ライドヘイセイバーに活躍を! (無個性のソーイお茶書き)
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番外編
【嘘予告】劇場版ライドヘイセイバーに活躍を!〜GODFOUL〜
———俺たちはResistance。宗教の管理者だ。
魔王幹部を順調に倒しつつライドウォッチを集めていたこのすば御一行の前に、史上最強最難関の敵が立ちはだかる!
———どうやら仮面ライダーの力を使って過去に行きアクシズ教の教祖を殺そうとしているようですね
———なんでそんなに冷静なのよー!
原因を察するカンタ!
教祖が消えたことにより存在自体が無かった(知られない)ことになりそうなアクア!
———やっぱあいつら普通に正義の味方だろ!
———その証拠と言わんばかりにアルカンレティアがまともな街になっているな…物足りない。
Resistanceの肩を持つカズマ!
通常運転なダクネス!
———アクア様が……消える…?
1人でシリアスしているミツラギ!
———では行くとしましょうか!アクシズ教開教の時代へ!
———めぐみんめぐみん!お弁当どれにする!?
目を紅く光らせ興奮するめぐみん!
お友達と初めてのピクニック気分なゆんゆん!
そして戦いは魔王のポテンシャルが最高潮の時代へと移行する!
勃発!水の女神アクア VS Resistance!
———ゴットブローが効かない!?なんで!
———アクシズ教自体に、意味がないからな
———攻撃効かないのはいつものことだけどな
突き落とされる、女神道!
———ねぇカズマ。私、本当にいらない子なの?
そして試される仲間との絆!
———また来たか…ジオウ!
———自分はカンタであり時の王者ではないです!
Resistanceとは関係なしに始まる魔王との戦い!
———なんか、いける気がする!
———まさか……常盤ソウゴ!?
そして現れた本物の仮面ライダージオウ!
果たしてライドヘイセイバーは活躍できるのか!?
———アクア。お前一応元なんたらなんだろ?だったらさ、たまにはその実力、見せてやれよ!
———ちゃんと現在進行形で女神よ!あとたまにはってのが余計だわ!私はいつだって全力なんだから!
———屋敷でゴロゴロしているから説得力ないな
ライドヘイセイバーに活躍を!
〜GODFOUL〜
———まさかお風呂で亡くなってしまうとは思いませんでしたよ?カズマさん
———スイマセン…もうちょい危機感持ちますね…
8月32日公開!
「映画前売り券を買うともれなくアクシズ教の入信申し込み書が!」「ついてこねーよ!」
☆☆☆☆☆
———お前たちの宗教って醜くくないか?
———カンタもそう思います
———わかるマーン
———ちょっ!?なんで同意してんのよあんた達!
実際のところ宴会以外はヤバイ所しかないアクシズ教を彼らは守れるのか!
そもそも守る気力が湧くのか!?
ライドヘイセイバーに活躍を!
〜GODFOUL〜
「絶対に見逃さないでちょうだい!」
「これ本当にライドヘイセイバー活躍します?」
☆☆☆☆☆
———祝え!……いや、やっぱり祝わんでいい!
———な、なんでよー!?
君はもう見たか!?
タイトルとは全くかけ離れた内容になりかねない史上最大の馬鹿騒ぎ!
ライドヘイセイバーに活躍を!
〜GODFOUL〜
『——変身!』
『ゴットタイム!』
☆☆☆☆☆
———しょぉがねぇなぁ!!
———なんだかんだで魔王幹部を倒してきたカズマさんだぞ!これを継承できても別におかしくねぇよなぁ!
『行くぜ……変身!』
『サトウ!』
祝え!お伽話の勇者『サトウ』の力を受け継ぎ、勇者候補から勇者へと進化した冒険者を!
『ブレイブタイム!』
ライドヘイセイバーに活躍を!
〜GODFOUL〜
「クリエイトウォーター!フリーズ!」
「その戦法は変わらないのですか!?」
要望があったら別パターンを追加します。
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本編
プロローグ
前略、自分、転生しました。
特典は『ライドヘイセイバー』と『ディケイドライドウォッチ』セットでお得だったので。
なんかそれだけでいいのかと女神様に心配されたので、それなら絶対に盗まれないようにご加護をお願いします、と言ったら了承されました。
ねだってみるものですね。
因みに年齢は16歳の高校2年。
農家を目指すか父親と同じ職場に就職するかを決めかねていて取り敢えずどっちに転んでもいいように体だけは鍛えていたから筋力と体力には多少自身があります。
流石に戦いまくっているであろう異世界人の皆さんには敵わないとは思いますが。
この世界での最終目標は魔王を退治すること。
それでは初めての異世界、頑張って生き残って行きましょう。
☆☆☆☆
ふむ、ここは中世ヨーロッパ程の建築技術はある異世界のようですが、ファンタジーというのは大体そんなものです。気にしなくてもいいでしょう。
取り敢えず、所持品を確認します。
ポケットにはカロリーメイトと一本満足バーが2本ずつ。
服装は赤色ノースリーブのジャージ上下セットで、いつのまにか自分の手には『ディケイドライドウォッチ』と『ライドヘイセイバー』ついでと言わんばかりに、金貨が二枚握られていました。
……見事に不審者ですねぇ。
ある程度稼げたらヘイセイバーを入れておく鞘みたいなものや、この世界の一般的な衣服を買う必要がありそうです。
それと、この金貨はおそらくこの世界の通貨だと推測します。綺麗な円形をしていますし、意味もなく金塊を渡すとも思えません。
宿代などは…確かゲームの世界に似た場所と説明されましたし、モンスターを狩れば稼げるのでしょう。
装備も、流石に序盤の方では特典を使用しても勝てないような敵もいないと思うので、今すぐ必要というわけでもないですし。
これらのことを踏まえると、そもそもモンスターを狩るのに何かライセンスが必須の可能性が高くなってきますね。
となると、そう言ったものを取るための手数料としてこの金貨を使用するのが正解ですね。
よし、ならばその辺に仰向けでぶっ倒れている魔法使いのような格好をした少女にその場所を聞いてみますか。
▼どう声をかける?
▼優しく
激しく罵るように
萌え豚のように
「もしもーし、お嬢さん、大丈夫ですか?どこかお怪我でもされましたか?」
「あっ、はい大丈夫です特に怪我はないのですがお腹が空いてて…もう二日も何も食べてないのです」
二日も何も……やはり異世界というのは厳しいものなのでしょうか。
▼取り敢えず、自分のポッケから…
虚無(キョム)
カロリーメイト(プレーン)
▼一本満足バー(シリアルチョコ)
を取り出して、包装を開け倒れている彼女の手に握られます。
「これは自分の国の栄養補給用のお菓子です。粒々の部分を喉につまらせないようにゆっくりと食べてくださいね」
「あ、ありがとうございます(はむっ、バリッ)お、美味しい…!そして甘い!」
少女は自分の注意をもう忘れてがつがつと一本満足バーを食してしまいました。
喉には詰まらせていないようなのでひと安心です。
▼話を聞く
倍プッシュだ…!
全部突っ込む(どの穴とは言わない)
「あの、貴方はここで何をなさっているお方なのでしょうか…?見たところ、魔法使いのような格好をしていますが」
「よくぞ聞いてくれました!」
自分がそう尋ねると彼女はマントをバサァッと翻し、落ちいていた杖を構えて盛大に名乗り出しました。
「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……!(クゥ〜)うっ…すみません、さっきのもう一本ありませんか…?」
結構感心して聞いていたのに随分と締まらないものですね。
▼満足バーを差し出す。
カロリーメイトを差し出す。
虚無を差し出す。
「ありがとうございます!」
ハムスターのように頬張るめぐみんと名乗った少女はとても愛らしかったです。
さて、流石に多少は腹の足しになったと思いますし、こちらの質問に答えてもらいましょうか。
その眼帯は?
あんた処女?
やーいやーいお前家オッバケ屋〜敷(カンタァ!)
