転生したのは前世もち (刀花子爵)
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初めに

何時からだっただろうか、自分の名前に違和感を感じたのは。

 

何時からだったろうか、友人たちの名前に違和感を感じたのは。

 

双子の弟、のび太と一緒に小学五年生になったときだったろうか?

もしくは、いつの間にか増えていた同居人、未来の猫型ロボットのドラえもんを意識したときだっただろうか?

 

 

「んー、まあ、考えてもしかたないか」

頭の中にここがドラえもんの世界であること、そして、自分は、ここがアニメや漫画の世界であることを浮かべながら何をしようが時間の流れに身を任せようと思うことにした。

自分は神様特典や、チートなステータスを持っているわけではない。

ただ、ここにいる人間たちより一度多くの人生を体験しているだけだ。

 

「また、考え事かい?のびろ君」

青い猫型ロボット。トーキョーマツシバロボット工場で製造されたネコ型ロボット第1号である。

 

別名ドラえもん。

「まあ、ね」

 

「…まあ、僕のことを知っていて未来のことも知っている君に考えるなっていうほうが酷だろうけど。あまり考え事ばかりもよくないよ」

 

ドラえもんの顔はいかにも心配ですという表情だ。

まあ、小学五年生がするような表情で考え事(いやまあ中身は三十代のおっさんなんだが)は、おかしいのだろう。

 

「わかった、わかった。じゃあ子供らしくするよ」

ドラえもんに心配ばかりかけるとママやパパが心配するので仕方なくズボンのポケットからお小遣いで買った文庫本を取り出す。

 

「いや、流石に小学五年生が推理小説読むってどうなんだい?」

「…赤川次郎は面白いぞ」

「いや、著作者のチョイスを言ってるんじゃないよ!」

「…小学生は推理小説読まないのか?」

「読んでもマンガじゃないかい?」

「…そうか」

 

小学生は読まないのか推理小説。

面白いのになぁ。

 

少し黄昏ていると、聞きなれた声が響く。

「やい、のびろ!」

「…」

黄色い服に紺色のズボン大きな体躯に俺様口調な人物。

剛田 武、通称ジャイアン。

この辺のガキ大将で、いじめっこ。お前のものは俺の物俺のものは俺の物と、ジャイアニズムを掲げている。

「のびろ君、ジャイアンが呼んでるよ」

ジャイアンから目を離しすぐに開いたページに目を移す。

「俺様がせっかく野球に誘ってやったのに、来ねぇとはいい度胸じゃねぇか!」

「いや、私は断ったしそもそも、いい度胸とはなんだ?ジャイアン、あなたは私より立場は上なのか?」

大人げなく言葉を殴りつける。

 

「うるせぇ!いつもいつも生意気なんだよ!」

 

…子供相手に対応を間違えただろうか?

というか、自分より我が強い子供相手に先ほどの言い分はやはりだめか。

 

私自身周りを見下しているわけではないが。読書の邪魔をされたせいか少し苛ついていたようだ。

というか。

「さっきからなんだドラえもん?」

裾をくいくいと、生地がのびちゃうだろ。

「に、逃げようよのびろくん」

…忘れてた、ドラえもんも確かのび太と一緒でいつもぼこぼこにされていたな。

「で、口喧嘩は終わりか豚ゴリラ?生憎と私は日本語しかわからなくてな、ゴリラが目の前でうほうほ言っていても理解できないのだよ」

 

「の!のびろくん!」

こいつ、ありえねぇ!という風に私を見るドラえもん。

「……」

そして、すでに言葉を失いバットを握りしめているガキ大将。

「ブッコロシテヤル!!」

 

バットで、殴ろうとしているのだろうバットを背負うように、持ち私めがけて走ってくる。

その顔は必ず殴ると言っても差し支えないほどすごい表情をしている。

となりにいるドラえもんなんていつも青い顔がさらに青くなっている。

 

あのバットを食らえば弱い自分なんてすぐにぼこぼこにされるだろう。

すでに自身の目の前に迫っている木のバット。

 

だが、それを食らってやるほど自分もお人よしではない。

 

「はぁ」

一呼吸置き、即座に右足でバットの底を蹴り上げる。

少し右足に痛みが走るが、バットはジャイアンの両手から抜け出て後方に飛んで行った。

「っ!」

驚いているようだが、もう遅い。

すぐに体を回転させて顎をかすめるように蹴りを放つ。

 

「がつっ!」

「悪いけど一方的にやられるつもりはないんだ」

おそらく視界が揺れているジャイアンに言うだけ言っておく。

 

「…やりすぎじゃない?」

「相手は、武器をもってこちらに危害を加えようとした。こちらは素手で対応。まだ優しいほうでしょ?」

 

空地じゃ、もう読めないなぁと考えながら家に帰ろうと小説をポケットに入れなおし。帰路につく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                    ★

 

「やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!何が一方的にやられるつもりはないだよ。俺は中二病かよっ!もっと抑えてものも言えただろうが何煽ってんだよおぉぉぉ!」

「ドラえもん、兄さんはどうしたの?」

「・・。うんまあ、いろいろあったんだよ」

 

そのあと自宅で転げまわる転生者がいた、てか自分だった



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2話

正月、特にやることもなく同室の、のび太とドラえもんは床でごろごろしていた。

 

自身の兄であるのびろうは、いつものように机で難しそうな本を読んでいる。

 

「兄さんも、ゆっくりしないの?」

 

自身が床で寝ているのに対して兄は机で読書、それもマンガではなく文字ばかりの本。

 

兄は自分と違い優秀だ。

テストはいつも百点だし、運動もできる、性格も少しぶっきらぼうのところはあるが優しい。

 

何時も怒られている自分とはくらべものにはならないだろう。

それでも、自分が兄を妬むようなことはない。

 

小さいころから自身のあこがれのような兄、だからこそその努力も知っている。

 

皆は、兄を天才というが違う、その証拠に一緒に使っている机の一番下の引き出しには自身の零点のテストの答案用紙と一緒に兄の勉強で使ってあるノートが同じように溜まっている。

運動だって、自分で計画してトレーニングしている。

そんな、昔から多くの努力をしている兄を妬んだり恨んだりすることなんてできるはずがない。

 

自分が勉強できないのは分っている、運動ができないのは分っている。

だけど、それを理由に努力している人を妬むのは間違っているのだ。

 

「私は十分ゆっくりしているよ。のび太こそそんなにのんびりして宿題はやったの?」

少し意地悪なことを言うが、いつものことだ。

「だ、だいじょうぶだよ。あとでキチンとやるし」

「私はママに言われてるしのび太のためにもならないから、もう見せないからね」

「そ、そんなぁ!」

一切手を付けていない宿題…どうしよう。

何時も兄の答えを写していたからすぐに終わるものと思っていたのに。

「はぁ、解き方は教えるからあとでキチンとやろうな?」

「はぁあい」

「ふふふ」

そんなやり取りを見て笑っているドラえもん。

何時もののんびりとした空気。

 

バタ

 

そんな空気の中急に部屋の扉が開いた。

「…」

兄が苛立つのがわかる。

基本的に優しい兄だがそんな兄が嫌うものの中で特に嫌うものが、自身の時間を邪魔されることである。

 

「なんじゃっ!若い者が真昼間からごろごろして!」

「…」

部屋に入ってきたのは中年ぐらいで小太りしているおじさんである。

少し剥げている頭とちょび髭が印象的だ。

 

ドラえもんがアワアワしている。

うん、わかってるよ。

裾を引っ張らないでよ。

 

「…」

「マラソンでもしてきなさい!」

 

だから、わかってるってドラえもん。

兄さんが本気で怒ってるのは分ったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             もう少し現実逃避させてよ。

 

 

                   ★

 

 

 

さっきのおじさんはパパの会社の社長らしく会社関係での年始の挨拶が嫌になってうちに逃げてきたらしい。

 

いまは、パパと食事している。

会話の内容は先ほども言った内容と、二三日泊めてくれといったもの。

何時もの自分ならすぐに文句を言ったり怒ったりするところだが今は違う。

「…」

無言の兄が怖い。

表情もいつもニコニコと優しい表情ではなく真顔だ。

ママも本気で怒った兄を一度見ているのでもう駄目だという表情だ。

 

「ドラえもん」

「はっ、ハイ!」

兄に声をかけられ気を付けの姿勢で返事をするドラえもん。

 

わかるよその気持ち。今の兄に声を掛けられたら同じようなことをしていただろうと、考える。

 

ああ、でも本当に今の兄が怖い。

 

 

                   ★

 

 

…兄がドラえもんに出すように言ったのは催眠グラスとゴーホームオルゴールとどこでもドア。

どんな道具か自分は分らないがドラえもんは理解しているようで兄に対してやはり、震えている。

 

「さてやるか」

兄の悪い顔に自分とドラえもんは抱き合いながら震えた。

 

 

                   ★

 

恐ろしく早い手際だった。

パパとママに耳栓をつけさせ催眠グラスで、何日も仕事が忙しく家に帰っていないようにおじさんに催眠をかけそこにオルゴールを流し、どこでもドアで目の前に自宅を出すなんて。

 

 

 

普段優しい人が起こると本当に怖いんだと今日知った。

 

 

                  ★

 

 

お、おう

「や、やりすぎた」

 

完全にやりすぎである。

ドラえもんに道具を借りむかつくおっさんを自宅へと返したが、やりすぎた。

あのあとに、おっさんの奥さんに会話を録音しておいたテープを渡して聞かせたが。

 

うんまあ、怒ってたよね。

 

ま、まあ、社長として年始の挨拶は大事だし。そ、それにほら、社長だからと言って特に気にしている社員でもないところに転がり込むのはおかしいし。

 

おっさんのおくさん、怖かったなぁ。  

 

 




一時間クオリティ!


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かぐや姫其の壱

こちらは、原作と、アニメをごちゃまぜにしております。

Qなんで(・・?

Aのび太に静香はいるのにその兄にヒロインなしとかないから。


「--!後で送り返してやる!」

 

学校から帰るとドラえもんが苛立った様子で部屋から出てきた。

いや、すぐにでも送り返せよと思ったが、急ぎの用事があるのだろう。

実際私を見ても目で答えるだけで外に出て行ってしまった。

 

一体何が届いたのだろうか?

 

「ふふふ―」

 

 

…のび太がにやけながら何かを持って外に出て行った。

 

 

・・・・ほんとに何なんだ?

 

部屋に入ると開けられている包み、またこれまたありきたりのように出ている何かの説明書。

 

 

・・・・かぐやロボット?何それ?

