この作品にはキャラ崩壊、独自設定、ストーリー改変など、様々な要素が含まれます。それでも大丈夫!という方は、とうぞ!
2015年の夏、天の神は人を滅ぼそうとし、地の神は人を守ろうとした。天の神と地の神の戦いは世界に災害という形で表れ、地の神は天の神に敗北し、天の神は後に星屑と呼ばれる存在を、世界に放った。
そんな中、
「……なに……あれ……」
友奈が呆然と呟く。その視線を追い、その先を見る。
星が、降ってくる
住み慣れた街に、白い塊が大量に落下してきている。そんな衝撃的な光景を目撃し、思わず神社へ走る足がとまる。
だが立ち止まってはいられない。友奈に声をかけ、神社へ急ぐ。
「今は神社に行こう。大人の人だったら何が知ってるかもしれないし」
「う、うん、そうだねっ!」
衝撃的な光景を見たからなのか、少し動揺したように返事をする友奈。そこから神社にたどり着くまで、2人に会話はなかった。
街を走り、神社の前にたどり着く。だが、神社に人気はなく、伽藍としていた。いつも神社の掃除をしている僧も、参拝に来た人も、避難しに来た人も、誰もいない。
キョロキョロと周りを見回し、人がいない事を確認したが、事実であることを恐れるかのように秋水に確認する。
「ね、ねぇしゅうくん。人、いないのかな?」
「……中に避難してる、と思いたい」
全く人がいないことを恐怖を感じたことで、不安そうに聞く友奈に、希望的観測で言葉を紡ぐ秋水。避難してきているならば、もう少しは人気があってもいいはず、とは思っているものの、それを口に出すことはない。それが言霊となってしまうことを恐れるために。
「とりあえず、中に入ってみよう」
そう秋水が言うと、2人は恐れを振り払うように、小走りで神社の中に向かった。
「誰かー! いませんかー!!」
大きく声を張り上げ、誰かいないか、と人を呼ぶ。そんななか、友奈は、声ではない、優しいイメージのような何かで、助けを求める声を伝えられた。
大人であればいきなりイメージを頭に伝えられれば怯えが先に来るだろう。だが友奈は優しい心を持った少女であるため、イメージに対して「なんで、私なんかが…?」などの疑問を持つことはあれど、求められた助けを無視することはできなかった。
友奈は、伝えられた方向へ向かうことにした。
「……こっち!」
「友奈!?」
イメージに従い、神社を走る。時間がない、伝わってくるイメージから、そう察した友奈は更に進む足をはやめる。
イメージに疑惑を持つことなく、友奈はそちらへと向かう。普段2人が遊ぶときは、立ち入ることが禁止されていた奥へと。
そして本殿にたどり着く。そこには、奇妙な存在感を放つ、1つの手甲が祀られてあった。
それは迫り来るものへの呪詛。
天への呪い。
その名は──《天ノ逆手》
友奈はイメージに従い、迷うことなくそれを手にとった。
その直後だった。何かが砕けるような音の後に、神社が大きく揺れた。
「うわっ!」
「外に出よう!」
秋水の手をとり、外に駆け出す友奈。2人が神社を出ると、外の空には白い塊が無数に宙に浮いていた。星屑、後にそう呼ばれる事になる白い塊は白色の袋に口を付けた様な姿をしていた。
神社に入る前にも見たが、遠目だったので細かいところまでは見えていなかった。あまりにも現実的な生物ではないその存在を前に、呆然とする。
「なんだ……あれ……?」
「しゃがんで!!!」
端的な友奈の声に即座に反応し、しゃがむ。その頭上を、天ノ逆手を着けた友奈の腕が凄まじい速度で通り抜ける。
武術習っている友奈の拳が、星屑を吹き飛ばす。友奈の対応があと数秒遅れていれば、今秋水は星屑に喰われていただろう。声をかけたのが友奈じゃなかったら、死んでたな、そんな事を考えながら、立ち上がる。
「しゅうくん、下がって」
「あ、ああ。…だけど、1つだけ約束だ」
神社の方向に向かいながら、友奈に約束させる。
先程の友奈の拳は、武術を習っていたとはいえ、
「無事に帰ってこい」
「……うん」
