本来の世界に帰ってきた料理人 (北方守護)
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第0話 試験

これは以前に今はサービスを終了した小説サイトecocaで投稿していた物を再投稿した物です。

その時の物を思い出しながら執筆するのでオリジナル要素が多いですが、楽しんでください。

誤字・脱字がやご都合主義があります。


誰かが言った………

 

見た目はジョッキみたいなビーフジャーキー

 

ビーフジョッキー…があると

 

世はまさにグルメ時代……

 

旨さを求めて探求する時代……

 

たくさんの樹々が生い茂るジャングルの出口で……

 

「ハァハァハァ……やっと捕獲出来ましたね……トリコさん(師匠)

 

「そうだな……今回は獲物を見つけるのが難しかったからな」

短髪黒髪の少年〔武昭〕と青髪の男性〔トリコ〕が話していた。

 

「これで武昭も立派な()()()()()

 

「だからといって捕獲レベル10の馬鰻(うまうなぎ)を1人でだなんてひどいですよ……」

タケアキの背中には馬の頭を持ち体が鰻の生き物〔馬鰻〕が入ったグルメケースが背負われていた。

 

「んあ?そんな事言われても仕方ないだろう、そいつはタケアキが鉄平から頼まれた依頼でもあるんだからよ」

 

「確かに師匠の言う通りですけど……」

タケアキは何人かいる師匠の中の1人〔再生屋 鉄平〕から言われた事を思い出していた。

 

 

とあるレストランでタケアキと鉄平が話していた。

 

「馬鰻……ですか?」

 

「ああ、タケアキも何回か使った事があるから言うけど体糊(たいのり)って知ってるよな?」

 

「はい、あらゆる物をくっつける事が出来る紫色の糊ですよね」

 

「さっすがー 俺が教えただけの事があるな、それでその体糊の原料の一つに馬鰻の粘液があるんだ」

【これはこの小説だけのオリジナル設定です】

 

「それで、こいつは俺からの再生屋としての合格試験みたいな物だ」

 

「じゃあ俺がその馬鰻を捕獲してきたら……再生屋として名乗って良いんですか?」

 

「そうだ……武昭が、俺に弟子入りしてから、それなりに経験は積ましてきたからな。

ここら辺で試験みたいな物をやってみようと考えたんだ」

 

「もし、俺がその依頼を達成出来なかったら……不合格ですか?」

 

「いや、そいつは依頼を終えてからだ、まぁ頑張りな……

そうそう、試験官じゃねぇけど武昭の依頼には()()()に同行してもらうから」

鉄平は代金を払うとレストランを出ていった。

 

それから数日後、武昭はトリコと共に依頼食材の捕獲に向かった。

 

 

「……いっ……おいっ!」

 

「うわっ!師匠!?どうしたんですか!?」

 

「それはコッチのセリフだぜ声を掛けても何も返事がなかったからだ」

 

「あっ、すみません。今、鉄平さんの事を思い出していたんです」

 

「そうか、じゃあ戻ってソイツを料理してもらうぞ!」

 

「はい!分かりました!!」

トリコと武昭は捕獲を終えると、そのままある場所に向かった。

 

 

トリコと武昭が来たのは巨大なホテルの97階にあるレストラン〔ホテルグルメ〕に来ていた。

 

「おーい!小松ー!居るかー!」

トリコが声をかけると厨房の方からコック服を着たレストランの調理長〔小松〕が出てきた。

 

「トリコさん、それに武昭君も、今日はどうしたんですか?」

 

「あぁ、実はよ武昭がコイツを捕獲してきたから調理して欲しいんだ、ほら武昭」

武昭はトリコに促されるとグルメケースを小松に渡した。

 

「これは……馬鰻ですね、僕も久しぶりに見ました、それでどうしてこれを?」

 

「はい、実は……」

武昭は小松にいままでの経緯を話した。

 

「なるほど……それで武昭君が馬鰻を捕獲して来たんですね……

じゃあ今から調理をするのでトリコさんは座って待ってて下さい、武昭君は手伝ってくれるかな?」

 

「おぉ、分かったぜ小松!旨い奴を頼むぜ!!(ジュルリ)」

 

「えっ!?小松さん(師匠)!!俺は馬鰻を調理した事無いんですよ!?」

 

「大丈夫だよ、僕が教えてあげるから、じゃあ行こう」

武昭は小松に連れられて調理場に向かった。

 

時間が経って……

 

「トリコさん!お待たせしました!!馬鰻丼と櫃まぶしです!!」

小松はトリコの前に馬鰻の料理を置いた。

 

「オォーッ!タレの焦げた匂いが漂ってくるぜぇー(ダバーッ)

ん?そういや小松、武昭はまだ出来ないのか?」

 

「少し苦戦してたみたいですよ、けど武昭君なら大丈夫ですよ」

 

「あぁ、小松の言う通りだ、俺は冷めない内にこれを食べるぜ!

この世の全ての食材に感謝を込めていただきます!ウンメェー!!」

とトリコが料理を食べ始める少し前、調理場では武昭が悩んでいた。

 

「うーん……馬鰻は師匠に教わって捌けたけど、どうするかだな……」

 

(馬肉だったら刺身が出来るんだけど、鰻は血に毒があるから生食出来ないんだったな……)

 

「師匠は調理場にあるものは自由に使って良いって言ってたけど……あっ!そうだ!!」

武昭は何かを思いつくと貯蔵庫に向かって何かを探し始めた。

 

しばらくして武昭がワゴンにクロッシュをかぶせた料理をのせてトリコの所に来た。

 

「トリコ師匠!お待たせしました!!」

 

「おっ!やっと出来たのか!待ち侘びたぜ!!」

 

「小松師匠、調理場に合った食材を使わせてもらいました」

 

「うん、僕が使っていいって言ったんだから気にしないで」

 

「それよりも早く食べさせてくれっ!」

 

「じゃあ行きます!これが俺の作った料理です!!」

武昭がクロッシュを取るとロール状のキャベツに赤と黄色のソースが掛かった料理が出てきた。

 

「武昭君、これはロールキャベツかな?」

 

「はい!()()()()を中に入れてビーツとターメリックのソースを掛けた物です」

 

「おいおい武昭、お前知らないのか?馬鰻の血には毒があるんだぞ?」

 

「トリコ師匠、俺がそんな事知らないとでも思ったんですか?」

 

「ふーん、どうやら何か細工がしてあるみたいだな、まぁ食べてみたら分かるか」

トリコは武昭の料理を食べた。

 

「オォッ!初めて生で食べたけどこんなに旨ぇなんて思わなかった!!」

 

「武昭君、僕にも少し貰えるかな?」

 

「はい、量はあるから良いですよ、どうぞ」

小松は料理を一口食べると確かめるようにしていた。

 

「なるほど……捌く時に出来るだけ血抜きをしたんだね、それに、このソースも良い工夫だよ」

 

「んあ?どう言う事だ小松」

 

「ソースに使われているターメリックとビーツはデトックス食材と言われてるんですよ」

 

「デトックス……つまり解毒作用があるって事か」

 

「さすが小松師匠、これでも俺は再生屋でもあるんで、そう言う事も教わってるんです」

 

「そうか……武昭、お前も頑張ったな、なぁ小松」

 

「はい、トリコさん……武昭君、これで()()()()()()()()()()()()

 

「え?トリコ師匠、小松師匠、試験てどう言う事ですか?」

 

「そいつは俺から話すぜ」

武昭が軽く混乱してると鉄平がレストランに入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クロッシュとはパーティーとかで料理の上にかぶせてある金属製で半円状の物です。

一応、この小説内ではトリコはコミック最終巻後の設定

食戟のソーマは原作開始の2~3年前の設定になってます。


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第1話 帰還

軽い主人公設定とソーマでの最初の原作キャラとの出会いです。


トリコ、小松、鉄平から試験の内容を聞かされた武昭は3人と一緒にIGOの開発局に来ていた。

 

「それでトリコ師匠、ここに俺に頼み事がある人がいるんですか?」

 

「あぁ……()()()が開発してた物が完成したからって数日前に連絡があってな……」

 

「トリコー!!」

 

「ハハハ!久し振りだな!お前達!!」

3人が中に入ると黒髪の女性と筋骨隆々な男性がいた。

 

「お久し振りです、リンさん、マンサム会長」

 

「えっ!?今ハンサムって言った!?」

 

「「「「言って(ねぇ)(ないです)(ないし)(ないですけど)」」」」

マンサム会長は皆から突っ込まれていた。

 

「それで会長、武昭は連れて来たけど、どうしてなんだ?」

 

「うむ、それを話す前に武昭に聞きたいんだが、武昭は小さい頃に神隠しにあってここに来たんだったな」

 

「はい、俺は元いた世界で崖から海に落ちた筈だったんです。

けど気がついた時には、小松師匠の所にいたんです」

 

「あの時はビックリしましたよー、仕込みを終えて帰ろうとした時に急に目の前に武昭君が現れたんですから」

 

「それから、俺はトリコ師匠から美食家、鉄平師匠から再生屋、小松師匠から料理人として鍛えられました」

 

「それに関しちゃ俺も驚いたぜ」

 

「けど俺はまだまだですよ、どれもスタートラインに立っただけですから」

 

「まぁ、そこまで出来るのも武昭が頑張ったからだ、それで本題だが……

実は数週間前に()()()が儂の所に来たんだ おーい」

マンサムが誰かを呼ぶと武昭達の前に長い嘴を持ち体中が毛に覆われた生物が姿を見せた。

 

「おぉ、お前は……ペアじゃねぇか!」

 

「あぁ久し振りだなトリコ」

 

「小松師匠、ペアって確か……ニトロ達からなるグルメ貴族の1人ですよね」

 

「そうだよ武昭君、ペアさんがいたから今も僕達がこうしていられるんだ。

それでペアさんがここに来た理由って何ですか?」

 

「あぁ実は俺が仲間たちと宇宙を移動してた時に小さいながらも空間の歪みを感知したんだ」

 

「それで私達の所にペアが来て詳しく調査してみたら私達が今いる地球とは違う地球が発見されたんだし」

 

「リンさん……もしかして、その見つかった地球が……俺が本来いた地球だって言うんですか?」

 

「そうだ、その地球から発生する様々なエネルギーの波長を調べたら武昭と同じ波長だったんだ」

 

「それをペアから聞いて俺や小松、鉄平があんな事をしたんだ」

 

「そうだったんですか……それでペアさん、俺はすぐに戻れるんですか?」

 

「その為に私がここの者達とある物を開発したんだ」

ペアは貝殻のヘッドか着いたペンダントを武昭に渡した。

 

「それはグルメ界に生息するジャイアントシェルから作られた小型転移装置だ」

 

「小型とは言っても中には裏の世界(うらのチャンネル)安全場所(セーフティゾーン)を利用した倉庫もあるから

沢山の物を入れる事が出来るし」

 

「その前に武昭、お前の血を一滴、ここにつけるんだ」

武昭はペアの指示通りにペンダントに血をつけた。

 

「これで、そのペンダントは武昭の物になった あとはこれを食べるんだ」

ペアが持っていたケースからある物を取り出すとトリコは見覚えがあった。

 

「おいおい、コイツは……アカシアのフルコースの一部じゃねぇか!」

 

「あぁ、ここにはGODとセンター以外のフルコースが揃っている」

 

「けど、そこまでしなくても俺のいた地球はそんなに危なくないですよ?」

 

「あぁーそれなんだが……どうやら向こうの地球にもグルメ時代の物があるみたいなんだ」

武昭の疑問にマンサムが〔厄介ごとが起きるかもな〕という表情で答えた。

 

「会長!俺の世界じゃ捕獲レベル1の猛獣が一匹だけでも危険じゃないですか!!」

 

「だからこそ、俺は武昭にこれを持って来たんだ、お前に捕獲してもらう為に……」

 

「ペアさん……ありがとうございます、それじゃ、この世の全ての食材に感謝を込めていただきます」

武昭はフルコースを食べ始めた。

 

その後、武昭が元の世界に戻ると聞いた関係者が何人か来ていた。

 

「武昭君、これは薬膳のレシピじゃ、1mmも書き漏らしてはおらんぞ」

 

「私からはカレー以外にも使えるスパイス類を渡そう」

 

「これを持っていくと良い。砥石ブーツにエプロン、それに……俺が作った包丁だ」

 

「ありがとうございます!膳王ユダさん!ダマラスカイ13世さん!メルクさん!」

 

「ヒッヒッヒッ 儂からは雲隠れ割烹や食林寺の修行で使用してる食材じゃ」

 

「安心せい、ちゃんと許可はとってきてあるからのう ため池よ」

 

「千代さん 千流さんにお礼を言っておいてください、鎮師範 俺の名前は武昭ですよ」

 

「フッフッフッ ワタシゃからも幾つかの食材を渡そうかの」

 

「鮮度は心配しないでください、私が凍らせましたから」

 

「節乃さん、ののさんありがとうございます!」

 

「武昭、コイツは師匠から渡された物だ、俺からの餞別も入ってる」

 

「鉄平師匠、向こうに行っても頑張ります」

 

「武昭君、僕からはお弁当を」

 

「武昭、戻っても元気でやれよ」

 

「小松師匠、トリコ師匠……はい!」

「じゃあ武昭、ココに来るしー」

武昭は鈴の指示された場所に向かった。

 

「ソイツは使用する時に周りに何も無い事を確認してから使うんだ、それとこれらを渡すのを忘れていた」

 

「もしも、他の人間がいると転移に巻き込まれるからな」

 

「分かりました、マンサム会長、ペアさん、じゃあ皆さん……また会いましょう!!」

マンサムから腕時計の様な物とディバッグを貰った武昭がペンダントのボタンを押すと強烈な光が発生し少ししておさまると武昭の姿が無かった。

 

「トリコさん……武昭君、またって言ってましたね」

 

「あぁ、その時は美味しい料理でも作って迎えてやれ」

小松とトリコは武昭がいた場所を見ていた。

 


 

武昭が本来いた地球のとある場所で……

 

「ん……どうやら成功したみたいだな……ってココはどこなんだ?」

武昭が考えていると腕時計型の機械のモニターに地球の映像が浮かび上がった。

 

「うおっ!?どうやら、コイツはコッチの居場所をしめしてくれるみたいだな……

どうやら俺はアマゾンにいるみたいだな……ん?」

武昭がモニターを見てると周りの植物に気になる所があった。

 

「コイツは……確か前にリンさんからコレを貰ってたな」

ポケットから箸の間に何らかの機械が付属されたスティックセンサーを出してスキャンした結果武昭に見覚えがある物だった。

 

「やっぱり、バナナキュウリだったか……うん、少し味は薄いけど間違いないか……ん?誰かいるのか?」

武昭が確認をしてるとガサガサ音がしたので、そっちに意識を向けると草むらから赤い長髪の女性が出てきた。

 

「あっ……何でここに人がいるか、わからないけど逃げ……」

 

「おっと危ない……何があったか分からないけど、まずは彼女の治療が先だな」

女性は何かを告げようとしたが、そのまま気を失ったので武昭女性を優しく受け止めて、その場から離れた。

 




エネルギーの波長に関しては、それぞれの地球に各々の波長があると思ってください。

紫水 武昭(しすい たけあき)身長208cm 体重125kg 髪 濃いめの茶色 瞳 黒色。

美食家兼料理人兼再生屋。ランキング103位。

トリコ、小松、鉄平から、それぞれの技術や知識を教わっている。

様々な料理人の店に習いに行った事もあり、そのお陰で繋がりがある。





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第2話 初捕獲

武昭が女性を保護してから時間が過ぎて夕方になったので夕食を作っていた。

 

「ん?……何かいい匂いがするな……」

 

「おっ、目を覚ましたか。体は大丈夫か?」

武昭は女性が気がついた事に気付くと作っていた料理を渡した。

 

「ほら、まずは軽く腹に何か入れるんだ」

 

「あ、あぁ悪いな……うーん、凄い良い匂いがするなぁ……ん!?」

女性は武昭が作った料理を一口食べて動きが止まっていた。

 

「どうした?もしかして口に合わなかったか?それとも体が痛いのか?」

 

「いや違うんだ!こんなに旨いスープなんて初めて飲んだんだ!!

なんで、こんな場所でこれだけの物が作れたんだ!?」

 

「あぁ、昔からこういう場所で作る事は慣れてるからな。それに食材ならそれなりに持ってたし

それでアンタに聞きたいんだから一体何があったんだ?会った時は何かから逃げてるみたいだったけど……」

 

「あっ!そうだ!おいっ!急いでここから逃げるんだ!!()()()が来ちまうぞ!!」

女性は何かを思い出すと慌てていた。

 

「まぁ待て、行動しようにも状況が分からないと動きようが無いから詳しく聞かせてくれ。

そういや自己紹介が遅れたけど俺は紫水武昭って言うんだけど」

 

「あ、あぁ……私は遠月学園て所に通ってる小林竜胆って言うんだ……」

竜胆は自分に起きた事を話し出した。

 

彼女は料理人でありながら自分でも色んな場所に行き食材を探していた。

そんな中、アマゾンの森林奥深くに今まで見た事が無い植物や動物が生息していると……

竜胆はその話を聞いて探索に向かおうとしたが案内をしてくれる人はおらず行くならば1人で行ってくれとの事だった。

 

「なるほど……それで探索してる時に何があったんだ?」

 

「……見たのは一匹のワニだったんだ……けど、私が今まで見た事も無い様なデカさだったんだ……」

竜胆はその時の事を思い出して震えていた。

 

「見た事が無いデカさのワニか……(まさかとは思うが……)」

 

グワァー!

武昭が何かを考えていると大きな獣の遠吠えが聞こえ木々を倒す音が近づいて来た。

 

「あ、あいつだ!あいつがコッチに来てるんだ!!」

 

「小林さん……安心しな何が来ても俺が相手してやるから」

 

「あ……(なんだ、この感じ……感じてた恐怖が薄らいで行く様な……)」

武昭に頭を撫でられた竜胆は落ち着いて来て震えが止まっていた。

 

「けど……あのデカさに紫水1人じゃ……」

 

「多分だけど、小林さんが見たデカいワニに心当たりがあってな……やっぱりか」

2人が話してると森の中から木々を倒してる存在が姿を見せた。

 

「やっぱり、ガララワニだったか……」

 

「なっ!?ガララワニって……おい!紫水はアイツの事を知ってんのかよ!!」

 

「アイツはガララワニって生物で通常で150年は生きるって言われてるんですよ」

 

「なっ!?150年ってなんで、そんな生物が今まで見つかってなかったんだ!?

それに、どうして紫水は、そんな事を……」

 

「その話は後にしてください、まずはアイツをどうにかしないと」

武昭は構えるとガララワニの前に立った。

 

「何する気なんだよ紫水?……逃げないと……」

 

「このままアイツを放置してたらここの動植物がなくなりますよ……

それに()()()()()が相手をしてるなら弟子の俺も相手をしないと」

 

「バカッ!そんな事を言ってる場合じゃないだろっ!!」

 

「バカかもしれないけど、俺がやりたいんだよ()()

ギャリン!ギャリン

 

「い、今の音は?……(武昭は手を擦っただけなのに、なんで金属音が……)」

 

「この世の全ての食材に感謝を込めて……いただきます!」

 

グワァァ!!

武昭が自身のルーティンを行うとガララワニが向かって来た。

 

「へっ、お前の倒し方はトリコ師匠から聞いてるんだよ!フォーク!!

 

「嘘だろ!?あれだけの大きさのワニだったら鱗の硬さもそれなりに硬い筈だ……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

けど、お前はコッチにいちゃ駄目なんだよ……ナイフ!!

武昭が左手の手刀でガララワニの首を斬り落とした事を見ていた竜胆は驚きから声が出なかった。

 

「ごちそうさまでした……さてと、竜胆、アンタ腹は空いてるか?」

 

「あ、あぁ……さっきのスープを飲んだら何か食べたくなってきた……」

 

「だったら少し待ってろ、コイツを料理してやるから……」

武昭は竜胆が呆気にとられてる中ガララワニの調理を開始した。

 

しばらくして……

 

「完成だ、ガララワニの丸焼きに唐揚げ、それに俺が持ってた野菜で酢豚ならぬ酢ワニって所だな」

 

「うわぁ……なぁ紫水って「悪いけど俺の事は武昭って呼んでくれないか?」あ、あぁわかったぜ武昭」

 

「じゃあ冷めない内に食べるか!この世の全ての食材に感謝を込めていただきます」

 

「い、いただきます……うわぁ……なんだよ!これ!?私もワニ肉を何回か食べた事があるけど今までの物とは全然違う!!」

 

「そりゃそうだ、ガララワニの肉は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そうなのか……ん?ちょっと待った武昭……なんか話を聞いてたら武昭ってココとは違う世界にいた事があるみたいに聞こえるんだけど……」

 

「うーん、まぁ別に話しても構わないかな?竜胆が信じるかどうかは分からないけど……

確かに俺は今のこの地球とは違う地球にいたんだ……」

武昭は竜胆に自分に何があったか話し竜胆は黙って聞いていた。

 

 

 




紫水武昭の追加設定。

武昭は元々ソーマの世界にいたのでトリコ世界でランキング100位以下でも遠月十傑の皆よりも料理は上手いです。

卒業生達が相手の場合は10回やって7~8回勝てるほどです。


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第3話 結束

食事を終えた武昭からグルメ世界の事を聞いた竜胆は最初は信じてなかったがガララワニと()()()を見て信じた。

 

「普通なら何を言ってんだ?って言うんだろうけど()()を見ちまったらなぁ……

それに私の体に巻いてある包帯みたいな()()も向こうの世界の物なんだろ?」

 

「えぇ、女性だから服の上から巻いてますけどソイツはドクターアロエって呼ばれてる奴です。

ちなみに本来なら1m当たり数10万円はするけど人の命には変えられませんから」

武昭が笑いながら言うが竜胆は青い顔をして固まっていた。

 

「え?じ、じゃあ……私に巻いてあるだけで……どれだけかかってるんだ?!」

 

「別に気にしなくて良いっすよ、俺だったら栽培出来ますんで」

 

「そ、そうか……なぁ武昭ってこれからどうするんだ?」

 

「どうするかなぁ?……コッチに戻ってきたはいいけど、もう死亡扱いだろうから戸籍も無いだろうし……」

 

「なぁ!だったら私と一緒に来ないか!?」

竜胆は猫の様な笑顔で武昭に聞いた。

 

「俺は構わないけど竜胆は良いのか?俺みたいな不審者なんかと一緒にいて」

 

「そんな事よりも武昭といたら旨い料理が食べれそうだからな!! お前も料理人なんだろ!!」

 

「そうか……フワァ……腹がいっぱいになったら眠くなっちまったな……

道具類を片付けないと……」

 

「だったら私がやるから武昭は先に寝てろよ」

 

「いや、俺がやったから最後までするよ……それが俺に料理を教えてくれた人の教えだから……」

 

「じゃあ手伝いくらいはさせてくれよ、あんなに旨い物をご馳走になったんだから」

竜胆がそう言ったので武昭は手伝わせながら道具類を片付けた。

 

道具類の片付けが終わって武昭達は眠りについていたが……

 

「すげぇな武昭は……他にも動物達がいるのに普通に寝てやがる……」

竜胆は武昭が所構わず寝てる事に感心していた。

 

「やっぱり、あのガララワニって奴をぶっ倒したからなんだろうな……

けど、そばにいても怖いどころか逆に安心出来るぜ……

竜胆は頬を染めながら武昭の横で眠りについた。

 

次の日の朝……

 

「ん〜……フワァ〜アレ?武昭は……」

 

「おっ、起きたのか竜胆、ほら朝食を作ったから食べるぞ」

竜胆よりも先に起きた武昭が料理を作っていた。

 

「あぁ、ありがとうな……これは……雑炊か?ヤシの実みたいのに入ってるけど……」

 

「そうだ、俺が持ってたスープの実にご飯を入れて作ったんだ」

 

「やっぱり武昭と一緒にいたら面白いな、じゃあ、いっただきまーす!」

 

「それで竜胆に聞きたいんだけど最初にガララワニを見た所はわかるか?」

 

「あ、あぁ……なんとなくは覚えているけど……そんな場所に行ってどうするんだ?」

 

「なんでコッチの世界にガララワニがいたのか調べようと思ってな……

理由があって、それが解決出来るなら解決した方が良いだろ……」

 

「そうか……じゃあ終わったら行こうぜ……(武昭がいるなら大丈夫だな……)」

料理を食べながら竜胆は安心していた。

 

朝食を終えて……

 

「そういや竜胆は体の傷はどうなんだ?」

 

「ん?あぁ、武昭がしてくれた、このドクターアロエで大丈夫だぜ」

 

「そうか、それで方向的にはどっちだ?」

 

「確か……うん、あの時は西日を背にしてたから向こう側だな」

 

「アッチか……よし竜胆、背中に乗れ」

 

「は?……イヤイヤ、別にそんな事しなくても私は行けるぜ」

 

「そうかもしれないけどそっちの方が早いからなホラ」

 

「わ、わかったよ……これで良いか?」

観念した竜胆は顔を赤くしながら武昭の背中におぶさった。

 

「そうだ、じゃあしっかり掴まってろよ」

 

「分かったよ……(武昭の体ってしまってるけど結構筋肉質だな…)」

竜胆は武昭におぶさりながら感触を確かめていた。

 

 

 




オリジナル食材

スープの実
捕獲レベル1以下 スープの木になる椰子状の木ノ実。
中に色々なスープが入っており燃えにくいのでそのまま火にかけても大丈夫。
(燃えにくいのであって燃えない訳ではない)

実の中のスープは割ってみるまで分からなく上手く割らないとスープが溢れる。


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第4話 確認

しばらくして武昭は竜胆の案内でガララワニを発見した所に到着した。

 

「竜胆、ここら辺なのか?」

 

「あぁ、大体この辺りだぜ……私は周りを気にしないで逃げたからな……」

 

