アカメが斬る!〜闇のキバが裁きを下す〜 (マスティ魔)
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主人公設定

一旦一区切りついたので、主人公のプロフィールを作りました。
ではではどうぞ!


ハドー

 

cv:宮野真守

 

 

容姿:金髪碧目のクール系美男子

(イメージキャラ:キグナス氷河)

 

 

16歳(キバットと会合時)

19歳(ナイトレイド加入時)

20歳(原作開始時)

 

 

帝国最強の将軍であるブドー大将軍の次男。厳格なブドーの『国とは人』という教えにより、いつの日か民を護る軍人になるために兄のシドー、父のブドーから訓練を受けていた。しかし、16歳の時に兄のシドーが革命軍に内通していたことをオネストに察知され、父であるブドーの手で粛清される場面に居合わせる。この時に、尊敬していた兄を殺した父のことを信じられなくなり、兄の遺書により力を付け革命軍に入ることを決意する。そして、同時に父への復讐心、革命への決意、愛しい者を喪った哀しみによりキバットバット二世にダークキバの資格者として認められる。しかし、現在の自分の力量では兄の足元にも及ばないことを痛感し、三年の間軍で腕を磨き上げるためキバットにダークキバとなるのを延期してもらう。

軍現役時代では、自身の本心を悟らせない様にし数々の任務を遂行していく中でエスデスに目をつけられる。エスデスもハドーの瞳の中にチカラを求めていることを感じとり、自身の部下にしようとするが断られる。余談だが、エスデスは勧誘の際に実力行使をしようとしたが、隙を突かれ逃げられる。そして、遠方への蛮族討伐任務の際に自らの死を偽装し、軍から逃亡する。

軍から逃亡して以降の数ヶ月間は、帝都に蔓延る己が快楽の為に罪なき者達を殺す者達、それを知りながら見逃す者達を自らをキバと名乗り、闇に紛れて暗殺していた。そんなある日に依頼人を偽ってナイトレイドのアカメ、ナジェンダ、ブラートの3人がハドーとキバットに接触する。そして、ブラートと一勝負を行いナジェンダ達に認められ、ナイトレイドのアジトへ案内され、正式にメンバーに加えられる。

ナイトレイドにメンバー入りしてから、暗殺の任務をこなしメンバーたちとの交流を深めたことで打ち解ける。初の帝具戦となるバリアズとの戦闘により、ダークキバの魔皇力を用いた必殺技を乱発したことで自身でも抑えきれない吸血衝動を発症する。この時、ハドーの容態の不安定さを察知したナイトレイドの皆んなにキバットが初めてダークキバの危険性を説明する。この事を知ったアカメは密かに森へ駆け出すハドーを見かけ、自身が思っている以上にハドーが苦しんでいる事を理解し、その苦しみを和らげるために無理矢理血を提供する(口移しで)。そして、アカメの血によって吸血衝動は完全とはいかないが緩和させることに成功する。

ナイトレイドでの主なハドーの役割は、炊事担当と医師となっている。ナイトレイドの中でも誰よりも人体に詳しく薬草の調合もかなりのモノであり、ごく稀にラバックに対して危険の少ない薬を盛っている。加えて、軍人時代でも料理をしていたこともあってアカメと共に炊事担当をしているため、つまみ食いをするアカメを嗜める監視役にもなっている。

また、第11話によって自分の中に皇帝の血が流れていることを知る。本人も母親の家系には興味がなかったためキバットによって告げられた際にはナイトレイドのメンバーたち同様に驚きのあまり声を上げていた。

実力面では現段階ではブラートに一歩及ばず、訓練においても勝ち越せないでいるが、アカメとは戦闘スタイルが似ていることもあって実力は拮抗している。

元々名家である将軍家出身なため目上の者には礼儀は丁寧であり、信念に従い生きているため弱者を踏み躙る者または敵と判断した者には容赦しない。加えて仲間を傷つける者も許さないなど情に熱い面もあるが、兄を殺した父への復讐を考えているなど冷酷な一面もある。しかし、それはあくまでも個人としての目的であるため、革命軍の一員としての目的である革命を優先させる様に自身を戒めている。ナイトレイドのメンバーの中でアカメとの仲が最も良く、アジトではよく一緒に行動することも多い。ハドー自身ははじめての吸血以来アカメを意識しているが、全く気づいていない。

好物は林檎で、よくオフモードの際には小説を読みながら10個近くペロリと平らげることもある。

 

 

 

 

 

キバットバット二世

 

cv:杉田智和

 

年齢1000歳以上

 

愛称はキバット。クールかつ厳格な性格をしているが、時折ツンデレの様な言動になることもある。自分の使命に命を賭ける強いプライドを持っているなど殆どは原作と変わりは無い。初代とハドー以外の資格者のことをつまらないと言ったりと割と毒舌であり、ハドーがあたふたしているのを影で嗤っていたりとSな面を持っている。ちなみにサブヒロイン投票では、かなりの支持を得ていた。やったね♪

 

 

 

 

 

 

《帝具》

 

 

【魔皇一身 ダークキバ】

 

 

魔皇力という人体に有害なエネルギーを宿す魔皇石で作られた鎧。人間では扱い切れなかったため始皇帝はキバットとの間に、何かしらの契約“血の契約”を交わしたことで完成した鎧型の帝具。他の帝具と違い、皇帝の血と王としての資質を持っていなければ資格者となることはできないため始皇帝とハドーを合わせても資格者は10人しかいない。キバットが鎧の魔皇力を制御し、資格者の肉体を魔皇力に適応させる対価として、資格者はキバットに血を吸わせる必要がある。また、魔皇力を用いた必殺技はかなりのモノであるため一発逆転の切り札ともなりえる。しかし、ダークキバとなり続けるためにはリスクを伴う。それこそが“吸血衝動”である。

この“吸血衝動”は変身解除時に発症し、ダークキバの力を引き出せば引き出すほど血を求める衝動は強まっていく。この衝動は人体にとって有害である魔皇力をキバットを通して自身の身体に流れており、魔皇力とともにキバットのキバットバット族としての魔族の細胞も資格者の身体を侵食していく。その結果、侵食されて行く身体は本人の意思など関係なく他者の血を欲する様になっいく。このため衝動を抑えこめる血を持つアカメの様な提供者の血を飲まなければ、いずれ衝動に負け血を求めるだけの怪物と成り果てる危険性を持っている。

また、奥の手も存在するがその条件として鎧に真の主として認められることが絶対である。現時点ではキバットから力量的にも達していないと判断されているためその内容も不明のまま。歴代達の中でも使えたのは初代である始皇帝のみとされている。

 

 

《臣具》

 

ジャコーダー

 

 

ハドーの兄であるシドーが持っていた武器。形態として鞭型のジャコーダービュート、細剣型のジャコーダーロッドになれるため中距離または近距離と使い分ける事ができる。応用性の高い武器である。そして、キバットに噛ませ魔皇力を流しこむことで魔皇力を用いた下記のような必殺技を放てることもできる。

 

 

 

《必殺技》

 

※第5話までは1日に1発を厳守していたが、アカメの血を貰って以降は5発近くは打てる様になっている。しかし、使いすぎるとアカメの血をハンパなく吸いたくなってしまう危険性?もある。

 

 

【ダークネスヘルクラッシュ 】

第4話初登場。魔皇力で強化されたストレートパンチ。帝具使いであるバリアズとの戦闘の際に使用するが、ギリギリの所で防がれるため決定打に成り得なかった。

 

【キングスバーストエンド】

第2話初登場。魔皇力で強化した両足蹴り。

ブラートとの腕試しにおいてノインテーターとぶつかり合い、互いに変身解除される。しかし、このときハドーは疲労困憊であり、ブラートはそこまで疲労していないことから実力の差が垣間見える。

 

【スネークキングデスブレイク】

第4話初登場。魔皇力で強化されたジャコーダービュートで相手を貫き、その肉体に直接魔皇力を流し込む。これにより耐性の無い相手は顔中から血を吹き出して絶命する。ちなみに内蔵の方もエグいことになっているため中々エゲツない技である。バリアズ戦ではラバックのクローステールの“界断糸”との合わせ技として使用。



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第1話 新たなる闇のキバ

 

 

『良いか、ハドーよ。国とは人だ。民草がいなければ国は成り立たん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私の剣は陛下が居らせる宮殿を守護する為のものだ。オマエの剣は何を守護するのか、必ず見つけろ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレにそう教えた貴方が…………

 

 

なぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない………ハ、ドォ……私は…失敗し……

……て、しまった……よう…だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実の息子である(・・・・・・・)兄上を手にかけるんだ(・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレが16歳の時、兄は父であるブドー大将軍の手で謀殺された。

 

 

 

 

 

 

 

兄が殺された理由は、この国の内政によって苦しみ続ける民を救うため、革命軍に内通していたことをこの国の醜悪の根源たるオネスト大臣に察知された。

 

 

 

 

 

そして、兄はオレの目の前で殺された。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ…あ、あぁぁあ………」

 

 

 

父の持つ雷を操る帝具によって、兄は……さっきまで生きていた筈の兄は、黒焦げの肉塊となった。

 

 

「ヌフフ、流石でこざいますねぇ〜ブドー将軍?。実の息子でさえ迷い無く殺すとは。まぁ〜死んだ彼の方は、貴方に対して迷いを持っていたようですがねぇ〜?」

 

 

 なぜ、なぜなんですか父上……!?

 

 なぜなんですか父上!?

あの日々は……、楽しかった日々の……オレたちに見せくれた父上の笑顔は、全部偽物だったのですか!?

 

 

 言葉に伝えようとしても、声がでない…出てくれない

 

 

 それほどまでに、オレにとってこの事態は受け入れがたいものだったのだ。父が兄を殺したということが。

 

 

「いやはや、この私も愛する息子がいる親の身として、処理を他の者に任せようとしたのですが、まさか貴方が自らの手で自慢の長男を殺すとは思いませんでしたよ?」

「口を閉じろ大臣。確かに私は彼女と………………彼女が遺した息子たち(・・・・・・・・・・)を愛していた————が、裏で革命軍と繋がっていたとなれば話は別。私の守護する宮殿に仇をなそうとするならば実の息子であろうと容赦はせん。だが、この私に愛する息子を手にかけさせた貴様たちは反乱軍を殲滅した後、しかるべき裁きを受けると思え……‼︎」

 

 

「おぉ〜それは怖い怖い。私も用心せねばなりませんねぇ。ヌフフフフフ……」

 

 

 オレには二人の話は全く耳に入らなかった。

 

 

 目の前にある兄上の死体が、まるで血の一滴すらも蒸発していき、各所が廃になっていくことで頭がいっぱいだった。

 

 

 そして、突然胸のうちからせりあがってくる吐瀉物をそのまま我慢することもできずに床に吐き出す。

 

 

「あぁーなんとも可哀想に16歳の少年にはまだまだ刺激が強すぎましたかねぇ?」

 

 どこから取り出したのか、特大の肉にかぶりつきながら大臣が悲しそうな面持ちでオレを見る。

 

 だが、オレにはこの顔が嘘であり、裏でオレたちを嘲笑っていることは容易に理解できた。

 

 なぜなら、顔では悲しそうな表情をしていても、瞳の奥で笑っていることがわかっていたからだ。

 

「リョウエン、ハドーを部屋に送ってやれ。私はまだやる事がある」

「かしこまりました旦那様。さぁ行きましょう坊っちゃま」

 

 幼い頃から教育係である老執事のリョウエンに連れられる形で、オレは部屋に戻った。もう何も考えたくはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、現実はそんな弱いオレを許さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「坊っちゃま。どうかコレ(・・)を、シドー坊っちゃまのご遺品でございます。ご用がありましたら申して下さい」

 

 

 

そう言って、ベットで静かに泣くオレを置いてリョウエンは、近くにテーブルに置いて部屋を出て行った。

 

そして、扉を閉め切る前に、

 

 

 

 

 

 

 

「何時迄もメソメソしていてはシドー様がお叱りに来ますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

静かにオレを叱って出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

暫く泣いた後、リョウエンが置いて行った兄上の遺品を確認すると、ソレは先ほどまで父上と闘い、そして殺された兄上が使っていた臣具—————ジャコーダーと手紙が置かれていた。

 

 

ジャコーダーを握り、また、涙が出そうになるが、歯を食いしばり涙を無理矢理止め、手紙を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

『親愛なる弟ハドーへ

コレを読んでいるという事は、私は既にこの世にはいないということになる。

私は友でるロクゴウ将軍の話を聞き、どうしても、この国を、もう一度民が笑う国に変えたかった。まだ、16歳という幼いお前にとてつもない苦しみを与えてしまった愚兄をどうか許さないでくれ。

この国を腐らせる醜悪の根源たるオネスト大臣によって街の治安が悪く、悪しき者達がやりたい放題が出来る街へと変わっている。そして、街は罪なき者達の血で穢れている。父上が私達を宮殿から出さなかったのはその事が原因であると私は思っている。そして、父上もこの国の現状を憂いているのも事実。

そして、どうか…私の代わりにこの国を……何の罪もなく毎日のように殺されていく民を救ってくれ。

オマエになら私の出来なかった革命を仲間達と共に出来ると信じている。何故なら、私とオマエには、誇り高い父上と誰よりも優しい母上の血が流れているのだから。

 

さらばだ———————我が最愛の弟よ。

 

 

私は……オマエを何時迄も愛している』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………兄上

 

 

 

手紙にはところどころ涙でできたかと思われるシミがあり、それには兄上の………深い決意を感じさせた。

 

 

 

そして、兄の臣具であるジャコーダーを強く握り、誓う。

 

 

 

 

兄の遺志を継ぎチカラを付け革命を成し遂げること

 

 

 

もう一度、この国を民が心から笑い合える国にすること

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、必ず父を………ブドー将軍を葬ることを

 

 

 

 

 

 

 

 

『オモシロイな人間』

 

 

 

 

 

 

「誰だ!?」

 

 

 

 

 

オレ以外誰もいない筈の部屋に響き渡る厳格ある声。

 

周囲を見渡すといつのまにかベランダに赤黒い蝙蝠のような存在がいた。

 

 

 

 

『俺の名はキバットバット二世。誇り高き魔族であるキバット族の生き残りだ』

 

「ならば、何をしに来た」

 

 

 

ジャコーダーをロッド剣状のジャコーダーロッドへと形態を変え、キバットバット二世を名乗る蝙蝠擬きに切っ先を向け、警戒心を強める。

 

 

 

『そう慌てるな。俺はお前にチカラを与えに来た。今のお前は哀しみと決意………そして、憎悪を持っている。俺の力を受け取りに相応しい存在へと成長したお前に俺は会いに来た』

 

 

キバットバット二世が言っている内容になんとか付いていっているハドーは、改めてキバットバット二世からの申し出を

 

 

「分かった。オマエのチカラを俺にくれ」

『よかろう』

 

「だが、しかしもう少しだけ待ってくれないか」

『ナニッ!?』

 

延期する形で応えた。

流石にこれは予想外であったのか、キバットバットは驚きの声を上げた。

 

 

「今のオレの実力は兄上の足元にも及ばない。だから、もう少しこの国でチカラを付ける。よりオマエのチカラを受け取るに相応しい男となるまで………三年待っていて欲しい」

『………いいだろう。まだまだチカラが開花していないオマエよりも其方の方が面白そうだ』

 

「ありがとう、キバット」

『気にするな。それと一つ忠告しておくが俺のチカラを受け取れば、オマエは……………人ではなくなる。それでもオマエは俺のチカラを求めるか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、構わない。この国を変えるためならそれでも構わない」

『……クックク。オモシロイなオマエは。気に入ったぞ人間』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、オレは兄と死別したが、

 

 

 

同時に、これから共に闘い続ける相棒(キバット)と出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦♫♦・*:..。♦♫♦・*:..。♦♫♦♦

 

 

 

 

 

そして、月日は流れ三年の月日が流れた。

 

 

 

19歳となり、遠方にいる蛮族を狩る任務に準じて、自分の死を偽装し、行方を絡ませたハドーは、数ヶ月間の間に帝都に蔓延る己が快楽の為に罪なき者達を殺す者達、それを知りながら見逃す者達を自らをキバと名乗り、闇に紛れて暗殺していた。

 

 

 

そんなある日。

 

依頼人と落ち合うはずの待ち合わせ場所へ到着すると、

 

 

 

 

 

 

 

「お前が最近帝都を騒がせているキバだな?」

 

 

 

革命軍へと身を投じたはずのナジェンダ将軍に加えて、指名手配犯の100人斬りのブラート、暗殺者アカメの三人がいた。

今のオレはフード付きのコートのフードを深く被り、口元をスカーフで覆っているため他の者から貌は判らない。キバットは服の中で様子をうかがっている。

 

 

「そうだと言ったらどうする。革命軍」

「お前は何の為に敵を斬っている?」

 

 

革命軍のナジェンダがオレたちの元へ危険を犯してまで来るという事は、オレを見極めに来たという事だろう。最近帝都で噂になっている暗殺集団ナイトレイドの精鋭を連れてまで来ているのに、真っ先にオレを殺していないのなら、スカウト方面で間違いないだろう。

ならざ、こちらもそれなりの誠意を見せなくてはダメだな。

 

 

「この臣具を残した者の遺志を継ぐために」

 

 

ジャコーダーをナジェンダ達に分かりやすく見せた。すると、ブラート、ナジェンダは驚きを露わにした。この二人は帝国軍にいた時に兄に会っている筈。

 

 

「……どうして貴様がソレを持っている!?」

「………託されたからだ。疑うのであれば、この場でオレ達の決意とチカラを示させてもらう」

 

少し、ナジェンダたちは考えるそぶりを見せ、声に出さずアイコンタクトのみを行うと、手配書と違うリーゼンヘアーのブラートが前へ出てきた。

 

「…よーし。シドーの武器を受け継いでいるなら、半端な覚悟じゃないことを見せて貰うぜぇキバ?」

「そのつもりだ。お互い鎧使いである以上肉弾戦で拳を交えさせて貰う」

 

「へぇ〜お前も鎧の帝具使いか。オレが勝ったら、酒を飲みながらシドーの話を聴かせて貰うぞ」

「承知した。では、オレが勝ったら、貴方が知るあにぃ………シドー殿のことを聴かせて貰う」

 

 

 

 

 

 

「良かったのか、ボス。あんな勝手に賭け事みたいにして」

「気にするなアカメ。恐らくヤツはこちら側の人間だ。周囲に何かあれば、ラバックやレオーネたちが知らせてくれるさ」

 

「ボスがそう言うなら私は従う」

「では、見届けよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ行くぜぇ!!インクルシオォォォォォ!!!!」

 

 

離れていても熱い魂が伝わる掛け声と共にブラートは、その身に帝具—————悪鬼纏身 インクルシオを纏わせた。

 

 

そして、対するハドーたちは、

 

 

「行くぞキバット!」

『ありがたく思え!絶滅タイムだ!』

 

 

カブリと右手をキバットに噛ませ、腰に黒色の止まり木状のベルトを出現させ、

 

 

 

 

 

「変身」

 

 

 

 

 

掛け声と共に変身する。

 

 

 

 

その身を帝具—————魔皇一身 ダークキバへと変える。

 

 

 



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第2話 ナイトレイド

 

 

互いに自らの腹の内を拳として伝えるため帝具の鎧を装着したブラートとハドー。お互いに鎧から漏れ出るプレッシャーに戦慄していた。ブラートから漏れ出るオーラはまさしく百戦錬磨の戦士。

 

そして、対するハドー………ダークキバから漏れ出るオーラは—————死。眼に映る者総てを絶滅させる光景を幻視させる程の恐ろしいもの。

 

そんなオーラを真正面から受け止めているブラートは内心冷や汗をかいていた。しかし、だからと言って引くような(たま)ではないのが、

 

 

男の中の漢—————ブラートである。

 

 

「……その鎧、随分とヤベェーオーラを出してくれるじゃねぇか? 思わず鳥肌が立っちまったぜ」

 

 

先ほどよりも戦意を高ぶらせながら槍の切っ先をこちらに向けるブラートにハドーも内心冷や汗をかいていた。自分がまだまだ未熟者であることを理解しているハドーは、ダークキバの鎧から漏れ出るオーラを受けても物怖じないブラートの戦士としての気迫に驚愕していた。自らの血と引き換えにキバットから注入された魔皇力と呼ばれる人外の力によって強制的に強化された身体能力でもブラートに勝てるビジョンをイメージ出来ずにいる。

 

 

「ソレは此方も同じだ。闇のキバの鎧を着ていても、貴方を倒せるビジョンが見えない…………だが、此方も負ける気は毛頭ないがなァ!!」

 

 

ジャコーダーを細剣ジャコーダーロッドにし、ブラートへ斬りかかる。対するブラートも、真正面から向かって来るハドーに対して鍛え抜かれた豪腕を使い槍を横一列に斬りはらう。向かって来ていたハドーは、ブラートの攻撃を見切り、体制を低くすることで躱し、低姿勢のままジャコーダーによる刺突でカウンターを狙う——————が、しかし、あらかじめハドーの動きを予期していたブラートは、槍を持っていない方の腕で左手でタイミングよくジャコーダーを掴んだ。心臓を射抜かんとするハドーの鋭い刺突をブラートがいとも容易く止めたことで、ハドーの動きに遅れが生じた。この遅れによって生まれた隙をブラートは逃さない。

 

 

 

 

「中々の刺突だぜ!!」

「恐悦至極だ」

 

 

 

槍を先ほどよりも短く持ち直し、逆手の状態でインクルシオの副武装ノインテーターを振り下ろした。

しかし、ハドーはノールックのまま凄まじい速さで振り下ろされる槍の切っ先を左脚で蹴り飛ばしてみせた。これにより蹴り飛ばされた槍は二人から離れた位置に勢いよく落ちた。

