IS学園in球磨川 (海・海)
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『週刊少年ジャンプから進学して来ました』

球磨川禊かっこいいな~。二次創作作りたいな~。

でも球磨川が出てくるとアンチにしかならないよね。

アンチで需要が高いのはHSDDかISかな。

HSDDは世界観が難しそう。ISにしよう。

でも球磨川禊のキャラはムズイ。それに設定はどうしよう。

そうだ!オリ主を入れよう。これなら多少不自然でも大丈夫だよね?

てなかんじで作りました。どうぞ。




「転生したら何になりたい?」

 

 

 

……そう問を投げかける神様に、俺は答えた。自分の願望を、欲求を、羨望を。

 

 

 

「過負荷になりたい。そして、球磨川禊(くまがわみそぎ)のように……」

「分かった。転生特典は球磨川禊の容姿と能力、大嘘憑き(オールフィクション)却本づくり(ブックメーカー)。名前はどうする?」

「………球磨川雪(くまがわそそぎ)でお願いします。多分、どんなに見た目が同じでも、どんなに能力が同じでも、俺はきっと、球磨川禊にはなれないから、だから、名前まではパクれませんよ」

「了解した。転生先の世界は、ISの世界だな。では行って来い」

 

 

 

 

 

こうして、交通事故で第一の人生を失った、ジャンプ好きで、異常なほど球磨川禊をリスペクトしているだけの普通な俺は、第二の人生を球磨川として生きることになった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「終わったぞ。安心院(あんしんいん)さん」

「へぇ~。さすがは神だぜ。一度死んだ他人の魂を別の体に入れるなんて、7932兆1354億4152万3222個の異常(アブノーマル)と、4925兆9165億2611万0643個の過負荷(マイナス)、合わせて1京2858兆0519億6763万3865個の能力(スキル)を持つ僕でも出来るかどうか怪しいってのに」

「いや、頑張れば出来るだろ。私のことも平等にカスと見下せるお主なら」

「まあね。でも、異世界転生なんてのは神様の仕事だってのはラノベの鉄則だろ?僕はそれを親切に守ってるだけだぜ。ここでは神様の出番に意味はあっても、僕みたいな平等なだけの人外の出番に意味はないのさ。まあ、あるとすれば漫画に出てくる悪の組織の黒幕のように、意味深な発言を残して消えるくらいだぜ」

 

 

 

「じゃあ、始めようか。球磨川計画を。フラスコ計画よりは、難易度は低いだろ。最も、雀の涙ほどの差しかないだろうけどね」

 

 

 

こうして、平等なだけの人外、安心院(あじむ)なじみは、本人の言う通り、意味深な発言を残して消えた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

~IS学園一年一組教室~

 

 

 

やあ!画面の向こうの皆。こんにちは!IS学園in球磨川を見るときは、部屋を明るくして、画面から離れて見てね。もしそうしなかったらその視力を無かったことにするから。

 

え?俺が誰かだって?そんなの、皆大好き球磨川雪に決まってるじゃないか。

 

ん?皆が大好きなのは球磨川禊の方でお前じゃない?引っ込んで交代しろ?おいおい、そんなに怒んなよ。球磨川禊のような難しいキャラを、この趣味だけで無駄に時間を使って小説を書いてる駄作者がうまく表現出来るわけないじゃないか。無茶を言うなよ。

 

つまり、皆の期待に応えられず、球磨川禊ではなくオリ主が転生することになったのは無茶な期待を押し付けた皆と、その期待に応えられなかった作者が悪い。だから、俺は悪くない。

 

おっと、そんなことよりなんで俺がIS学園にいるのか説明しなきゃね。

 

テンプレよろしく神様転生した俺は、なぜか母親のいる病院じゃなくて、ボロボロの研究施設みたいなところで目が覚めたんだ。肉体年齢五歳くらいの時に。そのあと警察のところで身柄を保護してもらって、孤児院に預けられて、追い出されたり引き取られたり孤児院がつぶれたりとまあ色々あったんだけど、何とか学校には通えたんだ。なぜか俺が通った学校は尽く廃校になったけど。

 

そんなこんなで中学受験が終わって一息ついたって時に国のお偉いさんが俺達の学校に現れて校内の男性のIS適正審査を行うとか言ってきたんだ。何でも一人男性のIS適合者が現れたから、探せば他にもいるんじゃないかって思ったらしい。

 

全く馬鹿らしい短絡的な考えだ。そこのもしかして俺適合しちゃうんじゃね?って淡い期待を抱いて裏切られるモブの皆と、どうせいないだろうからさっさと終わらせたいと顔に書いてあるISを持ってきたお姉さん。君達がそんな目に遭ってるのは淡い期待を抱かせた一人目の男性適合者と、その期待にすがった日本政府が悪いんだから、俺は悪くない。

 

だから他の皆が全員適性を確かめた中、まだ確かめていない最後の一人である俺が適正無くて、お姉さんの時間が無駄になったとしても、俺を恨むのはやめてね。

 

 

 

 

 

…………とまあお気楽なことを考えながらコアに触れたら、見事ISが起動しちゃいました。

 

 

 

いやぁ~、誰かの期待、それも日本政府の馬鹿で短絡的な考えから生まれた期待に応えるなんて、全くもって球磨川らしくないけど、まあしょうがない。適合しなかったらストーリー始まらないしね。

 

 

 

 

おおっと!俺の過去を回想している間に、原作主人公の自己紹介が始まるぞ。

 

 

 

 

「えー……えっと、織斑一夏(おりむらいちか)です。よろしくお願いします。…………以上です」

 

 

 

物凄く簡潔な自己紹介に、クラスの女子生徒は期待外れといった空気を放つが、俺としてはどうでもいい。

 

 

 

そんなことより俺は、その主人公の隣にいる童顔でおっぱいが大きい副担任が裸エプロンを着たらどうなるのか妄想するのに忙しいんだ。いやしかし、あの体は着痩せしているのか?だったら裸エプロンよりその着痩せした胸を強調させる手ブラジーンズの方が……。

 

 

 

パアンッ!

