ザボエラは焦り、クロコダインに再び考えるように要求する。

「そうだな…」

そう言ってクロコダインは右手で斧を持ち上げる。

 

「そうそう…ワシの考えを…」

とザボエラが丁寧に説明しているにも拘らず、クロコダインは考える仕草をしておらずに、斧をゴルフクラブのように構え…

「お前をどの様にして追い出すか考えたぞ…」

そして斧はザボエラに向かって振り下ろし…

「ひっ…!」

ザボエラが弁解する余地もなく、クロコダインは刀で言う腹の部分で飛ばした。

「ぶっ飛べぇー!!」

「ぎょええええぇぇぇ!!!」

クロコダインはザボエラを飛ばし、ロモス城へと向かった。



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親衛隊隊長の実力!

ジゼルがめちゃくちゃ強いです…そう言うのが嫌いな人は避けてください。


~鬼岩城~

「ハドラーよ…余がそなたを呼び出したのは他でもない。」

ハドラーはバーンに呼び出されていた。

「なんでしょうか?」

「パプニカ攻略の件についてだ。…これまでとは違い、ジゼルもパプニカ攻略に加える。」

つまりバーンはジゼルをヒュンケルの指揮下に置き、パプニカを攻略させようとしているのだ。

「なっ…!?しかし、ジゼルは私の直属の部下。それをヒュンケルと共にやるなどとあっては…!」

「ハドラー…余の命令が聞けぬと言うのか?」

「いえ!滅相もございません!」

「ならば良い!ダイとか言う勇者とクロコダインの決着が着いたら再び来い。」

「ははっ!」

そう言ってハドラーは下がった。

 

~ロモス城~

「獣王痛恨撃!」

「アバンストラッシュ!」

獣王と勇者の切り札が互いにぶつかり合い…そして、決着が着いた。

 

「グフッ…!」

アバンストラッシュを受けたクロコダインは仁王立ちしており、ダイはクロコダインに再び構える。

「まだ立ってられるのかよ…!?」

ポップがそう言うのも無理はない。

 

クロコダインは腹が切れており普通なら死んでもおかしくない状態である。しかしクロコダインは流石にダメージが大きく、自分自身の最後の意地で立っている。つまり…

「俺の負けだ…!」

「えっ!?」

ポップが声を上げるがクロコダインは無視して穴が空いた壁へと向かう。

「見事だ…ダイ。その技を進化させて多くの敵と立ち向かえ。」

クロコダインは一歩、一歩と壁へと向かう。

「マァム…お前は国王を救出させた冷静な判断を常に身につけろ。」

ダイはクロコダインが何をしているのかわかり、止めようとするがポップがダイを止めた。

「そしてポップ…お前は俺という強大な敵に勇敢に立ち向かった。そのことを忘れるな。」

そしてクロコダインは穴の空いた壁を背に向けて立ち止まった。

「…」

ポップはやろうと思えば自分が思った以上に活躍出来たことを思い出し、それを心掛けた。

「…さらばだ、負けるなよ…勇者は強くあれ…」

クロコダインがそれだけ言ってトン…と蹴り、そこから落ちた。

その後クロコダインの断末魔がロモス中に響き、程なくして巨大なものが落ちた音が聞こえた。

それがきっかけなのか、ロモス中のモンスターは撤退して行き、完全に勝利したことがわかる。

 

「やった…!」

「勝ったぞー!!!」

それをきっかけにロモス中の人間は大騒ぎ。

 

しかし、ダイだけは浮かない顔をしていた。

「(それにしても魔の森で会ったあの女の人…一体誰なんだ?何処かで聞いたことがある声なんだけど…)」

そんなことを考えているとポップが話しかけてきた。

「どうしたダイ?クロコダインをやっつけて嬉しくないのか?」

「ううん。俺は嬉しいよ。」

「それじゃ王様のところにいこうぜ!」

そう言ってポップはダイの腕を掴んで行った。

「ちょっと、引っ張らないでよ…!」

「ほらほら、遠慮すんなって。お前を祝っているんだ。」

そんなダイ達は順調に成長していた。

 

~鬼岩城~

「これはザボエラ様。ハドラー様に何かご用ですか?」

ガーゴイルHがザボエラにそう言い、用件を聞く。

「ハドラー様はどちらに?直接会いたいのじゃが…」

「ハドラー様は現在こちらにはおられません。ハドラー様は現在心臓の間におられます。」

「心臓の間じゃと?あそこは確か呪文の契約をする場所…一体ハドラー様はそこに何の用で…」

 

DGAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaN!!

 

その時、心臓の間から巨大な音が鳴り鬼岩城を揺らした。

「な、なんじゃ!?」

「今の…鬼岩城の方だ!」

「言ってみよう!」

 

そう言って三人は心臓の間へ向かうとそこにいたのは…

「素晴らしい…!これがベキラゴンか!」

髪をオールバックにしているハドラーだった。

「ハドラーよ。このベキラゴンを持って一刻も早く世界を征服せよ。」

「ははっ!」

 

「ハ、ハドラー様。今のは…?」

「ザボエラか?丁度良い時に来たな。今すぐ六軍団長を鬼岩城に集合する様伝えよ。」

「六軍団長全員…?まさか!?」

ザボエラがそう言うとハドラーは新しく渡されたマントを取りそれを着る。

「そうだ…あの忌まわしきアバンの使徒達を六軍団長全員で潰す時が来た!」

そしてハドラーの顔は黒い雷のような模様が出来ており、威厳も出していた。

 

一方鬼岩城内にて…アークデーモンAとガーゴイルCがとある話題をしていた。

「なあ…ハドラー様はともかくジゼル様の強さってどのくらいなんだ?」

「さあ…?そういえば聞いたことないな。俺らが所属している魔軍司令親衛隊の隊長を務めているから少なくとも俺らよりかは強いんじゃないのか?」

 

ここで説明しておこう。アークデーモンとガーゴイルは魔軍司令親衛隊に所属している。何故魔軍司令親衛隊に所属しているかというと、アークデーモンやガーゴイルは六軍団の中では、どれにも所属しない種族だ。

 

例えばアークデーモンやガーゴイルはクロコダインの率いる百獣魔団だと魔法タイプであるし、逆にザボエラ率いる妖魔師団だと肉体的すぎる。六軍団の中に所属するにはよく言えば万能型、悪く言えば中途半端な種族が入っても困るだけだ。

 

そこで割り当てられたのが魔軍司令親衛隊だ。現魔軍司令ハドラーは親衛隊と同じく万能型であり、強力な魔法も使えれば格闘戦も得意だ。故に中途半端な種族が所属するのは必然だった。

 

ジゼルは魔王軍の中でも異質であり、不死騎団と魔影軍団を除いた四つの軍団に所属することができる。

 

「それはわかっているんだが…どうもな…ジゼル様って謎なんだよな。」

アークデーモンAは納得しないのか渋る。

「あ!ジゼル様だ、こういう時は聞こうぜ!」

ガーゴイルCはジゼルを見つけ、ジゼルのところに向かった。

「あ、おい…ちょっと待てよ!」

それを見たアークデーモンAはガーゴイルCを追いかけてジゼルのところに向かった。

 

「ジゼル様~!」

「どうかしたの?」

「ちょっと魔王軍の中でバーン様を除いて誰が強いかってのを調べていたんです。」

「それで行き詰まった…ってこと?」

「全くその通りです。で、ジゼル様がどのくらい強いか知りたいんですよ。」

「なんで私の強さを?」

「ハドラー様と六軍団長の皆様の強さはすでに耳に挟んでいます。後は…ジゼル様のみです。」

「なるほど…じゃあ模擬戦をしに行くから一緒に行く?」

「「是非お願いします!!」」

アークデーモンAとガーゴイルCは喜んでジゼルについて行った。

 

~訓練所~

「あの~…ジゼル様?これを本気でやるんですか?」

ガーゴイルCがジゼルに尋ねる。その理由は…魔界でも有力な魔物達がそこに集まって、しかもそれが全員ジゼルの相手というのだ。2人がそう言うのも無理はない。

「ええ、そうよ。」

それをあっさりと肯定し、ジゼルは魔物達に顔を向けた。

「無理ですって!!私の上位種に当たり、魔王時代のハドラー様以上の実力を持っているベリアルが5頭!更にフリー最強傭兵セルゲイナス2頭!」

アークデーモンAがそういうと、ガーゴイルCが続ける。

「その上、冥竜王ヴェルザーの最新兵器キラーマジンガが6体!魔王軍の軍団長だったら最上位を狙えるグレートジンガー!」

アークデーモンAとガーゴイルCが言った魔物達は何度も言うようだがこの魔物達はジゼルと戦いにきた。クロコダインとヒュンケルの2人が力を合わせてもこんな魔物に挑むなら秒殺である。

 

「ジゼル様、こんな相手に特訓しているんですか?!無謀ですよ!!」

アークデーモンAはジゼルがその強豪達に挑むこと事態が無謀だと考えていた。

 

しかし、ジゼルの言う言葉は予想の斜め上を行くものだった。

「いや、今日は少ない方よ?」

「「えええ!?」」

アークデーモンAとガーゴイルCが驚愕の顔に染まる。

「ほら、ここは危ないから安全な場所に避難しなさい。」

「あっ…はい!!」

「失礼します!!」

2人はすぐさま安全圏に逃げ、ジゼルが魔物達に向かって構えた。

 

「なあガーゴイルC…やっぱりジゼル様一体ずつやるんだよな?」

「そうに決まっているだろ…でなきゃ何かの悪夢だぜ…」

もちろん、この会話はジゼルには聞こえていない。

 

「じゃあ準備はできたね…全員纏めてかかって来なさい!!」

ところがジゼルはアークデーモン達の予想外をいった。

「「ええええぇェエ?!!」」

これに2人は更に驚く。

『『おおおおぉぉぉ!!』』

そして、魔物達がジゼルに襲いかかる。

「「バギクロス!」」

先に仕掛けたのはセルゲイナスでバギクロスを使いすぐさま移動し、ジゼルに確実に当たるような位置に構える。

「バギマ!」

それをジゼルはバギマでかき消し、セルゲイナス2頭をまとめて蹴り飛ばす。

 

「イオナズン!」

ベリアルの1頭がジゼルに向かってイオナズンを放つが…

「マホカンタ。」

マホカンタで跳ね返し、5頭のち3頭のベリアル達が傷ついた。しかし…ベリアル達がジゼルが立っていた位置を見た時には既にいなかった…

「がはっ!」

その時イオナズンを放ったベリアルは声を上げ、ぶっ飛ばされていた。

「げえぇっ…!」

また隣にいたベリアルも腹をくの字にしながら飛んでいった。

「死ねい…!」

ところがジゼルはベリアルの1頭に後ろを取られ、絶対絶命かと思われた。

「甘い!」

ジゼルは回し蹴りをして後ろにいたベリアルをなぎ払った。

ここまで戦闘が始まって20秒である。

 

そして10秒後、ベリアル達5頭が片つき…キラーマジンガ6体とグレートジンガーがジゼルに襲いかかるが…

「ジゴスパーク!!」

かつて雷竜と言われたボリクスの切り札であるジゴスパークを出してキラーマジンガ6体はボログズとなった。

「ぐっ…!」

しかしグレートジンガーだけはしぶとく残っており…ジゼルはグレートジンガーに正拳突きを放ち…とどめを刺した。戦闘が始まって1分でジゼルの勝利に終わった。

 

「「(ジゼル様ってこんなに強かったんだ…)」」

2人の感想はこれだった。

「ジゼル!ジゼルはどこだ!?」

とそこへハドラーの声が聞こえ、ジゼルの目が♡になっていた。

「あっ!?ハドラー様今行きますから待っててください!!」

ジゼルはそう言うとジゼルは先ほどの戦闘よりも速く移動し、訓練所から出て行った。

「「(それなのに…なんでジゼル様はハドラー様に恋しているんだ?)」」

2人とその疑問は残されたまま…でだ。




あ〜…補足として、今回咬ませ犬になった魔物はドラクエの最強クラスの雑魚キャラです。
その中でもグレートジンガーは雑魚キャラの中では最強ですね。

グレートジンガーのスペックは…
・AI1〜2回行動
・イオナズン、ギガデインの魔法を習得
・HP1520(雑魚キャラとしては歴代1位)
・MP無限
・大地揺らしというダメージ100〜150の無属性全体攻撃
・合計すると通常の2倍のダメージになる振りかぶり
・金塊や不思議な木の実を落とす
1分以内で破ったジゼルは相当やばいですね…


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パプニカ城内(崩壊直後)にて…

~パプニカ王国~

ジゼルはハドラーの命令でパプニカに来ていた。

その原因は少し過去に遡る…

 

~回想鬼岩城~

 

「ハドラー様!何の御用でしょうか?!」

ジゼルはハドラーに向かって目をキラキラと光らせてハドラーの命令を待っていた。

「ジゼル…お前はパプニカ攻略に行け。これはバーン様の命令だ。」

「へ?パプニカ攻略って…ヒュンケルが担当している…あそこですか?」

「ああ、なんでもレオナ姫とか言う王女を取り逃がしたとかで…どうした?」

ハドラーはジゼルの様子が変だと気づき話しを止めた。

「…いえ、なんでもありまぜん…ヒック…どうぞ…」

ジゼルは涙を流しており、ハドラーのマントを掴んでいた。

「ジゼル…無理をするな。もし俺でよかったら泣きついていいんだぞ…」

流石のハドラーもジゼルを可哀想に思ったのかジゼルに優しい言葉を掛けてあげた。

「ありがとうございます…うわーーーん!!」

ジゼルはハドラーに目が腫れるまで泣きつき、感謝していた。

 

泣きつき終わった後、ハドラーが優しく声をかけ、ジゼルを安心させた。

「それじゃ頼んだぞ。俺はお前を待っている。」

それは言葉の通り、期待して待っているという意味だったが…

「はい…!(ハドラー様への愛がやっと届いた!!今日はいい日ね!!)」

ジゼルはハドラーにプロポーズされたと勘違いし、鬼岩城に出るまではハイテンションだった。

 

~回想終了~

 

「はぁ…」

とはいえ、ジゼルはハドラーの命令と言えどもハドラーと離れることを嫌がる。そのためジゼルは少し落ち込んでいる。

「そう気を落とすな…」

ヒュンケルがそうなぐさめるが今のジゼルには逆効果だった。

 

何しろハドラー以外の男と仕事をするのだ。

浮気の疑いをかけられたらジゼルは自殺する覚悟は出来ている。

 

「気を落とすな…?そもそも気を落とす原因を作ったのは、パプニカごときすぐに落とせなかったあんたのせいでしょうが!!」

ジゼルはヒュンケルがパプニカをすぐに落とせなかったことを指摘し、ヒュンケルを黙らせる。

「すまん…」

ヒュンケルは謝罪の言葉しか出ず、ただ謝るしかなかった。

 

とはいえヒュンケルはパプニカ王国を壊滅寸前までに追い込んでいる。その上パプニカ国王を殺し終わっており、後は後継者のレオナ姫を殺すか生け捕りにすればパプニカ王国は攻略完了だ。

しかし、そのレオナ姫が行方不明であり部下全員で探しても見つからない。

 

「それはそうと…レオナ姫に顔は見せていないんでしょうね?」

ジゼルはヒュンケルがレオナ姫に会っていなければ国の使者としてまだ使えると思っていたが…

「いや…それはあると言えばあるが…」

現実は残酷である。ヒュンケルは不死騎団長として顔を見せてしまったので使えないことが分かった。

「あ~もう…ダメじゃん。ヒュンケルはもうマダオね、マダオ。」

「マダオ?」

「まさにダメな男。略してマダオ。」

「そこまで言うか!?」

「言うわよ。」

「ぐはっ…!」

ジゼルはヒュンケルに精神攻撃を放った!効果は抜群だ!

 

「さて…もう遅いからご飯にするわよ。手伝ってヒュンケル。」

「料理なんて出来るのか?」

「材料があればほとんどの食べ物は調理出来るわよ。」

「なるほど。」

「だけど今は肉しかないよ?それでもいいなら作るけど…」

「頼む…」

 

~親衛隊隊長料理中~

 

料理はあっさりと出来上がり、ヒュンケルはそれを食した。

「美味い…!」

あまりの美味さにヒュンケルは声に出して表していた。

「でしょ?ほら、そんなに慌てない。」

「しかし…!こんなに美味いのは初めてだ。俺がアバンやミストバーンに師事していた頃もこんなに美味いのは…なかった…」

ヒュンケルはそう言って涙を流していた。

「そう…じゃあ、食べ終わったらもう寝なさい。勇者と言っても人間だし、夜出かけるような真似はしないでしょう…明日からダイ抹殺に行きなさい。」

「分かった。また明日。」

「ええ…おやすみ。」

 

~翌日~

朝になり、ジゼルはヒュンケルの寝た所を見て見たが…もうそこにはおらず、既に出かけていたことが分かった。

「さてと…レオナ姫は適当に歩いて探しますか…」

そう言ってジゼルは歩き始めて、壊れたパプニカ城の中へと入って行った。

 

~パプニカ城内~

「結構派手にやったわね…」

ジゼルがパプニカ城内を見た感想がこれだ。

何故なら…パプニカ城内は無茶苦茶に荒れており金銀財宝なども見当たらずに、いかにもコソ泥がやりました的な感じだった。

 

「…ん?あれは…?」

ジゼルが歩いていると、光るものを見つけて近づくと…青い宝玉の入ったナイフがあり、ジゼルはそれを拾った。

「これはパプニカ王家のナイフ…?なんでこんなものが…」

ジゼルはそれを見てパプニカ王家のナイフだと分かった。何故なら、そのナイフには王家の紋章が書かれておりすぐに分かった。

 

なお、パプニカには後二本ほどこのナイフと宝玉の色こそ違うが同じナイフがある。残りの二本のうち一本はダイが所有しており、もう一本はレオナが所有している。

 

「なんにしても持っておいた方が良いわね…何かの交渉に使えるかもしれないし。」

ジゼルはそう言うとパプニカのナイフをしまい、再び歩いて行った。それが後々彼女を救うことになる。

 

ジゼルは城内を外へ出ようとすると…戦闘をしているダイとヒュンケルの姿が見えた。

「(まずい!)」

ジゼルは咄嗟に隠れて気配を消した。その理由は先ほどジゼルが拾ったナイフにある。

もし、ナイフを持っていることがばれたら…?そう思ってしまい、ジゼルは咄嗟に隠れたのだ。

それに元々ジゼルは見つからないようにする行動に慣れていない。それ故の行動だった。

 

しかし、ダイ達はジゼルの気配に気づくはずも無い。それもそのはず。ジゼルの視力は竜の血を半分受け継いでいるせいか、かなり良い。その上、咄嗟に気配を消したためバレるはずもない。

 

「他の入り口から出るしかないわね…」

ダイ達がジゼルの入ってきた入り口付近にいるためそこからは出られない…となれば他の場所から抜け出すしかない。そう思って、ジゼルはすぐに行動に移した。

 

そして他の入り口から外へ出てみると…ジゼルは目を丸くした。

「クロコダイン!?」

死んだはずのクロコダインがヒュンケルの技をくらっているのを見たからだ。

「まさか…クロコダインが魔王軍を裏切った…?」

 

ジゼルは状況的に考え、ヒュンケルがダイ達に味方するはずはない。となればクロコダインがダイ達を庇い、味方になったという考えが浮かんだ。

 

しかしクロコダインは忠義に厚い男である。バーンは当然のこと、六軍団長の中でもハドラーに対して忠義を見せておりジゼルもそのことを良く理解していた。

そのクロコダインが裏切ったと考えにくいが…

 

「とりあえず、行って確かめましょう…!」

ジゼルはダイ達がガルーダに捕まって逃げたのを確認し、ヒュンケルの元へと向かった。



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親衛隊隊長はあの言葉が分かる

あの言葉とはなんでしょうか?当ててみてくださいね。ヒントは…ゴが最初に始まるあのキャラです。
ちなみに翻訳は出しませんよ?想像にお任せします。


クロコダインはダイ達を追おうとする自らの身体を犠牲にし、ヒュンケルを止めようとした…

「人間は強い!そして人間は優しい生き物だ。共に力を合わせ、喜びと悲しみを分かち合うことが出来るんだ。ただ強いだけの俺たちモンスターとは違う…!」

「黙れ!」

ヒュンケルはクロコダインの言葉に耳を貸さずにクロコダインに刺さっている剣を更に奥にやる。

「戯言は良さんか!!」

「ヒュンケル、人間であるお前に人間の素晴らしさがわからぬはずが無い…」

ヒュンケルに人間の素晴らしさを教えたが…

ヒュンケルは剣をクロコダインごと壁まで押す。

 

しかし、クロコダインはまだ話し続ける。

「ヒュンケル…お前は見て見ぬ振りをしているだけだ…!」

その言葉でヒュンケルは一瞬図星をつかれた顔をし怒った。

「黙らんかーっ!」

そして、ヒュンケルの剣がクロコダインを突き抜けて壁を破壊する。

「ぐあぁぁぁぁぁーーーっ!!!」

クロコダインは断末魔にも似たような叫びをあげ…血も一気に吹いた。

 

だが、そのとき血とは別のものがヒュンケルの手にかかった…

「涙…?!」

涙を流しながら、クロコダインは身体にある力を使い、ヒュンケルの肩に手を置いた。

「ヒュンケルいいぞ…人間は…今度生まれ変わる時は俺も人間に…ぐふっ…!」

そしてクロコダインは後ろに倒れた。クロコダインが最後に言った言葉は…

「無念…!」

マァムを逃がすことに失敗した事に対しての無念なのか、ヒュンケルに人間の素晴らしさを教えられなかったことに対してかは、不明だがとにかく言える事はクロコダインが気絶した事だ。

 

「…流石ね、ヒュンケル。」

そこへ現れたのは魔軍司令親衛隊隊長のジゼルだ。

「お前か…」

 

「クロコダインはどうする?」

ジゼルはクロコダインをどうするかをヒュンケルに尋ねた、

「手当てをしてやろうと思う。」

ヒュンケルは治療をすることに決めて、背中を向けた。

「…そう言うことなら私も手伝うわ。ベホマ…」

ジゼルが呪文を唱えるとクロコダインの身体は完全に回復し、それまでの苦しい表情が安らかな表情となった。

「すまない。」

ヒュンケルがそう言うと剣を頭の兜につける。

「それより…この娘どうする?」

 

そこへゴメちゃんがジゼルの元へと向かう。

「ピピィ!」

ゴメちゃんはジゼルに警戒しておらず、むしろ助けてくれた恩人に対していきなり無礼なことはしない。

「あれ?この子は…?」

ジゼルは少し前にダイとゴメちゃんに会っている。そのため立場以外は互いに認識はある。

「そう言えばいたのか?」

ヒュンケルが意外そうな顔でゴメちゃんを見た。だがその顔には全くと言っていいほど警戒している顔ではなかった。

「ピー!ピー!」

しかし、ヒュンケルに対しては、やはりと言うべきか警戒しており睨みつけていた。

「まあ、落ち着きなさい。ゴメちゃん。この銀髪のお兄さんは女の子に対しては優しいわ…」

「ピピィ?」

「そのくらいわかるわよ。私の仕事仲間だし。」

「ピー!?」

「だからと言って私は、今ダイ君には手を出せないし、何より…ついでに顔を出した程度だからその娘には手を出さないわよ。」

「ピ?」

「本当よ…」

「ジゼル…暇なら地底魔城までその娘を運ぶのを手伝ってくれ。」

ヒュンケルがジゼルにマァムを運ぶを手伝うように促した。

「はいはい…よいしょっと。じゃあ地底魔城まで運ぶからついて来なさい。」

ジゼルはそれだけ言うとマァムをおぶって歩いて地底魔城まで向かった。

 

~地底魔城~

「でね…ゴメちゃん。」

ジゼルはゴメちゃんに愚痴っていた。

「ピィピィ。」

「わかる?でも私の願いは…やっぱりハドラー様との子供を作って幸せに暮らすことかな。」

その言葉が後々本当になるとは誰一人予想がつかなかった。

「ピピッ!」

「うん…ありがと。それじゃ、仕事だからまた会えたらいいわね。リレミト!」

ジゼルはゴメちゃんに別れの挨拶を入れて地底魔城から出て行った。

 

 

一方…ヒュンケルはハドラーと会っていた。

「これは魔軍司令閣下…何か私に御用で?」

ここで前のハドラーなら嫌味の一つを入れてダイ抹殺を急かすだろう…が今のハドラーは違った。

「何、少しジゼルが不安になって見にきただけだ。お前なんぞに興味は無い。」

ハドラーはパプニカにジゼルに向かわせたことに罪悪感を感じているせいか…ダイ抹殺の件がハドラーの中ではどうでも良くなっていた。

「何…?」

 

これにヒュンケルは目を開く。何しろ、この挑発方法ならばハドラーを怒らせ、冷静さを失わせるとアバンに教わったからだ。ところが当の本人は至極冷静に返事を返してきた。

 

「ところで…ジゼルはどこにいる?」

「とりあえずここにはいない…とでもご答えしましょう。では…閣下もお気をつけて。」

そう言ってハドラーは立ち去ろうとするが立ち止まり…

「…そうそう、クロコダインの奴がこの大陸に来たみたいだが…知らないか?」

「知りませんな。」

「ならば良い。」

 

「(俺には興味がないだど…ふざけるな!ハドラー…俺には歯牙にも掛けない存在だと言うのか!!)」

ヒュンケルはハドラーを見下す悪い癖がある。そのため、挑発をしていたのだが…ハドラーには全く通じずに会話は終わってしまった。

ヒュンケルはこの鬱憤を晴らすためにダイを徹底的にいたぶることに決めた。ダイから見れば迷惑な話である。

 

その頃…ジゼルはというと…

「そう言えばバルジ塔にでも行ってみようかな…ルーラ!」

ルーラでジゼルはバルジ塔へと向かっていた。

「チッ…面倒なことをしてくれるもんだ。ルーラ!」

それを見た魔道士らしき老人もルーラでバルジ塔へと向かった。

 

~バルジ塔~

バルジ塔ではパプニカ王国の姫レオナ、三賢者の3人、後その他の兵士が話し合っていた。

「ご機嫌よう…パプニカ王国の皆さん。」

ジゼルがそう言うとパプニカ王国側の人間は全員ジゼルの方へと向いた。

「だ、誰だ!?」

三賢者の一人であるアポロがジゼルに聞く。

「魔王軍、魔軍司令親衛隊隊長ジゼル。と…そんなことよりもレオナ姫を渡して貰えない?」

ジゼルは律儀に答えるとレオナを渡す様に要求する。

「誰が魔王軍なんかに!」

アポロがそう言うとパプニカ側全員がその意見に頷く。それもそのはず。ここでYesといってしまったらパプニカを裏切ることになるからだ。

 

最も、かつてダイ諸共レオナを暗殺しようとしたパプニカの司教テムジンと三賢者の四人目の賢者バロンは裏切ったがそんなことはどうでも良い。

 

「残念ね…それじゃ…っ!」

その時、ジゼルは後ろから魔法が飛んでくるのを感じ、横に飛んだ。

「チッ…」

男はジゼルがよけたことに舌打ちをするがすぐに魔法の準備をする。

「まさか…マトリフさん!?」

その男はかつて、アバン達の仲間であり、魔法に関しては右に出るものはいないと言われるマトリフだった。

「久しぶりだな、てめえら。」

マトリフはニヤリと笑った。

 

「マトリフさん、何故ここに…!?」

三賢者の一人エイミがマトリフにそう尋ねる。

「何故も糞もねーよ。そこの魔族の女がやばそうな感じがしたから来ただけだ。」

マトリフは魔王ハドラーに対してですらそんなことは言わない。むしろ三流魔王と陰口を叩く位だ。それだけジゼルが強いことを認識していた。

「マトリフさんにそこまで言わせるほど…!?」

マトリフとエイミが会話していると…

「ここでやっても…面白くないわね。どう?下に降りてやらない?」

ジゼルがマトリフにバルジ塔の下で提案した。

「いいだろう。」

マトリフはこれ以上ない激戦を予想し、周りに被害を与えない様にそれを呑んだ。

「じゃあ、ついて来なさい。」

そう言ってジゼルはバルジ塔の下へと向かった。




作「それにしても…ジゼルとハドラーの会話が少ない…」

ジ「逆にヒュンケルとの会話は多いんだけどねー。」

ヒ「もしや…作者、サブとして俺もいれているのか?」

ハ「確かに考えているようだが、俺が…とこれ以上はネタバレになるから言えんな。それでは質問あるいは感想があれば感想で、気に入ったならば即お気に入り登録へ!」

作「あと矛盾点があったら感想にてお待ちしています!」


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魔王軍、惨敗!

タイトル負けしてますね、今回は。
それにしても、なかなかお気に入り件数が増えない…orz



一人の魔族の女性と一人の大魔道士の男が互いに向かい合っていた。

方や魔族としては若い分類に当たるジゼル。

もう方や人間としては老人の分類に当たるマトリフ。

だが共通していることはこれから戦うということだ。

「覚悟はいいな…?」

マトリフがジゼルに戦闘の準備が出来たか尋ねる。

「どこからでもかかって来なさい。」

ジゼルは準備万端に整えていると答え、構えた。

 

「それじゃ…イオラ!」

マトリフはそう言ってイオラをジゼルに放つ。

「遅い!」

それをジゼルはギリギリの距離までいって避け、マトリフに詰め寄る。

「トベルーラ!」

マトリフはジゼルが詰め寄ったところで空を飛ぶ。

「バギマ!」

ジゼルはマトリフが飛んだのを見計らって風の魔法、バギマを唱える。

 

「ルーラ!」

マトリフはルーラで移動し、無表情で避ける。

「(チッ…!厄介な女だ。メドローアを使う暇もねえ!)」

だがマトリフは内心はかなり焦っており、ジゼルがこれ程の強敵だとは思ってもなかった。

「(想像以上ね…人間なのにここまでやるなんて。)」

一方、ジゼルもマトリフを評価し始めていた。しかし…マトリフとは逆に余裕だった。

「さて、小手調べはここまでにしましょう。」

「そうだな。(おいおい…今のが小手調べだと?更にレベルが上がるってことかよ…)」

マトリフがそう言うとジゼルの様子が変わった。

 

ジゼルの髪が逆立ち、ジゼルの周りから雷が出てきた。

「…(なんだあれは!)」

マトリフが口には出さなかったが表情が驚いていた。

「さあ、行くわよ。」

ジゼルが先ほどよりも速く間合いを詰めて、マトリフに攻撃をした。

「がはっ…!(あの雷は演出じゃなかったのか!?)」

マトリフは雷に打たれた感覚を覚え、演出じゃないと改めて認識する。

 

「(ん…?氷が動いている…まさか!?)」

 

マトリフは一つの結論に達する。

現代科学において雷は上空で氷と氷の摩擦によって生まれるものである。

ジゼルは簡易的だがそれを再現したのだ。ヒャド系魔法で氷を出し、バギ系魔法で氷を動かし、氷同士を摩擦させ雷を作ったという訳だ。

 

そして何故ジゼルは速くなったのかというとジゼルの祖父ボリクスの体質にある。ボリクスは雷が近くにあると吸収する体質であり、その吸収した雷で神経を動かしていた。

ジゼルもその血が働き、雷を吸収し神経を動かしていた。

 

「(理屈がわかったとはいえ、何か解決策は無いのか!?)」

マトリフはかなり焦った。何しろメドローアと始めとした魔法は当たらない、ルーラを応用した技でも無駄。マトリフの頭の中には倒すのには不可能なものばかりだ。

 

「(いや、一つだけあった…あの魔法にかけるしかねえ!)」

マトリフはジゼルを倒す方法が一つだけあったことを思い出す。その魔法とは…

 

「パルプンテ!」

パルプンテの効果には色々な効果がある。例えば敵味方関係なくHPやMPを全回復させたり、巨大な魔神を呼び出し敵を逃げさせたり、時を止めたり戻したり…とにかく一杯あるがその効果はランダムで決まる。今回のパルプンテの効果は…

 

上からまばゆいばかりの光がマトリフに襲い掛かってきた。

 

これにマトリフはかなりの重傷を負ったがなんとか生き延び、そして…光の竜へとなった。

 

「グオオォォ!」

マトリフ…いや光竜はジゼルを雄叫びだけで動きを止め、そして息を吸った。

「(マズイ!ルーラ!)」

ジゼルはそれを直感的に感じ、ルーラを唱えようとしても…唱えられなかった。

「(なんで!?どういうこと!?)」

ジゼルはマホトーン状態に陥り、言葉を喋れない。

「グオオォォーッ!!」

そしてジゼルは光輝く息を直撃した。

 

「あぁぁぁーっ!!」

ジゼルは悲鳴をあげて、ボロボロになった。

 

「(このままだと…死ぬ!)」

ジゼルがそんな事を思っていると、光竜がもう二回目の攻撃の体制に入り、後は光輝く息を吐くだけだ。

「(もう終わりなのかな…ハドラー様…ありがとうございました…ああ、走馬灯が見える…)」

ジゼルは走馬灯を見て、自分の人生が終わりかと思い、諦めた…しかし、ジゼルは途中で諦めるのを諦めた。

 

「(いや!まだ生きられる!)」

ジゼルはそう心の中で言うと、必死にポケットの中から何かを探した。

「(あった!お願い!)」

ジゼルが探していたのはキメラの翼であり、今は逃げることに専念した。そしてキメラの翼を使い、命からがら逃げ出した。

 

そして残されたのはマトリフだけだ。

「(逃げたか…それにしても危ない賭けだったぜ。)」

マトリフがそう思うのは無理はない。パルプンテはランダムで何か起こるが何も起きないこともある。何か起こっただけでもラッキーな方だ。

その上、伝承を含めてあの光輝く竜のブレスに耐え切れた者はいないからというのもある。

「それじゃパプニカの連中は助ける義理はないし、俺は帰るか…ルーラ!」

マトリフはそう言うとルーラで帰った。

 

一方、ダイ達はと言うと…

「ライデイン!」

ダイはライデインの呪文を唱え、ヒュンケルに対して百発百中にする練習をしていた。ポップはと言うと…サボっていた。

「甘いぞ、ダイ!俺が手伝っているんだから百発百中で当てろよ!そんなんでヒュンケルに勝てると思うのかよ!」

…などということはなく、厳しくダイを教育し、ポップ自身も天候呪文ラナリオンで手伝っていた。

「わかっているよ。だけど中々上手く行かないんだ。」

 

ダイがそう言うとポップはため息を吐き…

「おめー、マァムがどうなってもいいのか?」

マァムをダシにしてダイのやる気を出させた。

「それは嫌だ!」

「だろ?だから百発百中にしろよ。」

「うん!」

ダイはそう言ってライデインの修行を再開した。

 

~鬼岩城~

ルーラの光が鬼岩城へと向かってきた。

「誰かが、ルーラで戻って来たぞ?」

そのことに気づいたアークデーモンAがそう言うとある部屋に向かった。

「一体誰なんだ?」

ガーゴイルCが誰かと思い…その部屋へ覗くと…

「はぁ…はぁっ…!」

そこにはボロボロになっていたジゼルの姿が見えた。

 

「ジ、ジゼル様!」

ガーゴイルCは慌てて、ジゼルに駆け寄る。

「一体どうなさったので!?」

アークデーモンAもその姿に気づいたのか駆け寄る。

「少し戦闘した後よ。私は蘇生液につかるから何か用があったらそこに報告してね。」

「「…」」

二人はまだジゼルがボロボロになったのが信じられないのか唖然とする。

「返事は?」

「「はい!了解しました!」」

「じゃ…」

 

ジゼルが立ち去ると、ガーゴイルCとアークデーモンAが話し始める。

「信じられん…あのジゼル様が負けるとは…」

「今の人間って怖いな…ジゼル様をあんなにするなんて…」

「俺たちは改めて人間の恐ろしさを実感する必要があるな。」

「そうだな。」

アークデーモンAとガーゴイルCは人間に対する認識を改め、警戒した。

 

~地底魔城~

ジゼルが鬼岩城へと帰還してから数日がたった頃…地底魔城では…

「さて、もうこれまでだな。」

ヒュンケルはライデインこそくらったが、その後ダイを押して気絶させた。

そしてヒュンケルがダイにトドメを刺そうとした時…

 

「やめて!ヒュンケル!」

マァムがヒュンケルを止めた。いやヒュンケルは止めざるを得なかった。その理由はマァムの持っていた貝殻にあった。

「それは…魂の貝殻!?何故そんなものを持っている!?」

「あなたのお父さんのバルトスの遺言が入っているの!」

父の遺言と聞いてヒュンケルが取った行動は早かった。ダイが気絶しているとはいえ、戦いの最中に兜を脱ぎ、魂の貝殻を耳に当てた。

 

『我が最愛の息子ヒュンケルよ、お前に真実を伝えたいが為にここにワシの魂の声を残す。』

 

~数分後~

 

ヒュンケルはそれを聞いて何もかもが信じられなくなっておりダイを殺すことだけを考えた。

「ヒュンケル!やめて!」

「うるさい!俺はもう立ち止まれないのだ!俺は魔王軍の不死騎士団のヒュンケルだ!」

 

ダイは立ち上がり、そして何かを考えこんでいた。

「魔法と剣…魔法剣…?」

そうブツブツと言い、今のダイは不気味だった。

 

「大地斬!」

ヒュンケルが大地斬をダイに向けてやると…

「大地斬!」

ダイも同じく、大地斬をやった。

「なっ…!?俺の方が押されている!?」

ヒュンケルが焦りの声を出す。何しろヒュンケルはダイよりも剣に関しては上で大地斬も技量なら上である。しかし、現在はどうだ?押されている。そんなことがあるかと思いヒュンケルはダイを観察すると…

「(ば、馬鹿な!?剣が燃えている!?)」

そう、ダイの剣が燃えているのだ。

「これがお前を倒す魔法剣だ!」

「馬鹿な!いかなる賢者も剣士も魔法剣は出来ぬはず!」

魔法剣は出来ないのが常識だ。

人間でいうなら指が手にあるように、心臓が左胸の方にあるようになっている。

 

だが魔法剣は心臓が頭にあるような常識破りなことであり得ないのだ。

「火炎大地斬!」

ダイはもう一度火をまとった剣で大地斬を放つ。

「大地斬!」

ヒュンケルも負けじと大地斬を放つが…

「そんな…!馬鹿なことがあってたまるか!!」

しかしヒュンケルの大地斬はダイの火炎大地斬に押され、負けていた。

「闘魔傀儡掌!」

ヒュンケルは魔王軍としてなのかダイを殺すことに専念し、動きを封じた。

「ぐぅぅぅ…!」

「これで終わりだ!ブラッディースクライド!」

ヒュンケルの切り札が当たる直前にダイは闘魔傀儡掌を自力で破り、そして雷を呼んだ。

「ライデインストラッシュ!」

雷をまとった剣でヒュンケルを見事撃破した。




雷については殆どWikipediaを参照にしました。ペディア先生…ありがとうございます。
ボリクスの体質とかはオリジナルです。
マトリフがジゼルの攻撃を受けても生きられたのはまぐれです。つまり、マトリフはラッキーがなかったら勝ち目はなかったでしょう。そのラッキーの確率はドラクエ5で言うはぐれメタルを三体味方するよりも難しいですね。

その他にわからないところで質問があればどうぞ!


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魔軍司令、寒さを覚える

今回はちょっとだけタイトルが含まれています。
言い忘れていましたがこの作品は流れが原作通りとは限りません。


〜あらすじ〜

ヒュンケルやジゼルが敗れ、数日が経っている間に色々なことがあった。

 

氷炎魔団長フレイザードが火山を噴火させてアバンの使徒諸共ヒュンケルを抹殺しようとした。しかし、アバンの使徒として目覚めたヒュンケルはダイ達三人を助けそのままマグマの中へ…

 

その翌日、フレイザードはバルジ塔でダイ達を撃退しレオナ姫を人質にした。

 

ダイ達はこのままではフレイザードに勝てないと判断し修行に励んでいた。

 

その一方、マトリフとの戦いで傷ついたジゼルは蘇生液で身体を回復させており眠っていた。

〜あらすじ終了〜

 

〜鬼岩城〜

「……ル様、…ゼル様、ジゼル様!」

ガーゴイルがジゼルを起こしに来た。つまり、何か用件があったことだ。

「んあ…?何?」

ジゼルは目を半目にして、起きた。

「ハドラー様がお呼びです。」

ガーゴイルから驚愕の言葉が出てきた。

「ハドラー様が?本当なのね?!」

ジゼルはハドラーと聞いてすぐにガーゴイルの首を絞めた。

「ぐえっ!…本当ですから離して下さい…」

「ハドラー様はどこにいるの?」

「ゲボッ…何時もの場所です。」

「ありがとう!じゃあね!」

ジゼルはすぐにハドラーの元へと向かった。

「なんでジゼル様は魔王軍の中でもいい上司なのにハドラー様のことになると周りが見えなくなるんだ…?」

ガーゴイルはそのつぶやいて立ち去った。

 

「ハドラー様〜♡」

ジゼルは例のごとく、ハドラーに飛びついた。

「…」

ハドラーは拳を前にだし…そしてそれをジゼルに向けた。

「はぅっ♡」

ジゼルの顔はハドラーの拳にぶつかり、その場から落ちた。その時の顔はかなり嬉しそうだったがハドラーはもう気にしなくなった。無駄なところでレベルアップである。

 

「ジゼル、いきなり抱きつくのはやめて貰えないか?」

「自重します…」

ハドラーが抱きつくのをやめるように説得するとジゼルは少ししょんぼりとして自重することにした。

 

「それでハドラー様。何の用でしょうか?」

「うむ…お前が寝ている間にヒュンケルがダイに破れた。」

「ヒュンケル負けちゃったんだ…それでどうするんですか?」

「パプニカ王国壊滅の件についてはオーザムの騎士団を全て壊滅したフレイザードが引き継いだ。そして俺とお前達魔軍司令親衛隊がフレイザードの援軍としてダイ達を始末することに決めた。」

 

「しかし、他の六軍団長を集結させてダイ達を始末した方が良いのでは?」

ジゼルがそう不思議に思うのは無理はない。その方が確実かつ安全だからだ。

「心配いらん。今の俺ならアバンの使徒を纏めて倒せると自信がある。それに我々の目的は地上を征服する事だ。アバンの使徒相手に六軍団長全てを使う訳にもいかん。」

ハドラーは当初、残った六軍団長全員を集結させてアバンの使徒全員を始末する予定だったがジゼルという人材がおり、その必要もなくなった。

 

「了解しました。それで我々はどうすれば?」

ジゼルがそういうとハドラーは地図を出した。

「フレイザードは今、バルジ塔にいる。」

ハドラーが地図上のバルジ塔を指す。

「それで?」

ジゼルがそう言うとハドラーはバルジ塔の付近の点をペンで書く。

「そのバルジ塔付近に氷炎結界呪法の元である炎魔塔付近にお前達が、氷魔塔付近に我々が待ち伏せし、一気にアバンの使徒を潰す!それが今回の作戦だ。」

「了解しました!ところでいつ決行するのでしょうか?」

「この作戦は今夜決行だ。準備は怠るなよ?」

「はっ!」

 

〜バルジ塔〜

そしてあっという間に夜になった。

 

魔軍司令親衛隊の構成員の半分は、ジゼル共に炎魔塔で、もう半分はハドラーと共に氷魔塔で待ち伏せしていた。

 

「ジゼル様。」

新しく親衛隊に入ったベリアルがジゼルにそう尋ねる。

「なに?ベン?」

 

ベンと呼ばれたベリアルはかつてジゼルが自分の強さをアークデーモンAとガーゴイルCに見せつけるためにやられたベリアルのうちのリーダーである。

 

ベンはジゼルに圧倒的な差で負けてからあれから修行しジゼルに師事するようになった。

 

余談になるが百獣魔団長にバーンに推薦されたがそれを蹴った。理由はジゼルに仕える親衛隊の構成員になりたかったからだ。その望みは叶い現在に至る。

 

「ダイと言う勇者はどんな奴なんですか?」

ベンがジゼルにダイが勇者なのか尋ねる。ベンはジゼルを相手に背後を取ったとはいえ、新人である。

「ダイ君はね…青い服を来た少年よ。見ればわかるわ。」

「ハドラー様直々に動く程の実力者でしょうが…」

そこでジゼルの足りない情報をアークデーモンAことアクデンが突っ込む。

「まあ、そうとも言えるわね…それよりもハドラー様…やっぱり、いい…♡」

ジゼルはアクデンの言ったことに一瞬冷や汗をかいたが、どういう思考回路になっているのかすぐに妄想に陥り、ハドラーの事を考え始めた。

 

その頃ハドラーは…

「…む?なんか寒気がしてきたな。」

ハドラーは嫌な寒気がしてきて身体をブルッと震わせる。

「氷魔塔が近いからじゃないですか?」

ガーゴイルCことカラスがハドラーの言うことに反応する。

「カラス…ジゼルに仕える身でありながらそれはないと思わないのか?」

「それもそうでしたね。」

カラスはすぐにハドラーの言ったことに気づき、ジゼルがまたハドラーに対して変な事を考えていると思った。

「(ハドラー様…そう思ったならとっととジゼル様と結婚してあげて下さいよ。そうすれば少しはマシになるのに…)はぁ…」

カラスが今更こんなことを言っても発展しないのはわかりきっているのでため息は出しても口に出さないでおいた。

 

〜炎魔塔〜

のこのことダイとパプニカの老兵バダックがジゼルの待つ炎魔塔に現れ…

「イオラ!」

ベリアルであるベンがイオラを唱え、攻撃を仕掛ける。

「な、なんじゃ!?」

それに驚いたバダックが腰を抜かし…

「誰だ!?」

ダイが戦闘体制になり、構える。

「…貴方も私もお互いにロモスで会ったことはあるはずよ。」

ジゼルがそう言ってフードを取る。

「え…?」

するとダイは驚愕の顔になった。かつてロモスで自分を助けた恩人が魔王軍だからだ。

「久しぶりね、ダイ君。」

そう言ってダイの見知った顔は笑った。

 

「ジ、ジゼルさん!?なんで魔王軍についているんだ!?」

ダイは驚いた声でジゼルに魔王軍になった経緯を話させようとする。

「ハドラー様の恋人だからよ。」

「こ、恋人!?」

「そう、私はハドラー様の恋人。」

「なんでハドラーなんかに惚れる要素が有ったんだ?」

「聞きたい?聞きたいならしょうがないな〜!」

ジゼルは勝手に喋り始め、この場にいる全員に迷惑をかけた。

 

〜氷魔塔〜

ポップとマァムは2人で行動し、氷魔塔へと着いたが…周りはガーゴイルだのアークデーモンだの六軍団に所属しないようなモンスターがポップ達を囲む。

「どうやら罠だったみたいだな…こりゃ。」

ポップがそう減らず口を聞くが次の声で驚いた顔になる。

 

「くくく…ダイは炎魔塔か。」

ハドラーの声がポップの耳に響きわたりポップが震える…

「まさか…お前は!!」

忘れもしない。かつての魔王でありデルムリン島で師であるアバンがメガンテを使って止めようとした敵。それがハドラーだ。

「まあ良い。貴様ら相手でも俺のストレス発散くらいにはなるだろう…」

ハドラーがそう言い前に出る。

「誰なの?ポップ。」

「魔軍司令ハドラー…!」

ポップはそう言ってハドラーの顔を見る。




ジゼルがいた事でハドラーは六軍団長全員に各王国を攻めるように命令が出来ました。そのおかげでバランも疑うことはなくなりました。疑ったとしても原作よりもマシです。
ちなみにオリキャラsの、アクデン【アークデーモン】、ベン【ベリアル】、カラス【ガーゴイル】の名前の由来はアルファベットの頭文字、ABCから取りました。


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炎魔塔、氷魔塔編1

今回はいつもよりも少し長いです!誤字脱字訂正しました。


~炎魔塔~

ジゼルが延々とハドラーの話しをしており誰もがうんざりとしていた。

「ジゼル様、その辺にして上げてください…ハドラー様に嫌われますよ?」

うんざりとしたアクデンがジゼルの話しを止めさせ、ダイ達と戦うように促した。

「もう…わかったわよ。」

ジゼルはこれに渋々と承諾し、構えた。

 

「それじゃダイ君…かかって来なさい!少しの間くらいは待ってあげるから。」

ジゼルがそう言うとダイは飛び上がり…

「ライデイン!」

ダイはライデインの呪文を唱えてあの技を披露するつもりだ。

「ライデインストラッシュ!」

そう、かつてヒュンケルを倒した、この技ライデインストラッシュで。

 

「やばいですよ、あれ!あれをくらったら私でも無事でいられるかどうか…!」

アクデンがライデインストラッシュを見てかなり焦る。

「…」

ところがジゼルは手を前にかざした…

 

バリバリッ!シュー…

 

するとどうだろうか…ジゼルはそのライデインストラッシュを片手で止め、周りの被害もなくしてしまったのだ。

 

「なっ…!俺の最高の技があっさりと…!」

ダイは自分のライデインストラッシュが一番良い技だと思いジゼルに速攻で仕掛けた。しかし現実は片手だけで止められる。つまり、詰みだ。

 

「ハドラー様がギラ系とイオ系が効かない体質であるように、私は雷…を吸収して体力を回復する特別な体質…つまりデイン系の技で攻めても無駄だということ…わかった?」

「それなら!火炎大地斬!」

今度はヒュンケルを追い詰めた技火炎大地斬を使ってジゼルを倒そうとした。

「やれやれしょうがない…その程度で私を倒せるなんて甘い…」

ジゼルはそう言うと息を吸い…そして…

「ゔおおぉぉっっ!」

ジゼルは火炎大地斬を恐ろしい雄叫びで打ち消し…そしてダイ達はおろか、味方であるアクデン達(ベンは無事)も被害を受けた。

 

「そ、そんな…!」

ダイは絶望の顔になる。何しろジゼルは雄叫びだけで、ヒュンケルを劣勢に追い込んだ火炎大地斬を封じたのだ。どれだけ自分とジゼルの差が大きいかいやと言うほどわかってしまった。

 

「さて…ダイ君、わかったでしょう。私には叶わないって…」

ジゼルはダイに諦めるように促すが…

「いや諦めるものか…!ここで諦めたらみんなが幸せに暮らせないんだ!」

ダイが勇者の心でジゼルに屈することなく立ち上がり、ジゼルに向かって構える。

「みんな、ね…人間は貪欲な生き物なのにそれを言うの?」

ジゼルはそう言って遠い目をした。

「どういう意味だ!」

「私達の故郷はダイ君の言う人間にやられたのよ…そして魔王ハドラーが産まれたのも人間のせいよ…」

かつてジゼルの村が人間に滅ぼされたことをダイにカミングアウトした。

 

〜氷魔塔〜

その頃、氷魔塔では…

「あいつがアバン先生の仇…!?」

「そうだ。あいつがかつての魔王にして魔軍司令のハドラーだ!」

ポップがそう言って今までに無いすさまじい顔になる。

「俺がアバンの仇か…ふっ…はははは!」

ハドラーがそれを聞き、いきなり笑い始めた。

「てめえ!何がおかしい!」

「いや、アバンを殺したのは俺ではない。アバンは自滅したのだ。メガンテを使うほど自分の身体を鍛えなかった…いや足手まといのお前たちを鍛えるために鍛えられなかったといった方がいいか?なぁ?」

「「「だははははははっ!」」」

ハドラーが大声で笑うと部下達も全員大声で笑った。

「許さない…!」

マァムはそう言うとハドラーに突進して間合いを詰めた。

「待て、マァム!」

ポップはマァムを止めようとするがすでに遅し。

 

マァムがハドラーに向かってスピアを振る…これが普通の雑魚なら反応出来ずに一撃で倒せるが相手が悪かった。ハドラーは格闘戦においてもマァムの師であるアバンを上回るのだ。故に…

「ああっ!」

ハドラーは片手でマァムのスピアを止めた。

「ふんっ…!」

そしてハドラーはそれをマァムごと投げ…

 

「死ねい!イオラ!」

ハドラーは凶悪な顔でマァムに向かってイオラを放った。

「危ねえ!マァム!」

それをポップが救い出し、イオラをギリギリだが避けることに成功した。

 

しかし、それはポップの恐怖の始まりでしかなかった。

「ハドラーの魔法の威力が上がっている…!?」

ポップはデルムリン島でハドラーの魔法をみたことがある。その時よりも魔法の威力が上がっておりハドラーがパワーアップしていたことが分かった。

「当たり前だ。俺はあれからアバンを倒した褒賞としてバーン様に更なるパワーアップをさせてもらったのだ。」

ハドラーがとある呪文を放つ構えになる…それはポップも知っている構えだった。

「べ、ベギラマ!?」

 

ポップは情けない声を出して鼻水を垂らす。

何しろ今の時点でのポップ自身の切り札と呼べるのは、この世界ではベギラマよりも弱いメラゾーマ…魔法力に差が余程大きく開いていない限り、メラゾーマでベギラマよりも威力が上になることはない。

 

「このベギラマで焼け死ぬがいい…ベギラマ!」

ハドラーはベギラマを放ち、熱線は刻々とポップに迫る。

「(ちきしょう…ここでマァムを守れねえで終わっちまうのかよ…!このままヘタレた俺のままで死んじまうのかよ…!!)」

ポップはこれまでの人生を振り返り、何のために戦ってきたのかを思い出す。そして思い出した言葉は…

 

勇者とは勇気ある者ッ!!

そして真の勇気とは打算なきものっ!!

相手の強さによって出したりひっこめたりするのは本当の勇気じゃなぁいっ!!!

 

このセリフはかつてダイとジゼルが捕まえたニセ勇者一行の魔法使いのまぞっほが言っていた言葉である。この言葉のおかげでポップはクロコダインに立ち向かうことができ、ダイを救ったと言える。

 

「(そうだった!俺にはあの爺さんのくれた勇気がまだ残っていたんだ!!一か八かだ!)」

ポップはそう思い、ベギラマの構えを取り…そして…

「ベギラマーッ!」

大声をあげてポップはベギラマを覚え、そしてその熱線を放った。

「べ、ベギラマができた!」

「バカな!」

ハドラーはポップがベギラマを使ったことに驚いてしまった…その結果…

「俺のベギラマが小僧のベギラマに押されるだと!」

 

魔法の威力は魔力だけでなく精神力にも影響する。

 

ポップは今ベギラマができたことによって興奮状態である。しかしハドラーはポップがベギラマを放ったことに驚いてしまい一瞬とはいえ集中力が切れてしまった。

故にどちらが勝つなんて当然のことだろう。

 

「ハドラー様、大丈夫ですか?」

ガーゴイルCことカラスが駆け寄るが…

「…どうやらあいつらを舐めていたようだな。評価を改める必要がある。」

最初ハドラーは八つ当たりにカラスを殴ろうとしたが必死に抑え、ポップ達の評価を改めた。

ジゼルがもし魔王軍にいなければ殴っていただろう…

 

その間にポップは爆弾に火をつけてしばらく待っていた…

「やれい!」

ハドラーが部下達に命令するとポップはハドラー達に向かって爆弾を投げた。

「そらよっ!」

 

「なっ…!」

それにハドラー達は驚く。その驚いた瞬間がハドラー達の命取りだった。

「ベギラマ!」

ポップはその爆弾に向かってベギラマを放ち、爆発をより強くして火の海にした…

 

「行こう…マァム。」

ポップはハドラー達を倒したと思いマァムに声をかける。

「ええ。」

マァムもこれに同調し、歩いて行った。

 

「待てい!小僧、帰るのはまだ早いぞ!」

 

しかしハドラーは無事だった。

 

ハドラーが無事な理由はハドラー自身の身体とポップが投げた爆弾にある。ハドラーはギラ系とイオ系に耐性がある…つまり熱線や爆発にかなり強いということだ。

 

ハドラーにギラ系とイオ系で致命傷を負わすにはベギラゴン、イオナズン等の高等呪文を何発も打つ必要がある。

 

ところがポップの投げた爆弾は即席で作ったためにアバンと戦ったハドラーのイオラよりも弱い。

 

ハドラーがそんなイオラ以下の爆発を受けてもうんともすんとも言わないのは当たり前のことだ。

 

「驚いたぞ…流石はアバンの使徒と言うべきか、まさかハナタレ小僧がここまで成長とは思いもしなかった。だがそれも終わりだ!」

ハドラーがそう言うと両手から火のアーチを出し、構えを取った。

「まさか…ベギラゴン…!?」

そう、かのアバンですら習得できなかったベギラゴンだ。ポップがベギラゴンを知っているのはアバンの使徒であるが故だろう…

 

「行くぞ…小僧!」

ハドラーは両手を中央に手を合わせた…

「あああ…!」

ポップとマァムはベギラゴンに怯えてしまい互いに抱きつく。

「ベギラゴン!」

そして巨大な熱線がポップ達を襲い掛かり、大きな音が響き渡った。

 

〜炎魔塔〜

「なっ…!?今の音は!?」

ダイはジゼルの過去を聞いていたがハドラーが先程放ったベギラゴンによって現実に戻った。

「ハドラー様のベギラゴンね…」

ジゼルがダイの質問に答え、ハドラーがやったものだと説明する。

「なんだって!?ハドラーが氷魔塔に…!」

「もしもダイ君が氷魔塔に行っていればハドラー様がどうなっていたかわからなかったわ…炎魔塔に来てくれてありがとう!」

 

「全然嬉しくない!もう、怒ったぞ!」

ダイはそう言うと額から竜の紋章が現れた。

「ん…?その紋章は!?」

ジゼルが珍しく声をあげて驚く。

「(なんで竜の騎士の紋章があるの!?バランはまだ生きているはず!!)」

 

竜の騎士とは…人の神、魔族の神、竜の神の三神が作り出した戦闘種族だ。だが竜の騎士は通常世界に一人しかいない。

 

それもそのはず。神達はそんな戦闘種族が数人もいて、その全員が自分達に逆らったら…?一人なら、まだなんとかなるが流石にどうしようもない…と考え一人にしたのだ。

 

話しがそれたが今代の竜の騎士はバランである。かつてジゼルが魔界にいた時にバランを世話したことがあるためバランは竜の騎士のことを話してくれた。

 

だが現実はどうだろうか?ダイもその竜の騎士である証拠…竜の紋章を額から出している。

 

「(まさか…ハドラー様はダイ君が竜の騎士だと気がついていた!?)」

ジゼルがそんな事を考えているとダイはジゼルに向かってある構えをしていた。

「ベギラマー!」

ダイはベギラマを放ち、ジゼルを倒そうとした…

 

「くっ…!マホカンタ!」

咄嗟にジゼルはマホカンタで返し、ダイに熱線が襲い掛かる。

「ベギラマ!」

それを打ち消すかのようにダイはベギラマを放つ。

「(…なんにしても後でハドラー様に聞く必要があるわね。今はこの戦いに集中しないと!)」

 

「ぬぁぁぁ!」

と…そんな時いきなりジゼルの部下達が吹き飛ばされていた。

「今度は何!?」

ジゼルは完全に冷静さを失い、周りを見回しながら叫ぶ。

 

「俺だ!」

声がした方向にいたのはかつて魔王軍の六軍団長の一人で人望が厚いリザードマン。

「ああぁーっ!」

そのことにダイは驚きの声と嬉しさを隠せない声をあげる。

「まさか、貴方が!?」

ジゼルも驚きの声をあげるが嬉しさは全くない。何故なら…

「獣王クロコダイン…!」

そう、ジゼルやハドラーにも信頼があったクロコダインが裏切ったからだ。




え〜…ここでアンケートを取りたいと思います。
ジゼルの過去の話しを別の作品で書いて出すべきなのか、この作品で出すべきなのか非常に迷っています。

とりあえず、今まで明らかになったジゼルの過去は
・ハドラーに救われた。
・バランの世話をした。
・魔界で戦いまくった。
の三点ですね。

それで今回はジゼルの過去を題材にした作品の要望、あるいはこの作品で出す要望が、西暦2014年2月28日午後23時59分までに10件(一人につき一件)以上に達したら書きたいと思います。

最後にアンケートの返答はメッセージボックスまでお願いします。それ以外は感想でお待ちしています!

アンケートの結果は活動報告にて発表します!次回もまた見てくださいね!


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炎魔塔、氷魔塔編2

注意!今回はオリジナル要素が強すぎます!ですので苦手な方はお控えください。


~氷魔塔~

一方、氷魔塔では…ハドラーがベギラゴンを放ちポップ達を追い詰めて、マァムを処刑するべくハドラーは氷魔塔にマァムを投げたが突然現れた人物に妨害された。

 

「何故貴様が生きている!?」

ハドラーが大声をあげ、地底魔城で死んだはずの、鎧を全身に纏った青年に叫ぶ。

「…」

しかしその人物は喋らず無視した。

「答えろ、ヒュンケル!」

 

そう…彼の名前はヒュンケル。魔王軍の元不死騎団長にして数少ない大魔王バーンに気に入られた人間だ。

 

「…クロコダインに助けて貰った。それだけだ。」

「クロコダインだと!?奴も生きているのか!?」

「そう思うなら炎魔塔に向かってみればわかるさ。」

ヒュンケルがそういった瞬間、ハドラーに余裕の笑みが浮かぶ。

「なら、その心配はなくなったな。あそこにはジゼルがいる。」

「ジゼルがいたところでなにが出来る。ハッタリもいい加減にしろ!ハドラー!」

ヒュンケルは知らない。ジゼルの本当の実力を…六軍団長の中でジゼルの実力を知っているのはクロコダインとフレイザードのみだ。

 

フレイザードは元々ジゼルの凍てつく氷とハドラーの地獄の炎から生まれた生物だ。つまりジゼルからしてみればフレイザードは息子であり、フレイザードにとってジゼルは母親である。

親子ならば互いにある程度のことはわかる…

しかし同僚だったとは言え、ジゼルとは殆ど赤の他人であるヒュンケルは全く知らない。

 

「ハッタリだと?笑わせるな。あいつは相当な実力の持ち主だ。最悪でも魔王時代の俺を瞬殺する程度にはな…」

「なんだと?」

 

「まあいい。魔王軍を裏切ったからには覚悟は出来ているだろうな?」

「ほざけ、ハドラー!お前が我が師アバンを殺したことはなんとも思わん…だが父バルトスを処刑したことに関しては許さん!」

「あいつは処刑させるだけの罪を犯したのだ。死んで当たり前だ!」

その言葉がヒュンケルを怒らせるきっかけとなった。

 

「貴様ー!!」

ヒュンケルはそう言ってハドラーに飛びかかり、魔剣がハドラーの上から襲いかかる、

「ぬっ…!だりゃっ!」

それをハドラーは右手から出したヘルズクローで防御し、左手から出したヘルズクローを使ってヒュンケルに攻撃する。

「…!」

しかしヒュンケルは野生の勘で避けたが驚くことが起こっていた。

「(…!俺の鎧に傷がついている?)」

 

ヒュンケルの鎧はオリハルコンに次ぐ硬さを持つ金属で出来ており、デイン系以外の攻撃呪文は受け付けないという代物だ。

 

「俺のヘルズクローで貫けぬ物などないわ!」

ハドラーの言うとおり、ヘルズクローはヒュンケルの鎧は愚か、ジゼルの心も貫いて見せた。

 

「面白い…!そう来なくては!」

ヒュンケルはハドラーに対しての怒りがなくなり冷静になり、ハドラーも冷静になっていた。

 

~炎魔塔~

「貴様…獣王クロコダイン!どこに雲隠れしていたのかと思えばダイの助太刀とは血迷ったか!!」

アクデンがクロコダインを指差して怒りの声をあらわにする。

「余り多勢に無勢な物でな…」

 

「クロコダイン!生きていたんだね!」

「グフフッ…獣王を舐めるなよ?ダイ。」

「そういえば氷魔塔にハドラーが…!」

「案ずるなダイ。向こうにも助っ人のヒュンケルがいる。だからこちらの心配をした方がいい…」

「クロコダイン…?」

クロコダインは震えていた…武者震いなどの類いではなく恐怖による震えだ。

「(クロコダインがこんなに震えているなんて…初めてだ。ジゼルはどれだけの実力を持っているんだ!?)」

 

「クロコダイン…貴方が魔王軍を裏切るなんて信じられないわね…ハドラー様に誓った忠誠は嘘だったの?」

「違う!俺は魔王軍に忠誠を誓ったのは本当だった。ヒュンケルはどうかは知らんがハドラーやバーンのためなら俺は死んでも構わないと思っていた!」

「なら何故…?」

「ダイは俺やヒュンケルを魔道から救った太陽なのだ!」

「太陽?」

「もし、ダイがいなければ俺やヒュンケルは魔道を彷徨っていただろう…!生きる者には太陽が必要なのだ、それを奪う者は断じて許さん!例え力及ばずとも戦うのみ!!」

クロコダインは斧をジゼルに向け構えを取った。

 

「(…ダイ君の厄介なところは竜の騎士だということじゃない。その人望。私がハドラー様に惹かれたようにクロコダインやヒュンケルもダイに惹かれたと言う訳ね。)」

 

ジゼルはそんなことを考え、しばらくの間沈黙する…数秒してからその沈黙をジゼルが破った。

 

「そう…だけど私も引けないのよ。私もハドラー様という太陽がある以上ハドラー様の為に尽くす…それだけのこと。正義と悪なんて物は関係ない。今回はどちらの思いが強いかで決まる。」

「ならば俺が勝つ!だぁぁぁーっ!」

クロコダインは突進し、斧をジゼルに横に振る…これは当たればひとたまりもない攻撃だ。

「危ないわね…」

しかし、ジゼルはクロコダインの斧を掴んで防御した。

「なっ…!?(俺の斧を掴んだ!?)」

「はぁぁぁっ!」

ジゼルはクロコダインごと持っていた斧を投げ飛ばした。

「ぐっ…まさかこれほどの怪力とは…!!」

クロコダインがそんな事を言っている間にジゼルはあるものを召喚していた…それは雷だ。

「ジゴスパーク!」

キラーマジンガをボロクズに変えた地獄の雷を呼び出し、クロコダインを攻撃する。

「ぐわぁぁぁーっ!!」

クロコダインは断末魔を上げ…気絶した。

「く、クロコダイン~!」

ダイが気絶したクロコダインを見て慌てて駆け寄る。

「安心しなさい、気絶させただけよ。」

ジゼルはそう言って追撃をせず構えを解いた。

 

「よくもクロコダインを…!」

ダイがジゼルに怒るとジゼルは納得した顔で頷く。

「それよ、それ。」

ジゼルがそういったのには理由がある。かつてジゼルも今のダイのような顔をしていたからだ。

「え?」

「ダイ君…今、私に怒っているでしょ?」

「当たり前だ!」

ジゼルの質問にダイは怒った声ではっきりと答える。

「ダイ君…かつて人間に仲間が殺された時の私と同じ顔をしている。」

「…」

「そんな時にハドラー様が私を安心させる為に地上を支配するようになったの…わかる?」

「そんなの自分勝手だ!人間をそんな扱いしていいのか!!」

 

「自分勝手…?そもそも、そうなったのはその人間が自分勝手な理由で私の仲間達を殺したからでしょ?」

ジゼルは人間の汚さを理解している。だからこそこんなセリフを言える。

「だけど、そんな人間はもういない!」

「貴方は世間を知らないだけでそう言う人間はいっぱいいる…だからハドラー様は汚い人間を改善させる為に、全ての地上を征服するの。」

ハドラーは実際にはそんな動機では動いていないが最近そう思うようになったのでハドラー自身はジゼルの言うことは余り気にしていない。

「俺は、俺は、勇者として戦うんだ!」

 

ダイは、人間を恨んだ過去を持つヒュンケル、パプニカ王国の側近達との関係が悪く自ら出て行ったマトリフの過去、そして人間の自分勝手な理由で仲間を殺された過去を聞き、葛藤する。

 

「ダイ君…君も人間に、育ててくれた恩人が人間に殺されたらどうする?」

 

それはヒュンケル戦でも導けなかった問題だ。ヒュンケルは義理の父であるバルトスを殺されて人間を憎んだ。だが実際に殺したのはハドラーだったからヒュンケルはアバンの使徒として目覚めた。しかしハドラーがバルトスを殺さずに、バルトスが死んでいたら?…間違いなくヒュンケルはアバンの使徒として目覚めることなく魔王軍に従属したままだろう。

 

「ううう…!俺は…」

ダイは悩み続ける。何しろダイは自身を育ててくれた恩人であるブラス、そしてデルムリン島にいるモンスター達を目の前で殺されたら…間違いなく殺した人間を憎む。だがダイはそれを認めようとはせず葛藤している。

 

「ねえ…ダイ君…っ!」

ジゼルがそう言った直後だった。氷魔塔の方が明るくなっていた。かつてアバンがデルムリン島でメガンテを放ったような光だ。

「あれは…!皆、行くわよ!」

それを見たジゼルは慌てて氷魔塔に向かった。

「「「はっ!」」」

残り大勢もジゼルについて行きハドラーのいる氷魔塔へと向かった…

 

「…(なんで俺は即答できなかったんだ?)それはそうと炎魔塔を壊さないと。」

ダイは持っていた爆弾で炎魔塔を破壊し、ポップ達と合流した。バダックは途中で転んでしまい後で行く事になった…

 

〜氷魔塔〜

「グランドクルス!」

 

ヒュンケルはハドラーの心臓を貫いたがハドラーは二つ心臓を持っており生きていた。

 

ハドラーが死んだと思い油断し、腹をヘルズクローで貫かれてしまい絶体絶命の危機に陥っていたがアバンの教えである闘気を頭に集めて…放った。それがグランドクルス。その威力は崖が出来るほど強力なものだった。

 

「むう…っ!やれやれ危なかった。」

ハドラーは無事に避けて、ガーゴイルCことカラスはよけきれずに被害を受けて死にかけていた。

「それにしてもヒュンケルの奴め…こんな大技を隠していたとはな…」

ハドラーは感心する。ヒュンケルの技が崖を作る程に恐ろしい技を持っていた事に…

 

「だがあれはもう放てまい…あれは一日一度が限度だ。」

ハドラーは冷静にグランドクルスの弱点を指摘し、ヒュンケルの背後へと近づいた。

「もうあれだけの闘気を使い果たしたのだ。ここにいるのは抜け殻よ…アバンやバルトスに会って来るが良い!」

ハドラーがヘルズクローを構えた、その時、ヒュンケルの右手が僅かに動いた。

「死ね、ヒュンケル!」

ハドラーのヘルズクローがヒュンケルの頭に襲いかかる…が

「ぐぁーっ!」

ハドラーのもう一つの心臓にヒュンケルの剣が突き刺さり、そしてそのままハドラーは倒れた。

「バカな…!とっくに闘気は使い果たしたというのに、動けるとは…」

ハドラーがそう呟くと大の字になる…

「(まさか無意識状態で戦うとはまさに戦士の鏡よ…)」

ハドラーはそれだけ思うと絶命した。

 

そして遅れて、ジゼルがやってきた。

「あぁぁぁーっ!ハドラー様!」

ジゼルはヒュンケルの剣を抜き、応急手当をしたが無駄に終わった。

「うう…ジゼル様…」

ジゼルに呼びかけたのはカラスだ。

「カラス?!何があったの?!」

「ハドラー様はヒュンケルに殺されました…」

「…ありがとう。今は眠って…おやすみカラス。」

それだけジゼルは言うとカラスにラリホーとベホマをかけて安静させた。

 

「ヒュンケル…!許さない!」

ジゼルの顔は怒りに怒り狂ったものであり、今の彼女の顔をみたら誰もが信じられないだろう。

「ジゴスパーク!」

ヒュンケルにクロコダインを仕留めた技を出してトドメを刺そうとしたが…

 

バリバリ!

 

ジゼルのジゴスパークが何者かに阻害されてしまいヒュンケルにトドメを刺せなかった。

「なっ…!?何故ここに!?」

『…』

ジゼルは驚く。その男は無関心、無愛想、無口などの言葉が魔王軍のなかでも似合う男だ。そんな男がヒュンケルをかばう義理はない。

「答えなさい!ミストバーン!」

魔影参謀ミストバーン。かつてヒュンケルの闇の師匠であり、大魔王バーンの忠臣がここに現れた。




やっぱりハドラーは一度死なないと駄目ですよね。
それにしてもベリアルBことベンの出番が全く無い…
それはそうとドラクエ7買いました!これでドラクエのナンバリング1〜10までやりました。だけど情けないことに1〜3、7、10がストーリークリアしていないんですよ。
5、6は簡単なんですけどね…この大魔王達はこういったことで忘れ去られるんでしょうか?
4?エスタークが印象に強くてラスボス覚えていない(嘘)


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氷炎将軍、アバンの使徒と戦う

最近の悩みはタイトルが思いつかないのと、時間がないことです…


ミストバーンとジゼルは対立していた…その理由は…

「…ミストバーン。貴方ヒュンケルをかばって何のつもり?」

ジゼルがミストバーンを睨むとミストバーンの口が開いた。

『ヒュンケルはまだ殺すべき人間ではない…』

「それはバーン様の命令?」

『違う…私の判断だ。』

「それでヒュンケルはどうするの?」

『…お前がヒュンケルを殺そうとするならば私はお前を殺す。』

「それはヒュンケルを見逃すという意味?」

『そうだ…』

「だったら貴方は魔王軍を裏切った裏切り者として私が殺すわ。」

ジゼルはそう言って戦闘の体制に入った。

『…』

ミストバーンも手を剣にして構えた。

 

方や魔軍司令の忠臣、方や大魔王の忠臣…二人が激突する前にとある人物が現れた。

「グッモーニン!お二人方。」

その男はミストバーンとは対照的な黒い道化師の格好をしていた。

「誰?」

『キル…!』

ミストバーンがそう言うとジゼルは少し考えた。

 

「キル…まさか、死神キルバーン!?」

ジゼルが驚くのは無理はない。キルバーンは大魔王バーン直属の殺し屋だが、その素性は一切不明で魔王軍の中では伝説となっている人物だからだ。

「そう、君のいう通り…僕の名前はキルバーン。以後お見知りおきを可愛いお嬢さん。」

キルバーンはジゼルに紳士な態度を取り、挨拶をしたが…

「気持ち悪い…」

ジゼルはキルバーンに毒を吐いた…

 

「ひどいね~…僕が紳士にしてあげたのに。」

「やわ男みたいでそういったのよ。ところで…何の用?」

「いやいや…大魔王バーン様がね、ジゼル君の事を呼んでいるんだよ。緊急事態だって。」

そのことを聞いてジゼルは構えを解いて…

「…わかったわ。だけどヒュンケルに関してはとりあえずお預けね。皆行くわよ、ルーラ!」

ジゼル達はハドラーとカラスを背負ってルーラで鬼岩城に戻った。

 

残ったキルバーンはミストバーンに話しかけていた。

「ねえ、ミスト…君はなんでヒュンケルをかばったんだい?」

『獲物は太らせてから…それだけだ。』

つまりヒュンケルは今殺しても意味がなく成長した時に殺した方が有益だと言っている。何故そんなことを言っているのかはミストバーンのみが知る事実である。

「面白いことやるね~それ。だけどヒュンケル君は不死身だからね。あのまま放っておいても死ななかったんじゃないの?」

 

ジゼルの攻撃はあのタフなクロコダインも一撃で仕留めるジゴスパークを持っている。だがヒュンケルは人間にも関わらず不死身の男と呼ばれるのはギャグキャラ当然の身体を持っているからだ。それを上回る身体を持っているのは破壊神シドー相手に三人パーティの中で一番活躍し、魔法が唯一使えず戦った某脳筋王子くらいのもの。

 

『いくらヒュンケルと言えども心臓を刺されたらひとたまりもない。』

しかし、ミストバーンは冷静にジゼルが心臓を狙っていたことを見ておりヒュンケルが殺されると判断。その結果止めたのだ。

「まあ君がそう言うなら仕方ないけど。シーユー!」

そう言ってキルバーンは消えた。

『(私も行くか…)』

ミストバーンはリリルーラでバーンのところへと戻った。

 

〜バルジ塔〜

一方、氷炎魔団長フレイザードはマァムの足を掴んで持ち上げていた。

「へっへっへ…屋上で待つなんて俺の性に合わないもんでな!」

「あぁぁぁーっ!」

マァムがそう叫ぶと、尖った岩にフレイザードは振りかぶり…

「そら、一人片付いた!」

その時、ダイ達を苦しめた技がフレイザードに直撃する。

 

「ブラッディースクライド!」

そう…アバンの使徒でありながら魔王軍に入ってしまった男の技だ。

「こ、この技は…!」

フレイザードは腕が攻撃され、思わずマァムを離してしまう。

 

そしてフレイザードは忌々しい顔になる。それもそのはず、フレイザードにとって目の上のタンコブの男が使っていた技がフレイザード自身の腕を攻撃したのだ。

 

「ヒュンケル!」

そうアバンの一番弟子であるヒュンケルだ。

「無事だったんだね!」

ダイはジゼルが氷魔塔の方向に行ったので少々不安だったがなんとか撃退したみたいで安心した。

「俺が死ぬと思ったのか?」

そう言ってヒュンケルは皮肉な笑みをフレイザードに向ける。

「てめえ…!」

「そうそう…クロコダインも、もうじき来るはずだ。」

ヒュンケルはクロコダインのことを知らない。クロコダインはジゼルによって一瞬で倒されてしまったことを。

「なんだと!?」

クロコダインが来ると聞いてフレイザードは驚く。自分の母親であるジゼルが認めた男が魔王軍を苦しめると言っているのだ。だがハッタリという可能性もある…

 

「お前の暴虐もそこまでだフレイザード!さあ、観念しろ。」

そう考えているとボロボロになりながらもクロコダインが本当に現れた。

 

「そうだな観念するか…六軍団長の二人とその二人を追い詰めたアバンの使徒達が相手じゃ俺と言えども相手が悪い…」

フレイザードはそう覚悟を決め、ある技を使う為に爆弾岩を退けた。

 

「何っ!?」

クロコダインが驚きの声をあげる。何しろフレイザードは出世欲の塊。その男が目の前にある獲物を逃すはずがないのだ。

「(爆弾岩を退けたということは本当に観念したのか?)」

ヒュンケルはフレイザードが爆弾岩を退けたことに本当に観念したと思う。

「さあ、レオナ姫を解放しろ!そうすれば命だけは見逃してやる!」

ダイがフレイザードにそう告げて、構えを解くが…

「ああ?お断りだ。」

「何っ!?」

今度はヒュンケルが驚きの声を上げるフレイザードは観念すると言ったにもかかわらずレオナ姫を解放しない…つまり矛盾だ。何を考えているのかわからない。

「確かに俺は観念するとは言ったが、それは無傷でいることを観念したんだ。今から出す技は俺にとってもめちゃくちゃに痛え…だから俺は命を懸ける!(バーン様…俺に勝利を!)」

フレイザードはそう言うと自分の手元にある暴魔のメダルを捨てた。

「フレイザード…お前がそれを捨てるということは…」

クロコダインがフレイザードが投げたメダルを見る。

「あのメダルがなんだってんだ?」

「あのメダルは…フレイザードにとって命の次に大切な物だ。」

 

ポップが訳が分からないと言わんばかりに声を出す…そしてヒュンケルが説明する。

 

ヒュンケルの話をまとめると、フレイザードを含めた六軍団長達とハドラーはバーンに忠義を見せるという名目でメダル取りというゲームをやった。

 

しかしただのゲームではない。メダルは火柱にある。しかもこの中で最も炎に耐性のあるハドラーですら躊躇うほどの火柱だ。

 

そしてメダルを最初にとったのが…半身を犠牲(その後ジゼルによって戻された)にしたフレイザードだった。

 

話を戻そう…つまりフレイザードにとってそのメダルは…

「そいつを捨てたってことは…!」

ポップが情けない声でフレイザードを見る。そう…フレイザードは覚悟を決めたということだ。そのせいかポップにとってはフレイザードは今、上司兼父であるハドラーを超えて見える。

「過去の栄光なんざもういらねえ!俺は新たな栄光を求めるのだぁ!!」

そう言ってフレイザードはバラバラになった。

 

~鬼岩城~

「ハドラー様…」

ジゼルは葬式を行っていた。勿論ハドラーのだ。

「なんでお亡くなりになったんですか…」

ジゼルがそう言って涙を流して、ハドラーの死体の前に立つ。

「ジゼル様。大魔王様のところに行かなくてよろしいのでしょうか?」

ベリアルBことベンがそう声をかけてバーンのところにいかせるように促した。

「…今行くわ。」

ジゼルはベンの言葉を聞いてその場から立ち去った…なお、この後ミストバーンが来たことで葬式は中止になったのは余談である。

 

〜バルジ塔〜

「死してなお栄光を求めるとは哀れなものよ…」

クロコダインがそう言うがヒュンケルはそれに首を振った。

「いや自爆するなら爆弾岩がいた方がより強さを増すはずだ!」

その言葉を待っていたかのように突然岩がアバンの使徒とクロコダインを襲った。

「あいたーっ!」

ポップが顔に巨大な岩に当たり、ぶっ飛ぶ。

「これは…フレイザードの岩だ!」

ダイはそれを見てフレイザードの岩だと確信した。

「そうよ!この岩の一つ一つが俺なんだよ…これぞ俺の奥義…弾丸発火散!」

フレイザードの声が聞こえ、そう宣言した。

 

〜鬼岩城〜

「偉大なる大魔王バーン様…何用で?」

「うむ…余が呼んだのは他でもない。」

バーンがそう言うと一息ついて…予想外の言葉を口から出した。

「ジゼル…魔軍司令にならんか?」

バーンがジゼルを呼び出したのは死んだハドラーから魔軍司令を引き継ぐ勧誘だった。

「お断りします。」

しかし、ジゼルは即答で答えた。

 

「何故だ?」

「私はハドラー様の為に魔王軍に仕えたのです。しかし、ハドラー様がいない以上、今後は故郷でひっそり暮らしていきます。故に魔軍司令に推薦されても私は辞退します。そんな地位なんかいりません。」

ジゼルはハドラーの為に行動するので例え魔軍司令に自分がなっても意味が無いと思っているのだ。

 

「ふむ…それはハドラーが生き返れば魔王軍にいるというわけだな?」

バーンはハドラーが生き返れば問題ないとジゼルに聞く。

「ですがあの状態で生き返ることは不可能です。ザオリクで蘇生させようと努力しましたが無理でした。」

全く言ってその通り。ハドラーは暗黒闘気によってのみ蘇生する。故に回復呪文であるザオリクは効かない。そのため、今頃ミストバーンがバーンの命令でハドラーを蘇らせているだろう。

 

「そうか…ならば少々驚くかもしれんぞ。」

バーンがそう言うと扉が開いた。

「なっ…!?」

そこでジゼルが見たものは驚くべきものだった。

「ハドラー様!?」

そう死んでいて、蘇生出来ないはずのハドラーが生きて扉をあけているのだ。

「くっくっく…どうだ?余のサプライズプレゼントは?」

バーンはイタズラが成功した子供の様に笑い、ジゼルに感想を聞く。

「凄いです…!」

ジゼルはただただ感心。いやこの場合は感動だろう。何しろ自分の愛しているハドラーが生きているのだから…

「うむ…ならば良い!」

それを境にバーンの声が聞こえなくなった。

 

「…」

これにハドラーはついて行けず唖然としていた。

 

「ハドラー様!もう二度と死なないで下さい!」

そう言ってジゼルは例のごとく飛びつくが…

「はぁ…」

ハドラーがそう言うと拳を前に出し…

「あうっ♡」

いつも通り、ジゼルは止まっているハドラーの拳を避けられずに墜落した。

 

「ハドラー様〜…」

それでもジゼルはよじよじと地を這ってハドラーに近づき、抱きついた。

「おいこら。やめろ。」

ハドラーはグイグイとジゼルの顔を押すがジゼルには無効だった。

「あれ?ハドラー様、前よりも力が増してません?」

しかし、全く無効だった訳でなくジゼルはハドラーの違和感に気がついた。

「む…?そう言えば…」

ハドラーもそれに気がつき、少し力が増していることを自覚する。

 

『それは暗黒闘気による影響…』

ここでミストバーンが現れ解説する。

「「ミストバーン!!」」

『ハドラー…お前の身体は死ねば死ぬほど、より強くなり最強の肉体となる。お前の身体は大魔王バーン様の為にある。故に生存権はバーン様が握っている。そのことを忘れるな…』

「待て!ミストバーン!どこに行く!?」

『バルジ塔へ…』

それだけ告げてミストバーンは消えた。




キルバーンが早くも登場しましたね。勢いにまかせていたらそうなりました。
それとジゼルはハドラー以外に対しての同僚…六軍団長かそれと同じくらいの幹部に対しては結構毒を吐きます。


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竜の騎士兼勇者、空烈斬を覚える!

