インフィニット・マスクドライダーズ (赤バンブル)
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転生したけど原作と全く違う件
他の作品の物を別作品の世界に出したらどうなるか・・・・・・・
俺はいわゆる転生者だ。
よくあるトラック事故に撥ねられ、神様から転生特典をもらって別世界へと転生するっていうアレである。
まさか、本当になるとは思ってみなかったな~。
神様はどっかで見たような胡散臭そうなおっさんだったけど俺は本来死ぬはずがなかった人間だったそうで本来生きるはずだった寿命分、特典を付けてくれると言ってくれた。
俺は最初に転生先をインフィニット・ストラトスの世界にしてもらった。
勿論ISは俺の大好きな仮面ライダーにする。
色々迷ったけど、なるライダーは俺が見た中では最新作の「仮面ライダージオウ」。
映画については知らないけどとりあえずグランドジオウまでのウォッチを時期によって解放ということでとりあえずは初期のライドウォッチは一通り使えるようになった。
『これでお前はあの世界における仮面ライダージオウだ。』
おっさん神様はそう言いながら俺にジクウドライバーとジオウライドウォッチを手渡す。
『言っておくが解禁は最低で小学生辺りからだ。体が成長しない内に変身したら体の負担が大きいからな。その後はまあ、時期が来ればジオウⅡウォッチも使えるようになるだろう。せいぜい来世を楽しみな。』
俺はこうしてジオウの力を持ってISの世界に転生した。
名前は「常間壮一」。今の俺の名前だ。
俺はこれから自分の大活躍劇が始まるとウキウキしながらIS原作の時期まで待ち続けた。こういうのは力に呑まれて暴走する危険性があるからある程度落ち着いてからにしないと。
ISと言えば主人公の織斑一夏の周囲がハーレム状態だからな。
普通なら全ヒロインと仲良くしたいと思うけど流石に世界観がおかしくなるかもしれないのでせめて簪ちゃんかシャルロット辺りぐらいとは仲良くなりたい。
そんなこんな考えているうちにでついにIS原作突入。
俺は今IS学園初の男子生徒としてISについて学んでいる。
周囲の女の子も可愛いし
あれ?初の男子生徒?
何かが足りないような気がする。
俺は自分の座っている席を確認してみる。
そこは本来主人公であるはずの織斑一夏が座るはずの席だった。そう言えばISをうっかり起動したときも織斑一夏と同じ場面だったような気がする。
何故、一夏がいないんだ?
それだけじゃない。
彼の幼馴染であり、メインヒロインである篠ノ之箒の姿もなかった。
変だな?
俺が調べた限り、「白騎士事件」は原作通り起きているし、担任である織斑先生は普通に教卓の方にいる。
後、モンド・グロッソも原作通りに展開されていたはずでその時一夏は無事に保護されている。
どうなっているんだ?
俺は気になって放課後、織斑先生に声をかけて聞いてみた。
一夏はどうしたのかと?
織斑先生は一瞬険しい顔をしたが
『弟は別の高校に通っている。』
とだけ答えた。
これ以上聞こうにも流石に詳しすぎると怪しまれると感じたので俺は一旦寮の方へと引き上げることにした。
その時チラッと見た織斑先生の顔はどことなく何か苦しそうに見えた・・・・・。
そして、今現在寮の部屋にいるんだけどなんかおかしすぎる。このISの世界。
今日が学園生活初日なんだけど最初のイベントともいえるセシリアが突っかかってくることはなかったし・・・・っていうかこの世界のセシリアなんかすごく大人しかった。
寮の部屋は普通の個室になっている。
確かに俺は一夏とは別人だけど・・・・・ここまで違いが出てくると何か違和感がある。
俺はその日の夜、寮の織斑先生の部屋をこっそり調べに行くことにした。
<ジオウ!>
俺はジクウドライバーを腰に装着し、ジオウライドウォッチを装填して回転させた。
「変!・・・・おっと、静かにしないと怪しまれる・・・・・変身。」
<ライダータイム!>
<仮面ライダージオウ!>
変身が完了すると鏡にはテレビでしか見れなかったかジオウに変身した俺が映っていた。
「さてと・・・・・・」
俺は手を翳すと姿が消える。
このジオウは一応ISという扱いになっていて神様の得点で見つからないように特殊な光学迷彩が晴れるようになっているんだ。これで怪しまれることなく部屋にも侵入できる・・・・・あっ、ちなみに壁はすり抜けられないのでご注意。
俺は部屋をこっそり出て織斑先生のいる部屋へと向かった。
この時間帯も大分遅いからおそらく酒でも飲んで寝ているのか、仕事をしているかになる。・・・・・まあ、私生活はズボラらしいから後者は微妙だけど。
恐る恐る部屋のドアを開けてみると中は暗かった。慎重に部屋を調べてみるけど織斑先生はいなかった。
「変だな?この時間帯ならいてもおかしくないんだけど・・・・・!」
俺はふと机の上に出席名簿ががさつに置かれているのに気が付く。
「・・・・・本当に一夏の名前ないのかな?」
興味本位で俺は名簿を除いてみる。するとあの名前に目が行く。
篠ノ之箒
「なんで箒の名前が?今日はいなかったのに。でも、消されているって・・・・・・」
ここまでくるとここが本当に俺が読んでいたインフィニット・ストラトスの世界のなのか怪しくなってくる。
原作なら初のIS学園男子生徒であるはずの一夏の不在。
出席名簿から消されている箒。
もしかして、俺が転生してきたせいでこの世界に何らかの異変が生じてしまったのでは?
俺は不安に駆られて寮から学舎の方へと向かう。
学舎は夜ということもあって不気味に感じた。
教室を一つ一つ見歩きながら俺は一階で隠し扉を発見する。どうやら地下へと繋がっているらしく階段を降りるとそこには某ゾンビゲームで出てきそうな実験設備があった。
「・・・・・もう、俺の知っているISじゃねえ。」
俺は恐る恐る歩いて行くとある少女が食事を盛った盆を持って歩いているのを見つけた。長い黒髪でポニーテールで胸が結構大きめ・・・・・って、あれ?あれ、箒じゃない?
「名前が消されていたのに。」
でもまあ、いたということが分かったので少しホッとした。暴力系ヒロインだけどISでは欠かせない一人だからね。
俺は少し距離を置いて箒の後を付ける。しばらくするとある扉の前に足を止めた。
(ここが彼女の個室か?)
俺は気になって彼女の近くへと近づいていく。
『グルルルル・・・・・・・』
(!?)
彼女のすぐそばまで来た瞬間、不気味な唸り声が聞こえて俺は思わず彼女から離れた。
(何だ今のは・・・・・・)
ビビった俺に気づくことなどなく箒は扉をノックする。
「・・・・・食事を持ってきた。」
すると扉の向こう側から声が聞こえた。
『ソ、ソコニ・・・・置イトイテクレ・・・・』
そう言うと彼女は部屋の前に盆を置く。すると差し入れ口から真っ黒なかぎ爪の生えた手が出てきて盆を部屋の中へと持ってった。
箒はしゃがみながら見えない相手に対して声をかけ続ける。
「今日、学園の入学式があったんだが・・・・・この学園に初の男子生徒が入ったそうだ。確か・・・・常間壮一だったかな。」
『・・・・・・』
「それでな、今日千冬さんがここに来た時そいつに声をかけられて・・・・」
『箒。』
「ん?」
『俺ハ・・・・・イツマデ生キナクチャナラナインダ?』
「えっ?」
扉の中の声を相手に箒は不安そうな顔をする。
『昨日モ、束サンガ、オレノ体ニ実験シタガ結局ナニモ変ワラナカッタ。・・・オレハ、マタ誰カヲ襲ウンジャナイカッテ・・・』
「だ、大丈夫だ!姉さんのことだ。きっとお前を人間の姿に戻せ・・・・・・」
『戻レル保障ナンテドコニアルッテイウンダ!?オレハ、ナンダ!?ニンゲンカ!?化ケ物カ!?モウ、最近ハドッチダッタノカスラワカラナクナッテキタンダ!!』
扉の中の声が恐ろしい声で叫んだ。
俺は離れたところから聞いている俺にも聞こえ、その声はどこか悲しさを感じられた。
『オレハ・・・・・・・俺ハ、怖インダ・・・・・マタ、アノトキノヨウニ、人ヲ・・・・ニンゲンノ肉ヲ・・・・・』
「もういいんだ・・・・・あれはお前のせいじゃない。」
『イヤ・・・・・・・ソモソモ千冬ネエニ助ケラレタトキカラオカシカッタンダ・・・・・トキドキ、ヒトヲ襲ウ夢ヲミテ・・・・・・・・気ガ付イタラ・・・・・』
「やめよう。やめてくれ・・・・」
箒は泣きそうな顔で言う。
『オレハ・・・・・今ノスガタニ、ナッテ・・・・・・ダンヲ・・・数マヲ・・・・・・クラスノミンナヲ喰ッチマッテイタンダ!!』
「アアアアアアアアアアアアア!!」
箒は悲鳴を上げながら耳を抑える。
ダンと数マ?
もしかして、コイツは・・・・・・
「もういい!もういいんだ一夏!お前のせいじゃないんだ!お前は悪くないんだ!!だから・・・・これ以上私の知っている一夏じゃなくならないでくれ・・・・・・・」
箒は扉に両手を打ち付けながら泣き崩れた。
この扉の中にいるのは一夏だったのか。
俺は、思わずぞっとしながら泣いている彼女を見る。
でも、化け物と言っていたけど一体どんな姿になっているんだ?
もしかして・・・・一夏を攫った相手は亡国企業じゃなくてショッカーとかじゃ・・・・。
『グ、グワアァアアア!?』
「!?どうした一夏?」
扉の向こう側で苦しみだした一夏の声に箒は顔を上げる。
『ウゥウウ・・・・マタ、起コッタ・・・・・・破カイ衝動ニ侵サレテ・・・・』
「待っててくれ!急いで姉さんたちを呼んでくるから!」
箒は急いで部屋の前から去って行った。
それを確認すると俺は部屋の前へと足を運ぶ。幸い、ドアには隙間窓が取り付けてあるのでそこから見ることができる。
「一体どんな姿に・・・・・」
俺は窓から一夏の姿を確認しようとした。
っが、次の瞬間俺の目に赤く発光する複眼が映った。
『グワアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
「うおっ!?」
頑丈に作られている扉が吹き飛び、俺は壁の方へと突き飛ばされる。
「いててて・・・・・・」
変身していなかったら死んでたかもしれない。
吹き飛んだ衝撃で光学迷彩が解けてしまった俺はその場で一夏の全貌を見る。
長い三本角に赤い複眼、牙が剥き出しのクラッシャー。
映画で見たものによく似ているが体形は人間にかなり近づけられて、右肩には『KUUGA』の名前が刻まれていた。
「アナザー・・・・・クウガ・・・・・・」
『グシャアアアァアァァァァァッァァァ!!!』
ジオウに変身している俺の目の前でアナザークウガは口を開いて襲い掛かる。
感想待ってます。
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ベストマッチとタイムブレーク
「くっ!」
俺は、咄嗟にアナザークウガの噛みつきを阻止する。
映画ほどの大きさではないけどやはりオリジナルである仮面ライダークウガを歪めたような姿は何とも凶悪に感じる。
『グアアアァアア!!』
こんな時に光学迷彩が解けたのは何とも不運なものだ。アナザーライダーは確か同じライダーの力でしか倒せない。関係なく倒すことができるジオウライドウォッチⅡはまだ手に入っていない・・・・となると優先的にクウガライドウォッチを装填してアーマータイムを使えばいい。幸い初期のウォッチの中にクウガライドウォッチもカウントされていたため、俺はアナザークウガの攻撃を回避しながらクウガウォッチを手に取り、起動させた。
<クウガ!>
『ゴシャアアアァァァア!!』
「うおっ!?」
次の瞬間、アナザークウガの爪が俺の前に伸び、クウガウォッチを危うく手放しそうになった。
「あぶねぇ・・・・・」
俺は距離を取り直してジクウドライバーの左側にクウガウォッチを装填し、ボタンを押して回転させる。
<ライダータイム!>
<仮面ライダー、ジオウ!!>
<アーマータイム!>
俺の目の前にかつてTVで見たクウガの巨大なマークが現れると同時にクウガアーマーが出現する。
<キュィン、キュィイン、キュイ、キュィイン・・・・・・・・クウガァ!>
炎に燃えながら音声に合わせてアーマーが分解し、体に装着されて顔の文字は「クウガ」へと変わり、俺は「仮面ライダージオウ クウガアーマー」へとなる。
このアーマーには仮面ライダークウガ マイティフォームの力が宿っており、アナザークウガに対しても十分な効果がある。
「待っててくれよ、織斑一夏。すぐに元に姿に戻してやるからな!」
『ダマレェェエエ!!』
正気を失っているのかアナザークウガは、口を開きながら俺に向かってくる。俺は落ち着いて構えを取り、彼の攻撃を受け流しながらカウンターを喰らわせる。
「ハッ!」
『グッ!?』
今まで自分と同じ力を持った相手と戦ったことがなかったのかアナザークウガは、俺の攻撃を諸に受けて僅かならが怯む。
「アナザークウガと言えば映画では強敵だったからどうしようかと思ったけど・・・・・なんか行ける気がする!」
『ホザケェエエエエエ!!』
アナザークウガは俺に向かって回し蹴りを披露するが俺は態勢を低くして身を躱す。
『オマエハ誰ダァアアアア!!オ前モ、オレニ食イ殺サレタイノカァアアアア!!』
「!?」
俺は目の前のアナザークウガの変化に驚く。
アナザークウガは地下の鉄パイプを捥ぎ取り、そのパイプを禍々しい大剣へと変化させたのだ。
「あれは・・・・まさかタイタンソード!?」
形状が原作である仮面ライダークウガに出てきた強敵 ゴ・ガドル・バ剛力体が使用していたガドルソードに近いが装飾は僅かながらオリジナルに近い。
『シネ!』
アナザークウガは目を紫へと変化させ、赤い体色は紫と黒に近い濁った灰色と変わる。
「くっ!間に合わない!」
<ジカンギレード!>
俺はジカンギレードでガードするがタイタンフォームに変化した影響なのか凄まじい力が体にかかる。
『シネ!シネ死ネ、死ネ、死ネ、シネ!!オレヲ、コンナ姿ニシタ奴モ、オレヲバカニシタ奴ラモ、ミンナ、シネ!!』
「まずい・・・・・完全に自分を見失いかけている・・・・・」
何とか態勢を整え直さなくては。
このままだと力押しで負ける。
だが、体勢を立て直そうにもアナザークウガ タイタンフォームのパワーの目の前には流石に同じ力を持つクウガアーマーでも対処しきれない。俺は攻撃を耐えるのがやっとで叩きつけられるたびに床にめり込んでいく。
「やば・・・・・流石にこれ以上は・・・・・・・」
<ゴリラ!>
<ダイヤモンド!>
<ベストマッチ!>
その時だった。
少し離れたところから聞き覚えのある電子音が聞こえた。
音が聞こえた方を見るとそこには篠ノ之束の姿があった。
でも、どういうわけか腰にはビルドドライバーが装着されている。
「ごめんねいっくん。悪いけど少し動けなくするからね。」
<Are you ready?>
彼女の周囲にはスナップライドホルダーが出現していた。
「変身!」
同時に彼女にハーフボディが合わさり、仮面ライダービルド ゴリラモンドフォームへとなった。
<輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イェイ!>
「はああああ!!!」
ビルドへと変身を終えた束は、俺に攻撃しているアナザークウガに向かってゴリラハーフボディで形成された右腕を打ち込む。
「えい!」
『ガアッ!?』
俺を始末することに夢中になっていたアナザークウガは、束ビルドの存在に気づかずそのまま壁へと激突する。
「今だ!」
俺は自由になると同時にジカンギレードを捨て、ベルトのジオウとクウガのライドウォッチを押し、ベルトをスライドさせる。
<フィニッシュタイム!>
<クウガ!>
「悪いがここで決めさせてもらう!」
俺は原点の仮面ライダークウガのように構えを取り、アナザークウガに向かって走り出す。そして、飛び上がると同時にヘルとを回転させた。
<マイティタイムブレーク!!>
「オリャアアアアアア!!」
俺は一回転するとアナザークウガに向かってキックを繰り出す。
『グッウウウ!!』
アナザークウガは、最初のキックを防いだものの、続く二度蹴り込んで吹き飛びし、身体に打ち込まれた紋章が俺の足裏にある「キック」の文字に変わり、勢いよく爆発した。
『ガアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「いっくん!?」
束ビルドは思わず爆散したアナザークウガを見て漠然とする。
この後厄介な話になりそうだな・・・・。
俺は着地すると爆心地を見る。
原作通りならアナザークウガの変身は解け、その場には気を失った一夏と砕けたアナザークウガウォッチが落ちているはずだ。
「なっ!?」
だが、そこには一夏ではなく、依然とアナザークウガが倒れていた。その横にはアナザークウガウォッチが砕けていない状態で落ちている。
「なんでだ?同じ力をぶつけたから元に戻るはずなのに!?」
<タカ!>
<ガトリング!>
「!?」
俺はビルドドライバーの音声を聞いて後ろを振り向く。その直後、ホークガトリンガーが俺の顔に突き付けられていた。
<天空の暴れん坊!ホークガトリング!イェーイ!>
束ビルドは、ホークガトリンガーを突きつけながら俺を見ていた。
「あ、あの・・・・・」
「君、何者なの?その恰好を見ると只者じゃないようだけど・・・・・そんなことよりもなんでいっくんを攻撃したの?彼は私たちと同じ人間なんだよ、もし殺したりなんかしたら・・・・・・・!」
束ビルドが俺に尋問をしようとした瞬間、俺たちの目の前にあった壁が崩れた。
「うわっ!?」
「おっと!」
瓦礫に埋まる俺を他所に束ビルドは背中の「ソレスタルウィング」を展開して、回避する。
『グシャアァアア・・・・・・』
「えっ?」
俺は瓦礫から顔を出すと驚かずにはいられなかった。
「あ、アナザークウガが・・・・・・・・二体!?」
そこにはもう一体のアナザークウガがいた。ただ、一夏クウガと違い、こちらは映画に出てきたのと同様の大きさで左肩には「2000」の文字が刻まれている。
アナザークウガは倒れている一夏クウガの方を見ると俺たちのことを気にすることなく、向かっていく。
「いっくんに手は出させないよ!」
束ビルドは、ホークガトリンガーでアナザークウガを攻撃しようとするがアナザークウガが手を翳した瞬間、弾丸はすべて止まってしまった。
「えっ?」
唖然とする束ビルドを他所にアナザークウガは、一夏クウガの前に来ると変身を解いた。
「・・・・・こんな形で回収できるとはな。」
変身を解いたアナザークウガの正体は俺も見たことがある男だった。
彼は、一夏クウガの目の前に転がっているアナザークウガウォッチを拾うと少し笑みを浮かべる。
「何年間も馴染ませた甲斐があったな。これとこのウォッチを融合させればようやく完成する。」
俺はこれはまずいとばかりに動く。すると男は俺の方を向いた。
「仮面ライダー・・・・ジオウ・・・・か。」
そこには俺が映画で見たスーパータイムジャッカー ティードの姿があった。
感想待ってます。
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暗躍する者
「何故、ティードがここにいるんだ?」
俺は一夏クウガの前に立っているティードを見ながら困惑する。
彼の手にはもう一つのアナザークウガウォッチが握られているがそれはおかしい。
アナザーライダーは昭和シリーズに登場する戦闘員や再生怪人とが違い基本的に一体しか存在しない。それもオリジナルのライダーの存在を上書きしてしまうことによって誕生するのだからこの世界では「仮面ライダークウガ」が存在していて、ティードがアナザークウガを誕生させてしまったことで上書きしたということになる。
しかし、この設定は原作と一致していない。
俺から少し離れたところにはISの世界に存在しないはずの「仮面ライダービルド」に変身した篠ノ之束がいる。
平成仮面ライダーは第二期を除いて、世界観に統一性がないからクウガと同じ世界にビルドがいるというのはないのだ(ヒーロー大戦とかはともかく)。
そんな俺を他所にティードはアナザークウガウォッチを見ていた。
「・・・・・まさか、この世界に仮面ライダージオウがいたとはな。それと仮面ライダービルドがいたのは計算外だったが・・・・まあ、目的の物が手に入ったし良しとするか。」
