カードキャプターさくら 語られぬ物語 (空白の語り部)
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序章
・予備知識(グリムノーツ知らない人は必読)
この小説、グリムノーツ知らない人には辛くない?と....
ということで!!!簡単に説明しましょう!
・グリムノーツ
本小説とクロスオーバーしている<グリムノーツ>がなんなのかと言うと、皆さん誰しもが知っている<シンデレラ>や<不思議の国のアリス>などと言った様々な童話が舞台となったアプリゲームです。
その物語の内容は、滅茶苦茶簡単に言うなれば主人公たちが旅をして自分探しをする物語です。
人によってはどハマりするアプリですが、この間サービス終了したばかりなんです。で・す・が!!!
サービス終了後に落とし切りアプリとなって、プレイこそできませんが、グリムノーツのキャラを見たりストーリーを見ることはできるので!ね!!ね!!!!(しつこい)
ではここから、本小説にも出てくるグリムノーツ関連の単語の説明と参りましょう。
・ストーリーテラー
全知全能の存在といわれている。<想区>を生み出し、そこに住む住民たちに<運命の書>を与える。その姿は誰も見たことがなく人々の認識の外にいる。基本的に感情や意思はなく<想区>を維持するためなら住民の<運命の書>を変え、その存在すら消滅させることもできてしまう
・想区
簡単に言うなれば童話の世界のことで、その数は数え切れない。それぞれの想区には固有のストーリーテラーが必ず存在し、想区に住む住民たちはストーリーテラーに与えられた<運命の書>に記述された通りに生きていき、そのことに疑問は挟まない。だが極たまに、想区には何の役目も与えられない空白のページを持った<空白の書>の持ち主が生まれてくる。
・運命の書
想区の住民なら誰しもが持っている本。生まれてから死ぬまでの自分の運命が記述されている。運命の書と持ち主の魂は強く結びついていて、持ち主から離れることもなく、破られることも無い。持ち主の命が尽きたと同時に本も消滅する。
<運命の書>には自分の<役割>が記され、持ち主たちは<役割>の通りに生きる。それが例えどんなに理不尽な運命だったとしても、その運命からは逃れることはできず、逃れようとする発想も持たない
・空白の書
想区の中で極たまに現れる、なんの運命も記述されていない<運命の書>。<空白の書>の持ち主は自分の役目がわからず、役割を持った想区の住民からは腫れ物扱いにされる。
しかし、なんの役割も与えられなかった<空白の書>の持ち主故に、<導きの栞>を使ってヒーローの魂と繋がることができ、ヒーローと一体化することができる
・導きの栞
物語の主役たちの魂を宿せる栞で、<空白の書>に挟むことで
・沈黙の霧
想区の外に広がる果てなしの霧。そこは想区と想区の狭間であり、温度も匂いも何も無い。<空白の書>の持ち主がそこを1人で歩くことは危険で、最悪の場合、霧と同化して消滅する。<運命の書>の持ち主も言わずもがな。
消滅するのを回避するには、同じ<空白の書>の持ち主と同行する必要があり、お互いがお互いの存在を意識することで自分の存在を保つことができる。<運命の書>の持ち主はそもそも想区の外にでる発想も持たない上に、想区の外があるなど知らない。
これくらいかな?まだ何かあればコメントして頂ければ幸いです!!!
本作の主人公のリオもこの<空白の書>の持ち主の類ですが、イレギュラーな要素があるので、グリムノーツを知らない人に<空白の書>というのを明確にする必要があったと今更ながら気付きました。
また修正したり追加したりするかもです
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Repage~プロローグ~
*****
僕らは生まれた時 一冊の本を与えられる
僕らの世界、生きる意味、運命
それらすべてが記された戯曲
運命の書
『運命の書』に記されし 役割に従い
人びとは喜び、悲しみ、怒り、
そして死んで行く
どんなに偉大な英雄も
どんなに気高いプリンセスも
定められた運命から逃れることはできない
運命を与えられなかった者たち
『空白の書』の持ち主を除いて─
*****
チュチュチュ....
「んぅ....ふぁあ〜」
青空が満天の朝に小鳥のさえずりが鳴いたとき、1人の10歳にも満たない男の子が起きる
「....朝か、早く起きないと」
バン!!!
突然リオの部屋の扉が勢いよく開き1人の少女が入ってきた
「リオ、朝よ!早く起きないと........って、起きてるじゃない」
「ついさっきにね....あとアリス、急にドアを開けないでよ。びっくりする」
「そんなことよりも、もうすぐご飯だから早く着替えてきてちょうだい」
「そんなことって....うん、わかった」
アリスと呼ばれた少女はリオにそう言った後、すぐに部屋を出ていった。それを見送ったリオはベットからでて着替えて朝食を食べる為に下へ向かった。
リオが住んでいるここはリデル家。リオはそこの養子として住ませてもらっている。この家には先程のアリスとその両親と姉1人に兄1人、妹1人そして猫3匹の計6人(リオ省く)と3匹家族である。
~~~~~~~
「えっと、次はあそこで野菜を買った後─」
朝食を食べ終えた僕とアリスは、外の散歩ついでにお使いを頼まれた。でも、買い物とかって普通なら昼間以降に行くよね?
あと、アリスが買う物をブツブツと言いながら歩いてるけど、僕の手を繋ぐのは控えて欲しいかな....恥ずかしいという気持ちもあるけと、それ以前に....
「あれ、役なしっ子じゃないか?」
「あらホントだわ....いやねぇ、うちの店に近づかないでくれるとありがたいのだけど」
「リデル家もあんなのを引き取るなんてどうかしてるよな」
「....リオ、気にすることないわよ」
「うん....」
外に出れば今みたいに、僕を貶す言葉が飛び交うのだ。でも、別にそれは大したことない
それ以上に嫌なのは、お世話になってるリデル家まで貶されることだ。
アリスは気にしないでと言ってくれるけど、それで解決するほど僕は強くない....
「リオの<運命の書>が
「....アリスも<運命の書>の持ち主だよね?」
「確かにそうだけど、私はあんな人たちみたいに、過剰に執着することなんてないの!
はぁ....こんな世界を創った神はどうかしてるわよ。どうして、たった一冊の本なんかに私たちの生き方とか全てを決められなきゃいけないのかしら」
「....そんなの─」
─それが、この世界の常識だから
─誰もが何かしらの<役目>を持っていないと形を保てない世界だから
─それで<役目>を与えられなかった者たちは先程のように腫れ物扱いにされる
─そんな世界なんて
─消えて失くなればいいのに
「リオ、どうしたの?」
「えっ....なにが?」
気が付けば、アリスが僕の顔を覗き込んで、心配していそうな顔をしていた....というか心配してくれていたんだと思う。
「何がって、さっきからボーッとしてたわ」
「ご、ごめん。なんか疲れちゃって」
「それもそうよね。早く帰りましょう」
「うん!」
僕は心配されないように、満面の笑みを浮かべながら返事をする。
「おい、なんだあれ...!?」
「そ、空が....!!」
そんな時だ。街の人たちが視線を空へと向けて騒いでることに気付いたのは─
僕とアリスは街の人たちが何故騒いでるのか疑問に思い、空を見るために顔を上げた。
「あれは...!?」
「空が、割れてる....?」
そこには青く澄んだ空と、その空に無理やり破く感じで出てきたような、赤黒い─空ともいえない空間が広がっていた。
「...おい!こんなこと<運命の書>には何も書かれてないぞ!?」
「そんなのこっちだって同じよ!」
「そうだ、これはきっと夢に違いないんだ!」
街の人たちは<運命の書>に書かれていない今の現象に混乱し、悲鳴をあげる者、人にやつ当たる者、現実逃避をする者。どの人たちも見ていられない状況だった。
「<運命の書>に記されていないだけでこの混乱...いや、あの空を見たら誰でもなるわね」
「アリスは平気なの?」
「私は、あれよ。周りの人たちが必要以上に慌てすぎて、逆に冷静になってるの」
「そっか...ねぇ」
「ん?どうしたの」
「あれ....」
街が混乱するなか、2人は冷静に周りを見ていたが、僕は何かを見つけアリスを呼んだ
僕が指をさした先にはひとりの男性を取り囲んだ集団がいた。見ていると、取り囲まれている男性の様子がおかしく、取り囲んでいる集団はそれを心配して集まった少し冷静な人たちだった。
「...な、なんで覚えてねぇんだ!?お、俺は!えっと、ァァアア....俺の、名前は...!」
「おい!どうしたお前!」
「な、なぁ!?俺の名前、覚えてるよな!」
「はぁ!?なんだよ急に!覚えてるに決まってるだろ!!
お前の名前は......あれ?名前は、名前....なんでだ?さっきまでは確かに覚えてたはずだ!なんで出てこねぇんだ!?」
可哀想に、その人は自分の名前を忘れ自分が何者なのかも分からなくなってしまったらしい。しかし周りを見ると、それはこの人だけの事ではなかった。
「私、は誰なの...!?教えて、私はなにをしてきたの?....」
「僕は...僕は誰で、何者で...分からないっ!どんな風に生きてきたかすら...!?」
自分が何者か、今まで何をしてきたか、どんな風に生きてきたのか。それを忘れ、失くしてしまって恐れる人たちが続々と現れ─
「わからねぇ...!俺は、本当に....今ここで、生きてるのか?存在しているのか....?俺は
俺は─────」
──名前、過去、そして自分の存在すら分からなくなった人は──
──世界から消失した
「リオ、目を閉じなさい」
「え?」
街が、世界が<意味>を失くし始めたとき、それを眺めていた僕に、アリスはそう言った。
「いいから閉じなさい。こんな光景は見ていいものじゃないわ。」
「わかった....」
アリスに言われて目を閉じた瞬間、僕の意識は深い眠りについた。
─<消失現象>
それは、自身の名前、過去、現在を徐々に忘れていき、自分が何者なのか、どこから来たのか、どこへ行くのか...なにもかも、わからなくなってしまって....
最後は自分の存在すら不確定となり、<いる>のか<いない>のかも、わからなくなった人たちは、次々と消滅していく
それが、今の世界で起きている。<運命の書>があるのにどうしてだろう?<運命の書>は自分の名前も生き方も全てが記されているのに
まさか、誰かが<運命の書>を消したのかな?
眠りにつく直前、誰かも分からない声が聞こえた。その声は、つらづらと今の状況を語っていったのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
プロローグの修正版がついにできました。この調子で頑張ろう!!
急展開なのは、すみません。
リデル家に関しては史実とは少し違っています。
ちなみにグリムノーツを知らない人の為に補足
・運命の書
ストーリーテラーに授けられる、自分の生き方等が書かれた本。どんな人物でもこれに抗うことはできない、そもそも抗うという発想にすら至らない。その本の通りに生きていく事が当たり前だと思っている。
なので、それを与えられなかった人物は悪い印象を受ける。<運命の書>に書かれていない事が起こったのだから困惑してしまい大抵の人が邪険に扱う
・ストーリーテラー
簡単に言うと神様的な存在。人々に自分の生き方等が書かれた<運命の書>という本を授ける
また分からないところがあったら感想で言ってください
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Repage1 はじまりのまえ
本編どぞ!
*******
─<運命の書>の持ち主は、世界を保つのには必要不可欠な存在
─しかし、<運命の書>が真白の<空白の書>の持ち主も、必要な存在である。
─世界に住む者たちは、必ず誰しもが<運命の書><空白の書>のいずれかの持ち主となる
─つまりあのとき世界が消えたのは、それらの持ち主がいなかっただけなのである
*******
「─────」
声が聞こえる。女の人の声が...
「も──ヶ月────わね」
意識が鮮明になってきた僕は、ゆっくりを目を開く。そして、最初に視界に映ったのが
「あら、目が覚めたのね」
月のように輝く白銀色の髪と、赤黒い血の色なのに何故か惹かれる眼をした女の人だった
「っここは...?」
「私の家よ。少し待っていてちょうだい。お腹を満たすものを持ってくるわ」
バタン...
「...?」
女の人はそう言ったあと、部屋から出ていった。残された僕は、いまどういう状況なのか分からず戸惑っていた。
確か、アリスと買い物の帰りに街中が大混乱になってその後は...そっか、気を失って─
「っ!アリスは、どこ?」
そこで気付いた。気を失った直前まで傍にいたアリスが見当たらないことに...
僕はアリスがいないことで、心配と不安の感情がごちゃごちゃになる。もし、アリスが戻ってこなかったらと...考えるだけで吐き気が襲ってくる。
そんなとき─
「ねぇ、ちょっとぉー!?」
「えっ?」
アリスの声が何処からか聞こえた。
「リオ!ここよ!!」
「ど、どこ!アリス....!」
僕は必死にアリスを探した。でも僕がいる部屋の中には誰もいない。僕は涙目になるが、それでも探すのをやめなかった。
そして、ふと...横目にぴょんぴょんと跳ねる物体を見つけ、僕はそっちに視線を移すと─
「やっと見つけてくれたわ!」
人形サイズまで小さくなったアリスがいた。
「え?ち、小さい....もしかしてアリス、ピッシュサルヴァーでも飲んだの?」
「飲んでないわよ!とにかくリオ、そっちに行きたいのだけど...この体じゃあ」
「あ、ごめんね!」
「無理はしなくていいわよ!?」
小さくなったアリスを見た僕は<不思議の国>生産?の、体が縮む薬<ピッシュサルヴァー>を飲んだかをアリスに訊いたら、違うと返ってきた。じゃあなんで小さくなったの?
とりあえず、僕はベッドから立ち上がって少し離れたところにある机、その上に乗っているアリス(何か言っているけど無視)を抱えた後、すぐベッドに戻った。
「ごめんなさい。無理をさせちゃって...」
「無理だなんて...人形サイズのアリスをこっちに移しただけだよ?」
「いいえ。リオは1ヶ月の間ずっと寝ていたのだから、目が覚めて急に立ち上がったりしたら立ちくらみとかあるじゃない」
「心配のしすぎ....って、1ヶ月!!?」
僕はアリスが言った内容に対して驚きの声をあげる。目が覚めたら1ヶ月経ってたなんて言われたら誰でも驚く。
「まあ驚くのも無理ないわ。でもそれが比にならないくらいの情報もあって─」
コンコン...ガチャ
「おまたせ、お粥つくってきたわよ。」
「え、えっと...ありがとうございます」
アリスが何か言おうとしていたけど、その直前でさっきの女の人が食べ物?が入っている器とコップを乗せたお盆を持って入ってきた
因みにアリスは、今の一瞬で人形のフリをしていたりする。
「これくらい当然だからいいのよ。あら、そのアリス人形やっぱりあなたのだったのね。倒れていたあなたのすぐそばにあったから」
「あ、えっと...はい。拾ってくれて、ありがとうございます」
「ふふ....さぁ、あなたは長い間眠っていたからお腹空いてるわよね。食べてちょうだい
はい、あーん...」
「あ、ありがとうございます...」ハム
そのときの僕はお腹が空いていたのか、それとも目覚めて間もないからかは分からないけど、特に文句を言わずに、女の人におかゆ?を食べさせてもらった。
***完食***
特に何事もなくおかゆを完食した
「あの、ありがとうございました。おかゆとても美味しかったです」
「それならよかったわ」
「えっと、その...」
「ん?」
「な、名前を聴いてないなぁ...と」
「あっ!そういえばそうだったわね。
私の名前は<天野 鈴>よ。
<天野>が名字で<鈴>が名前ね。まぁ、それはこの国の名前で本名は別にあるけどね」
「別の国?本名?」
よくわからず首を傾げる僕に、リンさんは微笑みながら教えてくれた
「元々、私はドイツに住んでいたのだけど、この国に住むためには、新しい名前が必要なのよ。
それで、そのドイツに住んでいた時の名前が<マーカラ>っていうんだけど、あまり気に入ってないのよ。だってそれ吸血鬼<カーミラ>の生前の名前なのよ?そんなの呼ばれたくないわ」
「は、はぁ...嫌いなんですか?吸血鬼」
「嫌いっていうか、よくは思っていないって言う感じね。私は少女を過剰に愛する趣味はないもの」
「そう、なんですね...あっ!ぼ、僕の名前を言ってませんでしたね!
僕は<リオ・リデル>と言います!それでここはどこなんでしょうか?」
微笑みから段々と目にハイライトが消えてきたところで、僕は無理やり話を切りかえる。
その後に場所を聞いた理由は、僕が住んでた街は多分消えたと思うから、なんとなくだけど確信して言える。だからここは僕が知らない場所の筈、その証拠にこの部屋の雰囲気とか、窓から見える町の様子が全然違うもんね
「そう...リオくんね、覚えたわ。それでリオくんは外国人なのよね?どこの国?
あ、因みにここは<〇〇県◇◇市友枝町>よ」
「えっと、イギリスです。
それと、〇〇けん◇◇し、ともえだ...ちょうですか?どこの国なんでしょうか?」
「<日本>よ?」
「にほん...まさか、遥か東のところにある島国ですか?」
「そうよ。やっぱりその様子だと手紙に書かれていたことは間違ってないみたいね」
「...手紙?」
まさか、イギリスから東の島国に居るとは思わなかった。色々訳わかんなくなってきたので、思考を停止して手紙について聞いた。
「あなたが倒れていたところにその人形と、それと一冊の本と一緒に、<この子を拾ってくれる親切な人へ>と英語で書かれた手紙が置かれていたの。その内容は
『この子を拾ってくれる親切な人へ
この子の故郷は滅んでしまいました。私はこの子を安全なところへ避難させる為にここまで来ました。しかし、もう私も長くはありませんので、どうかこの子をよろしくお願いします。
この子の好きなものは本。ジャンル問わず
嫌いな食べ物はピーマン、克服させてください。学校にも通わせてあげてください。』
みたいな感じで、あなたの情報とやって欲しいことが半ば殴り書きのように書かれてあったわ。」
「...なるほど、わかりました。ありがとうございます!」
「いいのよ。それで、私はこの手紙をわかった上であなたを拾ったんだけど...
私の家族にならない?」
「...っ」
僕はリンさんの誘いを聞いて迷ってしまう。
こんな何もない僕が家族になっていいのだろうかと、役なしっ子がいても迷惑にならないのだろうかと...それを考えた末。
だした結論は─
「すみません...それは、急に決めることはできないです。」
YesともNoとも言えないものだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
中途半端な終わり方ですみません。
リメイク前の変更点
・リンの設定が変態から改変されている。口調が変わっている。外国人であること。本名は<マーカラ>という設定追加
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Repage2 第一歩
本編どぞ!
「はぁ...」
「そんなに気負うことないわよ」
「うん、ありがとう。アリス」
僕がリンさんの誘いを曖昧に答えたあと、リンさんは今いる部屋から出て行った。多分1人にしてくれたんだと思う
そして今はアリスと今後どうするかを相談しているところだった。
「彼女が来て話が途切れちゃったけど、話を戻すわね。重大な情報がわかったわ」
「そういえば、そんなこと言ってたね」
「えぇ、この世界は私たち...と、断言してはダメね。リオがそうとは限らないし...少なくとも私にとって、ここは夢のような世界よ」
「どういうこと?」
僕がアリスにどういう事かを聞くと、アリスは<フッフッフッ>と少しムカつく笑い方をしたあと、目を輝かせて言った
「ここは本に...運命に縛られない世界なの!
つまり、未来がわかりきった退屈な毎日を過ごす世界ではないのよ!」
「ほ、本当に!?」
「えぇ!」
僕はアリスの言葉に目を輝かせた。なぜなら僕がいた世界は<運命の書>が絶対の世界。
<運命の書>に逆らうこと、その気をおこすことすら許されない世界。そんな憎い世界からおさらばできたんだ。嬉しくないわけがない
「でも、どうしてわかったの?」
「さっきの彼女がリオの<運命の書>を手にしたとき、<運命の書>だとわかってなかったみたいなの。そんなの普通は絶対にありえない
世界の住民は必ず<運命の書>がなんなのかを知ってるはずなのに、それをわからないのはおかしいこと。だから私は、直ぐにここが私たちの住んでいた世界じゃないとわかったのよ!」
「そっか...そういえば、さっきリンさんが読んでくれた手紙ってアリスが書いたの?」
「えぇ、この世界へ来て直ぐにね。まぁ体が小さくなったせいで凄く書きにくかったわ」
「そうだったんだ。ありがとう」
さっきから、僕とアリスは異世界へ来ても平然としているけど、別に起きたら異世界でした。ということに驚いてないと言ったら嘘になる。でも不思議の国でそういう有り得ないことは慣れっこだから、すぐ受け入れることができた。
「でも、気掛かりなこともあるわ。」
「え、なに?」
「私の<運命の書>が消えちゃったのよね。もしかしたら体が小さくなったのもそれの影響かもしれないわ」
「いや、冷静に考えてる場合じゃないでしょそれ!?<運命の書>がないって、それ一大事なんじゃ!!」
*<運命の書>はその持ち主にとって命も同然な存在。決して燃えたり破れたりはしない。しかし、もし何かあったら化物になってしまうことがある。リオはこの最後の情報を知らない
「大丈夫よ。1ヶ月経った今でも変化といった変化はないし」
「体小さくなってるじゃん!?」
「あれよ。ほら、<ピッシュサルヴァー>を飲んだからよ」
「飲んでないって断言したでしょ!!」
僕はリンさんに聞こえないようにしながら、アリスを問い詰めるけど、その本人はアハハと笑いながら流している。
「まぁでも本当に大丈夫よ。もしなにか変化でもあったら直ぐに言うから」
「...本当に?」
「えぇ!」
「言わなかったら一週間は口利かないから」
「絶対に何か変化あったら言いますから!!
それだけはやめてェ!?」
口を利かないと言った瞬間にアリスは涙目になりながら叫んだ。これはアリスがいい加減なことを言ってるときに、よくしている方法だったりする。
デメリットとしては、暫くの間アリスがうるさくなることぐらい
*******
「それで、これからどうするの?」
「どうって?」
アリスが一通り叫び終わり、落ち着いた途端僕に対してそんなことを聞いてきた。
「どうって...今まで私たちが住んでいたクソな世界はもうない。つまり、ここは私たちの住んでいた世界じゃないわ。だからここで生きていくのにも想像以上の苦労が待ってると思うのよ」
「アリス、レディがクソなんて言葉使っちゃダメなんじゃないの?」
「そこはもうどうでもいいのよ。いま重要なのはこれから、この世界での過ごし方よ」
「...そうだよね。アリスとしては何か考えとかはあるの?」
「一つだけね」
「それってやっぱり、リンさんの誘いを受けること...とか?」
「そうね、その方が私も安心だもの。彼女はあなたに対して何の疑いとかもなく受け入れてくれる
それだけじゃないわ。この世界...はまだわからないけど、少なくともこの町はあなたを受け入れてくれる人ばかりだと思うわ」
「どうして?」
確信を持って言ってくるアリスに、僕は疑問を投げる。確かにここは<運命の書>に縛られない世界、だとしても余所者の僕が簡単に受け入れられるとは考えづらい。
それにあの世界に住んでいた人たちは、僕が<運命の書>の持ち主じゃないとわかってなくても、何故か僕を避けてきた。
それはアリスの家族だってそうだった。
だから、この世界でもそうなんじゃないかと僕は思ってしまう。<運命の書>関係なく、僕はアリス以外の人たちとは仲良くできない。
しかしアリスは、僕の不安がる顔を見ても笑顔を絶やさずに応えた。
「あなたが眠っていた1ヶ月、この町の雰囲気はなんとなくわかったのよ。草木は生い茂って、空も澄んでいて心が落ち着くし、町の人の声も優しさがあった。あの世界とは雲泥の差くらいに大違いなの。だから大丈夫」
「...それだけで?」
「私はリオが不幸になったり絶望したりするような嘘はつかないわ。それに私の目を見くびらないで欲しいわね」
「別に見くびってなんかしてない!でも、そうだよね。アリスがそう言うなら...うん
頑張ってみる!」
僕はアリスに自信を持って言った。もう一度人と関わる努力をしてみよう!
*******
コンコン...
「あ、はい!」
...ガチャ
「リンさん...」
リンさんはノックをしたあと遠慮がちにドアを開けて入ってきた
「ごめんなさい。会いにくいところ来てしまって、でもやっぱり私的にはさっきの話─」
「あ、あの!さっきの話ですけど...
お願いしてもいいですか...?」
「え?」
「その、手のひらを返すようで嫌な感じに思うと思いますけど
僕を...引き取ってくれませんか」
僕はリンさんの方へ体を向けて頭を下げた。
リンさんはそんな僕を見て、最初は唖然とした顔だったけど、あとからその顔は微笑みへと変えて僕に言ったのだった。
「......えぇ、もちろんよ!リオくん」
「っ! ...ありがとうございます!」
こうして僕は、アリス以外の人と関わる第一歩を踏んだのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
はい!序章のリメイク化は終了!
ということは、序章 3頁は削除することになりますのでご了承ください。
さぁ、次は本編だ!
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クロウカード編
Repage1 不思議のはじまり
すみません。ガチャが不満の結果だったので、思わず叫んでしまいました。本当にすみません....
◇リメイク後
なんか上のやつ残しとこ
それでは本編どぞ
*******
『───!』
これは...夢?
神殿みたいなところで、女の人が嘆いていた
『ごめんなさい...あなたを、こんなめに.....』
その女の人は、ある方へ向かって涙を流しながら謝っていた
『あなたがそうなったのは私のせいだから...
どうか、自分を責めないで...!』
女の人は最後にそう言って、手に持っていた大杖を振り下ろした。
*****
ピピピピ....ピピピピ....ピピッ(カチ....
「むぅ〜....ねむい........」
本が大量にある部屋で目覚ましの音が鳴り響くのを鬱陶しそうに止める金白髪の美少年。少年はまだ眠たそうに目を擦りながら体を起こす。そこへ小さな人形サイズの少女が少年の方へ近付いた。
「おはよう」
「ふわぁ〜...おはよう」
「まだ眠そうね。リオ」
「だって...朝は苦手なんだもん」
リオと呼ばれた少年に、少女は呆れた顔で言った。
「あなたの朝が弱いところ、年々増してきてないかしら?」
「やっぱり...寝心地がいいと、そうなる...」
「もう!いつまでもヨロヨロしてないでパパッと着替える!リンが朝食を作ってくれているはずよ。」
「わかったよ...アリス」
まだ寝ぼけ気味で返事をした少年は着替えて学校の支度をしたあと、アリスと呼ばれた少女を肩に乗せて、朝食を食べにダイニングキッチンへ行った。
◇◇◇◇◇◇◇
では、少年少女の事を簡単に紹介しよう。
金白髪の少年
名前:<天野 リオ>
旧姓は<リデル>だが、そのリデル家でも養子として引き取られており、本当の姓は不明。
年齢:10歳 小学4年生
好きな教科:音楽、国語
苦手な教科:特になし
6歳のときに住んでいた世界が滅び、気がついたらこの世界へとやってきた異世界人。
人形サイズの少女
名前:<アリス リデル>
年齢:11歳
世界的有名な童話<不思議の国のアリス>に出てくる主役<アリス>ご本人
リオの1つ年上の義姉でもある。
7歳の頃にこの世界へ行き着くも、自分が育った世界が滅んだことより、弟であるリオを心配していた。
「クソな世界を気にするよりも、弟を気にするのは当然でしょ?」とのこと
訳あって体が人形サイズになっている。本人から原因を聞けば、<運命の書>が失くなったことが関係していそうだと言う。
◇◇◇◇◇◇◇
~~~~~
ガチャ....
