ガンダムブレイカー 星達の記憶 (バイン)
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寂れた町にて、はじまる

地球と宇宙を繋ぐ軌道エレベーターが完成してから、五年という歳月が過ぎて。

プラモデルを駆使し、シミュレータ上でロボット同士の戦闘を行う競技『ガンプラバトル』の世界大会で、軌道エレベーターを舞台にした決勝戦での騒動やそれに続く利権に目の眩んだアラブの石油王によって引き起こされたコンピューターウィルス騒動等々……様々な事件や事故が起こったものの、その全てをはね除け、人類は進歩を続けてきた。

今やアニメで見た宇宙旅行も間近……とはまだならないが、そんな事が出来る日も少しずつ近づいている。

そんな希望が持てる未来が待っている中で、この物語は始まる。

 

────────────────────

 

某県に位置する田舎町、『音美有町』。

人口千人にも満たない、少子高齢化の進んだ町の寂れた市街地に存在するホビーショップ『スターダスト』にて。

 

『あと三ヶ月程に迫って参りました、「ガンダムブレイカー」ですが、第20回という記念すべき回ということもあり、例年に比べてかなりの数の参加者が集まると予想されており、現時点で仮登録の人数が全国で数千人に達したとの情報もあり、一ヶ月以上の長期的なスケジュールの中でファイター達が激戦を繰り広げることが予想され……』

 

「第20回、かぁ……よくそんなに続いたもんだよなぁ」

 

店番の店員らしい少年が、カウンターに頬杖をつきつつ、テレビのニュースを眺めながらぽつりと呟く。

店内には少年以外の姿が無く、少年も暇そうにテレビを眺めていることから、暫く誰も来ていない事が伺える。

 

「というか日本だけでもう数千人ってことは……世界から来ることも考えると絶対に万単位で参加するよな、これ」

 

驚嘆して、それでも少年はどこか無関心な様子で言葉を続け、カウンターに寝そべりながらテレビ内に流れるニュースについて話し続ける。

 

『ガンダムブレイカー』。

発端はおよそ十数年前にまで遡る、そこそこに歴史のある『ガンプラバトル』の世界的な大会である。

同じように世界的に有名でレベルの高い大会は他にも存在するが、この大会の特長は、『参加』が容易なことであることだ。

例えば『ガンプラバトル選手権世界大会』も同じようにガンプラバトルの世界的に有名な大会ではあるが、こちらはどちらかというとファイターやビルダーとして国際的に有名であったり、国や大企業からのバックアップを受けた『プロ』向けの大会である。

ファイター一人一人のレベルが高く、白熱した戦いを繰り広げる様は多くの人が熱狂するが、いざ自分が参加しようとなると、難しくなる。一度負ければ終わりというトーナメント形式で、各々が死力を尽くして戦うこととなり、一般人では到底参加できないようなレベルの戦いとなっている。

しかし、『ガンダムブレイカー』は、そういった大会に参加している『プロ』だけでなく、ガンプラバトルを趣味や息抜きとしてやっている程度の一般人でも参加が容易い。

試合の形式が一対一やチームでのデスマッチ形式だけでなく、本選前の予選では無数のオリジナルガンプラ達が入り乱れる『バトル・ロワイアル』形式を取って行われ、一度負けたら終わり、という訳ではなくどれだけの戦果を挙げられたかによるポイント制のために期間中はバトルを気軽かつ様々な人と楽しめる。

勿論、ポイントを貯めて本選に進んだチームは、日本一、世界一の座を目指して白熱したバトルを繰り広げることもあり、本格的なバトルを見て楽しみたい、という人間も存分に楽しめる大会である。

全国・全世界から人間が集まる為にかなりの規模となり、万博やオリンピックのような大きな祭典にも負けず劣らず、実施中は世界の注目の的となる。

 

「参加だけなら無料だけど……うーわ、これ予選突破するのも一苦労だよなぁ……」

 

少年が手にした『ガンダムブレイカー』参加のための用紙と、 『GP01』と書かれたケースを交互に見やりながら唸っていた所。

 

