Fate/Diend Order (クロウド、)
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海東大樹 マテリアル

「サーヴァント、アルターエゴ。召喚に応じて参上したよ。全く、無理矢理人を英霊にして……ようやく終着駅についたと思ったけど、まだしばらく僕の旅は続きそうだ。よろしく頼むよ、マスター」

 

「さて、そろそろ旅を再会しようか」

 

「僕の旅の行き先は僕だけが決める……だけど、今の僕は君の行く末を見てみたいと思っている」

 

「え? 人の命とお宝どちらが大切かって? 違うね、人の命は等しくお宝さ」

 

「やぁ、マシュ。勉強かい? あんまり根を詰めると体が持たないよ? ココアでも入れようか、体が温まるよ」

 

「おや、少年君じゃないか。カルデアでも元気そうで良かった良かった。ん?いい加減、その呼び方はやめろって?僕からしたらどれだけデカくなっても君の心は少年だよ」

 

「セイバー……いや、ここではアルトリアか。どの世界でもシロウの為に戦ってくれた君には感謝の気持ちは尽きないよ。まぁ、初対面のときにいきなり切りかかってきたのは忘れてないけどね」

 

「げっ、アキレウス……。言っとくけど、僕は君と戦う気はないよ。君と戦うのホントに疲れるんだから……。」

 

「魔法少女の方のイリヤにクロエ、それに向こうのシロウの妹の美遊か。あの子達まで呼ばれてるとは……。思うところがあるのかって? そりゃね、でも僕からしたらどんな世界でもイリヤはイリヤだからね、うん。……家族と思ってるよ」

 

「おおっ、切嗣にアイリじゃないか! 夫婦揃ってここに呼ばれてるとは。相変わらず仲がいいようで、安心したよ。え? シロウ達のことは感謝してるけど、イリヤは渡さない? 何言ってるんだい、君?」

 

「アタランテ……あのときの僕は自分がやるべきことが見えてなかった……。だからこそ、君をあんな道に進めてしまった。だけど、僕も色々な場所を旅して少しは成長できたと思うんだ。え? そんなこととっくにわかってる? そうか……嬉しいよ」

 

「ジャック・ザ・リッパー……僕の最初の過ち。あのとき、もしも引き金を引かなければ僕の道も随分違ったものになったろうにね」

 

「ギルガメッシュ……君とは色んな世界で敵対したり、協力したりしたけど、君が持ってるお宝にはあまり興味はないかな……。僕のお宝は僕自身の手で手に入れなきゃつまらないからね」

 

「イシュタルにエレシュキガル、女神の依代か。なんであの子はホントこう、巻き込まれ体質なのか……。まあ、いい子なんだけどね」

 

「善性の女神パールヴァティか……うん、心優しいあの子が依り代に選ばれるわけだ。だけど、あまりあの子の体で無茶をしないでくれよ?」

 

「ネロ、か。月では世話になったし、してやったよ。彼も今頃笑ってみてるんじゃないか?」

 

「玉藻の前ねぇ……。彼女とは色々趣味が合うけど、個人的にはあまり付き合いたくはないかな、何か疲れるし。」

 

「BB、僕としては君がやったことを許すわけにはいかないし。許そうとも思わない。それでも、君があの子から生まれた存在だから……憎めない自分がいる」

 

「シトナイ、いや、イリヤ。君は僕が出会わなかった方のイリヤか……。性格はあまり違わないね。……だからこそ、安心するんだけど」

 

「アンリマユ……悪いんだけど、一発殴らせてくれないか? え? 嫌だ? そんなこと言わずに変身しないで優しくやってやるから」

 

「やぁ、ウェイ……いや、ロードエルメロイ二世。毎度のことだけど、随分印象が変わるものだね? 多くの人間を導くのはそう簡単なことじゃない、それが魔術師なら尚更だ。だからこそ、今の君は尊敬に値するよ。同じトラウマを持つもの同士仲良くしよう」

 

「ん? 二世の義妹に内弟子君か。どうしたんだい? え? 第四次の彼の様子について詳しく? まあ、構わないが、長い話になる。紅茶でも嗜みながらゆっくり話そうじゃないか」

 

「好きなもの? 勿論お宝さ! 勿論、宝石とかキラキラしたものには興味がないさ。僕が欲するのは本当に価値のあるものだけさ。

 あとは、家族かな?」

 

「嫌いなもの、か。僕の旅を邪魔するもの、かな?」

 

「聖杯? 本物ならともかく魔術師が作ったまがい物、いらないよ」

 

「ん? お腹でも空いたのかい?」

 

「やれやれ、女性の相手も楽じゃない……。」

 

「君はお人好しだな、そんなんじゃすぐに誰かに騙されよるよ? まぁ、僕は百回人を裏切ったやつより、百回人を信じて騙された馬鹿のほうが好感持てるけどね」

 

「『手が届くのに手を伸ばさなかったら、一生後悔する。それが嫌だから手を伸ばす』。とあるライダーの言葉だ。なんでそれを君に言ったかって? さぁ、なんでだろう?」

 

「もしかしたら……僕の今までの旅はこの場所に行き着くまでの旅だったのかもしれない……そう考えると、あのフランスでの出会いは運命、というやつだったのかもしれない。……ふっ、ガラじゃないな」

 

「何か騒がしいな、君が行くなら僕も行ってみようか」

 

「誕生日か、おめでとう。君が生まれてきた日というだけで十分、この日は特別だよ」

 

マシュ

 

「大樹さんには旅の中で様々なことを教えてもらいました。人間として生きていくのに何が一番大切なのか……それは自分がどうしたいかという意志だということを。私にとって大樹さんは先輩と同じくらい尊敬する人物です」

 

エミヤ

 

「私が彼をどう思っているのか、だと? ……ひとえに憧れ、なのだろうな。やはり、どれだけ年をとっても兄というのは弟の目標なのだよ」

 

アルトリア(セイバー)

 

「ダイキ……貴方はシロウや私に道を示し続けてくれた恩人です。その貴方と再び肩を並べて戦えるのはとても誇らしい。え? 第四次聖杯戦争で切りかかってきたことを忘れたわけではない? それは、その……すみませんでした」

 

アキレウス

 

「よ〜やく、チャンスが巡ってきたんだ。あの時の借りきっちり返させてもらおうかっ! あっ、コラ逃げるな! わざわざ透明化のカードまで使ってんじゃねぇ!」

 

イリヤ(魔法少女)

 

「ディエンド、さん? 最初は敵だと思ってたけど、ずっと見守ってくれてたんだよね……ありがとう、ヒーローさん」

 

クロエ

 

「ダイキ。ええ、覚えてるわよ。私をアインツベルンの城から助け出すのを手伝ってくれた人なんでしょ? どうりで嫌な感じがしなかったわけだわ」

 

美遊

 

「ディエンド……いえ、大樹さん。お兄ちゃんを助けてもらったことは本当に感謝しています。それに、私やイリヤをずっと守ってくれたことも本当にありがとうございます。あの……ここにいる間だけでいいので、お兄ちゃんって呼んでもいいですか?」

 

エミヤ(アサシン)記憶引き継ぎ

 

「海東大樹。彼には本当に世話になった。聞いた話だと、僕が死んだあとシロウの面倒まで見てくれたそうじゃないか、それにイリヤまで……。本当に感謝している。だが、兄以外としてイリヤに近づけば即起源弾を、撃たれる覚悟はしておくことだな」

 

アイリスフィール

 

「海東君、いいえ、イリヤのお兄さんなんだからもう大樹君って呼ぶべきよね。貴方もお母さんと呼んでくれてもいいのよ?」

 

アタランテ

 

「……あの男がジャックにしたことはまだ許していない。だが、カルデアでの奴を見れば奴があの時とは違うとわかっている。あの時の誓いは決して違えてはいなかったようだな」

 

ジャック・ザ・リッパー

 

「ねぇねぇ、お母さん! これからナーサリー達と一緒に青い人のお茶会に行くんだけど、一緒に行かない?」

 

ギルガメッシュ(アーチャー)

 

「誰かと思えば異邦人か。貴様には随分と汚泥を飲まされたが、貴様が辿ってきた旅路は評価に値する。光栄に思えよ」

 

イシュタル

 

「う〜ん、何なのかしらねあの青いの? ものすごく見覚えがあるのだけど……。」

 

エレシュキガル

 

「異世界を渡る旅人……彼の魂は私のもとに来てくれるのかしら……? べ、別に大した意味があるわけじゃないのだわ!」

 

パールヴァティー

 

「あの青い仮面の人ですか? よくお料理を教わっているんです。『地球の本棚』? というもののおかげで古今東西のお料理の本が見られるらしいんです! ですが、何故でしょうあの人に料理を教わるのは初めてじゃないような……?」

 

ネロ

 

「うむ。ダイキには月の聖杯戦争で随分世話になった。あやつさえ良ければ、余の右腕に引き立ててやっても良いと思っている!」

 

玉藻の前

 

「相変わらず魂が異常な位眩しいですねぇ……。まあ、御主人様には及びませんけど」

 

BB

 

「はぁ……本当にあの人はどこにでも巻き込まれますよねぇ……。そのたびに誰かの味方しちゃって、あれ絶対本来の目的忘れてますよ。お宝とかどうでもいいみたいな感じですもん」

 

シトナイ

 

「ダイキ……まさか、こんな形でまた会えるなんてね。あの金ピカに殺されそうになったとき助けてくれたのは感謝してるわ。それにしても、貴方ホントに年を取らないのね……。」

 

諸葛孔明

 

「海東大樹……お前は本当にどこにでも現れるな。第四次聖杯戦争や、その他にも助けられたのは感謝しているが。くれぐれも余計なことをあの悪魔に吹き込まないでくれよ」



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旅の軌跡
旅の軌跡 海東大樹と衛宮士郎


 ーーー僕があの世界に訪れたのは……そう、第四次聖杯戦争の世界で衛宮切嗣と協力してイリヤスフィールを救い出したあと、お迎えが来て世界を渡ったときだった。

 

 僕は一つの武家屋敷の前に呼び出された。

 

「ここは……。」

 

 人の気配を感じないその屋敷の表札を見てここがどこなのか思い出した。

 

『衛宮』

 

 そこには確かにそう記されていた。そこは間違いなく、衛宮切嗣が拠点として用いていた場所の一つだった。そして、脳内に刻まれた知識を閲覧するとこの世界はどうやら衛宮切嗣によって聖杯が破壊された世界らしい。

 

 僕がこの世界に呼び出されたということは僕にも役目があるということだ。そう考えていると、玄関の扉から一人の少年がひょっこり顔を出した。

 

「アンタ、誰だ……?」

 

 赤銅色の髪の男の子が僕を怪しい人を見る目で見ている。

 

「すまない、ここは衛宮切嗣さんのお宅で合ってるかな?」

 

「アンタ、爺さんの知り合いか?」

 

「……まぁ、そんなところかな。切嗣さんはいるかな?」

 

「……爺さんなら、死んだよ。先週」

 

 少年の言葉に僕は目を見開く。あの切嗣が……。

 

「ご病気、かな……?」

 

「お医者さんは、衰弱死って言ってた」

 

 衰弱死……間違いない、泥を浴びたんだ。アンリマユによって汚された聖杯の泥を。知識と一緒に流れてきた日付からしてその呪いに2年間も耐えたのか……。本来なら、数日持てばいいほうだろうに。

 

 いや、待て……。だとしたら、目の前のこの少年は何者だ? 息子? そんなはずはない。記録によれば彼の妻であるアイリスフィールも愛人である舞夜も既に故人の筈なのに。

 

「君の名前を教えてもらえるかな?」

 

「衛宮、士郎……。」

 

 衛宮、やはり切嗣の縁者、となれば彼は切嗣の養子か。魔術師殺しと言われたあの彼が養子にしたということはつまり、聖杯による被害の生き残りである可能性が高い……。そう言えば、Fateの物語にそういう少年がいた気がする。

 

 ーーーこの世界での僕の役割がわかった気がした。

 

「僕の名前は海東大樹、切嗣さんに頼まれて君を育てることになったものだ」

 

 僕は敷地に入り、半開きになった扉の前まで歩み寄る。そして、シロウの頭にポンと手を置く。

 

「これからよろしく頼むよ、少年君」

 

 そう言って僕は半ば強引にその家に居着いた。

 

 

 

 

 

 

 そこからは……結構楽しい日々だった。

 

「カレーかい? う〜ん、だけどルーはあと二つは入れてみたほうがとろみが出ていいんじゃないか」

 

「そうか? これ以上入れると辛味が増すんじゃない……。」

 

「だったら、砂糖でもとろみが出るからそっちを入れてみようか?」

 

「シロ〜ウ、今日のご飯なぁにぃっ?」

 

「おや、大河君も来たみたいだね。」

 

 転生前の記憶がほとんどない僕にとって『家族』との記憶なんて全くと言っていいくらいなかった。だから、シロウとの時間や近所の極道の娘さんとの日々は不思議と居心地が良かった。

 

 

 

 

 

「大樹さん、誰だその子?」

 

「ああ、この子? 今日から家で預かることになった間桐桜ちゃんだよ」

 

「……………。」

 

「大樹さん……自首してくれ」

 

「誘拐じゃないからね、決して!?」

 

 色々あって、家族も増えていった。

 

 

 

 

 

 

「……大樹さん、その人達は?」

 

「ん? 君のお姉さんのイリヤちゃんと、そのおつきのメイドさん、セラさんとリズさんだよ」

 

「大樹さん、俺理解が追いつかない……。」

 

「貴方がシロウ?」

 

「お、おおう……。」

 

「わ〜い、お兄ちゃんだっ!!」

 

「わっ!!」

 

「お嬢様っ……!」

 

「イリヤ、楽しそう……。」

 

 切嗣の最後の願いもきっちりこなしておいた。

 

 

 

 

 

 

「『正義の味方』になりたかった、か。切嗣さんは最後にそういったのかい?」

 

「ああ、だから俺が代わりになってやるって言ったんだ」

 

「……そんな必要ないじゃないか。だって彼はとっくに君にとっての『正義の味方』になれてたんだからね」

 

「…………そうだよな」

 

「だからね、少年君。忘れちゃいけない。『正義の味方』になりたいっていうのは誰かの夢ではなく自分の夢にさせる理由がいるんだ」

 

「理由……?」

 

「例えば……誰かを救いたいって気持ち、とかね?」

 

 月夜に縁側で語ったりもした。

 

 ーーーもしもあのとき、ちゃんと彼に道を示してあげていたら。そう後悔したのは次の世界に渡ったときだった。

 

 

 

 

 

 

「シロウ……貴方を、愛している」

 

 最後の戦いの果にセイバーも消え、その場には僕とシロウしかいなくなった。そして、この世界での役割を終えたという証明であるオーロラが現れる。

 

「大樹さんも……行っちゃうんだよな……。」

 

「ああ、どうやら……この世界での僕の役目は終わったようだからね」

 

 オーロラが迫ってくる中、僕とシロウは最後の会話をする。

 

「幸せだったよ。この世界に来て、シロウ、君と家族になれて……。なれよ、シロウ。自分が信じる、自分の願いのための『正義の味方』に」

 

 その言葉を最後に僕は新たな世界へと旅立った。

 

 ーーーまさか、そんな彼と別世界であんな形で再会するとは思わなかった。



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旅の軌跡 海東大樹と■■■■■

この話はありか、なしか……悩んでます。


「ここは……。」

 

 僕は気がつくと、燃え盛る場所にいた。一面、火の海。それ以外に見えるものは何一つない。瓦礫さえ見えはしない。まるで、全てが燃やし尽くされたような景色だった。

 

「……この世とあの世の境ということかな?」

 

 僕はゲーティアとの戦いでたしかに死んだ。今の僕がディエンドの力を持っていないのが何よりの証拠だ。ディケイドの力と同じくディエンドの力は僕の存在そのもの、その力が全くないとなると……答えは自ずと出る。

 

「てっきり冥界直行かと思ったけど」

 

 エレシュキガルに死後を管理してもらえるなら、さして文句はなかったが、一体ここはどこなんだ?