短い会話だが、お互いにお互いのことを十全以上に知り得ているため、全ての意図は伝わっている。先程から友奈が何かを受け取っていること、秋水が友奈だけに戦わせる事に悔しさを堪えていること。お互いにそこまで伝わっているとは思ってはいないが、無意識に理解している。
少年を守ろうとする少女と、それを悔しく思いながらも、力不足と理解し、邪魔にならないようにと行動する少年。お互いにお互いを思い合い行動している。
だが、2人がどれだけ相手のことを考えていようが星屑に関係はない。
友奈は星屑を殴り飛ばしながら戦っているが、星屑の数が多すぎる。細かい傷が増え、動きが鈍くなっていく。
段々と、星屑を倒すスピードが落ちていくが、星屑の数は対して減ったようには見えない。疲れが出ると、視界が狭まる。幾ら動きが超常的になっていたとしても、それは例外ではないらしい。
狭まった視界では、捉えられていなかった秋水の方向を確認した友奈は、焦りと危機感を覚え、そちらの方向へ猛スピードで接近した。
「ハッ!!」
神社に背を向け、友奈のほうを見ながら立っていた秋水の後ろから、星屑が飛来する。間に合わなければ、秋水は死ぬ。それだけは嫌だ、それだけを頭に浮かべ、秋水を助けようとする。
結果で言えば、友奈は間に合った。……その身を犠牲にしながら。
「がっ!? ……う、あ……」
星屑に吹き飛ばされ、地面に倒れる友奈。その幼い体に、星屑ほどの質量を持った存在の体当たりは厳しいものがあった。
痛い、苦しい。その2つが友奈の頭の中を占め始める。だがそれ以上に、秋水が殺されてしまう、という絶望が頭をよぎる。
だがその絶望は現実のものとはならなかった。
「……友奈、ごめん。これ以上は無理だ」
呟くように言うと、倒れた友奈の前に立ち、落ちていた木の棒を構え、恐怖を振り切るように声を出し、近づいてきた星屑を叩く。
星屑に全く効いた様子はなく、秋水を喰らおうと口を大きく開ける。そのことに気づいた秋水は体を捻り、避けようとする。
だが遅い。いや、星屑が早すぎるのか避けきれず、星屑の鋭い歯で秋水の左腕の肘から先を喰らう。
「あ、ァァァァあああッッ!!!!」
左腕から血が吹き出る。だが後ろに友奈がいるから倒れることはしない。自分が倒れてしまえば、次に自分の左腕と同じ末路を辿るのは友奈だと理解しているからだ。
「……あ、……ああ……あ、血が……血、が……」
喰われた秋水の腕から吹き出た血の一部が友奈の頬に当たる。震える腕を自身の頬に当て、血の存在を確認し、心が絶望に染まる。
だが、秋水の心は絶望していない。星屑への攻撃は無意味に終わった。たが、それが秋水が諦める理由にはならない。
「ああああッッ!!」
せめて自身は星屑という怪物に屈しはしない、という意味を込め、痛みを誤魔化す意図もあり、声を張り上げ、体を捻り、右腕で突きを繰り出す。
それでも、星屑にダメージはない。一般人に奇跡はない。
他の星屑に突き飛ばされ、友奈の近くに倒れる。秋水は起き上がらない。与えられた超常の力により少し回復した友奈は、よろよろと近づく。
だが、秋水に超常の力は存在しない。
「……ぁ……起きて……起きてよ……」
ぽろぽろと、涙が溢れ秋水の胸に落ちる。
自身の怒りと友奈の涙が、心が、
奇跡はない。
希望はない。
だが、存在はそこにあった。
心臓の音がやけに大きくなり、体が熱を発している。熱い熱い熱い、ただそれだけしか感じることが出来ない。だが、今はそんな事は関係ない。ヤツは友奈を泣かせた。それだけは許してなるものか。ただそれだけが思考に残る。
「……がっ、あ、ああぁぁぁぁぁああ!!!」
体が変わっていく。グチュグチュとグロテスクな音をたてながら左腕が生え、腕を喰った星屑が内側から破裂した。
決定的に違うナニカに変化していく。そう感じた。
そして友奈も、その変化を何かからのイメージもあり、理解していた。違う存在になってしまう。このままいけば、確実に取り返しのつかないことになる。そんな予感を抱いた友奈は、
「しゅうくん、行っちゃだめ!」
