ぐぅー喰種。(ぐぅーぐーる) (軽佻浮薄ですよ。)
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最悪の始まり

東京喰種の設定再編集版の様なモノで一部キャラを存在ごと抹消したり、役割を変えたり性格を変えたりしています。
喰種の設定は独自なモノを採用していて赫子とか赫包なんかの表面的な設定は踏襲しているので違和感は無いかと。
暇な時にちょくちょく書きたいと思ってます。
まあ、暇つぶしですね。
設定だけは考えたので後は原作のストーリーになぞりながら矛盾がない様に書くだけです………re?そんの知らねーよ。


僕はリゼさん初めて出会った日を、つい先日のように鮮明に憶えているんだ。

あの日は確か高槻泉が書いた新作の発売日で、午後特に予定のなかったから本屋に赴いて買いに行ったんだ。

確か本の題名は……小夜時雨だったかな、いつもとは違う本屋に入ったもんだから、ちょっぴり不安を抱えながら店内に入ると僕の感情は理性は一瞬で蒸発したんだ。

それは砂埃が立ち込める荒野に咲く一輪の花か、それかオアシスかどちらも彼女を表すには不適切なんだろう。

けど、その時も僕は小学生が泣き叫んでいる時と同じぐらいしか働いていなかった。

艶かしい滅紫色の髪とその鎖骨から鳥口突起の肩のラインは美しくて、つい見蕩れてしまう。

 

「───あの、高槻……泉が好きなんですか?」

「えっ………、うーん───好きかな?前の黒山羊の卵がよくてね。気になちゃってね」

 

彼女が手に取る本が高槻泉のそれも僕の目当てであった小夜時雨だったから、なんだか運命を感じてしまい───僕は語りかけたんだ。

そうすると彼女は最初なんだか意表を突かれた表情しながらも優しく微笑んで僕の言葉に返答をしてくれる。

そうすると不思議とダムが決壊したみたいに口数は止まらず、ついつい彼女を近くの喫茶店に誘って長話をしてしまったのだ。

 

「それじゃあ───金木くんはお母さんが女で一手で育てられたんだね。」

「うん、そうなんです。母には苦労ばかりかけてしまって恩返しのつもりで僕は勉強を頑張って、母の負担を減らそうと頑張ったんです。それでも母には全然恩は返せていませんけど」

「いいんじゃあないかしら、それで。生きるのは食べる事なのよ?」

「えっ────」

「誰かを食べて私達は育まれるのよ。そしてそれは両親も同じで、両親の時間を食べて私達は食べた分だけ自由に生きれるのよ。自由を頂いて自由に暮らす。ほら、食べることでしょ?」

「独特な表現ですね────でも、とっても分かりやすいですよ。なんだかリゼさんは学校の、いや保健室の先生みたいですね。」

「それって悪口?」

「あっ───いや、そんな気は………ただ僕は小学生の頃よく保健室にお世話になって先生に色々相談に乗ってもらって、それでそれで」

「ふっふふふ。冗談よ、それぐらい分かってよ───本当に研くんは可愛いんだからねぇ」

 

彼女は耳元で囁き、その一音一音が僕脳裏に焼き付いて離れなかった。

 

「金木くんは研くんて呼んだほうがしっくり来るから、今度からそう呼ぶね。私は用事があるから、今日はお暇するわ。じゃあまた会いましょう───ここは私の行きつけだから、ここでならまた会えると思うわ。また会いましょね」

 

手を振る彼女の背中を見つめながら喫茶店の看板に目をやる。

そこにはあんていくと書かれていた。

 

そしてそれから、あんていくは僕の行きつけにもなった。

毎日足蹴なく通うようになり、リゼさんともそこで毎日同じ時間を過ごした。

なんだか無表情の店員さんや不機嫌そうな若い店員さんが気になったけど、他の四人は愛想が良くて特に気にならなかった。

そんな生活が一か月ほど続いた頃だろうか、彼女からのお誘いがあったのは。

 

「研くん。このあと時間てあるかな?」

「えっと、あるけど。どこかに行くのかな───」

「一緒にディナーでもどうかしら、私がイチオシのレストランを予約したんだけど私の友人が趣味を優先して行けないて言うから来てくれない?お金は先払いでその子はお金を返さなくていいて言ってるんだよね」

 

うん、それはかなり魅力的な話だ。

行きたい、リゼさんとディナーを食べたい。

そして、そこで、そこから、そうして悲劇が始まる。

 

そのレストランは不思議な場所で会員制の様で全員が決まった仮面被らなくちゃいけなくて、僕はリゼさんから借りたチャックのついたハーフマスクをつけて入店した。

最初はどんな料理が出るのか心配だったけど、全部味わ良くただ一つの難点はフルコースなのに肉料理ばかりなぐらっだった。

ハンバーグが好きな僕には願ったり、叶ったりでもあったし何よりも笑顔で食事していたリゼさんの顔を見るだけで来てよかったと思えたんだ。

 

「どう、とって美味しいでしょう………?」

「はい。なんだか初めて食べる味ばかりですけど美味しいです。ちょっとお肉がレアばかりななのが心配ですけど」

 

最後は小声で慎重に言った。

こんな高級そうなレストランに意見するなんて気が引けたからだ。

 