「リン姉さんおはよう」
「おはようリオくん!ご飯できてるわよ」
「うん。ありがとう」
◇◇◇◇◇◇◇
微笑んでリオを迎えた女性
名前:天野 鈴
本名:マーカラ
行き着く宛がないリオを引き取った日本国籍の外国人。
自分の本名に対してあまりよく思っていない
リオを引き取った当初は、お互いに遠慮がちだったが、今では本当の家族のように接している
◇◇◇◇◇◇◇
「学校には....というか日本語にはもう慣れたの?みんなの言ってることわかる?」
朝食を食べてる途中、鈴はリオに訊ねた。
「うん、なんとかね。日本語を勉強し始めて1年経つか経たない頃には日常生活に支障はないレベルだったから。それに日本語を教えてくれる子が身近に居たからね。」
「そう、それはよかったわ」
この世界へ来て最初に苦労したのが、僕が住んでいた所とは違う言語を覚える点だった。
僕は昔から言語を習得するのは得意な方なんだけど、この国の言語は簡単ではなかった。文字の種類ありすぎの、字は同じなのに意味が全く違うとか、発音の方でも意味が違ってくるのが溢れかえるほどあった。
いつもなら
対象の言語の本を読めるまで 1ヶ月以内
対象の言語で会話できるまで 2~3ヶ月
(どちらも完璧にマスターするまで)
なんだけどな。
「ごちそうさま!食器は流し台におくから、それじゃあ行ってきます!」
「行ってらっしゃい....あ、あと昨日言った通り私今日は遅く帰るわよ!」
「はーい!」
ガチャ.....バタン!!
「ふぅ、学校の予鈴までまだ時間あるのにあんなに急いじゃって....学校が楽しいっていう気持ちが伝わってくるわ....ふふ」
──リオside──
タッタッタッタッタッタッ!!!
「ちょっ....ちょっとリオ!まだ時間あるからもう少しゆっくり行ってちょうだい!
色々戻しそう...!」
「あ、ごめん!」
アリスが具合悪そうな顔を見て慌てて走るのをやめて歩く。
というか、最近のアリスはレディさが抜けてきてる気がするなぁ
「....はぁ、まったく。」
「本当にごめんねアリス。早く学校に行きたくて」
「まぁ、気持ちはわか...らないわね。私はあんまり勉強する場所は好きになれないわ」
「あはは...一番勉強できるのに?」
「勉強ができるからと言って、勉強を好きにはならないわよ。」
「まぁ言われてみればそうかもね。」
因みに外でも余裕でアリス喋っているけど、周りに人がいない事はしっかりと確認済み
歩いてから暫くして、アリスは口を開いた
「にしても、この世界に来てからはや4年。いろいろ大変だったけど、段々と慣れてきたわよね。」
「そうだね。僕たちが住んでいた世界の常識とは違うところもあるからね。<運命の書>が存在しないところ、食文化に物の価値観に、ファッションとか、誰でも学校に通えるところとかいろいろ...でも
なにより、物語の本の量!!読んでも読んでもまだ未読の本が無尽蔵にある程!」
あの世界にも本は山ほどあったけど、3年もすれば読み切って、何回も繰り返して読んでたからなぁ...
それに比べてこの世界の本はあの世界とは比にならない位に多い!それに、種類も豊富!この世界の図書館に初めて行ったときは思わず目を輝かせたよ!
「あ、相変わらずの物語好きね」
「えへへ」
僕たちはそんなことを話しながら学校へ向かったのだった。
~~~~~
ガララ....
「おはよう!」
僕は教室のドアを開け挨拶をした。その挨拶に返してくれるクラスメイトと一言会話したあと自分の席に行く。そこには2人の女の子がいた。
「おはよう。トモヨ!サクラ!」
「おはようございます。リオくん」
「おはよう。リオくん」
友達のひとり
名前:大道寺 知世
年齢:10歳
僕がこの世界へ来て、リンさんに引き取られて一週間後くらいに初めて会った。
初めはお互い言語がイマイチわからなくて会話に苦労したけど、何故か伝えたいことはわかっていたんだよね。気が合うのかな?
因みに、日本語を覚えるのを手伝ってくれたのはトモヨ。その代わり僕も英語を教えたりしたよ
学校では、入学から3年生の時まではいつも僕の後ろにいて他の子と関わらないでいた。当時は引っ込み思案で口数も少なかった。
因みに3年生の時以外は同じクラス
もうひとりの友達
名前:木之本 桜
年齢:10歳
小学生とは思えない程の運動神経が抜群
友達になったきっかけは、3年生の時にトモヨが紹介してくれたこと。
話してみてわかったことは、赤の他人にも手を差し伸べる心を持っていること、そしてとても純粋だということ。嘘話でも普通に騙されるから、心配することがある
全体的に他の子とは違う雰囲気?を持った子
別に悪い意味ではなく、いい意味で
ちなみに2人の第一印象は
トモヨ:人魚姫か、かぐや姫
理由:最初見たとき、ひとりで今にも消えてしまいそうな感じだったから。
サクラ:童話のアリス、女神?魔女?
理由:見た目で活発そうな子だと思ったから後のふたつはなんとなく?
「あれ、サクラ。その手に持ってるキャンディどうしたの?」
「あ、これ?雪兎さんに貰ったんだぁ!」
「その時のさくらちゃん超絶可愛かったですわ!リオくんにも見せてあげたかったです」
「そ、そうなんだ....サクラもよかったね」
「うん!」
サクラが言ったユキトさんとは、サクラの7歳上のお兄さん、の同級生で友達のこと。
因みにサクラの初恋
そしてトモヨに関してもうひとつ。
トモヨは趣味としてビデオ撮影とかしてるんだけど、サクラと出会ったのをきっかけに....サクラに対してその趣味が暴走するようになった。たまに僕に対しても暴走する。
~~~~~
その後は普通に授業をして、お昼にお弁当食べてまた授業して、あっという間に放課後になって今は自分の家に帰ったところ。
「はぁ〜、今日も楽しかったなぁ!」
「そうね...見てる分には楽しめたわ。勉強は聞き流してたけど」
「ずっとそんなことしてると、いつか僕の方が勉強できるようになるかもね」
「それがないように隠れて勉強してるわよ」
「隠す意味あるのかな...」
「それで?これからどうするの」
「え?本を読む」
「...でしょうね」
~~数時間後~~
「ん〜〜〜っと...」
今までずっと本を読んでいた僕だったけど、流石に疲れたから少し休憩。体が固まり気味だったから軽く伸ばしたあと、アリスがいる方へ視線を向ける。
「よくもまぁ飽きないわよね」
「うん。本は大好きだから」
「...そうだったわね」
そんな感じにボーッとしながらアリスと会話していると...
────!
「っ!なに...?」
「リオ、どうしたの?」
何かを感じた僕は椅子から立ち上がって辺りを見渡す。急に立ち上がった僕に、アリスは戸惑い気味に聞いてきた
「ねぇアリス、なにか感じなかった」
「え?...ん〜、なにも」
「...そっか。気の所為なのかな」
アリスが何ともないのなら気の所為だと思う事にしたものの、それから何時間もリンさんが帰ってきて夜ご飯を食べてるときも、気になってしまって落ち着かなかった。
そのせいでアリスやリンさんに要らぬ心配をさせてしまった。
「リオ、そんなに気になるの?その何かを感じ取ったものが」
「うん。なんというか、体の奥がザワザワしてる感じで...ご、ごめんね。心配かけて」
「謝ることじゃないわ。にしても、リオがそんなになるくらいなのだから、何もないって言うのは無理があるわね
その何かは今も感じるの?」
「ううん。ザワザワとはしてるけど、あの時に感じたものじゃないと思う」
「そう...」
アリスは口に手を当てて何かを考え始めた。
そして、僕がアリスが次に言う言葉を待っていた時だった
ガタガタガタガタ!!!!!
「な、なに!?」
「風?にしては強すぎるわね」
突然、窓が大きな音をたてたことで驚いた僕だったけど、アリスはあまり取り乱さずに今の事象を考えていた。
僕は躊躇い気味に窓へ近づいて、外の様子を見ると そこには
「...鳥?」
「あらほんとね。それも随分と巨大ね」
全長10mはいってそうな巨大な鳥が、友枝町の上空を飛んでいた。
なんというか、<不思議の国>でいろんな奇怪なものを見たせいか、巨大な鳥を見ても平然とできることを悲しめばいいのか、喜べばいいのか判断に困るなぁ。
その後の鳥は、僕の部屋の窓からじゃ見えなくなる所へ飛んで行ったのだった
そして、僕とアリスはこう思った
─これから不思議なことが起こりそう─と
「......報告」
そんなことを窓際で思っている僕たちは、
家の前の物陰に、ひとつの影がいることに気が付かなかった
最後まで読んでいただきありがとうございます!
今は各話でのリメイク完成が早いですけど、段々と遅くなりますのでご了承ください。特に<静>とか<時>とかは最悪です
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Repage2 重労働か勉強。どっちがマシ?
そして知世お誕生日おめでとう!!(遅れたけど)
Repage後
随分遅れてしまいましたし、なんか文字数も減ってるや...
では本編どぞ!
*******
「...ここは?どこ」
気が付けば、僕は知らない空間にいた
確か僕は、アリスと大きな鳥を見たあと、歯を磨いたりして寝たはず。ということは夢?
「───」
「!...あなたは、だれ?」
後ろから声らしきものが聞こえ、振り返ると全身が影で覆われて分かりずらいけど、女の人が立っていた
「──み───て」
「え?」
「き──図書館にきて」
女の人がそう言った後、僕と女の人以外何もなかった空間が一変した。
それは、下から上まで目眩がする程の量がある本棚と、その本棚全てにぎっしりと入っている本がある空間だった
それを認識すると、僕の意識は薄れていった
*******
「ふわぁ〜...っはぁ」
「あら、寝不足なの?」
いつも通りに学校へ向かっている途中、欠伸をした僕にアリスが訊いてきた。
「うん...昨日と今日、変な夢を見てさ。昨日はあまり気にしなかったんだけど、あの大きな鳥を見てからは、なにか関係があるんじゃないのかなって...それで今日もまた変な夢」
「なるほどね...因みに内容は覚えてる?2つとも同じ内容だったの?」
「ううん違う内容。昨日の夢は、女の人が誰かに謝ってた。今日の夢は、女の人が図書館に来てって言ってた。その2人が別人かはわかんないけどね」
「そう...確かに、昨日の鳥のことを考えれば無関係とは考えづらいわね。」
「それじゃあ、この町の図書館に行った方がいいかな?」
「ん〜、そうね。一応行ってみましょう」
「うん、わかった」
今日の放課後の予定が決まった僕たちは、早足気味に学校へ向かった。
~~~~~~~
ガラ
「おはよう!」
「おはようございます。リオくん」
「っお、おはようリオくん!」
僕は教室に入ると、まだ時間が早いせいか、クラスの皆はトモヨとサクラ以外来てないみたいだった。
そして、トモヨとサクラは2人で話していたのはわかるけど、どうしてサクラは挨拶をするとき吃ったのだろう?
2人の前にあるサクラの席の机には、トモヨのカメラと、ぬいぐるみ...
「そのぬいぐるみ...」
「えっ?あ、あぁこれはね!私のぬいぐるみでね!結構気に入ってて学校に持ってきちゃったんだ!!」
「そうだったんだ...」
サクラの言葉に耳を傾けるも、僕の視線はずっとサクラのぬいぐるみのようなものにある
「......」ジー
「え、えっと...」
「そういえば、リオくんも毎日持ってきてますよね。そのアリス人形」
「えっ?う、うん!大切なものだから手放さずに持っておきたくて!男なのにね!?」
トモヨにアリスのことを言われて、僕は慌てて誤魔化す。
こうしたことを避けるためにアリスをおいて行ったことは一度だけあるけど、置いていって帰ったあと、アリスが人形になってた。それはもうホントに。目に光がなかったし
だから、それ以降は毎日連れて行ってたんだけど、やっぱりもう一度相談しよう...
「男の子だからといって、人形を持ってくるのは別におかしな事ではありませんわ」
「知世ちゃんの言う通りだよ!私と知世ちゃん以外のみんなも、人形を持ってきたりしてるだけで笑ったりなんてしないよ!」
「...うん、ありがとう!」
....まぁ、ふたりが言ってくれるなら、相談はまた今度かな
~~~~~~~
そんなこともあり放課後。僕とアリスはいま図書館に夢で見た女の人がいないかを探していたけど...
「ん〜...いないね」
「(そうね、特に変わったところもないし。今日のところは帰る?)」
「そうだね...」
まぁ、お目当ての人は探し出せなかった訳だ
今日のところはひとまず家に帰って、また明日にでも行こう。それでもいなかったら別の図書館に行くか、素直に諦めるかだね
僕は今後について考えながら図書館を出た。
「にしても、今日のトモヨとサクラはおかしかったよね。」
僕は家の帰り道に、今日の2人の言動についてアリスと話した
「サクラはわかるけど、トモヨはいつも通りじゃないの?」
「そう?確かにいつも通りに見えるけど、僕がサクラのぬいぐるみをずっと見てるとき、トモヨは僕にアリスのことを聞いてきたよね
普段のトモヨなら、どうしてぬいぐるみをずっと見るのか訊いてくると思うんだけど?」
「いや、普通に考えすぎじゃない?もし当たってたら凄いわね...」
「トモヨとは入学前からの仲だからね」
今朝のさくらと知世の様子を疑問に思っていたリオだったが、そろそろ我が家が見える距離に来た
「リンはもう帰ってきてるかしら?」
「どうだろうね。姉さん今朝は何も言ってなかったけど、その場合って遅いか早いかわからないときだか......ら?」
「?どうしたのリオ」
あと数メートル程で家に到着するという距離で、リオは話を中断して自分が歩いてきた道を振り返った。
「...っううん、なんでもない!」
「ふーん...そう?」
「うん!早く家に入って夕飯の準備しよう」
「リンが帰ってきていなかったらね」
リオは誰かの視線を感じ、歩いてきた道に振り返ったのだが、そこには誰ひとりとしていなかった。アリスにこの事を話すと変に心配されると思ったリオは、結局なにも相談せずに家の中へ入った。
しかし、アリスを心配させないように何も無いと隠したリオだったが、そんなことアリスには、声の調子とかで丸わかりだったのだ
~~~~~~~
「なんか、日が経つの早いね...」
「それはどっちの意味なの?メタ的な意味?それとも気分の方?」
「えっと...気分の方なんだけど。めた?ってなに?」
「...いいえ、なんでもないわ」
翌日、今日もいつも通りに話しながら登校するリオとアリス。道中にリオの発言でメタをするアリスだが、残念ながらリオにはそれに乗っかるというノリも知識もなかった。
「....」チラ
内心ノッてくれなかったと落ち込むアリスを他所に、リオは昨日の時と同じように後方を気にしていた。
「リオ....なにかあるならそろそろ話して欲しいのだけど?」
「え!?な、なんのこと?」
「いや、分かりやす過ぎるわよ」
そんなリオを、昨日から気づいてもなお言い出さなかったアリスは、流石に我慢ならなかったのか、昨日のことも含めてリオに訊いた
そしてリオは後方の方へ注意が向いていたせいで、大袈裟に反応してしまった。慌ててアリスの質問を誤魔化すリオだったが、その様子はなんとも分かりやすい反応だった。
「はぁ...別に誰かも分からない奴がリオの後を追っているのは昨日からしってるわよ。」
「え!?、そ、そうなの...!」
「ふふん!今までリオを見守ってきただけはあるわ!」
「......(過剰なまでに、がつくけどね)」
リオは事情を察しているアリスに驚くが、その後のアリスの発言でなんとも言えない気持ちになる。
「そ、それで昨日から僕を追ってきてる人はどうしたらいいかな?」
「まぁ、今のところ嫌な視線もないから、暫くは放置でいいんじゃないかしら」
「えっ、それ大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫!もし襲ってくるようならば、そいつの目にこのレイピアを刺してやるから!」
「アリスの方が怖すぎるんだけど...」
「それじゃあもうすぐ学校近くになるし、私は何も喋らない普通のぬいぐるみになるから話しかけちゃダメよ」
「え、ちょっとアリス!?」
「....」スン...
「(言うだけ言って人形になったし...!)」
アリスが何も喋らなくなったことで、リオの内心は焦りと不安、アリスに対する苛つきだけが残った。
~~~~~~~
「....ワァーナニコレー?」
「あ、リオくんおはようございます!」
「...おはよう、リオくん」
「うん、おはようトモヨ、さくら。それで、コレナニ?」
僕が何故こんなにカタコトになっているのかというと、それは簡単なことです。
なんか机と椅子の山が教室にできていて、運動場にもその何倍もの量が無造作に置かれていて、その現実から逃げるためのカタコト
「私が来たときには既にこの状況になっていまして、先生方は誰かのイタズラだと言ったみたいです...」
「それで今日の授業は全部中止にして、みんなで協力してこの椅子と机の山を元に戻すことになったの」
「...授業を受けた方がマシなくらいだね」
「あはは、私でも少し思っちゃったよ」
なんか、あの夢を見てから不思議なこと続きだなぁ...退屈はしなくはなるけど、不思議の国へ冒険したときと同じような疲労感がまた襲ってくるのかな...はぁ、考えただけでも憂鬱になるよ
僕は心の中で気分が落ちつつも、トモヨとサクラの元から離れて、ゴミのように積み上げられた椅子と机を戻す作業にかかった。
「(それにしても、これだけ雑に積み上げられると、木材とか欠けているかもしれないし気をつけてリオ)」
「(人形のふりはもう終わり?)」
「(ふふふ、小声ならバレはしないわよ。誰かが至近距離にいる訳でもないしね)」
「(...そっか。)」
この時、リオの脳裏にいつか起こるであろうひとつの予測がたてられた。
これ、いつかトモヨ辺りにバレそうだな。と
最後まで読んで頂きありがとうございます!
軽くキャラ紹介
・天野リオ (リオ・リデル) 年齢:10歳
特徴:金白髪で金眼
:中性的な顔
:食欲旺盛
・アリス・リデル 年齢:15歳
特徴:金髪で碧眼
:まぁ、容姿については(グリムノーツ 初期アリス)
:細剣使い(小さくなる前は)
:少しブラコン気味?
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Repage3 図書館
今からとても楽しみです!
そしてグリムノーツアンケガチャ....上位5人の内1人も当たりませんでした!うわぁぁああん!!ドロテア姉さんにC・オーロラ姫出て欲しかったぁ!
まぁ、ルートヴィッヒ当たっただけでも良しとしましょう....
それでは本編どうぞ。今回は完成度低いです
*リメイク後*
やっと終わりました...めっさ遅れました
「疲れた〜...!」
「お疲れ様、リオ。」
学校中にあった椅子と机の山を全て直し終わったあと、日はすっかり傾き始めていた。
そして、現在リオはアリスと一緒に帰っている途中だった。
「ねえ、学校中をあんな風にしたの、先生は子供のイタズラだって言ってたけど、アリスは信じる?」
「ここが不思議の国だったら信じるわね」
「...だよね」
生憎と、リオたちがいる世界は不思議の国ではなく現実の世界、超能力も魔法もない世界だと2人は思っている。
しかし、そんな思い込みは簡単に崩れさる
「早く帰って姉さんにこの事教え...てっ」
「リオ?どうしたの...っあ」
リオが家に帰ったあとの予定を言いながら歩いていると、前方にロングフードコートを着た人物がリオの行く先を阻むように現れた。その人物はフードを深く被っており顔が見えない。
「...だれ?」
『......』
リオの問いかけを沈黙で返した人物は、リオに対して手を招き、後ろへと歩き出した
「...もしかして、ついてきてって言ってるのかな?」
「ダメよリオ!明らかに怪しすぎるわ!」
「でもあの人を見てると、助けたくなってくるというか....」
「お人好し!!お願いだから、ここでそれを出さないでちょうだい!!」
謎の人物について行こうとするリオに大反対するアリス。その間にも、謎の人物は2人を気にもとめずに歩き続ける。
「大丈夫だよ。あの人は怪しいけど、危険なことをする人とは思えないから」
「その根拠はどこから?」
「第六感...つまり勘だよ!」
「不安すぎる!!」
「とにかく、今は僕を信じてよアリス!もし危なくなったら素直に逃げるからさ」
「....わかったわ。絶対よ?」
「うん!!」
アリスの反対を押し切ったリオは、今ではここからかなり遠くの方にいる謎の人物の元へ走って行った。
~~~十数分後~~~
謎の人物について行っていると、友枝町の近くにある山へと入っていっていた。
「どこまで連れていくんだろ?」
「やっぱり帰った方がいいんじゃない?」
「でも勝手に帰るのは困らせちゃうし....あ、あの!あとどれくらい歩きますか?」
『....』
リオの問いかけに無言を貫き通す人物は、暫く歩いていると突然足を止めた。
「?...あ、あの。どうしたんですか?」
「まさか、リオに何かするつもりでここまで連れてきたん─「アリス黙ってて」....はい」
『....』スッ
「え?」
足を止めた人物に疑問を感じたリオは声をかけるが、人物は先程と同じく無言。それにアリスが突っかかるが、それもリオに注意をされて静まった。
そんなリオたちのやり取りは無視して、謎の人物は身体をリオの方へと向け、ある方向へ指を指した。
リオは今までにない動作をしてきた人物に一瞬動揺しながらも、指した方向へと視線を向けた。そこには─
「っ!....え、建物?」
「どういうこと...ここ山の中よ?」
木々で生い茂っていた山の中に、底が見えそうな程に澄み切った湖。その湖の真ん中に美しくそびえ立つ、ドーム状の建造物があった
「友枝町にこんな場所あったっけ?」
「いいえ、ないはずよ。こんな綺麗な建造物があったら、町中に知れ渡っているわ」
「だよね。あ、あのっ...て、あれ?」
明らかに普通でない建物に疑問を抱く2人。そこでリオは後ろへ振り向き、謎の人物に建物について聞こうとしたが、その人物はいつの間にか居なくなっていた。
「なんなのよアイツ!連れてくるだけ連れてきて、まさかの置き去りなわけ!?」
「お、落ち着いてアリス...!」
「...ぅ〜〜!!
はぁ、確かにそうね。ここで叫んでいても何も変わらないわ」
「うん。とりあえずさ...入ってみる?」
「まぁ、理由もなくここへ連れてきた訳じゃないはずだから、それは賛成だけど...念の為気をつけなさいよ?」
「うん...」
何もせずに帰るのはさすがに忍びなかったリオたちは、ドーム状の建物の中へ入るために恐る恐るの様子で歩いていった
~~~~~~~
ギィィ...
「こ、こんにちは〜...」
リオの身長の何倍もある大きい扉をゆっくりと開け、若干震え気味で声をあげるリオ。しかし、リオの声に対する返事はなく、沈黙だけが返ってきた。
「...誰もいないのかしら?」
「じゃあ、さっきの人はなんで僕たちをここに連れてきたんだろう」
「そうねぇ。とりあえず中に入りましょう。一応声はかけたんだし、中に入っても問題は無いわよ」
「問題あると思うな...はぁ」
そう言いつつも、リオの足は建物の中へと進んでいく。
しかし、リオの足は数歩進んでから動かなくなった。恐怖で足が竦んだ訳ではなく、アリスの声で動かなくなった訳でもなく、無意識でリオは足を止めてしまった
なぜなら
「....すごい」
下から上まで、見上げる程の大きな本棚が視界の両脇を占めていたからだ。
正面には広場らしきものがある。だが、今のリオの脳内にはそんなことよりも、世界中の本をかき集めたかのような、本棚にぎっしりと詰まっている本のことだけだった。
「...」ボー
「リオ、本を読みたい気持ちはわかるけど、今は抑えてなさい。人がいるか調べないと」
「そっ、そうだね!それじゃあこのまま真っ直ぐ進もう!広場みたいな感じするし!」
「どんな感じよ...」
フラフラと本に足を向けそうになるリオだったが、アリスが声をかけたことによって正気を取り戻した。あのままでは本に溶け込んでしまうと、アリスは危惧したのだろう。
正気になったリオは人を探すために、まずは広場らしきところへと足を進めた。
「ふむ、どうやらこの図書館(仮)の中央辺りは本当に広場のようね。床がガラス張りの巨大床時計とは驚いたけど...」
「誰かいませんか〜!!」
「(この子絶対に早く本が読みたくて人探ししてるわね...)」
先程とは打って変わって、大声で人がいるかを確かめるリオに、アリスは内心、呆れ顔で思っていた。
「ふふ、そんなに声をだいにしなくても聴こえていますよ」
「「!!」」
リオがあげた声とは裏腹に、落ち着いた声が返ってきた。
「だ、だれ!?」
「あっ、アリスダメだって!」
「...むぐ!」
リオは声が聞こえた方に目を向けようとしたが、アリスが大声をあげたために慌ててアリスの口を塞ぐ。因みに先程の謎人物にはしっかりと、リオにしか聞こえないような声です
「別に隠さなくても大丈夫です。あなたたちのことはある程度把握していますので」
「えっ?」
傍から見れば
それもそう、相手は遠回しではあるが自分たちの事情、少なくとも
もちろんリオとアリスは、その事や異世界から来たことは誰にも話していない。
「...あなた、何者なの?っというか姿を見せなさいよ!!」
その人物は先程から声は聞こえてはいるが、姿は全くもって見えていないことに、リオから開放されたアリスが怒鳴った。
「それは申し遅れました...」
アリスの声に謝罪をした後、その人物らしき足音がリオたちの方へと向かっていく。
リオたちは音がする方へ視線を向ける。
そこには膝裏まで伸ばした金色の髪にサファイアのような瞳をした。黒紫のベレー帽をかぶった小柄な女性だった。
「私はジブリール...
ここ、<天望図書館>の司書です」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
リメイク前との大きな変更点
<レプリカ>現れてない代わり、図書館の司書<ジブリール>がスペシャル出演。グリムエコーズとはなんの関係もないよ。容姿とか性格だけ
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Repage4 <天望図書館>の司書
ハピメモ配信おめでとうございます!楽しんでます!小狼とさくらのやり取りがニヤニヤものです!
リメイク後。後書きにて書いてあります。
では本編どぞ!
「どうぞ、紅茶です」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう...」
リオとアリスは謎の人物の導きにより、この<天望図書館>へと訪れていた。いまはそこで出会った一人の少女と話をするために、場所を変えたところであった。
「...わぁ、美味しいです!」
「それは良かった。クッキーも焼いたので是非食べてください」
「ありがとうございます!やった!」
「ふふっ」
目を輝かせながら感謝を告げるリオに、少女は微笑みを浮かべる。
「それで色々と教えてもらいたいのだけど、まずあなたは何者?私がぬいぐるみじゃないことを最初からわかっていたようだし...」
笑顔でクッキーを食べて紅茶を飲むリオに、一瞬ここへ来た目的を忘れそうになったアリスは慌てて少女へと問い出す。
「先程も言ったように私はジブリール。ここ<天望図書館>の司書を任されている者です」
「あ、そういえば自己紹介がまだでした。
僕は天野リオと言います」
「あなたが司書なのはわかったわ。それ以外─「アリス。自己紹介は?」
...アリス・リデルよ」
「なんというか、すみません...でも、本当にそれ以上でもそれ以下でもないので」
名前を名乗らないアリスはリオに咎められ、渋々と自分の名前を言った。そんな彼女に対して、ジブリールは申し訳なさそうな顔をしたながら返した。
「...はぁ。それじゃあ別の事を訊くわ。実は、ここに来たのはフードを深く被ったロングコートのいかにも怪しい不審者に案内されたからなんだけど。」
「その方はいまどこに?」
「ここについた途端に姿をくらましたわよ」
「...なるほど、そうでしたか」
「なにか心当たりある?というかリオ、一旦食べたり飲んだりするのやめなさい!さっきまでの礼儀正しさはどこいったのよ!?」
「んぐ!ほ、ほへんなはい!」
ジブリールに色々と訊いている間、黙々と食べたり飲んだりしていたリオに、アリスは注意をした。
そんなやり取りを微笑みながら見ていたジブリールは、先程から打って変わらない表情のまま口を開いた
「そうですね。その不審者があなたたちをここへ案内した真意はわかりませんが、少しぐらいなら予想はつきます」
「え、どういうこと?」
「ここへ案内されたおふたりにまず知って欲しい事なのですが。
ここは、どこにでもあるような図書館です。しかしそれとは別に....