▼職業について
「アークウィザード…魔法使いの上位版ですかね?それって自分にもなれるでしょうか…?」
「それは本人の資質によりますね…確かめるには冒険者ギルドに行くのが早いです。というか、貴方はその剣を見るに、剣士の方かと思いましたが」
「いえ…これは
「いいですとも!」
……ふむ、冒険者ギルドですか。おそらく、この金貨の使いどころはそこでしょうね。
ついでにその辺も聞いてみます。
「あの、モンスターとかを狩るためには何か許可がありますか?」
「モンスターを狩る事だけなら特に許可はありませんよ?ただ、有料の冒険者登録をしていないと依頼としてモンスター討伐を受注できず、報酬が発生しないので、ボランティアになってしまいますが」
「なるほど、ありがとうございます。大体わかりました」
本当にゲームのような世界観なのですね…。
詳しいルールとかも聞いてみたかったのですが、流石に迷惑をかけてしまいそうなので自重します。
「あっ、そういえば貴方の名前を聞いていませんでしたね」
我が名(ry
スッペラピッチョン
▼本名を名乗る
「自分の名前は
そんな会話をしていると、めぐみんさんが
「あっ、着きましたよ!」
と、少し大きめの建物を指差しました。
「………ここが…冒険者ギルド…!」
こんなにワクワクするのは久しぶりな気がします。………自分はまだ見ぬ冒険を夢想しつつも、その扉を開きました。
▽To be continued▽
三つ目の▼で一番下を選んでいたらR-18ルートへ進んでました。
ちなみに作者はそんな描写書けないので主人公が普通の行動とってくれて一安心。
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登録・討伐
「あ、いらっしゃいませー。お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いている席へどうぞー!」
赤髪のお姉さんが愛想よく出迎えてくださいました。
……なんというか、想像してたより綺麗な場所ですね、冒険者ギルド。
酒を飲んでる人はいますが、床が油まみれで汚いと言った様子は見受けられませんし。
それと何故か女性が多いですね…血走った目でこちらを凝視されるのは少し恐怖を覚えます。
「なにぼーっと突っ立ってるんですか。さっさとカウンターに行って冒険者登録をしてきたらどうですか?許可がどうのこうの、と言ってましたし、魔法使いの素質と共にやっておくといいでしょう」
おっと。
めぐみんさんに注意されてしまいました。
確かにここにいつまでもいたら出入りの邪魔になりそうですし、空いてるカウンターに行ってさっさと確かめてきましょう。
「そうですね。では行ってきます」
めぐみんさんに一言声をかけて奥に向かったのですが……なんでこの4つある内の一列だけ妙に長いのでしょうか?
ハッキリ言って時間の無駄ですし、そこにいる職員さんの負担も大きいはずです。
少なくとも、このカウンターでの仕事内容は同じように思えますし。
……まぁいいです。ここで自分がどうのこうの突っかかった所でたかが知れてます。スルーしましょう。
☆☆☆☆
一番人の少ないところに並んで、遂に自分の手番が回ってきました。
「いらっしゃい。今日はどうしたの」
やけに馴れ馴れしい職員ですが、この人、なんとなく強いってことが素人の自分にも伝わってきます…!
怪我で冒険できなくなった元冒険者でしょうか?
それはともかく冒険者登録をしにきたことを伝えると、冒険者の心得とか注意事項、書類の提出諸々を求められたのでささっと聞いたり済ませたりします。
「はいよ、したらこのカードに触りな」
自分は無言でカードに触れます。
「ふむふむ…器用値が低めなことを除けば全体的に平均より上だね。特に生命力と筋力が目につく。前職は土木関連の何かい?」
▼どう答える?
我が名(ry
▼適当に誤魔化す。
そんなことは関係ない。
「ええ、そんなところです…えっと、オススメの職業とかはありますか?」
「なかなか礼儀正しい子だねぇ…今時珍しい。まぁそれはそれとしてだ。あんたはそうさなぁ…流石にすぐ上級職とはいかないが『戦士』から始めて見るのはどうだい?」
▼どう答える?
はぁ?戦士とか汗臭いのはごめんだね!
もっとスマートがいいな!
▼戦士に魔法は使えるか聞いてみる。
「成る程……あの、戦士って魔法の使用はできますか…?」
「補助として使える魔法ならあるが、攻撃的なのは無理だね……なんだい、魔法が使いたいのかい?」
「いえ、補助でも使えるならありがたいです!それに、合わなかったら職業変更しますので問題ないかと」
「まっ、それもそうさね。頑張りなよ、冒険者ギルドへようこそ。他はともかくあたしはあんたの活躍、期待してるよ」
「はいっ!ありがとうございました!」
ぺこり、と頭を下げて自分はその場から立ち去りめぐみんさんの元へ戻りました。
☆☆☆☆
▼どの依頼を選んだ?
一撃熊の討伐
▼ジャイアントトードの討伐
犬の捜索
初心者にオススメと書かれた依頼を受けて平原にやってきました。すでにターゲットが一体うろついている様子。
めぐみんさんも、自分一人だと不安ということを話したら快く付いてきてくれました。
自分が戦士を選んだと伝えた際に、少ししょんぼりしていたのが愛らしかったです。
危なくなったら自分のところまで逃げてくれれば魔法でなんとかしてくれるそうです。
頼もしい限りですね!
…さて、ようやくライドヘイセイバーの出番がやってまいりました。
まずは遠距離系っぽいものからやってみましょう。
『ヘイ!ドラァイブ!』
針を一回転させたらドライブの音声が鳴ったので、これはおそらくオモチャ基準のライドヘイセイバーなのでしょうね。
『ドラァイブ!デュアルタイムブレーイク!』
「ほっ!やっ!はっ!」
自分が三回剣を振ると赤、緑、紫のタイヤが飛び出てジャイアントトードに激突しました!
赤色(炎)はあまり効果がないようですが、紫と緑のタイヤはジャイアントトードの肉を切り裂くようにダメージを与えてくれました!
…うん、多少グロいですが耐えられないほどではないですね。
これならいける気がします。
「ゲッゴォッ!」
あっ、まだ生きているようです。
しかも結構な速度でこっちに飛んできました!?
こ、このままでは押しつぶされてしまいます!
ならば!
『ヘイ!ブレイド!』
『ブレイド!デュアルタイムブレーイク!』
のしかかられる前に真っ二つにするまでっ!!
「うぇぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
"ズバァン!"
「フゥーッ……怖かったぁ…」
ライドヘイセイバーから放たれた白い斬撃はジャイアントトードを綺麗に二等分に切り分け、自分のいる空間に落ちてくることはありませんでした。
「あと、これを…4回…!」
自分は内臓とか普段見えてはいけない部分が見えてるカエルをなるべく直視しないように、次の標的を探し始めました…。
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爆裂魔法!
『ヘイ!鎧武!デュアルタイムブレーイク!』
「これで、最後です!」
「ゲコォッ!?」
ズバッ!と脇腹を切り裂かれたジャイアントトードは大きな断末魔をあげて絶命しました。
あたりに、ミカンの香りが広がります。
……風味をつけてしまったようです。
「どうやら終わったようですね。まさか私の助けもなしにここまでやるとは想定外ですよ」
「いえ、いざとなったら助けてくださるめぐみんさんがいてくださったからこそですよ。心に余裕が生まれてやりやすかったです」
それと、スキルの恩地が大きいですね。
ジャイアントトードを倒していくらかレベルが上がり、スキルポイントが発生したので取らせていただきました。
『片手剣』スキル、これがあると無いとではヘイセイバーの扱い方がまるで違ってきます。
ライドヘイセイバーは両手持ちと片手持ち、どちらでも使用可能。
ですので、今後お金が貯まったら盾を購入する為に、今回は片手剣スキルにしました。
「これで5匹討伐完了ですね。ジャイアントトードの運搬はギルドに任せて今回は街に帰りましょう……っと、その前に、私の魔法を見ていきませんか?」
「めぐみんさんの魔法…!ぜひ見せてください!」
確か、最強の攻撃魔法と謳っていましたし、きっととんでも無く強力なものなんでしょう!そういうのはロマンがあって大変よろしいと思います!
「ふっふっふ…! ここまで熱意を持って見たいと言ってくれたのは貴方が初めてです!いいでしょう!今日は特に気合を入れて撃たせていただこうか!」
おお!これは楽しみです!…あれ?でも何かひっかかりますねぇ…?
「……あっ、でも、この辺で撃ってしまったらその、クレーターとかで賠償金求められません……?」
最強の攻撃魔法がどれ程のものか分かりません。
用心に越したことはないでしょう。
「………少し、的を探します」
ですか、やっぱりですか!
めぐみんさんも自分のことだけあって自覚はお有りだったのですね。
……それから数十分かけて、壊しても問題がなさそうな廃城を発見しました。あの城なら盛大に破壊しても誰も文句は言わないそうです。
ふわっ、と心地よい風が吹く中、めぐみんさんは最強の攻撃魔法…『爆裂魔法』の詠唱が響き渡ります。
『黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法!』
一文字一文字すぎる毎に辺りの空気がビリビリと震え出していきます。
そして、めぐみんさんが一旦詠唱に区切りをつけた時、あれだけ騒がしかった空気がシン…と静まり返りました…!
『エクスプロージョン!!』
瞬間、自分の視界は眩ゆい光に包まれます。
ですが、めぐみんさんの杖から閃光が走り抜け廃城に向かっていったのはわかりました……!
