とりあえず友希那とイチャイチャしよう (リメイル)
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プロローグ「日常」

どうも皆さんお久しぶりです。リメイルと申します。
数ヶ月活動しておらず、申し訳ございません。
今回は別の作品を考えているうちに思いついた話です。
今度投稿する作品の繋ぎだと思ってください。
また、これは作者の脳内をできる限り再現したものなので、少々雑です。
皆さんの想像力で映像化してみてください。

それでは本編どうぞ。



 

 

~起床~

 

 

カーテンの隙間から射し込む太陽の光に、自然と瞼を開ける。

 

 

壁掛け時計に視線を向けると、もうすぐ7時だった。

 

 

ベッドから出ようと、体を起こそうとする。

 

 

しかし腕がまったく動かない。

 

 

少し重みを感じる。

 

 

まさかと思い、布団を剥いだ。

 

 

「すう............」

 

 

案の定、彼女が寝息を立てて眠っていた。

 

 

どうしてここに........

肩を揺さぶり起こす。

 

 

「......ん.......おはよう」

 

 

猫のように手を丸めて目元を擦る彼女。

 

 

その可愛らしい仕草にドキリとしながらも、おはよう、と返す。

 

 

湊友希那。

 

 

近所に住む同級生で、バンド、『Roselia』のボーカリスト。

 

 

そして、現在交際をしている『彼女』である。

 

 

 

 

 

 

 

~登校前~

 

 

 

朝食の片付けをしている時、なぜ隣で寝ていたのか、聞いてみた。

 

 

「貴方の寝顔を見ていたら、眠くなったから布団に入ったの」

 

 

.......だそうです。

 

 

彼女でも限度というものがあるだろう。

 

 

そうつぶやくと

 

 

「私は貴方のもの、貴方は私のものよ。別にいいじゃない」

 

 

付き合ってから数ヶ月、恋は人を変えると言うがあまりにも変わりすぎて動揺している。

 

 

友希那のお父さん......ごめんなさい。

 

 

あなたの娘をこんなふうにしてしまって......

 

 

「そんなことより、早く学校に行きましょう」

 

 

いつの間にか全ての食器を棚に戻した友希那が、カバンを持って玄関に向かう。

 

 

その背中を慌てて追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

~昼休み~

 

 

晴天に恵まれた今日、屋上はそんな美しい青空を眺める特等席になっている。

 

 

いつもここで、友希那と昼食を摂っている。

 

 

進級してからクラスが別になったため、バラバラで到着することが多い。

 

 

しかし今日は一緒に来ることが出来た。

 

 

移動中、友希那が腕に抱きついてきた。

 

 

女子特有の柔らかさを肘に感じ、友希那も意外とあるのだと思った。

 

 

そんなこと考えていると、隣の彼女が脇腹を抓ってきた。

 

 

痛い痛い!

 

 

「..........今変なことを考えてたでしょ」

 

 

...........い、いいえ、なにもやましいことなんて

 

 

「........変態」

 

 

ジト目でこちらを見つめてくる。

 

 

......ごめんなさい。

 

 

「......まあいいわ。食べましょう」

 

 

そういって弁当箱の蓋を開ける。

 

 

弁当は友希那と交互に作りあっている。

 

 

今日は友希那が担当だ。

 

 

中身は白米、玉子焼き、葉物野菜のサラダ、肉団子など。色とりどりで見映えの良いものだった。

 

 

付き合う前まで、友希那はあまり料理ができなかった。

幼なじみに教えてもらいながら、ここまで成長したのだ。

 

 

とても美味しそうだ。

 

 

友希那は箸で玉子焼きを掴み、口元に持ってきた。

 

 

「はい、あーん」

 

 

口を開いて食べる。

 

 

「.......ど......どうかしら?」

 

 

美味しいよ、と返事をする。

 

 

「そう......よかったわ」

 

 

嬉しそうに微笑む彼女は、いつまでも見ていられるほど愛らしかった。

 

 

 

 

 

 

 

~放課後~

 

 

いつもはまっすぐ家に帰るのだが、今日は用事があった。

 

 

場所はライブハウス「CiRCLE」。

 

 

Roseliaのサポートとなってから、このように通うようにしている。

と、言っても音楽素人の目線のアドバイスしかできないのだが。

 

 

「~~~~~♪」

 

 

センターで歌声を披露する友希那は、普段の彼女とはまったく違う魅力が感じられる。

 

 

彼女達Roseliaはかなり実力のある本格派バンド。

 

 

その人気の高さは計り知れない。

 

 

曲が終わり、各々体勢を自然体に戻す。

 

 

「どうだったかしら?」

 

 

友希那からの視線を受けて、以前よりも上手くなっている、と特に飾りっけのない率直な感想を述べた。

 

 

「.........貴方、いつもそう言ってるわね」

 

 

かなり微妙な表情をされた。

期待されても困る。

 

 

少し悩んだ後、思わず見惚れちゃう綺麗な歌声だったよ、と言ってみた。

 

 

すると友希那は顔を赤く染めて。

 

 

「っ!み、みんなの前でそんなこと、言わないで!」

 

 

その反応に、他の4人は口々に言った。

 

 

「ちょっと友希那~。アタシ達の前までイチャイチャしないでよ~。見せつけ?」

 

 

ニヤニヤしながらからかう幼なじみでベース担当のリサ。

 

 

「これは湊さんではなく、貴方に責任がありますね。破廉恥です!」

 

 

眉間にシワを寄せ、明らかに怒っている風紀委員でギター担当の紗夜。

 

 

「ゆ、友希那さんが!どんな魔術を使ったんですか!?」

 

 

目をキラキラ輝かせて不思議なことを言う大悪魔ことドラム担当のあこ。

 

 

「わ......私......なにも見てない.......聞いてないですよ..........」

 

 

恥ずかしそうに両手で顔を隠す生徒会長でキーボード担当の燐子。

 

 

この子達と過ごす日は、非常楽しい。

 

 

あの時自身がしたことは、間違いじゃなかったんだ。

 

 

「ちょっと!聞いてるんですか!?元はと言えば貴方が!」

 

 

紗夜の声に、はーい。聞いてます。と軽く返事をする。

 

 

なんですかその返事は!、と叫んでいる紗夜を尻目に、

未だリサにからかわれている友希那に視線を向けた。

 

 

目が会い、顔をより赤くする彼女。

 

 

しかしこちらが笑顔を向けると、

 

 

「................」

 

 

いつもの可愛らしい表情で、微笑み返してくれた。

 

 

本当に、自分は幸せものだ。

 

 

 

 

 

 

~ライブ~

 

 

 

ライブの本番。彼女たちRoseliaは楽屋で自分たちの出番を待っていた。

 

 

「あ、アタシ緊張してきたかも.......」

 

 

「落ち着いて、リサ姉!え~とえ~と、わらわは......えっと~」

 

 

ベースを抱えながら緊張に震えるリサと、それをほぐそうとして空回るあこ。

 

 

「氷川さん.........ここなんですが......」

 

 

「ええ。リハーサルでも上手くいったのだから、大丈夫よ白金さん」

 

 

楽譜を見ながら再度確認する燐子と、優しい言葉で励ます紗夜。

 

 

その様子を見ながら隣で時間を確認する友希那。

 

 

友希那は大丈夫なのか?、と声をかける。

 

 

 

「ええ。ここまで私達は練習してきたわ。あとは後悔のないライブにするだけよ」

 

 

自信に満ち溢れた表情でそう言う彼女。

 

 

「でも────」

 

 

友希那はおもむろにこちらに身を寄せる。

 

 

「ぎゅっとしてほしい」

 

 

彼女からは考えられない言動に驚きつつも、衣装が乱れないように優しく抱きしめた。

 

 

彼女の体温が伝わってくる。

 

 

数秒後、体を離し微笑んだ。

 

 

「ありがとう」

 

 

その後、スタッフが声をかけに来て、彼女達はステージ裏に向かった。

 

 

楽屋を出る直前に友希那に、いってらっしゃい、と言った。

 

 

それ以上は言わない。これが普段のやりとりだ。

 

 

彼女は振り返り、返した。

 

 

「いってきます」

 

 

 

 

 

 

飲み物の入ったコップを持ち、声をあげる。

 

 

それでは、ライブ終了と致しまして、乾杯!

 

 

「「「「「カンパーイ」!!」」!!」」

 

 

ライブは無事大成功で終わり、打ち上げにファミレスに来ていた。

 

 

各々で好きなメニューを頼み、ワイワイと会話を楽しむ。

 

 

その中で感想を述べたら、また友希那が顔を赤くして、紗夜に怒られた。

 

 

........一体何をしたと言うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

打ち上げも終盤に差し掛かった時、友希那が立ち上がり、口を開いた。

 

 

「みんな、今日も最高のライブだったわ。こんな風にできたのも、全員がここまで努力を重ねてきたからよ」

 

 

いつにも増して真剣な表情の彼女に、全員口を閉ざす。

 

 

「私には、これからのRoseliaのあるべき姿が見えてきたわ。それはついてきてくれたみんなのおかげ。だから........ありがとう」

 

 

「「「「..............」」」」

 

 

昔の彼女ならあまり口に出さない素直な感謝を聞いて、みんな頬を緩めた。

 

 

「何言ってんの友希那!当たり前じゃん!」

 

 

「私達はなぜここまで出来たと思っているんですか?」

 

 

「あこは、友希那さんのおかげで成長できました!」」

 

 

「Roseliaだから......友希那さんだから.......ここまで来れたんです」

 

 

.......だってよ。

 

 

それを聞いた友希那は、満足そうに頬を緩めた。

 

 

「そうね......私達は、これからも頂点に狂い咲いて行くわ」

 

 

そして、こう言った。

 

 

「あなた達、Roseliaに全てを賭ける覚悟はある?」

 

 

今よりさらに、燃え上がれ。

 

 

 

 

 

 

とりあえず友希那とイチャイチャしよう プロローグ [完]

 