タイトルまんまですね。本当…


フレイザードは弾丸発火散を放ち、ダイ達を(恐ろしいまでに地味だが)追い詰めていた。

クロコダインはジゼル戦の負ったダメージが大きくすぐにダウン。

ポップはフレイザードの炎の岩を凍らせようとしてヒャダルコを撃ったが氷の岩に阻まれ、逆に自分が氷漬けに…

マァムは頭に巨大な氷の岩が当たり気絶。残ったのは不死身の男ヒュンケル、そして勇者ダイだ。

 

この場においてフレイザードを敗北させる方法は一つだけある…それは

「ダイ!フレイザードは禁呪法によって生まれた生物だ。フレイザードの岩の一つに心臓の代わりとなっている核を探せ!」

フレイザードの心臓とも言える核を壊すことだ。

「そんなこと言ったって…!」

そんなことを言われても核を探そうにもダイには見つけ方が分からない。

「ダイ、アバンストラッシュは何を斬る?!」

ヒュンケルがダイにアバンストラッシュの極意を思い出させる…そこにヒントがあるからだ。

「アバンストラッシュ…大地を斬り、海を斬り、そして空を斬る…そうか!」

ダイはそれを理解し、喜ぶ。

「何をごちゃごちゃと…!ヒュンケル、まずはてめえからだ!」

フレイザードの炎と氷の岩がヒュンケルの顔に襲い掛かり、ヒュンケルは倒れた。

「がはっ!」

そしてヒュンケルは意識を失った。

 

「ヒュンケル!」

ダイはヒュンケルの元に駆け寄るが…

「おっと!やらせるかよ!」

フレイザードの岩がダイに襲いかかり、ダイを攻撃する。

 

「くそっ…!」

ダイはあの時を思い出す…かつてフレイザードに負けたことを、ジゼルと戦い敗北寸前で見逃されたこと、そして空烈斬の修行をしたことも…

 

「くらえーっ!空烈斬!」

ダイが空烈斬を放ち、フレイザードに攻撃する…

「何をやっているんだ?そんなチンケな技で俺を倒そうなんざ甘いんだよ!」

しかし、フレイザードの核には当たらずフレイザードは無事だった。

 

「まあ、この俺の弾丸発火散相手によく戦ったもんだぜ…せめて冥土の土産には俺の得意技で仕留めてやるよ!」

フレイザードがそう言うと、五つある指から一つずつメラゾーマを放つフィンガーフレアボムズの構えをした。

「これでジ・エンドだーっ!」

 

そしてフレイザードの得意技のフィンガーフレアボムズが放たれ…なかった。代わりにフレイザードの指がボロボロと崩れていき、今にも身体全体にそれが行き渡りそうだ。

 

「げぇ…!?まさか、俺の核にさっきの技がかすったのか!?」

フレイザードの推測は正しく、フレイザード核はダイの空烈斬にかすり僅かにフレイザードに影響を及ぼしていた。

「ならもう一度だ!覚悟しろ!フレイザード!空烈斬!」

「…かぁっ!」

フレイザードは再びバラバラになり、ダイを襲う…

 

~魔界~

その頃…ジゼルはというと…大魔王バーンの命令で、ある兵器を探しにきていた。

「ん?フレちゃんの核がちょっと削られた?」

ジゼルはダイの空烈斬によってフレイザードの核が少し削られたことを感じ取りそう言った。

「フレイザードを、フレちゃんと呼ぶとは…フレイザードとは一体何の関係ですか?」

ベリアルBこと、ベンが疑問に思いそう口に出す。

 

ちなみに、ベンの実力は相当高くバーン曰く

「もしジゼルがいなければ魔軍司令親衛隊の隊長は当然、クロコダインがいた頃の百獣魔団、サボエラ率いる妖魔師団の二つを合併纏めて総括することができる大将としても兵士としても強者よ」

らしく、魔王軍でも有数の実力者である。

 

「ん~…親子かな?」

正確にはフレイザードはジゼルとハドラーとの禁呪法で生まれたので親子とは言えない…だがある意味親子であるとも言える。

 

「フレイザードとジゼル様が親子!?」

「ええ…ハドラー様と共に禁呪法でフレちゃんを作ったのよ…」

「ああ、なんだそんなことですか…てっきり、ジゼル様が腹を痛めて産んだのかと…」

「流石にそれは無理よ…」

まあ、フレイザードの半身は炎、もう半身は氷なのでそんな生物を産まそうとしたら確実にタダではすまない。

 

「それはそうとバーン様から何を頼まれたんですか?」

「ちょっとした兵器を持って帰ってこいって…」

「どんな奴ですか?」

「オム…オムライス?違うわね。でも確か天秤みたいな形をとっている兵器だって言っていたはずなんだけど…」

それを聞いてベンは顔を真っ青にした。

「…さてと。」

 

そしてベンは翼を広げて逃げようとするが…

「さてと、じゃないでしょうが!何か知っているならさっさと教えなさい!」

ジゼルのグーがベンに襲い掛かり、何発もベンはくらう。

「痛いですから!ジゼル様、やめてください!」

ベンは必死にジゼルにグーで殴るのをやめさせるように求める。

「だったら教えなさい!」

ジゼルの目が三角になり、ベンを脅した…

「わかりました!教えます!」

ベンは僅かな希望を見て、素直に白状することになった…

 

「それで?」

ジゼルはベンを正座させて、尋問を行っていた。

「はい…バーン様が仰っていたのはオムド・ロレスのことです。」

 

オムド・ロレスを、ジゼルはキラーマジンガのような一撃で倒れる兵器なので大したことはないだろうと思い名前を覚えずにいた。

 

「オムド・ロレス?」

ジゼルはその名前を聞いて首を傾げる。ジゼルはそんな名前を聞いたことはないからだ。

「ジゼル様…少し話を脱線させますがいいでしょうか?」

ここでベンが詳しい解説をしようとジゼルに申し出る。

「ん?別にいいけど?」

 

「ありがとうございます。ジゼル様、人間は何故魔族、竜と並ぶ種族だと知っていますか?」

「竜の騎士が人間の味方をしているからじゃないの?」

確かに竜の騎士は最強の兵士だが、所詮生き物。生きる期間が魔族や竜に比べると短い。だが…それだけの実力を今代の竜の騎士バランは持っている。バランは今までの竜の騎士の戦闘経験を持っており、歴代でも最強クラスの強さを持っている。

 

「いえ…違います。人間はとある兵器によって魔族と竜と肩を並べる存在となりました。」

しかし、ジゼルの予想は外れ、人間が魔族や竜と肩を並べる要因は竜の騎士ではなかった。

「それが…オムド・ロレスだと言いたいの?」

「ええ…オムド・ロレスは人間が作り出した最強兵器。その兵器の凄まじさと言ったら…とんでもないもので。」

「具体的には?」

「全盛期の闘神レオソードに土をつけたほどです…」

「闘神レオソードって御伽話に出てくるあのレオソードよね?」

魔界でレオソードと聞いたら、子供でも知っていると答えるほどの知名度の高さを持っている最強の戦士だ。

「はい。ですから…」

「面白いじゃない…」

 

ジゼルは燃えていた。マトリフに油断していたとはいえ負けて、ダイ戦では、ダイを捕まえるために手加減をしなければならなかった。

 

そのためジゼルの鬱憤を晴らすためにもオムド・ロレスのような全力を尽くし、戦える相手が欲しかった。

 

バーンとも戦いたかったが上司である為反逆罪になって魔王軍を首にされハドラーとも繋がりが無くなるので却下。

 

ヴェルザーに挑もうとしても刺客ばかり送って来るので一対一の勝負は無理。

 

ジゼルはベンの話を聞いて興奮し、逆に話したベンは憂鬱になり、オムド・ロレス探しを再開した。

 

~バルジ塔~

 

ダイは苦戦していた。フレイザードの核に空烈斬が当たらずに、逆にフレイザードの攻撃がダイの体力を削りダイが倒れるのも時間の問題だった。

「なんでだ!?なんで当たらないんだ!!」

ダイはフレイザードの核に当たらないことでイライラしてそんな暴言を吐く。

「ダイ!」

いつの間にかヒュンケルが目覚めたのか、ヒュンケルがダイを呼んだ。

そしてダイがヒュンケルの方へ振り向くと、ヒュンケルは自分の血をダイの目に入れた。結果…ダイの目は見えなくなり視界が閉ざされた。

 

「なにするんだ!」

ダイは怒る。無理もない…大事な戦いだというのに目を潰されてしまっては勝てるものも勝てないからだ。

「空烈斬は心の目で見て斬る技だ!なまじ見えてしまうからダメなんだ!」

その言葉を聞いてダイはハッとする。

「なまじ見えてしまうからフレイザードの核が見えない…ならば心の目で見ればいい!」

ダイは空烈斬の構えをとって、そして空烈斬は完成した。

「死ねーっ!」

フレイザードが襲い掛かるが関係ない。フレイザードの核が見える…フレイザードを倒すにはそこを斬ればいいからだ。

「これが本当の空烈斬だ!」

 

結果…フレイザードは元の身体に戻ると…

「へっ、やっぱり失敗だったようだな…げぇ!?俺の核が!!」

大成功だった。フレイザードの核は真っ二つに切れ、フレイザードは炎と氷の二つも持つ身体を維持できなくなるだろう…

「やべえ!身体が維持できなくなってきやがった…!このままじゃ死んでしまう…!!」

フレイザードは炎の身体と氷の身体を分けて自分の寿命を僅かに伸ばした。

「ベギラマ!」

しかしポップが復活しており、ベギラマで氷の半身を燃やしてしまいフレイザードは炎の身体のみとなった。これでフレイザードの寿命は決まったようなものだ。

 

「さて…こいつをどうしてくれる?」

ポップがヒュンケルにフレイザードの処刑方法…もとい、どんなふうにトドメを刺すか聞いた。

「もちろん…二度と復元出来ないほどバラバラにしてくれる!」

その言葉を聞いてフレイザードは青ざめる…弾丸発火散は核がないと出来ない。避けようとしても左半身のみしかないなので避けることは不可能。よって…打つ手なし。

 

しかしフレイザードはまだ諦めていなかった…

「(…俺を生んでくれたのは誰だ?…お袋だ!俺はジゼルの息子だ!)俺はここで負けるわけにはいかないんだよ!!」

フレイザードがそう言うと激しく燃え上がり、フレイザードの火が身体を溶かした。

「何っ!?」

予想外のことにヒュンケルは驚く…普通ならあそこで諦めるものだがフレイザードは自分の殻を破り、初めて成長したのだ。

「ヒャダルコ!」

ポップが咄嗟に放ったヒャダルコがフレイザードを襲う…それはなんらおかしいことでもなんでもない…だが

 

ジュー…!

 

文字通り焼け石に水だった。

「俺のヒャダルコがフレイザードの熱にやられた!?」

「死ね、ヒュンケル!」

フレイザードが最初に狙った相手はヒュンケルだった。フレイザードのマグマがヒュンケルを襲い掛かろうとしたとき…フレイザードは自分の身体が浮くのを感じた…

「なっ…!?てめえ…ヒュンケルを倒せるってのになんで、妨害しやがった!」

フレイザードは知っている…自分の身体を浮かした犯人を。

『…』

しかし当の本人は無視。

「あと一歩でヒュンケルを倒せるとこだったんだ!邪魔するんじゃねえ!ミストバーン!」

またもやミストバーンがヒュンケルをかばい、ここに現れた。

 

~魔界~

「これが…オムド・ロレス…凄い威圧ね。」

ジゼルは珍しく緊張していた。どのくらい緊張していたかというと生徒会長を決める演説を自分が話すくらい緊張していた。

「だからこんな化け物相手をどうやって持って帰るんですか?!」

ベンはジゼルを今だに諦めさせようとするが無駄だった。

「もちろん実力行使よ。」

清々しいまでの笑顔で答えられてしまいベン自身が諦めた。

「真ノ強サトハ何カ?」

そこへ第三者の声が聞こえた。

 

「どこにいるの!?」

ジゼルは周りを見渡すが、いるのはベンだけだ。

「果テルコトノ無イ欲望ダ……アル人間ハソウ答エ我トヒトツニナッタ……ダガ、セイギト答エタ人間モマタ我トヒトツニナッタ……ミナガ我トヒトツニナッタ……強サイサニ意味ナド不要ダ。」

「…ふざけているのか?」

ベンはオムド・ロレスが自分の作り主である人間をも殺して力を吸収していることに機嫌を悪くした。

 

「我ガ名ハ、オムド・ロレス…人間ガ使ワシタハカイノ使者。汝モ我トヒトツニナルガイイ…世界ハ、ハカイスルタメニアルノダカラ…!!」

そして、魔界で戦闘が始まった。




ジョーカー2Proよりオムド・ロレス登場!
ちなみにオムド・ロレスは常にマホカンタなんてふざけた効果がありますし厄介ですよね。
作者はオムド・ロレスは、スキルで自動HP回復をつけたメタルキングで地道にコツコツと通常攻撃で倒しました。
50ターン以上かかりましたね…ただひたすらにボタン押すだけでしたからまだよかったんですが…あれは疲れました。


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勇者一行、勝利する

今回はジゼルの出番はありません!
次回で思い切り出しますので期待していて下さい!


~バルジ塔~

「ヒュンケルは裏切り者だってのに何故やらせない!」

フレイザードが大きな声でミストバーンに意見を言う…何しろ自分の嫌いな相手を殺せると思った矢先に止められてしまい、そうしざるを得なかったからだ。

 

『…フレイザード。』

ミストバーンがフレイザードの名前を呼ぶ。

「ああ?なんだ?」

『新たな力は欲しくないか?』

「さっきまでの俺なら欲しがったかもしれねえが今の俺には必要ねえ!帰れ!」

 

フレイザードはあのままだったら絶対に死んでおり助けを求めたかもしれないが、身体を持っている今はそんな必要はない。

 

何故ならフレイザードは出世欲の塊である。だから一人で勇者ダイ達を仕留める必要があるのだ。ミストバーンなど余計な援護なしでだ…その方がバーンに強いと思われるし、認められ出世出来るからだ。

 

『…』

ミストバーンは残念そうな顔をして鎧を出した。それは魔影軍団が誇る最強の鎧である。しかし、その鎧の中身は空であり何も入っていない状態だ。そこにミストバーンはフレイザードを入れた。

 

すると鎧が動きだし…爆弾岩のような目が鎧から見えた。フレイザードの目である。フレイザードが鎧の中に入った証拠だ。

「がぁぁぁーっ!!」

フレイザードは理性を失い、大暴れ。その理由はミストバーンがフレイザードの了承なしに鎧の中に入れたからだ。フレイザードはミストバーンを殺そうと思うが誰が誰だかわからない。それにフレイザードは炎のような凶暴性を持っている。氷のような冷静さがない以上ただのバーサーカーである。

 

「なんじゃ、こいつは!?」

運悪く崖から上がってきたバダックとゴメちゃんが来てしまいフレイザードはそっちへと目を向けた。

そしてそのバーサーカーの攻撃がバダックのところに迫る…

「させん!」

復活したクロコダインがバダックを庇い、フレイザードの拳を受け止める。それは間違いではない。ジゼルにこそ負けるがクロコダインはザボエラをゴルフボールのように扱えるような怪力を持っている…

「なんだと…!?」

しかし現実はクロコダインがフレイザードに押されており、そしてフレイザードはそのままクロコダインを押した…

結果、クロコダインと後ろにいたバダック達は崖ごと落ちてしまい戦線離脱となった。

 

「くそったれ!一か八かだ!」

ポップはさっきのフレイザードにヒャダルコが効かなかったことからヤケになり、とある呪文を唱えた。

「マヒャド!!」

ポップがヒャド系最強呪文マヒャドを覚え、それを放った。これでポップはこの戦いで二つの呪文を覚えたことになる。これがさっきのフレイザードなら間違いなく死んでいたが…

「効かねえのかよ!?」

ポップが思わず冷静にツッコミを入れて、硬直してしまう。当然ながらフレイザードはそのまま突進してポップを弾き飛ばす。これでポップ戦線離脱である。

 

「ブラッディースクライド!」

今度はヒュンケルがフレイザードに挑む。ヒュンケルは、ブラッディースクライドは貫通の威力のみならアバンストラッシュ以上と言っていたがそんなことは無い。せいぜいアバンストラッシュくらいのものである。

「何っ…!?俺のブラッディースクライドがほとんど効かないだと…?!」

フレイザードにはほとんど効かずにかすり傷程度のものだった。

ヒュンケルはブラッディースクライドを放った直後なので動けない…当然フレイザードはそこを見逃すはずも無く…体当たりをした。

「ぐぁっ!」

ヒュンケルは吹っ飛び…バルジ塔に当たりヒュンケルの鎧が砕けた。これでポップのマヒャドが効かなかったのも頷ける。つまりフレイザードの鎧はヒュンケルの鎧と同じ素材で出来ており魔法を通さない。

それはともかく、ヒュンケルは気絶してしまい戦線離脱した。

 

「ごおおおーっ!!」

フレイザードは気絶したヒュンケルに襲いかかり、拳で殴ろうとするが…

「待て、フレイザード!俺が相手だ!」

ダイがフレイザードを止めてヒュンケルを助ける。

「うう…ゔぁーっ!」

 

フレイザードが突進し、ダイを倒そうとする…

「アバンストラッシュ!」

ダイは目を開き、額に竜の紋章をだし、自分の切り札を出した…

結果、フレイザードは鎧もろともバラバラになり死亡した。

 

『素晴らしい…』

その強さにミストバーンが褒め称え、ミストバーンは立ち去った…

「あれが本当のアバンストラッシュかよ…」

ポップがアバンストラッシュの威力に思わずそう言う。ポップはアバンストラッシュの全開を見ていない…ダイのアバンストラッシュがアバンのアバンストラッシュと同じだと認識した。

「あれは師のアバンのアバンストラッシュと同じ…いやそれ以上だろう。」

しかし、ヒュンケルの言葉はそれを上回ると言い、ポップの顔は少し赤くなった。

「それよりレオナを助けないと!」

ダイのセリフで全員がバルジ塔に入る…前に

「…哀れな奴だったよな、フレイザードも。ミストバーンの介入がなければ俺たちに勝っていたかもしれないし、墓でも作ってやるか?」

ポップがそう言い、立ち止まるが…

「必要ない…あれがフレイザードの墓だ。」

ヒュンケルが指をさしたのは先ほどフレイザードが捨てた暴魔のメダルだ。そしてヒュンケルはそのままバルジ塔の最上部へと向かった。

「…それもそうか。」

ポップも同意し、ヒュンケルと同じく最上部へと向かった。

 

〜最上部〜

そこにはレオナが氷漬けにされている姿があった。それを溶かそうとポップがベギラマやメラゾーマなどを放ち、またマァムの魔弾丸に入っている魔法を使っても全く溶ける気配を見せない…

「これでベギラマが入った魔弾丸は最後…ポップ!ここにベギラマを入れて!」

マァムはここにおいて覚悟を決めた。それは…

「ば、バカ!そんなことしたら…魔弾丸が壊れちまうだろうがよ!!」

 

一つの物に二つ物を入れると壊れる。当然である。魔弾丸も然り…ベギラマが入っているところにベギラマを入れたら威力こそ高くなるが、壊れることは確実だ。

 

「何を言うんじゃ!レオナ姫のためならそんな道具を犠牲にしてでもやるべきじゃろうが!!」

ここで事情を知らないバダックが横槍を入れてレオナを早く助けるように促す…

「そんな道具だと?この魔弾丸はな、アバン先生が残してくれた遺産なんだよ!!」

ポップはバダックの言ったことに怒り、事情を説明する。そう…マァムの覚悟とは、アバンの残した遺産を壊してレオナを救出することだ。

「むう…すまん」

レオナ姫に忠誠があるバダックと言え、自分の失言に謝る。

「ポップ!それよりも早くベギラマを入れて!」

「いいのか?」

「アバン先生なら人を助けることによって道具を壊したところで何も言わないわよ…」

「わかった…!」

ポップがそう言って魔弾丸を持つ…そしてベギラマを放とうとするが…

「ベギラ…?あれ?」

ポップが突然へたり込み、腰を抜かしたかのように動けなくなってしまった…

「どうしたの?!」

マァムが心配して駆け寄るが…ポップの顔は申し訳なさそうな顔になっていた…

「すまない…どうやら魔力切れだ。」

ポップはこの戦いにおいてベギラマ数発に、ヒャダルコ数発、マヒャドを唱えたのだ。これで人間で魔力切れにならないのは超がつく一流の魔法使いと言えるだろう。

「じゃあ、もう…!!」

「ああ…もう姫さんを助けられねえ…どんなに頑張っても魔法使いが魔力切れじゃあ意味がねえからな。」

ポップはそう言って寝っ転がった。

 

「俺がやる!」

その声は…意外な者だった。魔法が苦手でメラも手で打たないとまともに出来なかった勇者…ダイだ。

「けどよ、大丈夫なのか?」

ポップがそう聞く…ダイは竜の紋章無しでは魔法がろくに使えないからだ。

「俺は大丈夫!だからマァム貸して!」

「わかったわ!ポップが(魔法を)使えない以上はダイに賭けるわ!」

マァムが『魔法を』を抜かしたことでポップは少し拗ねていたがそれは余談である。

 

「はぁぁぁ…!」

ダイは額に竜の紋章を出して本当の力を出す。

「ダイ…その紋章、自力で出せるようになったのか?!」

ダイはこれまで、ピンチの時にしか竜の紋章を出せなかったが先ほどのフレイザードとの戦い…そしてジゼルとの戦いで竜の紋章を自在に出せるようになったのだ。

 

「あれは…!?」

ヒュンケルが驚きの顔をする…ダイの闘気が増えていたからだ。ヒュンケルはハドラー戦で出したグランドクルスのおかげで闘気を敏感に感じ取れるようになっていた。

「あれがダイの不思議な力だ。」

クロコダインはダイと戦った時に素手で斧を掴まれ飛ばされたことがある。そしてアバンストラッシュの時も竜の紋章を出していたのでクロコダインの腹が真っ二つに割れたのもその力だと判断した。

「なるほど…」

ヒュンケルは納得し、ダイのことについて前例がないか調べることに決めた。

 

「ベギラマーっ!!」

ダイは魔弾丸にベギラマを込めて、マァムに渡す。

「みんな離れて!」

マァムはレオナに当たるように魔弾丸を向ける…そして引き金を引くと…

 

バンッ!!ベリベリッ…!

 

やはりと言うべきか魔弾丸は壊れてしまい、先の部分が花のように乱れ、一部は剥がれていた…だが撃つことには成功し、ベギラマの入った弾は氷漬けのレオナに当たった。

「(ありがとう…魔弾丸。レオナ姫を助けてくれて。ゆっくり休んでね。)」

マァムがそんな事を思っているとレオナの氷が溶けて、レオナをダイが受け止めた…

 

「生きている…!生きているぞ!」

ダイはレオナの心臓の音を感じ、生きていることを報告した。

 

とは言ってもレオナはほとんどギリギリの状態であと少し遅かったら間に合わなかったのは事実だ。

 

「「「「やった〜!!」」」」

それに全員が喜び、パプニカの城跡で宴会を開くことになった…




バタフライ効果でポップがマヒャドを覚えました!

それよりもジゼルを今回出さなかったのはきちんとした理由があります。
それはオムド・ロレス戦をしっかり書きたかったからですね。
バラバラに視点を変えると見づらいと思い、今回ジゼルの出番をなくしました。
その分次回はジゼルの出番はありますが、ダイ達の出番がありませんのでご了承してください。

それにしても、合わないって理由で評価0つけられたのはちょっとショックだったな…ですがそれでも評価平均7点オーバーなんて夢のようですよ!

これからもこの作品をよろしくお願いします!


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親衛隊隊長、古代最強兵器に挑む

今回のは独自解釈、オリジナル要素満載です!注意してください!


 ~魔界~

 

 ダイ達がフレイザードと戦って勝利の宴をやっている一方、魔界にて

 

 

 

「先手必勝! ジゴスパーク!」

 

 ジゼルがいきなりジゴスパークを出して、オムド・ロレスに速攻した。

 

「れんごく斬り、ばくれつ斬り!」

 

 今度はベンがハドラー以上の炎を自分の武器にまとわせてオムド・ロレスに斬りつける。さらにベンはお得意の2回行動で今度はイオ系の魔法剣を使い……ひたすらに斬る。

 

「(おかしい。魔界の神と言われるバーン様がこんな遅い兵器を求めるはずが無い。となれば一撃一撃が余程強力なの?)」

 

 ジゼルはオムド・ロレスが的になっていることに不審に思い、警戒した。

 

「ジゼル様! もっとオムドを攻撃しないと!!」

 

 ベンがジゼルを叱り、ジゼルに攻撃するように呼びかける。

 

「ごめん!」

 

 ジゼルは息を吸って……ブレスの準備をした。

 

「しゃくねつ!」

 

 ジゼルはクロコダインよりもはるかに大きい炎のブレスを吐いてオムド・ロレスに攻撃した。

 

 

 

「やはり、伝説は古びたものでしか無いのか」

 

 ベンが飛び掛かりオムド・ロレスに攻撃が当たる寸前……二人に突然、大きな違和感を感じた。

 

「リバース」

 

 リバースとは周りにいる者と自分の素早さを逆転させる呪文だ……オムド・ロレスは攻撃しなかったのではなく、あまりにも図体がデカすぎるが故に素早さが失われ、攻撃出来なかったのだ。それが逆転した今どうなるかは想像出来る。

 

 

 

「ぐっ! どういうことだ、身体が重い!!」

 

「今まで攻撃出来なかったのがこういうこと?!」

 

 結果ジゼル達は究極的に遅くなり、オムド・ロレスは逆に理不尽とも言える程に速くなった。

 

 

 

「火炎竜」

 

 

 

 オムド・ロレスの攻撃は終わらない。火の竜がジゼル達を襲い、焼き尽くす。

 

 ジゼルはなんとか歴戦の戦いによる経験で耐える。しかし一名はそうもいかなかった。

 

「ぐぁぁーっ!!」

 

 ベンはそれに耐えきれず、気絶してしまった。気絶で済んだのは劣化しているとはいえハドラーと同じく炎や爆発に耐性を持っているが故だろう。これが他のジゼルの部下のメンバーだったら死んでいる。

 

 

 

「ベホマ!」

 

 ジゼルはベホマで自分の体力を回復させて、受け流しの構えをとった。

 

 

 

「ルカニ」

 

 しかしオムド・ロレスは古代の補助呪文である、守備力下降呪文ルカニを使い、ジゼルの守備力を下げた。

 

 

 

「しまった!!」

 

 

 

 ジゼルは補助呪文についてはバランから聞いていたがまさかこんな場面で使われるとは予測していなかったのだ。

 

 

 

「シネ!」

 

 オムド・ロレスは自分の身体からトゲトゲしい歯車を出し、ジゼルに襲いかかる。そして痛みを耐えるためにジゼルは目をつぶり、防御をした。

 

「?」

 

 

 

 しかしいつまでたっても痛みが来ず、目を開けると……一人の男が剣を構えて立っていた。

 

「やれやれ、やはりここにいたかジゼル」

 

「まさか、貴方に助けられるとはね」

 

 その男はかつて雷竜ボリクスに勝利したヴェルザーを封印した男である。

 

「お前に昔、世話になった礼だ」

 

 その男はカイゼル髭を生やし、竜を象徴するアクセサリーを身につけている。そして今代の竜の騎士であり、魔王軍超竜軍団長でもある。その男の名前は──

 

「バラン……ありがとう」

 

 最強の竜の騎士、バランだ。

 

 

 

「でもなんでここがわかったの?」

 

「古代の最強兵器を蘇らせると聞いたものでな。竜の騎士の記憶を頼りにして来てみれば見事に当たったものだ」

 

「なるほどね。話は変わるけどあの兵器はそんなにヤバイの?」

 

「ああ、だが倒せない訳ではない。お前と──」

 

 バランは竜の牙と呼ばれるアクセサリーを外し、握りしめる。するとバランの手から赤い血が流れ出てきた。

 

「私の最強形態を持ってすれば、いかなる兵器も太刀打ちできん!」

 

 バランの手の血が人間の血の色である赤から魔族の血の色である青へと変わり、更には髪の毛が逆立ち、バランの着ていた服が破れ、竜の鱗らしきものが胸、腹以外のところに浮き出てくると竜のような翼が生えた。これが竜の騎士の最強形態──竜魔人だ。

 

 

 

「それが竜の騎士の最強形態」

 

「私がこの姿になると理性を失う。故に滅多なことでは出さないが、状況が状況だ」

 

 

 

 バランは部下のやることになると慎重になるが自分のやることとなると相手を過小評価する傾向が見られる。ジゼルはそのことを知っておりそれがバランの弱点でもあると気づいていた。だがオムド・ロレスはその過小評価した状態でそこまで言わしめるほどの強敵だと認めた。

 

 

 

「バランにそこまで言わしめるほどの相手なら、私もやるしかない!」

 

 ジゼルは息を吸って、とある技の準備をした。

 

 

 

 話は逸れるがマトリフが生み出したメドローアはハドラーを倒す際にその技をなんとか魔法で再現できないかとマトリフによって生み出された技である。

 

 簡単に言えばジゼルが出そうとしている技はメドローアのモデルとなった技、オーロラブレスだ。

 

 

 

 メドローアは火と氷を互いに合わせて全てを滅ぼす呪文。しかし魔法であるが故の弱点──マホカンタや魔力を吸収するものには無効などの弱点もあり、範囲も限られる。

 

 

 

 ところがオーロラブレスはブレス系の技なので魔力もなければ吸収されることもなく、更には範囲もメドローアよりも広い。だが当然ながら弱点もある。それは致命的なまでに時間がかかることだ。

 

 メドローアは手で火と氷を操り放つ技なので簡単に出来るがオーロラブレスは口と肺で火と氷を操り放つ技、それはかなり時間のかかることだ。

 

 

 

 サクランボの枝結びで言うならメドローアは手でサクランボの枝を結ぶがオーロラブレスは口でサクランボの枝を結ぶと思ってくれればいい。

 

 

 

 一部の例外を除き大半の者は手でサクランボの枝を結ぶ方が良いと言うだろう。また口でサクランボの枝を結ぶことはとても難しいと答えるだろう。

 

 つまり、オーロラブレスの弱点はそういうことだ。

 

 

 

「バラン! 時間稼ぎお願い!」

 

 すぐさまジゼルは時間を稼くようにバランに頼んだ。

 

「了解した」

 

 バランはジゼルが何か大技をやることを期待したのか、それを承諾し真魔剛竜剣を抜いてオムド・ロレスに斬りかかる。

 

 

 

「オノレ! 邪魔ヲスルナ!」

 

 オムド・ロレスは氷ブレス系最強の輝く息を吐きバランを凍らせようとする。その息の威力はバランの部下であるボラホーンとは比べものにはならない。

 

「はあっ!」

 

 冥竜王ヴェルザーを封印したことのあるバランはそれが危険と感じて、すぐさまジゼルを守るために竜の騎士のみが扱える竜闘気(ドラゴニックオーラ)を縦横に広げ守った。

 

 

 

「コザカシイ!」

 

 オムド・ロレスは先ほどジゼルを襲った歯車で竜闘気が薄くなったバランを襲う。

 

「むっ!」

 

 バランは歯車を手で掴み、全力で歯車をオムド・ロレスの方向へと投げ返す。

 

「グォッ!」

 

 オムド・ロレスはバランの攻撃に耐えずにうろたえる。

 

「喰らうがいい! 大陸をも一撃で吹き飛ばすこの呪文を!」

 

 バランは両腕を前に突き出し、手を竜の形に変える。

 

「ドルオーラ!」

 

 バランの最後の切り札、ドルオーラが炸裂した。

 

 

 

「効イタゾ、今ノハ……」

 

 しかしオムド・ロレスは少し凹んだ程度でほとんど無事であり、ダメージもなかった。

 

「ば、バカな!? ヴェルザーですらドルオーラを受けて無事ではいられなかったのだぞ!!」

 

 ヴェルザーとの戦闘でドルオーラを使い勝利したとも言っていいほどドルオーラは強力だ。だがオムド・ロレスにはそれが無効だった。

 

「下ラン……ソンナ奴ト比較スルナ! 我ガ名ハ、オムド・ロレス。我ハ人間ガ使ワシタ最強ノ兵器! 故ニ、ソンナ大陸如キヲ破壊スル程度ノ攻撃デハ効カン!」

 

「ならばもう一度だ!! ドルオーラ!!!」

 

 バランの最後の切り札が再び放たれるが……結果はほとんど同じだった。

 

「ヤハリ……ソノ程度ノ物カ……デハコチラノ番ダ!」

 

 

 

 ここでバランが使えるドルオーラの量は3回である。その理由は竜闘気に関係する。ドルオーラは魔力を使っているため呪文に分類されるが主に竜闘気を使っているので竜闘気の消費が早いのだ。だがそのお陰でマホカンタで反射されることもなければ竜闘気で有るが故に吸収されることもない。

 

 

 

 だがドルオーラの欠点は竜闘気の消費が激しいことだ。

 

 バランは歴代の竜の騎士の中でも竜闘気の量は多い方なので3回で済むが竜闘気の少ない竜の騎士だと1回も使えない……などということもあり得る。

 

 

 

 しかしだ。バランはオムド・ロレスにドルオーラを2回放ったことで少なくとも全体の竜闘気の半分以上は消費していることになる。つまり先程の様に竜闘気を拡張させて守るのは難しいということだ。

 

 

 

「コレデ終ワリダ!」

 

 オムド・ロレスはジゼルに向かい、歯車を出して放った……

 

「させん!!」

 

 バランは歯車を掴もうとするが間に合わず……そのまま歯車がジゼルへと向かった。

 

「ルーラ!」

 

 バランはジゼルのところまでルーラで行き、文字通り身を犠牲にしてジゼルを守った。

 

 結果……バランはドルオーラで使った竜闘気の消費のせいか、防御用の竜闘気の量が足らずに歯車はバランを貫いていた。

 

「がはっ!! ぐぅ……!」

 

 バランは幸いにも心臓を貫かれておらず命には別状はなかったが重傷だ。

 

 

 

「サテ……汝達ノ力ヲ吸収サセテ貰オウ!」

 

 オムド・ロレスがそう言うと、オムド・ロレスの火の炎と氷の炎の二つの炎が激しく燃え上がった。オムド・ロレスは何をしようとしているのか? それは──

 

「滅ビノ矢!」

 

 名前こそ違うがマトリフの切り札であるメドローアだ。

 

 

 

 マトリフのメドローアはオーロラブレスを参考にして作ったものだがオムド・ロレスのメドローアは古代の人間が『僕の考えた最強魔法』みたいな感じで作られたものである。しかし余りにもそれが古すぎるためにメドローアの資料がなく、マトリフは参考にするものがオーロラブレスとなった訳だ。

 

 

 

 マトリフは滅びの矢をメラとヒャドを合わせた矢(アロー)と言う意味でメドローアという名前をつけた。

 

 

 

「もはや、これまでか!」

 

 バランが諦めの声を出し万事休すとなった。

 

「バラン、時間稼ぎご苦労様。あとは任せて」

 

 そこへジゼルが声をかけて一歩前に出る。

 

「終わったのか? だがあれには太刀打ちできん」

 

 バランがそういうがジゼルは無視して口を開き──

 

「オーロラブレス!」

 

 メドローアと同じ特徴のブレスがメドローアを消し去り、オムド・ロレスを襲った……

 

「グォォォーッ!!」

 

 オムド・ロレスは全身がボロボロとなり後一撃で崩壊するだろう……

 

「はぁっ、はぁっ……!」

 

 だがジゼルは先程放ったオーロラブレスでスタミナ切れとなり動けない。バランも同じく竜闘気をほとんど失い動けなくなっていた。これではせっかくのチャンスを無駄にする──と思われた。しかし嬉しい誤算があった。

 

 

 

「はあぁぁっ!」

 

 先程まで気絶していたベンが起きており、オムド・ロレスにトドメを刺した。

 

 

 

 するとオムド・ロレスは歯車を落とし、次に天秤を落とし……オムド・ロレスの身体が次々と崩壊していった。

 

 

 

「なんとか勝ったな……」

 

 バランが声を嬉しそうにしてジゼルに話しかける。

 

「ええ……!」

 

 ジゼルも同じく嬉しそうな声を上げて同調する。

 

「俺たちの勝利だ!!」

 

 ベンが勝利宣言をした。

 

 

 

 こうしてオムド・ロレスを持ち帰ることは出来なかったがジゼル達はオムド・ロレスに勝って終わった。




今回はジゼルだけじゃ荷が重すぎるかと思い、バランにも共闘させていただきました。
質問があれば感想へ、気に行っていただけたらお気に入り登録をしてください!!


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魔軍司令、死神に対して大笑い

久振りに更新できました!アンケート締め切りまであとおよそ3日です。


~海岸~

フレイザードに勝利したダイ達は、ヒュンケル&クロコダインと別れた。そして現在はと言うと…

 

「メラ!」

ポップがメラを放ち、マトリフに攻撃する。

「ヒャド!」

マトリフはポップのメラを打ち消すヒャドを放つ。するとポップの足の海水が凍りつき、ポップは動けなくなった。

「イオラ!」

そこにマトリフは容赦なくイオラを放ちポップに攻撃する。

「やばい!」

それを見ていたダイが声を出し、ポップを心配する。

「メラゾーマ!」

マトリフの上からメラゾーマが襲い掛かるがマトリフはそれをよけた。

「ポップ!」

メラゾーマを放ったのはポップだった。ポップが無事だったのをダイは安心し、安堵の息を吐く。

「ほお…トベルーラか。見ない間に少しはやるようになったじゃねえか。」

マトリフがそう言って称賛する。何しろポップにはトベルーラを教えていないからだ。

「へっ!当たり前だ!こんなんルーラの応用でなんとかならぁ!」

ポップの言うとおり。トベルーラはルーラの応用である。そのためマトリフはポップにルーラを覚えさせたのだ。

「だが甘い!トベルーラ!」

マトリフはポップにトベルーラで頭突きをしてポップを海に落とした。

 

「ねえ、マトリフさん。俺ももっと魔法の修行やりたいよ。」

それを見たダイがマトリフに魔法の修行のレベルを上げるように言う。

「何言ってやがる。お前は十分基礎をやっているだろうが。」

ダイは魔法の基礎である精神修行を行っていた。

「だいたい、お前はポップみたいに魔法をそんなに覚える必要なんざねえんだ。勇者にはとっておきの武器があるからな。」

マトリフがそう付け加え、ダイをなだめる。

「とっておきの武器!?どんなの!?」

ダイはそれにくらいついて、マトリフに勇者の武器がなにか聞く。

「決まっているだろ、勇者の武器は…勇気だ!勇者は魔法使いに比べたら魔法は使いこなせねえ、だからといって戦士に比べたら肉体戦は劣る。そこで勇気が必要なんだ。勇気があれば戦場のペースを握って勝利する。逆に勇気がなければどんな敵にも勝てやしねえ…ま、そんなこった。」

マトリフがそう言って立ち去ろうとする…

 

「勇気か…でもさ。マトリフさん。」

ダイはマトリフを呼び止め、話しを続けた。

「ん?」

「魔王軍には俺のライデインストラッシュを無効化する奴もいるんだ。だから…そいつに勝つためにも魔法が必要なんだ。」

「一応聞いておくがお前のライデインストラッシュを無効化するとは…どんな奴なんだ?」

マトリフは一人だけ心当たりがある。実際に戦ったことのある奴でないと祈るばかりだ。

「ジゼルって奴なんだけど…」

「ジゼルだと!?」

マトリフの嫌な予感が当たってしまった。

 

「知っているの!?」

「先日、俺もジゼルと戦った。結果だけ言えば俺の勝利に終わったが運が悪ければ死んでいた。」

「ええーっ!?」

「あいつに勝つには今のお前達では無理だ。今のお前達のレベルが一回りどころか三回りも上がらないと勝てやしねえ。何しろヒャド系とバギ系の魔法については俺を凌ぐ程だ。」

「そんなに強いの…!?」

「とにかく今言えることは基礎を固めろ。そいつに挑むのはそれからだ…」

マトリフはそう言って立ち去った…

 

「(ハドラーですら歯が立たないのに…ジゼルって魔王軍の一員相手じゃ間違いなく私は足手まといね…これからどうしよう…)」

マァムがそんなことで悩んでいると…

「うへうへ…!」

いなくなったはずのマトリフが瞬時にマァムの身体にセクハラをしていた。

「あーっ!!何すんのよ!このスケベジジイ!!」

マァムはマトリフを肘打ちでマトリフの頭を打った。

「ぐぉっ!!」

セクハラに集中していたのかマトリフは避けきれず、地面にめり込んだ…

「全く、油断している隙もないわ…」

マァムがそう言うとマトリフが地面から這い上がってきた。

「見た目は母親のレイラに似てやがるが馬鹿力だけは親父のロカに似やがって…ロカが昔、マァムが男だったら武道家にさせてやりたいって言ったのが良くわかるぜ…」

マトリフはそう言うと気絶し、一人残されたマァムは考えていた。

 

「(父さんから引き継いだパワーを生かせる武道家…僧侶戦士のままじゃ確かにダイ達の足を引っ張るだけ。だけど武道家なら足を引っ張ることなくダイ達を応援できる!)」

マァムはそう決意して武道家になることを決めた。

「(だけどそのためにはダイ達と別れなければならない。せめて別れの言葉くらいは言っておかないと…)」

 

マァムは武道家として旅立つためにダイ達と別れなければならなかった。その理由は武術の神と呼ばれたブロキーナに会う為である。おまけにブロキーナは弟子を取ったことがない。それ故に覚悟が必要だった。

 

だけどマァムはせめて、ダイ達に別れを告げてから行こうと思い、パプニカ城へと向かった。

 

~鬼岩城~

「邪悪の六芒星が三つに…!ヒュンケルとクロコダインは裏切り、フレイザードは死んだ。魔王軍は三人もの軍団長を失った。そのため邪悪の六芒星を形成するトライアングルが一つになってしまった…!」

ハドラーが汗をかき、真剣に考える…

「これはまさか、魔王軍の戦力が半減した事を意味するのでは…?!」

 

♩〜♩〜

と、そこへ笛の音が響き、そこにいるハドラー、ミストバーン、そして現在ハドラーの護衛についているアクデンとカラスがそちらを見る。

「この笛の音は…!」

ハドラーは知っている。この笛の音が誰なのかを。

「グッイブニング〜!魔王軍の皆さん。」

死神と呼ばれるキルバーンが姿を表した…

「「「…」」」

『…』

しかし、ミストバーンはともかくハドラー達もキルバーンの登場に黙りこんでいた。

 

「どうしたの?そんなに固まっちゃって?」

キルバーンの登場により空気は固まる。しかも全員その理由は…

「仮面を見ろ。仮面を…」

ハドラーが必死に笑いを堪えたような声でそう指摘するとキルバーンは首を傾げる…

「仮面?これは僕のお気に入りなんだけどなんか変?」

「だったら…なぜ落書きされているのだ?」

ハドラーが鏡をキルバーンに渡すと…

「なんだこれは!?」

そうキルバーンの仮面に思いっきり落書きが描かれて会ったからだ。しかもその落書きのせいでひょうきんみたくなっていた。

 

「…もう我慢できません…!」

「我慢だ、カラス!笑ったら死ぬぞ!」

『キル…!私はもう限界だ!』

「…」

カラス、アクデン、ミストバーン、そしてハドラーが

「「「だははははっ!」」」

『フハハハハハ!』

一斉に笑い、某年末番組なら全員OUTである。

 

「…殺すよ?」

キルバーンはそう言って殺気を出す。しかし笑いは止まらない。

「…ちょっと酷いよね!キルバーンが仮面の落書きに気がつかなかったくらいでさ!」

ここでキルバーンの使い魔ピロロがそう発言するが…無駄だった。ここで、キルバーンはもし笑った連中が敵になったときは容赦はしないでいぶり殺すことに決めた。

『キル、だったらその仮面を変えてこい…その仮面のせいで私達は笑っているのだ。』

ミストバーンの言うとおりである。キルバーンが落書きされた仮面を被ったままだと、全員が笑い死ぬのは時間の問題だ。

 

「くくくっ…確かにその通りですね。」

「カラス…笑い声はなるべく抑えろ。でなきゃ、俺たち死ぬぞ…ひひひ…」

この二人の声はキルバーンには幸いにも聞こえず、無事だった。

 

「ピロロ、替えの仮面あるかい?」

「もちろん!はい、キルバーン!」

そう言ってピロロがキルバーンに仮面を渡す。

「ピロロはいい子だね。おかげで助かったよ。」

キルバーンはすぐに仮面を変えてようやくいつものキルバーンの顔らしくなった。

 

〜魔界〜

オムド・ロレスを倒した三人は少し休んでいた。

「バラン…そう言えば、カール王国攻略は終わったの?」

ジゼルがそう話題をあげてバランと話す。

「その件については問題ない。もう滅ぼしてきた。」

バラン率いる超竜軍団はモンスターの中でも最強のドラゴン系統で編成されている。そのため魔王軍最強の軍団である。故にフレイザードが滅ぼしたオーザムと同じくらいの騎士団を滅ぼすくらいなら楽勝だ。

 

「…本当?」

「本当だ。お前は?」

「ダメだった。勇者ダイの心は折っても邪魔が入ってね。そのおかげでフレちゃんは死んじゃったし…」

「ほう…フレイザードは死んで、お前が失敗するほどの相手とは…」

「う〜ん、なんて言えばいいのかな。助っ人として来たのはヒュンケルとクロコダインなんだけど一番邪魔をしたのは別人なのよ。」

「?どういうことだ?」

「簡単に言うとハドラー様がヒュンケルに殺されたから私が敵討ちにヒュンケルを殺そうとしたんだけど…」

「だけどなんだ?」

「ミストバーンがヒュンケルを庇ったのよ。」

「ミストバーンはヒュンケルの闇の師だろう。それくらいは不思議ではあるまい。」

「なんとも言えないけどミストバーンはそんな感じじゃ無いわ…」

「なるほど…」

ジゼルとバランが話しを終えると何かが見えてきた。

 

「ん?なんか近づいてきますよ。ジゼル様、バラン様。」

ベンは一番早く気づき、それを報告する。その正体は魔王軍の中では下っ端の魔物ミニデーモンだった。

「ジゼル様、バラン様、ベン様。ただいま悪魔の目玉より伝令に参りました。」

「どうしたの?」

「ジゼル様はご存知かも知れませんがフレイザード様は死んだとのことです。それとバーン様が皆様をお呼びです。」

「わかったわ。それじゃみんな私に掴まって…ルーラ!」

ジゼル達は鬼岩城へと移動した。




バラン編まであと少しです。
しかし…色々な二次創作の作者様の影響で他の小説もやりたくなる…


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王女、気球を使って逃亡

~パプニカ城~

その頃パプニカ城では…

「姫様。これを返上する代わりに勇者様達一行について行くことの許可をお願いします。」

三賢者の一人のエイミがレオナに三賢者の証であるティアラを渡した。

「ふう…貴方もなの?」

レオナがそう言って見せたのはエイミが渡したものと同じものだった。

「え?」

それにエイミは驚く。レオナが言ったのは自分と同じことを考えている人間がいると言うことだ。

「こればかりは譲れないぞ!」

するとアポロ達が駆けつけてエイミと口論し始めた。

「待った!」

そこに割り込んだのは…トラブルの元となっている勇者ダイ!

 

「パプニカにその人ありと言われたワシが勇者様達と同行しないどういう事じゃ!!!」

ではなくバダックだった。バダックが割り込んだおかげでよりカオスになりやかましくなった。

 

「えーい!お黙り!…ダイ君達のことは私が決めます。よろしいですね。」

レオナは少女らしい声で叫び黙らせると、次にカリスマ全開の王女の声で皆の意見を一蹴した。

「う…はい。」

それに三賢者+老兵は黙り込んでしまった。

 

「レオナ~?どこ?」

そこにダイがレオナを呼び、この話しは終わりとなった。

「何~?ダイ君。」

レオナがダイの声を聞いて上機嫌となり、スキップで近づく。

「あのさ、レオナ。新しい武器が欲しいんだけど…この城下町の武器がほとんどなくて困っているんだ。だからいい武器ない?」

「あら、そう?じゃあいいところに紹介するから行きましょ。うふふのふ。」

 

「あの姫の行動…絶対に怪しい…」

レオナのあまりの不審さにアポロがそう呟く…

「じゃな。ワシはレオナ姫の行動を数年間も見てきたんじゃ。何か裏があるに決まっておるわい。」

レオナはカリスマを持っているがその反面お転婆が過ぎるという欠点があり、かつて世話役だったバダック達を困らせていた。

 

「大変です!!」

するとパプニカ兵士の一人が大慌てで四人の所に駆け付けた。

「何事だ!?」

アポロがそういうと兵士は一息ついてからとんでもない事を言った。

「姫様が、気球を使って逃げ出しました!」

「「「「なに~!?」」」」

四人はそういって気球のある場所に向かうと気球が本当に元の場所から無くなっていた。

 

「じゃあ皆頑張ってね~。」

レオナが気球の中から顔を出し、気球はどんどん上昇し四人ではどうしようもなくなっていた。

 

「ねえ、レオナ。」

「ん?」

「こんな泥棒みたいなことしていいの?」

「や~ね、ダイ君。これはパプニカの気球。つまり、私の物なのよ。パプニカの物は私の物、私の物も私の物。わかった?」

そんなんでいいのかと気球の下にくっついてきたポップは口に出すことなく黙ってロープに掴まっていた。

 

~鬼岩城~

「それにしても妙な噂が流れていてね、勇者君の正体が竜の騎士なんじゃないかって噂が。」

キルバーンがそう言ってハドラーを見る

「何故俺にそんな事を聞く?」

「ふふっ…それはこの中で勇者君と一番接触のあったハドラー君に聞くのが一番良いと思ったからだよ。」

「ジゼルにそれを聞いたらどうだ?死神。最後に生きている中で戦ったのはこいつだ。」

ハドラーがそう言ってジゼルがどこからともなく現れ、ハドラーに頬擦りをしていた。流石にジゼルの扱い方に慣れたハドラーだった。

 

「そうかい…じゃあジゼル君、君は勇者ダイ君について何か知っているのかい?」

「貴方に話す義務はないけどハドラー様の命令だから話すわ。ダイ君は竜の騎士よ。」

その言葉が鬼岩城の中に響き渡った…

「その言葉本当だな?」

ここでその言葉を言ったのはバランだった。

「本当も本当…ダイ君が私を倒そうとしてライデインの魔法剣を使って攻撃して来たのと額の竜の紋章が何よりの証拠。」

「ライデインだと!?」

「ええ、彼は間違いなく使ったわ。デイン系の呪文を使えるのは特定の魔物か伝説の勇者、そして竜の騎士くらいのもの…だけどダイ君からは魔物特徴の匂いはしなかった。そして伝説の勇者の血である天空人の匂いもなかった…となればダイ君を特定できるのは竜の騎士以外にない。」

「成る程…ところで魔軍司令殿…」

「なんだ?」

「ダイの正体が竜の騎士だと始めから知っていたのではないでしょうな?」

ここでハドラーの聞かれてはいけない質問が出てきてしまった…

「(まさか…!ここで出すか!?)」

ハドラーの心臓が二つ同時に飛び出しかけたがなんとか冷静になり考えるが…思わぬ救世主がいた。

 

「それはないわ。ダイ君は最初にクロコダインと戦った時に額に竜の紋章が出ていなかった…ダイ君の竜の紋章は私との戦いで目覚めたのよ…」

ジゼルだった。ジゼルはクロコダイン戦でもダイの強さを見ており、その強さを知っている。

「…むう、確かにそうかもしれん…今一度聞きますが、司令殿。それは事実ですかな?」

バランがそう聞くとハドラーは目をつぶり回想に入った。

 

「あの日…俺がダイと出会った日はアバン討伐の時だった。俺はアバンにしてやられたのだ。メガンテを受けてな…その傷が元で俺はかなりのダメージを受けた。ふらつくほどにな…更にアバンの教え子であるダイはアバンの切り札、アバンストラッシュを出して腕を切り落とした…」

「何が言いたい…!?」

「ようは俺はあまりのダメージにダイが竜の騎士かどうかわからない。それだけだ。」

ハドラーがそう告げてバランをなだめた。

 

「そうかい…」

キルバーンがそう言ってニヤリと笑って(キルバーンは仮面をつけているため雰囲気的に)

「それじゃあ、僕が確かめてあげるよ。ハドラー君が役立たずだってわかったし。」

するとヒャドが使い魔のピロロに向かって来た。

「ベギラマ!」

それをピロロはベギラマで対処した。

 

「キルバーン…!!今の発言取り消しなさい!!」

ハドラーの代わりに怒ったのはジゼルだった。それもハドラーやバランなどを含めて今までに見たことも無い程に怒っている。

「ふ~ん…ピロロに攻撃してもかい?」

「二度目は言わないわよ!」

ジゼルが怒鳴るとジゼルの髪の毛が逆立ち、今にもキルバーンを殺しそうな勢いだ。その殺気に影が薄くなっていたザボエラが失神してしまっていた。

「…まあいいや、取り消すよ。よくよく考えたらハドラー君は役立たずじゃなかったみたいだし…」

「なんだと?」

ハドラーがそれに反応するがキルバーンは無視して鍵を取り出した。

「それはともかく裏切り者が来ないように移動しないとね…」

キルバーンはそう言うと鍵を回した。すると…鬼岩城が大きく揺れた。

「なんだ!?」

「何をしたの!?キルバーン!!」

鬼岩城が揺れたことでハドラーとジゼルは大パニック。

 

そこでアークデーモンAことアクデンが外を見てみると、とんでもない事実がわかった。

「ハドラー様、ジゼル様!鬼岩城が動いています!!」

そう…鬼岩城に足がはえ、移動しているのだ。

「な、何ーっ!!」

「ふふふっ、楽しい楽しい世界旅行と行こうじゃない…」

こうして鬼岩城は移動することになった。




今日の教訓…
王女は何をしでかすかわからない。
恋した乙女の怒りはマジで怖い。
以上2点でした。

それはそうと私の作品…『うちはイタチに転生…?マジですか?』のお気に入り登録数の勢いがこの作品よりも上を行ってしまったのでそちらがメインになり更新がかなり遅れるかもしれませんがご了承下さい。


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王女達、デパートに寄る

~鬼岩城~

「それでバラン君…どうする気だい?」

キルバーンはそう言ってバランにどうするかを尋ねる。

「当然…ダイが竜の騎士である以上連れて帰る!」

バランは当然とまで言い切り、ダイを魔王軍に勧誘すると言った…

「なるほど…それじゃ少し勇者君には人間への絶望を知って貰わないとね…ジゼル君が勇者君の心を折ったから少し楽だよ。」

確かにジゼルはこの中で唯一ダイの心を折っている…ハドラーやクロコダイン、ヒュンケル、フレイザードですらダイの心を折ることは不可能だった。それ故に純粋にキルバーンはジゼルの事を褒めていたのだが…

「あんたに言われても嬉しくも何でもないわ。」

ジゼルはキルバーンを嫌っている…それ故の反応だった。

 

「…ちょっとハドラー君を弄り過ぎたかな?」

その一言がジゼルを怒らせた…ジゼルはプルプルと震え…

「ヤバッ!逃げるぞアクデン!」

「ガッテン承知!」

アクデンとカラスは野生の本能で

すぐさま逃げ避難した。

 

するとジゼルの震えが収まり…遂に…

「キルバァァァンー!!使い魔と共にそこに直りなさい!!!」

ジゼルは大暴走…その勢いに目が覚めかけたザボエラが再び失神してしまった。

「(あんまりじゃ…何でワシがこんな目に…!)」

ザボエラの叫びもジゼルの怒りに妨害され、なかった物になった…

「不幸じゃ…」

 

「よさんか!ジゼル!」

それを止めたのは魔軍司令ハドラーだった…

「ハ、ハドラー様!こいつはハドラー様の事を侮辱したんですよ!?」

ハドラーはジゼルの身体を拘束し、ジゼルは相手が相手なので抜け出す訳にはいかずにそのまま拘束された状態になっていた。

「本当に俺の為を思うなら落ち着け…わかったな?」

ハドラーはジゼルに有無を言わせない声を出し、ジゼルを黙らした。

「はい…」

ジゼルが珍しくハドラーに対しションボリとして返事を返した。

「バラン君…うってつけの手を使うから少しの間君の軍団のドラゴンを借りるよ。」

「良いだろう…」

「サンキュー…じゃ、シーユー!」

そう言ってキルバーンは立ち去った。

「(…そういえば今日、ベンガーナでドラゴンキラーがオークションに出るって話ね。あれは私や超竜軍団にとって相性が悪い。私が管理するのが一番良いわね。)」

ジゼルはそう思い、少し支度をしてルーラでベンガーナへと向かった。

 

~平原~

三人は馬車に乗って移動していた。

「も、もうちょっとペース落としてくれよ!」

ポップは田舎者故に馬車に乗る機会がない。それ故にポップの腰が悲鳴を上げて、耐えきれずにポップは情けない声でそうレオナに訴えるが…

「何言っているの!このくらい常識よ、常識!」

レオナは馬車のスピードをあげてポップにとって更にきつくなった…

「ダイ!この姫さんの暴走止めてくれよ。一応仲良いんだろ!?」

ポップはそのきつさに耐えられずダイに頼むようにした。

「でも、レオナが元気になっているのに水を差すのはちょっとな…」

しかし現実はなかなか上手くいかない。ザボエラ同様にポップも苦労人となってしまった。

「ダメだこりゃ…」

ポップはがっくりと項垂れ、そのまま目的地まで行くことに決めた。

 

~ベンガーナ~

 

その後なんとかベンガーナに着き、デパートへと向かった。

「やれやれ…ひでえ目にあったぜ。」

「全く情けないわね。男の子でしょ?」

「あれは無理!」

などとやりとりをしてしばらく歩くと…巨大な建物が見えた。

「ひょえ~…でけえ城だな。」

ポップは城だと思いそう呟いてしまった…

「何言っているのよ…これがデパート。お城にあんな宣伝あると思う?」

そう言ってレオナが指さしたのは『大安売り!バーゲン中!』と書かれた看板だ。

「あ…本当だ…」

ポップは少し落ち込み拗ねた。

「こ、これがデパート!?」

ダイはダイで驚き、感心した…

 

その時…

ドンッ!

「きゃあ!」

「とと…」

レオナとメイド服を着た女性がぶつかってしまい、レオナと女性はともに倒れてしまった。

「だ、大丈夫ですか!?貴族様!」

女性はレオナの高級な服を見て慌てて、レオナに手を差し伸べた。

「ええ、大丈夫よ。心配しないで…」

レオナは女性に心配させないように声をかけた。

「あ、ありがとうございます!」

「ほら、ご主人様が待っているんでしょ?早く行きなさい。」

「失礼しました!」

そう言って女性は慌ててデパートの中へと向かった。

 

「…」

ダイは何かを考えており、真剣な顔になっていた。

「どうしたんだよダイ?」

ポップがそれを見て不思議に思い、ダイに声をかける。

「あの人…どこかで見たことがある気がする…ポップ、心当たりない?」

「お前が人の関係で思い出せないなら俺も無理だと思うぜ…」

「うん…ごめん。」

 

 

女性は内心こう思っていた…

「(魔王軍の為とはいえ演技は疲れるわね…)」

そう…その女性はジゼルが変装したものだった。ジゼルの変装はほぼ完璧なもので一度面識のあるレオナに気づかせない程で、あの中で唯一ダイはジゼルだと感づいていたが結局わからず仕舞い…それだけジゼルの変装は完璧だった。

「早いところオークションへ向かわないと…」

ジゼルはそう呟いてオークションの場所へと向かった。

 

 

「へえ~これがデパートか…」

「うちの100倍はでけえな~!」

ダイとポップの二人は田舎者そのものの行為をしていた。

「こらこら…そんな田舎者みたいにキョロキョロしないで、こっちに来なさい。」

「え?姫さん…そこただの部屋じゃねえか?」

ポップは訳がわからないと言わんばかりにレオナにそれを指摘する。

「いいから来なさい。」

「行ってみようよ!」

 

そうして二人がレオナのいる部屋に入ると…

「それじゃ行くわよ。」

レオナはボタンを押す…すると…床が動いた。

「わわわっ!?なんだ!?」

「床が動いた!?どうなっているんだ!!?」

二人は大仰天…デパートも見たこともない二人が床が動くということに驚くのは無理なかった。

「これはエレベーターっていってボタンを押すと自動的に上の階や下の階に運んでくれる便利な乗り物よ。」

そう…レオナの入った部屋はエレベーターになっていた。ちなみに残念ながら階段が常に動いているエスカレーターは開発中である…

 

~四階~

「それじゃ鎧とか剣とか5000ゴールドまでなら好きに買っていいわよ!」

「5000ゴールド!?」

ポップがそう驚くのは無理もない…何故ならその額はとても庶民であるポップには手が届かない額だからだ。

 

そもそも5000ゴールドの価値とはどのくらいなのか?という疑問もある。宿は少なくとも5ゴールド前後はする…高いところだと500ゴールドとかその辺を行くのである…日本の宿代は平均すると一人当たり1万円前後である。高級ホテルなどは100万円という値段だ。つまり…500ゴールドで100万円の価値である。少なくとも…宿代の価値はそうなる…

 

(この世界では)武具や服がやたら高かったりするのはジゼルとヒュンケルが買い占めて、供給量が不足して武具のみにものすごいインフレが来ている。また武具や服を作る際に材料がモンスターを倒すなどの手段でしか手に入らない為に材料も高くなり…結果武具も高くなる訳だ。

ちなみに薬草などの道具が高いのもその理由である。

 

ダイが見ているのは少し大きめの鎧だ。

「レオナ!俺この鎧が良い!」

ダイはそう言ってレオナにねだった。

「良いわよ。これいくら?」

レオナは気づかない…この鎧がダイにとってデカすぎるということに…

 

「その前に試着なされてはいかがでしょうか?」

店員はダイの身長を心配してか試着してから買うことを勧めた。

「あら…それもそうね。それじゃダイ君この鎧を着てみて。」

レオナがそういうとダイはすぐさま着替えた。

「よっ…ととと…!」

ダイは着替えたは良いものの問題がありありだった。

まず重い…どんなものであれ戦闘するものであればスピードが大切だ。二つ目…ぶかぶかである…サイズが合わない武具を装備しても弱体化するだけである…

「お客様。もしよろしければ他の防具を用意しましょうか?」

「お願いするわ…!」

流石のレオナもダイが今着ている防具が合わないことを判断して、レオナはそれに頷いた。

 

「新品の杖…新品の杖…」

ポップは新しい杖を探していた…

「おっ!良いもん見っけ!」

ポップは新しい杖を見つけその値段を見て見ると…

「マジで…!?」

となってしまった。その杖とは魔封じの杖である。価格は6000ゴールドと非常に高い。ポップ自身は1000ゴールドも持ってはいない。その為ポップは魔封じの杖を諦めるしかなかった…

 

しかしそれ以上探索をしても無駄だった…

「なんで売り切ればっかりなんだよ…!」

前にジゼルとヒュンケルが買い占めたからである。むしろあるだけマシとも言える。下手をしたらこのデパートにもない可能性も否定できなかったのだ。

 

「はあ…ん?」

ポップが肩を落として目をついたのはドラゴンキラーだった。

「あら、ドラゴンキラーじゃない…」

どこからともなくレオナが現れそう解説した…

「でも値段が書いて無いよ?」

ダイの言うとおり…値段が書いていなかった。

「こちらの商品はオークションの景品となっています。もし欲しければオークションで競り落として下さい。」

ここでレオナ達は気がついた…周りの戦士や商人達がドラゴンキラーを目当てに来ていることに…

「…(絶対に競り落としてやるから今に見てなさい!)」

レオナがそんなことを思っていると一人の老人がやって来た。

 

「やめときな…」

「あ?なんだってんだ?」

戦士がそう言って老人に何が言いたいのか聞く。

「自分の力量以上の武器を手に入れて強い気になった馬鹿の仲間入りなんて、およしと言ったのよ。」

「なんだとババァ!」

老人の言ったことに戦士達は激怒する…無理もない。自分よりも弱い老人に『お前達弱すぎ。そんな武器手に入れたって豚に真珠。』と言われているようなものだ。

「おやめ下さい!お婆様!」

不穏な空気になり始めたところで一人の少女が出てきた。

 

「皆さんすみません…祖母は口が悪くて…」

「フン…ワシは本当のことを言ったまでよ。」

あくまで老人は挑発的な態度を崩さず、少女は何度も申し訳なさそうな顔をして、そのまま老人と少女は階段を降りて立ち去った…

 

「…で?どうすんだ?」

ポップがそういうとレオナは少しキレ気味に…

「もちろん買うわよ!」

と言った。




私が武器代の割りに宿代が安いと思っているのはそう解釈しているからです。
それにしてもまさか第二話で武器を買い占めるイベントがこんなに役に立つとは思いませんでした。
ハドラーはそういった意味ではかなり有能ですね…

魔封じの杖の値段はⅥを参考にしました。

オークションの景品が誰が何ゴールドで落とすのかは次回のお楽しみに…


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親衛隊隊長、オークションで競り合う

最近キレることが多くなっています…私の書いている小説で評価0を入れた一部の人たちをブロックユーザーに即座に入れたり、ゲームで上手くいかない…それだけの理由でPSPを勢い任せて合計3台ぶっ壊したり…そんな風になっている日常が続いて鬱になり始めている作者です。

とまあ…読者の皆様にとって私の愚痴などどうでもいいと思いますので今回の話をどうぞお楽しみ下さい!!


遂にドラゴンキラーのオークションが始まった…

「では最初に1万ゴールドからスタートです。」

「1万500!」

レオナが手を上げて競り落としにかかった。

「1万1000!」

負けじと戦士も手を上げた。

「1万1500!」

次は商人が手を上げて競り落としに来た。

 

そしてそんなことをして1万6000ゴールドまで上がり…レオナと商人の二人のみが残った…

「1万6500!!」

レオナが更に釣り上げ、競り落としにかかる…

「ええい!1万7000や!」

商人がレオナの提示した額を上回り、レオナは完全にムキになった。

「1万75…モガモガ!」

しかしレオナが言おうとしたところでダイ達に止められてしまった。その理由は…

「マズイよ…レオナ。もう予算オーバーしているよ…」

そう…ダイの言う通り予算がないのだ。

「その通りだぜ…次の機会にしようぜ…」

ポップも止めることを勧めてレオナを止めたのだ。

「う…」

レオナは残念そうな顔をしてドラゴンキラーを諦めた。

 

「もういませんね?では…」

競売員が商人の提示した金額に誰も手を上げないことを見て商人に渡そうとしたが…

「2万。」

先ほどレオナ達に遭遇したメイドこと…ジゼルがそう言った。

「2、2万ゴールドです!他、他いませんか!?」

競売員がその値段に興奮してしまいどもってしまったのは無理はなかった。

「ぐぐっ…2万50や!!」

商人は諦めきれないのかジゼルの提示した額を僅かに上げた。

「2万5000。」

しかしジゼルは表情を変えることなく金額を大幅に上げた…

「~っ!!」

これに商人は地団駄を踏む…

「諦めろよ、おっさん。このまま続けたら破産するぜ…」

戦士の男がそう言って商人に諦めさせた。戦士の男も商人に渡されるのは気に食わなかったようだ。

「くそーっ!!3万や!」

だが商人はヤケになった。これで落としても赤字になるし、落とせなかったとしてもドラゴンキラーは手に入らない…どこまでもドラゴンキラーが欲しいと言える。

「4万。」

しかしジゼルはまだ表情を変えずに金額を上げた。これによりジゼル以外全員が手を上げなくなった。

 

「決まりました!ではこちらのドラゴンキラーは…」

「メイよ。はい。」

ジゼルは偽名を競売員に言い、4万ゴールドを渡した。ジゼルがこんなに金を持っているのはカジノで大稼ぎをして景品を交換して売りまくったからだ。決して不合法的なものではない。

「メイ様が競り落としました。ではドラゴンキラーを。」

「ありがとうございます。」

ジゼルは礼を言ってドラゴンキラーを回収した。

 

「(ダイ君がいる以上、ここからお暇させて貰わないとドラゴンが私のところに来て厄介な事になりそうね…)」

ジゼルはそう思い、一旦外に出てルーラで鬼岩城へと向かおうとした…

 

ゴゴゴ…!

 

しかしその時大きな揺れが起きた。

「きゃあ!!」

その瞬間、ジゼルはロングのメイド服を着ていたのでスカートを踏んでしまいつまずいてしまった。何故ジゼルがロングのメイド服を着ていたのかと言うと…魔族人間関係なく、金持ちの間でメイド服はロングという定着があり、それを着せるのは常識だからだ。

「おおっ!し…げふっ!」

ポップが偶々ジゼルのスカートの中を見てしまいその色を言おうとした…そのことでジゼルは一瞬でヒャドを放ち、ポップを〆ておいた。

「ル、ルーラ!」

ジゼルは羞恥心から噛んでしまい、ルーラでその場を去った。

 

「あーっ!そうだ、思い出した!!」

ダイが突然大声を出して先程のメイドがジゼルと同一人物だとわかった。

「どうしたんだよ?ダイ?」

ポップはダイが大声を出したことに疑問に思い質問する…

「今のが魔王軍魔軍司令親衛隊隊長ジゼルだよ!」

ダイはポップの質問に答えてジゼルだと言うことを教え、警戒させる。

「…そう言えばあの時の顔にそっくりね…迂闊!」

レオナもジゼルの顔は見たことがあり、それに気付いてもおかしくはないのだが残念なことにレオナは凍り付けにされたせいで記憶も曖昧なものとなっていた。またジゼルの変装は非常に上手いためにジゼルだと気づかなかったのだ。

 

「てことは…!?この揺れは魔王軍か!?」

竜の軍団が姿を表し、街を襲撃した。

 

街がドラゴンに襲われたことでデパート内も大パニックになってしまった…

「おいおいおい、なんやねん!?あのドラゴンの数は!?」

ジゼルに最後まで競りあってボロクソにやられた商人がそう大声を出す。

「ただでさえ強いドラゴンが集団でやってくるなんて魔王軍が復活して始めてのことじゃねえか!?ドラゴンを倒そうにもあのメイドの持って行ったドラゴンキラーはねえ…!詰んでやがる!逃げるぞ!」

戦士の男の情けない声をきっかけに戦士はもちろん、商人、魔法使いなどなど色々な職業の人間が逃げ始めた。

 

「俺はあのデカイのをやる!レオナとポップはドラゴン達を片付けて!」

ダイが指示を出すと三人はドラゴンを目掛けて立ち向かって行った。

 

「はぁぁぁっ!」

ダイがヒドラに向かって攻撃するが無駄だった…その理由はドラゴン系全てに共通する皮膚の硬さである。その特徴は鋼よりも硬く、並の武器では太刀打ち出来ない…だが特殊な武器であればドラゴン系の皮膚をスッパリと斬ることができる。ジゼルはその武器を恐れて回収していたのだ。

 

「こ、こうなったら…今までの経験で養ってきた最大の武器を見せてやる!ドラゴン!てめえらをド肝を抜くような武器だ!」

ポップはポップでドラゴン4頭に向かってこれまでの経験を生かした自分最大の武器を見せようとした…

「俺の最大の武器…!逃げ足の速さだ!ついてこれるもんならついてみろ!」

メジロパーマ?ツインターボ?サイレンススズカ?何それ上手いの?と言わざるを得ない逃げ足でポップはドラゴンに背を向けて逃げ出した。

 

ドラゴン達はあまりの速さと行動に唖然としてしまい、ハッ!と我に返りポップを追いかけた。

 

残りのドラゴンはレオナが地味に時間稼ぎをしていた…

「はっ!」

ドラゴンの爪がレオナを襲い…それを避ける。

「ヒャダルコ!」

ドラゴンの炎がレオナを襲い…レオナはヒャダルコで炎を打ち消す…

 

それのエンドレスだった…その理由はレオナがまだ賢者として未熟なことにあり、また身体能力がポップ達に比べて劣っていることにも原因がある。その為ドラゴン一頭でも苦戦するのだ。

 

ダイ達は今最悪の状況に追い込まれていた…




メジロパーマやツインターボ、サイレンススズカはどれも実在した逃げ馬です。
それはともかくジゼルの活躍が最近全くないのはやはり原作の主人公がダイだからでしょうか?