 

うんまあ、いや、えー。

自分が汚い大人だからだろう、いろんな下種な考えが頭に浮かび、しかもそれをこの時代に送ってきた未来デパートに少し苛立ちを感じる。

 

おそらくドラえもんが送り返すと言っていたものはこれであたりだろう、それ開いているという事は、のび太が開けておそらくだが裏山の竹藪にでも行ったんだろう。

 

 

・・・・いや確かにこれ、未来デパートも悪いんだが。

こちらもだいぶ悪いような気がする。

 

深く考えるのはやめよう

 

 

                   ★

「あのぉー。兄さん」

 

机で少し古い本を読んでいるとのび太が髪の長い女の子を連れてきた。

見たことない子だがすぐに気が付いた。

「…ああ、その子がかぐやちゃんか」

「え!わかるの!」

ドラえもんがこそっと扉から顔をのぞかせているが説明はしなくてもいいだろ。

 

「ある程度はな。パパとママは受け入れているし、私も別に悪いとは思わないからね。だけどのび太。その子のことも考えて行動しなさい」

 

それだけ言って私は本を元の場所に返すために立ち上がった。

「あ、あの」

「ああ、自己紹介がまだだったね。私は野比のび郎。のび太の兄だ。それと君はかわいいからジャイアンたちに気をつけなさい」

 

「・・す、すごいさらっと初対面の女の子をほめてる」

「一番危険なのは兄さんなんだよなぁ」

 

聞こえてんぞお前ら。

「は、はい。よろしくお願いします」

「ああ、よろしく。もし困ってのび太やドラえもんでも解決できないことがあったら相談してくれ、いつでも力になろう」

 

眼を部屋の時計にずらすと待ち合わせの時間が近づいていた。

人を待たせるのは気が引けるし早めに出るか。

「じゃあ、すまないが私は出木杉と約束があるから、またあとで。ゆっくりするといい」

安心させるように輝夜の頭をなでて時間を確認する。

 

十分間に合う時間だ。

 

 

「たらしだよなぁ」

「のび太君、君に足りないのはああいう包容力だよ」

「うるさい短足」

「言ったなのろま!」

 

                 ★

 

…やはり、なかなかないか。

近くの図書館。そこで、私と出木杉は探し物をしていた。

「のび郎君が僕に頼み事なんて珍しいね」

いくつかの本に目を通しながら出木杉が聞いてくる。

普段からかかわりをあまり持たない私からの頼み事、少し驚きつつも受け入れてくれたこいつはやはりいい奴なんだろう。

「頭の回転はお前のほうがいいからな」

自分も机に置かれてある山のような本を片っ端から目を通しながら答える。

 

「…っち、やはりなかなかないな」

すでに探し始めてから三時間が経っている。図書館の利用可能時間まであと二時間。

満月のことを考えると時間はあまりにも少ない。

「僕としてはこういうのも楽しいからいいけどね」

そういう出木杉もやはり疲れているのか声にあまり力がない。

このまま探しても仕方がない。

「少し休憩を入れよう、飲み物を買ってくるが何がいい?」

「いや、僕も行くよ」

「そうか」

 

いったん本を机に戻し自動販売機のある所まで二人で向かう。

「ねぇ、のび郎君」

「どうした、出木杉?」

「こんな古い文献を急に探し出して僕にも手伝ってほしいとかほんとにどうしたんだい?」

子供の本当に純粋な疑問だったのだろう。

出木杉はそんなんで私に質問してきた。

 

「決まってるだろ?…ただの趣味だよ」

 

 

 

そのあとようやく見つけられたとだけ言っておこう

 

 

               ★

「あああああああああああああああああああああ、ああああああああああ。ほんと何なんですかねぇ!痛い痛いよ俺なあぁぁっぁぁぁぁぁぁ!。いやマジ何してんの!僕の考えた最強モテモテな大人なの?ニコぽ?なでぽ?踏み台転生者ですか私はぁぁぁぁぁl。包容力じゃねぇよ!たらしとかでもねぇよこんなんただのくそ野郎だよ!」

 

裏山で少年の声が響いたとか響かなかったとか。

 

 




来週中には上げます


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かぐや姫其の弐

『…ppp』

カチ。

 

聞き慣れた電子音の方角に手を伸ばし、いつもと同じような感触のスイッチを押す。

時間だ。

デジタルの時計は、午前四時を表示しており窓の外もまだ暗い。

自分のタンスからいつも使っているジャージを取り出し着替えた。

 

                 ★

 

外に出て固まっている筋肉をゆっくりとほぐす。

伸ばされている筋肉がエネルギーを生み出し熱に変わっていく。

 

「はぁ」

 

足首、膝、腰、背中、腕、それぞれをゆっくり伸ばしさらに体温を高め、意識を切り替えていく。

普段の頭ではない。

 

もっと深く、頭の中の記憶を出す。

恐怖、怒り、緊張、苛立ちそれをすべて体に思い出させろ!

ブルンと体が震えた。

頭の中心、そこから何かがあふれ出し体にゆっくりと浸透していく。

体も軽くなり、吐く息が白くなる。

 

わかる。

 

体の感触が、細かく動く筋肉が、流れている血が。

 

地面を思い切り蹴飛ばした。

 

「…」

それを誰かが見ているとも知れず。

      

                 ★

 

「はっはっ、はぁっ」

どれほど走っただろうか?

トレーニングというにはありえない、距離、時間、速さすべてちぐはぐな走り方。

 

「はぁ」

すでに来ていたジャージは汗で色が変わり長い髪は濡れていた。

大人も倒せるように、相手が武人であろうと倒せるように。

陸上選手より早く、空手有段者より強く、東大王よりも賢く。

相手が誰だだろうと立ち回れるように。

 

うまく映画の敵たちに勝てるように。

子供に重荷を背負わせることのないように。

 

まだ足りない、まだなんだ、まだ足りないんだ。

 

公園のベンチに横になり映画の知識を思い出す。

 

どれもこれも子供が巻き込まれること自体がおかしい事件事故。

それに巻き込まれることがほとんど決まっている自分。

 

打てる手はすべて打たなければならない。

あの子たちに不安を抱かせてはいけない。

「えほっ、かふっ」

歯を食いしばり体を起こす。

俺に休む暇なんてないんだ。

 

さぁ家に帰ればドラえもんに頼んでいた重力空間での筋トレだ。

 

 

 

『お前すげぇよ!』

 

…まだあの頃には足りないんだから

 

                   ★

 

                

「お兄さんはなぜ体を鍛えているんですか?」

昼過ぎ、いつものように本を読んでいると覗き込むようにかぐやちゃんが私に問うてきた。

どうやらのび太達は、しずかちゃんたちの所へ行っているようだ。

「聞いてどうするんだい?」

本を閉じてかぐやちゃんへと向き合う。

「…わかりません。ですが、お兄さんが何かに逃げているように見えました」

だから、逃げているのになぜ鍛えているのかと。

そうつなげるとかぐやちゃんはこくんと頷いた。

 

どう答えたものかな。

ロボットといってもこの子は人間と同じだ。

 

食べ、学び、考え、そして答えを出していく。

 

体も人と同じか。

育ち、老い、死ぬ。

恋もすれば結婚もする。

 

どう答えたものかなぁ。

「そうだね、確かに逃げてはいるよ。けど、鍛えているのは逃げるのをやめて戦うためだよ。戦い、守り、最後に散るためだ。そのために私は鍛えている」

かぐやちゃんは顔を横に振る。

「…わかりません。生きるためではなく死ぬために鍛える。私には理解できません」

「理解しなくてもいいさ、けどそういう人間もいるんだ」

私は不安がっているかぐやちゃんを安心させるために頭を撫でた。

「貴方の考えを私は好ましくは思いませんが…私はこの行為は好ましく思います」

「そう、それはよかった」

目をつむり撫でられるのを受け入れるかぐやちゃん。

きっとそこには自分とは違う純粋な気持ちがあると思うとひどくうらやましかった。

 

 

「…やっぱりたらしだよ」

「…早すぎない?」

「君とのび郎君じゃ格が違うってことだよ」

 

 

 

 

 

 



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かぐや姫其の参

「…………やっぱり兄さんはたらし」

「はっきり分かったね」

のび太とドラえもんがこちらを見ながらやれやれと言うように顔を振る。

私は手の本に目を落として聞こえなかった振りをして何も持ってない方の手を、何故か私の膝に頭を乗せているかぐやちゃんの額に置いている。

 

「……………………ねぇ、ドラえもん」

「なんだいのび太くん?」

「兄さんとかぐやちゃん、接点あった?」

「知らないの?かぐやちゃんがのび郎君にどんどんアタックしてたよ」

「…………何時から?」

「2日目から」

2人は私達のことを見ながらコソコソと話しておりもはやこの光景も日常と化した。

 

笑顔のまんま昼寝しているかぐやちゃん。

「……嬉しそうだねかぐやちゃん」

「実際のび郎君に1番懐いてるからね」

「……僕の兄さんなのに」

「君までそっち行くとシャレにならないからね?!?!」

 

次のページをめくると主人公が葛藤の末世界を救うために最愛の恋人を自分の手で眠らせるシーンだった。

……やっぱり、最後は散り際かね?

 

そんなに早く散るようにはしないが。

無茶はしないといけない。

 

まずはこの子から、助けよう。

 

 

遂に満月の日が来てしまった。

かぐやちゃんから説明を受け私たちは月からの迎えを打つ準備をしていた。

 

パパ、ママ。タケシ、スネ夫、静香、のび太、ドラえもん。

みんなかぐやちゃんを行かせないために今日この日のために準備してきた。

 

私もその1人だろう。

切り札もある程度作ってきた。

 

必ず勝てる切り札ではあるが。その場合どういう犠牲が出るかはわからない。出来るなら使わないようになればいいけど。

「お兄さん」

みんなの輪から外れ、ドラえもんに貸してもらったいくつかの道具それに自分で集めてきた物をの確認をしていた自分にかぐやちゃんが声をかけてきた。

その顔は不安そうだ。

「どうした、かぐやちゃん?」

「……怪我はしないでください」

「私より、みんなを心配してあげなさい」

私の手を握り祈るように呟くかぐやちゃん。

私は安心させるように頭を撫でた。

「あれ、確実に好きだよね?」

「僕の見間違いかな?お姫様とそれを守る侍にしか見えないんだけど」

「のび郎だからなぁ」

「のび郎もてるからねぇ」

聞こえてるからな貴様ら!