 

「……ひとまず、歩いてみるか」

 

 炎のない道を歩き始めた。見えるのはただひたすらに燃え続ける炎。この世の全てを燃やし尽くさんばかりの炎の海。それ以外は何もない殺風景な場所。

 

「さしずめ、煉獄ってところか?」

 

 炎で死後と聞けば、カトリック教の煉獄。天国と地獄の狭間にあり罪を浄化する炎の燃え盛る場所。

 

 ……どれほど、長い間歩いただろう……気付くと、僕の目の前には一人の少女がその場に佇んで燃え盛る炎を眺めていた。

 

「君はここで何をしているんだい」

 

「私は……もう、ここ以外にいられないから……。」

 

 少女は流し目で僕を見ると、それだけ答えて炎に視線を戻した。その瞳からは深い深い……孤独が伺えた。

 

「なら、君が何処かに行けるようになるまで、僕がここにいるとしよう」

 

「え?」

 

 僕の言葉に少女は面食らったような表情をする。どのみち、僕は役目を終えた身だ。なら、英霊を真似て死後まで自分の在り方を貫こう。

 

 僕は彼女の隣に立ち、燃え盛る地平線を眺める。

 

「さて……暇だから、なにか話そうか?」

 

「話……?」

 

「なに、飽きはさせないさ。良くも悪くも退屈しない話だからね」

 

 それから、僕はただひたすらに自分の旅の話をした。

 

 聖杯大戦でアタランテに誓いを立て、第四次聖杯戦争で『誰かの味方』として戦う道を選び、第五次聖杯戦争で家族と過ごす幸せを得て、グランドオーダーで……人を愛することを知った。

 

 当初は自分のことしか考えてなかった。だけど、過ちを犯して、手痛いしっぺ返しをくらい、僕は自分の為に力を使わないと誓った。

 

 僕は……あの終局特異点でようやく本当の意味で仮面ライダーになれたと思っている。

 

 最初は興味なさげに聞いていた彼女だったが、段々と僕の話に興味を持ち始め、魔法少女の世界の話になった時点で質問まで投げかけてくるようになった。

 

「その世界の弟さんはあなたが知っている彼とは別の道を歩んだのね……。」

 

「ああ……だけど、やっぱり本質は変わらない。彼は優しい少年だよ」

 

「……その人は幸せね。貴方という良き理解者がいて」

 

「……いいや、幸せだったのは僕の方さ。多くの人間に出会い、関わっていく中で……僕は本当に大切なものを受け取った……ああ、本当に幸せな旅だったよ」

 

「ええ……とても素敵な旅ね」

 

 その話に少女は微笑んで返した。

 

「……今度は君のことを教えてくれないか?」

 

「私のこと?」

 

「いいじゃないか、どうせ暇なんだ」

 

「私の話は……貴方の話の様に聞く価値のある話ではないわよ?」

 

「そうかな? 価値のない人間なんていない……だから、価値のない人生なんてないと思うんだ」

 

 僕がそう言うと、彼女は自分の生い立ちをポツポツと話し始めた。

 

 彼女は厳格な魔術師の家系に生まれ、幼い頃から魔術の英才教育を受けてきた。だが、その反面彼女は両親達からの過度な重圧から両親が共にいる日曜日が嫌いになった。そんなとき、カルデアに招かれある少女に出会った。その姿はまるで自分の生き写しのようで、彼女となら仲良くなれると思っていた。

 

「だけど私は……人に関わる勇気が出せなかった。だから、あの子に、マシュに……関わる事ができなかった」

 

「……それでいいんじゃないか? 誰だって勇気を出すのは簡単なことじゃない。だからこそ、勇気って言葉には重みがあるんだろう?」

 

「………………。」

 

「そっか……君は自分を理解してくれる相手が欲しかったのか……。」

 

「ええ。今思えばそうなのかもしれないわね」

 

「……これは僕の勝手な推測だが……君はもっと自分の内側をさらけ出せばよかったんじゃないかな」

 

「自分の内側……。」

 

「自分の気持ちなんて他人にわかるわけない。だからこそ、お互いに本音をぶつけ合って、自分の心を理解してもらうしかないんだ。

 それが出来ない人間に人の気持ちを知ることなんてできやしない。簡単な話だろ?」

 

「そっか……そんなに簡単な話だったのね」

 

 ……その時、少女の体に空から光が降り注ぐ。

 

「これって……。」

 

 それを浴びた彼女の体がゆっくりと消えていく。

 

「どうやら、君の旅はまだ終わっていないらしい」

 

「………………。」

 

「もし、君がまたここに来たら今度は君の旅の話をに聞かせてくれ。」

 

「待って! 貴方の名前は……?」

 

「僕は海東大樹だ、君は?」

 

「私はーーー」

 

 彼女が名乗り終える前にその姿は完全に消え去った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……成功だ!」

 

 聞き慣れた声とともに僕は目を覚ます。

 

 瞼を開けると、そこには多くのサーヴァントと、僕が導いた少女達が立っていた。

 

「ここは……まさか、カルデア「「大樹さん!!!」」うぉっ!」

 

 あたりを見回していると二人の少女、立花とマシュにひっつかれた。

 

「えっと……これってもしかして……サーヴァントとして呼ばれた感じかい?」

 

「うん、そうだよ……!」

 

 半泣きの状態の立花が僕の言葉を肯定する。

 

「一体、どうやって……。」

 

「君の形見のこれと、聖杯で擬似的に英霊にしたのさ。あとは、マーリンの手助けがあったというのもあるけどね」

 

 ロマンがシアンと黒のライドウォッチ、僕のディエンドライドウォッチを見せながら説明した。

 

「世界の後押しもあったんだろうね、かなりあっさり成功したよ」

 

 おいおい、やってくれたなソロモン王。力を盗まれた腹いせかよ……。

 

 僕は差し出されたライドウォッチを受け取り、バズルを合わせてスターターを押し込む。

 

『ディエンド!』

 

 ライドウォッチが、光となって消え代わりに僕の左手にディエンドライバーが現れる。

 

「仮面ライダーディエンド、完全復活だ」

 

「さっ、行こっ。大樹さん、カルデアの中案内するからっ!」

 

「さぁ、行きましょう!」

 

「おっ、おい……!」

 

 そのまま、立花とマシュに両手を引っ張られていく、ロマンに助けを求める視線を向けるが、

 

「後で霊基のチェックがしたいから、早めにしてくれよ〜」

 

「「はい!」」

 

 ……やれやれ、仕方ない。今は彼女達に付き合うとするか。

 

 そういえば、なにか()()()()()()()()()()()()()()気がしたが、今はこの喜びを味わおう。



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邪竜百年戦争 オルレアン
プロローグ


 やぁ、始めまして! 僕の名前は海東大樹またの名を仮面ライダーディエンド。世界を渡り歩く怪盗さ! だけど、その正体は前世で仮面ライダーディエンドの大ファンだった普通の高校生。交通事故で死んで気がついたら、何故か海東大樹になっていろんな世界を渡り歩くことになっていたんだ。

 君達は仮面ライダーディエンドについて知っているかい? 平成ライダー10作目、『仮面ライダーディケイド』に登場した、主人公のライバル的存在。カードを使ってライダーに変身できるディケイドとは違い、ディエンドはカードを使ってライダーを呼び出すことが出来る、とても戦い方に幅のあるライダーだ。僕がディエンドのファンになったのもこの能力があったからだ。だって、この時点でディケイドの能力より上じゃない?

 おまけに僕には『仮面ライダージオウ』でタイムジャッカーのスウォルツから与えられたタイムジャッカーの時を止める力(時間制限付き)と白ウォズから奪った未来ノート、さらには、全ライダーのカメンライドカード(召喚するライダーによって呼べる数が決まる)まである始末。

 うん、控え目に言ってかなりチートなんだ。

 だが、海東大樹として転生したからにはお宝を探すために世界を渡り歩かなければならない。そう考えた僕は早速灰色のカーテンを通って旅を始めたんだ。

 

 本当にいろんな世界を旅したものだ。

 

 ーーーーあるときは、正義の味方に憧れた男がいた世界。

 

 ーーーーあるときはその男の願いを引き継いだ少年の世界。

 

 ーーーーあるときは運命に抗う魔法少女達の世界。

 

 ーーーーあるときは優しい邪竜がいた世界。

 

 ーーーーあるときは月で戦う少年(少女)の世界。

 

 ………うん、もうお気づきかもしれないがこれFate時空なんだ。

 いや、なんでだよ。普通、ディエンドに転生したんだから、ライダー世界でしょ? なんでよりにもよって、死亡率が半端なく高い型月時空? と思うだろう? 僕も当初はいくあてのないやるせなさを吐きちらしたものさ。

 まぁ、なんやかんやあってそれぞれの世界の聖杯戦争に巻き込まれてもなんとか生き残り、かつ色々なお宝を報酬として頂いてきたわけさ。原作知識ほとんどないから物凄く苦労したけどなんとかハッピーエンドで終わらせてきたんだ。僕は原作海東程お宝に執着はないし、お宝か人の命かと問われれば迷わず命を選択できるくらいの善性はあるつもりだ。このへんの旅についてはまた今度機会があれば話そうじゃないか。

 そして、毎度の如くその世界での僕の役目が終わるとあの灰色のカーテンが現れて新しい世界へと送り込まれるのだが、今度の世界はなんと……中世のフランスだった。

 

 その時悟った。

 

 

 あっ、これ、FGO始まったな、と。

 

 



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邂逅

side:海東大樹

 

 さて、まずは状況を確認するとしようか。

 いつも世界を移動するときに潜る灰色のカーテンを通ったときにその世界についてある程度の知識は頭に入ってくる。だが、今回に限ってはここが西暦1431年のフランスだと言うこと、くらいか。

 僕が持っている原作知識は特異点が七つあることと、それがどの時代かくらいしか知らないんだよな。それと照らし合わせればここは間違いなく第一特異点ということだ。そして、あの空の光の輪。あれは間違いなくこの時代が異常であることの証明だ。

 次にこれからの行動だ。まずは、カルデアのマスターとサーヴァントと合流するのが先か。いや、まずは出来うる限りこの特異点に起こっていることを調べるのが先か。しかし、1431年フランス。百年戦争の休戦時代。この時代を聞くとどうしても思い出す人物がいる。

 人々の不死を奪った優しい竜がいた世界。その世界でかの竜と必ず合うと誓いあった女性。

 彼女が死んだのもこの時代。

 ……いけないな、あまり感傷的になるものじゃない。今はやるべきことをやるのみだ。

 

 とりあえず近くの街に来たが、外壁はなんとか持っているが中が酷い。人も傷だらけでこの世の絶望のように顔を下げている。休戦中の筈なのに何故ここまで。

 とにかく、街の人間に話を聞くとしようか。勿論、しっかり、この時代の人間に見えるように変装してだ。服はどこから出したかって? 僕は怪盗だよ? どんな状況でも潜り込めるよう準備はしているさ。

 手始めに近くにいたフランス兵に話しかける。

 

「すまない、少しいいかな?」

「なっ、なんだお前は?」

「警戒しないでほしい、僕は旅のものだ。この街の惨状について話が聞きたいんだ」

「敵では……ないのか……?」

「ああ」

 

 僕が敵対の意思がないのを見ると、兵は警戒を解いてくれる。見たところ、相当疲弊しているな。次、攻め込まれたら間違いなく持たないだろう。

 

 彼の話を聞くと、シャルル7世は魔女という存在によって殺され、イングランドは撤退したらしい。そして、今フランスは魔女の手下、動く骸骨や、死体、更には竜によって脅かされているという。

 そして、その竜を従えている魔女の名はーーー、

 

「ーーーーー()()()()()()()()?」

「ああ、あの方は悪魔と取引して蘇ったんだ。この国に復讐するために」

「ありえない」

「俺達も最初はそう思ったさ。だが、あの方は確かに蘇って、王をーーー」

「彼女に限ってそんなことをするはずがない……。」

 

 フランス兵と別れた僕は街の中を散策しながら彼女のことを、ジャンヌ・ダルクのことを考えていた。

 

『ジャンヌ・ダルクは竜の魔女として蘇りこの国に災いをもたらそうとしている』

 

 あの彼女が? 自らの死さえも"罰と救済"であると語った彼女が? あの戦いで誰よりも高潔な魂を、そして、全てを慈しむ美しい心を持っていた彼女が故郷であるフランスに復讐するなんてことーーーー

 

「ないない」

 

 そう呟いた瞬間、僕が先程までいた門の方向から張り上げるような悲痛な叫び声が響いてきた。

 

「ドラゴンだ! ドラゴンが来たぞぉ!!」

 

 空を見上げると巨大な影が群れをなしてこの街に迫ってくるのが見えてきた。あれは確か竜族の亜種のワイバーンという種だったはず。本物の竜ではないが普通の人間に太刀打ちできる相手じゃない。

 こちらを目指してきたワイバーンの一体が巨大な火炎弾を放つ。人々は悲鳴を挙げながら逃げようとするがもはや間に合わない。

 

 ーーーーー僕がいなければ。

 

「情報を貰った恩くらいは返そうか」

 

 火炎弾の時を停止させ。僕の愛銃、ディエンドライバーで打ち抜き霧散させる。

 

「早く逃げたまえ」

 

 その光景を唖然とした様子で見つめていた街の住人にそう短く伝えた僕は空から迫ってくるワイバーンの頭を打ち抜きながら、もっとも激戦とかしているであろう、門に走りだした。

