幽溺に舞え、静謐よ (ポンメルン・マグナ)
しおりを挟む

子供っぽい夢

リミテッドキャラが来ない…
水着ゾーイも当たらない…
てかSSRが当たらない…

せや!小説にして書いたら手元にあるも同然や!

と言うことで投下


 

数多の島々が浮いているこの世界。

今ではお伽噺の存在となってしまった星の民により齎された科学技術により、人々は空に足を置くことに成功した。

島が浮くと言っても、特別何かがあるわけでも無く、強いて言えば、この世界の人々は空で暮らす…と言ったところか。

 そして、この世界には空の民と呼ばれる4種の種族が共存している。

全てにおいて不条理が無いヒューマン。

聴覚が優れ、獣のように素早く活きるエルーン。

手先に優れ、人一倍力を保有しているドラフ。

非力ながらも、恐ろしき潜在能力を秘めているハーヴィン。

 

この四種の間に嫌悪的な関係は無く、互いに長所を活かしながら暮らしていた。

 

この物語は、トラモントという小島で暮らしていたエルーンの長い長い生の旅路である。

 

 

 

──────────────────────

草木が覆い茂る大自然、目に余るほどの緑。木々はゆらゆらと踊り、小鳥達は声を揃えて囀り飛ぶ。

 

 …なんて事は無く、そこに居るのはひたすら汗を振り撒きながら自分の背丈程の木剣を振るう少年。

身体から滲む汗により密着した服が彼の少しばかり膨らんだ筋肉を目立たせている。そしてエルーンの特徴的な獣の耳と銀髪。

見た目だけで言えば、運動している姿より座って本を読んでいる姿の方が似合うと言えよう。

 

「ふっ!てやぁ!」

 

幼さがまだ残る声を張り上げながら、斬り上げの動作から横一閃…そして突き。

この動作をひたすら繰り返していたため、穏やかに木の上に居座っていた鳥達は飛び去り、声の大きさのせいでまともな小動物は寄ってこない。

 

 

そもそも、彼は森の中で何をしているかというと…鍛錬である。それも一時間や二時間では終わらない5時間にも及ぶ長時間の物である。手の皮は木刀の握り過ぎで血が滲み、肩や足など筋肉痛どころの話では無い。

何故11歳の彼がそこまで血の滲むような努力をするのかというと、誰にでもある夢の実現の為である。

 

時は遡って五年前。

彼はただ街を歩いていただけだった。別に何かをしていた訳でもなく、ただの気分転換の散歩だったのかも知れない。だが、周りはそうでは無かった。

 

ある魔物が住み着き、街の一部を荒らし回ったのだ。

その魔物は人間の3倍はある大きさで、四足歩行の猛獣。とても力では勝てる見込みは無かった。

街の農作物は蹂躙され尽くし、その爪と顎で石すらも砕く破壊力。人間なら豆腐を毟るように砕かれるだろう。

 

住人は他の島に救助を求めた。しかし、短小な島にわざわざ構う大国なんて物は無い。

もう諦めて島からの脱出を計画していたのだが、一つだけ救助を受け入れてくれた国があり、その国に従属する騎士たちが現れた。

 

それからはもう圧巻の一言。

数十人の騎士達は魔法を駆使して相手の動きを封じ込め、相手の急所を確実に叩いていった。

魔物は彼らに手傷を追わせることなく倒れた。

 

少年はその強さに憧れを抱いた。

恐ろしき化物を寄せ付けぬ勇猛さに。

人々は当然お礼に貨幣や食物を献上しようとしたのだが、彼らの代表者らしき者は断ってこう言った。

 

『我らの正義に従って動いたのみ。我らは褒美の為に戦うのでは無く、人と世の為に走るのです』

 

そういって速やかに自分達の国に帰っていった。

少年は今度、その心の強さに憧れた。

少年はこの事柄を受け、彼らのように心身共に強くなり、世の為に働こうと幼い心で決心した。

はっきり言って憧れが過ぎる。理解からの決意が早すぎるのだ、この男は。

 

 

 

以上の事柄が彼を愚直なまでに鍛えさせる理由である。

心身共に強くなる為に身体を壊しそうになっているのは愚かと言えるかもしれないが。

 

この一つの出来事で、盲信的に彼らの騎士道を求め、人生の道を定めようとする時点で、彼もまだ子供の精神という事だろう。

 

疲労も回復しないまま、思考も働かずに剣を振る。

段々と速度が落ちていき、足腰も震えているほどにままならない彼に忍び寄る影が一つ。

 

「ここにいたのか。コーリス」

 

「…ん?ああ。いたのか」

 

少年の名前を呼んだのは青く少し癖っ毛の髪を持つ少女。この少年、コーリスは声をかけられて三秒後にようやく気付いた。恐らく集中より疲労が勝り、耳に言葉が届いても、働かない思考が受け入れるのを拒否したのだろう。なんとも子供にしては人間味の無い話だ。

 

「もう剣を振るのは辞めておいたほうがいいぞ。誰から見ても分かる程に目が虚ろだ。ふふっ、まるで幽霊だな」

 

少女は呆れの感情も含めながらくすりと微笑む。それもその筈、コーリスはこの鍛錬を二年間毎日欠かさないで行っているのだ。毎日こんな姿の幼馴染を見たら誰だって呆れるだろう。

 

一方コーリスは少女の冗談をまともに返せる程の元気は無いのに加え、持ち前の堅物気質故か上手く返せる自信もない。

 

「さすがに五時間は疲れる。悪いけど買い物の手伝いは出来ない」

 

「…別に買い物の荷物持ちを要求しに来たんじゃない。疲れて倒れられても困るから様子を見に来ただけだ」

 

「節度は守る……多分」

 

「守れる確率3%と言ったところかな?お前の馬鹿さ加減は私が一番知っている。皆と遊んだりはしないのか?」

 

 

会話からも分かる事だが、彼女はコーリスの幼馴染である。物心ついたときから側に居るので、家が近いとかその辺の理由だろうとコーリスは思っている。

彼女が買い物に行く時は彼女の妹に荷物持ちとして良く使われている。それこそ人助けだと、コーリスはいつも

満足げに微笑んでいるのだが、周りからしたら女性に連れ回されて喜んでいる男にしか見えないのが悲しい。

そんな彼女はコーリスの頑固さを知っているので、やんわりと棘を刺すのだが、彼はそれを気にも暮れずに剣を振るので、段々と言葉が辛辣になっていった。

 

それでもコーリスは自分の鍛錬が認められ始めていると勘違いしている。

鈍いとかではなく、単純に人の真意を読み取れない性格なのだ。

 

 

閑話休題(そんな事より鍛錬だ)

 

 

 

「遊ぶ……笑止」

 

「しょ、しょう?」

 

 

とても11歳の吐くセリフではない。というか普通の生活で笑止なんて使わない。

彼女の言った通り、お互いに11歳の身で、学校の友達がいない訳でもないのに、彼は真っ直ぐ家に帰ってはすぐ森へ籠もる。

同級生の中には偶然彼の鍛錬姿を見た者もおり、つい『変態だ…』と呟いてしまい、シメられた事もある。このような事例がある為、今の彼に近付くのは禁忌とされている。

身体が弱い妹の世話をしなければならないので、町の人間との交流は薄く、遊びに現を抜かす暇は無い。 

 

さすがに笑止とは言わないが。

 

 

「なんだ…?そのえっと、しょうしとは?」

 

「前に読んだ冒険小説に出てくる騎士のセリフ。騎士を目指すなら佇まいもそうしなきゃいけないからな」

 

「……」

 

 

彼も年頃の男子なのだ。

直感的にかっこいいと感じた物を日常生活で使いたがる。全空で不治の病とされる厨ニ病(若気の至り)に片足を突っ込んでしまった。

後に、彼は自分で発言を後悔して腹いせに家のドアを破壊する程に悶絶するのだが、それはまた今度。

 

 

「もう…島を出るからな。皆と遊びたい気持ちも無くは無い」

 

 

そう、コーリスは自分達を救った騎士達の住む島に行き、騎士を直接目指そうとしているのだ。

戦士を育成する士官学校へ通い、自らが憧れる騎士団への所属を目指している。

 

無論、島の移動は子供に簡単に出来る物ではないが、空を移動する騎空艇を操縦する操舵士がいれば問題の無い事である。

そして幸運にもこの島には良い腕の操舵士がいる為、移動手段に困る事は無い。

 

 

「そうか…あと三ヶ月か…」

 

「だからこそ、士官学校への準備をしなければいけない。期間が迫っているからこそ、皆と遊ぶ暇なんて無いんだ」

 

「…フィラにも会ってくれないか?」

 

「フィラの具合が問題無いならな」

 

 

フィラ。

彼女の妹であり、コーリスにとっても妹のような存在である。彼女とは違い、感性豊かで、毎日を楽しく生きていそうで、いつも微笑ましく見守られている存在。

ただ、体が弱く、毎日寝込んでる事は無けれど運動が出来る訳ではない。

 

コーリスは島の端に捨てられた捨て子だった為、別の人間の家に住んでおり、一人暮らしでは無いが、それなりに自立した生活が出来る。それを知った少女はどうしても用がある時、コーリスに妹の面倒を見てくれと頼んだのが始まりだった。

 

年下の面倒なんて見た事無いコーリスは突然の願いに戸惑い、緊張しながらフィラに会ったのだが、その不満はすぐに解消された。

フィラは驚く程に陽気で、人懐っこく、疎外的な雰囲気を醸し出すコーリスにもコミュニケーションを怠らなかった。コーリスもそれに安心したのか、良く舌が回るようになった。

