ハイテンション↑バカップル (アサルトゲーマー)
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雨には負けず 赤には勝てず

これは あたま を からっぽ に して よむ さくひん です 。

DON’T THINK. FEEL.


 

 暗い空。ざあざあと音を立てる大粒の雨。学校の帰り道。

 

 そう。絶好の相合傘チャンスである。

 物理的な距離が近くなることによって想い人と精神的にぐっと近づいたり、仲良くなったりするチャンスのあれだ。

 思春期特有の異性への距離感やらなんやらにおいて、これは重大なイベントの一つといっても過言ではない。

 

「イエエエエエエエエエーーーーッ!!雨だァァーーーーッ!!」

「雨ですゥゥゥーーーーーッ!!」

 

 

 一部のバカを除いて。

 

 バチャバチャと水たまりを踏み荒らしながら雨の中を走っていく一組の男女。

 男の名は灰天 翔。茶色に染めたソフトモヒカンがトレードマークのスポーツマンだ。まるで雨を受け入れるように両手を広げて歩道を駆けている。

 そして女の名は茄鳴須 奈央。長いウルフヘアが自慢のパワフル少女だ。綺麗にセットした髪をベチャベチャに濡らしながら翔の隣を並走している。

 

「奈央って割とバカだよな!俺が傘持ってくるわけねーーーじゃん!!」

「翔さんこそおばかですよ!こんな可愛い子との相合傘チャンスを棒にふるなんて!」

「一緒に雨に打たれながら帰るのもアリだろ!」

「アリかナシで言えば断然アリですね!!」

 

 うひゃっほーぅ!と奇声をあげながら水煙に消えていく男女。多少頭のねじが緩んでいるものの、その仲はとてもとても良いものだった。

 

「おーい奈央!」

「なんですかー!?」

「風邪ひいたら看病してくれー!」

「あ、じゃあ私もー!」

「オッケー!」

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

「全然風邪とかひかなかったわ!!」

「私たちは元気のパワーにあふれてますからね!!」

 

 次の日。普通に登校した翔と奈央は朝っぱらからテンションが高かった。

 馬鹿は風邪を引かないとか言うけれども、この二人に限っては元気が有り余っているだけだろう。

 

「そういや今日テスト返ってくる日だったよな!奈央は自信あるか!?」

「そりゃもちろんですよ!翔さんはどうですか!」

「補習の準備…できてるぜ!」

「バーカ!翔さんのバーカ!」

「うるせー!奈央に赤点あったら笑ってやるからな!」

「ふっ…赤点常習の翔さんならともかく私がそんなポカやらかすわけがないでしょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤点イエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「補習イエエエエエエエエエーーーーッ!!」

 

 回答欄のズレには勝てなかった奈央と普通に赤点を取った翔の壮絶な補修が始まる!!

 

「はいじゃあ補習を始めますよっと」

 

 禿げ頭の先生のけだるげな声。それに反応した奈央と翔はピッと背筋を伸ばした。

 

「先生!」

「なんですかな」

 

 奈央がバッと手を上げて勢いよく質問する。

 

「私は解答欄間違えただけなので先生の恩情的なアレコレで補習の免除とかできませんか!」

「できませんよ。一応決まりだからね」

「先生の恩情家!いけおじ!」

「褒めてもだめだからねー」

「じゃあ真面目に聞きます!」

「ノートも取ろうねー」

「今先生の外堀固めが熱い!!!」

「静かにしようねー」

「…………!!」

「はいそこ、顔がうるさいよー」

 

 抵抗もそこそこにやりこめられた奈央は変顔マシーンと化した。そんな彼女を見て翔はふっと息を吐く。

 

「ふふふ…所詮は同じ穴のムジナ…!俺と同じ補習を味わうといい…!」

「灰天くんは赤点多いからスペシャルな奴を用意してるよ」

 

 翔の顔からさっと血の気が引いた。そんな彼を見て奈央がぽんと肩を叩く。

 

「………………!…………!」

「何か言えし」

 

 彼にほっぺをぐりぐりされても先生の言うことをしっかり守る、よい子の鑑の奈央である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「補習終わりイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「買い食い最高ォォォーーーーッ!!」

 

 なんとか補習を乗り切った二人は近場の36アイスクリーム(+5)に寄ってアイスを食べながら帰路についていた。

 

「なあ…俺、今スゲーことに気が付いちまった…」

「何です?」

 

 真面目な顔をした翔に奈央は首を傾げる。

 

「同じモン買ったら食べさせあいっこする口実がなくなる……!」

 

 なんということだ!翔と奈央のカップにはまったく同じラムネ味のアイスが乗っているではないか!