そして、爆破の余韻がズシン、と骨身に響き渡り、熱風が自分の頬を撫でます…。
あぁ…これが…!これが爆裂魔法!!
「めぐみんさん!これ、すっっっっごいですね!ってど、どうしたんですか!?」
自分はめぐみんさんを賞賛しようと声をかけますが、彼女は今日出会った時のように仰向けで倒れており、
「ふふ…我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、消耗魔力も絶大。……要約すると限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません……あーすみませんが街までおぶっていただけませんか?」
そんなこと呟いたのでした。
因みに廃城は一部を除いてほぼ全壊してました。
☆☆☆☆
街への帰り道に、自分は僭越ながらめぐみんさんをおんぶさせていただきつつも世間話をしていました。
「いやぁ!めぐみんさんの爆裂魔法すごかったですね!」
「ふ、当然です。何せ最高最強の魔法ですから!例え使用後に倒れようが、私はこの魔法を使い続けますよ!」
「1日に一度きりの大技なのもロマンがあっていいですよね!んもぉ、さいっこうです!」
「あ、あなた分かってます!そう!私の魔力量では1日に一度きり…ですが、その代わりにあの攻撃力!堪りません!」
…訂正。爆裂話ですね!
「おい…なんか小さい子をおんぶしながら頭のおかしい会話してるぞ」
「爆裂狂と爆裂魔法で会話が広がるなんて…まさかあの変な服着た男も頭のおかしいのか…?」
「いや、間違いねぇだろ。だって冒険に行く前からあの格好だぜ?センスがどうかしてるやつと気があったんじゃねーか?」
「「成る程」」
なんか失礼な物言いですね!ヒソヒソ話してるつもりでもかなり聞こえてきますよ!?
あっ!もしかしてギルドで女性に凝視されたのってこの服装が原因ですか!
めっちゃ変なやつだって思われてたんですか!?
………いかんです。
爆裂魔法のことを理解してくださらないのは個人個人の価値観が違いますからまだいいとして、『センスがない』はシンプルに傷つきます!
……まぁ、それは後日しっかりとした装備を買うとして…。
「あの…めぐみんさん。差し支えなければこれからも一緒にクエストを受けてくれませんか…?」
「えっ…?」
自分のレベルではライドヘイセイバーの能力をフルに扱えないでしょう。
万が一今の自分の火力では足りない敵が出てきた場合の切り札が欲しいのです。あと、単純に爆裂魔法を毎日見たいってのがありますが…。
その日のクエストで強敵が出たらめぐみんさんのロマン砲でかっこよく決めてもらい、出なかった場合も今回の様に的を探せばいいだけです。
「…ですので…自分とパーティを組んでいただけないでしょうか?」
と、自分の独白を伝え、しれっと要求をランクアップさせました。
果たして、めぐみんさんは承諾してくださるのでしょうか…?
「ふ、ふふ…!いいでしょう!我が名はめぐみん!紅魔族髄一の魔法使いにして爆裂魔法を操るもの…!これからよろしくお願しますよ?我が同士よ!」
「……はいっ!」
————かくして、ここに後の爆裂コンビが爆誕したのだった…!
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報酬と唐揚げ(美味い)
話は中々進みませんが。
「…まさか1日で終わらせてくるとは思わなかったよ。ほれ、これが報酬の10万エリス。それに加えて買い取り5匹で2万5千。合わせて12万5千エリスだ、受け取りな」
「はい!ありがとうございます!」
自分は強者の受付さんから報酬を受け取りお辞儀と挨拶をしてからめぐみんさんの元へ戻ってきました。
「報酬額は12万5千エリスになりました。2人で6万2500エリスですね」
どん!とお金をテーブルに置いてめぐみんさんの分の料金を仕分けします。
「……あのー今回私は見張りしかしてないわけなのですよ。それなのに、半分ももらっていいんですか?いえ、要らないという訳ではないのですが」
ですが、自分の善意は余計な気を使わせてしまった様で、めぐみんさんはなんだか申し訳なさそうな顔をしています。
……こういうところがまたいいですよね。普段は強気で逞しいめぐみんさんが時たまこういった大人の気遣いを見せてくださる…。
大人ぶりたい
ですがここは異世界。身長的にまだ働ける様な年ではないと推測されるめぐみんさんでも、この世界では大人扱いなのでしょう。
なら、最初からそのつもりでしたが、自分もそれ相応の対応をさせていただきましょう。
「安心してください。自分達はパーティですから。……パーティを組むということは一種の契約の様なものですし、これは一緒に冒険してくださるめぐみんさんへの報酬金、と言ったところでしょうか?」
へんなところで消費を抑えていては、信頼関係の構築は険しくなります。
活躍したしないに関係なく報酬は今後も山分けにしていく予定ですしね。
「……中々義理堅い人にあたって良かったです…その、ありがとうございます」
ゴソゴソとお金を仕舞っためぐみんさん。
それと自分は気になった事が一つあったので、そこを聞いてみました。
「そういえば、この街の宿って何エリスで泊まれますかね?」
最悪野宿という手段がありますが、流石に夏でも夜は冷え込むかもしれません。
ここは日本とは異なる世界なのですから、何があってもいいように、せめて拠点くらいは確保しておきたいのですが…。
「そうですね…3泊くらいならそこまで問題ないですね。これからの食事代とかを考えても」
「成る程、つまり食費その他諸々を削って泊まれる日数を増やすか、万全の状態で3日泊まるかの選択になる訳ですね」
流石に力が出ないと困るのでしっかりと栄養は取りたいですね。
なので自分はしっかりと休むことにしますが、めぐみんさんもですか?
「はい。実家に仕送りする分を差し引いてもある程度は食べないと……今朝みたいになってしまいますからね」
「あー…確かにそうでしたね」
ジャイアントトードを切り裂いたショックが大きかったのか、もう遥か昔のように感じます。
「……というか実家に仕送りしているんですか?めぐみんさん。失礼ですが、その、てっきり自分は家出してきたものかと…」
「お?何ですか?紅魔族は売られた喧嘩は買う種族ですよ?」
「いえその…親には反抗したい年頃なのかなーと、思った所存でございます、はい。…お気に障ったのなら謝罪します」
「あっ、頭まで下げなくていいんですよ!?…な、なんか調子狂いますね…」
……それにしても、先程から出てくる紅魔族とはどのような種族なんでしょうか…?
めぐみんさんのような人が大勢いるのですかね…?
▽ …………チラッ(めぐみんさんを盗み見る)
天国かな?(疑問)
天国なのか(納得)
▼天国だな(確信)
「む、なんか今ぶるっと身の危険を感じました。野獣の眼光ですねこれは。そこから近づかないでいただけませんか?」
「大丈夫です。ノータッチは自分の信条ですから」
「えっ、今この人ナチュラルに肯定しませんでしたか!?」
何かおかしなことでも…?
「そんなことよりめぐみんさん。このギルドの料理どれも美味しそうですよ!オススメはジャイアントトードの唐揚げ定食らしいです」
「おい!さらっと流すんじゃなっ(くぅ〜)……メニューください…」
「はいどうぞ」
▼楽しい食事の時間を過ごした!
☆☆☆☆
めぐみんさんと一旦別れて自分は宿を確保しに街を散策します。
▽どの宿屋?
オンボロ、お化けでそう
普通。めぐみんさんがいるところ
▼安宿。安い代わりにサービス無し。
オンボロは論外ですし、普通の安宿は観光客や他の冒険者の方々で埋まっていましたので、部屋にはベット以外には何もない宿屋に泊まることになりました。
予想よりだいぶ安く済んだので万々歳です。とりあえずベットに腰掛けて、ライドヘイセイバーを…。
「……
自分は武器屋を求めて散策を再開させました…。
もっと段取り良くしないといけませんね…。
中途半端に終わってしまい申し訳無い…。
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主人公ズの邂逅
宿屋を出ると、眩しい太陽の光が目に刺さります。
時刻は大体…2時過ぎといったところでしょうか?
町もまだ活気に満ち溢れていて、自然とこちらも頑張らなくては!と思わされます。
…さて、では散策を始めましょう。
武器屋を人に聞くのもいいですが、町の地理を自分の足で把握しておくのもいざという時役に立つかもしれないので、適当に歩きましょう。
☆☆☆☆
まず武器屋がありそうな場所として考えられるのは、冒険者ギルドの近くです。
特にこれといって根拠はないですが、何となくありそうなイメージが自分の中に強く根付いているので、まずはここを詳しく探索してみることにしました。
この時もヘイセイバーは抜き身のままなので、すれ違う人を斬る事のないように気をつけないといけません。……やはり早急に鞘を手に入れる必要がありますね。結構神経を使いますし。
そんなこんなであたりを見渡していますと…。
「ふええええええ……グスッ……あぐぅ…!」
なんか緑色のベトベトしたものをかぶって泣きじゃくってる青髪の方と。
「おい、いい加減泣き止めって!なんか俺が悪いみたいじゃねぇか……っ!ほら、さっさと大浴場に行って汚れ落とすぞ」
「う"ん"…」
その泣いている方の手を引っ張っているジャージの青年が目に入りました。
……日本人、でしょうか?