 

side:藤丸立花

 

 私とデミ・サーヴァントとであるマシュは人理を修復し、世界を救うため特異点である1431年、百年戦争の休戦時期のフランスにレイシフトした。

 道中、フランス兵に話を聞こうとして敵と間違われ追いかけ回されるなどというハプニングに遭遇したけど、何とか近くの街の人にこのフランスで何が起きているかを聞くことができた。

 その突如、ワイバーン達が飛来し私はマシュと突然現れて味方してくれた旗を掲げるサーヴァントとともに街を守るためにワイバーンを迎撃していた。しかし、敵の数はあまりにも多く、このままだと押し切られてしまう。

 しかし、マシュへの支持に夢中で自分の周りへの注意が厳かになっていた。そのすきをついてワイバーンの一体が私に迫ってきていた。

 

「先輩っ!?」

 

 痛みを覚悟して目を閉じるが、次の瞬間聞こえたのは私の肉が避ける音ではなく炸裂音のようななにかだった。目を開くと、そこには体中を撃ち抜かれたワイバーンが地に付していた。

 この傷は明らかにマシュやさっきあったサーヴァントのものじゃない。

 一体、誰が……。

 

「いやぁ、危なかったね。怪我はないかい?」

 

 振り向くと、そこには青い無骨な形の銃を持った茶髪の青年が立っていた。私を助けてくれたのはこの人みたい。

 この時代のフランスに銃を使う人間なんているはずがない。いや、それ以上にただの片手銃でワイバーンの頭を貫通できるわけがない。

 ということは、

 

「ドクター、もしかして彼も」

『いや、違う。彼からはサーヴァントの反応がない。間違いなく人間だ。でも、だとしたら彼は一体……』

 

 青い銃をガンフリップして肩に担ぐと、青年は人懐っこい笑みでこちらに近づいてきた。

 その間にマシュが立ちはだかる。

 

「貴方は何者ですか?」

 

 未知の存在にマシュは私を守ろうと警戒心を顕にして盾を構えている。

 

「安心したまえ、僕は君達に危害を加えるつもりはないよ。ただ、この街にちょっとした恩があって、アレから街を守ろうと思ってね。どうだい? 君達も同じ目的なら協力しないかい?」

「信じられる要素がありません」

 

 マシュの言葉に青年はフッと笑うと、

 

「まあ、その通りだね。だけど、僕のことなんかより、まずはあのワイバーンをどうにかするのが先決なんじゃないのかな? こうしてる間にもこの街の住人が傷つくことになるよ?」

 

 私は横目で今も懸命に戦っているフランス兵の人達を見る。

 

「……わかりました、力を貸してください」

「いい判断だ」

 

 再び銃を指に引っ掛けガンフリップし、横薙に数発弾丸を打ち放つ。その全てがワイバーンに直撃し、数体が地に落ちる。

 

「すごい……」

「まだまだ、こんなことで驚かれちゃ困るな」

 

 青年は青い仮面の戦士が描かれたカードを構える。

 

『KAMEN RIDE………』

 

 銃にカードを装填し、規則的な音を鳴らす銃を空に掲げる。

 

「変身!」

 

『DI・END!!』

 

 トリガーを引いた瞬間、空にバーコードのような紋章、彼の周りに三つの影が現れ、紋章が十三枚のプレートに変わり、三つの影が彼と重なり彼の姿がモノクロの鎧姿になり、頭上のプレートがささるとモノクロな鎧に青い色が彩飾された。

 その姿はさっき彼が持っていたカードに記された戦士の姿そのものだった。



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協力関係

side:藤丸立花

 

 バーコードのような仮面の戦士になった青年は、銃を構え空を飛び交うワイバーンに視線を向ける。

 ワイバーンはあの人から何かを感じたのか一斉に炎を吐き出して攻撃を仕掛けてきた。

 

「危ないっ!」

 

 慌てて叫ぶが。今からではマシュのガードが間に合わない。

 しかし、仮面の戦士は避ける動作を一切見せず、ベルトの脇についたケースからカードを取り出し銃に装填する。

 

『ATTACK RIDE……BARRIER!』

 

 装填した弾丸を打ち出すと、それが光のバリアーとなって彼を炎から守る。

 

「よそ見をしていていいのかい? 一瞬で終わってしまうよ」

 

『ATTACK RIDE……BLAST!』

 

 さらに、新しいカードを装填し、引き金を引くと弾丸はまるでワイバーンに吸い寄せられるように飛んでいき次々と着弾し、爆発した。

 ワイバーンが次々と地に落ちる。

 

「はい、おしまい」

 

 そんな緊張感のない言葉を発し、仮面の戦士は銃を下ろしてこちらを向く。

 

「す、すごい……」

「関心はいいから、あとは地上にいるワイバーンだけだよ」

「あっ、はい。マシュ」

「はい、先輩!」

 

 私達はフランス兵と戦っているワイバーンを倒すために戦闘を再開した。

 

side:海東大樹

 

「これでっ…終わりです!」

 

 外套を被った旗を槍のように操るサーヴァントが最後のワイバーンを貫き、僕は変身をといた。だが、僕は無言でディエンドライバーの銃口を()()に向ける。

 

「え? 何してるの?」

『ええっ!? ここに来てまさかの敵だったパターンかいっ!?』

 

 手の甲に令呪を刻むマスターの少女と、何処からか聞こえる軟弱そうな声に僕は笑いながら答える。

 

「違う違う、最初に言っただろ? 僕はこの街に恩があるって。だからこそ彼女から警戒を解くわけにはいかないんだよ」

「どういうことですか?」

「……フードをとったらどうだい? ジャンヌ・ダルク?」

「え? ジャンヌ・ダルクって……」

 

 彼女は僕の言葉に素直に答え、フードを外す。フードの下から顕になったその顔は僕があの世界で出会ったジャンヌ・ダルク本人で間違いなかった。

 そして、その顔を見た街の兵士達の顔に恐怖が浮かぶ。

 

「魔女だ! 魔女が現れたぞぉ!!」

 

 兵士達は彼女の顔を見た途端、街の方へ逃げ出した。あれだけのワイバーンに襲われたあとだ、戦おうという気力すらもう無いだろう。

 僕はガンフリップして、ディエンドライバーをおろした。

 

「人よけはこんなものでいいかな?」

「「「『え?』」」」

「ほら、早くここから立ち去るよ。ここだと、彼等の気も休まらないだろ」

「あっ…だから、わざと……」

「近くに森があったはずだ、込み入った話はそこでしよう。それでいいね? ジャンヌ・ダルク?」

「はい、それで問題ありません」

「君達はどうする? 出来ればついてきてほしいんだけど?」

「どうしましょう、先輩?」

 

 僕の質問に盾をもったナス色の髪の女の子がマスターである橙色の髪の少女に支持を仰ぐ。

 

「……私は、ついていったほうがいいと思う」

『僕も賛成だ、弱体化しているが彼女はサーヴァント、この時代の事情に精通しているはずだ。それに、彼の事情についても聞かなければいけないしね』

「決まりだ。そうそう、茄子ちゃん」

「茄子ちゃん!?」

「自分のマスターはしっかり連れていきたまえ、君が抱えて走ったほうが早いだろ?」

「確かにそうですが、その前にその呼び方の訂正を「さあ、行くよ」ちょっと!」

 

 僕は後ろから叫ぶ茄子ちゃんの文句を無視して、走り出しその後ろを三人がついてくる。

 

 

 

 

「この辺でいいかな?」

「ええ、たしかにこの辺りなら落ち着いて話ができそうです」

 

 森に辿り着いた僕たちは互いに向かい合っていた。

 

「まず、貴方達の名前をお聞かせください」

「僕は海東大樹。よろしく」

「私の個体名はマシュ・キリエライトです。断じて、茄子ちゃん等という名前ではありません」

「藤丸立花です。マシュのマスターをしています」

「マスター? この聖杯戦争にもマスターは存在するのですね」

「いえ、私達はこの聖杯戦争とは無関係なのです」

 

 そこから、茄子ちゃん……じゃなかった、マシュがデミ・サーヴァントについて説明し、ジャンヌも自身が英霊としての力が弱まっていることと本来聖杯から受け取るはずの知識がないこと。所謂、死後すぐに英霊として召喚されたこと。そして、この特異点にはもう一人ジャンヌが召喚されていることなどを説明した。

 

「それで、貴方は一体?」

「名前からして、ひょっとして日本人?」

「まあ、名前は日本人だけど。故郷なんか覚えてないし、旅をする身としてはどうでもいいんだけどね」

「旅? 貴方は旅人なのですか?」

「まぁね、ただし、世界を渡り歩く旅さ。」

「世界を渡り歩く? それって、どういうこと?」

「平行世界の移動ってやつさ。聞いたことくらいあるだろ? パラレルワールドってやつさ」

『平行世界への移動!? それって、魔法の域じゃないか!』

「そんなこと言われても、君達魔術師の事情なんて僕からしたらどうでもいいことだし。それで、さっきから声だけ聞こえる君は誰だい?」

『ああ、そういえば僕だけ自己紹介が終わってなかったね。始めまして、ジャンヌ・ダルク。そして、海東大樹君。僕はロマニ・アーキマン。皆からはロマンと呼ばれている』

「ロマン……なるほど、夢見がちな方なのですね!」

『なんだろう、この敗北感。褒められたのに全然嬉しくないような……』

「いやいや、僕はいいと思うよ。うん、悪くないセンスだよ」

『笑いながら言われても説得力がないやい!』

 

 そこからは立花とマシュ、ロマンからカルデアについての説明をされた。そして、この時代の聖杯がもう一人のジャンヌが持つという仮設が上がった。

 

「なるほど、よくわかりました。まさか世界そのものが焼却されているなんて。……私の悩みなど小さなものでした。ですが、今の私は自分すら信じられなくなっています」

「竜の魔女とかいうあれかい?」

「はい、あれらを操っているのは間違いなく(ジャンヌ)なのでしょう」

 

 誰よりもこの国を慈しむ彼女にとってそれは確かに自身の喪失に繋がる原因になるだろう。

 

「ジャンヌさん、貴方はこれからどうするつもりなのですか?」

「……目的は決まっています。オルレアンに向かい。都市を奪還します。その障害となるジャンヌ・ダルクを排除します」

「……一人でも戦う。歴史書通りですね、先輩」

「うん、何処かの天才様とは大違いだね」

 

 そうだ、これが僕の知っているジャンヌ・ダルク。誰よりも純白な心を持った、女性。彼が惚れたのはこういうところかもしれないな。

 

「マスター、それにドクター。私達とジャンヌさんの利害は一致しています。どうでしょう、これからの方針として彼女に協力するというのは?」

「うん。私もそう思ってた」

『だね。ここはジャンヌと協力するのが最善だ。救国の聖女と共に戦えるなんて滅多にない機会だ』

「良かった。では改めて、ジャンヌさん。私達は私達の目的がありますが。それと並列して貴女の助けになりたい。」

「私達と一緒に戦ってくれますか?」

「そんな……こちらからお願いします。感謝しても足りないほどです。」

「じゃあ、僕も付き合おうかな」

「大樹さん? でも貴方は……」

「これでも、いろんな世界で聖杯戦争に巻き込まれてたんだ。それに、この世界に呼ばれた以上この世界にも僕の狙うお宝があるはずだからね。それを探すついで、とでも考えてくれていいよ」

「「「『お宝?』」」」

「あれ? 言ってなかったかい? 僕の本職……」

 

 僕はディエンドライバーを見せつけるように持ち、

 

「怪盗なんだ」

 

 そう名乗った。




ちょっと、設定を追加します。
今後の敵のことを考えてもうちょいディエンドを強化します。具体的には、

・他ライダーのアタックライドの使用可能(カブトのCLOCKUPなど)
・グランドジオウのような他ライダーの武器、及び必殺技の使用可能
・召喚ライダーのフォームチェンジなどです。

 Fate時空だと、これでも全然上がいるのがちょっと怖いです。


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黒いジャンヌ・ダルク

はい、頑張ってみました。
らららららららら、ランキングはいったぁぁぁぁぁぁ!!!!????


Side:藤丸立花

 

「さて、それじゃ行くとしようか」

 

 街から離れ森の中で一晩を過ごした私達は今後のことについての確認していた。 

 

「まずは近場の街、ラ・シャリテでもう一人のジャンヌについての情報を集めるんだよね」

「それが最善だ、向こうの戦力がどんなものかわからない以上、慎重に行こう」

「もし、そこで情報が手に入らなければ更にオルレアンに近づかなければならなくなりますが、それは出来るだけ避けたいですね」

 

 オルレアンは敵の本拠地。そこに近づけば近づくほど敵に見つかる可能性も高くなっていくから。

 

『ーーむ? ちょっと待ってくれ、サーヴァント反応だ』

「! 何処からですか?」

『座標は()()()()()()、君達の目的地だ!』

 

 ラ・シャリテにサーヴァント反応。恐らく、敵のサーヴァントか、それともジャンヌのように召喚された逸れサーヴァント……。

 だけど、なんだろう。物凄く、胸騒ぎがする。

 

「急ごう、嫌な予感がする」

 

 言葉を発した大樹さんだけでなく、マシュやジャンヌも私と同じ感覚を感じたのだろう。厳しい表情でラ・シャリテの方向へと視線を向ける。

 

 

 

 

 

「非道いな、これは……。」

「ドクター、生体反応をーーー」

『ダメだ、その街に命と呼べるものは残っていない』

 

 街についた私達を待っていたのは既に街と呼べなくなっている瓦礫の山だった。おまけに物凄い死臭だ。人の肉が焼けた匂いがする。

 

「うっ……!」

 

 その匂いに吐き気を覚え、私の身体は膝から崩れかけた。

 だが、私の身体は地につくことはなく誰かに受け止められた。

 

「しっかりしたまえ、君はマシュのマスターなんだろう? マスターの精神状態はサーヴァントにも影響する。気をしっかりもつんだ」

「……はい」

 

 そう言ってい大樹さんは私の肩を支えて立つ手伝いをしてくれた。

 

「……これをやったのは恐らく私なのでしょうね」

 

 ジャンヌがとても苦しそうな声で言う。

 

「そう決まったわけではーーーー」

「いいえ、わかります。その確信が私にはあります。

 ーーーわからないことはひとつだけ。どれほど人を憎めばこれ程の所業が行えるのでしょう。

 私にはそれだけがわからない」

 

「どうやら、それは本人に聞いたほうが良さそうだ」

 

 大樹さんが鋭い視線で空を見上げる。

 

「どういうこと?」

『大変だ! 先程去ったサーヴァント達が反転した。まずいな、君達の存在を察位したらしい!』

「数は!?」

『おい、冗談だろ……! 数は5騎!』

「5騎……」

 

