地球に選ばれた家族~夏季休業で帰省中、冬の駒王町に転移させられガイアメモリが生えてきた~ (しゃしゃしゃ)
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「始業式のヴォルテックス」 第0話前編「Vの衝撃/首領、撃沈! 」

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「ただいまー…」

「あ! 先輩お帰りなさい♥ 」

 扉を開けるとギャスパーが笑顔で駆け寄ってきた。

「ギャスパー…あ、そういえば帰ってくるの今日だったか」

「はい。それで、えっと…ただいま、です」

「ああ、おかえり。ギャスパー。そういえばゼノヴィアは? まだ帰ってないのか? 」

 僕がゼノヴィアのことを気にした素振りを見せると、ほんの少しギャスパーの顔が曇った。気づかないふりをして靴を脱ぎ、買ってきた食材を冷蔵庫に入れに行く。そんな僕の後をギャスパーがちょこちょこついてくる。
 可愛い。

「ゼノヴィア先輩は…その、ちょっと帰ってきたときに駅で色々あったので、今日はアーシアさんに付き添ってイッセー先輩の家に泊まるって言ってました」

「ふーん…その話も気になるけど、つまり今日はゼノヴィアの奴は帰ってこないってことか」

 さりげなく今日は朝まで二人きりでいられるということを示す。

 ギャスパーがハッと目線を上げる。瞳にほのかな欲望の色が灯る。

「そ、そうですね…今日は、僕と先輩の二人だけ…です」

 パタン、と冷蔵庫の戸を閉めてギャスパーの方を振り向く。顔を少し赤らめて、もじもじと落ち着きがない様子。よっぽどお預けが辛かったものと見える。


「ギャスパー…」

「先輩………♥」

 そっとギャスパーの頬に手を添え、唇を重ねる。僕も、ギャスパーも久々の味と感触に息遣いが荒くなり、舌を吸い嬲り唾液を絡めて、離れていた日々を埋めるように強く交わる。

「んぐッ…」
「んむっ…♥ 」

 貪るようなギャスパーの唇。
 舌の動きを止めないまま、頬から手を離し、数週間ぶりのギャスパーの体を撫でる。

 どれほど僕を求めていたのだろうか…。

「ふは♥ あっっ♥ (先輩とちゅうするの気持ちいいっ♥ )」
 
 線の細い上半身に比べて、肉付きのいい下半身。

「あ………っ♥ (いつもよりずっと感じちゃう…♥ )」


 サラサラでいい匂いのする綺麗な髪の毛。
 それでもこうして抱きしめてしまえば分かる男の子な肩と胸。

「んぁ…(抱きしめられるの、好きぃ…♥ )」


「ギャスパー、おかえり」

「えへ…先輩ぃ♥ (がまん、しないといけないのに……っ)」

 ギャスパーの体が震え、腰が引かれる。

 とぷっ、とぷっ、と音もなく液体が流れ出て、彼の下着を濡らす。

 弛緩した体を支え、引き寄せる。


「………ごめんなさい。ずっと、先輩とちゅうしたくて…我慢できなくて……♥ 」

 蕩けるような笑みを浮かべ、上目遣いで謝ってくる。
 ギャスパーの健気さがたまらなかった。

「ああ、もう、まったく…しょうがないなぁ 」

 にやにやと笑顔で返す。別に怒るほどじゃない。

 戦闘時でもないし、改造人間としての感覚は常人よりちょっと上程度に抑制しているわけだが、それでも会ったときからギャスパーの発情した匂いはプンプン香ってきていた。ギャスパーが我慢できずに出しちゃうことくらい予想できていた。

 むしろそこまで健気に僕を愛してくれるギャスパーに興奮が募るばかりだ。
 

「先輩…♥ 」

 ギャスパーはそわそわとした様子で、ズボンの上から手を添わせてきた。

「(先輩の○○○…♥ 久しぶりの本物の○○○♥ )」

 甘い吐息を吐き、膝立ちになってズボンに手を掛ける。
 当然のように彼のスカートの真ん中は持ち上げられてちょこんと凸ってる。
 可愛い。

「―――はぁぁ…んっ…♥ えっと、その、あの、じゃあ…いっぱいご奉仕しますね♥ 」

 ギャスパーは


―――パタン―――

 
『おっと、ずいぶん先の未来までお見せしてしまったようです。忘れてください』


(前編3000字弱、後編10000字強)



 

 

 とある島の秘密施設で、二人の男が会話をしていた。

 一人はドラゴンを思わせる意匠の兜をかぶった、威厳と強大なオーラを纏った老人。

 一人はだぼっとしたパーカーを着て、へらへらとした笑みを浮かべた冴えない男。

 

 

 

「こうして見つめ合ってるのもなんだし、ちょっと話しようかね。

 といっても、僕があんたに話せることなんてせいぜい思い出話しかないけどさ」

 

「………」

 

 

 

 

 

 世界征服、というものがある。

 文字通り、世界を征服してしまうことであり、悪の秘密組織の採取目標に掲げられることの多いものだ。

 

「なぁカイザー、実は僕はこの世界の住民じゃないんだぜ」

 

「………」

 

 

 世界征服を掲げる悪の秘密組織として有名どころはやはり『ショッカー』だろうか。番組の冒頭ナレーションでも「世界征服を企む悪の秘密結社である」と紹介されている。

 

 ショッカーの世界征服のプロセスは

①優秀な人材を改造し改造人間を生み出す。

②改造人間で世界中を襲う。

③混乱に乗じ大統領など世界中の要人と改造人間を入れ替える。

→→世界はショッカーの思い通り。

 というものだ。

 

 とても大掛かりで、組織力と資金がなければやっていけないだろう。改造手術とか一体いくらかかるんだという話だ。

 

 

「夏休みで地元に帰る新幹線に乗っていたはずなのに、気が付いたら公園に佇んでた。その上で僕には『地球の記憶』を生み出す力が備わってた」

 

「………」

 

「カイザー、そんな訳の分からない状況で僕が何を思ったか分かる? 僕は『利用されたらどうしよう』と思ったんだ」

 

「………」

 

 

 

 世界征服を目指す悪の秘密組織は大抵作戦を練っても正義のヒーローに作戦をぶち壊しにされる。

 

 そんな悪の組織を見て、『自分ならもっとうまくやれる』と考えた経験がない人間はそうはいないだろう。

 

 だが、大人になって「よし、世界征服してやる! 」と行動する人間はいない。それはなぜか。

 

 単純に世界征服にロマン以外の何かを見いだせないからだ。

 

 

 

「僕の尊敬する人の言葉だがね、『生まれに見合わない力を持っていれば力しか見られない』。力を持つ者はどう足掻いても権力者に利用されて力に見合った働きを強要される、自分ではない他人のために力を使うことを強いられる。僕はそれが嫌だった」

 

「“この世界”が半端な力の持ち主は骨の髄まで利用される世界だってのは知ってたからね。力があれば何をしても許される世界だってのもさ。

 

 だって、強ければテロに加担しても正義の味方みたいな顔が出来るんだからな、この世界は」

 

「………」

 

 

 世界征服というのは金がかかる。それに、「世界征服します! 」と言って協力してくれる人間が一体どれだけいるだろうか。支配するためにはどうしたって金と人が不可欠だというのに。

 

 

 

 大義がなければ人は動かないし、金がなくても人は働いてくれない。そもそも何のために世界征服をするのか。

 

 

 「平和な世界」を作るためか。

 自分を崇め奉らせるためか。

 支配者階級になりたいのか。

 大金持ちになって贅沢がしたいのか。

 人類の黒幕として、裏から世界をコントロールしたいのか。

 

 

 

 

「そういうのはカイザー、あんたにもわかるだろ? 権力の怖さとか、力を持つことの優位性とか。それでも僕一人じゃ力をつけるも何もなかったからね。こっそり勢力と兵隊を作ることにしたわけよ、あんたの秘密結社以上にあくどいこともやってね。

 当然といっちゃ当然。なんせ時間がなかったからさ。法律とか倫理観とかぶっちぎりまくったから、社会から隠れる必要があったのよ」

 

「………」

 

 

 少なくとも、贅沢がしたいだけなら世界征服なんてする必要はない。それができるだけの資金があれば、いくらでも贅沢できるだろう。

 

 世界征服を達成して、全人類の隷属化を果たしたとして、それは悪の組織が人類の“飼い主”になったということに他ならない。

 

 飼い主であるから、人類(ペット)の世話はしないわけにはいかない。

 

 食事の用意や、トイレの世話、病気の予防接種や健康管理、遊びに付き合ったりもしてあげなければいけない。

 

 人類(ペット)のことがよほど好きでなければ、飼い主でいるのはうんざりすることだろう。

 

 

 

 

「そんでまぁ…ゴロツキをダイヤモンドに変えたり、犬や猫を人間に変えて食ってみたり、人間を大量生産して従順に働くよう脳改造を施したり…あ、カイザーも部下を手ずから改造手術して怪人にしたりしたんだっけ。それもやったなぁ………」

 

「………」

 

「脱水症状で死にかけたり、脳みそパーン! しそうになったり、ワイヤーで上下に切断されたりもしたなー…」

 

 

 

 そもそも、世界征服のうまみとはなんだろうか。

 

 世界を支配したからといって、好きなことができるわけではない。逆に支配した相手から揉め事を持ち込まれて裁定を求められ、誰よりも公平中立であることを要求され、気に入らなくても弾圧や処刑は出来ず、無理にやれば反抗される。それが『世界征服』。

 

 

 世界中から美男美女を集めたり、世界の美味・珍味な食べ物に舌鼓を打ったり、そういうこともできるかもしれない。

 

 だがそれは今の時代、金さえあれば出来てしまうことでもあるのだ。世界征服なんてしなくても、世界征服できるだけの権力と資金力があればできてしまうことなのだ。

 

 

 

 

 

「そういえばカイザーは愛する人とかいるの? 僕も人の心は検索できないから、カイザーの愛情を向ける先とかは分かんなかったんだけど。

 僕はね、いるよ。愛してるの。一号っていうの。ああ、一号って名前ね

 元々は失敗作だったんだけど情が出ちゃって…今じゃすっかり心を奪われちゃった、てワケ。

 『すごく好きな人のすごく好きな人になれた幸せ』だね。彼女を思うだけで心の奥がほわっとして、とっても幸せな気分になるんだ。日々の食事とか、そういう、なんでもない日常も好きな人がいると全然違うよ。家族っていうのとはまた違ってさ。まぁ、僕の家族は実家ごと存在しなかったから今さら比べられないけど」

 

「………」

 

 

 

 さて、そんな『世界征服ってロマンだけど、割に合わないよなぁ…』な世界征服を企む悪の秘密組織が、この世界には存在する。

 

 

 

「ざっくり…4ヶ月ちょっと? それが僕がこの世界に来てからの時間で、僕が勢力を増大させた時間なわけだ。……半分ぐらいは海外で一号を生き返らせるために頑張ってたから実質2ヶ月ぐらい? それはともかく、この質問は単純に好奇心で聞いてみるものなんだけど…」

 

「………」

 

 

 およそ50年前に組織され、人知れず悪の行為を世界中で行ってきた秘密結社。国際刑事警察機構(ICPO)などにその存在を気取られることなく、慎重に慎重を重ね勢力を増し、世界征服のため戦力を整えて、そろそろ日本から征服しようかと企んでいた恐るべき悪の一団。

 

 

「50年かけて築いてきた組織をこんな若造に奪われるのは一体どんな気分かな? <カイザー・ヴォルテックス>首領さま? 」

 

「………」

 

 

 その名も『渦の団(ヴォルテックス・バンチ)』。

 首領であるカイザー・ヴォルテックスを頂点に、『四覇将』と呼ばれる幹部たち、魔物や獣人、人間の異能者や改造人間。黒づくめの戦闘員たちまで存在する冗談のような悪の巨大組織である。

 

 

 

「お父、さん。そろそろ、いいと、思う、よ? 」

 

「おう、それじゃ僕のものになる組織の連中にご挨拶といきますかね。冠ちゃん、カイザーの移動よろしくね」

 

「うん。まかせ、て! 」

 

 

 

 その悪の秘密組織が今、終わりの時を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 




後編に続く。
(9:00に予約済み)前日譚へのリンクはそっち。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


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第0話後編「Vの衝撃/ヴォルテ――ックスッッ‼ 」

「この本によれば、普通の大学生・郷秋敏(ごうあきとし)。彼には星の端末にして地球の守護者、ガイアの婿となる未来が待っていた。『渦の団(ヴォルテックス・バンチ)』を傘下に収めた彼は、駒王学園2年生、塚土筬(つかどおさむ)になりかわり……おっと、先まで読みすぎました」



 日本近海の孤島にその組織の秘密基地はあった。

 

 組織の名は悪の秘密結社『渦の団(ヴォルテックス・バンチ)』。

 

 アジトの奥にある広間――集会場に集うのは、全身黒づくめで統一された戦闘員や怪人たち。

 

 皆、一糸乱れず整列しているものの、集会場には困惑の空気が広がっていた。

 

 

「(一体なんだというんだ…)」

 

 他の戦闘員同様に困惑を抱えながらチラチラと視線を泳がせるこの戦闘員は本名:田中仁志、43歳。戦闘員歴23年のベテランでありながら、体力の低下から離職を考えつつも、大学受験の迫った息子の学費やまだ少し残っているローンの支払いなどを考えると辞めるに辞められない。そんな単身赴任中の父親である。

 

 

「(確か今日は四覇将合同の大作戦が行われるから、集会の類は開かれることはないはずだったのに…)」

 

 戦闘員田中は横目で同僚の様子を見る。隣に整列しているのは後輩の戦闘員佐藤。彼も何かあったのかと困惑した様子が黒ずくめの上からでも感じ取れた。そして彼もこちらに気づいた。

 

 

「(田中さん、何か知りませんか? 今日ってなんも予定なかったっすよね? )」

 

「(うん。特になかったはずだよ。もしかしたら何か不測の事態が起きたのかも)」

 

「(なんすか、それ。俺等下っ端に関係あるんですか? あぁ、もう。船の時間遅れちゃいますよ。この前負傷手当が出たからレストラン予約してたのに………)」

 

「(こらこら、駄目だよ佐藤くん。下っ端でも、組織の人間なんだから上の呼び出しにはしっかり応じないと。………ん)」

 

「(どうしたんですか? )」

 

「(いや、大したことじゃないんだが………いつもより人数が多いと思わないかい? )」

 

「(え…? ………言われてみれば、確かに、見える範囲だけでも知らない怪人サンや…戦闘員じゃない奴らも大勢いますね)」

 

「(普段の集会では見かけない研究員や技術チームの人たちもちらほらと見えるね………)」

 

「(………これってもしかして、本当にガチで重要かつ緊急な何かなんでしょうか)」

 

「(多分そうだろうね………)」

 

 

 二人が目と目で会話をし終えたその時、前方にある一段高い壇上に光が灯った。

 

 壇上の、禍々しい装飾を施された椅子。本来なら座っているはずの、威厳に満ちた組織の首領 カイザー・ヴォルテックスの姿はない。

 

 そして、常ならばそばに並ぶ幹部たちの姿もない。 

 

 

 

 暗転。

 集会場の灯りが落とされる。

 

 

「(………)」

 

「(おぉ…?! )」

 

 落とされた灯りが戻り、誰もいなかったはずの壇上に一人の美女が現れた。

 

 突然現れたその女は戦慄するほど美しかった。経験の浅い佐藤は不可解な現実に戸惑いながら鼻の舌を伸ばしているが、戦闘員歴23年の田中は女の正体が異形の存在――悪魔であることに気づいた。

 

 

「(いや、これは、悪魔というだけではない…この女、何かがやばい…! )」

 

 集会場に整列した戦闘員・怪人たち、それぞれが状況判断に従い行動を起こそうとした瞬間だった。

 

 

 

 

跪きなさい(ヒザマズキナサイ)

 

 

 

 

 

 たった一言、女が言葉を発した。

 

 その言葉を聞いて、全員が、考えるよりも先に身体を動かし跪いた。

 

 

「(………………は? )」

 

 田中を始め、誰もかれもが理解できなかった。自分はなぜ跪いてしまったのか。そして、何故―――

 

 

「(なんっ、だ…これは。………体の震えがッ! 止まらない?! )」

 

 ―――何故、震えて動けなくなっているのか、と。

 

 心を埋め尽くすのは得体のしれない()()()()()。考えることすら拒絶したくなるほどの「恐怖」だった。

 

 