今回はお試しの作品なので、特に続きという続きは考えていません(別のシュチュエーションは考えていますが)。
もしも好評だった場合やシュチュエーションのリクエストがあった場合、ひっそりと投稿するかもしれません。ですが、現在進めている作品を優先するので遅くなります。
ちなみにシュチュエーションの募集もしますので、twitterの方をよろしくお願いします。
それではまた別の作品、あったら次回でお会いしましょう。さようなら。


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エピソード1前編「出会い」

約8ヶ月ほど経ってしまいまして、まことに申し訳なく思っております。色々事情がございました。
さて、自らの妄想と願望を詰め込んだ話を、欠乏症の方狙いと適当なことを言っているこちらの作品ですが。
フォロワーさんからシチュエーションを頂きましたのでそれを組み込んでいこうと思います。しかしながらそれのみ、となるとかなり文字数が限られます。
そこで、せっかくなのでオリ主君と友希那の出会い(馴れ初め)を数話に分けて語らせていただこうと思います。
皆様は、いつも通りオリ主君を自分に当てはめて想像してみてください。
今回は短めとなってしまったので、それに関してはご了承ください。
それではどうぞ。


彼女と出会ったのは一年前。

 

 

ただ同じクラスで、隣の席だった。

 

 

窓際の1番後ろに彼女。その右に座る。

 

 

窓から教室に吹き込む風は、彼女の綺麗な髪を揺らした。

 

 

その光景を何度、夢に見ただろうか。

 

 

それほどに、美しく、つい見とれてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女はあまり人付き合いが得意なわけではなく、当時から注目を集めるボーカリストだったためか。

 

 

仲のいい人はほとんどおらず、教室では1人窓の外を眺めていた。

 

 

昼休み、彼女はリサに呼ばれて椅子から立ち上がる。

 

 

自然に目で追ってしまう。

 

 

その視線に気づいた彼女は、こちらに振り返り怪訝そうな表情を向けて教室を出ていった。

 

 

「お前.......湊はやめた方がいいぞ」

 

 

近くにいた親友が、やれやれと大袈裟に息を吐きながらこちらに寄ってくる。

 

 

どういう意味だ

 

 

「湊に気があるのか知らんが、お前とは住んでる世界が違う。話しかけることすら叶わないと思うぜ?」

 

 

別に気がある訳では無いが、確かに言われてみればそうだ。

 

 

圧倒的な歌唱力、しなやかなプロポーション、溢れ出す気迫、美貌。

 

 

それに比べてこちらはどうだ。

 

 

別に成績優秀な訳ではなく、ごく平均的な点数。

 

 

顔は整っていると、よく言われた。自分ではよくわかんないが。

 

 

そんなことは兎も角。

 

 

同じ人間なのに、この差はなんなのだろうか。

 

 

「まあ、そんなわけでよう。あんま関わらない方がいいぜ?っても隣の席だから厳しいか......」

 

 

彼女は自分にも、他人にも厳しい。決して妥協はせず、必ず成し遂げる。

 

 

それ故に、冷たい言葉をぶつけ、傷つけてしまうこともある。

 

 

他人とは関わらない『孤高の歌姫』。

 

 

そうなってしまったのにはきっとなにかある、そう感じていた。

 

 

隣だからこそ視線に入る、時折見せる悲しい表情。

 

 

どうにかしてあげたかった。でも自分に何が出来る?

 

 

話すこともできないのに。

 

 

しかし、きっかけは意外とすぐにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女がバンドをしていることを知った。

 

 

親友がよくライブハウスに通っており、そのことを聞いた。

 

 

今日までで何度かライブをしているらしい。

 

 

彼女のことはよく知らないが、それを聞いて嬉しくなった。

 

 

孤高なんて言われていた彼女が、バンドか........

 

 

近いうちにまたライブをするらしく、親友に誘われた。

 

 

ぜひステージ立つ彼女を、この目で見たいと思った。

 

 

そもそもライブハウス自体、行ったことがない。

 

 

音楽とは無縁なのだ。

 

 

ライブハウスの名は「CiRCLE」。

 

 

入口を抜け、中に入ると大勢の人で賑わっていた。

 

 

主に女子が多い。

 

 

開演までまだまだ時間はあるのに、もうここまでか

 

 

正直帰りたい気持ちもあるが、ここはせっかく誘ってくれた親友のためにも耐えよう。

 

 

それに、彼女の歌声も聴きたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一言で言えば『圧巻』だった。

 

 

それ以外に表現ができない。否、一言とは言ったものの、上手く表現できない。

 

 

それほど彼女達の演奏はこちらの心に衝撃を与えたのだ。

 

 

「なあっ!すっげえだろ!Roselia!」

 

 

興奮した面持ちで話しかける親友の声で、現実に引き戻される。

 

 

Roselia。

 

 

それが彼女達の名前だそうだ。

 

 

ああ........そうだな

 

 

彼女達の人気がよくわかった。

 

 

ステージの真ん中に立つ彼女の歌声が、周りの歓声をより盛り上げる。

 

 

正しく歌姫の名にふさわしかった。

 

 

『これが最後の曲です。聴いてください━━━━━━━━━』

 

 

アンコールを経て、彼女達の演奏は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

ライブがあった日の次の週。

 

 

教室内はその話で持ち切りだった。

 

 

それはまさにアイドルの如く。

 

 

クラスメイト達が友希那に話しかけては、

 

 

「そう....それはよかったわ」

 

 

と、一言で会話を切られる。

 

 

同じように話しかけようとしたが、そのめんどくさそうな表情にそんな気持ちはなくなった。

 

 

結局話しかけられないまま時間がすぎた。

 

 

 

 

 

失礼しました

 

 

日直の仕事を終わらせ、職員室から退出する。

 

 

下駄箱に足を進めると

 

 

?......あれは

 

 

床に、可愛らしい猫の刺繍が入ったハンカチが落ちていた。

 

 

拾って誰のものか確認するが、名前は書いていなかった。

 

 

近くに持ち主がいるかもしれない

 

 

そう思って立ち上がる。

 

 

「あ........」

 

 

ふと後ろから声が聞こえた。

 

 

振り向くと、そこには見覚えのある少女。

 

 

友希那だ。

 

 

彼女の視線はこちらの手元に向いていた。

 

 

どうやら彼女のもののようだ。

 

 

近づいて渡そうとしたが、なぜか少し怯えた表情をしていた。

 

 

なにかしただろうか?

 

 

とりあえず気にせず、表面を払ってハンカチを渡す。

 

 

見つかってよかったよ

 

 

そんな一言に、彼女は驚いた表情をした。

 

 

意外とコロコロ変わるんだな。

 

 

「........なにも言わないの?」

 

 

おそるおそる、といった感じか。口を開いた。

 

 

どうして?

 

 

「だって........私のイメージじゃないでしょ?ニャ........猫なんて」

 

 

確かにそう言われればそうだ。

 

 

しかし言われるまで考えてなかった。

 

 

だから。

 

 

別にいいんじゃない?

 

 

「え......」

 

 

また驚いた表情をした。

 

 

人の好きな物を、他人が兎や角言う筋合いはないと思う

 

 

「..............」

 

 

だからなにも気にする必要はないよ

 

 

そう言って笑ってみせる。

 

 

彼女の頬が少し赤くなり、その顔を隠すように下を向いた。

 

 

不安にしていたあの表情は消えていた。

 

 

そして

 

 

「...........ありがとう」

 

 

小さい声ではあったが、彼女から初めてお礼を言われた。

 

 

その姿は窓から差し込む夕日に照らされ、よりその魅力を引き出していた。

 

 

あの時のように、つい見惚れてしまった。

 

 

その視線に恥ずかしくなったのか、これから練習だから、と言って小走りに帰っていた。

 

 

彼女の背中が見えなくなるまで、そこに立っていた。

 

 

その出来事以降、友希那と2人で話す機会はなくなった。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。
今回、オリ主君の発言部分の語尾を無しにして区別させています。
時系列は2章の前の出来事と思ってください。そう考えると友希那の性格が違うのがわかるんじゃないでしょうか。
つまり、次回は2章の内容になるということです。オリ主君がどう絡んでくるのか、よく見ていてくださいませ。
また、現在私は就職活動に向けて取り組んでおります。しばらく投稿していないのは、そういうことです。落ち着いたらまた執筆時間があると思いますので、どうかよろしくお願いします。
それではまた次回お会いしましょう。読了ありがとうございました。


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エピソード1中編「亀裂」

どうも皆様、今の季節はどのようにお過ごしでしょうか。
コロナノバアアアアアアアアアカ!!!!!!
就職準備諸々が落ち着きましたので、執筆させていただきました。
さて、前回のあとがきの通り、本日はバンドストーリー2章の内容に入ります。
オリ主君がどのようにRoseliaのために、友希那のために動くのか。
それでは本編どうぞ。





あれから数ヶ月が経った。

 

 

友希那達Roseliaは、以来オファーが殺到。

 

 

こちらも委員会やバイトなど忙しくなったこともあり、なかなか会って話す機会がなくなっていた。

 

 

ライブの際はできる限りそれに参加。練習の時は差し入れを持っていく。

 

 

そうしたやり取りをしているうちに、紗夜、あこ、燐子とも仲良くなった。

 

 

それぞれバンドのことや個人的なお願いなどで連絡し合うようになった。

 

 

しかし最近は学校でのことやバイトでなかなか顔を出せない日が続いており、リサから、「SWEET MUSIC SHOWER」という大きなライブについて聞かされていたものの、断ってしまった。

 

 

そのライブが、Roseliaに大きな影響を与えるとは知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ち着きを取り戻したため、久しぶりに差し入れをしようとCiRCLEに向かう。

 

 

事前に皆には連絡を入れている。

 

 

ライブの余韻に浸る間もなく、練習を続けているだろう。

 

 

喜ぶ顔を思い浮かべながら、スタジオの扉を開けようとする。

 

 

が、

 

 

『何のために上手になればいいんですか!?』

 

 

今まで聞いたことの無い、あこの声が聞こえてきた。

 

 

『SMSで失敗したのに、反省会もやらないで!