「おー、いたいた。相変わらず暇そうよね、アンタ」

 

閑古鳥の鳴いていた店内へと、一人の来訪者がやって来る。

すわ来客か、と思って背筋を正した少年だったが、その姿を見てすぐに再び姿勢を崩す。

 

「なんだよ……久々の客かと思ったら……」

 

「なによ、何もせずバイト代が入ってくるんなら暇で結構じゃないの」

 

無遠慮につかつかと店内へと入ってくる来訪者へと無愛想に声をかける少年。

その来訪者……肩まで届く茶髪のロングヘアに前髪に赤い髪留めをした、少し小柄で健康的な体型の少女は、少年のいるカウンターの中まで入ってくる。

 

「おまっ……一応仕事中だぞ、ここまでは入ってくんなって!」

 

「いーじゃないのよ、どうせ誰も来ないんだし。ほら、さっさと行くわよ!」

 

「行くわよってどこに……あいててて!ひ、引っ張るなっておい!」

 

少女に腕を引っ張られて、店の外に連れ出され、どこかへと少年は連れ去られていく。

 

「はなせっ、て!……お前が急なのは今に始まったことじゃないけどさ……今度はなんだ?」

 

少女……『アキナ・ムロマチ』の手を振り払って、少年は問い掛ける。

その問いに、アキナは冗談めかして答える。

 

「ふふん、なんだと思うかねコウキくん?」

 

「勿体ぶってないでサッサと教えてくれ」

 

「ちぇっ」

 

仏頂面の少年……『コウキ・ミウラ』に対して、アキナは……高らかに答える。

 

「優勝するのよ……『ガンダムブレイカー』にね!」



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戦う理由

一週間以内に投稿したかった……



「……それは難しいんじゃないか?いや……無理だと思う」

 

『スターダスト』から少し離れた喫茶店、『バーミンガム』にて、コウキ達はあることについて話し合っていた。

 

「『ガンダムブレイカー』で優勝するってのは無茶じゃないかなぁ……」

 

論題は『「ガンダムブレイカー」に優勝すること』に関して、である。

ここでいう優勝、というのは『ガンダムブレイカー』予選のバトル・ロワイアルで『エースポイント』と呼ばれる功績点を一定以上獲得し、後に行われる本選を勝ち抜き、最終的に機動エレベーターの頂点……『宇宙』で行われる決勝で勝利し、世界一へと輝く、ということである。

……書くだけならば簡単であるが、それを成し遂げるにはまずかなり高い数値に設定されている『エースポイント』を稼がなければ本線という舞台にすら立てない。よしんば本選に行けても、そこから先は全世界から集まった猛者達との過酷な戦いを、勝ち抜かねばならない。

実力が十分でも、相手のガンプラとの相性次第によっては敗退することだってある。実際、前回大会では他の大会で優勝経験のあるプロのチームですら、本選の第一試合で相性の悪い相手とぶつかってしまいまさかの一回戦負けを喫するという番狂わせすら起きた。

『絶対』の存在しない、真剣勝負の舞台。生半可な実力では相手にすらなれぬ、その戦場で勝ち残り『優勝』の二文字を勝ち取りたい、と目の前の少女は語るのだ。

乗り気でない様子のコウキに、アキナは不満げに問いかける。

 

「なによ、やる前からそんな諦めムードなんか出したりして……何も61式戦車でビク・ザムと戦うってわけじゃないのよ?」

 

「こりゃそれ以上のことだっての……」

 

「アンタねぇ……四年前に立派な『お手本』がいることを忘れたの?『彩渡商店街ガンプラチーム』という町のチームが二連覇を成し遂げたのを」

 