「その途中で俺に会ったって訳か……ん?何か向こうから音がするな……うおっ!?」

武昭が何か音のする方に行くと地面がなく急に海になっていて落ちそうになったが寸前で水面に立っていた。

 

「危ねぇ!フゥ……ギリギリだったな……」パシャパシャ

 

「おいおい武昭、お前ってどこまで人間外れな事してんだよ」

 

「え?普通に両足を高速で動かしているだけなんだけど」

武昭は足に力を込めて陸に戻った。

 

「なんか武昭にそういう事を言うのが面倒になってきたぜ。 それにしても……なんで急にこんな所から海になってるんだ?」

 

「んあ?そうなのか?竜胆」

 

「そうだぜ、一応この辺りの地図は持ってるんだ、ホラ」

武昭は竜胆が持っていた地図と今いる場所を確認するが確か地図上で地面の所が今は海になっていた。

 

「なんか、まるで地面だった場所が海に変わったみたいだぜ」

 

「そうだな……ん?アレは、まさか……よいしょっと!」

 

「いきなりどうしたんだ武昭……って何だそれ!?」

竜胆は武昭が草むらに石を投げた事に疑問に思ったが捕まえた動物を見て驚いていた。

 

「コイツはヘビガエルって呼ばれてる向こうの世界の動物ですよ……もっとも昨日のガララワニよりは捕獲レベルは低いですけど」

 

「そうか……けど、なんでそんなのがコッチの世界にいるんだ?」

 

「ガララワニにヘビガエル……待てよ、竜胆少しココで待っててくれ」

武昭は竜胆をおろすと近くを探索し始めた。

 

少しして武昭が戻ってきた。

 

「武昭、どうかしたのか?急に何かを探してたみたいだけど」

 

「いや……ちょっとした仮説があったんだが、どうやら俺が考えてる通りみたいなんだ」

 

「武昭が考えてる通りって……」

 

「まぁ、まずはヘビガエルを料理して昼飯にするぞ」

武昭はヘビガエルの料理を始めてしばらくすると料理が出来た。

 

「じゃあ、この世の全ての食材に感謝を込めていただきます」

 

「なぁ武昭が食事の時に言うそれってなんだ?」

 

「あぁ、コイツは俺を美食屋として鍛えてくれた人が言ってた事です……

だから俺も食を愛する人間としての命に対する礼儀を忘れない為に、言ってるんです……」

 

「そうか……そうだよな私たち料理に関わる者達は命を貰ってるんだもんな……

じゃあ私もこの世の全ての食材に感謝を込めていただきます……」

武昭の話を聞いた竜胆も武昭と同じ事をしてから食事を始めた。

 

その後、食事を終えて2人は話していた。

 

「それで武昭が考えてる通りってなんだったんだ?」

 

「えぇ……どうやら、この辺りの地域の一部が向こうの世界……つまりグルメ世界と繋がってるみたいなんです」

 

「なっ!?だから、あんなガララワニやこんなヘビガエルみたいな奴がいたのか!!」

 

「そうです……その証拠に、これはさっき掬った海水です、見ててください」

武昭はポケットから何らかのセンサーの様な物を海水につけると液晶画面に様々な成分が表示されていた。

 

「武昭、その機械も向こうのなんだろ」

 

「えぇスティックセンサーって奴です……それでここを見てください」

 

「うーんと……ん?なんだ?このG・Mって」

 

美食物質(グルメマター)って呼ばれてる物で向こうの奴には必ずと言っていい程入ってる成分なんですよ」

 

「そうか……その成分が入ってるって事は向こうの世界の物って証明でもあるのか……

けど、それならココはどうするんだ?」

 

「そうだなぁ……このままにして別の人間が入ったら危ないし……」ピピピ

武昭達が解決方法を考えてると何か音がしたので確認すると武昭の腕時計からだった。

 

「ん?なんだ、この音……ここが光ってるな……」

 

〔ワハハ!どうやら問題なくそちらに到着したみたいだな!武昭〕

武昭が機械の光ってるボタンを押すと盤面が開き空中に画面が浮かび上がるとマンサムが写っていた。

 

「会長!?どうして通信が……」

 

〔あぁ、説明するのを忘れていたな、そいつは通信装置も兼ねていてな、それで通信しとるという訳だ〕

 

「そう言う事は渡す時にでも教えといてくださいよ……あっ、ちょうど良かった実はコッチで少し問題が起きたんです……」

武昭は今までの事を説明した。

 

〔なるほど……事情はわからんが世界の一部が繋がってるのか……〕

 

「はい、それに昨日ですけど捕獲レベルが低いですけどガララワニを捕獲しました」

 

〔ガララワニか……武昭程の実力なら問題はない相手だろうが、そんな存在がいるのが問題だな……〕

 

「だから、範囲はそんなに無いみたいなんで隠形樹を植えて隠そうかと」

 

〔ふむ……それならば暫くは大丈夫か……まぁ、こちらでもどうするか話し合ってみよう では〕

マンサムは通信を切った。

 

「さてと、まずはどれだけの大きさか見ないとな……竜胆、悪いけど背中に乗ってくれるか?」

 

「あぁ、構わないけど、どうするんだ?」

 

「どれだけ広がってるか見るんですよ……ちゃんと捕まっててくださいね?せーの!」

 

「ちょ、ちょっと待て武昭……何をする……ウワァァァ……

竜胆は武昭が何をする前に上空へジャンプされて顔を青くしていた。

 

 



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第5話 新顔

グルメ時代と繋がってる地域を確認して処理した武昭と竜胆は、その場から離れていた。

 

「全く……おいっ!武昭!!あんな事するなら先に言えよっ!!」

 

「悪いって謝ってるんだろう……確かに言わなかった俺が悪いけど……

それで、これから竜胆はどうするんだ?」

 

「うーん?それは武昭に着いて行くに決まってるだろ?」

 

「いや、それは無理だぞ?だって俺は向こうの世界から戻ってきたとはいえ簡単に言えば不法入国だからな」

武昭の言葉に竜胆はアッとした表情を見せた。

 

「だったら武昭はどうやってこの国から出るんだ?」

 

「まぁ、普通に海の上を歩いていけばいいだろ」

 

「いやいや、普通の人間は海の上を歩けないからな」

 

「え?そんな事言っても俺は歩けるんですけど……」

 

「もういいや、武昭と話してると何かが変わる気がするぜ……」

 

「そっか、じゃあ俺はもう行くよ、アッ、そうだ竜胆にこれでも渡しておくか」

武昭はポケットからドロップが数個入ったガラス瓶を渡した。

 

「んー?コイツは飴か?」

 

「そうだけど、ただの飴じゃなくて、こうすると……」

武昭が瓶を軽く振ると飴の色が変わった。

 

「コレはミラクルドロップって言って、こうやって振るたびに味が変わる奴なんだ」

 

「へぇー そうなのか……うん苺味だな……次はオレンジか」

 

「今度会う時には、また美味しい物を作ってやるよ」

 

「あぁ!待ってるぜ!武昭!!」

握手をすると武昭は、そのまま海上を駆けていった。

 

「またか……よーし、今度会う時までに私も料理の腕を上げないとなって!うん!葡萄味か!!」

竜胆はドロップを食べながら、その場を離れた。

 

 

それから1~2週間経ったある日の事……

 

「あーん!また勝てなかったぁ!!」

 

「よーし!武昭!!今度は俺の相手をしてもらうぜ!!」

 

「あぁ、構わないぞリョウ」

アマゾンから移動した武昭はデンマークにある薙切インターナショナルに来ていた。

 

 

「さぁ!どっちの料理が美味かった!?」

 

「「武昭の方だよ」」

審査員のベルタとシーラは武昭に票を入れた。

 

「ガァァァ!なんで俺の料理が負けたんだぁ!!」

 

「リョウの料理も悪くないだけどな……ただスープを作る時に野菜を入れ過ぎたから少し青臭いんだ……」

 

「チッ、確かに武昭の言う通りだぜ……今度こそ俺が勝ってやるぜ!!」

リョウがバンダナを取ると雰囲気が柔らかくなった。

 

「それにしても……武昭って、本当に料理が上手いよな……どこでそんな腕前を身に付けたんだ?」

 

「まぁ、色んな所でって事しか言えないよ」

 

「〔ムゥー〕武昭って本当に秘密主義よね!そんなに私達に話したくないの事があるのかしら!!」

リョウと武昭が話してると頬を膨らませたアリスが近くに来ていた。

 

「まぁ、人には誰しも言いたくない事があるって事だよ」

 

「おぉ、また料理対決をしていたのか」

3人が話しているとアリスの父親でもある薙切 宗衛が部屋に入ってきた。

 

「アッ、宗衛さんじゃないですか、どうかしたんですか?」

 

「うん、ちょっとね武昭君に話したい事があってね、私の部屋で話そうか」

促された武昭は宗衛と共に出ていったがアリスとリョウは、それを見て話していた。

 

「ねぇリョウ君、最近お父様と武昭が2人きりで話す事が多くないかしら?」

 

「そうっすね……まぁ、良いんじゃないんすか?」

 

「〔ムゥー〕もう!リョウ君たら無関心なんだから!!良いわ!私が聞き出して見せるわよ!!」

 

「アッ、お嬢……全く仕方ないな……」

リョウはアリスの後を追いかけた。



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第6話 案件

武昭が宗衛と一緒に部屋に行くとアリスの母親でもある薙切レオノーラがいた。

 

「アッ、レオノーラさんもいたんですね」

 

「それはそうデース、私とナッさんは常に一緒なんですカラー」

 

「ハハハ、私も同じ気持ちだよレオノーラ……それで武昭君を呼んだのは【G案件】らしき物が見つかったからだ」

G案件という言葉を聞いた3人は真面目な表情になっていた。

 

「それで……今回の場所はどこですか?」

 

「うむ、今回は東南アジアの、この辺りらしい」

宗衛はモニターに地図を写し出すとある地域を丸で囲った。

 

「それで、今回の件がG案件だと思う理由はなんですか?」

 

「それは、この様な物が見つかったからだ」

宗衛はアタッシュケースを取り出すと中からある物を出したが武昭はそれに見覚えがあった。

それは金色に輝く人参だった。

 

「コイツは……やっぱりゴールド人参じゃないっすか」

 

「やっぱり武昭君が知ってる物だったか……最初、それは塗料でも塗られた物だと思われていたらしい」

 

「でしょうね、コイツは向こうの世界での普通の畑でも極稀に出来る物ですからね」

 

「私達は以前に武昭君から様々なデータを見せてもらっていたから、それに心当たりがあったんだ」

 

「それで武昭君、コレはどう料理するんですカ?」

 

「コイツは柔らかくて糖度も高いから野菜ジュースにすると美味しいです」

 

「そうか、それは後で良いとして武昭君には、そこに向かってもらいたいんだ」

 

「分かりました、出発には、どれだけかかりますか?」

 

「今から空港に向かってくれれば良いのだが武昭君は大丈夫か?」

 

「えぇ、俺はいつでも出れますよ」

 

「そうか……ならコレがチケットだ、それと情報が書かれた書類だ。後は現地に案内人がいる」

武昭は宗衛からチケットと書類を受け取ると、そのまま空港に向かった。

 

 

「武昭だけでどこに行くのかしら……リョウ君!私達も行くわよ!!」

 

「はぁ……分かりましたよお嬢……」

リョウはアリスを止めれないと判断して一緒に空港に向かった。

 

 

 

飛行機の中で武昭は宗衛から貰った書類を見ていた。

 

「少し前から今まで見た事無い作物などが発見されている……か」

 

「紫水さん、そろそろ着陸します」

 

「はい、ありがとうございます」

武昭は目的地に到着した。

 

(どうやら目的地に着いたみたいね……行くわよ!リョウくん!!)

 

(ヘーイ、わかりやしたー……なんだろうな……この嫌な感じは……)

そんな中黙って飛行機に乗っていたアリスとリョウは武昭に気づかれない様に降りて後をつけていった。

 

 

しばらくして武昭は宗衛から聞いた案内人の所に来ていた。

 

「あなたが宗衛さんから聞いてた案内人ですか?」

 

「あぁ、そうだ……だが俺が案内出来るのは地図上だけでしか無いんだ」

 

「まぁ、何が起こるかわからないから構いませんけど それに1人だけの方が動きやすいですから」

 

「すまないな……それであの品が見つかった場所はここら辺りになる」

案内人は地図で、その場所を示した。

 

「うーん、結構な奥ですね……何か以前と変わった様な事はありませんでしたか?」

 

「以前とか……そういえば、少し前に山に入った奴から大きな獣を見たと聞いたな」

 

「大きな獣って、どんな奴でしたか?」

 

「そいつが言うには体長7~8m程の真っ黒な熊だってよ……」

 

「体長7~8m程の真っ黒な熊……(まさか……)わかりました、じゃあ出発しますんで」

武昭は案内人から情報を聞くと現場に向かった。



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第7話 真相

案内人から情報を聞いた武昭はジャングル内を歩いていた。

 

「ゴールド人参が見つかったのは、この先みたいだけど……ん?コイツは……ベーコンの葉じゃねえか……」

武昭はベーコンの葉を見つけると一枚むしり取って食べてみた。

 

「うん、やっぱりベーコンの葉だ……けど、コレが出来るって事はここの土壌がそれだけ栄養豊富って事なのか……」

 

「ねぇねぇ!それって何なの!?初めて見たんだけど!!」

 

「なっ!?何でここにアリスがいるんだ!!」

武昭はアリスがいた事に驚いていた。

 

「悪いな武昭、お嬢を止められなかった…。まぁ、それで一緒に来た俺も悪いけど……」

 

「リョウも来てたのか……はぁ興味を持ったアリスを止めるのは一苦労だしな……」

 

「〔ムゥ〜〕だって武昭が隠し事をしてるから悪いのよ!それだから私が来たんだから!!」

 

「はぁ……着いて来たもんはしょうがないから俺の言う事は聞いてくれ……それなら一緒に来ても構わないぞ」

 

「いやよ!私は好きに進みたいんだから!!」

 

「お嬢、ここは武昭の言う事を聞いた方が良いっすよ……」

 

「全く……(ん?なんだ……この爬虫類系の匂いは……)なっ!?危ない!アリス!リョウ!!グワッ!」

武昭が何かを感じてアリス達の方を見ると何が飛んで来たので体で庇うとソレに噛まれていた。

 

「武昭?……どうしたの……って……コレって蛇?」

 

「お嬢、俺はこんな蛇見た事無いっすよ……」

2人が武昭の体を確認すると青銅色の体色の頭部が2つある蛇が数匹噛みついていた。

 

「触るなよ2人共……コイツはベノムワインダーって言って一匹にでも噛まれたら数時間で死に至る猛毒を持ってるんだ……」

 

「一匹にでもって……おい!武昭!お前何匹に噛まれてるんだよ!?」

 

「リョウ君!急いで蛇を離さないと!!」

 

「大丈夫だ2人共……俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……少し離れてろ……」

武昭はポケットから数枚の葉っぱを取り出すと口に入れて噛み始めた。

 

「おい!そんな事してる暇があるなら……なんだ?この匂いは……」

 

「ミントみたいな匂いだけど……そんなに嫌な感じはしないわ……」

そんな事をしてるとベノムワインダーの動きが鈍くなり体から落ちた。

 

「変にコイツを逃すわけにはいかないな……これで良しっと……」

武昭はベノムワインダーにノッキングをすると持っていた透明な入れ物(グルメケース)に入れた。

 

「アリスとリョウは噛まれてないか?」

 

「え、えぇ……私達は武昭が庇ってくれたから大丈夫よ……」

 

「おい……それよりも、どう言う事か俺達に話してくれるんだろうな?」

 

「わかったよ……こんな所見られちまったら話さない方が面倒になりそうだからな……

まずは、向こうに拓けた所があるから、そこで話すよ」

武昭は地図を確認しながら移動した。

 

 

それから夜になると……

 

「なるほど……武昭は違う世界にいた事があるのか……」ムシャムシャ

 

「けど、それを私に内緒にしてる事無いじゃない!!」グビグビ

 

「宗衛さんからはアリスに話すと直ぐに喋るからって言われてたんだ」ガツガツ

 

「確かに……お嬢ならありえますね……」

アリスとリョウは武昭から話を聞きながら夕食を食べていた。

 

「まぁ……もしもこんな事がバレても俺がいなくなれば良いだけだからな……」

 

「武昭……大丈夫よ、私は絶対に話さないわ……もしもそんな事があったら私の命を奪っても構わないわ」

 

「アリス……そんな事はしないよ、それに俺は2人なら黙ってくれると信じて、この話をしたんだからな」

 

「そうか……ありがとうな武昭……」

 

「私からもありがとうね信じてくれて」

 

「それに2人はまだ俺に勝ってないんだからいなくなられても困るだろうし」

 

「アァッ!?だったら今度の勝負で勝ってやらぁ!!」

 

「待ちなさいよリョウ君!私が先に武昭に勝つんだから!!」

2人はいつもの絡みをしていたが武昭は普通に食べていた。

 

「それにしても……武昭はなんでここに来たのかしら?」

 

「あぁ、宗衛さんからここら辺でG案件……グルメ時代関係の情報を教えてもらったんだ」

 

「だったら武昭がたまにいなくなってたのは、その案件があったからなんだな」

リョウの言葉に武昭は黙ってうなづいた。

 




オリジナル生物。

ベノムワインダー 爬虫類 捕獲レベル1~3(体の大きさによって変わる)。
青銅色の体色の頭部が2つあり噛まれると数分で死に至る程の強猛毒を持っている。
血液は上手く毒抜きをすると強力な精力剤になる。
人によっては酒に漬ける事もある。
皮はベルトや財布等の皮製品になり、それなりの高級品。
身は少し癖があるが美味しい。


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第8話 威嚇

武昭から事情を聞いたアリスとリョウは、これからの事に着いて話し合っていた。

 

「それで武昭……お前は、まだここに居るのか?」

 

「あぁ、宗衛さんから貰った書類には気になる事が書いてあったからな」

 

「気になる事って……何が書いてあったのかしら?」

 

「まだ書類を読んだだけで、この辺りを詳しく調べちゃいないけど多分()()()()()()の生物がいる可能性があるんだ」

 

「なぁ、武昭……お前は、そいつが何か分かってるのか?」

 

「ここに来る前に案内人から聞いたんだが……7~8m程の大きさの黒い熊らしいんだ」

 

「7~8m程の大きさの熊って……ねぇリョウ君、普通の熊ってどれ位の大きさだったかしら?」

 

「俺も詳しくは知らないっすけど……確か最大でも3mで300kgじゃなかったか?」

 

「確かにリョウの言う通りだけど、それ位の大きさじゃ向こうなら子熊程だぞ」

 

「それだけの大きさが子熊程って……」

 

グギャーーー!!

 

「なっ!?何だ!今の鳴き声は!?」

 

「物凄く大きかったけど……待って、何か木が倒れる様な音もしてるんだけど……」

リョウとアリスが鳴き声に驚いているとジャングルの奥から何かが近づいていた。

 

「チッ、まさかとは思ったけど……()()()()()()()()()()()

 

ガァーッ!!!

武昭が何か心当たりがある事に気付いていると木々を倒して7~8m程の大きさの熊が姿を見せた。

 

「おいおいおい……武昭、アイツがお前の言ってた奴で間違いないのか?」

 

「あぁ……俺の予想通りだ……リョウ、悪いがアリスを連れてここから離れろ」

 

「待ちなさいよ武昭!あなた、もしかして()()と戦う気なの!?」

 

「当然だろ? 今ここでアイツの……黒鉄熊(くろがねぐま)の相手が出来るのは俺しかいないんだからな」

武昭は上着を脱ぐと黒鉄熊の前に立った。

 

「それに……ここで逃げたら俺たちはアイツに食われるだけだ」

 

「武昭……もしかして私達を守る為に?……私達が勝手についてきたのに……」

 

「まぁ、それもあるけど、俺は美食家だからな……食材から背を背ける訳には行かないんだよ!!」

 

ハァーッ!

 

「なっ!?何だ!あの武昭の後ろに見えるのは!……幻か……?」

 

「う、ううんリョウ君……幻なんかじゃないわ……私にも見えてるもの……」

武昭が体に力を込めると背後に鎧を纏った4本腕のそれぞれに武器を持った骸骨の姿が現れリョウとアリスにも見えていた。

 

「へっ、こっちに戻ってきて久し振りに本気で戦えるぜ!」ギャリン!ギャリン!!

 

「この世の全ての食材に感謝を込めて……いただきます!」

 

グギャー!!

 

「おっと!テメェ如きに苦戦してたら師匠達に合わせる顔が無いんだよ!! アックス!

黒鉄熊が向かってきたので武昭が右手を振るうと斧の幻影が見えて熊の右腕を切り落とした。

 

「悪いがこれ以上お前に構ってる暇は無いからな!鉈ぶるい!!

腕を落としても熊が引かなかったので武昭が両手を合わせて上から振るうと鉈の幻影が見えて熊の首を切り落とした。

 

「ご馳走さまでした……」

 

「本当に……あんな奴を倒しやがった……」

 

「武昭……大丈夫なの?……」

 

「あぁ、コイツはもう始末したからな……それよりも早く処理しないと!リョウ!アリス!手伝ってくれ!!」

唖然としてた2人は武昭に声をかけられると行動を開始した。




黒鉄熊 哺乳獣類 捕獲レベル22
黒く硬い体毛を持っており、その硬さは鉄に近く生半可な物では傷一つつかない。
アイスヘルに生息する白銀グリズリーとは先祖が同じで温暖な地域に移動したものが黒鉄熊に進化した。

その毛皮は硬く軍隊などでは防弾繊維として使われている。

肉はクセがあるがそのクセが良いと言う人もいる。

ちなみに熊の手の料理はそれなりに高く取引される。


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第9話 実食

武昭が黒鉄熊を始末した後……

 

「おいっ!こっちの方は下茹でが終わったぞ!!」

 

「そうか!なら、次はそこの鍋に入れて2時間蒸してくれ!!」

 

「武昭!味見をお願い!!」

 

「あぁ……少し臭みが出てるから生姜をスライスした物を入れて臭みを消してくれ」

黒鉄熊を捕獲してきた武昭達は薙切インターナショナルに戻っていた。

 

アリスとリョウは武昭に着いていった事が宗衛とエレノーラにバレて叱られていた。

 

その後、武昭は宗衛に許可を貰いアリスとリョウと共に採取してきた食材の処理をしていた。

 

「さてと、まずは黒鉄熊の処理からだな」

 

「武昭、俺達は何をすれば良いんだ?」

 

「あぁ、コイツを捌くから、その後の処理を頼むよ」

 

「捌くって言うけど……これってすごい硬いわよ?」

アリスとリョウは黒鉄熊を触って感触を確認していた。

 

「どうやって捌くんだ?あの時みたく手でやるのか?」

 

「いや……久し振りに()()()を使うよ」

 

「うわぁ……綺麗な包丁ね……」

 

「それに見てるだけでも俺達が持ってる包丁とは何かが違う事が分かるぜ……」

アリスとリョウは武昭が出した包丁に見とれていた。

 

「これは俺が向こうの世界で使ってた包丁で作った人の名前が付けられてて【メルク包丁】って言うんだ」

 

「メルクって人が作った包丁なのか」

 

「あぁ、向こうの世界じゃ普通のメルク包丁でも数十億円するからな」

 

「数十億円って……ねぇ、ちなみに武昭のその包丁は幾らなのかしら?」

 

「ん?俺の奴はメルクさんに直接材料を持って行って作って貰ったから正確な値段は分からないけど、包丁の素材だけだったら2~300万って所かな?」

それを聞いたアリスとリョウは驚愕の表情を浮かべていた。

 

「驚いてる所悪いが、コイツは早くしないと肉に血の臭みがつくから手伝いを頼む」ピシュン

 

「なっ!?……一瞬であの大きさの毛皮を剥いだって言うのか……」

 

「私でも出来ない事は無いとは思うけど……あれだけの速さとなると……無理だわ……」

 

「よしっ……リョウは肋肉の蒸し物、アリスは胸肉でハンバーグをそれぞれ作ってくれ

残った部分は俺が作るし、軽く俺の指示にも従ってもらうからな」

 

「確かに……こんな奴は俺は見た事は無いからな……」

 

「私も始めてみる食材だから、その方が良いわ」

アリスとリョウは武昭の指示を受けながら黒鉄熊などの調理を開始した。

 

しばらくして……

 

「オォッ!これが今回武昭君達が捕獲してきた物で作った料理なのか!」

宗衛達は武昭達に呼ばれて食堂に来ていた。

 

「えぇ、今回はアリスとリョウにも手伝ってもらいましたけどね……

まぁ、まずは冷めない内に食べましょう!」

 

【この世の全ての食材に感謝を込めて頂きます!!】

武昭の合図で皆は言うと食事を開始した。

 

「ウワァ……このスープ凄い美味しいよ!ベルタ!!」

 

「そうだね!シーラ!お肉も凄く柔らかいし!!」

 

「それは腿肉の所だな、温度を常に一定にしてある時間煮込むと良い出汁が出てホロホロに柔らかくなるんだ」

 

「うむ、このハンバーグは臭みが無く適度な歯応えがある」

 

「それは私が武昭に指示されて作ったのよ」

 

「おーう!この蒸し物も骨から綺麗に剥がれマース!!」

 

「それは肋肉を下茹でしてから蒸した物です……」

皆は色々と話しながら食事をしていた。

 

その後……

 

「そうだ、宗衛さん……これでちょっと作って欲しい物があるんですけど……」

「うん?何かな」

 

「これなんですけど……向こうの世界じゃ……」

「ふむ、なるほど……」

 

「全く……ダメですよアリス……勝手に着いて行ったりシタラ」

「はーいお母様……」

 

「リョウだけ良いなぁ!武昭に着いて行って!!」

「私達だって一緒に行きたかったのに!!」

「そんな事言うけど……俺だって被害者なんだぜ……」

 