やはりジャージ姿というのは目立つものですね…。と、いうかヌメヌメの女の子連れてるとかただのヤバイ人にしか見えないと言いますか…。
あ、目があった。
さっと目をライドヘイセイバーに移してあたかも整備してますよーと言わんばかりに観察します。
刃こぼれが無いかチェックししたり裏側はどうなってるか見てみたり………あれ?電源ボタンらしきものがありますね…。
「……まさか」
自分はその辺に転がっていた石を拾い、ライドヘイセイバーを押し付けます。
するとスパッ、と石が真っ二つに、まるで豆腐でも切っているかのようにあっさり切れました。
あ、案外切れ味いいんですね…。
それはともかく、今度は電源ボタンをOFFにし、半分になった石に再度押し付けますが……今度は全く切れませんでした。
というか、刃の部分が柔らかく、玩具のようになっていますね。玩具基準だとは思ってましたがここまでやるとは…。
「これなら鞘は必要ありませんね」
鞘がいらないなら、新しい服を買った時に何か引っ提げるようなものを買えばいいのですから。
そうでなくとも、買い物袋とかに入れるとか方法はいくらでもありますし。
「な、なあそこのお兄さん?」
「はい?」
あっ、ちょっとやってしまったかもです。
緑のジャージの人が話しかけてきました。
自分もちょっと変質者呼ばわりされて、ただでさえ自分の好感度は今日のうちに下がったのですから、この人たちと会話をすると相乗効果でさらに評価が下がる予感がするのです。
しかし、このまま無視するというのも人として…。
「俺の名前は佐藤カズマ。あんたもしかしてさ、日本の人?ライドヘイセイバー持ってるし」
「これはどうも…自分は斎藤カンタと申します。……って、知っているんですか?ライドヘイセイバー」
「まぁな。仮面ライダーはちょくちょく見てたし、その玩具も強烈な印象を受けたから、だいぶ記憶に残ってるぞ?」
「あー…」
確かに『ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘヘヘイ!セイ!』なんて言う騒がしい玩具はこれくらいですもんね。
「それで、自分になんのご用件が?」
「……どうか、一時的にでいいから俺たちのパーティに入ってくれないか?」
…?
「…あなたも転生者なら特典があるはずですし、自分を誘わなくともやっていけると思うのですが…仲間もいるようですし」
「いやそれがさぁ、こいつなんだよ、転生特典。俺、女神選んだの」
「えっ…?はぁっ!?」
こ、このヌメヌメして泣きじゃくっている青い女の子がですか!?
と言いうか神選べたんですか!?
「そ、そうよ!私は水を司る女神!アクシズ教団が崇拝する女神アクアなのよ!」
あ、急に元気になりましたね。
……そういえば、転生特典を選択する際に『…女神を選択するのは無しでお願いします』と言われたような…。
まさか、この方々がその前例だとは思いもしませんでした。
「…だったら尚更、苦労をしないのでは?神さまなのですから、ステータスも相当高いのでしょう?」
「そーよ!ステータスは最初からカンストしていて、初期スキルポイントも、宴会芸スキルとアークプリーストの全魔法を習得できる程の量を所持。そんじょそこらの一般冒険者と私を一緒にすることが間違っているわ!」
「おい待てなんだ宴会芸スキルって。もっと他に取れる有用なスキルなかったのかよ!」
「あっ!今宴会芸スキルをバカにしたわね!?なら、これを見ても罵れるかしら?『花鳥風月』!」
「「おおっ!?」」
女神アクア様はどこからか扇子を取り出し、バッと開きます。その数瞬後、扇子の内側から水が吹き出してきたのです!
自分は自然と拍手をしていました…!
「…スゲーな。でもさ、なんでそれで稼がなかったんだよ。そしたらあんな土木作業しなくたって武装買えたかもしれねーじゃねーか!」
「あのね、私は芸人じゃないから、芸でお金を取るわけにはいかないの!それに芸は請われてやるものじゃないの。これは芸を嗜む者の最低限の覚悟よ!」
「なんだそのプロ意識は!……あーっもう話が進まん!」
「何言ってんのよ。話を本筋から晒したのはカズマでしょ?もしかしてー数分前のことも忘れちゃうおバカさんだったんですかー!プークスクス!」
「ぐっ、心底腹立つ!言ってることが正論なのがなおのこと腹立つ!」
その後数分に渡って口喧嘩が行われ自分は置いてきぼりです。
最終的に女神アクア様が泣かされていました。
……仲良いですねぇ…。
しかし、なるほど。
やっぱりさっぱりわからないですね。
ステータスカンストしているなら、プリーストとはいえ現段階での自分より筋力が高い可能性がありますし、そこまで苦労する要素があるのでしょうか?
「あぁ、苦労しているのが不思議って顔してんな?…俺とアクアには総合的戦闘力ってものが足りないんだ。さっきジャイアントトードと戦ってきたんだが、俺はアクアが食われて足止めしてなきゃ攻撃を当てられんし、アクアはアクアで打撃が効かないって分かりきっていることを理解せずに突っ込むし…。まぁ、俺は昔(ゲーム時代)から指揮官タイプだし?アクアはプリーストだから回復役…そう、考えれば考えるほど俺らは適材適所がまるでできないし、補えてない!」
(お、おお…ここまでの長文がよく噛まずにスラスラと出てきますね…)
カズマはんはそこで一度言葉を区切り、自分に角度にして約90度の綺麗なおじきをし、
「なのでまともに戦えそうな特典持ってる貴方様に仲間になってほしいですお願いシャァース!」
急に敬語で元気よく懇願してきました。
自分は、そのあまりの勢いに
「ええっと…ちょっと仲間と相談させてください」
思わず、そんな曖昧な返事をしてしまったのでした。
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なんだこの人……ドMか。
お茶を濁してその場を立ち去った自分は、ブラブラとあてもなく街を歩き回っていました。
カズマさん達は明日、パーティメンバー募集の張り紙をして一日面接をするらしいので、もしokならそこに行くことにしましょう。
めぐみんさんとは明日の朝ギルドで集合予定なので相談もそこで済ませてしまうことに決定しました。
▽さぁて、ここからどう過ごしましょうか?
▼いい感じの飲食店で早めの晩御飯
ギルドで依頼を確認する
噴水広場に赴き幼女達を穏やかに見守る
☆☆☆☆
「穴場的なところを探してみますかね」
財布の中身を確認して、まぁ明日稼げればいいかと楽観的思考の下、おばちゃんが切り盛りしている中華っぽいお店やコロッケ屋さんを見て回ります。
コロッケ…美味しそうですけど今食べたら晩御飯が食べられなくなるので我慢です。
……ぐぅ〜
▽…が、我慢…です。
*そんなのお断りだ。
*いやだ、食べないもんか
▼気合いッ!入れてッ!我慢ッ!するんだッ!
「…さらばコロッケ、あなたのことは忘れません」
自分は足早に通り過ぎて行きました……くぅ…。
▽今なら引き返せる。
引き返す
▼それでも進む
▽後悔しませんね?
いいえ
▼はい
「…………お腹減った」
ちょっと後悔しました。
☆☆☆☆
「すまない、ちょっといいだろうか……?」
「はい?」
自分が空腹に苦しみ悶えながら歩いていると、金髪碧眼で頑丈そうな金属鎧を身に纏った女騎士の人に声をかけられました。しかもとびきりの美人さんです。
……しかし、礼儀としてやってはいけないとは頭では理解しているのですが、どうもお腹が減っているせいで、不機嫌なオーラを出してしまいます。
「んっ……あっ、いやすまない、やけにフラフラしていたのでな、心配で声をかけたのだ」
あっと、いけないいけない。
多分これ鋭い目付きになってますね。
目元をほぐして、二、三回パチクリと瞬きをして元の状態に戻します。
自分はそれ等を終わらせてから、女騎士さんに反応を返しました。
「これからどこかで食べようと思ってますのでご心配なく……」
しかしそれでも若干投げやりっぽくなってしまうのはもう許してもらうしかないですね。
「そ、そうか。お腹が空いていただけなのか……ところで、先程体がヌメヌメした女性を連れた男と話をしていなかったか?」
唐突な話題変換。
……あれ、何故それを…って、結構普通に話してましたし、目立ってましたからね。
これは仕方ないです。
「えぇ、まぁ…」
「立ち入ったことを聞いてしまい申し訳無いのだが…彼らとはパーティを組んでいるのか?」
「いいえ。あっ、ですが明日お試しでパーティを組むことになっていまして…」
「…!ぜ、ぜひ私もお試しパーティに!」
「えぇ…?」
「んんっ…!そ、その目付きもたまらん…!」
「ええぇ…?」
なんだこの人。
自分は困惑すると目付きが怖くなると親友のJに言われたことがあるのですが…この人は自分のこの目付きを見て興奮している様子…。
さてはあれです、どMですね?