 

 

 

おおっと、妄想が中断するくらい大きな音が鳴ったと思ったら、主人公君が頭を押さえて悶絶している。

その隣にはさっきまでいなかった偉そうに腕を組んでいる俺の嫌いなタイプの女が出席簿を持って立っていた。

 

 

 

織斑千冬(おりむらちふゆ)

 

世界最強(ブリュンヒルデ)の称号を持ち、ISにおいて、いや、生身においても並ぶものはあの天災しかいないというドチートな女。生身でISと張り合える。ホント、羨ましいくらいのハイスペックだぜ。

 

 

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聞き、よく理解しろ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」

「きゃあああああ!千冬様、本物の千冬様よ!」

「私、お姉さまに憧れてこの学園に来たんです」

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉さまのためなら死ねます!」

 

よし、じゃあ今から織斑先生の心臓を螺子で貫くけど、命を賭けて守ってね。先生のためなら死ねるんでしょ?

 

 

 

まあ冗談は置いといて、俺らを見下したような発言、態度からにじみ出る傲慢さ、そしてそれが許されている現状。

 

 

 

うん、典型的なプラスだ。心臓貫くのはやめて昆虫の標本みたいに螺子伏せてやろうかな。だって俺はマイナスなんだもん。プラスを見て螺子伏せたくなるのはしょうがない。プラスな織斑先生が悪い。だから俺は悪くない。

 

そう思いながら螺子を準備すると、織斑先生がこっちを睨んできた。

 

えっ?なんなの?俺のこと好きなの?もしかして二人目の男性操縦者だからこっちを見てるの?それとも螺子伏せようとしたから?はっ!もしかして、山田先生の裸エプロンや手ぶらジーンズを妄想してたから?う~ん、心当たりがありすぎて困るぜ。

 

 

 

「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

「きゃあああああっ!お姉さま!もっと(しか)って!罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないように(しつけ)をして~!」

 

 

 

全く、主人公でもメインヒロインでもないくせに偉そうに登場しただけでこの人気っぷり。本当に人気者(プラス)だな~。女子たちの黄色い声がうるさいくらい上がってるぜ。羨ましい。

 

でもまあ、俺も小学校二年生に進学した時の自己紹介で女子にきゃあああああって言われたことあるから別にいっか。その時男子はぎゃあああああっって言ってたっけ?中には口に出してまたこいつと同じクラスかよ~って言ってた奴もいたな~。気の弱い女子なんて瞳に涙を浮かべて絶望に染まった表情をしてたよ。

 

……ぐすん。不人気者(マイナス)は辛いぜ。

 

 

 

まあ過去のことは置いといて、織斑先生の質問に答えないとね。本来教える立場の教師の質問に答えてあげるなんて、俺って親切だなあ。

 

 

 

『織斑先生』『先生のクラスに馬鹿を集中させてるんじゃなくて』『この学園どころか世界中の女性は殆ど先生が言う馬鹿なんだから』『必然的に馬鹿が集まるんですよ』『だから』『このクラスのメンバーを編成した人は悪くない』『馬鹿な女子が悪いんですよ』

 

 

 

そう俺が発言した瞬間、さっきまであんなに騒がしかった女子達が、急に静かになった。

 

ああ、もしかして、俺や織斑姉弟がうるさいって思ってたのを察して黙ってくれたのかな?だとしたらこのクラスは少数の意見にも耳を傾けてくれる良いクラスかもね。たった三人のうるさいから黙れって思いを尊重して黙ってくれたんだから。

 

だからそんな良いクラスの人たちが、俺をおそらく好意的ではない感情がこもった視線で睨みつけているように見えるのは、きっと気のせいだよね?

 

「球磨川、それは君がこのクラスの女子たちを馬鹿だと思ってると解釈してもいいのか?」

『やだなあ織斑先生』『クラスの女子を馬鹿だと思ってるのは織斑先生でしょ?』『僕は織斑先生の言う馬鹿が集まってるとは言ったけど』『僕の言う馬鹿が集まってるとは言ってませんよ』

「そうか」

 

う~ん、織斑先生は納得してくれたけど、クラスの女子たちはこっちを睨んだままだ。おっかしいな~、俺なんか嫌われるようなことしたっけ?

 

ん?心の声と一人称が違うって?そりゃあ格好つけてるときは一人称は僕にするさ。心の中くらいは格好つけずに俺って言うけどね。球磨川禊のロールプレイなんだから、一人称は僕で、セリフに括弧つけるのは基本だよ。

 

「ちょうどいい。球磨川、次の自己紹介は貴様がやれ」

『えっ?』『僕の順番はまだ後の方ですよ?』

「二人目の男性適合者の自己紹介なんて、また騒がしくなるに決まっている。だったら早めに終わらせたい。私は面倒ごとは先に済ますタイプなんでな。分かったらさっさとしろ」

 

全く、しょうがないなあ。でもまあ、俺も自己紹介なんて面倒ごとは早く終わらせたいから、おとなしく従うとしよう。あれ、俺と織斑先生の意外な共通点発見。てっきり全くないと思ってたのに。

 

「出来ればこの一夏(バカ)のお手本になるような自己紹介を頼む」

『任せてください』『これでも僕は優等生ですから』『自己紹介くらいきちんとこなしてみせますよ』『そこの馬鹿と違ってね』

 

 

 

織斑君がこっちを睨みつけてきたけどスルーした。

 

 

 

 

じゃあ、織斑先生の期待に応えるとしよう。

 

 

 

 

 

『週刊少年ジャンプから進学して来ました』『球磨川雪です』『ISに乗れるってだけで自分はすごいと思っているけど実際は名前すら出で来ない人が過半数なエリート(笑)のモブキャラの皆さん』『よろしく仲良くしてください!』

 

 

 

おおっ!女子たちから誰がモブだこの野郎!とでも言いたげな視線を感じるぜ。やったね!クラスの心が一つになったよ!