<全ての物語を管理する場所>でもあります」
「....管理?」
「私も全てを話せる権利があるわけではないのですが...そうですね。ざっと言うなら、おふたりが元いた<
そして、アリスさんをぬいぐるみではないとわかったのはそれが関係している。としか」
「いま極自然に凄いこと言わなかった?」
「どうして私たちがこことは違う世界から来たのを知ってるのか。怪しいことこの上ないけど、置いておくとするわ。
それでその物語を管理する場所が、不審者が私たちを案内した理由とどう関係するの?」
アリスは、ジブリールが何かを隠していると思っているようだが、出会って数時間の関係でズケズケと探るのは失礼なので大人しく引き下がった。その後も質問をやめない辺り、彼女の好奇心旺盛さが見えてくる。
いや、元の世界発言は誰でも追求したくなる
「物語を管理するにはそれを為せる力が必要なんです。ですが現在、この図書館の物語を管理する力が減少しているのです。私もなにかと解決策を模索しているのですが、一向に進まず...」
「...それで?」
「そこで、普通の人なら見つけることすらできない図書館にあなたたちが来ました」
「さっきも言ったわよね?案内されて来ただけって」
「ですが、図書館に入れるという時点で只者ではありません。本当はおふたりを案内した方にも来て欲しかったところでしたが」
「どこかへ行っちゃいましたからね」
「はい。ですが、その方がここへ案内したというのなら、図書館の関係者という確率が高いでしょう。つまり、その方がおふたりを連れてきたということは、この問題はおふたりがいれば解決できると、私は予想しました」
「極論すぎるし、協力するなんて言ってないのだけど?」
「私も極論なことには同意しますが、協力して欲しいとは言ってませんよ。
...とはいえ、協力して欲しいのは事実です。
ですのでリオさん。身勝手ながら、この図書館の為に協力してくださいませんか?」
「えっと...因みに、放っておくとどうなりますか?」
「放置をしておくと管理する力も減少し、いずれ物語を管理する力がなくなる。つまりは物語の世界が衰退していくということです」
「....」
怒涛の急展開に頭の中が混乱するリオは、一度深呼吸をして、自分を落ち着かせる
(えっと、整理しよう。
1.フードの人に図書館へ案内された
2.ジブリールさんと出会った
3.紅茶とクッキー美味しい
4.僕たちがいた世界は管理されていた
5.その管理していた力が弱まっている
6.最終的にあの世界は衰退して滅びる
よし、整理ついた!意味わかんない!)
リオは、思考を放棄した!
「はぁ....ジブリール?その<物語の世界>というのは本当に私たちがいた世界なの?生憎、あそこ滅びたと思うのだけど?」
アリスは元いた世界があの時、空が割れ全ての住民が何者なのかを見失い消えていき、世界そのものが崩壊していったのを覚えていた
だからこそ、滅びた世界を管理する必要があるのかと遠回しに言う。
「はい、アリスさんの言う通り滅びました。この
ジブリールはアリスの問いに対し、懐からあるものを取りだしてテーブルに置いた。
「こ、これが僕たちがいた世界....本?」
「その通りです。おふたりがいた世界は私たちからすれば一冊の本なのです」
ジブリールの言葉に頭痛が激しくなるリオだったが、アリスはある事に気付いた
「世界が本...じゃあ、この図書館にある本の全てがひとつひとつの世界ということ!?」
「そういうことになります。つまり、ここには幾万以上の世界が存在し、幾億以上の生命があります。そして、管理しています。」
ここの管理する機能がなくなれば、それらはテーブルにある
2人はそう言われている気がした。
「...僕たちがいれば解決できるんですか?」
「っリオ!!ダ─ムグッ」
リオは自分に対して抗議するアリスを、申し訳なく思いながら口を塞ぐ。
アリスは自分を想っての言動とリオはわかっているが、だからといって放っておく訳にはいかなかった。
しかしそれとは逆に、アリスが何故か本気で止めてこないような感じに、リオは少し疑問を感じていた。
「おそらくは。ですが無理に協力しなくとも大丈夫です。いまおふたりがいる世界は管理外ですし、管理しなくとも衰退する心配はありません。それに、協力してもらえれば確かに解決できる確率は上がりますが、その分非常に危険です」
「でも、ジブリールさんだけじゃ解決できないんでしょ!」
「それは今の段階では、です。まぁあるとしても確率は極めて低いですが...なにせ、私はここから出られないので」
「出られない...?」
「私はここの司書ですので、少しは本を管理できます。ですから今の状況で少しでも管理を衰えると不味い事態になりかねませんから出るに出られないのです。」
「だったら尚更だよ!」
危険と言われていても自分の意志を曲げないリオ。そんな少年をみてジブリールは内心、申し訳なく思いながら口を開く。
「....ありがとうございますリオさん。ですが本当に危険ですから。なにせ、その解決するための方法が─」
ジブリールがリオに最後の忠告として言いかけたが、それは何かを察知したことにより叶わなかった
『
司書さん、司書さん
どうしてあなたは微笑むの?
司書さん、司書さん
どうしてあなたは穏やかなの?
司書さん、司書さん
どうして 嘘をつくの?
「っ離れて!」
「「!!?」」
ドーーーン!!!
突如、リオたちが座っていた空間が爆発した
椅子やテーブルは粉々になったが、ジブリールが爆発する前に声をかけたことで、リオとアリスは巻き込まれる前に回避することができた。
「な、なに!?いまの....!」
「<
「ちょっとジブリール!説明!」
予期せぬ爆発に、アリスはなにか知っていそうに呟いたジブリールに説明を頼み込む
「そうでした、すみません。
先程の爆発はおそらく、図書館の管理を補佐する力を持つ本<
「そんなのがあるって聞いてないわよ!?」
「私も言ってませんでしたから当然です」
「先に言っときなさいよ!」
「言おうとしたのですが、先程の爆発に邪魔されたんですよ」
「言い争いはやめて2人とも!?」
突然の襲撃に混乱しているのか、アリスは落ち着きがなく、リオの方もアリスと比べればマシだが、それでもドングリの背比べ程度という差である。
「私はそのつもりなかったのですが...
とにかく、管理する力が減少している原因はその本の消失なんです。そしてその本の回収こそが、解決方法であるのです。最悪なことに暴走して<無名>となっていますが....」
「無名...さっきも言ってたよね?」
「いったいなんなの?その無名っていうの」
先程ジブリールが呟いた単語について問い出す2人。ジブリールは今の状況を考えて、手短に説明をした。
「簡単に言うと、図書館を補佐する<欠片>が暴走した時の総称です。
それよりも気をつけてください!いま言った本はここにある本の中でも特殊も特殊な部類です!」
「気をつけてと言われても、その当の本人?見当たらないのですけど!」
「いえ、あっちの方にいます!」
ジブリールが指した方向には本棚があるだけだったが、その裏から影がでてきた
『嘘つきはお仕置きの刑なんだから』
「出てきても、さっきの怪しい不審者みたいな感じの真っ黒さね!!?というか、なんで本が人の形してるのよ!!」
しかし、本棚の裏から出てきてもその者の影が晴れることはなく。そこにいるのか、いないのかさえ曖昧になってしまいそうな程の何かが、そこにいた。
てか、アリスのせいでいろいろ台無しである
最後まで読んで頂きありがとうございます!
リメイク後
わーお、リメイクの内容は一旦メモで下書きをしているのですが、なんか字の大きさがあってないせいで可笑しくなってますね。
そして、ここまで出てこない原作キャラ...あ、あと2話ぐらいお待ちくだされ!
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Repage5 無名
ハピメモはあんなにも星三がでるのに!
なんかグリムシリーズのガチャは、本当に欲しい推しキャラって出てくれないんですよね....自分。他のゲームのガチャでは推しキャラ来てくれるのに....
リメイク後はまた後書きにて
それでは本編まいりましょ!
『いい子の力、見せてあげる!』
「おふたりとも!私から離れてください!」
リオたちが訪れた図書館に突如として現れた謎の影。その影、図書館の司書ジブリールが言うには<無名>となってしまった図書館の管理を補佐する本<欠片>だと言う。
リオたちに自分から離れるよう呼びかけたジブリールは、そのまま図書館を走り回る
ドーーーン!!!
「ジブリールさん!」
「私は平気ですので、おふたりは<無名>を回収してください!私じゃ無理ですので」
「回収方法を知ってるわけないでしょ!?<無名>とか<欠片>とかさっき聞いたばかりなのにどうやれと!!」
「それは簡単です。回収方法はこの本に書いてありますから、読んで実行してください!私は逃げることに専念しますので....せい!」
「って、おっと!」
「逃げながら喋ったり本を投げたりと、随分余裕に見えるわね」
ジブリールが投げた本を少しバランスを崩しながらも受け取ったリオ。その一連の流れを見ていたアリスは、逃げながらも他のことをやれるジブリールに唖然としていた。
「えっと...あ、これかも!」
リオはアリスの言葉を適当に流して、ジブリールから渡された本を開き、回収方法が書かれている頁を探し当てた。
*******
<KR>NKSNTIT
<KR>GNNKNHSNARTR、<MN>NNTTBAH、SNYUNKRKT
─HWUISTY WNKNHNYRT
─<○○○○○>
─KKN NNUMWKSSS
○○○○○H<KR>NYWNNGHR。
※ NMWMTETRSRT、SNKGKSKNTTRHKGNNTTRSRKRTI
*******
本に書いてあった回収方法を読み終えたリオだったが、ひとつだけ疑問に残る部分ができていた。
「役割の名前...今ジブリールさんを襲ってる子の名前っていうことかな?」
「リオ、わかった?」
「わかったんだけど...いまボンボンと爆発をおこしてる子の名前がわからないと回収ができないみたいで...」
「ふむ、それじゃあジブリールに訊いてみましょう?ここの司書なんだし、本のことなら把握してるでしょ。
ジブリール!その影の名前わかる!?」
「ジブリールさんがピンチな状況だというのにも関わらず訊くの!?」
本人は逃げてる最中だというのに、そんなことはお構いなしなアリス。しかしそんな彼女に問われたジブリールはというと....
『...悪い子は、おしおきっ!』
ドーーン!!
「ふっ......この<無名>は<赤ずきん>です!」
「え?」
とても余裕そうに答えていた。もう半分遊びで逃げてるのでは?と思うくらいに...
しかし、今のリオにはそんなことはどうでもよかった。普通は余裕そうなジブリールに一言ツッコミを入れるのだが、それよりも不思議な事が起きたのだ。
「了解よ!リオ、<赤ずきん>らしいわ!」
「アリス。なんて言ったの?」
「なんてって、だから<赤ずきん>!<無名>の名前よ!」
「...っ聞こえない」
リオに起こった不思議なこと。それは<無名>の名前が耳に入ってこないということ。
遠くに離れているジブリールが言った言葉なら聞き逃すこともありえるだろうが、リオの肩に避難しているアリスの声も届かないのは不自然過ぎるといえた。
リオの何かがおかしいと感じたアリスは、どこからともなくカンペを取りだし、文字を書き出した
「リオ!これ読んでみて!!」
「え?うん....
あの<無名>の名前は...
ごめん。そこから読めない」
「...わかったわ。
Hey!Jibril!!!」
「Hey ○iri のようなニュアンスで呼ぶのはやめてください。私を
「それはともかく、リオが<無名>の名前聞き取れないし筆談でしても読み取れないらしいのだけど!!」
アリスがいれば、緊張感ある雰囲気は淡々と壊されるようで...
「ですよね....簡単に言うなれば、<無名>となった<欠片>の名前を当てるのは自分で考えろということです。
因みにわかった人が分からない人にヒントを言う言動は禁止です。それ以前に、そんな発想は<無名>によって出てきません」
「回収させる気あるの!?」
「ですが、<無名>の言動にヒントが隠されているのでよく観察してください。無意識の内に自分の役割である言動をしていますので。あと年齢は声で考えるとヒントになります
最後に、そろそろ限界ですので早めにお願いしたいのですが...」
かれこれ十数分ぐらい経つが、その間ジブリールはずっと避けたり走っていたりしているので、限界が近いのも当たり前だと思えるのだが─
『それはうそ。あなたは全然疲れてなんていない、嘘をつく悪い子はやっつけちゃう!』
「<無名>に見破られてんじゃないの!!」
「....あの子の言動。声は僕と同い年ぐらいの女の子。嘘つきに反応。最初のあの言葉
わかった!!」
ジブリールの助言─なぜ言えるのかは後ほど─のもと、<無名>の正体を見破ったリオは、<無名>に向かって手を伸ばし、語り始める。
それと同時に、リオが伸ばした手の先からひとつの魔法陣が浮び上がった。
「
『...っ!』
語り終えると、リオと<無名>を中心に、強く温かい光に包まれた
やがて光が収まると、そこには手を伸ばしたままのリオと、それを見守っていたアリスとジブリールの2人。
そして、曖昧だった<無名>の存在がハッキリと映し出されていた。
ハッキリと映し出された<無名>は、
幼い顔つきに金色の髪、薄赤色の花飾り。ぶどう酒ひとつと花が満杯に入ったバスケットを腕にかけ、赤い頭巾をかぶっている少女
「ほわぁ、本当にあの<赤ずきん>の物語に出てくる赤ずきん?」
<無名>から<欠片>へと戻った<赤ずきん>にリオが目を輝かせながら質問をする。
『うん、そうだよ。私は赤ずきん
....ありがとう、語り子くん。私の役割を見つけてくれて。
それとジブリールちゃん、撃ったりしてごめんなさい!』
「お気になさらずに、<欠片>から<無名>になれば、理性がなくなるも同然ですから」
『うん。ありがとう...!』
<欠片の赤ずきん>は少しの会話をしたあと、最後にリオの方を向き、微笑んでから
光の粉となって天へと昇った
「お疲れ様でした。いま赤ずきんさんが粉となりましたが、それは図書館の役割に戻った証拠ですのでご心配なく」
「お、終わったの?」
「はい」
ジブリールにそう告げられると、リオは安堵のため息をついた。
「なんか、ゾッと疲れたわね」
「もう、アリス。一番働いたのはジブリールさんでしょ?ジブリールさんの時間稼ぎや、ヒントがなかったどうなっていたことか...」
「そう言って頂けてなによりです。ですが、今回は<赤ずきん>でしたので、嘘をつかなければ襲っては来ませんよ。」
「あ、そうなんだ」
「今回はおそらく、私の幸せという建前と、辛いという本音があったことで起きたものだったのでしょうね....」
自嘲気味に笑いながら、そう呟くジブリール
そんな彼女の言葉はこの場の人間に届くことはなかった。
一波乱去って落ち着くリオ、しかしアリスは疑問に思っていることをジブリールに訊いた
「....それで、ジブリール。あなたはどうしてリオに助言なんてできたの?その言動は禁じられていて発想も持たないって、さっきあなた自身が言ってたじゃない」
「あ、それでしたら簡単なことです
私は図書館の司書なので例外なんです」
「....そう。この図書館の司書っていう肩書きどんだけ万能なのよ」
「今日初めて使ったはずですが....」
茶番はさておき
「まぁ、図らずも<無名>と遭遇し<欠片>を回収した訳ですが...リオさん。最後にもう一度尋ねます。
<無名>となった<欠片>を回収するのは危険です。今回の<赤ずきん>は安全の部類に入りますがそれは少数、なかには危険の範疇を超える<欠片>もいます。
それでも手伝うと言いますか?」
ジブリールによる最終警告。普通なら先程の爆発などでトラウマになってもおかしくない程の状況、しかしそれ以上のものがあると言われると、なにが危険かなどをよく分かっていない子どもでも自ずと引き下がる。
「もちろん手伝うよ。怖いけど、ここの本が消えるのはそれ以上に嫌だから....!」
しかし、物語をなによりも愛する子どもは、恐怖から逃げ出さなかった。
自身の運命よりも、物語を選んだ。
「....わかりました。物語を救うことを選んでいただき、本当にありがとうございます!」
この瞬間 物語を愛する子どもの、失った物語を取り戻す日々が始まりを告げた。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
リメイク後
はい、ようやく一段落終わりました!もう抜けてる場所大ありだわ!例えばジブリールは<欠片>を回収できないの?とか、<赤ずきん>の正体見破るのあっさり過ぎるとか!ね!(しつこい)
因みに、リメイク前の<頁>の力を使うと同様に、リメイク後も<欠片>の力を使えるようにしています。
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Repage6 一難去ってまた一難
でもここでひとつ。
創造主ガチャに専念しててもう石(ガチャできる物質)がねぇよ
リメイク後:アァ、久々の5000字越えでチカレタ
というか、6話にもなってまだ2話ってどうなんだよ。我ながら思う
では本編どぞ。
「それじゃあ、ジブリールさん!僕たちは夕飯の準備があるからそろそろ帰るよ!」
「はい、また何時でも遊びにいらしてください」
「うん、またね!」
「....はぁ、私も聞きたいこと色々あるし、また来るわね。リオ同伴で...」
「ふふ、お待ちしております」
図書館の機能を補助する<欠片>を回収したリオ。その後ジブリールからこれからの事で必要なことをいろいろと教わっていたが、時間が遅くなり始めていたので帰ることにした。
図書館の出入口でジブリールと別れを告げたあと、リオとアリスは家へと帰っていく
「今日はいろいろあったわね...」
「うん。思い出すだけでなんか体が熱くなっちゃったよ」
「仕方ないわよ。あんなことがあったあとだもの。でも私は、体が火照り始めたのは不審者を見つけたときからよ」
「あはは、確かにそうかもね....」
今日の出来事を振り返って話すリオは、熱そうに手を顔に向かって仰いでいた。
「....怒ってないの?」
「え?」
しかし、リオは先程の疲れきった表情とはうってかわり、不安げな顔でアリスへと問いかけた。
「だって、アリスに相談せずに決めちゃったからさ。アリスは僕を想って反対してたけど、僕はそれを無視しちゃったよね」
「そうね。その事については怒ってない...といえば嘘になるわね。ジブリールの言うことが本当なら最悪の場合もあるというのに、あなたは手伝うと言ってしまった。正直に言って、本好きにもお人好しにも限度があるってものよ」
「ご、ごめんなさい...」
「でも、それをわかっていてなお、引き止めなかった私もどうかしているわよね。あなたが手伝うと言ったとき、心の奥底では喜んでいたのよ。
不思議なことに出会える!って...
ごめんなさい。こんなのじゃ姉失格だわ」
リオの肩に乗っていたアリスは、表情を曇らせて俯いた。そんな彼女をリオは肩から抱き上げて自身の顔の前に持っていき口を開く
「じゃあ、姉と相談せずに決めた僕。自己中心的で止めなかった姉。どっちも悪い事をして、お互いに謝った。これからは気を付けるようにしよう!これで終わり!ってことじゃダメかな?」
最後辺りは不安げな感じになっていたリオを見て、アリスは暫くリオをじっと見つめたあと、困ったように微笑んだ
「ふふ、そうね。これ以上長引かせるのもどうかと思うし、そうしましょう!ありがとうね、リオ!」
「うん!...それじゃ、帰ろっか!」
「えぇ、図書館によったおかげでいつもより遅めになってしまっまけど、リンは今日泊まりで帰ってこないらしいし、遅くても問題ないわね」
「それでも早く帰っとかないと...今日の夕飯の準備全然してないから、食べるの遅くなるよ?」
「それはいけないわね。時間通りじゃないと生活リズムが狂ってしまうし、そうなると健康にも悪影響がでるものね」
「1日だけで崩れないと思うけど」
「そういう緩さが不健康の元になるのよ!」
「は、はい!...」
作者としても耳の痛い話をしているふたりはそのまま真っ直ぐ、家に帰っていった
*******
山の奥にある図書館から、時間をかけて漸く自宅前へと帰ってきたリオとアリス。山から降りて来た時には既に太陽は沈んでいて、下手をすれば不審者か何かに襲われていそうな時間だが、この町はそういう類の事件は発生しない。治安的な意味でも、世界観的な意味でも起こりえない
そういうわけで、なんのトラブルもなく無事に無傷で帰ってこれたのだった
「よし、家に到着!」
「はぁ、ここまで帰るのに長かったような気がするわね」
「そう?あっという間だったけど...というかアリスはずっと僕に乗ってたから疲れたようなため息つくのはやめて欲しいね!」
「ただ乗ってるだけでも疲れるのよ!それにリオが歩いてる時の振動とかも疲労の蓄積になるの!!」
「わかったよわかった。とりあえず早く家に入って夕飯の準備をするよー!すっかり暗くなっちゃったからね。簡単なものでいい?」
「えぇ、もうお腹ペコペコだし食べれるものなら...」
ふたりは、疲労と空腹を感じながらも温かい自宅の中へと入っていく─
「リオくん?」
「えっ!な、なんでここにリオくんが!?」
「....え?トモヨ、サクラ...!?」
─はずだったが、自分の名前を呼ぶ少女ふたりの声が聞こえ戸惑いを隠しきれず(隠す意味はないが)足を止めてしまう
そして、リオが声が聞こえた方へ振り返ったさきには自分のクラスメイトであり、大切な友人の知世とさくらが、リオの目の前にいたのだった
「ふ、ふたりともどうしてここに!?」
「リオくんこそ!ど、どうして...!」
「どうしてって、そもそもここ僕の家前だしいるのは当然としか...」
慌てふためくリオとさくら。そもそもの話、どうしてさくらと知世はリオの後ろ、さらにいえば通った道にいるのだろうか。リオが家に入ろうとした時に丁度ここに到着したかと考える。しかしそれなら何故ふたりはリオが自分の家の前にいることを驚くのだろう。特に知世は描写こそしていないが、リオの家を実際に訪ねたりして知っているはずである
そしてその知世はというと、驚きながらも不思議そうな顔をしてリオに訊ねた
「リオくん、今日中に不思議な事や不可解なこと、少しでも変わったことはありませんでしたか?」
「えっ?な、ない....けど?」
「そうですか...では、リオくんの家はいつ─
─学校になったんでしょうか?」
「......え?」
リオは、知世の言っていることが暫く理解できなかった。それもそのはず、誰だって自分の家に帰ったはずなのに、友人から家が学校なの?と言われたら混乱する。学校が家なのは夢あり希望なしのサバイバルもので十分だ
しかし、そんな冗談と思っても仕方ない発言をしたのは知世であり、彼女はそんな冗談などは言わない方なので、リオは更に混乱した。だがそんな状態では何も変わらないので、リオは恐る恐る自分の家があるはずの後方へと振り返る
「っうえぇ、学校じゃん....!」
そこには、帰ってきたという安心と温かさに包んでくれる我が家はなく...人の気配が一切ない不気味な雰囲気を醸し出す学校があった
*******
リオside
*******
あぁ、最近いろいろ不思議なことが起きるなぁとは思ってたけど、今日は特に多いね。
学校に行くと机や椅子の山ができてたり、それを元に戻したあとの下校中で不思議な人にあったり、その人に図書館に案内されてジブリールさんと出会って、お菓子美味しい。その後は<無名>となった<赤ずきん>と遭遇
そして家に帰ったと思ったら夜の学校だった
「はぁ...」
「え、えっとリオくん?」
「もうこの際どうしてここに?とかは訊かないけどさ。サクラはどうしてそんな格好をしてるの?」
「え!?あ、あはは...」
いろいろ考えるだけナンセンスだと理解した僕は、サクラの服装について質問した。
今のサクラは、なんといえばいいのかわからないけど、とりあえずコスプレ?みたいな格好をしているから、どうしてそんな格好を?と思わずにはいられなかったんだよね
⚠︎注意⚠︎
作者はファッションについて無頓着です。この服の名前とか知識がゼロに等しいです。なのでそういう描写はありません
「今日はここでさくらちゃんの撮影会をしようと思いましたの!」
「あっ、そう!そうなの!この衣装とか知世ちゃん手作りでね!」
「あぁ、トモヨのいつものやつだね」
「お褒めに預かり光栄ですわ♪」
トモヨ。さっきのは貶してはないけど、褒めてもないよ?言わないでおくけどさ
まぁ、それはさておき...いま何時だろ?確か図書館をでた時は夕方頃で、ここまでの体感だと午後の6時か、遅くても7時ぐらいだと思うけど...
そう思った僕は学校にある時計台をみると、時計の針はもう
...えぇ?
それを知ってまた混乱しそうになったが、もう今はそのことを
「僕も行ってもいい?」
「えっ、どうして...!?」
「だって、こんな時間に2人だけでなんて、危ないよ?まぁ僕も子どもだから人のこと言えないけど、一応は男だしさ」
普通はこんな時間に小学生の僕たちが出歩いているのは少し危険で問題。それはトモヨもサクラもわかっているはず、なのに撮影のためだからってこんな夜に、しかもトモヨの護衛の人もいないなんておかしい。
素直に訊けばいいんだけど、なんかはぐらかされそう
僕がそう考えている間、トモヨとサクラは少し僕から離れてコソコソと相談をしていた。
「(ど、どうする知世ちゃん?リオくんを巻き込むのは悪い気が....)」
「(いえ、今のリオくんは確実に私たちを怪しんでます。ここで帰らせても、また訊いてくる可能性が高いですわ)」
「(で、でも...〜ぅ、ケロちゃんはどう思う?!)」
「(ワイか?...まぁ、ワイはそのリオっちゅう奴がどんな奴か知らんけど、見る限り悪いやつやないんやろ?)」
「(はい、とても優しい人です)」
「(ほな話した方がええんちゃうか?それに、協力してもろうた方が今後のクロウカード封印も捗りそうやし...)」
「(ど、どういうこと?)」
「(あいつから微かやけど魔力を感じる)」
「(え!そうなの!?)」
「(おう、まだ詳しくはわからんけどな)」
「あの〜、結構かかりそう?」
「いえ!もう少しで終わりますわ」
「そっか」
声を少し大きめにして質問する僕に、トモヨが振り返って返事をしたあと、また話し合いに戻った
ついて行ってもいいかと訊いただけなのに、随分と話し込んでいることに尚更怪しむ僕だったけど、それとは別のあることに気付いた
ゴゴゴゴ...
「...なんの音?」
トモヨとサクラが僕から離れて相談をしている間、なにか重たいものが動いたような音が鳴った。その音がなったであろう場所の方を向くと、そこには校門に入ったすぐにある石像があった
「(リオ?)」
「...なんか、嫌な予感が」
僕は石像から変な違和感を覚えたあと、それはすぐに起こった
ゴカン!!