ティードはそう言うと自分の持っていたアナザークウガウォッチを一夏クウガから出てきたウォッチと合わせる。すると吸い込まれるかのようにアナザーウォッチはどうかしてしまった。
「ウォッチが一つにっ!?」
原作においてはアナザーフォーゼ戦でアナザーファイズから追加で上書きされたのを見たことがあるがあれはウォッチの効力が無くなりかけていたことがあってのことでウォッチそのものを一体化させたわけではない。
「ウォッチが一つになるのがそんなにおかしいか?」
俺の言葉を聞いて、ティードは俺にアナザークウガウォッチを見せびらかしながら言う。俺は思わず身構えるがその前に束ビルドが彼の後ろから斬りかかろうとしていた。
<忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!イェーイ!>
「はあああ!!」
4コマ忍法刀がティードの首に達そうとした瞬間、彼は手を翳して束ビルドの動きを止めた。
「隠れ蓑術で俺の背後にまで迫っていたか。」
ティードは束ビルドの方を見るとパチンと指を鳴らす。すると空間が歪み、別のアナザーライダーが二体召喚されてきた。
<EX-AID>
<GAIM>
「アナザーエグゼイドにアナザー鎧武!?」
「ん?変だな、こいつらを使ったのはこれが初めてなんだが。」
束ビルドの相手を二体に任せながらティードは、俺が二体のアナザーライダーの名前を知っていたことに疑問を感じていたが過ぎに何か思い当たることがあったような顔になる。
「そうか・・・・お前、常磐ソウゴじゃないな?」
「!?」
ティードの言葉に俺は一瞬ビビった。それを見てティードは面白そうな笑みを浮かべる。
「その様子だとお前はこの世界の人間じゃないようだな。」
「うっ・・・・だ、だったら何だって言うんだよ!?」
「俺も同じ存在だったからな。」
「えっ?」
ティードの感慨深い表情を見て俺は唖然とした。
「よくは思い出せないが俺もお前と同様にライダーの力を与えられ、この世界に転生してきた。全てが思うがままだった・・・・・奪うことも偽善者として周囲から信頼を得ることもな。・・・・・・だが、それも最初のうちだった。」
歯ぎしりをしながらティードは一夏クウガの頭を踏みつける。
「俺の見た織斑一夏は圧倒的な俺を相手に絶望して引き下がるどころか、むしろ俺に挑んできた。そして、周囲もそんな奴を認めていき、篠ノ之束の協力のもと、奴もまた同じ力を手にして俺を倒した。・・・・・・死んだ俺は、意識を完全に消されることもなく怨念のように生かされ・・・・ある時ライダーに代わる新たな力を手にしてこの世界に舞い戻ってきたのだ!」」
「そ、そんなことが・・・・・・」
「俺は新たに手にしたこの力を持って俺にここまでに屈辱を与えたコイツを絶望させることを選んだ。そして、この世界の王として俺が歴史を一から作り直す!」
ティードの狂気の笑みを見て俺は、元は自分と同じ転生者でありながら傲慢で自分勝手な存在だと理解できた。こんな奴を野放しにするわけにはいかない。
「お前が王になろうがこの世界の歴史を作り直そうがそうはさせない!お前を倒して、一夏を元に戻す。」
「変わった奴だな、それだけの力を与えてもらいながら何故自分の力を誇示しようとしない?それだけで臨んだものが手に入るんだぞ?」
「そうかもしれないけどそれは、本当に手にしたものじゃない。それにお前を倒せば・・・・・」
「それは無理だな。俺を倒せたとしても織斑一夏が元の姿に戻ることはない。俺がこのウォッチの力を強力にするために調整したんだからな。」
「何っ!?」
ティードの言葉を聞いて俺は愕然とする。
アナザーライダーの姿から元に戻れない。原作では考えたこともなかったが実際人間の姿に戻れないというのは当の本人にとっては絶望的としか言いようがない。
「元々、このウォッチの力は不完全だった上にこの俺もダメージを受けてしまう危険性があったからな。丁度大会で誘拐されていた一夏にこのウォッチの半身を埋め込み、アナザーライダーとしての力を安定化させると同時に力を強くするように細工した。結果的に誘拐事件後の織斑一夏は、着々にアナザーライダーとしての力をつけ始めた。だが力が目覚めていくにつれ、奴は友人との関わることすら恐れ、初めてアナザーライダーとしての姿に変貌した後、人と会うのを恐れて一時姿を暗ました。」
「ん?でも、おかしいぞ?一夏の話が正しければアナザーライダーとしての力が制御できずにクラスの同級生を食い殺してしまったと言っていたはずだ。それが失踪するなんて・・・・・・・」
「忘れたか?奴のウォッチの半身は俺が持っていることを。」
俺はティードの言葉を聞いて察した。
一夏の友人である五反田弾と御手洗数馬たちを喰い殺したのは恐らく本人ではない。
以前「真・仮面ライダー」で似たようなものを見たことあるけど・・・・・もしかしてアナザークウガウォッチを通じて記憶を共有していたのか?
「まさか・・・・弾たちを襲ったっていうのは・・・・・」
「あぁ、あれのおかげでアナザーライダーの力がさらに強まった。自分が親友を喰い殺していると思い込めば尚更な・・・・ん?」
ティードは軽くジャンプして距離を取る。今まで気を失っていた一夏クウガがようやく目を覚ましたのだ。
「もう目が覚めたか。」
『オ・・・・オマエガ・・・・・・弾ヤ数マタチヲ・・・・・・』
一夏クウガは、戸惑いながらティードを見る。
「途中から聞いていたか。あの時、お前は異変を察した篠ノ之束に保護されていたところだからな。お前の姿を借りた上でやったからアイツら、かなり叫んでたぞ?『やめろ、一夏!』ってな・・・・クックックッ・・・・」
『キサマ!!』
「うわっ!?」
怒り狂った一夏クウガは拳をティードに向かって放つ。ティードは易々と回避するが瓦礫が飛んでくる俺にとってはたまったもんではない。
『ヨクモ!ヨクモォオオオオオ!!』
「何度でも言え。力がこっちの手に入った以上、アナザーライダーでも人間でもないお前は最早用済みだからな。」
<KUUGA>
ティードがアナザークウガウォッチを起動させ、自分の体へと埋め込む。
「クッ・・・・・グウウウウ!!」
同時にティードの周辺に黒煙が舞い始め辺りを闇へと変える。
「まずい!一夏、そいつから離れろ!!」
『シネェエエ!!』
俺はまずいと思い、変身中のティードの攻撃を加えようとしている一夏に叫ぶが怒り狂った彼には届かず、同時に凄まじい衝撃が施設中に響いた。
「えっ?ナニッ!?」
事を察して撤収を開始したアナザーエグゼイドとアナザー鎧武を見て唖然とする束ビルドはその衝撃波に吹き飛ばされる。
深夜を迎えようとしている学園に大きな穴が開き、そこから映画で見たものよりも巨大なアナザーアルティメットクウガが一夏クウガを片手で握りつぶそうとする勢いで握っていた。
『ガ、ガアァアアア!!』
『どうだ?ウォッチを失い、不完全になったお前が俺を倒すことなどできるわけがない。これでわかったか?』
侮辱するかのようにアナザーアルティメットクウガは一夏クウガを見る。
『ん?』
<マイティタイムブレーク!>
「オリャアアアア!!」
俺はそんなアナザーアルティメットクウガに向かってキックを繰り出す。正直言って映画では平成オールライダーのキックでようやく倒せた相手だから倒せるとは思っていない。
でも、このままだと一夏が殺されてしまう。そう思いながら一か八かで繰り出してみた。
「うおっ!?」
『なんだ、貴様か。今更俺にクウガの力など効くと思っているのか?』
アナザーアルティメットクウガは、俺の攻撃を物ともせず、一夏クウガをポイっと捨てて俺を摘まみ上げた。
「くっ!だったら!」
俺は、クウガウォッチを取り外してジカンギレードに装填する。
<フィニッシュタイム!>
<クウガ!>
<ギリギリスラッシュ!!>
「ハアッ!!」
俺は古代文字が浮かび上がらせながらアナザーアルティメットクウガに向かってジカンギレードを振り下ろす。
『・・・・・クックックックッ、効かないと言っているだろう!!』
「グアッ!」
アナザーアルティメットクウガの腕がギレードの攻撃を無視して俺に直撃する。俺は上空で無防備のまま落下を始める。
『このまま死ね!!』
口から黒紫の禍々しい破壊光線が命中し、俺はそのまま吹き飛ばされる。
「ウワアアアアアア!?」
俺は通常形態に戻り、地上へと落ちていく。クウガライドウォッチは俺の手元から離れ何処かへと落ちて行った。
「ガバッ!?」
グランドに激突し、俺は気を失うと同時に変身が解除された。
『ウ、ウゥ・・・・・・弾・・・・カズマ・・・・・・スマナイ・・・・・』
一夏クウガは赤い複眼から涙を流しながら力尽きた。しかし、彼の手元にクウガライドウォッチが落ち、そのまま彼の身体へと吸い込まれて行った。
『ハッハッハッハッハッ!!もう、俺に敵う奴はいない!!このまま究極の闇で世界を包み込んでくれる!!ハッハッハッハッハッハッ!!!』
そんな倒れている二人を見ながらアナザーアルティメットクウガは何処かへと飛び去って行った。
次回は・・・・いかに。
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苦悩
「う、うぅう・・・・・」
俺が目を覚まして最初に見たのは両腕を組んで仁王像の如く見ていた織斑先生の顔だった。
「目が覚めだようだな。」
「お、織斑先生・・・・・・」
見た限りここはIS学園の保健室のようだ。アナザーアルティメットクウガの攻撃で変身が溶けた後、破壊を免れた保健室へと運び込まれたらしい。手を挙げてみると包帯が巻かれて手当てがされてあった。
「痛・・・いててて・・・・」
俺は痛みにこらえながら上半身を起こしてみるとそこには保健室の椅子に座った顔にシップを貼った束さん、その後ろのベッドでは気を失ったアナザークウガこと一夏クウガが寝かされていて彼の手を箒がしっかりと握っていた。
「常間、目を覚ましたばかりで悪いがお前にはいろいろ聞きたいことがある。」
「・・・・・そうなりますよね。」
織斑先生の言葉に対して俺はしぶしぶ返事をする。
そりゃあ、ジオウの姿を監視カメラとか見られた上に一夏クウガに攻撃を加えたんだからな。ある意味でティード以上に得体のしれない奴だと思われているんだろうな・・・・・・全部正直に言っても信じてくれないだろうけど。っていうかジクウドライバーに関しては原作でも詳しい描写がないからわからないよ。
「えっと・・・・・どの辺から話した方がいいでしょうか?」
「まずは、お前が身に付けていたあの強化服についてだ。束のビルドに近いとも考えてみたが外見の特徴からしても明らかに別物だ。あれはなんだ?」
とりあえず、ライドウォッチとアナザーライダーの話はしておいた方がいいな。
「あれはジオウ、仮面ライダージオウという戦闘用の強化服って言うか・・・・ISに近いものです。詳しいことは俺にもわからないんですけど・・・・・」
「『ジオウ』か・・・・・・じゃあ、次にカメラで見た限り、お前は一夏に対して何か海中時計のようなものを使って形態を変えていたな?あれはISで言う形態移行か?」
「ジオウの特殊能力である『アーマータイム』という機能です。さっき使ったのは・・・・・・あれ?」
手元にクウガライドウォッチがないことに気づく。
「な、ない!?クウガライドウォッチが!?」
俺は質問中なのにもかかわらずベッドの下や部屋を見まわしながらクウガウォッチを探し始める。
あれがないとティードのアナザーアルティメットクウガに対抗できない。
「ない、ない!クウガウォッチはどこへ行ったんだぁ!?」
「おい、常間。何をそんなに慌てて探している?お前の部屋を確認させてもらったがウォッチというものはまだ・・・・・・」
「あれがないとアナザーアルティメットクウガを倒せないんだぁ!」
「あなざーあるてぃめっと?もしかして、学園から飛び去って行った黒い一夏に似た化け物のことか?」
「アナザーライダーは同じライダーの力を使わないと倒せない!仮に力づくで倒しても時間が経てば復活してしまうんだ!!」
俺がパニック状態で叫んでいる中、束さんが持ち込んだものなのかラジオからニュースが流れていた。
<緊急ニュース速報です。 本日の〇時〇〇分、市街地に突如巨大な生物が飛来、口部からまき散らしたガスによって人的被害があったとの情報が入りました。尚、現地のスタッフの話によればガスを吸ってしまった住民は怪物に変貌したとのことで、その姿は過去に放送されていたテレビ番組『仮面ライダー』に登場する怪人と非常に酷似していると・・・・・・現地からの追加情報が届きました!飛来した巨大生物が姿を消したことによるガスによる被害は収まりましたが怪人たちによる被害が拡大しているとのことです!現地の警察部隊が対応しているようですが・・・・・・>
そのニュースを聞いて俺の顔色は真っ蒼になった。
「アイツ・・・・・本当に究極の闇をやろうとしているのか?」
“究極の闇”
原作の仮面ライダークウガでは最後に残ったン・ダグバ・ゼバにより引き起こされる殺戮劇、もう一つの仮面ライダーディケイドではン・ガミオ・ゼダが発する黒い煙のようなものに触れ続け意識を失った人間をグロンギに変えるものであるが恐らくニュースを聞く限りでは後者だと思う。
「究極の闇?どういうことだ、常間。」
無意識に体を震わせている俺を見て織斑先生は、落ち着かせるように聞く。
「・・・・・人間を・・・・人間をさっきの怪物・・・・アナザーアルティメットクウガは怪人へと変えてしまう恐ろしいものです。おそらく、このままだと・・・・」
「人間を?それは本当なのか!?」
「・・・はい。」
俺の言葉を聞いて織斑先生は束さんと顔を合わせる。
「束、お前はあの怪物・・・・・アルティメットクウガとか言うのに対してどう思う?」
「さあね、私だって万能じゃないんだからこれと決まったことは言えないよ。・・・・・ただ、ISじゃ奴を倒せないというのは間違いないだろうね。おそらく、ビルドでも。」
「何?ビルドでも勝てないのか?」
「トライアルだろうがベストマッチだろうが今の私じゃ、倒せるとは思えないからね。さっき、えっと・・・・壮ちゃんでいいかな?壮ちゃんの言うクウガライドウォッチとかがないと勝てないって言うことだろうね。」
束は隠すことなく堂々と言い張る。
「だが、常間はさっきの戦闘でそのウォッチとか言うものを紛失してしまっている。っとなると、奴への対抗手段がない・・・・・・」
織斑先生は困惑している俺を見ながら束さんに再び視線を向ける。
「・・・・・と、とりあえず怪人たちを何とかしないと・・・・・」
「おい、常間!まだ、話は・・・・・・」
俺は、その場から逃げ出すかのように保健室から出て行った。
「くっ・・・・まだ、話が終わっていないというのに・・・・束、連れ戻すのを手伝ってくれないか?」
「そうだね、どのみち完全とはいかなくても一時的に倒せるのなら時間は稼げるはずだし。その間に打開策を考えればいいことだよ。」
そう言うと二人は箒と一夏クウガを残して部屋から去って行った。
・・・・・・う、動けない・・・・・。
俺は、結局何もできなかった。
弾も・・・・・数馬も・・・・・みんな、俺が殺したようなものだ。
そして・・・・・あの変な奴も俺みたいな化け物になってなんの太刀打ちできなかった。
俺は、何をやっても所詮は千冬姉のお荷物にしかならないのか?
「・・・・・・・・ん?」
俺は体に冷たいものがかかったことで目を覚ました。目を開けてみるとそこには青い空が見え、体を上げてみると海が目の前に広がっていた。
「海?・・・・ん!?」
俺は自分の手を見て普通の人間の手になっていたことに驚く。体の方を見まわすとあの恐ろしい化け物の姿ではなく、以前の俺 織斑一夏としての身体に戻っていた。
「どうなっているんだ?俺は・・・・・化け物に・・・・・」
俺は戸惑いながら辺りを見回す。周囲は建物は一切なくどう見てもどこかの海辺だということぐらいしかわからない。
「困ったな・・・・・ん?」
俺は自分のいるところから少し離れたところにどうやら地元の子供と思われる子たちが集まって何かを見ているのに気が付く。恐る恐る近づいてみるとそこには俺と同じ日本人と思われる男の人がジャグリングを披露していた。子供たちは興味津々にその男の技を見ており、終わると男はニコッと笑顔でサムズアップをした。
俺とその人は偶然目が合った。
「・・・・・・・そっか、それで一夏君はそんなに暗い顔をしていたんだね。」
「・・・・はい。」
その男 五代雄介は実に不思議な人だった。
会ってからすぐ『君、もしかして日本人?こんなところで会うなんて奇遇だね!』と言われて自己紹介とばかりに「夢を追う男 2000の技を持つ男 五代雄介」とか言う名刺を渡された時は正直ビビった。
俺が何かを抱えていることをすぐ察し、素直に聞いてくれた。
俺が千冬姉を見ながら「誰かを守りたい」と思うようになったこと。
誘拐事件後の俺の身体の異変。
そして・・・・かけがえのない友達を助けることができなかったことを全部吐き出すかのように話し続けていた。
「俺は、弾や数馬たちに何も話すことができなかった。避けられるんじゃないかって怖かったんだ。でも・・・・・そのせいで殺されてしまった。」
「・・・・・」
「俺は、みんなを殺したその男が憎いと思った!・・・・けど、全く敵わなかった。」
俺は顔を伏せながら言う。
「悔しかった!俺を怪物に変えた上に、かけがえのない親友を殺したあの男に敵わなかったことが!!もし、俺にもっと力があれば・・・・・・」
「・・・・・そっか。許せないね、それは・・・・・」
俺の話を聞いて五代さんは言う。
「・・・・でも、だからってそんな気持ちでいちゃいけないと思うんだ。」
「えっ?」
俺は顔を上げる。五代さんは握り拳を作って俺に見せる。
「俺はこれを使ってすごく嫌な気持ちになったんだ。大事なのは『復讐しよう』とかじゃなくて『もう同じことはさせない』っていう気持ちなんじゃないかな?」
「でも・・・・」
「例えばさ、俺が君にこうしたら、君はこう来るかもしれないだろ?そしたら、またこう!こう!って繰り返しならない?」
五代さんは自分の拳で打ち付け合いながら例えようとする。
確かに暴力を暴力でやり返すのはよくないことだ。
でも・・・・・・
「だったら・・・・・だったらどうすればいいんだよ!!」
俺は五代さんを見ながら思わず叫んでしまった。
「そんなことはわかってるさ!でも・・・・・人間じゃ無い化け物にされて、同じクラスのみんなを殺されて・・・・・アンタに俺の気持ちがわかるかよ!!」
俺はしまったと思って口を噤む。でも、五代さんは少し驚いただけですぐに落ち着くを取り戻してはっきり言った。
「・・・・うん、そうだよ。俺は君にはなれないし、君の気持になることもできない。でも、思いやることはできるよ。」
「・・・・俺はどうしたらいいんだ。」
俺は、再び腰を掛けて落ち込む。
「・・・・いいんだよ、悩むときはとことん悩んで。」
「・・・・・・・」
俺はIS学園を出てからずっとライドストライカーを走らせていた。
「アナザーアルティメットクウガを止めなくちゃ・・・・・でも・・・・・・」
飛び出したのはいいが対策なんて何もなかった。
正直言ってテレビではソウゴは対応するウォッチがない時はないなりに戦っていたが俺にはそんな考えは浮かばなかった。
クウガウォッチを無くしたのは致命的だ。
後、倒せる可能性があるのは今はまだ持っていないジオウライドウォッチⅡで変身するジオウⅡ。
もう一方は、持ってきてあるディケイドライドウォッチだがライドヘイセイバーでクウガの力を使えば僅かながら倒せる可能性はある。
でも、こればかりは確証が持てない。
ディケイドアーマーでアナザーライダーを倒していたのはゴーストとRIDER TIME龍騎ぐらいでどちらも対応したウォッチを所持していた。
しかも今回の相手はアナザークウガの強化版だ。
「俺は・・・・・・どうしたら・・・・・・・」
不安に煽られて俺はマシンを止める。
気が付けば雨が降っていて俺の身体を濡らしていく。
「このまま逃げた方がいいんじゃないかな?」
神様は時期が来たらジオウライドウォッチⅡとかを渡すって言っていた。
だったら、それまでの間どこかで隠れていた方が身のためではないのだろうか?