「そうだ武昭君、明日は一緒に着いて来て欲しい所があるんだが」

「はぁ、俺は特に予定も無いですけどどこに行くんですか?」

「あぁ、それは……日本だ」

宗衛は武昭に明日の予定を話していた。



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第10話 出会い

宗衛に連れられて武昭が来たのは日本にある遠月学園という所だった。

 

そして武昭と宗衛は学園長室で宗衛の父親で学園長でもある薙切仙右衛門に会っていた。

 

「久し振りだな、宗衛よ」

 

「えぇ、そうですねお父さん」

 

「それで、そこにいるのが……」

 

「初めまして、宗衛さんの所にお世話になってる紫水武昭と言います」

 

「ふむ、事情は宗衛から聞いてはいるが……本当に君は異世界にいたのかね?」ギロッ

 

「えぇ、こんな事を急に言われてもなかなか信じられないだろうですけど……

(うーん……軽く俺の事を威嚇してるみたいだけど、これ位なら向こうでも受けた事はあるな……)」

武昭は仙右衛門の威嚇を軽く流していた。

 

「ほぉ……なかなかの胆力の持ち主みたいじゃな……では何か儂に作ってはくれぬか?」

 

「えぇ、構いませんけど……好き嫌いとかはありますか?」

 

「特にはないぞ……それと、あるならば()()()()()()を使って欲しいのだが?」

 

「向こうの食材っすか……えぇ、わかりました、じゃあ作って来ます……厨房はどこにありますか?」

 

「それならば、私が案内しよう」

武昭は宗衛に連れられて近くの厨房に向かった。

 

しばらくして武昭が調理を終えて戻ってきた。

 

「おまたせしました」

 

「ふむ……これは……砂?……にシャーベットを掛けただけにしか見えぬが?」ギロッ

仙右衛門は武昭が四角い砂にシャーベットが掛かった物を見て睨みつけた。

 

「まぁ、こっちの人からすれば、そう思いますよね……けど一口食べてみてください

アッ、宗衛さんの分もあるから、どうぞ」

 

「すまないな、ありがとう……確かに普通の砂にしか見えないが、武昭君が作った物なら問題は無いからな オォッ!」

 

「なんと!大丈夫か!宗衛!!」

 

「はい!大丈夫です……これは砂に見えるが食べられるのか!それに、このシャーベットが清涼感を増してくれている!!」

 

「それは砂氷のシャーべ林檎のシャーベット掛けです」

 

「つまり、これは食べられる砂という事か……オォッ!」

武昭が作ったスイーツを食べた仙右衛門は長く歩いた砂漠でやっと見つけたオアシスで水浴びをしてる幻を見た。

 

「えっと……宗衛さん、これは……」

 

「あぁ、薙切一族に伝わる物でね、おはだけと呼ばれる物なんだ」

武昭は仙右衛門が着物を脱いでいた事を宗衛に尋ねていた。

 

その後……

 

「フゥ……最近暑かったが、あれで少し涼しくなったわい」

 

「だから武昭君はあれを作ったのかい?」

 

「えぇ、砂氷はサンドガーデンと言う砂漠地帯で涼を取る為に食べられている物でしたから。

それにシャーべ林檎は掛けた物の清涼感を上げる効果もあるんです」

 

「なるほど、確かに儂らとは違う世界に居たみたいだな……よし、お主の入学を許可しよう」

 

「ん?宗衛さん、今回俺を連れて来た理由って、それだったんですか?」

 

「あぁ、父には武昭君が、こっちの世界で暮らすのに必要な事をお願いしていたんだよ」

 

「そうだったんですか……ありがとうございます、仙右衛門さん」

 

「ハッハッハッ、気にするでない、それに儂からも頼みたい事があっての……」

 

「頼みたい事?俺が出来る事なら出来る範囲で手伝いますけど……」

 

「ふむ……実は……」

仙右衛門は武昭にある事を話していた。

 

しばらくして武昭は仙右衛門から学園で使用する住居に来ていた。

 

「ふーん、ここが俺の家になるのか……」

 

「あぁ、父さんからは家賃とかの費用は心配するなと聞かされている」

 

「別に、それ位のお金とかだったらあるんですけどね……」ドサッ

武昭は懐から袋を出して中身を見せた。

 

「これは……ダイヤだね……私にはよく分からないがかなりの価値だな…」

 

「向こうの世界には砂の代わりに砂金やダイヤで出来たジュエル砂漠って場所があるんですよ」

 

「それも、さっき出してくれた砂氷と同じ所のかい?」

 

「はい、サンドガーデンです それで宗衛さんの知り合いに宝石の鑑定士とかいませんか?

とりあえずの手持ちが欲しくて」

 

「あぁ、それならば今は私の持ち合わせを渡しておくよ。

それで、そのダイヤが売れたら、その分を引いて武昭君に支払おう」

 

「そうですか、ありがとうございます」

 

「さてと、私は用事ががあるから席を外すよ武昭君は好きに過ごしててくれ」

 

「だったら俺は学園内を歩いてみます」

 

「では私が用事を終えたら連絡をするよ」

武昭と宗衛はそれぞれ出て行った。

 

 

 




因みに年齢はソーマ達と同級生にしたいと思います。

今回の話で武昭の年齢を中等部1年生の生徒と同じにします。(13歳)

それと宗衛の仙右衛門の呼び方は、今回の話に書いてある物にします。


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第11話 再会と新たな出会い

少し編集します。


宗衛と来てから数日後……

武昭は1人でリンゴを食べながら遠月学園内を歩いていた。

 

「まさか、俺がここに通う事になるなんてな……」カシュッ

 

「んー?もしかして、お前……武昭か?」

武昭が声がした方を見ると学園の制服を着た竜胆と紫色の髪の小柄な少女がいた。

 

「おぉ、久し振りだな竜胆」

 

「本当にそうだなぁ!なんでここにいるんだ?」

 

「あぁ、来月から俺もここに通う事になったんだよ」

 

「そうだったのか!いやー、これでまた色んな美味しい物が食べれるぜ!!」

竜胆が肩を組んでくると一緒にいた少女が話しかけてきた。

 

「ねぇ竜胆、彼は誰なの?」

 

「初めまして、来月からここの()()()1()()に通う事になった紫水武昭って言います」

 

「そう……私は中等部3年の茜ヶ久保もも、よろしく」

 

「なぁ、武昭、また何か食わしてくれよー ()()()()()()()()()()()()()

 

「まぁ、一応、持ってはいますけど……直ぐに出来るのは()()()()位ですよ」

 

「ちょっと……君もデザートを作れるの?」

 

「それなりに作れますよ、師匠からは色々なジャンルの料理を叩き込まれましたから」

 

「だったら、ももに見せて……()()()()()……なんて言わせない様にしてあげる」

 

「別にバカにした訳じゃないんですけどね……じゃあ何処か厨房に案内してください」

 

「分かった、一緒に来て……」

 

「フッフーン、何か面白そうだぜー!!」

竜胆はももに連れて行かれる武昭の後をついて行った。

 

 

ももが準備した厨房で武昭が何を作るか考えていた。

 

「さてと、何にしようかなぁ……ん?これは……」

武昭は厨房の角に置いてあった材料に気がついた。

 

 

一方、ももは竜胆と武昭を待っていた。

 

「ねぇ、竜胆はどうやってあの子と知り合ったの?」

 

「アァー……それは、そのー……(ももには、あまりあっちの世界の事を話す訳には……)」

 

「お待たせしましたー」

竜胆が言い淀んでると武昭がワゴンに料理を載せて来た。

 

「キッチンに合った果物を使ったフルーツグラタンです」

 

「おぉ……カスタードの焼けた良い匂いがして来るぜ……」

 

「確かに匂いは良いけど問題は味だよ……んっ!?何!この味は!!」

 

「キッチンに置いてあった熟し過ぎたフルーツをカスタードに混ぜて作ったんだ」

 

「それとフルーツを合わせて焼き上げたのか……うん!美味しいぜ!!」

 

「けど、そんな事をしたら味がクドくなるのに凄くサッパリしてる……なんで?」

 

「あぁ、それは()()()の果汁を絞って焼き上げた上から掛けたんだ」

 

「だとしても、こんなにサッパリする柑橘類なんて味わった事が無いよ!!」

ももは武昭に詰め寄った。

 

「ねぇ!何の柑橘類を使ったの!!出来るならももにも分けて!!」

 

「それは言えないな……()()()()()()()()()()()

 

(なるほど……この柑橘類があっちの世界の物を使ってるのか……)

竜胆は事情を理解していた。

 

その後、ももと別れた武昭は竜胆と歩いていた。

 

「それにしても武昭が私よりも年下だとは思わなかったぜ」

 

「俺も竜胆が中等部だと思ってなかったけどね」

 

「それにしても、あのももがなぁ……」

竜胆は別れる時に武昭に迫っていたももの事を思い出して苦笑していた。

 

「そういや武昭は私と別れてからどうしてたんだ?」

 

「あぁ、あの後海を歩いていたらデンマークに到着してさ、色々事情があって薙切インターナショナルって所で世話になる事になったんだ」

 

「ふーん、その関係で遠月に来たって事か……まっ、武昭に会えたから私は良かったけどな」ニカッ

 

「そこに()()()()()()()()()()がいてさ暇があれば俺に対決を挑んでくるんだよ」

 

「そっか……なぁ、そのアリスって子は武昭の事情は知ってるのか?」

 

「知ってると言うか……無理やり知ったって所だな」

武昭は苦笑しながら理由を話した。

 

そんな中、武昭の懐から何かの音がしたので取り出すと小型のタブレットだった。

 

「チッ、また向こうの生物がコッチの世界に来たみたいだな、悪い竜胆」

 

「待てよ、私も着いていくぜ、その事を知ってるんだしよ、それに武昭がいるなら大丈夫だろ?」

 

「俺がいても安全とは限らないぞ、自己責任で着いてくるなら良いぞ」

 

「あぁ、私は自分が行きたいから行くんだ、何があっても気にしないで良いぞ!」

 

「はぁ、分かったよ、じゃあ行くから俺に掴まれ」

根気負けした武昭が言うと竜胆は背中におぶさって来た。

 

「えっと、俺は掴まれって言ったんだが……」

 

「別に良いだろ……私がこうしたかったんだから……」

 

「分かったよ……距離があるから()()()使()()()

武昭が両手を合わせて離すと歪んだ空間が現れた。

 

「武昭、それ……はぁ聞いても意味が無いからな」

 

「じゃあ行くか……裏の世界(うらのチャンネル)【ワープロード】発動」

武昭が竜胆を背負ったまま、ワープロードに入ると、その場から姿が消えた。

 




武昭はペアとアナザ、ニュースを食してるので裏の世界を発動出来るが、そんなに長時間は発動出来ない。


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第12話 敵対

ワープロードを発動させた武昭と竜胆はどこかの港に到着していた。

 

「よいしょっと、着いたか、大丈夫か?竜胆」

 

「あぁ、大丈夫だけど、ここって……寒っ!!

 

「それは、そうだろうな……そんな服装だったら寒いだろ ほら」

武昭は震える竜胆に自分の上着を渡した。

 

(因みに武昭達が来た場所は北極圏のアイスランドです。)

 

「まぁ、俺が着てたから汗臭いかもしれないけど、無いよりはマシだろ」

 

「べ、別にそれ位気にしないぞ……勝手に着いてきた私が悪いんだし」

 

「そうか、それにしても……ここら辺から反応はあったんだけど……」

 

「あぁ……やっぱり武昭だったのか」

声の方を見ると防寒具を着たリョウとアリスが立っていた。

 

「おぉ、リョウとアリスかお前たちがここにいるって事は……」

 

「そうだ、俺たちも反応を確認したから来たんだ……」

 

「〔ムゥ〜)ちょっと武昭!そこの女は誰なの!?」

 

「〔ムス〕おい武昭、この馴れ馴れしい女は誰なんだよ?」

 

「あぁ、彼女は俺が前に助けた小林竜胆、彼女は薙切インターナショナルの薙切アリスだ」ギュッ

 

「そうなんだ……初めまして……小林竜胆って言います」ギュッ

 

「あら、ご丁寧に私は薙切アリスよ、よろしく」

 

「ちなみに俺は黒木場リョウって言って、アリスお嬢の付き人やってるっす」

3人は自己紹介をしたがが竜胆とアリスは握手をしていた。

 

「ハイハイ、顔見せはそれだけにして、とりあえずは今の状況を確認するから移動するぞ」パンパン

武昭が手を鳴らすと女性陣は手を離した。

 

(はぁ……多分だけど、お嬢とあの竜胆って女は武昭の事が……)

リョウは何かを思ってため息をついていた。

 

その後、皆は近くの宿の一室で話していた。

「それで、この辺りの人達から聞いた話だと、ここから数km先にある島に変な生き物が見つかったらしい」

 

「あぁ……詳しく聞いたらトドみたいな牙があって体が丸かったって証言が幾つも出てきたぜ……」

 

「武昭、トドみたいな牙があって丸い体の生き物って……」

 

「やっぱり()()()()()()()()()()()()?」

3人の意見を聞いた武昭は黙ってうなづいた。

 

「って言うか、なんで貴女が向こうの世界の事を知ってるのよ!」

 

「そんなの武昭に聞いたからに決まってんだろ?」

 

「何よ!私なんか一緒に捕獲にも行ってるんだから!!」

 

「いやお嬢……あれは黙ってついて行ったんじゃ……」

 

「へっ!私だってな!武昭の捕獲を見た事があるんだからな!!」

アリスと竜胆は言い合いをしていた。

 

「それで武昭……何か思い当たる生物はいるのか?」

 

「あぁ、多分だけど、コイツだろうな」

武昭がタブレットを操作して画面に、その生物の映像を映し出した。

 

【ガウチ 哺乳獣類 捕獲レベル13】と映像の下に表示されていた。

 

「これが今回の獲物って事なのね」

 

「あぁ、その島はガウチがいるには条件が合ってるらしいんだ」

 

「それで、どうやって島まで行くんだ?」

 

「そうね、街の人達が船を出す事は出来ないって言ってたし……」

 

「住民たちからしたら一つの財産すからね、そんな生物がいる所まで連れて行くのも……」

 

「うーん……仕方ないな、普通に船を買うか」

 

「え?船を買うって武昭は、それだけの金を持ってるのか?」

 

「大きさにもよるけど、結構な金額がするぞ」

 

「もし無かったら私が立て替えてあげるわよ?」

 

「いや、現金はないけど、これ位なら持ってるんだ」

武昭は幾つかのダイヤをテーブルに置いた。

(これは宗衛さんに渡した物とは別の物です)

 

「まぁ、なんで持ってるかって聞きたいけど……」

 

「「「武昭だから良いか」」」

武昭は3人に何を言われても普通にしていた。




武昭は氷点下15℃くらいまでなら防寒具なしでも平気です。


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第13話 イレギュラー

何とか船を手に入れた武昭は目的地に向かっていたが……

 

「いやー船が手に入って良かったな」モグモグ

 

「それに、かなりの大きさの船よ」

 

「そうっすね……20tクラスっすからね」

 

「けど、武昭ってまだ食べるのか?」

皆は船室で話していたが武昭は食事をしていた。

 

「んあ?あぁ、腹が減ったからな、皆も食べるなら構わないぞ」ムシャムシャ

 

「いや……見てるだけで腹がいっぱいだぜ……」

 

「リョウ君の言う通りよ……」

 

「けど、それだけ食べるから、そんなに図体がデカいんだろうな……」

竜胆の言葉にリョウとアリスは納得していた。

 

「フゥ……とりあえずはこれ位にしておくか……」

 

「これ位って……皿の数だけでも数十人前は食べてるぞ……」

 

「さてと……そろそろ目的地に到着するんだけど……島に行くのは俺だけだ」

 

「あぁ、どんな生物かは映像だけでしか見ていないからな……

それに……見張る奴もいなきゃな……」

リョウはアリスと竜胆を指差した。

 

「何よリョウ君!武昭!まるで私が勝手に行動するみたいじゃない!!」

 

「そうだぜ!私にだって分別はあるぜ!!」

 

「まぁ、戻ってきたら一緒に調理を頼むぜ……おっと、着いたみたいだな、それじゃ、行ってくるぜ!」

武昭達が話してると船が目的地に到着したので武昭は目的地に降りた。

 

 

船を降りた武昭は島内を散策していた。

 

「うん……この擦れた跡……やっぱりガウチがいるみたいだな……それに、これは……」

武昭がツンドラの中を確認すると生姜の形をした氷が生息していた。

 

「やっぱり、流氷ジンジャーか……コイツはマイナス20℃のままで素早く切らないとダメだったな」

 

ガァー!!

 

「ふん、やっと目的の獲物が現れたか」

声の方を見るとガウチが叫びながら武昭に向かってきた。

 

「ガウチは群れで獲物を囲んで攻撃してくるんだったな!」

武昭はガウチに囲まれそうになったのを飛び上がって交わしたが下ではガウチが口を開けて待っていた。

 

「へっ!テメェらごときに食われる訳にはいかないんでな!ハァーッ!!この世の全ての食材に感謝を込めて頂きます!!」

武昭は体に力を込めて背後にグルメ細胞の悪魔が現れてそれぞれの武器を構えていた。

 

「どうやら、いるのはテメェらだけみたいだな!くらえっ!アックス鉈割り(なたわり)鎌刈り(かまがり)鍬打ち(くわうち)!!」

武昭が手を振るうと同時にグルメ細胞の悪魔がそれぞれの手持ちの武器を振り下ろしてガウチ達を始末した。

 

「ご馳走さまでした……お前らの命は無駄にはしないからな、さてとコイツらを収納……ガッ!」

武昭がガウチを収納しようとした時に何かが襲いかかってきて背中に傷を負った。

 

「今のは……まさか……()()()()()()()()()()……」

武昭が相手を確認すると水色の体毛を持ったジャガー【アイスジャガー】がいた。

 

「ケッ、ガウチの血の匂いを嗅ぎつけて来たのか……」

 

グワァー!!

 

「俺を食べようって言うのか……傷を負ってても、お前には負けてられるかよっ!トリコ師匠直伝!」

武昭が右腕に力を込めると太さが増していった。

 

「くらえっ!3連釘パンチ!!」ドゴン!ドゴン!ドゴン!

 

ガァァァ……

 

「ハァハァ……俺は師匠と違って……3連しか出来ないからな……フゥ、どうやら他にはいないみたいだな……

さてと、コイツも、持っていくか……」

武昭はガウチと一緒にアイスジャガーを収納すると、近くにあった食材も捕獲して船に戻った。



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第14話 手助け

武昭が船に帰ると3人が駆け寄って来た。

 

「おっ、ただいま皆」

 

「武昭!大丈夫なの!?」

 

「船にいても何かの声が聞こえて来たぜ」

 

「あぁ、そいつはガウチとは別の奴だよ、ちゃんと捕獲もしてきたし……じゃあ ん?どうしたリョウ」

武昭が船のキッチンに向かおうとした時にリョウが肩を掴んで引き止めた。

 

「料理は俺がするから……武昭は()()の治療をしてろ……」

 

「え?ケガの治療って、どう言う事かしら?リョウ君」

 

「これを見てくださいよ2人共……」

 

「なっ!?なんだよ、その傷……」

リョウが武昭の上着をまくると背中に///の傷があり血が流れ出ていた。

 

「あぁ、別の奴にやられてな、よく気づいたなリョウ」

 

「足元を見れば分かる……」

リョウの言葉にアリスと竜胆が武昭の歩いてきた場所を見るとポタポタと血の跡が残っていた。

 

「そんなに出血して大丈夫なのか!?武昭!」

 

「早く部屋で休みなさい!!」

 

「ハァーッ 分かったよ」

武昭はどこか納得した表情で船室の一つに向かった。

 

船室で……

 

「おい!もっと強く引っ張るんだよ!!」

 

「分かってるわよ!けど、これ以上は行かないのよ!!」

 

「うん、それくらいで良いぞ2人共」

武昭は竜胆とアリスにケガの治療されていた。

 

「それにしても……武昭が、そんな傷を負うなんてな……」

 

「あぁ、今回の事は完璧に俺が油断したからだ……けど、俺だけで行って良かったよ」

 

「そうか……それで今回の獲物はどんな奴なんだ?」

リョウに言われた武昭は船室にガウチとアイスジャガーを取り出した。

 

「なぁ、こっちのガウチって奴は教えてもらってるけど、コッチはなんだ?」

 

「パッと見ジャガーに見えるけど………」

 

「アリスの言う通り、コイツはアイスジャガーって奴だ」

 

「もしかして……その傷って……」

 

「竜胆の考えてる通り、アイスジャガーにやられたんだよ……あぁ、あんまり触らない方が良いぞ」

 

「あら?どうしてなの、武昭」

 

「だって、アイスジャガーは麻痺してるだけだからな」

武昭の言葉に3人は慌てて距離をとった。

 

「おいっ!なんで生きたまま連れてきたんだよ!!」

 

「ん?そんなの()()()()()()()()()()()()()()

 

「食べないのに……どう言う事だ?武昭」

 

「俺を鍛えてくれた師匠が言ってたんだ……

【生き物を殺す時は食べる分だけ……

食べないのなら生き物を殺す事はしない】って……

だから俺は無闇に殺す事はしないんだ……」

 

「そうなのか……そういや勝負した時に武昭の方は食材の残りが、そんなに無かったな……」

リョウは武昭との勝負の時の事を思い出していた。

 

「俺たちは他の命を食べて生きているんだ……だからこそ俺は食材を無駄にしないんだ……」

 

「そうだよな……私たちは料理人として基本的な事を忘れてたのかもな」

 

「えぇ……どんな食材であれ私たちは使わないと駄目ね……」

 

「なぁ武昭、俺にこのガウチの調理をやらしてくれないか?」

 

「ん?別に構わないけど……急にどうしたんだ?リョウ」

 

「武昭がケガをしてるって事もあるけど……俺も何かの力になりたいんだ……」

 

「だったら!私だって料理するぜ!!」

 

「なら、私もやらしてもらうわ、構わないわよね?武昭」

 

「あぁ、俺の師匠がこうも言ってたぜ【思いたったが吉日 他は全て凶日】だってな」ニカッ パンパン

武昭は笑顔で皆の肩を叩いた。

 

「下処理くらいは俺にやらせてくれ」

 

「まぁ、それくらいなら……〔ピシュン)え?……」

 

「嘘だろ……これだけの大きさの獲物の皮を一瞬で剥ぐなんて……」

アリスと竜胆は自分達が気付かない内にガウチの処理が終わってた事に驚いていた。

 

「なぁ武昭、コイツはトドと同じって考えて良いのか?」

 

「うーん……コッチの世界なら、そうだけど……まずは味見してみろよ〔シュン〕軽く焼いて……ホラ」

武昭はガウチを少し切り分けた物を焼いて3人に食べさせた。

 

「うおっ!私も何回かトドを食べた事があるけど、それとは全くの別物だぜ!!」

 

「しかも凄く柔らかいわ!!」

 

「いや、柔らかいけど ちゃんと歯応えもあるのか……」

 

「あっちじゃ、よく丸焼きにしてたけどな」

 

「よーし、待ってろよ武昭、今、作ってやるからな!」

 

「私だって美味しい物を作ってあげるわ!」

 

「へっ!俺様の実力を見てな!!」

3人は、それぞれ調理を開始した。

 


しばらくして3人が調理を終えたので食事をしていた。

 

「竜胆の料理はガウチのハンバーグか……うん、粗挽きだから歯応えがあって美味しいな」

 

「へっ!こういう獲物の料理は得意だからな!」

 

「次はアリスの料理だけど……コイツは煮込みか……野菜にも味が染みてるな」

 

「ふっふーん 始めての食材だったけど私にかかれば、こんな物よ」

 

「最後にリョウの奴は……衣をつけて揚げたのか……これは衣にも味を付けてるんだな」

 

「ハッ!コイツをサッパリした味わいにする為にしたんだ!どうだ!?美味いだろう!!」

 

「あぁ、皆からしたら始めての食材を使って、ここまで出来るなんてな」ガツガツ

 

「あぁ、武昭 飯食ってからで良いけど……包帯を変え……ん?」

リョウが武昭の背中を見た時に出血が少ない事に気付いた。

 

「おい、武昭……もう傷が塞がってないか?」

 

「そんな事有る訳無いじゃないリョウ君」

 

「あぁ、さっき応急処置したばっかりで、そんな直ぐに塞がるわけ無いだろ?」

 

「いや、リョウの言う通りだ ()()()()()()()()()()()()()()()()()

一旦、食事を止めた武昭が包帯を外すと深かった傷が治っていた。

 

「おいおい、素人判断だけど、あれは結構な深さだったぜ」

 

「まぁ、武昭なら不思議でも無いからな」

 

「そうね……それよりも私達も食べましょうよ!」

アリスの言葉にリョウと竜胆も食事を再開した。



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修行開始
第15話 修行 その1


食事を終えた皆が休んでいるとリョウが気になっていた事を武昭に聞いた。

 

「そういや武昭が研究所を出た後の部屋を俺が掃除をしてたんだけどよ、こんな物が落ちてたぞ」

リョウがポケットからツクシの様な物の燃えかすを出して見せた。

 

「あぁ、悪かったなリョウ、綺麗にしたつもりだったけど少し残ってたか」

 

「うーん?なぁ武昭、これってか普通のツクシと違うのか?」

 

「もしかして、これも向こうの世界の物なのかしら?」

 

「あぁ、コイツは【たいまつくし】って奴でな【食義】の修行に使ってた奴なんだ」

 

「その食義ってなんだ?」

 

「食義って奴は向こうの世界では小学校から普通に授業に組み込まれてて簡単に言うと食に対する礼儀と作法なんだ」

武昭の説明に3人は軽く頭をひねっていた。

 

「さっき俺が師匠から教わった事と少し似てるんだけど 食に感謝するって事は即ち命に感謝をする事……

そして常に心の中心に万物への感謝と敬意を据え付けておく事、それが食義の基本の構えなんだ」

 

