碧き鉄のアルペジオ (Distortion)
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mile.1 邂逅

えーと………
艦これもアルペジオもはまってしまったので、書いてみました。ボリュームはそれほどないですが、そこは勘弁してください(´・ω・`)

それでは、よろしくお願いします!


『ピッ ピピッ カチカチッ』

 

暗い部屋でPCとにらめっこ。

これが俺の基本的な生活だ。……ニート?いや、俺はちゃんと学校にも通っている。一人暮らしで束縛がないだけ。ちなみに今日は土曜日だ。

……ん、資材が切れた。仕方ない、休憩だな、飯でも買いに行くか。

 

俺はPCのディスプレイに表示されている艦隊戦ゲームを閉じ、コンビニまで出かける準備をした。

ここからコンビニまでは少し歩かないといけない。

今は冬だからな、ちゃんと服を着ないとその程度の距離でも凍えてしまう。

 

外へ出ると、案の定冷たい空気が襲いかかってきた。

「おお寒い寒い、ぱぱっと行って帰って来よう。」

 

歩き出すと、なにやら港の方向が騒がしくなってきたことに気づいた。……どうやら、また沖に船を出すようだ。

………20xx年、突如現れた"霧の艦隊"。

WW2の船舶を模したその艦隊にはどういうわけか既存の兵器は効果がなく、人類は制海権をほとんど失ってしまった。さらに、各国間の通信はジャミングされているため、協力して反撃にうつるといったことも封じられている。

これが現状。いくら船を出しても、少ししたらすぐに撃沈されてしまう。これじゃ……

 

そんなことを考えている間に沖では"霧"の艦と海軍のフリゲート艦が戦闘を繰り広げていた。

「しまった、退避の警報を聞き逃した!」

 

慌てて自宅へ転進しようとした、その時………

 

『ドガーーン!』「ぐあぁ……」

 

霧の艦が放った砲撃の流れ弾が近くに着弾、爆風で俺は港方面へ吹き飛ばされ、そのまま意識を失った。

 

 

 

「う………」

ふと意識が戻る。なんとか生きてるみたいだ。九死に一生とはこのことだな。

「お、目覚めたようじゃな。」

バッ、と声の主の方へ目を向ける。そこにいたのは、黒髪ツインテールの少女だった。

 

「あんたは…誰だ?…なんで避難…してないんだよ?」

「なんでと言われてもな………」

「どういうことだよ、警報は聞こえてただろ?」

「聞こえてはおったが、そんなものは関係無いのじゃ。……さて、本題に入ろうかの。我輩の名は"トネ"。霧の重巡洋艦じゃ。」

「おい、霧の重巡洋艦って………」

「最後まで聞け。……我輩はそこらの霧とは少し違った存在でな、アドミラリティコードより、海上封鎖の命を下されておらん。代わりに、とある命令が下されておる。」

「一体どんな………?」

「それは、"最初に遭遇した人類を艦長として座乗させ、以降艦長の助けとなること"じゃ。」

「はぁ………」

「つまり、これから貴殿は我輩の艦長となるのじゃ!」

「…………え?」

「なんじゃ、飲み込みが遅いのぅ。もしかして、聞いておらなんだか?」

「いや、話はちゃんと聞いてたけど……突拍子なさ過ぎて、処理が追い付かないっていうか………」

「そうか。まぁ無理もないかの。ならば、最後に一つ問おう。………貴殿は、何を"望む"のじゃ?」

「俺は…………」

これまで過ごしてきた人生を振り返る。

普通に学校へ通い、帰ればゲーム漬け。親孝行などはしたこともなく、今では霧の艦隊の出現で未来も暗くなっている。このまま陸でのうのうと過ごしていていいのだろうか?そんなことでは何も変えられず、又努力もしない自分が残るだけなんじゃないだろうか。

今がチャンスなんだろう。これまでの自分から成長し、人のために、自分のために何かをできるようになれるのは。

 

「俺は、"今"を変えたい。自分を、周囲を、……世界を。……だから、俺に協力してくれ、"トネ"。」

「あいわかった。貴殿の気持ち、しかと確認した。ならば我輩も全力で貴殿の力となろう!」

 

そう言って"トネ"は手を振り上げた。その直後、海中から旧大日本帝国海軍の重巡洋艦"利根"を模した巨大な艦船が大きな水しぶきを上げて浮上した。

 

「そういえば、貴殿の名を聞いてなかったな。これからパートナーとも言える関係なのじゃ、教えてもらえぬか?」

「俺は、響音黎人。よろしく頼む。」

「うむ。それでは、現時刻をもって、霧の艦艇"トネ"の艦長を響音黎人と設定する。………響音艦長、乗船願う。」

"トネ"の艦橋部分へつながる光の階段をのぼり、管制室へ。中に入ると、高度なコンピューターやモニター、電子機器、計量器などがずらりと並んでいた。

気がつくと、トネはすでに艦長席の近くに立っており、準備万端、といった様子だった。

 

「ところでさ、トネ、今さらだけど俺のやってたゲームにトネとほとんど一緒なキャラがいるんだけど……関係あんの?」

「気のせいじゃ。我輩のメンタルモデルがこのような容姿、特徴を形成したのは全くの偶然だと思うぞ?」

「そう、か………。あとさ、俺にもなんか手伝えることある?ずっとPCに張り付いたりしてたから、タイピングとかには少し自信あるんだよね。」

「ほう、ならば黎人用に大まかな指揮系統と戦略ウィンドウを搭載したホログラムを出せるようにしておこう。本当なら我輩だけでそこそこ動けるのじゃが、人間の力、見せてもらうとしようかの。」

 

数秒すると俺の眼前にホログラムウィンドウが展開した。おお、これはすごい………!

 

「さて、発進準備完了じゃ。艦長、出撃命令を。」

「よし…………重巡洋艦"トネ"、出撃!」

「了解、機関出力上昇、巡航速度にて航行を開始するぞ!」

 

こうして、しがない一般人の俺は今を変えるための戦いに身を投じることとなった。




とりあえず霧の重巡トネの装備を決めときます。
あとがきはその下に書きます。

ーーー霧の重巡洋艦"トネ"ーーー
モデル艦艇……帝国海軍利根型重巡洋艦「利根」
装備
20.3cm連装砲4基(荷電粒子,徹甲弾共に使用可)
12.7cm連装高角砲4基(使用弾種は主砲に準ずる)
25mm連装機銃6基(実弾のみ)
13mm連装機銃2基(実弾のみ)
61cm3連装魚雷発射管(侵食魚雷,通常魚雷使用可)
射出カタパルト2基
索敵,演算補助ユニット12機(最高同時展開機数6)
多目的ミサイルVLS72基
超重力砲(重巡洋艦規格)
カラーリング……碧。(緑寄り)
メンタルモデル……オンラインゲーム「艦これ」における"利根"とほとんど同じ

索敵,演算補助ユニット、というのがタグにある独自の装備です。 このユニットは、射出後に母艦の周囲を浮遊し、母艦の演算力,索敵範囲をブーストする能力を持ちます。
史実の利根型は航空機運用に長けた巡洋艦だったので、それを活かすために導入してみました。

こっからあとがきーーーーーーー

はいどうも~(´・ω・`)
第1話が終了ですね。第2話も頑張って書こうとは思ってます。感想とか欲しいです。私が死なない程度にお願いします。


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mile.2 初戦

前回の続きです!

大型艦建造で資材がピンチの私がお送りいたします。
それでは、どうぞ!


ーーー 舞浜近海 ーーー

 

「黎人よ、これから我輩の艦長なのだ、今のうちに霧の艦艇の特徴やこの艦の兵装を知っておかなければいけないじゃろう。……これを読むとよいぞ。」

 

そう言ってトネは俺のウィンドウにテキストデータを送信してくれた。

確かに、霧について知っておくべきことは多い。

艦長を任された以上、戦略も立てなければならない。

それに、これまで数多の説明書やウェブページ、ライトノベルを読んできた俺だ。この程度の量、数時間あれば端から端まで読みきれる。………読むだけなら。

 

「トネ、さっきこの艦に乗船する前なんだが、海上自衛隊の護衛艦が"霧"の艦艇に撃沈されていた。………霧の方はどういう艦なんだ?」

 

「ふむ、基本的に人類に対する海上封鎖は、軽巡洋艦級、駆逐艦級が行っておるようじゃ。………んむ?対水上レーダーに感あり。今の話にあったのはこやつか。」

「噂をすればなんとやら、ってやつだな。トネ、敵艦の詳細を。」

「了解、反応と艦影をデータベースと照合した結果、軽巡洋艦"ナガラ"級1隻じゃとわかった。この程度ならば、この場でなんとかできるが?」

「いいや、それはダメだ。万が一、陸に流れ弾がいったとき、多くの人が傷つくことになる。……ナガラ級をある程度沖に引っ張り出し、そこで倒す。いいか?」

「あいわかった。その作戦に乗ろう。」

「よし、1番砲塔に徹甲弾装填、前方のナガラ級が射程に入り次第威嚇射撃を行え!本艦はこれよりナガラ級誘引行動に移る!」

「了解、1番砲塔の仰角を修正。敵艦に向け発砲じゃ!」

 

轟音と共に放たれた2発の砲弾は、非常に緩やかな弧を描き、ナガラ級のクラインフィールドに直撃した。

クラインフィールドのせいで本体へのダメージは0だったが、ナガラ級はこちらを危険性の高い対象と認識したのか、追尾体制に入った。

これで威嚇射撃は成功。ナガラ級はこちらを追ってくるだろう。

 

そして、俺の手元のウィンドウの戦略MAPではナガラ級のデータが更新。クラインフィールド作動率が付記された。

 

「着弾確認。ナガラ級はこちらを優先対象として認識したようじゃ。」

「よし、進路を瀬戸内海沖に!距離を詰められないようにしながら航行、ナガラ級を海岸から引き剥がす!」

 

作戦通り、ナガラ級を誘引することに成功した。あとは沈めるだけだな。

 

「指定座標周辺に差し掛かったら、艦を120度回頭。1~4番砲塔をすべてナガラ級に向けろ!さらに、ミサイルVLS1~6番までミサイル装填、第1魚雷発射管に侵食魚雷2発装填、通常魚雷1発を装填!」

「了解、艦首120度回頭!各砲門をナガラ級に向け、指示に従い弾薬装填を行うぞ。」

「一気にケリをつける。各砲発射体制、侵食魚雷を残して各砲発射!」

 

 

明らかに軽巡洋艦に対しての砲撃としては過大だが、霧の艦艇にはクラインフィールドという絶対防御がある。これだけの攻撃をしてもかすり傷1つつきやしないのだ。

しかし、クラインフィールドにも限界がある。俺はそれを狙っていた。

 

「各弾命中!目標のクラインフィールドへの負荷上昇じゃ!」

 

この時点でナガラ級の推定クラインフィールド作動率は96%。これなら………!