話す内容は、将来の夢は何だとか、どの島に行ってみたいかだとか、姉は外ではどんなふうに振る舞っているのかなど、他愛無い普通の話だ。

だが、それだけでも外へ満足に出れないフィラには十分に楽しめる内容であり、彼の希望満ちる夢は彼女にとって冒険譚のような聞き心地だったのだ。

 

 

と、そんな過去を語った事で分かったと思うが、フィラは社交的、それに対し姉は閉鎖的。

なのにフィラは家から出る事が叶わず、姉は外で関係を広める事が叶わない。お互いの境遇が噛み合っていないのだ。彼女達の両親も普通の暮らしをさせてやりたいと思っているが、病がそれを許すことは無い。

なんとも皮肉な運命だ。

 

 

(…こいつらが普通に友達と遊んでいる姿を想像できないな。フィラの病気を治してやりたいが……)

 

少なくとも自分に治癒魔法など使えない。

いや、少し前に村に来た医療師でさえ、この病気を治す事は叶わなかった。

 

 

コーリスは、このやり場のない悔しさに身を固めながら、フィラの元へ向かうのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

少し大きめの屋敷。

その屋敷の一部屋がフィラの寝ている部屋だ。

 

コーリスはゆっくりとドアを開け、フィラが寝ているかを確認する。

 

 

「…起きてるか」

 

「あ…コーリスさん!」

 

ベットに腰掛けながら本を読んでいた少女は、コーリスの姿を見た途端本を閉じ、飼い主を見つけた子犬の如くすぐに駆け寄る。

 

 

「具合はどうだ?苦しいようであれば飲み物を持ってくるぞ?」

 

「ううん!大丈夫。手足が少し怠いだけで、具合は悪くないよ!それで…今日はどうしたの?」

 

 

具合は悪くないと言いながらも顔色は常人よりも白く、手足がぎこちないと言うだけでも辛い状態なのに元気に振る舞う健気さにコーリスは少し悲しくなった。

 

だが、フィラの明るさに少し顔が綻んだ事も事実だ。 

それがとても哀しく、この静かな一室がもっと静かになった気がした。

 

自分が来た事を喜んでくれる少女に、自分がそろそろ姿を消す事を知らせなければならないのは残酷な話だが、何れ話さなければならない事だと自決する。

 

 

「もう後三ヶ月で島を出る。フィラとも別れる事になるから…その挨拶だな」

 

「……そっか」

 

「そうだ」

 

 

明るい雰囲気から一変、場が冷え切ってしまった。

それを感じ取ったフィラは焦って話題を作る。

 

 

「えと、あ!何だっけ?その、これから行く島…リスクーウだっけ?」

 

「リュミエール、だ。俺はそこまで変食家では無い」

 

「あれ?でもこの前お姉ちゃんがコーリスさんが蜂の巣を食べてたって言っ「止めろ」………うん」

 

 

これはコーリスが蜂の巣が食べれると言うことを知っていただけで、知らない人間が恐れているだけである。

フィラの姉は虫が大嫌いな為、蜂の巣など絶叫物なのだが、偶然、コーリスが回収した虫が一切入っていない巣にコーリス自身が噛み付いているシーンを見てしまい、誤解が生まれてしまった。

 

コーリスは変食家であり、腹が空けば虫さえ食っても美味しく感じる変態であると。

 

無論でまかせであり、コーリスは悪くないのだが、悲しいかな噂は広まってしまった。

 

 

「お前の姉が話す事は信憑性が高いが、虫に関しては何がなんでも自分の先入観に囚われてしまう。だから安心しろ、蜂の巣は食える」

 

「う、うん」

 

「あと、何だか思い詰めてる顔してるぞ。蜂の巣でも食うか?」

 

「いや、今はいいかな…。えっと、前にお医者さんに言われた事があって…まだお母さん達にも話してないんだけど……」

 

「言ってみろ。出来るだけ秘密は守る」 

 

「あのね…島を出て、大きな島で治療を受けないか?って言われて…」

 

「…」

 

理には適った話ではある。

この島、トラモントは他の島に比べ小さく、国というより村が似合う島だ。

それならば、医療技術が十分に備わった都会の大きな島で治療を受けた方が良いと言うものだ。

 

医者は何一つ間違っていない。

だが、

 

 

「まさか一人じゃないよな?」

 

フィラは年端もいかぬ子供。コーリスですら15にもなっていないのに、フィラ一人で島の移動など危険すぎる。

ましてや、病が完治する確証も無い。

 

誰かが付いていくのならば問題無いだろうが、フィラの様子を見ると、一緒に行く人間は決まっていないらしい。

一人では行かせられない。

 

 

「一人で都会の島なんて大変だろう。付き添いは居ないのか?」

 

「お医者さんが付き添いを手配してくれるから、大丈夫だよ」

 

「そうか。じゃ、もっと会えなくなるかもな…」

 

「大丈夫だよ!私、病気なんかに負けられないから!まだ外の景色なんて知らないけど、病気が治ったら、色んな島に行って、たくさんの思い出を作って…それで島に帰ったら、お姉ちゃんに自慢するんだ!!外の世界はトラモントよりもずっと違って、違う楽しさがあったって。コーリスさんがリュミエールに行くんなら、私はその反対の島を巡るんだ!色んな島の思い出を交換し合おうよ!それから…」

 

「分かった分かった…鬱めいた話をした俺が悪かったな。」

 

フィラはずっとしたい事を我慢してきた為、これから目指す輝かしい理想の人生を夢見る。

しかし、それは決して叶わない夢では無く、フィラの元気があれば、その夢もすぐに実現出来るとコーリスは思えた。

 

 

「なら、約束だな。俺が先に島を出るから、思い出をたくさん拾って来てやる。それまで退屈せずに楽しみに待ってろ。ただ、お前が元気になったら、次はお前が俺に沢山の思い出を語るんだ。楽しそうだろ?」

 

 

コーリスはこの言葉を語ったら少し恥ずかしくなった。

何を偉そうにこんな子供みたいな事を喋っているんだと。ただ励ましの言葉だけで良かったろうに、と。

 

ただ、こんな言葉でも、フィラという少女は

 

 

「ッ……うん!!」

 

 

と、楽しみげに頷いてくれるのだった。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

空を跨ぐ

結構前の水着フェスの結果…
SSR一枚目…ヴェイン
SSR二枚目…水着パーシヴァル
SSR三枚目…ランスロット&ヴェイン
SSR四枚目…武器(水着パーシヴァル)

男ばっかじゃねぇかお前ん家ィィ!



「そろそろ行きます」

 

騎空挺が駐屯する乗り場では、人だかりが少なからず出来ていた。

今日はコーリスが島を出る日。

フィラと約束をしてから、驚く程に三ヶ月が早く過ぎたように感じた。

そんな彼を送るのは、捨てられていた赤子の彼を拾った高齢の夫婦。

コーリスが島を出たいと思っているのを見抜き、相応の金額まで渡してくれたので、コーリスは感謝が尽きない。士官学校への連絡も済ませたという点では、相当彼を甘やかしていると言えよう。

 

「今までお世話になりました。コーレ伯母さん、レルフ叔父さん」

 

「はは!そんなに畏まらんでもいい。いつも通りが一番過ごしやすいじゃろ?」

 

そう快活に笑うレルフは、捨てられたコーリスを発見した張本人。老いを感じさせぬ力強い振る舞いは周りにも活気を与え、強い存在感を示す。

それに反しコーレは静かな雰囲気を保ち、穏やかで人に安らぎを与える。

 

レルフは義理の息子の旅立ちを笑顔で送り、コーレは溢れ出る涙を布で拭き取り、無事を祈る旨を伝える。

この夫婦の他にも島の人間が大勢集まり、コーリスを送り出そうと様々な言葉をかける。

風を引くな、無駄遣いはするな、独身にはなるな、友達作れ、蜂の巣食うな、耳掃除を忘れるな、など、心配に近いものが様々だ。

こうして見ると、自分は以外に皆に好かれているのだろうか?という浮いた考えがコーリスによぎる。

 

実際、コーリスは街でも色々な人物との関わりを持ち、また、人の助けになろうとする彼の態度は密かに村の人々の好感度を上げていた。

そんなコーリス達まで駆け寄る影が一つ。

コーリスの幼馴染である。

 

「ん?どうした。ここまで降りてくるなんて珍しい」

 

「う、まぁ…別れの挨拶くらいはするべきだと思ってな…少しな…」

 

彼女の家は村から離れた山にあり、その場所もまた人々の疎外感を感じるには充分だった。

村の人々もあまり見ない顔付きに驚き、それと同時に交友関係を持っていたコーリスを意外に思った。

 

「なら恥ずかしがらなくても良いだろう。いつも通り堂々としろ、○○○

 

名前を呼ばれた彼女は一瞬たじろぎながらも前を向き、コーリスに言葉を伝える。

 

「あ、えーと…む、向こうでも、元気にな」

「口下手か」

 

コーリスは殴られた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「まったく酷い話です。知人の見送りを打撃で済ます奴がこの世界にいるでしょうか?いえ居ませんよね」

 

「お前は少し黙っとけ」

 

飛空艇。

それは空を飛ぶ移動手段であり、この世界に生まれたからには絶対に『乗ってみたい!』と思わせる乗り物である。

まして男にとっては最高の憧れ(浪漫)である為、コーリスはとても浮かれていた。

たとえ殴られて騎空艇に搭乗してしまったとしても。

 