そして、ブラートは蹴り飛ばされた槍を一瞥もせず、

 

「オオオオォォォォォォォォ!!!!」

 

ガラ空きとなったハドーの土手っ腹に強烈な膝蹴りを喰らわせた。

 

 

「ゴハッ!?」

 

 

まるで鈍器な様な物で殴られたかのような錯覚を連想させるほどの蹴りを喰らい息が詰まらせそうになりながら吹き飛ぶが、何とか態勢を整える。

 

「(コレが100人斬りのブラートの剛力……中々エグいな。生身で受けていたら…意識が飛ぶ程の一撃)……この剛力………やはり噂通り将軍クラスの実力か」

「そう言うお前も中々熱い気持ちが入ったハンサムな蹴りだったぜ?」

 

「戦いは常にクールで行かなければならないが、熱い感情は攻撃に乗せることも時としては良いからな」

「ハーハッハハハ‼︎ イイな!イイな! お前にもシドーのヤツとは違うが、熱い魂が伝わってくるぜぇ!!」

 

 

吹き飛ばされる形でジャコーダーを手放してしまい、武器はない。対するブラートも蹴り飛ばされたノインテータはハドーの方に近いため迂闊に武器を回収できない。お互いに武器を回収できないからと言って勝負を放棄するという思考は二人にはない。

 

 

 

よって二人が取った次の一手は、

 

 

 

「互いに武器が回収出来ない以上は……」

 

 

「拳と拳をぶつけて生身にダメージを与えるのがベストだよなっ‼︎」

 

 

漢と漢による拳のガチンコバトル。

いくらダークキバの鎧によって魔皇力で強化された身体でも、ブラートの動きに何とか付いて行き、インクルシオの鎧に何度も強烈な拳と蹴りによる攻撃の雨を降り注ぐが、ブラートもまるでダメージを感じていないかの様に動きに一切の遅れを見せず、ハドーに攻撃の雨を降り注げる。

そして、殴り合いを続けながら、ブラートの一つ一つの攻撃に吹き飛ばされそうになるが、ハドーは何とか踏ん張り、ブラートと同時のタイミングで拳を突き出した。

しかし、筋力の差によって突き出された拳は根気負けし、ハドーは又もや後方へと下がってしまう。

追撃として、駆け出したブラートは蹴り飛ばされた槍を拾い、勝負をつけようとします。

 

 

 

 

「行くぞキバット!!」

 

 

『wake up (two)

 

 

下がったハドーは、先ほどの拳の突き合いに負けることを予期していたため、下がる瞬間にバックステップで衝撃を逃し、自身の切り札とも取れる技を放つ準備をしていたのです。

ブラートも手応えに違和感を感じていたため、ノインテータを拾い上げたことは正解であったと確信し、ハドーを迎え撃つ態勢を整える。

 

 

「……キングスバーストエンド 」

 

 

魔皇力を全て両足に集中し、強力な両足蹴りをブラートへ向けて放った。

 

 

「ウオオオォォォォォォォォ!!!」

 

 

ブラートによる大砲並みの威力を誇る槍

 

ハドーたちによる魔皇の力を付加された蹴り

 

お互いに一撃は数秒もの間拮抗し合うが、二人の力に耐えきれなくなったのは、ブラートの足場……………つまりは地面の方だった。

しかし、ブラートは自分を中心にクレーターを作りながらでも陥没していくが、それでもブラートはハドーに押し負けはしなかった。

凄まじい力の拮抗によって発生した衝撃波は、やがて周りの木々を薙ぎ倒し、土煙りを撒き散らし、二人の姿を隠した。

これにより勝負の勝者を確認することを静観していたアカメたちは出来なくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、凄まじい衝撃波だ」

 

「あのブラートとこれほどまでに闘えるのなら即戦力だな、ボス」

 

 

土煙りが立ち込めるが、アカメとナジェンダはブラートとハドーがもうお互いに鎧をしまっていることを気配で察知しており、本格的にハドーをスカウトする形で話を進めていた。

そして、しばらくすると土煙りは無くなり、二人の姿が確認できた。

ハドーは片膝をつきながら、ゼェハァと肩で息をしており、明らかに疲労困憊だった。対するブラートも片膝をつき、イカすリーゼンは崩れてはいたがハドーほど疲労してはいなかった。

 

 

「お前、名前は?」

「オレの名はハドー。ジャコーダーは兄の形見だから、オレが受け取った」

 

 

「……そうか。よし! ハドー、俺たちナイトレイドに入れよ?」

「そんな勝手に決めていいのか?」

 

 

「良いだろうボス?」

 

と、髪をもう一度リーゼンヘアーに戻しながらナジェンダに確認を取る。ナジェンダもハドーをスカウトする気でおり、亡き友であるシドーの弟とともなれば、拒む理由はないとして肯定の意味を持つように首を縦に降る。

 

 

「話はアジトで他のメンバーも交えて話させて貰うが構わないか?」

「こちらとしては願ったりかなったりだ」

 

 

戦闘を終えたハドーはもう隠す必要はないとして、フードとスカーフを取り、素顔をアカメたちに晒した。暗夜の中でも月の光を反射するのようなキレイな金髪と宝石の様な碧眼を持つクールな美青年であるハドーに、今は亡き友であるシドーの面影を連想させられた。

そんなブラートの心情を把握出来ていないハドーとアカメは首を横に傾けてはいたが、勘ぐろうとは思わなかった。そして、ナジェンダは近くで待機している仲間のラバックとレオーネに合図を送り、ハドーを連れてアジトへ帰還することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦♫♦・*:..。♦♫♦・*:..。♦♫♦♦

 

 

 

 

 

 

アカメたちナイトレイドの隠れアジトへ案内され、アカメたち以外のメンバーであるラバック、レオーネの紹介を終えたハドーは、改めて自己紹介を行なう。

 

「改めて自己紹介をさせていただく、オレの名はハドー。ブドー将軍の実子であり、帝具—————魔皇一身 ダークキバの資格者だ。そして、オレの頭に乗っているのが……」

『誇り高きキバット族の生き残り。キバットバットⅡ世だ』

 

 

キバットと共に自己紹介を行なったが、ナジェンダたちはキバットの存在と物言いに驚いていた。そして、ラバックは額に手を置きながら、ハドーへ質問を投げる。

 

「あー、ブドー将軍の実子ってだけでもかなりヤバいのに、何だよ魔族って? 色々情報がありすぎて、ちょっと追いつけないんだけど」

『こんな事も判らんとは、その頭は飾りか?』

 

「んだとッ!!」

 

 

キバットの不遜な物言いに食ってかかろうとするが、ナジェンダの話しか進まんだろという義手による制裁で撃沈したラバックを置いて、レオーネは興味深そうにキバットを見ながら、キバットに質問する。

 

「さっきキバットはさ、自分のことを魔族って言ったけど生物型の帝具じゃないってことだよな?」

『その通りだ。俺の役目は並の人間では扱い切れない魔皇石に秘められた魔皇力を操作し、契約者の血を対価として、肉体に可能な限り適合させ、帝具である闇のキバを纏わせることだ』

「なるほど、つまりはキバットの役目は帝具を制御係を務めているという事で間違いないな。それにしても始皇帝の時代から生きているのなら魔族は長命ということになるのか」

 

 

ナジェンダの推察通り、魔族は人間と比べて長命かつ頑丈でもある。

 

『正確に言えば俺は700年前から数年前まで眠っていたのだがな。その話は今は置いておこう』

「俺たちを信用してナイトレイドへ入れてくれたことには本当に感謝している。だが、入る上で1つ条件をつけさせて貰えないだろうか?」

 

「内容によるが配慮しよう」

 

 

明らかに真剣な表情を見せながら僅かながら殺気を出すハドーにナジェンダは、怪訝な表情を取りながらハドーの提示する条件に耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……では………ブドー大将軍のことに関して可能な限りオレのわがままを通させて貰えないだろうか?」

 

 

そして、ハドーが提示してきたその内容にナイトレイドのメンバー全員が息を呑んだ。

 

コレはつまり………自らの手で実の父を殺す邪魔をするな。

 

そう言っている様にこの場にいる誰もが思ってしまった。

 

 

「本当にいいのか? あの人はお前の父親だろ」

 

先ほど拳をぶつけ合ったブラートは、最も疑問を投げかけるが、

 

「例え父であろうと………俺はブドーを…殺す」

 

瞳に黒い焔を燃やすハドーには迷いを存在せず、家族への情を捨て去る覚悟を決めた暗殺者の眼となっていた。

 

「わかった。こちらで出来る限り手を打とう」

「ちょっ!? ナジェンダさん!? いいんですか!?」

 

「構わん。責任は私が取る……(アカメのこともあるが、コイツの眼には復讐以外も見える……本人がその感情(・・・・)とどう向き合うかでコレからの戦いに関係するからな)……しかし、ある程度チームとしての方針には従って貰うぞ」

「承知した。オレの目的はあくまでも民のための革命だ。ソレを履き違えるつもりは毛頭ない」

 

 

「そうか……では改めてハドー、そしてキバット。ようこそナイトレイドへ私たちはお前達を歓迎するぞ」

 

こうしてハドーは、革命軍所属の殺し屋となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




余談ですが、ハドーの容姿はキグナス氷河をイメージしてください。性格は少々違うので、容姿が同じの別人という認識でお願いします。
そして、cvは宮野真守さんをイメージしてください。
では次回も楽しみにしてください!!


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第3話 禿鷲と蝙蝠 前編

アンケートにご協力いただきありがとうございました。
アンケートの結果によりハドーにはアカメの他にもヒロインを増やすことに決定しました。しかし、あくまでもメインアカメですので。

それでは第3話もお楽しみに下さい!!


ハドーがナイトレイドへ入って二週間の月日が流れた。

暗殺の仕事を他のメンバーたちと共に完遂し、オフの日はより交流を深めていった。ラバックはスケベな性格しており、暗殺のための訓練と偽って女性陣の風呂の覗きの共犯者にされ、アカメたちにボコられたが、歳も近いため悪友となれた。ブラートととは同じ鎧使いでもあり、兄の友人なこともあって誰よりも早くに打ち解けた。訓練の相手もアカメより請け負って貰っているが、何故だろう時より命とは別のもの(・・・・)が狙われているような………悪寒を覚える。レオーネはレオーネでよく絡まれる。避けられるよりはマシだが、酔いながら絡むのはやめてほしいとは密かに思っているが、悪いヤツではないためお釈迦などをしている。ボスであるナジェンダさんとは宮廷の情報またはダークキバの魔皇力を使った戦法の詳細を提示したり、自分が知る帝国の帝具使いがどれ程なのかなどの情報を提供する際にチェスなどをした。後、タバコを勧められたため試しに吸ってみると…………おもいっきり噎せた。その場にいたラバックには爆笑されたため毒草を混ぜた茶を出して、一日中下痢地獄をみせた………ザマァ。後、ボスとキバットが以外に仲が良いことに驚いた。ラバックは血の涙を流す勢いで嫉妬していた

……何故だ?

そして、最初にアカメのことは無口な仕事人と思っていたが、意外と感情が豊かであった。主に肉に関して。そして、ナイトレイドでのオレの役目は戦医と炊事担当となった。そのため同じく炊事担当のアカメと共に料理を作ったり、獲物となる危険種を狩っている。軍人時代に仲間に料理を振る舞ったりもしていたためナイトレイドのみんなには絶賛してもらえた。訓練の際にアカメと共に帝具を使えない状況を考えて、素手喧嘩(ステゴロ)の訓練を中心に行なっている。加えて、お互いにブラートの様な豪剣タイプではなく、スピードを活かした剣術でもあるのでお互いの欠点を言い合ったりしている。訓練を抜いた日々の生活ではアカメと一緒にいることが多いためレオーネにはからかわれたりする。ラバックに騙されたとは言え、覗いてしまったためアカメに対しては申し訳ないと言いようがない。アカメが気にしていないと言ってくれているが、やはり申し訳ない。

 

そして、本日は革命軍から暗殺の依頼が来た。

内容は世間では良識派で通っている政務官ラシュエルの暗殺。この政務官は実はオネストの部下であり、民の眼が届かない所で、地方出身者または身寄りのないスラムの美麗な女性ばかりを人身売買で買い取り、薬漬けにして自分または特定の主人を奉仕させるための性奴隷として仕立て上げるという悪行をしていた。そして、心身ともに壊れた女性を事故に見せかけて殺し、その事件の被害者を良心的に弔うという自作自演をしている。加えて、この自作自演はおこぼれを貰っている部下の他に賄賂を送っている警備隊が揉み消しているため民はこの事を知らない。さらに、富裕層や権力層の貴族にも攫らい、奴隷に仕立て上げた女性を仲介人を通して商品として売り捌いているという内容だった。

この内容を聴いたラバックは、

 

「ふざけんなよぉ!! 毎晩毎晩可愛い女の子を取っ替え引っ換えに加えて、それを自分好みにするとか何だよ!! アピールか?アピールなのかぁぁ? 」

「オレにメンチを切るな。スケベが」

「……おいラバ、お前の怒りの方向性が違わないか?」

 

何故かラバックはオレにメンチを切りながらキレた。

そして、ボスはラバックの訳の分からない怒りに対して若干引いているが、改めて新たに判明したラシュエルの片腕について説明してきた。

 

「……話を戻すが、革命軍からの新しい情報が入った。どうやらラシュエルは、専属の帝具使いの殺し屋を雇っているそうだ。今までラシュエルの周りを調べようとした密偵が何人も行方不明となっているのは、この帝具使いの仕業であることが先日漸く分かった。知らせてくれた密偵は致命傷を負っていて、報告後に死亡した」

「………なら、オレ達がやる仕事は……」

 

「ああ、今回の標的は政務官ラシュエル、賄賂を貰っている警備隊副隊長トルグ、ラシュエルのおこぼれを貰っている部下、帝具使いの殺し屋とする」

 

 

帝具使い同士が本気で殺して合えば…………………

……どちらかは必ず死ぬ。

ブラート、アカメ、ラバック、レオーネ、ハドーはそれぞれ帝具使いであるため自分たちが遭遇する未知の帝具使いへの警戒を強める。

 

「ボス、相手の帝具の詳細はわからないのか?」

「聴いた話によれば……風を使うと聴いている。だが、実際にどんな能力なのかはわからない。みんな、心しておくように」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

標的の決定を受けてたハドー達は事前の準備を進めていく。アカメは帝具 村雨の手入れ、ブラートは精神統一、ラバックは帝具 クローステールの最終調整、レオーネは自身の身体を念入りにほぐし、ハドーは自室で、真っ赤な薬品の様なモノを飲んでいた。

 

『随分と馴染んで来ている(・・・・・・・・・)ようだな(・・・・)

「ああ、今のところはコレでまだ抑えられる」

 

『だが、魔皇力を使いこなせばこなすほど、

その衝動(・・・・)は強くなっていく。かつての資格者も、その衝動に負け、人の心を失った。 仲間達にまだ話さないのか?』

「……………………」

 

『まぁーいい。俺はお前の意見を優先する』

「すまないキバット。いつかは皆んなに話す」

 

『気にするな、俺とお前との仲だ』

 

 

ジャコーダーの手入れを終え、皆んなと共に標的へ向かうため、ハドーたち————ナイトレイドは妖しい月が照らす夜の闇へ消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

♦♦♫♦・*:..。♦♫♦・*:..。♦♫♦♦

 

 

 

 

レオーネとブラートは、仲介人とトルグが落ち合う繁華街へ向かい、アカメとラバックとハドーは、ラシュエルの屋敷へ夜襲をかけている。警備の者もラシュエルのおこぼれを貰い、真実を黙っているため同罪。

 

「……ガァ…や、やめェ…⁉︎」

「絶命しろ」

 

ゴキッという首の骨が折れる音と共に1つの命が静かに屋敷の中庭で消えていく。警備をしていた男は音も無いまま、いつのまにか首に紅い鞭の様なモノで首を締め上げられながら、宙吊りにされ、命乞いをする暇も無く、首をへし折られた。男を絶命させた張本人は、暗夜の中に紛れる静かに獲物を狩る蝙蝠を連想させる鎧を纏いし者—————魔皇一身 ダークキバを纏ったハドーであった。

屋敷へ潜入したラバック、アカメ、ハドーの三人はそれぞれ別々に別れ、屋敷の標的を屠ることにした。そのため今のハドーはキバットと二人となっており、中庭にいた警備を全て絶滅させた。最後の警備をジャコーダーの鞭形態であるジャコーダービュートで絞め殺した後、もう一度周囲の気配を探りながら屋敷へ侵入し、ラバックたちと合流へ向かう。

 

 

 

屋敷の中に残っているラシュエルの護衛をジャコーダーロッドへと形態を切り替え、次々と斬り殺していく。そして、ラシュエルがいると思われる部屋のドアを開けると、

 

 

「…アァ……ギィ…た、たすけ……」

「散々女の子を弄ぶだけ弄んだり、殺したりしてる癖にソレはないだろ?」

 

 

ゴキッ‼︎という鈍い音を鳴らし、善人の面を被った醜悪の俗物ラシュエルはラバックによって呆気なく絶命させられた。

 

「終わった様だな、ラバ?」

「ああ、護衛の帝具使いとはお前と俺が遭遇していないとなると、多分アカメちゃんの方にいる可能性が高いな」

 

鎧を纏っているハドーから疲労の気配が見えないことを確認したラバックはまだ合流できていないアカメへの元へ急ぐため糸の帝具であるクローステールの糸を回収し終えると、ハドーに抱えられる様に移動した。ラバックの走力に合わせるよりも、鎧を纏ったハドーが抱えて走る方が早いため、キバットを含めた三人はアカメがいると思われる部屋へと急ぐ。

 

 

「何で護衛なのにラシュエルの所へいなかったと思う?」

「俺が思うに、屋敷にいる女の子と遊んでいる可能性が大だ!!」

 

「お前と同じようにそう思っているオレが残念だよ」

『気にしたら負けという言葉があるぞ?』

「よく言うぜ、アカメちゃんの裸を見た癖によぉ〜?」

 

「…………ラバック…帰ったら覚えておけよ」

「あ、あのぅ〜ハドーさん? 冗談なのでございますよぉ〜(⌒-⌒; )」

 

『「…………………」』

 

「頼むから返事してくれよ!! ガチで今のお前達、コエーから!!」

「キバット、村雨の気配はどっちだ?」

『奥の部屋を入れ』

 

 

「無視!? まさかの無視!?」

 

 

吠えるラバックを下ろし、奥の部屋を開けると、その部屋は食堂であった。しかし、部屋の惨状は中々酷いモノであった。

まるでナニカで斬りつけたかの様な切り傷が壁のあちこちについているが、今の2人の目の前にはそんな切り傷よりも眼を見開くほど驚くべき光景があった。

 

 

「へぇ〜お前ら、コイツ(・・・)の仲間だな?」

 

 

 

禿鷹を想起させる翼を広げ、意識の失ったアカメの首を絞め上げる奇妙なヘルメットをした男に、ラバックとハドーは警戒レベルを最大限まで引き上げた。

 

 

「アカメ!!」

「待て! 無闇に突っ込むな!!」

『気を落ち着けろ』

 

 

声を荒げてアカメの元へ突っ込みそうになるが、ラバックとキバットの声で冷静さを何とか取り戻した。何故、アカメほどの手練れが敵に手傷を負わせる事なく、敗北したカラクリが解らない今、無闇に突っ込むのは愚策としか言えない。

自分でも驚くほど激昂していた事に少々驚いていたが、改めてラバックと共にアカメを救出するのかを模索していると、

 

 

「馬鹿みたいに突っ込んでくれれば、楽に殺せたんだが。まぁーいい、お前達を殺した後、じっくりこの女で愉しむとするか?」

 

男が分かりやすい挑発をしてくる。ハドーは静かに怒りながら、ジャコーダーの切っ先を向け、ラバックはハドーより一歩後ろでクローステールの糸の結界を張る準備を行う。

 

「………ラバック、サポートを任せても構わないか?」

「いいぜ。ただし、しっかりとお姫様を助けろよ?」

 

「任せろ」

「作戦タイムは終了か?」

 

ラバックに改めて背中を預け、ジャコーダーを構えながら男の隙を見つけるとする。そして、男は翼を大きく広げ、気を失っているアカメの真上に浮き上がると、大きく両腕を広げ、無防備な状態を晒しながら、ラバックたちの攻撃を誘ってきた。

 

 

「ああ、終わりだ。お前は今夜で絶滅してもらうぞ! オッサン!!」

「オッサンじゃねぇよ。 オレはバリアズっていう名前があんだよ!小僧が!!」

 

 

仲間を救うためハドーは初となる帝具戦をラバックと共に行うこととなった。敵の未知数であり、少しでも油断・隙を見せれば狩られる状況下で2人は戦う。

 

帝具使い同士による殺し合いには必ず死者を出す鉄則下で

 

誰が死に。誰が生き残るのか。

 

そして、ハドーは自らに訪れる死の運命を断ち斬ることができるのか。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
バリアズの帝具はオリジナル帝具でありますので、能力の詳細はまだ不明です。なぜアカメがやられたのか、ぜひ、そのカラクリを予想してみてください!!
次回も楽しみにして下さい!!
感想の方もお待ちしております!!


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第4話 禿鷹と蝙蝠 後編

前回のアンケートの結果!!
チェルシーがサブヒロインに決定しましたァァァ!!
流石はチェルシーさん。同等の人気を誇る小悪魔系ヒロイン!!
そして、ネタ感覚で出したキバットバット二世を推す方々がいた事に驚きました。やったねキバットパパさんwww
『ふざけるなァァァ!!!』

それにしてもやはり戦闘描写は難しいものですね。頭の中のイメージを文にするのは骨が折れます。
それでは第4話どうぞ!!