みんなわけもわからないまま、ずっと練習してて......』

 

 

SMS......この前言っていた大きなライブのことか.....

 

 

そのライブでなにかあったのか、音楽に執着のない自分でもすぐに分かること。

 

 

『遠のいているわよ。今のあなたは』

 

 

次に聞こえたのは、冷酷な友希那の声。

 

 

それは孤高だった時の彼女以上に、冷たく、鋭い、ナイフのようだった。

 

 

『なんでですか!?あこが上手じゃないからですか?』

 

 

『そうよ。それに、こんなことで音をあげているようじゃ

先が知れてるわ。そんな甘えた様子で、このバンドにいる資格はない』

 

 

っ!ちょっと待て!

 

 

スタジオに入ろうと、ドアノブに手をかけようとする。

 

 

しかし、

 

 

『......こんなの.........こんなの、Roseliaじゃないっ!!!!』

 

 

それよりも早く、スタジオからあこが飛び出してきた。

 

 

咄嗟に横に避けたためぶつからなかったが、それどころではない。

 

 

「4人だけでも練習を続けましょう」

 

 

「どうして.......あこちゃんにそんなこと.....言うんですか......?」

 

 

燐子!?

 

 

「きっと....わたしたち......どれだけ練習したって.....

音なんか....あいません....!」

 

 

普段あまり自分を出さない燐子の訴える声。

 

 

「だって......誰も.....みんなの音、聴いてないから.......っ!」

 

 

そう言ってスタジオを飛び出す燐子。

 

 

..........

 

 

「友希那、どうしちゃったの?

この間の練習の時から、なんかヘンだよ?」

 

 

確かにヘンだ。まるで昔に戻ったよう。

 

 

「私は、Roseliaを......私達の音を取り戻したい」

 

 

取り戻したい?

 

 

「湊さん、言っていることが不明瞭すぎます。

取り戻すとは、一体どうすれば......」

 

 

昔のことは詳しくは分からない。

しかし戻ることと音に関して、本当に関係するのか。

 

 

「Roseliaに馴れ合いは必要ない。

クッキーはもう、いらない」

 

 

その言葉に、手提げ袋の中身を見る。

 

 

.......これも必要ないということか。

 

 

「ちょっと待ってよ!

そんな、どうして昔に戻っちゃったみたいなこと言うの?」

 

 

「.......そうでなければ、私達の音は取り戻せないからよ」

 

 

その声は、酷く、寂しそうに聞こえた気がした。

 

 

「私達、少し仲良くなりすぎてしまったんじゃないかしら」

 

 

スタジオから出る友希那。

 

 

その時目が合ったが、すぐに逸らされてしまった。

 

 

その表情は.........冷たかった。

 

 

友希那の背中を一瞥した後、スタジオに入る。

 

 

「あ..........聞いてたんだ......今の」

 

 

ごめん......入るタイミングがなかったからさあ

 

 

「いえ、こちらこそ申し訳ありません。こんな時に....」

 

 

紗夜もリサも、それどころではなかっただろう。

 

 

こちらを気遣ってくれた。

 

 

さっきのやり取り......この前のライブでなにかあったのが原因だろ?

 

 

「うん.......失敗しちゃってね」

 

 

SMSで、いつものように演奏していたが、何故かどんどんお客さんが居なくなってしまった。

 

 

それに悩んだ末、至ったのが『昔に戻る』こと。

 

 

最初のようにストイックで一切妥協のしないRoselia。

 

 

それに戻るという友希那の選択による結果がこれだ。

 

 

そうか......どうしてその場にいられなかったんだろうな

 

 

居たら何か変わったかもしれない。

 

 

タラレバを挙げればキリがない。

 

 

「湊さんの言っていたこと.......少しわかるような気がしました」

 

 

紗夜曰く、色々な経験によって成長し、バンドの空気がかなり良くなったRoselia。しかしそれ自体が大きな問題で、彼女達の無意識的に纏っていた張り詰めた空気が消え、いい雰囲気になった。

 

 

それだけならいいものの、そうしたことで、Roseliaのサウンドが前に比べて迫力が失ってしまった。

 

 

「昔の迫力を取り戻すためには、前みたいにならないと

いけないってこと.........?」

 

 

「.........以前の私達の戻ることが正しいとは

私には思えません。ですが.........」

 

 

元のRoseliaの音を取り戻す方法はわからない........か

 

 

「そんな.......!」

 

 

リサが驚愕した。

 

 

今まで自分がやってきたことは無意味だったのだろうか。

 

 

そう思わざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、いつもより早めにスタジオに着いた。

 

 

昨日のあったことの所為で、ほとんど集中出来なかった。

 

 

.......取り敢えず、もう少し考えないと

 

 

あの時のRoseliaの演奏を取り戻す。

 

 

1晩考えてもいい案は浮かばなかった。

 

 

他のみんなはどう考えているのだろうか?

 

 

そう思いながらスタジオに入る。

 

 

「あ!お、おはよう!」

 

 

そこにはリサと紗夜がいた。

 

 

ああ。早かったんだな

 

 

「貴方こそ、お疲れ様です」

 

 

どうやら2人はバンドをはじめたての頃のことを話していたようだ。

 

 

「━━━だからね。こんな風に、友希那やRoseliaについて

相談できる相手がいることってアタシにとってはすごく嬉しい。

それって、お互いに心を開いたからこそなのかなーって。えへへ........」

 

 

昔のことは詳しく知らないけど..........確かそうかもな

 

 

これが彼女達の変化なのだろう。

 

 

「そうですね......ですが今井さん.........」

 

 

リサが首を傾げる。

 

 

「.....こ、こういう話はすべてが解決したあとにしましょう。

今は目の前の問題に真剣に取り組まないと」

 

 

「そうだよね、ゴメンゴメン!

.........紗夜」

 

 

リサが紗夜とこちらに向き直る。

 

 

なんだ?

 

 

「一緒に、がんばろ」

 

 

リサが笑顔を向けてくれた。

 

 

勿論

 

 

「最初からそのつもりよ」

 

 

話に区切りがついた時、友希那が入ってきた。

 

 

「2人共、お疲れ様。貴方も」

 

 

「ゆ、友希那.........!おはよ!」

 

 

リサが慌てながら返事をする。

 

 

こちらを一瞥して、マイクのセッティングに取り掛かった。

 

 

「.......あ、あのさ、友希那」

 

 

「湊さん、1つよろしいですか?」

 

 

慌てるリサと紗夜が友希那に話しかける。

 

 

しばらく黙って見守っていよう。

 

 

「何かしら」

 

 

友希那の冷たい視線を向けたが、紗夜は気にせず言葉を口にする。

 

 

「Roseliaの音を取り戻さなければならない。

それはわかります。ですが......昔のような未熟な状態に

戻る必要はないのではないのでしょか」

 

 

友希那は下を向いて話を聞いていた。

 

 

「私達は成長しました。それを無下にするようなことは........」

 

 

「......からない......」

 

 

......え?

 

 

「友希那.......?」

 

 

「わからないのよ!!」

 

 

友希那の発した声に、いつもの冷静さは感じられなかった。

 

 

「他にどうしたらいいのか、わからないの!

見つからないから......こうするしか.......っ!!」

 

 

“わからない”。

 

 

初めて彼女から聞いた言葉。

 

 

「こうするしか.......ないじゃない......!」

 

 

「.......っ!」

 

 

「私だって、わからないですよ!

でも、こんな形でこれまでの経験を全部なかったことに

したくないんです!!」

 

 

これは紛れもない、紗夜の本音だ。

 

 

「妹と約束したんです。彼女の隣を並んで歩けるように

なると......前に進んでいくと.......」

 

 

ある雨の日、紗夜が最愛の妹、日菜と約束した。

 

 

それによって彼女は前を向き、成長することができた。

 

 

「湊さん......貴女だって同じはず。

お父様の大切な歌を歌ったこと。

それを全部なかったことにするんですか?」

 

 

「.......それは......」

 

 

憧れだった父の背中。その無念を果たすためにやっていた音楽。

 

 

それがいつの間にか、自分のためにするようになった。

 

 

その決意を......想いを........。

 

 

「......っ」

 

 

「あっ、友希那......!!」

 

 

友希那はスタジオを飛び出していった。

 

 

「.............ごめんなさい」

 

 

「紗夜は悪くないよ。.......友希那だってわかってる」

 

 

..........ああ。こちらこそ、黙って見ていてごめん

 

 

「..........」

 

 

紗夜の言葉を聞いて、友希那はどう思っただろうか。

 

 

不安が頭を駆け巡る。

 

 

ふと、扉の近くに落ちている物を見て、今までの記憶が一気に思い出された。

 

 

.......湊さんのこと、任せてくれないか?

 

 

「え!?どうしたの急に」

 

 

2人が目を見開いて、こちらを見た。

 

 

まあ........少し思いついてな......

 

 

「本当ですか!?」

 

 

ああ、だから、2人は白金さんとあこを頼む

 

 

「わかった.....友希那のこと、お願い!」

 

 

「ええ、私達もなんとかします」

 

 

そうやり取りして、すぐさま落し物を拾い、スタジオをあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 





何故かはわかりませんが、同じ話が連投されているという不具合()がありましたので、再編集しました。
当時の方は疑問に思ったと思いますが、指摘がなかったのが不思議です。

ではまた次回お会いしましょう。さようなら


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エピソード1後編「想い出」

悩みに悩んだこの回です。上手く表現できているでしょうか?
どうぞ、想像しながら呼んで見てください。
それでは、本編始まります。


友希那はすぐに見つかった。

 

 

駅前の大通り入口付近にいたのだ。

 

 

涙を流して.......。

 

 

そっと近づく。

 

 

湊さん.......