なんと、石像が宙に浮き始めたのだ。これは流石にこの世界では予想外...だったんだけど、つい先程その予想外な出来事に遭遇したばかりだから、思ったよりも混乱していない
石像はそのまま宙に浮いたまま、こっちへ突進するかのような勢いで迫ってきていた
「あぁ、機械でもない無機物が動くのを見たのっていつぶりだろ?」
「(そんなのいいから早く逃げなさい!)」
「リオくん逃げて!」
「でもこの石像ずっと追ってきそうでヤバいんなんだけど!」
「では、一度校舎の方へ入りましょう!!」
迫ってくる石像から逃げるため、僕たちはトモヨの提案により校舎へと避難した
*******
三人称side
*******
「よ、よし!さっきの石像は追ってこないみたいだね」
「そうだね...」
石像から逃れるために校舎の中へと入ったリオたち。突然のことで困惑するなか、リオは先程の現象からこれからどうするかをアリスと少し相談をすることにした。因みに、幸いにも他のふたりからは少しは離れているので安心には安心である
「(アリス、さっきのやつってさ)」
「(そうね。リオが予想している通り、<無名>の可能性が高いけど...)」
「(石像が勝手に動くっていう情報だけで見破るのは無理があるんだけど!)」
「(そうよね...)」
「(もう一度行くにしてもなぁ...)」
このとおり、先程のが<無名>という可能性は多いにあるが、リオはその正体が一向にわかっていなかった。
リオが情報集めのため行動に移ろうか迷っている間、さくらたちもリオたちに気付かれないようになにかを話し合っていた
「(ね、ねぇさっき石像が浮いてたよ!?もしかして、オ、オバケなんじゃ...!)」
「(いやちゃう、あれはオバケやのうて<影>のカードや。石像が浮いとるように見えとったけど、あれは影で持ち上げてるだけでオバケやない)」
「(あ、オバケじゃないんだ...そっか)」
「(ですがどうしましょうか。クロウカードだとわかっても、リオくんも傍にいますし─)」
「(ケロちゃんはさっきリオくんからなにか感じるんだったよね)」
「(あぁ、魔力がある者やし協力させてもええと思うけど...)」
お互いにお互いを巻き込まないように考えていたが、ここでひとつ気になる点がでてくる。先程、リオ組とさくら組は少し離れていると描写したが、それは小声では聞こえない程度の距離で、視界には入る距離だ。だがその点も、両者共に目前のことに夢中で相手に意識を傾けていないので気付かない─
「(ねぇアリス。もう一度行ってみた方がいいかな?)」
「(でもあの二人にはなんて言うのよ!どちらも人が良すぎる程の人格で、特にあの子なんかは...!っあ─)」
「(どうしたのアリス?...あっ)」
ただ、それはそこに観察眼などが優れている社長令嬢こと知世がいなければの話
知世はさくらたちと相談をしながらも、しっかりとリオを視界に入れていた。つまり、リオがアリスと話している、またはぬいぐるみが動いていることを見るのは必然であった
「リオくん。誰とお話を?」
「「終わった」」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
ここでお知らせです。カードキャプターさくら不思議な魔法使いの序章を1部再編しました。あまりにもあれだったので....(再編した後でもあれな感じだけどね)
リメイク後:↑のやつ煩わしいなぁ、記念に置いておこうと思ってたけどさ、あまりにもアレだったら消します
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Repage7 肌寒い夜の学校
カーリーにロキよ、マジで欲しかったです。特にカーリー....そして今度はあのカップルか....パスしようか迷ってる。内心は超欲しいけど石が....!
リメイク後
いやぁ、最後にリメイクしたの何時だろ?こんな作品を待ってる人はいるのかな?でも一人くらいはいると信じて、頑張ります。自分のペースになってしまいますけど
では本編どぞ!
前回のあらすじ
家に帰るも何故か帰った先は夜の学校。そこにはさくらと知世の姿があり、なんやかんやで同行して石像に追われて校内へ避難。そして知世にアリスのことがバレる
*******
リオside
*******
「リオくん、誰とお話を?見間違いでないのでしたら、先程そのアリス人形が動いていたような....」
トモヨにアリスが動いてるところを見られて、それを指摘されて、どう説明すればいいか分からずに焦って目をあちこちと彷徨わせてると
「....っあれ?」
「どうかしましたか?」
僕はふと、トモヨの奥にいるサクラに...厳密にはサクラのまえに置いてあるぬいぐるみに目を向けた
「もう巻き込むも巻き込まへんのもさくらの判断に任せるわ。わいが決めてええことちゃうしな」
「うん...わかった」
ぬいぐるみが、動いている。
ぬいぐるみが、喋っている。
「トモヨ、この話は後でするね」
「えぇ、わかりましたわ」
トモヨに一言いったあと、僕はサクラの前まで行って口を開いた
「サクラ...誰と喋ってるの?」
「「あっ....」」
短時間でものすごい既視感を感じた
*******
「それじゃあ、あなたたちの目的はその<クロウカード>を災いが起きる前に封印することでいいのね?」
「まぁ、せやな」
あの後、自分たちのことはサクラたちの後で話すということになり、いまは喋るぬいぐるみとかとかについて問い詰めた後だった
そして結果、さくらたちの事情は簡潔に言うと。魔法のカードである<クロウカード>の封印を解いてバラバラにしてしまったサクラは、<クロウカード>の守護者である<封印の獣 ケルベロス>通称ケロちゃんに、カードを封じるように言われたという感じらしい。カードは放っておくと<災い>が起きるから早めの封印が必要なのだとか。因みにトモヨは付き添いだね
で、今回は今朝の事件がクロウカードによるものだったらしく、人のいない夜の学校に来たわけだったという
「そっかそっかぁ....サクラも大変だね」
「あはは、まぁね。うん」
………………………
……………
………
「......で?」
「「え?」」
「お前さんらの事情は?わいらは話したんや。約束では最初にわいらに話した後にお前さんらが話すんやったよな?」
「うっ」
今になって思ったけど、こことは違う世界から来たなんてこと話してもいいのかな?そんな非現実的なことをあっさり信じてもらえるのかな!?あぁ、そもそもなんで後先考えずにやっちゃったんだろう!?せめて考える時間でもあればよかったのに!!
「....えっと」
「(やっぱり考えてなかったわね。私たちの事情が如何に説明しても、普通の人からは理解されるのが難しいかを...まぁ、でもこの子たちは─)」
「危ない!!」
「「「!?」」」
───
僕が吃っていると、視界の端から突然イスがこっちに向かってきた。トモヨが声を上げてくれたおかげで当たらずに済んだけど....
「くそ!もうバレよったか!」
「むしろ遅かったくらいだと思うわ」
「話はあとや!さくら、クロウカードの封印が優先や!....
って、<影>の本体に向かってやらな意味ないねんな....!」
「えっと、それじゃあ本体を探せばいいんだよね?」
「せやねんけど、まずは<影>が集めた影をどうにかせなあかんで?」
「じゃあ、影を消すにはどうすればいいの?」
「影は光にあたれば消えるんやけど、いまは夜やからなぁ」
「....それなら、私に考えがありますわ」
トモヨとサクラとケルベロス─ケロちゃんでいいや─が話し合っている最中、僕は影に投げつけられたであろうイスを見ていた。別に3人の言っていることが頭に入ってこない訳ではないよ?ほんとにほんとに。ただ、ある意味タイミング良く襲ってきたな〜とか、襲ってきたの一回切りだったな〜と思っただけでね
「─それじゃあ、私はケロちゃんと時間を稼いでくるよ!」
「わかりましたわ」
「ほな、そこの2人はトモヨの護衛を...って聞いてるんか?」
「....えっ?」
「ごめんなさい、リオは聞いていなかったみたい。私の方で説明しておくから気にせずに行ってきてちょうだい」
「はぁ、しゃーないな。ほな頼んだで!行くでさくら!」
「う、うん!」
僕がイスに夢中になっている間、話は進んでいたようで、ケロちゃんが一言いった後はサクラと一緒に外へと出ていった
....どゆこと?
「リオ、ブレーカー室に行くわよ」
「?」
「あなた本当に何も聴いてなかったのね」
「簡単に言ってしまえば、先程の影を消すために校内を明るくさせて─」
「まんまと出てきた本体のカードを封印するということよ。リオは機械に疎くてブレーカー室に行っても意味無いけど、その代わりに機械にはそれなりに強いトモヨの護衛をするってわけね」
「な、なるほど....」
本当にいろいろ話が進んでいたんだね
「それじゃあ、サクラたちも時間を稼いでる頃だしさっさと行くわよ」
「うん」
「はい」
アリスに促され、僕たちはブレーカー室に向かって行ったのだった
影とかが襲ってきませんように...これはフラグではなく祈りです
………………………
……………
………
ガラララ...
「ついたね」
「そうですわね。何故か普段よりも早くついた気がします」
「本当に何もなかったわね」
移動し始めて数分もしない内に、僕たちはブレーカー室へとたどり着いていた
……
襲ってきませんようにと祈りはしたけど、まさか本当に何事もなくたどり着くとはね。影のひとつも見なかったよ
影の全部がサクラのところに行ったのかな?それはそれでサクラが心配だけど....
「...とりあえず早く明かりをつけましょうか」
「そうだね。それじゃあトモヨ、よろしくね」
「はい、お任せ下さいな」
トモヨがブレーカー室の奧へ向かったのを確認した後、特にやることがない僕たちは外の警戒をすることにした
それにしても、お腹空いたなぁ...図書館からここまで何も食べてないんだよね。ここに来たのが10時過ぎで家を出たのが8時ぐらいだから、14時間以上家を空けてるんだよね
...ん?
そういえば、家に帰ってきたと思ったら学校だったのはなんでだろ?
幻覚?でもそこまで疲れてなかったし病気でもないはず、それにアリスも家に帰ってきたと思っていたから違うと思う....もしかして─
「きゃっ!」
「!どうしたのトモヨ!?」
「なにかあったの!」
僕が幻覚?に関してひとつの可能性にたどり着く直前、トモヨが小さい悲鳴をあげた。僕はさっきまでの考えは頭の隅に置いて、ブレーカーの前で右手....厳密には指?を左手で覆っているトモヨに駆け寄った
「トモヨ大丈夫?指怪我したの?」
「ありがとうございます。少し火傷をしただけですから」
「火傷?ブレーカーが熱かったのかしら?」
「とりあえず冷やした方がいいよ!アリス!冷やすもの!」
「ハイハイこれね」
「(救急箱ならまだわかりますが、冷やすものまであるのは用意が良すぎますわね。リオくん、よく怪我をしているのでしょうか?)」
僕はアリスと話すなかで、トモヨがそんなことを思っているとも知らずに、僕はトモヨの指を治療していったのであった
「よし、コレで大丈夫だと思うけど....家に帰ったら一応診てもらってね?小さい火傷だけど放っておくと悪化しちゃいそうだし」
「はい、ありがとうございます」
「それでトモヨ、ブレーカーはどうだったのかしら?」
「それが、不思議なことが起こりまして…」
「「不思議なこと?」」
治療を終えた後、アリスはトモヨに火傷を負わせたであろうブレーカーのことを訊くと、トモヨは本当に不思議そうに応えた
「ブレーカーを触ろうとしたら、すり抜けたんです」
「え?」
「すり抜けた....か。リオ、確認してくれる?さっきのトモヨみたいな事があるかもだから慎重にね」
「え?うっうん。わかった」
空間が一瞬静寂したけど、さすがは<不思議の国のアリス>の主役、摩訶不思議なことに慣れているからか冷静だね。僕ももう少し冷静さがあればいいんだけどねぇ....不思議の国には何回か行ったことあるから慣れはしてるんだけど、その後って大抵は思考停止か現実逃避だからなぁ
「....じゃあ、いきます!」
僕はブレーカーの前まで歩いたあと、気合を入れてゆっくりとブレーカーに手を近づけて....距離はゼロとなった─
「触った感触がないし、なんか暖かい
....っ!」
─が、手とブレーカーの距離がゼロになってもその感触は伝わらず、ほんのりと暖かい感じだけが返ってきた
そして、さっきトモヨが言ったことを確かめる為に、僕は手をブレーカーの奥に伸ばすと....
手は何も阻まれることなくブレーカーをすり抜けていった
「トモヨの言う通りみたいね」
「はい」
「....どういうことだろ?幻....なのかな」
「とりあえず、ここはブレーカー室じゃないわ。早く本物のブレーカー室に行かないと、サクラたちが心配ね」
「そうですわね。リオくん、ここは後回しにしましょう!」
「う、うん!」
アリスとトモヨの言葉に促され、僕はブレーカーの奥にすり抜けていった手を戻して、偽ブレーカー室を出る為に扉を開けた─
「なっ!嘘でしょ!?」
「これは....!」
「っなんでブレーカー室を出たら
ブレーカー室になってるの!!」
開けたがそこに広がる光景は何故か、またしてもブレーカー室だった
最後まで読んでいただきありがとうございます!
リメイク後
この後、すぐにもう1頁更新しますのでお待ちを
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Repage8 夢幻は1本の灯火から
ノーツの方はもうダメです。石がないもんね(´・ω・`)
リメイク後
あれですね。上の前書きを見ると<あぁ、そんな時期もあったなぁ>って思っちゃいます
はい、では本編どぞ。
「っなんでブレーカー室を出たら
ブレーカー室になってるの!!」
僕たちはブレーカー室の扉を開けた先が、またブレーカー室が待っていたことに驚きを隠せなかった
「不味いわね。このままじゃブレーカー室にたどり着けないわ」
「では、先程手がすり抜けたように、思い切って壁に向かって走り抜けるのはどうでしょうか?」
「それもわかるけど、あなたさっき火傷を負ったじゃない。次は身体全体が燃え上がるかもしれないわよ?」
「そうでした....」
「やっぱりこれ、<クロウカード>か<欠片>の仕業なのかな?」
僕は、トモヨが火傷を負う直前に考えていた可能性のことをふと呟いた。それを聴いたアリスは<確かに>と口に出して話し出す
「そう考えるのが妥当ね....<クロウカード>はよく知らないから保留として。幻を見せたり、火傷を負わせる<欠片>ねぇ....」
「....あの、欠片とは?」
「えっ?えっと....」
僕は、トモヨがその場にいながらも呟いてしまった事に、<欠片>のことを訊かれた事に戸惑ってしまう
色々あったせいで、まだその辺の説明をすると後がどうなるかを考えてなかったから、また僕は口が思うように動けなくなってしまった
でも、秘密を話してくれた相手に何も言わないのは失礼だよね。こっちも事情を話すと約束したのなら尚更だし、話さなかったらそれこそ相手に不快な思いをさせてしまうし、最悪の場合は嫌われるなんてことも....
なら....
「ごめんトモヨ。<欠片>についてはサクラが無事に<クロウカード>を封印できて、その後みんなに話す!だから、それまで待ってて!」
「....ふふっ、わかりましたわ」
「ありがとう」
いつまでもウジウジとしても無駄、無意味、ナンセンス!秘密を話さないで嫌われるより、話して軽蔑される方がまだマシ!イヤだけど!でもやらない後悔よりやる後悔だ!
*******
「ねぇリオ。こんなことをする<欠片>に心当たりある?」
「大体、検討はついたけど....まずは<欠片>の姿を見つけ出さないと回収すら出来ないから、この空間を見破る!」
そう言い切った僕は、ジブリールさんに言われたことを思い出しながら、右手を開いて自分の前に伸ばす
─リオさん。この先<欠片>を回収するには、回収した<欠片>に力を貸してもらわなければなりません
─それはわかるけど、どうしたらいいの?
─とても簡単なことです。力を貸してほしい<欠片>に、先程お渡しした本に<欠片の力>と書かれているところにその方法がありますので
─わかった!
─真剣に想いを伝えれば、相手は応えてくれますので....
「
語り始めると同時に、星のように輝く青白い魔法陣が出現した
そしてその魔法陣から放たれたのは、嘘をつく者は決して許さない怒りの炎。炎は蹂躙するかの如く、リオたちに見せる幻想だけを燃やし尽くした
「廊下に戻った....いえ、この場合はブレーカー室の幻が消えたというべきかしら?」
「うん。幻は実際にはないものがあるように見えること、それは嘘をつかれてるのと同じ。だから<赤ずきん>の力を使ったらいけると思ったんだ」
「流石はリオね!」
「まぁ、あとは<欠片>を回収するだけ─!」
『灯り....消えちゃった』
ブレーカー室の幻を燃やし尽くしたことで、いつも目にする学校の廊下の光景が広がった。その事でアリスと話をしているのも束の間、僕の視線の先には<無名>となった<欠片>がいた
「リオ、<無名>の正体はわかった?」
「もちろんだよ....」
さっきまでの幻はただの幻じゃなく、望み求めるものを見せる幻
最初は僕とアリスは家に早く帰りたかった、そこで学校が家という幻を見せられた
2回目はトモヨたちと合流して避難した先で襲撃にあったとき、あの時はどう話すかを考える時間が欲しかった。だから話し合いを中断するためにイスが飛んできた幻をみんなと見た
そして最後は、ブレーカー室に早くたどり着いて解決したかったから、目的地でないところが目的地に見えてしまった
あとは、図書館からの帰り道に何故か顔が暖かかったこと、トモヨが軽い火傷をしたことは....単に火がそこにあったから
まとめると、<欠片>の火が対象の望むものの幻を見せていた。それに当てはまる物語の人物といえば....
「
語り終えると、<赤ずきん>を回収した時と同じで、僕と<無名>を中心に強く温かい光に包まれた
やがて光が収まって<無名>がいた場所には
暖かく包み込んでくれる炎のような橙色の髪を二つに束ねて三つ編みにした、マッチ箱がいっぱい詰まったバスケットを持っている、僕よりも少し歳上の女の人がいた
『ありがとう...見つけ出してくれて。今後とも、よろしくね』
<欠片 マッチ売りの少女>は優しくも、どこか儚い笑顔を浮かべて一言いったあと、光の粉となって天に昇った
「<欠片>回収、2つめだね」
「そうね。これで家が学校という謎は解けたわね」
「あはは、本当に早く帰りたかったからね」
「はい!カットします♪」
「「......」」
いいものが撮れました!と、カメラを持ちながら間違いなくそう思ってる、満面の笑みで発言したトモヨに、僕だけでなくアリスまでもが唖然とした。
え?撮ってたの?友達が炎を出して、突如として女の人が現れて、そして光の粉となった光景を全部?
それを見て、一切の動揺とかせずに淡々と今まで繰り広げられたやつを撮ってたの!?
トモヨ、恐ろしい子....!
「そ、それじゃあ今度こそブレーカー室に向かうわよ!<欠片>を回収したから邪魔は入らないわ!」
「り、了解!!」
トモヨって、本当に肝が据わってるよね
とりあえず、随分と足止めをされたしサクラたちが心配だから早く行かないと!
時間稼ぎをしてくれているサクラの安否に不安にかられながら、僕たちはブレーカー室へと進む足を早めた
*******
三人称side
*******
「ホンマにもうこちとら焦ったで?さくらからブレーカー室はそんな遠ないって聞いとったから....」
「ご、ごめんなさい!」
「ちょっと予想外のことが起きて、予定よりも随分と遅れちゃったのよ」
リオが<欠片>を回収したあと、すぐにブレーカー室に行き、校内全ての明かりをつけた事で影は消失。さくらは、本体である<影>を封印することに成功した
が、明かりをつけるのに随分と時間がかかってしまった為か、クロウカードを封印した今、リオたちはケルベロスに軽い文句を言われていた
「ケ、ケロちゃん。もうそこまでにしとこ?リオくんたちだって悪気があった訳じゃないんだし」
「あったら蹴っ飛ばしたるわ!」
「ほ、本当にごめんなさい...」
「....〜はぁ、まぁ結果的には何とかなったしこれ以上は言わん
それで、予想外の出来事ってなんや?2人の事情に関係あることなんか?」
なんか、あっさりと引いてくれた。下手してたらサクラが危なかったかもしれないのに....まぁ、今は事情の説明だよね
「まぁ、予想外のことは僕たちの事情にも関係しているから、まずはそっちから話してもいい?」
「「もちろん(ですわ)」」
「ありがとう....
それじゃあ最初に質問するけどさ、みんなって非科学的な事とかって信じる?」
「「「......」」」
急に異世界から来ましたとか言っても混乱をさせちゃうから、まずは遠回りして説明しようと思って、こう発言したけど....
なんか、失敗したかな?みんな静かになったんだけど
「あの...みんな?」
「いや、そもそもの話な?<クロウカード>っちゅう魔法のカードがある時点で非科学的なもんやろ」
「現にさくらちゃんも魔法というもの扱えますから、もしそういうのを信じなくても、信じるしかないと思います」
「ケロちゃんみたいなぬいぐるみが喋れるのも、魔法を見たようなものだもんね」
「さくら、それはどういうことや!?」
僕の質問に呆れが混じってる感じで返すケロちゃんに、今更なのでは?という感をだすトモヨとサクラ
「....リオ、遠回りの説明を考えるのは杞憂よ。サクラたちの事情を訊いたときにわかっておくべきなのよ」
「あはは、そうだね....」
なんであの時は無駄に考えてたんだろうか?この世界に魔法があるなら、僕たちの事情も有り得ないということにはならないのに。一日に色々起こりすぎて疲れてたのかな?
「それで、リオくんがそれを訊くということは、リオくんとアリスちゃんの事情も普通では有り得ないということで良いのでしょうか?」
「...うん
もう単刀直入に言うけど、僕とアリスはこことは違う世界から来たんだ」
僕は<私は○○県出身です>みたいな感じで、事情を説明する前に知って欲しいことを軽く言った
この世界には非科学的なものがあるんだ。だから別に異世界から来たことを言うのも、なんて事なかったんだ
「まぁ...」
現に、トモヨはこの事を聴いて<そうだったのか>というぐらいの反応だもんね。なんだ、重く考える必要なんて本当になかったんだ〜
「「....えっ」」
「?」
「「ええぇぇぇえ!!!!」」
どうやら違ったみたいだった
「ケルベロスはともかく。魔法を知ったのが昨日今日の少女よ?異世界から来たなんてのは、驚いて当然だと思うわ」
最後まで読んで頂きありがとうございます!
リメイク後
リメイクされても駄文に変わりなし!でも、リメイク前よりは良くなってるはずなんですよ多分!?だから甘く見てください!蜂蜜に砂糖と練乳をこれでもかという程入れてかき混ぜた甘さで!?
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Repage9 <欠片>とは
聖夜人魚姫尊すぎるわ!!レヴォルの気持ちもわかるわ!!?
リメイク後
ああああああああぁぁぁ!!グリムエコーズも終わるぅ!!この先どうやって生きればばばばば!
はい、それでは本編どぞ!
「─というわけで、僕の友だちに<欠片>とか諸々の事情を話しちゃってごめんなさい!」
リオとアリスは図書館に訪れてジブリールに、先日の<影&マッチ>騒動でさくらたちに自分たちの事情を勝手に話したことを謝っていた
図書館にリオたちが再び来たことを歓迎しようとしていたジブリールは、第一声に謝罪を貰い戸惑っていたが、事情を聴くなりすると何時も通りの優しい微笑みの表情に戻り口を開く
「ふふ、別に謝ることではありませんよ」
「で、でも...!」
「リオさんたちが住む世界には、私が知る<物語の力>と違うものがあるのは前から気付いていました
そして、リオさんが<欠片>を回収していく内に、その関係者と関わるだろうとも....まさかこんなに早く関わることになるとは予想外でしたが」
「ご、ごめん」
「責めている訳ではありません。この先、その者たちと関わっていくのは必ず役に立つことですから」
「それはどういうことよ?」
「....実を言うとリオさんたちが回収する<欠片>は、<無名>状態になっていると何かに宿ってしまう場合が稀にあります」
「<無名>が、宿る?」
「はい。<無名>が宿るものは基本制限がありません。機械や植物、動物や概念に宿る場合も」
「なるほど...なんでも取り憑くことが出来るから、クロウカードにもやられる場合がある訳ね」
「その通りです。ですからそのクロウカードについての関係者が協力してくれると、<欠片>回収の危険度も低くなります」
「じゃあ、サクラたちに打ち明けたことは結果的にはよかったの?」
「はい。ただ、もしこちらの事情をまた話す場合はしっかりと私に知らせてください」
「わかった!」
最初の落ち込みムードだったリオは、ジブリールの言葉により元気を取り戻した。そのことにアリスとジブリールも一種の安堵をする
「ところで、その方たちはリオさんの事情を聴いてどのような反応をしていたんですか?」
「そりゃもう驚きまくりよ。逆にトモヨの冷静具合が驚くわね」
「トモヨも声には出てないけど、(ほんの少し)驚いてはいたと思うよ?ただ、サクラたちの驚きに目がいってしまっただけで」
リオは苦笑いを浮かべながら、さくらたちに事情を話したときの事を思い出していた
*******
「....ま、まとめるとなんや?つまり、リオとアリスは異世界から来た。ほんで、ワイらが住んでるこの世界に<欠片>っちゅうやつが散らばって─」
「大変な事が起きる前に回収することを、ジブリールさんっていう人に頼まれたっていうこと、だね....」
「平たく言えばそうね」
<影>封印後にリオがカミングアウトし、さくらとケルベロスが盛大に叫んだ。その後にリオとアリスは、落ち着きを取り戻した2人と、元からある程度落ち着いていた知世に事情を話した
今はそれが終わり、ケルベロスが整理のため簡単にまとめているという感じだった
「えっと...やっぱり信じられないかな?」
さくらたちの反応を見て、リオはみんなに信じてくれない気がして段々と不安になっていく
「いいえ。リオくんの言うことですから信じますわ」
「トモヨ...?」
そんなリオの言葉に、知世は誰よりも早く反応してリオに言葉を返した
「信じてくれるの?」
「はい!リオくんは可愛いウソはついても、そんなウソをつかないことは、誰よりもリオくんと付き合いの長い私が知っています」
「私も信じるよ!リオくんとは知世ちゃんほど長くはないけど、優しい子なのはわかってるから!ね、ケロちゃん!」
「まぁ、信じるしかないやろ...お前さんから感じたこともない魔力を感じたのも、異世界人なら納得やし」
「みんな...!」
「ね。なにも心配することなかったでしょ?」
「....うん。ありがとうみんな!」
*******
「ともあれ、何事もなく受け入れてもらえてなによりです」
「はい!ありがとうございます!」
「次からはあまり深く考え込まないようにね」
「き、気を付けます」
ジブリールからは安堵の声、アリスからは呆れの声をもらったリオは複雑な表情を浮かべながら返事をした
「それはそうとリオさん。少しお願いしたいこと...とは違いますが、やって欲しいことがあるんです」
「やって欲しいこと?」
「はい。これからの欠片回収を捗らせるために....
