ダンジョンで混じり子が戦うのは間違っているだろうか? (にわかDRPGプレイヤー)
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プロローグ

「……オレらはミノを何体片付けた?」

 

 狼人の青年、ベート・ローガは彼の後ろで雑談をしていた三人の女性に問いかける。

 

「どしたのベート?話に混ぜてもらえなくて不満とか?」

 

 問いに答えたのは女性……というにはやや発育に問題がある褐色の少女だった。

 

「さっさと数えろ」

 

 普段ならばこの程度の煽りにも反応するベートが冷静に返事を返したことで真面目な話だと理解した三人は各々が倒したミノタウロスの数を申告する。

 そこにベート自身が倒した数を加算すると――

 

「クソが、一匹逃がしてるじゃねぇか!」

 

 四人に別れてミノタウロスを追撃した彼らだったが、ほんの数分前に合流し、金髪の剣士アイズ・ヴァレンシュタインがミノタウロスを斬り伏せたことで全てのミノタウロスを撃破し、最後に残ったのがこれであったという勘違いをしていた。

 たまたま四人が合流し、かつそこで軽い事件があったからこその勘違いだろう。

 

 狼人であり五感が鋭いベートはアイズが派手にミノタウロスを斬ったことで撒き散らされた血液によって嗅覚が鈍くなっていたものの、遠くから臭うミノタウロスの体臭と僅かに臭う人間の血液の臭いを感じ取っていた。

 ただの勘違いかと思ったベートだったが、仮に勘違いでなかった場合の面倒を考えて問いかけてみればそれが勘違いでなかったことが確定する。

 

 自慢の脚に力を込めて弾丸のように飛び出すベートの後ろで三人――のうちの一人が置いていくなと叫ぶが、そんなことは知ったことじゃない。

 そもそもの話ミノタウロス如き何匹集まってもベートクラスの冒険者ならば余裕で撃破できる。

 それは先程まで手分けして複数体を追いかけていたことからも明らかだろう。

 ならばノータイムでトップスピードを出すことの出来るベートが自身より足の遅いものに速度を合わせる必要などなかった。

 

 普段のベートならばここまで急ぐことは無かっただろう。

 ともすれば四人の中で最後尾を走っていたかもしれない。

 だが、現にベートは最高速で移動している。その理由は、ミノタウロスと血液の匂いによって薄れてこそいるが、嗅ぎなれた匂い――つまりは知人の体臭があったからである。

 その人物のレベルは1。ミノタウロスはレベル2相当のモンスターであるため、彼がミノタウロスと戦っているのならば勝敗はおおよそ決まり切っているだろう。

 

 最高速で走るベートが曲がり角の壁を蹴りつけ、破壊することで速度をそのままに曲がると同時、曲がり角の先で一本の腕が回転をしながら宙を舞った。

 さらに濃くなった血液の臭いだが、ここまで接近すればミノタウロスの背中の向こう側でミノタウロスと対峙している――していた者の体臭だって嗅ぎ分けられる。

 

 腕を切り飛ばされた者を確定させたベートが震脚の要領で踏み込み、背中を見せるミノタウロスの後頭部を蹴りつけるために跳躍した瞬間、ミノタウロスの背中から鋭い刃の切っ先が飛び出し、ミノタウロスの体を灰へと変化させる。

 蹴りの対象が消滅したことで勢いの行き場を失ったベートは空中で体勢を整え着地すると、切り離された腕を回収して倒れ伏した持ち主へと駆け寄る。

 

「雑魚が。お前のステイタスなら逃げるくらいは出来たはずだろうが」

 

 罵倒の言葉が口から飛び出すが、それとは裏腹にベートの手は動き、力自慢のミノタウロスにやられたとは思えないほど綺麗な断面をしている腕に酒をぶちまけ、その後しっかり断面どうしを固定した後に酒とは別の瓶の中から液体をかける。

 

 エリクサーという死んでさえいなければどんな状態であっても命を長らえさせると評されるほどの効能を持った回復薬は正常に作用し、切断された腕を繋ぎ合わせた。

 

 ベートはミノタウロスを打倒し気絶した彼を担ぐと、彼の武器であったヒビだらけの刀と、ミノタウロスが所持していた刀を手に持って来た道を引き返した。

 

「ミノが相性の悪い刀を持ってたからの勝利か? いや、刀でもミノからしたら軽いだけの棒きれだがリーチの延長は間違いなく強化だ」

 

 来た道を引き返しながらベートは先程までの戦闘のことを考える。

 とはいえ、見たのはおよそ二、三秒。

 思考を深くする要素はほとんどない。

 だが、もしもミノタウロスが刀を逆に持っていたり、そもそも刀と似ているだけの棒切れを持っていたのならば腕は綺麗に切断されず、断面はぐしゃぐしゃになっていて腕を繋ぎ直すのは難しかったかもしれない。

 そもそもの話、骨まで粉々に折られつつも腕が切り離されることなく胴体ごと吹き飛ばされて追撃を受けていたかもしれない。

 

 そう考えるとやはりミノタウロスが刀を持っていたのは不幸中の幸いだったのだと結論づけた。

 

「あ、ベート」

 

 遅れてやってきた三人組を代表して胸の貧相な方の褐色少女がベートの名前を呼ぶ。

 

「おせぇぞ」

 

「そっちが早すぎるんじゃん! ってソレなに?」

 

 指さされたのはベートが雑に腰帯に挿した二振りの刀だ。

 

「こいつの得物と戦利品だ」

 

 顎で背負っている少年を指してベートは続ける。

 

「オレはコイツを連れてホームに戻る。おまえらはリヴェリアに直帰するように伝えろ」

 

 そのままベートは歩きだし、残された三人はベートに担がれていた少年について話し出す。

 

「今のって?」

 

「多分ウチの子ね。何回か見た事があるわ。名前までは知らないけど」

 

「ウィズ。ウィズ・イルミナル・ドリー」

 

 褐色姉妹は覚えていなかったが、アイズは彼に覚えがあった。

 というのも、早朝――深夜とすらさせる時間からホームの鍛錬場を使用しているのが彼だったからだ。

 彼の発する空気から一度も話しかけたことは無かったが、自身よりも早くから鍛錬をしている彼のことが気になって主神に名前を尋ねたことがあったのだ。

 

「ふーん。ウィズっていうんだ。彼が一人でミノタウロスを倒したならレベルアップしてるだろうし起きたら話しかけてみよっと」

 

◆◇◆

 

「レベルアップキター!」

 

 ロキファミリアのホーム、団員である少年の私室では気絶した部屋の主の少年が上半身を裸に剥かれ、背中を厭らしい手つきで撫で回されていた。

 完全に事案である。

 

「終わったんならさっさと服着せて出ろ。更新で生命力のドーピングさせて安定させるってのはそんなに触る必要があんのか?」

 

「趣味や。だってウィズたん更新の時だって一瞬しか肌見せてくれんし触らせてくれないんやで?こりゃあ一年分のお触り欲を発散するチャンスや!」

 

 そう叫ぶ糸目の女性――胡散臭い感じの少女の脳天に、ベートの手刀が叩き込まれ、ベットからつまみ出されたのはその直後だった。




察しがいい人は気づいたかもですが、主にwizardryとエルミナージュの設定が混ざります。
まあ知らんくても問題ないですが

続くかは未定、あと口調とか性格とかはやはりニワカなので間違ってたら教えてください
感想とか評価とか感想とかブクマとか感想とかしおりとか色々待ってます


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2話

あらすじがクソ適当なのにも関わらずそこそこな観覧者数なのはやはりwizardryクウォリティーなのかしら


 ミノタウロスが上層へ逃走し、二人の下級(レベル1)冒険者を襲った事件から一日。

 事件の翌日の昼頃にミノタウロスを打ち倒した方の冒険者ことウィズ・イルミナル・ドリーは目を覚ました。

 彼の眠っていたベッドの隣にはロキファミリアのママとも呼ばれるハイエルフの王族にして迷宮都市オラリオにおいてもひと握りのレベル6冒険者であるリヴェリア・リヨス・アールヴが椅子を寄せて座っていた。

 目が覚めたウィズに対し、リヴェリアは昨日から今までのことを説明する。

 

 ファミリアの遠征の帰還中による事故によって複数体のミノタウロスが上層へ逃走したこと、その中の一個体がウィズと相対し、ウィズは片腕を代償に無事撃破した事、追撃に走っていたベートの迅速な措置により後遺症を残さずに腕を繋ぎ合わせたこと、ミノタウロスの撃破により偉業が認められレベルアップの権利を得たこと、ミノタウロスの所持していた武器をウィズの戦利品として回収したこと。

 おおよそこれらがリヴェリアの伝えたものである。

 それに対し、ウィズの反応はただ一言。

 

「ベートさんにお礼を伝えておいてください」

 

 ただそれだけだった。

 一般的な十代前半の少年ならばミノタウロスを逃したファミリア上層部に対しての文句の一つや二つは出るだろう。そして助けられた事実こそあれど追撃班のミスによりあわや命の危機に陥ったのだからベートらへ思うところもあるはずだ。

 だが、そのようなことは一切口にせず、そして人生経験の豊富なリヴェリアをして表情からも読み取ることが出来なかった。

 

「自分は水浴びをしたらロキさまの所でレベルアップを行ってもらいます」

 

 それでは、と着替えを持って退出するウィズに何かを言おうとしたリヴェリアであったが、ウィズの退出までのわずかな時間では言葉を紡ぐことが出来なかった。

 それほどまでに二人の接点は限りなく薄い。

 それこそウィズの入団の折に数日間ほど世話をした程度だった。

 

 それ以降も他人との関わりが薄いウィズのことを気にかけていたリヴェリアではあったが、副団長という立場やウィズの性質もあり会話をしたことは無かった。

 特徴的な耳を持つ()()()()()()でありながら一般的なエルフとは違いリヴェリアに特別な感情を一切抱かないウィズに前述の心配事とは別に興味を持っていたリヴェリアだったが、ドアが閉まる音で気を取り直し、座っていた椅子を部屋の隅に寄せると部屋の主がいなくなった部屋から退出した。

 

◆◇◆

 

「ありがとうございました」

 

 誰もいない浴場で素早く体を清めたウィズは丁寧に水気を払い、ロキの私室を訪れた。

 そしてレベルアップの処置を行ってもらい、発展アビリティとして狩人を取得し、神聖文字(ヒエログリフ)で背中に記されているステイタスを訳した紙を受け取るとロキの言葉を遮ってステイタスの更新の礼を言い退出した。

 

「紙渡すタイミング遅らせるべきやったかなあ。でもウィズたんに嫌われたくないし今のがベストやろ」

 

 ステイタスの更新でウィズが横たわっていた寝台に突っ伏したロキはウィズのステイタス更新をする度に同じことを考えてボヤいていた。

 しかし、数秒するとウィズの残り香に気づき腰をくねらせる。

 その姿は紛うことなきHENTAIであった。

 

「ふぅ……。ウィスたんのアレ、確実にレアスペルやなあ。なんやねんカートリッジ制って。なんやねん七つの位階の呪文って。しかも二種類やから最低でも十四種類やろ? こんなんチートやチーターや! とりあえずフィンらに伝えとくんは確定やな。唯一の救いは神会が一月後って所ぐらいか。それまでにも一回ウィズたんと話して概要くらいは教えてもらわんとな」

 

 突如として脱力したロキは、体の代わりに頭と口を働かせる。

 普段は残念さがにじみ出る胡散臭いまな板ではあるが、天界では右に出るものがいない悪巧みの神だ。その称号は頭の良さを証明するものであり、そしてロキは自身の子供であるファミリアメンバーを大切に思っている。 

 暇だからと碌でもないことをするのはロキを含めたあらゆる神に共通するものであり、ロクデナシが面白いものにちょっかいをかけるのは火を見るより明らかである。

 完全に隠蔽するか、意図的に情報を公開するかするか、全てを隠蔽するか。

 それらを考える時間は一ヶ月もあれば十分だった。

 

◆◇◆

 

「【カートリッジ・スペル】。スキルではなく魔法のスロットを埋めて発現したにも関わらず肝心の魔法の詳細は記されていない。書かれてるのは魔法のルールだけ」

 

 ロキの部屋から退出したウィズは自室へと歩きながらステイタスの記された紙に目を通していた。

 その内容はロキがボヤいていた内容そのままなので割愛するが、肝心の魔法名や詠唱が記されていなければ魔法が効果を発揮することは無い。

 なぜならば魔法とは詠唱を行い、魔力の運用をして初めて行使が可能になるものであるからだ。

 肝心要の詠唱を知ることが出来ないのであれば最大で三つしかないスロットを占有するゴミの出来上がりだ。

 

「しかし脳内にはしっかりと使用可能な魔法が記述されている。カートリッジの最大数は九つか」

 

 しかも現在ウィズの脳内に浮かぶ全ての魔法は短文詠唱どころか魔法名のみで発動の可能な利便性の高い速攻魔法ばかりだ。

 詠唱の長いものほど高威力という魔法の原則からして若干威力に不安を覚えるが、これならば平行詠唱のような独特な感覚の必要な技能は必要ないし、ウィズが今まで行っていた単純な近接戦闘に活用することも簡単である。

 

 自室の前へとたどり着いたウィズは耳を澄まして部屋の中の様子を探る。

 起床してから一時間ほど経っているが、まだリヴェリアが室内にいた場合は部屋に置かれている得物は放置し、ファミリアの先輩が使わなくなった武器が大量に置かれている倉庫から武器を拝借しようと考えていたからだ。

 

 室内に物音は無し、リヴェリアは高レベルの冒険者ではあるが斥候やアサシンのような隠形に秀でた冒険者ではない。むしろそのようなこととは対極に位置するだろう。

 故に室内にリヴェリアは居ないと判断し――しかし徹夜で自身の様子を見てくれていたという可能性に思い至ったウィズは寝息も聞こえないくらい深く寝てしまっているということも考え、仮にそうだった場合睡眠を邪魔しないようにと、ゆっくりドアを開けることにした。

 ウィズは他者との接点を限りなく薄めてこそいるが、それは他者に興味がないということではなく、むしろそこらの粗暴粗雑粗悪の3Sな底辺冒険者とは比べようもないほど他人を思いやる気持ちを持っている。