 

「ミサイルVLS7,8番にミサイル装填、完了次第発射、クラインフィールド消失後に侵食魚雷を発射!とどめを刺すんだ!」

 

命令と同時に、ナガラ級を水底に叩き落とす2発の侵食魚雷が放たれた。それは迎撃を受けることすらなく、先のミサイルによって消失したクラインフィールドを通過し、ナガラ級に直撃。ナガラ級は侵食を抑え込む演算を行うこともできず、なすすべもないまま船体に2つの大きな穴を開き、そのまま爆発轟沈した。

 

「敵艦、ナガラ級の轟沈を確認。……戦闘が終了したのじゃ。こちらの被害は無し。初戦なのに素晴らしい勝利じゃな!」

「ありがとう。……でも、世界にはいろんな艦型、そして多くの霧の艦艇がいるんだよな。これからもよろしく頼むぞ、トネ!」

「こちらこそじゃ!お主の戦い、このトネが最後まで支え、見届けよう!………ところで、これからどこへ向かうのじゃ?」

「…………それは………後で考えようか。」

「……いきなりお先真っ暗じゃな。」

 




どうだったでしょうか?
無事に二人は旅に出ることができました。

まだまだ問題が多いですが、どうぞよろしくお願いします!

#1/3に修正を行いました。これからもご指摘、感想よろしくお願いします!


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mile.3 海上生活

どうも~、相変わらず大型建造で資材を溶かしている私です。

第3話となります!どうぞ~。( *・ω・)ノ


ーーー 小笠原沖 ーーー

 

俺が霧の重巡トネの艦長になって4日。

ここで新たな問題が発生した。

 

「……ヤバい、そろそろ買い足さないとなくなっちまう。」

 

……何が無くなるのかというと、ズバリ食料だ。

沖に出る前に積み込んだ食料、それが残り少ない。

 

「こんなことならムリしてでももっと持ってくるべきだったなぁ。」

 

こんなところで生活力の不足を思い知らされるとは……

 

メンタルモデルにとって食事はほとんど意味の無いものらしいから、トネは大丈夫だろうが………

人間はそうはいかない。空腹で普通に倒れてしまう。

 

「う~ん……買い出しは上陸しないとできないしなぁ、とりあえずトネに相談してみるか。」

 

貨物倉庫から艦橋へ向かって歩き出す。

重巡洋艦なので内装は広く、乗って間もない状態だと瞬く間に迷ってしまう。

 

「まぁ、こうやって道に迷っていられるのも今のうち、ってわけだよな。」

 

そんなことを考えている間に目的地に到着。

指令管制室の入り口は自動スライドドアである。

トネや資料によると、霧の艦艇は第二次世界対戦時の戦闘艦の形状を模しているだけで、武装、内装はまるっきり違うものらしい。

 

「トネ~、ちょっと相談したいことがあるんだが~。」

 

「む、"相談したいこと"とはなんじゃ?」

 

「実は、食料がピンチなんだよな。買い出しするには、陸に戻る必要があるんだ。それで話をしに来たんだ。」

 

「なんじゃそんなことか。その程度ならば我輩がナノマテリアルから生成できる。もっとも、本物とは少し違和感を感じるやもしれぬが。」

 

「なんだよそれ初耳だぞ………うん?ナノマテリアルって一応金属だろ?人間が食っても大丈夫なのか?」

 

「む、そういえば人類は我輩達とは勝手が違うのだったな。すっかり忘れておった。あっはっは!」

 

「いや笑い事じゃねぇよ!?俺にとっては由々しき問題なんだからな。……うーん、やっぱり買い出しかなぁ。」

 

「しかし、新たに食材を得るには、"お金"という物が必要なのではないか?」

 

「うぐっ」

 

そう、買い物にはお金が必要不可欠。

そして俺の所持金は食料2日ぶんにも足りないほどしか無いのだ。

 

「う~………どうする俺~。」

 

なんとか解決策を捻りだそうとするが、こういう事は考えたことが無かったので、迷宮に迷いこむばかりだ。

 

考えながら同じ所をぐるぐる回っていると、

 

「黎人!食料の件はひとまず忘れよ!対水上レーダーに感有りじゃ!」

 

「こんなときにかよ……敵艦の構成を。」

 

待って、と言っても待ってくれないのが敵襲の辛い部分の1つだ。とりあえず思考を中断して、状況の把握をするべく動く。

 

「駆逐艦フブキ級1、魚雷艇が2。遊撃部隊のようじゃな。」

 

「よし、敵が散開する前に叩くぞ!魚雷艇2隻に向けて艦砲射撃を行う、主砲の全ての砲塔に荷電粒子を装填、角度調整終わり次第順次射撃開始せよ!」

 

「了解、主砲1番2番の角度をそれぞれ敵魚雷艇に向けて修正、順次射撃する!」

 

 

敵に砲撃が命中。………が、初弾はクラインフィールドに阻まれたようだ。しかし、クラインフィールドは演算能力等で性能が決まる。魚雷艇のもつフィールドはもっとも容量が少ない、このまま続ければすぐにフィールドが消失するだろう。

 

少しすると、形容し難い音と共に、敵を包むフィールドが消えていくのがわかった。

 

「敵艦のフィールド消失を確認!とどめを刺すぞ!」

 

すかさず敵を海底に叩き落とす砲撃が放たれる。

 

「敵艦2隻轟沈じゃ!次は駆逐艦じゃな!」

 

「駆逐艦には侵食弾を使う!16番VLSに侵食弾頭装填、1~15番VLSは通常弾頭を装填して待機。クラインフィールド稼働率上昇を確認後一斉射撃する!」

 

「了解した。………敵艦より飛翔体!数は8、内2つにタナトニウム反応じゃ!」

 

タナトニウム反応……侵食弾か!駆逐艦でも持ってんのかよ…… っとと、これを食らうとまずいな。

 

「反応のある2発を優先して迎撃しろ!装填済みの1から4番VLSのミサイルを迎撃に回し、代わりに17から20番VLSに通常弾を装填だ!」

 

「対空砲火オンライン、対象ロック。迎撃開始じゃ!」

 

花火を連想させる美しい弾幕が展開される。そして、

2発の侵食弾を含む全ての飛翔体の迎撃に成功。

もちろん、ミサイル攻撃だけでなく砲撃もしてくるが、こちらのフィールド稼働率は4%。まだまだ耐えられる。対して、敵艦のフィールド稼働率は78%。

いよいよ大詰めだ。

 

「5から20番VLSまで一斉射撃!侵食弾は敵艦の中心線へ誘導!」

 

「了解、敵艦をロック、全弾発射する!」

 

15発のミサイルが放たれ、高速で敵艦へ飛んでいく。

敵艦も迎撃を行うが、撃ち落とされたのは通常弾が3発程度。これぐらいではフィールド突破に影響は無い。

 

通常弾が命中し、クラインフィールドが消失。侵食弾が敵艦中央部に狂いなく着弾し、その艦体を球状に抉る。

 

結果、敵駆逐艦は船体を真っ二つにして沈んでいった。

 

「敵反応消失。……戦闘終了、じゃな。」

 

「ふぅ……やっぱりしんどいな。こう……戦場の緊張感ってやつ?ゲームではほとんど感じることがないからなぁ、こっちは命かかってるし。」

 

「そう言うな。望みを叶える為に通るべき道なのじゃからな。」

 

「まぁ、そうなんだけどさ………。あ!閃いた!」

 

「閃いた?何をじゃ?」

 

「いや、うまくいくかどうかはわかんないけどさ……傭兵稼業ってやつを始めてみればいいんじゃないかな~、とか。……どうよ?」

 

「その判断は今は難しいじゃろうな。……でも、試してみる価値はあるかもしれぬな。」

 

「そうと決まれば、まずは本州に戻らないとな。進路を北へ、目的地は横須賀辺り。攻撃されないようにあんまり近づきすぎるなよ。」

 

「了解、巡航速度で移動する。」

 

こうして、俺とトネは横須賀海軍基地目指して移動するのだった。




あとがきは筆者の提督ライフですので、興味ない方はここでお別れです。
ご意見ご感想お待ちしております。
次回もよろしくお願いいたします!