 今の私達の戦力はマシュとジャンヌと大樹さんの3人だけ、明らかに数の利は向こうにある。

 

『速度が速い……これはライダーか何かか!? と、ともかく逃げろ! 数で勝てない以上、逃げるしかない!』

「ですがーーー!」

『数が同じだったら勝負を挑んでいい!! だが、戦力的に倍近くある相手と戦わせるわけにはいかないだろう!?』

「ジャンヌさん! サーヴァントがやってきます、すぐにーー」

「……逃げません。せめて、真意を問いただすさなければ」

「ですがーーーー!」

 

 ジャンヌは何があっても退くつもりはないらしい。正直、私ももう一人のジャンヌがなんでこんなことをしたのかを聞き出したい。

 だけど、ここで戦ってもこちらに勝ち目がないこともわかってる。だから、ロマンが言うことも理解してる。

 

『海東君! 君からもなにか言ってやってくれ!』

「諦め給え、ロマン。ジャンヌ・ダルクはこう言ったら、他人の意思なんて聞きはしないよ。それが彼女だ。それに見たところーーー」

 

 大樹さんは私を見て口元にニヒルな笑みを浮かべる。

 

「立花も同じ手合だ。僕は彼女に付き合うと決めたしね。彼女の意思を尊重するよ」

『クッ! ダメだ、もう間に合わない! マシュ、とにかく逃げることを考えるんだいいね!?』

 

 ロマンのその言葉は恐らく既に難しい。なぜなら私達は既に五人のサーヴァントに囲まれているのだから。そして、私達の正面に立つのは私達の隣に立っているジャンヌと瓜二つの黒い旗を掲げたサーヴァントだった。

 

Side:海東大樹

 

 青白い顔の貴族服の、巨大なアイアンメイデンを抱いた仮面の女、つばの大きな羽帽子を被ったレイピアを持つ剣士、十字の杖を持つ修道服の女性。見知った顔が一つ、いや、二つか。

 そして、漆黒の鎧をまとう黒い旗を掲げるもう一人のジャンヌ・ダルク。

 

「ーーーなんてこと、まさかこんなことがあるなんて」

 

 彼女はまず、こちらのジャンヌを見ると慄いたような表情を浮かべると、今度は実に楽しげに笑い出す。

 

「ねぇ。誰か、私の頭に水をかけてちょうだい。まずいの。やばいの。本気でおかしくなりそうなの。だってそれぐらしないと滑稽で笑い死んでしまいそう! 何あれ羽虫? ネズミ? ミミズ? どうあれ同じことねちっぽけすぎて同情すら浮かばない。ああ、本当ーーーこんな、小娘にすがるしかなかった国とかネズミの国にも劣っていたのね! ねぇ、ジル、貴方もそうーーーって、そっか、ジルは連れてきてなかったわ」

 

 彼女はひとしきり叫ぶと今度は冷え切った氷のような目でこちらを見つめる。

 

「貴方は……貴方は誰ですか!?」

「それはこちらの質問ですが……そうですね、上に立つものとして教えてあげましょう。私はジャンヌ・ダルク。蘇った救国の聖女ですよ、もう一人の私」

「……馬鹿げたことを。貴方は聖女などではない。私がそうではないように。いえ、それはもう過ぎたこと、語ることではない。それよりーーーこの街を襲ったのは何故ですか?」

「……何故、かって? 同じジャンヌ・ダルクなら当然理解しているものと思っていましたが。属性が変転していると、ここまで鈍いものなんでしょうか? この街を襲った理由? 馬鹿馬鹿しい問いかけですね。そんなの明白じゃないですか。単にフランスを滅ぼすためです。私、サーヴァントですもの。政治的にとか、経済的にとか、回りくどいわ。物理的に全部潰すほうが確実で簡潔でしょう?」

「バカなことを……!!」

()()()()()?」

 

 こちらのジャンヌの一言で向こうのジャンヌから、さらに黒い魔力が溢れる。

 ……あまり信じたくはないな、変転しているとはいえ、彼女がこれ程の憎悪を顕にしているとは……。

 

「愚かなのは私達でしょう、ジャンヌ・ダルク。何故、こんな国を救おうと思ったのです? 何故、こんな愚者達を救おうと思ったのです? 裏切り、唾を吐いた人間だと知りながら!」

「それはーーー」

「私はもう騙されない。もう裏切りを許さない。そもそも、主の声も聞こえない。主の声が聞こえない、ということは、主はこの国に愛想をつかした、ということです。だから滅ぼします、主の嘆きを私が代行します、全ての悪しき種を根本から刈り取ります。人類種が存続する限り、この憎悪は収まらない。このフランスを沈黙する死者の国へと作り変える。それが私、死を迎えて成長し、新しい私になったジャンヌ・ダルクの救国方法です。まぁ、貴女には理解できないでしょうね。いつまでも聖人気取り。憎しみも喜びも見ないふりをして、人間的成長を全くしなかった聖処女様には!」

「な……」

『いや、サーヴァントに人間的成長ってどうなんだ? それを言うなら……』

「少し黙っててくれないか?」

『あっ、はい……』

 

 余計なことを言いそうだったロマンを黙らせる。

 

「……貴方は、本当に"私"なのですか?」

「……呆れた。ここまでわかりやすく演じてあげたのに、まだそんな疑問を持つなんて。なんて醜い正義なんでしょう。この憤怒を理解できないのではなく、理解する気さえない。ですが、私は理解しました。今の貴方の姿で、私という英霊の全てを思い知った。貴方はルーラーでなければ、ジャンヌ・ダルクでもない。私が捨てたたただの残りかすにすぎません」

「ーーー流石にその言葉を認めるわけにはいかないな」

「誰ですか、貴方は? 見たところただの人間のようですが」

 

 前に出た僕に黒いジャンヌはその金色の瞳を向ける。だが、僕は彼女の質問には答えない。

 代わりに答えるのは、

 

「彼女が、ジャンヌ・ダルクじゃない? 冗談はよしてくれないか? ーーー復讐に身を落とした俗物が彼女を語ってくれるなよ」

 

 彼女の存在の言葉の否定だ。

 

「なるほど、騎士(ナイト)気取りの愚か者というわけですか。やはり、聖女様の周りにはそういった類が集まるのでしょうか? バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン。彼ら始末しなさい。」

 

 魔女の合図で二人のサーヴァント。青白い顔の男と仮面の女はこちらを見据える。

 

「雑魚ばかりでそろそろ飽きた頃でしょう? 喜びなさい彼らは、強者です。私が召喚したサーヴァントの中でも貴方達は一切血に飢えた怪物です。勇者を平らげることこそ貴方達の存在意義存分。に貪りなさい。」

「ーーーよろしい、では、私は血をいただこう」

「いけませんわ、()()。私は彼女の血と肉、そして、腸をいただきたいもの」

「強欲だな。では魂は? 魂はどちらが戴く?」

「魂なんて何の益にもなりません。名誉や誇りで、この美貌が保てると思っていて?」

「よろしい、では魂を私が戴こう! 皮肉なものだ。血を啜る悪魔に成り果てた今になって彼女の美しさを理解できるようになったとは」

「ええ、だからこそ感動を抑えられない。私より美しいものは許さない。いいえ、それよりーーーー私より美しいものの血はどれほど私を美しくしてくれるのかしら? ああ、新鮮な果実を潰すのは楽しいわ。果肉は捨てて汁だけを嗜むーーーこれこそ夜の貴族の特権。私の宝具で一滴残らず……!?」

 

 二体のサーヴァントが前に出ようとした瞬間、彼らの足元に火花が散る。勿論、発生源は僕のディエンドライバーだ。

 

「ごたくはいいから早く来たまえ」

「変わった武器を持ってますね。ですが、そんなものでどうにかできるとでも?」

「やれやれ、無知とは悲しいものだね」

「……まぁ、いいでしょう。どのみち、ここで死ぬことに変わりはないのだから。やりなさい、ランサー、アサシン」

「よかろう。まずは貴様の魂を戴くとしよう」

「私、男には興味ないのだけど。仕方ないわ、早く消えてもらいましょう」

 

 変転しているおかげか随分簡単に挑発に乗ってくれた。

 

「大樹さんっ!?」

「立花、後ろの二人は任せたよ。前の三人はーーー僕が相手をしよう」

 

『KAMEN RIDE………』

 

 ディエンドライバーをガンフリップして構え、ディエンドカードを装填し、手首のスナップで銃をスライドする。

 

「変身」

 

 銃口を空に向け、トリガーを引く。

 

『DI・END!』

 

 三つの影が重なり十三枚のライドプレートが頭に刺さり、仮面ライダーディエンドへと変身する。

 

「ほう、奇怪な鎧だ。それで?」

 

 変身した瞬間、バーサーク・ランサーは一気に接近し、自慢の槍で攻撃を仕掛けてきた。だが、それを躱し僕は腰のカードケースから2枚のカードを取り出す。

 

「歴史に名高い『串刺し公』と『鮮血魔嬢』にはコイツラなんか丁度いいかな?」

「っ!……貴様」

「何故、私達の真名を……」

「さぁ、君達の知らない君達にあっているのかも、しれないね」

 

 彼らの質問を軽く流し、カードをディエンドライバーに装填していく。

 

『KAMEN RIDE IXA!』

『KAMEN RIDE BARON!』

 

「行ってらっしゃい」

 

 僕が放った弾丸はいくつもの影となってそれが重なると、そこに二人のライダーが召喚された。

 

「吸血鬼、その命、神に返しなさい!」

「貴様の強さ、見せてみろ!」

 

 胸に太陽の紋章を刻む仮面ライダーイクサと、バナナのような鎧を纏った仮面ライダーバロン。二人はそれぞれイクサがアサシンへ、バロンがランサーへと攻撃を仕掛けた。

 

「くっ!」

「いきなり現れて、何者!?」

 

 二人のライダーはランサーとアサシンを竜の魔女から引き剥がし、分断する。

 

「さて、これで一対一だ。『竜の魔女』」

「……貴方は一体何者ですか? サーヴァントをこんなに簡単に召喚し、完璧に使役するなんてルーラーの力を持ってしても不可能です」

「アレ? 僕のことなんか興味なかったんじゃなかったのかい? まぁ、いいさ。君ほど大した二つ名があるわけじゃないが、一応名乗っておこうか。僕はーーー」

 

 ディエンドライバーをもう一人のジャンヌに向け。

 

「『通りすがりの仮面ライダー』。ーーーお宝を探し求めて世界を渡る怪盗さ。覚えておきたまえ……!」

 

 その言葉とともに銃の引き金を引いた。




召喚したライダーのチョイスはどうだったでしょうか?評価と感想、どしどしお願いします!


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竜の魔女とバーサーク・サーヴァント

はい、頑張って書いてみました。


「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

 ディエンドライバーから弾丸を放ちながら、ディエンドとなった僕は黒いジャンヌ・ダルクに接近する。彼女は旗を使って弾丸を弾く。

 

「くっ! 舐めるなっ!」

 

 旗の攻撃を腕で押し止め、銃口を彼女の腹に押し当てる。しかし、弾丸を放つ前に鞘から抜き放たれた彼女の鎧のように黒く染まった剣が迫り、距離を取る。

 

「喰らえっ!!」

 

 彼女は手から黒い炎を発生させ、僕を焼き尽くそうとする。……これが彼女の、恩讐の具現か。

 

『ウィザード!』

 

 僕は取り出した、シルバーのカバーのライドウォッチ『ウィザードライドウォッチ』を取り出しカバーをウィザードの顔に合わせて回転させ起動させると、青い魔法陣が現れそこから放たれた吹雪が炎を相殺する。

 再び弾丸を放ちながら接近し、剣を撃ち落としディエンドライバーで殴る。ディエンドライバーと彼女の旗が交差し膠着状態となる。

 互いに至近距離で睨み合い先に僕が口を開く。

 

「ーーー僕が知っている君より随分弱い気がするな」

「何を言っているの? 今の私はあの残りカスより強い、ステータスから見ても明らかでしょう」

「生憎、僕が言っているジャンヌは彼女じゃない。だけど、あの彼女も君より強いさ。だが、君は彼女と戦うことはない、ここで僕に倒されるからね」

「減らず口をっ……!?」

 

 言葉の途中で彼女の表情に驚愕が浮かび、それがすぐに薄い笑みに変わる。

 

「私にばかり気を取られてていいのかしら? お仲間が大変よ?」

「……なに?」

 

「くっ……!」

「うっ……!」

 

 その言葉の直後、僕の背後に息が切れたマシュとジャンヌが飛んできた。マシュの後ろには彼女ごと吹き飛ばされた立花がいた。どうやら、マシュが自身を盾に守ったおかげで怪我はないようだが、明らかに劣勢だった。

 

「マシュ! ジャンヌ! 立花!」

「ーーーよそ見をしていいのかしら?」

「! しまっ……!」

 

 3人に気を取られ、一瞬気が緩んだ瞬間彼女の旗が僕の腕を押し返した。そして、ガードがなくなった僕に彼女は手をかざす。

 

「喰らいなさい!」

「ぐっ……!」

 

 至近距離の黒炎に吹き飛ばされ、立花達と同じ場所まで弾き飛ばされる。

 

「大樹さん!」

「無事ですか!?」

「いつつ……ああ、なんとかね」

「チッ……思ったより頑丈な鎧ですね」

「そうだろ? 僕のとっておきのお宝だからね」

 

 ……本音は滅茶苦茶痛いけど。

 今の単独最強は恐らく僕だ。その僕が弱気なことを言ったら指揮に関わる。

 しかし、まさかここまで一方的に二人がやられるとは。英霊として弱体化しているジャンヌとサーヴァントになりたてのマシュ……それぞれなら確かに圧倒されて終わりだろうが、守りに特価した二人がこうも簡単ーーーそうか、彼女は自分のサーヴァントをバーサークと読んでいた。

 つまり、

 

「『狂化』によるステータス上昇か」

「ええ、彼女達は思考を失う代わりにそのステータスが大きく強化されています。その二人がいかに守りに適していても長くは持たないでしょう」

「失った? 奪ったの間違いだろう」

 

 見たところ、吸血鬼の二人組以外はバーサーカーになる逸話などない、正規の英雄。つまり、狂化は召喚した後に与えられたものということだ。

 

「そうですね。おかげで優秀な手駒になってくれましたよ」

「ふざけるな。君がしたことは英霊という世界に認められた宝を汚す行為だ。お宝を汚すことは何があっても許さない」

「では、どうすると? 貴方にどれほどの力があるか知りませんが、足手まといを三人を背負って戦えますか?」

 