 

 

「......っ!.......貴方.....どうして.......」

 

 

友希那は咄嗟に、袖で涙を拭おうとした。

 

 

それじゃあ目が腫れちゃうよ

 

 

もう遅いと思うけど そう呟きながら、

ポケットからハンカチを取り出し、涙を拭った。

 

 

彼女の目は赤くなっていた。

 

 

「........どうしてここに........?」

 

 

涙声のまま、再度聞いてくる。

 

 

少し気になったから.......って言うのもあるけど。

これを渡しに来たんだよ

 

 

そう言ってスタジオに落ちていた猫の刺繍の入ったハンカチを渡した。

 

 

「......これって」

 

 

1度拾ったことがあったから、すぐにわかった

 

 

そう、初めて彼女の言葉を交わした日。

 

 

ほんの少しの時間だったけど、不思議と心地のいい瞬間だった。

 

 

ずっとリサ達と悩んでたんだ........

どうすればRoseliaの音を取り戻せるんだろう.......って

 

 

「.......」

 

 

友希那は俯いたまま、耳を傾けてくれていた。

 

 

最初のRoseliaのことはわからないけど......湊さんの言っていることは

少しわかった

 

 

昔のような緊張感のある張り詰めた空気。それが消えたために生まれた今の雰囲気。

 

 

湊さんはさ。自分で考えて、自分のやり方で動いていた

でもそれでよかったのかな?

 

 

「.......え?」

 

 

友希那は顔をあげて、こちらを向いた。

 

 

友希那は誰にも何も言わず、昔のように練習して、取り戻そうとした。

 

 

それじゃあ、バンドじゃないよ

 

 

「.........」

 

 

1人で悩まず、抱え込まず、みんなに相談すべきだったと思う

 

 

それはきっと彼女もわかっている。

 

 

でも........こんな風になったのも、よかったかもしれない

 

 

「......どうして?」

 

 

友希那の方を向いて、目を合わせる。

 

 

本音でぶつかり合う.......それこそバンドなんじゃないかな?

 

 

「.............」

 

 

バンド組んだこともない自分が言えることじゃない。

 

 

 

「ふふっ。貴方は何を言っているの?」

 

 

自分でもわからないよ。でも........

 

 

「でも、何?」

 

 

いや、なんでもないよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「友希那先輩?」

 

 

後ろから聞きなれない声が聞こえてきた。

 

 

「........戸山さん?」

 

 

それは、花咲川の制服?

 

 

「はい!ところでそっちの人は」

 

 

彼女の後ろから同じ制服を来た女の子達が走ってきた。

 

 

「おい香澄!急に走るなよ!」

 

 

ツインテールの少女を筆頭にこちらに近づいてくる。

 

 

「あれ?先輩じゃないですか!」

 

 

その中に見慣れた少女がいた。

 

 

ああ、沙綾ちゃんか

 

 

いつも行っているパン屋の少女だった。

 

 

「沙綾、知り合い?」

 

 

その隣のロングの子が聞いた。

 

 

「うん、いつも家のパン買っていってくれる先輩だよ」

 

 

「あ!この前チョココロネを譲ってくれた人だ!」

 

 

1度店で見かけた、大量のチョココロネを買っていく少女もいた。

 

 

どうやら彼女達は「Poppin’Party」というバンドを組んでいるらしい。

 

 

そのライブをするということで、浮かない顔の友希那に声をかけに来たようだ。

 

 

確かにコロッケ屋のあの子や喫茶店の娘さんもバンドを組んでいた気がする。

 

 

こう考えると、ほとんどの知り合いがバンドやってるような....。

 

 

「そういえば、友希那先輩と一緒にどうしたんですか?」

 

 

「まさか先輩、湊先輩のこと泣かせたんですか?」

 

 

「えええええ。悪い人?」

 

 

おいおいおい!冤罪だ冤罪!

 

 

確かにまだ目元が赤いから、傍から見たらそう思うのは仕方がないと思う。

 

 

「違うのよ......彼が慰めてくれたのよ」

 

 

目元を拭いながらそう返事をする友希那。

 

 

「ところで、友希那先輩、大丈夫ですか?」

 

 

戸山さんが友希那の顔を伺う。

 

 

「ええ。彼のおかげで落ち着いたから大丈夫よ」

 

 

ほっとして息を吐いた戸山さんは、真剣な顔つきになって言った。

 

 

「........あの!ライブ、来てくださいっ!」

 

 

突然の申し出に、最初に声をあげたのはツインテールの子だった。

 

 

「は、はあ!?おい香澄っ!なんでそうなるんだよ!?」

 

 

「友希那先輩達の力になりたいけど、私上手に

アドバイスとか、無理だし.......」

 

 

突然ではあるものの、彼女の心からの激励であると感じた。

 

 

「あの、私達の演奏、Roseliaのみなさんみたいに

上手じゃないですけど、観てくれたら、

きっと元気になれると思いますっ!」

 

 

「戸山さん.......」

 

 

「そうですよ。先輩!」

 

 

それに続いて沙綾ちゃんも誘ってきた。

 

 

ああ、そうだな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『みなさん、こんにちは〜〜!

Poppin’Partyですっ!それじゃあ早速、1曲、いっきまーっす!!」

 

 

Roseliaとは全く違う、ノリノリで明るい曲。

 

 

ステージ上の5人は笑顔で、楽しそうに輝いていた。

 

 

ふと、横の友希那を見る。

 

 

これを見て、どう思っているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

Poppin’Partyのライブが終わり、一息ついた。

 

 

「友希那せんぱ〜〜〜い!!」

 

 

飼い主を見つけたペットのように、こちらに駆け寄る戸山さん。

 

 

「戸山さん。お疲れ様」

 

 

それに続いて、他の4人も来た。

 

 

「今日の演奏、どうでしたか?

キラキラドキドキ、してもらえましたか?」

 

 

「うん、したよ!」

 

 

「おたえに聞いてるんじゃねーっつの!」

 

 

どうやら彼女はこういう子らしい。

 

 

しかし、彼女の次の言葉に驚かされた。

 

 

「でも、私達がキラキラドキドキできてなくちゃ、

絶対聴いてる人には伝わらないと思う。だから、大事なことだよ」

 

 

...........!

 

 

「自分達が.......」

 

 

......この子本当はわざとやっているのではないか?

 

 

「あなた達、いつもどんな気持ちで演奏をしてるの?」

 

 

友希那の疑問に、彼女らしい答えが返ってくる。

 

 

みんなのことが大好きという気持ちを歌にのせ、届いてほしい。

自分達のその気持ちを感じてほしい。みんな同じ気持ちで演奏している。

 

 

正直「キラキラドキドキ」についてはよく分からないが、大事なことが伝わってきた。

 

 

友希那も感じるものがあったようで、表情を変えた。

 

 

戸山さん達から、またRoseliaのライブを見に行きたいこと。

沙綾ちゃんにまたパン屋に行ったら話をすることをお互い伝えて、帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那と2人での帰り道、彼女が口を開く。

 

 

「.......考えたこともなかったわ。

みんながどんな気持ちで演奏しているかなんて」

 

 

ああ、誰だってそうだ。自分以外の周りの気持ちを理解するなんて、口で伝えないとわからない

 

 

「ええ。同じ気持ちで演奏しているかなんて、なおのこと

気にしてなかったわ」

 

 

でも、わかったんだろ?

 

 

「ええ。私達の音を取り戻すこと.......それは、私達が

Roseliaである誇りを取り戻すことなのかもしれないわ」

 

 

ようやく友希那が納得した。

 

 

しかし、

 

 

「あと少し.......あと少しなのに......」

 

 

まだ.......見つからないのか......。

 

 

だったら、向き合えばいい

 

 

「え?」

 

 

2人の間に少しの静寂が生まれた時、口を開いた。

 

 

孤高だった貴女と、今は違う。今の貴女にはなにがある?

自分は何がしたいか.......その気持ちと

 

 

「.......Roseliaとして......歌いたい」

 

 

そうだ。それが今、貴女がやるべき事。誇り取り戻すためにすることだ

 

 

そう言って、一歩前に出て振り向く。

 

 

「私に......できるかしら」

 

 

街頭に照らされた彼女は、やっぱり綺麗だった。

 

 

できるさ.......絶対

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後。

ここ最近の日課である、作詞の手伝いのために友希那に付き添っていた。

 

 

友希那達が本当のRoseliaになった時、今までの付き合いがあったこともあり、Roseliaのサポートとして参加することになった。

 

 

そのひとつとして作詞の手伝いである。

 

 

なあ、今日はどこに行くんだ?

 

 

すぐ隣を歩く友希那に声をかける。

 

 

「そうねえ.......」

 

 

そう言って向かったのは学校近くの公園。今日は周囲に誰もおらず、静かだった。

 

 

静かな場所に来たかった、というわけではないことはわかる。

 

 

鈍感ではない自分には、どうしてもこの空間にはまさかと思ってしまう。

 

 

2人で並んでベンチに座る。

 

 

その際、ハンカチを敷くにも忘れない。

 

 

「ありがとう」

 

 

最近彼女との距離が妙に近い。

 

 

その所為でより意識してしまう。

 

 

沈んでいく太陽を眺めているうち、彼女が立ち上がり、こちらを向いた。

 

 

友希那......?

 

 

夕暮れに照らされる彼女の顔は、決してその光の所為ではないと理解する。

 

 

両手を膝の前で握りしめ、俯いていた顔を上げた。

 

 

「ずっと......考えていたの。いつからこんな風に思うようになったのかを」

 

 

...........

 

 

「私達のために、貴方は色んなことをしてくれた。いつもそばに居てくれた」

 

 

その瞳は、まっすぐにこちらを見つめてくる。

 

「優しい貴方は、誰にでも親切で、すぐに仲良くなる。それを見ていると、胸が痛むの」

 

 

それって.......

