ぐだおが女性サーヴァントに耳かき奉仕してもらう話。 (多奈川)
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沖田さんに膝枕で耳かきされる話。

「あれ、ダヴィンチちゃん。これって……」

 

人類最後のマスター、僕こと藤丸立花は、夕食後に暇つぶしがてらダヴィンチちゃんの工房へ顔を出していた。

 

「おや、見つけてしまったかい。ダヴィンチちゃんの素敵なショップの新商品を……!」

「いや、見つけたというか、すごい目につくところに置いてあるからさ。しかもご丁寧に手書きPOPまでつけて」

 

それは、先端がへら状になった細長い棒状の道具。江戸時代、享保年間に日本で開発された、耳の穴の中を掃除するためのもの。そう、耳かきだ。

 

「でも、何で耳かきなんて急に置くようになったの?」

「それはだね、最近、日本出身のサーヴァントがカルデアに増えているだろう? 今回、耳かき棒をショップに置くようになったんのは彼らのリクエストによるところが大きいね」

「ん? 日本出身のサーヴァントと耳かきにどういう関係が?」

「そもそも耳かきというのはだね、東アジアの人に多い乾いた耳垢の除去には向いているが、欧米人の粘性の多い湿った耳垢の除去には不向きなのさ。というか、欧米では耳かきという道具そのものがないんだよね」

「へぇー、初めて知ったよ。日本では当たり前にあるものだからさ」

 

そう言い、おもむろに耳かき棒を手に取る。

そういえばカルデアに来てからというもの、耳かきをした覚えがない。今まで気にならなかったが、急に耳の奥がむずむずとこそばゆくなってくる。

 

「お、やはり君も興味あるかい? 今回は初回特別サービスで10万QPと、大変お得になっているよ?」

 

うーん、この商売上手。というか、10万QPって安いな。クエスト一周すればすぐ手に入るし。え、感覚が麻痺している? ははは、まさかまさか。

 

「うん、買うよ。これください」

「はーい、お買い上げどうもありがとう~。これからも是非贔屓にしてくれたまえ」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「さて、では早速……」

 

マイルームに戻り、先ほど購入した耳かき棒を取り出す。竹製の片方がへら状に、反対側には梵天(ふわふわとした白い羽毛)がついたオーソドックスなタイプの耳かきだ。

そろりと、耳かき棒を耳穴へやる。しょりしょりと、細かい耳垢が耳かき棒に当たる音が心地よい。

耳の内側に傷をつけないよう、優しく撫でるように動かしてやる。気持ちよい感触だ。

 

その調子で耳かきを続け、少し奥に耳かき棒をやると、コツンと先端に何かがぶつかる。……遂に来たか、ボス級(の耳垢)が。

これまでは怪我を恐れて最小限の力で進めていたが、ここからはそうもいかないだろう。ぐっと指先に力を込める。……むっ、硬い。ぱきっと僅かに耳垢が浮く感触はあるが、それ以上動く気配がない。むむむ、どうしたものか。

大きな耳垢に苦戦していると、コンコンと誰かがマイルームの戸を叩いた。

 

「マスター、いますかー? 沖田さんです。今度の編成のことで少し相談したいことがあるんですけれど」

「お、沖田さん? うん、大丈夫だよ。入って」

 

そう促すと、いつもの新撰組の羽織を脱ぎ、ノースリーブの着物を着た沖田総司が元気よく部屋へ入ってくる。

 

「お邪魔しますね~。おや、何か用事の最中でしたか?」

「ああ、いや、少し耳かきをしていたんだけど、中々うまくいかなくて……」

「え゛っ!? 耳かき、ですかッ!!?」

 

うわずった声を上げ、ぐわっと沖田さんが顔を寄せてくる。白く透き通った肌、済んだ瞳。……可愛い、好きだ。結婚したい。

 

「お、沖田さんも、耳かきに興味あるの?」

「興味があるか、ですって? そんなのあるに決まってるじゃないですか!! 耳かきといえば沖田総司、沖田総司といえば耳かき! 歴史の教科書にも書いてある常識ですよ!!」

 

それでいいのか新撰組一番隊隊長……。というか、それが本当だとしても教科書にはそんなこと書いてないよ。

 

「さぁ、沖田さんの前で耳かきと口にしたからにはもう逃げられませんよ! マスターの耳の掃除、この沖田総司にお任せください!!」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「さぁ、こちらへどうぞ。マスター」

 

ベッドの上で正座した沖田さんが、自身の膝をぽんっと軽く叩く。

 

「え、膝枕! いいの!?」

 

思わず心の声に正直になっていた。だって沖田さんのニーハイ(?)生足膝枕だぜ?