「(動けない?! なんだってんだよ、これはよぉ! )」

 

「(違う、動けないのは問題じゃない。これはそんな生易しいものじゃない………ッ! )」

 

 悲鳴の一つも上がらない。誰もかれもが女のたった一言に屈服して、声をあげることすらできなくなっている。跪き、首を垂れ、怯えて小さくなっている。

 

 強力な魔物も、意気軒高な獣人も、多才な異能者も、誰も何もできなくなっていた。

 

 

 

 

 

「おっおー、さっすが姫ちゃん。見事な手際だねぇー」

 

(ココ)はぁ、これやる意味あるの? って正直思っちゃうんだけどぉ」

 

「こら、(ココ) それはいっちゃだめよ。お父様がやりたいって言ったんだから、馬鹿な真似と思ってもやらせてあげるのが私たちの役目でしょ」

 

「竜ねぇ、竜ねぇ、フォローになってないよ」

 

 頭を下げたままでいると、何人かの女性の声が新たに聞こえてきた。声の様子からしてまだ年若い少女だと思われる。

 先ほどの跪けとの命令を発した者とは違い、その声には恐怖は感じなかった。

 

 だが、それでも動けないことには変わりがなかった。

 

 

「やぁやぁ、待たせたねマイディアードーターズ」

 

「お父さん! へーい! 」

 

「へーい! 」

 

 パチン! と音がする。蜂蜜のように甘ったるい声の少女と男がハイタッチを交わした。

 

「…ねぇ、ずっと思ってたんだけどこれ意味ある? 」

 

「意味なんてないよ! お父さんとするの楽しいからやってるの! 」

 

「そ、そう。あー、うん、僕もナイちゃんとハイタッチするのけっこう楽しいよ」

 

「ナイ、ちゃん。お父さん、困って、る! 」

 

「そんなことないよ冠ねぇ。これはナイちゃんとお父さんのスキンシップなんだから口を挟んじゃやーよー」

 

 

 あからさまに引いた様子の男の声と、どもり気味にたしなめる幼い声、そしてそれをからかう様な、ひどく甘い声。

 

 

「(なんなんだ…一体何がどうなっているんだ…)」

 

 田中はもう頭が混乱してしまっていた。状況がまるでわからない。顔をあげて様子をうかがおうにもどうしようもできない。

 

 

 

「む、ー………」

 

「ナイちゃん、あんまりお姉ちゃんをからかうもんじゃない。それと、冠ちゃん怒ってくれてありがとう。でも僕は本当に大丈夫だから、ね? 」

 

 

「………え、へへ♪」

 

「あー! 冠ねぇずるい! 皆みてみて、冠ねぇがなでなでされてる! 」

 

「ずるいもなにもないでしょ。あまりわめくものじゃありません。はしたないわよ」

 

「でもいいなぁ…(ココ)も冠ちゃんみたいに小っちゃかったら…」

 

「大きさの問題なのでしょうか………」

 

 

 

 

「さてと、茶番はこのくらいにしよう。恐姫」

 

「はい。【面をあげなさい】」

 

 

 また、逆らえぬ声。

 考えるよりも先に顔が上がる。正面を向き、戦闘員田中は――否、その場の『渦の団(ヴォルテックス・バンチ)』の全団員は、驚愕に目を見開いた。

 

 

 

 視線の先、本来なら組織の首領が座るはずの椅子には見知らぬ男がニヤニヤとした笑みを浮かべながら座り、その周りには戦慄する美貌を持ったかの美女と、他に4人。合わせて5人の女が並んでいた。

 

 大柄な者、小柄な者、てんでばらばらな5人ではあったが、その美しい()()()()を見れば、彼女たちが姉妹かなにかであることは簡単に理解できた。

 

 

 

 

 だが、団員たちの目にそんな些事は入らなかった。

 

 

「「「「「「(首領―――ッ‼ )」」」」」」

 

 

 彼らの主、彼らを統べる首領 カイザー・ヴォルテックスが椅子の前に這いつくばり、黒い鎖のような何かで拘束されていたのだ。

 

 戦闘の痕、だろうか。カイザーの顔や手には無数の傷があり、鮮血がとめどなく滴っている。

 

 カイザーの象徴たるドラゴンを思わせる意匠の兜もボロボロになったうえで敢えて被せられている。嘲るように、侮辱するように。

 

 

「………っ! 」

 

 

「………!」

 

 

 カイザーがこちらに何かを伝えようともがくが、拘束は外れず声すら出ない。

 そして団員達も、今すぐにでも飛び出して首領を救い出したいはずなのに、動くことも叫ぶこともできない。

 

 

 

 

 

「ふひ―――ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ! 」

 

 その様子を見て、椅子に座った男が笑う。

 

「いっひっひっひっ! おい皆見てみろよ! こいつらの表情! これだよ、コレが見たかったんだよ! 」

 

「お父さん相変わらずいい趣味してるよねー」

 

「ええ、まったく」

 

「う、ん」

 

 男はちょっぴり悲しげな表情になって口をとがらせる。

 

「えー? そういうこと言うー? 」

 

「違うったらぁ、そうじゃなくてぇ…ね? 」

 

「うんうん。ナイちゃんが言ったの皮肉じゃないよ。ほんとに、最っ高」

 

「………ふふ」

 

 

 にやにやと、くすくすと、笑う女たち。

 

 絶望と驚愕と苦悶の表情を浮かべる団員たち。その様を眺めるのが最高に面白いというような、文字通り悪魔の笑みで嘲笑する5人。

 

 

 それを見て田中は自分の直感が正しかったことを悟った。そして、おそらくはもうどうしようもない…ということも。

 

 

 

「さて、悪の秘密結社『渦の団』のォ、諸君ッッ!

 ご覧の通り、君たちの首領は私と私の娘たちによって倒された。意外と強くはあったがこの通り無傷で勝たせてもらった。

 君たちを集めたのは他でもない。勝利宣言をさせてもらうためだ」

 

 

 誰もなにも耳に入らない。聞いているか聞いていないか、そんなことはどうでもいいとばかりに男は興奮しつつ朗々と語る。

 

 

「まぁ特にする必要はなかったんだがな。でもこういうのはロマンだと思うし? ともかく我々は勝った。そして君たちも我々には敵わない。今も君たちは、末の娘である恐姫の力の前になすすべもない。やれやれ、こんなざまで世界征服などとよくも言ったものだな。真面目にやれと言いたくなる。ああいや、失敬。真面目にやていたのは検索したから知っている。力不足を笑うのはよくないな。君たちは君たちなりによく頑張った。お疲れ」

 

 うけけ、うけけ! とわざとらしく嘲笑する。

 

 田中の横で佐藤が歯を食いしばって今にも飛び掛からんとする様相で震えていた。それを田中は悲し気に見やる。

 わかっているから、諦めているから。この拘束は外れないし、首領を助けることもできない。あの男に怒りをぶつけることは決してできないと。

 

 

「我々の組織は新興でね。戦力と人員はそれなりにあるんだが、コネがなくてね。組織が組織であるために必要な情報網や諜報能力…あとは資金元とかね。そういう組織力が全くないんだ。だからいただく『渦の団』の全てを」

 

『全てを奪う』男はそう言い放った。

 

 

「全てだ。やるからにはすべてをいただく。食べ残すのはもったいないからな。人手も技術も財産も人脈も秘密も一切合切全てをいただく。『VORTEX・BUNCH』が半世紀以上をかけて積み上げてきたすべてを僕ら『GAIA』がいただく―――お? 」

 

 

 ぐぐぐ、と首領の体がわずかに動く。

 

 

 

「ひ―――面白い。冠ちゃん、あー、そうだな口元だけでいいか。外してくれる」

 

「え、っと、()()()()も、とる? 」

 

「ああ」

 

 男が頷いた後、首領を拘束していた黒い帯のようなものが蠢き外れた。

 団員たちが安堵した次の瞬間、

 

 

「―――ッ! ッハ! 」

 

 首領の口から真っ黒な何か、大量の丸い何かが溢れ出した。

 

 かさかさと動き、触覚を動かす。ただそこにいるだけで人に生理的嫌悪感を抱かせるそれはまさに、“G(ゴキブリ)”だった。

 

 地に落ちたゴキブリたちは首領を拘束する帯に群がり同化した。

 

 

 

「(なんだ?! なんなんだ一体?! )」

 

 異常な光景に田中の背筋が凍る。

 《首領の口からゴキブリが溢れ、出てきたゴキブリは拘束具と一体化した》。言葉にすればそれだけなのだが、彼には何一つ理解できなかった。

 

 

「ガハッ! カハッ! ―――…っ! 」

 

 カイザーが男の顔を激しく睨む。傷つけ痛めつけられてなお薄れぬ威厳とオーラをたたえ声を出す。

 

 

 

「貴様に―――ッ! 」

 

 一瞬のうちにまた帯が首領を拘束し、喉が蠢く。

 先ほど以上の拘束がなされ、首領カイザー・ヴォルテックスは完全に動きを封じられた。

 

 

 唖然とする集会場。

 

 

「――――ひゃははははははははは! ヴァカめ! 敗者に語る言葉などないわ! ああ、ああ‼ その顔が見たかった! 最高だよカイザー! 驚愕と屈辱と怒りのマリアーッジュ! そして観客の団員達(みんな)! 最高のリアクションをありがとう! 」

 

 

 笑いが響く。椅子をバシバシと叩き前のめりになって笑い転げる男。何がそんなに面白いのか、そんな怒りは届かない。

 

 

「冠ちゃんもえらいぞ! 打合せなしでよく合わせてくれた。よーしよしよしよし」

 

「えへ、へ♪ 」

 

 撫でる男と嬉しそうに撫でられる少女。他の姉妹は何とも言えない表情をしている。

 

 ポロリ、と何かが少女から落ちた。

 カサカサ、と落ちたものは少女の足元から戻っていく。

 

 

 

「(あれは、まさか…いや、そうか、そういうことなのか…! なんてことだ…なんなんだあいつは! )」

 

 田中は理解した。首領を縛っているのはゴキブリの集合体であり、そのゴキブリのもとはあの少女であると理解した。そして理解したからこそ恐れた。

 

 異形の少女を? 違う。

 少女の能力を? 違う。

 

 田中が恐れたのは椅子に座った男だった。男の表情には恐れがなかった。嫌悪がなかった。ただ普通に、笑って少女の頭を撫でていた。

 

 なぜ恐れない、なぜ嫌悪しない。男からは特別な存在のオーラを感じない。なのになぜ…。

 

 

 

「さて、爆笑のショーは終わり。君たちにはこれからについてを説明してあげよう。不安だろう? 『新しい環境でやっていけるのかな? 』『怖い上司がいたらどうしよう…』『給料はちゃんと出るの? 』『危険な仕事をさせられたりしないかな…』と不安いっぱいのことだろう! 大丈夫! 心配いらないとも! 」

 

 大げさな動作で腕を広げて高らかにうたう。

 

 

 

「君たちは脳改造を受けることになる! 不安なんてなくなるとも! 」

 

 

 

 

 憎たらしいほどに輝いた笑顔で、とんでもないことをさらりと言った。

 

 

「脳改造と聞いて驚いたかい? 驚いただろうね。だけど安心して欲しい。君たちは君たちのままだ。ただ少し…僕らに絶対服従になるだけで。

 

 日向ぼっこのできなくなった悪の救世主いわく、『人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる』という。

 不安や恐怖の感情は消去してあげよう。愛情や友情も必要ないから消してあげよう。僕らは君たちの積み重ねたものには興味があるけど、君たち個人には全く興味がないからね。だから奪う」

 

 

「お父さんサイテー♪ 」

 

「はっはー。サイテーだろう? ………誉め言葉だよね? 」

 

「もちろん♪ そんなサイテーサイアクなお父さんがだーい好き! 」

 

 ぎゅっ、と5人の中で2番目に小柄な少女が抱き着く。

 

 

「むぅ…(ココ)も大好きぃ」

 

「冠、も」

 

「わ、私だって! 」

 

「………」

 

 

 他の4人も次々に抱き着く。

 おいていかれた田中たちは呆然とそのふれあいを見つめるしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 バン! と、静寂を破り集会場の扉が開く。

 

「―――なんということだ…まさか我らの留守に、賊が侵入しようとは」

 

「―――ワイら『四覇将』が全員出張なんておかしな指令やと思っとったんや」

 

「―――ぶひっ。その指令からして、奴らの策であったということでしょうな」

 

「―――せめて私が残っていれば…首領には指一本触れさせなかったというのに…」

 

 

 開かれた扉の向こうには4つの影があった。

 集会場の中で跪いている者たちは、その姿を見ることはできない。だがその声で、扉の向こうにいる者が誰なのかを察した。

 

 

「………全員、離れて」

 

 もみくちゃにされていた男が静かに言う。その言葉に従い女たちが離れ、男の目が『四覇将』を捉える。

 

 

 

「知っている」

 

 男が褐色の肌に陰陽師の衣装、顔面に五芒星といういでたちの男を指さした。

 

「ペンタグラム伯爵」

 

 

 そのままスライドさせ、大阪タイガースのユニフォームを着た虎の獣人を指した。

 

「タイガー監督」

 

 

 続いて額にタオルを巻いたラーメン屋姿の豚の獣人を指した。

 

「豚丸骨大将」

 

 

 最後に黒い毛並みのシーサーを指さした。

 

「彷徨海大元帥ファイナル・シーサー」

 

 

 

「ほう、我らを知っているか」

 

「もちろん。この秘密結社の大幹部様を知らないわけがないだろう? 」

 

「にゃっにゃっにゃっ! ワイらを偽の指令で誘導して、その間に目的を果たそうっちゅう算段だったんやろうが詰めが甘かったようでんな」

 

「まぁ、うん…そうだな…」

 

「ぶっひっひ、我ら4人は正に『渦の団(ヴォルテックス・バンチ)』の最大戦力。その我らがまさかこの危機に間に合わなかったなど―――首領! こ奴らを始末した暁には、我らいかような罰も受ける所存! 」

 

「あー…話し合いで解決する気はない………? 」

 

「今さら怖気づいたか。だがもはや言葉は不要。我ら『四覇将』、首領を害した貴様らを縊り殺すまで止まることはないと知れ」

 

 シーサーのその言葉が最後通牒だったのか、4人が戦闘態勢に入る。

 

 タイガー監督と豚丸骨大将がオーラを解放し、スペクトラム伯爵が符を構え、シーサーが咆えて味方に守護を掛ける。

 

 

 

 イスに深く腰掛けた男は天井を見上げ、小さくオーダーを発した。

 

「竜子、炉心」

 

「はい」

 

「えぇ」

 

 

 閃光と疾風が駆け抜ける。

 

 

「にゃ? 」

「ぶ? 」

「は? 」

「え? 」

 

 

 どしゃり、とも ばちゃん、ともとれる音とともにすべてが終わった。

 

 

 

 

 

 

 田中は思い出したように震え出した。

 

 まさかそんな、ありえない。あってはならない。

 

 『四覇将』の強さは何度も目にしてきた。彼らが負ける姿など想像もつかなかった。彼らが首領を補佐している限り、この組織は安泰であると思ていた。

 

 

「(なのに、ああ、なんで…なんで…

 なんでそんなに、絶望したような顔をしているのですか、首領………)」

 

 

 

 

 

「いぇ~い、(ココ)ちゃん大勝利ぃ」

 

「パパ、パパ、どうだった? 私の振動波。がんばって練習して魔力で包んで絞れるようになったの。どう? どう? すごい? 」

 

 

 大柄の美女が機械的な大筒へと変化した腕を戻しながら勝利をかわいらしく喜ぶ。

 手足の長い美女が恐竜のようになった頭部を戻しながら男に感想をねだる。

 

 

「ああ、竜子も炉心もすごかった。ありがとう、あいつらは僕よりも強いからね。お前たちがいなかったら今頃僕は八つ裂きにされていたところだよ」

 

 よしよーし、と二人の頬を撫ですさりながら、そんなことを男は言った。

  

 そしてその言葉は客観的にみて事実だった。男の自己評価は間違っていない。彼は単独ではカイザーはおろか『四覇将』一人一人にも遠く及ばない。【変身】してもあっさり力負けしていただろう。

 

 改造手術を施したといっても、結局は人と比べて化け物になっただけ。

 人であることを止めていない、怪人でしかない。

 

 

 

「ナイちゃん」

 

「ん。もういいの? 」

 

「ああ、もういい。眠らせてやって」

 

 男は少女の方を向かずに、どこからともなく取り出した細長い何かを投げた。

 

 少女は軽くそれをキャッチし、右手に構えた。

 田中の目にはよく見えなかったが、投げ渡された長方形の物体。それは機械のようでありながら何故か有機的な、不思議な気配を感じさせる、記録媒体…USBメモリのようなものだった。

 

 

「ナイトメア! 」

 

 少女の手の中で音が響く。

 起動音を響かせたそれを、少女は首筋に押し当てた。

 

 押し当てられたそれはそのまま少女の体に吸収され、次の瞬間 美しい紅髪の少女は無数の貌を覗かせた怪物の姿へと変貌を遂げた。

 

 

 その様を見て、戦慄を隠せない一同。

 それが彼らの最期の自由な時間となった。

 

 

「はーい! それじゃあ、良い子の皆 お休みの時間だよ~?