 

シャララーン、シャララーン。

 

急に周りの音が消え鈴の音が流れてきた。

「兵隊!構え!」

ドラえもんが指揮を出しおもちゃの兵隊、ころばし屋が降りてきた光に対して銃を向ける。

 

「撃てェ!!」

空気砲、ショックガン、攻撃系に当たる道具全てが光の塊に襲いかかる。

だが、それは無意味にも光の目の前で全てが散った。

光はどんどん近づいて来る。

 

距離が近づくにつれ光は収まり、金色の雲に乗った牛車が現れた。周りにはおよそその時代の服を着飾った人達。

 

私のつけているイヤリングがカランと震える。

「ま、まだだ!第2隊、撃てぇ!」

ドラえもんの声が響くがやはりそれも無駄に終わってしまった。

一人の男が雲から降りてきた瞬間ひみつ道具たちが一斉に倒れ機能しなくなったのだ。

私が持っている1振りの電光丸も光を失っている。

「かぐやさま、お迎えに参りました」

男がかぐやちゃんに近づくが私はその前に出る。

「……っ!」

男は、私が身につけているものを見て表情を崩した。

 

仏の御石の鉢を削って作った石下駄。

蓬莱の玉の枝を溶かして作った宝剣。

火鼠の皮衣を紡いで作った着物。

龍の首の玉を繋げて作った首飾り。

燕の子安貝を通して作った耳飾り。

 

竹取物語で、かぐや姫が求婚者5人に言った宝が今全てが目の前にあるのだから。

 

「そのお迎えはキャンセルだよ、月の人。まあ、そもそもこちらから頼んでもいないんだ。キャンセル料も払わなくていいだろう?」

 

宝剣を鞘から抜き男に構える。

 

さあ、第2Rだ。



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かぐや姫其の四

私が構えるのは宝石や金、銀でできた1振りの宝剣。

 

相手は月の人。その力は未知数だ。

だが負けるわけにはいかないだろう。

 

負けたら後悔してしまうかもしれないのだから。

だから、切り札のひとつを使わせてもらう。

 

まずは、場を整えよう。

 

「貴様ら!気合を入れ直せ!」

私の怒鳴り声に男たち全員がその場に立ち上がった。

「貴様らは、女子1人すら守れない程度の男か!そうならばもう用はない消え失せろ!!!」

ドラえもん、のび太、パパ、スネ夫、タケシ。全員の顔に気合が入る。

 

「違うのならばそれを見せろ!相手は目の前ぞ!」

歌舞伎のように、魅せるように味方を鼓舞する。

「タケシ!ドラえもん!前に!のび太、スネ夫は後方を!」

すぐに言葉通りに動く5人。

月の人たちも予想外だったのだろう、次の動きが取れないでいる。

「お前たち!早く……ぬ!」

 

男が懐から何かを取り出そうとしたので直ぐにそれを邪魔する。

「原始人がっ!」

「子のことを考えない結果だけの頭空っぽには言われたくないね」

柄を両手で握り男と間合いを取り合う。

 

さて、タイマンだね。

 

道具で戦えないなら宝で戦えばいい。

念の為と出木杉に頼んで竹取物語のことを一緒に調べていたのだ。

 

そうすると出るわ出るわ5つの宝とかぐや姫に関する情報。

中には偽物も多数あったがそこは出来杉、本物に近いものだけをピックアップしてくれた。

あとはいくつかの情報から共通点や似ている場所を自分の中でピースを当てていき、どこでもドアでその場所に向かい宝をゲット。

 

加工なんかも全て自分で行った。

守るために。

戦うために。

もう後悔をしないために。

 

私は全力で動く。

だから

「かぐやちゃん、あとは君だけだ」

君はどうしたい?

 

男を牽制しながらかぐやちゃんに問う。

「……わ、私は」

何かに取り憑かれたように狼狽え黙ってしまうかぐやちゃん。

それを見て男がにやりと口角を上げる。

「ふっ、ロボットが自分の意思など言えるわけがありません。プログラムされていることしか出来ないものなんですから。さあ、帰りますよかぐや姫」

 

男はこちらに歩みを進める。

「かぐや、君はどうしたい!ここには君を守るために立ち上がった人たちがいる、君を悲しませたくないと思った人間がいる。君は言われたとおりにしか動けないロボットなんかじゃない!」

私は否定する。

「人を心配して、分からないことを学んで、傷つかないで欲しいと願って。君はロボットなんかじゃない!だから言え!君の我儘を!!」

男の言っていたことを否定する。

 

「……たくない」

 

「……私……帰りたくない!!!」

「なっ!」

かぐやちゃんが言うのが信じられなかったのだろう男がスキを見せた。

 

刀身を担ぐように構え、男の懐に飛び込む。

「打刀・担構一刀心」

両手に力を込め柄頭を男の水月に叩き込んだ。

その際にガラスを割るような感触がした。

 

男は乗ってきた雲の手前まで吹っ飛んだ。

「ぐっぁ!」

「お姫様はお迎えが嫌なようだ、お帰り願おう。それでもまだ拒むと言うなら私は躊躇しない」

外ではのび太達が戦っていたのだろう。

服がところどころ破け土埃で汚れている。

 

「ぐ、ありえない!かぐやロボットが迎えを拒否し、さらにバリアーさえも素手で割るなど!」

雲に乗って居たもう一人の男が叫ぶ。

「かぐやはロボットじゃない。私の家族で、人間だ。それにお前らは道具に頼りすぎなんだよ」

だが、こちらも無傷では無い。

宝剣は歪み、自身の手のひらの皮も剥げ足元に小さな血溜まりができている。

アドレナリンが出ているから異物感と感じるがあと数十分もすれば痛みに戻るだろう。

 

やはりまだまだ前世には遠い。

「だが、迎えまでがあのセットの内容です!」

「説明書に書かれていない」

「未来の道具は過去においてはいけないんです」

「持ってきたのはお前らだ」

「それは間違えてしまって」

「何度目だ?何度間違えた?その際も謝罪の一言もしてないだろ」

戦闘ではかなわないと思ったのだろう、言葉で勝とうとする男。

相手からの言葉にすぐ返す私。

そこにもう月の人などという者はいない。

自分から墓穴を掘りに行く未来デパートの社員だった。

「ならば、開発費をお払いください」

その言葉、待っていた!

「いくらだ?」

「破損した機材、そしてロボットの開発費含め3億です」

ニヤリと笑う男。

「ドラえもん」

「う、うん。あれだね」

ドラえもんがポケットに手を入れ3つのトランクケースを取り出す。

「この時代の紙幣1万円札、3万枚計3億。まあ未来に持って帰れば多少値は上がるだろう、確かに支払ったぞ」

私はドラえもんから3つを受け取り相手に投げ渡す。

もうこれで、終わりと思うとほっとする。

上手く話が纏まってよかった。

「な、何故です!機体単価30万のただのロボットにどうしてこれほどの額を払えるのです!」

自分で開発費と破損した機材って言ったじゃん。

「阿呆か、かぐやが自由を手にするのにたった3億だ、そんな端金くれてやるさ」

 

私もう寝たい、今日のために何日も徹夜したし。

この装備のために技術だって覚えたんだ、ほんと疲れた。

もうさ、話まとまったんだからいいじゃん。

あんたが言って私が払った。

ほら終わったじゃん帰れよ。

「あんなセリフ一度でいいから言ってみたいよね」

「のび太じゃ無理無理」

「だなぁ」

君らはもう緊張感ないね、まあ戦闘終わったしね。

私も寝たいよ。

「話は終わったんだ、二度と来るな」

皆が終わりの空気になり家の中に戻っていく。

「金は貴様らの言う通り支払った。約束は守れ」

男はケースを抱いてこちらをを信じられないというような目で見てくる。

「約束を違え、またかぐやを奪いに来ると言うなら」

「その時の私は、今日ほど優しくはない。それだけは覚えておくんだな」

私も家の中に入る。

 

 

あー一件落着だー。

 

 

「のび郎くーん」

「兄さーん」

『そっとしておいて下さい・話しかけないでください、ほっといてください』

 

本来ならドラえもんの寝床である押入れ、その扉にはそんな張り紙が貼られており、2人が呼んでいる人物は朝から押し入れにひきこもり一切顔を見せていない。

 

『なんなんですかねぇ、ホント学習ないんですかね私は?もう40手前なのに何してんすかねぇ?攻撃した時に技名とか痛いんですけど、くっそ痛いんですけどぉ!!!』

 

中からは兄さんの声がブツブツと聞こえてくる。

かぐやちゃんは、なにか吹っ切れたようにママのお手伝いを積極的にしており、ママも娘のようにかぐやちゃんを可愛がっている。

かぐやちゃんの養育費などは全て兄さんが用意しておりパパもママもびっくりしていた。

 

まさか、自分の子供が国家予算並みのお金を持っているだなんて思っていなかったんだろう。ぶっちゃけ遊んで暮らせる。

兄さんに遊べば?と言ったら、人間働ける内が華なんだと、目を虚ろにして言っていた。

正直兄さんは遊びを覚えるべきだと思う。

 

 

あの後、あれでは収まらずタイムパトロールが来て事情聴取、さらに未来デパートのお偉いさんも来た。

 

特例としてかぐやちゃんはこの時代で家で過ごすようだ。

 

お偉いさんがロボットなんぞに、と言った瞬間、兄さんの後ろにタコと鬼が混ざったような化け物が口を開いているのが見えたが、一瞬だったから見間違いだろう。

 

兄さんは怒らせてはいけない。

 

「のび郎さん、のび太くん、ドラえもんさんごはんですよ」

かぐやちゃんが部屋に入ってきた。

「は、はーい、行こうのび太くん」

「うん」

かぐやちゃんの部屋をどうするという話も出たが、それも兄さんのおかげで解決した。

お隣さんの家を買い、うちと繋げたのだ。

 

2人は仲がいいのでドラえもんに、未来の兄さんのことを聞くと。

「……ギネスに載ってるよ」

との事です。一体なんのことかわからなかった。

 

まあけど、今日も兄さんはいつもどおりだ。

 

『ころせぇ!もう殺せよォ!!!!』




これにて、かぐやロボットは終わりです。

疲れた、少しの期間誤字を直すのにはいるので更新はできません。

感想くれたら嬉しさで更新します


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かぐや姫其の五

誰があれで終わりと言ったァ!



……両手骨折、フエール銀行の預金口座ふたつ。

今回の私自身の損害だ。

 

まあ、これだけで1人の人生を救えたことを喜ぶべきか。

「はい、のび郎さん」

アーンと、お粥の乗ったスプーンをこっちに向けるかぐや。

その顔は幸せですと顔に書いているように見える。

パパもママもその様子を微笑ましく見ており私の焦りなどひとつも知らないんだろうなぁー、と目が遠くなる。

 

かぐやは、本来なら未来デパートに連れて帰ってリセットするところを結果的には私が買取り。また、現代に住ませるように手配してしまった。

 

いや、それには後悔はないよ。けど、ここに住むとは思ってなかったし。ホントだよ転生者ウソツカナイ。

 

両手を骨折してしまった為に少しの間生活で両手を使えないという事実をかかえてしまい、仕方ないからドラえもんになんか道具出してもらうかーと思っていたらかぐやが世話を買って出たのだ。

 

断ると泣きそうになるし、下手に断れない。

諦め、かぐやの世話になることにしたのだが。

 

「のび郎さん、アーン」

「のび郎さん、痒いところはありませんか?」

「のび郎さん、トイレですか?ついて行きます」

「のび郎さん」「のび郎さん」

 

………………………………別に悪い気はしないよ、こんなに可愛い子が自分の世話をしてくれるんだからね。

けどね、年上の矜持とか、実年齢とか。

そんなのを考えるとね、うん。

 

ロリコンになるんだよね私。

…………嫌だなぁ。

いやほらあれだよ、私自身無下には出来ないのはわかってるんだけど、やっぱり私自身は年相応の人と……誰に対して言ってんだ私は。

 

「項垂れてるねぇ」

「のび郎くん真面目だけど変に大人びてるからね。こういう時どうしたらいいかわかんないのさ」

「かぐやちゃんの前は誰だっけ?」

「神成さんのお孫さん」

「その前は?」

「つばさちゃん」

「その前は?」

「丸井マリ」

「その前は?」

「隣町の子だね」

「ドラえもんよく覚えてるねぇ」

「あはは、君が兄さんばかりモテてるって僕に言ってきたんじゃないか」

「そうだっけぇ?でもみんな兄さん好きなんでしょ?」

「まあ、包容力あって紳士で気遣いが出来て優しくて、なおかつ可愛い方よりの顔だからね。みんなギャップにやられてるんだよ」

「へー」

ぶっ殺すぞ貴様ら!