『彩渡商店街』。『ガンダムブレイカー』を知っている人間ならば知らない人間は存在しないであろう、伝説のガンプラチーム。

付近に百貨店が出来て潰れかけていた商店街を盛り上げようと立ち上がった、一人の少女により結成されたチーム。

四年前の『ガンダムブレイカー』に出場し、日本一となって当時最強と謳われた最強のファイター、初代『Mr.ガンプラ』を撃ち破ったのち、一度の敗北を挟んでのち、世界大会決勝の舞台で発生したウィルス事件を解決し、そして『世界初のMS乗り』となり、正式に行われた決勝にて無事優勝を果たし、翌年行われた『ガンダムブレイカー』にも出場、 二連覇という快挙を果たし、商店街を救った伝説のチーム。

そんな無名から勝ち上がった例を挙げて、発破をかけようとするアキナの意向とは裏腹に、コウキの反応は冷めきっている。

 

「そうは言ってもなぁ……参加するのはお前と俺だけだろう?あそこは『トイボット』を参加させてたけどあれ結構高いしさぁ」

 

「あ、集める予定だからそれはいいのよ!」

 

「それに装備の問題だってあるしさぁ……『ガンブレ学園』とかみたくきちんとした設備とかもなしに戦えるか?『スターダスト』にある装備なんてたかが知れてるし」

 

「そんなものは気合でカバーすんのよっ!」

 

ばん、と勢いよくテーブルを叩いて立ち上がるアキナ。幸い店内に誰もいないため叱責が飛ぶことはなかったが、カウンター近くでグラスを磨いていた店長らしき髭を蓄えた中年の男にじろり、と睨まれて慌てて座り直す。

 

「私はね、この町を救いたいのよ。……生まれ育った町を守りたいの」

 

こほん、と咳払いをして、先程とは違い静かに話始めるアキナに、しかしコウキの反応は変わらない。

 

「そう……まぁ俺も一応参加はして会場限定パーツとか集める予定だしらそのついでにならいいぞ。……勝てるかと言われると厳しいが」

 

「そんなんじゃ駄目って言ってるでしょ!勝つのよ!……こうなったら、最後の手段を使う必要があるみたいね」

 

どんな呼び掛けにも大した反応を示さないコウキに業を煮やした様子でため息をついたのち、仕方ない、といった様子で鞄から携帯端末を取り出して少し操作したのち、コウキへと手渡す。

怪訝な顔をして端末を眺めているコウキだったが、携帯端末の動画が流れだし、そちらへと注目する。

 

『今回の『ガンダムブレイカー』特集には、特別ゲストとしてあの三代目『Mr.ガンプラ』に来ていただいております!』

 

『はいはーい、どうもーよろしくですー』

 

動画はニュースを録画したものらしく、アナウンサーらしき女性とアフロとグラサンと独特な格好をした男がスタジオ内にて話をしている。

三代目『Mr.ガンプラ』……世界最初の『プロ』のガンダムファイターの名を受け継いだ男、らしい。初代は四年前に行われた『ガンダムブレイカー』の数ヶ月後に引退を表明、一年後現れた二代目『Mr.ガンプラ』は襲名して後ほんの数日で失踪、そして去年新たに現れたのがこの三代目……らしい。

胡散臭く、飄々とした人柄ながらも、その実力は文句なしに『強い』。一度テレビの企画で行われた最早リンチとさほど変わらないような状況からの戦い、『1vs50』を勝ち残ったことでその実力は誰もが知ることとなった。

ビルダーとしてもファイターとしても超一流の人間として、彼を尊敬するものは少なくない……が、コウキを最も動かしたのは彼ではない。

暫く他愛ないファイター理論やガンプラのトレンドの話があったのちに、『ガンダムブレイカー』の優勝者へ送られる景品の話題に繋がる。

 

『今年の『ガンダムブレイカー』の優勝には、恒例となっているMr.ガンプラへの挑戦権と、なんと今回は副賞が用意されているとのことです!それがこちら!』

 

アナウンサーが芝居がかった仕草で手を振り上げると、プロジェクターによりスタジオ内に巨大な『何か』が映し出される。

全長は二メートルを軽く越す巨体に、巨大なコンテナと砲身の『オーキス』を纏ったMS……『デンドロビウム』の姿が。

 