ーー提督話ーー
大型建造で資材を溶かしている、と書きましたが、言うほど回してないんですよね。

なのですが、この前ついに長門建造に成功しまして。
大和狙いのに反応した物欲センサーがいいほうに働いたんで良かったです。石油無いけど。
弾薬は他3種よりあるのにな…………orz

#1/16途中部分を変更しました。


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mile.4 取引

おはこんばんちわー、
いつもより更新遅くなっちゃいましたね。

相変わらず資源と格闘中の提督です。

それでは続きです。どうぞ~。


ーー 名古屋沖 ーー

 

「……ふーん、ナガラ級を沈めて外洋に出ると思ったら、今度は戻ってくるんだ?………妙な動きね。これまでの船とは違う。なんだか………まぁいいわ。ちょうど退屈してたし。この艦、私が沈めてあげる!」

 

ーー 横須賀沖 ーー

 

「……黎人よ、もうすぐ目的地が見えるぞ。」

 

「いよいよか………トネ、通信を。相手はもちろん、横須賀海軍基地だ。」

 

「了解じゃ。」

 

「あーあー、こちら"霧"の重巡洋艦《トネ》の艦長、響音黎人です。聞こえま……………」

 

ーー 横須賀海軍基地 ーー

 

「上陰次官補、現在横須賀沖より通信が入っております。現場の通信兵ではどうにもなりませんので、通信室までご足労願います。」

 

「横須賀沖?洋上から通信だと?一体何者からのものだ。」

 

「はっ、なんでも、霧の重巡洋艦、とのことです。」

 

「どうしてそれを先に言わないんだ。早く行くぞ!抵抗無しに鹵獲された"あの艦"以来の接触なんだ。これは進展に期待がかかるな。」

 

気持ちいいぐらいにコツコツと足音を響かせ、通信室へ向かう。中では、大きなディスプレイに学生とおぼしき少年の顔が写っていた。

 

「マイクは?…………よし。私は統制軍軍務省次官補、上陰龍次郎だ。………君が艦長なのか?見たところ学生ぐらいの感じだが。」

 

「ええ。そして、俺はこの前まで高校生でした。……まぁ、今回はこんな話をするために来たんじゃないんです。お願い事、……いや、取引の交渉、ですかね。」

 

「ふむ、取引か。君は軍に降る気は無いのか?わざわざ交渉する手間はかからんと思うが。」

 

「それはダメです。あくまで、対等の立場でいたいんですよ。持ちつ持たれつ、ってやつです。」

 

「そうか。……なら、内容を聞こう。」

 

「わかりました。………簡単に言うと、弾薬の融通をお願いしたいんですよ。もちろん、取引と銘打った以上、タダでとは言いません。日本の海自、軍が行えない洋上の任務を、"依頼"という形で俺達が行います。まぁ、その時にもちょっとばかし報酬はいただきますが。」

 

「少し、検討の時間をくれたまえ。」

 

「はい、良い返事を待っときますよ。」

 

「(むぅ。取引としてはこちらが若干不利ではある。信頼性も足りない。………だが、今まで我々を苦しめるだけだった霧が、一隻であってもこちらに協力するというのは、人類としては大きな前進ではないだろうか。それに、対応は追々考えても遅くはないだろう。最悪、処分すればいい。)」

 

「わかった、取引に応じよう。……早速だが、依頼がある。1度上陸してきてくれないか?許可は私から出しておこう。」

 

「了解です。それでは、また後程会いましょう。」

 

ーー 横須賀湾内 ーー

 

日本にあるいくつもの海軍基地の中でも特に規模が大きいのが、ここ横須賀基地である。

霧の艦隊からの攻撃を避ける為に、周囲には防護壁が連なり、港にも要塞砲やミサイル発射機など、数々の自衛設備が立ち並んでいる。もっとも、これらが霧の艦隊に効果があるか、と聞かれてもYesとは言いがたいが。

 

「トネ、入るのは3番ドックだ。」

 

「了解じゃ。」

 

船体がドック入口に入ると、開閉口が封鎖され、排水がなされた。

 

次に、足場がまるごと下がっていく。巨大リフトか。

 

「へぇ、こんな構造だったんだ、写真では外壁だけだったもんな~。」

 

「レイトよ、感心している場合ではないぞ。我輩がついているとはいえ、まだ関係を築いていないゆえ、敵地同然の場所じゃ。くれぐれも気を抜くでないぞ。」

 

「わかってるけどさ、こんなとこ見られるのなかなかないんだぜ?そう、士官学校で良い成績取るぐらいしか……」

 

「黎人。」

 

「はい。」

 

トネに釘を刺されてしまったので、しばらくは逆らわないようにしないと。……おっ、もうすぐ着くな。

 

艦を降りると、いかにもな格好の男性から声をかけられた。

 

「上陰次官補は応接室です。自分が案内いたします。」

 

エレベーターで上に上がり、長い廊下を歩くこと6分。

ようやく応接室に到着した。

 

「ようこそ横須賀海軍基地へ、響音艦長。まぁ、かけてくれないか。」

 

「それじゃ、お言葉に甘えて。………それで、依頼とは何ですか?」

 

「もう本題に入るのかね?まぁ、こちらもその方が都合がいいが。………さて、依頼だが、伊豆諸島に向かってほしい。」

 

「………はぁ。」

 

「霧の艦隊が出現してから、海上封鎖が行われた。さらに、海洋をまたいでの長距離通信はほぼすべてジャミングされている。これでも努力して、各地の状況を確認したのだが、いかんせん伊豆諸島や小笠原諸島は遠洋でね。通信がジャミングによって繋がらない。我が海自の護衛艦も航行中に霧の襲撃を受け、目的を達成できないまま撃沈されている。」

 

「そこで、生存力が高く、もし沈んでも痛手になりにくい俺達に依頼、って訳ですか。」

 

「痛手になりにくい、って訳ではないが、大体そんなところだ。伊豆諸島の状況を確認し、こちらに知らせてほしい。これが君たちへの初依頼だ。受けてくれるね?」

 

「もちろん。俺はその為にあなた方との接触を企てたんですから。」

 

「ああ、そうそう。我々としては、まだ君達に対する信頼が圧倒的に足りていない。まぁ、これはお互いに少しずつ信頼関係を築けるとは思うが、我々にそんな時間は無い。………そうだな、霧に関する情報提供も依頼していいかな?これの報酬を我々から君達への信頼度としておこう。どうかね?」

 

「………トネ、霧についての情報提供に問題はあるか?」

 

「技術面や中枢的な部分の開示はアドミラリティコードに禁止されておる。提供できる部分を我輩がまとめて、先方に送信しておこう。」

 

「わかった、頼む。」

 

「これでこの件についても取引成立、というわけだ。この基地内では君達が余計な注意を払わなくていいよう、私が手を回しておこう。……こちらからは以上だ。武運を祈るよ。」

 

「……また会えるのを楽しみにしておきますよ。……トネ、艦に戻ろう。」

 

「うむ。」

 

こうして、俺達は執務室を後にした。




そういえば、1/8に艦これアルペジオコラボ終了しちゃいましたね~。
私としては、潜水艦が増えたんでいいイベントだったと思ってます。
読んでくださった皆さんはどうなんでしょうか。

今回もお付き合いいただき、ありがとうございました!

1/12大幅修正致しました。


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mile.5 伊豆諸島調査作戦

どうもです( *・ω・)ノ

時間かかっちゃって申し訳ないですΣ(ノд<)
こんな文でも考えるのはそれなりに大変なんですよね。
さて、見苦しい言い訳はこの辺にして、さっさと本編入っちゃいましょう。

それでは、どうぞ!


ーー 三浦半島近海 ーー

 

「もうすぐで伊豆諸島沖に突入する。トネ、索敵ユニット展開。敵襲に備えるんだ。」

 

「了解、補助ユニットを射出する。」

 

これで遭遇戦は避けられるな。後は………

 

「トネ、伊豆諸島の泊地の無線周波数はわかるか?」

 

「まだ島から遠いゆえ特定は難しいのじゃが、近海まで行けばなんとかなるやもしれぬ。……まぁ、そう急ぐでない。焦りは要らぬ失敗を呼び込む、という戒めの言葉が人類にはあるのじゃろう?」

 

「……それもそうだな。初依頼だから肩に力が入りすぎていた。まさか重巡洋艦に諭されるとは夢にも思わなかったよ。」

 

「お主はそういう道を選んだのじゃ。もっと成長してもらわぬとな、艦長。」

 

「………まぁ、善処するよ。さて、進路を大島に。ここは大丈夫だと思うけどな………」

 

ーー 三宅島近海 ーー

 

「ふぅ。次で最後だな。進路、八丈島へ!」

 

「了解じゃ。」

 

ここまでは無事に調査を進める事ができた。

被害としては、航空機の壊滅、駐留艦隊の撃沈が主なものだった。食糧は湾岸での漁や農業で賄っており、餓死での全滅は無さそうだ。

 

「黎人、八丈島沖にナガラ級1隻を確認。指示を頼む!」

 

「よし、先手必勝だ。1番から12番VLSにミサイル装填、13,14番VLSに侵食弾装填、主砲1番2番に荷電粒子チャージ、射程に入るまで待機だ。」

 

「了解、各種弾薬装填完了。目標、射程内まであと10秒なのじゃ!」

 

「4……3……2……1。各砲門斉射、撃てぇっ!」

 

トネから一斉に放たれた砲雷撃がナガラ級に襲いかかる。こちらを捕捉するのが遅かったため、戦闘準備のできていないナガラ級はミサイル数発を撃墜するのがやっとだった。

侵食弾によりクラインフィールド消失、無防備な状態で荷電粒子砲の砲撃に晒され、いくつもの直撃弾に耐えられずその船体を海の底に沈めていった。

 

「目標の撃沈を確認。やったな♪」

 

「おう。次もこれだけ楽ならいいんだがなぁ。……さて、トネ、警戒体制に移行。クラインフィールドの蓄積エネルギー解放、再展開。万全の状態にしておかないとな。」

 

「うむ。細かな気配りが勝利をもたらすからの。しっかり済ませておこう。」

 

「もうすぐ八丈島だ。モニター、望遠モード。島の外観をチェックするぞ。」

 

ーー 八丈島近海 ーー

 

「やっぱり駐留艦隊と航空機は全滅、か………。薄々わかってはいたけど、ここまで徹底されるともはや感心物だな。」

 

「それだけアドミラリティコードの命令は我輩達霧にとって絶対なのじゃ。人類を陸に追いやる事の意味はまだわかっておらんのじゃがな。」

 

「目的が不明でも忠実に従う、か………なんで疑問を持たないんだろうな?もっとも、そのせいで人類はボコボコにされてるんだけど。」

 

「それは我輩には答えられぬ質問じゃな。今となっては黎人の命令で動く艦じゃからな。」

 

「早くなんとかしたいな。これじゃ海洋国は疲弊していくばかりだ。」

 

「それには時間がかかる。さっきも言ったじゃろう?急くでない。今は力を付ける時期というやつじゃ。」

 

「………報告に戻るか。進路、横須賀へ。巡航速度を維持せよ。」

 

「む、待つのじゃ黎人。索敵範囲内に敵反応。この大きさは重巡洋艦クラスじゃ!手強いのがきおったな。」

 

「まじか……トネ、戦闘体制に移行!まともにやったら消耗が激しそうだ、頃合いを見て離脱する!」

 

ーー 八丈島北西海域 ーー

 

「ふふっ、さぁ追い付いたわよ。対空レーザーオンライン!私、霧の重巡洋艦タカオに勝てるかしら?覚悟しなさい!」




またタカオしゃべっただけに終わっちゃいました。
次回では暴れてもらいましょうかね。

さて、俺提督の近況報告といきましょうか。
大和出そうとしては鎮守府転覆を繰り返していたのですが、最近はイベントに向けて資材備蓄中です。
大型建造も最低値に切り替えたんですが、2回目で矢矧さんが出てきてくれました!
思わずにやけましたね、うん。

さて、今回もお付き合いいただき感謝です!
ご感想で元気をもらい、ご指摘で勉強させてもらったりあわくって修正したりと、とても助かっています!