「けど、そんな事をして何か意味があるのか?」

竜胆が疑問に思っていた事を尋ねた。

 

「あぁ、食義は精神面だけでなく技術面でも生かされるんだ」

 

「例えば、どんな風になるのかしら?」

 

「食への感謝を繰り返す事で目の前の対象物に対する集中力が増して、それに伴って集中力が向上して動作の素早さと正確性が上がるんだ」

 

「じゃあ武昭の調理中の作業が早いのって……その食義を覚えてるからなのか?」

 

「リョウの言う通りだな、最も俺の食義は上級の途中までなんだ」

 

「おいおい、あの腕前で途中だって言うなら……それを完全にマスターしたらどうなるんだ……」

竜胆の言葉にリョウとアリスは軽く冷や汗をかいていた。

 

「食義を完全に極めた料理人だと泳いでる魚が捌かれて頭と骨だけで何年も生き続けたって言う伝説があるぞ」

 

「泳いでいる魚を……それって生きたままって事なのか!?」

 

「そうだぞ、魚も捌かれた事に気付いてないみたいなんだ」

武昭の話を聞いた3人は、それぞれ何かを考えていたが……

 

「なぁ武昭、その食義って……俺も習う事は出来るか?」

 

「ちょっとリョウ君!そういう事なら私だって習いたいんだから!!」

 

「待てよ!ここは年上の私に譲れよ!!」

3人が武昭に迫ってきた。

 

「うーん……俺が貰った物の中に食義の修行に使う食材とかはあるから、やろうと思えば出来るけど……

俺も全部マスターした訳じゃないから俺が教えるにしても途中までにもなるぞ、それでも良いのか?」

武昭の言葉に3人は激しくうなづいた。

 

「そうか……じゃあ俺が食義を教えるけど……俺が習った奴はかなり厳しいけど、本当に良いのか?」

 

「あぁ!断る位なら最初からこんな事言わねぇよ!!」

 

「これでも私は薙切の一族なのよ!なめないでほしいわね!!」

 

「へっ!私だってな世界中の色んな所に行ってるんだぜ!そんな事でビビるかよ!!」

 

「分かったよ……じゃあ俺が出来る限りの食義の修行を教えるよ……まぁ、まずは戻るとするか」

武昭はそう言うと船を港に戻した。

 

それから数日後……

武昭達は宗衛と共にある島に来ていた。

 

「宗衛さん、本当にここの島を俺が自由にして良いんですか?」

 

「あぁ、ここは以前薙切で買い取った島なんだが、ちょっと交通網がね……」

 

「なるほど…けど、これくらいの大きさだったら問題は無いですね……

それで宗衛さんに以前渡した宝石なんですけど、その中からこの島の代金を支払っといてください」

 

「あぁ、そういう事なら構わないよ……それでここで何をするんだい?」

 

「えぇ、ここで俺が向こうの世界でしてた修行をするのに場所を作ろうと考えたんです」

 

「なるほど、けど資材かはどうするんだい?」

 

「それなら問題はありませんよ」

武昭がポケットから取り出した一粒の種を地面に埋めてピアスの一つから中の液体を一滴かけると直ぐに芽が出て空を覆う様にそのまま大きくなった。

 

「武昭君、これもやっぱり向こうの世界の物なのかい?」

 

「えぇ【アンブレラツリー】って言われてる奴です、あとは()()()だな」

次に武昭がポケットから取り出したのは手に乗るほどの四角形で幾つかのボタンがあった。

 

「コイツはアッチで作ってくれたダイスハウスって奴で好きな大きさの家を建てれるんですよ」

武昭がボタンを操作して地面に置くと四角形が光り輝き光が収まるとかなりの大きさの家が出来ていた。

 

「ふむ……向こうの世界の技術は凄い物だな……」

 

「本当ならコイツはこっちで家が見つからない時に使う様に渡されたんですよ……

けど、宗衛さん達に出会えたんでずっと使わなかったんです」

 

「武昭君、あと私に何か出来る事はあるかい?」

 

「いえ、とりあえずは大丈夫です、けど何かあったら手を貸してください」

 

「あぁ、私は構わないからいつでも頼って来なさい」

 

「ありがとうございます、じゃあアリス達を呼んで来ます」

武昭はアリス達を呼びに向かった。

 

 

武昭に呼ばれたアリス達は一緒にダイスハウスの中に入った。

 

「うわぁ……結構な広さだな……」

 

「それに、壁も凄い硬いわよ」

 

「武昭、ここで修行をするのか?」

 

「あぁ、まずはこれに着替えてきてくれ。リョウはこっちの部屋、竜胆とアリスは向こうの部屋だ」

皆は武昭から修行着を受け取ると着替えに向かった。

 


着替え終わった3人の前に武昭が立っていた。

 

「じゃあ、これから修行を始めるけど、まずはこれからだ」

武昭は3人の前に5m程の長さの箸と豆が山盛りに積まれたお椀をそれぞれの前に置いた。

 

「最初は、その箸でその豆を食べて貰おうか」

 

「本当に……こんな事をするのか?」

 

「あぁ、信じられないかもしれないけど、これはまだ基礎コースの中の一つだからな」

 

「なっ!?こ、これで基礎コース……しかも中の一つって……」

 

「皆が、それをしてる間に俺は次の用意をしてくるから」

武昭は、その場を離れた。

 

武昭が居なくなって……

 

「くっ……この箸を持つだけでも……かなりの力を……あっ!」

 

「長いから持てても……豆を……キャッ!」

 

「よしっ!何とか……掴めた……チキショウ!」

竜胆とアリスは箸を持つだけでも苦労しておりリョウは豆を持ってもすぐに落としていた。

 

(難しいけど、武昭はこれをしてあそこ迄なったんだ……だったら)

3人は苦労しながらも新たな決意をしていた。

 

 

 

 




オリジナル道具。
ダイスハウス
IGOが作り出した大きさを変えられる住宅の発明品。

サイコロ状の四角形で大きさは15cm四方。
サイコロの1の面に幾つかのボタンがあり、それを操作して自由に大きさを変えられる。

但し水道や電線が繋がってない為、別に発電機や水タンクなどが必要。


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第16話 修行 その2

食義の修行を開始して少し時間が経って……

 

「ハァハァハァ……何とか食べれたぜ……」

 

「けど、かなりの時間掛かったわね……」

 

「そういや……武昭は何処に行ったんだ?……」

3人が食事を終えて休んでいると……

 

「おっ、皆食事は終わってたか」ニカッ

武昭が笑いながら部屋に戻ってきた。

 

「あぁ……終わったけど、かなり疲れたぜ?……」

息も絶え絶えにリョウが返事をした。

 

「けど……本当に、こんな事をしてて食義が身につくの?」

 

「確かに、そう思うかもしれないけど、俺だって身に付けれたんだから大丈夫だよ」

 

「まぁ、武昭に教えて欲しいって言ったのは私達からだからな……それで次は何をするんだ?」

 

「次は食義の基本姿勢を覚えてもらう」

 

「基本姿勢って……どんな奴なんだ?」

 

「合掌……それと一礼だな」

武昭は3人前で基本姿勢を見せた。

 

「ふーん、それが基本姿勢なのか、それは簡単そうだな」

 

「そうだな、簡単そうだな……(正しいフォームが出来ればだけどな)まぁ、ついてきてくれ」

武昭は3人を連れて部屋を出た。

 

 

武昭が3人を連れて違う部屋に行くと壁の一面に多数の水鉄砲が仕掛けられていた。

 

「ここが基本姿勢を覚える為の場所なのか?」

 

「何かアッチにある沢山の水鉄砲が気になるのだけど……」

 

「武昭、どうしたら良いんだ?」

 

「今はまだ起動はしてないから反応しないけど、ここで合掌と一礼をするだけだ、こうしてな」

武昭は3人の前で合掌と一礼をした。

 

「なぁ、本当にそれだけで良いのか?」

 

「あぁ、これだけだな。()()()()()()()()()()()()()()それが、ここでの修行だ」

 

「それくらいだったら、直ぐに覚えてあげるわ」

 

「そうだな、こんな簡単な奴なら時間もかからないぜ」

 

「なんか期待はずれだけどな」

 

「じゃあ、それぞれ足元の記しがある所に立ってくれ」

3人が指示通りの場所に立ったのを確認した武昭は何らかの機械を作動させると3人から距離をとった。

 

「俺が声をかけるから、その通りに動いてくれ。合掌、一礼」

 

「「「合掌!!!一礼!!!」」」ピュン! ビチャッ!

 

「なっ!?つ、冷たい!!」

 

「何よこれっ!?」

 

「おいおい!コイツはどういう事だよ!武昭!!」

 

「ん?だからさっきも言ったろ?ここでは食義の基本姿勢を覚えてもらうって。

水鉄砲が反応してるのは皆が()()()()()()()()()()()()()()()()()

武昭が説明してる最中にも3人は水鉄砲を発射されていた。

 

 

しばらくして……

 

「ハハハッ、水も滴るって所だな3人とも」

 

「くそっ!こんなに濡れるなんて思わなかったぜ!!」

 

「リョウ君の言う通りよ!!」

 

「だから、着替えを持ってこいって言ってたのか!!」

3人は全身がびしょ濡れになりながら武昭に詰め寄っていた。

 

「濡れる位良いだろうに……俺が習った時はサボテンから針が飛んできて刺さりそうなったんだからな」

 

(((どんな修行なのっ!だよっ!!)))

 

「ハハハ、今日はこの位にして皆、風呂に入ってこいよ ちゃんと男女別れてるから。

その間に俺は夕飯を作ってるから」

皆は、それぞれの場所に向かった。

 

その後3人が上がると武昭が夕飯を作り終えていた。

 

「よしっ、皆上がったか それぞれ空いてる席に座ってくれ」

 

「いつも思うけど武昭君て本当に料理を作るのが早いわね……」

 

「普通、こんな短時間で出来る品数じゃないぜ……」

 

「まぁ……武昭だからな……」

 

「「それは、そうか……」」

リョウの言葉にアリスと竜胆が納得すると席に座って皆は食事を開始した。

 

 



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第17話 修行 その3

3人が武昭から食義の修行を受け始めて3日程経った頃……

 

「うん、だいぶ炎が保つ様になってきたな……」

 

「ハァハァハァ……けど、本当に変な考えをしたら直ぐに消えるな……

それにお嬢も出来る様になるなんて思わなかったっすよ……」

 

「もーうリョウ君、私だってこれ位出来るわよー」

 

「とか言いながら、着いたり消えたりが早かったじゃん」

 

「竜胆さんだって、私と変わらないじゃないですかー」

 

「はいはい、口喧嘩はそこまでにして朝食にしますよ」

武昭は3人に箸と茶碗を渡した。

 

「武昭、今朝の朝食はなんだ?」

 

「あぁ、そこに壺があるだろ」

武昭が指した先に一つの壺が置いてあり中には米粒の様な物が詰まっていた。

 

「これって……お米なの?」

 

「いや、そいつはタマゴ入りご飯って言ってご飯の中にタマゴが入ったご飯なんだ」

 

「へぇー美味そうじゃん、じゃあ「ちょっと待った!」んあ?なんだよ武昭ー」

竜胆が手を入れようとしたのを武昭が止めた。

 

「そいつも修行の一環だから箸で取ってもらう。食べたい分だけな」

 

「なぁ、聞きたいんだけど……これって何かあるのか?」

 

「何かって……何がだ?リョウ」

 

「修行って事は何かあるんだろ……俺達じゃキツイ事が……」

 

「別に何も無いよ……()()()()()()()()()()()()()取ったら俺が調理してやるから」

 

「そうなの、だったら私が一番にやってあげるわ!」

 

「あっ!ズルいぞ!!」

 

「そうだ、言い忘れたけど……「キャッ!?何!一個割れたら周りのも割れてってるわよ!?」やっぱりな……」

武昭はアリスが挑戦して失敗する事が分かってる様な口ぶりだった。

 

「おい!やっぱりって、どういう事だよ!!」

 

「そいつは凄い割れやすくてな一粒割れるとその割れた破片が当たっただけでも連鎖的に周りのも割れるんだ」

 

「じゃあ、どうすれば良かったんだ?」

 

「一粒ずつ丁寧に取れば大丈夫だったんだ、別に割れても食べられるから朝食は無しにならないぞ」

武昭は壺を持って朝食を作りに向かった。

 

朝食を終え、3人は礼の訓練をしていたが水を掛けられ濡れていたが着替えを済ませていた。

 

「チッキショー……また水浸しだぜー」

 

「けど、前よりかは濡れなくなってきてる感じがするわ……」

 

「だけど濡れてる事には変わりないですけどね」

 

「よーし、次の修行はコイツだ。皆こっちに」

武昭は3人を呼ぶと真っ直ぐに立たせて頭の上にプリンが盛られた皿を乗せた。

 

「そいつはプリンラクダと呼ばれてる動物のプリンで凄くデリケートなんだ、だから」

武昭が近くに合った皿をちょっと動かすと乗っていたプリンが崩れた。

 

「次はそれを崩さない様に5分、そのままでいてもらう……5分経って無事だったら食べて良いぞ。

よーいスタート」

 

「5分とは言うけど……結構辛いぜ……アッ」 竜胆15秒

 

「私なら5分くらい平気……キャッ」アリス20秒

 

「動かないって……5分って、こんなに長いのか……チッ」リョウ30秒

 

「まぁ、最初から長くは無理だからな、どれ昼食にするぞ、3人は顔を洗ってこい」

 

 

昼食を食べる場所に行くと大きなボウルの中に多数の細長い白い物が泳いでいた。

 

「昼食は白魚そうめんだ、コイツも食べたいだけ取ってくれ」

 

「コイツも取りにくいんだろ?武昭」

 

「流石にここまで来ると分かってきたみたいだな、けどコイツにはこれで取ってもらう」

武昭は今までとは違う箸を置いた。

 

「そいつは氷樹と呼ばれる物で出来た箸で物凄く滑りやすいんだ」

 

「確かに……今までの箸が普通に……うわっ!」

 

「ちゃんとした握り方じゃないとずっと掴みづらいぞ」

 

「そうは言うけど武昭はこれで掴めるの!?」

 

「あぁ、普通に出来るぞ、ホラ」

アリスは武昭が普通に出来た事に唖然としていた。

 

「俺も最初は苦労したんだ、けど頑張ってここまで出来る様になったんだ皆も頑張れよ」

 

「よーし、俺も武昭に追いついてやるぜ!」

 

「あっ!待ちなさいよリョウ君!」

 

「おいっ!先輩よりも先に取るな!!」

3人は白魚そうめんを取り始めた。

 

その日の夜……

 

「フゥ……ちょっと、喉が乾いたぜ……ん?あそこは……」

竜胆が水を飲みに台所に行くと武昭の部屋から微かな光が見えていた。

 

「私達に黙って何か夜食でも食べてるんじゃ……なっ!?」

竜胆が隙間から覗くと周りに数十本のたいまつくしを立てて座禅をしている武昭の姿があった。

 

「おいおい……あれって、どれだけの数やってるんだ……」

 

『フゥ……3時間の座禅が終わったか……次は……コイツだな』

武昭は土の入った鉢を取り出すと一粒の種を植えて座禅を始めた。

 

「ん?あれって……まだ私達がやってない修行か?……嘘だろ……」

 

『うん、ローズハムが咲くのが、ちょっと遅かったな……まだまだか……』

竜胆が見てると鉢から直ぐに芽が出てハムの花が咲き武昭はそれを食べていた。

 

『また、向こうの世界から危険な生物が来るかもしれないんだ……

だからこそ俺がやらなきゃ……』

 

「武昭……そうか……」

竜胆は何かを思うと寝室に戻った。

 

 

 

 



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第18話 修行 その4

皆が武昭から食義の修行を教わり始めて1週間目……

 

「ふーん……大分皆もたいまつくしが保つ様になってきたな」

 

「当たり前だ……何となくだけど武昭が言う感謝の意味が分かってきたぜ……」

 

「私も、こうしてると今までどれだけ騒がしかったのかが感じるわ……」

 

「あぁ、アリスの言う通りだな……私も以前と違うのが感じるぜ……」

 

「確かに……炎の燃える時間も伸びてきてるし、だいぶ感謝も出来る様になったからな……じゃあ違う修行をするか」

 

「あぁ……何でもこい」

 

「どんな修行だとしてもクリアしてあげるわよ」

 

「私達から受けさせてほしいって頼んだからな」

 

「ふむ……そうか、なら庭に来てもらう」

武昭は3人を連れて外に出て行った。


庭に出ると武昭は3人の前に植木鉢を置くと植物の種を1人ずつ渡した。

 

「そいつを土に植えて見守るんだ……それが今日の修行だ」

 

「これって……向こうの世界の物?」

 

「あぁ、ローズハムって言うバラの様なハムの花を咲かせる植物の種だ」

 

「バラの様なハムの花を咲かせる……何かしながらするのか?」

 

「特に無いぞ……発芽して花が咲くまで見守るだけだからな……()()()()でな」

 

「なっ!?不眠不休って……これはどうしたら咲くんだ?」

 

「くれぐれも感謝の念を忘れない様になしか言えないな……咲いたら今日の修行は終わりだ」

3人は指示通りに感謝の念を持って座禅を開始したが……

 

「なぁ武昭、この花ってどれくらいで咲くんだ?」

 

「さぁ?……強いて言うなら……感謝の念が強くないと……しか言えないな」

 

「念が強くって……どれだけなのかしら?」

 

「人、それぞれだな……あぁ、言っておくけどそれが咲かないと食事は無いからな」

 

「んなっ!?嘘だろって……今までの修行を受けてるから本当なんだろうな……」

 

「分かってくれたなら、感謝の念を込めた方が良いぞ……」

武昭はその場を離れた。

 

武昭が離れて3時間程経って……

 

「思ったけど……本当に料理の腕前が上がってるのかしら?……」

 

「確かにな……たいまつくしが長く点く様になって、お礼の構えをとって色んな物を食べて……」

 

「じゃあ武昭が何の役にも立たない事を教えてるって言うんすか?」

リョウの言葉にアリスと竜胆が黙ってうなづいた。

 

「ハァ……何か久し振りに包丁が握りたくなってきたぜ……」

 

「じゃあ武昭の所に行って何か料理をさせてもらいましょうよ」

 

「そんな事してて良いんすかねぇ……」

 

「別に良いじゃない、私達は悪い事をする訳じゃないんだから」

 

「今回ばかりはアリスの意見に賛成だぜ、なら行こうぜ」

 

「アッ、全く……しょうがないか……」

リョウは渋々2人の後をついて行った。

 

3人が武昭の所に行くと凄いスピードで料理をしていた。

 

「ん?どうしたんだ皆?こんな所に来て……って多分、本当に料理の腕前が上がってるか気になったんだろ」

 

「あぁって……俺達が、そう来るってわかってたみたいだな……」

 

「俺も食義の修行をしてて、そう思った事があったからな まぁちょうど良いか よいしょっと」

武昭は自分が料理してる所と違う調理台に3人分のまな板と包丁を置くとキャベツを冷蔵庫から取り出した。

 

「こいつはエナメルキャベツって呼ばれてる特殊調理食材でな、これを千切りにしてくれ」

 

「フッフーン、良いわよこんなキャベツ位簡単に「ちょっと待ったお嬢」何よーリョウ君」〈プクー〉

アリスが切ろうとしたのをリョウが止めた。

 

「武昭はコイツを特殊調理食材って言ってましたって事は、ちゃんとした調理をしないと味が落ちると思うんす」

 

「なっ!?なぁ武昭!リョウの行った事は本当なのか!?」

 

「ハッハッハッ、分かったか、リョウの言う通りだな、そのキャベツは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ある細さって……それを探せって事か?」

 

「いや……自分から探さなくてもわかる筈だぞリョウ……俺はグルメ世界である人に言われた事があるんだ」

 

「どんな事を言われたのかしら?」

 

「俺達料理人が食材を選んでるんじゃない 食材が客や料理人を選んでるんだってな……」

 

「食材が客や料理人を選んでるんって……どういう事だ?」

 

「その人は、こうも言ってたよ……「その日々、食材にその日の気分を尋ねてるんだって」……」

 

「じゃあ、料理を作るのに凄い時間がかかるじゃない」

 

「そうだなアリス だから、その人の店が開くのは月1で早い方だからな」

 

「月1で早いって……どれだけかかるんだ」

 

「まぁ、向こうは そう言う世界だったからな……ほら話してる暇があるなら調理をしてみろ 俺は違う作業をしてるからな」

武昭に言われた3人は、それぞれまな板の前に立った。

 

「確かに、こんな手触りのキャベツなんか触った事は無いぜ……」

 

「けど、決まった細さってどれ程なのかしら?」

 

「あっちの食材だから美味しく食べたいんだけどな……ん?」

キャベツを手にした竜胆が何かを感じていた。

 

「(なんだ、この感じ……何か手が勝手に……)バシュバシュバシュ……嘘だろ…」

 

「えっ!?なんで切れてるの!?」

 

「しかも、凄い細いぜ……」

アリスやリョウ、竜胆自身もキャベツが切れた事に驚いていた。

 

「いや……私も分からないんだ……触ったら体が勝手にって言うか……無意識に……

もしかして、これが食義って奴なのか……?」

 

「おぉ、どうやら竜胆は食義の基本が出来てるみたいだな。どれ……うん鮮度も落ちてないな」

竜胆が戸惑ってると武昭が来た。

 

「どうだ?直感的に、その食材にあった切り方が出来る事を体感して」

 

「これが……食義……あぁ、最初は戸惑ったけど、今なら分かってきた感じがするぜ……」

 

「だったら、ローズハムの芽も出せるかもな」

武昭は竜胆に種が入った鉢植えを渡した。

 

「うん今なら分かる筈だぞ?感謝するって事が……」

 

(修行する前に武昭が言ってたな……食に感謝するって事は命に感謝するって……)ピルピルピル バサッ!

 

「凄いわ!本当にハムの花が咲いたわ!!」

 

「しかも凄い速さだったぜ……」

 

「ほら2人もキャベツを切ったらやってみろよ」

武昭が促すとアリスとリョウもキャベツを0.8mmに切れてローズハムの花も咲かせる事が出来た。

 

「やったわ……私も咲かせれたわ……」

 

「それにキャベツもどれだけの細さに切れば良いのか分かったぜ……」

 

「どうやら、3人とも食義を身に付けたみたいだな……」

 

「あぁ……けど、まだ先があるんだろ?武昭」

 

「そうだな、今の皆はまだスタート地点に立っただけって所だな」

 

「面白いじゃない、すぐに武昭に追い付いて抜かしてあげるんだから!」

 

「今度こそ料理対決で俺が勝ってみせるぜ!」

 

「ハハハ、そうこないとな。さて、皆も俺が出した課題をクリアしたから夕飯にするか」

武昭は、そう言うと食事を開始した。

 

その後、修行を開始して2週間程経った頃……

 

「うん、たいまつくしの炎も2時間は保つ様になったし水にも濡れなくなったわ」

 

「よしっ、今朝はこれだけ取れたぜ」

 

「次は俺の番だぜ」

 

(うん……そろそろ3人も食義が身についてきたから……修行の卒業として()()()()()()()()をご馳走するか)

武昭は3人の様子を見ながら何かを考えていた。

 

 

 



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十傑との出会いと再来。
第19話 フルコースの存在と証


アリス、リョウ、竜胆が武昭から食義を教えてもらって2週間経った日の朝……

 

「今朝は武昭から修行しなくて良いって言われたな……」

 

「うーん……もしかしたら、違う事でもするのか?……」

 

「別に何だって良いわよ、私達はただ武昭から指示された事をするだけなんだから」

 

「おっ、皆起きてたのか」

3人が話してると武昭が来た。

 

「なぁ、武昭、今朝は修行をしなくていいって言ってたけど、何をするんだ?」

 

「簡単だよ竜胆、今日は皆に俺が向こうの世界で食べた店のメニューの一部と()()()を食べてもらうだけだ」

 

「向こうの世界で食べた店のメニューって……それってもしかして、食義が関係してるのか?」

 

「あぁ、これから出すメニューを食べるには食義が必要なんだ」

 

「じゃあ、それを食べる事が今日の修行なのかしら?」

 

「まぁ、その事は食べてから話すよ、とりあえずは食堂に行くぞ」

3人は武昭に連れられて食堂に向かった。

 

食堂に行くと、3人はそれぞれの席に座った。

 

「じゃあ、料理を出して行くから皆は、それを食べて行ってくれ……まずは椀物として、昆布石という石から出汁を取った吸い物だ。

本来ならば昆布酒として食前酒にするんだが皆は未成年だから吸い物にした」

 

「これが向こうの世界の食材で作った料理か……武昭、こいつを食べる時の注意はなんだ?」

 

「水面に波を立てずにゆっくりと動かす事だ、少しでも立たせると……こうなる」

武昭が透明な入れ物に入れた昆布石の出汁を軽く波立てただけで蒸発したのが3人には見えた。

 

「それに如何なる場合でも感謝、そして、一礼だ」

武昭が3人の前にお椀を置くと皆は両手を合わせて一礼をして食事を開始した。

 

「今までの私だったら、急いで飲もうとして消えてたかもしれないけど、今なら分かるわ……こうして食べる物もあるんだって……」

 

「時間はかかるけど、それだけの旨さがこの汁物にはあるぜ……」

 

「俺が今まで飲んだ汁物の中でも1番だ……それに胃が覚醒したのを感じる……」

 

「どうやら食べれた様だな次はサンシャインチーズだ……これは窓際に行って太陽の光を当てながら食べてもらう」

 

「うん、私が知ってるチーズとは全然違うわ……凄いトロリとしてるけど歯ごたえもしっかりあるわ……」

 

「次はミリオントマトだ。その名の通り千枚の皮を一枚ずつ丁寧に剥いた奴で潰さない様に慎重に食べるんだ」

 

「うわっ!こんなに小さいのに物凄く味が凝縮されてる!!」

 