 

 ウィズがドアノブを捻り、音を立てないようにゆっくりと引く。

 すると――

 

「おかえりー!」

 

 と、ウィズの感覚では誰もいなかったはずの室内から小柄な影が飛び出してきた。

 反射的にドアの裏に隠れることで回避し、影が鈍い音を立てて壁に激突したことを確認するとその隙に滑り込むように部屋へと入り、ドアを締め、得物を手にしようとした所で気づく。

 

「たしかミノタウロスが持っていたのは刀だったか」

 

 自身が使っていた刀に添えられるように置かれていたのはミノタウロスが持っていた刀だった。

 

 そして、朧気な記憶ではあったが、ウィズが今まで使っていた刀はミノタウロスの強靭な皮膚を斬りつけたせいで傷んでいた記憶がある。

 魔法と新しい武器の試運転を両立させるのは危険ではあるが、普段より浅い階層で試せばいいだけだとウィズは結論を出し、二振りの刀を手に取った。

 

「避けるなんてヒド――」

 

 直後、おでこと鼻頭を赤く腫らした褐色の少女が勢いよくドアを開きながら叫ぶ。

 しかし彼女の瞳に映るのは誰も居ない室内と、風に揺られるカーテンだけであった。




昔は三十分で3000~5000字くらいは余裕だったんですが気がつけば二時間で3000字……
一人称はかなり書きやすかったのかな

感想評価その他お待ちしてます


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3話

「まずは腹拵えから」

 

 ホームから出たウィズはそのままダンジョンに向かうと思いきや、軽食を求めて店を探していた。

 もとより常人より食事の量が多いウィズがおよそ一日の間気絶していたのだから空腹をおぼえるのは当然であった。

 元レベル1冒険者としては膨らんでいる財布にものを言わせて軽食を買い漁り、そのまま胃の中へと運んでゆき、漸く空腹が収まったところでダンジョンへと足を向けたウィズの視界に飛び込んできたのは山盛りの食料を運ぶアイズ・ヴァレンシュタインであった。

 

 アイズがウィズを知っていたのと同様、ウィズもアイズのことを知っていた。

 その理由は、オラリオの中でもひと握りの高レベル冒険者にして最短記録(ワールドレコード)()()()()()人形姫というアイズの知名度によるものであり、朝が早すぎる鍛錬の開始によって鍛錬場に二人きりになることが多かったから――などという理由ではなかったりするのだが。

 

 空腹が収まったとはいえ満腹ではなかったウィズは人形姫とも称されるアイズが頬を綻ばして口に運ぶ料理に興味を持ち、アイズが来た道へ寄り道をすることにした。

 

「じゃが丸くん……」

 

 ウィズがたどり着いたのはじゃがいもを潰して形成し、揚げたものが売られている店だった。

 掲げられてるメニュー表を見るに、アイズの持っていたのは小豆クリーム味という如何にもゲテモノといった感じのものだと推測できた。

 

 しかし店から漂う匂いは実に食欲をそそるものであり、地雷のようなトッピングメニューさえ避ければアタリの部類だとウィズは考えた。

 

「すみません。じゃが丸くんプレーン味と――」

 

◆◇◆

 

「買ってしまった……」

 

 やけに胸を強調する布地の薄い服を着ていたツインテールの少女のゴリ押しにより、プレーン味を基本として様々な味を購入することになったウィズであったが、その中には当然のように小豆クリーム味も混ざっていた。

 じゃが丸くん自体そこそこの熱量を持つ料理である。クリームなど直ぐに溶けてしまうだろう。

 

「――ええい、ままよ!」

 

 クリームが溶けてサクサクだろうじゃが丸くんの食感が崩れることやプレーン味がクリーム味になることを恐れたウィズは、最初に小豆クリーム味を頬張った。

 アツアツのじゃが丸くんと冷えたクリームによって口内が凄いことになったがウィズであったが――

 

「あれ、意外と美味しいか?」

 

 僅かに塩味を感じさせるじゃが丸くんと甘い小豆とクリームは見事に調和し、ウィズの舌を唸らせた。

 これならば人形姫が頬を綻ばせるのも頷けると理解したウィズは小豆クリーム味をひとつだけしか買わなかったことを若干後悔しつつ様々なバリエーションのじゃが丸くんを口へ運んだ。

 

 ウィズは小豆クリーム味の次にじゃが丸くんの中にレバーを入れたものを、その次にプレーン味を気に入ったようだった。

 その他の味も十分に美味しかった訳ではあるが、プレーン味を超えるものはなかったため、今後ウィズがじゃが丸くん買う場合はこの三種類から選ばれることになるだろう。

 

 露店区域の出口にあったゴミ箱にじゃが丸くんの容器を捨てたウィズはそのままダンジョンへと潜り、ミノタウロスが遺した刀を抜いて下層へと続く階段を目指した。

 

◆◇◆

 

「ここなら自由に検証できる」

 

 ダンジョン十階層。ギルドが冒険者に提供するマップの外にウィズはいた。

 十階層は霧に包まれたエリア(ダークゾーン)が点在するフロアであり、そのため多くの冒険者はこのフロアに留まることが少ない。

 上層から下層へと繋がる階段を目指して直進するのが常であり、ギルドのマップも二点間を結んだ範囲ほどしか記されていない。

 

 現在ウィズが居るのは階段から離れた場所であり、特に濃い霧を突っ切った先にあるそこそこの広さのある円形のエリアだった。

 この場所は三十七層の闘技場のような性質があり、出現する数も質も低いが、纏まった数を倒せるためウィズは二ヶ月ほど前まではこの場所を利用していた。

 ステイタスが一定の基準に達してからはさらに下層へと潜ったためこの場所は久しぶりであったが、その性質は変わっていなかったようだ。

 

「まずはインプからか」

 

 ミノタウロスの刀を抜いて十体前後のそれと相対する。

 ミノタウロスの刀はまるでウィズのために拵えたように手に馴染んでいた。

 新たな武器を入手した際にはそれ以前の武器との微妙な重心の違いなどから慣熟訓練が必要なはずだが、一時間にも満たないダンジョン探索のうち、半分未満の戦闘時間でウィズはこの刀を完全に使いこなしていた。

 

 肉体的な強度は並程度だが集団かつ知恵のあるインプたちの波状攻撃に対し、ウィズは向かってくるインプを軽々と撫で切りにしていく。

 技量はもちろんだが、レベルアップによって向上した身体能力と、抜群の切れ味を持つミノタウロスの刀があってこその結果だった。

 

 数分と経たずに全てのインプを灰へと還したウィズは魔石を回収すると独り言ちる。

 

「もう刀はいいか。魔法を試そう」

 

 刀を納めこそしないが、意識を切り替えて魔法を使うことを考える。

 現在ウィズが使える魔法は七つの位階のうち下位の四つまでであり、それぞれのカートリッジ数は下から9/6/3/1回ずつであった。

 これが二種類あるため魔法を使える回数は合計で38回。一日のダンジョン探索における使用可能数としては少し足りない程度のではとウィズは考えた。

 完全なマジックユーザーとしての戦闘は難しく、速攻魔法の特性を活かしてのフラッシュアクションによる魔法の行使によって近接戦闘を優位に進めるというのが良さそうである。

 

 壁に寄りかかってモンスターの出現を待ちながら思考していたウィズは空気を叩くような音と獣臭さを感じて目を開ける。

 数メートル前方には豚頭人身のオークと巨大なコウモリであるバッドバットが出現していた。

 

 敵を確認したウィズはひとまず魔法の射程を確認するために壁に寄りかかったまま魔法を発動する。

 

「<ハリト>」

 

 掌を敵へ向けて詠唱したウィズであったが、それに対して魔法が出現したのはウィズの背後の空間からだった。

 出現したのは火の玉。

 それはそこそこの勢いで飛び出してゆき、見事にオークへと直撃。肉の焼ける香ばしい香りと共にオークをダウンさせた。

 殺害こそできていないが広範囲の火傷によって戦闘復帰は困難そうである。

 

「第一位階の魔法でこれか。レベルアップ前の魔力ステイタス評価がSだったとはいえ強力過ぎないだろうか?」

 

 思わぬ結果に驚いたウィズだったが、倒れ伏した同胞を無視してオークの一匹が突貫してくる。

 横に滑るように回避し、背中側に回り込むと蹴り(ヤクザキック)を御見舞し、オークの体勢を大きく崩させる。

 

「<ハリト>」

 

 再び火球が発射され、オークに直撃する。

 その炎は瞬く間にオークを飲み込み、一体目のように戦闘復帰が不可能な傷を与えた。

 敵の集団へと振り返りながら<ハリト>の呪文への評価をするウィズに、バッドバットからの怪音波が照射される。

 思わず眉間に皺がより、不快な気分となって集中が乱れる。

 

「<ハリト>!」

 

 速攻魔法の特性は詠唱が簡単なこと。

 ムカツク音波に当てられようと、僅か三文字の魔法名を唱えることなど容易なことであった。

 火球はバッドバットに向かって飛んでいくが、宙を飛ぶ身軽なバッドバットは回避行動をとり、体の中心を外して翼の端に命中することになった。

 さらに、バッドバットより大きなに体躯を持つオークを戦闘不能に追い込んだはずの炎威はバッドバットを包むことなく、僅かに翼を焦がす結果に終わる。

 

「集中できてないと威力が落ちるのか」

 

 カス当たりではあったがバッドバットに攻撃が命中したことにより怪音波の照射が停止したことで僅かに冷静になったウイズは今の現象を理解する。

 翼が焼けたことで高度を落としたバッドバットに接近し、バッドバットの首を刎ねたウィズは、残る数体のオークとバッドバットでさらに魔法の検証を続けた。




Wizardryではおおよそ全てがTRPGよろしくダイスで決定しますが、現実において全く同じ状況から全く異なる結果が発生するのは違和感しかありません。
そのため、クリーンヒット+集中状態をダメージダイスの上限と設定しカス当たりになればなるほど、集中が乱れれば乱れるほど下限に近づくとしました。

また、wizardryではファンブルが採用されておりどのような判定も成功率95パーセントが上限となっていますが、どんな簡単なことでも得意なことでも5パーセントで失敗するのは理不尽なためそこら辺も平時なら考えないことにします。(にわかTRPGプレイヤー並の感想)

そもそもTRPGのダイスは実際にプレイヤーが行動できないことをダイスの結果から空想するもののはずですので、実際に行動できる物語の中の人がダイスに縛られる必要は無いですしね

あとwizardryでは『レベル〇呪文』とかそんな感じで言うと思いますが、ダンまちのレベルと被るので位階という表現を使わせてもらいました。


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4話

感想を非ログインからも受け付けるようにしてみました。
割と説明会なんで進行はほとんどないです。


 始まりの戦闘から数時間後、バリボリと飴を噛み砕くように咀嚼しながらウィズは思考する。

 長時間の戦闘に耐えられるウィズの肉体ではあるが、その分燃費が悪い。

 地上では大量に食事を、ダンジョンではこうして栄養の塊を噛み砕いて補給するのだ。

 

「カートリッジは一定時間――最短で十五分ほどの休憩を挟むことで回復する。これは累計でもいいが、休憩の質が悪ければ時間がかかる」

 

 ウィズは今までに二度カートリッジを枯渇させており、最初の枯渇の際にダンジョンを破壊して思考時間を確保して今のように考えていたところ、カートリッジが回復するという事実を知り、さらに二度カートリッジを使い切り使える魔法の効果の把握に努めていた。

 

「おそらくカートリッジは精神力(マインド)を汲み分けて作成されているもの。回復の際にごっそりと減った感覚があったから間違いないはず」

 

 つまり、裏を返せば戦闘中には精神疲弊(マインドダウン)の心配がないという事だ。

 カートリッジは自身の精神力で作られているが、カートリッジとなった時点で精神力とは別の場所に保存される。

 一度の戦闘中に使える回数こそ限られるものの、全てを使い切っても精神疲弊(マインドダウン)による気絶や体調の悪化などがないのはわかりやすいメリットである。

 現在のカートリッジの数とウィズの精神力容量の場合、連続して二度、完全に枯渇した状態からの補給が限界だということもウィズは理解していた。

 また、完全に枯渇する前に休憩を挟んだり、一度だけ魔法を使って休憩をするなどをして位階別に精神力の消費量を検証した結果、当然と言うべきか位階の高い魔法ほどカートリッジの作成に精神力を使うという結果となった。

 休憩によりカートリッジが補充できるということが分かったため、今後長時間の探索を行う場合は位階の低い魔法に使用を絞り、総合的な魔法使用回数を確保することも必要だとウィズは理解した。

 第一位階の時点でも十分強力な魔法が揃っており、第二位階にも使い勝手の良い魔法が多くあるため、第三位階以上の魔法はカートリッジ作成に使う精神力のことを考えて使用を控えていくことになるだろう。

 

「とりあえず魔法をまとめよう。今は脳内に浮かんでいるがいつ消えてなくなるかもわからない」

 

 レベルアップの折りに唐突に脳内に浮かんできた魔法の羅列ではあるが、これがいつまでも続くとは限らない。

 レベルアップ直後のみの現象である可能性も考え、ロキに渡されてから今までポケットに入れっぱなしにしていた自分のステイタスが記された紙を取り出し、魔法を書き込んでゆく。

 


 

グループA/第一位階

 

ハリト(HALITO)/クリーンヒットでオークを戦闘不能にする程度の火球

 

カティノ(KATINO)/眠りを誘う空気を放射し、吸い込んだ者を数秒間無防備にさせる。痛みで覚醒

 

ボラツ(BOLATU)/敵を石のように硬直させる。オークには無効化されることもあるがバッドバットには確定。対象の生命力次第?