これからもよろしくお願いいたします!


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mile.6 嵐の中から

お待たせしました!

だんだん更新ペース落ちて、今は週一に収まってる感じですね。これ以上落ちないよう尽力しようと思います。

それでは、本編をどうぞ。(  ̄▽ ̄)


ーー 八丈島西方海域 ーー

 

「進路を南へ!高角砲、機銃での迎撃を用意!ミサイルを主として応戦する!」

 

「了解!……じゃが、南に向かってどうするつもりじゃ?横須賀は北。真逆ではないか。」

 

「そこら辺は俺に考えがある。機関を酷使するから、備えておいてくれ。……大丈夫、たぶんいける。」

 

「ならよいが…………まもなく想定交戦距離、追い付かれる、次の指示を頼む。」

 

「おう。…1~72番全てのVLSに迎撃用ミサイル装填、次弾の高速装填も用意!高角砲、機銃を後方に向け、対空射撃、牽制射撃用意!時が来るまで耐えるんだ!」

 

「了解!……む。黎人、少し席を外す。どうやら向こうから呼び出しの様じゃ。」

 

「……大丈夫なのか?」

 

「うむ。席を外すといっても、リソースを少し割くだけじゃからな。艦船の運用には差し障りは無い。行ってくるぞ。」

 

ーー 概念伝達空間 ーー

 

トネが空間にログインした時、タカオは既に椅子に座って待っていた。

 

「一体何の用じゃ?」

 

「気になってたのよ。アンタ、霧の艦艇でしょ?なんでこんなことしてんのよ?アドミラリティコードにそんな命令は無かったと思うけど。」

 

「残念ながら、我輩には海上封鎖の命令なぞ下されておらぬ。我輩が従っておるのはアドミラリティコードではなく、我輩の艦長じゃ。」

 

「はぁ!?もしかして、艦に人間を乗せてるの!?………あり得ないわ。」

 

「それが我輩への命令じゃ。もういいじゃろう、艦長を待たせておる。これ以上はまた次の時じゃ。………次があれば、じゃがな。」

 

そう言い残し、トネはその場から姿を消した。

 

「………明らかに異質な存在ね。私達霧にも、何か異変が訪れようとしてるのかしら。」

 

ーー 重巡"トネ"艦内,指令管制室 ーー

 

「ふぅ。」

 

「おっ、戻ったか。……どうだった?」

 

「どうと言われてもの……もうすぐタカオが攻撃してくる。しっかり気を張っておくのじゃ。」

 

「そうか………よし、やるか!トネ、左180°サイドキックの準備!タカオが隙を見せたら発動、そのまま機関緊急出力で高速離脱する!」

 

「なるほど。ようやく意図をみせおったな。もちろん了解じゃ。」

 

「タカオの様子は?」

 

「タカオから、多数のミサイルを検知!総数78、内タナトニウム反応16!」

 

「迎撃ミサイル全弾発射!侵食弾を最優先で迎撃!並行して高角砲、機銃による対空射撃を開始せよ!」

 

迫り来るミサイル群と、迎え撃つミサイル群が衝突する。空中爆発する侵食弾、炸裂する高角砲弾、その様子はまさにカーニバルだった。

 

しかし、全てを撃ち落とすには至らなかった。複数のミサイルがこちらに向かってくる。また、迎撃しようのない砲撃はそのままこちらに命中する。

 

「ミサイル、砲弾がクラインフィールドに直撃したぞ!稼働率は現在32%なのじゃ!」

 

「くっ……。まだだ!対空砲火を密に!クラインフィールドを維持しろ!」

 

ーー 重巡"タカオ"艦橋上 ーー

 

「霧の重巡洋艦なだけあるわね………ここは一気に片付けるわ、……超重力砲、エンゲージ!」

 

ーー "トネ"指令管制室 ーー

 

「タカオに重力子反応!超重力砲のチャージを始めたようじゃ!」

 

「よしきた!サイドキックを10秒後に発動する!捕まるなよ!」

 

「サイドキック了解!衝撃に備えるのじゃ!」

 

「4,3,2,1…サイドキック、艦首左180°回頭!機関緊急出力、最大船速で駆け抜けろ!」

 

艦首右側、艦尾左側にブースターを点火したトネは、艦船とは考えられないほどの早さで方向転換していく。

 

……超重力砲展開。これが俺の待っていた、"隙"というやつだ。絶大な威力を誇る超重力砲だが、展開すると収納にちょっとした時間がかかる。

もちろん、そこに膨大な演算リソースを使うから、他の動きは比較的緩慢になる。この時に一気に離れてしまえば、潜伏の時間ぐらい余裕でとれるはず。そう考えたのだ。

結果的にこの考えは的中した。すれ違った後にタカオの様子を確認したが、さすがに動きがもたついているようだった。

 

ーー "タカオ" 艦橋上 ーー

 

トネが海域から離脱し、タカオ自身も戦闘体制を解除して警戒体制に移行。タカオはトネの駆け抜けた方向を見つめていた。

 

「まさか、私から逃げきるなんてね。重巡"トネ"とその艦長、か…… 人間を乗せるなんて、荷物を増やすだけと思ってたんだけどな…………」

 

一人呟き、自分の持ち場である名古屋湾へ向かおうとしたその時、ある艦から通信が入った。

 

「あら、ヒュウガじゃない。何の用?」

 

「第二巡航艦隊で通達したいことがあんのよ。とりあえず、概念伝達空間まで来なさい。細かいことはそこで話すわ。」

 

「あら、奇遇ね。さっき私からも言っとかないといけないことができたわ。」

 

「ふーん。……それはそうと、あなたなんでそんなとこにいるの?そこは名古屋じゃないわよ?」

 

「それぐらいわかってるわよ!」

 




タカオ不完全燃焼。う~ん(´-ω-`)

描写が難しいですねぇ。他の作者さんのssを読んで勉強しましょうかね。

今回は特に報告する鎮守府事情は無いですかね。
矢矧さんが桜ホロになったぐらいです。


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mile.7 動き出す歯車

おはこんばんちはー。

今回は会話が多いですが堪忍してくださいませ。
あっ、いつもだ。←

それでは、本編に入ります。


ーー 概念伝達空間 ーー

 

タカオが空間にログインしたとき、もう既にいくつものメンタルモデルが集っていた。

そう、東洋方面第二巡航艦隊の殆どの主力艦達がヒュウガによって召集をかけられたのだ。

 

「タカオも来たことだし、そろそろ伝達事項を説明するわね。………今から二時間程前、横須賀海軍基地からイ401が出港したそうよ。これを発見したのは、ちょうど付近で諜報活動を行っていたイ400,及びイ402。これを受けて、総旗艦艦隊から私達にイ401捜索の命が降りたわ。それと、最近日本近海で何隻かの霧の艦が撃沈されているわ。これの調査もぼちぼち始めていくわよ。」

 

「二つ目について、私からも伝えておく事があるわ!」

 

「そういえばそうだったわね。じゃあ、説明してちょうだい。」

 

「40分程前に、その艦と一戦交えたの。艦種は重巡洋艦、艦型は利根型を模したものだった。最近この世界に来たようで、アドミラリティコードに縛られていなかったの。そのせいか、人間を乗せて艦長にするなんていう私達霧には無かった行動を取っているわ。」

 

「なるほどね……それじゃ、タカオ,アタゴ,チョウカイはいつもの持ち場で哨戒。キリシマ,ハルナは日本近海を哨戒。私とイセは小笠原沖で待機、各艦を管制。発見報告を確認次第向かうわ。何か質問は?………無いわね。それじゃ、解散!」

 

 

ーー 横須賀海軍基地 ーー

 

あれから基地に帰投。

現在俺とトネは上陰の待つ執務室へ向かっている。

目的は言わずもがな、今回の伊豆諸島調査の報告と、報酬の受け取りだ。

 

「……さっきから思ってたんだけど、なんかあわただしくないか?」

 

「そのようじゃな。何か問題が起きたのじゃろうか。」

 

「ぜひとも聞かせてもらわねーとな。……おっ、ここか。」

 

ノックすると、「入りたまえ。」と声が返ってきたので、扉を開けて入室する。上陰の机には書類が置かれている。何かあったのは明白だな。

 

「座ったままで悪いが、なにぶん忙しくてね。こっちに来て報告してくれ。」

 

「……何があったのか後で聞かせてもらいますよ。トネ、報告を頼む。」

 

「伊豆諸島の各地に駐屯していた護衛艦は全て撃沈されておった。航空機も自衛隊、民間問わず壊滅的な被害を受け、島の外への連絡が不可能になり、孤立しておる。」

 

「………やはり、大きな被害を受けていたか。報告はそれで終わりか?」

 

「ええ。」

 

「そうか。ならこれで依頼は完了だ。これを主計課に提出してくれれば報酬を受け取れる。…それと、帰ってきたばかりで申し訳ないが、新しい依頼がある。受けてくれるなら現在のこの基地の事情も説明しよう。」

 

「わかりました。それなら、事情を聞かせてもらいます。」

 

「……君達が調査に向かっていた昨晩、この基地で保管していた"とある艦"が持ち逃げされてね。無理やり出ていったものだから、ドックが激しい損傷を受けてしまった。あわただしいのはその影響だ。」

 

「なるほど、そんなことが………依頼も、それに関係のあるものなんですか?」

 

「ああ。君たちに頼みたいのは、その"とある艦"の捜索だ。……とはいっても、逃走から時間もたっているし、目標が目標だ、今回の依頼は成否を問わない。」

 