「次は刺身だ これから先の幾つかはその店のメニューとは違って俺が師匠と一緒に捕獲した事がある食材を使った料理で今回はフグ鯨と呼ばれてる物だ。これは食義関係なく食べれる物だぞ」

 

「おいおい、なんだよ綺麗な身は……俺も沢山の魚介類は捌いて来たけど、こんな身の魚は初めてだ……」

 

「次は焼き物として兎鷺(ウサギ)の塩釜焼だ」

 

「これは鶏肉みたいだけど、獣肉みたいでもあるわ……そして両方の良い所を兼ね備えてるわ……」

 

「次は食義が必要で星米のご飯で、これを食べる時は一瞬でも瞬きをしたら味が一気に落ちる」

 

「一粒一粒が輝いてるぜ……星米って言う意味が分かったぜ……」

3人は食義を駆使しながら料理を食べて行った。

 

そして……

 

「そして、デザートとしてチェリンゴとホワイトアップルを使ったフルーツタルトだ」

 

「フゥ〜……この甘さが一息つかせてくれるぜ……」

 

「けど、甘いだけじゃなく酸味もあって対比が良いわ……」

 

「これが向こうの世界での材料を使った料理なのか……」

 

「どうだ?まぁ、俺が食べた店のメニューとは一部違ってたけどな」

 

「だとしても凄い美味しかったわよ」

 

「あぁ……今まで私達が食べて来たのが何だって思う位だぜ……」

 

「ん?なぁ武昭、ある物を食べてもらうって言ってたけど、それって食べた物の中にあったのか?」

 

「いや、あの中には無かったな……何故ならそいつは、これから出すんだからな」

武昭は厨房に行くと寸胴が乗ったワゴンを持ってきた。

 

「こいつは俺が、こっちの世界の食材で作った向こうの世界の料理だ……」

武昭が蓋を開けると中には()()が入っていた。

 

「武昭……これってただの水じゃないの?」

 

「あぁ、どう見ても水……って言うかちょっと沸かした位だな……」

 

「けど、武昭が作ったって言うなら……なっ!?」

匂いを嗅いだリョウは驚いた。

 

「お嬢!竜胆!この()()()の匂いを嗅いでみろ!!」

 

「匂いを嗅いでみろって……えっ!?」

 

「嘘だろ!?どう見ても普通の水にしか見えないのに……?」

 

「まぁ、まずは味わってみるんだ、今の3人なら分かる筈だぞ?」

3人は武昭からスープを注がれると言われた通りに味わった。

「うおっ!なんだこの味は!?」

 

「凄く透明なのに、色んな食材の味がするぞ!!」

 

「けど、どれもケンカしてなくて、それぞれが引き立て合ってるわ……ねぇ、武昭、このスープは何なの?」

 

「あぁ、こいつはセンチュリースープと呼ばれてるスープなんだ……けど、まだ未完成なんだ」

 

「嘘だろ……これだけの旨さなのに武昭の腕前で未完成だって言うなら、完成したらどれだけの旨さなんだよ……」

 

「完成形のセンチュリースープは鍋の蓋を開けたと同時にオーロラが浮かび上がるんだ……

そして、味は極めて濃厚でありながら喉越しはしつこくなくて飲んだら美味しすぎて顔がにやける程なんだ……」

 

「それだけの味わいがするって言うのか……けど、武昭はなんでこれを私達に出したんだ?」

 

「それは皆に俺の目標を話したかったからだ」

 

「武昭の目標って何かしら?店を出す事じゃないの?」

 

「それもあるけど最終目標としては【人生のフルコース】を完成させたいんだ」

 

「人生のフルコース?ってなんだ?」

 

「人生のフルコースって言うのは美食家がその人生をかけて作り上げるメニューの事なんだ。

内容としては前菜(オードブル)、スープ、魚料理、肉料理、主菜(メインディッシュ)、サラダ、ドリンク、デザートの8つからなるんだ」

 

「武昭は、そのフルコースのメニューは全部決まってるのか?」

 

「いや、まだ一つも決まってないんだよ……本当に入れたい物が見つからなくてな……」

 

「あ……もしかして、このスープって……武昭がフルコースに入れようとしてるの?」

 

「いや、こいつは今の俺で何処まで再現出来るか作った物で……3人への食義の修行の終わりとして作ったんだ」

 

「えっ?……修行の終わりって……」

 

「簡単に言うと俺が教えれる事はここまでなんだ……だからこれで修行の終わりとする」

武昭はアリスの言葉に、そう答えた。

 

「そうだろうな……武昭がしてきた修行も俺達がしてきた事と変わらないんだろ?」

 

「あぁ、リョウの言う通りだな……けど、俺は()()()を教えてないんだ」

 

「ん?そのある事ってなんだよ」

 

「俺は皆に食義を教える時にランクみたいな物を言ってたけど覚えてるか?」

 

「あぁ、確か基礎コースと上級があるって言ってたな」

 

「実は皆が今日までやってたのは俺が受けた上級コースと基礎コースが混ざった物で名付けるなら中級コースって所なんだ」

 

「なっ!?そうだったのか!?」

 

「まぁ3人なら出来ると思ってやらせてみたんだけど、やっぱり皆は乗り越える事が出来たな」

 

「もーう、どうりで厳しかった筈ね!けど、そのお陰で食義を身に付ける事が出来たのだから感謝するわ」

 

「ありがとうな、アリス、それで皆に修行終了の証として、これを渡す」

武昭は小さな箱を3人に渡した。

 

「何が入っているんだ?……かなり短いけど……これって箸か?……」

 

「けど、金で出来てる様に見えるんだけど……」

 

「そいつは向こうの世界の物質のグルメマテリアルって言う物で作った奴だ」

 

「軽く触っただけでも何か感じるぜ……」

 

「そいつは旨味で出来てて何万年使っても摩耗しないんだ」

 

「おい武昭……旨味って言ってるけど……まさかこれを使えば美味い料理が作れるのか?」

 

「答えを言えば作れるけど、それに頼ると成長はしなくなるぞ?」

 

「そうね……武昭の言う通りだわ……私は帰ったらこれを金庫にしまっておくわ」

 

「俺も自分が信頼がおける人の所に保存しておくっす」

 

「私は無くさない様にいつでも持っておくぜ」

 

「そうか……じゃあ、ここで宣言させてもらう……食義の修行!中級コース!これで終了する!!」

 

「「「ありがとうございました!!!」」」

3人は武昭に頭を下げた。

 




オリジナル食材

兎鷺 うさぎ 鳥獣類 捕獲レベル10
見る方向によってウサギにも鷺にも見える鳥。
臆病な性格で敵意を感じるとその脚力で距離を取って高くジャンプして、そのまま空を飛んで逃げる。
距離を取られると肉の中の毛細血管が切れて血抜きが難しくなる特殊調理食材。

ちなみにレベルの高さは見つけるのが難しいからで本来はレベル1以下。

毛皮はジャケットやマフラーなどにされる事が多く、その品物はそれなりの値段がする。

骨からは良い出汁が取れ人によっては血と混ぜてソースなどにする人もいる。


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第20話 氷の女王

武昭が3人に食義を教えてから数日経ったある日の事、武昭は遠月学園に来ていた。

 

「うっす久し振りですね学園長 それで今日は何の用ですか?」

 

「うむ、今日お主を呼んだのは久し振りに料理を作ってもらおうと思ったのじゃ」

 

「良いですよ、料理人は食べたい人がいるなら作るだけですからね それで何か希望はありますか?」

 

「ふむ……あるのなら向こうの世界の食材を使ってほしいのじゃ」

 

「はい、分かりました、じゃあ作って来ますけど……この後の予定とかは大丈夫ですか?」

 

「ハハハ、お主の料理を食べる為ならば時間など幾ら掛かっても構わぬ」

 

「そうですか、なら厨房に行って作りますか」

武昭は用意された厨房に向かった。

 

厨房に向かった武昭は今、自分が持ってる食材を確認した。

 

「うーん……今日の料理は……よし、あれにするか」

 

「あら?貴方は誰かしら?」

武昭が調理を始めようとした時に厨房に長い金髪の女性が入ってきた。

 

「あぁ、俺は紫水武昭、学園長に頼まれて料理を作りに来たんだ……

聞きたいんだけど、あんたはアリスの知り合いさんか?」

 

「え?貴方はアリスを知ってるのかしら?」

 

「あぁ、ちょっと薙切インターナショナルにいた事があってな」

 

「そう、私は薙切えりな アリスとは従姉妹なの」

 

「なるほど、どうりでアリスに似てる訳だな 俺の事は武昭って呼んでくれ、その方が呼ばれ慣れてるんだ」

 

「そう、分かったわ武昭さん、けど貴方がお爺様に料理を作りに来たと言ってましたが、それほどの腕前なのですか?」

 

「腕前か……まぁ、それなりの実力はあるかな?」

 

「そうなの……まぁ、お爺様が呼んだのでしたら、大丈夫なのでしょうけど」

えりなはどこか上から目線で武昭を見ていた。

 

「まぁ、初対面だから訝しむのも分かるけど、あんたも料理をするなら俺の料理を食べてもらうぜ」

 

「面白いじゃない、まぁ私の口に合う物が作れたらよ」

 

「よしっ、言ったな じゃあ作らせてもらうか……そうだ何かアレルギーみたいな物はあったりするか?」

 

「いえ、何も無いわよ」

 

「そうか、なら……コイツを使うか」

武昭は調理台にグルメケースを置くと中からストライプサーモンを出した。

 

「あら?そんな色の魚は初めて見るわね……それに、そのケースも……」

 

「そうか、そりゃ地球は広いんだから初めて見る魚もいるだろ?(向こうだったら普通にいるんだけどな)

おっ、メスで金色イクラが入ってたか」

 

「ちょっと待ちなさい!!それはイクラなの!?」

 

「あぁ、驚くのは後にして、まずは調理をさせてくれ(まずはイクラをほぐして醤油バッタの醤油に漬け込んでおく)」

 

(見た目は初めて見たけど身は普通のサーモンと一緒ね……それにあれは醤油に漬け込んでるのね…)」

 

「身は塩を振って焼いて、頭と骨はアラ汁に……ご飯は羽釜があるからコイツで炊くか」

 

「焼き魚とイクラ……それにご飯……もしかして鮭とイクラの親子丼を作るのかしら?」

 

「あぁ、ちょうど材料があったからな……あとは、今ある野菜で浅漬けを作るか」

武昭は野菜を違うグルメケースから出す適当な大きさに切って塩を振って軽く置いておいた。

 

「凄い手際ね……いつの間にか洗い物を入れた殆どの作業が終わってるわ」

 

「料理って奴は片付けまでする事だって俺は考えてるからな……おっと、魚も焼けてご飯も炊けたみたいだな」

武昭は焼けた魚の身を細かくほぐし丼に盛ったご飯の上に真ん中を空けて載せて空いた所にイクラを盛るとお椀にアラ汁を注いだ。

 

「よし、これで鮭とイクラの親子丼セットの完成だな」

 

「黒いご飯の上に赤い鮭の身と金色のイクラを載せたのね……けど問題は味よ」

 

「そうだな、俺は学園長に持って行くから食べててくれ」

武昭が出来た料理を持って学園長室に向かうと厨房にはえりなだけがいた。

 

 

学園長室で……

 

「うむ、またお主の料理を食べれるとは思わなかったぞ」

 

「まぁ、まずは冷めない内に食べてください」

 

「そうじゃな、ではいただきます……むっ!?これは……」

宗右衛門が一口食べると吹雪の雪原の中に立っていて地面から芽が出て直ぐに成長していき空が晴れたと同時に何処からか現れた多数の鮭に乗り流されている幻が見え現実では上半身の着物がはだけていた。

 

「おはだけが出たって事は美味しかったんですね」

 

「そうじゃ、吹雪が急に晴れたと思ったら多数の鮭に乗っておったわ……」

 

「その米は漆黒米と言って極寒の地でしか育たないんですよ、それにその鮭はストライプサーモンとそれから取れた金色イクラです。

ストライプサーモンは綺麗な水の所に群れで生息してるんです」

 

「なるほど……じゃから、あの様な景色が見えたのか……」

 

「そうだ、さっき、えりなって言う女生徒に会ったから同じ物を食べさせました」

 

「なんと!そうか……そうじゃ、お主は住む所が無いと言っておったからこちらで用意させておいたぞ」

 

「ありがとうございます、なら俺は場所を確認してきます」

 

「これが鍵と地図じゃ、そこに泊まるのも向こうに帰るのもどちらでも良いぞ」

 

「わかりました、それじゃ」

武昭は食べ終えた食器を持って学園長室を出て行った。

 



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第21話 氷の女王(裏)とあの世界へ

武昭が学園長に料理を持って行った後の厨房で、えりなが椅子を出して料理を食べようとしていた。

 

「それでは食べてみようかしら……んん!?これは……」

まずは米を食べて、その味に驚いていた。

 

「私も何回か色米は食べた事はあるけど……この米は今までの中で1番だわ……それに……」

次に細かくしたサーモンに箸を伸ばした…

 

「これも見た目は普通の鮭なのだけど……魚にある独特の臭みが無い……

しかも、味付けは私が見てた限り塩のみだけだったけど、それが逆に魚の旨さを引き出している……

金色のイクラ……川魚のヤマメから取れるとは聞いた事があるけど……あれは確かに鮭だったわ…」

えりなは箸で少しイクラを掬うと口に入れた……

 

「とれたてを醤油に漬けただけなのに味がちゃんと染み込んでいる……

しかも適度な硬さがあるのに皮は柔らかくて中からエキスが出てくる……」

最後にえりなは米と鮭、イクラを一緒に食べた……

 

「はぁ……米の甘さ、鮭の塩味が互いに引き立ってあって、イクラの歯ごたえがいい感じにしてくれる……

そして……最後に、このアラ汁がちゃんとしめてくれる」

えりなは自分が大平原に立っていて空から海に太陽の光が差し込まれそこから海に泳ぎ出す幻を見ていた。

 

「さすがにお爺様に呼ばれるだけはあるわ……」

 

「えりな様?ここにいらしたのですか」

えりなが余韻に浸ってると厨房に赤紫色のショートカットに制服を着た女生徒新戸緋紗子が入ってきた。

 

「あら、緋紗子、どうかしたの?」

 

「はい、そろそろ仕事の時間が近づいてましたので」

 

「そうだったの、ありがとう教えてくれて……そうだ、あなたに1つ頼みたい事があるのだけど」

 

「はい、どの様な事でしょうか?」

 

「紫水武昭という人物の事を調べてほしいの」

 

「紫水武昭……ですか?」

 

「えぇ、今さっきお爺様に呼ばれて料理を作ったのだけど、私にも料理を振舞ってくれたの」

 

「なっ!?えりな様に料理を振舞っただと!?そんな、どこの馬の骨とも分からない者の料理を食べて大丈夫ですか!!」

 

「大丈夫よ……けど、その料理は私が初めて食べた物だったわ……」

 

「えりな様が、その様に仰られるとは……分かりました、調査が終わり次第お教えします」

 

「ありがとう緋紗子……では、仕事に向かいましょう……」

えりなと緋紗子は厨房を出て仕事に向かった。


一方、武昭は学園長から言われてた住所に来ていた。

 

「ふーん、ここが俺の住む所なんだ」

住所の場所には二階建の一軒家が1棟あったが周りに木々や草花が多量に生い茂っていた。

 

「おぉ、学園の施設の一部だからと考えてたけど中々の家だな」

武昭は鍵を開けると家内を確認した。

 

「うん、電気水道、他のライフラインも問題はないか……とりあえずは家電を買わないとな……」

 

「おっ!誰が、こんな所にいるかと思ったら武昭じゃねぇか!」

武昭が声の人物を確認すると制服姿の竜胆がいた。

 

「よっ、そういや竜胆もここの生徒だったっけ」

 

「そうだぜ、それよりもこんな所に居てどうしたんだ?」

竜胆の質問に武昭が軽く事情を説明した。

 

「そうだったのか、じゃあ買いに行こうぜ!私なら、それなりに案内出来るからよ!!」

 

「そうか、なら案内してもらおうかな」ピピピ

2人が出掛けようとした時に武昭の通信機に通信が入った。

 

「悪いな竜胆、ちょっと待っててくれ、はいこちら武昭ですけど」

 

〔あっ、武昭君、私リンだし〕

 

「あっ、リンさんですか、どうしたんですか?」

 

〔うん、今日連絡したのは、武昭君に関係ある事なんだし〕

 

「俺に関係ある事って?」

 

〔そう、実はそっちの世界とこっちの世界の移動が自由に出来る様になったんだし〕

 

「えっ!?そうなんですか!!」

 

〔そうそう、こっちの技術者が研究して世界転移を自由に出来る様にしてくれたんだし〕

 

「けど、何か条件みたいなのは無いんですか?」

 

〔条件としては重量と転移する出入り口の設定だね〕

リンは武昭に設定条件を話した。

・転移可能重量は人物、物質などを合計して500kgまで。

・転移可能の入口として周囲半径300m内の何も無い広場。(サバンナの草原や砂漠の中でも可能)

・出口はグルメ世界のIGO内の一室。

・今の時点では、そこ以外での転移は不可能。

・但し、以前のガララワニやガウチの様な自然転移とは違う物とされている。

との事だった。

 

「そうだ、時間の流れとかはこっちと変わらないんですか?」

 

〔うん、こっちで1日過ごすとそっちでも1日進んでるよ〕

 

「そうですか……リンさん、その出入り口を設定するのに俺はこっちで何をすれば良いんですか?」

 

〔武昭君がマンサム会長から貰った通信機に扉のマークみたいなの無いかな?〕

 

「あっ、ありましたけど……これは気になってたんですよね」

 

〔じゃあ、それを……〕

リンは武昭に設定方法を教えた。

 

その結果……

 

「よし、こんな物だな リンさんこっちは準備出来ましたよ」

武昭は庭の木々を伐採し草刈りなどをして出入り口に必要な広場を作った。

 

〔そう、だったらそこの中心部で通信機のボタンを押すと自動的に設定して、こっちの世界に来れるよ〕

 

「分かりました……あぁ、竜胆も「当たり前だろ!?」まぁ良いか……リンさん、こっちの人も1人連れてって大丈夫ですか?」

 

〔うん、こっちは問題ないよ〕

 

「はい、じゃあ行くから竜胆、俺のそばに来い」

 

「あぁ!分かったぜ!!(向こうの世界にはどれだけ旨い物があるんだ!!)」

竜胆が自分に抱き着いたのを確認すると武昭は通信機のボタンを押した。

 

その瞬間、通信機から光が発生し武昭と竜胆を包み込み、消えたと同時に2人の姿が無かった。

 



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第22話 グルメ世界 (竜胆と)

この小説内では、一龍、次郎、三虎は生きていて、世界中を回っている設定にしてます。
一龍はマンサムにIGO会長を次郎はノッキングマスターの名前を鉄平に、それぞれ譲ってます。

それと運転免許の描写が出てきますが、武昭は特例で取った事にしてます。
グルメIDにしても同じです。


武昭と竜胆が光の眩しさから目をつぶっていると足元の感覚が変わったので確認すると、何処かの部屋で近くに黒髪の女性が立っていた。

 

「なぁ武昭……ここって……」

 

「あぁ、懐かしい匂いと人が居るからな……お久し振りですリンさん」

 

「うん!久し振りだし武昭君」

女性は武昭に近付くと軽く挨拶をした。

 

「武昭、この人は?」

 

「この人はIGO(国際グルメ機関)の中にある研究所の所長のリンさんで俺の師匠の1人でもあるトリコさんの奥さんなんだ」

 

「そうなんだし!私はリンだよ、よろしく」

 

「あっ、私は遠月学園中等部3年の小林竜胆って言います」

 

「遠月学園て言うのは向こうの世界で俺達が通ってる料理学校なんだ」

 

「ふーん、そうなんだ」

 

「バハハハ!どうやら無事に空間移動が出来たみたいだな!!」

3人が話してると筋肉質の男性が酒を飲みながら部屋に入ってきた。

 

「「あっ、マンサム会長」」

 

「あっ!今ハンサムって言った!?」

 

「「言ってません(ないし)」」

 

「えっと……武昭、この人は……」

 

「ん?彼はIGOの会長さんでマンサムさんだ」

竜胆が戸惑ってると武昭が説明した。

 

「ほう、どうやら彼女は武昭の事情を知ってるみたいだな」

 

「えぇ、俺1人でやる事にも限界がありますから」

 

「バハハハ!別に武昭が、そう決めたのなら儂らは何も言わんよ!!」バシバシ

武昭はマンサムに背中を叩かれていた。

 

その後、武昭はリンとマンサムに挨拶をすると部屋を出てある所に向かった。

 

「なぁ武昭、どこに行くんだ?」

 

「ん?タイミング良くこっちに戻ったから、こっちの街で新生活に必要な物を買い揃えようと思ってな」

 

「おや、誰かと思えば武昭君じゃないか」

目的地に向かう途中に2人は黒服にサングラスをかけた男性ヨハネスに会った。

 

「あっ、お久し振りですヨハネスさん」

 

「あぁ、そうだね それよりも何故ここに居るんだい?元の世界に帰ったと聞いてるが……」

武昭はヨハネスに事情を話した。

 

「そう言う事だったのか、では話しかけてすまなかった」

 

「いえ、気にしないでください、じゃあ又」

武昭はヨハネスと雑談を終えると再び目的地に向かった。

 

 

2人が到着したのは様々な乗り物が置いてある格納庫だった。

「確か……おぉ、あったあった」

 

「おい、これってもしかして……武昭の乗り物か?」

2人の前にはトレーラーハウスが一台あった。

 

「あぁ、普通の買い物だけならこれで済むからな……安心しろ免許ならこっちで取ってるから」

 

「そうなのか、じゃあ……おぉ、そこら辺の高級車よりも乗り心地が良いぞ」

 

「ちゃんとシートベルトは締めろよ、久し振りに行くか!」

武昭はエンジンをかけると、そのまま買い物に向かった。

 

 

武昭達が買い物に向かったのは満腹都市グルメタウンと呼ばれてる街だった。

 

「さてと、目的地に着いたぞ……ん?どうした竜胆」

 

「いや……こんなにデカイ街なんか見た事が無いから……それに、あの街の中心にある巨大なナイフとフォークはなんだ?」

 

「あぁ、あそこは、この街の象徴とも言えるグルメタワーって呼ばれてる建物だ、ほらまずは中に入るぞ」

竜胆は戸惑いながらも武昭の左腕に抱き着いた。

 

グルメタウンの入口に着くと武昭は竜胆に一万円を渡した。

 

「ん?なんだ、この金は」

 

「このグルメタウンに入るにはグルメIDって奴があれば無料だけど無いと入場料がかかるんだ」

 

「へぇー それで武昭は、そのグルメIDってあるのか?」

 

「あぁ、こっちに来た時からの奴だけどな……おい、俺達の順番だぞ」

促された竜胆は入場料を払い武昭はグルメIDを確認され、それぞれ中に入った。

 

「うわぁ……これがグルメタウンって所か……」

竜胆は多数の店を見て驚いていた。

 

「何か食べたかったら俺が払うから何でも構わないぞ」

 

「いやいや、私だって、それなりに手持ちがあるんだぜ……おっ、ちょうど良く自販機があったから私が買ってやるよ」

 

「買うのは構わないけど……ちゃんと値段見た方が良いぞ竜胆」

 

「へ?自販機がそんなに高い訳ないだろ……ってなんだこの値段!?」

武昭に言われて竜胆が値段を見ると【10万円】と書かれていた。

 

「そいつは三つ星自販機と言って貴重なドリンクが売られてるんですよ、だからほら」

 

「あっ、上についてる星は、そう言う意味だったのか……」

 

「ちなみに星の無い奴なら安く売ってるぞ」

 

「うわっ!10円とか20円って安すぎだろ……それに量も多いし……」

 

「ここはまだ入口だからな、中に入ったらさらに驚く物があるから楽しみにしてろよ」

竜胆は武昭の後をついていったが、その心中はワクワクしていた。

 

 

 

 



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第23話 グルメタウン 前編

武昭と共にグルメタウンに来た竜胆は、その規模に驚いていた。

 

「はぁ……確かに、こんな場所が普通にあるんだったら武昭の腕前にも納得だぜ……」

 

「ん?そうか? 俺なんかよりも師匠達の方が美味しい料理を作る事が出来るからな」

 

「武昭よりもって……ん?なぁ、あのホネナシサンマって……」

 

「その名の通り竜胆が知ってるサンマの骨が元々無い奴なんだ食べてみるか?」

 

「あぁ!こんな物見せられて食べない訳にはいかないだろ!!」

そう聞いた武昭は出店に買いに向かった。

 

「ほら、ホネナシサンマの炭火焼だ。頭から丸かじりで食べれるぞ いただきます」

 

「そうか、じゃあいただきます おぉ!私が今まで食べたサンマよりも脂の乗りがあって美味いぜ!」

 

「どうやら竜胆の口にあったみたいだな、けどこんなので喜んでたら驚き疲れるぞ」

 

「なぁ!次は何かご飯物を食べたいぜ!!」

 

「ご飯物か……だったら、違う物を食べる前に、そこのガリボックスでガリを食べた方が良いぞ?」

 

「ん?ガリボックスってなんだ?」

 

「味消し生姜で作ったガリでな、見ての通りここは料理店が多いから平等に味わってもらう為に設置されてるんだ」

 

「ふーん、そうなのか……おぉ!確かに口の中がさっぱりしたぜ!!」

 

「そうか、ならそこの定食屋に行くか」

竜胆は武昭に促されるまま近くの定食屋に入って行った。

 

「おいおい……武昭、これって普通の食材だよな?……」

 

「あぁ、こっちの世界でも向こうと同じ食材だってあるんだぜ ほら俺が前に作ったセンチュリースープが向こうの食材だぜ?」

 

「そう言えば、そうだったな……(ならこっちの料理を味わって覚えれば向こうでも再現出来る可能性があるって事か……)」

 

