君が謳うこの世界で (白黒熊猫の作家)
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身元調査報告書
順次更新していきます。
〔山内 桜良に関する身元調査報告書〕
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〔志雅 ——に関する身元調査報告書〕
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以上の報告書は軍諜報部が身元調査を行い、各審査の元通過した書類である。
本書類は、軍機密保護事項第54条3項に則り、一部を検閲、公開を拒否とし、これを公開しようと試みた者、公開した者には憲兵隊による拘束と軍裁判所による裁判により重罪を下すものとする。
本書類は【検閲】の指示のもと、【検閲】の確認が行われ次第、諜報部地下金庫へ半永久的に保存する。
以下【検閲】
(字数制限の為、用語解説事項を入れるものとする)————————————————————————————————————————————————————
〔機械化航空歩兵〕
魔力を原動力とする「魔導(小説版では魔道。一部には魔導)エンジン」により空を飛ぶことを可能にした「ストライカーユニット」を唯一動かすことの出来る少女「魔女(ウィッチ)」により編成された対ネウロイ戦闘部隊。魔導エンジンにより魔力を増幅することによって、通常の人が持つことも困難な銃火器も軽々と持ち、魔法陣による防御シールドを張ることが出来、ネウロイが放つ「瘴気」の中でも影響なく活動することが出来る。
〔魔女(ウィッチ)〕
世界には魔力が存在し、その魔力を発揮でき、唯一ストライカーユニットを使うことが出来る少女達の総称。普段は魔力のフィールドを張ったり、ちょっとした質量の物を動かしたり、ごく稀にほうきで空を飛ぶ程度だが、ストライカーユニットを装着した時は魔力の増幅で様々な能力を発揮できる。魔力を使える人間は圧倒的に女性が多く、しかも魔力の影響か容姿に優れた女性が多い。10代をピークに年齢と共に魔力を失うことが多く、中でも魔法シールドを失うことでネウロイと戦う戦士としての寿命が終わってしまう。このため兵役期間がとても短く、人々から「儚い花」さながらの憧れの象徴とされている。
〔使い魔〕
ウィッチが魔力を使う時、そのコントロールをサポートする存在。外見は犬やネコなどの普通の動物の姿をしているが、一部の高位の使い魔は人間並みの知性を持ち、しゃべることもできる。使い魔が使役されている間、ウィッチにはその使い魔と同じ耳と尻尾が現れる。また、ウサギの場合耳がよく聞こえる、ネコの場合夜目が利くなど、使い魔となった動物の特性を得ることもできる。ウィッチ一人につき一匹が必ず契約し、その契約は使い魔自身がウィッチのお尻にタッチすることにより結ばれる。
(リベリオン情報局(wikipedia)より参照)
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プロローグ
続けられるかどうか分かりませんが、独自の世界観で書いていきます。
よろしくお願いします。
朦朧とした意識の中、次第に映像が鮮明になる。
森の中、道では先程まで乗っていた軍用車がぼうぼうと音を立てて燃えている。
隣にはすでに生きているのか分からない部下が木に寄りかかっている。起こそうとして彼に手を伸ばそうとしたが、体が動かない。
体を見ると車両の爆発で吹き飛ばされたからか、自分自身も腹から車両の部品が突き出ていた。
ゆっくりと部品を引っ張り抜く。幸いにして出血は少なく済んだが、止血用の布が足りなかったため、致し方なく部下のシャツを引きちぎり、腹に巻きつける。
腰につけた軍刀や拳銃は今となっては無用の長物と言えるだろう。そのかわり、軍用車に積んでいた医療品が喉から手が出るほど欲しかった。
(こんな無様な死に方で俺は死ぬのか...)