態々勝てない戦いに挑むなんて馬鹿馬鹿しい。今はどっかで隠れて時を待った方がいい。
そう思っていた時だ。
「よぉ、こんなところで何してんだ?」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。振り向くとそこには見覚えのある男が傘をさして立っていた。
「アンタは・・・・・いや、そんなわけ・・・・・」
「正義の味方がこんなところで油を売っててもいいのか?アナザーライダーがいるのはここじゃないぜ。」
「えっ!?」
「なんだ?せっかく死んだお前に二度目のチャンスを与えてこの世界に転生させた俺の顔を忘れちまったのか?」
聞き覚えのある口調と胡散臭いおじさん面。
その男はまさに俺をこの世界へ転生した上にジオウの力をくれた神様そのものだった。
「も、もしかしてあの時の神様!?」
「他にお前のことを詳しく知っている奴がいるか?それとも証拠として前世でお前がこっそりノートに書いていたオリジナルライダーと必殺技とかをこの場で言ってやろうか?」
「・・・・・いや、マジで信じるよ。」
人は見当たらないけどこんなところで言われたら恥ずかしいので信じる。
っていうか神様がこんなところに来てくれるとは好都合だ。
「何しに来たかはわからないけど丁度良かった!ジオウライドウォッチⅡをくれよ!」
「何?」
「クウガライドウォッチを無くしちゃったんだ!ティードを倒すにはあのウォッチしかない!だから・・・・・・・」
「お前さ・・・・・・何かすごい勘違いをしていないか?」
「えっ?」
ジオウライドウォッチⅡを渡してもらおうとした束の間、神様は不機嫌そうな顔で俺を見る。
「お前そもそも変身して間もないって言うのに強化形態欲しがるなんて都合がよすぎると思わないか?普通なら、もっと先になるはずだろ?」
「そ、それはそうだけど・・・・・・・でも、このままだと世界が・・・・・」
「世界が滅んじゃう・・・・・ってか?それはお前が原因なんだぞ?」
「はっ?」
神様が言っていることがよくわからなかった。
「まだ、わかっていないようだな。よく考えてみろ。一つの世界に元々在りもしない物が流れ込んでくるんだ。そうしたらどうなると思う?」
「そんなに不味いことなの?」
「お前はラーメンとシチューを混ぜてうまいと思うか?まずいだろ?世界だって同じさ、その世界にないはずの代物が流れ込んだことによって世界のバランスが崩れる。そうした時点で原作も何も関係なくなるんだよ。」
「でも・・・・・神様転生って・・・・・」
「その世界でチート無双とかできると考えていたのか?思い違いだな、世界はそんなに甘いもんじゃない。世界っていうものは無意識にその均衡を保とうとするんだ。例えば、ガンダムをISとして出せば世界はガンダムに合わせて変化する。そして、別の作品のキャラの能力をもらって転生すれば、その世界にもその能力を持つものが生まれるようになる。わかるか?織斑一夏がアナザークウガになったのもお前が原因なんだよ。」
「そ・・・・そんな・・・・・」
「ドードー鳥って知っているか?その昔、インド洋の島に住んでいたって言われているが人間が発見してから約80年後に全滅したって言われている。原因は人間と一緒に島に上陸したネズミとかの害獣に喰い殺されたりしたからだ。お前たち転生者はいわゆるこの世界を食い荒らすために連れ込まれた害獣みたいなものなんだよ。」
神様は冷徹に言い放つ。それを聞いて俺はあまりのショックに膝を付いてしまった。
「・・・・・だったら・・・・・なんで転生なんてさせてくれたんだよ。」
「神様としてのルールだからさ。不幸な事故で死んだ奴には一時的にでも理想の夢を見させるためにってね。その世界の均衡を保てるかどうかはその転生者の力量次第ってわけなんだよ。つまり、俺はお前たちのような奴に夢を提供してやっただけに過ぎない。そこから先はお前らの責任、最も途中で放棄して勝手に自滅した後は俺が世界をリセットするんだけどな。」
「・・・・・ちなみにうまくいった奴は?」
「・・・・・ゼロだ。全員、自分が奪った役割の重荷に耐え切れず自滅して行った。ティードもその成れの果ての一つだ。執念の強い奴は稀にああいう形で残るんだよ、困ったね~。」
「・・・・・どうすればいいんだよ・・・・俺が・・・・俺がこの世界をおかしくしたって言うのかよ!!」
俺は雨に打たれながら叫ぶ。神様は、そんな俺の姿を見ながらしゃがみ込む。
「お前がこの世界に絶望して諦めるのは勝手だ。だがな、そうなった場合誰がお前の代わりにこの世界を守るんだ?」
「・・・・・・・」
「篠ノ之束だ。彼女に関しては驚かされたもんだ。俺がリセットした時に消し忘れたビルドドライバーと残ったフルボトルを基にビルドとしての力を持っちまったんだからな。お前が動かないとなると恐らく彼女がティードと戦うことになるだろう。自分の夢のためにな。けど、彼女じゃ奴には勝てない。もし敗れればISの生みの親である束すら勝てないのだからもう諦めるしかないと世界中が絶望するだろう・・・・・」
「・・・・・・・」
「お前が戦うしかないんだよ!時の王者である『仮面ライダージオウ』の力を持ったお前が!そう思って学園から抜け出してここまで来たんだろ!それとも奴と同じ道を歩むのか!」
「うるせえ!!」
俺は、神様に向かって泣き叫んだ。
「うるせえ!うるせえうるせえうるせえうるせえ!!俺にそんなことできるわけねえじゃねえか!!」
「やる前に諦めるのか?あこがれたからなりたいって願ったんじゃないのか?」
「俺は常磐ソウゴじゃねえんだ!王様になる気もないし、オーマジオウにもならねえ・・・・・そんな俺に・・・・できるわけないじゃないか・・・・・」
「お前は大事なことを忘れている。言っただろ?何でもかんでも原作通りじゃないってな。この世界にライダーの力が混ざった時から関係なくなっちまっているんだ。」
そう言うと神様は立ち上がり、俺の前から去って行く。
「話はしておいたぞ、やるかどうかはお前次第だ。もし、お前にこの世界を変える気があるなら最後まで戦え!俺はまだやる仕事が残っているからな。」
俺はポケットからジオウライドウォッチを取り出す。
この力が欲しいと望んだからこの世界はおかしくなってしまった。でも、同時にそれを修正できるというようなことを彼は言い残して行った。
「・・・・・・俺がやるしかないってか。」
濡れた顔を拭いながら俺はジクウドライバーを装着し、ジオウライドウォッチを作動させた。
<ジオウ!>
「・・・・俺たち転生者がこの世界の罪だというなら・・・・・」
ドライバーを回転させて仮面ライダージオウへと変身する。
<ライダータイム!>
<仮面ライダージオウ!>
「俺が変えてみせる!!」
仮面ライダージオウへと変身をした俺は再びライドストライカーに乗り込んで現場へと向かった。
次回は・・・いつ?
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一夏
「・・・・・」
俺はしばらく黙って五代さんと一緒に海を眺めていた。
思えばあの化け物の姿になって以来、海を見るのはすごく久しぶりだった。
透き通るようにきれいな海水は俺たちのすぐ近くまで波打ってくるがすぐに引いて行く。
「・・・・・五代さん。」
「ん?」
「・・・正直俺は自分のことが怖いんだ。また、あの化け物の姿になるかもしれないし、もしかしたら本当に怪物として殺されるかもしれない・・・・・・」
「う~ん~それはないんじゃないかな?」
「えっ?」
五代さんの言葉を聞いて俺は思わず顔を上げた。
「俺もね・・・・実は『変身』してたことがあるんだ。クウガに。」
「クウガ?」
悪戯っぽく言う五代さんの顔を見ながら俺は首をかしげる。
「少し前に日本に帰ったときなんだけどその時に『未確認生命体』っていう奴らが出てきて大変なことになってたんだ。」
「未確認生命体?」
五代さんは自分のことについて話してくれた。
彼が日本に帰った時、日本では「未確認生命体(グロンギ)」という古代の先住民族が蘇り、人間に対して殺人ゲームを行っていたんだという。その中で彼は偶然目にしたベルトの装飾品を身に付け、古代の戦士「クウガ」の変身能力を手にしてみんなの笑顔を守るために戦い続けたのだという。
俺は、昔弾たちと一緒に見ていた特撮番組「仮面ライダー」を思い出した。
だが、驚くべきことは五代さんは奴らと同様の扱いで「未確認生命体4号」として一度攻撃を受けたのだということだ。
「攻撃されたんですか!?警察に!?」
「うん、あの時はびっくりしたな。戦っていた5号と散り散りに逃げて、その後一条さんに怒られちゃったんだよ。桜子さんも心配してたし。」
「よく、それで戦い続けましたね。」
俺だったら正直言って嫌になって辞めていたと思う。
「俺は守りたいと思うから戦っていたんだ。あんな奴らのためにこれ以上誰かの涙は見たくないって。みんなに笑顔でいてほしいから頑張ってこれたんだよ。」
「・・・・・すごいですね。」
「でも・・・・それでも怖いと思ったことはあるんだ。」
「えっ?」
「途中で未確認の奴らが強くなってもっとひどいゲームをやったんだ。42号の時だったかな?あの時やり方があまりにもひどくて思わずそれまで以上になんていうか怒りを感じたんだ。その時、周りに一条さんたちがいたのに俺は金の赤になって倒そうとしていたんだ。でも、途中でゴウラムで押さえて場所を変えて倒したけど。その時、爆発の中で角が4本の目が黒くなったクウガを見たんだ。」
「・・・・・・・」
「それを桜子さんたちに教えたら、多分警告なんじゃないかなって言われてこれ以上強い力は使っちゃいけないって感じたんだ。」
「五代さん・・・・・」
その後、0号との戦いでさらに強くなった黒の金でも歯が立たずたくさんの人を死なせてしまったと悲しそうな顔で話した。
彼は覚悟を決めて「凄まじき戦士」になり、激しい戦いの末倒した。
それに比べて俺ときたら・・・・・そこまで人のことを考えたことがあったんだろうか?
「一夏君も自分のことが怖いかもしれないけどそれをもう一人の自分として受け入れ場いいんじゃないかな?」
「でも・・・・みんな自分から離れていくことが恐ろしいんだ。」
「ん~じゃあ、さっき話してくれた箒ちゃんって子はどうして一夏君のそばにいてくれたの?」
「そ、それは・・・・」
俺は、答えを出せなかった。
俺が箒と再会したのは俺があの怪物の姿になってからすぐ後だった。
姿を見られないように市街地の山の方へと言ったのだが運の悪いことにその場にいた警官隊に発見されて銃撃を受けた。
闘争本能に呑まれかかっていた俺は警官隊を返り討ちにして逃げようとした奴らを気絶する程度に痛めつけた。
その時体力を消耗した影響で一時的に人間の姿に戻ることができ、ちょうどその場で居合わせたのが彼女だった。
どうやら警官隊は政府の重要人物保護プログラムで彼女を警護していた部隊だったらしく、その山の近くの一軒家に住んでいた。
終始警官隊を襲っていたところを見られて俺は思わずその場から逃げ出してしまったが慣れていないこともあってその場で倒れて気を失ってしまい、気が付いたときは彼女の家に運ばれていた。
俺が目を覚ました時は既に彼女がそばにいてお互い気まずい空気となった。
俺は、とりあえず久しぶりと言って軽い挨拶をした。箒も返事して少し空気が軽くなったかと思ったが俺はまたそう本能に襲われ始める。
箒が「大丈夫か?」と寄り添ってくれた直後、俺は自分の右腕が再び怪物の物へと変わっていたのに気が付く。
このままだとまずいと思い、俺は完全に姿が変わる前に箒に家から逃げ出した。後ろから箒の叫びが聞こえていたが足を止めることなく、俺は必死に走った。また、あの怪物の姿になって。
その後、ひと月近く俺は山奥に細々と潜伏していたが変な二色の強化スーツを着た束さんに捕縛され、その際にまた箒と再会することになった。
その時、俺が生きていたことが分かってその後に会った千冬姉にも劣らぬほど号泣しながら俺を抱きしめた。
「生きててよかった」っと泣き叫びながら。
何故そこまで彼女が俺のことを思ってくれたのかはよくわからない。
でも、何かホッとしたような気分だった。
「・・・・・わからない。普通だったら拒絶されるだろうに。」
俺は首を横に振りながら言う。
箒とは長い間会っていなかったとはいえ、彼女の性格は知っているつもりだ。
普通なら最初に再会した時点で化け物扱いしてきてもおかしくなかったのに・・・・・
「きっと、その子も一夏君のこと大切だと思っているんだよ。だから、帰ってあげなきゃ。」
「でも・・・・・・俺なんかがそばにいたら・・・・・・」
「大丈夫!」
五代さんは俺にサムズアップをしながら笑顔で言う。
「これ、俺が小学校の時の担任の神崎先生って先生に教えてもらったんだけど『古代ローマで満足、納得できる行動をした者にだけ与えられる仕草』なんだ。だから、俺も自分が納得いくまでやっている。」
「・・・・・」
「一夏君も自分が納得できるまで何年も悩んで頑張って行けばいいんだよ。みんな、そうやって大人になって行くんだから。箒ちゃんがそばにいてくれるならそこが君の居場所だよ。」
「・・・・!」
俺は自分で無意識にサムズアップしていることに気がつく。
驚きながら顔を上げるとそこには五代さんの姿はなかった。
「五代さん?五代さん!!」
俺は辺りを見回しながら叫ぶとポケットの中に何か入っていることに気が付く。
取り出してみると何か懐中時計のようなもので「2000」という数字と彼のTシャツにも書かれていたクウガのマークがあった。
『どんな雨だって絶対止むよ。そしたら青空になる。今だって君の心に雨を降らせている雲の向こうには、どこまでも青空が広がってるんだ。』
「・・・・五代さん。」
どこからともなく五代さんの声が聞こえ、俺は無意識にウォッチを回転させて起動させてみる。
<クウガ!>
同時にあたりが眩しくなった。
『ウ、ウゥウウ・・・・・・・』
一夏は再び目を覚ました。見ると目の前には天井が見える。
『・・・・・・夢?』
上半身を起こして自分の手を見てみるとやはりアナザークウガとしての自分の腕だった。しかし、もう一方の手を見るとそこには箒が手を握って眠っていた。
『箒・・・・』
化け物の姿になりながらも慕ってくれる彼女に対して一夏は思わず感謝した。そして、本能なのか彼はそっとベッドから起き上がり、窓をそっと開けた。
『・・・・・行カナキャ。』
一夏は箒の方を一度見ると窓から飛び降りて学園から離れて行った。
5分後
「一夏!一夏!!どこ行ったんだ!?」
目を覚ましたら一夏の姿がいなくなっていたので箒はパニックになりながら彼を探していた。
「何処へ行ったんだ?・・・・まさか、ラジオで聞いた怪物のところへ行ったんじゃ・・・・・・」
窓に爪の跡が付いているのに気づいて箒は直感で行き先を見抜く。
そして
「おっととっ!?う、うわぁああ~!?」
どこから持ってきたのか青いパワードスーツを纏い、不慣れな運転ながらもバイクを走らせ、彼女は一夏の後を追った。
・・・・・・無免許運転で。
最期はいらなかったかもしれない。
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変身
「束、常間の反応はどうだ?」
大型の特殊トレーラーの中で千冬はインナースーツに着替えながら束に確認する。
「一時は別方向へ進んでいたけど今は私たちより少し先の方に行っているね。」
「本当にあの化け物と戦うつもりなのか・・・・最も私たちにはそれしか選択肢がないが。」
インナースーツに着替え終わると千冬はトレーラーのボタンを押す。
すると格納庫がスライドし、そこには全身青の装甲の強化スーツがパーツごとに分割された状態で置かれていた。
「まさかこんな代物を使うことになるとはな。」
「懐かしいね、白騎士とG3どっちを作るか迷った学生時代のあの頃を。あの頃、G3は兵器としての一面が強すぎたから白騎士を優先にしようとしたけど結局格好いいからどっちも作ってみようって毎日言い合いしながらやっていたよね。」
束はニヤニヤしながら装甲を千冬の身体に装着していく。
「本当に大丈夫なのか?学生時代と比べて私もずいぶん体型が変わっているから着れんかもしれんぞ?」
「フッフフフ、このてぇん~さいの束さんがいちいちそんな面倒な調整をしなくても済むようにオートフィット機能を付けてあるから問題ないよ。」
最期に頭部ユニットを装着させると束はオートフィットボタンを押す。するとG3-Xは千冬の身体にフィットした。
「おっ。」
「それにバッテリーも最新の物にしたから活動時間は従来のISのなんと5倍以上!依然として飛べないけどビルドのデータもインストールしているから武装の共有も可能!ある意味暮桜を使っていた選手時代のちーちゃんよりも強いよ!!」
「お前な・・・・・」
そんな物騒なものを作っている暇があったらいい加減にISの欠陥である適正認証の修正をしろと言いたかったが千冬はあえて言うのをやめた。
これから戦う相手はISなんかでは相手にならない。
このG3-X、実は過去に束がISを公式発表する以前に警察へのテロ対策チームの配備用として検討していたG3と呼ばれる強化服の強化版で元々は白騎士と同時に公開する予定だった。
G3はISのような突出した性能はないものの僅かな調整で誰にでも装着することが可能で拡張性がほぼ互角、絶対防御の代わりに特殊金属性の装甲で身を包んでいるため、露出の割合が高いISと比べれば安心感というものが感じられる。更にオプションの換装もその場ですぐに行うことと装着者によってのカスタマイズも安易に可能なことでISよりも早く戦闘の切り替えができるなど別の方向性で高い性能を秘めている。
だが、宇宙進出を夢見ていた彼女はG3の性能はISと比べて開発が安易な分兵器としての投入がしやすいこともあってG3の公表はやめた。
その時テスト装着を担当していた千冬すらも白騎士とは違う一面でG3の危険性を感じた。
“白騎士のような突出した性能ではないがISのようにコアからの書き換えによる製作と違い、G3は安定した性能で安易に量産が可能なため、間違いなくG3が採用され、兵器として扱われる”
二人は相談した結果、後継機としてより性能を向上させたG4の開発は設計図のみで中断し、G3は試作機を数機残してISが表舞台に出ることになった。
しかし、G3はやはりIS程ではないと言え十分な性能であることから束は各世代のISを開発するたびにそのデータを基に男性用ISの開発の一環としてG3の開発を再開した。
そして、このG3-Xは、第三世代のデータを挿入したテストベッド機で装着車をサポートするために高性能AIが組み込まれている。
「ほい、エンジンキー。」
束がアタッシュケースからステッキを出し、後方に置かされいるマシンのハンドルとして差し込む。
「私は先に常間と合流する。」
「はいよ、束さんもトレーラー止めたらすぐに追うから。」
後部の入口を開けるとロックは解除されG3-Xはマシンをトレーラーの外へと出し、追い抜かして現場へと向かっていく。
「さてと・・・・・私も行きますか。クーちゃん、お留守番よろしく。」
「了解しました。」
道路の端にトレーラーを止めて、束は外に出るとスマートフォンにボトルを挿入させてバイクへと変形させる。
「シャカシャカっと・・・・」
<ラビット!>
<タンク!>