 

「いいですとも! ささっ、早く沖田さんにマスターのお耳掃除をさせてください」

「で、では、失礼して……」

 

自身の頭を、柔らかく、そして、やや筋肉質な沖田さんの膝枕へと埋める。右耳を上にし、沖田さんへ背を向ける形になる。

 

「では、まずは耳の中を拝見しますね。……こ、これは! マスター!!」

「え、何……?」

「耳垢貯めすぎですよ! さては随分ほったらかしにしていましたね? これもう少しで耳穴埋まるくらいの大変な量ですよ」

「ひえっ、確かにカルデアに来てからは耳かきしてなかったけど、そんなに……?」

 

なんかもうすごい恥ずかしい気分だった。

 

「鼓膜の近くなんか山盛りですよ。……あ、興奮してきました」

 

今、何かとんでもない言葉が聞こえたような。

 

「それじゃ、耳かきしていきますよ。もし痛かったりしたら手をあげてくださいね」

 

まるで歯医者みたいだと思った。

沖田さんは、すっと慣れた手つきで耳かき棒を耳穴へと挿入する。

先ほどと動揺にしゃりしゃりと細か耳垢の粒が耳かき棒へと当たる。そして、沖田さんはそのまま奥へ耳かき棒を進入させていく。その道中で、軽くマッサージするように耳の内部の壁を擦るのがとても気持ちいい。

 

「ふふっ、気持ちいいですか、マスター? 大物を退治しますので、姿勢はそのままでお願いしますね」

 

自分が先ほど敗戦を喫した耳垢への攻撃を開始する。

こつっこつっと、まずは様子をみるように。そして、ぐーっと、耳垢ではなく、耳の壁をへらの裏側で押し当て始めた。それにより耳垢と壁の間にわずかに隙間ができる。沖田さんはそれを見逃さないようにへらを滑り込ませ、ぐぐっと、今度はテコの要領で一気に耳垢を浮き上がらせる――!

さくっ……。みしっ……。くっぐくっ……。ぐっぐぅううっ……。ぽとっ。

 

「……ふぅ、まずは第一関門突破といったところですね。無明三段突き、炸裂です!」

 

一旦耳かき棒を抜き、取れた耳垢を脇に広げたティッシュの上でこんこんと落とす。

 

「うわっ、でか! こんなのが耳の中に!?」

 

ティッシュの上には1センチ正方ほどの耳垢があった。

 

「中々の大物でしたね。2wave目の単体エネミーくらいの強さでしたが、この沖田さんにかかればどうってことはありませんでしたね」

 

うーん、メタい。膝枕してるので彼女の表情を窺うことはできないが、おそらくドヤ顔しているのだろう。

 

「よーし、どんどんいきますよー!」

 

再び耳かき棒が耳内部へ挿入される。

すりっすりっ……ぞりぞり……。するっ……すぅーっ。……とんとん。

溜まった耳垢が一つ一つ処理されていく。マイルーム内では耳かき音の他には、沖田さんの静かな息づかいが聞こえるのみだ。

他人に耳かきをしてもらうなんて小学校の頃に母親にやってもらったきりだったが、久しぶりにしてもらうと自分でするよりも遙かに気持ちがいい。何だろう、自分でやるときと違って次はどこにくるか予想がつかないからだろうか。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「ふぅ、これで右耳は大体綺麗になりましたね。最後に梵天で細かい耳垢を取っていきますよ~」

「は、はい……」

 

くるくると回転しながら梵天を上下させていく。かりかりと残った細かい耳垢が羽毛に絡まっていくのが音だけで分かる。へら部分と違う、梵天は耳穴全体をくすぐるように移動する。そのため、気持ちよさが先ほどまでよりも高い。ん、ふぅ……と思わず声がもれてしまう。

 

「くすっ。マスターは梵天がお気に入りなんですね。沖田さん、覚えましたよ。……こんなところでしょうか、梵天抜きますね」

 

名残惜しいが、しゅぽっと梵天で引き抜かれる。白い梵天に黄色い細かい耳垢がたくさん付着している。

 

「どうです、マスター? これだけ耳垢を掻き出せば聞こえ方も変わってくるんじゃないですか?」

「……確かに、いつもと違ってなんだか新鮮な感じがする。沖田さん、ありがとう」

「いえいえ、いいんですよ! それに、まだ半分ってところですしね。次は左耳いきますね。頭の向きを反対にさせてください、マスター」

 

そう言われ、体を沖田さんと向き合うように寝返りをうつ。

寝返りをうつと、そこは、黒色だった。

 

