気付いたら、カルデア新所長だった件 (雪風冬人 弐式)
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ゴルド新所長の主人公、あんま見ないなー。
嫌な顔しながら、おパンツ見せてくるメイドは、最高だぜ!!
的なノリで思いついたネタです。

あんまり深く設定は考えていません。それでもOKな方はどうぞ。


大体、4話ぐらいで終える予定です。


 ある日気付いたら、FGO2部から登場するカルデアの新所長、ゴルドルフ・ムジークになっていた。 何を言っているか分からないだろうが、自分もよく分からん。

 憑依なのか転生なのか、はっきりとしないが、幼少の時に両親より自分の名前を呼ばれて頭の中にFateを含めた前世の知識がいきなり甦ったのが、気付いたキッカケだった。

 そんなわけで、原作から逃げようとしたが、現実は非情であった。

 恐らくあの有名な抑止力くんが、仕事としたんだと思う。

 なぜなら原作乖離をしようと行動すると、戦え……、多々買え……、って声が響いて体が思った通りに動いてくれない。アラヤせんせー、カルデアの利権を多々買えって、こと何でしょうか?

 そんなこんなで、逃げるのは無理っぽいので出来る限り楽に生き残れるように頑張ります。

 ゴルドルフ・ムジーク、13歳のとある夏の日の心境であった。

 

 

 

ー―ーあれから、十数年の時が流れて現在。

 

「マスター、マスター!」

「…ん?すまん、ぼーっとしていたわ」

「間もなく、到着する。私達が付いているとはいえ、気を抜きすぎても困るぞ」

「ああ、すまない。助かったよ、ラクシュミー」

 

 過去を回想してぼーっとしていたら、メイドの言葉にいつの間にか目的地間近になっていたことに気付く。

 とうとう私が、カルデアの新所長となって施設に赴任する運命の日となった。

 今、カルデアの施設に向かうヘリの中だ。

 あの決心の日より、ご都合主義っぽいイベントに遭遇したりして様々な縁を結び、考えうる限りの対策はこうじてきた。

 それが、吉と出るか凶と出るか、あと一日でその結果が出るかと思うと、緊張してきた。

 ヘリが意外と揺れるから、乗り物酔いしそう。

 

「むむ。顔色が良くないですよ、マスター。ささ、この沖田さんが膝枕してあげましょう」

「ほんと!?わーい、流石は沖田さん」

 

 対面に座っていたメイドが、スカートを捲って太ももをポンポンと叩きながら魅惑の提案をしてくる。

 内なる欲望に従い、ツルツルとした輝きを放つ理想郷へダイブしようとするが、隣に座っていた先程声をかけてきたメイドに思いっきり脇腹をつねられた。

 

「マ、ス、ター?」

「イタイイタイ!ゴメンってば!」

「オキタもオキタだ。これから、私達の命運を賭けた戦地へ赴くんだ。気を緩めていたら、敵に付き入る隙を与えるだけだぞ」

「まーまー、ラクシュミーさん。気を張ってばかりいても、疲れるだけですよ」

「少なくとも、怠ける誰かよりはマシだ」

「おやおや?」

「んん~?」

 

 二人が立ち上がり、徐々に距離を詰める。

 心なしか、二人の視線の間に火花が飛び散っているようにも見える。

 一発触発の空気となる機内だが、不意に二人の間に一振りの鎌が現れる。

 

「お二人とも、いい加減にして下さい。今日のプランを台無しにする気ですか?」

 

 鎌を振り下ろしたのは、これまたフードを深く被ったメイドであった。

 苛立っているのか、言葉の端に棘が見える。

 さらに、フードの影から覗く瞳のハイライトが消えていた。

 

「落ち着け、グレイ。緊張を解す為の、二人のちょっとしたジョークだよ」

 

 なっ、っと同意を求めると、二人は必死に首を縦に振ってくれた。

 

「そ、そうそう。沖田さんとラクシュミーさんは、大の仲良しですよ!」

「そ、その通りだ。喧嘩するわけないじゃないか」

「「イッツ、ジョークさ!HAHAHA!!」」

「そうですか。どうやら、拙が勘違いしていたようです。お二方、申し訳ありません」

 