「さてと、次は……グルメデパートに行って俺の買い物をするか」

 

「あぁ、分かったぜ」

店を出た2人はグルメデパートに向かった。


グルメデパートに入った竜胆は品揃えの数に驚いていた。

 

「うわぁ……鍋だけでも凄い数あるぜ……ん?1,10,100……なっ!?」

 

「あぁ、栗坊鍋な。それは数千度の熱で煮込み続けても形が変わる事がないから、高級食材の調理に欠かせないんだ」

 

「そうなのか……こっちは包丁コーナーか……やっぱり包丁も高いな……」

 

「メルク包丁だな、研ぎ師メルクが作った包丁シリーズだ。

それでさっきの栗坊鍋は最高の鍋職人の1人栗坊が作った奴だ」

 

「はぁ……ん?なぁ、この保存データカードってなんだ?」

売り場内を見てた竜胆は多数のメモリーカードが目に付いた。

 

「そいつは、その食材に適した温度や保温、保冷で保存が出来る様になる食材のデータが入ってる物なんだ。

こいつは冷蔵庫用の奴で、それに対応する冷蔵庫に使うとデータの更新が出来るんだ」

 

「凄いな……こっちの世界での食に対する意識は……」

 

「そうだ、冷蔵庫と幾つかグルメケースを買って行くか。そうだ竜胆もいるか?」

 

「えっ?いや、私もそう聞いたら欲しいけどよ……結構な値段するぞ?」

竜胆が指差した先には定価9万円「テイクアウト1000」と値札が貼ってある物が棚にあった。

 

「ん?別にそれ位なら問題無いぞ?俺はいつもこれで支払いだし」

 

「それってクレジットカードか?金色だけど……」

 

「こいつはグルメクレジットって奴で限度額は1000億円までだったな」

 

「1000億……うん武昭といると私の中の何かが壊れてく感じがするぜ……」

竜胆はどこか悟った様な表情になっていた。

 

その後、武昭は新生活に必要な物、竜胆は新しい器具や珍しい食材を買って買い物を終えていた。

 

「ありがとうな!武昭!!こんなに買ってくれて!!」

 

「別にお礼を言われる事は無いよ、俺の買い物を付き合ってくれたんだからな……」

 

「あっ、武昭君……久し振り……」

声の人を確認するとミントグリーンの髪にピンク色のバンダナをした女性が立っていた。

 

「ののさん!お久し振りです」

 

「うん……そうだね……そうだ、久し振りに会ったから店に寄って行く?今なら()()も居るよ……」

 

「えっ!?本当ですか!けど……竜胆が……」

 

「武昭が行きたいなら私は構わないぜ」

 

「じゃあ行きます、そうだ竜胆も良いですか?」

 

「うん……良いよ……先生も、そんなにうるさく言わないから……」

返事を聞いた武昭と竜胆はののと一緒に店に向かった。




グルメクレジット ゴールドカード
トリコの無制限のブラックとは違い限度額がある。


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第24話 グルメタウン 後編

武昭と竜胆が、ののに連れられて来た場所は大きな城の様な建物の横にある小さなボロい食堂だった。

 

「ん?なぁ武昭、ここが目的地なのか?」

 

「あぁ、ここに居る人は、この世界で4人しか居ない美食人間国宝の1人で伝説の料理人でもあるんだ」

 

「なっ!?世界に4人しか居ないって……」

 

「先生、買い物に行ったら懐かしい人に会ったので一緒に来ました」

ののが店に入った後に武昭と竜胆も入ると小柄なピンク色のお団子ヘアの老婆が椅子に座ってお茶を飲んでいた。

 

「誰じゃ?懐かしい人とは?」

 

「俺だよセツ婆武昭だよ」

 

「おぉ!武昭じゃったのか、本当に久し振りじゃのう……ん?そっちの女子は誰じゃ?」

 

「あぁ、彼女は俺と一緒にこっちに来た竜胆って言うんだ」

 

「あっ、小林竜胆って言います……なぁ、武昭……このお婆ちゃんが本当に伝説の料理人なのか?

 

「まぁ、竜胆からすればセツ婆を始めて見て、そう思うのは当たり前だな」

 

「なんじゃ、その子はあたしゃの事を知らんのか……ってこの世界じゃないなら、そう思うのも無理はないのう」

 

「セツ婆、急に来てなんだけど何か食べさせてくれないかな?」

 

「うっふっふっ、しょうがないのう武昭は……ならセレ豚のカツ丼でもどうじゃ?」

 

「うん!構わないよ!ほら竜胆も席に座れよ」

 

「あ、あぁ……武昭が伝説の料理人って言ってたけど……」

 

「そうだよな竜胆も料理人だから分かるだろうけど、この店にある物全部、普通に見えるんだろ?」

 

「そうだぜ……伝説の料理人って言うなら、もっと高級な器具とか使ってるんじゃ……」

 

「確かに、そうかもしれないな……けど料理人は料理で勝負するんだ……」

 

「どこにでもある道具で最高のフルコースをお客さんに振る舞う……それが先生なんです……お水をどうぞ」

 

「ありがとうございます……うわっ!なんだこの水!?凄く飲みやすくてまるで空気みたいだ……」

 

「それはエアアクアって言う水で標高1万m以上の山から湧き出る水で世界でも5本の指に入るほどの喉越しなんだ」

 

「標高1万m以上って……武昭、もしこれって店で買うとなったら幾ら位なんだ?」

 

「確か……2リットルのボトル一本で12万円位じゃなかったかな?」

 

「えっ!?1,12万円……まさか、そんな水が無料……なのか?」

 

「え?お冷は普通に代金なんか掛からないだろ?ですよね、ののさん」

 

「はい、武昭君の言う通りですよ」

 

(そっか……そういや、ここは私がいた世界とは違うんだったっけ……)

竜胆は自分の常識が当てはまらない事を忘れていた。

 

「ほれ、話している間に料理が出来たじょ」

セツ婆は2人の前にカツ丼を置いた。

 

「おっ!久し振りのセツ婆の料理だ!冷めない内に食べようぜ!竜胆!!」

 

「あ、あぁ、そうだな……(よし、構わないで食べるぞ!)」

 

「「この世の全ての食材に感謝を込めて……いただきます」」

 

「旨んめぇー!!カツとタレとご飯がいい具合に絡んでるぜ!!」カッカッカッ

 

「武昭の言う通りだ!更に玉ねぎもちゃんと火が通ってるのに歯応えがいい感じにあって良いアクセントだ!!」

2人はその後カツ丼をおかわりした。

武昭は17杯、竜胆は1.5杯だった。

 

食事を終えて……

 

「ふぅ、ご馳走様セツ婆 久し振りに食べれて嬉しかったよ」

 

「うっふっふっ、わたしゃも久し振りじゃったからのう」

 

「それでお2人は……いつ向こうの世界に戻るんですか?」

 

「うーん、ここからIGO迄なら……時間て所だから、そろそろ行くよ」

 

「うっふっふっ、また来た時には寄りんしゃい、料理を作ってやるじぇ」

 

「その時は私も作りますから……」

 

「ありがとう、セツ婆、ののさん……じゃあ行くから、ほら竜胆行くぞ」

 

「ありがとうございました」

2人は食堂を出ると駐車場に向かった。

 

元の世界に帰った日の夜、竜胆の部屋の浴室からちょっとした悲鳴が聞こえたらしい……




エアアクアの値段は確かTVでこうだったとうろ覚えです。


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第25話 裸エプロン先輩

武昭と竜胆がグルメ世界から戻ってきた数日後……

 

「ふぅ、一旦作業はここまでにして何か軽く食べるか」

武昭は自身の敷地内に合った空き地を耕していた。

 

武昭が用意した物はカフェアリのコーヒーとクッキーアルパカのクッキーだった。

 

「向こうに行った時にウール火山の灰を持ってきたから、これを土に混ぜれば大体の食材は育つけど……

何にするかな……」

 

「おや?君が、ここの家の住人かな?」

武昭が何を育てるか考えてると薄い茶髪の癖っ毛の男子生徒が庭に入ってきた。

 

「ん?あぁ、学園長からこの場所を紹介されてな……悪いけど、あんたは……」

 

「あぁ、自己紹介がまだだったね僕の名前は中等部2年一色慧って言うんだ、よろしく」

 

「あっ、すんません先輩でしたか、俺は紫水武昭って言います、中等部1年に編入してきました」

 

「そうか、君がそうだったんだ そうそう僕の方が先輩だけど敬語は使わなくて良いから」

 

「そうですか、じゃあ一色さんて呼ばせてもらうんで俺も武昭って呼んでください」

 

「分かったよ なら武昭君で……それで聞きたいんだけど、ここを耕したのは武昭君だけなのかい?」

 

「えぇ、俺しかいませんから……どうかしました?」

 

「いや、1人でやった割には凄く広くやったなって思ったんだ」

一色は武昭が耕した空き地の広さに感心していた。

 

「え?別にこれ位なら1人で出来ませんか?」

 

「まぁ僕も畑を耕した事があるから分かるけど……1人でこれだけをやるとなるとね……」

 

「おーい武昭ー、竜胆様が来てやったぞーって、誰だ?」

武昭と一色が話してると竜胆が来た。

 

その後……

 

「そうですか、以前に武昭君と知り合ってからの付き合いなんですね……」

 

「あぁ、前に私が食材を探しに行った先で会ってな」

一色と竜胆は普通に話していた。

 

「それで竜胆はなんで俺の所に来たんだ?」

 

「あぁ、そうそう 実は武昭に私のフィールドワークに手伝ってほしくてな」

 

「俺は構わないぞ、それでどこに行くんだ?」

 

「アメリカ大陸のカナダだよ」

 

「カナダか、それでいつから行くんだ?」

 

「3日後には出れる様にしたいな」

 

「3日後か、じゃあ用意をしたら俺の家に来てくれ」

 

「あぁ、分かったぜ、じゃあなー」

竜胆が去ると一色も帰って行った。

 


言われた日になって竜胆と武昭はカナダにいた。

 

「それで竜胆、なんでカナダに来たんだ?」

 

「あぁ、前に知り合った人から連絡が来てさ、珍しい魚が見つかったから見に来てくれって言われたんだ」

 

「珍しい魚って……もしかしてG案件の可能性があるって事か?」

武昭の言葉に竜胆は黙ってうなづいた。

 

その後、2人は竜胆の知り合いから情報を聞いて捕獲された場所に向かっていた。

 

「竜胆、そこに」

 

「そうだな……おっ、これだな」

竜胆は武昭が運転する車の助手席でタブレット内の情報を見ていた。

 

揚羽蝶鮫(あげはちょうざめ) 魚類 捕獲レベル17】

・体にアゲハ蝶の模様があるチョウザメ。

・性格は凶暴で自分よりも大きな獲物でも食う事がある。

・体長は平均5~6mだが、ごく稀に10m級の獲物が取れる場合がある。

・生息場所としては海ならばどこにでもいる。

・尚これの亜種として、黒揚羽蝶鮫や紋白蝶鮫などがいる。

 

「なぁ武昭、これがいるって事は……」

 

「竜胆の考えてる通りだな、海中でグルメ世界と繋がったんだろうな、よし、ここだ」

目的地に到着したので武昭が車を駐車すると降りて場所を確認した。

 

そこは海沿いで砂浜がある場所だった。

 

 

 

 

 

 



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第26話 揚羽蝶鮫〔あげはちょうざめ〕

現場に到着した武昭と竜胆は色々と用意をしていた。

 

「ん?竜胆、それって前にグルメタウンで買った奴か?」

武昭は竜胆が持っている物に気付いた。

 

「あぁ!向こうで買ってきた小型モーターボートだぜ!それに、このボディースーツもだ!!」

竜胆が衣服を脱ぐと黒いピッチリとしたウェットスーツの様な物を着ていた。

 

「これって凄いんだな、最初はサイズが入るかなって思ってたけど簡単に着る事が出来たんだ」

 

「あぁ、それはコッ(トン)の皮で出来てる奴だったか」

 

「そう言えば、買う時に従業員さんにそう言われたな、それって珍しい生物なのか?」

 

「いや、コッ豚はそんなに珍しい奴じゃなくて普通に牧場でも育てられてるんだ。けど天然物の方が皮の強度が強い分高くなるんだ」

 

「へぇーとそうなのか……まぁ、私の()()()でも合う奴があったから買ったんだけどな」

竜胆は自分の胸を見て話していた。

 

「ふーん、まぁ女の悩みは俺には分からないからな、じゃあ潜水をするけど……どうする?1人ずつで行くか2人で行くか」

 

「いや、その前に聞きたい事があるんだけどよー 武昭はそれだけで平気なのか?かなりここの海は冷たいって聞いてるぜ?」

竜胆が武昭を見るといつもの格好で上半身を脱いだだけに口にマスクをしてるだけだった。

 

「ん?別にこれ位なら……うん、平気だぞ?」

 

「まぁ、武昭がそう言うなら大丈夫なんだろうな……なら2人で行こうぜ」

 

「そうだなって……竜胆も()()を持ってろ」

武昭は竜胆に一枚の葉っぱが入ったマスクを渡した。

 

「ん?何だこの葉っぱ……コレもアッチの物か?」

 

「あぁ、その葉っぱは酸素の葉って言って微量な光と微かな水分と二酸化炭素で光合成をして酸素を作れるんだ」

 

「へぇ、こんな葉っぱ一枚でなぁ……そうか、ならありがたく貰っとくぜ」

 

「じゃあ準備も出来たから潜るぞ お先に」ドブン

 

「あっ!先に行くなんてズルいぞ!」ドブン

武昭が潜ったのを見て慌てて竜胆も続けて潜った。

 

海中では武昭と竜胆が隣同士で泳いでいた。

 

〔うん、見た所……変な所は無いな〕

 

〔あぁ、普通にこの世界でも居る生物だし向こうの奴がいる感じもしないな〕

武昭と竜胆はマスクに着いてる通信機で話しながら海中の光景を見ていた。

 

〔なぁ武昭、その獲物って言うのはグルメ界ならどんな所に居たんだ?〕

 

〔揚羽蝶鮫は向こうでも中々見つからない獲物だったんだ……まぁ、それもあって捕獲レベルが高くなるんだ〕

 

〔そうなのか……それにしても、そんな生物がいる様には見えないけどな……〕

竜胆は自分の周りを見渡した。

 

〔竜胆の言う通りだな、特に生態系が崩れてる訳でもないし……ん?コイツは……気をつけろ近くに獲物がいる可能性がある〕

 

〔そうなのか?けど、何でそんな事が分かるんだ?〕

 

〔それは()()が落ちてたからだ〕

武昭が海底の岩に付着していたアゲハ蝶の様な物を竜胆に見せた。

 

〔これってアゲハ蝶か?何でこんな海中に……いや、まさか……〕

 

〔そうだ、これが揚羽蝶鮫の鱗なんだ……まぁ、これも上手く処理をすれば食べられるんだけどな……竜胆!危ねぇ!!〕

 

〔え?……武昭!?〕

竜胆は何かに気付いた武昭に庇われたが庇った武昭は左腕に切り傷が出来ていた。

 

〔大丈夫か?竜胆……〕

 

〔あぁ、武昭が庇ってくれたから大丈夫だけど……お前の方は……〕

 

〔これ位なら……問題ない!〕

武昭は傷付近の筋肉を締めて血止めをした。

 

〔それよりも竜胆は早く船に戻れ……()()()は俺が相手をする〕

武昭が水中の一点を見てるとその場所にタブレットで見た揚羽蝶鮫の姿があった。

 

 

 

 



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第27話 調理開始。(竜胆)

竜胆が武昭と同じ方を見ると体長7m程の大きさをした揚羽蝶の様な体表面をした鮫がいた。

 

〔武昭!お前が相手をするって言うけど大丈夫なのか!?〕

 

〔えぇ、以前も同じ様な依頼を受けた事がありますからね……とりあえず フライングナイフ!〕

武昭が鮫に向かって攻撃をするが躱された。

 

〔チッ!やっぱり水中じゃ動きが鈍くなるか!おっと!〕

鮫は武昭に狙いを定めると向かって来たが武昭は避けた。

 

〔くそっ!どうしたら……なっ!?〕

武昭が避けたのを見て鮫が方向転換したが何かが飛んできて武昭の体に傷を付けた。

 

〔一体何が!?……コイツは……鱗か!〕

武昭が体に当たった物を確認すると鮫の体から飛ばされた鱗だった。

 

〔確か普通の鮫でも鱗は楯鱗て呼ばれてて結構な硬さだったけど……コイツの鱗はそれ以上の鋭さがあるぜ!〕

武昭は鮫を見ながらどうしようか考えていた。

 

そんな中……

 

〔ん?今、何か……アレは!?〕

武昭は海中に何かを見つけるとソレに向かった。

 

〔チッ、アイツもコッチに向かってきてるか!〕

鮫は武昭を追ってきた。

 

一方……

 

「プハァ!ハァハァハァ……どうやら私の方には来なかったみたいだな……」

海上に出た竜胆は直ぐに船に上がると海の方を見た。

 

「武昭……大丈夫だよな?……ドゴォーン!なっ!?なんだ!あっ!」

竜胆が見てると海中から大きな爆発が起きたと同時に揚羽蝶鮫が水面から飛び出してきた。

 

「コイツは……確か武昭が相手をしてた奴だよな?……武昭は……」

 

「プハァ!……ハァハァハァ……あぁ、ギリギリで何とかなったか……」

竜胆が確認してると武昭が浮かんできて水面から顔を出していた。

 

「武昭!無事だったのか!!」

 

「あぁ、ちょうど海底に()()()()があったからな。竜胆悪いけど船をこっちに回してハシゴを出してくれ」

 

「分かった、ちょっと待ってろ」

竜胆は武昭に指示を受けた通りにした。

 

「ありがとうな竜胆……」

 

「これくらい良いって……おいっ!武昭!その腕どうしたんだ!?」

竜胆は武昭が上がってくる時に右腕に咬まれた様な傷跡があった事に気付いた。

 

「ん?コイツはアイツを捕獲する時にちょっとな……竜胆アイツを曳航するからそばにつけてくれ」

 

「あ、あぁ……けど、どうやってコイツをこんな風にしたんだ?」

竜胆は鮫に近づくと、こうなった理由を聞いた。

 

「それは()()()を使ったんだよ」

武昭はズボンのポケットから幾つかの巻貝を出すと甲板に置いた。

 

「コイツは爆破ツブ貝(ばくはつぶがい)って奴で上手く処理しないと爆発するんだ」

 

「へぇ……って、そんなのがあったら危ないんじゃないのか!?」

 

「あぁ、だから傷が治ったら俺が処理するんだ」グギュル〜

 

「全く……心配してたのがバカらしいぜ……」

竜胆は武昭の腹の音を聞いて苦笑いした。

 

その後、武昭は竜胆にドクターアロエを傷に巻いてもらっていた。

 

「ありがとうな竜胆」

 

「これ位なら私でも出来るからな、それでこれはどうやって処理するんだ?」

竜胆は甲板にのせられた揚羽蝶鮫を指した。

 

「あぁ、まずは腹を捌いて内臓を取り出すんだ、その後に全部の鰭を切り落とすって……そうだ、竜胆がやってみるか?」

 

「うえっ!?そうは言っても私はこんな奴を捌いた事無いんだぞ!?」

 

「中級とは言え竜胆も食義を身につけてるんだ……後は色々な食材を捌いていかないとな……まぁ強いて言うなら食義の応用課題だ」

 

「武昭……あぁ、分かったよ、私やってみるよ……けど、この鱗、かなり硬いぞ?」コンコン

 

「俺の包丁を貸しても良いけど……ん?そういや前に竜胆はグルメデパートで幾つか包丁を買ってきたんじゃなかったか?」

 

「あっ!そうだった!……確か……あった!」

竜胆は何かを思い出すと荷物の中を探り出して一本の包丁を出した。

 

その形は両刃だが片方が普通の形でもう片方が鋸刃になっている物で刃渡り60cmはある包丁だった。

 

「そいつは……特殊調理食材の包丁の【沖波】(おきなみ)だったか 」

 

「デパートで見た時に何か感じたんだ これならいけるだろ?」

 

「いける事はいけるけど……使うには難しいぞ?」

 

「へっ、難しいからこそ食義を鍛える事も出来るんだろ?……ふぅ……」

竜胆は包丁を持って精神統一をした。

 

「じゃあ……行くぜっ!!」

竜胆は鮫の顎の下に包丁の刃を入れると、そのまま腹から尾の方まで斬り開いた。

 

「そうだ、竜胆 内臓を取り出す時は1つずつ出すんだ。俺がどの部位か説明するから」

 

「あぁ、分かったぜ……っとコイツはどこの部位だ?かなりの大きさだけど」

竜胆が最初に手にした物は薄いオレンジ色で7~80cm程の柔らかい部位だった。

 

「そいつは肝で今みたいな取れたてなら刺身でもイケるぞ」ジュルリ

 

「そうなのか……まぁ私は初めてだから味見だ。ハイよ武昭」

 

「おっ、ありがとうな竜胆……う〜んコレコレ」

竜胆は肝を武昭と自分の分だけ薄切りにすると、そのまま口に入れた。

 

「うわっ!なんだこの肝!私も何度か魚の肝は食べた事があるけど凄くコッテリなのに後味が爽やかだぜ!!」

 

「取れたてならではの新鮮さからする味なんだ。あぁコイツを醤油に漬けて焼いても美味いぞ」

 

「なっ!そんな物があるなら来る前に言っておけよー!!」

 

「悪かったな、けどな醤油漬けにしようにも普通のじゃ無理なんだ。俺も今は持ってない」

 

「そうか……じゃあ、その話はここまでで……おいしょっとコイツはどこだ?』

 

「そいつは胃袋だな。切り開いて中を洗って日干しをすれば良い珍味になるんだ」

 

「そうか、うわっこんなに長いのは腸か……コレは空気が入ってるから浮き袋だな 次は……」

 

(いつのまにか俺の指示無しに捌いてるか やっぱり以前の修行が身について行ってるって事か)

武昭は自分の指示無しに鮫を捌く竜胆を見ていた。

 

暫くして……

 

「ふぅー やっと処理が終わったぜ」

鮫の捌きを終えた竜胆は額の汗を拭っていた。

 

「ご苦労さん。さてと次はコイツの処理をするか」

 

「なぁ武昭、コレの処理も私にやらせてくれないか?」

武昭が爆破ツブ貝の処理をしようとした時に竜胆が話しかけてきた。

 

「んぁぁ……俺もやらせたいけど、コイツは特殊調理食材だからな」

 

「特殊調理食材って……前にエナメルキャベツって奴を頼まれた細さに刻んだけどな」

 

「あぁ、コイツもちゃんとした手順で処理しないと危なくてな じゃあ幾つかあるから試しに一個やってみろ」

武昭はツブ貝を1つ俎板の上に置くと竜胆にやらせた。

 

「えっと最初は殻から身を外さないと まず、ここら辺に穴を開けて〈コンコン〉え?何か色が変わってきて……おいおい!大きくなってきてるぞ!」

 

「やっぱりダメだったか……竜胆、ふせろ」ドゴォーン!

竜胆が伏せたのを見た武昭がツブ貝を上空に投げると、そのまま空中で爆発した。

 

「爆破ツブ貝は変に殻に傷付けたりすると、その衝撃で爆発するから慎重にやらないとダメなんだ」

 

「そうだったのか……なぁ、もしかしてそんな食材は他にもあったりするのか?」

 

「そうだぞ、だからこそ俺は食義を覚えさせたってのもあるけどな。さてと俺はツブ貝の処理をするから竜胆は鮫の方を料理しといてくれ」

 

「あぁ、分かったよ……(私はまだそこまでの食義を覚えちゃいないのか……頑張らないと……)」

竜胆は新たな決意をすると鮫で料理を作り始めた。

 

その後、2人は互いに出来上がった料理を食べて港に戻った。




何か竜胆がメインになりつつある?


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第28話 帰還

揚羽蝶鮫の捕獲を終えた2人は遠月学園に戻ってきた。

 

「ふぇ〜 久し振りにここに戻ってきたぜ〜」

 

「俺も久し振りだな。それで竜胆はどうするんだ?」

 

「そうだなぁ……武昭はどうするんだ?」

 

「俺は学園長に会いに行くよ。あの人は()()()()()()も知ってるからな」

 

「そうか、なら私もついていくぜ。一緒にいたんだから説明も出来るし」

 

「それも、そうだな、じゃあ行くか」

武昭と竜胆は学園長室に向かった。


学園長室に到着した武昭と竜胆は今までの事を報告していた。

 

「ふむ、その様な事になっていたとは……それで、その海域は……」

 

「調べたら元の海域に戻ってました。多分、そこにいるグルメ界の生き物を捕獲すると戻るんじゃないかと……」

 

「そうか……それでお主に聞きたいのだが……」

 

「捕獲してきた食材ならあるから何か食べたいなら作れますよ……但し今ある物で作るからメニューはコッチ任せになりますけど……」

 

「では、それで良いから何かを作ってくれぬか?」

 

「良いですよ。料理人として料理を食べたい人がいるなら作るだけですから。調理場は前に使った所ですか?」

 

「あぁ、あそこはお主用にいつでも空けておる」

 

「そうですか、ありがとうございます。じゃあ出来るまで待ってて下さい。竜胆はどうする?」

 

「なぁ学園長の爺さん、私が武昭の手伝いをするから、私も出来た料理を食べて良いか?」

竜胆はイタズラ猫の様な表情を浮かべて聞いた。

 

「うむ、儂は構わぬぞ。武昭はどうだ?」

 

「えぇ、2人に作ってもまだ余るだけの量があるから問題は無いですね。なら行くぞ竜胆」

武昭は竜胆を連れて指定された調理場に向かった。

 


調理場に着いた武昭と竜胆は何を作るか話していた。

 

「それで武昭、何を作るんだ?」

 

「あぁ、揚羽蝶鮫があるから餡掛けオコゲにでもしようかなって」

 

「餡掛けオコゲって、中華料理にあるアレか?」

 

「あぁ、コイツ一匹だけで大体の材料は揃ってるからな」

 

「じゃあ私は何をしたら良いんだ?」

 

「竜胆には野菜の下処理を頼む、俺はその間に他の用意をするから」

 

「あぁ、分かったぜ。大きさはどれ位にするんだ?」

 

「大きさは人参と筍、玉葱は一口大の乱切りでピーマンは千切りだ」

竜胆は武昭の指示を聞き武昭はそうしながら自分の仕事を始めた。

 

暫くして……

 

「学園長、出来ましたよ」

 

「おぉ、待ち兼ねたぞ。今回は……コレは餡掛けオコゲか?」

武昭が持ってきたワゴンには野菜が入った餡掛けと薄黄色の揚げた物が入れられた器があった。

 

「えぇ、揚げサメ肉の餡掛けオコゲになります。けどコイツはまだ未完成なんです」

 

「ほう……何故、未完成の物を持ってきたのだ?」

 

「それは、()()()()()()()()()()()()()()竜胆」

 

「あぁ、見てなよ学園長!……ザバザバザバ!