「――ッ!!」

「? どうかしました、マスター?」

「う、ううん。何でもない。何でもない。本当何でもないから……!!」

 

いや、そりゃ少し考えれば分かったはずでしょ。だって沖田さんの丈の短い着物で膝枕とかされれば、そりゃあそうなりますよ。……しかし、幸い沖田さんは耳かきに夢中で気づいていないようだし、この束の間のエデンを堪能させてもらうとしよう。誰だってそうする。人類最後のマスターだってそうする、間違いない。

 

「おや、左耳の汚れは右耳ほどではないですね。残念です……」

 

と、ややテンションを下げながらもさくさくっと耳垢を掃除していく沖田さん。正座を続けていることや耳かきに集中しているためか、うっすらと汗をかき、肌がやや湿り気を帯びてきている。ほんのりと汗の香りが鼻に届く。ややツンとしたでももっと嗅いでいたいような、そんな独特な芳しさがある。

太ももでこれなら、もっと蒸れているであろうあの黒色はさぞ……。あっ、ダメだ。僕は腰を隠すように膝をくの字に曲げる。

 

「あれ、どこか痛かったですか?」

「いや、ううん、大丈夫。そのまま続けて……。もう少しゆっくりでもいいよ」

「? 分かりました。ゆっくりお耳を綺麗にしていきますねっ」

 

しょりしょり……。さくっ。ぐぐっ……。ぐっ。くくっ。すぅ……。

そうして、沖田さんとの耳かきの夜は更けていくのだった――。



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マシュに綿棒で優しく耳かきマッサージしてもらう話。

沖田さんの膝枕耳かきから三日後。

僕こと、藤丸立花はあてもなくふらふらとカルデア内を彷徨っていた。

あの出来事があってからというもの、僕は耳かきの快感が忘れないでいた。だが、自分で耳かきをしてもやはりどこか違う。誰かに自身の身を委ね、垢を丹念に掃除してもらうという行為……。人に奉仕されるという喜びに僕は飢えていた。あと、若干匂いフェチになっていた。

 

「はぁ……、とは言ったものの、人に耳かきを頼むとなると恥ずかしいんだよなぁ……」

 

この前は沖田さんが耳かきをしてくれるというからそれに乗っかる形でお願いできたけど、いい年して他人に耳かきをしてもらうなんて何だか甘えているようで中々踏み出すことが出来ない。とはいっても、耳かきしてもらたい欲は高まる一方。どうしたものか……。

 

「先輩、どうかしましたか? 何だか浮かない様子ですが」

「あ、マシュ……」

 

たまたま出会った後輩系美少女のマシュが心配そうに尋ねてくる。目隠れ女子っていいよね。

 

「最近はレイシフトも多く大変でしたし、もしやどこか体調を崩されているとか……? それはいけません! 私も付き添いますから早くメディカルルームへ行きましょうっ!!」

「ちょ、マシュ? あーっ! 困りますっ! マシュッ! あーっ!」

 

有無を言わさぬマシュに、漫画ならドヒューンッという擬音がつくであるとう勢いでメディカルルームへ担ぎ込まれる僕であった。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「すいませんでした! 私が早とちりしたばかりに先輩にご迷惑をおかけしてしまいました……」

 

落ち着いたところで事情を説明すると、マシュは申し訳なさそうにしょんぼりとした様子で謝ってきた。若干涙目になっている。……可愛い、好きだ。二人で幸せな家庭を築きたい。

 

「ううん、僕のことを心配してくれての行動だったんでしょ? むしろ有り難いというか、そこまで想ってもらえて先輩冥利につきるというか……。ありがとうね、マシュ」

「せ、先輩……」

 

肌を紅潮させたマシュが僕を見つめてくる。なんだかいい雰囲気になっていないこれ?

メディカルルームはスタッフ不在で、現在、僕とマシュの二人きりの状態だ。……うっ、そのことを意識すると急にドキドキしてきてしまった。

 

「せ、先輩! あのですね! わ、私……!!」

「ひゃっ、ひゃい!」

 

マシュの勢いに思わず素っ頓狂な声が出てしまった。

 

「よければ、私に、先輩のお耳のお掃除をさせてもらえないでしょうかっ!?」

 

一瞬マジで告白されるかと思ったのは内緒だ。

 

「えっ、マシュが僕に耳かきを?」

「は、はい! 頼れる後輩系サーヴァントナンバーワンを自負している、このマシュ・キリエライトが先輩のお耳を綺麗にするのは当然の責務かと! この前読んだ書物にも、耳かきは親しい男女が必ず行う通過儀礼のようなものとありました!」