あっ!ちなみにバリアズはス◯イダー◯ン・ホー◯◯ミングに登場したバルチャーです。分かる人には分かったかもしれませんけど。


 あえて気を失ったアカメを離し、自分の真下に放置する形で道を作り、無闇突っ込めば狩られることは眼に見えていた。だからこそ、敵————バリアズを一刻も早くアカメから離れさせ、アカメの安全を最優先とするラバックとハドー。しかし、バリアズもハドー達がアカメを最優先に救出しようとすることは分かっていたため、

 

 

「来ないなら、此方から行くぞォォ!!」

 

 

天井から一気に床スレスレまで急降下しながら、ラバックへ猛スピードで突進してくる。暗殺者としての感により何とかバリアズが自分に衝突する前に右へ転がる様に回避するが、

 

「まだなんだよなぁ? コレがぁぁ!」

 

ラバックの回避を読んでいたバリアズは自身の進行方向にある壁へ両足をつける形で急ブレーキし、バネの様に水平状態のままラバックへ又もや突進を仕掛けた。先ほど凄まじいスピードで翔んで来るラバックは反応しきることが出来ず、無防備な背中を晒してしまった。しかし、ラバックは決して慌てはしなかった。

なぜなら、

 

『wake up (one)

「ダークネス……ヘルクラッシュ!!」

 

「なにっ!?」

 

背中を預けられる仲間がいるからである。

バリアズは無防備となった格好の獲物へと変わったラバックに刃物状の両翼で首を斬り落とすため挟み込もうとした。しかし、バリアズとラバックの中間の位置に突然割って入ったハドーは、魔皇力を右腕へ集中させ、バリアズに向けてストレートパンチを放った。ハドーから繰り出される魔皇力で強化された技をバリアズは何とか翼を盾にするが、それでも衝撃を相殺しきることが出来ず、隣の壁をブチ抜きながら屋敷へ奥へと吹っ飛んでいった。勢いよく吹き飛ばしたため瓦礫から白煙が立ち込めてしまい、バリアズの姿を確認することができなくなってしまった。ダークキバによる必殺技を喰らわせた際にバリアズは翼を盾にしながら、ほんの少しだけ翼で後方へと翔んでいたことをハドーは見逃さなかったため、決定打にはなっていないと確信していた。そのため、ラバックに急いでアカメの容態を確認して貰うことにし、自分はバリアズの奇襲に備えることにした。そして、ラバックはアカメが無傷のまま気を失った原因を探ろうとするが、

 

「やってくれたなぁぁ‼︎ クソガキどもがァ‼︎」

 

 予想通り復活したバリアズはラバックの近くの壁を斬り裂き、もう一度ラバックへ狙いを定め、刃物状の右翼で斬り裂こうと迫って来た。

 

「ラバ! アカメを離すな!」

「えっ!?」

 

 バリアズが別方向から現れる数瞬前に殺気を感知していたハドーはジャコーダーをジャコーダービュートで形状変化させておいた。そして、アカメを抱えたラバックをジャコーダービュートで自身の真横に引き寄せた。突然、身体をあらぬ方向へ引っ張られたことで胃が捻れる様な痛みを与えながらの救出に物申そうとしたが、そんな事を言える状況ではないので断念した。

 

「先ほどから随分と俺の相方を狙っているな? なんだ、惚れたのか?」

「「気色の悪い事を口走るなぁ!!」」

 

 ジャコーダーを細剣ジャコーダーロッドに戻し、本気なのか冗談なのか、わからない問いを投げかけるが、思いのほかラバックとバリアズは息がバッチリなツッコミでキレてきた。

 

「……ったく、弱そうな奴から潰すのは常識だろうが?」

『全くもってその通りだ』

「おいっ!!」

 

 そして、ラバックを狙う要因はシンプルであった。クローステールの糸で身体に巻いているとは言え生身のラバックでは、バリアズの攻撃一つ一つが致命傷となる。対して、ダークキバの鎧はインクルシオの鎧より硬く、魔皇力をチャージした必殺技は強力なためバリアズからすれば厄介極まりない相手であるため、必然的にラバックへ狙いを定め、カバーに入ろうとするハドーをネチネチ倒すスタンスであることを今の言葉だけで把握したラバックとハドー。

そして、ラバックはアカメをそっと寝かせ、頭をボリボリと掻きながら、ハドーの横に並ぶ。

 

「一箇所に集まるなんざぁーいい的なんだよ! クソガキども!!」

 

 アカメを庇う様に陣取るラバックとハドー目掛けて、バリアズは帝具の翼に内蔵している回転輪を高速回転させ、周囲の風を吸収し、先ほどと比べられない程のスピードで向かってきた。先ほどよりも比べられないスピードを出して来たバリアズの突進をギリギリ反応することができたためアカメとラバックの盾となる事が出来た。そして、ハドーが盾になった事でクローステールによる糸の防壁を完成させるが、部屋中を縦横無尽に飛び回るバリアズの帝具である刃物状の翼で糸は斬り裂かれてしまった。これにより生半可な糸では防御もままらないことを突きつけられてしまった。アカメとラバックの盾となりながら、ハドーは飛び回るバリアズの動きを観察し続けていると、突然バリアズが自分を狙って、鋭い蹴りを放った。

 そして、ハドーはラバックとアカメの盾となり度重なる攻撃一つ一つをその身一つで受け続けたため、動きに遅れが生じてしまった。この生まれた隙をバリアズは見逃す程バカではなかった。そのため、ばあから放たれた蹴りを防御の体制を整える間も無く、ハドーはモロに喰らってしまった。

 しかし、蹴りを喰らいながらハドーはジャコーダーを投げ捨て、空いた両腕を使い、バリアズの蹴りを掴んでみせた。このためバリアズの動きを止まらせることに成功したため、反撃を加えてようとした所で、ラバックとハドーは突然膝をつき首を抑え、息をする事すら苦しそうにもがき始める。

 

「ッ‼︎……コ、コレは……⁉︎」

「///‼︎! …………ま、まさか……‼︎」

「かかったな、クソガキども」

 

 苦しみ出すハドー達を見下ろしながらバリアズは仮面で隠れていて、確認は出来ないが卑しい笑みを浮かべる。そして、バリアズは周囲の糸の結界を刃物状の翼で吹き飛ばし、ハドーの首を斬り落とそうとすると、

 

「2人とも‼︎ 早くソイツから離れろ‼︎」

 

 2人の後方で横になっていた筈のアカメが帝具 村雨をバリアズに目掛けて投げつけ来ていた。

 

「チッ! もう復活したか」

 

 もう意識を取り戻したアカメの攻撃に苛立ちながらもバリアズは、大きく翼を広げ、凄まじい突風を巻き起こし、村雨を跳ね返した。先程の蹴りが思っていたよりも効いていたためハドーは、突風に対して、踏ん張る事が出来ず吹き飛ばされてしまい、アカメは近くに落ちていたジャコーダーを床に突き立て、吹き飛ばされるのを阻止し、跳ね返された村雨を空いた手で回収し、ラバックは、糸を巧みに操り、踏ん張る——————が、前方から吹き飛ばされたハドーに巻き込まれる形で、壁まで吹き飛ばされてしまった。

 

「ゴヘェッ!!」

「あっ、ゴメン」

 

「…………殺すーミ゚皿゚;彡ー」

 

 鎧の塊が前方から吹き飛ばされ、それに巻き込まれながら壁に激突したためラバックは息が詰まらせる。そして、明らかに謝意がこもっていないため

キレかける。

 

「ようやく貴様の帝具の仕組みが理解できたぞ」

「クククッ、一度喰らって仕組みを理解しても、俺様の帝具——————烈空天翔 エグゾバルチャーの奥の手——無空結界は破れはしねぇ」

 

「あ〜クソ、たださえ翼の帝具の所為で突風は飛ばすは、奥の手で周囲を無空状態にして窒息死とか、接近戦のアカメちゃんと相性悪すぎだろ」

「すまない2人とも。奴の奥の手で…………」

「構わないさ。仲間だから助け合うのは当たり前だ」

 

 バリアズの帝具の能力に対する自分たちの相性の悪さに悪態をつきながら、クローステールの糸の中で強度、鋭さ共に通常の糸を遥かに上回るとっておきの一本である『界断糸』の使い時を考えながら、自分の身体に巻き付けてある糸を密かに結び直す。そして、ハドーはアカメが持っていたジャコーダーを返してもらい、自分たちに申し訳なさそうにするアカメを撫でながら、策を閃かせる。

 

「///……ん……」

 

「アカメ、すまないが少しの間だけ奴の注意を晒してくれないか?」

「おいおい、アカメちゃんと相性最悪なのにか⁉︎」

「何か秘策があるのか?」

 

「ある。 だが、それには俺とラバックの帝具を合わせる必要がある」

「わかった。だが長くは持たんぞ」

「ちょッ⁉︎ アカメちゃん⁉︎」

 

と、返事を待たずにアカメは持ち前のスピードを生かしてバリアズに斬りかかり続けるが、強靭な翼と、翼から放つ突風により全て捌き切られてしまう。そして、残ったラバックはアカメが攻撃を仕掛けている間にハドーから作戦内容を聴き、その作業に入る。部屋中の壁を踏み台にしながら攻撃を仕掛け続けるアカメのフォローへ回るハドー。

 少しでも擦れば即死の刀であるアカメの村雨に注意を集中していたが、先程のダークキバの必殺技によるダメージ深さは中々であったためハドーへの注意も必要となってしまった。

 そして、縦横無尽に部屋中を飛び回りながら、村雨の即死刀、ジャコーダーによる鞭と刺突の雨により2人への注意が強まっため自分への警戒が緩んだ瞬間を狙い定め、ラバックは界断糸で編んだ糸の槍を形成すると、

 

「喰らいやがれェェェェ!!!!!」

 

投げつけた。

さらにハドーも追撃として、空中にいるバリアズの心臓目掛けてジャコーダーによる刺突を放つ。

 しかし、バリアズもそれなりの場数を踏んで来ているためなのか、冷静に対処する。対抗として帝具による最大限の突風を巻き起こし、ハドーをもう一度吹き飛ばし、遅れて飛んで来る糸の槍を翼で叩き落とそうとする——————が、背後から鋭い殺気を感じ取った。

 

「葬るッ!!!!」

「クッ!!」

 

バリアズがハドーへ攻撃を放つ瞬間に空中にいるバリアズよりも部屋の家具を使い高高度へ飛び上がり、大上段の構えから村雨をそのまま縦一文字に斬りつける。しかし、そのアカメの殺気をギリギリ感じ取ったバリアズは翼を折りたたみ、村雨の斬撃から翼を盾にする形で防いだ。空中で斬撃を一時的に止めらてしまったためアカメはバリアズからの回し蹴りを腹に喰らう形で叩き落とされてしまう。

ハドーに放った突風により照準がズレた糸の槍を視認し、バリアズは勝利を確信する—————だが、それはバリアズの勝利ではない。

 

snake(スネーク) bite(バイト)

 

 自身を吹き飛ばした事で警戒が緩んだ隙を突き、ハドーはジャコーダーをキバットに噛ませ、そのまま魔皇力を注入し、ジャコーダーを用いて放つ事が出来る必殺技の準備を整えた。

 

「堕ちろ禿鷲」

 

 そして、クローステールで造られた槍の後方後方——石付きの部位に魔皇力で強化されたジャコーダービュートの切っ先を突き立てた。強化されたジャコーダービュートは通常の倍以上にその刀身を伸ばし、そのままクローステールの糸の槍を押しながら、軌道を修正し、バリアズの回避をさせる余裕を与える間も無く心臓へ槍を到達させた。

 

「じゃあな、オッサン」

 

 心臓へと到達したクローステールの糸の槍をラバックは操作をし、そのままバリアズの胎内の心臓を糸を用いて斬りきざんだ。

 

「ゴハッ‼︎…………こ、この……おぉレが、こごん゛な゛ガギにィィ……⁉︎」

「生憎、ナイトレイドは仲間の動き一つ一つを無駄にしねぇーんだよバーカwww」

 

 仮面の中を己の血で溢れさせながら、バリアズは己の敗北を認めぬままラバックたちナイトレイドによって絶命させられた。

バリアズという1人の帝具使いの始末を終えたラバック達は全員の状態を確認し合う。

 

「アカメちゃんは大丈夫か? 腹に一発デケェーの貰ってたけど」

「問題ない。衝撃は出来るだけ流しておいた。 毒を用いた攻撃もなかったから軽傷だ」

「すまないアカメ。 囮役を押し付けてしまって」

 

「気にするな。 2人には危ない所を助けて貰ったからな」

「いや〜それほどでもあるかなぁ〜あっ!お礼は、アカメちゃんのオッPアダッ‼︎」

「こんな時に何を言っているんだお前は。さっさとコイツの帝具を持って帰還するぞ」

 

 ラバックのゲスな見返りを途中で拳骨で遮りながら、バリアズの亡骸から帝具 エグゾバルチャーを担ぎ、帰還する事を2人に促す。アカメは静かに頷き、頭にタンコブを付けられたラバックはへいへいと適当に返事をし、クローステールの糸を全て回収し、屋敷を出て行く。誰にも見られることなく、3人は妖しい月が輝く夜の闇へと消えてゆく。そして、次の日の朝にはラシュエル暗殺の記事が書かれた新聞が帝都を騒がせることとなる。

 

 

 

 




《帝具説明》
烈空天翔 エグゾバルチャー
翼型の帝具であり、マスティマのプロトタイプ。
マスティマの様に円盤状にする事は不可能であり、折りたたんでいるため待機状態では大剣の様になっているため持ち運びが少々難。
しかし、適合すれば風を操ることが帝具使いになれる。
《奥の手》
無空結界
翼にあるプロペラを使い、周囲の空気つまりは風を吸収し、一定の範囲を無空状態にし、相手を酸欠にし、窒息死させる。

風を用いた中距離攻撃、近接戦では奥の手を用いて近づいて来た相手を酸欠にし無力化するためオールレンジに優れた帝具でもある。
そのためパンプキンの様な大火力での砲撃または、ラバックとハドーのコンビネーションの様に突風を諸共しない攻撃でなければ致命傷を与える事は出来ない。このためアカメの帝具とは相性は最悪なのである。


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第5話 チカラの代償

 帝都警備隊副隊長トルグの暗殺をさせたレオーネ、ブラートと合流したハドーたちはアジトへ帰還し、ナジェンダに報告を行う。

 

「そうか、オールレンジに優れた翼の帝具か。 それならば密偵が風と言っていた事も合点がいくな」

「ありゃー大分室内での戦闘に慣れている動きでしたから、かなりの年数であのレベルまで使いこなしていましたよ」

「ふむふむ大丈夫かアカメ? 手酷くヤラれたみたいだけど」

「問題ないぞレオーネ。ハドーとラバックのお陰で私は軽傷だ」

「しっかし、奥の手で相手を窒息死か。俺とレオーネの所に居なくてよかった言えばよかったが、ラバックとハドーの合わせ技じゃないと勝てないってかなりヤバいな」

 

「だが、全員無事に帰還し任務をやり遂げてくれたことに感謝する」

 

 

 

ナジェンダの労いの言葉を貰い全員で夜食を取ろうとするが、

 

 

「すまない。俺は思ったより消耗しているみたいだから遠慮するよ」

 

 

 今まで最低限の報告事項しか口を開かなかったハドーが断りを入れる。ダークキバの魔皇力を使った必殺技を1日に連発して使ったため想像以上に消耗していると不審がるアカメたちに説明を行い、部屋を退室する。そして、残ったアカメたちは夜食を食べながら、ハドーの容態が安定してない原因は明らかに魔皇力以外にあるのではと仮説を立てていると、ハドーと共に部屋を出ていった筈のキバットバット2世が会話に入る。

 

『お前達の推察通りハドーの容態の変化は魔皇力による疲労ではない』

「……やはりか、では何が原因なのだ。教えてくれキバット」

 

 棚どころから器用にワインを取り出しラッパ飲みをしながらナジェンダの問いにキバットは答えた。

 

『時期を見てアイツの口から話す予定ではいたが致したかない。要約するならば今、アイツの身体を蝕んでいる症状は吸血衝動だ』

「「「「「吸血衝動!?」」」」」

 

『その通りだ。我が帝具である闇のキバは本来なら人間にとって有害とされるオレ達魔族の魔皇力を宿す特殊な鉱石である魔皇石を用いて造られた。そして、以前にも話したがオレの役目は資格者の血を対価に強大な鎧の魔皇力を制御し、オレを通して鎧の魔皇力を資格者の身体に流し込み適応させ、資格者の肉体を強化し、魔皇石で造られた鎧の力を最大限に引き出すことだ。コレによりダークキバとなった資格者は帝具の中でも至高の帝具(・・・・・)をも超えるほどの力を引き出せる。だが、この魔皇力には大きなリスクも存在する』

「それが吸血衝動ってわけか、でも何でそんな衝動が突然現れたんだ蝙蝠擬き?」

 

『今から説明してやるから少し待っていろ! ミドリ小僧』

「っんだと!! コラァァ!!」

 

話しながらワインを定期的に飲むキバットに食ってかかろうとするが、ナジェンダからうるさい!という義手による制裁で撃沈するラバック。しかし、その顔には幸せそうであった。

 キバットの説明を聴き、仲間がそんな爆弾を抱えていたことを気付いてやれなかったことを悔しがるブラートとレオーネ。そして、ハドーを見送ってからずっと不安そうにしているアカメはキバットの話を聴きながらハドーの日常状態を思い出していく。

 

『話を戻すが、ハドーの体内に流れる魔皇力を制御するためにも俺はハドーから血を吸っていた。そのためオレを通して流れる魔皇力がオレのキバット族としての魔族の細胞とともに少しずつハドーを侵食し、吸血衝動という形でその身体を蝕んだ』

「治す方法はない…………のか?」

 

藁にもすがる思いでアカメは問いかける。

しかし、キバットの答えはアカメが期待に応えるものではなかった。

 

『そんな物は存在しない。こうなることはハドー自身も承知の上だ。それに歴代の資格者達は全員吸血衝動を発症している。コレは避けられない運命だ』

「……くッ‼︎」

「…………アカメ……」

 

『歴代の資格者達は闇のキバの力を引き出せば引き出すほど魔皇力による侵食を許した。そして本能のままに力と血を求め続け、その果てに人のココロを失い、血を求めるだけの怪物と成り果て死んだ資格者は殆どだ。今のハドーはその吸血衝動を自らの血と危険種の血をそれぞれ混ぜ合わせた血を飲み、その症状を緩和している。だが、それも完全な解決にはならない』

「どうにか出来ないのか、このまま俺たちは指を咥えていることしか出来ないのか……ッ!」

 

『残念ながら今のお前達(・・・・・)ではどうすることもできん。さっきも言ったが、こうなることはハドー自身もわかっていた。分かった上でアイツは俺の力を求めた。全ては亡き兄が果たせなかった誰もが笑い合える国を創り上げるために…………な』

「「「「「……………………」」」」」

 

『詳しいことは明日ハドーと直接話せ。それまで人を捨てつつあるアイツとどう向き合うかのか話し合っておけ』

 

ではなと言い部屋を退室するキバット。

 

残されたアカメ達はハドーの身体に起こっている症状に対して何も出来ない無力感を感じざるおえなかった。

 

 

 

 

 

 

♦♦♫♦・*:.。♦♫♦・*:.。♦♫♦♦

 

 

 

 

「ぐゔぁぁあ″あ″…………ぁあッ‼︎」

 

 危険種と自分の血を混ぜ合わせた血を全て飲み尽くしても収まらない底知れない飢餓感と血を求める本能。

あのままナイトレイドのみんなと一緒に居れば血を求める本能に負け襲いかかっていたかもしれなかった。それほどなまでに強い衝動……自身が想像している以上に強い血への欲求。今まで魔皇力を使った必殺技は1日に1度に定めていたが、今晩は臣具を通してとは言え2回目も使用したためいつもとは比べられないほどに身体が血を求めている。いつのまにかキバットはいなくなっていたが、今のハドーにはそれを気にする程の余裕はなかった。

 

「ク……ソ…………ッ‼︎は、ハヤク……チを…………血を……ッ‼︎」

 

 収まりきらない血への渇望を止めるためにハドーはアジトの近くに生息する危険種達の血を求め、部屋を後にする。

 

アジトから出て行く際にある人物に見られていることも知らずにハドーは内側から溢れる本能を抑えるために獣たちの血を求める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく散策するとすぐに夜行性の危険種 ブランズフォックスを見つけたハドーは、こちらへ飛びかかってくるブランズフォックスを一瞬のうちにジャコーダービュートで絞め殺した。亡骸と化したブランズフォックスの首にいつのまにか口元に変貌していた鋭く伸びる牙を突き立て凄まじい勢いで血を啜るハドー。そして、1分と待たずに全長2メートル近くあったブランズフォックスの亡骸は体内の血を総て吸い尽くされ、ミイラへとかわった。

かなりの量の血を飲んでも身体の奥にある血への渇望は止まらない。

 

 

 

タリナイ……ゼンゼンタリナイ……コノ程度デハ…

…満タサレナイ……モット……モット血ヲ…ッ!! 