ここにある本をできるだけ全て、読んで欲しいのです」
「「....」」
ジブリールの言葉に暫くの沈黙が続いたあと、最初に口を開いたのは体全体がマナーモードとなっているリオだった
「アリス」
「なに?」
「ふ、震えてるの?」
「あなたがよ。それはそうと、急にどうしたのよジブリール?ここにある本を読めだなんて、まぁリオにとっては幸福以外の何ものでもないけど....そもそも、
「本というのは、読者がいるからこそ本なんです。そこに、いくら全ての人を動かす程の事が書かれていても、読者がいなければ<無意味>です。ですから、是非読んでください」
「やったぁ!!じゃあさっ─「待ちなさい!」イタッ」
図書館の中にある数え切れないほどの本を是非読んで欲しいと言われたリオは、目を輝かせて本を読もうと移動しようとする
しかしアリスに耳を引っ張られ、それは敢え無く阻止される
「うぅ...アリス、なにするの?」
「はぁ、少しは待ちなさい....ジブリール。さっきの欠片回収を捗らせるってのは?」
「そうですね...これは昨日伝え忘れていたことなのですが、<欠片>というのは<物語の登場人物>と私はお伝えしましたよね」
「えぇ、そんなことを言っていたわね」
「<欠片>は<物語の登場人物>。つまりそれは<物語の世界>の住民であることを指します。ですが<欠片>となった者たちは、一般的に知られる物語とは異なるものばかりです」
「え?それはどういうこと?」
「例えば、<赤ずきん>の主役である赤ずきん。彼女の<運命>は─おばあさんの家へおつかいに行き、着いたときにおばあさんを食べたオオカミに食べられる。でも猟師に助けられる─重要部分を抜き出して簡潔的にすると、こうなっています」
「そうね。別のやつでは─オオカミに食べられたまま終わる─赤ずきんもあるわね」
「─自力でオオカミをやっつける─赤ずきんの物語もあったね!」
ジブリールが出した<赤ずきん>の物語を始めに、リオやアリスも語っていく。これだけで<赤ずきん>というひとつの物語でも、様々なものがあるといえた
「はい。ですが、リオさんが回収した<赤ずきん>は─
お母さんに頼まれて、おばあさんの家へおつかいに行った赤ずきん
彼女はその途中でオオカミと出会いました
赤ずきんは、綺麗なお花畑でおばあさんのために花を摘めばいいとオオカミに言われます
ですが赤ずきんは首を振り、断ったあと
手に持っていたバスケットの中から葡萄酒が入ったビンを取り出し
ビンを勢いよく振り下ろし、オオカミを殺しました─」
「え?き、急すぎない?」
なんと<欠片 赤ずきん>は、良かれと思って発言したオオカミ(嘘の有無関係なく)を唐突に殺す、という確かにリオの言う通り、今までの<赤ずきん>とは少し違うものだ
「嘘をついてるかを見分けることが得意で、なんでもかんでも嘘をつくのが嫌い。嘘をつけばつくほど苦しくなると、本人が言ってましたよ」
「ってことは、赤ずきんは嘘をつくオオカミが苦しまないようにしたってことだね。優しいけど....」
「そんな残酷な優しさ以外の他に、別の方法はなかったのかしら?」
普通、小学生以下であれば童話の中に<殺す>という言葉が出てきたら一種の恐怖などを感じるというのに....この少年。恐怖を感じていない、なんならその赤ずきんに対して慈愛を帯びた哀しい目をしている
「<欠片 赤ずきん>はまだ原典寄りですが、<欠片>の運命は原典よりも少し変わっています。まぁ変わっていると言っても、そもそも物語は時代が流れるにつれて解釈も異なってくるので、普通のことなんですが」
「要は、本を読むときは<if>とかを考えながら読んで、それを欠片回収に活かしなさいということね」
「そうですね」
「了解!それじゃ早速読んでくる〜!!」
「ちょっ、リオってば!急に走らないで!?」
リオは待ちきれないかのように、肩に乗せているアリスのことも忘れて本棚の方へと走って行く。その姿は先程までの見た目不相応の慈愛に満ちた表情が夢だったかのようなものだった。もはや話をしっかりと聴いていたのか疑問に思うほどに浮かれていた
そんなリオとアリスを見送ったジブリールは、暫く2人が行った先を見ていた
『言わなくてよかったの?』
「....赤ずきんさん」
ジブリールの背後から声をかけたのは、先日まで<無名>で図書館内を暴れまわり、リオによって無事に回収された<欠片 赤ずきん>だった
「ダメですよ。<欠片>の仕事はこの図書館の安定を支えることなんですから、サボってしまっては....」
『大丈夫。いまはすごく機嫌が良いみたいに安定してるから、マッチちゃんだけでも平気だってさ』
「おかしいですね....普段は全ての<欠片>が支えることで安定するのですが」
『それはものすごく不安定なときでしょ?って、それは今はいいよ!私はあの子に、私がしたことを言わなくて良かったのかを訊いてるの!』
「あなたがしたこと...それは、オオカミを殺した後
村の人々を一人残さず殺した事ですか?」
『....うん』
「今はまだ言わない方がいいでしょう。その事実を言えば、いくら物語を愛していても少しは揺らいでしまいます。<あの方>があなたと初めて会って知った時も、辛そうな顔をしていたと聴きました」
『....当然だよ。あの人の大好きな<物語>を壊したんだから』
「それでも、あの方はあなたを....<欠片>たちを救った
<運命>に逆らい、物語を乱した<罪人>のあなた達を」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
リメイク後
<欠片>=<罪人>ということが加わりました
本当はもう少し中盤の方で明かしとくべきなんでしょうけどね。書いちゃいました
そして頁紹介の代わりに、欠片の紹介だぁ!
欠片紹介!
名称:赤ずきん
効果:対象の嘘(幻)を見破る
罪状:殺される<運命>になかった者たちを殺した
名称:マッチ売りの少女
効果:火を灯し、幻をみせる
罪状:商売方法を変え、裕福になってしまった
という感じでしょうかね
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Repage10 それぞれの社会見学
Repage後
ひ、久々に更新しましたよ....もうスランプだわこれ
では本編どぞ!
*******
─私のせいで...
─王子様、姉さん、あの子や、みんなが...苦しんでしまう
─なら、それを防ぐためには...
*******
「じゃあみんな!グループに別れて各々出発してくれ!」
今日は社会科見学ということで、生徒たちはグループになって、それぞれ公共施設を見に行くことになっている
「それではリオくん、また」
「うん!お互い楽しもう!」
「はい!」
そして、僕のグループは植物園に行くことになった。トモヨやサクラは水族館らしい。できれば一緒に楽しみたかったけど仕方ないね
「(リオ、あなたも早く自分のグループに行かないと)」
「(そうだったね)」
トモヨの背中を暫く見つめたあと、僕はアリスに促されて自分のグループへと向かった
*******
「お待たせみんな!」
「おぉ、リオ!もう大道寺との話しはいいのか?」
「うん!お互い楽しもう〜って言って別れたよ」
「相変わらず大道寺さんと仲良いのね」
「まぁ入学から一緒だしね」
グループに合流した僕を迎えてくれたのは、3年生から友だちとなった2人
ひとりは、少しくせ毛気味の黒髪に黒目の男の子
名前は<日野山 永慈>
特徴的なのは身長約120cm、友枝小学校の4年生では最下位レベルというか一番小さい。本人に指摘すれば怒ること間違いなしなので注意
もうひとりは、腰あたりまで伸ばした茶髪に碧眼の女の子
名前は<霜月 菫>
エイジとは物心ついた時から一緒にいて、いつもエイジのことをイジったりしている。でもそれは素直になれないだけで、本当はもっと仲良くなりたいんだろうな
「よし!リオも来たことだし行くぞ!」
「ちょっと待ちなさい」
「なんだよ?」
「....あはは」
エイジが歩き出すのをスミレは慌てて止める。止められた本人は不満そうに振り返って言葉を返す。スミレが何を言い出すのか、それが予想出来る僕は思わず苦笑いを浮かべていた
「あの子はどこよ?」
「?....あぁ、アイツまた遅刻かよ」
「いや、あの子は一度も遅刻してないよ?ただギリギリ遅刻になってないだけで。あの子はギリギリを熟すの得意だしね」
「リオ、褒めてないわよ?それ」
僕たちのグループは4人となっていて、ここに居るのは3人(アリス除く)。明らかに1人足りない。あと1人はこの中でもマイペースが際立っていて、僕たちは大体その子に振り回されている。今日もそんな感じだろうな
「(アイツ、また遅くに来てるのね)」
「(もうアリス....レディを目指してるんだったら、アイツなんて言葉使っちゃダメだと思うよ?)」
「(仕方ないじゃない!アイツいつもいつも─)」
その子についての話題になると、アリスは小声で声を荒らげてその子を愚痴っていた。何故かアリスは、その子と会うと強く当たったり言葉が荒くなる。その度に僕は注意をするんだけど全然なおしてくれないんだよね
「ギュ〜っ....」
「おわぁ!?」
「「やっときた」」
小声でアリスと話していると、突然後ろからほんわかとした雰囲気を感じる声が聞こえた。それと同時にその声の人物に抱きつかれて、不意をつかれた僕は驚きの声をあげた
「えへへ〜。みんなおまたせ〜....これは回収〜っと」
「(ふがーー!!)」
「あはは...おはようアイリ」
「おはよ〜♪」
僕は後ろから抱きついた子へ視線を向けると、その子は僕の肩に顔を乗せてダラっとしていた
胸元辺りまで伸ばした金髪をサイドテールに結った、少し眠そうな赤眼の女の子
名前は<鏡宮 愛梨>
動くのも頭を使うのも面倒くさがるマイペースな女の子。実際は頭も運動も平均以上なのに....でも、他の人の為になると自分が嫌なことでも行動する優しい子
いつも僕に抱きつくのはやめて欲しいんだけどね。歩きにくいし
エイジ、スミレ、アイリとは小学1年生の頃からの友達。最近は遊んでないけど、前まではトモヨとも一緒によく遊んでた仲だ
「じゃ、ササッと行かないと遅れるよ〜」
「誰のせいでそうなったと思ってるんだ!」
「ゴーゴー」
「もう。相変わらずマイペースなんだから」
「あはは」
僕の背中に抱きつきながら、アイリは片手を上げて出発を促す。エイジはそれを見て文句を言ったり、スミレは呆れたようにため息をつく
まぁ、グダグダしながらも社会見学が始まった
*******
三人称side
*******
リオサイドが出発して数時間後
そのグループは置いといて、さくらサイドが見学する施設はというと....
「わぁ〜、このお魚かわいい〜!」
水族館であった。
ここにいるさくらサイドのメンバーは、先程からはしゃいでいるさくらと、その姿を撮影している知世、あとさくらたちの友達の
佐々木 利佳&柳沢 奈緒子&三原 千春である
(メインではな....コホン。後者の三人の詳細は以下略です。詳しくは原作をどうぞです)
「もうすぐでペンギンショー始まるよ!」
「「はーい」」
「さくらちゃn....!」
ダダダダダ!!!
「みんな、早く行こ!」
さくらは猛スピードで走り、一度止まって振り返り他の3人に呼びかける。その走っていた姿はまさに、はやきこと風の如し
そして、女子組はさくらを先頭にペンギンショーのある広場に行く
*******
パチパチパチパチ!!!
「わぁ〜すごいすごい!私もペンギンと泳ぎたいなぁ....」
「さくらちゃん泳ぐの得意ですものね」
ガラス越しに行われているペンギンショーは大いに盛り上がっていた。さくらたちもショーを楽しんで、見ていてとても微笑ましい光景が広がっていた
....が、異変は突然起こった
『〜〜〜♪』
「....!」
バシャーン!!!
突然、ショーを進行していた女性が水槽にできた謎の渦に足を引っ張られて水の中に沈んでいってしまった
女性は藻掻くことで、なんとか水中から出ることはできた。しかし、地上には上がろうとしても渦の所為で上がれないまま
そんな女性を見たペンギンは勇敢にも助けようと渦に向かうが、ミイラ取りがミイラになるかのようにペンギンも謎の渦に捕まってしまう
「ペンギンさん!?」
さくらは捕まったペンギンに何回も呼びかけるも、呼びかけるだけでは何も起こらない
「どうした!?」
するとそこへ、ペンギンの餌係だと思われる青年が餌入りバケツを持って入ってきた。青年は目の前の光景をすぐに普通ではないと思い、女性へと駆けつける
「ペンギンが渦に呑まれて、助けに行きたいけど行けないの!」
「....!」
餌係の青年はバケツを置き、急いで水の中に飛び込み、渦を掴んだあと力ずくで渦を広げるようにしてペンギンを助け出した
「お兄ちゃん....?」
周りの観客が安堵の声をあげてるなか、さくらは餌係の青年が自身の兄ということに気付き、何故いるのか疑問に思っていた。
『クスクス...』
「....?」
餌係の青年改め、さくらの兄 桃矢は水から出たあと、突然謎の笑い声が聞こえ周りを見る。しかし周りにはペンギンと飼育員の女性に観客だけ。その声を発した者らしき影は見当たらなかった
『大成功....!』
*******
リオside
*******
アイリのギリ遅刻により少し出遅れた僕たちだったけど、その後はなんのトラブルもなく目的地である植物園に到着した
「おっ、バラだ!!」
「ほんとう!?わぁ、キレイ」
植物園へ訪れてすぐにエイジが見つけたのは、アリスが生まれ育った国 イギリスの国花ともなっているバラだった
「バラ....バラといえば、やっぱり<美女と野獣>とか<しらゆきべにばら>だね」
「いや、急におとぎ話に繋げんなよ....」
「バラといったら<不思議の国のアリス>もあるよ〜?」
「お前もノるなし!それバラじゃなくてトランプとかチェスだろ!!あといい加減に自分で歩けよ!?」
「<眠れる森の美女>もバラよ?」
「菫が一番ノらないって思ってたのにノるのかよ!あとそれはバラというか、どちらかといえばイバラだろ!!」
各々の<御伽噺のバラといえば?>を言っていく3人に、永慈は鋭いツッコミをする。この4人が揃うと大抵ツッコミは菫や永慈になるが、今回は永慈だけなようで負担が大きそうだ
因みにアイリは学校からここに到着した今も、リオの背中に凭れながら歩いている
「じゃあエイジは<おとぎ話のバラ>と言えばなにが思いつく?」
「え?」
「ツッコミするだけじゃなくて永慈も答えなさいよ」
「おぉ〜、そうだそうだぁ」
「えぇ....なんなんだよ。もう」
「ほらほら、エイジ早く早く!」
3人に急かされる永慈は、呆れの入った溜息を吐きながら仕方なさそうに答える
「<雪の女王>とかは?」
「「....それってバラの要素、最初だけ(だよねぇ)」」
「うるせぇ!!そもそも<バラといえば?>のおとぎ話なんて、殆どリオが最初に言ったやつだけじゃねぇか!!?」
「でも<不思議の国のアリス>も─」
「それもうツッコんだからいいっての!!」
永慈は、自分が思う<おとぎ話でバラといえば?>を答えるもリオとアイリに口出しされる。それを受けた永慈は、半ば投げやりな感じでツッコミをした後ドシドシと先へ進んでいったのだった
最後まで読んで頂きありがとうございます!
なんかこっちも雑になってきたかな?HAHAHA!
Repage後
おいおい、これまだ3話だぜ?こりゃ10年かかるわ
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Repage11 見学終わりに
Repage後
そういやこの時期だったな。スイパラコラボ
というかやっとこの頁をリメイクできた。ここもかなりの黒歴史だから早めに上書きしたかったんだよね
本編どぞ!!
「植物園とっても楽しかったんだぁ!!」
「それはよかったですね」
「アリスはちょっと不満げだけどね」
「当たり前よ!アイツ本当に許さない!」
社会見学が終わって、家に帰ったあとすぐに図書館へと行った僕たちは、ジブリールさんに今日のことを話していた。アリスはアイリの愚痴ばっかりだけど....。アイリってば、解散するまでずっとアリスを離さなかったからね
「アイリさんという方は、よほどアリスさんのことが好きなのでしょうね」
「いいえ、あれはリオに抱きつくとき邪魔だから退かしてるのよ!!断言できる!」
「何故そこまで確信を....?」
「だって私を摘み上げたあと、即カバンの中へシュートよ!?好きだったらそんな事せずにずっと抱えたりするでしょ!!!」
「落ち着いてアリス!ここ図書館!」
*******
「あれ?ジブリールさん。なんか新しい本ありませんか?」
アリスを落ち着かせて、僕はいつも通り読書しようと目が回る程の数がある本の中から何冊か取り出そうとしていた。そしたら、本棚の中に見たことない本を見つけた。これ前までは見かけなかったはずだけど....
因みに図書館の本の配置は、僕が通って見たことがある本棚なら一通り覚えてる
「それは、最近新しく創られた本ですね。どうやらリオさんのおかげで、図書館の機能がほんの少しだけ回復したようです」
「ジブリール、図書館の機能って本を管理するだけじゃなかったの?」
「それもあります。ですが新しく本を入れるのも機能のひとつとしてあります」
「それって、大丈夫なの?」
ジブリールさんの説明を聴いたアリスが疑問の声をあげた。最初、僕はなんのことか分からなかったけど、すぐそれに気づく。それは、新しい本が出来てばかりだと何時か本棚がギュウギュウになって壊れるんじゃないかっていうこと
「大丈夫ですよ。条件が揃えば本棚は増えるので、圧迫することはありません」
「そうなのね」
「それなら良かった!それじゃあ気を取り直して、今日はこの本とアレと....アレも!」
「程々にしときなさいよ?」
「はーい!」
ジブリールさんの言葉を聞いて安心した僕は、気を取り直して本探しに夢中になっていった
「全然聞いてなさそうね」
「それだけ好きなのでしょうね」
*******
「あ〜、次はなに読もうかな」
「まさかさっき選んだ数冊の本を数時間で読み干すなんて....流し読みを疑うわね」
「何言ってるの?本なんて集中して読めばあっという間に読み終わるんだよ?」
「あなたにとってはそうなんでしょうね。私は字がずらーっと並んでるのを読むのはどうしても集中しきれないわ」
「あぁそっか。まぁ本を読む速さなんて人それぞれだからね。あんまり気にしない方がいいよ?....
あれ?」
アリスと楽しく話しながら次読む本を探す為に図書館の中を歩いてると、ズラーッと並べられている本棚....の他に、ひとつの扉があった。それを見た僕は大きくではないけど、戸惑ってしまった
別に扉ひとつで戸惑うことはないんだけど、問題はそれがある場所が、僕が何度か通ったことがあること。何度か通ったことがある道なのに、扉は見たことない。そのことに僕は戸惑ってしまった
そして、扉の前でずっと立っている僕を心配してくれたのか、アリスが声をかけてくる
「どうしたのリオ?」
「アリス。この扉ってここにあったっけ?」
「え?言われてみればそうね....少なくとも昨日まではなかったはずよ」
「ってことは今日リフォームとかしたのかな」
「その可能性はあるけど、あのジブリールだったら事前に言ってくれるはず....」
「忘れてたんじゃないかな?ジブリールさん意外と言い忘れてることってあるよ」
「確かに、それもそうね」
最初に出会ったときも言い忘れあったからね。多分、この扉もなにか言い忘れちゃったんだろうね。あとで聴いとくとして....今は
「この扉の奥って、本なのかな?」
「リオ、入る気なの?」
「だって気になるじゃん!」
「っでも、もし危ないものがあったらどうするのよ?」
「図書館に危ないものがあるってなに....?でも、大丈夫だよ!危ないものならジブリールさんが言ってくれるでしょ!」
「そのジブリールは言い忘れ癖があるってさっき自分で言ってたでしょうが!?」
声を荒らげるアリスに、扉の奥に何があるのかしか考えてない僕はなんのその〜。まぁ確かにアリスの言うことも正しいと思う。でもこの扉の奥にはそんなものはないって、僕の勘というか心?が言ってる気がする
「まぁ、物は試しに開けてみようよ」
「それ絶対にダメなやつ!!開けたら絶対に中まで入るヤツよそれ!」
「それは偏見でしょ!?危なかったら直ぐに閉めるから!」
「開けた瞬間扉の中に吸い込まれるトラップだったらどうするの!?」
「不思議の国じゃないよここ!!」
「ある意味で不思議の国以上なのよここ!?」
ガチャ
「「!!」」
段々とヒートアップする僕たちだったけど、それはさっきから言っている問題の扉が開いたことで中断になる
僕たちは突然扉が空いたことで驚いていると、その扉からひとりの人物が出てくる
『もう、図書館ではお静かにって習わなかった?』
「あ、あなたは....」
「<マッチ売りの少女>!?」
*******
「あの扉の奥は<管理者室>となっていて、この図書館の主の自室です」
「そうだったんだ」
扉からマッチさん(<マッチ売りの少女>のこと。本人からそう読んで欲しいと言われた。)が出てきたその後、ジブリールさんが慌て気味に僕たちのところへやってきた。そして今は、ホールに戻ってあの扉の奥のことについて話していた
「あれ?っていうことは、昨日まではその管理者さんの部屋はなかったの?」
「いえ、ありましたよ」
「でも昨日まであそこに扉なんてなかったわ」
『それは魔法で隠していたの』
「どうして?」
僕たちの疑問に対して、ジブリールさんとマッチさんは丁寧に答えてくれる
「あの部屋には、管理者の自室の他にも重要なものが保管されています。なので普段は何者かに盗まれないよう魔法で隠しているのです」
『この図書館に入れる人が限られているのもその為なの』
「そうだったのね。もうリオ、やっぱり入っちゃダメだったじゃない」
「あはは....ごめんなさい」
危ないものはないけど、簡単に触っちゃいけない場所だった
「でも重要なものって、なにを保管しているのかしら?」
「詳しくは言えませんが、簡潔に言うなら─」
『この図書館の心臓部ってところかな』
((それ重要の範囲超えてる))
盗まれたら終わるやつだよね?心臓部ってことは、それが壊れたりしたらここにある本が全部失くなるんだよね。そうなったらもう....うん。言葉に出来ないよ
***翌日***
「昨日もたくさん読んだね〜!」
「私はリオ程読んでないけど」
図書館から家に帰って、晩御飯お風呂その他諸々した後寝て、そして今日が来ていまは登校中。僕は昨日のことを思い出しながらアリスと話していた
「それに、マッチさんと話すことが出来たのもすっごく嬉しかったなぁ!!」
「そうね。管理者室についての説明終わった後、リオってば色々マッチに話しかけてたものね」
「そりゃ相手はおとぎ話の主役だよ!?話しかけない訳ないよ!
それで、マッチさんの物語を聴いたんだけどね、<マッチ売りの少女>とあまり変わらないみたいだった」
「そういえばどんな感じだったかしら?忘れちゃった」
「アリス聞き流してたもんね....えっと、違うのはマッチ売りで工夫に工夫を重ねて裕福になったこと。そして生きてることだって」
「あまり変わらないとは?....凄い変わってるんだけど」
「あ、あはは。本当だね」
確かに結果的には変わってるけど、マッチさんが辛い思いをしたのは変わらないからね。僕からしたらあまり変わってない判定ということで....多分
…………………………
…………………
…………
「あれ?」
「(どうしたのリオ?)」
学校に到着して正門を越えたところで、僕は横目からトモヨとサクラを見つけた
「2人とも、何話してるんだろ?」
「(行ってみたら?)」
「....うん、そうしよっかな」
僕は2人の様子を確認する為に、学校の玄関に入らず道を逸れて2人のところへ行く
「トモヨ、サクラ。おはよう!」
「おはようございます。リオくん」
「あ、おはよう!」
2人に挨拶をかけると、いつも通りに返してくれた。でも、少しサクラの様子が違うのはなんでだろ?もしかして、さっき話してたことに関係あるのかな?
「ここで何を話してたの?」
「実は、さくらちゃんに大きな試練が訪れたんです」
「ってことはクロウカードだね」
「もしくは無名の欠片ね」
「す、すごいね2人とも。今のでわかるんだ....」
トモヨの言わんとしていることはある程度わかりますから!
心の中で胸を張った僕は、サクラに事情を聞き出したのであった
「要は、その<
「うん。そういうこと」
「水....実態がないから難しいということかしらね。リオが協力するにしても、持ってる欠片は<赤ずきん><マッチ売りの少女>の2人」
「その欠片さんたちはどのような事が?」
「それは──」
トモヨやサクラには欠片がどういうものか説明したけど、今ある欠片がどんな事ができるのかは話してなかったね。まぁ軽く説明するだけにしとこう
<赤ずきん>は、対象の幻や嘘を見破る
<マッチ売りの少女>は、対象が望む幻を見せる
「っていう感じなんだけど、どっちも捕まえられそうにもないね。ごめんサクラ、僕じゃ役に立てそうにないや」
「ううん。気にしないで!」
「そういえば、あの時の歌は何だったんでしょう?」
「歌?」
僕が持ってる欠片の力について説明した後、トモヨが思い出したかのように言ってきた
「あの歌とっても綺麗だったよね!」
「えぇ、透き通るような歌声でした」
「なになに?水族館に歌手でも来たの!?」
「いえ、どこにもそのような人はいませんでしたわ」
「班のみんなにも聞いたんだけど、聞こえなかったって....」
2人が絶賛するんだから、よほど綺麗だったんだろうけど、歌ってる人が見当たらないってどゆこと?しかも2人だけが聞こえたなんて....
「3人とも、クロウカードについて話し終わったのなら早く移動しなさい。もうホームルームのチャイムまであと少しよ」
「「え?」」
「まぁ、ホントですわね」
アリスの言葉に僕とサクラはポカンとして、トモヨは時計を確認してから、手を口に当てて少し困ったように驚いた
「は、早く教室に戻ろ!!」
「はい!」
「もう少し早く言ってよアリス!?」
「私もついさっき気付いたのよ!」
僕たちは暫く固まっていると、ハッと我に返るように急いで教室へと戻って行ったのだった
最後まで読んで頂きありがとうございます!
Repage後。
これいつRepageしたか、まだ読んでくれる人がわかるようにRepage前のやつ全部消した方がいいのかな?まぁ、もうRepage前のストーリーないからそうした方がいいかな。
よし。Repage前のやつ消しますね。読み返したら恥ずかしすぎるんですよ!!駄文も駄文だし!
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Repage12 初デートを見守ろう
はい、リメイク完了!&今までのリメイク前話は全て消去します!いや。しました!
これからはナメクジ更新でも良ければ、こっちの方もやりマース
※上記からわかる通り、大幅リメイク致しました。リメイク後の話を読んでいない方は、まずリメイク1話から読むことを物凄く非常に凄まじくオススメします!!
では本編どそ
放課後の下校中。朝は少し元気がなかったサクラだったけど、今はすっかり笑顔が戻っていた
「今日は話を聞いてくれてありがとう。知世ちゃん、リオくん、アリスちゃん」
「元気になってくれてよかったよ」
「さくらちゃんは、その笑顔が一番ですわ」
「困ったらいつでも相談にのるわ」
「えへへ、ありがとうみんな」
朝の様子から見たらどうなるかと思ったけど、ちゃんと元気になって良かった
「そうそう!皆さんに渡したい物が....」
「「「??」」」
トモヨは話を切り替えて、朝から持ち歩いていた紙袋から何かを取り出す
「家の母の会社が作った新製品です」
「あら?ただの箱....じゃないわよね流石に」
「当たり前でしょアリス。それにしてもこれって、もしかして携帯電話ってやつ?」
「はい。母が使い心地を知らせて欲しいって言っていましたわ。リオくんにさくらちゃん、アリスちゃん、それとケロちゃんの分もありますの」
「いいの知世ちゃん?」
「はい!」
トモヨはそう言って、1個ずつピンク色の携帯電話を僕たちに手渡していく。まぁアリスとケロちゃんの分は、それぞれ僕とサクラが持ったけどね
「ありがとうトモヨ!」
「大切にするね!」
「この世界の技術って、やっぱりすごいわね」
僕たちがいた世界も何時かはこんな技術に発展してたのかな?まぁ確かめることなんて今更無理か
僕たちはトモヨから携帯電話を受け取った後、止めていた足を動かして下校路を歩き始める
「それじゃあ3人とも、またね!」
「うん。バイバイ!」
「はい、また月曜日に」
「気を付けて帰りなさいよ」
分かれ道でサクラと別れて、3人になる。いつもなら3人になっても、サクラがいる時と特に変わらず雑談とか話すだけなんだけど
「リオくん。さくらちゃんが言ってたクロウカードの件なんですが、欠片が関わっているということは?」
「正直に言えばなんとも。僕はまだどんな欠片があるのかわからないし、ジブリールさんに聞いたとしても教えてもらえないと思う」
「正確には教えようとしても教えられない、かしら」
「それは、他の人が欠片さんの名前を言ってもリオくんには聞こえないというのが関係してるからですか?」
「うん。正しくその通り」
実際に試したからね。<マッチ売りの少女>を回収した後、ジブリールさんに3人の欠片を言ってもらった。そしたら<赤ずきん><マッチ売りの少女>までは聴こえたけど、最後が何回言ってもらってもわからなかったんだよね
「まぁその話は置いておいて。今回のクロウカードとは関係なしに、トモヨたちが行ったその水族館には1度行くべきね」
「どうして?」
「トモヨやサクラが言ってたじゃない?歌が聞こえたって、しかも他の人は聞こえなかったのよね」
「はい。それに今朝は言いそびれたんですが、水族館を出るときにそこのスタッフさんに聞いたら、そんな歌手は雇ってないと....」
「トモヨとサクラにしか聞こえなくて、スタッフさんもそんな人を雇ってない謎の歌手」
うん、凄く怪しい。絶対に欠片、それかクロウカードだね
「ほら、1度は行くべきでしょ?」
「確かにそうかも....よし、そうとなれば善は急げだ!明日行こう!」
「えっ、いくら何でも急すぎない?」
「では私もご一緒しますわ」
「じゃあ待ち合わせは12時でペンギン公園前で!」
「はい、わかりましたわ!」
「いや、聴きなさいよ!そして12時って時間的にお昼ご飯前なんだけど!?」
「ではお弁当を作ってきますので、それを食べてから行きましょうか」
「賛成!」
アリスが何か騒ぐ中で、トモヨと水族館を調査することになった
「あ、サクラも誘っとく?」
「....いえ、少し時間を置きましょう。元気になったばかりですし、まだ整理がついてないはずですから」
「そっか。わかった!」
*******
*******
雲ひとつとない青空に、お日様がサンサンと輝く日曜日
僕、天野リオはトモヨと水族館を調査することになっていたのだが....─
「なるほど水族館か〜....丁度ええ、ワイはクロウカードがおるかを確かめれて─」
「私はさくらちゃんのデートをビデオに収められて」
「僕は欠片がいるかの確認ができる....