「うーん、その情報は正しいような正しくないような……。というより、そもそもマシュは耳かきの経験があるの?」

 

このカルデアに耳かきのための道具が販売されるようになったのはつい先日のことだ。カルデアで生まれ育ったマシュが耳かきの経験があるとは思えないが……。耳かきの経験がない人に自分の耳を託すのは例えマシュであっても少しこわい。

 

「いえ、知識はありますが、まだ実践経験はありません。正直なところ、今の私が耳かき棒を使っても、先輩を気持ちよくさせてあげるどころか、怪我させてしまう可能性だってあります……。なので、今回は耳かき初心者の私でも扱えるこの道具を使ってお掃除したいと思います!」

 

そう言うとマシュは、メディカルルーム内の棚に置かれていたプラスチック容器を手に取り、それの中身を取り出す。

 

「そ、それは……」

 

それは、紙で出来た棒の先端に脱脂綿を蒔き付け丸めたもの。医療用品やメイク用品としても使われることがある道具だ。

 

「はい、綿棒です!」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「では、先輩、私のお膝にごろんとしてくださいね」

 

メディカルルームに設置されたベッドに腰掛けたマシュに促され、僕は彼女の膝枕へと頭を乗せた。彼女の履いているタイツのざらざらという感触が沖田さんのそれとは違い新鮮な感じがする。

 

「さて、お耳の中は……。さすが先輩、ほとんど汚れがありません。日頃からお耳の中も清潔にされているのですね!」

「そ、そうかな……」

 

ちなみに、さっき話した事情の中には沖田さんに耳かきしてもらったという話はぼかして伝えている。だって、二人きりのときに他の女性サーヴァントの話をするとマシュの目がこわいんだもん……。

 

「それじゃ、綿棒を外耳道に入れて細かい汚れを取っていきますね」

 

さりさり……と耳の産毛をかき分けて綿棒が耳の内部へ侵入してくる。耳かき棒とは違い、耳の壁を面で優しく刺激できるのは綿棒の特徴だ。入れるだけでも気持ちいい。

綿棒を上下に動かすとしゃりしゃりと、細かい耳垢の粒が綿棒の先端に絡み取られる音がする。

しゅりしゅり……。しゅくっ。そり……すっ……。しょりしょり……。

何度か綿棒を上下に往復させ、しゅくっと綿棒が一旦取り出される。一分にも満たない時間だったので、正直もっとして欲しい。

 

「はい、これで細かい汚れを取ることはできました。次に汚れていない方の先端で、お耳を優しくマッサージしていきますね」

 

僕の物足りなさを感じてか、マシュが綿棒でマッサージを開始してくれる。さすが頼れて気遣いのできる後輩系女子だ。

さりさり……。しゅくっ……。さわっ。しゅくっ……。すぅっ……。

綿棒の腹で優しく何度も耳の壁をなぞってくれる。あー、気持ちいい。これ好きだ。

 

「次に綿棒を回転させて、全体をマッサージしていきますね」

 

綿棒を親指と人差し指でつまむように持ち替え、くりくりっと綿棒をゆっくり回転させる。耳の中全体を連続でなぞっていく刺激に思わず声が漏れてしまうほどだ。

くるっくるっ……。さり……。くるっ……しょり……。しゅりしゅり……。

 

「くすっ、先輩可愛い……。このくるくる、気に入りましたか? そろそろ、反対のお耳にいきましょう。気持ちよくてもあまり連続でやり過ぎると傷ができてしまうそうですから」

 

もっと続けて欲しかったがまだ反対側の耳が残っていると思い、素直に頭の向きを変える。

 

「では、汚れてしまった綿棒を取り替えて、と。まずはこちらもお掃除からいきますね」

 

さりさり……と、先ほどと動揺に産毛をかき分け綿棒が入ってくる。

しゅり……。しゃりしゃり……。すぅ……。しゃりしゃり……。

やっていることは同じなのだが、右耳と左耳で感じ方が違うのか、気持ちよさも先ほどのものとはやや違うものになっている。

しゃり……。しゅりしゅり……。しゃりっ……。

掃除が終わると綿棒が一度抜かれ、マッサージのための耳かきが始まる。

さりさり……。しゅりっ。しゅっ……。さくっ……。しゅくっ……。すっ……。

 

「先輩の好きなくるくる、いきますね」

「ん、あふぅ……」

 

ぞわわっと快感に全身が襲われ、声と共につま先がぴくぴくっと反応してしまう。

くるっ……。そわわっ……。しゅり……。くる……くる……。しゅりり……。

数分ほどして耳のマッサージが終わり、綿棒が引き抜かれる。

 