「おっ……おおおおおおおお!?」

 

『副賞として優勝者には、現時点で世界最大のガンプラ、『1/50 試作3号機デンドロビウム』が贈呈されます!』

 

『うぉぉ!?デッケェ!?』

 

その偉容を見た画面内のMr.ガンプラとコウキが唸りを挙げる。

その様子に手応えを見たアキナは、確信した様子で不敵な笑みを浮かべて、固まっているコウキからひょい、と携帯端末を取り上げる。

そう。『コウキ・ミウラ』という男は……『機動戦士ガンダム0083 STARDUS TMEMORY』というシリーズを好んで……いや、『尊敬』している。作中に出てきた台詞は全て空で言え、ガンプラを購入・改造するときもこのシリーズを好んで使用する。……食費を削ってまでも食玩やポスター等を買い、自分の部屋へと所狭しと貼る辺りは筋金入りだ。

そんな男が、この作品で最も有名ともいえるモビルスーツ……『デンドロビウム』に釣られない訳がない。『そんな巨大なものをどこに置くのか』 『そもそも組み立てられるのか』なんてことなど些細な事だろう。好きなものに理由を付けるような男ではない。

 

「……アキナ!」

 

「よし!乗り気になったって感じ……」

 

「こんなとこいる場合じゃないだろ!さ、さ!速く『スターダスト』に戻って優勝の為の作戦を練るのと、『勝てる』機体を作るんだ!」

 

「……ここまでとはちょっと思わなかったわ」

 

支払いすら忘れて勢いよく喫茶店から出ていくコウキの後ろ姿を呆然と見つつ、あきれて呟いた。

 

─────────────────

 

「1/50デンドロビウム……!1/50デンドロビウム……!1/50デンドロビウム……!」

 

うわ言のように呟きつつ、『スターダスト』へと全力で駆け出し、数分も掛からずに店の前へとたどり着いたコウキは、その勢いを殺さぬまま店の中へと駆け込む。

勢いよく扉を開けたあと、カウンターの奥へと向かおうとして、店内に一人、来客がいることに気づく。

これから店長に連絡をしてここを貸しきりにしよう、と考えていたために、少し対応に困る。

一人くらいだしさっさと対応しておこう、と宇宙世紀系統のガンプラのあるエリアを物色し、『HG ゲルググ』の箱を手に取った男に近寄って声を掛ける。

 

「あのー、何かお探しでし……」

 

声に反応した男が、こちらに向き直った時、コウキは絶句した。

メッシュが入った銀髪に意思の強さを感じさせる黒い瞳、凛とした佇まいは180cmを越える身長も相まって『美丈夫』という言葉がよく似合う。

その男は、コウキの姿を認め、不敵ににやりと笑い、答えた。

 

「久しいな、コウキ・ミウラ」

 

そう声を掛けた男……『アラフミ・カトウ』に、コウキは厳しい瞳を向けた



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激突

間がクッソ開いてる上にそんな進んでません……ゆるして……


「……何をしにきた、カトウ」

 

突き刺さるようなコウキの厳しい視線をなに食わぬ顔で受け流し、手にしていたゲルググの箱を戻して、ゆっくりと歩みよってくるカトウ。

 

「フ……久々に海外から帰って来た友人に対してその反応はご挨拶だな」

 

コウキは決して小柄な部類ではなく、一般的な成人男性ほどの身長ではあるが、カトウと並ぶとどうしても見劣りしてしまう。すらりとした長身に透き通るような白髪に凛とした目つき。『イケメン』と言っても過言ではないその顔立ち。

そんなカトウの顔を明らかに歓迎していないとわかるまなざしで見つめるコウキ。

この『アラフミ・カトウ』と『コウキ・ミウラ』は、幼少からの知り合いにして、常々競い合う中である。ことの原因がどちらにあったのか、それは当の本人ですら覚えていないことではあったが、二人は和解をせず、今に至るまで互いの力を競い、ぶつけ合い続けた。時には勉学で、時にはスポーツで、時には『ガンダム』を題材にした議論に至るまで……ありとあらゆる分野で競い合い続けた。

