月より美しく、儚い小娘 (蓬莱山えーりん)
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月より美しく、儚い小娘
満月が輝き、暗く淀んだ村を、森を照らす。
遠くには店を閉めようとしている人間が見える。
近くには夜だと言うのに妖精が空を飛んでいるのが良く見える。月光は大きく紅い、ある館を照らしていた。
時は亥の刻(21時頃)。少女は館の窓から体を出し、膝をついて月を見ていた。
「ああ、退屈。この時間に外に出ても何も無いしねぇ。」
そうボヤくのは、この大きく紅い館____『紅魔館』の主…レミリア・スカーレットだった。
「咲夜、何か面白いことないかしら?」
「お嬢様、今宵の月を見ながら紅茶を頂くのは如何でしょうか?」
そう答えるのはこの館のメイド長を務める、十六夜咲夜だった。
「そう言えば巫女のところに行ってたから、今日の紅茶を嗜んでいなかったわ。今すぐ持ってきて頂戴。」
「かしこまりました。少々お待ちください」
メイドは紅茶を入れに、部屋を出た。恐らく3分……いや、1分も掛からないであろう。彼女は時を操る能力を持っているのだ。
「さて………」
巫女や魔法を使う人間はもう寝た頃だろうか?レミリアはそう考えながら美しく光る球体を見つめていた。
そして、昨日の夜中のことを思い出した。
「……」
昨晩、レミリアは初めて人間を抱いた。その感触はどの妖怪でも味わうことのなかった、暖かさがあった。自分は吸血鬼で、死ぬことは無い。私はあの子の死を見届けなければならない。彼女は人間に関心などなかった。……あのメイドが来るまでは。
抱いたあの日、私は恐怖を覚えた。人間が死ぬことに、自分の目の前から日常が突然無くなることに。勿論、自分達の仲間にしようともしたが人間はそれを拒んだ。理解できなかった。私の出会ってきた人間は全て不老不死に憧れ、私欲の塊だった。なのになぜ。
貴女は私が一番大切な人間。一番離れたくない人間。一番____
「お嬢様?」
声がした方に向くと、彼女がいた。
「どうされましたか?呼びかけても返事がなくて……」
少しぼうっとしていたようだ。私は暖かい紅茶を受け取った。能力で冷めないようにしてくれたのだろう。
「いえ、大丈夫。紅茶、ありがとう。」
「今日の紅茶は月を見ながら呑むと風味が増します。(根拠はない)さしずめ、月見団子ならぬ月見紅茶…といったところですか」
「それは楽しみね。……貴女も1杯いかが?」
「いえ、私は……」
「ふふ、遠慮しないで。月見紅茶、楽しみましょ?」
いや、今はこれでいい。死ぬことなんて考えるな。ああ、貴女は……月より美しく、儚い……
初めての小説、上手くいってるか不安で不安で……でも、描いていて楽しかった!
よければ感想、お待ちしておりますm(_ _)m
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