「どうでしたか、先輩? 私、ちゃんと先輩のことを気持ちよくできたでしょうか?」

「う、うん。すごい良かったよ。初めて耳かきしたとは思えないくらい上手だったよ」

 

素直にそう述べると、マシュはぱぁっと表情を明るくした。彼女がもし犬ならしっぽをぶんぶん振り回しているのが見えるのだろう。

 

「あの、先輩。もしこれからお耳が痒くなったり、耳かきをして欲しくなったらすぐに私を呼んでくださいね? 耳かきのできる後輩系サーヴァントのこのマシュ・キリエライトに、先輩のお耳の管理は任せてください!」

「う、うん。頼もしいよ。これからもよろしくね」

 

この後、マシュが独学でどんどん耳かきや耳マッサージの技術を身につけ、あまりの気持ちよさに僕がアヘアヘ言わされるのは、もう少し先の出来事だ――。



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ニトクリスに耳の外側をふきふきしてもらう話。

「はぁ、エミヤの耳かき気持ち良すぎた」

 

ホクホクとした顔で食堂を後にする僕こと、藤丸立花。最近の趣味は耳かきをしてもらうこと。ついさっきも食堂にいたエミヤ(弓)に耳かきをしてもらったばかりだ。いい年になって耳かきをしてもらうなど……と少し小言も言われたが、きっちり最後まで綺麗にしてくれた。エミヤって下手な女性よりおかんみがすごい気がする。

 

「後は部屋に戻ってシャワって寝るかな。明日も素材集めの周回だし、はよ寝よっと」

 

軽い足取りでマイルームへと戻ると、扉の前に一人のサーヴァントが立っていた。

 

「あれ、どうしたの? ニトクリス?」

 

大胆に晒された健康的な褐色の肌が溢れるほどに眩しい。

 

「やっと戻りましたか、我が同盟者。まったくファラオを待たせるとは不敬ですよっ」

「えっ、ごめん。でも、待ち合わせの約束とかしていなかったし……」

「ま、まぁ、確かにそうですね。……コホン、とりあえず立ち話もなんですし、部屋に入れてもらっても?」

「あ、うん。今開けるね」

 

カードキーを使いマイルームの扉を解錠する。ニトクリスを中へ入るよう促すと、彼女はぽすんとベッドに腰をかけた。なんかもう若くて綺麗な女性がベッドに腰掛けるとそれだけでちょっと興奮してしまう。

 

「それで、貴方に話があって待っていたわけですが――。何だか顔が赤くありませんか?」

「ええっ。ううん、さっき走ってきたせいかなー。そのせいだなー。あははは」

「そ、そうですか。トレーニングを怠らないとは良い心がけですね」

 

何だか良い方に解釈されてしまった。少しの申し訳なさを感じる。

 

「それで、僕に話っていうのは?」

「その、偶然にも、偶然にですよ? 貴方が耳の掃除をされるのが好きだと聞きまして……。それでその、マスターである貴方が耳の詰まりから戦闘に支障を来してしまうのは私にとっても問題ですから? このニトクリスが貴方の耳の汚れを取ってあげようかと思いまして。ええ、良いのです。同盟者たる貴方だからこそ特別ですよ。頭を垂れ、喜びなさいっ!」

「え、ごめん。さっきエミヤに耳かきしてもらったばかりだから……」

「ふふっ、しょうがないですね我が同盟者は。さぁ、私の膝に頭を乗せ……。えっ、今何と?」

 

僕の返答が想定していたものと違ったのか、ニトクリスが固まってしまった。

 

「さっき、耳掃除してもらったばかりで、一日に何度も耳かきをすると耳を傷つけてしまうから、その、ごめん……」

 

なんでこうもタイミングが悪いのか。気まず過ぎる。

 

「えっ、えっ、じゃあ、私はどうすれば?」

「それは、耳掃除はまた次回ということで今日はお帰りいただくしか……?」

 

ニトクリス顔真っ赤じゃん。ぷるぷる震えて泣きそうじゃん。……可愛いじゃん、好きだ。一緒に海辺で水をかけあってイチャイチャしたい。

 

「えっとその、僕シャワってくるからさ。ニトクリスも明日の周回メンバーだし早く寝た方がいいんじゃないかなって」

「…………。ま、待ちなさい! この私の誘いを断るなんて不敬ですっ! 不敬不敬

っ!!」

 

子供みたいにだだをこね始めてしまった。どうしたものか。

 

「じゃ、じゃあ、この前もらったマッサージオイルがあるんだけど、僕がニトクリスにマッサージでもしてあげようか? ……なんて」

「いえ、それは、何だか嫌な予感がするので遠慮しておきます」

 