本当にいいのかな?」
「いいわけないでしょ」
親友の初デートを盗み見ていました。
何故こうなったのかというと....
昨日、トモヨと別れて家に帰ったらサクラから留守電が来ていた。
サクラから聞いた内容を簡単に言えば、僕たちと別れた後の帰り道にユキトさんと出会って、そこでデートに誘われたらしい
僕は、サクラが本当に嬉しそうにしてて安心してたんだけど
そこから数時間後、トモヨから電話がかかってきた
内容は、明日の調査は後回しにしてサクラの初デートをビデオに収めよう!!
つまり、トモヨがいつも通り暴走しただけ
「サクラちゃんたち入っていきましたわ」
「ほなワイらも行くで!」
「はぁ、なるようになれだね」
「考えることを放棄しないで!?」
黄色のコートと帽子に、レンズが黒めの伊達メガネを身につけたトモヨは肩にケロちゃんを乗せて水族館の入口へ歩いていく。その手にはビデオカメラが忘れずに構えられてた
僕はもう、考えることをやめて欠片に専念することにした
…………………………
…………………
……………
「大きい魚だね....食べれるかな?」
「ひとりじゃ無理じゃないでしょうか?」
「そんなことないと思うよ」
「は、はぁ....」
さて、水族館に入って早速ふたりは楽しんでるけど、ちょっと話してる内容がおかしくないかな?ユキトさんどれだけ食べるの
「ほのぼのですわね」
「なんや今時の若僧は手も握らんのかいな」
「付き合ってもない男女だもの。まだ会話が途切れてないだけマシなものよ。途切れると微妙な空気になって台無しになるわ」
「詳しいねアリス」
「立派なLadyですもの。当然よ!」
「それLady関係あるの─
ピチャン
冷たっ!?」
久しぶりにLadyに拘るアリスにツッコミをしていると、首筋の辺りから冷たい何かが当たる。僕がそれに小さく叫ぶと、みんながこっちに振り向く
「リオくん、どうかしましたか?」
「えっ、あぁいや、なんか首筋に水があたっちゃって」
「なんや雨漏り....ちゃうな、水漏れか?」
「水族館ならありえる話....いや、逆にありえないのかしら?」
「水槽からの水漏れだった場合だと、この水族館が大惨事になりますわ。おそらく空調機器から漏れたのでは?」
「真上にそれっぽいものがあるからそうかも」
「またあとで係員さんに伝えておきましょうか。今はさくらちゃんたちを....あっ、移動しましたわ」
「....?」
「どうしたのリオ?」
「ううん、なんでもないよ」
納得はしたのに、まだ少し違和感が晴れないまま、僕はサクラたちを追いかける
**********
「それじゃあ、いちごミルクのかき氷を2つください」
「はいよ。ユキは大盛りじゃなくていいのか?」
「え、大盛りあるの?」
サクラたちを追いかけると、次に着いたのは大きな円柱状の水槽が傍にあるカフェだった
このカフェは水族館の中にあることを活かして、魚が泳ぐ水槽を見ながらティータイムができる人気スポットのひとつ。更にこのカフェにある<いちごミルク味のかき氷>はとても美味しいって評判になってる
あ、話がズレたや。
まぁ、そこでサクラとユキトさんがティータイムしてるのを上から見てるわけだけど....
「父兄同伴のデートかいな」
「いや違うでしょ?そんなの最早デートじゃないわよ。普通に考えてバイトじゃないの?」
偶然なのか、サクラのお兄さんであるトウヤさんがそこでバイトをしていた....カフェでバイトしてたら賄いとして美味しいスイーツとか食べれるのかな?
「....っあら?」
「トモヨ、何かあった?」
「水槽の中に....なにかいますわ」
「どこや?」
「さくらちゃんたちの上に」
僕たちは、トモヨに言われた方へ視線を向ける。そこには、水槽の水の中でこっちを見つめている全身青くて長髪の女の人がいた。
全身青いのは印象的だけど、それよりももっと目を引くのは、腰から下が魚のようになってることだった
「人魚?」
「あの姿は間違いない。クロウカードの<
ケロちゃんが確信してあの人魚、<水>の名前を言うと、それが聞こえたのかわからないけど<水>が動き出す
『〜〜〜♪』
「この歌はあの時の....!」
「謎の歌手はカードって訳ね。でもなんで急に歌を─」
─ピキ....バキバキ
「なに....?」
「まさかっ」
突然と歌い出した<水>を疑問に思っていると、<水>の上の方で何かイヤな感じの音がした。僕たちは恐る恐る音がした方へ視線を向ける
そこには、今にも割れそうな程の大きなヒビが水槽に入っていた
「ヤバっ!」
『クス....〜〜〜♪』
この後どうなるか一瞬で予想着いた僕は、ヒビが入ってる下にあるカフェへ向けて声を張り上げようとするが
ガシャァン!!!
叫ぶ前よりもヒビの入った水槽が割れて、そこから水が勢いよく流れてきてしまう。その勢いは大きくて、あっという間にカフェを丸ごと浸水させてしまった
「さくらちゃん!!」
「助けないと!」
「いや待ちなさいリオ!」
「なにさアリス!?早く助けなきゃ!」
「どうやってよ!?魔法でやるにしても貴方は有効な欠片を持ってない。直接助けるのもナンセンス、貴方も巻き込まれるだけよ!」
「でも....っ!」
『クスクス....』
上からカフェの様子を見ていた僕は助けに行きたくても行けない現状に悶々としていた。そんな僕を見てか、<水>は愉しそうに笑っていた
「あのクロウカード....!」
「趣味悪いわね」
「あいつ、ホンマに<水>か?」
「どういうことですの?」
「<水>は攻撃的なカードや。でも、あんな風に笑ったりせぇへん。それに歌も歌わん」
「じゃあどうして...」
「あ、水が引いていってるわ!」
僕は<水>を見て、この世界に来て滅多に感じなかった怒りに染る。だけど、ケロちゃんの言葉を聴いてそれは少し治まって、代わりに疑問を浮かべた
その疑問を解決しようと考えるけど、その前に浸水しているカフェにある水が完全ではないけど引いて行っていた
「どうやらユキトがカフェ裏への扉を開けて、それで水が引いていったようね」
「流石はユキトさん」
「では、さくらちゃんの元へ行きましょう!」
「....(あの<水>、なんやったんや?)」
浸水したカフェからようやく顔を出したサクラがトウヤさんに救出された。それを見て、僕たちはカードのことは一旦おいて、サクラの元に駆けつける
「さくらちゃん!」
「怪我とかは?」
「知世ちゃん、リオくん。全然平気だよ....あ、雪兎さんは!?」
「それなら大丈夫。今は貴女の兄と話してるわ」
「そっかぁ...死んじゃうかと思ったよ」
いくら運動神経がずば抜けているサクラといえど、今回はやっぱり危険すぎたね。下手をすれば水面に上がれずそのまま....いや、やめとこう。ネガティブになるよりポジティブに行こう
「ねぇケロちゃん、これってやっぱり」
「あぁ、クロウカード<水>の仕業....やと思う」
「?....あ、そういえばなんで皆がここにいるの?」
「「「「....ア、アハハ」」」」
親友の初デートの様子を見にー、なんて言えるわけないでしょ。欠片調査で来てるのもあるけど、何故サクラを誘わなかったのか言うことになる。それだとサクラに気遣わせてしまうから言わない
だから、ここは笑って誤魔化すしかないね
そして、誤魔化す僕たちを見て首を傾げているサクラの前にユキトさんが歩み寄ってきた
「さくらちゃん、大丈夫だった?」
「えぇ....」
「せっかくのかき氷が台無しになっちゃったね」
「いいえ、それはべ....かき氷?こおり....─っ!雪兎さん、ありがとうございます!!」
「え、え?」
何故かユキトさんの裾を掴み、目を輝かせてお礼を言ったサクラ。そしてそれを一瞬たりとも見逃さないとトモヨがカメラを構える
傍から見れば不思議な光景だ
『クスクス....楽しい』
最後まで読んで頂きありがとうございます!
グダグダとしすぎていますが、この拙作をこれからもよろしくお願いします!
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Repage13 その<水>は泡にならず
長くなるだけならまだいいとして、はよ終わるように雑にしてしまったかもしれないという不安が....
それでは本編どぞ!
「ほ、ほぇぇ」
「素敵ですわ〜」
サクラとユキトさんのデートが終わったその夜。僕たちは<水>を封印するため、水族館へと来ていた
そして今は、その水族館近くで作戦会議。もとい、トモヨによる封印前の撮影会が開催されていた。衣装に着替えたサクラを前から横から後ろからと、余すことなく撮ってる
「リオ、着替え終わったのならトモヨのとこ行きなさいよ」
「あ、あはは。これからあんな風になるのかと思うとね....」
「リオくん。着替え終わったんですね!!」
「う、うん」
「さぁさぁ、こちらへ!」
そして僕は、前回の<影&マッチ>回収では突然と予想外だったということで僕の衣装は当然なかった(トモヨは何故か残念がっていた)。だけど今回はしっかりと用意されてたんだよね
で、今はそれを着替え終えてトモヨに撮影されている
「わぁ〜!リオくんの服、どこかの国の王子様みたいだね!」
「私としては、てっきりサクラと同じ<水>をモチーフにした衣装にするのかと思ったわ。これは何がモチーフなの?」
※リオの衣装について描写しようとしたのですが、あまりに拙いためにリオの衣装をイメージするために参考にしたモノを後書きにて書きます
「モチーフは先程さくらちゃんが仰った通りの<とある国の王子様>ですわ。ですが....」
「どうしたの?」
「本当は、リオくんにもさくらちゃんと同じような<水>をモチーフにした衣装を用意していたんです」
「あれ、そうだったんだ?」
「ほな、なんでそれにせんのや?」
「その衣装を完成させた後、何故かリオくんに着せたいと思えなかったんです。似合う筈なのに、どこか躊躇うというような感じがして」
「何処かの誰かが止めているのかもしれないわねぇ」
「何処かの誰かって、誰なの?」
「さぁ?」
「いや、さぁ?って....わからないなら適当なこと言わないでよ」
アリス、残念そうにするトモヨを見ながら言ってるんだけど、何故か別のところに言ってそうな感じがする
「それで、唯一躊躇う感じが出なかったその衣装にしたんです。それはリオくんに着てもらいたい衣装で、私が初めてデザインしてつくったものなんです」
「初めてだとは思えないクオリティね」
「僕もお裁縫ある程度できるけど、トモヨには届きそうにないな....」
「知世ちゃんって、本当にお裁縫得意なんだね」
「ありがとうございます。それとリオくん、右脚部分のレッグホルダーですが、いつも持ち歩いてる本を入れてくださいな」
「そんなものまでついてるの?....あ、本当だ。ありがとうトモヨ!」
いつも持ち歩いてる本っていうのは勿論<運命の書>。人生の拘束具と言ってるけど、やっぱり片時も離せないというか、これがないと落ち着かないんだよね。だから家だけじゃなく学校にも持って行ってる。流石に体育とかお風呂の時とかは手放すけど
まぁ、それはおいといて....
雑談もしながらある程度撮影会を終わらした後、今回のクロウカード封印について本格的に話し合うことに
「さくら、封印についての作戦は大丈夫やな?」
「うん!任せといて!」
「おし。ほな作戦開始の前にリオ、お前さんに聞きたいことがある」
「なに?」
「<欠片>ちゅうのは<無名>状態になってる間、何かに取り憑くとかするんか?」
「うん。機械とか植物、動物に概念とかにも宿ることがあるんだって....あっ!」
「な、なんや?」
「色んなものに宿るから、クロウカードにも宿ってしまうかもって言ってた!」
「やっぱりか....」
「どういうことなのケロちゃん?」
「今日のクロウカードを見たとき、ワイはあれがホンマに<
「それでは、今回のクロウカードは欠片さんを宿しているということでしょうか?」
「まぁ、そういうことやな...」
そっか。そういうことなら、今日クロウカードを見たときの疑問が無事に晴れたって訳なんだけども....
「<クロウカード>と<欠片>の力が合わさるっちゅうことは、単純に魔力が増えるだけやったらまだええ方やねんけど....」
「明らかにそれだけじゃないでしょ?」
「やろうなぁ....」
「ほ、ほぇ....カード封印できるか心配になってきた」
ケロちゃんが言うには、今の<水>は本来とはかけ離れた性格をしているらしい。攻撃的なカードで気性が荒いというだけで、笑うなんてないそうだ
「取り敢えずさくらにリオ、気を引き締めて行きや」
「う、うん!」
「わかった!」
「それでは、作戦開始ですわね!」
*******
三人称side
*******
「それじゃあ、ここからは別行動で!」
「気を付けてねサクラ!」
「リオくんもね!」
警備員の目を掻い潜り水族館に裏口から侵入したリオたち。作戦通りに動くため館内を走り、分かれ道でさくら側とリオ側に別れていく
そして別れてから数分後程で
「ここだっけ?....」
「はい。目的地はここであってますわ」
「それじゃあ、後はサクラたちの連絡を待つだけね」
さくらから伝えられた作戦で、自分たちの目的地にたどり着いたリオたち
「サクラ大丈夫かな?」
「あっちにはケルベロスがいるんだから大丈夫でしょ?それよりも、リオは今回の<欠片>がなんなのか考えときなさい」
「そうは言われても、全く検討もつかないよ。あのカードの性能の中でどれが<欠片>としての性能なのかわからないんだよ?しかも欠片のシルエットも声のヒントもなしだから、難易度が高い....」
「クロウカードにない性能と今わかっているのは、感情豊かで言葉を発したり歌を歌うことですわね」
「....言われてみれば確かに。これで正体を見破れ!は無理があるんじゃないかしら」
欠片が何かに宿ったりするの、厄介すぎと痛感しているリオたち
「そういえば....」
「「??」」
「どうして前回のとき、マッチ売りの少女さんは<
「あ、ホントだ」
「それは単に相性が悪かったんじゃない?ほら、<影>って見るからに陰湿で、ポジティブな<マッチ売りの少女>とは合わないわ」
「ちょっとアリス?」
「マッチもソイツに宿るのを躊躇うに決まってるわよ」
「なんでそんなことアリスは言っちゃうかな!?」
レディとは思えない言葉をなんの躊躇もなく言うのはどうなのだろうか。そして<影>への偏見が凄いことになって<影>が可哀想だ
ピピピ....ピピピ....
「あっ、さくらちゃんからですわ」
いつか理想のレディになると言っていたアリスに、本当に理想のレディになれるのかとリオが心配になっていると、知世の携帯から着信がきた
さくらからの連絡は、配置についたという合図、つまりここから本格的に作戦開始となる
*******
「よし、じゃあリオくんと待っててね!」
ケルベロスと共に<水>が潜んでいる場所へとたどり着いたさくら。知世たちに連絡を済ませ、闇の杖を構える
「気いつけぇやさくら。まだ4枚目の封印で、<欠片>っちゅう存在を取り込んどるからな」
「うんっ....!
─出て来なさい<水>!!」
……………………………
……………………
……………
シーン....
「あ、あれ?」
「出てけぇへんな....」
「なんでだろ─ピシャ....ほぇえ!?」
「どないしたさくら!?」
「なんか首に水が!!」
『クスクス...』
<水>が現れない事に困惑していたところ、水鉄砲並の威力の水がさくらの首筋に突然かけられた。2人は慌てて後ろを振り向くと、そこには口を両手で抑えながら笑っている<水>がいた
「<水>や!」
「っもう、びっくりしたじゃない!」
『っおもしろい....クスクス』
「....なんやろ。ワイが知っとる<水>と違って、ただのイタズラ好きの子供みたいにみえるな」
「もしかして、それも<欠片>が宿ってる影響なの?」
「おそらくな。それよりもさくら、はよやるで!」
「分かった。
<水>!そんなに遊びたいなら、私と鬼ごっこしましょ!あなたが鬼で、私を捕まえれたらあなたの勝ち!」
『クス....いいよ』
「決まりね....─
さくらが呪文を唱えると、闇の杖の先端から一対の翼が生えた。さくらは<
『〜♪』
<水>は逃げ出したさくらを捕まえるため、傍に水を生み出し激しい波を作り出す。<水>はその波に乗ってさくらを追っていく
「よっしゃ。追ってきてるでさくら!」
「うん!このまま知世ちゃんたちのところに行けば─....え?」
*******
リオside
*******
「....」
「リオくん、先程から一言も喋っていませんね」
「<水>に宿ってる欠片が何かを考えてるんでしょうね。ヒントらしいヒントもないから、相当悩ませてるみたい」
「<欠片>のシルエット姿はカードに宿っていますから見えませんものね」
「唯一ヒントらしい歌を歌うというのも....候補が多すぎるわ」
人を困らせることを楽しんでるなら悪戯妖精パック?でも歌は歌わない....いや<欠片>は原典とは少し違うって言ってたから、<if>を考えるなら歌うのかも。でもそれなら原典とは違ってイタズラ好きな子もいるかもしれないから....
「ぁああ!!!全然絞りきれない!<if>を考えたらどの子も当てはまるんだけど!?」
「あらら、オーバーヒートしちゃったかしら?」
「リオくん。一度頭の中をリセットしてみては?今は混乱しているようですし」
「....うん。そうだね、そうする」
リセット....。もう、いきなり難易度上がりすぎだよ。サクラが来るまでになんとかしないとね
……………………………
…………………
……………
─ズドドドドド....
「ん、なにこの音?」
サクラの合図から数分後、そろそろサクラが来るであろうタイミングで、物凄い音が遠くの方から聞こえてくる
「ほぇえええ!!!」
「ぎょえええ!!!」
「さくらちゃんたちの声ですわ」
「....嫌な予感がするわね」
音の方へ視線を向けると同時に、サクラとケロちゃんの声も聞こえて来た。だけど、サクラたちの声が近くなるにつれて、音も大きくなってきて....
「ほぇぇええええ!!!」
「いくらなんでもやりすぎやろぉ!?」
─ズドドドドォオオオ!!!
「....凄い水流で追ってくるとは思ってたけどさ」
「えぇ。でも、誰も通路全部埋めるほどの水流で来るとは思わないでしょ!?」
「まるで津波ですわね」
作戦その1として、サクラたちは<水>を引き寄せて配置についた僕たちの元へ合流する
なんだけど、予想よりも勢いがありすぎる合流だね。慌てるところなんだけど、逆に落ち着いたよ....
「リオ、そろそろ頭を絞りなおした方がいいわ」
「わかってる」
作戦その2。僕たちが場所確認のため配置ついた<冷凍室前>で、合流したサクラは<水>を冷凍室に閉じ込める
「
『─っ!』
<
『....っ〜〜!』
「くそ、耐えとる!....やっぱり魔力上がってんな!」
「リオ!」
「....」
<欠片>を宿している<水>は、普通よりも魔力が上がっていたことで、冷凍室に流されるのを抗うことができていた
だから僕の役割は、もし予想よりも<水>が抵抗したなら、それを防ぐために<欠片>を回収することだ
でも、やっぱりわからない!!
そもそもどうして今!?<欠片>が何かに宿って来るのは別にいいけど、ジブリールさんに説明されてからすぐに来なくたっていいでしょ!!あと、宿るにしても幅が大きすぎるんだよ!生物や無機物、さらには概念!?ナンセンス過ぎる!
そんなに宿れるなら....
─どうして前回のとき、マッチ売りの少女さんは<影>に宿らなかったのでしょう?
─単に相性が悪かったんじゃない?
「....もしかして」
ふとトモヨとアリスの言葉を思い出した僕は、ひとつの予想にたどり着いた
「リオ!さくらが長く持たん!」
「作戦変更!よく良く考えればこのタイミングで無理に回収する必要はないわ!まず<水>の集中を切らしなさいリオ!!」
でも、それが確実にそうなのかはわからないから、ひとまずアリスの言う通りにしよう....というか、なんでそういうことを予め言ってくれないの?
「
語り始めると同時に、前回の時と一緒で、星のように輝く青白い魔法陣が出現する
◇◇◇
その魔法陣から繰り出されるは1本の炎を灯したマッチ。そのマッチの炎は絶望に凍える者を、光ある未来へと導く
◇◇◇
『っレヴォル....!?』
僕は<水>の目の前へとマッチの炎を操って、幻想を見させる。そして、幻想を見たであろう<水>は見るからに集中力を落とした
「よし!集中をきらしたわね<人魚姫>!!」
『っまぼろし?....しまっ─きゃあ!?』
<水>は幻想を見て集中力を切らした。それはつまり、<風>への抵抗をやめてしまったということ。<水>は今見た光景が幻とわかってもう一度抗おうとするけど、時すでに遅し!
<水>は<風>の力に押し負けて、冷凍室へと流されていった。それを確認したサクラは冷凍室への扉を閉めた
作戦、ひと段落完了!
「....ふぅ」
「ごめんねサクラ。時間かけちゃって」
「ううん。全然平気!」
「ナイスやでさくら、リオ!!」
「これであとは<水>が凍るのを待つだけね」
ユキトさんとデートをして、サクラは<水>の動きを止めるためのヒントを得て今回の作戦になつたんだけど、上手くいってよかったよ。危うく僕のせいで台無しになるところだったけど....間に合ってよかった
「リオくん、<欠片>の正体はわかりましたか?」
「うん。バッチリだよ」
「それは良かったですわ。では、そろそろ頃合いですわね」
アリスたちが暫くサクラに賞賛の声を上げているのを見ていると、隣からカメラを持ったトモヨが腕時計を確認して<水>が凍ったタイミングだと僕たちに教えてくれた
─ガチャ....
それを聴いた僕たちは、万が一のことも考えて慎重に冷凍室への扉を開ける
そこにいたのは、全身余すことなく見事に凍りついた<水>
「しっかり凍ってるわね」
「よしさくら、リオ!封印や!」
「
サクラが呪文を唱えてクロウカードの封印をする。封印されていく<水>の中から弾き出されたかのように黒い影....無名状態の<欠片>が現れた
「
暴れないよう直ぐに僕は<欠片>を回収する。いつものように、僕と<欠片>を中心に温かい光が輝く
光が収まったとき、僕の目の前にいたのは....
儚くも美しい薄紫色の瞳と、同じ色の髪をハーフツインにした、下半身が魚....つまりは人魚の少女がいた
『....みんなを悲しませて、ごめんなさい』
「っ!」
一言そういって、<人魚姫>は光の粉となって天へと昇って行った
「....どうやら、今日の騒動は人魚姫にとっても不本意だったようね」
「おそらく<水>の攻撃的な性格に影響されたんやろうな。」
「そっか....」
僕は、<人魚姫>が嬉々として人を悲しませる性格ではなかったことを心の底から安心した
「にしても、無名状態の<欠片>を回収した後に出てくる姿は<欠片>の本来の姿か?」
「うん、そうだよ。本来の姿の<欠片>たちを見るのって、いつもワクワクするんだよね!」
「物語好きなリオにとっては、<物語の登場人物>と実際に会えるのは夢のような話だものね」
「それならアリスもやろ?お前さんも<不思議の国のアリス>の主人公やないか」
「アリスは見慣れた!」
「なんか複雑な気持ちだわ....」
流石に何年も一緒に過ごしてるのに、毎日<あのアリスと話せた!><あのアリスと手を繋いだ!>とか言ってられないでしょ....
内心そんな感じに思っていると、僕の周りに後2人いないことに気づく
「あれ?そういえばサクラは?」
「....あっち」
ケロちゃんが指した方向を見ると、そこには封印した<水>のカードを握りながら頬を染めてボーッとしているサクラ。そしてそれを撮影しているトモヨがいた
「トモヨはいつもの事だけど、サクラは?」
「多分ユキトさんを思い出してるんだと思う。今回の作戦って、ユキトさんとのデートで思いついたらしいから」
「....締まらないわね」
「ほんまにな」
あはは、2人の言う通り締まらないね....
こうして<水&人魚姫>回収は幕を閉じたのだった
最後まで読んでいただきありがとうございます!
リオのバトルコスチューム
グリムノーツ エクス(学園)を参考にしています
因みに、今まで<無名>と呼んでいた<欠片>は、無名状態の<欠片>というふうに表記します。簡単に言えば、回収する前も後も<欠片>と描写しますのでよろしくお願いします
あと、この作品はカードキャプターさくらを視聴している前提でやっていますので、<闇の杖>とか<クロウカード>などの詳細は省きます
以上!
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Repage14 楽しみな日曜日
わーい書けたー。けど、次の話は中途半端な文字数で終わりそうです
では本編どぞ!
*******
─<運命>なんてどうでもいい....