自分の理解力はキショイと言われたことがあるレベルですから間違い無いですね!……いえ、別に傷ついた訳じゃないです…はい…できれば黄金の理解力とかの呼ばれ方が良かったです…はい…。
いやそれにしてもわっかりやすい反応ですけどね。
「明日、面接をするため一日ギルドにいるそうなのでその時にまた会いましょう。では自分はこれで」
「あぁ!また会おう!」
女騎士さんはウッキウキで歩き去ってしまいました。自分も彼女と反対方向に歩み出————
「……ありました…隠れ家のような飲食店」
————そうとした時、ふと路地裏を見てみると、そこにはひっそりと佇む、まさに知る人ぞ知る、といった感じのお店が建っていました。
「行きましょう。もうお腹ペコペコです。ペコりんちょ」
は?
失礼、頭がどうかしているようです、それほどにお腹減ったのです。
とにかく入りましょう…自分はドアを開け、店内の混み具合を確認…
「いらっしゃいませー!」
"バタンッ!"
ちょっと待て。
痴女がいた。
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天使か
▽前回のあらすじ
▼コロッケ見逃した。
▼ドMに遭遇した。
▼痴女の店を見つけた。
…ど、どうやらお腹が空きすぎたせいで幻覚が見えてしまったようですね…。
一度深呼吸をして、心を静めて中に入りましょう。
「あっ、カロリーメイト食べれば…って、ないですねぇ…トードとの戦いの際に落としてしまいましたか」
心が落ち着つきを取り戻すと、最初に持っていた栄養補給剤の存在を思い出しました。
が、自分のポケットにはその存在はすでに消失していたようです。
…さて、いい加減に入るとしますか。
▽扉を…
▼ゆっくりと恐る恐る開ける
邪魔するぜぇと言いながら開ける
バーン!と開ける
「い、いらっしゃいませー?」
すると、先程自分に
…あっ、そうか。
自分が入店したと思ったらいきなりドアを閉められたから困惑してらっしゃるのですね?
…それなら謝罪も含めてここが本当に飲食店なのかの確認もとってみましょう。
「先程は急にドアを閉めてしまい申し訳ありません。…あの、ところで、ここって飲食店、ですよね…?それにしては、その、従業員の方の服装が…」
「…なるほど。お客様はここに来るのは初めてなのですね?」
「はい」
「では、私たちが何者かもご存知ではないと」
「少なくとも破廉恥な格好をしても平気な人種だとは思ってます」
あ"っ"。
しまった!失言を!
「フフッ…あ、改めて正面から言われるとすこし堪える物ですね…」
「っ!す、すみません!」
自分はババッと頭を下げました。
はっ!もしかして、店長の趣味でこのような格好を無理矢理させられているのでは…!?それならば、この店員さんの態度にも説明がつきます。
……なんという事だ!これは立派なセクハラ及びパワハラではないか!
そもそも飲食店なら食欲が失せてしまうような色彩は避けることを徹底させるのが常のはず!なんて怠慢なんだ!
…いや、そこは異世界なのだから価値観が違うのでしょうか?
……でも、自分に出来ることは…。
自分はこの世界に来て一日も立っていません。
なんの権限も無いし、お金だってトードを狩った時の報酬金くらいしか無いです。
グググ…ッ!
何も……出来ないッ!
……あれ、しかしそれだと『私たちが何者かもご存知ないと』と言う発言はどうなるのでしょうか?
「あ、頭をあげてください!堪えはしましたがそこまで気にしていませんので!」
「で、ですがっ」
「それに、無理矢理着せられてるわけでもないですから。これは私たち種族にとって普通の衣装なのですよ」
「……………種族?」
破廉恥な服装が普通の衣装………まさか、この人の種族は……!?
「私たちはサキュパス。男の方の精気を吸い生き長らえている、モンスターです」
▽…………。
なぁにぃ!?モンスターだぁ!?確保ォー!!
な、なんだってー!
▼……ワォ。
「……ワォ」
「フフ、驚くのも無理はありません…詳しい内容はお席にて説明いたします。どうぞこちらへ」
自分はまさかこの世界にて会えるとは思わなかった、しかし、いつかは会ってみたかったモンスターさんに手を引かれながら席に着いたのでした。
……それにしてもお腹すきましたねぇ…。
☆☆☆☆
「————以上が当店の成り立ちと役割となっています。何かご質問等はありませんか?」
「あなた方は天使か何かですか」
「や、やめてください縁起でもない!」
大まかに説明を聞いた自分は、無意識的に天使か、と呟いていました。
彼女たちの行いをザッと纏めると、『割安なお値段で男たちの欲望を静め犯罪減少に貢献』
と言ったところでしょうか。
めぐみんさんのような方が2日も何も食べられないほど追い詰められてしまう世知辛いこの世界で、一つ光を見つけたような気分です。
それに料理も美味しい。
流石に限界だったのでいくつか注文してみたのですが、どれもプロ顔負けと言っても過言ではないほど
ただやはり日本と価値観が微妙に違うのか、パスタを頼んだら蕎麦擬きが出てきたのは驚きましたが。
なんですかあのワサビみたいなもの。積極的に口の中に突っ込んでくるとか嫌がらせの塊みたいですね。
思わず叫んでしまい恥をかいてしまいました。
が、不幸中の幸いですね。
ここが人の多いギルドでなくてよかった。
これ以上変質者として広まりたくないですし。
そして、自分の奇行にも触れないで下さるサキュパスの皆さん…やはり天使か。
しかし、今の自分にはそこまで財布の余裕はない為、今日は食事だけで済ませます。
もう少し生活に余裕を持てるようになってから、ここにまた来ることにしましょう。
「今日はこのような素晴らしい店舗を開拓できて良かったです。またお金が貯まったらお邪魔させていただきますね。あ、料理とっても美味しかったです!」
「いえ、こちらこそ!この店で初めて料理の注文が入ってこちらも新鮮な体験でした。フフッ、シェフの子がとっても喜んでいましたよ?『やっと皆の役に立てるっ!』って気合いを入れてましたし」
「…それは、まぁ…このお店の都合上そうなりますよねぇ…」
「えぇ…それはもう号泣しそうな勢いで」
な、なんというか…お疲れ様です…。
「それでは自分はこれで。今日はありがとうございました!」
「ありがとうございましたー!またのご来店をお待ちしておりますね!」
自分はドアを開け、その店を後にしました。
外の日は落ちかけていて、暗くなる寸前、と言ったところでした。
異世界に来てからの一日目が既に終わりの時を迎えようとしているのです。
「これはさっさと帰った方が良さそうですね…」
『ライドヘイセイバー!』
『ヘイ!カブト!デュアルタイムブレイク!』
自分はライドヘイセイバーのカブトを起動させクロックアップ状態で宿屋への道を走って行きました。
……今日は生きてきた中で一番濃い一日でした。
これが夢オチでないことを祈るばかりです。
長かったなぁ…。
これデストロイヤーまで何話かかるだろうか…?
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ッアァァッ!
なんというかもう……『平成』が四方八方から殴りかかってくるような映画でした…。
メチャクチャ面白かったです。
翌日。
夜が明けて、まばゆい光が自分の体に注がれます。
起き上がって窓の外を覗いてみると、名前も知らない花が綺麗に咲き誇っていました。
「今日はいい天気ですねぇ…。鳥はさえずり、花は咲き誇っている。こんな日には何かいいことが起きるかもしれません」
ライドヘイセイバーとディケイドライドウォッチを持ち、ポケットにお金を突っ込んで宿からチェックアウトします。
その際店員さんに
「ありがとうございました。また来ます」
とだけ伝えて自分はその場を後にしました。
さて、今日は異世界生活2日目。
今日は同じ日本出身のカズマさん達と合同でカエル狩りをするつもりです。
まあ、めぐみんさんが嫌だと言ったらそれはしょうがないです。
今回は御縁が無かったということで。
……それはともかく、まずはお風呂入りましょう。
昨日カズマさんから聞いた大浴場に向かいます。
何せ昨日はさっさと寝てしまって体を洗えていませんからね。エチケットが無いのは失礼に値します。
なので合流前にサッパリしておきましょう。
☆☆☆☆
「かぽーん」
大浴場ではなく大衆浴場でした。
普通に勘違いしていて一人で恥ずかしい思いをしつつもお風呂を堪能します。
朝早いこの時間には自分しか人はおらず、完全に独り占め状態となっていました。
ここだけ日本の銭湯の施設と余り変わらなくて驚きましたがそんな事はどうだっていいのです。
「あぁ…いい湯ですぅ……」
熱い湯船に肩まで浸かり、じっくりと体を温める。
これを贅沢と言わずしてなんと申せましょうか!