 

 

自分の知らない自分がずっと語りかけてくる。

血への欲しさでおかしくなりそうな自分を必死に抑え込もうとするが、収まる気配が無いことに悔しさの炎を募らせる。

 

 もう一度国を民が心から笑い合える国にするために人であることを捨てる覚悟を決めていたのに自分の中に暴れ続ける魔皇力を抑えることが出来ない事に怒り、悔しさのあまり下唇から血が出る程に歯をくいしばっていると、

 

 

「……!やっと……やっと見つけたぞハドー‼︎」

 

 

 いつものように凛とした彼女の声(・・・・)が背後から聴こえた。

 

 

 

 

 

 

♦♦♫♦・*:.。♦♫♦・*:.。♦♫♦♦

 

 

 

 

 自分達ではどうする事も出来ないハドーの現状をどう解決するのかについて話し合っていたが解決策が見つからず、時間が流れ続けるためナジェンダは次の日の朝にハドーも交えて話し合うこととし、一時解散することとなった。各自部屋へ戻り仕事の疲れを取ろうとした際にアカメは、ハドーがアジトから急いで出て行くハドーを見つけた。キバットの話を聞いたことで今のハドーは吸血衝動に苦しんでいることを知ったアカメは急いでハドーの後を追った。本来なら仲間であるレオーネ達に知らせるべきなのだが、この時のアカメにはハドーの後を追うことしか頭になかった。

 

時は戻り現時刻。

ハドーが危険種であるブランズフォックスの血を飲み尽くした所でアカメは漸くハドーに追いついた。そして、ハドーの顔にステンドグラスを想起させる紋様が浮かび上がっている事にアカメは驚きを隠しきれなかった。

 

「……大丈夫なのか?」

「来るな!」

 

 驚きはしたがハドー自身が未だに苦しそうな表情をしていたため容態を確認するために近づこうとするがハドーはそれを強く拒絶する。

 

「今の俺ハ……ッ!!」

「知っている。キバットからお前の容態を総て聞いた」

 

「ッ!? なら、何で来た‼︎今俺の近くにいたら危険であることぐらいわかるだろ!!」

お前に渡す物があるからだ(・・・・・・・・・・・・)

 

 

 そう言ってアカメは自分でも驚くほど素早くネクタイをほどき首にかかっていた滑らかな黒髪を退かし、その細い首を露わにした。

 

 

「ッ///!?!? ア、アカメ!?」

「私の血を吸ってくれ」

 

「ハアァァァ!?」

「私の血をお前が満足するまで飲んでくれて構わない。お前のその辛さを私にも分けてくれ」

 

「ふざけるなッ! この衝動は歴代資格者達も収まり切らない物である事もキバットから聴いている筈だ。第一お前の血をコイツみたいに吸い尽くす恐れもあるんだぞ!!」

「そうか…………出来れば穏便に血を渡したかったが仕方がない」

 

自身の中の衝動の危険性を誰よりも理解しているためアカメの血の提供を断固として拒否する。しかし、アカメもハドーが血の提供を断ることは分かっていたため強硬手段に出ることにした。

 

「無理矢理飲ませる!」

「えぇ!?」

 

驚くハドーを置き去りにアカメは凄まじい速さでハドーの懐へ入り込むと、その勢いに乗せて服の襟を掴み、思いっきり背負い投げた。

投げられたハドーは自身の身体の奥で暴れ続ける魔皇力を抑えることに精一杯であるのでアカメの強硬手段に対応することができぬまま組み伏せられてしまう。

 

「ちょッ!? ちょっと待てアカメ! 話を聞け!!」

「聞かない。今のお前は私の血を飲むことだけを考えろ」

 

 ジタバタと暴れるハドーからジャコーダーを取り上げ、ジャコーダーの刃で先ほどあらわにした首に軽く傷を入れる。ちくりと痛みが走ったのちに首から鮮血が滴る。自分の目の前に流れるアカメの血に自身の奥で暴れる衝動が激しく反応し、先ほどより強く魔皇力が暴れまわる。しかし、ハドーはギリギリ残っている理性を総動員し抑える。

 

「早く私の血を飲め」

「!……ふ、ふざ……け……るな……ッ!!」

 

 仰向けの状態で両手をアカメの両手に抑えられている上に馬乗りに乗られているためアカメを退かせることが出来ずいながら、断固として拒み続ける。そんなハドーを見かねたアカメは自身の下唇を強く噛み切り、自身の口内に血を出させると無理矢理ハドーの唇に自分の唇を押し付けた。

 

「ッ!?!?」

 

 そうアカメはハドーに口移しで血を無理矢理流し込んだ。そして、アカメの口から直接流し込まれくる血への渇望を抑え切れなくなったハドーは本能のままに送り込まれる血を飲み続ける。ハドーが自分の血を飲んでくれたことを確認できたアカメは一瞬両手の拘束が緩めてしまった。コレによりアカメの血を強く求めるハドーは拘束を振り払い、アカメを荒々しく抱き締める。驚くアカメの唇を強く重ね合わせる。アカメの口内の血を一滴残らず味わい尽くすような長い……長いキスをする。

 

「……んっ!? (な、なんだ⁉︎この感覚は⁉︎メ、メラ達のセクハラとは全く違う⁉︎……頭がフワフワして……く…………るぅ……)」

 

 帝国の暗殺者として戦っていた際にある暗殺組織の首領(女性だらけの殺し屋)に捕らえられ、事あるごとにセクハラさらまくり色んな意味でおかしくなりそうな体験をしていたアカメだが、男性相手のキスは初めてでもあるため未知の感覚により全身の力が抜けていく。

 そして、いつのまにかアカメはハドーに押し倒されているが未知の感覚の際で気づいていない。またハドーも現在理性が吹っ飛んでいるので気づいていない。ちなみにキバットバット二世は密かに傍観している。2人に気付かれずに。

 しばらくの間ハドーはアカメの口内の血を総て飲み尽くすと、アカメの匂いに誘われる様に鋭く伸びた牙を白い首筋へと牙を突き立てようとしたところでハドーは僅かな理性を取り戻すと、

 

「…………本当にいいのか?」

 

最後の確認をアカメに問いかける。

そして、押し倒されているアカメも頰を赤らめながらハドーの目をしっかりと見つめ、

 

「私の血を吸ってくれ」

 

ハドーに首筋を差し出す。

アカメが差し出してくれた首筋にハドーはその牙を突き立てる。

 

「あ……ぅ……」

 

 痛みとわずかな快楽のような込み上げ、声が僅かに震える。そして、ハドーの背中に手を回し、互いに抱き締め合いながらアカメは微笑みかける。アカメの血を大事そうに少しずつ吸いながら、自分の中で暴れ続けていた衝動が凄まじい速さで無くなっていくのを感じながら、ハドーは深く……深くアカメに感謝する。

 

 

 

 

 

 

 

『コレでお前の“血の適応者(・・・・・)”はアカメで決まったな。お前と同様に愛しい女の血で衝動が収まるとはな…………やはりお前の血(・・・・)を継いでいるだけのことはあるな………………始皇帝?』

 

 

 

 

 

 

この密かな吸血が次の日の朝に別の意味で問題となることはこの時のアカメとハドーは知るよしもなかった。

 

 




ちょっとしたお知らせとして、あのドS将軍率いるイェーガーズにオリキャラを1人、また慢心ボンボン率いるワイルドハントにもオリキャラを1人追加します。加えて、どちらも仮面ライダー型の帝具としています。どんなライダーなのかは既に決定しています。予想してみて下さい。

それでは次回も楽しみにしていて下さい!!


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第6話 殺し屋の日常

 アカメの血によって吸血衝動は収まったハドーはすぐさまアカメの止血を行い、今夜起こった事は明日の朝ナイトレイドのみんなにきちんと説明することを約束し、2人はそれぞれ部屋へ戻った。

ちなみに帰る途中で隠れていたキバットを見つけた2人は驚くほど息の合った動きで捕獲し、何処まで見ていたのかを尋問した。

 

そして、次の日の朝。

ハドーは誰よりも早くに台所で全員分の朝食の用意をしているとアカメ以外のメンバーは容態が安定しているハドーを見て驚きを露わにする。ビックリしているレオーネ達をアカメと共に落ち着かせ、吸血衝動が緩和したことを話す。しかし、今まで重大事項を黙っていたためブラートによる鉄拳、ナジェンダには義手によるリアルアイアンクロー、レオーネの逆エビ固めで危うく死にかける。

 

「で、同様やって衝動を抑えたんだ? 歴代の資格者達も全く緩和できなかったのに」

「……えーと、そ、それは……」

 

軽いチャップを浴びせたラバックはどのようにして衝動を抑えたのかをハドーに問いかけるが、ハドーは昨夜のことを思い出してしまったため言い淀んでしまい説明できずにいると、

 

「昨夜、私がハドーを押し倒し、そのまま口移しで血を飲ませた。すると、ハドー曰く暴れ回っていた魔皇力が収まったそうだ」

 

 アカメが真顔で爆弾を投下した。

 

「「「……………………」」」

「ちょっ!?ア、アカメ!?」

 

「ん? 何だ? 事実だろ?」

「いや、確かに事実だが……」

「「「ええェェェェェェ!?!?」」」

 

 ナジェンダ達が驚くのも無理はない。しかし、誰よりも冷静さを取り戻したレオーネは何処と無く悪い笑みを浮かべながらアカメに質問する。

 

「にゃるほどにゃるほど☆でさ、親友よ。口移しだけで済んだのか?」

「いや、流石に足りなかったのか。首筋の血も吸わせた」

「ほほう。ではアカメ、どんな風にハドーに血を与えたのか、もっと詳しく分かりやすく私たちに教えてくれ」

 

「構わないぞボス。これでハドーの容態が安定した理由がわかるかもしれないしな」

「そうだぞアカメ〜もっとオネェさん達に教えておくれよ〜」

 

 そして、いつのまにか復活したナジェンダも加わり暴露大会となってしまっている。本来ならハドーはすぐさま止めに入ろうとしたのだがブラートによって拘束され、止めることができずにいる。

 

「離せブラート!! これ以上昨夜のことをボスとレオーネに弄られたくない!!」

「まぁーまぁー俺たちに黙っていたんだから、愛の制裁だと思え。そう…………愛の制裁…………愛の」

 

「人を拘束しながら頰を赤らめるなァァァァァァ!!」

 

 この後数分間、氷使いのエスデス将軍と同等のドSな笑みを浮かべるレオーネとナジェンダによってハドーは弄り倒されることとなる。

 

 

 

「いや〜中々アカメも大胆だな〜オネェさんはビックリだぞ」

「いや全くだ。夜の森の中でそんな風に血を与えたとはな〜だが、これでハドーの容態も安定したとはいえ、いつまた症状が出る可能性もある。アカメはいつでもハドーに血を与えれる様にしておけ」

「わかった」

「わかったではない!!いい加減にしてくれ!これ以上この話を掘り下げないでくれ!!」

「ま、いいじゃないかコレで許してもらえるんだからな」

 

 ニヤニヤ顔のレオーネとナジェンダ、ブラートの視線を向けられながら恥ずかしそうに顔を真っ赤にするハドーに今まで黙っていたラバックが話に入る。しかし、その声音と体は震えている。ラバックの心中を察しているナジェンダはラバックの肩にポンっと手を置きラバックのある感情を爆発させる。

 

 

 

 

「本音は?」

 

「何で!ハドーはアカメちゃんとそういう展開が多いんだよ!?この前も俺に騙されたとは言え、アカメちゃんの裸を覗くわ。普段から行動するのが多いから他から見るとアベックにしか見えねぇーし!!今度はアカメちゃんから押し倒された上に口移しだけでなく、アカメちゃんの首筋の血を啜るとか何だよオマエ!?ラブコメの主人公かよ!?いくらオリ主だからって何でも有りかよ!?ふざけんなよ作者!!俺にも美味しい想いさせろよ!!タグ見てみろ!ラバック幸せにし隊ってあんだろうがぁぁ!!何で1話から最新話まで俺は痛い目ばっかあってんだよぉぉぉ!!」

 

「ツッコミが長いってラバ。嫉妬の炎燃やしすぎだろ。後、途中から何言ってるんだお前?」

 

 ナジェンダとレオーネはラバックの心の叫びにドン引きしながら、途中から訳の分からないことを口走るラバックを放置することにし、ハドーとアカメが作った朝食を食べていく。

しばらくの間、ハドーはアカメとの初めての吸血のことを弄られ続けることとなってしまった。自業自得である。

ちなみにキバットは朝は弱いためハドーの部屋に創った止まり木で爆睡している。

 

そんなこんなで腕利きの殺し屋とは思えない穏やかな日々が過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ♦♦♫♦・*:.。♦♫♦・*:.。♦♫♦♦

 

 

 

 そして月日は流れていき、アレからナイトレイドのメンバーもまた増員された。新たにメンバーに加わったのが狙撃手のマインと天然ボケの凄腕の殺し屋シェーレが加わった。そして、2人にも帝具が与えられた。マインはかつてナジェンダが将軍時代に使っていた浪漫砲台 パンプキン、シェーレは革命軍に保管されていた万物両断 エクスタスのそれぞれ使い手となった。マインの初陣の際はちょっと危険な場面はあったが、マイン自身の狙撃手としての才能はナジェンダも大小判を押すほどなまでにあった。加えてシェーレも革命軍にスカウトされる前はハドー同様に殺し屋をやっていた経験もある上に殺しになると極めて冷徹となり、プロの暗殺者となる。そんな頼りになる2人を加えたナイトレイドはより一層名前が帝都において広がるようにもなっていた。ちなみに現在の状況で顔が割れているのが、アカメ、ブラート、ボスのナジェンダ、シェーレの4人となっている。そのため帝都での情報収集はスラム育ちのレオーネ、警戒心が強いラバック、軍で死亡したことになっているハドー、マインとなっている。

 

 そんなある日、地方から出稼ぎに来た身元不明者たちを甘い言葉で騙し、己の屋敷で監禁し、趣味である拷問で死ぬまでその命を弄ぶ一家への暗殺依頼が来た。現在ボスであるナジェンダは革命軍の本部へ出かけているのでアカメがボス代行となり、アジトの会議室にて集まったナイトレイドのメンバーに任務の指示を出す。

 

「レオーネとラバックが集めて来てくれた情報によるとやはりこの一家は黒であることが判明した」

「間違いなかった。屋敷の周辺から僅かだが血の匂いやら人が腐る匂いやらがした。しかも民衆にはばれないようになってもいやがる」

「おまけに護衛たちにも賄賂を送って黙らせているから護衛達も同罪さ」

 

 集めてきた情報を提示しながら分かりやすく顔を顰めるレオーネと此方も分かりやすく肩を竦めるラバック。そんな2人の証拠を聴いたボス代行のアカメは凛とした声で決定事項を告げる。

 

「標的が黒であることがわかった以上、私たちがやる事は一つ……標的を葬るだけだ」

「だな。そんでどうする? ボスがいないから指示はお前に任せるぜ、ボス代行」

 

 ブラートが言うと、アカメは頷き皆に告げてきた。

 

「夜襲を仕掛けるのは明日にしよう。今日はレオーネとラバックが帝都まで行ってきてくれたわけだからな」

「私は別にそこまで疲れてないけどなー」

「別に大したことしたわけじゃないさ」

「ラバックはいいとして、レオーネは随分と帝都で楽しんできたみたいにも見える」

 

「ギクッ!?」

 

 レオーネたちの言葉の後に続く様に悪そうな笑みを浮かべているハドーが告げた。

 

「隠すなよレオーネ。酒の匂いが強いってことから大分飲んできたな?」

「な、なんのことやら?」

 

「おいおい。隠すなって言ってるだろ? この間、俺に金を借りに来るくらい金が無いのにアルコールの匂いが中々だから言い逃れは出来ないぞ。それにその腰の袋は何だ? 誰かからチョロマカしてきたんだろ?」

 

 輝く程の笑みを浮かべているが目が笑っていないため恐怖しか無い。そんな恐ろしい笑みを浮かべながらにじり寄ってくるハドーにレオーネは滝の様に冷や汗を流し目を逸らす。

そして、

 

「逃げるが勝ち!!」

 

脱兎の如く近場の扉へ手を伸ばすが、

 

「逃がさん!ジャコーダービュート!!」

 

鞭形態のジャコーダービュートによって捕縛された。

 

「ふぎゃっ!?」

 

魚釣りの一本釣りの様にレオーネを引き寄せ、レオーネの脳天でチョップを入れる。

 

「どうせ地方出身者からくすねたんだろ。まったく、そういうお前が標的になりかねない真似はするなって言っているだろ」

「い、いや〜コレはアレだよ!?アレ!!そう!授業料みたいなアレであの少年も帝都の厳しさが分かったかなーと思ってねぇ〜〜〜テヘェ☆」

 

「テヘェ☆ではない!! 明日の任務が終わったら返してこい!!」

「ちょ、ちょいまち! 返して来いって言ったって帝都はかなりの広さが……」

 

「ライオネルの嗅覚強化を使えば簡単なはずだろ。その袋に付いているはずの持ち主の匂いを追えば」

「私は犬か!?」

 

 ジャコーダービュートを解きながら説教を行い終えたためレオーネを離す。解放されたレオーネは頭に出来たタンコブを抑えながらあうーと落ち込みその場に仰向けに倒れこんだ。しかし、すぐさま起き上がり近くにいるアカメの近くに行くと、嘘泣きしながら彼女の胸に飛び込んだ。

 

「アカメー!ハドーが私のこといじめるぅー!」

「だめだぞハドー、レオーネをいじめては」

 

「何で俺が悪いってことになるんだ」

 

 めんどくさそうにため息をつきと、頭にキバットをずっと乗せているハドーは踵を返して会議室を出て行こうとする。

 

「あれ?ハドーは任務ないだろ?」

「夜食の下ごしらえだ。アカメ、行くぞー」

「……うん♪今晩はハドー特製のステーキ丼だからな全力で手伝うぞ♪」

『デザートはスイカを所望する』

 

 ラバックの問いに答えながらアカメを呼び、呼ばれた彼女は嬉しそうに笑みをうかべてながらハドーについていった。

 

 

 

 2人と一匹が会議室を出ていったあと、マインが呟く。

 

「それにしても、あの2人は仲良いわね。アレで付き合ってないってどういうことなの?」

「まぁ〜ハドーにとってアカメは自分の吸血衝動を止めてくれる“血の提供者”だからな〜私らの中じゃ〜アカメは特別なんだろうねぇ〜アカメもアカメでハドーの事を気に入ってもいるし、よくコンビも組むし、鍛錬も付き合ったりしてるから懐いているんだろ。あと、ハドーの料理が好きって可能性も前にはあったけど今はどうなっているんだろうな〜」

「ある意味でお似合いの2人ではあるがな」

 

「確かにね」

「クソ羨まケシカラン!!」

 

「「うるさいドヘンタイ」」

「姐さんとマインちゃん辛辣すぎッ!?」

 

 

 あいもかわらずのラバックのお笑いポジションは絶好調なためブラートたちは可笑しそうに笑い合う。

 

 

 

 

 

そして、任務決行日。

太陽が西に沈み、既に夜が世界を包んでいた。だが、天高く上がる月は不気味なほど赤く染まっている。

 

「赤い月とか珍しいな」

『オレからすれば実に気分が乗る月だ』

 

「ハハハっ、確かにお前の体色も赤だもんな」

「任務を遂行する。標的は富裕層のあの一家全員と護衛たち全て以上だ」

「了解した。行くぞキバット?」

『絶滅タイムだ!!』

 

ガブリとキバットに手を噛ませ、魔皇力を注入しベルトを出現させる。

 

「変身」

 

掛け声とともに鎧を纏わせる。

 

「では、皆準備はいいか?」

 

彼女の問いにハドーを含め全員が頷く。

それを確認したアカメは静かに頷いた後踵を返した。

 

「では行くぞ」

 

 

 

 



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第7話 新メンバー

 標的である富裕層の一家へと到着すると、シェーレは誰よりも早く屋敷へ潜入を開始する。そして、ハドー達ナイトレイド一行は屋敷の庭に生えている木々の間に、ラバックのクローステールが張り巡らされて作った足場に妖しく光る月を背にし佇む。

 

「標的を確認。葬る」

 

 屋敷からぞろぞろ出てきた護衛の警備兵達を確認したアカメはインクルシオの鎧を身に纏ったブラートとともに降り立ち、レオーネは屋敷へ潜入する。

 

「ハドーは行かなくていいのか?」

「いや、行くさ。ちょうど、あの“人が腐る匂い”を出す離れに逃げようとしている標的がいるからな」

 

「了ー解。んじゃ、そっちはよろしく〜」

「しっかりとヤンなさいよ」

「問題ない」

 

 イヤな………人が腐っていく匂いを出す離れの倉庫へ向かうためダークキバとなったハドーはクローステールの糸を器用に使い、空中を飛び回りながら地上へ降り立つ。

 

「何処へ行く気だ」

「ヒッ!?」

 

短く悲鳴をあげたのは今回の標的に含まれている一家の一人娘であるアリア。そのアリアの護衛の警備兵は恐怖に震えた瞳をしながら銃口をハドーへ向ける。

 

「く、来るなぁぁぁ!!」

 

半狂乱で銃を乱射するが、ハドーはその銃弾全てを見切っているため掠りもしない。

 

「儚く散れ」

「ふざけェ———」

 

 ジャコーダーを細剣状のジャコーダーロードへと変えながら、銃弾の雨を全て避け切り、警備兵の心臓へその刃を突き立て絶命させる。警備兵からジャコーダーロードの刃を引き抜きながら付着した血を払い、近くで腰を抜かしているアリアへと近づく。恐怖に染まった瞳でハドーを見上げ命乞いをする。

 

「い、いや!死にたくないッ!!」

「貴様に殺された奴らも同じことを思っていたはずだ」

 

 しかし、彼女の悪行を知っているためそんな命乞いを聞き分けることもなくアリアの首を絞め上げる。

 

「散れ。外道が」

 

「その子を離しやがれぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

より強くアリアの首を絞め上げようとした所で背後から来る奇襲に気付き、ジャコーダーロードで防いだ。

剣を上段から凄まじい勢いに乗せて打ち込んで来た剣をジャコーダーロードで防ぎながら、その相手の顔を確認する。

 

「標的ではないとなると地方の者か」

 

 栗色の髪で外見から察するに歳は十代くらいで瞳にはアリアを救うという事しか視えない。加えて剣筋は中々なモノであるため油断すれば危ないためアリアを離し、バックステップで奇襲してきた少年から離れる。

 