 僕達を囲んだ三人のサーヴァントがジリジリとにじりよってくる。

 イクサとバロンは、離れたところでランサーとアサシンと戦闘している。向こうはまだ戦えそうだな。

 撤退を考えるか。ここで倒すとか多見えきった以上あまり使いたくなかったが、カードケースからATTACK RIDE INVISIBLEのカードを取り出す。これを使って……、カードを装填しようとした時、僕達とバーサーク・サーヴァント達の間に割り込むように何かが走ってきた。

 

「ガラスの馬に馬車?」

 

 立花が突如現れたそれを見て呟く。そこに、この廃墟のような場所に似つかわしくない凛とした声が響き渡る。

 

「ーーー優雅ではありません。この街の有り方も。その戦い方も。その思想も主義もよろしくないわ。貴方はそんなに美しいのに血と憎悪でその身を縛ろうとしている。善であれ、悪であれ、人間ってもっと軽やかなものじゃないかしら?」

「……サーヴァント、ですか」

 

『竜の魔女』の言葉に答えるように馬車の扉が開き、中から大きな帽子を被った女性が現れた。

 

「ええ、そう。嬉しいわ、これが正義の味方として名乗りを上げるというものなのね! 貴方が誰かは知っています。貴方の強さ、恐ろしさも知っています。正直に告白してしまうと、今までで一番怖いと震えています。

 ーーーそれでも、貴方がこの国を侵すのなら、私はドレスを破ってでも貴女に戦いを挑みます

 なぜなら、それは」

「貴女、は……!?」

 

 彼女の姿を見て最も動揺したのはレイピアの騎士、恐らくバーサーク・セイバーだった。

 

「まあ、私の真名をご存知なのね。知り合いかしら、素敵な女騎士さん?」

「セイバー。彼女は何者?」

「…………。」

 

 セイバーは答えようとはしない。つまり、彼女にとってあの女性はそれだけ大切な相手ということか。しかし、マスターである『竜の魔女』の指示を断れるはずもない。

 

「ーーー答えなさい」

「この殺戮の熱に浮かされる精神でもわかる。彼女の美しさは、私の目に焼き付いていますからね

 ヴェルサイユの華と呼ばれた少女。彼女はーーーマリー・アントワネット」

「マリー・アントワネット王妃!?」

「これはまた……すごい大物が飛び出してきたね」

「はい! ありがとう、私の名前を呼んでくれて! 本当はもっと話がしたいのだけど、今日はここでお開きよ! アマデウス、機械みたいにウィーンってやっちゃって!」

「任せたまえ、宝具『死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)』」

 

 もう一人いたのか。というか、アマデウスってまさか……。

 彼が流す音楽がバーサーク・サーヴァントと竜の魔女の動きを鈍らせる。状態異常系の宝具か。

 ならば、せめてもの意趣返しをさせてもらおうか。

 

「サービスだ、受け取り給え!」

 

『ATTACK RIDE BLAST!』

 

 空に放った無数の弾丸が敵のサーヴァント達に降り注ぐ。

 

「さあ、皆さん乗ってくださいな!」

「ジャンヌ、立てるね?」

「はいっ!」

 

 マリー・アントワネット王妃の言葉に僕は近くの二人を小脇に抱え、ジャンヌとともに彼女の馬車に乗り込んだ。

 

「あそこの二人はいいのかい?」

「あれは僕がカードから呼び出した存在だ、僕がそばを離れれば自動的に消える」

「へぇ、サーヴァントとは違うのか」

「それでは御機嫌よう皆様。オ・ルヴォワール!」

 

 王妃の言葉とともに走り出す馬車に乗り込んだ僕達は戦線を離脱した。




評価もどしどしお願いします。
日間39位となりました。頑張って残り続けられるようにしたいと思います。
ついでに、皆さんのためにちょっとしたネタバラシを。これをもとに皆さん、想像を膨らませてくださいな。
主人公はApocryphaの世界で魔術協会の魔術師からある英霊の触媒を盗みマスターとなりました。しかし、その英霊は天草四郎に賛同し、彼を裏切り天草四郎を新たなマスターとしました。しかし、闇に堕ちたその英霊を元マスターとしてのケジメの為に打ち倒し、その願いを盗みました。
 さぁ、彼が呼び出したのはどの英霊なのか? 何が理由で決別したのか。
 まっ、ぶっちゃけオルレアンの時点でこの話してる時点でわからないわけ無いっすよね。
 この設定どう思いますかね? 意見な聞いてみたいです。何か問題があったら他のネタを使わなきゃいけないので。この作品では事前にこうやってこちらから質問して問題がないか確かめたいと思います。皆さん、ご協力お願いします。


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一難去って

マリーさんの口調がいまいちわからん!


「ーーーふう。はい、ここまでくれば大丈夫かしら?」

 

 ラ・シャリテから撤退した僕達を乗せた馬車は街の南東、おそらくはジュラの森の近くに移動した。

 

「ドクター?」

『ああ、反応はもう消失している。

 ついでにいうと、そこからすぐ近くの森に霊脈の反応を確認した』

「わかりました。ジャンヌさん、大樹さん、それからーーーマリーさん」

「マリーさん、ですって!」

 

 マシュの呼び方にマリー・アントワネットは過剰に反応する。まぁ、相手はあのフランス王妃、さん呼びは少し失礼だったか?

 

「し、失礼しました。

 ええとーーー」

「失礼じゃないわ、とっても嬉しいわ!

 今の呼び方、耳が飛び出るくらい可愛いと思うの!」

 

 ーーー思わず、ズッコケかけた。

 

「お願い、素敵な異国のお方!

 これからもそう呼んでくれないかしら……!」

「は、はぁ……。

 ミス・マリー、とかマドモアゼル・マリー……では?」

「ダメ。ぜんぜんダメ。

 マリーさんがいいのっ! 羊さんみたいで!」

「それじゃメリーさんじゃ……」

「はい! はいはいはい!

 はじめまして、マリーさんです!

 話の早い方は魅力的よ。当ててみせるわ。

 貴方、とてもおもてになるのではなくて!?」

「え!? そ、そんなことないですよ……」

 

 マイペースな王妃様に立花もマシュもタジタジだ。

 

 でも、なんというかーーー、

 

「ーーーフランスの英霊っていうのはなんで、皆こうインパクトが強いのか」

「え?」

「ああ、ジャンヌのことじゃなくて」

 

 僕の頭によぎるのはあの戦いで最後まで彼に付き従ったサーヴァント。決して飛び抜けた力を持っていたわけではなかったが、マスターの命令より自分の意思を信じて行動した彼には感服の言葉しか思い当たらない。

 

「………マリーさん。

 話をしていいでしょうか?」

「ああ、ごめんなさい。

 私ったら一人で舞い上がって、はしたない

 それで、ご用事は何かしら?」

「この近くの森に、強い霊脈が察知されました。

 拠点とするため、そこに向かいたいのですが……。

 皆さん、問題ありませんか?」

「勿論、構わないわ。

 いいですか、アマデウス?」

「僕に意見を求めても無駄だってば

 君の好きにすればいいさ、マリア。」

「わかりました。

 問題はない、と思います」

「右に同じくだ」

 

 マリーが、もう一人のサーヴァント。おそらくはヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトに確認し、ジャンヌ、僕が了承する。

 

「では、そこで腰を落ち着けて、

 これから先のことを話し合いましょう」

 

「……どうやら、霊脈に群がっている

 モンスターたちがいるようですね」

 

 森に入った僕達が霊脈にたどり着くとそこには獣の頭を持った獣人のモンスター。所謂、ウェアハウンドというモンスターが群がっていた。

 

 ここは、霊脈。魔力の濃い場所だ。モンスターが群がっていても不思議なことじゃない。

 

「ここは僕に任せてくれ」

「大樹さん?」

「君達はさっきの戦いでセイバーとライダーにこっぴどくやられたあとだろう? 

 ここは僕に任せて、休み給え」

「でも、大樹さんだって……」

「僕の傷は気にする事はないさ、

 こんなものかすり傷の部類だ」

 

 立花にそう伝えて僕は前に出る。

 

『KAMEN RIDE ……』

 

「変身!」

 

 カードを装填し、銃口をウェアハウンド達に向けてトリガーを引く。

 

『DI・END!』

 

 ライドプレートがウェアハウンド達に直撃してから、ディエンドに変身する。

 

「とは言っても、この数は厄介だ。

 ここは僕の兵隊さんに任せよう」

 

 カードケースから3人のライダーが描かれたカードを取り出し、ドライバーに装填し発射する。

 

『KAMEN RIDE……RIOTROOPER!』

 

 放たれた影が収束し、量産型ファイズとも言えるライオトルーパーが三体召喚される。召喚されたライダー達はそれぞれがウェアハウンドに向かっていく。

 

「アマデウス、突然新しい方が現れたわ!」

「へえ、こうやって呼び出してたのか」

「彼らは一体……?」

「でも、さっき呼び出されてた人達より弱そう」

「ドクター、あれはサーヴァントなのですか?」

『確かに反応は似ているけど、少し違うな。

 寧ろ、サーヴァントより少し反応が強い』

 

 三者三様ならぬ、六者六様の反応をする。コレについては後で僕から説明したほうが良さそうだな。

 

 ライオトルーパー達によってあらかたのウェアハウンドが倒れたのを確認した僕はディエンドの紋章が記された黄色いカードを装填する。

 

『FINAL ATTACK RIDE DI・DI・DI・DIEND!』

 

 銃口の周りに光のカード達が渦のように伸びて敵をロックオンする。青緑のエネルギー弾がトリガーと共に放たれ、残りのウェアハウンド達は爆裂四散したのを確認して、変身を解いた。

 

「ふぅ、こんなもの……っ!!」

「大樹さんっ!?」

 

 変身を解いた僕は激しい痛みに胸を抑えてその場に片膝をつく。それに慌てて立花達が近づいてくる。

 

「やはり、無理を……」

『考えてみれば、

 あれだけ至近距離で敵の攻撃を喰らったんだ。

 マシュやジャンヌより、彼のほうが余程重症の筈だ』

「……安心したまえ、幸い呪いなどの類ではないから薬を塗って包帯でも巻いておけば治るさ」

 

 実際、この程度の傷英雄王の宝具の雨や、騎士王の剣、それに、彼女の矢に比べたら本当に大した怪我ではないのだから。

 

「素敵ね!

 まるで物語に現れる騎士様のよう。」

「やめてくれ、僕はただの怪盗。

 お宝を探し求める、ただの風来坊。

 騎士なんかとは一番縁遠い。

 それより、マシュ早く召喚サークルとやらを設置したまえ」

「はい」

 

 僕に言われ、マシュが霊脈の中心へと自身の盾を設置する。

 

 光が盾から放たれ召喚サークルが設置された。




感想で批判が多かったので前回の提案は取り下げます。


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聖女と王妃

「落ち着いたところで、

 改めて自己紹介させていただきますわね」

 

 召喚サークルが確立し、僕達は各々近くの倒木に腰掛け向かい合っていた。

 

「私の真名はマリー・アントワネット。

 クラスはライダー。

 どんな人間なのかは、どうか皆さんの目と耳で

 じっくり吟味していただければ幸いです。」

 

 マリー・アントワネット王妃は優雅に一礼して、自身の名とクラスを明かす。

 

 本来の聖杯戦争ではありえないことだろう、サーヴァントの真名は自身と本人の逸話を繋げる。即ち、弱点を露呈するも同然なのだ。

 

「それと、召喚された理由は残念ながら不明なのです。

 だって、マスターがいないのですから」

 

 ーーーそう、これは人理焼却という異例の事態により起こったイレギュラーな聖杯戦争。そもそも、優勝賞品である聖杯が既に向こうのジャンヌ・ダルクの手に渡ってる時点で成り立ってないのだから、こういうこともあり得るのだろう。

 

 続いて、彼女の隣に腰掛けている優男。おそらくはキャスターのクラスのサーヴァントが名乗る。

 

「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。

 僕も、彼女と右に同じ。

 なぜ、自分が呼ばれたのか、

 そもそも自分が英雄なのか、まるで実感がない。

 確かに僕は偉大だが、しかし、それでも数多くあった芸術家の一人に過ぎないんだが。

 ま、音楽のために魔術も多少は嗜んでいたけど、

 それだって、悪魔の奏でる音に興味があっただけなのに」

 

 続いて、僕達の名乗りだ。先陣を切ったのはマシュからだった。

 

「私はマシュ・キリエライト。

 デミ・サーヴァントで、真名はわかっていません。

 そして、こちらがーーー」

「藤丸立花です。

 マシュのマスターをしています。

 よろしくお願いします」

「ああ、よろしく。

 同じ、非戦闘系だ、仲良くしよう。」

「は、はい、アマデウスさん」

「僕は海東大樹。彼らの協力者と考えてくれればいい

 それで、こっちが……」

「ジャンヌ。

 ジャンヌ・ダルクね」

 

 僕が紹介するのを遮ってマリーは彼女の名を呼ぶ。

 

「フランスを救うべく立ち上がった救国の聖女。

 生前から、お会いしたかった方の一人です。」

「……私は聖女などではありません」

 

 落ち込んでいるな、目で見えるほどに。

 

 まぁ、あんなものを見せられたあとで聖女なんて呼ばれても胸が苦しくなるだけだろう。

 

 しかし、それを理解している上で王妃を言葉を続ける。

 

「ええ。貴女自身がそう思っているの事は

 みなわかっていたと思いますよ。

 でも、少なくとも貴女の生き方は真実でした。

 その結果を私は知っています

 だから、みなが貴女を讃え、憧れ、忘れないのです。

 ジャンヌ・ダルク。オルレアンの奇跡の名を」

「………………。」

 

 王妃の言葉にジャンヌは口を噤む。

 

 マリー・アントワネット。

 

 彼女が生きたのは18世紀後半、そして、ジャンヌが生きていたのがこの時代14世紀前半。その間、三百年もの間、彼女の名はこの国に深く染み付いていたのだろう。

 

『救国の聖女』としてのジャンヌ・ダルクの名が。

 

「ま、その結果が火刑であり、あの竜の魔女なワケだが。

 良いところしか見ないのはマリアの悪い癖だ。

 そうだろう、ジャンヌ・ダルク?

 君の人生にはいささか変調がある。

 ”完璧な聖人"なんて呼ばれて傷つくのは

 他ならぬジャンヌ自身だ。

 いいかいマリア。君はいつも他人をその気にさせすぎる。

 たまには相手を叱り、否定することも大切だよ」

「そ、そんなこと、アマデウスに言われなくても

 わかっていますっ! いえ、毎日貴方に言われています!」

 

 なんとなく、この二人の関係が見えてきた気がする。

 

 ロマンチストな王妃様と、リアリストな天才音楽家。この二人は生前から知り合い、というより、とてもメジャーな逸話があったはずだが。

 

「この音楽バカ! 人間のクズ!