「ぁぁぁアア■■■■■■■■ッッ!!」
変わっていく。体が。
変わっていく。内側から。
変化に伴い、秋水の手には、1本の剣が握られていた。それで、この変化は終わった。
だが、秋水が動き出す気配はない。不安を覚えた友奈は神社の柱を支えに、立ち上がる。
「しゅう、くん……?」
静止していた星屑が、動き出す。愚かで傲慢な人間を喰らおうと、明確な殺意を持って。
友奈は、そこで先程見た、星屑に喰われる秋水を幻視した。確かに、ただの一般的な人間であった、変化の前の秋水だったからこそ、喰われた。
だが、完全とはならずとも、■■■としての力を呼び覚ました秋水では、そうはならなかった。
「■■■■■■ッッ!!!!」
声として聞き取ることの出来ないような音で叫びながら手に持った剣で、星屑に切りかかる。先程の一撃とは比較にならないほど素早く、荒々しい斬撃。
星屑は抵抗すらできず、切り裂かれ2つに別れた。バチッ、と回路がショートしたときのような音が鳴り、剣に電気が走る。
「■■ッッ!! ■■■■■■■■ッ!!!!」
無数に存在する星屑に向かい、突撃する秋水。友奈を守る。その誓いだけはたましいにでも刻まれているのか、星屑を友奈に近づけさせられることはない。
剣に、雷が溜まっていく。
だか、相手側も倒され続けるだけの存在ではない。
星屑同時が集まっていき、1つの存在となる。今、この瞬間星屑は進化した。人が多くの時を重ね、進化していくことを嘲笑うかのように、この一瞬で進化をしてしまった。
それでも今の秋水に敵うわけではない。それどころか、進化した個体を相手にする時の方が、動きが格段に速く、鋭い。
剣に、
星屑もその光景を見て、下手に
剣に
確かに星屑は脅威だ。人間の発明は一切効かず、一般人であれば喰い殺す。相手が勇者であっても、その適応力と、圧倒的な数で押し切ることが出来るだろう。たが、今回は相手が悪かった。
「■■■■ッ!!」
剣に溜まった
轟音とともに、視界が白く染まる。出力や範囲を気にする理性など、今の秋水にはない。街全てを巻き込きこみ神鳴りが、街全てに降り注いだ。まだ生きていた男も、女も、すべての人間すらも消滅させながら。
その神鳴りが収まったとき、街に人間は2人しか存在していなかった。神鳴りの発生元でもある秋水と、何か、神社に祀られていた神によって身を守られた友奈だけだった。
そしてその神は、その身を犠牲にし、友奈を守ったことで、神鳴りに直に当たり、存在を自然に還すこととなった。その神は最期の力を使い、友奈に1つのイメージを残し、傷を少し癒やした後、自然に還った。
「■■■■■■ッッ!!!」
街の星屑は全て消し去ったが、秋水は止まらない。空に向かって、吠え続ける。
その姿に秋水が遠くに行ってしまうような危機感を覚えた友奈は、自身が怪我をしていたことを気にすることなく、後ろからそっと体を包み込む。
「終わったよ……しゅうくん、もう、終わったんだよ……」
母が子に言い聞かせるような、優しい口調で語りかける友奈。それに安心したのか、秋水の体から力が抜け、気を失った。
「ありがとね、しゅうくん。あとは、私ががんばるから」
そう呟くように言うと秋水を背負い、神の残したイメージを辿り、
その瞳には確かな決意が宿っていた。
秋水くん
人?腕喰われて友奈ちゃん泣かせたから暴走して星屑倒しちゃったついでに街1つぶっ飛ばしちゃった少年。友奈ガチ勢みたいなもん。
友奈ちゃん
勇者。奈良から一般人連れて四国行くの大変だよね、減らしてあげようか?(外道)幼馴染の暴走を後ろからのハグと声をかけることで鎮める。かわいい。
神社の神様
神。何時も友奈ちゃんが行ってた神社の神様。天の神から人類を守るために友奈ちゃんを勇者として採用。たが秋水くんの神鳴りによって神樹として一体化できず、友奈ちゃんに遺言を残し、できる限りの治療をして自然に還った。
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