奇しくも進学した大学まで全く同じだったこの二人は、しかして今までは疎遠となっていた。カトウが世界旅行サークルへと入部し、コウキがここ『スターダスト』にてアルバイトをはじめたことによって、だ。

世界各地へと赴き、滅多にこの地へ戻れないカトウとアルバイトに精を出すコウキは、大学の履修している講義も違い、滅多に顔を合わせることがなくなっていた。今日この日、顔を合わせるまでは。

しばしにらみ合い、こう着状態に陥っていた二人であったが、カトウの方が一瞬フッ、と小さく笑って背を向け、唐突な行動に戸惑うコウキを無視するように店の奥へと歩いていく。

店内の最奥までたどり着いたカトウは、そこにおいてあった『あるもの』へと手を触れ、コウキの方角へと振り返って獰猛な笑みとともに、誘った。

 

「しばし疎遠となってはいたが……コウキ、多少は強くなったんだろう?なら、このカトウに、お前の実力を見せてみろ!……『ガンプラファイター』としての力をな」

 

 

─────────────────

 

 

(……ガンプラバトル。奴とやるのは久しぶりだな)

 

技術の向上により、人間がそのまま収まる球形の『ガンプラバトルシミュレータ』は進化を遂げた。 

コクピット内はガンダムらしい計器やレバー、メーターがあしらわれた機械的なコクピット、『機動武闘伝Gガンダム』の『MF』などで採用されているような操縦者の動きを完璧に再現する『モビル・トレース・システム』を模したもの、従来のシンプルな操縦桿だけのコクピットと自由にカスタマイズが可能になっている。

本物のMSや戦闘機のように計器がそこかしこに存在し、ボタンやレバーの増設されたコクピット内にて、操縦桿をぐっ、と握りしめる。

 

(アイツが何を企んでいようが…今は勝つ!大丈夫だ、奴の戦い方はよーく分かってるんだ…!)

 

「コウキ・ミウラ、ガンダム一号機ゼフィランサス、発進します!」

 

 

─────────────────

 

無機質なコンクリートに重々しい振動が響く。

真昼、ぎらぎらと照りつける太陽を反射するコンクリートの地面を、一体の機体がゆっくりと歩を進める。

白い両腕と両脚、腹部の赤と胸部の赤とトリコロールカラーに塗られ、頭部はライトグリーンの光を放つツイン・アイにV字アンテナと、どこかあの『RXー78ー02 ガンダム』を思わせるようなカラーリングと輪郭。

機体の名を『RX-78GP01 ガンダム試作1号機 ゼフィランサス』と言う。

 

『……基地ステージの建物、HGなら機体がすっぽり隠れられるような高さだったなんてな』

 

シミュレーター内でゼフィランサスを動かしているコウキの声が内蔵されているスピーカーを通して響く。

ゼフィランサスの頭部をゆっくりと動かし、建物がそこかしこに存在し視界が悪くなっている状態で周囲を警戒する。

同じようにシミュレーター内にログインしている筈の男…カトウの機体を探してはいるものの、周囲の建物の高さはゼフィランサスの背丈すら超える程であり、視界はお世辞にも良いものとは言えず、索敵を難しいものにしていた。

視界の悪さに対して苛立ちを覚え、スラスターを一時的に吹かして上から俯瞰するような形で眺めるべきか、とそんな考えが浮かんだ瞬間、コクピット内を甲高い警告音と『LOCK ON警報』という無機質な電子音声が鳴り響く。

 

『ロックオン警報!?どこから……うっ!?』

 

唐突の出来事に慌て、浮き足立つコウキの焦りを受けて、咄嗟の回避行動すら取れずに地面に着弾した砲弾により体勢を崩して地面へと轟音とともに倒れ込むゼフィランサス。

空から連続して降りそそぐ砲弾を左手のシールドで防ぎつつ、なんとか機体を起こして敵を視認しようとカメラを動かす。

しかし、敵を確認する前に、別種のアラートが鳴り響く。

…後方から『接近警報』が。

 