彼女が怒りに身を任せ、この騎士目指しの愚物を殴った理由は、単純に『お前に言われたくねーよカス!』というような感情が湧いたからである。

 

この男、自覚してないがとんでもない言動をしている。

勉学に悩み、コーリスに相談をした者は『ああ、単純に覚え方が下手なだけだろう。未だに身につけていないのか?』と、鬼畜極まりない暴言を吐く。

なお、本人にとっては『ああ、自分に合った勉強方法が見つけられてないのか…それならしょうがないな!まだ身につけてなくても、余裕で間に合うよ!』と言っているつもりである。

 

挙げ句の果てには、騎空士に憧れた小さな子供に対して、『高所が苦手なお前には向いていないな。そんなんじゃとても無理な夢だ』と、外道ここに極まれりと言った言葉を吐き捨てる。思わず泣いてしまう哀れな子供。

この時ばかりは村中の同年代にビンタされた。

 

これも本人には『いい夢だね!でも、高い所が苦手なのを直さなくちゃ大変だよ?これから苦手意識を消していくのを頑張ろう!』という吐いた言葉そっちのけの脳内変換が行われており、同年代から粛清を受けてた時は、『これがいじめか…』という被害妄想まで生まれていた。

 

はっきり言ってこれじゃただの屑である。

コーリスが村の人々から嫌われなかったのは、村の人々がコーリスをネタ扱いできる程に悟りを開いていたのと、コーリスの毎日に及ぶ献身的な行動が村の為になっていたからであろう。

どっちみち口下手に変わりは無いのだが。

 

「…あなたは暴力肯定派ですか?へー」

 

「お前拗ねると本当面倒くさいな…度量ハーヴィンか?」

 

「そこまで言わなくても…ハーヴィン族に失礼です」

 

「自覚あんだったら直せ」

 

コーリスが現在話している人間は騎空艇の操縦士。名をサレア。茶髪で眉目秀麗な彼女には、一時期ファンが耐えなかったとか。

トラモントにいる僅かな操縦士で、その操縦の実力は他の空域の比べても上位に位置するらしい。

若年、そして女性ながらもその操縦能力は天候に関係なく目的地まで難なく到着させる精密さ。まさしく天才と言うべきものだろう。

 

まぁ、その毒舌と荒々しき男のような口調のおかげで婚期を逃し……そうになってるだけだから問題は無い。

少なくとも逃しそうになってるからイライラして辛辣な言葉を子供に投げかける訳ではないだろう…多分。

だが、お互い遠慮の無い言葉を投げかける性格からか気が合い、年の差は11もあるが、今ではすっかり仲良しである。

 

「サレアさんはリュミエールに行った事がありますよね。どんな感じの島なんですか?」

 

「ああ、運び手という職業柄かあんまり中には入れないからな。詳しくは分からないが、まぁ…活気溢れる島だったな。経済は回ってるし、皆笑顔って感じの島だ。犯罪者の数も他の島に比べて少ないらしい。騎士団で有名な国のフェードラッへにも行ったが、あそこは国として機能してるが堅苦しい雰囲気があったな。勿論元気で煩い奴もいたが」

 

「色々珍しい国って事ですね」

 

「そういうことだ。リュミエール聖騎士団も活動が案外自由で、弱い奴でも受け入れるらしい。前に不器用なハーヴィンでも入れたって話だ。来る者は拒まず、辞める者も拒まずって体制と聞く」

 

「そんな国でも一応士官学校は存在するから良く分からないんですよね。実際リュミエール聖騎士団の強さはかなり有名ですし」

 

「指導者が優秀なんだろう。力が無く、取り柄さえ無い奴に対しても適材適所を見つける程にな。まぁ、一番影響を与えているのはこの体制を長年続かせている歴代の国王達だがな」

 

 

コーリス達の住むトラモント、リュミエール聖騎士団本拠地のリュミエール聖国、国を守護する騎士団で全空に名を轟かせるフェードラッへ。

これらの島は全てファータ・グランデ空域という一つの地域として纏められており、広大な海に身を浸すアウギュステ列島や、翠緑の森を持つルーマシー群島、艇整備職人の島であるガロンゾ島を始め、豊かな土地で溢れているのがこの空域の特徴である。

数々の島を渡った操縦士がその中でも特に活気に溢れていると言ったのがリュミエール聖国だ。

 

空域で語るならば、ファータ・グランデと魔物を凶暴化させる乱気流、通称瘴流域を挟んで隣接するナル・グランデ空域が挙げられるが、ナル・グランデは数多くの国が覇権を争う戦乱の空域であり、とても平和な空域とは言えない。

さらに遠方にはファータ・グランデやナル・グランデを超える規模の空域、アウライ・グランデ大空域があるが、多くの瘴流域を挟む上に堅固な情報網で仕切られているため、詳細を知るものは少ない。

 

幾つかの空域の中で、比較的平和なファータ・グランデに生まれるのは、誰だって幸福に思うだろう。

だが、ファータ・グランデにも問題は少なからず存在する。

まず、この世界には『空の民』と『星の民』という種族が存在していた。

空の民とは、言わずもがな現在全空域に存在する四種族、つまりヒューマン、エルーン、ドラフ、ハーヴィンの事である。

そして星の民とは、遥か昔…それこそ数百年前にも遡る時代に突如姿を表した侵略者である。現地民にとって謎でしか無い莫大な技術力を持って土地を蹂躙し、全空最悪の戦乱である『覇空戦争』を引き起こした圧制者達。

戦争を引き起こした後、自分達の兵器を遺して消えるように姿を隠した謎の種族である。

 

星の民の使っていた兵器の名は『星晶獣』。

名称に獣と入っている通り自我を持ち、この世界の創造主である神にも等しい力を持っている。

星晶獣は各自何らかを司る能力を持っており、その全てが戦いに関わる物だった。だが、星の民が撤収した事で戦っていた星晶獣は放置、残った星晶獣は主を失い、結果空の民の地に残されてしまった。

それを見た空の民は星晶獣が蔓延る事を危惧し、数多くの島と契約を結ばせる事でその力を使った発展の仕方を見つけ、もしくは守り神のような存在にした。

 

ここまでは良いのだが、ファータ・グランデ空域には星晶獣と契約した島が多すぎるのだ。

もし、何らかの影響で眠れる星晶獣が暴走し、それに刺激され他の星晶獣が暴れ出してしまったら……きっと第二の覇空戦争が始まってしまうだろう。

そんな自体にならないよう、各島も立ち回っている。

水を司る島なら水質汚染に気を向ける、大地を司る島なら森林破壊などを控えるなど、様々な対策を欠かさない。

 

なお、トラモントは星晶獣と契約していない島であり、歴史書にもそのように記述されている。

 

「星晶獣…仕事的に会う事になりそうです…」

 

「会う時はその島の一大事って事だ。滅多に無いから安心しろ。暴走した星晶獣なんて私でも聞いた事が無い」

 

実際、暴走を危惧されていると言っても実例がここ数十年まったく無い。

周辺の魔物が暴れるケースは少なくないが、星晶獣が人目に触れる瞬間などは無い。いや、あってはならない。

 

「もし、会う事があるなら命に関わる瞬間だ。今からでも気を引き締めろ。私も操縦士という身分、命を背負う事も自分の命を掛ける事もある。だが、お前は人を守る騎士。私以上に命を張る人生になるだろう」 

 

「……分かっています」

 

「秘密にしておけと言われたが流石に言っておく、お前が騎士になりたいと発言した時、コーレさんは肯定するのを渋ったそうだ。あのレルフさんでさえ苦痛に満ちた表情をする程なんだ。お前が島を出た後、きっと泣いただろうな。いいか?お前は後ろめたさを覚えてはいけないんだ。夜通しする程悩んだ末の厚意で送ってもらったお前が後悔するな。それこそ本当の屑野郎になってしまう。いや、ただのポンコツか?」  

 

「…」

 

厳格な口調から悪口になり掛けているが、これも自分への気遣いだとコーリスは受け取った。

 

「説教みたいで個人的に好きじゃ無いが、お前はもう割り切るべきだ。夢だけで行動をした結果堕落なんてのは見るに耐えない。お前は後悔することなく前に進もうとしろ。それが夢の実現だ。無償で得が出来ると思うなよ」

 

厳しい口調だが、コーリスはそれが心地良いと感じていた。無論Mでは無い。

 

明らかになった伯母達の思いと、サレアのアドバイスに隠れた優しさに胸が暖かくなったからだ。

思わずコーリスは頭を下げた。操縦しているサレアが見える訳も無いのにだ。

 

「ありがとうございます。サレアさんの言葉、胸に刻んでおきます。あと…」

 

「ん?なんだ」

 

「やっぱり優しい人ですね。貴女は」

 

「チッ…言っとけ」

 

サレア一瞬忌々しいと言いたそうな顔でコーリスを睨んだが、コーリスには温厚な笑みが浮かんでいるだけ。

ここで終われば良いのだが…

 

「お礼に今度…いえ、もうちょっと先に成りそうな話になるんですが…」

 

「あ?」

 

それで終わらさないのがコーリス。

11歳にして『口下手クソ外道野郎』というあだ名をつけられたのは伊達では無い。

つまり…

 

「優しそうな男性を紹介しますね」

「しね」

 

地雷を一踏み、いや百踏み、千踏み。

温かい空気は、着々と、それでいて確実に殺意の奔流と化した。

 