「大丈夫ですか、アリアさん?」

「あ、ありがとう!タツミ!」

「面倒な事になった」

 

一々説明していては時間がかかり過ぎるためさっさと標的であるアリアを抹殺するため切っ先を向け本気の殺気を放つ。

 

「おい!ナイトレイド、どうしてこの人を狙う! この人は金髪の女に騙されて有り金全部取られた俺を助けてくれた心優しい恩人なんだぞ!」

「……なるほど(………金髪…有り金………地方…マジか!?………すまない…………その犯人は身内だぁぁ……)」

 

「だが恩人だからと言ってその女が本当に善人である確証はない」

「何ッ!?」

「何をしている。キバ?」

 

 今、ここにいないレオーネに対して呆れと僅かな怒りを感じていると、木々の間からアカメが合流してきた。ちなみにハドーは任務中はナイトレイドのみんなに『キバ』と呼ばさせている。名前バレを防ぐためである。

 

「レオーネに騙された少年だ」

「なるほど。標的ではないのだな」

 

 アカメにタツミと呼ばれている少年の対処を任せ、アリアに狙いを定めようとした所で、さらなる乱入者が来た。

 

「よーアカメ〜キバ〜そっちはどうだぁ〜ん?」

 

タツミが無一文となる元凶を作った犯人であるレオーネが標的であるアリアの父親を始末し終えたため、2人の様子を見に来たのだ。

 

「あー‼︎アンタ、あの時のおっぱ————!!」

 

 こんな状況でもおっぱいって言おうとしたよこの少年。まぁそれも無理はないと思う。レオーネは乳はデカイからな。仕方ない。

 

「ソダヨー、あの時の美人のお姉さんだヨー」

「…………………………」

 

そんな事を密かに思っていると、突然妙な視線を感じるとそこには何故かブスッとした表情のアカメがいた。

 

「どうしたんだ、アカメ?」

「…………………………別に」

 

 プイッとするアカメの態度の真意を今ひとつ把握できていないハドーは首を傾げる。そんなハドーたちを面白そうに見ながらヒラヒラと手を振りながら全く悪びれた様子もないレオーネ。

 

「おいレオーネ。少年には後で謝っておくとして、この少年にこの女の本当のツラを見せてやれ」

 

 アカメの心中を察しきれないハドーは改めて悪びれもないレオーネにタツミにアリア達の本性を言うように言い放つ。

 

「ほいほーい……いいか少年、よく見とけよ。これがその女の本性だ」

 

 離れの重厚な扉を、ライオネルで強化した拳で破ると、それと同時に強烈な腐臭と血臭がその場にいた全員を襲った。

離れの中はまるで正に地獄だった。天井からは数人の人間が逆さ吊りにされ、手術台のような上には腕と脚を拘束された状態の男性の遺体が転がっており、その腹からは内臓がこぼれ出ていた。更には首や赤ん坊と思しきものが容器の中に収められていたり、水牢のようなものの中には既に事切れていた者の姿もある。また壁際を見ると、手足をもがれた死体が飾ってあったりもしたが、まだ息のある者も数人見て取れた。しかし、この腐臭と外観から察しても全員長くはない。ワザと生かされている者達だ。そして、密かに逃げようとするアリアをジャコーダービュートで拘束し、逃げなくする。

 

「何故同じ人間をあんな玩具の様に出来るのか理解不能だ」

「な、何だよ………コレ?」

「これがこの女……この家の裏の顔ってわけだ。地方出身者を甘言で惑わして家にいれ、その後薬を盛ってから死ぬまで拷問し続け自分達の快楽を満たす……とんだサド家族ってわけだ。護衛の者達も黙っていたから同罪だ。そうだろ嬢ちゃん」

 

ジャコーダービュートの拘束を逃れようともがくが全く解ける気配もなく、アリアは憤怒の瞳をするレオーネに詰め寄られる。

 

「し、知らないわ! 私こんな場所があったなんて知らなかったものっ!」

「まだシラを切るか……その図太さだけは尊敬してやる」

 

 ここまで真実を突きつけられても今だに猫を被り続けるアリアに侮蔑の視線と言葉を浴びせる。

 

「た……つみ…?タツミなの……か?」

「!?」

 

 そして、恩人を信じたいと願うタツミに聞き覚えのある声がする方へ顔を向ける。

 

「イエヤス!!」

「知り合いもいたのか」

 

 兄弟同然とも言える親友の変わり果てた姿を見つけてしまう。その少年にもそこいらに転がされている亡骸たち同様に赤黒い斑点が浮き出ていた。

 

「おい!大丈夫か!?」

「タツミ………その女が、その女がサヨを………

……いじめ殺しやがったんだ!!!!!」

 

「!?」

 

 そして、イエヤスの指差す方向には………

 

「さ……サヨ…………?」

 

 無残にも、足を根元から切り取られ、凄まじい程の拷問傷を付けられた少女サヨの姿があった。

 

「…………」

 

2人の変わり果てた姿に絶句するタツミ。

 

「ハドー、無理なのか?」

「あぁ、あの少年はもう末期だ。俺の調合した薬でも死を数日引き延ばす事しかできない」

 

 タツミの友の容態を見ながら、アカメはハドーにまだ希望は残っていないのか尋ねる。しかし、そんな淡い期待は打ち砕かれる。ハドーはナイトレイドのメンバーの中で一番人体に詳しく、薬物の取り扱いにおいて誰よりも詳しいため戦医を務めている。そのためイエヤスの身体を蝕むルボラ病の侵攻状態が手遅れなレベルである事を察してしまった。彼はもうすでに気力のみ生きている状態であった。

 

「………何が悪いって言うのよ!」

 

そして、追い詰められたアリアの表情が激変する。

 

「お前達はなんの役にも立てない地方の田舎者でしょ!?家畜と同じ!!それをどう扱おうが私の勝手じゃない!!だいたいその女、家畜のクセに髪がサラサラで生意気すぎ!!私がこんなにクセっ毛で悩んでるのに!!だから念入りに責めてあげたのよ!!むしろこんなに目をかけてもらって感謝すべきだわ!!」

 

人の皮に隠していた人外の本性を滲み出した。

 

「クズめ」

「葬る」

「待て」

 

これ以上生かしおく必要がないためハドーとアカメはアリアの命を奪おうとするが、タツミが2人を止める。

 

「なんだ?まだかばうつもりか?」

「いや………」

 

 瞳を黒い炎を揺らめかせるタツミを見たハドーはジャコーダービュートの拘束を解いた。そして自由になったアリアに近付き、

 

「……俺が斬る!!」

 

一瞬の躊躇もなくアリアを斬り捨てた。

 

「躊躇いもなしに……か」

 

そんなタツミを見た檻の中のイエヤスが心から笑う。

 

「へへ、流石タツミ。スカッとした…ぜ……ゴフ!?」

「!イエヤス!!」

「待っていろ」

 

イエヤスの容態が急変したのを見てしまったハドーが檻を破壊する。

 

「イエヤス!!しっかりしろ!」

「ルボラ病の末期だ。ここの夫人は人間を薬漬けにして日記に書いて楽しむ習慣があった。そいつはもう助からない」

 

アカメが残酷な一言をタツミに告げる。

 

「そ、そんな!?」

「タツ……ミ…」

 

イエヤスが僅かな力を振り絞りタツミに最後の言葉を届ける。

 

「サヨはさぁ……あのクソ女に最後まで屈しなかった…かっこよかったぜ…………だ…か、ら……このイエヤス様も…最期は……かっこよく………」

 

静かに力尽きるイエヤスにハドーが脈を測る。

 

「……死亡を確認した。もう気力しか持っていなかった状態だった。よく頑張ったよ彼は」

「……どうなってんだよ……帝都は……」

 

声を震わせるタツミ。

 

「行こう」

「んー、なあ二人とも、あの少年もって帰らないか?」

「ん?」

「は?」

 

「ほら、アジトはいつだって人手不足。運や度胸、才能もあると思わないか?」

「実力、才能面は俺はあるとは思う」

「よし!決まりだ!」

 

 当本人のタツミを置いて話を進めていくハドーとレオーネ。

 

「離せ!俺は二人の墓を!」

「心配するな。2人は俺が運んでおく」

 

「はあ!?」

「諦めろ、レオーネは一度言い出したな撤回しない」

「うんうん♪流石は親友〜分かってくれるねぇ〜」

 

「ハアァァァァァァ!?」

 

 そのまま連れていかれるタツミ。

そして、残ったハドーは静かなにサヨを下ろし、イエヤスとともに近くにあった布でくくりつけると2人を丁重に担ぎ、待っていてくれていたアカメと一緒にブラートたちの元へ向かう。

 

「おー待たせー♪」

「遅いわよ三人とも! なにやってた……って、それなに?」

 

 戻ると同時に開口一番マインが若干怒りながら言って来たが、レオーネの胸元で暴れるタツミを見て首をかしげる。

 

「新しい仲間だ!」

「ファッ!?」

 

 レオーネの言葉に誰よりもビックリしていたのはタツミだった。まぁ無理もない。いきなり殺し屋の仲間だといわれても驚くのは当たり前だ。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺は別に仲間には」

「あきらめろ少年。レオーネはそういうのはまったく聞き入れないほど頑固だ」

 

 肩を竦めつつタツミの肩に手を置いていたハドーだが、レオーネをキロリと睨む。

 

「レオーネ、あとで少年に残った金返しとけよ」

「……はーい」

 

しょぼんと、ワザとらしく落ち込んだ様子を見せるレオーネだが、それを尻目にハドーはアカメに視線を送る。彼女もその意図が理解できたのかコクンと頷き、皆に告げる。

 

「では任務終了だ。アジトに帰還するぞ!」

「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

 号令と共に皆同時に駆け出し、タツミはブラートに抱えられて行くこととなった。途中、市街地を駆けながらアカメはハドーにある事を問いかける。

 

「そういえばハドー、今晩は血は要らないのか?」

「大丈夫だ。今回は魔皇力を使っていないから吸血衝動は起きていないぞ」

 

 

 

「………………そうか…(´_ _`)シュン」

「(なんで……心なしかちょっと残念そうなんだ)」

 

 

 

 




ついに原作主人公年上キラーのタツミの登場です。
この辺りは原作と全く変わりはありません。
しばらくは原作と大差ない展開が続きます。
ちなみにアカメが斬る1.5の短編集からもいくつか出しますので、楽しみにしていてください。私は特にラバックが主役の回が好きです。同士がいてくれたら嬉しいです。

では、次回も楽しみにしていて下さい!!


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第8話 タツミの選択

 富裕層での一件から3日目がたった昼頃、ハドーは頭にキバットを乗せながら薬草を摘み取りながら、ある目的地に向かっていく。

 

『あの小僧はまだ仲間に加わらんようだな』

「無理もないだろ。兄弟同然の友をあんな風に殺されたんだからな。気持ちの整理がつかないのも仕方ないだろ」

 

『まるで兄を失った時の自分を重ねているのか?』

「………かもなー」

 

『で、今日の獲物は何だ?』

「タイコウバチの巣を狙う。前に見つけた時はまだ巣は小さかったが、今なら良い蜂蜜が実っているはずだ。それに気配訓練にもなるからな。後、毒消しはポーチの中に入っているから準備は万全だ」

 

 キバットとともにたわいない会話をしながら歩いていると、目的地である森の中で一際大きい木の下へ到着する。キバットと共にこの木へ到着する前にラバックの間抜けな叫び声が聴こえた気がしたが気のせいである事にした。

 到着し荷物と共にキバットを下ろし、懐から目隠し用の布を取り出し目を覆う。目隠しをしたハドーは木の根元へ来ると鋭く重い回し蹴りを木に叩き込んだ。ドカーン!!という炸裂音を立てた木から全長1メートル半くらいのハチの巣がハドーの近くへ落下する。蜂の巣が地面へ落下する前にキャッチするや否や洒落にならない量の蜂が飛び出して来た。しかし、ハドーは慌てることはなく腰にさしている剣を取り、迫り来る人を余裕で殺せる毒針を持つタイコウバチの群れの動きを事細かに察知し、最低限の動きで躱し斬り殺していく。まるで舞のような鮮やかな剣舞で蜂達を瞬く間に翻弄し数分足らずで絶滅させる。そして、キバットの近くに気配が2つ増えた事を感じとり、目隠しを外すと頭にキバットを乗せたレオーネと絶句しているタツミがいた。

 

「ん?どうしたレオーネ、招集か?」

「イヤイヤ、この少年にアジトを案内していた所だ」

 

「そうか。で、お前は俺達の仲間に加わる気になったのか?」

 

 耳だけタツミ達に傾けながら巣の解体作業を続ける。テキパキと幼虫を取り出し、蜂蜜を回収しているハドーを見ながらタツミは返答を濁す。

 

「い、いや………」

「早急に決めろというのも無理な話だからな、ゆっくり自分で決めろ。改めて自己紹介しよう。俺はハドー。で、レオーネの頭の上にいるのが俺の相棒の………」

『キバットバット二世だ』

 

「蝙蝠が喋った!?」

「気にするな。そういう種族だと思えばいい」

「ちなみ言えばハドーは、紅い方の鎧を着ている奴だから」

 

キバットが言葉を話すことに当然のようにリアクションをするタツミを面白がりながらレオーネはハドーに関する情報を追加する。

 

「それにしてもタイコウバチの蜂蜜かぁ〜甘くて美味いんだよなぁ〜何で食べるんだ?」

 

取れ立ての蜂蜜をキラキラした瞳で見ながら、炊事担当のハドーに問う。

 

「今のところは、今晩のデザートのホットケーキに使うこととレモンの蜂蜜漬けに使うことしか考えてないな。リクエストはあるか?」

「いやいや〜じゅーぶんじゅーぶん♪」

 

僅かに口から涎を垂らしながらレオーネは夜食の後が楽しみになったようでルンルン気分となっている。

 

「そういえばアンタだったよな。サヨとイエヤスを運んでくれたの。ありがとう、2人を連れて来てくれて」

「気にするな」

 

そう言ってハドーは解体したタイコウバチの巣と蜂蜜を持ち、アジトへ向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 アジトを案内されているタツミはレオーネに無理矢理連れて行かれる形でアカメがいるであろう河辺へと向かっていく。

 

「タツミはブドー大将軍のことは知ってるよな?」

「え?知ってるけど、急にどうしたんだ?」

 

「ハドーは…………その大将軍の息子なんだ」

「ええぇぇぇ!?」

 

「そんで、ハドーは実の兄ちゃんを目の前で父親に殺されたんだ。理由は革命軍に内通していた事に対する国家反逆罪として。で、死んだ兄ちゃんの悲願“誰もが心から笑い合える国を作る”っていう意志を継いで私達と一緒にいるんだ」

 

 レオーネの言葉にタツミは表情が強張ったのを感じた。ハドーの身分と、その暗い過去と決意を聴いたことで自分もつい先日に兄弟同然の二人の親友を殺されているから、ハドーの気持ちも少しだけわかったような気もした。

 

「よし!じゃあ気を取り直して今度はアカメの方に行くぞー」

 

 

 

 

 

 ♦♦♫♦・*:.。♦♫♦・*:.。♦♫♦♦

 

 

 

 

 タイコウバチの巣の搾取による気配強化訓練を終了し、アジトの自室で瞑想していると、ボスであるナジェンダが革命軍本部から戻って来た知らせを受け、ナイトレイド全員を会議室へ集められた。そして、ボスとタツミは改めてナイトレイドに加わるのかを尋ねているところを見ると、レオーネがボスにタツミのことを話したようだ。

 

「さて、事情はここに来る途中話してもらったから大体納得はした。それでどうだ?タツミ、我々ナイトレイドに加入する気はないか?」

 

 ナジェンダが義手の掌を向けてタツミに問うたが、彼はまだ決心がついていないのか言いよどむ。

 

「でも断ったりしたらあの世行きって聞いたぞ」

「そんなことはしないさ、しかしアジトを見られた以上故郷に返してやるわけにも行かないな。革命軍の本部にある工房で働いてもらうことになる。別に断ったところで命が危ないとかそういうのはない。それを踏まえたうえでどうする?」

 

ナジェンダの鋭い視線がタツミに向けられる。すると彼は拳をグッと握り締めてポツリと語りだした。

 

「俺は、帝都で稼いで故郷を少しでも救いたかったんだ。でも、いざ帝都に来てみれば国を治めるはずの都市や人が腐りきってた……ッ!」

「トップがあんな感じだからな。なぁブラート」

「ああ、中央のお偉いさん方が腐ってるから、地方はどんどん貧困にあえぐことになるんだ。だから俺達はその根幹を取っ払おうとしてるってわけだ」

 

ハドーの声に頷きつつタツミに告げるブラートに続いてナジェンダが補足を入れた。

 

「ブラートとハドーは元帝国の有能な軍人だ。しかし、二人とも帝国の腐敗を知って革命軍に入ったんだ」

「でも、この前みたいな政治に直接関係のない悪人をちょいちょい殺していっても国を変えるには至らないんじゃないか?」

「確かにお前の言っている通りではあるがタツミ。さっきボスがいったこと忘れているぞ。オレたちは何もオレたちだけで帝国と戦おうってわけじゃないんだ。オレ達ナイトレイドは元々革命軍にその身をおいているんだ」

 

そして、ハドーの言葉に続くようにナジェンダは説明する。

 

 

 

 帝都の遥か南に革命軍が存在している。

初めは小さな軍隊だったが、総大将ベルサルクの元へその思想に賛同する者達が次々と集まり、次第にその勢力を大きくし、今や帝国軍に負けない程の大規模な軍隊となった。すると必然的に諜報や暗殺を受け持つ組織が必要となってくる。

それこそがナイトレイドだ。

今は帝都のダニ退治をしているが、革命軍の決起とともに、その混乱に乗じて腐敗の根源たる大臣を

 

この手で討つ!

 

 

「大臣を……!」

 

驚愕するタツミにナジェンダは更なる革命軍の話を語る。

 

「それが我々の目的だ。他にもあるが、今は置いておく。決起の情報は詳しくは言えんが………勝つ為の策は用意してある。その時が来れば、

確実にこの国は変わる(・・・・・・・・・・)

「……………」

 

「その国は…ちゃんと民にも優しいんだろうな(・・・・・・・・・・・・・・・)?」

「無論だ」

 

即答するナジェンダ。

 

「スゲェ……!」

 

ナジェンダたちナイトレイドの目的を聴いたタツミが関心の声を上げる。

 

「じゃあ、今までの殺しも悪い奴を狙ってゴミ掃除してるだけで……いわゆる正義の殺し屋(・・・・・・)って奴じゃねぇか!!」

 

ナイトレイドが掲げる志に感動しタツミは感服するが、彼の言葉を聴いたナイトレイドのメンバーは誰もが笑う(アカメとハドーは無表情)。

 

「それは違うぞ。オレ達がやっている事は確かに聞こえ的には気持ちがいいものかもしれない。でも、結局のところ、殺しは殺しだ。そこに正義なんてものはない」

「ここにいるオレ達全員、いずれ報いをうけてもおかしくはないんだぜ」

『人が死ねば怨みが、憎しみが生まれ負の連鎖が続く』

 

 ハドーの言葉にブラートとキバットが続けるようにタツミに殺し屋としての履き違えてはならないモノを教える。そして、二人だけでなくナイトレイド全員の瞳には暗い影が落ちており、酷く冷たい目をしていた。それこそが闇の世界に生きる者達の瞳。

 それに対しタツミがゴクリと生唾を飲み込んだが、ナジェンダが最後の問いを投げかける。

 

「3人の言うとおり、ここにいる全員相応の覚悟を持っている。それでもお前の意見は変わらないか?」

「……ああ、変わらないさ。それに報酬がもらえるんだったら、それを故郷に送って少しでも故郷を豊かにしてやりたい!」

「殺しの稼業を始めたら大手を振って故郷に帰れなくなるかもしれないわよ?」

 

 マインが意地悪げな笑みを浮かべて言うものの、タツミはそれに被りを振って答える。

 

「構わないさ。オレの力で村の皆が少しでも幸せになるならな」

「……決まりだな。修羅の道へようこそ、タツミ」

 

ナジェンダいいつつ、彼に手をさしのべた瞬間、ラバックのクローステールが巻かれる音が部屋に響く。

 

「ナジェンダさん、敵襲だ!」

「何人だ?」

 

「オレの結界のなかだと……合計で9人……いや、11人だ!全員がアジト近くまで来てます!」

「ここを嗅ぎつけたとなると、異民族の傭兵あたりか。仕方あるまい———」

 

 ボスとしてアジトの危険を耳にしたナジェンダは煙草にライターで火をつけると皆に向かって冷徹な声で告げた。

 

「—————全員生かして返すな」

 

 瞬間、その場の空気が一気に重くなり、さらにそれぞれの殺気が鋭くなった。

 

「全員散開、行け!」

 

 言うが早いかその場にいた全員が一気に駆け出し、ハドーとキバットも外へ向かう。侵入者を絶滅させるため駆け出すハドーは近くにいるラバックに侵入者の情報を問う。

 

「ラバック、侵入者はどんな感じだ?」

「一番遠くに逃げてる奴はマインちゃんとシェーレさんコンビにお任せ、アカメちゃんは河原の方、ブラートとレオーネ姐さんは各単体の敵担当、残っているのは洞窟か、森の奥にいる三人組」

 

「よし、俺は3人組をヤるから洞窟の方は頼むぞ」

「りょーかい。そういえばタツミはブラートと合流するしたみたいだから多分大丈夫だと思うぞ」

 

「今のアイツはメンタル面はまだまだだから敵の戯言で隙を突かれる恐れもあるからな」

『お前が気にすることではない。殺し屋となった以上、自己責任だ』

「相変わらずだな、この蝙蝠擬きは」

 

『黙れカエル頭』

「っんだとコラァァァ!!」

「やれやれ……」

 