指示通りに竜胆がオコゲに餡を掛けると池の鯉に餌を与えて集まった時の様な音と何らかの匂いがした。

 

「ウォォ!なんだ!この音と匂いだけで体がソレを求めている!!では!頂きます!!」

餡掛けをした途端学園長が我慢出来ずに料理にかぶりついたその瞬間……

 

(何と!儂は今自分が食べた鮫になっているのか!?そして……ヌォォォ!!)

学園長の脳裏には自分が鮫に変化してあらゆる生き物を食い続けてる映像が浮かび上がった。

 

その後……

 

「ふぅ……今回も満足したぞ……粉をつけて揚げたサメ肉と何らかのオコゲに軽く油通しした野菜の餡の餡を掛けた所までは分かるが、どうしてこの様な味わいになったかは……」

 

「まぁ、向こうの食材だから分かんないのは当然ですね。今回の材料は()()()を使ったんです」ドン!

武昭は近くにあった机に今回の食材を出した。

 

「野菜は普通に売ってる奴ですけど、メインはコイツらです」

 

「コレは……サメ肉と肝、それと鱗……か?」

 

「あぁ、今回の料理に使った油はこの肝を溶かした物を使ったんだ」

材料を見た学園長に竜胆が説明を始めた。

 

「この鮫油……で良いか、コイツで野菜を炒めてサメ肉を揚げて作ったんだ」

 

「なるほど、だからこそあれ程の鮫の味を感じたのか……だが、この鱗は……もしや!」

 

「そう、このオコゲは、この鱗を揚げたんだ。そしてサメ肉にはこの鱗から取った粉を塗している」

 

「そうか……今回も美味かった……ご馳走様……」

 

「じゃあ、今日はコレで帰らせてもらうぜ」

 

「あぁ、また何か手に入れた時は料理を頼む」

そう言われた武昭は竜胆と一緒に学園長室を出て行った。

 

 




今回の料理。

揚羽蝶鮫の餡掛けオコゲ。

材料。
・サメの素材。(肉、鱗、肝)
・その時にある野菜類。



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第29話 手入れ

学園長室を出た武昭と竜胆は武昭が住んでいる家に来た。

 

「ここに来るのも久し振りだな」

 

「そういや武昭って、ここに住んでるんだったな」

 

「とは言っても、なかなか居る事は無いけどな そうだ竜胆、軽く掃除とか手伝ってくれないか?」

 

「私は構わないけど、何か食べさせてくれるなら良いぞ」

 

「あぁ、何かある物で作ってやるよ じゃあ汚れても良い服に着替えろよ 俺はここで着替えるから」

2人は着替える為にそれぞれの部屋に向かった。


着替えた2人は家の庭に来ると作業を開始した。

 

「うん、それなりに育ってるな」

 

「武昭、いつの間に野菜とか植えてたんだ?」

竜胆は庭に畑がある事を疑問に思って武昭に尋ねた。

 

「あぁ、幾つかの種を普通に蒔いただけだぞ」

 

「だとしても、何でこんな成長してるんだ……まさか()()()()()()()?」

 

「軽く肥料代わりに()()を土に混ぜただけなんだけどな」

武昭はポケットから何かを取り出すと竜胆に見せた。

 

「コレって……灰か? けど武昭が出したんなら()()()()()()()()()

 

「竜胆の思ってる通りでな こいつはウール火山の噴火の時に出る火山灰でなミネラル豊富で栄養満点なんだ それに」

 

「なっ!?おい!そんなの食べたら……まさか……()()()()()()()()()()

 

「少し舐めてみろよ、ほら竜胆」

 

「武昭が、そう言うなら……おぉっ!程良く塩分があって美味しいぜ!!」

 

「コレをポップコーンのスパイスにしても美味いんだぞ。俺の師匠のパートナーだった()()()がそのポップコーンしか食べなかったからな」

 

「ふーん、その師匠さんのパートナーがポップコーンしか食べなかったって、かなりの偏食だな」

 

「まぁ、テリーは()()()()()()()

武昭の言葉を聞いた竜胆は作業の手を止めて気になった事を聞いた。

 

「なぁ武昭、その師匠さんのパートナーが狼って、どう言う事だ?」

 

「ん?そうか、こっちじゃパートナーアニマルって奴はいなかったんだっけ……」

武昭は竜胆にパートナーアニマルの説明をした。

 

「へぇー そんなのが居るのかー けど、何でそのパートナーはポップコーンしか食べなかったんだ?」

 

「うーん師匠のパートナーアニマルのテリーって言うのは元々はグルメ界にいたバトルウルフって言う生き物だったんだけど……」

竜胆は武昭からテリーの事情を聞いていた。

 

「なるほど……そう言う事だったのか……」

 

「あぁ、それでも師匠とテリーは仲が良かったし、俺もたまに背中とかに乗せてもらってたからな」

 

「けど、前に向こうに行った時に会えなかったぜ」

 

「それは、そうだよ。テリーとか何体かの生物達は人間界からグルメ界に帰ったんだからな」

 

「なぁ、武昭 何回か武昭が言ってるグルメ界って、どんな所なんだ?」

 

「まぁ一言で言うと……()()だな……」

武昭が遠い目をしていたので竜胆は、それ以上聞かない事にして作業をしていた。

 

 

 

 

 



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第30話 ちょっとした本気

作業を終えた2人は家に入るとリビングで食事をしていた。

 

「うーん、外で作業をしてたから、この微かな塩味が体に染みるぜ……けど、これってベーコンみたいだけど野菜なんだろ?」

 

「あぁ、ベーコンの葉って奴で前に採ってきたんだ そうだコレを巻いて食べても美味いんだぜ」

武昭は保管庫からキュウリを持ってきたが成り方がバナナの様な房状になっていた。

 

「ん?武昭、これってバナナか?キュウリか?」

 

「こいつはバナナキュウリって奴で、こうして食うと……カァー!美味いぜ!!」

 

「あっ!武昭だけズルいぜ!うーん!ベーコンの葉とバナナキュウリの互いの歯応えも良いぜ!!」

 

「このベーコンの葉は焼いてもいけるんだぜ」

 

「ふわぁ……焼いたらまた違う味わいがするぜ!!」

その後、2人は色々とグルメ食材で食事をしていた。

 

食事を終えて竜胆は武昭が淹れたお茶を飲んでいた。

 

「はぁ……このお茶を飲むと何か心が落ち着くぜ……」

 

「コレはこっちに帰ってくる時に知り合いから貰った静か茶って奴なんだ……」ピンポーン

 

「ん?誰か来たみたいだな……ハーイ、あっ一色さんじゃないですか」

2人が落ち着いてるとインターホンが鳴ったので武昭が行くと一色がいた。

 

「やっ、久し振りだね武昭君、おや竜胆君もいたんだ」

 

「よっ、一色。どうしたんだ?」

 

「あぁ、ちょっと武昭君に手伝ってほしい事があってね」

 

「そうですか、なら上がってください」

武昭にそう言われた一色は家に上がった。


リビングに通された一色は来た事情を話した。

 

「なるほど……町内会の知り合いから祭で出店をしてくれないかって頼まれたから手伝って欲しいって事ですか……」

 

「あぁ、武昭君が無理なら断ってくれても構わないよ」

 

「いえ、その日なら俺も暇ですから良いですよ」

 

「そうか、受けてくれてありがとう じゃあコレに詳しい事が書いてあるから」

 

「なぁ一色、それって私が行っても良いのか?」

 

「僕としては人手が多い方が助かるけど……本当に良いのかい?」

 

「あぁ、たまにはそんなのも良いなって思ってよ」

 

「じゃあ、竜胆も参加するって事でこっちからは町内会の方に連絡はしておくよ」

一色は必要事項が書かれた書類を武昭に渡すと家を出て行った。


お祭り当日、武昭と竜胆が待ち合わせ場所に行くと一色と町内会の人がいた。

 

「やぁ、武昭君、竜胆君おはよう」

 

「えぇ、おはようございます一色さん」

 

「よっ一色」

 

「この方が、この町内会の会長さんだよ」

一色に紹介された武昭と竜胆が挨拶をすると会長から詳しい説明をされた。

 

その後、武昭達は出店場所に来ていた。

 

「なるほど、ここが俺たちの場所ですか」

 

「うん、なかなか良い所じゃん」

 

「そうだね、それじゃ仕込みをしようか」

一色に言われた武昭と竜胆は仕込みを開始した。

 

「けど、蕎麦のガレットって出店で出すには珍しいんじゃないのか?」

一色に言われて食材の処理をしてた竜胆が言った。

 

「うん?そうかい?」

 

「まぁ、クレープがあるんだから蕎麦のガレットがあっても珍しくはないんじゃないか?海外じゃこうだし……

それに()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()

武昭の言葉を聞いた一色は気になった事を尋ねた。

 

「ねぇ武昭君、なんで僕が蕎麦の方が使いやすいって思ったんだい?」

 

「ん?だって、一色さんの指先から蕎麦の香りがするからですよ。

そんなに香りがするって事は小さい時から常に触ってるって事ですから」

 

「へぇ……そうなんだ……(彼は一体、何者なんだ?……)」

一色は武昭の事を疑問に思いながらも着々と出店の用意をしていった。


祭りの開催時間になって……

 

「はい!チーズとハムのガレットが出来上がりました!!」

 

「武昭、次はホウレン草と卵のガレットを3人前なぁ」

 

「はいよ、おいしょっと……竜胆、出来たぞ」

3人の屋台には沢山のお客が来ていたが武昭と竜胆は普通に対応していた。

 

(竜胆はなんとなく分かってたけど、武昭君もこれだけの数を捌けるなんて思わなかったな……)

一色は2人の対応を見て何かを感じていた。

 

その後、祭りは問題なく終わった。

 




武昭はトリコ世界で店をやっていたので、この位なら普通に対応出来ます。


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初代との出会い
第31話 グルメ世界へ(アリスとリョウ)


武昭が元の世界に戻ってきてから半年ほど経った時だった……

 

「武昭!私も向こうの世界に行ってみたいのよ!!」

武昭が遠月学園内にある自分の家の自室にいるとアリスが部屋に入ってきた。

 

「向こうの世界って……グルメ世界の事か?」

 

「そうよ!前に竜胆も連れて行ったんでしょ!?だったら私も連れて行ってよ!!」

 

「お嬢、そんな事言っても武昭にだって事情があるんすよ」

リョウがお茶を淹れて戻ってきた。

 

「おぉ、ありがとうなリョウ……うーん俺は別に構わないけど2人は何か仕事とか無いのか?」

 

「ふふーん、そう言われると思って頼まれてた仕事は全部終わらせて来たんだから!!」

 

「お嬢の言う事は事実っす……武昭が良かったら俺も一緒に良いっすか?」

 

「なーんだリョウ君も行きたかったんじゃないのー」

 

「いや武昭だけにお嬢の相手にさせる訳にもいかないんで……」

 

「そうか、ならグルメ世界に行くとするか……〔リンさん武昭ですけど今大丈夫ですか?〕」

 

〔ん?武昭君、大丈夫だけど……どうかしたし?〕

武昭はリンに事情を説明した。

 

〔うん、こっちは大丈夫だし……それに武昭君に教えようと思ってた事があるし〕

 

「ん?俺に教えようと思ってた事って、なんですか?」

 

〔うん、2、3日前に情報が入って来たんだけど、洞窟の砂浜に()()が産卵に来てるみたいだし〕

 

「えっ!?そうか!そろそろその時期だったんだ……じゃあ今からそっちに行きます!!」

 

〔うん、待ってるしー〕

 

「よしっ!早く行くぞ!アリス!リョウ!!」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

「あぁ、そんなに慌てなくても……」

 

「思い立ったが吉日、他は全て凶日ってな!師匠に言われてたからなホラ行くぞ!」

3人はグルメ世界に転移した。


グルメ世界に来た3人はリンから詳しい情報を聞いてある場所に向かった。

 

「武昭……ここって港よね?」

 

「あぁ、これから行く場所に必要な()()がここに居るんだ」

武昭は胸ポケットからカスタネットとハーモニカが合わさった様な物を取り出した。

 

「ん?武昭、なんだソレ?」

 

「あぁ、コイツはハモニタネットって言ってな、こう使うんだ」

武昭はハーモニカを奏でながらカスタネットを鳴らした。

 

それから少しして…。

 

「ん?ねぇリョウ君、何か海中から出て来てない?」

 

「お嬢の気のせいじゃ……って確かに……ウワッ!?」

2人が海面を見てると何かが迫って来てたので見てると背中に大きな貝を背負った蝦蛄が出てきた。

 

「武昭!?何か来たわよ!!」

 

「なんだ!この生き物は!?」

 

「コイツが俺の仲間でパートナーアニマルの蝦蛄貝のレージだ」

武昭がレージに近寄ると甘えてるかの様に寄ってきた。

 

「ハハハ、悪かったな暫く顔を見せなくて……それで悪いけど俺をある所に連れて行ってくれるか?」

レージに尋ねると了解の意を示したみたいに両手のハサミを鳴らした。

 

「そうだレージ、この2人の俺の仲間達だからな」

 

「えっと、あの……薙切アリスって言うわ……」

 

「俺は黒木場リョウって言うんだ、宜しくな」

2人がレージに自己紹介をするとレージは少しジッと見ると理解したらしく背中から何かを取ると2人に渡した。

 

「おっレージから仲間の証の珊瑚を貰ったか」

 

「そうなんだ、ありがとうレージ」

 

「それで武昭、このレージの何処に乗り込むんだ?」

 

「あぁ、それはここだよレージ」

武昭が言うとレージは貝の部分を海面に出して沈むと貝の上部を開いた。

 

そこには普通の家の様に幾つかの部屋や台所などがあった。

 

「このレージは背中の貝に乗り込む事が出来るんだ、ホラ乗り込むぞ」

武昭に言われて乗り込むと貝が閉まって海に潜り始めた。

 

 

 




武昭のパートナーアニマル
蝦蛄貝 甲殻貝獣類 捕獲レベル最低450
背中に巨大なシャコ貝を背負った蝦蛄。

本来は凶暴な性格だが武昭は稚貝の頃から育てているので穏やかな性格になっている。
体中に珊瑚や海藻などが生息しており、それらによって安全場所(セーフゾーン)が発生している。


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第32話 フグ鯨と……

武昭達がグルメ世界に来てから1〜2日経っていた。

 

「それにしても……こっちの世界には珍しい生き物が居るんだな……」

 

「リョウ君の言う通りね。貝殻が透けて海中が見えるなんて」

 

「まぁ、俺も()()()()()()()()()()()()()には驚いたけどな……ん?どうした?」

武昭はアリスとリョウが自分の方を見ていた事に気づいた。

 

「ねぇ武昭は元々私達の世界にいたのよね?なんでこっちの世界に来たの?」

 

「あぁ、確か俺は元々は向こうの世界に居たよ……けどな2人も遭遇した事があるけど空間の歪みに巻き込まれたんだ」

 

「それで、グルメ世界に来たって事か。けど直ぐにこっちに帰って来たら良かっただろ」

 

「いや、今と違ってその時はまだ空間の歪みがごく稀にしか発生しなかったんだ。

だけどIGOでの研究が進んでこうして自由に行き来出来る様になったんだ」

武昭は転送装置のブレスレットを見せた。

 

「そうだったのか……なぁ武昭は元の世界に居た時に家族とかは居なかったのか?」

 

「俺は小さい頃に両親を亡くしててな母親の知り合いの所に世話になってたんだけど……

こっちに来た時のショックでどんな人だったのか覚えてないんだよ」

 

「そんな事情があったのね……ごめんなさい変な事を聞いちゃって」

 

「別に良いぜ気にしなくても、いつかは話さないと考えてもいたからな、それよりもご飯にでもしようぜ!」

武昭が言うと3人は食事を開始した。

暫く海中を進んでいると少し明るくなっていった。

 

「おっ、どうやら目的地近くに着いたみたいだな……」

 

「うわぁ……凄く水が澄んでるわね……」

 

「深海に居たから余計明るく感じるっすね……」

2人が話してるとレージが海面に上がり砂浜に降り立った。

 

「ここが目的地の【洞窟の砂浜】だ」

 

「凄いわね、海中から見ても綺麗だったけど、陸地に上がってもこんなに水が澄んでるわ……」

 

「そうっすね……ん?なぁ武昭、向こうに何か入口みたいのがあるけど、あっちからも来れるんじゃなかったのか?」

リョウが指差した方は洞窟の入口だった。

 

「ん?あぁ、確かに向こうからも来れるけど、この場所は地上からだと深さ800mはあるんだ」

 

「えっ!?深さ800mって……どれだけの深さなの?」

 

「それに洞窟の長さは全長数十kmとも言われてて迷路みたくなってるんだ」

 

「それで武昭は海の方から来たのか……なぁ、ここが800mの深さって事は海の方はもっと深いって事か?」

 

「あぁ、海の方から行くとするなら深さ1000mの深海から来る事になるぞ」

 

「そうだったの……ありがとうねレージ」

アリスに感謝されたレージは喜んでいた。

 

砂浜に降りた2人は武昭から来た理由を聞いていた。

 

「それで武昭、ここには何を捕獲しに来たの?」

 

「あぁ、ここには前に2人が食義の修行の時に食べた【フグ鯨】を捕獲しに来たんだ」

 

「フグ鯨ってあの時に食べた刺身の魚よね!?」

 

「それを捕獲しに来たのか……なぁ、それって俺でも捕獲出来るのか?」

 

「うーん、捕獲はまだリョウには難しいな……捕獲は俺がしてくるから2人にはフグ鯨を捌いてもらうぜ」

武昭は上半身だけ服を脱いだ。

 

「捕獲は無理だけど一緒に潜って見る位なら平気だぞ」

 

「そうか、なら俺も一緒に潜るよ。お嬢はどうしますか?」

 

「私は待ってるわ着替えとかも持ってきてないから」

 

「分かった、じゃあ行くぞリョウ」

武昭はリョウを連れて行った。

 

 

 

 

 



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第33話 常識外

武昭は潜る前にリョウに何か渡した。

 

「そうだ、リョウこのマスクと通信機を渡しておく」

 

「あぁ、悪いな……ってこのマスク中に葉っぱが一枚入ってるだけなんだけど……」

 

「そいつは酸素の樹に生えてる酸素の葉って奴でな僅かな光でも光合成をして酸素を作り出す事が出来るんだ」

 

「そうなのか……よしっ、これで準備は出来たけど……武昭はそのままで平気か?」

 

「ん?あぁ、俺はそれなりに()()()()()からな、ホラ行くぞ」

武昭とリョウは海中に入っていった。

 

海中で……

 

〔水中でこんなに綺麗に見えた事は初めてだぜ……ん?なんだ、この魚?鮪みたいだけどイカみたいな足があるし〕

 

〔あぁ、そいつはイカマグロって奴だ……ホラ、リョウ、あれがフグ鯨だ〕

 

〔んあっ!?なんだ!こんなに大きかったのか!?〕

リョウが武昭に言われて見た方には巨大な球形の体に細長いヒレを持った魚がいた。

 

〔なぁ、武昭……どうやってこんなデカいのを捕まえるんだ?〕

 

〔ん?よく見てみろよ、リョウ、こんなにデカい理由が分かるぞ〕

 

〔よく見てみろって……なっ!そうかあんなに小さい魚が集まってデカく見えてたのか〕

 

〔そうだぜ、俺が師匠達と来た時はこれよりも一回り大きかったけどな……そうだリョウ、一匹捕獲してみるか?〕

 

〔いや、やらせてくれるなら構わないけど……俺が捕獲するのは難しいって……〕

 

〔その理由を体で覚える為にもやってみろ……軽くアドバイスとして落ち着いて捕獲するんだ〕

 

〔落ち着いてか、分かった、じゃあ行ってくるぜ〕

リョウはフグ鯨の大群に近づいていった。

 

〔凄いな……じゃあコイツにするか……武昭は落ち着いてって言ってたけど……なっ!?色が変わった〕

 

〔リョウ、そいつはもうダメだ【毒化しちまったからな】〕

 

〔毒化って……身に毒が回ったって事か?〕

 

〔あぁ、そのフグ鯨は少しでも刺激を与えると体内の毒袋が破れて全身が毒化して食べれなくなるんだ〕

 

〔そうだったのか……確かに俺じゃ、まだ無理だな……〕

 

〔だから見せてやるよ、フグ鯨の捕獲法をな……〕

 

〔なんだ、この感じ?……目の前に武昭がいるのは見えてるけど……そこにいない様な……凄いぜ……〕

リョウは武昭の存在が消えた事に驚きと感心していた。

 

〔確かココさんは警戒心が薄い奴を狙っていたな……コイツだ……まずは一匹……次は……〕

 

〔凄えぜ……俺じゃ直ぐに毒化したのに武昭は普通にノッキングしてる……必ず俺の物にしてやる……〕

リョウは武昭の技術を見て決意を強くしていた。

 

その後…。

 

「フゥ!とりあえずはこれ位だな」

 

「おかえり、武昭、リョウ君……あれ?リョウ君は獲れなかったのかしら?」

 

「えぇ、あれは今の俺にはまだ無理っすよ……けどいつかは俺自身でフグ鯨を捕獲しますよ、お嬢……」

 

「ハハハ!そうだ頑張ればリョウも出来る様になるぜ、さてとそれよりもコイツを捌くか」

武昭はフグ鯨を網袋から出すと一匹をまな板の上に載せた。

 

「そうだ、どっちかやってみるか?」

 

「だったら私がやってみるわ、リョウ君はどう?」

 

「俺もやってみたいっすけど……武昭、何かあるんだろ?」

 

「あぁ、さっきリョウも海中で見ただろ?」

 

「そっか……お嬢、フグ鯨を捌くのは難しいっすよ。変に触ったら体内の毒袋が破れて食べれなくなるっす」

 

「えっ!?そうなのリョウ君!!武昭、それは本当!?」

 

「リョウの言う通りだ、フグ鯨は体内に毒袋を持っていてな、それは破れやすく少し失敗しても食べれなくなるんだ」

 

「そうだったの……じゃあ、その毒袋を破らない様に捌けば良いだけね」

 

「アリスの言う通りだ……あぁ、そうだ言ってなかったけど毒化したフグ鯨は0円だけど、今のその状態なら末端価格で【1億円】はするから」

武昭の言った言葉にアリスはフグ鯨を捌く手を止めた。

 

「え?……えっと……武昭……それって……本当?」

 

「ん?あぁ、因みに毒袋を完全に取り除いた場合は【3億円】に跳ね上がるぞ」

 

「1億円から3億円って……本当にコッチにいたら金銭感覚が狂ってくるぜ……」

リョウは話を聞いて冷や汗を流していた。




因みに〔〕の文は通信機での会話です。


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第34話 マスターとの出会い。

武昭が捕獲してきたフグ鯨は20匹はいたが……

 

「さてと、じゃあ俺が捌くか…。まずはコイツからだな……えっと……ここからだな……」

 

「ねぇ武昭、捌くなら尻尾からより頭からの方がやりやすいんじゃないかしら?」

 

「いや()()()()()()()()()()()()()()()()コッチからの方が正しいんだ」

 

「武昭、もしかしてフグ鯨の毒袋ってその個体によって場所が違うのか?」

 

「あぁ、リョウの言う通りだ、元々フグ鯨は体長6m程の大きさなんだけど深海に来るにつれて水圧で潰れていって、これ位の大きさになるんだ。

それで味も濃縮されて旨くなるんだけど、不要な老廃物も圧縮されて……」

 

「それが毒袋になるって事か」

 

「そうだ、だから、その個体によって場所が違うから捌き方は何百通りもあるんだ」

 

「じゃあ武昭は、その何百通りの捌き方を覚えているって事?」

 

「まぁ覚えているって言うか何となく分かるって言った方が良いな……例えば」

武昭はフグ鯨の一匹を手に取った。

 

「このフグ鯨だった、この位置にあるしコッチはここだし……コイツは……」

 

「俺にも見せてくれ……って全然分からないぜ……」

リョウもフグ鯨も見るが全部同じに見えた。

 

「けど、俺はリョウやアリスなら出来ると思ったんだけどな……」

 

「え?私やリョウ君なら出来るって、どういう意味かしら?」

 

「うーい……それはお主らが【食義】を習ったからじゃろ?」

皆が声のした方を見ると洞窟の方から白髪のリーゼントでタンクトップの上から袖なしジャケットにズボンを履いた長身の老人が立っていた。

 

「なっ!?お前は誰だ!!」

 

()ぃちゃん!久し振りだね!!」

 

「おお、武昭じゃないか、久し振りじゃのう……」

老人は武昭が駆け寄ると頭を優しく撫でた。

 

「武昭も大きいけど、より大きい人だな……」

 