<ベストマッチ!>
フルボトルをビルドドライバーに挿入し、レバーを回転させることでスナップライドホルダーが発生する。
<Are you ready?>
「変身!」
束が言うのと同時にハーフボディが組み合わさり、仮面ライダービルドの基礎フォーム ラビットタンクフォームへと変身する。
<鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!>
「私も行くとしますか。怪獣退治に。」
束ビルドもマシンビルダーに乗って現場を目指した。
<フィニッシュタイム!>
「ハア、ハア!」
<鎧武!>
<スカッシュタイムブレーク!>
壮一はアナザー鎧武に向かって必殺技を繰り出し、すれ違い様に大橙丸Zで切り裂き、子供の絵の如く歪んだオレンジ型のエネルギーに包み込んで爆散させた。
『ガアアッアアァ!?』
「はあ・・・・はあ・・・・・」
『ウゥウ!!』
「がっ!?」
しかし、倒したのも束の間アナザーエグゼイドの攻撃を受けて倒れてしまう。
市街地に来て最初にグロンギたちを率いたアナザー鎧武と交戦し、アーマータイムを駆使してグロンギ数体を巻き込んで倒せたのはいいものの敵が多すぎる上に体力の消耗が激しかった。
『フゥンッ!』
「くそ!」
壮一は大橙丸Zでアナザーエグゼイドを吹き飛ばすと腕に装着されているエグゼイドライドウォッチを使おうとするがゾンビのように蠢くグロンギたちに阻まれて動きを封じられてしまう。
「は、離せっ!?」
原作のように個体ごとに人格がないことはありがたいがここまで数が多いとキリがない。ティードの姿も今のところどこにもなく、このままでは体力が底を尽きて倒れてしまう。
『ウゥウウウウ!!』
「ヤバッ!?」
アナザーエグゼイドは壮一に向かって飛び掛かってくる。今は防御も避けることもできない。
絶体絶命だ。
『ウゥウウッ!?』
その直後何かがアナザーエグゼイドの側頭部に命中し、吹き飛ばす。壮一は何事かと飛んできた方を見るとグレネードを発射した千冬の姿があった。
「仮面ライダーG3-X!?」
「常間、早くそいつらから離れろ!」
千冬はマシンの後部座席にセットされているガトリング式機銃を掴み、解除コードを入力する。
<解除シマス>
「うげっ!?」
壮一は千冬が何をやろうとしているのか察し、必死こいてグロンギたちの拘束から脱出する。千冬はそれを確認した瞬間、「GX-05 ケルベロス」と呼ばれるガトリング式機銃を連射する。弾丸は次々とグロンギたちの身体を貫き、30以上いたはずの数があっという間に殲滅されていく。
「うわあぁ・・・・・・えげつねぇ・・・・・」
原作である「仮面ライダーアギト」でも十分すぎる火力であったがあれ程苦戦していたグロンギたちは今自分の目の前でただの肉塊へと変わっていくのを見て壮一は唖然とする。
『ウォオオオオオオオ!!』
そんな呆然としている壮一の隙を見てアナザーエグゼイドは襲い掛かろうとする。
「よそ見は禁物だよ!」
「えっ?」
『グオッ!?』
そのアナザーエグゼイドに向かって遅れてきた束ビルドがドリルクラッシャーで攻撃をする。
「今だよ!」
「あ、ああ!」
<ディ・ディ・ディ・ディケイド!>
壮一はこれ以上の体力の消耗は危険だと判断して使うウォッチを変更する。
<アーマータイム!>
<カメンライド!>
<ワーオ!>
<ディケイド!ディケイド!ディーケーイードー!>
平成仮面ライダー10人目にして「世界の破壊者」という二つ名を背負う「仮面ライダーディケイド」の力を持ったディケイドアーマーへとなり、そこに更にエグゼイドライドウォッチをセットする。
<ファイナルフォームタイム!>
<エ・エ・エ・エグゼイド!>
ディケイドの文字が書かれていた顔がスライドし、顔がエグゼイド ダブルアクションゲーマーレベルXXの物へと変わり、壮一はRとLの二人に分裂する。
「わおっ!二人に増えた!?」
「「これで何とか行ける気がする!!」」
二人はライドヘイセイバーとジカンギレードを持ち合わせ、アナザーエグゼイドに斬りかかる。
『グッ!?』
突然二人に増えた壮一を見てアナザーエグゼイドは驚いたがその間も壮一たちは攻撃を緩めない。一方が取り押さえるともう一方が必殺技の態勢へと移行する。
「今だ!」
「よし!まずはこれだ!」
R壮一はライドヘイセイバーの針を動かす。
<ヘイ!ヘイ!ブレイド!!>
「よし!」
L壮一はライドヘイセイバーの刀身が雷を纏って巨大化した瞬間、アナザーエグゼイドから離れる。
<ブレイド!デュアルタイムブレーク!!>
『グオワァッ!?』
「まだまだ!」
<ヘイ!ヘイ!555!>
続いてフォトンブラッドを帯びて赤く発光する。
<555!デュアルタイムブレーク!>
「ハアッ!」
原点の555のスパークルカットのようにアナザーエグゼイドを宙に浮かせて拘束し、R壮一は一気に走り抜けてアナザーエグゼイドを斬りつけた。
『ガアアアアッ!?』
「一気に決めるぞ!」
「おう!」
L壮一はエグゼイドライドウォッチを、R壮一はディケイドライドウォッチを剣に装填し、ケリを付けようとする。
<フィニッシュタイム!>
<エグゼイド!>
<ギリギリスラッシュ!>
「そりゃ!」
『グウッ!!』
最初にL壮一が斬りつける。その後、R壮一がオーバーキルの如くライドヘイセイバーの針を回転させ続ける。
<フィニッシュタイム!>
<ヘイ!仮面ライダーズ!>
<ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘヘヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!>
「これで決まりだ!!」
R壮一は「ヘイセイ」の文字とライダーズクレストが描かれた20枚のカード型エネルギーを纏ったヘイセイバーでアナザーエグゼイドを切り裂く。
『グオオオオオワアアアアアアア!?』
<ディディディディケイド!>
アナザーエグゼイドはあまりの仕打ちに苦しみながら爆散する。同時に増援で駆け付けたグロンギたちもライドヘイセイバーの余波で全滅する。
「なんて奴だ・・・・。」
ケルベロスの弾倉を交換している中、千冬はその光景を見て言う。しかし、目の前の敵はほとんど殲滅できたものの壮一の体力はかなり摩耗していた。
「ハア・・・・ハア・・・・・ハア・・・・」
エグゼイドウォッチを外した瞬間に元の一人に戻り、壮一はその場で膝を付いてしまう。
「どうやら、親玉を除いて全滅できたよう・・・・」
<KUUGA>
「!?二人とも伏せて!!」
危険を察知した束ビルドはすぐに伏せるが降り注いだ破壊光線を目の前に壮一と千冬は吹き飛ばされた。
「「うわあぁあ!?」」
壮一は、体力の限界で変身が解除される。千冬は頭部ユニットが破損したものの酷い怪我はしていない。
『性懲りもなく抵抗してくるとは能天気な奴らだ。』
そこへアナザーアルティメットクウガが舞い降りてきた。壮一はまた変身しようと立ち上がろうとするがダメージと疲労の蓄積で思うように動けなかった。
「くっ・・・・・・」
『フン、せっかく作った怪人たちも全滅か。まあいい、また別の場所で増やせばいいんだからな。だが、その前にお前だけは始末しておくか。邪魔になるからな。』
アナザーアルティメットクウガは、ノソノソと倒れている壮一の元へと進んでくる。
「まずいね・・・・」
束ビルドは距離が離れて救助に行けないと判断してフルボトルを変更する。
<海賊!>
<電車!>
<ベストマッチ!>
<Are you ready?>
「ビルドアップ!」
束ビルドは射撃と近距離戦も可能な海賊レッシャーフォームへとビルドアップする。
<定刻の反逆者!海賊レッシャー!イエーイ!>
『うん?』
壮一を叩き潰そうとした瞬間、アナザーアルティメットクウガの顔に何かが当たる。
「ほらほら!こっちだよ!」
<各駅電車!>
<急行電車!>
束ビルドは壮一から敵を離すべく、カイゾクハッシャーでアナザーアルティメットクウガを攻撃する。
『小賢しい!』
アナザーアルティメットクウガは破壊光線で攻撃をする。
「まずッ!」
<ロケット!>
<パンダ!>
<ベストマッチ!>
束ビルドは瞬時にボトルを変更する。破壊光線が命中し爆炎が上がると同時に炎の中から別な姿で目の前に現れる。
<ぶっ飛びモノトーン!ロケットパンダ!イェーイ!>
『瞬時にフォームチェンジだと!?』
テレビ以上の形態の切り替えの早さに驚いている隙に束ビルドは壮一を回収して高速離脱を試みる。
『逃がすか!』
「ぐっ!?」
アナザーアルティメットクウガの巨大な腕をたたきつけられ、束ビルドはビルに衝突する。
「束!」
千冬はマシンからアタッチメントを取り出し、連結させることによって完成する「GXランチャー」で攻撃を試みる。
『無駄な抵抗を。』
「無駄かどうかは貴様が決めることじゃない!」
千冬はランチャーをアナザーアルティメットクウガに向かって発射する。命中すると同時に凄まじい爆発が起こるが致命傷には至らず、アナザーアルティメットクウガの腕に捕まってしまう。
「うっ!?」
「ちーちゃん!」
激突したビルの中から変身が溶けてボロボロの恰好になった束が壮一を担ぎながら叫ぶ。
『へっへへへ・・・・世界最強と言われてもこの程度だ。このまま握り潰してやる!!』
アナザーアルティメットクウガは千冬を握り潰さんと力を入れ始める。
「ぐううぅううう・・・・・」
いくら身体能力が常人を上回るとはいえ、所詮は人間での領域内。千冬の身体に徐々に圧力がかかり始める。
「ちーちゃん!」
束は、再度ビルドに変身しようと試みるが目の前に数体のグロンギたちが現れる。
「ぐっ!邪魔だよ!!」
<フェニックス!>
<ロボット!>
<ベストマッチ!>
迫ってくるグロンギたちに対して彼女は壮一を下ろして新しいボトルを挿入する。
「変身!」
<不死身の兵器!フェニックスロボ!イェーイ!>
束ビルドはフェニックスロボフォームへと変身し、炎でグロンギたちを焼き払う。元々再生能力が高いグロンギではあるがフェニックスのボトル成分で構成されている炎のためか一部は消し炭と化する。
「そこをどけ~!!」
『貴様はそこで雑魚を相手にしていろ。』
アナザーアルティメットクウガは視線を再び千冬に戻して今度こそ握り潰そうと力を籠め直そうとする。
「くそ!ただでは死なん!!」
千冬は左腕の二の腕の部分に装備されている「GK-06 ユニコーン」と呼ばれるコンバットナイフを展開して腕を斬りつける。
『ハッハッハハ!そんなものが効くわけ・・・・・グッ!?』
笑いながら侮辱しようとしたアナザーアルティメットクウガの顔に何かが衝突する。同時に捕まっていた千冬は拘束が解かれ、地上に落下していくがぶつかった何かは建物から飛び移って彼女をキャッチし、地上へと下ろした。
「あ・・・・あれは・・・・・・」
ようやく動けるようになった壮一はその姿を見てすぐに正体が分かった。
「い、一夏・・・・・・」
それは学園から来たアナザークウガこと一夏だった。一夏は、千冬を地上へと下ろすとすぐにアナザーアルティメットクウガの元へと向かう。
『くたばり損ないが。まだ、俺に抵抗する気になったか。』
アナザーアルティメットクウガは顔を押さえながら一夏クウガを見る。大きさからにして明らかに勝ち目はないように見える。
『 今更何しに来た?人間でもアナザーライダーでもないお前が戦いに来てなんになる?』
『・・・・・オレハ、オ前ヲ許セナイ。』
『 許せない、ハッハッハッハハハ!!あの時の時点で力の差は明らかだっただろう!お前は抜け殻!俺が本体のようなものなんだよ!!』
『ソンナノ関係ナイ・・・・・俺ハ、誰カヲ守リタイト思ッテ強クナリタイトネガッタンダ。コンナトヲスルオ前トハ違ウ!』
『ハッハッハッハッ!!おめでたい奴だな!!』
対峙している一夏クウガに対してアナザーアルティメットクウガは笑いながら言う。
『お前の正義感なんてただの偽善者みたいなもんなんだよ。誰かを守りたい?具体的には誰をだよ?世界中の人間か?だとしたら馬鹿としか言いようがないな。誰もお前みたいな化け物のなり損ないになんて助けを求めねえんだよ!』
『・・・・・イイサ、ソレデ。』
『何?』
「一夏・・・・・・」
自分の考えをすべて否定された上に見た目のことを言われた一夏を見て千冬は心配するが一夏クウガは、動じなかった。
『化ケ物デモ、人間デナクテモイイ。千冬姉、束サン・・・・・箒ガ俺ノコトヲ必要トシテクレルナラソコガ俺ノ居場所ダ。俺ハ、ナニモ言ワナイウチニ逃ゲヨウトシテイタンダ。ダカラ、モウ逃ゲナイ。』
『・・・・クックックックックッ・・・・・・ハッハッハッハッハッハッ!!最高のバカだよ!織斑一夏。俺はお前のそういうところが嫌いだったんだ!!そうやって何があっても人のために動こうとするその貴様の信念がなっ!!』
アナザーアルティメットクウガは巨大な腕で一夏クウガを攻撃する。一夏クウガは体色を青に変化させて高く飛びあがり、後ろに回ると赤に戻って背後からキックを繰り出す。
『グッ!?』
『俺カラ見レバ、オマエコソガ化ケ物ダ!!人ノ命ヲ弄ンデ怪物ニ変エテ、更ニ他ノ人タチノ命モ奪ッテ!!』
バランスを崩して前の建物に倒れ込んだアナザーアルティメットクウガに一夏クウガは電柱を捥ぎ取り、巨大な大剣へと変化させて叩きつける。
『グオッ!?』
『俺ハ戦ウ!オ前ノヨウナ奴ラノタメニ、大事ナモノヲ亡クシタ人タチヲ悲シマセナイタメニ!!』
『この出来損ないが・・・・』
『ミンナノ“笑顔”ノタメニ!!』
『ガアッ!?』
「い、今のは・・・・・」
壮一は、一瞬一夏クウガの姿が原作のクウガの本来の変身者である五代雄介の姿と重なった。だが、アナザーアルティメットクウガは一夏クウガの足を掴み、持ち上げた後に勢いよく地面に叩きつけた。
『グウゥウ!!』
『悲しませないために?笑顔のためにだとっ!?』
『ガフッ!!』
何度も地面に叩きつけた後、アナザーアルティメットクウガはその巨大な足で一夏クウガを踏み続けた。
『それが偽善者だって言うんだ!!お前のような考えの人間なんてこの世界で腐るほどいる!!』
『ゴフッ!!』
『だが、どうして世界は変わらないと思う?どいつもこいつも嘘つきだからさ!!』
『ガバッ・・・・・・』
『表ではいくらでも善人みたいなことを吐けるけどな、所詮は人間、みんな悪人みたいなもんなんだよ!!』
『ブフッウゥ・・・・・・・』
『お前だってそうだ!!口先だけで何もできやしない!!お前もそういう奴らの仲間なんだよ!!』
何度も踏みつけられ続けて一夏クウガの全身から大量の血が流れてくる。
「やめろ!これ以上、一夏を傷つけるな!!」
千冬は、先ほどの握り潰しで左腕を負傷しながらも突撃銃で目を狙うがほどんど無意味だった。
「いっくん!ぬうぅ・・・・もう、いい加減にしてよ!!」
いくら攻撃しても湧き続けるグロンギたちに対して束ビルドは堪忍袋の緒が切れてドライバーのレバーを連続で回す。
<Ready Go!>
<ボルテックフィニッシュ!>
<イェーイ!>
一体のグロンギをロボットアームで掴み、全身に炎を纏って飛び上がると他のグロンギたちも巻き込んで灼熱の炎に身を包んで体当たりをする。それでも次々と湧き出て、助けに行くことができなかった。
「くっ・・・・・・・・」
壮一は、起き上がってドライバーをセットするがライドウォッチを起動させる前にグロンギたちに襲われ、ジオウライドウォッチを落としてしまう。
「しまった!」
変身ができない中、一夏クウガはボロボロの状態でほとんど動かなくなった。
『ハア、ハア・・・・・本当にクソむかつく奴だ。』
最期にとどめともう一度足を振り上げ、踏みつぶそうとすると千冬とは違う方角から弾丸が飛んできた。
『今度は誰だ?』
振り向くと、そこにはG3-Xの前身機であるG3が銃を構えていた。
「あれはG3!?」
「嘘っ!?使わないからって学園の格納庫にしまっておいたのに!?でも、いっくんがここに来たってことはまさか・・・・・」
「うおおおおおお!!」
G3は、マシンから高周波振動ソード「GS-03デストロイヤー」を装備してアナザーアルティメットクウガに向かっていく。
『邪魔だ。』
「うわっ!?」
しかし、ぎこちない動き上に簡単に弾き飛ばされ、壁にぶつかると頭部ユニットはあっという間に外れて箒の素顔が露わになった。
「し、篠ノ之!?」
「やっぱり・・・・・」
『ホ・・・・・箒・・・・・』
『ほう、この期に及んでメインヒロインが来たか。』
アナザーアルティメットクウガは、一夏クウガを踏みつけるのをやめて立ち上がろうとした箒の足を摘まみ上げた。
「う、うわあっ!?」
「箒ちゃん!」
『ナ、何ヲスルツモリダ・・・・・・』
『何ッて?お前にさらなる絶望を与えてやるのさ。』
アナザーアルティメットクウガは爪で箒の身体を切り裂いた。
「うわぁあ!?」
幸い、装甲が引き剥がされただけだがインナースーツも僅かながら傷がついていた。
『このままコイツをお前たちの目の前でみじめに晒して切り裂いて殺してやる!』
『ヤ、ヤメロ!!』
一夏クウガは、瀕死の状態でアナザーアルティメットクウガの身体に飛び移って攻撃を加えるが箒を離す様子はない。アナザーアルティメットクウガの爪が更に箒のインナースーツを剥ぎ取り、彼女の裸体に微かに傷がつく。すぐ目の前に死が迫っていると感じ、恥ずかしさよりも恐怖が体を支配した。
『いい体してるな、次はそのきれいな肌を剥ぎ取ってやろう。』
「あ・・・・あぁ・・・・・・」
『ヤメロオォオオオオオオオオオ!!』
一夏クウガは頭部に飛び移り、クラッシャーから牙を剥き出しにしてアナザーアルティメットクウガの複眼を食い潰す。予想外のところへの攻撃にアナザーアルティメットクウガは思わず悲鳴を上げた。
『ぐわあああああ!?俺の目がぁああああ!!』
「きゃあああああ!!」
『クッ!!』
その瞬間に、箒は放り出され地上へと落ちそうになる中、一夏クウガに抱きかかえられる。
『箒・・・・・』
全身が血で汚れている中、一夏クウガは無意識に箒を強く抱きしめた。そんな彼のことを箒は受け入れる。
「私に心配かけさせるな・・・・馬鹿・・・・」
その言葉を聞いて一夏クウガは、五代と話していた時に明確に出ていなかったものが出た。
何故、彼女が自分のことを拒まなかったのか。
どうして、心配してくれたのか。
(そうか・・・・箒は俺のことを大事に思ってくれていたんだ・・・・・こんな、化け物の姿になり果てた俺のことを・・・・いつもそばにいてくれて・・・・・なんで今まで気づかなかったんだろう・・・・)
そんなことを感じている中、アナザーアルティメットクウガは、目を抑えながら落下中の二人を睨みつける。
『この蛆虫どもが・・・・・・この世界から最初に消えろォオオオオオオオオオオ!!!』
口から今までとは比べ物にならない威力の破壊光線を発射する。
「あ、危ない!!」
ウォッチを何とか回収しようと応戦している壮一は、一夏クウガに向かって叫ぶ。
『箒!』
一夏クウガは何とか箒だけでも助けようと焦るが落下中のためどうすることもできない。
「一夏!」
箒ももうだめだとばかりに彼を強く抱きしめる。破壊光線は既に二人の目の前にまで迫って来ている。
(箒だけは死なせたくない!せめて・・・・せめて彼女だけは・・・・・)
だが、同時に考えた。
彼女だけ助かったとしても自分がいなくなったらどうなってしまうのか?