そう思いながら胸ポケットから本を取り出す。
「星の王子様」
彼女から借りた本は無傷のままその姿を留めており、私は付箋が挟まっている所のページを開く。
1943年にリベリオン合衆国で出版されたばかりで、扶桑語訳はまだ出ていないものだが、士官学校で英語は必修だったため何の問題もなかった。
傷口が痛むのをなんとかごまかそうとして、小説へと意識を傾ける。
元はと言えば、「彼女が帰ってこない。」「行方不明だ。」と聞いて、独断で基地を飛び出したせいだ。
最後の通信は、彼女が実家から帰って来る際に無線によって伝えられた連絡のみ。
「今、実家を出るから!2時間くらい立てば着くよ!」
「道は暗くなるだろうし、止まってくれば。別に明日でもいいよ。」
「えっー。だって君。寂しがり屋でしょ?私が帰らないと泣いちゃうかも!」
「泣かないよ………。でも帰って来るなら、気をつけて。」
「分かったよー!気をつけながら早く帰るね!」
数時間前の無線のやりとりがついさっきのように思い起こされる。
正直に話すと、すぐにでも帰ってきてほしかった。
早く会いたかった。
到着時刻を過ぎても来ないから心配だった。
すぐにでも飛び出して、探しに行きたかった……。
そこまでしてでも、どうしてもこの言葉は彼女に伝えずにはいられなかった。
「君と一緒に生きたい」
彼女はこの言葉をどう受け取るだろうか。
考えていると、ズシズシと重い音を立てて陸戦型ネウロイが迫ってきていた。
結局、最後までこの小説を読み切ることはできなかった。
小説を胸ポケットへと終い、軍人としての義務を果たすため、腰に下げた拳銃と軍刀を抜き、軍刀を杖にしながら立ち上がる。
ネウロイ赤い光がこちらを見つめた。
私は夢の中で、彼女に会っていた、かもしれない。
正直、続けられるか分かりません。
でも、最後まで頑張りたいと思います。
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1
「残念だよ。君のような優秀な部下を失うとはね」
大きな執務机の前。タバコ臭く、あまり清潔とは言えない空間で上司は積み上がった書類の始末をつけている。
「君はこの海軍省に必要な人材であると言うのに。どうして上官に楯突くような真似をした?」
書類を書いている手を止め、タバコを外し煙を吐き出しながら上司が自分のことを見る。
「不正を行っているなにそれを見逃せと?」
私は強く言い返した、それが当然だと思うから。
上司はまたタバコを吸って煙を吐き出し、沈黙の時が流れる。
「たしかに不正は取り締まるべき項目だが……。そんな単純な世界じゃない。世渡りがうまくなければ、出世街道からは大外れだぞ」
改心して謝りに行けとでも言っているのだろうかこの人は 。
私には到底できることではない。それは断言できる。
「私は出世のためにこの道へ入ったのではありません。扶桑の未来のため。美しき扶桑のために身を捧げようとしたからこそこの道を歩んだのです」
上司は頭を掻きながら、何か言いたそうにしたが口を閉じた。
「まあ、いい。お前がそこまで言うなら、俺も止めはしないさ」
上司は惜しそうな顔をしながら私を見つめる。
「しかし、その姿勢を崩さないでいることは大切だ。私が左遷先にも手を回しておこう。苦労しない職場にな」
上司はそう言うと、執務机の引き出しを開け、一枚の紙を取り出す。
霞ヶ浦航空隊にウィッチ教練場が併設!
新たな教練場への有志諸君を求む!