 

グループA/第二位階

 

ディルト(DILTO)/敵の眼前に暗闇を生成する。そこまで視界は悪くならないが割と邪魔

 

メリト(MELITO)/広範囲版ハリト。威力は据え置きだが単体に使う場合でもクリーンヒットさせやすい

 

ポンチ(PONTI)/敏捷に補正

 

グループB/第一位階

 

ディオス(DIOS)/傷を回復。ポーションの節約になる程度

 

バディオス(BADIOS)/傷を開く。ディオスで塞げるくらいの傷

 

グループB/第二位階

 

モンティノ(MONTINO)/敵を黙らせる。咆哮による強制停止(リストレイト)を防げそうだが吐息なども聞こえなくなるので注意

 


 

 と、ここまで書き記したところで紙に余白がなくなった。

 

「……これはロキへの提出用にしよう。多分色々と聞かれるだろうし。これを渡しておけば手早く済むはず」

 

 ほかの魔法は詳しく検証できなかったし、と呟いてから荷物をまとめて帰り支度を始めるウィズ。

 流石にハリトとメリト、ボラツの三つは自分に向けて使わなかったが、ほかの魔法は本来敵に使うだろうものでも()()()()()()使用し、おおよその効果を把握した。

 カティノは敵が動きを止めるということが分かっていたがどのような理屈でそうなっているのかが分からなかったり、ディルトもどの程度視界を塞いでいるかが分からなかったりしたため自分に使うという工程は魔法の効果の把握には役立っていた。

 

 本来ならばマジックユーザーはこのような検証をする必要はなく、ステイタスに魔法の効果が記されているが、ウィズの【カートリッジ・スペル】には魔法の効果が明記されていないのだ。

 仮に複数人の味方に効果がある魔法が使えたとしても今のウィズではその真価に気づくことが出来ないだろうし、高威力の魔法もそれに耐えるモンスターと相対しない限り性能を把握することは出来ない。

 

「パーティ……はだめだな。とりあえず攻撃魔法の限界を知る為にも明日は中層に足を運ぼう」

 

 ウィズは数時間の戦闘結果にしてはそこまでの量がない魔石を四つの袋に分けて腰に括り付けると、上層への階段へと歩き出した。

 

◆◇◆

 

「トータル210オーバーやと」

 

 ロキファミリアホーム、ロキの私室では部屋の主であるロキが神聖文字(ヒエログリフ)で記された紙を見て驚いていた。

 その紙はレベルアップ後、数時間のダンジョン探索を行って帰ってきたウィズ・イルミナル・ドリーのステイタスが記されたものだ。

 いくらレベルアップ直後はステイタスが上がりやすいとはいえ、オラリオ二大派閥の主神であり、数多くのステイタス更新を行ってきたロキでも一日でここまで成長した眷属は見たことがなかった。

 

「魔力が60オーバー、力、耐久、敏捷で120オーバー。器用も他と比べると微妙やけど常識に当てはめれば異常や」

 

 レベルアップ、レアスペルに加えてこの成長の速さという神会でド級の話題性の塊となってしまったウィズのことを考えて頭を抱えるロキは、忌々しげに紙を睨みつけて呟く。

 

「どーせ主神のウチにも読めないようにロックが掛けられてるこのスキルが原因なんやろなあ」

 

 ウィズ本人には伝えていなかったが、ウィズにはステイタスを刻んだロキにすら読めないスキルがひとつある。

 ステイタスを他者に読めないようにする処置はいくらかあるが、それは主神であるならば無条件で解除できるものばかりである。

 例外としては改宗前の主神によってロックされたものが残っている場合、改宗後の主神は読むことが出来なくなったりするのだが、基本的にそれらは解除されてからの改宗となるためそんなことは滅多に起こらない。

 

 そもそもの話、ウィズはロキが刻んだ恩恵で初めてステイタスを得たのだ。

 ()()()()など居るはずもない。

 

「まあええわ。考えてもしゃーないしな。今は渡された魔法について考えるべきやな」

 

 ロキはウィズのステイタスが書かれた紙を厳重に保管し、ウィズに渡された紙を手に取る。

 こちらには共通語で書かれたウィズのレベルアップ直後のステイタスが記されている。

 当然、ロキが読めないスキルは書かれていないので初期値の能力値と発展アビリティに加え【カートリッジ・スペル】の概要しか書かれていなかったものだ。

 それが半日ほどの時間を掛けて【カートリッジ・スペル】の詳細である魔法名とその詳細が書かれてロキの手元へ戻ってきていた。

 

「これがなかったら引き止めて色々聞けたんやけどなあ。うまいこと躱された感じや。それにしてもスロットひとつで回復と補助、攻撃まで出来るんはやっぱ強いわな。ウチにはあのモンスターが倒せるとか言われてもようわからんからフィンらに聞くしかないんやけど……この魔法名はどこの言葉なんやろな。魔法は必ず共通語ってわけでもあらへんけどそれでも各種族の言葉ってのが基本やけど」

 

 見たことも聞いたこともないわーと、ロキはベッドに倒れるように身を投げて思考も放棄するのだった。



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5話

本日二話目です
前話は若干説明回だったのと日曜ということで二話投稿です


「ウィズたーん! 打ち上げいくでー!」

 

 バーン! と、ウィズの自室のドアを大きな音を立てて開いたのは主神であるロキその人だった。

 机に向かって筆を走らせていたウィズは少々眉をひそめながら振り返り言った。

 

「先の遠征に自分は関係ないはずですが」

 

 打ち上げ、つまりロキファミリアが誇る上位冒険者たちで深層まで探索した遠征――その成功を祝ってのものだ。

 遠征への参加は最低でもレベル3からというのがロキファミリアのルールであるため、ついこの間まで冒険者の底辺であるレベル1だったウィズには無関係の行事である。

 

「そーやけど折角レベルアップしたんやしみんなでお祝いしたいやん? どーせみんなバカ騒ぎしたいだけなんやし話題性のあるウィズたんの参加を渋る奴なんておらんやろ」

 

 ウィズは直感した。これは強制イベントだ。と。

 たがそろそろウィズもロキに対して空気抜きを行う必要があると考えていたため、今回でそれをこなせるならそれでいいやと考えることにした。

 というのも、入団して2ヶ月ほどの頃、今よりも他人との接点を薄めて生活していた頃、もともとロキに気に入られて入団したという経緯を持つウィズを構えなかったロキが暴走しおよそ三日間ベッタリ張り付かれるという事件があったからだ。

 ウィズは他者との肉体的接触を特に避けている節があり、その事件からは適度に発散させることで二度とそうはならないように気を使っているのだ。

 

 ここで勘違いして欲しくないのはウィズが他者を嫌っているわけでもその関わりを煩わしく思っている訳でもないという事だ。

 寧ろ普段から構ってくれるロキのことは有難く思っているし、ロキに張り付かれた三日間は泣くほど嬉しく思っていたりもする。

 

 だが、ウィズ・イルミナル・ドリーという存在は他者との触れ合ってはいけないのだ。

 少なくともウィズ本人はそう思っているし、他者の温もりを求める心を押しつぶし、それによって発生するストレスをモンスターを殺すことで発散しているのだった。

 

「分かりました。正門に行けばいいですか?」

 

 ウィズは先程まで筆を走らせていた紙を折りたたみ、机に備え付けられた棚にしまうと立ち上がってロキに問いかけた。

 

「お、やけに乗り気やん。ウチの長年の思いが身を結んだってところやな? ほな一緒に行くで」

 

 ニンマリと笑って手を差し出してくるロキだったが、ウィズはその手を無視して部屋を出ると、ロキは待いやー! と、ウィズの横につき、手を握ろうとするのだった。

 

◆◇◆

 

「遠征の成功とウィズたんのレベルアップを祝って――乾杯!」

 

 豊饒の女主人、その一角を貸切った打ち上げはロキの音頭によって開始された。

 ウィズはロキの隣に座らせられており、同席するのはフィン、リヴェリア、ガレスに加えて若手頭のアイズ、ベート、ティオネ、ティオナと、錚々たるメンバーだった。

 

「ミノタウロスを倒してレベルが上がったんでしょ? どうやって勝ったの?」

 

 最初にウィズに話しかけたのは胸がない方のアマゾネス、ティオナだった。

 円卓の隣合う席だったためにティオナはウィズに体を寄せて聞く形になったが、ウィズとしては冷や汗ものであった。

 賑やかな酒場、和気藹々とした空気に自分に興味を持つ美少女。

 あまりにも暖かな空気すぎてウィズは人生において最初に抱いた決意が崩れそうになるのを自覚していた。

 

「別に。ただ全力で戦っただけです。腕をはね飛ばされての勝利だったようなので実質相打ちですね。ベートさんに助けられていなければ死んでいました」

 

 淡白に答えるウィズになにか違和感を感じながらもティオナは話を展開する。

 どんな戦闘スタイルなのか、普段はどこを探索しているのか、スキルや魔法を持っているのか。

 

 ウィズが長年の経験から身につけた()()()()()()()()受け答えをしていると、元気溌剌と言った感じのティオナもだんだんしょんぼりとしてくる。

 ウィズがそれに罪悪感を感じていると、ティオナの頭に拳骨が落とされた。

 

「同じ派閥とは言っても初対面なんだからそうそう話してくれるわけないでしょうに。そもそも自己紹介はしたわけ?」

 

 ウィズが顔を上げるとそこには一部以外は自分に話しかけてきていたアマゾネス、ティオナと似ている女性がたっていた。

 

「ごめんなさいね。この子、英雄譚に目がなくって。特にミノタウロスが出てくる……なんだったかしら、それがかなりお気に入りみたいなのよ」

 

 ティオナと名乗った女性が代わりに謝罪する。

 二人は姉妹のようだった。

 

「アルゴノゥト! 英雄が牛の魔物を倒してお姫さまを救い出すお話。あ、私はティオナ・ヒュリテよろしくね」

 

「ウィズ・イルミナル・ドリー。好きに呼んでください」

 

 流石のウィズも自己紹介を連続でされた後に目を向けられては自己紹介を返さないわけにはいかなかった。

 自身の中途半端さに呆れつつも今度は逆にこちらから話題を振り、適正レベルが2とされる中層の話を聞く。

 既にモンスターの知識と地図から読み取れる地形は頭に叩き込んでいるが、それでも実際体験したことのある先輩からの知識を得られるのは有難かった。

 

「ウィズたーん! そんな堅苦しい話してないでお酒飲もうやー!」

 

 と、立場的にウィズの隣にずっと座っている訳にも行かず、遠征メンバーが座っている机を回って酒を飲んできただろうロキが戻ってきた。

 ジョッキを押し付けられ、飲むように促されたウィズは仕方なしとそれを煽り――意識を暗転させた。

 

◆◇◆

 

「ウィズたーん!」

 

 空になったジョッキを落とし、崩れ落ちるように倒れたウィズを見てロキは叫んだ。

 

「息はあるし気絶してるだけっぽい。多分すっごい下戸?」

 

「そか、なら良かったわ……。それにしてもウィズたんがここまでとは……アイズたんもそうやし酒飲ませちゃイカン子が増えたなあ」

 

 平坦な胸にウィズを抱えたティオナがウィズの呼気を確認し、命に別状はなさそうなことをロキに伝えると、ロキは額を抑えて項垂れた。

 

「ウィズたんのこと任せてもええか? ティオナも気に入ったみたいやし」

 

「任せといてー! ……寝かせてあげるだけで大丈夫だよね?」

 

「怪我してる訳でもないんだしそれでいいんじゃないかしら?」

 

◆◇◆

 

 酔っ払ったベートが先日アイズに助けられた冒険者を馬鹿にした結果、店内にいた本人が店を飛び出していってしまったり、ベートの反省を促すためにロープで雁字搦めにして逆さ吊りにしたりと多少の問題はあったもの大きな事件はなく無事に宴会が終わり、食欲を満たした一部の男性冒険者は色街へと消えていった。

 豊饒の女主人も営業を終え、閉店の準備に取り掛かっている。

 あとは酔いつぶれた者をホームに運搬すればロキファミリアの営業も終わりだ。

 

 数時間の間ウィズを膝枕していたティオナだが、高レベル冒険者であるためか特に足が痺れるということもなく、ロキに任されたようにウィズをホームまで送るために背負おうとした所で違和感に気づいた。

 

「ちょ、あーと。ロ、ロキー!」

 

「んー? どしたん?」

 

 高レベル冒険者たちと飲み比べをしていたくせにほとんどシラフに見えるロキがティオナに呼ばれてやってきた。

 

「その……ウィズのことなんだけど……」

 

「もしかしてこれか?」

 

 ロキが人差し指と中指の間から親指を突き出してからかうように聞いた。

 

「違くてその……ね? ロキなら知ってるんじゃないの?」

 

 言葉に出さずにロキに何かを伝えようとするティオナに、ロキもようやく何かを察したようだった。

 

「あー。スマン。ちょっとだけ待っとってくれんか?」

 

 ロキはそう言ってティオナの元を離れ、リヴェリアに一枚の紙を渡して戻ってくると言った。

 

「ホームに帰ったら話すわ。ソレのこと知ってるのは片手で足りる程度やから内緒にしとってな?」

 

「わ、わかった」

 

 今晩のティオナは最初の一杯以来酒を飲んでいなかったものの、店内にはアルコールが漂っていたためかちょっぴり思考に靄がかかっていた。

 それに加えて現在不思議を体験していて、ロキからはなにやらヒミツを話されるらしい。

 お目目をぐるぐるさせたティオナは吃りながらも頷いた。




次回、僅かにウィズの秘密が明かされる?