「なっ……!?うし、ろ……!?」

 

『遅い』

 

慌てて振り向いた直後、巨大な金属同士がぶつかる轟音が鳴り響き、ゼフィランサスの左手から盾が弾き飛ばされる。

盾を諦め、咄嗟に後方へとスラスターを吹かして飛びすさって、ようやく攻撃を仕掛けてきた張本人の姿を視認する。

ゼフィランサスと同じ『ガンダム開発計画』により開発された機体であり、全体的に重厚なボディに両肩に装備された大型のフレキシブル・スラスター・バインダーが取り付けられていることもあって機体をかなり巨体に見せている。

頭部は同じようにツイン・アイにV字の角といったガンダム・ヘッドとなる部分は同じであるが、それ以外のデザインはゼフィランサスとは別物となっており、見る人間からすればどこか『悪人面』と言われそうな顔立ち である。

何よりも最大の特徴である、大柄な機体の半身を覆い隠せるほどのサイズの重装の騎士が手にしているような武骨な盾。

『RX-78GP02A ガンダムGP02A サイサリス』を元に、細部を調整された機体が、そこにいた。

 

『ほう……さっきの蹴りは腕ごと持っていく気で放ったが……中々どうして、機体の作り込みは悪くないようだな』

 

正面の機体…『プロトサイサリス』から、カトウの声が聞こえてくる。

コウキがゼフィランサスを操縦しているのと同じように、カトウもシミュレーターを駆使しサイサリスを動か しているのだ。

 

『だが……機体は悪くなくとも、パイロットには問題があるようだな。鈍ったな、コウキ』

 

残念そうな口調でコウキに言いつつ、サイサリスは腰部から円筒状のパーツを抜き放ち、青い刀身を出現させてビームサーベルとし、盾と共に構える。

 

「ほざいてろ……っ!」

 

軽く吐き捨てると同時に、手にしていたプルバッブ・マシンガンを放り捨て、バックパックにマウントされている発振筒を抜き放って、同じようにピンクの刀身を出現させて応じる。

盾がなくなって片手が空いたため、柄を両手で握り締めて、腰を軽く落として構える。

 

じりじり、じりじりと互いに間合いをとりつつ、二体の鋼鉄の巨人が睨み合う。

  

 

…数秒続いた睨み合いは、コウキが動きを起こしたことで拮抗が破られる。

体勢を低くして、両手でサーベルを握りしめ、アメフトやラグビーのタックルのような体勢で、バックパックのスラスターを全開で吹かして、プロトサイサリスへと突進する。

 

「であああああああああっ!」

 

突っ込んでくるゼフィランサスを見て、カトウはあえてどっしりと構え、真っ向から受け止めにかか…

 

『……だから鈍った、といったのだ』

 

「アッ………!」

 

ると見せかけ、ギリギリのところで身を翻して突進を避ける。

体勢を戻そうとするも既に遅く、つんのめってた倒れこんだゼフィランサスの右肩へと青い光刃が振り下ろされ、腕ごとビームサーベルが機体から離れていく。

コウキがゼフィランサスを起こす頃には、油断なく刃か向けられ、下手な動きを見せればすぐさまコックピットのある腹部を付けるように構えているプロトサイサリスの姿がそこにはあった。

 

『勝負あり、だな。……フン、素組みの機体と鈍った腕ではこの程度だろう。これで「ガンダムブレイカー」にに挑もうとは片腹痛いわ』

 

冷たい言葉が投げ掛けられる。その言葉に対して、ぐっ、と堪えて俯くコウキ。

しかし、その表情は次の瞬間、驚きへと変わる。

 

『入ってやろう』

 

「……は?」

 

『貴様らのチームに、俺も参加してやろう、という訳だ』




間が開きましたがこっから頑張って投稿して出すよう努力させていただきます

……ライダー募集にもご協力していただければ幸いです


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