心の中で叫びながらドラえもんとのび太の言うことに対して無視を決め込む。

 

違うんだ、それぞれ困っていたから声をかけて手伝っただけで他は何もしてないんだ。

 

 

 

 

……………………はい、嘘です。高校生に声掛けられたり、追っかけに付きまとわれたり、今の世界でやって行けるのかと悩んでたり、ピアノの事で悩んでいたのでそれぞれ適切に対応しました。

きちんと相談に乗りました。

 

一緒に悩み解決したりしました。

…………それで好かれるわけないじゃんと思ってました。だって、たまたま会って少し話した程度だよ?

言わば公園で愚痴ってたらたまたま答えくれた人間だよ?

 

そんな怪しい人に絡むと思う?

思わないじゃん。

 

「そう言えば最近この辺ですごい綺麗な黒猫見るんだけど?ドラえもんの新しい彼女?」

「……いや」

「またまたぁ、みぃちゃんだけじゃなく2人目なんてドラえもんも隅に置けないなぁ」

「……くんのだよ」

「え?なんて?」

「クロちゃんだろ?!のび郎くんのだよ!」

「え?!?!」

「綺麗で可愛くて器量も良くて狩り上手で、猫なのにのび郎くんに助けられてからあの人しか考えられないって言ってるの?!?!」

「……兄さん猫まで落としたの?」

 

マジでぶっ殺すぞお前ら。

「はぁ」

もういいや、考えるのやめよ。

 

近くにあった自分のカバンの中にいつものものを入れる。

「私は外に出てくる。クロ付いて来るのはいいがそれは置いていきなさい」

「にゃん」

ドラえもん達がぎょっとして声の方をむくと雀を口にくわえたクロネコが窓からこちらを見ていた。

「くくくくく、クロさん」

 

もうどうにでもなれ

 

 

あー、ビバ休日ビバ読書。

 

裏山の少し奥に木が生い茂っているのにも関わらず日が当たるところがある。

「にゃん」

そこにハンモックを吊り。

カバンも近くの木の枝に吊るしてある。

 

両耳には好きな音楽が流れているイヤホン

手には童謡が詳しく書かれてある本。

骨折?気合と根性でどうにかなる。

お腹には丸くなって寝ている黒猫のクロ。

「ゴロゴロゴロ」

 

……進んでいく物語、それにつれて私自身の能力も色々と増えている。

かぐやちゃんを自由にできたのは大きい。

……やっぱり、あの最後は嫌だもんね。

まだまだ救わないといけない人がいる。

映画の時期だっていつ来るかわからない。

 

そのために準備はしすぎるくらいじゃなくちゃなぁ。

 

あのドライバーもいつか来る時が来てしまうんだろうなぁ。

フエール銀行のお金また増やしとかないとなぁ。

今回の事でタイムパトロールに名前は覚えられただろうしめんどいなぁ。

……もっと好きに動きたいなぁ、出来たらこうやってダラダラしたい。

自堕落に生きたい!

ほかの二次創作の最低系オリ主みたいにしたい!

 

 

「はぁ。なぁーんで私は、こんなふうな性格なんだろねクロ」

「にゃん!(優しくて私はいいと思う!)」

やっぱり動物は癒しだわぁ。

お腹の上で包まりながらゴロゴロと鳴くクロに癒されつつ本に目を戻す。

 

「何を読んでいるんですか?」

「うわっ?!」

「ホントの童謡?」

いつの間にかかぐやちゃんの顔が目の前にあった。

「か、かぐやなんでここに?」

ここは私とクロぐらいしか知らないはずなのに!

焦りを知っててか、かぐやちゃんがさらに顔を近づけてくる。

「知ってますか、のび郎さん?童謡って本来割と怖いものらしいですよ」

「にゃん!」

かぐやちゃんにびっくりしてクロは逃げた。

……あのやろ

 

最近とことんついてないみたいだ。

「童話も本来は割と怖いみたいです。シンデレラなんか特にそう」

かぐやの指が私の顔に添えられる。

「私には継母なんていません。意地悪なお姉さんたちも、それでも王子様はガラスの靴を履いていなくても私を助けてくれました」

……これ、お前かぐや姫だろって突っ込んだらダメかな?

ダメだよな。

 

「リセットされていた記憶も戻してもらいました。あなたは自由にしていいと言ってくれたけど、私はあなたがいいんです」

涙を流しながらもう片方の手で私の手を握ってきた。

 

 

 

はぁ。

「それ、源さんに習ったろ?」

「あ、バレちゃいました?」

てへと可愛らしく舌を出すかぐや。

ほんとにどうしよかな。

「ですが、気持ちは本当ですよ。むしろのび郎さんも男を見せてください」

はぁ。

深いため息が出る。

ほんと今日は厄日だよ。

「私はまだ子供だ、これぐらいで許してくれ」

「あ」

ほんの少しだけかぐやの額に唇を当てる。

外れてしまったイヤホンと本をカバンに入れる。

「ほら、もう暗くなってきた。帰るぞ」

「……」

ったく。

顔真っ赤にして。

かぐやの右手を自分の右手で強引に掴む。

「ほら、帰るぞかぐや」

「……はい!」

もー、顔真っ赤にしてとニコニコしちゃってまあ。

ほんとこっちの事もこじらせちゃってる私って。

はぁ。

 

「聞いてよみいちゃん。最近ご主人が女を大量に落としまくってるの!」

「あー、確かドラえもんさんの所の、のび郎さんだっけ?カッコイイもんねー。あれは年頃の子なら落ちるわよー」

「わかってるわよ!けど、羨ましいじゃない!みんな人間よ!私だけなのよ猫なの!私だって人間だったらのび郎さんとデートだって!きー!」

「でも、1番距離が近いのはクロちゃんなんでしょ?」

「そうよ、今日もご主人と2人きりでお昼寝してたのよ!なのになのにあの女!きー!!」

 

のび郎が聞いたら即時にストレスで血を吐くであろう会話をしていた猫たちだった。

 

 

 




いつも誤字報告感謝しております(`・ω・´)ゝ


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のび郎くんのストレス、かぐやのその日

田舎の大食いイベントに来てます。

ゆずサイダー1リットルとか余裕だわ


「のび郎、お手紙が来てるわよ」

机で宿題をちょうど終えたところにママから声がかけられた。

「はい、今行きます」

手紙、はて?誰からだろうか?

そんな疑問に頭をひねりながら手紙を受け取りに下に降りた。

 

「のび郎ちゃん、モテモテねぇ」

笑いながらママが手紙を渡してくる。

 

差出人を見ると見知った名前が書かれていた。

伊藤つばさ、丸井マリ、神成ミズエ。

見知ったどころか付き合いの長い友人である。

誰がなんと言おうと友人である。

 

友人以外の選択肢はない、多分、きっと、Maybe。

 

すぐに中身に目を通す。

内容は割と単純でまとめると上から。

伊藤つばさ。

『誕生パーティーに来てください』

丸井マリ。

『ライブに来てください。チケット送ります』

神成ミズエ。

『近々会いに行きます』

との事。

 

「…………(白目)」

 

ここはあれだ、お約束を叫ぼう。

 

「ドラえもーん!!」

 

初めまして、無良竹かぐや11歳です。

 

私は元々未来デパートの商品であるかぐやロボットでしたが、今私が住んでいる家のび家の長男・野比のび郎さんにこの身を買われ(重要)、のび郎さんのお嫁さん候補として花嫁修業を行っております。

 

本来ならば、満月の夜に記憶をリセットされ繰り返し次のお客さんのところへ向かうのですが。

のび郎さんは、それをよしとせず私を哀れに思い、私に自由を与えてくれました。

私自身、前までの記憶がない状態でしたので何が起こるか分かりませんでした。

ですが、メモリにフィードバックがあったせいか次の満月の夜に私はここを去らねばならないんだということはわかりました。

 

私はそれが嫌でした。

でも、私はロボット。プログラム通りにしか動けません。

心が嫌だと思っていても頭は刻まれた通りのプログラムでしか動かせません。

 

ですがのび郎さんを始めお友達やパパさん、ママさんは抗ってくれました。

 

私はそれがとても嬉しかったのです。

最後の満月の夜。のび郎さんは、私を籠の中から外へと自由にしてくれました。

 

嬉しかった。

もう、お別れをしなくてもいいんだと思うととても嬉しかったです。

ですが、のび郎さんがくれた言葉はあまりにも非情でした。

 

「これで自由だな、どこにでもいけるぞ」と。

乙女に対してとてもひどいと思い誠に憤慨です。

個人的には、俺の物だとか、もう離れないとかそういうセリフが聞きたかったです。

後から源静香さんに話すと苦笑しながら確かにと同意を貰えました。

 

私は間違ってなかったのです!

それからは少女漫画なるもので恋愛なるものを勉強しております。

それからというもの毎日のようにのび郎さんにアタックしていますが、なかなかいいお返事かいただけません。

 

この身を自由にしたのはのび郎さんなんですからね!

なんせ、私はかぐや姫。

惚れられたことはありましたが。

惚れることはありませんでした。

 

あなたはかぐや姫を恋に落としたんです。

きちんと責任とってもらいます。

 

 




陰キャに大食いとか無理やったんやOrz

この作品ではかぐやちゃんは割とメルヘンというか脳内スイーツです。

惚れたからね仕方ないね!