 必殺! 強制熟睡…ナイナイビームッ! 」

 

 

 元の姿であったのならかわいらしいかったのであろうサイドピースのポーズをとり、怪物が全身から波動を放つ。

 

 紅色の波動は集会場の隅々まで広がり、団員たちの体を通り抜けて散った。

 

 

「(………う、あ、ぁ)」

 

 通り過ぎてすぐに、田中を抗い難いほど強力な睡魔が襲った。

 咄嗟に目線を隣に向けると、佐藤が睡魔に負け、崩れ落ちていた。

 

「(ああ、もう、駄目だ………冬美…俊則…)」

 

 最後に、最愛の家族を思い戦闘員田中の意識は闇に落ちて消えた。

 

 

 

「(…すまないな。さっきまで話した理由は正確じゃない。情報網も諜報能力も資金元も今の僕らなら簡単に用意できるんだ。だから、それが理由なら『渦の団』は必要なかった。

 組織としての形が欲しかったんだ、正義のヒーローに倒される悪の秘密結社という形が)」

 

「(許してくれとは言わない。ただ、僕に課せられたであろう“敗北の運命”を殺すために死んでくれ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ………どや! 」

 

 人の姿に戻った少女が鼻高々に胸を張る。体格に見合わない大きな胸がより強調され揺れる。

 

「………(チラッ)」

 

 男のサガというか、ちらりと(ちち)に目を向ける「父」と呼ばれていた男。

 

「~♪ 」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

 

「おおう、ジト目はつらい…。ナイちゃん煽らないで、こっちに殺気逸れてきてるから。

 ああいや、すごかったぞ。さっすが過剰適合者やハイドープなんかを軽く超えた融合適合者の一人。羨ましいよ」

 

「フヒヒ、はーい♪ もっと褒めてくれていいんだよー? 」

 

「あ、ナイちゃん、使ったメモリ消しちゃって」

 

「えー? 中身(データ)食べちゃったからもうガラクタだよ? 」

 

 排出された【ナイトメアメモリ】をプラプラ振りながら不思議そうに言う。

 

「だとしても、だ。外装だけでも解析されて情報を掴まれるかもしれない。スタンダードメモリなら僕がいくらでも生やせるから、ほら」

 

「はーい…えい」

 

 紅のオーラが放出され、メモリは消滅した。

 

 

 

「………では、転送しますわ。お父様、よろしいですか」

 

「うん。恐姫ちゃん補給足りてる? 」

 

「大丈夫ですわ。私を誰だと思っているのです」

 

 恐姫と呼ばれた戦慄するほどの美女が一歩前に踏み出す。

 

 足のかかとが離れ、床に打ち付けられる一瞬の間に【変身】は完了していた。

 

 

 カツン、とヒールが床を叩く音が静まり返った集会場に響く。

 紅髪の美女の姿はなく、彼女がいた場所には、見るものを威圧する巨大な仮面を帽子のように被り、マントを纏った奇怪で蠱惑的な怪物の姿があった。

 

 

 彼女を中心に血のように紅く、血のように黒い、粘液状の精神干渉波「テラークラウド」が広がっていく。

 精神干渉空間「テラーフィールド」を集会場の全体に展開し、彼女は男を振り返って準備ができた事を暗に告げた。

 

 男が頷くと、「テラーフィールド」を用いた多人数空間転移が始まった。

 彼らを含めたこの場の全員が呑まれ消えていく。

 

 

 数秒後、『渦の団』の秘密基地は空っぽの城になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*******************

 

「よし、それじゃあ転送した元『渦の団』団員達は改造塔に送って作業員に感情抑制と絶対服従の施術を行わせる感じで。遠征前の会議で言っていた通り、責任者は恐姫だ、しっかり頼むぞ」

 

「わかりました。完璧に役割を果たしてみせます」

 

「うん。彼らはうちが吸収したわけだから、会社でいうなら『GAIA』が親会社で『VORTEX・BUNCH』は子会社だ。そして恐姫は親会社から出向した幹部。組織運営とか大変だと思うが信じてるからな」

 

「! はい、必ず」

 

「よしよし、そんならあとはよろしく。僕は―――」

 

 嬉しそうに頷いて踵を返そうとした男。

 

 

 

「………! 」

 

「―――ガハァッ! 」

 

「お父さんが悲鳴を上げて転がっていったー! 」

 

「なぁに、その説明口調ぅ…? 」

 

「いつものお遊びでしょう。ナイのことを気にしていたら頭が持たないわよ」

 

「お留守番だった分、(うい)姉さまが寂しさを感じるのも仕方ありませんわね。…まぁ、あの勢いはどうかと思いますけれど」

 

「お父、さん、だいじょ、ぶ かな? 」

 

 

 

 

 転がっていった二人だったが、かたや改造人間、かたや上級悪魔の血を引く者。傷一つなく立ち上がってみせる。

 

 

「………。初、突然危ないだろう? 」

 

「………うるさい」

 

「初…」

 

「うるさい」

 

「………」

 

「なんで私を連れていかなかったの」

 

「………」

 

「…どうせ、私がキレて殺すと思ったんでしょ」

 

「………」

 

「…それでもいいから、ちゃんと行くって言ってから行ってよ」

 

「ごめん」

 

「…ん。反省したなら許してあげる」

 

「反省した、反省したよ。だからそろそろ放してくれないかな? 」

 

「…………もうちょっと、このままで」

 

 

 

 ひしっ、と男の胸に抱き着いて離れない少女。

 

 仕方がないのでくっつけたまま歩いて娘たちの元まで帰る。

 

 

 

「ほら、着いたよ。そろそろ降りない? みんなの顔すごいことになってるよ? ほらほら」

 

「………………わかった」

 

 のそりと少女が降りる。

 

 

「はい、それじゃこれで今日の作戦は終了! お疲れさまでしたー! 」

 

「「「「「「「お疲れさまでした」」」」」」」

 

 

 向かい合って整列し、互いに頭を下げる。挨拶は大事。

 

 

 

「じゃあ、幹部一同は通常業務に移行、区切りが付いたら帰ってしっかり休むこと! 」

 

「はい」

 

「なにかな? りゅーちゃん」

 

「パパはなにするの? 」

 

「うん?! あー………一号のところに行って………」

 

「あ、うん。わかった。早く行ってあげれば? 」

 

 竜子の口調に棘が混じる。男はそれに気づいているのかいないのか、照れたように頬を掻いて、懐から拳銃のような何かを取り出した。

 

 

「それじゃ、サラバ! 」

 

 

 男がロードメモリを銃――才古銃(さいこがん)に装填し、引き金を引く。

 彼はそのまま、作られた“道”を通り表の駒王町に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、残された6人は心底憎々しいという表情で突っ立っていた。

 

 

「………クソが」

 

「………クソとか言っちゃだめだよ初ねぇ」

 

「腐っていてもしょうがないわよ。私たちは私たちの仕事をしましょう」

 

「う、ん。………でも、やっぱ、り。あのクソ女は、許せな、い」

 

「………体しか取り柄がない癖にぃ…魔力だって使えない、失敗作のくせにぃ…! 」

 

「………。では、私はお父様に任された仕事がありますので、失礼いたします」

 

 恐姫が脳改造塔へと短距離転移で向かおうとテラーフィールドを生身で展開し潜っていった。

 

 転移跡が大きく削れている。怒りと嫉妬を抑えることができなかったようだ。

 

 他の5人も各々オーラを抑えきれず一帯を破壊してしまっているが、後始末は整備用のロード・ドーパントがこなすので問題ない。

 

 

 

「…チッ。私も仕事に戻るよ。培養の途中だったからね」

 

(ココ)もエネルギー制御室に行かないとだねぇ…はぁ、もっと褒めてほしかったなぁ…」

 

 

 

「竜ねぇ、戦闘用の悪魔兵士を5体ぐらいあとで技術開発部(ウチ)に寄越してくれない? 才古銃の新型プログラム作ったんだけど、反動とか対応するメモリの副作用が心配なの」

 

「ええ、いいわよ。ちょうど訓練で傷物になったのがいるから実験でも何でも好きに使ってちょうだい。あ、記憶はあった方がいいかしら? いらないならこっちの方で記憶処理しておくけど? 」

 

「んー、そうだね。兵士としての記憶は消去でいいかな。でも命令を理解できる程度には残しておいて」

 

 

 

 この街、“裏駒王”の支配者たち、各部門を取り仕切る幹部たちは各々の持ち場に戻り、街の管理運営や情報収集、技術兵器開発の仕事を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 表の駒王町に戻った男―――本名を郷秋敏(あきとし)。またの名を田中耕一、またの名を塚土(おさむ)という彼はルンルン気分で帰路についていた。

 

 

 とあるアパートの一室。「田中」という外れかけの表札がかけられた扉を開け中に入る。

 

 

「ただいまー! 」

 

「あ、秋敏さん お帰りなさい! 」

 

 玄関を抜けると、彼の帰宅を笑顔で迎える美女がいた。

 

 彼女の名は「一号」。郷が生み出した人造悪魔第一号にして、魔力を使えなかった失敗作。そして、彼を助けるために命を落とし…彼に生き返らされたガイアメモリを核とした死体人形。

 そして、愛するパートナーでもある。

 

「イヤー疲れた。さっさとシャワー浴びてのんびりしたい気分だ」

 

「お疲れ様です。今日はカレーを作ってみたんです。もうすぐ完成するので、一緒に食べましょうね」

 

「くぅ………っ」

 

「どうしました? 」

 

「尊みがやばい。帰ってきたら好きな人がカレー作って待っててくれるとか、幸せすぎて死にそう」

 

「そんな…私の作ったカレーですから、あんまり美味しくないかもですよ? 」

 

「いや! 絶対うまい! 愛情は最高のスパイスというからね! シャワー浴びてくる! 」

 

 

 

「………愛情。

 おいしくなーれ、おいしくなーれ。私の愛、秋敏さん、大好きです…」




 次回、『Tの異変/平凡な男子高校生、塚土筬』
 ――兵藤一誠は悪魔である。いつものように教室に入ると、そこには4月の初めから病気で休んでいたクラスメイトの『塚土筬』の姿があった。数週間ぶりに会う級友はどこか雰囲気が違っていて………。


(前日譚。
 異世界転移から幹部製造まで⇩ 
 https://syosetu.org/novel/185279/31.html)

 ↑ 『用語集』に飛びます。合計127,886文字、読むのがおっくうな方はそちらをどうぞ。


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「旧校舎のディアボロス」 第1話「Tの異変/平凡な男子高校生、塚土筬」

 原作第一巻、ちょい進んだあたりからスタート。
 side兵藤一誠でプロローグ的な前置きです。短いです。

塚土(おさむ)とは

 前回の3つの出来事。
 1つ! 『渦の団』が崩壊した。
 2つ! 元団員たちが脳改造手術を施される。
 そして3つ! 郷秋敏は塚土筬に変身(なりかわっ)た!



 

 俺の名前は兵藤一誠。両親や学校の奴らは俺のことを「イッセー」と呼んでいる。エロくて有名なだけの、青春を謳歌している平凡な高校二年生!………だったんだけど、すこし前から俺の人生は丸っと変わっちまった。

 

 人生って言ったけど、今の俺は人間じゃない「悪魔」だ。

 

 忘れもしないあの夕暮れの公園で夕麻ちゃ―――堕天使に腹を貫かれて死にかけていたところを部長の力で悪魔として蘇らされ、命を救われた。

 

 部長の話では俺の中の「神器」が危険なものと思われて、殺されたって話だ。話を聞かされた時は「ふざけんな! 」って思ったけど、そのおかげで部長の眷属になれたって思うと複雑だ。

 

 自分が人間でなくなったってことは俺でも結構ショックだったけど、そんな気持ちも部長の言葉で吹っ飛んだんだ!

 

 「やり方次第ではモテモテな人生も送れるかもしれない」って!

 

 なんでも、部長たち悪魔は昔の大きな戦争のせいで数が減って、下僕を集めるようになったそうだ。俺みたいな「神器」を持った人間や、特殊能力を持ったやつを悪魔に転生させたりして。

 

 そんでもって、悪魔のお偉いさんはそんな転生悪魔にもチャンスをくれるようになったんだそうだ! ――力さえあれば、転生者でも爵位を与えよう、って!

 

 

 つまり! 俺でもやり方次第では爵位を貰って、ハーレムを作ったり! エ、エッチなことをしたりもできるかもしれない!

 

 

 ただの人間のままだったら夢に見ることさえできなかったハーレム! 女の子たちの群れ! おっぱいの楽園が、努力さえすれば実現できるかもしれなくなったんだ!

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ‼ 悪魔、最高じゃねぇか! 」

 

 

 話を聞いたときは、俺秘蔵のエロ本を捨ててもいいかもと一瞬思ったぐらいにテンションが上がっちまった。

 

 どうせ人間に戻れないなら、このまま悪魔としての人生、悪魔生を突き進むだけだ! と自分でも意外に思うほどあっさり状況受け入れちゃってさ。

 

 悪魔とか天使とか堕天使とか、普通なら馬鹿らしいと思ったかもしれないけど、実際に見せられれば信じるしかないわけで。

 

 なんたってハーレムを作れるんだから、悩むことなんて何もなかった。

 

 

 

「ハーレム王に俺はなるっ! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう宣言したのが数日前。

 今の俺が悪魔として何をしているのかといえば、下積みを卒業して「仕事」を取り始めたところだ。

 

 「仕事」っていうのは悪魔の契約のこと。人間に召喚されて、契約を交わして願いを叶え、代価をいただく。

 悪魔ってのはそういう仕事をしてポイントを高めていくものらしい。仕事をしまくれば悪魔の王さまから褒めてもらえるって話だ。

 

 つまりデカい仕事――契約をとれば王さまから爵位を貰えるかもしれない!

 

 

 俺もデカい契約を取り付けて爵位を貰ってやる! ………って意気込んでみたものの、今のところ俺の契約数は0。

 

 今まで何回か依頼者さんに召喚してもらったものの、今のところ1人も契約できてない。

 

 というのも、俺は魔力が全然ないらしく、部長たちの使う転移魔法陣を使ってのジャンプができなくって、仕方なくチャリで依頼者さんの家に行く羽目になって変態呼ばわりされたり、ただ話すだけで、契約をとってこれなかったり。

 

 まぁ、依頼者さんからは「また頼みたい」とか高評価だったらしく、そこが逆に部長の頭を悩ませる原因になっているっぽいくて、俺としては申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 

 

 俺、魔力も子ども以下で、肝心の「神器」もどうやって使えばいいのかわからないし、こんなんで出世なんてできるのかな………。

 

 

 

 

 

 ああ、やめやめ! 落ち込んでも何にもならない! 俺は俺にできることを精一杯やるだけだ! そのためにもこの「神器」がなんなのか知ることができればいいんだけど。

 

 

 神器といえば、アーシアは元気にしてるかな………。

 

 

 

 

 

 

 一昨日の下校途中に出くわした金髪美少女シスターのアーシア。なんでも町外れの教会に派遣されたんだけど、道に迷ってしまったらしく、俺としては困っている美少女を放っておくなんて考えられなかったから道案内することになった。

 

 

 悪魔になったことで俺は日本語以外の言葉も日本語として聞き取ることができるようになった。そのおかげで英語の授業ではいきなりペラペラになっとことを先生や周囲のクラスメイトから驚かれたけど。

 

 

 

 だからその時も俺には彼女の言葉が日本語で聞こえて、何に困っているのかも理解できたからな。俺が人間のままだったら、多分どうしたらいいかわからなかっただろうし、そこは悪魔になったことに感謝だな。

 

 

 で、道案内の途中で膝を擦りむいた子どもがいて、アーシアはその子に駆け寄ると手の平から淡い光を発してけがを治しちゃったんだ。

 

 あれは驚いた。あれが「神器」の力、特定の人間に宿る規格外の力ってやつなのか、って。

 

 

 

 俺の「神器」の力がどんなものなのかはわからないけど、確かにこんなすごい力が俺の中に宿ってるなら、俺も出世できるかもしれない。そんなふうに少し思ったけど、アーシアのどこか陰のある微笑みを見たら、「俺も神器持ってるんだけど、どうやったら使えるようになるかな? 」とか聞くのははばかられた。

 

 

 その後アーシアを教会の近くまで送り届けて、夜そのことを部長に話したらかなり怒られた。………すげえ迫力で、真剣に怒ってくれて、ビビったけど少しうれしかった。こんなに大事に思ってくれるなんて、俺本当にリアス・グレモリー部長の眷属になれてよかったって思ったよ。

 

 まあ、なんにしても―――

 

「そろそろ契約とらないとまずいよなぁ…」

 

「契約? 」

 

「のわっ!? 」

 

 突然呼びかけられて思わず飛び上がる。

 びびった………、ていうか俺今声出てたか。やばいやばい、気をつけないと。

 

 とりあえず息を整えて、声の方を見る。

 

 駒王学園の制服を着た男がリュックを肩に背負ってきょとんとした顔で立っていた。

 

 誰だ? と、そんなふうに怪訝な気持ちが顔に出ていたのか、そいつは爽やかな表情で俺に笑いかけてきた。

 

 

「どうも! 今日付けで復学となりました、駒王学園2年生、塚土筬でっす! 兵藤一誠くんだよね? よろしく! 」

 

「え、ああ、おう…よろしく? 」

 

 なんだこいつ。

 

 ん? 塚土筬…?