 

あ!でも、二人だけ仲間はずれがいるな~。

一人は金髪縦ロールの典型的なお嬢様。もう怒り心頭で視線に殺気が混ざってる。誰がモブだこの野郎!じゃなくて殺すぞ!と言いたげだね。

二人目は黒髪ポニーテールのリボンと巨乳が特徴的な女の子。なぜか今にも吐き出しそうな表情をしている。苦しそうだ。よし!ここは紳士として助けなければ。

 

 

 

「織斑の自己紹介の方が百倍ましだ馬鹿者が!」

 

パアンッ!

 

『あ痛ッ』

 

こうして俺は頭に出席簿をお見舞いされた。てかこれ出席簿の威力じゃねえ!

 

そして、俺より百倍ましとお墨付きを受けた織斑は、こっちを見てざまあみろとでも言いたげな表情を浮かべていた。

 

ちくしょう。ただの自己紹介ですら、俺と主人公には百倍の差があるのか。

 

 

 

『また勝てなかった』

 

 

 

まあ、自己紹介で張り合ってもしょうがないけど。ちなみに、さっきまで吐きそうになっていた女の子、俺が叩かれたら吐き気が収まったみたい。人の不幸で体調が良くなるなんて、なんてひどい子なんだ!

 

 

 

とまあ、こんな感じで俺のIS学園生活は始まった。

 

 

 

さて、一応原作知識はもってるわけだけど、どこまで意味を成す時が続くんだろうこの知識。

 

 

 

だって、俺が原作沿いなんてルートに進むわけないだろ?仮にも球磨川だぜ。思いっきりアンチへイトしまくるに決まってんじゃん。

 

 

 

原作崩壊させてやる。前もって覚えている知識が意味を成さないほどに滅茶苦茶に。原作の流れなんて螺子切ってやる。

 

 

 

そして、大嫌いなプラスの連中を螺子伏せてやるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあそんな先のことは置いといて、自己紹介をやり直そう。あのままじゃ納得いかない。

 

 

 

 

 

『僕は雪』『IS学園生徒会長になる男だ!』

「唐突にネタに走るな!」

『あ痛ッ』

 

 

 

織斑先生、◯NEPIECE読んでたんですね。意外。

 

 

 

「全く、やはり優等生というのは嘘だったなこの問題児め。縋り付きたくなるような嘘を……」

 

 

 

おいおい、優等生ってのはホントだぜ。

 

 

 

自己紹介の時に螺子でクラスメイトを殺さない俺って優等生だと思うんだけど、どう思う?

 

 

 

優等生のハードルが低い?あっはっは!しょうがないよ。

 

 

 

だって俺は、めだかボックスの世界のマイナスの頂点、混沌よりも這いよる過負荷にして、不完全にして負完全の、あの球磨川禊に最も近い男なんだから。

 

 

 

俺の基準は、いつだってあの人だから。

 

 

 

だから、ハードルが低いのは球磨川禊(基準)が低いのが悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから俺は、悪くない。

 

 

 

 

 



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『僕が悪かったです』

FGO水着イベント始まりましたね。

三十回ガチャ引いたんですけど、十連目で茨木童子(水着)を二体引いて、二十連目で源義経(水着)とベオウルフ(ピックアップ関係なし)を引いて、そして三十連目にジャンヌ(水着)を引くことができました。

超ラッキーでめっちゃうれしかった。


さて、無事にクラス全員の自己紹介が終わってだるい一時間目を何とか寝ずに乗り切って、今は休み時間なわけだけど、やっぱこの時間は友達作りに励むべきかな~。

 

だってせっかく男子は二人しかいないって状況なんだから、この状況を利用して女の子と友達にならない手はないよね!

 

 

 

「なあ、二人目の男性操縦者ってのはお前か?」

 

 

 

おっと、女の子と友達になりたいと思った矢先に野郎が話しかけてくるとは、これは下心満載で女子に話しかけようとした俺への罰か何かかな?

 

まあいいや!話しかけられたらちゃんと返事しないとね!

 

『そうだよ』『ていうかIS操縦者でもないのにここにいるわけないだろ』『まさか君の目には僕が男装の麗人にでも見えたのかい?』

「いや、そういうわけじゃないけど……。でもお前、女みたいにガリガリだな。ちゃんと飯食ってるのか?」

 

ブワッ

 

「えっ!?泣いた!?しかも血涙!!」

『ごめんね』『僕のことを心配してくれる人なんて今までいなかったから』『感極まって泣いちゃって』『うう……ぐすっ』

「飯食ってるか心配しただけで泣くって、今までのお前の人生には何があったんだよ……」

 

少なくとも、君のような幸せ者(プラス)には想像もできないような不幸(マイナス)な事だよ。

 

『それで』『どんな用があってこれから友達作りに励もうとした僕に声をかけたんだい?』『どうせくだらないことだろうけど』

「いや、くだらなくねえよ。ただ、二人しかいない男同士、これから仲良くやっていきたいって思って声をかけたんだ」

『え!?』『男同士仲良く!?』『もしかして君はホモなのかい?』『ごめんね』『僕にそっちの趣味はないんだ』『君とは仲良くできそうにないぜ』

「ちげえよ!俺にもそんな趣味はねえよ!」

 

うん知ってる。でも、そっちの趣味があることに期待した女子生徒が何人かいるみたいなんだよねえ。顔を赤らめながらこっちを見ている人がちらほら。どうやら頭に腐が付く女子のようだ。

 

「織斑君と球磨川君、どっちが受けでどっちが攻めか……」

「織斑君が攻めよ。引き締まった体格の織斑君が華奢(きゃしゃ)な球磨川君を無理やり……」

「だけど球磨川君って絶対ドSでしょ?だったら球磨川君が攻めってシチュエーションも捨てがたいわ」

 

……これ以上不愉快な妄想をされる前に会話の流れを変えよう。

 

『あっはっは』『冗談だよ』

「やめてくれ。かなり笑えねえぞそれ」

『そうかい?』『僕は面白かったけど』『まあいいや』『これから仲良くやっていこう』『自己紹介の時にも言ったけど』『僕の名前は球磨川雪』『よろしくね!』

「俺の名前は織斑一夏だ。俺のことは一夏って呼んでくれ。俺もお前のことを雪って呼ぶから」

『お互い名前呼び?』『まるで友達同士みたいだね!』

「何言ってんだ。俺たちもう友達だろ?」

 

 

 

おいおい、会って間もなく友達になれるほど、プラスとマイナスの溝は浅くないぜ。…………可愛い女の子は別としてね!