ありがたい…ありがたい…!
そしてお風呂から上がったのならキンキンに冷えた飲み物が最適。
まさにBest Match!
「おじさん!冷えたクリムゾンを!」
「あいよ!クリムゾンネロイドね!」
石焼き芋の、車で売っているアレのようなスタンスのクリムゾンネロイドネ売りのおじさんに注文し、グイッと飲み干します。
グビッグビッ……。
「ッアァァッ!」
これが至高である!
「これ、お代です!美味しいクリムゾンをありがとうございました!」
「あいよ!兄ちゃんもいい飲みっぷりだなぁ…しばらくはここらに滞在するからまたこいよ!」
「はい!」
おじさんと別れ、ギルドへと足を向けます。
幸先の良いスタートを切れた気がしますね!
☆☆☆☆
「めぐみんさーん!おはようごさいまーす!」
「あ、おはようございます。時間ぴったりですね」
ギルドに着くとそこには既にめぐみんが待機していました。
「では揃いましたし、早速クエストと行こうじゃないか!」
めぐみんさんは興奮した様子で杖を構えています。
心なしか目が紅く光っているような…?
「あの、すみません…もしかして既にクエスト受けちゃいました?」
「…いえ、そんな事はしませんよ。ただ、クエスト後の爆裂魔法披露が楽しみで仕方がないのです!」
「あっ、そうなんですね!…それなら、今日は観客があと2人…いや3人増えますよ」
「はい?」
自分はめぐみんさんに別れた後起こった出来事を説明しました。
☆☆☆☆
「いいんじゃないでしょうか。人数が増えると取り分は減りますがその分負担が少なくなりますしね…永続的に稼ぐにはこのくらいのデメリットを背負うのは仕方ないでしょう」
「ありがとうございます!では早速行きましょう」
めぐみんさんの了承を得てホッとしつつも自分達は冒険者ギルドの中へと入って行きました。
朝から元気に挨拶してくださるお姉さんに会釈をしながら、カズマさんとアクア様を探します。
アクア様はなかなか派手な髪色(ダクネスさんもですが)をしているので見つけるのはそこまで難しくなく、一回見渡した程度で見つけることができました。
「カズマさん、アクア様。おはようございます」
「おうカンタ!おはよう。今日はよろしくな」
「あら、私に様付けなんてやるじゃない。この調子でどんどん崇めて……って、その後ろの子は?」
「昨日話していた自分のパーティメンバーのめぐみんさんです!」
「……なんだめぐみんて、バカにしてんのか」
「ち、ちがわい!」
▽このすば!▽
そこまでおかしな名前では無いような気もしますが…たしかに日本では馴染みの無いですね…恵とかなら結構ある気もしなくもないですが。
「ンッンッ!気を取り直して……我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……!」
「……その赤い瞳、もしかして、あなた紅魔族?」
めぐみんさんの名乗りにもはや無反応だったカズマさんに変わってアクア様が疑問を口にしました。
その問いにめぐみんさんはコクリと頷くと、アクア様に冒険者カードを手渡します。
「いかにも!我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん!我が必殺の魔法は山をも崩し岩をも砕く……!」
あれっ!?バージョンアップしてる!
「あっ、自分の時よりパワーアップしてますね!」
「フッ…人は日々進化するのですよ…!」
「いいなぁ…自分も何か考えてみるのもいいかもしれません!……しかし…今の自分には大した称号はないですし厳しい物がありますね…」
…せめて変身できたら何か違うのですが…。
「フッフッフッ…慌てることはないですよカンタ。何故なら!カッコいいとは……自然に身につくものなのだから!」
「おぉ!名言!」
「フッ、そうでしょう!そうでしょう!」
そうか…!
それなら自分はこれからの冒険で成果を上げればきっと自分だけの名乗りができるかもしれません!
よぅし!
やる気がバリバリと湧いてきましたよーっ!
「…なあアクア。俺、ちょっとこいつらに声かけたの間違いだった気がするんだが」
「いいじゃない!紅魔族の子はさっきみたいな名乗りをあげるのが普通の習慣だし、私はとても良いと思うわよ?」
「……お前が同意している時点で嫌な予感しかしねぇんだよ…!」
「ちょっとそれどういう意味!?」
「すまない遅れたッ……す、既にパーティとしての空気が整っている!?…そんな中私は出遅れて1人阻害され……ンンッこれはなかなかの快感…!」
「……なんだこいつ!?」
……あっ!今日もう1人来るのを忘れてました!
▽このすば!▽はアニメ版のアレの再現です。
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ふっ!はっ!
タケル!どうして変身しない!
冒険者ギルドで全員の自己紹介が終了した後、依頼を完遂していた自分とめぐみんさんはもう一度受注しました。
カズマさんは
「別に疑っているわけじゃないんだけど…この世知辛い世界を生きてるとどうしても用心したくなるようになっちまうもんなんだ。どうか受け入れてくれ」
と仰り、面接の形をとりそれぞれカズマさんかアクア様が実力を見せ納得いく成果を出せばパーティを結成する、という流れになりました(アクアに任せるのは不安だけどな…とカズマさんは洩らしてましたけれど)
その際にダクネスさんがパーティメンバーになった時のことを考えて一緒に狩りをして見てはどうかという提案をなさったので、くじ引きによる(カズマさんとアクア様は参加せず固定)臨時パーティが決まったのでした。
そして現在に至ります。
『ヘイ!ダブル!デュアルタイムブレイク!』
ライドヘイセイバーでダブルを選択し、ルナ状態に変化させトードを中距離から傷を与えます。
「ふっ!はっ!アクア様!どうしてわざわざ突っ込むのですか!」
「だって!だって!女神が負けっぱなしなんて、信者に示しがつかないじゃない!!」
カズマさんが言っていたとうり無策で突っ込んで行ったアクア様を捕食しようとトードが舌を伸ばしたので切り落としたのですが…。
「ゲェゴォ!」
あれは完全に怒ってますね!
しかも近くにいるアクア様をターゲットにして押しつぶそうとしてます!
「危ない!」
『ヘイ!ドラァイブ!デュアルタイムブレイク!』
自分はドライブを選び『どんより』を発生させます!
……本編では仮面ライダードライブは『どんより』を使用したことは無かった筈ですけど何故か使えてしまいました。
ですが流石に広範囲とはいかず、別のトードを相手取っているカズマさんたちまでは届いていないようですね。
「おっと、こんなことを考えてる暇はないです!」
自分だけが元の走力で走れる世界を疾走し、アクア様を横から失礼して、トードから引き離します。
それと同時に効力が切れたので結構危なかったみたいでしたね…。
「ちょっと!もっと早く助けなさいよね!すこし、ほんのすこしだけ怖かったんだから!」
「すみません…」
なら動かないでくださいよ…。
まぁそれはそれとして、早めに退治してしまいましょうか。
と、自分がディケイドライドウォッチを懐から取り出した瞬間。
「『エクスプロージョン!』」
とんでもない爆風と熱量が自分達を襲いました。
「ん?…うわぁぁぁあっ!?」
「いやぁぁぁぁあ!今度は何よー!」
…まさか!めぐみんさん!?あれっ!もしかして
あっ、満足そうに倒れてらっしゃる!
「クソぅ!自分も詠唱含めて見てたかったです!」
『フィニッシュタァーイム!』
自分はヤケクソ気味にライドウォッチをスロットに装填し、時計の針を5回転させました。
「ゲゴォッ」
「ゲッゲッ!」
「ゲロッドォ」
一度、必殺技の威力も試しておかないといざという時に放つタイミングがわからなくなりますからね。
それに、めぐみんさんの爆裂魔法の影響で地面から這い出てきたトード達がちょうどよく的になってくださる様子。
ここはありがたーく実験してしまいましょう!