「何か詳しい情報は無いんですか?」

 

「ここに資料がある、私が簡単に説明しよう。……まず目標だが、2年前に鹵獲、保管していた霧の潜水艦"イ401"だ。」

 

「霧の潜水艦……なんで今まで使わなかったんですか?」

 

「2年前にふらっとここに航行してきたのを鹵獲したんだが、我々の技術では解析不能、さらにこちらへの航行を最後に、以降イ401が起動することは無かった。………さて、話を戻そう。もう1つの目標がこの人物だ。」

 

そう言って上陰は写真を資料の上に出した。

 

「誰です?これ。」

 

「彼の名は千早群像。海洋技術総合学院の生徒だったが、イ401の出港と同タイミングで失踪している。おそらく、イ401に乗っているのだろう。千早群像は、我々の間で有名な千早翔像の息子でね、戦術家としての才能を受け継いでいるとすると厄介なことになる。成績も学年次席だった。」

 

「学年次席………それって相当頭いいじゃないですか。」

 

「そうなるな。……説明は以上だ。捜索期間は2日。それ以上は捕捉困難と見なし、捜索を打ち切って帰投してくれ。痛手だが、諦めざるを得ないだろう。それと、説明した内容、資料は全て機密事項だ。取り扱いに気を付けるように。」

 

「了解です。それでは、失礼しました。……トネ、行こう。」

 

二人が退室した後、上陰は椅子を回転させながら考え事をしていた。

 

「イ401の起動とトネの出現。……時代は変わりつつある。このチャンスを逃してはならない。私は私のやり方で人類の復興を目指す。」

 

 




今回もお付き合いいただきありがとうございました!

そろそろアニメ登場キャラの出演が増えてくると思います。

さて、俺提督はまた懲りずに大型回しました。
結果、うちの鎮守府に長門3隻、陸奥3隻という収集つかない状況に。もうどうしようもありません。


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mile.8 航路を持つ者

おはこんばんちは。

今回の投稿、日曜未明ですよ。
夜中に一気書きするとこうなります。皆さんは気をつけてくださいね!

第8話、始まります。


ーー 高知沖・遠洋 ーー

 

「ふあぁぁーあ。」

 

依頼を受けてから目標であるイ401を探すこと丸1日。

目標の"も"の字すらも見つかる気配がない。

それどころか、これだけ日本近海をうろついているにも関わらず、霧の艦隊にすら出くわすことは無かった。

そりゃあ欠伸の1つぐらい出るってもんだ。

 

「黎人、いくら何もないと言ってもここは海の上。いつ何が起こるかわかったものではないぞ。わかったら気を入れ直すのじゃ。」

 

すっかり暇してる俺とは違い、トネは索敵ユニットの制御を行っている。

 

「しっかし、ここまで何もないと逆に不思議だよなぁ。もっとも、これが"霧"が現れる前の本来の海ってやつなんだけど。」

 

「そうじゃな、いくらなんでもこれは謎じゃ。……もしかしたら、霧の艦隊もイ401を探しておるのかも知れぬな。」

 

「なるほどな。……そうだ、トネ、ユニットの索敵範囲を水上特化に切り替え。範囲を広げてくれ。」

 

「うむ、あいわかった。じゃが、水中索敵はかなり狭くなる、よいのじゃな?」

 

「ああ。トネが言ったように霧の艦隊もイ401を探しているなら、その霧を見つけた方が早いかもしれない。」

 

「ほう、黎人にしては合理的な考えじゃな。」

 

"にしては"は余計だと思ったが、これは触れないでおこう。ツッコミ入れたら負けだ。

 

 

 

ーーさて、索敵方針を変えてから40分後。ここに来てようやく動きがあった。

 

「黎人、霧の艦艇を捕捉したぞ。位置は西、おそらく日向灘辺りと推測。反応は3つ。」

 

「やっとか。その3隻、何か変わった動きはあるか?」

 

「今探りを入れておる。少し待つのじゃ。………発砲音、及び複数の着水音を確認!対潜攻撃のようじゃ!」

 

「ビンゴだな。機関全速!主砲は荷電粒子装填後待機し、1~6番VLSに侵食弾、7~20番VLSにミサイル装填!一気に片をつけてイ401との接触を図る!」

 

「了解、各種弾薬装填!機関出力上昇、戦闘距離まであと4分なのじゃ!」

 

 

ーー 日向灘・海中 ーー

 

「複数の着水音。ナガラ級からの攻撃。」

 

「サウンドデコイ発射、後に回避運動!こんなところで沈む訳にはいかない!」

 

「回避運動了解、潜航深度を下げて、デコイを発射する。」

 

水中を突き進むミサイル群は、サウンドデコイに翻弄され大半が誘導目標を見失った。が、後続のミサイルはそうはいかない。いくつかのミサイルが蒼い船体めがけて海中を往く。

 

「……被弾した。クラインフィールド稼働率、38%。」

 

「逃げ回ってもらちが開かないか。……進路反転、ナガラ級への反撃に入る!」

 

「了解、艦首180°回頭。」

 

「魚雷発射菅1~4番、魚雷装填!5,6番に音響魚雷を!」

 

「了解、各種弾薬装填する。…………待って。群像、何か様子がおかしい。海上で複数の発砲音。ナガラ級に攻撃している船が居る。」

 

「なんだと?一体誰が………もし護衛艦ならすぐにやめさせないと危険だ。イオナ、通信回線を開いてくれ。」

 

「群像。」

 

「なんだ?」

 

「戦術マップから、次々反応が消えていく。」

 

その言葉が信じられなかったのか、千早群像は眼前のモニターに目を移した。

 

その画面には、さっきまであったはずの敵反応は無く、代わりに1つの反応………重巡洋艦級のものが映し出されていた。

 

ーー 日向灘・海上 ーー

 

俺達は海中へ執拗に攻撃をしかけるナガラ級3隻を急襲、これを撃沈した。が、まだやることは残っている。

 

「戦闘終了。トネ、海中の艦はイ401で合ってるか?」

 

「艦影、識別コード共に一致。イ401で間違いないようじゃ。」

 

「よしよし。じゃあ目標と通信を繋いでくれ。」

 

「了解した。」

 

トネがイ401との通信を繋げると、モニターにおそらくイ401の艦内であろう景色と、袖無しセーラー服の女の子、そして資料にあった写真と同じ、中性的な顔立ちをした学生服の男性……千早群像が映し出された。

 

「あーあー、こちら霧の重巡洋艦トネ、イ401、聞こえますかー?」

 

『聞こえている。私がイ401艦長の千早群像。救援感謝します。』

 

「あぁ、その事はいいんだって。こっちの都合ですから。あと、お互い堅いの抜きでもいいですか?こういう言葉には慣れてないんで。」

 

『ええ。構いません。』

 

堅いの抜きって言ったのに、千早群像は態度を崩さない。やっぱ戦術家の息子で成績総合2位だと違うのか。

 

「こっちの用件を言わせてもらう。横須賀海軍基地からイ401を強奪しての逃走。こんな感じに向こうは取り扱ってる。俺達に依頼された内容、それはイ401を探しだし、奪還する事。……後はわかってもらえると思う。」

 

『…………』

 

千早群像は沈黙を守っている。そりゃ、一難去ってまた一難な状況だしな。

 

『それなら、俺達が対話する意味はもう無いな。イオナ、通信を切って出航。』

 

「待て。最後に1つ、聞きたい事が。」

 

『………なんです?』

 

「千早群像。あんたはなんで海に出た?聞かせてほしい。」

 

『……人類の未来を、新たな航路を切り開く為。………人類と霧は争うばかりではないはずだ。俺は、その航路を探しだしてみせる。』

 

「なるほどな。……それを聞けて良かった。じゃあもういい、行ってくれ。……新たな航路の為に。」

 

『いいのか?』

 

「勿論。これは俺がゲームで培った事だが、同志は多いほど良い。俺とあんたは進む道は違うかもしれないが、目指すところは似たようなもんだ。依頼主にはうまく誤魔化しておくさ。」

 

『………すまない。じゃあ、もういかせてもらう。また会えたら、今度は仲間を紹介する。』

 

「それは楽しみだ。それまで是が非でも生き残らねーとな。」

 

 

ーー 紀伊半島沖 ーー

 

イ401と別れ、今は横須賀への帰り道だ。

千早群像との接触は、俺の気分を高揚させていた。

 

「……本当によかったのじゃな?」

 

「ああ。同じ志を持つ奴がいるとわかっただけで今回の依頼は大成功だよ。」

 

俺は俺の航路を、あいつはあいつの航路を。もしかしたらもう航路が交わる事は無いのかもしれない。……だが、それには寂しさを感じることは無かった。




読了お疲れ様です。(お疲れ様ってほどボリューム無いけど)

誤字、脱字の指摘、アドバイス、感想お待ちしております。

さてさて、恒例の鎮守府近況報告~活動報告でやれ~の時間です。

え~、前回の投稿から今日までの間に、2隻の艦娘を改装しました!
五十鈴改二と夕立改二ですね。
特に五十鈴はすごいです。
演習の相手潜水艦バシバシ大破させちゃいます。3式爆雷積んでるだけありますね~( *・ω・)

それでは、この辺で。次回もよろしくお願いいたします!