 

「あっ!!盲点でした!!」

「ちくしょう!そっちの味が気になるから食べさせてが使えないなんて…!」

「あああ!私はなんて愚かなことを!」

 

 この世の終わりに直面したような絶望した顔でアイスを食べ続ける奈央。

 しかしそんな二人に光が差す!翔が天啓を得た顔で空を見上げたのだ!

 

「いや、違う…!食べさせあいっこするのに口実なんていらない…!」

「な、なんですって!翔さんは天才ですか!?」

「よっしゃ奈央!食べさせあいっこするぞ!!」

「がってんです!…あれ?」

 

 奈央がアイスのカップを覗く。そこにはプラのスプーンが一つ入っているだけ。

 

「……」

「奈央…おまえ…」

「………てへ。全部たべちゃいました」

 

 翔がわなわなと震える。そして自身のアイスから一口分をスプーンに掬い、彼女に突き出した。

 

「餌付けイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「許されたイエエエエエエエエーーーーッ!! もがもが」

 

 彼と彼女はいつも仲良し。

 

 

 

 



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素直さやひたむきさMAX END

大丈夫?カップルをギスギスさせるための間男間女絶対殺すマンの作品だよ!


 デートというものにはとかく金が掛かるものである。

 映画館デート。おやつ込みで一人4000円強。

 買い食いデート。クレープひとつ700円くらい。

 カラオケデート。一時間600円前後。

 

「お財布スッカラカンイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「金欠イエエエエエエエエエーーーーッ!!」

 

 そう、彼らは今金欠だった。

 放課後にデート。休日にデート。隙あらばデート。残念ながら当然の結果と言えよう。

 

「お金稼がなきゃ!!」

「バイト探さなきゃ!!」

 

 そう言って二人は学校の中だというのにバイト求人誌を広げて顔を突き合わせている。

 賃金、拘束時間、仕事の内容をあーでもない、こーでもないと相談している二人の元に近づいて行く足音が一つ。

 

「おーっほっほっほ!!金欠とは情けないですわねお二方!」

 

 金髪巻き髪お嬢様のエントリーだ!彼女は御鐘 望子、ナンカスゴイカンパニーのご令嬢である!

 

「モッチー!」

「望子ですわ!貧乏でいらっしゃる貴方たちのためにお仕事を持ってきましたわよ!」

「ありがとうございますモッチーさん!」

「望子ですわ!」

 

 ペシーンとバイト求人誌の上に重ねられたパンフレットは遊園地のもの。はてこれは?翔と奈央は首を傾げた。

 

「うふふふ…貴方たちには園内のヒーローショーに出演していただきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ怪人ども!!お前たちの悪事は僕たちモモタロウ戦隊が許さないぞ!!いくぞみんな!!」

「ワンワン!!」

「……。きじきじー!!」

「えっ?……。サルサルー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶっつけ本番大失敗イエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「キジの鳴き声まったくわかりませんでしたイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

 

 遊園地のバイト当日。そこには愚かな敗北者たちが居た!!

 

「なーにをやっておりますのおばかさん!雉の鳴き声は『カー』や『ケーン』でしょう!」

「ごめんね!!!」

「でもまあ翔様のフォローはなかなかよかったですわね!今回はそれに免じて減給はなしにしてさしあげます!」

「モッチーさんの美人!雅量!ゴージャス巻き髪!」

「おーっほっほっ!褒めても賃金は等倍ですわよ!」

 

 上機嫌な望子から渡されたひとつずつのポチ袋。二人は顔を見合わせて袋の中を覗いた。

 

「…あれ。モッチーさん、これって」

 

 奈央が袋から紙幣と共に取り出した一つのチケット。それは遊園地の一日フリーパスであった。

 目を点にした彼女を見て満足そうな顔をした望子は腰に手を当て、大笑いする。

 

「おーーーーっほっほっほっほ!アツアツのお二方にはお似合いのボーナスですわ!御鐘望子は雅に去りますわ!セバス、帰りますわよ!」

「中村です」

 

 言うだけ言うと望子はセバス(中村)を連れて歩き去っていった。

 ぽつんとステージ裏に取り残された二人。

 

「モッチー心まで美人とか惚れるわ」

「惚れちゃいますね」

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 

「んあああああああーーーっ!どうして!わたくしは!素直に翔様と奈央様を応援していると言えませんの!答えなさいセバス!」

「中村です」

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 

「ジェットコースターイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「水しぶきイエ…がぼぼぼっ!」

「奈央ーっ!?」

 

 しばらく後。そこには最後に水溜まりにぶち込まれるタイプのジェットコースタに乗っている二人が!