 

「あ! もしかしてずっと休んでた、塚土? 」

 

「YES! その塚土です! あっはっは、久々の学校で舞い上がっちゃってますね、私! 」

 

 ずいぶん、なんていうかエキセントリックなやつだな。

 

 

 

「病気だとか聞いてたけど、もういいのか? 」

 

「ああ、もう大丈夫。それでさ、僕四月の始業式の前から休んでたじゃん? 先生が色々教えてはくれていたんだけど、教室の場所とかわからないんだ。だから、連れてってくんない? 」

 

「おう、いいぜ」

 

「ありがとう! 助かるよ! 」

 

 

 塚土筬、ずっと休んでるからどんな奴なんだろうと思っていたけど、明るい奴なんだな。ちょっと意外だ。

 

 ………あと、良い奴だな。

 

 俺は結構馬鹿やってるから、女子からはゴキブリ並みに嫌われてるし、男子も一部の連中は「一緒にいると女子に同類かと思われる」って露骨に避けてきたり嫌な目で見てくる奴がいる。

 

 でもこいつは普通に話しかけてきた。確か聞いた話では一年の時は健康だったらしいから俺の醜聞も耳に入ってるだろうに。

 

 

 

 

 ん、よく見たらこいつけっこうイケメンだな。さすがに木場には劣るけど。

 

 ………イケメンっていい奴が多いのか?

 

 人は見かけだけではわかりませんね。イケメンの認識が俺の中で変わりそうだぜ。

 

 

 そうして歩いている間に校門の前まで来た。

 

「それじゃあ、教室に案内するからついてきて」

 

「はいよー」

  

 

 

 

 

 

 

 

(“主人公”とのファーストコンタクトは良好、っと)

 

(まぁ、本番は夜だ。ひとまず学園生活を満喫させてもらおうかな)

 

(………とりあえずブルマ女子を観察だな。ブルマとか僕の世代では絶滅してたもんな。本当にロマンすぎる。ありがとう! )

 

 







塚土筬(本物)
…駒王学園2年生。両親出張の一人暮らし(一軒家暮らし)。
 ラノベ主人公みたいな状況に、空から女の子でも振ってこないかと期待していたが一年間なにもなかった。
 つまんねーのー、と3月の下旬に買い物から帰ってきたところを郷秋敏に攫われ、“なり替わり候補”として脳改造を受けた。以降は病気といって学校を休んでいた。
 原作が始まったので、郷秋敏の学園生活のための仮の姿として、名前と顔と記憶と戸籍と、存在の全てを奪われて廃棄された。
 人づきあいが苦手で友達は一人もいなかった。休んでいる間に大体の生徒は自然と彼のことを忘れた。なので微妙にイケメン化してても誰も気づかない。
 ちなみに、両親は脳改造して確保済み(親との顔合わせとかあるかもしれないしね! 授業参観とか! )当たり障りなく出張先で働いてもらってる。
 

 主人公は自己改造と地球の本棚によるカンニングで、勉強関係は無敵です。






第2話「Tの異変/青春 二度目の高校」


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第2話「Tの異変/青春 二度目の高校」

 Over Quartzer見た。色々あるけど最高だった。
 ルシエド先生の補完考察短編も最高でした。




 

 

―――駒王学園・男子トイレ

 

 

「(たまごまごまごまごひまごー)」

 

 適当なことを考えて頭を空っぽにして用をたす。

 

 しょんべんに意識を集中すると出なくなっちゃうからね。

 

 くっちゃべりながらじょろじょろ出来るやつの気が知れない。うん。

 

 ああいうの本当にむかつくよね。こっちが出そうと思って集中してるのにぺっちゃくっちゃぺっちゃくっちゃ………喋りたいならトイレの外で喋れっつーの!

 

 

 しっ…かも…っ、鏡の前で髪いじってんじゃねーよ! 女子かおまえは! っと、いけないいけない。そういう男女の偏見は駄目だ。

 

 ともあれ、静かに出して速やかに退室しろやという話ですよ。

 ただし手を洗わないやつ、お前は一体何なんだ。理解不能、理解不能。チ●コ触ったら手を洗えよ! ああ、気持ち悪い気持ち悪い。

 

 

 そんなこんな考えていたら出し尽くせた。

 ピッピッと振ってしずくを落としてごそごそ。

 

 

 もちろん私は手を洗います。当然です。

 石鹸も使います。当然のことです。

 

 手の平も手の甲も、手首も爪のところも丹念に洗います。

 

 

 え? はよしろって言ってたのに、そんなに手を洗ってていいのかって? 問題ありません。僕以外このトイレに人はいませんから。

 

 

 

 

 

 

 

 ここは駒王学園の奥まったところにある旧男子トイレ。

 利用者の大半は階段側だったりの新しいトイレに入るので、ここは穴場なのです。

 トイレはリラックスできるところでなければねッ!

 

 

 やっぱり女子高だった名残なのでしょうかね。この学校、男子トイレの数が少ない。

 男子の数の少なさだったり、回転率の違いだったりでまぁ、問題になるほどじゃないけど、やっぱり少ない。階によっては男子トイレのない所もあるからね。うん。

 

 登校一日目で気づいたこの学園の不便さよ。

 

 

 

 足音。

 

 そうやら僕以外の利用者が来たようだ。僕みたいに繊細ボーイなのかもしれんし、さっさと泡を流してトイレを出よう。

 

 

 新品のハンカチで手を拭く。

 繊細ボーイ(仮)とすれ違う僕。

 

 さて、昼食はどこで食べようか………。

 教室でクラスメイトと親睦を深めるってのもいいけど、やっぱり食事は一人で食べたいよね~。

 

 偉大なる藤子不二雄先生の短編でもあったけど、食事は性行為と同じようなものだし、せめて友人以上の関係でないと食事を一緒に取りたくはないにゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭の奥で違和感。通信が来る。

 

 

『呼ばれてなくてもジャジャジャジャーン♪ お父さんの頭の中に這い寄る混沌、ナイアルラトホテップこと、ナイちゃんだよ♪ 』

 

 頭の中に埋め込んだ、通信装置からうちの子の特徴的な甘ったるい声が伝わる。

 

(ナイちゃん、どしたの)

 

『どうしたって、挨拶の方? 通信の方? 』

 

(両方。こっちはお昼時だから適当に屋上に上がって昼飯をいただこうと思ってたんだけど? 何かあったの? )

 

『んっんー、何もないよ。“何もない”っていう、報告。あとは単純に私がお父さん成分を補給したくなったから! 』

 

  

 ムスコニウムとか系列だろうか。

 ………お父酸?

 

 

『それでそれで、お父さん、学園生活どんな感じ? 楽しんでる? 』

 

 んー………。

 

(順調だよ。特に問題もないし、“主人公”との縁も自然に結べたしね)

 

 実際、午前中はかなりいい感じだった。

 前もって、地球の本棚でクラスメイトの個人情報漁っておいたおかげで名前も好みも、何もかも把握できてたから会話も戸惑うことなかったし、話をするときもちゃんと相手の名前を呼べた。

 

 いやー、ほんと地球の本棚さまさまだわ。これがあれば、うっかり名前を忘れても再検索で楽勝だし、会話のストックも尽きない。

 

 

『主人公…ねぇ…本当にあんなのが? 』

 

 ナイちゃんの声に呆れのような感情が乗る。

 

(あんなのでも、主人公なの。夢世界で見せたでしょ。ハイスクールD×D第一巻の表紙にリアス・グレモリー、アーシア・アルジェントの両名と共に乗っかってたでしょ。まだ信じられない? )

 

 彼女たち幹部勢には、子どもの時に「世界の秘密」について話してある。でもまぁ、なかなか信じられないようで。

 

 

『信じる信じないじゃなくてさー………。あんなのが主役とかイヤなの。ねぇ、本当にあんなよわっちぃゴミクズが? 』

 

(ゴミクズ言うない。甘く見るなっての。今はそりゃ、僕にだって敵わないほどよわっちぃいけど、一月もすれば抜かれるし、一年ぐらいすればナイちゃんも敵わなくなるかもだよ)

 

『………信じられなーい! 』

 

 

 と、まぁこんな感じで我が最愛の娘たちは脅威を脅威と認識してくれないのである。彼女たちは悪魔らしい悪魔だから、生まれつきの実力に驕って敵を見下し侮る習性があるのだよね、悲しいけど。

 

 ………信じられないのも分かるけどね。常識的に考えて、普通の学生だった奴が一年とかからず異形実力ランキングで上位にランクインするとかわけわからんよね。僕もそう思う。

 

 

『………本当にそんな強くなるなら今のうちに殺しちゃえばいいのに』

 

(だーら、言ったでしょ? 殺しは駄目。つまんないからね)

 

 そう、つまらない。僕と僕の勢力にとって、今の原作主要キャラをぶっ殺すのは簡単なことだけど、もったいないから止めている。止めて、って言えば止まってくれるのは娘たちの良い所。

 

 

(確かにこの世界は原作主人公でしか解決できない危機や問題は存在せず、彼らを排除したところで世界が詰むこともないけれど………彼らがいた方が都合がいいんだよ、何かとね)

 

『ぶー…まあ、わかったよ』

 

 

 都合がいいというのは原作知識的にということ。ナイちゃんもその有用性をわかっているからそこまで食い下がることはない。今までのはちょっとした不満によるじゃれつきだったんだろう。可愛いものだ。

 

 

 

 

 

『あ、そうだ。ねぇねぇお父さん、話は変わるんだけど』

 

(ん? なに? )

 

 教室に寄って、弁当をとり、良い感じに一人になれる場所を検索する。場所から紐付けて、人が来ない感じの穴場スポットをーっと。

 

 

『言い忘れてたけど、才古銃ってさ、まだ未完成だからデータ取りとか継続してやってんのさ』

 

(………)

 

『それでね? どのメモリのデータがダウンロードされたかとか、情報送られてくる仕組みになってるの』

 

(………)

 

『………「アイズ」と「インビジブル」のメモリが使われたみたいなんだけど…? ねーお父さん、なにに使ったの? 』

 

(それは…)

 

『んー? それはー? 』

 

(あー…うー…あー…)

 

 

『おとうさん』

 

(はい のぞきました。すみません! )

 

 

 精神的ドゲザ状態。

 僕はド畜生ですごめんなさい。

 

 

 …授業中、日本史の授業の先生が話し方クソつまらんかったから、ついうっかり、出来心でやってしまったんだ………。浮遊義眼と透明化能力のコンボによる NO☆ZO☆KI。

 

 机の正面下に潜り込ませチラチラ。

 覗きに集中しすぎると不意の動きに対応できないからスリルもあって楽しかった。

 パンツは正直オマケだったけど楽しい楽しいだった。

 

『………』

 

(…言い訳をさせてください)

 

『どーぞ』

 

(あれはロマンだったんだ)

 

『ロマン? 』

 

 そう、ロマンだったんだ。

 

 机の下から覗く女子高生のパンツ。それはロマンなのだ。

 僕らの安田くん*1もそう言ってる。

 

 断言しよう。よこしまな感情などひとかけらもなかったとッ!

 

 僕は単純にシチュエーションに萌えていただけだとッ!

 

 そもそもどんなパンツ履いてるかは本棚で検索済みだし。そういうのじゃないんだよ。エロ目的じゃなくてね?

 

 そうだね、青春と言い換えてもいい。僕の青春が溢れてしまったっていうだけ!

 楽しかった! 机の下に配置して「股もーちょい開けやァ! 」ってやるのも、「うおおお! ギリギリだァ! あっぶねぇ! 接触したらさすがにばれるぜ、わっはっは! 」ってやるのもマジ最高に楽しかった。

 

 これぞ青春。

 アホやったりバカやったり、後々思い返せば黒歴史な行為に全力で取り組む! これぞ青春……これが青春だ!

 

 思いっきり視姦させていただきました! ごっつぁんです!

 やっぱ花のJKは最&高! まぁ、一号には遠く及ばないがな!

 思わず神に感謝しちゃったっつーの。この世界神死んでるけど!

 

 

 

『………べっつにー。私はお父さんが覗き魔だろうがラブだけどー』

 

(正直すまんかった)

 

 謝るときは謝る。

 青春が暴走したと言い訳したいところだけど、そうしたら機嫌悪いままだし。形だけでも謝ったほうがいい。

 

 ごめんなさい したという事実が重要なのだ。

 

 

『ん。許したげるっ。お父さん私で良かったね~。気づいたのが初ねぇだったら………? 』

 

(バイオハザードだな。うん)

 

 

『えへへへ』

 

(いきなりなんだよ)

 

 唐突に笑い声が響くとびびる。

 穴場スポットも検索完了したし、そろそろ昼飯にしたいんだが。

 

『んー、お父さんがおかしくて』

 

(え? )

 

 瞬間視界にノイズが走る。

 

 暗闇。

 

 見えない。

 

 目は開いているはずなのに、暗闇が晴れない。

 

 

(なにを)

 

『えへへへへへ。まったくお父さんったら♪

 パンツが見たいなら言ってくれればよかったのに』

 

 あ、まずい。

 怒ってる?

 

 

『えっと、こうかな? 』

 

 視界が開ける。

 目の前には黒と肌色のコントラストが、

 

 ってこれ

 

(ナイちゃん)

 

『あ、映ってる? お父さん見えてるー? 私のおパンツ』

 

 見えてる見えてる。

 

 むっちむちの太ももから きわきわな鼠径部から、むちゃくちゃいい感じの黒パンツが見える。

 

 今日の服装は下着オンリースタイルですかナイちゃん。

 父親(ぼく)だからいいけど、はしたないですわよナイちゃん。

 

 

 目を閉じてもおパンツ様が見える。

 

 というか、それしか見えない。

 

 眼球を動かしても視線が揺れてくれない。

 

 

 

(視界ジャックですか、ナイちゃんさん)

 

『イッエース! 今お父さんの視界は私の発明品「ハチ撮リくん」のリアルタイム映像と同機してるよ。

 さぁ、お父さん! 私のパンツ好きなだけ見ていいんだよ! 』

 

 

 強制じゃねぇか。  

 それはともかく前が見えねぇ。

 

 

(ナイちゃん戻してくれない? )

 

『えー? パンツみたいんでしょ? 』

 

 あ、これは怒ってるやつですね。

 拗ねてますね。

 分かります。

 

 これはすぐには戻してくれませんね。

 

 仕方がないので、視覚以外の感覚を底上げし補う。

 

 道順は地球の本棚(あたまのなか)にある。嗅覚と聴覚と肌の風読みで他の生徒をよけつつ進もう。

 

 

 

(いやー、嬉しいなぁ。ナイちゃん最高だよ! )

 

『いやーん♪ お父さんのえっちー』

 

 

 きゃっきゃっきゃっきゃっとわざとらしく喜ぶ彼女にこちらもやや大げさに合わせ、しばらく茶番。

 

 

 

 

 

 その後、昼休みが終わっても視界ジャックを解除してくれなかったので、娘のおパンツを瞼の裏に映しながら午後の授業を受ける羽目になった。

 

 先生に当てられた時は焦ったけど「わかりません」で乗り切った。屈辱。

 

 

 


 

 

 

 

 塚土家。

 学園から徒歩15分ぐらいの場所にある一軒家。

 少し前まで本物の塚土(おさむ)が暮らしていた家。

 

 

 今は僕の第二の家。

 

 つっても僕が暮らしてるのは一号がいるアパートが主で、この家には“塚土筬”にジーンで変身させた作業員を置いているんだけどね。

 今日は特別に僕がいる。

 

 

 なぜかっていうと、

 

 

―――ピンポーン

―――こんばんは! 悪魔グレモリーの眷属のものですが!