「な!?操縦の片手間で銃を構えないで下さい!死人が出ます!!」

 

「今なら死んでも下に捨てりゃバレねぇなぁ!!」

 

「自分が悪かったです!!!でも、せめて好みだけでも!サレアさんの役に立ちたいんです!」

 

「ッ!……バニッシュピアース!!!」

 

「ちょ、まってk」

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

       

 

 

日記

 

3月9日 ① 

 

 何故いきなり日記を書き始めたかと言うと、リュミエールでの暮らしはどうだったかを知りたいらしく、トラモントに帰ってきた時に見る為に書いてほしいとの事だった。また、日記は特徴的だった日を書くだけで良いらしい。

どうやら俺の口頭は下手らしく、日記にでも書かないと詳しく理解出来ないそうだ。誠に遺憾である。

 

 まず出来事を纏めていく。

朝に起きて昨日準備しておいた荷物を玄関に運んでおいた。中には私物と書物。リュミエール聖士官学校への入学手続きも入っている。

朝食を食べ、コーレ伯母さんとレルフ叔父さんとの会話を噛み締めて楽しむ。

これで暫く別れだと思うと泣きなくなる。恥ずかしい。

そして数時間が過ぎ、騎空艇の停留所に足を運ぶ。

 

 停留所には意外にも沢山の人だかりが出来ていた。

同年代の友達、近隣の大人達、最近来た医者までもが俺を見送りに来ていた。

自分は嫌われていなかったと思うと安心する。

口下手クソ外道野郎と一時期言われていた身にとっては嬉しい物だ。

皆と話していると、珍しくあいつが来た。

まぁ、村の皆はあまり見ていないだろうけど、伯母さん達は分かると思う。山の屋敷の。

小さい頃に偶然会ってから一緒に過ごす時間が多かったから幼馴染で良いのか?取り敢えずあいつが下に降りてくるのは珍しい訳で、送りの言葉がたどたどしいので、つい口下手と言ったら殴られた。吹っ飛んだ先が騎空艇なのも惨めさを強調するな。

 

 悲惨な別れを遂げた後は空。

サレアさんはいつも通り。怒っているような口調だけど気遣いは忘れない。

トラブル別に何も無かった。魔力を込めた銃撃で燃やされそうになったなんて事は無い。ウン。

なんだかんだあって、リュミエールには無事到着だ。

 

                

 




遅れてすまんのぉ…

まだまだグラブル初心者でのぉ…

マグナ周回して疲れたんじゃぁ…

取り敢えずサイドストーリーやってたらサブル島に殺意が湧きました(半ギレ)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

リュミエール聖王国、来日

石大量配布…ほう?

石配布と共にゾーイとフェリの絵……ニチャァ

ブローディア水着ハートサングラス?


…………やりますネェ!!(ポンメルン)




「付いたぞクソ野郎。ここがリュミエール聖王国だ。荷物降ろしの用意をしろ」

 

「はい」

 

「寮登録までは付き添ってやる。また妙な事をほざいたら風穴が空くと思えよ?」

 

「はい。御忠告感謝致します」

 

昨日の出来事のせいかコーリスに元気が無い。

流石に学んだのか、受け答えも下手な事は言わずに感謝の言葉のみを選んでいる。

コーリスは学ぶ男だ。しかし悲しきかなその場で対応する事は出来てもこれからの人生に活かすことは出来ないだろう…そうでなきゃもう口下手・天然など治っている。

 

少し大きめの皮袋に包んだ荷物を背負い、サレアの案内の元、コーリスは一言も発さずに、足を動かす以外の身体の機能を停止させ、トラウマを思い出した子供のように続いていく。

一方サレアは不機嫌そのもの。コーリスの方を見る度不満と憤怒、憎しみの混じった舌打ちを無意識に打ち付けていく。

それを見たコーリスは『ああ…そりゃ結婚出来ないな…』と相変わらずの思考を無感情の顔面で広げていたのだが、何を感じ取ったのかサレアは腰に掛けている愛銃の引き金に触れたのだ。

 

それからコーリスは何も考えなくなった。

何も考えられなくなった。

自立起動していた思考は錆果て、空の風に当たり冷えて止まっていた汗腺からは激流の如き汗が流れ、感情を表していた瞳は深淵の闇を顕現させていた。

 

少し経った後、コーリスは自分の人生の追想を強いられていた。 

物心つく前から年中霧が立ち込めるトラモントに捨てられ、拾われ、コーレ伯母さん達に育てられた。

エルーンの自分にも優しくしてくれたヒューマン達。

森で遭遇した青色の髪を持つエルーンの少女。山の上に家があり、下の森で迷ってしまったらしいから頑張って家に返したのを覚えている。彼女の両親には凄くお礼の言葉を送られた。

 

魔物に襲われる村。

霧でよく見えない視界の中サレアさんが操縦した騎空艇に乗って駆け付けてきたリュミエール聖騎士団の人々。俺に夢をくれた人達。

夢を追い鍛錬を続け、家で疲れて寝ていた俺を労ってくれたレルフ叔父さん。よく迷惑かけたな…。

 

10になった頃、友人と小さい子供を泣かし、村中の奴らからビンタを食らう。痛かった。

他の奴らは『子の心の方が痛かろう…』と言っていた。何歳だよ。

あいつの妹、フィラに愚痴を零したら苦笑いされた。

 

蜂の巣から溢れる蜂蜜を啜った。勿論虫抜きはしてあるが、それでもあいつには無理だったらしい。一晩で俺が変態になった。いつか〆る。

 

フィラと約束をした。二人だけの秘密。

トラモントを去った。寂しくて泣きそうだ。

サレアさんに怒られた。死ぬ。

 

──ああ、これが走馬灯というやtッ!?

 

「付いたぞ。ここがリュミエール聖王国士官学校第一寮だ。早く証明書を出せ」

 

「…はい」

 

コーリスの飛びかけていた意識を銃で叩く事でサレアは戻した。流石に撃つことはしなかったようだ。

彼は再びビクビクと怯えながら寮の扉を叩く。

中は木造りのテーブルや椅子が設置されており、受付机の前には休憩のスペースが広がっている。

何故か受付にいる人間以外に人気が無い。

 

「すみません、寮の申請に来たものです。これが証明書何ですが…」

 

受付席に座っている外見中老の女性に士官学校との契約で得た証明書を見せ、話し掛ける。

女性は何やら驚いた様子で紙を見る。

 

「ん?おお!騎士志望かい!?若いのに頑張るねぇ…。んん?トラモント…霧の小島から来たっていうのかい!!あの霧を掻い潜ってよくここまで来たね!ああ、人気が全く無いだろう?それはね、他の島から来て態々()()()()()ってのが珍しいからだよ。大体の人間は自由奔放な騎空士を目指すからねぇ。最近は本国でも聖騎士志望が減ってるんだから有難いもんだよ…。あ、私はグルシって名前さね!皆からは愛情込めて『おばちゃん』って呼ばれてるよ。あんたも是非呼びな!今じゃこんな寂しい寮になっちまったが、決してボロくは無いよ!全く最近の若者はヘタレでねぇ…戦うのが怖いって喚きながら家に引きこもってる奴らばっかりさ…加えて勉強も疎か…あんたみたいのは大歓迎さ!あ、後もう一人騎士志望がいたよ。あの子も遠い国から来てたねぇ…ま、仲良くしてやってくれ。あとそれからそれから…………」

 

乾いた外見から恐ろしいマシンガントーク。話題を提示するまでも無く舌は高速回転している。

コーリスはおろか、サレアまで冷や汗をかいている。

このおばちゃん、強い…!

などとくだらない思考を広げている間にも、トークは終わらない。

 

「でね!騎士を目指す人間は皆フェードラッへに行っちまうんだよ!何故かうちの国は緩いと思われててさぁ、あっちに人員を吸われちまうんさ。個人的には国を守るあっちと空域を守ってるこっちじゃ別物だと思うんだけどねぇ…。まったく、商売上がったりだよ!ん?横のアンタは?保護者かい?」

 

「ああ…一応身分は証明するべきか。私は騎空艇操縦士のサレアだ。こいつを送る為に来たんだ」

 

「んん…サレア…!?」

 

「私の事を知ってるのか?」

 

「そりゃあもう知ってるなんてもんなんじゃないよ!操縦士のサレアって言ったら超一流の操縦士で豪雨乱風雷鳴などお茶の子さいさいの天才で有名じゃないか!!いやーうちに来るなんて嬉しいこったね!どうだい?食事でも。騎士はフェードラッへに吸われてるが飯の旨さだけは負けないつもりだよ!何だったらここを食堂に改装しても良いかなんてねっ!はははは!!」

 

「あー、ちゃんと住もうとしてくれる人間がいるから辞めとけ。取り敢えず飯は大丈夫だ。こいつを送り届けたら目的達成だからな」

 

「そうかい…。まぁ未来の騎士様一人確定って事で喜んでおくとするよ」

 

「そうしとけ。私以上の大物になるかもしんないぞ?」

 

「まぁた楽しみな事を言うねぇ」

 

本人そっちのけで繰り広げられる未来への期待。

実はこの二人知り合いかと思わせるような軽い会話。とても初見の若者と年配の雰囲気では無い。

おばちゃんは何百年前からこういう性格と相場が決まっているが、若者は珍しい。

基本、敬語を使かったりする物だが…。

 