 音階にしか欲情しなくなった一次元フェチニズム!

 そんなに楽譜が恋しいなら、いっそ音符にでもなったらどう!」

「……自分で言っておいてなんだけど、君に罵倒されると。こう、なんとも言えない感情が湧き上がるな

 だがまあ、やればできるじゃないか!

 そんな感じでジャンヌにもかましてあげなさい

 もっと早く。もっと強く。もっと辛辣に!

 君が思うままの欠点を口にしてするんだ!」

「ノン、それは無理よアマデウス。

 貴方のような人間のクズには欠点しかないけれど、

 ジャンヌに欠点はないんだもの。」

「ーーー本気か。これは重症だ。

 そこまで、ジャンヌ・ダルクが好きだったんだな、君は。」

 

 確かに、これはアマデウスに同感だな。

 

 この世界、いや、あらゆる世界においてただ一つで完璧なものなんてただの一つもない。少なくとも、僕は彼女の欠点を一つ知っている。彼女は自分の心、特にーーー恋愛に関するところが酷く鈍感なんだ。

 

 誰がどう見ても、明白だったのに最終決戦でようやく、自分の気持ちに気づくような人だからなぁ。まっ、相手が相手だったから仕方ないような気もするけど。

 

「好き、というより信仰ね。

 あとはちょっとの後ろめたさ。

 ……小さじ一杯分くらいの、ごめんなさい。

 愚かな王族が抱く、聖女への当然の罪悪感」

「……マリー・アントワネット。

 貴方の言葉は嬉しい。でも、だからこそ告白します

 生前の私は聖女なんてものではなかった。

 私はただ信じたことのために旗を降って、

 その結果、己の手を血で汚しました。

 勿論、そこに後悔はありません。

 結果、異端審判で弾交されたこともーーー私の死も

 ですが、流した血が多すぎた。

 田舎娘は自分の夢を信じた。けれどーーー

 その夢の行き着く先がどれほどの犠牲を生みものなのか、その時まで想像すらしていなかった。

 後悔はなかったけれど、畏れを抱くこともしなかった。

 ……それが私のもっとも深い罪です」

「ーーーだからこそ、

 自身の死すら『罰と救済』だった」

「……はい、そのとおりです。

 私が聖女と呼ばれたのはあくまで結果論です。

 そんな小娘を聖女と呼ぶのはどこか違うと思います」

 

 その考え方自体が彼女を聖女足らしめてるっていうのに、なんで気が付かないのかなあ……。

 

「そう。

 ねぇ、聖女ではないのよね?

 それなら、

 私は貴女をジャンヌと呼んでもいい?」

「……え、ええ。勿論です。

 そう呼んでいたたげると、なんだか懐かしい気がします」

「良かった。

 それなら私もマリーと呼んで。

 貴方が聖女ではないただのジャンヌなら、

 私も王妃ではない、ただのマリーになりたいわ。

 ね、お願い、ジャンヌ。

 どうか私をマリーと呼んでみて?」

「は、はい。

 では、遠慮なく……ありがとう、マリー」

「こちらこそ、嬉しいわジャンヌ!」

 

 マリー王妃は感極まったようにジャンヌに抱きついた。

 

「それとごめんなさい、私の気持ちばかり押し付けて。

 貴方は自分を見失ってしまったのね。

 何もわからなかったあの日の私と同じように。

 ならそれは貴方が見つけるしかない事柄だわ。

 私はジャンヌを思いっっきりエコひいきしたいけど、それをぐっとこらえて黙ります!

 いっぽうてきに信じるんじゃなくて、支援する! これが女友達の心意気よね、アマデウス!」

「そうだね。いいんじゃないか? 女友達の心意気とか、スイーツな響き満ちていて大変空虚だ。」

「私達も信じていますよ。

 ね、マスター?」

「もっちろん!」

 

 生前のジャンヌ・ダルクに彼女のような、『聖女ジャンヌ・ダルク』としてではなく『ただのジャンヌ・ダルク』として同じ立場に立ってくれる、誰かがいたら、歴史は……どうなっていただろうか?

 

 これは僕の考えるべきことじゃないしな。なにより、彼女は自身の人生に悔いはないと言っている、それを悲劇と断じるのはただのエゴでしかない。

 

 どっちにしても、僕の話はあとになりそうだ。

 

 僕は木から立ち上がり、彼女達に背を向ける。

 

「大樹さん、どこ行くの?」

「傷の手当のために近くに水辺がないか、探しに行くのさ。ついでに、偵察でもしてくるよ。」

「だったら、私達もーーー」

「生憎、僕は女性の前で肌を晒す趣味はないんだ。

 君達はカルデアの説明と、ついでにガールズトークにでも花を咲かせ給え。」

「おいおい、僕は男だぜ?」

「だったら、男らしく僕がいない間の彼女達の警護でもしたまえよ」

「無理よ。アマデウスったら、とっても弱いもの」

「バッサリ言うなぁ。その通りだけど」

「じゃ、そういうわけだから。」

 

 僕は指で銃の形を作り、バーンというポーズとともにその場をあとに、しようとした。

 

「そうそうそう、言い忘れていた。あの場にいた二人のサーヴァント、バーサーク・ランサーとバーサーク・アサシンの真名を伝えておこう。ロマンにでも詳しく聞くといい」

「そういえば、なんで大樹さんはあの二人の真名を知っていたのですか?」

「なに、旅の縁というのは奇妙なものでね。僕は彼らにあったことがあるのさ。

 ランサーの御仁の名はヴラド・ツェペシュ。

 アサシンの女性の名はエリザベート・パートリー。

 対策はきちんと練っておくといい」

 

 それだけ告げると、僕は今度こそその場をあとにした。

 

 それにしても、まさか()()()()()()が向こう側として呼ばれるとは。ドラクルと呼ばれた以上、竜の魔女に召喚されてもおかしくはないが、もしも、彼が竜という縁に結ばれて召喚されたのではなく、()()()()()()()()という名に結ばれた縁をたどって召喚されたとしたら……。

 

 僕は懐にしまってあった、緑色のライドウォッチを取り出す。そこには仮面ライダーのマスクではなく、サーヴァント・アーチャーの紋章が刻印されていた。

 

 この中にはある英霊の力と願いが封印されている。僕が彼女から盗んだ品だ。もし、彼女が向こう側として呼ばれているのならば……僕は彼女をーーー。

 

「ーーー考え過ぎだろうか」

 

 その不安を拭うように僕は再び森の中を歩み始めた。

 

 

 

 

「!!? しまった……! 僕としたことが!」

 

 応急処置が終わった僕は一日の疲れが一気に出たのか、防御用の決済とトラップを張ったあと軽く休むつもりで岩に寄りかかっていたらどうやら寝落ちしてしまったらしい。

 

 そして、最悪なことに遠くで炎が上がるのが見えた。どうやら、戦闘中らしい。ディエンドライバーを拾い上げ、彼女達と別れた場所まで全力で走り出す。

 

 5分程走り続けると、視界に見慣れたワイバーンの群れが見えてきた。

 

「変身!」

 

『KAMENRIDE……DI・END!』

 

 打ち出したライドプレートで、前方のワイバーンを打ち飛ばしようやく皆と合流する。

 

「大樹さん、無事だったんですね!」

「すまない、遅れてしまったようだ」

「安心してください、丁度終わったところです」

『待ってくれ! 近くにサーヴァント反応がある!

 これは……ラ・シャリテにいたサーヴァントの一騎だ!』

 

 ロマンの言葉に全員に緊張が走る。

 

 そして、森の中から現れたのはーーー、

 

「今晩は皆様、寂しい夜ね」

 

 現れたのは十字の杖を握った修道服の女性、バーサーク・ライダーが僕達の前に現れた。



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vsバーサーク・ライダー

「バーサーク・ライダー……!」

「ーーー何者ですか、貴方は?」

「何者……? そうね、私は何者なのかしら?

 聖女たらんと己を戒めていたのに、こちらの世界では壊れた聖女の使いっぱしりなんて。」

「壊れた聖女……。」

 

 あの竜の魔女のことか……。

 

「ええ、彼女のせいで理性が消し飛んで、凶暴化してるのよ。今も割と衝動を抑えるのに必死だし。困ったものね、全く。

 だから、貴方達の期待はありがたいけど、味方になることはできないわ。気を張ってなきゃ、貴方達を後ろから攻撃するサーヴァントを味方にできるわけ無いでしょう?」

「ではどうして、出てきたのです?」

「……監視が役割だったけど。最後に残った理性が、貴方達を試すべきだと囁いている。

 貴方達の前に立ちはだかるのは"竜の魔女"。

 ()()()()()に騎乗する、災厄の結晶。

 私ごときを乗り越えられなければ、彼女が打ち倒せるはずがない。

 倒しなさい。躊躇なく、この胸に刃を突き立てなさい!」

 

 狂気に侵されていても英雄としてのあり方を忘れないのか。

 

「我が真名はマルタ! 狂気に侵されし我がクラス"バーサーク・ライダー"……!!」

『マルタ……? 聖女マルタか!?』

「立花。気をつけ給え、彼女が竜の魔女に呼ばれた所以。それは、彼女がーーー」

「行くわよ、大甲竜タラスク!!」

『グオオオオオオオッ!!!』

 

 彼女の背後に巨大な甲羅を持つ竜が召喚された。

 

「"ドラゴン・ライダー"だからだ。」

 

 聖女マルタ。新約聖書にも登場する、聖女。かの救世主とも関わりがあり、彼女の最も有名な逸話が祈りによって、悪竜を説伏したというもの。

 

 その竜の名はタラスク。リヴァイアサンの子にして数多の勇者を屠った怪物。

 

「来るぞっ!」

 

 タラスクが腕を振るう瞬間マシュが前に出て、攻撃を防ぐがその衝撃は彼女の近くの大地を抉る。

 

「ぐぅ!」

「予備動作なしでこの威力か。だけど、力自慢ならこっちにもいる……!」

 

『KAMENRIDE………KIVA!』

 

 僕はコウモリをモチーフとした、全身の拘束具の鎖が特徴的なライダー、仮面ライダーキバを呼び出す。

 

「さらにこれだ」

 

『FORM RIDE……KIVA DOGGA!』

 

 カードを発動すると、キバの身体を鎖が多いそれが弾け飛ぶと紫色の重厚な鎧が纏われていた。そして、その手には巨大なハンマー、ドッガハンマーが握られていた。

 

『ガアァァァァァァ!!』

「ふん!」

 

 タラスクの腕の攻撃をキバはハンマーの持ち手で受け止める。そして、それをかちあげハンマーで打ち返した。

 

『グガアァァァァ!!!』

 

 パワー勝負ではドッガフォームはタラスクより上だろう。しかし、速さでは本来のキバの特徴である素早さを失ってしまう。

 

 ならば、

 

「ジャンヌ!」

「っ!」

 

 キバの背後に回り込んだタラスクの攻撃をジャンヌが弾き飛ばす。そして、それによってすきができたところにキバが攻撃を叩き込む。

 

 守りに適した彼女とパワー重視のキバ故のコンビネーションだ。それにしても、僕がそれを伝える前に気付くとは、さすが、聖女として戦場に立ち続けただけのことはある……!

 

 僕は、彼女本人を……!

 

『ATTACK RIDE BARRIER!』

 

 直感で危機を察知し、バリアーを放って防御する。瞬間、バリアーに光による衝撃が与えられる。

 

「あっぶね!」

「やるわね、私の祈りを避けるなんて」

 

 なるほど、ジャンヌが防御に適した祈りなら、彼女の祈りは敵を倒すことに適した祈りっわけか。

 

「だったら、祈りをする暇もなく間髪入れずに銃弾を打ち込めばいいだけの話だ」

「その間、私が何もしていないと思う?」

「思ってないさ」

 

「「………………。」」

 

 弾丸を放つのと彼女が駆け出すのはほぼ同時だった。

 

 放たれる銃弾とそれを杖で撃ち落とす、マルタ。流石にあの杖は盗めそうにない。僕に彼女ほどの祈りは持ち合わせていないからな。

 

「なんて考えてる暇はないな……!」

 

 流石というか、新しいカードを装填する暇もない猛攻だ。だが、杖を掲げる暇もない彼女も状況は同じ。となれば、決定打を与えるためにーーー。

 

「ーーーいいでしょう。絶望に抗う正しき人々、ならば私は貴方達の敵として試練を与えるのが役目……!」

 

 この魔力の高まりは、来るか……!

 

「全員、備えろ! 宝具だ!」

 

 彼女の杖がただの祈りなど比べ物にならない輝きを放つ。それに呼応して、タラスクが空に舞い上がり全身から光を放ち、まるで太陽のように輝く。

 

「ーーー愛を知らない哀しき竜。

 ーーーここに。星のように!

 ーーー『愛を知らない哀しき竜よ(タラスク)』!」

 

 彼女の手が下に降ろされるとともにタラスクが僕達に向けて流星のように地上へと降り注ぐ。

 

 まずいな、あれは下手な隕石より威力がある……!

 

「令呪をもって、命じる!『マシュ、宝具を開放して!』」

「ーーー宝具。展開します……! 『仮想宝具疑似登録/人理の礎(ロード・カルデアス)』」

 

 立花が令呪を使用し、マシュに宝具を開放させる。マシュの盾の後ろにいる僕達は無事だが、その範囲の外は文字通りクレーターになりつつあった。

 

「マシュの宝具が押し負けてる。このままじゃ長くは持たない。」

「そんなっ……!」

「ジャンヌ……君は宝具を使えるか?」

「……私の宝具のことを知っているのですか?」

「この状況じゃ、それを使う以外に他はないだろう。それで、使えるのかい?」

「不可能です。弱体化に加え、魔力が圧倒的に足りていません」

 

 やはりか。どうする、時間を止めようにもあれ程の魔力の塊を停止させるのはおそろしい、消費を強いられる。だが、今はこれしかない。あとの戦いに響くだろうが今は彼女達を生かすのが先決。

 

「だったら、冬木でやったように私とジャンヌが仮契約すれば……!」

 

 タラスクの時を止めようと手をかざそうとすると、立花がとんでもない提案をしてきた。

 

「何言ってるんだ! 君の魔力じゃないにしても負担は君に行くんだぞ、二人分の宝具の開放なんて自殺行為だぞ!!」

『海東君の言うとおりだ、無茶にもほどがある!

 他になにか手があるはずだ!』

「ううん、ここではこれが最善だと思うから……。

 それに、後輩(マシュ)が頑張ってるのに先輩(わたし)が頑張らないわけにはいかないでしょ?」

 

「『…………っ!』」

 

 立花の決意の込められた目に気圧され、僕とロマンは何も言えなくなった。この眼を僕はよく知っている、僕が旅をしてきたときに出会ったマスター達の眼だ。

 

『君ってやつは……! わかったよ!