「なんですかこれは。私はウィッチでもなんでもありませんよ」
上司は何か企んでいたかのようにニヤリと口元をゆがめた。
「この教練場はウィッチ候補生の教育も行なっている。君はその学習練の司書課の課長になってもらう」
私は一瞬唖然とした。が、瞬時に状況を理解しようと努めた。
「本が好きな君にはもってこいだろう」と上司は話し続けるが、これは果たして軍務の一環と言えるのだろうか……。
「言い忘れたが、同時にお前の昇進も決まっている。まぁ、本省からの左遷祝いというところだな。お前は司書課の課長と共に、教練場の教育総監部の東北方面教育官としての任も背負ってもらう」
余計に理解が追いつかなくなった。
結局、無理やりこの任を背負わされる形で書類にサインをさせられた。
先が見えない不安からか足取りも重くなり、自分の執務室へ向かう道がいつまでも終わらない階段のように思えた。
(とりあえず荷物の整理でもするか……)
ダンボールを取り出し、本棚にしまってある本や机の者類等を小分けにしながら整理していく。
「おーい、いるかぁー」
顔を上げて入り口を見ると、同期の倉本がガムを噛みながら立っている。
いつもリベリオンから輸入しているガムを噛んでいることから指導を受けていたが、いつの間にか、その指導を行う担当官も呆れて何も言わなくなった。
「なんだ倉本。お前が来るとは珍しいな。用があるなら単刀直入に。ないなら仕事へ戻れ」
またすぐに荷物の整理を始める。
正直、自分にとって彼は関心の対象にも入っていなかった。
「冷たいなー。わざわざ同期の優等生が異動になったからって見送りに来てやったのに」
本心から言っていて、皮肉を混じらせるつもりはないのだろうが、私にとっては心底うざいと思わせるには十分だった。
「異動ではなく左遷だろ。それにわざわざ見送られるようなことでもない」
やけくそになり本当のことを話してしまった。が、彼はふーんとだけ話すと、噛んでいたガムを包み紙で包み、軍服のポケットへとしまった。
「お前、霞ヶ浦に行くんだろ。あそこはいいぞー、海も近いし、山もある!ここで疲れたやうにはもってこいだ」
「田舎ってことだろ、都会に疲れたら田舎へ戻って、お母さんにでも泣きつけと?」
私は逆に皮肉って、思ったことをそのままに言ってしまう。彼は、目を丸くしていたかと思うと、わははと急に笑い出す。
「何がおかしいんだ」
「いや、お前がそんなジョークを言えるやつだったとはな!」
「何も変なことは言っていないだろう。用がないならもう帰ってくれ」
彼はしばらく笑い続けていたが、笑い疲れたのか息をヒィヒィいいながら落ち着きを取り戻した。
そして、胸ポケットから一枚の紙を取り出し、私の目の前へ突き出した。
「気をつけろよ。この東京じゃ憲兵大隊がいるからそこまで治安は悪くないが、地方じゃ反軍拡主義者や反ウィッチ主義者が活動してる。この前も佐渡島海軍教練場に過激派が破壊行為をしたばかりだ」
急に真面目になり、冷たい空気を醸し出している彼を見て、私も「あぁ、忠告ありがとう」とだけしか言えなかった。
「それでは、異動先でも頑張ってくれ」
上司が入り口に見送りに来てくれた。上の階の窓際では倉本が私を見下ろしながら、いたずらな敬礼をしている。
「はい、今までお世話になりました」
形式的な事例を済ませ、用意されている送迎用車両に乗り込む。
扉を閉め、運転手が各種点検を終わらせると、エンジンをかけ、車はゆっくりと走り出した。
後ろを振り返ると、上司は既にいなかった。
私はこんなものだろうと思い、軍帽とボタンを外し、荷物を離して楽な姿勢になった。
これからどうなるのだろうか。
父は田舎で教師をやっていた。母は私を父と同じように教師にしたかったのだろうか、熱心に勉強をさせた。
常日頃、勉強することしかさせてもらえなかった私の唯一の休憩時間は読書だった。読書は教育の一環として認められていたので、私が逃げることができる唯一の空間だった。
その教育の成果もあってか、学校では常に成績はトップクラスで、将来有望と大人たちからはもてはやされた。しかし、どこか心の奥で親に反抗したい気持ちがあったのも確かだろう。
ある日、学校へ軍服を着た人がやってきた、士官学校への推薦生徒を視察に来たのだ。
昼休み、私は先生から職員室に来るようにと呼ばれた。
「志雅君、悪い話ではないんじゃないかな?君は熱心に努力していたじゃないか」
先生は士官学校への入学を熱く推してきた。
目の前の軍服を着た2人組は何かをボソボソと話している。
「彼が、志雅………くんです」
「成績は素晴らしい………だな」