個人的にティオナ好きなんですけどあんま詳しく知らんので指摘があったらばしばし飛ばしてください


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6話

わー思ったより設定公開のバーゲンセールだぞー^p^


 部屋の主の意識がない時に入り込まれることに定評があるウィズの部屋では一つの影がウィズのズボンを下ろしていた。

 既に上半身を覆う服は臍上まで捲られており、ズボンが下ろされたらほとんど全裸である。

 

 ウィズは随分とズボンの腰の位置を高くしていたようで、影はズボンを随分と下げたが、その位置は腰より少し下程度までだった。

 

「これやろ?」

 

 ズボンを下げていた影――ロキがウィズの腰、正確には腰に巻かれているものを指さした。

 

「うん、背負ったらなんか硬くって。あと脚の方にも同じ感触があったからちょっと触ってみたら気づいたの」

 

「つい昨日にもベートが背負って帰ってきたやろ? そんときにも気づかれてたみたいやし、いいタイミングなのかもしれんなあ……と。もっかい言うけどこれはガチで内緒な? フィン、リヴェリア、ガレスと昨日知ったベートしか知らん話やからな」

 

 コクンと頷いたティオナにロキは続ける。

 

「さて、どこから話すべきやろ。ベートへの説明はリヴェリアがしたしなあ。長くなるけど最初っからでええか」

 

◆◇◆

 

 その日、ロキはフィンと二人でオラリオの外周近くにいた。

 ロキの思いつきで入場門、つまるところオラリオ内外を行き来するための検問がみえる所にいたのだ。

 オラリオへの入場は特別規制されているわけでもなく、過去冒険者として活動していたことがあるか、犯罪者の人相書きに似ているものが無いかと言った程度の簡単なものだ。

 そうしてロキは入場してきたウィズを見つけたのだった。

 

 オラリオの外から来る者は基本的に恩恵の刻まれていない一般人であり、そのようなものを狙うゴロツキ冒険者も存在する。

 街を案内してやるとか冒険者としての心得を説いてやるとか言って適当にやった後に案内代や講義代といって有り金を全部捲るのだ。

 ウィズのような年頃の少年は冒険者への憧れがあり、ゴロツキ――つまり力ある者への憧憬を持っていることが多い。

 それを狙った小狡いビジネスなのだが、それを知っていたのか、そもそも他人を信用していないのか、ウィズは複数回ゴロツキに話しかけられても基本的にそれらの話に取り合わなかった。

 

 それが気に食わなかったのがゴロツキをまとめる小悪党だった。

 ゴロツキを避けて移動するウィズの思考を逆手にとり、ゴロツキの配置でウィズを路地裏へと誘導したのちに襲撃をかけたのだ。

 ロキと共にウィズを尾行していたフィンは、正義感を発揮してウィズを助けるために飛び出そうとした。

 しかし、ロキの手によってそれはとめられ、フィンは経緯を見守ることになった。

 

 ゴロツキたちも殺しは拙いと理解していたのか得物に選んだのは鞘に納めたままの刀剣類であった。

 それでも鉄の塊であることには変わりなく、凶器に違いない。

 とくにステイタスを持つ冒険者とそれ以外との肉体スペックを考えれば死に至らしめるのに十分なものだろう。

 フィンが飛び出そうとしたのもこれが理由の一つである。

 

 ゴロツキがウィズに剣を振るう。ゴロツキ、つまり落ちこぼれだけあってその剣技は拙いものであったが、肉体スペックにものをいわせたそれはウィズの肉体を痛めつけるかと思われた。

 しかし、ウィズはその攻撃を滑るように回避し、そのまま冒険者の背後へ移動、ヤクザキックでもってバランスを崩させ転倒させる。

 ウィズはゴロツキが手放した剣を拾い、ステイタスに関係の無い純粋な技量を以て複数人居たゴロツキを打ちのめしたのだ。

 これはゴロツキのステイタスが低く、技量もない冒険者だったからこその結果だが、それをみたロキはやっぱりな、と笑みを深めた。

 

 ゴロツキに襲われたことで気がたっていたウィズは、物陰に隠れるロキとフィン――正確にはロキのみに気づき、出てくるように勧告する。

 フィンが人の良い笑みを浮かべながら悪気はなかったと説明すると納得してこそいなかったようだが拾った剣のを腰帯に挿したウィズは、二人になぜ隠れていたのかを聞いた。

 

 しかし、ロキはその問には答えず、ウィズをファミリアに勧誘した。

 ウィズほど腕が経つならばオラリオにやってきた理由は即ち冒険者になるため、冒険者になるには神が必要で、その神に宛がないならば自分の眷属にならないか? と。

 ロキファミリアは2大派閥と呼ばれる大御所であり、冒険者としての活動に不自由させない。そう聞いたウィズは眷属の少ないファミリアを探して入るつもりではあったが、勧誘されたならば別にいいかとそれを了承し、そのままロキファミリアのホームへと案内され、恩恵を刻まれた。

 

 その夜、ちょうど同日に入団試験が行われていたということもあり、複数人の同期と共に入団したことが食事の際に食堂で紹介され、ウィズとその同期たちは暖かく歓迎された。

 

 その後、リヴェリアによるダンジョンについてのお勉強タイムなどを経てウィズはロキファミリアに入団したことを後悔し始めた。

 リヴェリアの勉強がキツかったから――ではない。

 正確にはキツかったからということも間違いではないのだが、そのキツさが単なる新人いびりではなく、新人の安全を思っての事だと理解したからだ。

 

 ウィズがオラリオに来る前に所属していたコミュニティでは、ウィズは迫害の対象だった。

 曰く、不幸の象徴。曰く、化け物。

 そんな環境で育ったウィズが自分がそういう存在だと思うようになるのは不思議なことではなく、そして唯一対等に接してくれていた少年がウィズを守って野盗の放った矢に倒れた時、ウィズの中で自分の存在がどういうものなのかが確定したのだった。

 ウィズは、自身に力がなければ周囲は不幸に轢き殺されると認識し、オラリオへと向かい、自身が力を得るためにどうしようもないロクデナシの神を利用して恩恵を授かり、力をつけようと考えていた。

 

 しかし、初対面の際にロキをみて主神がこれならばと、ロクデナシの集まりだと考えていたファミリアはアットホームで優しいコミュニティだった。

 そんなコミュニティを力無きウィズに襲いかかる不幸で汚してしまうのは本意ではない。しかし、改宗するには一年以上の時間が必要であるし、ロキの許可も必要である。

 ならば早急に力をつけるしかない。

 そう思いながらウィズはロキファミリアの積み重ねた新人育成のカリキュラムをこなしていった。

 

 入団から二週間。

 ウィズは同期三人と合計四人でパーティを組み、ファミリアの先達のアシスト無しで初めてダンジョンに潜った。

 結果は想定外に湧いてでたモンスターによってトラウマを負わされたひとりが冒険者を志すことをやめた。というものであった。

 それは、考え無しにダンジョンを進んだ暫定的なパーティリーダーであった少年の判断ミスや、先達としてアシストしてくれていた強者が居なくなったことでこちらに手を出してくるモンスターが増えたからということでもあるのだが、ウィズは自分のせいだと考えた。

 

 入団から一ヶ月。

 三人となったパーティは六階層に踏み入り、そしてウィズ以外の二人がウォーシャドウによって殺害された。

 今回はリヴェリアによる授業をしっかり覚えていなかったパーティメンバーが五階層が余裕だったしちょっとくらいなら良いだろう。と、刻まれたステイタスの力に酔ったための慢心、判断ミスによるものなのだが、歪んだ環境で育ったウィズはやはり自分のせいだと考えた。

 そしてウィズは不幸を叩き潰す力を渇望し、一週間の間ファミリアから姿を消した。

 

 行方不明となった眷属のうち、主神と眷属を繋ぐ恩恵によってウィズの生存を知るロキはフィン、リヴェリア、ガレスの三人にその事を伝え、三人は低階層で活動する団員たちにそれとなくウィズの目撃情報を募りはじめる。

 

 二日、三日間経っても見つからない。

 目撃情報すらないのは、と考えたフィンらによって低層を組まなく捜索され、ようやく見つかったのは七階層の未探索地域であった。

 手刀でもって強靭な甲殻を持つキラーアントを破壊し、背後から飛びかかるニードルラビットは腰から生えた強靭な()()で刺殺する。

 一週間もの間ダンジョンを宛もなくさまよっていたウィズの服は完全に用を成さないものへと変化しており、そしてそこから覗いたのは腰から生えた竜を思わせる細く、しなやかで、強靭な尻尾であった。

 

 ウィズは自身を発見したフィンに対し、ファミリアには帰らないと告げた。

 が、フィンもはいそうですか。と頷けるわけがなかった。

 ウィズを連れ帰ることはロキに頼まれたことだったし、なによりウィズの強さへの貪欲さとそれを得るために苦労を厭わない精神性、他者との触れ合いに積極的でないという欠点こそあったが人格的に問題もなく、将来的にファミリアの力となってくれる人材だと確信していたからだ。

 

 言っても聞かないウィズに対し、フィンは実力行使に出た。

 サクッとウィズを気絶させたあと、腰から生える尻尾を隠すように布を巻いてそのままホームへと連れ帰ったのだ。

 そしてフィンは、自身の個室に備え付けられたシャワーでもって気絶しているウィズの一週間分の汚れを落とすと服を着せてロキの部屋へと運び込む。

 程なくして帰還したリヴェリアとガレスを交え、四人でウィズをどう扱うかという話が行われた。

 経緯は省くが、恩恵が刻めるということはすなわち人間であるということであり、モンスターのような尻尾が生えていたとしても、だからといってファミリアを追放したり、殺害などは有り得ないという答えが出た。

 むしろそこまでは予定調和であり、仮に敵対派閥にこのことを知られた場合などの対応法などがおもな議題となったのだが。

 

 その後、ロキは目を覚ましたウィズから生い立ちを聞き出し、「強さを求めることは否定しないが必ず帰ってくること」と言い含めた。

 

 なお、直径3C、長さは2.5Mほどあるウィズの尻尾は普段は腰に巻かれて隠されている。

 不自然に膨らむ腰部分は腰部分にゆとりがあるズボンを履き、シャツも裾の長さあるものを着用することで隠していたのだった。

 しかし、尻尾を隠すのには確りとした意思が必要なようで、気絶したり眠っている間は張り付くように腰に巻かれているそれが緩み、背負われていたりするならば重力に従うようになる。

 

 ベートとティオナがウィズの尻尾に気づいたのはこのせいだった。

 

◆◇◆

 

「そういえば一年くらい前に新人がみんな居なくなった気がする。その生き残りだったんだね」

 

 ティオナは眠るウィズの頭を撫でながら呟いた。 

 ロキファミリアでは新人がドロップアウトしたり死亡するということは他所と比べれば少ないが、決してない訳では無い。

 そのようなことにあまり興味のなかったティオナは故にウィズのことを知らなかったのだ。

 

「ロキ話長くない? 最後の四人の会議のところだけでよかった気もするけど」

 

 ホームに帰ってきたのは二十二時過ぎ。今では完全に日付が変わっている。

 

「確かにそうかもしれん。でもな、ウチはティオナにウィズたんを任せたいと思うんや。それには知ってもらわんとあかん。いくらウィズたんに不幸などないと言い聞かせても安全地帯にいるウチからの言葉は届かん。フィンらは保護者枠やしフットワークも軽くない。でもティオナなら強くて不幸などないって言葉じゃなく行動で証明できるやろ? ずっと一緒にいろとは言わんけど、暇な時に構ってやって欲しいんや。ダメか?」

 

「ロキ。私ね、昼間にウィズが起きたってリヴェリアに聞いてここに来たの。ロキのところでレベルアップしたら戻ってくるって思ってね。ドアが開いたと同時に飛び出して話を聞こうとしたの。どうなったと思う?」

 

「捕まえたんやないか? いや、ダンジョンいっとったしそもそも帰ってこなかったとかか?」

 

「ううん。躱されてそのまま無視! ドアまで閉められて私が入ってきた時には窓から正門に歩く姿が見えてたよ。で、私は夜にも彼に絡んだ。つまり、言われるまでもなくこれからもよろしくしていくつもりってこと」

 

 ちょっと苦手意識持たれてる気もするけど。とティオナは肩を落としながら言った。




信じられるか? この話の主人公は今のところほとんど気絶してるんだぜ?

長々と書きましたが結局腰から竜みたいな尻尾が生えてる!ってのとウィズが他者との関わりを避ける理由を書いただけっていう……
しかもその理由も割とチープだしね!
でもでもまだまだ書いてない設定、なぜウィズが生まれ育ったところでそういう扱いをされていたのか、なぜそういう体なのか、ロキでもよめないスキルはなんなのかなどが残ってるので話は展開できますね!

あとリヴェリアがウィズの秘密を知っているってことでリヴェリアに矛盾が発生しました。

ウィズがミノ事件の翌日に起きた時彼女はハーフエルフ云々がナントカカントカでウィズのことが気になってるって感じの事書いたんですが、秘密知ってるならそうじゃないこと知ってるよね
気が向いたら修正しておきます。本当はフィンとロキしか知らない設定だったんですけど書いてるうちに知ってるってことになってましたわ……


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7話

フィンの身長は低いと言っても140くらいあると思ってたんですが、120もないみたいですね
前話でフィンの服をウィズに着せたと言ってましたがさすがに無理。
ウィズの身長は160後半くらいですね


 窓から陽の光が差し込み、室内を明るく照らす。

 煩わしい太陽によって起床を促されたウィズは、()()()()()を感じていた。

 

 また寝坊したな、と早朝鍛錬を逃したことをぼんやりとした頭で悔いていると、十階層で風の魔法を使ったかのように霧が払われ、頭が覚醒する。

 

 ウィズの眼前。そこには――涎を垂らして寝ているティオナ・ヒリュテがいた。

 

 びいくーる。嘗て自分を守って死んだ少年の口癖を思い出してウィズは落ち着く。

 昨晩、自分は何をしていたか。

 

「打ち上げに参加して、酒を飲まされて――」

 

 しかしウィズはそれより先が思い出せなかった。

 然もありなん。ウィズはそこで気絶するように眠っているのだから。

 

 しかし、真実を知らぬウィズは思考を止めることは無い。

 

「酔っ払ってお持ち帰りルートか?」

 

 それは無いだろう。と自分で出した答えのひとつに苦笑する。

 そもそもの話ウィズの抑圧されていたそれが解放されたのなら一番に絡みにいくのはリヴェリアだろう。

 もしくはロキ、フィンといったところだ。

 有名人ではあるものの接点がなかったティオナを。ということはありえない。

 

 ちなみに、リヴェリア以下三人の名が上がったのはウィズが感じたことの無い家族の温かみを強く感じるからだったりするのだが、ウィズはそれを言う気は無いし、察せられるつもりもなかった。

 

「となると、暴れたとかか? それを鎮静させたのがティオナで、運んできてそのまま寝てしまった。とか?」

 

 そういうことにしておくか、と暫定的な答えを出したウィズは起き上がり、確定的な答えを得た。

 