『ヘイ!カメーンライダーズ!』
『ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘヘヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘヘヘイ!』
平成の凹凸成分を固めたようなハイテンションボイスが待機音声として流れ出します。
トード達もこちらの方に気づき、ピョンピョン跳ねながら向かってきました。
……格好の的!
「必殺技、発動します!」
『ディディディディケイド!ヘイセイライダー!アルティメットタイムブレイク!』
スクランブルトリガーと呼ばれる突起部分を押し込むと、虹色に輝く10枚のカードが横一列に現れます。
そこにトード達が重なったタイミングでライドヘイセイバーをカードの軌道に合わせて……
「振り、抜く!」
「「「「ゲロォォッ!?」」」」
「うわぁっ!?」
勢いに釣られ、体が半回転しました。
ちょうど必殺技放った仮面ライダーの図みたいになっていますね。
最初から狙ってきたトード含め、計4匹の断末魔が背後から聞こえてきます。
めぐみんさんの分も含めれば充分クエストの目標値に達していることでしょう。
……クレーターが発生してしまったようですが、賠償金とかはどうなるのでしょうかね?
☆☆☆☆
とりあえず、自分は受付の方に相談を持ちかけることにしましょう。
そういう訳で昨日と同じ受付(強者)の人の場所へとやってきました。
「魔法でクレーターができた場合の賠償金?…ハッ、ないない。そんなことでいちいち請求していたら冒険者なんて職業はあっという間に廃れてるよ。まぁ、民間の畑とかに作ったのなら話は別さね」
「中々に豪気ですね…」
「そりゃ、冒険者ってのは基本貧乏だからねぇ。ギルドとしては本来なら求めたいもんだが、見逃してやってんのさ」
「な、なるほど…参考になりました。貴重なご意見、感謝します。では、自分はこれで」
「あいよ。また来な」
…つまり、仮に大金を得たとしたらこれまでのクレーター分を求められたりするのでしょうか?
やはり無闇に撃つのではなく、
廃棄予定の城だとか、壊そうにも壊せない物とかに放つのが一番の様子。
これは要相談になりますね…。
「…と、いう訳です。クレーターの賠償金はないみたいですね」
「…貧乏だからってのがアレだな。将来、遡って請求されんのが怖い。あ、これ今回の報酬なー」
「ありがとうございます」
カズマさん達が集まるテーブルへ移動し結果を報告。
既に換金は終わらせたのでしょう。全員分のエリス硬貨が並べられていました。
「もー!そんなことで弱気になってちゃ困るわ!そんなんじゃいつ私が帰れるかわかったもんじゃないじゃない!」
アクア様からお酒の匂い。
既に出来上がっているようですね…。
「こらめぐみん。お前に酒はまだ早いだろう。ほら、こっちを飲め」
「いいじゃないですか別に!ダクネスはケチですね。…まぁ、シュワシュワは貰いますが」
「ケッ…!?」
こちらはこちらでお楽しみになっている模様。
パーティの件は、自分とカズマさんとである程度話しておきましょう。
「…カズマさん。パーティの件についてなのですが」
「あぁ。アクアの話を聞く限り…というか、最後のやつは俺も見てた。……前例が前例だとはいえ、疑ったりして悪かったな!これからは一緒に頑張っていこうぜ」
「……!はい!」
がっちり握手を交わす自分達。
…ある程度どころか全部決定してしまいました。
「お待たせしましたー!ミカン風味のカエルの唐揚げ定食でーす!」
すると、やけにタイミングよく店員さんが二食分料理を運んで下さいました。もしかして話聞かれてましたかね?
「腹が減ってると思って、お前の分も注文しといたんだ。…あ、もしかしてカエル苦手だったか?」
「あ、いえ、寧ろ鶏肉みたいで美味しいと思ってます。お気遣い感謝、です!」
少しの沈黙の後、クスッと互いに笑いが漏れ出しました。…いいですね、こういうものは。
なんだかとても心が温かくなります。
…さて、この唐揚げ定食。昨日も食べましたが…風味が付いている物なんてメニューにありましたかね?
「では、いただきます」
「いただきまーす」
▽何から食べる?
▼唐揚げ
付け合わせのサラダ
ご飯
素材が木でも、プラスチックでもない箸で茶色く輝くカエル肉を挟んで持ち上げます。
粉を余分につけたのか、
明らかに肉のない部分まで茶色の衣が飛び出していますが、これもまた美味しい所。
溢れる涎を飲み込みつつ、
ガブリと全体の半分ほどを噛みちぎり、咀嚼。
カリッカリッ、と衣が潰れる音が口内で響き、
下味に使われた醤油系の調味料の旨味が肉汁となって口の中を蹂躙してきます。
「〜〜〜〜〜!」
これ!これですよ!唐揚げの旨味が凝縮されているこの感じ!ふわりと香るミカンも食欲をバチバチ刺激してきます!
そして嚥下しないうちにご飯を掻き込む!
「……!!うんまぁい…!」
最っ高…!
最早賛辞の言葉が見つからない…!
今の自分にできるのは、二つの食が奏でる味のデュエットをひと噛みひと噛み味わい、幸福になること、ただそれだけ…!
「……うまそうに食うなぁ…」
「あんれぇ?どうしたのカズマぁ〜。カンタをみてニヤケちゃって〜。あ、もしかしてそっちのケがあるのかしら!」
「ちっげーよ!微笑ましく思ってただせだ!酔っ払ってるからって何言ってもいいってわけじゃねーんだぞ!」
「あらあら必死になっちゃって〜。逆に怪しくなってるわよ〜?」
「お前後で覚えてろよ。泣いて土下座してカズマ様許してくださいって言いたくなるようなことしてやるからな」
「……あ、あまりアクアをいじめてやるな。そうだ、罰ならこの私が代わりに受けよう。クルセイダーとして、仲間の身代わりになれるなら本望だ。……こ、ここで実行してくれても構わないっ!さあ!さあ!」
「だぁぁぁあ!今度はお前か!ってかお前に関しては却下だ却下!攻撃当てられるようになってから出直してこい!」
「あの!他のお客様のご迷惑になりますので!もう少しお控えください!」
「「すみませんでした!」」
……ふふっ。
どうやら幸せというのは料理だけでなく、周りの環境にも左右されるのですね。
「…とても美味しくて、とても幸せです」
ギルドのザワザワとした喧騒の中、自分は静かに呟いたのでした。
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合体魔法!
短い上に繋ぎ回。
というかこうでもしないと自分の書きたい場面に辿り着ける気がしないのでちょくちょく時間を飛ばしていきます。
カズマさん達とパーティを結成してから1、2週間ほど経ちました。
いやー驚きの連続ですよ。
キャベツが空を飛んで自分達から逃げ回ったり、時に攻撃してきたり、捕まえた分だけの報酬を受け取り小金持ちになったり。
カズマさんが盗賊スキル『スティール』でめぐみんさんのパンツを手にして思わず拝みそうになったり。
アンデットの王であるリッチーと遭遇したりと、本当にイベントが目白押しでしたよ。
……しかし最近は魔王幹部がこの街の廃城に移り住んだ影響で、弱いモンスターが隠れてしまいまともなクエストがない状態に陥っています。
これは来月まで続くそうな。
ダクネスさんは実家で筋トレを。
アクア様はお酒の飲み過ぎで文無しになってしまったためバイトに奔走を。
そしてお金に困っている訳ではない、カズマさんとめぐみんさんと自分は通称『爆裂散歩』に赴いていました。
狙いは、初日の爆裂魔法にて中途半端に残っていた、あの廃城です。
爆裂散歩が始まってから毎日狙っているのですが、周囲の瓦礫は吹き飛んでも、一つ残った塔だけが全く崩れず鎮座していました。
なので、
『ヘイ!ウィザード!デュアルタイムブレイク!』
「『エクスプロージョン』ッッッッ!」
"ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!"
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
業を煮やした自分達は何がなんでも破壊してやろうと画策。そこで一つの案が思いつきました。
ライドヘイセイバーで仮面ライダーウィザードの『ビック』の魔法を選択して爆裂魔法を何十倍にも威力に跳ね上げる、という作戦です。
これならいけるかも、という結論に至った自分たちは早速実行に移りました。
……本編を視聴していないので魔法を大きくできるかは不安でしたがライドヘイセイバーでは出来てしまいました。すごいぞヘイセイバー!
「おおおおおお!すごい威力でしたね!」
「おいおい今まで全く崩れなかった塔が一瞬で消し飛んだぞ!」
「爆裂魔法を愛するもの達の共同作業!合体魔法!そしてこの威力!!…フフッ、フハハハ!ハーッハッハッハァ!素晴らしい!これは…いい!」
叫ぶ自分達。
特にめぐみんさんはまるで魔王になったかのような笑い方で身体の内から溢れ出す衝動を、どこまでも続く青空に発散していました。
その時は全員がアドレナリンの分泌を抑えられず、帰り道は興奮が治りませんでしたよ!