だが、コーリスは少し納得していた。

サレア以外の操縦士も見た事がある故の結論だ。

操縦士とはワイルド(血気盛ん)な生物なのだ。飽くなき探究心と死をも恐れぬ芯の太い心は自然とその人格を型どっていく。女性とて例外では無い。

…子供に銃を向けるのはどうかと思うが。

 

舌を回転させながらも事務仕事をきっちり終えたおばちゃんは部屋の番号が記された鍵を渡してくる。

 

【A-02】と書かれた鍵だ。

まさかとは思うが…。

 

「この寮二人しかいません?」

 

Aとはアルファベットの最初に位置する物。恐らく幾つかの区域で分けられており、次に続くBが存在するのだろう。

そして02とは、区域に存在する部屋の番号だろう。

…両方とも最初に位置する番号ということは。

 

「…そうさ。騎士を目指す者はいれど本国の人間ばかり。さっきも散々言ったけどあんたみたいのは本当に珍しいんだ。恐らく、あんたともう一人で終わりだろうね。昔は沢山五月蝿い奴らがいてねぇ…私が30くらいの時は部屋が常に満杯さ」

 

そう語る彼女は先程の和気藹々とした語り口からは一転し、哀愁漂う、そして何かを懐かしむようだった。

単純に騎士業が過疎化した悲しみもあるだろうが、それだけでは無い気がする。そう思ったコーリスは敢えて聞く事をしなかった。

人が自分から言おうとしない限り、人の深層に踏み込むべきでは無いという考えを持っているからだ。彼の数少ない自論だろう。

 

騎士とは守る事。

守るという事は戦う事。殺めるも殺められるも同率に受け止めなければならない。死にゆく者も少なくは無いだろう。

 

「辛気臭い空気になって悪いね。部屋でも確認しに行っててくれよ」

 

言われた通り鍵を持ってAと地面に記されている通路を進む。サレアさんとは外でまた会う予定だ。

何でもリュミエールはあまり訪れないらしく、少しでも見て回っておきたいのと、操縦士としての依頼探しも兼ねてある。

 

「ここだな」

 

最初の方に位置する部屋なのでエントランスから近い場所に部屋があった。

ドアに書かれている文字を確認した後、鍵穴に鍵を差し込み、音を立てないようゆっくりとドアを開ける。

 

 

中は思ったよりも綺麗だった。

木目が目立つ地面は靴が引っ掛かる事も無いし、作業用の机まで用意されてあった。

更にフカフカそうなベッド。コーリスは大満足であった。

 

 

 

用意されてあった椅子に真顔で居座るハーヴィンさえ居なければ。

 

 

 

「待っていたぞ」

 

「…用務員の方ですか?」

 

反射的にそう聞いてしまった。

自分の部屋になる予定の場所に入れるのは掃除を行う用務員でしかあり得ないと思ったからだ。

 

「違うな」

 

癖毛の黒髪に混ざった赤いメッシュを揺らしながら、その小人は表情を変えずに否定する。

その返答を聞きながらこの人物の分析を進める。

エルーンから見て明らかに未発達に見える短い手足、体型に反し大人びて見える顔付き。間違いない、四種族では小柄な種族のハーヴィンだ。

 

「俺はお前を確かめに来た」

 

「はぁ…」

 

「俺と同じ(こころざし)を持つに相応しいかをな」

 

「……と、言う事は」

 

「そう。俺がもう一人の志望者だ」

 

先に申し込みに来ていたもう一人の志望者はハーヴィンの少年だった。

コーリスは少なからずの衝撃を受ける。

 

まず、ハーヴィンは色々な商業に流通している。

そして、数多くの様々な役職に務める。よろず屋、絵画家、質屋、服屋など、職業のフットワークは四種族の中で一番軽いと言えるだろう。

だが、ハーヴィンは傭兵などは一切行わない。

それは何故か?

 

単純に、力が足りないのだ。

無論、個人個人の努力で済ませられる程ならば当の昔に解決している問題だろう。

だが、ハーヴィンはその体躯の影響で他の種族より力が劣る。言ってしまえば子供の力で大人の力に勝てる訳が無いのだ。

拳で闘おうとすれば、余裕で掴まれ軽く投げられる。

重い刃物を持とうとすればその重さに振り回され、標的を斬る力さえ出ない。

 

そもそも戦闘に向いていない種族なのだ。

武力に抵抗出来ない身体を良い事に犯罪に巻き込まれる事も少なくない。

普段から軽視される事もある。

成熟した大人が子供扱いされ、馬鹿にされた事もある。

戦闘に関して、全てが不条理な種族。

それが自分と同じ騎士を目指し、尚かつ自分と同じ目標を持つに相応しいか見に来たと?

 

余程の強者か、はたまた単純に余裕を見せに来ている勝ちたがりか。

 

「相応しい?お前がどんな人間が知らないが、騎士とは国を守り、人を守り、世界を守る存在だ。相応しい相応しく無いでお前に合わせている暇も無いし必要も感じられない。志とは人が平等に抱ける物、実現するように努力こそすれ、夢を持つ事に許可なんて必要無い。大体人の部屋に居座るな。驚くだろ」

 

「フッ…その心味、良い」

 

「……気取ったように言うな。ますます訳が分からなくなる」

 

「どうやら本気で騎士を目指すらしいな。ならば言っておこう…俺の名はスルト・ヴァーグナー。リュミエール聖騎士団団長に成り、ハーヴィンの汚名を返上する。均衡を保つ者だ」

 

 

──何だこいつ。

 

コーリスの頭はこの思考で満たされた。

考えても見て欲しい。寮の鍵を渡され初めて部屋に入ったら変な小人が居て、志を共にするに相応しいか確認しに来たと喚きながらドヤ顔で自己紹介。

誰だって混乱する。

 

だが、スルトと名乗った小人はコーリスの様子に触れる事なく、用が済んだとばかりに部屋を出ようとする。

 

「ではな。士官学校ではお互いに睨みを聞かせる好敵手となるだろう。まぁ、お前が強いのならばの話だが」

 

最後にこちらを横目で見ながらそう言ってドアを開けるスルト。

最後までその気取った態度が崩れる事は無かった。

 

 

「ぎゃふ!!」

 

 

短い足が窪みに引っ掛かり転ぶまでは。

 

 

そして、もう一つの疑問が頭を過った。

 

──あいつ…どうやってこの部屋に入った?

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「…てことがありまして」

 

「災難…?いや、友達が出来た事を喜ぶべきか?」

 

「災難…いや、災厄ですね」

 

転んだ変人(スルト)を助けて見送った後、コーリスはサレアとリュミエールの観光をしていた。

夕焼けに染まった空の下では沢山の商店がアピールをしている。

 

中でもコーリスが見ていたのは高額で売られているエリクシール。

エリクシールとは、傷を負った人間が飲めば即座に回復し、疲れ果てた人間が飲めば活力が漲るという魔法の治療薬。

だが、その効果を作る為にそれ相応の労力が費やされている為、かなり高額。

ちなみに効果が薄くなったものの生産コストが大幅に繰り下げられたエリクシールハーフなる物も存在する。

 

(あれを持っていればフィラの病気も治ったか?)

 

その考えが頭を過った瞬間、あり得ないと断ち切った。

そもそもエリクシールに病気は治せない。その前提を失ってた自分に失笑する。

 

(フィラが自分の病気と戦おうとしているのに、結局俺は空想に助けを求めてるのか…)

 

スルトの志審問の記憶も蒸し返され、彼は少し自分に自信を失っていた。

結局、これからも自分は悩み続けるのだろうと、コーリスは憂鬱に身を浸らせた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

日記

 

3月9日② 

 

 リュミエール聖王国に着いてからはまず寮登録をしにリュミエール聖王国士官学校第一寮を目指した。

管理人のおばちゃんは凄まじい饒舌で、話題を作っては自分で広げていた。

 

 渡された鍵を持って部屋へ向かうと、中には寮仲間の変人、スルト・ヴァーグナーなる者がいた。

真顔で居座るわ志共にするのに相応しいかとか良く分からないことを言われ続け、少し疲れた。奴が帰り際に転んだのは少しスカッとした。

 

 変人が帰ったら夕方の街をサレアさんと回った。高額のエリクシールだったり、アウギュステ列島の海産物まで売ってあって、他の島との交流が深い島だと思った。後、ドラフの大人の男性が凄く怖い。はっきり言ってモンスターかと思った。そして、珍しくサレアさんが夕食を奢ってくれた。凄く感動してまた余計な事を口走りそうになった。危険が危ない。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

紫苑の夢

テスト期間につき、遅れた。
俺、ワルクナイ。
テスト、ワルイ。



すみませんでした。


──なあ、コーリス。

 

柔らかい森に包まれながら、横に耳を傾ける。

 

──人とどうやって関わり合えば良いんだ?

 

次に目を向ければ涙が。

膝を抱えて、涙目で心情を訴えてくる少女。

朧気な意識を抱え込みながらその質問の返答を考える。

だが、問に答えるまでもなく耳にはもう一つの声が流れてきた。

 

──…話せばいいと思う。

 

聞こえて来たのは涙に対する一切の同情も含まない返答。それが、自分自身の声だと気付くのに時間はかからなかった。

だが、自分の目には声も手も足も存在しない。

ただ二人の動向を横で見つめているだけ。

 

(懐かしいな…)

 

そう、これは過去の自分。

過去の自分を景色として見つめている奇天烈な現象─これを夢と判断した。

違和感のある空気に包まれているのに、その場では疑問に思えないという矛盾。異常空間に溶け込む精神。

人にとって今も、そしてこれからも未開の地。

それが夢である。

 

(こんな声だったか)

 

数年前の自分を見つめ直して思うのは声の変化。

一年前程の景色。横で泣いている○○○には目もくれず、今の状況を理解する。

彼女の横にいる自分の高い声に不甲斐なさを感じ、思わず苦笑を顔に浮かべてながら声を聞く。

 

 

──私はどうすればいいのかな?フィラは病気で家に出れず、母さんはフィラの看病につきっきり。父さんは種族柄かヒューマンに関わろうとしない。私はこうやって森でぼやっとしてるだけ。人の役にも立てず、妹の話し相手にもなってやれないし、作ってやる事もできない。なぁ、お前はどうして自然に過ごせるんだ。

 

──自然?