 

「ゴーカートイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「マリ〇カートエイイイイイイイイーーーーッ!!」

 

 そしてゴーカートに乗ってはしゃぐ二人が!

 

「観覧車はイエらない」

「はい」

 

 そして観覧車で急に大人しくなる二人が!!暴れると危ないからね!

 

「はあー。今日は遊んだなぁ」

「はい、とっても楽しかったです!モッチーさんには感謝ですね」

「そうだな」

 

 そう言って肩を寄せ合う二人。はしゃいだせいなのか、二人きりで居るせいなのか、二人の体はほんのりと熱を持っていた。

 自然と手が重なり、絡まり合う。

 

「今日は凄く楽しかった。またデートしような」

「翔さん、何もう終わった気でいるんですか?まだイベントが一つ残っていますよ」

 

 え、と翔が思った時にはもう遅かった。夕陽で伸びた二人の影が重なり合う。

 長い沈黙。息を止めた二人。先に「ぷは」と息を吐いたのは奈央だった。

 

「えへへ。観覧車で好きな人と口づけするの、夢だったんです」

 

 口元を押さえながら、彼女は顔を赤くして言った。

 

 

 

 

■■■

 

 

「セバス!!今お二方は何をしていましたの!?双眼鏡を貸しなさいセバス!」

「中村です」

 

 

■■■

 

 

 

 

 夜。

 奈央は自分の部屋でぐったりしていた。彼女の記憶は遊園地を出たあたりからすっぽり抜けており、いつの間にか風呂を済ましてベッドに倒れこんでいる状態だ。

 

「やっちゃった…。翔さんに、口づけしちゃった…」

 

 頭はふわふわ、視界はぐるぐる。壊れたレコードのように同じセリフを呟き続ける奈央は幸せそうに頬を緩めながら枕に顔をうずめる。

 

「翔さん大好きいええええーーっ。えへへ」

 

 翔さんも私の事を考えていてくれているのかな?奈央は幸せな気持ちで眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奈央大好きイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

 

 なんだか遠くから叫び声が聞こえたような気がした。

 

 

 




キャラ紹介

灰天 翔
はいてん しょう君。うるさい。

茄鳴須 奈央
かなりす なおちゃん。うるさい。

御鐘 望子
おかね もちこちゃん。うるさい。

中村
なかむら君。しずか。


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しなびたエリンギ

焼き肉なら塩タンから焼いてロース、ハラミ、カルビ、ホルモンの順番で焼くので第三話の投稿です


 

 

 年頃の若い男女が梅雨の屋外ですることは何か?

 もくもくと立ち上る白い煙。じゅうじゅうと音を立てて踊るソーセージ。汗を流すエリンギ。口直しのカットされた野菜。

 

「良く焼いたエリンギ美味エエエエエエエエエーーーーッ!!」

「新鮮な生ピーマンイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

 

 そう、バーベキューである!!

 景色の良い河原で炭に火を入れ、大好きな人と一緒に食事!これ以上の贅沢はあろうか!いや、ちょっとしかない!

 

「良く焼いた豚ハラミだオラァ!あーーーーーん!!」

「はぐっ!……んまーーーーい!そしてお口直しにキャベツを…!」

 

 もう一度言おう!これ以上の贅沢などちょっとしかない!!

 

「翔さん!牛ロースですよ!!あーーーーん!!」

「あーーーーん!!……ふへぇひょほほ!!ほふぁん!!」

「ですよね!!もう一口あーーーーーん!!」

「ほはんほ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「土砂降りイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「傘無しイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

 

 繰り返し言うが梅雨の屋外である!!天気の激変をその身をもって受け止めた二人は気合でバーベキューを続けていた!!