 尻尾がティオナの脚から腰へかけて巻きついている。

 つまり、()()()()()()()()()

 

 ウィズは寝る時も寝巻きの中に尻尾を隠して眠っている。寝ている間には目立たなくするための腰への巻付きは緩むものの、掛け布団の上からそれを看破するには至らないレベルであるため、唐突な入室にも対応できるようにするための睡眠方法だ。

 

 それは寝相やらでどうにかなるものでは無い。

 つまり、()()()()()()()()()()()

 ここまで至ると話は簡単だった。

 

 打ち上げで何らかの理由からティオナに尻尾がバレた。そしてロキやらの自分の事情を知る者が説明のために尻尾を出して――と言った具合だろう。

 暴れた。という懸念事項は残ったが、少なくともお持ち帰りという爆弾は完全に処理――そもそも存在しないことが分かったウィズは、ティオナの躰から尻尾を退散させる。

 睡眠中の無意識のそれだったからか、締め付けはかなり弱かったようで肌の薄い腹部に僅かに鱗の痕が残るだけで済んでいた。

 

 ティオナの体温や柔らかさを手や舌にも勝る感覚器官である尻尾から確認しながら、ウィズはそのまま自分に巻き付けていき、服の下へと収納する。

 

「よし、ダンジョン行くか」

 

 目標は十八層――とはいえ目標は目標。ティオナからモンスターの実地的な特徴は聞いているが流石にそこまでは行けないだろうと考えながら、ウィズは寝ているティオナを放置して部屋を出た。

 

◆◇◆

 

 ウィズはちゃっちゃかと十二層まで降りてきた。

 ここまでにモンスターと戦った回数は三度程。準備運動にすらなっていなかった。

 ウィズが早朝訓練を行う理由の一つに、エンジンがかかるのが非常に遅いという理由がある。

 鍛錬では技量も向上しているはしているだろうが、一人で行うそれではたかが知れている。

 体に基礎を作るという意味でもステイタスがある冒険者にはほとんど無意味だ

 上層までならばともかく未知の中層に冷えた体で突入するのは心許ない。

 なにか準備運動になりそうな手頃なモンスターは居ないかと探し回りながら練り歩いていると――

 

「助かった。同業者だ!()()()()()()()()()!」

 

「でも一人しか居ないし時間稼ぎにもならないっすよ!!」

 

 と、全速力で走る冒険者パーティを発見した。

 おおよそ怪物進呈だろう。と、あたりを付けたウィズは先んじて刀を抜いておく。

 納刀状態から攻撃、防御へと移る抜刀術をウィズは扱うことは出来るが、それでも納刀状態と抜刀済みでは圧倒的に後者のほうが手札の枚数が多くなるからだ。

 

「一人で足りねぇなら二人にすりゃあ良いだろ!()()!」

 

「うぃっス!」

 

 リーダーの掛け声によって最後尾を走る大きなバックパックを持った小さなサポーターが転ばされる。

 足を引っ掛けられたのだ。そのついでに作業中に一時的に魔石を保管するための小袋を掠めとっているあたり、かなり手癖が悪い。

 

「サポーターは()()()()()のために死ねぇ!」

 

 ギャハハとウィズを追い越した者達は笑いながら去っていく。

 

 ロキファミリアが健全なだけで冒険者って基本的にクソだわ。と改めて認識したウィズは押し付けられた敵――インファントドラゴンを睨みつける。

 このままではサポーターは轢き殺されるだろう。と理解したところで温まり切ってない体ではあるもののレベル2としてのステイタスを発揮し、転んだサポーターを回収する。

 

 ()()()()()()()が今この状況が不幸の真っ最中なのだから関係ないだろうと投げやりになりながらサポーターを地面におろす。

 

「一人で帰れるか?」

 

 頷くサポーターを見て実は下手な冒険者より強いんじゃないだろうかとウィズは思った。

 

「じゃあさっさと帰ってくれ。巻き込まれたいなら話は別だが」

 

 そう言ってウィズはインファントドラゴンに突撃した。

 

「<カティノ>」

 

 生成した気体を吸い込ませることで瞬間的な無防備状態にするための第一位階魔法を唱え、インファントドラゴンへ吸引させる。

 巨体故か効き始めが遅かったものの、見事にインファントドラゴンへ効果を与えた魔法により、インファントドラゴンが減速する。

 

 攻撃すれば直ぐに覚醒するが、逆をいえば放置しておけば数秒はこの状態が続く。

 その数秒で戦闘区域外へとサポーターが退避したのを確認すると、覚醒する直前のインファントドラゴンの右前脚の腱を切りつけた。

 

 ゼリーにスプーンを入れるように、とまでは柔らかくなかったものの、随分とあっさり刃が通り、足首からは血が吹き出す。

 

「ミノタウロスより百倍柔らかいな」

 

 百倍とは、すっごく。という意味である。実際の硬度が1/100という訳では無い。

 そもそも、レベルアップ前のステイタス、かつ得物も普通の刀だった時と比べて今のウィズはレベル2であるし、使っている刀だって前まで使っていたそれと比べれば雲泥の差である。

 2等級ほどの性能はあるのではないかとウィズは考えていた。

 故に、インファントドラゴンとミノタウロスでは比較にすらなってなかったりする。

 

 痛みによって意識を覚醒させたインファントドラゴンが暴れる。

 レベル2となったウィズでもあそこまでの質量が直撃したらダメージは免れないため、安全地帯――インファントドラゴン背中へと退避し、そこを足場にして跳躍、距離を取った。

 背中に留まっていたとしてもしがみつくのが精一杯で攻撃に転じることは出来なかっただろう。

 

 スタミナ切れか、冷静になったのか。それとも痛みから暴れられなくなったのかは定かではないが、静止したインファントドラゴンへと再びウィズは接近した。

 長い首を用いた噛みつき攻撃がウィズを襲うが、左にステップすることで回避。

 そのまま首で薙ぎ払うような攻撃はさらに懐に潜り込むことで胸の下まで移動し、回避する。

 動かない胴体――ではなく、左前脚の腱を狙ってウィズは刀を振るうが、直前にインファントドラゴンの左前脚が地面から離れ、刀は硬質化した踵を撫でるに留まる。

 そして、体重を載せた左前脚が床へと叩きつけられる。

 懐にいてはじゃが丸くん(材料は人肉)になってしまうため、再びバックステップで回避する。

 

 再び攻撃のためにインファントドラゴンに接近したウィズに、今度は尻尾が襲いかかった。

 速度をそのままに、前に、上に跳躍することで尻尾の薙ぎ払いを回避したウィズは、そのままインファントドラゴンの背中へと飛び乗り、駆ける。

 速度の乗ったウィズの斬撃は、インファントドラゴンの太い首に大きな傷をつけた。

 

 そのまま背中から飛び降りて、そのついでに軽く刀を振るって頭へと攻撃すると、運が良かったのか瞳を斬りつけることまで成功したウィズはニンマリと笑った。

 

 インファントドラゴンは激痛のあまり咆哮するが、ウィズを強制停止(リストレイト)させることは出来ず、そして声量に比例するかのように大量の血が首の傷から吹き出す。

 

「実戦だとエンジンのかかり方も違うな」

 

 準備運動が終わったことを認識したウィズは、この戦闘をおわらせることにした。

 

「<モリト>」

 

 呟いたウィズの前方から放射状に雷が発射された。

 第三位階のこの魔法は、オークを相手にした検証によると範囲が広い分単体へのダメージは位階にしては低い。しかし、それは体の大きくないオークをあいてに試したからだ。

 モリトの雷はインファントドラゴンの全身へと突き刺さり、表面を焦がした。

 筋肉が収縮し、インファントドラゴンの傷口からはさらに血が吹き出し、それとは逆に雷は体内からもインファントドラゴンを焼き始める。

 五秒にも満たない放射の後残ったのはぐったりと脱力し、物言わぬ躯となったインファントドラゴンと無傷のウィズだけだった。

 

「さて、魔石はどこだったっけな」

 

 初めてインファントドラゴンと遭遇したウィズは、インファントドラゴンの魔石の位置を記憶しておらず、頭や胸といったそれっぽい位置を切り刻むことになった。

 

「折角血を浴びずに倒したのにこれじゃあ意味が無いな」

 

 およそ十分後、そこに残っていたのは魔石を抜かれて灰となったインファントドラゴンと、血塗れのウィズだった。




モリト

敵全体に攻撃する雷属性の魔法。
同レベルの1グループを対象にしたマハリト(炎の魔法)よりひと周りほど威力で劣る


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8話

感想が貰えました。
嬉しい。経験上最初の感想はなかなかつかないのは分かってるんですがやっぱりないと寂しいですしね


 インファントドラゴンを倒したウィズは、早速栄養補給を行いながら十三層へと進出した。

 想定外の魔力消費があったものの、レベル1時点で魔力を最大まで鍛えていたウィズの総魔力量はかなりのものであり、第三位階の魔法とはいえ一発程度ならば大したものではなかった。

 そもそもカートリッジの弾数こそ減ったが、ウィズの精神力はこれっぽっちも減っていない。

 これは、精神力の時間経過で緩やかに回復するという特性から考えると勿体ないことではあるが、精神力を最大で保っているということは肉体のコンディションが最高であるということでもある。

 魔法という手札を入手したウィズだったが、その本質はインファイター。

 少しでも肉体のコンディションは高い方がいいため、これもデメリットと言うほどではない。

 

 閑話休題。

 

 十三層へやってきたウィズの最初の感想は上層のそれと殆ど変わらないというものであった。

 天井こそ高いが、霧などは存在しないため十階層より戦いやすいのではないかとすら思う。

 

 ウィズはギルドで観覧した十三層のマップを頭に思い浮かべつつ、実際に自分の目で確認して自分専用の脳内マップを作り上げていく。

 

 しばらく歩いていると、ウィズは曲がり角の先に第一村人をようやく発見した。

 白と黄色の毛並み、ゴブリンほどの体躯、額の角。可愛いという思いこそ湧かなかったが、間違いなくアルミラージだろう。

 それは三体で行動しており、レベルアップしたてのソロの冒険者の初陣としての難易度はやや高めに思われた。

 

 が、それはウィズには当てはまらない。過冒険者歴わずか一ヶ月の頃、武器防具なしという状況で七層のモンスターを相手取り一週間戦い抜いたウィズは()()()である。

 

 そもそも――

 

「<カティノ>」

 

 ――と、ウィズが呟くだけでアルミラージたちは意識を朦朧とさせる。

 オークには吸引させれば確定で効果を発揮していたそれだが、どうやらアルミラージにはそうでも無いようで、三体のうち一体は特に変わった様子を見せず、寧ろ仲間の二体の異変を感じとって周囲を警戒していた。

 

 曲がり角から飛び出したウィズは、まず初めに無防備となっているアルミラージの首を刎ねた。

 中層のモンスターとはいえ、流石にインファントドラゴンよりも硬いということは無く、ダンジョンの床に頭がひとつ転がる。

 カティノを無効化(レジスト)したアルミラージがウィズの姿を認め、そして仲間が倒されたことに気づいて声を上げる。

 その声によってもう一体のアルミラージは意識を覚醒させ、二対一の状況から戦闘が開始された。

 

 最初に動いたのはウィズであった。

 意識を保っていたアルミラージが叫ばずに攻撃を開始していたのならば順番は前後していただろうが、アルミラージが攻撃を放棄して仲間を起こしたと考えるならばアルミラージの行動も悪くはないものだっただろう。

 

 ウィズは、二対一の戦いを有利な状況にするために意識を覚醒させたばかりで隙の多いアルミラージの胴体を蹴りつけ、数メートル後退させる。

 これでわずかな時間だが一対一だ。

 

 蹴りによって片脚が上がり、隙が出来たウィズにもう一体のアルミラージが手斧で攻撃を行う。

 上から下へと振り下ろす攻撃だが、剣よりも重心が先端にあり、そして重いそれは高い威力を誇る。

 対して、ウィズは振り下ろされる斧の柄へと刀を振るった。

 斧は先端の重く、刃の付いた部分が一番強い。しかし、その分柄の方は威力はそこまで高くない。

 いかに武器による防御に優れない刀とはいえ、木で出来た部分、しかも攻撃用のものでは無い場所へと添えたのならば滑らせ、攻撃を無効化することは可能だ。

 

 意図せぬタイミングで斧の振り下ろしをとめられたことによって体勢を崩したアルミラージにもう蹴りを御見舞する。

 こういう時に尻尾が使えたのならばアルミラージの胴体を串刺しにすることも可能だったかもしれないが、ここは誰が見ているかもわからないダンジョンの中だ。

 ウィズは素直に四肢を使った攻撃を行った。

 

 吹き飛ぶアルミラージにそのまま追撃を行うために駆け寄り、大上段からの斬り下しへと体勢を移行したところでウィズは背中に鈍痛を感じた。

 

 努めてそれを無視し、眼前のアルミラージを魔石ごと真っ二つにして灰とし、振り返ったウィズの目に映ったのは無手でこちらへ駆けるアルミラージだった。

 勢いの乗った貫手を半歩ずれ、半身になることで回避したウィズはお返しとばかりに左手を握りしめ、アルミラージの角を避けて顔面を殴りつけた。

 たたらを踏み後退したアルミラージに今度こそウィズは刀を用いた斬撃を加え、絶命させた。

 

「ここまで素早いと適正距離を保つのも大変だな」

 

 刀、もとい長物は接近時にこそ真価を発揮するが、それでも貫手を紙一重で回避した直後の密着状態では十分に腕を振るうことが出来ず、その威力を発揮しない。

 そのような距離さえも適正距離としてしまう技がない訳では無いが、ウィズはそれらを扱うことが出来なかった。

 そのための蹴りや拳だ。

 しかしそれらも刀から片手を離してしまったり足を地面から離してしまうという欠点があるため、武器を用いた近接戦闘技術としてはギリギリ落第であろう。

 

 それでもウィズの強靭な手足を用いた打撃は強烈であり、刀と出会うまでのウィズは四肢と尻尾を武器にした戦闘を行っていたという経歴があるために総合すればレベル2の冒険者としての純粋な戦闘ロジックの完成度という意味では中々のものだったりするのだが。