光線が命中すると同時に一夏クウガの身体に亀裂が走る。
(俺がここで箒を失えばこの先絶対に後悔する・・・・・・箒だけ助かれば、俺と同じように後悔するんじゃないのか?ずっと俺のことを想って・・・・・・)
今までは自分はどんなに傷ついてもいいと考えていたこともあった。姉の背を見て、自分のことを顧みずに自分のことを守ろうとしてくれたことが強い影響だったのかもしれない。でも、姉自身ももし自身がいなくなった時の自分のことまで考えていたのだろうか。
(俺は・・・・・・)
胸の内の何かが熱くなった。
同時に腰部の禍々しかったベルトが剥がれ落ち、中から古代文字が刻まれ赤く発光するベルトが現れる。
(俺は・・・・・もっと・・・・・もっと生きたい!)
続いて全身がボロボロと崩れ始める。それはまるで蛹を脱いで成虫になろうとする昆虫のように見えた。
(俺は・・・もっと彼女と共に生きたい!もう、彼女が泣くところを見たくない!ずっとそばにいてくれた彼女に笑顔でいてほしい!)
ベルトの光がさらに増して二人を包み込んだ。
「そんな・・・・・・」
壮一はやっとジオウライドウォッチを回収したのも束の間、二人が破壊光線で爆発したのを目にする。
『ハッハッハッハッハッ!!これでクウガは俺一人になった!!そして、ライダーも必要ない!!俺一人であればいい!!』
アナザーアルティメットクウガは残った三人を始末しようと動き始める。
「うぅううう・・・・・・よくも・・・・よくもいっくんと箒ちゃん・・・・を?」
やっとグロンギたちを片付けて怒りを露わにしていた束ビルドは、アナザーアルティメットクウガの背後で光っている何かを見てキョトンとする。
『ん?』
束ビルドの反応を見てアナザーアルティメットクウガも後ろを振り向く。破壊された瓦礫の中でその光は徐々に薄れてその赤い鎧に頭部に逞しい金色の角を持った仮面の戦士が箒を抱えているのが見えた。
「・・・・・・・・」
『な・・・なんだと!?そんな馬鹿な!?』
アナザーアルティメットクウガが唖然としている中、少し遠く離れた建物の屋上で壮一と別れた神がワイングラスにシャンパンを注ぎながら一言呟いた。
「ハッピーバースデー・・・・・・・ここに正真正銘、この世界で最初の仮面ライダーが誕生した。」
そして、彼はグラスを掲げてさらに一言いう。
「織斑一夏、仮面ライダークウガに乾杯!」
編集が途中で読み込まなくなったので途中から通常の物になってしまいました。(修正済み)
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トリプルライダーキック
「一夏がクウガに?」
壮一は、今起こっている出来事が理解できていなかった。
アナザーライダーは変身者としての資格を持たないものがライダーの力を持ったことで変貌する怪人であり、誕生した段階でオリジナルのライダーは存在できなくなる。
ましては一夏は既にアナザークウガに変貌したため、仮面ライダークウガがこの世界に誕生するはずがない。
「・・・・・・・」
クウガは、黙って箒を抱きかかえたまま立ち上がる。箒は一体何事かと思いゆっくりと目を開けた。
「・・・・い、一夏?」
先ほどまでの禍々しい顔ではなく、正義のヒーローのような姿になった彼に対して箒は目を見開きながら驚く。
『クッ・・・・・今更オリジナルが出てきたところでなんになる!!』
「「!?」」
アナザーアルティメットクウガは、動揺しながらも二人に向かって破壊光線を発射する。クウガは通常のマイティから瞬時にスピードとジャンプ力に特化したドラゴンフォームへとフォームチェンジしてその場から離脱する。
「きゃあっ!?」
突然の出来事で箒はパニックになっていたがクウガは彼女を手放そうとしない。しかし、クウガには飛行能力がないため、連続で攻撃を受け続ければ逃げ場を失ってしまう。
「このままだとやばい!」
壮一は急いでジオウライドウォッチ共にフォーゼライドウォッチを起動させる。
<ジオウ!>
<フォーゼ!>
ドライバーの両側にウォッチをセットし、回転させる。
「変身!」
<ライダータイム!>
<仮面ライダージオウ!>
<アーマータイム!>
ジオウに変身すると同時に目の前に白いロケットを模したアーマーが何やら万歳というポーズをとると装着されていく。
<3・2・1!>
<フォーゼ!!>
顔の文字が「フォーゼ」と変わり、彼は「仮面ライダージオウ フォーゼアーマー」とへなる。
「宇宙~~~行く~!!!」
変形してブースターロケットのような姿になると壮一は一夏の元へと飛んでいく。
『ちょこまかと逃げやがって!!』
アナザーアルティメットクウガは破壊光線を拡散タイプの物へと切り替えクウガの周囲の建物を破壊した。
「しまった!」
飛び移る建物が無くなったことによってクウガはそのまま落下していく。
「ん?」
そこへ変形した壮一が彼のすぐ近くまで駆けつけ、手を掴んだ。そのまま、クウガは壮一と共にゆっくりと地上に降下し、地上で待機していた千冬と合流する。
「常間!一夏!」
「織斑先生!」
「・・・・・」
クウガはマイティへと戻ると抱きかかえていた箒をゆっくりと下ろし、千冬に預ける。
「一夏?」
「千冬姉、箒のことを頼む。」
そう言うとクウガは、背を向いてアナザーアルティメットクウガの方へと向かおうとする。
「待て!お前だってさっきの攻撃で相当ダメージを受けているはずだ。無理して行かせんぞ!」
「・・・・俺は大丈夫だよ。でも、このまま奴を好き勝手にさせるわけにはいかない。」
「一夏!」
箒はクウガを抱きしめた。
「箒・・・・」
「行かないでくれ!もし帰ってこなかったら・・・・私は・・・・・」
「・・・・・・大丈夫だ。」
不安そうに見る箒に対してクウガは彼女の目の前でサムズアップをして見せる。
「一夏・・・」
「ある人に大事なことを教えてもらったから。必ず帰ってくる。」
そう言うとクウガは、彼女を一回強く抱きしめた後アナザーアルティメットクウガの元へと走って行く。その後を壮一が追いかけていく。
「一夏!」
箒はクウガの後を追おうとするが千冬に止められる。
「千冬さん!どうして・・・・」
「行かせてやれ。今私たちが行っても足手まといになるだけだ。それに・・・・・・・」
千冬は自分の左腕を抑えながら箒にその辺から拾ってきた布を手渡す。
「これを体に巻いておけ。」
「えっ・・・・・・!!」
今になってようやく自分が全裸になっていたことに気づいて箒は顔を真っ赤になった。
目の前に走ってきた二人を見てアナザーアルティメットクウガは黒煙を発生させて次々とグロンギを生み出していく。
クウガは、マイティで格闘戦を行いながら瞬時にタイタン、ドラゴンとフォームチェンジを行い、グロンギを倒していく。
対する壮一も足を引っ張らないようにとフォーゼアーマーからディケイドアーマーに切り替え、ビルドライドウォッチを装填した。
<ファイナルフォームタイム!>
<ビ・ビ・ビ・ビルド!!>
胸部のアーマーに「スパークリング」と表示され、顔が仮面ライダービルド ラビットタンクスパークリングフォームの物へと変わってライドヘイセイバーとドリルクラッシャーの二刀流で奮戦する。
「・・・なあ。」
「ん?」
戦闘の合間、クウガは壮一に話しかける。
「あの時は襲い掛かって悪かったな。」
「別にいいよ。攻撃したのは俺だしね。」
二人は息を合わせて次々とグロンギたちを蹴散らしていく。
「俺は、織斑一夏。お前は?」
「常間壮一。この世界じゃ異物みたいなものさ。」
「異物?」
クウガはその言葉を聞きながらもタイタンソードで目の前に突進してきたズ・ザイン・ダの角を斬り飛ばし、突き刺して撃破する。
「いわゆる俺のせいでアンタの人生を狂わせちまったようなもんだよ。俺がこの世界に来なければ・・・・」
「そんなことはないさ。」
クウガは、マイティに戻って壮一の目の前に迫ったメ・ギノガ・デをパンチで返り討ちにする。
「俺も自分のことを劣等品とか千冬姉の恥さらしだと思い悩んだことがあったんだ。だから、自分なんていなくなればいいと思っていたときもあった。でも、それでも千冬姉は俺のことを大事にしてくれた。俺に『守る』ということを一番最初に教えてくれたんだ。そして、五代さんから『みんなの笑顔を守る』って言うことを教えてもらった。」
「五代?もしかして、仮面ライダークウガの五代雄介のことか?」
<オーズ!>
<ファイナルフォームタイム!オ・オ・オ・オーズ!!>
手に火炎を纏わせながら攻撃する壮一は驚いた様子で言う。
「俺はあの人みたいに強くない。でも、彼はそれ以上に誰の涙も見たくないと思って戦っていたんだ。だから、俺はこれ以上同じことを繰り返させない。そのために戦う。」
「一夏。」
最後の一体を倒すと同時にクウガの身体から見覚えのあるものが出てきた。
「あっ!クウガライドウォッチ!?」
「ウォッチ?これが?」
不思議そうに言う中、アナザーアルティメットクウガは二人に向かって攻撃を再開する。
『仮面ライダーどもが!!』
「ハッ!」
「激マズっ!?」
その直後、二人の背後からグラフ型の標的固定装置を展開し、x軸でアナザーアルティメットクウガを拘束した。
「「えっ?」」
『こ、これは!?』
<Ready Go! >
<ボルテックフィニッシュ!>
<イェーイ!>
更に地面からいつの間にかラビットタンクに戻った束ビルドが現れ、グラフの上を滑って加速しながらキックを放った。
「えいや~!!」
『グアァアア!?』
束ビルドのボルテックフィニッシュを受けてアナザーアルティメットクウガは後方へ吹き飛んでいく。
「束さん?」
「あれ・・・・本当に束さんなんだ・・・・」
束ビルドは技を繰り出し終えると二人の元へと行き、早速とばかりにクウガを子供のようにあやし始める。
「いっくん~!!よかったよかった~!!一時はどうなっちゃうかと思ったよ~!!」
「いや・・・・・その・・・・すみません・・・・」
クウガは、そう言うとクウガライドウォッチを壮一に手渡す。
「いいのか?」
「うん。形から見た限りこれが必要なんだろ?」
飛ばされた方を見ると怒りのあまりにブラックアイ化しつつあるアルティメットクウガが起き上がってきている。
『どいつもこいつもふざけやがって!!』
「もう体力も残り少ない・・・・・一気に決めるぞ。」
「・・・・あぁ、ありがとう。使わせてもらうよ。」
壮一はクウガライドウォッチを起動させる。
<クウガ!>
そして、ディケイドライドウォッチのスロットに付け替える。
<ファイナルフォームタイム!>
<ク・ク・ク・クウガ!!>
胸部のアーマーに「ライジング」の文字に変更され、フェイスプレートはクウガの物へと変わる。
「じゃっ、束さんもちょっと前にクーちゃんが持って来てくれたこの出来立てホヤホヤのやつを使おうかな?」
束ビルドは、缶型のアイテムを軽く振るとプルタブを引き、ドライバーにセットする。
<ラビットタンクスパークリング!!!>
レバーを回すとスナップライドビルダーがビルドのライダーズクレスト型のフレームに変化しており、何か炭酸のような泡が見えた。
「ビルドアップ!」
<シュワッと弾ける!ラビットタンクスパークリング!>
<イエイ!イエーイ!>
束ビルドは基礎フォームであるラビットタンクの強化版ともいえるラビットタンクスパークリングフォームへと変わった。
「・・・・・・・五代さん、一緒に戦ってくれますよね。」
クウガは、両腕を開いて腰を落とした構えを取る。
<キュイン>
<バヂバヂ、バヂバヂ・・・・>
すると装甲の縁とベルトが金色へと変化し、右足に強化パーツが追加されライジングマイティへとなった。
「行くよ!」
最初に束ビルドが飛び、レザーを連続で回す。
するとアナザーアルティメットクウガの目の前にワームホールの様な図形を出現させる。
「よし!」
<ク・ク・ク・クウガ!>
<ファイナルアタックタイムブレーク!!>
「・・・・ハッ!」
クウガと壮一は互いに右足に炎を纏わせ、駆け出す。
そして、ワームホールのような図形の目の前で大きくジャンプし、一回転して三人同時にキックを繰り出した。
<Ready Go!>
<スパークリングフィニッシュ!>
「「「うぉりゃああああああ!!」」」
三人のキックはワームホールの中央に結束され、アナザーアルティメットクウガに直撃する。
『グウウウオォオオオオオオ!!!』
アナザーアルティメットクウガは何とか耐え切ろうとするが三発のキックの内の二発は自分に効力がある力で徐々に体に封印エネルギーの文字が浮かび上がってくる。
『何故だ!?何故、俺は奴に勝てない!?ここまで圧倒的な力を手に入れて何故だぁ!?』
「それはお前が自分の欲望しか見ていないからだ!!」
壮一は、キックを繰り出している中で言う。
『なんだと・・・・』
「ここにいる一夏はみんなを守るために戦うことを決意した!束さんは自分の夢を叶えるために戦っている!そして、俺は・・・・・・」
封印エネルギーが結束し、アナザーアルティメットクウガは苦しみだす。
「この世界と共に生きるために戦うんだ!!」
叫び終わるのと同時に三人のキックが貫通し、アナザーアルティメットクウガは大爆発を起こした。
『グワアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
三人同時に着地し、爆発したアナザーアルティメットクウガの方を見る。
爆煙の中で変身が溶けたティードは瀕死の状態ながらも罅の入ったアナザークウガウォッチを回収しようとする。
「ハア・・・・・カア・・・・お、俺は・・・・・こんなところで・・・・・ハア・・・・・」
しかし拾おうとした束の間、目の前には三人のライダーはいた。
「くう・・・・・・・」
「悪いけどこれは私たちがもらうよ。」
束ビルドはそう言ってアナザークウガウォッチを拾うが手に触れた瞬間、完全に砕け散ってしまった。
「うぅう・・・・」
「お前ももう終わりだ。」
「ハ、ハッハッハッハ・・・・・・・」
「何がおかしい?」
既に瀕死なのにもかかわらず笑いだすティードに対してクウガは聞く。
「お前たちは・・・・・ゲフッ・・・・・・俺を倒せばすべてが終わると思っているのか?ハッハッハッ・・・・・・」
ティードはヨロヨロと起き上がると恨めしく三人を見る。
「この世界は様々な面で歪んでいる・・・・・・俺をここで倒したとしても・・・・第二、第三の歪みが訪れる・・・・・そして・・・クックック・・・・・この世界が滅びの時が訪れる・・・・ガフゥ!!」
笑いながら吐血し、ティードはその場に倒れ込む。
「お前たちのみじめな最期を・・・・・・地獄から見ているぞ・・・・・・・・やっと・・・・・苦しみから解放される・・・・・・長かった・・・・・」
最後に言い終えるとティードの遺体はその場で灰のように崩れ去ってしまった。
「・・・・・それでも戦うさ。」