「大丈夫よ。レアでも問題ない食材出てないし、それに完全に生な訳じゃあないのよ?」

「そうなんですか………リゼさんが言うなら大丈夫ですね。」

 

どうにしかして僕は笑いを捻り出してゴマしながらも今僕が何の肉を食べているのかが、不安になってしまっている。

もしかして、これ………いや考えすぎだ。

血が滴る肉をフォークで刺し、口にほうばる。

それだけだ、それだけなんだ。

 

「それじゃあ、研くん。また、今度ね───」

「あっ、はい。」

 

流し目で視線を合わせないようにして僕はその場から立ち去った。

時間が大分過ぎ、レストランに入る前はまだ西日が差していたが今はすっかり夜になってしまった。

 

「ふぅ、リゼさん───僕は本当に貴女の事が………」

 

その事に浸りながら僕は突き当たりの道を曲がろうとした時、悲鳴が聞こえた───女性の金切り声である。

 

「リゼ……さん。」

 

僕は焦燥にかられて踵を返す。

何故なら悲鳴が聞こえた方角がリゼさんと別れた方だったからだ。

けれど、それは杞憂だったのだ。

走りそして目撃したモノはどれも見慣れているけれど、視たことも視たくないモノ。

 

「あら、研くん来ちゃったんだ。」

 

そこは工事中であろう柵に覆われたビルの敷地内で、そこには血に塗れながら何かを喰べ続けるリゼさんとそこら中に肉片が散乱している無残な姿をした僕の母さんの姿だった。

───近くには買い物袋が………あぁ─────

 

「─────ぁ………あぁ、ああああああああああああああああああああ────────!!」

 

惨状。

喰い散らかされた母さんの肢体がそこら中に巻き散っていて踏む場所も無いような状況だ。

僕は足がすくんでその場で尻餅をついてしまった。

 

「ごめんね……本当は研くんを喰べる為に近づいたのよ。でも、研くんが悪いのよ私を本気にさせちゃった研くんが悪いの───我慢が出来なくて研と同じ香りのした彼女を喰べたくて喰べたくてしょうがなくちゃったのよ。これやっぱり研くんのお母さん?」

「えっ………、ぐ、喰種だっ───た、んですか………」

「そうよ。私は喰種───」

 

リゼさん母さんの腕を齧りながら立ち上がって僕のへと身体を寄せる。

そして母さんの腕を地面に置いて血塗れな彼女が僕の右頬を優しく撫でた。

 

「巷だと大食いなんて呼ばれているけれど、私。研くんと出会ってから、これが初めての食事よ……一か月半と少し、これも研くんを美味しく頂くスパイスのつもりだったんだけどね───ねぇ、研くん。私と一緒に生きましょう──責任は取るは私がお母さんの代わりに」

 

最初は理性が働いていたからか、それがとんでもない事だと思ったんだ。

でも時間が経つとそんな気も失せて、彼女と一緒ならそれでもいいんじゃあないのかと。

美しい彼女なら母さんを奪った彼女なら相応しいんじゃあないのかと、思ってしまった時。

惨状に幕が閉じられた。

 

「───研くん!」

 

上から鉄骨が降ってきて僕達は下敷きになった。

リゼさんは背中から綺麗な畝る血の塊を出して僕を庇ってくれた。

ボロ雑巾みたいに傷だらけになって、そして最後の一本は僕の腹に串刺しになった。

そこから先の記憶はない。

ただ工事中のマンションの屋上に誰かがいたような、そんな気がしたぐらいなのだ。

 

朦朧とした意識の中で医者や看護師が臓器移植が何とか、倫理やら親族の許可だとか何かまっとうそうな事を並び立てていたけど、そんな事はどうだっていい。

僕はリゼさんと一緒に───沈む意識の中で背中から抱きしめてくれる、滅紫色の麗人は僕の顔を舐め回しながら僕を上へと押し上げる。

ああ、リゼさん。

───そこにいるんだね。

 

幻想は砕け散り、視界がクリアになった。

最初に見えたのも白い天井で、視線を右にやると色んな管が僕に繋がっている事を知って初めて僕が病院に運び込まれた事を知った。

 

「…………りぜ───さん」

 

会いたい、逢いたい、遭いたいよ。

もう一度僕を殺して(すくって)ください。

そんな想いに縋りながら、つまらない時間を過ごした。

そして暫くすると看護師が僕の覚醒に気がつき、医者やら警察らがぞろぞろ入れ替わる様に入ってきて僕に色んな話をした。

そして僕がある一言で気力を失った。

僕はリゼさんの臓器を移植され生きているのだと、リゼさんが死んだんだと。

受け入れがたい現実は目の前でほくそ笑みながらそこで佇んでいる。

僕は一日で大切なモノを同時に二つも失ったのだ。

 

「これからどう生きればいいんだ。どうすりゃあ、いいんだよ母さん────ねぇ、答えてよ」

 

悲しさは膨らみ、奥歯を噛みしめながら打ち震えるながらひたすら耐えた。

それしか弱い僕には出来ない。

 

暫くすると、一つ発見をした。

食べものに味が無いのだ、それらが不愉快な風味を醸し出した無理に食べようとすると嘔吐感で胃が支配される。

その時は気づかなかったけど、それが最悪の始まりなのだと予兆なのだと今は分かる。

そして数週間後、僕は退院して誰もいない家と帰った。




来週までに書きたい。


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