 バックアップは任せろ! 何があっても意味消失は防いで見せる』

「なら、僕が勝負を決めよう。あとのことは構わず、全力でぶつけるんだ」

「ありがとう、大樹さん、ドクター」

 

 令呪をジャンヌに向けて仮契約を結ぼうとする、二人の隣でカードを装填し、キバへと銃口を向ける。

 

『FINALFORM RIDE KI・KI・KI・KIVA!』

 

「痛みは一瞬だ」

 

 キバの背中を撃ち抜くと、彼の身体は変形し巨大な弓『キバアロー』へと変形する。さらに、新たなカードを装填する。

 

「変わった……!」

 

『FINALATTACK RIDE KI・KI・KI・KIVA!』

 

 宙に留まっていたキバアローを握り、グリップを引く。

 

「こっちの準備は出来た。そっちは……!?」

「仮契約は既に終わりました!」

「よし、頼んだぞジャンヌ!」

「はい!」

 

 彼女の旗が神々しい輝きを放つ。

 

「我が旗よ! 我が同胞を守り給え!

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』ーーー!!」

 

 ーーー彼女の旗の光が、タラスクを押し返した。

 

『海東君、今だ、決めてくれっ!』

「彼女達が命がけで作ったチャンス、無駄にはしないさ……!」

 

『キバって、いくぜぇ!』

 

 グリップを離すと同時に先端のヘルズゲートが開放され、魔皇力で生成された紅の矢がタラスクとマルタ目がけて、閃光の如く放たれた。

 

 矢がタラスクに直撃するのと同時に、暁の閃光が夜を照らした。

 

「……………。」

「全く、無茶をするお嬢さんだ」

 

 魔力の負荷が祟ったのか気を失った立花を支え、マリーに預ける。

 

「勝った、のでしょうか?」

『いや、微弱ではあるが彼女の反応が残っている。

 だが、これは……』

 

 光が晴れるとそこには、地に倒れた聖女マルタと彼女と同じく、いや、それ以上にボロボロになったタラスクが彼女の脇に控えていた。

 

「あれ程の魔力を込めた攻撃で無事とは、ね」

「いいや、最後の最後でタラスクが彼女を庇ったんだ」

「タラスク、ごめん。

 私に付き合わせて……本当にごめんね」

『グオォォォ……』

 

 タラスクはまるで気にするなと言いたげに光の粒子となって消失した。

 

「マルタ。貴方はーーー」

「手を抜いた? んなわけ無いでしょ、バカ。

 これでいい、これでいいのよ。

 全く、聖女に虐殺させるんじゃねぇっての」

 

 最後だからか、マルタは聖女らしい喋り方ではなく、少し荒っぽい喋り方となっている。なるほど、これが聖女になる前の彼女か。

 

「……いい、最後に一つだけ教えてあげる。

 "竜の魔女"が操る竜に、貴方達は絶対に勝てない。

 あの竜種を超える方法はただ一つ。

 リヨンに行きなさい。かつてリヨンと呼ばれた都市に。竜を倒すのは、聖女ではない。姫でもない。

 竜を倒すのは、古来から"竜殺し(ドラゴンスレイヤー)"と相場が決まっているわ」

 

"竜殺し"。僕がその二つ名で真っ先に思いつくのはあの戦いに参加していたセイバー、彼に命を与えた英雄。もし、彼女の言う竜殺しが彼ならもしかしたら、本当に……。

 

 話すことが終えたのか彼女は目を閉じ、終わりの時を待つ。

 

「さぁ、早くトドメを刺しなさい。このまま放っておくと、今度こそ貴方達を倒すわよ」

「ああ、そうさせてもらうよ。

 ーーー痛みは一瞬だ」

「ええ、そうしてちょうだい。

 ……次は、もうちょっと真っ当に召喚されたいものね」

 

 僕は右手に握りしめた歪な形の短刀を彼女の胸めがけて振り下ろした。



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過去とこれから

皆さんラスベガスやってますかァァァ!!?
水着沖田ついに来ましたねぇ!父上がルーラーにまで手を出しましたねぇ!自分は三十連しておっきーとカーミラが出ましたよ。ですが、本命はピックアップ2です!だって、水着沖田だもの!ルーラー獅子王だもの!ペンギンメルトだもの!引くでしょ?引くよね!?


 ーーーー懐かしい夢を見る。

 

 僕が海東大樹()になって初めて訪れた世界の記憶だ。

 

 記憶に映るのは二人のサーヴァントが対峙している姿。

 

 一人はオルレアンの聖処女。

 

 もう一人は、ギリシャで二人の神を信仰し純潔の狩人と呼ばれた女性。しかし、その姿は伝承にある美しくも気高い姿ではない。

 

 彼女が伝説で打倒した獣、魔獣カリュドーンの毛皮をまとい、闇と凶暴性を放つ姿。美しかった森を連想した緑の髪は色を失い。その姿は、憎しみのみで動く獣そのものだった。もはや、その姿は英雄ですらなかった。

 

 一進一退の攻防を繰り広げる二人に放たれた弾丸が二人の動きを止める。

 

『貴方は……赤のアーチャーのマスター……!』

 

『元……マスターさ』

 

 そう、例え僕が召喚したサーヴァントであろうと既に僕と彼女の間にパスの繋がりはない。

 

『悪いね、彼女の相手は僕に譲ってもらう』

 

『待ってください! 彼女をあのままには……!』

 

『……だから、僕がやるんだ。君は早く大聖杯に向かい給え』

 

『ですがッ! 彼女はッ!』

 

 僕は奥歯をギリッと噛み、彼女の足元に数発弾丸を飛ばす。

 

『早くいけと言っているだろうッ!!

 

 ………頼むから』

 

『ッ! ……わかりました』

 

『待てぇ!』

 

 走りさろうとする聖女を追いかけようとする、彼女の前に立ちふさがる。

 

『君の相手は、僕だ。……君をそんな姿にしてしまったのはマスターであった僕に責任がある』

 

 一番近くにいたのに、一番彼女の気持ちに気付けていたはずなのに。なのに、僕は彼女の心の根底に歩みよろうともしなかった。

 

『だから、僕が君に引導を渡す。それが、僕にできるせめてもの償いだ』

 

『どけぇぇぇぇ!!!』

 

『……変身』

 

 彼女の矢と、ライドプレートが激突し戦いの火蓋が切られた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「お目覚めかい?」

 

 目を覚ましたバーサーク・ライダー、いや、元バーサーク・ライダー、聖女マルタは僕の顔を見て表情に驚きの色が浮かび、自分の身体を確かめるように触れる。

 

「……私はどうしてまだ現界しているの? 確かに貴方にトドメをさされたはずなのに」

 

「ああ、これのことかい?」

 

 僕は昨日、自身が彼女の胸に突き立てた歪な形の短刀を見せるように持つ。

 

「これは僕が昔立ち寄った世界で手に入れたお宝でね。『破壊すべき全ての符(ルール・ブレイカー)』。切りつけた相手のあらゆる魔術効力を初期化する宝具だ」

 

 随分前になるが、ある世界で散々煮え湯を飲まされた相手。これは彼女を倒した戦利品として頂いたものだ。

 

『裏切りの魔女』の異名を持ち、その名の由来が宝具となった短刀。

 

「それで、私の『狂化』の呪いを解いたということ?」 

 

「ああ、ついでに『竜の魔女』との契約もだ」

 

 僕は右手に刻まれた赤い紋様、2画分の彼女の令呪を見せる。

 

「ホントに驚いたよ、目が覚めたらマルタさんが大樹さんのサーヴァントになってるんだもん」

 

 ついさっきまで魔力回路の消耗で目を覚まさなかった立花が興奮した様子で語る。

 

『その短剣があればあの場にいた他の三騎とも契約できたんじゃないのかい?』

 

「無茶を言う、君だってわかってるだろ? これはあくまで盗品。僕本来の力じゃない。一回使うのにどれだけの魔力を持っていかれるか」

 

 実際、ついさっきまで僕も全く動けなかったし。便利なんだが、リスクが高い。

 

「おかげで嫌なものを見た」

 

「? なにか言ったかい。」

 

「いや、なんでもない。それに、変な希望をもたせるのも悪いからハッキリ言うけど、彼女以外のサーヴァントはもう手遅れだ」

 

「手遅れ?」

 

「彼女はその意志の強さで理性を抑えてたおかげで呪いの進行が遅れた。全く、信じられない精神の強さだよ

 だが僕の見立てだと、あの三人は既に『狂化』の呪いが霊核にまで及んでいる。呪いを解除すれば霊核が崩れて消滅するだけだ」

 

「そんなっ!」

 

「まぁ、正規の英霊に無理矢理『狂化』の呪いなんて付与したんだ。当然といえば当然だろう。それに向こうには聖杯という膨大な魔力リソースがある。駒がかければ新たに召喚するって腹じゃないのかい?」

 

「でも、それではあまりに……」

 

「君達はまだ聖杯戦争についてあまり知らないんだったね。だったら、よく覚えておくといい。聖杯戦争っていうのはこういうものさ。聖杯を求める魔術師なんてものはどいつもこいつも基本はクズしかいない。

 今回はその相手が更に輪をかけてクズだっただけの話さ」

 

 僕の言葉に一般的な人間の意見を持つ立花とマシュはなにか言いたげだが、これが現実だ。

 

 いつかの世界の虫爺に外道神父なんかがいい例だ。

 

 まあ、何処かのうっかり優雅な娘と正義の味方の少年君みたいに甘すぎるやつもいたけどさ。彼の言葉を借りるなら心の贅肉っところか。

 

「まぁ、だからといって向こうのやってることが正しいなんて言う気はないし、それを容認してやるつもりも全くないさ。

 それで、マルタ。君はどうするんだい?」

 

「はぁ、貴方ねぇ。ちょっと前まで敵だった相手に、人々を虐殺してたサーヴァントに今度は国のために戦えって言うの?」

 

「だけど、それは竜の魔女に操られて……!」

 

 マルタを庇護しようとしたマシュの言葉を僕は手で制する。彼女の中で周りがどう思おうが関係ないだろう。大事なのは彼女がどう思うか。

 

「僕をサディストと言いたければそうすればいいさ。僕の目的はあの竜の魔女を倒すこと、そのために効率的だったから君を引き入れたそれだけだ」

 

「私からもお願いします」

 

 僕の隣からジャンヌが前に出てマルタに懇願する。

 

「私はなんとしてもこの国の平和を取り戻さなければなりません。それが私がこの世界に召喚された意味であり、偽りのない私の意思です」

 

 ジャンヌの真っ直ぐな瞳で見つめられたマルタはバツが悪そうにため息をこぼす。

 

「はぁ……仕方ないわね。聖女の後輩にここまで頼まれたんじゃ、断らないわけにはいかないわよね。それに、私も私でかなり腹にすえかねてるもの」

 

 パンっと拳を片手に打ち付け、怒りを表明する。

 

「嬉しいわ! 私貴女とも話がしてみたかったの! なんてたって、かの救世主と親交があったとされる聖女様ですもの!」

 

「はぁ、またマリアの悪い癖が出た」

 

「よろしくお願いしますね、マルタさん」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

「そういえば、昨日から思ってたんだけどなんで口調がコロコロ変わるの?」

 

「その話はまた今度ね」

 

 全く、昨日まで敵だったっていうのにこんなに早く順応するとは。

 

 どの世界にも必ずその物語の中心となった人物がいた。この物語の主役は間違いなく彼女だ。そして、僕が関わる以上僕の物語でもある。お宝も大事だけど、最後まで見届けてやるのも僕の役目か。

 

「それじゃあ早く行こう。リオンとやらにいるこの戦いの命運を握る切り札(ジョーカー)を迎えに」




感想評価どんどん来てください。
あっ、だけど自分就職試験に向けて忙しいんで9月すぎまでかなり亀更新だと思います。


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仮面ライダー(自由を守る者)

久しぶりに投稿しました!
結構人気があるのから再投稿していこうと思います。
もうすぐ卒業なので!


「マルタ、君はいまどれくらい戦える?」

 

 僕はリオンへの道すがら、隣を歩くマルタに声をかける。

 

 マリーの馬車で行っても良かったが、それでは敵に察知される危険性があるため僕達は徒歩でリヨンに向かうことになった。

 

「……はっきり言って、タラスクを失ったのは痛いですね。私はライダー、馬となるものがいなければステータスは弱体しますから」

 

「まっ、ステゴロであれだけ戦えるんだ。問題ないんじゃないか?」

 

「……アマデウス、次ステゴロって言ったら顔が凹むと思いなさい」

 

 怖っ……。

 

 鋭い眼光でアマデウスを睨む自分のサーヴァントに寒気を覚える。考えてみれば、契約したサーヴァントなんて彼女が二人目か。

 

 僕のサーヴァントはなんでこうおっかない女性が多いのか?

 

「ねぇねぇ、大樹さん。そろそろ教えて?」

 

 最初に契約したサーヴァントを思い出し、視線を遠くしていると立花が質問を投げかけてきた。

 

「なにをだい?」

 

『そうそう、君の能力は一体なんなんだい? サーヴァントにも負けない力を与える鎧に、それを召喚する能力

 ……おまけに世界を渡る力なんて、魔術師が聞いたら発狂するよ?』

 

「だからさ、僕は魔術師じゃない。『通りすがりの仮面ライダー』。それが僕だよ」

 

「「「「『仮面ライダー?』」」」」

 

 ロマニ、立花、マシュ、ジャンヌ、マリーが聞き慣れない単語に疑問符を浮かべる。

 

 毎度思うことだけど、この説明いちいちしなきゃいけないのかな?