 ぎこちない笑みを浮かべながら、如何にも私達仲良しです、と露骨にアピールする二人を見て納得したのか、静かに鎌を仕舞って着席するメイド。

 それに伴って、剣呑だった二人も着席する。

うーん、やっぱこの二人を一緒にしたのは不味かったかな。

 まあ、今更嘆いても仕方ない。既に賽は投げられたのだからな。

 

『目的地に到着しました。間もなく、着陸します』

 

 機内のアナウンスに、カルデアに着いたことが分かり窓から外を覗く。

 隣には今はヒトの皮を被った、侵略者の二人が乗ったヘリが見えた。

 明日、俺の行動次第で自分自身の運命が決まる。ついでに、人類の命運も。

 外を見つめながら我知らず、ギチギチと拳を強く握りしめてしまっていると、温かい感触で包み込まれたのを感じた。

 

「大丈夫だ、マスター」

「そうです!マスターには、私達がいます」

「マスター。貴方は、一人ではありません」

 

 いつの間にか、三人のメイド達が近寄って手を握ってくれていた。

 

「フッ。従者に励まされるとは、私もまだまだ修行が足りんな」

 

 ようやく、カルデアに着陸したヘリのドアが外側から開けられる。

 

「お疲れ様です、マスター。お手を」

「うむ。大儀である」

 

 雪が少し振っている為か、黒い傘を差したメイドが傘を持っていない手を差し出してくる。

 その手を握った時、メイドの手から密かにUSBメモリが手渡される。

 地面に降りて、服の内ポケットから懐中時計を取り出す自然な動きで隠して受け渡しを悟られないようにする。

 

「……道中、目標の思考はその中に」

「……よくやった、香子」

 

 不自然にならないように傘を使って顔を隠しての会話。

 さて、ここからが本番だ。

 

「お二方共、お待たせして申し訳ない。さあ、私の物となったカルデアに入ろうじゃないか。私の躍進が始まると思うと、笑いが止まらなくてね!ワハハハハ!!」

 

 ごく自然な表情で、自分の権力を見せびらかしたい金持ちを演じる。

 相手に取って、騙しやすいカモだと写ってもらえればそれだけ作戦の成功率は上がる。

 逝くぞ、ゴルドルフ・ムジーク。

 プライドや羞恥心は捨てろ。

 度胸の貯蔵は十分だ!




何で、彼女らがメイドかって?
私の趣味だ。良いだろう?

感想待ってまーす。


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予想以上に皆さまに読んでいただいて、驚いています。
感想、評価をいただきありがとうございます。

自分の趣味とご都合主義全開で行くので、ついて来れる奴だけついて来い!

あと、ぐっちゃんと項羽様のカップリングこそ至高!という方には不快にさせてしまうかもしれない表現があります。

それでも、気にしないという方は、改めてどうぞ。


 唐突だが、過去の話をしよう。そうあれは、一年ほど前のことだった。

 原作でいうところの、第一部の人理焼却が行われる時期。

 これが始まるまでが、私の自由に動ける準備期間のタイムリミットだろうと考え、趣味と実益を兼ねながら世界中を駆け回った。

 表向きは私の趣味の一つとされている、カーレースへの参加。

 裏は原作知識を生かした、ある人物達のスカウトと亜種聖杯戦争への参加。

 この世界は、Apoの要素も混じっているらしく、各地で亜種聖杯戦争が執り行われていた。

 金とコネにものを言わせて情報を掴むと、現地へスカウトした人材を派遣し、時には自ら乗り込んで勝ちはしなくとも、聖遺物や魔力リソース、運が良ければ受肉したサーヴァントを雇っていった。

 そして迎えた、人理焼却が行われる7月のあの日。

 ぐだ男かぐた子かどっちかは知らないが、人理修復は任せた、と寝床について私は意識を手放したのだった。

 が、しかし、運命とはそう甘い物では無かった。

 あれか。一年ぐらいぐっすり眠れるぞい。例えカルデアが失敗しても、苦しまずに逝けるし、今まで散々美人なメイド達を口説いてパフパフしてきたから、悔いはないや、なんて思ったのがいけなかったのか。