 

 と、ウィズはつい先程背中に鈍痛を感じたことを思い出す。

 既に痛みは引いており、体の動作にも支障はない。だが、これが頭に当たっていたのならば怪我を負っていただろう。

 既に何によってのものなのか、という答えは得ているが、念のためにと振り返って確認すればやはりアルミラージの持つ手斧が落ちていた。

 

 事前に得ていたアルミラージの情報に投擲の狙いは正確だが、意図して刃を突き刺すことは出来なさそう。と追記する。

 刃が刺さらなければただの質量武器、石や鉄塊と変わらない。

 ウィズはアルミラージに対する危険度を実戦経験を以て評価した。

 

◆◇◆

 

 ヘルハウンドが見つからないな、と十四層へ降りたウィズは独りごちた。

 十三層ではどこへ行ってもうさぎばかり。犬の姿はこれっぽっちも認められなかった。

 しかもうさぎもうさぎで三匹以上の群れとなっているのだから大変である。

 最初の戦闘のように背中に斧を投げられた回数は数しれず。ほとんどの斧は回避していたが、何度か命中した時に運悪く刃がクリーンヒットし、ウィズの胸当てを背中側で固定していた紐が切られてしまったこともあり、今のウィズは膝上まで裾のあるシャツにズボンと、膝部分のプロテクターのみというダンジョンにあるまじき軽装だ。

 

 なお、紐が切れて着用していてもカパカパと動いて邪魔になるだけとなった胸当てはそこら辺に投棄してきている。

 地上に持ち帰って直すために大事に持っていれば、それだけでも荷物となるし、そもそもの話、その胸当ては購入以来一度も活躍したことがなかったため、ウィズの体重を重くする拘束具としての意味しかなかったので正当な理由ができたら捨ててしまおうと考えていたものであったりもするのだ。

 

 ちなみに、刃が突き刺さったその投擲での損害は胸当てのみであり、その下の普段着兼インナーであるシャツ、及びその更に下にあるウィズの肌には切り傷などは全くない。

 せいぜいが打撲傷程度であったが、ウィズの持つ回復魔法、<ディオス>によって即座に回復されている。

 一般の冒険者が回復する場合はポーションを用いなければならないため、費用を考えて使用を見送る程度の怪我ではあったが、時間経過で回復可能なリソースである精神力を対価として使用出来る魔法を持つウィズならば気軽に回復できる。

 

 わずかな傷でも肉体のコンディションは低下する。

 回復をケチらないことは即ち生存、殲滅能力に直結するのだ。

 

 ウンウンと拘束具を投棄した理由を並べ、正当化していると、ウィズとしては珍しく床に転がっていた石を蹴飛ばしてしまう。

 

 その石が転がった先は、たくさんの犬が集まって眠っている部屋であった。

 その中心には一回り、いや二回り以上大きい犬が存在し、ウィズは今までヘルハウンドを見なかった理由を今更ながらに理解した。

 

 強化種による階層をまたいだ群れの形成。

 およそ三十体を超えるヘルハウンドの双眸がウィズを睨みつけた。




ちなみに、Wizardryのマスターレベルと呼ばれるひとつの基準であるレベル13ですが、これは原作開始時のアイズ(レベル5の上辺)あたりを想定しています。
なので、レベル2のウィズだとレベル4呪文までくらいかなと、勝手に思ってます。
超威力のラザリクなんからレベル5呪文なんでしばらくお預けですね……

あとディなんかの扱いをどうするかとかも困ったりしてます。
無いものとして登場させないか、気付け呪文(ドラクエでいうザオラル相当)にするか。
まあレベルアップまでかけたらの話なんですけど


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9話

7/20/21:12
魔法の位階が間違っていたので修正するついでにほかの部分も加筆修正。
だいたい400字くらいの追加なんで読み返さなくてもいいかもです
暑すぎて2時間未満の睡眠しか取れなかったので朝早くの投稿です
執筆してる途中に前書きにはアレかいて後書きにはアレを書こうとか思ってるんですが、だいたい忘れてしまっています。

ちなみに、前話の書き忘れは自分に刀に関する知識はないので全てでっち上げの適当理論であるということです。

今回忘れなかった前書きに書こうとしていたことは、ちょっと無双しすぎた感じがあるなってことですね


「ウィズ居ないなー」

 

 呟きながら、レベル5冒険者であるティオナは十三層を散策していた。

 朝起きればウィズの部屋。昨晩ウィズと同衾したことを思い出し、戦闘スタイルに見合わず乙女な彼女は赤面したりと百面相であったが、気を取り直してせっかくの休養日なのだからとウィズと親睦を深めるためにホームを探し回った。

 

 が、ウィズよりも起きるのが遅かったこともありウィズは既にホームを出ていたことを知る。

 オラリオは広い。宛もなく探し回るのならば広いとはいえ探索範囲が限られるダンジョンを探す方が可能性はある。

 ましては捜索対象は戦姫とも呼ばれるアイズの世界記録を一週間という短い時間だが更新した実績を持つ生粋の戦闘狂であるウィズだ。

 昨晩のウィズとの会話の内容――中層のモンスターの実地的な情報――を考えれば活動場所はさらに限定される。

 十三層程度ならばティオナは散歩感覚で探索できることもあり、とても気軽な感じでここへやって来ていた。

 

「もしかしてもう一個下に降りたのかな?」

 

 今日の十三層はやけにモンスターが少ない。

 いつもなら火を吹いてきて面倒臭い犬はおらず、アルミラージもほとんど見かけない。

 もしかしてウィズが全部倒しちゃった?

 などと思い始めた頃、ティオナの傍に下層へと続く縦穴から熱気が舞い上がった。

 

「暑っ! ちょっとヘルハウンドにしては熱量がありすぎるかな?」

 

 強化種だったら危ないよね、とティオナは中層を適正な狩場とする冒険者たちの為に一肌脱ぐことにした。

 

 縦穴から下層へと飛び降りると、通路を何本か挟んだ向こう側の大部屋で熱量を伴った赤い光が渦をまいていた。

 本格的に強化種案件かも、と気を引き締めたティオナはそちらへ足を運んだ。

 

◆◇◆

 

 そこで行われていたのはダンジョンの常識から外れたものだった。

 通常、ダンジョンの中ではモンスター同士が争うことは無い。

 例外として魔石の味を覚えた強化種が魔石を狙ってモンスターを攻撃するということはあるが、その程度である。

 しかし、十四層の中央にある大部屋ではヘルハウンドとアルミラージの戦争が行われていた。

 その数は合計で五十はくだらないだろう。

 怪物の宴(モンスターパーティ)すら可愛く思えるほどの数だ。

 その戦争の中、ティオナはウィズの姿を見た気がした。

 

 さすがに気の所為だよね? と自らの目を疑うが、目を擦ってもその姿は消えることがない。

 この数はレベル5の冒険者であるティオナをしてさすがに恐怖が先行する数である。

 いくらステイタスによって肉体が強化されていようと、その質量は変わらない。

 腕の数も、足の数も変わらないのだから、これほどの数に押し寄せられれば圧死は免れない。

 さながら数十匹のミツバチにのしかかられ、殺されるスズメバチのような状態になってしまう。

 しかし、ティオナの前で戦いを繰り広げるウィズは自身に飛びかかり、組み伏せようとしてくるヘルハウンドやアルミラージを空中でたたき落とし、足場にし、モンスターとその死体がひしめき合い足場も覚束無いそこで舞うように戦っていた。

 

 と、跳躍したウィズに向けて明らかに体のサイズがでかいヘルハウンドが炎を吐き出した。

 空中で炎に呑まれるウィズ。

 はて、彼は火精霊の護布(サラマンダー・ウール)を着用していただろうか。

 直前までの記憶が確かならば、ウィズの衣装は昨晩酒場で見たそれと同じだったはずだ。

 ウィズの部屋にあった胸当てすら装備しておらず、完全な無防備状態。

 

「ウィズ!」

 

 叫んで、ティオナは大剣を投擲する。

 本格的な狩りをするつもりもなかったために今日の得物は重くて頑丈なだけが取り柄の標準的なものだ。

 しかし、その大剣は達人がナイフを投げるが如く進行方向に刃先を固定したまま飛んでゆく。

 

 ヘルハウンド強化種を守るように自身の身を捧げた複数体のヘルハウンドによってヘルハウンド強化種へと大剣は届かなかったが、確実にヘルハウンド強化種の意識を誘導することに成功し、ヘルハウンド強化種は火炎放射を終了してティオナを睨みつけた。

 

 対して、アルミラージたちは複数体のヘルハウンドが倒れた今を好機と見たのかアルミラージ強化種を中心としてヘルハウンドの数を減らしている。

 三つ巴の戦争は混沌を極めていた。

 

 ティオナは出来るだけ早くウィズを回収するために部屋に踏みいろうとしていたが、モンスターの数が多くウィズの落下地点までルートを見いだせずにいた。

 突撃することは可能だが得物を投擲しリーチが短くなった今、複数体に囲まれれば勢いが削がれ、そのままタコ殴りだ。

 生きていれば回復が可能であるエリクサーであっても死んでしまえばそれまでだ。

 故に炎に呑まれたウィズは素早く回収しなければならない。

 

 そして、部屋の入口でまごついていることを嫌ったティオナは、突貫を選択した。

 ベート程洗練されてはいないが、無手の戦闘も可能であるティオナは鎧袖一触にヘルハウンドや時折交じるアルミラージを倒してゆく。

 しかし、素手の攻撃では魔石を破壊するには至らず、モンスターたちは絶命させてもなお死体としてティオナの行く手は遮る仕事を全うする。

 進退窮まる状況につい熱くなり、さらに一歩踏み込んだティオナを待ち受けていたのは巨大な肉体を活かしたヘルハウンド強化種の体当たりだった。

 死体が散乱する床は硬いのか柔らかいのかすらわからず、起伏に規則性すらない。

 レベル2冒険者が無防備にヘルハウンドの、それも強化種の炎を受けた場合のタイムリミットなどティオナは知らないが、それがとても短いものであるという現実的な思考。

 足場の悪さに加え、視野が狭まっていたティオナにとってヘルハウンド強化種の体当たりは不意打ちだった。

 通常のヘルハウンド(子牛サイズ)に倍するヘルハウンド強化種の体重で行われた体当たりを防御姿勢を取ることすらできずにティオナはくらってしまう。

 レベル5冒険者とはいえ十代の少女であり、ヘルハウンド強化種と比べればないも同然のティオナは吹き飛ばされ、壁に激突する。

 頑丈な体故にダメージこそないが、内臓や脳が揺れることは防げず、それによって受身を取ることができなかったティオナは力なく床に崩れ落ちる。

 そこを複数体のヘルハウンドに囲まれたティオナは散歩だからと気を抜いてサラマンダーウールを持ってこなかったことを心底後悔した。

 

 しかし、吹き付けられるのは強烈な熱量ではなくむしろ逆。

 何度もヘルハウンドが火を吹いたために上昇していた気温すらリセットする強烈な冷気がヘルハウンドたちを一瞬で凍結させ、絶命させた。

 一瞬何が起こったのかわからなかったティオナが都合よくリヴェリアが助けに来てくれたのかとすら錯覚する範囲魔法であった。

 しかし、よく考えてみれば威力はリヴェリアのそれに大きく劣るし、遠征の収支計算を行っているリヴェリアがここにいるわけが無いのだ。

 

「<リトフェイト>。自分の戦いなんで引っ込んでてください。<ディアル>」

 

 ティオナに何らかの魔法をかけて話しかけたのは炎に呑まれたはずのウィズだった。

 ウィズはシャツの腕部こそ消失させているが、それ以外の部位は僅かに煤が着いた程度であり、髪の先端が少々燃えた程度の負傷であった。

 それでも炎に呑まれたために若干の酸欠状態にあるようだが、脳震盪によって立ち上がることすら出来ないティオナと比べれば随分軽症である。

 

 ウィズがティオナの腕を掴んで部屋の出口へと放り投げると、ティオナはふわふわと重力を感じさせない動きで出口へと飛んでゆき、しっかりと両足で着地した。

 唱えられたふたつの魔法のうち、どちらかが重力を緩和する魔法、もう一方が回復魔法だったのだろう。

 直接的な傷以外には効果の薄い回復魔法だが、脳震盪などにも全くの無意味というわけでもなかったらしい。

 

◆◇◆

 

 ふう。とウィズは一息ついた。

 炎に呑まれたウィズは両腕に酷い火傷を負った。

 ティオナの援護がなければ何をする前にヘルハウンドに群がられて死んでいただろう。

 どうやらウィズの服は尻尾を隠すという目的のために防刃、防熱に優れた素材でできているらしく、ヘルハウンド程度の熱量では燃やすことが出来ないらしい。 

 尻尾を隠すという役割からすれば腕の部分は蛇足であるため、そこだけ通常の布地だったのだろう。とウィズは考えた。

 

 この服は初期からウィズの事情を知る四人からウィズに贈られたもので、デザイン、色が異なる同一素材、規格の服が複数枚ウィズのタンスには仕舞われている。

 むしろこれしかないのだからウィズのお洒落への関心の低さが見て取れるだろう。

 そもそも尻尾を無理なく隠せる大きなサイズの服自体少ないので仕方ないのかもしれないが。

 

 閑話休題。

 

 炎に呑まれたウィズは、腕の火傷を癒すために使用できる中で最高位の回復魔法である<ディアル>を使っていた。第三位階の回復魔法だ。

 

 

 レベルアップ直後こそ――と言っても昨日のことだが――第四位階の魔法は2グループあるものを1回ずつしか使えなかったウィズだが、ステイタスの更新によって今のウィズはグループにつき3回まで唱えられるようになっていた。

 既にカートリッジとして精神力が組み上げられているため、大技も反動無しで使える。だからこそ、ウィズは何を考えることもなく魔法を放った。

 

「<ダルト>!」

 

 ウィズの唱えた魔法名に呼応するように再び世界に冷気が吹き荒れる。

 ティオナを囲んでいたヘルハウンドを凍結させた魔法であり、第四位階の魔法である。

 ウィズが使える第四位階の炎と氷の攻撃魔法のうち、こちらは氷の魔法だ。

 