 

 

 

『ありがとう一夏ちゃん』『僕達はこれで親友だ』『一緒に温い友情』『無駄な努力』『虚しい勝利に満ちた学園生活を送っていこうぜ!』

「いやなんだよそれ!?もうちょっと普通の青春を楽しもうぜ」

 

おいおい、普通なんてお気楽なものだなあ。

 

お前みたいなプラスが、この世に二人しかいない男性操縦者が、世界最強の弟が、ライトノベルの主人公が、普通の学校生活を送れるわけがないだろう。しかも僕の目の前で。

 

 

 

「……ちょっといいか?」

「『え?』」

 

ちょっと話してる間にメインヒロインの登場だ。って、よく見れば俺の自己紹介の時に吐きそうになってた子じゃん。

 

『篠ノ之箒さんだよね?』『掃除用具みたいな名前だから覚えてたよ』『それで?』『何の用があるんだい?』

「……貴様に、用は……無い。い、一夏に用があるのだ!」

「おい大丈夫か箒?顔色悪いぞ」

 

本当だ。これは保健室に連れてったほうがいいかも。顔が青を通り越して白くなってる。今にも倒れそうだ。

 

『本当に大丈夫?』『無理は良くないよ』『ん?』『ますます顔色が悪くなってないかい?』『何か嫌なことでもあったのかな?』

 

篠ノ之さんの顔を覗き込んだら、ますます顔色が悪くなった。

 

「ぐっ……心配無用だ。それより一夏、ついてきてくれないか?」

「あ、おい!……悪い雪。箒は俺の幼馴染なんだ。放っておけないし、ちょっと行ってくる」

 

タッタッタ………と、急ぎ足で一夏は箒の後を追った。追いかけられている箒の顔は、先ほどまでの顔色の悪さが少しはましになったようだ。

 

 

 

……う~ん、これは、やっぱり篠ノ之さんの体調が悪い原因は俺みたいだ。

 

それはつまり、この学園で可能な限り抑えてきた俺の過負荷性が悟られたということに他ならない。

 

そして、その悟られた原因が俺の想像通りだとすれば……。

 

 

 

『箒ちゃん』『君とは仲良くなれそうだぜ』

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「箒、どうしたんだよいきなり呼び出して?」

「……本当はもっと色々話したいことがあるのだが、時間もないし手短にいくぞ。球磨川とは仲が良いのか?」

「はあ?なんでそんな事聞くんだよ?」

「いいから答えろ一夏!お前は球磨川と仲が良いのか!?」

 

一夏は箒のあまりの激高ぶりに驚愕した。箒はもともと気が強く、言葉を発するときはハキハキとしていて迫力がある方だったが、ここまで強く言われたのはもしかしたら初めてかも知れなかった。だから、その勢いの負けるような形で、つい答えてしまった。

 

「まあ、初対面だしそこまで仲が良いってわけじゃないぞ。これから仲良くなろうとは思ってるけど」

「今すぐ奴と縁を切れ」

「はあ!?なんでそこまで言われなくちゃいけないんだよ?せっかく俺と同じ男子なのに、急にそんなこと言われても困るって!」

「お前には分からないのか!?奴の危険性が!」

 

そう言われても、一夏には何のことかさっぱりだった。一夏の球磨川に対する第一印象は華奢な奴。腕っぷしは弱そうだし、悪人のようには見えない。確かに性格はちょっと変わっているかもしれないが、そこまで危険な奴だとは思えなかった。

 

「そう言われてもなぁ~。具体的に、あいつのどこが危険なんだよ?」

「それは……私にも上手く説明出来ないが、とにかく奴は危険なんだ!今日初めて奴の姿を視界に入れた時、私は吐きそうになった。近くで見たらその時以上の寒気と嫌悪感と恐怖が一気に襲いかかってくる!いいか?これ以上奴と関わるな!!」

「お、落ち着けって……」

 

キーンコーンカーンコーン

 

「ほら、チャイムなったぞ。急いで戻ろうぜ」

「あ、ああ」

 

どうやってこの幼馴染を(なだ)めるか頭を悩ませていた一夏にとって、このチャイムはナイスタイミングだった。これ幸いにと、会話を切り上げ教室に戻るように促す。

 

 

 

しかし、戻った先には関羽(千冬)が君臨していた。

 

パアンッ!

 

こうして一夏は、出席簿アタックを喰らった。

 

そして千冬は、もう一人の遅刻者である箒に出席簿を向けようとして、やめた。

 

「篠ノ之、体調が悪いなら保健室で休んでいろ。なんなら今日の授業が終わるまで休んでいても構わん。私が許可する」

「……ありがとうございます」

 

千冬は、おぼつかない足取りで保健室に向かう箒を見送った後、尋ねた。

 

「織斑、篠ノ之と球磨川は前から面識があったのか?」

「いや、今日初めて見たって言ってたぜ。それにしてはえらく嫌ってるけど……」

「……そうか」

 

 

 

それだけ聞いた後、千冬は視線で一夏に早く席に着くよう促し、山田先生のもとへ向かった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

一夏は、球磨川が何もしていないにもかかわらず、さっそくピンチに陥っていた。それは……

 

 

 

(お、俺だけか?俺だけなのか?この専門用語の羅列にしか見えない教科書に悪戦苦闘しているのは?他の皆はちゃんと理解できてるのか?)