 

「ちょっとまって!!ソーセージどこに消えた!?」

「翔さんさっき食べたでしょ!」

「おじいちゃんじゃねえぞイエエエエエエエエエーーーーッ!!で、奈央食った?」

「実はさっき…たべちゃいました!!」

「じゃあソーセージ追加いくぞおおおおおおおお!!」

「やったーー!」

 

 無煙コンロの油除けが機能し、浸水したところで直ぐに排水されてしまうので炭の火力は依然変わりない。

 調理中の材料が濡れないよう紙皿を掲げた二人は控えめに言ってもアホっぽかった。

 

「トドメにホルモン投入イエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「ころころ焼きイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

『流石に風邪ひいたぜイエエエエエエエエエーーーーッ!!ゲッホゴホガホーーッ!!』

「やーい翔さんの貧弱!!かぜっぴき!!」

『返す言葉もないぜヒャッホーーーーーッ!!』

 

 翌日の日曜日の朝。翔は見事に風邪をひき奈央に電話で連絡を取っていた。

 ちなみに奈央はちっとも体調を崩してはいない。

 

「それじゃあ今から翔さんのおうちに行って看病しますね!」

『朝ごはんはおかゆでよろしく!!』

「アイサー!では後ほどっ!」

 

 ピ、とスマホの通話を切った奈央。彼女はにたりと笑った後、台所の冷凍庫を漁り始めた。

 

「フフフ…この間の看病の約束の奴を冷凍していて正解でした…!」

 

 そう言って奈央が取り出したものとは…?

 

 

 

 

 

 

 

「では翔さんのおうちでクッキング、です!ではまずザルにお米をドン」

 

 冷凍ごはんのエントリーだ!家庭的である奈央は余ったご飯を冷凍しているのでレンチンごはんとは基本縁がないのである!

 

「そして冷凍梅干しもドン」

 

 冷凍されたウメボシのエントリーだ!これはただ単に奈央がうっかり冷凍しちゃっただけのものである!

 

「流水解凍して、煮込んで、つめたい塩入れて…」

 

 冷凍されたアジシオもエントリーだ!やっぱりうっかり冷凍しちゃったものである!大丈夫かこの女!?

 

「はい、できました!ただのおかゆです!」

 

 そしてできたのは冷えた梅の乗った土鍋おかゆである!おかゆを作ればおかゆができる、古事記にもそう書かれている!

 彼女は土鍋を持って翔の部屋に突撃した!

 

「出来ましたよイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「待ってたぞイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「ふーふーしますねイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「憧れのシチュエーションじゃんやったーーーー!!」

 

 風邪の日のおやくそく、おかゆフーフーである!

 

「ふー。ふー。もぐ」

「あっ」

「うん、おいしいです!」

「奈央ォ!そりゃないよ!」

「こ、これはつい食べてしまったんです!別に味見ってわけじゃ…!」

「正直者イエエエエエエエエエーーーーッ!!」

 

 とまあ、そんなこともあったが。紆余曲折を経て二人は無事に食事を終えた。

 

「おうちデートしたくない!?」

「したいです!」

 

 突然の翔の提案。それに奈央は快く乗る。そして彼女はにやりと笑った。

 

「じゃあまずはおうちの探検ですね!翔さんってエッチな本どこに隠してますか!?」

「言う訳ねーじゃんバーーーーーカ!!奈央のエッチ!」

「あ、じゃああるって事ですね!手始めにクローゼットでも漁ってみます!」

「おい馬鹿やめて!」

「あーーー!この雑誌の人すっごくおっぱい大きいですよ!」

「勘弁して欲しいぜイエエエエエエエエエーーーーッ!!」

「イエっても私の手は止まりませんよ!風邪で弱っている今が翔さんの性癖を網羅するチャンスです!いざ!」

 

 ばさばさと本を漁る奈央と顔を真っ赤にしてタオルケットに蹲る翔。

 

「イヤーーー!!やめて!!」

「へへへっ!やめてと言われてやめる女がいますかっ!」

 

 その日、男の情けない叫び声が住宅街に響いたとか響かなかったとか。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 

「あのー…翔様はどうされましたの?今日はなんだか、萎びているような…」

「はいっ!私がたっぷり辱めました!」

「えぇ…?」

 

 次の日の学校では机に突っ伏す男子と困惑する巻き髪のお嬢様、あと顔をキラキラと輝かせた女子が居たそうな。

 

 



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