ゴロねこニャン吉奮闘記 2 (紫 李鳥)
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ゴロねこニャン吉奮闘記 2

 

 

 

 シーシー

 

 昼食を終えたニャン吉は、木陰でゴロゴロしながら、爪楊枝で歯の掃除中。

 

 今、ご馳走になった西京焼きは、林業を営む吉田さんちの。

 

 少し開いてた台所の窓から忍び込んで失敬したもの。

 

 悪いと思いながらも、腹ペコになったら、理性も常識もへったくれもねぇ。

 

 あ~あ~、満腹、満腹。さて、めしも食ったし、昼寝でもするか……。

 

 

 

 

 スヤスヤ……

 

 グーグー……

 

 ガーガー……

 

 グアーッ!ガアーッ!

 

 なっ!なんだ?……あああ、ビックリした。

 

 自分のいびきで飛び起きたニャン吉は、よだれを拭きました。

 

 

「ちょっと、知ってる?益田さん、空き巣に入られたんだって」

 

 ん?頭に手ぬぐいを被って、背中に竹かごを背負ったおばさんが、麦わら帽子にもんぺ姿のおばさんと立ち話中。

 

「聞いたわよ。タンス預金してたんだって」

 

「へそくりしてたのよ」

 

「うちもへそくりできる身分になりたいわ」

 

「うちだって、食べていくのが精一杯で、へそくりなんて、夢のまた夢よ。ハハハ……」

 

「それにしても、早く捕まってほしいわね。ま、うちは盗まれるものないから心配ないけど」

 

「うちもお金のほうは心配ないけど、ハートを盗まれる可能性があるから気をつけないと。おほほ……」

 

「あらぁ、お若い。女はいくつになっても気持ちだけは若くいたいわね」

 

「あら、まだまだお若いわよ」

 

「あら、そうかしら?オッホッホ」

 

(ったく、うるさいな。昼寝もできねぇ。場所変えるか)

 

 

 

 ニャン吉は、小さな神社の裏まで来ると、涼しい床下に入りました。昼寝の続きをしようとした、そのときです。

 

「――5、6、7、8、9、10万か。クッ、結構あったな、タンスに。さて、街に行ってうまいもんでも食うか」

 

 男の独り言を耳にしたニャン吉は、床下から顔を覗きました。

 

(こいつが盗んだのか)

 

 お金を手にした中年男が背を向けようとした寸前、ニャン吉はピューマのようにしなやかに走ると、男の手を目掛け、ジャンプしました。

 

ガブッ

 

 一瞬のできごとに、何が起きたのか分からず、男はキョトンとしていました。

 

 

 

 川を越え、畑を越え、猛スピードで交番まで行くと、“ただいま、パトロール中”の札が下がった戸を開けて、泥棒から取り戻したお金を届けました。

 

 

 

 

(ったく、昼寝もろくすっぽできなかった。さて、晩飯は誰んちのにするか。吉田さんちはさっき西京焼きいただいたばっかだから、次は農業の藤田さんちにするか。どれ、それまで一寝入りっと)

 

 

 

 

「ちょっと!ちょっと!私、見たのよ、空き巣の犯人」

 

(ん?さっきのおばさんたちじゃん)

 

「えっ!誰だったの?」

 

「白黒のずんぐりむっくりの雑種」

 

(白黒のずんぐりむっくりの雑種?俺のことじゃん。……まさか、西京焼き盗むとこ見られたのかな)

 

 

 

 

 

「札束くわえて、逃げてた」

 

(お、俺じゃないって、金盗んだのは。トホホ)



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