 

──ああ。お前はエルーンの捨て子なんだろう?拾われても一人の環境の筈だ。それなのに人が寄ってくる。お前が人を突き放したような発言をしても周りが笑顔で()()()()()()()()。私は余計な事を何も言わないのに誰も話してくれない。目すら合わない。

 

──ああ、そんなことか。

 

余りに軽率な返答に頭を抱える。

少なくとも悩みに悩んで涙まで流している少女に対する対応では無い。余りにぶっきらぼうすぎる。

それも過去の自分だと言うのだから、俄然見るに耐えない。今すぐ過去に戻って殴りたいくらいだ。

 

 

──…そうだな。お前にはどうでも良いし簡単な事だったな。頭も良いし、身体も動かせて、友達もたくさんいて、フィラの話し相手になれる。確かにお前は何でも出来るからな…。これなら、こんな陰湿な姉より妹が外にいる方が良い…。いっそ私が病気にかかれば良かったッ…!!

 

痺れを切らし、言葉に比例して涙の量が増えていく。

地に滴る水滴は誰の元にも届く事はなく、現実に溶かされていくだけ。

悩み、というのは妹に対して何も出来ない自分の無能さに打ちひしがれている、と言ったところか。

 

 

──なら、どうして話し掛けない?交友が広がればフィラにも楽しい空間が出来るかもしれないのに。

 

──怖いんだ…。他種族として離されていくのが!仮に私が友達をフィラに紹介したとして、父さんがそれを良しとしないかもしれない!『エルーンの風習』が何だと故郷の決まりごとを並べて仲違いをさせようとするかもしれない。家族の縁が切れて、またあの子に辛い思いをさせるのが堪らなく怖いんだよ……。

 

──へたれめ。

 

──ッ!!!

 

 

 

『…馬鹿が』

 

コーリスは過去の風景を覚えている為、彼女を怒らせ胸元を掴まれた記憶がある。

そして、へたれという言葉を堺にこれから殴られると言う事も知っている。確かに自分が悪いが、自分が殴られる風景を見るのは微妙な気分だ。

いっそ笑い飛ばせれば楽だ。しかし当時は考えなかった彼女の心情が知りたい。

自分の風景に現を抜かす暇はない。

じっと、この景色を見つめてみようか。

 

激情のままコーリスの胸ぐらを掴んだ少女は叫ぶ。

 

──お前には出来るのか!?私に出来ない事を卒なくこなしたお前が!!ならばやってくれよ!ああそうさ、相談というのが間違いだった!お前を頼れば出来ると思っていた私が馬鹿だったんだ!

 

──……お前じゃないと意味が無いだろう。

 

──違う!!お前と話すフィラの表情はいつにも増して楽しそうだった!私と話している時よりも目が輝いていた!最初からお前を頼るのでは無く、()()()()()()()!!周りの人間もお前を頼りに日々を過ごす事もあった。なら、()()も助けてくれよ!!正義の騎士なんだろう!?

 

 

とめどない悲しみと怒り。

もはや自分の無力さを受け入れてしまっている。諦めの心は相手への渇望と変貌して叩き付ける。

ただ普通に生きているだけでも、彼女にとっては一番羨ましい物だった。

 

 

──なぜ黙る!!

 

吐き出した思いに答えないコーリスへの怒りか、それとも無意識に同情を欲しているのか。

年相応の感情の爆発を見せた彼女は、まるで無い物ねだりをして誰かに縋る子供だった。

普通の人間なら、ここで彼女の言葉を受け止めて慰めたり、協力したり、または彼女の望み通り行動するといった方法を取るだろう。

 

しかしそこはコーリス。

自分の思った事を素直に吐き出し、他人の言い分は認めるが言いなりにはならない頑固者である。

地雷を超え、逆鱗に触れる。

 

 

──こんな姉で、フィラが可愛そうと思っただけだ。

 

思えば、この発言は意地っ張りの延長だったかもしれない。

 

───────!!!

 

声にならない叫びを携えて男を殴る。

涙と感情で混ざりあった顔を隠す事も、目の前にいる男に涙が溢れる事も気にせず、嗚咽のまま殴る。

だが、男は自分に対し失望のような感情を含んだ目を向けてくる。痛みなど感じていないように。

 

……それが、堪らなく悔しかった。

 

数分経って彼女は冷静さを取り戻した。

が、大人びた精神がそれを許さなかった。

親友を感情のままに殴りつけたのが良くなかったようだ。どんなに無情な言葉を突き付けられたとしても、人としての罪悪感が込み上げてくる。憤怒に包まれていた顔は病人のように青白く染まり、力強く握られていた拳は開き、カタカタと指を痙攣させている。

 

無論、いくら力強く殴ったと言っても成熟していない少女の腕力。痛みは感じれど傷として顔に残る訳が無い。

コーリスは経験としてそれを理解している。殴られている男が途中にそう思っていたかは本人にも分からないが。

 

──あ、その…私はそ、そんなつもりじゃ

 

──………。

 

──は、はは…馬鹿だな…私は。相談を持ちかけに森へ連れては勝手に怒って人を殴る。唯一の交友関係も自分で断ち切ってしまった。

 

──なぁ。

 

──いや、いいよ。コーリスは頭が良いからな。()()()()()に掛ける言葉もすぐ思い浮かぶんだろう?でも、私にはその言葉に対する返答が思いつかないよ…。

 

 

無言で見つめる男を見てさらに萎縮したのか、言葉もおぼつかない。

もう何もかもが嫌になったのか、男の言葉も断ち切って自分という存在を嫌悪する。

 

 

──こんな馬鹿な女に付き合わされて疲れただろう?今まで済まなかった。もう無茶を言わないよ。

 

──そうか。なら言わせてもらう。

 

──?

 

──第一俺を人間じゃないみたいに言うな。慰めの言葉を直ぐに言える程器用じゃないし、何でもこなせる超人なんかじゃない。まず器用なら言葉で子供を泣かせたりしない。

 

──それでも、私よりよっぽど立派な人間さ。妹にさえ億劫な私より…。

 

──…何を言っても無駄か。

 

口下手な彼が必死に絞り出した言葉でさえ彼女の後悔を忘れさせるには程遠い。

ならば、最後に本心だけは言う。

 

 

──言っておく。誰だって怖いのは普通だ。俺だって一人じゃ他の島の人に声すらかけれない。だが、人を頼りにする事すら怖がっているなら、人間何が出来るんだ?

 

返事をする事なくおぼつかない足元で家に帰ろうとする○○○

その言葉は結局彼女に届いたのか。

それは今になっても分からない。

 

だが、何故こんな夢を見たのかは予想がつく。

それは、普段凛としている彼女が見せた数少ない弱みが印象深かったと言う事。

 

 

 

 

そして、これが彼女との初めての喧嘩だったということ。

何か特別な物があるわけでも無い、単なる下らない言い合い。それが思い出として残っているという事なのだろうか。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

聞こえたのは目覚まし時計の音だった。

朝でも遠慮なくジリリリ!!と鳴る時計は、コーリスがトラモントから持ち込んだ私物だ。現在午前5時。

 

「……」

 

…夢でも見たのか。起きた時の妙な目の冴え方と、服に染み込んだほんの少しの汗がそれを連想させる。

夢の内容を覚えている人もいるだろうが、自分は別。

嫌な夢、怖い夢、楽しい夢、奇妙な夢など、様々あると聞くが、どれも内容を覚えていない。

朧気に残っているのは、故郷を思わせる緑と、懐かしい思い出を匂わせる雫だった。

トラモントを想ったのは、一週間前にサレアさんが帰省した時だろうか。

 

「………」

 

重力に引っ張られるように身体を伸ばす。

望んだ行動かは分からないが、勝手に体が動いてしまう。

半分だけ開いた眼で洗面所に向かう。

目に写ったのは耳を垂れさせた半目半口で寝癖を付けたみっともない男だった。

髪型だけでも人前に出せるようにしたいので、顔と髪を水で洗う。

 

髪についた水滴をタオルで拭きながら、窓から外を見渡す。そこから見える中庭はとても綺麗だった。

コーリスは半袖の私服に着替え、部屋を出てエントランスに向かう。

そこには当然グルシことおばちゃんがいた。

 

「相変わらず早いねぇ…」

 

「やる事は朝にやっておきたい性分でして」

 

「ま、それが良いけどね。あんまり切羽詰めんじゃないよ?」

 

眠そうに欠伸をしながら注意をされる。

この寮に入って10日は経った為、早朝に顔を出す事を驚かれなくなったが、毎日同じ時間に起きている内に感心されるようになった。

この生活様式はトラモントでも変わらなかったのだが。

 