 

 

 予定通り。

 

「兵藤? くん? 」

 

『え? 』

 

 

 がちゃりと扉を開けて顔を出す。

 

「塚土…? 」

 

「兵藤…悪魔って」

 

 

 自分でも白々しいと思うが、驚いたような演技。

 まぁあっちも驚いているしバレることはないだろう。

 

 さて、こっからだ。気合を入れろ。

 

 

「………とりあえず、中にどうぞ」

 

「あ、お邪魔します」

 

 

 

 “契約”を通じて主人公組に組み込ませてもらう。

 

 全ては 敗北の運命(ほし)から逃れるために。

 

 

 

 

*1「くそっじれってーな俺ちょっと やらしい雰囲気にしてきます‼」で有名な僕らのHERO




 『保健室の死神』なんだかんだめっちゃ好きだった。鈍ちゃんさんエロかった。

 次回、悪魔眷属イッセーと改造人間オサムの話し合い。
 第3話「Tの異変/変…身…!」
 


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第3話「Tの異変/変…身…!」

 主人公は改造人間なわけですが、ファンタジー要素はないので拳銃ぐらいならともかく、ミサイルランチャーぶっぱなされたら焼死します。



 

 学校の授業が終わって表向きの部活も終了した夜、俺こと兵藤一誠はいつも通りチャリに乗って依頼者の元に向かっていた。

 

 チラシ配りで鍛えられた端末捌きで携帯悪魔機器を操って俺を呼んだ人間の家に急いで向かう。

 

 学園からそう遠くない場所で良かった。あんまり待たせると依頼者を怒らせちまうかもしれないしな。

 

 ………ひょっとして、部長がそういう依頼者を選んで仕事を回してくれているんだろうか。部長! 使えない眷属で本当にすいませんッ!

 

 

 ドアの前に立って呼び鈴を鳴らす。…呼び鈴を鳴らす悪魔ってなんだろうな。

 俺もできることなら魔法陣からシュイーンって召喚されたいもんだ。

 

 

 少ししてインターフォンからが反応した。

 

「こんばんは! 悪魔グレモリーの眷属のものですが! 」

 

 自分でも説得力がないと思うけど、こういっておかないと相手側も学生が間違えて鳴らしたとか思っちゃうかもだからな。

 

 

『兵藤? くん? 』

 

「え? 」

 

 つい声が出る。俺の名前、なんで?

 

 

 ガチャリとドアが開いてこの家の住人――今回の依頼者――が顔を出した。 

 

「塚土…? 」

 

 

 顔を出したのは、クラスメイトの塚土筬だった。

 もう夜だから制服は脱いでいるしラフな格好に着替えているものの、間違いなく俺が今日 登校途中に出くわしたイケメンだった。

 

 

「兵藤…悪魔って」

 

 こういう場合、どうすればいいんだろうか。

 

 部長に報告?

 記憶を消したりするのか? いやでも俺はそういうのできないし、色々するうちにこいつがネットとかに挙げたりするかもしれないし。

 

 

 

 

「………とりあえず、中にどうぞ」

 

「あ、お邪魔します」

 

 

 とりあえず、玄関先でどうこうもないし、入ろう。

 部長に報告とかは、後で考えるっきゃないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 玄関で靴を脱ぎ、塚土について廊下を進み、俺はリビングに通された。

 

 

 塚土は飲み物の用意をすると言ってキッチンに向かった。一応監視のような真似はしているが、キッチンの向かいで形態とか使われていたら気づけない。

 

 

「なぁ、兵藤…くん」

 

「兵藤でいいぜ…えっと、塚土」

 

「そっか、なら兵藤。紅茶? コーヒー? 」

 

「えーっと、それならコーヒーで」

 

「了解。ちょっと待っててくれな」

 

 会話が止まる。

 

 きょろきょろと部屋を見回す。

 

 ………普通の家の普通の部屋だ。なんていうか、感じのいい…ホッとする雰囲気の。

 

 黒いのは、あれピアノか? でも、ピアノにしては色々モノ置かれすぎというか…ピアノの上に写真立てやボトルシップ、赤いポストのような貯金箱、色々乗っていて騒がしい。

 

 写真………そういえばこの家、親はどこにいるんだ?

 

 

「塚土、大丈夫なのか? 親御さんとか…」

 

「んー? ああ、大丈夫。俺一人暮らしだから」

 

「え、マジで! 一人暮らしなのか?! 」

 

 

 驚いてデカい声を出してしまった。

 

「しー、もう夜だし静かに」

 

 瓶から出した豆をくるくるするやつで粉にしている塚土は人差し指を唇にもっていって注意。

 

 

「わ、わりぃ…」

 

「まぁこの家しっかりしているから今ぐらいの声ならもれないんだけどね。

 で、両親の話だけど、二人とも仕事でね。中学生の頃からこっちは一人暮らし」

 

「へぇー」

 

 なんか、羨ましいような…でも本人がどう思ってるかはわからないし話題にしちゃいけない話題だったか…?

 

「いやー、好きな時に好きなモノ食べられるし、風呂も入り放題だし、エロいもん見てても親がノックなしで入室する危険も皆無だし、サイコーだぜ! 」

 

「ぶはっ! 」

 

 思わず吹き出す。

 

 塚土お前、そういうキャラだったのかよッ!

 

「おっと、学校とキャラが違うから戸惑ったかな? 」

 

「当たり前だろ! 」

 

「はっはっは。仮面を被っていたに決まっているだろう? 休学していた分、好印象を与えないとクラスに馴染めないと思ってね」 

 

 お、驚きの真実………。

 人当たりが良いうえに、頭も顔もよくて復帰初日から先生にも評判良い感じのこいつにそんな秘密があったなんて…。

 

「ぶっちゃけ、初日でもう仮面被るのキツイなーと思ってたところだし、まぁこれで貸し借りなしでいい? 」

 

「は? なんのことだ? 」

 

 貸し? 借り? …朝の案内のことか? あんなのべつにいいってのに。

 

「秘密の話。こっちは兵藤が悪魔だってこと。そっちは僕が仮面を被っているってこと。不可抗力とはいえ秘密を知っちゃったならこっちも明かさないとフェアじゃないでしょ? 」

 

 違った。

 

 秘密か………そうなのか…? 

 そういうもんなんだろうか…。理解はできるけれど…。なんか、やっぱり変わったやつだな。

 

 

 

 それから少ししてコーヒーを二人分持って塚土がリビングに戻ってきた。

 

「はい、どうぞ。砂糖とミルクはお好みで」

 

「ああ…サンキュ」

 

 …そういうけど、塚土は手をつけずにブラックで飲んでいる。それが一番ってことなんだろうか。

 なんかめちゃくちゃ凝ってたし、多分そのはずだ。

 

 カップを持ち上げて、匂いを嗅いでみる。

 

(いい匂い…)

 

 朱乃さんの入れてくれたお茶と同じぐらいうまそうだ。

 

 

 ずずずっと一口、

 

 

 

「ぶっ! 」

 

 まずっ!

 

 

 

「くっくっく、大丈夫? 」

 

 こいつ!

 

「なんだこれ! こんなひどいの飲んだことねぇぞ」

 

「おいおい、出されたものにひどい言い草だな。そう言われることは分かっていたけどね。お父さんもお母さんも僕の入れたコーヒーはまずいって酷評してたし」

 

 なんてやつだ。

 

「………お前は平気なのか」

 

「ん、平気だとも。僕は僕の入れたコーヒーが嫌いじゃないし、これはこれでいい味してると思うんだけどねー」

 

 信じられないがマジのようだ。

 悪いけどブラックは無理だ。砂糖とミルクマシマシで飲もう。

 

 

 

「さて、それじゃあ本題に入ろうか」

 

 塚土がカップを置いてこちらをじっと見つめる。

 

 

「まず兵藤。お前は僕が召喚した悪魔ってことでいいんだよな? 」

 

「ああ そうだ。信じてもらえないかもしれないけど」

 

「いや、信じるよ。召喚のチラシ、調べたけど発信機とかそういうのは何もなかったし、悪魔でないとしたらタイミングが良すぎる」

 

「おお…」

 

 信じてもらえた…! 悪魔っぽいこと何もしてないのに!

 

「それに、悪魔グレモリーの眷属…リアス・グレモリー先輩も悪魔ってことだろ。なら納得だ」

 

「え、お前部長が悪魔だって知ってたのか!? 」

 

「いやいや、知らなかったよ。家名が悪魔とは攻めた家だなとは思っていたけどね。あの美しさも、高貴なオーラも悪魔というなら納得だ。

 それに“部長”か…確かオカルト研究部だっけ? なるほど部長がリアス・グレモリー先輩で、他の部員は眷属ってことね」

 

 

 ……………!

 なんなんだこいつ…! さっきまで抜けたところを見せていたのに感がいいとかそういうのじゃ、

 

「―――まぁ、べつにそれはいいんだけどね」

 

「え? 」

 

「だから、うん。誰が悪魔とかそういうのはいいってのさ。『あなたの願いを叶えます!』ってチラシの文字に偽りがなく、悪魔という超常の生物が存在しているのなら、ね」

 

「………ああ。代償を払ってもらえるなら悪魔として願いをかなえられる…はずだ」

 

「はず? 」

 

「うっ…いや、あのさ、俺…実は悪魔になりたてで、契約のこととかも詳しくは知らないんだ…」

 

「ふーん…まぁいいや。相談料とか言って魂や寿命をぶんどったりはしないよね」

 

「そんなことはしねぇよ! 」

 

「ならいいか」

 

 

 そう言うと塚土はソファに座り直して態勢を整えた。

 相談内容…一体何なんだろう。

 願いがあるようには見えないんだけど………。

 

 

「僕の願いというのは、兵藤。僕のルーツを知ることなんだ」

 

 ルーツ…?

 生まれ、親のことか? それならそういうのを調べる研究所とかに…。

 

「違う、違うんだよ兵藤。僕が知りたいルーツってのは生まれのことでもあるけどそうじゃない。親の浮気とか、本当の親とか、そういうことじゃない」

 

 

 俺の考えをナチュラルに読んで否定すると、塚土は上を向いて話し出した。

 

 

 

「………。初めは、ちょっとしたことだった。

 夜中に、ひどい爆音が鳴り響いた気がして飛び起きたんだ。けどそんな音は近所の人の誰も聞いていなかった」

 

 

 ? いきなりなんなんだ………?

 

「ささいなことだよ。うん…些細なことが始まりだった。

 学校に行こうと靴を履いた時に、全身が激痛に襲われた。制服や下着や靴下の繊維一本一本が皮膚を削るような、激しい痛みだった。

 そのあとも、ふとした瞬間に異常なほどキツイ匂いを感じたり、目が良くなりすぎて失神したりした。感覚の暴走が始まったんだ」

 

「………」

 

「暴走の感覚が早まる前になんとか、救急車を呼んで入院した。大仰な検査を受けて、結局原因は不明。麻酔を打ってもらって、それでも止まらなかった。その頃には声を出すだけで耳やのどが死にそうになるからひたすら耐えた。耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、耐えて、そうしてようやく制御ができるようになったんだ」

 

 

 

「塚土…」

 

 ずっと休んでいたのは、そういうことだったのか。

 でも、それは、つまり………どういうことなんだ?

 

 何かが、目覚めたってことなのか?

 

 

 

 

「そして、ついこの間。決定的なことが起きた」

 

 言いながら塚土は立ち上がった。

 

「決定的なことというのは、ありえないことということだ。感覚の暴走は、原因不明なれど、異常なれど、あり得ることだと納得できた」

 

「塚土!? ちょ、おまえ! 」

 

 喋りつつ服を脱いでいく! お前なにするつもりだよ!

 

「あ、悪い。つい気分が盛り上がって…ここじゃまずいな」

 

 上着を脱ぎかけた状態で塚土が部屋から出ていく。

 

「………」

 

『それでな、こっからが願いに関係するところなんだけど』

 

 扉の向こうから声が聞こえてくる。

 もしかして脱いでいるのか…?

 おいおいおい! まさかあいつソッチの趣味があったのか?! そういうことなのかッ?!

 

『違うからね。僕は普通に女の子が好きだし。おっぱい最高。

 脱いだのは“変身”のコントロールがまだうまくいかなくて、服が破れるかもしれないからさ 』

 

 “変身”?

 

 

「うん、まぁ、百聞は一見に如かず。それじゃあ見てもらおうかな」 

 

 そう言ってドアの向こうから現れたやつは下半身にタオルを巻いただけの状態だった。

 分かりやすく言わないでも全裸。多分!

 

 こいつ綺麗な体してんな………じゃなくて‼

 

 

「おいおい、ちゃんと説明してくれよ! 」

 

 俺にそういう趣味はねぇ!

 ぶ、部長! 朱乃さん! 小猫ちゃん! 木場! 助けて‼

 

 

 

「だから違うってば…

 フゥー………、変…身…! 」

 

 塚土がまるで特撮のヒーローのようにポーズをとる。

 

 次の瞬間、塚土の体が蠢き文字通り『変身』していく。

 

 筋肉が膨張し、鱗が全身を覆い、瞳が赤く染まり、爪や尻尾が生えていく。

 

 

 さっきまでの塚土筬の面影はどこにもなく、そこにいるのは巨大なトカゲの怪物だった。

 

 

 

「な………な……」

 

「まぁ、こういうわけだ」

 

 いやいやいや、こういうわけってどういうわけ?!