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mile.9 作られし希望

おはこんばんちはです( *・ω・)ノ

前書きは書くことありません!ネタ切れとも言いますが、そのぶん本編突入が早くなるはずです。

とか書いてるといつもの前書き量に。しまった……←

はい、それでは本編どうぞ~
#今回はレイトを黎人に変換してお送りします。


ーー 九十九里浜沖 ーー

 

「こちら霧の重巡洋艦トネ、艦長の響音黎人です。応答願います、どうぞ~。」

 

『こちら"試製白鯨"艦長の大山貴士だ。今回の試験航海では貴艦に護衛してもらえると聞いている。よろしく頼む。』

 

「こちらこそ。生きて陸で会えるよう努力しますよ。どうぞよろしく。」

 

今回の依頼は試作新型潜水艦の試験航海を護衛する事。

将来的に自分の食い扶持を減らす事になるが、生憎と己一人の為に戦っている訳じゃない。二つ返事で承諾した。

 

因みに、依頼を受けたのは今から3日ほど前の話となる。

 

 

 

~~3日前~~

ーー 横須賀海軍基地・執務室 ーー

 

「新型潜水艦、ですか?」

 

「そうだ。現段階では我々は君たちのような協力的な霧に頼る他無いのだが、さりとていつまでも手をこまねいている訳ではない。……つい先日建造を終えた新造艦、それがこの"試製白鯨"だ。」

 

そう言い、上陰は写真付きの書類を机に出した。

 

「……あまり大きくはありませんね。」

 

「何度も言うが、まだ試作品の域を脱していない。度重なる試験を乗り越えて初めて、人類の新たな希望となり得るのだよ。……つまり、今回の依頼は"試製白鯨"の試験の護衛だ。横須賀湾内で行うという手もあるが、霧の砲撃が市街地に流れてしまってはもとも子もない。」

 

「なるほど、話はわかりました。人類の希望は増えるに越した事はありません。依頼は受けさせていただきますよ。」

 

「君たちなら受けてくれると思っていたよ。……さて、出航は3日後、試験は九十九里浜沖で行う予定だ。武運を祈っておこう。」

 

 

ーー 九十九里浜沖 ーー

 

………とまぁ、こんなことがあったわけだ。

 

「トネ、今回は護衛目標の帰還を最優先にする。襲撃に備えて迎撃用のミサイルと攪乱用の音響魚雷を装填しておいてくれ。」

 

「了解なのじゃ。」

 

ーー 同海域・海中 ーー

 

「ここまで航行してきましたが………大きな問題点はまだ見つかっていません。後はハイパーキャビテーションシステムですが………」

 

「わかった。ハイパーキャビテーションシステムの発動最終確認に入ってくれ。」

 

「!?複数の着水音!霧の艦隊に捕捉されたものと思われます!」

 

ソナー担当から良くない知らせが届く。

 

「慌てるな!こちらにも霧の艦艇が付いている、一刻も早く試験を終えて帰投するぞ!」

 

激励の言葉を言い終わると同時に、水中爆発の衝撃が白鯨に伝わる。被弾ではないことから、おそらく彼らが迎撃してくれているのだろう。

 

ーー 同海域・海上 ーー

 

「音響魚雷を正面のナガラ級4隻に向けて発射!対潜攻撃は全て叩き落とすんだ!試製白鯨に当てさせるな!」

 

「了解、護衛目標への攻撃を優先して迎撃する!音響魚雷も発射なのじゃ!」

 

白鯨のハイキャビ最終確認フェイズはもうすぐ終了するらしい。が、出来るだけ急いでほしいとこだな。

 

「音響魚雷、炸裂!これであやつらのソナーは少しの間使用不能じゃ。」

 

「よし、ナイスだトネ!今のうちにけりをつける、超重力砲発射用意!」

 

「超重力砲用意了解!超重力砲、エンゲージなのじゃ!」

 

「ソナー復帰までに間に合うか?」

 

「現在超重力砲チャージ率24%、おそらくあやつらのソナー復帰が先じゃろう。」

 

「そうか……こうなったらもう祈るしかないな。」

 

「……チャージ率62%………!ナガラ級が対潜攻撃を再開!」

 

この状態では迎撃を行うのは辛い。もうだめかと思った瞬間、それは起こった。

レーダー上をかなりの速度で駆けるビーコン。信号は……試製白鯨。スーパーキャビテーション………ここまで速いだなんて、正直全く思ってなかった。

 

「超重力砲発射用意完了、いつでも撃てるぞ!」

 

「よし、超重力砲発射にあわせて艦首を110°回頭。なぎはらえ!」

 

掛け声と同時に放たれた、一本の太く碧色をした光線がナガラ級を次々撃沈していく。

 

超重力砲。霧の艦艇の中でも搭載艦が限られている最終兵器。目標の構成因子を一瞬にして活動停止させ、崩壊させる。クラインフィールドですら数秒持つかどうかという超火力はまさに霧しか持ち得ない圧倒的な力の象徴である。

 

「敵の消失を確認。トネ、急いで白鯨を追いかけるぞ。」

 

「ふぅ、さすがにちと疲れるな。帰ったら寝る!」

 

「霧に疲れとかあんのかよ?………まぁ、いいか。」

 

そんな会話を交わしながら、俺たちは白鯨を追いかけてまたも横須賀を目指すのだった。




さてさて。
ご指摘ご感想募集なうですよー((

アニメ原作のはずなんですが、wiki見たせいで白鯨のロマン性に少し引っ掛かっちゃいました。スパキャビスゲェ。

提督業は…そうですね~………
嫁艦の榛名さんが育成最終フェイズに入りかけですね。
え?利根?…………一緒に育てます。



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mile.10 初見殺し

どうもです。

一応週一ではありますが、どうもお待たせしちゃった感じですね。

あと、題はこんなんですけど別にバトル回じゃないです。悪しからず(  ̄▽ ̄)


ーー 横須賀海軍基地・執務室 ーー

 

「よくやってくれた、試製白鯨から得られたデータを元に、白鯨を完成させる………更なる希望が持てることだろう。これが報酬の明細だ。いつも通り主計課で申請してくれ。」

 

「お世話さまです。……それじゃ、補給を済ませたらまた出港しますね。」

 

「せっかく急ぎの依頼がないんだ、市街地でゆっくりするつもりは無いのかね?」

 

「一人で行ってもアレですし……それに、我々は霧に認識されているであろう艦です。あまり居座るとこの基地が攻撃に晒されるかもですよ?」

 

「………なるほど、なら止める理由は無い。もとより君は自由だったな。」

 

「察してもらえてよかったです。それでは。」

 

上陰の執務室を出たところで、一息つく。声には出せないが……あの人相手だとあまり砕けた話ができない。俺みたいなのが苦手とする場の空気だよな。

さてさて、用も終わったしトネのとこに戻るか。

 

ーー 同・地下ドック ーー

 

せわしなく動く整備士達の間を縫って歩くこと数分。ようやくトネの待つドックへたどり着いた。

 

「ただいま~……で、どうだ?トネ。人間の手によるメンテも慣れてきたんじゃないか?」

 

「まぁ、ぼちぼちといったところじゃ。我輩にとっては、自分の体を知らぬ人間にいじくられている状態じゃからの。」

 

「なにそれエr」

 

「言わせぬぞ。」

 

俺の場を和ますジョークはピシャリとシャットアウトされてしまった。さすがメンタルモデル、といったところか。

 

「そういえば、ことづてを頼まれておるのじゃ。危うくいい損ねるところじゃった。」

 

「なになに?誰からだよ?」

 

「急くな。……それが、イ401からのものでな。概念通信で千早群像の言葉であろう内容をえんえんと聞かされておった。」

 

「へぇ………なんて?」

 

「出港の際、イ401のクルーを連れていって欲しいらしい。その後は沖でイ401と合流、クルーを引き渡す。…簡単に言うとこんなところじゃろうな。」

 

「それ、俺らに頼む理由は?」

 

「我輩達と違い、あやつらはお尋ね者のようじゃな。あまり迂闊に動けないのかもしれぬ。」

 

「ふーん……よしわかった。その話に乗ろう。今のうちに貸し作るいい機会だし、まぁクルーの紹介もしてくれるだろう。……てか、あいつ恐ろしい程用意周到だな。」

 

……まぁ、そんなこんなでトネと俺は横須賀のある場所へ向かうことになったのだった。

 

ーー 横須賀・海岸 ーー

 

「ここらへんでいいのか?」

 

「そのようじゃな、生体反応を3つ確認した。……岸に寄せるぞ。」

 

……闇夜に3つの人影がうっすら見える。………なんかビビってない?

 

「さて、一回降りようか。401と合流するまでとはいえ、立派なお客さんだからな。」

 

「うむ。地上へのクラインフィールドを形成する。」

 

降りた時に一番目についた存在……それは謎のマスクを装着した奴だった。……なんだよアレなんかのボスだよ何してくるかわかんねーよ初見殺しだよ。

 

「おおぅ、誰か降りて来やがった。」

 

「二人見えますが……生体反応は1つのようですね。片方が世に言う霧のメンタルモデルというモノでしょうか。」

 

「それって前群像に会いに来たあのカワイイ子みたいなのってこと?」

 

「恐らくは。」

 

「マジかよ!?それちょっと楽しみだわ!」

 

………なんか盛り上がってるし。

 

「……盛り上がってるとこ悪いけど、とりあえずあんたら3人が千早群像の言うイ401のクルーでいいのか?」

 

「ええ。」

 

「まぁ、艦に乗ってくれ。話はそれからするよ。」

 

ーー トネ艦内 ーー

 

「じゃあ、かるーく自己紹介といくか。俺はこの艦の艦長、響音黎人。短い間だがよろしく。」

 

「我輩は霧の重巡洋艦トネ。そのメンタルモデルじゃ。」

 

「私は織部僧と言います。このマスクはアレルギー対策なので、そこもよろしくお願いいたします。」

 

なるほど………いや気になるわ。

 

「私は四月一日いおり。"四月一日"って書いて"わたぬき"って読むから、間違えないでね~。」

 

こんなとこにも初見殺しが。

 

「あのカワイこちゃんもよかったがこっちもなかなか……」

 

「杏兵!」

 

「いてっ!?………ああ、俺は橿原杏兵。砲雷なら俺の領分だぜ!」

 

やっぱこいつも一癖あるんだな。………ん?

 

「それって、ハイソニックミクちゃんのロゴ入りTシャツじゃねーの?」

 

「おっ?わかっちゃうか?いいだろー。抽選でたった数百人にしか配られない特別な逸品だぜ?」

 

「俺もハイソニックミクちゃん好きなんだよな~。それめっちゃ羨ましいわー………ああ、トネ。巡航速度で航行。401との合流地点に向かってくれ。……それでさ~…………」

 

「はぁ。了解したのじゃ。」

 

結局その後は杏兵とハイソニックミクちゃんについて語り明かした。401との合流時に目にクマができていたことは言う必要の無いことだろう。




今回もお付き合いいただきありがとうございました。

今回はギャグ成分に振ってみました。まだまだですね。

それはそうと、2/14の艦これアプデ、新しいシステムらしいですね。ついにケッコンカッコカリですかね?楽しみです。




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mile.11 重巡洋艦トネの慢心

お久しぶりです。とってもお久しぶりです。
前回の更新から1ヶ月半、ようやく更新できました。

読んでいただいてる方々には本当申し訳ないです。
こんな調子が続くかもですが、どうかお目こぼしを。

さて第11話です。いつもより地の文気持ち多いかな?