ではまた次回も見てください。


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竜の騎士兼勇者、正体を知ろうとする

意外と早く書き終わりました…それにしてもジゼルの戦闘能力の高さについて見直したら…やっぱチートですね…まあ現時点で竜魔人のバランとほぼ互角ですからね。相性の問題でジゼルが勝ちそうですが…経験はバランの方が上ですしバランにも勝ち目はあると思います。

とは言っても今回のお話には関係ありません。リクエストなどがあれば書きますが今のところその事を書く予定はありません。

ではどうぞお話をお楽しみ下さい…


ポップはある程度距離を測って岩の上に立った。

「これでもくらいやがれ…!ベタン!」

ポップがベタンを唱えるとドラゴンが押し潰され、ドラゴンを仕留めた…

「やったぜ!」

しかしこの時ポップは死亡フラグを立ててしまった…その結果…

「ヴルル…!」

「ウソーン!?生きている!?」

ポップは鼻水を垂らし、またもや逃げる羽目にあった。デルムリン島から出て以来、ついていない一日となった

「不幸だぁぁぁっ!!」

ポップに合掌…

 

ダイは様々な手段でヒドラを倒そうとしたが…全く通じない。大地斬も海波斬も試したが無駄だった。

「なら、これでどうだ!」

ダイはそういうと…紋章を出し、本気になった。

「くらえ…!アバンストラッシュ!」

ダイが紋章を出せば少なくとも平均よりも少し上のクラスの軍団長を一撃で倒すだけの力はある。このヒドラもそのクラスのレベルである…それ故にヒドラの首が全て斬られ、ダイの勝利が確定した…

 

「やばい!」

しかしダイは安堵している暇はない。何故なら…レオナやポップが危機に追い込まれていたからだ。

「ライデイン!」

ダイはライデインを唱え、自分の持っている剣に雷を落とさせた…ヒュンケルにトドメを刺したあの技である。

「ライデインストラッシュ!」

ドラゴン4頭はダイの奥義、ライデインストラッシュを喰らい絶命した…

 

「ふーっ…これで終わった…」

ダイは違和感を感じた。その理由は誰一人からも感謝されないことである。

「どうしたダイ?」

ポップがそう言ってダイに尋ねようとしたがダイは目を合わせなかった…

「なんで…なんでそんな目で見るんだよ…!?」

そう…街の人々がダイを見る目を恐怖などによるもので見ていた。

「…」

返ってくるのは恐怖による沈黙…

 

「ウフフ…酷いよね。折角助けてもらったのに恩を仇で返すなんて…」

その時、どこからともなく声が聞こえた。

「誰だ!?出てこい!」

ダイがそう言うとキルバーンが現れた。

 

「ま、魔王軍か!?」

「僕の名前はキルバーン…口の悪い友達は死神なんて呼ぶけどね…」

「お前が超竜軍団長か!?」

「軍団長?…僕はそんなには偉くないよ。ただの使い魔さ。」

「その使い魔が何の用だ!?」

ダイ達は警戒し、身構える…

「実はそこのダイ君の正体が魔王軍でも話題になってね…本当にそうなのか確かめるために超竜軍団から竜を借りてきたんだよ。思った以上に早くダイ君の正体がわかってよかったよ。…それとジゼル君を連れ戻しに来たんだけど…知らない?」

 

「さあ…ジゼルのことに関してはドラゴンキラーを買って以来は知らねえよ!むしろこっちが聞きたいくらいだ!」

ポップがジゼルがデパートにいたことを言い出した。

「そっか…じゃあ君達も知らないと…僕はこの辺で失礼するよ。じゃあね。」

「まて!俺の正体ってなんだ!?」

キルバーンはダイの質問に答えようともせず帰ろうとしたが…立ち止まった

「ああ、言い忘れてたけどもうそろそろ本物の超竜軍団長が君達の元にやってくるよ。それじゃあね…」

そう言ってキルバーンは本当に立ち去った。

 

~鬼岩城~

「ジゼル…貴様どこへ行っていた?」

大魔王バーンの怒りの声が響き渡る…

「はっ…ベンガーナにてとある武器を回収しておりました…下手したら今回の作戦に影響を及ぼしかねないものでしたので…」

「なんだと?」

「ドラゴンキラーです。今回の作戦でキルバーンがドラゴンを使ってやってくると聞いたもので…急いで回収して来ました。」

「余はあの時全て武器は回収したと聞くが…?」

「ええ…それが厄介なことに回収したくても出来ない状況だったのです。」

「話せ。」

「はっ…ドラゴンキラーはいわゆる非売品で私がどう頼んでも貰えなかったのです。下手に人がいるところで騒動を起こせば魔王軍復活の前に私の顔が知られてしまいます。」

ジゼルの顔が知られてしまえば人間の情報ならミストバーンやザボエラでなんとかカバー出来るが、買い物をしたり現地で騒動を起こさず工作活動出来るのはジゼルのみだ。

 

「ふむ…だが余に無断で行くとはどういうことだ?」

「はっ…緊急事態故に話すことが出来ませんでした。」

「よし…わかった。お前はしばらくの間謹慎していろ。それが今回の処罰だ。」

「わかりました…」

ジゼルが退室するとハドラーが待っていた…

 

「ジゼル…バーン様からなんと言われた?」

ハドラーが聞いてきたのはバーンの様子だった…

「私の無断行動の動機を尋ねられたこととその処罰についてです。」

「む…そうか。」

ハドラーは心底安心し、ホッと一息ついた。

 

「そ、れ、よ、り、も!ハドラー様♡」

「ん?」

「フレちゃんの代わりを作りませんか?」

「………フレイザード亡き今、魔王軍は確かに戦力不足かもしれんな。ひょっとしたら良い戦力が生まれるかもしれん。やってみるか…」

「やった!ハドラー様大好きです♡」

ジゼルがそう言ってハドラーに抱きつき、頬擦りをする。

「こらこらよさんか…それはまた後でな…」

「はぁい♡」

ハドラーとジゼルは別の部屋に行き…とあることをした。

 

 

 

二人がそのあることをしている間、ここで配合について説明しよう…何故配合についてかは察して頂きたい…

 

配合はそれぞれ違う種類のモンスターとモンスターを合わせるとその両親となった別のモンスターが生まれるというものである。

 

例えばおおきづちとダースドラゴンを両親とした配合だとバトルレックス、リリパット、シャイニングのいずれかが生まれる。

 

また特殊な配合もある。

両親のモンスターとの掛け合わせが特殊な場合、他のモンスターとは別のモンスターが生まれることがある。例えば両親の片方がメタルスライムでもう片方もメタルスライムだとその子供は、はぐれメタルになる…

 

他にも両親が関係ない配合もある。例えば両親となるモンスターの両親(つまり祖父母)がバル、ベル、ブル、ボルだった場合バベルボブルになる…という具合だ…これを四体配合という。

 

 

 

「…うーん…ハドラー様大好きです…zzz…」

ハドラーとジゼルがナニをやったのか全くもってわからないが、とにかく言えることはジゼルが疲れ果てて寝てしまったことである。

「(…こいつはこいつなりに俺のことを気遣っている。だが俺はその期待に答えてやることも出来もしない…ただひたすら自分のことばかりを考えてな…)」

ハドラーはジゼルをベッドで寝かし、ザボエラのところへと向かった…

 

〜テラン〜

ダイ達一行はメルルの言った言葉、すなわち竜の騎士という言葉が気になり、竜の騎士の発祥地とされているテランに来ていた。

「ナバラさん!この国のどこに俺の正体を知る手がかりがあるんですか!?早く教えて下さい!」

ダイがそう言いメルルの祖母ナバラに尋ねる。

「ダイ…焦りすぎだ。少し冷静になれ。」

ポップがダイを冷静にさせるためにその言葉を言ったのだがダイは返って憤怒した。

「うるさい!」

その言葉にポップが目を丸くしたがダイはそれを見てようやく冷静になった。

「ごめん…でも一刻も早く俺の正体が何なのか知りたいんだ。」

 

ダイが焦るのは無理なかった。ダイは自分が人間だと思っていたからこそジゼルに心は折れたが魔王軍になることは否定した。もし自分が魔族だったりしたらおそらく魔王軍に入っていたかもしれない…それを想像するだけでゾッとする。だから一刻も早く解決したいのだ。

 

「…ついといで。」

ナバラがそう言って案内をしたのは竜の彫刻だ。

ダイ達はそれを見て驚いてしまった…無論彫刻の出来ではない。その彫刻に彫られている紋章に驚いたのだ。

「この紋章は!?」

ポップはその紋章を何度も見たことがある。この中でポップがこの紋章を見た回数は一番多く、ダイの力だと思っていたものだからだ。

「これが俺の額に出てくる紋章?」

ダイは額に出てくる紋章は見たことが無い。もし見るとしたら鏡を持って見ないとわからない…そんなことをするのはナルシストか余程の馬鹿なのでダイは見ていない。

「ええ…間違いないわ。」

レオナから返ってきた言葉はYesだった。

 

メルルがダイ達にこう告げた。

「この紋章を持つ方を竜の騎士と私達は呼んでいます。しかし…人かどうかはわかりません。私達は神の使いと解釈しています。竜の騎士様は凄まじい力と数々の魔法を操り、天、地、海全てを味方に変え、全てを滅ぼす者とされています。」

「竜の騎士様は破壊者や救世主ということすらわからない…確実に言えることは竜の神様が生まれ変わったかのような強さを持っていることは言えるんじゃ…」

ナバラがメルルの後を継ぐかのように言葉を繋げる。ダイは人間だという確証が欲しかったのにそんなことしか竜の騎士の情報はなかった…そのことに落胆しかけるが…

「だが…この湖の底に近づくことを許していない神殿がある。そこには竜の神の魂が眠っている。もしかしたらそこに竜の騎士の情報があるかもしれない。」

ナバラがそう言って湖の真ん中を指さしダイに告げると…

「俺…行ってくるよ!」

ダイは俺一人で行くからと言わんばかりに一人で湖に飛び込み、神殿へと入って行った…




次回からはジゼルの過去編とバラン編のどちらかを書きます…と言ってもすぐに終わりそうな気がしますが…

ではまた次回お楽しみに!


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親衛隊隊長の過去1

次回あたりでジゼルの過去は終わると思います…後書きはあの三人組に乗っ取られたので前書きに色々と私の言葉を載せます。ではどうぞ!


ジゼルは夢を見ていた…彼女の過去の夢だ…

 

~魔界(過去)~

ハドラーとジゼルの住んでいた村が襲われ数日経った頃…ハドラーは地上に出る支度をしている時だった。

「ハドラー様…」

ハドラーのメイド…ジゼルがハドラーに話しかけてきた。

「なんだ?」

「私はハドラー様に何度も救われました…ですが私に出来ることと言えば掃除をしたり、料理を作ったりすることしか出来ません…」

当時のジゼルは十八番のジコスパークはおろか戦闘のせの字も知らないような少女だった。

「ああ…確かにそうだな。お前は地上に出たところで人間に襲われるのがオチだ。」

「ハドラー様…どうしたら強くなれますか?」

ジゼルは悔しかったのだ。ハドラーの手伝いを出来なかったのだから…

「戦え。そして勝って勝って勝ちまくれ。それだけだ…」

ハドラーの答えは実にシンプルで経験を積むというものだった…その理由は魔族と言うのは確かに魔力や力に優れているがダラダラと過ごしているものが多く、その力を良い方向へと使っていないのだ…それ故にすぐにでも経験を積めばあっと言う間に強くなる…ハドラーもそうやって強くなったらしく、ジゼルはその言葉を信じることにした。それがジゼルの規格外な強さを持った理由の一つである。

 

「それじゃ初めはぶちスライムとか倒さないとね…」

ジゼルはそう言って家を出てぶちスライムを倒しに行った…

 

しかしここ魔界にて普通のスライムはいない…ではジゼルの言うスライムと一体何なのかというと…

「見つけた♡」

ジゼルが見つけたのはメタルスライムである。ジゼルは悟られないようにこっそりと近づき…そしてハドラーから託された魔人の金槌を取り出し…思いっきりぶん回した。

「ピギィッ!」

メタルスライムに会心の一撃が炸裂し、ジゼルは一気にレベルが上がるのを感じた。

 

「なにこれ凄い…!」

ジゼルは天啓を得たのかのようにホイミやヒャド、バギなど次々と技を習得し、まるでさっきまでとは別人かのように思えた。

「だけどまだまだね…もっとやれば何かヒントが得られるかもしれないし、もう少し探してみよう…」

ジゼルは成長することの楽しみを覚え、メタルスライムを探しては倒し、たまたまその場にいたはぐれメタルを倒し経験値を大量に得た。もちろん全てが全て成功した訳ではないが二体に一体は倒せたのでそれでも十分な経験値だった。具体的にはメタルスライム10体に、はぐれメタル3体である。結果ジゼルのレベルが1から12になった。

 

一見メタル狩りをしていたにも関わらず少ないように感じるがそれは正しい。ジゼルの素質はあまりにも大きくその分成長するのが遅い。異世界での大魔王達やメタル系のモンスター達にしてもこの特徴が現れる。

 

しかし、大魔王やメタル系のモンスター達よりもジゼルの成長は遅すぎる。そのことからジゼルの素質はあまりにも大きいとわかる。

 

スライム狩り…もといメタル狩りを終わらしてきたジゼルは一旦ハドラーの屋敷へと入り、手入れをしていた。

「これは…何かの種子?」

ジゼルがタンスの裏にあった種子を見つけ、それを拾った。

「これ…育ててみようかしら。」

ジゼルの趣味は大変多い。料理、掃除、裁縫、栽培…などなど。これらは全て超一流のプロにも勝るほどである。なぜならハドラーを喜ばせるために始めたことが趣味となり、必然的に趣味が多くなってしまったのだ。腕が超一流のプロにも勝るのはもちろんハドラーへの愛である。

「でも他にもありそうね…徹底的に掃除をして探すのが一番ね。」

ジゼルはその後掃除をすると色々な種類の種子を見つけた。

 

「結構色々な種類の種子があるわね…」

ジゼルはそう言って掃除で見つけた種子を並べた。もう気づいているかもしれないが一応この種子全て、ステータス強化のための種子である。

「まあ育てて見るのが一番いいわ。」

ジゼルはそう言って種子を植えた…育て始めた…数日後、植えた種が成長し再び種となり、ジゼルは種を様々な調理法で食べた。

 

この調理の際にジゼルは種本来の用途であるステータス強化のエキスを凝縮していたのだ。その結果ステータスは上昇して行き、さらに強くなっていた。しかも余った種を再び植えて育てていたので数日に一回は種を食べていた。

 

結果メタル狩りの効果もあり、ステータスはカンスト寸前まで育って行った。

 

そんな毎日を過ごしていたある日のことである。この日は来客がやってきたのだ。

「はぁっ…くっ…まさか魔界にあんな化け物がいたとは…」

その男は竜を象った剣を装備していた。二十代あたりの人間といったところだろう。

「人間?!」

ジゼルはこの時自分とハドラーを別れさせた原因の人間がやってきて、驚きの声をあげるがすぐに構えた。

 

男は剣を持っており、ジゼルはそれを抜くと思って警戒していたが…

「魔族が住んでいたとは…私もここまでか…?」

しかし男は剣を抜くどころかそのままぶっ倒れてしまった…

「…」

ジゼルは人間に憎しみがある…その為に人間であるこの男を殺そうと考えるがためらう。

「なんで…?なんで殺せないの!?こいつはハドラー様と私を引き裂いた人間なのに!?」

ジゼルはそう声をあげて泣いてしまった…

 

正確に言えばこの男は人間ではない。気がついているとは思うが、この男は竜の騎士であり、後の超竜軍団長を勤めるバランだ。竜の騎士は人間、魔族、竜の三つの種族が混ざって出来た種族である。それ故に二つも同胞の血が混ざっているジゼルは殺せなかったのだ。

 

またバランはヴェルザー討伐の為に魔界に来たはいいもののヴェルザーの刺客に狙われてしまったのだ。もちろん撃退はしたが重傷を負い偶然ボロボロになっていたハドラーの屋敷を見つけ、そこに泊まろうと考えたがジゼルが住んでいたとは思わずショックで倒れたのだ。

「もう…わからないよ、ハドラー様。人間を憎んでも憎めないって、こんな従者失格ですよね…」

ジゼルは乾いた声を出しハドラーに嫌われる想像をしてしまい…失神した。




ベン「なあ…二人とも?」
カラス「どうしました?ベン様。」
アクデン「肩凝っているならイオナズンしますが…」
ベン「アクデン…俺がイオで回復するのを知っているとは言え無断でそれをやったら殺すぞ?」
アクデン「ひいっ…!すいませんでした!」
ベン「ってそんなことじゃねえよ!俺ら三人の出番が異常に少ないと思わないのか!?」
AC「そう言えば…」
ベン「まあそんな訳で俺ら三人は後書きで感想の解説コーナーを設けることにした。文句は言わせねえ!」
カラス「いいんですか?そんなことして…」
ベン「読者の感想を詳しく説明するんだからいいんだよ…それに文句は言わせねえと言ったはずだ。カラス…」
カラス「マジ勘弁してください!」
ベン「いや許さん!ドルモーア!」
AC「なんでそれ〜!?ぐふっ…」
ベン「と言う訳だ!読者のみんな、感想をどしどし応募しろ!そして次回も見ろ!以上だ!」


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親衛隊隊長の過去2

~魔界(過去)~

「ここは…?」

今代の竜の騎士バランが目覚め、自分がベッドにいることに気がついた。

「(そうだ…私は魔族の家に入り、そのまま気絶したのだな…)」

バランは今までのことを思い出し、状況を把握する。

 

ガチャ…

するとジゼルがバランの部屋に入ってきた。

「あ…」

ジゼルは気まずそうな顔をして、人見知りをしてしまう。と言うのもジゼルはバランのことを殺そうとしたのだ。罪悪感で人見知りをしてしまうのは無理はない…

「もしかして、貴方が私を治療してくれたのか?」

バランはそのことを察して、話しを聞くことにした。

「え、ええ…」

「そうか…すまないな。」

バランは突然謝り、頭を下げた。

「いえ…私は当然のことをしたまでですから。…!?」

 

グラグラ!

 

ジゼルの台詞が終わるのを待っていたかのように地面が揺れた。

 

「地震…?!」

ジゼルは慣れない地震のせいか驚いてしまった。

「いや…今のは巨大な生物が高いところから降りた時に出来る事象だ。どうやら私に対する刺客のようだな…」

「刺客…?何故貴方が狙われるのですか?」

「私は竜の騎士という種族だ…竜の騎士は神々から地上を平和にする為に作られた種族…それをよく思わない輩が私のところに来て始末をしに来たという訳だ。」

バランはジゼルの質問に律儀に答えた。

「…竜の騎士さ「私の名前はバランだ。竜の騎士という名前ではない。」…バラン様、もし、地上を支配している魔族が部下の為にやっていることだとしたら…貴方は許せますか?」

 

「いきなりなんだ?」

「私は竜と魔族のハーフ…それ故に同村の魔族から迫害されていたところをこの館の主人に助けられました…そして、私はご主人様に仕え同じ魔族とも仲良くなって行きました…しかしそれを人間達が壊したんです!それに怒りを覚えた私のご主人様は地上を侵略して人間共を支配し、私の為に努力しています…」

 

「…私はお前に助けられた。だがなそれは許す訳にはいかん。」

「どうして!?」

「私は人間が好きだからだ。お前がお前の主人を愛するようにな。」

「!!」

「お前の話は嘘ではないだろう…だが人間は力や魔力はなくとも心がある生き物だ。当然お前以上に感情は豊かであるし、怯えや恐怖の度合いも大きい。それ故に魔族や竜を恐れ、やられる前にやったんだろう…」

「じゃあこの私の人間を憎む気持ちはどこに行けばいいの!?私の為にご主人様は地上を征服しているし、せっかく人間に復讐する為に力までつけたのに…何の意味もないじゃない!!」

「…お前はお前の主人が好きなんだろう?だったら話は早い。お前はお前の主人に結婚を申し込め…そうすればお前の生きる意味がわかる。」

「え?」

「私は竜の騎士故に子供を持つことはない…だが竜の騎士は人間の心、魔族の魔力、竜の力を兼ね備えた生物だ。それ故に人が何を大切にするのかよくわかる…それは家族だ。」

「家族…?」

「そうだ…人間は私利私欲で魔族を殺す筈はない。そんなことをすれば魔族に恨まれるからだ。だが家族を守る為なら人間は手段を選ばん。おそらくお前達の誰かが人間に手を出して恐れたのだろう…」

「…勝手ね。私はこのあたりの魔族を見て見たけどそんな魔族はいなかった。」

ジゼルはそう言ってバランのことを一蹴した。

 

バンッ!

 

ジゼルのセリフが終わると突然入って来たのはグロテスクな怪物だった。

「いや~ようやく見つけたよ~…バラン君!」

 

その怪物は身体はピンク色の芋虫、顔はあるにはあるが白目。そして、何よりも顔付近にあるのは指らしきものが手のようについている。

「(気持ち悪い…)」

それ故に、ジゼルがそう思ってしまうのは無理なかった。

 

「ガルマッゾ…まだ生きていたのか!?」

バランの驚く声が上がる…つまりこの生物はバランが仕留めた筈の生き物であるとわかる。

「にゃははは…僕がそんなもので死ぬと思う?僕は超魔生物なんだよ?」

バランの疑問をバッサリと切り捨て、ガルマッゾは答える。

 

「…バラン様こいつは?」

ジゼルはガルマッゾのあまりの嫌悪感に敬語を忘れてしまう。

「こいつはガルマッゾ…冥竜王ヴェルザーの放った刺客だ。」

「そ!だからメイドさん、どいて貰えるかな?血は流さないからね?」

「…」

ジゼルは無言でどいた。

 

「いや~ありがとう…おかげで楽に殺せるよ。それじゃはじめようか!」

ガルマッゾがそう言ってバランに襲い掛かり、攻撃を仕掛ける…

「はぁぁぁっ!」

…攻撃を仕掛ける前に、ジゼルが飛んで、ガルマッゾに向けて後ろから魔神の金槌を振るった。

 

ブォン!ドガッ!!

 

「にゃにっ!?」

効果は抜群…会心の一撃で今のジゼルなら大半の敵なら仕留められる一撃だった。

「けほっ、けほっ…不意打ちとはやるね。この身体が完璧じゃないのもあるけど反応できないなんて驚きだよ。」

しかしガルマッゾは余裕そうにジゼルを称賛し、ジゼルに対して構える。

「まあ…メイドさんは僕に攻撃しちゃった訳だし死んで貰うよ。」

口調こそ穏やかであるが殺気の量は尋常ではなかった。

 

それもそのはず、ガルマッゾは超魔生物としては完璧ではないと言ってはいるがほぼ完成していた。その為バランのギガブレイクを受けても瞬時に回復し、再生する筈である…しかし回復しなかった。

 

「(とんでもないね…このメイドさん。多分パワーなら間違いなく最強だね。)」

 

そう…ジゼルのパワーがあり得ないまでに強かったのだ。

 

ジゼルは竜と魔族のハーフである。

 

話は変わるが歴代の竜の騎士なかでも人の心を不要とした者はいる…その竜の騎士が開発した技…竜魔人化である。バランによれば初代からあったと言うが実際には竜魔人という概念はない。竜の紋章を授ける時に変わって竜の騎士の歴史が変わってしまったのだ。

 

竜魔人化とは人の心を失う代わりに魔族と竜の力を倍増させ、戦闘が終わるまで戦い続ける恐ろしい変身である。

 

何が言いたいかと言うとジゼルはその竜と魔族の力を完璧に引き出せる要素はある。ジゼルが成長し、会心の一撃を出せばいくら超魔生物と言えどたまったものではなかった…

 

「それじゃ、行くよ~!!ドルマドン!」

ガルマッゾはジゼルに向かって闇の呪文であるドルマ系最強の呪文ドルマドンを放つ。

「マホカンタ!」

ジゼルは魔法を跳ね返す呪文、マホカンタで跳ね返すが…

「無駄だよ~…僕はドルマ系の呪文を吸収してパワーアップするんだから。」

ガルマッゾはドルマドンを吸収し、その魔力で回復した。

 

「ギガブレイク!」

バランがガルマッゾに必殺のギガブレイクを放ち、頭についていた指を切り落とした。

「ならば逆のデイン系は苦手の筈だ…」

バランの言うとおり、ガルマッゾはデイン系は苦手である…

「にゃはは…参ったね。でもバラン君忘れてない?そんな攻撃は無駄だってことを!」

バランによってやられたガルマッゾの指が再生し、復活した。

「キモい…」

そのグロさにジゼルは思わずそう言ってしまった。

 

「はぁぁぁ…ジゴスパーク!」

ガルマッゾは地獄の雷を呼び出し、バランにそれを当て攻撃し大ダメージを与えた…

「くっ…!?なんて技だ!?」

バランは余りのダメージの大きさに思わずそう言ってしまう…と言うのも竜闘気で防御しているにも関わらずダメージが響くのだ。

「この技はかつて真竜の戦いでヴェルザーに敗北したボリクスの切り札…彼が雷竜と呼ばれたのもそう言う理由だよ。ちなみに僕が使えるのはそのボリクスの細胞を取り込んでいるからなんだよね。」

ガルマッゾは律儀に説明した。

 

「それじゃもう一丁!」

今度はジゼルに向けてジゴスパークを放ち、攻撃する…それがガルマッゾ最大の間違いだった。

 

ブチン!

 

ガルマッゾのジゴスパークにより、ジゼルはその雷を吸収した。その雷もジゼルの雷を吸収する許量範囲を超え、ジゼルの身体から黒い雷がバリバリと鳴りつづけ…目もカラーコンタクトを入れたかのように紅くなり、そして最終的にはジゼルの身体が徐々に変化して…ついには翼の生えた龍となった。

 

「ヴー…!」

ジゼルは言葉も喋れなくなりとあるブレスと放った。そのブレスはビーム状でガルマッゾに向かって行った。

「ひゃぁぁぁ!?なんだい!?」

ガルマッゾはそういいながらもギリギリよけ、少し掠った程度で済んだ。

「ひえ~…恐ろしいブレス。」

ガルマッゾがそう言うのは先程のガルマッゾの掠った部分が回復していないのだ。掠っても回復する超魔生物の身体であるにも関わらずだ…

 

「がぁぁぁーっ!!」

ジゼルはそれを連発し、ガルマッゾに当てて行った…

「危ないってこれ!」

ガルマッゾはそれを避け続けたが…

 

ツルン!

 

「しまった!」

ガルマッゾは足を滑らせこけてしまい…そしてブレスが直撃した。

「ぎにゃぁぁぁっ!」

…そろそろジゼルが吐いたブレスの正体を明かそう。正体はオーロラブレスだ。本来ならば一回吐くすらも大変難しくかなりの時間がかかるがジゼルのまとった黒い雷のおかげで出来るようになったのだ。

 

「にゃはは…危なかったよ。」

しかしガルマッゾは無事だった。オーロラブレスを受けたにも関わらずだ…

「何故生きている!?」

「滑った時に咄嗟の判断でこの胴体を地面に叩きつけておいたんだ。その反動で回避して、半身をやられる程度で済んだんだ。」

ガルマッゾは笑いながらそう解説した…半身がやられても、これだけ素早く動けるのはバーンくらいのものだろう…

 

「がぁぁぁっ!」

ジゼルは爪をたて、ガルマッゾを切れ味の悪い包丁でトマトを切るように頭と胴体を真っ二つにした。

「ぎゃぁぁぁっ!」

流石の超魔生物と言えども頭と胴体を真っ二つにされてはたまったものではない…むしろジゼルが不完全であったから苦しみが来たのだ。

「ぐっおおぉぉっ!」

ジゼルはその場で気絶し、寝てしまった。

 

「にゃはは…まさか僕がこんなやられ方しちゃうとはね…やっぱり人間はどんなにがんばっても魔族や竜には叶わないか…」

「貴様が人間だと!?」

「そうさ…僕はカルマッソという人間の時にモンスターに憧れて、超魔生物の研究をしていた。だけど圧倒的に魔物の数が足りなかった。そこでヴェルザー様に誘われたのさ…『俺の元で働けばただで魔物の材料をくれてやる』ってね。そして僕自身がモンスターになってからガルマッゾって名乗ったんだ。」

「…愚かな。」

バランはガルマッゾのやったことを否定した。

「愚かなものか。僕がモンスターをどれだけ好きかわからないからそんなことが言えるんだ!」

ガルマッゾはそれだけ言うとチリとなり…風に飛ばされた。

「…確かにな。私は人間でないから人間が好きかもしれん。だが自分の種族に誇りを持たん奴には哀れな死のみしかないか…」

バランはそれだけ言うとヴェルザーを倒しに出て行ってしまった。

 

そしてその後、二人が再開するのは魔王軍であることは言うまでもない…




という訳でガルマッゾが登場しましたので解説…

この話のガルマッゾはめちゃくちゃパワーアップしています。どのくらいかと言いますと以下のスペックをみてご確認ください。

・自動HPMP回復
・ドルマで回復
・テンション
・AI2回行動
・デインに弱い
・スキルガルマッゾ
・マホカンタ使用可

以上です。ステータスの方はテリーなどのステータスを参照してください。

では次回はバラン編です。過去編は一旦切り上げます。ハドラーとイチャイチャシーンはこの時に期待してください。ではお楽しみに…


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竜の騎士兼勇者、竜騎将に敵対する

~竜の神殿~

竜の神殿に入ったダイは真正面にあった扉を開け、目にしたものは水晶だった

「竜の騎士よ。一体何の用でここに来た?」

水晶が喋り、ダイは驚く暇もなかった…自分の正体を知りたかったからだ。

「俺は一体なんなんだ?竜の騎士ってのは人間なのか!?それとも化物なのか!?」

ダイは率直に水晶にそう聞き、覚悟をした。

「そのどちらでもない。」

しかし水晶は意外な答えを出した。

「はえ?」

ダイはその答えに変な声を出してしまった。

 

「竜の騎士は人間の神、魔族の神、竜の神の三神が作った最強の兵器…」

「三神…?」

「それは…」

水晶が言葉を繋げようとするが途中で止まった。

「どうしたんだ!?」

「この神殿に何者かが侵入した…有り得ない!ここは竜の騎士以外入ることなどできぬ筈…!何者だ!!」

するとダイが閉めたドアが壊れ、そこにいたのはカイゼル髭を生やした男であった。

「誰だお前は!?」

ダイがそう聞き、男に聞く。

「私はお前の父、バランだ。」

そう、バランである…

 

「馬鹿な…!竜の騎士に親などいるものか!」

水晶がバランの存在を否定し、あくまでダイを竜の騎士だと主張する…何故ダイを竜の騎士だと主張するのかはバランとは違いまだ幼いということだろう。

「いや、私こそが正統な竜の騎士…この子は私と妻の間に生まれた子供なのだ。」

バランは水晶にそう言って説明する。

「そんな例は聞いたことはない!」

「私とてそんな例は今までなかった。だが出来てしまったのだ。竜の紋章を持つ者がな…」

「馬鹿な…まさか三神が竜の騎士がいる時代に再び竜の騎士を作ったというのか?」

 

「…そんなことはどうでも良い。とにかく言えるのはその子は私の息子ディーノ。もっとも赤ん坊の時につけた名前であるが故に覚えていないのは当たり前だがな。」

「ディーノ…それが俺の名前か?」

「そうだ、ディーノよ。私とともに人間を滅ぼそう…」

「なんでそうなるんだ!!」

「ジゼルの仲間が人間に殺されたのは知っているな?ジゼルはかつて人間を憎んでいた…魔王軍に入るまではな。」

「…」

「私は当時のジゼルと会った。その時のジゼルは今のジゼルとはまるで違う。あいつには愛するべき恋人がいる…だから変われた。だが私にはもういない。」

「それって、つまり!」

「私が人間を憎むのは、唯一と言っていい私の妻であり、お前の母ソアラが人間に殺されたからだ!」

 

パリーン…!

バランの怒りの言葉で水晶は割れ、砕け散った…

 

「お前も魔王軍に来るのだ。ソアラを殺した人間を滅ぼす為に…」

「嫌だ!」

「何故だ!?何故そこまで人間の味方をする!」

「俺には大切な人がいるんだ!」

「なんだと?」

「お前みたいに大切な人を殺されたからって拗ねる奴に味方するもんか!そんなの間違っている!」

「そうか仕方ない…ならば強制的に連れて行くしかあるまい。」

バランがそう言うとダイは竜の紋章を光らせて剣を逆手に持ち、フレイザードを倒したあの技を放った…

 

「アバンストラッシュ!」

そう…毎度おなじみのアバンストラッシュである。今のダイのアバンストラッシュは師であるアバンすらも上回る。オリハルコンの次に硬い物質で出来た鎧を纏ったフレイザードもこの技で倒した。それ故にバランもただではすまないと思っていたが…

「…抵抗は終わりか?ディーノ。」

しかしバランはほぼ無傷だった。

 

「(そんな!?俺のアバンストラッシュが全然効いていないなんて…!)」

そのことにダイは絶望する。ジゼルのように自分の技が効かない相手なのか?と。

 

「もう一度チャンスをやる…私と共に人間を滅ぼすのだ!ディーノ!」

「絶対に嫌だ!だいたいそんなことをしたらハドラーやジゼルの目的である地上征服の意味がないじゃないか!」

「私とお前が組めばあの二人も黙っているだろう…」

「俺は魔王軍なんかには入らない!もう決めたことなんだ!」

「…もう戦いは避けられんか。いくぞ!ディーノ!ぬぅぅぅ…はぁぁぁあっ!!」

バランの竜の紋章が光輝き、竜闘気を放出し、そして神殿は崩壊した…

 

~地上~

神殿が壊れたことによって大きな揺れが起きた…その結果…

「なんだなんだ!?地震雷火事親父!?」

ポップがそう言ってベタな慌て方をする…ここまで来ると余裕なのかもしれない。

 

タン!

 

「ダイ!大丈夫か!?」

「うん。だけどヤバいのが来る…」

「ヤバいの?って言うと超竜軍団長か?」

「わからない…だけどそれに見合った強さはある。あいつも竜の騎士なんだ!」

ダイのそのセリフが終わると同時に湖から出てきたバランが地上に立った。

「さて…ディーノ。覚悟は良いな?」

バランから発する殺気はこれまで戦ってきたクロコダイン、ヒュンケル、ハドラーとは比較にはならない強さだ。

「(…化物かよ…こいつ!!)」

「(こんな、こんなことって!!)」

それ故にダイ以外は怯えてしまうのは無理なかった。ダイだけが無事なのはバランと同格以上のジゼルと対峙しているからである…

「うるさい!だいたいさっきからあんたの話を聞いてみればディーノ、ディーノ、ディーノって…俺はダイだ!爺ちゃんからもらった立派な名前だ!」

とはいえ、ダイもバランの殺気に全く怯えていなかったというわけではない。ダイは虚勢を張る為にそう言ったにしか過ぎなかった。それが間違いだった。

「良いだろう…ディーノとして味方せん以上、貴様を魔王軍の敵である勇者ダイとして私は全力を持って叩き潰す!」

バランが切れ、ダイにそう宣言をした。

 

〜鬼岩城〜

一方魔王軍の拠点、鬼岩城では…バーンが魔王軍幹部を集め、悪魔の目玉でその様子を観察していた。

 

「何をやっているのよ…バラン。それに帰ってきてからお仕置きしないといけないわね…」

ジゼルがそう呟き、バランにお仕置きをすることに決めた。

 

「(バラン…後で骨は拾っておくぞ。)」

ハドラーはジゼルが呟いたことを聞いて、バランの今後について同情した。

 

「まさか竜の騎士とは思わなかったでゲス…ってなんじゃ今の口調は!?ワシは某蝸牛閣下じゃないんじゃぞ!!」

ザボエラが全く意味不明なことを喋り、怒る…

『黙れ、ザボエラ…』

するとミストバーンから殺気付きで注意された。自業自得である。

「やかましいわ!お主の声『黙れ。』はいすいませんでした。」

ザボエラがミストバーンに逆ギレしたがミストバーンの強くなった殺気で謝ってしまった。

 

「ハドラー君もバラン君もミストも大変だね…クスクス…」

キルバーンは笑い声を出し、面白がっていた。

 

なかなかカオスな状況が出来上がっている魔王軍だった…

「皆のものに聞く。」

するとバーンから全員に声をかけられた。

 

「バランがダイを連れて帰って来ると思うか?」

バーンの質問はまるで明日の天気を聞くかのような感じで聞いてきたが返答を間違えれば…即死である。それ故にキルバーン以外は真面目に考えた。

 

「口で説得するのは無理ですね。ああなったら二人とも頑固ですから…」

そう答えたのはジゼルだ。ジゼルは二人の性格を知っており、そう答えたのだ。

「ふむ…お主の言うことだ、違いないな。」

バーンはそれに納得した顔で頷く。

 

「私ジゼル同様にもそう思います。私は「やーん♡ハドラー様大好き〜!!」離れんか!ジゼル!報告の最中だぞ!」

ハドラーがバーンに報告する最中にジゼルが抱きつきキスを求め、ハドラーは必死に抵抗する。

「良い、ハドラー…次ミスト。プッ…」

バーンはその微笑ましさの余りに笑い声を少し出してしまった。

「バーン様!?今、笑いましたよね?!絶対笑いましたよね?!」

バーンはハドラーがそう叫ぶが無視してミストバーンの言うことに耳を傾けた。

 

『はい…ダイを魔王軍に連れてくれば世界はこちらの物です…世界はバラン次第で決まります。』

ミストバーンはバラン次第でどうにかなると期待していた。

「バラン次第か…キルバーン。意見は?」

 

「僕ですか〜?僕はバラン君の家族愛に掛けますよ。」

「ほう何故だ?」

「あそこ、あそこ…」

「む?」

キルバーンが指さした方向を見るとそこにあったのは、ジゼルが後1cmでハドラーとのキスに成功する場面だった。

「狂愛ほど有利になる物はありませんよ。」

「確かにそうだな…良くわかった。ではしばらく観察をすることに「あのう…ワシの意見は?」お前の意見はどうでも良い。」

バーンの余りの言葉にザボエラはうなだれ、悪魔の目玉を見ることすらもできなくなった。




ABC「モンスターABC組のあとがきコーナー!」
A「はい、と言うわけで前回俺らがなんで出れなかったのか理由を説明します。」
B「速いなおい…」
C「では行きますよ…その理由は…作者がど忘れしていただけでした。」
B「ふっざけんな〜っ!!イオグランデ!!」
AC「ぎゃーす…俺らにやらないでください…マジで。」
B「あ〜スッキリした。それはそうと話は変わるが前回のガルマッゾの強さについて考察するぞ。」
C「あれはチートでしょう?超魔生物の上にドルマドン…間違いなくクロコダインやヒュンケルが戦ったら返り討ちでしょう?全盛期のバランですら撃退がやっとなんだから。」
B「まあな…ジゼル様は暴走したから勝てたもんだしな。もしあそこでジゴスパークやらなかったら勝てなかったしな。」
A「ひょっとしてやりすぎた?」
B「いやそんなことはないぞ。会心の一撃で回復が間に合わなかった部分もあるしな。」
AC「確かに…そのまま会心の一撃を出し続ければ勝ってもいたってことか。」
B「おっと時間だ。それじゃ読者のみんな次回もまた見てくれよ!」


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魔剣士、竜騎将に立ち向かう!

ようやく投稿出来ました…疲れた…


~竜の神殿跡地~

ダイはバランのギガブレイクを受け、湖の底へと沈み一行は絶体絶命の危機に陥っていた。

「こいつの相手は俺がやる。」

そこに現れたのはクロコダインではなく鎧をまとったヒュンケルだった。

「ヒュンケル!」

ポップが安堵の声を出してヒュンケルを見るが…

「…」

バランの威圧に押されるかのようにヒュンケルは冷や汗をかいていた。

「(おいおい…元とは言え六軍団長のヒュンケルでもこいつとはこんなに差があるのかよ!?)」

ポップは二人の差がいやと言うほどにわかってしまった。ヒュンケルが魔物のがいこつだとするならバランはドラゴン…ポップはそう思えてしまった。

 

「ヒュンケル…貴様まさか私に歯向かうなどという愚行はせんだろうな?」

バランの一言一言に殺気が乗せられており、ヒュンケルを脅した。

「…確かにバラン…お前は俺よりも遥かに強い…だがそれでもやらなければならない!ダイという弟弟子を守るために…!!」

「貴様に何が出来る?せいぜい剣を振るうことくらいしか出来まい。その剣の腕もハドラーの格闘術とほぼ互角…私の敵ではないわ。」

バランは剣を構えた。

「行くぞ!バラン!」

それが戦いの合図となり、ヒュンケルはバランに向かって行った。

 

「大地斬!」

ヒュンケルはアバンの剣術…大地斬を用いて、バランに攻撃した…

「くだらん…」

しかしバランにはアバンストラッシュですらノーダメージなのだから当然ノーダメージである。

「ならば…これならどうだ!火炎斬り!」

「何っ!?」

バランはヒュンケルの技に驚いた…何故なら魔法を使えないはずのヒュンケルが剣に火を纏わせ攻撃してきたからだ。

「魔法が使えぬ者…それも人間が魔法剣を使うだと…!?」

バランはそれを自分のギガブレイク同様に魔法剣だと思った。通常火や雷など剣に纏わせて攻撃するのは竜の騎士のみの特典である。だが魔法も使えないただの人間であるヒュンケルが火を纏わせた剣を振るうのはありえないからだ。人間の手に竜の足がつくのと同様に…

 

「確かに俺は魔法は使えん。だが剣に火を纏わせることくらいは容易い。」

バランはヒュンケルのその言葉からいくつかの推測を立てた。そして一つの結論に達した。

「(…なるほど、これで説明がついた。かつて太古の時代魔力を使わずに火炎の剣や真空の剣を使った者たちとヒュンケルは同じことをしたのだろう…)」

 

「ブラッディースクライド!」

バランがそんなことを考えているとヒュンケルは自分の必殺技ブラッディースクライドを放った…しかも火炎斬りと同じ要領でブラッディースクライドにも火がついている。

 

「むっ……ふんっ!」

流石というべきかバランはそれを弾き、ヒュンケルの最大の必殺技を退けた。

「流石だな…バラン。(あれでもまだダメか…)」

ヒュンケルは表面上は余裕ぶっているが軽く絶望した。つけ刃とは言え強くなったことには変わりないブラッディースクライドを弾き返されたのだから。

「ヒュンケル…実に残念だ。お前の才能をここで埋もれたまま死なせることになると思うとな。」

バランはヒュンケルの剣術を認めた。バランはヒュンケルの技を受けて自分よりも剣術は上だと確信したからだ。だがそれでも勝てるとでも言いたげなのはバランは本気…竜の騎士の力を出していないからだ。

 

「はぁぁぁーっ!!」

バランは竜の紋章を光らせ、本気になった。

ドガッ!バギッ!メシャッ!

結果、バランのスピードは上がりヒュンケルはそれに対応出来ず、ヒュンケルの鎧はリズム良くボロボロに壊され、ヒュンケル自身も大ダメージを受けた。

 

「トドメだ…」

「がはっ…!」

ヒュンケルはトドメを刺され、血を吐き気絶した…

 

「酷い…酷すぎるわ!」

レオナはその残虐性にその言葉しか吐けなかった。

 

「…さて貴様達の番だ。」

バランは目標をポップとレオナに定め、二人がいる方向に向いた。

 

「くっ…どうすればいいんだ!?」

ポップは思わずそう叫ぶ。

「あいつ…バランは竜の紋章が出ている時はほとんど無敵だ。だけど倒せないわけじゃない。」

すると…湖から這い上がったダイがそういった。

「ダイ!」

ポップはダイを見つめ、無事だったことに安堵する。

「バランを攻略するには竜の紋章が出ている時に感じる不思議な力を打ち破るパワーが必要なんだ。魔法なんかじゃあの力の前では打ち消される。」

ダイはそれだけ言うと剣を持って構えた。

「まだ子供だと言うのにそれだけ私の攻略法を見つけるとはな…だが実際に出来るのか?ダイ?」

バランの場合、ジゼル以上のパワーがなければ竜の騎士の力…即ち竜闘気を打ち破ることは出来ない。バランはそれを知っていてダイにそう尋ねた…

「出来るさ…俺には守るべき大切なものがあるんだから!」

「その通りだ…ダイ。」

気絶していたヒュンケルが立ち上がり、ダイに賛同した。

「ヒュンケル…おめえ気絶していたんじゃなかったのかよ?」

ポップがヒュンケルのあまりの回復の速さに驚愕する…

「俺は不死身の男だ。それ故に気絶から回復するのも速い。」

ヒュンケルはそれだけ言うと剣を拾った。

 

「そうか…ならばギガブレイクを受ける覚悟は出来ているというのだな?」

バランはそういい空の雲を操り、ギガデインをいつでも打てるようにする。

「当たり前だ!」

そのセリフが合図となり、バランひギガデインを唱えた。

「ギガデイン!」

バランは剣を構え、雷光が剣に纏われるかと思われた…

 

バチバチッ!

 

「何っ!?」

ギガデインが剣に纏われる前に何に阻害された。その何かとは…ダイの剣だった。

「今だ!ヒュンケル!」

「ブラッディースクライド!」

先ほどとは違いヒュンケルは光の闘気を使ってブラッディースクライドの威力を高めた…何故先ほど使わなかったのかと言うと闘気は命の源である。それをバカスカ使ったら死ぬのは目に見えている。それ故に使えなかったのだ。

「アバンストラッシュ!」

ダイのアバンストラッシュがヒュンケルのブラッディースクライドと合わさるように混ざり、バランに襲いかかる。

 

「やった!流石にこれならバランにもダメージが入っているはずだぜ!」

ポップがそう評価するのは無理なかった…通常の敵であればダメージどころかオーバーキルしてもおかしくない攻撃だ。これでバランにダメージが入っていなかったら打つ手はない。そう思わざるを得なかった。

「いや…五分五分だ。」

ヒュンケルはバランの強さをいやというほど知っている。一度手合わせしたがとんでもないほど強いということだけがわかった。その経験から出た結論だ。

「ま、まさか…これならバランと言えども一溜まりもないはずだぜ?」

そして煙が晴れると、そこにいたのは無傷で立っていたバランだった。

「おいおい…嘘だろ!?」

「信じられないわ…!」

ポップとレオナは再び絶望した…あれだけの攻撃を受けて無事だったのだ。自分達が何をしたところで無駄ではないのかと…そう思ってしまった。

 

「いや…ダメージはある!」

ダイがそう言うとバランの頭から赤い血が流れた。

「血、赤い血だわ!」

通常赤い血を出すのは人間や動物などの種族であるが魔族などの特殊な種族は青い血が流れる。事実ダイやポップはその青い血をハドラーで見たことがある。しかし、バランの血の色は赤かった…そのことから魔族とは違うとわかる。

 

バランが手甲で頭ふくと手甲に血がついた。それを見たバランは驚きの一言だった。

「…!(私が血を流すとは…!やはりディーノの力は凄まじい…いや、その周りにいる者たちがディーノの力を引き出しているのか!となれば…私がやるべきことは一つ!)」

バランは冷静に考え、ダイの力を無力化する方法を思いつく。

「ダイよ。お前の力は凄まじい…これから魔王軍の脅威となり得るだろう…それ故にお前の力を奪ってやる…」

バランは一旦竜の紋章を消し…そして一気に輝かせた。

 

~鬼岩城~

「なるほど…考えたわねバラン。」

ジゼルが納得した顔で頷いた。

「どういうことじゃ?」

ザボエラはジゼルが何故頷いたかわからない…竜の騎士のことは研究しているがそれとこれとは別だからだ。

「バランは竜の騎士特有の闘気…竜闘気を使ってダイ君の記憶を消そうとしているの。」

「しかし何故それを使う必要が?」

「簡単に言えば、バランは竜の紋章の共鳴を応用してダイ君の記憶を無理やりなくそうとしている…小さな波が大きな波に飲み込まれるようにね。」

「(なるほど…流石はジゼル殿。フレイザードの親であることはよくも悪くも十分に説明がつくわい。)」

ザボエラがそう感心し、嫌な記憶も思い出す。というのもフレイザードの出世欲はハドラーに対するジゼルの狂愛から来ており、お互いに似たもの同士だったからだ。

 

フレイザードに絡まれると新しい魔法の実験という名のザボエラいじめ。特に半年前にあった出来事だとザボエラが縄に縛られフィンガーフレアボムズの餌食になった。

 

ジゼルの場合はとある出来事が原因でトラウマになった。それはえらく不機嫌なクロコダインに偶々遭遇し、「邪魔だ!ザボエラ!」と温厚なクロコダインらしくもないセリフを言われた時にはもう遅く、真空の斧でぶっ飛ばされ…その着地点がジゼル入浴中の風呂だった。それが原因でザボエラは一ヶ月間フレイザードの魔法の実験台となった。それ以来ジゼルの機嫌を損ねるような真似はしていない。

 

「ううむ…(しかしこのままではバランの言いなりになってしまい、俺と戦う口実が出来ん。…?俺とあろうものがダイと戦うことを楽しみにしているとはな。おそらくフレイザードが倒されたからか?いやデルムリン島でダイを仕留め損ねたからか…?)」

そのあとハドラーは思考するも全くダイと戦いたい理由はわからなかった。とにかく言えるのはダイと再び戦いたいと願っていることだけだ。

 

「これでダイが我が軍団に下れば世界に一人しかいないはずの竜の騎士が同時に二人も手に入る…実に愉快だ!」

『同意見です。』

バーンが上機嫌になったことでミストバーンも上機嫌になる。

 

「…一つ質問いいですか?」

これまで珍しくだんまりだったキルバーンが口を開いた…

「なんだ?」

「勇者君…いやダイ君の育成は誰がやるんですか?」

一気にその場がどよめいた…

「私がやります!バーン様!」

ジゼルが手を上げ、バーンに意見する。もしダイとバランが手を組まれればジゼルの目的である人間と共存することが出来ないからだ。ならばせめてダイだけはジゼルの考えに賛同させるように教育することで引き込もうとする。

 

「私もジゼルを推します。メラ系やギラ系の呪文などは私が教えます故…どうかお願いします!」

ハドラーはジゼルを推した。そうすることでジゼルの教えられない部分を教えることでダイに尊敬されるようにしようとした…ジゼルがいなければそんなことはしなかったかもしれない。また同時に訓練という名の戦闘が出来ると考えてもいたからだ。

 

「それならワシが教えます。ワシは妖魔士団故に魔法が得意です。どうかワシをお願いします!」

ザボエラはジゼルを推さずに自分を推した。だいたいはジゼルと同じ考えで違うことといったら竜の騎士の戦闘データが欲しかったからというところだろう。

 

『…』

ミストバーンはダイを育てさそうにバーンを見つめている!

 

「あらら…結構いるんだね。そういうの。」

キルバーンは全くと言っていいほど興味はなく、悪魔の目玉を見た。

 

そしてバーンの意見は…

「それはダイがこちらに来てから決める。未来のことを今決めたところでどうしようもあるまい…」

と至極当たり前のことを言った。

 

「「「わかりました。」」」

三人はそう言うと再び悪魔の目玉を見た。

『…』

ミストバーンはすごく悲しそうな顔(雰囲気)をしている!

 

「(さて…どう出るか?勇者を失った勇者達一行は?)」

バーンはそう思うと三人同様に悪魔の目玉を見た。




本来クロコダインのところをヒュンケルにしました。というのもジゼル戦の時にバランに対して言うセリフを言っちゃっているからですね。それとヒュンケルとダイの共同プレイも試したかったのが主な理由です。


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親衛隊隊長、罰を受けさせる

おおう…なんて文字の多さだ…5000字いくとは…

というわけでスタート!


~テラン城~

バランによってダイは記憶を失った。しかしバランは「後日迎えに来る」と言いそのまま立ち去ってしまった。

 

レオナはその間、自慢の金とコネでテラン王国の城を使い、ダイをオリの中に入れた。決してレオナがSMに目覚めた訳ではない。

 

レオナがダイをオリの中に入れたのはせめてダイが無事で居られるようにするための処置だった。

 

しかし占い師のメルルらがバランの情報を映し、状況を伝えた。

 

「…けっ!馬鹿馬鹿しい!」

そんな時…ポップはとんでもない発言をした。

「…何が馬鹿馬鹿しいのよ!?」

「だいたいこんなところに閉じ込めたところであのバランってやろーは馬鹿げた力を持っているんだ。足止めすらも出来やしねー…」

ポップのいうことは正しかったが…少なくともアバンの使徒としては失格のセリフだ。

「…」

ヒュンケルはそれを責めず無言だった。

「悪いが俺は抜け出して貰うぜ。こんなところで死んだって一文の得にもなりはしないしな。」

「ちょっと!あんたそれでもアバンの使徒なの!?」

「うるせえ!主力のダイはこんな状態!ヒュンケル一人じゃバランには勝てねえ!バランからしてみれば俺は虫ケラ以下だ!オマケに敵はバランだけじゃなく最強の軍団!こんな絶望的な状況他にあるか!!こんな状況で逃げ出しても…」

「ポップ!アバンの使徒はどんなに絶望的な状況でも諦めずに命をかけて戦うのでしょう!?それに今ダイ君が敵の手に渡ったらそれこそ絶望的な状況になり得るのよ!」

「ギャーギャーうるせえ!…とにかく俺は抜けさせて貰うぜ。じゃあな。」

ポップはそれだけ言うと走って何処かへ行ってしまった…

 

「ハァ…」

レオナはポップのことを少しは信頼していた。だがそれを裏切られたのだ。ため息を付くには持ってこいの状況だった。

「…すまない。」

ヒュンケルは弟弟子のヘタレ具合にレオナに謝罪をした。

「貴方が謝ることではないわ…」

レオナはそう言ってヒュンケルの謝罪を断った。

「少し外へ出る…」

「ええ…どうぞ…」

レオナはブルーになっており、ヒュンケルが外へ出るのを止めなかった。

 

「(ポップ…お前のことだ。お前にはお前の考えというものがあるのだろう…だがそのまま行ってもお前は死ぬことは良くわかっているはずだ!)」

ヒュンケルは周りを見渡し、誰もいないことを確認して走る。

 

~アルゴ岬~

一方こちらはバランである。バランがここにいるのは体力の回復と…竜騎衆を呼び寄せることである。

 

「集え!竜騎衆!」

その合図で台座の炎が炎上する。

 

竜騎衆とはバラン直属の部下でその実力は軍団長クラスの強さを持つとも言われているドラゴンライダー三人のことである。

 

「空戦騎ガルダンディー見参!!」

鳥の獣人…ガルダンディーはスカイドラゴンに乗り、バランの目の前に現れた。

 

「海戦騎ボラホーン参りました!」

今度はトドのような獣人がバランの目の前に現れ…挨拶をした。

 

「陸戦騎ラーハルト推参!」

そして竜騎衆最強と言われている陸戦騎ラーハルトが現れたことによってバランは満足気に頷いた。

 

「我々三人を呼び寄せるとは…何かあったのですか?」

ラーハルトがバランにそう尋ねる…彼の疑問は最もだった。バランは三人に頼ることをせずとも竜を操るだけでリンガイア、カールなどの国々を短期間で滅ぼすだけの実力者である。それ故に三人の出番などはなく、長年待機状態だったのだ。

 

しかし、こうして呼び寄せられたということはリンガイアやカールなどを滅ぼすよりも骨の折れる事態が起きたという事である。

 

「やっと私が探し求めていた息子…ディーノが見つかったのだ!そのディーノは皮肉にも魔王軍の脅威…勇者ダイだったのだ!」

「…!なんと皮肉なめぐり合わせか!」

「私はダイ達勇者一行と一戦交えた…その結束力は想像以上に強く、私も手傷を負った。」

「バラン様が手傷を…!?」

「それでここに来られたのですか…」

 

「うむ…(もっとも来た理由はそれだけではない…)」

「心得ました。バラン様。要はディーノ様の奪還にお力ぞえをすればよろしいのですね。」

ラーハルトはバランの考えを察し、自分のやるべきことを述べた。

「そうだ。私は全精力を使いディーノの人間としての記憶を消去してある。あとは迎えに行くだけなのだが…厄介なのは仲間達なのだ。奴らは勇者ダイのためなら死を恐れん…特に魔王軍の元軍団長の二人…獣王クロコダインと魔剣戦士ヒュンケルは侮れん。」

バランの性格は自分のこととなれば大胆…所謂、過信しがちだが部下や他人のことになれば慎重になる。それ故の発言だった。

「ククク…バラン様にならともかく軍団長如きに遅れをとる私達竜騎衆ではありません!」

ガルダンディーがそういい、バランの過小評価を改めさせようとするが…無駄だった。

「確かにお前達は竜の騎士程の力はないがそれでも魔族、獣人族の中から選りすぐったエリートだ。だが…人間という者は厄介だ。奴らが死を覚悟すればとんでもない力を発揮し得るのだ。もし勇者の仲間達が抵抗していたならお前達3人で叩き潰せ!私はその間にディーノを取り戻す。」

バランは作戦を伝え、3人に命じる。

「「「ははっ!!」」」

「戦の準備を整えてくる…しばし待て。」

バランはそういって泉へと向かった。

 

「フッ…バラン様も相変わらず細心なお方よ…たかが人間と裏切り者の軍団長相手にわざわざ我らをお呼びになるとは…」

ガルダンディーという鳥男は傲慢である。人間を見下し、獣人である自分達が偉いとおもっている。バランもバランで人間を滅ぼすには丁度良いため性格の矯正はしなかった。

「無礼だぞ!ガルダンディー!!」

ボラホーンが窘め、ラーハルトも同意する。

「その通りだ。獅子は兎を狩る時も全力を尽くすと言う。その細心の配慮が最強の超竜軍団の栄光を支えていることを忘れるな!」

ラーハルトがそう注意するもガルダンディーには馬の耳に念仏だ。

 

ガルダンディーは周りを見渡し、街を見つけた。

「ん?あれは…確かベンガーナって言ったっけか?」

ガルダンディーはそう呟くとスカイドラゴンに乗った。

「丁度良い!人間達を相手にするのは久しぶりなんでな!ちょっとウォームアップしてくる!」

ガルダンディーはそう言うと二人をおいてぼりにしてベンガーナへと向かってしまった…それがガルダンディーの恐怖の始まりとは知らずに…

 

~鬼岩城~

それを見ていたジゼルは怒っていた。

「バランのアホ!」

ゲシッ!ドガッ!

隣にいたザボエラがジゼルの蹴りをくらい壁に当たる…

「何故ワシに八つ当たり!?」

ザボエラはそれだけいい…気絶した。どこまでも不幸である。

「バーン様!いくらなんでもこれは許される行動ではありません!今すぐ謹慎命令を解除してベンガーナに向かわせて下さい!」

 

ジゼルは無駄な犠牲は出さずに人間をなるべく生かすことを好む。そのためガルダンディーのように無駄に人間の命を奪う行為は許せないのだ。

 

フレイザードのオーザム滅亡に関しては世界最強と呼び声の高いカール騎士団と並ぶ軍隊がおり、生かしたまま攻略するのは難しいと判断したのとバーンの命令であることなので不問としたのだ。

 

「確かにあのガルダンディーと言う者、いささか問題がある。余に刃向かうことはなくとも行動に問題がある以上は罰が必要だな。良いだろう…ジゼルの謹慎命令を一日のみ解除する!ただし殺すな。灸を据える程度だ。」

またバーンもガルダンディーを見て罰が必要だと判断した。ある程度実力があれば多少の問題は見過ごすが…ガルダンディーでは実力不足だった…(とはいえ生きられるだけでもまだ実力があると言える。)強くて多少の問題を起こすならともかく弱くて問題を起こすなら処分する…それがバーンのやり方だ。

「かしこまりました!ルーラ!」

ジゼルはすぐさまベンガーナへと向かい、移動した。

 

「良いんですか?行かせちゃって…」

キルバーンがバーンに謹慎命令を一日だけなくしたのを許したことに疑問に思う。

「良い。どのように処分するか見ておきたかったのだ。ジゼルもバラン直属の部下を殺す真似はせんが…一応釘を刺しておいた。」

「なるほど…鳥がコゲ鳥になるか、バラバラになるか楽しみですよ…ウフフ…」

キルバーンは笑い声を出し、その場の雰囲気をかなり重くした。

 

~ベンガーナ~

「行け!ルード!」

ガルダンディーは自分の騎乗するスカイドラゴンに炎のブレスを吐くように命令した。

「かぁぁっ!」

すると横からガルダンディーと同じ竜騎衆の一人のボラホーン以上の氷のブレスにスカイドラゴンに直撃した。

「なっ…!?だ、誰だ!?てめえは!?」

ガルダンディーがそこをみるといたのはジゼルだった…ただしジゼルの顔は怒りに満ち溢れていた。

「魔王軍魔軍司令親衛隊隊長…ジゼル。」

ジゼルはそれだけ言い、おぞましい殺気を出した。その殺気の量はガルダンディーの上司であるバランすらも凌ぐ…

「は、ハドラーの使い魔がなんのようだ!!」

ガルダンディーはいきなり切れたバラン以上の殺気を叩きつけられ動揺していた。というのも何故自分は殺気を向けられているのか?という疑問とバラン以上の実力者がいるのかという疑問で満ち溢れているからだ。

「貴方は軍律違反をした。その罰を執行しに来ただけのこと…本当なら死んで貰いたいのだけれどバラン直属の部下である以上は私が決められることではない。」

「俺のどこが軍律違反したって言うんだよ!!」

ガルダンディーは逆ギレしてジゼルに問う。

「先ほど貴方はベンガーナの人間に攻撃をしようとしたわね?」

「それのどこがいけねんだよ!人間は滅ぼしてナンボだろうが!」

「貴方ね…人間を単純に滅ぼしたらどうなるかわかる?魔王軍のメンツってものがあるの?それを貴方は潰そうとした訳…罰は受けて貰う。」

 

ジゼルの殺気が最大限に強くなり、ガルダンディーは最早抵抗することも許されない。

 

「あ…ぁ…!」

 

いや実際には抵抗しようと必死でガルダンディーは自らの羽を持っていたが投げられなかった…上司であるバラン以上の化け物を相手に抵抗すると何をされるかわからなかった。

 

「ギガデイン!!」

ジゼルは勇者や特殊な魔物しか習得出来ないデイン系最強の技ギガデインでガルダンディーを処刑した。

「ぎゃぁぁぁあっ!」

ガルダンディーは腕や足がもぎ取られるような感覚に襲われ悲鳴を上げる。

「ハートブレイク!」

ジゼルはガルダンディーの心臓を目掛けてパンチをした…するとガルダンディーの時が止まった。

「はあぁぁっ!」

ジゼルは背負い投げの要領でガルダンディーを地面に落とした。

「がはっ…!」

そしてガルダンディーは口の中から血を吐き出し、苦しんでいるとスピードをつけたジゼルがガルダンディーの右腕に着地した。

「ぎゃぁぁぁっ!?」

メシメシとガルダンディーの腕が悲鳴を上げ、ガルダンディー本人も悲鳴を上げる。

「まだ終わりじゃないわよ…」

ジゼルはさらにガルダンディーの右腕に負担をかけた。

「いぎゃゃぁぁぁあ!?や、やめてくれ!死ぬ!死んでしまう!」

ガルダンディーが痛みのあまり、情けなく泣き縋り、ジゼルに助けを求める。

「安心しなさい…死なない程度に手加減してあるから。ほらもう一丁!」

ジゼルはまさに魔王軍に相応しい邪悪な笑みでそう告げた。

 

ついにガルダンディーはそれを逃れることが出来た。その方法とは…

「ぎ…!」

ガルダンディーは失禁し、気絶することで痛みをなくしたのだ。

 

「…まだ生きているわね。それじゃバランのところに届けましょう…」

ジゼルはそう言って排泄物臭いガルダンディーを魔法の筒でしまい、アルゴ岬へと向かった。

 

~アルゴ岬~

「遅い!遅すぎる!」

ボラホーンはガルダンディーの帰りが遅いことにイラついていた。

「ベンガーナに行ってから数分が経つが煙の跡すらもない…ベンガーナの前で何かあったに違いない…」

ラーハルトはそう推測し、ガルダンディーの帰りを待っていた。

「準備は整ったぞ。…どうした?ガルダンディーが見当たらないが…」

するとバランが丁度帰ってきて、二人にとって非常にまずい状況になった。

「いえ…実はガルダンディーの奴が勝手にベンガーナに行ってからまだ帰って来ないのです。」

ボラホーンは事情を説明し、バランに告げた。

 

「…あの馬鹿が。」

バランは失念していた。魔王軍には人間共存主義者のジゼルがいるということを…ジゼルはバーンやハドラーの命令で無い限りは人間を滅ぼさないし、許さない。そのことを教え忘れていたのだ。もっともこの場合勝手にベンガーナを攻めたガルダンディーにも非があると言えるがそれを教えなかったバランにも責任はある。

 

「バラン…どういうつもり?」

噂をすればなんとやら。ジゼルが魔法の筒を出してボロボロになり、更にう○こ臭いガルダンディーを出した。さっきよりも表記がひどくなっているのは気のせいである。

「すまない…私の責任だ。」

それはボロボロになったガルダンディーに向けてなのかジゼルに向けてなのかわからないがバランは謝った。

「処罰は私の方でやっておいたわ…使えないそのボロクズの代わりに私の部下を貸すわ…ベン!」

ジゼルがそういうとベリアルのベンが現れた。

 

「お呼びですか?ジゼル様?」

「このボロクズの代わりを一日やってあげて。」

「こいつは…竜騎衆のガルダンディーじゃありませんか?アクデンの方が…実力的に近くありません?」

ベンはジゼルの命令に渋り、眉を顰める。

「だけどアクデンだと死ぬ可能性があるから…ね?生きて帰って来れるのは貴方だけなのよ。」

ジゼルは上目遣いでベンを説得する。

「そういうことでしたか。わかりました。」

ベンは納得した顔でジゼルの命令に従った。




ABC「モンスターABCのあとがきコーナー!」
A「そういえばまた前回あとがきコーナーやらなかったみたいですね…」
B「全く持ってけしからん…!最後に出番があったからよかったものの…これで出番なかったらイオグランデで木っ端微塵にしてやるところだったぞ。」
C「なんて物騒な…それよりもとっとと今回のお話について述べますよ。」

A「ガルダンディーの処罰か…これは酷い(苦笑)」
B「ジゼル様はキレたり、ハドラー様が絡んだりすると暴走するしな…」
C「本当迷惑ですよね。」

A「まあ普段優しいし、そのくらいのギャップがあってもいいんじゃないか?」
B「そうだな。」
C「と…まあそれはともかく前回の更新から一日で仕上げたわけですがそこらへんは?」

A「うーん…それよりも前々回から一ヶ月ぶりに更新した前回の方が驚いた…」
B「実は作者がなに一つ思い浮かばなくてそのまま放置して他の作品に手を出していたらそうなったらしい…」
C「あ〜…あれですね。まあ仕方ないといえば仕方ないのですが…とここまでですから最後にあれを!」
ABC「次回も見てくれよな!」


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勇者一行、超竜軍団に刃向かう

〜平原〜

「待て!」

テラン城に向かうバラン達を止めたのはポップだった。

「ほう…貴様はあの時の魔法使いか。何をしにきた?」

「もちろん…てめえら止めに来たんだよ!ベタン!」

 

ポップの呪文が竜騎衆二人にあたり、騎乗していた竜は死んだ。

「うおおおおっ!?」

また二人もそれに動揺し、動きが取れなくなった。

 

「むんっ!」

しかし素早くポップの背後に移動したベンはトライデントでポップを突き刺そうとした…

「させん!」

鎧を纏ったヒュンケルがどこからともなく現れ、ベンのトライデントを止めた…ように見えた。

「イオラ!」

ベンはヒュンケルの首の横…つまりポップに向けてイオラを放ち攻撃をする

「くっ…!」

ヒュンケルは首をひねり、ポップに対するダメージを少しでも減らそうとするがヒュンケルの兜からイオラが入り込み、自身の顔に火傷を負ってしまった。

 

「ほう…魔剣士ヒュンケル。やるではないか。」

ベンはヒュンケルが己の顔を犠牲にしてまでポップを庇おうとする意気込みに感心した。普通の戦士であれば顔に向かって来たものは反射的に避けようとしてヒュンケルの向いた方向とは逆の方向へとひねる。ただそうすればポップの命はなかったわけでヒュンケルの判断は正しい。

「そっちも大したものだ…何故魔王軍の軍団長になれなかったのが不思議なくらいだ。」

「俺は軍団長なんかに興味はない。ジゼル様に仕えることのほうが余程良い。」

「お喋りはここまでだ。行くぞ!」

「来い…!」

 

「(あっぶね〜もう少しで死ぬところだったぜ…)」

一方ポップはベンとヒュンケルのやりとりに驚いていた。決してビビったわけでは無い。

「っとそうだ!イオラ!」

ポップはもう片方の手でイオラを放った。

「舐めるなーっ!!小僧ーっ!!!」

ボラホーンが切れ、ベタンもなんのその!ポップに襲いかかる。

「おいおい…冗談だろ!?」

まさかバラン以外にベタンが効かない相手がいるとは思わなかったのだ。

 

ヒュンヒュン…ドガッ!

真空の斧がボラホーンの襲撃を止めた。

「何だ!?」

ボラホーンとポップは驚き、斧が飛んできた方向を見ると…そこにいたのは前に見たときよりも勇ましく、覇気を纏った獣王クロコダインがいた。

「獣王クロコダイン!」

ポップは来ないと思っていた助っ人…しかもクロコダインが来てくれたことに嬉しくなる。

「またせたな…ポップ。」

クロコダインはニヤッと笑い、バランの方へと向ける。

 

「バラン…単刀直入に聞こう。ダイとお前の関係は親子だな?」

クロコダインがいきなりそんなことを聞いてきた。

「そうだ…今からディーノを取り返しに来た所だ。だが何故貴様がそんなことを知っている?」

バランもそしてこの場にいた全員が思った疑問だった。クロコダインがバランとダイが親子だということを知っているのはおかしいからだ。

「カール王国に行った時…竜の紋章の跡があったのでな…おそらくそんなことが出来るのはダイと同じような存在。だがカール王国を攻め滅ぼしたのはバランと言う噂が流れてな…それで結びついたというわけだ。」

クロコダインは一見武道派のタイプだが実は相当頭の回転が良く知略派としても有能なモンスターである。その為バランとダイが親子という関係にも気づけたのだ。

「なるほど…なら何故そちらの味方をする?」

「決まっている…ポップやヒュンケルが理由なしにお前と戦うような真似はせん。故に俺はポップやヒュンケルの味方をする!」

「そうか…残念だ…ならば死ぬがいい!ギガデイン!」

バランは真魔剛竜剣を抜き、ギガデインを唱え剣に雷を纏わせる。

「ギガブレイク!」

バランは竜の紋章を光らせ、本来の力を引き出し…クロコダインを斬る!

完全にバランのギガブレイクは決まった…そのはずだった。

 

「…まさかこれだけか?バラン。」

しかしクロコダインの声からは余裕そうな声が聞こえた。

「バカな!?ギガブレイクが効かないだと!?」

「ふっ…俺が何の為にカールへと行ったと思う?」

「破邪の洞窟か?!」

バランは破邪の洞窟の存在は知っている…だがそこに結局入ることなく一刻も早くヴェルザー討伐の為に魔界へと移動したのだ。それに魔界のモンスターのほうが強いと思っていたのでスルーしたという理由もある。

「そうだ。俺はジゼルと戦い一瞬で負けた。俺はその時、完全に実力不足を感じレオナ姫救出後カールへと向かった。」

クロコダインはジゼルに一瞬で敗れたことをバネに破邪の洞窟に入り、必死にジゼルに負けないように地下へと行った。

「じゃああの時必死に俺を説得したのは…その為か!?」

ヒュンケルは当初カールに向かおうとしたがクロコダインがどうしてもカールに行きたがっていたのでヒュンケルは譲ることにしたのだ。

「ヒュンケル…お前にはすまないことをしたと思っている。だがどうしても自分の実力不足を感じてしまい、足手まといになる確率が高かったのだ。許してくれ。」

「クロコダイン…ならパワーアップしたお前の力を見せてやれ!そうしたら許してやる!」

ヒュンケルは柄にもなく熱いセリフを出し、クロコダインを応援した。

「ならばパワーアップした俺の力を見るが良い!獣王会心撃!」

クロコダインは一瞬で闘気を溜め、ボラホーンに向かって放った…当然ボラホーンは避ける間も無く死んだ。

 

「すげえ、すげえぞ!おっさん!その調子で残りの槍男もバランもやっちまえ!」

ポップはクロコダインの強さに大興奮。これ以上クロコダインが輝いて見えたのは恐らく生まれて初めてだろう。

 

「誤算だったな…お互いな。」

しかし空気になっていたベンがそうつぶやくと一気にヒュンケルが押された。

「なんてパワーだ…!?」

「メラゾーマ!」

ベンはメラ系最強呪文メラゾーマをヒュンケルの顔に向かって放つ

「海波斬!」

ヒュンケルは避ける…などという選択肢はなく呪文なども切れる海波斬で対処した。

「バラン!」

ベンはアイコンタクトをしてバランにテラン城に向かわせるように促した。

「ちっくしょーっ!!ルーラ!」

ポップはルーラを唱え、バランよりも早くテラン城へと向かう。

「させん!ルーラ!」

バランもルーラを唱えテラン城へと向かった。

 

〜鬼岩城〜

「あちゃ〜まさかクロコダインがこんなパワーアップするなんて…」

ジゼルは自分のせいでクロコダインが想像以上にパワーアップさせてしまったことを反省した。

 

「(でも破邪の洞窟だけじゃないわよね…バランのギガブレイクは相当強烈…破邪の洞窟だけでギガブレイクが効かないなんてことは無い…)」

ジゼルはクロコダインのギガブレイクの耐性について考えた。そして結論は…

 

「(まさか…これも私のせい!?)」

ジゼルのジゴスパークがクロコダインに雷系の耐性をつけてしまったということだ。元々クロコダインはタフなこともありジゼルのジゴスパークに比べればなんでも無いと思い込んで特訓してきた。その為かバランのギガブレイクすらも克服してしまったのだ。

 

「はあ…ハドラー様分を補給しよう。」

珍しくジゼルは落ち込み、トボトボと歩いて行った。




何故かパワーバランスを考えるとクロコダインがパワーアップしてしまいました…
世の中気合と根性ですね。


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獣王&魔剣士、大苦戦!