 気付いたら、屋敷じゃなくて見覚えのない畦道で寝転がっていた。

 

「ちくしょうめぇ!知らない天井だ、ってネタやりたかったけど、天井すらナイじゃないかッ!!」

「およよ。あれ、もしかしてゴルドルフくん?」

「ん?誰だ、ってウェイ!?」

 

 どうしようもない現実に苛立ちを募らせていると、背後から私を知っていると思わしき人物が声を掛けてきた。

 誰だろう、と振り向くとガチで知人だったので驚き、変な声が出てしまった。

 

「何で貴女が、ここに居るんですか、武蔵師匠!!」

 

 そう、まだ中坊ぐらいの時期にムジーク家の庭園で腹を空かせて行き倒れていて、助けた見返りに護身術とか大人の階段的なことを色々と教えてもらった師匠。その名も魔境JAPANが生み出した頭おかしいSAMURAIの一人、宮本武蔵である。

 この人に出会ってなければ、私の体型は原作通りとなって結果にコミットできていなかっただろう。

 現在はキチンと引き締まった体型だが、気を抜くと直ぐにお腹が出てしまうので油断大敵だ。

 しかし、食材を目にすると、多々買え……、多々買え……、って声がするけど、ぽっちゃり体型にならないといけないのも、もしや抑止力案件なのだろうか。

 

「お~、やっぱりゴルドルフくんだったか。久し振り、すっかり男らしくなっちゃって。……ジュルリ」

「師匠、盛ってないで、ここが何処か教えて下さい」

「や、ゴメン。私もこの世界は来たばっかだから、よく分かんないや」

「ふむ。困りましたね」

「そうだね~。ところでさ」

 

 携帯もネットも繋がらず、どうしようか途方に暮れていると、不意に肩を叩かれて師匠が上空を指差した。

 

「アレは、お知り合い?」

「アレ?」

 

 視線を空に向けると、人影がこっちに向かって落ちて来ているのが見えた。

 

「……ギャァァァァァアアアアアアアアアアア!!ヘルプ!ヘルプ、アスク、ミィィイイイイ!!」

「親方、空からナマモノが!」

「ナマモノって、酷くない?」

 

 魔術で強化した視力で、落ちている人物を見るとこれまた、思いっきり知り合いだった。

 まあ、あいつなら上空から地面に叩き付けられた程度じゃ死なんから、全力でネタに走る。

 そうこうしてる内に、地面に落ちると思いきや、あいつは空中で身を捻って体勢を変えると、片膝を立ててシュタッ、とカッコよく着地した。

 

「スーパーヒーロー着地!?スーパーヒーロー着地よ、ゴルドルフくん!!あれ、絶対膝を痛めるよねッ!!」

 

 着地に仕方がツボにハマったのか、バシバシと自分を叩きながら興奮して声を荒げる師匠。

 

「ちーっす。どうして、貴女がここにいるんですか、ぐっちゃん?」

「お、お前、ゴルド、ルフ、か。私が、知るわけ、な、いでしょ、うが」

「横になったら?」

「そうする」

 

 着地で膝を痛めたらしく、プルプルと震えるぐっちゃんこと、虞美人。またの名は、芥ヒナコ。

 おかしいな。彼女は、今はカルデアで爆破に巻き込まれた筈なのに。

 

「私も本当にどうしてか、分からないわ。カルデアでコフィンに入って、レイシフト直前に意識を失って気付けば落ちてたんだから」

 

 メガネをクイッとして、知的な雰囲気を醸し出すが、いつも持ってる本を枕にして、横になって未だに膝の痛みで痙攣しているという、シュールな絵面だ。

 

「ねねっ、ゴルドルフくん。仲良さそうだね。もしかしてこの子、コレ?」

 

 小指を立てて興味津々といった感じで、聞いてくる師匠。

 それを見た、私とぐっちゃんは奇しくも同時に返事をした。

 

「「いいや、セフレ」」

 

 あまりの衝撃発言だったらしく、師匠はフリーズしてしまったので、仕方ないから痛みから復帰したぐっちゃんと片腕ずつ抱えてまるでエイリアンを連行するが如く移動したのだった。