片方の軍人が私を見て、ある紙をカバンから取り出す。
「君は地方の学力優秀者の中から選び抜かれた1人なんだ。親御さんにも説明させてもらうが、君は国に選ばれた1人なんだよ」
当時の私はその言葉が意味するところを理解できた。ここでこの推薦を拒否すれば、国からの命令を拒否した非国民として私の居場所はなくなる。それどころか、親にも迷惑がかかるだろうと。
「分かりました」
そう言う事しか出来なかった。
2人の軍人は嬉しそうな顔をしながら、書類を出し、サインを求めた。
私は求められるままに書類にサインをし、彼等と共に家へと帰った。
母と父は最初は反対していたが、私から行きたいと言うと、もう何も言わなかった。
次の日、昨日の軍人たちが再び黒塗りの車に乗ってやってきた。
私は母と父に別れの挨拶をした。
母は目元に涙を浮かべていた。
「私達は貴方の帰る場所として待ってるからね。いつでも帰ってきなさい」
「うん、分かった」
私は車に乗り込んだ。
車はゆっくりと走り出した。
「……さん!大尉さん!」
誰かが私を呼んでいる……。いつのまにか昔のことを思い出しているうちに寝てしまっていたようだ。
「どうしたんだ」
運転手が顔を青白くしながら私を見るために振り返っている。
周りは地方の町のように思える場所だ。私にはどこか懐かしく思えたが。
「過激派です!バリケードを作って道に簡易的な検問所を引いています!」
車のシートに隠れながら前をゆっくりと覗き込むと、3両ほど前に家具が乱雑に置かれた状態でバリケードのようなものが引かれ【軍拡反対!民衆に力を!】という文字が書かれた旗がかかっている。さらに覗き込むと、散弾銃で武装した過激派と思われる連中が、1両1両確認しているところだった。
私は身の危険を察知し、腰につけている九四式拳銃を取り出す。
「運転手、他に道はあるのか?」
運転手は興奮状態になっており、考えることは難しそうに見えた。
(これでは無理だな……)
1両前の車に検閲が入っている。奴らが来るまでもう時間がない。
(覚悟を決めるか……)
私は拳銃の弾数を確認し、息を整える。
連中のうち、1人が走って2両前方の車両へと戻っていった。
(近くの武装民兵は2人!今しかない!)
私は勢いよくドアを蹴り飛ばし、飛び出しながら1人に照準を合わせた。
パァン!
乾いた銃声が町に響いた。
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2
民兵の1人が肩のあたりから鮮血が吹き出し倒れる。
もう1人の民兵は大声で何かを叫んでいる。
彼は私を見つめていた。憎らしそうに。
チャリンと小銭が落ちるやうに薬莢が落下する。
この一瞬は地球上の空間とはおそらく別のものかと思うほど時が遅く感じられた。
「この野郎!やりやがったな!」
民兵が猟銃を構える。
車から飛び出した勢いでそのまま民家の石の塀へと身を隠す。
同時に猟銃の重い発射音が響く。
石の塀の欠けらが勢いよく飛び散る。
突発的な銃撃戦が起きたためか、周辺の住宅から住民がなんだなんだと顔を覗かせる。
「危ないから家から出ないでください!」
普段は大声を出さない私も声を荒げる。
石の塀の陰から顔を出そうとすると、先程前の列へ走っていった民兵がこちらへ戻ってくるのが見えた。
(正面突破は無理だな……)
周囲を見渡すと民家の庭先に裏口があるのが見えた。
そこで私は一計を案じた。
道路から民兵がジリジリと距離を詰めてきていた。
迷わずに裏口へと走り、わ ざ と 勢いよく音を立てながら戸を開ける。
そして軽やかな身のこなしで開けた戸の裏側へと隠れた。
民兵達は私が逃げたと思い、周囲を見渡さないまま、裏口から飛び出していった。
「ふぅ、助かった…」
一息ついてそっと戸を閉めた。
そして車へ戻ろうと民家の庭から出て行こうとした。
幸い民家の中は留守だったのか誰も出てこなかった。
庭を抜け、道路へ身を乗り出したその時だった。
「動くな」
右から冷たい銃口が私の頭を捉えた。
さっき、肩に穴を開けてやった民兵が猟銃を構え、睨みつけている。
「銃を捨てろ」
「まぁ、落ち着いて話し合おうじゃ…」
「うるさい!早くしろ!」
言われるがまま、手に持っていた拳銃を地面は捨てる。
それと同時に猟銃の台尻が振り下ろされる。
「うぐっ!」
顔を殴られた衝撃があまりにも強く、そのまま道路へ倒れこむ。
顔の一部が切れたのか、抑えていた手には血が付いていた。
「死ねぇ!軍国主義者め!」
銃口が避けることすらできない近距離で私を捉える。
死を覚悟した。
パァン!