 相変わらずの仲の悪さに呆れながら、ハドーはダークキバに変身し侵入者の抹殺のため駆け出す。

 

 




とんでもなくどうでもいい余談です。
タイコウバチの見た目はスズメバチサイズのポケモンのスピアーです。危険種としてのクラスは2級です。



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第9話 魔皇力

今思ったのですけど、料理するときの髪をくくっているアカメって可愛いですよね。


 侵入者の三人組の元へ移動していると頭に獣の皮を被っているのを確認すると、どうやら帝国に雇われた異民族のようだ。ダークキバになっている今の状態なら余裕で追いつける。

 

「ちっ!追いつかれたか!?」

「コイツのこの容姿……キバだ!?」

「なっ!?」

 

 どうやら俺の噂も知っているようだが関係ない。アジトを知った以上絶滅させるだけだ。

驚きを露わにしている標的達の中で一番近くにいる曲刀を持っている禿げ頭の心臓に細剣ジャコーダーロードを突き立てる。

 

「ガハッ!?」

 

 あまりの速さで自分がヤラレた事に驚愕しながら男は絶命した。そして、今度は獣の皮を被っている男がハドーの死角から斬りかかってくるが、常に視界に頼らない訓練を積んでいるハドー相手には愚行である。突き立ているジャコーダーから手を離し、上段から振り下ろされる剣を片手で捕まえるや否や数秒も待たずにその刀身を砕く。粉々に砕かれた剣に気を取られ動きに遅れを出した男の心臓目掛けて拳を振り抜く。すると、心臓諸共男の身体をいとも簡単に拳が撃ち抜き2人目を絶命させる。

 

「ヒッ!?」

 

 目の前で起こった惨状に小さな悲鳴を上げながら、最後に残った標的の異民族の年若い男はハドーに無防備な背中を晒しながら逃げる。

 

ソレはお前達が一番最初に取るべき手だ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

『絶滅タイムだ!喜べ!』

 

ジャコーダーを回収し、鞭形態のジャコーダービュートへ変え、ジャコーダーをキバットへ噛ませた。

 

snake(スネーク) bite(バイト)

「スネーキングデスブレイク」

 

 キバットに鎧の魔皇力をジャコーダーへ流させ、強化されたジャコーダービュートで標的を刺し貫いた。そして、ハドーはまだ息がある標的を近くの木で吊るし上げ、ジャコーダーに流れている魔皇力を標的へと流し込んだ。

 

「ガア″ア″ァァァァァァ!!!!」

 

人体にとって有害である魔皇力を流し込まれた男は苦痛の悲鳴を上げ、目、鼻、口、耳と言ったあちこちから血を流しながら絶命した。

自分が担当した標的の死を改めて確認し、アジトへ戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦♫♦・*:.。♦♫♦・*:.。♦♫♦♦

 

 

 

 日が沈み夜となりタツミの加入と初任務を生き残ったことを祝して小さな宴会が開かれた。アカメによるとタツミは敵を討つことを躊躇し窮地に陥ったがアカメが駆けつけことで事なきを得たという。そして、戸惑いをアカメに指摘されたタツミはうかない顔をしながら何処かへ行った。

 

「考えが甘ちゃんすぎるのよ、あの新人」

 

タツミが友人の墓へ行ったのを見計らってマインは肩を竦めながら愚痴る。

 

「お前も初任務の時は似たようなものだったろ。シェーレに危ない所をフォローしてもらってた癖に」

「アレ、そんなことありましたっけ?」

「シェーレは忘れているだけだ」

「はぁー!?私があんな奴と一緒なわけないでしょ!!」

「えぇーマインちゃんも中々危なかったって俺も記憶してるよ」

 

「うっさい!!ドヘンタイ!!」

「ヒデェ〜〜〜(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)」

 

 キシャーと唸るマインにタイコウバチの蜂蜜がかかったホットケーキを渡しつつラバックを生贄にし、タツミの元へ向かう。案の定、死した友の墓の前に膝を抱えこんで座っていた。

 

「初任務の死亡率は高い。よく生き残ったな」

「ありがとう、ハドー。でも、俺………躊躇しちまったよ…殺し屋になったのに」

 

「仕方がないことだ。相手も人間だ。お前が故郷を救いたいという戦う理由があるように敵にも戦う理由がある」

「ハドーは………迷わないのか?」

 

「迷わない。レオーネあたりに聴いたと思うが、俺は父を討つ。しかし、それは俺個人としての目標だ。俺が今すべきなのは“民の誰もが心から笑い合える国を創る”こと。だから、その道のりで誰に怨まれようとも闘い続ける覚悟を兄の墓前で誓った。だから、俺は迷わない」

「すげいなハドーは。でも俺は………」

 

「殺した相手のことよりも、殺しによって救える命があると思えばいい。それに殺し屋として生きていけなくても人はいくらでも生きていける………俺はそろそろ戻る。お前も早めに戻って来い。ボスもお前も交えて話があるみたいだったからな」

「おう……ありがとうなハドー……俺も頑張ってみるよ」

 

 それだけ告げて立ち上がるとその場を後にし、アカメたちの元へ戻っていく。ハドーが戻ってから数分も経たないうちにタツミは戻り、ナジェンダからアカメの下で色々と勉強しろと告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、楽しい宴会が終わり皆んなが寝静まっていく中ハドーは、

 

 

 

 

「すまないアカメ」

「構わないさ。いつでもいいと言ったのは私の方だ」

 

 

「ちょっと痛いと思うけど我慢してくれ」

「心配しすぎだぞ。それに………辛いんだろ?」

 

 

「ありがとうアカメ」

「来てくれ………ハドー」

 

 

 

 

 

 

 

 

密かにアカメに吸血させてもらっていた。

 

 あの一件から吸血衝動は収まるには収まったが、魔皇力を用いた必殺技を使用した日には無性にアカメの血を吸いたくなってしまう。ソレは回数の多さに関係なく。

パジャマに着替えていたアカメの白い肌の首元に伸びた牙をそっと突き立てる。

 

「あぁ……くぅ…」

 

チクリとする痛みとともに来る快感によりアカメの声は僅かに震えてしまう。自分の理解できない感覚に戸惑いながらもハドーが優しく抱きしめてくれていることに安らぎを感じながら自らの血をハドーに吸わせる。

 

 

 

 

 

 

♦♦♫♦・*:.。♦♫♦・*:.。♦♫♦♦

 

 

 タツミの初任務から数日の月日が経ち、タツミはアカメの下で炊事担当をしながら、ちょっと自分の扱いに不満があるようだ。そんなタツミにマインは意地悪そうに突っかかりとたわいない光景を広げている。

 

「殺し屋なのに来る日も来る日も炊事担当………」

「それはしょうがない。ナイトレイドの中での私の割り当ては炊事だからな。私と組めば必然的にお前も炊事担当になる。この後は私と食料調達に行くぞ」

 

「ああ……というか、さっき出てった他の皆は何処いったんだ?」

「別の任務だ。因みに言っておくと、ハドーも私と同じ炊事担当だが、アイツは医師でもあるからハドーと組めば薬作りも学ぶことになるぞ」

「へぇー炊事もしながら薬も作っているのか、ん?でも朝からハドーもいないけど一緒に行ったのか?」

 

聞き返すと、アカメは被りを振って否定した。

 

「いや、今朝からハドーとキバットは帝都で革命軍の密偵チームと情報収集だ。帰ってくるのは明日の朝ぐらいになる」

 

 ハドー達が各自の役目を全うしているのに対して自分はまだまだ新人であることを痛感しながら、アカメとともに食料調達へ行く。そして、ブラート、ラバック、マイン、シェーレの不在の間にタツミたちに民からの帝都警備隊長のオーガ、油屋のガマルの暗殺依頼が入る。タツミはコレを自分たちがやり遂げると宣言し、見事その依頼をやり遂げた。余談ながら傷を負っていないか確認するためタツミはアカメ、ナジェンダ、レオーネにパンツ一丁にされたが、アカメが自分をとても心配してくれていたことに初めて気づいた。

そして、後日タツミはマインの下で殺し屋として勉強しろと言われた。

 

 

 

 

 タツミがマインの下で働くことになった次の日の朝、今だに部屋から出てこないマインをナジェンダの命令によりタツミが呼び行っている間に帝都での調査を終えたハドーはナジェンダに報告を行っていた。

 

「———以上が大臣の遠縁に当たるイヲカルの情報です。裏も取れているので護衛諸共殺しても問題はない。だが、その護衛は破門されたとは言え皇拳寺出身者で内の1人は元師範代を務めていた程の難敵だ」

「わかった。すまないな危険な潜入の後にまた暗殺の任務まで」

 

「問題ない。あの変装は………………言いたくはないが完璧だ」

「ふふん!そうだろそうだろ!」

 

 半端なく言いたくないという顔をしながらも潜入する時にいつも女性陣に無理矢理やらされるあの変装(・・・・)を褒める。まるで自分のことの様にナジェンダは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「で、決行は今晩なのか?」

「あぁ、お前たちの情報で標的が自室を出る時間が判明したから、その瞬間にマインに狙撃させる。その後追って来る護衛達をナイトレイド全員で駆逐する作戦で行く」

 

「了解。今のうちに少し仮眠をさせて貰う」

「アカメ達には私の方から話しておく。今は休んでおいてくれ」

 

そう言ってキバットが既に戻っている自室で仮眠を取るため会議室を出ていく途中で小腹が空いたため厨房へ行くとアカメが朝食の準備をしていた。

 

「ん? おかえりハドー。戻って来ていたのか」

「ただいま。今さっきな潜入での報告を終えたところだ」

 

「そうか、お疲れ様だな。何か食べるか?」

「小腹が空いたから、林檎でも貰うさ」

 

「好きだな林檎」

「果物の中では一番の好物だからな」

 

 置いてある林檎を丸噛りながらアカメが作っている朝食のスープを見ていると、アカメが味見用の容器を突き出して来た。

 

「味見してくれ」

 

突き出してくれた容器を飲ませてもらったハドーはスープの味に満足したためアカメにグッドサインを出す。

 

「いつも美味しいなアカメの料理は」

「そう言って貰えると作っている者として気分が良くなる」

 

「昼食は俺も手伝うからな」

「あぁハドーの料理はどれも美味しいからな今からでも楽しみだぞ。おやすみ、ゆっくり休んでくれ」

 

眠気に負けそうになりながら部屋に辿り着き、そのままの格好でハドーは眠りについてしまった。しかし、ハドーが完全に眠りにつく前に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ウ……ヌハ…シ…ヌ…コノ………マ…マ…デハ…

 

 

…………ザン………バ……ト…ヲ……ツカ…メ……

 

 

 

 

今まで聴いた事も無い声が耳に入って来た。

 

 

その言葉の意味を理解することになるのは、もう少し先のことになるのをこの時のハドーはまだ知らない。

 

 

 

 

♦♦♫♦・*:.。♦♫♦・*:.。♦♫♦♦

 

 

 

 輝く星々が暗夜の空の下でハドーたちナイトレイドは標的イヲカルが屋敷から出てくるのを待っていた。

 

「随分とイヲカルの情報を集めてこれたな?」

あの変装(・・・・)のおかげだ。不本意だが」

 

「なるほど〜コレはレオーネ姐さんの大手柄とも言えるな〜」

「いや〜(^◇^;)ホント、あの時の酒の勝負で勝っておいて良かったぁ〜」

「確か〜レオーネがハドーの吸血の事を弄り倒しすので、それに怒ったハドーと多少の酔っていたレオーネと酒の飲み比べの勝負をして、ハドーがあっさりと負けたのが原因でしたよね?」

「その通りだ。その一件の際でハドーは潜入任務の時は必ずと言っていいほどあの変装(・・・・)をさせられる」

「ま、負けちまったものはしょーがねぇさ。負けた以上男らしく振る舞えよ」

 

「あんな格好で振る舞えるかぁぁぁぁ‼︎」

 

 標的が現れなず、離れた所にいるマインの狙撃も無いため何気ないラバックの一言から始まり、最終的にはここにいないマインとタツミ以外のメンバーにレオーネに飲み勝負で負けたことを掘り返される。

 

「お前ら……あの一件を掘り返してたのしいか?」

「「「「「うん」」」」」

 

「ッざけんな!絶滅させるぞ?」

「きゃ〜助けてくれ〜アカメ〜ハドーが私達を虐めようとしてくるぅ〜」

「ダメだぞ、ハドー。皆んなは大事な仲間なんだからな」

 

「何で全面的に悪い事になるだよ」

 

 深いため息を吐いた所でイヲカルの屋敷から一筋の光が走った。即ち其れはマインのパンプキンによる遠距離狙撃。そして、見事に標的を仕留めたためおこぼれを貰っている護衛達がマインを捕らえるために動き出す。しかし、そんなことは予想済みであるのでアカメ、ブラート、シェーレ、ラバック、ハドーが仮面を付けた5人の護衛の進行方向で待ち伏せる。案の定、護衛の内の1人がハドーへ襲いかかってきた。

 

「皇拳寺の門下生も堕ちる所まで堕ちるか…」

「ダマレェェェェ!!」

 

皇拳寺の門下生として鍛えられているため中々のスピードの拳をふるってくるが、普段からブラートの槍捌きやアカメの剣を相手に訓練を積んでいるハドーからすれば避けるのに難のことはない。降り注ぐ拳の雨を全て受け流し、相手が拳を振り抜く瞬間を狙いすまし、

 

『「絶滅しろ」』

 

 鋭い手刀で男の心臓をぶち抜き、身体を大穴を開け絶命させる。

手についた血を振り払い、周りを見てみるとレオーネが最後の1人を片付けていた。

 

「あー! スカッと爽やか♡」

 

 暴れられてレオーネはどうやらご満足な様子でストレスが全くないホクホクな表情を浮かべる。そんなレオーネに仮面の下で苦笑いを浮かべているハドーは、死体となった護衛達の数を数える。

 

「やはりか……」

「1人足りないようだな」

 

 標的のイヲカル、その護衛の数は全員で6人の筈。しかし、ここにいるメンバーで倒した数は5人。明らかに足りない。数が合っていないことに疑問を浮かべ、口元に手わ置き、調べた筈の情報をもう一度整理し直していると、アカメもその疑問に便乗する。

 

「おそらく、残りの1人はマインとタツミの所に行った可能性が高いな。逃げるより下手人を差し出した方が自分が生き残れる可能性を高いはずだからな。先に行ってくる」

「2人を頼むぞ」

 

「大丈夫だろ、あの2人はそう簡単にやられる筈は無い」

「////……ん…」

 

 2人の無事を想うあまりに不安そうな顔をするアカメの頭を1撫でしてからハドーは魔皇力で強化された脚を使い、もうダッシュでマインたちとの合流場所へ向かう。

 

そして、合流地点へ向かってからしばらくしたとき、ハドーの耳に何かが放たれる轟音が入ってくる。しかし、ハドーはそれに薄く笑みを浮かべ合流地点の近くに行くと、聞き覚えのある声が怒鳴りあっているのが聞こえる。

 

「なによ!せっかく認めてあげようと思ったのに!!」

「うるせぇ!お前天才じゃないな、秀才止まりだ!!」

 

 茂みを抜けて声のするほうを見ると、案の定タツミとマインが言い争いをしていた。彼等のすぐそばには護衛の一人と思われる男の骸が胸を打ち抜かれた状態で倒れていた。恐らく先ほどの轟音はパンプキンの砲撃で、護衛の男はそれに打ち抜かれたのだろう。しかし、タツミの頭を見てみると頭頂部がチリチリになっており、多少なり煙も出ていた。随分と大変なことになっているようだ。肩を竦めつつ未だに言い合いをしている二人を見ていると、アカメ達がやってきた。

 

「やっぱ心配する必要なかったな」

「ああ、あの程度の奴等なら問題はなかっただろ」

「………そうだな」

 

レオーネの言葉に頷きつつ、アカメは薄く笑みを浮かべる。

その後、二人のいい争いが一段楽したところでナイトレイド一行はアジトへと帰還した。

 

 




会話の中にある変装についてはその内出しますよ〜
ハドーは心底嫌っていますが、女性陣はキャーキャー言っています。
それでは次回も楽しみにしていて下さい。


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第10話 首斬りの帝具使い

アカメが斬る!の続編であるヒノワが征く!のヒサメがとてつもなく良いキャラをしていると思います。主にリンズ姫に一途な所が。そして、どうかナハシュとポニィが感動の再会を果たしてほしいです。私はナハシュはウェイブと同じくらい好きな男キャラですから。


 イヲカルの暗殺から数日が過ぎた頃、新たな問題が帝都で発生した。その内容を確認するためハドー達は作戦会議室へ集まっていた。

 

「今回の標的は帝都で噂の連続通り魔だ。夜な夜な現れては無差別に人を殺す……しかも被害者全員、首を狩られている。もう何十人も殺されている」

「首を狩る……あのザンクが現れたのか」

 

 ナジェンダの言葉にハドーは壁に背を預けながら言う。するとナジェンダはおろかその場にいたタツミとシェーレを除いた全員が頷き同意する。

 

「ザンクって誰だ?」

「アンタまさか知らないの? 本当にド田舎からきたのね」

「すいません。私も分かりません」

「シェーレは忘れているだけだ」

 

タツミの質問とシェーレのド忘れにマインとハドーが呆れてしまうが、タツミにザンクについての説明を始める。

 

「ザンクは通称“首斬りザンク”と世間では呼ばれている。ザンクはかつて帝国の大監獄に勤める首斬り役人だった。だが、オネスト大臣の所為で処刑される者達が増大し、ザンクは毎日の様に人の首を斬り落としていた。そして、その中にも罪なき者達が存在しザンクに命乞いする者達もいた。そんな日々が数年も続き、とうとう首を斬るのが癖になってしまうが、監獄の中では物足りなくなり獄長を殺し、その帝具を盗み、辻斬りとなった。はっきりと言えばザンクも、この国によって狂わされた被害者だ」

「討伐達を組織された直後に姿を消したが、帝都に現れるとはな……」

 

 ハドーの言葉に続く様にブラートもザンクの情報をタツミ達に説明する。2人の話を聴いたタツミは拳を強く握りしめ、ザンクを討つ決意を固めてる。

 

「危険な奴だな。探し出して倒そうぜ!」

 

しかし、熱くなっていくタツミを落ち着かせる様にブラートが嗜める。

 

「ザンクはハドーも言った様に俺達同様に帝具持ちだ。2人1組で行動しないと………お前危ないぜ」

 

 何故かタツミの顎をくいっと上げさせ、頰を赤らめながら別の意味でタツミをクールダウンさせる。加えて、タツミとブラートの周りには艶かしい薔薇の幻覚を見てしまったラバックとハドーはヒソヒソとブラートから距離を取りながら身の危険を感じる。

 

「「(アンタが1番危ない相手だよ)」」

 

すると、ナジェンダが軽く咳払いをし自身に注目を集めさせる。

 

「よって今回の任務は全員二人一組で動け。相手は帝具使いであるため命の危険は数段に高まっているということを忘れるなよ」

 

 彼女の言葉に全員が頷き、今日の深夜からザンクの討伐に出かけるということになった。ちなみに、ペアはアカメとタツミ、レオーネとブラート、マインとシェーレ、ラバックとハドーとなったが、心なしかアカメが不満そうな視線をハドーに送っていたのは余談である。

 

 

 

 

 

「はぁあぁ……マインちゃんとシェーレさんは仕方ないとして、出来ればレオーネ姐さんかアカメちゃんとがよかったな〜また蝙蝠コンビと一緒か〜」

 

と目の前でブーブーと文句を垂れているのはラバックにハドーは軽い手刀を炸裂させる。

 

「あだぁぁぁ」

「オレたちでわるかったな。愛しのボスからの命令なのだからキチンと警戒しろ」

『ナジェンダの編成に不備はない』

 

 ラバック的には女子と一緒でなかったことが不満なのだが、ラバックのクローステールとハドーのダークキバのコンビネーションは中々のモノであるためナイトレイドの任務ではハドーとラバックは良くコンビを組むことが多い。

 

「わーってるよー、つーかさ男だけしかいない方を狙うかねぇ。オレだったら絶対に女の子の方を狙うな!」

「それはお前の好みだろうが……隠れろ」

 

 ラバックの物言いにやれやれと肩を竦めているとハドーは複数の気配を察知し、急いで足を止めてラバックを路地裏に引きずり込む。

 

「ちょッえ!?何!?お前もそっちの気があんの!?」

「黙れ。静かにしていろ」

 

割とドスのきいた物言いをしながら先ほどまで自分達がいたところに視線を向ける。すると、警備隊の人間が数人駆けて行った。

 

「なるほどね。オーガを殺されたからその犯人探しもしてるってわけだ。タツミも大変だねぇ」

「あちらの方にも気を配っておかなければな」

 

 警備隊の隊員が過ぎ去ったのを確認し、二人は再び通りを歩いてザンクの捜索を開始しようとした所で、ハドーはへばりつく様な不気味な視線を感じ、時計塔へ首を向けるが誰もおらず気のせいとして処理し捜索を再開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ハドーが振り向いた時計塔の裏には悪鬼の表情を浮かべる男ザンクがいた。

 

「お〜お〜こんなに離れているのに気づくとはねぇ〜隠れるのが遅かったたら見つかったいたねぇ〜愉快愉快♡。さぁ〜てどの首から頂こうかなぁ〜」

 

ハドーの気配察知に多少は驚きながらも、暗夜の空の下で自身の首斬りの衝動に従い自身を探すナイトレイドの中から好みの首を選り好みしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先ほどの気配以降怪しい者の姿はなく、一向にザンクは見つかる事はなかったので、適当な路地を見つけた二人は適当に座ることにした。キバットは目立つためハドーの服の中に身を潜めている。

 