 

 

わかってしまう。友希那の今の気持ちを、自分に対する想いを。

 

 

「不安な時、いつも貴方の顔が思い浮かぶと、自然にその不安がなくなる。貴方と一緒にいると、楽しくて、胸が高鳴る」

 

 

彼女の顔は真っ赤に染まっていた。

 

 

「やっとわかった。私は.............貴方のことが好き。誰よりも.......貴方が大好きなの」

 

 

友希那の顔は、今まで見たRoseliaのボーカルとしての彼女ではなく、

 

 

 

1人の少女としても湊 友希那だった。

 

 

「返事を.......聞かせて?」

 

 

無言で立ち上がる。

 

 

近づいていくと、友希那は目を逸らして、恥ずかしそうにしていた。

 

 

........そっか

 

 

その姿は煌びやかで美しい。とても愛おしいと感じた。

 

 

だから強く抱きしめた。

 

 

「っ!」

 

 

........同じ気持ちだよ

 

 

「それって.........」

 

 

ああ。友希那が好きだ。大好きだ。誰にも渡したくないぐらい好きなんだ

 

 

そう口にすると、友希那の瞳から涙が零れた。

 

 

それはあの時のような悲しみの涙ではなく━━━━━━━

 

 

 

「ありがとう.......」

 

 

 

 

━━━━━━━━喜びの涙だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?」

 

 

パジャマに着替えを済ませ、彼の部屋に戻ると

 

 

彼はベットの壁に寄りかかり眠っていた。

 

 

「........疲れたのね」

 

 

Roseliaの練習の付き添い。ライブ衣装の相談や買い物。ライブの打ち合わせ。

 

 

そして今はセットリストの相談。

 

 

今日だけでかなり忙しそうにしていた。

 

 

寝てしまうのは無理もない。

 

 

「................」

 

 

ゆっくりと彼に近づく。

 

 

手にはセットリストの紙とライブステージの図面を持っていた。

 

 

「本当........熱心ね」

 

 

彼にはずっと助けられてきた。

 

 

メンバーが自分たちの音を見失った時や誰かが欠けて、練習どころじゃなかった時。

 

 

そんなときすぐに動いて、支えてくれた。

 

 

1年前、ただの隣の席で、興味がなかった。

 

 

けれど他の人とは違う何かを秘めている。

 

 

きっとあの出会いは、奇跡だったんじゃないか。

 

 

その表情を見ると、そう感じる。

 

 

自然と口元が緩む。

 

 

彼を起こさないよう、膝の上に頭を乗せた。

 

 

所謂膝枕だ。

 

 

「........起きてないわよね?」

 

 

普段は大人びた雰囲気を持っている彼。

 

 

その寝顔は、子供のようだった。

 

 

「ふふっ...........可愛い」

 

 

そっと頭を優しく撫でる。

 

 

彼を綺麗な黒髪が、指の間を抜ける。

 

 

いつもは自分がされていること。

 

 

たまにはこうするのもいいと思った。

 

 

「.......貴方のおかげで、私は幸せよ」

 

 

彼は起きる気配がない。

 

 

視線の先は、彼の唇。

 

 

ゆっくりと顔を近づける。

 

 

鼓動が一層、早くなる。

 

 

彼の顔が間近に迫る。

 

 

目を閉じようとした刹那。

 

 

「あ...」

 

 

彼が目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか眠っていたらしい。

 

 

意識が戻ったのは、後頭部に柔らかい感触がした時だ。

 

 

「........起きてないわよね?」

 

 

まだ寝ていると思っているのか、機嫌のいい声が聞こえてくる。

 

 

「ふふっ...........可愛い」

 

 

髪を撫でる小さな手の温かさを感じる。

 

 

友希那からこうされるは、初めてだった。

 

 

彼女の風呂上がりのシャンプーの匂い。少し火照った太ももの温もり。

 

 

本当に心地いい。

 

 

「.......貴方のおかげで、私は幸せよ」

 

 

そんなこと言われれば、我慢が出来なくなってしまう。

 

 

そろそろ寝たフリはやめよう。

 

 

そう思って目を開けると、友希那の顔が目の前にあった。

 

 

「あ...」

 

 

気づいた友希那は羞恥で顔を赤くし、離れようとする。

 

 

それを逃がすまいと、腕を掴んで引き寄せる。

 

 

「急にな.......〜〜〜〜〜っ!」

 

 

急に何を、と口にする前に膝枕の状態から頭を抑え、即座にキスをした。

 

 

柔らかい唇の感触。

 

 

「んっ........んんっ」

 

 

目をつぶり、本能のままに唇を貪る。

 

 

部屋には唇を重ねる音が響く。

 

 

やがて息継ぎのため、お互い唇を離す。

 

 

「はあ......はあ........突然なにするのよ......」

 

 

.......あんなこと言われたら、そうしたくなるよ

 

 

「あんなこと........っ!いつから気づいて?」

 

 

独り言として呟いていた本音を、まさかバッチリ聞かれていたことを知った彼女は、さらに顔を真っ赤にした。

 

 

「.........意地悪」

 

 

枕を抱きしめ、そっぽを向く仕草が可愛かった。

 

 

悪かったって、許してくれ

 

 

「......ふんっ」

 

 

不機嫌です、と言わんばかりの反応に、頬を掻く。

 

 

できることならなんでもするから.......

 

 

その言葉に反応した友希那が、こちらを振り向く。

 

 

「......なんでも?」

 

 

さっきの態度が嘘のように、ずんずん近づいてくる。

 

 

「.......本当になんでもしてくれるの?」

 

 

その迫力に、首を縦に振るしかなかった。

 

 

「それじゃあ..........」

 

 

そういって抱えていた枕をこちらに投げてくるのを、受け止める。

 

 

突然な━━━━━

 

 

言葉は続かなかった。

 

 

友希那に唇を奪われたからだ。

 

 

甘い香りが、鼻孔をくすぐった。

 

 

唇を離し、友希那は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...........さあ、今日は私も満足させてくれる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時の行動は、決して間違いじゃなかった。

 

 

Roseliaは本物のバンドとして成長していった。

 

 

そして、彼女とこうなるなんて、1年前まで有り得なかった。

 

 

でも、今は恋人として過ごしている。

 

 

その幸せを、再確認したのだった。

 

 

 

 

 

とりあえず友希那とイチャイチャしよう エピソード1[完]




3週に渡る2人の出会い(馴れ初め)でございました。
久しぶりに2章を見直したら........はい(´・ω・`)
最後の部屋でのことに関しては、友人のハメ作家から頂いたシチュエーションです。長らくお待たせして申し訳ない。
さて、次回なのですが、いつも通り提案されたシチュエーションを主に書きますが、ひとつ私が考えている話があります。その場合はある方からの許可が必要なんですよね〜。なのでどうなるかはわかりません。
Twitterとこちらでアンケートしようと思いますので、是非よろしくお願いします。
それでは次回があったらよろしくお願いします!


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エピソード2 「願い」

どうも、お久しぶりです。リメイルと申します。
ガルパのRoselia箱イベ「この胸満たすあたたかさは」楽しんでいますでしょうか。
もちろん私は一日でストーリー全解放、報酬星3まではしましたよ。
ガチャですか?課金して出しますよ。
さらにバンドストーリー3章が出るということで、さらに盛り上がっています。
映画も迫っていますし、これはお金が吹っ飛びますね。
さて、それでは本編に移ります。どうぞ。


 

 

 

 

「ねえ」

 

 

ある朝、いつものように友希那と肩を並べて歩いている時だった。

 

 

誰かから連絡が来たのか、しばらくチャットアプリを開いていた友希那がこちらを向いた。

 

 

どうした?

 

 

その声に応じて、目を向ける。

 

 

友希那は自分の携帯を胸に抱きしめ、少し言いずらそうにしていた。

 

 

普段出さない雰囲気で居る彼女に首を傾げる。

 

 

深呼吸を繰り返す友希那は、決心したのか口を開く。

 

 

「今.......連絡が来たの」

 

 

そう言って携帯の画面を見せる。

 

 

その画面は誰かとのトーク履歴。

 

 

その相手は━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.......お父さんから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会って話がしたい。

 

 

それが友希那のお父さんから来た内容だった。

 

 

付き合い始めて数ヶ月になる彼女の父親なのだから、当然了承した。

 

 

いつか訪問すべきだろうと思っていたため、時期こそ早まったものの都合が良い。

 

 

かと言っても、なにか準備をしていたわけでもなく、少々悩んだ。

 

 

服装は決して堅苦しくならないような、それでいて着崩しのない平装。

 

 

手土産として日持ちのする菓子を持ち、湊家に向かう。

 

 

インターホンの前で、何度も深呼吸を繰り返す。

 

 

偶然にも、今日のことを打ち明ける時の友希那と同じ様だった。

 

 

緊張感はこちらが圧倒的ではあるが。

 

 

意を決してインターホンを鳴らす。

 

 

するとすぐに扉が開き、友希那が出迎えてくれた。

 

 

「入って、お父さんとお母さんが待ってるわ」

 

 

お母さんもか......

 

 

当然ではあるが、ふと思ってしまった。

 

 

..........お邪魔します

 

 

靴を脱いで、友希那の後に続く。

 

 

玄関を抜けた先━━━━━━リビングの奥の椅子には、威厳のある、男前な男性、友希那のお父さんが。

 

 

その傍らには、友希那によく似た女性、友希那のお母さんが居た。

 

 

2人は、高校生の娘がいるような年齢には見えないくらい、若い姿。

 

 

「君が、“噂の”友希那の彼氏君かい?」

 

 

は、はい。そうです

 

 

噂の、と言われて少し動揺した。

 

 

一体彼女はどんな風に両親に話をしているのだろう?