 冷気は部屋を巡り数体のヘルハウンド、アルミラージを絶命させ、そして床の大部分を占有していたヘルハウンドとアルミラージの死体を消滅させた。 

 魔石の回収は不可能となるが、戦闘区域の整備はそれよりも優先されるものだ。

 

 ちなみに、攻撃魔法が多くあるグループAの第四位階魔法は今回のダルトで弾切れである。 

 使用した二発のダルトと、ティオナにかけた浮遊の魔法、リトフェイトによってカートリッジを使い切ったからだ。

 

 強烈な魔法によって今まで二種族の戦闘に紛れる邪魔者という認識でしか無かった二体の強化種からのウィズへの認識が、優先撃破の対象へと変化した。

 彼らは群れへ号令をかけると、先陣を切って突撃する。

 

「<ディルト><カンティオス><マモーリス><ソピック><ポンチ>」

 

 ウィズの連続詠唱は無効化(レジスト)する者も多く存在したが、それぞれ視界を塞ぎ、混乱させ、恐怖させた。

 それによって群れの統率はメチャクチャとなり、その隙にウィズは自身の存在感を薄める魔法と敏捷にブーストをかける魔法を使ってその場を離脱する。

 強化種である二体にはいずれの魔法も無効化されていたが、ウィズはひとまずアルミラージの強化種の脇をすり抜け、アルミラージの群れの最後尾へと着く。

 混乱している群れはウィズを認識できず、まさに烏合の衆である。

 

 対して、ヘルハウンドの強化種はアルミラージの群れを無視してウィズへと炎を放射した。

 一時的に協力関係となった二種族ではあるが、そもそもが敵対関係。 

 本能に忠実なモンスターであるヘルハウンド強化種は一切の躊躇がなかった。

 そして、混乱したヘルハウンドの群れもリーダーに追随するようにアルミラージの群れへと炎を放射する。

 

 たった数十秒で群れを失ったアルミラージの強化種が激昂してヘルハウンド強化種へと攻撃を始めたのを見てウィズは安堵の息を吐いた。

 

「でかいのが戦ってるうちに小さいのの数を減らしておこう」

 

 ウィズは炎を浴びた時に落とした刀を回収してから目立たぬように斬撃による一撃必殺によるヘルハウンドの間引きを始めた。




アルミラージの群れが簡単にやられていましたが、それまでの戦闘では互角の戦いを繰り広げていました。
簡単にやられた理由は密集していて、かつ素早い動きを活かすことが出来ない状況(数々のバッドステータスによる足止め)があったからですね

あとミツバチによるスズメバチ殺害方法は圧殺と言うよりは体温で焼き殺している感じらしいです

ティオナが簡単にやられてる気もしますが気を抜いていたのと視野が狭くなってたからとかそんな感じで
レベル5冒険者が知り合いの危機程度で簡単に視野狭窄を起こすわけがない?
展開の犠牲になったのだ……


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10話

前話でディアル(回復魔法)が第四位階とされていたのを第三位階に修正しました。
書き始める前に某所から貰ってきたメモにもはっきりと第三位階と書かれてるのに何故間違えたのか……

その修正のついでに、400字程度加筆しました。

以下200字程度での加筆の要約

ティオナが視野狭窄になってたのはティオナを戦闘に参加させないためのご都合主義ではあるものの、ご都合主義だから!で押し通すのではなく多少無理のある理由でもしっかり書いといた方がマシ。という考えでそこら辺をちょこっと加筆。

ちなみに、ティオナ70キロとした場合でもヘルハウンド強化種(子牛サイズのヘルハウンドの二回り以上でかい)の体重はティオナの7-8倍程度はあるので、その体当たりで吹き飛ばされるということについては普通であると考えているのでそっちは修正していません。
普通はしっかりと防御体勢をとるか、そもそも回避するべき攻撃ですので、無防備にくらったティオナには吹き飛ばされてもらいました。


 ヘルハウンド強化種が自身の群れの崩壊に気づいたのは群れのメンバーが自身と共にアルミラージ強化種と戦っていたヘルハウンドの首が宙を舞ってからだった。

 

 アルミラージの群れを焼き払い、その強化種との戦闘が始まった時、ウィズの魔法でバッドステータスが発生しているものも含めて十五匹程のヘルハウンドがおり、そのうち即座に戦闘できるのは三匹ほどだった。

 強化種とその三匹で俊敏に動くアルミラージ強化種を捉えようと攻撃を行っていたが、なかなか命中させることが出来ず、暫くすると通常のヘルハウンドは倒されてしまい、タイマンの戦闘へと移行していた。

 ただし、そのタイマン状態は長くは続かなかった。

 ウィズの使用した魔法の効果から脱したヘルハウンドが戦闘に復帰したからだ。

 最初は三匹増え、一匹がアルミラージ強化種に倒される時にはさらに復帰したメンバーが追加され五匹に、それからは波状攻撃によってアルミラージの攻撃の出鼻をくじき、あとはさらに復帰してきた同朋を加えて物量で押し潰してしまえばいい。

 ヘルハウンド強化種はそのように戦闘――否、狩りを進行させていたが、いつまで経っても追加のメンバーが来ない。

 まだなのか、と戦闘に参加できていなかったものたちが居た方向を向けばそこには何もおらず、そして気がつけば自分から最も離れたところにいたヘルハウンドの首が宙を舞っていた。

 下手人はアルミラージではなく、ヒトガタのナニカ。

 自らの住処へと侵入し、殺されてきたニンゲンとは異なる存在だった。

 

 何度も邪魔しやがって。と、怒りに身を任せて全力で火を放ったヘルハウンド強化種に対し、ヒトガタ――ウィズはそれを待っていたとばかりにニヤリと笑って呟いた。

 

「<バリコ>」

 

 突如として突風が吹き荒れ、ヘルハウンド強化種の吐き出した炎と衝突する。

 風は炎を押し返すことは出来ず、むしろ酸素を供給された炎はさらに強化される。

 

「おっと、一発じゃ足りないか。<バリコ>――もう一発追加<バリコ>」

 

 炎をさらに大きくしながらも、ウィズの放った風は炎を押し返し、そして()()()()()()()()()へと直撃させた。

 

 ヘルハウンド強化種が放っただけの炎ならば、大怪我とはなるだろうが即死はしなかっただろうアルミラージ強化種だが、ウィズの手によって異常に強化されたそれには耐えることが出来ず、肉体は溶け、魔石は消失した。

 

◆◇◆

 

「よし」

 

 アルミラージ強化種を無事に倒すことが出来たことにウィズは喜んだ。

 

 アルミラージ強化種とヘルハウンド強化種。どちらが強いかといえばどちらも強いが、タイマン戦闘に於いてはアルミラージ強化種の方が確実に強い。

 

 それは、アルミラージ強化種の強さは一芸に依らない純粋な肉体性能の高さに由来するものだからだ。

 さらに二足歩行であるため、人間のように前後左右に自在に動くことも可能であり、正面からタイマン戦闘で倒すのは無理だとウィズは判断していた。

 

 対して、ヘルハウンド強化種は炎こそ強烈だが、所詮は四足歩行生物。

 持続的な速度を出せるのは正面方向にのみ。

 左右へはサイドステップしかできず、後方への移動は下手だ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()ウィズならば、側面背面を維持することで炎の攻撃を封殺することが出来る。

 となれば、群れを失った今のヘルハウンド強化種は、体がデカくて皮膚が硬かったりするだけのヘルハウンドと変わらない。

 

 故に、ウィズによる撃破順位はアルミラージ強化種>ヘルハウンド強化種であり、そしてアルミラージ強化種を自力で倒すことが出来ないのならばヘルハウンド強化種の力を利用してやればいいと考えたウィズは()()()()()()()()()を用いて風を発生させ、アルミラージ強化種をやき尽くした。

 

 さて、先程攻撃魔法が多いグループの第四位階魔法を使い尽くしてしまったウィズが何故第四位階の攻撃魔法を使えたのか。

 それは、回復、補助魔法が多いグループの第四位階にも攻撃魔法があったからである。

 それが、先程ウィズの使ったバリコ――剃刀のように鋭い風を発生させる魔法だ。

 ちなみに、第四位階には第一位階の傷を開く魔法、バディオスの上位であり、第三位階の回復魔法、ディアルで塞げる程度の傷を開くバディアルという攻撃魔法もあったりする。

 

 閑話休題。

 

 アルミラージ強化種強化種を倒し、二種族の通常種が居ない今、ウィズとヘルハウンド強化種はタイマン状態である。

 そして、前述の通りウィズはヘルハウンド強化種を完封することが出来る。

 故に、ウィズは時間こそかかったものの無傷でヘルハウンド強化種を倒した。と、経過を省いて結果だけを残すことにする。

 

◆◇◆

 

「さっきは助かりました。アレ(大剣の投擲)がなければ回復するまもなく死んでいました」

 

 ヘルハウンド強化種を倒したウィズは、未だ部屋の入口に立っていたティオナに礼を言った。

 ついでにティオナが投げてくれた大剣を拾って返却まで済ませた。

 

「それでは自分は下に行きますので」

 

 ウィズはこの部屋に集まっていたのがコノフロアのほぼ全てのモンスターだということを知っている。

 それを倒した今、このフロアにいるかもしれないのは下層からやって来ているかもしれないモンスターのみだ。

 それならばさっさと下に降りる方が賢いだろう。というのがウィズの判断である。

 

「ちょ、ここまでの戦闘をしたんだし普通は帰らない? 精神力(マインド)だって沢山使ったでしょ?」

 

 踵を返して下層への階段へ歩いていったウィズをティオナは呼び止めた。

 冒険者の常識から言ってウィズの行動は異常である。あれほどの魔法を何度も使い、数十匹のモンスターを倒し、強化種二体を倒したのだから、普通の冒険者ならば地上に戻る。

 戦闘の途中に大部分の魔石は失われてしまったが、稼ぎだってヘルハウンド強化種の魔石だけで十二分である。

 消耗があり、稼ぎだって足りているのならば、それ以上ダンジョンにいる理由はない。ましてやさらにしたに潜るなんて言うのは異常である。

 

「確かに精神力(マインド)はかなり使いましたが……自分の魔法は変なんでまだまだ使えますよ」

 

 ウィズは第四位階のカートリッジこそ使い果たしたが、第三位階以下のカートリッジはおよそ半分ほど残っている。

 これだけあれば強化種などのイレギュラーがなければ余裕で探索が可能であろう。

 ついでに言えば、やろうと思えばダンジョンの壁を破壊して二十分弱ほど休憩すれば精神力を吸い上げてカートリッジは全回復するのだ。

 その場合既に消耗している精神力からカートリッジ回復分の精神力が減るため、残る精神力は三割ほどになってしまうため、もう一度先程までと同じような戦闘を行うことは不可能であるが。

 

「それでも普通は帰るよ。防具だってなくなってるし、危険だもん。下に行くって言うなら流石にファミリアの仲間として見逃せないかな」

 

 ティオナの言うことは一般常識からして正論である。防具がないのはティオナも同じではあるが、それは初めから装備していないだけ。防具があったのにそれがなくなったのならば、モンスターを避けての帰還が普通である。

 その防具が、ウィズが普段から要らないなと実感していたものであると知らないティオナは、ウィズからすればやや的外れである理由で帰還を促す。

 

「分かりました。それでは帰りましょうか」

 

 ウィズは、素直に頷いて帰還することにした。

 その理由は、ティオナが完全に善意から言葉を発しているというのもあるが、仮に強行した場合、実力行使で帰還させられる可能性があったからである。

 高レベル冒険者であるティオナとの手合わせができると考えれば悪くない選択肢かもしれなかったが、その後、フィンらからダンジョン探索の自重を求められたり、説教をされる可能性があることを踏まえれば帰還に頷く方が利口であったのだ。




日付が変わったあとくらいに第四位階までのウィズが使える魔法をまとめて投稿しておきます。
こちらは使える魔法が増えたら加筆していく感じになるんですかね。

以下前話を含めて戦闘でウィズの使った魔法

<ディルト>
魔法使い系第二位階
敵の眼前に暗闇を生成する。いうほど視界を制限できていない。
<ソピック>
魔法使い系第二位階
自分の存在感を薄れさせる
<ポンチ>
自分の敏捷をブースト
<カンティオス>
魔法使い系第三位階
敵を混乱させる
<マモーリス>
魔法使い系第三位階
敵を恐怖させる
<リトフェイト>
魔法使い系第四位階
浮遊させる。所謂レビテト。飛行魔法ではない
<ダルト>
魔法使い系第四位階
氷の攻撃魔法
<ディアル>
僧侶系第三位階
ディオス(第一位階)よりたくさん回復する
<バリコ>
鋭い風で敵を切り裂く。ソニックブームとか鎌鼬系ではなく今回みたいに何かを押し返すことも可能


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現時点でウィズが使える魔法一覧

なお、元としたWizardryシリーズのそれとは効果が違っていたりする可能性もあります。
企業が出しているWizardryの小説は読んだことがないのでそちらで採用されている表現と違う可能性もあります。

物語の進行によって加筆。
加筆したあとに第一話の前に移動します。
つまり暫くはここに置いておきます

日付変更前に1話更新済み

あと世界樹4が届いたので更新頻度が落ちる
かも知れません


魔法使い系

 

1LV

デュマピック DUMAPIC

東西南北がわかる

 

カティノ KATINO

眠りを誘う空気を放射して吸ったものを数秒間のあいだ意識を朦朧とさせる

 

ハリト HALITO

クリーンヒットすればオークをワンパンできる程度の火球による単体攻撃

 

モグレフ MOGREF

耐久にブースト

 

ボラツ BOLATU

敵1体を石のように硬直させる

バッドバットには確定、オークには抵抗されたことから生命力かなんかで抵抗されているかもしれない

 

2LV

ディルト DILTO

暗闇を発生させる。

ウィズが自分にかけて検証した結果、ウザイくて薄暗くなってるけどそれほど視界を塞げてる訳では無い

 

ソピック SOPIC

自分の存在感を薄くする

 