 その後、迷い込んだ世界は並行世界の江戸時代初期、現在の千葉県辺りの下総国であり、英霊剣豪なる虐殺を繰り返す集団とかち合ったり、変な坊主に目を付けられたりしながらも、元の世界へ戻る算段をつけることができたのだった。

 でも結局、元の世界には戻れずに明らかに、原作でいう期間限定イベントや1.5部の特異点に巻き込まれたんだよな。

 不幸中の幸いか、途中から自分のメイド達とも合流出来て、新しいメイドが増えたから何とか攻略は出来たけど。

 

 さて、何故私が先程まで過去を回想していたかというと、今向かっているコフィンに原因がある。

 案の定、ダ・ヴィンチ女史からの歓迎されてない歓迎を受けた私は、その足でAチームメンバーが収容されているコフィンを見に来た。

 他の職員やダ・ヴィンチ女史、ぐだ男らへの対応は、例の二人やついて来た魔術協会の方々に任せた。

 ムニエル氏と思わしき職員は、私は院長回診の如くゾロゾロ引き連れたメイド達を見て、血涙を流していたが。

 

「さて、これか。ニトクリス」

 

 目的のコフィンを見付けると、メイドの一人に声を掛ける。

 

「ハッ。出ませい!!」

 

 うさ耳を付けたメイドが杖をかざすと、白い布を被った二足歩行の謎生物、メジェド様が現れてコフィンの隙間から内部へ侵入する。

 

「アヒャヒャヒャヒャ!フヒヒヒヒヒヒ!!」

 

 途端、内側から女の子がしちゃいけないような笑い声を響かせて、コフィンのドアが開いて目的の人物である、ぐっちゃんが転がり落ちた。

 

「イーヒッヒッヒッヒ!ちょ、止め、止めなさいよ!起きた、起きたから!!」

 

 それを見たうさ耳メイドが、杖を振ると脇や足裏をくすぐっていたいたメジェド様が消える。

 次いで、パシャっと感光した音が響き、ぐっちゃんの顔が強張った。

 

「よくやった、アナスタシア」

「恐悦至極」

 

 灰色の長髪で片腕にぬいぐるみを抱えた愉悦スマイルのメイドが、スマホを操作しながら恭しく頭を下げる。

 

「さて、ぐっちゃん。あの写真を項羽さんに」

「分かってるわよ。アー、くりぷたーヲ裏切ルノハツライケド、脅サレチャッタカラ逆ラエナイナー」

「宜しい」

 

 こちらの意図を察したぐっちゃんは、明らかな棒読みで心が籠ってないが誰に聞かせるわけでもないから良いだろう。

 ちなみに、写真はアナスタシアのあの様子なら既に項羽さんに送信済みと推理する。

 

「そういや、お前のメイド隊ってコードネームでもあるの?」

 

 さらに渡したメイド服を見て、私が率いるメイドの一人に紛れさせることを言わずとも察したぐっちゃんが、袖を通しながら聞いてくる。

 

「あるぞ。アベンジャーズだ」

「フフッ。アッセンブルしなきゃね」

 

 こうして、また一つ駒を進めることが出来た。

 運命(Fate)の刻は近い。




 この時空では、ぐっちゃんは新所長の影響もあってアメコミ好きにもなってます。


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承②

ルーキー日間の方ですが、ランキング入りしていてビックリしました。
これも皆さんのおかげです。

4話じゃ無理っぽいので、5話構成になります。…多分

今更ですが、独自解釈、独自設定あります。


『それで、無事に芥ヒナコはこちらの陣営に引き込めたわけか。お見事だよ、我が婚約者殿。早速、式を挙げようじゃないか』

「あと、5年ほどは待て。それと、南極に式場なんてないぞ。つーか、それ以前にウェディングドレス着て外に出たら、それが死装束になるわ」

 

 カルデアに到着した夜。

 予定していた職員達への挨拶周りや協会による査問等が落ち着くと、宛がわれた部屋で外部と連絡を行う。

 もちろん、魔術的にも科学的にも防音してドアの内と外の両方共、メイド達に見張らせている。

 

「で、私はお世辞ではなく、計画の進行具合を聞きたいのだが?」

『もう、つれないではないか。まあ、懸念していたシャトルは、問題なく打ち上げに成功したよ。私も彼女達も変わりなく、初めての宇宙旅行を楽しんでいるよ。最も、君が一緒ではないことを気にしていたがね』