ーー 西之島 ーー

 

群像ら一行と別れて数日。俺達はとある場所に訪れていた。

 

広い空、青い海。がらがらの砂浜。そう、無人島である。

 

「突然だが、ここに秘密基地を作ろうと思う。」

 

「本当に突然じゃな。」

 

「ちゃんと根拠はあるんだぜ?……この前読んだんだ、ナノマテリアルは火山の近くに埋まってる事が多い…と。この島は十数年前に海底火山の働きでできたらしいし、もしかしたら……ってのが理由だ。」

 

たまには横須賀以外の陸地でのびのびしたいのも理由の1つだが、これは伏せておこう。

 

得意気に推測を言い切った俺を尻目に、トネはなにやら演算処理を行っていた。それが終わると、

 

「……ふむ、どうやら黎人の予想は的中していたようじゃな。ここの地中にナノマテリアルの反応をキャッチした。」

 

へぇ、ホントにあったのか。4分の1くらいは場を和ませる冗談だったんだけどなぁ。

 

「じゃあok?」

 

こうなると俄然わくわくしてくる。小学生の頃は秘密基地とか作ってたしな。すぐバレて壊されてたけど。

 

「まぁいいじゃろう。じゃあ、我輩がじきじきに建設してやろう。」

 

「ふふん、俺は凝るからな。覚悟しとけよ?」

 

「望むところじゃ。霧の重巡洋艦を嘗めるでないぞ?」

 

トネは自信満々でそう答えてくれた。

 

ーーこれは俺がトネと出会う前の話だが、俺は結構趣味が多かったりする。もちろん、プラモデルを作ったりもする。そして、内装や塗装にも気を使う。すごく気を使う。だから一応トネにも教えておいてやったんだが……

 

 

 

日がもう沈むかという時頃。トネはすっかり疲れた様子だった。

 

「まだ、まだやれるのじゃ。なんといっても我輩は筑摩より"おねえさん"なのじゃからな……!」

 

「お、おう………もうちょっとだ、頑張れ。」

 

そろそろ限界が近いのだろう。筑摩って………

まぁ、完成も近いしな。お言葉に甘えてここはホントに頑張ってもらうとしよう。

 

 

 

日の代わりに月が海を照らす。基地を作りはじめてから14時間後。遂に俺達の基地は完成した。

 

ナノマテリアルを掘り出す採掘機はもちろん、倉庫も建てた。一番の目玉はドックだ。横須賀で使ったあの地下ドックを参考に、トネの船体に合わせた設計をしている。整備も捗るだろう。俺は何もできんが。

 

生活空間もある。とりあえず俺専用の部屋。あと、使わないだろうけどトネの部屋も建てた。

 

このように、俺としてはそこそこ満足のいく仕上がりとなった訳だが、これを造ってくれたのは紛いもなくトネだ。「抜かった……ここまで酷使されるとは思わなんだ……百万年の昼寝だな……」と言い残して艦に戻っていったが、後でちゃんと労ってやらないとな。何が良いかな。

 

 




今回もお付き合い感謝します。

なんせ日にちが経ってるものですから、若干キャラがブレてるかもしれないですね(´・ω・)

あと、プラモとかそんなん作ってる場合じゃねーだろ日本というツッコミは無しでお願いします。
そんなこと言ったらハイソニックミクちゃんのグッズだって作れないだろうし(震え声


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mile.12 勇気

どーもー、お久しぶりです~。
継続は力なりと言いますが、軽率な行動はそもそもとらない方がいいんじゃないですかね。

もちろん、碧き鉄は細々とでも続けるつもりですが。

こちら、第12話となります。どうぞ。


ーー ??? ーー

 

夜。有視界戦闘が昼に比べて大きく制限される上に、悪天候が重なろうものなら、レーダーの捕捉力も削がれる。戦闘を避け、ひっそりと進む潜水艦には都合のいい環境である。

それは霧の艦艇でも例外ではない。もっとも、人類の艦艇程の影響はないが。

 

そのせいか、イ401のクルー達には多少緊張感の和らいだ様子が見られた。

 

「よーやく潜水艦生活になれてきたよな。そーいや群像、これからどうすんだ?」

 

「そうだな、あいつらのようにビジネス、といきたいところだが、生憎と交渉の材料が少ない。まずは俺達の価値を上げるべきだと思っている。」

 

それを聞いた杏兵だが、どうも釈然としない様子だった。それを察したのか、

 

「つまり、時を見て動き出す故、それまでは今の生活が続く。ということですね?」

 

僧がごくごく簡単にした形で聞き返す。

 

「……まぁ、そんなとこだ。」

 

「……群像、霧の艦艇が近付いてる。反応からして、大型艦。」

 

こうして、彼らの束の間の急速は幕を閉じるのだった。

 

 

 

「敵艦捕捉!データベースより該当艦を検索……出ました!モニターに出します!」

 

そうしてモニターに映し出されたデータは、一行を絶句させた。

……大戦艦級、ムツ。それが、401に襲いかからんとする霧の正体だった。

 

「おいおい!いきなり大戦艦級かよ!?順序関係無しじゃねぇか!」

「今度ばかりは、相当ヤバいね……」

 

当然、彼らは大戦艦級など相手取った事はない。せいぜい、軽巡洋艦級の相手程度だ。

不安に包まれるクルー。が、群像は不安を表には出さなかった。

 

「イオナ、1つ策がある。これは君の力に依るところが大きい。聞いてくれ。」

 

群像が現状を切り抜ける策を説明し終えると、クルー達は気合いを入れた様子で、

 

「わかった。頑張る。」

 

「私に代替案はありません。お供しますよ。」

 

「戦うのはしょーがないけど、機関に無茶させ過ぎないでよ?」

 

「私も異論はありません。みんなで生き延びましょう。」

 

「……あーもう!こうなりゃヤケだ、群像、俺もお前に賭けるぜ!」

 

全員が一致団結したのを確認した群像は、一瞬だけ満足そうな表情をした。がすぐにそれを引き締め、大きく号令を発した。

 

「本艦はこれより、大戦艦級との戦闘に入る!必ずここを抜けるぞ!」

 

 

 

ーー 西之島・秘密基地 ーー

 

困った事になった。

今、俺の目の前に大戦艦級が鎮座せしめているのだ。

 

事の発端は俺が気まぐれに外を散歩してしまった事にある。

 

ーー 時を遡ること4時間前。

基地建設騒動の後、トネを労うにはどんなことをすれば良いのか考えに考えた訳だが、なかなかこれといったアイデアが浮かばない。

出てこないものを延々と模索し続ける事は結構疲れる。

気分転換にぶらっと歩いて来ようと思い立ったのが運のつき、出歩いた先の砂浜には女性が流れ着いていた。

 

「ん?なんだあれ。」

 

遠目には何が打ち上げられているかなんてわかるはずもない。強いて言うなら、なんかカラフルだなー、って程度。目良くないし。

そうして確認した物体、それが女性だった。体のところどころにノイズがかかっているというおまけ付き。

これにはもうトネに助けを求めるしか道が思い浮かばず、なんやかんやでこの状況に戻る、という寸法だ。

ちなみに、トネはいろいろしてくれた後、また眠りについた。幸いなことに、ここの椅子で。

 

で、恐る恐る質問をしてみたんだが、いくつか聞き出すことに成功した。

まず、彼女は霧の大戦艦級、ムツのメンタルモデルであること。

次に、ムツは艦体、更に記憶の一部を失っているということ。ホントに都合の良いことに、アドミラリティコードからの命令の記憶もなくしているようだ。そのおかげで、俺はムツに攻撃されることも無く、こうやって五体満足で質問を行うことができている。

 

「……それで、何故に大戦艦級のあんたが砂浜に打ち上げられてたの?」

 

「……笑わない?」

 

霧とはいえ、メンタルモデル。大戦艦級のプライドというものがあるのだろう。答えはYes以外ないな。

 

「笑わない。」

 

そう答えると、ムツは口を重そうに開いて言った。

 

「……潜水艦を攻撃して、返り討ちに遭ったの。」

 

「あっ……」

 

察した。すごく察した。ムツの言う潜水艦とは、

おそらくイ401のことだろう。あいつらならやりかねない。

俺が一人合点していると、ムツはなにやら不思議そうな面持ちで、

 

「そういえば私、なんで潜水艦に攻撃なんて仕掛けたのかしら?う~ん……」

 

「それは後で考えればいいんじゃないかなあ!うん、きっと他に大事なことがあるよ!」

 

これは危ない!声が裏返りかけたぞ、マジで。

こんなところで命令なんて思い出されたらシャレにならない。ナイス阻止、俺。

そうだ、これも聞いておきたいな。なんかヤバいの思い出しそうならまた止めればいいか。

 

「そん時の戦闘、覚えてたら聞かせてくれない?」

 

「ほう、それは我輩も興味があるな。」

 

いつの間に起きたのか、トネもイ401の戦いに興味を持ったようだ。やっぱり本質的には兵器なんだろうか。

 

「……いいわ。でも、あまり長くないから参考にならないかもね。」




そーいやちょっと前に艦これ春イベントが終了しましたね。皆さんはどこまで攻略なさったんでしょうか?
え?E-5?……知りませんね。(赤城並感
私はE-3で手一杯でした。エリートカ級……フラッグタ級……う、頭が。

副題も少し変えてみました。原作がdepth(深度)なので、こっちはmile(海里)って感じですね。さすがにsea mileとまでは書きません。長いので。

それでは、また次回お会いしましょう!
お相手は、Distortionでお送りしました!


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mile.13 追憶の夜戦

すっかり隔月モードになっちゃいました。
いつになったら更新ペース上げられるんでしょう?