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ブラックベルト

いつも誤字報告ありがとうございます(`・ω・´)ゝ


学校から帰ってすぐに何時ものジャージに着替える。

広くなった庭の端に植えてある木には藁が巻かれている。

 

「…はぁ」

気を付けの姿勢から半歩右足を前に、左足を半歩後ろに半身になるように、左こぶしは腰の側面に付けるように持っていき、右手は甲を相手に見せるように前に構える。

 

今の自分の状態、各場所に意識を充てる。

 

「ハッ!」

右手を一度引き正拳突き、また、右を引き右足の上段蹴り。

同じように左も動かす。

 

右、左、右、左、同じ動作を繰り返し体があったまってきた。

体温が上がり汗がにじみ出る。

 

呼吸が深くなる。

ドン、ドンと木が揺れ、付いていた葉が一枚、また一枚と落ちてくる。

その葉をめがけてさらに足を飛ばす。

自身を中心に葉っぱの円ができあがり、全ての葉の真ん中には穴が開きいつの間にか葉が付いていた木は丸裸となっていた。

 

「…やりすぎたな」

あとでドラえもんに直してもらおう。

 

動いたせいで髪が汗でぬれていた。

地面を見ると自分がいた場所だけ水たまりのようになっている。

上のジャージを脱ぐと汗のせいで張り付いたシャツが見える。

 

うん、風呂はいろう。

 

                  ★

風呂から出ると、のび太が帰ってきたと思ったらまたドラえもんに道具を借りて外に行った。

十中八九ジャイアンの所だろう。

 

あいつも懲りないなぁ。

やれやれと思いつつ温かくなってきている気温に嫌気がさす。

 

もうすぐ夏だ。

…本当に嫌だ、何もしなくても出る汗、べたつく肌、最悪すぎる。

 

それにもうすぐあれが来るかもしれない。

道具も不十分だし調べも終わってない。

やることが多すぎて手が回っていかない。

 

…もういいや、気晴らしに散歩にいこ。

                  

   

 

                  ★

 

「ひぃ、ゆるしてぇ」

 

運命は私をゆっくりさせてくれないのだろう。

聞きなれた声の方向に走ればスネ夫たちが高校生達に金をせびられていた。

…はぁ、まったく嫌になる

「その辺でやめてくれないだろうか?」

「あ?」

声を掛ければこちらを見る高校生達。

その眼には獲物が増えたと書かれている。

 

…はぁ、嫌になる。

「本当に嫌になる」

「あ?」

「気晴らしに出かけたのにこんな奴らに会うなんて本当に嫌になる」

「んだとこらぁ!」

ガンっ!

「のび郎!」

頭に衝撃が走る。意識が真っ白になった、右側頭部に鈍痛。

高校生の一人が持っていた木刀で私の頭を殴りつけたようだ。

殴られた場所からは皮膚が切れてしまったのだろうか血が出ている。

「よくも兄さんを!」

近くにいたのかのび太が高校生に走る。

だが、石につまずいて転んでしまった。

「あ、帯が」

のび太が巻いていた黒帯がこけたときにちぎれた。

「ははは、また増えやがった」

大柄な高校生がのび太を捕まえようと近づく。

「く、くるな」

のび太も逃げようとしているが恐怖で腰が抜けたのか立ち上がれていない。

「なあ、こいつも使おうぜ」

 

細目の高校生が銃らしきものを出した。

金属特有の光沢はないからエアガンだろうが。

どうやら、こいつらはそれで私たちを痛めつけようとしているらしい。

…はぁ、本当に。

「本当に嫌になる」

「あ?」

人の痛みをわからず悪戯に人を傷つけようとする。

「こいつっ」

「自身がよければ周りを傷つけようがなにもかまわない」

私の言葉に苛立ちを覚えたのか高校生がまた木刀で殴ろうとしてくる。

だが。

「その行動がどれだけ人を傷つけるか理解しない」

それをつかんだ。

「なっ!」

「だから、知らずのうちに人を殺してしまう」

つかんでいた木刀が握っていたところから折れた。

「…私は弱い者いじめをする奴らが嫌いだ」

眼に血が入ったのか視界が赤い。

ああ、でも、このままこいつらは懲らしめないと。

 

 

折れた木刀をまだ持っている高校生めがけて、折れた先を投げると同時に踏み込む。

「ぎぇっ」

わきの下、あばらがもろに出ている場所に三日月蹴りを叩き込んだ。

感触からして骨が折れているだろう。

痛みで転げまわっている高校生。

あとふたりか。

「な、やりやがったな!」

怒りをあらわにしてエアガンを持った男は銃口を私に向ける。

「だが、おそい」

乾いた音が四発。

エアガンというものは意外にその弾道が見える。

ならばあとはそのあとの弾道を予測すればすべてよけられる。

 

「な、ぎゃあ」

間合いを詰め即座に溝に肘内をぶち込む。

すぐに背後に回り蹴りも叩き込む。

「は、はっ」

肺に入っていた空気をすべて吐かせた。

しばらくは動けまい。

「な、っく」

逃げようとするが遅い。

そもそも逃げるならば喧嘩を売らなければよかったんだ。

すぐにその背中に追いつき太もも側面にけりを入れる。

 

「が、ええ」

ちょうど筋に入ったらしく高校生はその場に膝をついた。

そいつの髪を鷲掴みしてエアガンを取り出した高校生に投げつける。

スネ夫たちはもう逃げたらしくこの場には私たち兄弟と高校生達だけだ。

 

「…さぁ、ここからが本番だ」

 

折れた木刀を拾い折れた先を高校生たちに向けた。

おそらくあいつらにはとても恐ろしく見えたのだろう。

 

顔を青白くさせていた。

っち、白ける。

「帰るぞのび・・た」

木刀を高校生たちに投げ、まだ腰を抜かしているのび太に声を掛ける。

「兄さん後ろ!」

 

のび太が指差し叫ぶ。

ああ、知ってるよのび太。

こういう奴らほど愚かなんだ。

 

即座に振り返り塊になって襲ってくる三人に本気の蹴りをぶち込む。

鈍い音が三つ。

「ぎゃ!」

男たちの右腕は、そろってブランと吊るした鐘のようになっている。

骨が折れたのだ。

「次はどこがいい?もう片方の腕?それとも足?ああ、折れてる腕をもっと酷くするのもいい」

もう、見逃す気も失せた。

こいつらはとことんしなくちゃ。

1歩、また1歩高校生達に歩みを進める。

 

もう手加減しなくてもいい。

こいつらはそういうことをしたんだ。

こっちは年下で木刀で殴られた。

血もまだ止まらない、それにエアガンで痛めつけようともした。

警察沙汰になっても困るのは相手だ。

なら、相手が許してくださいと言うまでやろうじゃないか。

大丈夫だ、痛いだけで死にはしない。

口角がゆっくりと上がる。

目が細くなる。

 

まだ頭から鬱陶しい鈍痛が引かない、ああ、それならこいつらにも同じことをすればいい、同じように殴って同じように血を流してもらおう。

木刀の折れた部分を握り尻もちを着いている高校生めがけて木刀を振り下ろー「兄さん!」ー

 

「のび郎くん!」

    

高校生たちは三人そろって逃げて行った。

 

はぁ、おわった。

                  ★

 

結局頭の傷は八針も縫うことになった。

それだけでなく右足の骨にはヒビが、右手にもヒビが。

体がもろすぎる。

 

高校生の中に大手会社の、社長息子が居たらしくあまり大事にはならなかった。

……こういう人ほどことを大きくしたがらないものだ。

楽でいい。

 

「のび郎くん」

「どうしたんだ、ドラえもん」

自分の部屋で寝ているとドラえもんが尋ねてきた。

今回の事でパパには怒られママには泣かれてしまった。

 

ドラえもんもだいぶ心配していた。

「今回かなり危なかったんだよ、へたをすればもっと大怪我していたかもしれないんだよ」

「だろうな、だけどあの時私も抑えれなかったんだ」

抑えてもっとスマートに解決もできたのに、私はできなかった。

 

精神は肉体に引っ張られると聞いたことがあるが。

まさか自身で体験することになるとは思わなかった。

「強いのはわかるけど、ほんとに壊れちゃうよ」

「分かってる、もう無茶はしないさ」

これ以上は本当にきつい。

心配ばかりかけている。

「そう?」

『□□□お前すげぇよ!』

…………嫌な言葉だ。

「ああ、私は少し寝るから少しの間部屋に人が入らないようにしてくれるか?」

「それぐらいならおやすい御用さ」

ドラえもんは、ポケットから何かの道具を取り出した。

「外で使う道具だから僕はもう部屋から出るけどきちんと休みなよ」

「ああ、分かったよ」

「じゃあね」

ドラえもんはそう言うとドアを開けて部屋の外に出た。

 

天井を見上げる。

ふたつのファンがクルクルと回っており室内の空気を循環させている。

目を本棚に向けると見えるのは3つの化石。

……もう、次のことが動き出す。

 

怪我を治して万全の状態にしなければ。

 

 

 

 

 

 

 




次回からのび太の恐竜です。


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のび太の恐竜その1

最近かぐやが化石の本にハマりだした。

 

私の書斎に篭っては化石や恐竜、地層の本ばかり呼んでいる。

のび太も今日はスネ夫に呼び出されたらしくスネ夫の家だ。

……あいつ、夏休みの宿題終わってないのに大丈夫なのか?

既に終わっている宿題が入っているランドセルに目をやりそろそろかと、自分の記憶を思い出す。

 

スネ夫に呼び出されたのび太。

化石。

夏休み。

 

のび太の恐竜が始まっているんだろう。

 

……てか、化石なら私も持ってるんだがなぁ。

のび太もそれ持っていけばよかったのに。

 

自分の部屋に飾ってある化石に目をやる。

アンモナイト、三葉虫、フクイラプトル、フタバスズキリュウ。

全て私がドラえもんの道具を借りて取ってきたものだ。

インテリアにどうかと思ったが。

やはり、私の趣味には合わないなぁ。

 

基本的に和風の自室。

畳に簾、風鈴、扇風機と家の増築費用を私が出したのでだいぶ家も広くなった。

お金のことはパパとママには、誤魔化しておいたが。

……貯金が未だにパパの年収の5倍以上とか言えないし。

少しオシャンティなおうちになりスネ夫の家みたいなのでは無いが三階建ての一軒家である。

充分目立つ。

 

私達も自室を持っているし。

パパの書斎もある。

 

きちんと部屋があるから喧嘩になることは無いが。

「のび郎さん」

「開いてるよー」

かぐやが、声をかけながらドアを開ける。

せめて返事を待とうよ。

両手に本を持ってウキウキした顔で部屋に入ってくる。

 

「本ありがとうございました」

……なら、それは私の部屋ではなく私の書斎へ戻しておいてくれというのは野暮なのだろう。

「とても面白かったです」

「それは良かったが、一日でそれ全部読んだのか?」

かぐやの両手には10数冊の本。

目を通すだけなら1日かければ可能だが読むのなら1日以上かかる量だ。

「はい」

 

……この子には、1度限度というものを教えないと行けないかもしれない。

 

それにしても恐竜かぁ、始祖鳥の進化理論とか前世(昔)でよく考えてたっけ。

 

ガラパゴス諸島の固有進化も面白かったし、よく考えたものだよなぁ。

 

「所でのび郎さん」

「どうしたんだ?」

かぐやが私に言う。

いや何となく分からんでもない。

「最近暑いですよね」

「夏だからな」

「たまには涼しい所で過ごしたいですよね?」

「……そうだな」

 

……これはあれか?どこか連れていけということか?