壮一はすぐそばにいるクウガとビルドを見ながら言う。
「それが・・・・俺やお前のような存在だったとしても・・・・最後まで・・・・」
互いに変身を解くと一夏はその場で倒れそうになる。壮一は慌てて支える。
「大丈夫か?」
「あぁ・・・・・あの姿になって苦しんでいるよりは楽な方だ。」
そう言っていると一台のトレーラーが三人の元へと走ってきた。目の前で止まると応急処置で左腕をギプスで固定している千冬と箒が下りてきた。それと同じく運転席の方から束の助手であるクロエ・クロニクルがG3のマイナーチェンジであるG3マイルドの恰好で降りてくる。
「束様、新しいアイテムの使い心地がいかがでしたか?」
「うん、シュワって爽快って感じかな?」
「じゃあ、そういう風に記録しておきます。」
そう言ってクロエは、運転席の方へと戻って行く。一夏は千冬と箒と向き合っていた。
「・・・・・ただいま。」
「・・・・・フウ、お前って奴は・・・・・本当にバカな弟だ!」
そう言うと千冬は一夏を手繰り寄せて強く抱きしめた。
「よかった・・・・・本当によかった・・・・・・」
「・・・・ありがとう、千冬姉。」
「一夏。」
次は箒の方へと向き直る。箒は先ほどのこともあってか顔を赤くしていた。
「箒・・・・・」
「わ、私の裸・・・・・見てたよ・・・・な?」
「・・・・・ごめん。」
そう言うと箒は膨れっ面で目の前に来る。そして
「だったら、責任取ってくれ。」
二人の唇が重なる。
それを見て壮一は、勿論千冬と束は呆然としていた。
「い、一夏・・・・・・・」
「あらま・・・・・これは・・・・・ちょっと早かったかも。」
「あぁ・・・・・羨ましいな。」
抱き合っている二人を見ながら壮一は夕方になり、茜色になっている空を見る。
「こんな物騒なことになるんだったら・・・・・ライダーの力じゃなくて・・・・可愛い彼女を頼めばよかったかもな~。」
数日後のIS学園
「今日からこのクラスでお前たちと共に学ぶことになった織斑と篠ノ之だ。仲良くしてやってくれ。」
一年一組において一夏と箒が新しく編入することになった。
「おぉ~!!常間君に続いて二人目・・・・・・・」
「言っておくがこいつら二人付き合っているから無理だぞ。」
「「「「「えっ!?」」」」
二人目の男子生徒が来たと喜びかけた女子生徒一同だったがその言葉を聞いてしょぼんとする。
「あの・・・・織斑先生・・・・」
「山田君、何も言わないでくれ。」
「いや、そういうことじゃなくて・・・・・・」
副担任である山田真耶は窓から見える大きく穴が開いた校舎を見ながら言う。
「なんで校舎が壊れているんでしょうか?」
(あんなこと言っても信じてもらえんしな・・・・・でも、他の教室も被害が出てこれ以上仮設校舎造るとグランドのスペースが無くなるから・・・・・これは他の策を考えるしかないかもしれんな。はあ。)
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また何か始まった件
壮一による前回までの「インフィニット・マスクドライダーズ」のあらすじ
・学園生活初日から原作と異なっていた。
・一夏のアナザークウガ⇒クウガへの変身。
・スーパータイムジャッカー ティードかと思いきや俺と同じ元転生者。
・束さんがビルドに変身した。
・千冬さんがG3-X、助手のクロエさんがG3マイルド。
・アナザーアルティメットクウガによる箒のサービスシーン。
・一夏と箒、晴れてカップルに。
・ティードのせいで校舎が壊れて教室不足に(仮設は作ったもののそれでも足りない)。
・クラス代表?そう言えばまだ決まってない(汗)
「これってもうISの原作とどめていないな。大丈夫なのかこれ?」
そんなこんなで第八話をどうぞ。
200X年
「・・・・・が、があ・・・・・・・・」
俺は・・・・そうか確か教室に来た一夏が突然化け物になって・・・・・。
「お・・・・・おい・・・・・誰か・・・・誰かいないのか?」
僅かに体を動かしながら俺は辺りを見回す。
教室は血で真っ赤に染められていた。
目の前で友人の何人かがバラバラの死体で転がっている。多分、アイツに喰い殺されたんだろうな。
鈴の奴は・・・・・運のいい奴だ。教室の隅っこの死体のすぐ脇で気を失っているだけみたいだ。
「ゴフッ・・・・いてえ・・・・・」
口から吐血しながら俺は改めて自分の身体を見る。不幸中の幸い、手足は亡くなってはいないが腹部の出血がひどい。隣の数馬は、首がスッとんでいる。
「俺は・・・・・ここで死ぬのか?」
俺は朦朧としている意識の中で死んだ親父のことを思い出す。
親父は死ぬ間際に、じーちゃん、母さんに何か言っていたこと。俺に何があっても蘭を守ってやれ言っていたことを思い出す。
「い・・・いやだ・・・・・俺は・・・・・まだ・・・・・」
俺は腹部を抑えながら立ち上がろうとする。だが、次の瞬間に口から大量の血を吐き出し、倒れてしまった。
「まだ・・・・・死ねないんだよ・・・・・・・」
悔し紛れに歯を食いしばっていると目の前に誰かが立っていた。
白衣に髪を後ろで束ねている男だ。
『ふむ・・・殺し方が雑だな。僅かながら息のあるものが数人いるようだ。』
「だ・・・・・誰だよ・・・・・」
『まあ、ちょうどいいモルモットが手に入ったから良しとしよう。君に新しい体験をさせてあげよう。』
「なに・・・・・・・」
男は懐から何か時計みたいなものを取り出して起動させる。
<ΑGITΩ>
「な・・・・なんのつも・・・・・」
『遠慮はいらない。精々私の研究の役に立つデータを収集できるように動いてくれたまえ。』
「グッ!?」
身体に何かを埋め込まれ、俺は意識が何かに吹き飛ばされようとしていた。
「う、ウゥウウ!?」
身体の傷は治って行くが同時に何か異形な者へと変化していく。
何かの気配を感じて一瞬見ると、鈴が怯えた顔で俺を見ていた。
「が、が・・・・・・ガアアアアア!!!』
<ΑGITΩ>
20XX年
「はぁあ~~」
俺は欠伸をしながらベッドから起き上がる。とは言っても目に見えたのはIS学園の学生寮ではない。
「・・・・・そう言えば、昨日から休校になって家に帰ってきたんだっけな。」
ティードことアナザークウガの攻撃でIS学園の校舎の一部が倒壊してしまい、仮校舎を設けようにも限度があったため、学園側は苦渋の決断で今年入学してきた新入生たちを一回自宅へと帰し、校舎が修復されるまでの間、話がまとまり次第クラスごとに別の高校の一教室を借りて授業を行うという苦肉の策を出した。無論、一年の代表候補生も含めてだ。
因みに現段階ではIS学園生徒が他の高校に通っている間は以下のような制約が課せられるそうだ。
・代表候補性を含める専用機持ちの生徒はISの使用を学園外で禁ずる。
・他校の生徒に迷惑をかけないよう心得る。
・ISを使う授業に関しては日程を決め次第、IS学園のアリーナを開放する予定。
・代表候補性は指定のホテルで待機。高校はそこから通うようにする。
後、ティードがやったことはIS学園で爆破テロが起きたとかで誤魔化された。
束さんが情報操作をすることによってどこかの国が仕掛けたのではというプレッシャーを与え、代表候補性の扱いに関しても致し方あるまいという判断をさせたのもこれが原因なのかもしれない。
織斑先生がこの話を聞いたとき大半の女子生徒がショックを受けていたが一番文句を言いそうなセシリアは至って大人しかった。
えっ?この人、本当にあのセシリア・オルコット?なんか怖いんですけど。
そんなわけで俺は今自分の家で原作では常磐ソウゴの自宅であるはずの「クジゴジ堂」に帰って来ていた。
「叔父さん、おはよう。」
「あぁ、おはよう壮ちゃん。今日は早いね。」
下では俺の叔父である順一郎おじさんがちょうど朝食を準備していたところだった。
基本的なところは原作の常磐純一郎と同じなんだけど、口調がちょっと変わっている。
「いや、昨日帰ってきたときはびっくりしたよ。向こうに行ったら夏休みまで帰ってこれないって言っていたからさ。」
叔父さんは久しぶりに帰って来てくれてうれしかったのか茶碗にご飯を盛る。俺は、新聞を開いてニュースの方を確認する。
『IS学園爆破!!』
『女尊男卑化社会への警鐘か?』
『狙いは織斑千冬に恨みを持つものか?』
『犯人は学園の教師・生徒の可能性も・・・・』
「物騒なことばっかり書いていやがるなマスコミの奴ら。」
「でも、本当に大丈夫だった?学校、危ないことになったそうだけど。」
叔父さんは、悟飯を俺の前に置くと心配そうに言う。
「あぁ、大丈夫だよ。吹き飛んだのは校舎の方で学生寮には何もなかったから。」
テレビでは、マスコミが記者会見を開いているIS学園の教師陣に対して質問攻めをしている。その中には織斑先生の姿もあった。
「先生たちも大変だな・・・・・・」
俺はそう思いながら朝食を食べ始める。
しかし、小学校に入った直後に親が事故で亡くなって叔父さんが引き取ってくれてからずっと二人暮らしだったけど・・・・・・なんか、ソウゴがさみしく思うのはなんとなくわかるな。
マジで二人だけの食卓ってさみしいんだよ。
しかもこっちの叔父さんは、俺を引き取る以前と俺がIS学園に行った短い期間の間一人で食事をしていたんだからな・・・・・
ピンポーン!
「あっ、こんな時間にお客さんかな?はいはい~。」
叔父さんは一回店の方へ行き、しばらくすると真面目な顔で戻ってきた。
「壮ちゃん、壮ちゃんのお友達が相談があるそうだけど?」
「友達?」
店の方へと行くとそこには一夏と箒が来ていた。
「一夏。篠ノ之さんも。」
「突然の訪問で悪い。」
「えっ?しばらく匿ってくれ?」
リビングでコーヒーを飲みながら二人の話を聞いて俺は思わず吹き出しそうになる。
「あぁ。IS学園の件で千冬姉たちが取材に追われていただろう?俺も弟というわけで何か知ってんじゃないかって言われて付けられててさ・・・・・家でも安心していられないんだよ。束さんに頼もうにも限度があるし。」
一夏は困った顔で言う。
話によるとマスコミが自宅に押し寄せてきて安心して過ごせないのだという。
束さんと織斑先生の判断で箒と一緒にいたようだったけど流石に私生活まで除かれてはたまったものではないと思い、今回俺の家に訪問してきたという。
「頼むよ。ほんの一日、二日でいいからさ。ちょっと、落ち着くまで箒だけでもいいから匿ってくれ。今の家じゃ落ち着いてもいられないからさ。」
「でも、他に頼めるところとかなかったのか?俺以外に友達も・・・・・あっ。」
俺は一瞬「しまった」と思い口をふさぐ。一夏は悲しそうな表情をしながらもうまく隠そうと返事をした。
「友達の方は・・・・・・・無理だったんだ。いろいろ都合があってさ・・・・・」
一夏は直接とは無い上、友人たちをクラスメイト事ティードに殺されてしまった。しかもティードは悪いことに一夏に擬態した上でアナザークウガに変身したのだからもし、あのクラスで生き残りがいたら一夏は殺人犯または怪物呼ばわりされてしまうのが当たり前だ。
一夏はそれを自分の責任と感じているため、行くのを躊躇っているのだ。
「悪い・・・・余計なことを聞いたな。」
「いや・・・・いいんだ。あれも俺の罪として受け入れなくちゃいけないからな。」
「一夏・・・・・」
そんな一夏を見て箒は心配そうな顔をする。
「邪魔して悪かった。他に当たることにするよ。」
「えっ・・・・いや・・・・・・」
「困っているんだったら別にここにいてもいいよ?」
戸惑っている俺を見てか叔父さんは一夏に対して言う。
「でも・・・・迷惑なので・・・・・」
「いやいやいや・・・・・家も壮ちゃんと二人暮らしだからね。空き部屋もあるから落ち着くまでここに居候しても構わないよ。」
「それに・・・・・」
「壮ちゃんの友達が困っているところを見過ごせないからね。困ったときはお互い様、遠慮はいらないよ?」
二人を見ながら叔父さんは優しく言う。
「・・・・そ・・・それじゃ・・・・お願いします。」
「よかったね~壮ちゃん。」
「うん・・・・・・・・そうだね。」
まっ、ぶっちゃけソウゴとゲイツとツクヨミが俺と一夏と箒に入れ替わっただけだからね。
そう言えばウォズ枠もそのうち出てくるんだろうか・・・・・・流石にそれはないか。
「「しばらくお世話になります。」」
「こちらこそ、壮ちゃんとも仲良くしてあげてね。壮ちゃん、小・中揃ってあまり友達が作れなかったもんだから・・・・・・」
「叔父さん、頼むからそれ以上俺の恥ずかしい経歴言わないでくれ!!」
「・・・・・・」
私は、いつもの習慣で朝、学校に行く前に仏壇に線香をあげている。
「お父さん。お兄ぃ。行ってきます。」
それだけ言うと私は店の厨房の方で下ごしらえをしているお母さんとお爺ちゃんに挨拶しに行く。
「お母さん、お爺ちゃん、行ってきます!」
「おう、行ってきな!」
「はい、今日のお昼。」
お爺ちゃんが厨房の方で元気に返事してくれた一方、お母さんは私に包んである弁当を渡してくれた。
「もう、お母さんったら。別にコンビニで買うって言ったのに・・・・」
「何、言っているのよ。コンビニのお弁当はいろんなものが入って怪しいんだから。手作りの方が安心なの!」
「うん・・・・・じゃあ行ってくるね。」
お母さんの笑顔に文句も言えず私は弁当をかばんに入れると外に出て学校へと向かって行った。
「・・・・・・」
一瞬、後ろを振り向く。
誰もいない。
最近いつもこうだ。
よくわからないけど誰かがずっと私を付け回しているかのように感じる。初めの頃は気のせいだと思っていたけどそのうち家以外ではどこでも視線を感じるようになった。
「・・・・・・・」
私は、そのまま学校まで走って行った。
『・・・・・・ウゥウ・・・・・』
クジコジ堂
「あぁ、千冬姉?・・・・・うん、家にもマスコミが取材に来たよ。とりあえず、常間の家でしばらくお世話になることなったから心配しないでくれ。・・・・・・・えっ?弾の家の方がよかったんじゃないかって・・・・・いや・・・・・ちょっとそれは・・・・・・・・」
リビングで一夏は織斑先生と電話をしている。
やっぱり、織斑先生も俺のところよりも弾の家の方に行くと思っていたようだ。最もあんな事件があれば生きづらく感じるのも無理はないけど。
因みに一夏の中学校のクラスが皆殺しにされた事件に関して調べてみたんだけど、メディアでは、謎の集団殺人事件として取り上げられていた。
内容はテロ組織による無差別殺害とか騒がれていたようだけどアナザーライダーの存在に関してはわからないようでその辺は詳細を掴むことができないまま事件が終息している。
因みにこの事件では僅かながら生存者がいたようで原作では一夏のセカンド幼馴染である凰鈴音が一夏のクラスで唯一の生存者だった。
彼女に関しては、どうやら原作通りに中国へ帰国したらしい。
あれ?でも、原作と違っているから中国の代表候補生にならねえんじゃね?