 

 通信の相手は、陶器人形のような白い肌に純金の糸を思わせる細く真っ直ぐな髪の美少女である。

 

「その点は、どうしようもないことだ。私はサーヴァントでもなければ、英雄でもない。少し意地汚い、普通の人間さ」

『冗談は止してくれよ。君が一般人だったら、この世は世紀末になってるよ。しかし、私も噂のカルデアを拝見してみたかったんだがな』

「それは何度も言ったが、この件が片付いたらだ。いくら、未だに疑似サーヴァントの状態とはいえ、お前に何かあったら私がロードに顔向けが出来ん。敵が来ると分かっているそっちよりも、いつ化けの皮が剥がれるか分からないこちらの方が危険だからな。それに、お前の役割はあくまでも宝具での後方支援だからな。本当は、家で待っていて欲しかったが」

『ふん。グレイも君もいない茶会は味気ないからな。そんなことをするぐらいなら、体を動かした方がまだ効率的だよ』

 

拗ねたように口を尖らせる十五歳児。ロリコンじゃないが、可愛すぎて堕ちそう。

 まあ、婚約云々は背伸びしたがる子供のジョークだろう。

 いやあ、小っちゃい頃の、大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになる、発言を思い出しちゃったよ。

 可愛いいのう。癒されるのう。

 

『何はともあれ、無事に帰って来るんだぞ。待ってるぞ、マイダーリン』

「善処するさ。待っててくれ、マイハニー」

 

 最後に通信を切る時に、向こう側で何やら慌てる声が聴こえた気がするが、気にしないでおこう。

 時計を確認すると、午後の9時。夜食を頂くには、丁度良い時間だな。

 

「と、いうわけで、夜食にカレー麺を所望する」

「何が、というわけで、何でちか。この時間に、カップ麺は健康に悪いでち。専属シェフとして、見過ごせないでち!」

「そこを何とか!正月に手伝ったじゃないか」

「確かに立て直しに貢献してくれた、大恩人には違いないでち。だからこそ、でちゅよ!」

 

 夜食を食べにこっそりと厨房に潜入して、持ってきたカレー麺を調理していたら運悪く、今回専属コックとして同行してもらって厨房を取り仕切っていた紅先生に見つかってしまった。

 

「し、仕方ないだろう。本当なら、クリスマスはイバラキンとルヴィア嬢、鈴鹿っちとキャンプする予定だったんだ。それが、サン[タ]が来てパーになっちゃったからせめて、キャンプご飯で雰囲気だけでも、と思ってました。はい……」

 

 段々と紅先生の殺気が濃くなってきて、最後は尻すぼみしてしまう。

 

「まあ、作ってしまったものを捨てるのはさらに論外でち。今回だけは見逃すから、食べてくるでちよ」

「本当!?ありがとう、紅先生」

「そう思うでちたら、食べ物を使って謀をしないで欲しいでちよ。モノを食べる時はでちね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんでちよ。独りで静かで豊かで……」

「今後は、やりません。厨房を汚さないように、食堂スタッフの休憩室で食べてきます」

 

 いくら敵を欺く為とはいえ、食材を利用してしまったことを反省して、カレー麺を持って移動する。

 休憩室に入ると男性のスタッフが一人いて、自分と同じメーカーのカレー麺を啜っていた。

 

「お邪魔するぞ、名探偵殿」

「お構いなく、新所長殿」

 

 休憩室に居たのは何を隠そう、変装した世界的有名な名探偵シャーロック・ホームズであった。

 偶然居合わせた体で、近くに座って共にカップ麺を啜る。

 

「さて、まずは久しぶりだね、ゴルドルフ君。新宿の件は、改めてお礼を言わせて貰おう」

「何、必要だから尽力したまでだ。それで、カルデアを見てこれからをどう推理する?」

 

 お互いに食べ終わると、話を切り出したのはホームズの方であった。

 