「少し言った所に新しくビーチができたそうですよ」

……暗に連れていけということだろう。

ジーッと見つめてくるかぐや。

 

個人的には家でダラダラ過ごしたい。

この前の手紙の件で誰かに会うようなフラグが立っていると思うと外にすら出たくない。

正直アイドルと知り合いだと思われると色々あるのだ、ほんとに。

なのでフラグを回避するべく外出は最低限に控えているのだが。

 

「ダメですか?」

「分かった、分かったから泣きそうになるんじゃない」

捨てられた子犬のような顔をするな。

 

宿題は終わっている、やることも特にないし。

ママに言うとしても………………うん、微笑ましいような顔で見られるんだろうなぁ。

 

足どうするかなぁ。

 

(ↂ⃙⃙⃚⃛ ¨̯ ↂ⃙⃙⃚⃛)

…………ドアからドラえもんの顔が覗く。

 

 

「……………………………………ドラえもんなんかない?」

「うふふふ、ちょっと待ってね」

……すごくいい笑顔でポケットから何かを出そうとする。

少しイラッときたが、まあ、頼んだのは私だ。

正直私もスネ夫の家に行けばよかったと後悔している。

 

……青い海、白い砂浜、ゴミのような人波。

真新しいビーチを、目当ての人達が多く私は既にウンザリしていた。

ドラえもんの道具を借りるべきだった。

少なくともそうすればこのビーチを人混みの中いなくて済んだのに。

そして、

「おじょーちゃん、ジュースあげるからこっちで遊ばない?」

かぐやに群がるロリコン共。

いや確かにかぐやは美人だよ、なんたってモデルはかぐや姫なんだからね。そりゃ可愛いし美しいし綺麗だよ。ちょっと性格が天然だったり、子犬みたいだったりかなりギャップを感じるところがあるけどまたそこがいいと私は思う。

まあ、それはともかく。

「私の連れなんで遠慮してください」

「えぇ、!し、失礼しました!」

自慢じゃないが私はそこそこ体を鍛えてる。

その辺の格闘技を齧ってる大人ぐらいなら倒せる程度に、この前のはスネ夫達に被害が及ばないようにしたからああなっただけで、本来あんな奴ら一瞬で倒せるのだ。

ホントだよ、のび郎嘘つかない。

 

「人がいっぱいですねのび郎さん!」

そうだね、そのせいで君を狙ってるゴミ共もいっぱいだけどね。

荷物は最低限しか持ってきていないし、このビーチは係員さんに言えば荷物は預かって貰えるようになっている。

既に最低限の荷物も預けており完全なフリーである私たち。

「のび郎さん、行きましょう」

手を引っ張って海へと走ろうとするかぐやに私も微笑ましくなり2人で海へ「……あれ?のび郎さん?」

 

行こうとしました。

 



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のび太の恐竜その2

「・・・・」

「・・・・」

 

 

き、気まずい。

 

声を掛けてきたのは薄いパーカーを羽織っていた、伊藤つばさ。

ドラえもんによく登場するアイドルだ。

ひょんなことがあり私は、友人としての関係を築いている。

 

のだが、だが。

 

先ほどからこの空気は何なのだろうか。

 

「のび郎さん、そちらの方は誰でしょうか?」

 

「あ、ああ。この子は野比かぐや、私の家族だ」

そう答えると何かしらつぶやいている伊藤。

 

何を考えているんだろうか?

「初めまして野比かぐやと言います」

かぐやも挨拶している。

2人が目を合わせて笑っているし、やはり女子同士のほうが相性がいいのだろうか?

「ところで伊藤はなんでこんなところに?」

素直に気になったので聞いてみた。」

「ポスターの撮影です。普通は、春とかにするんですけどここのビーチができることを知ったママがここが開くまで待とうって」

「なるほど」

確かにここは新しいところだから話題作りとしては最適だろう。

それに伊藤も、アイドルとしてはかなり有名だ。

ここのビーチを伊藤つばさが来たビーチと流行らせる案なのかもしれない。

「……」

そんなことを考えているとかぐやに手を引っ張られる。

「そう言えば、かぐやさんを見るのは私初めてなんですけどご親戚ですか?」

伊藤からもっともな疑問を投げられる。

「まあそんな所、父方の親戚でね」

適度な嘘を混ぜながらかぐやの後ろから来ている複数人の人間に目をやる。

……このくそ暑いのに長袖?日焼け防止だろうか?

体型から見るに体育会系。

……顔を隠すようなサングラスとマスク。

まさか、いやこんな場所で?

「かぐや、私が合図したらあそこのライフセーバーがいる場所まで伊藤を連れていけ」

かぐやの耳元で小声で言うと伊藤の顔がひきつった。

 

「ほんとに仲がいいんですね」

どんどん近づく男たち。

どんどん機嫌が悪くなる伊藤。

 

近づいてきた男が伊藤の手を無造作に掴んだ。

その瞬間である。パンという音が4回連続でビーチに響き男たちは蹲り、私は男たちの後ろに立っていた。

 

 

 

「今だ!」

かぐやは、伊藤の手を掴みライフセーバーのいる所に走り出す。

4人のガタイのいい男。

まともにやっては勝てない。

なので金的だけ狙わせてもらった。

 

金的はまともに打撃を加えるとシャレにならない、掠れるように玉を蹴るととんでもなく痛い。

ほんとに痛い。

声が出なくなるほど痛い。

蹴りあげても良かったが、伊藤の関係者だとまずいのでかする程度に留めた。

 

……これで伊藤の関係者だったらごめんなさい

 

 

 

 

結果的には伊藤の関係者ではなかった。

 

身代金を要求しようとする犯罪者たちだった。

2ヶ月計画をねり今回の撮影の休憩中に映画の撮影に見せかけて誘拐する手筈だったようで

近くに車もあり警察が調べたところ出るわ出るわ証拠の山。

 

誘拐未遂犯を捕まえに来た警察官に私は危険なことをしたとお叱りを受けたが、勇敢だとジュースを貰った。

おう、感謝状ぐらいよこせや。

ついでに伊藤には休憩中でもボディーガードが着くようになった。

自由に動けるのは家だけらしい。

 

正直私のせいでもあるのですまんと思う。

 

「で、のび太これなに?」

「恐竜の卵だよ兄さん!」

 

「かぐやちゃん、海はどーだった?」

「色々あって楽しめませんでした」

 

……結局海を楽しめなかったかぐやが不機嫌になったり弟が石の塊に頬ずりしてたり。

 

私の平穏は遠い



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のび太の恐竜その3

遅くなりました、申し訳ございません。
理由としては部署が変わり、今までやっていた仕事内容全て覚え直し、家族の緊急の入院。祖父の介護とリアルが忙しかった為です。

ホント、正月ぐらいゆっくりしたかった。


少し肌寒い朝、道着に着替えた私はドラえもんに頼んで作ってもらった地下室で正座していた。

 

意識するのは全身。

指先から臍の下、丹田へと意識を流す。

どこか調子が悪ければ痛んだり上手く力が入らなかったりするが今日も大丈夫そうだ。

 

のび太が卵の化石をタイムふろしきでホントの卵にして孵してしまった。

恐らくあいつらもこの事は目にしているだろう。

 

心配だ。

 

胃が痛い。

たまにやらかす自分の行動で頭が痛いのに。

自業自得ではあるのだが気持ちが舞い上がってしまうとその時の勢いに任せてその言動と行動がおかしくなってしまう。

 

自覚はあるのだ。

ただ、やってしまう。

若気の至り、酒の勢い。

そんなノリでやってしまう。

 

被害は自分だけだ。だけなのだが、精神的にとてもつらい。

 

はぁ。

 

 

                    ★

 

 

少し日が経った夜。

 

「・・・・・・なんだ?」

 

奇妙な感覚に襲われ目が覚めた。

カーテンを見ると少しだが揺れている。

 

そんなことを考えているうちに揺れは一定の間隔でどんどん近づいてくることが分かった。

何が来るかはわからない。

 

ただ、大きい何かが家に近づいてくる。

やばい、本能が警報を鳴らしている。

近づく何かを敵として、認識する。

 

確認できるのは影、形は分らず。

使える武器は、電光丸だけ。

 

やるしかない。

行動はシンプルだ。窓から出て相手の急所らしき部分を切る。

 

それだけだ。

 

呼吸を落ち着ける、こわばっているから。だから無駄な力を抜く。

勝負は一瞬だ。

「ふー」

視野を広く、もっと相手が近づく。

無駄な力を抜き、相手の何かが伸びた。

 

 

いまだ。

―ピー

「ピー助!」

 

 

・・………?

 

 

カーテンを開くと大きくそだっていたフタバスズキリュウがのび太に甘えているところだった。

…私はピー助に危機を感じたのか。

 

いくらなんでも間違いすぎだろう私。

なんでそこまで気を張ってるんだ、あの無邪気な恐竜に危機を感じるなん……。

「そこだ!」

私の真後ろ、そこを電光丸で居合いを放つ。

そこにあったものは、黒い目玉にアンテナが着いたようなもの。

…………違う、私の危機感はこいつらからだ。

「いやぁ、お見事」

部屋の隅、暗闇で何も見えないところから一人の男が現れた。

「私が部屋に入った瞬間に飛び起き、カメラを出した瞬間に一刀両断とは、まさに侍だな」

その男は全身黒い服装で身を固め顔がわからないように覆面のマスクをしていた。

やはり来たか。

……こいつをここで斬ってしまえばそれでこの話は終わるかもしれない。

「人を恐れないフタバスズキリュウ。それに、人に恋するかぐやロボ。まるで宝箱だなここは」

っこいつ!

「なぜ知っている?と言う感じだな。物事を進めるにおいて下調べは当たり前だろう。君のような勘のいい子供がいるなら尚更ね」

ねっとりと煽るように私に話しかけてくる。

かぐやの近くにはこいつらの仲間がいると考えた方がいいか。

 

「何が目的だ」

 

私に取れる行動はひとつしか無かった。

「やはり君は勘がいいね、その分話も通じやすそうだ」

男は一呼吸置いた。

「私は君の弟の持っているフタバスズキリュウ、ピー助くんが欲しいんだよ。だけど君の弟くんは取引に応じてくれなくてね。だから君にも説得をして欲しいわけさ。もちろんタダでとは言わないよ」

脳内の奥がドロリと溶けたような感覚がある。

「君は年齢の割に大人びているね。もちろんそっちの方向にも。だから君には天国を見させてあげよう。なぁに奴隷と言うのは割と多いからね」

 

「ふぅ」

賢い君ならどちらを選んだ方が得かはわかるはずだよ。

そう男は私に言葉をなげつけた。

 

ダメだこいつは。

 

こいつは本当に。

「私を怒らせたな?」

「あん?」

その瞬間に私は自身の部屋の壁をぶち抜きかぐやの部屋に入った。

部屋にいるのは同じように黒ずくめの3人。

そいつらは、持っているものをかぐやに向けていた。

「貴様らぁ」

私は怒っていたのだろう。

弱いのに正義感は強い自分の性格を自覚はあるのに客観的に見ておらず、やはりどこか強者でいた自分に酔っていたのだ。

だから。

 

だから私は本来使うことの無いものを使っていた。

 

 