─世界に拒絶されたとしても
─私は、<運命の人>よりも<愛する人>を選ぶわ
*******
「なるほど、やはり<欠片>はクロウカードにも宿れるんですね」
「はぁ....ジブリールの予想通りだけど、厄介ね」
「でもサクラたちと協力すれば大丈夫だよ!なんとかなる!」
<水&人魚姫>を回収できた翌日。僕とアリスはその事をジブリールさんに知らせるために図書館へと来ていた
<欠片>がクロウカードに宿れることを聴いたジブリールさんは予想が当たったからか、少し落ち込んだ様だった。多分、ジブリールさんとしても当たって欲しくなかったんだね
「それよりもジブリール?貴女<欠片>が何かに宿れる云々に関して、言い忘れてたりすることがあるんじゃないかしら?」
「っおかしいですね。<欠片>が宿れるのはその<欠片>と関連性が高いモノだけだと、私の中では説明したんですが....」
「アンタの中じゃなくて実際に声に出しなさいよ!!おかげで<人魚姫>だと分かるのに苦労したんだから!」
あまりにも白々しくて、逆にわざとやってる感じがあるジブリールさんの言葉に、アリスは声を荒らげる
昨日の<水&人魚姫>で、僕は<欠片>は何かの
それで僕は、<欠片>は自身と深い関係があるものとだけ宿れるのかもしれないと予想した
一か八かだったけど、結果的にこの予想はジブリールさんの言葉はほぼ正解だった訳だね
「あ、でもアリス?あの<欠片>が<人魚姫>だってこと僕よりも早く気付いてたよね?」
少し考え事してたせいで流しそうだったけど、僕が<欠片>の力を使って<水>の集中を切らした時、アリスは「集中をきらしたわね<人魚姫>!!」と言っていた。それについて、アリスを問い詰める
「っそりゃ、まぁ見た目的に考えれば<人魚姫>かな?って思ったのよ!深くは考えてない!」
「つまり勘で当てたんだね」
「....」
無言はYESとするからね....はぁ、なんか期待して損した。いや勘だけで当てれたのは結構凄いけど。まぁ別にアリスが僕よりも早く知ってても、それを教えることはできないから意味ないけど
…………………………
…………………
……………
昨日のことを知らせ終えたところで、少しかたい(雀の涙程度)雰囲気から緩い感じにジブリールさんが話しかける
「それで、今日も本を読んで帰りますか?」
「それもいいんだけど、人魚姫さんと話したいことがあって」
「なるほど。人魚姫さんでしたら....っあ」
「?どうしたのジブリールさ─」
『わぁっ!!』
「うぁあ!?」
ジブリールさんが途中で話すのをやめたことに疑問を思っていたら、誰かに後ろから耳元で声をあげられる。驚いた僕は慌てて後ろに振り向くと
『クスス....驚いた?』
「に、人魚姫....さん」
僕が驚いたことにクスクスと口に両手をあてて笑っている人魚姫さんがいた
「相変わらずイタズラ好きですね、人魚姫さん」
『だって楽しいから』
「子どもか!あなたお姫様でしょうが!?」
『お姫様だからって、自分の性格や趣味を奪うのはどうかと思う』
「それとレディになるとか言って、それに似合わない言動よくしてるアリスには言われたくないかな....」
「なんでしれっとリオは人魚姫の味方をするの!?」
僕が庇わなかったことにショックを受けるアリス。そのあと、それを見て揶揄う人魚姫さんと軽い争い(アリスの一方通行だけど)
本の中で想像してた人魚姫とは随分と違うなぁ....
『それで、リオは私になんの御用?』
「え?あ、そうだった」
アリスと人魚姫さんのやり取り見てたらすっかり忘れてた
「人魚姫さんはどんな物語を歩いてきたのか気になって。今までの<欠片>さんたちは自然と自分の物語を語ってくれたからさ」
『あぁ、なるほどね。いいよ〜、聴かせてあげる!王子様の為なら泡にだってなる一途な人魚姫とは違う、私の物語を─』
人魚姫さんは懐かしそうに自分が歩んできた物語を語って、僕はそれを楽しく聴いたのだった
*******
数日後
*******
人魚姫さんの物語を聴いてから数日後の日曜日の朝
「ごめんなさいねリオくん。今日も帰ってくるのは遅くなりそうだわ」
「ううん。大丈夫だよ!姉さんが頑張ってくれてるんだから」
「っ〜〜!!!ありがとうリオくん!!」
「っぅわぁ!?...っもう苦しいよ」
仕事に行くリン姉さんを玄関で見送ることと、その時に抱きつかれるのは小学一年生の頃は恥ずかしかったけど、今では慣れたなぁ
「それじゃあ、リオくんも今日はトモヨちゃんとサクラちゃんと楽しんできてね。行ってきます!」
「うん。行ってらっしゃい!」
─ガチャ....バタン
「っよし!お昼になる前に掃除とか諸々片付けよう!」
「そうね。やる事やってから思う存分楽しみましょ」
リン姉さんを見送ったあと、僕とアリスはテキパキと掃除や洗濯とかの家事を終わらしていく。普段の日曜日は本を読んだり勉強したり、その合間に家事をしてのんびりする日なんだけど....今日は少し違う
「にしても今日は晴れてよかったわね」
「うん!絶好のピクニック日和だね!」
そう。今日はトモヨとサクラとピクニックをする日!もう約束した日から今かと今かと待ち侘びてしまうくらい楽しみなピクニック!しかもトモヨはお弁当とかお菓子とか作ってきてくれるらしいしね!
「あっ、僕も何か持って行った方がいいかな?」
「まぁ何かしら持っていくべきなんじゃない?食べ物とかトモヨが用意してくれてるし。それ以外のものとか」
「それもそうだよね。じゃあ─」
─プルル....プルル....
「誰だろ?」
アリスと話しながらでも手を休めず掃除をしていると、家の中に電話の音が響き渡る。僕は一度掃除の手を止めて電話に出る
「はい、もしもし。アマノです」
<....っあ、もしもしリオくん?さくらです>
「どうしたのサクラ?」
<実は....─>
電話をかけてきたのはサクラだったけど、なんだか声に元気がない....何かあったのかな?内心そう思いながら僕はサクラの話を聞いていく
…………………………
…………………
……………
「そっか、それなら仕方ないね」
<ごめんねリオくん....楽しみにしてたのに。なんなら知世ちゃんと2人だけで─>
「それはヤダ。大切な親友の一人を抜いてなんて尚更楽しめない。この埋め合わせはまた改めて、ということで!」
<....っうん、分かった。ありがとうリオくん!それじゃあ>
─ガチャ....
サクラから聴いた話を簡単に言うと、今日のピクニックは行けないとのこと
理由はこの前、友だちのピアノコンサートの応援に行ったときに、サクラは自分の当番をサクラのお兄さんに変えてもらったらしい。それでその条件として、今日の日曜日の当番は全部サクラがやることに....
というのをすっかり忘れていたみたいだった
「もう。そんなことを忘れているなんて、サクラってば抜けてるわね」
「確かにそうかもしれないけど、すごく反省してるみたいだし責めないであげてよ」
「えぇわかってるわ。電話越しでもそれが伝わるほどだもの。本人も理解してるしこれ以上は言わないわ....でも、今日の予定はどうするの?」
「ん〜。そうだねぇ....」
サクラと電話を終えてから数時間が経って、お昼にやる予定の家事も全部終わらせちゃってるからなぁ。そうなると今日は一日中ずっと読書でも─
「言っておくけど、今日一日中ずっと読書はなしよ?」
「あぅ、やっぱり?」
「当たり前よ!こんなにもいい天気なのだから外にも出るべきだわ!!」
「あはは、そうだね。じゃあお昼ご飯を食べたら外にでも─」
─プルル....プルル....
「あ、電話だ」
「なんだか今日、電話多いわね」
「たったの2回でしょ」
まぁ、電話が短時間に2回も鳴ることは珍しいけどね
そんなことを思いながら、僕は受話器をとる
「はい、もしもし。アマノです」
<もしもし、大道寺です>
「トモヨ?どうしたの」
<サクラちゃんのこと、もう聞きました?>
「うん、聞いたよ」
<そのことで少し提案がありまして>
「提案?」
*******
三人称side
*******
知世からの提案─さくらの家に行き家事の手伝いをして、そのあと遊ぼうという案。それに賛成したリオとアリスは、家を出て予め決めていた集合場所である公園前に来ていた
「あっ、トモヨおはよう!」
「おはようトモヨ」
「おはようございます。リオくん、アリスちゃん」
「それじゃ、揃ったことだし行きましょ」
「うん」
「ええ」
知世が来て全員(といっても3人だが....)が揃い、アリスの言葉をきっかけにリオたちは歩き始めた
「ねぇ、トモヨは何を持ってきたの?その荷物、お弁当だけじゃないよね?」
「はい。さくらちゃんに着てもらう衣装を持ってきましたの!本当なら森林公園で<さくらちゃん、ジャングルを舞う!の巻>を撮ろうと思っていたんですが」
「どこへ行ってもソレを貫けるのは凄い意志を感じるわね....」
「まぁ、それがトモヨだからね」
「そしてその後に、リオくんを
「モ、モデルかぁ....」
「慣れてるんだからいいじゃないの」
「っそうだけどさ」
モデルという言葉に戸惑うリオに、何気なく返すアリス。何故慣れてるのかは、また別の機会で話すとしましょう
そんなこんなで世間話をしながら、さくらの自宅へとたどり着いたリオたち
─ピンポーン....
「....あれ?」
「出ないわね」
「念の為に、もう一度押してみては?」
「うん」
─ピンポーン....
「は、はーい!」
一度目は何も反応せず。知世の言葉でリオはもう一度インターホンを鳴らすと、家の中からさくらと思わしき声が聞こえてくる
「あ、さくらちゃんの声ですわ」
「一回目で反応がなかったのは、何か手が離せなかった状況だったのかな?」
「そうかもしれないわね。現に返事が聞こえて数秒経ったけど、出てくる気配がないわ」
─ズゴゴゴゴ...
「「....」」
「気の所為かしら?サクラの家から妙な音が聞こえるのは」
「勝手に玄関の扉開けていいかな?」
「さくらちゃんにもしもの事があっては行けませんから、開けましょう」
「よし」
─ガチャ
さくらの家の中で一体何が起こっているのか。リオたちは中にいるであろうさくらとケルベロスを心配しながらも、玄関の扉を慎重且つ素早く開けた。そして玄関の扉を開けた先の光景には─
「─あ、あの...これは、そのっ!」
「まぁ...!」
「サクラの家はジャングルだった?」
「そんな訳ないでしょ!」
「って、知世ちゃんにリオくん、アリスちゃん!?」
家の中を埋め尽くす程の木の枝に縛り上げられているさくらとケルベロスがいた
最後まで読んで頂きありがとうございます!
人魚姫の<運命の書>は、他の欠片たちと一緒に番外編にて書こうかと思います。いつになるかわかりませんが
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Repage15 変わりゆく木之本宅
更新は、相変わらずの亀速度
グリムシリーズの最新作、プロジェクトグリム。キャラデザインが次々と上がって行って、今からでも楽しみですなぁ
本編どぞ!
「助けてくれてありがとう!」
「いやぁ〜、ほんまに助かったわ」
「いえいえ」
「偶然とはいえ、サクラの家に来て正解だったね」
「そうね」
さくら家の中(一階部分)が一面木の枝で埋め尽くされ、それに呑み込まれ枝に縛り上げられていたさくらとケルベロス
今は、そんな2人をさくら家に訪問しに来たリオとアリスに知世が救出したという状況
「それにしても、どうしてこんなことに?」
「庭のお手入れですか?」
「いや、こんな庭のお手入れがあってたまるもんですか!?こんなことになる原因なんて限られてるわよ!」
「ということは、欠片かクロウカードだね」
「うん。あ、でも今回はクロウカードだけだと思う!ちゃんと確かめたから」
「あら、そうなのね。それでケルベロス、検討はついてるの?」
「あぁ、これはクロウカード<
「うん!」
先程まで蠢いていた樹は鳴りを潜め大人しくなっている。その時間を無駄にする訳にはいかないと、ケルベロスはさくらに封印するように言う
頷いたさくらは、クロウカードの使用、又は封印する際に使う<闇の杖>の仮の姿<闇の鍵>を取りだし、呪文を唱える
「
闇の力を秘めし鍵よ 真の姿を我の前に示せ
契約のもと さくらが命じる
さくらの足元にリオとは別の魔法陣が浮かび上がる。呪文を唱えると<闇の鍵>は光だし徐々に姿を変え、やがて<闇の杖>となった
「
汝のあるべき姿に戻れ
クロウカード!
さくらが<闇の杖>を使い封印の呪文を唱えると、家の一階部分を埋め尽くしていた木の枝は光り輝きながら廊下奥の扉の方へと縮み消えていった
「素敵ですわさくらちゃん!」
「本当にさくらの勇姿を一秒たりとも見逃さないわね」
「カメラ取り出す動きすら見えなかった気がするんだけど....」
「ふぅ....。ほぇ?」
封印の呪文を唱え終わったさくらは一息ついたものの、周りを確認して違和感を感じた。その様子を知世はいち早く気付き声をかける
「どうしました?」
「カードがないの....」
「そんなはずないやろ。その辺に落ちとるんとちゃうか〜」
本来<クロウカード>は封印すればカードとなり、所有者と看做した者の手元にひらりと飛んで来るが、今回は何故かそれがない。ケルベロスは辺りを探してみるも、それらしきものは見当たらない
「木の枝が消えていった方向にあるとかは?」
「確か、奥の部屋の方だったわよね」
「そっか、地下室!」
「よっしゃ。ほんならカード取りに行こか!」
「うん!」
─ズゴゴゴゴ...!!!
─チュチュチュ!!チュチュチュ!!
「「「「???」」」」
「....ネズミ?」
クロウカードがあるであろう地下室へとリオたちは歩き出す。しかし突然の地響きと、地下室から出てきた複数のネズミに、困惑し足を止めてしまう
ネズミが地下室から別の部屋へと移動した後、地下室から封印して消えていった筈の<樹>がリオたちへ襲いかかってきた
「ほぇえ!?」
「ちょっ、クロウカード封印したんじゃないの!?」
「わからんけど、このままやと不味い!さくら、みんなと上に逃げるで!!」
「う、うん!知世ちゃんたち、こっち!」
「(さっきのネズミたち...)」
「リオ!早く行きましょ!」
「う、うん!」
ネズミのことで後ろ髪を引かれながらも、リオはアリスに促され二階へと避難していった
『あぁ....綺麗なお部屋が』
*******
リオたちは二階へ避難するも、<樹>は止まらず迫り来る。それを見て、屋根裏に続く階段を上る。リオを最後尾にして上りきったところで後ろを振り返ると、<樹>は階段の入口付近で成長が止まっていた
「止まった?」
「一応、ひと安心ってところかしら」
「...せやな、でも油断はできん。またいつ動き出すかわからん」
「じゃあ、その前に封印しなきゃ!」
「では、そうと決まれば!!」
…………………………
…………………
……………
「着替え終わった?」
「う、うん」
「もう入っても大丈夫ですわ」
クロウカード封印するにあたって、もはや恒例となりつつ─というかもうなってる─知世作のコスチュームに着替えるさくら。その際、リオはその場から離れようとしたが、他の部屋が樹によって行けないため屋根裏のベランダで待っていた
そして知世たちの合図で、屋根裏の中へ入るリオ。入った先には、着替えたさくらを撮影する知世とそれに便乗するケルベロス、見守るアリスという光景が広がっていた
「ではリオくんも!」
「え、僕も?」
ということで、未だに私服のままのリオも着替えることに
そしてリオが着替えている間に、何故さくらの家がこんなことになったのかをさくらとケルベロスから聞いていた。それを説明すると
家族が出かけた後、さくらはケルベロスと協力して家の掃除や洗濯をしていた。その途中でさくらはリビングでクロウカードをカードの状態で発見した。ケルベロスに報告しようとしたものの返事は返ってこず後回しに
そして地下室で掃除をする時に電話が入り、クロウカードをそこに放置して電話を出て、そこから家を出て数時間。帰ってきたら妙な音が...で今に至る
「あぁ!!?」
「な、なんや!?まだ説明しとる途中やぞ!」
「実はケロちゃん....クロウカードもう一枚見つけてたの!」
「なんやと!?ってことはそれも名前書いてないんか!?」
「う、うん....」
さくらから告げられる新事実に戸惑うケルベロス。そこに先程の言葉で疑問に思ったアリスが口を開いた
「ねぇ、なんでカードに名前書く必要があるの?」
「クロウカードは封印した後、持ち主と認められた者が名前を書いて初めて持ち主になるんや。名前を書かずに放置したら、また封印は解かれて逃げ出すことになる」
「それが今の現状と重なるわけね」
「ご、ごめんなさい」
「まぁ、過去をとやかく言ってもしゃあない。今後は気ぃつけぇな?」
「はーい」
「着替え終わったよー」
話もひと段落したところで、タイミングよくリオが着替え終えた姿でさくらたちと合流する。因みに、リオも着替えてる間はしっかりとケルベロスの話を聴いたりしています
「よし。ほなリオも着替え終えたことやし封印しに行こか!」
「(....これ着るの2回目だけど、しっくり来るなぁ。流石はトモヨ)」
全員の準備が整ったということで、リオたちは屋根裏部屋から地下室へと移動していくのであった
*******
リオside
*******
「うわぁ...二階まで樹で埋め尽くされてる」
「一階に行くのすら苦労しそうやな」
「さっき通った廊下とはまるで別物だわ」
「トモヨ大丈夫?手貸そうか?」
「えぇ、今は大丈夫ですわ」
「必要になったら遠慮なく言って!」
「はい。ありがとうございます」
僕たちはサクラを先頭に樹を掻い潜りながら二階廊下をゆっくりと進んでいく。関係ない話だけど、下手なジャングルよりもジャングルになったこの家。それをよくまぁロングスカートで...しかも片手にカメラを構えながら歩けてるねトモヨ
「よしっ!やっと階段まで行けた」
「ほんならこの調子で進むで!」
「うん!」
『はぁ....流石に樹が邪魔だわ』
「っ?」
「リオくん、どうかしました?」
「なにかあったの?」
「あ、いや。なんでもない」
何か声がしたようが気がしたけど、皆は反応なかったし気の所為かな?
気の所為とは思うも頭の片隅に置いておく僕は、後ろにいるトモヨとアリスにそれとなく誤魔化す。その後、樹に注意しながら階段を降りていっているサクラたちのあとを追った
「うっわ寒!なんやこれ!!」
「ほぇ〜!雪が積もってる!?」
一階に降りた僕たちが目にしたのは、さっきまでの樹に埋め尽くされた廊下や部屋。であることは変わりないけど、何故かそれに加えて床や樹に張り付くように積もる雪?のようなものだった
「これは雪ではなく、霜ですわね」
「空気中にも霜....というより氷の結晶が舞っているわね」
「私の家、目を離した隙に色々変わりすぎだよ....」
「これ、もう一枚のクロウカードの仕業?」
一階に降りた僕たちが目にしたのは、部屋や廊下を埋め尽くす樹に満遍なく張り付いた霜。そして空気中を舞う結晶だった
この光景を見たみんなは戸惑ったりしているけど、僕はこれもクロウカードなのかケロちゃんに聞く
「いや、確かにこんなこと出来るクロウカードもおるけど、それにしては違和感があるな」
「違和感って?」
「わいの知ってるカードやったら、一面氷漬けか吹雪やで。それやのに霜が降りてるだけってのは、ちょいと弱いで」
ケロちゃんが何を言いたいのかを察した僕は、食い気味にケロちゃんにある事を聞いた
「っじゃあ、欠片が関わってるってこと?」
「かもしれんな。ホンマにリオたちが来てくれて助かったわ」
「そっか。欠片はリオくんにしか回収できないもんね」
「僕がこの世界に来なかったら、ジブリールさんどうしてたんだろ?」
もしかしたら、別の人を選んでたのかな?
「ほな、気を取り直して先に進むで!」
「三人とも、足元に気をつけなさいよ」
「「「うん(はい)!」」」
─パキパキッ!
「な、なに!?」
霜が降りた床や樹に手足が滑らないように進もうとすると、何処からかはわからないけど、何かヒビ割れのような音がした
突然のことに、サクラはトモヨに抱きつきながら周りをキョロキョロしている
「っ!....先程の音は、恐らく樹に罅が入った音では?」
「?....うわっ、ホンマや。」
「しかも、そこだけじゃなくて、全部の樹に罅が入ってるね」
「あぁ、うん。嫌な予感がするわ」
「い、嫌な予感って?」
「さくら考えてみ?霜が付いた樹に罅が入って、その罅は今も大きくなっていってるっちゅうことは?」
─バキバキッ!
「樹が壊れる....!?」
「みんな伏せて!!」
樹に大きく、そして深い罅が広がり、今にも壊れそうな程になった。アリスの声にみんなが反応して、素早く身体を守るよう屈めたあと─
─パッシャァアン!!!
家を埋めつくしていた樹が、張り付いた霜と氷の結晶と共に、砕け散った
最後まで読んで頂きありがとうございます!
アニメ版カードキャプターさくらとは違った展開に勝手に進んでいきました!これからどうなってしまうのか、自分でもわかりません!頭では構想してるけど、また勝手に動くかも
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Repage16 樹の水やりは程々に
みなさま。お久しぶりです。空白の語り部です
夏休みに入ったから更新頻度も上がると思ったでしょう。しかし蓋を開けてみれば、仕事で忙しくて家に帰ってもクタクタでその余裕なし。結果、こんなに空いてしまったのです
まぁ、こんなに日が空くのは初めてではないですので皆さんは「またか」と呆れてると思います
では、本編どぞ!
─パッシャァアン!!!
木之本宅を埋めつくしていた樹が、張り付いた霜と氷の結晶と共に、砕け散った
「みんな、大丈夫?」
「は、はい。大丈夫ですわ」
「びっくりしたぁ〜....えっ?ほぇえ!?」
「なんや、どないしたさくら?って、おぉ....」
身を屈めていた状態を解いたリオたちは、誰も怪我がなかったことに安堵の息を吐く。しかし、さくらは自分の家の状況に驚愕していた
「あら。サクラの家は樹がなかったらこんなにも綺麗なのね。細かいところまで汚れを落としてるじゃない」
「う、ううん。普段は汚くはなくても、こんなに綺麗ってわけじゃないよ?」
「なんか、わいらが掃除した後よりも綺麗になっとるなぁ....どういうことやこれ?」
樹で埋め尽くされていた廊下や部屋が、先程の爆発でかは不明だが、一片の塵も残さずにキラキラのピカピカになっていた
「さっきの樹に付いてた霜も爆発も欠片が原因なら、その欠片は綺麗好きなのかもしれないね」
「でも爆発で綺麗にするのは心臓に悪いわよ....」
「何にしても、まずはクロウカードがさきや。また樹が生えだしたら溜まったもんやないで!」
─コツ...コツ...
「....っ足音?」
「さくらちゃん。他にどなたかいらっしゃるんですか?」
「う、ううん!知世ちゃんたちが来るまで私とケロちゃん以外誰もいないよ!?」
「じゃあ─」
突然響き渡る足音。この家にはさくらたちしかいない、しかしさくらたちは誰一人歩いたりしていない。つまりはなるはずのない音。その音に困惑する
一同が困惑している間にも、足音は段々とこちらへ近づいてくる。そして─
『■■■?....って、あら?』
何処までも透き通るような声をした足音の主であろうモノが、隣の部屋から出てきた
その姿は、明確に捉えることはできない影のようで、正しく<無名>と成り果てた<欠片>だった
『どちら様?』
「いやそれはこっちのセリフやわ!?」
「なに自分の家に訪ねてきた他人みたいな感じに言ってんのかしらねこの欠片は!?ここあなたの家じゃないわよ!!」
『知ってる。でも仕方ないじゃない。気が付いたらここにいたんだから』
「(気が付いたらここに....ってことは最近目を覚ました無名なのかな?なんか、いままでの欠片の中でも穏やかな人?だなぁ)」
突然知らない場所に居たにも関わらず落ち着いている雰囲気を乱さない。その理由は、気品な性格か、マイペースなのか....
『それよりも、さっきの樹はなに?聞いた話では浸水した地下室から生えてきたらしいけど』
「それよりもってなんやねん!....って、地下室が浸水?」
「えっ、でも私が最後に来たときは水の一滴もなかったよ」
「地下室にクロウカードを2枚置きっ放しにしてたんでしょ?きっと残った1枚の仕業よ」
「やろうな。ってことはさっきのはジャングルみたいになっとったのは<樹>ともう一枚が影響し合ってたっちゅうことか。こりゃ早く封印せんとな。時間経てば、またジャングルなるで」
欠片から知らされる地下室の現状に、アリスは<樹>とは別の方のクロウカードと予想付けた。それをケルベロスは直ぐに肯定し、いち早く封印するよう促す
『そう。そのクロウカード?の仕業なのね。それじゃ私も協力するわ』
「え、いいの?」
「こっちとしては助かるけど....」
『えぇ!このお家、私はすごく気に入ってるの。ここに住む家族が押し付ける事せずに協力してお家の事をする。そんな家庭を守れるなら是非とも協力したいわ』
「わぁ〜!ありがとう欠片さん!」
「(本当に今までの欠片とは全然違う....何も宿ってないから?でもそれだと<赤ずきん>や<マッチ売りの少女>が当てはまらない....ん〜?)」
今まで回収してきた欠片の中では<マッチ売りの少女>が一番危害を加えて来なかった。しかし、それでもリオたちを幻覚で惑わせた
今回の欠片は友好的に会話をし、果ては協力を惜しむことなくする。この事にリオは違和感を感じずにはいられなかった。だがそう考えた矢先に、<赤ずきん>という存在を思い出してひとつの可能性を見つける
「(<赤ずきん>といえば....ウソを言ったジブリールさんに対して襲ってきたんだっけ?どんなウソを言ったのかは知らないけど....それで、特にウソを言ってない僕やアリスには襲ってこなかった)」
初めて図書館へ訪れた日、諸々の説明を受けている時に突如現れた無名状態の<赤ずきん>。出会って早々ジブリールに向かってドカンドカンと襲ってきたが、リオたちには一切襲わなかった
「(もしかして、無名状態の欠片にウソを吐いたら襲われる?でも、それなら<人魚姫>のときがわからないや。ウソを吐いてなくても襲って....いやアレはクロウカードに宿ってたから?え〜?)」
謎が謎を呼ぶ。考えに考え込むリオは、知恵熱が発生する程に欠片事情について考察していた。しかし、そんなリオに後方からずっとカメラを構え撮影している知世が声をかける
「リオくん」
「っ!....なに?トモヨ」
「ひとまずクロウカードから解決しませんか?欠片さんのことは、その後ということにして」
「そうよリオ。それに欠片のことは、私が見張るわ。変な動きをしたら真っ先に教えてあげる!」
「....そうだね、わかった。ありがとう二人とも!」
2人の言葉を聴いたリオは、深く考えることをやめてクロウカード回収のサポートへ思考を切り替えたのだった
*******
「そういえば、欠片さんはどうして地下室が浸水してると知っていたんですか?」
「確かにそうね。誰かに聞いたみたいな事言ってたけど?誰から?」
『ネズミたちから聴いたの。私が目覚めたときから色々教えてくれてるわ』
「なるほど。あの時ネズミが走ってきたのは、欠片さんに知らせる為だったのか....」
「ナチュラルに動物と話せることがわかっても全然動じへんな....」
「まぁ、リオくんとアリスちゃんは<不思議の国のアリス>の世界から来たし、普通に動物と話せてたのかも...って、あ」
さくらを先頭に地下室へ向かっている途中、後方のリオたちが欠片と話していた。現実離れした会話を聴いていたさくらは、階段を降りた先に床が水に浸っているのが視界に入った
─パラパラパラ
「うわっ、ホンマに浸水しとる」
「これ、本は大丈夫なのかな?」
「いまは大丈夫でしょうけど、放っておくと本まで水浸しね」
「あれ?樹がまだある」
『ごめんなさいね、さっきのは一階部分だけ綺麗にしたの。二階部分は多少何とかなってると思うけれど、根元までは流石に手間で....』
「う、ううん!それでも凄く助かったよ!」
『そう?それならよかったわ─』
一階部分の樹を霜漬けにして綺麗さっぱり消し去った欠片だが、根元まで霜漬けさせるのは今後の行動等を考慮して体力を温存させたようだ
─パラパラパラ
「それにしても、先程からなっているこの音はなんでしょう?」
「雨の音のようにも聞こえるけど、ここ地下室だよね」
「でもクロウカードなら部屋の中でも─あ!」
「サクラ?」
地下室に入ってきた時点から聞こえてくる、浸水した床にしとしとと鳴る雨音のようなもの。リオは室内なのに雨が降るのか?という疑問を抱いている。しかし、クロウカードならそんなことも可能だろうと、さくらは言おうとしたが、その途中に、とあるものを発見した
『キュ~!!』
─それは、雨を降らす小さな雨雲に乗るピエロのような衣装を着た小さな少女だった
「やっぱり<
「前回も水だったのに、今回も水が関わるのね....」
「少なくともクロウカードやったらもうおらんから安心せい。それよりさくら!」
「うん!」
ケルベロスに促され、<雨>の前に出てくるさくらは声を張って<雨>の注意を引く
「イタズラはそこまでよ、<雨><樹>!!」
『?....キュ~♪』
「サクラ、来るわよ!」
パラパラパラ...!!