これでもマッサージには自信があるのだが本人が嫌なら止めておこう。

そして、少しの間お互い口を開くことができずシーンと気まずい時間が流れる。眉間に皺を寄せて俯いていたニトクリスだが、何か思いついたのか顔を上げて僕にこう言った。

 

「その、先ほどは耳の内部を掃除されただけなのですね?」

「え、うん。耳掃除といったら耳の中の垢を取るんだから、そういうことになるけど」

 

そう返答すると、ニトクリスはしめたという顔をする。

 

「そ、そうですか! ふふふ、耳掃除というのもを勘違いしているようですね、マスター。耳の内部に垢が溜まるのと同様に、耳の外にも汚れがつくのは当然のこと! ましてや常に晒されている外側の方こそ汚れやすいといってもいいでしょう! さぁ、今一度私の膝枕に頭の乗せるのです! さぁ!!」

「ひえっ、は、はい……」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「ふふっ、まるで赤子のようですね。可愛いですよ」

 

子供をあやすように頭を撫でられる。恥ずかしいが何だか気持ちよさもある。

というか、ニトクリスの生足膝枕ヤバイ。マジで。下の服装もほぼ下着みたいなもんだし、雑念を捨てねば不敬を起こしてしまう。

 

「……思った通り、耳介や耳の裏側に汚れが溜まっていますね。特に裏側の汚れは臭いの元にもなるのですから、我が同盟者としてきちんと清潔を保ってくださいっ」

「そ、そうなんだ。ごめん」

 

いつもちゃんと洗っていたつもりなのだが十分ではなかったみたいだ。耳の裏の汚れなんて普通は目に見えないもんだし。

 

「それでは、耳のマッサージも兼ねて化粧水をコットンになじませて拭いていきますからね。じっとしてください?」

 

どこから取り出したのか化粧水のボトルと取り出し、コットンにぼとぼとっと液をなじませていく。

ぴたっ――っと、ひんやりとした触感が耳に当たり思わずビクリとする。

 

「もうっ、じっとしてくださいと言ったではありませんか」

「ご、ごめん。少しびっくりして……。もう大丈夫だから続けてもらってもいいかな?」

 

すっ……。しゅうぅ……。くくっ……。しゅっ……しゅっ……。

耳介に押し当てたコットンを動かすとしゅうっと化粧水が耳に浸透する音だろうか。不意義な音が聞こえる。まずは全体の表面を優しく撫でられ、同時に耳たぶを彼女の綺麗な指先で軽く摘まむようにマッサージされる。まるで赤子が母にされるように、僕はニトクリスに身を委ねる。

 

「ふふ、気持ちよさそうですね。次は耳の溝を一つ一つなぞって綺麗にしていきます」

 

ぐっ。ぎゅっ……ぎゅぎゅっ……。きゅうっ……。

先ほどより力を込め、コットンが丁寧に溝のなぞり上げていく。耳の外側が文字通り綺麗になっていくのを感じる。

耳の溝をすべて綺麗にし終わると、最後に耳の穴の入口へコットンを押し当てゆっくりと回転させていく。耳の穴が塞がれ、コットンを動かす音が内部でぞわわっと響いてゾクゾクする。

 

「はい、仕上げに耳の裏の汚れを拭き取りますよ」

 

ニトクリスは耳たぶを持って耳を内側に閉じ裏側を拭きやすいように露出させる。

くっ……ぐくっ……。と、コットンで二、三度擦りあげる。

 

「ほら、見てください。これだけの汚れが貴方の耳についていたのですよ?」

「ひえっ、真っ白だったコットンが薄く黄色に染まっちゃってる……」

「ふ、ふふふ。やはり私の考えていた通りですねっ。さぁ、ごろんと頭の向きをかえませいっ」

 

ううっ、ニトクリスのむちしっとり太ももヤバイ。ここに住みたい……。頬を押し当てると吸い付いてくるようだ。

 

「こちらの耳も同じくらい汚れがついていますね。汚れたコットンも変えて、と」

 

ぽととっと化粧水をこぼす音。これ好きだ。雨音とか水滴が落ちる音って何だかずっと聞いていたくなる。

 

「まずは表面をさっと拭きますね」

 

ひたっ……。すっ。しゅっ……しゅっ……。しゅうぅ……。

表面を拭き終えると先ほどと同様の手順で溝をなぞり上げていく。

ぎゅっ……。きゅっ……ぎゅう……。きゅきゅっ……。

途中、慣れない膝枕をしていたせいか、ニトクリスがもぞもぞと足を動かし、ぴたっとくっつけられていた太ももをやや開脚させる。同時に彼女の内側に籠もっていた匂いが鼻腔を刺激した。