……まぁ。
「また街の近くで撃ちやがったなっ!こんの爆裂狂がぁ!保護者も何やってんだよ!何やってんだよ!!」
「「すみませんでしたッッッッ!!」」
爆裂魔法の轟音が、街の近くで撃ったのと同じ音量で聞こえていたようで、土下座して謝る事態が発生したんですけどねっ!
本当にすみませんでしたッッッッ!!
☆☆☆☆
そして、翌日。
どうやら更に謝らなくてはいけないかもしれないお相手がやってきたようです…。
「……俺は、つい先日、この近くの塔に越してきた魔王軍の幹部のものだが…」
緊急アナウンスによって集まった数多くの冒険者を前にしても全く怯まずに、凄まじい威圧感を放つ漆黒の鎧を着た騎士のモンスター……デュラハンが自分の首を前に差し出してくぐもった声で声を放ちました。
そしてプルプルと小刻みに首を震えさせ……!
「まままま、毎日毎日毎日毎日っっ!!おお、俺の塔に、毎日欠かさず爆裂魔法を打ち込んでゆき、剰え塔を消滅させた頭のおかしい大馬鹿は、誰だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
魔王幹部のデュラハンは、
それはもう、お怒りでした。
「いや、誰かやったかなんぞ最早どうでもいい!!何がどうであれ、あれだけの短い期間で爆裂魔法を劇的に進化させたウィザードがいる街など放っておけるか!絶対に!魔王幹部の誇りかけて!この街を!崩壊させてくれるわぁぁぁぁぁあ!!」
………とんでもなく、お怒りでした!
うん、原作沿いだな!
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唐突すぎませんかね!?
まさにタイトルどうりな今回。
作者の心は硝子なので罵倒はやめてね!
「ゆけ!この街の人間を皆殺しにせよ!」
デュラハンさんがその右手を振り下ろすと同時に正門から大量のゾンビが…ゾンビ、が……?
「 ア ナ ザ ー ア ギ ト ォ ! ? 」
『 ラ イ ド ヘ イ セ イ バ ー ! 』
唐突すぎませんかね!?
思わずライドヘイセイバーを構えながら叫んでしまいました!
そりゃライドヘイセイバーを持ち込めるのですからそう言うことがあるかもしれませんけども!
こういうのはもっとちゃんとした前振りがあるものなのでは!?
「フハハハハ!ゆけゆけ!このどのような攻撃を喰らおうとも倒れぬ俺の新たな軍団よ!」
【アギトォ…!】
あっ、いつのまにかデュラハンさんの姿もアナザーアギトになっていますね!
これあれです!多分ですけどこの魔王幹部とかいう肩書からして相当強いモンスターなんでしょうし特典待ちの日本人からぶんどったのでしょう!
"GYaaaaaaaaaaa!"
アナザーアギトの雄叫びが響き渡りました!
鼓膜が破れそうなくらいの合唱団です!
「と、とにかく応戦を!」
『ヘイ!アギト!デュアルタイムブレイク!』
まず自分の目の前から迫ってきたアナザーアギト2体に黄金の光を纏ったヘイセイバーで斬りつけます!
通じるといいのですがッ!
"Goo…"
すると断末魔のようなものをあげてそのまま倒れました! よし!これなら……!
"GYooo!"
「わぁぁぁぁぁあ!?」
『ヘイ!エグゼイド !デュアルタイムブレイク!』
と思ったら今度は普通のゾンビとして襲いかかってきてました!
とりあえずゾンビゲームとかで特攻ありそうなエグゼイドで迎撃です!
「ぐ、なんだこいつら!新種のアンデットかぁ!?」
「切っても切ってもダメージがまるで…うわっ!」
「誰かエリス教の教会にいって聖水持ってきてくれぇぇぇぇぇ!!」
…いや、自分より不味い状況にあるのは皆さんの様子。自分はヘイセイバーの能力でなんとかアナザーアギトの仮面を剥がせましたが、他の方ではそうはいきませんし…!
そしてチラッと見えてしまいましたが、今、アナザーアギトに噛まれた人が…!
"GYoooo!!"
「きゃぁぁぁぁぁぁ!?」
「なっ、マジかよ!?噛まれただけでこいつらと同類になっちまうのか!」
もう犠牲者が!
…でも自分が助けに行こうにも身体能力は周りの方と比べると低いですし逆に足手まといになりそうですね…っ!
「でりゃぁっ!」
『ヘイ!アギト!デュアルタイムブレイク!』
『ヘイ!エグゼイド!デュアルタイムブレイク!』
恐らく、本体であるアナザーアギトデュラハンを倒せば元に戻るとは思いますけどこのアナザーアギトの肉の壁をどうしましょう…?
ディケイドライドウォッチにはあの『世界の破壊者』のデータが詰まっていますから、このライドウォッチでアルティメットタイムブレイクを使えばアナザーライダーの設定なんて無視して倒せるとは思います。
しかし、
チャージが長いのでその間に攻撃されて自分も感染してはもう打つ手がなくなってしまいます。
「『ターン・アンデット!』」
「ん?ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!?」
「あ、アクア様!?」
こ、この声は間違いなくアクア様!いきなり混戦となったのでパーティメンバーと離れてしまったのですが、一人見つけることができました!
(確か、この呪文はウィズさんに使っていた退魔の……だった筈。デュラハンさんも悲鳴を上げていたし、もしかしたら時間を稼いでいるだけで倒されるかもしれないですね)
「それなら自分は自分にできることをするだけです!」
『ヘイ!フォーゼ!デュアルタイムブレイク!』
自分はフォーゼを選択し、トリガーを引きまふ。
すると、ライドヘイセイバーの持ち手の先端から勢いよく煙が噴射されました!
「ト〜ビアガラーイズ!」
体がフワッと浮き上がり空を舞っています!
そして、ライドヘイセイバーを離さないようしっかりと握り、正門近く屋根へと着地。
戦場をそこから俯瞰します。
「……えぇー?」
…なんかデュラハンことアナザーアギトが地面をゴロゴロ転がりながら煙を立ち昇らせているのですが。
「そんなに痛いのですかね?退魔の呪文とやらは」
その近くにはカズマさんやアクア様。
噛まれているのにもかかわらず、皮膚が硬すぎて牙が通っていないダグネスさん(推測)
……その中でめぐみんさんだけが見当たりませんでした。
「まさか、アナザーアギトに…?」
…いや、あのダグネスさんがいるのですから少なくとも守り通せるくらいの守護はありました。
「それなら別の場所にいる…?」
ありえます。
彼女の爆裂魔法は広範囲な攻撃な為、ある程度距離を離さなければないですし。
カズマさんに指示されて移動している可能性だってありますし…そうだと信じましょう。
「…よし、始めます!」
『フィニッシュタァーイム!』
ディケイドライドウォッチをセットしてハンドセレクターを5回転!
『ヘイ!カメーンライダーズ!』
ここからならアナザーアギトの攻撃は届きませんがこちらからの必殺技は遠距離可能なので通ります!
あとはタイミングを見計らってこっそりと!
『ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘヘヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘヘヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘヘヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘヘヘイ!』
今回は、自分から見て縦に…ディケイドのディメンションキックのように並べて…!
「突くッ!」
『ヘイセイライダー!』
『アルティメットタイムブレイク!』
「よし、軌道は完璧!当たれぇぇぇぇぇ!!」
「当たるか馬鹿者ォ!逆に何故家1軒ほどの距離しか空いておらぬのにその音声が聞こえぬと思った!?」
………あっ。盲点でした!
…しかぁーし!
「避けましたね!」
避けた、と言うことはこの攻撃がデュラハンに痛手を負わせることが出来ることの証明!
ダメージを与えていけばアクア様の退魔の呪文の効きもどんどん良くなるでしょうしね!
「これなら……いけます!」
……とはいえ、ライドヘイセイバーは使うたびに僅かながら魔力を消費します。必殺技ともなるとその消費も爆上がり。
今の必殺技はあと2回が限度です。
ですが、外さなければなんの問題もありません!
「さぁ!花道でショータイム!あなたの罪を数えて神に返しなさい!」
「多分だがいろいろ間違っているだろう!それ!」
『ヘイ!フォーゼ!デュアルタイムブレイク!』
自分はフォーゼを選択して安全に地面に降り、
『ヘイ!電王!デュアルタイムブレイク!』
ヘイセイバーをブンブン振り回すことで先端から飛び出た紅色の閃光を牽制としてデュラハンに叩きつけました——–—————!
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