 

「ふぅ。仮面ライダーっていうのはこことは違う世界の……所謂、抑止力に近いかな?」

 

「抑止力?」

 

『ああ、立花君。抑止力っていうのはね……』

 

 魔術師となって日の浅い立花がロマニに説明を受ける。

 

 カウンターガーディアンとも呼ばれるそれは星の延命を願う無意識集合『ガイア』と、霊長類の存続を願う『アラヤ』の二つによる安全装置のようなものだ。

 

『アラヤ』などは一般人を後押しするような形で顕現したりするが、仮面ライダーの生まれ方もそれによく似ている。

 

 立花が、ロマニからの抑止力の講義を終えると僕は自分のカード、『仮面ライダーディエンド』のカードを取り出す。

 

「仮面ライダーというのはその世界にその対となる『悪』が生まれたとき、それに対応するように同時に生まれるものなのさ。その一人一人が現代における世界を救った英雄と言ってもいいかもしれない」

 

『そんなにすごいのかい?』

 

「すごいとも」

 

 ーーーあるものは皆の笑顔を守るために戦い。

 

 ーーーあるものは人間の可能性を信じて戦い。

 

 ーーーあるものはそれぞれの願いを叶えるための戦いを止めるために戦い。

 

 ーーーあるものは人間として戦い。

 

 ーーーあるものは運命に抗うために戦い。

 

 ーーーあるものは心を鍛え続け、二人の少年を導くために戦い。

 

 ーーーあるものは己の信念を貫くために戦い。

 

 ーーーあるものは時の運行を守るために戦い。

 

 ーーーあるもの人と怪物の境界に立とうと戦い。

 

 ーーーあるものは世界を破壊し、再生するために戦い。

 

 ーーーあるものたちは自分が愛した街の涙を拭うために戦い。

 

 ーーーあるものは己の欲望を見つけるために戦い。

 

 ーーーあるものは友情を守るために戦い。

 

 ーーーあるものは絶望を希望に変えるためにに戦い。

 

 ーーーあるものは世界を救うための力を求めて戦い。

 

 ーーーあるものは人の善性を信じて戦い。

 

 ーーーあるものは命を燃やして戦い。

 

 ーーーあるものは人々を救うために戦い。

 

 ーーーあるものは愛と平和のために戦い。

 

 ーーーあるものは世界を良くするために王になるために戦った。

 

『つまり、君もその仮面ライダーの一人だと?』

 

「まあ、そういうことだね。

 僕が他のライダーと違うのは本来、ライダーにはそれぞれの物語が存在するが、僕の場合は決まった世界が存在しないからそういう物語がない。だからこそ、世界を行き来できるのさ」

 

「あっ、な〜るほど。決まった世界がないから、自由に世界を渡れるのか」

 

 勘の良いアマデウスが僕の言葉をいち早く理解して、手を叩く。

 

「まっ、自由自在とはいかないがね。何処かのライダーが言っていたよ、『俺達は正義のために戦っているんじゃない、俺達は人々の自由のために生きている』のだとね」

 

「あら! だったら、ダイキさんもその仮面ライダー?としてこの世界に呼ばれたのかもしれないわね!!」

 

 マリーがなにか思いついたように手を合わせ、キラキラした目で僕を見る。

 

 立花も気になったのか、マリーに尋ねる。

 

「マリーさん、それってどう言うこと?」

 

「だってそうでしょ? 仮面ライダーって、人々の自由のために戦うのよね? だったら、()()()()()()()()()()()()()()()()()この世界に呼ばれるのは当然じゃない?」

 

「あっ、そっか!」

 

 この戦いは世界を救う戦い、言い方を変えれば人々の自由を守るための戦い。ならば、その守護者たる仮面ライダーがその世界に呼ばれてもおかしくはないということか……。

 

「参ったね、今までそんなこと考えなかったら気付かなかったよ……。」

 

 面食らって額を抑えていると、ジャンヌが何か気付いたように声をかけてきた。

 

「もしかして……今までの世界でもそうだっのではないですか?」

 

「というと?」

 

「今までの世界でも人々の自由を妨げる何かと戦ったことはないか? ということよ」

 

 ジャンヌの言葉をマルタが補足して伝える。

 

「言われてみれば……割と人類規模でやばかった世界が多かった気が……。」

 

『例えば……?』

 

「汚染された大聖杯とか、第三魔法で魂の物質化を行おうとした神父がいた世界とか?」

 

『さらっと言ってるけど、とんでもないなっ!? 後でその話について詳しく教えてもらえないか!?』

 

 興奮した様子で、喚くロマニとかなり驚いている様子の面々。

 

 その中で立花が代表して質問を投げかけてきた。

 

「大樹さん、大聖杯って……冬木にも行ったことがあるの?」

 

「なんだ? 君達も冬木に行ったことがあるのかい?」

 

「実は……」

 

 立花の言葉を次いで、マシュが特異点Fで起こったことについて語った。キャスターのクー・フーリンとともに戦い、アーサー王を打倒したこと、そして、レフ・ライノール・フラウロスを名乗る男にカルデア所長、オルガマリー・アニムスフィアを殺されたこと。

 

 僕とジャンヌ達は悲痛な面持ちでその話を聞いていた。飄々としているのはアマデウスくらいなものだろう。この年の少女たちが背負うには重すぎる業だろうからな。

 

「……なるほど、その世界の聖杯戦争は僕がいた世界と大分違うようだね」

 

「というと?」

 

「セイバー、アーチャー、アサシンは僕が知っている者と同じだけど、クー・フーリン、メドゥーサは僕がいた世界ではランサーとライダーのクラスだったからね」

 

 僕は三つの世界で第五次聖杯戦争に挑んだことがあるが、アサシンは二種類いた。話からして間違いなくハサンだろう。

 

 セイバーは言わずもがな、アーチャーはまぁ、あの少年の未来だろうな。ならば、セイバーを守ってたのも納得がいく。

 

「この話はまた今度にしよう。かなり長い話になるからね」

 

 そう言って半ば強引に話を区切った。あまり話して気分がいいものじゃあない。

 

「……そう言えば、マルタ様。竜殺しの真名はわかるのですか?」

 

「ええ、わかるわよ。彼の英雄の真名はニーベルゲンの歌に謳われる万夫不当の竜殺し。聖剣バルムンクの担い手である彼の名は……」

 

()()()()()()()

 

 マルタの言葉をついで僕がその真名を告げた。

 

『ジークフリートだって!? 最強の竜殺しじゃないか!?』

 

「ああ、彼がいれば心強い」

 

 ロマニの言葉に僕も同意する。

 

「もしかして、大樹さんはジークフリートさんとも出会ったことがあるんですか?」

 

 僕の口ぶりからマシュが察した、

 

「ああ、ここまで来ると……本当に因果を感じるよ。

 ーーーマルタ、一つ聞くけど向こうにアーチャーはいるかい?」

 

「ええ、いるわよ。もしかして心当たりがあるの?」

 

「……真名はわかるか?」

 

「……ごめんなさい、そこまではーーー」

 

 これに彼女に対しての非はない。狂化されていた彼女に他のサーヴの真名を知る余裕があったかと問われれば否だろう。

 

 だが、彼女には他の英霊にはない大きな特徴があった。

 

「なら……獣の耳と尾がなかったかい?」

 

 僕は真剣な表情でマルタを見る。どうか、無いと言ってくれ、僕の考え過ぎであってくれと願った。

 

 だが、

 

「彼女も知ってるのですか?」

 

 マルタのその言葉は僕に残った僅かな希望すら打ち砕いた。そう桐生戦兎風にいうなら、

 

「……最っ悪だ」

 

『君がそんなことをいうほど危険なのかい? そのアーチャーというのは?』

 

「いや……彼女は……」

 

 僕が次に紡いだ言葉に全員が目を向いた。

 

 

 

 

 

 

「僕が始めて契約したサーヴァントだ」

 

 

 

 

 

 

 




感想、評価くださいな!


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竜殺しを探せ

 その男は多くの人間を導いた。

ーーー正義の味方を目指した男を。

ーーーその夢を引き継いだ男を。

ーーー己の王の征道を走った男を。

ーーー月の表と裏で戦った少年と少女を。

ーーー運命に抗う魔法少女達を。

ーーーただ一人の妹のために理想を捨てた男を。

 その核にあったのは……一人の英霊への誓いだった。


Side藤丸立花

 

「なに……これ……」

 

 近くの街で情報収集をしながらリヨンの街に辿り着いた私達を迎えたのはジークフリートではなく、瓦礫の山と無数の徘徊する死体達だった。

 

「……これは、リビングデッドと言うやつだね。死体を操るとは悪趣味だな」

 

 全身の震えが止まらない私を支えながら、大樹さんはその惨状を見ている。大樹さんは向こうのアーチャーの話をしたあと、それから一向にそのことに関しては口を開こうとしなかった。私達もそれなりの事情があると聞かなかったけど、気になる気持ちはある。

 

「ロマニ、一応聞くが生体反応は?」

 

『……残念ながら』

 

 この状況で人が生きているわけがないのはわかっていた。だけど、それでも辛い……。

 

『だが、サーヴァントの反応がある。二つだ、一つはジークフリートだとすると残りはーーー』

 

「ーーーわかってるさ。いるんだろう、出てたまえッ! 竜の魔女の手先、バーサーク・サーヴァントッ!!」

 

 大樹さんが瓦礫の一角に叫ぶと、そこから顔半分を仮面のようなもので隠した、巨大な金爪を装備した紳士風の男性が現れた。

 

「この街をこのようにしたのは貴方ですか?」

 

「然様。人は私をーーーオペラ座の怪人(ファントム・ジ・オペラ)と呼ぶ」

 

「なるほど、オペラ座の怪人のモデルになった反英雄か」

 

 ジャンヌさんが旗を、大樹さんが銃を強く握りしめながら話しかける。二人とも目には怒りの色が見えた。

 

「ここは僕が受けもとう。君たちは早く竜殺しを探しに行き給え」

 

 大樹さんは、銃口をファントム・ジ・オペラに向けながら、冷静な口調でそう伝える。だけど、その声は無理矢理作っているように聞こえた。

 

「危険です、相手はバーサーク・サーヴァント。全員で確実に倒すほうがーーー」

 

「安心したまえ、あの程度の相手に負けるほど僕は弱くはないさ。

 それに、少しだけ八つ当たりもかねてるからね」

 

 出会ってからたった数日だけど、大樹さんは今まで見たことのないような目つきでファントムを睨んでいた。それはおそらく、この街の残虐な殺戮によるものだけではなく、行き場のない怒りから来たものだろうというものは皆がなんとなくわかっていた。

 

 大樹さんは左手で懐から鷹のようなマークが書かれた時計のような機械を取り出して上部分についているスイッチを押す。

 

《サーチホーク! サガシタカッ!タカッ〜!》

 

 すると、それが手のひらで変形し小型の鷹のようなメカに変形して空を飛び上がった。

 

「それについていけば、ジークフリートのところまで案内してくれるはずだ。」

 

「わかったわ! 皆さん、行きましょう!!」

 

「えっ? ちょっと、マリーさん!?」

 

 マリーさんがジャンヌさんと私はの手をとって、メカが飛び立った方向に走り出す。大樹さんのサーヴァントであるマルタさんだけはその場に残ろうとしてたけど、

 

「君も行ってくれ。君しか竜殺しの容姿を知らないんだからね」

 

「了解しました、マスター」

 

 大樹さんが負けるなんて思わないけど……。

 

「大樹さんっ!」

 

 気づいたら私は大樹さんに激励を送っていた。

 

「勝ってね!!」

 

「……ああ、任せておきたまえ」

 

 自信満々の表情でそう返してくれた大樹さんを見て安心した私は振り返らずにメカを追った。

 

Side海東大樹

 

 ……勝ってね、か。やれやれ、たった数日で随分信頼されたものだ。

 

 ディエンドライバーでリビングデッドを威嚇射撃をしながら、カードを装填し銃口を向ける。

 

「変身!」

 

『KAMEN RIDE DIEND!!』

 

 リビングデッドをライドプレートで吹き飛ばしながら、僕はディエンドに変身した。

 

 しかし、ゾンビ共は直ぐに立ち上がり僕に向かってくる。

 

「流石は死体。ふっ飛ばしただけじゃ倒れてくれないか……!」

 

 僕が死体の相手をしている間にファントムの周りに死骸で組み上げられた巨大なオルガンが現れる。見ただけでわかるアレは間違いなく、宝具。

 

「唄え、唄え、我が天使……『地獄にこそ響け我が愛の唄(クリスティーヌ・クリスティーヌ)』」

 

 ファントムの真名解放により発動した宝具が耳障りな音楽となって僕の耳に響く。アマデウスと同じタイプの宝具か、長く聞いていると危ないなこれは……!

 

 リビングデッド共の攻撃を交わしながら、ディエンドライバーのポンプを引き、カードホルダーからライダーカードを取り出す。

 

「音には音で勝負させてもらおう」

 

 僕はライドリーダーにカードを装填する。

 

『KAMEN RIDE IBUKI!』

 

「ハッ!」

 

 放たれた弾丸が三つの影となり、それが重なると青い鬼、魔化魍から人を守る仮面ライダー響鬼の世界のライダーの一人仮面ライダー威吹鬼を召喚した。

 

 威吹鬼は腰のバックルに装着された音撃鳴・鳴風を、専用の銃、音撃管・烈風に装着しトランペットのように持って吹き鳴らす。

 

「音撃射・疾風一閃!」

 

 清めの音でファントムの音を相殺しさらに、邪なる存在であるリビングデッドまで悶苦しむ。

 

「私の歌が……!」

 

 驚愕し、唖然とするファントムを他所に僕はディエンドのファイナルアタックライドのカードを装填し銃口を定める。

 

『FINAL ATTACK RIDE ーーー』

 

「悪いけど、あまり時間をかけてやるつもりはないんだ」

 

『ーーーDI・DI・DI・DIEND!!』

 

 引き金を引くとカードのトンネルをくぐりそのまま真っ直ぐに放たれたディメンションシュートが宝具ごとファントムに直撃した。

 

「嗚呼……クリスティーヌ……」

 

 光となってファントムが消滅していくと僕の手元にあったブランクウォッチにアサシンの紋章が刻まれた。

 

「この力は僕の性には合わないが、後で立花の助けになるかもしれないし。持っておくか……。」

 

 タイムジャッカーの力を持つ僕にはその力をウォッチに封じることができる。しかし、2019年からのアナザーライダーと同じように歴史から存在が消えることはない。但し、消滅のタイミングでないとこのウォッチは生まれない。

 

 だが、僕はこれらのウォッチを二つしか持っていない。一つはあの彼女との約束と誓いのウォッチ。もう一つは彼女を倒すはずだった英雄との戦いの末にブランクウォッチをパクられたあと半ば無理矢理に押し付けられた。

 

『悪いが君の力を受け取るわけには行かない。踵を撃ち抜かれた君相手に勝っても意味がない。少し前の僕ならともかく、今の僕は本気の君に勝たなければ力を受け取る気にはなれない』

 

『そいつは俺も同じさ。だから、お前さんにこの力を預けておく、必ず再戦するために縁を結んでおく必要があるからな。だから、受け取っておけ』

 

 あれから自ら英霊相手にライドウォッチを使うのを封じた。それは英雄という宝を貶す行為だとあの戦いを通して理解した。変わりに宝具とか色々と頂いたけども。

 

 だが、ロマンに聞いた話だとカルデアにはフェイトという召喚システムがあるらしい。このウォッチがあればほぼ100%特定召喚できるだろう。

 

 ファントム・ジ・オペラ(コイツ)が力を貸すか甚だ疑問ではあるが、持っておいて越したことはないだろう。これから先、彼女達はここより遥かに困難な特異点に遭遇することになるのだから。




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