 

「? 耳が赤いですよ、マスター?」

「ご、ごめ……。気持ち良くて、その……」

 

彼女の汗の匂いが鼻を通して脳を揺さぶってくる。ああ、マズイ。非常にマズイが目を離せないし嗅ぐのを止めることもできない。

少しして、不敬をニトクリスに見つかることになるが、それはまた別のお話だ――。



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沖田オルタちゃんにも膝枕で耳かきされる話

「ふぅ、何の予定もなくのんびりするのも久しぶりだな」

 

今年のギル祭りも終わり、僕は久しぶりに自室でくつろいでいた。

体感的には三ヵ月くらい時間が過ぎている気がするが気のせいだろう。多分。うん、多分……。

 

「入るぞ、マスター」

 

そう言って導入もそこそこに入ってきたのは、沖田総司オルタナティブ、別名沖田オルタちゃんであった。というか、返事する間もなく入ってきたねこの人。

 

「あれ、沖田ちゃん。今日はどうしたの?」

「ああ、マスター。ちょっと聞きたいことがあるのだが」

「あ、うん。何かな?」

「マスターは最近ぼっくすがちゃとやらで忙しかったのだろう。だから、『溜まって』いるのではないか?」

「えっ、たまって……。えっえっ……。えっ……?」

 

直球すぎる質問に思わずどもってしまう。

 

「どうなんだマスター? その、忙しいと『溜まって』しまうものだと聞いたのだが、間違っていただろうか?」

「いやその、間違ってはいないというか。うん、間違ってはないんだけど、僕も男だからそういうことを言われると、その、少し困るというか……」

「? 何か問題があるのか? もし溜まっているのなら、私がシてやろうと思ったのだが。ダ・ヴィンチちゃんのお店で道具も買ってきたことだからな」

「ええっ!? 道具も!?」

 

このアルターエゴ、スケベすぎるっ……。結婚しよ……。

 

「ああ、煉獄耳かき棒だ。かっこいいだろう?」

 

そう言って取り出した通常のものよりも細長い黒色の耳かき棒を見せてくる。

 

「えっ、耳かき棒? えっえっ……。あっ……。あ~、そうね耳かきね! いや、分かっていたよ。最初からね。うん全部知ってた。マスターだからね。マジ本当だから」

「? それで、溜まっているなら耳掃除してやるがどうだ? というか私がやりたいぞ。やりたみ」

「じゃあ、その、お願いします」

 

ややこしい言われ方だったのか、それとも僕の心が汚れているだけなのだろうか。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「マスター、私の膝にごろんとしてくれ」

 

ベッドに腰かけ、自らの太ももをぺちぺちと叩き、僕にそこに来るように言う。

 

「それじゃ、お邪魔します」

「ふふっ、私のむちしっとり膝枕はどうだ? 痛くないか?」

「い、痛くはないけど、その言い方どうしたの?」

「ああ、ダ・ヴィンチちゃんがこう言うとマスターが喜ぶと言っていてな。どうだ?」

 

これきっとさっきのやり取りもダ・ヴィンチちゃんの入れ知恵だな。

僕はなんとなく恥ずかしくコクコクと頷き返事をした。沖田ちゃんはその様子にとても満足したようだった。

 

「まずは耳の外側をふきふきするぞ。冷たい化粧水をしみ込ませたこっとんで拭いていくぞ」

 

そう言い、ぽとぽとと化粧水をコットンへ染み込ませ耳の外側へと当てる。ひんやりとした感触が気持ちいい。

しゅっ……。くくっ……。しゅうぅ……。きゅっ……。きゅっ……。

まずは、耳の付け根から。優しく撫でられる感覚が心地いい。

 

「ふき取り化粧水というやつらしいぞ。これで外側の汚れを取っていくからな」

 

外側を掃除し終えると、次に内側の溝へと移った。先ほどまでよりやや力を込め掃除していく。拭くというよりぬぐうという感じだろうか。

ぐっ……。ぎゅっ……。ぎゅぎゅっ……。くっ……。

片耳が終わると反対側も同じように綺麗に拭かれていく。あまり気にしていなかったけど、拭いてもらう前と後では心なし耳の軽さのようなものが違う気がする。うまい表現が分からないが清々しい感じというか。

 

「よし、お待ちかねの耳かきで掃除していくぞ。」

 

そう言い、沖田ちゃんは煉獄耳かき棒を耳の内部へと侵入させてゆく。

 

「最初は入り口付近の細かい汚れを優しくなぞっていくぞ」

 