「やはり出てこないな」

「やっぱさー女の子の方に行ったんだって絶対。男二人じゃつまらないじゃん?」

『こんな小僧達の首は好みでは無いのかもな』

 

「そこにお前が同意するのかよ……」

 

 キバットの発言に唇を尖らせて嘆息しているとラバックが思い出したように声を上げた。

 

「そういえばさ。ダークキバの奥の手って結局はどんな感じなんだ?」

「キバット曰く今の俺では使えないようだ」

 

「マジで?」

『今のハドーは使える領域には達してはいない』

 

 帝具には「奥の手」を有するものがある。例としてインクルシオの場合は素材にされた超級危険種、タイラントの特性を生かした透明化が出来る。しかし、気配までは完全に断てる訳ではないのであまり動かないほうがいいとブラートは言っていた。しかし、透明化にも体力・精神力はかなり消費するようだ。

 ハドーの持つダークキバにも奥の手が存在しているが、自身は使える領域に達していないためその詳細も不明である。

 

『歴代の資格者の中で奥の手を使える領域へ至ったのは初代だけだからな。前提条件を言えば、鎧に真の主として認められるということだ』

「革命を成功させるためにも俺自身、もっと強くならないとな。このままではエスデス戦にも遅れを出してしまう可能性も否定できないからな」

「エスデスねぇ……でもさ、あの女はいま北に行ってるじゃん」

 

「今の任務は北の勇者ヌマ・セイカの討伐だったな。ラバック的にはどれぐらいかかると思う?」

「最低でも一年はあると思うぜ。ヌマ・セイカの軍は中々強いらしいし」

 

 ラバックはそう言っているものの、ハドーは疑念があるのか考え込んでしまう。今現在帝国の軍人の中で大将軍といわれる自分の父であるブドーと並ぶほどの強さを持っているのがエスデス。そして、ナイトレイドで彼女に匹敵できるといえばブラートくらいな筈。

 アカメも十分強いがエスデスは彼女をゆうに超える強さを持っている。数年前にエスデスと相対したことがあるため彼女の底知れぬモノを間近で感じ取れたが、バケモノとしか言いようがない。

 

「アレをサシで戦うのは避けたいが、お前のクローステールの奥の手を使えばどうだ?」

「やめてくれ。クローステールの奥の手でも足止めしか出来ないさ。ダメージなんて与えられねぇーよ」

 

 ラバックも肩を竦めているが、エスデス相手に足止め出来る時点で十分すぎると思う。しかし、新しい国にはあの様な戦闘狂は邪魔でしかない。人外と化しつつある自分同様に。

 

 

 結局、その後もザンクを探して回ったものの見つかる事はなく、捜索を始めてからしばらく経った後、アカメとタツミがザンクを討伐したということを聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦♫♦・*:.。♦♫♦・*:.。♦♫♦♦

 

 

 ザンク討伐任務の翌日、ハドーと彼の頭に乗ったキバットはアカメ達が回収した帝具「スペクテッド」と眺めていた。

 

「コレがザンクの帝具か。気色悪いな」

『久々に見たな。この目玉帝具』

「能力は遠視、洞視、未来視、透視、幻視の五視だそうだ。タツミは幻視に惑わされ私と分断された。その間に洞視や未来視で苦戦を強いられたんだろう」

 

お茶を飲みながら答えるアカメの解析に、ハドーはため息を吐きながら作ったコーヒーを飲む。

 

「なるほどな。あの時感じた視線は遠視による視線か……全く遠くから此方を観察し俺達を選り好みしていたわけか」

 

 自身が感じた視線の正体が肩を竦めスペクテッドをテーブルの上に置き、タツミの姿を探してみる。しかし、何処にもいない。

 

「タツミは?」

「多分友人二人の墓だろう。この帝具の幻視は相手がもっとも愛する者の姿を目の前に浮かび上がらせる能力らしいからな」

 

 

 

 

 

…もっとも愛する者か………

 

 

 

 

 

 

…ハドー……私の血を吸ってくれ……

 

 

 

 

「////…⁉︎⁉︎」

 

な、なななんで!あの時のアカメが出てくるんだ⁉︎

 

 初めて吸血させてもらった時のアカメが脳裏をよぎった事に困惑しているハドーはコレを煩悩と判断し、煩悩を退散させるために壁にガンガンと頭突きする。

 

「ん?何をしているんだ?自分を傷つけてるのはダメだろ」

「////……す、すまん」

 

 

 アカメによって壁から引き離されたハドーは顔を赤く染めながら、アカメと視線を合わせようとはしない。そのことをアカメは首を傾げてはいるが、深く考えなかった。そして、そろそろ夕食の準備をするためハドーとともにタツミの下へ向かった。ちなみに物陰からいつの間にハドーから離れていたキバットとともにレオーネはニヤニヤしながら2人を眺めていたのは余談である。

 外に出るとやはりタツミが墓の前でしゃがんで手を合わせているのが見える。

 

「怪我してるところ悪いが、夕食の支度をするぞ」

 

麻袋を彼の頭に投げたハドーが言うと、タツミは短く返事をしてこちらにやってきた。だが、近くまで来たところでタツミがアカメに問うた。

 

「アカメ、お前ザンクと戦った時幻視を使われてたよな……あの時、誰を見たんだ?」

 

 その問いにハドーも少しだけ驚いた表情を見せ、心の奥底で気になっている自分も存在していたが、そのことにハドーは気づけていない。

 

「……時が来れば話す……ただ、これだけは言える。今の私にとって大切なのはナイトレイドの仲間達だ。勿論お前もだぞ、タツミ」

 

タツミの問いにアカメは伏し目がちに答える。

 

「んなっ!?」

 

アカメの言葉にタツミは頬を赤らめ指をワナワナと動かしていたが、ハドーは暖かな笑みを浮かべて二人に告げる。

 

「そろそろレオーネ辺りが癇癪を起こすから行くぞ。今晩はアカメのリクエストに応えて肉づくしだぞ」

「よし!流石ハドーだ♪」

「って昨日も肉だっただろ!野菜も食べろよ!」

 

「心配するな野菜もたくさん出すさ。もちろん美味しいのをな」

「ハドーの料理はどれも本当に美味しいから私は大好きだぞ」

 

「褒めても一品ぐらいしか増やさないぞ」

「………ん…」

 

 

 

 

「………コイツらこれで付き合ってないのかよ

(−_−;)」

 

 ハドーの言葉にアカメが喜び、気分を良くしたハドーはアカメの頭を撫でる。そして、タツミは2人には聴こえない声量で2人に呆れた後、三人は夕食の支度をする。しかし、ハドーは肉を捌きながらアカメが幻視によってみたという人物を思い浮かべていた。

 

…恐らくアカメが見たって言う人物……帝国に所属している妹のクロメのはずだ

 

 以前話してもらった彼女の妹クロメ。会ったこともしゃべったこともないが、現在も帝国暗殺部隊に所属しており、帝具使いでもあることから手練れであることさ間違いは無い。

 

………恐らく戦うことになるだろう。できればアカメとは戦わせなくないな……………例え、アカメに怨まれようとも…

 

父を討つことを目的の1つにしている自分が言えることではないな…と密かに思いながらつまみ食いするアカメをたしなめながら支度を進めていく。

 




今思ったのですけど、ラバックのクローステールの奥の手ってどんな能力なのでしょうかね?原作では披露されることはありませんでしたけど。
それでは次回はお楽しみください!


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第11話 資格者の条件

 首斬りザンクとの攻防から数日の月日が流れた朝のこと。

ハドーは修練場でブラートと剣を交えていた。本来ならブラートはインクルシオの槍ノインテーターがあるのだが鎧が解けた時でもインクルシオの鍵である剣で戦える様にしている。そのためブラートとハドーは互いに木刀を持ち鍛錬している。ブラートとハドーは同時に土を蹴り凄まじい速さで駆け出す。そして、ブラートは豪腕による上段から両手で持った木刀を振り下ろしに対し、ハドーは木刀を横へ構えで防御する。筋力ではまだまだブラートの方が上回っているため、木刀から伝わる衝撃にハドーは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてしまう。振り下された衝撃が身体を伝って地面に伝わり、その場が足の形にメコッと凹んでしまう。しかし、ハドーはなんとか木刀を振り上げ鍔迫り合いへと持ち込んだ状態のまま鋭い蹴り上げを放つ。そして、対するブラートも鍔迫り合いの状態のまま蹴り上げを出すことに慌てることなく、バックステップで躱す。蹴りを躱されたことで自由となったハドーは、後退するブラートへ追撃とばかりに連続刺突を繰り出す。

 

「以前よりも鋭いなッ!」

「まだまだお前には追いつけていない!」

 

 ナイトレイドへ加入してからアカメやブラートたちと修練を積み、バリアズを含んだ数々の強敵によりレベルアップしたハドーの刺突はより鋭さと速さが増していたことでブラートの剣速と互角といえるレベルにまで上がっている。しかし、ブラートは繰り出される刺突の雨を総て同等の剣速による剣戟で防ぎきってみせた。

 

「ック!」

 

 中々決定打を出せないことに悔しげの表情を浮かべるが、焦りや感情の変動は動きの遅れにも繋がるためすぐ感情の波を鎮め冷静になるとブラートから一旦距離を置く。明らかに感情の切り替えの速さが増していたことにブラートは密かに喜びを感じながら、挑発的な笑みをハドーへ送る。ブラートの挑発を受ける形でハドーは深く腰を落とし、木刀の切っ先をブラートの心臓へ狙いを定め、その峰に軽く左手を添えた構えをとる。

 

「(!さっきよりも気迫が鋭くなった)」

 

木刀を両手で握り締め上段の構えを取り、互いに戦意を高ぶらせる。そして、2人が同時に踏み出そうとした所で第三者の声が2人の耳に入る。

 

「2人ともボスがこれからタツミにザンクから奪った帝具が適合するかどうか試すみたいだから呼んでいるぞ」

 

 声のする方向を見ると2人分のタオルを持ったアカメがいた。アカメの制止でブラートと共に修練をやめ、彼女から貰ったタオルで汗を拭き3人で会議室へ向かう。会議室の道中へ向かう途中でリーゼントを整えながらブラートが思い出したように声を上げる。

 

「そういえば今日のタツミの教育係はシェーレだったな?」

「合っているぞ」

「今日のシェーレは張り切っていたしな」

 

 仕事以外でのシェーレの姿を脳裏に浮かべたハドーは割と失礼な発言をする。

 

「シェーレで大丈夫か?」

「問題ないだろう。シェーレは家事全般は出来ないが、戦闘はずば抜けているしな」

「肉を焦がすのは本当にダメだがな」

 

 どうやらアカメは割とシェーレが肉をマル焦げにしたことを根に持っているようだ。そんなことを密かに呆れながらたわいもない会話をはずみながら会議室へ向かう。

 

 

 

 

 

 

♦♦♫♦・*:..。♦♫♦・*:..。♦♫♦♦

 

 

 

 アカメ、ブラート、ハドーが会議室へ入ると既に他のメンバーが集まっていた。メンバーが揃ったことを確認したナジェンダはタツミにザンクの帝具スペクテッドを差し出す。

 

 

「全員揃ったな……ではタツミ、お前の傷も癒えたことだしザンクから奪取したこの帝具をつけてみろ」

「!いいの!?皆んなは?」

 

 若干興奮した面持ちでタツミがスペクテッドを手にとりながら、疑問を投げかける。

 

「帝具は1人1つまでだからな。体力・精神力の疲労がハンパないからな」

『常人が扱えばその肉体は崩壊するからな。力を無策に求め、帝具の同時発動を試みた愚か者がいたが呆気なく死んだ』

 

 ブラートの意見に続く様にハドーの頭の上に乗ったキバットが過去の実体験を語る。ハドーは頭上のキバットの言葉に重みがあるのを感じ帝具による同時発動は自身が考えているよりも危険であることを痛感する。心の中でハドーがそう思っているとアカメがタツミに告げる。

 

「確か心を覗ける能力があったろう。私の心を見てみろ」

「アカメの心は……夜に肉を食いたいと思っている」

 

「完璧だな!」

「それはいつものことでしょーが!」

 

どうやらタツミもアカメの好物を大体把握してできたのだろう。明らかに能力を発動していないのを確認しながら、ハドーはアカメに残念なお知らせをする。

 

「残念だが、今晩の献立はきのこたっぷりのバター醤油スパゲティとシチュー、生春巻きだ」

「な、なん、だと!?」

 

 アカメがまるであり得ないという顔をしながらレオーネに慰められている。そこまで落ち込まなくていいでは……と思いながら密かに唐揚げでもトッピングに入れてあげようという気になってしまう辺りハドーもアカメにとても甘い一面がある。そんなアカメを置いて、マインか心を覗かれるのは拒否したためタツミは自身の知らないスペクテッドの能力を発動させる。しかし、タツミが女性陣を見て驚いているのはどうしたことだろう。

 

『ククク。青いな小僧』

「ん?どういうことだ?」

 

『スペクテッドには透視の能力があると言えば分かるだろ』

「なるほど。ラバックが欲しがりそうな能力だな」

「おいおい、まさか今のタツミはまさか!?」

 

「お前の予想通り。今のタツミは女性陣の下着が見えているということだ」

「何それ!すっげーうらやましいんだけど!!」

『欲望に忠実的だな貴様は……』

 

 興奮した面持ちでいるラバックにキバットと共に溜息を送りつつ、タツミを見ると突然彼の頭から少量の血しぶきが飛び出した。

 

「まずい拒絶反応だ!」

 

 驚いた様に声を上げながらハドーは急いでタツミからスペクテッドを取り外した。突然のことだったためタツミは何が起こったのかわからないと言う顔をしていたが、ナジェンダが静かに事実を告げる。

 

「相性が悪かったようだな。スペクテッドがお前には合わなかったのさ」

「どうせだっさい外見だなーとか思ってたんでしょ」

「それと相性が関係してくるのか!?」

「あるぞ。帝具との相性は基本的に第一印象で決まるからな。最初に抱いた感情が好印象であれば相性がいいって感じだ。俺とキバットの場合は、コイツから何か引き寄せられるような強いモノを感じたと言った例もある」

『相性以外にも“闇のキバの鎧”を纏うには初代の資格者の血(・・・・・・・・)を引いていることが大前提だがな』

 

「ん?初耳だな」

 

 ハドーの説明に続く様にキバットも自身が管理するダークキバについての追加情報を提供する。ハドーも流石にそんな事を聴いたのは初めてであるためキバットの話を詳しく聴くため頭ではなく、腕にキバットをとまらせる。流石に現在の資格者であるハドーも知らないことに驚いたアカメ達だが、仲間として知っておきたいためキバットの話を静かに聴くことにする。

 

『はじめて言ったからな。もう事実を告げて構わんだろ。はじめてダークキバの鎧を纏ったのは………始皇帝だ』

 

「「「「ええぇぇぇぇぇぇ!!!」」」」」

 

突然のカミングアウトに全員が度肝抜かれた。

 

『闇のキバの鎧を纏えるのは皇帝の血を受け継ぎ、王の資質を持つ者だけだ』

「ちょ、ちょっと待て!俺が皇帝の血を!?」

「いやいやいや!なんで資格者のお前が驚くんだよ!」

 

『どうやら母親の事を何も知らなかった様だな』

「何処かの名家で、父上に一目惚れし結婚するために絶縁したとしか聴いていない」

「色々ツッコミたいがキバットよ。ハドーは皇帝の血を受け継いでおり、王の資質?を持っているからダークキバになれるという事だな?」

 

 未だに慌て続けるハドーやラバックたちを置いて1番冷静さを取り戻したナジェンダはキバットに確認を取る。

 

『その通りだ。始皇帝は魔皇石の魔皇力を扱う事に長けている魔族であるこの俺キバットバット二世との間に交わした“血の契約”により闇のキバの鎧を纏いダークキバとなった。だが、ハドー同様に吸血衝動を発症したため、自分の子息の中で最も王の資質を持つ者に鎧を継承させ、自身は“至高の帝具”シコウテイザーを駆り他国と戦った。加えて、始皇帝はハドー同様にアカメの様な自身の衝動を抑え込める血の提供者を運良く見つけ、吸血衝動を抑えこんだ。その後、歴史書にある通り不治の病で始皇帝はその生涯を終えた。そして、始皇帝との間に交わした“血の契約”の下で俺は皇帝の血を受け継ぎ王の資質を持つ者を資格者としながら、資格者と共に戦い続けた。まぁ、俺からすれば始皇帝以外はろくな奴ではなかったがな。付け加えるなら、資格者はお前で10代目だ』

「ハドーが……大将軍だけじゃなく皇帝の血も継いでいるとかヤベェーイな」

「かなりの情報でパンクしそうだが話を切り替える事にしよう。いいか、タツミ。私たちは殺し屋チームだが、今回のように帝具集めもサブミッションに行っている。ザンクのような帝具使いとの戦闘では一番いいのは相手の帝具を奪取すること。最低でも破壊がミッションだ」

「帝国に渡さないためか」

 

「そういうことだ。とりあえずこの文献でも読んでおけ、帝具のことについて書かれている」

 

 ナジェンダが言いながら文献を放り投げた。それを受け取ったタツミは早速本を開く。

 

「結構あるけど……これで一部なのか?」

「そうだ。出来ればその本に書いてある帝具の情報だけでも頭に入れておけ」

 

「わかった……でもさ、ボス。一番強い帝具ってなんなんだ?」

「……相性や用途で変わってくるが……強いてあげるなら“氷を操る帝具”だと思う。キバットから聞いた話だと名前はデモンズエキスだったとか。まぁ幸い使用者は北の異民族征伐に向かっているがな」

 

 本来なら感じない筈なのにエスデスから受けた傷が疼くのか眼帯を抑えながら言うナジェンダはキバットを見ながら言ってくる。タツミもそれにつられて肩に乗っているキバットを見やってくるが、ハドーも頷き、脳裏にかつて相対ひた一人の女を浮かび上がらせる。

 

 

……私のモノ(配下)になれ……

 

……私なら今よりもっとお前に力をつけさす事ができるぞ?

 

……ククク、私の誘いを断るか……

 

……面白い!弱ければ死ぬだけだ……

 

……せいぜい足掻いてみせろよ?

 

 

 一度話した程度だが、彼女の威圧感は忘れもしない。帝具と同じくまさしく氷の女と言った感じだったが、アレはもはや人外と言える存在としか思えない。そんな事を思い出しているとタツミが笑みを零して笑い始める。

 

「フッフッフ、強敵上等!どんどん帝具を集めようぜ」

「随分とご機嫌だなー、いきなりどーした?」

 

彼の言動を不審に思ったレオーネが聞くと、タツミは皆のほうを向きながら笑みを崩さずに告げた。

 

「帝具ってのはまだまだ未知の能力を秘めてる奴もあるかもしれないんだろ?そこで俺はピンと来たんだよ。これだけの力がある帝具ならさ、もしかしたらだけど……死者を生き返らせる帝具だってあるだろ!そしたらさ、サヨとイエヤスだって生き返るかもしれねぇだろ?だからオレは帝具を集め————」

「————ねぇよ」

 

 タツミの発言をそこで終わりにさせたのはブラートだった。見ると彼以外のキバットを含めた全員が顔を伏せており、瞳の色が見えないようにしている。

 

「帝具であろうと死んだものは生き返らねぇ。命は一つだけだ」

「で、でもよ!そんなの探してみなくちゃわからねぇじゃねぇかよ!!」

 

 悲しい声を上げるタツミ。しかし、誰もそれに首を縦に振る事はなかった。無論ハドーも同じだが、彼はタツミがそう望むことも仕方がないと思っていると一見非情とも思える言葉がアカメから発せられる。

 

「タツミ、キバットが言った始皇帝のことを考えてみろ。もしそんな帝具があるのなら、彼はまだ生きているはずだ」

「不老不死の力を得る帝具がなかったから死んだ……ようはそういうことだ」

『そんなモノは存在しない。死者に拘るな小僧。それに貴様は死者となった友にもう一度死んだ時の記憶を思い出させる気か?』

 

 アカメとブラート、そしてキバットの痛烈な一言に悲痛な表情を浮かべながら顔を伏せてしまう。

 

「あきらめろタツミ。でないとその心の隙を敵に利用されて……お前が死んでしまうぞ、タツミ」

 

 アカメの声を最後にタツミは最後まで声を発することがなく、夕食にも現れる事はなかった。そんな夕食時、ハドーはタツミに重い言葉を投げたキバット、ブラートとアカメの3人に告げる。

 

「もうすこし優しく言ってやってもよかったのではないか。タツミの気持ちが分からないお前達でも無いだろ?」

「いや、アレぐらい言っておかなかければ」

「変な希望を持たせてやるよりスッパリ忘れさせたほうがいいからな」

『死者はどこまで行っても死者だ』

 

「そういうものか……だが、オレはタツミの気持ちわかってしまうよ。オレも初めてキバットの力を手に入れたときは、もしかして兄を……と思ってしまったよ」

 

グラスを傾けるハドーにレオーネが驚いた様子を見せる。

 

「ハドーはそういうのはないと思っていたから意外だな〜医師だし〜」

「そうか?だが、一度は思ってしまったよ。魔皇力といった人外のチカラを使えばあるいは……ってな」

 

 何処か寂しそうに見えてしまったアカメは不安そうな表情を浮かべながらそっと袖口を引いて問う。

 

「今はそういう事は思っていないだろう?」

 

はじめての吸血の時同様こちらを心配して聞いているのだろう。それに対してハドーは穏やかな表情でアカメの頭を優しく撫でる。

 

「ああ。ダークキバになって初めて襲いかかってきた吸血衝動のおかげでそんな甘い考えは捨てたさ。さっきお前やブラート、キバットが言ったようにそんなもんがあれ先祖であるば始皇帝はまだ生きているだろうしな」

「…ん」

 

撫でてもらいながら安堵したようにアカメは少し嬉しそうな顔となる。

 

「今のタツミもきっとその事をきちんと理解はしているだろう……ごちそうさま、今日も美味しかったぞハドー、アカメ」

「あぁ、お粗末さまでした」

「口に合って何よりだ、ボス」

 

 1番最初にナジェンダがそう言って席を立ち、それにつられるように他のメンバーも食事を終えて各々の部屋で戻っていった。

しかし、ハドーはまだ部屋には戻らず、食堂でキバットと共にグラスに酒を注いで煽っていた。2年程前から嗜む程度に飲み始めた酒だが、今は飲みなれてくると美味いと感じるものになっていた。

 

「お前からのカミングアウトに驚いたぞ」

『お前は自分の事を知らなすぎるぞ。お前の母の家系ぐらい知っておけ』

 

「あまり興味がなかったものだからな。例え知っても、俺やお前、ナイトレイドの皆んなとの関係が変わるわけでもないだろ」

『ふっ、そうだな』

 

キバットと酒を酌み交わしていると、食堂の入り口からシェーレがひょっこりと顔を出した。

 

「まだ起きていたんですか、ハドー?」

『俺もいるぞ』

「俺は炊事係かつ医師だからな。お前達の健康を整える役目もあるからな。そろそろ来る頃だろうと思ってシチューを温め直しておいたぞ」

 

 首を傾けてシェーレの後ろにいるタツミを視線を送る。彼は何か言いたげだったが、キバットを頭に乗せたハドーは調理台に立って温め直したシチューをシェーレとタツミの前に差し出す。

 

「食べろよ。腹にモノを貯めなければ明日の訓練は耐えられないぞ?」

「あ、あぁ……」

「ありがとうございますねハドー」

 

タツミとシェーレはシチューを口にし始めたのを確認すると別の料理を暖め始める。

 

「今までシェーレに慰められたんだろうからそこまで言わないが。お前が思った事は決して恥ずかしいことでも悪いことではない。だから気にするな。アカメやブラート、コイツもお前を心配して言ってくれたわけだからな」

『心配なぞせん。ムカついただけだ』

 

「おい!」

「……ありがとうな、ハドー、キバット」

 

「気にするな」

『ふんっ!』

 

ふくれっ面のままキバットは部屋へ戻り、そんなキバットを流し目で見ながら、それ以降言葉を発さなかった。そして、タツミも少しだけ気が楽になったようで彼の口元が緩んだのだった。

 




とうとう判明しましたダークキバを使うために必要な3つの条件!
1つ目が皇帝の一族であること。
2つ目が王の資質を持っていること。
3つ目が帝具との相性。
という感じです。このためハドーと始皇帝を含めても資格者は10人しか居ません。

余談として、イェーガーズのオリキャラライダーのヒントを出します。

ヒントは、“赤くて速いライダー”です!!