 

勉強に困っているという、学生にはありがちなピンチだった。

 

隣の女子を見てみると、山田先生の説明に相槌を打ちながら、真剣にノートを取っている。

 

(女子はだめか。なら男子は……)

 

そして一夏は、自分と同じ馬鹿仲間を探すため、球磨川に目を付けた。だが……

 

 

 

(なっ、なんだあの真剣な表情は!?)

 

球磨川は、自己紹介の時のおちゃらけた態度が嘘のように、真顔で教科書と対峙していた。時々頷きながら、ページをめくって何か思案するような表情を浮かべている。その姿は、まさに本人が自称したような、優等生のそれだった。

 

(球磨川、お前、真面目な奴だったんだな。第一印象でふざけた奴だって決めつけてすまん)

「織斑君、何かわからないところはありますか?」

 

一夏の様子から、何か悩んでいることに気付いたのだろう山田先生が、親切に聞いてきた。

 

「ほとんど全部わかりません」

「え……。ぜ、全部、ですか……?」

 

予想以上の不甲斐なさに、さすがに頬が引きつる山田先生。いくら急な進学だからとはいえ、初日でこれはあんまりだった。

 

「えっと、織斑君以外で、今の段階で分からないっていう人はどれくらいいますか?」

 

シーン……

 

球磨川を含め、挙手する人間は誰もいない。

 

「織斑、入学前の参考書は読んだか?」

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

パアンッ!

 

強烈な出席簿アタック。だが、今回は完全に一夏の自業自得だ。

 

「必読と書いてあっただろうが馬鹿もの。少しは球磨川を見習って……」

 

この騒ぎの中でも教科書から目を離さず、一生懸命勉学に勤しむ球磨川の姿を視界に収めた千冬は、そこで何かに気付いたように一瞬動きを止め、球磨川の背後に回り込む。

 

 

 

 

 

そこには、正面からではばれないように、分厚い教科書にジャンプを挟んで熟読している球磨川の姿が……。

 

バアンッ!

 

パアンッ!ではなくバアンッ!である。誤字ではない。

 

これにはさすがにクラス全員が引いた。まあ、完全に球磨川の自業自得なので、同情する声はなかったが。

 

「真面目にやっていると思ったら、何をやっているのだ貴様は?」

『何って』『ジャンプを読んでいるんですよ』『見て分からないんですか?』

 

ブチッ!!

 

球磨川の開き直ったような態度に、千冬の堪忍袋の緒が切れる音がした。その時の千冬の表情と威圧感は、もはや三国志の英雄では例えようもない、鬼や悪魔といった人外を例えに使ったほうが似合うような、そんな形相になっていた。

 

その威圧感に球磨川を除くクラス全員が恐れおののき、近くにいた者は小さく悲鳴を上げるほどだった。

 

『こんな分厚い教科書』『教師に隠れて挟んでジャンプを読めっって言ってるようなもんじゃないですか』『だから僕はその通りにしただけですよ』

 

それでもなお、球磨川の態度は変わらない。彼はプラスを恐れない。強さや暴力では、球磨川は変えられないのだ。

 

千冬と球磨川は、致命的に相性が悪かった。

 

 

 

「球磨川君、そんなに、私の授業はつまらなかったですか……?初日の授業だから、躓いちゃいけないって、ぐすっ、一生懸命頑張ったつもりなんですけど。うぅっ……」

 

そう発現する山田先生の姿は、瞳にわずかに涙を浮かべて、悲しみに染まった表情をしていた。たった一人授業を真面目に受けなかっただけでこれなのだ。この人の教師という職業に対する熱意と、生徒を思う心がうかがえる態度だ。

 

『ごめんなさい山田先生』『こんなに僕を思ってくれている山田先生を泣かせるなんて』『僕は人として最低だ』『泣かないでください山田先生』『僕が悪かったです』『次からはちゃんと真面目に授業を受けます』

「本当ですか!?分かってくれて先生嬉しいです!頑張ってくださいね。先生も精一杯サポートしますから」

 

強さや暴力は球磨川を変えられないが、涙は別だ。たった一人の授業に対する態度で涙を流すような脆い心を傷つけるなんて、弱い者の味方を自称する球磨川には不可能だった。

 

少なくとも、気が変わるまでは真面目に授業を受けようと、ジャンプを引き出しに入れてから教科書を手に取る。

 

 

 

この教室で球磨川と一番相性が良いのは、山田先生かもしれない。

 

 

 

「ISは諸々の性能が過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった兵器を深く知らず扱えば必ず事故が起こる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解ができなくても覚えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ」

 

全くもって正論だった。正しくて、完璧で、非の打ち所がない、プラスの言葉。

 

球磨川が最も嫌うものだった。

 

「織斑、貴様自分は望んでここにいるわけではないと思っているな?」

 

ギクリと身を震わせる一夏。どうやら図星だったらしい。

 

「望む望まざるにかかわらず、人は集団の中で生きなくてはならない。それすら放棄するのなら、まず人であることを辞めることだな」

 

厳しく現実的な言葉にもかかわらず、その言葉は一夏に対しては発破としての役割を果たし、一夏は頑張ってここで学園生活を送ることを決意した。

 

そして、その言葉に焚き付けられたのは、一夏だけではない。球磨川もまた、その言葉でやる気を出した。

 

 

 

 

 

ただし、ある意味後ろ向きな方向で。

 

 

 

『人を辞めろって言うのなら』『僕は問題ないですね』『だって僕は自他ともに認める人でなしですから』『人ではない故に』『人でなし』『なんちゃって』

「!?」

 

千冬は驚いた。まさかこの言葉にこのような返しが来るとは思っていなかったから。

 

それは、球磨川のことに対する無知ゆえの反応。この男が、プラスの言葉を前向きに受け取り、まともな反応を返すわけがないのに。

 

 

 