 

 

「ちょっ........ちょっとお父さん!」

 

 

「友希那がよく、君のことを話しているよ。君のような男が、娘と付き合っているなんて......僕は嬉しいよ」

 

 

聞かれたくなかったのか、友希那が顔を赤くして止めようとする。

 

 

しかしお父さんは気にせず笑顔を向けている。

 

 

「まさか友希那が、こんなにイケメンの彼を連れてくるなんて.......お母さんも嬉しいわ」

 

 

やはり夫婦、似た者同士なのか、お母さんがそれに続く。

 

 

そんな両親の言葉に羞恥で顔を赤くする友希那。

 

 

こちらもこちらで、恥ずかしい。

 

 

そのやり取りがしばらく続き、いつの間にか緊張もほぐれていった。

 

 

「ところで」

 

 

と、今までの雰囲気を一気に変え、友希那のお父さんが口を開く。

 

 

「友希那とは、結婚を前提として付き合っている......という認識でいいかい?」

 

 

結婚。

 

 

言わずとも、独り身としてのゴール。そして夫婦としてのスタート。

 

 

人生が大きく変わる、最大の出来事の一つ。

 

 

このまま順調に付き合いを重ねていけば........いずれは

 

 

そう口にする間に、お母さんは友希那を連れてリビングを出た。

 

 

友希那は去り際に、不安そうにこちらを見ていた。

 

 

そんな彼女を見て、大丈夫、と目で伝える。

 

 

伝わったのだろうか、少しだけ表情に変化があったように見えた。

 

 

「........少し昔話をしよう。君は、僕の過去について友希那から聞いているかい?」

 

 

.........音楽活動をしていて、ある理由で辞めてしまった、ぐらいは

 

 

「そうか........なら、詳しく話そう」

 

 

友希那のお父さんは、かつて誰もが知る有名なバンドマンとして活動していた。インディーズ時代は特に名盤視されていた。

 

 

数々の音楽雑誌で表紙を飾ったり、特集記事が掲載されたり等、必ずと言っていいほどに目にしていた。

 

 

しかし、当時入っていた事務所から自分たちの音楽を無視され、仕事として無理やり活動させられた。

 

 

それに伴い、ファンは熱が冷め、離れていってしまった。

 

 

その心に深い傷を付けられ、そのまま解散してしまった。

 

 

ずっと彼らが夢見ていたステージ。

 

 

それを掴める、あと一歩だったのだ。

 

 

そんな最悪の出来事が起きてから、友希那は変わってしまった。

 

 

父親の........否、自分の音楽を認めさせるため、一切の妥協の許さない、ストイックな性格と考え方になってしまった。

 

 

「友希那がああなってしまったのは.......きっと僕の所為でもあるんだ」

 

 

だから、と窓際で背を向けていたお父さんが振り向いた。

 

 

「友希那には......心から笑っていて欲しいんだ。信じ合える仲間や友達と」

 

 

..............

 

 

Roselia。

 

 

今の友希那に変えてくれたのは、間違いなくあの4人だ。

 

 

自分だけの音を見つけたい、憧れの人とカッコイイを目指したい。

 

 

大切な人を支えたい、自分を変えたい。

 

 

全く違う想いで、全く違う境遇で..........それでも同じ道を歩みたい。

 

 

そうして出会った5人。

 

 

今も、突き進んでいる。

 

 

「もちろん.......君もだよ」

 

 

えっ........

 

 

考えていることがわかったのか、お父さんが座り直して言った。

 

 

「Roseliaはもちろん.......君がいたから、友希那は恋をして、愛を知った。あんなに音楽だけに執着していたあの娘が、普通の女の子の表情をしてくれた。

 

 

..........そうしてくれたのは、君のおかげだよ」

 

 

そう語る表情は、バンドの元ボーカルではなく、普通の父親の━━━━

 

 

━━━━━穏やかな笑顔だった。

 

 

その表情を見ていると、頬を暖かな物が通った。

 

 

「これから友希那達は、色んな壁にぶつかると思う。何度も折れそうになると思う........それでも、何度でも、君が支えてやってくれないかい?」

 

 

.......はい........ずっと........支え続けます!一生........そばに居続けます!

 

 

視界はぼやけて、お父さんの表情が見えない。

 

 

「ありがとう.......君で良かった」

 

 

お父さんは目元に涙を浮かべ、それでも笑顔を向けてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、お互いに日頃友希那のことだったり、昔の友希那のことを話したりと、かなり盛り上がった。

 

 

つい声が大きくなってしまったためか、顔を真っ赤に染めた友希那が入ってきて、怒られた。

 

 

お母さんが声をかけてくれなかったら、色々大変だっただろう。

 

 

長い間居たため忘れていたが、時間を確認すると、時計の針が7を指していた。

 

 

帰ろうかと思ったが、まだ話し足りない、とお父さんが引き止めてきた。

 

 

お母さんもせっかくだから、と泊まることを勧めてきた。

 

 

そうなるとは思わず、なにも準備していなかったので断ろうとしたが、まだほんのり顔を赤くした友希那が、服の裾を掴んで離さなかった。

 

 

その目が言うに、根掘り葉掘り聞かれそうだからひとりじゃ無理、と訴えているように感じた。

 

 

結果だけで言えば、泊まらせてもらうことになった。

 

 

夕食も頂き、その後一悶着あったが、無事に終わった。

 

 

一悶着の内容は割愛しておく。

 

 

寝る場所に関しては、当然の如く友希那の部屋。

 

 

隣の家がリサ宅だと思うと、ビクビクしてしまう。

 

 

だってベランダ越しで会話できるんでしょ?

 

 

きっとまた弄られるに違いない。

 

 

ベットの横の床に布団を敷く。

 

 

「........お父さんと、何を話していたの?」

 

 

部屋着に身を包んだ友希那が、口を開く。

 

 

娘をよろしく、ってさ

 

 

「よろしくって.........ッ!」

 

 

その言葉の真意に気づいたのか、はたまたでもなにか想像したのか。

 

 

湯船で火照った顔を、より一層赤くする。

 

 

「そ.......そんな、私たち、まだ高校生よ......なのに......そんなこと.......」

 

 

愛用の猫の枕に顔を埋めて、悶えている。

 

 

相変わらずのそのかわいい反応に、愛おしさを感じ、後ろから抱きしめた。

 

 

「ッ!ちょっと!今は.........」

 

 

安心しろ.......一生大事にするから

 

 

耳元でそう言うと、顔を真っ赤に染めつつも、振り返って抱きしめ返してきた。

 

 

今度は枕ではなく、胸に顔を埋めて。

 

 

「私.......貴方と出会って......本当に幸せよ」

 

 

そう言って腕の中で顔を上げ、笑顔を向ける。

 

 

.......今日は眠れそうにないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず友希那とイチャイチャしよう エピソード2 [完]




ノーブルローズの映像化ということは、友希那パパが登場するんですよね?
ふと思ったんですが、声は誰が当てるのでしょうか?
個人的には上松さんにして欲しいですね。Roseliaのお父さんですから。
別の人でも、バッチリあっていれば納得しますね。それをファンはどう見るか、ですね。私がやってもいいんですよ?()
さて、そんな世迷言は置いといて、本日の話はどうだったでしょうか?
友希那パパとママの口調は難しかったです。内容を振り返るために漫画の「Roselia Stage」を読み直しました。友希那可愛いなあ、おい。
あの笑顔、たまらん。そのためならロリコンになってm(殴
はい(´ー`)
次回は一応3rdseasonの内容を考えてはいますが、アニメの内容を思い出しながらなので、かなり時間を要します。
あ、あとシリーズとして更新しましたので、よろしくお願いします。
さて、かなり長く喋ってしまいましたが、いかがだったでしょうか?
是非とも感想、評価、リツイートよろしくお願いいたします。
では次回お会いしましょう。さようなら!


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友希那誕生日記念話

どうもリメイルです。
今回は友希那誕生日記念の回で、完全友希那視点です。
本当は投稿する予定ではなかったのですが、投稿している方が多く、やっぱり出さなきゃいけない気持ちになり、急遽完成しました。
そのため、描写が上手く表現できていない部分があると思いますが、どうかご了承ください。
文字数も少ないです。
それでは本編どうぞ。


 

 

 

 

 

 

『私には音楽しかないの!』

 

 

かつて私が言った一言。

 

 

それを聞いた貴方の顔は、今でも忘れないわ。

 

 

何回、貴方に対して冷たい態度をとったかしら。

 

 

何回、貴方の優しさを無下にしたかしら。

 

 

何度失敗しても、無視されても、貴方は私に変わらず接してくれた。

 

 

なぜそこまでして、私と話そうとするのか、まるでわからなかった。

 

 

そんなにしつこいと、普通の子なら嫌われるわよ。

 

 

でも、きっとあの時があったから、今がある。

 

 

本当にありがとう。私を救ってくれて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「CiRCLE2周年ライブ?」

 

 

いつものように、彼の膝枕を堪能していると、ライブのチラシを見ながら声をかけてきた。

 

 

「ええ、来月、CiRCLEができて2年になるそうだから、いつもお世話になってるお礼に出演することになったの」

 

 

と言っても、いつもと変わらないけれど。

 

 

「来月の........10月26日........ってお前の誕生日じゃないか」

 

 

そう、ライブが行われる日は私の誕生日。

 

 

もちろん、ライブをするのはお父さん達も知っている。

 

 

「被ってしまったのだから仕方がないわ。それに、誕生日にRoseliaや他のバンドと演奏できるなんて、幸せだわ」

 

 

上体を起こし、彼の膝の上に座る。

 

 

「さあ、みんなと話し合う前に、候補としてセトリを考えておきましょう」

 

 

そう言って振り返った時の彼の顔は、不服そうだった。

 

 

「誕生日会なら、前日かその次の週でもいいわ。そんな顔しないで」

 

 

彼の顔を両手で挟み、目を合わせて言う。

 

 

「.......わかったよ」

 

 

「ええ」

 

 

キスをして、無理やり話を終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました」

 

 

各バンドごとのリハーサルを終え、本番前の大きな休憩。

 

 

御手洗から控え室に帰ってくると、開けたドアからクラッカーの音がした。

 

 

「「「「「友希那(さん)(湊さん)!お誕生日おめでとう(ございます)!」」」」」

 

 

「............みんな」

 

 

中ではリサを筆頭に準備したのか、たくさんのお菓子とプレゼントが置いてあった。

 

 

「はい、友希那!これはあたしと紗夜からね!」

 

 

「一生懸命作ったので、お口に会うと良いのですが」

 

 

そう言って渡してきたのは猫や犬の形をしたクッキー。

 

 

いつもとはデザインが異なり、今日のために考えたのが伝わる。

 

 

「こっちはあことりんりんからです!」

 

 

「あこちゃんと行ったお店に、友希那さんに似合いそうなものがあったので.......これを選びました」

 

 

青い薔薇をもしたネックレス。

 

 

所々にラメが散りばめられており、輝いている。

 

 

そして、

 

 

「今回はこれにした」

 

 

彼からのプレゼントは5色に分かれた、しかし派手ではない、シンプルな髪飾り。

 

 

「これなら、友希那の私服にも合うんじゃないか、と思ってな」

 

 

私を思って考えてくれたプレゼントに、自然と涙腺が緩む。

 

 

「みんな.......ありがとう」

 

 

「ちょっと!友希那!?」

 

 

嬉しくて涙が流れる。

 

 

それを見たリサが慌てる。

 

 

近くにいた彼が、涙を拭ってくれた。

 

 

私は幸せものだ。

 

 

こんなにもみんなに想われているだなんて。

 

 

「本当に......ありがとう」

 

 

涙を拭い、顔を上げ、笑顔を見せる。

 

 

そうすると、みんなも笑顔になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Roseliaのみんな〜。そろそろ本番だよ!」

 

 

まりなさんからの声がけで、気を引き締め、舞台袖に移動する。

 

 

後ろから伝わってくる、メンバーの様々な感情。

 

 

緊張、興奮、昂り..........