では、次回もまたお楽しみ下さい!!


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第12話 お前の罪を数えろ!

申し訳ありません。リアルが忙しく中々執筆作業が進まず、ズルズルと遅くなってしまいました。とりあえず、出来立ての話です。因みに、今回の話は、アカメが斬る1.5短編集のラバックが主役であったピュア先生の話です。

※所々甘い展開がありますのでブラックコーヒーをお手に。


 タツミがシェーレによって慰められてからも月日は流れていく。その中には、野党によって両眼を失った少女をタツミとシェーレがアジトへ連れてきてしまったこと、先代のインクルシオの所有者であるゲンセイ率いる人のこころを修羅へと変貌した武人たちのなれ果てである眉雪会との激戦などといった暗殺と日常を重ね合わせながら、革命への一歩を着々と進めていく。

 

そんな彼らナイトレイドのある日。

修練場でタツミは教育係の番が回ってきたハドーによって押さえ込まれていた。

 

「ぐぬぬぅぅッ!!」

 

 地面とハドーの間に挟まれる様にいるタツミは、身体中に力を入れハドーの拘束から逃れようと試みるが、原因は不明だが抜け出せずにいる。そんなタツミをハドーは流し目で拝見しながら、服の上からでもタツミの筋力が以前よりも格段に上がってきていることを改めて理解する。そして、数分もの間のタツミの抵抗も虚しく彼は白旗を上げ、ハドーに降参する。

 

「クッソォォ!なんで勝てないんだ!?」

「単純な話だ。お前は全体に力を入れ過ぎのあまり筋肉を硬直させてしまい、簡単に間接技を決めさせる要因を作った。さらにお前は、力に頼りすぎるあまり敵から受ける力を流すということをしていない」

 

「うーん?中々難しいのな。俺ってば、ハドーみたいに受け流す柔関連の技とか苦手だから」

「人には向き不向きがある。しかし、俺たちはいつ死ぬかも分からない日常を送っている。苦手とは言え、初歩関連はお前の身体に叩き込んでやる」

 

「おう!頼むぜハドー!!」

「意気込みはいいな。だが、気合いだけでは生き残れはしないぞ」

 

 ニカッと暗殺者とは思えないほどの明るい笑みを浮かべてくるタツミに、少々複雑そうな表情をするハドーは、タオルとともに水筒を手渡す。

 

「うぅ…アニキにも言われることだからな」

「常にココロは熱く、頭はクールにしておけ。俺もナイトレイドに入りたての頃は熱いせいで、ラバに怒られたことがあるからな」

 

「へぇ〜そうなのか、意外だな。仕事の時とか、剣を握った時とかハドーはクールなのにな」

 

 暗殺の依頼を行う際に冷徹なまでに冷静に対処するハドーを見ているタツミは、信じられないと言いたげに驚いた表情を浮かべる。目を見開くほど驚きを露わにするタツミをおかしそうに見下ろしながら、ハドーは少し懐かしそうに語る。

 

「オレが初めて標的として帝具使いと相対した時、相性の悪さでアカメが倒されていた時、冷静さを欠いて飛びかかりそうになったんだ。その時は、ラバにキバットもいたお陰で危なかったがな」

「あ、あのアカメがやられるってやべぇな」

 

「その時の相手は風を操る上に、近づいたら周囲の空気をなくし、無空状態にする奥の手を有していたからな。近距離による接近戦を得意とするアカメでは相性最悪だから。だが、何とか俺とラバの連携技で倒すことには成功したし、その帝具も革命軍が所有している此方は戦力増強もできた」

「何事も慌てず、常にその時の最善を尽くすってことだよな!」

 

「そう言うことだ。それと、コレはアカメ以外のナイトレイドの皆が了承してくれた大事なことを伝えるぞ」

「なんだよ。大事な事って?」

 

そして、今度は明らかに先程とは雰囲気が違うハドーに訝し気な眼差しをタツミは向ける。

 

「いずれ俺は、アカメの血だけでは抑え切ることが出来なくなる日が来る。そして、その時の俺はおそらく人のココロを失い、血を求めるだけの怪物に成り果てるだろう。その時は……………俺を殺してくれ」

「なっ!?」

 

 悲痛な目をするハドーから底知れぬ覚悟を感じ取ると共に、仲間である自分達に自らを撃つように懇願するとは思っていなかったのか、タツミは大口を開け持っていた水筒を取りこぼすほど驚きを露わにする。

 

「今のお前には早いかもしれないが知っておいてほしかった。例え、俺を斬る覚悟が出来なくてもいい。人のココロを失った俺からアカメを……ナイトレイドの皆を護ってくれ。おそらく、アカメは自分の血が無くなるまで俺に飲ませてでも救おうとしてくれるだろう。でも、俺はアカメにそんなことをしてほしくない。アカメの命を代償にしてでも、俺は生き永らえようと思わない」

「で、でも!」

 

いつの日か、ココロを失うことを予期しているハドーは、詰め寄ってくるタツミの胸部にそっと拳を当てながら、話を続ける。

 

「頼む。お前を男として、見込んで頼む。俺からアカメを……ナイトレイドの皆…家族を護ってやってくれ」

「…………………分かった。でも、俺だって諦めないからな!」

 

 ハドーの覚悟を汲み取ったタツミもまた自らの決意の証としてハドーの胸部に拳を当て、覚悟の炎を宿す瞳で言葉を繋ぐ。

 

「あぁ、わかった。

 

元気のいい返事をし、タツミはハドーとともに支度を済ませて傷薬の作り方を教わりつつ薬草採取を行うのであった。

 

 

 

♦♦♫♦・*:.。♦♫♦・*:.。♦♫♦♦

 

 

 日が沈みかける夕方にハドーとタツミはアジトに帰還した。目的の薬草の他にも、道中遭遇したアブルファンゴを狩ったため夕食には又しても肉料理となったのは余談である。

 

 そして、食後の運動としてブラートは素振りへ、タツミとマインは帝都から戻ってきたラバックから大人気マンガ『オーダーマン』の作者ピュア先生の話を聞いていた。暗殺者としてではなく、貸本屋としてのラバックと交流があるピュア先生は、人当たりが本当によく、困っている人を見捨てることの出来ない帝都に数少ない善人の1人である。

 

「その先生の描くオーダーマンってどんなマンガなんだ?」

「知らないの?ホント、アンタって田舎者なのね〜」

 

ピュア先生が描く漫画に興味を持ったのか、少年のように瞳を輝かせるタツミに対し、マインは相変わらず小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。田舎出身なため帝都のことを詳しく知らないタツミは田舎者であることを否定できず、悔し気に下唇を噛み締める。

 

「読んでみろよ。少年のお前向きだぜ」

「そ、そうか。俺ってば結構精神年齢上がって来ているんだぜ。コレでも」

「私も知らないので一緒に読ませて下さい」

 

 分かりやすくソワソワしているタツミとともに後ろからシェーレも興味深そうに顔を出す。その後、タツミとシェーレはともに少年漫画である『オーダーマン』を読むのであったが、シェーレは早々寝落ちしてしまう。しかし、タツミは黙って1人で読み続け全てを読み切るや否や、立ち上がる。

 

「アニキィ!俺とオーダーマンごっこやろうぜ!!」

 

そして、先程まで精神年齢が上がっていると発言していた者とは思えないほど幼稚というのか、少年心の極みというのか分からなくなるほどの遊びに素振りから帰ってきた歳上のブラートを誘う。

 

「いいだろう!!俺も熱い物語は大好きだぜ!!」

 

 対する大人の筈のブラートも乗っかり2人して、ヒーローごっこへと走るのであった。そんな2人をちょっと混ざりたそうなナジェンダと、うたた寝をしかけているシェーレ以外の女性陣であるレオーネ、マインはドン引きしたかのように呆れる。そんな2人を置いて、キラキラと瞳を輝かせるタツミはハドーにも声をかける。

 

「なぁ!ハドーもやろうぜ!!」

「悪いが遠慮する」

 

しかし、彼はその誘いを断る。

 

「なんでだよ!熱いヒーローものは、男のロマンだろ!!」

「見て分からないのか。今の俺は———」

「コラ、ハドー起き上がろうとするな」

 

 

起き上がって理由を話そうとしたのだが、アカメの声が頭上から聴こえてしまったので、ハドーはしぶしぶ寝転がるのであった。

 

 

「アカメにマッサージして貰っている途中だ。だから、参加せん。マインに頼め」

 

 

 レオーネ仕込みのマッサージをアカメはハドーに施しているため、2人の参加を断念したタツミは燃え上がり続ける熱意のままマインを願い続けるのであった。その結果、キレたマインがパンプキンを取り出しブラートとタツミに襲いかかってしまったことで、ごっこ遊びはオーダーマン役がタツミ、ヒロインであるレディオーダーマン役を何故か嬉々としてブラートが、敵役がマインという図式になってしまうのであった。そんな3人を呆れたように眺めつつも、思いの外アカメのマッサージが心地いいのか、だらし無いような間抜けな顔になり始めるハドーはアカメのマッサージを堪能するのであった。そんな2人を相変わらずラバックは血の涙を流さんと言わんばかりに嫉妬の鬼と化しかけるのだが、ナジェンダの拳骨によって強制的に沈静化させられるのであった。

 

「全く、コイツらは。それよりもレオーネ依頼進展は?」

「いんや全然」

「どんな内容でしたっけ?」

「確か、娘が行方不明になった父親からの依頼だったはずだ」

「あ゛ぁ、む娘は家出をす、するような子じゃ、すまんアカメ…もう少し腰を強く押してくれ。あ゛ぁぁソコソコ。するような子ではなく、もしも犯罪的な…ぐぅ…ことに巻き込まれているのなら、そ、ソイツらを殺してくれという…い゛依頼だ」

 

 ごっこ遊びに参加できなく少し残念げなナジェンダは気を取り直して、レオーネに今請ている暗殺の依頼についての情報を整理する。そんな2人の会話に眠りかけていたシェーレ、ハドーにマッサージ中のアカメ、されているハドーも参加し、改めてどの様な内容であるのか、再確認する。

 

「テメェ!アカメちゃんに黙ってマッサージされるか、ちゃんと喋るかどっちかにしろ!!話が聞き取りにくいんだよ!!つーか、ソコ変われェェェ!!」

「標的がハッキリしない以上雲を掴む様なモノだが、もしものことを考えてラバック、レオーネ。もう少し帝都を探って来てくれ」

「りょーかい、ほら行くぞーラバ〜」

 

「ちょちょっと待ってレオーネ姐さん!ハドーを殴らせて!殴らせてぇぇぇ!!」

「ハイハイ、2人のラブっぷりは今に始まったことでもないだろ」

 

 レオーネに首根っこを掴まれながらラバックは、彼女とともに帝都へ調査に向かうのであった。

 

「どうだ、ハドー。レオーネの様に上手く出来ているか?」

「あ゛あ゛、マジで気持ちい゛い゛。さいごぉ〜〜〜」

 

 どことなく甘〜い雰囲気を出すアカメとハドーを面白そうにナジェンダは眺めているとテーブルで1人酒を飲み続けるキバットが耐えキレなくなったのか、眉間にシワをよせ始める。

 

『全く、随分と間抜けヅラになったモノだな』

「そー言ってやるな。たまには、あぁいうリラックスも2人には必要なことだ。しかし、いい加減に身を固めてくれないものかな」

 

 そんな2人の声がタツミたちのごっこ遊びでかき消されてしまったため、ハドーとアカメの耳に入ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハドー爆発しろ!!

 

 ♦♦♫♦・*:.。♦♫♦・*:.。♦♫♦♦

 

 

 

 その日の深夜の内に異民族の男によって、見知らぬ女性が拉致されそうになっていた現場に出くわしたピュア先生は自らの善意のままに飛び出す。その結果、ピュアは重症を負うものの調査に来ていたラバックの機転によって助かる。そして、漫画家としての絵の才覚によって一瞬の内に、その異民族の男の似顔絵を描き、ラバックに託し、力尽きるように意識を失う。

 

 その後、ラバック、レオーネ、ハドー、タツミ、マインの調査によって、たった数時間で、その男のアジトを発見する。そして、その男こそが連続女性行方不明事件の首謀者であることを突き止め、夜襲をかけることとなる。

 

「なぁラバ、なんでオーダーマンの面なんか被ってんだ?」

『俺たちのパクりか、小僧』

「チゲーよ!ピュア先生の分も乗っけて、悪人を裁くんだよ。そのためにちょっとオーダーマンの力でも借りようって話だよ」

「なんだが、ラバのくせに生意気ね」

 

「えぇぇぇぇ何で!俺結構カッコいい言ったのに!?」

「いい加減に漫才も終わりにしろ。行くぞ、奴等もそろそろ古代危険種を目醒めさせようとするぞ」

「標的…異民族全員。皆、気を引きしめろ」

「「「「「了解」」」」」」

 

 

 ナジェンダ以外のナイトレイドのメンバーはそれぞれ気配を殺し、建物へと潜入する。すると中では、数十メートルはある巨大な卵を祭壇に置き、その側に死した3人の年若い女性を貼りつけにしていた。そして、その側には男と同じような装束をした異民族の者達が何十人も狂ったように祈りを捧げていた。

 

「間もなくだ…間もなく我らの大願が成就する。生贄の血によって古代危険種バルルキングの卵は孵化する。そして、目覚めたバルルキングによって、お前たちの帝都は地獄へと化す!我らの一族の復讐は果たされるのだぁ!!」

「狙いをベラベラと喋ってくれてありがとよ」

「お陰で貴様達が何をしようとしていることも把握した」

 

儀式に夢中でいた異民族の者達はラバックとハドーの声に驚愕し儀式を中断する。

 

「誰だ!?」

「貴様たち……」

「悪を斬る者さ」

 

声のする方を振り返ると、オーダーマンの仮面を付けたラバックと顔に魔皇力によるステンドグラスの様な紋様を浮かび上がらせるハドーがいた。

 

「「さぁ……お前たちの罪の数えろ」」

 

 その言葉を合図とする様に、物陰にいた他のナイトレイドのメンバーが次々と現れ、異民族の者達全員を取り囲む。

 

「全員生かして帰すなぁぁ!!」

「行くぞ、キバット」

『有り難く思え!絶滅タイムだ!』

 

「変身」

 

 ダークキバへと変身したハドーは向かってくる武装した異民族の者達に正面から突っ込んでいく。ハドーの無策に異民族の者達は不敵な笑みを浮かべるのだが、近くの建物を支える柱が死角から現れたシェーレによって両断される。その結果、前列にいた者たち数人は柱を避けることが出来ず、踏み潰され圧殺される。そして、倒れた柱を踏み台にし飛び上がると、ジャコーダーをキバットに噛ませる。

 

snake(スネーク)bite(バイト)

「スネーキングデスブレイク」

 

 魔皇力によって強化させた、ジャコードビュートで祭壇に鎮座している卵の中で眠っているバルルキングの心臓目掛けて、その切っ先をハドーは突き出す。刺し貫いた感触を確認し、ハドーは標的であるバルルキングへと鎧の魔皇力をジャコーダーを通して流し込む。すると、魔皇力に耐え切れなくなったバルルキングは、数秒と待たずに卵諸共粉々に爆散する。バルルキングの死滅を確認したハドーは、周りを見渡すと既にラバックが相手にしている首謀者の男以外他のメンバーたちによって異民族の者達は全滅させられていた。

 

「悪を斬ると言うのなら貴様ら…帝国を討て!!」

 

 ラバックのクローステールによって四肢の動きを封じられた男は怨嗟に満ちた叫びを上げる。

 

「それも討つよ……逝った先で見てな」

 

そんな男の叫びに対し、ラバックは不敵な笑みを浮かべ、男の頸を180°回転させ、頸の骨をへし折り絶命させる。

 

 

「作戦終了…帰還する」

 

アカメの言葉に全員が頷き、彼らはアジトへと帰還するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

任務を終え皆が寝静まる中ハドーの部屋では、

 

「ぐぅ……はぁはぁはぁ…っ!」

「我慢するな、吸いたければ吸えと言っているだろ」

 

パジャマ姿のアカメは苦しげにする彼に寄り添っていた。

 

「だ、だが…こんなペースでお前の血を吸ってばかりいては…」

「私がいいと言っているんだぞ」

 

 魔皇力を使っては直ぐにアカメの血を求めてしまう自分の身体に、ハドーは少しでも忍耐をつけさせようとするのだが、思いの外上手くいっておらず、アカメに襲いかかりそうになっている。

 

「もういい。お前がそこまで強情になると言うのなら、私も強行手段を取る!」

「強行ってまさか!?分かった!!分かったから待っ——」

 

「もう遅い」

 

 アカメの言葉の意味を理解したハドーは慌てて、彼女を止めようとするのだが衝動を抑えるのに必死であったため止めることができず、

 

「ん………」

「んん………っ!?」

 

彼女に唇を奪われ、口移しで血を流し込まれることとなった。

 

「ん……ぅんん…はぁやくのメェ…!」

「……んちゅ…あ、ふぁかめぇ……」

 

 アカメが血を飲ませようとしているのだが、以前と違いハドーを押し倒してはおらず、今回は2人ともベッドの上で座っているせいで、アカメがハドーの胸の中に入り込む形で口移しをしているので上手くいかず、ただ舌を絡め合う結果となっている。しばらく、アカメとハドーの攻防が続くのだが、押し寄せる衝動のほかにも来るモノ(・・・・・・・・)があるのか、軍配はアカメに上がる。

 

「んっ!んんちゅっ……ん…くちゅ……んあぁっ!ふぁ、ふぁろ…」

「………ゴメン…もう少しだけ……我慢してくれ…」

 

 送り込まれる血を舌で汲み取りつつもハドーは、アカメの口内にある血を全てを飲み干すべく彼女を強く抱き締め、逃がさないかの様に彼女の後頭部に手を添えて位置を固定する。

 

「……わかった。ハドーの…気が済むまで…吸ってくれ」

「………ゴメンな。いつも、痛かったら…言ってくれ……んっ」

 

 そして、アカメの了承を得てハドーは彼女をゆっくりと寝かせ、まだ彼女の口内に残っている血を舌で汲み取りつつ吸い出していく。その途中で、彼女の舌と絡め合うことが何度かあり、数分後には2人は単なる血の口移しではなく、深い口づけに変わっていたことには気づかず、

 

「んんんっ!……あぁっん……ぅんん…らぁ」

「ゴクっ…んちゅ…んっ!んん……ゴクっ!」

 

自分の血と思い込みアカメは唾液をハドーへと送り続け、対しするハドーもアカメの血と思っている彼女の唾液を荒々しく吸い出していくのであった。

 

 その後、アカメはかつて同性愛者であるメラから受けたセクハラまがいのキスとは違うハドーとの口づけの快感によって、首筋の血を吸わせて終えた後、彼と一緒のベッドで眠りについてしまうのであった。そして、次の日の朝、朝食作るためにハドーを呼びに来たタツミは、髪と服が乱れたアカメと一緒に寝ているハドーを目撃してしまい、色んな意味でいつもよりも騒がしい朝を迎えることとなったのは余談である。





マジでハドー爆発しろやぁぁぁぁぁ!!


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