俺はそう思いながらもテレビをつける。
『今回は先日起こった「IS学園爆破事件」についての特集を行いたいと思います。世界でもIS操縦者育成用の特殊国立高等学校として知られているIS学園ですが今回の爆破事件について現場と合わせて専門家の方たちにお話を伺いたいと思います。』
「また、このニュースかよ・・・・・いい加減勘弁してほしいなぁ。」
『はい、こちら現在IS学園の校長含めた責任者一同の記者会見の会場です。先日に引き続いて校長は今後としては生徒と教師を含めて今後の方針を検討していくとのことですが・・・・うわぁっ!?』
その直後、現場中継の映像に一瞬が何かが写って途切れた。
「な、なんだ!?今のは!?」
「どうした?」
電話を終えた一夏が気付いたのかテレビを見る。
『こ、こちら記者会見会場です!今、先ほど奇怪な怪物が複数会場を襲撃してきて・・・・・あっ!こっちに近づいてきます!うわあぁ!?』
そのディレクターのすぐ横に写った姿を見て俺は何が起こったのか分かった。一瞬だがクラッシャーを剥き出し、金色の角を持った何かが。
「まさか・・・・・アナザーライダー?」
「また、この間のような奴らか?」
一夏と俺は緊張した表情で互いを見る。
「現場には千冬姉がいるはずだ!早く助けに行かないと・・・・・」
「行くにしても中継会場の場所がわからないし、第一どうやって・・・・・・」
「壮ちゃん、お友達の一夏君宛てに何か大きな荷物が届いたよ。」
叔父さんの声を聞いて俺たちは店の外に出てみる。外に出てみるとそこにはこの間のトレーラーがあり、宅急便の配達人の恰好をしたクロエさんがいた。
「あ、貴方はクロエさん?」
「束様からのご指示で織斑一夏様にお届けものです。」
「俺に?」
目の前にあるかなり大きめの箱の包装を外してみると一台の見覚えのあるマシンが出てきた。
原作では警視庁が開発して後にゴ集団との戦いまでクウガの愛機として使われていた「トライチェイサー2000」だ。
「これを俺に?」
「はい、束様が一夏様の足が必要だろうと言われて。」
「私には何もないのか?」
「残念ながら妹様の物は何も。」
「そうか・・・・・」
箒は残念そうにしょぼくれる。一夏はトライチェイサーのコントロールパネルをいじってみるとディスプレイでカーナビが出た。
「なんだこりゃ!?」
「どうやら、敵の反応を探知したようですね。」
「じゃあ、これで千冬姉たちのいるところへ!?」
「はい、可能です。束様も一足先に行っておられます。」
こうしちゃいられないとばかりに一夏は急いでマシンの上に置いてあったヘルメットを被り、エンジンをかける。
「常間、急いで行こうぜ!早く千冬姉たちを助けねえと!!」
「えっ!?でも、ちょっと準備・・・・・・」
「いいから急ぐぞ!」
そう言いながら箒も一夏の後ろに乗ると一足先にトライチェイサーは走って行ってしまった。
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!?」
俺は、叔父さんに「行ってきます」と言ってからライドストライカーに乗って一夏たちの後を追う。
「くそ、速すぎだろ!?あれ、絶対に束さんの魔改造受けてるだろう!!」
俺は、速度違反にならない程度でマシンを走らせるが危うく横断歩道を渡っている最中のカップルに接触しそうになる。
「うおっ!?危なっ!?」
俺は急ブレーキでストップする。その時何か落としたような気がしたがそんな場合じゃないため、カップルの二人に誤って行くことにした。
「すみません!」
「あっ!ちょっと君!!」
男の人の方は、走り去って行く俺に声をかけるが俺は聞かずに行ってしまった。
「行ってしまったか・・・・ん?」
男は落とした何かを拾う。
「これは・・・・・!?」
それはあるライダーのライドウォッチだった。男はそれを手に取った瞬間、何かが見えたのか驚いた顔をする。
「ア・・・・・・ア・・・ギ・・・ト?」
「どうしたの翔一?」
女性の方は驚いた顔をする男に声をかける。
「い、いや・・・・何でもないよ。」
男はそのままウォッチをポケットにしまう。
「でも、あの子一体何だったのかしら?」
「さあ・・・・でも、何も言わないで行くような礼儀知らずではなかったからいい方だよ。」
「そうね。じゃあ、気を取り直していきましょう。哲也の誕生日プレゼント買いそびれちゃったから、今度はちゃんとしたものを買ってあげなくちゃ。翔一も選んでね。」
「わかったよ、雪菜。」
そう言うと二人は気を取り直して歩いて行った。
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全部私のせいだ
『ウゥウウ!!』
IS学園の教師一同で行われていた記者会見の会場は突然乗り込んできた奇怪な怪物たちにより、中断となりパニックへと陥っていた。
「皆さん、落ち着いて行動してください!」
学園長は、年長者として落ち着かせるように促すが迫ってくる怪物たちを目の前にして記者たちの耳には入っていなかった。
「学園長も避難してください。」
「織斑先生。しかし・・・・・・」
「学園長の身に何かがあれば大変ですので・・・・・」
『ウゥウ!!』
「くっ!」
飛び掛かってきた怪物に向かって千冬は勢いよく蹴りを繰り出す。一瞬後ろに引きずられ怪物は動揺したようだがすぐに襲い掛かってくる。
「学園長!早く!」
学園長を取り逃がすと千冬はテーブルなどを盾にして時間を稼いでいると会場の外で待機していた真耶がアタッシュケースを持って走ってきた。
「織斑先生・・・キャッ!?」
『ウオォオオ!!』
<Ready Go!>
<ボルテックブレイク!>
「おりゃ!」
『ウゥッ!?』
彼女に手がかかろうとした瞬間、怪物は間に割って入ってきたドリルクラッシャーで弾き飛ばされた。真耶が怯えながら見るとそこには束ビルドが駆けつけていた。
「お待たせ~正義の味方 仮面ライダービルドでぇ~す!」
「は、はぁ・・・・」
困惑する真耶を引っ張り、千冬はアタッシュケースを受け取り、中身を見る。
「まさか護身用に持って来ておいたISがこんな形で役に立つことになるとはな。」
「『打鉄』と『ラファール・リヴァイヴ』しかありませんが。」
「私は打鉄を使う。山田君はラファールを使ってくれ。」
「は、はい!」
二人は瞬時にISを展開して怪物たちの迎撃に入る。
『ウグッ!?』
『ウゥガゥ!!』
「この狭い空間じゃISは不利だ。飽くまでも脱出優先で迎撃するぞ!」
「わかりました!」
真耶はラファールの装備である25mm7連砲身ガトリング砲「クアッド・ファランクス」で束ビルドと千冬の援護を行い、怪物たちがうまく近づけない内に束ビルドと千冬が接近戦で一体一体確実に仕留める。
「なっ!?」
「どうしたのちーちゃん?」
千冬が驚いているのを見て束ビルドは近づこうとしたが目の前で倒した怪物の姿を見てその答えが分かった。
「に、人間!?」
そう。
倒した怪物が人間になったのだ。
束ビルドは動揺しながらも周囲にいる怪物たちの恰好を見る。
顔は全く同じように見えるがそれぞれ人間が身に付けている衣服を纏っている。
「こいつらまさか・・・・・・・」
「千冬姉!」
そこへクウガが会場へと乗り込んできた。クウガは怪物の家の一体を強化マイティキックで倒すと会場にあるセット用のパイプを取り、ドラゴンフォームへとなる。後ろでは、とりあえずパイプを振り回して撃退する箒の姿が見える。
「はぁああああああああ!!」
「待て一夏!」
箒をカバーするのと同時にドラゴンロッドを振り回そうとするクウガを千冬が止める。
「何故だ、千冬姉!」
「迂闊に攻撃するな!コイツ等・・・・どうやら人間が変化したものらしい。」
「何っ!?」
クウガは先ほど蹴散らした怪物を見ると姿が変貌して人間になっていた。
「どうなってやがんだ?」
「やっと、追いついた・・・・・」
そこへやっとジオウが合流する。ジオウは、周囲にいる怪物にジカンギレードで返り討ちにしながらクウガたちの元へと来る。
「常間、コイツ等は?コイツ等も以前の俺と同じような奴なのか?」
「少し違うな。コイツ等は『アナザーアギト』。アナザーアギトの力を持つアナザーライダーだ。」
「アナザーのアナザー?」
「うんまあ、名前がややこしいけどアナザーライダーなのは確かだ。でも、服を着ている個体はオリジナルじゃなくて襲われた人間がなったもので一体一体倒したところでキリがない。何も着ていないオリジナルを倒さなくちゃ・・・・・あっ。」
ジオウはそう言いながら腕についているウォッチを取ろうとするが何故か硬直する。
「・・・・・・・・」
「常間?どうしたんだ?」
「・・・・・・コイツ等に効くと思うアギトライドウォッチ・・・・・・・落とした・・・・・・」
「「「えっ!?」」」
その言葉を聞いて真耶を除く三人は驚きの声を上げる。
「どういうことだよ!?つまり、倒せないってことか?」
「お前と篠ノ之さん追いかけた時、どっかに落としちゃったみたい・・・・・・」
「どうする?相手が人間である以上、攻撃してしまえば死者を出しかねんぞ?」
「攻撃するぐらいなら大丈夫だと思います。コイツ等は飽くまでオリジナルの攻撃を受けて変貌しているだけなので・・・・・でも、このまま放置すればもっと増えるけど。」
「要はみんなやっつけちゃえばいいってわけだね。よしよし・・・・じゃあ、これでどうかな。」
<トラ!>
<UFO!>
<ベストマッチ!>
束ビルドはボトルを差し替えてレバーを回す。
<Are you ready?>
「ビルドアップ!」
<未確認ジャングルハンター!トラユーフォー!>
<イエーイ!>
束ビルドは早速ピンク色のUFOを作り出して、周囲にいるアナザーアギトたちを翻弄する。
『ウグウッ!?』
『ウガッ!?』
「はいは~い!団体様、円盤の中へご案内~!」
トラハーフボディの爪でジオウたちの周辺にいるアナザーアギトを一掃するとレバーを回し、残りの個体を円盤の中へと吸い込ませる。
<Ready Go!>
<ボルテックフィニッシュ!>
<イエーイ!>
『『『『『『ウオォオォォオオッ!?』』』』』』
アナザーアギトたちは吸い込まれたかと思いきやそのまま全員床に叩きつけられて爆散した。すると全員元の人間の姿になって気を失って倒れていた。
「本当はミキサーにかけられたかのようにバラバラになっちゃうんだけど・・・・・・今回は吸って、吐いての感覚で抑えました~。」
束ビルドはそう言うとUFOから降りる。その姿を見てジオウたちは呆然とする。
「す、すげぇ・・・・・・」
「「流石、たば(ねえ)むぐぅ・・・・・・・」」
クウガと箒が言いかけたところで千冬が口を封じる。幸いなことに真耶は気を失って倒れていたが。
「ふう・・・・しかし、問題はまだ解決していないな。」
千冬は、打鉄を解除して会場を見渡す。幸い被害者の増加にまでは至らなかったようだが束ビルドが倒した中にオリジナルの個体はいなかった。つまり、オリジナルは別のところにいる可能性がある。
「常間、お前が言うには確かそのオリジナルを倒せばいいんだよな?」
「あぁ。でも、問題はそれに対応しているアギトライドウォッチが手元にないことだ。アギトの力を使わなかったら倒してもまた復活してしまう。」
「う~ん~でも、どこで落としたのか憶えていないの?」
互いに変身を解除して、束は壮一に言う。
「それが・・・・・もしかしたら、撥ねかけたあのカップルと差し掛かった道かも。」
「じゃあ、壮くんはそのウォッチを探して。私は、他に有効策がないかどうか調べてみるから。」
「俺と箒は、オリジナルを探してみるよ。」
「待て、お前と篠ノ之は常間と一緒にウォッチを探せ。」
一夏がオリジナルのアナザーアギトを探そうと言い出した瞬間、千冬が止めた。
「どうしてだよ、千冬姉?」
「敵はあの行動から見て恐らく本体であるオリジナルは数体引き連れていてもおかしくはない。篠ノ之を守りながら戦えるか?」
「ち、千冬さん!?それじゃあ、まるで私が・・・・・」
「現にさっきも危なかっただろ?」
「うぅう・・・・・・」
「それに一夏にはお前が必要だ。・・・・・・・・私も立場の都合上、そばにいてやることもできない。だから、無茶をしようとするな。」
千冬が感慨深い顔で言われた箒は一瞬しょげていたにもかかわらず顔を赤くした。
「束、G3-Xの修理は出来ているか?」
「ちゃんとできてるよ。」
「待ってくれよ!俺や箒のことを想って行ってくれるのはいいけど、千冬姉だって、この間の戦いの怪我まだ治っていないだろ!?さっきの戦闘でだって左腕の動きが鈍っていたじゃないか!」
心配してくれるのはいいけどやはり引き下がれないところがあったのか一夏が言う。
「G3-Xは、人口AIが動きをサポートしてくれるからあの個体なら数体でも相手にできる。それにオリジナルとは戦うつもりはない。見つかったらお前たちにも連絡する。」
「・・・・・・無茶はしないでくれよ。」
そう言うと一夏は箒と共に会場を去って行く。その後を追うように壮一もその場から去って行く。
「さて・・・・・問題はこれからだな。会見中にこんな騒動があったとなったらどう言い訳するか・・・・・」
「現にアナザーアギトを見た人がいっぱいいるからね~。明日にでもなればちーちゃんたちの会見よりもでっかい記事になるよ。」
「はあぁ・・・・・・束、お前は念のため近くにまだ奴らが残っていないかどうか調べてくれ。私は山田君を連れて一回学園長たちと落ち合った後、合流する。」
「あいあい。じゃあ、また後でね~。」
そう言うと千冬は気を失っている真耶を担いで会場から出て行った。
「・・・・・・・ねえ、もう私以外誰もいないんだから出てきてくれてもいいんじゃない?」
会場の中で束が言うと後ろの方から足音が聞こえてきた。
「私の存在にいち早く気づくとは・・・・流石この世界の天才と言うべきかな?」
束が振り向くとそこには白いメッシュの入れられた髪と多数のピアスを身に付けた男がいた。
「会場に乗り込んだ時から気づいていたよ。君があのアナザーライダーとか言うものをここに招き入れたのもね。多分、オリジナルを作ったのも君でしょ?」
「ほう、そこまで察していたか。では、何故私の存在を彼らに知らせなかったんだい?」
「少し気になったからだよ。君が何を企んでいるのかをね。」
そう言うと束はビルドドライバーにラビットタンクスパークリングをふりふりしてセットする。
<ラビットタンクスパークリング!>
「ふむ、どうやら口で言うよりもこっちでやり合った方が性が合うようだね。」
そう言うと男はビルドドライバーでもジクウドライバー、アークルとも異なるドライバーを腰に付け、レモンが描かれた錠前のようなアイテムを取り出す。
「へえ、それは誰かさんからのもらい物かな?」
「残念ながら私の自作のベルトだよ。趣味みたいなものなんでね。」
<レモンエナジー!>
錠前を起動させると男はそれをドライバーにセットする。
<Lock On!>
「そうなんだ・・・・・なんか羨ましいね。私のは掘り出し物を改造しただけだからね。」
「君だったらもっとすごい代物を作れるんじゃないのかい?」
「私はベルト作りが趣味でも夢でもないからね~。」
双方とも変身態勢が整い、真剣な目で対峙する。
<Are you ready?>
「変身!」
「変身!」
束はスナップライドビルダーを展開した後に重なり、男は自分の真上からチェックのようなものが開いてレモンを模した何かが頭に被さる。展開をし終えると双方は変身した姿へとなった。
<シュワッと弾ける!ラビットタンクスパークリング!イエイ!イエーイ!>
<ソーダッ!!レモンエナジーアームズ!ファイトパワー!ファイトパワー!ファイファイファイファイファファファファファイッ!>
「あのアナザーライダーのオリジナルがどこにいるのか教えてもらわないとね。」
「あれはやっと動き出した研究サンプルなんだ。アギトの力がどれほどの物か調べるためのね。」
二人の仮面ライダーは互いの武器を持ちながら間合いを取る。
「そう言えばまだ自己紹介をしていなかったね。私の名は戦国凌馬、君と同じ科学者だ。そして、この姿はアーマードライ・・・・いや、この世界で言うのなら『仮面ライダーリューク』と言ったところか。」
「あっ、そう。でも、まあそこらの二三流とは違うようだから覚えてはおくよ。敵としてね。」
「ハッハッハッハッ、私のことを二三流扱いするとは!まあ、一度死んだ身だから仕方ないともいえるがね!!」
デュークは「創生弓ソニックアロー」にエナジーロックシードのエネルギーを回して攻撃を始める。対する束ビルドは、海賊レッシャーの装備であるカイゾクハッシャーで応戦する。
<各駅電車!>
「私と武装を合わせるとは随分余裕だね。」
「いきなり全力で行ったら負けフラグでしょ?」
そこから射撃戦ではらちが明かないと判断して弓型武器による接近戦へと移行する。
しかし、ラビットタンクスパークリングには他のフォームの武装を使用できるという強みがある。
一方のゲネシスドライバーで変身するライダーはエナジーロックシードの換装は可能だが装備の変更はできない。
よって、接近戦に移行した瞬間に束ビルドはドリルクラッシャーとの二刀流へと戦闘を切り替え、ソニックアローのみのデュークを自分のペースへと運んで行く。
「流石と言わせてもらおう。初見での戦闘でこの私を相手にここまで有利に戦えることにね。」
「褒めてくれても嬉しくないね。なら早く倒されてオリジナルのことを教えてよね!」
束ビルドははドリルクラッシャーの直撃をデューク与えて吹き飛ばした。しかし、デュークは、束ビルドと距離が離れたことを、利用して、ロックシードを三つほど起動させる。
「ん!?」
束ビルドはデュークの真上にチャックのようなものが開き、落ちてきた怪人たちを見て警戒する。
『シャー!』
『シャー!!』
「うわっ、なんだこれ?」
「私もまだ実験サンプルのデータを取っている最中でね。悪いけどこの辺で引き揚げさせてもらうよ。」
そう言うとデュークは今度はブランクウォッチを取って起動する。するとブランクウォッチはアナザーウォッチへと変貌する。
<BUILD>
「しばらく、コイツ等と遊んでいてくれたまえ。」
初期インベスに向かってウォッチを投げる。すると初期インベスの一体がアナザーウォッチをロックシードを勘違いして捕食し、アナザーライダーが誕生する。
<BUILD!>
「あっ!私のそっくりさん作るなんて反則だよ!」
束はそう言いながら早速アナザービルドを蹴り飛ばす。
その間にデュークは光学迷彩を貼ってその場を去って行った。
「君は興味深い存在だったよ。また、会える時を楽しみにしているよ。」
「あっ!こら!」
アナザービルドと初期インベスたちをペシペシと叩きながら束ビルドは文句を言うもののデュークの姿はもうそこにはなかった。
感想待ってま~す。
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消せない記憶
・・・・・・・あの日の出来事は多分私以外は知らない。
あの当時、私には三人の男友達がいた。
同じ家が食堂で妹の蘭に舐められながらも亡くなったお父さんの分まで頑張って行こうと決めている弾。
共通点はそこまでないけど遊ぶ際によく提案を上げてリーダーシップを取っていた数馬。
・・・・・そして、肝心なところが鈍感だったけど一番親しかった一夏。
もし、あのクラスで私以外に生存者がいたとしたらきっと一夏は殺人犯に指名されていたかもしれない。
全ては一夏がISの世界大会の決勝戦で姉である千冬さんの応援に行って帰って来てからだった。
現地で誘拐されたと新聞にも出ていたため、学校に戻って来て早々私たちはフォローしながら元気づけようとした。
でも、戻って来てからしばらくして一夏の様子がおかしくなった。
学校で保健室に行くことが多くなり、目の下に隈ができることもあって何があったのかを聞いてみると「人を襲った夢を見た」とか言ってそれ以上のことは詳しく取り合ってくれず、次の日から無断欠席になった。
丁度この時、家の両親が離婚騒ぎになっていたところだったから彼を構うことができなかったけど・・・・・話だけでも聞いてあげればと後悔している。
そして、その悲劇は突然私たちを襲った。
その日の帰りのSHRで先生が出席を確認していた時だった。
「明日の日直は織斑・・・・・ふう、そう言えば織斑は今日も休みだったか。じゃあ繰り上げで御手洗だ。」
明日の日直をやる生徒の名前を呼んでいた時、先生は一夏の席を見ながら出席簿から顔を上げた。
「ここんところ多いな・・・・欠席するなら連絡ぐらい・・・・・・」
そう言った矢先、一夏が入口を開けて入ってきた。
「ん!?もう学校が終わりだというのに!?」
先生は呆れた表情をし、周囲の友達は既に終わっているというのに遅刻してきた一夏のことをクスクスと笑う。
けど、私だけはその様子に何か違和感を覚えた。
数日前まであったはずの隈はすっかり引き、逆に何か不気味さがあった。
一夏は周囲を見て不敵に笑みを浮かべるとポケットから何かを取り出した。
「全く、織斑!ここ数日無断で欠席したかと思えばもう学校が終わるというときに来るとは・・・・・今更来たことはともかく体調崩したならちゃんと先生に連絡しろと・・・・・」
<KUUGA>
「あのな、先生は別に無断欠席した事で怒っているんじゃないんだぞ?連絡一つもよこさなかったことについて怒っているんだ。一体どういう理由なのか説明・・・・・・」