それでは、13話です。
#今回はいつもより地の文多いです。


ーー 数日前 某海域 ーー

 

海中に響く多数の爆音。この世界においてそれが意味するものはたった一つである。

 

ーー霧の艦艇による、対潜攻撃。

それはもちろん、この夜も例外ではなかった。

 

「いくわよ……沈みなさい!」

 

その声と同時に、大きな艦体から大量のミサイルが放たれる。それらは3つ程の群れに分かれ、暗い海中へと消えていった。

 

ミサイル群はそれぞれが複雑な軌道を描き、目標である敵潜水艦へと水の中を突き進んで行く。いつもなら、ミサイル群は敵に命中、それで終わるはずだった。

 

だが、今回は違った。

 

海中に潜む敵は、これまで自分が沈めてきた無人潜水艇とは大きく異なる動きを見せた。

サウンドデコイ、アクティブデコイ、魚雷での迎撃。

迫るミサイル全てを的確な動きで回避していく。

 

それもそのはず、相手は自分と同じ霧の艦艇なのだ。

さらに、その潜水艦は人間を乗せている。通常、霧の艦艇が人を乗せることはあり得ないのだ。

 

霧の『例外』ーーイ401。

それが、この戦闘における霧の大戦艦ムツの相手だった。

 

 

 

ミサイル全てを回避したイ401は、速度を上げて真っ直ぐこちらに向かってきた。おそらく、強引に突破する腹積もりなのだろう。

 

「なら、これで……!」

 

それを止めるべく、次々ミサイルを撃ち込む。戦艦の本懐は、圧倒的火力による殲滅。霧の艦艇でもそれは変わらない。

 

120にも昇る数のミサイルがイ401に襲いかかる。

が、それもほとんどが避けられてしまった。

 

サウンドデコイや音響魚雷でソナー誘導式のミサイルは目標を見失い、弾道入力式のミサイルは機敏な動きで回避される。

 

最後のミサイルが避けられたのを皮切りに、少しずつイ401の反撃が見られるようになった。

 

基本的にイ401から一度に発射される魚雷は8本だ。

しかし、複数の弾種や誘導パターンを使い分けて撃ち込んでくる。

 

侵食魚雷を庇うように周りの魚雷が迎撃の魚雷に向かっていく。その甲斐あって、侵食魚雷は私の右舷に命中した。

 

「くっ……!」

 

演算リソースを割いてタナトニウム侵食を抑える。

侵食魚雷は危険だが、数発程度ならば演算とクラインフィールドを駆使して無傷に収める事ができる。

それにしても、他を犠牲にして一発を当てる誘導パターン……私達にはなかった方法だ。これが人間というものなのだろうか。

 

「まだよ!たかが1、2発で私は沈まないわ!」

 

負けじとこちらもミサイルを撃ち込む。

放たれた無数のミサイル群はイ401ごと周囲を凪ぎ払うべく拡がっていく。いわば面制圧攻撃だ。

 

対してイ401はアクティブデコイを盾にして乗り切るつもりのようだ。だが、デコイを盾にした場合、爆発と気泡で前が見えなくなるだろう。そうなればこちらの物だ。

 

そう考えた私は、さらに十数発のミサイルを放った。

 

思惑通り、デコイを盾にしたイ401は爆発と気泡に包まれ視界が塞がれたであろう状態に陥った。

そこへさっき放った後続のミサイルが着弾。

次に姿を現したのは、クラインフィールドが崩壊し、無防備になったイ401だった。

 

それでも、イ401は撤退の素振りを見せなかった。

それどころか、依然として突破を試みようとしていた。

 

「そこまで追い詰められて、なお向かってくるなんて……いいわ、全力で打ち倒す!」

 

私に向かってくる6本の魚雷を叩き落とし、再びミサイルを撃ち込む。だが、これは目眩ましだ。

 

イ401は最大の攻撃で沈める。一番確実な方法だから。

 

イ401との間に気泡が広がるのを見計らい、艦体の形態を変化させる。

 

「超重力砲、エンゲージ!」

 

その掛け声でエネルギーの充填が始まり、そしてーー海が割れた。

 

「"エネルギー充填率、30%"」

 

重力場によってゆっくりと持ち上げられるイ401。

こうなってしまえば、もう何もすることはできない。

何本か通常魚雷を撃ってきたが、クラインフィールドの許容量は90%ちょっと。そんなものは悪あがきに過ぎない。

 

「"エネルギー充填率、60%"」

 

まだ、イ401は諦めない。そして、その攻撃は私には届かない。

何故諦めない?……まだ手を残しているのだろうか?

自棄?それとも何かを待っているのか……

 

「"エネルギー充填率、90%"」

 

その瞬間、海中に発射体の反応を確認。

勝利を確信していた私は、突然の攻撃に動きが遅れた。

まさか、これを待っていた……?

 

私の艦体は、16ものタナトニウム侵食に押し潰され、それに耐えきれず崩壊、超重力砲も暴発で空へ発射。

 

薄れる意識の中、私は気づいた。沈み行く中目にしたのは、使用済みのターレットだった。

 

私は考えた。

 

超重力砲を使う直前、迎撃したイ401の魚雷は6本。

普通なら、8本撃つはず。

 

そう、イ401は残りの発射口2つを使い、自立ターレットを設置していたのだ。おそらくは、ターレットに装填した魚雷は全て侵食魚雷だったのだろう。

 

そこに至った時点で、意識を無くした。

 

 

そして、爆発や沈没に伴う渦、超重力砲制御時の侵食による高負荷のせいで、記憶を大きく失った。

 

 

 

ーー 秘密基地 談話室 ーー

 

「で、ここに流れ着いたところをあなた達に助けられたって訳。……これが私が戦った時の記憶よ。」

 

ムツが自信の記憶を語り終えたとき、部屋は重い空気に包まれていた。あまりに壮絶な戦いに、俺もトネもつい聞き入ってしまった。

 

「なるほど……あいつら、えげつない手を使うな……」

 

それに肯定するように、トネも言う。

 

「そうじゃな。我輩もあやつらと戦うと負けそうじゃ。うちの艦長とは戦術のレベルが違うのだな。」

 

「くっ、否定できねぇ……」

 

だが、そもそも頭の出来も違うし、向こうは6人だ。

比べるのは間違っている、はず。

 

「さて、ムツの話も聞き終わったし次の話に行きますか。」

 

俺の言葉に、ムツは不思議そうに表情を変えた。

 

「次……って?」

 

俺は、出来る限りの真剣な顔で言った。

 

「ムツ、俺たちの仲間になってくれ。」

 

 

 

 




そういえば、PCが1台熱暴走でやられちゃいまして。

作品はスマホで打ってますし普通に使う分には動くんですが……

WoTができないんですよ………(´Д`)

バイトしようかなぁ………


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mile.14 第三砲塔

こちら、第14話となります。

因みに、(第三砲塔絡みのネタは)ないです。


ーー 秘密基地 談話室 ーー

 

「……唐突ね。そういう事はもっと段階を踏むものじゃないの?」

 

冷たくムツは返す。その表情に驚きは感じられない。

さらに、あまり乗り気でない。が、この反応は当然だろう。俺だって、見知らぬ人にいきなり「一狩り行こうぜ!」とか言われても「いいとも!」とはならないし、なにより困る。

 

が、ここでムツを逃す訳にはいかない。今後の俺たちの動きにかなり関わってくるし、敵に回られると厄介なのは明らかだろう。

 

危険だが、賭けに出るか……

 

「そうは言っても、俺達に段階を踏む時間なんてないんだ。わかるだろ?」

 

とりあえず、言葉を返す。

正直、言葉での駆け引きは苦手だ。戦術と違って、対抗策を事前に用意するのが難しいように感じる。

 

「それは残念ね。断るとあなた達はどうするのかしら?」

 

言動とは裏腹に、ムツは薄い笑みを浮かべている。

あからさまな挑発だ。

 

「別にどうもしないよ、嫌なら帰ってもいい、ナノマテリアルも分ける。」

 

俺の返答を聞いたムツ。それまでの冷静な表情が、複雑なものに変わっていった。

 

「……わからないわね。」

 

少し抑えた声でムツは呟く。そして、俺に問う。

 

「時間がないなら、何故最初から私を強制的に動かそうと思わなかったの?あまつさえ、嫌なら帰ってもいい、だなんて……意味がわからないわ。」

 

「……とある男が言ってたんだ。"人類と霧はいつかわかりあえるはず、俺はそんな世界を目指して戦うんだ"ってな。大きい奴だと思った。俺もそんな世界をつくろうと思った。その夢をこんなとこでひび割れさせる訳にはいかないんだ。だから、強制なんてのはやらない。夢のためなら、どんな遠回りでも歩いてやるさ。」

 

それを聞いたムツは、呆れたのか、ため息をつく。

 

「…非合理的ね。私には理解できなさそうだわ。」

 

「そうか。」

 

「でも、興味が湧いたわ。」

 

ムツは続ける。心なしか、その表情は少し柔らかに見えた。

 

「それに、あなた達を見てると、人類と霧が手を取り合う世界も悪くないんじゃないか、って思うの。」

 

「どうしてそう思うんだ?」

 

「なんとなく感じるのよ。……あなたと重巡トネが、どこか"つながってる"って。401の強さも、そういったところにあるのかもね。」

 

「仲間とまでは言わないけど……そうね、協力ぐらいならしてあげるわ。」

 

その言葉を聞いて、俺は手を差しだした。

 

「十分さ。…よろしく頼む、ムツ。」

 

ムツが、俺の手を握る。

 

「こちらこそ。」

 

その上から、トネが両手を乗せる。

 

「よろしく、なのじゃ!」

 

 

 

―――人類と霧の艦隊の共生、か……ここまで来るのは結構大変だったが、先はもっと長いんだよな。そして、さらにその先も……あいつらは、どうするんだろう?

 

ふとよぎったが、メンタルモデル二人の握力攻撃が拭い去ってしまった。地味にクるんだよなぁ……

 

 




榛名改二が楽しみで楽しみで楽しみです。(唐突

イベントも榛名も8月なんですけどね。そして春イベで失った資材回復してないですけどね(机バン

バイトしてPC買ってWarThunderやってみたいです。


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