~平原~

「あの魔法使いの小僧は生け捕りにしておきたかったのだが…やむを得ないか…」

ベンがそういい、ヒュンケルから距離を取る。

「ラーハルト…ヒュンケルの相手をしてやれ。」

「ベン…お前に指図される筋合いはない…だがそちらのほうが良いか。」

ラーハルトはバラン以外の命令はほとんど聞かない。というのも自分がバランの次に強いと思っているからである。しかし今のクロコダインを相手にしても全く勝てそうにもない…バランはクロコダインを相手にしろとは言っていない。ベンの言うとおりにした方が効率的だと考えた。

 

「クロコダイン…貴様と会うことはあっても戦うのは初めてだな。」

「確かにそうだな…」

「まさかこんな形で戦うとは思ってもいなかった…行くぞ!」

「来い!」

 

「ベギラゴン!」

ベンはハドラー以上のベギラゴンを放ち、すぐに別の魔法を唱えた。

「イオナズン!」

ベンはイオ系を得意としており、その威力はベギラゴンに迫る威力だ。

 

ベンの最大の特徴は二回行動にある。故に二つの呪文がほぼ同時に使えることが出来るのだ。

 

「むうっ!」

クロコダインは腕を×にして自分の体を守る。

そして二つの呪文が当たった時、クロコダインは無事だった。クロコダインが使った技は大防御である。この大防御は破邪の洞窟内で身につけて賜物であり、努力の結果である。

 

「流石は獣王クロコダイン…大したものだっ!」

ベンはクロコダインの大防御を解いた瞬間を狙い、クロコダインにトライデントを振り回しクロコダインに直撃させた。

「ぬおっ…貴様も相当な腕だな!」

クロコダインはベンの直接攻撃によろけたがすぐに立て直し、真空の斧を手に取り、振る。そして鍔迫り合いが始まった。

「ぬぅうううっ!!」

ベンがクロコダインを押し、体制が有利になる。

「うおおぉぉぉーっ!」

クロコダインは負けじとベンのトライデントを押し、体制を元に戻す。しばらくこの様子が続いた…

 

 

ヒュンケルとラーハルトの戦いは…一方的だった。

「がはっ…」

「この程度か?魔剣士とやらは…」

ラーハルトが一方的にヒュンケルを圧倒していたのである。何故なら…

「(こいつ…スピードが速すぎる!)」

そう…ラーハルトのスピードが速すぎるのだ。ヒュンケルの攻撃はラーハルトにかすることはなく、逆にラーハルトの攻撃はヒュンケルに大当たり…とにかく当たるのだ。おかげでヒュンケルの鎧は前よりもボロボロになり、使い物にならなかった。

 

「く、くそっ!」

ヒュンケルはとにかく動きを最小限にして突き、薙ぎ払い、その他もろもろの攻撃を速度を優先し、ラーハルトに少しでも当たるようにするが…全ての攻撃が紙一重で躱される。そしてヒュンケルはラーハルトに遊ばれていることに気がつき、かっとなるが冷静になる。

「(カウンターしか奴を倒すしかない!)」

ヒュンケルは先ほどとは打って変わってラーハルトの攻撃を待ち構える。

「もう抵抗は終わりか。よかろう…とどめを刺してやる!」

ラーハルトの槍はヒュンケルの心臓を目掛けて突っ込み、ヒュンケルにとって最大のチャンスがやってきた。

「ブラッディースクライド!!」

ヒュンケルは自身にラーハルトの槍が筋肉を貫かれたが寸前で止まり無事だった。またブラッディースクライドがラーハルトの心臓に当たれば死亡することは確実だ。だがラーハルトはそこまで甘くなかった。

「狙いは悪くなかったぞ。」

ラーハルトは生きていた。しかも無傷でだ。

「バカな!?完璧なタイミングだったはずだ!」

ヒュンケルのタイミングは確かにバッチリだった…ただそれがラーハルトで無ければの話しだ。ラーハルトは異常とも言える速さでヒュンケルのカウンターに対応した…それだけの話しなのだ。

「当たらなければどうと言うことはない!」

ラーハルトは槍を回し、前方へと傾けさせる。ヒュンケルはラーハルトのスピードについて行けず迎え撃つことはできなかった…

「ハーケンディストール!」

ラーハルト最強の技が決まった。

「(この俺が手も足も出んとは…!)」

 

 

「どうやらラーハルトの方は有利のようだな…」

ベンはクロコダインにそう言って焦りを生まれさせる。

「くっ…!」

クロコダインは焦りとベンの戦いに対する疲れが見え始め、徐々に押されて行った。

「ふんっ!」

そして鍔迫り合いはベンが勝ち、クロコダインの腹にトライデントが突き刺さった…ここでクロコダインの名誉のために言っておくがクロコダインが弱い訳ではない。ベンが強すぎるのだ。ベンの力はかなりのものであり、その力は古代最強兵器のオムド・ロレスですらも、トドメをさせるくらいにはある。

「ぐあっ…くっ!」

クロコダインはベンの攻撃を持ち前のタフネスさで耐えた。

「ここまで俺と戦ったのはお前が初めてだ。自分に誇りを持つがいい…ベリアル族最強の俺とほぼ互角に戦ったことを…!」

ベンはクロコダインに向けマホカンタが常にかかっているオムド・ロレス戦では使えなかったイオ系最強呪文イオナズンを超えた呪文を放とうとしていた。

「(イオナズン…いやそれにしては強すぎる!?)」

クロコダインはハドラーのイオナズンを見たことがあるがベンの唱えようとする呪文はそれとはまた違った。

「これがベリアル族に伝わる最強の呪文…イオグランデ!!」

瞬間、テラン城まで爆風が届き、ラーハルトやヒュンケルすらも巻き込んだ。

 

~鬼岩城~

ハドラー補給が終わったジゼルは悪魔の目玉を再び見ていた。

「あっ…通信切れた…」

ベンのイオグランテが悪魔の目玉を吹っ飛ばし、中継が繋がらなくなってしまったのだ。

「ザボエラ、とっとと悪魔の目玉を向こうに手配しなさい!」

ジゼルはザボエラにそう命令して悪魔の目玉を手配させるようにした。

「しかし今の爆風でテラン城付近の悪魔の目玉はおりません…手配するころにはもう終わっています…」

「死にたいの?」

ジゼルは笑って(目は全く笑っていなかったが)そうザボエラに向かって言った。

「し、至急準備してきます!」

ザボエラはピューっと逃げるかのようにすぐに悪魔の目玉の手配をしに向かった。

 

「(しっかし、ベンがあんな切り札を持っているとはね…)」

ジゼルはベンのイオグランデの威力に驚いていた…あれは自分のジゴスパークに匹敵するくらいの威力ではないかと思ってしまうくらいにはあった。

 

「ふっ…はっはっはっはっ!」

いきなりバーンが大笑いしてその場にいた全員の注目を集める。

「どうされましたか?バーン様…」

ハドラーがそう聞くと笑い声は消え、さも子供がおもちゃを与えられたかのようにご機嫌なバーンは愉快そうに答えた。

「まさか未だにこの世界でイオグランデを唱えられる者が余の配下になっているとは…愉快!実に愉快!」

バーンはかなり機嫌が良くそのように大声で言ってしまったことは無理もなかった。それだけイオグランデを扱えるのが珍しかったと言うことだ。

「イオグランデとは一体…どのような呪文なのですか?」

ハドラーがそう聞くとバーンは満足げに口を開いた。

「イオグランデとはイオナズンの上位にある呪文でな。その威力は凄まじいが消費魔力も溜めも大きい…また使用者自身もイオに関する素質がかなり無ければ覚えるのは無理だ。それ故にイオグランデは滅亡したかと思われたが…まさか魔王軍にいたとは驚きだ。」

 

「ベンがそんな呪文を使うなんて…」

「これなら百獣魔団と妖魔師団もベンに任せても良いだろうな。」

この場にザボエラがいたら確実に抗議していただろうが生憎ザボエラはいないので抗議する者はいなかった。

「それはベン次第でしょうね。」

ジゼルはそう言って話しを切り上げ、全員ザボエラの帰りを待った。




ABC「モンスターABCの後書きコーナー!」
A「何故か二回に一回はサボるコーナーですが始めましょう!」
B「もう俺の出番があるからこのコーナーは別にほっといてもいいんだが…そう言う訳にはいかないしな…」
C「まだそっちはいいですよ…おれなんか名前すらほとんどないですからね?」
ABC「…虚しい…」
A「それはそうと遂に出ましたね。イオグランデ…」
B「ようやく俺のチートタイムってわけだ。作者には大感謝だぜ…」
C「ラーハルトも順調に戦っていますが…これから本番ってことも頭に入れておかないと!」

A「クロコダインのパワーアップも凄いですね…」
B「インフレしすぎたかと思いきや俺が強すぎて噛ませ犬になったがな!」
C「インフレの連続…これダメなパターンじゃん。と時間だ!では…」
ABC「これからもよろしくお願いします!」


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獣王&魔剣士、勝利する

「大した奴だ…クロコダイン。」

ベンがクロコダインを賞賛し、目の前の鰐を見る。

「がはっ…」

クロコダインは既に腹に穴が空き、ろくに喋れる状態ではなくなり、答えられない。

 

「一体何があったというのだ…?」

吹き飛ばされただけで済んだラーハルトが代わりに質問し、ベンは律儀に答える。

「俺は究極爆裂呪文イオグランデを放った…だがあの場からクロコダインは咄嗟に前に詰め寄り、自らを盾としてヒュンケルにダメージを行き届かないようにしやがった…あいつらは仲間を庇うということがよほど好きなようだな。だが…逆に中途半端に来てもクロコダインの被害が増しただけだし、ヒュンケルも被害を受けていただろう。クロコダインの判断力と勇敢さは賞賛すべきものだ。」

「…そうか。それだけ聞ければ十分だ。」

 

ラーハルトはそれだけ言うと吹き飛ばされたヒュンケルを見て、気づく。ヒュンケルはまだ生きていると…

「ほう…流石は不死身と言われることだけのことはある。俺の技を受けてまだ動けるとはな…だがこれ以上はお前達を相手に構っている暇はない。一刻も速くバラン様に合流しなければならないからな。」

「そうはさせん…!」

ヒュンケルは気力のみで立ち上がり、ラーハルトを止めようとする。何故なら先ほどテラン城に向かったバランだけでも厄介なのにラーハルトが来てしまっては確実にダイがさらわれてしまう…ヒュンケルは少しでもその可能性を減らそうとして立ち上がったのだ。

「大した根性だ…だが貴様のその根性は何処からくる?」

「ダイは地上の希望だ!それを奪われる訳にはいかん!」

「下らん…人間の為にディーノ様の力を使うこと…いやそれ以上にディーノ様の力によって希望を得ようとする態度が気に食わん!」

ラーハルトの顔が憎悪に満ち溢れ、顔が歪む。

「そもそも人間達はディーノ様の母君の仇だ。バラン様がその仇を打つのは筋だ!!その仇を御子息のディーノ様の手によって守らせようとするとは腹立たしい…!!」

「ダイの母の仇が…人間?!」

「そうだ…あれは今から12年前の話しだ。」

 

ラーハルトはバランの過去を話した。

要約すると…

・バランは魔界でヴェルザーに勝利はしたものの満身創痍の状態で死にかけたところをアルキード王国の王女のソアラに助けて貰った。

・バランとソアラはその出会いの後仲良く暮らし子供まで授かった。

・しかしアルキード王国の家臣が嫉妬、権力欲に駆られアルキード王にバランが魔物だと告げ口をする。

・アルキード王はバランを処刑しようとしたがソアラに妨害され、『恥さらし』といってしまう。

・バランはアルキード王が実の娘に向かって恥さらしと言ったことにブチ切れ。その日のうちにアルキード王国は潰れた。

・以後バランは人間を滅ぼすことを決める。

 

「その話しは本当なのか?」

それを聞いたヒュンケルはラーハルトに思わずそう尋ねてしまった。

「バラン様が俺だけに語ってくれた悲しい過去だ。」

「そうか…だが尚更だ。尚更、倒れる訳にはいかなくなった…!!ダイの為にも、バランの為にもな!」

「なんだと?」

「俺はバランの気持ちもよくわかる。俺もかつてはバラン同様に人間を憎んでいた。だがダイ達に出会ってわかった…人間もそう捨てたものでない…とな。」

「ほざけ。貴様にバラン様の気持ちがわかるか!」

ラーハルトは遂にキレて、ヒュンケルに槍で首を取ろうとしたがとあるもので防がれた。

「…なっ!?首飾り!?」

「これはアバンの使徒の卒業の証に貰えるものだ。いってみればアバンの使徒の…ダイ達の絆の証なのだ!」

そしてヒュンケルは闘気を溜めてとある技を使う…

 

「いかん!逃げろラーハルト!」

ベンがそういうがラーハルトの身体は不思議と動かずヒュンケルの技を直に受けることになった。

 

「グランドクルス!」

ネックレスから光の闘気が放たれ、ラーハルトを襲った。

 

光が収まり、ヒュンケルの攻撃が終わった。

「ヒュンケル…これを受け取ってくれ…」

ラーハルトが力尽きる前にヒュンケルに槍と防具を渡そうとしたが…ある者によって阻害された。

「させんわ!」

そのある者とはベンだった。ベンは槍と防具を蹴り飛ばしたのだ。

 

「な、何をする…!?」

ラーハルトはベンにそう抗議するがベンは無表情で答えた。

「敵に塩を送るのは結構だが…俺とヒュンケルの戦いが終わってからにして貰いたいものだ。それに俺に勝てない男がバランに勝てるとは思えん…」

つまり、ベンは自分を鎧なしで倒して見せろといっているのだ。鎧が有ればベンのイオグランデは無効化とまではいかなくともかなり減少されてしまう為であった。

「それも、そうだな…お前がまだいたか…」

ヒュンケルは闘気を使ってしまったので自らの気力のみでベンに立ち向かった。

「それでこそ、不死身の男よ!」

ベンはヒュンケルの大きな壁なり立ちふさがり、持っているトライデントを振った…

 

カラン、カランカラン…

ベンがトライデントを落とした。

「…っ!なんだ!?」

突如、ベンの身体に異変が起きた。身体が痺れ動けなくなってしまったのである。

「ようやく…効いてきたか。がぶっ!げほっ…!」

クロコダインが血を吐きながらも立ち上がった。

「何を、した…!?」

ベンは麻痺し始め、身体が動けなくなり始めた。

「俺はイオグランデを喰らった瞬間に焼け付く息(ヒートブレス)をお前に吐いた…それだけのことよ。ほんの一瞬だったがどうやら修行の成果はあったようだな。」

クロコダインはただデイン系の克服ではなく、技も磨いていたのだ。特に焼け付く息はジゼルを相手に想定して磨き続けた。

しかし、それでもベンが麻痺するには理由が足りない。ベンは体質上、麻痺に弱い。下手したら下級モンスターと同じくらいに弱いため麻痺に関しては警戒していたが、まさかクロコダインがこんな技を使うとは思わなかったのだ。

「ジゼル…さ…ま…ご…許し…下…さい…」

ベンは完全に麻痺し、動けなくなった。

「行くぞ!ヒュンケル!」

「ああ!」

 

「ブラッディースクライド!」

「獣王会心撃!」

二人の必殺技がベンに炸裂し、心臓を貫いた。



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魔法使い、善戦する

今回はポップが大活躍します…ではどうぞ。


「全くなんでワシがこんなことを…ブツブツ…」

ザボエラこと魔王軍幹部の下っ端は悪魔の目玉を手配するためにテラン城やその他諸々の場所へと向かっていた。

「とっとと手配しないと…いかん!こんな想像やめじゃ!一刻も早くせんとな…」

ザボエラはブツブツと言いながら恐ろしい想像をしてしまい冷や汗をかいていると人影を見つけた。

「あれは…ヒュンケルとクロコダイン!?」

その人影とは移動しているヒュンケルとクロコダインでテラン城へと向かっていた。

「(…いくら満身創痍とはいえワシ一人が攻撃をしても魔法慣れしている戦士の二人が相手では瞬殺…二人とも魔法使いならばどれだけ良かったことか…)」

ザボエラがそう思えるのは無理なかった。ザボエラの魔力は非常に高く、ベンの切り札イオグランデなどの究極呪文や竜の騎士やジゼルのような特殊な種族が使うデイン系の呪文などを除いたほとんどの魔法を扱うことが可能だからだ。それ故に魔法対決ならば魔王軍の中でもバーンを除けばトップクラスの実力を持っていると自負がある。

 

「(いや…ベンはどうしたんじゃ!?ジゼルは部下に関しては優しいが…その反面同僚などに関しては厳しい…悪魔の目玉がない上、ベンの方が有利じゃったし、尚更ワシが疑われる!」

ザボエラはヒュンケルとクロコダインに構う暇がないと言わんばかりにその場を立ち去り、ベンを探した。

 

「やはり死におったか…ベンの奴め…!」

ベンの死体を見てザボエラは思わずそう叫ぶ。

「やはり蘇生液につけるしかあるまい…」

蘇生液とはクロコダインやジゼルが使った装置にある液のことで、それに対象者をつけると大怪我を負った際に完全回復したり半々の確率で蘇ったりすることが出来る、某警部が開発した某泥棒探知機並みの隠れたチート装置である。

しかし、かなり便利なのだが余り使われることはない。何故なら魔王軍に大怪我を負えてしまう幹部はほとんどいなかった上に戦力にもなり得ない雑魚などの場合蘇生の必要はなく処分されてしまうからだ。またジゼルなどの回復呪文の系統を使えたりする者がいるからである。

ちなみに今までの蘇生液の使用例はクロコダイン、ジゼルの二名しか使っていないのが現状である。

 

とにかくザボエラはベンを蘇生液のある鬼岩城まで運ぶために棺桶に入れ部下にそれを持たせ、鬼岩城へと向かった。

 

~数分前テラン城~

ポップとバランはルーラでテラン城前まで来ていたが…突然中断させられた。

「なんだ!?」

ポップはルーラを解いた瞬間に吹き飛ばされた。

「(この衝撃、ドルオーラ…とまでは言わないが地上の魔物ではあり得んまでの威力だ…ジゼルか?いや、あいつはあり得ぬ。あいつはハドラーの為に無闇やたらに地形を崩壊させたりはせん…となればジゼルの部下のベンか…想像以上の戦力だ。)」

バランはジゼルの部下ベンの戦力に驚き、ヒュンケルやクロコダインの足止めの件については安心し、自らやるべき事を考えた。

 

「小僧…もう一度聞こう。私の邪魔をする気か?」

バランはポップに殺意を向け、睨む…常人やフレイザード戦の時のポップで有れば間違いなくビビって腰を抜かすだろう。だが…ポップは予想を裏切った。

「へえ…あんたは虫ケラかなんかと同じくらいにしか思っていない俺なんかを相手にするって言うのか?」

ポップは卑下し、バランになるべく相手にされないようにしていた…それこそがポップの作戦である。

 

こう言ってしまえば実力を隠し持っているかあるいは命惜しさに命乞いをしているのかどちらかに聞こえる。

 

「確かに貴様は私にとって虫ケラと同等…」

 

バランはもちろん後者の方だと考える…何故ならフレイザード戦でポップが活躍したという話は聞いていないし、それよりもバランは部下の場合を除き、敵を過小評価する傾向にある…その為ポップが実力を隠し持っているとは考えられなかったのだ。

 

「だが我が息子ディーノを取り返す邪魔をする者は何人たりとも許さん!例え虫ケラだろうが全て邪魔になる者は一人残らず叩き潰すのみ!!」

 

バランがそう思ったのはダイ達の絆を恐れての事だった。ダイ個人よりもダイ達の絆の方が危険だと思ったからこそダイの記憶を失わせた。そうでもしなければ間違いなく自分は最後の手段を使わなければならないだろう…ただそうしてしまえば自分の息子であるダイを殺すことになる。それ故の判断だった。

バランはポップをこの場で殺すことを決め、剣を抜く…

 

「(バランが激情家で助かったぜ…もし激情家でなければ時間稼ぎが出来なかった。)」

ポップはバランの性格を短い間に読み取っていた。その為、あえて自分を卑下させることでバランの注意を向けさせたのだ。そしてポップは覚悟を決めた顔で杖を取った。

 

ポップは偶々マトリフのところにあった魔道書を読み、二つの呪文を覚えた。

「ピオリム!スカラ!」

ポップは覚えたての加速呪文ピオリムと防御力上昇呪文スカラを唱え、自らのスピード、そして防御力を上げる…

 

ちなみにそんな呪文を覚えることが出来たのはだいたいジゼルのせいである。マトリフはジゼルに勝ったとはいえあれは運が良かったからこそ勝てたのであって、もし運が少しでも悪かったら死んでいたと思わざるを得なくなっていた。やはりマトリフは身体能力に差があると思い、それを少しでも埋めるために必死で古代の魔法を調べた。そして習得したのがこの二つの呪文である。他にもマジックバリアなどもあったがマトリフもまだ習得していないのでポップも習得出来るはずもなく…現在に至る。

 

「下らん真似を…」

バランは呆れた声でそう言うとポップを切ったが…切ったはずのポップが残像となって消えた。

「何処切っているんだ?」

そしてポップはバランの後ろにいた。

「なにっ!?」

バランは驚く…何しろ魔法使いであるはずのポップが自分の部下であるラーハルトと同等以上の速さで移動していたのだ…驚かないはずがない。

 

「(危なかったぜ…ルーラも使っておいて良かった…)」

切られる寸前、ポップは瞬時にピオリムで口の動かす速度も速くなった超高速ルーラを唱え、避けていたのだ。逃げ足に関しては天才的だと自覚があるからこその最大の武器となっていた。そしてバランは自分に対して警戒する…そうすることがポップの目的だ。警戒されることによって迂闊にバランも手を出せなくなり時間稼ぎも出来る。

ポップがスカラを唱えたのはバランの攻撃を受けた際に傷を少なくさせる…これは普通の使い方である。だがポップはそれ以上のことを考えていた。

「(もし攻撃されたとしてもさほど効いていないと思わせるには十分だ!さあ…来やがれ!)」

ポップは心理戦に持ち込むことが最大の狙いだったのだ。現在のポップは戦闘には最適の心理状態、一方バランは自覚はないが焦りが生まれていた。

「(あの小僧がラーハルトと同等の速さか…ラーハルトを倒すのは容易いことだ。だがラーハルトは攻撃をしてくるから倒せるが奴はなんだ?いきなりあのような呪文を唱えたとなれば何か秘策があるはずだ…下手にカウンターを狙えばこっちが殺られる。となれば殺られる前に殺る…それしかない!)」

案の定ポップの思い通りとなり、バランはポップに向かって襲いかかって来た。




AC「ど〜も!モンスターABCの後書きコーナーは今回はおやすみです。」
A「理由は簡単ですよね…ええBが死んでいる以上は後書きコーナーが出来ないと言う理由なんでね…」
C「まあそういうことだ…それじゃまた次回もみてくれよな!それと今回気になった点は感想に送ってくれ!」


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竜騎将、怒る

久しぶりの投稿です…いろいろネタを考えていたら遅くなりました。


 ~鬼岩城~

「妖魔司教ザボエラただいま戻りました!」

 そう言ってザボエラが戻ってきたのはあれから数分経った頃である……

「そう……でヒュンケル達は死んだ?」

 ジゼルがそう言ってザボエラに近況はどうなっているか聞いた。

「いやいや……生き残っているのはベンではなく……ヒュンケル達じゃ!」

「なんだと?」

 

 この場にいた魔王軍幹部のなかでもトップクラスの実力者達は驚いた。

 と言うのもベンはジゼルほどではないにせよかなりの実力者だ。それこそ時代こそ違えば魔王と呼ばれてもおかしくない程に……だがそのベンが負けたのだ……驚くのは無理ない。

 

「間接的な死因となったのは遅効性の麻痺毒によるものが原因……つまりその遅効性の麻痺毒のせいでベンは動けなくなりその間に死んだと考えて良いでしょう」

 ザボエラはベンの死因を解析し、それを発表した。

「なるほど……そういえばバランはどうなったの?」

 ジゼルはベンのことはもう心配していないのがバランの様子をザボエラに聞く。

「これを見ればわかります……」

 そう言ってザボエラは悪魔の目玉を使い、バラン達の様子を見せた。

「えっ……?! 嘘!?」

 そこには信じられない光景が映っていた。

 

 そこにはクロコダインやヒュンケル、レオナが倒れ、ポップもよろよろの姿で映っており、バランがダイを見つめていた。もちろんジゼルが驚いたのはそんなことではない。むしろ予測していたことだ。だがジゼルを驚かせたのはバランが竜魔人となっていたからだ……

 

 ~テラン城前~

 

「どうやらあんたを相手に俺もここまで頑張れるなんて思いもしなかったぜ……」

 ポップはよく頑張った……バランの攻撃を避け、そして何度もフェイントを織り交ぜ、緩急をつけ、とにかくあらゆる手段で時間を稼いだ。

「ポップ! 無事か!?」

 クロコダインとヒュンケル、そしてレオナが駆けつけ、ポップを心配する……

「へっ……俺達の思い通りに動いた気分はどうなんだ? 竜の騎士さんよ! ゲフッ!」

 ポップはバランに最後の虚勢を張り、皮肉げに笑う。……するとすぐにポップの口から血が飛び出た。

「ポップ君!」

 レオナはポップにベホマを唱え、治療に務める……

「確かに貴様らの思い通りに私は動いてしまった……だが私とて竜の騎士だ……貴様らがいくら策略を立ててもただで踊らされるほどマヌケではないわ」

 バランはポップがしていることはハッタリだと言うこと気がついた。それ故にバランがしたことは……極めて単純なことである。

 

 接近戦を極めた格闘家は肩を動かさずにパンチを放つことが出来る……通常で有れば肩が僅かに動き、格闘家はその動きを見て予想するものだが……肩が全く動かなければ予想がつかずいきなりパンチが飛び出してきた錯覚に陥る……

 

 バランはそれを利用してポップに攻撃を与えたのだ。ポップは防御呪文スカラを唱えていたので何とかなったが相当応えた……そして二撃目がポップの腹にクリティカルヒットして現在にいたる。

「ヒュンケル、おっさん……タッチだ。流石にただの魔法使いが竜の騎士のパンチをモロに喰らっちゃ動けないわ……」

「いや……ポップ、よく頑張った。魔法使いの身でありながらバランにそれだけの軽傷で済んだのだ。後は俺たちに任せておけ……」

 クロコダインがポップにそう言うと斧を持ち構えた。

 

「ヒュンケル、クロコダイン……まさかお前二人達があの二人を倒すとは思わなかった……あの二人は相当な手練れ……お前達程度の相手ならば十分だと判断したのだがどうやら私はお前達のことを過小評価していたようだな」

 バランは剣を抜き、構えた……この場で唯一構えていないのはヒュンケルのみだ……

「バラン……お前は何故戦う?」

 いきなりヒュンケルがそんなことを言い出し、バランに質問した。

「もちろんディーノを邪悪なる人間から取り戻すためだ!」

 バランはその質問にダイを取り返すためだと答えた……

「何故邪悪だと言えるんだ? ラーハルトから聞いたぞ……! お前は妻のソアラを人間に殺されたから人間を憎んでいる……違うか?」

「そうだ! 私は全ての人間が憎い!」

「では聞くが……ソアラすらも憎いと言えるのか?」

「!? そ、それは……」

 それは初めてバランがどもった瞬間だった……何故ならそんなことは考えておらず人間を殺すことを毎日考えていたからだ。

「やはりな……お前は人間が憎いのではない……お前は矛盾に耐えられなかっただけだ!」

「矛盾だと?」

「お前は人間であるソアラの慈愛に触れた……だが同時に人間の醜悪も見てしまった。お前はその矛盾に耐えきれずに人間を殺すという行動しか取れなかった……違うか……?」

「……そうかもしれん……だが今更そんなことを言ったところでもう遅い。もう私は唯一の家族であるディーノを取り戻すためにここまで来たのだ」

 ヒュンケルの言葉はバランに届かず、バランは剣を置き、目に着けている竜の牙と呼ばれるアクセサリーを外した……

 

「この状態での私の実力はお前達2人同時に倒せるほどではない……故に私、いや竜の騎士の本気を出そう……竜の騎士は何故人間の姿をしているのかわかるか? それは本気で戦えば理性を失い、全ての敵を倒すまでに戦い続けるからだ……もちろん我が息子ディーノとて敵とみなせば例外ではない……!」

 そしてバランは竜の牙を握り、赤い血を流した……しばらくすると血が魔族特有の青い血となり徐々にバランの姿が変わって行った……

 

「これが竜の騎士最強の形態……竜魔人だ」

 そしてバランは竜魔人となり、一行に絶望と恐怖を与えた……

 

「ウオォォオッ!!」

 まずはじめにバランが剣を持ち、襲ったのはクロコダインだった……と言うのも今のクロコダインは通常の状態のバランのギガブレイクをほぼ無効化しているのだ……バランが警戒するのは当たり前のことである。

「ぬぅぅぅ……!」

 クロコダインは手をクロスさせて大防御で防ぐが……

「ハァァァァッ!!」

 バランはクロコダインに足払いをした。

 

「何ッ!?」

 クロコダインがバランに足払いをされたことに驚き、そのまま尻餅をつく……何故なら竜魔人状態のバランとは言え、足のみでクロコダインを尻餅を付かせるのは無理だ。バランはテコの原理を利用してクロコダインを尻餅を付かせたのだ。

 

 何にせよ今の状態のクロコダインは大防御が解除され、バランの格好の餌食だ……

「ドラゴニックブレイク!」

 バランは竜闘気のみを用いてクロコダインに斬りかかる。何故なら先程も言った通りクロコダインにはギガブレイクを無効化する身体を持っている。そんな相手にギガブレイクを使ったところで無駄だ。ならばいっそのことデイン系を用いらずに竜闘気を用いて破壊力を高めた結果、新しい技ドラゴニックブレイクが産まれたのだ。名前のセンスがないのはバランが竜魔人であるが故だろう。

 

「ブラッディースクライドーッ!!」

 ところがヒュンケルが自らの切り札ブラッディースクライドを放った。

 するとバランはクロコダインの攻撃をやめ、とある呪文を唱える。

「ギガデイン!」

 ここで言っておくがバランはギガブレイクのためにギガデインを出すようなイメージがある。しかし本来のギガデインの使い方──つまり剣ではなく人や魔物などに向けて放つことは滅多にしない。だがバランは本来の使い方の方を選んだ。すなわちヒュンケルにギガデインを放った。

 

「グァオォォーッ!」

 ヒュンケルの装備している鎧、すなわちラーハルトの鎧は前装備していた鎧同様にデイン系の技は通す。

「ギガデイン!」

 ライデインですら相当なダメージを負うのにその上位のギガデイン2発となればヒュンケルにとって致命傷とも言えるダメージを負わせることができる。

「これで一匹目」

 バランはそう告げると空気となっていたレオナの首を叩き、気絶させた。

「二匹目」

 レオナを気絶させたのは単純な理由でヒュンケルの回復を阻止させるためなのともうひとつ……自分の妻ソアラに通じるものがあったからだ。

「さてクロコダイン。後はお前を倒せば終わりだ……そこの魔法使いの小僧は魔力も尽き、先程のように逃げることすらもできん……」

 

「やむを得ん」

 クロコダインは斧を落とし、自らの闘気を静め……ほぼ0にした。

「何の真似だ……? クロコダイン……」

 バランがクロコダインの異変に気がついた……

「何、一か八かの賭けをするまでのことだ。これで失敗すれば俺はほぼ負けが決まる。ただし、成功すればバラン。お前に大ダメージを与えることが出来る」

「無刀の陣か……いいだろう。その勝負受けて立とう!」

 無刀の陣。アバンがハドラーを倒す際に使った技のひとつで攻撃力を何倍にも上げる代わりに失敗した時のリスクも大きいカウンター攻撃だ。

「ドラゴニックブレイク!」

 バランは竜闘気を込めた剣でクロコダインに一気に迫る……

「獣王会心撃!!」

 クロコダインは一瞬で闘気を溜め、獣王会心撃を放った。そしてクロコダインのタイミングはバッチリでバランに決まった……ように見えた。

「何ッ!?」

 簡単に言うならばバランはそれをよけたのだ……まさにその動きは芸術的な動きだった。

「(残念だったな……クロコダイン。お前が斧ではなく獣王会心撃で攻撃することはわかっていた。お前が斧をとっていれば間違いなく私に勝てただろう。欲を張りすぎた結果だ)」

 そしてバランのドラゴニックブレイクが決まった。

「済まない……ポップ……俺が不甲斐ないばかりに……グフッ!」

 そしてクロコダインは大量の血を流し気絶した。

「お、おっさ〜んっ!!」

 ポップは信じられなかった。クロコダインがバランの攻撃に合わせてタイミングがバッチリ決まっていたのに、バランがそれをよけたことを。

 

「ハァッ!」

 そんなことを考えているとバランはポップを蹴り飛ばした。

「ヴゲッ、ガフッ……ゴフッ……!!」

 ポップは放物線を描き地面に叩きつけられ、口から血を出した……

「どうやらここまでのようだな」

 バランが剣を持ち、ポップに近づこうかと思われたその時……

「なんてこった」

 ポップがそうつぶやくのは無理なかった。この場にはいてはいけないダイが現れたのだから




最近はジゼルの出番があまりありませんよね…私としても出したいんですが…バラン編での出番は解説くらいしかありませんね…そんな自分にorz
とはいえ自分が書かなければ他の方にも迷惑をかける可能性も否定できませんので書き上げました!

そう言えば最近失踪している方々ってあれなんですよね…リアルが忙しいのもありますが名前を伏せて他の作品書いていたってパターンもあるんですよね…バクみたいな感じで実際に見かけました…

では感想が有れば感想に、この3次創作を書きたければメッセージボックスにどうぞ!


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竜の騎士兼勇者復活!竜騎将敗れる!

バランはダイをずっと見つめていた…

「おじさんは誰?」

ダイが口を開き、バランに尋ねた。

「私はお前の父親だ…」

バランは竜魔人となっても父親としての意識はあり、物静かにそう答えた。

「でも、おじさんの姿…まるでバケモノだよ。」

「……確かに今の私の姿はバケモノそのものだ。お前はどうやら母親の血が濃いようだ…故に竜魔人とはなれぬだろう。だが…その布をとってみるがいい。」

バランは竜の紋章を輝かせた。するとダイがポップが託したバンダナをとった。

「再びダイの竜の紋章が輝き出した!?」

ポップは驚きの声を上げた…というのもダイの記憶が消えてしまい、竜の紋章が全くと言っていいほど輝いていなかったからだ。

「あ…わかる!わかるよ!おじさんは嘘をついていない!」

「その紋章こそが私とお前をつなぐ証なのだ…私はお前の父さんなのだよ…」

「父さん…!」

フラッ…!

ダイはバランに近寄ろうとするが…そこに立ちふさがったのはこの中で唯一動けるポップだ。

「…どけ!」

バランが激怒し、ポップに殺気を放つが今のポップには無意味だ。

「どくかよ…俺は他の誰よりも無様だった…けどな!俺はダイに出会って人生が変わった!ダイに出会っていなければ俺はもっと無様に暮らしていた!!そこにいるヒュンケルもそうだ!ヒュンケルは育ての親をアバン先生に殺されたと思い込み一生アバンを恨んで過ごしたかもしれないし、誤解が解けても永遠に罪悪感に苦しんでいるはずだ!姫さんもダイがいなければ死んでいた!…そんな俺たちを救ってくれたダイが俺たちの敵になっちまうなんて……死んでも我慢出来ねえ!!!」

ポップは魂の篭った熱い想いを言って涙を流した…ポップがレオナのことを知っているのはフレイザードを倒した宴会の時にレオナが泥酔してポップに話したからである。

「そうか…ならば死ぬが良い!」

バランが歩いてポップに徐々に迫ってくる…

 

「(くそっ…何かないのか?ん…この球宴会の時におっさんに貰った物だよな…この球使えるか?ダメだ!こんな球が役に立つとは思えない…アバン先生ならどうした?!考えろ…考えろ!)」

そしてポップは一つの案を思いついた。自己犠牲呪文メガンテだ…

「ダイ…そのバンダナずっと持ってろよ!俺のトレードマークなんだ…」

ポップは笑ってそれだけ言うとダイを突き飛ばした。

「え?!」

ダイは突然のことに驚き、尻餅をついてしまう。

「うおおおおぉぉぉーっ!!」

ポップが出た作戦は特攻…のように見せかけ、バランの頭に手を差し込むのが目的だ。

「あああ…!」

ダイはその時点で苦しんでいた…ヒュンケルの過去、バランの殺気、倒れているクロコダイン、そしてポップにバンダナを託されたことがキーポイントとなっていた。

「だろうな…こんな無様な姿見たくもなければ触りたくもない!ギガデイン!」

そしてバランがかなり毒を吐きながらギガデインをポップに向けて放ち、ポップに直撃した。

「ぐぁぁぁーっ!」

そしてポップの断末魔…

 

それは一つの奇跡だった。氷魔塔、炎魔塔での出来事…ジゼルとの対峙が関係していた。

ダイが一番最後に忘れた記憶が今蘇り、そこから連鎖が続き…

「ポップ~っ!!」

ダイの記憶が完全に戻った…

 

「ダイ…記憶が戻ったのか!?」

ヒュンケルがそのことに驚き、思わず叫ぶ。

「うん、大丈夫!」

ダイは笑い、そう答えた。

「また記憶を取り消せばいいだけのことよ…」

バランは竜の紋章を光らせ、再びダイの記憶を失わせようとした。

「もうそんな手には乗るか~っ!!」

ダイは紋章を無理やりというか力任せというかほぼ強引に右手に動かした。

「バカな…」

 

それはあり得ないことだった。本来日光や流水に弱い吸血鬼が「ガハハ」とか言いながらサングラスをかけて日光浴をしたり、「俺は世界水泳チャンピオンになる!」とか言って流れるプールに逆らって泳いでいたりするのと同じ行動である。

 

「バラン…俺は許さないぞ。俺の大切な記憶を奪ったばかりか大切な親友の命を奪ったりして…!!」

ダイは素手だが構え、バランに立ち向かって行った。

「戯け、小僧がぁぁぁっ!」

バランは逆ギレし、ダイの動きに合わせてカウンターを放ち直撃するが…

「そんな程度かよ…みんなには全力を出せて俺には全力が出せないと言うのかぁぁぁっ!!」

ダイは気づかないようだが実際にはバランは疲れ果てている…それもそのはず、ポップとの対峙では時間稼ぎを見事にさせられてスタミナを削られ、クロコダインとヒュンケルにはギガデインを何発も打ち、魔力が切れていた…当然ながら疲れないはずがなかった。

「舐めるなぁぁっ!!小僧!」

しかしバランは竜の騎士としての根性があり、両手を竜の形に変えた。

「貴様のような調子こいたガキにはこれが丁度良い…」

そしてそこにありったけの竜闘気を溜めた…

「この技は一撃でも大陸を破壊する技だ…受けてみよ!ドルオーラ!!」

ベンのイオグランデ、いや…それをしのぐ技が放たれた。

 

「うぉぉぉぉっ!」

しかしダイは両手をバランと同じように構え…ドルオーラを受け止めた。

「なんだと!?」

バランが驚くのは無理もない…同じ竜の騎士が相手となれば未知の領域も多い…だが今の彼は知能のない竜魔人である。

「ふ~っ…いて~っ!!」

 

バランは某世界一の殺し屋が某サイヤ人にドドン波を両腕で止められた顔をしていた…

「おのれ…」

するとバランは何を思ったのか剣を持ち出し、ダイに切りつけた。

「やはり貴様と言えど素手では歩が悪いようだな!」

バランがだんだん小物臭くなっているがそこは気にしないで欲しい…

「くそっ!」

ダイはパフニカの短剣を取り出し、必死に抵抗するが…無駄だった。リーチに差があり過ぎるのだ。

 

「ダイ…!受け取れ!」

すると身体を動かせるようになったクロコダインが真空の斧を投げ渡した。

「その斧は特別製だ…多少のことなら壊れはせん…!思い切りやってやれ!」

ダイは斧を持つのは初めてだが短剣よりもマシなのでバランとの攻防に応じることができた。

 

「アバンストラッシュ!!」

そしてダイの竜闘気入りのアバンストラッシュがバランに炸裂し、真空の斧がボロボロになり壊れた…

 

「…やった!やったぞ!」

ダイはバランに手応えを感じそう宣言した。

「よくぞやったダイ!真空の斧は惜しかったが、まあ…バラン相手ではやむを得ん。」

クロコダインはそう言ってダイを祝福した。

「うん!ありがとうクロコダイン!」

「それよりもレオナ姫を起こさないとな…ダイ起こしてやれ。」

ヒュンケルは冷静に状況を判断し、レオナを起こすように促した。

 

「はあっ、はあっ…今のは死ぬかと思ったぞ…!」

そしてダイがレオナに近づくと通常の状態のバランが現れた。

「バ、バラン!?」

「あれだけの攻撃を受けて生きていたのか!?」

「あの斧が壊れなかったら私と言えども死んでいた…」

バランが死ななかった理由はまさにその通りであり、真空の斧がオリハルコンだったら間違いなく死んでいただろう…

「…ヒュンケルよ。あのまま全員を殺し、ディーノと共に過ごしたら永遠に苦しむことになっただろう。礼は言っておく。ありがとう…」

「気にするな…ラーハルトが気にしていたことを俺は代弁したにしか過ぎない。」

「そうか…餞別としてそこの魔法使いの小僧に出来ることをしよう。」

「餞別?」

「私の血だ…私の血には当然ながら人間の血だけでなく魔族の血、竜の血も混ざっている。それ故に生前に闘志があるならばこの小僧は生き返る。」

そしてバランは自らの血をポップに流し込んだ…

「げほっ…ごほっ…!」

するとポップは生き返り、眠りについた…だが生き返るのはあまりにも早過ぎた。

「信じられん…早過ぎる…」

バランもそれに驚きの声を上げた。

 

ここで解説しよう…何故ポップがそんなに早く生き返ることが出来たのかを…

クロコダインに貰った球…あれこそがポップが生き返ることが出来た物なのだ。それを復活の球という…復活の球は所有者が死んだ場合復活することができる。ただしその際に復活の球は破壊されボロボロになる…

 

「なあ、あんたこれからどうするんだ?魔王軍に戻るのか?」

ダイがそう言ってバランに尋ねる。

「魔王軍には戻らん…もはやあそこに未練はない。」

そのことにダイはホッと息をつく…

「じゃあどうするんだ?」

「これからのことを考える…いずれ私とお前は会う機会ができるだろう。さらばだ…」

バランはそう言って立ち去って行ってしまった…

 

~鬼岩城~

「…終わりましたね。」

ジゼルがそういい、状況を把握する。

「バランの奴め…まさか魔王軍を抜けるとは…」

ハドラーがかなり意外そうな声を出し、興味深く見る。

「それでどうするんですか?バーン様…」

キルバーンがそう聞くとバーンは少し考え、キルバーンに向けた。

「そうだな…キルバーン、空戦騎ガルダンディーと竜騎将バランの暗殺を命じる。」

「わかりました…では失礼します。」

キルバーンは歩いて、その場を立ち去った…

「では皆の者、これにて解散だ…」

バーンが全員を解散させた。

「では私達も失礼します…」

ハドラーがそう言い、立ち去ると全員が立ち去った…

 

~荒地~

「こちらでどうですか?ジゼル様…」

蘇生液で復活したベンがそう言って建物を見つける。

「いいわね。ナイスよ、ベン。」

スカートを履いていたジゼルは妙な違和感を感じていた…腹痛、吐き気、その他諸々の症状が出ていた。

「もうすぐだから…待ってて…」

建物内に入ったジゼルは誰かをあやすかのように腹を撫でた…そう…ジゼルは妊娠していたのだ。

 

「…痛~っ!?」

しばらくするとジゼルはものすごい激痛に襲われ、ベットに横たわった。

「だ、大丈夫ですか!?」

連れてきたモンスター三匹が駆け寄りジゼルを心配する。

「こ、この~っ!!治りなさい!!」

そして…瞬時最大級の痛みが来たがそれを乗り越えて…ジゼルは赤ん坊を生み出した。

「オギャー、オギャー!」

通常なら一発で赤ん坊を生み出すのは相当難しいことである。だがジゼルの場合痛みを堪えようと力み過ぎて赤ん坊を生み出した…と言うわけだ。

「…えっとどういうこと?」

ジゼルはなんで赤ん坊がいて、しかも泣いているのかわからなかった…それもそのはず…人間ならば妊娠して10ヶ月してから子供を生み出す物だが…魔族の場合はそれに比べかなり早い。

「あー…どうなっているんだ?」

「知らん…なんで赤ん坊がここに?」

「俺が知りてえよ…」

このモンスター三匹はついに現実逃避をし始めた…

「オギャーオギャー!」

そして二回目の赤ん坊の泣き声にはっとしてジゼルは赤ん坊のへその緒を辿ってみると…自分の方に出ていた。

「もしかして私とハドラー様の子供?…どうしよう?」

しばらくの間ジゼル達は子守と名前をどうするか考えた…




ABC「「「久々のモンスターABCのあとがきコーナー!」」」
A「いやー謎の展開ですね…まさかジゼル様が子供を生むなんて…」
B「全くだ。あの人はなんでああもマイペースなんだ?」
C「いやいやそれは関係無いでしょ…それよりもB身体大丈夫なんですか?」
A「あ!それ俺も気になっていました!」
B「ん〜まあ一度死んだけどもう平気だぞ。」
C「それは良かったです…あ、そろそろ時間です。」
ABC「「「では次回もよろしくな!」」」


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親衛隊隊長、旅の準備をする…

タイトル詐欺?いえ準備ですよこの話は!!(元ネタ同作者の作品【チャゴス?いえチャールズですよこいつは!!】より)


 〜バルジ塔〜

 ジゼル達一行はバルジ塔に来ていた。それというのもフレイザードが眠っている地であるからである。

「しかし今更何故ここに来たんですか?」

「うん。フレちゃんと過ごしたあの日が懐かしく思って、ここに来たの」

 ジゼルは思い出す。フレイザードが食事の前に(本当にその必要性があるのか疑問だが)つまみ食いをして追いかけたことを。

 だがジゼルもフレイザードも幸せだったに違いない。形はどうあれジゼルはハドラーとの子供の面倒を見て楽しかったし、フレイザードはジゼルを本当の母親のように感じていた。フレイザードにあそこまでの出世欲があったのはジゼルへの恩を返すためだ。

「フレイザード様に報告でもするんですか?」

 しばらく出番のなかったアークデーモンAことアクデンがそう言って尋ねる。

「そんなところ。はあっ!」

 ジゼルはそれだけ言うと地面を殴った。

 

 

 すると地面が揺れ、亀裂が入り、そこからマグマが発生した。

 

「い、一体何をする気ですか!?」

 ガーゴイルCことカラスがそう聞くがジゼルは無視した。

「マヒャド!」

 ジゼルはマグマの出した方向の逆にマヒャドを唱えた。

 

「/$%〒^×*€¥°」

 ジゼルは某情報思念体の早口言葉のように通常の人間や魔族が理解出来ない言葉を発した。すると凍てつくマヒャドの氷の塊と灼熱のマグマから生まれた炎の岩石が一つに集まると徐々に人型が出来て来た。

「まさか、そんなやり方でやるとは」

 ベリアルBことベンはジゼルのチートじみた行動に呆れ、溜息を吐いた。

 

「……ん? 俺は確か、ダイにやられて死んだはずじゃ?」

 そう、ジゼルはフレイザードを復活させたのだ。

「フレぢゃ〜ん!! 良かったよ〜!!」

 ジゼルは涙をボロボロと流し、フレイザードに抱きついた。

「わっ!? お袋!?」

 フレイザードはジゼルが抱きついたことに驚き、前よりも冷静に状況を把握する。

「(……お袋、どうやら俺を蘇らせたみたいだな。こいつは嬉しい誤算だ。ダイ達に復讐するのもいいが、一番許せねえのは俺を利用したミストバーンだ。お袋やハドラー様には悪いが魔王軍を抜けさせて貰うぜ)」

 フレイザードはミストバーンに復讐する為に魔王軍から抜けることを決意した。それを言おうとしたが予想外の言葉がフレイザードの時を止めた。

「フレちゃん。私、ハドラー様との子供を産んだんだよ」

 

 ピシィッ! フレイザードはその言葉に硬直した。

「言語が限りなく今の言語に近かったが、何語で話したんだ? 古代語か?」

「だから、私とハドラー様との子供なのよ。この赤ちゃん」

「ついにハドラー様耐えきれなかったか。仕方ねえか」

 フレイザードはまだまだ産まれたての上、禁呪法で作られた存在であるが故に性欲の概念もない。しかしジゼルが押して、ハドラーはそれを回避する。それの毎日を見ていたら限界もくることはフレイザードにもわかっていた。

 

「フレちゃん、貴方に頼みがあるの。しばらくの間この子の面倒を見て欲しいの」

「……なあ、ベン」

 フレイザードは思わずベンに尋ねた。

「なんだ?」

「お袋はなんて言ったんだ? 俺には全くわからない言語で喋っているようにしか聞こえなかったが?」

 フレイザードは現実逃避をし始め、ジゼルの言った言葉を古代語か何かと置き換えた。

「現実逃避をするな、フレイザード。ジゼル様はお前にその赤ん坊の面倒を見るように頼んでいる」

 

「ふぅ~、やっぱりか。しかしなんで俺なんだ? 別にお袋が面倒見ても問題はねえと思うが」

 フレイザードは何も考えていない訳ではなくジゼルが何故自分に子守を押し付けるのか理解出来なかったのだ。と言うのも魔王軍でも子守をするケースもあったからだ。ハドラーの魔王軍最強の騎士バルトスはヒュンケルの面倒を見ていた。そのおかげでフレイザードにとっては認め難い事実だがヒュンケルは六軍団長にも推薦された……だからフレイザードにとっては下の兄弟にあたるこの子供も魔王軍にいた方が都合がいいと思った。

「フレちゃん。どうせ魔王軍に戻らないでしょ?」

「なんのことだ?」

 フレイザードはすっとぼけるがジゼルには無駄だ。

 

「ハドラー様から聞いたけどミストバーンに利用されたそうね。フレちゃんの性格上、ミストバーンに復讐することを望むはず。復讐がいけないことなんて言わない。むしろ私はそれで正しいと思っている。それが当たり前の感情なんだから……」

「お袋、俺を応援するのはありがたいんだがそれは魔王軍の敵を作ることになるんだぜ?」

「もう、魔王軍には絶望したわ」

「ハドラー様が死んだからか?」

「ううん……生きているよ。むしろ元気なくらい。だけど違和感を感じていたのよ」

「そりゃどういうのだ?」

「ミストバーンによって復活した時のハドラー様、殺し屋キルバーン。この二人から感じた匂いがどうも変な感じだったの。で、その匂いがハドラー様に抱きついてとあるものの匂いだって気づいたって訳」

「黒の核晶か?」

 フレイザードはジゼルが嫌がるものをある程度知っていた。そのなかには黒の核晶という爆弾が入っていた。この爆弾は魔法使いなどではタブーとされている禁呪法をホイホイと使う魔族ですら恐れる恐怖の爆弾だ。使用例はヴェルザーなどの超過激な者しか例がない為使ったら歴史に悪い意味で残る。

 

「「「な、なんだって!?」」」

 モンスター三匹はその事実に驚く。黒の核晶もそうだが、何よりも驚いたのはあの抱きつくスキンシップに意味があったことだ。

「そう! あの大魔王バーンは、ハドラー様との約束を違えたばかりか、ハドラー様に黒の核晶を埋め込んだ張本人……私はバーンが許せない……っ!! だから私はバーンに復讐する為に育児休暇と偽ってさりげなく魔王軍を抜けるっ!!」

 ジゼルは育児休暇を利用して魔王軍を抜けることをフレイザード達に話した。

「ふ〜ん。それで俺が赤ん坊を世話することの理由になっていないがどう説明するんだ?」

「それはね、フレちゃんは魔王軍に直接対峙する訳にも行かないでしょ? 私は変装すればダイ君達を使って魔王軍とも対峙できるけどこの子の面倒を見なければならない。お互いに有利に事を運ぶにはそれが一番良いかなって思って」

「なるほどな、それでお前らどうするつもりだ?」

 フレイザードはモンスター三匹に対して忠誠心があるか一応質問した。

 

「ふっ、舐めるなよフレイザード」

 ベンがそういうとアクデンが続いた。

「その通り、我々三人は」

 アクデンの次はカラスが続いた。

「ジゼル様に」

 そして三人が声を揃えた。

「「「忠誠するのみ!!!」」」

 三人はドヤ顔でそう答えた。

 

「ありがとうみんな!!」

「お袋、そういえば赤ん坊の名前は決まっているのか?」

「もちろん! 名前はハドラー様、ラーの鏡、伝説の不死鳥ラーミアのラーと風のゼファーと私の名前のジゼル、そしてヒュンケルとその義父バルトスからちなんでラーゼル、この子はラーゼルよ」

「絶対ハドラー様とお袋の名前を足して2で割っただけだろ?」

 フレイザードが触れてはいけないところを突っ込んだ。

「ラーゼルよ。この子は……良いわね?」

 ジゼルは半ギレし、低い声を出した。

「わかったから殺気飛ばさないでくれよ」

 フレイザードはそれに呆れながらもラーゼルをみた。

 

「そういえば、ジゼル様」

 カラスがそれまで疑問に思っていたことを聞こうとジゼルに尋ねた。

「何?」

「ラーゼルって男の子なんですか?」

 そう男女の区別がわからなかったのだ。

「いや女の子よ。可愛いでしょ?」

 ジゼルはラーゼルという名前が女の子の名前だと完全に思っていた。

「はあ、そうですか」

 カラスにはそのセンスが理解出来なかった。




というわけでオリキャラ、ラーゼルの登場です。ラーゼル自身はこちらが原点ですが私の作品の中では初登場ではありません。登場するのに遅れたのはバラン編が長引いたことが原因です。


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武道家、武道会に出場する!

~某所~

「はあっ、はあっ! くそっ!!」

ガルダンディーはとにかく逃げていた。その理由はというと

「ほ~ら、おとなしく殺されちゃいなよyou!」

キルバーンがしつこく追いかけて来たからである…キルバーンの口調が変わっているのは気分によるもので、特に意味はない。

「キャハハハ! キルバーン、ドS~!!」

使い魔ピロロが笑いガルダンディーをコケにする…

「ほらもういっちょ。」

グザッ!

キルバーンの鎌がガルダンディーの羽根を斬り、ガルダンディーを動けなくする。

「グッ……!!」

ガルダンディーはそれを堪え、羽根を羽ばたき逃げようとするが、飛べない。ガルダンディーの騎乗していたスカイドラゴンのルードはキルバーンによって殺されている。それを知らないガルダンディーはむしろ幸運かもしれない。知っていたらガルダンディーはキルバーンに立ち向かい、真っ先に死んでいたはずだ。例えジゼルによるトラウマが植えられてもだ…現在ガルダンディーが逃げているのはジゼルのトラウマが原因である。

「仕方ねえ」

ガルダンディーはこうなったら足で逃げるしかないと判断し、地上に降りて足で駆けるが、キルバーンが飛ぶ速度に比べたら遥かに遅い。

「無駄だよ無駄無駄♡」

キルバーンはガルダンディーの背中を斬り血吹雪を出させる。

「グァッ…!!」

しかしガルダンディーはその痛みすらも感じないように出来るだけ逃げようとする…いや正確には竜騎衆の集まるアルゴ岬へと移動しようとしていた。そこに行けばバランがいると思っているからだ。

「君の狙い、わかっちゃった。大方君はあれだろう?バラン君に助けを求めようとしている。だけど無駄だよ。君は気絶していたからわからないけどバラン君は今、傷を癒している真っ最中。君を助ける暇なんてないんだよ。」

キルバーンはガルダンディーの狙いに気づき、そう指摘した。

「う、嘘をつくな……ぜー、バラン様がそんなに弱いわけない……!」

しかしガルダンディーは信じなかった。何故ならガルダンディーにとってはバランは絶対の存在だと認めていたからだ。

「残念だけど奇跡が起きてね。勇者ダイが記憶を取り戻して疲れ果てたバラン君を倒したんだよ。流石に死にはしなかったけどそれでも重傷は負ったみたいだしね。」

しかしキルバーンの言ったことは事実だ。バランは今治療をしておりガルダンディーの元に駆け寄るのは無理だった。

「じゃあね。」

キルバーンがそう言ってガルダンディーにトドメをさそうとするが…何者かによって止められた。

 

「そこまでだ、死神。」

その声はガルダンディーの主人であり、ダイ達とも戦った竜の騎士であるバランだった。

「バラン様。ありがとうございます。」

ガルダンディーはバランに礼を言ってその場に倒れる。

「ふ〜んもう身体の方は良いのかい?」

キルバーンはバランの登場に意外そうな声を出した。

「貴様ごときに遅れを取る私ではない。死ね。」

バランは真魔剛竜剣を取り出し、キルバーンを真っ二つに斬った。

 

「流石バラン様、ありがとうございます。ですが俺はもうダメです、血を流し過ぎました。」

ガルダンディーは気づいていた。どのみち自分は助からず、このまま多量出血で死ぬということを。

「ラーハルトもボラホーンも死に、せめてお前だけは生きて欲しかったが死神が相手では運が悪かったか」

バランは自らの部下が自分よりも早く死ぬことを哀しみ、そう言った。

「バラン様、最後にこれを……」

ガルダンディーがそう言って渡したのは一枚の普通の薬草だった。

「む?これは!?」

バランはそれを受け取り、薬草を見て驚く。

「まさか竜騎衆の中で一番弱い俺が長生きしちまうなんて思いもしませんでした…」

ガルダンディーは最期にそう言い、死んだ。

「ガルダンディー、逝ったか」

バランはガルダンディーを棺桶の中に入れて軽く土を掘り…その穴に棺桶を入れて土葬した。

 

「た、大変だ〜!!」

バランが去るとピロロがそう言って粉を取り出し、真っ二つにされたキルバーンにかけた。

「う、ふふふ。バラン君相当やるね。まあ一匹は駆除したし良しとしよう。」

キルバーンは復活し、元に戻った。

 

〜ロモス〜

ロモスではロモス国王主催の武道会が開かれていた。その武道会には様々な人間達が集まり、優勝賞品を狙っていた。

「覇者の剣か」

その優勝賞品は覇者の剣。世界で最も硬く強い金属、オリハルコンで出来た剣なのだが、一人だけその覇者の剣が偽物だとわかっていた。

「(覇者の剣は既に魔王軍の元にあるのを知らないの?)」

そう、ジゼルだった。彼女は武器回収をする際に覇者の剣を回収していた。覇者の剣はハドラーに献上しており、魔王軍の元にあった。

「(魔王軍の誰かが裏切ったか。あるいは人間を集めて何かをする作戦なのか。どちらにしても気になるわね。)」

ジゼルは何にしてもここで考えても仕方ないので武道場に入った。

 

「それでは受付が終わりました。ゼシカ様。控え室でお待ちください。」

ゼシカというのはジゼルの偽名だ。もし本名であるジゼルと登録したら魔王軍の足を引っ張ることになるし、それに悪魔の目玉で見た顔…マァムがいたのでジゼルが魔王軍の手先だとわかれば襲われる危険もある…それ故にジゼルは顔を隠していつもの格好とは違いモシャスをして人間に化けて魔法戦士のような格好をしていた。

 

ちなみにジゼルがゼシカという名前を使ったのは暗黒神ラプソーンを封じた七賢者の内の一人シャマル・クランバートルの娘ゼシカ・クランバートルに由来する。

 

「それでは選手の皆様は集合してください。」

ジゼル達一同はそう呼ばれ集合することになった。

 

「それでは予選を開始しますので名前を呼ばれたらリングに立ってください」

司会者がそう説明すると紙を開いた。

「ではラーバ選手とゼシカ選手舞台にお立ちください。」

早速名前が呼ばれ、ジゼルがリングに立つと…

「おいおいあの嬢ちゃん、可哀想だな。」

「ああ、優勝候補No.1のラーバに当たるなんて不幸にも程があるぜ」

そんな話を聞いてジゼルは…

「(この人ボロボロにしたらどうしよう。手加減出来るかな? いや手加減しないと注目を浴び過ぎて逆に危険ね)」

そう、よりによってジゼルは優勝候補No.1の相手と戦わなくてはならない…ボロ勝ちしても注目されてしまうので手加減することは当たり前のことだった。

 

「それでは始め!」

「(私のような闘技場のなかでは小柄な体型はスピードタイプが多い。少なくともパワーでねじ伏せるような真似は止めないと)」

ジゼルはそう考えて作戦を立てた。

「ウォォォォッ!!」

ラーバがジゼルに殴りかかってくるがクロコダインという典型的なパワータイプをパワーでねじ伏せたジゼルにとっては脅威ではなく、冷静に対応する。

「遅い…」

ジゼルはヒュッ!と避けてラーバの攻撃を避けた。

「(速いっ!)」

それを見ていたマァムはそう思わざるを得なかった。マァムはブロキーナに師事してきたがあれ程までに速く動けるかと言われれば否だ。ジゼルは修行の際にベンに後ろを取られたことがある。スピードが遅い? 違う、スピードならジゼルの方が上だろう。ベンの最大の特徴は立ち回りの良さだ。パワーアップしたクロコダインですらもベンの立ち回りの良さに苦しめられた。ジゼルはそこから学び取り、1〜2回行動くらいは出来るようになった。

 

「はあっ!!」

ジゼルは避けた瞬間に素手で疾風突き(普通ならリーチの関係上槍だがそれを補うスピードがジゼルにはあった)を放ちラーバの腹に炸裂する…すると

 

バキバキッ!

 

という音がラーバから聞こえてきた。ラーバの背中の骨は折れ、気絶し戦えなくなってしまった。

「(この人、パワーに関しては私と同じくらいだけどスピードが桁違いね)」

ジゼルは疾風突きを放ったはずなのだがマァムからしてみれば正拳突きに見えた。何故ならラーバからは自分の正拳突きでやったと同じような音が聞こえたからだ。それ故にマァムがジゼルの戦闘スタイルが超スピード型と判断してしまった…

 

「審判?」

審判からジゼルの勝利宣言の声が聞こえて無かったのでジゼルは審判に尋ねた。

「10.2!魔法戦士ゼシカ選手予選突破です!」

こうしてジゼルは予選最速のタイムで予選を通過した。

 

それからしばらくし、予選も順調に進んでマァムの予選が始まった。マァムの相手はクロコダイン並の大男でかなりマッチョだ。何をどう食事したらそうなるのか疑問だがそれはジゼルにとってどうでも良かった。

 

その理由はある一人の男に視線を注がれていたからだ

「(これはダイ君の匂い…?)」

ジゼルは竜の血を引いており身体能力が非常に高く、嗅覚も高かった。そのため何度も会ったことのあるダイの匂いを覚えており嗅ぎつけたという訳だ。某犬刑事などと突っ込んではいけない。

 

「3分15秒!武道家マァム選手予選突破です!」

ジゼルがそんなことを考えているとマァムが試合を終わらせてダイ達にいる方向に近づいた。

 

「聞こえたわよぉ? ポップ?」

マァムがドスの効いた声でそう言ってポップに近づくとポップが青い顔をした…と言うのもマァムの試合を見ていたポップが「こんな化け物見たいな力の持ち主が可愛い顔してる訳ねーって!」などとマァムの顔を見ずに大失言してしまったからだ。

「も、もしかしてマァム、か?」

ポップは頭ではわかっていた。しかし身体が拒否していた。「ええ…もちろん。」

マァムはにっこりと笑っていたが目が笑っていなかった…

「歯ぁ食いしばりなさいっ!」

ドガッ!バキッ!!メキャッ!!!

 

〜お仕置き中しばらくお待ちください〜

 

「まひかいねえや、このほうりょくせいとなくりかた…(間違いねえや、この暴力性と殴り方…)」

ポップはお仕置きされたことによってマァムだと確信する。ちなみにマァムがポップに対して最初にお仕置きしたのはマァムが男と勘違いされたのに対しジゼルがスタイル抜群の持ち主だと発言したことである。

 

「痛っ、何だ?」

しかし後ろから不自然な痛みを感じ後ろを振り向くとそこには大ネズミがいた。

「ん? なんだこいつ?」

ポップは今までのことが非常識過ぎて全く動じなくなっていた…クロコダインは魔王軍の元軍団長という立場だったが平気で人と混ざって宴会を楽しんでいたし、ヒュンケルも魔物に育てられていたのいうのは聞いた…またアバンから邪悪なる魔物から邪気を追い出して魔物を扱い、戦う魔物使いやそれらに酷似したモンスターマスターなる職業の話も聞いていた。もちろんポップは魔物から邪気を追い出す才能はなかったため魔物使いやモンスターマスターにはなれないが…

 

閑話休題…恐らくこの大ネズミは魔物使いなどの手によって邪気を追い出され、生活が自由にできるのだろうとポップは考えた。

「なにやっているんだよ?! ポップ!?」

しかしダイはそんなことは知らない。ダイだけがパプニカのナイフを出して警戒していた。端から見ればアホ丸出しである。

「おめえ、アバン先生から魔物使いやモンスターマスターの話聞いてないのか?」

「何それ?」

ポップはダイに魔物使いやモンスターマスターの説明をした。

「ふ〜ん、そんな職業があるんだ。俺も出来そうだしやってみようかな。あ、俺勇者って職業だし無理か。」

などとダイは冗談を織り交ぜつつも感心していた。実際にダイはデルムリン島でモンスター達を巧みに操っていた…もしもダイが勇者で無ければ魔物使いやモンスターマスターになっていたのかもしれない。

「正確に言うとこの子は私の師匠、武術の神と言われる拳聖ブロキーナに改心されて私と一緒にブロキーナ老師に師事した兄弟弟子なの。空手ねずみのチウよ。」

マァムがそうチウを紹介するとチウは偉そうにふんぞり返っていた。

「僕が空手ねずみのチウだ。以後よろしく頼むよ。フフフ…」

そう言ってチウは不敵に笑う…

「空手ねずみ…ってそのリーチの長さで届くのか?」

ポップは空手と言うからには何か手があるのかと思っていたら…

「僕ならなんとでもなるさ!」

とウザいまでのドヤ顔でチウは答えた。

 

「ところで君が勇者ダイかい?」

チウはダイに話しかけた。

「そうだけど。」

「意外と小さいんだな…プ…」

チウはバカにするように少しだけ笑った。

「そ、そうかな…」

ダイは複雑だった…スケベ大王にスケベと言われるかミラクルバカにバカと言われるようなことは初めてだった…チウの身長はダイの胸程なので察して欲しい。

 

「それではレスラー・ゴメス選手と空手ねずみのチウ選手。リングにお上がり下さい。」

「おっと…時間だ。それじゃ僕の勇姿を見たまえ。ハハハ!」

司会者の声が聞こえ、チウは笑いながらリングへと向かった。

 

「もしかして勇者ダイってのは君かな?」

するとチウと入れ代わりにジゼルがダイに話しかけてきた。

「え?ええ、そうですけど。」

「いや〜君がダイ君か。噂は聞いているよ。なんでも魔王軍の軍団長をバッタバッタと倒して行ったとか!」

ジゼルは初めて会うかのように接してしかも口調も男みたいに変えた。こうすることでジゼルだと悟られないようにするためだからだ。

「ところであんたは?」

案の定、ダイはジゼルに気づかず名前を聞いてきた。

「私か? 私はゼシカだ。この武闘大会に出場している者だ。マァム君、予選突破おめでとう。君と戦うことを祈っているよ。」

「あ、ありがとうございます。そちらも予選突破おめでとうございます。」

マァムはまさか優勝候補No.1を破った相手に声をかけられるとは思わずに戸惑っていた。

 

「そう言えば、そこの魔法使い君は一体?」

ジゼルは一応知っているが初めて会う設定なのでポップの名前を聞いておいた。

「俺? 俺はポップだ。よろしくなゼシカさん。」

「ああ、よろしく。」

かくしてジゼルはゼシカとしてダイ達に接触することに成功した。




ABC「モンスターABCの後書きコーナー!」
A「はい。というわけでまたもや出番がなくなった俺たちですがザムザ編スタートしましたね。」
B「う〜ん…作者がやる気を出してくれればいいんだが…」
C「作者は武道会編ってほとんどネタを考えていませんしね…」

A「それはともかくガルダンディーは即死亡しましたね…」
B「作者としてはガルダンディーをゲスのまま殺したかったそうだが…まあ仕方あるまい。」
C「ガルダンディーって作者が一番嫌いなタイプですからね〜」

A「それにしてもゼシカってあれですよね…」
B「元ネタはもちろんⅧだ。俺もⅡじゃなくてⅧが元ネタだ…作者はⅧが好きなんだよ…」
C「あ、そろそろ時間です…」

ABC「次回も見てくれよな!」


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勇者一行、雑談をする

久しぶりの投稿です…いや〜ようやくスイッチが入りましたよ…


「レスラー・ゴメス選手予選突破です!」

当然ながら、チウは手が届かずゴメスの格好の餌食となって敗北した。

「底知れない弱さだね…」

思わずジゼルは男口調でそう呟いてしまった。

 

「…」

チウは深く影を落とし、かなり落ち込む…リーチなどを考慮せずにパワーのみで本気で勝てると思ったのだろう。

「まあそう気にするなよ…」

ダイはチウを慰めようとするがチウにとってはなんの意味もなかった。

「放っておいてくれ…僕は死刑宣言をされたのと同じものだから…」

またもやチウが影を落とし拗ねてしまった。

「でも体当たりとかそういうの使えばいいじゃんか…」

ダイがそう呟き、チウにアドバイスを送る…

「君…勇者がそんなことをしてカッコイイと思うのか?僕は格好良くなりたいんだよ!」

チウはそう言ってダイを黙らせた…ダイにも心当たりがあるからだ。主にどたま金槌という武器とか…

「やれやれ…チウとか言ったけ?」

黙ってしまったダイに代わってチウにジゼルが話しかけた。

「誰だ!?」

当然ながらチウとジゼルの面識はない…

「私はゼシカ…それよりも君の言っていることは本当に正しいのかい?自らを格好良くする為に戦っているみたいなことを言っているみたいだけど…」

「当然じゃないか!それ以外に戦う理由なんてあるかい!?」

パンッ!

ジゼルの平手打ちがチウに頬に炸裂した。

「何をする!?」

チウは突然の平手打ちに抗議する…

「…ねえ、チウ。もし戦場に出たらどんなことを頭に入れているんだ?」

ジゼルはそう言ってチウを説得しようとした。

「それはもちろん格好良くすることさ…」

「私の友達は泥をすすってでも戦い抜きどんなに無様でもどんなに見苦しくてもわずかに勝率があるならばそっちの方にかけた…」

これはヒュンケルのことでジゼルにも伝わったのだ…ヒュンケル、いやアバンの使徒の諦めない心こそが魔王軍最大の武器だということを…

「…」

チウは黙ってそれを聞く。

「戦場に出れば男も女も子供も関係ない…まして戦い方を気にする者は真っ先に死ぬ。」

フレイザードのフレイザード理論こと男女平等論はジゼルから来ており、ジゼルも敵となれば種族性別問わず、心を鬼にして戦う…

「実際に戦い方を気にした者は死んでいった…私の友は泥をすすって這い上がって来た。」

もっとも敵としてだけど…とはジゼルは言わない。流石にそれを言って誤魔化せるほどダイ達もバカではないことはわかっているからだ。

「今の話しヒュンケルに似ているね…」

マァムはそう言ってヒュンケルのことを思い出す…ヒュンケルの戦い方は邪道とまでは言えないが決して美しい戦い方ではない。苦戦してもギリギリで勝つ…そんな戦い方だ。

 

「ヒュンケル…っていうとあの魔王軍のヒュンケル?」

ジゼルは思い切りヒュンケルのことを知っていたがあえて聞いた。

「ええ…とは言ってももう彼は改心してアバンの使徒として目覚めて私達同様に魔王軍と戦っているわ…」

「その口ぶりからするとアバンの使徒が魔王軍だったみたいだが…まさか君達も魔王軍なんて落ちじゃないよな…?」

そう言ってワザとらしくジゼルは距離を取る…

「バッキャローっ!そんな訳あるか!!」

ポップは冗談でもそんなことを許さず大声をだした。

「ははは、冗談だ…君達の目を見ていても魔王軍のような目つきじゃないのはわかっているよ。」

そう言ってジゼルは笑った後、真顔になった。

「…魔王軍に所属していそうな感じはロモス王の近くにいる大臣なんかがそうだな…」

ダイ達に聞こえる程度に言ってジゼルは大臣を視線に映す

「「「えっ!?」」」

するとダイ達は大臣達の方に振り向いた。

「まあ…そんなことは私の戯言だと思ってくれればいいさ。当たっているかどうかなんて私ですらわからん。そろそろ時間のようだしお暇させてもらうよ。」

そう言ってジゼルは立ち去った…

 

「なんか嵐のような人だったね…ゼシカさん。」

ダイがそう言って感想をいうとポップは溜息をついた。

「あいつが魔王軍なんじゃないの?なーんて…」

もろダイレクトに当たっているぞポップ!しかし残念なことにそれが冗談めいた空気でなければどんなに言っても無駄である。

「何言っているのよ…ポップ。ゼシカさんの目を見たでしょ…」

マァムが呆れた声でそう言ってジゼルを思い出す…

「まあな…あの人、優しそうな感じだったもんな…」

ポップはそれを肯定し、マァムに同調する。

 

そして予選を通過した選手たちがリングに集結した。

 

「さあ~今年の武道大会は大荒れとなっております。優勝候補No.1のラーバ選手を僅か10秒で破った強く美しき男装の麗人ゼシカ~っ!!」

「「「ゼシカ、ゼシカ、ゼシカ!!!」」」

ジゼルが呼ばれゼシカコールが武道場に大きく響く…ジゼルはかなり評判が高くなってしまったがこれでも抑えた方なので気にしていない。

「あーっと、物凄い歓声であります!続いて入場するのは…」

その後色々な選手が登場し…その中で一番目立つのは…

「全く強いのか弱いのかわからない謎の実力者、ゴースト君!」

実況がそう言うと現れたのは頭から一枚の布を覆ってそこに二つの穴を開けただけの格好をした人物だった…ちなみに裸足である。かなり悪い意味で目立った。

「(あのゴースト君って相当な実力者ね…いやでもわかるわ。)」

しかしジゼルだけははっきりとゴースト君の強さを感じていた…マァムも見抜き始めていたのだがそれでも信じられなかった。

「そしてゼシカ選手と同じく女性ながらにして予選を突破した~マァム~!!」

これまたジゼル程ではないが観客席に歓喜に溢れる…

「(様々な選手が集まる中でも…特にあのゼシカさんとゴースト君は絶対に侮れない…)」

マァムはゼシカとゴースト君に注意を払った…そのくらいマァムにとっては不気味な相手だった…

 

そしてロモス王国の大臣が前に出てきた。

「それでは諸君にはくじを引いてもらう…」

そう言って大臣はくじを出して選手たちに引かせる…しかしそのくじがあまりにも変だった。

ジゼルはE、マァムもE…これだけなら普通のくじだが、ゴースト君はAだが同じAを引いた者はいなく、他の選手もペアになっているということはなかった…

「ちょっと待って!」

そしてマァムが異変に気付いた…選手達のくじを並び替えると…そして一つの単語が出来上がった。

その単語はGAMEOVER…少なくとも冗談にしてはやり過ぎだ。

「なんでえ!?これは!?」

当然選手の一人は切れてくじを大臣に投げつけるが見事にキャッチされてしまった。

「どういうことだ!?」

ロモス王が怒り、威嚇するが大臣には無駄だった。

「ヒヒヒ…つまりこういうことさ!!」

大臣…いやそこに現れたのは一人の魔族だった。

「俺は妖魔師団長ザボエラの一子、妖魔学士ザムザ!魔王軍に貢献してくれてありがとう…諸君。」

そう言って現れたのはザボエラのような服を纏った男であり確かにザボエラの息子だと言えるような顔つきだった。

「(まさか…妖魔師団のやることって…)」

「キッヒッヒッヒ…妖魔師団の研究している超魔生物の材料に最も適している人間が欲しくてな。この大会を開いたというわけよ…それに景品を餌にして魔王軍に逆らうロモスにいる馬鹿どもを纏めて始末出来る一石二鳥な作戦…こうも上手くいくとはな…!ヒヒヒ…!!」

ザムザの薄汚い笑い声がその場に響いた…



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氷炎将軍と勇者一行、苦戦する

タイトルが思いつかない…


~某所~

「なんで俺が子守なんか……ブツブツ……」

フレイザードはブツブツと文句を言いながら、ラーゼルの子守をする。ちなみにジゼルはメイド時代に子守もやったことはあるが人間に化けれるという理由から現在は不可能である。

「にしても人間のガキじゃないだけまだマシか。魔族のガキだとまだ手間が少なくて助かるぜ」

フレイザードが何故そんなことを知っているかと言うとジゼルに子守の方法を教わったからだ。当然といえば当然である。もし教えなかったら子育てレベル3のバランよりも酷くなっていたかもしれない…

「全く、魔族のガキでこれだけ手間がかかるんだ。バランの野郎はダイをあやすのに苦労したんだろうな」

フレイザードはそう言って再び子守を始めた。

 

~荒地~

バランはトベルーラでとある場所に向かっていた…しかしくしゃみをしそうになったので止まった。

「……」

バランはくしゃみしそうだったが堪え、そして考えた。

「一体何なのだ?」

このような経験はバランにとっては初めてだったので首を傾げたがすぐにトベルーラで飛んで行った。

 

~某所~

「ふやぁー!ふやぁー!」

ラーゼルが泣いて再びフレイザードを困らせた。

「今度はなんだってんだ?」

フレイザードは氷のような冷静さでラーゼルをみた。

「今度はオムツかよ、しかもでけえ方」

フレイザードはラーゼルの紙おむつを外し排生物を自分の炎で焼いて捨て、オムツを変えて、オムツの処理を終えた。

「(でもまあこれも後2日で終わる。これが人間のガキだったら後一年も待たなきゃいけねえからな)」

魔族は長生きだが赤ん坊の時期は非常に短い…その為、ジゼルはフレイザードに子守を数日任せる程度で済んだ。

「お袋、出来れば早く帰ってきてくれ」

フレイザードはジゼルにそう願いざるを得なかった。

 

~ロモス~

ところ変わって武道場では大混乱が起こっていた。

「さて、お喋りはここまでだ。用件をとっとと済ませよう。ヒヒヒ……!」

ザムザがそう言って闘技場のメンバー達を見た。そしてザムザが合図を送った。

「な、なんだ!? この檻は!?」

ザムザが合図を送ると牢獄が現れ、ジゼルを始め、リングに上がっている選手達は閉じ込められてしまった。

「ヒヒヒ……その檻は壊れることはない。諦めてそこでおとなしく死ぬまで待っていろ」

ザムザはそれだけ言うとロモス国王のシナナに顔を向け、イオラを放った。ここで言っておくがイオラの威力はダイナマイト級である。少なくとも魔王時代のハドラーのイオラですらバダックの作った爆弾を超える。そんなものが戦う術がないシナナに直撃したら間違いなく死ぬ。そして爆発した。

「ん?」

しかしザムザは明らかに爆発が早すぎると気づいた。そして一つの影が映った。その影を確かめようと声を出そうとするが必要なかった。

 

「ダイ、ポップ!お前たちも来ていたのか!」

その正体を教えたのはシナナである。彼はダイやポップ達に助けられた人々の一人でもあり、パプニカに行く際に船を貸してくれた本人でもあるから彼はよく覚えている。

「もうお前たち魔王軍の好きにはさせない!」

ダイがそう言ってザムザを睨む。

「ほう、どうやら一石二鳥が一石三鳥、四鳥にもなったかもな。」

しかしザムザは不敵に笑い、そう呟いた。

「ポップ、王様達を逃がしてくれ!」

ダイは冷静にシナナや観客達を避難させるようにポップにそう言った。

「任せろ!」

 

「行くぞ!」

ダイはバラン戦で目覚めた竜の紋章を引き出し、輝かせ…竜闘気を身体の周りに覆った。

「メラゾーマ!」

ザムザがメラゾーマを放ち、ダイに攻撃するが無駄だった。竜闘気は自らの防御力を上げるだけでなく魔法を防ぐ効果がある。言ってみれば今のダイはマホステにスカラを二回かけた状態である。

「だぁぁぁっ!」

竜闘気の効果はそれだけではない。使い方次第ではバイシオンやピオリムをかけた状態になる。そしてダイがザムザを剣で斬りかかった。

「むっ!」

しかしザムザはそれを腕で防いだ。強化されているダイの攻撃は格闘を得意とする魔軍司令当初のハドラーですら傷つけることができるのにザムザは服を切り裂かれた程度でほぼ無傷だ。

「なっ!? 受け止めた!?」

魔法を中心に攻撃を行う妖魔師団であるザムザはハドラーやジゼルのように身体能力が高いわけではない。では何故受け止められたのか?その疑問がダイの頭によぎる。

 

「そらよっ!」

そしてザムザの拳がダイに襲いかかってきた。

「っ!」

ダイは竜闘気で防御し、無傷だったが違和感を感じた…妖魔師団は体術を得意とはしていないにも関わらずこんなにも衝撃が来るのか?

「ヒヒヒッ! 何故俺がこんなにパワフルなのか不思議そうな顔をしているな?」

その疑問に答えるかのようにザムザが口を開けた。

「妖魔師団は膨大な魔力と反比例するかのように貧弱とも言える身体をしている…その貧弱な身体を変える為に我々は無敵の肉体、超魔生物を研究しているのだ!」

「超魔生物!?」

「超魔生物は妖魔師団長ザボエラ指導の下、神々が作った兵器。つまり竜の騎士を目標にして様々な肉体を作っている」

「兵器だって!?」

ダイが自分の父のことを兵器と言ったことに激怒する

「そう、そしてこの人間達は皆超魔生物の実験台になるわけだ。魔族をバカスカと使えんからな」

「そんなことはさせない!!」

「お前がいるのは嬉しくも悲しくも誤算だった。お前がいることで我々の研究を完成させることは出来る…そしてこの俺の身体もようやく完成させることができる!!」

そう言ってザムザは身体を徐々に変えていき、化け物みたいな容姿になった。

 

「これが超魔生物」

ポップがそう言ってザムザを見上げる。

「俺は自分の身体をベースに超魔生物そのものにしているがまだ90%しか完成していない…100%になる鍵はお前にある…行くぞ!ダイ!!」

ザムザがそう言って襲いかかって来た。

「たぁーっ!!」

ダイは竜の紋章を光輝かせてザムザにカウンターをとり…

「でいっ!はあっ!」

そしてザムザをタコ殴りにしてザムザを押す。

「なんだ!ただの見掛け倒しじゃないか!」

チウがそう言ってポップを見るとポップは険しい表情をしていた。

「違う」

「え?」

「あのくらいの敵ならダイはとっくに倒している。だけどまるであいつには攻撃が通じていねえ」

ポップはそう言ってチウにザムザがほとんどダメージがないことを気づかせる。

「あっ、確かに!」

そしてチウはポップを見ると既にそこにはポップの姿はなくなっていた。

 

「(ふう~参ったわね)」

ジゼルはラーゼルを出産して間もない為、全力を出せず周りにある檻を壊せなかった。全力でやったなら壊せただろうが身体が重く力が入らないのだ。

「(かと言ってデイン系の特技や呪文は使う訳にはいかないし)」

デイン系が使えるのは魔族や魔物ならともかく人間は伝説の勇者のみと限られている。そのため使ったら間違いなく疑われるので使わなかった。

「(それにしても超魔生物ね……バランの刺客が確かそうだったわね。あの時は無我夢中だったらどうやって倒したのか全く記憶にない)」

ジゼルは自分の記憶を思い出してみるがやはりところどころ抜け穴があるのだ。思い出すのはやめた。

「この檻は生きている」

するとゴースト君がそう呟いた。

「?」

マァムとジゼルは首を傾げた。

「さあマァムや、修行した日々を思い出してごらん」

そういってゴースト君はマァムから離れた。

「!」

マァムはゴースト君の正体に気づいてゴースト君に向かって頷き、構えた。

「(なるほどね…下手くそ過ぎて逆に疑ったわ。)」

ジゼルもマァムと同様にゴースト君の正体に気づいた。

「皆離れて!」

マァムが大声を出し、手を白く輝かせた。

「閃華烈光拳!」

そして牢獄は崩れた。

 

「竜の騎士といってもこんなものなのか?ヒヒヒッ!」

ザムザはそう笑ってダイを持ち上げ自分の腹にダイを入れようとしたがザムザは何者かに蹴られ、ダイを吸収し損ねた。

「貴様はマァムか」

ザムザはザボエラ経由で勇者一行のメンバーを教えてもらったためマァムも知っている。

「あなたの悪行もそこまでよ。妖魔学士ザムザ」

そして第2Rが始まった。

 

「(今回はザムザにお仕置きをしてあげたいけどマァムの実力を見る為にも観戦させて貰うわ)」

ジゼルはそう思っているが実際には動けなかった。ジゼルとはいえどもラーゼルを生み出して激しい運動は無理だったということだ。




ABC「モンスターABCのあとがきコーナー!」

A「はいと言うわけでザムザ編スタートしましたね。」
B「本当…早いな…その割には俺達の出番ないけど。」
C「まあまあ、最終決戦の頃には出番も必然的に多くなりますから大丈夫ですって!」

A「フレイザード様はハドラー様よりもジゼル様に似ているんですよね…」
B「そうそう、フレイザードの冷徹な性格もジゼル様からきているんだよな。」
C「意外ですよね〜…ハドラー様かと思いきやジゼル様に似ているなんて。おっと…そろそろ時間ですよ!」

ABC「これからもよろしくな!」


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妖魔学士ボコボコにされる

今年最後の投稿です!


 ~某所~

 

「なあカラス」

 

 アクデンがそう言ってカラスに話しかける。

 

「なんだ?」

 

 カラスはあくびをしながらもそれに答える。

 

「暇だな」

 

 ザグッ! 

 

 アクデンはいきなりカラスの影にトライデントを刺すと──

 

「ゲゲゲッ!?」

 

 魔影軍団のシャドーがカラスから出て行き死んだ。

 

「全くなんでこんなことをしなくちゃいけないんだか」

 

 カラスも影を剣で刺して魔影軍団の魔物を狩る。これには理由があった。

 

 ジゼル達一行にとって魔王軍はすでに敵である。しかし魔王軍はそうは思ってはいない。だがミストバーンはジゼルが産休を使ったことに疑問に思ったのとジゼルが魔王軍の目的である地上崩壊の動きに気づいたかどうか確かめるために動いた。しかし魔影軍団を使ってくることはお見通しでアクデン、ベン、カラスの3匹を使って影を徹底削除していた。

 

「よう、そっちは大丈夫か?」

 

 ベンが現れて2匹に挨拶をする。

 

「いえ、大丈夫ですよ。これで一応半径500m以内の影は全て殺しておきました」

 

 そう言ってアクデンはベンの質問に答えるとまたトライデントを影に刺す。

 

「ギャーッ!!」

 

 そして影が断末魔を上げて消え去った。

 

「なるほどな。これもジゼル様の為だ。魔影軍団の奴らには悪いが、こうでもしないとダメだしな」

 

「罪悪感は抱く必要なんかありませんよ。あいつらがプライバシーを侵害してきただけのことですから」

 

「それもそうか」

 

 そんな見張りをしているベン達だった。

 

 

 

 ~鬼岩城~

 

『やはり無理か』

 

 ミストバーンは影を使ってジゼル達の動向を探っていたがベン達に影を殺されてしまい不可能だった。しかもベン達がやったという証拠は不足しており、自ら行っても育児休暇で断られてしまうだろう。

 

「もうよい、ミスト。これ以上詮索しても無駄だ」

 

 バーンがそう言ってミストバーンにジゼルの詮索を止めるように命令した。

 

『畏まりました』

 

 ミストバーンはバーンに対して崇拝と言っていいほどバーンに忠誠心がある。その為、バーンの命令は絶対であり、例え殺すべき相手を生かせと命令されたらそれに従うしかないのだ。そこがミストバーンとジゼルの違いである。ジゼルの場合はハドラーの為にハドラーを裏切るようなことをするし、それこそが大切だと思っている。

 

 ミストバーンとジゼルの共通点は主人の為に動いているということだろう。

 

 

 

 ~ロモス~

 

「ヒヒヒっ! 面白い。たかが人間とは言えその牢獄から抜け出すことが出来るとはな」

 

 ザムザはマァムを見て多少驚いたもののマァムがどう脱出したかの方に興味を持った。

 

「私は貴方を許せない! 人間をゴミ呼ばわりして!」

 

 マァムは激怒し、ザムザに襲いかかった。

 

「(どれ、一撃受けてみるか)」

 

 ザムザは超魔生物である自分の身体を使い、マァムが魔牢獄を破った原因を調べようとし、わざと攻撃を受けた。

 

「がっ!?」

 

 そしてザムザは思い切り脇腹に拳を入れられ、その場所に穴が開いた。そこまではダイと同じだ。

 

「(回復せん!? どういうことだ?)」

 

 超魔生物は回復速度が異常なまでに速く、受けたダメージもすぐに元通りになってしまうのだが今回は戻らなかった。

 

「そうか、マホイミか」

 

 ザムザは一瞬で回復しないことからマァムの使った呪文が過剰回復呪文マホイミだと判断した。

 

 特定の場所を過剰に回復しすぎるとその場所は死滅してしまう。それを利用したのがマホイミである。もっと簡単に言えば最大HPを減らす呪文だと思ってくれればいい。

 

「(へえ、あの娘中々えげつない呪文を使うのね)」

 

 横たわっているジゼルはその呪文を聞いて少し驚いていた。雰囲気からしてそんな呪文を使うような感じでなかったからだ。

 

 

 

「これが私の新しい技、閃華烈光拳よ」

 

 マァムはそう言ってジリジリとザムザに近づき、再び放った。

 

「ふっ! 二度も同じ技が通用するか! かぁっ!」

 

 そう言ってザムザがジャンプで避けてタンを放った。

 

 

 

「(もう少しズレよう)」

 

 ジゼルは邪魔にならないように動こうとしたが……その際に指輪を落としてしまった。

 

「(ハドラー様の為に買った指輪が!)」

 

 

 

 バギッ! 