「素晴らしい」

目の前にいた少年はその一言に尽きる。

目的の恐竜を調べるうちにでてきた家族関係、その中で飼い主であるのび太君の兄、その子はひみつ道具である変身ドリンクをいつの間にが摂取したのだろう。

自分の腕を蔓に変化させ私の仲間全員を壁に縛り付けていた。

本来ならかなりの集中力とイメージがないと変身できない道具のはずだが彼はそれを一瞬でやり遂げていた。

「立場が逆転してしまったな」

決して小さくない音が響いた。

下の子たちは直ぐにここに来てしまうだろう。

「貴様らは私の逆鱗に触れたぞ!」

仲間たちを縛り上げる蔓に力を入れ動きを完全に取れなくしている。

「見事だよ。だが、大人とはずるいものでね。こんなものも使うんだ」

緊急用タイムベルトのスイッチを押す。

スイッチを押せばアジトに転送される代わりに、半径500メートル以内で同じベルトをしているものを一緒に転送してしまうという欠点があるが、今はそれが強く出た。

「君を気に入ったよ、のび郎くん」

 

説得にも失敗し完全に彼に敵対されたというのに私の、笑みが止むことは無かった。




いつも誤字報告ありがとうございます


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のび太の恐竜その4

いつも感想ありがとうございます。
励みになります。


……白い砂浜、青い海、照りつける太陽。

 

はしゃいでいる友人たち。

隠れてタイムマシンを直している同居者。

 

私の反応を気にしているかぐや。

 

「カオスだ」

 

 

あの後ドラえもんたちが私の部屋に駆け込んできた。

壊れた壁は大きくしたタイムふろしきで直した。

 

理由は聞かれなかったが蔓になっていた腕を見てのび太が気絶した。

我が弟ながらもう少し肝を太くしてもらいたい。

「使ったんだね」

「ああ寝ぼけて噛み砕いたみたいだ」

「もう!だから危ないって言ったじゃないか」

肘から手にかけて皹が入り血がじわりと滲む。

「やっぱり形状を変化させて濃度を上げた変身ドリンクを使うのは危険だよ」

ドラえもんはポケットから包帯などの治療道具を取りだしテキパキと私の両腕に施す。

「説明しただろ。変身ドリンクの量と正しい使い方には意味があるんだよ」

初めて変身ドリンクを使った時にされたドラえもんの説明を思い出す。

「飲む量が決まっているのは、自分の記憶が確かなうちに効き目が切れるようにしているため。時間をかけて変身しているのは体に負担をかけないため、だっけか?」

 

「そうだよ。変身ドリンクを使って変身するにはイメージが大切なんだ。確かに自分自身に戻るには時間はかからないけど、それは自分を完全に覚えているからなんだよ。もし、自分をも思い出せなくなれば戻れなっちゃう。それに、時間をかけての変身には体に負担を与えないようにするためだよ。石を熱したあと急に冷やしたらボロボロになるでしょ?けどゆっくり冷やすとボロボロにならない、それと同じだよ」

 

「そうか」

 

体超痛てぇ。え?てか何、変身ドリンクで作ったタブレットそんなに負担やばいの?

確かに三本を1つに濃縮したけど原作ではそんなデメリットなかったよね?

え?まじ?割と便利でお手軽に使えると思ったらそんなデメリットあるの?

せっかく完全に変身するものじゃなくて基本の体と想像したものがいい感じに混ざるように調整できたのに。

何そのデメリット、どっかの救世主かAI絶対ぶっ壊すマンかな?

いや使いますけど。タブレットどころか、粉末、キャンディ、注射、ガム、煙草、ガントレットと、どっかのゴキブリ倒すために作られた薬品レベルで形状のバリエーション増やしたんですけど、むしろそれを楽しみたいだけで開発したレベルの代物なんですけど。

 

そんなデメリットあるならそれ前提でフォローできるように道具組み込んだんですけど。

先に言ってくれよドラえもん。

 

 

 

あ、騒ぎになるんでピー助を白亜紀に返すのね。

ついて行った方がいい?

あ、自分たちだけで行くのね。

 

 

「そんなわけでピー助を助けに行きたいんだ」

……ジャイアン達にタイムテレビを見せたのび太。

自分がピー助を送ったところが日本じゃない事を知ったようで迎えに行くと私に言いに来た。

 

知ってたよ。

だから準備してたよ。

 

だが、向かう時に待っていたのは定員オーバーの警報とほとんど暴走状態と言っていいタイムマシンの歓迎だった。

タイムマシンから私たちは放り出されたが無事みんな白亜紀の北アメリカへと到着したのだった。

ドラえもんに頼んでおいた道具は頼んでおいたものに入っている。

これがどこまで通用するか。

 

冒頭に戻る。

 

 

「私たちも行きましょ」

かぐやが手を引っ張る。

「ああ」

今は考えても仕方ない。

かぐやと走りながらのび太たちのもとへと向かった。

 

 

「あ、兄さん」

「楽しそうだな、のび太」

のび太はピー助の背中に乗って海を進んでいた。

剛田とスネ夫は海底のほうへと潜っている。

源も同じように海底でユリをとって遊んでいた。

 

皆楽しそうだ。

 

私一人がこれから起こることを知っていると思うと胃が痛いよ。

 

…そんなこと思っているとのび太がピー助の上から別の何かに飛び移った。

「ここで甲羅干しー」

 

楽しそうだな、みんな。

よし、私も今は楽しもう。

 

「ちょっ、兄さん!海の上走るとかどうやったらできるの?!」

「のび郎さん?!」

答え、気合い。




いつもいつも感想、誤字報告ありがとうございます。

かなりモチベも維持できています。
あと、主人公ですが。
割と作者の好きなように書いてるので割と矛盾の塊ですw。
ツッコミどころはあると思いますが見逃してください。


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のび太の恐竜その5

筆が乗ったけど短いです


夜、空気が汚染されていないせいか星が近くにあるように見える中、焚き火を囲み私たちはドラえもんから貰った物を食べていた。

 

……大きい。

 

ドラえもんはどこか上の空、それ以外は楽しそうに喋っている。

 

だからだろう、ゆっくりとくるそれに気が付かなかった。

「ひっひいっ!!」

最初に気がついたのはスネ夫だ。

木の中こちらを見ている猛禽類のようにとがった目が2つ、それに気がついてしまった。

 

余談だがティラノサウルスの大きさは、約4メートルから6メートル弱。

そして重さは4.500から、14000キロ程だ。

 

私たちの目の前に現れたティラノサウルスはそれをはるかに超えていた。

「み、みんなこっちへ!」

ドラえもんがみんなの盾になるように前に出る

「のび郎くんも!はやく!」

だが、私は限界だった。

分かっているこれは八つ当たりだ。

大人気なくみっともないただの八つ当たりである。

 

これでも自分は頑張ったと思うんだ。

のび太に勉強を教えテストの最低ラインを5点にまで引きあげ、パパが持ち帰ってきた会社の仕事をたまに気づかれないように手伝い部長の地位まで引きあげ。

フエール銀行や、ハツメイカーを使い資金を作り、そのお金でドラえもんに頼んで買ってもらったひみつ道具を自分なりに改造し、これから来る未来のトラブルのために備え。

その他のフォローも欠かさなかった。

だから、これは今日は楽しんでもいいやと思ったのに邪魔をされたという子供特有の八つ当たりなのだ。

「の、のび郎!早くこっちへ」

ポケットから煙草を取りだし焚き火に入っていた木の枝で火をつける。

「ふぅ」

ゆっくりとフィルターを越してくる紫煙を肺の中にゆっくりと染み込ませる。

実際にこれが正しい煙草の吸い方かは、分からないが私は前の時も同じような吸い方だったから問題は無いだろう。

「のび郎!何してんだよ!」

 

こちらを睨みつけているティラノサウルス。

襲うなら早く襲えばよかったのだ。

その巨体なら、私など瞬殺だっただろうに。

 

警戒していれば、辞めていれば、そもそも近づかなければ。

まあ、この時代の頂点に近いものに何を言っても仕方ないのだろう。

 

「駄目だのび郎くん!!」

ピキピキと、額や首の血管が浮いてくる。

 

ビリッ。

大きく変化するからだに耐えきれず服が破れていく。

「あ、あああhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!!!」

人だった喉からその姿とは似合わない美しい声が漏れる

 

「Gruuu」

どおした?

来いよ?

腹が減ってんだろ?

ほら?

 

吸盤が着いた右手だったものをティラノサウルスに伸ばすとゆっくりとこの時代の王者とも言える恐竜が後ずさる。

 

来いよ!

「Hahhhhhhhhh!!!」

 

 

 

 

「やりすぎたか」

ティラノサウルスはその体の大きさに似合わない速度で逃げていった。

 

いやもうほんと、ストレス溜まるよ。

ようやく落ち着けるかなと思ったら邪魔してくるんだもん。

まだまだやる事あるんだからこの時ぐらいは静かにゆっくりしたいよ。

てか君らいつまで固まってんの?

 



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のび太の恐竜その六

お待たせしました。


なんやかんやあってこの時代の日本に行くことになった。

 

「あれ、兄さん服変えたの?」

朝1番の私を見てのび太が声を出す。

「ああ、少し肌寒くてな」

私の服が半袖の服から長袖に変わっていることを気にしたみたいだ。

「季節的には夏だけどまだこの時期は、肌寒いもんね」

ドラえもんがも同意するように続いた。

さすが猫型ロボット、寒いのは苦手なのだろう。

 

「さて、みんなタケコプターはつけたね?」

昨日の話の通りだとみんなで飛ぶらしいが。

 

これ、一人を除いてスモールライトで小さくなって何か入れ物に入るなりして運んだほうがもっと効率がいいんじゃないかと思ったが、だめなんだろうなぁ。

さらに言えば故障したらタイム風呂敷で壊れる前まで戻すなり…やめとう、下手に私がこの行動に口を出せばわかっていることにたいして何か予測不可能なことが起こりそうだ。

 

「…人生ままならないものだな」

 

カチっ

 

皆がタケコプターのスイッチを入れる。

「海岸沿いに沿って北へ」

ドラえもんが先導を切りみんなの前へと動く。

皆が続く。

私は、かぐやへと近づいた。

「大丈夫だかぐや、みんな無事に戻れる。」

「はいっ」

 

かぐやもみんなの所へと急ぐ。

 

「ッ!」

 

1度だけ胸が強く脈打つ。

その時一瞬、本当に一瞬だが右手から鋼色の何かが生えた。

だが、もうそれは見えない。

何度右手を見てもそこにあるのは普通の人間の子供の手だ。

 

 

変身ドリンクを使いすぎたせいだろうか?