 

 

「んー。見て分かる通り、怪物に変身する力が僕の中に目覚めちゃったわけなのよ。あんだーすたん? 」

 

 パクパク口を開いて声を出す塚土。

 声は変身? 前と同じだ。

 

 めちゃくちゃ違和感……なんだろう、牛乳だと思ったら豆乳だったみたいな…。

 

「この通り、ヘビっぽい化け物に変わることができるようになってな、見た目通り力も上がったし、それは別にいいんだけど、いい加減この力が何によるものなのか知りたくって」

 

「知りたい? 」

 

「うん。だってさ、不安じゃん。感覚・肉体とどんどん人間離れしてきて、そのうち精神とかまで人間離れする可能性がないとは言い切れんし、この変身だったりが寿命とかそういう命のエネルギーを消費して行われている変化で、身体を変換するたび細胞の交換が行われテロメア消耗とか、テラフォのM・O手術みたいなさ」

 

「M・O手術? 」

 

「ああ、こっちの話。ともあれそういう訳なんだ」

 

 びっくりしてそれどころじゃなかったけど、そうか。

 

「なぁ塚土、それってもしかしたら神器ってやつかもしれないぞ」

 

「? セイクリッド・ギア? 」  

 

 

 それから俺は塚土に神器の説明をしてみたものの俺じゃ持っているのかどうか見分けられないと気づきまして、話し合った結果、部長たちに判断をゆだねることになりました。

 

 

 帰ったら部長に報告だな…。

 

 そうして塚土家を後にしてチャリで学園に。

 

 はぁ……また契約とれなかったなぁ…。

 

 

 

 

 





 コーヒーがまずいのはわざとです。おやっさんリスペクト。



 この後兵藤一誠くんはフリードに撃たれたり、「アーシア!」したりしました。
 →そのリアルタイム映像(冠ちゃんのゴキブリ監視網+メモリー・ドーパント映写怪人)を郷秋敏は家族でゲラゲラ笑いながら見て鍋パーティーしました。

 ↓からの次回。

 第4話「Tの異変/人を外れたもの」



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第4話「Tの異変/人を外れたもの達」

 公式さんが、T2ガイアメモリ26本マキシマムで世界を永遠に破壊できるとか無茶な設定を出しおった………克己ちゃんが凄いんだよね。そういうことにしよう、うん。


 主人公は鈍感ではありません。娘たちが自分を肉食獣のような目で見ているのは察していながらスルーしています。





 

 

 ぱち、と目を覚ます。いつのまにか寝ていたらしい。寝ぼけ眼を擦りながら手探りでスマホを手に取り時刻を見る。

 

 7:20。

 

 寝坊といえば寝坊だが、そこまでじゃない。今から支度をすればホームルームには余裕で間に合う。

 

 

「………っ、あたまいてぇ…。あ~…昨日、どうしたんだっけ…? 」

 

 頭痛。

 昨日の夜のことが思い出せない。

 

 思い出せ。

 

 

 ………確か、昨日は―――そう、確か兵藤一誠の大立ち回りを家族みんなで観覧して鍋パーティーしたんだった。

 

 

 

 アーシアの「こんなこと主がお許しになるはずがありません! 」ってのが最高に爆笑だったね。

 

 

 うん、

 いや、それ貴方行っちゃうの? 「異教徒と怪物はぶっ殺せ! 」が教会の基本姿勢じゃない? って。

 

 なんていうか爆笑だよね。アーシアちゃん知らないわけじゃないはずなのにそんなこと言っちゃってさ。いや? もしかしたら本当に知らないのかもしれないけどさ。それでも聖書の勢力に侵略を受けた各地の神話生物が聞いたら激昂確実だよ。

 『地球の本棚』には、彼女の信じる神を奉じる天使や神父やシスターが行った筆舌しがたい凌辱がたくさん記録されている。

 主を信じないものは獣と一緒、悪魔と一緒じゃないの? て。

 それに比べればフリード神父の行為なんて、名目と手順をちゃんとしてる分まだましだよ。フリード神父にはヒューヒュー! だったね。

 ………救済したいなぁ。彼居ないと3巻があれだから6巻の最期で救出しようかな。

 

 

 

 

 

 そのあとは………記憶がないな。

 

 

 

 ………………………そろそろ現実逃避はやめようか。

 感覚を強化するまでもなく感じるこの匂い。汗と唾液と、…いろんな体液の混ざった独特の匂い。

 

 くんくん…全員か。そうか全員か。全員に襲われるのは久しぶりだな。

 

 

 

 なにはともあれ起き抜けで気持ち悪いのでシャワーを浴びることに。

 朝シャンでカピカピになったところとかを流して綺麗にする。

 鏡を見たら虫刺されのようなキスマークが首筋についていたので今日は首筋隠しておかないとな、としんどい気持ちになる。

 体洗ってさっぱり。

 匂いが落ち切らないので初風謹製 超強力消臭剤を全身にスプレーする。

 

 

 

 薬を盛ったのはナイちゃんかな。ナイちゃんにウーロン茶をもらって飲んだ後の記憶がないし。睡眠薬かなにか、改造人間(ぼく)の解毒機構で分解できない薬か………この頭痛は薬の副作用か。

 

 あえて副作用がある薬使ったのは「昨日なにかあった? 」とか「頭が痛い…」とかそういう反応を期待してか。

 期待されても僕は何も反応できないのになぁ…。

 

 

 

 朝食を用意するとき()()()ツヤツヤしていた6人の愛娘と挨拶をしたけれど、なんでもない風を装った。

 

 強化した僕の鼻は彼女たち(胎の中)から香る嗅ぎなれた匂いをキャッチして伝えてきたが、それも努めて無視した。

 

 

 

 

 

 

 無視。

 無視無視。

 

 うん。

 何もなかった。

 昨日も、その前も、なにもなかった。

 下半身がヌルヌルするとか、春なのに汗だくとか、起きたら全裸になっているとか、口の中変な味とか、筋肉が熱を持っているとか、そんなのは全部気のせいだ。

 

 僕ら親子の間に「父と娘」以外の関係はない。

 

 頭を撫でたり抱きしめたりキスしたり一緒にお風呂に入ったりしても、それ以上があってはならない。

 

 親子以上の関係になったら僕らは今の関係性でいられない。仲良し家族ではいられなくなってしまう。

 

 

 この街のためにも僕のためにも修羅場は起こすわけにはいかない。

 

 

 今日の朝食はご飯と鯖味噌と味噌汁と冷奴とほうれん草のお浸し。

 

「いただきます」 

 

 

 

 


 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 

 おいしかった。

 食べたら時間がやばくなったので急いで登校準備。

 

 

 

 

 準備完了。

 

 

 

 ネオガイアドライバー。

 

「ロード」

 

「ゾーン」

 

【変身】

 

 メモリがドライバーに挿入され、変身が完了する。

 

 ロード=ゾーン・ドーパント。

 

 ロード・ドーパントの異空間生成能力で“裏駒王”から表の駒王町への道を生み出し、ゾーン・ドーパントの座標転移能力で出口を駒王学園に繋げる。 

 

 

 

 

 

「行ってきます」

 

 

「「「「「「行ってらっしゃい! 」」」」」」

 

 

 

 

 

 


 

 放課後。

 

 僕が教室でゆっくりしていると、周りからキャーキャーなんて女子の黄色い悲鳴が聞こえてくる。

 

「君が塚土筬君かな?」

 

 声をかけてきたのは木場君だった。

 昨日の今日だというのに早速呼び出されるらしい。

 

「もしかしてオカルト研究部、グレモリー先輩からの呼び出し? 」

 

「うん。僕についてきてもらえるかな」

 

「わかった、荷物まとめるからちょっと待ってて」

 

 

 

 

 

 

「ここが…噂のオカルト研究部」

 

 金髪のイケメンに連れられて旧校舎に到着。

 念の為各種感覚器官の感度を上げておく。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう―――失礼します」

 

 扉を開けてくれた木場くんにお礼を言って入室する。

 

 

 部屋の中には3人の美少女が。イイね。

 目の保養、&、ナイススメル。いい匂いだ…。

 

「はじめまして、かしら。私はグレモリー家次期当主 リアス・グレモリー。貴方が昨日召喚したイッセーのご主人様ということになるかしら」

 

「駒王学園2年 塚土筬です。今回はお招きいただきありがとうございます」  

 

 

 促されたのでソファーに座り、対面の紅髪の上級悪魔さまに顔を向ける。

 リアス・グレモリーと会うのは二度目、言葉を交わすのはこれが初めてとなる。

 約4ヶ月前、彼女の寝込みを襲って血を採ったとき以来。………やっぱりおっぱい揉んどけばよかったな。ナイトメアで悪夢に閉じ込めてたから起きるわけなかったし、揉んでおけば…。

 強化された僕の目は彼女の大きな大きなおっぱいが、呼吸の度プルンプルンする揺れを捉え、むくむくと劣情を煽ってくる。

 

 

 

「どうかした? 」

 

「いえ、ちょっと緊張してしまって」

 

 危ない危ない。男のチラ見は女にとってガン見と同じというし、しゃーない。今は反射で我慢しよう。

 

「―――そういえば、兵藤のやつ今日休んでるんですけどどうしたんですか? ひょっとして僕の願いが…」

 

「それは違うわ。昨日、貴方の元を訪ねた後にちょっとね…」

 

 リアスさん悲痛な表情で顔を若干伏せる。

 周りの3人も同様に悲しげな顔だ。事情は知っているものの、「なんだろう…」みたいな不思議そうな表情を浮かべておく。その上でかぶりを振って真剣な表情を作る。

 

 

 

「…大丈夫なんですか? 」

 

「ええ、大丈夫。今日は大事をとって休ませただけだから問題ないわ」

 

「そうですか、よかった。

 それで今日僕を呼んだのは一体どういう要件なんでしょうか」 

 

 

「ええ。昨日イッセーから貴方の願い事のことも聞いたわ。そのためにも貴方や貴方の力を見せてもらおうと思って」

 

「………そういえば、昨日兵藤は僕の力が“セイクリッド・ギア”? とかいうものじゃないかって言ってたんですけど」

 

「イッセーがそんなことを? …確かにその可能性もあるわね。オサム? ちょっとじっとしていてもらえるかしら」

 

 そういうとリアスさんは前のめりになって、探るように僕を見つめた。

 おそらく僕が神器(セイクリッド・ギア)を持っているか見極めているのだろう。

 

 

 

「………どうやら違うみたいね。オサム、貴方のその力は神器とは別物よ」

 

「そうですか」

 

 知ってる。

 メモリを生み出す能力が神器にカテゴライズされないかは、人造悪魔兵士を生み出してから散々試して確認した。

 改造人間手術も、超常は一切使わず科学・物理100%で行った。

 

 人外の目では僕は「ただのどこにでもいる人間」としか感じられない。そう注意してここにいる。

 

 

 

「それでその、セイクリッド・ギアってなんなんですか? 」

 

 だから、僕は全く何も知らないという顔で質問をする。

 

 

「“神器”というのは―――」

 

 原作で読んだような説明台詞を吐き始めたので、相槌を打ちつつ目の焦点を「アイズ」の義眼に合わせる。

 

 

 

 思ったより木場くんが呼びに来るのが早かったから変身を解除することができなかったからね。

 今の僕は「ジーン」の力で変形させているものの、アイズ=ジーン・ドーパントのままなのよね。

 

“アイズ=ジーン・ドーパント”

 

 なぜ変身しているんだといえば、そりゃ兵藤一誠×アーシア・アルジェントのデートを出刃亀しているからですがなにか?

 いやー、他人のデートをこっそり覗き見するのは楽しい楽しい。

 なんだかんだメインヒロインなだけあってアーシアちゃんも可愛いし、金髪シスターがハンバーガーを頬張って笑みを浮かべるのとか心が幸せでいっぱいになるよね。 

 

 ちなみに今は夕暮れの中でベンチに座ってなんか話しているところ。耳は飛ばしてないから何を話しているかは二人の唇を読むしかないけど、そんな技術ないからね。

 多分アーシアの教会追放の話とかだろうと思う。

 

 そうなるとあとちょっとで痴女堕天使ことレイナーレさんが出てくるわけか。

 

 帰ったら皆を集めて、『初めての原作介入』作戦の最終ブリーフィングしないと。

 

 

 

「そもそも私たち悪魔は―――」

 

 聞いてないのに悪魔をはじめとする三勢力についても説明しだした。話したがりか この先輩。

 

 知っているから話半分で聞きながら相槌だけしっかり打っておく。

 

 

「―かくかくしかじか―」

 

「―まるまるうまうま―」

 

 

「少し話過ぎたかしら。後になったけど、オサムの変身というのを見せてもらおうと思うのだけどいいかしら」

 

 ようやくでござる。

 お茶も二杯目がカラになった。

 すかさず姫島先輩がお茶を注いでくれる。ありがとっす。

 

 ぐびり…、うまいっす。

 

 

「………わかりました。それならその、シャワー室をお借りしてもよろしいですか? 」

 

「あら、どうして? 」

 

 聞いてないのか。

 

「兵藤から聞いていると思うのですが僕の変身は異形の姿に変身するものです。だからその、制服を着たままだと服がビリっと………」

 

 察した様子の4人。

 

「そういうことなら使ってくれて構わないわ。朱乃」

 

「はい部長」

 

 姫島先輩がバスタオルをとってきて僕に手渡してくれた。

 使っていいということだろう。

 

「ありがとうございます」

 

 お礼を言ってシャワー室に。

 

 

 ………。

 監視カメラの類はなし。

 肉体内蔵式魔力センサーも反応なし。

 

 ジーンの肉体変化を解いて、変身解除。

 メモリとドライバーを体に戻して、脱衣。

 

 

「………」

 

 こうして見てもなかなかどうして良い体つきだ。うん。

 グッジョブ、僕。

 

 元の塚土筬は結構だらしない体してたものだけど、成り代わるにあたって、顔と体に手を加えるかは結構悩んだけど加えてよかった。

 

 いいカラダやで………。男からしても惚れ惚れするカラダやで…。

 ナルシーということなかれ。

 むしろダ・ヴィンチちゃん的な、自分の作品としての自画自賛だから。ナルシーとは若干違うから。うん。

 

 

 

 

 さてさて、自慢の暴れん棒がまろびでないようにバスタオルで下半身をガードして と。

 

「お待たせしました」

 

 

 

 ふっ、声も出ないか。みんな僕の体に見とれてしまっているようだぜ………。

 ………冗談はさておき。

 

「では初めます。

 ……変…身…! 」

 

 

 4人の悪魔が見つめる前で変身ポーズをとり、肉体の変身機構を作動させる。

 

 めきめきめきっ! と体が中から外から作り変えられ人から怪物へ、人間:塚土筬から改造人間:コブラ男へと変わっていく。

 

 

 

「………」

 

 うむ。

 言葉もない。さすがに驚いているようだ。小猫ちゃんもさっきまではジト目気味だったのに、今は目を大きく開けてじっとこちらを見ている。

 

 

 

「こんなかんじですが、どうでしょうか」

 

「………そうね。鱗とか、見た目は爬虫類みたいね」

 

「爬虫類というか、蛇っぽいんですよね。自分で調べたところ」

 

「蛇? 」

 

「ええ。そんで自分は初め蛇の呪いとかでこうなったのかとも思ったんですけど、僕自身も家族も思い当たる節はなくて」

 

「呪いですか…」

 

「朱乃、どう思う? 」

 

「そうですわね…、呪いで体が変化したというのは違うかと。人の形を変えるほどの呪詛であれば強い思念が残るものですが、そういう痕跡は感じられませんし、多分違う理由が変化の要因かと思われますわ」

 

 おっぱいでけぇなぁ…。

 今の僕の動体視力なら、姫島先輩のちょっとした胸の動きもコマ送りのごとく捕捉可能だ。

 匂いもね。

 美しい香り………。む? 木場くんも意外といい匂いしてるな。やるじゃん。

 

 

 

「そう…。オサム、申し訳ないけれど貴方の願いはすぐには答えは出そうになさそうだわ。私もあなたの変身に魔力などを感じることはできなかった。おそらくはあなたの血筋に人以外の何かがいて、それがあなたに遺伝したのだと思うのだけれど、それも仮定でしかないわ」

 

 

 うん違うね。

 でもまぁ、物理的に肉体改造で化け物になったとか思わないよね。

 

 科学文明で育った人間が、“未知”の説明に科学を用いるように、超常に囲まれてそれと共に育ったものはまず超常に理由を見出すよね。

 

 分かりやすく言うと『ゴルゴムの仕業』なわけだけど。

 ゲゲゲの鬼太郎で不思議な事件が起こったら「もしかして妖怪の仕業? 」っていうのと同じだよね。うん。

 

 

 

「そういえば五感が強化されていると聞いたけど、大丈夫なの? 」

 

 兵藤一誠の説明でどこまで伝わったのかは知らんけど心配そうにするリアスさん。

 お優しいことで。

 

「平気ですよ。そっちのコントロールは完璧ですし。じゃなきゃ生活できてませんよ」

 

「…どのくらい強化されているの? 」

 

 

 きた。

 

「そうですね…数値的なものは分かりませんが、異常ですね。

 例えば…、この旧校舎僕ら以外に誰かいますよね」

 

「! 」

 

「奥の部屋…いるのは………この匂いは男? …男にしては体重が軽い。…ずいぶん小柄ですね、年は僕らと同じくらい、高校生? 」

 

 

「結界が張ってあるのになんで…」

 

「結界? よくわからないですけど、同じ建物である以上空気は流れていますし、振動は感知できますからこれぐらいは」

 

 

「あらあら、塚土くんはすごいですわね」

 

「ここからそこまでわかるなんて信じられません」

 

 

「オサム、確かにこの旧校舎には私の眷属がもう一人いるわ。あなたが言い当てた通りの子がね。…小猫の言った通り信じられないくらいの感度ね」

 

 

「ええまぁ、だからこそ制御するまでは普通に生活することもままならなかったわけで…」

 

 

 

 

 

 

 

 ―――その後、

 リアスさん、僕の感知能力に悪魔的思考からレア度を見出されたようで眷属化を薦めてきたが、案の定駒が足りなかったので悪魔化ならず。(まぁ、なる気もなかったけど)(頭の中に『地球の本棚』もってるんだぜ? 転生させる気なら変異の駒持って来いっての)

 

 

 悪魔化は失敗だったものの、なんやかんやあってオカルト研究部に入部することになった。

 狙い通り。

 

 

 赤い蝙蝠が飛んできてパタパタしたら「今日は帰って」と言われたが、まぁそういうことなんだろう。

 

 僕の方も通信で「レイナーレに兵藤一誠ボコられ血だらけ」という感じの報告が届いたから察して帰った。

 

 

 味方sideとして、塚土筬としての目的は達成したことだし、今からは敵side、郷秋敏としてのパーティー開始だ。

 

 

 

 

 





 謝罪。
 最後のダイジェストは力尽きたためです。
 まぁ描写しても面白くなりそうになかったしね。

 いよいよ次回は原作1巻の佳境、廃教会バトル。
 秘密組織『GAIA』とグレモリー眷属初邂逅となる、かも。

 お楽しみに。
 


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第5話「Tの異変/聖女を取り戻せ」

 匿名設定やめようかなぁ…って思ってる。

 side一誠
 side秋敏



―――パン!