『さっきから偉そうな御高説ご苦労様』『だけどそれは』『最初から集団の中で生きていける奴にしか効果はないぜ』『僕みたいなはみ出し者には』『最初から集団に排他されるような人間には』『足りない部分を補うために群れるような』『一見弱い人間がやるようなことすら出来ない弱者には』『全く心に響かない』

 

教室の空気が急に重くなった。

 

球磨川がその過負荷性をわずかに開放したのだ。

 

千冬の言葉は心に響かないと球磨川は言ったが、それは球磨川の言葉も一緒だ。

 

括弧つけた、本音かどうかも怪しい球磨川の言葉は、人の心には響かない。

 

 

 

ただ、それでも人の心には残る。

 

 

 

 

 

響くではなく、へばりつくという形で。

 

 

 

『そんな弱者の気も知らずに』『自分の主観で物事を語るなよ』『高々僕らより数年多い人生経験から得た結論を語ればいい感じになると思った?』『現実的で厳しい事を言えば反論する奴はいなくなると思った?』『高圧的な言葉と態度で威圧して実力の差を見せつければ歯向かう奴はいないって思った?』

 

 

 

(あめ)えよ』

 

 

 

そして球磨川は、千冬の顔面に向かって螺子を投げた。

 

それをとっさに出席簿で受け止める千冬。だがその螺子は出席簿を突き破って、千冬の顔の数cm手前で止まった。

 

 

 

『が』『その甘さ』『嫌いじゃないぜ』

 

 

 

パチン

 

 

 

球磨川が指を鳴らした瞬間、出席簿に空いたはずの穴と、穴を空けたはずの螺子は消えてなくなった。

 

 

 

 

 

まるで、虚構(なか)ったことにされたように。

 

 

 

『驚かせてごめんなさい』『で?』『僕の手品は面白かった?』

(そうか。篠ノ之はこれにやられたのか)

 

 

 

千冬は、箒の体調不良の原因に納得いった。

 

始めて球磨川を見たときから違和感は感じていた。こいつは普通の人間とは違うと直観的に感じ取っていた。

 

だが、それが何なのかは分からなかったし、分かったとしても些細なことだろうと思っていた。

 

 

 

(楽観視していたにもほどがある)

 

箒の体調不良の原因が球磨川ということは、千冬も分かっていた。だが、それはきっと箒は前から球磨川と知り合いで、何か球磨川にトラウマがあるのだろうと思っていた。だから、球磨川と箒が初対面だと聞いて、少しだけ動揺した。

 

 

 

(だが、今のこいつと対峙すると、篠ノ之の様子にも納得がいく)

 

ヘラヘラとした笑顔、人を食ったような態度、括弧つけた喋り方、終いには些細な挙動の一つ一つにすら吐き気を覚えるようになってきた。

 

現に自分以外の人間は意識を保つのも辛そうなのが何人もいる。弟の一夏だって口元を抑えて吐きそうなのを我慢している様子だ。情けない気がしなくもないが、それを責める気にはなれなかった。

 

 

 

パン!!

 

 

 

千冬は思いっきり手を叩いて、重苦しい空気を変えた。

 

 

 

「球磨川、下らない手品などせずに、さっさと席に座れ。真面目にやるのだろう?」

『まあ』『気が変わるまでの間ですけどね』

「山田先生、大変でしょうが、授業を始めて下さい。どうしても授業を受けられないものは、急いで保健室に向かえ」

 

 

 

 

 

こうして、数名の早退者は出たが、授業は無事に再開された。

 

 

 

 

 




球磨川になって苦労したこと。

目薬使わずに嘘泣きすること。

(五歳の時)
『う~ん』『嘘泣きってどうやるんだろう』『悲しいことを思い浮かべればいいのかな?』『でも』『それだけじゃ血涙は流せないよね?』『でもこれができなかったら球磨川じゃない気がする』『ホントどうしよう……』

数年の練習の末、何とか習得した。


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『悪いのは一夏ちゃんとクラスメイトだ』

「おい球磨川!さっきのは一体何だよ!?」

 

ん?さっきの?何のことかな?僕にはさっぱりだ。

 

『おいおい一夏ちゃん』『何があったか知らないけど落ち着きなよ』『さっきのって一体何のことだい?』

「とぼけるな!クラスの皆を体調不良にしたり、千冬姉に螺子を投げたりした事だよ!」

 

おいおい、そんなことでわざわざ声を荒げないでくれよ。こっちだって暇じゃないんだから、いちいち一夏ちゃんの言いがかりに付き合ってらんないぜ。

 

『皆が体調不良になったのは皆が体調管理を怠ったからだろ?』『それとも君は』『僕がクラスメイトを体調不良にした証拠でもあるというのかい?』

「うっ……でも!千冬姉に螺子を投げたのは本当だろうが!」

『あれはただの手品だよ』『出席簿に空いた穴はきちんと塞がっていたじゃないか』『僕には織斑先生を傷つけるつもりなんてこれっぽっちも無かったよ』

「てめえふざけ……」

「ちょっと、よろしくて?」

 

俺と一夏ちゃんの会話に急に割り込んできた礼儀知らずは、金髪縦ロールのメインヒロインだった。

 

 

 

 

セシリア・オルコット

 

イギリスの代表候補製。しかも貴族。最初は主人公のことを嫌っていたくせに、一度負けそうになっただけでベタ惚れするチョロイン。自己紹介の時に自分の自慢ばっかりしていた。貴族であることと代表候補生であること、入試一位であることを特に強調していた。

 

『えっと』『確かセシリア・オルコットさんだよね?』『自慢ばかりの派手な自己紹介が印象に残ったから覚えてるよ』『それで?』『明らかに取り込み中なのに割って入って来てまでよろしくしたい理由は何なのかな?』

「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

 

 

 

明らかにこちらを見下した態度。己の優位性を疑わない絶対の自信。それは貴族(プラス)としての誇り(プライド)と代表候補生の立場からくるものだろう。

教師を除けばこいつはこのクラスの誰よりも強者(プラス)だ。

 