 

 

私はずっと1人だった。

 

 

誰にも頼らず、自分だけで全てを成し遂げようとしていた。

 

 

それがずっと続いていたら、きっと、いつか折れてしまっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも今は━━━━━

 

 

 

 

 

「友希那さん!」

 

 

あこがいて

 

 

「友希那さん....」

 

 

燐子がいて

 

 

「湊さん」

 

 

紗夜がいて

 

 

「友希那!」

 

 

リサがいて

 

 

「友希那」

 

 

そして、彼がいる。

 

 

私は5人に振り返り、頷く。

 

 

「さあ.......行くわよ」

 

 

ステージに立つと、静かだった客席が熱気の溢れるものに変わる。

 

 

「Roseliaです。早速だけど、メンバー紹介行くわよ」

 

 

左腕を上げ、紗夜を指す。

 

 

「ギター、氷川紗夜!」

 

 

紗夜の細い指、その見た目と裏腹に力強い音を奏でる。

 

 

「ベース、今井リサ!」

 

 

リサのベースは、優しくも、しっかりと芯の通った低音を響き渡らせる。

 

 

「ドラム、宇田川あこ!」

 

 

体全体を使ったパフォーマンスは、あこの見た目からは想像できないほどの迫力。

 

 

「キーボード、白金燐子!」

 

 

その洗練された指先は、燐子自身を表すようにしなやかで、それでいて秘めたるものを感じる。

 

 

リサがマイクを力強く持ち、続ける。

 

 

「そして我らがボーカル、湊友希那!」

 

 

楽器隊のパフォーマンスをバックに、客席に向けて礼をする。

 

 

ふと、横目に舞台袖で見守る彼が映る。

 

 

いつも見ている笑顔。

 

 

自然に口元が緩む。

 

 

「それじゃあさっそく、聴いてください」

 

 

今日はなんて、良い誕生日なのだろう。

 

 

マイクを握りしめ、腕を振り上げる。

 

 

 

 

 

「━━━━━━━潰えぬ夢へ、燃え上がれッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那誕生日記念話[完]




友希那、誕生日おめでとう。


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バレンタインエピソード

バレンタイン。

それは甘くもほろ苦い、ひと時の味わい。

(´・ω・`)



初めましての方は初めまして、ご存じの方はお久しぶりです。リメイルです。
本日はツイッターで募集されていた「バンドリ杯」に参加させていただきます。
テーマとしましては『イチャイチャ』なのですが、私の小説はシリアスあってのラブコメ、ですので、必然的にシリアス多めになってしまいました。申し訳ございません。
しかしながら後悔はしていません。

このお話についてですが、初めてご覧になる方に説明させていただきますと

1.主人公は一人称をしゃべらない。

2.主人公視点ではセリフに「」がついていない。

3.若干の性格変更あり。

という3点をご理解いただけると幸いです。


「こいつら、やってんなあ!」という声が聞こえるよう、頑張ります!






それでは、本編に参りましょう。どうぞ









 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆ......ゆゆゆゆゆゆゆっ友希那が!チョコを作る!?」

 

 

周囲の目を気にせず、信じられないものを見たかのように、幼なじみのリサが大声をあげて立ち上がった。

 

 

「.....そんなに大袈裟に反応しなくてもいいじゃない。さすがに失礼よ」

 

 

「た.....確かにね~........ご......ごめんなさい!」

 

 

私とリサは、いつものファミレスで、新曲のフレーズの相談していた。

 

 

一旦休憩を挟んだとき、ふと目に入ったカレンダーの赤い印。

 

 

2月14日。

 

 

そう、バレンタインデーだ。

 

 

私が「彼にチョコを贈ろうかしら」とボソッと口にした時、

リサが先程の反応をしたのだ。

 

 

「だってさ~友希那、料理そんなにできないじゃん!......っていうか全然できないじゃん!」

 

 

「失礼ね。私も彼と付き合いだしてからは、勉強しているわ」

 

 

かつての私は、音楽のことしか考えていなかった。

 

 

そのため、年相応の経験をしてこなかった。

 

 

実は密かに、お母さんにお願いして、料理や家事を勉強しているのだ。

 

 

リサには内緒だけれど。

 

 

「......こんな気持ち、初めてなの.....自分で誰かのためにしようと思うのは」

 

 

胸の前で両手を握り、俯く。

 

 

彼と出会ってから、ずっと貰ってばかりだった。

 

 

こんなことを彼が聞いても、「気にしなくていい」とほほ笑むと思う。

 

 

けれどやっぱり、なにかしてあげたい。

 

 

「だからリサ.....協力してくれないかしら?」

 

 

それを聞いたリサは、真剣な面持ちから一変し、口角を上げる。

 

 

「もちろん!喜んでくれるように、頑張ろう!」

 

 

「ありがとう......リサ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ!早速始めよっか!」

 

 

相談から数日、リサの家のキッチンにいた。

 

 

「これがお父さんにでしょ?それでこれがあこ達~。こっちが部活のみんなで」

 

 

「ところでリサ」

 

 

リサはテキパキと、渡す人数分に板チョコを分けていた。

 

 

それは毎年見る光景だが、ふと気になったことがあった。

 

 

「ん?どうしたの友希那?」

 

 

「リサ、あなたは本命のチョコはあるのかしら?」

 

 

振り向いた状態でしばらく固まり、次は顔を真っ赤に染めた。

 

 

「と........とととととととと突然どうしたの!?」

 

 

「....動揺しすぎよ。私はよく彼との話をするけど、リサからそういうのは聞かないからよ」

 

 

私以外のメンバーだと、最近は紗夜から聞く。燐子は時折スマホの画面を気にしているので、いずれは何か進展がありそう。

 

あこは..............まだよくわからないわ。

 

 

「あ....あたしは......その......」

 

 

羞恥で顔を赤く染め、その反応が可愛らしい。

 

 

普段はからかわれているから、いつもと逆の立場になり、自然に頬が緩む。

 

 

「あ,,,,,,あたしのことはいいじゃん!!ほらっ!始めるよ!」

 

 

これは.......あるわね。

 

 

「ふふっ。ええ、お願いするわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてバレンタイン当日。

 

 

結局リサの恋愛事情は聞き出すことはできなかったけれど、リサの知らない面を見れただけでも良かった。

 

 

朝はいつものように手をつないで登校。

 

 

教室内は、いつもと雰囲気が違う気がする。

 

 

女子生徒が多いからか、特にバレンタインは女子にとって大事なイベントなのだ。

 

 

実際に私もその一人だ。

 

 

放課後になり、彼のいる教室に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩!これを」

 

 

それは、1年生であろう女の子から、チョコレートを受け取っている彼の姿だった。

 

 

頭が真っ白になった。

 

 

手の力が抜け、持っていた包みが床に落ちる。

 

 

その音に気付いた彼がこちらを向いて、驚いた表情をした。

 

 

顔を見られるのが嫌で、その場から逃げるように走りだした。

 

 

「.....っ!?友希那!!」

 

 

私はその場で堂々と、彼のところに行くべきだった。

 

 

話をきちんと聞くべきだった。

 

 

「えっ.......友希那!?」

 

 

自分のクラスの教室から出てきたリサの横を通り過ぎて、そのまま走り去った。

 

 

「...........っ!」

 

 

私が冷静でいれば、こんな気持ちにならなかったのに.......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後悔するのが遅かった。

 

 

彼女は人一倍傷つきやすいとわかっていたのに。

 

 

いつも通り、彼女の友希那と登校した。

 

 

昨日家に行こうとした際、「用事があるから」と断られた。

 

 

理由ははぐらかされたが、教室で親友に「今日は何日だ?」と、聞かれて気が付いた。

 

 

朝のHRからずっとそわそわしていた。

 

 

放課後、友希那のクラスに行こうとすると、教室の外で部活の後輩が待っていた。

 

 

1年生の女の子で、よく相談に乗っていた。

 

 

一体どうしたんだ?

 

 

「先輩......これを」

 

 

彼女が渡してきたのは、可愛らしい包装をされた物だった。

 

 

これは?

 

 

「チョコです!これを....友希那先輩に渡してほしいんです」

 

 

.......え?友希那に?

 

 

少しでもドキリとした気持ちを返してほしい。

 

 

話を聞くと、どうやら中学の頃から友希那にあこがれを持っており、Roseliaの大ファンである。

 

 

ここの高校を受けたのも友希那がいるからだ。

 

 

なるほどね。でも、なんで直接渡さないの?

 

 

そう言うと彼女は慌てたように言う。

 

 

「いやいやいや!そんなの恐れ多いですよ!友希那先輩と目が合うだけでもう........」

 

 

.......理由は察した。こんなファンが現実にいるのなんて、思わなかったが。

 

 

「だから先輩!これを」

 

 

再度チョコの包みを差し出した。

 

 

その時————————

 

 

ガサッ、と廊下で物音がした。

 

 

そちらに視線を向けると、そこには

 

 

「......っ!?友希那!!」

 

 

気づいたころには、すでに友希那は背を向けて走り出していた。

 

 

.......最悪だ。

 

 

さっきの光景を見て、友希那がどう思ったか、わからないわけがない。

 

 

とにかく、誤解を解かなければならない。

 

 

「先輩!?急にどうしたんですか!?」

 

 

ごめんっ!必ず渡すから、下駄箱に入れておいてくれ!