 

 

 部室に乾いた音がこだました。音の発生源は俺の頬からだ。

 叩かれた。俺は部長に頬を平手打ちされた。

 部長の顔は険しい。

 

 

「何度言ったらわかるの?ダメなものはダメよ。あのシスターの救出は認められないわ。」

 アーシアを助けられなかった俺は、一度学校へ赴き、事の詳細を部長へ報告した。

 報告したうえで俺は、あの教会へ行くことを提案したんだ。

 もちろんアーシアを助けるためだ。でも部長はこの件に関しては一切関わらないと言ってきた。

 だけど納得できない俺は部長に詰め寄り、そして叩かれたわけだ。

 

 初めて叩かれた頬が予想以上に痛かった。特に心が。

 

 俺に期待してくれた部長を裏切るのはつらいけど、それでも譲れないものがある。

 

 

 

「なら、俺一人でも行きます。やっぱり儀式ってのが気になります。堕天使が裏で何かするに決まってます」

 

「あなたは本当にバカなの? 行けば確実に殺されるわ。もう生き返ることはできないのよ。それが分かっているの? 」

 

 部長は俺を諭すように冷静さを振る舞いながら俺に言ってくる。

 

「あなたの行動が私や他の部員にも多大な影響を及ぼすのよ! あなたはグレモリー眷属の悪魔なの! それを自覚しなさい! 」

 

「では俺を眷属から外して下さい。俺だけであの教会に乗り込みます」

 

「そんなことができるはずないでしょう! あなたはどうしてわかってくれないの!? 」

 

 

 初めて部長の激昂している姿を見た気がする。

 俺、部長には本当に迷惑かけっぱなしだな………。

 でも、部長、ごめんなさい。

 

「俺はアーシア・アルジェントと友達になりました。アーシアは大事な友達です。俺は友達を見捨てられません! 」

 

 

 

 

「………あの子は元々神側の者。私たち悪魔とは根底から相いれない存在なの。いくら堕天使側に降ったとしても、私たち悪魔と敵同士であることは変わらないわ」

 

「アーシアは敵じゃないです! 」

 

 

「だとしても、私にとっては関係のない存在だわ。イッセー、彼女のことは忘れなさい」

 

 すっと朱乃さんが近づいて部長に耳打ちをする。

 なんだ、何かあったのか? 朱乃さんの報告を聞きさらに顔が険しくなっている。

部長は俺をちらりと一目見た後、今度は部室にいる部員全員を見渡すように言った。

 

 

「大事な用事ができたわ。私と朱乃はこれから少し外へ出るわね」

 

 ―――ッ!

 

「ぶ、部長、まだ話は終わって―――」

 

 言葉を遮るように、部長は人差し指を俺の口元へ。

 

「イッセー、あなたは『兵士(ポーン)』を弱い駒だと思ってるわね? どうなの? 」

 

 

 俺は部長の問いを静かに肯定し、頷いた。

 

「それは大きな間違いよ。『兵士』には、他の駒にはない特殊な力があるの。それが『プロモーション』よ」

 

 プロモーション?

 なんだ、それは。

 

 

「実際のチェス同様、『兵士』は相手の陣地の最深部へ赴いた時、昇格することができるの。『(キング)』以外のすべての駒に変化することが可能なのよ。イッセー、あなたは私が『敵の陣地』と認めたな書の一番重要なところへ足を踏み入れたとき、『(キング)』以外の駒に変ずることができるの」

 

 なんてこった! じゃ、じゃあ、俺は木場の『騎士(ナイト)』や小猫ちゃんの『戦車(ルーク)』、それに朱乃さんの『女王(クイーン)』にもなれるのか!?

 

「あなたは悪魔になって日が浅いから最強である『女王』へのプロモーションは負担がかかって、現時点では無理でしょう。でも、それ以外の駒になら変化できる。心のなかで強く『プロモーション』を願えば、あなたの能力に変化が訪れるわ」

 

 

 すげぇ!

 その力に俺の神器を合わせれば、あの神父を殴り飛ばすくらいはできるかもしれない!

 

 

「それともうひとつ。神器について。イッセー、神器を使う際、コレだけは覚えておいて」

 

 部長が俺の頬を撫でてくれる。

 

「―――想いなさい。神器は想いの力で動き出すの。そして、その力も決定するわ。あなたが悪魔でも、想いの力は消えない。その力が強ければ強いほど、神器は応えるわ」

 

 

 想いの力が神器を動かす…。

 そうか、俺の願いが強ければ、こいつは動いてくれるんだな。

 

 

 

 

 

 「あなたは強くなれる」…そう言い残して部長は朱乃さんと共に魔方陣からどこかへジャンプしてしまった。

 

 

 

「兵藤くん」

 木場が呼び止める。

「行くのかい? 」

 

「ああ、行く。行かないといけない。アーシアは友達だからな。俺が助けなくちゃいけないんだ」

 

「………殺されるよ? いくら神器を持っていても、プロモーションを使っても、エクソシストの集団と堕天使を一人で相手にはできない」

 

 わかってる。

 んなことはわかってる。重々承知だ。

 

「それでも行く。たとえ死んでもアーシアだけは逃がす」

 

「いい覚悟、と言いたいところだけど、やっぱり無謀だ」

 

「だったら、どうすりゃいってんだ! 」

 怒鳴る俺に木場はハッキリと言ってくる。

「僕もイク」

「なっ………」

 

 俺は予想外の木場の一言に言葉を失う。

 

 

「僕はアーシアさんをよく知らないけれど、キミは僕の仲間だ。部長はああおっしゃったけど、僕はキミの意志を尊重したいと思う部分もある。それに個人的に堕天使や神父は好きじゃないんだ。憎いほどにね」

 

 ………こいつはこいつで、アーシアみたいに何かの過去があるんだろうな。

 

 

「部長もおっしゃっていただろう? 『私が敵の地陣地と認めた場所の』って。

 部長は遠回しに認めてくれたんだよ。じゃなければ、キミを閉じ込めてでも止めると思うよ」

 

 木場は苦笑する。確かにそれで俺のプロモーション発現条件が揃う。

 ………部長。ありがとうございます!

 

 ここにいない部長へ感謝を奉げている俺のもとへ、小柄な少女が一歩前へ出る。

 

「……私も行きます」

 

「小猫ちゃん? 」

 

「……二人だけでは不安です」

 

 小猫ちゃぁぁぁぁぁぁん! 無表情で何を考えているかわからないけど、その内に秘められた優しさに触れられた気がしたよ!

 

「感動した! 俺は猛烈に感動しているよ、小猫ちゃん! 」

 

「あ、あれ? ぼ、僕も一緒に行くんだけど………? 」

 

 放置された木場が何とも寂しげに笑顔を引きつらせている。

 わかってるよ、木場。感謝してるぞ。

 

 困ったイケメンって、なんか、ちょっとかわいいとか思ってしまった。

 

 よし! これならいける! いけるぞ!

 

「んじゃ、三人でいっちょ救出作戦といきますか! 待ってろ、アーシア! 」

 

 こうして俺達三人は教会へ向かって動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――“裏駒王”、(暫定)作戦室。

 

 

「原作通り、兵藤一誠と木場祐斗、塔上小猫の三人は教会に向かい始めました」

 

「リアス・グレモリーと姫島朱乃は冥界と通信中。この後はおそらく教会に向かって待ち構えている下級堕天使三人と交戦すると思われます」 

 

「よし、探知されないよう教会付近に待機させるのは人造悪魔兵士以外だ。恐姫、戦闘員は使えるか」

 

 

「はい。元“渦の団”構成員の脳改造は17時間前に全て完了。稼働試験でも問題はありませんでした」

 

「コネクタ手術は」

 

「はいはーい! それはナイちゃんと初ねぇが共同研究した新型コネクターを施術済みだよー」

 

「………初耳なんだが? 」

 

「完成したのが昨日だし。初ねぇ、説明シクヨロ」

 

「…簡単に説明すると新型コネクターは刺すメモリを選ばない、メモリ使用者が初めに登録したメモリ以外も使うことができるコネクター。お父さんのネオガイアドライバーの解析結果をもとに実用化して見た試作品」

 

 

「それはすごい発明だけどぉ…副作用とかぁ、あるんじゃないのぉ? 」 

 

「イエス! (ここ)ねぇの言うとおり! 便利な分副作用たくさんだよ! 」

 

「具体的には? 」

 

「…私のウイルスをもとに調整した毒素中和微生物が新型コネクターの定着に使われているんだけど、それがまず強靭な肉体でないと定着前に負荷に耐えられず使用者が死亡する」

「うわあ…」

 

「…それに適合できたとしても施術を受けたものは新型コネクターから分泌される微量消滅毒素が溜まっていき、平均して一年ほどで命が尽きる。他にもメモリの精神汚染の影響を受けやすくなったり思考が単純化するだろうって実験結果が出てる」

 

「これが検証データね。ちなみに検証実験はオールド・ドーパントじゃなくて、ナイちゃん謹製ガジェットのオールドウェーブ照射でやったから数値は確実だよ」 

 

「………ちょっと待って、この子たち私の兵士の世話係じゃない。いつの間に攫ったの? 」

 

「アハ、ごめんごめん。適当な人間がいなかったから、つい」

 

「僕としては、竜子がただの作業員の顔とか覚えているのが驚きだったんだが。え、それ当たり前なの? 」

 

 

「「「「「「当たり前でしょ? 」」」」」」

 

 

「わお、さすが元は一つ。ハモリがすげぇな。

 それはさておき、じゃあその新型コネクタ手術を施した戦闘員を教会周辺に配置。配置前に消臭剤ぶっかけるのを忘れるなよ。鼻の利く猫又ちゃんが居るからな」

 

 

「数、は? 」

 

「とりあえず現場配置は30人。教会正面と裏手に2:1で配置…メモリがなんでもいいなら、インビジブルメモリを持たせて待機中は消えてもらって、僕らが登場するのと同時に変身解除、どーん! が面白いか…? 」

 

「それいいわね。兵舎の方にマスカレイドメモリの自爆機能を解析搭載したインビジブルメモリがあるけどそれ使う? 」

 

「竜子ちゃん、ナイスッ! 確かロードメモリもあったよね。それも持たせて。おちょくった後は30体のロード・ドーパントで作った穴で悠々と帰っていくアレやりたいから。………オーバーロードでリザードマンの集落制圧しに行ったときのあれみたいな! あれ、あれ、あのマーレが「元気でいてください」とか煽りにしか聞こえないようなこと言って帰っていったようなあれ」

 

「長い! でも分かる! 絶対びっくりするよ、あいつら! 」

 

「お父さん流石流石ぁ」

 

「…やんややんや」

 

「どーもどーも。

 はい、それじゃ各員持ち場にゴー。」

 

「はーい、初ねぇ 恐ねぇ配置する戦闘員の最終チェック協力して」

 

「…わかった。ラボから持ってこさせるからちょっと待ってて」

 

「その前に姉さま方、私の兵士たちを勝手に実験台にしたことについて何かないのですか………? 」

 

 

「私は今回、念の為の人造悪魔兵士の指揮官なのよねえ…(ココ)、私たち待機組の分も楽しんできてね」

 

「うん。心、頑張っちゃうよぉ! 」

 

「心、お姉ちゃん、頑張っ、たら、敵みん、な、燃え尽き、ちゃう、よ? 」

 

 

 

 

 全員が去って、一息つく。

 

「賽は投げられた、か…」

 

 準備は万端。

 

 情報収集は『地球の本棚』と冠ちゃんの“Gネットワーク”のダブルで完璧に行っている。

 

 今この時、原作に登場しない僕のような未知の力を持った転生者・転移者が介入することはほぼありえない。

 

 原作通りに事は進み、原作通りに事態は収束しようとしている。

 

 

 だが油断はできない。できるわけがない。

 いくら情報収集をと言ったって、全人類を絶えず監視するようなものではないし、地球の本棚は『人の心の中までは検索できない』。

 

 だから、例えば憑依転生者がいた場合はそれを見抜くことができない。よくあるのだと、ヴァーリとかレオナルドか。彼らがどこぞの憑依オリ主に内面すり替わっていたとしても僕には見抜くことができない。

 

 レオナルドだと最悪だな。

 異空間に関わる魔獣を生み出してそこで戦力を増やすかもしれん。『地球の本棚』の弱点に、異空間の情報はインストールされないという点があるわけだし。

 

 

 僕は4ヶ月で勢力をここまでにしたが、僕よりも有能でチートな輩が現れたらあっさりと抜かれるかもしれない。

 

 怖い。

 

 

 あー、杞憂だったら最高なんだが、楽観して全てを失ったら最悪だしな。

 

 

 

 それじゃ、僕も準備して向かうとしますかね。

 

 

 

 

「あ、そうだ」

 

 

 

〔DOWNLOAD complete〕

 「ジーン・アップグレード」

 

 

 

【変身】

 

 

 遺伝子書き換え、肉体変換。

 塚土筬→郷秋敏。

 

 改造手術で手をつけた部分には触れず、表皮情報のみにアクセス。情報操作。

 

 

「ほいっと」

 

 はい。謎の組織『GAIA』のボス。「郷秋敏」の完成。

 

 僕本来の顔だからまぁ…色々反応に困る微妙さの顔だけど、ここにちょちょいとメイクを施して………。

 

 

 ほい、ちょっと影のあるどこにでもいそうでどこにもいない、特徴のない特徴的な印象に残る顔面のできあがり。

 

 服は、パーカージーンズに、家族おそろいの黒マント着用で、怪しげな雰囲気演出、と。

 

 

 

 取り出したるは、才古銃~♪

 

「ロード」

 

 引き金、ぐっ。

 

「ロード! 」 

 

 マダオボイスと共にメモリのエネルギーを抽出した光弾が発射され、表の駒王町への道が生まれる。

 

 

 さぁ、遊びの始まりだ。

 

 

 

 





 長くなってしまった……。レイナーレさま登場まで行けなかった…。
 次回全編sideイッセーで顔合わせとなります。
 そんでもって、第一巻終了ですかね。


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第6話「Tの異変/愚神礼賛」

 匿名やめました。どうもしゃしゃしゃです。これの他にもいろいろ書いてます。
 最近は「仮面ライダーエボル/夜は眠れるかい」のMAD見ながらテンション上げてます。


 協会裏手、堕天使3匹と悪魔2匹がじゃれ合う其処より少し離れて、『GAIA』幹部六姉妹の一人である恐姫と彼女に従う改造兵士たちは観察を行っていた。

 

「結界の展開を確認。お父様に報告を」

 

「あ、ウグぁ うがぁ」

 

 改造兵士がたどたどしくも確かな手つきで小型通信機を操り待機中の『GAIA』首領 郷秋敏に指示を仰ぐメッセージを送った。

 

「………それにしても、あんな弱くて愚かな気品だけの女が私達の母親だなんて信じられませんわ」

 

 さながら地を這う虫を見る目で視界に移る紅姫(くれないひめ)を見下す。

 

「―――いえ、いいえ。そうでした、私達に母親などおりません。私達にいるのはお父様だけ。お父様…お父様…」

 

 あぁ…っ、とくねくねしだした恐怖の女帝に周りの兵士たちは誰も反応しない。

 彼らは改造人間。脳を改造され、自我も何もかもを剥奪され、此度の新型コネクター手術により寿命すら奪われた戦闘機人。

 命令に従うだけの木偶人形。

 

「うぅ…がうう」

 

「はっ! …こほん。ご苦労さまですわ。えー…ふむふむ。了解、それではこれより作戦行動に移ります。兵士No.01からNo.20まで、メモリ交換―――」

 

 

 哀れ堕天使、哀れ悪魔。

 すべてすべて手のひらの上。

 騙され囚われ夢の中。

 

 

 

―○●○―

 

 

 

 

「嘘よ! こんなの嘘だわ! わ、私は究極の治癒の力を手に入れた堕天使よ! シェムハザさまとアザゼルさまに愛される資格を得たのよ! あ、あなたのような下賤な輩に、私は! 」

 

 レイナーレが両手に光の鎗を作り出し、それを勢いよく投げ出してきた。

 

――ブゥン。

 

 俺はそれを横殴りに拳で薙ぎ払った。さっきまでは触れることさえ辛かった光の鎗が嘘みたいに消し飛んだ。

 それを見たレイナーレの表情がさらに青ざめる。

 

「い、いや! 」

 

 バッ! 黒い翼を羽ばたかせ、レイナーレは今にも飛び立とうとしている。

 逃げる気か。

 おいおい。

 さっきまで元気に俺を嘲笑っていたじゃないか。

 

 少しでも勝てないとわかると撤退か? いいご身分だな。

 

 だけど! 逃がさない!