「今は語るべき時ではない。と、言いたいがそうも言ってはいられない状況だからね。結論から言うと、種は七つだ」

「そう推理した理由は?」

「一番大きいのは、トライヘルメスで検索した結果だ。後はその他に諸々の証拠からだね」

「そうなると、未知のクリプターが一人はいることになるな」

「ああ。虞美人こと芥ヒナコを助けなければ、未知の敵は生まれなかったけどね」

「分かってるさ。でも、偽善かもしれないが知り合いを敵に回すのは、どうにも嫌でね」

「気持ちは分からないでもないさ。どちらにせよ、明日で君の運命は決まる。過労で全力の出せないことのないように、しっかり休んでおくんだね」

「ご忠告どうも。もし私が失敗したら、その時は頼むよ」

「まあ、出来る範囲で対処はするさ。良い夜を」

 

 先に出て行くホームズを見送り、自分もゴミを片付けて紅先生に明日の朝食にステーキのリクエストをして案の定、却下されてすごすごと落ち込みながら部屋へ戻る。

 人間的にダメな大人の演技を終えて、一息つく。

 出てくる可能性が高い、未知のクリプター。一体、誰なのだろうか?

 私は勝てるのだろうか?

 ともかく、今更悩んでも仕方ない。

 寝不足で負けましたなんて、シャレにならんからな。

 そうして、思考を切り上げて私は夢の世界に旅立つのだった。

 

 

 

 

 

 (地球)を包み込む大いなる宙の中、異星の神は静かに密かに近付いていた。

 狙った星のテクチャを張り替え、自らの七つの根を降ろす為に。

 本来ならば、星は人類は何も出来ずに漂白される筈であった。

 

「イグナ……イグナ……トゥフルトゥクンガ」「ふんぐるいふんぐるい、オン・ソチリシュタ・ソワカ、うがふなぐるふたぐん」

 

 だがしかし、今ここに反撃の狼煙が上がる。



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転 side space

色々と忙しくて間が空いて、申し訳ない。

誤字報告やお気に入り登録ありがとうございます。

今回、俺TSUEEEE要素が過多となっています。
また、設定等もふわっと考えたものですので、公式とは違う部分があるかもしれません。

あと、最初に言っておきます。戦闘描写は苦手だ。

それでも良ければ、続きをどうぞ。


 成層圏を浮遊する、とある大富豪が道楽でメイドの要望に応えて飛ばしたとされるスペースシャトルの中。

 管制室の中には機械だけでなく、見知らぬ言語や魔法陣も刻まれて科学と魔術が交差したようなSFチッキな空間となっていた。

 

「目標、確認。射程圏内に入りました」

「術式起動!マスターに変わって号令する。冠位決指定決戦(グランドオーダー)、開始!!」

 

 その日、世界中の宇宙関連の機関に困惑が広がった。

 地球に接近する一つの彗星とそれに随伴していた七つの隕石が、突如観測出来なくなったのだ。

 だが、その困惑も僅かな間だった。

 人々は自分達が、先程まで何に困惑し、慌てていたのか不思議に思いながらも通常業務に戻り、やがてその出来事を綺麗に忘れてしまったのだった。

 

―――全ては、夢の話。さてさて、ボクももう一仕事しないとね。

 

 何者かの声を聴いた気がしたとある研究員が、部屋の片隅に一輪の花が咲いているのを見かけた。

 しかし、もう一度見た時には消えており、その研究員は見間違いかと結論付けたのだった。

 

 

「団体様をごあんな~い!楽しい楽しい舞台の始まりね!光殻湛えし虚樹(クリフォー・ライゾォム)!」

「さて、取って置きのご開帳といこうじゃないか。刮目せよ、混元一陣(かたらずのじん)!!」

「地に瞬く願いの光。堕ちた月は、無垢なる願いを束ね天を望む。宇宙(そら)に夢を、星天を照らせ地の朔月(ほしにねがいを)!」

「さぁ~て、一仕事した後のボクにこんな大仕事とか。ほんとマスターはクズだなあ。さてさて、あるマスターの話をしよう永久に閉ざされた理想郷(ガーデン・オブ・アヴァロン)

 

異星の神。そう呼称される地球外生命体が、目標の星に根を下ろそうとした時、それは現れた。

 地球に向けて降下している最中に、目の前に昏い穴が開いたかと思うと彼等を呑み込み、気が付いた時には極彩色の空間が広がる大地の上であった。

 