猟銃とは違う軽い発砲音が響く。
体のどこにも痛みは無い。私は恐る恐る目を開けた。
民兵の手から血が吹き出し、「ぎゃあ!」と声を上げると民兵はそのまま猟銃を地面へ落とした。
銃声のした方を見ると、海軍の軍服を着た少女が私と同じ将校用の拳銃を構えて立っていた。
銃口からは白い煙が立っていた。
少女はこちらへ走ってくると、心配そうに私を覗き込んだ。
「大丈夫ですか!ひどい…。顔から血が出てる!」
彼女はポケットからハンカチを取り出し私の顔に当てる。
後ろでは民兵が猟銃は手を伸ばそうとしていたが、すぐに気づかれ、両手に手錠をかけられる。
「き、君は…」
「話は後です!とにかく今は逃げることが優先です!車は無いんですか!」
勢いに押され、先程まで乗っていた車を指差す。
彼女は車を確認すると、戻ってきて私の肩へ腕を絡ませ、立ち上がらせる。
落ちていた拳銃も拾い上げ、車の側まで行く。
運転手は我先にと逃げ出したようで、中には誰もいなかった。
私はそのまま助手席へと転がり込む。彼女は運転席へと座ると、慣れた手つきでエンジンをかけ、ハンドルを握る。
車は勢いよく発進し、簡素なバリケードを吹き飛ばした。
後ろを見ると、騒ぎ気づいた民兵が戻っているのが見えた。
民兵2人は近くに停めてあったバイクに乗り込み、追ってくる。
「ねぇ、彼ら追ってきてるよ」
「そんなこと言われなくてもわかります!君は銃は撃てるよね!」
「動くマトを狙ったことはないし、そもそも射撃する機会なんてほとんどなかったよ」
「なっ…!君はそれでも軍人なの?!」
「悪かったね。だけど、どうやら私が撃つしかないみたいだ」
「弾も少ないから頼むよ!」
彼女は腰から拳銃を取り出し私に預ける。
私も腰から自分の拳銃を取り出し、マガジンを抜く。
後部座席へと転がり込み、拳銃の台尻で後部の窓を割って、バイクへと狙いを定める。
パァン!パァン!
2発撃つが…。両方とも明後日の方向へと飛んで行った。
「本当に下手なんですね!初心者でもあんな風には撃ちませんよ!」
「うるさい、運転に集中しろ」
急かす彼女を後ろにもう一度狙いを定める。
蛇行するバイクの先を読み、ここぞというタイミングで撃った。
弾丸は銃口からは飛び出ると、まっすぐならバイクのタイヤめがけて飛んで行った。
バイクは制御を失い、乗っていた2人はバイクと一緒に道路の脇へ吹っ飛んで行った。
「ふぅ!やるじゃん!射撃下手なんて本当は嘘でしょ」
「先を読んでそこで相手が来るのを待ってただけ。できて当然だよ」
「へぇ。結構言うじゃん」
彼女の拳銃を返し、私は後部座席で姿勢を崩す。
「とりあえず、このまま基地へと連れて行くから。その後はまたその時に考えてね」
「あぁ、分かった……」
もう何も考えられなかった。あまりに突然のことが重なったため、彼女の名前を聞くこと。基地とはどこなのか。すら聞くことができずに私はそのまま眠りについてしまった。
「ところでさ、君が今度来る教育官の人なの?」
「……」
「ねぇ!聞いてるの?」
「…Zzz」
「寝ちゃってるし…。まぁ、しょうがないよね」
2人を乗せた車は太陽が落ち行く中、森の街道を抜け、田園が広がる道へと走っていった。
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