「誰なんだよあんた?今は俺と球磨川が話してんだから邪魔すんな!」

「はあ、あなたよくそんな方とお話し出来ますわね。球磨川さん、わたくしはあなたとはよろしくしたくありません。ですが、おぞましいからという理由だけで関わるのをやめれば貴族としての沽券にかかわります。下々との対話もまた貴族の義務。わたくしはそれを投げ出すようなことは致しません」

 

一夏ちゃんの言うことも無視して、セシリア・オルコットはこちらに一方的に関わってくる。でも、それはこちらには都合がいい。俺は、お前みたいな強者(プラス)を螺子伏せるためにこの学園に入学してきたんだ。

 

『どんな理由にせよ』『君みたいな有名人が僕に関わってくれたのは光栄だよ』『イギリスの国家代表候補生にして入試一位の実績を持つ』『セシリア・オルコットさん』

「よくご存じですのね」

『自己紹介で君が自慢げに語ったことじゃないか』

 

実際大体の人が鬱陶(うっとう)しがってたもんなこいつの自慢話。一夏ちゃんはどうしてあんな派手な自己紹介されたのによくこいつのことを記憶にとどめておかずにいられるんだろう。

 

 

 

 

~回想~

 

「わたくしはイギリス出身の貴族、セシリア・オルコット。イギリスノの代表候補生ですわ。そして入試一位の実力者でもあります。」

 

「まあ、このわたくしのことを知らないという人はまずいないでしょうけれど、形だけでも紹介しておきましょう」

 

「みなさん、このわたくしと同じクラスであることの幸せを噛みしめるといいですわ。おーっほっほ」

 

(((うざい)))

 

それがクラス全員の総意だった。

 

~回想終了~

 

 

『実際すごいと思うよ』『世界最強の前で代表候補生であることを自慢するなんて』『僕には恥ずかしくてできないぜ』

「え?……はっ!」

 

今気づいたのかよ。周り見てみろよ。何人か笑ってるぜ。

 

「オルコットさん、気づいてなかったの?」

「シーッ、黙っててあげなよ。ってもう遅いか」

「世界最強の前で国家代表候補であることの自慢……プッ」

「千冬様、内心笑ってたりしてたのかな?」

 

世界最強である織斑先生からすればクラス代表候補生であることを自慢するこいつはさぞかし滑稽に映っただろう。

 

いや~、気づいたうえで世界最強ほどじゃなくても、候補生だって十分すごいんだって開き直っていたんならともかく、そうじゃないのなら悪いことしたかもな~。あ!オルコットさんめっちゃ顔赤くなってる。かっわい~。

 

「よ、よくも恥をかかせてくれましたわね!」

『おいおい』『恥をかいたのは君の自己紹介が原因だろ?』『僕は悪くない』

「あなたよくもぬけぬけとそんな……」

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

 

「っ……!またあとで来ますわ!逃げないことね!よくって!?」

「球磨川、俺との話だってまだ終わってないからな!忘れるなよ!」

『僕は逃げも隠れもしないよ』『それとオルコットさん』『立ち振る舞いには気を付けたほうがいい』『そんな負け犬の遠吠えのようなセリフは君みたいな強者(プラス)には似合わない』『あと一夏ちゃん』『僕物覚え悪いから多分忘れると思う』『ごめんね』

「……忠告、ありがたく受け取っておきますわ」

「本当に忘れてたら承知しないからな」

 

本当、振る舞いには気を付けてもらいたいよ。

 

 

 

……君には、螺子伏せがいのある強者(プラス)であってもらわないと困るんだから。

 

 

 

 

 

そして三時間目、クラス代表を決める時間がやってきた。

 

 

 

「今からクラス代表を決める。自薦他薦は問わない。誰か推薦したい人物はいるか?」

「はいっ。織斑君を推薦します」

「私もそれが良いと思います!」

「お、俺!?」

 

おいおい一夏ちゃん、何を驚いているんだよ?この世に二人しかいない男性、興味本位で指名されてもおかしくないじゃないか。当然僕も……

 

 

 

球磨川雪 0票

 

 

 

うん知ってた。……泣いていいかな?同じ男性操縦者なのにこの扱い。

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

おお!セシリアさん。そうだよね、同じ男性操縦者なのにこの扱いの違いは納得いかないよね。差別は良くないよ。

 

「男がクラス代表なんて恥さらしもいいところですわ!わたくしにそのような屈辱の一年間を味わえとおっしゃるのですか!?」

 

はあ?その程度が屈辱だなんて、ずいぶん沸点が低いな貴族様は。

 

「実力から言えばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しさを理由に極東の猿にされては困ります。わたくしはISの技術を学びに来たのであって、サーカスに来たわけではありません」

 

おお!大半が日本人のこのクラスで日本人を堂々と猿呼ばわり。クラスメイト全員君を睨みつけてるけど、気づいてない?

 

「クラス代表は実力のトップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ。大体、文化が後進的なこの国で暮らすこと自体私にとっては耐えがたい苦痛で……」

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理何年覇者だよ」

 

おいおい、俺が挑発する前にもうやらかしちゃったのかい一夏ちゃん。

 

「もう許しません。決闘ですわ!」

「いいぜ。四の五の言うより分かりやすい」

『あ!』『僕自薦するからその決闘参加するね』

 

危ない危ない。原作介入のチャンスを逃すとこだったぜ。

 

「……いいだろう。オルコット、織斑、球磨川の三名でクラス代表決定戦を行う」

「「二人まとめてぶちのめしてやる(さしあげますわ)」」

『怖い怖い』

 

二人ともすっかり殺気立っちゃって。何をそんなに苛立っているんだ?代表決定戦なんてくだらないイベント、気楽にやればいいのにさ~。俺はなんとなくエントリーしたけど、もちろんテキトーにやるよ。()()()()()()

 