 

 

 

 そしてその指輪はマァムの閃華烈光拳を避け、タンを放ったザムザに踏まれた。

 

「ふふふふ……」

 

 そしてジゼルは産後の運動がなんぼのもんじゃ! と言わんばかりにゆらりと立ち上がった。

 

「これが愛の力よ」

 

 誰に言っているのかわからないがザムザにふらふらと歩いていった。

 

 

 

「くっ」

 

 マァムがザムザの放ったタンを取ろうとするが中々取れない。

 

「このタンは特殊な粘液で出来ている。お前のその技は呪文を応用したもの──つまり手からしか出来ないと判断してそうしたのだよ!」

 

 そう言ってザムザが片方の腕を上げ、マァムを殴ろうとしたがその瞬間音速を超えた風圧がマァム達に襲った。

 

 

 

「い、今の風は!?」

 

 マァムの後ろから突然風圧を感じ、マァムは重心を低くして対処した。

 

「げはっ!?」

 

 何故かザムザがいきなり倒れ、頭から出血していた。

 

「さあ覚悟は出来ているんだろうね?」

 

 そこには赤いオーラを放っているゼシカ(ジゼル)がおりその姿はまさに修羅だった。

 

「な、何だ!? 貴様!!?」

 

「さすらいの魔法戦士ゼシカ」

 

 それだけ言うとジゼルはザムザの懐に入り……正拳突きを放った。

 

「ぐぁっ!?」

 

 そしてザムザは身体をくの字に曲げ、苦しむが……ジゼルの攻撃は終わらない。

 

「まだまだ」

 

 今度は爆裂拳を放ち、ピンポイントで正拳突きを放ったところにすべて当てていく。

 

「がぁぁぁぁっ!?」

 

 ザムザの回復が間に合わない。それだけがザムザの苦しみだった。

 

 回復が間に合わないのは2つほど要因がある。一つはジゼルを怒らせてしまったこと。もう一つは超魔生物対策とも言える一点に集中して攻撃することによって回復を間に合わせないということだ。

 

「これで終わりだ!」

 

 そしてジゼルの正拳突きがザムザに放たれ、ザムザの腹を貫き勝負は終わった。

 

 

 

 ジゼルの戦いを見た魔法使いPは後にこう言った──「あんなもん戦いじゃねえ、虐待だ」と。

 

 

 

「(せめて親父に報告しなければ……!)」

 

 ザムザは頭にある装飾品を取り、それを空に投げた。

 

「何をした!?」

 

 足手まといとなってしまったダイがそう言ってザムザに問い詰める。

 

「あれは親父に超魔生物の研究の成果、つまり今日あったことを報告した。それだけだ」

 

「馬鹿野郎! そんなことして奴がお前を褒めるとでも思っているのか!?」

 

 ポップは知っていた。先日ザボエラに騙されてザボエラがどれだけ狡智かを。

 

「そんなことわかっているさ。けどな、あんな奴でも俺の父であることに変わりはない」

 

 そう言ってザムザは目を瞑り死ぬのを待っていた。

 

「……?」

 

 しかし致命傷を負ったにもかかわらず死なないことに異変を感じたザムザは目を開けるととんでもない姿があった。

 

「! お前何をやっている!?」

 

 ザムザが見たのはマァムが敵である自分を治療している光景だ。

 

「動かないで!」

 

 マァムがそれだけ言うとザムザはビクッと反応して元の位置に戻った。

 

「お前、何をやっているのかわかっているのか? 俺はお前達の敵だぞ?」

 

 ザムザは横になりながらもマァムにそう尋ねた。

 

 

 

「確かに貴方は私の敵だわ。だけどあんな姿見せられて同情出来ない人はいないわ」

 

 グサッ! 

 

 ジゼルの良心に100のダメージ! 

 

「それにこれが私の力の使い道なのよ。私は誰かを傷つける為に力を得たんじゃない。私は出来るだけ守ろうとしたいから力を得た」

 

 グサグサッ! 

 

 ジゼルの良心に658のダメージ! 

 

「神様から得た命を弄るのは決していいことではない……だけどその弄った本人を殺すなんて真似は私には出来ない。私は守る為に戦うのだから……」

 

 

 

 バタッ! 

 

 ジゼルの良心は力尽きた! 

 

「ははは……私は何の為に怒っていたんだろう……」

 

 ジゼルはすっかり心を折られ、端の方で体育座りになっていた。

 

「……まあ元気だしてよ」

 

 そう言ってチウがジゼルを慰めた。

 

「ありがとう……」

 

 

 

「……だが俺を放っておいてもいいだろう?」

 

 しかしザムザはそれでも納得がいかなかった。放っておいても自分は死ぬし、ダイ達にとっても有益なことだ。わざわざ自分を生かす理由はない。

 

「誰かを助けるのに理由は必要?」

 

 この言葉でザムザはマァムの性格を理解した。甘い……こいつはシュガーパイとあんこクリームパフェを同時に食べるくらい甘いと……

 

 

 

 そんなことを思っていると立ち直ったジゼルがやってきた。

 

「ザムザ、一つ言っておくけど私はザボエラを知っている」

 

「何だと?」

 

「今のままじゃあの性格からしてザボエラは君のことを見向きもしないだろうね。だけどザボエラは無駄にプライドが高い。ザボエラの真似をするのではなく、超えるということを目標にしたらどうだろうか? 必ず奴は君を意識しざるを得なくなる」

 

 それを聞いてザムザはハッとした。確かにザボエラは無駄にプライドが高く、邪魔者は消そうと必死だった。その邪魔者になることでザボエラが自分を認めたら、そう思うとザムザは自分の身体に鞭を入れた。

 

「あっ!? ちょっと!? 治療はまだ終わってないわよ!」

 

 マァムがそう言ってザムザを止めようとするが手を払われた。

 

「もういい。俺は行く」

 

 そう言ってザムザは立ち上がり、武道場から出て行こうとしたが──

 

「どこへ行くんだ?」

 

 ダイがそう言ってザムザを立ち止まらせた。

 

「どこへでもいいだろう……」

 

 ザムザは振り返ると何かすっきりしたような顔で出て行った。

 

 

 

「(これでザムザは私の味方になり得るようになった)」

 

 ジゼルの目的はハドラーの核の結晶をどうにかすることである。そのためには専門家、つまりザムザのような人材が必要だった。まだ味方にはなっていないものの、ザボエラと対峙する以上はこちらの味方に引き込みやすい。そうすればハドラーの核の結晶をどうにかして外す……ということも夢ではない。

 

「それじゃまた会おう。ダイ君、ポップ君、マァム君、次会う時は共に戦おう」

 

 そしてジゼルも立ち去った……



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鬼岩城、登場!

「うえ~」

 

 ジゼルは無茶しすぎて身体を横たわせていた。

 

「ザムザ後で覚えてなさい」

 

 この場合ほとんど自業自得だが気にしてはいけない。それがジゼルクオリティだ。

 

 

 

 ~某所~

 

『ハドラーはいるか?』

 

 ミストバーンはハドラーを探していた。かつてのクロコダインの住処、ヒュンケルの拠点などを探したがどこにも見当たらなかった。となればいる場所はジゼルの場所かザボエラの場所──前者は無理なので後者であるザボエラの拠点にミストバーンは来ていた。

 

「えっ、いや、その、居るにはいますが……」

 

 ザボエラはミストバーンに怯えていた。何回も殺気付きで睨まれていたらそうなる。

 

『……』

 

 ミストバーンは無言でザボエラの抗議を無視して入っていった。

 

 そして奥深くに入ると変わり果てたハドラーが蘇生液の中にいた。

 

「ミストバーンこの姿惨めだろう?」

 

 ハドラーは目を開き、ミストバーンに話しかけた。

 

『……』

 

「ミストバーン。パプニカ王国で世界会議──つまり世界の要人が集まるのは知っているな? そこで頼みがある」

 

『お前の代わりにそれを潰せというのか?』

 

「そうだ。俺はあいつに守られたまま今まで魔軍司令として過ごしてきた。だがもううんざりだ、そんな怠惰な生活は。俺はダイとバランとの戦いを見て何を思ったかわかるか? ミストバーン」

 

『……』

 

 ミストバーンは無言を貫いた。

 

「俺は興奮した。あの二人の戦いを見てな……あの二人と戦い、倒してみたいと心からそう願った。だがそれをするにはあまりにもレベルが違う! 少なくともジゼルを超える必要がある……」

 

『その為の超魔生物化か?』

 

「そうだ! ジゼルを超えるにはそれ以上のスペックが必要だ!」

 

『だが超魔生物はお前の得意としている呪文も使えなくなる欠陥だらけのものだぞ? バーン様にとってもお前にとってもメリットはない』

 

 そう、それだけならまだロモスを攻めた時のクロコダインの方がマシだ。ハドラーはパワーと呪文が使えてこそ価値がある。それを捨てるなどとんでもない。

 

「その心配は無用だ。変身という機能があるから魔力を失うのだ。俺自身を超魔生物にすることによって魔法は使えるようになる!」

 

『なっ、何ぃっ!?』

 

 ミストバーンがハドラーの前では初めての驚愕の声を上げる。

 

『ハドラーよ! お前は魔族の身体を捨てて永遠に化け物のまま生きるというのか!?』

 

 ミストバーンが驚いたのは自らの身体を捨ててでもダイ達に挑むということだ。

 

「構わん! 俺はあいつらと戦いたい……ジゼルもわかってくれるだろう。それに妻を守るのが夫の役目だ」

 

『……わかった。お前の意見を聞こう。だがジゼルはどこだ?』

 

「知らん。あの馬鹿またやらかしたのか?」

 

『そうではない。奴は育児休暇を貰って以来行方がわからんのだ』

 

「……そういう時は放っておけ。奴のことだ。何か考えているに違いない」

 

 そこらへんは相変わらず、対処は変わらなかった……

 

『……そうか。パプニカは私に任せておけ』

 

 そしてミストバーンはパプニカ王国へと向かった……

 

 

 

 ~数日後~

 

 いよいよ世界会議当日となりパプニカに世界各国の要人達が集まったがそこにジゼルの姿はなかった。

 

 

 

「キィ~ヒッヒッヒッヒッ!」

 

 パプニカにザボエラの笑い声が響り渡り、全員が上にいたザボエラを見ようとするがそこに姿はなく代わりにあったのは、岩の蛇と、それに乗っかっている悪魔の目玉に妖魔師団の魔物だった。

 

「おはよう諸君! ワシは魔王軍妖魔師団長ザボエラ。本日をもってこのパプニカは滅亡するのじゃぁぁぁっ!」

 

 ザボエラは問答無用で空から妖魔師団の魔物達を使い、パプニカの建物や人間達をヒャド系の魔法で凍らせた。

 

 

 

「(さて……ミストバーン。ワシの補助を受けたんじゃからワシに感謝すんじゃぞ? 見返りはたっぷりとして貰うからの……ヒヒヒッ!)」

 

 ザボエラは鬼岩城を隠すと聞いてチャンスだと思い、部下達にパプニカに行きヒャド系の呪文だけを使うように命令した。ヒャド系の呪文ならば温度だけが下がり、結果空気中の飽和水蒸気量が減り、霧を発生しやすくなる。

 

 しかしそれ以外は温度の上昇や風の影響で霧がなくなり台無しになってしまうがメラ系やギラ系それとイオ系の呪文は威力が強い為対策が出来ているが、ヒャド系の呪文を対策しているというのはほとんどない。

 

 

 

 ヒャド系の呪文を一気にやられたら、威力も大きいが魔力の消費も多い3系統の呪文に頼ざるを得なくなる。つまり無駄に魔力を消費させるというのがザボエラのもう一つの目的なのだ。

 

「(さあ……呪文を使うなら使えばいい。その時は貴様らが絶望するのじゃからな!)」

 

 更にそれだけではない。呪文を使えば気温が必然的に上がり鬼岩城が見えるようになり精神的なダメージを負わせることになる。使わなかったとしても鬼岩城が隠れるので好都合だ。

 

 

 

「最初は妖魔師団の魔物をやっつけるんだ!」

 

 ダイ達がそう言って剣を持つが前に立つものが現れ妨害された。

 

「待てダイ」

 

 そこにいたのはヒュンケルだった。ヒュンケルが剣を持つとラーハルトから授かった鎧を着た。ヒュンケルの鎧よりもラーハルトの鎧は視界が大きく、スピードも出やすくなっている為メリットが大きい。結果ヒュンケルの鎧は御蔵入りとなってしまったのだ。

 

「ここは俺達二人で十分だ」

 

 クロコダインが前に上がり、右腕に闘気をみなぎらせる。ボラホーンを一撃で倒した獣王会心撃だ……この技は威力もあり範囲も広い。クロコダインの一番の切り札と言っていいくらいの大技だ。

 

「無茶だよ! たった二人であんな数どうやってたおすんだよ!?」

 

 しかし、二人が相手にするにはあまりにも妖魔師団の魔物達は多すぎた。妖魔師団の魔物は100を超える勢いなのに二人でやるには荷が重い。ダイは少なくともそう思っていた。

 

「何、心配いらん。俺もヒュンケルもパワーアップしてきたのだ」

 

 クロコダインが左腕にも闘気をみなぎらせる。

 

「その通りだ。俺達は今までの俺達とは違う」

 

 ヒュンケルが剣を構え、剣を火で纏わせた。

 

「なっ……!?」

 

 クロコダインが両方の腕で獣王会心撃をすることとヒュンケルが魔法剣を使えることにダイは目を開いた。

 

「さあしかと見よ! 獣王──」

 

 クロコダインは更に両腕に闘気を溜め、威力を高めさせる。

 

「ブラッディー──」

 

 ヒュンケルは回転させるスピードを上げ火をより炎上させる。

 

「会心撃、痛恨撃!」

 

「スクライド!」

 

 二人の必殺技が妖魔師団達を飲み込んだ。

 

 

 

「凄えっ! あの大群を一気に蹴散らしたぜ」

 

 ポップは妖魔師団が消えたことに驚き、目を開いた。

 

「いや、どうやらもっと厄介な奴が出てきたようだな」

 

 クロコダインのセリフの直後、霧が晴れ次第に巨大な鬼のようなものが見えてきた。

 

「な、なんだこりゃあっ!?」

 

 ポップは久しぶりに鼻を垂らし、それを見る……

 

「あれは俺達が見た頃とは違うが鬼岩城だ」

 

 ヒュンケルがその巨大なもの──鬼岩城を解説した。

 

 

 

「撃てーっ!!」

 

 ドドドドッ! 

 

 

 

 すると隣からそんな声が聞こえると大砲の発射音が連続し、大砲の弾が鬼岩城を攻撃した。

 

「がはははっ! どうか! 見たか驚いたかびっくりしたか! これが我がベンガーナ王国が誇る最新兵器だ!」

 

 ベンガーナ国王がそう大声で大砲の威力などを自慢し、ベンガーナの力が如何に優れたものか国民だけでなく他国民達にも理解させる。事実鬼岩城はひび割れて鬼岩城が崩壊した……かに見えた。

 

 鬼岩城は徐々に姿を現した。鬼岩城は周りの表面の岩を攻撃されただけで本体は全くの無傷。それを見たベンガーナ国王は大したことはないと思い、大砲を打たせたが……それでも無傷。そして大砲は鬼岩城の攻撃によってぐちゃぐちゃになり使い物にならなくなった。

 

「なんということだ……!」

 

 ベンガーナ国王は心を折られてしまい、膝をついた……

 

 

 

『パプニカ王女レオナ、そして世界各国の指導者よ』

 

 氷のような冷たい声が鬼岩城から響き、全員が鬼岩城を見る……

 

『我は偉大なる大魔王バーン様の配下、ミストバーンである』

 

 その声の持ち主……ミストバーンが自己紹介をするとヒュンケルが鬼岩城を更に睨み、今にも飛びかかりそうだった。

 

 

 

 ミストバーンはヒュンケルの闇の師──言ってみればヒュンケルの黒歴史の一つなのだ。

 

 食事は魔界の植物などを使うためゲテモノばかりでロクでもないものだった。しかし味が悪かったと言えばそうではない。むしろミストバーンの上司であるバーンが絶賛する程だ。アバンとジゼルによってヒュンケルの舌が肥えているだけなのでそれに比べるとどうしてもゲテモノにしか感じなかった。

 

とにかくヒュンケルにとってミストバーンは倒すべき存在である。

 

 

 

『命令する……死ね』

 

 ミストバーンは降伏すらも許さなかった。




ABC「モンスターABCの後書きコーナー!」

A「ジゼル様の出番は少なかった今回でしたが…ようやくここまで動きましたね。」
B「そういえばこの小説が始まってから一年以上経つんだな…」
C「そう思うと作者も頑張ってよかったと思っていますよ。そして俺たちも。」

A「まだまだ伏線回収し終わっていないから終わる気配すらも見せない…これはいいことなんだが回収できないなんてことはやめて貰いたいものですよ…」
B「全くだ…それで失敗した例はかなりかなりあるしな…」
C「おっと…時間ですね…」

ABC「次回もお楽しみに!」


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魔軍司令、パワーアップ完了

マリカー8はまっていたら投稿遅れました…


 ミストバーンがパプニカを襲っているその頃、ジゼルは思考していた。

 

「(ハドラー様を救うにはハドラー様と直接戦う必要がある。そこまで持ち込むにはどうすれば良い?)」

 

 ジゼルはハドラーを救う為に自分と戦う必要があった。その理由は至って単純でハドラーに仕掛けられている爆弾はいくら強力とはいえ所詮は機械で出来た爆弾──要するに爆弾に火がつかなければ良いのだ。そのためジゼルが得意のヒャド系の呪文を唱えて爆弾に火をつけなくさせる。それがジゼルの作戦だ。

 

 しかしこの作戦は欠点がある。もしもバーン達がその作戦に気づいてしまったら全てが台無しになる。それどころかジゼルやハドラーは消えてなくなるだろう。いかにバーンに気付かれずにハドラーの爆弾を止めるかが鍵となるのだ。

 

「(そう言えばハドラー様はダイ君に執着していた。クロコダインを倒した時から自分が倒したいと言わんばかりだった)」

 

 ジゼルはハドラーがクロコダインを倒したダイを一人の武人として戦いたいことに気がついた。それは名誉を目の前にしたフレイザードと同じ目だった。

 

「(やはり魔王軍を抜け出したことは間違いではなかったわね)」

 

 元々ジゼルはハドラーを救う為にザムザをスカウトするつもりで魔王軍を抜け出したがそれ以上の得策も生まれた。ハドラーと戦うにはダイにくっついていることだ。そうすればハドラーの爆弾を止める事ができる。あながちジゼルの行動も間違いではなかったのだ。

 

「(その前にやるべきことをやらないとね……)」

 

 ジゼルは体を動かし、その場を後にしようとした。

 

「イオラ!!」

 

 爆発呪文がジゼルに襲いかかるがジゼルは竜の本能で避け、それを放った犯人を見た。

 

「誰だ?」

 

 その犯人は蛇の髪を持った魔族の男性だった。

 

「俺は妖魔師団のベルドーサ。お話でも……キェェェッ!!」

 

 ベルドーサの不意打ちがジゼルを襲うがカウンターをしてジゼルからすれば何一つ問題なかった。

 

「で? お話でもしましょうか?」

 

 ベルドーサの不運はジゼルの機嫌が少し悪かったことだろう。ジゼルは自業自得とはいえ身体が動けなかった為にストレスがたまっていた。そのストレス発散の相手がベルドーサになった……それだけの話だ。

 

「ひいっ!」

 

 ベルドーサが必死に逃げようとするが無駄だった。

 

 

 

「正拳突き!」

 

 ジゼルの一撃がベルドーサを吹っ飛ばす。

 

「アッパーカット!」

 

 そしてジゼルは回り込み、顎を的確に掬うように殴るとベルドーサは抵抗することすら許されずそのまま上に上がって行った。

 

「背負い投げ!」

 

 そしてジゼルはベルドーサの腕……ではなく髪を掴み、蛇を千切りながら投げた。

 

「爆裂拳!」

 

 そしてジゼルの拳の嵐がベルドーサを襲撃する。もう止めて! ベルドーサのライフはゼロよ! 

 

 それから5分後

 

「ふ~っ……スッキリした」

 

 そこには人間年齢5才ほど若返ったジゼルと……

 

「」

 

 ボロ雑巾のようなベルドーサの死体が転がっていた。呪文を使っていないあたり余程ストレスが溜まっていたと思われる。

 

「それじゃ本当に行こ」

 

 ジゼルがベルドーサを殺したのは至って簡単でベルドーサは使えないと判断したからだ。ザムザは付け入る隙があったがベルドーサは違う。ベルドーサは超魔生物でもなければ心が腐っているとジゼルは感じたからだ。

 

 

 

 ~パプニカ~

 

 パプニカでは鬼岩城が真っ二つにされ、妖魔師団の援護も悲しく魔王軍は無様な結果に終わった。

 

「ぬおぉぉぉっ!!」

 

 ミストバーンは叫んだ。それはダイ達がミストバーンの素顔を僅かだが見えたからだ。

 

「見たな……っ!」

 

 ミストバーンは冷静さを完全に失い、バーンのお気に入りの一つであった鬼岩城を真っ二つにしたダイ達を憎悪の対象としてみていた。

 

「そんなに怒ることか?」

 

 ポップは暢気そうな声でミストバーンに尋ねるがそれがミストバーンの逆鱗に触れた。

 

「黙れ!」

 

 ミストバーンの叫びにダイ達は驚く。フレイザード戦の時は少なくとも寡黙という印象があり、こんなに激怒するとは思っていなかったからだ。

 

「もはやこれまで。私の顔を見た以上アレをやるしかない!」

 

 ミストバーンは闇の衣を剥がし始めるとミストバーンの背後から鎌を持った男がミストバーンを止めた。

 

「ストーップ。そこまでだよ。ミスト」

 

「キ、キル!」

 

「だいたいそれはバーン様から禁じられているだろう? ミスト……」

 

「そうであった……」

 

「それにこんな雑魚相手にそれをやる必要もないよ」

 

 キルバーンはそう言ってポップを見るとポップが真っ赤な顔でキルバーンを見ていた。

 

「な、何おう!」

 

 ポップはまだまだ未熟であり、フレイザードのフィンガーフレアボムズが最大火力でありキルバーンからしてみれば脅威でもなんでもなかった。それに精神面もバランに善戦したと言う事実もあり不安定だった。

 

「それじゃ僕達はお暇しようか」

 

 キルバーンとミストバーンは宙に浮くとそのままゆったりとしたペースで死の大地へと向かっていった。

 

「あの野郎!」

 

 ポップはキルバーン達に追いつけると判断し、一人で追っかけた。

 

「あっ!? ポップ待てよ!!」

 

 ダイ達も慌ててそれを追いかけた。

 

 

 

 ~死の大地~

 

「案の定ってところだね」

 

 キルバーンはうまく行きすぎてため息を吐いた。

 

 そこにはポップが金縛りで動けなくなり苦しむ姿があった。何があったのかすら書かれないのは最早酷すぎる。

 

「じゃあね」

 

 キルバーンは鎌を振り下ろし、ポップを殺そうとした瞬間、衝撃が走る。

 

「がはっ!?」

 

 しかし後ろから何者かに殴られキルバーンは前へと吹っ飛んだ。そしてポップは恩人に礼を言おうとしたが……予想外の人物故に言葉が出なかった。

 

「久しぶりだな」

 

 その声はジゼルにボコボコにされ、マァムに命の危機を救われた人物だった……

 

「ザムザ……!」

 

「全く、お前は礼も言えないのか? まあお前を助けるためじゃないからいらないが」

 

 ザムザはそれだけ言ってミストバーンを見るとミストバーンは怒りに満ちていた。

 

「貴様も裏切るのか……ザムザ」

 

 ミストバーンの低い声が響き渡るがザムザは鼻で笑った。

 

「確かに魔王軍は裏切ったが俺は俺を裏切ってはない!」

 

 ザムザはドヤ顔で言い切って魔王軍を裏切ったことを宣言した。

 

「裏切り者は許さん!」

 

 ミストバーンが指を伸ばし、それらがザムザに襲いかかる。

 

「ふっ……!」

 

 ザムザはそれを避け、マァムを苦しめたタンをミストバーンに吐き、動きを止めようとするがミストバーンはそれを真っ二つに切り落とし、激戦が続いた。

 

 

 

「してやられたね……これは」

 

 キルバーンがため息を吐くと次から次へと勇者達がやって来た。

 

「(あの魔法使いここまで計算していた、なんてことはないな。ザムザが現れたことは完全に予想外だったようだしザボエラが用意したとも思えない──となれば少し調べてみるか)」

 

 キルバーンは心の奥でそう決意するとイオラが目の前まで来ていた。

 

「うおっ!?」

 

 キルバーンは首を曲げて避け、ポップを睨むとポップはしてやったりと言わんばかりにガッツポーズしていた。

 

「まあ序曲もここまでさ」

 

 キルバーンが後ろを振り向くとそこに現れたのは超魔生物となったハドラーだった。

 

 

 

「待たせたなミストバーン。俺のパワーアップは終わったぞ」

 

 今のハドラーはバルジ島と戦ったハドラーとは桁が違う。ダイはそう感じていた。事実、魔界の鍛冶師ロンベルクに貰った剣の鞘が勝手に開いていた。この鞘が勝手に開くことはない。強者と戦う時のみ開くようになっている。暴走したフレイザードが覆っていた鎧を相手にする時ですら開くことはなかったのだ。つまり今のハドラーはかなりの強敵だ。

 

「さて……ダイ。早速だが俺と一対一の勝負をして貰おう! この時の為に俺はつまらぬ誇りと魔族の身体をも捨てた! 今やその望みはただ一つ! 我が生涯の宿敵アバンが残したお前達を倒すこと!」

 

 ダイはこの時感じてしまった。ジゼルが惚れた理由と本気で戦わなければ殺されると。そしてダイは竜の紋章を光り輝せた。

 

「おいフルパワーでやったら体力温存出来なくなるぞ! もっと抑えておけよ!」

 

「いいや今回のハドラーはかつてない程の強敵だ。竜魔人のバランを凌ぎ得るかもしれない」

 

 ポップはハドラーを見て信じられない顔をした。炎魔塔の時のハドラーは少なくとも自分が善戦したバランよりも弱かったと思っていた。だがその評価を覆すことになったのだ。驚かないほうがおかしい。

 

「よくぞ見破った!」

 

 そしてハドラーはマントを投げるとそこにあったのはそこにいるザムザ──いやそれ以上の超魔生物の身体を持ったハドラーだった。

 

「それでこそアバンの使徒よ!!」




そういえばこのサイトで原作ダイの大冒険で原作初期からここまで進んでいるのって私くらいのものですから原作を思い出すのに物凄い苦労します…とはいえ他の作品も面白いんですよ?アンチではないのでご安心を。

出来ればクロスオーバーとかコラボとかいいよなぁ…私の表現力ではジゼルの面白さを1/10くらいにしてしまっている感がありますから…などと考えている私がいます。露骨なまでにここに書いてしまうのは嫌だけどジゼルの面白さを引き出せないのはもっと嫌なので頑張ります!

PS…もしメッセージボックスに書いてくれればジゼルを貸しますよ。


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親衛隊隊長の過去3

 ハドラーはかつて魔界の一つの村の若い村長だった。今回はそんな彼がジゼルと出会った過去……

 

 ハドラーは気晴らし出来るものがないかと散歩をしていた。すると5人の魔族が立ち止まっていたのが気になりそこに行く。

「やめて!」

 魔族の少女が男の魔族達に虐げられ、身を縮め頭を庇っていた。

「はははっ! おもしれーこいつ!!」

 そのゲスじみた言葉にハドラーはキレた。ハドラーはこういった事を嫌い、正々堂々とした事を好む。

「おい、止めろ」

 ハドラーは魔族の腕を掴んで止めた。

「なんだ? てめえは?」

「貴様らは恥ずかしくないのか?」

 ハドラーは魔族を無視して話を続けた。

「あぁっ!?」

 魔族が逆ギレしハドラーを睨む。

「いたいけな少女を数人がかりで襲いかかるとは……魔族の恥晒しめ」

 後々ハドラーも人間に対してやるがそれは言ってはいけない。何故なら魔族は人間を見下しているからだ。ハドラーとて例外ではなかったからだ……話がそれた。ハドラーは人間はともかく魔族に対しては寛容だ。

「ふざけんなっ!」

 そして魔族の一人がハドラーに殴りかかるが所詮は素人、格闘戦を好むハドラーからしてみればかなり弱い。

「ふんっ!」

 ハドラーは魔族の腹に一発入れると魔族は胃液をゲェーゲェーと吐き戦闘不能となった。

「さて、覚悟は出来ているんだろうな?」

 ハドラー無双が始まり、魔族達はとにかく逃げた。だがハドラーに回り込まれてしまいボッコボッコになった。

「あ、あの!!」

 ハドラーが立ち去ろうとすると少女が呼び止めた。

「何かようか?」

 ハドラーはそれを見て驚いていたが顔にだすことはなかった。その少女は竜と魔族のハーフだった。

「助けてくれてありがとうございます!」

 そのハーフの少女は深々と礼をした。ハドラーはそれを見ると立ち去ろうとするが立ち止まった。もしこのままハーフの少女を置いて行ったらどうなるだろうか……? 明日には死んでいるかもしれない。それだと後味が悪すぎるのでハドラーは決心した。

「俺の家で働かないか?」

 ハドラーはその少女を雇うことにした。ハドラーは人間を見下すことはあっても竜を見下すことはない。その理由は竜の身体にある。竜は身体が鋼よりも硬く、しかも呪文をものともしない鱗を持っており、その力はモンスター随一の強さを誇る。魔界の歴史でもそう呼ばれているのだ。

 魔力を高く持っている魔族とモンスター最強の竜のハーフ。

 ここで埋めて置くにはあまりにも惜しい存在だった。

「でも私は見ての通り竜でもなければ魔族でもない。そんな私でいいんですか?」

「構わん。それよりもお前の名前は? 俺の名前はハドラーだ」

「ジゼルです」

 こうして2人は出会った。

 

 その後、ハドラーとジゼルはハドラーの家へと戻った。

「ここがハドラー様のご自宅……」

 ジゼルは圧倒されていた。ハドラーの家はまさしく屋敷と呼ぶに相応しいからだ。ジゼルの家はこんなデカくはなかった。

「そうだ。さあ入るぞ」

 ハドラーはジゼルは連れて入るとそこに現れたのはハドラーの家にいるメイド達だった。

「おかえりなさいませ! ハドラー様!!」

 人間年齢18~30前のメイド達がハドラーに敬礼するとハドラーは満足そうに頷いた。

「出迎えご苦労。早速だがお前達に託したい仕事がある」

「なんでしょうか?」

「こいつの身体を洗ってやれ。その後こいつをメイドとして雇うから教育を頼む」

「わかりました」

 メイド達はジゼルを連れていくと身体を洗い、メイド服に着せ替えた。その際にジゼルの胸に嫉妬したメイド達が暴走したのは言うまでもない。

「わあ……綺麗」

 ジゼルはメイド服に着替えてそう呟いた。というのもジゼルは現在着ているメイド服以上に清潔な服を着たことがない。いつもボロボロの服しかなかったからだ。

「ジゼル。ぼけっとしてないで私の方を向きなさい」

 メイド長らしき女性がそう言ってジゼルを振り向かせる。

「あ……すみません」

 ジゼルは素直に謝り、頭を下げた。

「さて、ジゼル。あんたは家事も知らないだろうしメイド長である私が徹底的に教育してあげるわ」

「ありがとうございます!」

「よろしい。では始めに私のことはメイド長と呼びなさい」

「PAD長!」

 何故ジゼルがそういうのかと言うとメイド長はジゼルとは逆にまな板の胸でPADで誤魔化していると丸わかりだからという理由ともう一つ……ここに来る途中ハドラーに言われたからだ。

「違う! メイド長よ!」

 などと初歩的なことからスタートしてジゼルのメイド生活は始まったが……料理をやらせれば包丁でまな板ごと切ってしまう。掃除は床が擦り減る程雑巾掛けをしてしまう……

 

 とにかく問題だらけでメイド達も嘲笑い、陰口を叩くようになった。

「(……やっぱり私はここにいちゃいけないんだ)」

 ジゼルは次第にそう思い始めメイド長にどうするべきか相談した。メイド長に相談すれば自分を罵倒し、自分を雇うキッカケも無くなるだろう……と思っていた。

「……そう。それじゃ貴方のしたいことって何かしら?」

「え? ……私のしたいこと?」

「私はね貴方と同じようにハドラー様に拾われたのよ」

「そうなんですか……?」

「私は新人時代、こんな胸と子供っぽい体格に童顔……苛められる要素は一杯あった。例えばモップが届かない場所にあったりとか、子供メイドとかバカにされたりね」

「……PAD長じゃ怒らないんですね」

「まあ……それはハドラー様がつけた渾名だからね。渾名はそれぞれの代のメイド長につけられるからハドラー様に認められたって証拠なのよ」

「……」

「ハドラー様の為を思うには手を抜かずに慎重にやること。それが貴方の目標よ」

「……ありがとうございます!」

 その日からジゼルは変わった。ジゼルは張り切り過ぎずに程よい力加減で家事をした。

 

 そしてある日……ハドラーが外出し、留守となっていた。残っていたのはメイド達だけである。

「さあ、ハドラー様のお帰りの為に掃除をしましょう!」

 メイド長はメイド達にそう告げ大掃除を始めた。

「……」

 この時ジゼルは違和感を感じていた。何かが違う。ジゼルの心の中でそう感じており、ジゼルは人目のつかない場所で掃除をし始めた。

「イオラ!!」

 すると玄関の方から大爆発が起き、大きく屋敷が揺れた。

「キャァッ!」

 ジゼルはそんな経験はなく、どうすれば良いかわからずに慌てて壺の中にすっぽりと入り隠れた。

「薄汚い魔族達め! 今日こそがお前達の最後だ!」

 その言葉が聞こえてジゼルは震えていた。

「(人間……ってこんなに怖いの?)」

 そして悲鳴が次々と聞こえメイド長も殺された。

「(来ないで……!)」

 ジゼルはただひたすらに祈っていた。だがそれが仇となった。

「おい! あの壺動いているぞ!」

 それを聞いてジゼルはもう終わったと思った。だが予想外の方向へと動いた。

「ああ? それはほっとけ。ツボックとかそんなモンスターだ。下手に刺激したらザキ系の呪文で殺されるぞ。あいつらはマホトーンが効かねえから無理だ」

「そ、それもそうだな」

 などと勘違いをして人間達はその場を立ち去った。

 

「(助かった……の?)」

 ジゼルはホッとその壺から出ようと体制を整えて頭を出し……肩がつっかかった。

「あれ?」

 その後何度も試してみるがジゼルは頭だけが出てそれ以上先は壺から出ることは不可能だった。

「……出れない」

 頭だけひょっこりと出した状態でその姿はひょうきんだった。壺を破壊しようにも力は出ない。まさに詰んでいた。

 

 ~数日後~

 ジゼルは眠りにつき、ただずっと待っていた。

「おい! 誰かいないのか!?」

 ハドラーがいつの間に帰って来たのか大声を出して呼んでいた。

「ハドラー様!」

 ハドラーに頼めばこのひょうきんな格好も何とかして貰えるだろうと思い、返事をした。

「いたか……」

 そしてハドラーは近づくと目を丸くした。

「お前……何をやっているんだ?」

「人間がこの屋敷に襲撃して来たので私は咄嗟に壺の中に隠れていたら出れなくなってしまいまして……」

「……はぁ」

 ハドラーは渋々壺ごとジゼルを持ち上げるとジゼルが顔を真っ赤にした。

「ハ、ハドラー様!?」

 ジゼルは壺の中で暴れて壺から出ようとするが無駄だった。メイドをやっているとはいえ戦闘員ではなかった……それ故に非力であり力任せに脱出することは不可能だった。

「大人しくしてろ」

 言われるがままにジゼルは大人しくなり顔が苺……いやそれ以上に赤くなった。

「そいっ!」

 そしてそれをハドラーは投げた。

 壺が割れ、ジゼルは脱出することに成功した。

「ありがとうございます! ハドラー様!!」

 ジゼルは90度のお辞儀をして感謝した。自分の為に私物を破壊したのだ。メイドという立場からすれば歓喜するのは当たり前である。

「ジゼル。お前以外に生存者はいないのか?」

「ええ……メイド長ことPAD長……グズッ……それにヒッ……私以外のメイド達の悲鳴が聞こえ……ましたから……」

 ジゼルは自分の仲間達が死んだことを未だに受け入れられず泣いた。

「……泣くなジゼル。お前にやって貰いたい事がある」

 ハドラーは何か決意したかのようにジゼルに頼みごとをした。

「なんでじょうか?」

 ジゼルはまだ涙目でハドラーにそう尋ねた。

「この屋敷の留守番をしろ」

「えっ? それじゃハドラー様は?」

「地上だ。俺は地上の人間を滅ぼす」

「イヤです! 私もどうか……「黙れ」えっ!?」

 ハドラーはジゼルの言葉を遮った。

「ジゼル。俺はお願いをしているのではない。命令しているのだ」

「……ハドラー様。何故地上の人間を滅ぼそうとしているのですか? 魔界に住む人間でもよろしいのでは……?」

 ジゼルは地上に出る理由を尋ねた。別に復讐をするなら魔界にいる人間を屈すれば良いからだ。

「……魔界にある魔素の影響は人間を魔物に変える。そんな人間を狩った所で意味などない」

「だから地上を……!」

「そうだ。そして俺は地上を征服する」

「なっ……!? 地上を!?」

「女であるお前には理解出来ないだろうがな……俺は1人の武人としてどこまで通じるのか試してみたい……その衝動を抑える度に俺を苦しめる」

 そしてハドラーは地上に出る支度をいつの間にかしており、ジゼルはそれに気がついて手伝った。

 

 その後、ジゼルはバランと出会い別れ、しばらくするとハドラー敗北の情報を得た。

「私は一体何のために修行してきたの? ハドラー様無しでどうやって生きていけばいいの?」

 ジゼルは自問自答していた。ハドラーはアバンに敗北し、アバンは勇者として生き生きとしていた。一方自らの恩人ハドラーは死んでいた。ならばどうするか? それだけがジゼルの頭で一杯だった。

「会いたいか?」

 するとどこからともなく声が聞こえた。

「誰?」

 ジゼルが振り向くとそこにあったのは悪魔の目玉だった。その映像にはカーテン越しに写っている声の主がいた。

「余は大魔王バーンなり。それよりも貴様はハドラーに会いたいのか?」

 声の主、バーンがそう言ってジゼルを勧誘しに来たのだ。

「もちろんです!」

「貴様の実力は大したものだ。悪魔の目玉越しでもよくわかる。そこでだ。余の魔王軍に所属せんか? もちろんハドラーの配下として所属することも可能だ」

 バーンはハドラーを餌にジゼルを上手く勧誘し、ジゼルの様子を見た。

「なります!」

 ジゼルはそれを聞いて即答だった。とにかくハドラーに会えるなら何一つ問題はない。そう思っていたからだ。

「よかろう。それでは迎えを待っていろ。余の配下ミストバーンが迎えに来る」

 こうして魔王軍の親衛隊隊長は生まれた。




ABC「モンスターABCのあとがきコーナー!」
A「と言う訳で再びジゼル様の過去でしたね。」
B「なんでこんな過去編やったんだろうな?」
C「バラン様だけが語られちゃバラン様ルートになるからじゃないからですか?」
ABC「…ありそうだな。」

A「いやいやそんなことはないよな?フレイザードもジゼル様のことは慕ってたし。」
B「でもハドラー様のことは慕ってなかったし…どうコメントしたらいいかわからん。」
C「ああくそっ!もう時間だ!」

ABC「次回も見てくれよな!!」


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魔軍司令改め武人圧倒する。親衛隊隊長、親衛騎団と出会う。

まず一言。評価コメントに誤字報告が来てドン引きしました。そういったことは感想でやって貰いたいものです。


 ハドラーはダイ……いやダイ達を圧倒していた。強さもそうだが覇気だ。まるでその場にいる全ての者を呑み込むかのような雰囲気がダイ達を圧倒していたのだ。ハドラーと同じ超魔生物の身体に自信のあるザムザですらもその覇気に呑まれていた。

 

「まさかこの程度ではあるまい! それではパワーアップしがいがないぞ! ダイ!」

 

 そしてハドラーは超魔生物となって新しく身につけた技の構えを取った。

 

「な、なんだぁ!? その構えは!?」

 

 ポップが今まで見たこともない構えにそんな声を上げていた。

 

「超魔爆炎覇!」

 

 イオナズン、ベギラゴンに代わるハドラーの新しい必殺技がダイに直撃し、ダイは氷山に突っ込んでそのまま動けなくなった。

 

 

 

「おいおい、嘘だろ……ダイがこんなに呆気なくやられちまうなんてよ」

 

 ポップが情けない声で地面を殴る。ポップは信じられなかったのだ。ザムザは油断したにせよベストな状態ではない為にバラン以上の敵ではなかった。しかし今回は違う。最善を尽くし新たな武器を手に入れた状態で完全敗北したのだ。ダイはバラン戦の時よりも強くなっている。しかしそれをハドラーが超えただけのことなのだ。

 

「呆気なく? 貴様それでもアバンの使徒か?」

 

「え?」

 

「……自分で考えろ。どうやら俺にはもう一人戦わねばならぬ者がいるようだ」

 

「もう一人?」

 

 少なくとも今の情けない自分ではない。ポップはザムザを見るがザムザはハドラーとは向き合わず一点だけを見ていた。そしてそれをポップが見るとそこにいたのはガルーダに捕まって飛んでいた獣王クロコダインが君臨していた。

 

 

 

 クロコダインが地上に降りるとミストバーンやキルバーンに見向きもせずハドラーだけを見ていた。

 

「久方ぶりですな。ハドラー殿」

 

 クロコダインもハドラーを見つめ、今にも戦闘が始まろうとしていた。

 

「クロコダイン。お前は俺の部下ではあるまい。わざわざ敬語で話す必要もないだろう」

 

「それもそうだな」

 

「獣王クロコダイン。武人としてお前とは決着をつけねばならぬ」

 

「……すまんがそれは出来ん」

 

「何っ?!」

 

「かあっ!」

 

 クロコダインは煙を上げ、その場にいたポップやザムザを連れ去り逃げた。

 

「ひゅ~っ! エクスタシィ~!」

 

 キルバーンは呑気な声でクロコダインを賞賛した。

 

『……』

 

 ミストバーンは沈黙。ハドラーをただ見つめていた。

 

「まさかクロコダインが逃げの一手を打つとはな」

 

『追わぬのか?』

 

「放っておけ。クロコダインはダイを救いに来たのだ」

 

「あの勇者君を? でも君の一撃で葬ったじゃないか?」

 

「あの場にクロコダインがいてはどうしようもあるまい。あいつはバランのギガブレイクをも封じた強敵だ」

 

「あの鰐君のことを随分買っているんだね。僕はあの魔法使い君が一番厄介になりそうな存在だと思うよ?」

 

「ダイ! この勝負次会うときまで預けて置くぞ!」

 

 ハドラーはキルバーンの言葉を無視してダイの方向へとそう叫んだ。

 

 

 

 ~某所~

 

 フレイザードは相変わらず、ラーゼルの世話をしていた。

 

「……にぃ……!」

 

 突然誰かの声が聞こえフレイザードはそれに反応した。

 

「ん? 今誰か呼んだか?」

 

 フレイザードはあたりを見回すがいるのはラーゼルのみで他はいない。

 

「にぃに!」

 

 するとちょうど良い適温にしたフレイザードの炎の岩のあたりからそんな声が聞こえた。

 

「お前か? ラーゼル」

 

「にぃに! にぃに!」

 

 ちなみに赤ん坊は言葉を何回も繰り返して覚えさせないと言わないのでフレイザードの兄馬鹿加減がうかがえる。

 

「全く……ほらお兄様だぞ!」

 

 現在のフレイザードはまさしく赤ん坊の妹を世話をする兄そのものだった。

 

「(ま、おふくろが帰ってくるまでラーゼルを鍛えてやるか)」

 

 などと兄馬鹿になっていたフレイザードだった。

 

 

 

 ~カール王国~

 

 一足早くジゼルはカール王国についた。その目当てはクロコダインがパワーアップした破邪の洞窟である。クロコダインはそこでパワーアップしてヒュンケル、いやそれよりも強いベンを倒すまでに至った強さの秘密を探るべくジゼルはカール王国に来ていたのだ。

 

「(全く信じられないわね。見た目こそ超竜軍団によって攻め滅ぼされた感じなのに人々はもう復活している)」

 

 ジゼルはカール王国を一目見てそう思った。カール王国はバランがフレイザードの勇者討伐の時に攻略していた国だ。わずか5日しか持たなかったがそれも仕方ないだろう。ドラゴンもそうだがバランが強すぎるのだ。この国出身である勇者と呼ばれるアバンですらバルジ島の時のハドラーに自己犠牲呪文メガンテを使っていたくらいだ。しかもハドラーが耐えきるという有様だ。カールにアバン以上の大物が現れたと聞いたなどという噂は流れず、僅かに聞いたことはあるのは剣術のみならアバンを凌ぐとまで言われていたホルキンスくらいのものだった。逆にいえばそれ以外はバランからしてみれば雑魚であり、鬱陶しいハエ程度にしか感じなかった。

 

「(もしかしてこれがカール王国の強さかもね……フレちゃんが滅ぼしたオーザムとは訳が違う)」

 

 そんなことを考えて数分、ジゼルはようやく破邪の洞窟にたどり着き、破邪の洞窟へと入って行った。

 

「これが破邪の洞窟」

 

 ジゼルはスライム等の雑魚はまるで掃除するかの様に進んでは宝箱を開け、宝箱を開けては進み、進んでは宝箱を開け、それがミミックならば正拳突きで倒し、倒しては進んで、進んでは階段を降りて……そのループが8日間進み132階で止めた。ちなみにその記録は世界最速記録である。ありえないという方もいるとは思うがそれがジゼルクオリティ。気にしてはいけない。

 

 

 

 むしろ気にするのは何故ジゼルがそんな中途半端な位置で止めたかということだ。

 

「(ダイ君達に合流しないと!)」

 

 そう、ジゼルが止めたのはダイ達に合流するためだった。もしもここでいつまでもいてハドラーとダイが戦ったら元も子もないのだ。ハドラーを救うヒントになれば良いと思い入ったのだが、まるで意味がなかったので引き返すことにしたのだ。

 

「はああぁぁぁっ!」

 

 ジゼルは物凄い勢いで逆走し、階段を登り続けた。途中の魔物達はジゼルの突撃によりぶっ飛んでいった。

 

 

 

「ん……? 朝?」

 

 あれからジゼルは全速力で走り、8日かかったところを2日かけて元の場所に戻った。久しぶりに朝日を拝むことになり、しばらく歩くとカールにてハドラー親衛騎団なるものの襲撃があると聞いた。

 

「ハドラー親衛騎団?」

 

 自分は魔軍司令親衛隊の隊長であるし、ベン達が新しく独立するとは思えない……となればハドラーが新しくスカウトしたか禁呪法で作ったかのどちらかだ。

 

「トベルーラ!」

 

 そしてジゼルはその襲撃した場所、サババへと向かった。

 

 

 

 ~サババ~

 

「ノーザン・グランブレード!!」

 

 1人の人間がオリハルコンの人形に飛びかかり、闘気剣を振った。その威力は不死身のヒュンケルですらもまともに受ければ気絶するライデインストラッシュ並だった。

 

「効いたぜ今のは」

 

 しかしその人形はまるでダメージを受けていない。

 

「そうだな。人間の痛みでいうなら頭にタンスの角をぶつけたくらいだ」

 

 その人形は頭を少し掻き、次の言葉を放とうとしたが、ザムザの時に現れた疾風がそれを阻止した。

 

「うおっ!?」

 

 その人形は他の人形、特に巨体な人形によって止められた。

 

「不意打ちとはいえ俺をここまで飛ばすなんて一体誰だ?」

 

 その人形は驚きの声を上げた。上司のハドラーからダイ達一行の話は聞いていたがここまで強いパワーを持っているとは聞いていない。だがその人形はハドラーに不満があるわけではなくむしろオモチャを与えられた子供のような目をしていた。

 

「あの方のようですね。ヒム、気をつけなさい」

 

 この中で唯一女性型の人形が先ほどまで戦っていた人形ヒムに注意を呼びかけた。

 

「わかってるってアルビナス。俺をここまで飛ばした相手だ。油断は出来ねえよ」

 

 ヒムは女性型の人形アルビナスにそう言って再び前へと出た。

 

 

 

「さてとあんたの名前を聞こうか?」

 

 ヒムは相手を強者として認め、名前を尋ねた。先ほどの人間ノヴァにはやらなかった行為だ。

 

「ゼシカ。さすらいの魔法戦士さ」

 

 ジゼルは男性的な口調でヒムに返した。

 

「俺の名前はヒム。ハドラー様に仕えるハドラー親衛騎士団の1人だ」

 

「そう名乗った以上わかっているだろう?」

 

「もちろん」

 

 そして二人が互いに向き合い片方は右手、もう片方は左手を素早く出し……

 

 ガキンッ!! 

 

「「勝負!!」」

 

 二人の拳がぶつかり合い戦闘が始まった。



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親衛騎団、自己紹介をする。

 ジゼルはヒムの攻撃を避けて攻撃する……がヒムはそれを見抜き避ける。ジゼルが再び攻撃しヒムに攻撃する暇を与えない。ヒムはそれを打開しようとするがジゼルのフェイントに翻弄され体勢を崩す。

 

「!」

 

 ジゼルはその隙を見てヒムに正拳突きを放つ。正拳突きは強力だが今までの攻撃の中で避けやすいだけあってヒムに避けられてしまう。

 

「(勇者達以外にここまで強え奴がいるなんて聞いてねえぞ!)」

 

 ただジゼルが優勢なことに変わりなく徐々にヒムは追い込まれ苦しい顔をした。

 

「信じられないって面だね」

 

 ここでジゼルはヒムを挑発することにした。ジゼルはヒムの性格を見抜き、どんな風に挑発をすれば良いか理解していた。ダイを葛藤させたのもダイの性格を理解していたからだ。

 

「……っ!」

 

 ヒムは怒りに満ち、思わずジゼルに手を出すがジゼルはそれを難なく避け、カウンターを入れる。

 

「あいにくだが私の目的は大魔王バーンただ一人。戦闘センスだけのお前如きに勝つどころか苦戦していたら大魔王バーンに鼻で笑われるんだよ!」

 

 

 

 生まれて間もないと言うのにジゼルの動きについて行っている。それだけでもベン以上の戦闘センスがあるということなのだが、ヒムに足りないのは経験だ。圧倒的な経験の差がジゼルを優勢にさせている。それどころかヒムは息を乱しているのにもかかわらずジゼルは息を乱してすらいない。その事実がヒムを余計腹立たせた。

 

 

 

 そしてジゼルの蹴りが入ろうとした瞬間、声が響く。

 

「ヒム! 退きなさい!」

 

 アルビナスはそれを見てあまりに不利だと感じ、ジゼルにいつの間にか近づいて口から棘のような物を出した。それにヒムは慌てて横に飛ぶ。ジゼルはそれに反応出来ずに避けられない。

 

「ニードルサウザンド!」

 

 そしてアルビナスの技が決まり、脳に刺さり死んだ。

 

 

 

 それがジゼルでなかったならばの話だが。

 

 

 

「ふんっ!」

 

 ジゼルは避けずに棘をもう片方の足で薙ぎ払い、ヒムの飛んだゴーレムのようなオリハルコンの人形のちょうど目の当たりに刺さった。

 

「ブ、ブローム!?」

 

「ブロック!!」

 

 ゴーレムのような人形、ブロックはそれに狼狽え、その場にいた人形達が駆けつけた。

 

 

 

「凄え……」

 

 するとジゼルの後ろからそんな声が聞こえた。ジゼルはその声の主を探すとダイ達が見え、ポップがその声の主だとわかった。

 

「おや、ポップ君。久しぶりだね」

 

「あんためちゃくちゃ強かったんだな」

 

「まあカールの破邪の洞窟に入っていたからね。とはいえ私1人だと流石に全員は倒せないから2、3人くらいは相手できない?」

 

「2人だけでも十分だよ! 3人くらいなら俺たちがやるから大丈夫!」

 

 ダイ達のメンバーはダイ、ポップ、マァム、クロコダイン、ヒュンケル、ザムザである。一方ハドラー親衛騎団はヒム、アルビナス、ブロック、シグマ、フェンブレンの5人。これでジゼルが2人足止めするというならダイ達は2対1で有利に戦えるのだ。

 

「どうやら貴方達は勘違いしているようですね」

 

 アルビナスはそう言って溜息を吐いた。

 

「勘違い?」

 

「そう、いつ我々ハドラー親衛騎団が5人だと言いましたか?」

 

「ま、まさかもう1人いるっていうのかよ!?」

 

「その通り!」

 

 マァムの足元からオリハルコンの手が現れ掴むと徐々にその巨大な姿を現し、マァムの両足を持ち上げ、握りしめた。

 

「あぁぁぁーっ!?」

 

 マァムはその握力の強さに耐え切れず、殴ろうとするがその巨大なオリハルコンの人形には届かず、次に足を握っている腕を攻撃しようとしたがその前に背中から地面に叩きつけられた。

 

「がはっ!?」

 

 マァムは咳き込み、吐血するがそのダメージは大きい。

 

「マァム! しっかりしろ!」

 

 ヒュンケルが駆け寄り、マァムに薬草を食べさせ、ダメージを回復させた。

 

「誰だ! お前は!」

 

 そしてダイがその巨大なオリハルコンの人形に立ち向かうとその人形は真剣な目をしていた。

 

「我が名はマックス。かつてバーン様のところでは守護神マキシアムとして世話になっていたが昔の話。今ではハドラー親衛騎団の団長を務めるマックスだ」

 

 マックスはマキシアムの時にハイエナのように弱った敵を確実に殺すというやり方からミストバーンから侮蔑されていた。ただバーンはマキシアムがミスをしないので放っておいたが、とあるミスをしてしまった。それはガルダンディーだ。ガルダンディーはキルバーンに追われる前に欲張ったマキシアムに狙われておりなんとか逃げ切ったがそれが原因となりマキシアムとしての人生を終え王の駒に戻った。そしてハドラーの部下マックスとして生まれた。

 

「そしてハドラー様の忠実なる僕にして死の大地を守護する我がハドラー親衛騎団を紹介しよう」

 

 マックスは全員の顔を見渡し親衛騎団のメンバーはうなづいた。

 

「俺の顔は忘れちゃいまい。親衛騎団の兵士ヒムだ」

 

 ヒムは好戦的な笑みをし周りを見た。

 

「私は戦場を駆ける騎士シグマ。以後お見知りおきを」

 

 ランス状の槍を持った馬頭が礼儀正しく挨拶をした。

 

「我が名はフェンブレン! 親衛騎団のビショップにして完全無欠の狩り人よ……」

 

 全身刃だらけのフェンブレンが刃を光らせ、不敵な笑みを浮かべ笑う。

 

「もう1人は残念ながら怪我を負う負わないに関わらず喋れないので我輩が紹介する。親衛騎団の城兵ブロック」

 

 マックスはジゼルを忌々しく睨むがジゼルは無視だ。

 

「ブロ~ム……」

 

 今までの雰囲気が台無しになりそうな勢いでブロックが返事をした。無理もないだろう……先程シグマに抜かれたとはいえ目に棘が刺さっていたのだから。

 

「そして私は女王アルビナス」

 

 アルビナスが自己紹介を終えるとマックスは満足そうにうなづいた。

 

 

 

「我輩達はそんな世間話をしに来たのではない。ハドラー様からふるいをかけるように言われているのでな」

 

 マックスは自分の重量からかドスドスドスと音を立てて歩き、ダイ達から離れていった。

 

「キング・スキャン!」

 

 そしてマックスはジゼルごとダイ達をスキャンした。

 

 

 

 ~某所~

 

 一方フレイザードはラーゼルの世話をしていた。

 

「兄様、兄様!」

 

 驚異的なスピードで成長したラーゼルは人懐こい笑みでフレイザードに抱きつき、フレイザードはそれを温度調節した火の石の方へと移した。

 

「全く……ここまで懐くとは思わなかったぜ」

 

 フレイザードはそう言いながらも満足気に笑っていた。

 

「兄様、お母様ってどんな人なの?」

 

 ラーゼルはフレイザードの話を聞いていくうちにジゼルがどんな人物か気になり始め、フレイザードに尋ねるようになった。

 

「お袋か? お袋は強い奴だよ」

 

「強い?」

 

「ああ期待していな。お袋に会うまでの間は俺の過去の話でも聞いていろ」

 

「うん……兄様ありがとう」

 

「俺が生まれたのは今から一年くらい前だ……」

 

 フレイザードはラーゼルに過去の事を話し、魔王軍に所属していたこと、ダイ達に敗れたこと、そして自分達のもう1人の親……ハドラーの事も話した。

 

 

 

「それじゃバルトスっていう魔物も兄様同様に禁呪法で作られたの?」

 

 ラーゼルはヒュンケルの育ての親であるバルトスに興味を持った。

 

「まあ所詮そん時生まれてすらいない俺の話だからハドラー様に聞いた方がいいぜ」

 

「ヒュンケルは?」

 

「ヒュンケル? あいつは女誑しだからダメだ。お袋が鈍感だから良かったものの……よりにもよってハドラー様の前でプロポーズしたんだぜ……まあお袋はバッサリと断ってヒュンケルを振ったけどな。その後のヒュンケルの絶望した姿は面白かったぜ……クククッ!」

 

 すっかり兄馬鹿になっていたフレイザードは魔王軍時代に目の敵にしていたヒュンケルをラーゼルに近づけまいと教育をしていた。

 

「そうなの?」

 

「ああ、本当だ」

 

 フレイザードのラーゼル育成は順調だった。




ABC「モンスターABCの後書きコーナー!」
A「まさかマキシアムが親衛騎団になるなんて思いませんでしたね。」
B「これもジゼル様のせいだろうな…」
C「影響与えすぎです…俺達の出番は与えないくせに…」

A「同感だ。俺達の出番よこせ!」
B「フレイザードの出番が多い!もっと減らせ!」
C「くそっ…時間だ…」
ABC「次回も見てくれよな!」


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勇者一行、親衛騎団と対決す

「(…ジゼルだと?奴は確かにゼシカと名乗った筈…ならば!)」

マックスは動揺していた。その理由はゼシカと表示されるはずがジゼルと表示されていたという異常だからだ。本当にジゼルだとしたら何故自分達と敵対する理由がわからない…マックスのする事は決まった。

 

「スーパー・スキャン!!」

ジゼルを徹底的に解析することだ。マックスにはジゼルが何故ハドラーに所属している魔王軍に敵対するようなことをするのかわからなかった。本来この技は弱点を解析するのに使うのだが…過去を覗く事が出来るのでそれを使ってジゼルに何があったか調べた。

「(なんということだ…!!)」

そしてマックスが見たものはハドラーに黒の核晶…つまり爆弾が埋め込まれているという事実を知ったジゼルが魔王軍を裏切ってそれを阻止しようとベン達と話し合っている場面だ。

「(迂闊にハドラー様に報告すればハドラー様諸共全員死ぬ…ジゼルの行動は正しいかもしれん。ならば我輩達は如何する?)」

「よそ見は禁物だ。マックス。」

するとそのジゼルがマックスに迫り、腹の辺りに正拳突きを構えていた。

「ぬっ!?」

それをマックスはヒムに似た人形を腹の前に地面から生やして対処した。

「お、俺!?」

ヒムが驚くがマックスは無視して砕けた人形の破片をジゼルに投げた。

「!」

ジゼルはそれを避け、後ろに下がる…するとその場に兵士人形が現れ、避けていなければ間違いなくそのオリハルコンの拳を喰らっていただろう。

「(ハドラー様やミストバーン達にこのことを悟られる訳にはいかん。悟られたら我輩はおろか親衛騎団は全滅する。この場でやるべきことは決まっていると言うわけか…ジゼル。)」

マックスは壊れた人形の回復を見ながら考える。これはマックスの能力によるものだ。マックスは回復呪文を得意とし、オリジナルの特技もマスターしている。その特技の一つが現在つかっている技、アモールの劇によるものだ。この技はアモールの雨とリホイミを応用したもので完全に人形が粉々になっていなければ超魔生物のように回復できるという優れものだ。ちなみにマックスを除いた親衛騎団達は5系統の攻撃呪文を扱うことが出来る。

 

話は変わるがマキシアムの時はアホだったが現在のマックスの頭の回転は速い。それもそのはず…彼もハドラーの影響を受けていたのだ。

ハドラーはジゼルのせいでストレスこそ溜まっていたが大変有能であり、人間達から集めた金に物を言わせて武器回収をし、逆らおうとする人間達の強さを封じた。

 

ダイとクロコダイン以外の現在の装備は縛りプレイでもやっているのか?といわんばかりの弱さだ。ちなみにクロコダインの武器といえばバラン戦でぶっ壊れたが、ロン・ベルクがその強さを見込んで作り、ダイの剣を除けば勇者一行の中では一番強い。それ以外の武器でまともなのはヒュンケルの剣くらいのものだがオリハルコンでできている親衛騎団相手ではノヴァのように闘気を使って強化するしかないのだ。

 

話がそれたがハドラーは勇者一行はおろか魔王軍の敵となり得る人材も武器がなければ意味がないので力を封じたと言っていいのだ。これは脳筋のミストバーンやバラン、そして知略に長けているサボエラには決して真似できない…なぜならミストバーンやバランはそんなことをせずとも国を滅ぼすことが出来るので不必要だった。サボエラは頭は良いがバカであり、そう言った発想は無理だ。

 

「…アルビナス!!我輩のことは大丈夫だ!我輩はこの男女を止める!お前たちはダイ達を止めろ!」

マックスは冷静に判断し、ダイ達の足止めの指示をアルビナスに任せ自らはジゼルの足止めをした。

「わかりました。マックス。」

アルビナスは頭の切れるマックスが回復呪文しかつかえないマックスにとってかなり不利な相手をすることに疑問を持ったがマックスの考えていることはほぼ間違いなく、その間違いも恋愛的な意味でハドラーにどうやったら好まれるかという相談のみだった。アルビナスのそう言ったところはジゼルに似てしまったのだろう…

 

閑話休題…

 

そしてアルビナスは4人に指示した。

「では皆さん、各自作戦通りに別れなさい。」

アルビナスが指示したことにより、ヒムはダイとヒュンケル、シグマはポップ、フェンブレンはマァム、ブロックはクロコダイン、アルビナスはザムザとバラバラに別れた。

 

「オラオラどうした!?二人がかりでそれか!?」

ヒムはダイとヒュンケルを圧倒し、優勢になった…というのもダイは自慢の剣は使えずナイフで対処するしかなく、ヒュンケルも足手まといのダイをかばうのに精一杯だ。

「(くっ…あの女、どうやってこいつ相手に優勢になったんだ!?)」

苦戦するあまりヒュンケルはジゼルに向けてそう思わざるを得なかった。通常の敵ならダイをかばうまでもなくカタをつけることが出来るのだがそれを許さないのがヒムだ。ヒムは近接戦のみならば現在の超魔ハドラーに少し劣る程度である。それに比べヒュンケルはミストバーンに指摘されたように光と闇を彷徨っているせいか弱体化している。現在のヒュンケルがヒムに劣るのは無理なかった…

「おっと危ねえ危ねえ。」

ヒムは、無言で放ったダイの空烈斬を避けカウンターを入れた。

「がはっ!?」

ダイは地面に倒れ、ヒムは追い討ちをかけるかのように殴りに言った。

「させん!!」

それをヒュンケルは妨害し、追い討ちを防いだ。

「勇者よりもてめえの方が厄介だな。」

ヒムは不敵に笑い、自らの得意とするメラ系呪文を応用した技の準備をし、ヒュンケルも構えた。

「ヒートナックルゥゥゥ!!」

「ブラッディースクライド!」

そして二人の技がぶつかった。

 

「(強え…こいつ。)」

一方、ポップはシグマを相手に苦戦していた。シグマはこれまで戦ってきた相手でも最も厄介だった。確かに純粋な強さで言えばハドラーやバランの方が上だ。しかしこれまで戦ってきた相手は少なくとも油断やそこから生まれる隙などがあった。だがこの敵には全くと言っていいほどない!それ故に息がつまる戦いだ。

「流石だ…君は。」

それ故にポップは一手一手とこの馬顔に対処され続けた。シグマはギラ系の次に強力なイオ系呪文を得意とし、その威力はハドラーのイオ系呪文と変わらないくらいの威力だった。

「(ダイの親父さん相手に使ったあれじゃ返ってやられるのがオチ…)」

ポップはシグマに対して油断という文字が見当たらないので以前使った作戦を放棄することに決めた。

「(と普通は思うだろうな。)」

しかしポップはそれを放棄せず片手にメラ系最強の呪文、メラゾーマを放った。

「(そう来たか。だが私には呪文は通用せん…それはヒムを通してわかっているはずだ。彼は目くらましが目的と捉えるのが妥当…だがハドラー様が認めた魔法使いだ。決してそんなことではあるまい。)」

シグマはポップに対して警戒を解かず、自らが持っていたシャハルの鏡でポップのメラゾーマを跳ね返した。

「マヒャド!」

間髪いれずにポップがマヒャドを入れたことにシグマはとあることに気づく。

「(なるほど金属疲労が目的か…金属疲労をすれば彼の腕力でも私にダメージを与えるのには十分。そうとなればこれ以上は危険だ…)」

シグマは隙を見て左手でポップの腕を掴み、右手首の内部にたまったイオ系エネルギーをゼロ距離で一気に解き放つ!

「ライトニングバスター!!」

その威力はイオナズン級で呪文に耐性のある服を着ているポップと言えどもただでは済まない。

 

「さて小娘、クイズだ。ワシの身体の内、刃は何%で出来ている?」

フェンブレンがマァムにそう尋ねるがマァムはそれを無視した。それに答えても勝手に話すと理解していたからだ。

「90%だ。」

シャキン!

予想通り、フェンブレンはそのことを話し、腕の刃をマァムに向け突いた。

「くっ…!」

それに対してマァムは全く手が出せない。下手に手を出したら逆にこちらが傷がつく。ましてや敵はハドラーの部下だ。刃の腹に攻撃しても捻って刃を向けられるのがオチだと考えた。

「(さあ逃げ回るがいい…)」

フェンブレンはドSであり、その様子を楽しむ。もっともそれは仲間の前では隠すので誰にも気付かれない。

「(私にも遠距離の技があれば…!)」

マァムは自分に遠距離の技がないことに嘆いた。クロコダインの獣王会心撃のような技は使えない。まさしく相性は最悪だった。

 

「貴方も超魔生物のようですが所詮貴方はハドラー様のように魔族の身体を捨てなかった欠陥生物…そんな身体で私に勝てるとでも?」

アルビナスはザムザを圧倒していた。アルビナスのスピードは速く、巨体のザムザではスピードが出ない。

「黙れ!貴様に俺の何がわかる!」

ザムザはその挑発にのり、攻撃が単調になる。

「だから貴方は欠陥生物なんですよ。」

そしてニードルサウザンドがザムザに向けて放たれた。

「ぐおっ!?」

ザムザは多少驚くがそれをものともしないのが超魔生物だ。ジゼルのように余程パワーがない限りザムザに実質ダメージを与えることは不可能である。

「(む…!?)」

そしてアルビナスはある異変に気づき、クロコダインに向けて毒針を放つがそれもザムザによって防がれた。

「あいにくだが俺の身体の内部で毒を調合することが出来てな…それ故にこんなショボい毒は屁でもない!」

ザムザはそう言い放つと毒針を抜いて自らの身体に入った毒を解毒した。

 

「まさかその程度ではあるまい!」

クロコダインは他の勇者勢達とは違い善戦をしていた。それもそのはず、クロコダインはさらなる修行によりバラン戦よりもパワーアップしパワーも自然とついていた。クロコダインは自身を苦しめたベンが麻痺に弱くなければ死んでいたと思っていた。まだジゼル達のレベルにすら到達していないベンを相手に苦戦しているようでは間違いなくバーンを相手にしたら負ける…はっきりいってそう言える自信があった。ギガブレイクをほぼ無傷で耐えられるといっても所詮それはデイン系の呪文に耐性ができただけの話だ。クロコダインが修行に励むのは無理なかった…

「ブローム!」

ブロックはクロコダインを押し返し、抵抗するが…クロコダインは咄嗟に離れ、右腕に闘気を溜めた。

「受けてみよ!獣王会心撃!」

そしてクロコダインの必殺技がブロックに直撃した。

「ブローム!」

しかしこの程度ではブロックの動きを封じるのがやっとだ。そこでクロコダインはもう片方の腕に闘気を溜め、獣王会心撃を放った。

「これが俺の最高の技だ!」

そしてもう一つの渦がブロックのところで最初に放った渦とクロスしブロックの腕をもいだ。

「ブローム!?」

そしてそれを見たアルビナスはクロコダインに毒針を放つがザムザに防がれ、マックスが全員を集合させた。

「こっちも集合だ!」

ダイの合図で一度ジゼルを含め全員が合流した。



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元親衛隊隊長、スカウトする

ジゼルはダイ達に合流するのを見たマックスは親衛騎団達を回復させ、万全の状態に戻した。

「厄介だな…」

それを見たクロコダインは眉を寄せた。何しろただでさえ傷をつけるのに手間がかかるオリハルコンを回復させられてしまったのだ。これで自分達が付けた傷はほとんどなくなったといっていい。

「この勝負、技を多数連発するよりも一撃にかけた方が良い。」

ジゼルはこのまま長期戦に持ち込まれたら自分はやられずとも必ずダイ達がやられると判断し、指摘した。

「なるほど…確かに最もだな。」

それをザムザは先日ジゼルと戦ったことを思い出し、頷いた。

「あの王は私がやるとして、後はどうする?」

「…ゼシカ殿、その王のことだが弱点がある。」

「…弱点?」

「そうだ。あの王…マックスは決まって重傷者、いや重傷部分には左手、軽傷部分には右手をつかっている。」

クロコダインはマックスがわざわざ右手と左手を使いわけて治療していることに気がついた。

「…それは本当かい?」

ジゼルはこれに気がつかなかったが決して洞察力が通常よりも劣っているわけではない。事実親衛騎団を含めクロコダイン以外は全員気づいていないのだ。それだけクロコダインの洞察力は異常であり、自分と同じパワータイプのブロックを打ち負かすまでに強くなった理由でもある。

「ああ、先ほど戦ったブロックだけがマックスの左手で治療されていた。おそらくなんらかの理由で使い分けなければならないのだろう。」

「なるほどね…ありがとう。」

「礼には及ばん…」

そして作戦は続き、勇者一行達は誰と戦うか決めた。

 

一方…

 

「さて、あのゼシカとかいう女だが…我輩が相手をする。」

マックスはジゼルにこだわり、相手にすることにしていた。

「…マックス、貴方が相手では厳しくありませんか?」

アルビナスはマックスとジゼルの相性は悪いのに何故戦うのか理由がわからずそれを尋ねた。

「確かにそうだ。あの女相手では相性が悪い…」

「では私が…」

「やめておけ。お前は確かに手足を解放すれば優勢に戦うことは出来るだろう…しかし奴の経験値は我輩達はおろかあのメンバーの中で飛び抜けている。圧倒的な経験の差で負けてしまうのがオチだ。自然治癒が出来、タフな我輩だからこそあの女を相手に勝つことは出来ずとも負けることはない。」

マックスの言ったことは半分は嘘だが半分は本当だ。マックスはアルビナスがジゼルに勝てるとは思えなかったがアルビナスが勝ったらおそらくハドラーを救うことはかなり難しくなる。幸いなことにザムザがいるが口下手な自分達では説得も難しいだろうと判断していた。

「わかりました。それでは…」

そして親衛騎団達も作戦を立てようとした。

 

「そこまでだ!」

突如現れたハドラーが戦闘を中断させ、全員がそちらに向いた。

「ハドラー様、随分と早くありませんか?」

マックスは予想以上にハドラーが中断しにきたことに驚いていた。

「うむ…悪魔の目玉を通してお前達の様子を見せてもらった。予想以上に強い奴がいたのでな…」

ハドラーは変装したジゼルを強者を見るような目で見た。

「そうですか。」

「ハドラー!これは何の真似だ!貴様は正々堂々と戦うのでなかったのか!?」

ヒュンケルが怒鳴り声を上げハドラーに聞く。

「俺のいる所は死の大地…その場で実力無きものが来られても大魔王様の御前を汚すだけ…言わばこれはふるいをかけたまでのことだ。」

「ふるいだと?」

「そうだ。この場に立っている者達だけが死の大地へと行く資格がある。」

そう言ってハドラーは順々にダイ達と目を合わせた(ノヴァはヒムに負けているので目を合わせなかったが)

「よもや俺の知る顔以外に残る奴がいるとは思わなかったが…楽しみに待っているぞ!」

ハドラーは消え、親衛騎団達もリリルーラでその場から立ち去った。

 

「あれ?」

そして元の場所に戻るとマァムが異変に気付いた。

「どうした?マァム?」

ポップは声をかけ、マァムに話しかける。

「チウがいなくなちゃったのよ…」

マァムはゴミ箱の中も開けて探すがいなかった。

「そういえばゴメちゃんもいない!」

ダイも初めての親友がいなくなったことに気づき、探すがどこにもいなかった。

「…すまん多分俺のせいだ。」

いきなりクロコダインが謝り、頭を下げた。

「どうしたっていうんだ?」

「チウには俺の特訓の手伝いの報酬として獣王の笛というアイテムを渡してな…それを使ってモンスター達を連れて死の大地へと向かったのかもしれん。」

「チウのことだ無茶しかねえぞ…急ぐぞ!」

ポップはひとっ飛びして死の大地へと向かい、全員も死の大地へと向かった。

 

~死の大地~

「へっへっへっ…」

チウは得意げにモンスター達を使い、死の大地の情報を集めていた。

「これで全員帰って来たな。」

最後にホイミスライムが戻り、チウはその情報を聞き出した。その内容は海底に扉があったという報告だ。

「なるほど…どうやらそこにあるようだね。」

チウはそれまで空、陸を探しても見つからなかったことに納得し、チウが呼んだ中で一番の大物、火喰い鳥を残し他は収納して乗って帰ろうとした。

「何処に行くんだ?」

するとそこに現れたのは全身刃の駒フェンブレン…彼はハドラーの命令によってネズミを始末しろと言われていた。

「(まさか本当にネズミとはな…)」

フェンブレンは比喩表現ではなく本当にネズミであることに驚いていたがそんなことはどうでもいい。とにかくやるべきことをやるだけだ。

「へっ!お前の弱点なんぞわかっている!空を飛べないんだろ!ならこうすればいいだけのこと!!」

チウは火喰い鳥に空を飛ぶように命令して逃げようとしていた…

「バギマ!」

しかし親衛騎団はマックスを除いた全員がそれぞれの系統の攻撃呪文を唱えることが出来るということをチウは知らなかった。フェンブレンはその中でも空気を操るバギ系の呪文を得意としていた。

「うわぁぁぁぁっ!」

チウや火喰い鳥、ゴメちゃんはそれに巻き込まれ墜落した。

「さて…じっくりゆっくりといたぶってやろう。」

現在のハドラーから生まれたとは思えないセリフをフェンブレンは吐いた。これは魔王時代のハドラーの部下バルトスにも見られた傾向で禁呪法の中には生み出した者とは性格が違う例が出てしまう…フェンブレンもその例だった。

「くっ…こいつらに手出しをさせない!」

気絶した火喰い鳥やゴメちゃんを庇うようにチウは立ちはだかった。

「安心しろ、そいつらに手出しをせん…とハドラー様なら仰るだろうな。だがワシは残酷なのだ!先にこいつらからいたぶるとしよう。」

フェンブレンはチウを蹴り飛ばし火喰い鳥にフェンブレンの刃が突き刺さろうとした。

「やめろ~っ!!」

そしてチウは立ち上がり、突進する…

「うるさいわ!」

再び蹴り飛ばし、チウを気絶させた。

「ようやく邪魔が消えた…では早速…」

早速やろう。と言おうとした瞬間、フェンブレンは何者かに襲われた。

「ぎゃぁぁぁぁっ!?」

フェンブレンは目を潰されてしまい、まともに戦闘することなく帰還してしまった。

「(なんだ…?ポップか?マァムさんか?)」

チウはフェンブレンの声による叫び声で目が覚めたが誰がフェンブレンを傷つけたかわからない。ポップかマァムあたりが助けてくれたのだろうと思い再び気絶した。

 

そして数分後…ダイ達が駆けつけ、チウを発見した。

「チウ!」

マァムはそれを見てすぐにベホイミで回復させる…当たり前といえば当たり前だ。自分の弟弟子が傷つけられて冷静になれないのは無理もない。

「マァムさん…?助かったよ。」

チウはそれから自分が掴んだ情報、フェンブレンに傷つけたられた事を話して行った。

「なるほどね…おそらくそこにはハドラーがいると言っていいだろう。」

ジゼルはそれを聞き、ハドラーはそこにいると確信した。ジゼルがハドラーを呼び捨てなのは怪しまれない為で本心ではかなり謝っている。

「そうだね…でも俺達の傷を癒す為にも今回は帰ろう。」

全員の傷を癒す為には死の大地から離れる必要があった。それ故にダイは帰還するように促した。

「…悪いけど私は残るよ。」

「俺もだ。」

ジゼルとヒュンケルはそこに残り、クロコダインもついでに残った。

「そうか。でもちゃんと戻ってきてよ。」

ダイはそう言って他の全員を戻らせた。

 

「さてと…そろそろ出てきたらどうだ?」

ヒュンケルがそういうと1人の男が出てきた。

「やはりバレていたか。」

その男はバラン。元超竜軍団長にしてダイの父親である。

「バラン!?」

クロコダインだけが驚き、バランをまじまじと見ていた。

「…まだ他にもいるだろう。大人しく出てこい!」

今度はジゼルはそういうと誰1人出て来なかった。

「…」

ジゼルはナイフを取り出し、それを投げ、岩を粉々にするとそこにいたのはアルビナスとヒムだ。

「なっ…!?貴様らもいたのか!?」

二人がアルビナスとヒムがいたことに驚き、アルビナスとヒムも自分達がいた場所を嗅ぎ付けられたことに驚いていた。

「全く…貴女には全く叶いませんね…ですが私とヒムの二人がかりならばどうでしょうか?」

アルビナスは手足を解放し、ヒムと共にジゼルを襲ったがジゼルにとってはまだまだ赤ん坊、二人は瞬殺(もちろん生きている)され海に捨てられた。もちろん海に沈められた程度では死ぬことはないがそれでもえげつないことには変わりない

「これで話しが出来る。」

「酷いな…」

バランがポツリと一言呟いたがジゼルは無視した。

 

「さて…貴方が何者かはどうでもいい。私はハドラーをこの手で倒したい。貴方は大魔王バーンの首が欲しい。そこで協力しないか?」

ジゼルはバランに協力するように求めた。

「協力?何の協力だ?」

「貴方はおそらくハドラーと戦うことになる…その時私に譲って欲しい。それだけのこと。貴方からしてみればハドラーを気にせずバーンの首を取った方が都合がいい…違う?」

つまりジゼルはハドラーと戦うことなしにバランはバーンと戦うことが出来るように交渉したのだ。

「ハドラーなぞ私の敵ではない…不要だ。」

しかし、バランはなるべく1人でいることが良いと思っている…その方が行動しやすいと思ったからだ。

「勇者ダイがボロ負けしたと言ってもか?」

ここでジゼルはバランの息子の名前を出した。

「何だと?」

「今のハドラーはかつてのハドラーとは違う。別人だと思ってもいいくらいだ。」

ヒュンケルはそれに加勢してバランの説得を試みた。

「…ヒュンケル、クロコダイン、その男女にハドラーを倒せるだけの力はあるのか?」

「俺が苦戦した相手を瞬殺したくらいだ。何一つ問題ないだろう?」

「むしろハドラーが押される姿が目に浮かぶくらいだ。」

「そうか…」

それを聞いてバランはジゼルを思い出した。

「では翌日、ここで会おう。」

こうしてバランが味方となった。




ABC「モンスターABCの後書きコーナー!!」
A「はい、というわけで後書きコーナーです。今回はバランが味方になりましたね。」
B「しかしジゼル様は自重って言葉を覚えて欲しいよな…親衛騎団の二人を瞬殺なんてよ…」
C「あの二人はカウンセラーが必要になりますね。」

A「そういえばマックスの右手がどうこうってのはデスタムーアがモデルなんですよね。」
B「作者によると最初右手を倒して復活させられた時の絶望感は半端じゃなかったみたいですね。」
C「あれはどうしようもないですよ…」

A「後、あれだわ。作者の作品、タバサのTS物語がこの作品のお気に入り件数を超えたってやつ。」
B「まさかあそこに抜かされるとは思わなかった…特別ゲストとして出てみるか?」
C「それはそれで面白そうですね。俺達が変態になりそうだけど…おっと時間だ!」

ABC「次回もお楽しみに!」


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元親衛隊隊長、武人と戦う

「それじゃ行こうか」

 

 ダイ、バラン、ジゼルの3人は海に潜り海底の門をぶち壊しに向かった。

 

「よく来たな」

 

 そこで出会ったのはフェンブレン。彼はバランに潰された目を治さずにここに立っていた。その理由はバランにやられた時の屈辱を忘れない為であり誰よりも──それこそ主人のハドラーよりもバランに挑む為だった。

 

「邪魔」

 

 ドカッ!! 