 

 

返事は聞かず、急いで友希那を追う。

 

 

昇降口を出て、必死に頭を回す。

 

 

彼女の体力を考えると、そこまで遠くに行かないはず。

 

 

「ちょっと!はあ.....はあ....もう!友希那も君も!いったい何が」

 

 

思考をしている間、リサが息を切らして駆けてきた。

 

 

り......リサ。それが.......

 

 

リサにこれまでの経緯を説明すると

 

 

パァン!!!!

 

 

左の頬に痛みが走る。

 

 

リサからビンタを受けたのだ。

 

 

「.........あたし言ったよね......友希那を悲しませないでって」

 

 

.......ああ

 

 

「......約束したじゃん......なのに.....」

 

 

リサとの約束。

 

 

『友希那をもう二度と悲しませない』。

 

 

それを破った。

 

 

......もう一度チャンスをくれないか?

 

 

先ほどの痛みで、目が覚めた。

 

 

「今回はあたしでも....友希那の場所はわからないよ?」

 

 

リサは冷めた目で、こちらを見ていた。

 

 

.....大丈夫だ......わかる

 

 

正直、確実とは言えない。

 

 

それでも—————————————

 

 

 

 

 

 

 

 

もう失望はさせない

 

 

 

 

 

 

 

 

————————ここで終わらせたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひたすら走り続けた。

 

 

誰もいないところに行きたかった。

 

 

私の心を表すように、雨が強く降りしきる。

 

 

「はあ......はあ........はあ」

 

 

体力もないくせに、必死に走っていた。

 

 

自然にたどり着いたのは、あの時の公園。

 

 

彼と恋人となった場所。

 

 

灰色の空を見ながら、思う。

 

 

 

 

会いたい

 

あの腕の中で、抱きしめられたい。

 

ちゃんと、謝りたい。

 

 

どうしようもないほど、愛しい気持ちが溢れ出てくる。

 

 

「でも......っ!」

 

 

こんな顔を見せたくない。

 

 

彼の優しさを知っていても、会うのが怖い。

 

 

今の私は矛盾だらけだ。

 

 

雨はさらに激しさを増す。

 

 

 

 

「はあ、はあ.......やっぱりここ居た」

 

 

そんなに暗い気持ちに、日が刺した。

 

 

「......なんで......」

 

 

彼は、私の元に、必ず駆けつけてくれる。

 

 

私の望みを叶えてくれる。

 

 

必ず......私の救ってくれる。

 

 

「なんとなく.......ここにいると思って」

 

 

びしょ濡れな状態も気にせず、彼の胸に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.......あそこで私が.....冷静でいられればよかったの」

 

 

雨は晴れ、雲の隙間から太陽が顔を出す。

 

 

隣に腰を下ろした彼に、ポツリと語る。

 

 

「でも......胸が痛くて......苦しくて.......逃げ出したくなった」

 

 

思い出しただけで情けなく思う。

 

 

 

私の想いを知った彼は、静かに口を開く。

 

 

「ここに来る前、リサに怒られたよ。友希那を悲しませるなって........約束してたんだ。でもそれを破った」

 

 

「........約束」

 

 

「浮かれてたんだ.......今までの人生で、こんなに幸せなことなんてなかったから」

 

 

浮かれていた。

 

 

自分だけではなかったことに、少しうれしく感じる。

 

 

「.....そういえば、あの女の子はいいの?」

 

 

と、ここに来る前に彼といた女の子のことを思い出した。

 

 

彼女にも迷惑をかけてしまった。

 

 

「ああ。彼女もそうだけど、今日渡せれたやつさ......全部友希那に渡して欲しいって言われたものなんだ」

 

 

「......え?」

 

 

思いがけない事実に、思わずぽかん、となる。

 

 

「まさか本当にそうしてくる人か実際にいるなんて.......タイミング悪すぎ」

 

 

じゃあ.....全部私の.......勘違い?

 

 

ガクッと力が抜ける。

 

 

彼はすぐに腕を掴んで、支えてくれる。

 

 

「なによ.......最初から.....私の.....」

 

 

もうさっきまでの暗い気持ちはなかった。

 

 

安心と羞恥、色んな感情が混ざりあっている中で、何よりも喜びが溢れ出す。

 

 

目から涙は出てくる。

 

 

「っ!友希那!?」

 

 

彼が涙を拭いてくれた。

 

 

「....ありがとう」

 

 

「うん。誤解が解けてよかった」

 

 

 

しかし.......

 

 

「......せっかく作ったチョコ......結局渡せなかったわ」

 

 

リサにしっかり謝らないと。

 

 

「これのことか.......」

 

 

すると、懐から私が渡すはずだったチョコの包みを取り出した。

 

 

「!?.......どうしてそれを」

 

 

「.......食べていいんだよな?」

 

 

そう言って、リボンを解いて、中を開ける。

 

 

中から、歪な形のチョコレートを取り出し、口に運ぶ。

 

 

「どう.......かしら。うまくはできなかったけれど」

 

 

それを聞いた彼は、こちらを向いて微笑んだ。

 

 

「そんなことない、美味しいよ」

 

 

顔が赤く染まる。

 

 

その笑顔を向けられたのは、初めてではない。

 

 

私の大好きな笑顔。

 

 

「そう、ありがとう」

 

 

微笑み返す。

 

 

すると、彼は私の肩を抱き、唇を重ねた。

 

 

「..........ん......」

 

 

口の中に甘さが広がる。

 

 

彼に首に両手を回し、体を預ける。

 

 

お互いの存在を確かめるように、深いキスをする。

 

 

しばらくして、体を話し、立ち上がる。

 

 

「帰ろう.....みんなのところに」

 

 

差し出された手をつかみ、歩き出す。

 

 

「そうね。行きましょう」

 

 

 

 

 

 

その後、校門前で待っていたリサにからお説教を受けたのは、いうまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リサによるお説教を受けた後、

 

 

友希那とリサ、さらにずっと待ってくれていた後輩を連れて帰路に立っていた。

 

 

後輩についてだが、自分の所為だ、と涙目になっていたところをリサに発見されたそうだ。

 

 

本当に申し訳ないことをしてしまった.......。

 

 

そのことでも相当に怒られたが、彼女は———————————

 

 

「全然気にしないでください!」

 

 

と笑顔で言った。

 

 

なんていい娘なんだ!

 

 

その後憧れの友希那とご対面して、とんでもない表情をしたのはここだけの話としておく。

 

 

前を仲良く歩く3人を見て、改めて周囲の皆のありがたみを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人と別れた後、当たり前のように友希那の部屋を訪れていた。

 

 

友希那母から、「今日もお泊まり?」と笑顔で言われた。

 

 

別にそのつもりはなかったが、友希那が腕を抱きしめて離してくれない。

 

 

どうやら今日もみたいです

 

 

「.....私.....嫉妬深いし、独占欲が強いのね」

 

 

自室のベットの上で、友希那がそうつぶやく。

 

 

バックハグをしながらだ。

 

 

さっきの出来事を踏まえてだろう。

 

 

多分、自分も友希那の立場だったら、同じ感じだったと思う

 

 

そう返してあげた。

 

 

「あなたも?」

 

 

友希那はクスクスと笑う。

 

 

「今回はお互いに、ダメなところがあったみたいね」

 

 

そう言うと友希那は体を離し、正面に回った。

 

 

「......キス.......しましょう?仲直りのキス.....」

 

 

抱きしめ合いながら、お互いの唇を重ねる。

 

 

「....ん.....ちゅっ.....んんっ」

 

 

ひたすらに求め合い、ただひたすらにキスを続ける。

 

 

.....ん!?

 

 

突然友希那が舌を入れてくる。

 

 

「.......好き.......好き......大好き.....」

 

 

息が苦しい、頭が回らない。

 

 

理性の壁に亀裂が走る。

 

 

しばらくして、ようやく唇を離す。

 

 

頬を赤く染め、潤んだ瞳はこちらを真っすぐ見据える。

 

 

その表情はいつもよりも美しく、目が離せない。

 

 

首にちくりと、痛みが走る。

 

 

「......ふふっ......付けちゃったわ....キスマーク」

 

 

いたずらが成功したように笑う彼女は、年相応の少女のようだ。

 

 

「.....きゃあ!」

 

 

いつの間にか彼女を押し倒していた。

 

 

「もう.....そんなに焦らなくても、私はどこにも行かないわ」

 

 

友希那がどこに行こうが、絶対に見つけるよ

 

 

「.....そう......ありがとう」

 

 

再びキスをする。

 

 

「ねえ.....しましょう?」

 

 

その言葉と表情が相まって、理性の壁は完全に崩壊した。

 

 

 

 

「......ぎゅって.......して?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"愛というものは、どれだけ多くのものを与えたかではなく

そこにどれだけの思いやりが注がれたか、ということなのです"

 

 

かつてマザーテレサがそのような言葉を残した。

 

 

愛は回数ではなく、一つひとつへの想いが大切なのである。

 

 

会えない日々があるかもしれない。

 

 

会えない時が多いかもしれない。

 

 

それでも、気持ちを大切のすることが重要なのだ。

 

 

それを今.....心に刻むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、部屋の外から聞こえた友希那母の声で、現実に引き戻されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

バレンタインエピソード [完]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、いかがだったでしょうか。
地の文に悩みながら、どうにか書ききれました。
うまく表現できてるとうれしいです。
イチャイチャって書いていると、精神がすり減るんですよね。どうしてでしょうかね?()
劇中のマザーテレサの名言ですが、バレンタインの起源を調べていたら見つけたものです。
問題ありましたら変更しますので、よろしくお願いいたします。

また次回お会いいたしましょう。ありがとうございました!


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