すすっ……。すっ……。すっすっ……。

耳かき棒を巧みに使い、先端部分で優しく何度も入り口を刺激される。

こそばゆくも耳内部をマッサージされている感覚に背筋がぞわわっとなり、思わず吐息が漏れる。

 

「気持ちいいか? 可愛いぞ、マスター」

 

自身の耳が紅潮してゆくのを感じる。女子に可愛いと言われても嬉しくないという人がいるが、ぶっちゃけこんな美少女に膝枕されて可愛いって囁かれるの本当ヤバイ。雄であることを辞めてしまうレベルでヤバイ。

 

それから沖田ちゃんは徐々に耳の深部へと耳かき棒を徐々に"掻き"進めていく。

手先が器用なのか沖田ちゃんの耳かきはとても上手く、僕は彼女の太股に溶けてしまうんじゃないかというぐらい蕩けきっていた。

 

「ふぅ、これで大体綺麗になったな」

「ぅん、沖田ちゃん有り難うね。本当、その、すごかったよ……」

 

まるで事後の女子のようなコメントだと自分で思った。恥ずかしい。恥ずかしみ……。

そろそろこの太股での生活(もとい耳かき)も終わりかなと思い立ち上がろうとすると、上から沖田ちゃんに押さえつけられてしまった。えっ、ここに永住してもいいの!?

 

「まだだぞ、マスター。まだ耳掃除は終わっていないぞ」

「え、でも、いつもやっているところぐらいまではやってもらったよ……?」

「マスター、煉獄耳かき棒はな、伊達じゃないんだ」

 

漆黒に黒光りする耳かき棒を持ち、沖田ちゃんは自身満々にそう宣言した。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

こりっ……。そりっ……。ぞりりっ……。

 

「あっ……。おっ……。んふぅ……。んおおっ……」

 

先ほどまでとは桁違いの衝撃。耳の奥が圧迫されるような苦しみ、その中でかすかにある気持ちよさ。まるで災厄が解き放たれた後のパンドラの箱のよう。

僕は、彼女の通常より細長い耳かきにより、未開発であった鼓膜付近を耳掃除されていた。

ぞりっ……っと一掻きされる度に息が荒くなる。新雪に足跡を残すかのように、今まで誰にも触れられたことのなかった敏感な部位を踏破されてゆく。

 

ずりっ……。くくっ……。

最初こそ苦しいとしか感じなかったが、それが少しずつ和らいでいくのを感じる。耳かきの振動が耳奥から脳に伝わり、頭部全体が彼女に犯されてゆく。

涙が浮かび、鼻からも口からも体液が漏れ出す。これは知ってはいけない感覚だ……。

心も体も白旗を揚げた頃、やっと沖田ちゃんによる耳かきは終了した。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「どうだ、ちゃんと耳かきできていたか? マスター」

 

純朴な表情で首を傾げながら沖田ちゃんはそう尋ねる。

正直、衝撃度だけで言えば今までしてもらった耳かきの中で一番凄かった。しかもこれで耳かき初心者だというのだから、今後彼女がさらなる進化を遂げたとき一体どうなってしまうのか空恐ろしくもある。

僕が褒めると、沖田ちゃんはニコリと嬉しそうに笑った。

 

「ときにマスター。一つ聞きたいことがあるのだが」

「あ、うん。僕に答えられることなら」

「耳垢の臭いはおでんの香りと似ていると聞いたのだが本当か?」

 

だ、誰だ純粋な彼女にそんなことを教えたのは!?

 

「そ、そんなことは……ないよ! いや、正直僕も耳垢を嗅いだ経験なんてないからどれぐらい違うかは分からないけれど、それはきっと違うと思う!」

「うむむ……。でも、マスターも分からないのなら、ちょうどここにマスターの耳垢もあるし試してみよう」

 

そう言い、彼女はティッシュの上に置かれた僕の耳垢へと鼻を近づけ――。

 

「えっ!? ちょ、まっ! まってぇっ!!?」

 

僕はそれを全力で阻止しにいったのだが、果たしてどうなったかというのは僕だけの心の中にしまっておくことにしよう……。




前半部を去年の10月くらいに書き、後半部を今年の8月に書きました。
ので、途中で文体が変わっているような。そうでもないような。

耳かきをさせたいサーヴァントはたくさんいるのですが、耳かきのバリエーションが思いつかないため、今後は思い立てば更新という感じになります。(1年に1回更新できればいいねレベル)

ぐっちゃんパイセンに悪態をつかれながら耳かきしてもらいたいだけの人生でした。
皆様もよきFGOライフを~~。


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