 

 瞬殺である。特に見せ場もなくフェンブレンは叩き潰され比喩表現抜きに海底にめり込んだ。

 

「さて、行こうか」

 

 ジゼルはそう言って2人を促した。

 

「ああ、そうだな」

 

 バランはそれに承諾し、頷いた。

 

「(俺は何も突っ込まないよ)」

 

 ダイは2人のやりとりに突っ込むことすらも止め、そのまま海底の門をこじ開けた。

 

 

 

「ダイにバランにお前か。俺には時間がない。早く始めよう」

 

 ハドラーは3人を見、マントを外した。一見すると舐めたように見えるが実際は違う。ハドラーは黒の核晶の影響で身体を蝕んでいた。それ故に余裕がなかった。

 

「それじゃ私から行こう」

 

 ジゼルはそう言ってハドラーの前に立った。

 

「ゼシカとかいったな。マックスから情報は聞いてある。全力で行かせて貰うぞ!」

 

 マックスはジゼルが強いと報告しハドラーが戦いたくなるような相手に誘導した。ジゼルの作戦を不意にはしなくなかったのだ。

 

「ああ、こちらも行かせて貰うぞ!」

 

 ジゼルは疾風突きの要領でハドラーの懐に入り心臓を目掛けてハートブレイクを狙うがハドラーはヒム程甘くはない。

 

「ふんっ!」

 

 ハドラーの攻撃だ。ハドラーはシンプルに殴りに行き、格闘戦へと持ち込んだ。

 

「流石は元魔王といったところだ!」

 

「そんなかつての栄光に縛られたからこそ俺は敗北し続けたのだ! 己の地位を可愛がっている男に勝利などない!」

 

 ハドラーが優勢になり、ジゼルを押し始めた。これには理由がある。ハドラーを救うには一瞬心臓付近にある黒の核晶を凍らせる必要があるのだ。そのためにはハドラーを止まらせる必要がある。ハートブレイクを出したのもその一つの理由だ。だがハドラーはそれを許す程弱くはない。むしろジゼル個人が戦った中で五本の指に入るくらい強いと思ったくらいだ。

 

「まさか人間の身体でここまでやるとはな。マックスから聞いた評価よりもずっと上ではないか」

 

「そっちもね。ここまで強いとは思わなかった。だけどもう終わらせようハドラー!」

 

 ジゼルの身体がブレ、左手でハートブレイクを放つとハドラーはそれに直撃した。

 

「ぐおっ……!?」

 

 そして身体に異変が起きた。ハドラーの身体は動かなくなった。ジゼルはハドラーの心臓付近を切り裂き、黒の核晶に手を突っ込んだ。

 

「マヒャド!」

 

 ジゼルは黒の核晶をマヒャドで凍らせた。

 

「うおおおっ!!」

 

 しかしまだ半分といったところでハドラーが動き始めジゼルの腹を殴った。

 

「くっ!」

 

 ジゼルは飛ばされ、腹を抱えた。

 

「(ここまで強かったなんて予想外ね。笑っちゃうわ)」

 

 ジゼルはそう思い自虐気味に笑った。ハドラーが自分よりも格下だと思っていた。それは事実だがジゼルには油断もあった。かつてのハドラーが持っていたように。

 

「(でもそれでこそ私の惚れた魔族ハドラー。絶対に助けなきゃ妻として失格よ!)」

 

 だがジゼルはハドラーを救うためにここまで来たのだ。気合の入り方も半端ではない。

 

「面白い」

 

 またハドラーは笑っていた。ハドラーは竜の騎士以外にこんな強敵に巡り会えるとは思わなかったのだ。ハドラーに黒の核晶を埋め込まれていたが故の皮肉だろう。

 

「バラン、この戦いどう思う」

 

 父親を呼び捨てにしてダイはハドラーとジゼルの戦いの感想を聞いた。

 

「二人とも強い。竜魔人状態の私と互角と言っていいだろう」

 

「そんなに?」

 

「私は敵を過小評価する傾向があるからな。もしかしたらそれ以上かもしれんが、とにかく言えることは私は竜魔人にならないと絶対に勝てんということだ」

 

 

 

 そしてバランはハドラーを見ると心臓の付近に黒の核晶が埋め込まれていることに気がついた。そしてそれが半分凍りついていることにも

 

「っ!」

 

 バランは動揺した。何故ハドラーの身体に黒の核晶が埋め込まれているのか? そしてあのゼシカという女はそれに気がついていたのか? バランは様々な疑問を持ったが自分達に出来ることはこの場にいる二人にヒャド系とバキ系以外の攻撃呪文を使わせないことだ。

 

「《ダイ聞こえるか!?》」

 

「《何、これ? 一応聞こえるけど》」

 

「《竜闘気の応用でお前にテレパシーをしている。よく聞け。ハドラーには黒の核晶が埋め込まれている。もしもハドラーに向けてヒャド系とバキ系以外の攻撃呪文を使えば……黒の核晶が大爆発し、死の大地は真っ平らになる》」

 

「《じゃあどうすれば!》」

 

「《今はゼシカという女が止めているが万一ハドラーと戦うことになったらヒャド系とバキ系以外の攻撃呪文は唱えるな! ゼシカに今は任せろ》」

 

「《うん、でもむやみにハドラーを傷をつけたら爆発するんじゃないの?》」

 

「《その心配はない。ゼシカが先ほどマヒャドをやったおかげである程度の衝撃なら爆発しないようになっている。とにかく攻撃呪文を唱えるな》」

 

「《わかった》」

 

 そしてバランはテレパシーを止め、再び観戦していた。その理由はバラン達が加勢したところでバーンに黒の核晶を爆発させてしまう可能性があったからだ。

 

「(なんと無力なのだ、私は)」

 

 バランは唇を噛んだ。これほどまでに無力だと感じたのはソアラが死んだ時以来だったからだ。ソアラは悲しみしかなかった。しかし今回は違う。ゼシカ一人に任せてしまうことが悔しかったのだ。

 

 

 

「(格闘戦では少々不利か。ならば!)」

 

 そんなバランの気持ちも知らずにハドラーは魔軍司令時代の切り札の呪文、ベギラゴンを唱えた。

 

「ベギラゴン!」

 

 そしてその呪文はジゼルに向かい、襲いかかる。それをジゼルは両手を構えて冷気を作った。

 

「マヒャド!」

 

 それはただのマヒャドではない。いくらジゼルでもただのマヒャドであればハドラーのベギラゴンに押されてしまう。そこでジゼルは本来片手でも出来るマヒャドを両手で融合させ、威力を通常の2倍近くまで上げた。

 

「ぬぉぉぉっ!?」

 

 ハドラーはそれに押され、ジゼルのマヒャドに直撃した。

 

「やった……?」

 

 ダイがそう呟き、ハドラーを見るとピンピンとしていた。その理由は超魔生物の体質のおかげで自動で回復していたのだ。

 

「ふっ、驚いたぞ。俺のベギラゴンをマヒャドで押し切るなんてな」

 

「よく言うよ、そのマヒャドが直撃しても回復されちゃ頭いたいね」

 

 ハドラーの賞賛の声をジゼルはバッサリと切り捨て頭を抱えた。

 

「(ふむ、今ので呪文の方ではこちらが若干有利と見た方が良いか。しかしそれではジリ貧という作戦になる)」

 

 ハドラーは短期決戦に持ち込みたかった。その理由はハドラーは自分が何もせずとも時間が経過すれば死ぬと自覚していた。そのため、長期戦でダラダラとやるよりも短期戦で一気に決着をつけたかった。

 

「ゼシカ、そろそろ決着をつけよう」

 

 ハドラーは覇者の剣を取り出し、魔炎気を出した。

 

「そうね」

 

 それを見たジゼルは片手に全ての魔力を込め、冷気を放出する。

 

「超魔爆炎波!」

 

 ハドラーの必殺技、超魔爆炎波がジゼルを襲う。

 

「アイス・ハートブレイク!」

 

 ハートブレイクにヒャド系の呪文を足した技がハドラーを襲う。

 

「貰ったぁっ!」

 

 僅かばかりかハドラーの超魔爆炎波がジゼルに襲いかかるのが早かった。

 

「くっ!」

 

 ジゼルは技を出したまま足を動かし、無理やりそれを避けた。

 

「何っ!?」

 

 ハドラーはそれに驚いた。まさか技を出している時に足を動かせるとは思っていなかったのだ。それ故にハドラーの超魔爆炎波は外れた。

 

「アイス・ハートブレイク!」

 

 そしてジゼルの技が決まり、黒の核晶を完全に凍らせた。



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元親衛隊隊長、任務完了

「見事だが、少々威力が足りなかったようだな」

ハドラーはその威力のなさに落胆していたがジゼルの目的はそれではない。

「ようやく、ようやく出来た……」

ジゼルは涙を流し、氷漬けにした黒の核晶を取り出した。

「な、なんだこれはぁぁぁっ!?」

ハドラーは一回使うだけで魔法使いから異端扱いされる禁呪法をホイホイと使うがそれを見ただけでも震えた。その理由は黒の核晶というのは超強力な爆弾である。その威力はそこらの大地をペンペン草も生えないくらい真っ平らにしてしまう威力があるのだ。それが自分の身体の中に埋め込まれていたら? おそらく恐怖で震えるだろう。

「何故、俺の身体の中にこんなものがあるのだ!!」

「それはハナっから大魔王バーンが貴方を巻き添えにして地上を破壊しようとしたからですよ。ハドラー様」

ハドラーの疑問に答えたのはジゼルだった。元の口調に戻ったジゼルを見たハドラーはそれに驚いた。

「その声、まさか!!」

そしてジゼルはモシャスを解いた。

「お久しぶりです。ハドラー様」

その姿に誰もが驚いた。ダイもバランもそして悪魔の目玉で見ていた魔王軍の幹部たちも全員驚いていた。

「お前は、もしかしてそれに気づいていたからこんな技を……!?」

そこでハドラーは気付かされた。ジゼルが自分の為に動いていたのだと。

「そうです。始めにハドラー様に黒の核晶が埋め込まれていることに気付いたのはハドラー様と性行為をしたことです」

「あの時か……だが何故俺に報告しなかった!」

「報告すればミストバーンの耳に入り、バーンは即刻処刑すると判断しました」

「!」

「ですから私はハドラー様に報告するよりもハドラー様とあえて敵対し、無理やりこれを氷漬けにした方が良いと判断しました。ずっと黙っていて申し訳ありません」

ジゼルが謝罪するとミストバーンが現れた。

「ミストバーン! 俺に言ったことは嘘なのか!? そしてバーン様は俺に本当に爆弾を埋め込んだのか!?」

『ハドラー、お前の行動は尊敬に値する。だがバーン様の命令は全てに優先する!それが答えだ』

「!!」

『さらばだハドラー』

ミストバーンは隠し持っていた黒の核晶を取り出し、自分の姿を露わにした。

「それがお前の本当の姿!?」

ミストバーンはハドラーの疑問に答えることなく黒の核晶を起動させた。何故ハドラーの黒の核晶を爆発させないかというと黒の核晶は所詮機械、ジゼルによって氷漬けされた黒の核晶は爆発出来ない。それ故に新しい黒の核晶を用意しておいたのだ。

「なっ!」

バランとダイはそれに驚き、硬直し、ハドラーはショックで動けない。となれば動けるのはジゼルただ一人だ。

「脱出するよ! 皆!

リリルーラ!」

全員を引き連れジゼルはリリルーラで脱出した。

 

~某所~

「わっ!? ジゼル様、それにハドラー様にダイとバラン!?」

ジゼルがフレイザードの元に合流するとアクデン、ベン、カラスの三頭が駆け寄った。

「3人ともご苦労様、もうハドラー様の件は終わりよ」

「ということは成功したんですか?」

「ええ。ただね……」

「ただ?」

「ダイ君の仲間達と親衛騎団の皆を救ってあげられなかったことが残念よ。まさかミストバーンがあんなことをするとは思わなかったのよ」

「そ、そんな……」

「いや、その心配はなさそうだ……見ろ」

ハドラーが向いた方向に全員が向くとそこにはマックスとブロック、城兵の駒が全員を抱えていた。ただし全員気絶しており眠っていた。

「なっ、どうやってあそこから脱出したんだ!?」

ダイがそう聞くとマックスはドヤ顔になった。

「簡単なことだ。我輩はずっとゼシカ、いやジゼル殿の監視をしていた」

マックスが抱えているクロコダイン、ザムザ、ヒュンケルなど下ろすとそれに続いてブロック、マックスが操っていた城兵の駒も下ろした。

「何故?」

ジゼルはそれがわからなかった。何故自分を観察するようなことをするのか理解出来なかった。ただ単純に目立ちすぎたというのもあるがそれだけだったら理由としては弱い。

「我輩がスキャンをした時にゼシカがジゼル殿であったこと、そして裏切った理由を含め全て調べさせて貰った」

ジゼルが少し変装を見破られていたことに落ち込んだがハドラーのスルースキルは伊達ではない。

「それでは初めから気づいていたのか? マックス」

ハドラーはマックスに確認をし、ジゼルを見る…

「ええ、万一ジゼル殿の策が上手くいかなかった場合も想定し、我輩とブロックにリザオリクを唱え、駒は自動回復するようにして全員を守るようにしました」

「リザオリク?」

ジゼル達はその呪文に首を傾げた。その呪文は聞いたこともないからだ。

「その対象者が死んだ時に発動する呪文です。その効果は蘇生、つまり死んだら一度だけ生き返るという呪文です」

「なっ、そんな切り札があったのか?!」

「もっとも魔力を相当使いますから休ませて貰います。最後に、フェンブレンは無事です。失礼……!」

ドシンッ!

マックスは倒れ、眠りについた。

「よくやってくれた。ジゼル、マックス。お前達は俺に過ぎた部下だ。これからも俺に従ってくれるか?ジゼル?」

 

「ハドラー様、その前に紹介したい子がいます」

「ん?」

「フレイザード、ラーゼル出て来なさい!」

そして建物内から現れたのは魔族の子を連れたフレイザードだった。

「よう!久しぶりだな。ハドラー様に、お袋」

「そうだな」

ハドラーはフレイザードを懐かしく思い、あの時の自分とフレイザードを思いだしていた。あの時はジゼルを利用することしか考えず、フレイザードも目的と手段が逆になって暴走していた。だが二人はもうそうならないと感じていた。

「もう!久しぶりはないでしょ!」

ジゼルが少し子守を頼んだ程度でフレイザードがそんな皮肉を言うとは思わずぷりぷりと怒った。

「全くお袋、少し女らしくなったか?」

「ハドラー様、フレちゃんがイジメる~!」

ジゼルは嘘泣きでハドラーに抱きつき、ハドラーは無言で撫でる。

「へえ、ハドラー様も変わったねぇ。昔なら嫌がっていたのにね」

「ジゼルへの褒美だ。今回は許す」

「それよりもこいつを紹介するぜ。こいつは俺の妹にしてハドラー様とお袋の娘。ラーゼルだ!」

「はじめまして! お父様! お母様!」

「はじめまして? おい、まさかジゼル。フレイザードに任せきりにしたままじゃあるまいな?」

ジゼルがギクッと動き、硬直した。

「え~とそれはですね」

「俺に尽くしたことは褒めてやるがフレイザードに任せきりとは何事だ!」

ハドラーはじゃれ合う程度の強さでジゼルを梅干しの刑にした。

「ひゃぁぁぁっ!? なんか強くなってる〜っ!!」

ハドラーによるお仕置きが終わった後、ジゼルは目を回し、しばらくするとラーゼルに近づいた。

「はじめまして、っていうのは私にとって不自然だから久しぶりね。ラーゼル」

「うん!お母様久しぶり〜っ!」

ラーゼルは笑顔でそう言ってジゼルに抱きついた。

「あらあら。抱きつく癖は私に似たのね」

「えへへ〜っ♡」

 

ジゼルとラーゼルがひっついている間、ハドラーとバランは話あっていた。

「バラン、もしもダイが息子でなく娘だったらダイの母親はああなっていたのか?」

ハドラーはそう言ってキス魔となったジゼルを指差した。

「……ならんだろう」

バランはしばらくの間が空き、そう答えた。ソアラも大概親バカであり、息子であるディーノに対してキス魔となっていた。それをダイが知ったらどうなるだろうか?

「……」

二人は無言となった。




ABC「モンスターABCの後書きコーナー!!」

A「はい、という訳でハドラー様を救出して、俺たちの出番もあった…」
B「それはお前だけだろうが!イオナズン!」
C「げふっ!?何故俺まで…」

A「ひでえ目にあった…でもバーンとの負け試合に参加出来ませんでしたね。」
B「それは仕方ないだろうが。ジゼル様にハドラー様、バランもいるんだぞ…老人形態なら間違いなく仕留めてしまう…」
C「ありそうで怖いですね…おっと時間だ!」
ABC「感想は感想へ、要望はメッセージボックスへ…次回もお楽しみに!!」


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勇者一行、修行開始

ようやく投稿出来ました。


「う…ここは?」

クロコダインが目を覚ますとそこにいたのはラーゼルだった。

「気がついた?」

ラーゼルはそう言ってクロコダインの頭にあったタオルをどかした。

「お嬢さん…ここはどこかな?」

クロコダインは紳士にそう言ってラーゼルに尋ねた。

「お嬢さんじゃないよ、ラーゼルだよ!」

「ではラーゼル…俺達はどこにいるかわかるか?」

「お母さんならよく知っているから呼んで来るね。」

ラーゼルはそう言って退室した。

 

「(さて…ラーゼルの母が出てくるまで状況を整理するか。)」

クロコダインはそれまで状況を整理することにした。

「(まず俺達はダイ達とは別ルートで親衛騎団と戦った。そしてその戦闘の最中にマックスとブロック、そしてマックスの操る城兵の駒が俺達を下敷きにして潰した…流石の俺といえどもマックスと城兵の駒の両方の重さには対応できずにそのまま意識がなくなった。)」

クロコダインは黒の核晶が爆発したことに気づかず、意識を失ったのだ。無理もない。それだけ大規模な爆発だったのだ。

「(しかし、俺は目が覚めたら包帯を巻かれた状態でここにいた…一体俺が気絶している間に何が起こった?)」

現在のクロコダインが包帯を巻かれるということは相当な重傷である。どのくらいかといえばギガブレイク100発分に相当するといえばわかるだろう…

「そういえばホップ達は…?」

クロコダインは周りを見渡すと個室だとわかり外へ出ようとした。

「あ…」

そして外へ出るとそこにいたのはジゼルだった。

「起きた?」

「まさかジゼル…お前が助けたのか?」

「いや詳しくいえば違うよ。これからそれを説明するから皆が起きたら外に出るように言っておいて。」

「皆…?」

「そう、クロコダイン…貴方が一番の重傷を負ったんだから個室にして治療したのよ。ほらあそこに皆いるわ。」

ジゼルは扉を指差してそちらに向かせるとクロコダインは頷いた。

「そうだったのか…」

ホッと一息をついてクロコダインはその場に腰をかけた。

 

そして全員が気づき、外に集合させた。

「これで全員揃ったね。」

ジゼルの言葉に全員が頷く。

「これから私達がやるべきことは大魔王バーンを倒すこと。」

「その通りだ…あくまで俺達は大魔王バーンを倒すという共通点があるということにしか過ぎない。」

「簡単に言えば敵の敵は味方ってことだな。俺個人としてはてめえらなんかよりも憎い奴がいるし、てめえらと協力することは何一つ問題はねえよ。」

ハドラーの言葉にフレイザードが付け足すとマックスも声を出した。

「我輩達親衛騎団はハドラー様の命令に従うまでだ。」

 

「こいつは頼もしいぜ…」

ポップがそう言ってその場の空気を少しでも明るくしようとしたがそうはいかなかった。

「…大魔王バーンは強い。おそらく私、ダイ君、ハドラー様、バラン、ベンの五人が全員総掛かりでも勝てないほどに強い。」

「…冗談だろ?おふくろがそんな弱気なんて。」

フレイザードが信じられない顔でジゼルを見るがジゼルは首を振った。

「はっきり言うけどこれは冗談じゃない。あいつは…ハドラー様並かそれを上回るくらい魔力を持った魔法使いのメラゾーマを超えるメラを放つような奴…今の時点じゃ少なくとも大敗北するのは目に見えている。」

それを聞いてポップ達は絶望的な顔になった。それもそのはず…ポップは魔力に関してはハドラーと同等である。そのハドラーのメラゾーマがバーンのメラで押し切られる程バーンは強いのだ。

「そ、そうだ…魔神ダークドレアムはどうだ!?あいつに勝てば…」

フレイザードは魔神ダークドレアムの伝承を知っていた…その伝承はダークドレアムに勝てば願いが叶い、前回ダークドレアムに勝った当時の勇者達一行は当時の大魔王デスタムーアを滅ぼして欲しいと願ったところデスタムーアを物理的に、しかも一瞬で消し去ったという伝承だ。フレイザードはそれを利用しようとしていた。

「却下。ダークドレアムは人間に対しては弱いけど私達魔族の天敵。主力が人外である以上倒すことすら無理。それならまだバーンに挑んだ方がマシ。」

しかしダークドレアムは魔族に異常に強く、魔族の天敵とも言える存在だった。これまでの歴史の中で人間のみしか願いを叶えていないのが何よりの証拠だ。

「ダークドレアムの路線は無理となればジゼル殿…破邪の洞窟はどうだ?俺もあそこでパワーアップしたし、あそこならばアイテムも呪文も手に入る。」

クロコダインがそう言って自らの経験も話した。

「悪くない…でもその中に入って効果的なのは人間である貴方達と経験不足の親衛騎団くらい…私達はあまり効果的じゃない。」

「じゃあどうするのさ?」

ダイがそう言ってジゼルに尋ねる。ここまで否定されたら流石に尋ねるのは当たり前のことだ。

「私が稽古をつける。」

 

「…ちょっと待って下さい。ジゼル様。」

ベンがそう言ってジゼルに意見を出す。

「何?」

「少なくとも一対一の勝負で私を打ち負かしてからジゼル様の特訓に参加してはどうでしょうか?そうでもしないと大魔王バーンに勝てるとは思えません。」

ベンはジゼルに僅か数秒でボロボロに負け、その自分以下であればジゼルの特訓についていけない…現時点でベンがベンを超えている、あるいは同格と思っているのは強い順にジゼル、竜魔神状態のバラン、現在のハドラー…それにクロコダインだった。

「…確かにそうね。」

ジゼルは確かに自分が相手ではあまり意味がないと思い、それに納得した。

「でははじめに…ダイと戦わせて貰います。」

ベンはダイを指名し、トライデントを投げ地面に突き刺さる…

「ええっ!?俺と!?」

ダイはまさか自分が指名されるとは思っていなかったのだ。ベンはクロコダインから話を聞くとクロコダインに敗れクロコダインに恨みを持っていると思っていたからだ。

「本当はリベンジでクロコダインと再戦したいのだが…バランを破った実力を見ておこうと思ってな。」

ベンはトライデントを抜き構える。

「…わかった。剣も戦えって言っているし。」

ダイは剣を抜き構える。

「話が早くて助かる。」

しばらくの沈黙の中、誰かの汗が静かに落ちた。

 

「!」

そして二人はそれを合図に同時に動き、鍔競り合いをする。

「ふんっ!」

力のあるベンがダイを押し切り、ダイをトライデントで貫く。

「竜闘気!」

しかし、ダイは一瞬だけ竜闘気を全開にして身を守ると今度は剣を火に纏い、それを振った。

「火炎大地斬!」

ヒュンケルの大地斬を上回るダイの火炎大地斬がベンに襲いかかる!

「くだらん!はぁぁぁぁっ!!」

しかしベンからしてみればなんでもなく、ベンは爆裂切りでそれを打ち消し、イオラを10発放つ。

「くっ…!!」

ダイはそれを凌ぐのが精一杯でベンの接近を許してしまう。

「貴様それでもバランを倒した男なのか!?これならバランの方がよっぽど強いわ!!」

ここでベンは父親であるバランと比較させ、刺激を与える。このままベンが勝っても何一つ意味がないからだ。刺激させなければ怒りを抑えること、怒ったとしても新しい技を思い浮かべさせるのが重要だ。

「(ディーノ…必ず勝て。私に出来ることはお前の勝利を祈る事くらいだ…)」

バランは愛する息子であるダイが頑張る所を見て、そう願った。誰でも子供は応援したくなるものだ。

 

「遅い!遅すぎるわ!!」

ベンは得意の二回行動でダイを追い詰めていき…トライデントをダイの首元の前で寸止めした。

「これで…決着は着きましたね?ジゼル様?」

ジゼルは黙って頷いた。通常であればジゼルなら頷かないのだが…そうもいかない。ダイがここで竜闘気を使って防御しても相手がベンでなくバーンだったら無意味になるし、ベンはその事を理解していたがジゼルに念のために確かめたのだ。

「勝負は俺の勝ちだ。ダイ…もしも相手がバーンならこんな生易しいものではないぞ…覚えておけ。」

ベンはトライデントを戻すとダイにそう言って元の場所に戻った。

「…」

ダイはジゼルやハドラー、バラン相手ではなくそれ以下の相手に負けてことにショックを受け、下唇を噛んだ。




ダークドレアムは魔族に異常に強い設定です。そうでもしないとダークドレアムを倒す基準のレベル60でも苦戦するデスタムーアを遊んで葬れないはずですから…

ちなみに作者個人の話ですがデスタムーアは初見から3回連続全滅したのに対し、ダークドレアムは1回も全滅しませんでした。一番ひどかった初見殺しはⅧのラーミアでなくドルマゲスですね。あれはない…と個人的に思いました。


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氷炎将軍VS親衛騎団

 ベンとダイの試合が終わり、次は誰と誰が戦うか揉めた。

 

「それじゃおふくろ、この腹違いの妹弟達に経験って奴を積ませてやるけどいいか?」

 

「腹違いって、確かにそうだけど親衛騎団の皆は私にとっても可愛い子供よ」

 

 ジゼルはそう言って苦笑し、アルビナスをみる。

 

「ふん、実にくだらない。禁呪法で作られた駒が子供なんてほざく甘さは捨てたほうが良いのでは?」

 

 アルビナスがジゼルを嫌うのはアルビナス自身がファザコンだからだ。それ故にジゼルがハドラーと仲良くするのが許せなかったし、ジゼルを義理の母とも認めていなかった。

 

「……」

 

 ジゼルは悲しそうな顔になり、アルビナスを見る。

 

「少なくともてめえらのように言われた事をやるだけの駒よりかはマシだぜ?」

 

 フレイザードはジゼルが悲哀の表情になったのを見てアルビナスを挑発する。

 

「フレイザード。それは私達に喧嘩を売っているのですか?」

 

 アルビナスはそれに乗った。デルムリン島で見せたハドラーの単純な性格がここに来て現れてしまった。

 

「フレイザードお兄様だろ? アルビナス?」

 

「私達親衛騎団に勝てたらそう呼んであげますよ」

 

「っておい! アルビナス、俺達を巻き添えにするなよ!!」

 

 ヒムが突っ込むがアルビナスは無視した。

 

「兄より優れた妹弟なんぞ存在しねえって事を証明してやるよ」

 

「既に俺達が参加することになってやがる」

 

 ヒムはフレイザードのターゲットになったことに肩を落とした。苦労人の部分は間違いなくジゼルに絡まれた時の魔軍司令時代のハドラーそのものだった。

 

「我輩は敵に備えたい、故にこの勝負降りる」

 

「マックス!!」

 

「許せ」

 

 こうしてマックスを抜いた親衛騎団とフレイザードの戦いが始まった。

 

 

 

「フィンガー・フレア・ボムズ!」

 

 早速フレイザードは必殺技であるフィンガー・フレア・ボムズを放ち、攻める。

 

「オリハルコンにそんなものは効かないのは知っているでしょう! フレイザード!!」

 

 アルビナスはそれをものともせず、突っ込んでフレイザードに立ち向かって行った。

 

「待てアルビナス!」

 

 だがそれを止めたのはシグマだ。彼は決して油断しない。その為、真っ先にフレイザードが自分達に無駄だとわかっている呪文を唱えたのか? という疑問を真っ先に持ち、アルビナスを止めたのだ。

 

「へえ、結構やるじゃねえか。だけどそいつはもう動かねえぜ」

 

 フレイザードはそう言ってアルビナスを嘲笑う。

 

「何をバカなことを……っ!?」

 

 アルビナスが動こうとするが炎の鎖が邪魔をして動けなかった。

 

「そいつは俺の岩から禁呪法の応用で作り出した炎の鎖──さっきフィンガー・フレア・ボムズを放った時にてめえにぶつけてやったんだよ。もしもお前が忠告を無視してあの時動いていたら親衛騎団全員巻き添えだぜ」

 

 フレイザードは得意げに解説すると真顔になった。

 

「この鎖を解こうなんて考えるのは止めときな。俺以外の奴らがその鎖を解こうとしたら大爆発を起こしてお前もそいつも巻き添えを喰らう。そこでおとなしくしていな!」

 

 フレイザードはもうアルビナスに用はないと言わんばかりにヒム達に目を向けた。

 

 

 

「(こんな技で封じてしまうとはな)」

 

 マックスはフレイザードがアルビナスの動きを封じる程強くなっていたことに驚いていた。マックスの中のデータでは以前のフレイザードなら文字通り秒殺だったが今は全然違う。駒の動ける範囲が広い程強いという訳ではないがそれでも駒の中で最も動ける範囲が広い女王……アルビナスの動きを封じたのだ。同じ親衛騎団のメンバー達に出来るかと言われれば無理と答えるだろう。それだけアルビナスの動きを封じることは不可能に近いのだ。

 

「(だが相性が良いとは言えここまで出来るとは……以前のハドラー様のように復活したら強くなるようになっていたのか?)」

 

 だがマックスはフレイザードの技だけに注目した訳ではない。フレイザード自身についても注目したのだ。マックスの考える通りフレイザードはパワーアップしていた。しかし死んで復活したからという理由ではない。あえて言うならジゼルがラーゼルを守る為にフレイザードを強くしたのだ。以前なら魔軍司令初期の弱いハドラーの為に調節していたが今回は違う。ジゼルの凍てつくマヒャドとマグマから復活したのだ。ハドラーと重ねる必要性がなかったとは言ってはいけない。ジゼルはハドラーとの間に子供が欲しかっただけなのだから。

 

 

 

「さてと……今度はてめえらか」

 

 フレイザードは残った3人(フェンブレンは不在、マックスは不参加)を見て笑った。

 

「ブロック、ヒム、今回は私の指示に従ってくれ。私に作戦がある」

 

 シグマは槍を構え、いつでも動ける準備を整える。

 

「ブローム!」

 

「わかった」

 

 ブロックとヒムはそれを了解し、目を合わせ、3人が同時に動いた。

 

「へえ? 3人同時にやりゃ俺を倒せるってか?」

 

 フレイザードは輝く息でブロックを攻撃し、それを避けた2人はフレイザードの右半身──つまり氷の身体の部分を攻撃しようとしていた。フレイザードは今まで強力な氷系の技を使ったことがない。あえて言うなら現在使っている輝く息くらいだろう。

 

「ヒートナックル!!」

 

「ライトニングバスター改!」

 

 そして2人はフレイザードの右半身に向かってメラ系とイオ系の特技を放った。イオ系はともかく、氷の身体にメラ系は天敵である。それ故にヒムのヒートナックルが効くかと思われた。

 

「2人して痛えじゃねえか」

 

 だが実際にはほぼ無傷、ヒム達はそれに目を開く。

 

「俺のヒートナックルとシグマのライトニングバスター改を受けて無傷だと!?」

 

「そう驚くなよ。確かに今までの俺ならこの右半身は無くなっていただろうな。だがおふくろの凍てつく氷のおかげで炎すらも凍らすことが出来るようになって、てめえらの技の属性をなくしたんだよ」

 

「無茶苦茶だぜ」

 

 ヒムはこの状況にも関わらずに笑っていた。

 

「ブロォォーム!!」

 

 そう、ヒムが笑っていたのはフレイザードに突っ込んでくるブロックにフレイザードが気づかなかったから笑っていたのだ。

 

「なるほど、それがお前達の作戦か。考えたもんだ」

 

 フレイザードは半ば関心しながらブロックを見てギリギリのところで避けた。

 

「はあっ!」

 

 避けたところを見計らい、シグマはフレイザードを取り押さえた

 

「てめえ! それが目的か!」

 

 フレイザードは暴れるが解けない。

 

「今だ! ヒム!」

 

「ヒートナックル!!」

 

 シグマの声でヒムがフレイザードの右半身に炎の拳を炸裂させた。

 

「がはっ!」

 

 だがそこにはフレイザードはおらず、右手を失ったシグマがいた。

 

「シグマ!?」

 

 ヒムは慌てて手を抜き、シグマを見る。

 

「何故だ?! 何故いきなり消えたのだ……!?」

 

 シグマはそう言って消えたフレイザードに尋ねた。

 

「弾丸発火散の応用だよ」

 

 それを聞いた一部のギャラリー達は納得してしまったが親衛騎団のメンバーはわからない。

 

「弾丸発火散は俺の身体の小さな岩をバラバラにしてそれを当てる技。今回はその身体がバラバラになる原理を利用してやったって訳だ」

 

 そしてフレイザードは3人をアルビナスと同様に炎の鎖で拘束すると、高らかに笑い声を上げる。

 

「これで俺の勝ちだ! ひゃーっはっはっはっは!」

 

 フレイザードの勝ちが決まった瞬間だった。

 

 

 

「まさか私達が負けるなんて……」

 

 アルビナスは影を落として、ブツブツと呟いていた。

 

「さてそれじゃアルビナス? 俺のことをフレイザードお兄様って呼んでみな?」

 

「くっ、フレイザード……お……兄様」

 

「よく出来ました!」

 

 フレイザードはニヤニヤと笑い、アルビナスの頭を撫でた。やっていることは最低であるがジゼルからすれば微笑ましく、ジゼルも混ざった。

 

「それじゃアルちゃん! 私のことはお母さんって呼んで!」

 

 かつてないほどジゼルの笑顔が眩しく輝いており、ハドラーも苦笑していた。

 

「呼びません! 言うとしてもジゼル様くらいです!」

 

 アルビナスはぷりぷりと怒り、口を閉ざしてしまった。




ABC「モンスターABCの後書きコーナー!」
A「はい、という訳で今回はフレイザードが勝ちましたね。魔改造され過ぎじゃないですか?」
B「まあ今回のフレイザードの技、炎の鎖のモデルはDBの四星龍から生まれたものだからな。その影響でめちゃくちゃに魔改造されてしまったんだ」
C「それは仕方ありませんね」

A「そういえばまた作者が新しい小説を書いたらしいですよ?」
B「またか…確かターニアを主人公にした『ドラゴンクエストⅥ〜ターニアの冒険記〜』だったな。」
C「それに関しては作者は原作をプレイしながら書いているみたいですよ?この小説は原作をほとんど読んでいないくせに…」

A「それはともかく、次回は誰と誰が戦うんですか?」
B「次回は…お前達なんじゃないか?今まで戦ってないし…」
C「マジですか!?って時間だ〜っ!!」

ABC「次回もお楽しみに!!そして作者の書いている作品もよろしくお願いします!」


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テンション獲得!?武道家と魔剣士のやり方。

フレイザードと親衛騎団の戦いも終わり、次に戦うのはアークデーモンAことアクデンとガーゴイルCのカラスのペアとポップ、マァム、ヒュンケルの3人組のペアだった。…なぜかジゼル陣営VSダイ&ハドラー陣営になっているのはベンがダイを打ち負かしたのとフレイザードが親衛騎団に勝ったことが原因だろう。

「あと一人足りないけど大丈夫なのかよ?」

ポップがそう指摘するとアクデンはニヤリと笑った。

「問題はない…それともダイを打ち負かすベンを連れてきてもいいのか?」

そう言ってベンを見るとベンはトライデントを手に持った。

「いやいや!流石にそれだと勝てねえからやめてくれ!」

ベンの強さを間近でみたポップはそれを恐れた。一瞬で負けが予想出来、成長もクソもあったものではない。今回はあくまでも力を見るものだ。

「じゃあヒュンケルが抜け」

ポップがそう言った途端、カラスが左手で首をガッチリと止め、剣でポップの頬をいつでも突けられるように準備をしていた。

「アホか。俺たちを舐めすぎだ。」

「速いっ!?」

ヒュンケルが声に出して驚くがベンやジゼル、アクデン以外の全員が驚いていた。特にバランは自分の部下であったラーハルトと同格ではないかと疑ったくらいだ。

「カラスは俺とベンとは違って使える呪文は補助呪文のみだがスピードは桁違いだ。」

「げっ!?マジかよ!?」

「…俺も参加しよう。」

流石に不利と悟ったのかザムザが参加を表明した。彼は前回のマックスと同様に観戦することに決めていたがあの動きを見てはこちら側が負けると判断したのだ。流石のザムザといえども自分の陣営ではなく、ジゼルの陣営ばかり勝ち続けると胸糞悪いというものだ。

「参加するのがクロコダインであればベンを加えるが…お前なら問題ないだろう。」

ポップ達にはその言葉は挑発ではないがザムザにとってはその言葉は挑発と同じである。

「…後悔しても知らんぞ?金魚の糞共…」

それ故にザムザは2人を怒りを抑える代わりに挑発してしまった。

「やれやれ、どうしようもない奴らだ。」

しかしその挑発には乗らず二人は落ち着いていた。

「金魚の糞か…まあそれは否めないがその糞がどれだけ強いかもわからない奴はただのバカだ。」

むしろ挑発仕返し、ザムザがキレ、戦闘が始まった。

 

ザクザクザクザク…!

 

「遅い!遅すぎる!」

ヒュンケルとザムザを翻弄し、次々と体にその跡を切り刻む。

「(ラーハルトはカウンターとしてのグランドクルスでどうにかなったが…カラスはジゼルの元についているだけあってそういったカウンターは無駄…となれば超魔生物のザムザに頼るか?いや…愚策だ。第一ザムザにもプライドというものがある。俺は…どうすれば勝てる?)」

ヒュンケルは悩み、防御を続ける。それしかカラスは許さない。

「おのれえっ!」

ザムザがタンを吐くとカラスは素早くそれを切り捨てた。

「げっ!?唾切っちまった!!」

などとカラスは間抜け面をしながらもザムザを標的に変えた。

 

「お前達の相手はこのアクデンだ。」

ドンっ!

アクデンはトライデントを地面に突き立て、仁王立ちをする。

「イオラ!」

ポップはすかさずイオラを放ち、アクデンに攻撃するが…

「無駄だ。俺のイオ系の耐性はハドラー様、ベンを凌ぐ…もっともそれだけではないぞ。」

アクデンはポップとマァムの目の前から消えると二人の後ろから攻撃していた。

「がっ…!?」

「ぐっ…!!」

ポップとマァムは一瞬意識を刈り取られたが流石はアバンの使徒というだけあり、気合で耐えた。

「…なんて奴だ。あの一瞬で俺達の後ろに回り込むなんて…」

「俺はベンと同じように二回行動が出来る。故に貴様ら如きの後ろを取ることは容易いことだ。」

「なっ…!!」

ポップが驚愕の事実に震え、アクデンに怯える。

「むしろ純粋なパワーで言えば俺はベンよりも上だ。」

更に絶望させる言葉が2人を襲った。しかしアクデンは何故そこまで自信が持てるのかと言うならば、ミストバーンの部下である怪しい影が影響している。怪しい影は怪しい影という種族ではなく多くの魔物がミストバーンの暗黒闘気によって姿を変えた魔物だ。中には怪しい影以上の魔物だったりするものいるし、はぐれメタルだったりもするパターンもある。ミストバーンは少しでも情報を得ようとし、強い魔物やはぐれメタルから出来た魔物を送ったが結果アクデンやカラス、そしてベンがそれらを倒し、その周りにいたフレイザード、ラーゼルの急成長にもつながった。

 

「じゃあ…貴方はベンよりも強いって言いたいの?」

マァムはそう尋ね、アクデンに問うがアクデンは首を横に振った。

「いや流石にベンよりかは弱い。だが…ベンが何故格上なのかわかるか?」

「え!?それじゃベンは手を見せていないってこと!?」

ポップとマァム、いやジゼル達4名を除いた全員が驚いていた。

「そうだ。マァム…お前も武道家の端くれならテンションという言葉を聞いたことはあるのではないか?」

「テンション…僅かに聞いたことはあるけどまだ速いって言われて…」

マァムはその時少し気を落としたが代わりに努力し、いつか教えてもらおうとしてきた。

「そうか…まあ仕方あるまい。では闘気くらいはわかるだろう?」

「ええ。」

「闘気をコントロールし、闘気を溜めると興奮作用があることから『テンションを上げる』と呼ばれ、それが出来る者はテンションを獲得した者として扱われる。ベンはそのテンションを獲得しているが…俺は獲得していない。それの差がどれだけの差かわかるか?」

「…」

「おそらく今のベンはジゼル様やハドラー様、バラン達の領域に辿り着けるだろう。その一方で俺はせいぜいクロコダインが限界だろうな。」

「そんなに差があるの?」

「もちろんだ。テンションの段階が一つ違うだけでも大違いだ。お前がテンションを上げることが出来れば大幅な戦力アップとなるだろうな。そうだな…竜の紋章が出ている状態のダイを打ち負かす程度には強くなるだろう。」

「…それを今から獲得しろと?」

「そうだ。でなければ俺に勝てんのはわかっているだろう?」

「…そうね。」

「そういう訳だ。ポップ。マァムがテンションを獲得まで時間を稼いでみせろ。」

「けっ、言われなくともやってやるよ!」

アクデンとポップの戦いは続いた。

 

「(なるほど…テンションか。)」

それを聞いていたヒュンケルは早速テンションを上げようとするが…上げ方がわからない。それもそのはず…本来テンションを獲得するのは武道家であり、ヒュンケルのような戦士ではない。ベンのような特殊な魔物を除いてテンションを獲得出来るのは格闘を極めた者である。

「おらおらおら!何ぼさっとしてやがる!」

カラスの剣は止まらない。剣術で言えばヒュンケルの方が上だがそれを帳消しにするほどのカラスのスピードが速い。

「ええい!ヒュンケル、お前もお前で役に立たない奴だ!」

ザムザはそう言いながらもヒュンケルを庇い、守る。これはザムザがヒュンケルが何かするのを感じ取り、ヒュンケルに少しでもダメージを負わせないようにする処置だった。ザムザ自身も自動回復するのでカラスの剣とは相性がいい。

「なるほどな…ならばこれならどうだ?バイキルト」

カラスが呪文を唱えるとザムザに攻撃し、深い傷をつけた。

「がはっ…!?どういうことだ…!?」

「俺が使った呪文、バイキルトは攻撃力を2倍に上げる呪文…これまで無事だったお前の身体でもダメージはつくのは当たり前だ。」

「小賢しい奴だ!」

「ならばもう少しスピードを上げるか。ピオラ。」

カラスはラーハルトの速度に加え、更にスピードが速くなった。現在のカラスのスピードについてこれる者は皆無であろう…

「くそっ!!」

ザムザは自前のハサミを振り回し、まぐれでも当てようとするが無理だった。

「終わりだ!」

カラスは血を流し過ぎたザムザを蹴飛ばし、気絶させた。

 

「ウォォォオーッ!!」

その時、ヒュンケルは一気に何かがみなぎるパワーを感じ、それを身体全体に通した。すると身体がぐんと軽くなり、まるで身体が浮いているようだった。

「ヒュンケルの髪が変わった!?」

クロコダインが驚いたのはヒュンケルの髪が逆立ったことだ。一体どれほどの闘気を溜めればそうなるのか想像すらも出来なかった。

「そこだ!」

ヒュンケルは一瞬でカラスを捉え、殴り、カラスは戦闘不能となった。

「ぐっ…まさかテンションを獲得せずにテンションブーストを使うとはなんて奴だ…」

カラスは気絶し、ヒュンケルも気絶した。

 

ここで説明しよう。今ヒュンケルが使ったのはテンションブーストという必殺技で戦士と武闘家を極めたバトルマスターをさらに極めた者が会得する必殺技で彼ら自身ですらもこの必殺技を出せるのは稀なことである。その効果はテンションを過程を無視して一気に何段階も上げることが出来る技だ。

ただヒュンケルはバトルマスターではない。そのため無理にテンションブーストを使ったせいか気絶してしまったのだ。気絶する方だけまだ軽い方で下手すれば死んでいたかもしれない…何しろ闘気を放つグランドクルスとは対称的にテンションは闘気を溜めるが、闘気を溜めすぎるとその分無駄になる…早い話しが例えるとヒュンケルは風船の中に空気を過剰に送り込んでしまったと言っていいだろう。

 

「さすがはヒュンケル…あのアドバイスでカラスを引き分けるか。」

それを横目で見ていたアクデンはヒュンケルを評価し、見る。

「(まだか…くそ…!魔法使いたるものクールにしねえと…)」

ポップはマァムがテンションを獲得するのに時間がかかることにイラついてしまい、すぐに頭を冷やそうとする。

「これでどうよぉぉっ!!」

そしてマァムはテンションを上げることに成功した。

「よくやった…だがそれを打つのはお預けだ!」

アクデンはポップを転ばせ、トライデントの柄の部分で殴り、気絶させた瞬間にはマァムの後ろにいた。

「くっ…!はぁぁぁっ!!」

マァムはアクデンに正拳突きを放ち、それを当てた。

「がっ!?」

その威力はまるで今までの攻撃がいかに貧弱だったのかを証明し、アクデンはマァムの一撃に倒れた。

 

「これが…テンション…」

マァムはテンションが元に戻るのを感じ、元の場所に戻った。その後マァムはジゼル側に初めて勝利されたこともあってかもみくちゃにされた。




次回はジゼル達が戦います。お楽しみに!


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最強の魔族、その名前はエスターク!?

ようやく復活しました。やたら私に粘着してくるユーザーさんがいてSAN値削られて、運営に頼んでも対応してくれないのでモチベーションが下がりまくりでした…がなんとか持ちこたえました。


「さてそれではハドラー様、バラン。これから私はモシャスを使ってとある魔族に変身します」

「魔族? まさかバーンではないだろうな?」

ジゼルよりも強い魔族はハドラーの頭の中ではバーン位のものだ。それ以外に思い浮かばなかった。

「いいえ。ですがカールの洞窟の中でも最強の敵といっていいくらいの強敵です。生涯それ以上の敵と戦うとしたらバーンくらいです。ハドラー様やバランがその魔族とどれだけ戦えるか試したいのです」

「私達がどれだけ戦えるか? ジゼル、私達をなめていないか? 私は正統な竜の騎士。負けるというのがあり得ん」

バランは自分の種族に誇りを持っている。それ故の発言だった。

「その魔族は寝ぼけた状態で私を死ぬ寸前まで追い詰めたのよ。この傷痕が何よりの証拠」

ジゼルは腕を捲って見せるとそこには腕をもがれて再生した痕が残っていた。

「これは!?」

ハドラーはそれを見て驚いた。ジゼルがそれほどまでに傷痕を残しているのは珍しい、というか初めてだ。ハドラーはかつてダイと戦った時に傷をつけられ、痕が残ったがジゼルの傷痕はそれ以上だった。いかに追い詰められたかハドラーの頭の中で理解してしまった。

「ジゼル、まさか油断した訳ではあるまい」

それを認めないのがバランだ。バランは目の前でジゼルの強さを理解している。だがジゼルが油断したとなれば話は別だ。油断すればマトリフにも劣ることも知っていた。

「逆よ。むしろ最初っから飛ばしたけど勝てなかった」

「そこまでいうのならやって見ろ。お前をそこまで追い詰めた程の相手見たくなった」

バランは剣を抜き、ハドラーも構えた。

「わかりました。死にかけても恨まないでください……」

ジゼルはモシャスを唱えた。

 

「うっ!?」

ダイやクロコダイン、ヒュンケルなどの戦士達は見てすらもいないのに威圧されうめき声を上げた。

「おいおい冗談でしょ?」

ポップはその威圧に呑まれることはなかったがそれは実力がダイ達よりもないからだ。事実、ベン等はガタガタと震えている。

 

「それがその魔族の姿という訳か」

今のジゼルの姿は巨大な黄金の体に二本の角とマントのような羽、3つの目玉、そして一番の特徴は二本の剣を所持していることだった。

「その通り。私のモシャスは対象の強さもコピー出来る。真似出来ないのはタフさと魔力くらい。その魔族の名前は──」

 

エスターク

 

これを聞いたジゼルの部下であるモンスター三人組は顔を真っ青にした。

「どうしたんだよ? そんなに顔を真っ青にして」

事情を知らないフレイザードが三人組に声をかけると三人組の中で青ざめていないベンが震えながら答えた……

「はるか昔、神鳥レティスが闘神レオソードに仕える前の話、マスタードラゴンが世界を治めていた頃の話だ」

「マスタードラゴン?」

「マスタードラゴンは今でいう三神を強くしたようなドラゴンの神だ。フレイザードは生まれてから一年も経っていないからわからないだろうが、かつてエスタークと呼ばれた魔族がいた。エスタークは魔界を牛耳り、魔界全てを制圧した後地上に乗り込んだ。ここまでは普通の魔王と同じ行動だ。だが恐ろしいのは圧倒的な強さだ。如何なる加護を受けた武具を装備してもエスタークの前ではただのコスプレだ。マスタードラゴンが竜の騎士に相当する天空の勇者と共にしてようやく封印できたというふざけた強さだった。そのあまりの強さにエスタークは地獄の帝王と呼ばれている」

「つまり、エスタークは当時の世界神に喧嘩売って封印されたって訳だな。ありがちな話だな」

「フレイザード、それがどれだけヤバいのか理解しているのか?マスタードラゴンはこの世界の三神をしのぐ存在だ。そいつが戦って封印がやっとだったんだ。そんなことは大魔王バーンでも無理だろう。三神相手では精々一対一の勝負で互角、おそらく歴代の魔王の中では最強かもな」

「エスタークを過大評価しすぎじゃねえか?お袋はそいつを相手に生きて帰って来ているんだ」

ベンは黙ってハドラーとバランを指差すとそこには震えている二人の姿があった。

「決して臆することのないハドラー様やバランが震えているんだ。本能で理解しているんだろうよ……いくらジゼル様が化けたとは言えエスタークの強さに怯えているんだ」

「確かにな。でもよ、何でお袋はエスタークの姿でダークドレアムを倒そうとしないんだ?あれだけ強いならダークドレアムも倒せそうな感じがするんだが」

「ダークドレアムは魔族に対して強い。エスタークも魔族だ。やられるのは目に見えている」

「そういうことかよ。何にしてもここから離れないと被害を受けるぜ。避難するぞ!」

フレイザードの言葉で全員がハッとしてその場から避難した。

 

「全力で行くぞ!!」

バランは竜闘気を解放し、竜の騎士最強の形態である竜魔人となった。流石にエスターク相手に通常の状態では勝てない。そう感じていたのだろう。だが本当にすべきことは逃げることだった。エスタークの周りには黒い風が吹いていた。

「よけろバラン!!」

ハドラーが警告するも、バランは逃げるどころかエスタークの懐に入った!

「ドラゴニックブレイク!!」

バランのギガブレイクに代わる切り札ドラゴニックブレイクで切りつけようとした瞬間、バランが逆に切り刻まれた。

「がァァぁッ!?」

バランは青い血を大量に流し、膝をつく。過去たった一撃でここまで傷ついたのはバランがバランとして生まれて、いやバランの記憶にある歴代の竜の騎士の中でも初めてだろう。

「(竜魔人のバランの身体でこの様か。俺が超魔爆炎覇で突っ込んだところで死ぬだろうな)」

ハドラーはバランの様子を見て冷静に判断し、状況を整理し始めた。

「(となれば俺がやるべきことはただ一つ)」

そして両手に魔力を込めると両手に炎のアーチが現れ、ハドラーはそれを凝縮させ両手を前に出した。

「ベギラゴン!!」

ハドラーの両手から熱線が発してエスタークに襲いかかる。そう、ハドラーの呪文における切り札ベギラゴンだ。ベギラゴンは時代によって威力が変化するがこの時代では五系統の呪文の中で最強の攻撃呪文である。その上ハドラーの込める魔力は通常のレベルではなく魔界でも上位を占める程だ。その最強クラスの熱線がエスタークを襲う。

 

ドシンッ!!

 

なんとその最強の熱線をエスタークは煙草の火を消すかのように踏み潰してしまった。

「ハドラー様のベギラゴンを踏み潰したぁっ!?」

約一名、鼻水を垂らしてそう叫んだものがいた。ヒムだ。彼はオリハルコン故に呪文の類いは効かないがエスタークのようにベギラゴンを踏み潰せと言われたら無理と答えるだろう。その理由はベギラゴンの勢いそのものにある。ベギラゴンは熱線であり質量もある。故にヒムであってもハドラーのベギラゴンを受ければ物理的なダメージは限りなく小さいとは言え受けるのだ。

「ヒム、エスタークとはそういうものだ」

アクデンは諦めたかのようにヒムにそう言い聞かせた。

「んなアホな」

ヒムはエスタークに対して改めて恐怖を覚えた。

 

「ククク、クハハハ……ハッハッハーッ!!」

ハドラーは笑っていた。エスタークがベギラゴンを踏み潰し、やけくそになったのではない。ジゼル曰くエスタークはこれで本気を出していないのだ。エスタークという魔族を知りたい。そして自分はどこまで戦えるのか? そう思っただけでもハドラーの顔が笑顔に変わる。

「やはり自分の保身に頼っているようでは勝てぬか。ならば全身全霊、俺の魂までも込めた切り札受けてみよ!」

右手に仕込んであった覇者の剣を取りだし、ハドラーの暗黒闘気──魔炎気が身体に纏わるとハドラーは突進した。

 

「超魔爆炎覇!!!」

 

そしてエスタークに直撃した。これが並みの魔族であれば文字通り蒸発するがジゼルがモシャスで化けているとはいえ相手は最強の魔族。この程度で死ぬ訳がない。せいぜいヒムに対してノーザングランブレードを放つ位の威力だ。

「ギガブレイク!!」

そこにタイミングよくバランがハドラーとクロスになるようにエスタークを切り付ける。こうすることで一点に攻撃が集中し、威力は何倍にも高まる。その結果エスタークは膝をついた

「すげえ、あのエスタークを相手に膝をつかせた」

三人組はそれに驚き、腰を抜かした。

 

「流石ですね。ハドラー様、バラン」

ジゼルの声が聞こえ、ハドラーとバランはエスタークの頭を見るとそこにはエスタークの姿はなく再び下を見るとジゼルの姿があった。

「いくら劣化したとはいえ最強の魔族を追い詰めるのは私でも無理です。これならバーン相手でも通用すると思いますよ」

ジゼルが誉めるがバランは浮かない顔で口を開いた。

「そうか。逆に言えばこれだけの威力を込めなければバーンは傷つかんということになる。違うか?」

そう、バランの言うとおりエスタークがいくら最強の魔族とはいえ先ほど戦ったのは所詮は劣化したエスターク。バーンは全開の状態のエスタークに勝てることはあってもなくとも劣化したエスタークよりかは強い。それはハドラーやバラン、ジゼルはわかっていた。

「ええ、生半可な攻撃じゃあ弾かれるだけね。私のジゴスパークも改良しなきゃバーンには通じない」

ジゼルはため息を吐いて頭を抱えた。と言うのもカールの洞窟内でエスタークにジゴスパークを放ったがエスタークに化けたジゼルがハドラーのベギラゴンを力業でねじ伏せたようにジゴスパークも剣で凪ぎ払われてしまったのだ。おそらくバーンも同じことが出来るとジゼル達は考えていた。

 

「バーンに勝つにはとにかくレベルアップしかないだろうな。今の時点でバーンに敵うものはこの中にはいない」

ハドラーが締めくくり、それから全員がそれぞれレベルアップの為の修行を始めた。




ABC「モンスターABCのあとがきコーナー!!」
A「はい、という訳でようやく復活しましたね。この作品が。」
B「全く…とんでもないよな。俺達をほったらかしにするなんてな。」
C「理由は前書きに書いてある通りですけどメンタル弱いよな…」

A「そんなことはどうでもいいでしょう。それよりもエスタークってどのくらいの強さ何ですか?見たところバーンと互角みたいにかかれていたけど…って質問が来そうだから答えましょうよ。」
B「俺に丸投げか!?…まあいい、ジゼル様と戦ったエスタークは8のリメイクと同じくらいだな。」
C「ハドラー様やバラン普通に死にますね。作者はリメイクはやったことありませんけど。」
A「おおっと…そろそろ時間です!」
B「それじゃ久しぶりの投稿だから作者のSAN値削らない程度の批判なら大歓迎だ。」
C「質問も忘れずにな!要望だったら作者のメッセージboxだ!」
ABC「次回もお楽しみに!!」


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豪魔軍師動く

ご久しぶりです。投稿作品が多くなるとやっぱり大変ですね…

最近更新したのでは

ターニア、イタ転、TSタバサ、競馬、キルア、テニプリ、エリデビ、ラギハン

…次は何更新しましょうか?

まあそんなことはさておき本編どうぞ!今回はおまけ付きです!


その頃…バーン達はというと。

「まさかあの役立たずがあそこまで有能になると思いませんでしたね。バーン様?」

キルバーンが言葉にこそ出していないがバーンを責めていた。何故わざわざ敵を増やすような真似をしたのか?と。

『キル…!口を慎め!』

役立たずとはマキシアムのことを指しており、ミストバーンも鬱陶しく思っていた。何故なら当時のマキシアムは鉄壁の守りとか言っておきながら弱った獲物を横取りするような真似しかできなかったのだ。

「よいミスト。キルバーンの言っていることは事実だ。それに…ハドラーに与えたのはあくまで白の駒のみ。チェスとは白黒のセットで成り立つものだ。ミスト、お前が禁呪法を用いたところで面白くあるまい…あいつに任せてみようと思う。」

バーンは黒色のチェスの駒を手に持つとキルバーンが首を突っ込んだ。

「へぇ〜ハドラー君をライバル視している奴に殺らせるって事ですか?」

「あやつも余やミストの手で下すよりも自らの手で下したほうが良い。違うか?ミスト。」

『その通りです。』

「ならばこれを渡してこい。」

『承知しました…』

ミストバーンがその場から消え、部屋を出て行くとバーンとキルバーンのみが残った。

「しかし本当に良いんですか?ガルヴァスなんて小物で。」

 

豪魔軍師ガルヴァス

 

かつてハドラーの影武者であり、現在は六軍団長に代わって六将軍と共に地上を侵攻し、現在魔王軍内で活躍している男だ。しかしハドラーと同等かそれ以上の肉体を持っているにも関わらず精神面は卑劣故に脆く、ハドラーよりも格下扱いされていた。

「あれで勝てぬようならば軍師と名乗る資格はない。」

「でもミストって魔影参謀の肩書きがつくのに脳筋ですよ。」

キルバーンの言う事は正しく、ミストバーンの侵攻はどれもこれも数と魔影軍団特有のタフさによるものが大きく、ミストバーンの評価は魔影参謀(物理)となっていた。

「それは言うな…」

それについてはバーンも気にしていたらしい。

 

〜カール王国〜

 

ジゼル達がカール王国に向かう途中、カール王国は魔王軍に攻められていた。

「いけぃ!偉大なる豪魔六将軍達よ!」

その総大将は赤髪の魔族が指揮を執っていた…彼こそが豪魔軍師ガルヴァスだ。ガルヴァスは直参の部下豪魔六将軍達を使い、カール王国を攻めていたのだ。

「ガルヴァス様!」

そんな中、ガーゴイルのような男がやってきて膝をついた。

「む?どうしたベグロム?」

そのガーゴイル、ベグロムが頭を上げると口を開く。このベグロムという男は六将軍達の内の一人であり、中でも最強の種族である竜を束ねる立場の超竜将軍だ。だが彼自身はガルヴァスから見ても精々穴埋め程度の強さしか持っておらずバランどころか初期のクロコダインにも劣り豪魔六将軍の中でも最弱だ。そんな彼が将軍になれたのはガルヴァスのような卑劣さとガルダンディー程ではないが竜とのコミュニケーション能力が高いことにあり、気に入られたからだ。

「ミストバーン様がお見えになりました!」

「わかった。通せ。」

ガルヴァスはそれを聞いてミストバーンを通すと席についた。

 

「ミストバーン…ここに何の用だ?」

『…』

無言でミストバーンが取り出したものはバーンに渡された黒いチェスの駒だ。

「これは…?」

ガルヴァスがそれを手に持ち、ミストバーンに尋ねる。

『…』

ミストバーンが目の光を赤色に変えて何を言いたいのかガルヴァスに理解させる。ミストバーンはバーン達の前ではペラペラと口が軽くなるかガルヴァス達等の相手に対しては口がかなり重くなる。それこそ噂通り一度口を開いたら数十年間は口を効かないほどに…そのため目の光を自在に操り、理解させるしかないのだ。

「そうか。これを使って侵攻を進めろ…と?」

ガルヴァスはミストバーンが目の前で喋るのを見たことがない。そのため推測し、それが正しいかミストバーンの目の光を見て確かめる。

『…』

ミストバーンはまだ無言。紫色に目の光を変えて答える。

「半分はあたりで半分は不正解か…私にこれを託したとなればハドラー絡みか?」

『…!』

目の光を青色に変え、その表情(といっても雰囲気的に)は嬉しそうだ。本来感情的な彼があれだけバーンの前で喋っておいてガルヴァスの前で無言はキツイのかもしれない。

「これを使って裏切り者のハドラー達を始末しろと…そう言いたいのだな?」

『…』

そしてミストバーンは頷き、その場から消えた。

「よかろう!ならば豪魔六将軍と共に誘き寄せたところを一気に叩き潰してくれるわ!」

ガルヴァスは高笑いを上げ、自らの身体を見た。

 

〜翌日〜

 

ハドラーは一人、鍛錬をしていた。その理由はバランはダイと修行し、ジゼルは娘ラーゼルと遊んでおり、対等に戦える相手がいないからだ。ヒュンケルやヒムと戦っても参考程度になるだろうが一人でやる方が効率的だ。

「ん?」

後ろから気配を感じそちらを見ると大目玉がそこにいた。

「大目玉…一体誰だ?」

大目玉はいわゆる魔王軍専用のTV携帯のようなものでそこに送られていたとなれば魔王軍の誰かが自分と接触したがっているということであり、ハドラーは誰がそんなことをするのか気になった。

 

「久しぶりだな。ハドラー。」

そこに映し出されたのはガルヴァスだった。

「…貴様か。俺に何の用だ?」

「何の用?私がお前に会いに来たということがどういうことが理解していないようだな。私は貴様を追い越す前に立ち去った…だが今、私はハドラー…貴様を超えた。見よ!我が身体を!!」

ガルヴァスはそう言ってマントを脱ぐ…するとハドラー同様に超魔生物の身体がそこにあった。

「…それがどうした?超魔生物と言うのなら俺も同じだ。」

「…ふっははは!!同じ?何を言うかと思えばそんなことか?私はお前とは違いバーン様に信頼されている上に身体を改造した時期が違う…ザボエラの研究が進んだおかげで私はお前を超えた…という訳だ。皮肉なものだな…ハドラー。お前の身体が私の目標に近づかせるとはな。」

「くだらぬな。研究が進んだところでお前が俺を超えたという証明にはならぬ。本当に超えた証拠が欲しくば俺と一対一の勝負で勝ってみろ。」

「もとよりそのつもりだ。ハドラー…カール王国にて待っている。」

大目玉の通信が切れ、ハドラーはマントを持った。

「(…一対一とは言ったがあやつは俺とは違い平気で卑怯な手段を使う男。俺と因縁があるカール王国に指定したということは奴も何かしらの理由あってのことだろう。)」

 

ハドラーは魔王時代、当時のカール王国王女フローラを魔界の神の生贄にしようとしていた。しかしそれはアバンによって阻止され、自分は退却する羽目になった。それからだ…アバンとハドラーの因縁が始まったのは。そしてバーンの力でハドラーはアバンを破った…だが本当に勝った訳ではない。アバンの意思を継ぐダイ、ポップ、マァム、そしてヒュンケルが自分に立ち向かった。いつしかハドラーはダイというアバンの最高の弟子をライバルと認めていた。

ガルヴァスも似たような心境だったのかもしれないがそれでもハドラーはガルヴァスという人物を信用していなかった。ハドラーは少なくとも武人としての心があった。だがガルヴァスはむしろザボエラのような卑劣な手段を好んで使う為信用されなかった。

 

「もし一対一をするのであれば見届け人が必要だな…」

ハドラーはそう呟きその場から去った。

 

〜おまけ〜

「お母様!お兄様!」

ラーゼルが喋るようになってからラーゼルはジゼルやフレイザードに抱きつき、笑顔でいた。

「それじゃ高い高いしよっか!」

それに応えるようにジゼルも笑顔だ。今日も親バカっぷりが半端ではない。

「うんやるー!」

そしてラーゼルが笑顔で返すとジゼルの魔力が増大した。

「それじゃトベ」

「ちょっと待て。」

それに待ったをかけたのはフレイザード。二人とも「どうしたのー?」と言わんばかりに首を傾げた。親子である。

「まさかお袋、ラーゼルを抱えてトベルーラで飛んで行こうとしたんじゃないだろうな?」

「そうだけど?」

「もしラーゼルが万一落ちたらどうするんだ?」

このフレイザードも兄バカでありラーゼルが落ちた時の事を考えていた。

「落ちないようにするから大丈夫よ!」

「大丈夫よ!」

二人は親指を立てて笑顔で言い切った。

その後結局フレイザードに説得されラーゼルの高い高いは中止になり、変わりに呪文を見せてやるとラーゼルは大喜びした。



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豪魔軍師と元魔軍司令の決着

 〜カール王国〜

 

 

 

「ハドラーよ。貴様の命もここまでだ。貴様の首を取りバーン様に献上する」

 

 ハドラーがカール王国に到着するとガルヴァスがそう告げた。

 

「その為に1人でここで待っていたのか? 俺が魔王軍を抜けてから随分律儀になったな」

 

「貴様に合わせただけのことよ。その方が悔いはあるまい」

 

「ガルヴァス、いつからだ?」

 

「何がだ?」

 

「お前が俺に因縁をつけるようになったのはいつからだと聞いているんだ。俺がお前を出し抜いて魔軍司令となった頃からか?」

 

「違うな。貴様と初めて戦った時からだ。私が貴様に僅差で負けてから貴様に勝てるだけの実力を持ってもバーン様に認められず、影で暗躍するようになった。だが貴様が魔王軍を抜け魔軍司令の座を獲得しても私には功績がない。だからバーン様をはじめ数多くの魔王軍の連中は私よりも貴様を評価している。言ってみれば穴埋めでしかない。だが私は貴様を倒してハドラーという魔族よりも優秀だと証明してやるのだ!」

 

「ならばお喋りもここまでだな。行くぞ!」

 

 ハドラーは駆け抜け、ガルヴァスに突っ込む。

 

「超魔爆炎覇!」

 

 いきなりハドラーの必殺技がガルヴァスに炸裂する。だがハドラーは妙な違和感を感じていた。仮にもガルヴァスはハドラーと同じ身体を持つ。黙ってやられるはずがないのだ。

 

「(これはオリハルコンか……?!)」

 

 その違和感の正体がわかり、ハドラーはその場を離れる。するとガルヴァスの前には巨大なオリハルコンのチェスの駒があり、ハドラー親衛団と同じものだとわかった。

 

「何っ……!?」

 

 そのチェスの駒を見てハドラーは驚愕する。だがそれも一瞬だった。チェスは白と黒の二つの種類がある。自分に渡されたのが白だとするならばおそらくガルヴァスに渡されたのは黒だと推測していた。

 

「ハドラー。私は貴様を倒す為に色々と準備してきた。その為ならば手段は選ばん。ガルヴァス騎士団、出でよ!」

 

 ガルヴァスが声を出す。するとガルヴァスの周りから他のチェスの駒が現れハドラーを囲った。

 

「フハハハ! 貴様と同じようにバーン様から私もオリハルコンのチェスを貰い、禁呪法で命を吹き込んだのだ!」

 

「やはりお前はそのような手段しか取れぬのか……」

 

 ハドラーは落胆し、肩を落とす。と言うのもハドラーは1人でここまで来たガルヴァスを認めていたからだ。だが実際にはチェスの駒を使い多勢に任せた。

 

「勝てば何とでもなる。勝者こそが歴史を作る……行け! 我がガルヴァス騎士団の力を見せてやれ!」

 

 そしてハドラーを囲ったチェス達、ガルヴァス騎士団が襲いかかる。

 

 

 

 だがそれは地面から現れた同じオリハルコンのチェスの駒によって阻止された。

 

「やはりハドラー様の言った通りになりましたね」

 

 そのチェスの中でも一際巨大な駒が変形し、声を出す。

 

「出来ればこのような展開にはなりたくなかったのだが……頃合いを見計らって地面から出てくるのは流石だ。マックス」

 

「ありがとうございます。ハドラー様」

 

 ハドラーが用意した見届け人、それはハドラー親衛団のリーダーであるマックスだった。

 

 

 

「何だと……!?」

 

 ガルヴァスはまさか自分の行動を読まれるとは思わずそう呟いてしまう。だがすぐに立ち直り、ガルヴァスは思考する。

 

「(いくらハドラー親衛団が現れたとはいえ数では私の方が上だ。こちらにはまだ切り札がある)」

 

 ガルヴァスの計略はまだまだ尽きていないのも事実でありガルヴァスはハドラーに対して不敵な笑みを浮かべた。

 

「丁度いい。我がガルヴァス騎士団と貴様のハドラー親衛団どちらが強いかはっきりさせようではないか」

 

「よかろう。マックス、あとは任せた」

 

「御意、我輩にお任せあれ」

 

 マックス達はハドラー達から離れ、ガルヴァス騎士団と対峙し戦い始めた。

 

 

 

「ガルヴァス。もう出すもの出したらどうだ?」

 

 ハドラーはガルヴァスにそう告げる。と言うのもガルヴァスという男はこれだけでは終わらないと身にしみて感じているのだ。ましてやガルヴァス騎士団なるチェスの駒を使っていたのだから尚更だ。

 

「どういう意味だ?」

 

 すっとぼけた態度でガルヴァスが返事をする。

 

「お前のことだ。アレで終わりではあるまい」

 

「流石はハドラー、よくぞ見抜いた」

 

 ガルヴァスが笑い声を上げ、ハドラーを褒める。

 

「豪魔六将軍達よ、出でよ!」

 

 ハドラーを囲むように6人の将軍達が現れ、構える。

 

「ふっふっふっ……流石の貴様と言えどもこれだけの人数相手に敵うまい! やれ!!」

 

「「「「「「おおーっ!!」」」」」」

 

 六将軍達が声を上げ、ハドラーに襲いかかる。

 

 

 

「雑魚は引っ込んでいろ! メラゾーマ!」

 

 ハドラーのメラゾーマが六将軍の1人、ベグロムに直撃し焼き殺す。だがこれで終わりではない。

 

「ヘルズ・チェーン!」

 

 ハドラーの手首から出された鎖が百獣将軍ザングレイの持つ戦斧ザンバーアックスに絡みつけ、振り払う。

 

「な……!!」

 

 ザングレイがザンバーアックスごと振り払らわれ、隣にいた魔影将軍ダブルドーラを巻き込んでその場に倒れる。

 

 

 

「フィンガー・フレア・ボムズ!」

 

 だがそれをただ見てボケっとするほど六将軍は甘くない。デスカールがフレイザードの技フィンガー・フレア・ボムズを放ち攻撃する。

 

「やったか!?」

 

 フレイザードと同じ称号を持つ魔族の男、氷炎将軍ブレーガンがそう言い、前に出る。

 

「馬鹿者、ハドラーは炎に関係するものであれば耐性を持っている! あの程度でハドラーがやられるか!」

 

 ガルヴァスの言う通り、ハドラー相手にその系統の呪文でダメージを負わせるにはバーンのような膨大な魔力の持ち主でない限り到底不可能だ。しかもデスカールの出すフィンガー・フレア・ボムズはフレイザードの出すものよりも劣化している。つまりハドラーのダメージはほぼ皆無だ。

 

「その通りだガルヴァス」

 

 ハドラーのヘルズクローがブレーガンの胸に刺さり、ブレーガンはその場に倒れた。

 

 

 

「これで後4人だな」

 

 4人の内2人は死んでこそはいないがハドラーのヘルズ・チェーンによって身体を倒されただけでなく気絶しており、起き上がるには時間もかかる。現在相手にできるのはデスカールとメネロの2人だけだ。

 

「貴様ら足止めすらも出来んのか!」

 

 ガルヴァスはその体たらくに激怒し、怒鳴り声を上げる。

 

「「も、申し訳御座いません!」」

 

「もう良い! 貴様らはガルヴァス騎士団のところに行って援護しろ!」

 

「「ははっ!」」

 

 2人はルーラを使い、ガルヴァス騎士団の元へと向かった。

 

「初めからこうすれば良かったものを……」

 

「黙れ! 貴様に僅かな差で敗北した私の気持ちがわかってたまるか!」

 

「だからこうしてお前と対峙しているのだろう。元々俺とお前はそう言う者同士だ」

 

「ならばこれ以上の言葉は不要だ!」

 

 ガルヴァスが両腕を広げ、炎のアーチを作り出す

 

「!」

 

 それを見てガルヴァス同様にハドラーも両腕を広げ、炎のアーチを作り出す。

 

 両者が唱える呪文、それはベギラゴン。最強と言われるギラ系呪文の中でも最上位に位置する呪文。それがベギラゴンだ。

 

 

 

「「ベギラゴン!」」

 

 両者のベギラゴンが中央でぶつかり合い、接戦する。

 

「ぬぉぉぉぉっ!!」

 

 ガルヴァスが雄叫びとも言える声を上げ、ハドラーのベギラゴンを押していく。

 

 呪文は術者の精神状態によって左右される……ガルヴァスはこれまで何度もハドラーに敗れ去った。だがガルヴァスはそれを越えようとしており精神状態はとても良い。またハドラーよりも超魔生物になるのが遅かった分、超魔生物の研究が進みガルヴァスの力が上なのだ。

 

「ぐっ……!」

 

 その一方、ハドラーは苦戦していた。ガルヴァスが予想以上に強くなっていたことに動揺していたのだ。それ故にハドラーの精神状態は悪くなり、ガルヴァスに追い詰められていく。

 

 

 

「ハドラー様〜♡」

 

 

 

 そんな時、1人の女性の声が聞こえた。隙あらば自分に抱きつき、自分に尽くしてくれる魔族の部下であり、妻ジゼル。

 

「お父様頑張ってー!!」

 

 そしてその間に生まれた娘の声も聞こえてきた。

 

「(ジゼルやラーゼルのためにも負ける訳にはいかん!)」

 

 そのジゼルとラーゼルの顔を思い出したハドラーは覚醒し、ガルヴァスのベギラゴンを押し返した。

 

 

 

「何だと!?」

 

 それを見てガルヴァスは動揺してしまい、ガルヴァスのベギラゴンは消え去ってハドラーのベギラゴンが直撃する。

 

「どうやら魔法の勝負では俺の勝ちのようだな」

 

 ハドラーがそう言い、ベギラゴンを喰らったガルヴァスに近づく。ガルヴァスの身体は超魔生物故にベギラゴン程度ではダメージを負わない。

 

「そのようだ……だが!」

 

 ガルヴァスはベギラマを後ろの方向へと二発放った。

 

「何の真似だ?」

 

 ハドラーがそう尋ねたのはガルヴァスの後ろで気絶していた六将軍のザングレイとダブルドーラが灰となったからだ。つまり意図的にやったとしか思えないのだ。

 

「勝てなければ勝つ手段を選んだまでだ」

 

 そしてもう二発も残った六将軍の2人へと放つ。ガルヴァスの企み、それは豪魔六芒星を完成させることにある。豪魔六芒星は豪魔六将軍全員が死んだ時、ガルヴァスに六将軍達の力を分け与える。つまり生き残っている六将軍を殺すことによってパワーアップするのだ。

 

 その事にデスカール達は気づいておらずガルヴァス騎士団の援護をしていた。

 

 

 

「マヒャド!」

 

 直撃するかと思われたその瞬間、マヒャドを唱える女性の声が響き渡り、ガルヴァスのベギラマは女性が唱えたマヒャドによって掻き消されてしまった。

 

「何者だ!」

 

 その正体を探るべくガルヴァスは声を出しあたりを見回す。ガルヴァスの知る限りメネロは妖魔将軍であるものの攻撃呪文は得意ではなくマヒャドなども当然使えない。

 

 

 

「あ、あ……!」

 

 そしてガルヴァスはその人物を見つけるやいなや鼻水を出してしまった。

 

「(ふっ……あれは幻聴ではなかったようだな)」

 

 ハドラーはガルヴァスとは対称的にその顔を見て笑っていた。

 

「よくもまあ自分の部下に対してそんな非道なことが出来るわね」

 

 ハドラーの部下であり、妻でもあるジゼルがそこにいた。

 

 

 

「ジゼル、ラーゼルはどうした?」

 

「今はぐっすり寝ています。フレちゃんに預けてありますから大丈夫ですよ」

 

 ハドラーはやはりジゼルらしいと思い、頷く。

 

「そうか。だがその2人を避難させておけ。決着をつける際に邪魔だ」

 

「でも……」

 

「何、すぐに終わる。終わったらラーゼルと一緒に川の字になって寝よう」

 

 それを聞くとジゼルはすぐに頷いた。

 

「かしこまりました!」

 

 そう言ってジゼルは裏切られたことによってショックを受けている六将軍の2人を抱えて避難した。

 

「(随分と臭い台詞を吐くようになったものだが……悪い気はせん)」

 

 ハドラーはガルヴァスを見るとガルヴァスは安堵しており、余裕すらも感じられた。

 

「ジゼルがいなくなって安心していたのか?」

 

「貴様とジゼル、2人を相手にしていたら勝てんが貴様1人ならば話は別だ」

 

「生憎だがお前は勝てん。何故ならお前は自分の為に本来守るべき部下を殺したが俺には守るべき部下の為に戦うからだ」

 

「そんな綺麗事で勝てるほど世の中は甘くないぞ!」

 

 

 

 ガルヴァスが拳を作り、ハドラーに殴りかかる。しかしハドラーはそれを掌で受け止めた。

 

「どうした? それがお前の力か?」

 

「黙れ!」

 

 ガルヴァスはその拳からハドラー同様にヘルズクローらしきものを出しハドラーの拘束から逃れ、そのまま顔へ向ける。しかしハドラーはそれを難なく避け、ヘルズクローでガルヴァスの心臓を貫く。いくら超魔生物であっても心臓を貫かれれば死んでしまう。

 

「うっ……!」

 

 そしてガルヴァスは息絶え、死亡した。

 

「これが守るべきものがある者とない者の差だ……」

 

 

 

 ガルヴァスが死んだことにより、ガルヴァス騎士団は動かなくなり、その場で停止する。

 

「決着が着いたか……」

 

 マックスは戦いが終わったことに安堵し、その場に座る。

 

「我輩は空気を読んで帰るか」

 

 ジゼルとハドラーの2人きりにさせようと思い、マックスはその場を去っていった。

 

 

 

 〜〜

 

 

 

「それで貴方達はどうするの?」

 

「……どうするとは?」

 

 デスカールが口を開くとジゼルが答えた。

 

「ガルヴァスが死んでそのまま魔王軍に帰って居場所はあると思う?」

 

「ないでしょうな」

 

 デスカールは即答した。と言うのもデスカールは六将軍の中では有能でありこれから先のことも理解していた。

 

「それじゃあ私の部下にならない?」

 

「私めでよろしければ引き受けましょう」

 

 デスカールはジゼルの誘いを引き受け、ジゼルに向かって膝をつく。

 

「デスカール!?」

 

「どうせジゼル様に助けられなければガルヴァス様に殺されていた。この方あってこそ儂は生きている。故に仕えることに決めた」

 

「デスカール仕えてくれて有難うね」

 

 ジゼルの笑顔がデスカールに炸裂し、デスカールは照れてしまった。それを見たメネロは面白くなさげだった。

 

「あたしは残念だけどジゼル様の部下になる気はないわ。あたしは最高の職場を用意してくれたガルヴァス様に忠誠を誓ったからね。例えどんなことがあっても恨まないし憎めないよ」

 

「メネロ……その割にはプルプル手が震えているがそれはなんだ?」

 

「こ、これは何でもないよ! いやハドラーに対する憎しみよ!」

 

「メネロ無理をするな。どうせ女限定で加虐趣味を持つお前のことだ。その鞭でジゼル様を攻撃してジゼル様の泣きそうな顔を拝めたいのだろう?」

 

「うるさい!」

 

「ところがジゼル様の下につけば女に命令されている自分が嫌になってしまうのでないのか?」

 

「だまれだまれ黙れぇぇ!」

 

 メネロは鞭を振り回し、デスカールを攻撃しようとした。だがそれはジゼルに止められてしまい鞭も没収されてしまった。

 

「はいそこまで。とにかく無理に仕える必要はないからどこでも好きな場所に行きなさい」

 

 ジゼルはそういってメネロに鞭を返した。

 

「デスカール。最後に同僚としての願い聞いて貰えないかい?」

 

「何だ……?」

 

「私を殺してガルヴァス様の隣で眠らせて欲しい」

 

「……わかった。動機はどうあれお前がガルヴァス様を慕っていたのは事実だ。その願いを叶えてやる」

 

 デスカールは自らの爪を使い、メネロの心臓を貫いた。

 

「さぁ行きましょう。ジゼル様」

 

 デスカールはメネロをガルヴァスの隣に埋めるとジゼルとともにその場を去った。そしてメネロはガルヴァスと会えたかはわからない。だがデスカールという男が新たに仲間となったのは違いなかった。




ABCD「モンスターABCDの後書きコーナー!」
A「なんか増えた?と思ったやつ前へ出ろや。」
B「いきなり暴力的だな!?折角後書きコーナーに新人が来たんだから歓迎しようぜ!」
C「Bの言うとおり!新しく入ったDよろしく!」
D「…いつもこんな感じなのか?後書きコーナーに採用されることになった元不死将軍デスカールだ。よろしく。」

A「本名はいっちゃダメでしょ本名は!」
B「ところどころ出番云々で話す俺たちだって似たようなもんだがな…」
C「それとこれとは話が違いますよB。」
D「それよりも前の更新が半年以上前だがそれについては突っ込まなくていいのか?」

A「作者だってなぁ…やる気になれば2日で仕上げられるんだよ!この話もそうだったし!」
B「ただやる気が沸くまでものすごい時間がかかるだけなんだ!」
C「ウジョー様の小説『ハドラー子育て日記 異世界旅行編』が更新されているのを見て自分も書かなきゃマズイと思ってようやくやる気を出したくらいだぞ。それから2日前に手をつけて5000字超なんてありえねえ文字数を書きやがったんだ…」
D「確かに5000字オーバーはものすごいことだが…色々伏線が出来てしまったぞ。それについては…」

A「さー時間だ!」
B「そんなわけで次回はifエンドか普通に進むか迷っているわけだが…」
C「それはまた次回のお楽しみってやつですね。」
D「…ifエンドだとどうなる?」

A「俺たちの口からは言えん!何せ半年前から考えていたことだ!ガルヴァスに関わらないことだけは確かだ!」
B「そんな訳でこの小説の感想は感想へ、誤字報告は誤字へよろしくお願いします。」
C「それから作者にプライベートに関わらない程度で個人的な質問を聞きたいあるいは要望したければ作者のページのメッセージボックスに頼むぜ!」
D「それとお気に入り登録もよろしく頼む…」
ABCD「次回もお楽しみに!」

A「…新人うまくいったな。」
B「これからもやらせようか。」
C「そうですね。」


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ifルート〜ダークドレアム召喚〜

あけましておめでとうございます!更新遅れて申し訳ありませんでした!