 

 

(逃がすわけねぇだろ! )

 

 俺はレイナーレに向かって駆け出し、その手を引く。信じられない速度が出た。レイナーレが反応できないスピードだ。

 掴んだ腕は何とも頼りなく、弱々しく感じるほど細かった。

 

「逃がすか、バカ! 」

 引き寄せる。

「私はッ、私は至高の! 」

 

「吹っ飛べクソ天使ッ! 」

 

 右腕の籠手に全ての力を乗せて憎き敵の顔面へ鋭く、まっすぐ打ち込んだ。

 

 ゴッ! ッガッシャアァァァン!!

 

 俺の一撃で吹っ飛んだレイナーレが教会のガラスを突き破って吹っ飛んで行った。

 

 

「―――ざまーみろ」

 

 思わず笑みがこぼれる。会心の一撃で、もうおきあがってくる気配はない。

 けど、すぐに涙がこぼれた。

 

「…アーシア」

 

 

 

 

―○●○―

 

 

 

 

「部長。持ってきました」

 

 木場に支えられながら、部長と朱乃さんに褒められていると、小猫ちゃんがずるずると何かを引きずって教会の中に入ってきた。 

 引きずってきたそれは黒い羽を生やした――堕天使レイナーレ。

 

 気絶していたが、朱乃さんが魔力で生み出した水の塊をぶつけ叩き起こした。

 

「はじめまして、堕天使レイナーレ。私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主よ」

 

「…紅の髪、グレモリー一族の娘か」

 

「短い間でしょうけど、どうぞお見知りおきを」

 

 部長を見上げ睨めつけていたレイナーレだが途端に嘲笑い叫んだ。

 

「アハハ! 残念。私にはまだ協力してくれている堕天使が―――」

 

「彼らは助けに来ないわよ」

 

 レイナーレの言葉を遮り、部長はハッキリ言った。

 

「堕天使カラワーナ、堕天使ドーナシーク、堕天使ミッテルト、彼らは私が消し飛ばしたもの」

 

「嘘よ! 」

 

 レイナーレは上半身をなんとか起こし、部長の言葉を否定する。

 それを聞いて部長は懐から三枚の()()羽を取り出した。

 

「これは彼らの羽。同族のあなたなら見ただけで分かるわね? 」

 

 

 

 

 

 羽を見て、レイナーレの顔が一瞬固まり、狂ったような笑い声をあげた。

 

 

 

「―アハハハハハハハハハ!! 何それ! 何を言っているの! それが! その作り物の羽が! 堕天使の羽ですって…?

 ―――アハハハ! 滑稽すぎて笑いが止まらないわ! 何よ、私を笑い殺す気?! それがグレモリー家の次期当主の秘術とでも言うつもり?! あぁ! だめだわ! 笑いすぎて負けちゃうぅ…! 苦しいわ! 苦しいわ! このままじゃ私、腹がよじれて死んじゃう…ッッッ!

 …………っぷ。

 …………ぷふっ。アハハハハハハハハハ? 」

 

 

 

 なんだ? いったいなんなんだ? なんでレイナーレはこんなに笑っているんだ?

 部長が出した羽は堕天使の羽じゃないのか?

 

「…何を言って…………ッ! 」

 

「―――あらあら? これは…? あら? 」

 

 

「部長? 朱乃さん?! 」 

 

 どうなってるんだよ! そうだ!

 

「木場! 小猫ちゃん! 何がどうなってるんだ!? 」

 

 何が何なのかさっぱりわからない俺は悪魔の先輩である二人に問いかける。

 

「わからない…。ともかく、あの羽は堕天使のものじゃない。作りものだ」

 

 そうなのか? ………いあy、でもだったらなんで―――。

 

 

「部長達がそれに気づかないわけがないんです。つまり、二人を騙した敵がいて、その3人の堕天使は消えていない…」

 

 ! それはっ、

 

「まだ何も終わってない、ってことだね」

 

「そうよ! 終わらない! 終わらないわ! 私はこんなところでやられない…私は、私は私は私はッ! 」

 

 

 まずいっ! レイナーレの手に槍が、部長はまだ立ち直ってない! くっ!

 

「部長ッ! 」

 

「イッセー? 」

 

 

 駄目、間に合わな―――ッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―☆★☆―

 

 

 

「いや、お前はここで終わりだよ」

 

「堕天使レイナーレ」

 

 

 

―☆★☆―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 間に合わな………あれ………?

 

「イッセー…? 」

 

 俺の目の前には不思議そうな顔をした部長がいる。

 

 自分の体を見る。新しい傷はない。

 

 周りを見る。木場と小猫ちゃんと朱乃さんが困惑した表情で立っている。

 

 俺たちだけ。

 レイナーレはどこにもいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――パチ、パチ、パチ。

 

「! 」

 

 

 どこからか拍手が聞こえ、俺たちはまたせわしなく周囲を見渡す。

 いない…。

 

 

 

 

「上です…! 」

 

 小猫ちゃんの声で視線を上向けると、壊れた十字架の上に一人の男が立っていた。

 

 

「ハロー♪ 」

 

「だ、誰だお前! 」

 

 なんなんだよ一体!

 

「僕はソラ! ―――じゃなくて。改め改め、そういうわけで初めましてこんばっぱー! 僕は郷秋敏だよ―――今後よろしくお見知りおきをってところかな? 」

 

 

うけけけ! うけけうけけ!

 

 なめらかな字自己紹介と特徴的すぎる笑い声。

 俺たちはおかしな笑い方のこのパーカー黒マント男にどう対処していいかわからず固まるばかりだった。

 

 

「…そう、郷秋敏さん? 一体私たちに何のようなのかしら? 」

 

 一番最初に立ち直ったのは部長だった。さっきの困惑した様子は立ち消え、そこには凛とした俺たちの主である部長の姿があった

 

 

 

「いやいや、用というほどのことはないさ。面白そうだったから首を突っ込んだだけ。あとはちょっとした収集にね―――ほら」

 

 男が何気なく上を指差す。

 

 

「「「「「―――っ!? 」」」」」

 

 

 俺たちはまたしても固まった。

 男が指差した上―天井―には、レイナーレを含めた4人の堕天使が吊るされていた。

 

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃ! そう! それそれ! やっぱり驚いた表情って面白ーい! 」

 

 男の人を馬鹿にしたような笑い声が教会に響く。

 

 

「そんな、一体、どうやって………」

 思わずといった様子で部長が小さく呟く。

 

「どうやって? 」

 

「――きゃあ!」

「部長! 」

 

「どうやって!? 」

―――「スパイダー! 」

 

「―むぐっ! 」

「小猫ちゃん?! 」

 

 

「こうやってさ! 」

 

「わっ! 」

「木場? ああ、くそっ! 」

 

 

 それは一瞬の出来事だった。

 十字架の上にいた男がリアス部長の背後に突然現れ、かと思えば小猫ちゃんの後ろに回り、銃のような武器から発射した糸でぐるぐる巻きにして、飛び掛かろうとしたら男のいたところには木場がいて、振り向けば男はもとの位置に戻っていた。

 

 

「瞬間移動…」

 

「エサクタ! 正解だっ! レイナーレも手元に引き寄せてこの――『我ァ学の結晶! ェエークセレント292946 才古銃(サイッコガァァンッ )』‼ この! 我らの素晴らしき発明品を使いィ…宙づりにしたというわけなのです! 」

 

 な、なんなんだよ…なんなんだよこいつ…ッッッ!

 

 

 圧倒されていた。

 俺も木場も部長も誰もかれも、この男の迫力と勢いに圧されていた。次から次に入力される謎現象に思考はとっくにオーバーフロウ。

 

 

「おぉっと、そうだった。リアス・グレモリーだったかな? 君には悪いことをした」

 

「え? 」

 

 

 沈痛な表情を浮かべたと思ったら、一転嘲りの表情で部長を指さして今日一番の笑い声を放った。

 

「まさか…ぷすす。あんなドヤ顔でっ、っ! ドヤ顔で赤い羽を見せるなんてっ、くはっ! 思ってなかったからさ! …ふひっ。ちょっとしたイタズラのつもりだったんだよっ? かはっ、くひっ、ちょっとした…ちょっとした…あーはっはっはっはっは! ひゃははははっ! 駄目だ! 笑い止まらねぇ!

 あんな! あんなドヤ顔で!

――『これは彼らの羽。同族のあなたなら見ただけで分かるわね? 』

 とか言っちゃって! ぷすすー! 超マヌケなんですけどー! こんなのが次期当主なんですかー?

 

――『堕天使カラワーナ、堕天使ドーナシーク、堕天使ミッテルト、彼らは私が消し飛ばしたもの』キリッ!

 ………ぷっ、ひゃははははははははっ! マジウケるー! キリッ! だって。キリッ! だって! 超絶キメ顔クールでちたねー? ………もう、まじ、あかんわ…っ! ヤメテー、ハラガヨジレルー。………、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ☆ 」

 

 

 

 

 

「ぶ、部長…」

 

 恐る恐る部長の顔色をうかがう。

 

「…………」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ…!

 

「ひぇっ…」

 

 怒ってるー! 部長お怒りだ! なんか赤くてやばいオーラも出てる!

 でも怒って顔を真っ赤にした部長も素敵です!

 

「私の可愛い下僕たち…」

 

 ちらりと見れば朱乃さんはこんな部長を前にしても、あらあらうふふと余裕そうだ! すげぇ!

 俺は超怖いのにッ!

 

「あの無礼者を消し飛ばしてあげましょう! 」

 

「「「はいっ! 」」」 

 

 

 部長の号令で構えをとって敵を睨む。

 俺たちの敵意を受けた男はまたまたオーバーなアクションで反応した。

 

 

 

「ひぇぇ、怖いよー。怖いよー。化け物どもが睨んでくるよー。僕みたいなか弱く儚い人間にこんな敵意を向けるなんて、なんて危険な奴らなんだ! ああ、恐ろしい恐ろしい。

 助けてー、みんなー! 」

 

 

―――ザッッ!!

 

 

 

 何を言ってやがる、と思った。

 弱くて儚いとかふざけるな、と思った。

 

 部長を馬鹿にされた怒り、俺たちをおちょくる言葉に対する怒り、怒りが神器に力を与えてくれた。

 

 

 みなぎる力、あふれる闘志。

 そしてそれはすぐに消滅した。

 

 

―――ザッッ!!

―――ザッッ!!

―――ザッッ!!

 

 瞬きをした間に、教会の椅子に誰かが座っていた。

 5人や10人じゃない。

 数十人の人の群れ。

 さっきまでいなかった奴らが俺たちを完全に包囲していた。

 

 

 

 

「―――怖いから、仲間を呼ばせてもらった。ちなみに、そいつらは一人一人が素のままでも中級悪魔と戦える程度の戦闘能力を持っている。【変身】をすれば…まぁ、これ以上は言わなくても分かるかな? そして―――」

 

 

 今までとは打って変わって真剣な表情と声色で戦力差を語る男。

 俺にはわからないけど、部長や木場たちには現れた不気味な集団の力が分かるようで、緊張した面持ちで固まっている。

 

 

 

「ヘイッ! カモーン、マイ! ディアー! ドーターズ?! 」

 

「わぁ」

 

「ひゃ」

 

「にょろろーん♪ 」

 

 また3人現れた。いや、声からして女の子!

 女の子ですかッ?!

 

 

 くっ! マントが邪魔だ! 顔も体もはっきりしない!

 

 

「はっはっは、えーっと? 確か兵士くんだったかな? そんなに目を見開いても見えやしないよ。この子たちのマントには認識阻害の魔術をかけている。いくら頑張ってもの子たちを捉えることはできないよ」

 

「くっ! このっ! うううっ! 」

 

 俺は諦めず目を細めたり、態勢を変えたりしてなんとか正確にとらえようと試みる!

 が、駄目!

 

 

「イッセー! ちょっと、止めなさい! 今そんなことに体力を使う場合じゃないでしょ! 」

 

 そんなこと?!

 そんなことですと?!

 

 

「部長! 『そんなこと』じゃないですよ! 俺の鍛え上げた直感が目の前の女の子たちは美少女であると訴えているんです! 確かめなきゃ死んでも死にきれません! 」

 

 我ながら馬鹿なことを言っているとは思っている!

 でも、俺は俺のスケベ心を抑えるような真似はしたくないんです!

 

「あらあら、兵藤くんったら」

 

「あはは…」

 

「兵藤先輩、やっぱりサイテーです」

 

 

 うおおおおおお…!

 くっ! たとえ軽蔑されても、俺は諦めない!

 

 

「はっはっは。―――分かったか。あれが“主人公(そう)”だ」

 

「うえぇ…気持ち悪いぃ…お父さーん」

 

「最低ですわ」

 

「なるほどー」

 

「さて、兵藤一誠くん…でいいのかな? 君に一つ良いことを教えてあげよう」

 

 いいこと?

 

 

 

 

「―――ヒトの娘をいやらしい目で見てんじゃねぇよ」

 

 口調荒く、男が左手を上げる。

 

 

―――!

 

「ぐっ………ッッッ! がはっ! 」

 

「うぅぅぅ……」

 

「このオーラは…っ、上級悪魔以上…ッ……!? 」

 

 空気が重い、息が苦しい、心臓が飛び出そうだ…。

 とても立っていられない………!

 

 “圧”が、違う! あの男じゃない…!

 

 

「くっ……、あなたたちは一体…」

 

「当ててみればー? 当たってたらー、正解って言ってあげる♪ 」

 

 ねっとりと甘い声。

 でも彼女が言葉を発する度にオーラが力を増して、意識が飛びそうになる。

 

 

「っ、はっ、はっ…七十二柱の断絶された上級悪魔も末裔…」

 

「はい、不正解♪ 」

 

 

「うっ…」

 

「部、長…」

 

 俺は、俺は……俺は…

 

 

 

―――パン!

 

 

 手を打つ音。

 それと同時に圧が消えた。

 

 

「ここまで。手に入れるものは手に入れられたし、おちょくるのも楽しめたし、僕らは帰るよ」

 

「貴方たち………」

 

 部長、もう怒る気力もないという感じにお疲れだ。

 俺も、ちょっと疲れて何もする気になれない…。

 

 

「おっと、一つ…いや二つ忘れものだ。

 まず一つ目は挨拶。『俺たちはGAIA、星の記憶を受け継ぐもの』よろしくな。

 そして二つ目、ほらよ」

 

 ひゅん、と俺の手元に何かが飛んできた。

 それは緑色の指輪で―――ってこれ!

 

 

「返しておくよ。うちには必要ないものだからな。金髪シスターの形見にするなり自分らで使うなり好きにするといい」

 

 

 アーシアの………。

 

 

「それじゃーなー」

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 ロード 」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

「はははっ…」

 

 もう笑うしかない。

 俺たちを取り囲んでいた男たちが重なり鳴り響く音とともに怪物へと変わり、空間に孔を開けた。そしてそこを通って男たちが消えていく。

 

「カラダニキオツケテネ! 」

 

「お大事にぃ 」

 

「………」

 

「オタッシャデー♪ 」

 

 

 

 

―〇★〇―

 

 

 

 奴らが消えてからしばらく、安心することはできなかった。

 

 しばらくして部長がアーシアを悪魔として蘇らせてくれるということになり、アーシアが生き返った。

 とても嬉しいはずなのに、それを喜ぶ気力が圧倒的に不足していた。

 奴らは何者だったのか、何が目的だったのか。

 

 部長は自分に任せなさいと言ってくれたけど、そういう訳にはいかないだろう。

 

 

 

 

 いくつかの謎としこりを残したまま、俺の悪魔としての初めての実戦は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 思うこと。→オリキャラ作りすぎた…。話に絡ませるのがむずい。ヒロインが0話以降全然出てこない…。これでは名ばかりヒロインに………。
 次回、捕まえた堕天使さん達の使い道(素材)含めた原作第2巻番外0話。
 お楽しみに。


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