「二人とも、言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い、いえ、奴隷にしますわよ」

「侮るなよ。真剣勝負に手を抜くほど腐っちゃいない」

『僕は勝負においてわざと負けたこのなんて一生に一度もないさ』『僕の全ての勝負は真剣に戦って全て敗北した』

「……一人は真面目に戦う気があるのかすら疑わしいとは、嘆かわしいことですわ」

 

事実を言っただけなのにこの反応。一応やる気はあるんだけどな。真剣勝負に手を抜く気がないのはこっちも同じなのに。

 

勝負で手を抜いたことは無い。何時だって俺が有利な条件で戦ったことは無い。できるだけ対等に戦おうとした。勝つための努力だってしたことがある。勝ちたいという想いはこの世界の誰よりも強い。

 

 

 

なのに、勝てない。

 

 

 

それが、負完全()という存在だから。

 

 

 

『安心しなよ』『僕の誇りにかけて全力で戦うことを誓うから』

「ていっても男が女に純粋に力比べするわけにもいかないだろ。ハンデはどのくらいつける?」

 

 

 

一夏ちゃん、それ本気で言ってるの?すごいな。

 

見ろよ、クラス全員嘲笑の笑みを浮かべてるぜ。

 

 

 

「織斑君本気で言ってる?」

「男が女より強かったのって昔の話だよ?」

「ISが使えるって言っても初心者なんだから、むしろ織斑君がハンデをもらわないと」

『さすが一夏ちゃん』『真剣勝負に手を抜かないと言った矢先に自分にハンデをつけて負けたときの言い訳を作るなんて』『まさに卑怯者のすることだよ』『そこにしびれる憧れるぅうう!』

 

 

 

俺の言葉に、クラスメイトは全員疑問を持った表情を浮かべる。って一夏ちゃん、本人が疑問を浮かべてどうするの。

 

 

 

『常識的に考えて初心者の一夏ちゃんが代表候補生に敵うわけないよ』『だから一夏ちゃんは自分にハンデを付けて負けたときの言い訳を作ろうとしたんだろ?』『勝ち負けの決まった真剣勝負なんてあるわけないからね』『真剣勝負に手を抜かないという言葉にも矛盾しない』『この勝負は始まる前から結果が決まっている』『ならばと一夏ちゃんはいかに仕方なく負けるか考えた』『どうだい僕の名推理』

「そんなわけないだろ!大体、まだ俺が負けるなんて決まってないだろうが!」

『え?』『なら君はハンデのついた勝負が真剣勝負だというのかい?』『それは驚いた』『君の真剣ってその程度だったんだね』

「そ、それは……」

 

俺の言葉に、クラスメイト達は一夏ちゃんに疑心暗鬼を持ち始めた。

 

「織斑君そんなこと考えてたんだ」

「熱血って思ったら卑怯なタイプだったんだね」

「イメージ崩れた」

「千冬様の弟なのにこんなことして恥ずかしくないのかしら」

「千冬様の弟とかじゃなくて人としてどうかと思うわよこんなの」

 

もちろんその空気を何とかしようと一夏ちゃんは口を開いた。

 

「違う!俺はそんなつもりはない!ただ、言葉を間違えたって言うか……」

 

そんな言い訳じみた反論が通じるわけもなく……

 

「口を開かないでこの卑怯者!」

「それでも千冬様の弟なの?」

「こんな奴が同じクラスだなんて一組の恥だよ」

「くッ……」

 

 

 

……言い訳じみた反論に、ちょっと女子に強く反論されただけで口をつぐむ愚行。

 

 

 

 

 

はぁ、本当にひどい。最低だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな言い訳じみた反論を信じてあげないなんて。

 

 

 

『やめろよ皆!』『本当に一夏ちゃんがそんな卑怯なことをしたと思っているのかい!?』『一夏ちゃんは違うと言っているのに!』『大切なクラスメイトじゃないか』『クラスメイトの言うことは信じてあげようよ!』

 

 

 

瞬間、教室は静寂に包まれた。

 

 

 

この場にいた球磨川を除く全員が理解できなかった。なぜ一夏を責めるような物言いから一転、庇うようなことを言うのか。

 

 

 

「ふざけるな!元々お前があんなこと言ったから俺が疑われたんだろうが!」

『おいおい』『僕は思いついた中で最も可能性が低い推理を披露しただけだよ』『可能性が低いとはいえわずかにでも君が卑怯者だって可能性があるなら放っておけないだろ?』『だから僕が提示した可能性を完膚なきまでに否定してほしくてあんなこと言ったのに』『君はみんなの前で自分の無実を証明できなかった』『だから証明できなかった君と』『一夏ちゃんの言葉を信じなかったクラスメイトが悪い』

「違う!何もかも全部お前が悪い!」

 

 

 

全く、俺がやると善行も悪行に見えるのかね?

 

 

 

『いいかい一夏ちゃん』『僕は親切であんなことを言ったんだ』

 

 

 

つまり何が言いたいのかというと……

 

 

『人に親切にすることが悪い事のはずがない』

 

 

 

 

 

だから…………

 

 

 

 

 

『僕は悪くない』

 

 

 

 

 

なら誰が悪いのかというと……

 

 

 

 

 

『悪いのは一夏ちゃんとクラスメイトだ』

 

 

 

俺がそう言った瞬間、一斉にこの場にいる全員から視線が向けられる。

 

その視線には、嫌悪、憎悪、怒り、恐怖、様々な感情が混ざっていたけど、一つとしてプラスの感情はなかった。あるのはマイナスな感情のみ。

 

 

 

その視線を受けて、俺は……

 

 

 

二コリ

 

 

 

……と、過負荷らしく、へらへら笑った。

 

 

 

 

 

 




球磨川に転生して苦労したこと

螺子の調達

『人を螺子伏せられるくらいの螺子ってどこで売ってるのかな?』『そもそも僕の所持金で買えるかな?』『まずい』『螺子が手に入らなかったら僕は球磨川を名乗れない』
『いったいどうすれば……』



Amaz◯nで格安で売ってあった。Amaz◯nパネェ。




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