今度からはスピード上げていきたいと思います!

Ⅴ空「みんなー!作者に感想を書いてくれー!そうすりゃ作者のモチベーションがあがっぞ!」


 若き魔族の男が膝を着き、目の前の人物を睨む。

 

「どうした? バーンとやら……もう少し私を楽しませてくれると思ったが期待ハズレだな」

 

 ブーメランパンツを履いた筋骨隆々の男が若き魔族、バーンをつまらなさそうに見つめる。

 

「化け物め……! ならば余の魔法で仕留めるまでよ!」

 

 バーンは掌に魔力を込め、呪文を唱える。すると火の玉が現れ、徐々に不死鳥へとその姿を変えていく。

 

「カイザーフェニックス!」

 

 そして凄まじい轟音と共にバーンのメラゾーマが男に炸裂した。このメラゾーマが当たれば例え、はぐれメタルやメタルキングなどの呪文が効かないような者であっても一瞬で焼き尽くしてしまう。まさしく全てを滅ぼす不死鳥であると言えるメラゾーマ。そのメラゾーマがその褐色肌の男に直撃した。

 

「やったか!?」

 

 バーンとその男の対決を傍観していたギャラリー、もといポップがそう叫ぶ。ポップはバーンの魔力を嫌というほど理解しておりその威力も自分のメラゾーマがバーンのメラに打ち負けた、という形で体験済みだ。それ故にあの男は無事ではないと思ってしまった。

 

「化け物ではない。我が名はダークドレアム、全てを滅ぼす者也」

 

 だが褐色肌の男、ダークドレアムは全くの無傷。その事にバーン以外の人物が唖然としてしまった。

 

「嘘だろぉぉぉっ!?」

 

 ポップの叫びはこの場にいる全員の気持ちを代弁していた。

 

「ジゼル、何故お前はダークドレアムにその身魂を売ったのだ……!」

 

 ハドラーがそう呟くと拳を作り、地面を叩き、10分前の事を振り返った。

 

 

 

 〜10分前〜

 

 

 

 大魔王バーンの元へ辿り着いた四人。そのメンツは豪華なものだった。かつて魔王として君臨したハドラー、そのハドラーの妻であるジゼル、そして神からの使いの竜の騎士バランとその息子ダイ。いずれも人間ではないが各々の持つ打倒バーンの気持ちは人間達よりも強かった。

 

「よく生きていたな。ハドラー、ジゼル、バラン、ダイ。四人のうち黒の核晶で誰が死ぬと思っていたのだが……やはり貴様らは運に恵まれているようだな」

 

 バーンが心を完全に折られたポップやマァム、それにクロコダイン等多数から目を離し、四人に目を向ける。

 

「大魔王バーン……! よくも抜け抜けとそんな台詞が吐けたものね」

 

 バーンに対して構えを取るジゼルはハドラーを裏切ったことに対する怒りを解放させ、その様子はまるで暗黒闘気に取り憑かれたかのようなものだった。

 

「逃げろ、ジゼル……! バーンは俺達が戦っていい相手ではない……!」

 

 それを見たヒュンケルは逃げるように促すがジゼルは首を振った。

 

「ヒュンケル、確かにこのままじゃ勝てないわ。だけど私には一つだけ大魔王バーンを倒す手段がある」

 

 ジゼルは子供に言い聞かせるかのようにヒュンケルにそう語る。

 

「ジゴスパークか? 確かにかの冥竜王ヴェルザーを苦戦させた雷竜ボリクスの技ではあるが、余にそれは通じないぞ」

 

「ジゴスパークはあくまでこの状態での私の切り札。かの地獄の帝王エスタークにそれは通じなかった以上、大魔王バーンに通じる訳もない。今の私の切り札はジゴスパークとはまた別の技よ」

 

「よかろう……ならばそれを見せてみよ。それが余の首を取るに足りるのであれば取ってみよ」

 

『バーン様!』

 

「よい、ミスト。あの四人に対する黒の核晶から生き残った褒美だ」

 

「言質は取ったわよ……もう後悔しても知らないわ」

 

 ジゼルがそう告げ、壺を取り出す。その壺の蓋を開けるとギャラリーとなっていた全員が引いた。

 

「……何あれ?」

 

 それはダイが思わず毛嫌いしているはずのバランに尋ねてしまう程であった。

 

「……」

 

 だがバランは沈黙。その様子はまるで何かを見極めるようであり、ダイもそれを見て、壺の中身を再び見る。

 

「我が名はジゼル。魔神ダークドレアムよ、我が身魂を贄としその姿を現界に表し、大魔王バーンを滅ぼし給え!」

 

 そしてジゼルの身体が変化していく。肌が褐色になり、筋肉が肥大し服が破け、パンツ一丁の姿になる。だがそのパンツも緑のブーメランパンツへと変わった。

 

「いかん!」

 

 その変化の途中でバランはすぐさま真魔剛竜剣を抜き、ジゼルに斬りかかる。

 

 だが既に時遅し、それは叶わなかった。高い金属音が響き、バランの攻撃を軽々と凌いだ。

 

「我が名はダークドレアム。全てを滅ぼす者。邪魔をするのであれば容赦はせぬ」

 

 ジゼル、いや元ジゼルの現ダークドレアムの威圧感は想像を絶するものであった。ハドラー、バランは元より、あの大魔王バーンですら恐怖に震えた。

 

 

 

「余が恐怖に震えた……だと? そんなことはあり得ぬ!」

 

 そして一瞬でも恐怖させたことにダークドレアムに怒りを感じたバーンはイオナズンを放ち、持っていた杖でダークドレアムに攻撃する。

 

「に、二回行動だと!?」

 

 ハドラーはそれを見て驚愕していた。何故なら二回行動は魔物、それもベンのような特別な魔物の特権であると思い込んでいたからだ。しかしバーンは魔族でありそれに当てはまらない。例えるならば生身の人間がメタルスライムのように呪文が効かないのと言っているようなものだ。

 

「二回行動で何を驚いている?」

 

 ダークドレアムはそう言い、受け止めた真魔剛竜剣をバランごと投げ、イオナズンを回し蹴りで打ち消し、バーンの攻撃をカウンターを合わせ追撃、イオナズンとメラゾーマで止めを刺す。

 

「ば、バカな!? 三回行動どころか、四回も行動しただと!?」

 

 今度は鼻水を垂らしてしまうくらいに驚愕してしまうハドラー。三回行動はもはやおとぎ話に出てくる大魔王ゾーマくらいしかいない。それだけでも鼻水を垂らしてしまうくらいの出来事であり、それをダークドレアムは軽々と超えてしまったのだからハドラーは唖然としざるを得なかった。

 

「ミスト……」

 

『はっ!』

 

 バーンがそう呟き、ミストバーンに合図を送る。するとミストバーンの身体がなくなったがバーンは若き肉体を得た。

 

 

 

「許さぬ……! 余をここまでコケにしおって……!!」

 

 バーンは怒りのあまり、ダークドレアムに突撃する。普段の彼であればそんなことはしない。若い身体を戻したことで感情的になり、それをしてしまう程に怒り狂っていた。

 

「カラミティエンド!」

 

 暗黒闘気を収縮させた超全力チョップがダークドレアムに直撃する。その威力はオリハルコンですらも軽々と切り裂くほどの威力であり、生身の生き物が受けたならば無事ではいられない。

 

「それがどうした?」

 

 だがダークドレアムは無傷だった。それどころか笑っているほど余裕であり、それがバーンの怒りをさらに増長させた。

 

「(ふざけおって……余のカラミティエンドをわざと受けることで自分の力を誇示しているというのか!)」

 

 まるで自分が相手に今までしてきたような行動を取られ、怒りに震えるバーンは握り拳を作り、そこから魔族特有の青い血を流す。

 

「攻撃とはこうやるものだ」

 

 次の瞬間、バーンの視界からダークドレアムが消え、気がついたら宙を舞っていた。

 

「くっ……!」

 

 バーンは体勢を整える為に宙を回転し、着地する。

 

「なっ……!?」

 

 しかしそれも出来なかった。バーンが膝を着いた。ダークドレアムの攻撃によりバーンの頭は揺らされ、脳震盪を起こしていたのだ。むしろあの一瞬で気がついたバーンが異常だと言える。

 

 

 

 そして冒頭に戻る。

 

 

 

 〜〜

 

 

 

「さて大魔王バーン。お前に一つ聞こう。どんな滅ぼし方がいい?」

 

『バーン様は滅ぼされぬ! むしろ貴様が滅びよ!』

 

 ダークドレアムの後ろを付いていたミストバーン、もといミストがダークドレアムの中へと入る。

 

「くっ……動け!」

 

 ヒュンケルはミストの狙いがわかってしまった。ミストは元々暗黒闘気の塊であり、ダークドレアムのような輩であれば乗っ取るのは容易い。そう思い、ミストは身体の中へと侵入したのだ。

 

 もしミストがダークドレアムの身体を得た場合、もはや誰にも止められない。そう思い、ヒュンケルは身体を動かし、光の闘気を集めた。

 

『うぎゃぁぁぁぁーっ!!』

 

 だがミストが最後に見たものは光の闘気などではなく、自分よりも遥かに巨大な暗黒闘気。ダークドレアムの暗黒闘気を操って乗っ取るつもりが逆に吸収されてしまい、断末魔をあげて死んでしまった。

 

「バカな……」

 

 それを感じ取ったヒュンケルは唖然としていた。ヒュンケルはそれを知っていたからこそ光の闘気を集めミストを浄化させようとしていたからだ。

 

 

 

「(流石にこれはまずいねぇ……)」

 

 この場においてミストバーンよりも沈黙していたキルバーンがこの状況を見て人形だけを置いて撤退しようとしていた。

 

「その人形を置いてどこへ行くのだ?」

 

 だがそれは叶わなかった。魔神からは逃げられない。そんなことをキルバーンが考えているとダークドレアムがキルバーンの頭をわしづかみにして持ち上げる。

 

「ただ逃げるのであれば逃げればいい。しかし何度でもいう。私の邪魔をするものは容赦はせぬ」

 

 キルバーン、いやキルバーンの人形を氷漬けにし、本当のキルバーン……ピロロを片手で握りつぶす。

 

 

 

「あのミストバーンとキルバーンが一瞬で殺られるとは……あの程度の苦戦で済んでいるバーンはどれだけ強いのだ?」

 

 クロコダインは改めて驚愕する。キルバーンはともかく、ミストバーンの強さは底知れないものがあった。ミストは暗黒闘気であるが故に光の闘気を浴びさせれば楽勝、などという話ではない。むしろダークドレアムは全てを滅ぼすなどの発言から決して善良な存在ではなく、暗黒闘気を使う立場であることがうかがえる。だがダークドレアムは光の闘気を扱えないというハンデすらも物ともせず、まるで蚊を殺すかの如くミストを一瞬で殺した。 そんなダークドレアム相手にバーンは苦戦だけで済んでいる……それがどれだけバーンが自分とかけ離れた存在かが理解してしまう。まさしく桁が違うのだ。

 

「お、おのれ……!」

 

 バーンは第三の眼を潰し、身体を変化させていく。その姿をダイ達、特に元魔王軍の軍団長達は見覚えがあった。

 

「あ、あれは……鬼岩城!?」

 

「鬼岩城は元々余のこの形態を現したものよ。この形態になると二度とあの身体になることはない……だがそれでも勝たねばならん!」

 

 バーンはダークドレアムを握り、締め付ける。その事に機嫌を良くしたバーンは高笑いを上げた。

 

「フハハハハ! 流石に魔神と言えど……」

 

「ふんぬ!」

 

 ダークドレアムはバーンの手を破壊し、拘束から逃れた。

 

「なっ……!!」

 

「さてお遊びはここまでだ。そろそろ滅ぼさせて貰おう」

 

「な、何っ!?」

 

 この場にいたダークドレアムを除いた全員がバーンと同様に驚愕する。

 

「ば、バカな……! 4回行動ですら本気でなかったというのか!?」

 

「私の最大行動回数は20だ」

 

 最早、ハドラーは思考することを放棄した。ポップの視点で言うとポップのメラゾーマがバーンのメラに打ち負けたということよりも絶望することである。

 

「だが、かつてバーン同様に大魔王と呼ばれた者でも6回しか私の攻撃を耐え切れなかったものでな……その点期待しているぞ」

 

 ダークドレアムが両手を広げ、呪文を唱える。

 

 

 

「イオナズン!」

 

 凄まじい轟音が鳴り響き、バーンの左半身が崩れていく。

 

「マヒャド!」

 

 今度はマヒャドでバーンの巨大を凍らせていく。もしかしてバーンを凍らせて嬲るつもりなのだろうか? 

 

「ベギラゴン!」

 

 かと思えばベギラゴンで頭を狙い撃ち、バーンの周りにあった氷を溶かし、バーンの身体もマグマのように溶かしていく。

 

「ギガデイン!」

 

 ダークドレアムのギガデインが頭から炸裂すると、バーンは遂に身体の動きを止めてしまい、その場に伏せる。

 

「ビッグバン!」

 

「グランドクロス!」

 

「ジゴスパーク!」

 

 三つの心臓を狙い撃ちするかのようにダークドレアムは追撃する。

 

「……」

 

 断末魔すらもあげられずバーンは死に砂埃が立ち、しばらくするとそこにはバーンの巨体はなく、代わりにバーンの巨体サイズの灰がそこにあった。

 

「7回か……少しは楽しめた」

 

 ダークドレアムはダイ達の方へ振り向き、不気味な笑みを浮かべた。

 

「次は貴様らの番だな」

 

 そしてダイ達がダークドレアムに殺されるとダークドレアムは地上、魔界、ありとあらゆる全てのものを破壊し、それが終わると、その場から去っていった。

 

 

 

 ーifルート完ー




≫「私の最大行動回数は20だ。」
≫最早、ハドラーは思考することを放棄した。ポップの視点で言うとポップのメラゾーマがバーンのメラに打ち負けたということよりも絶望することである。
・ちなみにこれの他に、【某宇宙の帝王が戦闘力53万と告げたり、某波動球の使い手が「ワシの波動球は108式まであるぞ」と告げるのと同じである。】という文章をいれようとしましたがカットしました。


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元親衛隊隊長、女王の義娘と向かう

ようやく書けた……こればかり言ってますね。ちなみにifルートとは何も関係ありません


「ジゼル様、よろしいでしょうか?」

ジゼルがフレイザードと共に娘ラーゼルをあやしているとベンが敬礼しながら尋ねてきた。

「ベン、どうしたの?」

「ダイを見かけませんでしたか?」

「ダイ君? そう言えば今日見かけなかったわね……デスカールに探させてみようかな」

「デスカールに?」

「お呼びでしょうか? ジゼル様」

突如タイミングを図ったように登場したデスカールにベンは目を丸くする。

「どっから現れたんだ……?」

「ダイ君がいなくなったから探してくれない?」

「ではこの水晶で探しましょう」

フレイザードの疑問などスルーし、デスカールが水晶に魔力を込め、ダイの居る場所を探しだす。すると水晶の中に景色が生まれダイとバラン、そして白銀の竜も写し出された。

 

「ふうむ……どうやらこの白銀の竜がダイを拉致しようとしたが、バランがそれを止めている現場ですな」

「で、そこにいくにはどうすればいい?」

「その場所に行くには竜の騎士であることが条件。つまり我々のような魔族は永遠にその場へ向かうことは出来ない。しかしダイ達の話が終わった後ならわかる」

「その場所は?」

「ここだ」

デスカールが地図を出し、テラン王国に指差す。

「テラン王国……?」

「さよう。かつてガルヴァスに命じられダイを討伐する為に竜の騎士についての歴史を調べたら、テラン王国に竜の騎士の原点があった。ということは白銀の竜が竜の騎士を我々の場所に戻すには原点であるテラン王国に戻す可能性が高い」

「むう……正論だ」

「言われてみれば……」

「テラン王国にか」

「おや、どうやらハドラー様もその考えにたどり着いたようですね」

三人がデスカールの水晶玉をみるとそこには竜の騎士二人を待ち伏せるように仁王立ちしているハドラーが写っていた。

「ちょっと待てよ? お袋、ハドラー様はデスカールのように水晶でその場所を見るなんて真似は出来ねえよな?」

「うん。ハドラー様が得意なのは物体に息を吹き込んで命を与えたりすることくらいであとは戦闘に特化しているからそんなことは出来ないわ」

「なるほど。しかしよろしいので?」

「うん?」

「ハドラー様の元に駆け寄らなくて」

「……フレちゃん、あとは任せた!」

「了解だ!」

「そ。じゃあ行くわよ!ベン!」

「ははっ!」

フレイザードにラーゼルを任せたジゼルとベンはルーラを使い、テラン王国へと向かった。だがその先にいたのは別の人物だった。

 

~テラン王国~

 

「これはこれはジゼル様にベン。この先に何か用でも?」

アルビナスがジゼル達の前に立ち塞がるようにジゼル達に対面し、妨害する。

「アルちゃん……そこを退いてくれない?」

「ハドラー様の命令に背きます故にお断りします」

「命令とは?」

「ハドラー様の邪魔をする輩は排除する。それだけですよ」

その瞬間、アルビナスの口元から毒針が飛び出し、ジゼルを襲う。しかしジゼルは毒を触れないようにそれを掴んだ。

「それだけ? 本当はハドラー様と戯れる私が羨ましいんでしょ? 素直にハドラー様とボディタッチしなさいよユー」

「んな訳あるか!!」

ジゼルが体をくねくねとうねらせ、アルビナスの耳元でそう呟くと腕を開放したアルビナスの拳がジゼルの顔面に炸裂する。

「痛っ~! ちょっとアルちゃん! お母さんに向かってグーはないでしょ!」

「黙れ! 私達親衛騎団がハドラー様個人の力によって生まれている以上、母親面する貴様が許せん! 母親面したいのならフレイザードだけにしろ!」

ここまでブチ切れたアルビナスを目にしてジゼル達は目を丸くし、呆然としていた。

「ハドラー様から妨害はしても殺すなと言われていますが、今度ばかりはそうもいかない……殺してあげます」

「アルちゃん……」

ジゼルが寂しそうに、顔を伏せアルビナスを見る。

 

「死ね! サウザンドボール!」

「って俺からかよ!」

アルビナスの灼熱の球が、ベンに向かう。しかしベンとて黙ってやられるほど弱くはない。

「イオナズン!」

ベンがイオナズンで対処し、それを打ち消すと煙が舞う。その瞬間、金属音が響いた。

「(ふん、どうやらジゼル様との一騎討ちに持ち込みたいが故にあの技を繰り出したということか……そんなことをせずとも俺は手を出さないというのにご苦労なことだ)」

ベンがそう思考しつつも自分の腕を見ると、火傷のような症状を出していた。

「(この傷痕を見るとあの技はベギラゴンを改良したものか。ベギラゴンは通常、というか当たり前の話なのだが両手を使わないと出来ない。しかしあのサウザンドボールとやらは片手のみでベギラゴン以上の威力を出している。不意討ちとはいえ俺に傷を負わせたのが何よりの証拠。そしてあの異常なまでのスピードとオリハルコンの身体は厄介なものだ)」

アルビナスがジゼルのカウンターに屈し、腹をくの字にしてよろけながらもまだ立ち向かうその姿を見てベンはため息を吐いた。

「(……尤もイオナズンではなくイオグランデであれば傷を負ったのは俺ではなくアルビナスの方だったがな。そんな奴にジゼル様に勝てる要素など一つもありはしないか)」

ジゼルの背負い投げがアルビナスに炸裂し、アルビナスの身体の亀裂が更に深くなる。

 

「何故、何故妨害するんですか?」

アルビナスが亀裂の入った身体に鞭を入れ立ち上がりながらジゼルにそう尋ねる

「アルちゃん。貴女はやっぱり私の子供だよ」

「まだそんなことを!」

「私の子供でなければ良心が傷まずに戦えるからとっくに終わっているよ。少なくとも私はアルちゃんをこれ以上傷つけることは出来ないわ」

「やはり貴女は温い。その甘さが命取りとなる……っ!?」

アルビナスの目から涙が流れ、アルビナスはそれを止めようと目を瞑ったり、擦ったりするも止まらない。

「な、何故私の顔から涙が?」

「それはアルちゃんが私を受け入れた証拠よ。だから擦ったりしないで思い切り私の胸で泣いてもいいのよ」

「くそっ!止まれ、止まれぇぇぇっ!」

ジゼルを無視してアルビナスが涙を止めようと必死に抗うが止められない。そしてついに最終手段に出た。

「この止まらぬ涙を流す目は不要!」

アルビナスが目を自らの指で潰そうと目に目掛けて指で刺そうとするがそれはジゼルによって止められた。

「……アルちゃん。その目は誰のためにあるの?」

「ハドラー様の為。しかしこんな涙を流す目になってはハドラー様も不要に思われる!」

「アルちゃん、自分の目というのは自分の成長の為にあるのよ」

「成長?」

「うん。目というのは理想だけを見るものじゃない。そこには様々な現実がある。現実を見て見直したり受け入れたりすることで成長するの。アルちゃんはハドラー様の為って言ったけどそれは間違いじゃない。アルちゃんが成長してハドラー様の手助け出来る範囲を広められるからね」

「……完敗ですね。私もまだまだ未熟だった。そんな状態でお義母様を止めようなんて早すぎた」

「えっ? 今お義母様って言ったよね!?」

「さて、貴女の想像にお任せします。敗者は黙って去るのみ」

アルビナスがそう言ってリリルーラを唱えその場から消えてしまう。

「さあ、ハドラー様の元に行くよ! ベン!」

「はっ!」



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竜騎将VS武人

何か書けた。普通だったら1ヶ月以上かかるのに……

それではどうぞ。


~テラン王国~

 

その頃、ハドラーがダイ達と合流し話し合っていた。

「ダイ、バラン。たらればの話になるが、あの時俺の身体に黒の核が埋め込まれていない状態で、お前達と戦っていたらどうなっていたと思う?」

「竜魔人となった状態で戦わなければお前を倒すことは出来なかっただろうな」

「何故だ?」

「竜闘気や攻撃呪文、剣術だけではお前を倒すには火力不足だからだ。だが竜魔人にはそれがある」

「そうか……なら竜魔人となれ、バラン」

いきなりハドラーが覇者の剣を抜いて、バランに襲いかかるが、金属音が響く。だがハドラーの剣を防いだのはバランではなくダイだった。

「バラン。ダイに庇われるほど衰えるということは、どうやら貴様自身にも問題があるようだな」

それはバラン自身がダイの反射速度より劣っているということ他ならない。ハドラーの言葉によってそれに気づかされたバランが口を開いた。

 

「随分と饒舌だなハドラー。弱い犬ほどよく吠えるというがまさしく今の貴様そのものだ」

「その通りだ今の俺は弱い。そしてお前もな」

「何だと?」

「バランもしもだ。ジゼルの化けたエスターク並みの実力者が魔王軍にいたらお前一人だけで倒せるのか?」

「竜魔人となれば可能だ」

「では仮に竜魔人となってそいつを倒したとしよう。しかしその先にはそいつよりも格上のバーンがいる。万全の状態でも勝てるかどうか怪しい相手に、万全ではない状態で挑む。それはわざわざ犬死にするようなものだ」

「何が言いたいハドラー」

「気付いているのではないのか? このままではバーンに立ち向かったところで敵う術はない。俺とお前が力を合わせても傷をつけるだけに止まるということを」

「……」

「バーンを倒すに当たって強くなることに越したことはない……バラン。俺との決闘を受けろ。それも生死を掛けたものだ」

 

「なんでそうなるんだ!?」

ダイが声を粗げ、ハドラーに尋ねる。

「至極単純。俺達程の力量となれば生死を掛けた決闘をすることにより勝者はその力を取り入れることが出来る。バーンを倒すにはどちらか片方が犠牲にならねば奴に勝てん」

「ダメだよ! こんな決闘受けたところでどっちかが犠牲になるだけで終わるじゃないか!」

「ダイ、お前には聞いていない。俺はバランに聞いている。それで受けるのか?」

バランは目を瞑りしばらくの間思考する。そして目を開き口から結論を出した。

 

「その決闘受けよう。ただし余計な横槍が入るかもしれないがそれでもやるのか?」

「その心配はない。冥竜ヴェルザーと雷竜ボリクスが竜の頂点となるべく闘った真竜の闘いは何人足りとも横槍を入れることはなかった。実力者同士が拮抗していれば真竜の闘いのような状態になる」

「ならば、最初から全力で行かせてもらうぞ! 離れていろダイ!」

バランが竜の牙(装飾品)を握り血を流すと、竜闘気が高まり竜魔人となる。

 

「ギガブレイク!」

バランが先制でギガブレイクを放ち、ハドラーに襲いかかる。それをハドラーは超魔爆炎覇で迎え撃った。その瞬間熱風の竜巻が起こり真竜の闘いの再現が始まった。

「ハドラー、お前の予想通り真竜の闘いを再現したな。流石、私と共闘しただけのことはある」

真魔剛竜剣を振りハドラーの身体を切るがハドラーは全く気にせず超魔生物の再生力を利用し傷を治しながら得意の接近戦に持ち込む。

「それだけ俺達の力が拮抗している証拠。共闘して頼もしい相手が敵になると恐ろしいとはよく言ったものだな」

ハドラーの爪がバランを襲い、青い血を流させるがどれも致命的なものはない。

「その台詞を私はお前ではなくジゼルに向けて放つがな」

だが確実にこのままではバランが不利になることは明白だ。その理由としてバランは常に血を流しているがハドラーは攻撃した瞬間にこそ流れてはいるがすぐに傷が治り止まる。血を流しすぎれば頭の回転はおろか、身体も動かなくなる。故に長期戦が不利と感じたバランは距離を離し、短期決戦に持ち込もうと力を溜める。

「俺は大魔王バーンに言おう。なぜなら勝つのはこの俺だからだーっ!」

そしてそれを待ち構えていたかのようにハドラーが突撃して竜魔人に最高の一撃を放った。

「超魔爆炎覇ーっ!!」

バカの一つ覚えのように突っ込むその姿勢はどこか清々しく、バランを魅了させた。

「ドラゴニックブレイクぅぅっ!!」

だが見とれて動けないほどバランとて馬鹿ではない。むしろ逆。ハドラーの動きに魅了されたからこそバランの本能を刺激し、竜闘気で覆った剣がハドラーに向かい、決着が着いた。

 

「ぐあっ!」

「ぬぅぉっ……!」

両者共に剣が深く突き刺さる。その瞬間、両者を取り巻いていた竜巻がある人物を襲った。

「がぁぁぁぁぁっ!!!」

「ハドラー!」

その人物はハドラー。バランの本能がハドラーを僅かに上回ったのだ。

「(私が竜の騎士としてではなく普通に産まれていたならば逆の立場になっていただろう……)」

バランがそんな仮説を立てて竜魔人を解き、尻餅をつく。

「ハドラー。確かにお前の力を吸収させて貰ったぞ」

バランはハドラーとの闘いで自分が成長していたことを確信していた。それ故の発言だった。

 

「ハドラー様!!」

そこへやって来たジゼルがハドラーを介抱し、ベホマをかけるが今のハドラーは魔法を受け付けない。その理由はバランが竜闘気を纏わせたドラゴニックブレイクによる攻撃がハドラーを傷つけていたからだ。これがギガブレイク以外の魔法剣だったり、通常の攻撃であればハドラーの傷はすぐに治っていただろう。そのギガブレイクですらハドラーの致命傷になり得るかどうか怪しいものだ。故にバランは致命傷となり得るドラゴニックブレイクに賭けた。

「……ジゼルか」

「何でハドラー様、こんな真似をしたんですか!?」

「馬鹿と思われても仕方あるまい。しかし俺はどうしても気になった。自分の力が竜の騎士相手にどれくらい食いつけるかをな」

「エスタークじゃ、ダメなんですか!?」

「あれはお前だろう。エスタークではない……後治療するからといって俺の胸板に引っ付くな。ベン、取り外せ」

「無理です。ジゼル様を引き剥がすには俺の力でどうこう出来るレベルではありませんから」

薄ら笑いでありながらもベンの目は暖かく、それは恋人同士を見守るようなものであった。しかし約一名空気を読めない男がいた。

「飲めハドラー。私の血は竜の血を含んでいる。強靭な精神力がなければ回復出来んがそれを飲んで回復することだな」

「空気読んでよ……父さん」

バランの行動を見たダイがボソリと呟き、頬をかく。ハドラーを一人の武人として認めたことは有難いが空気を読んでからそういう行動をしてもらいたいものだ。

 

「バランの血なんて飲めたものじゃないですよ、ハドラー様。竜の血の純度が高い私の血を飲んで下さい!」

ジゼルが自ら血を流しハドラーにそう進言すると飲み始めた。

「あぁ……っ、んっ……! ハドラー様、激し、いっ」

光悦とした表情でジゼルが腰を振り、ハドラーの腹に押し付ける。

「止めんか。ダイの教育に悪いだろうが」

ハドラーがその動きを止めると竜の騎士二人が目を丸くしていた。

「えっ? そうなの?」

「私は戦闘以外疎いからそういうことはわからん……」

「バラン、お前がダイを魔王軍に連れていったらダイがとんでもないスケベになっていたかもしれんな。ジゼルのせいで」

「……」

ハドラーのあんまりな言いぐさにジゼルが珍しく反論せず、それが気になったベンが声をかけた。

 

「ジゼル様、どうされました?」

「いや、ちょっと気になることが」

「何でしょうか?」

「バランは私が腰振ってもダイ君にそれを見せさせないどころか唖然としていたところをみると性に関する知識が全くと言って良いほどない。だけどダイ君はそこにいる。それっておかしくない?」

「……あ。確かに」

「そうなると二つほど説が浮かぶ。一つはソアラさんが浮気……」

それを言った瞬間ジゼルに物凄い殺気が襲いかかる。

「ソアラは浮気などせん! それにダイが竜の騎士である以上私の息子であるのは明白だ!」

一瞬、ダイやベンが竜魔人となったバランが見え、恐怖した。

「そう、ソアラさんが浮気して別の男の種を貰ったとしても普通の子供しか生まれない。ダイ君が竜の騎士である以上それはない」

「もう1つの説とはなんだ?」

「もう1つの説はソアラさんが神の涙を使ってバランとの子供を設けた……これが一番考えられるわ」

「神の涙か。確かにあり得るな」

ダイ以外の全員が頷き、納得した。

 

「ベン、神の涙ってなに?」

困った時のベンペディアと言わんばかりにダイがベンにそれを尋ねた。

「神の涙は何でも願いを叶える神々のアイテムだ。ただし悪し者の願いは叶えられんというものだ」

「つまり正しい心を持っていると叶うの?」

「そういうことだ何が基準なのかは不明だがな。だから仮にお前の母が浮気していて、その子供を竜の騎士にさせようともその願いは叶えられん」

「だから皆納得していたのか……」

「そうだ。だからお前の両親はバランとソアラで間違いないということだ」

 

「ところでジゼル。お前達は何の用でここに来たんだ?」

「それが、ベンがダイ君と修行したいからここに来たんですよ」

「俺と?」

「そうだ。一番俺の実力に近いのはクロコダインだ。だが雪辱を果たすその時までクロコダインとは戦えん。だからその次に近いお前と実践形式で修行しようと思った訳だ」

「私達じゃダメなの?」

「冗談はよしてください。ジゼル様達相手では火力が足りずにジリ貧に終わるだけですよ」

「お前の得意な立ち回りやイオグランデでもか?」

「ええ。立ち回りってのは本来足りない火力を補うもので、イオグランデも一撃必殺の技。一度でも耐えられると自分以上の相手ならば勝ち目はありません」

 

「つまり俺なら勝てると言いたいのか?」

ダイが剣を握り、戦闘体勢になる。

「勝てる。少なくともお前は未熟だ」

「そうかよっ!」

「甘いっ!」

それは一瞬だった。飛びかかってきたダイをベンが沈め地面にめり込ませる。

「ダイ、お前は何のためにあの白銀の竜と会ってきた?」

「聖母竜のことを知っているのか?」

「詳しくは知らん。しかしその関係の予測は出来る。大方、竜の騎士を産み出した存在だろう。……話を戻す。その聖母竜とやらがお前達に何かしら警告をしてきたはずだ。その警告を聞いておきながらこの有り様とは……親衛騎団の連中と戦っていた方がマシだったな」

ベンの言葉がさらに突き刺さり、ダイは再び唇を噛んだ。




ABCD「モンスターABCDの後書きコーナー!」

A「いやー、出番がねぇっ!」
B「いきなりそれか?」
C「出番がある奴はいいよなぁ……何せBは作者のお気に入りだし」
D「二回も原作主人公を倒したあたり作者のお気に入り具合が半端ないということがうかがえるな」

A「くっそー……俺だって、本気出してやるぜーっ!!」
B「お前達の本気見せてみろ!」
C「うっしゃぁっ、俺も気合い入れてやる!」
D「儂は影の功労者となろう……出番は増えるだろうし」

A「さて、時間が迫ってきたので恒例のアレを!」
B「この小説の感想は感想へ、誤字報告は誤字へよろしくお願いします」
C「それから作者にプライベートに関わらない程度で個人的な質問を聞きたいあるいは要望したければ作者のページのメッセージボックスに頼むぜぇぇぃ!」
D「それとお気に入り登録もよろしく頼む……」
ABCD「次回もお楽しみに!!」


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テランにて……

今回はダイのスランプの原因です。



「ポップ……」

「よう、ダイ。どうしたんだ? そんなどんよりした顔して」

「……ポップはさ、スランプに陥ったことってある?」

「スランプというよりは、でけえ壁にぶち当たっちまったよ。俺は」

「デカイ壁?」

「ダイは竜の騎士、マァムは先生のパーティの仲間の娘、ヒュンケルは先生の一番弟子。アバンの使徒は皆、俺を除いて特別な力や才能を持っているんだ」

「そ、そんなことないよ!」

「無理に励まさなくていいんだ。俺の事は俺がよく知っているんだ」

「ポップ、メドローアを使える時点で普通じゃないって! あれって確かメラとヒャドの系統魔法を同じくらいにしなきゃダメなんだろ? 俺にはそんなことは出来ないよ」

「そうか。じゃあダイ。お前に出来る事は何だ? メドローアは強力だが、実戦じゃただの砲台と変わらねえんだ。それに対してダイの武器は剣じゃないのか?」

「剣?」

「正確には魔法剣。あれを極めるしかねえよ。お前の親父さんのドラゴニックブレイクだっけか? あれは竜闘気の剣技だから竜闘気の少ないダイかやっても劣化版にしかならねえんだ」

「……そうだね」

「俺は先に壁を超えに行くぜ。ダイ」

ポップがその場を立ち去り、一人になりダイは回想する。

 

~回想~

 

ダイはその空間にいた。ただ白く淡い摩訶不思議な空間で、その先には白銀の竜がいた。

「私の名前は聖母竜。竜の騎士の生と死を司る神の使い」

「その聖母竜が何でここに?」

「単刀直入に申します。大魔王バーンの他に私を害する存在が現れたのです。貴方にはそれを討伐して貰いたい」

「害する存在ってヴェルザーのことか!?」

「いいえ。あの石化した竜にそのような力はありません。しかしヴェルザー領の人外であることは確かです。それを討伐しなければ大魔王バーンよりも神々にとって脅威になるのは事実」

「バーンよりも?」

「ええ。魔界のヴェルザー領に行き、私を害する存在を討伐しなければ竜の騎士を産み出す力を失ってしまうでしょう」

「それって……竜の騎士が生まれなくなるってことなのか?」

「その通りです。本来であれば私が竜の騎士に干渉して討伐させるなどあってはならない。しかし現時点でその存在はバーンよりも格下。叩ける内に叩いておかねばならない」

 

「少し待って貰えないだろうか? (マザー)よ」

それに異議を唱えたのはバランだった。

「貴方は……私が創り出した方の竜の騎士ですね」

「そう、私が貴女に創られた竜の騎士のバランです。そしてこの子、ダイは私と人間との間に生まれた混血児。どういう因果は知らないが竜の騎士としての力を受け継いでしまった。(マザー)よ貴女にお尋ねしたい。ダイのようなことは初めてなのでしょうか?」

ダイのようなこと。それはつまり竜の騎士が子供を産み、その子供がまた竜の騎士となる例だ。

「答えはイエスとしか言えません。初代の竜の騎士を創造して以来、ダイのような例はありませんでした」

「そうか。しかし大魔王バーンを無視してまでその害する存在を討伐する必要性があるのでしょうか?」

「先ほども言いましたが現時点でこそバーンよりも格下ですがその存在はいずれバーンを凌ぐようになります。ですから早めに倒さねばなりません。それに竜の騎士はそもそもマスタードラゴン亡き後、人、魔族、竜の神々が世界のバランスを崩す者を倒すために産み出した種族です。しかし長い歴史の間に悪しき者の力はますます強大になっていきました。今、世界を席巻している大魔王バーン至っては神すらも超越しており、現在の竜の騎士の力ではどうこう出来る相手ではありません」

 

「そ、そんなっ……! それじゃ大魔王バーンを無視してその害する存在だけを倒せっていうのか!?」

ダイは聖母竜の言葉を聞いて驚いていた。エスタークを封印した神達の心が折れる程の相手だとは予想していなかったからだ。

「そうです。竜の騎士の弱体化を防ぐだけでなく、より進化していくならばその害する存在との戦いで得た経験値も必要不可欠なのです」

「だからって大魔王バーンを無視すればそれこそ地上が滅びるよ!」

「幼き竜の騎士よ。貴方の気持ちもわからなくありません。しかしこれは神々の意思なのです」

「神の意思だと?」

「神々は、地上が破壊されても地上を戻せば問題ない。現在地上にいる人々は犠牲になってもらうしかないと考えています。私とてそれに反対しました。しかしそれは聞き入れて貰えませんでした」

「それでせめてもの反抗に、竜の騎士を進化させようと考えたのか……」

「その通りです。しかしそれまでの竜の騎士では進化は出来ません。イレギュラーとも呼べる貴方ならその未知の可能性を切り開くことが出来るでしょう」

(マザー)。先ほどから気になっていたのですがその存在とは何者ですか?」

「私にも詳しくわかりません。しかし先ほど申したようにその者は今でこそバーンよりも格下ですが、放置すればバーンをも凌ぐ脅威的な存在となります」

「今は、格下なのだな?」

「はい。その者はまだバーンほどではありませんが脅威的な存在であることに違いありません」

「ならば(マザー)。そちらの方の時間はまだあると言うことだ。しかしバーンに関してはそう悠長なことも言っていられない。現状、バーンに全力を注がなければ均衡は一気に崩れ、ダイの仲間達は皆殺しにされるでしょう。そうなればダイは永遠に後悔することになる。そうあっては進化も退化となるでしょう」

 

「……バラン、貴方が言いたいことはわかりました。私はダイの意見を尊重します。先ほど大魔王バーンに勝てぬというのは竜の騎士単体ならばそうでしょう。しかし私の力を宿すことにより力を10倍以上まで引き上げることが出来、勝ち目が少しだけ上がります」

「10倍……!!」

「しかし私の命が削られ、私の力を宿すには一人、それも力を引き出せるのは一度きりのみとなります」

「一度きり……!」

それを聞いたダイが動揺し、バランを見る。しかしバランは既にその答えを出していた。

 

「ダイ。お前がその力を宿すのだ」

「えっ!? 父さんの方が強いから父さんが宿した方が良いと思うけど」

「ダイ、お前は私よりも人の優しさを知っている。私がその力を引き出したとしても野獣となって暴れまわるだけに終わるだろう。人の心を保ち、魔族の魔力を扱い、竜の力を真に引き出せるのはダイ。お前だ」

「……」

そしてダイが頷き、聖母竜の近くに寄る。

「決まったようですね。それでは私の力を授けましょう……!」

そして聖母竜が一つの珠となりダイの身体の中に入っていくとどこからともなく声が響く。

「この力に慣れぬ内は制御出来ずに戸惑うことも多々あり、特に最初の頃は竜の騎士の力もマトモに引き出せないでしょう。しかしこの力を扱えるようになったとき、貴方は間違いなくバーンを倒せます。自分を信じ、バーンをそしてその存在を倒して下さい」

そしてダイ達は元の世界に戻り、現在に至る。

 

~回想終了~

 

「自分を信じろか。ベンやクロコダイン、ハドラーに父さん、そしてジゼルを超える自分をイメージをしなきゃダメだな」

 

そしてダイは剣を持ち、イメージの中でそれらと戦う。ベンは圧倒的な速さで翻弄されてしまう。クロコダインとハドラーは攻撃が当たるもののダメージはほとんどなく返り討ちにあう。そして竜魔人となったバランとは相討ち。ジゼルに至っては力ずくで無理やり突破されてしまった。

 

「あーっ、全然ダメだ! 少なくともあの五人相手に勝てなきゃバーンを倒せないのにどうして勝てるイメージが湧かないんだ?」

しかも五人のうちクロコダイン、ハドラー、バランの三人はダイと戦って一度以上負けている。それにも関わらずダイが勝てるイメージが湧かなかった。

「どうにかしないと……」

ダイの眠れぬ夜は続く。




いやしかしあれですね。オリ主が一切出ないってのはどういうことなんでしょうか?
それはともかく誤字脱字報告、高評価、お気に入り登録、感想よろしくお願いいたします!


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武道家、パワーアップ完了

注意! 今回からナンバーズシリーズ要素の増大化が進みます。それでも宜しいならどうぞ。


勇者一行とハドラー達はアバンの使徒とそれ以外の二手に別れ──約一名、夫と義理の子供達と一緒になれたことに歓喜していたが夫と息子以外に無視され落ち込んでいた──別行動を取っていた。それというのも大魔王軍が更に再結成され、新たに任命された六軍団長も地上を攻めて来たからであった。

 

ダイ達アバンの使徒は六軍団長を相手にせず、バーンパレスへと向かいバーンの首を取りに向かう。その先にいたのは三人の獣人達であった。

 

「来たか勇者達よ!」

鉄球を持った猪の獣人が不適な笑みを浮かべ、大声を出す。

「誰だお前達は?」

「ほっほっほっ、その質問は私がお答えましょう。私は大魔王バーンによって復活した太古の帝国の三将軍のうちの一人、ゲルニック」

梟の獣人、ゲルニックがダイの質問に答え、自己紹介を済ませる。

「同じく将軍の一人! ゴレオン」

鉄球の猪男、ゴレオンもそれに続き、もう一人の豹の将軍も続いた。

「同じくギュメイだ」

 

「その三将軍が何故、ここに?」

「当然、貴様の首を貰う為だ。勇者達の首を取ればバーン様に認められ幹部に出世出来るのでなぁっ!」

「ゴレオン、それは貴様だけだ。少なくとも大魔王に協力したのはガナサダイ様を蘇らせる為だ。二君に仕える気はない」

「勇者達の存在はガナサダイ様が蘇ろうが蘇らまいがどちらにせよ、我々の邪魔になる。それを排除したい大魔王と利害が一致しただけのこと」

ゴレオンは出世、ゲルニックはダイの存在を消したいが故に、ギュメイはガナサダイを蘇らせる為。理由は違えど三人がダイ達に立ちふさがる。

「さて、話が長くなりましたね。そういう訳ですので貴方達には死んで貰います。何、大人しくしていれば痛みは感じませんよ」

ゴレオン、ゲルニック、ギュメイがダイ達を殲滅せんと動いた。

 

 

 

「俺の相手は貴様か」

ゴレオンが選んだ相手はマァムだ。マァムを選んだというよりも消去法でそうしざるを得なかっただけでゴレオンの意思によるものではない。本音を言えばギュメイやゲルニックに相手をして貰いたかったのだがギュメイは紳士であり女に傷をつけるのを拒む、ゲルニックは武道家のマァムとは相性が悪い。必然的にマァムと相性の良いゴレオンが相手をすることになった。

「力の将軍ゴレオンの恐ろしさ、目に焼き付けるが良い!」

ゴレオンは力を溜め、マァムに向けて鉄球を投げる。

マァムはそれを避け、冷静に力を溜め一撃に備える。

「ちょこざいな!」

ゴレオンとマァムの戦いのコングが鳴った。

 

「ぬぅんっ!」

ゴレオンが再び鉄球を振る。だが先ほどとは違い溜めなかったが故に素早く、そして重い鉄球がゴレオンを中心に周回する。だがマァムは鉄球の軌道を読み、ゴレオンの懐へと潜り込む。

「でりゃぁぁぁっ!」

手甲を着けたマァムがゴレオンの顎を力を溜めたアッパー気味に攻撃。拳闘術においてそこを攻撃することで最も相手を倒しやすい箇所、言うなれば急所のひとつが顎だ。顎を砕いた相手は倒れるだけでなく歯を食い縛る力が弱くなり、体全体の筋力も発揮しにくくなる。それだけ顎は致命的な弱点だ。

「それだけか?」

だがゴレオンは倒れない。マァムの渾身の攻撃が通じなかったのだ。

「あの攻撃を顎に貰ったらクロコダインでも狼狽えるはずなのになんてタフなの……!?」

「俺は力の将軍ゴレオン! この程度の攻撃に耐えねば他の将軍に笑われるわ!」

「なら、閃華烈光拳!」

ゴレオンがバカ笑いしたところにマァムが必殺技である閃華烈光拳を放つ。

 

「無駄だっ! どれだけやろうとも俺に効かぬ!」

「そ、そんな! 生物である以上閃華烈光拳は効くはず!」

「生物というちんけなものに俺を一くくりにするな。俺は力の将軍ゴレオンだ、それ以上でもそれ以下でもない!」

「もうめちゃくちゃ……」

マァムはゴレオンの理屈に呆れ呟きながら間合いを取る。

 

生物でないとするなら、フレイザードやハドラー親衛騎団達と同じような呪法生命体なのか、不死騎団のゾンビ系の魔物かどちらか。バーンに蘇らせて貰った等の発言から後者である確率が高い。閃華烈光拳でもパワーでも通じない敵にどう立ち向かうかそれが今回のマァムの課題だ。

 

これまで閃華烈光拳が通じない相手はパワーでねじ伏せて来た。しかしこのような敵は初めてであり、対処に戸惑ってしまう。ニフラムさえ使えればゾンビを浄化することも出来るのだが、マァムはそこまで器用ではない。一番効果的な攻撃といえば光の闘気でニフラムの代用をするしかない。だがゴレオン程の強敵となるとグランドクルス以上の闘気が必要でマァムには不可能だ。

 

そこまで考えた末にマァムは前に戦ったアクデンのことを思い出す。ベンとアクデンの差はテンションの有無の違いだと。しかしただテンションを上げるだけではゴレオンを倒せない。工夫が必要だ。カラスを撃沈させたヒュンケルのようにテンションを上げなければならない。だがゴレオンがそれをさせてくれるとも思えない。

「いや、あの人の真似をすれば……!」

味方でかつ最も自分に近い戦闘スタイルの持ち主を思い出し、それをイメージする。それはジゼルだった。ぶち切れた時のパワーとスピードは凄まじいものであり、まさしく野獣そのものだった。

だがそれだけでもまだゴレオンを倒すイメージが湧かない。ゴレオンの場合、肉体だけでなく、魂すらも破壊しなければならない。その考えはアバン流刀殺法の空烈斬とアバンストラッシュの考えそのものだった。

「はぁぁぁぁ……っ!!」

気を高め、テンションを上げる。それだけではなくゴレオンの魂を探りそれをロックオン。そしてマァムはジゼルになりきり……一気にその力を解放した。

 

その瞬間、暴風が吹き荒れる!

 

「これが私の最高の奥義よ!」

普段であれば言わないこともジゼルになりきっているせいかそう言いだし、ゴレオンの全てを破壊する。

「ぐわぁぁぁーっ!」

ゴレオンの断末魔の叫びがその場に響き、体を崩す。

「いやだ、グレイナルの時みたいに焼かれるのは嫌だ!」

幻覚を見ているゴレオンがのたうち回り、燃えていく。そしてある程度時間が経つとゴレオンは動きを止め、肉体が一気に崩れた。

 

「なんとか倒せたけど、この様じゃ問題ね……」

マァムは他の将軍もいるというのに腰を落とし、姿勢を楽にする。疲労を隠せず、顔に出てしまうがそれだけゴレオンが強敵であり放った一撃も負担の大きいものである証拠だ。

「(この問題を解決さえすれば、完全にこれは技になる……バーン戦の前には完成させないと)」

マァムはそう決意し、前へと向かう。




ABCD「モンスターABCDの後書きコーナー!」

A「いやー、驚いたな……」
B「何がだ?」
C「そりゃ俺たちだけじゃなくジゼル様の出番がほとんどなしで終わったからじゃないか?」
D「その出番も名前だけだったしな。この分だとあと二話はジゼル様の出番はないな」

A「それもあるが敵がⅨの三将軍だぜ。なんかフラグっぽいこともいっているし」
B「だけどまあいいじゃないか。三将軍の一人は片付けたんだし」
C「そうだな。俺たちの稽古が実を結んだと思うと感激だぜ……」
D「三人の成長も楽しみだ」

A「さて、時間が迫ってきたので恒例のアレを!」
B「この小説の感想は感想へ、誤字報告は誤字へよろしくお願いします」
C「それから作者にプライベートに関わらない程度で個人的な質問を聞きたいあるいは要望したければ作者のページのメッセージボックスに頼むぜぇぇぃ!」
D「それとお気に入り登録もよろしく頼む……」
ABCD「次回もお楽しみに!!」


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陸戦騎推参、大活躍

お久しぶりです。話の都合上、前回の【その先には二人の将軍が待っていた】という文章はカットしました。申し訳ありません。


ゴレオンとマァムが戦いを始めたちょうどその頃。

 

「ほっほっほっ、ギュメイの邪魔はさせませんよ」

ダイとギュメイの一騎討ちをさせる為にゲルニックはヒュンケルとポップを相手にする。

「貴様は見たところ魔法を主体に戦うようだが、これを見てもそう言えるのか? 鎧化(アムド)!」

ヒュンケルが鎧を身に纏い、構える。この鎧は攻撃呪文を無効化する効果があり魔法を主体に戦う相手に優位に戦うことが出来る

「何一つ問題はありません。メダパニ」

しかし、ゲルニックは補助呪文でヒュンケルを混乱させる。その結果、ヒュンケルは混乱してしまった。

「うおおおぉぉぉっ!」

「敵は、向こう、向こうだって! ヒュンケル!」

襲いかかってきたヒュンケルにポップがゲルニックに向け指差す。しかし混乱しているヒュンケルには無駄だった。

「ほーっほっほっ。貴方達の無様な姿を見ると心がスッキリしますね」

ゲルニックの笑みはサディストそのもの。ポップがヒュンケルに斬られそうになる度に笑い声を上げる。

 

 

 

ダイの相手はギュメイ。片刃の剣を左手に持つヒュンケル等の戦士寄りの将軍だ。

「つ、強い……!」

それまでダイは幾度なく剣を持つ相手と戦ってきた。ヒュンケル、バラン、稽古上のロン・ベルク、超魔ハドラー。しかしいずれも右利きであり、剣を左手のみで持つ相手はギュメイが初めてだ。

「むんっ!」

その初めての経験に加え、ギュメイ自身もかなりの実力者。ヒュンケルのような付け焼き刃で身につけた魔法剣擬きではなく、正真正銘の魔法剣使い。その上ベンのように二回行動を起こせる格上の相手だ。

「く、くそっ!」

ダイはギュメイの戦法に苦しむあまり、雑に魔法剣を扱う。その結果、足元を掬われた。

「うわっ!?」

「去ね。勇者ダイ」

氷を纏ったギュメイの剣がダイを襲った。

 

「させん!」

第三者の声が響き、その剣は止まった。青年の声を聞き、ヒュンケルはゲルニックと対峙しておりダイを庇った者とは別人であるとわかる。では一体誰なのか? ダイは答え合わせをするようにその人物を見る。ジゼルやハドラーのような魔族特有の尖った耳にヒュンケルの剣と同じ素材を使った槍。

「誰……?」

しかしその人物はダイの心当たりに全くなかった。それもそのはず、ダイと行動を共にした四人の中で面識があるのはゲルニックを相手にしている二人のみである。

「陸戦騎ラーハルト見参。ディーノ様の危機を駆けつけここに参った!」

 

「陸戦騎ラーハルト?」

「はっ。私、ラーハルトは貴方の父君バラン様にお仕えする部下にございます」

「父さんの……!?」

「はい。それよりもディーノ様お下がり下さい。この豹を一瞬で仕留めてご覧いたしましょう」

「あ、あのさ……悪いけど俺のことはダイって呼んでくれない?」

「了承しました」

微笑み、ダイが後ろに下がりラーハルトが前に出る。そしてギュメイも片手持ちから中段構えに切り替えた。

「我と貴様どちらかが一瞬で死ぬ……と言うことか」

「流石だな。今の会話でこちらの意図を読み取るとはな」

まさか。そうダイが思った瞬間ラーハルトとギュメイが動いた。ギュメイの剣がラーハルトを捉え切り裂き、ラーハルトの槍がギュメイを捉え貫き、互いに背を向ける。

「……見事!」

ギュメイが声を上げ、ラーハルトを讃えた瞬間ギュメイの腹から血が流れ、姿が消えていく。

「ガナザタイ様、再びそちらに参ります。貴方を復活させられぬ私を御許し下さい……」

そして忠臣ギュメイは安らかに眼を閉じ完全に姿を消した。

「そちらもたいしたものだ……我が鎧を二度も切りつけられるだけでなく、火傷と凍傷を負わせるとはな」

ダイはそのセリフを聞いて思わずラーハルトの体を見るとヒャド系の魔法剣とメラ系の魔法剣で切られ傷痕が目立つ。見ているだけで痛々しいものだ。その視線に気がついたラーハルトが口を開いた。

「ダイ様、心配には及びません。それよりも先に進んで下さい。私は残りの者の救援に参ります」

「わかった。気をつけてね」

ダイがその場から離れ、先に進む。

「(氷と炎、この二つを上手く使えば、俺も強くなれるかもしれない。いや強くなってみせる……!)」

 

 

そしてギュメイが倒れ数分後、ポップは混乱したヒュンケルに追い詰められ服はボロボロ。それでもほぼ無傷で済んでいるあたりポップも成長していた。しかしそれにも限度があった。

「うわぁァァっ!?」

ポップが尻餅をついたのを好機と見たゲルニックがポップに目掛けて巨大な火の玉を放った。

「おくたばりなさ……何っ!?」

だがポップに目掛けて突き進んだ火の玉が真っ二つに切り裂かれた。

「ふん、全く情けない奴らだ」

「お、お前は……あの時の!? そうだ、ラーハルトだ!」

「久しぶりだな。それだけ元気ならこいつの必要はないと思うが、一応食っておけ」

ポップに薬草を与える。ダイと態度が大きく異なるものの、対応は同等以上だった。

「うおぉぉぉっ!」

そしてヒュンケルがラーハルトを襲うがそれをいともあっさりといなした。

「目を覚ませ。ヒュンケル」

「う……ラーハルト?」

ヒュンケルが仰向けの状態からラーハルトに視線を向ける。そして思い出す。ゲルニックと戦っている最中でメダパニにかかりポップを攻撃してしまったことを。

「気を付けろラーハルト。あいつはメダパニを使ってくる」

「お前の状態を見ればわかった。要はあいつの呪文を食らわなければいいだけのことだ」

「出来ますかね? 貴方如きに」

「その如きを試してみるか?」

そしてラーハルトが動く。ゲルニックに一瞬で迫り、バッサリと切り捨てた。

「ほっほっほっ……どうやら私もここまでのようですねぇ。ですが私を倒したが故にあのお方を目覚めさせてくれた」

「なんだと?」

「他二人の将軍は知らない方が都合が良いので伝えられていませんでしたが、私達三将軍が倒されるとガナザダイ様が復活するようになっています。ガナン帝国に栄光あれ……!」

半透明になっていたゲルニックの姿が消え、ラーハルトが土を蹴る。

「クソっ、ダイ様が危ない!」

ラーハルトがダイの向かった先へといき、ヒュンケルやポップもそれに続いた。

 

~~

 

「しかし良いのだなミストバーン? その勇者とやらを倒したらバーンを殺しても」

『……ガナサダイ、お前に許されるのはバーン様と一対一で戦う権利だけだ』

「どちらでも同じだ。どちらか殺されるまで貴様達は手出し無用。真にこの世界を支配する王を決める戦いにそのような邪魔があっては不粋だ」

『……』

「バーンは余を余興として復活させたつもりなのだろうが、それが間違いであったことを身体で教えてやる。ミストバーン、お前の間違いはバーンを止めなかったことにある、と後悔するが良い」

『バーン様のお言葉は全てに優先する。バーン様の命令に従って後悔することなど何一つない』

「ならば最初で最後にバーンの命令を従って後悔するその瞬間を見せてやろう」

ガナサダイがダイのいる場所に移動し、ミストバーンだけがそこに残った。

『バーン様の命令に従って後悔することなどない……絶対にだ!』

怒りを交えたミストバーンの叫びは誰にも聞かれることはなかった。




感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。また高評価やお気に入り登録、感想を送ったりすると作者のモチベーションが上がります。


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勇者一行、暗黒皇帝との戦い

ようやく書き終わりました。またしても本作主人公の出番ありません。原作主人公の出番はありまくりますが。


「さて、余の部下である三将軍達をよくぞ倒した……とでも言っておこうか勇者ダイ」

「誰だ!?」

「余の名はガナサダイ。ガナン帝国の皇帝だった男だ」

「そのガナサダイが何の用だ!?」

「余の望みはただ一つ。バーンの首よ」

「なっ……だったら何故俺の邪魔をするんだ!? 俺も目的は大魔王バーンだ!」

「貴様の首をバーンにくれることでバーンと一騎討ちする契約をしているのでな。それに貴様はどのみち処刑しなければならない。余の帝国を作るには邪魔だ」

「そんな契約バーンが守るものか!」

「メラゾーマ!」

ダイの言うことなどガン無視してガナサダイがメラゾーマを放つ。

「クソっ、やるしかないのか」

ダイがメラゾーマを避け、ガナサダイから距離を取り剣を抜いた。

「そう言うことだ。余は貴様を殺し、そしてバーンを倒し余の帝国を再興させる。貴様は余を倒し、バーンを倒して世界に平和をもたらす。目的を達成するにはどちらか死ななければならぬ」

ガナサダイが杖を振ると灼熱の炎がダイに目掛け飛んで行った。

「海波斬!」

その炎を切り、ダイが一気に詰め寄る。ガナサダイが魔法使いと同じタイプ、つまり近接戦が苦手かつ体力が少ないと判断したからである。その判断は正しく、ガナサダイの不意を突かれた顔がダイの視界に映った。

「やるではないか」

「うっ!?」

しかし右から衝撃が走り、ダイが左へと転げ回る。

「つ、強い……! ギュメイよりも遥かに」

「その口振りだとギュメイに苦戦したようだな。だがギュメイ達三将軍が束になっても余に勝てぬよ」

「あんなに強い将軍達が束になっても敵わないだって……!」

「それはバーンとて同じ。あやつの前では三将軍はおろか、この形態の余を倒すことなど造作もない」

「この形態?」

「一部の魔族は魔力が多過ぎて力を出すと姿を変える者がいる。余もその一人。その姿を見せてくれよう」

老人のガナサダイの姿がみるみると骨の竜のような姿に変化していく。

 

「(な、なんだこの力は……!? あながちバーンを倒すというのもハッタリじゃない!)」

そして形態変化が終わるとダイに待っていたのは絶望だった。威圧感に関してはバランすらも凌ぎ空気が淀んですら見えた。

「さあ、余の本気の力を味わうといい」

「(いや、俺は二度と負ける訳にはいかないんだ!)」

心が折れかけたダイはジゼルとの対戦を思い出し、不屈の精神で持ちこたえた。

「ライデインストラッシュ!」

剣を逆手に持ったアバンの使途の奥義、アバンストラッシュにライデインを付加したライデインストラッシュ。無論ダイとてこんなもので倒せるとは思っていない。しかし牽制の役くらいには立つ。

 

「ますます面白い。時代が時代ならば貴様をスカウトしていたほどだ」

そんなことをほざきながらガナサダイがいつの間にか手にしていた盾で防ぐ。盾には何一つ傷がなかった。

「(う、上手い……! 俺のライデインストラッシュを暗黒闘気で防いだ)」

ダイが心の中でガナサダイを評価する。ガナザダイの盾に一瞬だけ暗黒闘気が見え、それがガナザダイを発したものだと気付き、盾を使って防御に適した形に変えたのだ。

「ふんっ!」

もう片方の手に持っている槍を振り回し、ダイを攻撃する。しかし攻撃力こそ高いがラーハルトの槍よりも遅かった為に避けることが出来る。

「ドルマ」

しかしそれも淡い期待。避けた先にガナザダイの放った弾幕状の闇呪文ドルマが待ち伏せていた。

 

「うおぉぉっ!」

ダイがそれを竜闘気で防御するがガナサダイの放つ弾幕がさらにダイを襲う。

「先程言ったことは訂正しよう。バーンとの一騎討ちがなければスカウトしていたかもしれぬ」

「そうかよ!」

一気に竜闘気を解放させ、ダイが弾幕を蹴散らす。そしてその隙をついて放射型のアバンストラッシュを放った。

「アバンストラッシュアロー!」

先程のライデインストラッシュに比べ、威力こそ弱いが素早く、ドルマ程度であれば切り捨てられる。

「愚か者め、余の盾を忘れたか?」

それを防ぐ為に盾を突き出し、ガナサダイが防御に移った。アバンストラッシュアローはライデインストラッシュよりも威力が弱く、ガナサダイに攻撃が届くどころか盾に傷すら負わない。

「百も承知だ。アバンストラッシュブレイク!」

ダイはすかさずその盾を目掛けて闘気を込めた剣を振るう。そして先程のアローとブレイクが盾の一点に交差する。

「何っ!?」

暗黒闘気を纏った盾に亀裂が入るのを見て驚愕の声を上げる。時間と共に亀裂が広がっていき、ついに盾を破壊した。

 

「おのれぃ……」

「ガナサダイ、俺はお前の弱点を見切ったぞ。その馬鹿デカい図体のせいで避けることが出来ない。だから防御することに徹底して攻撃を打ち消そうとしていた。しかしその防御の要だった盾はもうない。もはやお前に勝ち目はない」

「勝ち目がないだと? 笑止!」

「うわっ!」

不敵な笑みを浮かべ槍を振り回すガナサダイ。その風圧でダイが吹き飛ばされ、激突する。しかし激突した先にいたのはラーハルトだった。

「ダイ様!」

「ネズミが一匹増えたか。だがネズミ一匹増えたところで──」

「ダイ、無事!?」

マァムが入り、その後にポップ、ヒュンケルと続く。それを見たガナサダイが口を開いた。

「ネズミが何匹増えても同じこと。この皇帝に敵わぬものなどない」

「ダイ様、ところであの化け物は?」

「ガナン帝国のガナサダイ。さっきの将軍達の主人だ」

「ほう……アレが」

ラーハルトはガナサダイを見て感心した声を出す。それもそのはず、空気が淀んで見えるほど魔力を放出しているガナサダイは強者であると評価しているからだ。

「貴様ら、覚悟はいいな?」

目が血走る程、ガナサダイがキレそれを始める。

「げえっ!」

「なんだこの攻撃は!?」

「動きが読めん!」

その動きはダンスの動きのそれでありながらラーハルト達を確実に攻撃する。しかも急所に何度も当たる為にラーハルトやヒュンケルの鎧を剥がしていった。

「これぞ槍の舞。やられた諸君痛かったかね?」

「くそっ……!」

痛恨の一撃を喰らったラーハルトが蹲りながら手放した槍に手を伸ばす。

「ぐわっ!」

しかしガナサダイはそれを許さず、冷酷に尻尾でラーハルトの足を床に縫い付けた。

「まず一匹よ」

「し、信じられねえ。あのラーハルトが手も足も出ないなんて……!」

「魔法使いの小僧、皇帝たる余が魔王でもない魔族一人に手こずるとでも?」

そしてガナサダイが槍をポップに向け、突き刺す。

 

「ヒャドストラッシュアロー!」

だがそれに待ったをかけたのはダイ。アバンストラッシュにマヒャドを付加させた必殺技がガナサダイを襲う。

「何っ!?」

「メラストラッシュブレイク!」

メラゾーマを付加させたアバンストラッシュのブレイクがダイと剣と共にガナサダイを切りつける。そして先程放たれたヒャドストラッシュアローと重ね合わせ、一つの奥義へと昇華し、ガナサダイの身体を斜めに真っ二つにした。

「オーロラクロスブレイク!」

その奥義の名前はオーロラクロスブレイク。魔法剣版メドローアがここに誕生した。

 

「お、のれ、こんな小僧に我が野望を阻止されようと、はな」

「まだ生きているのか……しぶとい奴だぜ」

「だが余はガナン帝国の再興を今は出来ずとも必ずしてみせる。それまで平和な世に浸っているが良い……ごふっ!」

そしてガナサダイの死体が砂状になりラーハルトを縫い付けていた尻尾もラーハルトを解放した。

「しかしオーロラクロスブレイクだっけ? あの技。魔法剣版のメドローアじゃないか」

「うん。本当はメドローアの性質を持った魔法剣にしたかったんだけど、俺ポップみたいに器用じゃないからマヒャドとメラゾーマの二つの魔法剣にして分けたんだ。それならほんの一瞬合わせるだけで済むしね」

「それだけではない。あの形にしたことで竜闘気が魔力を包み込んで敵に切りつける時にメドローアの効果を生み出せるようになっている。魔法を無効化する竜闘気ならではの技だ。アバンストラッシュの……いや比較にならん程の威力だ」

「そんなに違うの?」

ラーハルトの治療をしていたマァムが口を挟み、ヒュンケルに尋ねる。

「だがそれはタイミングが合えばの話だ。マヒャドとメラゾーマの魔法剣が重なるという現象上、タイミングが少しでもずれるとお互いに打ち消しあってしまいアバンストラッシュどころか海波斬にも劣る。ハイリスクハイリターンの大技だ」

「うん。そうなんだよね。何度かオーロラブレイクを練習したけど失敗ばかりだったよ。今回出来たのだって偶然だよ。オーロラクロスブレイクの無属性版のアバンストラッシュクロスの方がタイミングが合いやすいからオーロラクロスブレイクはバーンまで取っておきたかったけど、それだと勝てそうになかったから、本当にやむを得ずって感じだね」

「だとすると、バーンの時も一か八かの大博打になるのか。ダイ、ちょっと耳を貸してくれ」

ポップがダイに耳打ちすると、ダイはそれに頷き、笑みを浮かべた。




ABCD「モンスターABCDの後書きコーナー!」

A「いやー、驚いたな……」
B「何がだ?」
C「そりゃ俺たちだけじゃなくジゼル様の出番がほとんどなしで終わったからじゃないか?」
D「この下り、前にもやったような気がするのは儂の気のせいか?」

A「やったが、そういうのは気にしないほうがいいぜ、出番は間近なんだからな」
B「次はザボエラとの戦いか? だとすると、ザムザか? あいつならありそうだ」
C「ザボエラとザムザの戦いというと、この場では言えないあの作品を思い出す……」
D「あの作品は、終始ザムザのターンだったがこの作品はどうなるのだろうな?」

A「さて、時間が迫ってきたので恒例のアレを!」
B「この小説の感想は感想へ、誤字報告は誤字へよろしくお願いします」
C「それから作者にプライベートに関わらない程度で個人的な質問を聞きたいあるいは要望したければ作者のページのメッセージボックスに頼むぜぇぇぃ!」
D「それとお気に入り登録もよろしく頼む……」
ABCD「次回もお楽しみに!!」


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妖魔司教の最高傑作

お待たせしました。ようやくジゼルの出番です。


 その頃のジゼル達はというと談笑していた。

 

「もう痛いじゃないアルちゃん」

 

「自業自得です」

 

 口を尖らせ文句を言うジゼルに容赦なくアルちゃんことアルビナスがバッサリと切り捨てた。

 

「だからってハドラー様とくっついただけでサウザンド・ニードルをやらなくてもいいじゃない」

 

「お義母様が自重しないからでしょう」

 

「ねえハドラー様、今の聞いた!? 私のことお義母様だって!」

 

「ジゼル、それは何度も聞いたぞ。だから離れろ」

 

「お義母様!」

 

 アルビナスがハドラーからジゼルを引きはなそうと必死の形相で引っ張る。しかしジゼルはハドラーから離れず、ハドラーは苦笑いするだけだった。

 

 

 

 

 

「……アルビナス変わったな」

 

「まあ確かにな」

 

「うむ。変わった」

 

「ブローム」

 

 ヒムの意見に親衛騎団三人が肯定し、頷く。しかしフレイザードが解せないのか首を傾けた。

 

「そうなのか? お袋と仲直く喧嘩してばっかりじゃねえか」

 

「仲良く喧嘩してばかりとは頓珍漢な言葉だな」

 

 フレイザードの発言に突っ込みを入れるザムザ。彼はザボエラを越える為にジゼル達と同行していた。

 

「前だったらハドラー様云々言っていたはずだぜ。それが今ではジゼル様に絡んでいる。一体何があったんだ? マックス何か知っているのか?」

 

「何故我輩に聞く?」

 

「そりゃマックスは対象者の過去を知ることが出来るんだろ。アルビナスの過去を調べれば一発でわかるんじゃないのか?」

 

「一応出来なくないがしたくない。そう言うことは本人に聞くべきだ」

 

「とかなんとか言って、本当は知っているんじゃないのか?」

 

「お袋に似てきたな……ヒム」

 

「どうあがいても子は親に似るものだ。兄者」

 

 フレイザード達がそんな会話を繰り広げていると地響きが起こり地面を見ると地割れを起こし、空を見ると一気に暗くなる。

 

 

 

「ありゃ……魔王軍か?」

 

「今の状況を説明するなら、天地両方から魔王軍の軍隊が現れた。というところか?」

 

「ということはミストバーンや親父もいるのか?」

 

 ザムザがかつての同僚達がいるかどうか確かめていた。

 

「ミストバーンは魔軍司令になっている為なのかいない。しかし魔軍司令補佐のザボエラならいるぞ」

 

 

 

「あのザボエラが……?」

 

「らしくないな」

 

 クロコダインとフレイザードが首を傾げる。フレイザードとザボエラはよく言えば軍人主義、悪く言えば勝つためなら卑劣な手段も問わない。しかしフレイザードは他人の手を借りないのに対して、ザボエラは前線に出ることも事態も少なく、前線に出る時は味方と共に行動してかつ勝利を確信した時のみである。

 

 その事を特に知っていたクロコダインとフレイザードが首を傾げるのは当たり前のことだった。

 

「親父のことだ。バランを目の前にして逃げないということは……」

 

「罠だな」

 

「ヒヒヒ……裏切ったとはいえ流石じゃの。伊達に儂と長い付き合いはしておらぬわい」

 

 ザボエラがバランとザムザを誉め、笑みを浮かべる。

 

「しかしそう推測したところで何が変わるのじゃ? 儂が態々こんな前線まで来た以上、儂が万全に備えておるということをわからぬお主らではない。つまりこの場にいる全員一網打尽にしてやる確信があるということじゃよーっ!」

 

 ザボエラの腕輪が光輝き、ザボエラが連れた魔王軍の軍隊が倒れるとザボエラを中心に死体が集まり次第に大きく変化していく。

 

「せっかくじゃザムザ、お主に教えてやろう。お主は竜魔人の身体を研究していたから竜魔人こそが最強の身体だと思っているじゃろう。しかしそれは間違いじゃ。どんな攻撃も受け付けず圧倒的な力で捩じ伏せられるには竜魔人では足りぬぅっ!」

 

 

 

「竜魔人を超える答えがそれか?」

 

「その通りじゃ。見て死ぬが良い。儂やバーン様を裏切った愚息達にはもったいないくらいの処罰じゃ!」

 

 そしてザボエラの形態変化が終わる。そこにあったのは巨大な大猿の姿だった。

 

「これは……なんだ?」

 

「ヒヒュドラードだ。かつて闘神と名乗る前のレオソードが唯一臆した魔物だ」

 

 マックスが解説するとベンが「出番取られた!?」と嘆いているが全員無視した。

 

「流石、とでもいっておこうかのマックス。その通り儂はヒヒュドラードを参考にして、ネオ・ヒヒュドラードを造り上げたのじゃよ!」

 

「どこからどうみてもヒヒュドラードだろうが!」

 