メリト MELITO

ハリトと同じ威力で範囲攻撃

 

デスト DESTO

開錠

ウィズは効果を把握していない

 

ポンチ PONTI

敏捷をブースト

 

モーリス MORLIS

小範囲の敵に恐怖を与える

 

3LV

ディアフィック DIAFIC

探しものを見つけやすくするバフ

ウィズは注意力が上がると考えている

 

マハリト MAHALITO

炎の高威力の範囲攻撃

 

コルツ CORTU

魔法に対する防御力向上。

重ねがけ有効だがそもそも魔法を使ってくるモンスターをウィズはしらない

 

CONFUSION カンティオス KANTIOS

敵を混乱させる。

 

モリト MOLITO

マハリトなどよりも広範囲を雷で攻撃

オークなどの巨大ではないものに対しての威力はそこそこだが、広範囲に散らばる攻撃を全て命中させられるような状況ならそれ以上の火力にも

 

マモーリス MAMORLIS

広範囲の敵に恐怖を与える。

 

4LV

ツザリク TZALIK

雷で超威力の単体攻撃。

 

ラハリト LAHALITO

モリトの倍くらいの威力で炎の範囲攻撃。範囲はメリトやラハリトと同等でモリト以下

 

リトフェイト LITOFEIT

浮遊魔法。飛行魔法手間はないので飛べない。足音を軽減する。

 

ロクド ROKDO

敵複数体を石のように硬直させる

オークでも何十体に一体程度しか抵抗できてなかったので範囲以外もボラツから強くなってる

 

ダルト DALTO

氷で範囲攻撃。属性的にラハリトの方が破壊的ではあるが、だいたい似たような威力

 

バスカイアー VASKYRE

虹色の光を投射して複数のバッドステータスを併発させる

 

 

◆◇◆

◇◆◇

◆◇◆

 

僧侶系

 

1LV

ディオス DIOS

ディアンケヒトファミヒアの一番安いポーションくらい回復。便利

 

バディオス BADIOS

ディオスで塞げるくらいの傷を開く

 

ミルワ MILWA

照明を作る。モンスターからの被発見率が上がる

 

ポーフィック PORFIC

魔法で盾を作り出して防御する。

自分が移動しても一定時間経過か破壊まで追従する

 

カルキ KALKI

一定時間防具を強化

味方全員に有効だがウィズは気づいていない

 

2LV

カルフォ CALFO

1センチ前後の完全に固定されているものを透視できる。服の下は覗けない(重要)

 

カツ KATU

敵を魅了する魔法だがウィズはカティノと似たものだと思っている。

 

モンティノ MONTINO

敵の発する音を無効化する。強制停止(リストレイト)を防げそうではあるが戦闘の判断に使える呼吸の音なんかも聞こえなくなるので注意

 

カンディ KANDI

知人のいる方角がわかる

 

マツ MATU

透明な膜を作り出して攻撃を肩代わりさせる。

強度はポーフィック以下ではあるが、味方全員に有効。もちろん気づいてない。

 

3LV

ラテュマピック/ラツマピック LATUMAPIC

対象と自身の記憶の中のものを比べ合わせて対象が何なのかを判断する。

普通にやるより効率的で正確

 

ディアルコ DIALKO

バッドステータスを回復

 

バマツ BAMATU

透明な壁を作り出して攻撃を肩代わりさせる。強度はポーフィック以下だが味方全員に以下略

 

ロミルワ LOMILWA

ミルワより強く、持続する光。

 

フィスノイト FISNOIT

魔法の効き目をあげる。

オークとボラツで検証したところ体感重ねがけ有効

 

ディアル DIAL

ディオスよりたくさん回復する。多分ハイポーションよりは回復量が低い

 

4LV

バディアル BADIAL

ディアルで塞げる程度の傷を開く

 

ラテュモフィス LATUMOFIS

解毒魔法。色々な毒を回復できるが効果の高いものには無効

 

マポーフィック MAPORFIC

盾を作る。かなりの長時間持続するが、ポーフィックより強度が低い。味方全員に以下略

 

バリコ BARIKO

鋭い風で攻撃

かまいたちのようなものでは無いため、何かを押し返すことも可能。殺傷能力はモリトくらい。

 

ハカニド HAKANIDO

対象の精神力(マインド)を直接削る。



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12話

ラスダンっぽいところまで進んだので休憩がてらに
今回は進行と言うより帰路の会話を抜粋した感じになっています。

あとちょっと前までの書き方より下手になってる気がしますがそれは進めてたwizシナリオの語り口に影響されてたからですかね


「ねね、たくさん魔法を使ってたみたいだけどあれってなんなの?」

 

 帰路の途中、ティオナは先の戦闘について色々と尋ねてきた。

 ヘルハウンド強化種はレベル3クラスのモンスターでこそないが、それでもレベル2終盤クラスのそれである。

 それに加えてアルミラージ強化種と、両者の群れを相手に勝てた()()()()()()()()()()()()()()()()ウィズが気になるのは仕方の無いことである。

 

「自分の魔法には攻撃魔法が多いグループと回復魔法が多いグループがあるんですよ。その分魔法スロット一つで複数個使えるみたいです」

 

 帰路は急ぐものでは無い。

 ティオナがいる今、上層のモンスターは殆ど寄ってこないため、実質的には洞窟を散歩しているような気分である。

 そして、モンスターを全スルーしたとしても普通に歩いて帰るのならば一時間ほどの時間がかかるため、豊饒の女主人の時とは違い、完全な二人きりの今、それだけの時間を完全に無口で過ごすにはウィズの対人性能は些か低すぎた。

 

 そのため、ウィズは聞かれたことに対して曖昧に返事をするようになっていた。

 

「そうなんだ。もしグループに名前が無いなら魔法使いグループと僧侶グループって名前をつけたらどう?」

 

「僧侶? 自分はそのようなものとは縁がないと思いますが」

 

「英雄譚にあるんだよ。敵の大軍を殲滅して英雄と魔王の一騎打ちの舞台を整えて、魔王の弱体化までしてしまう魔法使いと、英雄の傷を癒して英雄を強くする魔法を使う僧侶が出てくるやつ」

 

 ティオナが言うには、神々が地上に降りてくるよりも前からある物語のようだ。

 登場人物は英雄、魔法使い、僧侶、そしてロクデナシの遊び人。

 英雄が打ち倒すのは二つの足で直立する巨大な竜だという。

 

 大昔でも竜、ドラゴンというのは英雄とはセットで対極なのだなとウィズは思いながらも、ティオナの語りを聞いている。

 こうして喋らせておけば自ら口を開く必要がなくなるため、ウィズは安心して聞きに徹することが出来た。

 

「それでね、今まで遊び呆けていた彼だけど魔法使いと僧侶が敵の手に落ちた時に英雄には内緒で二人から教わってた二つのグループの魔法を使って英雄と一緒に二人を助け出したの!」

 

 魔法の強さや使える数こそ二人には劣るものの、一人でふたつの魔法を使えるという便利さから遊び人――改め、賢者は魔王討伐にも貢献したという。

 

 このことからウィズは人を見る際に自分の視点以外で見るということを学んだ。

 所詮物語と笑うなかれ。英雄譚とは過去から受け継がれる教育の祖だ。

 一見遊び人にしか見えなくても裏で勤勉に学んでいるかもしれない。

 そういう教えを説くためのものなのだろう。

 もしくは、人生に失敗して先を見ることが出来なくなった者には遊び人でも魔王討伐に貢献出来た、つまり、失敗してしまったとはいえ真面目にやって来たあなたならばもっと簡単に逆転できる。

 そういう説得材料になる物語なのかもしれない。

 

 真実は千年以上前に置き去りにしてしまったため今の夜で知るものは居ないだろうが、ウィズはそうやって納得した。

 

 もし、この英雄譚の正体が遊び人の賢者タイムと掛けたシモネタ全開の官能小説から要素を抜き出したのものであったとしても、それを知らぬならそうでないのと同義なのだから。

 

◇◆◇

 

「いや、自分の魔法はそんなに便利じゃないですよ。攻撃魔法ならともかくモンスターを弱体化させるのは成功したり失敗したりですからね」

 

 だから魔法の成功を前提に組みたてた集団戦では上手く立ち回れないでしょう。と、ウィズは言った。

 

 先の戦闘を見たティオナが、ウィズがレベルアップして遠征に参加できるようになった時のことを夢想して呟いた、手札の多さから一軍入りもあるかもね。という言葉に対しての返答だった。

 

 ウィズの扱う敵を弱体化する魔法は、中層(同格)のモンスターどころか上層(格下)のモンスターにすら抵抗(レジスト)される可能性があるのだ。

 やや格上といったところだろう強化種たちには一切効果を発揮していなかったことから、今のウィズでは下層からの格上には基本的に効果がないと考えていた。

 

 そうなれば残るは一般的なそれと同等の近接戦闘能力がある速攻魔法使いというそこまで希少性もない平凡な冒険者の出来上がりだ。

 

 さらに付け加えるならば、ウィズは集団戦闘の経験値が圧倒的に不足している。

 遠征における集団戦闘は、通常の探索でのパーティでの戦闘を発展させたものだ。

 ロキファミリアでは安全性の確保とともに遠征に参加できるようになった時にある程度の下地が出来上がっているようにとパーティでの行動を推奨していたが、ウィズは最初の数週間でパーティが全滅してからは完全にソロ行動だ。

 全ての冒険者よりも集団戦の経験値は不足しているのでないだろうか。

 

「そっかあ。カースじゃないと抵抗される確率も高いんだね」

 

「それに、自分の魔法は長くても一分前後で効果を失いますから」

 

 敵全員に弱体化を施すまで連続で魔法を使う、というのも最初に弱体化したモンスターの魔法効果が解けてしまって無理だという。

 ソロならば自分が使う魔法は分かるし、複数体の敵のうち一体だけでも弱体化に成功すればそのモンスターへ割く思考のリソースを削減できるが、集団戦闘ともなると敵の状態が理解できない仲間たちは弱体化に成功していても思考のリソースを割き続けなければならないため効果が薄い。

 そういう訳であった。

 

 ならば攻撃魔法の手札の数ならばとなれば、先程から何度かティオナの口から名前がとび出たレフィーヤという少女が圧倒的のようだ。

 レベル3ながら、レベル6であるリヴェリアと同じ魔法が使えるという。

 ウィズはその魔法を見たことは無いが、強力だということは何となくわかった。

 仮にウィズがレベルアップしたとしてもレフィーヤには敵わないだろう。と、ウィズは思った。

 

 ソロならばともかく、集団戦には向かないと自分を評価したウィズは、ステイタスが自身の経験と思いから発現するものならば、自分のそれはどのようなものなのかと考え――そしてすぐに考えるのをやめた。

 

◇◆◇

 

「ヘルハウンドに燃やされてから急に強くなった気がするけどあれってなんなの?」

 

 正確にはティオナが倒れてから、なのだが、全く関係ないためにウィズは指摘しなかった。

 

「精神力を肉体に回しただけですよ。それまでは強化種に意識されないようにと、消耗を少なくするために精神力による肉体強化をしてなかっただけです」

 

 さも当たり前のようにウィズは言うが、ティオナは精神力のみで肉体を強化する技法など知らなかった。

 魔法の効果による肉体強化をそのような表現としたのか、とティオナはウィズに聞いてみるが、ステイタスをブーストさせる魔法を持っているが、それとは別口だとウィズは言う。

 

 魔力のステイタスが全く成長していない自分だけが知らないのかとすらティオナは錯覚したが、不得手とはいえ魔法を使え、魔力ステイタスが成長している姉からもそのような話は聞いたことがないことを思い出した。

 ウィズを迫害していた地域の常識だったのだろうか。

 だが、世界中の技術が集まると言っても過言ではないオラリオにあってもそのようなことは聞いたことがなかった。

 ティオナは魔力が一切成長していないとはいえ、レベルアップの際に器が大きくなることによって最低限の魔力は得ているはずだ。

 その最大量はレベル2のウィズを上回っているだろうほどだ。

 だから、とダメ元で精神力による肉体強化について詳しく聞いてみた。

 

「いいですよ。秘匿技術って訳でもないですし」

 

 ウィズは十四層でのお礼のついでだと、考えながら自身の方法論をティオナに教える。

 

「体のどこかに精神力を貯めておくプールのような霊的な器官があります。そこから精神力を汲み上げて体に流すんです。持続的な強化なら循環、瞬間的なのならそれも必要ないですね」

 

 通常、汲み上げられた精神力はそのまま魔法へと変換される。それが魔法というものの性質である。

 それが習慣になっていればなっているほど精神力を汲み上げるのは難しくなってくるが、ティオナにはそのクセがなかったため、プールを探すのに時間がかかったとはいえそれを見つけてからはそこそこ早くコトが進んだ。

 

 それを動かすことが可能となった時、まずは指先へと精神力を送ったティオナだったが――

 

「痛っ!」

 

 ――その指先が爆ぜるように赤く染まり、強化は失敗に終わった。

 幸い、勢いよく血が吹き出しただけで傷自体はそこまでではないようだった。

 

 ウィズが焦って回復魔法を何度か唱えて完治させると、ティオナは失敗するとこうなるのかと驚いた。

 戦闘中に失敗したら傷つく体内での精神力の運用など正気ではないからだ。

 

「いえ、失敗しても強化が弱まったりそもそも強化されなかったりするくらいです。そもそもオンオフを脳内のスイッチで切り替える位の感覚なんのでよっぽどの事がないと失敗しませんし」

 

 物心つく時からこれを行っていたウィズだから失敗してもその程度なのか、そもそも運用が間違っているのか、種族による差なのか、ということは分からないが、どうやらティオナには無理なようだということが分かった。

 

 ちなみに、ウィズが精神力による肉体強化を実感しだしたのはダンジョンに入るようになってからである。

 オラリオで精神疲弊などの常識を知り、そして消費量を増やすことでモンスターとの戦闘を有利に運べるほどの強化を得ることが出来たからだ。

 それまでは、ステイタスを持たない人間が敵であったため、時間経過で回復する精神力と同量以下の精神力を消費し、極小の強化を永続的に得るだけで十分だったからだ。



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