朝に起きて即鍛錬。

そんなにも珍しい事なのか。

グルシさん曰くこの年の若者は朝に弱く、やるべき事を後回しにする為昼にやり、最悪夜に回して寝不足になる事がしばしばらしい。

自分は寧ろ夜に弱く、決まって10時には倒れるように眠ってしまうのだ。だから静かな朝に一人で黙々と鍛錬が出来るのは気分が良い。

 

…隣部屋のあいつは真逆だ。

夜は煩いほど声を張り上げて話し掛けてくるのに朝は音量最大の目覚まし時計でも起きない。文字通り叩き起こさないと意味を成さないのだ。

ここ数日間で毎日グルシさんからマスターキーを貰って起こしに行っている。旗迷惑な物だ。

 

「涼しい」

 

 

中庭に出たら思わず言葉に出てしまう程の涼しさ。

丁度良い朝の風が吹き抜け、気持ちよく顔を叩いてくれる。朝早く起きる利点はこの快適さにあると感じる。

 

 

風の余韻に浸る訳にもいかず、鍛錬の準備を進める。

まずは身体解し。予め柔軟をやっておく事で体温の上昇と固まった関節を解す。

次に走り込み。

広く、そして円状になっている中庭は外周に適していて走りやすく、体力の向上に良く繋がっている気がする。

二十周程走ったら息を整え、軽く布で汗を拭き取りながら木器に立てられている木剣を手に取る。

この場所は昔から士官学校の生徒達の鍛錬の場になっていたらしく、色々な種類の武器を模した木造りの塊が置いてある。

 

 

自分が握った木剣は背丈の半分以上の大きさを持つ物。

トラモントで使っていた、要らない木の塊を削って無理矢理剣の形に仕立てていた物に比べ、作ろうとして作られた剣はとても形が整っている。

荒れた部分も無く、つるりとした側面が良く目立つ。

重さも申し分無く、本物の剣には劣るだろうが両手で持たなければならない程には重い。

 

 

両手で構えた剣を中段に保ちながら、剣を横凪に振るう。振るうだけで自分の筋肉が隆起し、足が剣の重さに持っていかれるのを実感する。

それを堪えながら斜めに剣を振り下ろし、脇を締めて突く。

合間合間に足を入れ替えながら剣を振るう事で、如何に効率よく力を節約しながら振るえるかを追求できる。人間とは体格がそもそも違うものなので、自分の体に合った型を見つけるのが得策と言えよう。

 

「───ッ!!」

 

 

最後に振り下ろした剣を手首を回す事で構え直し、下から直線上に振り上げる。上から下に落とすのは誰でも可能な動きであるが、下から上へ物を上げるのは通常よりも腕力を使う。

これらの動きを繰り返すだけで、次第に自分の向き不向きを知る事が出来ると実感する。

 

 

コーリスは、生活に支障が出ない限界まで剣を振り続けた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

朝の鍛錬が終わり、濁流の如く流れた汗を綺麗に浴槽で身体を洗い流し、エントランスのテーブル席に座る。

少しすると、グルシさんがやって来た。

 

「おつかれさん!いやー、凄い気迫だったよ。若者であれが出来るんだねぇ…」

 

「集中してると、自分が変わる気がします。その物事以外どうでも良いと思えるくらいに」

 

「極限まで集中してるって訳だね。で、何時ものを頼むよ」

 

 

そう言って苦笑を浮かべながらマスターキーを渡してくる。理由はもう分かっている。

馬鹿(スルト)を起こしに行くのだ。

先程述べた通り、スルトの朝の弱さは異常であり、近所迷惑になる程の音量を目覚まし時計に設定しても一向に起きてこない。

肘を腹に全力で叩き込む事でようやく目が覚めるレベルだ。

 

 

そんな相手の部屋に向かっている途中で大音量の目覚まし時計の音が聞こえる。

起きないだろうが。全く無駄な足掻きである。

マスターキーを一号室の扉に差し込み、ドアを開ける。

スヤスヤと安らかに眠っているハーヴィンと脈動する目覚まし時計。

この対比が非常に不快である。

 

ベッドの目の前に移動し、スルトの額を軽く叩く。

が、反応が無い。

 

「起きろ!!」

 

 

怒っているわけじゃないが、できる限り大きな声で挑戦してみるも反応無し。

生きているのかと疑問に思えて来た。

前に肘で叩き起こした時は少し堪えた様子だったが、10秒程で何時もの騎士風の佇まいに戻った。

かなり身体は頑丈と言えるだろう。

何度も同じ手を使って耐性を付けられても困るので、少しやり方を工夫してみる。

その方法とは…

 

 

「起きろ()()()()()()()そんなんで騎士になれると思ってるのか?」

 

「んだともう一辺言ってみろ三下ゴラァァァァァァァァ!!!!」

 

 

効果あり。口調すら変えさせる精神攻撃だ。

奴にとって、【チビ、ザコ、マヌケ】は禁止用語らしい。無論本音では無く起こす為の口撃に過ぎないが、理性を失わせるには充分だった。

 

 

 

──まあ、たった三人しかいないけど賑やかで楽しいぞ。そっちはどうだ?○○○

 

 




新召喚石でスルトって名前来ちゃった…。

星晶獣と同じ名前で大丈夫?スルト・ヴァーグナー君。
いじめられてない?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

なんか思ってたのと違う

リミテッドキャラで私服って珍しいですよね。
ところでラカムの評価が良くない事に憤怒。

変わらないラカム(戒め)


「少々取り乱したが問題無い。(わずら)わしい夢を見ただけだ」

 

「ならその胡乱な目を整えろ。お前の事だから二度寝しそうだ」

 

起きて早々()()()()暴言を吐きあったが、相手は正気を取り戻したようだ。口調が理知的に戻っている。

そして二度寝しそうと言ったが、こいつに限っては昨日四度寝を決め込んだ。

恐ろしい事件だった。起こしても気絶するように閉じる瞼は、きっと肌を切り裂いても開かないだろう。

そう思わせるくらい凄絶な物だった。

 

いい加減にしろと怒り狂い、何度その小さい体躯を蹴り飛ばそうとしたか…。しかし奴は素早く、以上に身軽だ。騎士団長を目指すと豪語するだけあって鍛えている。終いには身体に宿る火の魔法を使って拳の勢いを付け、反撃してくる始末。

しかも奴は魔力が以上に多いのか、拳の威力がおかしい。庭で喧嘩したときは10メートルほど上空に飛ばされたものだ。

自分も魔法は使えるが、得意なのは防御と弱体系。火や水などの攻撃魔法は少ししか使えない。

自分の魔法もおかしいとよく言われるが、ゴリ押し系のスルトよりマシだと思う。

 

話が逸れたが、今日は大事な日だ。

喧嘩などしている暇は無い。

 

 

「全く…今日は入学の日だ。大抵大事な日というものは寝坊常習犯でも起きるものだが…?」

 

「──毎日と違わぬ振る舞いを。これが騎士の享受だ」

 

「……じゃあ毎日早起きしてそれを毎日の振る舞いとしてみれば良いのでは?」

 

「自分の道はッ!…曲げられない」

 

「いや本当に曲げて」

 

 

またこれだ。

事あるごとに言い訳の嵐。馬鹿がなまじ強い力を持つと危険というが、こいつはただ面倒臭いだけだ。

思えば初めて会ったときもそうだった。

 

鍵が掛かっていたのでどうやって先に入っていたかを本人に聞いたら…

 

『中庭から窓に入らせて貰った。火の噴出は実に便利だ』

 

と、不法侵入を反省する素振りも見せなかった。

不法侵入するわ地面の凹みで転ぶわキレて椅子燃やすわで問題児。

グルシさんは楽しそうに眺めているが、追い出しても良いんじゃないかと思う。自分だったら鍋にぶち込んで3日間放置する。

それ程までに奴の蛮行は留まる事を知らない。

 

「着替えろ。朝食の準備が出来たら呼ぶ。くれぐれも寝るなよ」

 

「分かっている」

 

「寝るなよ」

 

「分かっている!!!」

 

 

二度目の注意をして部屋から出ようとした時にはもう火のパチパチとした音が鳴っていた。

そんな事を気にせず部屋を後にする。ああ見えて人に火を直接当てては来ないから安全だ。

早速エントランスの横にある食堂へ移動し、グルシさんが用意しているであろう朝食を運びに行く。

 

グルシさんの料理はなんと言うか…母の味?故郷の味?と言えば良いのか…。

凄く美味しい。無論高級料理店のように着飾った味付けでは無く、栄養や食べやすさを追求している真心の籠もった料理。コーレ叔母さんの味を思い出す。

今日の料理は何だろうか?

良い匂いが立ち込める食堂へと足を踏み込んだ。

 

「起きたかい?」

 

「ええ。もう少しで来ると思います」

 

「ならば良し。起きたばかりだから少量でも問題なさそうだね」

 

 

ハーヴィンは小人だ。その理に従うならば当然胃も小さく、常人の三分の一程の食事で十分なエネルギーを得られる。逆に言えば余り物を食べられないので、食べる事が好きなハーヴィンがいるのならば哀れな話だ。

スルトは味わって物を食べるが、大食いでは無い為か安定して食事を取っているように思える。

外食でもお子様ランチを頼まざるをえないのは本人にも不本意らしいが。

 

両者とも好き嫌いは無く、基本何でも消化できる。

サバイバル訓練なら余裕で3ヶ月生き残れる自信がある。

何故かって?