 ベンが二つの意味で突っ込み、爆裂斬りをすると逆に自らにその衝撃が返ってくる。

 

「何故俺の攻撃が弾き返された……?」

 

「ヒヒヒ。甘いのう……この身体はヒヒュドラードと同様にマホカンタバリアを常に貼れるだけじゃなく、アタックカンタも常に貼れるんじゃよ!」

 

「何っ!? バカな……ハッタリだ!」

 

「ガラクタが儂の身体を見抜けると思うたか? アホめ」

 

「いや親父、単純にそんなベラベラと喋るから皆信じられないんだよ」

 

 ザムザがザボエラのキャラ崩壊にツッコミを入れて指摘すると、全員が頷いた。

 

「どちらにしても、だ。奴にアタックカンタとマホカンタがあるのには違いない。となれば物理でも呪文でもない攻撃しかあるまい」

 

「というと、ヒュンケルのようなグランドクルスや俺の獣王会心撃、バランのドルオーラのようなものか?」

 

「いやジゼル様のジゴスパークも可能だ。とにかく直接攻撃しないでかつ、魔法でもない攻撃が良い」

 

 ベンがそう答え、攻撃を促す。

 

 

 

 

 

 

 

「つまりこういう攻撃も通用するってことか!」

 

 促す前に真っ先に動いたフレイザードが炎の鎖をヒヒュドラードに巻き付け、笑みを浮かべる。

 

「流石フレイザード、炎のような残虐さを兼ね備えた上に冷静じゃ。ただの戦闘狂とは訳が違うわい……じゃが!」

 

 炎の鎖を無理やりほどき、フレイザードに巨大な手が襲いかかる。

 

「今のこの儂には通用せんわ!」

 

 フレイザードがそれをステップで避け、ザボエラに向けて指を差した。

 

「けっ、やっぱりてめえは素人だ。動きもバラバラ、近接戦が苦手なのにそんな近接戦で戦うなんて戦わざるを得ないなんてバカじゃねえのか?」

 

「バカ? この偉大なる儂にバカとな? 儂が六軍団長任命された理由が何だがわからぬようじゃな」

 

「てめえの知識じゃないのか?」

 

「いいえ、フレちゃん。ザボエラは魔力がハドラー様を凌ぐ程に豊富だったからよ」

 

「そう。しかしそれは半分の理由、もう一つの理由がこれじゃぁぁぁっ!」

 

 ザボエラが両腕を頭の上に上げると闇の究極呪文が出来上がる。

 

「ドルマドン!」

 

 闇の究極呪文、ドルマドンがザボエラのハドラー達を襲いかかるがシグマがそれを阻んで、魔法を反射させる。

 

「無駄じゃ無駄じゃ!」

 

 ザボエラがマホプラウスでドルマドンを吸収し、更に威力を高める。

 

 

 

 

 

「超魔生物の弱点、呪文が使えなくなる上に過剰回復呪文に極端に弱いというものじゃが、儂はそれを克服した。そこの元魔軍司令とは違ったやり方でな」

 

「っ! そうかそういうことか!」

 

「ザムザ、一体どういうことだ?」

 

「結論からいうと親父は死体を纏って操っているだけなんだ」

 

「……はあ?」

 

「つまり、あのダニは自分が超魔生物とならずに死体を集めて超魔生物ならぬ超魔ゾンビを作り上げそれを操作している。こういうことですか?」

 

「認識としては間違ってない。あくまでもアレは鎧みたいなもので呪文を使うには支障がないんだ。身体を別のものに書き換えた俺とは違ってな」

 

「しかも回復も出来るわい。この通りな」

 

 先ほど負ったであろうヒヒュドラードの火傷が治り始め、笑みを浮かべるザボエラ。

 

 

 

「そうじゃついでに教えておこう」

 

「何をだ?」

 

「ワシはあくまで囮でしかない」

 

 

 

「嘘だ!」

「はったりだ!」

「ありえない!」

「見栄張るな!」

「この腐れ爺が!」

「見え透いたブラフを!」

「それは現実じゃなく妄想の話だろ?」

「──────」

「────」

「──

「」

 

 ジゼル達がまさかザボエラからそのような発言を聞くとは思いもよらず、声を荒げた。

 

「お主達の驚く声がここまでどうして心地好いじゃろうな? キヒヒッ!」

 

 ジゼル達の非難の声にザボエラは余裕の笑み、いやどや顔でそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

「確かに儂の最悪の役目は囮じゃが、お主達を始末すれば最高の手柄となる。いくら儂が慎重な軍師とはいえネオ・ヒヒュドラードを使える以上これを逃すほど愚かではないわい」

 

「まさか、ザボエラがフレイザードのような大胆な手段を使うとは……!」

 

「そうじゃ、理解しておらぬようじゃからもう一回言っておこう。儂はあくまでも囮でしかない。二回聞いてこの言葉の意味を理解出来ぬようであれば貴様らの頭は鶏以下じゃな」

 

「囮……まさか!? 他方面に魔物が!?」

 

「半分正解じゃ。正解は各国に魔王軍の新・六軍団長達が攻めこんでおる、でしたー! 残念賞に貴様らに死を与えてくれようぞ!」

 

 ザボエラの操るヒヒュドラードの腕が伸び、アルビナスとブロックを掴む。

 

 

 

「私達を握り潰そうとしたところで無駄──っ!?」

 

 ザボエラの手に握られたアルビナスが動揺しただけでなくブロックとアルビナスの体に軋む音が響く。

 

「ネオ・ヒヒュドラードの血液はオリハルコンをも溶かし腐食させる。そして腐食したところを強引に握り潰した……ただそれだけのことじゃよ」

 

 その解説が終わった途端、暴風が吹き荒れた。

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんじゃぁこの風は!?」

 

「ザボエラぁぁぁっ!!」

 

 そこにはぶちギレたジゼルが仁王立ちしており、顔は般若のように憤怒していた。

 

「ジゼル……!」

 

「今すぐ私達の娘と息子を離せ」

 

「お主わかっておるのか? このまま儂がこやつらを握り潰せばこやつらの人生さようなら──」

 

 ザボエラが語り尽くすまえにヒヒュドラードの腕が切断され、アルビナスとブロックが解放された。

 

「ななな、なんじゃとぉっ!?」

 

「かまいたち。本来であればもっと弱いけど私が冷気と暖気を利用して風を強くし、その腕をスッパリ切断出来るように改良したわ」

 

「おのれぃっ! だがその程度で儂を倒せる道理はないわ!」

 

 ザボエラがヒヒュドラードの腕を生やしてジゼルに襲いかかったが、それを淡々とジゼルは見つめ口を開いた。

 

「さようなら、ザボエラ。最期の貴方はフレちゃんみたいだったから割りと好感持てたわ。だけど私の息子達に手を出した以上、その罪は重いわよ」

 

 皮肉げにそう呟き、ジゼルがブレス版メドローアとも言えるオーロラブレスをヒヒュドラードに喰らわせ消滅させた。

 

 

 

 

 

 

 

 だがこれで終わりではなかった。

 

「ジゼルめ、まさかあのような攻撃を持っているとは思わなんだ……が、神は微笑んだ」

 

 ヒヒュドラードの消滅寸前に、ザボエラはヒヒュドラードから緊急脱出し、下半身こそ消滅し重傷こそ負ったがとうにか生き延びていた。

 

「ヒヒヒ……儂がこうして生きているとは知らずにあのように終わった空気を醸し出しおって……そのお陰で儂は生き延びられるのじゃからあの者共の呑気さに感謝せねばな」

 

 下半身が消滅している為にザボエラが腕を使って這いつくばり移動する。そして大きな壁にぶつかった。

 

 

 

「よう、親父」

 

「ザムザ……」

 

 その壁の正体、それは自らの倅ザムザだった。

 

「ネオ・ヒヒュドラード。確かにあれは素晴らしい出来だった上に男のロマン、脱出装置を着けたのもポイントが高い」

 

「ちなみに自爆装置もあったわい」

 

「流石親父だな」

 

「のうザムザ、いや我が倅よ。儂は無念で堪らん。お主の最高傑作を見る間もなくこの世を去るのじゃからな」

 

「親父……」

 

「ザムザ、最期にお主の超魔生物となった姿を見せてくれぬか?」

 

「良いだろう。親父よ見ておけ、これが俺の最高傑作だ」

 

 そしてザムザが変身の構えを取ると、ザボエラが最後の力を振り絞って動いた。

 

「喰らえっ!」

 

 毒を含めたザボエラの爪が変身途中のザムザに襲いかかり、ザムザが硬直した。

 

「ザムザよ、お主は甘すぎる。故に命を落とした……まあ殺したのは儂じゃが。そしてお主の体を有効活用してやるわい」

 

 

 

 ザボエラの考えていた計画は、息子ザムザに会った瞬間から計画されており、ザムザの超魔生物となった体を解体して新たに超魔ゾンビを作成してこの場から逃走しようと目論見、ザムザに襲いかかった。結果はザボエラの想像以上に上手くいき、今にもザムザの体を解体せんと言わんばかりに手を動かす。

 

 

 

「さらばザムザよ。最期に役立ったお主のことは三日間くらいは忘れぬわい」

 

 そしてザボエラの魔の手が伸びた瞬間、ザボエラの背後から衝撃が襲いかかった。

 

「やはり貴様は煮ても焼いても食えぬ奴か」

 

「く、クロコダイン!?」

 

「一部始終見ていたぞ。己の息子ザムザを騙し、闇討ちまでするその腐った根性……どこまでも見下げた奴だ!」

 

「待ってくれクロコダイン!」

 

「良いだろう。ただし俺はそいつを止めることは出来んぞ」

 

 クロコダインがそう冷淡に告げると先ほどまで硬直していたザムザが復活し今にも虫の息となったザボエラにトドメを刺そうとしていた。

 

「なっ──」

 

 ザボエラが何もいう暇もなく、ザムザはその拳を振り下ろし、ザボエラを殺した。

 

 

 

「親父よ、俺はあんたを信頼している。良い意味でも悪い意味でもな。その結果あんたは俺の期待を裏切らなかった。だからどんな行動を仕掛けるかわかったんだよ」

 

 ザムザの声は震え、いつの間にかその目には涙が流れていた。

 

「ザムザ……」

 

「だけど親父、俺は期待を裏切って欲しかった。安らかに眠って欲しかった。ただそれだけなんだ」

 

 ザムザの溢れる涙にクロコダインはどうすることも出来なかった。




没ネタ
「けっ、やっぱりてめえは素人だ。動きもバラバラ、近接戦が苦手なのにそんな近接戦で戦うなんてバカだ」
「どのくらいバカなの?」
空気を読まず、ジゼルが口を挟む。
「そりゃライトマ──ライトマシンガンのこと──で敵陣に突っ込む──敵が潜り込んでいるであろう場所に突撃すること。通常はショットガンなど近距離武器でやる──のと同じだ」
FPSの用語やらなんやら多いのでカット。


後書きらしい後書き
最後の方はファイアーヘッドさんがSS投稿掲示板にて掲載されていたドラゴンクエストUSBみたいな感じになってしまいました。



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新不死騎団長、はりきる

前回投稿してから2年以上経ってないからセーフ、セーフ!(バリアウトです)

ちなみに最近ドラクエやっていないんですが、皆さんのオススメは何でしょうか?メッセージボックス等で教えて頂けると幸いです。
作者はナンバーズの中では4,5,6,8,9クリア済みで他購入したけどクリアしていないのは1,2,3,7,10です。11のみナンバーズで購入していません。


「ザムザにクロコダイン、どこに行っていたの?」

 

「何、後始末をな」

 

 ザムザの腫れた目を見てジゼルは全てを察した。

 

「そう……その様子だとケジメはしっかりつけたみたいね」

 

「ああ。それでこれからどうするんだ?」

 

 ザムザがジゼルの問いに頷くと、ジゼルが目を閉じ、淡々と告げる。

 

「新六軍団長を潰すわ」

 

 それは魔王軍に対する宣戦布告だった。

 

 

 

「新六軍団長を潰すとは大きく出たな」

 

「当然、何も考えていない訳じゃないわよ。あのクソ爺が魔軍司令補佐だったとはいえ、今の魔軍司令はバーンの腹心ミストバーン。ハドラー様よりも魔界に精通しているだけでなくバーンの為ならば何を仕出かすかわからない、それがミストバーン自身の恐ろしさよ」

 

「そのミストバーンに従う新六軍団長も然りという訳か」

 

 

 

「ええ、バーンは使えるものは全て使い、新六軍団長が油断ならない相手だというのはわかっているわね? 特に六軍団長だったフレちゃんやクロコダイン、それにバランなんかはその辺を理解しているでしょ?」

 

「うむ。十分に承知している」

 

「マックス、例の物を」

 

「はっ!」

 

 ハドラーの部下からジゼルの部下に成り下がったマックスが地図を取り出す。

 

「各軍団の動きを観察したところ、それぞれの主要国を一気に攻め立てるとのことです」

 

 マックスが地図を取り出し、各国に丸をつける。

 

 

 

「ふむ……それでマックス、新六軍団長と言うからにはそれなりの相手なのだろう」

 

「一人だけ除き、それなりの実力者であれば勝てます」

 

「その一人とは?」

 

 マックスが地図に指を差し口を開いた。

 

「ここに向かった不死騎団のオルゴ・デミーラ。かつて世界を征服寸前まで成功したこともある魔王です。ザボエラが死んだ今、魔軍司令に最も近い軍団長と言え、このオルゴ・デミーラを倒すことにより超竜軍団と魔影軍団を除いた魔物のほとんどが止まります」

 

「オルゴ・デミーラ……いつぞや悪さしている魔族から聞いたことあるわね。あの時のアレはタイムスリップだったのかしら?」

 

 ジゼルがそう呟くが全員無視した。

 

「しかし奴がそれを成し遂げたのは豊富な人材あってのことだろう? 奴自身はどうなのだ?」

 

「神をも封印した実力者であり自身も自らが頂点に立つと豪語していたのに関わらず、バーンの下につき軍団長のポストで納得しているのかわからないくらいです」

 

「確かに実績や性格を考慮しても軍団長とは言わずバーンと同格の扱いの魔軍司令になってもおかしくないな」

 

「ならその対処は私、ハドラー様、バラン、ベンの四人でどうかしら?」

 

「ええっ、私もですか!?」

 

「そりゃそうでしょ。相手は神をも封印した魔王よ。下手したらバーンよりも格上かもしれない。そんな相手に勝つ、最悪足止めするにはこの面子じゃないと無理よ」

 

「マックス、他の面子はどうなんだ? 俺がいないと困るということはないのか?」

 

「ないな。それ以外は超竜軍団の軍団長がデミーラに次いで警戒すべき相手だが、それは我輩達が相手になればいいだけだし、他もデスカールと同等以下の実力しか持っていない」

 

「さらっとワシのことを弱いの基準にしおった!?」

 

「やはり魔王軍は人材が不足しているということなのか……」

 

「仕方ないと思うよ? 旧軍団長のうち半分はハドラー様がスカウトしてきたんだからね。そ・の・上! 私という戦闘面でも工作面でも優秀な親衛隊の隊長を連れてきたのもポイントよ!」

 

「フフ……確かに大いに助けられたな」

 

 ハドラーが苦笑し、黒の核晶を取り出してくれたことを思い出す。もしジゼルがいなければハドラーは裏切りに気づくことなく死んでいただろうし、何よりもダイとの決着をつけることがないまま終わっていた。

 

 

 

「さあそういう訳だからベン、行くわよ」

 

「仕方ない……了解です」

 

 ベンが諦め、ジゼルについていき、ハドラーやバランもそれに続く。

 

 

 

「さて、我々親衛騎団もいくとしよう」

 

「ちょっと待てマックス、ところで俺達の相手は一体どんな相手なんだ?」

 

「闇竜バルボロス、かつて空の英雄と呼ばれたグレイナルのライバルであり対の存在でもある(ドラゴン)だ」

 

 

 

 

 

 その頃、新六軍団長達はオルゴ・デミーラを長とし、その指示に従っていた。

 

「バルボロス、あんたのところの竜を使ってデク人形達を不定期に襲撃してバラバラにさせなさい」

 

「ははっ」

 

「理由は簡単よ。勇者ダイは今バーンパレスにいて地上には予備の戦闘員しかいないから不定期に襲撃することによって予備戦闘員が不足するからよ」

 

「なるほど兵士達の疲弊を狙っていると」

 

「そういうことね。他の軍団とは違って超竜軍団を動かすのを不定期にした理由としては竜のモチベーションといつ強力な竜が襲撃するかわからない恐怖を味わさせることが出来るから……」

 

「了承した……ではオルゴ・デミーラ殿、その指示に従おう」

 

「宜しく~」

 

 オルゴ・デミーラの指示により、各国で一斉に大規模な魔物による侵略が始まる。

 

 魔物以外の生物を石にする雨を降らす魔物、人と魔物の姿を取り替え人間不信させる魔物、人間の力を奪いそれを自らの力に変える魔物など搦め手の魔物は全てオルゴ・デミーラの指揮下に入りそれ以外の魔物は全て他の軍団長に委ねられた。

 

 

 

「流石、かつて世界を後一歩まで支配した魔王よな。ミスト、そうは思わぬか?」

 

『はい。しかし恐れながらバーン様、あの者を野放しにしておけばバーン様の障害になります』

 

「奴は余には逆らえん。何故なら奴が生きていられるのは余の魔力あってのもの。余が死ねば余の魔力なしに生きられず、そのまま死ぬと言う訳だ。それにミスト、オルゴ・デミーラ程度ならお前でも討伐可能だ。その時が来たら命ずる。それまでダイ達の相手をするが良い」

 

『了承しました』

 

 ミストバーンがその場から消え、バーンは賽子を三つ取り出す。そのうち一つは普通の白い賽子、二つ目は青黒い賽子、三つ目は深緑の賽子だった。この賽子は人間、魔物、竜を象徴したものである。それらを放り投げ出た目を確認するとバーンが上機嫌に笑った。

 

「どうやらこの勝負面白いことになりそうだ」

 

 出た目はピンゾロ──つまり全て1であり誰がこの勢力争いに勝つかわからないというものだった。




後書きらしい後書き
ようやく書けたよ。と言う訳で今回はオルゴ・デミーラとバルボロスを登場させました。本来であればレオソードだったりゲマだったりと色々な既存キャラを出したかったのですが物語の都合上カットしました。


それはそうと感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。また高評価やお気に入り登録、感想を送ったりすると作者のモチベーションが上がります


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親衛隊隊長ら、天魔王に挑む

PS4でXIS購入しましたのでXIネタ多めです!
尚、XISの小説を書こうとしているが主人公が決まらないのが悩み。

一応リストアップ
・アーウィンの弟スカイ(元ネタ、スターフォックスよりスカイクロー)
→過去編とか書かなきゃいけないのでボツ

・マルティナ成り代わりセルゲイ(男)
→いろんなキャラを性転換する嵌めになるボツ

・エマまたはマヤ同行
→ターニアの二の舞ボツ

・シャール
→内政モードなら可だがそれを書くだけの文才なしボツ

・神獣(notオリキャラ)
→ロウとかに拾われて旅をするなら有り?

・カミュ転生
→マヤ同行と被る可能性がある

・ローシェ時代編の5人目の仲間
→ローシェがバカだったり、ウラノスが守銭奴だったり、セニカの脳内お花畑だったり、ネルセンが常識人だったりする話。絶対書けないからボツ

……XIテーマ小説増えろ


「ハドラー様、ジゼル様、バラン。あれがオルゴ・デミーラではないでしょうか?」

 

 ベンかオルゴ・デミーラを発見し、報告するとハドラーが頷いた。

 

「そのようだな」

 

「ですね。ハドラー様、どうしますか?」

 

「ベン、イオグランデを放て」

 

「はっ? しかしあれは街一つ滅ぼすほどの威力の呪文ですが大丈夫ですか?」

 

「構わぬ。オルゴ・デミーラがクッションになる。それに街一つ滅ぼす程度の攻撃で死ぬようであれば魔王オルゴ・デミーラはカビの生えた伝説だったということだ」

 

「逆にベンが魔王なんて呼ばれるかもしれないわよ」

 

 ジゼルが煽てるとベンがバランに尋ねた。

 

「わかりました。バラン、お前も同じ意見か?」

 

「反対だ」

 

「それはどうして?」

 

 ジゼルが尋ねるとバランがそれに答える。

 

「呪文を弾き返すマホカンタの存在だ。大魔王ゾーマ等と言った大魔王級の魔物はマホカンタを展開出来る」

 

「確かに……」

 

「反射されたイオグランデを打ち消すには私のドルオーラ程の威力と範囲がなければならない。それが出来るのは私を除けばジゼルのみであり、それも時間がかかる」

 

「私のジゴスパークは範囲こそ広いけどその分威力はイオグランデにちょっと劣るけど……もしかして奥の手のアレのことを?」

 

「ああ。かつて伝説の最強兵器を滅ぼしたあの技しかあるまい。だが先程も言ったようにアレは時間がかかる。時間を短縮しようにもこの状況では出来ないし、リスクもある」

 

「なるほどね。でももうやるしかなさそうだけどね」

 

 オルゴ・デミーラがこちらに気付き、笑みを浮かべるとともに魔力を注ぎ両腕をジゼルに向けた。

 

「イオナズン!」

 

「くたばれ、イオグランデ!」

 

 ハドラーに命ぜられた時から既に溜めていたお陰でベンがすぐさま放つことが出来、オルゴ・デミーラのイオナズンを押し返す。

 

 

 

 だがそれもつかの間でありオルゴ・デミーラが更に魔力を込めるとベンが押し切られる。

 

「ぐぉぉぉっ!?」

 

「ベン、大丈夫!?」

 

「大丈夫ですよ。俺にイオ系の耐性がなければ死んでいました」

 

 ベンが笑い声を上げ、地上に降りるとともに三人も降りる。

 

「イオナズンで俺のイオグランデを押し切るとは流石、魔王オルゴ・デミーラということか。その名前は伊達ではないな」

 

 ベンが感心し、オルゴ・デミーラを称賛すると不満げに答えた。

 

「ふん……あの程度の攻撃で我の実力を図ったつもりか? 言っておくが全盛期の我は大魔王様をも凌ぐ。だが我を甘く見積もっていたせいか不完全に復活してしまった」

 

 バーンが自身の魔力でオルゴ・デミーラを甦らせたとはいえ、神をも凌駕するオルゴ・デミーラを再現出来ていなかった。かつて実力を発揮出来ずに倒されたオルゴ・デミーラからしてみれば不満しかない。

 

 

 

「不完全な復活となれば好都合! 畳み掛けるまでだ」

 

 バランが竜魔人となり、背中の真魔剛竜剣を抜き、雷を纏わせ斬りかかる。

 

「ギガブレイク!」

 

 バランのギガブレイクによりオルゴ・デミーラの胴体と頭が離ればなれになる。

 

 

 

「やった!」

 

「ふふふ、それで倒したつもりかしら? 本当にお馬鹿さんね」

 

 切り離したはずのオルゴ・デミーラの胴体から人型の魔族が現れ、女言葉でそう語る。

 

「くっ……おちょくりやがって!」

 

「貴方達が勝手に勘違いしたんでしょ? それにこの程度のマジックは大魔王様もやれるわ」

 

 魔族、オルゴ・デミーラがため息を吐きながら首を左右に振り呟く。

 

「まったく、大魔王様も理解出来ないわ。こんなデグ人形相手に私を蘇らせるなんてね」

 

 オルゴ・デミーラの口から光り輝く息が放たれ、ハドラー、ベンがダメージを負いバランはそれを竜闘気で防いだ。

 

「そこのカイゼル髭の貴方、やるじゃない。確か超竜軍団の軍団長をしていたバランだったわね?」

 

「今となってはその称号は無意味なものだ」

 

「まあデグ人形にしてはやると言ったところだからスカウトしたいとは思えないけどね」

 

「ほざけ!」

 

 バランが再びギガブレイクを放とうと剣を構え、オルゴ・デミーラに向け振りかぶる。

 

 それと同時にオルゴ・デミーラは口から剣を取り出し、暗黒闘気を纏わせてそれを防御する。

 

 

 

「うぉぉぉっ!」

 

「はぁぁぁっ!」

 

 バランとオルゴ・デミーラの鍔競り合いが地面を振動を与えて揺らす。それだけバランとオルゴ・デミーラの攻撃は凄まじいものであり、互いに均衡は保たれていた。

 

「かぁっ!」

 

 バランの額の紋章がオルゴ・デミーラを襲うとオルゴ・デミーラがそれを避けるとバランスが崩れ、バランがそのまま斬りかかる。

 

「かかったわね!」

 

 オルゴ・デミーラが口から輝く息を放ち、バランを奇襲するがバランはそれを防いだ。

 

「甘いっ!」

 

「やるじゃないの……魔族、竜、人間の三つの要素を掛け合わした神特製のデグ人形は伊達じゃないってことかしら?」

 

「竜の騎士すらもデグ人形扱いとはな……神の使徒である竜の騎士を舐めるな!」

 

「バカの一直線で避けるのも容易いわね」

 

 オルゴ・デミーラがそれを避けると更にバランの攻撃が激しくなる。そしていつしかオルゴ・デミーラに余裕が生まれ、敢えて大袈裟に避けようとすると鎖が襲いかかり拘束する。

 

「時間稼ぎご苦労だった、バラン、そしてベン!」

 

 鎖の先にいたハドラーが二人を褒め称え、笑みを浮かべる。

 

 本来であればハドラーはこのように集団で一人を攻撃するというのは好まない。しかしミストバーンがバーンを崇拝するようにハドラーにも優先順位が存在する。それはダイとの決着をつけるというものだ。

 

 

 

 ハドラーにとってダイは宿敵でありライバルでもあるアバンの弟子でもある。アバンを倒したのは事実だが決して勝利した訳ではない。見方を変えればアバンに勝ち逃げされたとも言えてしまう。そのアバンの後継者であるダイは因縁の相手とも言える存在でそれを打ち負かすことでリベンジを果たそうとしていた。

 

 その為ならば集団戦法だろうが妻であるジゼルだろうが使えるものは何でも使う。ましてや相手が卑劣な手段を使うのなら尚更だ。

 

 

 

「くっ、なによこれ!?」

 

 オルゴ・デミーラが自身を拘束する鎖を解こうとするが拘束された時の姿勢が力の出ない姿勢であり、バランとベンを仕留める為に力を出したこともあり力尽くでは解けない。

 

 それでも拘束から逃れる為にオルゴ・デミーラが一点だけを集中し破壊しようとするがそれは出来なかった。

 

「ぐぁぁぁっ!?」

 

「俺のメラは地獄の炎。永遠に消えることはない」

 

 鎖から伝わってきたハドラーのメラゾーマの炎がオルゴ・デミーラを焼いていたからだ。それにより身体が思うように動かずにいた。

 

「待たせたわね……覚悟はいい?」

 

「ま、待──」

 

「オーロラブレス!」

 

 そしてジゼルが口を開き、口から炎でも氷でもない第三の属性のブレスがオルゴ・デミーラを襲った。

 

 

 

 

 

「グハハ……危うく死ぬところであったわ!」

 

 オルゴ・デミーラが無傷の状態で元の形態に戻り、高笑いを上げる。

 

「ば、馬鹿な……オーロラブレスを受けて尚、生きていられるというのか?」

 

「いくら強力な攻撃と言えどもブレス攻撃であることには違いない。ブバーハを唱えればこんなものだ」

 

 オルゴ・デミーラが生きていられた理由、ブレス攻撃を減少させるブバーハ。オーロラブレスがブレス攻撃であることには変わりなく、オルゴ・デミーラは咄嗟に使って見せた。

 

 

 

「デグ人形ども。よくも小賢しいことをしてくれたな……絶対に許さんぞ! 我が闇の力でぶち殺してくれる!」

 

 巨大な闇の玉を作り出しオルゴ・デミーラがそれを放とうとすると腕がもげ、徐々に身体が崩れその場で呻き声を上げる。

 

「ぐぁぁぁ……何故だ、何故デグ人形如きの攻撃で我の身体が崩れていく……!? ま、まさか大魔王様が我を!?」

 

 

 

 オルゴ・デミーラはかつて魔王だったが今となっては軍団長の一人であり自尊心が高いオルゴ・デミーラにとっては屈辱でしかなかった。

 

 しかし真っ向から反発してしまえば逆賊となり、大義名分が生まれない。それ以前にバーンの魔力で動いており反逆すら許されないのだが、功績──つまり勇者達を倒すことによってそれは解放される。

 

 だがオルゴ・デミーラは最初から逆らうことはせずバーンの力を削いだ上でバーンに反逆する者を取り込む。その為にはガナサダイのように同盟者としてではなくオルゴ・デミーラ自身がバーンの下につき、バーンの影響力を削ることを選んだ。

 

 それ故にオルゴ・デミーラはバーンが自らを恐れ魔力の供給を止めさせたと思っていた。

 

 

 

 だがその予想を否定する声が上空から声が響く。

 

『違う』

 

「ミストバーン!」

 

 バランとハドラーが真っ先に反応し続いてジゼル、ベンがミストバーンを見る。

 

『ブバーハ程度ではあの攻撃は防げなかっただけのこと。バーン様は無関係だ』

 

「な、なんだと!?」

 

 オルゴ・デミーラが驚いたのは自分のブバーハが破れたことではない。

 

 ブレス攻撃を防ぐブバーハだがフレイザードはFFB(フィンガー・フレア・ボムズ)でそれを破っており、前例がない訳ではない。FFBが呪文攻撃だというのもあるがある程度の攻撃で破れてしまうものである。ジゼルのオーロラブレスもそれに該当しており、オルゴ・デミーラのブバーハを破っただけだ。

 

 オルゴ・デミーラが驚愕した理由、それはバーンがこの件に関わっていないことであった。

 

 

 

『いくらバーン様が偉大なる大魔王であっても、これから死に至るものを魔力のみで回復させることは不可能。むしろバーン様の魔力があるからこそ現世に留まれているのだ』

 

 ミストバーンが饒舌に語るのを見てオルゴ・デミーラを除いた全員が驚愕する。

 

「あ、あり得ん! このデグ人形如きが俺様を討ち滅ぼすとでも言う──」

 

 それを境にオルゴ・デミーラの身体が一気に崩れ始め、ついにプライドを捨てミストバーンに懇願する。

 

「ミストバーン様、私オルゴ・デミーラは貴方の部下となり忠誠を誓います! ですから──」

 

 ミストバーンが上空を指差すとそこには女性型の巨大な魔物──メイデンドールをモチーフにした黄金の人形が現れ、語る。

 

『バーン様の温情により、もう一度チャンスを与える。それで仕留められなければ死あるのみ。今の身体を捨ててバーン様に忠誠を誓うというのならば──』

 

「構いませぬ!」

 

 そしてオルゴ・デミーラの身体が崩れ、その魂が黄金の人形に宿った。

 

 

 

「カカカ……素晴らしい。全盛期とまでは言わずとも魔力が溢れておる」

 

 口調と声の質が変わり、オルゴ・デミーラが宿った人形──デミーラ・ドールが闇の呪文を唱えると球体だった闇の塊がスノードラゴンを彷彿させる姿へと変化する。

 

「ドルマドン!」

 

 そしてそれがジゼルに向けて放たれるとバランが竜闘気を纏わせ咄嗟に庇った。それでもダメージはあり、所々にその影響が現れていた。

 

 

 

「なっ、どうして?」

 

「ここで大魔王を倒し得る切り札を持つお前を死なせる訳にはいかないからだ」

 

「……」

 

 ジゼルが無言で頷き、デミーラ・ドールを睨む。

 

「さてお話は終わったようじゃな。そろそろ退場して貰おうか」

 

「ぐぁっ!?」

 

 デミーラ・ドールのデコピンがバランを吹き飛ばし、青い血を吐かせた。

 

 

 

「カカカ……物理攻撃に関しても問題ない。全盛期並みと言ったところか?」

 

「エスターク級の物理攻撃ということか。だが慣れぬ身体で動かせんことには変わりない!」

 

 ハドラーが駆け、デミーラ・ドールに突撃する。

 

「超魔爆炎覇!」

 

 ハドラーの必殺技がデミーラ・ドールを襲うがデミーラ・ドールの暗黒闘気が阻害しダメージを与えることが出来なかった。

 

「なっ、暗黒闘気のみで防御しただと!?」

 

「カカカ、バカめ。動けぬのであれば闇の衣で防御すれば問題はない」

 

 デミーラ・ドールが腕を凪ぎ払い、ハドラーを吹き飛ばすとベンがそれを受け止めた。

 

「ぬぅ……猪口才な」

 

 ハドラーはこの時、自らの頭脳を用いてデミーラ・ドールを討伐する方法を閃かせようと周囲を見渡すとある違和感に気づいた。

 

「あのバカが!」

 

 ハドラーがしかめ面になり悪辣を吐く。それはデミーラ・ドールの檻の中にジゼルがいたからだ。

 

 

 

「操り電気人形のショーご覧にあれ!」

 

「なっ、いつの間に!?」

 

 デミーラ・ドールがジゼルの声を聞き、驚愕するとジゼルに向かって暗黒闘気が迫る。

 

「バカ、速く出ろ! お前が死んだら残された者はどうなる!? フレイザード、ラーゼル、親衛騎団、そして俺を悲しみさせたいのか!」

 

「ハドラー様、私は確実に生きてかえってこれるからこそここにいるんです。だからもし死んだら……なんて縁起の悪い言葉は言いません。ですから私を信じて下さい」

 

「速く出るんだ!」

 

「ジゴスパーク!」

 

 ジゼルのジゴスパークがデミーラ・ドールを襲い暗黒闘気すらも弾き返す。

 

「し、信じられん。以前のジゼルであればアレほどの雷は放てぬはずだ」

 

「それだけではない。あれは地獄の雷と言うよりも聖なる雷──我々竜の騎士と同じようなものだ」

 

 バランがヨレながらも解説するとベンがそれに続いた。

 

「ジゼル様はただパワーアップしたのではなく、大魔王対策にパワーアップしたってことですね」

 

「うむ。ただパワーアップするのであれば簡単だが適正が余程合わない限り別の道に突き進むというのは難しいものだ……よし、ジゼルに続くぞ!」

 

 ハドラーがそう声をかけるとバラン、ベンが互いに協力し、連携を取る。

 

「超魔爆炎覇!」

 

「ドラゴニックブレイク!」

 

「爆裂一閃突き!」

 

 ハドラーの突撃、バランの竜闘気の剣技、そしてベンの粉塵爆発を彷彿させる突きがデミーラ・ドールに炸裂した。

 

 

 

 

 

「お、おのれ……せめて貴様らと心中してくれる!」

 

 デミーラ・ドールが悪あがきにドルマドンを放とうとするが分散されてしまい片腕が地に落ちた。

 

「所詮は借り物。この身体では無茶であったか」

 

 ボロボロに崩れていく自らの身体を見つめ敗因を冷静に分析するデミーラ・ドール。

 

「皮肉なものね。私達を人形扱いした貴方が人形になってやられるなんて」

 

「覚えておくといい。光が闇を凌駕するなど有り得ぬこと。我が肉体滅びようとも魂は受け継がれ、第二、第三の魔王が現れる……」

 

 そしてデミーラ・ドールが砂金へと姿を変えていき、ジゼルが解放されると共にハドラーが駆け寄る。

 

「この大バカモノが!」

 

「ぎゃふっ!?」

 

 ハドラーの拳がジゼルに突き刺さるとジゼルが頭を抱え涙目になる。そしてそれと同時にハドラーがジゼルを抱き締めた。

 

「心配したんだぞ我が妻よ」

 

「ハドラー様……」

 

「もうこんな真似はするな。お前の身に何かあったら息子達に顔向けが出来ん」

 

「ごめんなさい、ごめんなさいハドラー様ぁぁぁっ!」

 

 ハドラーの包み込まれながらジゼルが涙を流しハドラーの胸を濡らした。

 

「あの時互いに力があればこのようになっていたのかもしれないな……」

 

 ハドラー夫妻の愛を見たバランが一人呟き上を向いた。

 

 

 

「しかし第二、第三の魔王か」

 

「ハドラー様、あんな負け惜しみを真に受けているんですか?」

 

 暗黒闘気の影響が薄くなったバランの治療をしながらジゼルがそう口を挟むとハドラーが頷く。

 

「うむ、少し気になることがあってな。俺が超魔生物となって以来古びた伝説を持つ魔族や魔物が増えている。もしかしたらバーンはそういった類いの者達を復活させる手段を持っているのではないか?」

 

「オムド・ロレス、ザボエラのネオ・ヒヒュドラード、そしてオルゴ・デミーラ。確かにあり得ない話じゃないですね」

 

「それを防がぬ限りはこのような強敵が増える一方だ。ダイ達であればその都度戦えば強くなれるかもしれぬが俺達はそうではない。事実奴らの成長についていけんのもあって俺は超魔生物となった」

 

 ──尤も、妻を守る為というのが一番の理由だ。だからジゼル、お前を失うのが怖かった。

 

 ハドラーがその言葉を呑み込む。その理由はそんな惚気話をすればジゼルが使い物にならなくなる。ジゼルの扱い方を覚えたハドラーであった。

 

 

 

「バラン、貴方は心当たりある?」

 

 ハドラーが惚気話をしなかったお陰でマトモにバランに尋ねると意外な返答が来た。

 

「ある」

 

「何っ!?」

 

 ハドラーが思わず声を出し、バランを見る。事務処理をしていなかったバランが自分よりも情報通であると予想していなかったからだ。

 

「聖母竜曰く、そいつは今でこそバーンよりも格下だがいずれバーンをも凌ぐ存在となり得る存在だ。もしかしたらそいつが古代の魔王達を復活させバーンに協力しているのかもしれん」

 

「そいつはどこにいる?」

 

「魔界のヴェルザー領にいるとしかわからん。バーンと無関係であれば無視しても構わないと思っていたがそうも言ってられない状況になってしまった以上、ヴェルザー領に向かうしかないだろう」

 

「そうね……ハドラー様、マックスに念話お願い出来ますか?」

 

「もうしている。俺達は魔界に住む協力者を潰しに行くとな」

 

「流石です!」

 

 ジゼルが褒め称えるとハドラーが指揮を取る。

 

「それでは魔界のヴェルザー領に向かおうか」

 

 ハドラーの一声にジゼル達はもちろんバランもそれに従い、ヴェルザー領へと向かった。




ABCD「モンスターABCDの後書きコーナー!」

A「久しぶりだけど質問がありそうなので予想で答えるぞ」
B「今回出たオリジナル技の爆裂一閃突きだよな?あれは雷光一閃突きと超はやぶさ斬りの合わせ技だ。属性はイオ系になる」
C「いやその事じゃなく前話の前書きのことだよ。1年以上経ってないとかいっておきながら1年以上経っていたんだよ。あれは作者の勘違いだったってことだ」
D「作者に代わって謝罪しないとな。申し訳ありませんでしたーっ!」

A「後、前書きにも書いているが作者がPS4のDQXIS買ったそうだぞ」
B「XIネタが所々仕込まれたのはそういうことか。ちなみに作者はLv80でラスボス、Lvカンストしてから裏ボス倒したらしい。ビビりにも程があるぜ」
C「今度はステータスカンストしてから時空の破壊者に挑むつもりらしい。メルトアがトラウマになったから仕方ないんだが」
D「だからオルゴ・デミーラがメイデン・ドール形態になったのか。本来はゾーマの役割なのにか」

A「さて、時間が迫ってきたので恒例のアレを!」
B「この小説の感想は感想へ、誤字報告は誤字へよろしくお願いします」
C「それから作者にプライベートに関わらない程度で個人的な質問を聞きたいあるいは要望したければ作者のページのメッセージボックスに頼むぜぇぇぃ!」
D「それとお気に入り登録もよろしく頼む……」
ABCD「次回もお楽しみに!!」


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新・超竜軍団長バルボロスとの戦い

DQ11Sに続いてDQMJP3も購入しました。常にアタカンタの大地の竜バウギアが強いですね。新超竜軍団長をバルボロスにして後悔した程です。まあまだ全クリしていないので評価は覆る可能性がありますが。


 その頃、居残り組は各新軍団長の元に向かい討伐していった。

 

「どうぢで、どうぢでボクちんだけがこんな目に遭うんだ!」

 

「ふんっ!」

 

 かつてギガ・マホトラの使い手として名を上げ、新・妖魔師団長となったブギーがデスカールに蹴りを入れられる。

 

「ぎゃぶっ!」

 

「言っておくがこのような目に遭っているのは貴様だけではない」

 

 ブギーを暗黒闘気で拘束すると共に自前の剣を構えて炎を纏わせる。

 

「や、やめ──」

 

 その威力に怖じけついたブギーが拘束から逃げ出そうとするがデスカールにやられた傷が原因で身体が動かずそれは叶わない。

 

「ブラッディースクライド!」

 

「ほげええええぇぇーっ!」

 

 断末魔の叫び声がその場に響きブギーが倒れた。

 

「さて、他の軍団長のところにいくか」

 

 ブギーの死体を確認するとデスカールがその場から去り他の軍団長達を討伐するべくルーラで移動した。

 

 

 

 ルーラで移動した先、それは新・超竜軍団長バルボロスのいる場所だった。

 

「デスカール、お前もここに来たか」

 

 デスカールよりも他の軍団長を早く倒したアクデンが声をかける。

 

「うむ。それで状況は?」

 

「信じられないことだが、あの様だ」

 

 アクデンが指差した先にいるのはボロボロになった親衛騎団であり、無傷でいるのも指揮官のマックスのみという有り様だった。

 

「なら何故加勢にいかぬ!?」

 

「行きたくとも出来ん。奴──バルボロスは親衛騎団以外の連中を確実に仕留める為結界を張っている。それも我らの力量では破壊出来ないものだ」

 

 アクデンがそう告げるとガーゴイルのカラスが降り、無言で首を横に振る

 

「駄目か?」

 

「どこにも隙はなかったぜ。あれを壊すにはベンのイオグランデ級の破壊力の攻撃をするしかない」

 

「ならば俺が行こう」

 

 その言葉を聞いた男が両腕に闘気を溜めてその技を放つ。

 

 

 

「どうした、それで終わりか?」

 

「くそっ!」

 

 バルボロスの挑発に乗るヒムを尻尾で凪ぎ払い、

 

「待てヒム! むやみやたらと攻めても無駄だ。私のライトニングバスターやアルビナスのニードルサウザンドも通じない以上、無駄だ」

 

「やってみなきゃわかんねえだろうが!」

 

「その通りだ。もしかしたらかすり傷くらいは狙えるかもしれんぞ?」

 

 バルボロスが笑みを浮かべ挑発するとヒムが再び拳に炎を纏わせた。

 

「とことん嘗めやがって覚悟出来ているんだろうな!」

 

「いいからさっさとかかってこい」

 

「うぉぉぉぉーっ!」

 

 ヒムの突撃、それは彼の技ヒートナックルではなく、自らの主人ハドラーの必殺技超魔爆炎覇そのものでありその突撃力はハドラー親衛騎団の誰もが知っておりバルボロスと言えども無事ではすまない。そう確信していた。

 

 

 

「惜しかったな」

 

「なっ──」

 

 だがバルボロスは全くの無傷。かすり傷を負うことはなかった。

 

「闇の衣か」

 

 解析を終えたマックスが呟き、解説する

 

「闇の衣?」

 

「わかりやすく言えば暗黒闘気を身に纏わせ鎧と同じ働きをさせるものだ。熟練すればありとあらゆる攻撃を無効化させることが出来る。それを剥がすには光の闘気が必要となる。つまり禁呪法で生まれた金属生命体たる我輩達ではほとんど勝ち目はないということだ」

 

「な、なんだと!?」

 

「マックス、本当に勝ち目はないのですか?」

 

 ヒムが驚きの声をあげる一方でアルビナスが冷静に尋ねる。

 

「ほとんど、と言ったはすだ。ない訳ではない。かつてその威力と命中率の悪さに歴史の闇に葬られた系統の呪文がある」

 

「それを使えば勝てると? しかし契約しようにも時間がありませんし、貴方が申し上げたように命中率の悪さに歴史の闇に葬られたのでしょう?」

 

「勝てる。アレだけの巨体に当たらない方が問題だ。その系統はマータ系。メラマータ、ギラマータ、ヒャドマータ、バキマータ、イオマータの五つこそバルボロスを倒すものとなる」

 

「くくく……甘い、カスタードプリンシュークリームよりも甘い! 確かにマータ系の呪文は脅威だ。しかしマータ系はそれぞれの呪文を複数回攻撃するだけの呪文。しかも一発の威力は大したものではない」

 

「大したものじゃねえなら何故脅威なんだ?」

 

「マータ系の脅威は一ヶ所に当たれば極大呪文を大きく上回るということだ。しかも魔力もその威力に見合う以上の低コストだ。そして我輩以外は攻撃呪文のスペシャリスト。一ヶ所に集約して出来ないとは言わせぬぞ?」

 

「わかりました。ならば契約しましょう」

 

「そうさせるとでも?」

 

「ブバーハ!」

 

「ほう、ブバーハを覚えていたか。しかも俺のブレスを防ぐとはやるではないか」

 

 バルボロスが感心し、笑みを浮かべるとマックスが5人を回復させマータ系の呪文を契約させる。

 

 

 

「指揮官たる我輩はサポート役だ。それ故に攻撃呪文以外なら使える……さあ契約完了だ。お前達、やれるな?」

 

「勿論だ」

 

 親衛騎団の全員がバルボロスの心臓を目掛け突撃するとバルボロスから放たれる黒い霧が周囲を覆う。

 

「い、いかん! 戻れお前達!」

 

「メラマータ!」

 

 それを見てマックスが撤収するように促すがその言葉に反応出来なかったヒムがメラマータを唱える。だがそれは不発に終わる。

 

「なっ、失敗だと?」

 

「残念だったな」

 

 ヒムが叩きつけられ動けなくなるとバルボロスが巨大な闇の球を作り出しそれをヒムに目掛けて放つ。

 

「くたばれ、人形共!」

 

 絶体絶命──今のヒムの状況を表すとしたらそんな状況であり、バルボロスが勝利を確信し笑みを浮かべる。

 

 

 

 そしてその瞬間、バルボロスの球を貫き巨大な渦が頬を掠めた。

 

「な、なんだと!? 我が闇の衣を撃ち破るとは、一体誰の仕業だ!?」

 

「俺だ」

 

 ピンクのリザードマン──クロコダインが名乗りを上げるとアルビナスが驚愕の声をあげた。

 

「獣王クロコダイン!」

 

「待たせたな。ハドラー親衛騎団」

 

 

 

「しかしどうやってあの闇の衣を突き破ったのですか?」

 

「あの闇の衣とやらは確かに厄介だった。しかしヒュンケルの光の闘気を俺の獣王激烈掌に乗せることで闇の力を一点に集中させ破壊したという訳だ」

 

 アルビナスが疑問の声を上げるとクロコダインがそれに答え、ヒュンケルに視線を送る。

 

「と、いうことだ。ここから先は俺達に任せてくれ」

 

「わかった。だが無理はするな。いくら回復呪文が得意な我輩と言えども魔力に限界はある」

 

「もとよりそのつもりだ」

 

 

 

「くくく……よかろう。この闇竜バルボロス、貴様ら纏めて相手にしてくれよう!」

 

「かぁっ!」

 

 バルボロスが暗黒闘気のブレスを吐くと同時にクロコダインが凪ぎ払い、その隙を見てヒュンケルが光の闘気を交えた攻撃をするとバルボロスの身体から出血し親衛騎団全員が目を見開く。

 

「アレだけ私達が攻撃しても通じなかったというのにこうも易々と負傷させるとは……」

 

 シグマが腕を組み、思考する。確かにハドラー親衛騎団はハドラーの守護兵として優秀だ。しかし相性というのは絶対的な能力に差がない限りは覆せない。それを痛感し、ヒュンケルとクロコダインの連携攻撃を観察し取り入れようとしていた。

 

 

 

 そしてしばらくするとヒムが回復し終わり、口を開く。

 

「俺も、やるぜ」

 

 ヒムがそう声を上げるとヒュンケルが首を横に振る。

 

「バカを言うな。お前では相手に出来ん」

 

「いや出来るさ。バルボロスはあんたの光の闘気交えた攻撃なら通用する。つまり闇の衣が一瞬だけ剥がれるんだ。その一瞬だけ叩き込めば俺の攻撃でも通用する」

 

「それならクロコダインに任せた方が良い。クロコダインの獣王激烈掌に闘気を交えたならバルボロスもただではすまない」

 

「それは出来ねえよヒュンケル。何故なら獣王激烈掌は言ってみれば砲台。巨体なバルボロスと言っても避けるのは容易く、うかつに攻撃出来ない。だから確実に攻撃を当てられるあんたが攻撃しているんだろう?」

 

「仕方ないか」

 

 ヒュンケルがため息交じりにそう頷き口を開く。

 

「だが俺に合わせろ。戦闘センスはお前の方が高いのだからこのくらいは出来るだろう?」

 

「当たり前だ」

 

 ヒュンケルとヒムが飛び出し、バルボロスの心臓目掛け飛び出すとバルボロスのブレスがヒュンケルを襲う。

 

「ヒュンケル!」

 

 思わずヒムが声を上げ、不安そうにそちらを見るとヒュンケルがそのブレスを切り裂き声を荒げた。

 

「無駄なあがきは止めろバルボロス!」

 

 そしてヒュンケルの剣がバルボロスの身体を切り裂き、それに連携してヒムがハドラーの超魔爆炎覇を真似た突撃で攻撃するとバルボロスの身体に穴が開いた。

 

 

 

「くっ……まさかここまでとはな。だが、俺は死なん! さらばだ!」

 

「そうはいかねえよっ!」

 

 バルボロスが大空に羽ばたき攻撃が届かない位置に逃げようとした瞬間、炎の鎖と氷の鎖がバルボロスを拘束した。

 

「な、なんだ!?」

 

「カーッカッカッ! この氷炎将軍フレイザード様から逃げられるとでも思ったのか!」

 

「フレイザード!」

 

「ようヒュンケル、いつからこんな小物相手を取り逃がすようになっちまったんだ? 昔からか! 騎士道精神って奴は大変だねぇ。女に取り入れる為の騎士道精神って奴は」

 

「何が言いたいフレイザード!」

 

「昔、お袋に惚れていたんだろ? だから取り逃がして騎士道精神をアピールしていた……はっ、馬鹿馬鹿しい」

 

「黙れフレイザード! そういうお前こそジゼルに認められるように手柄を立てるようにしていたのは知っているんだ」

 

「そ~れ~の~何が悪い? 誰だって認められたいって欲求はあるんだぜ。ハドラー様しかり、お袋しかりな。だけどお前のそれは女に取り入れる為のもんだろうが!」

 

「ぐぁぁぁっ!?」

 

 フレイザードが力むとバルボロスの身体の半身が燃え、もう半身が凍てつき断末魔の叫び声が響いた。

 

「ヒュンケル、貴方の騎士道精神はそこから来ていたのですか……」

 

「違う! 父バルトスの教えだ!」

 

 ヒュンケルがフレイザードの指摘とアルビナスのジト目を否定するももはや手遅れでこの場にいるほとんどが懐疑的な視点でヒュンケルを見ていた。




とりあえず構想として練っているのがダイの大冒険原作、DQ11S要素取り入れたカミュ主人公物。
序盤は本当にダイの大冒険原作という名前の11Sですが、徐々にダイの大冒険に近づいていきます。
そんな小説、需要あれば活動報告に投票お願いいたします。投票する場所がアンケートではなく活動報告な理由はこの小説とほぼ関係ないからです。

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第三の勢力

DQ11Sだけでなく今度は無料版DQ10をダウンロードし、一応Ver1クリアしました。久しぶりにプレイしましたがバトマスが強い……


「止まれ!」

 

 ヴェルザー領に来ていたジゼル達だがバランが突如声を出し三人を止めた。

 

「どうしたバラン?」

 

「この先からとてつもない威圧感を感じる。一度休んで万全の状態で行こう」

 

「それもそうだな」

 

 バランが慎重な提案を出すことは珍しくないがこの先にいる敵は不完全だったとはいえオルゴ・デミーラを超える敵であり、万全の状態でなければ勝てない相手である。故にバランの提案にハドラーが頷き、ジゼル達がそれに従った。

 

 

 

「ベン、ちょっといい?」

 

「何でしょうか?」

 

「今まで貴方には申し訳ないことをしたわ。ごめんなさいね」

 

 ジゼルが頭を下げるとベンが鼻で笑い飛ばした。

 

「はっ、何を今更……こちとら今まで散々ジゼル様に振り回されてきたんです。湿っぽい話は止めましょう」

 

「だけどね、貴方のような部下を持てて私は幸せよ。もし貴方がいなければ死んでいた場面もある」

 

「んな大袈裟なジゼル様」

 

「いや大袈裟でもない」

 

 バランが口を挟み、語る。

 

 

 

「オムド・ロレスの時などはお前が止めを刺さなければジゼルや私は死んでいただろう」

 

「そうよ。貴方はこの中じゃ非力に感じるだろうけど存在そのものが支えになっているのよ。それにこの中で一番史学に富んでいるのはベン、貴方よ」

 

「バラン、ジゼル様……」

 

「ジゼル達の言うとおりだ。縁の下の力持ちとはお前のことを言う。俺は工学系故に見たことない魔物の弱点はキラーマシンといった魔物しか予想がつかん。しかし相手を一瞬で判断する能力は誰よりも優れている」

 

「ハドラー様、流石です! その調子で私のぱふぱふを受け取って下さい!」

 

「やめい」

 

 ジゼルが飛びかかるがそれを押し退け、顎を撫でると猫のように丸くなるとハドラーが口を開く。

 

「それにベン、マックスがお前のことを俺達の戦いについていけると評価しているだけじゃない。フレイザード達と共に我が娘のことを守ってくれた。それだけでも感謝している。ありがとう」

 

 ハドラーの礼の言葉にベンが涙を流し、しばらくその場から動けずにいた。

 

 

 

 そしてしばらくしてその場所へ向かうとそこには魔王時代のハドラーのような格好をした魔族がそこにいた。

 

「よくぞ来た。オルゴ・デミーラを討伐した者達よ。我が名は竜王。かつて勇者ロトに滅ぼされたが、長い年月をかけて復活した竜の王だ」

 

 魔族に化けた竜王がそう語り、ジゼル達を見つめる。

 

「半端者二人に魔族二人がここまでくるとは大したものだ」

 

「竜の騎士を半端者呼ばわりとはいい度胸だ」

 

「儂は竜族の長、竜王だ。貴様らみたいな竜の血が半端に持っているのを者を完全なる竜族とは認められん。だから半端者と読んでいるだけのこと」

 

 

 

「さて、それよりも貴様ら。もし儂の部下になればこの装置の使用権限を分けてやろう」

 

 竜王がそう誘うとジゼルが即答した。

 

「いらない」

 

「ほほう、いらんと申すか。しかし良いのか? この装置の使用権限があればかつて魔王と呼ばれた猛者達をも従えさせることが出来る。それを聞いた上で尋ねよう。儂の部下にならんか?」

 

「ならないわよ。その魔物達は昔存在したもので、無理やり忠誠を誓わせるものでしょ? 禁呪法で生まれた生物だって生き物であることに違いない……貴方のそれはただの奴隷作成マシーンでしかない! そんなものの為に忠誠を誓える程、バカじゃないわ」

 

 

 

 ジゼルが即答した理由、それは禁呪法で生まれた生物であっても愛を持って接しており、奴隷のように洗脳するのがどうしても許せないからだ。

 

 ハドラーと共同作業で生まれたフレイザードは当然、ハドラーが単身で命を吹き込んだ親衛騎団も例外なく愛を持って接している。

 

 もし何らかの誤りで禁呪法によって大魔王ゾーマが生まれたとしてもジゼルは愛を持って接するだろう。

 

 それ故に竜王が持つ機械に対して抵抗感──いや拒絶反応が出ていた。

 

 

 

「全くだ。それに俺達はそれを壊しに来た以上交渉の余地など全くない」

 

「よかろう。交渉決裂という訳だな。ならばかかって来るが良い!」

 

 竜王が指を鳴らすとその場で大爆発が起こりベンが仁王立ちし全員を庇う。

 

「大丈夫ですか?」

 

「うむ、助かった。俺はともかくジゼルにイオ系に耐性がないから、俺のイオナズン級の爆発では負傷するからな」

 

 ハドラーがジゼルを見ると無傷でありベンに感謝の言葉を告げる。

 

「しかし無詠唱でイオナズンを起こすとは竜王などと名乗る割には魔法に特化しているな」

 

 バランが冷静に分析すると竜王が口を挟む。

 

「今のはイオナズンなどではない。イオだ」

 

「!?」

 

 

 

「今のがイオナズンではなくイオだと?」

 

「無論。呪文は使い手の魔力によって威力が変化する。儂のイオがお主達のイオナズンと同等の魔力であったということだ」

 

「聖母竜に大魔王バーンを超えると言わしめるだけのことはある……だが、呪文だけで勝てると思うな!」

 

 バランが剣を抜き竜闘気を纏わせ斬りかかると竜王が竜闘気を出し杖でそれを止めた。

 

「竜闘気だと!?」

 

「ほう、我ら竜王の一族しか扱えぬこの技術をこちらでは竜闘気というのか。それでは本当の竜闘気の使い方というのを見せてやろう」

 

 竜王がそう告げると竜闘気を纏った無数の球が変則的にバランを襲う。初めは竜の騎士による本能でそれを避けていたが次第に均衡が崩れ、竜王がバランを攻める。

 

「ぐぉぉぉぉっ!?」

 

「バラン!」

 

「去ね、ギラマータ!」

 

 一発の威力がベギラゴンの威力を遥かに超えるギラマータがバランを襲うがハドラーが庇い、フォローする。

 

 

 

「ハドラー様、大丈夫ですか!?」

 

「安心しろジゼル、俺の身体はギラ系の呪文に耐性がある」

 

「強がりは良くないぞ。儂のギラは貴様らのベギラゴン以上の威力。それが複数当たった以上無事な訳が──」

 

「ベギラゴン!」

 

 ハドラーのベギラゴンが竜王に直撃し、目を見開く。

 

 

 

「どうやら貴様らを過小評価してたようだ。儂のギラマータを受けて呪文を放つ奴など勇者ロトくらいだ。最も奴は儂のベギラマと同じ威力のベギラマを放ったがな」

 

 顔を事前に手で覆って防ぎ、竜王が笑みを浮かべると一歩前へ歩む。それだけで四人が脂汗をかき、流す。

 

「ふむ、では懐かしい顔触れを出しておこうか」

 

 竜王が機械のボタンを押すと機械が作動し、複数の物体を生み出すとハドラーが驚愕し、目を丸くする。

 

 

 

「なっ!? ガンガディア、キギロ、バルトス……!」

 

 ハドラーが口にしたのはかつて魔王時代のハドラーの部下だった魔物達だ。その魔物達が現れたことによりハドラーと言えども冷静ではいられなかった。

 

「ふん、下らぬ。退け! お前がやらないのなら私がやる!」

 

 バランの一喝とともに剣が亜人樹──キギロを切り捨てようとすると一つの影が現れ、それを庇おうとするとバランが剣の軌道を反らした。

 

「竜王、貴様ぁっ!」

 

 バランが反らした理由──それは庇ったのがバランの妻でありダイの母、ソアラだったからだ。ソアラはバランを庇って命を落としている。それがバランのトラウマの引き金となり、ソアラを傷つけないように剣の軌道を変えてしまった。

 

「斬ればいいではないか。尤も斬れるのであればの話しだがな」

 

 竜王がそう告げると再び椅子に座り、肘をつくと産み出された悪霊達がハドラー達に立ち塞がる。

 

 

 

「竜王よ、どうやら俺を舐めているようだな」

 

「何?」

 

「確かにお前達は忠実な俺の部下だった。しかしバルトスは命令違反を起こし俺によって処刑された。立場が変われば殺すことなど容易いものだ」

 

 ハドラーがバルトスに接近するとソアラが立ち塞がる。

 

「バラン、こいつは任せた!」

 

 ハドラーが手首から鎖を出し、ソアラを拘束させ、バランに渡す。

 

「バルトス、このような形で蘇生されてはヒュンケルも本意ではあるまい。大人しく成仏しろ」

 

 ハドラーがかつてバルトスを処刑したようにバルトスの頭を殴ろうとすると、バルトスがそれを防ぐ。

 

「容易いとは、一体何のことを言うのか是非ご教授して頂きたいものだ。元魔王ハドラー」

 

「それはこういうことだ、メラゾーマ!」

 

 ハドラーのメラゾーマがバルトス達を焼き付くす。

 

 

 

「俺のメラは地獄の炎、そいつを焼き付くすまで消えることはない」

 

鎧化(アムド)

 

 無機質な声が響き、ハドラーのメラゾーマの炎が吹き飛ぶと共に姿を表す。その姿は全身を鎧に包みこんだバルトス達の姿だった。

 

「その鎧はロン・ベルクの……!」

 

「そうですハドラー様、いやハドラーぁぁぁっ! 今の僕はお前を凌ぐ! この呪文を通さない鎧に鋼鉄の身体は完全にむて──」

 

「喧しい」

 

「ぎゃぁぁぁっ!?」

 

 キギロの鬱陶しさにハドラーが爪を立てキギロに突き刺すとそこからメラゾーマを流し込まれ、キギロが身体の内側から燃えていく。いくらキギロが鋼鉄の身体で蘇ったとしてもハドラーの爪はオリハルコンをも貫いてしまい、その中からメラゾーマを流しこまれれば一溜まりもなく勝てる要素がどこにもなかった。

 

「キギロ、どれだけパワーアップしようが慢心というお前の弱点が根本的に解決された訳ではない……ジゼル、竜王は任せた。ベンはガンガディアを頼む」

 

「はっ!」

 

「畏まりました」

 

 ジゼルが竜王の元に、ベンがガンガディアの元に行くとハドラーが構える。

 

 

 

 

 

「……斬るしかないのかソアラ」

 

 葛藤の末、バランがそう決断する。

 

 元々のソアラの戦闘力はバランどころか旧魔王軍時代の魔物にも劣る。しかしバランに対してはかなり効果があり、動きも魔物というよりも人間のそれに近く、しかもソアラの意識が時折戻る為に躊躇してしまう。それ故にバランは引き延ばしに伸ばして決断をしていた。

 

 だが呪文でソアラを倒すという考えはバランのトラウマに触れてしまう。ソアラの直接の死因は呪文による攻撃であり、それを彷彿をさせてしまうからだ。その結果バランは剣で斬り成仏させようとしていた。

 

「さらばだ!」

 

 

 

 

 

「バルトス、二度もお前の失態の尻拭きをすることになるとは思いもしなかったぞ……」

 

「ハドラー様、人間の子供を育てるという酔狂を許して頂きありがとうございました。しかし儂は貴方を倒さなければなりません。ヒュンケルと会う為にも!」

 

「その気迫、もし魔王時代の俺の時に発揮していたら許していたかもしれん……だがもうとっくに過ぎたことだ。来い、バルトス」

 

 6本の腕によって産み出されたバルトスの剣技がハドラーを襲うがハドラーはそれを覇者の剣が装備された右腕のみでいなす。

 

「バルトス、地獄から蘇ったお前の怒りはそんな物なのか? これだったらヒュンケルの方が上だぞ!」

 

「ヒュンケルが生きているのですか!?」

 

「勿論だ。奴は不死身そのものだ。例えメラゾーマで焼かれようが闘気が尽きようが死なん」

 

 ハドラーは一度ヒュンケルと戦った際にメラゾーマでヒュンケルを焼き付くしている。通常であればそれだけで致命的なダメージを受け、まともに動くことすら出来ない。しかしヒュンケルは最後の力を振り絞り、ハドラー達を倒すことに成功している。

 

「そうでしたか……ならばこの勝負何も意味がありませぬ。私と竜王が交わした契約は死んだヒュンケルに会わせる為でした。それが儂の息子ヒュンケルではございませぬ以上どこに戦う理由などありましょうか?」

 

「確かにな。お前の息子ではなく魔界の剣豪の方が蘇ったら不本意だろうな。戦わぬというのならバルトス、俺はお前に謝ることがある」

 

「私を処刑したことですか?」

 

「違う。お前はそれに値するだけの罪を犯し、俺はお前を処刑した事に後悔や反省はない。だがお前は決して失敗作等ではない。お前の騎士道精神はヒュンケル、そしてお前の弟妹にも受け継がれている」

 

「弟妹?」

 

「バーン率いる大魔王軍時代に産み出した自慢の息子達だ。いずれもお前に勝るとも劣らない精神の持ち主だ。だからハドラー親衛騎団の騎士道精神の原型たるお前を失敗作などと言ったことに対して俺はお前に謝罪しなければならぬ……すまんな」

 

「そうでしたか……これで悔いなく儂も死ねるというもの……竜王との契約上の関係上、息子ヒュンケルと会うことは叶いませぬがハドラー様、どうかお伝えください」

 

 ──我が息子ヒュンケル、無事に育ってくれて嬉しいと

 

 契約を破ったバルトスが灰になり、ハドラーだけがその場に残る。

 

「バルトス……確かにその言葉ヒュンケルに伝えよう」

 

 

 

 

 

 ガンガディア──彼はトロール族でありながら頭脳明晰、ハドラーの参謀のようなポジションで活躍していた。それ故に頭脳戦では絶対の自信があり、ベンに対してもそれは変わらず優勢に戦い、止めを差したと思われたがベンのイオラが鎧を貫きガンガディアの心臓を爆発させた。

 

「油断、したな?」

 

「おのれぇぇぇぇっ! 完全体であったなら、貴様らごときに……ぐふっ」

 

「……全く大した野郎だ。完全体であったとしても勝てただろうがな」

 

 ベンがそう呟きベホマをかけると回復し、ベンの身体が癒えていく。

 

 

 

「ふむ、一番感情的な娘が相手とな……良かろう。感情的であることと強さはそこまで比例関係にない。元魔王が儂相手に任せたというだけあってその実力は折り紙つきということなのだろうな?」

 

「当たり前よ、私は元魔王軍親衛隊隊長にして雷竜ボリクスの孫娘にしてハドラー様の最愛の妻ジゼル! ハドラー様の障害になる貴方を殺すわ」

 

「儂を殺すと来たか……何? 雷竜ボリクスの孫娘だと?」

 

「そうよ、なら証明してあげるわ……その身体でね!」

 

 ジゼルが地獄から雷を呼び出し竜王に直撃させると竜王が紫に輝く巨大な竜となり本性を現した。

 

「我が名は竜王! 竜の王にして全てを統べる者! 勇者ロト亡き今恐れる者などない!」




カミュ主人公の物語はまだかって?まだです。
AIのべるすに任せるのもいいんですが、あれはどちらかというと自分の設定したオリジナル小説用に使うものですから……

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65話

新年明けましておめでとうございます

昨年は別の小説を書いていたせいもあって更新することはございませんでしたが今年こそは更新をしていきたいと思います


「半端者。貴様、雷竜ボリクスの孫と言ったな」

 

「ええ、血縁関係があるのは事実よ」

 

「ボリクスのジゴスパークはこんなものではない。本物のジゴスパークというのはこういうことを言うのだ!」

 

 竜王がそう言い放ち、ジゴスパークを放つ。それはジゼルのジゴスパークよりも遥かに強力なもので当たればただではすまないものだった。

 

 だがそれをジゼルは吸収し、白く光輝く竜へと変貌していく。

 

「グレイナル……!」

 

「グレイナル?」

 

「最近の若い奴らはグレイナルも知らんのか……全く嘆かわしいものだ。今の貴様の姿はかつてガナン帝国を滅ぼした空の英雄と呼ばれた竜に酷似している」

 

「大した英雄様ね、それは」

 

「だがしかし如何にグレイナルに似ていようとも所詮半端者は半端者。屠るなど容易いこと。死ねドルマドン!」

 

 竜王が呪文を唱え、ドルマドンを唱えるとドルマドンの形がドラゴンの姿となり、ジゼルを襲った。

 

「邪魔よ!」

 

 雷の球がドルマドンを押し退け、竜王に直撃する。

 

「ほう……やるではないか。全盛期のオルゴ・デミーラと並ぶ程だな。だがこの我、竜王に敵う術はどこにもない! 例え大魔王バーンが相手だったとしてもだ!」

 

 竜王の凄まじい雄叫びが響き、竜王を除くその場にいた全員がダメージを受ける。

 

「それはおかしい話よ」

 

「あ?」

 

「だって今の貴方はまだその域に至ってない。パワーで言えばまだエスタークの方が上よ」

 

「だから貴様は半端者なのだ!」

 

 竜王の身体が筋骨隆々の身体へと変化していき、真の姿を表した。

 

「これが本当の竜王……!」

 

「真・竜王となったこの我に敵うものなど存在はせぬ。だが進化の秘法を使うことで、更に強くなる」

 

 進化の秘法により真・竜王の腕が3対に増えるだけでなく、メタル化し、結界のようなものが展開される。

 

「常にマホカンタ、常にアタカンタの結界……って所ね。それを突破するにはジゴスパークかブレス系でやるしかない」

 

「だがこの通り、儂の身体はメタル化している。これによりありとあらゆる属性攻撃を受け付けん!」

 

「……なら、これしかないってことね!」

 

 ジゼルが息を吸い込み、氷と炎のブレスを混ぜ合わせ、それを一直線のビームのように放つ。

 

「!」

 

 それを見た真・竜王が避け、羽ばたき3対の腕からドルマドンを重ねると先程の竜状のドルマドンよりも遥かに巨大かつ密度の高い闇のエネルギーがジゼルを襲った。そしてジゼルは次のオーロラブレスを吐くのを中断し、呪文を唱えた。

 

「マホステ」

 

 ありとあらゆる呪文を無効化する霧が発生し、それをジゼルを包み込むとドルマドンが掻き消される。

 

「ほう、マホステを覚えているとはやるではないか。これで我は呪文は唱えることは出来ても貴様に致命傷を与えることは出来なくなる。ならば物理攻撃しかあるまい!」

 

 真・竜王がジゼルに迫り、インファイトを仕掛けるとジゼルが距離を測り、再びそれを放とうとするが真・竜王がそれを許さず、追撃する。

 

「やっぱりね。属性攻撃が効かないとはいえその性質はあくまでもメタル化によるもの。つまりメタルスライムに影響を与えられるブレス、オーロラブレスなら影響を与えられる!」

 

「ほざけ! 半端者めが!」

 

 ジゼルがオーロラブレスを吐きそれを溜め、真・竜王がそれを防ぎ躱し攻撃に移る。それらの攻防が延々と続く。

 

 

 

「(ソアラよ許し──どういうことだ?)」

 

 ジゼル達が攻防を繰り返す一方。

 

 ソアラを切りつけてしまったバランは悲しみよりも違和感を覚えた。

 

 この世界にはくさった死体という魔物がいるが、六軍団長どころかそこらにいる魔物であり、戦闘力そのものは魔物の中ではドラゴンにも劣る存在である。見た目こそ生前のそれに酷似していたがくさった死体となったソアラを一撃で屠るなど物理的にはバランにとって容易いことである。

 

 バランが覚えた違和感、それはソアラを切った感覚が人間を斬った時でもなければくさった死体とも違う別のものになっていたことだ。

 

「お初にお目にかかるぜ、竜の騎士さんよぉっ!」

 

 その言葉と共に斬ったソアラが崩れ別の魔物が現れる。フレイザードのような目つきに加え身体は死の大地で出来た岩で出来ており禁呪法で創られた生命体と判断出来る。

 

「何者だ?」

 

「俺の名はグランナード。かつてハドラー様に地底魔城で創られ、竜王様に新しい身体を貰った兵士でさぁ」

 

「またハドラーの元部下か……」

 

「アンタも元部下だろう? まあそんなことはどうだっていいンだ。それよりもアンタの奥さんの魂は俺が預かっている」

 

「何だと?」

 

「俺を倒せばアンタの奥さんは解放される──っと!」

 

 無言でバランが剣を振るうがグランナードが腕でそれを防ぐ。

 

「そう焦ンなよ、竜の騎士様よォ。まだ話しの途中だぜ。対処出来たから良かったものの俺達の身体のうちどれかにはアンタの奥さんが封じられているんだ。アンタの奥さんは永遠に苦しむことになっていたンだぜ」

 

 グランナードの分身が地面から次々と現れるとバランが歯を食いしばる。

 

「貴様……!」

 

「悪く思うなよ。アンタの竜闘気による物量作戦でいったら間違いなく俺が圧倒的に不利だ。その不利を覆す為の手段を取っているだけのこと。さあ、死んでもらうぜ!」

 

 グランナードAがバランにそう告げ、腕を刃状へと変え、バランに斬りつけようとするがバランにダメージは通らない。それもそのはず、今のバランは竜闘気を纏い、並大抵の攻撃は竜闘気によって防がれてしまう。火力に欠けるグランナードでは現状を打破する手段に欠ける。それ故にバランが警告の一言を放つ。

 

「無駄だ。いくら貴様らが攻撃しようとも竜闘気を纏った私に傷を負わせることは不可能。死にたくなければ早くソアラを解放──」

 

 バランの言葉を無視し、グランナードがバランのコメカミに指を突き出すとめり込む。

 

「なっ、離せ!」

 

 並大抵の攻撃ではバランに傷を負わせることすら出来ない。ではどうするべきか? グランナードが出した答えは一つ。自己犠牲呪文(メガンテ)だ。

 

 この呪文は僅かな魔力と全生命エネルギーを使い、敵を殲滅する呪文である。命を犠牲にするというだけあり、その威力も並大抵のものではない。非力なものが竜の騎士に与えられる唯一の攻撃手段、それがこの呪文だ。

 

自己犠牲呪文(メガンテ)!」

 

 空気が爆ぜると同時に閃光の輝きが周囲を照らす。

 

 そしてその輝きが消えると竜魔人となったバランが君臨していた。

 

 

 

「危うく死にかけたわ!」

 

 バランがグランナード達を睨みつける。流石のバランも自己犠牲呪文を使われ焦りがなかった訳ではない。あの時バランは咄嗟に竜魔人となりグランナードの腕を切り落とし、その場から離れ爆発の被害を軽減していた。もしそうしなければバランは大ダメージを負うことになっていただろう。

 

「テメェ良くもグランナードAを!」

 

「貴様が考えた作戦だ。その失敗を私のせいにするな!」

 

「うるせえ! テメェら、やっちまうぞ!」

 

 グランナードB、グランナードC、グランナードD……が一斉に襲い掛かる。

 

「(全く厄介な奴だ。フレイザードの狡猾さに加えてハドラー以上の禁呪法。次々と生やされてはキリがない!)」

 

 バランはグランナード達を確実に処理するも次々と増えていくグランナードに苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

 一気に殲滅してしまえばどうということはないが、バランにはそれが出来ない。ソアラの魂を封じられている以上グランナード達を一体ずつ処理しなければならないが今の状況ではグランナード達が雪崩れ込み、いずれバランに自己犠牲呪文(メガンテ)を放つことになる。それが一体なら致命傷にはならないが何体も続くと流石のバランでも致命傷となり死に至ることになる。

 

「(やむを得ないか)」

 

 バランが剣に竜闘気を溜め、ビーム状に放つとグランナード達の身体が上半身と下半身に別れ、一瞬硬直すると共にバランが次々とグランナード達の核を斬り殲滅していく。そしてそれを繰り返していくと僅かに光を感じ取り、その個体がソアラの魂を封じていると確信した。

 

「うおぉぉぉぉっ!」

 

 その個体以外を全滅させるとバランが剣を突きつける。

 

 

 

「動くな。動いたら殺す!」

 

「……」

 

「貴様がソアラの魂を封じているのだな?」

 

「さあ? もうとっくにくたばったんじゃねえの?」

 

「惚けるな。貴様がソアラの魂を封じているのはわかっている。僅かながら貴様からソアラの魂を感じた」

 

「……ケッ、その通りだよ。俺がアンタの奥さんの魂を封じている」

 

「今すぐ解放しろ」

 

「先代のグランナードは地底魔城でしか活躍出来ないという不完全な状態で産まれた。しかし人間の魂と先代のグランナードを同化させることで大地そのものの魔物として竜王様は俺を創造したンだ」

 

「つまり貴様が死ねばソアラも解放されるということか」

 

「平たく言えばそうなるが俺達の痛みは全てアンタの奥さんに還元している。後一回攻撃したらアンタの奥さんは解放される前に消えるぜ」

 

「でまかせを──」

 

「でまかせだと思うならなんでこんなにも光が弱々しいのか考えられないのか?」

 

「それが真実であれ偽りであれどのみちもう遅い。私もソアラも、そしてお前もな」

 

 バランがグランナードの核を貫き、前へと向く。そこには真・竜王がジゼルやハドラー、ベンを追い詰めている光景があった。

 

 

 

「グランナードも死んだか……まあ良い。どの道我の前にひれ伏すのだからな」

 

「ほざけ、貴様に私をひれ伏すことなど出来はしない。いくら貴様が竜の王とて竜の騎士には叶わん」

 

 真・竜王とバランがそう対峙し、火花が飛散る。

 

「気をつけてバラン! そいつはメタル化している上にアタカンタとマホカンタのバリアを常に張っているわ。その対象外の技でしかダメージは与えられないわ!」

 

「なるほど。ならば竜闘気、それも遠距離でなければならんということか」

 

 竜閃紋を放ち、真・竜王に攻撃するが真・竜王は全くのノーダメージ。

 

「この程度では効かぬか」

 

「くだらん真似をするな半端者!」

 

 真・竜王が試されたことに憤怒し、ベギラマを放った。

 

 

 

「(奴のベギラマは通常のベギラゴン以上……となれば、避けるしかない!)」

 

 バランが納刀し、ベギラマを避け、真・竜王の懐へと潜り込む。

 

「バカが!」

 

 戦闘において懐に入ることはインファイトに持ち込むということであり、多少の傷を覚悟にする戦闘スタイルに切り替えることに他ならない。しかし真・竜王にはアタカンタの結界があり、インファイトに持ち込んだところで傷つくのはバランのみである。

 

 真・竜王の拳がバランを襲おうとした瞬間、バランが直ぐ様剣を抜いた。

 

「気炎万丈!」

 

 バランの剣が真・竜王の拳をチーズのように裂いていき、その腕は犠牲となる。

 

 

 

「バカな……っ! 何故アタカンタが作動せん!?」

 

「アタカンタはマホカンタの物理版だ。私が攻撃すれば何事もなく弾き返すが既に攻撃を弾き返したものであればその対象にならん」

 

「つまりカウンターってことね。そういう抜け道があるなんて、流石竜の騎士ね」

 

「だ、だが我が物理攻撃しなければ良いだけのことだ! これでも喰らうが良い!」

 

 業炎のブレスを吐き、周囲を焦土に返すとともにバランが伏せ、ジゼルに顔を向けた。

 

「ジゼルっ! 例のブレスを!」

 

「待っていました! そのブレス!」

 

「しまっ……!?」

 

 真・竜王のブレスはオーロラブレスとは異なり威力が高いだけの炎のブレスであるのに対してオーロラブレスは相反する属性を混じり合わせた消滅の息である。故にそれを直撃してしまった真・竜王は自らの身体が消滅するとともに、その未来を見た。

 

「(かくなる上は……!)」

 

 真・竜王が最後の悪あがきにそれを作動する。

 

 グランナードは本来ハドラーの禁呪法を用いて生まれた魔物であるが、真・竜王はそのグランナードの魂を利用して死の大地そのものに命を吹き込んで蘇らせた。しかしバランの手によってグランナードは倒れ、大地も元に戻りつつあった。

 

 だが完全にグランナードの魂が消えた訳では無く、僅かながらに残っていたグランナードの魂が自己犠牲呪文(メガンテ)を唱えると地面が光輝き始める。

 

「いかん! 空へ逃げろ!」

 

 バランがそう警告すると全員空へ避難し、爆風に巻き込まれる形で舞い上がった。

 

 

 

 かくして魔界の第三勢力、竜王軍は真・竜王が滅びたことにより消滅し、残った有象無象も竜王軍から脱退していくことになる。




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