瓶のパッケージには成分をいじらないでくださいとご丁寧に書かれていたが……まあ、いいか。

自己責任とも書かれていたし。

 

……ま、まあいざとなればタイム風呂敷にでも包まれて体直せばいいし(暴論)

あれ?なんで地面が…めの……まえ…に。

「のび郎さん!!」

「兄さん!!」

 

 

 

 

のび郎君が目の前で落ちた。

間一髪のところでジャイアンが助けたが具合が顔色が悪い。

 

あの子は大人びている。

年相応な事もあるが周りの子供と比べるととても落ち着いてのび太くんがジャイアンやスネオと喧嘩になると仲裁もしたりする。

 

のび太くんが言う我儘も仕方ないと言ってどうにか叶えようとする。

 

今回も、みんなが遊んでいる時に周りに気を配ったり

夜のキャンプの時もティラノサウルスを追っ払った。

 

ボクも何処かでのび郎を特別視してたんだと思う。

 

だけど、この子は子供だったんだ。

『疲労』

お医者さんカバンにそう表示されたのび郎はベッドで寝ている。

「今日はここで泊まろう」

 

まだ日は高いが、のび郎くんに無理をさせる訳には行かない。

明日までかぐやちゃんがのび郎を見てくれるからその間に解決しなくちゃいけないことをみんなで担当しよう。

 

「……」

空気が悪い。

「いきなりのび郎が倒れてるじゃんか!」

騒ぐスネ夫。

当たり前だろう。

不甲斐ないが僕達の中で1番の支柱はのび郎くんだ。

 

そんな彼が倒れた。

黙っている皆も精神的な支えが倒れたのはやはりショックなのだろう。

「スネ夫」

ジャイアンがスネ夫を諌めるがスネ夫は止まらない。

「大体のび太があんなこと言わなけりゃこんなことにはならなかったんだ!」

 

「……勝手に着いてきたのはそっちだろ、それなのにまるで自分が被害者みたいに言うのはやめてよ」

「っぐ!」

お、おう…のび太くんが冷静にしかもどストレートな正論を返した。

「もう、やめなよ。ここで言い争っても仕方ないじゃないか」

言い争うなら行動を起こすべきだ。

幸いやることは多い。

「今日だって無駄にはできない、できることをやろう」

のび郎くんなら、もっと上手く収めるんだろうなと思いながらみんなにこれからの事を説明する。

 

「……」

目が覚めると知ってる天井が目に入った。

窓に目をやると月が登っている。

それなりの時間寝ていたのだろうと予想が着いた。

 

……?

 

体が動かない。

いや、動かそうとすると鈍い痛みが走る。

 

前世でも味わったことのある痛み。

これ、筋肉痛だ。

 

……軟体動物に体を変えたからだろうか?それとも日常的に使わない筋肉を使ったからだろうか?とてつもない筋肉痛が自身を襲っていた。

 

簡単にまとめると、やっべぇ筋肉痛だこれ?!ってな感じだろうか?

 

割とマジめに動けないレベルだ。

軟体動物になるのは控えよう

 

「目が覚めた?」

声がする方に目を向けると丁度入口からドラえもんが入ってきた所だった。

その顔はいつもの笑顔ではない。

「……ああ、どうやら心配をかけたみいだね」

「そうだね」

…………。

「怒ってる?」

「いや、別に勝手に道具を改造してその反動で倒れてみんなに心配かけたことに対してなら全然怒ってないよ」

体を起こすと今まで寝ていたせいかピキピキと軽い音が鳴る。

嘘だ。怒ってないならドラえもんはそんなに回りくどい言い回しはしない。

「……今は寝てるけど、かぐやちゃんすごい心配してたんだよ」

「そうか」

「なんでも一人で抱えると疲れるよ」

「ああ」

「のび太くんも心配してたよ」

「そうか」

「君は!自分の体がどうなってるか、分かってるの!?」

ドラえもんが私の肩に手を乗せる。

部屋の窓ガラスに写っている私の両目は人の丸い瞳孔ではなく猛禽類のように縦に長い形状になっていた。

 

 

「変身ドリンクの濃度を上げて成分もいじって、副作用がどれだけあるか!既に体の表面上にすぐ分かる形で出てきてる。内部にどれだけ影響が出ているか二十二世紀の病院で見てもらわないと何も分からないんだよ!」

「必要な事だ」

そう、必要な事なんだ。

 

これは現実。

アニメのように誰もが欠けないなんて事はありえない。

誰も欠けることもなく、皆で帰るには最低限の準備が必要だ。

最悪を考え、それに対しての対策を考え、適任者にそれを任せる。

何も代償がない成功なんてありえない。

 

アニメみたいに全てが成功に繋がるなんてそん都合のいいことはないんだから。

 

「現代にちゃんと帰れたら病院には行くから、みんなには黙っていてくれ」

「……かぐやちゃんは気付いてるかもしれないよ」

「賢い子だからな」

 

ほんと、ロボットとは思えないくらい人間臭くなっちゃったけど。

いい傾向だよ。

「……君は。……君はいつも何処か違う所から僕達を見てる」

「そこまでにしときなよ、ドラえもん。私も古くからの友をこの手で壊したくはない」

 

 

部屋に聞き覚えのない低い声が響く。

「っ!!!」「遅いな」

ドラえもんは、私を背に隠すように動くがすぐに声の持ち主に頭を掴まれた。

 

「A級犯罪者、ノビ・ノビロウ!何故ここに!」

はい?

 



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のび太の恐竜その7

前の投稿からだいぶ遅くなりました。
今回伏線盛りだくさんです。





……ドラえもんの道具の1つキャンピングカプセルというものがある、テニスボールほどの大きさで地面に指すと大きくなり1人用のカプセルホテルのようなものが出来上がるのだが。

 

いま、その1つに三人の人物がいた。

 

一人、私

一人、ドラえもん。

一人、永久犯罪者だれ?

 

「はっはー、まだ何もしてないのに犯罪者は無いだろうドラえもん?そしてこの時代の俺、初めましてだな」

その人物はそう言いながらドラえもんを片手で押しのけ私の目の前に立った。

 

 

180はあるであろう身長に腰まで伸びた髪をひとまとめにしている。何処か怪しそうな雰囲気を持つ青年。

 

「俺の名前はノビ・ノビロウ、未来のお前さ」

「違う!」

ドラえもんが叫ぶ。

 

「お前みたいな化け物と、のび郎君を一緒に『カチッ』……」

「ちょっと煩いから黙ってもらうぜ。ドラえもん」

 

ノビロウが棒状の物を取り出すとドラえもんが口を開いたまま止まった。

 

ドラえもんだけじゃない。

 

何かが止まっている。

「流石俺、もう異変に気がついたか」

 

笑いながらノビロウは手に握っている棒をくるくると回している。

 

落ち着け。時間が止まってるだけだ、ドラえもんが壊れたり消えたりするわけじゃない。

 

 

「一応説明しといてやるよ。これはタイムコントローラーって言う道具だ、時間を止めたり早めたり遅くしたりできる。今この時は俺とお前以外動くことは無い」

 

「で、だ。話を戻すが俺は未来のお前だ」

「……そうか」

 

未来の私か。

目の前の私はどこか不服そうに口をとがらせる。

「そうか、ってそれだけか?もっと驚いてもいいだろ。永久犯罪者とかどうしてその道具を!とかさ」

 

大人になった私はよく喋るんだなぁ。

場違いな感想を考えながら今取れる手段をいくつか考える。

……ダメだな道具を使われたらそれでおしまいだ。

 

「まあ、仮面ライダーで言う所の貧弱な初期フォームのお前を、最終フォームにしてやろうって思ってタイムパトロールから逃げながら来たんだ。感謝してくれ」

 

ニコニコと愛想よく喋る未来の私。

 

「帰れ、お前は「信用出来ない?」」

 

そうだ、この男は今の私が成長した姿だろう。

自信をもって目の前にいる人物が未来の自分だとは思えるが、それはそれだ。

自分だからと言って簡単に信用はできない。

 

疑い深い?

慎重にならざるを得ない状況で簡単にホイホイ信用していたら命がいくつあっても足りやしない。

ドラえもんぽくない?

当たり前だ、自分自身イレギュラーな存在だ。

 

だからこそ。

「ああ」

 

自分が自分を利用しないなんて、そんな甘いことを信じられない。

 

 

「信用出来ない?そんな自分勝手な理由で強くなる機会を蹴る?お前どこまでこの世界を舐めてんだ?」

 

一瞬で何かにまかれ壁にたたきつけられた。

 

「かはっ」

 

その衝撃でくちから肺の空気が吐き出される。

「あれだね、自己嫌悪?いや、古い鏡を見せつけられてるみたいだね」

 

ノビロウの腕が蛸のような触手になって俺の体を掴んでいた。

 

「蛸ってのは体の9割が筋肉でな、無駄なく動かすとこんなに早く動かせるんだ」

もちろん力もあると俺の体を締め付けている触手の力が強くなる。

 

何を言っているかが俺の耳には入ってこなかった。

むしろ今この状況は自身にとって1番ダメなものだった。

 

上手く動かない体に振るわれる理不尽な力。

 

原始的な感情。

恐怖が頭の中を震わせる。

ゆっくりと何かの蓋がズレて行くような感覚が……

「はぁ」

 

呆れたようにため息をつくノビロウ。

体から触手を外し腕を元に戻した。

「今成られても困るからな」

先程の感覚が無くなった。

まるでもう意味は無いと示しているようだ。

 

これだから子供の俺はとガリガリと頭をかいている。

「その感覚いいものでは無いが、今回絶対に必要になるもんだ。覚えとけ」

 

そう言いまだ何か言おうと口を動かした。

ビービー!

安いおもちゃのような電子音が鳴り響いた。

「うっそだろお前、ほぼほぼ何も出来てないのに!」

オーマイガー!

とオーバーアクションで右手首に着いているなにかを押して音を止めた。

 

「ッチ仕方ない、おい、俺。お前が思っているほどこの世界はアニメみたいにはいかねぇ。かぐや姫ロボットだって道具だったからこそあったものだからな。そこんとこよく考えとけよ」

それだけ言うとノビロウは空間にブラックホールをイメージする様な黒渦の穴を開けてその中に入っていった。

 

「するな!ってあれ?居なくなった」

何も無かったい?と心配するドラえもんに返事をしたが。

 

あの蓋をずらすような感覚。

あれが気になって仕方がなかった。

 

 

「……っち、ほんとにしつこいヤツらァ!」

後ろから追いかけてくるタイムパトロールを振り切るためにスケボー型のホバークラフトを使い愚痴を吐く。

 

『転送まであと15分です。逃げ切ってください』

耳に着いている無線機からかぐやからの通信が入る。

「あいよー」

返事をしながら先程のことを思い返す。

多分あいつはあれを感じたはずだ。

 

自身のことながら面倒な道具に手をつけたもんだと嫌になる。

『若い頃ののび郎さん可愛かったですね、今ののび郎さんも嫌では無いですがやはりいつもとは違う、新鮮味とは大事ですね』

かぐやさん通信から色々漏れてますよ?

 

だが、確実に早い。

俺が感じるよりも早くあれを感じていた。

なら、これまで救えなかった人も救える。

 

完全に扱えるようにするべきだがまだ早い。

少なくとも1度きっちり落ちないとあれは認識できないもんだ。

 

 

だから、耐えろよ俺

 



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