先生が説教をしようとしているのを他所に一夏?は時計のようなものを体へと突っ込み、赤い複眼の巨大な虫のような怪物へと変貌していく。
その際、一瞬だけど一夏の顔が別の人間の顔へとなったのを私は見た。アイツは一夏じゃないと分かって喋っている先生に叫ぼうとしたのも時すでに遅く、先生は怪物にあっという間に叩き潰された。
先生がまるで圧縮機にプレスされたミンチのような姿になったのを見てその場は騒然、あるものは窓からある者は廊下から逃げようとしたが怪物はまるで動きを止めたかのように(私にはそう見えたけど本当に一瞬の出来事だったから確証は持ていない)次の瞬間に教室は血の海になっていた。
私は運よく死体の下敷きになって気を失っていたことが幸いして命拾いした。
次に目を開けた時は私以外生きている人間はいなかった。
既に一部が食い散らかされたかのようにバラバラにされ、数馬に関しては首が見当たらなかった。
弾は腹部を貫かれていたけど辛うじて生きていた。
本当ならこの場から離れて救急車を呼びに行くべきだったのかもしれない。でも、その時白衣を着た男が一夏の偽物が持っていたのと同じアイテムを弾の身体に入れて別の怪物へと変身させた。
私は恐怖のあまりにその場から動けなくなったが弾は牙をむき出しにし、一夏の名を呼びながら姿を消した。
その後、私は遅れてきた救助班に助けられ唯一の生存者として扱われた。
自分は襲われた直後気を失って何も覚えていないと言って本当のことを言えなかった。
言ってしまえば、二人は化け物扱いにされるだろうし、何よりもそれを認めてしまうことが怖かったから。
両親が離婚した後、私は日本から離れたいという思いで母と一緒に中国へ戻った。
それから二人のことはできるだけ思い出さないようにしている。
思い出せば、二人が仮に生きていて会えたとしても拒絶してしまいそうだから・・・・・・・
『ウガァア!!』
「もう、時間余りかけられないんだから勘弁してよ~!!」
襲ってくるアナザービルドに対して束ビルドは、攻撃をうまく受け流してドリルクラッシャーとホークガトリンガーで攻撃を加える。
『グウウウ!?』
「悪いけどハイスペックな私と怪物に皮を着せた偽物とじゃ力の差があり過ぎるんだよね~。」
炭酸のエフェクトで下級インベスを吹き飛ばして一か所に集めると束ビルドは、スパークリングをドライバーから外し、二本のフルボトルに取り換える。
<クジラ!>
<ジェット!>
<ベストマッチ!>
ラビットタンクスパークリングから背中翼を持ったような姿へと切り替える。
<Are you ready?>
「ビルドアップ!」
『ウゥウウ!!』
アナザービルドはフォームチェンジ中の束ビルドにキックを繰り出そうとするが直前に別方向から巨大なドリルのように回転しながら突撃する物体に妨害されて吹き飛ばされる。
『ガアッ!?』
アナザービルドがぶつかったものの着地した方を見るとそこには蝙蝠の意匠を持つ怪人が立っていた。
『ウゥ?』
「・・・・・・束様、早く切り替えてください。」
「はいはい。」
蝙蝠怪人?の一言に返事すると束は別形態 クジラジェットフォームへとなる。
<天駆けるビッグウェーブ!クジラジェット!イエーイ!>
「次も控えているから早く終わらせないとね!」
束ビルドは潮吹きで下級インベスたちをアナザービルドの方へと飛ばす。
『ウグワァッ!?』
『ワァッ!?』
「一か所に集めて・・・・・」
ドリルクラッシャーをガンモードに換装し、潜水艦フルボトルを入れる。
<潜水艦!>
<Ready Go!>
<ボルテックブレイク!>
ドリルクラッシャーから無数の魚雷をインベスたちに向かって放つ。アナザービルドは耐久性が高いことと仮にもオリジナルのビルドの力を持った存在であることもあって耐えきったが下級インベスたちはあっけなく爆散する。
「とどめの一発っと!」
<Ready Go!>
束ビルドがドライバーのレバーを回転させると大波が発生し、辺り一帯を呑み込んだ。
『グウォオオ!?』
「できればウォッチとか言うのほしかったけど多分いっくんの時みたいに壊れちゃうだろうからね・・・・・」
水中に魚雷を撃ち込み、自身も水中へと潜る。
潜水していると束ビルドの真下に巨大なクジラが出現し、潮吹きで彼女を水上へと押し上げる。
<ボルテックフィニッシュ!!>
同時にアナザービルドは魚雷で水上へと放り出される。
『ガアッ!』
<イエーイ!>
「えい!」
束ビルドはアナザービルドに向かってライダーキックを炸裂させる。衝撃と受けてアナザービルドの体内からアナザーウォッチが飛び出して砕け散ると同時に爆発した。
「やっぱり、残らないか。残念。」
着地すると束ビルドは、ボトルを外して変身を解く。
「・・・・・・・・」
「クーちゃんお疲れ。あまりもんで作った割には上々の性能だね。」
束が声をかけると蝙蝠怪人?は周囲にガスを放出すると同時にクロエの姿となり、持っていた銃型アイテムを見る。
「ですが、さっきの攻撃の際の衝撃でスチームガンの機能が一部不具合が起きています。」
「まあ、突貫工事で作った代物だからね。箒ちゃんがいっくんのサポートしたいと思っているだろうから作ってみたけどやっぱり危ないかな?」
受け取ったトランスチームガンが煙を吹き出しているのを見て束が聞くとクロエは容赦なく会える。
「性能なら上でしょうけど安全面なら少なくとも装着者の身体を守るように作られているG3の方が遥かにマシです。」
「そっか。だとすればこれは没だね・・・・・・・じゃあ、次のアイディアができ次第また作ってみますか。」
残念そうな顔をしながら束はトランスチームガンをポケットにしまい込むと、クロエを連れて会場から出て行く。
「早いとこアナザーアギトのオリジナルを見つけないとね。あのセンゴクリョーマとか言う奴の言うことが正しいのならもう私たちの近くで活動していてもおかしくないはずだし・・・・・・・」
「・・・・・・」
「どうしたの蘭?」
「・・・・・えっ?」
夕方、友人たち2人と共に家に帰っていた蘭は、少し離れたところから感じる視線を気にしながら歩いていた。
「う、ううん・・・・・何でもない。」
「そう?最近なんか視線気にしてない?よく後ろを見るけどさ。」
「私・・・・・そんなに見てる?」
「結構見てるわよ。それともまさかストーカーにつけられてるとか?」
「ま、まさか!?そんなことはないわよ!」
友人の冗談に驚きながらも蘭は感じる視線が気になってしょうがなかった。
「そう言えばもう随分経つのよね。」
「何が?」
「ほら、蘭のお兄さんの学校の事件。」
「あぁ、知ってる知ってる!確かテロ組織が襲ったって・・・・」
「日本でテロが起きるなんてその日まで信じられなかったのにね・・・・・・」
「・・・・・・・」
「あっ、ごめん。確か蘭のお兄さんって・・・・・・」
「・・・・いいのよ。私もある程度受け入れられるようになったから。」
悲しそうな顔をしながら蘭は言う。友人たちは少し気まずく感じながらも話題を変える。
「そう言えば来年の進路どうする?」
「私は森高かな?偏差値上々だし。」
「私はどうしようかな・・・・・・蘭は?確かIS学園希望してたけど?」
「う~ん・・・・・進路変更して専門学校にしようかな?調理師の資格ほしくなるし。」
「他の高校にすればいいじゃない。」
「でも、お母さんとお爺ちゃんにこれ以上負担掛けられないから。私が手伝わないと。」
「そっか・・・・・でも、IS学園もこの間爆破事件あったしね。」
そう言いながら帰路を歩いていると途中の角で若干時代遅れに感じる不良たちがコンビニで一服していた。
「げっ、アイツら・・・問題校の不良たちじゃん・・・・・・・」
「IS登場してから学校の風紀が乱れて不良校化した学校が激増したって言うけどこの辺の近くだったなんて・・・・」
「スルーしよう。スルー・・・・・・」
蘭たちはそのまま無視して通り過ぎようとする。
「おう、ちょっと待てよ。そこの嬢ちゃんたち。」
「「「ビクッ」」」
「俺たち目の前にして無視して通り過ぎようなんていい度胸してんじゃんか。あぁ?」
(((ま、まずい・・・・・)))
不良たちに囲まれて蘭たちはゾッとする。
「嬢ちゃんたち、どこの子よ?」
「コイツらの制服、あの有名私立女子校の『聖マリアンヌ女学院』ってとこのもんスよ。」
リーダー格と思われるリーゼントの不良に下っ端が言う。
「だ、だったら何ですか!?私たちは家に帰る途中なんです!」
「なんだよ、女尊男卑主義予備軍が揃っていい子ぶっちまってよ?」
「女尊男卑主義予備軍?」
「知らねえのかよ?最近の女子校はみんなこういう風に言われているんだぜ。女子校から出た奴のだいたい8割が女尊男卑主義者になるっていう。」
「私たちはそんな考えなんて持ってません!!」
「おうおう、そこの嬢ちゃんは一番度胸あんじゃねえか。せっかくなんだし、俺たちと遊ばねえ?」
一番威勢がよかった蘭に対して不良たちが迫ってくる。相手は4,5人。抵抗しても取り押さえられてしまうのが目に見える。
「蘭・・・・どうしよう・・・・・」
「うぅ・・・・・・」
「どうしたんだよ?俺たち、一緒に遊ぼうって言っただけだぜ?真面目に学生生活するなんて馬鹿馬鹿しく・・・・・」
「やめなさいよ、アンタたち。」
「「「「「あぁ!?」」」」」
後ろからの甲高い声を聞いて不良たちは一斉に振り向く。
そこにはコンビニ袋を持ったラフな服装をしたツインテールの髪形をした少女が立っていた。蘭はそれを見て思わず声を上げた。
「り、鈴さん!?」
「・・・・・・気分転換でホテルから出てきたのにこんなのに出くわすなんて・・・・日本もすっかり物騒な国になっちゃったわね。」
「なんだ、このガキ!やんのかコラ!?」
「年下だとは思うけどアンタらにガキと呼ばれるほどガキじゃないわよ!!」
ガキと呼ばれたのが癇に障ったのか鈴は容赦なくリーダー格の男の股間に向かって強い蹴りをお見舞いする。
「フブッ!?」
「「「アッ!?リーダー!?」」」
一撃で膝を付いて倒れてしまったリーダー格に下っ端たちが心配そうに集まる。鈴はその隙を逃さずに飛び上がって同じ年頃の少女ではとてもできないであろう回し蹴りを披露した。
「「アベシッ!?」」
「す、すごい・・・・・」
「はあ・・・・・・護身術のつもりで鍛えていたのがこんなところで役に立つなんて。」
鈴は落とした買い物袋を拾うと蘭たちの方を見る。
「鈴さん・・・・・確か中国に帰ったんじゃ・・・・・」
「いろいろ訳ありで一人戻って来たのよ。帰ってくるつもりはなかったんだけどね。」
そう言うと鈴は腕時計を見ながらため息をつく。
「この時間帯、物騒な奴らが多いわよ。早く帰らないとさっきと同じように捕まりそうになるかもしれないし。」
「「は、はい・・・・」」
そう一言言うと鈴はそのまま三人の前を去ろうとする。
「あっ、鈴さんちょっと!」
「えっ?何?」
「・・・・・あのよかったら家に来ませんか?母も祖父も喜ぶと思いますし。」
蘭は戸惑いながらも鈴に言う。一年以上前の弾の葬式以来会っていなかったこともあって複雑ではあったが一応助けてもらったこともあり、感謝の意を込めて言ってみた。
一方の鈴も何かを思い出したかのように一瞬不安そうな表情を浮かべるが蘭たちに心境を悟らせないように振舞う。
「でも、突然の訪問じゃ迷惑じゃない?私、土産なんて持って来ていないわよ?」
「大丈夫ですよ。助けてもらったんですから。」
「そ、そう?」
流石に断るのも悪いと考え、鈴はその言葉に甘えることにした。
「そんじゃ・・・・・・・久しぶりに厳さん料理ご馳走してもらおうかな?」
「はい!」
「ない。ない・・・・・ここにもない。」
壮一は落としたアギトライドウォッチの行方を追っていたが落としたと思われる現場から一夏たちと別れて徐々に範囲を広げて捜索していたがどこにも落ちていなかった。
「一夏、そっちは?」
壮一は携帯で連絡を取り合いながら一夏と状況を確認し合っていた。
『いや、お前からクウガのウォッチ借りて箒と辺りの人に似ているものが落ちていなかったか聞いてみたけど誰も見ていないだってさ。交番に届けられたか最悪な場合野良犬かノラ猫が拾って持って行っちゃったんじゃないか?』
「野良犬か・・・・・・流石にやばいな。野良犬なんかが咥えて持って行ったら探しようがないぞ。」
壮一は困った顔で言う。
『俺と箒はもう少し近くを探してみるよ。常間も何かあったら連絡してくれ。』
「わかった。後で落ち合おう。」
携帯を切ると壮一はライドストライカーを再展開しようとする。
「あっ、お巡りさんだ。」
丁度、巡査の後姿を見たので壮一はウォッチを見なかったかどうか聞こうとする。
「すみません、お巡りさん。この辺にこんな形をした・・・・・」
壮一は声をかけた瞬間、その巡査の顔を見て言葉を失う。
『ウゥウウ・・・・・・・』
「あ、アナザーアギト!?」
それは巡査ではあったが顔はアナザーアギトだった。さらにその先を見るとさらに複数の個体が見られ、どうやらここでオリジナルがさっきまでここにいた可能性がある。
「こんなところに・・・・・くそ!一夏に連絡する暇がない!」
『『『『ウゥウウウウ・・・・・・』』』』
壮一はジクウドライバーをセットし、ジオウライドウォッチを起動させる。
<ジオウ!>
ベルトにセットし、急いで回転させる。
「変身!!」
<ライダータイム!>
<仮面ライダージオウ!>
ジオウに変身すると壮一はジカンギレードを剣に変形させ、アナザーアギトたちを斬りつける。
「この辺が襲われたということはオリジナルはまだそう遠くへ行っていないはずだ!早くコイツ等を倒して一夏と合流しないと・・・・」
ジオウはすぐにホルダーからウォッチを手に取る。
<カブト!>
「早業ならカブトだな!」
カブトライドウォッチをセットし、再度ドライバーを回転させる。
<アーマータイム!>
<Change Beetle!>
<カブト!>
カブトムシを模したアーマーが分割し、ジオウの身体に装着されていく。
それは本来の力の持ち主である「仮面ライダーカブト」のキャストオフを意識しているように見え、マスクに角、胸部装甲が変わり、両肩にはカブトゼクターを意識したものが追加され、顔の文字が「カブト」になり、仮面ライダージオウ カブトアーマーへと変身した。
「・・・・・・・でも、ぶっちゃけカブト編中途半端で死んじまったし、多分トリニティで倒していると思うからカブトアーマーの性能よくわかんないんだよな・・・・・ドライブの方がよかったかも。」
そう言いながらもジオウは迫りくるアナザーアギトたちの攻撃を高速で回避し、セットでついていたカブトクナイガンZで斬りつけていく。
「クロックアップは出来ないようだけどドライブ以上に高速で動ける感じだな・・・・・・行ける気がする!」
ジオウは高速で次々とアナザーアギトを蹴散らし、一か所に集める。それを確認すると一気に片づけるために必殺技を仕掛ける。
<フィニッシュタイム!>
<カブト!>
<クロックアップタイムブレーク!!>
「ライダーキック!!」
カブトの変身者である天道総司を意識してジャンプしてライダーキックを繰り出す。ただ、オリジナルである天道総司は主に回し蹴りでワームを倒していたことの方が多いため、これは少し違う気がする。
『『『『グオォオオオッ!!』』』』
アナザーアギトたちは一斉部爆散し、元の人間の姿へと戻る。だが、まだ、終わりではない。
「よぉし、ウォッチは見つかっていないけど先にオリジナルを捕まえるなりしなくちゃな!!」
ジオウ カブトアーマーはそのまま一夏たちに任せた方へと走って行った。
「それにしてもアンタ、見ないうちにまた胸おっきくなってない?」
「えっ?私よりもすごい人なんていくらでもいますけど・・・・って言うか鈴さん、なんで自分から自虐ネタ言っているんですか?」
「ふん、私なんでどうせまな板ですよ。向こうに行ってから努力も欠かさなかったのにBにもいかないし。」
夜、食事を済ませた鈴は蘭が途中まで見送るということで止まりのホテルへと歩いていた。
「それにしても鈴さんが代表候補生だったなんて驚きました。」
「好きでなったんじゃないのよ。本当は別の奴がなる予定だったんだけどこの間の爆破事故で日本は物騒な国と勘違いして辞退したのよ。そんでなりたいともいわなかった補欠扱いの私が早送りでこっちに送られたの。」
「大変なんですね・・・・・・でも、久しぶりに日本に帰ってこれたんですからよかったじゃないですか。」
「よかった・・・・・・・か・・・・・・・」
蘭の言葉を聞いて鈴は複雑そうな表情を浮かべる。
「・・・・蘭。」
「はい?」
「アンタさ・・・・・もしもよ?もしも・・・・実は弾が生きていて化け物になったとか聞いたらアンタどう思う?」
「えっ?」
「もしもよ。一夏や弾が実は怪物でしたとか言って私たちの目の前で人間じゃないものになったらアンタ・・・・・・それを受け入れられる?」
「ちょっと・・・・突然何を言っているんですか?そもそもうちの兄は・・・・・あっ!」
話を聞いていて前を見ていなかったため、蘭は立ち止まっていた誰かにぶつかってしまった。
「すみません!うっかり・・・・・・・」
謝ろうとぶつかった相手の顔を見た瞬間、蘭の顔は真っ青になる。
『ウゥウ・・・・・・』
「キャアアアアアアアア!!」
それは学生を服を着ていたアナザーアギトだった。蘭は思わず隣にいる鈴を見るが彼女の方は顔の生気が失われ、体を震わせていた。
「あ・・・・あ、あぁ・・・・・・・」
「鈴さん!」
蘭は鈴の手を引っ張ってその場から逃げ出す。しかし、次の角を曲がるとそこにも複数のアナザーアギトたちがうろついていた。
『『『『ウゥウゥウ・・・・・・』』』』
「何よ・・・・・・なんなのよこれ!?」
アナザーアギトたちは蘭たちの姿をするとまるで獲物を見つけたかのように追いかける。
「とりあえず、一回家に戻らないと・・・・・・」
「あぁ・・・・・・・・」
「鈴さん!しっかりしてくださいよ!!」
完全に怯え切ってしまった鈴を引っ張りながら蘭は家を目指そうとする。
『『『『ウゥウ!!』』』』
『『ウゥウ!!』』
『『『ウウゥウ!!』』』
「どうして私たちのことを付け狙うのよ!」
アナザーアギトたちが呼んでもいないのに次々と2人の後を追いかけていく。その数は既に20を超えており、追いついていないことだけが唯一の救いだ。
「もうすぐ家だ・・・・・・家に帰ったらすぐにバリケードを・・・・・嘘ッ!?」
やっと家の目の前に来た時、蘭は絶望する。
既に五反田食堂の目の前には10人以上のアナザーアギトが集まっていたのだ。店の中の様子までは見ることはできないが恐らく母と祖父は抵抗していると思われる。
「どうしよう・・・・・・」
後ろにはもう相当な数のアナザーアギトが追いかけてきている。目の前のアナザーアギトたちも蘭たち二人の姿を見るなり、向きを変えて向かってくる。蘭と鈴は迫りくるアナザーアギトたちに対して逃げることすらできなくなった。
「ハア・・・・ハア・・・・・ハア!!」
何かを思い出したのか鈴は再会した時とはまるで別人のように頭を押さえながら震える。
「助けて・・・・・・・誰か助けて・・・・・・・」
アナザーアギトたちはまるでゾンビ映画のゾンビのようにおぼつかない動きで近づいてくる。自分たちが何をされるのか蘭はわからない。でも、おそらく無事では済まされないことは明確だった。
『『『ウゥウウ・・・・・・・』』』
「助けて・・・・・お父さん・・・・・お兄ぃ・・・・・・・誰か・・・・・」
亡くなった父と兄に助けを求めても誰も来ないことはわかっていた。でも、助けを求めずにはいられなかったのだ。アナザーアギトのうちの一体が彼女の手を掴もうとする。
『ウゥウウ・・・・・・』
「ひっ!」
歯牙を剥き出しにしている顔はまさに悪魔に見えた。
「誰か助けて!!」
アナザーアギトが口を開いて蘭に襲い掛かろうとする。
「うぉりゃああああああ!!」
『ウゥッ!?』
「えっ?」
突然の第三者の叫び声と同時に蘭を掴んでいた手が勢いよく離れた。目を開けてみると目の前に赤く複眼に金の三本角、赤い装甲に包まれた仮面の戦士が炎を纏った右足のキックを繰り出していた。
キックを受けたアナザーアギトはすぐそばにいた複数のアナザーアギトを巻き込んで吹き飛ばされ、立ち上がろうとすると同時に紋章が浮かび上がって道ずれに爆発する。
「・・・・・・・」
目の前に着地した赤い戦士を見て蘭は思わず驚くものの何か懐かしい雰囲気を感じさせられた。赤い戦士は、アナザーアギトを何体か蹴散らすと二人の元へと向かう。
「早く逃げろ!」
聞き覚えのある声だった。だが、同時に赤い戦士の背後から何かが飛び掛かってきた。
「うっ!?」
赤い戦士は飛び掛かってきたものの正体を見るとそれは他のとは違う衣服を身に纏っていないアナザーアギトだった。
「オリジナル?」
『イヂィイイイイイイガアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
「い、今の声って・・・・・・・」
アナザーアギトの声を聞いた蘭はその声の正体がすぐに分かった。同時に怯えていた鈴は顔を上げる。
「弾・・・・・・・」
クラッシャーを全開にして牙を剥き出しにして叫ぶアナザーアギトに対して彼女は呼んだ。
次回は出来次第公開予定です。
カブトアーマー・・・・・予算の都合とはいえせめてガンバライジングで全部のアーマー出してほしかった。
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