「バカな!!サーヴァントの待ち伏せだと!?」

 

異星の神の尖兵として、蘇ったキリシュタリア・ヴォーダイムと彼によって甦ったクリプター達は有り得ない事態に思わず呆けてしまう。

その隙を逃す程、彼女達は甘くなく本体と七つある本体から延びる根に攻撃が加えられる。 

 咄嗟に防ごうと動くキリシュタリア達だったが、ロシア、北欧、イギリス、南米に根付く筈だった根が閃光に貫かれ、根元から切り払われ、修復不能なほど捻じ曲げられ、押し寄せた波によってポッカリと開いた漆黒の穴に吸い込まれて消えた。

 

「一本でも刈れればいいと考えていたが、四本も刈れるとはね。重畳重畳」

「メイド……だと!?」

 

そして、自分達の前に立ちはだかった人物達の統一された衣装にも、さらに驚くことになった。

 

「ひいふうみい、と。クリプターは六人。おやおや一人、足りないね」

「いないのは仕方ない。ボクらはボクらで、与えられた仕事をするまでだ。美遊ちゃん、辛かったら遠慮なく下がりなよ」

「大丈夫です、マーリンさん。皆さん、魔力のことは気にせず全力で戦って下さい!!」

 

 呆気に取られていると、キャスターと思われるメイド達によって各クリプター達とそのサーヴァントは戦闘に突入したメイドと共に再び別の空間に分断されてしまった。

 残ったのはキリシュタリアとそのサーヴァントたるギリシャの英雄カイニス、異星の神のみであった。

 対峙するのは、七人のメイド達。

 

「メイドセイバー、宮本武蔵!」

「メイドアーチャー、アルテラ・ザ・サン[タ]!」

「メイドランサー、個体名オルトリンデ!」

「メイドキャスター、マーリン!」

「メイドライダー、アルトリア・ペンドラゴン!」

「メイドアサシン、カーマ!」

「メイドバーサーカー、謎のヒロインX[オルタ]!」

「七人揃ってぇ!」

『メイド戦隊、グランドレンジャー!!』

 

 七人のメイドが各々が違うポーズを取って名乗りを上げると、何故か背後で爆発が起きた。

 

「おいマスター、アイツらふざけているがヤベぇぞ。下手すりゃ、冠位並みの霊基まで昇華してやがる」

「グランドサーヴァントが、各クラスで揃っている、だと!それじゃあ、私達はまさか……」

 

 キリシュタリアの前に立つカイニスは彼女達の実力を察して全神経を集中させているに対して、何かに気付いたキリシュタリアは顔を俯かせて体を震わせる。

 それは、武者震いなのか屈辱からなのか、本人にも理解出来ない複雑な感情から来るものであった。

 

「あなた達が地球を漂白して、人類史を造り直そうとするのがどんな想いから来ているかは興味はあります。が、知ったところで意味はありませんので、排除させてもらいます」

「オルトちゃん、言うようになったねぇ。ま、そんなわけで、倒させてもらうわ」

「私ィ、残業はしない主義なんで、抵抗しないと助かるんですが」

 

 メイド達の会話が聞こえていたキリシュタリアは、自分達が厄介者扱いされていることにとうとう自身の理性に限界に限界が来たのを感じた。

 

「我が令呪を持って、従者に命じる!奴等を殺せ。躊躇せず、一切合切滅するんだ!!私達の偉業を成し遂げる為に!!」

「応よ、マスター!目に物を見せてやるぜ!!」

 

 こうして、人知れず人類史を左右する侵略者との決戦の火蓋が落とされたのだった。 




 止めて!ここで戦隊物定番の合体武器攻撃をくらったら、カイニスはやられて戦力が無くなっちゃう!
 そうしたら、自信満々で自分達が正しい人類史を創るとイキってたなろう系主人公っぽいキリシュタリアはどうなっちゃうの!?
 大丈夫、まだ一言も喋らずに退場予定になっちゃってる異星の神様がいるから、まだマシな扱いだよネ!!

次回「キリシュタリア 死す」

※嘘です。

 カルデア側の予定です。


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