「っぅ?....なんだ、大したことないや─ドバー!!─うっ!?」
さくらのもとへ襲いかかる?<雨>だが、所詮は雨で脅威ではない。と思っていたさくらに、水いっぱい入ったバケツをひっくり返したかのような量の雨が降ってきた(もはや雨の領域ではない)
その雨に堪らず地下室中で逃げ回るさくら。そして、それを楽しく笑いながら<雨>は追っていく
「さくら、なにやっとんねん!?はよ封印や!」
「そうは言われても〜!!」
「なにかでカードを足止めできればいいんじゃない?」
「あっ!じゃあさっき欠片さんがやった霜漬けで少しは足止めになる....かも?」
前回の<水&人魚姫>回収を参考に、同じことをしようと欠片に頼もうとするリオ。だが彼が振り返った先には知世しか居らず、欠片の姿はなかった
「す、少し目を離した隙にあんの欠片どこ行ったァ〜!!」
「口調荒れすぎだよアリス」
「私たちがクロウカードの方へ集中していたときに移動したのでは?それまではずっとカメラにリオくんやさくらちゃんと一緒に映っていましたから....」
「そ、そっか(常に全員をカメラに収めるのって凄く難しそうなんだけど....)」
欠片の姿が消えたことで、いち早く欠片を探したいところ。しかし、現在クロウカードと戦っている?さくらに何も言わずに行くのは要らぬ心配をかける。リオはさくらに一声かけようとする
─ゴゴゴゴゴ....
「リオくん!通路がっ!?」
「え?....っ樹で遮られてる!!」
「もう!最悪なタイミングで成長するんじゃないわよ!?」
欠片を探そうと行動に移す前に、リオたちが来た道が樹によって遮られていた。しかも通れる隙間もないくらいにギッシリしている。そのため欠片を探しに行こうにも、先ずはクロウカードを封印して樹をなんとかしなくてはならない
「(あれ?クロウカードが出す樹って、こんな色だっけ?)」
「リオ!手が空いてんやったらちょいと手伝ってくれ!」
「あ、うん!」
気になることはあるが、今はクロウカード優先として頭の片隅に置いたリオ
「で、なに手伝うの?」
「確かリオが持つ欠片の<人魚姫>は水を操るんやったな?」
「うん」
「その欠片で<雨>の雨の水を利用して捕まえてほしいんや。さくらの<水>もできるにはできるんやけど、逃げるのに必死で余裕なさそうや」
「確かに。樹もさっきより多くなってて逃げづらそうね」
「ですが、所々で蔓のようなものが混ざってませんか?」
「<樹>は蔓も出せるから、別に変なことやないで。まぁ、それで足場になる樹とならん蔓があってややこしくなるやろうけど....」
「あ、あれ蔓だったんだ」
先程の気になることは案外早めに解決した?リオであった
一方さくらは、樹を登ったり掻い潜ったりしながら<雨>から逃げている。途中で蔓に足を取られて転びそうになる姿は、とてもカードを使用できる余裕はなかった
「これは、呑気になってる場合じゃないね....」
「時々さくらちゃんが通る場所に突然樹や蔓が成長してきますから、とても危険ですわ」
「いつ怪我してもおかしくないわね」
「?....っ!
「ドンと任せて!
魔法陣から放たれるのは、幸運か不運を引き連れる人魚の姫が操る水。その水は、誰もが虜になるほどに美しい
放たれた水は<雨>の周りを取り囲み、<雨>の雨水をも利用して閉じ込める
「よしっ!捕まえた!」
「ようやったでリオ!今やでさくら!!」
「ありがとうリオくん!!
リオとさくらの連携により、本棚の本が濡れる前に<雨>を封印することに成功した。<雨>が降らせた雨によって浸水した地下室も、浸水する前に元通り
「よし!あとは─」
残るはさくらの家をジャングルにした<樹>のみ。気を切り替えて<樹>を封印する為に構えるさくらとリオ。そして、彼らの前に樹を操っていた<樹>が初めて姿を現した─
『ふぁあ〜....あ、ようやく終わった?』
─聴いてる此方まで眠くなるような声とゆったりとした口調で....
最後まで読んで頂きありがとうございます!
知ってますか?<樹>って、さくらに封印されてから暫くは出番がないらしいですよ。まぁ<雨>はそれ以上にないんですけどね
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Repage17 <樹>の起床
えー、皆さん。
ハッピーハロウィン&メリークリスマス&あけましておめでとうございます
とうとう出来ました続きが....
言い訳がましくはありますが、一応続きは最初出来てたんですよ?でも後からなんか、違うなと思って書き直してたらいつの間にか....
まぁ!良しとしてください!これからは、ひと月に1本....ふた月に1本と、頑張ります....はい
本編どぞ
『ふぁ〜....少し眠ってた』
<
「凄いマイペースなカードさんだね....」
「あの騒動の中で寝てたなんて、呑気すぎでしょ」
「....っ」
「どうしましたリオくん?」
「な、なんでもないよ!」
<樹>の姿を見て褒めと辛辣な言葉を出すさくらとアリス。しかし、リオだけは<樹>の姿を見てから終始無言。さらに手足は微かにだが震えていた。それに気付いた知世は心配してリオに一声かけるが、リオはなんて事ないように返す
「(なに、あのカード。笑顔なのに笑顔って感じがしないっ....それに、なんだか怖い)」
「油断したらアカンでさくら!そいつはもう<樹>やない!」
「えっ!?」
「クロウカードじゃない?どういうこと?」
ケルベロスが突然放った言葉は、ここにいるリオたちを驚愕させるのに充分だった。動揺するリオたちの代わりにアリスは、ケルベロスに説明を求める
「<樹>は温厚な性格でな、相手を傷付けるようなことはせん。それやのにコイツは淡々とさくらを追い詰め傷付けた。<雨>に影響されてもここまでならん」
「そっか。だからカードじゃないって言ったんだ」
「おう。それにクロウカードは基本的に言葉を出さん。言葉を出せるのはおるっちゃおるけど、その中に<水>や<樹>はおらんのや」
「なるほど。では、このクロウカードさんは」
「あぁ。前の時と同じ─いや、逆やな
そのクロウカードは
<欠片>に取り込まれとる!!」
*******
『よく見破ったわね』
「フン。クロウカードを守護するワイやからな!クロウカードのことならなんでもお見通しやさかい、カードの状態もすぐに見破れるわ!!アッハッハ!」
「調子にのってたら足下掬われるわよ....」
<樹>を取り込んだ欠片は、それを見破ったケルベロスに対して余裕の笑みを浮かべながら褒める。そんな欠片にケルベロスは鼻高となって意気揚々とし、それをアリスは呆れながら忠告していた
「じゃあクロウカードを封印するのは前と一緒?」
「それでええと思うで。やけどクロウカードと欠片の立場が前回と逆やから、そこだけが不安やな」
「そっか。前は<人魚姫>が<水>に取り込まれてて、今は<クロウカード>が<欠片>に取り込まれてるもんね」
「前は偶然回収できただけやったかもしれへんし。そもそもカードか欠片が、もう片方に取り込まれるなんて現象自体初めてやからな。わからんことが多いわ」
「そうですわね。元々2つは別々の世界のものなんですから、不明な点が多い方が当然ですわ」
「まぁ、分からない事は次第にわかっていくわよ。今はあまり気にせずに目の前のことをやりましょ!っというか....」
『あは!私を無視して話し合いなんて....
─いい度胸だ....なァっ!!』
─シュルルル!!!
「「「!!?」」」
「ほら襲ってきた!!逆によく耐えてたわね!?」
長い時間話し合っていたリオたちに、流石に待ちきれなくなった欠片は半ば不機嫌そうに妖しげな笑い声をあげる。そして、全員に向けて茨のように刺々しい蔓を伸ばして襲いかかると─
「っうわぁ!!」
「「リオくん!?」」
「知世っ!アリスをお願い!」
「ちょっ、待ちなさいリオ!?」
─思っていたが、何故か蔓はリオだけを襲う
手元付近を狙っていた蔓を咄嗟に避けたリオ。しかし、欠片は間髪入れずに襲いかかる。それを見たリオは、肩に乗っていたアリスを少しでも安全な場所へと、本人の声を無視して知世の方へ投げる
「っ大丈夫ですかアリスちゃん?」
「えぇ。もうリオったら!私の安全よりも自分を優先しなさいよ!あのお人好しが!!」
「てかなんでリオばっか狙っとるねん!?」
「とにかくリオくんを助けないと─きゃあ!」
疑問に思う点はあれど、それを隅においてリオを助ける為に動こうとするさくら。しかし、足を動かす前に欠片がさくらたちの目の前に蔓を張り巡らせる
『ふふ、下手なことは控えることね...』
「クッ!あのマイペースメンヘラめぇ....」
「どうしよう。これじゃあリオくんが....!」
「どうにかここから出ないとですわね」
「やけど、どないすんねん。今さくらが持っとるカードだけやとどうにも出来んで!?」
助けに行こうにも蔓の檻から抜け出すことが出来ず、かといって檻の中から何か出来ることもない。手詰まり状態でいるアリスたちは、悶々としながらリオの様子を見るしかなかった
*******
リオside
*******
─シュルッ!
「っと!」
あれから数分、ずっと欠片がクロウカードの力を利用して襲ってきてるのを避けてる。流石に疲れてきたから、なにか打開策を考えたいんだけど...
『考え事?随分と余裕なのねっ!』
シュッ!
「うっ!」
ダメだ。考えてたら動きが鈍って今みたいに棘の蔓を受ける。あの欠片、僕の動きを完全に読んでるみたいに動いてくる....!
『あは....あら?』
─カチカチ....
「えっ?」
僕が焦っているのを見て笑う欠片にイラッとしていると、突然 欠片が出す蔓が霜にまとわりつかれ動きを止めた
って、霜?
『はぁ....はぁ....っそれ以上、この子を虐めないで』
『あはは、もう抜けてきたの?』
僕と蔓の檻に捕まっているみんなは、クロウカードを取り込んだ欠片とは別の声のする方へ視線を向ける。その方向は僕の後ろで、そこにはここへ来る前まで一緒にいた欠片がいた
「あれはさっきの欠片か!」
「今までどこにいたのよアイツ!?」
「というか、なんだか欠片さん疲れてる?」
「もう一方の欠片さんの言葉からだと、私たちと離れたときに何かあったんでしょうか?」
アリスたちが捕まってる方へ視線を向けると、そっちも霜が蔓の檻にまとわりついていた。それはともかく、アリスは落ち着いて欲しい。さっきから声荒らげすぎてる気が─
ってそうじゃないや。さっきまでいなかった欠片が戻ってきたけど様子がおかしい。トモヨが言ったのが当たってたら、様子がおかしいのも急に僕たちの前から消えたのも頷けるかも
『一応、キツめにやっておいたんだけど....流石ね』
『っ御託はいいわ。早くこんな事やめてちょうだい。みんなを解放して....人様の家で暴れないで』
『ん〜....それもそうね!マナーがなってなかったわ』
「え?」
後ろにいた欠片は僕を守るかのように前へ出て、敵対する欠片へと話しかける。あの棘の蔓でかなり強く縛られていたのか、彼女はかなり消耗していた
そして僕は、彼女の要求に欠片が素直に聞き入れてくれた事に対して、思わず声を上げてしまった。なんか、思ったよりも軽く受け入れてくれて拍子抜けというかなんというか....
『....随分と素直ね』
『えぇ、私も迷惑はかけたくないの。さっきのは確かに周りへ被害が出そうだったものね。次からは気をつけるから─』
そのまま欠片は穏やかな雰囲気を崩さないままに片手を掲げはじめる。その動作をみた僕はなにか悪い予感がする。直ぐにここから離れた方がいいと頭ではわかっているのに、何故か身体が動かなかった
『っ逃げて─』
僕の前に立つ彼女は何かを察して振り返ってくれる。彼女をおいて逃げるのはイヤだと思い動こうとするけど、やっぱり身体が動かない。しかも口まで動かせなくなってる....まるで全身が痺れているかのようだった
『─眠りなさい....』
反撃することも逃げることできず、何が起きてるのかさえはっきりと分からないまま、僕は眠るように意識を失った
*******
三人称side
*******
『ふふ....おやすみなさい』
そう言って笑う欠片の前にはリオだけでなく、さくらや知世にケルベロスまでもが眠るように気を失い倒れていた。しかし、その中でも同じ欠片である彼女だけは未だに意識を保っている
『どうして、襲ったりしたの....』
『あらら。やっぱり起きてた?』
『答えてっ...!私たち<欠片>は無闇に人へ襲ったりはしない!<無名>となっても琴線に触れて暴走するようなことがなければイタズラの範囲で収まるわ』
『....』
『<クロウカード>と一体化して人を襲う場合も新たにわかったけど、貴女は違う。自分の意思でこの子たちを襲った
どうしてなの?■■■■■■』
『そんなの簡単な話よ』
先程までの相手の心を安心させようとする声ではなく、困惑や怒りなどの負の感情が入り混じった声で彼女は欠片を問い詰める。そんな彼女に欠片は何食わぬ顔で淡々と口を開く
─ビリリッ!!
『ウグッ....』
欠片は一瞬の隙を突き、先程の棘付き蔓で単に襲うのではなく、それに電気か何かを纏わせて彼女へ襲った
既に疲労やダメージを受けていた彼女は、避けることも叶わずに攻撃を受けて気を失う。倒れる彼女を唯の蔓で捕まえて、欠片は独り言のように続きを言った
『そう、小さな子供でもわかる簡単な話
そう言って欠片は、リオたちを守ろうとした欠片の彼女を連れて、クロウカード<樹>の身体に入ったまま地下室から去って行った
最後まで読んで頂きありがとうございます!
はい。さくらに<樹>は封印させませんでした。オリジナル展開はどこがで入れたい、ならこうしよう面白そうだしと思った次第です
リオは霜降り欠片と樹欠片、どっちも回収出来ませんでしたけどね
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Repage18 焦りは禁物
(꒪0꒪ノ)ノ彡1ヶ月を過ぎてないだと!?
早いな....
本編どぞ!
...ピピピ...ピピピ...ピ─
─カチ...
「んぅ。っ朝、か」
カーテンに遮られているにも関わらず、窓から朝日が漏れ入ってくる。それを受けながら気怠そうに身体を起こす部屋の主
「おはようリオ....どうしたの?」
「おはようアリス。大丈夫、なんでもない」
部屋の主であるリオは、アリスに挨拶を返しながら寝巻きから制服へと着替える。その最中もどこか気力がないような感じで支度している
しかし、リオは別に朝が苦手という事ではない。たまに読書で夜更かしはすれど、早寝早起きをしっかりとしている。なら何故今日は元気がいつもよりないのかというと
「もう、大丈夫な顔に見えないわよ。そう落ち込まないの!トモヨ的に言えば、最初の大きな試練が訪れただけよ」
「うん....」
簡単な話。先日の木之本宅での騒動のことを引き摺っているのだ。クロウカードは1枚封印出来たものの、欠片2人は回収できず。更にクロウカード残り1枚は、片方の欠片に捕らわれているようなものだ
リオが気にしているのはまさにそこ。彼は、さくらが欠片の所為でクロウカードを封印できなかった、そしてその原因は自分にあると思っているのだ
「(僕がもっとしっかりしてれば、さくらは<樹>を封印できたかもしれないのに)」
「ほら、ボーッとしてないで!着替え終わったんだから早く朝ご飯を食べましょ!」
「いたたっ!わかったから耳引っ張らないで!」
アリスはいまのリオを見かねて、多少強引だが話題を逸らさせて朝食へと催促したのだった
*******
「リオくん!おはよう!」
「えっう、うん。おはよう....」
支度を終えてダイニングキッチンに来たリオ。そんな少年を元気のあり過ぎる声で迎えたのは、リオの保護者兼義姉の鈴だった
普段と違う彼女に戸惑うリオを置いて、鈴は少年の手を引っ張り朝食が置いてあるテーブルの前の椅子へと座らせた
「はい!今日の朝食はホットケーキよ!焼きたてホヤホヤだから、早いうちに召し上がれ!」
「うっうん」
「あ、それとも食べさせてあげた方がいいかしら?」
「大丈夫だよ!?い、いただきます!」
「(テンション高すぎるわね)」
「モグモグ...うん。美味しい」
「ありがとう!サラダもあるから!」
異様にテンションの高い鈴の言動は、朝食が終わってからも続き、リオが学校へ出かけると見送りするときも止まらずにいた
「それじゃあ、いってくるね」
「えぇ。そういえば、今日は早めなのね」
「うん。今日は日直だから、黒板綺麗にしたり花瓶の水変えたりとかしなきゃいけないから」
「そうなのね....あっ!今日は早めに帰ってくるから、お風呂一緒に入りましょうよ」
「入らないよ?」
「でも前までは一緒に入ってたじゃない」
「親睦を深めようっていう理由だったよね?もう僕と姉さんは充分に仲良いけど」
「あら〜!嬉しいこと言ってくれるじゃない!!」
「っうぐ。もう姉さん。苦しいってば」
リオの発言で感極まった鈴はリオを抱きしめる。胸の中に包み込まれたリオは息苦しそうに藻掻く
余談だが、当時の鈴は半ば無理やり一緒に風呂へ入っていた。リオもこの世界に来て間もなかったこともあり、日本では<裸の付き合い>という言葉があると鈴に言われ流されるままに入った、ということがあった
「っふぅ....。姉さん、どうしたの?」
「どうって?」
「今日はなんか、随分とテンション高いというか....何かあったの?」
「私はなにもないわ」
「えっ、じゃあどうして?」
疑問に思うリオに、彼女はリオの目線に合わせるように屈みこむ。そして、朗らかな笑みを浮かべて言った
「リオくんにもっと愛情を注いであげようと思って」
「....なにそれ?」
「普段から私は夜遅くに帰ってくるじゃない。そのせいでリオくんと接する機会がないわ」
「でも、仕事なんだから仕方ないよ」
「そうなの。でも仕方ないで済ませたらダメよ!」
「....」
「だから!私がリオくんといるときは、最上の愛をあなたにあげるから!リオくんも全力で甘えてきて!」
鈴の決意表明ともとれる言葉に、リオは何と返事をすればいいか分からずに戸惑う
「そ、そっか。じゃあそろそろ学校行かないとだし、行ってくるね!」
「あら?もうそんな時間なのね。あっ!なら早速だから行ってきますの─」
「行ってきまーす!!」
─ガチャ!...バタン!
リオが戸惑いの末に辿り着いた考えは逃げるのみ。ただし、その逃げは返事をどうすれば?とかの類いではない。それも少なからずあったろうが、いまの鈴に下手に接すると疲れそうとか面倒なことになりそうだと無意識に感じ取って逃げただけである
「あ....いけない。少し焦りすぎたかしら?とりあえず私も支度しないといけないわね」
そして、逃げるように(ではなく逃げた。)学校へ行ったリオを見送った鈴は先程の言動に反省するも、後悔などは微塵もしていなかったのだった
*******
「まぁ。そんな事があったんですね」
「そうなんだよ。ホントに今日の姉さんおかしかったから、どうしてだろう?って思ってさ」
「それは、最近リオくんの元気がなかったからではないしょうか?」
「僕が?」
「はぁ....あのね、リオ」
学校の教室へと到着したリオは、もう一人の日直当番である知世に今朝方の鈴の言動について話していた。そして粗方聴き終えた知世は、鈴の行動の意味を考えて指摘する。だが、それでもどうして?と疑問に思うリオ。そんないつまでも察しない少年にアリスが口を開いた
因みにここは教室だが周りは誰もいない。リオも知世も日直という事で早めに来ていたからである
「最近のリオは明らかに元気がなかったのよ?あなたは隠してたつもりでしょうけど、リンはそれに気付いてたわ。それも、私たちがサクラの家から帰ったときにはね」
「最初から気付いてたの?」
「多分ね。それで暫く様子見して、全然元気が戻らないリオを見てあの行動を起こしたんだと思うわ」
「鈴さんはリオくんの事を大切にしてますから、余計にリオくんの変化がわかるんですわ」
「そうだったんだ....悪いことしたなぁ」
「リオくんは悪くありませんわ。鈴さんがそうしたいと思ったから、そうしたんですわ」
「そうね。そんな事思うなら元気を出すこと!過ぎたことをいつまでも考えるのはナンセンスよ!」
「っそうだね。ありがとう2人とも!」
「えぇ!!」
「はい!」
2人の言葉によって、リオは完璧とは言えずとも元気を取り戻した。その様子を見た知世は、本来なら元気のないリオの為にと、登校中に思いついたことを話す
「ではリオくん!今後の英気を養うということで、早速ですが今日の放課後どうですか?」
「今日?うん。大丈夫だよ」
「実はぬいぐるみや玩具を売っている<ツインベル>というお店が今日オープンするんです。一緒に行きませんか?」
「ホントに?行く行く!」
「よかったですわ!」
知世の誘いを引き受けたリオ。久しぶりに彼の純粋な笑顔を見て、アリスは内心ホッとしながらリオに声をかける
「ちょうど良かったわねリオ。ぬいぐるみが置いてそうなお店が新しくできて」
「そういえば、リオくんはぬいぐるみを自作しているのでしたわよね」
「うん!去年から始めて十数個ぐらい出来てきたんだけど、どうしても行き詰まる時があってさ」
「そういうときに、お店にあるぬいぐるみとかを見て参考してるのよ。気分転換も兼ねてね」
因みに、ぬいぐるみを作っているというリオ。そんな少年の部屋はアリスと同じ位の大きさの自作ぬいぐるみが1年足らずで沢山おいてあり、そのどれもが御伽噺にでてくる人物をモチーフにしている
「では今度ぬいぐるみ作りの幅を広げる為に、一緒に衣装作りをしませんか?」
「いいねそれ!ぬいぐるみに着せる衣装とかの参考にもなるかも!!」
「それじゃあ都合が合う日に!場所は─」
そして、日程や場所などを決めたその後。リオたちは黒板などを綺麗にしながらぬいぐるみや縫い物などの裁縫関連の話題で盛り上がったのだった
*******
学校の放課後。リオたちは今日オープンの店に、途中で一緒に行くことになったさくらやその友人たちと来ていた。が─
「マキさん。これどこにおきますか?」
「そうね。じゃあそっちの窓付近にしましょうか」
「わかりました!」
「ほぇ!?テープが離れないよ!」
「大丈夫ですか?....っはい、とりましたわ」
「ありがとう知世ちゃん」
「(なんで、お店の準備を手伝っているのかしら?)」
そう。知世たち以外がいる為喋れないアリスが思っている通り、リオたちは何故か準備の手伝いをしていた
理由を話せば長くはならないが、簡潔に言おう
店にきたが開店準備が終わっていない。店長の真樹は手間取って準備が進まない。ならば手伝おう
といった具合である
「(本当にお人好しね。眩しいくらいに)」
そして、ある時はダンボールから商品を取り出して棚に並べ、またある時は床掃除してたら転んでダンボールの山を崩したりとちょっとしたトラブルがありながらも、店の準備は一段落したのだった
「手伝ってくれてありがとうみんな。引っ越してきたばかりだから、とても助かったわ。....さぁどうぞ!」
「ありがとうございます!」
「いただきます!」
手伝ってくれたリオたちにお礼としてお茶菓子を用意した真樹は、店の中にあるまだ片付けられていないダンボールや商品などを見てため息をつく
「こんなのじゃ、お客さんにどんなのがあるのかわかりづらそうね。明日にはゆっくりできるようにしておくから、遊びに来てね」
「はい!また来ます」
「ホントに素敵なお店!」
「千春ちゃんぬいぐるみ大好きだからよかったね」
「うん、すっごく嬉しい!」
「あっ、このお菓子美味しい」
「(リオ、みんなとの会話よりもお菓子か!)」
「よかった。実は手作りなのよ」
「そうなんですね!とっても美味しいで─」
話しかけられたリオは視線をお菓子から真樹へと変えようとする。しかし、その途中で窓の外を見ることになって思わず硬直した
『っいそげ!いそげ!』
「(すごい勢いで走っていったわね....欠片が)」
「....」
「どうしたの?」
店の前を横切るあやふやな影の存在<欠片>。急すぎたこともあってリオは暫く固まっていたのだが、真樹の声で気を取り直していち早く行動する
「っごめん皆!用事が出来たから先に帰るね!っあ、お菓子美味しかったですマキさん!また来ます!」
「えぇ、気をつけてね」
「はい!」
─ガチャ...バタンッ!
「凄く急いでたね。リオくん」
「....早く作りたくなってしまったのでは?」
「なにを?」
「ぬいぐるみですわ。昨年から御伽噺の登場人物のぬいぐるみを作っているんです。今日お店に来たのも今後の参考目的も少しあったそうです」
「天野くんってぬいぐるみつくってるんだ!」
「すごい!」
「(リオくんが少し焦ってましたし、咄嗟に誤魔化しましたけど....欠片でしょうか?)」
欠片を見失わないように急いで店から出るリオ。その様子を見た知世は、暫く友達と話してから直ぐ後を追おうとする。
「っでは私も─」
─ゴタゴタタタン!!
「大変、ダンボールが!?」
「置き方が悪かったのかしら....っ!」
が、山積みダンボールが謎に崩れ中身も散らかってしまったので、それを放って行くことは出来ずに結局は追えなかったのだった
何故か散らかってしまった商品のひとつを見て真樹が青褪めていたが、散らかったのを片付けることに気を取られてそれを見た者はいなかった
*******
リオside
*******
「どこに行ったんだろっ!」
「結構足が速かったわよね!っというかさっきの声はとても知っている子な気がしてならないわね」
「確かに、そうだね...あの子だよね」
店を出てから走り回って欠片を探したけど、すっかり見失っちゃった。でも、なんの欠片なのかは予想がついた。声を聞いただけだから、声が似ているだけで全く違うってなったら最悪だけどね
「っよし。もう少し探そう!」
「なに言ってるの!日が暮れそうになってるし、これ以上は危険よ!」
「大丈夫!!さっきの欠片があの子なら、特に危険はなさそうだし!」
「ダメ。絶対にダメよ」
「アリス?」
僕を止めるアリスは何回か聴いてきてるはずなのに、なんだかいつもより様子が違った
「リオ。この前のこと、まだ気にしてるのよね」
「....だって、サクラに迷惑をかけたんだよ。僕が欠片を回収しなかった所為でクロウカードも封印できなかった。だから早く欠片を回収しないと、また─」
「またそうやって一人で抱え込もうとしない!」
「別にそういう─」
「とりあえず、今日はもう帰るわよ。今のあなたじゃ危険でもない欠片にも、取り返しのつかないの事になるわ」
「....わかった」
無理やりアリスの説得を振り切ることはできた。でもなんだが、今のアリスに逆らうのは心の底からダメだと思ったんだ
さっきのアリスの言葉の中には、怒りや心配の他に、悲しみや恐怖、後悔といった感情がごちゃごちゃになっていたのが表情から見て取れた
その様子を見て、アリスが壊れてしまうのではないかと思った僕は、彼女の言う通りに家へと帰った
「(はぁ。やっぱり、不安定ね....)」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
キリのいい終わり方ってどうしたら?
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