「ねぇ、武昭はそのお爺さんの事を知ってるの?」

リョウが老人の大きさに驚いているとアリスが武昭に尋ねた。

 

「あぁ、この人は俺の師匠の1人鉄平さんの祖父で、初代ノッキングマスター次郎さんって言うんだ」

 

「ホホホ、今じゃノッキングマスターは鉄平じゃからワシはただの酔っ払いのジジイじゃよ」

次郎は砂浜に座ると持っていた酒を飲んだ。

 

「それで次ぃちゃんがここに来たのって、やっぱりフグ鯨?」

 

「おぉ、フグ鯨のヒレ酒は美味いからのぉ〜」

 

「だったら俺が獲ったのを少し渡そうか?」

 

「いや、それはお主達が捕獲した物じゃから結構じゃ。自分の物は自分で獲るわい」

次郎は酔っ払いながら海に入っていった。

 

「ちょ、ちょっと!そんなに酔っ払って海に入ったら危ないわよ!?」

 

「武昭!直ぐに助けに「いや次ぃちゃんなら大丈夫だよ」おいおい、そんな事言って」

アリスとリョウが慌ててる中武昭だけが平然としてたので少しすると持っていたバケツに多数のフグ鯨を入れた次郎が上がってきた。

 

「なっ!?あれだけのフグ鯨がいるなら毒化しててもおかしくないのに、全然普通のままだ……」

 

「あれ位、次ぃちゃんにとったら朝飯前だよ」

 

「うい〜それじゃワシは地上に戻るからのう……お主達頑張るんじゃぞ、経験を積んでいけば実力はついていくからのう」

次郎はそのまま洞窟から出て行った。

 

「あれが伝説と呼ばれてた人の力なのね……ねぇ武昭、私にフグ鯨を捌かせてちょうだい」

 

「あぁ、良いぜ。失敗しても気にするな初めての食材なんだから」

 

「分かったわ……武昭、コレはどこに毒袋があるのかしら?」

 

「うん、コイツだったら腹のこの辺りだな……だからエラからこの辺りまで刃を入れるんだ」

 

「この辺りまでね……次はどうするの?」

アリスは武昭の指示を受けながらフグ鯨を捌いていった。

 

その後、リョウもフグ鯨を捌きたいと言ったので交代しながら捌いていった。

 

その結果……

 

「ふぅ……やっとここまで来たか……」

 

「この黒いのが毒袋ね……あれだけいたのに結構失敗しちゃったわね……」

2人の前には成功したフグ鯨が一匹ずついた。

 

「まぁ、一匹ずつでも捌けたんだ。初めてにしては上出来だよ……ここからは素手でやるぞ、まずはアリスからだ」

 

「えぇ、良いわよ……それで、どうするの?」

 

「ゆっくりと慎重に毒袋が破れない様に周りの粘膜を取り除くんだ……慌てないで少しずつ……」

 

「少しずつね……確かに、ちょっと力を入れただけで破けそうな位に脆いって分かるわ……けど、だからこそ慎重にしないとダメなのね……」

 

「あぁ、そうだそのまま手前の粘膜を取ったら手に乗せて裏の粘膜も取り除くんだ……」

 

(優しく……ゆっくりと……慌てないで……ダメよ落ち着いてやらないと……)

 

(あのお嬢が……あんなに落ち着いてるなんて……)

 

「よし、それで全部取れたぞ……けどそこからもゆっくりと手で挟んで持ち上げるんだ……」

 

「えぇ……ここまで来て、最後で失敗なんてしたくないわよ……やった、取れたわ!!」

アリスが毒袋を完璧に取り除くと同時にフグ鯨の身が黄金に光り輝いた。

 

「武昭!コレってなんなの!?」

 

「コレはフグ鯨から毒が完全に取れたって言う証なんだよ……さてと次はリョウの番だ」

 

「あぁ、頼むぜ……」

リョウは武昭の指示でフグ鯨の捌きを開始した。

 

その後……

 

「ふぅ……まさか1匹の魚で、こんなに疲れるなんて思わなかったぜ……」

 

「ハハハ、まぁ2人は休んでろよ、あとは俺が料理するから」

 

「武昭、それでフグ鯨はどこが食べれるのかしら?」

 

「あぁ、フグ鯨は毒袋以外は全部食えるぞ、疲れてるなら、ヨイショっとコレを食べてみろ」

武昭は内臓の一部を切り分けると2人に渡した。

 

「コレは内臓か?」

 

「あぁ、フグ鯨の肝だ、食べてみろ。獲れたての刺身はまた格別だぞ」

 

「武昭がそう言うならいただきます……ん!?何これ!?」

 

「たった一口分なのに疲れが吹っ飛んだぜ!」

 

「フグ鯨の内臓は各種滋養強壮に優れてて生で食べると10日間は不眠不休で活動しても疲れない程の精力が得られるって言われてるんだ」

 

「確かに……一口食べただけで、こんなになるんだからな……」

 

「ねぇ!武昭!他の部分はどうなの!?」

アリスが聞いてきたので武昭はそれぞれの部位の説明をした。

 

その後、3人はレージに乗り込んで砂浜から離れていた。

 

「いやー凄く有意義だったわ!!」

 

「あぁ、それにまさかあんな人に会えるなんて思わなかったぜ……なぁ武昭」

 

「ん?どうした、リョウ」

 

「いや次郎さんが俺達だったらいずれフグ鯨を捌ける様な事を言ってたけど……もしかしたら竜胆も……」

 

「あぁ、今俺が食義を教えたのはリョウ、アリス、そして竜胆の3人だからな」

 

「そうか……武昭、また都合があったらコッチに連れてきてくれないか?」

 

「アァーッ!リョウ君ズルいわよ自分だけだなんて!私だってコッチに来たいんだからー!!」

リョウの言葉を聞いたアリスが武昭に詰め寄っていた。

 

 



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第35話 初代との出会い。(会長編)

武昭がアリス、リョウを連れてフグ鯨の捕獲に向かってた頃と前後して……

 

「なぁ〜もも〜なんでこんなに買い込んだんだぁ〜?」

 

「うん、前にあの武昭って子が作ったフルーツグラタンに使った物を探したいから……」

竜胆はももと一緒に地方の農家に買い物に出ていた。

 

「それと竜胆は暇をしてたし……()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()

 

「なるほどなぁ〜そう言う事だったのか……(うーん武昭がいたら話しても大丈夫そうだけどなぁ……)」

 

「竜胆?何を考えてるの?」

 

「んあ?いや、そのー……ん?おい、もも……周りを見てみろ」

 

「周りって……え?ここって……どこ?……」

竜胆に言われてももが周囲を見回すと先程までいた農道ではなく多数の小島が浮かぶ海の上にいた。

 

「ねぇ!竜胆!ここってどこ!?なんでこんな所にいるの!?」

 

「あぁ、まずは落ち着けよもも……(多分だけどここはグルメ世界なんだろうな……けど何か生き物がいない様な……)」

 

「んー?なんじゃお主ら?なんでこんな所におるんじゃ?」

2人が声のした方を見ると金髪に色黒の肌で筋肉質の背の大きいアロハシャツを着た人物が立っていた。

 

「なっ!?えっと、あの、その……」

 

「なぁ、ちょっと聞きたいんだけど、ここってグルメ世界なのか?」

 

「竜胆!なんで知らない人にそんなタメ口なの!?」

 

「ハハハ、気にするでない、確かにここはグルメ世界じゃぞ」

 

「やっぱりなぁ……そうだ、なぁ武昭を知ってるか?」

 

「ん?お主達は武昭の知り合いか?……そういや前にマンサムが空間の歪みが何とか言っておったのう」

 

「あぁ、私達は武昭が本来いた世界からコッチに来たみたいなんだ」

 

「おぉ、そうじゃったのか、ならIGOに連絡した方が良いみたいじゃな。〔おぉリンか、ワシじゃ〕」

 

〔あっ!前会長!急に連絡するなんてどうしたし?〕

 

〔実はのう今、ワシの所に武昭の世界からの漂流者達が来たんじゃ、それで連絡したんじゃよ〕

 

〔え?そうだったし、それでその人達の名前は?〕

 

〔そう言えば、まだ聞いとらんかったわい〕「お主らの名前は何と言うのじゃ?」

 

「私は小林竜胆って言って以前に武昭と一緒に来てリンさんとは一度会ってます」

 

「わ、私の名前は茜ヶ久保ももって言います……」

 

「うむ、そうか、安心せい必ず元の世界に帰してやるからのう」〔リン、2人おってのう1人は小林竜胆という子でもう1人は茜ヶ久保ももと言う〕

 

〔えっ!?竜胆ちゃんが来てるんだし!?そういや武昭君もちょうどコッチに来てるし!〕

 

〔そうじゃったのか、ならワシが2人を連れてくるからリンは武昭に教えといてくれ〕

 

〔うん、分かったし。じゃあIGOの本部まで連れてきてほしいし〕

2人は通信を終えた。

 

「という訳ででお主らをIGOまで連れて行くからのう」

 

「そういや爺ちゃんの名前って何て言うんだ?」

 

「ハハハ、まだ言っておらんかったのうワシの名前はIGO前会長の【一龍】じゃ」

一龍は2人に自己紹介をすると2人をIGOのリンに指示された場所まで連れて行った。

 




竜胆達がいたのはトリコ本編でトリコが会長に会いにきた時にいた場所です。


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第36話 一龍との再会。

武昭が洞窟の砂浜帰ってる途中、リンから竜胆達がコッチの世界に飛ばされたと聞いたので、そのままIGOの本部に向かった。

 

IGOに到着した武昭達はリンに言われた部屋に来た。

武昭達が部屋に入ると竜胆ともも、リン……それと一龍がいた。

 

「よっ竜胆に……茜ヶ久保先輩?なんでここに?」

 

「あぁ、私とももが一緒にいる時にコッチに飛ばされて来たんだ」

 

「そうだったんですか、けど一爺(いちじい)ちゃんがいるとは思わなかったよ」

 

「おぉ、それはそうじゃこの子達はワシの別荘の近くに来てたんじゃよ」

 

「へぇ、ある意味1番安全な所で良かったな竜胆」

 

「ん?どう言う事だ?武昭」

 

「一爺ちゃんは俺の師匠達の1人トリコさんの親とも言える人なんだ」

 

「ふーんそうだったのか……それで、なんでアリスが一緒に居るんだ?」

竜胆は武昭の横にアリスがいた事に気づいた。

 

「それは私が武昭にコッチに連れてきてもらったからよ。一緒に捕獲にも行ってきたし」

 

「お嬢、それを言うなら()()っすよ」

 

「へぇ、そうだったのか……けどな私は前に来た時にグルメタウンて所で包丁とかを買ってもらったんだぜ」

アリスと竜胆が話してるとももが武昭の近くに来た。

 

「ねぇ、あなたは前に私にスイーツを作ってくれたよね?あの時、私は初めて食べた味がしたんだけど、もしかしてコッチの世界の奴だったの?」

 

「えぇ、あの時は俺がたまたま持っていた()()を使ったんですよ」

武昭はポケットから澄んだ青色の皮の果物を取り出した。

 

「武昭、それってなんだ?レモンみたいに見えるけど、そんなに皮が青くないし……」

 

「ほーう、そいつは【スカイボス】じゃないか、珍しい物を持っておるんじゃのう」

武昭が取り出した物を見て一龍が何か当てた。

 

「さすが一爺ちゃん、やっぱり知ってたんだ」

 

「当たり前じゃ、そいつはワシが以前に見つけたんじゃからのう」

 

「ねぇ、そのスカイボスって何?」

武昭が一龍と話してるとももが話に入ってきた。

 

「あぁ、コイツは3000m級の山の森林限界に生息する果実でな、料理をサッパリさせたい時に使うんだ、ホラ」

武昭はスカイボスを手で半分に切ると実を搾って果汁をももとリョウに味見させた。

 

「どれ……うわぁ……本当だ……ほんの少しだけなのに口の中が凄くサッパリしてるぜ……」

 

「コレだ……確かに私が前に食べたスイーツに入ってた味と同じだ……ねぇ、コレってまだ持ってる?あるなら私に分けてほしいんだけど……」

 

「渡したいのは山々だけど俺も持ってたのはコレで終わりだからな……そうだリンさん()()()に在庫って無いですか?」

武昭はリンに物があるか聞いた。

 

「ん?研究所に……うーんあるとは思うけど……武昭君でも代金は貰うし」

 

「えぇ、俺は構いませんよ、じゃあ「待って、なら私が払う」え?でも……」

 

「大丈夫、お金ならそれなりに持ってるから……だからあるなら私に売ってください」

 

「おいおい、もも 幾ら金があったとしても、それはやめた方がいいぞ」

 

「どういう事?竜胆」

 

「向こうの金銭感覚と同じに考えない方が良いですよ、リンさんスカイボスって1個幾らでしたっけ?」

武昭に聞かれたリンは持っていたタブレットでスカイボスの値段を調べた。

 

「えーっと、今は大体【1個5万円】だね」

 

「え?……コレが1個……5万円なの?……」

 

「ふーん、結構安いんだな」

竜胆の言葉を聞いたももは驚いていた。

 

「竜胆、何を言ってるの!?1個で5万円なんだよ!!」

 

「え?だって前に武昭と買い物に行ったけど、その時に1本10万円のジュースが売ってたし……」

 

(((1本、10万円って何が入ってるんだ?)))

竜胆の言葉を聞いたアリス、リョウ、ももは頭を捻っていた。

 

「あ、もしかしたら市場に入荷されてるかもしれないよ」

 

「市場って……あぁ世界の市場(ワールドキッチン)か……久し振りに行ってみるか、そうだ皆は」

 

「「「「行くっ!(わよ!)(ぜ!)」」」」

武昭が聞く前に竜胆、もも、アリス、リョウが賛成していた。

 

「そうか、なら行くとするか……あっ、そうだ一爺ちゃん、洞窟の砂浜で次ぃちゃんに会ったよ」

 

「なぬ?次郎にか、あいも変わらず酒を飲んでおったじゃろ?」

 

「うん、フグ鯨のヒレ酒か飲みたいから来てたみたいだよ」

 

「ハハハ、アイツも変わらんのう……じゃが元気で何よりじゃわい……」

 

「じゃあ行ってくるね一爺、リンさん」

武昭は2人に言うと皆を連れて自分の車がある駐車場に向かった。




スカイボス【柑橘類 捕獲レベル5】
3000m級の山の森林限界に生息している青色の皮のカボス。
空に近い程、皮の色が濃くなる。
料理をサッパリさせる時に使う。
酒を飲む時のカクテルの材料にする事もある。
果実は真っ白で苦味が強い。


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第37話 グルメ中央卸売市場 『世界の市場』

武昭達がIGOの駐車場に来ると竜胆は以前と違う車がある事に気付いた。

 

「なぁ武昭、お前の車ってトレーラーハウスじゃなかったか?」

 

「ん?あぁ、確かに持ってはいるけど市場に行く時は()()()なんだ」

皆の前には俗に言う巨大なサロンバスと呼ばれる車輌が置いてあった。

 

「まぁ武昭の事だからコッチじゃ当たり前なんだろうな……」

 

「「確かに」」 「え?なんで、そんな反応なの?」

リョウの言葉にアリスと竜胆は納得し、ももは軽く混乱していた。

 

「ホラ、早く乗り込めよ」

武昭が言うと皆は乗り込んだが……

 

「うわぁ……凄い設備だわ……」

 

「前に違う車に乗ったけど、それよりも豪華だな……」

 

「なぁ、武昭、キッチンがあるけど料理も出来るのか?」

 

「あぁ、冷蔵庫に大体の食材は入ってるから構わないぞ」

 

(そっか……コッチの世界は私のいた世界とは違う事が色々あるんだ……)

皆が普通にしてるのを見たももは何処か遠い目をしていた。


武昭の運転で到着した所は彼らが見た事が無いほどの敷地の市場だった。

 

「前にグルメタウンって所に行ったけど、ここはそれ以上に広いぜ……」

 

「流通してる食材の量も凄く多いわ……」

 

「それにパッと見ただけでも食材の新鮮さが分かる……」

 

「凄い……こんな所があったなんて……」

 

「ん?おぉ!誰かと思えば武昭じゃねぇか!!」

誰かが武昭に気づいたので見ると色黒の筋肉質の体で顔に傷があるサングラスを掛けた男性がいた。

 

十夢(トム)さん!お久し振りです!!」

 

「久し振りだな、今日は何を仕入れに来たんだ?」

 

「それも、あるけど皆にここを見せに来たんだ」

武昭が皆を紹介すると十夢に頭を下げた。

 

「そうだったのか、俺は卸売をしてる十夢だ、よろしくな」

 

「そうだ、十夢さん今日は何か入ってますか?」

 

「あぁ、ちょうど今良いのを仕入れてきたぜ……コイツだ」

十夢は武昭達に塊肉を見せたが武昭以外の皆はわからなかった。

 

「十夢さん、コレって黒毛カグヤ牛じゃないですか」

 

「おっ、流石だ武昭だな。すぐに分かったか」

 

「武昭、この肉ってどんな肉なんだ?」

2人が話してると竜胆が話に入ってきた。

 

「あぁ、この黒毛カグヤ牛って言うのは肉の成分にケラチンが含まれてて霜降りの部分により含まれてるんだ」

 

「だから美容に気を使う女性達からは髪の毛がツヤツヤになるって言われてるんだ」

 

「店によってはコラーゲンが沢山ある白毛シンデレラ牛と合わせて料理する所もありますからね」

 

「白毛シンデレラ牛も入荷してるぞ、コッチが大体白が100g…万で黒が…万って所だな」

 

「えっ!?それぞれ100gでそんな値段するのか!?」

 

「やっぱり十夢さんの所だから安いですね、じゃあ白を600kgに黒を500kgお願いします」

 

「なっ!?……100g…万を600kgに…万を500kgって……白と黒を合わせて軽く何億か行ってるんだけど…。…」

ももは武昭と十夢の取引を聞いて驚いていた。

 

「後は何かありますか?」

 

「だったら虹の実はどうだ?天然じゃない人工栽培の奴だけどな」

 

「そう言うって事は……あぁI()G()O()のか……だったら貰おうかな。それで今はどれだけあるの?」

 

「あぁ、ウチで仕入れたのは600kgの奴で1個約3億4千万ってとこだな」

 

「まぁ虹の実でそれなら安いか……なら100kg分貰うよ」

 

「おぉ、ありがとうな武昭……それじゃ食材はどうする?直ぐに持ってくか?」

 

「いや、まだ回るから後で店に取りに行くよ」

 

「そうか、じゃあな」

武昭と十夢は取引を終えた。

 




黒毛(くろげ)カグヤ(うし)【哺乳瓶 捕獲レベル1以外】
全身が黒毛で覆われた牛。
五つ星以上の料理屋でなければ提供できない程の高級食材。
牧場などでも飼育可能。

霜降り部分にはケラチンが沢山含まれていて食べると髪がツヤツヤになると言われている。
白毛シンデレラ牛と合わせて出す店もある。

訂正があったので数字を変更しました。

虹の実は900kgで5億との指摘があったので単純計算でkg555,555円だったので
この小説ではkg560,000円にしました。




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第38話 違う物

武昭は十夢との取引を終えると他の店で野菜や果物などを仕入れて帰路についていた。

 

「ねぇ……()()()()()って凄いんだね……」

助手席にいたももが武昭に話しかけた。

 

「んー?別に俺は凄くないよ、俺はただ師匠達に習った事をやってるだけです」

 

「ふーん、そうなんだ……」

 

「なぁ、武昭ーコッチって何か温泉みたいのって無いのかー?」

2人が話してると竜胆がイスの後ろから声をかけてきた。

 

「温泉って、そんなに疲れてるのか?」

 

「そう言えば、最近の竜胆はちゃんと仕事をしてるから司が驚いていた……」

 

「そりゃあ私だってたまには真面目に仕事をする事があるんだぜー……それで武昭ー何処か無いのかー?」

竜胆を見るとグデーとしていた。

 

「温泉か……ここからだったら……少し距離があるから時間が掛かるけど、それでも良いのならあるぞ」

 

「そうかっ!だったらそこに行こうぜ!!」

グデーとしてた竜胆は猫の様な笑顔になると元気になった。

 

その後、武昭が車を走らせて到着した場所は軽く木々が生い茂り近くに川が流れていた。

 

「武昭、ここに言ってた温泉があるのか?」

 

「あぁ、昔に美食家の依頼を受けた時に偶然見つけてな……おっ、あったぞ」

皆が武昭の案内でついた場所は川の水から湯気が立っており木々からも湯気が出ていた。

 

「ここはバスバブの木が生えているんだ。確かそれにもデータが入っていたな」

 

「えーっとバスバブの木……おっ、あったぜ……どれどれ」

竜胆がタブレットを操作するとデータが映し出された。

 

【バスバブの木 植物類 捕獲レベル0】

・温泉が湧き出てる場所に生息する植物。

・その大きさは、その場の温泉の温度によって変化する。

・温泉の水温が高いほど幹は太くなる。

・この木で作成したバスタブはいい香りがする。

・幹の中に多量の水分を蓄える事が出来、温泉が枯渇しても暫くは大丈夫。

・長さは10cm~太さは50cm~。

 

「ふーん、そうなんだ……それでこの木をどうするの?」

 

「コイツはちょっと変わった現象があってな、そろそろだな……ホラ」

 

「一体、何が……え?枝が開いていってるわ……」

アリスが武昭が指さした方を見ると上の部分が開いていった。

 

「この木は夜になると中に溜まった余分な湯気を排出するのに木を開くんだ」

 

「じゃあ武昭が言う温泉って……この木だって事か?」

 

「あぁ、その通りだ竜胆……ホラ、他の木も開いてきてるぞ」

皆が周りを見ると木々が次々と開いていくのが見えた。

 

「皆、車の中に湯浴み着と部屋があるからそこを使ってくれ、俺とリョウは違う部屋を使うから」

 

「あぁ、分かったぜ武昭、それじゃ、お嬢……」

 

「おいおい!私達も早く行こうぜー!!」

 

「ちょ、ちょっと!竜胆、引っ張らなくても……」

 

「うーん、本当にコッチの世界は面白い物があるわね」

皆は、それぞれ指定された部屋で着替えに向かった。


湯浴み着を着た女性陣が外に出ると先に温泉に入っている武昭とリョウがいた。

 

「おーう、ここだここだ」

 

「結構良いお湯っすよ」

 

「あら、確かにちょうど良い温度ね」

 

「ふぇ〜それに凄く良い香りがするぜ〜」

 

「私でも……深さが大丈夫……」

入った皆がユッタリしているとリョウが武昭に話しかけた。

 

「そういや前に近くに来たって言うけど、その時はどんな獲物だったんだ?」

 

「ん?その時は確か……あぁ、そうだ【シャイニングレープ】って言う果物だったな」

 

「それってどんな奴なんだ?武昭」

竜胆が話に入ってきたがアリスとももも聞きたそうな顔を見せていた。

 

「あぁ、その名前通り葡萄の一種なんだけど生息してる場所が面倒なんだよ」

 

「どこに……あったの?……」

 

「ちょっと前に見せたスカイボスがあったろ?その生息地よりも高い山で更に常に日光が当たってる場所でしか生息しないんだ」

 

「確かスカイボスがあるのって……3000m級の山だったよね?……それよりも高い山なんて……」

 

「それに日光が常に当たってないとダメなんて……」

 

「場所が場所だから捕獲レベルは高めだけど群生地に到着したら簡単なんだ」

 

「そうなんだ……あれ?……何か……頭が……」

 

「おっと、大丈夫ですか?もも先輩?」

ももの顔が赤く軽くフラついたので武昭が慌てて支えた。

 

「どうやらのぼせたみたいですね……竜胆、少し変わってくれ」

 

「ん、分かったぜ、何かするのか?」

竜胆は呼ばれて武昭と変わった。

 

「あぁ、ちょっと飲み物を作ってこようと思ってな」

 

「なら、私も手伝うわよ」

 

「大丈夫だ、ただ混ぜるだけだからな」

武昭はそう言うと車に戻った。

 

少しして武昭が飲み物を持って戻ってきた。

 

「竜胆、もも先輩にゆっくり飲ませてくれ」

 

「あぁ、分かったぜ、ほらもも飲むんだ」

 

「うん……ありがとう……ふぅ……凄くサッパリしてて飲みやすい……」

 

「武昭、私も飲んで良いか?」

 

「あぁ、アリスとリョウも飲んでおけ」

 

「分かったわ、美味しい」

 

「うん、風呂に入ってるとちょうど良いぜ」

 

「なぁ武昭……この水って前に飲んだ事がある感じがするけど……まさかエアアクアか?」

飲み物を飲んでいた竜胆が味わいに心当たりがあった。

 

「あぁ、エアアクアにスカイボスの絞り汁と笹砂糖(さささとう)を混ぜたんだ」

 

「おいおい、だったらこれだけでかなりの値段がするだろ?」

 

「?竜胆、それってどう言う事?」

 

「あぁ、この使ってるエアアクアって水は2ℓで12万円するんだぜ」

竜胆の言葉を聞いた、ももの動きが止まった。

 

「じゃ、じゃあ、これ一杯ってどれだけするの?……」

 

「まぁ、20万よりは安いな、笹砂糖もそんなに使ってないし」

 

「ちなみに、その笹砂糖ってどれほどするんだ?」

 

「笹砂糖は1kgで2万円って所だな」

 

「じゃあ100g2000円するんだ……何だろう私の中の何か壊れて行く気がするな……」

ももは遠い目をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




笹砂糖 調味料 捕獲レベル1以下(人工栽培可能)
糖分を蓄えている幹?と葉と花を持っている笹。

幹と葉〉幹だけ〉葉だけ〉花の順番で味、出来る量、値段が変わる。
よく取れる→よく取れない。

幹と葉の混合1kg=5000円。
幹だけ1kg=10000円。
葉だけ1kg=15000円。
花のみ1kg=20000円。
花のみで作られた砂糖は珍しく、中々出回らない。


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