トラモントで引かれる程危険物摂取したからだよ。

笑い茸、毒キノコ、毒草。

味さえ良ければ満足感で苦しみをカバーできる精神論が意外にも功を成し、毒見最強の称号を得ることが出来た。

ただフィラに引かれると本当に心が傷むので辞めようかなと思っている。

 

 

閑話休題(そんな事より飯だァァァ!!)

 

 

奴がもの食わぬ顔で来たときには既に料理が出来ていた。食事の時は随分と大人しいので、騎士の振る舞いに煩いようにマナーにも気を付けているらしい。

個人的には子供みたいと馬鹿にされないように意地になってるハーヴィンにしか見えないのだが…本人に言ったら殺されそうなので伏せておく。

 

たった三人の食事はまるで家族のような温かみと、少しの寂寥感があった。曰く、大量の長机が満席になる程に人が溢れていた時代より静かでこれもまた良い物らしいのだが、他人とっては廃れていく文化に過ぎないだろう。

今や聖騎士団の栄光など人寄せの材料にならない。

ファータ・グランデでは戦の時代はもう過ぎ去って、戦う事より環境と歴史を大事にする事が最優先なのだ。忌むべき戦乱の災禍を後世へ語り継ぐ。その義務感により歴史を学ぶ人間が最近多いのだとか。

だが、忌むべき記録、それも星の民によって引き起こされた回避しようも無い横暴。星の民を未だに憎む者も歴史を忘れようと躍起になっている者も当然存在する。

愛国心故か戦争を経験していない人間も星の民を盲信的に恨む程の影響がある。

 

全く…こう言っちゃなんだが民度がそこまで良くないな。

何せ霧で子を捨てている自分の姿が他人から見えないという理由でトラモントまで捨てに来る親がいるのだから。

 

 

まったく…度し難い。

 

 

最近増えている事件を載せている新聞に目を通しながら心の中でそう呟いた。

 

 

──────────────────────

 

 

『中々に決まってるじゃないか!最近のは格好良いんだねぇ…』

 

 

グルシさんが言った送りの挨拶はそれだった。

朝食を取り終わった現在、俺とスルトは数日前に士官学校から正式に送られてきた制服を着て外を歩いていた。

白のシャツとネクタイ、そして上に着る碧色のブレザー。グルシさん曰く昔は赤色のブレザーだったらしい。充分かっこいいと思うが…。

 

「赤の方が良かったな…」

 

スルトは赤の方が良いらしい。

どうせ火属性使いにとっては色が被った方が格好いいとでも思ってるんだろう。いや実際そうかもしれないが。

確かに青色の鎧を着る騎士が火を使ってたら違和感が凄い。そう思えば色は大事かもしれない。

 

…自分は微妙な色になりそうだな。

 

「仕方が無いだろう。【赤】は今の時代良く無いイメージを持っているらしいからな。災禍、火事、そして何より問題なのが血だ」

 

「そんなに厳しく止めている物なのか?イメージというのは」

 

「少なくともリュミエール聖騎士団はそうしてる。何より【碧】は青と白の明るいイメージを合わせた物だ。清純さと正義の光を合わせている…これ以上にない色だろう」

 

まあ、憶測でしかないが。

正義という概念を大事にしている騎士団にとってはイメージを固める事は大事だ。

規律が守られている事も表さなければならない。

 

 

「ところで」

 

「…?なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

「エルーンって露出狂?」

 

「俺がエルーンと知って言っているのなら蹴り飛ばすぞ火だるまが」

 

 

 

 

上等…粉微塵にしてくれる。

 

 

 

 

 

「いや実際あの背中や脇が男女共によく目に止まるというか…毒というか…」

 

「目の前に何も曝け出していないエルーンがいるが…?」

 

「いやお前は変わり者だし…」

 

「鏡」

 

「未来の騎士団長しか映らんな」

 

「今すぐフェードラッへに行くか商人として生きろ。お前と騎士を目指したくない」

 

「そこまで言わなくても…。で、結局何であの様な服が多いんだ?」

 

 

確かにエルーンは脇や背中を強調する服をよく着ている。自分はヒューマンと同じ長袖服だが。

 

…そう言えばアイツも背中やわ、脇…太腿をよく強調していたな…。破廉恥な!

今意識してみると恥ずかしい…確かに毒だ。

 

 

「おそらくは文化的な物だろう」

 

「文化?」

 

「そうだ。エルーンは常人よりも聴力が強く、身体は軽く疾い。獣の様な身体的特徴が目立つ種族がエルーンだ」

 

「ふむ」

 

「そして森に居所を作ったり弓で狩りをするなど、原始的な風習もある。機械的な文化を好まず自然的な文化に生きるのはエルーンくらいだな。それで、動きやすさと獣の本能のような物が混ざった結果があの服ではないのか?」

 

「なるほど…しかし感謝するぞコーリス」

 

「んん?」

 

「謎と緊張が解けた。今なら死角から攻撃されても完封出来る程の落ち着きだ」

 

「…良くわからん例えだ。ま、緊張を解した後に門を開けられるのは良い事なのかもしれないな」

 

 

 

目の前に聳え立つ建物。

それは間違いなくリュミエール聖士官学校。中央には腕を競い合う為の決闘場が配置されており、それを取り囲む校舎の風格は凄まじい物だった。

 

きっと、厳格な校長による有り難い言葉が飛んでくることであろう。

一言一句心に刻まなければ…

 

と、思っていたのだが。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

「え〜にしーろーはーと…全員いますねー。はい皆さんの指導を努めますリエスですー。ま、適当に学んでってください」

 

軽いよ。

士官学校だよ?お勉強の為の学校じゃないの。戦いの技術を学ぶ学校なの。あと校長なんて居なかったわ。

数人の指導者が各分野に分けて指導するシステム。

 

今思えば確かに必要ないわな。

校長がいてもやる事は『がんばってますね〜』の一言と共に訓練を除きに来るぐらいだろう。

数は28人。周りには屈強なドラフが多く、存在感が強すぎる。11歳で中年のヒューマンぐらいの筋肉あるぞあれ…と思わせて美少年のドラフもいる。

うーんこの格差社会。ドラフで産まれたら幸せな人生を拝めるのだろうか。

 

 

後、集合場所の教室に入った時、こちらを見てほぼ全員が驚愕の感情を向けていた。

無論、スルトの事なのだが。気怠けな教師ですらほんの少しの時間目を見開いていたぐらいだ。馬鹿にする視線はなく、奇抜な物を見る目だけがこの場にはある。

真顔なところを見ると、本人は気にしていないらしい。

 

「…ッッッッ!!!」

 

訂正。

めっちゃ気にしてた。顔が赤いし涙目…手も震えている。

宛ら慣れない衣装を着て恥ずかしがる小学生だ。

この時点で数人の女子のハートをキャッチしてしまったハーヴィン。そりゃ美顔で小さくて涙目で震えている姿を見たら可愛いと思うだろう。

 

変な目立ち方をしたせいで屈辱的な気分を味わったスルト。

露出狂呼ばわりをした罰と知れ。

無様なりスルト。燃えるような恥辱を味わい給え。

 

こればっかりは実際種族間の問題だからどうしようもないと言うのに、それを認めようともしない。

ドラフを見ろ。ゴリッゴリの筋肉を自慢げに曝け出しているでは無いか。

まず、ハーヴィンを卑下するという輩はいるが、それ以上にハーヴィンの商業力を認めている人間が多いのだ。いくら小躯だの非力だの馬鹿にされようが知ったことでは無いのだが…さっきのスルトの発言で気が変わった。

 

自然に生きる種族のエルーンが露出狂…?

もしこれからその先入観が広まっていったら…否、もう既にそう思われているとしたら。

屈辱的以前に種族として変態のレッテルを貼られてしまう。

思うとスルトが哀れに思えてきた。

 

(俺もこれから奴の気持ちを考えてみるか…)

 

少しだけ見る目を変えてみようかと思案していた矢先

 

 

 

「このエルーンだって露出狂だぞ!!」

 

 

「貴様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

恥を書くには二人が丁度いいらしい。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

日記

 

 

3月19日

 

 

 入学式と言うには余り晴れ晴れとした雰囲気では無いが、ブレザーがある時点であくまでも士官学校と言うことを実感させられる。聞いた話では士官学校に通わなくても何かしらの分野に置ける実力が備わっていれば騎士団に入れるらしい。だが、他の国から来た実力者ならまだしも、戦いの経験が無い人間がそのまま騎士団に入れる可能性は低いだろう。余程の天才じゃない限り、剣を握って戦うことなど耐えきれない。

結局のところ、本人の気持ちと努力次第で変わるのだと思う。

 

 あ、そういえば事件が増えているから気をつけて。殺人事件が増えているというより、気象変動や浮力のズレが多いらしい。トラモントも霧が深くなってきたと聞いたから、騎空挺を飛ばす時には用心してくれると助かる。やっぱり、故郷が見えづらくなると不安だから。

 

 こっちは大丈夫。わいわいやってるよ。都会に来ると種族間での役割の分担がはっきりしすぎて少し生きづらそうな雰囲気が無くはないけど…。

でも、エルーンは自然を作り、ドラフは地を作り、ハーヴィンが都市を作り、ヒューマンが文明を作っている。

このような関係が続く限り、争いが起きることは無いと分かる。

 

 ん?どういう事だって?

言うなら、均衡?四種族が互いの働きを理解して、社会を正しく回せたらそれで充分だと思う。

互いを助け合う。昔から言われてきた事だけど、良い事だと思う。騎士を目指したのも、種族間の関係をより良い物にしたいからだし。

 

 

 

今の世の中は少し荒れてるからね。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。